アニメ様の『タイトル未定』
354 アニメ様日記 2022年3月6日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年3月6日(日)
散歩以外はデスクワーク。「連休中にやる作業のC」「同じくD」を片づける。
『明日ちゃんのセーラー服』9話を鑑賞。意欲的な絵コンテだなあ、と思いつつ観ていたら、絵コンテが舛成孝二さん。特に冒頭のバス内部のパートがよかった。読書好きメガネ少女の回を舛成さんが担当するというのもポイント高い。 女の子がハンバーガーを食べた後に顔を赤くするのは『かみちゅ!』でもやっていた。

2022年3月7日(月)
定例Zoom打ち合わせで、調子に乗って「自分の『ああっ女神さまっ』史」を語ってしまう。『バブルガムクライシス』8話から「三神デビュー・パック」を経て、OVA『ああっ女神さまっ』に続いてOVA『逮捕しちゃうぞ』に至る。話すだけ話して、次回のトークイベントのノリはこれではないな、というところに落ち着いた。
仕事の合間に、グランドシネマサンシャインで『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』を観る。

2022年3月8日(火)
午前3時にアクション作画を、スロー再生で何度もガン見する。これも仕事である。

定例Zoom打ち合わせで、今まで『カードキャプターさくら』の47話として扱われていた「さくらと不思議な転校生」が、現在の配信サイトでは『カードキャプターさくら さくらカード編』1話になっているという話から、『らんま1/2 熱闘編』の最初のエピソードは1話として扱われるのと19話として扱われるので、どちらが都合がいいか(「正しいか」ではない)という話に。気になって配信サイトを確認すると、現在の配信サイトの『らんま1/2』は第1シリーズと『熱闘編』の区別がなく、両方をまとめて「らんま1/2 デジタルリマスター版」というタイトルになっている。しかも、第1シリーズのエピソードとして作られ、『熱闘編』の7~9話として放送された格闘フィギュアスケート編が、本来の制作話数である14話~16話として扱われている。おお、なるほど。

CSでたまたまやっていた「秘密のデカちゃん」を1話分だけ観る。1981年に放送されたTVドラマだ。「噂の刑事トミーとマツ」第1シリーズと第2シリーズの間に放送された番組だから、当時、一度くらい観ていてもおかしくないんだけど、記憶にあったのはタイトルだけ。中年刑事の日暮庄助(石立鉄男)と婦警の日暮祥子(大場久美子)は血が繋がっていない親子で、実際には夫婦。そして、周りには夫婦であることを隠している。「おくさまは18歳」に刑事物をプラスした感じで、設定が盛り盛り。1本観た限りの印象だと、「おくさまは18歳」的な楽しさは薄い。祥子がもっと子どもっぽかったり、頼りなかったりしたほうが番組としては観やすいかも。まあ、これは好みの問題かもしれない。

作業をしながら、録画してあったスターチャンネルの「ジャイアンツ」吹き替え版をながら観。タイトルだけ知っていた映画で、観るのは初めて。こんな話だったのね。吹き替えメンバーはジョーダン・“ビッグ”・ベネディクト2世(ロック・ハドソン)が羽佐間道夫、レズリー・ベネディクト(エリザベス・テイラー)が武藤礼子、ジェット・リンク(ジェームズ・ディーン)が野沢那智。ジョーダンとレズリーの子どもが、吉田理保子、池田秀一、榊原良子かな。ながら観で演出を語るのもひどい話だけれど、最後のレストランでの殴り合いの演出がよかった。続けて、スターチャンネルの「エアポート’80」を流し観。

2022年3月9日(水)
ホテルでの打ち合わせで、同席した方達はショコラアフタヌーンティーを頼む。ケーキがかなりのボリューム。自分はダイエット中だったので、見ているだけだったが、見ただけで満足。
自分で組んだスケジュールに自分が振り回された印象の1日。いかんいかん。
寝る前に、2週前のモーニングの「相談役 島耕作」最終回を読む。会社を離れても普通に働きそうだなあ。フィクションの人物ではあるけれど、お疲れさまと思った。

2022年3月10日(木)
この日も深夜から事務所でデスクワーク。深夜から明け方にかけてでないと書けない原稿が書けた。東映チャンネルやスターチャンネルやWOWOWを流しつつ作業。『魔女っ子メグちゃん』とか「Gメン’75」とか映画の『ドラえもん』とか。

2022年3月11日(金)
「アニメスタイル016」のページ構成と原稿を猛烈な勢いでやっていた(はず)。この「アニメ様日記」は当時のメモ、自分のSNSの書き込みをまとめてテキストにしているのだけれど、この日はメモがひとつも残っていなかった。

2022年3月12日(土)
阿佐ヶ谷ロフトAで「第185回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作8【お姫様たちを待っていた運命について考えてみる編】」を開催。今回も配信のみのイベントとなった。イベント開始前に事務所でデスクワーク。イベントがある日の割りに作業が進んだ。

第761回 俺は信じない!

 以前というか、もう20数年前なのでハッキリ“昔”ですか。たまたま俺が、某大手アニメ会社の忘年会に出席した(その年1回だけ)際、あるアニメ作品の原作者先生による提案で、先生ご自身が“賞金”を出して会場の皆でジャンケン大会をすることになったのです。賞金は1・2・3等賞の3段階で、1等賞が新人アニメーターの1ヶ月分の給料くらいでした。その時、会場にはプロデューサー以下アニメ制作スタッフ、アニメーター、監督、声優、アーティストなどなど、数百人入る中勝ち残って1等賞を手にした若者はアニメーター(確か動画マン)で、その際、壇上にてMCを務められた声優の方との会話が、以下のように記憶しています。

MC「ご職業は?」
若者「あ、アニメーターです」
MC「そうですかぁ、良かったですね。普段大変でしょうから、——ねぇ、これで何か美味しいモノでも食べて下さい」 
若者「あ、はい──」(MCの先導で場内拍手~)

 そのMCさんとの他愛のない会話に、第三者の立場ながらも、同じアニメーターを生業にしている自分は、複雑な心境になったのを憶えています。別にそのMCさんは何も悪気なく「おめでとう」を言ったつもりだと思うのですが、自然とその方の口から発せられた言葉に当時自分も若かった故、「え?アニメーターって普段そんなに良いモノ食ってないと思われてるの?」と。一緒にいた先輩も「何か、嫌な感じ」と呟いていました。実際そのMCの声優さん自身が高額ギャラを要求することで有名な大御所だったのも“嫌な感じ”の要因ではあったのですが。
 今度は近年のアフレコ現場で、コ●ナ禍でどの作品も“打ち上げ”がなくなったとの話題を、某声優さんとしていたのですが、その際もその声優さんから「アニメーターさん達の労をねぎらうことができなくて~」との気遣いの言葉が。
 まあ、何が言いたいのか分かる人にはご理解いただけると思うのですが、単純に、

アニメって皆一緒に作っている仲間なはずなのに、アニメーター(作画マン)はそんなに貧困に喘いでいると思われること自体、何だか切なくて、残念!

なんです。別に俺自身はアニメーターとして同情も哀れみも受ける云われはなく、作画の仕事に誇りを持ってやっています。前述の大御所声優様のギャラ分を作画に回して~と言う気もさらさらありません。
 確かに、アニメ制作におけるあらゆるセクションの中で“デジタル化による作業の効率化”が実現しなかった(道具をPCに持ち替えても絵を描く速度自体は対して変わらなかった)セクションが“アニメーター(作画)”です。仕上げもデジタル化のお陰で、“セル・筆”時代より数倍枚数が上がるようになりました。何せクリック・ポンで一気に面が塗れるようになった訳ですから。撮影も“アナログカメラ&フィルム”時代より、1作にかかるスタッフの人数が段違いに減り、期間も圧縮できてデジタル化の恩恵を受けました。美術も素材のコピペやBANKがかなり作業効率を上げました。
 ところが作画はと言うと、想像に難しくないかと思いますが、道具がPCに変わってよくなったのは、せいぜい“消しゴムのカスが出なくなった”くらいです。もちろん、データとクラウド上で設定や素材のやり取りができるようになったのは、デジタル化の恩恵と言えなくもないと思います。でも、それはどちらかと言うと“制作進行の効率化”の成功と言うべきでしょう。むしろアニメーターにとっては、デジタル化により、

高解像度に耐えうる動画線に気を遣い、増え続ける情報量との戦いを余儀なくされた!

だけでした。さらに近年は働き方改革なる、労働時間制限で、もう挟み撃ち状態です。
 この話は次回に続かせて頂きたいのですが、今回の締めに取り敢えずは言いたいこと。

アニメーターじゃない人間が“アニメーターの労働環境を改善”とか言うのを、俺は信じません!

