第204回 夢と希望は色あせない 〜Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo!〜

 腹巻猫です。4月7日に2枚組CD「Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム」がマーベラスから発売されました。3月に公開された『映画 ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』でプリキュア5が共演したことから企画された歌と音楽集です。選曲・構成・解説を担当しました。初収録音源もありますので、ぜひお聴きください!
https://www.amazon.co.jp/dp/B08TQ9KMT6/


 過去に発売されたサントラ盤を新たな構成で発売しなおす機会はそうそうない。よほど人気作品でなければかなわないことだ。
 いっぽうで構成者の立場からすると、「あの曲も入れておけばよかった」とか「最後はこうなるとわかっていたら、別の曲順にしたのになあ」と、一度リリースしたサントラ盤に悔いが残ることがある。いや「悔い」とはちょっと違うな。そのときはベストの構成と考えていたのだから。「チャンスがあれば別の構成に挑戦してみたい」という野望である。
 「Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム」は筆者にとってそんな野望がかなったアルバムになった。
 今回はこのアルバムについて書いてみたい。

 『Yes!プリキュア5』と『Yes!プリキュア5GoGo!』は2007年2月から2009年1月まで連続して放映されたプリキュアシリーズ第4作目と第5作目にあたる作品である。
 サンクルミエール学園に通う女子中学生、夢原のぞみ、夏木りん、春日野うらら、秋元こまち、水無月かれんの5人は異世界から来た妖精ココとナッツと出逢い、伝説の戦士プリキュアに変身する力を手に入れた。彼女たちは襲い来る邪悪な敵(『Yes!プリキュア5』ではナイトメア、『Yes!プリキュア5GoGo!』ではエターナル)から平和な世界を守るため、壮絶な戦いをくり広げる。
 それまでのプリキュアシリーズではプリキュアは2人が基本だったのに対し、『Yes!プリキュア5』はプリキュアが5人に増え、群像劇とチームアクションで見せる作品になった。生まれ育った環境も個性もバラバラの5人が、ときに対立したりしながらも力を合わせてひとつの目標に向かっていく。その姿が幅広い層に支持され、続編『Yes!プリキュア5GoGo!』が制作されるほどの人気を得た。プリキュアシリーズで同じキャラクターで2年にわたって放映された作品は現在のところ本作が最後である。
 放映から10年以上を経ても本作の人気は根強く、2019年にNHK BSプレミアムで放送された「発表!全プリキュア大投票」では、作品部門の第3位に『Yes!プリキュア5GoGo!』が、第6位に『Yes!プリキュア5』が選ばれている。また、プリキュア部門では本作から3人のプリキュアが10位以内にランクイン。歌部門では『Yes!プリキュア5GoGo!』のオープニング主題歌が堂々の第2位、『Yes!プリキュア5』のオープニング主題歌が第4位という結果だった。
 本放映当時に発売されたサウンドトラック盤の構成・解説は筆者が手がけた。筆者はシリーズ第2作『ふたりはプリキュア Max Heart』(2005)からプリキュアのサントラ盤の仕事をしているが、この頃は毎回の音楽録音に立ち合い、録音が終わったあとのスタジオで作曲家インタビューもしていたので、たいへんに思い出深い作品である。
 劇中音楽(BGM)は、シリーズ第1作『ふたりはプリキュア』(2004)から音楽を手がけている佐藤直紀が2作とも担当。舞台となる学園や街並みがヨーロッパ風に描写されているのに合わせて、ヨーロッパの香りがするしゃれたサウンドで書かれた曲が耳に残る。プリキュアの変身曲や活躍曲は佐藤直紀ならではのキャッチーなメロディとダイナミックなオーケストレーションで仕上げられ、シリーズの集大成という印象だ。この2作品が佐藤直紀が音楽を担当したプリキュアTVシリーズ最後の作品になった。
 当時発売されたサントラ盤は、『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』それぞれで2枚ずつ。『Yes!プリキュア5』のために作られたBGMはバージョン違いも含め70曲あまり。『Yes!プリキュア5GoGo!』では同じく50曲あまり。これまで発売されたアルバムに大半の楽曲が収録されている。
 また歌ものに関しては、放映当時、それぞれにソングアルバムが2枚、ベストアルバム1枚が発売されている。主題歌とキャラクターソングは、のちに発売された「プリキュア ボーカルベストBOX」やコンピレーションアルバムに再収録される機会も多かった。

 歌のアルバムもサントラ・アルバムも熱心な『プリキュア5』ファンはすでに持っているだろう。そこで、今回の「メモリアルアルバム」はこれまでにないコンセプトで作ってみた。歌とBGMをひとつのアルバムにまとめてプリキュア5の世界を表現しようと考えたのだ。2013年発売の10周年記念CDセット「プリキュア ボーカルベストBOX」でもソングアルバムのラストにBGMパートを設けて同じようなことを試みたが、今回の構成はそれとは違う。歌とBGMを区別せずに並べて、ひとつの流れの中で聴いてもらうことをめざした。イメージは「歌とオーケストラサウンドによるプリキュア5のコンサート」である。
 同時に選曲にあたっても、過去のアルバムへの再挑戦として、蔵出し音源や近年発売されたアルバムに収録されていない曲をフォローしたいと思った。
 歌ものについては、「プリキュア ボーカルベストBOX」の発売前に「メモリアルボーカルセレクション」というシリーズが各作品で発売されていて、BOXはそちらと内容が同じにならないように選曲した経緯がある。なので、「ボーカルベストBOX」に収録されなかった重要曲がいくつかあるのだ。『ふたりはプリキュア』の劇中で流れた「☆SHINING STAR☆」「Heart to Heart」などはその一部である。
 いっぽう、BGMはほぼ全曲がCDに収録されているが、劇中に使用されていて、まだ商品化されていないバージョン違いの楽曲が何曲か残っている。今回はその中のいくつかを収録することにした。
 ディスク1「Yes!プリキュア5」編の内容を紹介しよう。収録曲は下記のとおり。

  1. メタモルフォーゼ!〈V-4A〉
  2. プリキュア5、スマイル go go!(歌:工藤真由)
  3. メタモルフォーゼ〜青春乙女LOVE&DREAM〜(歌:ぷりきゅあ5)
  4. 5つの心!プリキュア5!!〈V-16〉
  5. 乙女の力、受けてみなさい!〈V-15〉
  6. もん!太陽ドリーム(歌:夢原のぞみ/キュアドリーム[CV:三瓶由布子])
  7. リバーシブル(歌:夏木りん/キュアルージュ[CV:竹内順子])
  8. とびっきり!勇気の扉(歌:春日野うらら/キュアレモネード[CV:伊瀬茉莉也])
  9. サブタイトル〈V-1〉
  10. 私の夢、けってーい!!〈V-32〉
  11. Yes!〈V-38〉
  12. イケメン登場!〈V-24〉
  13. キラキラしちゃってMy True Love!(歌:宮本佳那子)
  14. 見て見て見てね!! ★
  15. プリキュアキャッチ!〈V-2〉
  16. プリキュアキャッチ2!〈V-3〉
  17. 信頼(歌:秋元こまち[CV:永野 愛])
  18. Heavenly Blue(歌:水無月かれん/キュアアクア[CV:前田 愛])
  19. 星の冠(歌:コージ&夏[CV:草尾 毅&入野自由])
  20. 闇からの使者〈V-47〉
  21. コワイナー出現!(Alternate version) 〈V-29B Perc & Pf & Strings ver.〉★
  22. プリキュアの敗北(Alternate version) 〈V-103 Brass,Horn Cut〉★
  23. 女帝デスパライア(Strings version) 〈V-105 Strings Only〉★
  24. プリキュアfly(歌:工藤真由)
  25. 1、2、シュート!〜Five Explosion〜(歌:夢原のぞみ[CV:三瓶由布子]&ぷりきゅあ5)
  26. 信じる仲間とともに〈V-46〉
  27. プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン!〈V-101〉
  28. 希望の絆〈V-9B〉
  29. 思いは空を超えて〈V-109〉
  30. ガンバランス de ダンス〜夢みる奇跡たち〜(歌:宮本佳那子 with ぷりきゅあ5)

 ★=初収録音源
 〈〉内はMナンバー
 ※歌手のコーラス表記は省略しました。

 1曲目は5人共通の変身BGM。『Yes!プリキュア5』を象徴する楽曲であり、アルバムの開幕を飾るにふさわしい曲だ。
 続いて、オープニング主題歌「プリキュア5、スマイル go go!」とプリキュア5人が歌うイメージソング「メタモルフォーゼ〜青春LOVE&DREAM〜」を収録。「メタモルフォーゼ〜青春LOVE&DREAM〜」はキャラクター名や技名を織り込んだ、70年代アニメソングみたいな燃えるキャラクターソング。「プリキュア ボーカルベストBOX」から漏れた1曲である。
 トラック4〜5にはプリキュア登場&活躍シーンに流れるBGM「5つの心!プリキュア5!!」「乙女の力、受けてみなさい!」を収録した。いずれも使用頻度の高い、代表的なアクションBGMである。躍動感みなぎる佐藤直紀のプリキュアサウンドに「来た来た!」と気持ちが高揚する。
 ここまではコンサートの序盤のイメージで、「最初からクライマックス」を意識して盛り上がる曲を詰め込んだ。これまでのサントラ盤にはなかった構成である。
 トラック6〜8は、のぞみ、りん、うららのキャラクターソング。「とびっきり!勇気の扉」はシングルバージョンとアルバムバージョンがあるが、ここでは第20話の劇中で流れた、のぞみたちがコーラスを務めるバージョンを収録した。
 トラック9〜12はサブタイトル音楽と日常場面でよく流れた軽快なBGM。聴けば「そうそう! 『プリキュア5』ってこんな感じ!」と想い出がよみがえるファンも多いだろう。それだけ耳になじんだ曲である。「イケメン登場!」は妖精ココとナッツが人間に変身した姿、コージと夏のテーマ曲。
 前期エンディング主題歌「キラキラしちゃってMy True Love!」に続いて、トラック14は次回予告用音楽「見て見て見てね!!」。放映当時発売されたサントラ盤には収録されなかった初商品化音源だ。
 アイキャッチ音楽2曲をはさみ、トラック17〜19は、こまちとかれん、ココ&ナッツのキャラクターソングを収録。
 トラック20〜23はプリキュアの敵ナイトメアの脅威を表現するBGM。アルバムの中でがらっと雰囲気が変わるところだ。トラック21〜23の3曲が初収録になる。「コワイナー出現!(Alternate version)」はよく使われた怪物出現曲のパーカッションとピアノ、ストリングスのみで演奏されるバージョン。「プリキュアの敗北(Alternate version)」はプリキュアの敗北場面に流れた悲愴な曲のブラスとホルンを抜いたバージョン。第48話でプリキュア5が絶望の闇に襲われる場面などに使用されている。「女帝デスパライア(Strings version)」はナイトメアの首領デスパライアのテーマのストリングスのみのバージョン。同じく第48話でなどで使われた。
 強敵出現の重苦しいムードを吹き飛ばすようにトラック24「プリキュアfly」が流れて空気を変える。主題歌歌手・工藤真由が歌うテンションの高いロックナンバーだ。これも「プリキュア ボーカルベストBOX」から漏れた名曲の1つ。次の、のぞみとプリキュアたちが歌う「1、2、シュート!〜Five Explosion〜」とともに最終決戦突入のイメージで選曲した。
 トラック26〜29には物語の大詰めとなる第48話と第49話(最終回)で使用された曲を集めた。
 放映時に発売されるサントラ盤は、放映期間中にリリースする都合上、最終回の展開や、そこでどんな曲が使用されるかを知らないまま構成しないといけない。最終回を音楽で再現するサントラが作れたら……という思いがずっとあった。本アルバムでは、その思いを実現してみた。
 「信じる仲間とともに」と「プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン!」は第48話のプリキュア5対ナイトメアの決戦を盛り上げたアクション曲。「希望の絆」と「思いは空を超えて」は、第49話で最後の戦いが終わったあとの、のぞみたちとココたちとの別れの場面をしっとりと彩った曲である。最終回を思い出しながら聴くと胸に迫るものがある。
 アルバムのラストは後期エンディング主題歌「ガンバランス de ダンス〜夢みる奇跡たち〜」で締めくくった。
 ディスク2「Yes!プリキュア5GoGo!」編の内容にも少し触れておこう。
 歌ものでは「プリキュア ボーカルベストBOX」未収録の「プリキュアからの招待状」「プリキュアモードにSWITCH ON!」に注目。どちらも聴けば勇気がわいてくるような熱い曲だ。「プリキュアモードにSWITCH ON!」はプリキュアシリーズ5周年を記念して作られたメモリアルソングである。
 BGMは『映画 ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』の中でもアレンジされて流れたプリキュア5活躍曲「勇躍!プリキュア5!」を筆頭に、代表的なアクション曲、日常曲などを収録。初収録音源では、エターナルの首領の過去を描く「館長の秘密」の別演奏によるバージョン違いと、苦悩する心を表現する「折れた心」の第47話などに使用された別バージョンを収録している。

