アニメ様の『タイトル未定』
368 アニメ様日記 2022年6月12日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年6月12日(日)
今週の日曜もワイフと遠出をして散歩。皇居東御苑を歩く。感心するくらいに立派な庭園だった。取材の予習で『KURAU Phantom Memory』を21話まで観た。入江泰浩さんの過去の記事に目を通した。

2022年6月13日(月)
取材の予習は続く。『KURAU Phantom Memory』を最終回まで観て、TVシリーズ『CODE:BREAKER』の序盤と終盤を観る。同作OAD全3巻を観る。『ママは小学4年生』『熱血最強ゴウザウラー』等で入江泰浩さんが作画したパートに目を通す。ちなみに『CODE:BREAKER』のタイトルの二文字目って、ロゴだと「O」に「/」なんだけど、これって機種依存文字なのね。ネットで検索して、文字化けしているページをいくつか見た。だから、この日記では「O」で表記する。

2022年6月14日(火)
「この人に話を聞きたい」で入江泰浩さんのインタビュー。監督作の『ヒーラー・ガール』の話だけでなく、アニメーター時代の仕事、制作中の自主制作作品等、色々な話をうかがう。

2022年6月15日(水)
午前中は東京都現代美術館の「井上泰幸展」に。超貴重な資料が山盛りだった。言葉にするのが難しいけれど「ホンモノ感」のある展示だと感じた。展示に関わった方々の熱意も凄い。午後は小川びい君と打ち合わせ。20年前に作った同人誌について、色々と僕が忘れていたことを教えてもらう。

2022年6月16日(木)
TOHOシネマズ池袋の朝の回で『劇場版 からかい上手の高木さん』を観る。完結編ではないのに完結編みたいな仕上がり。予想よりも満足感があった。冒頭の音響の設計が面白かった。もう一度観て、音響を確認したいくらいだ。
昼は表参道で、業界のある方と吉松さんとでシェラスコをいただく。その「ある方」とは食事に行く約束をしていたのだけれど、コロナのために約束を果たすまで2年かかった。自分と吉松さんは渋谷まで歩いて、青山ブックセンターの「『デザインのひきだし46』刊行記念 大箔覧会 in ABC」に立ち寄る。箔押し&箔加工についての展示だ。専門学校生か若いデザイナーさんかは分からないけれど、お嬢さん達が展示物を見てはしゃいでいるのが印象に残った。

2022年6月17日(金)
グランドシネマサンシャインの朝の回で『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』を鑑賞。手描きアニメ風3DCG作品として、現状で最高の仕上がりだと思った。キャラの芝居も、手描きアニメ的なアクションもよかった。3DCGで鳥山明さんの画、あるいは今までのアニメ『DRAGON BALL』に迫ろうとする意欲を感じた。内容についてはピッコロのキャラクターの膨らませ方と、ピッコロと他のキャラクターとの関係、そして、今までのシリーズからのネタの拾い方もよかった。
僕の中では『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』のカイの芝居、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』のピッコロの芝居が繋がっている感じだ。作品外で月日を重ねたキャラクターの厚みと古川登志夫さんの芝居がシンクロしていると思えて、それがよかった。
それから、このひと月ほどで「シン・ウルトラマン」「トップガン マーヴェリック」「庵野秀明セレクション『ウルトラマン』4K特別上映」『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』を映画館で観た。ちょっと不思議な気分だ。

BONESで中村豊さんと打ち合わせ。中村さんと『モブサイコ100Ⅲ』追い込み中の亀田さんに、大量のおはぎを差し入れる( https://twitter.com/59033ihcimihsoy/status/1537737489297063937?s )。

2022年6月18日(土)
仕事の合間に、新文芸坐で「顔役」(1971/98分/35mm)を観る。プログラム「没後25年 異才・勝新太郎 型破りな表現者」の1本。二度目の鑑賞のはずだけど、冒頭の水虫に薬を塗るところとラストくらいしか覚えていなかった。非常に尖鋭的な作品だが、大きな意味での演出意図は分かる。かっこいいし「映画を観ている」気分に浸ることができた。それから勝新が可愛い。まさか勝新を可愛いと思う日が来るとは思わなかった。

第197回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作12【平安中期 何がどれくらいの大きさだったのか 編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、タイトルは発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に、平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。これまでのイベントでも、あっと驚くような新しい解釈が語られてきました。

 2022年11月12日(土)に開催する第12弾のサブタイトルは「平安中期 何がどれくらいの大きさだったのか 編」。現在、片渕さん達は「平安時代の何がどれくらいの大きさだったのか」を主に調べているのだそうです。その調査研究の成果を語っていただきましょう。出演は片渕須直さん、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回は会場にお客様を入れての開催となります。ただし、会場の定員は少なめの人数に設定します。今回のイベントは「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた片渕須直監督次回作」もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは11月1日(火)19時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT/PLUS ONE https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/233292
会場チケット https://t.livepocket.jp/e/animestyle_event197
配信チケット https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/194133

第197回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作12【平安中期 何がどれくらいの大きさだったのか 編】

開催日

2022年11月12日(土)
開場12時30分/開演13時 終演15時~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第777回 インタビューと人海戦術

先日、とある雑誌のインタビュー取材をお受けし、楽しくお話させていただきました!

アニメ誌ではありません(写真もなし)。依頼のメールを見た時、「あ、コンビニで見たことある~」と言った感じの雑誌です。まだ、詳細は伏せますが、単純に“俺が大好きな某漫画について語ってください”のインタビューで、それは当たり前にテンションが上がりました!
 で、「なぜ、俺に?」と取材に来た方々に尋ねると、このWEBアニメスタイルの連載で何回かその某漫画について語ってたのを目にしたかららしいのです。(777回も続けてて良かった! ありがとうアニメ様)イラストも描かせていただきましたが、その件に関しては雑誌発売時、もう一度話題にさせてください。
 で、つい先程(リアルにこの原稿に手をつける2時間前)、数年前に家庭の事情でウチ(ミルパンセ)を辞めた人から電話がきました。訊けば「実家に帰って地元にある小さなアニメ会社で、またアニメーターを始めた」とのこと。「おお、それは良かった!」と返し、要件は? と訊くと「作監を手伝ってくださる方いませんか?」とのHELP要請でした。俺は、

ごめん、ウチも作監が全然追いつかない状態で(汗)!

と、返さざるを得なかったのは言うまでもありません。「手伝ってあげたいけど、今は逆にこっちが手伝って欲しいくらいで」と続けて。ここで何度も繰り返し言ってる“現状アニメ業界全体の人手不足”。“今の段階での”自分の答えは、

まずは、会社内でできるだけ何とかすることを考える!

です。とにかく当たり前な話、その仕事が元請けだグロスだ関係なく、“現場で受けたんだから、現場でこなす”少なくとも“こなそうとする”のところまではスタッフを鼓舞して、その上でもちろんできない分は次の手を考える。例えば作監の修正をラフまでにして、清書をその作監の指導の下、社内の新人にやってもらうとか。昨今は制作進行・デスク・制作プロデューサーが100人に電話しても10人アニメーターが摑まるかどうかな上、よしんば摑まったとてそれは、いつ手を付けてくれるかも分からないフリーの方々。しかも、言い値の請求に応えなければならないので赤字必至。だから自分、ここ何年とかは、先輩を含めキャリアのある知り合いのアニメーターさんらにも声を掛けていません(それどころか、飲みにも行っていないし電話もしていないという……ごめんなさい)。なぜなら自分の先輩は皆さん巧い方々なので、どうせ手が埋まってて電話するだけでも時間がもったいないという。でも、そうは言っても、以前はダメもとで電話を掛けては、お互い情報交換みたいなことをしていましたが、それもここ7〜8年は社内の新人との交友がほぼ9割(この連載で見ても、ろくに友人・知人に会えてないのが分かりますよね?)。そんな訳で、社内の若手を指導しての人海戦術。幸い毎年新人は入ってくれるし、捕まらないアニメーターに電話しまくって仕事した気になるよりも、自ら手を動かし、若手に教えて何とかする方がよっぽど早いのです。よって、ウチのスタッフは脚本や演出やキャラデザといった要職に就くのも早い訳です。

 さて、現在制作中のシリーズを年内で作り終えての、さらに来年以降制作する作品らの打ち合わせが次々始まっています。この先2年程の予定が埋まり、それらに自分がどう関われるか? がこれからの問題。制作プロデューサーかまた総監督・シリーズ構成? なるべく現場の若手にメインを任せつつ、ちょっと距離を置いて監修して、自分の監督作のほうも準備しようと思っています。

アニメ様の『タイトル未定』
367 アニメ様日記 2022年6月5日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年6月5日(日)
明け方までにこの日にやらなくてはいけない作業を終える。ワイフと遠出をして散歩。イベント「花菖蒲を楽しむ」開催中の小石川後楽園に行く。
SNSで『響け!ユーフォニアム』新作のスケジュールを知る。2023年に「アンサンブルコンテスト編」がBlu-ray発売、劇場特別上映。2024年にTVシリーズ「久美子3年生編」放映だそうだ。楽しみに待ちたい。
仕事関係で観たい某TVアニメ。全24話で、配信は第1話だけが無料。第2話以降の配信が1話あたり220円だから全話を視聴すると5060円。これはハードだ。輸入盤DVDは全話入りで3453円。Amazonにある中古DVD全巻セットが3350円。さて、どうする。