多分、その方達は「描いてくれる人がいなくなったら自分の作品が作れなくなるじゃないか!」と、その実、自分のことしか考えていない人達に板垣からは見えるから。そんなのに利用されるくらいなら、アニメーターが自分で営業・プロデュースができるようになった方が“アニメーターの高給化”には近道かと思います。

第192回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作10【世紀末の京都を歩き回ってみよう編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、タイトルは発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に、平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。これまでのイベントでも、あっと驚くような新しい解釈が語られてきました。

 2022年7月9日(土)に開催する第10弾のサブタイトルは「世紀末の京都を歩き回ってみよう編」。今回は主な舞台になるはずの京都がテーマとなるようです。どんな話題が飛び出すのでしょうか。出演は片渕須直さん、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回は会場にお客さんを入れての開催となります。ただし、会場の定員は少なめの人数に設定します。今回のイベントは「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのは基本的にメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた片渕須直監督次回作」もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは6月30日(木)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT PROJECT
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/220219

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第192回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作10【世紀末の京都を歩き回ってみよう編】

開催日

2022年7月9日(土)
開場11時30分/開演12時 終演14時~15時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第233回 人の命は尽きるとも 〜最強ロボ ダイオージャ〜

 腹巻猫です。『マジンガーZ』「秘密戦隊ゴレンジャー」等で知られる作曲家の渡辺宙明先生が6月23日に亡くなりました。その音楽に勇気づけられ、取材や音源発掘、資料提供等でお世話になり、イベントにも何度もご出演いただきました。ただただ、感謝しかありません。ありがとうございました。


 以前にも当コラムでお知らせしたが、2014年にCDで発売された「最強ロボ ダイオージャ 総音楽集」が、今年3月より配信(ストリーミング&ダウンロード)で聴けるようになった。タイトルは「最強ロボ ダイオージャ オリジナルサウンドトラック」となっているが、内容は「総音楽集」と同一である。
 今回は、渡辺宙明追悼の意を込めて、この作品を紹介したい。
 『最強ロボ ダイオージャ』は1981年1月から1982年1月まで放映された日本サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)制作のTVアニメ。
 イプロン星系51の星々を支配するエドン国のミト王子は、王宮での堅苦しい生活がいやになり、身分を隠して領地の星をめぐる旅を始める。旅のおともをするのが教育係のスケードと剣術指南役のカークス。ミト王子は訪れた星々で庶民が悪政に苦しめられていることを知り、王家に伝わる巨大ロボット・ダイオージャを操縦して支配者を懲らしめるのだ。
 とあらすじを紹介すればわかるとおり、「水戸黄門」のロボットアニメ版である。
 『機動戦士ガンダム』の人気が盛り上がっていた時代に現れた、明るく楽しく痛快なロボットアニメだった。
 その音楽担当に選ばれたのが渡辺宙明。まさに適任! と言いたいところだが、本作は渡辺宙明がそれまで手がけてきたロボットアニメとはひと味違う。シリアス寄りのドラマもたまにあるが、基本的に明朗でユーモラスな作品。悲壮感や悲劇的な要素は薄い。渡辺宙明が手がけてきたロボットアニメや特撮ヒーロー作品でも、こういうテイストはあまりなかった。
 しかし、それがストレートで勢いのある音楽を生み出す結果になった。カッコいい曲は文句なしにカッコよく、ロマンティックな曲はうっとりするほどロマンティック。コミカルな曲やほのぼのした曲も多い。のびのびと書いていることが伝わってくるような爽快な音楽だ。

 配信中の「最強ロボ ダイオージャ オリジナルサウンドトラック」は、CD版の「総音楽集」とまったく同じ構成。主題歌も挿入歌もカラオケもCDと同じ並びで配信されている。ありがたいことである。
 アルバムは全51曲(51トラック)。配信元によって、トラックリストをCDと同様にディスク1とディスク2に分けて表記しているケースとディスクを分けずに表記しているケースがある(Amazon Musicなどが後者)。便宜上、以下ではディスク分けなしの表記を基本にしよう。
 トラックリストだけからはわかりづらいが、アルバムは大きく4つのブロックに分かれている。
 トラック1〜13は、放映当時発売されたアルバム「最強ロボ ダイオージャ BGM集」の復刻。トラック14〜29はこれが初蔵出しとなった「未収録BGMコレクション」。トラック30〜39(ディスク2のトラック1〜10)は、放映当時発売されたアルバム「スペース ファンタジー ダイオージャ」の復刻。トラック40(ディスク2のトラック11)以降は主題歌・挿入歌のレコードサイズとカラオケなどを集めた「ソングコレクション&ボーナストラック」だ。
 最初のブロックの「最強ロボ ダイオージャ BGM集」は氷川竜介による構成。都合によりオリジナル盤ではフルサイズで収録されていた主題歌をTVサイズに差し替え、挿入歌を割愛している(これらはアルバムの後半に収録している)が、BGMの構成はそのままである。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 最強ロボ ダイオージャ(TVサイズ)(歌:たいらいさお)
  2. 胸に輝く王者の印
  3. 広い宇宙を一直線に
  4. 星から星への旅ぐらし
  5. 苦しみの人びと
  6. 敵地へ急げ
  7. 幸せの星空
  8. 乙女の涙
  9. ズッコケ珍道中
  10. 悪領主の逆襲
  11. 正義の刃を受けてみよ
  12. 平和の祈り
  13. ヨカッタネ宇宙(TVサイズ)(歌:たいらいさお)

 オープニング主題歌「最強ロボ ダイオージャ」は、合いの手コーラスが楽しい人気曲。コンサートで歌われると、必ず観客の合唱が入って盛り上がる。渡辺宙明はこういう「一緒に歌いたくなる曲」を書くのがとてもうまかった。
 トラック2「胸に輝く王者の印」はサブタイトル音楽に続けて戦闘BGMを2曲続けている。ノリノリのアクション音楽から始まるのが燃えるところだ。アクション系作品のサントラの構成は、頭から「来た来た!」と思わせるのが大切なのである。
 軽快な曲調のトラック3「広い宇宙を一直線に」、ほのぼのムードのトラック4「星から星への旅ぐらし」が続く。軽妙なリズムやシンセサイザーのユーモラスな音色が印象的だ。
 トラック5「苦しみの人びと」は、哀愁や悲哀を表現する音楽。ここでもシンセサイザーの音色が効果的に使われている。シンセサイザーの全面的な導入が本作の音楽的特徴のひとつなのである。
 トラック7「幸せの星空」は筆者の気に入っている曲。前半部分のリリカルなメロディは、ほかの宙明作品であまり聴けない曲調。ノスタルジックでもあり、淡い恋心のような甘酸っぱい香りもある。胸がキュンとなる旋律だ。後半部分はトランペットとストリングスが奏でる清々しいメロディ。こういう曲が聴けるのが本作の魅力である。
 次のトラック8「乙女の涙」も情感たっぷりの美しい音楽だ。前半はストリングスやビブラフォンによるロマンティックな曲。後半はアコースティックギターとストリングスが奏でる哀しみのテーマ。本作の抒情的な一面が表現されている。
 トラック10「悪領主の逆襲」とトラック11「正義の刃を受けてみろ」は「BGM集」のクライマックスとなる部分。サスペンス〜ピンチ〜ダイオージャ登場〜戦闘〜勝利という流れになる。ロボットアニメの高揚感が凝縮された聴きごたえ抜群のトラックだ。
 平和描写音楽を集めたトラック12「平和の祈り」がBGMパートを締めくくる。事件が解決してミト王子たちが星を去っていく、ちょっぴり感傷的な場面が目に浮かぶ。
 トラック13はエンディング主題歌「ヨカッタネ宇宙」。これまた、ほかの渡辺宙明ロボットアニメ作品ではあまり聴けない、ほのぼのとやさしい味わいの名曲である。
 ここまでが放映当時のBGM集を再現した内容。BGMの聴きどころを集め、メリハリの効いた構成にまとめた名盤だった。
 トラック14〜29の「未収録BGMコレクション」は、「BGM集」に未収録曲の中からステレオ音源が残っていたものをまとめた。もし、放映当時「BGM集Vol.2」が発売されていたら……というイメージだ。構成は筆者が担当した。
 筆者のお気に入りはトラック16の「人恋し旅の空」。ハーモニカをフィーチャーした2曲を1トラックに編集した。ハーモニカは渡辺宙明の音楽人生の原点となった楽器でもある。哀愁を帯びた音色と旋律がしみじみと胸にしみる。この原稿を書くために聴き返しながら、渡辺宙明がイベントに出演した際に持参したハーモニカを吹いてくれたことを思い出した。
 トラック30〜39(ディスク2のトラック1〜10)の「スペース ファンタジー ダイオージャ」は、劇中での使用を想定せず、鑑賞用の組曲として録音されたアルバム。それまで作られた主題歌・挿入歌・BGMのモティーフをもとにアレンジされている。特徴は生楽器とシンセサイザーサウンドの濃密な融合。宇宙刑事シリーズ以降の宙明サウンドにつながる音楽的試みが、この段階でなされている。70年代宙明サウンドと80年代宙明サウンドをつなぐ重要アルバムなのだ。
 筆者のおすすめは、宇宙刑事サウンドをほうふつさせるトラック36「ファイト アンド ビクトリー」と、ミト王子役の古川登志夫が歌った挿入歌「HEARTへようこそ」をアレンジしたトラック37「ウエルカム トゥ マイハート」。渡辺宙明自身も気に入っているというこのアルバム、もっと聴かれ、評価されてほしいと思う。
 トラック40(ディスク2のトラック11)以降には主題歌・挿入歌のレコードサイズとそのカラオケ、前半部分に収録しきれなかったBGM(モノラル音源)を収録した。「終わったかと思ったら、まだおまけがあった」みたいなお得感をねらった構成だ。ガイドメロディが入っていないオリジナル・カラオケは初商品化。これをバックに歌ってみるのもよいが、ぜひ、アレンジの巧みさにも耳を傾けていただきたい。

 元のCDアルバム「最強ロボ ダイオージャ 総音楽集」発売の際(2014年)に、オリジナル盤に関わった渡辺宙明、藤田純二、氷川竜介の3人をゲストを迎えてトークイベントを行ったのも懐かしい思い出である。ステージ上に3人が並ぶ姿は胸が熱くなるものがあった。そういう意味でも、筆者にとって深く印象に残る作品だ。
 ところで『最強ロボ ダイオージャ』の音源はこれで全部と思っていたのだが、「総音楽集」の発売後、キングレコードで未収録の音源が見つかった。主題歌「最強ロボ ダイオージャ」のメロオケと挿入歌「HEARTへようこそ」のアコースティックギターによるインストゥルメンタルである。どうやら、BGM録音とは別に、レコード用の録音の際にスタジオで録られたインスト曲があったらしいのだ。2曲とも劇中では未使用。まったくの未発表音源だった。
 この2曲は2015年に発売されたCD「渡辺宙明コレクション CHUMEI RARE TREASURES 1957-2015」に収録されている。
 こうして作品を聴き返していると、人の命は尽きるとも音楽は不滅なのだとあらためて感じる。聴く人、演奏する人がいる限り、音楽は死なない。筆者がいなくなっても、渡辺宙明の音楽は残り続けるだろう。音楽という命を後世に伝えるお手伝いができたことを光栄に思う。

