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第523回 事故渋滞で長時間待たされたけど……
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前回も言いましたが『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』放映中!!
どこから語り始めていいか、考えている時間がないため、オープニングから!
OPのダンスはアニメ化に際して、原作者・空えぐみ先生のリクエストだったと記憶しています。「OPは是非躍らせて欲しい」と。そしてさらに「“沖縄”を詰め込んだモノにして欲しい」とも。
で、できたのが今作のOPです。コンテ・演出・作画監督と全カット分のレイアウトは自分でやりました。本編と同時進行からくる現場リソース的に、空いた時間に俺の方でコツコツと背景原図、それと同時にキャラのポーズ・動きのラフを積み上げていって、手の空いたスタッフを見つけては「このレイアウトでー」と原画を発注。で作監は部分的に、篠(衿花)さんに手伝ってもらって完成しました。キャラクターたちが皆可愛いので、描いてて何の苦もなく楽しいばかりの仕事で、概ね予定どおりの仕上がりになってると思います。
主題歌はHYさんの「大大大好き」で、サビがとても耳に残る良い曲だと思いました。
で、ファーストカットc-001は俺の一発原画。シーサーのキャラ、ゆるくって好きです。c-002,003,004もこちらでラフを入れて、山本(直幸)君に原画を振りました。
で、すみません(汗)、仕事に戻ります故、続きは次回。
杉井ギサブロー監督と言えば『宮澤賢治 銀河鉄道の夜』『紫式部 源氏物語』『タッチ』『悟空の大冒険』等、素晴らしい作品を残してきた名監督です。
その杉井監督をゲストに迎えたトークイベントの第二弾を、2025年2月16日(日)に開催します。聞き手は小黒編集長が務めます。
前回のテーマは「アニメとアニメーション」でしたが、今回のテーマは「映画とアニメとアニメーション」。作品としては『ナイン』と『タッチ』と『宮沢賢治 銀河鉄道の夜』について触れる予定です。
今回のイベントも配信があります。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは1月18日(土)12時から発売。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
なお、前回の杉井さんのトークイベント「第230回アニメスタイルイベント 杉井ギサブローとアニメとアニメーション」は現在もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。アニメスタイルチャンネルは会員向けのサービスです。
「第230回アニメスタイルイベント 杉井ギサブローとアニメとアニメーション」(アニメスタイルチャンネル)
https://www.nicovideo.jp/watch/so44334898
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/305597
会場(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/ta7g6
配信(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/354221
第234回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年2月16日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
杉井ギサブロー、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 2,300円、当日 2,500円(税込·飲食代別) |
腹巻猫です。本年もよろしくお願いいたします。
昨年はさまざまなコンサート、イベントに足を運びましたが、11月20日に恵比寿LIQUID ROOMで開催された牛尾憲輔さんの劇伴作家活動10周年記念ライブ「behind the dex」はなかなか衝撃的な体験でした。オールスタンディングのホールを満杯にした観客が『チェンソーマン』『DEVILMAN』『ダンダダン』『ピンポン』などの劇伴で盛り上がるさまは、まるでクラブイベントのよう。絶賛放映中だった『ダンダダン』の曲は観客の反応も大きかったです。今回はその『ダンダダン』の音楽について。
『ダンダダン』は2024年10月から12月まで放映されたTVアニメ。龍幸伸による同名マンガを原作に監督・山代風我、アニメーション制作・サイエンスSARUのスタッフで映像化された。霊媒師の家系に生まれた女子高校生・綾瀬桃(モモ)と宇宙人の存在を信じるオカルトマニアの男子高校生・高倉健(オカルン)が、協力して怪事件に挑むSFファンタジーである。
随所に凝った映像演出や力の入った作画があり、目が離せない。モモとオカルンが口論しながらも互いを意識し、接近していく展開が学園ラブコメのようでこそばゆいし、登場する宇宙人や怪異などに過去の特撮ドラマやアニメ、劇場作品などへのオマージュが見られ、懐かしい味わいを出している。オカルト、SF、ホラー、学園青春ものなど、さまざまな要素が入り混じった、多彩な楽しみ方ができる作品だ。
牛尾憲輔が手がけた音楽については、放映中からアニメ雑誌などにインタビューが掲載されており、そのユニークな作り方がとても気になっていた。
監督の山代風我は、「昔の円谷プロダクション作品の『ウルトラQ』から『怪奇大作戦』あたりの空気感を映像で出していきたい」と構想を話した上で、音楽は「使用したいクラシック音楽があるくらいで、あとは何でもありの世界観のように、自由にやってほしい」と牛尾に伝えたという。
音楽作りは、牛尾憲輔が原作、脚本、設定画などの資料をもとに、イメージアルバムのような形で数曲を制作し、監督たちに聴いてもらうことからスタートした。幸い、最初から互いに考えていた方向性が合致し、音楽メニューの作成、楽曲制作へと進んだ。牛尾憲輔はほかの作品でもこんな進め方で劇伴作りをしているのだそうだ。
『ダンダダン』はさまざまな過去の作品やカルチャーへのオマージュにあふれた作品である。牛尾はインタビューで本作の印象を「あらゆるカルチャーをリミックスするような感じ」と語っている。その感じを音楽でも再現するために、さまざまなジャンル、時代の音楽をリミックスするスタイルを考えた。
と書くと、既存の音楽のスタイルを模倣したり、取り入れたりして新曲を作る手法が思い浮かぶが、牛尾憲輔が試みた方法はそう単純ではない。
牛尾憲輔が選んだ手法は「サンプリング」。既存の楽曲を取り込んで、加工したり、新しい要素を足したりして、独自の楽曲に仕上げていく作り方だ。現代のテクノやダンスミュージックではおなじみの手法である。
ユニークなのはここからだ。サンプリングにはもとになる楽曲が必要になる。しかし既存の楽曲は権利の問題などで自由に使えない。そこで、牛尾は自分でサンプリング用の楽曲を作り、それを加工して新たな曲を作るという二重の手間をかけたのである。
たとえば、第1話でモモが「(俳優の)高倉健のような男」を探して学校内を歩き回る場面にかかる「tiger and flower」という曲。高倉健が主演した任侠映画の主題歌のような曲を作曲し、それをサンプリングしてローファイ・ヒップホップ風に仕上げたという。単なるパロディ、パスティーシュではなく、その時代、その作品へのリスペクトをこめた楽曲をいったん作って、そこから現代に通用する楽曲に昇華させているのだ。
しかも、サウンド感もその時代の楽曲らしくするため、あえてレコード盤ぽい音質やブラウン管テレビから流れてくるような音質でサンプリング用の楽曲を制作している。多くの曲をこうしたやり方で作ったため、「ほとんどの曲で通常の倍の手間がかかっている」と牛尾憲輔は語る。
「ふつうに○○風の曲を作るほうが楽だし、早いし、ほとんどの人は違いに気がつかないのでは?」と考える人も多いだろう。が、それでも作り方にこだわる。コンセプトや作る過程に意味があると考える。牛尾憲輔はそういう作家である。
本作のサウンドトラック・アルバムは2024年12月18日に「『ダンダダン』オリジナルサウンドトラック」のタイトルでアニプレックスから配信とCD(2枚組)でリリースされた。
収録曲は以下のとおり。
Disc 1
Disc 2
全33曲。インタビューなどによれば、牛尾憲輔が本作のために制作した楽曲はこれですべてである。
最近は1クールのアニメでも40〜50曲を作ることが多いので、曲数は少なめだ。しかし、1曲1曲が濃密であるのと、多くの曲が2分から3分台の長さなので、物足りない感じはない。
