アニメ様の『タイトル未定』
188 アニメ様日記 2018年12月30日(日)

2018年12月30日(日)
コミックマーケット95の2日目。ただし、僕は片づけないといけないことが山積みなので、午前中は事務所で作業。午後からコミケ会場に。この数日、作業をしながら『ちはやふる』を観返している。第1シリーズの16話が新作を入れた総集編で、猛烈に切れ味がよくて面白い。いしづかあつこさんのコンテ回だった。さらに20話は山内重保さんが絵コンテで、いしづかあつこさんが演出という異色タッグ。こちらは山内さんの色が濃いようだ。山内さんの世界をきっちり映像として仕上げたいしづかさんが、さすがともいえる。

2018年12月31日(月)
コミックマーケット95の3日目。この日も午前中は事務所で、午後からコミケ会場に。2日目も3日目も谷口さんが来場し、ブースに立ってくださった。

今年作った本は、小冊子を含めると
「アニメスタイル013」
「黄瀬和哉 アニメーション画集」
「黄瀬和哉のうすい本」
「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」
「馬越嘉彦 描き下ろし原画集」
「電脳コイル アーカイブス」
「谷口淳一郎 アニメーション画集」
「谷口淳一郎のうすい本」
 で全8冊。これと別に複製ミニ色紙を6枚を作った。秋から年末にかけて予定していた書籍6点の刊行が諸般の事情で来年にズレこんだこともあって、出版点数が少なかった。ズレこんだ6点があるので、アニメスタイル20年目となる2019年は、かつてない新刊ラッシュになるはずだ。

2019年1月1日(火)
元旦。午前中は、ワイフと上野で立ち飲みをした後(立ち飲み屋にお雑煮があったのでいただいた)、アメ横を歩いて、池袋の地下ショッピングセンターで買い物。午後は事務所で作業。TOKYO MXで途中から観た映画「セトウツミ」が気になって、その後、Amazon Prime Videoで同タイトルのドラマを観る。前にテレビで、ドラマ版をチラリと観ていたのを思い出した。夕方、自宅で『かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』を途中から観る。物語がよくできているのと、ヒロインであるゾロリーヌが魅力的であることに関しては、劇場での初見と感想は変わらず。どこからどこまでが脚本なのかが気になる。

2019年1月2日(水)
昼はワイフと、ホテルのビュッフェに。午後は事務所でテキスト作業を進める。

2019年1月3日(木)
取材の予習で『映画 Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』『映画 Yes!プリキュア5GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』を観る。『おジャ魔女どれみ』シリーズも目を通す。テキスト作業も進める。

2019年1月4日(金)
この日は事務所の半仕事始めで、15時から打ち合わせ。テキスト作業も進める。取材の予習も進める。

2019年1月5日(土)
MX4Dで『ドラゴンボール超 ブロリー』を観る。猛烈に椅子が揺れて(ずっと揺れていて)バトルを体感できた。入場料の金額分以上に楽しめた。ただし、僕の場合は、没入感はIMAXのほうが上だった。午後、ボケモンGOのフレンドとEXレイドに参加。取材の予習で『ハピネスチャージプリキュア!』を観始める。本放送時の3倍くらい面白い。

第595回 風邪全快と作監の話をまた

1人の作監が2人に。
3人、4人、5人、10人!

 こんな感じで昨今、アニメは作画監督(作監)の人数が増える一方。TVシリーズは言うに及ばず、劇場作品ですら作監補佐まで入れて10数人とか当たり前になって久しく、アニメ業界をあげて「作画監督不足!」が問題になっています。原画マンより作監です、どこのスタジオも欲しているのは。現状、自分の実感としては、海外撒きを視野に入れていれば「原画マンが埋まらない」という相談件数は以前より減っています。昨日も2件「作監で手を貸してほしい」との電話があったくらいです。1件は劇場のパート作監、もちろん次作品(春先にはPVの発売予定)のコンテ真っ最中の自分には無理なので、丁重にお断りしました。そしてもう1件は、ウチ(ミルパンセ)に「某TVシリーズのグロスを」とそれもウチの次作品とスケジュールまる被りで「難しい」と電話を切ろうとした寸前、やはりここでも先方の本音が伺えました。「じゃあせめて1〜2週間作監貸してもらえません?」と。やはりどこも作監が欲しいようです。
 自分は作監もやります。実は『ユリシーズ』でも作監が足りない時、ちょくちょく手伝い程度にはやってました。他所様のスタジオのスタッフを立てるため、自分はノンクレジットにしてたんです。ただ最近は上がってきた原画の8〜9割をほぼ演出と作監が血眼で描き直しするのが通例。

早い話、作監が描くものが原画で、制作さんがかき集めてる原画はその下描き! アニメの制作本数が増え過ぎた昨今、まともに原画教育がなされていない人を原画マンにするため、それを直す側が必死なのです!