 この「Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム」、自分で言うのもなんだが、すごくいいアルバムになったと思う。なにせマスタリングのときにエンジニアさんが「いいのできた!」と言ってくれたくらい、音楽アルバムとして聴きごたえがあるのだ。
 古くからのプリキュア5ファンは当時を思い出して懐かしく、また感動を新たに聴いてもらえるように、新しくプリキュア5を知ったファンにはプリキュア5の魅力が伝わるように、そんなアルバムをめざして選曲・構成してみた。手元に置いて愛聴していただければ幸せである。
 そして、これが好評なら、プリキュアシリーズのほかの作品も新たな選曲・構成で「メモリアルアルバム」を世に出せるのではないかと野望をふくらませている。『プリキュア5』は夢と希望を拓いてくれる作品なのだ。

Yes!プリキュア5&Yes!プリキュア5GoGo! メモリアルアルバム
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佐藤順一の昔から今まで (16)子育てとアシカ曲芸のゴムマリオくん

小黒 作品歴から話が外れますが、佐藤さんにお子さんができたのはいつぐらいですか。

佐藤 31歳の時ですね。『ユンカース(・カム・ヒア)』をやってる時に「シナリオの完成と長女の誕生とどっちが早いか競争ですね」みたいなことを言ってたんだよね。

小黒 ということは1991年ですね。前にもうかがいましたけど、「よいお父さん」になろうと思われたわけですよね。

佐藤 まあね。できる限りそうしたいなとは思ってた。

小黒 やっぱり、子供ができると生活パターンが変わりますか。

佐藤 変わるね。生まれたのが『ユンカース』の絵コンテ期間なんですよ。TVの仕事をスパッと止めて、絵コンテ作業の時間をもらってた。子供の世話をする時間があったから、公園に行って遊んだりしていて。そういうふうに遊びながら、コンテの内容を考えたりもしていましたね。

小黒 お子さんができたことが仕事にも影響しているわけですね。

佐藤 しているよね。実際に近所の子供達の様子を見ていたわけだし。机に張り付いてガリガリとやっていたんじゃなくって、外に出て色々考え、思索する時間がちゃんとあったな、というふうに思う。

小黒 これも以前にうかがいましたが、お子さんが生まれてからは、東映で仕事していても、晩ごはんの時間には車で自宅に帰って、家族と一緒にご飯を食べて、またスタジオに戻るような暮らしをしていたんですよね。

佐藤 そこまでじゃなかったかもしれない。でも、子供が小さい時は、なるべく生活を優先で考えてたね。小学校に上がってからもね、授業参観が何日かあったら必ず一日は行く、と決めていて。だから、例えばお父さんがアニメの仕事やってることで、子供が何かつらい思いをするんだったら辞めようと思ってたからね。

小黒 凄い。

佐藤 で、辞めた場合はどんな仕事ができるかなって考えてたからね。

小黒 そこまで。

佐藤 うん、そうそう。

小黒 実際にそういうことがあったんですか。

佐藤 ないです。そんなに気にされてなかった(笑)。

小黒 作品歴に沿った話に戻ります。まず『美少女戦士セーラームーンSuperS』(TV・1995年)と、『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ』(TV・1996年)ですが、この2作品は『S』ほどは気負ってないですよね。

佐藤 『SuperS』は、タイガーズアイが出てくるやつですね。

小黒 そうですそうです。「アシカ曲芸のゴムマリオくん」が出てるやつですよ。

佐藤 そうそう。球体シリーズみたいなものを勝手にやってるやつだ。

小黒 読者に説明すると、佐藤さんが演出した回だけ、出てくる敵モンスターのレムレスが親戚なんですね。

佐藤 そうそうそう。

小黒 「玉乗りゾウ使い エレファン子さん」と「アシカ曲芸のゴムマリオくん」。あと「風船女 プー子ちゃん」とかね。ゴムマリオは「いつぞやは、僕のまたいとこの風船女プー子ちゃんがお世話になったぜ!」なんて言うんですよね(140話「ミニが大好き! おしゃれな戦士達」)。

佐藤 勝手にアドリブで作って楽しんでた頃だね。

小黒 『SuperS』の頃は、脚本打ち合わせには出られてるんですか。

佐藤 どうだったかなあ。出れてないんじゃないかなあ。

小黒 レムレスをどういうものにするかは、演出権限で決められたんですね。

佐藤 そこは自由度高かったんだろうね。だから、気負うっていうよりも、遊んだほうが勝ちみたいな感じでやってたのかもね。

小黒 なるほど。『SuperS』で、佐藤さんが最初にやられたのが132話「お似合いの2人! うさぎと衛の愛」という、衛の後輩が出てくる話なんですけど、覚えてないですか。

佐藤 覚えてないんすよ。

小黒 始まり方が斬新で、ファーストカットは歩いてる2人の後ろ姿を、30秒ぐらいの長回しで見せているんですよ。

佐藤 マジか(笑)。

小黒 後半の風船女プー子ちゃんのアクションで枚数を使うので、その分、止めたのかと思ったんですが、覚えてないですか。

佐藤 (笑)。覚えてないですが、当時だったらやっぱり枚数の意識はしてたんじゃないかな。

小黒 『メモル』の「忘れ草」の時でも、最後にメモルが自宅に帰ったところを、背景だけ見せていましたよね。

佐藤 そういう手はよく使っていますね。画で表情を動かすと、役者さんの芝居が縛られてしまうんだけど、ここは自由に演じてもらいたいというところもあるんです。そういう時に、画ではあんまり描かないようにして、キャストが演技を自由にできるようにすることは、よくあるよね。その場面だったら、画でコントロールする以外のやり方で、その2人の関係性みたいなものを出そうと思ってるんじゃないかな。

小黒 『セーラースターズ』の話になってしまうんですけど、「セイヤとうさぎのドキドキデート」(181話)という話があって、ムーンが決めゼリフを言っている間、ムーンでなくセーラーアイアンマウスをずっと見せているんです。これは単純にアイアンマウスを描きたくてそうしているのかと思うのですが、覚えていますか。

佐藤 覚えてはいないけど、そういう外しはやりそうだよね。

小黒 やりそうですね。

佐藤 『セーラームーン』もシリーズ長いから、色々外したくなるんだよね。

小黒 「ドキドキデート」自体は艶っぽくてよい話でした。

佐藤 うさぎとセイヤ君がいい感じになりそうなやつでしょ。ちゃんとロマンチックにやろうとした記憶があるなあ。もしかしたら、うさぎが浮気をしそうな感じもありつつみたいな。

小黒 そうです。観返すと「本当に衛はうさぎのことが好きなのか」「この2人、大丈夫か!?」とか、ハラハラしますね (笑)。

佐藤 その時じゃないかもしんないけど、少女マンガの編集をしてる人と、色々話す機会があったんだよね。その時に「少女マンガの鉄則」について聞いて、なるほど! と思ったんですよ。その鉄則とは「主人公のターゲットの男の子は、どんなことがあっても主人公を一途に好きでいなくてはいけないけれど、主人公は誰を好きになっても構わない」ということなんです(笑)。だから、主人公は浮気をし放題なのである、それが少女マンガである。そう思ってやってるかもしんないな。

小黒 『SuperS』に話を戻すと、フィッシュアイが、セーラームーンとちびムーンに「いつもそんな短いスカートで飛んだり跳ねたりして、恥ずかしいと思ったことないの?」って聞くんですよ(140話「ミニが大好き! おしゃれな戦士達」)。

佐藤 ああ、はいはい。

小黒 それに対して、2人が「ないわ!!」と自信満々に答えるんです。これは佐藤さんが入れたんですかね。

佐藤 いや、それはシナリオにあったと思う。シナリオのセリフを覚えてるよ。

小黒 なるほど。『セーラームーン』としては、きわどいとこを突いてますよね。

佐藤 そうだよね。『セーラームーン』で、そのセリフを言うのは面白いなと思って入れた記憶があるかな。

小黒 マーキュリーがいたらきっとショックを受けるとこですよ。「みんなも恥ずかしいと思っていたのに」みたいな。

佐藤 「え、恥ずかしくなかったんだ」って(笑)。

小黒 そんなこんなで、『セーラームーン』は少しずつお付き合いが薄くなっていくわけですね。

佐藤 そうだね。

小黒 なぜかというと、ひとつには同時期に『ゲゲゲの鬼太郎』(4期)(TV・1996年)があると。

佐藤 そっか、『鬼太郎』がその頃か。

小黒 『セーラースターズ』と同じ年なんですよ。

佐藤 確かに。もらってるリストがすげえ役に立つね。

小黒 『鬼太郎』はどのような意気込みで取り組まれたのでしょうか。

佐藤 やりたくてやったんだよね。「やりたい」と言って入れてもらったのか、やりたいと思ってたら呼んでもらえたのかは覚えてないけど。『鬼太郎』は、多くの演出さんがそうだと思うけど、やってみたいんだよね、やっぱり。

小黒 なるほど。

佐藤 歴史の中で何度も作られていくんだけど「自分の『鬼太郎』」をちょっとやってみたいんだよね。

小黒 細田(守)さんも「同じ原作を色んな演出家がやっているから、作り甲斐がある」と言ってましたね。

佐藤 それもそうだし、やっぱり水木先生の作品の独特な空気感をトレースしたい。原作からアレンジされてアニメっぽくなってはいるんだけど、「『鬼太郎』はこうではないか。水木作品はこうではないか」という試みが、それぞれのシリーズにある。4期は特に水木しげるテイストが強めに出てるシリーズでもあったしね。

小黒 3期が原作から離れたので、今度は原作に近いところに戻ろうという意識があったんでしょうね。

佐藤 (シリーズディレクターの)西尾大介の意志もでかいと思うし、東映の清水(慎治)さんも『鬼太郎』が好きで、なんなら最初の「墓場鬼太郎」をやりたい、ぐらいのことをその頃から話してたから。自分も水木さんのテイストを活かしてやりたいな、とは思っていたので、そういう意味では前のめりになって取り組んでいるシリーズかな。


●佐藤順一の昔から今まで(17) 『ゲゲゲの鬼太郎(4期)』と『地獄堂霊界通信』に続く


●イントロダクション&目次

第702回 無垢にアニメーター

 今、原画直しをやってます。昔、「PLUS MADHOUSE 2」で川尻善昭監督が自身の監督作品で自ら原画を描くことについて、「原画は好きな音楽を聴きながら手を動かすだけだから、なんのストレスもない」的なことを仰られてましたが、俺これ分かります。本当に原画描くだけでいい仕事なら、こんなに気楽で面白いことはないです。

だって、誰でも教科書やノートの端っこに描いて遊んだいわゆる”パラパラマンガ”の延長ですから!