全体の構成は、ディスク1がおおむね第1話から第4話までのイメージ。モモとオカルンが出会い、妖怪ターボババアが仲間に入るまでのエピソードで使用された曲が収録されている。ディスク2は第5話以降に登場するキャラクターや怪異をテーマにした曲が並ぶ。物語に沿いつつ、ディスク1とディスク2で雰囲気を変えた巧みな構成だ。
ディスク1から紹介しよう。
1曲目「code:DDD」は本作のメインテーマ。「ダンダダン」と聞こえるリズムをベースに、不穏なシンセサウンドが加わり、さらに別のリズムが重なってダンスミュージック風に発展する。牛尾憲輔のコメントによれば、異なるジャンルのベースやドラムがサンプリングされているとのこと。本作の主題歌「オトノケ」も「ダンダダン」というフレーズから始まるので、意識したわけではないだろうが、主題歌と劇伴のサウンドが呼応したような形になっている。
このメインテーマのバリエーションがトラック9の「code:DDD (Ver.H)」とディスク2のトラック12「code:DDD (Ver.O)」。「(Ver.H)」はホーミーを、「(Ver.O)」はお経をミックスした曲になっている。呪文のようにも聞こえる人の声が、楽曲に妖しさ、不気味さを加味している。
トラック2の「a slice of peach」はモモのテーマ。しだいに重なる複数のリズムと女声ボーカルによる、はじけた曲調のナンバーである。ボーカルの歌詞はよく聞き取れず、何を歌ってるのかわからないが、それもねらいなのだろう。
次のトラック3「okarun’s file」はオカルンのテーマ。シンセサウンドによるSFホラー音楽風の曲である。90年代の人気海外ドラマ「Xファイル」あたりを思い出してしまう曲調だ。
先に紹介したトラック4「tiger and flower」は、任侠映画主題歌風の原曲がしだいに変形して、どんどん印象が変わっていくのが聴きどころ。
トラック5「seiko」はモモの祖母で霊媒師の星子のテーマ。ミステリアスに始まり、中盤はディスコ風の曲をサンプリングして軽快に、終盤はさらに曲調が変わってテクノロック風に変化する。サントラCDの解説書に掲載された牛尾憲輔のコメントによれば、「3曲分の労力をかけている」そうだ。
トラック6「serpoians」は人間の女性をねらう宇宙人・セルポ星人のテーマ。ループするギターのフレーズとエコーがかかったパーカッションの組合せが、妖しく奇妙な宇宙人のイメージを伝える。「ウルトラQ」「アウターリミッツ」などの60年代SFドラマの香りがある曲だ。
トラック8「(un)lucky cat」はにぎやかなラテン風の楽曲をベースにしたナンバー。女声ボーカルが入って、お祭りさわぎみたいな雰囲気になる。この曲はモモとオカルンのコミカルな場面によく選曲されていた。
トラック9「code:DDD (Ver.H)」からは、一気呵成という感じで、モモ&オカルンと怪異との対決が描かれる。
アップテンポのビートがループするトラック10「on the edge」は、ピンチの場面によく流れた曲。ほぼリズムのみの楽曲だが、よく聴くと複数のビートが重なり緻密に構成されていることがわかる。
トラック11「like a fire」からトラック14「breakthrough」まではバトルシーンでおなじみの楽曲。「like a fire」「paranormal funk」「breakthrough」は70〜80年代ディスコやファンク風の楽曲をベースに、現代的なダンスミュージックに仕上げている。バトルシーンにダンスミュージックが流れるのが本作の特徴で、それが高揚感を生むとともに、ユーモラスな味わいを出す効果をあげている。
同じくバトルシーンに流れるトラック12「william hell overture」は、よく知られたクラシック曲「ウィリアム・テル序曲」と「天国と地獄」をベースにした曲。もともとは「それっぽい曲を」という注文だったのを「そのまんま使ったほうが面白い」と提案し、いったんクラシック的な演奏を録音したのち、サンプリングしてハウス風に加工したのだそうだ。
怪奇現象を描写する不気味なトラック15「the tunnel」に続き、トラック16「the girls」は第4話で使用された曲。モモとオカルンが非業の死を遂げた少女たちを悼む場面に流れた鎮魂の曲である。この曲のように、シリアスな心情や事件を表現する曲は、サンプリングではなく、ストレートな手法で作曲されている。
ディスク1の最後に収録されたトラック17「turbo granny」はターボババアのテーマ。前半はホラー映画的なシンセサウンドで「怖さ」を前面に押し出し、後半は軽妙なリズムに合いの手やねこの鳴き声を加えた曲調でコミカルさを打ち出す。ターボババアのキャラクターの変化を1曲の中に凝縮した曲である。
ディスク2は、モモとオカルンの内面を表現する「momo」(トラック1)と「okarun’s life」(トラック2)から始まる。どちらも思春期の高校生の心情に寄せた繊細なサウンドの楽曲になっている。
次の「more than friends」(トラック3)と「less than lovers」(トラック4)は、タイトルどおり「友だち以上」「恋人未満」の2人の関係を表現する曲。青春映画風のポップな「more than friends」に対し、「less than lovers」は『僕の心のヤバイやつ』に通じる甘酸っぱい香りがする。
80年代の化粧品のCM音楽風に作ったというアイラのテーマ「aira」(トラック5)、70〜80年代シンセミュージックをベースにしたような「can’t take it anymore!!」(トラック6)などは本作の明るい面を代表する楽曲だ。
トラック8「the crawling ghost」からトラック11「acrobatic silky」までは、放映時に大きな反響を呼んだ第7話で使用された楽曲が並べられている。
モモとオカルンが妖怪アクロバティックさらさら(アクさら)から逃げる場面に流れた「the crawling ghost」とモモとオカルンが死んだアイラの蘇生を試みる場面の「curse」(トラック9)は、怪異を描写する曲としてほかのエピソードでも使用されたナンバー。
アクさらの過去が描かれる場面の「love theme」(トラック10)とアクさらとアイラの別れの場面に流れる「acrobatic silky」(トラック11)は、このエピソードに沿って書かれた曲だ。特に「love theme」はフィルムスコアリングで書かれた4分30秒に及ぶ曲で、本作の音楽の、そして本アルバムの一番の聴きどころと言ってよいだろう。
アルバムの終盤は、第10話以降で流れた印象深い曲が収録されている。
トラック13「jiji!」は第10話で登場するモモの幼なじみで初恋相手のジジのテーマ。能天気な曲調がジジのイメージにぴったり。
「spoken spell」(トラック14)は第9話のセルポドーバーデーモンネッシーとのバトルシーンに、「taro and hanako」(トラック15)は第11話と第12話の人体模型タローとハナのエピソードで使用された。
そして、「the kitos」(トラック16)は、第12話でモモとオカルンが温泉街にやってくるシーンで使われた曲。モモたちが出会う怪しい人々、鬼頭家の一族のテーマであり、なんとなく劇場作品「犬神家の一族」のテーマを思わせる。これがアルバムの最後の曲。本編にならって、サントラも「次回(第2期)に続く」という雰囲気で終わるのがニクい。
なお本作の第5話では、モモとオカルンがお互いを探して学校の中を歩き回るシーンに、フェルナンド・ソルのギター曲「モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲」が使用されている。多くの人が指摘しているとおり、これは「怪奇大作戦」第25話「京都買います」のオマージュだろう。ここはサンプリングでは意味がない。ストレートな楽曲の引用が効果的だった。
失敗すると単なるパロディになってしまいそうなサンプリングという手法を、徹底した作りこみと絶妙なバランスでオマージュに昇華させているのが、『ダンダダン』の音楽のユニークですぐれたところである。2025年7月からの放送が決定した第2期でも、同じ方向性の音楽が聴けるのか? それとも新たな試みが行われるのか? 今から楽しみでならない。
「ダンダダン」オリジナルサウンドトラック
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『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(略称・沖ツラ)』が放映開始しました!
