第111回 何かが始まる予感 ~二十面相の娘~

 腹巻猫です。前回お知らせした横山菁児先生に続いて、「仮面の忍者 赤影」(1967)、『ピュンピュン丸』(1967)などの音楽を手がけた小川寛興先生、『宇宙海賊キャプテンハーロック』(1978)、『銀河鉄道999』(1978)、『サイボーグ009』(1979)などの主題歌・挿入歌を作曲した平尾昌晃先生の訃報が相次いで飛び込んできました。アニメ音楽史に残る名曲を遺した先生方が相次いで天に。寂しい夏です。


 8月2日と3日に池袋の東京芸術劇場で「セーラームーン クラシック コンサート」が開催される。『美少女戦士セーラームーン』誕生25周年を記念したオーケストラ・コンサートだ。『セーラームーン』とオーケストラといえば渡辺俊幸が編曲した「交響詩 美少女戦士セーラームーンR」があるが、今回はそれとは異なる構想による新アレンジ。『セーラームーン』の歴代アニメ、ミュージカル作品から選曲されているというから90年代アニメファンもセラミュファンも聴き逃せない。故・有澤孝紀さんのアニメBGMも演奏されるとか……。
 http://sailormoon-official.com/information/25th_classic_concert.php
 その「セーラームーン クラシック コンサート」にアレンジャーとして参加しているのが三宅一徳。アニメや東映特撮作品の音楽でも活躍する作・編曲家だ。今回は三宅一徳の仕事を紹介したい。

 1963年生まれの三宅一徳は沖縄出身。すぐに東京に引っ越したので東京育ちだ。幼少期からピアノ、オルガンを習って音楽教育を受けたが小学校2年で辞めてしまう。その後、ロック、ポップス、映画音楽、海外TVドラマの音楽など、さまざまな音楽を吸収して育った。少年時代は音楽家より飛行機のパイロットになりたかったという。高校生になり、航空大学を目指そうとしたが視力が低下して断念。小さいころからなじんでいた音楽の道に舵を切りなおした。
 少し回り道をしたが、晴れて東京藝術大学作曲科に入学。純音楽を勉強するいっぽうで商業音楽の世界に傾倒していった。本当は、アカデミックな純音楽よりも、ロックや映画音楽のような商業音楽がやりたかったのだ。
 この東京藝大時代に知り合ったのが、1年先輩にいた佐橋俊彦。『機動戦士ガンダムSEED』や「仮面ライダー電王」の作曲家である。趣味が一致した2人は意気投合して現在まで続く交友がスタートする。2人のエピソードは面白いのだが字数の都合もあるので割愛しよう。
 藝大卒業後、三宅は現代音楽と古典音楽のハイブリッドのようなユニークな音楽活動を始めた。シンセサイザーと邦楽器、クラシックとロック。邦楽器奏者ユニット・箏座のメンバーとして活動した時期もある。そんな中で徐々に映像音楽やオーケストラアレンジの仕事が増えていった。
 実は三宅は、1995年リリースのアルバム「美少女戦士セーラムーンSuperS in Paris」(日本コロムビア)で、一度『セーラームーン』の楽曲をアレンジしている。同じ年に手がけたのがTVアニメ『ぼのぼの』(1995)の音楽。そして、三宅一徳の名をサントラファンに知らしめたのが、2002年の東映スーパー戦隊シリーズ「忍風戦隊ハリケンジャー」の音楽だ。大編成オーケストラに邦楽器。三宅の指向にぴたりとあった編成で繰り出されるダイナミックな音楽は新時代のスーパー戦隊音楽の誕生を印象づけるものだった。
 その後も、「仮面ライダー剣」(2004)、「獣拳戦隊ゲキレンジャー」(2007)、「天装戦隊ゴセイジャー」(2010)と東映特撮作品の常連として活躍。アニメでは『ふたつのスピカ』(2003)、『エリア88』(2004)、『妖逆門』(2006)、『ライブオン CARDLIVER 翔』(2008)などを手がけている。
 オーケストラ、ロック、シンセサイザー、邦楽器。異なる音楽要素を自在に操る三宅一徳の音楽は、ひとつの枠では語りがたい。密林の中に多様な動物や植物が共生するように、多様な音楽が渾然となって自然に共存する現代のクロスオーバー音楽のような印象がある。

 そんな三宅一徳の作品から、今回は2008年に放送されたTVアニメ『二十面相の娘』を紹介しよう。
 『二十面相の娘』は2008年4月から9月まで、全22話が放送されたTVアニメ作品。小原愼司の同名マンガを原作に富沢信雄が監督。アニメ制作はボンズとテレコム・アニメーションフィルムが担当した。
 戦後復興期の日本を舞台に、怪人二十面相の仲間となった少女・美甘千津子(チコ)が二十面相の遺産をねらう怪人や博士を相手に活躍する冒険活劇。幾度も危機に陥りながらも二十面相を信じ、慕い続けるチコの心情が胸を打つ。チコ(声・平野綾)が二十面相を呼ぶ「おじさん」を聞いていると、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスがルパンについていったらこんなふうだったのでは……と想像してしまうのは筆者だけではないだろう。
 三宅一徳の音楽は時代背景に沿ったレトロな雰囲気を醸し出しつつも、それにとらわれず、二十面相のキャラクターにふさわしい変幻自在な表情を見せる。カッコよさ、サスペンス、叙情。冒険活劇の要素を押さえながら現代的なサウンドに仕上げた意欲作だ。
 サウンドトラック・アルバムは2008年9月にランティスから発売された。2枚組63曲収録のボリュームがうれしい。曲数が多いため、収録曲は下記リンクを参照されたい。

 TVアニメ「二十面相の娘」オリジナルサウンドトラック
 https://www.amazon.co.jp/dp/B001DC6RIS

 ブックレットは見開き4ページのみのシンプルなものながら、作曲者のコメント入り。「二十面相号外」と題された投げ込みリーフレットで4人のプロデューサーのコメントも読むことができる。コストを抑えながら必要な情報がしっかり入っている。
 主題歌の収録はなく、全曲、三宅一徳作品で構成。サブタイトル音楽や同一テーマのバリエーションも網羅した、ファンにはうれしい内容である。
 曲順は劇中使用順とは関係なく、曲調重視で並べられているようだ。本編とは別の、サントラだけのアナザーストーリーを音楽で楽しむ構成になっている。
 Disc1の1曲目に配されたのは「華麗なる盗みのテーマ」。本作のメインテーマとも言うべき曲だ。サックスとブラスをフィーチャーした8分の6拍子のジャズ。バックはピアノ、ウッドベース、ドラムスという王道の編成にストリングスが加わる。レトロなビッグバンドの香りを漂わせつつ、演奏は現代風にスタイリッシュ。スリリングで優雅な雰囲気も感じさせるみごとなテーマだ。第1話アバンタイトルで二十面相が天使のオルゴールを盗み出す場面から使用。チコが二十面相の誘いに応じて外の世界へと飛び出していく名場面にも使用されて鮮烈な印象を遺した。
 Disc2の最後にはこの曲のバリエーション「華麗なる盗みのテーマ Not BRASS」が配されて、シンメトリーをなしている。しゃれた構成である。
 二十面相やその仲間たちが活躍する場面には「AcTionN」と題された「華麗なる盗みのテーマ」の変奏が流れる。サントラでは「AcTioN -動-」「AcTioN -動 02-」「AcTioN -迷-」「AcTioN -迷 02-」「AcTioN -静-」と5曲のバリエーションが収録されている。「動」はスマートに軽快に、「迷」はピアノでしっとりと、「静」はフルートとギターをメインにミステリアスに。メインテーマを印象づける巧みな音楽設計だ。
 その「AcTionN -静-」でDisc1が締めくくられ、Disc2は「スリルの風をきって」と題された軽快なジャズナンバーから開幕する。サックスとブラスが華麗に奏でるのはメインテーマとは異なる旋律による二十面相のテーマ。第1話でチコを乗せた二十面相の車がパトカーとカーチェイスを繰り広げる場面に使用された。
 「二十面相 SMOKY」はサックスが二十面相のテーマを奏でるジャズバラード。「二十面相 COOL」では、サックスの代わりにビブラフォンがフィーチャーされている。
 かと思うと、同じ「二十面相」のタイトルがついた曲でも「二十面相/Arranged B-type」はメインテーマのバリエーション、「二十面相 ~香りを残して~」は劇中歌「Bonne Justice」の変奏、「二十面相 Silence」はまた別の旋律と、二十の顔を持つ男のように音楽も変幻自在なのが面白い。
 メインテーマ、二十面相のテーマと並んで印象深いのが、チコのテーマである「チコ-二十面相の娘 one」だ。軽快なリズムに導かれて素朴な笛の音がフォークロア調のメロディを奏でる曲で、チコの活躍場面にたびたび使用された。
 この素朴なの笛の音――クレジットにはケーナ、パンフルート、リコーダーと書かれているが曲ごとにどの楽器かは特定しづらい――が出色で、本作に懐かしさと異国情緒をブレンドしたような独特の空気感を添えている。大団円によく使われた「東の空が光るころ」にも笛がフィーチャーされているし、チコと親友の春華、チコの世話をするメイドのトメさんらがガールズトークを繰り広げる心休まる場面にも、「イスを並べて」「風に吹かれて」「スープを囲んで」など、明るい雰囲気の笛の曲が流れる。
 ライナーノーツの三宅一徳のコメントによれば、自由を求めるものの象徴としてジャズとトラディショナルミュージックの要素を本作の音楽の核に置いたのだそうだ。そのトラディショナルミュージックの部分を代表しているのが、こうしたリコーダー系の笛の曲なのだろう。
 二十面相一味が盗みを働く場面のスリリングな曲も耳に残る。ピアノとパーカッションのリズムが緊迫感を生む「作戦開始 Code-A」、ウッドベースとラテンパーカッションの絡みが秘密の活動を暗示する「作戦開始 Code-B」、ピアノ、ギター、ストリングスだけのシンプルな編成の「合図とともに」など。抑えた曲調が効果を上げている。
 忘れてはならないのが「少女探偵団」と題された一連の曲。少女探偵団とは冒険に憧れる春華が自分とチコとトメさんの探偵活動を妄想して名づけたチーム名。ジャジーで遊び心満点の曲調に仕上がっている。スキャットこそフィーチャーされていないが、雰囲気はアルマンド・トロバヨーリの「黄金の七人」! 少女探偵団はエンディング映像にもメインで取り上げられているのに、劇中では第15話「少女探偵団」と最終話くらいしか活躍の場がなかったのが残念だ。この曲が流れる華やかな場面をもっと観たかった。
 世界大戦の遺産が悲劇を招くシリーズ中盤から後半にかけての展開では、超人的な能力を身につけた怪人やマッドサイエンティストが暗躍を始める。そうした場面に流れるのが「大戦の暗部」「人間タンク」「白髪鬼」「教授」といった楽曲。いずれも、ミステリアスな曲調の中に悲しみを宿しているのが特徴だ。彼らは大戦によって人生を変えられてしまった悲しい犠牲者でもあるのだ。
 本作の音楽の白眉は、実はアクション曲よりも、こうした哀感を帯びた曲ではないかと思う。チコの苦悩を表現するピアノ曲「心の瓦解」や淡々としたピアノの音色に静かな悲しみがにじむ「孤独(Sepia)」、世間の噂とは異なる二十面相の秘めた想いを暗示するメインテーマのアレンジ「巷間の噂」、チコや春華が悲壮な決意を固める場面に流れた「背に雨音が響き」、そして、第6話でのチコと仲間との別れや第14話でのチコと二十面相との別れの場面に流れた、ずばり「別れ」と題された弦合奏の曲。大人びた曲調でチコたちの複雑な心情を表現し、ドラマに深みを与えている。こうした曲が、本作を単なる冒険活劇にとどまらない人間ドラマに昇華させていると思うのだ。
 ボーナストラックに収録された「Bonne Justice」は物語の鍵となる重要な曲である。フランスの詩人ポール・エリュアールの詩「よき正義」に三宅一徳が曲をつけた。劇中では秘密の暗号を宿した歌として登場し、二十面相とチコが口ずさむシーンがある。サウンドトラックに収録されたのはMeriが歌うシャンソン風のバージョン。まるでミシェル・ルグランかフランシス・レイかと思うようなおしゃれでロマンティックなサウンドに仕上がっている。このバージョンは実質的な最終話となった第21話で二十面相とチコとの最後の別れの場面で使用され、フランス映画の一場面のような名シーンを創り出している。

