アニメ様の『タイトル未定』
319 アニメ様日記 2021年7月4日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年7月4日(日)
早朝散歩の後、都議会議員選挙の投票に。僕が行った投票所は一番乗りと二番目の人が投票箱の中を見ることになっているようで、僕は二番目だったので、投票前に箱の中を確認した。
カセットハードディスクの録画を整理していたら、鈴木敏夫さんと岩井俊二さんの対談があった。番組タイトルは「日本映画専門チャンネル×岩井俊二映画祭 present 映画は世界に警鐘を鳴らし続ける 特別番組 鈴木敏夫×岩井俊二」。2012年に日本映画専門チャンネルの岩井俊二特集内で放送された番組で、録画はその再放送であるらしい。驚いたのはアニメージュで「風が吹くとき」を特集した号の話題だ。特集を企画したきっかけ、社内と読者の反応についての話。自分がアニメージュで仕事をしていた時期の話だけど、まるで知らなかった。敏夫さんが大袈裟に語っている可能性はあるけれど。

2021年7月5日(月)
ワイフと椎名町まで歩いて、餃子の満州で昼飯。僕もワイフも餃子の満州が好きなんだけど、酒が呑めない間は行く気にならなかったのだ(念のため書いておくと、外食で酒が提供できた時期のことである)。
「この人に話を聞きたい」の原稿に集中できるかと思ったけれど、それ以外のやらなくてはいけない作業が次々と生じる。

2021年7月6日(火)
久しぶりに『機動戦艦ナデシコ』1話を視聴。今さら言うまでもないけど、脚本も演出も尖っている。2話以降が楽しみになる超盛り沢山な内容。当時もそう思ったはずだけど、ダイゴウジ・ガイは1980年代に割といたタイプのオタクなんだろうなあ。1話のルリは後の彼女とキャラが違うけれど、それは味わいのうち。ユリカは今観ると「普通の女の子」だな。突飛な言動はあるけれど、それも含めて普通の女の子。1話のエステバリスのアクション作画はかなりいい。当時は、『ゲキガンガー3』との対比を考えると、リアルロボットとして扱われるエステバリスの描写がスーパーロボット的でいいのか? と思ったけれど、むしろ、スーパーロボット的でいいのだと思えた。
『機動戦艦ナデシコ』2話。1話に負けず、超盛り込み。大筋はマジメで表現はコメディで、1990年代らしいノリもあり。ダイゴウジ・ガイ大活躍の回でもある。3話の予告がこれまた面白くて、期待が高まる。2話劇中の『ゲキガンガー3』はロクロウ兄さんの話。異星人シックースの地球名がロクロウなのは、『大空魔竜ガイキング』でフジヤマ・ミドリのピジョン星人としての名前がグリーンであったことに由来する。ちなみに、この日記で『ゲキガンガー3』のタイトルに「・」を入れないのはわざとであります。
『機動戦艦ナデシコ』関係で佐藤徹さんにインタビューをする。お元気そうでよかった。

2021年7月7日(水)
『機動戦艦ナデシコ』再視聴は5話から10話まで。5話で炸裂する首藤ワールド。この話でルリのキャラクターが固まるかと思ったら、そんなことはなくて徐々に完成していく感じ。作品全体のノリとしては、イネスが出てきてからが本調子。アカツキ・ナガレは記憶にあるよりもコメディ寄り。というか、アカツキが面白お兄ちゃんとして描かれる回が連続する。これは当時も思ったことだけど、イネスの「ワープという言葉もちょっと⋯⋯」というセリフはややメタな感じ。
11時に行きつけの病院に行って、新型コロナウイルス・ワクチン接種を受ける。ほとんど待たずにサクっと終わる。次に出す書籍の構成1弾のPDFが上がる。次の次の書籍の素材関係が動く。引き続き「この人に話を聞きたい」原稿を進める。
引き続き、1人で散歩する時はネックスピーカーでサントラを聴いている。この日の早朝散歩では『こどものおもちゃ』『ナースエンジェルりりかSOS』のサントラを聴いた。サントラではないけれど、最近、聴いたCDだと「小んなうた亞んなうた 小林亜星 楽曲全集 コマーシャルソング編」がよかった。

2021年7月8日(木)
「この人に話を聞きたい」の原稿を進める。原稿まとめの参考に『恋は雨上がりのように』原作最終巻に目を通して、改めてアニメ最終回を観て、実写映画版を観る。『メジャーセカンド』もチェック。『彼女がフラグをおられたら』を観ていたら、何故か『僕は友達が少ない』を観たくなった。
以下は『恋は雨上がりのように』について。確かに原作とアニメでは、ラストが違っている。原作だと、店長にとっての小説と、あきらにとっての陸上は「待たせているもの」であって、アニメだと「果たさなくてはいられない自分との約束」なのね。言葉遊びっぽくなるけど、アニメは約束だから、それを果たしたら戻ってくるかもしれない。さらにアニメだと、店長とあきらが「自分との約束」を果たした後のことを語りあっていて、改めて恋を続けるかもしれない余地を残している。しかも、本編ラストカットで小説を書き終えたのかもしれないと匂わせている。

2021年7月9日(金)
「この人に話を聞きたい」原稿の大詰め。最後の最後でインタビュアーの口調を整えた。

2021年7月10日(土)
最近、テレビをつけるといつも、CSで『おそ松さん』をやっている。どうして? と思っていたけれど、確認したら帯番組なのね。こっちが毎日同じ時間にテレビをつけているだけだった。
新文芸坐の9時45分からの回で「ソナチネ」(1993/94分)を観る。プログラム「乾いた銃声/虚無の闇 北野武と黒沢清の暴力」の1本。この映画は初見。予想以上に面白かった。スリリングだし、味わいもある。些末なことだけど、スチールでお馴染みのビートたけしが自分の頭に銃をあてるカットって、クライマックスではなかったのね。
築地食堂源ちゃん東池袋店にで昼飯。呑んで食べる。再び緊急事態宣言が実施されるので、源ちゃんのホッピーもまたしばらく呑めない。14時から2時間ほどZoom打ち合わせ。割と冴えたことを言った気がする。その後はレイトショーの用意等。夜はレイトショー「新文芸坐×アニメスタイル スクリーンで観たいアニメ映画vol. 2 『魔女見習いをさがして』」を開催。ゲストは関弘美さんと佐藤順一さん。佐藤さんは前の仕事の関係で遅刻するかもしれなかったのだけれど、余裕で間に合った。トークは公開インタビューのようなノリになってしまった。内容は充実していたと思う。『魔女見習いをさがして』を観るとビールを呑みたくなる。コンビニで缶ビールを買ってから帰る。

佐藤順一の昔から今まで(30) 『ケロロ軍曹』の話題であります!

小黒 そして『カレイドスター』が終わって『ケロロ軍曹』が始まる。

佐藤 はいはい。

小黒 『カレイドスター』の放映が2004年3月までで、『ケロロ軍曹』が4月にスタート。『カレイド』の作業を引っ張ったので、佐藤さんが『ケロロ』に本格的に入るのが遅れた、と聞いた記憶があります。

佐藤 そう……だったです? 並行してやっている時期があるのか。『ケロロ』とか『(ふしぎ星の☆)ふたご姫』(TV・2005年)とか、その頃の記憶は、色々ごちゃごちゃになってるんですよね。

小黒 並行してやっていたのは間違いないですね。『カレイド』が遅れていなかったとしても、『カレイド』の制作中に『ケロロ』の仕込みをやっていたわけですよね。

佐藤 そうだね。気分がダウンになった頃の具体的な記憶はないんですけど、例えば『ふたご姫』の主題歌を聴くと、その時の気分がよみがえるんですよ。

小黒 つらかった時の気分ですか?

佐藤 そうそう。「あっ、この時、つらい気分だったな」って。

小黒 分かります、分かります。僕もそういう曲があります。

佐藤 (笑)。何があったかは覚えてないんだけど、その時期なんですよね。『ケロロ』もね、2年目の主題歌なんかを聴くと、その気分がよみがえってくるんですよ。

小黒 じゃあ、精神的につらい時に作ったんですね?

佐藤 そうそう(笑)。

小黒 つらい時期の話で申しわけないですが、『ケロロ』の事を聞いてもいいですか。

佐藤 はいはい。

小黒 どうして総監督をやる事になったんですか。

佐藤 オファーはサンライズからもらったんだったかな。あの原作を「ファミリーコンテンツ」にしたかったそうなんだけど、その時、サンライズでやってる人の中には、そういったものが得意な人が見当たらなかったと。それと、あまり予算を使わないのが前提だったんです。「枚数を少なくしても面白いものを作れるのは、やっぱり東映の人じゃないか。佐藤さんなら、なんとかしてくれるんじゃないか?」という感じで呼ばれた(笑)。その2点が大きかったんじゃないかな。

小黒 ファミリーコンテンツにするというのは、原作にあるマニアックな味付けや、色っぽいところを薄味にしていくという事ですね。

佐藤 そうですね。そういう意図でオファーをもらいました。ただ、現場的な作業をガチではできないと思うので、例によって「総監督ならできると思います」とお話して、監督として山本(裕介)さんに入ってもらう事になった。山本さんはサンライズからのオファーだったはずで、僕は初対面だったと思いますね。

小黒 脚本打ちやコンテチェックは佐藤さんの役割なんですね?

佐藤 いや、1年目のホン打ちは全部、立ち会ったんですけど、コンテチェックは基本的に山本さんですね。

小黒 そうなんですね。

佐藤 最初の頃は、山本さんのチェックの後に僕が見るやり方を考えていたんだけど、早い段階で「大丈夫だ」と感じたので、山本さんにお任せしてるはずです。

小黒 なるほど。途中から総監督じゃなくて、監修になるんですが、これはどういう経緯だったんですか。

佐藤 他の作業もあったりしたので、アフレコとダビングのところだけ立ち会うぐらいの関わり方にさせてもらおうと思って、そうしたんだったかな。ホン読みは全然出なかった。コンテ、内容も含めて、それは全部お任せするとなったんだけど、後半はアフレコも問題なく進むので、立ち会うのはダビングだけになってましたね。

小黒 ダビング立ち会いではどういった事をするんですか。

佐藤 特に何をするという事もないんですけどね。完成形ができるのがダビングなので、そこは一応、観ておくと。稀に、音楽について意見を出したりしたぐらいですね。

小黒 じゃあ、主にお仕事されたのは、1年目ですか。

佐藤 そうですね。シリーズ構成の池田眞美子さんも「じゃあ、構成を辞めようかな」という感じだったので、一緒に外れたんですよね。

小黒 いや、2年目もやってるんじゃないですか。総監督としてクレジットされているのが2年目の最後までなので(編注:3年目からの役職は監修。池田眞美子がシリーズ構成でクレジットされているのも、2年目の最後まで)。

佐藤 えっ、2年目もやったかな? そうだそうだ。2年目はオリジナルの話をやんなきゃいけなくなってるので、やってますね。その後、僕が総監督を外れた時に池田さんも一緒に辞めたんだった。

小黒 作品コンセプトの話に戻りますが、原作をちょっと子供向けにして、日曜の朝に観られるようなものにしたい。

佐藤 そうですね。「ファミリー向けにしたい」っていうオーダーだったので。

小黒 キャラクターデザインを誰にするのかについては、佐藤さんも関わってるんですか。

佐藤 キャラクターデザインを追ちゃん(追崎史敏)にオファーしたのは、僕なんですよね。「誰がいい?」みたいな話になって、僕から「追崎君がいいんじゃないか」と言って。「とりあえずラフでいいので、描いて」ってお願いしたんだけど、そん時の追ちゃんが凄く忙しかったんじゃなかったかな。これは、追ちゃんに聞かないと分かんないけど。

小黒 なるほど。佐藤さん的に「『ケロロ』はこういうふうに作るべき」と思った事は他にありますか。

佐藤 子供向けだったので、「どうしようかな?」と色々考えた。最初に思ったのは、冬樹が割とニュートラルなので、もうちょっと駄目っ子にしたほうがいいかなと。のび太的なテイストを出すのが、視聴者の年齢層を下げるにはいいかなと思ったんだけど、原作の吉崎(観音)さんに提案したら、「冬樹はそういう方向ではない」という話だったので、それはやめましたね。ただ、ファミリー向けにするなら、夏美やママがグラマラスなところは避けたいなと思いました。小学校高学年ぐらいになってくると、女の子がセクシャルなものについて、ちょっと嫌悪を示したりする事もあるので。そのぐらいの年齢の子が読む少女マンガって、ほんとに胸がペタンとしてるのが普通じゃないですか。「そういうテイストに変えたいです」って話をして、吉崎さんにもオッケーいただきました。最初はママもそうするつもりだったんだけど、それをやるとキャラが全然変わっちゃうので、「ママはグラマーなままでいいか」と、元に戻してるんですけど(笑)。内容的な事を含めていくつか提案して、オッケーもらって進めていましたね。吉崎さんは「ホン読みに参加したい」という事だったので、シナリオ打ち合わせには吉崎さんも参加してますね。ただ、最初の打ち合わせに入る時に「アニメーションの最終的なジャッジは僕のほうでするので、吉崎さんの意見を却下する事もあります」という了解をもらってます。そういうルール作りをしてから、スタートしたんですよね。

小黒 別の取材でもうかがいましたけど、他には「ケロロがいい奴で、冬樹との友情に厚い」事を重視すると。

佐藤 そうですね。そこは、とにかく死守しようと(笑)。それがズレると好感度が下がって、アニメだと笑えなくなるんじゃないかという気がしたので。「2人の友情に関しては揺るぎないほうがよいはずだ」と思っていました。