空えぐみ先生(新潮社 くらげバンチ)の同名コミックのアニメ化です。原作の誰も傷つけない優しい笑いを巧くアニメに落とし込もうと頑張っています。是非観てください!
そして、今年はもう幾つか企画が動いているので、その都度続報を!
そしてさらに今年からデアゴスティーニより、『特捜最前線 DVDコレクション』が発売開始! 念願の“全話”! 何せ全509話で全170巻!? しかも隔週刊行で7年間楽しめる!! 長坂秀佳先生作品~109話分が蘇る!! 夢のよう!! 途中で途切れないことを切に祈りつつ、今年も宜しくお願いします!
「今年も、忙しくて楽しかった!」と言い続けて50歳が終わりを迎えようとしている板垣です。年が明けて1月28日で51歳で、この連載も有難いことにそろそろ900回! 18年も続けていることになります。だから何だ? と言うほど広がる話題でもなく、ただ月並みに「時が経つのは早いな~」と。
取り敢えず、
来年早々より『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』放映開始!
で、さらに次作の発表も? まだ情報は流せませんが、2025年も忙しくなることだけは決定事項です。
2025年最初の【新文芸坐×アニメスタイル】は映画『クレヨンしんちゃん』です。
1月19日(日)に第4作『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(本郷みつる監督/1996年)、第8作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』(原恵一監督/2000年)を上映します。【新文芸坐×アニメスタイル】では何度も映画『クレヨンしんちゃん』を上映してきましたが『嵐を呼ぶジャングル』はこれが初めてのはず。「初笑い」のテーマに相応しいタイトルとしてセレクトしました。両作とも貴重な35mmフィルムでの上映となります。
それぞれの上映に、本郷みつる監督と原恵一監督のトークがつきます。『ヘンダーランドの大冒険』では上映の後にトークを、『嵐を呼ぶジャングル』では上映の前にトークをやります。
チケットは1月12日(日)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(「嵐を呼ぶ初笑い!クレヨンしんちゃん」情報ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-01-19-2
【新文芸坐×アニメスタイル vol.185】 |
開催日 |
2025年1月19日(日) |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
2300円均一 |
上映タイトル |
『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(1996/97分/35mm) |
トーク出演 |
本郷みつる(監督)、原恵一(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
前回の続き。是非りんたろう監督の本『1秒24コマの僕の人生』の感想を! と思っていたのですが、まだ全部読めていないくらい、今忙しくて、今回もいつもの如く“忙しい”の話を短く。
50歳になってまだまだ仕事がいただけているのは、本当に有り難い話で、来年も何作かを同時進行で動かさなくてはならず、まだまだ楽しくなりそうです!
20代の頃は、皆さんそうだと思うのですが、まさか自分が50歳になるなんて微塵も思ってもみなかったし、もしそうなったとしても、やりたいことはあらかたやり終えて残された仕事を細々とこなして食っていけたらいいな~などと思っていましたが、全然ダメ! やらなきゃならない(と思っている)こと、半分もできていない! 今年こなしたいと思っていた仕事すら、こなせずに来年に持ち越し! ま、そんなもんなんでしょうね、人生とは。
そもそも俺自身は大した人間だと思っていません。己の人生にも高学歴・高収入を狙うとかいった過剰なプレッシャーをかけてもこなかったし、こんな自分程度のアニメ監督でもいまだに何某かの仕事ができて暮らしていけている現状を続けて一生を終えられれば、「本当に幸せな人生だった」と、死ぬ瞬間思えるのでしょう、誰も恨むこともなく。
今の自分は誰も恨んでないし、嫌な思い出も「あれはあれで良かったのかも」くらいには考えられるようになりました。例えば、10数年前の監督降板の時は「自分は悪くない!」と周りに叫んだし、手間かけて事の経緯を委員会周りから聴き込みしてくださったスタッフさんもいて、その方からも「君は悪くないよ」と慰められもしました。「10年経ったらその時のあらましをどこかで」~とかも、自分も人間なのでそれくらいは考えました。ところが、今になって語るとしたら、もう恨み辛み話とかじゃなく、ただのしくじり先生——“監督業での失敗・反省からの注意事項”的な話にしかならないと思います。もうすでに興味ある人もいない(と思う)話、今さら語るのもね……?
ハッキリ言いますが、あの時のことは100%全部、自分が悪いです! 関係各所、スタッフの皆様、本当にご迷惑お掛けして、申し訳ありませんでした!
てのが、現在の心境。それでも悪口言う人は言うので、どうぞ。こちらは構っている時間ありません! 自分は自分で、目の前のいただいた仕事を楽しく、できる限り誠実にこなしていくのみ。仕事、仕事…!
とは言っても、目の前の仕事が忙しいばかりでは、新しいモノは作れないので、来年こそは遊ぶ時間を作る努力もしなければと思いつつも、コンテ渡して現場のスタッフに任せて自分だけ自由出勤なんてできない性分なもんで。
今回も何が言いたいのか纏りませんでしたが、
まずは、新年早々『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』放映開始になるので、是非観てください!
