COLUMN

第790回 必死で修正

毎度のことながら、

今現在、制作中のシリーズで総監督として原画と美術を修正しています!

グロス話数に限らず、上手くいってない原画はできる限り直す努力をします(CLIP STUDIOは原画だけでなく背景も描けます故)。
 で、まずアクション・シーンです。いつの世になろうとも、若手アニメーター、特に男子は“カッコ良いアクション原画”に憧れるものですね。しかも、勢いのある鉛筆タッチのアクション原画に! ウチ(ミルパンセ)の新人も例外ではなく、アニメスタイル様よりいただいた原画集や画集を熱心に見て研究している若手スタッフがいて、俺もちょくちょく「○○さんの原画ってどう思いますか?」的な質問されたりします。その都度、原画について俺自身が教わったことや常々考えていることなどを話すのですが、10年前会社を始めたばかりの時とでは話す内容が多少異なってきました。
 と言うのも、10年前の予想よりずっと早いスピードで“昭和のアニメ制作スタイルの崩壊”が始まったようで、例えば動画の育成でも

動画は“線”に始まり“線”に終わる!
毎日毎日、線と線の間に何本も綺麗な線を引き続けるのが仕事!

的な根性論も、10年前はやっぱり教えてました。自分自身が新人の頃そう習ったので。ところが社内全員デジタル作画に切り替えたところで、ここ数年は

今後、動画作業が自動中割りになるだろうけど、立体の認識や1コマ1コマを画で描くという動画の本質は知っておいた方がいい! で、デジタル仕上げも同時に覚えましょう!

となっていきました。これはあくまで持論ですが——後輩の育成を義務付けられている業界人が、心掛けなきゃならないのは、

若い世代がこれから手にする、もしくはすでに手にしたテクノロジーで画を動かすことの矜持・楽しさを教えること!

だと思います。でないと、アニメ制作(に限らずあらゆるエンタメ産業)の仕事がもっと早いスピードで、全てAIに持っていかれると思います。デジタルに持ち替えてみるとハッキリ気付きます——アニメ業界が「人手不足」だ「働き方改革の弊害」云々言いながら、“人の使い方に本当に無駄が多い”ことに! 単純に言うと、紙(アナログ)作業のスタッフのために“プリントアウトしてタップ貼る”制作進行が何人雇われなきゃならないか? と。「それは制作会社が考えることだから」と仰るアニメーター、そして演出の方々、「じゃ、全原画・全修正用紙をプリントアウト&タップ貼り、同スキャン&タップ貼りに1カット何分掛かって、1日何カットこなさなきゃならないか?」ご存知ですか? とりあえず、それを計算してから「デジタル化は制作の怠慢云々」を発するようにしましょう。少なくとも板垣が知る限り、これ以上“無駄な仕事に対して人員を配置”し続けると、製作費は完全に破綻します。実はスポンサーはアニメ制作工程での無駄(贅肉)部分にすでに気付いているからこそ、製作費をこれ以上上げられないのです。だから、先ずは今年の新人育成が始まる際、間違っても未だに「動画は紙から教えるべき」とか言わないこと!

 あ、そうそう、原画の話でした。つまり、原画でも自分は入社希望の新人らにこう話します。

これからCGの上にディティールを足すような手描き作画仕事が増えると思うけど、将来的にそうなったとしても“画を動かす仕事——アニメーター”をやりたい?

と。要は、これからの視聴者が何を求めるか? から逆算すると、我々昭和型アニメーターのよく謳い上げる「アニメは情報量(線・ディティール)を減らしても、動かしてなんぼ!」とかいった作画矜持は決して視聴者が望んでいるアニメではないのです。これからは、

情報量(線・ディティール)を増やし、且つ崩れずによく動くアニメ!

が求められているのだし、それが当然だと個人的に思っています。だって、生まれた時から3DCGやVRのゲームに慣れ親しんだ子供らが、ブヨブヨ作画な上、碌に動かないアニメに興味示すはずないでしょう!? ここ2~3年、製作委員会は「止めてもいいので、キャラ崩れは絶対NG」「作画崩壊は納品拒否」スタイルで仕事を振ってくる場合が多いし、故に委員会に厳しい目が注がれる中、俺自身も必死で作画も背景も直しまくっている日々で、誇張なく本当に必死です(汗)!

 てトコで、またすみません。チェックの時間なので、