小黒 視聴者が観てて安心できるものにするという事ですね。

佐藤 うん。


●佐藤順一の昔から今まで (31)『ケロロ軍曹』の話題であります!・2 に続く


●イントロダクション&目次

アニメ様の『タイトル未定』
318 アニメ様日記 2021年6月27日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年6月27日(日)
早朝、新文芸坐に行ってオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクション vol.130 鬼才・今 敏の仕事」の終幕を見届ける。午前中は散歩とデスクワーク。昼はワイフと吉祥寺の肉山で、二ヶ月遅れの誕生祝い。前にこの店に来た時は、ちょっとボリュームが足りないと思ったけれど、ダイエット中としては、ちょうどいい量だ。そして、美味しい。

2021年6月28日(月)
岡田麿里監督作品『アリスとテレスのまぼろし工場』の制作が発表される(実際に発表されたのは6月27日のようだ)。特報からして素晴らしい仕上がり。平松禎史さんの役職は副監督だそうだが、これは平松さんにとっても代表作になるのではないか。
新文芸坐で「若者たち」(1967/96分/デジタル)を観る。プログラム「追悼・田中邦衛 優しさとユーモアと」の1本だ。面白い映画で、それ以上に興味深い映画だった。男4人、女1人の5人兄弟の物語で、各人のエピソードが描かれる。先に同タイトルのTVドラマがあり、これは後に作られた劇場版なのだそうだ。90分足らずの作品なのに異様に沢山のエピソードが詰まっているのはTVドラマ版の内容を圧縮しているためだろうか。ザ・ブロードサイド・フォーのヒット曲「若者たち」はTVドラマ版の主題歌であり、この劇場版でも劇中で何度も使われている(本当に何度も使われる)。さらに映画の最後で、スタッフではなく、この主題歌のクレジットがドーンと出る。こんなふうに主題歌がクレジットされるのは初めて観た。登場人物がやたらと熱い。主に田中邦衛さんが演じる長男が熱い。青春ものでありつつ、社会派であるのも、兄弟が家庭内でディスカッションをするのも新鮮だ。演出的にも面白いところがあった。TVドラマ版は1966年の放送で、自分は生まれてはいるけれど、おそらく観てはいない。ああ、なるほど、自分が知っているTVドラマの前に、こういうものがあったのね。色々と合点がいった。TVドラマの本を漁って、どのように記述されているかチェックしたい。

2021年6月29日(火)
ワイフと映画に行くつもりでチケットをとっていたのだけれど、事務所でアクシデントが発生して行けなくなった。夫婦50歳割りのチケットだったので、一緒に行って入場して、映画を観ないで事務所に戻る。

2021年6月30日(水)
アニメスタイルが「天元突破グレンラガン アーカイブス」を刊行することを発表する。予定よりずれてこの日の告知となったが、今年前半の区切りになってよかったかもしれない。
Twitterで話題になっていた「アニメ様の七転八倒 第92回 『エスパー魔美』再見 「動き出した時間」」を読み直す。よく書けているなあ。自分がこれまでに書いた原稿の中で一番いいかもしれない。

アニメ様の七転八倒 第92回 『エスパー魔美』再見 「動き出した時間」
http://www.style.fm/as/05_column/animesama92.shtml

2021年7月1日(木)
試写会で『鹿の王 ユナと約束の旅』を観る。感想はまた改めて。その後、ガード下の居酒屋に入る。2000年の「アニメスタイル」第2号で取材に使った店だ。あすけんを入力しながら呑む。塩分を過剰にしないで呑むのは難しい。

2021年7月2日(金)
グランドシネマサンシャインで「ゴジラvsコング」【IMAXレーザーGT3D字幕】を鑑賞。作品として、全肯定はできないんだけど、とにかく映像が凄い。それだけで入場料分の価値があった。事務所に戻って、山のような用事をガシガシと片づける。
『東京リベンジャーズ』未視聴分を観る。面白かったけど、これって全何話なんだろうか。

2021年7月3日(土)
午前中の散歩で北区に。雨の名主の滝公園を楽しもうかと思って、公園の前まで行ったが、倒木発生のため閉園とのこと。残念。事務所で少しキーボードを叩いた後、吉松さんと、やきとんひなた池袋東口店で呑む。リアル店舗で吉松さんと呑むのは久しぶり(念のため書いておくと、外食で酒が提供できた時期のことである)。やきとんも旨い。今回は飲食時のみマスクを外して、話す時はマスクをする「マスク呑み」だった。二人で「あすけん」を入力しながら注文した。あっという間にカロリーも塩分も大変な数字になる。

第215回 21世紀の青春 〜Free!〜

 腹巻猫です。1977年に放送された日本アニメーション制作のロボットアニメ『超合体魔術ロボ ギンガイザー』のデジタルアーカイブ化をめざすクラウドファンディングがスタートしています。筆者にとっても、サウンドトラック・アルバムの企画・構成を手がけた思い出深い作品。実現を祈りたいです。支援募集は11月5日まで。詳細は下記を参照ください。

超合体魔術ロボ ギンガイザー 全28話保存プロジェクト
https://readyfor.jp/projects/ginguizer-2021


 『劇場版 Free! -the Final Stroke-』前編が9月17日からロードショー公開される。2013年から放送されているTVアニメ『Free!』の劇場版である。
 今回は、その『Free!』の音楽を聴いてみよう。
 『Free!』は2013年7月から9月まで放送されたTVアニメ。おおじこうじのライトノベル『ハイ☆スピード!』を原案に、監督・内海紘子、アニメーション制作・京都アニメーション、アニメーションDoのスタッフで映像化された。
 小学生時代に同じスイミングクラブに通っていた4人の少年、七瀬遙、橘真琴、松岡凛、葉月渚。小学校卒業前に水泳大会のメドレーリレーで優勝したのを最後に、4人はそれぞれの道へ進んでいた。水泳競技から離れていた遥は、高校2年の春に偶然、凛と再会。勝負を挑んできた凛とプールで対決するが、僅差で破れてしまう。それをきっかけに4人の止まっていた夏が動き出す。
 水泳競技を題材にしたスポーツ青春アニメ。かつてともに汗を流した少年が、成長してライバル同士になり、競技で対決する……という王道パターンをふまえているように見えて、実は勝敗には重きが置かれていないのが本作の特徴。ドラマの主軸は少年たちの友情である。
 2014年にTVアニメ第2期『Free! -Eternal Summer-』を、2018年に第3期『Free! -Dive to the Future-』を放送。劇場版もこれまで4作が公開されている。息の長い人気作品だ。

 音楽は第1作から一貫して加藤達也が担当している。加藤は1980年生まれ。父がレコード会社に勤務していたことから幼少時より洋楽に親しみ、少年時代からバンド活動や作曲を開始。東京音楽大学音楽学部に進学し、作曲指揮専攻 映画放送音楽コースで学んだ。卒業後、三枝成彰のアシスタントを経て作曲家デビュー。これまで、『聖痕のクェイサー』(2010)、『境界線上のホライゾン』(2011)、『食戟のソーマ』(2015)、『ラブライブ!サンシャイン!!』(2016)、『キラッとプリ☆チャン』(2018〜2021)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2018/藤澤慶昌と共作)など、多くのアニメ作品の音楽を手がけている。
 水泳を題材にしたアニメの音楽となれば、スピード感のあるリズムに流麗なストリングス、ピアノの高音できらめきを表現した爽快なサウンド……みたいなイメージが思い浮かぶ。
 が、21世紀のスポーツ青春アニメである本作の音楽は、実に現代的。「今、スポーツ青春アニメの音楽を作るとこうなるのか」とうならせるサウンドになっている。
 加藤達也の証言によれば、のどかな田舎の港町を舞台にしたアニメなので、ほんわかした曲を書けばよいのかと思っていたら、打ち合わせで監督からは提示されたのは「モダンでポップな作品」というコンセプト。それを受けて、音楽作りは「POPさ、オシャレ感、軽快感、そして通常の劇伴音楽とは一味違うトンガッた音楽」をコンセプトに挑んだという。ダンスミュージック的なリズムやデジタルサウンドを積極的に取り入れて、モダンでポップな音楽を聴かせてくれる。
 本作を象徴する楽曲が3つある。
 ひとつは物語の舞台となる港町をテーマにした「Rhythm of port town」という曲。加藤達也によれば、この曲が「全体の方向性を示した曲」になったという。「のどかな田舎の港町の雰囲気」から思い切って離れた、ポップで都会的な曲に仕上がっている。それでいて、温かい生活感もほのかに漂わせているあたりがうまい。
 もうひとつは、遥たちが立ち上げる岩鳶高校水泳部のテーマ「Melody of ever blue」という曲。本作の音楽はメロディよりもサウンドやリズムで聴かせるタイプの曲が多いのだが、この曲は、明解なメロディをオーケストラが力強く奏でる、ストレートな「青春アニメ!」という雰囲気の曲。同じメロディは劇中の感動的なシーンに流れる曲「Night sky & ever blue」にアレンジされ、また、歌詞をつけて、第12話のエンディングテーマ「EVER BLUE」にもなった。本作のメインテーマと呼べる曲である。
 そして3曲目は、本作の要となる「泳ぎ」を表現した曲「Brilliant swim」。
 競技の緊張感とスピード感、水を切って泳ぐ浮遊感や爽快感、飛び散る波しぶきと泡のきらめき。さまざまな要素を表現する音がひとつにまとまり、聴いていると水の中を進んでいるような気分になる。
 実はこの曲が流れるシーンは多くない。第2話で遥と凛がプールで泳ぐシーンと第12話で遥たち4人が県大会のリレーで泳ぐシーンの2回使われただけである。しかし、いずれも重要なシーンであり、特に第12話はクライマックスシーンに長く使われているので、本編を観た方は深く印象に残っているはずだ。本作を代表する楽曲のひとつと言えるだろう。
 本作のサウンドトラック・アルバムは2013年10月に「TVアニメ『Free!』オリジナルサウンドトラック Ever Blue Sounds」のタイトルでランティス(現・バンダイナムコアーツ)から発売された。2枚組、全64曲収録のボリューム。主題歌のTVサイズや予告用音楽、PV用音楽なども収録された完全版である。
 ディスク1から聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. Rage on (TV size) / OLDCODEX
  2. A boy in the water
  3. Taste the satisfaction
  4. Rhythm of port town
  5. Innocent boy
  6. Revelry of student
  7. Funny group
  8. Woe is me!
  9. Formal horror
  10. Old days
  11. Words that changed my life
  12. Aggressive groove
  13. Diving & Spray
  14. Sparks crackled
  15. Great nostalgia
  16. To depths of blue
  17. Painful incident
  18. Analysis mania
  19. Comical theory
  20. Otoboke time
  21. Timid boy
  22. Strong rival team
  23. Rival and friendship
  24. Let’s go to camp
  25. Enjoy the tropical
  26. Beautiful sea
  27. Dangerous situation
  28. Crisis of life
  29. Memory of the past
  30. I need you
  31. Night sky & ever blue
  32. Melody of ever blue

 アルバム全体の構成は、ディスク1が前半(1〜6話)のストーリー、ディスク2が後半(7〜12話)のストーリーをイメージした内容。
 物語の前半は水泳競技のシーンはほとんどなく、遥たちが水泳部を立ち上げ、新入部員を勧誘し、練習を重ね、チームの絆を深めていく過程がユーモアをまじえて描かれる。同じ京都アニメーションが制作を手がけた『けいおん!』や『響け!ユーフォニアム』を思わせる「部活もの」の雰囲気が楽しい。
 そのため、音楽も日常シーンを彩る明るい曲やコミカルな曲が多め。競技シーンに流れるスポーツものらしい曲はディスク2にまとめて収録されているため、「いちばん『Free!』らしい曲が出てこない」と感じるかもしれない。しかし、ディスク1に収録された曲の多くは物語の後半でも多用されている。まったりと作品世界に浸ることができる内容なのである。
 オープニング主題歌に続く2曲目「A boy in the water」は第1話のアバンタイトルに使われた導入の曲。「水は生きている……」という少年時代の遥のモノローグとともに流れた。シンセとピアノで水のイメージを表現したSE的な曲だ。
 トラック3「Taste the satisfaction」からは、遥たちの日常を描く曲が並ぶ。水泳部の練習シーンなどに流れる軽快な「Taste the satisfaction」、町の情景をさわやかに描く「Rhythm of port town」、とぼけたシーンによく使われた脱力系の「Innocent boy」、はじけたラテンムードの「Revelry of student」などなど。ポップなリズムを生かした曲が多く、曲調もバラエティに富んでいて飽きさせない。
 トラック9「Formal horror」は第1話で遥たちが夜のスイミングクラブを訪れる場面に流れた曲。ホラー映画音楽風の曲調がくすっとさせる。
 トラック10「Old days」は曲名通り、回想シーンにたびたび使われた曲。ピアノとアコーディオンなどがノスタルジックに奏でる青春アニメらしい曲である。
 次の「Words that changed my life」はピアノとストリングスによる心情曲。リリカルなメロディが胸にしみる。遥たちの想いを表現する曲として、全編を通してよく使われた。これも、本作を代表する楽曲と言ってよいだろう。
 トラック12からは、遥と凛の再会と、ふたりの対決場面に流れる曲が続く。凛の登場シーンに流れるヘヴィなロック「Aggressive groove」、ふたりの高揚した感情を表現する「Diving & Spray」と「Sparks crackled」。「Sparks crackled」は、以降のエピソードでも遥と凛の対決シーンに使われている。緊張感とともに、ちょっとユーモラスな空気がただよう曲である。この絶妙な味の出し方がうまいなあと思う。
 トラック15「Great nostalgia」は、ギターとストリングスにコーラスが絡む、さわやかでノスタルジックな曲。遥たちの友情を表現する曲としてよく使われた。「Words that changed my life」とともに、本作の青春ドラマの側面を支えた曲である。
 トラック18の「Analysis mania」は、渚に勧誘されて水泳部の仲間に加わる竜ヶ崎怜のテーマ。理論を重視する頭脳派で、その理屈っぽい性格が音楽でもコミカルに描かれている。続く「Comical theory」「Otoboke time」も怜がらみのシーンで使われたユーモラスな曲だ。
 トラック24からは第5話と第6話で描かれた水泳部の夏合宿をイメージした曲がまとめられている。合宿への期待感やキャンプの楽しさをラテンのリズムで表現する「Let’s go to camp」、トロピカルムードの「Enjoy the tropical」「Beautiful sea」。一転して、緊迫した曲調で嵐の海の危機を描く「Dangerous situation」「Crisis of life」と続く。
 トラック30「I need you」は、第6話、夜の無人島の洞窟で、渚と怜、真琴と遥が語らう場面に流れた、やさしい心情曲。ピアノとストリングスが、4人の心が通い合う様子をしっとりと描写する。使用されたのはこの回だけだが、少年たちが絆を深めていくシーンに流れて忘れがたい曲になった。
 トラック31「Night sky & ever blue」は、第6話で、遥、真琴、渚、怜の4人が夜空いっぱいの星を見上げる感動的な場面に流れた曲。ピアノとストリングスが奏でるメロディが4人の友情を歌い上げる。本作の音楽の中ではオーソドックスな「ベタな曲」と言えるかもしれないが、そこがいい。この曲は、第4話で凛の妹・江が遥に「なんのために泳いでいるんですか?」とたずねる場面や、第11話で遥と渚が夜の公園で語らう場面にも使われた。
 ディスク1のラストは、本作のメインテーマと呼べる「Melody of ever blue」。劇中では、第8話で遥たち4人がメドレーリレーを泳ぐ場面に流れている。