で、明日は次作品のアフレコが“朝10”なので寝るとします。
腹巻猫です。昨年から今年にかけて、藤子・F・不二雄生誕90周年を記念したさまざまな企画が実施される中、映像関係で注目を集めたのが、今年配信された新作アニメ『T・Pぼん』でした。かつて単発TVスペシャルとしてアニメ化されたことがありますが、シリーズものの形で映像化されるのは初めて。原作に沿いつつも現代的なアレンジを施した仕上がりで楽しめました。音楽は大島ミチルが担当。スケールの大きな音楽が作品内容にぴったり。今年の締めくくりに、この作品を紹介します。
『T・Pぼん(タイムパトロールぼん)』は2024年5月からNetflixで配信されたアニメシリーズ。藤子・F・不二雄の原作マンガを、監督・安藤真裕、アニメ—ション制作・ボンズのスタッフでアニメ化した。シーズン1、シーズン2の2部構成で、各12話、全24話が配信されている。
平凡な中学生・並平凡(なみひら・ぼん)は、ある事件をきっかけにタイムパトロールの見習い隊員に任命される。先輩女性隊員リームと超空間生物ブヨヨンとともにぼんが挑む任務は、歴史の中で不幸な死を遂げた人物を救うこと(ただし歴史に影響を及ぼさない人物に限る)。タイムパトロールとして経験を重ねたぼんは、準隊員を経て正隊員に昇格し、さらなる任務に挑んでいく。
SFの分野でタイムパトロールものといえば、歴史を改変しようとする時間犯罪者と、それを阻止しようとするタイムパトロールの対決を描くものが主流。しかし、本作は過去の世界で死ぬ運命にある人を救助するという、SFとしては「掟破り」とも言える設定になっている。が、それが時間犯罪ものとは異なるサスペンスを生み、人間ドラマとしても見ごたえのあるエピソードが続出した。
アニメ版は原作の持ち味を生かし、現代的な歴史考証や科学考証を盛り込んで、幅広い世代に楽しめる作品に仕上がっている。世界各地が舞台になっている点でも海外配信に恰好のタイトルだ。
音楽は『鋼の錬金術師』『四畳半神話体系』などの大島ミチルが担当。世界中を飛び回って演奏や録音を行っている大島ミチルは、本作の音楽にまさにうってつけの作曲家である。
『T・Pぼん』の音楽は、大編成のオーケストラを使ったスケールの大きなサウンドで作られている。大島ミチルはXのアカウントで本作の音楽についてのコメントを何度か投稿しているのだが、その中で「この作品にオーケストラサウンドはどうかなぁ?と思ったのですが、ヘビーなシーンも多いので…」と語っている。歴史的な戦争や大災害が描かれる作品だから、物語を彩る音楽にはオーケストラの雄大なサウンドが必要だったのだろう。
演奏はハンガリーのブタペスト交響楽団とアメリカのナッシュビル・ミュージック・スコアリング・オーケストラが担当。日本からギターの古川昌義、尺八奏者の藤原道山らも参加している。作品にふさわしく、演奏も国際的だ。
大島ミチルのコメントによれば、本作の音楽は全4回にわたって110曲以上を録音したそうである。レギュラーで使用される録り溜めの曲もあるが、映像に合わせて書いた曲も多い。オーケストラによるサウンドもあいまって、映画音楽のようなリッチな印象の音楽になった。
本作のサウンドトラック・アルバムは「T・Pぼん(Soundtrack from the Netflix Series)」のタイトルで2024年8月30日にNetflix Musicから配信開始された。今のところCDでの発売はない。収録曲は下記リンクを参照。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DFD4VHDM
サウンドトラックに収録されたのは、110曲以上から厳選された55曲。配信サイトによってはトラック番号を01〜55と表記しているケースもあるが、Amazon Prime Musicなどでは、DISC1:01〜35、DISC2:01〜20と、2枚のディスクに分けて表記している。曲目を見ると、DISC1はシーズン1、DISC2はシーズン2を想定した内容であることがわかる。本稿でも、ディスクごとに分けて紹介することにしたい。
ディスク1は、大島ミチル作詞・作曲によるオープニングテーマ「BON BON BON」からスタート。主人公の名「ぼん」をリズミカルに歌いこんだ、ロック調の軽快な曲である。実はNetflixで言語をスペイン語にするとスペイン語バージョンを聴くことができる。スペイン語版だけNetflixの希望で追加したのだそうだ。
トラック2からはBGM集。構成は劇中使用順に即したもので、各エピソードから1曲〜数曲をセレクトしている。この構成がなかなかすばらしい。
1話完結の作品なので、使用順にはこだわらず、イメージアルバム風に構成することもできたと思う。が、しっかり本編の流れを反映した曲順になっている。だから聴きながら本編をエピソード順にふり返ることができる。自然に『T・Pぼん』の世界に入っていける、いい構成だ。
ここからは、各曲がどのエピソードから選曲されたかを明らかにしながら、聴きどころを紹介していこう。
トラック2「Very Ordinary」〜トラック7「I Won’t Be Erased!」は第1話からの選曲。弦がのんびりと奏でる「Very Ordinary」は、平々凡々たるぼんのキャラクターを描写する曲で、ぼんの場面にたびたび選曲されている。トラック6「Time Patrol」はタイムパトロールのテーマ。登場ファンファーレから始まる高揚感たっぷりの曲だ。
トラック8「There’s Two of Me?」〜トラック15「Parent and Child Reunion」は、ぼんの初任務を描く第2話からの選曲。リームとブヨヨンの登場場面に流れる「Ream and Buyoyon Appear」がユーモラスな味わいを出している。ぼん初出動の場面の曲「The First Dispatch」(トラック11)が、不安から決意へと変化していくぼんの心情を表現する。ぼんが洪水から老婦人を助ける場面に流れるトラック14「I Want to Help!」がいい。緊迫感と使命感がミックスされた、人命救助をテーマにした本作を象徴する楽曲だ。この曲はシーズン1よりもシーズン2でよく使われていた。
ここまでで15曲。タイムパトロールぼんの誕生を描く第1話と第2話の曲を手厚く収録しているのがディスク1の特徴である。
トラック16「The Royal City」は第3話で古代エジプトの場面に流れた民族音楽風の曲。本作では、こうした異国をイメージした曲がたくさん作られていて、アルバムの中で音楽の印象を変化させるスパイスのような役割を果たしている。
トラック17「I Became a Time Patrol Agent!」〜トラック20「The Weight of People’s Mistakes」は、第4話からの選曲。古代人が丸木舟で太平洋を渡る場面に流れるトラック18「Sailing Across the Ocean」は、上下する弦の動きが果てしない大海原を思わせる、悲壮感あふれる楽曲である。
トラック21「Witch Hunt」とトラック22「Where Love Leads」は中世ヨーロッパの魔女狩りをテーマにした第5話から。エキゾチックで哀感ただよう「Witch Hunt」と恋人たちの語らいの場面に流れる美しい「Where Love Leads」の対比がみごと。
次のトラック23「Thoughts on India」は第6話で天山山脈を越えようとする玄奘法師とぼんたちが語らう場面に流れた東洋風の曲だ。
トラック24「The Tradition of Sacrifice」〜トラック26「The Terror of the Minotaur」は第7話から。クレタ島のいけにえと魔獣ミノタウロスのエピソードを彩る不安な曲や異国風の曲が並ぶ。
トラック27「Mainland Showdown」とトラック28「Ensign Sakuragi」は、第二次大戦末期の沖縄を舞台にした第8話からの選曲。空襲で壊滅した都市の惨状を描写する「Mainland Showdown」、生き残った特攻隊員・桜木少尉の悲哀を表現する「Ensign Sakuragi」。どちらも悲痛な想いが伝わってくる。吉永小百合による「原爆詩」の朗読の音楽も手がけている大島ミチルらしい楽曲である。
