第542回 600回を目指して

 気がつけば2017年ももうすぐ終わり。サブタイトルに”第542回”って書いてて、「ほぼ11年やってるんだこの連載」と。ろくに内容がなかった回も少なくないので、それほど大した偉業を成してるつもりはありません。ただただ「11年経ったか」と呆然としているだけです。でもまあ、ぼ〜っとしててもまた1回分無駄にするだけなので、ここはひとつ600回を目標に掲げ、何かテーマを決めて書くべきではないか? と思い立ち、

板垣の「決して立派じゃないアニメ人生」を
改めて順を追ってまとめてみよう!

かと。今まで書いてきたことと、一部内容が被っても気にしませんからあしからず。

 いきなりですが、そもそも自分は3歳の頃から、いわゆる「お絵描き」が大好きだったため、「TV画面の中で動く絵」に興味をひかれるのは当然のことではありました。

第121回 生きることは闘いさ 〜家なき子(その1)〜

 腹巻猫です。SOUNDTRACK PUBレーベル第22弾として、12月27日に「家なき子 総音楽集」を発売します。『家なき子レミ』でもなく安達祐実のドラマ「家なき子」でもなく、出崎統監督のTVアニメ『家なき子』(1977)の音楽集です。渡辺岳夫作曲の主題歌・挿入歌とBGMをCD3枚に集大成しました。主題歌2曲以外はすべて初CD化!
 Amazonでは「在庫なし」になっていますが、遅くとも12月22日頃には購入可になると思います。価格は5500円(税別)。12月16日のイベント「Soundtrack Pub【Mission#33】劇伴酒場忘年会2017」でDJタイムの合間に内容と制作秘話を紹介しますので、待ちきれないという方はこちらにもぜひどうぞ!

家なき子 総音楽集
http://www.amazon.co.jp/dp/B077Y6QZS9/style0b-22/ref=nosim

Soundtrack Pub【Mission#33】劇伴酒場忘年会2017
http://www.soundtrackpub.com/event/2017/12/20171216.html


 ということで、今回と次回の2回を使って「家なき子 総音楽集」の内容を紹介したい。

 本アルバムは、主題歌・挿入歌を収録したDISC-1とBGMを収録したDISC-2&DISC-3の3枚組。今回はDISC-1の主題歌・挿入歌集から紹介しよう。
 『家なき子』は1977年10月2日から1978年10月1日まで全51話が放映された東京ムービー新社制作のTVアニメ作品。エクトール・マローの原作を出崎統監督が映像化した。マローの長大な原作のエピソードをほとんど盛り込み、オリジナルの要素を加えた大河ドラマともいうべき作品である。
 舞台は19世紀のフランス。シャバノン村の少年レミが旅芸人ビタリスの一座に売られ、旅立つところから物語は始まる。物語の前半はビタリス一座とレミの辛く苦難に満ちた旅。その中でビタリスの厳しくも慈愛に満ちた人柄や旅先での心温かい人々とのふれあいが描かれる。しかし、冬山でビタリスと一座の動物たちは命を失い、レミと名犬カピだけが生き延びる。
 後半はビタリスという人生の師匠を失ったレミが花農家のアキャン家の人々やパリで出逢った少年マチヤに助けられながらひとり立ちしていく物語。レミは実は捨て子で、実の母親ミリガン夫人を探すストーリーが軸となる。ときに迷い、立ち止まりそうになるレミの心をはげますのは、亡き心の師ビタリスの「前へ進め!」という言葉だ。
 本作のあとに放映されたのが、ほぼ同じスタッフで作られた『宝島』。『宝島』は出崎アニメのベストにも数えられる人気作だが、筆者の中では『家なき子』も同じか(その日の気持ちによっては)それ以上に好きな作品だ。ビタリスの存在感、レミを育てたバルブラン・ママと実の母ミリガン夫人の美しさ、マチヤとの友情、アキャン家の末娘リーズの可憐さ。魅力的なキャラクターと端正な描写に引き込まれ、小林七郎が手がけた詩情あふれる美術と渡辺岳夫の美しい音楽に陶然となる。うっかり観返していると、「あれ、オレなんで泣いてるの?」とはっとする場面がたびたびある。自分の心の中にかろうじて残っているかもしれないピュアな気持ちを思い出させてくれるような、大切な作品なのである。
 本放映時に主題歌シングルと主題歌・挿入歌を収録したLPアルバム「家なき子」がキングレコードから発売された。1980年に出崎統自身が構成した劇場版『家なき子』が公開され、同じ年にBGMを収録したLPアルバム「家なき子II 音楽集」がキングレコードから発売されている。

 「家なき子 総音楽集」のDISC-1には主題歌・挿入歌集「家なき子」をそのまま復刻収録した。内容は次のとおり。

  1. さあ歩きはじめよう
  2. マチヤはともだち
  3. すてきな白鳥号
  4. 笛をふこうよ
  5. ぼくらはなかよし
  6. ぼくらはなかよし〈カラオケ〉
  7. だいすきなカピ
  8. リーズとぼく
  9. ママにあいたい
  10. はらペコマーチ
  11. はらペコマーチ〈カラオケ〉
  12. おやすみなさい

 レコードでは01〜06がA面、07〜12がB面だった。
 歌はすべて沢田亜矢子。カラオケが入っているのがユニークなところである。カラオケには沢田亜矢子が歌のお姉さん風に「みんなで歌いましょう」と語るナレーションが入っている。CDではそれも含めて復刻した。
 本作の音楽作りについて渡辺岳夫は後年、「名作ものがつづいたので、逆に非常に恐かった作品です」と振り返っている。「こういう作品に関しては、ぼくの中にもうなにもないかもしれないと思ったからです」と。
 渡辺岳夫は本作の前に『アルプスの少女ハイジ』(1974)、『フランダースの犬』(1975)、『あらいぐまラスカル』(1977)を手がけて名作アニメ音楽の第一人者となっていた。さらにこの年は、1976年から始まった『キャンディ・キャンディ』がまだ放映中で追加録音が行われ、『新・巨人の星』『無敵超人ザンボット3』の音楽も担当し、本作が始まった3ヶ月後の1978年1月からはマローの「家なき娘」を原作にした『ペリーヌ物語』もスタートする。渡辺岳夫は作曲家として超多忙な生活を送っていた(並行してTVドラマや時代劇の音楽も担当しているのだ)。そんな中、『家なき子』のLPを作るために1ヶ月以上スタジオにこもったという。できあがったアルバムは苦心のあとを感じさせない名曲ぞろいである。
 まずは主題歌。
 オープニングは上品で爽やかな曲調の「さあ歩きはじめよう」。松山祐士が書いた序奏は大作劇場作品のタイトル音楽のように雄大で格調高い。まさに大河ドラマがスタートするという雰囲気で心をつかまれる。ハープの響きが印象的な美しい前奏に続いて沢田亜矢子の歌が始まる。
 沢田亜矢子は国立音楽大学声楽科で学んだ本格派で、1973年に歌謡曲歌手としてレコードデビューする。以来、女優としても活動しながら歌の仕事を続けていた。透明感のある澄んだ歌声が魅力で、やや大人びた母親のようなぬくもりも感じさせる。オープニング映像に登場するバルブラン・ママやミリガン夫人のイメージと重なる。まさに『家なき子』という作品にぴったりの歌声だった。
 エンディングは対照的に明るく元気のいいマーチ。本作の作風だったらしっとりしたバラード風の曲も合ったと思う(『家なき子レミ』みたいに)。が、この歌だからこそ、本編が辛くても最後は明るく締めくくられて、また来週も観ようという気持ちになった。ビタリスの言葉「前へ進め!」を体現した歌なのだ。
 本作の音楽の中で、これまでCD化されているのは上記の主題歌2曲のみ。いずれもアニメ主題歌ベスト的なコンピレーション盤に収録されている。
 続いて、初CD化となる挿入歌たち。
 本アルバムの発売は1977年11月21日。第8話が放映された頃だった。その時点で登場していないマチヤや白鳥号やリーズの歌がすでに作られている。いわば歌で今後のストーリーの予告をしているのだ。マローの原作がしっかりあったからこそ実現した趣向である。
 本作の挿入歌作りはBGMより先行して行われたため、BGMにも挿入歌のメロディを使った曲が存在する。それがまた実に効果的だった。本編では主題歌・挿入歌の歌入りが使われたことはなく、使われるのはいつもアレンジBGMかカラオケだった。本編を観てアルバムを聴くことで「こんな歌詞がついていたのか」と『家なき子』の世界がさらに広がる。放映当時アルバムを買ったファンだけが味わえる楽しみだった。
 余談だが、本作の主題歌・挿入歌の制作は日本テレビ音楽によって行われた。キングレコードは発売のみで音楽制作には関与していない。いわゆる「持ち込み原盤」というスタイルである。当時のキングレコードのディレクター藤田純二氏の話によれば、アルバムとして完成された形のマスターが提供されたのだそうだ。翌年放映の『新・エースをねらえ!』のアルバムも同様のスタイルで作られている。
 渡辺岳夫が苦心したと語る『家なき子』の挿入歌は、『フランダースの犬』などの一連の世界名作劇場の挿入歌とはひと味違う雰囲気を持っている。より文学的というか、クラシカルというか、やや古風で落ち着いた香りがある。その雰囲気の違いが『家なき子』を音楽的にもほかの名作アニメと一線を画したものにしている。
 その代表的な曲が「すてきな白鳥号」だ。
 マンドリンと弦のピチカートが奏でる序奏。シンガーズ・スリーのコーラスがそっと重なって、イントロからうっとりする。白鳥号はミリガン夫人と息子のアーサーが乗る船。ミリガン夫人はアーサーの療養のために船でフランスの運河を巡っているのだ。レミはビタリスと離ればなれになったとき、偶然白鳥号と出会い、船上で夢のようなひとときを過ごす。ミリガン夫人が実の母親とも知らずに……。
 劇中ではそのミリガン夫人と白鳥号のテーマとして、本曲のコーラス入りカラオケがくり返し使われていた。シンガーズ・スリーのコーラスが流れてくると、条件反射のようにミリガン夫人の美しい姿と武藤礼子さまのしっとりした声が浮かんでくる。なんて素敵な歌と伴奏でしょう。聴くたびに夢心地になってしまう。
 もう1曲重要な曲として挙げたいのが「リーズとぼく」。アキャン家の末娘リーズはレミと心を通わせ、のちにレミと結婚することになる本作のヒロインである。そのリーズをレミの視点から歌った曲だ。哀愁たっぷりの曲調はちょっと歌謡曲っぽく、本アルバムの中でも異彩を放っている。それだけに印象は深く、本アルバムの中でも本曲をベストに推すファンもいる。
 劇中ではなんといっても第50話。マチヤとリーズが見守る中でレミとミリガン夫人が再会を果す場面に本曲のストレートアレンジのBGMが流れていた。全篇のクライマックスを飾った名曲なのだ。
 ふたたび余談になるが、レミとリーズの恋はマローの原作でも濃密に描かれている。当時の(いや今でも)児童向け作品としては珍しいことだと思うが、同じマローが書いた児童向け作品「ロマン・カルブリス物語」でも主人公の少年とヒロインの恋が物語の柱になっているので、これはマローの作風なのだろう。マローの一連の児童向け作品は今読んでも面白い、起伏に富んだ香気あふれる作品なので、機会があればぜひ読んでみてほしい。
 『家なき子』の挿入歌からもう1曲選ぶなら「ママにあいたい」だ。これも沢田亜矢子のたおやかな歌声とシンガーズ・スリーの美しいコーラスが胸に残る曲。シャバノン村に残して来たバルブラン・ママを想うレミの心情が、やさしくぬくもりのある曲調で描写される。
 劇中では本曲をアレンジしたBGMがレミの母への想いを表現する曲としてたびたび挿入されていた。第38話、故郷に戻ったレミがバルブラン・ママと再会する場面にも、本曲のアレンジBGMがたっぷり流れる。「すてきな白鳥号」「リーズとぼく」とともに忘れられない曲だ。
 ほかにも、マチヤの明るいキャラクターを歌った「マチヤはともだち」、カピとの友情を前半はユーモラスに後半はロマンティックな曲調で歌う「だいすきなカピ」、『アルプスの少女ハイジ』の「アルムの子守唄」と並ぶ渡辺岳夫子守唄の名曲「おやすみなさい」など、聴きごたえのある曲が並ぶ。これまでCD化されなかったのがもったいない名盤である。

 「家なき子 総音楽集」DISC-1の後半には、主題歌・挿入歌のオリジナル・カラオケを収録した。本作のカラオケは、過去にアルバム「家なき子」の中で2曲、当時キングレコードが発売したアニメ主題歌カラオケ集アルバムの中で1曲(「さあ歩きはじめよう」)が商品化されているが、いずれもガイドメロディの入ったカラオケだった。今回のCDではガイドメロディの入らないオリジナル・カラオケを発掘して全曲収録した。
 ただ、残念なことに挿入歌についてはステレオのカラオケ音源が発見できず、モノラル音源での収録になっている。ご了承いただきたい。主題歌のカラオケはステレオ収録である。
 最後にDISC-1のボーナス・トラックについて。
 本作の主題歌には、TVシリーズ用とレコード用の録音に先駆けて、TVスポット用に録音された別テイク(仮テイク)が存在する。放映開始前の番組宣伝に使われたようだが、その映像は確認できていない。今回、音源のみが発見できたのでそれを収録した。TVサイズと同じカラオケを使ったものだが、歌い方やコーラスの有無が異なる。完成版と聴き比べていただくと、主題歌完成までの過程がうかがいしれて興味深い。
 さらにもう1曲。ピアノの伴奏だけをバックに沢田亜矢子が歌う音源が残されていた。沢田亜矢子さんにお聞きしたところ、渡辺岳夫のアトリエで初めて譜面を見て歌ったときの録音でしょうとのこと。そのあたりの経緯は沢田亜矢子さんにインタビューして解説書に掲載しているので、あわせてお読みいただきたい。

 さて、『家なき子』の歌といえば、劇中で流れたレミの歌やビタリスの歌もある。それらも今回マスター音源が発見されたのでBGMとともに収録した。詳しくは次回で。

家なき子 総音楽集
Amazon

131 アニメ様日記 2017年11月26日(日)~

2017年11月26日(日)
デスクワークの日々は続く。午前1時50分に事務所へ。深夜のアニマックスでは『無敵鋼人ダイターン3』一挙放映(3回目)、キッズステーションでは『キャシャーン』HDリマスター版、ちょっと遅れてファミリー劇場では『MEGAZONE23 III イヴの目覚め/ 解放の日』HDリマスター版。それらを流しながら作業。その後はdアニメストアの『Rahxephon』の後半を流す。
 ワイフが『らんま1/2』にはまって、このところ、ネット配信で『らんま1/2』を観ている。昼飯でマンションに戻ったら、やっぱり『らんま1/2』を観ており、「最初のオープニングの絵が違うのはどうしてなの?」と聞かれた。特に全身の走りの画が気になるらしい。「確認したことはないけど、亜細亜堂の作画だからだと思うよ」と解説。ついでにAプロ、シンエイ、亜細亜堂についても軽く解説。「アップやバストショットは、亜細亜堂以外の方の作監修正が入っているかも」とつけくわえた。

2017年11月27日(月)
デスクワークの日々は続く。土曜、日曜に続いて、朝の8時半から学生編集スタッフが原画のスキャンをするはずだったのだが、連絡の行き違いで、僕がその時間に出かけてしまい、彼を事務所の前で待たせてしまった。すいません。
 作業をしながら『ガールズ&パンツァー 第63回戦車道全国高校生大会 総集編』(Amazonビデオのレンタル)、『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』を1話から配信の最新7話まで(Netflix)、『銀魂.』の「ポロリ篇」を331話から最新337話まで(録画)等を流す。『ガールズ&パンツァー 総集編』はよくまとまっていた。『キノの旅』は話そのものが面白い。『銀魂.』は原作がシリアス展開が続いている事もあり、非常に楽しめた。

2017年11月28日(火)
デスクワークの日々は続く。OVA『神秘の世界エルハザード』を全話(DVD)を流して、『機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER』(Amazonビデオのレンタル)を流して、『茄子 スーツケースの渡り鳥』(Amazonプライム)を流して、吹き替え版の『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』(Amazonプライム)を流した。他にも色々と再生した。
 OVA『神秘の世界エルハザード』のエンディングテーマ「BOYS BE FREE!」の歌詞は「あなたが女の子になっても私は好きでいるわ。弱くても偉くなくても、あなたのことが好きだから、頑張らなくてもいいのよ」といった意味のもの。当時もオタク男子に対して意地悪な内容だなあと思ったけれど、今となってみれば、その後の色々なことを予言しているようでもある。枯堂夏子はすごい。

2017年11月29日(水)
デスクワークの日々は続く。昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では3位を放映。『旧ルパン』の「十三代五ヱ門登場」だった。五右ェ門メインの話は強いなあ。1位、2位はやはり「さらば愛しきルパンよ」「死の翼アルバトロス」か。違う話がきたら、それはそれで面白いけど。
 Amazonプライムで『映画 クレヨンしんちゃん』を再生しながら作業をする。この日に流したのは『超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』『嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』『伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃』『伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』。第1作から第10作は繰り返し観ているので、それ以降の作品を選んだ。

2017年11月30日(木)
デスクワークの日々は続く。原稿まとめの日。先日、目を通した12万文字のテープおこしを、1万文字ほどにまとめる。気合いを入れて、超スピードの作業。
 今日もAmazonプライムで『映画 クレヨンしんちゃん』を流す。再生したのは『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』『ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』『オタケベ!カスカベ野生王国』『嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦』『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』。

2017年12月1日(金)
デスクワークの日々は続く。次回の『クレヨンしんちゃん』の放映は1月で、次回の『ドラえもん』は大晦日であるらしい。年末感が強まる。

2017年12月2日(土)
デスクワークの日々は続く。金曜で「アニメスタイル012」の作業が一段落して、数か月ぶりに(ひょっとしたら今年で初めて)やらなくてはいけない作業のない日になるかと思ったのだけど、そんなことはなかった。むしろ、普段より遅い時間まで作業をした。

第541回 最終話アフレコ

『Wake Up Girls! 新章』最終話のアフレコでした!