2022年6月6日(月)
グランドシネマサンシャインで『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』Dolby Atmosを鑑賞。自分が観たかったものとは少し違ったのだけれど、「ククルス・ドアンの島」のリメイクとしては充分以上の出来であり、驚くくらいにサービスたっぷり。そして、自分が『ガンダム』の何が好きなのかを改めて考えることになった。
『薔薇王の葬列』は途中の話数を観ていなくて、最近の数話を観ているんだけど、ちゃんと観ていたら、もっと楽しめただろうと思っている。

2022年6月7日(火)
TOHOシネマズ 日比谷で「庵野秀明セレクション「ウルトラマン」特別上映(4K上映)」を観る。映画館で観ているのに「上映会」気分だった。映像については鮮明な部分はかなり鮮明。音もよかった。内容については「空の贈り物」が圧倒的な面白さ。上映の最後が「空の贈り物」でよかった。ブログラム全体としては「このセレクトでよかったの?」と思わないでもないけれど、観客にもっと「ウルトラマン」を観たいと思わせるセレクトだったのかもしれない。「ウルトラマン」もいいけど、「帰ってきたウルトラマン」の5、6話とかも劇場で観たい。映画の後は、東京ミッドタウン日比谷内をうろうろして、銀座 蔦屋書店 T-SITEをのぞいて、ギンザ・グラフィック・ギャラリーの「佐藤卓TSDO展〈in LIFE〉」に立ち寄る。やたらとカルチャーな時間を過ごした。
取材の予習でAmazon prime videoで『灼熱の卓球娘』1話から10話まで観た。
紙の文庫本で買った小説「むらさきのスカートの女」を読了。普通の意味での面白さとは違うかもしれないけど、面白かった。解釈するのが楽しい小説だと思う。

2022年6月8日(水)
仕事の合間に、新文芸坐で「少林寺 4Kリマスター版【4K上映】」(1982・中国=香港/100分/DCP)を観る。嬉しかったのは新文芸坐の、作品上映前の予告編が復活したこと。「少林寺」の前にやった予告は「戦場のメリークリスマス 4K修復版」「テオレマ 4Kスキャン版」「アンビュランス」「ナイル殺人事件」だったかな。古今東西過去近年の予告をゴチャっと観られるのが、新文芸坐の良さのひとつだと思う。
Amazon prime videoで UHDの「孤独のグルメ」を観る。確かに通常の「孤独のグルメ」より綺麗。五郎の顔の皺もよく分かる。
取材の予習で、かなり久しぶりにOVAの『エイリアン9』を視聴。すっかり忘れていたけど、「久川綾アニメ」のひとつだ。

2022年6月9日(木)
次号の「設定資料FILE」は『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』だ。『ククルス・ドアンの島』のBlu-rayを再生しつつ、「設定資料FILE」の構成作業をする。『ククルス・ドアンの島』Blu-ray劇場限定版についてきた絵コンテ、原画集にも目を通す。さらに映像特典、シナリオ デジタルアーカイブも見る。原画集で「えっ、あそこって安彦さんの原画だったの?」と驚く。シナリオ デジタルアーカイブを読んで、さらに知りたいことが増える。

2022年6月10日(金)
『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』のブライトは、実際には白目があるけれど、白目部分を白く塗っていないということなのね。ある程度、カメラが寄ったカットだと、目の上の部分が白く塗られている。劇中の登場人物からも白目が見えづらいので、カイに「白目ナシ」と言われたということなのだろう。
あまりにも登場人物が多いので、Blu-rayソフトでどの人物がどこに出ているのかを確認しながら、「設定資料FILE」の構成を進める。今回の構成は難産で、密度感の調整をするために一度できたページをやり直す。
作業をしながら、作業机にタブレットを置いて色々と観た。『からかい上手の高木さん』3期の未視聴分(9話分くらい)を連続して観たのだけど、没入感が強かった。高木さんを応援したくなった。

2022年6月11日(土)
取材の予習で『KURAU Phantom Memory』の視聴を開始。仕事の合間に、池袋で開催されていた「プロデューサー・丸山正雄のお蔵出し PART1《『A-Girl』『真・孔雀王 天魔復活/崑崙鳴動』》」に。『A-Girl』って上映用の素材はこのイベントのために用意したものだろうか。『真・孔雀王』は一度は観ているはずなのだけど、すっかり内容を忘れていた。リラックスした感じのよいイベントだった。

第776回 コンテ清書と原画

現在、オープニングのコンテ清書中(ラフは済)!

あ、もちろん現在、シリーズ構成・総監督で携わってるシリーズの、です。因みにエンディングの方も、コンテプランのサムネイルはできています。本来は監督に任せるはずだったのですが、現場スケジュール的に慣れてる自分がコンテ切った(描いた)ほうが早いだろう、という話で引き取ることにしました。
 今回は本編の内容的に“優しさ”がテーマなので、OP映像も比較的アクション要素よりは、キャラクターを丁寧に魅せるカット割りを心掛けています。
 以前にもここで語った(書いた)かと思いますが、俺のOP・ED場合「さあ、これから1週間OPコンテのことだけを考えるぞ!」と、他の仕事を止めてそれだけやる体制で取り組んだことがほとんどありません。必ず何かと同時進行。それは『化物語』OPや『はなまる幼稚園』ED・『妖狐×SS』EDなど、他者の監督作品のOP・EDのみお手伝いパターンも例外ではありません。なぜなら、

(総製作費から逆算した)OP・EDのコンテ・演出料では1ヶ月食えるかどうか?

程度ですから。同時にシリーズ本編のコンテからレイアウト・チェック──時には原画や作監等もやりつつ、頭の片隅でOP・EDの構成を日々考えるものです。『化物語』や『はなまる幼稚園』の時も、さらに別作品のコンテや次の監督作品の脚本などを片手でやりつつでした。
 今作のOP・EDも本編作業をやりつつ、ヘッドホンで主題歌を繰り返し聴きつつ、ふと思いついたところで、

 と、傍らのメモ用紙(フレーズ毎に2~3行ずつ空けた歌詞カードをPDFで書き出したモノ)にサムネでメモっていくのです。「このフレーズに、あの画を~」と部分部分バラバラ、90秒がパズルのように埋まっていく場合もあれば、頭からまるでドラマの如く順番に描かれる時もあります。『化物語』OPはパズル的に、『ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』OPはドラマ的に画が埋まっていった記憶があります。
 特に今回は(も?)作画スタッフの労力軽減のため、コンテの段階でややラフ原画にできるくらいの精度で清書しています。本来は自分「過度なコンテ清書は不要」派です。それは若い頃、

コンテの意図をくんで、より良くなるよう考えて描くのが原画の仕事である!

との教えを受けて育ったし、他人のコンテで俺自身が原画を描く際でも、余りに細かく決めこまれたコンテだと逆に動きもレイアウトも巧く繋がらなかったりもするからです。
 でも、自分の主義・主張なんかより、ここ数回分の内容でも触れているとおり“業界全体の人手不足”を補う方が最優先。不本意ながらも、ある程度細かく描き込んであった方が、新人に原画を振ることもできて現場が助かるので、時と場合、必要とあらば、今は粛々と清書をすることにしています。その代わり、自らが既に原画を描いているつもりでのコンテ清書です。それくらいのワガママは許してください。

 てとこで、明日はワクチン接種に行ってきます。

第196回アニメスタイルイベント
夏目真悟と仲間達

 『四畳半タイムマシンブルース』は森見登美彦さんの同名小説を映像化したアニメーション。2010年に放映されたテレビアニメ『四畳半神話大系』のキャラクター達が活躍する新たな作品です。監督を務めたのは『四畳半神話大系』にも参加した夏目真悟さん。アニメーション制作はサイエンスSARUです。

 10月30日(日)に開催するトークイベント「第196回アニメスタイルイベント 夏目真悟と仲間達」では、夏目監督と制作に参加したスタッフの方々に『四畳半タイムマシンブルース』のメイキングについて語っていただきます。
 トークは2部構成で、第1部では夏目監督が登壇。第2部では他のスタッフの方達にも出演していただきます。会場は新宿のLOFT/PLUS ONE。お客さんが会場で観覧するかたちでの開催で、第1部のみをネット配信します。
 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

 チケットは10月18日(火)19時から発売。購入方法については、以下のリンクをご覧になってください。

 『四畳半タイムマシンブルース』はディズニープラスで独占配信中。また、9月30日から3週間限定で劇場公開されています。イベントに来る前に是非とも本編をご覧になってください。

■関連リンク
LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/231885

『四畳半タイムマシンブルース』公式
https://yojohan-timemachine.asmik-ace.co.jp

第196回アニメスタイルイベント
夏目真悟と仲間達

開催日

2022年10月30日(日)
開場18時/開演18時半 終演20時半~21時半頃予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

夏目真悟、小黒祐一郎、スタッフの方達

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第241回 音楽も時間旅行する 〜四畳半タイムマシンブルース〜

 腹巻猫です。小学生の頃は模型作りや工作大好き少年だったので、10月からスタートしたTVアニメ『Do It Yourself!!』に注目しています。舞台が「ものづくり」の街として有名な新潟県三条市。空にドローンが飛び、市内を自動運転バスが走る近未来的な街に描写されていて、SFなの? リアルなの? とドキドキ。オープニング&エンディング主題歌の作詞・作曲と劇中音楽を佐高陵平がひとりで担当していることに驚きました。アコースティックサウンドの音楽がいい感じです。