第9話で流れたトラック29「Agents Riding Dinosaurs」は、ジュラ紀にバカンスに出かけたぼんとリームが恐竜の背に乗る場面の曲。のんびりした雰囲気から始まり、しだいに盛り上がって雄大な曲調で終わるのが気持ちいい。
続くトラック30「Gun Man」とトラック31「Tactics」は、西部開拓時代のアメリカを舞台にした第10話で流れた曲。古川昌義のギターをフィーチャーした西部劇風の曲だ。
トラック32「The Athenian and Persian Army Time-trippers」は、古代ギリシャを舞台にした第11話より。アテナイ軍とペルシャ軍が対峙する場面に流れた、ハリウッドの史劇映画を思わせる壮大な音楽である。
トラック33「Time-trippers」とトラック34「Ruin & Parting」はシーズン1の最終回である第12話からの選曲。ぼんとリームの別れの場面に流れる「Ruin & Parting」が切ない。突然の別れに動揺するぼんの心情を、ストリングスと木管の旋律が表現する。その雰囲気のまま、エンディングテーマのTVサイズ「Tears in the Sky (TV Version)」でディスク1を締めくくる構成もうまい。
続いてディスク2から。
トラック1「A Growing Sense of Responsibility」とトラック2「A Cute New Recruit」はシーズン2の第1回となる第13話からの選曲。「A Growing Sense of Responsibility」は、ついに正隊員となったぼんの決意を表現する曲。弦のおだやかなメロディにリズムが加わり、しだいに力強く変化する曲調から、ぼんの成長が感じられる。「A Cute New Recruit」は新たにタイムパトロールの見習い隊員となった、ぼんと同じ中学の同学年の少女・安川ユミ子のテーマ。シーズン1のヒロイン・リームとは異なるタイプの魅力を表現するキュートな曲調だ。この曲は第20話でユミ子が正隊員に昇格した場面にも選曲されている。
トラック3「New Team, New Uniforms」〜トラック6「Chaac Descends」は古代マヤを舞台にした第14話から。ぼんとユミ子がタイムパトロールの新ユニフォームを身につける場面の「New Team, New Uniforms」には、ディスク1に収録されたタイムパトロールのテーマ「Time Patrol」のモチーフが引用されている。
トラック7「The Gempei War」と次の「The Sound of Kamomaru’s Flute」は、平安時代の壇ノ浦の合戦を描く第15話で使用された。「The Sound of Kamomaru’s Flute」は平家の血を引く少年・加茂丸が吹く笛の音。藤原道山による演奏である。
トラック9「The Beginning of Writing」は第16話で、トラック10「Tracing Roots」とトラック11「Dire Wolves」は第17話で使用。「The Beginning of Writing」も「Tracing Roots」も、ぼんが人類の長い歴史に思いをはせる場面に流れた、しみじみとした曲だ。歴史の中の平凡な人間の営みに光を当てる、『T・Pぼん』らしい曲である。
次の曲は第18話から……となりそうなところだが、実は第18話と19話からは選曲されていない。トラック12「The Fate of the City of Troy」はトロイ戦争を描く第20話で使用された曲。重苦しい曲調が戦争の無情さを表現する。
トラック13「Strategy」は第21話、トラック14「Those Who Know No Fear」とトラック15「The Great Eruption」は第22話からの選曲。不穏な曲や緊迫した曲が続いて、アルバムもクライマックスに向けて盛り上がってくる。「The Great Eruption」は火山の大噴火によって滅びた都市ボンペイの悲劇を描写する音楽。これも史劇映画風の重厚な曲だ。
民族音楽風のトラック16「The Bazaar of Mohenjo-daro」は第23話のモヘンジョ・ダロの場面に流れた曲。本編ではループして長く使用している。続くトラック17「Following Clues」も第23話から。ぼんが行方不明になったリームの手がかりを探す場面に流れた緊迫感に富んだ曲で、このシーンが最終回への布石になっている。
トラック18「Chase After the Dimension Ball!」とトラック19「Tears in the Sky (Time Patrol Version)」はシーズン2の最終回、第24話からの選曲。「Chase After the Dimension Ball!」はフィルムスコアリングで書かれた3分近い曲。映像に合わせて変化するスリリングな曲調が実に映画的。「Tears in the Sky (Time Patrol Version)」はエンディングテーマをオーケストラ編成にアレンジ・演奏した曲で、ラスト前のぼんのモノローグに重なって流れた。エンディングテーマのアレンジが流れるのはこのシーンだけ。それだけに印象深いシーンになった。うまいなあ。
アルバムの最後に収録された「Tears in the Sky」は、エンディングテーマのフルサイズである。大島ミチルのコメントによれば、『T・Pぼん』は命を救う話なので「亡くなった大切な人への思い」をテーマにして書いたそうだ。大島自身、この曲を書いている最中に身近な人を亡くし、そのときの気持ちを曲に込めたという。歴史の中に消えていく人々への想いと、それを忘れずに前に進もうとする想いが胸を打つ。ポップス的な曲調に普遍の想いを乗せた名曲だ。
最後に、このアルバム全体の感想をまとめておこう。
オーケストラサウンドが悠久の歴史と世界の広大さを感じさせる、スケールの大きなサウンドトラックである。生オケならではの温かみのある音は、人の命を救う本作のテーマに沿っている。さまざまな時代や土地を描写する音楽はバラエティに富んでいて、聴きながら、ぼんと一緒に時間旅行を体験しているような気分になる。本編使用順に沿った曲順で名場面を思い出しながら聴ける、理想的なアルバムだ。
あえて不満を言うなら、収録時間の制約がない配信アルバムなのだから、もっと収録曲を増やしてほしかったなあ。日常場面で流れるユーモラスな曲や、第8話のラストで桜木少尉と恋人・明子の想いがつながる場面の曲など、「サントラで聴きたかった」と思う曲がまだまだある。バランスを考えての選曲だと思うが、あと10曲くらい入れてほしかった。
いや、『T・Pぼん』の原作はまだ10話以上残っているから、アニメ版シーズン3の制作も夢ではない。もし、シーズン3が実現したら、新曲と未収録BGMを収録したサントラ第2弾をリリースすればよいではないか。ぜひそうなってほしい。
T・Pぼん (Soundtrack from the Netflix Series)
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りんたろう監督の「1秒24コマの僕の人生」購入しました!
りんたろう監督版の「まんが道」みたいな感じで、フィクション・作り話を面白がれない俺にとっては、いちばん興味あるのはこういう“実話の漫画化”です。
りんたろう監督作品はほぼ全作観ている俺。劇場版『銀河鉄道999』を始め『幻魔大戦』『カムイの剣』『火の鳥~鳳凰篇』『X』などの劇場長編も好きですが、個人的にTVシリーズ『がんばれ元気』第1話が大好き。当時の安かろう悪かろうなTVシリーズが当たり前に流れる中で、「こういう画面を作りたい! そして自分自身もこれが観たい!」という明確な意思表示を1カット1カット丁寧に積んだフィルムで、今現在に至るまで何回も観れる良作だと思います。
りんたろうアニメは時が経っても何回も観たくなるんです、自分は。『メトロポリス』も公開当時劇場で観た限りでは正直「どうだろう、これ?」とは思ったものですが、結果気付けば、りん監督の画コンテ付きスペシャルエディションDVD-BOXを買って、さらに後にBlue-rayでも買い直しました。
ハラハラドキドキなスペクタクルを楽しむために観るのではなく、“画作りを味わう”! それが、りんたろう監督作品の醍醐味!