最強ロボ ダイオージャ オリジナルサウンドトラック[Amazon Music]
https://www.amazon.co.jp/music/player/albums/B09SYJR5KR

各種配信サイトへのリンク
https://lnk.to/aFk3aZbJ

渡辺宙明コレクション CHUMEI RARE TREASURES 1957-2015
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
353 アニメ様日記 2022年2月27日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年2月27日(日)
土曜夜のTOKYO MXのアニメを録画で観る。『明日ちゃんのセーラー服』8話と『その着せ替え人形は恋をする』8話がとてもよかった。いいものを観た。DVDで『ああっ女神さまっ』OVA1巻から4巻を観る。

2022年2月28日(月)
明け方に「アニメスタイル016」の中村豊特集のために『僕のヒーローアカデミア』のデクの技の名前を調べる。ユナイテッド ステイツ オブ スマッシュではなくて、ユナイテッド ステイツ オブ ワールド スマッシュだった。
グランドシネマサンシャインで「ナイル殺人事件」をIMAXで観る。話が面白いわけではないし、登場人物にも共感はできないけど、なんとなく満足。映像は必ずしもIMAX向けではなかった。原作未読だし、今までの映像化作品も観ていないのでなんとも言えないのだけど、ここはアレンジした部分なのだろうなあという部分がいくつかあった。分かりやすくエロティックな男女が出てくる映画を久しぶりに観た気がする。
OVA『ああっ女神さまっ』5巻、劇場版『ああっ女神さまっ』をDVDで観る。劇場版DVDに合田監督のイメージボードが収録されているなんてすっかり忘れていた。

2022年3月1日(火)
28日の22時に起床して、23時に出社。散歩などを挟んで、1日の夕方まで作業。さすがに色々と進んだ。年に一度は『ソウルイーター』と『The Soul Taker』のタイトルの言い間違いをする。この日も間違えた。
『ああっ女神さまっ』のCDはOVA時代に何枚も持っていて、かなり聴いていたのだけれど、1枚もパソコンに入れていなかったことが判明。CD「決定盤『ああっ女神さまっ』アニメ主題歌&キャラソン大全集」を購入して聴く。時代の楽曲だなあ。懐かしいとか、そういう言葉では片づけられない。しかし、このCD、「放っとけないのさ」が入っていないのに「放っとけないのさ全員集合」が入っているのはいいのか。
『その着せ替え人形は恋をする』の最新の8話を三回くらい流し観した後、1話から8話まで観る。

2022年3月2日(水)
午前0時半に起床して、午前1時半に出社。早朝散歩は続いている。この日は温かくなったせいか、散歩ルートで大勢の猫に会った。いつも会う「なっちゃん」がいないなあと思っていたら、どこからか猫の鳴き声が。声がするほうに歩いて行ったら、散歩コースから外れたところで、なっちゃんが日なたぼっこをしていた。日なたぼっこをしていて、僕らが来たのに気づいて「こっちにいるよ」と声をかけてきたのだ。賢い猫だなあ。ワイフが頭をなでたら、喜んでいた。
3度目のワクチン接種のために豊島区役所に。前2回の接種は行きつけの病院で、どこか家庭的な雰囲気だったけど、区役所での接種はイベントって感じ。

2022年3月3日(木)
先日、「アニメスタイル016」の中村豊さんに取材して、映像を観ながら担当パートについて話をうかがった。その音声おこしについて「話題になっている映像が分かるかたちでおこしのテキストを作成できないか」と相談したら、話題になっているカットのキャプチャー画像がついたおこしが上がってきた。凄い、ムックみたいだ。これをこのまま販売したほうがいいのではとさえ思った。
ようやく、頭の中で『その着せ替え人形は恋をする』の文字を「そのビスク・ドールはこいをする」という音に変換できるようになった。

2022年3月4日(金)
3日と4日の朝で、Blu-ray 「富野由悠季の世界」を視聴した。本編、本編ディスクの映像特典、特典ディスク、早期予約特典ディスクの全てを観た。かなりのボリュームだった。富野監督の発言を大量に残したという意味でも、意義のあるソフトだ。そして、改めて「富野由悠季の世界展」が富野監督にとっても、関係者にとっても、ファンにとってもハッピーな企画だったのだと思った。今回の一気観は不思議な没入感があって、それもよかった。

2022年3月5日(土)
午前11時まで「連休中にやる作業のA」を片づける。11時から14時まではワイフと散歩。14時に事務所に戻って「連休中にやる作業のB」を進める。

第760回 作画の研究

アニメスタイル様が、ちょくちょく送って下さる、著名な方々の原画集やイラスト・画集! この場を借りて纏めてお礼申し上げます! 本当にありがとうございます!

 実際、自分よりもミルパンセ社内のアニメーターたちの教本として非常に役立たせていただいています。俺自身も若い頃、友人アニメーターらと同人誌系の原画集やイラスト集などを肴に朝まで酒を酌み交わす、みたいなことをして、巧い方たちの“作画を研究”したりしていました。
 この連載の超初期から語っているとおり、業界に入る際の板垣は、最初から“監督・演出”志望でした。そもそも自分のアニメ好きは“出﨑アニメ”に特化し過ぎていて、出﨑統監督のコンテには興味があっても、原画やアニメーターにはそれほど興味がなかったんです。ところが、専門学生時代に小田部羊一先生に作画を教わったり、皆でアニメを作ったりしてるうちに、何と言うか……性に合ったんでしょう。作画が面白くなって、卒業する頃にその小田部先生から「板垣君なら、大塚(康生)さんのところが良いよ!」とテレコム・アニメーションフィルムを勧められて、取り敢えずは「アニメーターとして」アニメ業界入りとなったわけです。
 つまり、学生時代は周りの友人らより、アニメーターや作画について全然知りませんでした。どのくらい知らなかったかと言うと、後に原画をみっちり教わることになる、友永和秀師匠のこともテレコム入社時は知らなかったくらいで、青山浩行さんら先輩方から「お前は何しにテレコム来たんだ?」と言われたものです。多分、その頃知ってたアニメーターは杉野昭夫さん・大塚康生さんまでだったと思います。
 なので、テレコム時代は“作画職人を目指す”ため、友人らの後を追うように作画に関する情報を収集したり、その時代時代の作画の傾向を探ったり、友人所有の原画集を見せて貰ったりで、一気に作画オタクに仲間入りした訳です。
 そんな訳で、いつの時代もある職業を目指してその業界に入ってくる若者たちは、技の研究に余念がないもの(だと思う!)。こと、アニメ業界におけるアニメスタイル様の書籍類は、ウチの会社に限らず、新人アニメーターたち皆、大好物だと思います。

また、何か良い本ができたら送ってくださると、ウチの新人(と自分)が喜びますゆえ、宜しくお願いします!

アニメ様の『タイトル未定』
352 アニメ様日記 2022年2月20日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。後日、追記をするかもしれません。
2022年2月20日(日)
午前中にワイフとTOHOシネマズ池袋に。『グッバイ、ドン・グリーズ!』を鑑賞する。巣鴨まで歩いて、ワイフの買い物に付き合ったり、池袋西武の古本市に寄ったり、前から気になっていた街中華で食事をしたり。その後はデスクワーク。インタビューまとめをチェック出し寸前まで持っていったのだけど、チェック出しまでにマンガ単行本を2冊読まないといけないことに気づく。
作業をしながら『トップをねらえ2!』Blu-ray BOX Complete Editionを流し観。このBlu-ray BOXは購入はしたものの開封していなかった。本編ディスク2枚と特典が入ったEX−DISCの3枚組で、EX−DISCが盛り沢山。再録ではあるが映像のインタビューが何本か入っているし、線画設定も収録。線画設定はパソコンの大きなモニターで見ても問題ないくらいの解像度で、それが嬉しい。

2022年2月21日(月)
リメイク版『フルーツバスケット』を配信で改めて1話から視聴する。

2022年2月22日(火)
バルト9で『フルーツバスケット -prelude-』を観る。かなりよかった。総集編プラス新作の構成は1本の映画としてのまとまりはよくないし(作り手も1本の映画としてまとめることを優先してはいないだろう)、総集編部分は乱暴と言えば乱暴だし、一見さんお断りなんだけど、それでもよかった。

2022年2月23日(水・祝)
天皇誕生日。午前中は主に原稿作業で、午後は主に取材の予習。淡々として、これはこれで休日らしい1日だった。『Sonny Boy』1話から6話をBlu-ray BOXで観る。ながら観ではなく、ヘッドホンをつけて集中して観た。

2022年2月24日(木)
牛丼一杯で幸福感が得られるところがダイエットのよいところだなあ。午前中は主に取材の予習。11時から社内Zoom打ち合わせ、13時からZoom取材、16時半からZoom打ち合わせ。
取材の予習で『Sonny Boy』の後半を観た。パキっとした画作りが魅力の作品だけに、Blu-rayが威力を発揮。配信で観るよりもずっとよかった。Blu-ray BOXは映像特典も非常に充実。満足度の高いパッケージだった。ちなみに『Sonny Boy』のBlu-ray BOXはTOWER RECORDSと公式サイトでのみ販売。他の店舗やAmazonでは購入できない。僕は公式サイトで購入した。

2022年2月25日(金)
気になることがあって、アニメと実写の歴代『若草物語』のキャストについてチェックする。日生ファミリースペシャルの『若草物語』とTVシリーズの『若草の四姉妹』って四姉妹のキャストは同じだと思い込んでいたけど、違うのね。小山茉美さんは『若草物語』だとエイミーで『若草の四姉妹』だとメグなんだ。潘恵子さんは『若草の四姉妹』ではベスだけど、世界名作劇場の『愛の若草物語』ではメグ。そういえば『愛の若草物語』で潘恵子さんに取材した際に『若草の四姉妹』の話題が出た。山田栄子さんは『愛の若草物語』『若草物語 ナンとジョー先生』でジョオ(ジョー)で、1949年の実写「若草物語」(1990年・NHK放送バージョン)でもジョー。1990年のNHKバージョンは『愛の若草物語』を意識して山田さんにしたのかもしれない。杉山佳寿子さんは1949年の実写「若草物語」(1972年・東京12ch放送バージョン)はジョーで、日生ファミリースペシャルの『若草物語』でもジョー。
最近、配信や電子書籍でお金を使いすぎているなあと反省したその直後に、確認することがあって「書を捨てよ町へ出よう」を、Amazon Prime Videoでレンタルしてしまう。

2022年2月26日(土)
朝と昼間は、散歩以外は原稿作業。16時から吉松さんとSkype吞み。
合田浩章さんの仕事のおさらいで『バブルガムクライシス』の『8』を観る。その後、『1』から『3』を観る。

第759回 人間の旬は過ぎた

40代がそろそろ終わりに近づきつつあります!