 あっという間だったけど、とても楽しいアフレコで、毎回自分のコンテが役者さんたちの芝居によって血肉が着いていく感じがハッキリありました。Wake Up Girls!の皆さんはもちろん、前シリーズからのレギュラーメンバーの方々には、俺がコンテに書いた「以下OFFでアドリブよろしく〜」について、色々なアイデアやアドバイスなど、本当に助けていただいたし、Run Girls,Run!の3人も、いきなり巧くてビックリ! もっとテイクを重ねるかと思いきや、一発で「いいじゃん!」と。後半話数のコンテでは、3人に期待した上での芝居が増えていった気がします。WUG!もRGR!もコンテで芝居を描いてると、こんなオッサンでも少女になれる瞬間があり(ま、以前から語ってるとおり、絵コンテの面白さはつまるとこソコなんですが)、若い頃を思い出して変に熱くなったりします。RGR!の歩が憧れの真夢に声をかけてもらって感激(昇天?)するところとか、自分が出崎統監督のサイン会に行って握手してもらった感動・衝撃を思い出して描けたし、あ、あと猫!

結局、俺はずんだ(猫)の目線だったのかも?

 明らかにシーンの切れ目切れ目で、板垣はあそこで気持ちよさそうに転がってます。ちなみに猫を出したいと言ったのは、脚本の松田恵里子さんで、「ずんだ」という名前を提案したのも松田さんで、「デブでオスの三毛猫」と決めたのは自分です。菅原美幸さんのデザインもリアリティベースの可愛さで気に入ってます! 今思い出したけど『迷い猫オーバーラン!』の時も、デブ猫出したっけ。

第140回アニメスタイルイベント
元祖 ここまで調べた『この世界の片隅に』 平成30年正月編

 多くの観客に受け入れられたアニメーション映画『この世界の片隅に』。公開から1年を過ぎてた現在まで途切れることなく、上映が続いている。

 片渕須直監督と制作スタッフは『この世界の片隅に』の制作過程で、舞台となる地域や時代風俗について綿密な調査研究を行った。それに裏付けされた臨場感や登場人物の存在感が本作の魅力のひとつだ。
 その調査研究の結果を披露していただくのが、トークイベント「ここまで調べた『この世界の片隅に』」シリーズである。今までのイベントでも「そんなところまで調べるの?」「当時の日本の風俗って、そうだったの!」と観客から驚きの声を頂戴した。今回のイベントも深い話をうかがうことができるはずだ。

 今までと同様に、トークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。前売り券は2017年12月9日(土)から発売開始。

 なお、今回からトーク中のお客様によるステージの撮影はお断りすることとなった。イベント中に撮影タイムを設ける予定だ。片渕監督の姿を撮りたい方は撮影タイムにどうぞ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/78572

第140回アニメスタイルイベント
元祖 ここまで調べた『この世界の片隅に』 平成30年正月編

開催日

2017年1月14日(日)
開場12時 開演13時 終演16時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直(『この世界の片隅に』監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

130 アニメ様日記 2017年11月19日(日)~

2017年11月19日(日)
デスクワークの日々。午前3時に事務所へ。キッズステーションで『無敵鋼人ダイターン3』の一挙放映をやっていた。HDリマスターではない。なんだか懐かしい画質。もう少し早い時間に事務所へ入っていたら、キッズステーションの『ご注文はうさぎですか?』一挙放映と、キッズステーションの『無敵鋼人ダイターン3』の一挙放映のどちらを観るかで悩んでいたはず。

2017年11月20日(月)
デスクワークの日々は続く。朝は『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』のDVDを観ながらキーボードを叩く。『南極カチコチ大冒険』は秀作です。お勧めします。作業をしながら、Blu-ray BOXで『四畳半神話大系』を全話観る。再見は久しぶりだったけれど、記憶にあるよりも「濃い」作品だった。

2017年11月21日(火)
デスクワークの日々は続く。作業をしながら『戦闘妖精雪風』のBlu-ray BOXと『AIKa』DVDBOXを流す。『戦闘妖精雪風』を再見したのは久しぶり。『AIKa』はお色気とかそういうことだけでなく、突き抜けたものがあると改めて思った。

2017年11月22日(水)
デスクワークの日々は続く。『攻殻機動隊 新劇場版』を流しながら作業をする。

2017年11月23日(木)
デスクワークの日々は続く。作業をしながら『夜明け告げるルーのうた』と『夜は短し歩けよ乙女』を繰り返し観る。午後は特に理由はないけれど、『ガルフォース』のDVDを流す。

2017年11月24日(金)
デスクワークの日々は続く。OVA『魔法使いtai!』を観る。やっぱりOVA『魔法使いtai!』は「夢アニメ」だなあ。ちなみに「夢アニメ」は以前、今石洋之さんが使っていた言葉だ。
 ところで、『夜明け告げるルーのうた』のラストシーンで町の人達と人魚達が踊り出すけど、ルーが踊る前に踊り出しているから、あれはルーの力で踊らされているのではなくて、町が救われたのが嬉しくて、自発的に踊っているんだね。

2017年11月25日(土)
今日は朝の8時半から学生編集スタッフが事務所に入り、「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.2」のためのスキャン作業。深夜から事務所に入っている僕が言うのもなんだけど、8時半は早いなあ。
 作業をしつつ、『Rahxephon』を1話から視聴。これからまとめる取材のテープおこしに目を通す。文字数をカウントしたら12万文字。目を通すだけで1日はかかるなあ。昨日で作業が一段落して、今日は時間に余裕があるはずだったので(実際にはそうではなかったのだけど)、ワイフと約束していてた「ラ・ラ・ランド」を新文芸坐で観る。予想していたほどハッピーな映画ではなかった。冒頭のミュージカルシーンが素晴らしい。新文芸坐の音響もよかった。

第540回 仕事とコーヒー

 先週は祝日だったので、前回何を書きかけて中断したのか? と思い出すとこから。そうそう、

自分がやりたくない仕事は必ず誰かがやってくれている!

って話でした。まあ、そんなわけで『Wake Up, Girls! 新章』もコンテ全話(結局全話切ってしまった)終わっても、レイアウトや作画のお手伝いをしています。楽しくコンテを切ったら「あとは作画が上がるのを待つだけ」とは行きません。社内のアニメーターたちが机に必死にしがみついてるのに、俺だけ「お先に〜」ってできない性格なもので。皆が描きたいキャラを描けるわけでもないのがアニメのお仕事。監督が数分でフニャ〜とラフなモブシーンのコンテを描けば、アニメーターは数時間か、下手をすれば1日がかりで作画することになり、3コマのラフなアクションシーンのコンテも、アニメーターが10〜20枚の原画にしなければならないものなのです! アニメーター出身でない監督さんからすると、「え、アニメーターの人って、モノはなんでも画さえ描いてれば幸せなんでしょ?」と思われるかもしれませんが、そんなハズありません! アニメーターだって描くのがおっくうなもの、描きたくないものくらいあります。でも、フィルムのために必要だ(と思う)から描いている。当たり前の話。つまり、「自分がやりたくない仕事は必ず誰かがやってくれている」ということですね。

第139回アニメスタイルイベント
長濵博史さんと朝まで『THE REFLECTION』!

 「第139回アニメスタイルイベント 長濵博史さんと朝まで『THE REFLECTION』!」は、アニメスタイルイベントとしては珍しいオールナイトのトークイベントだ。12月9日(土)の深夜から10日(日)朝にかけての開催となる。
 トークのテーマは10月に放映を終えた『THE REFLECTION』。原作・監督の長濵博史が熱く、そして、たっぷりと語ってくれるはずだ。トークは『THE REFLECTION』の映像を上映しながら進行。また、長濵監督以外の出演者も予定している。

 前売り券は11月28日(火)から発売開始となっている。また、このイベントはオールナイトにつき、18歳未満の方、および高校在学中の方は入場はできない。詳しくは以下の阿佐ヶ谷ロフトAのリンクを見ていただきたい。

 今回のイベントは作品上映があるため、ネットでの配信はない。トークを聞きたい方は是非、阿佐ヶ谷ロフトAに足を運んでほしい。

■関連リンク
阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/78480

第139回アニメスタイルイベント
長濵博史さんと朝まで『THE REFLECTION』!

開催日

2017年12月9日(土)
開場:24時/開演:24時30分 終演:翌日4時30分~6時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

長濵博史(『THE REFLECTION』原作・監督)、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)、他

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第120回 うつし世は夢 〜Paprika〜

 腹巻猫です。鶴ひろみさんの急逝、ショックでした。初主演作『ペリーヌ物語』は個人的に大好きな作品で、完全版サントラを作ったときはファンレターを書くようなつもりで心して作りました。折しも11月からTOKYO MXで『ペリーヌ物語』を放映中。涙なしに見られません。


 今回は筒井康隆の原作を今敏監督が劇場アニメ化した『Paprika』。アニメーション制作はマッドハウスが担当。2006年9月にベネツィア国際映画祭に正式出品され、日本では2006年11月に公開された。夢を題材にした圧倒的なビジュアルが見どころの作品である。
 今監督は本作に先行する『PERFECT BLUE』『千年女優』『妄想代理人』といった作品でも妄想(歪曲した記憶)と現実をテーマに取り上げ、妄想が現実を侵食し、現実と妄想の境界があいまいになるさまを描いている。『Paprika』も夢が現実を侵食する話。今監督はもともと筒井作品のファンで、2003年のアニメージュ誌上での筒井康隆との対談がきっかけになって本作の映像化が実現したと公式サイトのプロダクションノートに記されている。
 精神医療総合研究所で開発中の他人の夢とシンクロできる装置DCミニが盗まれた。犯人はDCミニを悪用して次々と研究所の所員の精神を侵し始める。夢探偵パプリカとしても活動するサイコセラピスト千葉敦子は、島所長とDCミニの開発主任・時田浩作とともに事件の謎を追い始めるが、所長も浩作も、そして敦子=パプリカ自身も悪夢の中に捕えられてしまう……。
 というのが大まかなストーリー。原作より物語は単純化され、理解しやすくなっている。だが、本作は物語を追うよりもめくるめく夢のイメージに浸って、パプリカとともに夢の迷宮をさまようのが本来の楽しみ方だろう。

 音楽は平沢進。『千年女優』『妄想代理人』でも今敏監督と組んだ名パートナーである。
 平沢進は1954年生まれ。東京都出身。小学校4年生でエレキギターを手にし、黛敏郎やタンジェリン・ドリームの音楽に出会って電子音楽への傾倒を深めていく。70年代にはメロトロン・サウンドを取り入れたプログレッシブロックバンド、マンドレイクで活躍。1979年にテクノポップグループP-MODELのボーカリスト/ギタリストとしてメジャーデビューする。P-MODELはヒカシュー、プラスチックスとともに、YMOに続くテクノ御三家と呼ばれて人気を集めた。1989年から並行してソロ活動も展開。「歌えるバンゲリス」をテーマに電子音とボーカルをミックスしたサウンドを進化させていった。現在はソロをメインに活動。1990年代からインタラクティブ・ライブやインターネット配信を行うなど、先駆的な活動を続ける音楽家である。
 アーティストとしての活動がメインだが、映像音楽やゲーム音楽もいくつか手がけている。映像音楽作品に、OVA『DETONATOR オーガン』(1991)、TVアニメ『剣風伝奇ベルセルク』(1997)、そして今敏監督の『千年女優』(2002)、『妄想代理人』(2004)、本作『Paprika』(2006)などがある。
 中でも今敏監督の3作は別格だ。もともと平沢進のファンであった今監督は平沢の音楽で劇場作品を作るのが念願で、「『千年女優』の音楽は平沢進しか考えてなかった」とインタビューで語っている。平沢進にとっても今監督の作品は注文に応じた職人的な音楽作りではなく、自分なりの解釈が提示できる刺激的な仕事だったという。本作『Paprika』も監督からの熱い要望に応える形で参加した。
 サウンドトラックとしてはメロディアスでロマンティックな要素がある『千年女優』や意外にポップな『妄想代理人』の方が入りやすい。『Paprika』の方がざらっとして近寄りがたい印象がある。それだけに『Paprika』の音楽には「恋愛もので完結するような音楽に興味はない」と語る平沢進の音楽性がよく表れている。聴いていると中毒になるような危うさをはらんだ音楽である。
 サウンドトラック・アルバムは平沢進のプライベートレーベル・テスラカイト(ケイオスユニオン)から2016年11月に発売された。Amazon等でも入手可能だ。
 収録曲は以下のとおり。

  1. パレード
  2. 媒介野
  3. 回廊の死角
  4. サーカスへようこそ
  5. 暗がりの木
  6. 逃げる者
  7. Lounge
  8. その影
  9. 滴いっぱいの記憶
  10. 追う者
  11. 予期
  12. パレード(instrumental)
  13. 白虎野の娘(パプリカエンディングバージョン)