であると、未だに定期的に観返しています。角川アニメ以降のりんたろう監督作品評は賛否両論気味ですが、俺は個人的に映画としては「?」でも、りんたろう作品としては“賛”寄りです。やっぱり、色々文句を言いつつも何度も観返している時点で、監督の術中にハマっているのでしょう。
自分のりんたろう監督とのニアミス(?)はほんの何回か。まず、自分がテレコム(・アニメーションフィルム)を退社してフリーになって、最初の仕事が『はじめの一歩』の原画だったため、ちょくちょくマッドハウスに出入りしていたのですが、その際、当時マッドハウスに在籍していた学生時代の同期・(寮でも同室だった)山田勝哉君の席に行ってお喋りしていると、自分の背後を通過していったのです、りんたろう監督が! それは当たり前で、当時の山田君は『SPACE PIRATE HERLOCK』(2002年)のメカニックデザインや『48×61』(2004年『スチームボーイ』DVD特典OVA)の原画などでりんたろう班所属で、彼の席からすぐそこが“りん監督部屋”でしたから。
さらにその後は前述した『SPACE PIRATE HERLOCK』第10話の原画をお手伝いしましたが、りん監督とはお会いできませんでした。後はマッドハウスの忘年会ですれ違ったくらい。遅れて途中からいらっしゃったりん監督ですが、現れるや否や「りんさんが来た!」と、広い会場の空気を一変させたそのオーラの凄さを、今も記憶しています。
監督やアニメーターとして活躍し、様々な作品を手がけてきた北久保弘之さん。その北久保さんのトークイベントを開催します。北久保さんのトークイベントは、シリーズ企画として数回開催する予定です。
2025年1月26日(日)に開催する第1回では『GOLDEN BOY さすらいのお勉強野郎』、『ジョジョの奇妙な冒険』、PSゲーム『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を中心にお話をうかがいます。作品内容についてだけでなく、作画についても話をしていただくことになるはず。トークの聞き手は小黒編集長と沓名健一さんが務めます。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは2024年12月14日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/302320
会場&配信チケット(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/wgpz1
配信チケット(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/348331
第233回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年1月26日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
北久保弘之、小黒祐一郎、沓名健一 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 2,300円、当日 2,500円(税込·飲食代別) |
今日は色々なことがありました。まず、朝から某アニメ誌の取材。もちろん、現在制作中のシリーズのです。そして午後、某大手アニメ会社から作監の依頼。
ここ数年は会社(ミルパンセ)と音響スタジオの往復がメインなワークスタイルのため、社内スタッフ以外の人と話をすることがめっきり減った上、仕事も忙しくなる一方だから友人らに電話すらできていません。なので、向こうから話しを聞きたい~だけでなく、仕事の依頼ですら良い気分転換に使わせていただきました!
某アニメ誌の取材は、いわゆる“作品内容について監督が語る~いつものアレ”です。が、これもやっぱり作っている最中だ、と自分の考えを纏めるのに有効的に働きます。ライター(記者?)の方から質問され、それらに答えることで「あ、俺、今こんなこと考えてるんだ」と自分を客観的に見ることができて面白いモノです。来年の別シリーズ、さらにその次とまたよろしくお願いします。あ、写真はNGで。必要なら似顔絵提出します。
余談ですが、自分は取材を受ける際“写真”は基本お断りしています。イベントで演者さんらと並ぶ際やTV番組取材での制作現場模様などでない限り——あ、後、海外からの取材で写真の断り方が分からなかった時以外は基本写真は撮られていないと思います。俺としては作品の宣伝のためが基本で、前者の演者さんと監督で~と言われると断りづらく、やっぱ「失礼かな?」と思ってかなり無理して壇上に上がります。実際それらの登壇の際は、毎回舞台裏でえずいてるくらいのあがり症なのです。番組なども何回かありましたが、飽くまで“制作現場ルポ”のスタッフ代表枠のつもり。雑誌取材における写真NGは、単純に自分自身が止めで保つ出で立ちだと思っていないからです。——って、10年以上前にも語ったのですが、お忘れの方も居るでしょうね……。
で、次が某大手アニメ会社から作監の依頼。結果から言うと電話をくださった制作さんには「今、忙しくてお受けできません……」と丁重にお断りさせていただきました。
おそらく、何年も前の連絡先リストに片っ端から電話したんでしょう? でなきゃ俺のトコまでかけてきやしないでしょうから!
と、作監探しに奔走する制作さんが気の毒で、お受けできない代わりに「作監がいないならウチならこうしてる~」的なアドバイス(提案?)をさせていただきました。余計なお世話かも知れませんが、
人手不足は知恵で乗り切る!
これが、会社同士がスタッフの奪い合いをしないで済む唯一の考え方だと、自分は信じています!
ってとこで、また内容なくてすみません。仕事に戻る時間で……(汗)!
片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。
『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などについての調査研究を進めています。その調査研究の結果を披露していただくのが、トークイベント「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」シリーズです(以前は「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルで開催していました)。
2025年最初の「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」である「10」は1月4日(土)に開催します。サブタイトルは「平安京大内裏・内裏ツアー ー中宮定子はどこを歩いていたのかー 編」。今回は平安京の大内裏、内裏を中心とした話になるようです。出演は片渕監督、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。
なお、今回の「10」は「ここまで調べた片渕監督次回作」時代から数えて、25回目のイベントとなります。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは2024年12月7日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/301735
会場&配信チケット https://t.livepocket.jp/e/yvnzt
配信チケット(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/346942
なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr
第232回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年1月4日(土) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,800円、当日 2000円(税込·飲食代別) |
腹巻猫です。2024年1月期に放送されたTVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』のサウンドトラック・アルバムが11月15日に発売されました。放映終了から半年以上経っての発売は、本作の音楽に大きな反響があったことをうかがわせます。筆者もさっそく購入して聴きました。今回は、この異色ロボットアニメの音楽を紹介します。