 ディスク2は、先に紹介した「Brilliant swim」からスタート。「Strong swim」「Swim toward the hope」と「泳ぎ」をテーマにした曲が続き、以降もクライマックスに向けた曲が並ぶドラマティックな内容。
 最終回(第12話)では映像に合わせたフィルムスコアリングで新曲が制作されている。長いシーンに合わせて流れる「Real feeling」と「Feelings and emotions」は聴きごたえたっぷり。曲の中には、ディスク1に収録された「Words that changed my life」「Melody of ever blue」のメロディが登場する。そのメロディを聴くと、さまざまなシーンが頭の中をよぎり、じーんとしてしまう。溜め録りとフィルムスコアリングの組み合わせでドラマを盛り上げる音楽演出もうまい。
 『Free!』第1作で作られた楽曲のメロディは、以降のシリーズでもアレンジされて再登場する。キャラクターとともに音楽も成長しているのだ。
 21世紀のスポーツ青春アニメ『Free!』。音楽はオシャレでポップ。けれど、シンプルでオーソドックスな楽曲もしっかりとドラマを支えている。新作映画も音楽に注目しながらお楽しみいただきたい。

TVアニメ『Free!』オリジナルサウンドトラック Ever Blue Sounds
Amazon

佐藤順一の昔から今まで(29) 『カレイドスター』の すごい 思い出・3

小黒 その後、『カレイドスター』のOVAが2本ありますが、お話としてはTVで完結しているじゃないですか。

佐藤 うん。そうですね。

小黒 でも、描けるならもっと描きたいみたいな感じだったんですか。

佐藤 そうでしたね。TVシリーズ本編のほうに自分のカラーが出すぎているので、1本目はそうじゃないものが観たいなと思って、和田さんにまるっとやってもらったんだよね(編注:OVA『笑わない すごい お姫様』で和田高明は絵コンテ、演出を担当した上に、音地正行と共同で作画監督を担当。原画も描いた)。

小黒 ロゼッタの話ですもんね。

佐藤 そうです。ロゼッタの話を好きなようにやってもらおうかな、と思って。結構好きなようにやってくれて、それはそれで和田さんらしくて面白かった。2本目のほうは、池田東陽が成立させたんだと思うんだけど、「本編の映像をBANKで使いながらひとつの話を作れない?」という感じのスタートラインから始まったものだったかな。

小黒 『カレイドスター Legend of phoenix ~レイラ・ハミルトン物語~』(OVA・2005年)ですね。

佐藤 総集編的なものなんだけど、それでOVAになんないかな? みたいなとこからスタートしてるんですね。だから、過去映像を大分使っているんですけど、玲子さんに書いてもらっただけあって、思ったよりちゃんと新作になった。

小黒 完成した作品は回想部分もありますが、新作部分がメインになっていましたよね。

佐藤 そうそう。全体の尺はこれで新作部分はこのぐらいという条件で作る事になったんだと思うんですけど。どこで切り替わったのかは、あんまり詳しく覚えてないですね。

小黒 ここで話はいきなり30年くらい前に飛ぶんですけども、佐藤さんが「島本和彦さんの『仮面ボクサー』をアニメにしたい」と言ってた事があって。

佐藤 マジっすか!?

小黒 マジっすよ。

佐藤 記憶にないです(笑)。

小黒 時期的に言うと、『ビックリマン』か『悪魔くん』の頃だったのではないかと。

佐藤 ああ。

小黒 「あれをアニメにできないかと思うんだけど、編集部の担当さんは分からないかな」と言われたんですよ。僕が「アニメージュ」で仕事をしていて、「仮面ボクサー」の連載が、同じ徳間書店の「月刊少年キャプテン」だったんですよね。それで「仮面ボクサー」の担当さんの電話番号を教えた覚えがあります。

佐藤 当時は東映にいたから、やったとしたら東映の企画部に企画を持っていってるはずですね。

小黒 そうですね。作品のかたちにはならなかった。

佐藤 覚えてないや。企画書を一瞬見た記憶があった気がしたけど、それも気のせいかもしれないです。

小黒 でも、「仮面ボクサー」は好きだったわけですね?

佐藤 そうね。今、言われるまで忘れてましたけど(笑)。島本和彦さんの作品は好きなノリだったので。

小黒 『カレイドスター』の仮面スターは、全然、島本ノリじゃないんだけど、名前が「仮面ボクサー」っぽい(笑)。

佐藤 「仮面ボクサー」があったから仮面スターをやったわけではないと思うんですけど(笑)。仮面スターは、玲子さんのアイデアかなあ。

小黒 レイラさんにしては、ちょっとはっちゃけてますよね。

佐藤 そうですよね。もしかしたら「そろそろ仮面のキャラがほしい」みたいな事を言ったのは、池田だったかもしれないですね(笑)。「やっぱ仮面じゃないスか」みたいな事を。

小黒 あっ、タキシード仮面的な意味で?

佐藤 そうそう(笑)。

小黒 ほんとかなあ?(笑) だけど、池田さんならそのぐらいの事は言ってもおかしくないですね。

佐藤 (笑)。

小黒 その後は、池田さんとはどうだったんですか。

佐藤 『カレイド』の後、「やっぱりもっと一緒にやりたいね」って話はあったので、機会があればと思ってやってましたけど。ずっとベタでやってるわけではないので、折に触れ、ぐらいの感じで。

小黒 以下の話は、このインタビューで記事として活かす必要はないんですけど、池田さんが亡くなった時に、みんながあんまり驚かなかった。

佐藤 はいはい。

小黒 イベントでも「死んじゃったね、バーカ」みたいなノリだったと思うんですが、あれはどうしてだったんですか。

佐藤 いや、体調悪そうなのにガールズバーに行くし、ずっとバーボンかなんか持って歩いてる奴だったので(笑)。

小黒 なるほど。

佐藤 まあ、愛情込めて「バーカ」と言ってました。みんな、嫌いではない。「お前の事は大好きだったよ、馬鹿野郎」っていうやつですよ(笑)。

小黒 池田さんが亡くなる前のことですが、楽屋での世間話で印象的だった事があります。イベントが始まる前に、池田さんはどれだけ自分の体、生活がボロボロかという話をしていたんですよ。それを聞いて僕はかなり驚いて。イベントが始まってからも、僕はそのイベントに気持ちが入らない、みたいな事がありました。

佐藤 (笑)。体調悪そうなのは、見てても分かったので、「大丈夫かよ?」って言うんだけど、飲むのをやめないので、もうどうしようもなかった。

小黒 顔色悪かったですものね。

佐藤 うん。後になってみるとね、「ああ、これが原因かな」というものは色々と分かるんだよね。会社を興して、色んな人の責任を背負い込まざるをえなくなった事もあったので、そこは大きいんじゃないかなあ、とは勝手に思ってるけど。

小黒 なるほど。でも、愛すべき人物だったという事は、語り継いでいきたい感じではありますね。

佐藤 そうですね。今までにも何度か言ってるんだけど、池田東陽がいなかったら、僕もあそこまで『カレイドスター』に没頭しなかったと思うんですね(笑)。

小黒 ああ。

佐藤 普段なら、ちゃんと距離をとって作っただろうと思うんだけれども、「やんちゃな熱意にやっぱ応えていきたいな」という変なスイッチが入っちゃった事は確かです。

小黒 池田さんはエンカレッジフィルムズを立ち上げて、ほどなく亡くなられたんでしたっけ。

佐藤 『おんたま!』とか、作品をいくつかやってはいるので、作ってすぐではなかったですよね。『(絶滅危愚少女)Amazing Twins』(OVA・2014年)っていう作品をやり始めたぐらいの頃だったんだよね。

小黒 分かりました。池田さんの事は語り継いでいきましょう。池田さんは面白い人物でした。

佐藤 うん。


●佐藤順一の昔から今まで (30)『ケロロ軍曹』の話題であります! に続く


●イントロダクション&目次

アニメ様の『タイトル未定』
317 アニメ様日記 2021年6月20日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年6月20日(日)
15時からSkype打ち合わせ。取材の予習で『謎の彼女X』を1話から観る。久しぶりの視聴であり、新鮮だ。自分の思い入れは置いておいて、アニメ『謎の彼女X』のカラーは卜部美琴のキャスティングで半分くらいは決まっているなあ。アニメ版の方向性を反映したキャスティングともいえるんだけど。

2021年6月21日(月)
自分が住んでる辺りでは、この日からコロナワクチン接種の申し込み受付が始まった。行きつけの病院の始業時間に電話をしたら「今すぐ、来て」と言われる。クーポン券を持って病院に行って、申し込みをする。
緊急事態宣言からまん延防止等重点措置へ移行して、外食で酒を飲むことができるようになった。午前中の散歩で東池袋と西池袋の飲み屋の店頭を見て歩く。営業を再開する店もあれば、6月いっぱい休みの店もあり、7月11日まで休む店もあり。
本放送時にも同じことを思ったはずだけど、『謎の彼女X』を観ていて「あれ、この回、なんだか違うぞ」と思ったら、山内重保さんの演出回。役者の芝居も他の回と違うような。最終回についてはまとまりがいいんだけど、こんなにまとまりがよくていいのか、というあまり他の人に共感してもらえない気持ちで終幕。
仕事で20数年前のあるアニメのレイアウトや原画を見ている。この作品のレイアウトや原画は当時も見ていて「レイアウトでこんなに修正を入れて、また原画で修正を入れるの?」と思ったものだけど、今となっては、レイアウト時のラフ原画があっさりしていて、見ていてホッとする。ラフ原画がこのくらいラフでも、きちんと原画が上がっているものなあ。
夕方、営業を再開した築地食堂源ちゃん東池袋店に。ホッピーを飲むのは4月24日以来だ。

2021年6月22日(火)
午前1時に出社して「シン・エヴァンゲリオンのオールナイトニッポン」を聴きながら作業をする。散歩や原稿作業を挟んで、昼にグランドシネマサンシャインで『宇宙戦艦ヤマトという時代 西暦2202年の選択』を鑑賞する。正直言うと、シリーズの『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』よりも面白かった。シリーズを観ているから感じられる面白さであるはずだけど。取材の予習で『宇宙兄弟#0 小山宙哉 Special Edition』を観る。『宇宙兄弟』の各話も少し観る。

2021年6月23日(水)
午前中はデスクワーク。午後にワイフと『漁港の肉子ちゃん』を観る。自分はネット試写に続いて二度目の鑑賞。その後、ワイフと居酒屋に。たっぷりと食べて吞む。
取材の予習で『MAJOR 2nd』第2シーズンの最初のクールを視聴。第2クールはポイントの回だけ観る。『団地ともお』も視聴。渡辺歩監督がコンテを描いた39話B「巡りゆくともお」がかなりよかった。
「パネルクイズ アタック25」が今秋で終了することを知った。生活パターンもっと余裕のあるものにして、日曜の昼にワイフとのんびりと「新婚さんいらっしゃい!」と「パネルクイズ アタック25」を観られるようになりたいと思っていたのだけれど、その夢が叶うことはなかった。

映像ソフト市場において、配信の数字がパッケージ販売・レンタルを合算した数字を上回ったそうだ。これから、作品が目的とするものや、何をもって作品の成功とするかが変わっていくはずだ。それは作品の内容にも影響する。