そして今、社内の若手に対して「ああ~これが若い頃の自分に、当時の先輩方が抱いたと思われる感情なのだ……」と考える様になった、歳食った自分がいます。つまり、現在の板垣は、自分に原画を教えてくださってた頃の友永(和秀)師匠と同年代なのです。
 若い世代とのやり取りは、それ自体、毎日が勉強。若手にムカつくことがあった時などは、一瞬踏み止まり——

多分、友永さんも25年前の俺に同じくムカついたことがあるはず!

と考えれば、いちいち怒らず「仕方ないか、昔の自分もこうだったしな〜次に期待しよう」と許せるようになりました。期待を裏切られたり、仕事から逃げられた時とかも同様です。

50代に近づいて、ようやく“相手を許す”ことができるようになりつつある板垣です!

 そんな心境でYouTubeをダラ観してると、「ああ言われたら、こう言い返した~」だ「誹謗中傷! 訴えてやる!」だと、自分より10以上若いYouTuberさんらが過激な発言などで賑わしているのとかが目について複雑な気持ちになります。ま、ここで俺、説教するつもりは毛頭なく、前述同様「この連載で自分も若い頃、色々世間に唾棄してたもんな~」とも思うし、誰でも世間に言いたいことはあるだろうし、誰でも程々に言ってもよいかと思います。あくまで、“程々に”です。

しかし、若い頃——と言えるくらい無駄に長期連載であることに今更ながら驚き、呆れます……

 やっぱり、人間の旬は20~30代だと思います。その時期は誰もが元気で、仕事も遊びもとにかく楽しくて、たくさんの物事に怒り、様々なことを真剣に考え、幾人の友人と大笑いするものです。
 そういう板垣も20代の頃は、語り合える友人らと「宮崎駿作品・高畑勲作品、そしてスタジオ・ジブリの未来」とか「押井守監督&Production.I.Gに於ける数々の問題作」についてとか、何を偉そうにと、今振り返ってもとても恥ずかしいことを肴に朝まで語り明かしたものでした。本当に恥ずかしい! でも、その当時は最先端の本気だったし、本当に楽しい宝物のような時間だったんです。
 だから、ウチの若手に限らず、世間にモノ申したい20~30代の方々、“旬”を存分に楽しんでください! その旬の時期に成果を残せると、40~50代で“もう一段上のステージの旬”を味わえるのではないでしょうか?
 ま、このコラム連載からも読み取れる(?)ように、その人間の旬を過ぎた現在の俺は、コ●ナ禍関係なく飲み会とかも自らの意思でほぼしなくなったし、これからは今いる自分の立場でできる作品作りに没頭したいと思っています。その現場から、新しい監督を生み出すお手伝いができたら——それが今回、“総監督”の目的の一つでもあります。

これまでの人生で、今が一番“穏やかな心境”なのかも知れません!

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.136
平尾隆之の世界

 6月25日(土)のオールナイトは意欲的な作品を発表してきた平尾隆之監督の特集です。上映作品は『映画大好きポンポさん』『ギョ』『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』の3本。それぞれ方向性の違う作品が揃いました。『映画大好きポンポさん』は貴重な35mmフィルムでの上映となります。  
 
 余談ですが、『ヨヨネネ』は『ポンポさん』のコルベット監督が、原作の中で好きな映画の1本として挙げている作品です。今回のオールナイトはその『ヨヨネネ』と、コルベット監督も登場する『ポンポさん』を一緒に観ることができるプログラムとなります。  
 
 トークのゲストは平尾監督を予定。チケットは6月18日(土)から発売開始です。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要。入場時には検温・手指の消毒を行います。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.136
平尾隆之の世界

開催日

2022年6月25日(土)

開演・終演

開演 22時30分/終演 5時00分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般3000円、各種割引・友の会2800円(ポイント利用19P)

トーク出演

平尾隆之、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『映画大好きポンポさん』(2021/90分/35mm)
『ギョ』(2011/70分/BD)
『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』(2013/100分/DCP)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第232回 一番私らしい曲 〜シートン動物記 くまの子ジャッキー〜

 腹巻猫です。SOUNDTRACK PUBレーベル第30弾「シートン動物記 くまの子ジャッキー/りすのバナー 音楽集」が6月22日に発売されます。「シートン動物記」を原作にしたTVアニメ2作品の初のサウンドトラック・アルバム。小森昭宏が作曲した主題歌・挿入歌・BGMをCD2枚に集大成しました。予約受付中!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B2JFQ666


 ということで、今回は『シートン動物記 くまの子ジャッキー』の音楽を紹介しよう。
 『シートン動物記 くまの子ジャッキー』(以下『くまの子ジャッキー』と表記)は1977年6月から12月まで放送されたTVアニメ作品。アーネスト・T・シートンが書いた動物文学「タラク山の熊王」を原作に日本アニメーションが映像化した。
 舞台は1870年頃(第1話で「今から100年ほど前」のナレーションが流れる)のアメリカ合衆国の南部、シェラネバダ山脈にそびえるタラク山のふもと。ネイティブ・アメリカンの少年ランと親をなくした子ぐまのジャッキーとの友情を描く物語である。瑞々しい大自然の描写や森やすじが手がけた愛らしいキャラクターが印象的で、同じく日本アニメーションが制作した「世界名作劇場」に通じる雰囲気がある。
 監督は『フランダースの犬』『家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ』などを手がけた黒田昌郎。本作の姉妹作品である『シートン動物記 りすのバナー』(以下、『りすのバナー』と表記)も黒田昌郎が監督を務めている。
 そして、『くまの子ジャッキー』と『りすのバナー』の両方の音楽を担当したのが小森昭宏だ。

 小森昭宏といえば、『勇者ライディーン』『超人戦隊バラタック』等のロボットアニメ作品や「忍者キャプター」「バトルホーク」等の特撮ヒーロー作品の音楽がよく知られているし、人気が高い。本作は日常描写中心の、どちらかといえば地味な作品。しかし、とても小森昭宏らしい作品だ。
 その理由のひとつは、本作が「動物もの」であること。
 小森昭宏の初期の代表作となったのがNHKで放送された「ブーフーウー」。3匹の子ブタを主人公にした着ぐるみ人形劇だ。また、編曲を担当した「黒ネコのタンゴ」は大ヒットし、小森昭宏が作編曲の仕事に専念するきっかけとなった。いまでも歌い継がれる童謡「げんこつやまのたぬきさん」も小森の作曲。ほかにもTVアニメ『名犬ジョリィ』、劇場アニメ『ほえろブンブン』、人形アニメーション『コラルの探検』(子ぐまのコラルが主人公)など、小森昭宏作品には「動物もの」が多い。
 また、小森昭宏は子どものための音楽に深い関心を持ち、力を入れた作曲家でもある。「げんこつやまのたぬきさん」のほかにも童謡や子ども向けの合唱曲を多数作曲し、日本童謡協会の理事を務めた。同協会が開催するコンサート「こどもコーラス展」の実行委員長も務めていた。
 子ぐまと少年の友情を描く『くまの子ジャッキー』は、まさに小森昭宏にぴったりの作品だったのだ。
 小森昭宏は外科医出身という珍しい経歴の持ち主である。少年時代から音楽に親しんだが、戦争で命を失いかけた体験から医者を志して慶應義塾大学医学部に進み、卒業して脳外科医になった。外科医として勤務しながら、ラジオやTVの音楽の仕事を続けていた。小森昭宏が作る音楽は、生きるよろこびや命の輝きと深く結びついている。