 ジャケットは平沢進のポートレイト。平沢進のオリジナルアルバムの趣だ(アメリカのMilan Recordsから発売された海外版サントラはジャケットに作品のビジュアルが使われている)。
 曲順も劇中使用順にはこだわっていない。本作の音楽は画に合わせて曲をつけるフィルムスコアリングではなく、使用場面を想定してはいても自由に発想をふくらませた音楽を用意し、シーンに合わせて選曲していく方式で作られている。平沢進のアルバムとしての側面を前面に出した形は本作にふさわしい姿なのである。
 曲数はわずか13曲。しかし、劇中で流れる曲はこれでほぼすべて(一部、トラックダウン違いによる別バージョンが使用されている)。
 音楽が流れる場面は思いのほか多く、同じ曲がくり返し使われている。その大半は夢の中のシーンである。現実の場面では効果音的な音楽が薄く流れるだけで、音楽らしい音楽はほとんど夢の中でしか聴こえない。興味深い音楽設計だ。
 1曲目「パレード」は12曲目に置かれた「パレード(instrumental)」のボーカル・バージョン。平沢進の作詞・作曲・歌唱による作品だ。劇中ではインスト・バージョンの方が使用されている。
 DCミニを利用した攻撃によって意識を侵された所員たちが見る奇怪なパレード。その場面にくり返し流れるインパクト抜群の音楽である。狂気をはらんだ悪夢のテーマとして、一度でも本作を観たら忘れられない音楽だろう。同じフレーズの反復が心をむしばむ悪夢の侵入をイメージさせる。本作を代表する1曲である。
 トラック2「媒介野」はオープニングタイトルに使用された曲。夢の中を駆けるパプリカの映像とともに流れた。「媒介野」は造語のようだが、夢と現実をつなぐパプリカの活動を象徴するような秀逸なタイトルだ。
 不思議なボーカルからリズムが加わり、オリエンタル風味のメロディが始まる。トラック13のエンディングテーマ「白虎野の娘」のインストゥルメンタル・アレンジである。  オープニング映像ではパプリカが現実と非現実を自在に行き来しながら夜の街を駆け抜けていく。その不可思議な爽快感が幾重にも重ねられた音とリズムで表現される。本アルバムの中でも群を抜いてポップで聴きやすいナンバーだ。
 作品の後半でパプリカが孫悟空の扮装で夢の中を飛ぶ場面にも、ふたたびこの曲が流れる。パプリカのテーマとも呼べる曲である。
 トラック3「回廊の死角」はパプリカのクライアントであった粉川警部が17歳の時の映画作りの記憶を思い出す場面などに使用。回廊とは「記憶の回廊」の意味だろうか。ノイズのような音が響く中、叫び声のようなものが現れては消える。夢の中で、怖いとわかっていても恐ろしい場所に引き寄せられていく……そんな緊張感を思い出す曲である。
 トラック4「サーカスへようこそ」は作品冒頭の夢の中のサーカスの場面に使用。現実音楽的な(夢の中だから現実音楽という表現もおかしいが)BGMに徹した曲である。
 トラック5「暗がりの木」は弦合奏の音がクラシカルに奏でる落ち着いた音楽。パプリカ=敦子が夢の中で一連の事件の黒幕が理事長だと察し、覚醒して理事長のもとを訪れるシーン。理事長の屋敷の温室の場面から流れ始める。「暗がりの木」とはその温室にある木のことだろう。実は覚醒したと思っていたらこれもまた夢の中……というシークエンスの曲で、映画を観てから聴くと穏やかな曲調にかえってドキドキしてしまうというしかけがある。
 トラック6の「逃げる者」とトラック10の「追う者」は対になったような曲である。どちらも夢の中での追跡・逃走場面に流れるアップテンポの曲だ。「逃げる者」は激しいブラスの響きの中に禍々しいコーラスが聴こえてくる危機感に富んだ曲。「追う者」は「白虎野の娘」のメロディをアレンジした疾走感のある曲。しかし、夢の中では追う者と追われる者は容易に入れ替わり、どちらが追う者でどちらが追われる者かわからなくなる。「追う者」は粉川警部の場面に「追われる者」はパプリカのピンチの場面によく使われているが、その役割は明確には分かれていない。
 トラック7「Lounge」は粉川警部がパプリカとコンタクトするときに使うネット内のバー「RADIO CLUB」で流れている曲。これも現実音楽(?)として書かれた小粋なジャズタッチの曲だが、アルバムの中でほっとひと息つける憩いの音楽になっている。
 トラック8「その影」はコントラバスの低音の響きと金属的なパーカッションがじわじわと近づく脅威を描写する曲。1分を超えて宗教音楽的な合唱が入り、実写劇場作品「オーメン」の音楽のような暗い情念があふれだす。劇中では夢の中でパプリカが捕えられていたぶられる場面、クライマックスで現実を侵食した理事長が巨大化してパプリカに襲いかかる場面などに流れて危機感を盛り上げている。
 トラック9「滴いっぱいの記憶」は本作の音楽の中でも異色とも言える愛らしい曲。ふわふわしたシンセサウンドとボーカルで「白虎野の娘」のバリエーションがやさしく奏でられる。夢は夢でも、悪夢ではなく、心地よく安心できる夢といった曲調である。
 劇中では序盤で敦子が「最近、私の夢を見ていない」とつぶやく場面で短く流れたあと、敦子と粉川警部が現実世界で初めて顔を合わせる場面、クライマックスで敦子が浩作への気持ちに素直になる場面に流れている。「媒介野」がパプリカのテーマとすれば、こちらは敦子のテーマ。生身の女性に戻った敦子の心情を描くドリーミィな曲である。
 トラック11の「予期」は闇の奥から何かが現れてくるような不気味な緊張感をたたえる曲。ストリングスの通奏音を背景に妖しい声やノイズが浮かび上がる。「回廊の死角」と同様のサスペンス曲だが、こちらは映像のバックに薄くはわせるような使い方で、たびたび使用されている。
 この曲の次が「パレード(instrumental)」、そしてエンディングの「白虎野の娘」なのだから、アルバムの中ではパプリカも浩作たちも、夢に捕えられたまま現実には帰還しないとも受け取れる。現実を浸食する夢をテーマにした『Paprika』らしい構成だ。
 その「白虎野の娘」はエンドタイトルに流れた本作の主題歌。もともと平沢進のアルバム『白虎野』に収録されていたタイトル曲「白虎野」を本作用に歌詞の一部を変えて録音したものだ。作詞・作曲・歌唱は平沢進。ベトナムのバクホー油田(英名:White Tiger Field)からインスパイアされて作られた曲だという。
 反復するリズムとメロディ、ファルセットをまじえたボーカルと合成音声の共演、安易な解釈を拒む不思議な歌詞。平沢進のスタイルがよく表れた玄妙な曲で、聴くほどに脳の中を焼かれるようなトリップ感覚が味わえる。

 サウンドトラックでありながらオリジナル作品としても聴ける重層的なアルバムである。圧巻はやはり「パレード」、そして「白虎野の娘」だろう。作品のイメージを反芻しながら聴くもよし、自分の夢の記憶をすくい上げながら自由に想像を広げて聴くのもよし。「うつし世は夢、世の夢こそまこと」、そんな名言が浮かんでくるようなアルバムだ。ただし、あまり聴き入ってしまうと夢から抜け出せなくなるかもしれないので、ご用心を。
 なおテスラカイトのサイトではサウンドトラック・アルバム未収録のアウトテイク「走る者」を無料配信している。

パプリカ オリジナル・サウンドトラック
Amazon

テスラカイト「パプリカ」オリジナル・サウンドトラック発売記念 無料配信ページ
http://teslakite.com/freemp3s/paprika/

129 アニメ様日記 2017年11月12日(日)~

2017年11月13日(日)
『この世界の片隅に』が劇場公開1周年を迎えた。この1年間ずっとどこかで上映されていたのだ。これは大変なことだ。今後も皆に愛され続ける作品でありますように。
 夜は「第137回アニメスタイルイベント絵本刊行記念 あずきちゃん同窓会」を開催。出演者は以下の通り。

丸山正雄さん(プロデューサー)
小島正幸さん(監督)
芦野芳晴(キャラクター設定)
ゆかな(あずきちゃん役)
宮崎一成(小笠原勇之助役)
川田妙子さん(西野かおる役)
真殿光昭‏さん(高柳ケン役)
ゆきじ(トモちゃん役)
津久井教生さん(坂口まこと役)
皆口裕子‏さん(あずきちゃんのお母さん役)

 アニメスタイルイベント史上で、ゲストの人数が最大であったかもしれない。さらに第三部では飛び入りで、近藤栄三プロデューサーにもステージにあがって、たっぷり語っていただいた。ゲストを集めるのは丸山さんにお任せしていて、イベント開始直前までどなたが来るか分からなかったので、トークのプランを立てる余裕はなく、その場その場の判断でトークを進めた。とは言っても、皆さん、お話が上手なのでその点では苦労しなかった。僕がやったのは話題に漏れがないか、ゲストの皆さん全員に話してもらえているかを気にしたくらいだ。トークの内容は企画、脚本、作画、演出、アフレコと多岐にわたり、きちんと「作品のイベント」になっていたと思う。お客さんの反応が異様によかったのも印象的で、キャストの方々も喜ばれていた。
 僕はイベントにあたって『あずきちゃん』全話を観直したのだれど、全然足りなかった。お客さんの方がずっと濃かった。次に機会があったら、もっと気合いを入れて予習をしたい。

2017年11月13日(月)
録画で、TV放映版「シン・ゴジラ」を観る。間にCMが入ると、緊張感が維持できないのではないかと思ったけれど、そんなことはなかったようだ。

2017年11月14日(火)
明け方、作業中にパソコンにトラブル発生。再起動しようとしたけれど、再起動できない。慌てて自宅に戻り、ノートパソコンを事務所に持ってきて、作業を続ける。不幸なことは重なるもので、iPhoneの歩数計アプリも落ちて、再起動をかけたら昨日と今日の歩数記録がリセットされた。昼にはパソコンか復旧したが、またこんなことがあるといけないので、新しい外付けのハードディスクを購入して色々とバックアップをとる。

2017年11月15日(水)
「ルパン三世ベストセレクション」の5位は『旧ルパン』1話「ルパンは燃えているか・・・・?!」。これは順当。残りは4本だ。おそらく『新ルパン』の「死の翼アルバトロス」「さらば愛しきルパンよ」は入るとして、今までの流れから考えると『旧ルパン』の「黄金の大勝負!」も入りそう。残り1本は『旧ルパン』なら「脱獄のチャンスは一度」「十三代五ヱ門登場」「7番目の橋が落ちるとき」あたり、『新ルパン』なら「哀しみの斬鉄剣」「国境は別れの顔」あたりか。『新ルパン』の「ICPO(秘)指令」「君はネコ ぼくはカツオ節」、『PARTIII』の「ニューヨークの幽霊」「カクテルの名は復讐」あたりがくると、僕的には嬉しい。

2017年11月16日(木)
ある作品のレイアウトを見ていたのだけれど、監督修正が猛烈に上手い。昔のTVシリーズの巧い作画監督的な巧さで、えらく画が決まっている。しかも、この作品だと、演出、作画監督がチェックした後に監督がチェックを入れている模様。総作監とチェックするカットを分けているのだろうか。
イベント関連で動きがいくつかあった。来年1月に予定していたイベントのひとつが2月以降に延期。それと別に前から準備していたイベントが中止。企画していたイベントの全てが実現したら、12月と1月で4回イベントをやることになっていたはずで、それはそれでしんどかったけれど。それと、オールナイトの企画もひとつ、没になった。まあ、そんな日もある。

2017年11月17日(金)
作業をしながら『機動警察パトレイバー』の初期OVAシリーズ(アーリーデイズ)を流す。面白いなあ。3話、4話を観るのはリリース時以来かもしれない。3話、4話はリリース当時は「え~~」と思いながら観ていたんだけど。 仕事の合間に「少女革命ウテナTVアニメ20周年記念展」に行く。予想していたよりも資料が充実。お客さん達が熱心に見ていたのも嬉しかった。実は展示で使える『少女革命ウテナ』の資料が手元にあり、今回のイベントで提供しようかと思ったのだけど、実現しなかった。それは別の機会に。

 声優の鶴ひろみさんが亡くなられたことが報じられた。亡くなったのは11月16日(木)だそうだ。『ペリーヌ物語』のペリーヌ役、『DRAGON BALL』のブルマ役、『きまぐれオレンジ☆ロード』の鮎川まどか役、『それいけ!アンパンマン』のドキンちゃん役が印象的だ。僕は書籍「キャラクターボイスコレクション」で取材させていただいた。色々なお話をうかがったのだが、10年後か20年後にまた話を聞きたいと思った。お話をうかがって、ちょっと気になることがあり、鶴さんがどんなふうに歩んでいくのかが気になったのだ。だけど、その願いは実現しなかった。心よりご冥福をお祈り致します。

2017年11月18日(土)
原稿を書いていて、自分にとって一番のキャプションが書けた。多分、この数年のベストだ。チェックに出す前に「やっぱりやめた」と思わなければこのままで。
「別冊映画秘宝特撮秘宝」で、気になっていた「検証・11月の傑作選」に目を通す。會川昇さんの原稿だ。「帰ってきたウルトラマン」の「11月の傑作選」について、その呼び名が生まれて、活字になるまでが検証されており、大変に興味深い。当時、僕は「ウルトラマン大百科」の「11月の傑作選」についてのコラムの「怪獣ファンは……」という記述について、「この怪獣ファンって誰なんだ」と思っていた。その謎が解けました。ありがとうございます。

第138回アニメスタイルイベント
チェ・ウニョンが語るサイエンスSARUのアニメーション

 今年公開された劇場アニメーション『夜は短し歩けよ乙女』と『夜明け告げるルーのうた』、そして、2018年1月に配信開始になる『DEVILMAN crybaby』。これらの話題作を制作しているプロダクションがサイエンスSARUだ。快進撃を続ける同プロダクションの成り立ちと、同社が取り組んでいるFlashによるアニメ制作について、プロデューサーのチェ・ウニョンに語っていただく。他のサイエンスSARUのスッタフにも出演していただく予定だ。

 開催日は2017年12月3日(日)。夜ではなく、昼間のイベントだ。なお、今回のイベントは2時間から2時間半のやや短めのイベントとなるかもしれない。 
 今回のイベントもトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。前売り券は11月25日(土)12時から発売となる。詳しくは以下の阿佐ヶ谷ロフトAのリンクを見ていただきたい。

 サイエンスSARUの代表である湯浅政明監督は今回のイベントには出演しない。湯浅監督には12月23日(土)開催のオールナイトでトークに出演していただく。興味がある方には、トークイベントとオールナイトの両方に参加されるのもいいだろう。また、12月16日(土)発売予定の「アニメスタイル012」では湯浅政明監督の特集を予定している。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/78163

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 99 湯浅政明の長編アニメーション!
http://animestyle.jp/2017/11/16/12499/

「アニメスタイル012」
http://amazon.jp/dp/4802152035/style0b-22/ref=nosim

第138回アニメスタイルイベント
チェ・ウニョンが語るサイエンスSARUのアニメーション

開催日

2017年12月3日(日)
開場:12時/開演:13時 終演:15~16時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

チェ・ウニョン(プロデューサー)、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)、他

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

128 アニメ様日記 2017年11月5日(日)~

2017年11月5日(日)
三連休3日目。午前2時に事務所へ入り、昼まで「アニメスタイル012」のページ構成。ある作品の美術設定(線画)を見て、ニヤニヤする。作業をしつつ、アニマックスの『無敵超人ザンボット3』の一挙放送を観る。映像が綺麗だなあ。ロボットアニメのコクピット内のカットだと、金田伊功さん作画の勝平が一番好きだ。それを確信した。昼過ぎから、TOHOシネマズ新宿で「ブレードランナー 2049」を観る。予想していたのとは随分違ったけれど、楽しめた。雰囲気が魅力の映画だと思った。

2017年11月6日(月)
11時に有楽町方面で打ち合わせ、事務所に戻って打ち合わせが2件、15時から西武池袋線方面で打ち合わせ。有楽町方面と西武池袋線方面の打ち合わせは来年の仕事関連。
 朝のTOKYO MXの『あらいぐまラスカル』が最終回を迎えた。今回の再放送では、ほぼ全話をリアルタイムで視聴した。毎日観ているうちに、朝ドラ視聴と同様に、登場人物が「隣人」のように思えてきた。物語を楽しむというよりは、隣人の言動に触れてなごんだり、感心したりする感じ。通常の意味での「物語を楽しむ」というのとはちょっと違うかもしれないが、楽しんだことは間違いない。
 アニマックスの『空手バカ一代』の1、2話を録画で観たのだけど、これも猛烈に綺麗。セルの部分はまるでデジタルアニメのようだ。1話は木村圭市郎さんの色が濃い。2話とあわせて、原画は『タイガーマスク』経験者ばかり。3話から変わっていくんだろうなあ。

2017年11月7日(火)
11時から西武新宿方面で打ち合わせ。これも来年の仕事関連。TOKYO MXの『あらいぐまラスカル』の後番組は『ペリーヌ物語』。『ラスカル』からの流れで改めて1話を観ると、これが実に新鮮。「新番組が始まったぞ」という感じ。 ペリーヌのキャラ立ても、お母さんとの対比も抜群に上手い。デザインや色遣いも『ラスカル』とは随分違う。全体に華やかで楽しい。やっぱり『ラスカル』はストイックな作品だったんだなあ。

2017年11月8日(水)
荻窪方面で打ち合わせ。その後、吉松さんと焼き鳥屋で「アニメスタイル012」の取材。イベントの予習で『あずきちゃん』再視聴中。35話「ナイショ! 赤ちゃんはどこからくるの」はキスしたことで、あずきを妊娠させたかもしれないと思い込んだ勇之助が「子どもが産まれたら一緒に育てよう」と言い出す話。絶好調の面白さ。演出・絵コンテは片渕須直さん。そのひとつ前が34話「ドキッ! 夢のなかのファーストキス」。あずきと勇之助のキスのところも凄いんだけど、キスをした後、家でずっと呆然としているあずきがいい。エピローグの落とし方も上手い。演出・桜井弘明さんの大ホームラン。

2017年11月9日(木)
TOKYO MXの『ペリーヌ物語』3話は「おかあさんのちから」。1話と2話で頼りなかったペリーヌの母親が、旅先でお世話になった家のお産で頼れるところを見せる。この構成も上手いなあ。仕事の方は「アニメスタイル012」と「設定資料FILE」でてんやわんや。ベテランアニメーターの激ウマ原画を見てニヤニヤする。

2017年11月10日(金)
12月のオールナイトを発表した。次回のオールナイトは「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 99 湯浅政明の長編アニメーション!」。99回目を湯浅さんの特集にしたくて、それを実現するために11月のオールナイトを休んだのである。

2017年11月11日(土)
イベントの予習で『あずきちゃん』を再視聴中。『あずきちゃん』3期1話から大迫みちえという名の校長先生が赴任してくる。初老の女性で、かつてはケンの父の担任でもあった。演じている伊倉一恵さんは当時三十代半ばだったはずで、初老の役を演じるにはかなり若い。ケンの父は小学校の時に、大迫先生にラブレターを出しており、今でもそれを照れくさく思っている。そんなエピソードもあるので、初老ではあるけれど、どこか若さを感じさせるキャスティングを狙ったのだろう。野山けい子(あずきの母)が皆口裕子さん、ケンの父が矢尾一樹さん。お二人とも当時、三十代半ば。お母さん役、お父さん役をやっておかしくないともいえるけれど、やはり若々しいお母さん、お父さんを狙ったキャスティングだったはずだ。伊倉さんのキャスティングは、皆口さん、矢尾さんのキャスティングの延長線上にあるのだろう。そのあたりのことを丸山正雄さんに聞きたいけど、覚えていないだろなあ。
 同じく89話「再会! お父さんの恋人」に登場する美千代は、あずきの父親の初恋相手だったのではないかと思われた女性。千住で「たぬき」というもんじゃ焼き屋をやっている気っ風のいい人で、演じているのは兵藤まこさん。息子の貞男は、トモちゃん役でレギュラーのゆきじさんが演じた。両役とも存在感たっふりで、ナイスキャスティング。貞男は主人公感あり。

第539回 また途中までで……

自分がやりたくない仕事は必ず誰かがやってくれている!