 9月30日から3週間限定で劇場公開されている『四畳半タイムマシンブルース』を観た。

『四畳半タイムマシンブルース』公式サイト
https://yojohan-timemachine.asmik-ace.co.jp/

 『四畳半タイムマシンブルース』はTVアニメにもなった森見登美彦の小説「四畳半神話大系」と、実写劇場化もされた上田誠の戯曲「サマータイムマシン・ブルース」がコラボした作品。
 『四畳半神話大系』がアニメ化された際に上田誠がシリーズ構成・脚本を手がけ、また同じく森見登美彦原作の劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』でも上田が脚本を担当した縁もあって、2作品のコラボが実現したのだとか。森見登美彦が小説「四畳半タイムマシンブルース」を2020年に発表し、それをアニメ化したのが今回の作品。単純にTVアニメを劇場用にした作品ではないわけだ。
 『四畳半神話大系』は大学三回生の「私」が「もし入学したときに違うサークルを選んでいたら」と異なる可能性を考え、それを体験する物語。時間ループと並行世界(今風に言えばマルチバース)の要素を取り入れた不思議な世界観の作品である。実験的な映像表現も観られる意欲作だった。
 いっぽうの『サマータイムマシン・ブルース』は、クーラーのリモコンを求めてタイムマシンで時間旅行を試みる大学生たちのスラップスティックなSFコメディ。筆者も好きな作品だ。
 その2作がコラボしたという話を最初に聞いたときは、込み入ったプロットの作品がふたつ合体して、話がこんがらがるのではないかとちょっと心配した。
 しかし、作品を観て感心した。ドタバタはあるけれど正攻法のタイムトラベルSFになっている。驚くほどTVアニメ版(便宜上TVアニメ『四畳半神話大系』をこう呼ぶ)の雰囲気が再現されているし、キャストも2020年に逝去した藤原啓治以外はオリジナルメンバーが集結した。TVアニメ『四畳半神話大系』が放映されたのは2010年。10年以上経っているとは思えないのがすごい。
 今回はTVアニメ版にあった実験的な映像表現やシュールな描写が抑えられ、ぐっと観やすい作品になっている。さわやかな後味の青春ものとしても観ることができる。TVアニメ版を観てない人も、きっと楽しめるはずだ。
 本作はDisney+でも配信されていて、配信版は5つのエピソードに分けて公開している。でも、できれば劇場で一気に観ることをお奨めしたい。タイムトラベルにからむ伏線の回収や謎解きなどは一気に観たほうが面白いはずだし、カタルシスがあると思うからだ。
 ただ、Disney+では劇場版に含まれないエピソードを第6話として配信しているので悩ましい。事情が許すなら両方観てほしいところだ。

 音楽にも感心した。TVアニメ『四畳半神話大系』の音楽を手がけた大島ミチルが本作でも音楽を担当。TVアニメ版の雰囲気を受け継いだ楽曲を提供している。劇場版のために書かれた新曲もあるし、TVアニメ版のBGMをアレンジした曲もある。音楽が流れてくると「ああ、『四畳半』だ!」という気分になる。
 劇場版のために書かれたメインテーマは、ギターが奏でるブルージーな曲。「タイムマシンブルース」のタイトルにちなんだ曲想だろう。また、タイムトラベルのサスペンスを表現する曲、新たに登場するキャラクター「もっさりくん」のテーマなどが設定され、それらのアレンジが全編に散りばめられて、映画音楽としての統一感を生んでいる。
 劇場版のための新曲とTVアニメ版をふまえた曲、2種類の音楽が流れることで、過去と現在の『四畳半』の世界が混然となる。物語と同様に音楽も時間を行き来しているようだ。絶妙の音楽設計なのである。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「四畳半タイムマシンブルース Original Soundtrack」のタイトルでFABTONE/フジパシフィックミュージックより2022年9月28日に発売された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 京都の夏
  2. タイムマシンサスペンスの始まり
  3. 責任者はどこか2022
  4. 小津と明石さんのテーマ2022
  5. 日常がそこにある
  6. 城ヶ崎と蚊帳の外の相島
  7. ワクワク!のんきなタイムトラベラーズ
  8. もっさりくんと樋口さんのシャンプー
  9. 私のテーマ
  10. タイムマシンサスペンス
  11. タイムマシーンブルースにおける相島と小津
  12. タイムマシン製作委員会
  13. もっさりくん
  14. 宇宙の摂理に反する
  15. 京都、左京区
  16. 不毛な日常
  17. ピンチ!宇宙崩壊の危機!!
  18. 私の焦りと不毛なループ
  19. 一生の不覚
  20. 宇宙崩壊やばい〜カッパ伝説
  21. ピンチ!宇宙崩壊の危機!! 絶望バージョン
  22. 四畳半主義者
  23. 押し入れの中で
  24. 壮大な時空の旅路
  25. 四畳半の終わり
  26. Time Machine Blues〜Ending Version
  27. 薔薇色のキャンパスライフ〜四畳半タイムマシンブルースVer.
  28. 四畳半の甘い生活〜四畳半タイムマシンブルースVer.
  29. 憧れの黒髪の乙女〜四畳半タイムマシンブルースVer.
  30. 責任者はどこか?〜四畳半タイムマシンブルースVer.
  31. 「私のテーマ」〜四畳半タイムマシンブルースPianoVer.
  32. 夏休みへ続く儚い想い
  33. Time Machine Blues

 フィルムスコアリングで作られた音楽を使用順に収録した構成(ただし、完全収録ではないもよう)。TVアニメ版の音楽をアレンジした曲のタイトルは、原曲のタイトルを踏襲してつけられている。TVアニメ版のサントラをお持ちの方は、新旧の演奏を聴き比べてみるのも一興だろう。
 1曲目の「京都の夏」が本作のメインテーマ。ギターが奏でる、もの憂いムードの曲である。冒頭、京都の夏の暑さにうんざりする「私」のモノローグとともに流れていた。トラック11「タイムマシーンブルースにおける相島と小津」やトラック24「壮大な時空の旅路」は同じメロディをアレンジした曲だ。
 トラック2「タイムマシンサスペンスの始まり」は時間旅行をめぐるトラブルを描写する曲。このモチーフはトラック10「タイムマシンサスペンス」に発展する。緊張感とコミカルさが同居する曲調が『四畳半』らしい。
 さらに困った状況を描写する音楽がトラック17「ピンチ!宇宙崩壊の危機!!」とトラック21「ピンチ!宇宙崩壊の危機!! 絶望バージョン」。
 物語が進むにつれて、同じモティーフがよりダイナミックなアレンジで反復されるのが映画音楽ならでは。サントラを聴く楽しみのひとつである。
 トラック7の「ワクワク!のんきなタイムトラベラーズ」も本作のための新曲。弦・パーカッションによるリズムとクラリネットのとぼけた音色のアンサンブルが楽しい。
 トラック8「もっさりくんと樋口さんのシャンプー」で初登場するのが、新キャラクター「もっさりくん」のテーマ。このテーマはトラック13「もっさりくん」でも聴ける。クラシカルでユーモラス、謎めいているが妙に親しみを感じるキャラクター「もっさりくん」のイメージがうまく表現されている。
 TVアニメ版のBGMをアレンジした曲にも注目してみよう。
 TVアニメ版に由来する曲のタイトルは基本的に原曲のタイトルを踏襲している。その曲名のつけ方にはいくつかのパターンが見られる。
 トラック3「責任者はどこか2022」とトラック4「小津と明石さんのテーマ2022」は曲名のあとに「2022」がついたパターン。「責任者はどこか2022」はTVアニメ版の「責任者はどこか?」のアレンジ。「小津と明石さんのテーマ2022」はTVアニメ版の「小津のテーマ」と「明石さんのテーマ」を合体してアレンジした曲である。2曲が1曲になっているのは、同じシーンで小津と明石さんが続いて登場するから。いずれもTVアニメ『四畳半神話大系』でよく流れたおなじみの曲だ。
 TVアニメ版のBGMと同じ曲名が付いた曲もある。
 トラック9「私のテーマ」、トラック15「京都、左京区」、トラック16「不毛な日常」、トラック22「四畳半主義者」は、TVアニメ版に同じタイトルの曲がある。メロディや楽曲の構成も同じで、アレンジ曲というより、同じスコアで演奏された「新録版」のようである。
 といっても、原曲と新録版とではミュージシャンも録音環境も異なっているから、曲のニュアンスも異なる。
 TVアニメ版との大きな違いは、本作の音楽の大部分が海外で録音されていること。TVアニメ版は日本のスタジオとミュージシャンで録音されたが、劇場版はブダペスト、パリ、ニューヨーク、東京の4都市で録音が行われている。オーケストラはブダペスト、バオリンソロはパリという具合だ。近年は世界を飛び回ってレコーディングやコンサートを行っている大島ミチルならではの仕事である。
 劇場版の音楽はTV版よりクラシック的というか、広がりのある、まろやかな音に仕上がっている。劇場に映える音楽(音だから「映える」はおかしいけど)、劇場の音響システムで体験してほしい音楽である。
 トラック25「四畳半の終わり」はラストシーンに流れるピアノソロの曲。TVアニメ版に「四畳半紀の終わり」という似たタイトルの曲があるが、そのアレンジではない。「私」と明石さんが河原で語らうシーンに流れる、しみじみと心に残る曲である。
 ここまでが劇場版で使われた音楽で、トラック26以降は実は劇場版では使用されていない。Disney+のみで観られる配信版で使われた曲である。
 トラック26「Time Machine Blues〜Ending Version」は配信版のエンディング主題歌。メインテーマに歌詞をつけて歌にした曲だ。トラック33「Time Machine Blues」はそのフルサイズ。
 トラック27〜32は配信オンリーの第6話で使用された曲である。
 そのうち、曲名に「四畳半タイムマシンブルースVer.」と付けられたトラック27〜31はTVアニメ版の音楽をアレンジした曲。「薔薇色のキャンパスライフ」「四畳半の甘い生活」「憧れの黒髪の乙女」など、『四畳半神話大系』で耳になじんだ曲が選ばれている。「四畳半タイムマシンブルースVer.」としたのは劇場版の曲と区別するためだろうか。シーンに合わせて演奏されているため、曲の長さも30秒程度から2分を超えるものまでさまざまだ。
 トラック32の「夏休みへ続く儚い想い」は第6話のラストシーンに流れる、3分を超える曲。「明石さんのテーマ」の変奏から始まり、メインテーマのピアノソロに展開、ストリングスとピアノのリリカルな演奏で締めくくられる。本アルバムの中でも「四畳半の終わり」と並ぶ感動的なナンバーになっている。