2020年映像ソフト市場6874億円、配信がパッケージ販売・レンタルを逆転(アニメーションビジネス・ジャーナル)
http://animationbusiness.info/archives/11523

2021年6月24日(木)
午前1時に出社し、午前4時まで次の次に作る書籍のための作業。取材の予習で『団地ともお』を数本観た後、『彼女がフラグをおられたら』の最初の6話分とラスト3話を観る。『彼女がフラグをおられたら』は本放送時に1話を観て、それ以降は未見だったけど、予想よりもずっとよかった。終盤は「えっ、こんな展開になるの」という感じだった。『漁港の肉子ちゃん』の原作にも目を通す。

2021年6月25日(金)
取材の予習で『恋は雨上がりのように』『大きい1年生と小さな2年生』、『ドラえもん』の「あの窓にさようなら」「45年後…未来のぼくがやってきた~」等を観る。『恋は雨上がりのように』については、渡辺歩監督自身がどう思っているかは分からないけど、渡辺さんの持ち味が原作にストンと綺麗に落とし込めている感じ。『漁港の肉子ちゃん』のパンフレットにも目を通す。
午後は「この人に話を聞きたい」で渡辺歩さんの取材。彼がこのコーナーに登場するのは、なんと21年ぶり。『漁港の肉子ちゃん』の話を中心に聞いて、他の作品についてはポイントのみを聞くかたちしようかと思っていたが、取材が始まってから、個々の作品についてきちんと聞いたほうがいいと分かり、21年分のほぼ全ての仕事についてうかがうことにした。長い付き合いだけあって「この作品は本人とってこういう位置づけなのだろう」という予想が、ほぼ当たっていた。和やかに取材は終了。

2021年6月26日(土)
早朝と午前中に散歩。散歩時にANIMEX 1200シリーズの「(45) テレビオリジナル BGMコレクション 宇宙刑事ギャバン (限定盤)」「(46) 宇宙刑事シャリバン 音楽集 (限定盤)」「(47) 宇宙刑事シャイダー 音楽集 (限定盤)」を聴く。
昼間は原稿作業。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクション vol.130 鬼才・今 敏の仕事」を開催。トークのゲストは丸山正雄さんと平尾隆之さん。今回もトークは充実したものとなった。

第722回 美味しいと圧巻!

白泉社のミスター・ベルセルクこと島田明様、
招待頂きありがとうございます!

で、会場内はとにかく「圧巻!!」の一言。三浦建太郎先生は凄えですっ! 月並みな言い方だけど、やっぱり生の画は迫力が違う! 三浦先生の生原稿の数々を見て、自分が漫画に挫折した理由がはっきり分かりました。いや、何度も話題にしたと思うのですが、小・中学校の頃の板垣の夢は「漫画家になること」で、高校までは普通にペン入れして漫画を描いてました。それこそ受験勉強もせずに。でも、どうしてもペン入れしてる途中でその時描いてるネタ(お話)に飽きてしまい、さらにペン入れするも己の画自体が気に入らなくなってまた白紙から、の繰り返しでした。そんな俺と違い三浦先生は毎ページ毎ページ頭に思い描いた像と同じクオリティのものを紙の上に再現できたのだと思います。ニコ・ニコルソン先生の「マンガ道場破り」において三浦先生が「画を描くのが快楽で快楽で苦痛に思ったことがない」と語られてますし、自分も三浦先生御自身から同じ台詞を聞きました。生の画を見ると正にそのことがよく分かり、板垣には到底それが出来なかったのだと─。ま、そりゃただ単に俺に才能が無かっただけの話なんですが、本物の天才の仕事を見て改めて痛感した日だったということです。

佐藤順一の昔から今まで(28) 『カレイドスター』の すごい 思い出・2

小黒 『カレイドスター』が佐藤さんの歴史の中でもちょっと異色なのはですね、TVシリーズなのに、動かさないと成立しない作品だという事ですね。

佐藤 ああ。

小黒 『プリンセスチュチュ』も、ちゃんとバレエをやらないといけない企画なので近しいところはありますね。『カレイドスター』は肉感を出す感じの演技が必要なシリーズでした。

佐藤 はいはい。

小黒 1話とか、顕著ですよね。

佐藤 そうですね。1話はそんなに枚数をかけるコンテではなかったんだけど、和田高明さんとかが鬼のように動かして(笑)、ああなっているんだと思います。

小黒 なるほど。

佐藤 それはね、『ゲートキーパーズ』の時に思ったんですよ。『ゲートキーパーズ』で自分がコンテを描いた回で、コンテだと自動車がスライドで入ってくる想定のカットが、スピンして止まるみたいな画になってるんです。それで、オッケーになってて。誰か怒るわけでもないし、制作が困るわけでもない(笑)。

小黒 演出家が始末書を書かなきゃいけないわけでもない。

佐藤 わけでもないし、むしろ、それを評価してる感じもあって、「なんか住む世界が違うな」と思って(笑)。だから、「ガリガリと止めるみたいな事は求められてないんじゃないかな」とは思ってやってるかも。

小黒 今、和田さんの名前が出ましたね。他の方の回も動いていましたけど、和田さんはちょっと特殊でしたね。

佐藤 和田さんは別枠感がありましたね(笑)。色々勉強にもなりましたけど。原画1枚だけ見ると全く分からないんだけど、動くと「こういう動きなんだ」って分かるんです。全然画は違うんだけど、動かさないと分からないという意味では、尾鷲(英俊)さんとかと似ていたかもしれない。

小黒 ここで佐藤順一、生まれて初めてのスランプがあったわけですね?

佐藤 ええ、そうですね(笑)。正確には『カレイド』の後です。

小黒 まず、『カレイド』で物凄い量のコンテを描かれた。7週連続、佐藤順一コンテみたいな事があったわけですね。

佐藤 うん。やらざるをえなくなった。

小黒 前も聞きましたけど、何故なんですか。

佐藤 そうね。2期ですね。時期は迫ってくるんだけれども、2期をやるという正式なゴーが出なくて。流石にこれ以上待てなくなったので、「駄目だったらそん時に言ってくれればいいから、今はとにかくゴーと言ってくれ」という事でスタートしたけど、やっぱり時間が足りなくて、コンテを発注するのに必要な期間が取れない。「コンテを1週間で上げて」という感じだった。とりあえず頭のほうは自分でやるしかないな、となって。

小黒 他の方にコンテを描いてもらうよりも、自分で描いたほうが早いと判断したんですね。

佐藤 そうです。その頃になると、上がってきた他の人のコンテに多めに手を入れて全体の調整をするかたちになっていたので、なんだかんだで凄く作業本数が多くなってしまった。

小黒 第1期の2クール目、14話から26話までも、ほぼ毎週佐藤さんの名前が出ていますね。

佐藤 そこもスケジュールが詰まってきてて。ちょうどその頃だと、「流石にこの動きまくってるコンテだと間に合わないよね。内容から見直して、動かないコンテにしないと」と言って、直した話数も何話かあるんですよ。少しでもカロリーの低いコンテにするために、話の構造から変えた回が何回かあります。

小黒 なるほど。コンテの段階で、話を変えて動きを減らした、という事ですね。

佐藤 そうですね。

小黒 コンテマンが2人連名で出ている場合は、他の方が描いた絵コンテを半分ぐらい描き直したという事でしょうか。

佐藤 そういうケースもあるし、AパートとBパートで担当を割ったケースも混ざってます。それとは別に、さっき言ったように1回上げていただいたものを、制作上の都合で内容を変えなきゃならない時があって「そういう事情でコンテ直すんです。申し訳ないです」という話をして、直させてもらって連名にしたものもあります。

小黒 なるほど。

佐藤 修羅場が続く作品ではあったので、色んな事がありました(笑)。

小黒 佐藤さんが監督した作品で、こんなにご自身で絵コンテを描いたものはないですよ。

佐藤 ないでしょうねえ。大体、そんなに自分でコンテをやらないと気が済まないタイプではないので(笑)。前にも言ったように『チュチュ』でも上がったコンテに、相当手を入れてはいるんです。それは伊藤郁子さんのイメージが後から膨らんで、内容を修正した結果、次の話数も修正しなきゃなんなくなっちゃった、みたいな事があって。手を入れている物量は多いですけど、『カレイド』とはちょっと事情が違う感じなんですね。

小黒 なるほど。キャラクターについてもうかがいます。子安(武人)さんのやったフールのコミカルな感じは、佐藤さんの持ち味が出ていると思ってよろしいんでしょうか。

佐藤 そうですね。ああいうのは、やっぱり楽しいので。『チュチュ』の猫先生と同じ立ち位置ですよね(笑)。なんか膨らませやすいというか。

小黒 あと、ケンですね。延々と引っ張る、ケンのがっかりギャグ。

佐藤 (笑)。そうそう。ああいうの好きなので。弄られキャラがいると、ほっとするじゃないですか。

小黒 お話に関しても、キャラクターに関しても、なんの違和感もなく気持ちよく作れた、と。

佐藤 『カレイド』は、そうですねえ。「没頭するってこういう事かな?」と思うくらいにやっていました。あまり自覚していないけど、奥さんに「『カレイドスター』の頃は全然、家に帰ってこなかった」と言われたので、そうなんだよね(笑)。

小黒 なるほど。

佐藤 スタジオでコンテ中に痛風に襲われたので、近くのコンビニで1キロの氷を買ってきて足を冷やしながらやったりとか。

小黒 痛風対策で足を冷やした?

佐藤 そうそう。医者に行く時間がなかったので、とりあえず足を冷やしてなんとか乗りきる、みたいな。

小黒 ああ~。

佐藤 歯が痛い時に新宿の24時間開いてる薬屋を探して、そこで「新今治水」という歯痛の薬を買ってきたのも、『カレイド』の間の出来事なので。確かにずっとスタジオにいた可能性ありますね(笑)。

小黒 スランプの話に戻りますが、その後、コンテが描けなくなっても不思議はないぐらい、熱中してやっていたんですね。

佐藤 そう。『魔法使いTai!』の時も似た感情があったんだけど、『カレイドスター』が終わった時に「あっ、そらの演技がもう描けない」と思ってしまって。「そらが描けない」っていうのが、結構大きかった。

小黒 喪失感があったんですね。

佐藤 そうそう。

小黒 佐藤さんにとっては、キャラクターの芝居を描く事が、一番大事な事なんですね。

佐藤 そう。芝居というよりも、そのキャラクターを描いてる事が、なんかね、喜びになってるんですよ(笑)。「もっともっと描きたいな」っていう感じになってるんですね。

 それが終わったのと同時に、別の喪失感も沸いてきたんですよ。「俺って、周りから必要とされてないんではないだろうか?」みたいなものがゴソッて出てきて。

小黒 ええっ!?(笑) 「俺って、そんなに大した奴ではないのでは?」みたいな?

佐藤 「大した奴」というか「自分なんて、いてもいなくても同じじゃない?」みたいな感じというか。なんだろうね? ちょっと適切な言葉が出ないんだけど。

小黒 それが佐藤さんのスランプだったんですね。立ち直るまでに1年くらいかかったんでしたっけ。

佐藤 そう。飲み会に行ってみたり、色々やってみたりしながら(笑)。

小黒 ありましたねえ! あの頃、僕も、佐藤さんに飲みに誘われました。

佐藤 そうそう。駄目な飲み会を繰り返す、みたいなやつ(笑)。

小黒 佐藤竜雄さん達と順一さんとで飲みました。

佐藤 竜雄さんと凄く飲む機会が多かったの、あの頃ですからね。

小黒 なるほど、なるほど。

佐藤 みんなが心配してくれたのか、分かんないけど……。


●佐藤順一の昔から今まで (29)『カレイドスター』の すごい 思い出・3 に続く


●イントロダクション&目次

第721回 40代後半の色々

 たぶん誰でもそうだと思うのですが、20代の頃は「まさか自分が40歳になる」なんて夢にもおもわず、特に男に生まれたなら「将来、自分は何かの天才として世間から認められるはず!」と信じて疑わなかった10~20代があったという人は多いのでは?
 自分も幼少期から周りの人より少々絵を描くのが好きで、小・中・高と図画工作・美術の成績はそれなりに良かったし、今でもその延長で食えてるわけなので、それだけで十分幸せなんだと50歳を目の前にして更にそう思うようになりました。白状すると30代の頃までは自分も人並みに「何か人から評価される作品が必ず作れるはず」と張り切ってみたりもしたのですが、30代後半過ぎたあたりから、

はい、自分の才能はここまで!
てか、むしろ今まで良くやったよ……(ため息)

と、ある種の諦観みたいな気持ちになってきて、正直気が楽になりました。この連載を初期から読み続けている方——そんな人いないかも知れませんが、もしいたなら中には気づいて下さる方がいらっしゃるかも知れません。『てーきゅう』(2015年)以降、俺が知り合いや友人関係に仕事をお願いすることが極端に減っているということに。それは自分にとって当然の価値観(?)で、つまり、

皆、歳相応──それぞれの作品でメインを張ってるのにそれを置いて、現状の自分の作品を「手伝ってくれ!」なんて言えないし、言う資格がない!