『勇気爆発バーンブレイバーン』は2024年1月から3月まで放送されたTVアニメ。原作・Cygames、監督・大張正己、アニメーション制作・CygamesPicturesによる、オリジナル・ロボットアニメである。
ハワイで人型機動兵器・ティタノストライドを投入した合同軍事演習が実施された。自衛隊のパイロット、イサミ・アオと米軍のパイロット、ルイス・スミスは演習中に出会い、意気投合する。が、突然、宇宙から飛来した謎の侵略者デスドライヴズの襲撃を受け、ハワイの軍事基地は壊滅の危機に瀕した。絶体絶命のとき、巨大ロボット・ブレイバーンが現れ、イサミたちを救う。イサミをパートナーに選んだブレイバーンは、人類と共にデスドライヴズと戦うことを約束する。
90年代のロボットアニメ「勇者シリーズ」をほうふつさせるタイトルに反して、第1話はシリアスに始まる。が、終盤になって「こうくるか!」と思わせる展開が待っている。タイトルどおりのスーパーロボット・ブレイバーンが登場するのだ。
ブレイバーンは人間の言葉を理解し、話すことができる意思のあるロボットである。このあたりは勇者シリーズと似ている。しかし、なんのために、どこから来たのかは謎に包まれていた。その謎がしだいに明かされていくわけだが、ひねりにひねった設定になっている。単純明快で熱血なロボットアニメへのオマージュにあふれているが、けっこう、クセのある作品である。
音楽は映画やTVドラマ、CM等の音楽で活躍する渡邉崇が担当。渡邉がロボットアニメを手がけるのは本作が初めてである。
サウンドトラック・アルバムの解説書に掲載されたインタビューで、渡邉崇は「自身が大好きな昭和のヒーローものの音楽と、ハリウッド映画のようなテイストの音楽を混在させた世界観の音楽構築」に挑戦したと語っている。ふたつのサウンドはだいぶ異なるが、無理に融合させず、そのまま混在させることを選んだという。
実際、サントラ盤を聴くと、昭和のロボットアニメ風の曲と「アベンジャーズ」のような現代のヒーロー映画風の曲が共存している。突き抜けた爽快感のある曲とシリアスなアクション曲の混在は違和感がないわけではないが、それは『勇気爆発バーンブレイバーン』という作品の特徴でもある。それが作品の味であり、魅力なのだ。あえてサウンドを統一しなかったことは正解だった。
音楽的な聴きどころのひとつは、スーパーロボットアニメ的な「燃える曲」。ブレイバーンの登場場面や活躍場面に流れ、盛り上げる。思い切った曲調が、ときにユーモラスな味わいにもなっている。
人間側の戦闘曲は、比較的シリアスな曲調で作られている。ミリタリー描写はリアル寄りで、音楽も緊迫感に富んでいる。人類の危機がシリアスに描写されるぶん、ブレイバーンの活躍が爽快に感じられるという対比をねらったのだろう。
心情曲では、ピアノと管弦楽が共演する曲が耳に残る。いわゆる「エモい曲」が多く作られ、名場面を彩った。本作の音楽は、生楽器とシンセの打ち込みを併用しているが、心情曲については生楽器の音を大切に作っている印象を受ける。
敵のデスドライヴズにつけられた曲も興味深い。特に、スペルビア、クピリダスといった機械生命体の幹部たちにつけられたテーマが秀逸だ。得体のしれない敵なので、音楽も個性的になっている。本作のもうひとつの聴きどころと言ってよいだろう。
本作のサウンドトラック・アルバムは「オリジナルTVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで、11月15日にCygamesから発売された。収録曲は以下のとおり。
CD1枚に47曲を収録。最終回にのみ流れたオープニング主題歌のイサミ・アオ・バージョンが収録されているのが目玉のひとつである。
大張監督のインタビューによると、劇伴は50曲以上を発注し、そのすべてを劇中で使用したそうだ。だとすると本アルバムは完全収録ではないが、印象的な曲はほぼ入っている。
構成は、物語を再現するというよりは、作品のイメージと音楽的流れを重視したイメージアルバム的なコンセプトで組まれているようである。
1曲目の「Brave fight!!」はブレイバーン登場シーンに流れる曲。アルバムの序曲的位置づけなのだろう。ちょっと時代劇をほうふつさせるような昭和テイストの曲になっている。残念ながら本編で使われたのは第2話だけだった。
2曲目「Combat start!」はブレイバーン、人間側の区別なしに使われた戦闘曲。高速でうねる弦のフレーズが激しい戦闘をイメージさせる。第6話で使用された日本奪還作戦のテーマ「オペレーション・アップライジング」(トラック3)、ミリタリーマーチ風の「ダイダラ中隊」(トラック4)と軍事活動を連想させる曲が続き、本作の世界観をくっきりさせる。
トラック5で、謎めいたヒロインのテーマ「ルル」が現れるのが面白い。笛やシンセ、人の声などが奏でる、神秘的でエキゾチックな曲だ。第3話の冒頭、月夜の浜辺でスミスがルルと出会うシーンに流れていた。次の「Innocent」もルルにつけられた曲である。
トラック7「Lana」とトラック8「ラムファイヤー」は軽快な日常曲。ハワイが舞台になっていることから、南の島を連想させるトロピカルなサウンドが使われている。
トラック9からはブレイバーンをイメージさせる曲が並ぶ。「勇者の帰還」は勇者のテーマとも呼ぶべき曲。第4話でブレイバーンが侵略者から最初に奪還すべき地として「日本」を選ぶ場面に流れていた。第9話の合体シーンで使用された「勇気合体!バーンブレイバーン!!」(トラック10)、トランペットソロから始まるアクション曲「Absolute bravery」(トラック11)と続いて、ヒーローものの雰囲気が盛り上がる。
「Absolute bravery」は第1話のブレイバーン登場シーンから使われ、以降も勇気や決意を描写する曲としてたびたび使用された名曲である。
ここでようやく、敵の襲来と戦闘を描写する「Enemy attack」(トラック12)が登場。ハリウッド映画音楽を思わせるスケール豊かな曲調が、敵の圧倒的な力を表現する。この曲は第1話のデスドライヴズ襲撃シーンから使われていた。
ここからは、楽曲のタイプ別に紹介しよう。
まず、昭和ロボットアニメ風の燃える曲。
トラック20「私の変形を見よ!」は第2話などで、ブレバーンが飛行形態ブレイサンダーに変形して飛び立つ場面に流れた曲。ブレイサンダーからブレイバーンに戻るときも同じ曲が使われている。
トラック36「極鋼!スパルガイザー」は第5話でルルが観ているヒーロー番組「機攻特警スパルガイザー」のテーマ曲。パンチの効いたブラスサウンドや昭和歌謡風のメロディラインがいかにもそれらしい。
主題歌「ババーンと推参!バーンブレイバーン」の歌入りとカラオケ(本アルバムには未収録)も、ブレイバーンの活躍を盛り上げる楽曲としてたびたび挿入されていた。
次にシリアスな戦闘を描写する曲。
トラック32「大混戦」はデスドライヴズとの死闘を描写する激しい曲。弦楽器の動きがスリリングなトラック38「焦燥」も緊迫した戦闘シーンに使われた。
トラック40「ティタノストライド」と「タイタンの咆哮」は、デスドライヴズに立ち向かう人間たちの闘志を描写する曲。「タイタンの咆哮」は第8話でスミスが敵幹部・クーヌスと刺し違える場面に使われたのが印象深い。
そして、勇気や友情や決意を表現するエモーショナルな曲。本作のドラマ部分を支える重要な楽曲である。
ピアノとオーケストラによるトラック18「Island」は、美しい南の海の情景をイメージさせる希望的な曲。第4話で酒場をおとずれたイサミが兵士たちから「ヒーローの登場だ」と感謝される場面や第8話のブレイブナイツ結成の場面などに使用された。
次のトラック19「光あれ‥!」は弦の律動的な動きから金管を中心にしたオーケストラの力強い演奏に展開する高揚感あふれる曲。第5話のオペレーション・アップライジングの準備に励む兵士たちの場面に流れて、決戦気分を盛り上げた。
トラック22「鋼の絆」はブレイバーンとイサミたちの絆を表現する曲。繊細なピアノの響きから、金管と弦のゆったりしたフレーズに展開、終盤はヒロイックで躍動的なオーケストラの演奏で終わる。この曲は最終話(第12話)でブレイバーンが最終必殺技を放つ場面に使われている。
トラック25「ATF」は、各国の軍隊により結成された多国籍部隊「Allied Task Force」の略称をタイトルにした曲。ピアノと弦の導入から弦の流麗なメロディに展開し、リズムやエレキギターが加わって盛り上がっていく。第3話でキング司令が兵士たちにブレイバーンを紹介する場面、第7話でブレイバーンがイサミと共に戦うよろこびをスペルビアに語る場面など、友情や仲間との絆を描くシーンに選曲されていた。