 自分も中学・高校の頃はよく描いてました。当時、文房具店で何用か分からない、やや厚手の事務カード的な用紙に、行き当たりバッタリのアクションを——『あしたのジョー2』ばりのカメラ回り込みは不可避なヤツばかりパラパラ〜と。ちなみに先輩アニメーターに訊いたところ、「僕は金田(伊功)爆発を真似して描いた」とか「俺はメカの変形」など各々好きなアニメを模したパラパラマンガで遊んでいたようです。逆に言うと、

無垢に画を動かして遊んできた人たちだからこそ、アニメーターになったんでしょう!

 俺の場合、パラパラマンガという遊びに、理屈とコツをご教示くださって、プロのアニメーターにしてくれたのが小田部羊一先生・田中敦子さん・友永和秀師匠——そして大塚康生さまでした。

アニメ様の『タイトル未定』
295 アニメ様日記 2021年1月17日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年1月17日(日)
日曜から月曜にかけて、仕事で疲労が溜まったワイフの心身を休めるため、近くのホテルに泊まった。朝9時にチェックインして、翌日の昼12時にチェックアウトするプランで、僕はホテルから出社し、ホテルから散歩に行ったりと、普段とあまり変わらない生活だった。ただ、ホテルから出かけると、見慣れた街の見え方が変わって新鮮だった。
「佐藤順一の昔から今まで」で確認することがあり、20数年ぶりに「EVA友」を読み直す。インタビューで、佐藤順一さんが『エヴァ』に対して分析的なことを言っている。これはこれで「時代の気分」が出ている。他には『魔法使いTai!』を観たり、『新世紀エヴァンゲリオン』の第弐拾壱話、『DEATH』のコンテを確認したり。

2021年は1月18日(月)
午前2時50分に事務所に入って、みっちりと原稿作業。ホテルに戻ってから、ワイフと公園に行ってラジオ体操。朝の散歩の後、チェックアウト。その後はデスクワーク。いつものことだけど、月曜は忙しい。

2021年は1月19日(火)
散歩以外はデスクワーク。作業をしながら『進撃の巨人』第1期を再生する。やっぱりよくできてるなあ。ランチで池袋の風というお店に入ったのだが、店内に田村ゆかりさんのサインやグッズが置かれていた。店員さんによれば、店内で田村さんの曲がずっとかかっていることもあるとか。オーナーが田村さんのファンなのだそうだ。知り合いのアニメーターが田村さんのファンなので、彼と池袋で食事をすることがあったら、ここに行くことにしよう。

2021年は1月20日(水)
昼過ぎまでデスクワークと散歩。15時からBONESで打ち合わせ2本立て。打ち合わせに出る前に、熱があるかと思って計ったが、平熱だった。こんなに頻繁に熱を計る日々が訪れるとは思わなかった。
『進撃の巨人』視聴は第1期が終わって『Season 2』に突入。本放送時にも思ったけれど『Season 2』で映像の作り方を変えているなあ。この違いについてはいつか言語化したい。
就寝前に「よふかしのうた」最新6巻を読む。今度はそちらに展開するのか。僕の場合、七草ナズナのセリフは読んでいる間、新谷真弓さんの声で脳内再生される。もしも、アニメになったしたら、どんなキャスティングになるのだろうか。

2021年は1月21日(木)
IMAXの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を観に行くつもりだったのだけど、ワイフの体調がいまひとつでとりやめに。その後で、IMAX上映が22日(金)までだと知る。なんてこったい。
「川元利浩アニメーション画集」のキャプション作業を始める。正確にはキャプション中のコメント部分の執筆だ。画集のキャブションを書くのは10ヶ月ぶりくらい。キャプション作業が本調子になるのは2日後くらいか。

2021年1月22日(金)
ワイフとグランドシネマサンシャインで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q ver.3.333【IMAXレーザーGT版】』を鑑賞する。映像についても音響についても満足。改めて観ると、ミサトがシンジに状況を説明しないことや、シンジがカヲルの言うことを聞かないことも、作品のテーマと関連しているのだろうと思える。『新劇場版』は『:序』『:破』『:Q』でそれぞれテーマが違うのだろうなあ。ランチをとってから事務所に戻り、Zoom打ち合わせと「川元利浩アニメーション画集」の作業。
Netflixで『進撃の巨人』の『Season 3』の後半と『The Final Season』の配信最新話までを観る。『進撃の巨人』のWIT STUDIO制作のシリーズは、とても区切りのいいところで終わっていた。
いつも行くスーパーマーケットの無人レジで、間もなく現金が使えなくなる。使えるのはクレジットカードと交通系ICカードのみで、現金で買い物をする場合は有人レジを使うことになる。自分はリアル店舗では滅多にクレジットカードを使わないので、交通系ICカードの頻度が高くなりそうだ。既に、コンビニやファーストフードでも、交通系ICカードで支払うことが多い。

2021年1月23日(土)
13時からアニメスタイルチャンネルの「アニメスタイルTALK 009 叶精二のアニメーション講義 第一回」を収録。元々は会場にお客さんを入れてのイベントになるはずだったのだが、非常事態宣言中ということもあり、ビデオ通話で収録。配信のみのイベントとなった。叶さんのお話は大変に面白かったのだけど、僕が調子に乗って喋り過ぎた。前にも思ったけど、配信のみのトークは勝手が違うなあ。

アニメ様の『タイトル未定』
294 アニメ様日記 2021年1月10日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年1月10日(日)
朝はデスクワーク。昼はワイフと散歩。その後、TOHOシネマズ池袋で『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』の〈前編〉を観る。事務所に戻って原稿作業。ワイフと新文芸坐のレイトショーで「レディ・マクベス」を観る。2016年のイギリスの映画で上映時間は89分。自分ではなくてワイフが観たがっていた作品だ。何回か新文芸坐で予告を観ていて、内容を分かっていたつもりだったのだけど、予想していたのとは随分と違った。話自体はあまり面白くないのだけど、映画としては楽しめた。撮影と美術とロケーションがいいのかな。あるいは俳優か。表面的な物語以外に、何かの文脈があるのかもしれないけれど、それは分からなかった。
新番組の深夜アニメを片っ端からチェック。『プレイタの傷』1話のビジュアルがかなりよかった。

2021年1月11日(月)
早朝から午前10時までデスクワーク。昼前後はワイフと散歩で北区に。音無親水公園から名主の滝公園に。王子駅近くの立ち飲みおでん屋で軽く飲み食い。13時に事務所に戻り、15時までデスクワーク。グランドシネマサンシャインで『銀魂 THE FINAL』を鑑賞。ファンムービーとして充実した仕上がり。色々な意味で、アニメの『銀魂』らしい作品だ。前にも書いたかもしれないけれど、これで終わりにしないで、年に一度くらいは万事屋のメンバーがダラダラと喋るだけの新作を作ってほしい。
dアニメストアで『ミームいろいろ夢の旅』の配信が始まっていた。116話「探訪!アリの不思議な国」終盤のアリジゴクとのバトルは、当時から高坂希太郎さんの原画だろうと思っているのだけど、裏はとっていない。
「佐藤順一の昔から今まで」関係で『きんぎょ注意報!』の映像をチェック。放送当時に吉成曜さんが、石浜真史さんの『きんぎょ注意報!』の作画に注目しており、初めて会った時に石浜さんの作画担当パートを全部言い当てたのだそうだ。今回『きんぎょ注意報!』を観返して「ここが石浜さんのパートかな」と思えるところがあったのだけど、確証はない。
『きんぎょ注意報!』の時点で佐藤順一演出回に「頭のところにギザギザ模様が出現」の漫符はあり。同漫符について「『もーれつア太郎』の佐藤順一回で、既にあるかも」という話も聞いたけど、まだ見つけていない。

2021年1月12日(火)
新文芸坐の黒澤&三船特集の最終日。進めなくていけない作業がいくつもあって、行くのをあきらめる。「川元利浩アニメーション画集」の編集作業を進行させつつ、「この人に話を聞きたい」の原稿を進める。
寝る前に「バキ道」の1巻から最新8巻までをKindleで読む。最初の数冊は再読。連載で「刃牙」シリーズを読んでいた頃のことを考えると、まとめ読みはかなりの贅沢だ。渋川剛気の活躍はこれが最後かもしれないと思ったり。いや、そんなことはないか。

2021年1月13日(水)
外出の予定があったが、原稿を優先させることにしてとりやめ。朝イチで『ワンダーエッグ・プライオリティ』1話を観る。映像がかなりいい。「川元利浩アニメーション画集[デザイン編]」の束見本が届く。B4変型(縦266mm×横364mm)だ。当たり前だけど、かなりデカい。
アニメスタイル編集部は年に一度は『フリクリ』絵コンテ本か『新世紀エヴァンゲリオン』絵コンテ本を仕事で使っているのだけど、この日は『新世紀エヴァンゲリオン』の絵コンテ本が見つからなかった。事務所3階と倉庫を探して、結局事務所2階の平積みになった資料の中から発見。絵コンテ本は分かるところにまとめておこう。

2021年1月14日(木)
映画に行く予定だったのだけど、原稿作業のために延期。13時からGoogle Meetで打ち合わせ。このプロジェクトでは初めてのビデオ通話による打ち合わせだ。機材のせいか互いの声がよく聞こえず、調整しつつ打ち合わせを進める。ビデオ通話で打ち合わせを始めた頃はいつもこんな感じだったなあ。午後の散歩は高田馬場の戸山公園まで歩いて、帰りは山手線。居酒屋の加賀屋がランチを始めていたので、食事とホッピーをいただいてから事務所に。新番組を数本チェック。

2021年1月15日(金)
午前3時頃に出社し、5時半まで「この人に話を聞きたい」の原稿作業。事務所が入っているビルが午前7時から8時まで停電だったので、ラジオ体操の後、そのまま散歩に。「この人に話を聞きたい」の本文を仕上げて、事務所スタッフのチェックにまわす。14時から中野ブロードウェイで打ち合わせ。本来ならアニメスタイル側から3人くらい行かなくてはいけないのだけど、三密を避けるために僕が一人でうかがった。打ち合わせの後、ブロードウェイ内を少し歩く。新しくできたセル画ショップで『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のイメージボード数枚が、とんでもない価格で売りに出されていた。中野の飲食店の辺りを少し歩く。昼吞みをやっている店が増えた印象。事務所に戻って「この人に話を聞きたい」の原稿を終える。
Apple Musicに「らんま1/2格闘歌かるた」があったので、久しぶりに聴く。須賀正人さんの仕事は濃いなあ。早坂好恵さんと中嶋美智代さんの「主題歌ガールズのうた」という歌があるんだけど、このタイトルも、須賀さんならではのセンスだと思う。Apple Musicの「決定盤「らんま1/2」アニメ主題歌&キャラソン大全集」は何故か「じゃじゃ馬にさせないで」や「乱馬ダ★RANMA」が入っていない。CDには入っているのに。「らんま1/2歌暦(平成3年度版)」も聴く。これも聴いた記憶があるなあ。自分がかなり『らんま1/2』の曲を聴いていたことが分かった。『らんま1/2』が大好きだけど、CDは聴いていなかったワイフに勧めたら、Apple Musicで聴きまくって悶絶していた。