 そんな小森昭宏が手がけた『くまの子ジャッキー』の音楽。まず、大杉久美子が歌う主題歌が出色だ。小森はオープニング主題歌「おおきなくまになったら」について、「一番私らしい曲だといえます。自分でも気に入ってる曲です」とコメントしている。エンディング主題歌「ランとジャッキー」も一度聴いたら耳に残る楽しい曲だ。
 劇中音楽(BGM)は約100曲が録音されている。全26話のTVアニメにしては多めの曲数である。この音楽は『りすのバナー』でも引き続き使われた。
 アメリカの大自然を舞台にした作品らしく、アコースティックギターやアコーディオン、マリンバなどを使った素朴なサウンドの曲が多い。フルートなどの木管楽器や木琴(シロフォン、もしくはマリンバ)も活躍する。
 こういう題材であれば、弦楽器をたっぷり使ったスケール感豊かな音楽にする選択もありえたと思う。が、シンプルな編成で演奏される温かみのあるやさしい音楽が、この作品には合っている。予算の都合ではなく、小森昭宏があえて選んだサウンドだと思うのだ。
 本作の劇中に流れるのは、ほのぼのした音楽ばかりではない。
 物語の中で、ジャッキーは猟師に狙われたり、犬に追われたり、山火事に巻き込まれたりして、たびたびピンチに陥る。そういう場面では、アップテンポのアクション系の曲や緊迫感のあるサスペンス曲が流れる。『勇者ライディーン』なんかを思い出して、ニヤニヤしてしまうところだ。
 本作のBGMはこれまで一度もレコードやCDに収録されたことがなく、今回の「シートン動物記 くまの子ジャッキー/りすのバナー 音楽集」が初商品化になる。2枚組のうち、ディスク1が『くまの子ジャッキー』の音楽集、ディスク2が『りすのバナー』の音楽集という構成。
 ディスク1を聴いてみよう。
 詳しい収録曲は下記を参照。
https://www.soundtrack-lab.co.jp/products/cd/STLC046.html
 1曲目はオープニング主題歌「おおきなくまになったら」のTVサイズをステレオ音源で収録した(初商品化)。レコードサイズの編集ではなく、カラオケ、ボーカルとも別録音されたものだ。当時はレコードサイズとTVサイズを別に録ることが多かったのである。エンディング主題歌のTVサイズも同様だ。
 トラック2「タラク山のふもとで」は本作の世界観を象徴する、雄大な自然描写曲。ノスタルジックなメロディが「シートン動物記」の世界へ誘ってくれる。
 トラック3「森の中へ〜サブタイトル」は、第1話で子ぐま(ジャッキー)が森の中へ進んでいく場面に流れた短い曲とサブタイトル曲をつなげたもの。サブタイトル曲はほぼ毎回、本編の冒頭に使用されているので、聴くと「『くまの子ジャッキー』が始まる!」という気分になる。
 トラック4「くまの子ジャッキー」はオープニング主題歌のストレートアレンジ。ジャッキー初登場の場面に流れた。軽快に始まり、中盤で哀愁を帯びた曲調に変化、ふたたび軽快な曲調に戻って終わる。この展開が何度聴いても気持ちよく、引きこまれる。
 子ぐまの兄妹が仲よく遊ぶ場面に流れたトラック5「なかよく遊ぼう」に続いて、トラック6「ともだちになろうよ」は、森の中で子ぐまに出会ったランが「ともだちになろうよ」と子ぐまに語りかける場面のゆったりしたオープニング主題歌アレンジ。
 次の「きみの名はジャッキー」は、ランが子ぐまに「ジャッキー」と名前をつける場面のやさしく愛情あふれる曲である。
 ここまでが第1話で流れた曲。
 以降、ほぼストーリーの流れを追う形でBGMを収録している。
 聴きどころをいくつか紹介すると——。
 トラック10「追いつめられて」は、猟師にねらわれた母ぐまピントーが、森の中でしだいに追いつめられていく場面に流れた危機描写曲。スリリングな曲調は小森昭宏のロボットアニメや特撮ヒーローものの音楽に通じるところがある。トラック29「せまる危機」、トラック34「もえるタラク山」なども同様の曲調の楽曲。
 トラック15「森を走ろう」は、ジャッキーとランが森の中を駆ける場面などに流れる、ちょっとユーモラスなタッチの軽快な曲。木管楽器や木琴が奏でる元気いっぱいの音楽は小森昭宏が得意とするところである。トラック24「楽しい水あそび」も木琴やフルートの響きを生かした楽しい楽曲だ。こうしたユーモラスな音楽は『くまの子ジャッキー』よりも『りすのバナー』でよく使われている。
 トラック19「サクラメントの町へ」は、第15話「西部の町」でランとジャッキーたちが馬車に乗って西部の町サクラメントへ向かう場面に流れた曲。はずむようなウエスタン風の曲調に胸が躍る。使用回数は少ないが印象に残る曲のひとつだ。
 アルバム後半は、ランとジャッキーが離れ離れになり、ふたたび再会するまでのドラマをイメージした構成。
 トラック30「つらい別れ」、トラック35「ランの悲しみ」、トラック39「会いたい想い」などは、ランの悲しみやジャッキーを心配する気持ちを表現する哀感ただよう曲。もともと小森昭宏は舞台劇の音楽が認められてデビューした作曲家。朝の連続テレビ小説「いちばん星」や「音楽劇 窓際のトットちゃん」といった作品も手がけている。人間ドラマに寄り添った音楽も達者なのである。
 本作の音楽の中でとりわけ印象に残るのが、ジャッキーが辛い試練に立ち向かう場面に流れる、悲壮感のあるボレロ風の曲ではないだろうか。
 ジャッキーは猟師のボナミィに目をつけられ、猟犬の訓練の相手をさせられる。また、物語後半では、川を流され、ふるさとの山から遠く離れた土地に流れ着いてしまい、故郷をめざして長い旅をすることになる。そんな場面に流れたのが、トラック32「ジャッキーとジルの旅」とトラック33「ふるさとへの遠い道」。こうしたボレロ風の曲は『りすのバナー』の終盤でも、バナーたちが新天地を求めて旅をする場面に使用されている。
 アルバムの終盤は、最終回のラストに流れたトラック41「ジャッキーとの再会」とトラック42「さようならジャッキー」を続けて収録して、感動の名場面を再現した。
 続くトラック43「はるかなるタラク山」は、第5話でピントーとジャッキー、ジルの親子がタラク山の森の奥へと帰っていく場面に1度だけ流れた曲。さわやかで感動的な曲調がフィナーレにふさわしいと考えて、この位置に収録した。
 エンディング主題歌「ランとジャッキー」のTVサイズが物語を締めくくる。
 以降はレコード用音源コレクション。オープニング、エンディング主題歌のレコードサイズとそのカラオケを収録した。カラオケはガイドメロ入りの音源がレコードに収録されたことがあるが、ガイドメロの入らない純カラオケは初商品化である。
 最後に、小森昭宏自身が編曲したオープニング主題歌のマーチアレンジ「おおきなくまになったら 並足行進曲」を収録。放送当時レコードで発売された、アニメソングのマーチアレンジ・シリーズの1曲である。初CD化。

 ディスク2の『りすのバナー』の音楽についても触れておこう。
 先に書いたように、『りすのバナー』では『くまの子ジャッキー』の音楽が引き続き使用されている。『りすのバナー』のオリジナル曲もあるが、その数はおそらく40曲ほど。「おそらく」と書いたのは、『りすのバナー』の音楽テープが未発見で、その全貌がわからないためである。
 そういう事情もあって、ディスク2の収録曲の半分は、『りすのバナー』で使われた『くまの子ジャッキー』の音楽で構成した。特にユーモラスな曲やアクション系の曲が『りすのバナー』でよく使われている。
 ただ、それだけでは『りすのバナー』の世界を再現するには不足なので、『りすのバナー』のオリジナルBGMをMEテープ(本編音声からセリフを除いた効果音と音楽をミックスしたテープ)から採録・復元して収録した(編集に苦心しましたよ)。効果音が重なっている部分もあるが、貴重な音源ゆえにご容赦いただきたい。
 『りすのバナー』の主題歌2曲のTVサイズは、『くまの子ジャッキー』と同様に、ステレオ音源で収録した。こちらもレコードサイズとは別録音、初商品化である。
 ディスク2の終盤は「ソングコレクション」として主題歌・挿入歌のレコードサイズを収録。『りすのバナー』の挿入歌のCD化は今回が2回目。挿入歌のうち、大塚周夫とはせさん治が歌う「おれたちはいつも」は、過去に発売されたレコードやCDではナレーション入りで収録されていたが、このたびナレーションなしの音源が見つかり、初収録が実現した。本アルバムの目玉のひとつである。

 最後に本アルバムのブックレット(解説書)について。
 小森昭宏は残念ながら2016年に逝去している。ブックレットには2001年に取材したインタビューを再構成して掲載した。
 『くまの子ジャッキー』『りすのバナー』に共通する魅力のひとつが、森やすじがデザインを手がけた愛らしいキャラクター。森やすじは筆者が少年時代から敬愛するアニメーターのひとりである。その魅力を伝えたくて、ブックレット内にキャラクター設定を紹介するページを設けた。音楽ともども、お楽しみください。

シートン動物記 くまの子ジャッキー/りすのバナー 音楽集
Amazon

試聴用動画(期間限定公開)

アニメ様の『タイトル未定』
351 アニメ様日記 2022年2月13日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年2月13日(日)
無観客配信イベント「第184回アニメスタイルイベント 作画マニアとはなにか?」を開催。イベント中に呑みすぎた。すいませんでした。

2022年2月14日(月)
Amazon prime videoのアニメタイムズで『魔法のスター マジカルエミ 蝉時雨』の配信が始まっていた。よかった。人に勧めたい作品ではあるのだけれど、視聴が難しい作品だったのだ。劇場版『エースをねらえ!』の配信も始まらないかな。
先日、事務所で『美少女戦士セーラームーン』放送1年目に、アニメージュの記事でセーラー戦士の声優さん達と麻布十番に行った時の記念写真が出てきた。声優さん達だけでなく、僕やマネージャーさん、アニメージュの編集さんなど、記事づくりに関わった人達も一緒に写っている。『セーラームーン』が盛り上がり始めた頃の華やかさを思い出す。
「合田浩章スケッチブック」の4度目の校正紙が出る。もう一度、本機校正をとるつもりでスケジュールを組んでいたけど、次は簡易校正でよさそう。
「アニメスタイル016」のほうは二転三転。色々と考える。

2022年2月15日(火)
ワイフと新宿に。新宿ピカデリーで『地球外少年少女 後編「はじまりの物語」』を鑑賞。その後、新宿紀伊國屋別館アドホックビルで『地球外少年少女』のミニ複製原画展を見る。ワイフは店内にあったわたせせいぞうさんのマンガ原稿の、アナログ時代の色指定を見て感銘を受けていた。
『鬼滅の刃 遊郭編』最終回は先に配信で観て、改めて録画で観た。これは豪華な放送だなあ。作品が大切にされている感じがよい。

ネットで大橋学さんが2月12日に亡くなったことを知る。僕が大橋さんに最初に取材したのが1987年。アニメージュの『ロボットカーニバル』の記事だった。その後もインタビューでお話をうかがったり、イベントに来ていただいたり。イラストをお願いしたこともあった。思い出は数多い。心よりご冥福をお祈り致します。