トラック34「Mana/マリーンの俺が転生したらスーパーロボットだった件」は、タイトルどおり、第9話のスミスの転生シーンに使われた曲。曲の後半は「鋼の絆」と同じモチーフが使われている。静から動への転換が気持ちいい曲だ。
トラック35「勇者の血脈」もピアノとオーケストラによる友情と絆を表現する曲。「勇者の帰還」「宿命」「勇者の血脈」には同じメロディが使われており、本作における勇者のモティーフなのだろうと想像できる。
トラック44「アブソリュートズバッシュ、そして〜」は最終話クライマックスのブレイバーン対ヴェルム・ヴィータの対決シーンに使われた。仲間たちの勇気がひとつに融合していくさまが、リズムと管弦楽とコーラスによって描写される。昭和のロボットアニメ音楽とは違ったスタイルで熱い想いを表現した「燃える曲」である。
最後にデスドライヴズのユニークな音楽。
トラック16はずばり「デスドライヴズ」と名付づられた曲。重厚なオーケストラサウンドに妖しいコーラスとシンセサウンドが重なる。「不気味」や「怖い」というより「奇妙」な音楽である。
幹部の機械生命体に付けられた曲は、スペルビアのテーマ「高慢の翼」(トラック15)、ヴァニタスとペシミズムのテーマ「虚栄と悲観の輝き」(トラック26)、クーヌスのテーマ「淫蕩の閃光」(トラック39)、クピリダスのテーマ「強欲の炎」(トラック42)、ヴェルム・ヴィータのテーマ「まことの命」(トラック43)の5曲。
スペルビアはのちにブレイバーンと共闘するので、「高慢の翼」は和風サウンドを混ぜつつもヒロイックに作られている。しかし、残りの4曲はそれぞれに異質。現代音楽的なサウンドや男声・女声コーラス、エキゾティックなリズム、デジタルサウンドなどが組み合わさって、分類不能の「奇妙な音楽」(誉め言葉)になっている。「ロボットアニメの敵はこういう曲」というパターンを打ち破る、挑戦的で前衛的な音楽だ。前にも書いたが、本作の音楽の大きな聴きどころである。
『勇気爆発バーンブレイバーン』の音楽は、燃えるロボットアニメのオマージュに収まらない、意欲的で現代的な作品になっていると思う。その両極にあるのが、昭和のロボットアニメ風の熱い曲とデスドライヴズの奇妙な曲だ。ふたつの音楽は真逆の方向に振り切っている。タローマン風に「なんだこれは!」と言いたくなる。爆発しているのは勇気だけではない。音楽も爆発しているのだ。
オリジナルTVアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」オリジナルサウンドトラック
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納品が始まると、作画修正やリテイク指示三昧の毎日。再三話題にしているとおり、ミルパンセでは今、外(外注やフリー)に撒かず、なるべく社内~社員スタッフで制作しています。そのため、出来の悪い演出指示・作画・美術などは、もちろんリテイク~結局自分で直すことになります。その際スタッフたちに「どこがどうおかしいのか?」「どう修正するべきか?」などを説明するのに、自分が20~26歳までお世話になったテレコム・アニメーションフィルムで受けた指導内容と、その後フリーになってから回った各スタジオ(会社)でお会いした名監督・名アニメーターの方々との仕事の経験まで——その全てが“糧”となっていて、それらのお陰で俺は今、食えている気がします。
テレコムだけではなく、その後のフリー生活でも「巧い人が関わっている作品」を意識的に選んで参加して一つでも多く「巧く効率のいい仕事の“コツ”」を盗み取ろうとして走り回っていました。それらが今、若手の指導に実を結んでいるという訳です。
ただ、自分はフリーで彼方此方のスタジオで楽しく仕事ができた時期があって、本当に幸せだったと思いますが、現状の若いアニメーターたちには社員若しくは固定給で会社に拘束してもらうほうをお勧めしています。その理由は、デジタル作画がメインになりつつある昨今、制作会社と連携を取るかたちで仕事しているほうが、制作体制の改変にも組み込んでもらえるし、新しいツールの情報だって自動的に入ってきますから。
それでも未だに「アニメーターはフリーが基本!」「俺たちの“自由”を奪わないでくれ!」的に頑ななまでに“会社に囲われたくない”主義の方は、それはそれで良いと思います。人それぞれですから。
ただし、憶えておいた方がいいのは、
“原画しか描けない”とか“コンテしか描けない”“ラフな演出指示画をペラペラ入れるだけ”などの「~しかできない」アニメスタッフより、令和の世は“一人でアニメ作品を作れるアニメクリエイター”の方をこそ、「画を動かすことができる才能職」として世間が認知している!
ということ。某動画サイトには1人で作ったショート・アニメが続々上がっているだけでなく、世の芸能人らが続々フリーになって、“お笑い”“料理”“歌”と、己の芸1本で動画投稿し始めたのがその証拠かと。なのにアニメーターはフリーを名乗りながら、会社から発注を受けないとエンタメを作るどころか、画一つ動かせないって……。だから、自分は社内のスタッフたちに、色々なセクションに興味を持つことを促しているのです。
脚本・コンテ・演出・原画・背景・音響・編集~と興味を持った仕事は、自分が知っている限り、なんでも教えてやらせてみています! ここ2~3作は“監督”の指導もしている!
と。せめて、まだ1人制作は無理でも動画制作工程全般に興味を持って働けば、何かの切っ掛けで“クリエイター”になれるのではないかと!
って訳で、現在制作中『沖ツラ』の次作も別の監督を面倒見て、共同監督しています!
2024年12月21日(土)に新文芸坐で『北極百貨店のコンシェルジュさん』を上映します。『北極百貨店のコンシェルジュさん』は西村ツチカさんの同名マンガを映像化した劇場アニメーション。可愛らしくてハートウォーミングな内容で、物語的にもクリスマス前後の鑑賞が相応しい作品です。アニメーションとしても丁寧に作られており、作画的な見どころもたっぷり。作画ファンにもお勧めです。
トークコーナーのゲストは板津匡覧監督と、アニメーターの井上俊之さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。
チケットは12月14日(土)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(『北極百貨店のコンシェルジュさん』情報ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2024-12-21-1
【新文芸坐×アニメスタイル vol.184】 |
開催日 |
2024年12月21日(土)14時00分~16時15分予定(トーク込みの時間となります) |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
一般2400円、各種割引2000円 |
上映タイトル |
『北極百貨店のコンシェルジュさん』(2023/70分) |
トーク出演 |
板津匡覧(監督)、井上俊之(原画)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
今回もコンテ・演出・作画とオープニングとエンディングを楽しく作らせていただきました!
演出に転身したアニメーターで「OP・EDアニメを好き勝手に作るのが夢!」という方に何人も出会いました。むしろ、シリーズの監督は重たいから、ミュージック・クリップくらいのサイズで“自分純度100%アニメ”を作りたいといった具合です。
でも、板垣個人に取ってOP・EDは、自分で監督する作品の“箸休め・余興”枠。曲発注で「こんな作品にしたい~」と本編の指針を語って、それを踏まえた上で各アーティストさんが思い思いの主題歌を作ってくださり、それに自分で本編内容からイメージを膨らませた“画”付けると。つまり、俺にとってはあくまでも“本編ありき”なんです。
たまに、自分が監督じゃない作品のOP・EDアニメーションのみを受ける場合があるのですが、その場合、大抵プロデューサーからの依頼で、監督から直接はなかったような気がします。『化物語』(まよいマイマイ)OPも『鬼灯の冷徹』(OAD)EDも。そもそもそういったOP・EDのみの依頼がきた際は必ず「何で監督がやらないの?」とプロデューサーに訊くくらい、俺に取ってOP・EDは監督がやるのが基本で、本編のコンテが一区切り着いたところで楽しむ、監督業に付いてくるご褒美みたいなモノ。
ここまで何本もやってきてだんだん飽きてきてはいるものの、本編のドラマを90秒で語り切る! やっぱり面白楽しい仕事です。放送をお楽しみに!
って訳で、おやすみなさい!