 アニメ作りってそういうものだし、まぁ他の業種でも、いや世の中規模でそーゆーもんだと思います。「私は原画だけやってたいし、原画だけ描いていれば幸せなの!」という若手、それこそ数えきれないほど会ったことがあります。ところが「じゃ、自分が描いた原画を自分で動画にしてくれる?」と訊くと、大概の人の答えがNOです。当たり前な話、誰かが動画をやらなければアニメにはなりません。一方でこんな人も。「人の原画を修正するのは大変なだけで面白くない! 演出も作画も監督も絶対やりたくない!」実力的に無理なら仕方ないにしても、他の人より巧いのに頑にNOを言い続けてる中堅、結構います。「では、あなたの描いた原画は、演出チェックも作督」チェックもなしに使えているのでしょうか?」と。当然ですが、誰かがチェックしてくださることでアニメになっているのです。つまり何が言いたいかとゆーと、

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 99
湯浅政明の長編アニメーション!

 2017年最後のオールナイトは湯浅政明監督の特集だ。今年は『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』と、彼の長編劇場作品が2本も公開された。いずれもアニメーションならではの楽しさに満ちた作品だった。
 今回のプログラムはその2作品に湯浅政明の本格的監督デビュー作の『MIND GAME』、そして、短編『キックハート』を加えた4本立てだ。アニメスタイルではこれまで何度も湯浅監督作品のプログラムを企画してきたが、監督作品だけのプログラムはこれが初となる。魅惑の湯浅ワールドを堪能していただきたい。
 トークのゲストは湯浅政明監督。前売り券は11月18日(土)から新文芸坐とチケットぴあで発売となる。

※チケットは完売しました。ありがとうございます。当日券の予定はないそうです。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 99
湯浅政明の長編アニメーション!

開催日

2017年12月23日(土)
開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5:25(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

湯浅政明、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

キックハート(2013/12分/BD)
夜明け告げるルーのうた(2017/113分/DCP)
夜は短し歩けよ乙女(2017/92分/DCP)
MIND GAME マインド・ゲーム(2004/103分/35mm)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第119回 暗黒のオペラ ~NOIR~

 腹巻猫です。菅野祐悟トークライブ、いよいよ今週末開催となりました。11月18日(土)阿佐ヶ谷ロフトで19時開演です。『PSYCHO-PASS』で出会った岩浪美和音響監督とのお仕事(『ジョジョの奇妙な冒険』『亜人』『BLAME!』など)の話や『ガンダム Gのレコンギスタ』の富野監督とのやりとりなどもお話しいただく予定。これまで菅野さんがインタビューなどで語りきれなかったとっておきの秘話をうかがいますよ。当日は特典つき物販や抽選会も予定しています。前売券はe+で発売中!

菅野祐悟トークライブ
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/76470


 今回取り上げるのは『NOIR』。『魔法少女まどか☆マギカ』や『ソードアート・オンライン』シリーズで知られる梶浦由記が音楽を手がけたTVアニメ作品だ。
 高校時代からバンド活動を行っていた梶浦由記は、1993年、ボーカルの石川智晶らとともに音楽ユニットSea-Sawとしてデビュー。作詞・作曲・編曲とキーボードを担当する。2年ほどでSea-Sawの活動はいったん休止になり、メンバーはソロ活動を開始。梶浦由記は劇場作品やゲームの音楽で活躍を始めた。1996年、劇場アニメ『新きまぐれオレンジ☆ロード』の音楽を担当。これがアニメ音楽デビューとなった。
 1997年、梶浦由記は真下耕一監督のTVアニメ『EAT-MAN』の音楽をEBBY、米田和民とともに担当。それが縁で2001年に真下監督の『NOIR』の音楽を単独で手がける機会を得る。以降、『.hack』シリーズ(2002~)、『MADLAX』(2004)、『コゼットの肖像』(2004)、『ツバサ・クロニクル』(2005)、『エル・カザド』(2007)と真下監督作品の音楽を続けて担当している。ほかに『舞-HiME』(2004)、『舞-乙HiME』(2005)、『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)、『Fate/Zero』(2011)、『ソードアート・オンライン』シリーズ(2012~)、『僕だけがいない街』(2016)などのアニメ作品の音楽を担当。また、ソロユニットFictionJunctionやボーカルユニットKalafinaでも楽曲を発表し、独自のサウンドでアニメファン・音楽ファンを魅了してきた。アニメ以外でも、NHK「歴史秘話ヒストリア」(2009~)の音楽や連続テレビ小説「花子とアン」(2014)の音楽を担当するなど活躍の場を広げている。
 実は筆者が初めて梶浦由記の名前に注目したのは『機動戦士ガンダムSEED』だった。この作品では梶浦由記はエンディングテーマと挿入歌を担当。悲愴な感情がみなぎるクライマックスシーンなどに梶浦由記が書いたボーカル曲が流れ、佐橋俊彦のパワフルなBGMを圧倒するほどの鮮烈な効果を上げていた。その後、『舞-HiME』『舞-乙HiME』を観て「むむっ!」と思い、放送当時観てなかった『NOIR』はあとから追いかけることになった。

 『NOIR』は2001年4月から同年9月までテレビ東京系で放送されたTVアニメ作品。『神秘の世界エルハザード』(1995)などの脚本を手がけた月村了衛(現在は小説家として活躍中)が原案・構成・脚本を担当したオリジナル作品だ。
 パリで一匹狼の暗殺代行人として活動するミレイユは一通のメールに導かれて日本の女子高生・霧香と出会う。霧香の抜群の戦闘能力に驚いたミレイユは、失った記憶を取り戻したいという彼女とコンビを組むことを決意。「NOIR」のコードネームで仕事を開始した。
 当初の印象は、銃を持った2人の女のバディもの。女暗殺者といえばリュック・ベッソン監督の劇場作品「ニキータ」(1990)が思い浮かぶが、その影は本作にもちらちらしている。ヨーロッパ映画のような味わいのある映像とハードボイルドタッチの脚本・演出。『AIKa』(1997)の菊地洋子らが手がけたキャラクターデザインと抑制の効いた演出のおかげで、暗殺を題材にしていても生々しさがなく、スマートなアクション作品として観られるのが好印象だ。物語が進むにつれてミレイユの過去と霧香の記憶の謎が明らかになり、終盤は悲痛なドラマが展開する。緻密な構成と映画的な演出ががっちりはまった、見応えのある作品である。
 本作の中で音楽の存在感は圧倒的である。見せ場となるアクションシーンを始め、ドラマの要となる重要な場面に梶浦由記の音楽が流れ、観る者の心をかきたてる。
 何より印象深いのはボーカルをフィーチャーした曲。歌がドラマを盛り上げる趣向は『機動戦士ガンダムSEED』に受け継がれている。
 もともとSea-Sawで作詞・作曲を手がけていた梶浦由記は、何をおいても「歌を書く作家」である。歌が梶浦音楽のルーツと言ってよいだろう。
 過去のインタビューによれば、梶浦由記の音楽活動の始まりは歌好きの父に奨められてピアノを習い始めたことだったという。父親が好んで歌ったのはドイツの歌曲やオペラの曲。梶浦は小学生のときからシューマンやシューベルトの音楽を聴いて育った。ドイツに在住していた少女時代は本場の劇場でたびたびオペラを鑑賞した。
 そのためか、梶浦由記の音楽からはオペラの匂いがする。それもモーツァルトなどの明るいオペラではなく、ワーグナーのような祝祭的で神話的な楽劇の世界の匂いが。加えて、梶浦が選ぶ旋律やリズムには、聴くものの本能に訴える原始的な音楽のエッセンスが宿っている気がする。これは梶浦が少女時代を過した異国の風土がもたらしたものだろうか。
 梶浦由記の音楽は、アニメで描かれたシーンをオペラの一場面のような劇的な場面に変える力を持っている。とりわけ、ボーカルをフィーチャーした曲は聴く者の心をゆさぶり、ドラマの情感を2倍にも3倍にも増幅させるのだ。おそるべき梶浦マジックである。
 『NOIR』は、梶浦由記のアニメ音楽のスタイルが確立されたと言ってよい作品。その後の作品に受け継がれる要素がほとんど盛り込まれている。ファン必聴の作品だ。
 サウンドトラック・アルバムはビクターエンタテインメントから「NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK I」と「同 II」のタイトルで2枚発売された。
 1枚目から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. コッペリアの柩(歌:ALI PROJECT)
  2. les soldats
  3. snow
  4. canta per me
  5. corsican corridor
  6. ode to power
  7. solitude by the window
  8. romance
  9. silent pain
  10. lullaby
  11. melodie
  12. chloe
  13. whispering hills
  14. zero hour
  15. liar you lie
  16. sorrow
  17. salva nos
  18. きれいな感情(歌:新居昭乃)

 オープニング主題歌とエンディング主題歌を冒頭と最後に置き、その間にBGM16曲を配置。オーソドックスな構成だが曲順はよく考えられている。物語の流れよりも、続けて聴いたときの心地よさを優先した構成だ。本作の雰囲気と音楽にはこういう構成がよく合っている。
 1曲が長い。どの曲も2分から3分台。真下監督は自ら音響演出も担当し、長い曲を生かした演出を行っていた。キャラクターの心情がしだいに変化し、アクションに突入していくような場面でも、細かく音楽を切らずに1曲をずっと続けて使って情感を途切れさせない。画よりも音楽がシーンを引っ張っているような印象さえ受ける。
 トラック2の「les soldats」はミレイユたちを狙う謎の組織ソルダのテーマ。毎回、冒頭に流れるナレーションのバックに使われていた。宗教儀式のコーラスのような混声合唱からリズムが加わり、妖しくエスニカルなロックに変貌する。ジャンルに収まらない梶浦音楽の特徴が表れた曲だ。
 トラック3「snow」は一転して、淡々としたピアノの旋律が奏でる寂しげな曲。第3話でミレイユが命を狙ってきた女殺し屋を倒したあとに思い出の墓地を訪れる場面に流れた。シンプルな編成に美しいメロディが映える曲である。
 トラック4の「canta per me」は本作の音楽の中でももっとも印象深い曲のひとつ。チェロとギターの強いリズムをバックに女声ボーカル(貝田由里子)の美しく哀感を帯びた歌声が流れる。曲名はイタリア語で「私のために歌って」の意。愛する人に「別れの歌を歌って」と呼びかける切ない歌だ。
 悲しい別れの歌がミレイユたちが暗殺を実行する場面やソルダの刺客と戦う場面のバックに流れ、緊迫したアクションシーンに悲しみの影が落ちる。音楽の力が映像に情感を添える名場面になっている。悲しい歌は感情を殺して暗黒世界に生きるミレイユと霧香の心の声のようである。
 トラック5「corsican corridor」は「コルシカ回廊」と名づけられた民族音楽風の曲。ケーナ風の音が異国情緒を演出する。第17話でミレイユが故郷コルシカに帰るシーンに流れていた。ヨーロッパ、中東、台湾と世界各地を舞台にしたエピソードのために、エスニックなサウンドがふんだんに取り入れられているのも本作の音楽の特徴だ。
 トラック6「ode to power」は暗い情念を表現するサスペンス調の曲。「ode to joy」が「歓喜の歌」だから本曲は「力の歌」だろうか。暗黒社会にうごめく闇の力を表したような曲である。
 「窓辺の孤独」と題されたトラック7「solitude by the window」はピアノとアコーディオンが哀愁たっぷりに奏でる曲。ミレイユや霧香の心情を表現する曲としてよく使われている。フランス映画の一場面に似合いそうな雰囲気の曲である。
 トラック8「romance」はギターとアコーディオンによる心情曲。イタリアの映画音楽作家ルイス・バカロフあたりが書きそうな、スパニッシュな香りのする曲だ。霧香が絵を描く青年ミロシュと交流を深めていく第13話で流れていたのが印象的。
 ピアノとシンセサイザーの音色が複雑に絡み合うトラック9「silent pain」は、ひりひりするような緊迫感や心の動揺、苦悩を表現する曲。ピアノのメロディの間にさまざまな音が現れては消え、抽象絵画のように乱れる心を映しだす。これもジャンルに収まらない現代音楽のような曲だ。
 トラック10の「lullaby」は英語詞で歌われるボーカル曲。本作の音楽の中でも屈指の美しいメロディを持った曲だ。別れの歌――というより死にゆく者の思いを歌った歌のように聴こえる。本編では物語終盤の重要な舞台となる「荘園」絡みの場面によく流れていた。
 トラック11「melodie」はミレイユと霧香の過去をつなぐ重要なアイテムである懐中時計のオルゴールの曲。懐中時計のオルゴールが過去の因縁を呼び起こす趣向はセルジオ・レオーネ監督の劇場作品「夕陽のガンマン」を彷彿させる。その「夕陽のガンマン」のエンニオ・モリコーネの音楽に漂う血と硝煙の匂いは、本作の梶浦由記の音楽では涙と雨の匂いに置き換わっているようである。
 「真のNOIR」を名乗って現れる女殺し屋クロエのテーマ「chloe」、マカロニウェスタンの音楽のような「whispering hills」、ピアノが静かに美しく奏でる「zero hour」、エスニックなリズムと妖しいボイスの組み合わせが緊張感を生む「liar you lie」など、味わい深い曲が続く。いわゆる捨て曲のない濃密なアルバムである。
 チェロのソロが厳かに奏でるレクイエム「sorrow」に続き、本作の音楽のハイライト「salva nos」が登場する。
 さまざまな音が入り乱れる導入部から四つ打ちのリズムがスタートし、女声ボーカルが讃美歌風のメロディを歌い始める。曲名の「salva nos」を英語にすると「save us」。「私たちに救いを」と祈る歌だ。しかし、曲調はアップテンポで激しい。エレキギター、パーカッション、ヴァイオリンなどの音が散りばめられたバックトラックは現代ロック調で美しいメロディを際立たせる。
 「canta per me」と並んで、暗殺シーンやアクションシーンにくり返し使用された重要曲である。本作を観た者なら必ず耳に残っている曲だろう。その曲の歌詞とメロディが讃美歌風に作られているところに深い意味を感じる。作詞も自ら手がけて本作のテーマを結晶させた梶浦由記の音楽作りの巧みさ、その音楽を生かした真下監督の音響演出の的確さに唸らされる。アルバムの締めくくりにふさわしい名曲である。

 本作の音楽打ち合せで真下監督から「好きにやっていい」と言われた梶浦由記は、アニメのための音楽ということを意識せずに作曲を進めたという。結果、既成のアニメ音楽の枠に収まらない音楽が生まれた。歌とインストゥルメンタルが渾然となった梶浦サウンドはここから始まったのだ。
 『NOIR』の音楽には魔術的な梶浦音楽の原型が詰まっている。『魔法少女まどか☆マギカ』や『ソードアート・オンライン』で梶浦サウンドにはまったというファンも、ぜひ、このアルバムから梶浦由記の音楽世界をたどってほしい。

NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK I
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NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK II
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127 アニメ様日記  2017年10月29日(日)~

2017年10月29日(日)
早朝に新文芸坐に。着いた時には、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98 岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」の最後のプログラム『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』の終盤だった。人物アクションの音が凄まじいほどで、迫力倍増。いや、3倍くらいになっていた印象。
 この3日間で、ゆうきまさみさんの「白暮のクロニクル」をkindleで一気読みした。完結してからまとめて読んだ方が面白いだろうと思って、読むのを我慢していたのだ。集中して読んだおかげて、単行本を1冊1冊読むよりも、キャラクターにより愛着がもてた気がする。もっともっとゆうきさんのマンガを読みたい。
 夜は橋本敬史さん、谷口淳一郎さん、泉津井陽一さんと打ち合わせと食事。このメンバーなら肉。肉を食べた。

2017年10月30日(月)
学生編集スタッフに「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.2」のための資料のスキャンをやってもらう。ただし、入稿に使うためのスキャンではなく、ページ構成のためのスキャンだ。スキャンの日々は、ここからしばらく続くはず。

2017年10月31日(火)
Production I.Gで打ち合わせ。移動中に、花村ヤソさんの「アニメタ!」1巻から最新4巻をまとめて読む。これもkindleで読んだ。新人アニメーターを主人公にしたマンガで、かなり取材して描いているようだ。アニメスタイルの読者にもお勧め。
 「アニメスタイル012」の表紙デザインがAmazonにあがる。慌てて急いで編集を進めなくては。

2017年11月01日(水)
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』試写に。ストップモーションアニメで、とにかく映像表現が素晴らしい。それだけでも観る価値あり。アクションは日本のアニメ的というか、今風のアクション映画的というか、ケレンがあってそれもよい。