2022年2月16日(水)
作業を進めながら、テレビアニメの録画を流し観。今さら言うまでもないけど、異世界物が多い。この日に観たのは以下のタイトル。

『異世界美少女受肉おじさんと』6話
『賢者の弟子を名乗る賢者』6話
『天才王子の赤字国家再生術』6話
『プリンセスコネクト!Re:Dive Season2』6話
『TRIBE NINE』6話
『王子の本命は悪役令嬢』5話
『フットサルボーイズ!!!!!』6話
『薔薇王の葬列』6話
『失格紋の最強賢者』6話
『ヴァニタスの手記』17話
『プラチナエンド』18話
『ハコヅメ 交番女子の逆襲』6話
『東京24区』6話
『リアデイルの大地にて』6話

ネットで購入した『ルパン三世』の「企画書復刻版セット」をパラパラと見る。本当にマニアックな商品だ。『新ルパン』の企画書は期待していたものではなかった。これと違うバージョンがあったら、それも見たい。
就寝前に「歩くひと 完全版」を読了。この作品はゆっくり読みたいと思ったのだけれど、2日で読み切ってしまった。読むだけで、心が豊かになった気がした。

2022年2月17日(木)
早朝散歩は続いている。最近は公園でラジオ体操をしてから、雑司ヶ谷を歩くパターンが多い。この日はIKE・SUNPARKで朝陽が昇るのを見ながらラジオ体操をした。仕事中にテレビをつけたらWOWOWで『映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城』が放送中。リマスター版で猛烈に綺麗だ。フィルム時代の映画『クレヨンしんちゃん』もリマスターしてほしい。

2022年2月18日(金)
仕事でストレスがきているのだけど、プチ禁酒中なので、酒を呑むわけにはいかない。ユルめのダイエット中でもあるので、肉と炭水化物をガッツリというわけにもいかない。自分のストレス対策は不健康だなあ。
Twitterで書籍「市川崑のタイポグラフィ」で『さよなら絶望先生』が話題になっていることを知り、購入したものの読んでいなかった同書籍に目を通す。本当だ。「市川崑タイポグラフティの影響」の項で『新世紀エヴァンゲリオン』「古畑任三郎」と共に『【俗・】さよなら絶望先生』の「黒い十二人の絶望少女」が取り上げられていた。ちょっと嬉しい。

2022年2月19日(土)
午前1時20分頃に起床。午前2時05分に出社して、夜明け前に「土曜から月曜午前中までで一番重たい作業」を片づける。散歩や休みをはさんで18時半まで作業。
『ダイの大冒険』のラブコメ部分がとてもよかった。
今やっている仕事で、某作品で窓口からいただいた本編カットの数がやたらと多くて驚く。1話の本編カットが9802枚。2話以降もそのくらいの数がある。動画から機械的に静止画を出力したものだろう。欲しいカットの欲しいコマを選びたい場合は、このくらいあったほうがありがたい。

第758回 ダビング開始

#04までアフレコ終了! 来週は#05のアフレコ、そしていよいよ#01からダビング開始!

てとこが現状。あ、今制作中のシリーズです。昨今、3ヶ月前とかに納品する(放映開始前に全話納品する)作品が増えています。よって、本作もまだ未告知にもかかわらず、制作は先へ先へ進んでいるという訳。
 ダビング開始ということは、毎週選曲リストにも迫られます。今回も自分が共同で音響監督でもあるので。もちろん、先週#01の選曲は提出しました。その選曲を基に、共同の音監さんに現場でアドバイスをいただく、という感じです。これは前作(『蜘蛛ですが、なにか?』)も同様で、自分はまだ“音響監督を勉強中”の立場ですから。やはり、板垣はまだ音響に関して唯我独尊にはなり切れないし、客観的な意見が欲しくて、共同の方やミキサーさんから別の提案が出てきたら、「有難うございます」と、従う場合が多いです。
 今回は総監督ということで、コンテチェックまでやって監督に指示を出したところで、その話数の画に関する自分の仕事は一旦終了。演出・作画・美術の発注・打ち合わせなどはほぼ監督任せ。コンテチェック後直ぐに音響関連に頭を切り替えることができるお陰で、アフレコ済のロールを細かく確認し、音響スタッフさんらに宛てて詳細な“音響メモ”を渡すことができています。そこは前作よりやり易いシステムが敷けたと思っています。詳細と言っても音響のプロフェッショナルからすると、まだまだ緩いメモでしょうけど。
 ダビング前に声優さんの芝居を改めて聴いていると、やっぱり凄いですね、“役者の力”って! 余談ですが、以前は自分“声優さん”ではなく、“役者さん”と呼んでいました。ところが数年前、ある若い声優さんに

“声だけでも役者であり俳優だ”と言う大御所がいるけど、俺は逆にそういう方達こそ、声の仕事に誇りを持っていないと思うんですよ! 自分は声の仕事に誇りを持ってるからこそ“声優”と呼ばれたいです!

と言われて「なるほど!」と思い、それ以来、敬意を込めて“声優さん”と呼ぶようにしています。
 で、今回の作品は“友達との楽しい学園ライフ(+アクション)”系で、声優さんらの息の合った掛け合いがポイントなはずが、昨今のアフレコでは、コ●ナの影響で一度に録音ブース入りできる声優さんが3〜4人まで(※録音スタジオにより、多少の違いあり)。コ●ナ以前は一度に10~20人入ることも可能で、その場で「○○さんと△△さん、ここら次カットまでアドリブで埋めてください」と言えたのです。ところが現在は2~3人ずつグループ分けでスケジュールが組まれての収録になっているため、掛け合い相手が別グループになったりします。だから、ここもアフレコ前の音響メモで、間を埋める用の掛け合い台詞を板垣の方で書き、前もって音響制作さんに送ります。それでも現場で意欲的にアドリブをぶち込んで下さる声優さんは尊敬するし、本当に助けられています(現在進行形)!

 ——という訳で、現在制作中の作品で語れる(書ける)のはここまで。

 で、7月以降は去年~今年始めにかけてお手伝いした他社からのグロス(下請け)作品がポン・ポン・ポンと3本ほど、放映されると思います。興味のある方は観てください。

 そして、『ベルセルク』が“原作・三浦建太郎 漫画・スタジオ我画 監修・森恒二”として連載再開! の発表が! 先程、白泉社・島田明さんにメールしました。「応援しています!」と。

アニメ様の『タイトル未定』
350 アニメ様日記 2022年2月6日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年2月6日(日)
ワイフとグランドシネマサンシャインで「ゴーストバスターズ/アフターライフ」【IMAXレーザーGT字幕版】を鑑賞。「メガネ美少女もの」(あるいは「理系ローテンション美少女もの」)としての純度が異様に高い。「メカと美少女もの」としての完成度も高い。メガネ美少女が科学に精通し、さらにメカのギミックを使いこなしているところがポイント高いです。オリジナルの「ゴーストバスターズ」にはあまり思い入れはないので、無責任な発言になるかもしれないけれど、続編としては完璧な出来だったと思う。映画序盤が実に「映画的」で素晴らしかった。田舎町の撮り方も、人の撮り方もよかった。
午後は次回のイベントについてのZoom打ち合わせ。白熱する。

2022年月2月7日(月)
グランドシネマサンシャインで『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 -STASHA- 』を鑑賞。「えっ、そうなるの!?」という設定、あるいは展開の連続。ある設定については、昔なら納得できなかったはずだけど、それが「なるほど」と思えてしまったのが自分でも不思議だ。「よし、古代、よく言った」と思うところが何ヶ所かあった。

2022年2月8日(火)
ワイフとTOHOシネマズ池袋で『鹿の王』を観る。試写会に続いて二度目の鑑賞なので、作画等に注目しつつ観る。作品自体の印象は変わらず。

2022年2月9日(水)
すずめやで差し入れのどら焼きを買ってから、中村豊さんの撮影のため、BONESに。予定よりも早い時間に着いたら、カメラマンさんも来たところで、一緒にロケハンする。スタジオ内で撮影した後、公園で撮影(後日追記。公園で撮った写真は今回の特集では使わなかった)。
『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』がNetflixのランキングで上位にきていたので、改めて視聴。全話を流し観。

2022年2月10日(木)
配信で『神在月のこども』を観る。原画の大半をライデンフィルム京都スタジオで描いている模様。
仕事関係で、見たかったある作品のキャラ表を見ることができた。上手いねえ、凄いねえ。眼福眼福。

2022年2月11日(金)
仕事の合間に、早稲田松竹で「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を観る。ブログラム「早稲田松竹クラシックスvol.178/ジム・ジャームッシュ監督初期作品特集 -路上の人々-」の1本。同監督の作品で今までに観たのは「デッドマン」「コーヒー&シガレッツ」「ブロークン・フラワーズ」かな。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」はタイトルだけ知っていて、これが初見。かなり楽しめたし、ある意味では傑作だと思う。若い頃に観たらもっと感銘を受けただろうなあ。映画館で観ることができてよかった。
15時に某駅前の喫茶店に。あるアニメーターさんと打ち合わせ。顔をあわせるのは年末の夏以来かな。互いの近況報告から、書籍についての話。世間話では『閃光のハサウェイ』で盛り上がる。

2022年2月12日(土)
進行中の書籍のラフ描き。原稿。翌日のイベントの準備。『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『半妖の夜叉姫』『名探偵コナン』をリアルタイムで観る。

第757回 予定が立たない人生

本当に申し訳ないことに、色々な方との約束を守れていない今日この頃!

「今度、遊びに行きます!」「今度、飲みに行きましょう!」など、よくある口約束な「今度今度~」が、年々実現できる頻度が下がっていて、本意じゃないけどただのよくある社交辞令に、結果なってしまう事態を本当にどうにかしたい! 同業者なら「お互い仕事は大事だよね~」と暗黙で許容して頂けるだろうと高を括ってばかりもいられません。なぜなら、そう言って先延ばしにしていた相手が、もう二度とお会いできない人になっていたりし始めたからです。
 でも、性格を疑われるのを怖れず本音を言うと

何かを作り続けているこの仕事自体は、飲み会より面白い!