 『四畳半タイムマシンブルース』のサウンドトラックは、劇場用新曲とともにTVアニメ版の代表曲を新アレンジ・新演奏で聴くことができる、TVアニメ『四畳半神話大系』のファンにも魅力的なアルバム。TVアニメ版のサントラが入手困難になっているだけに、遅れて『四畳半』のファンになった人にもぜひ聴いてほしい作品である。配信版もリリースされており、一部の音楽配信サービスではハイレゾ版も選択可能だ。

四畳半タイムマシンブルース Original Soundtrack
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アニメ様の『タイトル未定』
366 アニメ様日記 2022年5月29日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年5月29日(日)
朝9時までに大物原稿を一段落させる。その後はワイフと調布に。深大寺で前回は食べられなかった蕎麦をいただいて、神代植物公園の中を歩く。神代植物公園は劇場版『美少女戦士セーラームーンR』の植物園のモデルだ。離れたところにある水生植物園にも寄る。バスで移動して吉祥寺に。ユニクロ吉祥寺店のみでやっているSTUDIO4゚Cのグッズを作ることができるサービスで、『鉄コン筋クリート』のTシャツを作る。

2022年5月30日(月)
昨日の『サザエさん』Aパート「名探偵ワカメ」はちょっとした異色回。ワカメが日常の中で、色々な推理を披露する話で、謎を解く度に効果音と共に、ワカメがホームズのような姿になる。背景もイメージ背景となる。そして、姿が変わる時に、元の姿の画と探偵姿の画がパカパカする。推理の度にそれをやるのだ。演出家のアイデアだろうか(脚本/中園勇也、演出/森田浩光、作画監督/見陰智史)。
昼食時に池袋PARCOで開催中の「WIT STUDIO 10th Aim Higher」に。少し待ったけれど、当日券で入れた。特にマニア向けの展示というわけではないけれど、色々な作品の資料を見ることができて楽しかった。撮影OKな資料が多いのも嬉しい。

2022年5月31日(火)
Wikipediaの『ハイスクール!奇面組』の項で、2007年に発売されたDVD-BOXの1巻に、原作者描き下ろしのアニメスタッフ向け設定資料などを収録したブックレットが付いていたことを知る。Amazonを見るとブックレットは168ページあるらしい。うーん、気になるなあ。
グランドシネマサンシャインで、ワイフと「トップガン マーヴェリック」【IMAXレーザーGT字幕版】を鑑賞。終盤の展開をのぞけば正攻法の作りなんだけど、猛烈に面白い。映像も豪華。終盤の展開は「おいおいマジかよ」って感じで、別の映画が始まったのかと思ったけれど、それも含めて満足。しっかりと作って、きっちりと楽しませる。僕は旧作の熱心なファンだったわけではないけれど、ファンも大満足なのではないか。こういう映画が作れるんだなあ。ただ、本来なら若い人を育てなくてはいけない立場である主人公の振るまいについては、他人事ではなくて、ちょっと苦笑いした。

以下は「トップガン マーヴェリック」の画角についてのメモ。SNSを見ると情報が錯綜しているみたいだけど、「トップガン マーヴェリック」IMAXは「IMAXフルサイズ」ではない。「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」公開時の呼称にあわせるなら「IMAX画角」だ(この呼称は一般的なものではないはず)。IMAXフルサイズ=1.43:1、IMAX画角=1.90:1。ただし、「トップガン マーヴェリック」はIMAX画角の時間が長い。見せ場のほとんどがIMAX画角だ。そして、僕の印象としては、他の「IMAX画角」の映画よりも満足度が高い。それから、スコープサイズとIMAX画角の切り換えが上手い。映画を観ていて「ああ、画が大きくなった」「小さくなった」と思うものもあるが、「トップガン マーヴェリック」は、気がつくと画角が変わっている感じだ。

2022年6月1日(水)
『その着せ替え人形は恋をする』『ワンダーエッグ・プライオリティ』等のBlu-rayソフトを、43インチ4Kモニターで再生してみる。『その着せ替え人形は恋をする』のオープニングでもモアレが起きない。万歳。『ワンダーエッグ・プライオリティ』はアニメ美意識の高さが際立つ。それらとは別のある作品で、今まで気にならなかった、というか気づかなかったテクスチャーのズレが気になった。動画の粗さも気になるようになった。
リンクは張らないけど、Twitterで『犬王』の松本憲生パートをズバリ当てた人がいた。僕は関係者から聞いていたので知っていた。すごいなあ。分かる人には分かるんだ。

2022年6月2日(木)
モスプレミアム 千駄ヶ谷店で錦織博さんと打ち合わせと世間話。顔をあわせるのは久しぶり。錦織さんは見かけが変わらないなあ。ちなみにモスプレミアムとは、お酒が呑めるモスバーガーである。
30年前の同人誌で書いた編集後記を読み直して、軽いノリで書いたことを後悔する。

2022年6月3日(金)
血液検査の結果が出た。薬を飲んでいるからではあるのだけれど、成人病関係の全ての数値が問題無しだった。先生に「血圧も他も、きちんとコントロールできている」と言ってもらった。アレルギーがありそうで、それも調べてもらったのだけれど、何のアレルギーがあるのかは今回はわからず。一番可能性があるのが「蛾」のアレルギーだそうだ。蛾は縁が無いなあ。
先日、紙の文庫本で買った小説「三千円の使いかた」を読了。普段の自分なら読まないタイプの小説だが、帯のテキストで煽りに煽っていたので買ってみた(今までだと、帯で煽っているような小説もあまり手に取らなかった)。読んでみたら、予想よりもずっと楽しめた。序盤のブロックが特に面白く、主人公の姉のエピソードが印象に残った。

2022年6月4日(土)
阿佐ヶ谷ロフトAで「第191回アニメスタイルイベント 『犬王』の作画を語ろう!」を開催。盛り沢山で楽しいイベントになった。製作委員会とサイエンスSARUさんのご厚意で、話題になっている部分の映像や制作素材をスクリーンに映すことができた。そのオペレーションもサイエンスSARUも方にやっていただいた。配信のない部分では、アドリブ的に大勢のスタッフに参加していただいた。こういったノリのイベントは久しぶり。「時が動き始めた」って感じ。帰りに書店で紙の文庫本を数冊買った。

第775回 若かった……

『BLACK CAT』のコラボカフェ、とのことです!

 2005年に放映された自分の初監督作。放映時の自分は30歳、前作『砂ぼうず』(2004年・副監督)の後半は同時に『BLACK CAT』の脚本打ち合わせを開始してたので監督に着手した時は29歳、若かった。原作者・矢吹健太朗先生にとっても初アニメ化で当時24歳(自分より6つ若いはず)。
 で、先日、

「お久し振りです~」と『BLACK CAT』の
キャラデザ秋山由樹子さんより電話!