 『二十面相の娘』は、三宅音楽の大人カッコいい一面が聴ける渋い作品である。東映特撮作品のケレン味たっぷりのストレートな音楽や『ふたつのスピカ』のハートウォーミングな音楽とはひと味もふた味も異なる、アクの強い音楽を聴くことができる。ジャズに民族音楽にオーケストラ。異なる音楽の出逢いがダイナミズムを呼び、闇と光の間でもがく人間のドラマを陰影豊かに描き出す。劇中の二十面相とチコの台詞を引くなら「何かが始まりそうな」予感に満ちた、刺激的で心を動かされる音楽だ。

TVアニメ「二十面相の娘」オリジナルサウンドトラック
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111 アニメ様日記 2017年7月9日(日)~

2017年7月9日(日)
アニメイト池袋本店の前で「『世界一初恋 アニメイトの場合』はアニメにならないのかなあ」という話から、「『世界一初恋』の前にやっていたやつなんだっけ。『極悪エロティスト』みたいなタイトルの」「それは『純情ロマンチカ』だ! なんだ、エロティストって。エロいテロリストか!」と会話が展開。そんな日曜の昼。念のため書いておくけど、僕は『世界一初恋』も『純情ロマンチカ』も好きですよ。それから「世界一初恋 アニメイトの場合」はアニメイト池袋本店が舞台になっているらしいです。
 作業をしながら「午後のロードショー」の「シャークネード サメ台風2号」を観る。オンエアでは途中からの視聴だったけど、全編を観たら予想以上の馬鹿映画。しかも、男の馬鹿映画。ブラボー。

2017年7月10日(月)
アニメージュ発売日。今月は「この人に話を聞きたい」はお休み。「設定資料FILE」は『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』。この作品の設定は充実している。デザインそのものもいいし、設定の数も多い。特にニーナがいい。表情もいいし、ポーズもいい。スタッフの愛情が注がれている感じだ。ニーナのラフのポーズ集はどうしても載せたくて掲載した。
 作曲家の横山菁児さんが亡くなられた事を知る。iTunesに「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」を入れてなかったので、改めてAmazonに発注する。

2017年7月11日(火)
SNSで知人に「小黒さん的には『宇宙戦艦ヤマト2199』『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』はどうなのよ」と聞かれたので「『2199』にあったオーラのようなものが『2202』はなくなっている。そのオーラがないから『2202』がつまらないというわけではない」と答えて、さらに「自分の中では、オリジナルの『宇宙戦艦ヤマト』との関係性という意味で『宇宙戦艦ヤマト2199』と『超時空要塞マクロス』の位置づけは近い」と話す。さらに『ヤマトよ永遠に』のアルフォン少尉と『2202』のキーマンの関係はどうなんだろうかと話が転がっていく。説明しておくと、アルフォン少尉の初期名がキーマンなのである。

2017年7月12日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では23位を放映。『ルパン三世PARTIII』44話「ボクたちのパパは泥棒」だった。以下は過去に書いたコラムからの抜粋。
……………………
 これは僕が好きな話でもある。とある街でルパン、次元、五右ェ門のところに、彼らを父親と呼ぶ子どもが現れる。つまり、ルパン、次元、五右ェ門が過去に関係した女性が子どもを産み、その子が転がり込んできたわけだ。身に覚えのあるルパンは、彼らの存在を否定できない。女性に対して堅い次元や、超堅物の五右ェ門まで、指折り数えて、その子が本当に自分の子どもなのか考えるところが、無闇におかしい。劇中では描かれていないが、彼らもやる事はやっているわけだ。ルパン達の私生活の、生臭い面が垣間見えたエピソードだ。
 最初に隠し子が発覚したのはルパンで、その時の次元のハシャギっぷりが凄い。「きたー! きたきたきたきた、ついにきました。ルパンさーん!」と大喜び。俺はいつかこんな日がくると思っていたんだよ、というわけだ。長い事、独身貴族を気取って遊んできたけれど、ツケが回ったきた。彼らが長年遊んできたからこそ成立する話である。少なくとも、脚本の狙いとしては、この話の彼らは20代ではない。
……………………
 キャラクターとしてのルパンファミリー好きとしては、大変に楽しいエピソードだ。いい話がランクインしたなあ。ますます他の順位が楽しみだ。

2017年7月13日(木)
水曜の22時から23時のTOKYO MXはショート番組の密集地帯。『カイトアンサ』『イケメン戦国 時をかけるが恋ははじまらない』『アニュ研!秋葉原アニメ・アミューズメント研究所』『クリオネの灯り』『てーきゅう9期』『ノラと皇女と野良猫ハート』『ラファンドール国物語』の7本立て。録画をまとめて視聴したけど、なかなかカオス。静止画で話が進む『ラファンドール国物語』にはちょっと驚いた。

2017年7月14日(金)
ここ数日は編集作業の大わらわ。自分でページ構成をやっているわけでも、原稿を書いているわけでもないのに、ずっと忙しい。どうでもいいけど、大わらわって「大童」って書くんですね。

2017年7月15日(土)
池袋HUMAXシネマズで『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』を観る。サトシとピカチュウの出会いから描く内容で入りやすかった。僕的にはもっともっと話がシンプルでもよかった。副監督で、絵コンテでもクレジットされている矢嶋哲生さんのカラーも出ていたと思う。

第523回 基本、出たくありません

自分は出たがりではないのです!

 大前提として、TVに出たがりだったりSNSで出たがりな方々を非難する気はもーとーありません。むしろその度胸には敬服するばかりで、俺にはその度胸も度量もないだけ。かなり前にもここで説明したとおり、作品の宣伝だったり、その他自分だけ出ないわけにはいかないような場合を除き、基本写真取材もNGにさせていただいてます(海外とかで不意に撮られたりしましたが)。地元名古屋の友人なら、板垣がかなりの「照れ屋」なのを皆知ってると思います。小学生の頃、友人の何人かが「天○クイズ」(1967〜2004年/CBC)に出演したことがありました。それは小学生が何人かのグループで申し込む視聴者参加型クイズ番組で、当時そこに出た友人の1人から「伸くん、誘ってあげなくてゴメンね(笑)」と自慢げに言われたんですが、正直羨ましくもなんとも思わなかった記憶があります。
 でもまあ我々昭和生まれにとって、TVや雑誌は絶対権力! TVに出たことがあればタレント気取り。本や新聞で取り上げられたりすれば、それを自慢するためにそれを持ち歩く。そーゆー友人、何人もいました。度胸のない俺の場合、自分が関わった作品は「見て〜」と電話やメールしたりしますが、己自身が出演した番組とかは誰にも教えません、恥ずかしいから。以前某○HKで「ラノベのアニメ化」云々の特集(ホラ、特集タイトルすら憶えていない)に出ざるをえなかった時、それも親姉弟にすら伝えていなかったのに、山形の母方の従兄弟から「伸くん、TV出とった?」と。ぐぁ〜

見られたくなかった〜っ!!

と悶えたもんです(汗)。いや、本来仕事絡みでカメラを向けられるのは光栄なこと。それが分かってても苦手は苦手。というわけなので、監督としての責任感のみで、頑張ってしゃべりに出てきたとしても、けして「格好よい出で立ち」も「面白いお話」も期待しないでください。板垣より。

110 アニメ様日記 2017年7月2日(日)~

2017年7月2日(日)
事務所に篭もって「この人に話を聞きたい」取材の予習でDVDを観る。あれとかこれとか『ビーストウォーズメタルス 超生命体トランスフォーマー』とか。予習とはあまり関係ないけど、先日途中まで観た『僕だけがいない街』をラストまで観る。それで気がついたのだけど、僕は雛月加代が助かったところで満足して、その後の話数を観ていなかったようだ(最初の数話は二度か三度ずつ観ているのに)。誰に対して申し訳ないのかよくわからないけど、申し訳ない気持ちになった。主人公の藤沼悟が十数年眠り続けた後のシリーズ終盤は、それまでと手触りが違っていて新鮮だった。

2017年7月3日(月)
午前中は取材の予習の続き。昼から取材。「この人に話を聞きたい」の第百九十五回は音響監督の岩浪美和さん。どんな取材になったのかは「アニメージュ」9月号が発売されるまでのお楽しみ。

2017年7月4日(火)
録画で「ルパン三世ベストセレクション」の第1回を観る。第1シリーズ、第2シリーズ、第3シリーズから人気投票で選ばれたエピソードを放映するようだ。昨夜の放映は24位の第1シリーズ3話「さらば愛しき魔女」だった。これは渋い話がきたなあ。他の23本も渋めの話が多いのだろうか。楽しみだ。
 取材には間に合わなかったけれど、『超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズリターンズ』DVDのコメンタリーを聞く。出演者は岩浪さんとキャストの方々。これが猛烈に面白かった。言いたい放題で「そんなことまで言って大丈夫か」と思うほど。アニメのコメンタリーの中でも傑作だろう。特に1話はコメンタリーを聞いてから本編を観たら面白さが倍増。

2017年7月5日(水)
中野で佐藤順一さんの取材。取材に向いている喫茶店が見つからなかったので、カラオケBOXで話をうかがった。何の作品についての取材なのかは、掲載される本がまだ発表になっていないのでここにも書けない。誰も観たことのないアニメについての取材である。取材の帰りに、まんだらけ中野店によってアニメ雑誌やアニメムックの古本をチェック。今は制作プロダクションが刊行して、イベントなどで販売する資料集も多いのだけど、まんだらけにはそういった書籍も置いてあった。つまり、一般書店で購入できない本を売っていたのだ。もう少しで数万円分をまとめて買ってしまうところだったけれど、計画を練ってから再び来ることにした。少しは僕も大人になった。事務所でボロボロになった「アニメージュ」を一冊だけ買い直す。

2017年7月6日(木)
夏に出す書籍の特典小冊子に、ある作品の制作資料を相当にマニアックなかたちで収録できることになった。自分でも楽しみ。それにしても今週は具体的なことが書けない話題が多い。ごめなさい。
 7月5日深夜の『天元突破グレンラガン』再放送の枠内で、錦織敦史監督、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀さんの新作『ダーリン・イン・ザ・フランキス』が発表になった。TRIGGER&A-1 Pictures共同制作だそうだ。面白い顔ぶれだ。  そして、7月6日には岡田麿里さんの監督作品『さよならの朝に約束の花をかざろう』、山賀博之監督&キャラクターデザイン・貞本義行さんの『零世紀 エメラルダス』。それから『プリセンスチュチュ』のBlu-ray化も発表される。岡田麿里さんには「自分の作品」をやってほしいと思っていたので、監督作品は嬉しい。

2017年7月7日(金)
朝から新番組の1話をガンガン観る。『最遊記RELOAD BLAST』はなんだか懐かしい。『アクションヒロイン チアフルーツ』は丁寧な作画が好印象。午後、テレビをつけたら「午後のロードショー」で「シャークネード サメ台風2号」という映画をやっていた。腰が抜けるほど豪快な馬鹿映画で見入ってしまう。後日、改めて観よう。「午後のロードショー」は毎日録画しているのだ。

2017年7月8日(土)
夕方から、片渕須直監督と『この世界の片隅に』イベント打ち合わせ。アニメスタイルのトークイベントはほとんど事前の打ち合わせはしないし、『この世界の片隅に』イベントではこれが初めて。具体的なトークの内容ではなく、方向性の再確認をした感じ。

第522回 放映開始、9期!

『てーきゅう』第9期、放映スタート
今回エンディングがあります!