2021年1月16日(土)
午前5時に出社し、朝食とラジオ体操をはさんで9時半までデスクワーク。ワイフと散歩に。神田川沿いのウォーキングコース「いきいきウォーク新宿」を歩いて、新宿中央公園近くのレストランでランチ。事務所に戻ってZoom打ち合わせ。今まで対面でやっていたプロジェクトの打ち合わせが、今回からビデオ会議になった。念のために記しておくと、1月14日(木)で話題にしたのとは別のプロジェクトである。打ち合わせが対面の時よりもあっさりしたものになった気がするけど、世間話が減っただけかもしれない。その後、原稿作業を進めて、17時から吉松さんとSkype飲み。
原稿のために『新世紀エヴァンゲリオン』のLDの解説書を確認したら「LD&ビデオソフト版のために制作を進められていた新作パートのいくつがが『DEATH』編で先に公開されている」と書いてあった。いや、書いたのは僕のはずだけど。Wikipediaの記述を読んで『DEATH』編初出の新作パートについて、公式にはアナウンスされていないのかと思った。ちょっとひと安心。
ワイフの「高校の頃に観たかったけれど、観ることができなかったアニメ」が『魔法使いTai!』『シャーマニックプリンセス』『ジャングルDEいこう!』であることが判明。

第203回 逆転する時間 〜四月は君の嘘〜

 腹巻猫です。フジテレビのアニメ放映枠「ノイタミナ」の放映開始15周年を記念した「ノイタミナ presents シネマティックオーケストラコンサート」が5月29、30日に開催されます。ノイタミナの名を冠したオーケストラ・コンサートははじめて。『図書館戦争』『四月は君の嘘』『約束のネバーランド』の3作が取り上げられ、各作品の音楽を担当した作曲家も参加するそうなので期待が高まります。チケットは現在発売中。
https://www.noitamina-concert.jp


 音楽を題材にしたアニメの音楽作りは難しい。まず演奏シーンの音楽がある。昔のアニメだとレコードから選曲して使ったりしていたが、今はプロのミュージシャンに演奏してもらうケースがほとんどである。そして、演奏シーンの音楽が立派であれば、背景音楽、いわゆる劇伴のほうもそれなりのクオリティが期待される。シンセの打ち込みだけですますというわけにはいかないのだ。
 『四月は君の嘘』はクラシック音楽を演奏する中学生を主人公にしたアニメである。新川直司の漫画を原作に2014年10月から2015年3月まで放映された。
 少年時代から天才ピアニストと期待された有馬公生は、11歳の冬、母の死をきっかけにピアノが弾けなくなってしまう。ピアノから遠ざかったまま14歳になった公正の前にバイオリンを弾く少女、宮園かをりが現れた。かをりは公正を強引に伴奏者に任命し、バイオリン・コンクールのステージに上げる。かをりにふりまわされるうちに、公正は音楽への想いを少しずつ取り戻していく。
 音楽がテーマといっても、ライバルと競ってコンサートで勝ち進む物語ではない。基本はボーイ・ミーツ・ガール。公正とかをり、公正の幼なじみの少女・澤部椿の3人の関係が主軸になる青春アニメだ。最終回でかをりの秘めていた想いが明らかになる。そこから第1話にさかのぼって観返すと、物語が違ったふうに見えてくる。心憎い構成の作品である。

 音楽を担当したのは横山克。幼い頃からピアノを習い、中学生2年生のときにシンセサイザーを買って作曲に興味を持つようになった。国立音楽大学作曲学科在学中の2005年から作曲家として活動。劇場作品、TVドラマ、アニメ、ドキュメンタリー、CM、アーティストへの楽曲提供など幅広い分野の作品を手がけている。映像音楽の代表作に、NHK連続テレビ小説「わろてんか」(2017)、実写劇場作品「ちはやふる」3部作(2016〜2018)、TVアニメ『荒川アンダーザブリッジ』(2010)、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(2015)、『空挺ドラゴンズ』(2020)などがある。
 横山克は「音楽モノの名作アニメに憧れて、この仕事を志した」という(サウンドトラック・アルバムの対談インタビューより)。本作の音楽を担当することにプレッシャーもあったが、やりがいも大きかった。
 『四月は君の嘘』では、キャラクターが演奏するピアノやバイオリンが心理描写にもなっている。こういうとき、背景音楽はピアノやバイオリンを使わないようにして劇中の演奏シーンと干渉しないようにする手もあるのだが、本作はそうではない。あえて、ピアノとバイオリンを音楽の中心に据えている。そして、劇中で演奏される音楽はエコーを深めにかけるなどして響きを変え、背景音楽と明確に区別している。
 イシグロキョウヘイ監督から提示された音楽のキーワードは「透明感」と「ボーイ・ミーツ・ガール」だった。音楽の軸となったのはメインテーマ「四月は君の嘘」と「私の嘘」と題された曲。この2曲のメロディがさまざまにアレンジされて、劇中の重要なシーンに使用されている。繊細だけどセンチメンタルにならず、青春ものらしい爽やかさが感じられる音楽である。
 ただ、これだけだと際だった特徴のない、よくある音楽になってしまう。そこで横山克はエレクトロの要素を混ぜるというひと工夫を加えた。このアイデアが効いている。「おや?」と思わせる、ひっかかりのある音楽になっているのだ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「四月は君の嘘 ORIGINAL SONG & SOUNDTRACK」のタイトルで2015年1月にアニプレックスから発売された。横谷克作曲の挿入歌4曲を含む65曲入りの2枚組。主要な楽曲はほぼ収録されている。
 ディスク1を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. 君は忘れられるの
  2. 四月は君の嘘
  3. 視界が紅い!?
  4. 夕暮れ時の下校
  5. 私の嘘〜PianoSolo
  6. 母の夢
  7. ゆるすまじ盗撮魔
  8. 女同士の“かわいい”
  9. 私、ヴァイオリニストなの
  10. For you〜月の光が降り注ぐテラス(歌:EMA)
  11. 彼女は美しい
  12. 今日のことは忘れられないよ
  13. まるで映画のワンシーンのように
  14. 春の香り
  15. 君は春の中にいる
  16. 暴力上等
  17. こういう気持ちを何て言ったかな
  18. 友人A君を私の伴奏者に任命します
  19. おとなしく伴奏しろー!!!
  20. バンソウバンソウバンソウバンソウ
  21. 弟みたいな存在〜PianoSolo
  22. 暗い海の底
  23. 挫けそうになる私を支えてください
  24. ぼくの住んでいる街はカラフルに色付いている
  25. My Truth〜ロンド・カプリチオーソ(歌:EMA)
  26. アゲイン
  27. 夏の日差し
  28. 季節が変わる
  29. 水面
  30. ウソとホント
  31. 君がいる
  32. 思ったより大きいな
  33. 友人A〜PianoSolo

 曲順と曲名は、横山克自身が第1話から第6話ぐらいまでの音楽の使用順にもとづいて決めたそうである。ディスク1が、ほぼ第6話あたりまでの内容に相当する。本編を思い出しながら聴くと感動がよみがえる。
 1曲目の「君は忘れられるの」は、第1話のアバンタイトル、宮園かをりが登場するシーンに流れる曲。曲の冒頭、ふしぎな響きの音が入り、ピアノのメロディが続く。このふしぎな響きの音はシンセサイザーかと思いきや、ピアノの音を逆再生したものである。横山克の言うエレクトロの工夫だ。逆再生の音は、ほかの多くの曲にも使われていて、本作の音楽の特徴になっている。
 2曲目の「四月は君の嘘」は本作のメインテーマ。ピアノを中心にアコースティックギターやストリングスなどを重ねて、透明感と爽快感のある曲に仕上げている。このメインテーマのメロディをスローにアレンジした曲がトラック17の「こういう気持ちを何て言ったかな」。公正や椿の揺れる気持ちを表現する曲として使われた。
 トラック5の「私の嘘〜PianoSolo」は第1話で公正が母の遺影に語りかける場面に流れた曲。本作のシリアスな面を象徴するメロディである。
 続く、「ゆるすまじ盗撮魔」「女同士の“かわいい”」は第1話の曲タイトルそのままのシーンで使用されている。
 第1話のラストでかをりが公正に自己紹介する場面に流れたのがトラック9の「私、ヴァイオリニストなの」。キラキラしたピアノの音色とはずむリズム、シンセのアクセントなどで公正の高揚する気持ちを表現している。
 トラック12「今日のことは忘れられないよ」とトラック13「まるで映画のワンシーンのように」は第2話のバイオリン・コンクールの場面で続けて使用された。演奏を終えてロビーに現れたかをりが少女から花束をもらう。そして、公正たちに駆け寄って感想を求める。まぶしい光があふれるような「今日のことは忘れられないよ」がかをりのよろこびを、「まるで映画のワンシーンのように」が公正の複雑な心境を伝える。「まるで映画のワンシーンのように」は「私の嘘」の変奏だ。
 トラック14「春の香り」は第2話の楽譜に埋もれて眠る公正の場面に使用。まさに春のまどろみのような曲で、後半から聴こえてくるオーボエのメロディが美しい。次の「君は春の中にいる」は第2話で公正が桜の下でかをりと再開する場面の曲。余談だが本作のロケ地は筆者の家の近所が多く、この場面の背景もよく知っている場所である。
 そして、全編の中でも特に印象深い、第3話でかをりが公正を伴奏者に任命する場面。トラック18「友人A君を私の伴奏者に任命します」が流れる。ピアノの速いフレーズからストリングスの温かいメロディへ展開する、公正の気持ちの変化を代弁するような曲だ。メインテーマや「私の嘘」と並んで本作を象徴する楽曲で、以降のエピソードでも公正がステージに立つ場面などで使用されている。
 ユーモラスな「おとなしく伴奏しろー!!!」「バンソウバンソウバンソウバンソウ」は、第3話の曲タイトルそのままのシーンで使われた。こういう明るい曲も青春アニメらしい雰囲気を作る重要な要素である。
 トラック21の「弟みたいな存在〜PianoSolo」は椿の公正への気持ちを表現する曲。第3話で椿が公正のことを「ダメダメな弟って感じ」と話す場面に流れている。第20話の椿が公正と雨宿りしながら語らう場面では、この曲のフルバージョン(ディスク2に収録)が使用された。
 第3話でかをりが泣きながら公正に伴奏を頼むシーンに流れたトラック23「挫けそうになる私を支えてください」も「私の嘘」の変奏曲。青春のもどかしさや切なさが伝わるアレンジである。
 第3話のラスト、公正たちが自転車に相乗りしてコンクール会場に向かう場面に流れたのが、トラック24「ぼくの住んでいる街はカラフルに色付いている」。カラフルという形容がぴったりの明るくにぎやかなサウンドの曲。ここが、物語の上でも、アルバムの上でも、大きな盛り上がりになる。
 トラック26「アゲイン」は、第4話で演奏中にピアノが弾けなくなった公正に、かをりが「アゲイン」と言ってバイオリンを弾き始める場面に使用。迷うようなピアノのフレーズから、後半はリズムが加わり、華やかなサウンドに変わっていく。ドラマを感じさせるが盛り上げすぎない、絶妙なバランスの曲である。
 以降は劇中使用曲にこだわらず、物語をイメージした構成になっている。
 トラック30「ウソとホント」は、かをりの恋心をテーマにした曲で、ソロバイオリンがフィーチャーされている。優雅に聴こえるこの曲、実はバイオリンではすごく弾きにくいキーの曲なのだそうだ。かをりのちょっと屈折した心情が演奏にも反映されている。
 トラック31の「君がいる」は「私の嘘」のピアノソロによる切なく、はかない印象のアレンジ曲。第7話でかをりが公正の手のひらに自分の手のひらをあわせて公正を励ます場面に流れた。ほかにも、第15話で公正がかをりの見舞いに行く場面、第20話で椿が公正に告白する場面など、全編を通して重要な、感動的なシーンに使われている。
 アルバムのラストは「友人A〜PianoSolo」。おだやかでやさしいメロディのピアノ曲である。友人Aは公正のことだが、公正のテーマというより、椿もしくはかをりから見た公正を表現する曲なのだろう。