 何でも、コラボカフェのために久し振りに 『BLACK CAT』の版権を描きおろしたとのこと。当時、秋山さんにとっても初キャラクターデザイン・総作画監督。つくづく、「皆若かったな~」と感慨深く、手短にお互いの近況報告。
 てとこで、また短くてすみません。仕事に戻ります。次回は頑張ります( ̄▽ ̄;)。

アニメ様の『タイトル未定』
365 アニメ様日記 2022年5月22日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年5月22日(日)
早朝の新文芸坐に行って「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.135 押井守映画祭《4K VS 35mm》編」の終幕を見届ける。

2022年5月23日(月)
43インチ4KモニターでNetflixの『K RETURN OF KINGS』を観る。予想していたことではあるけれど、『K RETURN OF KINGS』の映像は大画面に映える。破綻もない。ロングショットのキャラクターも見やすい。
久しぶりに「紙の文庫本を読もう」と思って、早朝散歩の途中で、大塚の山下書店で数冊買った。そのうちの1冊が「僕、はまじ」で、この日のうちに読了した。「僕、はまじ」は『ちびまる子ちゃん』の登場人物である「はまじ」のモデルである浜崎憲孝さんの半生記だ。「僕、はまじ」の単行本が刊行されたのは2002年だが、僕は今回の文庫化で初めて読んだ。『ちびまる子ちゃん』劇中のはまじはひょうきんで、のんびりとしたところのある少年だが、現実の浜崎さんは生身の人間である。ひょうきんでのんびりしているばかりではない。プールの授業に耐えられずに学校から脱走し、登校拒否になる。高校を中退して漫才師を目指したのにも驚かされた。文章で書かれている浜崎さんと『ちびまる子ちゃん』のはまじの印象は非常に近い。それだけにその後の、あるいは『ちびまる子ちゃん』で描かれていない部分が興味深かった。文庫版のあとがきに書かれた最近の体調の部分も、色々と感じさせられた。これから『ちびまる子ちゃん』のはまじを見る目が変わりそうだ。

2022年5月24日(火)
『その着せ替え人形は恋をする』を再見。1話から最終回までNetflixで一気観した。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の桐乃が美少女ゲームが好きであることについては違和感があるのに、『その着せ替え人形は恋をする』の海夢がアダルトなゲームをやっていることについては「ありそう」と思えるのは何故だ(個人の感想です)。
新文芸坐の10:00~11:39の回で「ジャコ萬と鉄」(1964/99分/35mm)を観る。プログラム「丹波哲郎 生誕100年祭」の1本。主演が高倉健で、敵役が丹波哲郎。最後は当然2人の対決になると思っていたら、クライマックスで対決にならない。ならないんだけど、盛り上がるし、爽快でもある。その意外性も込みで満足。丹波哲郎演じるジャコ萬に惚れているユキという女性も相当に面白かった。今回観たのは1964年版だけど、1949年版も観てみたい。

以下は某SNSに書いた話題。Twitterで、業界のある方が『新世紀エヴァンゲリオン』のLDの売り上げが2~3万枚本だったとツイートしていたので、反論するつもりで書いたのだけれど、大人気ないのでTwitterには書かなかった。なお、以下の数字は正確ではありません。
…………
『新世紀エヴァンゲリオン』のLDはテレビ放映中で各巻15万枚くらい出ていたと記憶しています。『DEATH AND REBIRTH』のプレスシートを作った段階で、LDとビデオを合わせて各巻30万くらいだったかな。
途中から「一時的に、日本中のプレス工場で他のLDのプレスを止めて『エヴァ』のLDをプレスしています」と言われた記憶がある(ヤシマ作戦っぽい)。記憶モードだし、元々、大袈裟に言っていたのかもしれないですが。
『機動戦艦ナデシコ』のLDの1巻が確か8万枚で、かなりのヒット作なんだけど、『エヴァ』の15万枚の後だったので、あまり成功に見えなかったというのはありました。
もうひとつ。『新世紀エヴァンゲリオン』のLDではジャケットの印刷に特色を使えなかった。特色を使うと、乾かす時間が必要になるので、プレス数が多い『新世紀エヴァンゲリオン』では使えなかったのだ。一方、『少女革命ウテナ』のLDジャケットは特色を使いまくりだった。『少女革命ウテナ』のLDジャケットは途中の巻から、ほぼモノトーンになるのだが、実は5色印刷だった。『少女革命ウテナ』はプレス数が少なかったので、インクを乾かす時間がとれたのである。嬉しいような嬉しくないような話。

2022年5月25日(水)
グランドシネマサンシャインの13:25 ~15:44の回で「ハケンアニメ!」を観る。ついては色々と思うところがあったけれど、まだ、書けない。この映画を誉める人が大勢いるのも分かる。

2022年5月26日(木)
配信で『プレイタの傷』1話を配信を43インチで視聴。いやあ、これは凄い。大画面映えする。
『であいもん』を1話から最新8話まで観る。これはテレビドラマっぽいなあ。勿論、アニメ的な描写もあるんだけど、基本的にはテレビドラマっぽい。だけど、今このくらいの感じのテレビドラマがあるかというと、ないかもしれないし、テレビアニメとして魅力がないわけでもない。以前にあった「テレビドラマのようなテレビアニメ」よりもナチュラルな仕上がりになっている印象。
SNSで『SHIROBAKO』で劇中での監督の扱いが軽かった(作っている作品を引っ張っていく存在ではなかった)のは先に「ハケンアニメ!」があったからかもしれないなあと書いたら、関係者から打ち合わせでは「ハケンアニメ!」のタイトルは出ていなかったと突っ込みが入った。ちなみに「ハケンアニメ!」の連載が2012年からで『SHIROBAKO』の放送が2014年から。

2022年5月27日(金)
仕事の合間に、ワイフと旧古河庭園に。庭園内をぐるりと回る。薔薇の盛りは過ぎていたけれど、ワイフは満足した模様。途中で浅見光彦ファン御用達らしい和菓子屋で事務所スタッフへのお土産を買う。

2022年5月28日(土)
『犬王』公開日。バルト9の最初の回でワイフと鑑賞する。わざわざ新宿に行ったのは、池袋よりもスクリーンが大きいのではないかと思えたから(本当に大きいかどうかは分からない)。もっともっと大きなスクリーンで観たい。

第774回 現状と希望

 プロデューサーさんらとの雑談において、業界全体の人手不足が話題になることが多い昨今。でも以前から何度もここで語っているとおり、

他社からの引き抜き及びフリーの引っ掻き集めによる大量生産ではなく、 新人から育成したスタッフと共に身の丈に合った“コツコツ地道に”型の作品づくり

をモットーに10年やってきてる我々にとっては、多少キツくても現状「まあ、まだ予想の範囲内」です。
 最近、「動仕(動画・仕上げ)を海外に撒くと、1週間でも上がってこなくなった」と何人もの制作プロデューサーが泣きを入れる事態が始まっているようですが、俺自身は1994年アニメ業界入りした頃から、こうなるのは概ね分かっていたので、現状に対して何も憂いたり驚いたりなんてしません。
“動画”とは原画より神経質な質感の線が求められ、その線の間と間にさらなる中割りを数枚ずつ描いていく根気の要る役職。そんな動画作業を1ヶ月間でも描いた事がある方なら分るはずです。これ“忍耐と根性こそが最大の美徳”的昭和価値観を持ち合わせていないと続かない仕事だと。そんな苦痛な動画作業をしてると、自分らが新人の頃から「まあ、早く原画になったら、楽しくなるから頑張って~」と周りの先輩より繰り返し言われたものです。諸先輩方は声援のつもりで声を掛けてくださったのだと思いますが、当時から自分はこう思っていました。

俺らが皆数ヶ月とかで原画になったら、動画マン不足はどう補うの?

と。早い話、単純計算で原画マン1人当たりが上げる原画分を全て動画にするのに3〜5人の動画マンが必要と言うこと。つまり、

作品本数増やす → 原画マン増やす(動画マンを原画に上げる) → 動画マンが足りなくなる
——そして、動画(仕上げも)海外に撒く

を今までやってきた訳です。「誰もやりたがらない作業を海外で安く人雇って」って。すると当たり前ですが、日本の下請けのみを延々やってくれるモンだと(日本だけが勝手に)思い込んでいた外国が、自国のアニメを作るようになって日本のお手伝いができなくなった、ってだけ。小学生レベルの算数ができれば当然はじき出せる結果でしょう。逆に“アニメ大国”とか煽てられて、よく今まで持ったものだとさえ思います。
 故にそれを今頃になって鬼の首を取ったように「俺だけは分かった! 製作費が安いからだ!」「俺だけは見抜いた! アニメ業界は終わりだ!」「俺だけは言う! 業界責任者出てこい!」とか言ってるだけの類の話は、まず動画を1000枚描いてからにしてくださいってこと。
 ネットが開かれたお陰で、テレビや大手代理店だの権力の影響を比較的受けずに自分の作品を発表できるようになってきました。ようやく

今こそ純粋に画を動かすことの大変さ
そして、その面白さを見直す時期!

に来ているのではないでしょうか? 一度でも動画職で飯を食ったことがある方々は、感じたはずです。

自分で描いた画が動いた瞬間の興奮を!

その自分の持ってる技術にもう少しデジタル力を借りて“作品を創る知恵”さえ磨けば、小さい作品からでも楽しくアニメを創れる未来がすぐそこに来ていると思うし、それができる便利なデジタル・ツールが今はあります。
「俺らを56す気か!?」とか言って“働き方改革”だ“インボイス制”だに反感持つ昭和気質な“低収入と引き換えに自由だけは守りたい”フリーの方々(俺も以前はそうでした)——ここで一つ、監督だぁ演出家だぁ原画マンだぁのプライド云々は取り敢えず置いておいて、それこそプロデューサーも含む業界人の皆さん、

1カットでも2カットでもいいから、デジタル動画・仕上げをやってみてはどうでしょうか?