 曲を聴いた時「あ、面白い」と思って、どーせなら変なことやろーと絵柄をリアルにしてみました。実はいつぞやこの連載でだいぶ前(第386回?)に描いたリアル版イラストをスタッフに渡して描いてもらったんですが、作監・木村博美さん(まだ10代!)の手によりさらにリアルに(笑)! 『ベルセルク』でも十分に発揮されたデッサン力がここでも活かされてます。彼女は一旦任せると、とにかく考えて描いてくれるから安心。第8期のうどん子オープニングのラスト、まりもの頭上にのっかるかまぼこが両サイドがかじられたパンツ型になってたのは、木村さんのアドリブです。そしてOPや本編も演出・豊島英太くん、総作監・吉田智裕くんはじめ、スタッフは全体的に新人がメインにくり上げられてる感じでしょうか。この調子で板垣からコンテも奪っていく若手が現れるのもそんなに遠くない未来かもしれません。あ、念のため

EDが付いても本編尺(OP・ED抜き)は90秒と変わらず!

です。最悪、再放送などでEDをカットすることがあっても、ちゃんと今までどおり2分枠でいけますから。まあなんにしても第9期、でもって5周年の『てーきゅう』! ここまで来れたのはあくまで結果であって、計算してたわけではないんですが、少なくとも俺の場合単純な話で、

喜んでくださる方たちがいるなら
できる限り続けよう!

と思ってたのは確か。だって気取ったところゼロで気軽に観れる『てーきゅう』が好きだから、断る理由が皆無でしょ? 自分が作りたいのは何かの賞をとる高尚なアニメではなく

残業帰りのサラリーマンがシャワー浴びて
ビールに枝豆で観れるアニメ

ですから。あと『てーきゅう』って「人間が追求すべき幸せとは何か?」というやや哲学的なテーマを感じてます。これは冗談でもなんでもなく、ルーツ先生の原作を読んでると

結局、人間たいがいのことがどーでもいい!!

と思えてくるんです。たとえそれ程笑えないギャグであっても、それを読んでる己自身のくだらなさ、しょーもなさに笑いがこみ上げてきます。要は人間ってそんなに偉くないと。けして作者が読者を馬鹿にしてるのではなく、読者自身に「あ、俺(私)馬鹿でいいんだ!」と気づかせてくれ、

もっとリラックスして生きれば周りはそんなに敵ばかりじゃない!

と教えてくれる。それが「てーきゅう」です。アニメもそれを目指して10期、11期と続けていきたいと考えてます。

第110回 凛々しく、たおやかに 〜機動戦士ガンダム MS IGLOO〜

 腹巻猫です。『宇宙海賊キャプテンハーロック』『聖闘士星矢』等の音楽で活躍された横山菁児先生が7月8日に亡くなりました。2014年に広島のご自宅にうかがってお話を聞いたのが、お会いした最後になりました。残念です。心より哀悼の意を表します。


 2003年に東映スーパー戦隊シリーズ『爆竜戦隊アバレンジャー』の音楽を羽田健太郎が担当したとき、4人の作曲家からなる作曲家チーム「ヘルシー・ウィングス」を編成して共同で作曲にあたった。そのとき、東京音楽大学出身の若手作曲家3人をチームメンバーに抜擢している。1人は前回紹介した山下康介。もう1人は『侍戦隊シンケンジャー』や『魔法つかいプリキュア!』などで活躍する高木洋(本連載の第58回で紹介)。3人目が大橋恵である。  今回は大橋恵が手がけた『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の音楽を紹介したい。

 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』は2004年から2006年にかけて発表されたサンライズ制作のフルCGアニメ作品。1話30分のフォーマットで作られたミニシリーズである。2004年に第1期「1年戦争秘録」全3話がバンダイミュージアムで限定上映され、2006年に第2期「黙示録0079」全3話がOVAとして発売された。2008年には続編『機動戦士ガンダム MS IGLOO 2 重力戦線』全3話がOVAとして発売されている。
 『機動戦士ガンダム』(1979)と同じ1年戦争の時代を背景に、新兵器開発に携わるジオン公国の軍人たちを描いた異色の作品だ。「ガンダム」のタイトルがついているのにガンダムは1カットしか登場しない。戦争の前線ではなく、兵器開発の現場に焦点を当てた発想がうまい。ジオン公国側に立って描かれるドラマも新鮮で、観ているとついジオンに肩入れしてしまう。
 各話で描かれる兵器は、歴史の表舞台には登場しない試作機や大量生産が見送られた失敗作ばかり。技術者とテストパイロットを中心に描かれる、苦い挫折と報いのない闘いの物語なのだ。今西隆志監督は本作を「挫折する『プロジェクトX』」と表現したそうだが、むしろ、松本零士の「戦場まんがシリーズ」のような味わいがある。

 本作の音楽を手がけたのは大橋恵。1975年生まれの女性作曲家である。
 大橋恵は広島県呉市出身。実家はレコード店。レコードは試聴ができるので、子供の頃から音楽は聴き放題だった。エレクトーンを学び、中学生時代から自分で曲をアレンジするようになる。作曲家を志して東京音楽大学に進学。東京音大で映像音楽の作曲家をめざす学生は作曲指揮専攻の「映画放送音楽コース」を選ぶことが多いが、大橋は「芸術音楽コース」を選択。池辺晋一郎に師事した。もともと映画音楽に興味があったが、高校時代の恩師から「純音楽を学んでおいたほうが勉強になる」とアドバイスされたためだという。とはいえ池辺信一郎も映画音楽をたくさん手がけているので、映画音楽の考え方や現場も教えてもらうことができた。
 大橋の師匠にあたる作曲家がもう1人いる。『GS美神』『機動戦士ガンダムSEED』『仮面ライダー電王』などの音楽で知られる佐橋俊彦である。エレクトーンの先生が佐橋俊彦と知り合いで、その縁で佐橋のアシスタントを5年ほど務めた。池辺信一郎と佐橋俊彦。映像音楽の最高の師のもとで学んだことが大橋恵の財産になった。
 その大橋が初めて単独で1本の作品を手がけたのが『機動戦士ガンダム MS IGLOO』である。いわゆる「本格的デビュー作」。しかし、デビュー作にありがちなぎこちなさや硬さはみじんもない。もう第1作から傑作。歴代ガンダム音楽の伝統を継ぐ、堂々たるスコアを書いている。
 大橋恵の作風を評する言葉でよく聞くのが「男性以上に男らしい」というフレーズ。豪快でダイナミックなオーケストレーションに誰もが驚く。筆者も『MS IGLOO』の音楽を聴いたとき、サントラファンのツボをつく音づくりに一発で魅せられてしまった。
 しかし、その感触はやはり男性作曲家のものとは微妙に違う。宝塚歌劇の男役が発する、女性が演じる男性ならではの凛々しさ、清々しさのようなものが、大橋恵の音楽にはあると思うのだ。
 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』のサウンドトラック・アルバムは、公開時に19曲入りのものがバンダイミュージアムで限定販売されていた。2005年4月に、31曲入りの拡大盤がビクターエンタテインメントより発売され、全国で買えるようになった。2008年には「重力戦線」用の追加録音を収録したサウンドトラックも発売。「重力戦線」のサントラは通常版と特装盤の2種類があり、特装盤には1作目のサントラが同梱されている。これから買おうという方は、「重力戦線」特装盤がだんぜんお得である。
 今回は、31曲入りの「機動戦士ガンダム MS IGLOO ORIGINAL SOUNDTRACK」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. 「603」 のボレロ
  2. 新月の中
  3. 宇宙の進軍
  4. 輔(かまち) 其ノ弐
  5. 堅忍不抜
  6. 激突警報
  7. ターニングポイント
  8. 進出ス!
  9. まだか?
  10. 降ろし方始め!
  11. 舫解ケ
  12. Z.w.P.A
  13. 哀しみの鉄槌
  14. 死守セヨ!
  15. 機動戦
  16. 失探
  17. 決戦兵器
  18. 感度かすかに
  19. 上陸の夢
  20. 重い夕陽
  21. 柵越えのメリーさん
  22. 遭遇
  23. オン タイム
  24. 蜃気楼
  25. ある技術士官
  26. 続航セヨ
  27. 「帰航ヲ祝ス」
  28. 記載事項なし
  29. 流星
  30. 半旗たなびく
  31. 時空(そら)のたもと 〜 Full Ver.-MS IGLOO 主題歌-(歌:Taja)

 本アルバムの初回盤は、透明プラケースではなく、モスグリーン(ザク・カラー)の不透明のプラケース入り。ケースの表面には黄色いジオンのマーク。裏面は劇中の一場面を捉えたCGイラストのステッカーが貼られている(もしかしたらこっちが表なのだろうか)。曲目は帯に表記。ジオン軍の兵器の装甲をイメージしたような凝ったパッケージである。
 曲名のつけ方もユニークだ。「進出ス!」などの電信文風表記や「降ろし方始め!」などの命令形のタイトル。曲名だけで場面が目に浮かぶようなインパクトがある。
 トラック1「「603」 のボレロ」は本作のメインテーマ。「603」とは新兵器の試験を任務とするジオン軍の部隊、603技術試験部隊のこと。物語はこの603部隊を中心に展開する。
 曲調はボレロ。「ラテン民族的なスピリットを表現したい」という今西監督のリクエストに応えたものだ。ベースとスネアドラムのリズムの上に金管と弦のメロディ。勇壮さよりも静かな決意や悲壮感を感じさせる曲調である。
 ガンダムの歴史上でジオン軍が連邦軍に敗れることは決まっている。しかし、音楽は敗戦に向かっていく暗さよりも逆境の中で努力する人間の姿を描こうとしたという。ひとつの目標に向けて力を尽くす人間の意地が伝わってくるような胸にしみるテーマだ。
 トラック2「新月の中」は弦楽器を中心にした不安な曲。第1期第1話「大蛇はルウムに消えた」のアバンタイトルで宇宙空間に603部隊の試験支援艦ヨーツンヘイムが登場する場面に流れている。  トラック3「宇宙の進軍」はジオン軍の快進撃を表現するかのような明るいマーチ。
 続くトラック4は「輔 (かまち) 其ノ弐」と題された弦楽器による沈痛な曲。1曲前のマーチと対照的で、期待とは異なる戦場の現実を突き付けられたような哀感がただよう。
 トラック5「堅忍不抜」では重いリズムと上下動する弦に重なる金管群のメロディが苦しい闘いを描写する。リズムとカウンターメロディの使い方がうまい。第1期第1話のクライマックスで使用された印象深い曲だ。
 トラック6「激突警報」は、緊迫した状況を描写する短いサスペンス曲。第1期第2話「遠吠えは落日に染まった」で地上に降りた603部隊が連邦軍と遭遇する場面に流れている。
 トラック7「ターニングポイント」はメインテーマのアレンジ曲。第1期第1話でジオン艦隊と連邦艦隊が交戦する場面に流れた。悲壮感を帯びた曲調が兵士たちの勇壮さとともに戦争の虚しさを描き出す。大橋恵の持ち味が発揮された秀逸な曲だ。
 次のトラック8「進出ス!」は、第2期第1話「ジャブロー上空に海原を見た」のクライマックスなどで使用された燃える曲。打ち込みを交えたスタイルながら、流麗なメロディと緊迫したリズムで宇宙世紀時代の接近戦を鮮やかに描き出す。ここでも、勇壮さだけでなく哀しみの感触が胸に刺さる。
 後続の楽曲も聴きごたえがある。ピアノの淡々としたリズムが焦燥感をあおるトラック9「まだか?」、モビルタンク・ヒルドルブと連邦軍との死闘場面に使用されたトラック14「死守セヨ!」、モビルスーツ・ヅダの決死の宇宙戦シーンに流れたトラック15「機動戦」、哀感を帯びた美しいメロディのトラック18「感度かすかに」など。劇中のニュース映画のBGMなどを挟んでメリハリをつけた構成も巧みで、飽きずに聴けるアルバムになっている。
 アルバムの白眉はラスト前に置かれたトラック30「半旗たなびく」。毎回のエピローグで、603部隊のオリヴァー・マイ中尉が技術試験観測の結果を報告書にまとめる場面に流れた曲だ。試験結果は失敗だったり、テストパイロットの死を伴っていたりと、いつも苦い余韻を残す。メインテーマの哀しみを湛えた変奏がオリヴァーの気持ちを代弁している。本作を象徴する曲である。最後に主題歌「時空のたもと」で締めくくる流れもいい。
 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の音楽は、戦場の人間ドラマにフォーカスした音楽である。愁いを帯びたメロディが兵士たちの苦悩を、緊迫した曲調が激戦の中の感情の高ぶりを表現する。情感とスケール感は、そうそうたる作曲家が手がけた歴代ガンダム音楽と比べてもひけをとらない。