と本気で思ったんです(今も思ってます)。そう言う意味で『てーきゅう』はそれまでの作品づくりのスタイルをリセットするつもりで取り組みました。キャラから音響監督までできる限り自分一人から再出発するつもりで。ミルパンセも知人を誘ってスタッフを引っ搔き集めるのではなく、自分に付き合ってくれるスタッフをド新人から自ら育てる。結果、いくら現場的に頑張って作った作品でも世間の評価が付いてこなかったら、それなりのところで辞めていくスタッフもいます。その際は止めもしないで、むしろ「今までありがとう!」——です。だって、自分も若い頃、数々の不義理を顧みずテレコムを辞めた身なので、俺に対する信頼値が無くなったなら、今度は逆に辞めていかれて当然。因果応報。また新人を育てればそれで良し。そんな考え。
 あと、良く自分、新人との面談で言うのですが、

誰でも数ある内の一つは必ず夢が叶うものだ!

と信じてます。そりゃあ全ての人が第一希望の夢が叶うわけありません。そういう意味ではなく、例えば板垣の場合「アニメ監督になりたい」夢は叶いました。それで本来十分幸せなはずなんです、普通の人なら。ただそこに身の程わきまえず「アニメ監督になった上で、評価もされたい!」と二つ目の夢(欲)を重ねるなら、年齢相応の努力が必要。更に「アニメ監督になった上、オリジナル劇場アニメを作らせてもらえて、世界中の賞を総なめし、ボロ儲け! そして褒め讃えられたい!!」と三つ以上になるとそれこそ天才な人。

なのです。だから自分は次のシリーズの準備をしつつ、社内の若手と一緒にグロスのお手伝いや原画描き&指導をする日々が何年も続いているし、監督やらせてもらえるだけで幸せな事なのでしょう。権威もお金も無く不自由することも多い——けどなぜか、最高の「自由」を感じています。

アニメ様の『タイトル未定』
316 アニメ様日記 2021年6月13日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年6月13日(日)
午前中は散歩とデスクワーク。昼は吉松さんとSkype飲み。あすけんにデータを入れつつ、宅配のピザと缶ハイボールをいただく。呑む機会が減ったせいか、酒に弱くなった。『閃光のハサウェイ』をBlu-rayで観る。劇場で衝撃を受けたカットについて確認する。
散歩時に「Gメン’75 MUSIC FILE」「FOREVER SERIES 勇者ライディーン」「勇者ライディーン オリジナル・サウンドトラック」を聴く。

2021年6月14日(月)
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のチケットが取れたので、グランドシネマサンシャインに。12日(土)から配布が始まった公式謹製36P冊子「EVA-EXTRA-EXTRA」(通称・シンエヴァの薄い本)をゲットする。薄い本と呼ばれるだけあって、同人誌的な作りだけれど、内容はかなり充実。イラストもいいし、前日譚の漫画「EVANGELION:3.0(-120min.)」は『新劇場版』のエピソードのひとつとして、きちんと成立している。今回のように漫画のかたちでよいので、他の空白期間の出来事も発表してくれると嬉しい。
この日の作業のメインは編集中の書籍の進行。他は新しい書籍の企画書を書いたり、それとは別の企画について連絡を取り合ったり。さらにイベントの準備を進めたり。

2021年6月15日(火)
午前中に新文芸坐で「大草原の渡り鳥」(1960/84分/35mm)を観る。プログラム「デビュー65周年記念 不滅のマイトガイ・小林旭」の1本。渡り鳥シリーズについては、影響を受けた作品やパロディは沢山観てきたけど、きちんと鑑賞するのは初めて。これがアレやアレのルーツなのだなあと思いながら観た。物語は予想以上に面白く、クライマックスでは「えっ、このタイミングでこの人が撃たれるの?」「この人がこの人を撃つの?」と驚いた。ポーカーの勝負も面白かったなあ。
昼以降はデスクワーク。次に出す書籍の編集以外の作業。普通に考えたら、編集長がやる必要のない作業だけど、今の状況で編集部スタッフにやってもらうと間に合わないので、自分でやるのであった。
『閃光のハサウェイ』からの流れで、パンダイチャンネルで『Witch Hunter ROBIN』を視聴。途中で配信の具合がよろしくなくなったので、dアニメストアの『Ergo Proxy』に切り換える。散歩時に「Gメン’75 テーマ・ヒストリー」と「Gメン’75 & ’82 ミュージックファイル」を聴く。

2021年6月16日(水)
Twitterで「この人に話を聞きたい」の浦沢義雄さんの回(2001年3月号 VOL.273)がちょっと話題になっていた。それをきっかけにして、その記事を読み返してみたら、かなり面白い。特に終盤の部分は「この人に話を聞きたい」でも珍しいノリになっている。
午前中はデスクワーク。午後は丸の内ピカデリーでDolbyCinemaの『閃光のハサウェイ』を観る。Blu-rayを入れると三度目の視聴。通常の上映でも不満はなかったけれど、DolbyCinemaでの上映はやはり印象がいい。映画館自体もかなりよかった。渋谷に寄ってTSUTAYAでCDを返してから事務所に。
長濵博史さんの新作『うずまき』の映像の一部がネットにアップされた。公開されたアニメ映像は短いものだが、これは凄い作品なるのでは! 期待して待つことにしよう。
Kindleで「進撃の巨人」を1巻から読み始める。序盤はアニメの最初のシリーズが始まる前に読んでいるはずだが、細部は忘れていて、新鮮な気持ちで読んだ。散歩時に『閃光のハサウェイ』のサントラを聴いた。

2021年6月17日(木)
数日前から、早朝散歩コースの途中にメカっぽい謎の物体が落ちていて、その前を通る度に「これは何だろう」と思っていた。この日の散歩で、ワイフが『甲鉄城のカバネリ』のアイテムではないかと気がついた。その場でスマホで検索してみたところ、確かに無名が腰につけていた金色のメカと、彼女が使っていた銃だ。要するに無名のコスプレで使う小道具だ。捨てた人物の手製かどうかは分からないけど、よく出来ていた。
次の次の書籍のために資料の整理に着手する予定だったけれど、他の用事を片づけるので精一杯。資料の整理は明日以降に。

2021年6月18日(金)
グランドシネマサンシャインで『映画大好きポンポさん』を観る。試写で観て、グランドシネマサンシャインで一度観たので、これでスクリーンで観るのは三度目。イベントの予習のための鑑賞だった。今回はテーマやメタ的な部分に注目しつつ観た。その後はデスクワーク。この日もやることが多かった。Netflixで『終末のワルキューレ』を1話から最終回まで観る。第2シリーズも作るのだろうけど、すごいところで終わった。アニメの続きを待つか、原作を読むかは難しいところ。

2021年6月19日(土)
朝、イベントの準備で『映画大好きポンポさん』の関連記事に目を通す。イベントで聞こうと思っていた事が既に話題になっていたのに気づく。過去記事をチェックしてよかった。昼にロフトプラスワンで「第176回アニメスタイルイベント 『映画大好きポンポさん』を語ろう!」を開催。途中でお客さんとの交流があったほうがいいのではないか、という流れになり、イベント後半で予定になかった質疑応答をやることになった。イベントとしては盛り沢山な内容となったけれど、僕個人が聞きたかった話題にはたどり着かず。可能ならパート2を開催したい。
このコラムの第298回(アニメ様日記 2021年2月7日(日))で「連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる」について「これが初見」と書いたが、過去の日記を確認していたら、その映画を2011年に観ていたことが判明。誰も気にしないと思うが、訂正しておく。すいません。前にも観ていました。

第214回 ひとつ殻を破ったような 〜漁港の肉子ちゃん〜

 腹巻猫です。公開から間があいてしまいましたが、フライングドッグ設立10周年記念劇場アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』を観ました。実によかったです。若者向けのようでいて、昭和世代にも刺さる作品。劇中、アナログレコードが重要なアイテムとして登場します。それに合わせて、パンフレットがLPレコードを、サントラCDがシングルレコードを模したデザインで作られているのがたまりません(もちろん両方買いました)。いっぽう、牛尾憲輔による劇中音楽は実に現代的で、そこもフライングドッグらしい。


 今年(2021年)の6月に公開された劇場アニメ『漁港の肉子ちゃん』がモントリオールで開催された第25回ファンタジア国際映画祭でAXIS部門今敏アワード・審査員特別賞を受賞。吉祥寺の映画館・アップリンク吉祥寺で凱旋公開が行われている(9月2日まで)。
 今回は、その『漁港の肉子ちゃん』の音楽を聴いてみよう。
 『漁港の肉子ちゃん』は西加奈子の同名小説が原作。明石家さんまが企画・プロデュースし、『海獣の子供』(2019)を手がけた監督・渡辺歩とアニメーション制作・STUDIO4℃のスタッフでアニメ化された。
 漁港の焼肉屋で働く「肉子ちゃん」は大柄で食いしん坊でお人よし。男にだまされて前に住んでいた町を離れ、娘と2人でこの北の町にたどりついた。娘の喜久子(キクコ)は、肉子ちゃんとは外見も性格も似ていない、しっかりものの小学5年生。最近は肉子ちゃんのことを少し恥ずかしいと思い始めた。2人のユーモラスな日常とキクコの成長を描く、ちょっと“普通”でない家族の物語。
 筆者は公開当時に劇場で観た。今年の劇場アニメは良作ぞろいで、本作も「すごいものを観たなあ」と思った1本だ。お笑い系かと思われてしまいそうだが(たしかに笑えるシーンは多いが)、それが先入観になって敬遠する人がいたらもったいない。映像も演出も見ごたえがあり、ドラマも心を揺さぶる、感動的な作品である。

 音楽は村松崇継。実写の映画やドラマの音楽を多く手がけている作曲家だ。特に、実写劇場作品「クライマーズ・ハイ」(2008)、「誰も守ってくれない」(2009)、「64—ロクヨン—」(2016)、TVドラマ「氷壁」(2006)、「小公女セイラ」(2009)、「コールドケース〜真実の扉〜」(2016)など、シリアスな作品、硬派な作品にすぐれたスコアを提供している印象がある。
 実写作品の数に比べるとアニメの仕事は驚くほど少ない。劇場アニメ『思い出のマーニー』(2014)、『メアリと魔女の花』(2017)、『夜明け告げるルーのうた』(2017)、「カニーニとカニーノ」(オムニバス『ちいさな英雄—カニとタマゴと透明人間—』の1本)(2018)、TVアニメ『ひめチェン! おとぎちっくアイドル リルぷりっ』(2010)があるくらい。アニメでは子どもも楽しめる明るい作品が多く、情趣のあるヨーロッパ風の音楽やリリカルな音楽が記憶に残る。
 実写とアニメ、どちらにも共通するのは、村松崇継の持ち味である美しいメロディだ。村松自身が演奏するピアノをはじめ、ストリングスや木管などの生楽器の音色を生かしたサウンドが心地よい。繊細で品のある、美しい音楽を紡ぐ作曲家である。
 ところが、『漁港の肉子ちゃん』は、これまで村松崇継が手がけた作品とはひと味違うタイプの劇場アニメである。
 『漁港の肉子ちゃん』は人間のダメな部分、弱い部分をユーモアをまじえて描く、生活感あふれる作品だ。実写作品でいうなら「男はつらいよ」シリーズのような、アニメなら『じゃりン子チエ』のような……。
 村松崇継は本作のために、これまでの作品ではあまり聴けない、ぐっと大衆的な曲調のメインテーマを書いた。村松の代表作のひとつにNHK大阪放送局が制作した朝の連続テレビ小説「だんだん」があるが、その音楽もここまで「こてこて」ではない。これが、本作の音楽のトピックスのひとつめだ。
 本作の音楽のトピックスのふたつめは、キクコを演じたCocomiがフルート奏者として演奏に参加していること。Cocomiは木村拓哉・工藤静香夫妻の長女。モデルとしても活躍しているが、フルートは11歳から始めて各種コンクールに入選、ライブ、コンサートで演奏するなど本格的な活動を続けていて、けして余技ではない。とはいえ、声優が演奏家としてサウンドトラックの録音に参加するのは異例のこと。結果は、キャラクターの心情がフルートの演奏で表現され、映像音楽としても魅力的な楽曲が生み出された。
 本作の音楽的トピックスの3つめとして、サウンドトラック・アルバムが吉本興業の関連会社である「よしもとミュージック」から発売されたことが挙げられる。
 近年は、大手レコード会社系でない独立レーベルからサウンドトラックが発売されることも珍しくなくなった。でも、よしもとミュージックからアニメサントラが発売されるのはこれが初。本作の製作を吉本興業が手がけているからだろうが、「よくぞ出してくれた」と思う。
 収録曲は以下のとおり。

  1. イメージの詩(歌:稲垣来泉)
  2. 漁港の肉子ちゃん
  3. 肉子ちゃんは私の母親だ
  4. 肉子ちゃんはこの港で暮らすことにした
  5. 肉子ちゃん“おはよう”
  6. ええ食べっぷりやなあ
  7. あそこで皆生きてる、すげえな
  8. 「とっておき」だて
  9. 肉子ちゃんは優しいのである
  10. 「キクリン、何か言うた?」
  11. いつだって、全力で肉子ちゃんだ
  12. ゆっくり家族になっていく
  13. クラスの誰かに会いませんように
  14. 私は決められない
  15. 私、なんて狡い子なんだろう
  16. 肉子、落ち着け〜
  17. お母さん、大好き
  18. 普通がいちばんええんやで
  19. みんな、望まれて生まれてきたんやで
  20. ささやかな希望、あふれ出る光
  21. たけてん(歌:GReeeeN)