そこから、創作に対する自分らの姿勢を見直して「次に何ができるか?」が見えてくるものだと思います。自分も今のシリーズが納品し終わったら、徐々に“小さい作画アニメ”とか作りたいと思っています。

 はい、仕事に戻ろ! と。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.139
『MEMORIES』と大友克洋のアニメーション

 10月15日(土)開催のオールナイトは大友克洋監督作品の特集です。上映作品は『MEMORIES』『迷宮物語』『AKIRA』。

 『MEMORIES』は「彼女の想いで」「最臭兵器」「大砲の街」の3本で構成されたオムニバス映画。大友さんは原作、制作総指揮などを兼任し、「大砲の街」では監督も務めています。
 『迷宮物語(Manie-Manie 迷宮物語)』もオムニバス作品で、りんたろう監督の「ラビリンス*ラビリントス」、川尻善昭監督の「走る男」、大友監督の「工事中止命令」の3本で構成。「工事中止命令」が大友さんが初めて監督を務めたアニメーション作品です。
 『AKIRA』は大友さんの同名マンガを、自身が監督することで映像化した劇場長編アニメーション。新文芸坐としては初めての『AKIRA』4Kリマスター版の4K上映となります(2021年4月のオールナイトでは4Kリマスター版を2Kで上映)。大迫力の映像と音声をお楽しみください。

 上映前のトークでは『MEMORIES』にスポットを当て、プロデューサーの田中栄子さん、「大砲の街」で技術設計を務めた片渕須直さんにお話をうかがいます。チケットは10月8日(土)から発売開始となります。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要。入場時には検温・手指の消毒を行います。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.139
『MEMORIES』と大友克洋のアニメーション

開催日

2022年10月15日(土)

開演・終演

開演/23時、終演/5時35分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般3000円、各種割引・友の会2800円

トーク出演

片渕須直(『MEMORIES』技術設計)、田中栄子(プロデューサー)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『MEMORIES』(1995/107分/35mm)
『迷宮物語』(1987/50分/35mm)
『AKIRA』4Kリマスター版(1988/124分/DCP/PG12)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第240回 映画が鳴る 〜劇場版ツルネ —はじまりの一射—〜

 腹巻猫です。今週から新しい連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」が始まりました。主演がクッキングアイドルまいんちゃんであり、キュアカスタードである福原遥さん。音楽が富貴晴美さんということで大いに楽しみ。主人公が空にあこがれる女性である点も、劇場アニメ『ブルーサーマル』や76年放映の朝ドラ「雲のじゅうたん」(音楽は坂田晃一)を思い出させてわくわくします。大きく舞いあがってほしい。


 8月に公開された『劇場版ツルネ —はじまりの一射—』をようやく観に行った。
 なんとなく腰が重かったのは、これがTVアニメ『ツルネ —風舞高校弓道部—』の総集編的な作品であり、音楽も含めて音響が一新されていると聞いたからだ。
 特に音楽は、作曲家がTVアニメ版の富貴晴美から横山克に交替している。TVアニメ版の音楽がとてもよく、音楽ともども印象に残るシーンも多かっただけに、劇場版がよくても悪くても、なんとなくもやっとするような気がしていた。
 しかし、観てよかった。TVアニメ版とは印象の異なる1本の作品に仕上がっている。音楽も想像をはるかに超えてよかった。TVアニメ版とはまったく異なる方向の音楽になっていて、比べる意味がない。TVアニメ版も劇場版も、どちらもよいのだ。
 劇場版のベースになったTVアニメ『ツルネ —風舞高校弓道部—』は2018年10月から2019年1月まで放映された作品。綾野ことこの原作小説を京都アニメーションが映像化した。弓道に打ち込む高校生たちの青春を描く物語だ。
 『劇場版ツルネ —はじまりの一射—』はTVアニメの放映から3年余りを経て公開された劇場版である。TVアニメ版の映像が使用され、大まかなストーリーは変わらないが、新作カットも追加されている。
 劇場版の大きな特徴は、セリフの再アフレコが行われ、効果音と音楽も作り直されていること。劇場によっては7.1chによる上映が行われている。音響を一新した効果は抜群で、本作を象徴する音である弦音(ツルネ)=弓の弦の鳴る音や矢が飛ぶ音、矢が的を射る音などが、全身に響くほど臨場感たっぷりに聴こえる。
 物語のまとめ方も感心した。
 TVアニメ版は弓道部員とその周辺のキャラクターが織りなす群像劇の趣がある。個性の異なる少年たちが互いに競い合いながら成長し、友情を育んでいく姿が「青春ドラマ」という感じで清々しい。
 いっぽう劇場版のほうは、主人公の鳴宮湊にぐっとフォーカスを絞った物語になっている。余計なエピソードをばっさりカットし、TVアニメの終盤の展開をクライマックスに据えて、そこに向けてすべてが収斂していくように再構築されている。劇場版としてすっきりした姿にまとまっているのだ。総集編ベースの作品であることを忘れるくらいである。

 そして音楽。
 TVアニメ版の富貴晴美の音楽はすごくよかった。弓道の凛としたイメージ、青春もののさわやかさ、躍動感、切なさなどが、ピアノ、ギター、ストリングスなどの生楽器を中心にした音楽で表現されている。
 劇場版の音楽は横山克。当コラムで取り上げた『四月は君の嘘』をはじめ、アニメ、ドラマ、劇場作品の音楽を数多く手がけ、その実力は誰もが認めるところ。10月から始まる『うる星やつら』も楽しみだ。だから不満があるわけではないが、最初に書いたように、TV版がよかっただけに、ちょっともやっとしたのである。
 ふりかえれば、TV版と劇場版とで作曲家が代わるのは珍しいことではない。TV『新竹取物語 1000年女王』(音楽・宇崎竜童、朝川朋之)と劇場『1000年女王』(音楽・喜多郎)、TV『北斗の拳』(音楽・青木望)と劇場『北斗の拳』(音楽・服部克久)など、「劇場作品は劇場作品」と割り切って音楽をがらっと変える例は昔からあった。
 しかし、TV版の映像を使った総集編的作品で音楽担当が代わるのは珍しいと思う。『科学忍者隊ガッチャマン』はボブ佐久間(TV版)からすぎやまこういち(劇場版)に交替しているが、これは特殊な例だろう。TVシリーズを熱心に観ていたファンは、音楽込みで場面を記憶し、音楽が感動に結びついている。TVシリーズのファンを呼び込みたい劇場作品で音楽を変更することは冒険である。
 作曲家にとっても、同じ映像に別の音楽をつける仕事はプレッシャーを感じるのではないだろうか。
 が、本作の横山克の音楽は、観る側の不安や想像をはねとばす、みごとなものだった。観る前からあれこれ考えて「大きなお世話だったなあ」と思ったくらい。まったくブレのない、直球勝負の音楽である。
 劇場版のドラマが鳴宮湊にフォーカスを絞っているのと同じように、映画音楽も鳴宮湊の内面にぐっとフォーカスを絞っている。筆者は劇場版を観ながら、「これは湊のための作品であり、音楽だな」と感じていた。後日サントラ盤を入手してライナーノーツを読んだら、横山克が「本作は、湊のために、音楽の全てを向けて書きました」とコメントしていたので、筆者は「うんうん」と大きくうなずいたのだった。
 本作のサウンドトラック・アルバムは8月21日に「『劇場版ツルネ —はじまりの一射—』オリジナルサウンドトラック」のタイトルでバンダイナムコミュージックライブから発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. Tsurune the Movie – The Sound of Origin
  2. A Winding Road
  3. Body of Kyudo
  4. Mind of Kyudo
  5. Okonomeeting
  6. That Sound
  7. First and Last
  8. Do You Like Kyudo?
  9. Lost Target
  10. For Yourself
  11. One Target
  12. I Will Wait for You
  13. Question the Past
  14. Saionji Knows
  15. Masaki’s Confession
  16. Go Masaki!
  17. Fly Against the Wind
  18. Masaki in Accident
  19. Eyes on the Target
  20. His Words
  21. Like a Flower
  22. Tailwind
  23. When the Rain Is Gone
  24. Tsurune the Movie – The First Shot
  25. Where the Rivers Meet
  26. Hand(歌:ラックライフ)
  27. Next Season

 劇中曲を使用順に並べ、主題歌も収録した理想的な構成のアルバムである。
 音楽はメロディを抑えたストイックな曲調で書かれている。特に作品の前半は、登場人物のゆらぎ、震える感情をシンプルなサウンドで描写する曲がほとんどだ。心のサウンドスケープを描く音楽とでも言おうか。シーンを盛り上げすぎない寡黙な感じの音楽が、弓道のイメージや作品全体のトーンと合っている。
 特に印象的なのはメインテーマである(と思われる)1曲目の「Tsurune the Movie – The Sound of Origin」。ピアノと薄い弦と控えめなリズムが奏でる曲だ。最初のピアノの音が弓から矢が放たれる音のように聴こえる。後半に現れるピアノとリズムによる緊張感のあるパートは射手が矢を射る場面にかかる「一射のテーマ」とも呼ぶべきモティーフ。PVにも使われ、本作を象徴するサウンドになっている。
 作品が進むにつれて、音楽が少しずつ色づいてくる。弓をうまく射れなくなっていた湊が自信を取り戻し、弓道部の結束も増していくにつれ、音楽の音色や響きが豊かになっていく。この音楽設計は劇場作品ならではだ。
 トラック21「Like a Flower」ではメインテーマの緊張感のあるパート(「一射のテーマ」)が反復され、タイトルどおり「花が開くような」湊の復活を音楽で表現する。
 それに続く、トラック22「Tailwind」、トラック23「When the Rain Is Gone」が、抑えめながらも解放感のある曲調で書かれているのもいい。
 トラック24「Tsurune the Movie – The First Shot」はメインテーマの変奏。木管楽器が加わり、弦の音も大きくなり、情感豊かな演奏になっている。湊や弓道部員たちの成長が音楽にも反映されているのだ。
 本作の音楽は録音にもこだわりがある。管弦楽とコーラスはブルガリアで録音。チェロのソロやギター、ドラムスなどを日本で録音している。海外録音だからよいというわけではないが、ヨーロッパのミュージシャンのストリングスや管楽器は「よく鳴る」というのは音楽スタッフからしばしば聞く話である。音が重要な作品なだけに、音楽も「鳴り方」にこだわったのではないか、と筆者は考えている。
 『劇場版ツルネ —はじまりの一射—』の音楽は、音楽としても、サウンドとしても、みごとに鳴っている。TVアニメ版の総集編だから、音楽が違うから、と敬遠していてはもったいない。音響設備の整った劇場で、ぜひ体験してもらいたい作品である。
 2023年1月からは、『ツルネ』のTVアニメ第2期がスタートするという。音楽はどうなるのか。ドキドキしながら、待っている。