2017年11月02日(木)
『DEVILMAN crybaby』の試写。配信前ということで、どこまで書いていいのか分からないけれど、湯浅政明さんらしいし作品だし、新しさもある。『デビルマン』らしさもおさえている。その後、移動して「アニメスタイル012」の特集のための湯浅さんへの追加取材。

2017年11月03日(金)
三連休1日目。この連休は「アニメスタイル012」のページ構成を進める予定だ。パソコンでひたすら画像をひらいた。作業をしながら『ボールルームへようこそ』を1話から最新17話までを再視聴。

2017年11月04日(土)
三連休2日目。「アニメスタイル012」のページ構成の続き。その途中で外出。イオンシネマ板橋で『ヤマノススメ おもいでプレゼント』を鑑賞する。上映時間は28分と短いものだが、僕的には満足感あり。演出も作画も丁寧だった。あおいとひなたの関係に対して感じていた(この映画を観ていても感じていた)違和感が、ラストで払拭できたのもよかった。

【ARCHIVE】 「この人に話を聞きたい」
第9回 原恵一


●「この人に話を聞きたい」は「アニメージュ」(徳間書店)に連載されているインタビュー企画です。
このページで再録したのは、1999年7月号掲載の第九回 原恵一のテキストです。




僕が、彼に最初に取材したのは13年前。当時の彼は『ドラえもん』で傑作、異色作を生む若手演出家だった。その後、傑作『エスパー魔美』を手がけ、現在、『クレヨンしんちゃん』のチーフディレクターを務めている。「日常性」にこだわり、常に精緻でリアルな演出を見せてくれる彼。13年前からずっと、僕にとって「気になる演出家」なのである。




PROFILE

原恵一(Hirata Toshio)

 1959年(昭和34年)7月24日生まれ。群馬県出身。血液型B型。東京デザイナー学院アニメーション科卒業、CM制作会社を経て、シンエイ動画入社。現在に至る。代表作は『エスパー魔美』『21エモン』(チーフディレクター)、1996年秋以降は『クレヨンしんちゃん』の2代目チーフディレクターを務めている。趣味は、映画、温泉。ちなみに独身。

取材日/1999年5月12日 | 取材場所/東京・シンエイ動画 | 取材・構成/小黒祐一郎





―― ご無沙汰していました。13年ぶりですね。前回の取材は、確か「ルーキー登場」というタイトルのコラムでの取材でした。(注1)

  (笑)すっかりオヤジになりまして。

―― いえいえ。原さんの外見が全然変わっていないので驚きました。

  あんまり苦労してないからかな。でも、だんだん不安になってきますよね。人並みに老けないと(笑)。

―― 苦労していないというのは、同じ業界の他の人に比べて、という事ですか。

  そうだと思いますね。TVシリーズの『クレヨンしんちゃん』は安定しちゃっていますから。あんまり普段の仕事に関しては苦労がないんです。申し訳ないなあと思います。

―― 今までの原さんお作品って基本的には、『ドラえもん』、『エスパー魔美』、『21エモン』、『クレヨンしんちゃん』、映画の『ドラミちゃん』で、ほぼ全部ですか。(注2)

  ほぼ、そうですね。

―― シンプルな作品歴ですね。

  履歴書を書くのも簡単ですね。

―― 作品リストを作ったら、同年輩の人の3分の1くらいの量だったりして(笑)

  でしょうね。みんな、いっぱいやっているからなあ。僕は、基本的にものぐさなんだと思うんです。あれがやりたいとかこれがやりたいとかいう気持ちが、そんなにないんですよ。ずっと今の会社に所属してるからやってこれたけど、フリーでこんなに呑気にしてたら、不安になっちゃってどうしようもないでしょうね。

―― 不安というか、食えなくなっちゃうかもしれないですよ。

  食えないですよね(笑)。

―― 改めて昔の話から聞かせてください。この仕事を志したきっかけは何ですか。

  高校生の時だったかな、本屋で、専門学校の案内が載っている雑誌を立ち読みしていたら、東京デザイナー学院が載っていて、「アニメーションを教える学校があるのか。それも面白いなあ」と思ってですね。その専門学校へ行って、現在に至るという感じなんですよ。

―― (笑)。アニメは特にお好きだったんですか。

  嫌いじゃなかったですね。他の人に比べりゃ、観ていた方なんだろうけど。「あの作品のあのキャラがどうの」というような見方は全然していなくて。周りにもそんな人は誰もいなかったから。専門学校へ来たら、そういう人がいてビックリしましたけどね。

―― 『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』の世代ですよね。

  そうですね。やっぱり『ヤマト』は一生懸命見てたんですよ。面白くて。

―― あ、そうなんですか。

  でも、あれは、アニメ好きじゃなくても観てましたよね、割とね。

―― あの頃は、そうでしたね。後のアニメファンとは、ちょっとニュアンスが違いますね。

  中学生だったと思うんだけど、割と話題でしたからね。

―― 本放送でご覧になっていたんですか。

  うん、本放送です。あれは日曜日の7時半ですか。だから、名作劇場と同じ時間でね。

―― 『アルプスの少女ハイジ』の裏でしたね。

  妹がいるんですけど、妹は『ハイジ』が観たくて、僕は『ヤマト』が観たい。1週交代で観るという約束にして。でも、『ヤマト』って連続ものだから、次回に話を引っ張るじゃないですか。「ああ、来週も観たい!」と思って、妹に「来週も観るから、その次は2週連続で観ていいよ」とかって言って。だけど、『ハイジ』を観ていいと約束した週になっても「やっぱり今週も見せてくれ」とかね。

―― 貸しが溜まっていくんですね。

  そう。どんどん溜まっていく(笑)。専門学校に入った頃に『ガンダム』が始まったんです、確か。

―― 同級生とかは『ガンダム』で盛り上がって。

  僕も結構、観ましたよ。「面白いなあ」と思って。新鮮でしたよね。「あ、アニメでこんな、ドラマみたいなものが作れるんだ」と。

―― 卒業してすぐ、シンエイ動画ですか。

  いえいえ。その頃はね、アニメの業界って職がほとんどなかったんですよ。悲惨なくらい、どこも人を採らなかった。それで『ど根性ガエル』とかが好きだったから、東京ムービーに入れてもらおうと思って。当時、東京ムービーが見学コースというのをやっていたんですよ。それに行ってですね、『ルパン三世』の第2シリーズをやっているスタッフルームで「東京ムービーに入りたいんですけど、どうすればいいんですか」と、監督の御厨恭輔さんに聞いたんです。

―― 大胆ですね。それは卒業してからなんですよね。

  卒業制作とかが大変だったから、就職活動が全然できなくて。要領のいいヤツは学生の間に顔をつないでね、スタジオに潜り込んじゃっていたんです。「マズいなあ、俺も何かしなきゃ」と思ってね。それでそういう行動をとったんでしょうね。今、考えるとなんてあんな事やったんだろうと思うけど。御厨さんに「やる気があるんだったら、絵コンテ描いてきて見せてみなよ」と言われて、必死になってコンテを描いてですね、持って行ったんですよ。そうしたら、「東京ムービーはダメかもしれないけど、何かあったら教えてやるから」って言われて。当時はアパート住まいで、電話なんかなかったから住所を教えたんです。しばらくしてから、御厨さんから往復ハガキが来て(笑)。

―― (笑)。

  で、「偶然知り合いが人を探している。君がよければ紹介する。でも、アニメじゃないんだ」と。それはTVCMとか企業のPR映画を作っている会社だったんですよね。でも、働かなきゃいけないなと思っていたから、アニメじゃなくてもいいかと思って、そこに入って。CMの現場でこき使われてですね。1年半ぐらいしたら、社長から「君は向いてないよ」と言われて(笑)。で、その社長さんが元々アニメをやっていた人なんですよ。それで、シンエイ動画を紹介してくれたんです。それからずっと。

―― 在籍してるんですか。

  ええ。なんだか、ふとした事でどんどん流れていきますね、人生は(笑)。

―― シンエイ動画は演出志望で入ったんですか。

  ええ、一応。最初は『怪物くん』で制作進行だったんですよ。半年ぐらいかな。その後が、『フクちゃん』だったと思うけど。『フクちゃん』の途中で、演出助手として『ドラえもん』へ行ったのかな。ちょっと、その辺はもう記憶がボヤけてるんですけど。

―― 『ドラえもん』ではいつぐらいで演出になったんですか。

  その時に、もとひら了さんという方がチーフディレクターだったんですが、僕が演助になって、すぐにお辞めになったんですよ。それで芝山努さんが監督になって、その下に演出を二人置くシステムになったんですね。

―― じゃあ、『ドラえもん』に移られて早々に演出になった。

  うん。そうだったと思います。コンテもすぐに描き始めちゃったんじゃなかったかな。

―― 初コンテは『ドラえもん』なんですね。

  『ドラえもん』ですよ。

―― 初コンテって覚えてます?

  覚えてますよ、勿論。「悪魔のイジワール」という話です。(注3)

―― それはどういう話なんですか。

  飲み薬でそれを飲むと悪党になってしまうというような話だった。今、思い出すと、恥ずかしい出来ですけど。

―― この時期の原さんは『ドラえもん』で問題作、異色作を次々と連発して。

  うん。……だったんですかねえ。あの頃、リピートの長さが変わっていたんですよね。(注4)僕らがやってた時にリピートの尺が短くなっていって、新作の尺が長くなっていったんですよ。12分ぐらいあったと思うんですよね。だから、結構好きな事が入れられたんですよ。それもありがたかったんですよね。

―― かなりメリハリのある内容で。

  無我夢中でしたよね、あの頃は。

―― 「地球下車マシン」とか凄かったですよね。SF的でしたよ、画面作りが。(注5)

  ありがとうございます。

―― あれ、重力がなくなって地球から落ちちゃうんでしたっけ?

  そうそう。元々、僕は藤子・F・不二雄先生の作品が大好きだったんで。藤子さんが観てどう思われたか知らないですけど、僕なりに「先生は、もっと、こういう事がやりかったに違いない」とか勝手に思い込んで、どんどん膨らませていったんです。

―― SFだという事は、ずいぶん意識しました?

  ……かもしれないですね。本当は小さい子供に向けた、優しいものが求められていたんだろうけど、それからちょっと外れていたものを作っていたのかもしれないですね、僕らは。

―― リアルっぽい事も、おやりになってるんですよね。

  どっちかというと、そういうものの方に興味があったので。まあ、外枠は『ドラえもん』だけど、変なところにこだわってみようとか。そういういやらしい試みをしていたと思うんですよ(笑)。

―― 原さんの回で、乾いている屋根が映っていてピトンピトンと雨が降ってくるという描写があって、屋根が濡れた感じが凄くよくって驚いた覚えがあります。

  あれはダブラシでやったんですよ。

―― 覚えてます?

  覚えてます。多分ね「強いイシ」ってやつだったと思いますよ。(注6)

―― 「強いイシ」ですか。もうビンビンの時期の作品ですよね。

  ビンビン(笑)。

―― 原さんの『ドラえもん』は「あっ、『ドラえもん』でこのカメラワークは初めて観たな」とか「この表現は初めてだ」なんて、発見が多くて楽しかったですよ。

―― 今、思えば、ですか。

  でも、いやらしいですよね。「自分さえよければ」という感じで。

―― 今、思えば、ですか。

  うん。今、思えば。

―― 『ドラえもん』で印象に残っているエピソードってありますか。

  そうですね。結構、真面目なやつで、「ハリーのしっぽ」というやつ。(注7)

―― 彗星のやつ?

  そうそう。あれがね、凄い夢中になってやったなあ。コンテが定尺の倍くらいになっちゃったんですよ。「バカか、お前は!」って怒られて。枝葉がメチャメチャ膨らんじゃって。で、またそれを刈り込んで、ようやく尺に収めて。

―― 最初のコンテだと24分ぐらいあったんですね。

  うん。もうびっくりしちゃうくらいあったんですよ。もう十何年も演出やってますけど、コンテ尺は、未だに全然合わないんですよ。いつも長くなっちゃって。全然、読めなくてね。

―― 『ドラえもん』時代に何か他に印象的だった事とかあります?

  一度、ある原画の人とかなりぶつかった事があって。「あなたのは『ドラえもん』じゃない。やりたくない」って、面と向かって言われた事がありますね。

―― その方は、ベテランの方だったんですね。

  うん。かなりベテランの人でした。作監の中村(英一)さんが、まあまあと言って間に入ってくれて。こっちはもうこうなってる(自分の視界が狭くなってる)から、「これはこうなんだから、こうしてください」と言って。……うん、今は反省してますけど(笑)もう、ほとんど今はないですよ、そういうのは。

―― その時は、自分が思った通りにしよう、という気持ちが強かった?

  そうですね。それでちょっと感情的になって、その人に出さなくてもいいリテイクまで出したりしていたかもしれないですね。嫌な思い出なんですけど。それは覚えていますね。

―― いい思い出はないんですか。

  (笑)苦しかった事の方が多いですよ。絵コンテを描けるのは確かに嬉しい事だけど、何か変わったものを作りたいと思っているから、始終、絵コンテの事しか考えていないんですよ。コンテ中毒というかね。自分なりに「あ、そこそこ上手くできたな」とか思ったりするのが楽しい事で。後はずっと「どうしよう、どうしよう」と思っていた事しか覚えていないですね。

―― その後、『ドラえもん』を離れて『エスパー魔美』でチーフディレクターになられるわけですが。

  『魔美』はね、凄く大事にしたい作品ですね。

―― 原作は前からお読みになってたんですか。

  読んでましたよ。で、「まさか、これができるとは」と思うくらい嬉しかったですね。27、8 歳だったと思うんですけど。シンエイ動画としても、『魔美』は大事に作りたい作品だったようなんですけど、「そんなのを俺に任せて大丈夫かい?」という感じで(笑)。

―― ファン側でも「ついにアニメ化か!」という感じでしたよね。

 『魔美』をやると聞いていたので「ちょっと関われればいいな」くらいには思っていたんですよ。そうしたら「君にチーフディレクターをやってもらおうかと思っているんだ」と言われて、ギョギョっと。でも、まだ若かったから「よーし、やるぞ!」って、すぐにやる気が出てきたんだけど。みんなが思い入れをしている原作だったから、放映が始まったら、すぐにあっちこっちから叩かれて(笑)。

―― あ、そうなんですか!? 「『魔美』はこんなんじゃない」とか言われたんですか。

  うん。そういう作品だったんですよ。だから、始まってすぐに「こら、タマらんわ」という時期がありました。何とか乗り切ったんですけど。

―― あの当時の藤子アニメとしては画期的に渋かったですよね。画面の作りも。

  僕は基本的に変わってないと思いますよ。『ドラえもん』やっても、『しんちゃん』をやっても、画作りは意識して変えていなくて。とにかく同じようなものしか作れないんですよ、僕は。キャラクターの画が違ったりね、美術の画の雰囲気が違ったりしてるけど、絵コンテを見るとほとんど同じような事をやってるんですよ。

―― キャラクターの色使いとか、背景の感じとかに関してはどうですか。

  ああ、あの辺もですね、特別注文したつもりはないけど、大体、思った通りになっていたので「よかったよかった」と思いましたけどね。

―― 全体にちょっとリアルめで。

  ええ、そうそう。ちょっとリアルめにやりたかったから。美術もちょっと淡い色使いのものを描いてくれていたので。『魔美』はいろいろな試みができたんじゃなかったかなあ。あの頃は一所懸命働いていたんですよ(笑)。

―― 各話の脚本に関しては、いかがでした。

  あの頃は、僕はシナリオがキチンと読めていなかった頃でしょうね。ま、今も読めてるかどうか分からないんだけど。何か、本当に枝葉の部分にしか目が行かないような感じで。「こうじゃない方がいい」というのは分かるんだけど、どうしたらいいのか分からないとかね。『魔美』はシナリオ会議がメチャメチャ長かったですよ。

―― そうでしょうね。

  大変でしたね。昼過ぎから夜までずっと喫茶店にいて、結局、1本もOKにならなかったりとかも。

―― シリーズ中盤を過ぎると凄い話が続出しましたよね。例えばゲストキャラが、駅のホームで上り電車が来るか、下り電車が来るかで思いつめるという話があったじゃないですか。(注8)。あれなんか、どうしてそういう話をアニメでやろうと思うかな、と不思議に思いました。

  (笑)。アレはね、新聞の投書か何かでそういうのがあったらしいんですよ。いつもこっち側のホームに早く電車が来ればいいなと思ってるんだけど、なぜか反対側が先に来る。で、調べたら時刻表がそうなっていた、というのをライターさんが読んでね、「これを作っちゃえ」と言って作った話なんです。後半になると段々、オリジナルの話が多くなってきて……。

―― どんどん、魔美と関係のない話が。

  そうそう(笑)。主人公が活躍しなくなっちゃってね。

―― 「アニメのお話は、普通こうだろ」と思って観てると、却って足下をすくわれるような話が続出してですね。

  申し訳ない。

―― いえいえ。脚本の桶谷(顕)さんは最初は文芸だったんでしたっけ。途中からシリーズ構成になるんですか。

  最初からシリーズ構成だったかなあ。ちょっとその辺は覚えてないんですけど、とにかく、途中から凄く頼りになるライターさんになったんですよね。

―― キメの話は桶谷さんみたいな。

  うん。そういう風になってた。シリアスな話とか。「そうそう、こういうのがやりたかったんだよ」というのを結構、書いてくれましたからね。

―― 具体的には?