 『四月は君の嘘』の音楽は端正で美しい。が、それだけではなく、サウンドに工夫を凝らした個性的な音楽である。特に逆再生した楽器の音が効果的だ。特徴のある音で曲を印象付けると同時に、「逆から見れば(聴けば)違って見える(聴こえる)」という本作の物語の本質をついた工夫にもなっている。
 逆再生を取り入れたサウンドトラックというと、最近でも劇場作品「TENET」があったが、実は1937年公開の「舞踏会の手帳」ですでに試みられている。意外と古典的な手法である。これらの作品に共通するのは時間が重要なカギになっていること。『四月は君の嘘』の音楽は、過ぎゆく時間を押しとどめようとする想いの反映なのかもしれない。その想いはとても切ない。

四月は君の嘘 ORIGINAL SONG & SOUNDTRACK
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
293 アニメ様日記 2021年1月3日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年1月3日(日)
ワイフと新文芸坐で「七人の侍」を観る。プログラム「黒澤明生誕111年 三船敏郎生誕101年 銀幕に甦れ! 黒澤&三船 日本映画最高のコンビ〈東宝編〉」の1本だ。ワイフはこれが初見で、僕は劇場で観るのは二度目。初見時の没入感はないけれど、やはり面白い。その後、事務所に戻ってデスクワーク。山積みになった資料の中から目当ての雑誌を探さなくていけない。これは半日かかるかな、と思っていたら3分くらいで見つかった。こんなに簡単に見つかるなら、段取りとか考えないですぐに探せばよかった。17時から吉松さんとSkype飲み。減酒中なので、僕は缶ハイボール1本だけで、あとはノンアルコールビール。イベントの予習で「枕草子」関係の本を読み始めた。
「七人の侍」と『ガンバの冒険』について考える。『ガンバの冒険』の7匹が「七人の侍」の7人を意識したものとすると、リーダーのヨイショに相当するのが島田勘兵衛、その幼なじみ(昔なじみ)で相棒のガクシャが七郎次、クールで頼れるイカサマが久蔵、人当たりがよくて飄々としたシジンが林田平八、年少の忠太が岡本勝四郎。で、若くて元気なガンバが菊千代。ボーボに相当する登場人物はなしかな。参謀役という意味では片山五郎兵衛の役回りもガクシャが引き受けている感じだ。また、登場人物全体を考えると、忠太の立ち位置は岡本勝四郎よりも、侍を探すために街に出た農民(利吉)に近い。『ガンバの冒険』が「菊千代が主人公で、仲間が死なない『七人の侍』だ」と思うと色々と納得できる。

2021年1月4日(月)
散歩とデスクワークの後、新文芸坐で「どん底」を観る。これも「黒澤明生誕111年 三船敏郎生誕101年(以下略)」の1本。前売りチケットを購入した時には、これが時代劇だということも知らなかった。タイトルだけ知っていたけど、こんな映画だったのか。事務所に戻って、文庫「黒澤明作品解題」引っぱり出して「どん底」の項に目を通す。その後、軽い晩飯をはさんで19時半までデスクワーク。
「佐藤順一の昔から今まで」で『もーれつア太郎』辺りの取材は終わっているのだけど、確認することがあってAmazon prime videoで『もーれつア太郎』の佐藤順一さんの演出回を視聴。

2021年1月5日(火)
午前中に散歩をして、その以外は用事を片づける。やっぱり仕事はじめの日は忙しい。16時にからBONESで打ち合わせ。

2021年1月6日(水)
昼飯の後に三省堂へ。単行本、文庫の辺りを見る。久しぶりに「本屋に来た」という感じで刺激になった。最近はネット書店ばかりだった。もっとリアル書店に行かなくては。ワイフと新文芸坐で「用心棒」を観る。これも「黒澤明生誕111年 三船敏郎生誕101年(以下略)」の1本。自分は二度目の鑑賞。今回はDCP上映で、とにかく音がよかった。イベントの予習で「100分de名著」の「枕草子」の回を配信で視聴。これはかなり参考になった。

2021年1月7日(木)
「川元利浩アニメーション画集」の編集作業、同書の告知の準備でとにかく忙しかった日。「佐藤順一の昔から今まで」で確認することがあって『きんぎょ注意報!』『美少女戦士セーラームーン』を流し観。ぼんやりと観ていても、『きんぎょ注意報!』の入好さとるさんの作監回が分かるようになった。
ネットで「SLAM DUNK」の映画化が発表になる。『SLAM DUNK』の大ファンで、再映像化するならやりたいと言っていた監督がいたけれど、今、彼は自身のオリジナル企画を転がしているはずで、原作ものをやっている場合ではないよなあ。

2021年1月8日(金)
仕事の合間に、東京ドームシティ Gallery AaMoで開催中の「画業40周年記念企画 ゆうきまさみ展」へ行く。ゆうきさんの作品を再読したくなった。確認することがあって『クレヨンしんちゃん』の「アクション仮面に再会だゾ」を再見。この話でいちばん凄いのは「セーラー・ムフ~~ン、セーラー・イヤ~~ン、セーラー・バカ~~ン」の3人でも、幾原邦彦さんっぽい伊藤一彦さんが同人誌即売会でサイン会をやっていることでもなく、みさえの「アニメにも監督なんているの」のセリフだ。これは「アニメファンではない人にとっての、アニメスタッフに対する認識ってこんなものだ」という自虐ギャグだろう。

2021年1月9日(土)
トークイベント「第172回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作」の開催日。朝は事務所でデスクワーク。イベント前にしては作業が進んだ。池袋から新宿まで歩いて、LOFT/PLUS ONEに到着。片渕さんの提案で何度も休憩を入れてトークを展開。片渕さんの調査と資料は今回も圧巻。平安時代の個々の日の天気まで分かるのだ。お客さんに声を出さないようにお願いしていたので客席の温度が分からず、それだけは残念。声を出さないことを含めて、コロナ対策を徹底したイベントとなった。僕の枕草子の予習はなんとか足りていた模様。イベント終了後は歩いて池袋に戻る。

第700回 大塚康生様(2)

新人の頃の板垣はよく大塚(康生)さんに画を見ていただきました!

 これは学生時代の師・小田部羊一先生にテレコム入社を報告した際、先生から言われた一言「描いた画はどんどん大塚さんに見てもらいなさい」に起因します。

てな感じのやりとりから、ちょくちょく描いた画を見て寸評・修正をいただく日々が始まりました。主に夜寝る前が描く時間。どのようなものを描いたかというと、

・黒澤明監督作品(高校生の頃から傾倒していた)の名場面をアングルを変えて描いた鉛筆画。
・見よう見まねで描いた原画の習作。
・似顔絵など

 ホント気の向くまま好きなものを描いて大塚さんに見せに行きました。すると、例えば黒澤映画の鉛筆画でも修正用紙をのせて、騎馬武者のポーズや目線などを

「実際(の映画)はこうじゃないかもしれないけど、アニメーションの場合はこちらの対象を見ないと分かりづらいよ」

などと解説しつつサササッと直してくださいました。

 てとこでまた仕事に戻らせていただきます(汗)!

第173回アニメスタイルイベント
撮影監督トーク 泉津井陽一・脇顯太朗

 4月開催のイベントは会場にお客さんに入っていただくかたちの企画となります。イベントタイトルは「第173回アニメスタイルイベント 撮影監督トーク 泉津井陽一・脇顯太朗」。ゲストはアニメスタイルイベントでお馴染みの泉津井陽一さん、『ソードアート・オンライン -アリシゼーション- 』等を手がけた脇顯太朗さん。2人の撮影監督にアニメの撮影について語っていただきます。

 開催日時は2021年4月4日(日)。会場は新宿のLOFT/PLUS ONEです。開演は13時からです。今回も先行してロフトグループによるツイキャス配信を行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。
 チケットは「会場でのイベント入場料+ツイキャス配信視聴」と「ツイキャス配信視聴」の2種類を用意します。アニメスタイルチャンネルでの配信は、同チャンネルの会員の方が視聴できます。チケットに関して詳しくは、以下にリンクしたLOFT/PLUS ONEのページをご覧になってください。

 LOFT/PLUS ONEを含むLOFTの会場は厚生労働省が定めた、新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインを遵守し、さらにガイドラインよりも厳しいLOFT独自の基準を設けて、万全を期してイベントを開催しています。
 来場されるお客様にはマスクの着用、手指の消毒をお願いしています。消毒液は会場に用意してあります。また、体調の優れないお客様は来場をお控えください。

 同じく新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、今回のイベントは通常の半分ほどの人数で定員となります。また、飲食物についてはお客様がカウンターで注文し、その場で代金を支払うキャッシュオン形式となります。

■関連リンク
LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第173回アニメスタイルイベント
撮影監督トーク 泉津井陽一・脇顯太朗

開催日

2021年4月4日(日)
開場12時半 開演13時 終演16時

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

泉津井陽一、脇顯太朗、小黒祐一郎(司会)

チケット

現場+配信視聴/1,500円 配信のみ/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
  アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
292 アニメ様日記 2020年12月27日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年12月27日(日)
早朝の新文芸坐に行って、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol.128 湯浅政明のセカイ」の終幕を見届ける。昼間はワイフと散歩。散歩の途中で目の前に黄色いIKEBUSが止まったので、乗ってみる。IKEBUSが走るのは池袋だけ、つまり、走るのは僕達が知っている場所だけなのだが、バスから見る池袋の街は新鮮で楽しかった。事務所でキーボードを叩いた後、グランドシネマサンシャインで『えんとつ町のプペル』を鑑賞。映像はなかなかの見応え。特にプペルの頭部の造形がよかった。お話にはあまり乗れなかったけれど、隣にいた親子連れの母親が、映画の半ばから泣きながら観ていたようだ。

2020年12月28日(月)
仕事納めの日。午前中に散歩。午後は用事を片づける。新文芸坐で「ゾンビ〈日本初公開復元版〉」を観るつもりだったのだが、夕方までに出さなくてはいけない書類があるのに気づいて断念。書類を書いた後、「Blu-ray Perfect Soldier Box発売記念 装甲騎兵ボトムズ展×マルイ」に。

2020年12月29日(火)
散歩に行ったり、事務所でキーボードを叩いたり。仕事納めをしたのは会社であり、僕自身はやらなくてはいけない作業がある。ワイフとグランドシネマサンシャインで「ワンダーウーマン 1984【IMAXレーザーGT字幕版】」を観る。冒頭の過去シーンだけで、入場料分以上に楽しめた。

2020年12月30日(水)
池袋から代々木公園まで歩く。事務所に戻ってデスクワーク。その後、駅前の喫茶店で打ち合わせ。新文芸坐で「コンボイ」(1978・米/111分/BD)を観る。プログラム「両作品日本最終上映! サム・ペキンパー骨太2本立て コンボイ | 戦争のはらわた」の1本。「コンボイ」は自分が中学生の頃に公開された映画で、宣伝は何度も目にしていたが本編は未見。どんな内容なのかほとんど知らなかった。ああ、なるほど、こういう映画なのか。序盤のシネスコ画面で走るトラックが、映画ならではのダイナミックさでとてもよかった。主人公達と対立する保安官の男性がいるのだけど、外見から「吹き替えでは富田耕生さんに違いない」と思って、事務所に戻ってからWikipediaで確認したら、やはり吹き替え版では富田耕生さんが演じていた。
アニメ『池袋ウエストゲートパーク』の2話以降を観る。1話を観た時は「なんだか違うなあ」と思ったけれど、続けて観ると、ちゃんと「池袋ウエストゲートパーク」になっていると思えた。