 曲名は、劇中のセリフから採ったり、ナレーション風にしたりと、話し言葉を基調に付けられている。続けて読むとキクコと肉子ちゃんのかけあいのようで、ほのぼのした味わいがある。曲順はオーソドックスに劇中使用順に沿った並びだ。
 2曲目の「漁港の肉子ちゃん」が肉子ちゃんのテーマであり、本作のメインテーマ。アコーディオンをフィーチャーした、ジンタ風のメロディの曲だ。ちょっとユーモラスでノスタルジック、昭和の香りがする。村松崇継本人が「試行錯誤して出来上がった」と語るように、これまでの村松作品にない雰囲気の曲である。
 人間くさい方向に思い切り振りきったこの曲は、自分を飾らずに生きている肉子ちゃんにぴったり。同時に、こういう曲でも詩情がただよい、下世話になりきらないのが、村松崇継らしい。
 このメインテーマのメロディは、「肉子ちゃんは私の母親だ」「肉子ちゃんはこの港で暮らすことにした」「ええ食べっぷりやなあ」「肉子ちゃんは優しいのである」「いつだって、全力で肉子ちゃんだ」「肉子、落ち着け〜」といった肉子ちゃんがらみの曲にアレンジされて使われている。
 基本はユーモラスなテーマなのだが、本作の終盤に流れる「みんな、望まれて生まれてきたんやで」(トラック19)では、このメロディがしみじみと胸を打つ。映画音楽のマジックである。
 トラック5「肉子ちゃん“おはよう”」はCocomiのフルートをフィーチャーしたキクコのテーマ。本作の音楽の中で、フルートはキクコの分身である。
 村松はCocomiのフルート演奏を評して、「喜久子の気持ちをそのまま楽曲に投影し、素晴しい表現力と演奏技術により、楽曲の中でも喜久子という人物をしっかりと存在させた」(サウンドトラックのブックレットより)と絶賛している。実際、Cocomiのフルートの調べは表情豊かで、音の中にキクコの顔が見えるようだ。
 キクコのテーマは、「ゆっくり家族になっていく」「私は決められない」「お母さん、大好き」といったキクコの心情を表現する曲で変奏される。それぞれのシーンに合わせてフルートの音色や息づかいも変化しているのが聴きどころだ。
 トラック20「ささやかな希望、あふれ出る光」では、キクコのテーマと肉子ちゃんのテーマがメドレーで奏でられ、フルートからアコーディオンへと、まるで手をつなぐように演奏が引き継がれる。映画を締めくくるにふさわしい感動的な曲になっている。
 本作の音楽的トピックをひとつ付け加えると、チェロ奏者の宮田大の参加がある。宮田大は世界的に活躍するチェリストで、国内外のコンサートやソロアルバムなどで活躍。村松崇継とは以前から交流があり、村松が書いた曲を宮田が演奏したり、ライブで共演したりしている。
 本作の音楽では、不器用な少年・二宮とキクコが友情を深めていく場面の曲「『とっておき』だて」(トラック8)で宮田大のチェロがフィーチャーされている。深みのあるチェロの音色が、2人の心のふれあいをさわやかに、しっとりと表現して心にしみる。
 もう1曲、クライマックスを支える重要曲「みんな、望まれて生まれてきたんやで」(トラック19)にも宮田大のチェロが参加。この曲ではメインテーマである肉子ちゃんのテーマをチェロのソロとストリングスが奏でる。音楽はスコアだけでは完結せず、演奏によって完成すると言われるが、そのことをあらためて実感させられる、みごとな演奏だ。歌うような弦の響きが、物語の感動を何倍にもふくらませてくれる。
 『漁港の肉子ちゃん』の吉祥寺での凱旋公開はもうすぐ終わってしまうが、鑑賞の機会があれば、ぜひ音楽といっしょに肉子ちゃんの世界に浸ってもらいたい。

 本作は村松崇継にとっても、ひとつ殻を破ったような手ごたえがあった作品だったのではないかと思う。何年かのちにフィルモグラフィを見て、「これがターニングポイントだった」と回想する日がくるかもしれない。そのくらい、本作の音楽は一歩突き抜けて魅力的だ。村松崇継の今後の作品が楽しみである。

 「あしたへアタック!/リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集」は越部信義が生み出した歌と音楽がたっぷり楽しめる2枚組。はずむリズムとペーソスただようメロディの魅力を堪能してほしい。越部信義大好きの筆者が自信を持ってお奨めします。

劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』オリジナル・サウンドトラック
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佐藤順一の昔から今まで(27) 『カレイドスター』の すごい 思い出・1

小黒 「佐藤順一の昔から今まで」の取材は今回で4回目です。『カレイドスター』(TV・2003年)からうかがいますね。佐藤順一ヒストリーの中でも、大きな1本ではないかと思いますが。

佐藤 そうですね。

小黒 そもそも、どうしてGONZOで監督をする事に?

佐藤 この前にGONZOの『ゲートキーパーズ』(TV・2000年)というTVシリーズがあったんですよ。オファーをもらって『ゲートキーパーズ』をやっている時に、池田東陽がアシスタントプロデューサーとして入っていて。「次は1本、一緒にやりたいよね」と話をしてる中で「こんなんあるんだけど」と言って出した企画が、『カレイドスター』のペライチの企画書。

小黒 じゃあ、元々の企画案は佐藤さんから出されたんですね。

佐藤 そうですね。僕のほうから「こんなTVシリーズやってみたいな」という企画を提出して、それを池田東陽が成立させたっていうのが、大まかな流れですかね。

小黒 佐藤さんの出した案は、元々はどういった内容だったんですか。

佐藤 基本的には、そんなに変わってないです。ターゲット的には子供向けで、女の子がサーカスをやるという。『(おジャ魔女)どれみ』とかよりも、少し上のターゲットっていうイメージの企画ではありました。

小黒 佐藤さんがやりたかったポイントはどこなんですか。

佐藤 サーカスですね。

小黒 サーカス。熱血じゃないんですか。

佐藤 自分が好きなので、そういう方向にしましたけど、そもそものきっかけとしては、サーカスもののアニメがあんまりない。だけれども、子供達はサーカスに凄く興味を持ってるなという体感があったんです。そう思ったきっかけは『ダンボ』なんですね。子供の頃にディズニー作品の『ダンボ』等でサーカスの存在は知ってるけど、実際には観た事がないという人が相当いる、と。そういう子達は、サーカスもので女の子が頑張る話があったら、興味を持つんじゃないかなっていうところが、スタートではあるんですね。

小黒 なるほど。

佐藤 だったら日本人が好きなスポ根の構造で作ろうか、という流れになったわけだから、そんなに大きなズレはないですよ。

小黒 で、そのままスポンサーも付いて、作れるようになったという事なんでしょうか。

佐藤 そこはやっぱり時間がかかっていて。池田東陽が生きていたら、彼に詳しく聞きたいところだけど、韓国の出資を使えば作れるんじゃないかな? っていうところにたどり着いたんです。韓国のスタッフを使う条件で、韓国の出資が決まるというシステムになったんだと思います。それで作ろうと。

小黒 その韓国のスタッフが、G&G ENTERTAINMENTというプロダクションなんですね。ゴンゾ・ディジメーションとG&G ENTERTAINMENTと、二つの会社がアニメーション制作でクレジットされています。

佐藤 ゴンゾ・ディジメーションについてはよく覚えていないけど、ゴンゾ・ディジメーション・ホールディングス(GDH)というトップの会社があって、その傘下にゴンゾ・ディジメーションがあったのかな。

小黒 話を戻すと、久々に佐藤さんが自分から動いた企画という事ですね。

佐藤 そうそう。軸になって動かそうと思った企画ではありましたかねえ。

小黒 シリーズ構成が吉田玲子さんなのは、どうしてなんですか。

佐藤 玲子さんには、色々無理もお願いしやすいのもありますし。僕が知ってる中で、長物の構成をする事について、一番信頼できる人でした。それで、玲子さんにお願いをした感じですね。

小黒 大きいお話の流れには、佐藤さんも関わっているわけですよね?

佐藤 そうそう。僕が大まかな縦のラインをダーッて作って、それを玲子さんに渡して構成にしてもらうんです。玲子さんの構成の時点で大分変わるんですけど、軸は変わらないっていうか。中盤にあるサーカスフェスティバルでの挫折のくだりは、僕はそんなに書いてないと思うので、あれは玲子さんじゃなかったかな。

小黒 その辺りは、吉田さんが膨らませたという事ですね。

佐藤 うん。

小黒 画作りに関しては、いかがですか。

佐藤 基本的には、池田東陽のチームで考えていたので、渡辺はじめさんとかも含めて、池田東陽が「この人とやりたい」という人を集めてきてる感じですね。

小黒 話は前後しますけど、池田さんが熱烈な『セーラームーン』ファンだという事を、僕達は『カレイドスター』をきっかけにして知るわけですが……。

佐藤 そうです(笑)。

小黒 その事を、佐藤さんには表明してたんですか。

佐藤 してたと思う、多分(笑)。でも、『セーラームーン』が好きだという事は分かってたと思うんだけど、どのぐらい好きかっていうのはね。人によって温度差があるじゃないですか。

小黒 ちょっと好きだったぐらいとかね。

佐藤 なんかの拍子に『セーラームーン』の話をしていて「大人が観て、本気で感動する話じゃないから」と言ったら、池田東陽に「(力強く)しますよ!」と言われた記憶がある(笑)。

小黒 (爆笑)。

佐藤 「ああ、ごめんごめん」って思いました(笑)。

小黒 池田さんの話が先になっちゃいますけど、池田さんの要望は、声優さんのキャスティングには反映されているんですか。

佐藤 まあまあ入ってるというか。「こういうところに『セーラームーン』のキャストを入れたいな」という空気感はあったので。

小黒 レギュラーにもいますし、シリーズ後半になると「ここで深見梨加さんか!」とか(笑)。

佐藤 そうそう(笑)。

小黒 打ち合わせで「俺はセーラー戦士全員を出すんだ」と言ってたわけではないんですね?(笑)

佐藤 言ってたわけじゃないけど、そういう空気感はありましたね。

小黒 確かOVAで富沢(美智恵)さんが出て、内部太陽系戦士がコンプリートされたんですよ。

佐藤 全制覇みたいな(笑)。

小黒 自分の事で言うと、放映中に「『セーラームーン』っぽい気がするのは、俺が『セーラームーン』のファンだからなのか?」と思っていて、「いや、違う違う。ここで深見梨加さんをキャスティングしたのは意図があるだろう」と途中で気づいたんだと思います。

佐藤 その意図は確かにあって、気がついたらセーラー戦士キャストが揃ったというわけではない。

小黒 シリーズ後半になって、久川(綾)さんと三石(琴乃)さんが会話すると、セーラームーンファンとしては、ちょっと楽しい気持ちになったり。

佐藤 そうそう(笑)。

小黒 佐藤さん的には、キャストはどうだったんですか。

佐藤 広橋(涼)さんはオーディションですね。櫻井(孝宏)君もオーディションだな。他は割とオファーで呼んでるはず。

小黒 後々、このカレイドチームのキャストの方々がですね、佐藤順一チームを形成していく事になると思うんですが、それは間違いないでしょうか?

佐藤 そんなつもりは別になかったけど、『カレイドスター』の頃に声優さんとの距離感が近くなったんです。それまでは「なあなあ」にならないように、ディスタンスを取るようにしてたんですけど。

小黒 佐藤さんはアフレコ後の飲み会も、あまり行く感じではなかったんですね。

佐藤 行かない。誘われても基本行かなかったんです。「そういうのもありかな?」って思ったのが、『カレイドスター』だったんですよね。そっから「作品を作る仲間」的な感じが、声優さんにも持てるようになったかな?

小黒 この「佐藤順一の昔から今まで」のインタビューで、初めて佐藤さんが照れていますね(笑)。

佐藤 そう、そうです(笑)。

小黒 (笑)。

佐藤 ずっと東映でやってると、アフレコでの演技指導を自分でやるじゃないですか。だからこそ、あまり関係が近くならないようにしておかないといけなくて。「友達みたいになると甘さが出るな」というのは、ずっと感じていた。だから、『セーラームーン』の時もそうだったけど、プロデューサー達は終わったら役者と飲み会に行ったけども、自分は「それには行ってはならん」と思ってたわけです。演技とかについての話は、基本的にはアフレコの時間の中でやるべきである、という考えだったので……。

小黒 で、それ以降は役者さんのパーソナリティをキャラクターに取り入れていくような事も。

佐藤 そう。「素はこんななんだな」と分かったら、その素も活かしていく。そういうやり方を覚えたのが『カレイドスター』だったと思います。

小黒 なるほど。例えば「レイラさんだって、全てにおいて立派なわけではない」といったかたちで掘り下げていくわけですね。

佐藤 そうですね。コーヒーを淹れられなかったりするのは、大原(さやか)さんの属性を拾ってきてる気がするし(笑)。

小黒 なるほど。

佐藤 だから、ラジオにも何回か行ってるんですよね。『カレイドスター』の「すごラジ(インターネットラジオ カレイドスター そらとレイラの すごい ○○)」といって、広橋さんと大原さんの素が出てるラジオがあって。キャラがちゃんと立ってて面白いなって凄く感じたので、「これを活かさない手はないな」と思ったんじゃないかなあ。

小黒 『カレイドスター』は飲む機会が多かったんじゃないですか。僕はスタッフでも関係者でもないけど、何度か『カレイドスター』の関係者と飲んだ記憶があります。当然そこには必ず池P(池田東陽プロデューサー)がいたわけですけど(笑)。