  やっぱり、「たんぽぽのコーヒー」とかね。(注9)

―― あの話は御自身で演出もやられましたよね。

  あれは結構ね、夢中になってやりましたよ。『魔美』はドラマらしい事ができたのも、嬉しかったですね。

―― しかも、ゴールデンタイムで。

  ねえ。あんな地味なの(笑)。

―― 『魔美』は80年代の後半の作品なんですけど、気分的にはもう7、8年前というか。ちょっと古い青春ドラマみたいでしたよね。

  NHKの少年ドラマシリーズみたいなね。

―― 後にも先にも『エスパー魔美』みたいなアニメはないですからね。

  あれはやれてよかったシリーズだと思います、本当に。

―― 大事にしたいと。

  そうですね。大事にして、何かあったらあそこに戻って(笑)、反省しながらやっていきたいですね。

―― 悩んだ時に『魔美』を観るとか。

  「お前、こんなに真面目にやっていたのに、今はどうしたんだ?」と、自分に言ったりね(笑)。

―― アニメの『魔美』のベースになっているのは、淡々とした日常ですよね。「平穏な日常っていうのはなんと価値があるものか」という気分が、作品のベースにあったような気がしますね。

  僕は基本的に日常の話が好きなんですよ。だからどうしてもやっぱり、地味なものが多くなっちゃうんですよね。

―― その「日常」というのは別に、アニメスタジオで徹夜して絵コンテ描く「日常」じゃなくて(笑)。お父さんとお母さんがいて、子供がいて、焼き魚を食べたりとか、という「日常」ですよね。

  勿論、そうです。僕らが考える「普通の人達の普通の日常」です。

―― それは憧れなんですか。

  憧れ……があるんでしょうね、きっとね。確かに僕らの生活サイクルは、真っ当な人生を送っているとは言えないです(笑)。(注10)

―― 話がズレちゃいますけど、『アルプスの少女ハイジ』で黒パンに溶かしたチーズを乗せて食べるとか、山羊の乳を飲んだりするとか、そういう生活描写がありますよね。あれは「こういう生活こそが豊かな生活なのだ」という主張が作品の根幹にあって、やっているわけですよね。それに通じているのかもしれない。「普通の日常をアニメで描く事」で、その価値を提示するというか。

  僕にとってはそういった描写が、他の人にとってのアクションシーンや、お色気シーンの代わりで、そういうのを作る事に快感を覚えていたのかもしれないですね。『魔美』だけじゃなくて、藤子Fさんの描く家族というのは、東京の郊外に家を持っていて、食事はみんな一緒でね。ああいうのに憧れがあったのかもしれないですね。僕の実家は商売をやっていて、家族揃って飯食った記憶ってほとんどないんですよ。親父は朝早く出かけて、夜遅く帰ってくるような仕事だったし。「チャコとケンちゃん」とか「ケーキ屋ケンちゃん」とか、あの辺のドラマの中の生活というものに、憧れがあったのかもしれないですね。(注11)

―― 僕なんかも、思い浮かべる「家族の食卓」って『サザエさん』の中のものなんですよね。今時、お父さんがわざわざ着物に着替えて、ご飯食べるわけないと思うんだけど。

  『おもひでぽろぽろ』の世界みたいな。

―― 「ファンタジーとしての日常」を描いてるんですね。

  多分、そうですね。そういうのに縁がなかったから。

―― 『魔美』が終わった後って、原さんの名前をしばらく見なくなりますが。

  東南アジアに一人で旅行に行ってました。

―― どのぐらいの期間だったんですか。

  7ヶ月くらいでしたかね。

―― それは『魔美』が終わって休むという事だったんですか。

  いつか行きたいと思ってたんですよ。普段は旅をするといっても、年末年始に1週間くらいがせいぜいじゃないですか。実はね、『魔美』が始まった頃に、あちこちから叩かれまくって「もう逃げ出しちゃおうかな」と思って、その時に計画したんですよ。

――でも、さすがに放映中には行く事ができず。

  何とか自分をなだめつつ。一応、終わりまでやって。終わるのが決まった時に「ちょっと、休ませてもらいたいんだけど」と言ったら、会社の方も許してくれたので。

―― 最初から7ヶ月の予定だったんですか。

  本当は1年間休もうと思ってんたんですよ。でもなんかね、一人でリュック担いで旅行してるとくたびれるんですよね(笑)。

―― その間、ずっと移動していたんですか。

  気に入ったらしばらくいて、飽きたら別のところへ移動して、とかね。本当は東南アジア以外も行こうと思ってたんですけど、結局、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールを行ったり来たりしていただけですね。

―― 『魔美』に続いて、『チンプイ』のチーフディレクターをやるという話はなかったんですか。

  それはね、あったんですよ。でも、旅行に行くのは今しかないと思って。あの旅行は行ってよかったと思いますよ。僕は、旅行が大好きなんでね。1年に1ヶ月くらいは休みが取れるような世の中になって欲しいなあ、と思いますね。

―― でも、それはアニメをやってると無理でしょうね。

  うん。多分、無理なんだろうね。

―― 帰国後、『21エモン』でTVのチーフディレクターですね。

  『21エモン』は準備期間が短くて、大変でしたね。(セル画の)枚数も削ってですね。あれが初めてですね、枚数に制限が入ったのは。

―― それは制作スケジュール的な問題だったんですか。

  ええ。あれでSFの連続ものというのは大変だなあ、と分かりました。このくらいのものでもこんなに大変なんだから、サンライズとかでやるようなハードなヤツだったら、どんなに大変だろうかと。

―― ご自分の中でこういうところが狙いだったとか、というのはあります?

  『魔美』とは違って、とにかくテンポを出そうと意識してやっていたとは思うんですよ。でも、元々、僕の中には足りないというか……。

―― パンチがない?

  (笑)パンチがない、ですね。淡々としている方が向いているみたいで。

―― 『21エモン』が終わって『クレヨンしんちゃん』が始まり、各話演出として参加するわけですね。

  『しんちゃん』が始まった時、スタッフの誰も、こんなに長く続くと思っていなかったと思いますよ。アニメーターさんが面白がって、あれこれやってくれてたのが大きかったんじゃないかなあ。最初は、動かないアニメを作るというのが目標だったんです。

―― えっ!? そうなんですか。それは全体の総意として。

  うん。チーフディレクターの本郷(みつる)さんも、そのつもりだったはずです。『しんちゃん』は画も簡単、動きも少なく、スケジュールも楽に、という感じで始めたんだと思うんですよ。でも、段々原画の人達が暴走し始めて、演出もそうかな。いつの間にか変わっていってしまったんですね。

―― TVでも、動く時は動きまくりですもんね。

  ええ、そうですね。その辺は本当に贅沢にやっています。

―― 原さん自身も、最初の頃はあんまりノレてなかったとか?

  う~ん。そうですね。平面的な画作りという約束だったから。でも、段々我慢できなくなって。徐々に徐々に……。

―― 自分の中で『しんちゃん』に関する印象が変わった話はあるんですか。

  「これで開眼したぜ」とか、そういうのはないんですよ。何話だったか忘れちゃったけど、台風が来る話があって、それが「『しんちゃん』も面白いかな」と思えた話数でしたね。(注12)

―― 映画版はどうなんですか。御自身の中だと。

  『しんちゃん』の映画は凄く楽しみながらやってきています。

―― 映画は最新作が7作目ですが、最初の4本は本郷さんが監督で、原さんは演出、本郷さんと共同で絵コンテでしたよね。実際の仕事の分担はどのようなかたちで。

  原作者の臼井(儀人)さんのメモを基に、本郷さんがプロットを起こして、一緒にコンテに入るというやり方でした。

―― 同時進行で、原さんが前半を描いて、本郷さんが後半を描いているみたいな。

  うん、そうそう。1本目は前半後半ではっきり分けちゃったんですけどね。2本目以降は結構、入り乱れてますよ。

―― 1本目の『アクション仮面VSハイグレ魔王』では、前半は本当に淡々と日常を描写していて。

  ええ。あの辺は僕がやったんです。

―― 後半の本郷さんのパートはアクションシーン山盛り。分かりやすい構成ですよね。『雲黒斎』はどうなんですか。

  時代劇シーンは、ほぼ僕がやりました。時代劇という事もあって、相当入れ込んでやってましたね。

―― 時代劇がお好きなんですね。

  うん、そうですね。メチャメチャ好きな人に比べれば、僕はそんなに観てる方じゃないと思うんだけど、一度やってみたかった。原画にもそういう人がいてね、助かったんですよ。模擬刀を横に置いて、コンテやってましたよ(笑)。

―― 自分で刀を持って、ポーズをとりながら。

  うん。分からなくなると誰かに相手してもらって、「こう来てこう来たら、次はこうか」とかね。チャンバラはかなり燃えてましたね。また機会があったら、やりたいですね(笑)。

――  5作目以降は、本郷さんが抜けて、原さんが監督としておやりになっているわけですが。

  そうですね、割と好き勝手に遊ばせてもらっていますね。「今度はこんなのにしよう」という上からの声みたいなものが、ほとんどないんですよ。僕みたいなタイプからすると、誰かから「今度はこんなの」と言われて、やった方がいいのかもしれないけれど。

―― 最新作の『温泉わくわく大決戦』ですが。

  今回、個人的に一番燃えたのは丹波哲郎ですよ。これはもう大興奮でしたね。

―― 今回は随分と「邦画」でしたよね。

  それは思いました。「俺は日本映画をやっているんだよなあ」と。丹波さんに出演交渉をした時に、丹波さんが「その映画に自分が必要なら出てもいい」と言ってくれたらしいんです。その話を聞いた時にね、ちょっと感動したんですよ。「映画? ……映画なんだよ! さすが映画人、言う事が違うなあ」って。「『しんちゃん』とはいえ、日本映画なんだ」って。

―― なるほど。

  若いスタッフは、丹波さんお名前を聞いてもピンと来なかったみたいですけど、声や出来上がったものを観て、「丹波さんでよかったですね」と言ってくれる人が多かった。

―― 存在感ありますからね。

  ありますね。ちょっと、あり過ぎたという話もあるんですけど(笑)。

―― 全部、持っていっちゃいますからね。

  持っていかれちゃった。

―― 「丹波さんが活躍すれば、しんちゃんいらないじゃん」とか(笑)。 

  「俺が来たら、もう大丈夫だ」と丹波さんが言えば「そうだろうな」って納得しちゃえるとこってありますからね。

―― 今回は温泉の話と言いつつ、ついに女性の裸は出しませんでしたね。

  そうですね~。その辺は「子供は観てもあんまり嬉しくないだろう」というところかな。

―― 出したかったけど、セーブしたというわけではない。

  いや、そんなに出すつもりもなかったし。『しんちゃん』のあの画でヌードシーンやって「どうだ、凄いだろう!」って言ってもね。そんなの……。

―― かえって、ガッカリしてしまう?

  うん。ガッカリしちゃうでしょ。みさえのお尻は出てるんですよ。

―― 伊福部マーチも話題になりましたね。(注13)

  今回は本当にね、「日本映画」というのを意識しましたよ。丹波さんでしょ。伊福部昭さんでしょ。それから、映画とは関係ないけどエンディングが「いい湯だな」。あれをエンディングに使うのが念願だったんですよ。エンディング観て、自分で感動しちゃいましたからね、「ついにやったぜ。ついにできた!」って(笑)。(注14)

―― ドリフ世代なんですね。

  勿論ですよ。どっぷりですよ。温泉の話だからエンディングは「いい湯だな」を使いたい。これはもう最初に決まってたんですよ。しんちゃん達で「いい湯だな」を新録音する、これが果たせた。多分、僕が一番嬉しかったんだろうなあ(笑)。

―― 原さんが監督になってからの3本は、家族愛の比重が強くなってると思うんですけど。

  そうかもしれないですね。家族が力を合わせて何かをする、というね。それは原作の臼井(儀人)さんからの要望もあるんですよ、僕もそういうのは嫌いじゃないので。しんちゃん一人の活躍は、あんまり得意じゃないのかもしれない。むしろ、つい気持ちが大人の方に行ってしまうんですよ。

―― 『暗黒タマタマ』と『温泉わくわく』は、ひろしの方に行ってますね。

  ひろしはね、割と僕はやりやすいんですよ。年齢も近いし。ま、いつの間にかひろしの方が年下になっちゃいましたけど、35歳の設定ですから。

―― だったら、僕はひろしと同じ歳か。やだなあ(笑)。

  ひろしって、だらしないじゃないですか。だらしないけど、たまにはちょっとカッコいいところも作ってやるかとか、結構ね、素直にやれるんですよ。

―― 素直に?

  自分の憧れの部分ですね。自分も多分、情けない奴だろうから。「ひろし、がんばれ!」というような気持ちでね。

―― 僕はここ3作だと『暗黒タマタマ』が一番好きなんですよ。ゲストキャラもいい味出してるし。最後の歌って踊るところも泣けるし(笑)。

  毎回、感動を狙ってるんですけどね。どんなおバカな事をやりながらも、体育会計の熱さみたいなのを『しんちゃん』の映画に関しては常に心掛けてはいるんですよ。だから、コンテの温度を上げる事を、自分に課しているんですよ。

―― 「コンテ温度」ですか。新しい言葉ですね(笑)。例えば『巨人の星』というのは、凄く温度が高いんですね。

  温度高いですよ、メチャメチャ(笑)。

―― 『タイガーマスク』とかも高いんですね。

  高いですね。常に『しんちゃん』の映画のコンテに入る時には「よ~し、コンテ温度を上げるぞ!」と自分に言い聞かせるんですよ。

―― 温度ですか。

  体育会系のノリかなあ。光線とかに頼らない、頼りたくない。

―― なるほど。原さんになってから、クライマックスで光線はないですね。

  今回のもそうですが、敵を倒すのは、とにかく体当たり(笑)。それで何とか、熱く盛り上げたいと思ってるんですよ。「汗をかけっ!」「走れっ!」とかね、そういうのが好きなんです。

―― なるほど。原さんにとって、本郷さんは、どういう存在なんですか。

  技巧派ですね。

―― 凝るという事ですか。

  凝るというか、……何かこう、面白くするためにはいくらでも飾りをつけていくというか……。

―― 料理で言うと、同じシャケの切り身があったとして、本郷さんはクリーム煮にしちゃうとか。原さんは塩焼きとか。

  僕は「生でもいいわい」とか(笑)。

―― 本郷さんは、さらに海鮮スープまでつけたり。

  ああ、そうかもしれない。本郷さんは演出する事にも凄く貪欲だとは思いますね。観てる人の事を凄くよく考えていると思います。僕は割と自分さえよければ、みたいな作りになっちゃうので。

―― 本郷さんが映画『しんちゃん』でやっていた、ファンタジー的なモチーフを否定するわけじゃないんですね。

  そうではないです。ただ、僕が不得手だという事です。あんまり興味を持ってやれない世界なので。

―― 『暗黒タマタマ』も、ギリギリで現実世界の中でとどまってますよね。

  『しんちゃん』で初めての監督だったので、夢中でやったんですよ。徹底的にファンタジー的な要素を排してやろうと思ってやっていました。あれができたお陰で、その後がやりやすくなったような気がしますね。

―― じゃあ、『温泉わくわく』は意識的にちょっとファンタジー的な要素を足してみた?