2020年12月31日(木)
昼までに年内の作業を終わらせる。ここ数年、大晦日はコミックマーケットの最終日でドタバタしていたのだけれど、今年は冬コミがなかったので、久しぶりに時間に余裕のある大晦日だ。午後から都内のホテルに行くつもりだったのだけど、ワイフが発熱し、様子をみることに。熱が下がったので、夜になってから出かける。高級なホテルではないけれど、快適。年越し蕎麦もいただいた。

2021年1月1日(金)
明けましておめでとうございます。朝はホテルの正月御膳。昼前にチェックアウトしたけど、2泊か3泊すればよかった。大塚のれん街の寿司居酒屋が開いていたので、ちょっと呑んでから帰宅。「今年の元旦は家のことは何もしない」のを目標にしていたので、おせちも餅も買っていない。

2021年1月2日(土)
早朝から事務所に。とにかく原稿に手をつける。前から行きたかった区役所ビル内の中華料理屋でランチ。三が日だけあって他の客はほとんどいなかった。グランドシネマサンシャインで『劇場版 生徒会役員共2』を鑑賞。劇場作品らしさは薄く、整理されずにエピソードが並んでいる感じなんだけど、その大胆な作りも『生徒会役員共』らしいかな。僕が見た範囲では観客は全て男性で、上映中にクスリと笑いが起きていた。
原作「鬼滅の刃」を最終巻まで読んだ。連載の最終回は読んでいたけれど、単行本では連載の最終回の後にエピローグがいくつもあり、特に最後のエピローグが素晴らしかった。

第699回 大塚康生様(1)

 3月15日——大塚康生さんが亡くなられたとのことでした。大塚さんの話はこの連載で何回も語ってきたし、略歴やアニメ界に残した功績などはWikipediaで調べてください。とにかく大塚さんが亡くなったのです。
 『大塚康生画集「ルパン三世」と車と機関車と』(玄光社刊)に寄稿した板垣の色紙にも描いたように、テレコム入社試験中の大塚さんのニコニコ顔はいまだにハッキリ脳裏に焼き付いてます。「ここ(テレコム)に入れば、大塚さんに教えてもらえる!」と試験課題の『未来少年コナン』(のポーズを5つ描く)も無我夢中で描いて、その後即面接。今さっき上げた俺の『コナン』数枚を見ながら「試験はどうだった?」のニコニコの大塚さん。「……面白かったです!」と自分。すると大塚さん、あっさり「まぁ、こんな面接なんてやってもあんまり意味ないから、何か訊きたいことがないなら帰っていいすよ」と。面接は3分で終わり(たぶん5分はかかってません)。で、2〜3週間もしないうちに合格通知が届き、1994年3月15日に入社(たしか4月じゃありませんでした)。そして大塚さんによる研修が始まりました。結果から話すと、おそらく正式に大塚さんご本人による研修を受けたのは、自分の代が最後だったと思います。次の年の研修から、大塚さんからその当時の我々の先輩方へとその任が引き継がれ、大塚さんはちょっと離れたところからの顧問的な位置に就かれました。

すみません。途中ですがまた時間切れのようです。大塚さんの話は来週以降も続けさせてください!

第202回 妖怪がいる日常 〜夏目友人帳〜

 腹巻猫です。3月30日に開催が予定されていた蒔田尚昊(冬木透)作品の演奏会「歌の世界」が無観客公演となり、映像配信されることになりました。映像音楽以外の冬木透(蒔田尚昊)作品が聴ける貴重な機会です。チケットは1000円とお求めやすい価格ですので、ぜひどうぞ。
 詳細は下記URLを参照ください。
https://www.maita-sekai.com


 3月7日に配信された「水木しげる生誕祭」の中で、『ゲゲゲの鬼太郎』の新作劇場アニメと『悪魔くん』の新作アニメの制作が発表された。妖怪ブームはまだまだ続くようだ。
 今回は、妖怪が登場するアニメ『夏目友人帳』のサントラを聴いてみよう。
 『夏目友人帳』は緑川ゆきの漫画を原作に2008年7月から9月まで放映されたTVアニメ。第2期となる『続 夏目友人帳』が2009年1月から3月まで放映され、その後、2017年までに第3期〜第6期が作られた。2018年には劇場版第1作を公開。今年2021年には『石起こしと怪しき来訪者』が劇場上映されている。根強い人気を持つ作品だ。
 主人公は、普通の人には見えない妖(あやかし)の姿を見たり、声を聞いたりすることができる高校生・夏目貴志。若くして亡くなった祖母・レイコも妖を見ることができ、妖と勝負して勝った証に「友人帳」に名前を書かせていた。レイコが遺した友人帳を手にした夏目のもとに、「名前を返せ」と訴える妖が集まってくる。夏目は妖たちに名前を返すことを決心し、招き猫に憑依した妖怪・斑ことニャンコ先生とともに、妖とかかわり始める。
 妖怪退治の話ではなく、妖怪に名前を返し、解放する物語であるのがユニーク。人に危害を加えようとする妖怪もたまに登場するが、どちらかといえば、ユーモラスな妖怪やけなげな妖怪が多い。妖怪も人間と同じように悲しんだり、悩んだりする存在として描かれている。
 物語の舞台が、山や川や草原に囲まれた自然豊かな土地であるのが、とても印象的である。筆者の出身は高知だが、幼い頃(1960年代)は家のまわりは畑や田んぼばかりだった。目の前が畑で、その向こうは小高い山、家のすぐそばを川が流れ、虫や小動物が無数にいた。そんな故郷の原風景を思い出させる。

 音楽は吉森信が担当。広島県出身で、90年代からモダンチョキチョキズ、ヒカシューなどのバンドやセッションに参加しながら、ミュージカル、舞台にも出演していた。作・編曲家、鍵盤奏者として幅広く活動する音楽家である。
 『夏目友人帳』の監督・大森貴弘とはバーで知り合い、TVアニメ『恋風』(2004)、『学園アリス』(2004)、『BACCANO!』(2007)などの作品を一緒に作ってきた。つきあいが長いこともあり、『夏目友人帳』の音楽は「すごく自由に作らせてもらった」という。
 音楽はゆったりした、素朴なサウンドのものが多い。妖怪アニメっぽい不気味な曲や怖い曲はほとんどないし、あっても、重たくない。美しく描かれた自然の風景に溶け込むような音楽である。が、そんな中に聴いただけで笑ってしまうようなユーモラスな曲があって、これが本編でも効果を上げている。
 本作のサウンドトラック・アルバムは2008年9月に「夏目友人帳 音楽集 おとのけの捧げもの」のタイトルでアニプレックスから発売された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. きみが呼ぶ名まえ〜夏目友人帳のテーマ
  2. 草躍る風の響き
  3. めぐる夏の便り
  4. にゃんこらせっ。
  5. ゆるやかな畦道で
  6. 夏・窓・開けっ放し
  7. おうし座の怪人
  8. 闇夜に潜むものあり
  9. 百鬼夜行〜妖怪大行進
  10. 荒ぶる神の降臨
  11. ほのかな記憶
  12. 雨夜の月のように
  13. 百雷の神楽
  14. きみに触れた光
  15. 暖かい場所(歌:夏目貴志=CV:神谷浩史)
  16. 一斉の声(TVサイズ)(歌:喜多修平)

 BGM(劇中音楽)14曲を収録。最後の2曲は夏目のキャラクターソングとオープニング主題歌のTVサイズである。
 『夏目友人帳』には、胸がキュンとなるエピソードやしんみりするエピソード、ほっこりするエピソードなど、いわゆる「いい話」が多い。そういうエピソードで流れるしっとりとしたピアノ曲やストリングスの曲が印象に残っているファンが多いだろう。
 しかし、この「夏目友人帳 音楽集 おとのけの捧げもの」にそういう曲を期待すると裏切られる。とぼけた曲やユーモラスな曲、情景描写的な曲がほとんどなのだ。ネットには「聴きたかった曲が入ってない」という感想も見られる。
 実は、多くのファンが期待する「泣ける曲」や「癒やされる曲」は、第2期のサントラ盤「続 夏目友人帳 音楽集 いとうるわしきもの」に収録されているのである。第1期と第2期は放映時期も近く、第1期の音楽は第2期でも使用されている。1期と2期はセットと考えてよいだろう。サントラ盤も同様だ。
 筆者が思うに、第1期のサントラは妖怪がいる風景をイメージしたアルバム、第2期のサントラは夏目と妖怪や友人たちとの物語をイメージしたアルバム、と作り分けているのではないだろうか。
 では、第1期のサントラはつまらないかというと、そんなことはない。むしろ、筆者はすごく面白いアルバムだと思った。「泣ける曲」や「癒やされる曲」が入ってないから聴かないというのでは、あまりにもったいない。
 1曲目「きみが呼ぶ名まえ〜夏目友人帳のテーマ」は本作のメインテーマ。ピアノとアコーディオン、ストリングスなどが奏でるノスタルジックで美しい曲だ。本編では、第2期のサントラに収録されたピアノがメインの変奏「きみが呼ぶなまえ〜夢のつづき」のほうがよく使われていた。
 トラック2「草躍る風の響き」とトラック3「めぐる夏の便り」は自然豊かな風景がイメージされる曲。「草躍る風の響き」では弦楽器のアンサンブルが風にゆれる草の音や木々の葉ずれの音に聞こえる。メロディよりも音色を重視した、ドビュッシーやラベルの音楽を連想させる曲だ。「めぐる夏の便り」は、ピアノとクラリネット、ストリングスによる穏やかな曲。のんびりした田舎の情景が眼に浮かぶ。中間部は淋しい曲調に転じてしんみりさせるが、また穏やかな曲調に戻って終わる。夏の日、自然の中を歩いているような気分になる。
 続く、トラック4「にゃんこらせっ。」とトラック5「ゆるやかな畦道で」は、筆者が本アルバムの中でも特に気に入っている曲。「にゃんこらせっ。」はニャンコ先生のテーマで、ファゴットなどの低音の木管楽器がとぼけた演奏を聴かせる。毎回のようにニャンコ先生のコミカルなシーンで流れていた。「ゆるやかな畦道で」は笛が奏でる脱力系のメロディがたまらない1曲。メロディオン(鍵盤ハーモニカ)やパーカッションが加わり、さまざまな音が風景を満たしていく。曲の中に豆腐屋のラッパが聞こえてくるが、これはレコーディングのとき、休憩時間に外出していたら、たまたま豆腐屋が通りかかったので、とっさに声をかけて吹いてもらったのだという。ユーモラスに聞こえるが、こういう曲も心休まる「癒やしの曲」だと思う。
 トラック6「夏・窓・開けっ放し」がまた不思議な、ほとんど効果音のような曲。聴けばわかるが、蚊が飛ぶ音を模した曲である。メロディもリズムもなく、蚊の音だけが空中を行き交う。
 その次の「おうし座の怪人」も筆者が気に入っている曲で、つまづくようなピアノと口琴などの民族楽器、ホーメイなどがセッションをくり広げる。アバンギャルドなのかコミックなのか、とにかく型にはまらない音楽である。この曲は妖怪の登場場面にたびたび使用されたほか、冒頭部分がアイキャッチに使われている。
 トラック7「闇夜に潜むものあり」は弦楽器を中心にしたサスペンス曲。夏目が妖怪に追われるシーンなどに使われた、おなじみの曲だ。不気味でコミカルな「百鬼夜行〜妖怪大行進」、強力な妖怪の脅威を感じさせる「荒ぶる神の降臨」と、妖怪登場曲が続く。
 トラック11「ほのかな記憶」はハープのアルペジオに後半からチェロの瞑想的な旋律が重なる曲。タイトルどおり、回想場面にたびたび使用されていた。
 トラック12「雨夜の月のように」では、ピアノとフルートが、乱れる心を描写するような緊張感のある演奏を聴かせる。この曲は第8話で蛍の妖怪が「あの人に会いたい」と言って夜の沼へ行くシーンに流れていたのが印象的。
 第6話の妖怪たちの祭りの場面に流れたトラック13「百雷の神楽」を経て、BGMパートのラストの曲へ。
 トラック14「きみに触れた光」は、さざ波のようなピアノソロが続く、幻想的な美しさを持った曲だ。7分という長い演奏時間を、ほとんど明解なメロディを奏でることなく、ドラマティックに展開することもなく、ひたすらピアノの音色を聴かせる(ピアノ演奏は吉森信)。5分を過ぎて、舞い踊る光を思わせる美しい曲想に変化。解き放たれたようなさわやかな印象を残して終わる。夏目から名前を返してもらった妖の姿が思い浮かぶ。