のです。どこかの金持ちYouTuberさんが、「昼間から酒飲んで好きな映画観て、ゲームやってれば、僕は楽しいですけど~、え? 皆そうなんじゃないんすか?」ってなこと言ってるのをたまたま目にしたんですが、何の根拠もなく自分にとっての快楽を適当に一般化しないでほしいと思いました。俺は貴方の高尚な楽しみを否定する気は毛頭ないのですから、貴方ももう少し「人のそれぞれの幸せのかたちを分かったら?」と。

少なくとも俺は、ゲームやって酒飲むより、アニメの仕事をしてる方が幸せなんです!

 名古屋(実家)の友人らは、他人と遊ぶより一人で黙々と何かを作っている方が楽しい板垣を昔から知っています。自分から「今日、ウチで遊ぼう!」と友達を誘っておきながら、遊んでる最中に、マンガのアイデアでも思いつこうものなら、その場で「ごめん、今日帰って」と遊びを中断して自ら呼んだはずの友達を追い帰して一人漫画描き始めたり、またその逆、自分一人先帰っての場合もありました。子供の頃からそんな俺は、今も相変わらず。たとえ、そのYouTuberさんのように働く必要がないほどお金があっても、酔っぱらってゲームで遊ぶより、俺はコンテや原画描いていたい!
 という訳で、よりピュアに作品を創れる50代を迎えられるよう、現場を育てるので手一杯な毎日。そして、指導している若手が日に日に腕を上げて行く様を見ているのはとても嬉しいのです! その代わりやっぱり、人に会う口約束は二の次になってしまい、友人&関係者様、本当に申し訳ありません。現在制作中の作品が終わる頃には、コンテ・演出の経験者も増えて、徐々に時間が作れるようになると思うので、

皆さん、とにかく長生きして下さい!

 ——すみません、また、時間がなくなってしまいました。

第231回 なんくるないさー 〜白い砂のアクアトープ〜

 腹巻猫です。アニメ制作を題材にした劇場作品「ハケンアニメ!」を観ました。感想は賛否あるようですが、私は大いに楽しみました。ドラマが単純な視聴率対決におさまらず、フィクションを作る意義にまで斬り込んでいくのがとてもいい。池頼広さんの音楽も意欲作です。


 今年は沖縄本土復帰50周年。今回は沖縄を舞台にしたTVアニメ『白い砂のアクアトープ』の音楽を聴いてみたい。
 『白い砂のアクアトープ』は2021年7月から12月まで放送された、P.A.WORKS制作によるオリジナルアニメ作品。
 海咲野くくるは、両親をなくし、祖父母と一緒に暮らす女子高校生。夏休みのあいだ、祖父が館長を務める「がまがま水族館」の館長代理として働いている。ある日、がまがま水族館にひとりの少女がやってきた。岩手から上京してアイドルになったものの、挫折して居場所を失い、逃げるように沖縄行きの飛行機に乗った宮沢風花だ。がまがま水族館でふしぎな幻を見た風花は、くくるに「ここに置いてください」と頼み込む。しかし、経営難のがまがま水族館は閉館を迫られていた。「がまがま水族館を救いたい」というくくるの夢を聞いた風花は、その夢をくくると一緒にかなえようとする。
 連続2クールの2部構成。1クール目では、くくると風花が親友となり、がまがま水族館を立て直すために奮闘する姿が描かれる。2クール目は、がまがま水族館が閉館したあと、高校を卒業して働き始めたくくると風花たちの物語だ。
 沖縄の自然や水族館の生きものの描写がていねいで、観ていて癒やされる。飼育の苦労や客集めの苦心など、水族館の舞台裏が描かれるのも興味深い。
 しかし、見どころはやはり、くくると風花が夢を追い、さまざまな経験をして成長していく姿。2人が挫折の先に新しい夢を見出す展開は、すがすがしく感動的だ。
 話はそれるが、筆者が生まれ育った町は太平洋が近く、水族館のある浜辺が定番の遠足コースだった。今でも、旅先などで水族館を目にすると入りたくなる。そんなこともあって、本作は心惹かれる作品だった。
 監督の篠原俊哉とシリーズ構成の柿原優子は、2018年放送のTVアニメ『色づく世界の明日から』を手がけたコンビ。
 その『色づく世界の明日から』の音楽を担当していたのが、本作でも音楽を手がける出羽良彰である。

 出羽良彰は1984年生まれ。2006年に音楽ユニット「樹海」でメジャーデビューし、現在は作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、ギタリストと、幅広く活躍する音楽家だ。映像音楽では、TVドラマ「問題のあるレストラン」(2015/羽深由理と共作)、「下剋上受験」(2017)、「私たちはどうかしている」(2020)、TVアニメ『凪のあすから』(2013)、『ふらいんぐうぃっち』(2016)、『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』(2017)などの音楽を担当している。
 映像音楽には、海や水を表現する定番的なサウンドがある。海の広大さや波のうねりを表現するストリングス。はじける泡や水面にきらめく光を連想させるハープ、ビブラフォン、ウィンドチャイムなど。
 が、本作の音楽には、そういった定番的な表現はほとんど使われていない。楽器編成は、ピアノ、フルート、オーボエ、クラリネット、ギター、小編成のストリングスがメイン。水のイメージにつながる爽快さ、流麗さはあるが、どちらかといえば、ピアノや木管楽器のやさしい響きが印象に残る。くくると風花の心情にフォーカスした音楽になっているのだ。
 沖縄が舞台の作品ではあるが、音楽に沖縄的な要素はあまりない。いくつかの曲に沖縄の三線の音が使われているくらいである(「三線」と書いたが、ミュージシャンクレジットに三線の表記がないので、これが生の三線の音かどうかは定かでない)。
 また、青春もののアニメやドラマの音楽では金管楽器やエレキギターを使って躍動感を表現することが多いが、本作ではどちらも使われていない。それが上品でさわやかな印象につながっている。
 全体に、とてもシンプルでさわやか。ときどきユーモラス。からっとして透明感のあるサウンドは、沖縄の空と海にふさわしい。
 本作のサウンドトラック・アルバムは2022年1月に「TVアニメ『白い砂のアクアトープ』オリジナルサウンドトラック」のタイトルでランティス/バンダイナムコアーツ(現・バンダイナムコミュージックライブ)から発売された。
 2枚組で、1枚目が1クール目、2枚目が2クール目のサウンドトラックになっている。
 1枚目を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. まくとぅそーけ、なんくるないさ
  2. 新しいスタート
  3. アクリルガラス
  4. くくる
  5. 導かれるままに
  6. 風花
  7. あきらめきれない夢
  8. アクアトープ
  9. がまがま水族館
  10. 夏休み館長
  11. ひるまさん、、
  12. うどんちゃん
  13. くちばしの傷
  14. なくしかけてるくくるの夢
  15. 夢を守るため
  16. ふたりの再出発
  17. ブルー
  18. フラッシュバック
  19. 母と子
  20. バックヤード
  21. 不審者
  22. 隠せない動揺
  23. 重なる心
  24. 予感
  25. 不穏な空気
  26. よんな〜 よんな〜
  27. まだ、大事な仕事が
  28. 悲しみを堪えて
  29. ファーストペンギン
  30. 久しぶりの休日
  31. 真帆とくくる
  32. チョコ
  33. 揺らぐ心
  34. 漂流
  35. くくるの絶望
  36. 夢の終わりと始まり

 1クール目に使用された曲はすべて収録されている。また、収録された曲はすべて1クール目で使用されている。曲順は1クール目の物語に沿って、ほぼ使用順に並べられている。美しい構成のサントラである。
 トラック1〜9は第1話で使用された曲。
 1曲目の「まくとぅそーけ、なんくるないさ」は第1話冒頭に流れた。沖縄の情景描写に続いて、くくるが登場し、道路わきの祠に手を合わせて「まくとぅそーけ、なんくるないさ」と祈る。「正しいこと(誠のこと)をしていれば、なんとかなるさ」という意味の沖縄方言(ウチナーグチ)だ。この「なんくるないさ」はくくるの気持ちを支える言葉であり、本作を貫く通奏低音でもある。ピアノの伴奏をバックに、三線の音がシンプルなフレーズを刻んでいく。沖縄の風に吹かれているような気分になる曲である。
 トラック2「新しいスタート」は、アイドルを辞めた風花が沖縄に旅立つ場面に流れた曲。ストリングスが刻む軽快なリズムとフルートのさわやかな旋律が風花の解放感を表現する。この曲はのちのエピソードでも、くくるたちが新しい挑戦を始める場面に使用されている。
 トラック3「アクリルガラス」はアコースティックギターとストリングス、木管楽器のアンサンブルによる軽やかな曲。くくるがスクーターに乗って登校する場面に流れた。特定の心情や状況を表現するというより、さまざまな場面に使えるニュートラルな曲のひとつだ。
 トラック4「くくる」は元気いっぱいのくくるのテーマ。
 風花ががまがま水族館にやってくる場面の「導かれるままに」、ピアノとストリングスがしっとりと奏でる風花のテーマ「風花」、水族館の魚を見て風花が思いにふける場面の「あきらめきれない夢」。繊細で美しい音楽とともに物語が動き始める。
 トラック8「アクアトープ」は、がまがま水族館を訪れた風花が、水と魚たちに包まれる幻を体験する場面の曲。幻想的というより、心に秘めていた想いや記憶があふれだすような、抒情的な音楽だ。のちのエピソードでも同様のシーンで使用されている。
 そして、トラック9「がまがま水族館」は第1話のラストに使用された、がまがま水族館のテーマ。この曲にも三線の音が使われている。
 トラック10から3曲はユーモラスな曲が続く。「夏休み館長」は第4話で初使用。パーカッションとピアノ、シンセ、三線などによる陽気な曲だ。
 「ひるまさん、、」は第1話で風花がなぞの占い師(実は後述の「うどんちゃん」の母)に「あなた、悩みごとがある」と話しかけられる場面で初使用。その後も怪しい人物の描写によく使われた。「ひるまさん」とは「あやしい」「めずらしい」という意味の沖縄方言だそうだ。
 「うどんちゃん」はくくるの同級生の「うどんちゃん」こと照屋月美のテーマ。ノリのよい曲調が月美の明るいキャラクターにぴったり。第2話で初使用された。
 トラック13〜16も第2話で使用された曲。
 「くちばしの傷」はピアノソロによる悲しみの曲。水族館を手伝い始めた風花が、ペンギンのえさやりに失敗して落ち込む場面で使われた。
 トラック14「なくしかけてるくくるの夢」はアコースティックギターとエレピが奏でる心情曲。タイトル通り、くくるが、がまがま水族館の行く末を心配する場面に流れていた。くくるの水族館への想いを象徴する曲でもある。
 トラック15「夢を守るため」と次の「ふたりの再出発」は、第2話終盤からラストにかけて使われた。ピアノと木管楽器、ストリングスが奏でる希望的なメロディが、くくると風花の友情と決意を表現する。「夢を守るため」は第12話の、「ふたりの再出発」は第11話の重要な場面でも使用された印象深い曲である。