『劇場版ツルネ —はじまりの一射—』オリジナルサウンドトラック
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アニメ様の『タイトル未定』
364 アニメ様日記 2022年5月15日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年5月15日(日)
作業の合間にワイフと新文芸坐へ。「川本喜八郎と岡本忠成の世界〈川本喜八郎作品〉」「同・〈岡本忠成作品〉」を鑑賞。4K修復版マスターとリニューアルした新文芸坐の上映システムのおかげで、贅沢な鑑賞となった。僕としては映像よりも、広がりのある音響に感銘を受けた。特に「虹に向って」がよかった。川本喜八郎作品はほとんどが過去に鑑賞したものだった。岡本忠成作品は初見のものがあり、また、バラエティに富んでいて楽しかった。ワイフは「おこんじょうるり」が気に入ったようだ。
この日に上映されたプログラムは新文芸坐のオリジナルではなく、他の映画館でも上映されたものだ。このプログラムとWOWOWプラスの放映、UHD+Blu-rayソフトは同じ内容かと思っていたのだけれど、そういうわけではないようだ。WOWOWプラスは、劇場上映のプログラムに岡本忠成作品の『花ともぐら』『モチモチの木』を追加。UHD+Blu-rayソフトはそれに川本喜八郎作品の『旅』を追加。しかし、UHD+Blu-rayソフトには劇場公開とWOWOWプラスにあった『虹に向って』が入っていないようだ。

2022年5月16日(月)
新しいハードディスクレコーダーが届く。色々と試す。
たまたま放映を観た『はなかっぱ』の「影絵のはなかっぱ」。かなり前のエピソードみたいだけど、ビジュアルの思い切りのよさが凄い(脚本:うえのきみこ 絵コンテ・演出:前園文夫 作画監督:金澤比呂司)。

2022年5月17日(火)
昔からお世話になっているライターさんと食事。先日の早川優さんに続いて、久しぶりにリアルで知人に会った。

2022年5月18日(水)
幾原さんの写真が載っていると知って「anan」2022年5月25日号 No.2299を購入。同じ号の「ハケンアニメ!」特集では辻村深月さんと松本理恵監督の対談もあり。「ハケンアニメ!」公開と前後して、幾原さんと松本さんの記事を同じ号に載せるあたりが「分かっている」って感じ。

2022年5月19日(木)
TOHOシネマズ新宿の8:30∼10:20の回で『バブル』を観る。せっかくだから、大きなスクリーンで観たいと思って、この時間のこの劇場で観た。
42インチの4Kモニターが届いたのでセッティングをする。

今日は島田満さんの誕生日だ。島田さんと同い年になってしまった。

2022年5月20日(金)
43インチ4Kモニターと4K ULTRA HD Blu-ray対応のハードディスクプレイヤーの組み合わせで色々と試す。

以下、感想を思いつくままに。あくまで僕の主観だ。

4K ULTRA HDの『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を視聴。映像はクッキリハッキリ。アジアンな街の看板が色鮮やかでよかった。4Kリマスター版のIMAX上映では「背景が『絵』に見えてしまう現象」が起きたと記憶しているけれど、43インチではそれはないようだ。動画の線がきびしいカットは43インチでもきびしいけれど、致命傷にはなっていない。
4K ULTRA HDの『イノセンス』。これは素晴らしい。画の深みが圧倒的。構図も大画面向き。同じ内容でも作品の魅力が50%増しだ。たまに映像的なノイズ(モアレのような)があるのだけれど、ノイズなのか制作者が意図した処理なのかが判断できない。

43インチ4Kモニターで配信を観る。アニメでよかったのは『化物語』『傷物語』。多分、2Kでの配信。尾石さんの(シャフトの)映像は大画面でも映える。映像の設計がよくできているのだろうなあ。配信でも充分に楽しめたけれど、これはBlu-rayで観たい。

NetflixとAmazon prime videoで4Kで配信されているコンテンツを片っ端から観る。YouTubeの「4K 日本の絶景」みたいなコンテンツが予想以上にいい。

購入するまで、テレビのリモコンでNetflixやAmazon prime videoを起動させられることに魅力を感じられなかったのだけれど、使ってみるとかなり便利。リモコンでYouTubeを起動させることができるのもいい。これは配信を観る機会が増えそうだ。

43インチ4KモニターでDVDソフトを観ると、かなり映像が甘くなる(例外はあるのだろうと思うが)。32インチHDモニターでVHSソフトを観た感覚に近いか。

大味な感想になるけれど、現行の深夜アニメは43インチで意外と見応えがある。ただし、構図が甘いカットはダメージが大きくなる。

2022年5月21日(土)
この日の新文芸坐は、昼間のプログラムが「DUNE/デューン 砂の惑星」と「マトリックス レザレクションズ」。オールナイトが「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.135 押井守映画祭《4K VS 35mm》編」で『天使のたまご』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『イノセンス』の3本立て。「マトリックス レザレクションズ」と『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を同じ日に上映するのも面白い。
オールナイトの前に、4Kリマスター版『GHOST IN THE SHELL』を試写で数分だけ観せてもらう。心配だった「背景が『絵』に見えてしまう現象」は、今回は無かった。動画の線もそんなにはきびしくなかった。ただし、これは印象の話なので、他の人が観たらまた違うかもしれない。音響も素晴らしく、新文芸坐の上映システムで上映する4Kリマスター版『GHOST IN THE SHELL』の満足度は高いはず。
試写で「頭から20分くらいのところから再生してください」と言って、市場のシーンから再生してもらった(大体20分くらいだろうと勘で言ったら当たった)のだけど、その後で「ダレ場も観たい。船のカットを」と言ったら「ああ、分かりました」と言って、瞬時に船のカットに飛んだのが凄かった。凄いのは新文芸坐の上映技師さんだ。この場合の船のカットとは、素子がダイビングをする場面の船ではなく、街中の水路を行く黄色い船のこと。そのカットの動画の線がちょっときびしいのだ。
オールナイトのトークのゲストは押井さんと石川光久さん。盛り沢山のトークとなり、25分押しで終了。楽屋でも、トークでも、押井さんから「『攻殻』や『イノセンス』もいいけど、評判がよくない作品の上映もやってほしい」というオーダーが出る。来年のプログラムの課題としたい。

第773回 歳とっても描きたい!

 最近、「歳をとるとはこういうことか」と考えることが多くなりました。でも、若い頃に考えていた“将来老けるイメージ”より、本当に老けた現状の方が概ねマシな感じです。
物理的に集中力は散漫になり、モノ覚えも悪くなるし、体力は落ちる一方。でも、仕事は楽しくできていますから。徐々に老眼も入ってきてはいるけど、デジタル作画は拡大して描けるので、それほど支障ありません。40歳になったあたりから、イベント絡み以外で酒を飲むこともなくなって、自分で調理して野菜の多めの食事も心掛けてます。健康に気を遣って、後30年は何がしか描けたらいいな~と。あ、後は運動もしなきゃ。
 と言う訳で、若い頃浅はかに考えがちな「太く短く楽しく生きることこそ男らしい」なんて、今は微塵も思っていません。そんなんより、できるだけ長くしぶとく生きて、長くしぶとく作り続けたい! なんでもいいから。
 現状の自分、

人生半分以上消化した時点で、今までにヒット作と呼べるものなし! 貯金もなし!
大金持ちになることに興味なし(金は常時食うのに困らないくらいあれば十分)!
仕事は次々くる! コンテや原画はまだまだ描ける! デジタル・技術革新は大歓迎!
現代に合った作り方改革中! そして、創作意欲まだまだ旺盛! が、慢性的運動不足!

て、とこ。今の自分を正確に見据えることが、更なる成長への第一歩ってことで、これだけ揃えば仕事をする——描くしかない。上記の条件で許す限りのモノ作りをしていきたいです。勿論、若手の育成をしつつ、です。
 ま、新人採用&育成も初めて早10年。やっぱり当然の話ですが10年経つと、初期に入ってきた人と今とでは既にだいぶ違います。まず、デジタル競争。社内スタッフ全員PCやツールを共通規格で通そうとしても、「俺だけはもっと優位な液タブとツールで!」とどうしても他者にマウントを取りたいのか、勝手に規格外れな道具を持ち込むなどのスタンドプレーで、データ書き出しにひと手間掛かって制作上かえって迷惑だったりしたものです。ところがここ数年内入社組は、皆協調性があって現場に優しい人たちばかりになりました。
 その分、「将来、監督になって自分の作品を作りたい!」とか派手な夢を語ってくる人が減りました。先週面接した2人もそれぞれ「作画までしか考えていません」でした。
 やはり、“たかが10年、されど10年”。アニメ『あしたのジョー』の荒々しさが、『あしたのジョー2』の洗練された美しい画面になるまでがたった10年なのです。

色々なモノが変わり進化するのに10年は十分過ぎる時間!