 「夏目友人帳 音楽集 おとのけの捧げもの」は、物語を意識したサントラではない。夏の日、風の音や虫の音を聞き、遠雷を聞くように妖怪の気配を感じ、夕立にあうように妖怪と出会い、妖怪が通り過ぎたあとに残された想いにそっと触れる。そんな、妖怪がいる日常のひとときを切り取ったアルバムだと思う。物語的な癒やしや感動を求めると物足りないかもしれないが、すごく豊かな音が詰まったアルバムだ。
 できれば、さしせまった用事のない夏の午後に、リラックスした気分でこのアルバムを聴いてみたい。ニャンコ先生や妖怪がふらりと現れるかもしれない。蚊はちょっと困るけれど。

夏目友人帳 音楽集 おとのけの捧げもの
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続 夏目友人帳 音楽集 いとうるわしきもの
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佐藤順一の昔から今まで (15)「レイ、心のむこうに」と「ネルフ、誕生」

小黒 この頃のお仕事に『新世紀エヴァンゲリオン』がありますね。

佐藤 お手伝いしていますね。

小黒 甚目喜一のペンネームで絵コンテを担当された。これは、佐藤さんにとっては大きい仕事ではないのですか。

佐藤 いや、大きいですね。こう言ってはなんですけど、庵野さんの作品に、自分が合うとはカケラも思っていなくて。一生接点がない人だろうと思っていた。

小黒 最初に庵野さんに会ったのが「アニメージュ」の座談会ですか(前出の「アニメージュ」1993年5月号の記事)。

佐藤 そうなんです。庵野さんが『セーラームーン』をお好きということで座談会を組んでいただいたことがあって。

小黒 僕が企画した記事だと思います。

佐藤 お世話になっています(笑)。それで、お好きならばということで、原画や絵コンテをやっていただいたりしました。でも、庵野さんが作っておられる作品、例えば、『王立宇宙軍』みたいな作品に、自分の居場所があるとはとても思えず。「逆はないな」と感じていたんですね。

小黒 なるほど。

佐藤 庵野さんが原画描いたのは、レンジみたいなものでダイモーンの卵を生成するところです(編注:103話「やって来たちっちゃな美少女戦士」)。多分、あの辺のシステムのデザインも込みでやっていて、『エヴァンゲリオン』ぽいテイストを感じますね。あとは、ウラヌス、ネプチューンの変身バンクの絵コンテを、やっていただいているかと思います。

小黒 話を戻すと、庵野さんの作品に関わることはないだろうと思っていたんですね。

佐藤 『エヴァンゲリオン』っていうの作ってるんだよって聞いた時には、「ああ、関係ないだろうな」って思っていましたね(笑)。

小黒 『エヴァンゲリオン』は、どういうかたちでオーダーがあったんですか。

佐藤 話を頂いたのは大月(俊倫)さんからだったかなあ。こういうものは貸し借りなので、『セーラームーン』の原画とかをやってもらった以上、やらないっていう選択肢はなかったですよね。それで引き受けることして、打ち合わせに行ったという流れだったと思います。

小黒 どんな打ち合わせだったんですか。

佐藤 どんなだったかなあ。結構身構えて行った気がするんですけど。最初に企画書をもらって、そこに各話がどんな内容なのかざっくり書いてあって、シリーズ中盤に全編ラブコメのデート話があったんですよ。それで「あ。そっちね!」と思って少し気が楽になったり。

小黒 ハハハ(笑)。

佐藤 だから、最初にやった第伍話(「レイ、心のむこうに」)で上げたのが、少し笑いにシフトしたコンテだったんです。カップラーメンにカレー入れて食べる辺りにテイストが残ってますけどね(笑)。

小黒 やわらかい感じだったんですね。

佐藤 そうですね。「笑ってください」という感じのコンテを持って行ったんですけど、「違う。こうではない」と。「もっとATG(日本アート・シアター・ギルド)な匂いなんです」と言われて、「勘違いしてました」と直したんですね(笑)。

小黒 それで、シンジがレイを押し倒した時の目のアップとか、レイの部屋の乾いた感じになるわけですね。

佐藤 そうなんです。シンジが、綾波に見つかってアタフタするところを、最初は松本零士がやる「わたわた」のような感じのコンテにしてたけど。

小黒 ああ、それは違う(笑)。

佐藤 そういうんじゃなかった。松本零士パロが効かなかった(笑)。

小黒 でも、ミサトがカップラーメンにカレーを入れるのは、OKだったんですね。

佐藤 そこは何故か(笑)。それまでダメにしちゃ可哀想だろうっていうことで残してくれたのかもしれないけど、OKにしてくれましたね。

小黒 なるほど。

佐藤 あの辺は探り探りやってますね。

小黒 シンジがエントリープラグの中にいて、ゲンドウと綾波が話してるのを見ていると、綾波が凄く可愛くピョンと飛び降りて。

佐藤 ピョンとね。

小黒 そして、ゲンドウがにこやかに話をしてるんです。

佐藤 (笑)。

小黒 あれ、今振り返るとNGですよね。

佐藤 まあね。今考えれば「そうじゃあない」(笑)。

小黒 でも、あの「ピョン」がいいんですよ。ピョンが(笑)。

佐藤 そうですね。必要かなと思ってやったけど、今思うと違ったな。

小黒 あれは、シンジの目には、そう見えていたということですよ。

佐藤 そう見えたんですよね。心理描写(笑)。

小黒 心理描写として解釈したい。

佐藤 そうに違いない。エントリープラグが見せた幻である。

小黒 で、佐藤さんはその後も、『エヴァンゲリオン』のリアル回担当として、4回コンテを描くわけですね。

佐藤 ですね。ロボットの出ない回ですね。

小黒 何か印象的なことはありますか。

佐藤 印象的なこと……。ちょっと気合が入った日常担当なので、細かな芝居を入れたくなるんですけど、庵野さんから「ちょっと枚数がかかりすぎるので」と言われて(笑)。「そういうことも考えるんだな」っていうのは思いましたね。やりたいようにガンガンやってるわけではなくって、全体の予算とか、フロー管理を含めてやるスタイルなんだな、とその辺で知ったりとかね。

小黒 最初に第伍話を描いて、次に第四話「雨、逃げ出した後」をやるわけですね。

佐藤 はい。

小黒 第四話の最後、シンジとミサトが無言で見つめあうところは、庵野さんが秒数を足したんでしたね。

佐藤 足してますね。

小黒 佐藤さんは何秒ぐらいにしたんですか。

佐藤 どうでしょうね、あれ。最終的に60秒でしたか。

小黒 絵コンテだと60秒になっていますね(編注:絵コンテでは60秒。それが実際の映像では約50秒になっている)。

佐藤 多分ね、今考えても自分で勇気を持ってできるのは、30秒がいいとこじゃないですか。20秒でも、勇気を振り絞ると思います。(ここまでだと思って)ストップウォッチを押しても、「え、まだ13秒?」ぐらいの感じだと思いますね(笑)。

小黒 第拾伍話「嘘と沈黙」の、結婚式の場面で「3つの袋が」と言ったり、「てんとう虫のサンバ」を歌ったりを一瞬だけ見せる辺りもいいですね。あの切り取り方が素晴らしかったです。

佐藤 あの辺は、それが『エヴァンゲリオン』のテイストだと思ってやってると思います。ブツッと切ってくというか。

小黒 長く撮ったものを、編集したような。

佐藤 そんな感じ、そんな感じ。

小黒 第拾伍話のコンテは夜道のシーンで加持がミサトを引き寄せて口づけをし、その後で、ミサトが手を回すのか回さないのか、クエスチョンのままコンテが終わってるんですよね。

佐藤 はい。庵野さんによる「熟考します」というおまけが付いてた(笑)(編注:佐藤さんの「この時 ミサトの手は垂れさがったままか 加持の背に回しているか⋯⋯どっちだ?」というト書きに対して「これは熟考します」というコメントが付けられている)。

小黒 (笑)。

佐藤 完成した映像だと手を回しかけて、下ろすっていう流れになってる。

小黒 そして、佐藤さんの持ち味が恐らく最大に発揮されたのは第弐拾壱話「ネルフ、誕生」ですが、覚えていらっしゃいますか。

佐藤 覚えてます。いやーな回でしょ。リツコの母とかのいやーな感じが出る回ね。

小黒 あと、ユイが出ますね。ユイの出番は大半がこの回です。

佐藤 ああ、冬月とユイの回だ。

小黒 最初にユイが登場した場面のコンテが素晴らしいんですよね。数カットしかないのに、冬月が彼女を好きになったのが分かる。ユイを見つめる冬月のカットの「魅かれたか⋯」というト書きがいい。

佐藤 そうそう。教授と生徒の関係でありながらね。深読みが、どんどんできるシナリオだったので(笑)、思わせぶりな描写をいっぱい入れています。時系列としては後ろで、ユイと冬月が話をしている場面がありましたよね。シンジが生まれてて、子守りかなんかしてるのかな。なので、乳が張ってるんですよ。

小黒 冬月がユイの胸元を見る場面ですね。場所は芦ノ湖畔です。

佐藤 うんうん、若干無防備な感じの胸が見えるみたいなとこね。

小黒 ユイが子供を産んで無防備になったことで、冬月は嫌悪感を感じているんですね(編注:絵コンテのト書きには「嫌悪をあまり露わにせず」とある)。佐藤順一、絶好調ですよ。

佐藤 いやいや、ちょっと待って(笑)。言うたら、心理的には寝取られですからね。あそこは自分でも割と好きなところなんですよ。色々と業(ごう)が見えて、好きです。

小黒 芦ノ湖畔のシーンのコンテは、第弐拾壱話の時に描いてるんですか。

佐藤 そうだと思いますね。

小黒 つまり、オンエアの時にはカットされて、その後に追加されたということですね。

佐藤 え、本当? オンエアの時は違うんですか。

小黒 オンエアの時にはなかったんですよ。あのシーンは『DEATH』が初出で、ビデオフォーマット版から第弐拾壱話に入っています(編注:現行の単品DVDでは「ビデオフォーマット版」の第弐拾壱話にそのシーンが入っている。配信されている第弐拾壱話は「オンエアフォーマット版」であるため入っていない)。ビデオフォーマット版用に改めてコンテを描いた可能性もありますよ。