 本作で実力を認められた大橋恵は、TVアニメ『うた∽かた』(2004)、『トランスフォーマー ギャラクシーフォース』(2005)、『ザ・サード 蒼い瞳の少女』(2006)、『BLUE DRAGON』(2007)などを立て続けに担当。スーパー戦隊シリーズでも『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)、『特命戦隊ゴーバスターズ』(2011)を担当して“凱旋帰国”を果たした。ほかにも『夢色パティシエール』(2009)、『ドラゴンコレクション』(2014)などの作品がある。
 アクションものを多く手がけ、ダイナミックな作風が注目される大橋恵だが、自身は『うた∽かた』のような日常性のある作品のほうが書きやすいそうだ。女性らしい目線と男性的カッコよさをあわせ持った、凛々しくたおやかな音楽が大橋恵作品の魅力。もっともっと活躍し、評価されてほしい作家である。

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109 アニメ様日記 2017年6月25日(日) ~

2017年6月25日(日)
トークイベント「第132回アニメスタイルイベント アニメをもっと楽しむための撮影講座2」を開催。今回のイベントでは、こちらから泉津井さんに「基本中の基本」から話してもらうようにお願いしており、実際にアニメの撮影の基本についてきっちりとお話ししてもらえたので、その意味では成功。ただ、「応用編」については時間が足りず、泉津井さんが話したかったことを全て話してもらうことはできなかった。それについては次の機会に。それにしても、客席に業界の方が多かったなあ。

2017年6月26日(月)
3月に始まった深夜アニメが次々と終了。片っ端から最終回を観る。
 午後は外出。30年以上もお世話になった方が定年になったと聞き、中野の東映アニメーションに。90分ほど世間話。長いお付き合いだけど、こんなにたっぷりと話をしたのは初めてかもしれない。ササユリカフェさんに行って、 「小池健監督作品『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』テレコムスタッフの手仕事展」をチラと覗いてから、吉松君との打ち合わせに。

2017年6月27日(火)
立川シネマシティで『BLAME!』の【極上爆音上映】を鑑賞。ちなみに劇場で『BLAME!』を観るのはこれで二度目。前回はお話が気になって途中から音響に気持ちが行かなかったのだけれど、今回は音を体感するのが目的だった。で、当たり前すぎるくらい当たり前の感想になってしまうけれど、爆発関係の音が凄かった。ストーリーの印象が変わってしまうくらい凄い。例えば、あるシーンにおける主人公が放つ銃の威力が、通常の音響の5倍くらいに感じられた。3DCGの質感と音響が合っているのもいい。

2017年6月28日(水)
『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』をバルト9で観る。確か午前8時30分からの回だったはず。こんな時間なのにお客さんはそこそこ入っていた。皆さん、映画を観てから出勤するのかな。ライバル的な立ち位置でアンジェリーナ゠クドウ゠シールズという少女が出てきて「あれ? このキャラクターはTVシリーズにいたっけ?」と思って映画を観た後で確認した。TVシリーズ『魔法科高校の劣等生』は原作7巻「 横浜騒乱編〈下〉」までの映像化で、今回の『星を呼ぶ少女』は原作11巻「来訪者編〈下〉」の後の話。そして、アンジェリーナは原作では9巻「来訪者編〈上〉」で初登場しているらしい。アニメで登場したのは『星を呼ぶ少女』が初めてだったのだろう。原作ファン向け作品らしい思い切った作りだ。むしろ、アンジェリーナを「今までも出ていたキャラクター」としてきちんと描けているところが面白いと言うべきか。パンフレットは完売しており、購入できなかったのだけど、そのあたりにも触れられていたのだろうか。アンジェリーナ以外についても「あれ?」と思ったところがあった。機会があったら確認したい。

2017年6月29日(木)
午前1時に事務所へ入って(タイプミスではなく、本当に午前1時)、昼までデスクワーク。午後は三鷹の森ジブリ美術館に。目当ての企画展示「食べるを描く。」では、ジブリ作品の劇中の食事シーンを原画とともに紹介。改めて宮崎駿作品の「セルの塗り分けによる表現」の巧みさに感心した。土星座の上映は『ちゅうずもう』。大変に出来がよくて感心。お客さんの反応もいい。カフェ「麦わらぼうし」では企画展示に合わせた新メニューがあり、その中から、お城のベーコンエッグ(パン付き)をいたただく。美味しかったんだけど、『ハウルの動く城』劇中のベーコンエッグのようにベーコンが分厚いわけではなかった。あれをお店でだすのは現実的でないのかもしれない。そのうち、自分でやってみよう。

2017年6月30日(金)
仕事の合間に、新文芸坐でスウェーデンの実写映画「幸せなひとりぼっち」を観る。Twitterで本郷みつるさんが「激しくオススメ」していたのがきっかけで観る気になった。長年勤めた会社を突然解雇されて、自殺しようとする老人の物語。回想で描かれた亡き妻との出逢いがよい。本郷さんは「観終わると、ちょっといい人になります」と言っていたけれど、その通りの映画だった。

2017年7月1日(土)
試写会で『メアリと魔女の花』を観る。スタジオジブリ出身のスタッフが、ジブリのスタイルで制作した作品である。どうしても、ジブリ作品や宮崎駿監督作品と比べられるはずで、その意味において不利な作品である。僕もちょっと厳しめの感想を抱いてしまった。スタジオジブリ出身のスタッフが作ったと思わなければ「大変な力作だ」と素直に思ったはずだ。
 試写会は上映の後で、背景美術会社「でほぎゃらりー」の株主である川上量生さん、庵野秀明さん、西村義明さんの鼎談があった。鼎談の内容はでほぎゃらりーの成り立ち、アニメの背景美術について等。

オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95
BONES NIGHT 『アクションアニメ』はいいぞ!」


 7月29日(土)開催のオールナイトは、BONES関連作品を集めたプログラムだ。上映するのは『ストレンヂア 無皇刃譚』『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』『COWBOY BEBOP 天国の扉』の3本。いずれも見応えたっぷりのアクション映画だ。
 トークコーナーでは、公開10周年を迎えた『ストレンヂア 無皇刃譚』にスポットを当てる。『ストレンヂア 無皇刃譚』はハードな、そして骨太の時代劇であり、BONESの人物アクションの集大成とも言えるフィルムだ。トークのゲストは南雅彦プロデューサー、安藤真裕監督を予定。前売り券はチケットぴあと新文芸坐の窓口で、7月8日(土)から発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95
BONES NIGHT 『アクションアニメ』はいいぞ!

開催日

2017年7月29日(土)
開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5:30(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

南雅彦さん(プロデューサー)、安藤真裕監督(『ストレンヂア 無皇刃譚』監督)、
小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『ストレンヂア 無皇刃譚』(2007/102分/35mm)
『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(2005/105分/35mm)
『COWBOY BEBOP 天国の扉』(2001/114分/35mm)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

108 アニメ様日記 2017年6月18日~

2017年6月18日(日)
アヌシー国際アニメ映画祭で『夜明け告げるルーのうた』が長編部門クリスタル賞(グランプリ)を受賞、『この世界の片隅に』が審査員賞を受賞。日本人の作品が長編部門クリスタル賞を受賞したのは1995年の『平成狸合戦ぽんぽこ』以来で、22年ぶりだそうだ。これは嬉しい。  録画したDlifeの『X-ファイル2016』で『ファイアボール』のステーションIDを確認。3DCGのTVアニメ『ファイアボール』の新作映像である。ステーションIDは2種類あったけど、あっいう間に終了。『ファイアボール』の旧シリーズを観直したくなった。
 同じく録画で、チャンネルNECOで放映された『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』を観る。1991年放映の『じゃりン子チエ』第2シリーズで、関東地方では未放映。僕も動いている映像を観るのはこれが初めてかもしれない。映像を観るのは初めてかもしれないけれど、当時、「アニメージュ」で記事を担当した。1話が始まった途端に、セル撮した記憶のあるカットがあった。このシリーズの各話に片渕さんが参加しているんだけど、ネットの情報によると、序盤は絵コンテだけの参加なのね。

2017年6月19日(月)
早朝、24時間営業の山下書店大塚店で『ユーリ!!! on ICE』公式ファンブックと公式ガイドブックを購入。早めに買っておかないと買い逃すかもしれないと思ったのだ。ところで、アニメムックをファンブックと呼称するのはいつから定着したのだろうか。文句をつけるわけではないけれど、気になる。
 カップヌードルCM「HUNGRY DAYS 魔女の宅急便 篇」が公開された。緻密な背景と凝った光の処理。流行のスタイルを、さらに過剰にした画作りだ。作り手が映像の完成形を設定して、それを作り切っているという印象。

2017年6月20日(火)
『進撃の巨人』Season 2の後半を一気観。きちんと検証したわけでなく、印象だけで書いてしまうと、物語の語り方も、画作りも前シリーズから少し変わっているのではないか。物語についてはピリピリした感じが軽減されたのではないか。画作りに関しては、意識して変えたのだろうと思う。『正解するカド』も最新話まで、数話分まとめて観る。シリーズ終盤にきて、お話がキャラクター寄りになった。悪くはないけど、ちょっと意外だった。

2017年6月21日(水)
『エロマンガ先生』11話「二人の出会いと未来の兄妹」を観る。竹下良平監督が絵コンテ、演出を担当した回で、とにかくよくできている。それから1カット、とんでもない構図があった。  仕事の合間に「サムシネ!」第267回 1983年の吉松孝博(6)で話題になった、学生時代の吉松さんの写真が載った記事を探すため、当時の「アニメージュ」「マイアニメ」「ジ・アニメ」をひっくり返すが見当たらない。それを探す過程で、吉松さんが初めて表紙を描いたアニメ誌を発見する。

2017年6月22日(木)
TOKYO MXの再放送で『母をたずねて三千里』7話「屋根の上の小さな海」。ロッシ一家の引っ越しと、屋根の上でのフィオリーナとの交流。印象的なエピソードだし、高畑勲監督が『母をたずねて三千里』で絵コンテを担当した最後のエピソード。キャラクターの感情の流れもよいし、「いい画」が山ほどある。
 午後は井上デザインさんで夏に出る書籍の打ち合わせ。

2017年6月23日(金)
Amazonから「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標 原画集」が届く。最初に『次元大介の墓標』を観た時に「あ、このあたりカットの作監修正原画が見たい」と思った原画がきっちりと載っていて、満足。具体的に言うと、見たいと思ったのは、S.25/C.035のルパンのアップなど。

2017年6月24日(土)
公開初日早朝の新宿ピカデリーで『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第二章 発進篇』を観る。アクションの見せ場が何度もあって、その意味でサービス満点。発進シーンを含めて押さえるべきところをちゃんと押さえているのも嬉しい。1978年の『さらば宇宙戦艦ヤマト ―愛の戦士たち―』で、いくらなんでも地球の復興が早すぎないかと思ったのだけど、その疑問が40年近く経って解消された。『宇宙戦艦ヤマト2199』との比較で言うと、『2199』にあったオーラのようなものがなくなっている。女子クルーを何人も降ろして「女の子が大勢乗っている艦」でなくしたのも、オーラがなくなった理由のひとつだろう。オーラがなくなっているからといって、作品に魅力がなくなっているわけではない。

「第131回アニメスタイルイベント 長濱博史、THE REFLECTIONを語る!!」トーク抜粋

 TVアニメ『THE REFLECTION WAVE ONE』はアメコミの巨匠であるスタン・リーと共に『蟲師』『惡の華』で知られる長濱博史が原作を務めている作品だ。7月から放映開始となる本作だが、どういった経緯で制作されることになったのか、どんな内容の作品なのか等はまだ公になっていなかった。
 その一部が、2017年5月21日(日)に開催されたトークイベント「第131回アニメスタイルイベント 長濱博史、THE REFLECTIONを語る!!」によって語られた。以下はそのトークの抜粋である。