だから何処かの監督さんのように、凡庸な才能のくせになぜか余裕かまして、平気で何年ものブランクを空けることができないのです、小心で凡庸な俺には。だって現状、まだ俺ら世代の監督相手の仕事(企画)ってそこそこありますよ。それが証拠に、上記の様な不安条件てんこ盛りの板垣にですら、常に2~3本は話があります。少なくとも出版社・メーカー問わずプロデューサーはそれぞれ案件を数件位ずつ持っているはずで、声が掛からない訳がないです。もし、仕事がないとすれば、その監督は身の程をわきまえず「この僕にふさわしくない企画だ~」とかお高くとまって断ってる(た)としか思えません。
 おっと、時間切れ。また仕事に戻ります!

アニメ様の『タイトル未定』
363 アニメ様日記 2022年5月8日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2022年5月8日(日)
早朝からワイフと遠出して散歩。調布駅から深大寺まで歩き、その後は深大寺周辺をぐるぐると回る。吉祥寺まで移動して、WORLD BREAKFAST ALLDAYという店で朝食。神代植物公園にも行くつもりだったのだけど、それは次の機会に。事務所に戻って、デスクワーク。ずっと悩んでいたある書籍の増刷部数を決めて、「設定資料FILE」で使用する資料に向き合う。
WOWOWプラスで放映した『うる星やつら いつだってマイ・ダーリン』を録画でながら観。再見して改めて思うのは、この作品で『うる星やつら』のキャラクターを「立体」として描こうとしたのだろうということ。高橋久美子さんの仕事は、その後も立体志向が強いはず。

2022年5月9日(月)
仕事の合間に、新文芸坐で「巴里の屋根の下 4Kデジタル・リマスター版」【4K上映】(1930/93分/DCP)を鑑賞。プログラム「4Kで甦る映画史の輝き ルネ・クレールからの贈りもの」の1本。2022年に観た40本目の映画だ。お勉強モードでの鑑賞となった。確かにセットが凄い。ルネ・クレール監督としては初のトーキー映画だそうだが、サイレントとトーキーが混在している感じがよかった。

2022年5月10日(火)
ワイフとグランドシネマサンシャインで『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』を鑑賞。TVシリーズを観ていない観客にとってはカルトな映画であるのかもしれない。冒頭の新作部分を観ると、幾原邦彦監督の完全新作劇場長編が観たくなる。

ちなみに劇場版『輪るピングドラム』のロゴは以下のかたち。
……
劇場版 輪るピングドラム
RE:cycle of the PENGUINDRUM
[前編]君の列車は生存戦略
……
「劇場版 輪るピングドラム」は「RE:cycle of the PENGUINDRUM」のルビという解釈であるらしく、テキストでタイトルを表記する場合は『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』。あるいは「劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』」であるようだ。

2022年5月11日(水)
「設定資料FILE」の構成を進める。次号の「設定資料FILE」は『犬王』だ。

作業の合間にスターチャンネルの「ある愛の詩」を録画で流し観。1988年の大晦日にテレビ東京で放映された「愛の特別ロードショー」バージョンだ。テーマ曲は知っているし、有名な「愛とは決して後悔しないこと」のセリフも知っていたけど、映画本編は未見(のはず)。ヒロインのジェニーの病気であることが分かってから、ラストまでがあっという間で少し驚く。今作ったら、闘病生活に入ってからを長くするのではないか。吹き替えはジェニーが勝生真沙子さんで、オリバーが池田秀一さん。勝生さんがメチャメチャいい。池田さんもいい。

2022年5月12日(木)
作業をしながら、スターチャンネルの「シャレード」を観る。1994年放送の吹き替えだから、吹き替えはそんなに古くはない。レジーナ・ランパート(オードリー・ヘプバーン)は池田昌子さん。Wikipediaによれば池田昌子さんの「シャレード」は4バージョンあって、演じる度にピーター・ジョシュア(ケーリー・グラント)の吹き替えが変わっているらしい。自分はこの映画を1980年代にレンタルビデオで観ていて、細部は覚えていないけれど、面白かった記憶がある。今回の放映は吹き替えの尺に合わせて本編をカットしていて、113分が90分ほどになっている。そのせいか「あれ、もう終わり?」という感じだった。

2022年5月13日(金)
グランドシネマサンシャインで「シン・ウルトラマン」【IMAXレーザーGT】を観る。この映画は感想が非常に難しい。冒頭は100点満点で5億点くらい。他の部分も、いいところはかなりいい。しばらくはこの作品をどう受け止めるかについて考えることになりそうだ。いずれにしてもIMAXで観てよかった。パンフレットは購入できたが、デザインワークスは完売だった。

2022年5月14日(土)
午前中にワイフと遠出をして散歩。ムック「歩いて再発見! 東京8000歩さんぽ」を参考にして、後楽園から神保町経由で神田明神まで歩く。途中で喫茶店に入ったりしたので、予定時間内にムックのコースの全部を歩くことはできなかったけれど、楽しい散歩になった。その後、中野に移動して吉松さんと昼吞み。

第772回 動かす喜び、続き

徐々にまた、自分自身も若手スタッフに混じって作画への参戦開始!!

(前回からの続き?)現在、正にその“動かす喜び”を実感中です。前作『蜘蛛ですが、なにか?』もそうでしたが、現場で困っている作画と言えば、やっぱりアクション! もちろん、業界屈指のアクション系のアニメーター“超激巧”級には全然敵いませんが、友永和秀師匠についてマンツーマンで教わった弟子である板垣が「アクション描けません」は通らないでしょう。という訳で、そこそこ世間で普通に通用する程度には成長させていただき、今でも若手スタッフの手が及ばない辺りのアクション・エフェクト作画のお手伝いはここ数年の通例。コンテ描いた(今回はチェックした)側の責任というか、

自分ができないことを、他人に強要するのは人道に反する!

というのが、俺の主義です。周りの人たちはとっくに知っています。板垣が“自分で描けないカット内容”をコンテにしない! ってことを。ま、むしろ友永さんの指導をちゃんと受け、その技術を身に付ければ「人間の手で描けないモノなどない!」と、自然に分かるのです。およそハッキリ言って、

作画はCGより万能!!

です。
 この連載で地球の人口位の回数ほどは言ってますが、敢えて繰り返します。やっぱり作画って楽しいんですよ!! 実際、他の監督さんとかは知りませんが、自分の場合は制作サイドより

「このエフェクトのシーンまだ手付かずなんですよ~」とか
「ここのアクションシーンを振ってたアニメーターから、
“やっぱできない”とギブ・アップが出て、今浮いてます」

などと泣き言が入ると、どっかの勘違い監督さんと違って制作さんを責めたり、俺はしません(今までも責めたことがありません)。

と、“仕方なく俺が描くか~”風を装って、実は腹の中で「しめしめ、また楽しませて貰いましょう!」とほくそ笑んでいたりします。それくらい原画を描くのって面白いから! また、“良い様に使われて~”と非難する同業者もいるのは分かっています。だって仕方ないでしょう。

企画の数と監督の人数に対してアニメーターの人数が圧倒的に足りていない現状なのだから!

 それで、「監督自身が何でもやったら、制作がサボるだけじゃないか!」と、俺を非難したいだけすれば良いけど、じゃあそう仰る同業者にお訊きしたいのです。

作品が作りたいの?
それとも、作業者をかしずかせて指揮者ヅラしたいの?
どっちが優先!?

と。板垣は前者が優先ってだけ。「どちらも無条件で保障されるべきが監督だ!」なんて理想論の話をするのは勝手ですが、「じゃあ、理想の現場が与えられる事を運に任せて、十分にご自愛下さい」ってだけ。
 因みに、“痺れを切らして自分で作業をしちゃう系”監督の板垣には次の次くらいまでの話(仕事)がきています(汗)。

 とにかく、作画の直しから新規レイアウトの作成、背景の修正や音響の指示出しまで、できることは何でもやるのが“総監督”だと思ってアニメ制作の醍醐味を楽しんでいます。また、やる気だけ剝き出しの中身薄い内容でごめんなさい。仕事戻ります。

第195回アニメスタイルイベント
沓名健一の作画語り[アクション作画編]

 10月2日(日)に開催するトークイベントは「第195回アニメスタイルイベント 沓名健一の作画語り[アクション作画編]」です。メインの出演者はアニメーター、演出として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さん。トークのテーマはアクション作画です。更にゲストとして監督であり、アニメーターとしての活躍もある安藤真裕さん、アニメーターの中村豊さんが出演。司会進行はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。濃密なトークにご期待ください。

 今回のイベントは3部構成で、第2部で沓名さんが安藤真裕さんにアクション作画についてうかがいます。中村さんはコメント役での参加。第1部と第3部は沓名さんと小黒がメインでトークを進める予定です。
 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回は会場での観覧のみで、配信はありません。チケットは9月22日(木)19時から発売の予定。チケットについては、以下のリンクをご覧になってください。

■関連リンク
阿佐ヶ谷ロフトA
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/229433

第195回アニメスタイルイベント
沓名健一の作画語り[アクション作画編]

開催日

2022年10月2日(日)
開場12時30分/開演13時、終演15時~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

沓名健一、安藤真裕、中村豊、小黒祐一郎

チケット

前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。