  う~ん、自分ではあんまりファンタジーのつもりはないんです。段々、道具が大きくなってきてはいるんですよね。だから、地味なのが好きとは言いつつ、どこか不安で戦車何十台とか、身長何十メートルのロボットを、出してしまっているのかもしれないですね。

―― 『暗黒タマタマ』は伝奇物風ですよね。現実世界を舞台にしていて、SFまでいかないという。

  そう。SF一歩手前みたいなのが好きですね。キャラにしても、カッコいい奴が出てきて、カッコいい事を言う、というようなのにあんまり興味が持てないというか。カッコ悪い奴らがカッコ悪い事をやってるってのが、何か好きですね。カッコ悪いなりにがんばったりとか。

―― TVシリーズの『しんちゃん』も、本郷さんから原さんいバトンタッチされて、テイストが変わったと思うんですけど。

  どうなんでしょうね。……劇中劇みたいなものは減りましたよね。

(注15)

―― その辺りは、スッパリなくなりましたね。

  子供は、あんまり面白くないんじゃないかな、と思ったんですよ。

―― なるほど。

  やってる人と、ちょっとマニアックな人は面白いかもしれないけど、観てるのは大部分が子供だから。あとはね、OLのお姉さんとかが観てくれているみたいだから。そういう人はああいう劇中劇とかをやっても面白くないんじゃないかな、と思って。

―― 全体のテイストを意識的に変えようとはしてないんですか。

  特にはないですね。まあ、家族構成は変わっちゃったけど、それぐらいで(注16)。ただ、映画と同様に野原一家の話を中心にしようと思ったかもしれない。さっきの話に戻るけれど、家族の他愛もない話は、僕は嫌いじゃないですから。さっき、上手い言い方をしましたよね。

―― 「ファンタジーとしての日常」ですか。

  そうそう(笑)。

―― 今後って……まあ、『しんちゃん』は今後も続くと思うんですけど、それは置いておいて、こういう事をしてみたい、というのはないんですか。

  う~ん。一度ね、メチャメチャにプラトニックな恋愛ものをやってみたいと思ってはいるんですよ。観てる人がもう恥ずかしくて、照れちゃうようなのを。

―― 作品世界的には『エスパー魔美』に近い感じですか。

  ああ、近いですね。

―― 自分で新作の企画書を書いたりとかはしないんですか。こういう事をやりたい、とか。

  たまーにありますけどね。なかなか採用されないですね。

―― 活動はしてるんですね。

  細々とですが。ただ、僕がやりたいものっていうのは、どう考えても売れないんですよ(笑)。「コレが売りだ」というものが、どうしてもなくてね。ないから好きなんだけどななあ、自分では(苦笑)。



(注1) 
インタビュアーの小黒が、前に原恵一に取材したのは、1986年の年末。アニメージュ1989年2月号の「TVアニメーションワールド」のルーキー登場というコラム記事だった。

(注2) 
実際には、次ページのリストにあるように『チンプイ』『化粧師』『景山民夫のダブルファンタジー』にも絵コンテ等で参加している。とはいえ、これが原さんが手がけたアニメのほとんど全てであり、中堅演出家としては参加した本数はかなり少ない。

(注3)
 「悪魔のイジワール」は1984年1月20日放映の第112回Cパート。

(注4) 
『ドラえもん』は1本新作、1本再放送で構成されている。原さんが参加していた頃の『ドラえもん』は再放送分の時間が短く、その分、新作が長かった。

(注5)
 『地球下車マシン』は1985年1月4日放映の第159回Aパート。

(注6)
 「強いイシ」は1985年9月6日放映の第191回Aパート。

(注7)
「ハリーのしっぽ」は1984年12月21日放映の第157回Aパート。

(注8)
 103話「日曜日のトリック」。駅で上りの電車がくれば、その日はツイていると思い込んでいるゲストキャラの少年。だが、来る日も来る日も、下りの電車ばかりが来る。実は、上りと下りの本数が同じでも、上りの電車が来てから下りがくるまでの方が間隔は長く、「次に来る電車」は下りである確率が高かったのだ。というお話。

(注9)
 54話「たんぽぽのコーヒー」。マーラーの「交響曲第2番」を効果的に使用した事でも話題になったエピソード。

(注10)
昼夜逆転していたり、会社に泊まり込んだりするという事。

(注11)
 「チャコとケンちゃん」と「ケーキ屋ケンちゃん」は、いずれも昭和40年代に放映されたホームドラマ「ケンちゃんシリーズ」。

(注12) 
19話Aパート「台風がやってくるゾ」。

(注13)
『爆発!温泉わくわく大決戦』では「ゴジラ」と「怪獣大戦争」から伊福部昭の曲が流用され、特撮ファンの間で話題になった。この曲の使用も原さんのアイデアだった。

(注14)
 「いい湯だな」は。往年の人気バラエティ「8時だよ!全員集合」でエンディングに使われたドリフターズの有名な歌。

(注15)
実際には、今後の『クレヨンしんちゃん』で、新しい劇中劇をやるかもしれないそうだ。

(注16)
 原さんがチーフディレクターとなった前後で、しんちゃんの妹のひまわりが生まれた。

第538回 答えを出すスピード

今年も気がつけば、残り1ヶ月半!

 ま、毎年毎年同様なフレーズが飛び交う時期が来ましたとさ。今年もたくさんコンテ切りました。単純な話、自分は

作画がカット数なら、コンテは本数! 尺数と言ってもいい!

という主義です。以前ここで書いた大塚康生さんの話、「3秒のカットは3秒で描くべき」理論。つまり、芝居やアクションは、現実のスピードに近い時間で描き上げるほど、いいカットになると。これをコンテの話に置き換えると「20数分のコンテなら」となるわけです。これって俺の場合、後輩らに「答えを出すスピード(速さ)」と説明してます。事実、大塚さんは答えを出すスピードがとにかく速い。自分が悩んでいると横から覗いて「板垣くん、ここはこーゆー画を入れないと」と目の前でサササッと描いて見せてくださるんです。

即、答えが出せる職人、カッコイイ!

 こんな大先輩が悠々自適でいてくださったから、アニメーターたちに真っ当な夢を与えることができるんだと思います。だって「これくらい巧くなれば、お金に困ることはない」と体現してくださってるのですから。その「これくらい巧くなったら」の技も見せることができず、私生活の贅沢を見せびらかすだけの先輩は、後輩から尊敬などされません。それは理念・観念を語るだけではダメなんです。実務、実務! とにかくコンテも実務が先。ごく1部の天才を除き、コンテは量を描けてナンボ。

来年もシリーズが控えており、コンテいっぱい描けますようにっ!!

126 アニメ様日記  2017年10月22日(日)~

2017年10月22日(日)
川崎市民ミュージアムで行われた国産アニメーション100周年記念イベントの記念講演「アニメーション史を訪ねた男、100年を語る」に行く。「日本アニメーション映画史」の著者の一人である山口且(旦)訓さんの仕事について、原口さんとの対談形式で語られた。初めて知る話ばかりで、大変に興味深いものだった。「日本アニメーション映画史」のあとがきでも触れられているが、山口さんがこの本で担当した「第一部 日本アニメの歴史(I)」は、彼の卒業論文が元になっている。山口さんは先行する書籍や研究がほとんどない中、独自の調査で日本のアニメーションに関する事柄を、ひとつひとつ調べていったのだ。

2017年10月23日(月)
この日記の7月30日(日)の項でも書いたけれど、2016年の夏から、中古ソフトで「スーパーロボット大戦A」をプレイしている。今日、五度目のプレイが終わった。五度目では、ザンボット3を中心にスーパーロボットに資金を投入して、主力ユニットとした。スーパーロボットが前に出て、後方からリアルロボットが援護するといういかにも「スパロボ」らしいプレイができて満足。今回はゴッドガンダムを風雲再起に乗せたのだが、これが猛烈に強くて楽しかった。

2017年10月24日(火)
ヴィレッジヴァンガードの池袋サンシャインシティアルタ店が「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」を沢山入荷してくれていると知り、仕事の合間に様子を見に行く。『美少女戦士セーラームーン』等の少女マンガと並ぶかたちで、どっさり置いてあった。Twitter用の写真を撮らせてもらうために店の人に声をかけたところ、POPを書いてほしいと言われた。POP用の紙を持って帰り、事務所スタッフに描いてもらうことに。

2017年10月25日(水)
仕事の合間に『いぬやしき』1話、2話を観る。よくできている。 さとうけいいちさんと恩田尚之さんは『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』を作りながら、『いぬやしき』の準備を進めていたわけで、それもすごい。この作品は、おそらく原作のテイストをきちんと再現しているのだろう。放映が終わったところで原作を読もう。

2017年10月26日(木)
朝から『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』Blu-rayのコメンタリー、インタビュー等をチェックする。午後にはサイエンスSARUで、チェ・ウニョンさんに取材。

2017年10月27日(金)
バルト9で『コードギアス 反逆のルルーシュI 興道』を観る。話が詰まっているのに、ダイジェスト感があまりなく、よくできた総集編だ。TVシリーズよりも、ロボットアニメの部分を押し出している印象で、それを含めて楽しめた。

2017年10月28日(土)
昼間は原稿作業、オールナイトのトークの予習等。この日も池袋ではコスプレイベントがあったのだけれど、見に行く時間がとれなかった。ただ、事務所近くで『るろうに剣心』の志々雄真実が傘を差して歩いているのとすれ違った。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98 岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」。ちなみにこのイベントタイトルも岩浪さんにつけていただいた。トークの出演は岩浪さんに加えて、杉山潔プロデューサー(『ガールズ&パンツァー』)、瀬下寛之監督(『シドニアの騎士』)、塩谷直義監督(『PSYCHO-PASS サイコパス』)といった方々。皆さんがどんどん話を進めてくださって、司会の僕としては楽をさせてもらった。

第118回 輝きを宿す音 〜コメットさん☆〜

 腹巻猫です。11月18日(土)19時より阿佐ヶ谷ロフトで「菅野祐悟トークライブ」を開催します。アニメでは『図書館戦争』『鉄腕バーディー DECODE』『PSYCHO-PASS』『ガンダム Gのレコンギスタ』『ジョジョの奇妙な冒険[2期・3期]』『亜人』『BLAME!』などの音楽を手がける作曲家・菅野祐悟さん。その音楽史や作曲秘話などをうかがう予定です。前売券はe+で発売中!

菅野祐悟トークライブ
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/76470


 今年は「ウルトラセブン」(1967)など、放映50周年を迎えた作品がいくつかある。TVアニメでは『リボンの騎士』『パーマン[白黒版]』『悟空の大冒険』『マッハGoGoGo』など。TV特撮だと「ジャイアントロボ」「仮面の忍者 赤影」「キャプテンウルトラ」などがそうだ。そんな50周年作品のひとつに「コメットさん」がある。
 「コメットさん」は1967年にTBS系で放映された国際放映制作の特撮TVドラマ作品。星から来たコメットさんが地球の家のお手伝いさんになり、魔法のバトンの力で難題を解決しながら子どもたちと交流を深めていく物語だ。実写版魔法少女もの(あるいはその元となった「奥様は魔女」の日本版)というべき作品である。歌手の九重佑三子が主演し、1年半にわたって放映された。放映終了から10年後の1978年には大場久美子の主演でリメイクされ、こちらも1年以上放映されている。現在も根強いファンを持つ作品だ。
 そのコメットさんをアニメ化したのが、2001年に放送されたTVアニメ『Cosmic Baton Girl コメットさん☆』(以下『コメットさん☆』と表記)。今回はこのTVアニメ版を取り上げよう。

 TVアニメ『コメットさん☆』は2001年4月から2002年1月までテレビ大阪/テレビ東京系で全43話が放映された。アニメーション制作は日本アニメーション。アニメーション協力としてシナジージャパンが参加している。のちに『エルフェンリート』(2004)、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』(2010)、『すべてがFになる』(2015)などを手がける神戸守が監督を務めた。
 トライアングル星雲にあるハモニカ星国(ほしくに)のプリンセス・コメットさんは逃げ出した隣国の王子さまを探すために地球にやってくる。地球で星力(ほしちから)を使い果たしてしまったコメットさんは双子の子ども剛(つよし)と寧々(ねね)に助けられ、その家に居候させてもらうことに。コメットさんは地球の人々が持つ「輝き」に魅せられ、王子さま探しよりも地球で輝きを持つ人を見つけ、応援することによろこびを見出していく。
 実写版ではほとんど描かれなかったコメットさんの故郷の設定を大きくふくらませ、アニメ版独自の世界を作り上げている。大きなトピックスは、コメットさんの母親である王妃役を初代コメットさん=九重佑三子が演じ、第19話から登場するコメットさんの叔母・スピカ役を2代目コメットさん=大場久美子が演じていること。2人は若い頃に一度地球で暮らしたことがあり、星に帰ったあともその思い出をとても大切にしていた。王妃=1作目のコメットさん、スピカ=2作目のコメットさんとも受け取れる設定と配役で、実写版から観ているファンは胸が熱くなる。
 ユーモラスな場面をまじえながら、キャラクターの心情が丁寧に描かれているのが印象的だ。毎回、コメットさんやコメットさんが関わる人々の小さな成長が描かれて爽やかな感動を呼ぶ。「良心的」という言葉がこれほど似合う作品はない。実写版ファンの間ではあまり話題に上らないようだが、旧作の精神を受け継ぎ、新しい解釈のコメットさん像を示して見せたすばらしい作品である。

 音楽は音楽ユニットMOKA☆として活躍する小西香葉、近藤由紀夫の2人が担当している。
 筆者がMOKA☆の名をはじめて意識したのは2008年に放送されたTVアニメ『ポルフィの長い旅』だった。ヨーロッパの旅を描く物語に、エキゾティックな香りを漂わせる、素朴でふしぎな浮遊感のある音楽がよく合っていた。MOKA☆の小西香葉はこの作品で次回予告のナレーションも担当している。
 MOKA☆は異なった音楽背景を持つサウンドクリエイター近藤由紀夫と小西香葉のユニット。作詞・作曲・編曲・演奏・歌唱等のサウンドプロデュースをこなし、アーティストへの楽曲提供や映像音楽を手がけるほか、オリジナルアルバムも発表している。映像音楽の代表作に、映画「恋文日和」(2004)、TVドラマ「R-17」(2001)、「火消し屋小町」(2004)、「だいすき!! ゆずの子育て日記」(2008)、「チャレンジド」(2009)、「僕とスターの99日」(2011)、TVアニメ『エルフェンリート』(2004)、『しにがみのバラッド。』(2006)、『純情ロマンチカ』(2008)、『さらい屋 五葉』(2010)、『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』(2014)、『pupa』(2014)などがある。
 『コメットさん☆』の音楽は楽器の響きを生かした、やさしく温かい曲が中心。魔法少女アニメっぽい華やかなサウンドやポップなサウンドは控えめだが、心に残るメロディと巧みな音使いが印象的だ。
 サウンドトラック・アルバムは「コメットさん BGM集I」「同II」の2枚がNECインターチャネルから発売された。
 「BGM集I」から紹介しよう。収録内容は以下のとおり。

  1. 星のトレイン
  2. オープニングテーマ〜君にスマイル(TVサイズ)
  3. ヘンシン!
  4. JOY OF LOVE
  5. 終わらない夜
  6. HORIZON
  7. Looking For Your Heart〜君のハートはどこ?〜
  8. マジカルコメット
  9. 輝きをさがして
  10. ワクワク惑星
  11. 涙の雨音
  12. へなちょこラグ
  13. ミステリアス・メテオ
  14. ハロー!ハロー!
  15. Feeling Soul
  16. いつもの笑顔
  17. らぶりーラバボー
  18. はじめての好き
  19. エンディングテーマ〜トゥインクル☆スター(TVサイズ)