■「THE REFLECTION WAVE ONE」データ

2017年7月22日(土)より放映開始
NHK総合テレビにて、毎週土曜日午後11:00~11:25(全12回)

原作:スタン・リー 長濱博史
監督:長濱博史
脚本:鈴木やすゆき
音楽:トレヴァー・ホーン
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
EDテーマ:9nine
アニメーション制作:スタジオディーン
制作・著作:THE REFLECTION製作委員会
©スタン・リー, 長濱博史/THE REFLECTION製作委員会

公式サイト
http://thereflection-anime.net/


■イベントトーク抜粋


●アメコミを日本のアニメにする夢

―― 『THE REFLECTION』の企画はどんなかたちで成立したのでしょうか。

長濱 元々自分はマーベル作品の大ファンなんです。それこそ日本のマンガより好きなくらいです。そういうことをアメリカで開催された日本アニメのイベントに呼ばれた際に言い続けていたら、向こうの方が「そんなに好きならスタン・リーに会おうか」と言って、機会を設けてくださって、そこから企画が動き出しました。

―― スタン・リーさんの印象は。

長濱 とても明確なビジョンを持っている、明晰な人だなと感じました。その一方で、アメコミの神様のような存在でありながら、こちらと対等にやろうとしている感じがありました。これは凄いことです。通常この手の大御所から感じられる近寄りがたさというものは一切感じませんでした。それから、今年で94歳ですが、まだまだ若いです。

―― 初めて会った時から企画が動いたのですか。

長濱 実は今回の『THE REFLECTION』は2回目の企画なんですね。1回目は『蟲師』の監督をするより前、10年以上昔になります。1回目の時がスタンと初対面で、その時はその場で決定しました。スタン自身が以前から日本と組んで幾つか企画をやってみたいと思っていたんだと話してくれました。アメリカでは基本的に、「やる?」と聞かれて「やる」と即答すれば企画が始まりますし、「考えます」と答えれば企画は流れます。僕がその場で「やります」と言ったら企画が始まった、ということですね。

―― 2回目の企画となる今回の経緯は。

長濱 今回はあちらから、「前回は企画が流れてしまったがもう一度やってみないか」と打診がありました。これももう4、5年前の話です。1回目の企画の時はスタンが積極的に、「日本とやるのだから日本とアメリカのいいところを混ぜたい」と主張していて、日本を舞台にし、さらに『パワーレンジャー』のような日本的なヒーロー像を下敷きにキャラを作っていたんです。でも今回はアメリカを舞台にアメコミをアニメにしようということで、日本の要素は削ろうとはしていないですが、積極的に取り込むということもしていません。アメコミをアニメーションにしたいというのが、今回の企画の成り立ちなんですよ。ブルース・ティムの『バットマン』のような例外はあるんですが、アメコミをきちんとアニメーションにした作品というものは存在しないんです。アメリカはどうしてもカートゥーン(アメリカ風の児童向けアニメーション)から抜け出せない。ちゃんとアメコミをアニメーションで観たいという思いが自分の中にあったんですね。

―― 「これこそがアメコミ」というアニメを作りたかった。

長濱 そういうことです。

―― 長濵さんが、以前からずっと言い続けていたために企画が成立したと受けとめてよいでしょうか。

長濱 そうですね。僕は言い続けていれば叶うとずっと思っているんです。『蟲師』もそうです。アニメ化は難しい企画でしたが実現した。『蟲師』も夢が実現した例です。この『THE REFLECTION』もそうですね。

馬越 普通は願っていれば叶うというものでもないんですが、長濱さんの場合、既に動いているんです。自分から呼び込んでいるという表現が正しいかと。

長濱 願うだけでは叶いませんが、口にすれば叶いますよ。時間差はあるかもしれないし、違ったかたちで叶うかもしれない。それでも、自分の好きという気持ちが相手に影響を与えているわけですよ。この影響を及ぼすというのが、好きということを口に出すことの力なんです。話はかなり戻りますが、私が初めてアメリカのイベントに参加したきっかけも、ずっとアメコミが好きだと言い続けていたところ、同時多発テロの影響でアメリカの日本アニメのイベントのゲストに欠員が出たので参加してみないか、という話が回ってきて掴んだものだったんです。

馬越 長濱さんは人の10倍ほど口に出していると思います。

長濱 今回音楽をトレヴァー・ホーンさんというイギリスの音楽プロデューサーにお願いしているんですが、これもスタジオディーンの野口(和紀)さんとこの作品が動き出す前から、いつかトレヴァー・ホーンの音楽でアニメをやりたいね、と語り合っていたところ、この企画が動き出してから彼とのパイプが見つかり、それで依頼したんです。向こうがその場で快諾してくれたことには驚きました。


●『THE REFLECTION』で描きたいもの

―― トレヴァー・ホーンさんがプロデュースした楽曲に合わせた新しいPVを拝見しました。独特の色使いだと感じましたが、アニメ本編でも同じようになるのでしょうか。

長濱 そうですね。その場面ごとに色のトーンがあり、シーンや時間でそのトーンが変わります。アメコミの作風ですね。結局、アメコミをアニメにするにしても、自分が『蟲師』や『惡の華』で経験したものと同じプロセスを通っている。作品独自の何かがあるのか、それとも通常の方法でなんとかなるのか、それを考えるプロセスです。僕が好きなアメコミはシルバーエイジ(1950年代から1960年代)の作品で、この頃のグラデーションなどを再現してみたかったんです。ところが、いざ実際に取り組んでみると、『蟲師』並みに徹底的にやり尽くさないと、ウソが浮いて見えてくることが分かったんです。撮影段階で様々な処理を加えれば加えるほど、ウソが目立つ。なので無駄なものを一切足さない、引き算のアニメにすることにしたんです。こういう方向性に舵を切れるのも、馬越さんが色々とやってみてくれているからですね。

―― 色使いがとてもシンプルなんですね。空にしても、ベタ塗りというか、濃淡がない。

長濱 ないんです。でも表現として成立しています。

―― 馬越さんの名前が出ましたが、馬越さんがキャラクターデザインとして参加し始めたのはいつ頃だったのでしょうか。

馬越 最初から参加する流れはありました。が、初めて打診された時は断りました。

長濱 馬越さんが、「スタン・リーと一緒に作品を作るというあなたの夢が叶うのだから、キャラクターの原案は自分で作るべきだ」と主張したんです。デザインをアニメ的に動かせるようにアレンジする作業はしてもよいが、自分が一から作ることはしない、と。もっとも、馬越さんはそのデザインのアレンジをすることにも渋っていましたが。

馬越 長濱さんが凄いことをやっている、というのを遠くから眺めていたかったんです。

長濱 そういうわけで、ティザーPVに出てきた止め画のキャラクターは、自分が元を作っています。当初は影が付くのかどうかも分からない状態でした。結局黒の影だけを付けることになりました。

―― 随分とスタイリッシュなビジュアルになりそうですね。

長濱 というよりシンプル。動かすのは難しいのですが、スタッフが渋らずやってくれています。

―― ビジュアル面以外で、長濱さんが描きたかったものとはなんだったのでしょうか。

長濱 今回僕がやりたかったことというのは、スタンが生み出したマーベルの宇宙(ユニバース)というものを彼に返したい、ということだったんです。アメコミの世界では、原作者がキャラを保有できず、出版社がその権利を抱えています。しかし、マーベルの宇宙のかなりの部分は、スタンが作り上げたものなんです。なので、それを違ったかたちで翻訳して、彼に返したかったんです。今回原作として僕がスタンと連名でクレジットされていますが、これは僕が彼に軽く言ったら、相手がそれを快諾してくれたのが理由です。嬉しかったですが、アニメを作っている過程では、スタンを仮想の原作者、僕を一人の読者としてイメージしながら制作しています。もうひとつ、僕はアニメで『アベンジャーズ』のようなことをしたかったというのもあります。『アベンジャーズ』に登場するヒーローは誰もが独立したタイトルの主人公であるわけですが、観客はその個別のタイトルに触れた経験がなくとも『アベンジャーズ』を楽しむことができるわけです。今回の『THE REFLECTION』はその逆の過程を辿っています。個々のキャラクターについては誰も何も知らないが、それでもキャラクターを楽しみながら見ることができる、そういう作品を目指しています。なので、登場するキャラの数はとても多いですし、すぐ死ぬような悪役にも名前を付けバックボーンを設定として与えています。


●スタン・リーと長濱博史が企画の中心にいるということ

―― NHKで夏から放映することになっているようですが、これにはどういう経緯があったのでしょうか。

長濱 詳しいことは舞台脇にいる野口さんに聞いてみましょう。

(野口和紀プロデューサーが登壇する)

野口 スタジオディーンの野口です。NHK総合で今年の7月から毎週土曜夜に放映となります。詳しい日程はまだ確定していませんが、6月にはお伝えできるかと思います(編注:イベントの後、放映開始日等が告知された)。

―― 7月放映開始ということは、もうすぐですね。

野口 特殊な状況で決定しました。元は配信だけの予定だったのですが、NHKさんから企画を認めてもらい、急遽放映できることになりました。よろしくお願いします。

(野口プロデューサーが降壇する)

―― なぜ当初は配信だけで考えていたのでしょうか。

長濱 原作者の一人がアメリカ在住、音楽プロデューサーはイギリス人ということで、必然的に「自分たちのところでも作品を観られるようにしてほしい」ということを言われるわけです。なので、世界同時に公開できる配信を考えていた。今回の企画に日本の出版社が関わっていないのも大きいかもしれません。

―― 今回のプロジェクト自体、内容以外の部分も長濱さんが動かしているわけですね。

長濱 企画の中心にスタンと自分がいるという点で、今回の企画は特殊だと思います。スタジオディーンで制作することになった理由も、スタン側から「確実に企画を遂行できる人を連れてきてほしい」と言われ、野口さんに連絡したところ、すぐOKの返事があったからですし。他にも、先ほど音楽の話をしましたが、それもこちらから打診しました。9nineというチームにEDを歌ってもらうのですが、トレヴァー・ホーンが日本のユニットをプロデュースするのは初めてなんですよ。これは凄いことです。9nineは作中で日本のヒーローチームとしても登場しますね。

―― チームですか。

長濱 チームです。『プリキュア』シリーズにせよ、『パワーレンジャー』にせよ、日本のヒーローやヒロインはチームを組む場合が多いんです。そういった日本のヒーロー・ヒロイン像を投影しています。そう、投影なんです。英単語のreflectionには確かに反射という意味があるんですが、それだけではない。投影という意味もあります。イメージとしては水面のきらきらとした光です。そういったイメージを持ちながらタイトルや作中でのある事件名にreflectionを用いています。


●あらゆる箇所に見どころが

―― アクションは毎回あるのでしょうか。

長濱 ない回もあるかもしれませんが、基本的にはあります。

―― 登場するヒーロー的なキャラクターは、皆が特殊能力を持っているのでしょうか。

長濱 持っています。悪者も持っています。悪者の方が面白いですね、様々な意味で。キャラ立ちしています。デザイン的にはヒーロー側のキャラクターは……。

馬越 アイガイというヒーローがいるんですが、そのキャラクターを描くだけでも大変です。

長濱 デザインが複雑なのは、僕が元を描いたからです。

馬越 監督の指示が細かい。

―― キャラの数も多いとのことでしたが。

長濱 削ったんですが、それでもまだ多い。先ほども言いましたが、どれほど出番が少なかろうと、キャラには名前と設定を与えています。アメコミでは使い捨ての戦闘員は許されませんし、そうした設定があるからこそ後に別の作品で再登場できるわけです。

―― 最後に一言ずつお願いします。

馬越 現段階では多くは話せませんが、私自身も楽しみにしています。

長濱 アメコミ好きなら楽しめる作品になっていると思います。悪い奴をやっつけるという単純なストーリーではありません。音楽や声優にも力が入っています。長く続けていきたいと考えていますのでよろしくお願いします。