佐藤 あ、そうなんですね。記憶は曖昧だけど、最初のTV放映版のために描いたんじゃないかなあ。

小黒 第弐拾壱話ぐらいになると、庵野さんから演出的にこうしてほしいというオーダーはあまり出ていないんですね。

佐藤 そうですね。南極に行く観測船のつくりが全然分からなかったので、その説明はしてもらったような気がしますけど。

小黒 劇場版はいかがでしたか。絵コンテを担当されたのは『まごころを、君に』(劇場・1997年)のシンジとアスカの室内でのシーンですよね。

佐藤 言い争いをして、コーヒーをこぼしたりするところですね。

小黒 そうです。シンジとアスカがテーブルの周りを回るところで、足元まで入れてたカットから連続した芝居で3回もアングルを変えているのが大変だったと、そのシーンの作画監督を担当した平松(禎史)さんが言っていました(編注:「アニメスタイル013」の『さよならの朝に約束の花をかざろう』特集の取材記事)。

佐藤 そうでしょうね。大変なことをやりたい時期でしたね(苦笑)。でも、その頃になると打ち合わせをしつつも、「何をどう求められたのかな」って思いながら探り探りやった記憶がありますね。

小黒 なるほど。

佐藤 劇場版だと「こういうことやってみようかな」というモチベーションよりも、「間違わないようにちゃんとやんなきゃいけないな」といった気持ちのほうが強かったかもしれない。

小黒 『エヴァンゲリオン』全体としての印象は、どうでしたか。

佐藤 『エヴァンゲリオン』全体としてかあ……。自分がこういうモノを作ることはないと思っていた作品ですよね。あとは「作られ方」や「現場の在り方」が印象に残ってますよね。誰かがそう言っているのを直接聞いたわけではないんだけど、「この『エヴァンゲリオン』で、俺らが庵野秀明を盛り上げていくぞ」というモチベーションが現場にあると感じていたんです。そんな現場は東映にはなかったし、聞いたこともなかった。それが新鮮でしたね。そういう目標で団結していたのも興味深かったし、そういう現場って強いよなと思いました。それは、作ろうかと思って作れるものでもないので、人徳がそうさせるんだなあとも思ったり。

小黒 では、第2回のインタビューはこのぐらいで。次の取材は『セーラームーンSuperS』から『プリンセスチュチュ』辺りまでですね。

佐藤 まだまだ長い道のりですね。よろしくお願いします。


●佐藤順一の昔から今まで (16)子育てとアシカ曲芸のゴムマリオくん に続く


●イントロダクション&目次

第698回 さらに忙しいのはもっと良いこと

『蜘蛛ですが、なにか?』EDの話を、と思っていたのですが、忙し過ぎてちょっと今回もまたお茶濁し(汗)!


 そういえば『蜘蛛ですが、なにか?』の次回エンドカード(5秒)の「次回、〜お楽しみに!」は板垣が書いた文字をそのまま使っています。V編の現場でフォント位置の参考として提出したつもりが、まんま使用されてしまいました(汗)。で、次回こそはちゃんと書きます!

アニメ様の『タイトル未定』
291 アニメ様日記 2020年12月20日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年12月20日(日)
ワイフとIKE・SUNPARKのファーマーズマーケットに。雑司ヶ谷を少し歩いて、お洒落パン屋とお洒落コーヒー店で買い物をして、それを南池袋公園で食べる。実に日曜日らしい日曜日。その後は事務所でデスクワーク、駅前の喫茶店で打ち合わせ、事務所に戻ってデスクワークと、あまり日曜っぽくはなかった。取材の予習で『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』『機動戦士ガンダムNT』を配信で観る。

2020年12月21日(月)
新文芸坐の正月興行「黒澤明生誕111年 三船敏郎生誕101年 銀幕に甦れ! 黒澤&三船 日本映画最高のコンビ〈東宝編〉」のチケットをネットで購入。今回のプログラムのチケットは全席指定制だ。ワイフと行く分を含めて4つのプログラムを購入した。4つとも行けるかな。「この人に話を聞きたい」取材の予習は続く。

2020年12月22日(火)
この日の仕事は取材の予習、零細企業の社長らしい作業、それから、編集長っぽい仕事。夕方は吉松さん、ワイフと食事。がっつり食べる。

2020年12月23日(水)
年末らしく、用事が山盛り。打ち合わせの前に、上石神井から井荻まで散歩。このルートを歩くのは久しぶりで新鮮だった。井荻のスタジオで打ち合わせ。取材の予習で『ソードアート・オンライン アリシゼーション』を視聴。前にも観ているが、ふた回り目のほうが面白い。進行中の書籍の数を数えたら、14タイトルもあった。

2020年12月24日(木)
旭プロダクションで「この人に話を聞きたい」の取材。第210回は撮影監督の脇顯太朗さんだ。面白い取材になった。取材内容を大きく分けると「脇さん個人の話」「仕事歴」「脇さんのアニメーションについての考え」であり、原稿にする上で色々なまとめ方が考えられる。まとめがいのあるインタビューともいえる。年内の取材はこれにて終了。

2020年12月25日(金)
散歩は毎日続けている。今日は仕事の合間に池袋から東中野まで歩いた。その後で中野で開催されている「1980年の世界」というイベントを見に行った。1980年の雑誌等を展示するという企画で、展示を見ている間、既に存在しない自分の実家に帰ったような気分だった。ワイフから、クリスマスプレゼントで手編みのニット帽とマフラーをもらった。今年もワイフは沢山のニット帽を作ってくれて、合計で6つのニット帽をもらった。
「あれとこれのテープ起こしが年内に間に合わないなら、正月休みはあの原稿を進めよう」と思ったけれど、いやいや、自分から正月の仕事を増やすことはないだろうと考え直す。

2020年12月26日(土)
午前中は新文芸坐で「ペイン・アンド・グローリー」(2019・スペイン/113分/DCP/R15+)を鑑賞。ワイフの希望で、どんな内容かまるで知らないで観たのだけど、かなりよかった。映像と語り口がよく、映画として満足感が高かった。落ち着いたこの映画にしては演出がオーバーな部分があって、そこで苦笑したのだけれど、最後まで見るとその演出がおかしくなかったことが分かるという仕掛けがあり、それも面白かった。
昼飯とデスクワークをはさんで、また、新文芸坐に。花俟さんとアニメスタイルのオールナイトについて打ち合わせ。夕方はグランドシネマサンシャインで『ジョゼと虎と魚たち』を観る。自分は実写映画版が好きだったので、色々と面食らうこともあったけれど、若い観客に向けて作るならこれもありだろうと思う。画面構成がよかった。画面設計の役職で川元利浩さんがクレジットされていたが、どこからどこまでが川元さんの仕事なのかが気になる(後日追記。ジョゼの部屋と恒夫のバイト先は3DCG。その部分も川元さんがチェックはしているが、レイアウトを描いたのは他のシーンだそうだ)。
夜は新文芸坐で「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 128 湯浅政明のセカイ」を開催。今日は映画鑑賞、打ち合わせ、トークの聞き手で三度も新文芸坐に行った。湯浅さんと顔を合わせるのは久しぶり。『MIND GAME』の頃にアニメスタイルが作った湯浅さんイラストの缶バッジが湯浅さんの手元にないと聞いたので、事務所にあった分をひとつ差し上げた。オールナイトの入りは7~8割。今回も作品初見の方が多かった。『MIND GAME』は6割くらい、『夜明け告げるルーのうた』と『夜は短し歩けよ乙女』は3割くらいが初見だったはず。トークで湯浅さんが「これからアニメ界を去るかもしれないが、また戻ってくると思う」と言っていたのが印象的だ。

アニメ様の『タイトル未定』
290 アニメ様日記 2020年12月13日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年12月13日(日)
仕事の合間に、TOHOシネマズ池袋で『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 前編』を鑑賞。黄瀬和哉さんがキャラデザイン(共同)、絵コンテ(共同)、演出(共同)、作画監督(共同)、総作画監督(単独)を兼任していたのがトピックスのひとつ。夕方から吉松さんとSkype飲み。飲みと言いつつ、禁酒中なのでノンアルコールビールで。

2020年12月14日(月)
ワイフとグランドシネマサンシャインで『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を【IMAXレーザーGT】で観る。ワイフはこれが初見。自分は二度目の鑑賞だった。公開が始まった頃に『鬼滅の刃』のIMAXが、フルサイズIMAXだという発言をSNSで見かけて、ずっと気になっていた。それを確認するのも今回の目的だった。結論から言うと、画面比率は通常上映と同じ16:9だった。考えてみたら当然なんだけど、確認できてよかった。

改めて『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を観て思ったのは、娯楽作としてよくできているということ。盛り上げるべきところをしっかりと盛り上げている。個々のシーンや描写に充分な尺をとっていて、物足りなさを感じさせない。それから、煉獄杏寿郎というキャラクターは1980年代や90年代のマンガやアニメでは(ひょっとしたら1970年代のマンガやアニメでも)パロディの対象になったタイプだと思う。つまり、マジメであり、正論を口にし、それを実行しようとするタイプ。そういうキャラクターは何時の頃からか、茶化される対象になっていた。時代がひとまわりして、そういったタイプが「好ましい存在」になったということかもしれない。

「週刊少年ジャンプ」で「チェンソーマン」が完結。少年マンガとしては衝撃的な終わり方だったが、もっと残酷な結末を迎えるかとも思っていた。僕が「チェンソーマン」がもっと続くだろうと予想していたのは、主人公のデンジにはまだ「吐き出すこと」があるだろうと思っていたからだ。連載終了と共に第2部が「少年ジャンプ+」で連載されることが発表されたが、僕が望む展開になるかどうかは分からない。とにかく、ここまで充分に楽しませていただいた。

2020年12月15日(火)
としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)のEAT GOOD PLACEで、ワイフと朝食。最近開店したばかりの店だ。秋まで続けていた早朝散歩で、工事中の建物を見ながら、どんな店になるのか、よくワイフと話しあっていた。料理は美味しいし、店は広くて綺麗。観光地にある店みたいだ。いや、遠方から来た人にとっては、ここは観光地なんだろうけど。
もうひとつ、外食の話題。SNSで池袋の松屋の三軒が閉店することを知る。少しばかりショックだ。事務所の近くの吉野屋も最近、閉店した。

2020年12月16日(水)
15日(火)と16日(水)は「川元利浩アニメーション画集」のコメントのための、川元さんへの取材。長いインタビューになるのは分かっていたので、最初から2日かけてやるプランだった。

2020年12月17日(木)
仕事の合間に、新文芸坐で「アルプススタンドのはしの方」(2020/75分/DCP)を観る。「”主人公”じゃない青春だから愛おしい のぼる小寺さん | アルプススタンドのはしの方」の1本。高校野球の応援に来た学生達の物語で、カメラは客席のみを撮り、試合をやっている選手は映さないというコンセプトの作品だ。後で知ったのだけど、戯曲を映像化したものなのだそうだ。確かに舞台でできる内容であるのだが、映画ならではの臨場感を感じる場面があった。

2020年12月18日(金)
「佐藤順一の昔から今まで」の取材の予習で『ストレンジドーン』『ゲートキーパーズ』『ゲゲゲの鬼太郎 おばけナイター』『スレイヤーズぷれみあむ』『地獄堂霊界通信』等を視聴。『地獄堂霊界通信』はこんなこともあろうかとDVDを購入していたのだけれど、ネット配信にあったので配信で観た。13時から取材スタート。今回の取材は『美少女戦士セーラームーンSuperS』の話題から。今日の取材分が世に出るのは早くて来年の2月だ(と、この時には思ったけれど、早くて3月末になりそうだ)。

2020年12月19日(土)
「杉並マンガアニメ祭」のトークイベントで、吉松さんの聞き手を務める。トークは吉松さんの学生時代から現在までを振り返るというもので、僕が気にしたのは時間内に話をおさめることぐらい。後半は展開を早くして『宇宙よりも遠い場所』まで辿り着いた。その後、吉松さん、ワイフと西荻窪に移動して無期休業直前のササユリカフェに顔を出す。イベントの打ち上げで、近くの魚料理の店で飲んで食べる。