 ドラムス、ベース、ギターにストリングスと木管(フルート、クラリネット、サックス)、ハープを加えた小規模な編成。浮遊感のあるシンセサイザーの音が加わって独特のサウンドを生んでいる。
 トラック1「星のトレイン」は第1話でコメットさんが地球へやってくるときに乗った星のトレインのテーマ。ファンタジックなイントロに導かれ、軽快なリズムに乗ってストリングスがメロディを奏でる。爽やかな躍動感にあふれた曲だ。第2話以降も、星のトレインの登場シーンやコメットさんが星のトンネルで空を駆ける場面などによく使われた。そして、最終話(現行版)のエンドクレジットに流れるのもこの曲。コメットさんの輝き探しはまだ終わらない。そんなことを感じさせる旅の始まりの曲である。
 2曲目はオープニング主題歌「君にスマイル」のTVサイズ。放送ではイントロに「コメットさーん」「はーい」という実写版から受け継がれた子どもたちとコメットさんのかけあいの声が入っていたが、CDでは採用されていない。ぜひ入れてほしかったところだ。
 トラック3「ヘンシン!」はタイトル通り、コメットさんがバトンを使ってミニドレス姿に変身する場面に使われた曲。キラキラしたイントロから上昇する音階をくり返すミステリアスでワクワク感のある曲調に展開。コメットさん登場を印象付ける。3曲目に変身BGMを持ってくる思い切った構成が効果的だ。
 次の「JOY OF LOVE」は本作の音楽の中でももっとも重要な、メインテーマとも呼べる曲である。コメットさんが決意を胸に行動を始める場面や星力で輝きを持つ人々を応援する場面によく流れていた。ストリングスとシンセが奏でるシンプルで力強いメロディが心の中にわき上がるよろこびや希望を表現する。バックのエスニカルなリズムに胸が躍る。このリズムの使い方はMOKA☆の特徴のひとつだ。
 このメロディをマーチ調にアレンジした「MARCH OF LOVE」やしっとりとしたスローアレンジ「JOY OF LOVE,again」も劇中の名場面によく使われていた。また、コーラス入りアレンジの「JOY OF LOVE, forever」は最終話でコメットさんが地球に戻る場面に流れて印象深い曲になった(いずれもサントラ2枚目に収録)。
 トラック5「終わらない夜」は第13話でコメットさんが病院で行われる手術に立ち会って青ざめる場面など、少し緊迫した場面に使われたサスペンス曲。アルバムの中ではほんわかした雰囲気を引き締めるスパイスのような曲になっている。
 ピアノとクラリネットが奏でるトラック6「HORIZON」は落ち着いた曲調の情景描写曲。それだけにとどまらない、なかなか味わい深い曲だ。第19話で高原に寝そべってくつろぐコメットさんの前にスピカおばさんが現れる場面、第29話でコメットさんがほら貝を耳に当てて遠く離れた少年ケースケの声を聞く場面など、日常の中で心がふっと波立つようなシーンに流れている。
 トラック7「Looking For Your Heart 〜君のハートはどこ?〜」とトラック15「Feeling Soul」は、シンガーソングライターの少年イマシュンこと今川瞬が劇中で歌っている曲のエレキギターによるメロオケ。歌入りはソングアルバムに収録されている。MOKA☆は「売れなさそうな歌」というオーダーに応えて渋いブルースを書いたそうだ。
 コメットさんが魔法(星力)を使う場面の定番曲「マジカルコメット」に続いて、シンセのふわっとした音色が耳に残る「輝きをさがして」。曲の頭の部分はサブタイトル音楽としても使用されている。細野晴臣が手がけた『銀河鉄道の夜』(1985)というアニメサントラの名盤があるが、この曲はそのサウンドや雰囲気を連想させる。星くずの中を自分だけに見える輝きを探して旅するような、新しい出会いへの期待と少しの不安とさびしさが一緒になったような、ふしぎな気持ちに包まれる曲である。
 バイオリンの優雅なメロディとエスニックなリズムを組み合せた「ワクワク惑星」は高揚する心を表現する曲。楽しい場面に流れる曲だが、コメットさんとケースケの絡みの場面にも使われて、コメットさんのケースケへの気持ちの変化を表現していた。登場人物の心情をすくいとる音楽演出のうまさが光る。
 トラック11「涙の雨音」は悲しみや寂しさを表現する曲。シンセとピアノをメインにした淡々とした曲調で、コメットさんたちの気持ちに寄り添う繊細な曲だ。使用頻度は高く、数々の名場面に流れている。なんといっても記憶に残るのは最終話前の第42話で、カスタネット星国の王女メテオが地球でお世話になった老夫婦とさよならする場面。コメットさんになにかと競争心を燃やすメテオはわがままで高慢に見えるけれど、実はやさしい気持ちを持った少女。そのメテオが地球を去る前に仮の両親にきちんと別れを告げようとする場面は涙なしに観られない。ああ、思い出すと涙が……。
 トラック13「ミステリアス・メテオ」はそのメテオのテーマだが、妖しくミステリアスな曲調を生かして、謎の人影が現れる場面や心が不安でざわざわする場面などによく使用されていた。
 「へなちょこラグ」「ハロー!ハロー!」「らぶりーラバボー」はややエキセントリックなサウンドと強めのリズムを使ったコミカルな曲。劇中ではあまり使われなかったが、アルバムの中では楽しい雰囲気をかもし出してメリハリをつける格好のアクセントになっている。
 トラック16の「いつもの笑顔」はコメットさんと双子の日常シーンによく流れた曲だ。ピアノのリズムにオカリナ風の音色の素朴なメロディが重なる。本作のほんわかした、やさしい空気感をよく表わしている。同じメロディをアレンジした「雲のおさんぽ」という曲(サントラ2枚目に収録)もいい曲で、第9話「雲のゆりかご」でコメットさんと双子が雲のベッドに乗って空の散歩を楽しむシーンに使われていた。
 エンディング主題歌の前に置かれた「はじめての好き」は、「JOY OF LOVE」と並ぶ本作を代表する楽曲のひとつである。
 コメットさんは地球で輝き探しをするうちに、星国の王子さまでなく地球の少年に恋をしてしまう。プリンセスとしての責任と自分の気持ちとの間で揺れるコメットさん。まるで『ローマの休日』のようなロマンティックで切ない心の動きが物語後半の見どころだ。コメットさんだけでなく、コメットさんのお付きの妖精ラバボーにも、メテオにも、恋の季節が訪れる。「はじめての好き」はそんな恋する想いを美しいメロディで表現する曲。胸の奥がキュンとなるようないい曲である。
 2枚目の「BGM集II」についても書いておこう。すでに紹介した「JOY OF LOVE」のバリエーションや「雲のおさんぽ」、メテオのテーマをストリングスが妖しく奏でる「PRINECSS METEO」、コメットさんの新変身テーマ「REBORN」、「はじめての好き」をアレンジした「さいごの好き」など、1枚目に劣らず名曲が詰まった1枚だ。中でも重要なのは「胸に住む人」と題された曲。コメットさんが初めて「好き」と言われてとまどう場面やケースケへの気持ちを意識する場面など、揺れ動く心を表現する曲として全編を通してよく使われた。最終話でコメットさんが地球でお世話になった人たちと別れる場面にも流れている。これも本作を代表する楽曲のひとつである。

 『コメットさん☆』のサントラは1枚目も2枚目も収録時間は40分少々。CDとしては短めだ。もっと曲を入れてほしかったとも思うが、その分、凝縮されたアルバムになっている。1枚目のライナーノーツでMOKA☆の二人が「1曲1曲私たちが感じている輝きをこめて音楽を創らせていただきました」と書いているように、じっくり聴くほどにキラッと輝くものが見つかる音楽である。
 しかし、こんな良質のサウンドトラックが今では入手困難とは。配信でもよいから、いつでも手に入るようにしてほしいったら、してほしいものですよ(とメテオさんの口調で)。

コメットさん☆ BGM集I
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コメットさん☆ BGM集II
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125 アニメ様日記  2017年10月15日(日)~

2017年10月15日(日)
今週は事務所に入った時間を、この日記に書くことにする。早朝というか深夜に出社して、朝あるいは昼まで集中して原稿作業をするようにしている。実はこの超朝型生活に切り替えてから、睡眠時間は増えた。この日は午前2時45分に事務所に入った。
 『DRAGON BALL超』は先週に続き、ジレンの強さをアピール。面白い。TOHOシネマズ新宿で『Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower』を観る。原作ゲームをプレイしていないので、内容についてあれこれと言うことはできないが、ボリュームたっぷりでアクションも山盛り。エネルギーを感じる作品だった。

2017年10月16日(月)
午前2時40分に事務所に入って原稿作業。「この人に話を聞きたい」の原稿まとめに着手。

2017年10月17日(火)
午前0時40分に事務所へ入って原稿作業。午前6時まで原稿。その後、朝飯と軽い散歩などを挟んで、池袋から中野まで歩く。電車で移動して、10時半から南阿佐ヶ谷で打ち合わせ。11時半に事務所に戻って、打ち合わせが2本。14時くらいには、そろそろ1日の仕事が終わってもいい感じになっていた。いや、終わらなかったけど。

2017年10月18日(水)
午前1時20分に事務所へ入って原稿作業。「ルパン三世ベストセレクション」では9位を放映。『PARTIII』5話「五右ェ門無双」だった。10位の『PARTIII』第24話「友よ深く眠れ」に続き、2週連続『PARTIII』の五右ェ門メインのエピソードだった。銭形や五右ェ門にスポットがあたった回が強いなあ。ということは、これから「哀しみの斬鉄剣」もくるか。

2017年10月19日(木)
午前1時40分に事務所へ入って原稿作業。作業が一区切りついたところで『生徒会役員共』原作15巻限定版のOADを観る。いつもの通りの面白さ。それから『少女終末旅行』の2話がよかった。1話もよかったけど、2話はもっとよかった。かつて僕が思い描いた「こういうアニメがあったらいいな」に近い。午後は中野で「アニメスタイル012」の取材兼打ち合わせ。ICレコーダーは回さず、話を聞きながらキーボードを叩く。その後、まんだらけに寄って、見当たらなくなったアニメ雑誌のバックナンバーを購入。それと、刊行当時に購入し損なって、ずっと手に入れる機会のなかった「杉野昭夫 作品集」も買った。30数年かけてようやく入手できた。

2017年10月20日(金)
午前2時50分に事務所へ入って原稿作業。夕方に仮眠。夜は新文芸坐へ。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98 岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」のための、岩浪さんによる音響セッティングに立ち合う。セッティングにより、音が一段と立体的になった印象。さすがです。以前、オールナイトで『劇場版 シドニアの騎士』を音量増しで上映した際には音が割れてしまったが、今回はそんなことはなさそうだ。

2017年10月21日(土)
新文芸坐での立ち合いを終えて、午前1時00分に事務所へ入って原稿作業。紀伊国屋書店新宿本店で「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」が販売されていると聞いて、昼に行って確認する。マンガコーナーやアニメコーナーではなく、画集コーナーに平積みになっていた。嬉しい。

第536回 朝が好き!

久々に晴れた朝はやっぱり気持ちいいですね。
今日も6時起き!

以前解説したとおり、朝が大好きな板垣です。とにかく「朝」には思い出がいっぱい。
 幼稚園の頃は、山形のおじいちゃんと一緒に新聞配達(という名の散歩)をしてジュースをおごってもらった思い出。自分、プロフィール上は愛知県名古屋市出身だけど、両親は山形県出身。姉は名古屋で生まれたらしいのですが、俺は母親が帰省してる時に生まれたそうなので「生まれた場所は山形だ」と。よって、幼い頃は毎年、夏か正月に山形で過ごした思い出が多く、朝と言えば山形での朝がいちばん好きです。その時から早起きで(朝4時〜5時?)、ひとり縁側で一面の田んぼをボケ〜っと眺めてたもんです。冬の雪景色などは、遠くの山々まで、まるで水墨画のように綺麗だったのを思い出します!
 小学生になると早朝ゴルフ(笑)。この連載のかなり初期に語った、手作りクラブで公園にて。これも「朝4時集合!」と友人らに声をかけて、自分は3時に公園行って、ひとりでクラブを振って夜明けを待ってました。すると友人らは5時近くにやってきて合流。平日の学校行く前でも、そーやって遊んでたんです。
 あとは、マンガも早朝描いてたし、パソコンでゲーム作ったりするのももっぱら朝。そして、今現在は朝コンテ!

いくつになっても、朝は自分にとっていちばん楽しい時間!

なんです。
 そしてやっぱりアニメの再放送枠。我々世代が子供の頃は、家庭用のビデオデッキもそれほど普及しておらず、好きなアニメを「もう一度観たい!」となると、再放送を待つのみ。80年代、名古屋(に限らないと思いますが)では早朝アニメの再放送枠があちこちにありました。主に朝5時〜6時半頃とか。自分が生まれる前に作られたアニメは、これらの再放送で観たものばかりです。『アタック NO.1』や『タイガーマスク』『ど根性ガエル』『バビル2世』、あと『巨人の星』とか。
 あ、ちなみに徹夜明けとかで「あ〜あ、朝になっちゃった……」と不本意ながら迎えてしまう朝は、あまり好きではありません。せっかくの朝が力いっぱい楽しめないから。

どんなに忙しくても「朝を楽しむ」ため、
たとえ3時間でも必ず寝る主義です!

124 アニメ様日記  2017年10月8日(日)~

2017年10月8日(日)
なんということだ。先週の日記で『それいけ!アンパンマン』について書くのを忘れていた。10月6日(金)に放映された「アンパンマンとどろんこ魔王」が見応えのある仕上がりだったのだ。内容はアンパンマンの誕生、バイキンマンの幼少期を回想で描き、ミュージカルパート、カレーパンマンとしょくぱんまんが人々にパンを届ける描写もあり。後半ではアンパンマン達がどろんこ魔王と戦うのだが、どろんこ魔王は劇場版第1作『それいけ!アンパンマン キラキラ星の涙』に登場したキャラクターだ。この話は筋立てから豪華で、それだけでなく画面構成もしっかりとしていた。大きさや広さを感じさせるレイアウトになっていた。オンエア時に途中から観たのだが、劇場版をテレビ放映しているのかと思った。エピローグ部分では、アンパンマンがやなせうさぎを助ける。やなせうさぎは、原作者の故やなせたかしが自分をモデルにしたキャラクターだそうだ。エピローグの舞台となっているのが、ウユニ塩湖をイメージしたと思われる場所であり、その情景がまた美しい。最後のシーンまでスペシャルな回だった。この話の脚本は米山正二、絵コンテが永丘昭典、演出が山内東生雄。監督の永丘さんがTVシリーズで絵コンテを担当するのは珍しいはずだ。アンパンマンを演じる戸田恵子さんのブログによれば、この「アンパンマンとどろんこ魔王」で『それいけ!アンパンマン』が30年目に突入したのだそうだ(2017年7月31日のエントリー「さんじゅうねんめにとつにゅう。」)。その節目を記念したエピソードなのだろう。
 以下が10月8日(日)の話題。『DRAGON BALL超』のスペシャル「これぞ全宇宙一の究極バトル! 孫悟空VSジレン!!」がかなりよかった。なんと言っても面白い。話の密度が高いうえに展開が速い。テンションは高いし、次回への引きもいい。圧倒的な強さのジレンに対して悟空が苦戦し、新しい力「身勝手の極意」を会得したにも関わらず、それでもジレンに負けてしまうのがいい。作画もいいところがあった。今までの『DRAGON BALL』のオリジナルストーリーで、一番満足度が高かったと思う。
 昼から阿佐ヶ谷ロフトAでトークイベント「第136回アニメスタイルイベント アニメスタイルのアニメファン(アニメ雑誌ライター)講座 初級編」。出演者は僕と吉松さんのみ。レジュメを作ってあったし、喋ることも決めていたので話がサクサク進んだ。トーク最初のブロックが「10分で分かる『アニメファンのアニメの歴史』だった。さすがに10分では終わらなかったけど、10分と少しで終わった。第二部の「アニメファンなら観ておきたい200本」を紹介するパートは、予定通りにポイントのみを話すかたちになった。  

2017年10月9日(月)
体育の日。昼までデスクワーク。午後はTOHOシネマズ 新宿で、ワイフと実写映画「ドリーム」を観る。SNSで知人が誉めていたので観にいく気になったのだ。よくできていたし、楽しめた。3人の主要登場人物のうち、メアリーがクライマックスのドラマにほとんど絡まなかったのがちょっと意外だった。エピローグで主人公のモデルになった女性の、現在の様子が紹介されるのがよかった。ドラマと現実がリンクした感じだった。  

2017年10月10日(火)
『おそ松さん[第2期]』1話と2話をまとめて観る。2話Aパートで、チョロ松以外の六つ子の乳首がなくなってしまった。これから、六つ子が裸になった時に、5人は乳首が作画されないのだろうか。『おそ松さん』は「男性アニメキャラにおける乳首問題」において重要な作品なので気になる(「男性アニメキャラにおける乳首問題」を気にしているのは、僕を含めて数人しかいないのかもしれないが)。それにしても「乳首がなくなったわね。おそ松」は凄いセリフだなあ。
 他も次々と10月の新番組をチェックする。いつも、後で落ち着いて観ようと思って、チェックが後回しになるのだけど、今期は先に一通り目を通したかったので、ながら観もありで、ガンガンとチェックすることにした。  

2017年10月11日(水)
iPhoneを5sから8Plusに乗り換えた。予想していたことではあるが、メインで使っている歩数計アプリから、2日分の歩行記録が消えた。まあ、全部が消えなくてよかった。
 打ち合わせで、仕事を手伝ってもらっている学生さんに「この前のイベントで、誰の原画か当てられることは重要ではないと言われたばかりですが、この『セーラームーン』の版権イラストはどなたが描いたのか分かりますか」と言って、スマホで画像を見せてきた。それに対して「スマホで『セーラームーンS LD』で画像検索してごらん。ほら、それが元のイラストだよ。つまり、伊藤郁子さんのイラストをトレースして色を付け直したものだ」と答える。いやあ、すぐに答えられる質問でよかった。
 昨日に続き、10月の新番組をガンガンとチェックする。この日に1話をチェックしたタイトルは『戦刻ナイトブラッド』『お酒は夫婦になってから』『食戟のソーマ 餐の皿[第3期]』『あめこん!![雨色ココア第4期]』『TSUKIPRO THE ANIMATION』『このはな綺譚』『大正ちっちゃいさん』『UQ HOLDER! 魔法先生ネギま!2』『アニメガタリズ』『妹さえいればいい。』『ブレンド・S』『アイドルマスター Side M』『鬼灯の冷徹[第弐期]』『王様ゲーム The Animation』『Just Because!』。  

2017年10月12日(木)
『夜明け告げるルーのうた』展 in ササユリカフェを訪れる。原画やイメージボードは勿論、壁にかけられたタブレットで流れていたメイキング映像も見応えがあった。  

2017年10月13日(金)
昼から夜まで、打ち合わせ4本立て。新文芸坐の打ち合わせで、11月のオールナイトはお休みすることになった。「新文芸坐×アニメスタイル セレクション」の「Vol.100」は来年1月になりそう。  

2017年10月14日(土)
ネットで“映画「この世界の片隅に」に関わったチーム一同”が第65回菊池寛賞を受賞したことを知った。日本文学振興会のTwitterアカウント(@shinko_kai)のツイート(ツイートがあったのは10月12日)によればこの「一同」には、原作のこうの史代さん、片渕須直監督、制作・製作スタッフのみなさん、そしてクラウドファンディングに参加された皆様が含まれます”とのこと。僕もクラウドファンディングに参加しているので、菊池寛賞を受賞したことになる。それはともかく、クラウドファンディングに参加した人達が「一同」に含まれているのはいいな。