■プロフィール

長濱博史(Hiroshi Nagahama)
アニメ監督・演出家。1970年3月15日生まれ。マッドハウスに入社しアニメ業界に入り、現在はフリー。1997年『少女革命ウテナ』でコンセプトデザインを担当。『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』『十兵衛ちゃん2 ―シベリア柳生の逆襲―』など大地丙太郎作品への参加が2000年代前半に多かった。2005年『蟲師』で初監督、注目を集める。以降の監督作としては『デトロイト・メタル・シティ』『惡の華』『蟲師 続章』など。2017年7月から放送予定の『THE REFLECTION』では監督をこなすと同時に原作者(スタン・リーと共同)としてもクレジットされている。

馬越嘉彦(Yoshihiko Umakoshi)
アニメーター、キャラクターデザイナー、作画監督。1968年7月30日生まれ。日曜朝の少女マンガ原作アニメ三部作『ママレード・ボーイ』『ご近所物語』『花より男子』でキャラクターデザインを手がけ、『おジャ魔女どれみ』シリーズではキャラクターコンセプトデザインを担当。近年では『ハートキャッチプリキュア!』『僕のヒーローアカデミア』でキャラクターデザインを担っている。長濱博史監督とのコンビは、長濱がチーフディレクターを務めた『十兵衛ちゃん2 ―シベリア柳生の逆襲―』から。その後、長濱が監督した『蟲師』『蟲師 続章』でもキャラクターデザインを受け持った。2017年『THE REFLECTION』でもキャラクターデザインとして長濱監督と組んでいる。

■イベントデータ
日時:2017年5月21日(日)
会場:阿佐ヶ谷ロフトA
登壇者:長濱博史、馬越嘉彦、小黒雄一郎(アニメスタイル編集長)

■記事構成
深川和純、アニメスタイル編集部

第520回 やっぱり「ほどほどに」!

 なんとなく前回言い足りず重ねますが

「ほどほどに」です!!

 俺の理想のデジタル化は。なんでもカンでも無条件に「デジ最高!!」ではなく、作品を面白くするため、制作費を効率よく使うために、我々制作者側は新しい技術に対して、単に好き嫌いではなく研究して勉強して「これ、作品作りに使える!」と思ったらほどほどに使ってみる姿勢って大事なのではないでしょうか? と。別に「全編CGでキメるべき!」と言いたいわけでも「手描き作画はすべて滅ぶ!」とアニメーターの危機感を煽りたいのでもありません。

「ほどほど」の割合で折り合いがつくのが理想!

と思うだけ。いくら世の中デジタル化だっつったって、すべてが0か1、もしくは「ある・なし」で片づくはずはないでしょう。作画アニメに一部CGまたはその逆でも、要は「効果的に使えているか?」が問題なのだと思います。
 で、『ベルセルク』は最終回を迎えたわけですが、今まで監督してきた作品とは違った意味で疲れましたし、それと同時に楽しませてもらいました。何しろ、ここでも何度か報告したとおり、コンテは昨年末で最終回まで上がっており、今年始めにはCGの発注がいつでもできる状態。そんな中、作画パートをコツコツ進めつつCGを発注し、かなりの時間差で上がってくるモーションをチェック。これがまた当たりもあれば「アレ?」な上がりもあり一喜一憂。とにかく良くも悪くも自分の思ったように上がってこない。もちろん素晴らしいアクションカットもいっぱいありました! それらが上がってきた時は「CG凄えっ!」と興奮します。が、上手くいってないものが上がってくる時もままあるわけ。その時は当然「リテイクお願いします!」とはなるものの……これはCGアニメーターさんが悪いわけではないんですが

上手くいってないカットほど納品ギリギリ!!

 でモーションの修正ができないんです。「レンダリング時間的に無理です!」となり、あとは撮影処理で対応するしかありません。まあでも、2クールで詰め込めるだけ詰めた内容だけに、CGスタッフの皆さんもパッツンパッツンの余裕がまったくない状態で本当によく頑張っていただきました。現場をヒーヒーにしてしまったのはすべて自分の力不足によるものです。スタッフの皆さん、申し訳ありませんでした。そして、

お疲れさまでした!!

第109回 一陣の風 〜ちはやふる〜

 腹巻猫です。8月11日(金)夜、阿佐ヶ谷ロフトにて「渡辺宙明トークライブPart11」を開催します。脚本家の荒川稔久さんをトークゲストに迎え、宙明先生の最新作や作詞とメロディとの関係などについて語っていただきます。コミケ初日の夜ですので、打ち上げも兼ねてぜひおいでください。前売券は7月1日(土)10時より発売! 詳細は下記を参照ください。
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68971


 6月24日、前回紹介したコンサート「作曲家の祭典2017」に足を運び、4人の作曲家の音楽とパフォーマンスを大いに堪能した。
 今回は、そのコンサートでも取り上げられたTVアニメ『ちはやふる』の音楽を紹介しよう。
 TVアニメ『ちはやふる』は2011年10月から2012年3月まで放映された作品。原作は末次由紀の同名少女マンガ。『カードキャプターさくら』(1998)、『NANA』(2006)等を手がけた浅香守生が監督、アニメーション制作をマッドハウスが担当している。深夜枠の放映だったが人気作品となり、第2期『ちはやふる2』が、2013年1月から6月まで放送された。2016年には広瀬すず主演の実写劇場作品も公開されている。
 美人だがかるた以外目に入らない「かるたバカ」の高校生・綾瀬千早を主人公に、競技かるたの世界で腕を競う少年少女たちが描かれる。技を磨き、ライバルと闘うスポ根的な要素と少女マンガらしい繊細な心情描写の融合が絶妙で、ぐいぐい引き込まれる。この作品で競技かるたがどういうものか具体的に初めて知ったというファンも多いだろう(筆者もそうだ)。
 音楽は山下康介が担当した。シンプルな楽器編成で試合の緊迫感や焦燥感、静かな闘志、仲間への友情や恋心などを描写している。派手なサウンドで自己主張する音楽ではないが、耳に残る。『ちはやふる』という作品にふさわしい、端正なたたずまいと躍動感を兼ねそなえた音楽である。

 山下康介は1974年生まれ、静岡県浜松市出身。小さい頃からピアノを習っていたが格別音楽好きというわけではなかった。転機は中学生になって吹奏楽部に入部したこと。楽器のアンサンブルの楽しさを知り、自分でも曲を書くようになった。高校生時代には自作のスコアを見てもらおうと作曲家・すぎやまこういちの事務所に送ったところ、本人から電話がかかってきて励まされたという逸話が残っている。本格的に作曲家を志して勉強を重ね、東京音楽大学音楽学部に入学。作曲専攻/映画・放送音楽コースに進んだ。
 在学中から山下のオーケストレーションの技術は評価が高く、山下が師事した羽田健太郎は山下のことを「百点満点の学生」と評したという。世に出たきっかけも、羽田健太郎のコンサートのアレンジを1曲まかされたことだった。卒業後、TVドラマ、アニメ、劇場作品、ゲーム音楽の作曲家として、また、ポップス、クラシックのアレンジャーとして活躍。代表作には、ゲーム「信長の野望」シリーズ(1996〜2009)、TVドラマ「花より男子」(2005〜2007)、「クロサギ」(2006)、「有閑倶楽部」(2007)、「小暮写眞館」(2013)、特撮ドラマ「魔法戦隊マジレンジャー」(2005)、「海賊戦隊ゴーカイジャー」(2011)、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(2015)、「宇宙戦隊キュウレンジャー」(2017)、アニメ『Xenosaga THE ANIMATION』(2005)、『ガラスの艦隊』(2006)、『デジモンクロスウォーズ』(2010)、『パズドラクロス』(2016)などがある。2009年公開の劇場アニメ『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』では、宮川泰、羽田健太郎の跡を継いで新作BGMを書き下ろしている。
 山下康介といえば、オーケストラを巧みに鳴らす、華やかで勢いのある音楽というイメージがある。出世作となったゲーム「信長の野望」がそうだし、一連のスーパー戦隊シリーズの音楽もそうだ。アニメでも、壮大な宇宙SFや冒険ものをよく手がけている。少女マンガ原作のTVドラマ「花より男子」や「有閑倶楽部」だって、メインテーマはミュージカル音楽のような華やかさにあふれている。
 しかし、山下康介を語る上で、もうひとつ忘れてはならないことがある。それは、山下康介が大林宣彦監督の作品とずっと寄り添ってきたことである。
 音楽にこだわることでも知られる大林監督は、1996年のTV映画「三毛猫ホームズの推理」でアレンジャーとして山下康介を起用。以降、山下は作・編曲家として、ほぼすべての大林作品の音楽制作に関わってきた。「あの、夏の日 〜とんでろ じいちゃん〜」(1999)、「理由」(2004)、「転校生 —さよなら あなた—」(2007)、「この空の花 長岡花火物語」(2012/メインテーマ作曲・久石譲)、「野のなななのか」(2014)などなど。そのほとんどは、學草太郎と並んで音楽担当にクレジットされている。學草太郎とは大林宣彦の作曲家としての筆名。大林監督が紡ぎ出したメロディを、山下康介がシーンに合わせてオーケストレーション、補作し、映画音楽として完成させているのである。
 大林監督は独特の音楽の付け方をする。心の中で何かが動くとき、その気持ちと連動するような音楽が鳴る。とまどいやひらめき、歓び、失意。感情に音楽がついているのではなく、音楽が感情を導いているような印象を受けることすらある。そういうときの山下康介の音楽は、心にすっと入り込んでくる。音楽が流れるシーンが多いのに、押しつけがましくない。どこか懐かしくて少しさびしい。
 『ちはやふる』の音楽は、そんな大林映画の音楽に感触が似ている。煌びやかな宇宙SFやヒーローものとは違った、山下康介の抒情的な持ち味が生かされた作品である。
 サウンドトラック・アルバムは、第1期に「ちはやふる オリジナル・サウンドトラック&キャラクターソング集 第1首」と「同 第2首」の2枚が、第2期に「ちはやふる2 オリジナル・サウンドトラック」が1枚(Webラジオとのカップリングで2枚組)発売された。
 今回はサントラ1枚目の「第1首」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. YOUTHFUL (TVサイズ)(歌:99RadioService)
  2. かるた日和
  3. 高ぶるキモチ
  4. まなざし
  5. 心構え
  6. 秘めた想い
  7. 「ちはやふる」メインテーマ
  8. かるたの目
  9. 過去の記憶
  10. かるたなんて
  11. 勝利への道
  12. 焦り
  13. 思わぬ展開
  14. 本当の実力
  15. 和美人
  16. 曇りココロ
  17. 大きな存在
  18. 活動開始!
  19. おさななじみ
  20. チームちはやふる
  21. 「ちはやふる」メインテーマ〜p.f.ver.〜
  22. full throttle(歌:綾瀬千早[CV:瀬戸麻沙美])
  23. 夢への地図(歌:綿谷新[CV:細谷佳正])
  24. NICK MAN!(歌:西田優征[CV:奈良徹])
  25. そしていま(歌:瀬戸麻沙美)