佐藤 (笑)。ただ、現場をやってる間は実はそうでもなかったんです。その辺の距離感が変わってきたのって、本編が終わって、ラジオをやってるぐらいからだと思うんですね。その後の作品で、キャストのキャラを活かすようになるんだけど、 『カレイドスター』の現場をやってる間は、『セーラームーン』の感じとそんなに変わってないです。池田が声優さんと仲良くして、声優さんの家でホームパーティーをやったりしてたのも、知らなかった。

小黒 そんな事をしてたんですね(笑)。

佐藤 僕が痛風で、ヒーヒー言いながらコンテの修正をしてる時に、あいつはホームパーティーに行ってやがりましたからね(笑)。


●佐藤順一の昔から今まで (28)『カレイドスター』の すごい 思い出・2 に続く


●イントロダクション&目次

第720回 懐かしい動画

 先日、金曜ロードショーで懐かしい宮崎駿監督作品『もののけ姫』(1997年)が放送されていたようです。「ようです」と言うのは今回も自分、観ていませんでしたから。Blu-ray持ってるし。ただ、若い頃動画で参加している数少ないジブリ作品の1つ。他は『耳をすませば』と『On Your Mark』(1995年)、それぞれに少々の思い入れがあります。各作品、描いた動画枚数は何百枚ずつだったと思いますが、安藤雅司さんや近藤喜文さんら超絶巧い方々が描かれた生の原画や作監修正に自分の動画の線を載せて、劇場の大画面で公開される緊張感(汗)! 特に『耳をすませば』は自分が研修明けすぐのド新人での動画でかなり緊張しました(そのせいか最初のカットもはっきり覚えており、聖司が教室にやってきて「聖司君……」と呟く雫のアップがそれです)。

 そして、今回は『もののけ姫』話。

ずう~っと前(10年以上前?)にもここで『もののけ姫』の動画の話題をさせて頂きました(例の◯揺らしてみたって話)。で、ここからの話はその時も話題にしたかも知れません。確認しようにも現在700回以上あるこの連載の内の第何回かも憶えてないので、もし同じ話を繰り返していたらご容赦下さい。あれは、山犬の走りリピートの動画を描いていた時、大塚(康生)さんが通りかかり、俺の机に貼ってあった『もののけ姫』のキャラ表を見つつ、雑談開始。

大塚「板垣君、こーゆーのすきでしょう?」

当時、よく大塚さんに「画、観てください!」と言っては黒澤明監督作品の名場面を鉛筆画にして持って行ってた俺。その板垣の黒澤好きを意識した上での話の振りです。

板垣「ああ、はい。そうですね~」
大塚「(原画を覗き見て)犬の走り描いてんの?」
板垣「まあ、でも全部中割参考入ってますしね~、この通りやるだけですね」
大塚「ん~~、ちょっと貸してみて」


と、大塚さんは板垣の席を奪って、他所様の山犬の走り原画の上に自ら勝手に修正を載せ始めたのです!何しろ『太陽の王子 ホルスの大冒険』の冒頭でド迫力の狼の群れ対ホルスを描いた大塚さんが、俺の目の前でジブリの山犬にサラサラ~ッといつもの達筆な一発描きで修正を入れてるのです! そりゃ痺れました! 周りの先輩らも覗きに来てザワザワ。

つまり、大塚さんの説明は「俯瞰アングルでの山犬の走りの原画から原画へ中割り5枚、その全部で胸部が見えるのはおかしい!」と。要は、前脚が着くと腰部が上がるわけで、となるとその際俯瞰では胸部が見えないはず、との事でした。

 もちろん、その時の大塚修正は本番の動画に反映するわけにも行かず(ジブリ様の中割参考を無視するのはマナー違反ですから)、板垣の自宅に現在も大事に保管してあるのでご安心を。
 あと、完成後の打ち上げパーティーでは、動画チェックの舘野(仁美)さんより、

「板垣さんの動画は線が綺麗で中割も丁寧で助かりました。田中(敦子)さんから聞いた んですけど、原画になられたそうですね。今度は板垣さんの原画を私が動画にするかも 知れないので、その時は宜しくお願します」

とのお言葉を頂き(社交辞令でも嬉しい)、一緒に記念写真も撮っていただきました。その写真も、同じくその打ち上げパーティーに参加されていた高畑勲監督と板垣とのツーショットと一緒に、今でも板垣の宝物として保管してあるので、こちらもご安心を!
テレコム辞めて数年後、監督やらせてもらえるようになった際、『耳をすませば』~『もののけ姫』あたりでジブリに居らっしゃったスタッフさん——鶴岡耕次郎さん、桑名郁朗さん、有富興二さんらと仕事でご一緒出来たのも、更に嬉しかったです。

アニメ様の『タイトル未定』
315 アニメ様日記 2021年6月6日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年6月6日(日)
午後は事務所でデスクワーク。必要なデータが半分しかなかったことが分かって、予定していた作業は断念。それは月曜以降にやることにして、スケジュールの調整をしたり、事務所を片づけたり。いつも「1日が短い」と思っているけど、急ぎの作業がないと結構長い。
「新美の巨人たち」の「和田誠×清水ミチコ 一枚の絵」を録画で観る。「週刊文春」の仕事についての部分もよかったけれど、学生時代に描かれたものがあまりにも巧いので驚く。
「キネマ旬報」2021年6月上旬号の「追悼 大塚康生」に目を通す。映画雑誌としては充分以上の内容であるけれど、取材で参加している叶精二さんによる総論的な文章があれば、更によかったと思う。
「お近づきになりたい宮膳さん」3巻を読む。松林と宮膳さんの恋愛前のドキドキを延々と描くマンガかと思ったら、そうではなかったようだ。これからはお付き合い初期のドキドキを描くのだろう。まあ、それはそれで楽しみ。

2021年6月7日(月)
外部の方達とのZoom打ち合わせで、何故かやたらと持ち上げていただいた。お世辞なんだろうけど、ちょっと嬉しい。散歩時に「宝島 完全版音楽集」を聴く。TSUTAYAのレンタルで済ましてしまったけれど、これは購入しないといけないCDだった。反省。

2021年6月8日(火)
仕事の合間にワイフと、新文芸坐で「燃ゆる女の肖像」(2019・仏/122分/DCP/PG12)を観る。プログラム「私は今、本当の私を生きているだろうか 燃ゆる女の肖像 | 聖なる犯罪者」の1本。演出が素晴らしく、特に映画前半の映像とテンポがよかった。ラストカットもいい。ただ、先に「ラストカットが凄い」と言われてから観たら、印象が違ったかもしれない。スカートに火がついた後のシーンの切り替わりと、そこでのドラマも飛躍も面白かった。
以下は、最近買ったあるアニメ映画のパンフレットに目を通して感じたこと。パンフレットでスタッフインタビューが異様に充実していると「この作品はムックが出る予定がないのね」と思ってしまう。パンフレットの作りとしては間違ってないけど、ちょっと寂しい。

2021年6月9日(水)
グランドシネマサンシャインで『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を観る 。BESTIA enhancedでの上映だった。これはアバンギャルドアニメの最先端だ。華恋とひかりが、カメラ目線で「観客」について言及したところで「やるなあ、すげえ」と思った。

2021年6月10日(木)
グランドシネマサンシャインで『シドニアの騎士 あいつむぐほし』を観る。こちらはDolby Atmosでの上映だった。音響が凄い。しっかりと楽しませる娯楽作であり、満足度は高い。ただし、自分の感覚ではあそこまでハッピーエンドにならなくてもよかった。
進行中の書籍の作業が終盤で、同じメンバーによる社内打ち合わせを13時と17時で2回やる。

2021年6月11日(金)
仕事の合間に、グランドシネマサンシャインで『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を観る。これは素晴らしい。20年ぶりくらいに「アニメのリアル」が更新されたのではないか。演出や作画もかなりのもの。「あっ」と驚く箇所がいくつもあり、キャラクターの人格描写も凄みがあった。

2021年6月12日(土)
散歩以外はデスクワーク。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の劇場限定版Blu-ray、パンフレットに目を通す。

アニメ様の『タイトル未定』
314 アニメ様日記 2021年5月30日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月30日(日)
散歩以外は原稿作業。引き続き、散歩時にネックスピーカーでアニメのサントラを聴いている。この日聴いたのは「タッチ music flavor 1」。『タッチ』のサントラを聴いたのは、多分、初めて。大半の曲は記憶にあったのだけど、まとめてBGMのみを聴くと作品自体の印象とズレる。それが面白かった。

2021年5月31日(月)
散歩以外はデスクワーク。散歩時に「ルパン三世 ルパンVS複製人間マモー BGM集」を聴いた。確認したいことがあって『プラネテス』を1話から観る。

2021年6月1日(月)
5月1日の起床時の体重が78.3キロで、今日の起床時の体重が73.5キロだから、ひと月でだいたい5キロ落ちた。コツを掴んだとはいえ、落ちすぎかもしれない。6月以降は体重を落とすことよりも、維持することを考えたほうがいいかもしれない。
『プラネテス』の視聴は続いている。千羽由利子さんの画はやっぱり新しかった。今の目で観てもイケている。以下は視聴しながら書いたメモだ。

7話「地球外少女」は放送当時よりも楽しめた。
13話「ロケットのある風景」は当時も面白いと思ったけれど、抜群の仕上がり。ハチマキとタナベがキスしそうになるところの大胆なまわり込み(Bセルがスライドして画面一杯になっている間に、Aセルを差しかえる)は絵コンテ段階のアイデアだろうか。同シーンは、二人が恋愛に至っていないのに「確かにキスしそうだ」と思えるところが面白い。
当時、自分は序盤のタナベを「愉快なやつだ」と思っていたはずだけど、今の目で観ると「こんな部下がいたら、面倒だな」と思う。危なげなところが気になってしまう。

テレビをつけたらWOWOWで『名探偵コナン ゼロの執行人』を放送していた。何度観てもあの状況で、コナンが「安室さんって恋人いるの?」と訊くのが凄い。勿論、いい意味で。

2021年6月2日(火)
デジタルでの画像のコピーと違って、フィルムはコピーをすると劣化することを事務所のスタッフに説明する。次の次の次の次の次くらいに刊行する書籍の企画書の進行などを考える。夕方、ユニクロに行く。採寸してもらったところ、ウエストは91センチ。ユニクロの店頭にあるジーパンが入るようになっていた。
榎本温子さんが『サイバーフォーミュラ』のアニメイトカセットコレクションが好きだというのは、前から知っていたけれど、それを榎本さんがTwitterで話題にしてくれた。ちょっと嬉しい。ちなみに『サイバーフォーミュラ』のアニメイトカセットコレクションの台本は僕の仕事だ。かなりノって書いた。
『プラネテス』を最終回まで視聴。今回の再見で一番よかったのはハチマキ、タナベの存在感。特にシリーズ中盤以降にタナベが、地に足のついた「女性」に変貌していくのが凄い。ハチマキは、やりたいことをやりたいようにやる「若者」ではなくなっていく。勿論、アニメ作品ではあるんだけど、狭義の「アニメ」ではなくて「ドラマ」寄りの作品なのだろう。もう8話くらい観たかった。
千羽由利子さんの画はシリーズ序盤が尖っていて、次第に観やすくなっていった感じか。彼女の仕事史としては『フィギュア17 つばさ&ヒカル』のリアル感をさらに押し進めたものという位置づけになるはず。その後、千羽さんは『ブレイブ・ストーリー』で柔らかい方向に行くのだけど、『プラネテス』の発展形の仕事も観てみたかった。この頃の千羽さんのリアル感は大友克洋系とも、黄瀬和哉系とも違う。『人狼』っぽいわけではないけれど『人狼』以降のデザインではある、のだろう。

2021年6月3日(木)
仕事の合間に、新文芸坐に行って「穴」(1957/102分/35mm)を観る。プログラム「三回忌追善 大映映画の大輪の華(はな) 京マチ子 Part2」の1本だ。話がとてもよくできている。京マチ子さんが演じる主人公は頭がよくて、何度もピンチに陥るのだけれど、ノリとか運ではなくて、知恵を使って突破する。そういった部分の作り込みが巧い。事件が解決した後で、おそらくは観客のほとんどが気にしていなかったであろう、犯人側の作戦の疑問点についての説明が入る辺りはいかにもこだわって作っている感じ。最後に主人公が、そんなには接点がなかった男性と仕事仲間になるか結婚するかという話になって、そこは無理矢理感があったかな。
ワイフが紫陽花の鉢植えが欲しいと言う。夕食の後、それを探してあちこちの花屋を見て歩く。

2021年6月4日(金)
ワイフとグランドシネマサンシャインで『映画大好きポンポさん』を観る。自分は試写に続いて、二度目の鑑賞。以下は、二度目の鑑賞後のツイートの文面。

『映画大好きポンポさん』はいいですよ。まず、映画として面白い。間口は広く、映画ファンでなくても楽しめるはず。相当にテクニカルな映画であり、そして、テクニカルであることが魅力に繋がっている。アニメーション映画として、新しいタイプの作品でもあるはず。

『無限のリヴァイアス』の再視聴をスタート。

2021年6月5日(土)
仕事の合間にSHIBUYA TSUTAYAへ。Amazonでプレミアが付いてたCD「交響組曲 科学忍者隊ガッチャマン」「テレビオリジナル BGMコレクション 人造人間キカイダー/キカイダー01」、それから『TO-Y』のVHSを借りる。『TO-Y』のVHSをレンタルするのは10数年ぶり。夕方、事務所で進行中の書籍で使うポジフィルムをチェックする。
散歩中に『プラネテス』のサントラを聴く。これは名盤だ。次に『プラネテス』を観る時はもっと曲を気にして観ることにしよう。