 ここからは重要な曲を拾って紹介しよう。
 トラック19「母と子」は、第3話でがまがま水族館を訪れた獣医の竹下先生が、これから生まれてくる自分の子どもの幻を見る場面に使用された。シンセとピアノがやさしく語りかけてくるような曲だ。のちのエピソードでは、くくるが亡くなった双子の姉妹の話を聞く場面に使われている。本作における「家族のテーマ」とも呼べる曲である。
 トラック23「重なる心」は、第4話で、くくると風花が互いに「もっと仲良くなりたい」という気持ちを伝えあい、ふたりの絆が深まる場面に流れた。ピアノソロが奏でる、しっとりと美しい友情のテーマである。初出は第3話のラストシーン。第11話では、風花がくくるに「くくるを手伝うことで私が元気をもらっていた」と話す感動的なシーンに流れている。
 トラック27「まだ、大事な仕事が」は、第5話で、自分を探しにきた母親から身を隠していた風花が大事な仕事をやり残していることを思い出し、がまがま水族館に戻る場面で使用。風花のまっすぐな性格が描写された名シーンだ。この曲はこの場面でしか使われておらず、場面の展開と曲の展開もぴったり合っている。こんなふうに、フィルムスコアリング的に作られた曲が本作にはいくつかある。実際に映像に合わせて書かれたのか、シナリオ段階で場面を想定して書かれたのかは不明だが、名場面と分かちがたく結びつき、記憶に残る曲になっている。
 トラック34からの3曲も、そうした1回しか使われなかった曲である。
 トラック34「漂流」は、第11話でくくるががまがま水族館にたてこもる場面に使用。
 トラック35「くくるの絶望」は同じく第11話で、くくると風花が停電したがまがま水族館の中の生きものたちを守ろうとする場面に使われた。厳しい現実に直面したくくるの折れそうな心と、それを支えようとする風花の想いが、ピアノとストリングスの愁いを帯びたサウンドで表現される。
 トラック36「夢の終わりと始まり」は第12話のラストシーンに流れた。がまがま水族館を離れて再出発しようとする、くくると風花の心情を表す曲だ。ピアノとストリングス、フルートが奏でる音楽に、ふたりが読む工藤直子の詩「おわりのない海」が重なる。
 夢はかなわなかったけれど、終わりではない。「またあした」。そんな気持ちが心にこみ上げてくる。しみじみとした余韻が残る、第1部締めくくりの曲である。

 『白い砂のアクアトープ』の音楽は、澄んだ水のように、すっと心に入ってくる。青春の日々で出会う、夢、葛藤、羽目をはずす楽しさ、友情、切なさなどが、シンプルなサウンドとメロディで表現されている。
 その源流は、美しい沖縄の海のイメージと本作の主人公であるふたりの少女のキャラクターだろう。
 本作の音楽を聴いていると、夢を信じて、口にしたくなる。「まくとぅそーけ、なんくるないさー」と。

TVアニメ『白い砂のアクアトープ』オリジナルサウンドトラック
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アニメ様の『タイトル未定』
349 アニメ様日記 2022年1月30日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年1月30日(日)
散歩以外はデスクワークの一日。色々と進んだので満足。
『ワンダーエッグ・プライオリティ』1話から6話まで観た。

2022年1月31日(月)
ワイフと新宿ピカデリーで『地球外少年少女 前編「地球外からの使者」』を鑑賞。仕事の関係で、既に視聴していたのだけれど、劇場で観たほうが没入感がある。
『ワンダーエッグ・プライオリティ』を7話から13話前半まで観る。数度目の鑑賞だけど、今までで一番面白かった。

2022年2月1日(火)
この日に抱えていた取材原稿のまとめ作業が7本。チェック出しのための仕上げ作業が3本、外部スタッフに出すための粗まとめが2本、外部スタッフから上がってきたまとめのチェックが2本。大忙しだ。
『ワンダーエッグ・プライオリティ』の終盤を何度か観て、『Sonny Boy』を1話から4話の途中まで観た。

気になることがあって、編集部のスタッフに改めてアニメスタイルの用字一覧を見せてもらう。それで、どの漢字がいつから開くようになったのか、いつから漢字でいくことになったのか、について話をする。さすがに20年以上の歴史があると、色々あって、漢字を多用していた時期もあるし、やたらと開いていた時期もある。最新の用字一覧は5、6年前に作られたものだと思うけれど、これによると「アニメスタイル007」から「アニメスタイル010」は漢字が多かったらしい(用字一覧の備考に書かれていた)。
ちなみに「絵コンテ」と「画コンテ」の使い分けは、かつては『フリクリ』と『空の境界』だけが画コンテ。他は絵コンテだったのだけれど、今は「その作品のクレジットで画コンテと表記されているものだけ、画コンテ」ということらしい。ただし、例外はあり。「いっしょうけんめい」は一時期まで「一所懸命」で統一だったけれど、先代の編集デスク時代に「一生懸命」になった模様。

2022年2月2日(水)
仕事の合間にグランドシネマサンシャインで「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム【IMAXレーザーGT字幕版】」を鑑賞する。二度目の鑑賞で、IMAX上映の映像が気になって足を運んだ。IMAXの「ノー・ウェイ・ホーム」は「IMAXフルサイズ」ではなかった。改めて告知を見ると、「全編IMAX画角」とあって、フルサイズとは書かれていないので間違ってはいない。IMAXで観てよかったと思えたのは終盤。アクションではなくて、芝居メインの場面だった。

『名探偵コナン』の「警察学校編」って、『コナン』物語開始時から7年前の話なのね。そして『コナン』は劇中であまり月日が経っていないはず。松田刑事が死んだのが20年以上前という感覚だったので、ちょっと違和感があった。20年以上前というのは、視聴者(読者)である僕の生活時間であって、間違っているのは僕の感覚なんだけど、まあ、とにかく驚いた。

2022年2月3日(木)
ワイフと西武池袋本店で開催されている「チョコレートパラダイス2022」に行く。ワイフがバレンタインで僕に贈るチョコレートを一緒に選んだ。あまり縁がなかった高級チョコレートを山のように見ることができて、それだけでも楽しかった。面白いチョコがあったので、中村豊さんの差し入れ用に購入する。
確認することがあって「アニメスタイル005」をパラパラとめくる。歴代「アニメスタイル」の中でも特に読み応えがある号なんだけど、1冊の雑誌としてはまとまりがないなあ。
『スーパーカブ』の取材のまとめで、原作に「主人公がショパンを聴いている」という記述があるかどうかを確認する必要があり、事務所スタッフにお願いして、Kindleの本文検索で確認してもらった。検索してもらったのは原作の1巻から4巻。ちなみに原作はKindleの読み放題にあった。調査は10分足らずで終了。ショパンを聴いている場面も、クラシックを聴いている場面もあった。すごいぞ、電子書籍。紙の本なら数時間はかかったはず。

2022年2月4日(金)
仕事の合間に、ワイフとグランドシネマサンシャインに行って「355」【字幕版】を観る。この映画を選んだのはワイフ。最近、美女が出る映画を観ていないので観たかったらしい。ポスターを見て「5人の女性エージェントが活躍する映画」と思ったら、5人のうちの1人はエージェントではなくて、セラピストだった。映画後半まで4人で話が進み、5人目が敵か味方か分からない感じで出てくるのは面白かった。5人目はキャラ立ちもいいし、戦闘力も高そう。

2022年2月5日(土)
BONESで中村豊さんの取材。先日購入したバレンタインチョコを差し上げる。Twitterを見ていたら、僕が惑星チョコを選んだのが作画ネタだと気づいた人がいてびっくり(『スペース☆ダンディ』『モブサイコ100』の中村パートにちなんで惑星チョコを選んだのだ)。

https://twitter.com/sekise10/status/1489883149903745028?s=20&t=zutya3aCM8TVPZDuYT8M8A

この日はテアトル新宿で「血ぃともだち」のレイトショーがあった。チケットは取れていたけど、熱っぽいこともあって鑑賞は控えた。それから、確認することがあって『スーパーカブ』を音声を消して映像だけ観た。

第756回 意外に、総監督って……

現在制作中のシリーズ、総監督なのに結構忙しい!

 総監督と監督の二重ディレクションだと、多少“暇”になるかと思いきやそうでもありませんでした。シリーズ構成・脚本は終えて、アフレコが始まると意外に毎日毎日やることがいっぱい。そして、監督の方はラスト3本分のコンテを鋭意作業中で、それを追う俺のコンテ・チェックが折り返し地点を超え、

多分、最後はまた板垣も作画修正のお手伝いもやることになりそうです!

 因みに作品のタイトル発表はもう少し後になりそうなので、勝手に詳細は書けず、申し訳ありません。そんなこんなで、作業に戻ります(汗)。