 オープニング主題歌のTVサイズで始まり、エンディング主題歌のフルサイズで終わる構成。トラック22〜24の3曲は声優が歌うキャラクターソングである。
 山下康介がラジオ「山下康介の作曲夜話」で語ったところによれば、本作の音楽メニューはTVアニメとしては曲数が少なく、初回録音は30曲程度だったそうである。
 楽器編成は、ストリングスとハープ、木管がフルート、オーボエ、クラリネット1本ずつ、金管もトランペット、トロンボーン1本ずつにホルンが2本。加えて、近年は打ち込みですませることが多い4リズム=ドラムス、ベース、ギター、ピアノが生で入っている。スーパー戦隊シリーズなどの音楽と比べるとシンプルな編成だ。
 このシンプルな編成が効果を上げている。百人一首の札を一瞬の判断で取り合う競技かるたの世界に雄大重厚な音楽は似合わない。颯颯とした一陣の風のような音楽がふさわしい。ほとんどの曲はドラムス、ベース、ギターを伴わないクラシカルなスタイルで統一されている。リズムセクションが入る曲も生楽器でバンド的な躍動感を出し、現代の少年少女が活躍する作品らしい軽快さを表現している。
 トラック2「かるた日和」は軽い雰囲気の日常テーマ。ピアノのリズムの上でバイオリンのメロディが軽やかに歌う。ドラムスが入って、弦と木管が楽しく絡み合うバンド音楽風に展開。高校でかるた部を作ろうと意気込む千早が幼馴染の太一と再会する場面や千早たちがかるた部の部員を勧誘する場面などに流れた。浮き立つ気持ちを描写する曲だ。
 トラック3「高ぶるキモチ」はかるたの対戦に向けて高揚する気持ちを表現する曲。弦の刻みが胸の鼓動の高まりを表し、ピアノがメインテーマのモティーフの断片を繰り返す。後半には金管が同じモティーフを奏して心に情熱があふれていくようすを描き出す。第1話では、小学生の千早が転校生の新とかるたの対戦をし、初めてかるたの面白さを知る場面にフルサイズ流れていた。対戦中、劣勢から逆転のチャンスをつかむ場面などにも流れた印象的な曲だ。
 トラック4「まなざし」は木管とストリングスが繊細に奏でる心情曲。中盤からピアノがメロディを引き継ぎ、暖かく奏される。第1話で太一と再会した千早が小学生時代を思い出す場面に使われている。
 トラック5「心構え」では、かるたに向かう気持ちが弦と木管のアンサンブルで描写される。ひとつのモティーフがさまざまに変奏されて繰り返され、試合に挑む期待と不安、静かな闘志が伝わってくる。
 次のトラック6「秘めた想い」は全篇を通して印象深い曲だ。ホルン、ストリングス、木管がゆったりと奏でる3拍子のメロディ。抒情的な旋律がしみじみと胸を打つ。第1話のラストで千早がかるたで日本一になりたいと思い立つ重要なシーンにほぼフルサイズ流れていた。山下康介によればもともとは新の想いを表現する曲だったとのことだが、新だけでなく、広くキャラクターの心情を表わす曲として多くの感動的な場面を飾っている。
 そして、続くトラック7が「ちはやふる」メインテーマ。サントラ盤ではメインテーマを冒頭に持ってくることが多いが、本アルバムはここでようやくメインテーマが登場する。新との出会い、かるたとの出会いを経て、千早の胸にかるたの女王=クイーンになりたいという夢が芽生える。その展開を受けてのメインテーマである。よく考えられた曲順だ。
 メインテーマのモティーフとなっている5音のフレーズは、山下康介がタイトルの「ちはやふる」の5音を象徴するものとして考えたとのこと。このフレーズが決まるまで2週間ほどを費やしたが、決まってから後の作曲はスムーズに進んだという。『ちはやふる』の音楽では、この5音のモティーフがさまざまな楽曲の中に登場する。曲数が少ないこともあり、本作ではキャラクターごとのテーマなどは設けず、メインテーマを中心に全体が構築されている。映画音楽のような音楽設計が特徴である。
 トラック8「かるたの目」は筆者が本作の中でももっとも印象に残っている曲。一瞬の緊迫、心の揺れを表現するような冒頭の弦とピアノの動きが鮮烈である。緊張した心が徐々に動き始め、しだいに新しい風景が見えてくる。最後に登場するのはホルンと木管が奏でるメインテーマのメロディ。2分間の演奏時間にドラマが凝縮されている。大林作品にもこのような音づかいで心情を表現するシーンがたびたび登場する。大林流音楽演出を経験した山下康介らしい映画的な楽曲だ。
 本作の音楽の特徴のひとつは、1曲1曲が長く作られていること。アルバム収録用に長く録ったわけではなく、音楽設計の必然から長くなっている点が重要だ。本アルバムに収録されたBGM20曲の中でも1分台の曲は4曲しかなく、あとはすべて2分以上である。
 これもラジオで山下が語っていた話だが、かるた競技には糸が張り詰めたような緊張感から、上の句が詠まれたときの一瞬の勝負、試合の中での駆け引きなど、静と動の対比と大きなうねりを持った流れがある。競技の中の心と体の動きを音楽でも表現するため、1曲の中で展開のある長い曲になった。歌もののように1コーラスを繰り返す曲ではなく、次々と新しい曲想に展開していく曲が多い。最後まで緊張感を保ちながら、じっくり聴ける曲ばかりである。
 アルバム中盤は、かるたを辞めてしまった新との確執、かるた部員勧誘の苦心などをイメージした楽曲が並ぶ。
 トラック12「焦り」は曲名通り、焦燥感を表現する曲。ほとんど弦とピアノだけの編成で不安といらだちの心情が表現される。シンプルだが山下の曲作りの巧みさが際立つ曲である。
 木琴と木管が奏でるトラック13「思わぬ展開」は、猪突猛進する千早などを描写したちょっとユーモラスな曲。フルート奏者・赤木りえのアドリブが効いている。第14話では現クイーン・詩暢(しのぶ)と対戦した千早が詩暢のレアなTシャツの柄に気づく場面に流れていた。
 呉服屋の娘・かなちゃんこと奏の登場シーンに流れたトラック15「和美人」は、ほっと一息つける曲。邦楽器風の演奏で雅な雰囲気を出している。
 アルバムの終盤は千早たちのかるた部の活動が本格化したイメージで盛り上がっていく。
 アクティブなトラック18「活動開始!」は、かるた部の部員がそろい始める場面などに流れた軽快な曲。アコースティックギターのカッティングを導入にドラムス、ベース、ピアノが加わり、弦と木管楽器がさわやかにメロディを奏で始める。青春の躍動感を表現するバンドサウンドが心地よい。
 トラック19「おさななじみ」は千早と太一と新の友情をイメージした曲。ピアノのアルペジオをバックに弦とクラリネットがノスタルジックなメロディを奏でる。懐かしくてどこかさびしい。ここにも『転校生』などの大林作品の香りがただよっている。
 トラック20「チームちはやふる」は、かるた部の快進撃を予感させる勢いのある曲。4リズムをバックに弦、木管、金管がメインテーマのモティーフを歌い継いでいく。それぞれの楽器がかるた部メンバーを表現しているようにも聴こえる。コーダは一転して静かな曲調になり、ピアノがそっとメインテーマを奏でて終わる。余韻のある心憎いアレンジである。
 BGMパートの最後はメインテーマのピアノ・バージョン。本編を観てから聴くと、かるたへの想い、友情、秘めた恋心、さまざまな想いが詰まった曲に聴こえてくる。
 少ない曲数の中で練り上げられた充実したサウンドトラックだ。アルバムを聴き終えた印象もさわやかで、まさに一陣の風を浴びたような気分になる。

 物語の後半、「チームちはやふる」で高校かるた選手権地区大会を勝ち抜いた千早たちは、全国大会に挑む。サントラ2枚目「第2首」には、そんな展開に合わせた楽曲が収録されている。試合の駆け引きや強敵の出現を描写する音楽はドラマティックさを増して聴きごたえも十分。さらに「ちはやふる2 オリジナル・サウンドトラック」には千早たちが高校2年生となった第2期の追加楽曲がまとめられている。ぜひ「第1首」とあわせて聴いていただきたい。
 「作曲家の祭典2017」では、メインテーマの変奏のひとつ「かるたとともに」(「第2首」に収録)がコンサート用のオーケストラ・アレンジで演奏された。昨年の「作曲家の祭典2016」では「メインテーマ」が演奏されている。いつか、『ちはやふる』だけでボリュームのある組曲を作って演奏してくれないだろうか。それだけ魅力的な作品であり、音楽だと思うのだ。

ちはやふる
オリジナル・サウンドトラック&キャラクターソング集 第1首
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ちはやふる
オリジナル・サウンドトラック&キャラクターソング集 第2首
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ちはやふる2 オリジナル・サウンドトラック
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107 アニメ様日記 2017年6月11日~

2017年6月11日(日)
午前3時45分に事務所入りはいつものこととして(超朝型なのです)、午前7時から堺三保さんと打ち合わせ。午後はオールナイト関連で確認する事があって『カラフル』を鑑賞。いやあ、面白かった。初見時よりも楽しめた。物語の語り手として腰が据わっているところが素晴らしい。今、原恵一監督の劇場作品でどれが一番好きかと聞かれたら『カラフル』と応えてしまうに違いない。

2017年6月12日(月)
新宿バルト9で『KING OF PRISM PRIDE the HERO』を鑑賞。午前8時40分の回だった。今回は尺も長いし、広げた風呂敷を畳まなくてはいけないという事もあり、1作目『KING OF PRISM by PrettyRhythm』とは作りがやや違う。僕的には1作目に感じた驚きはなかったけれど、トンデモない映画であるのは間違いないし、ファンの期待に応えた作品になっているはず。
 昼間は「設定資料FILE」の構成。夜は会食。業界の先輩のある方に、5月3日の「第130回アニメスタイルイベント アニメ様のイベント 雑誌デザインのこだわり編」のトークに感銘を受けたと言っていただく。「小黒君は本当に『編集』が好きなんだね」とのこと。酔っ払いが好き勝手に話したイベントだったので、呆れられたと思っていた。よかった。

2017年6月13日(火)
午前中から夕方まで「設定資料FILE」の構成。設定資料と縮小コピーにまみれる。

2017年6月14日(水)
朝6時からのTOKYO MXの『母をたずねて三千里』1話を観る。ドラマづくりが大人目線で驚く。これは高畑勲監督の作品が客観的であるのとは、また別の話なのだろう。この年齢になって観ても『母をたずねて三千里』は凄い。
 午後は『山村浩二 右目と左目でみる夢』の試写会に。全9本で約57分の短編集。僕が内容を理解できたのかどうかは置いておくとして、贅沢な時間を味わった。気に入ったのは「古事記 日向篇」と「干支 1/3」。

2017年6月15日(木)
東京アニメセンターの「ポッピンQ展 POP IN MUSEUM」に行く。展示は設定資料、絵コンテ、原画など。原画は原画マンが描いたもので、僕が見たかった作監修正原画ではない模様。ただ、レイアウト段階での作監修正を元にして原画が描かれているはずで、展示されていた原画から作監修正の線がどんなものかを想像してみた。

2017年6月16日(金)
新宿ピカデリー『劇場版 黒子のバスケ LAST GAME』最終上映が朝の8時50分からで、観に行こうかと思ってサイトで確認したら、すでに完売していた。朝なのに。
 病気で休まれてた藤原啓治さんが、仕事を再開されることになったそうだ。ああ、よかった。ずっと心配していた。また新作であの声を聞ける日が楽しみだ。
 池袋に改装中のビルがあり、少し前から「すごいTSUTAYAができる」と掲示されていた。すごいTSUTAYAってなんだ? 店舗の大きさから考えて「レンタルの在庫が日本一ですごい」はないだろうなあと思っていたのだが、どうやら、アイドル&アニメ&コミック専門の店舗らしい。池袋だから、乙女ロード的な意味で女性ファンに特化した店ができるのではないかと予想していたのだけど、外れたかな。

2017年6月17日(土)
早朝、24時間営業の山下書店大塚店で雑誌を数冊買い込む。「EX大衆」7月号は「サンライズ栄光の全史」という記事の富野由悠季監督インタビューが目当て。『無敵超人ザンボット3』についてのコメントが印象に残った。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 94 アニメファンなら観ておきたい200本 原恵一監督のアニメーション映画」。原恵一監督は缶のハイボールを片手に楽屋入り。トークは公開10周年を迎えた『河童のクゥと夏休み』がメインで、進めているうちに『河童のクゥ』から『ドラえもん』の話に流れた。『河童のクゥと夏休み』は「平凡な日常に非日常が入ってくる」という意味では『ドラえもん』と同じ。かつて、アニメ業界に『ドラえもん』を子どものものだからと馬鹿にする人達がいて、それがあったので『ドラえもん』のリアリティを増したものを作りたいという気持ちがあったのだそうだ。原さんが若手演出家として『ドラえもん』に参加していた頃、子ども騙しの作品ではないという意気込みで臨んでいたのも、それとリンクしている。それから、30数年前の僕との出会いの話になり「小黒さんは見るからに胡散臭かったけど、最初に自分の仕事を取り上げてもらったので恩を感じている」と言っていただいた。
 聞こうと思って用意していた話のいくつかは聞けなかったけれど、リラックスムードで気持ちよく話ができたので、僕的には満足。復帰が決まった藤原啓治さんについても話ができたし、トークの最後に原さんが「トイレ行きたくなっちゃった」と言って、慌てて席を立ったのも可笑しかった。用意していた質問はまたの機会に。
 明け方に新文芸坐に戻って、オールナイトの終了を見届ける。

第519回 手描きの有りよう


と、今週のイボ事情も最終回を迎えたトコで、今回は単刀直入に

動画を100枚も描いたことない人に
「やっぱりアニメは手描きでしょ!」と言ってほしくありません!