第213回 思わず胸がキュッとなる 〜あしたへアタック!&リトル・ルルとちっちゃい仲間〜

 腹巻猫です。SOUNDTRACK PUBレーベル第28弾「あしたへアタック!/リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集」を8月25日に発売します。1977年放送の『あしたへアタック!』と1976〜77年放送の『リトル・ルルとちっちゃい仲間』、日本アニメーション制作のTVアニメ2作品をカップリングした2枚組CDアルバムです。音楽はどちらも越部信義。BGMは全曲初商品化! 堀江美都子が歌う主題歌・挿入歌とオリジナル・カラオケも収録しました。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B09BDT9HSF/

以下で試聴用ダイジェスト動画を公開中です。


 今回は、サウンドトラック初リリースとなる『あしたへアタック!』と『リトル・ルルとちっちゃい仲間』の音楽を紹介しよう。
 収録曲は下記を参照いただきたい。
https://www.soundtrack-lab.co.jp/products/cd/STLC043.html
 ディスク1に収録した『あしたへアタック!』は、バレーボールに打ち込む高校生の少女たちを主人公にしたスポーツ青春もの。1977年11月に日本でバレーボール・ワールドカップが開催されることに合わせて企画された作品で、アイキャッチにワールドカップの告知が出るのが当時をしのばせる。
 主人公の聖美々はバレーボールが大好きな高校3年生。部員がいなくなって廃部寸前だった橘高校バレーボール部を再建し、猛練習を重ねて、ライバルチームとの試合に挑んでいく。原案は『サインはV』の原作者・神保史郎、監督に『アタックNo.1』の演出を担当した黒川文男。60年代の人気バレーボール番組を手がけたスタッフがタッグを組んだ作品である。

  越部信義は「おもちゃのチャチャチャ」等の子どもの歌やTVアニメ『マッハGoGoGo』(1967)、『サザエさん』(1969〜)、『昆虫物語みなしごハッチ』(1970)、『ジムボタン』(1974)、『ジェッターマルス』(1977)等の音楽を手がけた作曲家。歯切れのよいリズムと快活な中にペーソスただようメロディの音楽が持ち味だ。
 越部信義が手がけたアニメ作品の中で、「少女向け」と呼べるものは意外に少ない。本作と『風船少女テンプルちゃん』(1977)、『リトル・ルルとちっちゃい仲間』(1976)があるくらい。いや、『テンプルちゃん』と『リトル・ルル』は女の子が主人公ではあるが、どちらかといえば「子ども向け/ファミリー向け」に近いから、「少女向け」と呼べるのは本作だけかもしれない。『あしたへアタック!』は越部作品の中でも貴重な、ティーンエイジャーの少女たちを主人公にした作品なのである。
 『ジムボタン』のエンディング主題歌「ボッコちゃんが好き」や『ジェッターマルス』の挿入歌「キライ!スキ!」を聴くと、越部信義がアイドル歌謡的な曲も得意だったことがわかる。もし、越部信義が魔法少女アニメや『キャンディ・キャンディ』のような少女アニメを手がけていたらどんな曲を書いただろう……。書いてほしかったなあと思うのだ。
 そんな「もしも」が実現した気分を味わえる作品が『あしたへアタック!』である。
 美々たちの青春を彩るさわやかな曲や、ゆれ動く心情を表現するリリカルな曲、試合シーンを盛り上げるアップテンポの緊迫感のある曲など。越部信義のほかの作品ではあまり聴けない曲調の音楽がたっぷり聴けて、思わずにんまりしてしまう。
 試聴動画で聴ける「丘の上の学園」は第1話の冒頭で橘高校が紹介される場面に流れる曲。軽快なリズムにストリングスの流麗なメロディ、フルートの対旋律。「これぞ青春アニメ」と言いたくなる曲だ。
 同じく試聴動画で聴ける「友と呼べるなら」はギターとフルートのメロディが美々の切ない気持ちを表現する曲。亡き友の無念を晴らすために橘高校に挑戦してきた白バラ学園の花房みつる。激しい闘いを経て、美々とみつるのあいだに友情が芽生える。第10話で2人が手を取り合う感動的な場面に流れた曲だ。
 試合シーンの曲も充実している。試聴動画では重い曲想の「苦しい闘い」が紹介されているが、リズム主体のスピーディな曲「白熱のラリー」やトランペットとストリングスが熱い闘志を表現する「猛攻」など、越部信義がヒーローものや巨大ロボットものを手がけていたらこんな曲を書いていたかも(これも書いてほしかった)と思わせる曲調だ。
 筆者が本編で印象深かった曲の筆頭が、エンディング主題歌「バレーボールが好き」をアレンジした「美々の想い」である。しっとりとしたストリングスとピアノの演奏が美々の秘めた想いを表現する。第1話で美々が開かずの間になっていたバレーボール部の部室の扉を開ける場面、第9話で試合に破れた美々が「私にとってバレーとは何?」と自問する場面、第17話で美々の同級生・伏島一郎が「青春は短すぎる」と美々に語る場面、そして、第22話で決戦を前にした美々が一郎に心の弱さを指摘されて我に返る場面など、数々の名場面に流れた。
 本作のオープニング主題歌は「あしたへアタック」だが、もともとは「バレーボールが好き」のほうがオープニング用に作られた曲だった。「バレーボールが好き」は美々たちのバレーボールへの想いとバレーボールから得られるよろこびや友情を歌った曲。そのことから想像できるように、本作が描こうとしたのは60年代スポ根的な「試練に打ち克って勝利をつかむ」ドラマではなく、少女たちが悩んだりぶつかったりしながら、それぞれの明日を見つけていく物語なのである。「美々の想い」は、その象徴のような曲だ。
 もう1曲、試聴動画で聴ける「勝利へのアタック」はオープニング主題歌のピアノとストリングスなどによる力強いアレンジ。使用回数は多くないが、これも印象深い曲で、最終回では美々たちのインターハイ優勝を賭けた試合シーンを盛り上げた。
 ディスク1の終盤には、主題歌・挿入歌のフルサイズと主題歌のオリジナル・カラオケを収録。挿入歌「美しい今日」と「会うのは明日」は堀江美都子が歌うさわやかなアイドル歌謡風の曲。初出は放送当時に発売された4曲入りコンパクト盤だが、CD化される機会が少なく、これまで「堀江美都子 歌のあゆみ3」と「日本アニメーションの世界 主題歌・挿入歌大全集 第2集 〜スポーツアニメ編〜」に収録されたぐらい。貴重な音源なのである。

 ディスク2には『リトル・ルルとちっちゃい仲間』の歌と音楽を収録した。本作の原作は1930年代からアメリカの新聞に連載された人気漫画「Little LuLu」。アメリカの小さい町を舞台に、7歳くらいのいたずら好きの女の子ルルと仲間たちの日常を描くコミカルな作品だ。
 「Little LuLu」は海外でも何度かアニメ化されているが、本作は日本向けにライセンスを取得してアニメ化したもの。現在は映像ソフト化や再放映、映像配信等がされておらず、本編を観ることがかなわない。キャラクターの画像も使用できない。いわば、「幻の作品」である。しかし、音楽だけなら商品化できるとのことで今回のリリースになった。実は『キャンディ・キャンディ』サントラ発売に匹敵する画期的なことなのだ。

 越部信義の仕事の中で大きな位置を占めるのが「おかあさんといっしょ」や「ひらけ!ポンキッキ」といった幼児向け番組の楽曲である。「おかあさんといっしょ」内で放送された着ぐるみ劇「にこにこぷん」の音楽をずっと手がけていたし、「はたらくくるま」「ぼくは電車」などの歌も子どもたちに親しまれた。
 小さい子どもたちを主人公にした『リトル・ルルとちっちゃい仲間』は、そんな越部信義の本領発揮!とも言える作品だ。
 本作のもうひとつのポイントは、これが越部信義初の日本アニメーション作品であること。それまでは『マッハGoGoGo』『昆虫物語みなしごハッチ』等のタツノコプロ作品や『サザエさん』『ジムボタン』等のエイケン作品が多かった。で、筆者の想像だが、越部先生、けっこう気合を入れて取り組んだのではないかと思うのだ。
 まず、BGMの1曲が長い。2分を超える曲もけっこうある(逆に『あしたへアタック!』は1分未満の曲が多い)。そして、曲がバラエティ豊かで、変化に富んだメロディとさまざまなスタイルのアレンジが聴ける。演奏もノッている。「楽しんで作っているなあ」と思わせる音楽なのである。
 試聴動画で紹介した「いたずらの種はつきず」はクラビネット(エレキピアノの一種)の音色が印象的なユーモラスな曲。クラビネットは70年代の洋楽によく使われた楽器で、アニメ音楽では1977年放送の『野球狂の詩』のテーマ曲や1978年放送の『はいからさんが通る』の主題歌で使われて「アニメソングのポップス化」を印象づけた。それを1976年放送の本作のBGMに使っているとは、越部先生、さすがのセンスである。試聴動画には入っていないが、クラビネットを使った主題歌アレンジのBGMもある。
 続いて試聴動画で紹介している「昼さがりの街角」はソプラノサックス、フルート、クラリネットなどの木管楽器が交代でメロディを奏でるのんびりムードの曲。ちょっと『サザエさん』を思わせる曲調だ。
 ギター(クラビか?)とブラスによる「角を曲がれば」は、ちょこまかと動くルルたちが目に浮かぶような軽快な曲。本作のBGMは60曲余りが録音されており、そのほとんどがテイク1でOKになっている。当時の音楽作りは「せーの」で全楽器が演奏を始める一発録音。ノリのよい演奏から、スタジオセッションの勢いと楽しさが伝わってくる。
 試聴動画では、ほかにエンディング主題歌「わたしはルル」をアレンジした「スキップ」と名づけられた曲を2バージョン紹介している。1曲は口笛ソロによるバージョン。この手のコミカルな作品に口笛ソロを採用するセンスにしびれる。口笛の音色がほのかな哀愁をただよわせ、胸がキュッとなる。これぞ越部サウンド。もう1曲はピアノとリズム(ウッドベース、ギター、ピアノ、ドラム)によるバージョン。ジャズ風のしゃれた雰囲気で聴かせる。どんな場面に流れているのか観てみたいものだ。
 ディスク2の終盤には、主題歌2曲のフルサイズとオリジナル・カラオケ、そして、ディスク1に収録できなかった『あしたへアタック!』の主題歌のTVサイズ・カラオケと挿入歌2曲のオリジナル・カラオケを収録。『あしたへアタック!』の主題歌TVサイズは、カラオケ、ヴォーカルともにレコード用フルサイズとは別録音である。今回はTVサイズもステレオマスターから収録した(初商品化)。
 BGMとともにぜひ味わってただきたいのが、主題歌・挿入歌のカラオケのすばらしさ。歌のバックに隠れていた対旋律やリズムを聴くと、越部信義がいかに精巧に楽曲を構築しているかがわかる。カラオケだけで音楽になっているのだ。歌うもよし、聴くもよし、である。

 「あしたへアタック!/リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集」は越部信義が生み出した歌と音楽がたっぷり楽しめる2枚組。はずむリズムとペーソスただようメロディの魅力を堪能してほしい。越部信義大好きの筆者が自信を持ってお奨めします。

あしたへアタック!/リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集
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第179回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕須直監督次回作【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、作品のタイトルや内容は発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督は平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。

 2021年9月4日(土)に開催する第5弾のサブタイトルは【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】。前回は清少納言や藤原定子の周りにいた女性達をとりあげました。今回は男性達が話題となるようです。
 会場は新宿のLOFT/PLUS ONE。チケットは〈会場での観覧+配信視聴〉と〈配信視聴〉の2種類を販売しますが、コロナの感染状況を鑑みて、配信のみのイベントとなる可能性もあります。その場合、〈会場での観覧+配信視聴〉のチケットは払い戻しいたします。チケットは8月18日(水) 18時から発売となります。
 詳しくは以下にリンクしたLOFT/PLUS ONEのイベントページをご覧になってください。

 ※新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑みて、本イベントを無観客配信のみの開催に切り換えさせていただきます。〈会場での観覧+配信視聴〉のチケットは払い戻しさせていただきます。詳しくは以下のページをご覧になってください。
 直前のお知らせとなってしまい誠に申し訳ありませんが、何卒ご理解賜りますようお願いいたします。(09/01追記)

【重要変更あり】ここまで調べた片渕須直監督次回作【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】(LOFT/PLUS ONE)
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/188574

 出演は片渕須直さん、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 配信は先行してロフトグループによるツイキャス配信を行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルではトーク本編とは別に「ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク」も配信する予定です。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。  

 また、アニメスタイルチャンネルでは過去の「ここまで調べた片渕須直監督次回作」をアーカイブ配信しています。以下のリンクをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT/PLUS ONEのイベントページ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/188574

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

■過去の「ここまで調べた片渕須直監督次回作」配信
アニメスタイルTALK011 ここまで調べた片渕須直監督次回作【基礎知識編】
https://www.nicovideo.jp/watch/so38425053

第175回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作【初級編】
https://www.nicovideo.jp/watch/so38783833

ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク1
https://www.nicovideo.jp/watch/so38784040

第177回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作【覚えておいてほしい人の名 編】
https://www.nicovideo.jp/watch/so39087228

ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク2
https://www.nicovideo.jp/watch/so39087276

第179回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕須直監督次回作【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】

開催日

2021年9月4日(土)
開場11時半 開演12時 終演15時予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
  アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。