って。モブシーンやアクションシーン、メカやダンス、楽器演奏シーンに至るまで、動画100枚すら描いたことない監督に、そう易々と「やっぱりここは手描きじゃないとなー」とか「なんで皆なんでもCGにしちゃうのかなぁ」「アニメの監督なんだから、もっと手描きを大事にしないとさぁ」などなど。まあ、絶対言うなというのは言い過ぎですが、少なくとも

一度、手描き動画の「手間」を想像くらいしてみてください!

と。こう言うとアニメーターではない制作出身の監督さんで「失敬な! 自分は制作時代、何カットも動画をやったことくらいはある!」と仰る方、何人も知ってます。が、その方々がやったことある動画って、せいぜい「各話演出時代に足りない目パチ・口パクを描いたことがある!」だったり「中割りを2〜3枚足したぜ!」くらい。いいとこ「原トレ(原画のトレス)のみの止めは描いたことある」です。俺が言いたいのは

原トレ何十枚、中割り何十枚の「普通の動画」のこと!!

です。アニメーター出身でない監督さん、分かります? 動画用紙にビッシリ埋められたモブや爆発、髪・フリルの嵐のようななびき美少女、ロボットアクション。これ動画1枚何時間かかって、1日何枚描けるか!? ヘビーな内容のヤツは1日3枚しか上がらないとかあるんですよ! 昔の名作○場的な、線が少なくカゲなしキャラで繰り返し鑑賞しないこと前提な動画なら「ワシの若い頃は1日30枚は当たり前じゃった!」とか言ってられますが、現在のブルーレイやネット配信で何回こすってもボロが出ない、カゲ付きロボやフリフリ美少女の中割り動画を、1日30枚描けると思いますか? もうその基準自体が現代に相応しくないでしょう? あと

手描きの動画だから無条件に高尚なアニメ!

とかってのもどうですか? 1970年代生まれなら、いちばん多感な時期にジブリアニメを見て以来、今の今まで手描きアニメ素晴らしき! となるのは自由ですが、2000年生まれの若者に「手描き=高尚」は通じますかね? こーゆーと今度は「だからこそ手描きの素晴らしさを伝えなければならんのじゃろ!」とか言われそうですが違います。俺が言いたいのは「ほどほどに!」です。今の視聴者さんは、子どもの頃からCGバリバリ回り込みのゲームとかで遊んでるわけで、つまりは「画が動くなんて普通のこと」。その人たちに手描きの素晴らしさを伝えたいなら、ある程度——それこそほどほどに普段彼らが慣れ親しんだ映像をベースにするところから始めなきゃならないはず。その上で、手描きの魅力を味わえる作品を監督は作らなきゃなりません。でないと、作っても古くてまず観てもらえないでしょう。そしてさらにアニメータ側からすると

監督さん、そんなに「手描き、手描き」言うなら、あなたのコンテはこれだけの手間と労力のかかる手描き動画を十分に活かせる内容なんですか!? 本当に信じていい、このコンテ? 自分の何週間分の労力、絶対に無駄になりませんよね?

なんですよ。ご理解いただけますでしょうか、無条件手描き至上主義監督の方々様。

第134回アニメスタイルイベント
公開30周年 山賀博之が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を語る

 2017年2月18日(土)のオールナイトに続き、公開30周年を迎えた『王立宇宙軍 オネアミスの翼』にスポットをあてたトークイベントを開催する。オールナイトでも山賀監督に『王立宇宙軍』について話をうかがったが、もっともっとたっぷりとお話をうかがいたい。そのように考えてアニメスタイル編集部は、今回のトークイベントを企画した。

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』はガイナックスの第一作であり、公開時に24歳であった山賀博之監督をはじめ、貞本義行、庵野秀明といった若いスタッフが中心となって作り上げた劇場アニメーションだ。作り手のエネルギーが迸ったフィルムであり、映像についても作劇についても非常に先進的。今の目で観ても充分に見応えのある作品だ。未見の方はDVDなどで作品を鑑賞してから、イベントに足を運んでほしい。

 今回のイベントもトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。前売り券は2017年6月24日(土)から発売開始だ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68416

第134回アニメスタイルイベント
公開30周年 山賀博之が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を語る

開催日

2017年8月6日(日)
開場18時 開演19時 終演22時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

山賀博之(『王立宇宙軍 オネアミスの翼』監督)
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第133回アニメスタイルイベント
元祖 ここまで調べた『この世界の片隅に』 平成29年夏編

 多くの観客に受け入れられ、ロングランが続いている劇場アニメーション『この世界の片隅に』。先日、アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門審査員賞を受賞したばかりだ。

 片渕須直監督と制作スタッフは『この世界の片隅に』の制作過程で、舞台となる地域や時代風俗について綿密な調査研究を行った。それに裏付けされた臨場感や登場人物の存在感が本作の魅力のひとつだ。
 その調査研究の結果を披露していただくのが、トークイベント「ここまで調べた『この世界の片隅に』」シリーズだ。今回の出演者には片渕監督を予定している。今までのイベントでも「そんなところまで調べるの?」「当時の日本の風俗って、そうだったの!」と観客から驚きの声を頂戴した。今回のイベントも深い話をうかがうことができるはずだ。

 今回もトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。前売り券は2017年6月22日(木)から発売開始だ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68348

第133回アニメスタイルイベント
元祖 ここまで調べた『この世界の片隅に』 平成29年夏編

開催日

2017年7月16日(日)
開場18時 開演19時 終演22時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直(『この世界の片隅に』監督)
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

106 アニメ様日記 2017年6月4日~

2017年6月4日(日)
国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2017」に行く。お目当ては、なかむらたかし監督の新作『イリオンとカリシア』。なかむら監督としては初の3DCG作品で、7分ほどの短編だ。元々、セルルックの3DCG作品を作るテストとして作られたもので、本来は一般公開する予定ではなかったのだという。キャラクターを含めて、なかむら監督らしいビジュアル。アクションも「アニメ」的。この延長線上で作れば、なかむら監督作品として、見応えのある長編が3DCGで作れるのではないかという可能性を感じた。同イベントでは、他にも印象に残る作品があった。愉快だったのがドイツの「素晴らしきかな、自然!-カメレオン編」。韓国の「グリーン・ライト」は画作りにいいところがいくつも。
 夕方は池袋の家電量販店に。4Kのモニターで『君の名は。』のプロモーションを流していたのだけど、驚くくらいに映像が鮮明。というか驚いた。これは凄いなあ。モニターを買うのは少し後になると思うけど、『君の名は。』は4K Ultra HD Blu-ray同梱版を購入してもいいかもしれない。

2017年6月5日(月)
ネットで『響け!ユーフォニアム』の完全新作劇場作品が2本作られることを知る。山田尚子監督による「みぞれと希美の物語」と、石原立也監督による「2年生になった久美子たちの物語」だそうだ。これは楽しみだなあ。

2017年6月6日(火)
『ポッピンQ』のBlu-rayを流しながら作業。『ポッピンQ』は僕にとっては愛おしい作品だ。名作とか傑作とかではなくて、愛おしい。アニメーションとして丁寧に作られているし、作品全体にもキャラクターにも初々しさがある。作画に関しては、キャラクターデザイン・総作画監督の浦上貴之さんはかなり丁寧な仕事をしているに違いない。線の感じもよい。修正原画が見てみたい。それから、集団ヒーローものとしてもいいところが沢山ある。最初に主人公4人が能力を発現させたところは高揚感が素晴らしくて、観る度にワクワクする。最後の戦いで伊純(特殊能力が俊足)が、あさひ(柔道と合気道の遣い手)をおんぶして、ボスキャラがいるところまで駆け上がるんだけど、そういう「特殊能力以外の部分は普通の女の子」な感じもいい。客観的に見ると、作品としてツッコミどころもあるんだけど、それと愛おしさはあまり関係ない。
 それから『ポッピンQ』は、僕の「セーラームーンアンテナ」にビビっとくるものがあるのだ。ちなみに、セーラームーンアンテナとは、アニメ『美少女戦士セーラームーン』濃度の高いものに反応するアンテナで、『セーラームーン』ファンに備わっている機能である。そのビビっときたのが、作画監督として伊藤郁子さんが参加しているのと関係しているのかどうかは、まだ解明できていない。「この人に話を聞きたい」で宮原直樹監督に取材をして伊藤さんの仕事ぶりについて聞いたのだが、まだ確信はもてないのだ。

2017年6月7日(水)
ドラマ「怪獣倶楽部」1話を観た。僕よりも上の世代の特撮ファンの方々をモデルにした作品だ。世代が違うので、感覚がズレているかもしれないが、時代の気分がちゃんと出ていると思った。それでいて、カジュアルな作りになっているのもいい。
 「三つ目がとおる オリジナル版大全集」が刊行されるそうだ。その告知で、今までの単行本で写楽と和登さんの入浴シーンがカットされていたことを知る。ああ、なるほど。なんとなく単行本は淡白になっている印象だった。他にも連載と単行本の違いは多かったはず。オリジナル版の刊行は嬉しいなあ。
 平松禎史さんとの打ち合わせのために吉祥寺に。目的地の町を目指してウロウロしていると、同行した編集スタッフCが、あるお店を指さして「小黒さん、ウッドベリーズがあります!」と言ったのだった。おお、これが『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』でりょーたすが行きたがっていたウッドベリーズか。『オカルティック・ナイン』は吉祥寺が舞台だったものなあ。思わぬところで聖地巡礼。

2017年6月8日(木)
またまた吉祥寺。昼から駅前のルノアールである監督と打ち合わせ。何故かその監督とは縁もゆかりもない山田尚子監督の素晴らしさについて熱弁を振るってしまった気がするが、多分、気のせいではない。
 Amazonから事務所に「日本アニメ(ーター)見本市資料集Vol.3 カセットガール 全記録全集」が届く。表紙デザインはBetaのビデオケースをモチーフにしたもので、編集部の若いスタッフに「これ、分かる?」と聞いたところ「Betaってなんですか?」と返された。それはそうだよなあ。

2017年6月9日(金)
「カセットガール 全記録全集」をパラパラとめくる。巻頭言に「トラディショナルなアニメムックのスタイルをイメージしながら編集」とある。アニメムック的かどうかは分からないけど、確かに何だか懐かしい部分がある。スタッフ座談会の文字組みの感じとか。最初と最後の実写のページはSTUDIO VOICEあたりの雑誌っぽいと思ったり。
 11時から南阿佐ヶ谷で打ち合わせがあり、2時間ちょっとかけて池袋から歩いた。

2017年6月10日(土)
土曜だけど、事務所で作業。急いでやらなくてはいけない仕事もあるのだけど、あえて、急いでやらなくてもいい仕事に手をつける。やってみるとこれが難しい。作業をしながら、NHK-FMの「アニソン・アカデミー」を流す。ピンチヒッターパーソナリティが前川陽子さんで、ゲストが「ひょっこりひょうたん島」つながりで久里洋二さん、若山弦蔵さんという濃さ。若山弦蔵さん関連曲として『プロゴルファー猿』の「夢を勝ちとろう」が流れたんだけど、これはヒネり過ぎかな。若山さんがミスターXを演じたのは『プロゴルファー猿』のスペシャル版だけで、その時は「夢を勝ちとろう」は使われていないはず。