 いわゆる最近の「作画崩壊」とは、制作さんがサボってるのではなく、コンテを引っ張ったからとかでもなく、大概は大手の制作会社との「作監争奪戦」に負けた中小制作会社によって起こるのです。つまり作監を入れてない酷い原画(下描き)のままで良ければ、番組を落とすことは減ると思います。でも現状ノー作監でフィルムを作っても、委員会から納品拒否を食らうことになるだけでしょう。
 だからといって「アニメの本数を減らせ」とか、単純なことではない——って話は次回(汗)!

アニメ様の『タイトル未定』
187 アニメ様日記 2018年12月23日(日)

2018年12月23日(日)
早朝、新文芸坐に。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110 〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション」の終盤に立ち合う。その後、作業をしながら『転生したらスライムだった件』を最新話まで観る。昼に散歩とポケモンGO。夏目漱石さんのお墓がジムになっていた。ここでバトルをする勇気はないなあ。

2018年平12月24日(月)
作業をしながら、ネット配信で『君の膵臓をたべたい』を観る。予想以上に作画がいい。これはBlu-rayが出たら購入しよう。他にも劇場で観ることができなかった作品を配信で観る。

2018年12月25日(火)
作業をしながら、Amazon Prime Videoで『空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』を観た。劇場では観ていないので、これが初見だ。アニメの世界と実写の世界を行き来する話なんだけど、劇中で「アニメの世界」「実写(現実)の世界」という言い方はしない。実写の世界だと人間に毛穴があるので、ケータは「毛穴世界」と呼んでいた。つまり、この映画だとアニメキャラは毛穴が省略されているわけではなくて、元々ないのだ。実写パートとアニメパートの混在については非常によくできていた。話は変わるが、学生アルバイトさんのおかげで、事務所の倉庫に通り道ができた。

2018年12月26日(水)
Amazon Prime Videoで配信が始まった『サザエさん』初期話数を4話まで観る。こういったレアなタイトルは、今後、DVD BOXやBlu-ray BOXではなく、配信になっていくのかもしれないなあ。それはそれでありがたい。ポケモンGOでレベル40に到達した。現在のシステムでは40以上はない。この後、僕のモチベーションは続くのだろうか。

2018年12月27日(木)
事務所に「谷口淳一郎 アニメーション画集」の見本が届く。今回も充実した仕上がりとなったと思う。個人的に達成感を感じた部分についてはまた別の機会に。「WEBアニメスタイル」で「サムシネ!」が突然の最終回。

2018年12月28日(金)
コミックマーケット95搬入日。編集部スタッフの大半が搬入のために東京ビッグサイトに。僕は事務所で編集作業や事務作業を進める。昼飯は「エヴァンゲリオン酒場」でランチ。摩砂雪さんが編集した『エヴァ』のPVが流れていて、同行したワイフにLD、VT、初期DVDにはあるけれど、その後の『エヴァ』で無くなってしまったカットについて説明する。我ながら面倒くさいファンだ。

2018年12月29日(土)
声優の藤田淑子さんが亡くなられたことを知る(ネットで報じられたのは12月28日のようだ)。様々な役をやられた方だが、僕にとっては『一休さん』の一休役が印象的だった。それから『新ビックリマン』の飲み会でお話させていただいたことも思い出深い。心よりご冥福をお祈り致します。

コミックマーケット95の1日目。今回、アニメスタイルが販売するのは「谷口淳一郎 アニメーション画集」。ご本人の提案で谷口さん自身が会場にいらっしゃり、ブースに立っていただくことになった。イベントらしい賑やかな感じになった。

第154回アニメスタイルイベント
谷口淳一郎の仕事

 2019年2月2日にトークイベント「第154回アニメスタイルイベント 谷口淳一郎の仕事」を開催する。
 これは『魔法少女まどか☆マギカ』『刀剣乱舞-花丸-』『多田くんは恋をしない』等で知られるアニメーター&キャラクターデザイナーの谷口淳一郎にスポットをあてたイベントだ。彼が今までに手がけた作品について、あるいは仕事に対するこだわりについてたっぷりと語っていただく。

 現在決定している出演者は谷口淳一郎、そして、『多田くんは恋をしない』『月刊少女野崎くん』を手がけた監督の山崎みつえ。他の出演者も決まり次第発表する。なお、イベントでは谷口淳一郎の初めての作品集である「谷口淳一郎 アニメーション画集」のサイン本を、特典小冊子付きで販売する予定だ。

 今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は2019年1月12日(土)から発売開始。詳しくは、以下のリンクの阿佐ヶ谷ロフトAのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/108376

【アニメスタイルの新刊】『魔法少女まどか☆マギカ』『刀剣乱舞-花丸-』の谷口淳一郎の初めての画集! 一般販売スタート!!
http://animestyle.jp/news/2019/01/07/14892/

第154回アニメスタイルイベント
谷口淳一郎の仕事

開催日

2019年2月2日(土)
開場12時00分 開演13時00分 

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

谷口淳一郎、山崎みつえ、小黒祐一郎(司会)、他

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第148回 昭和・平成を越えて 〜サザエさん〜

 腹巻猫です。あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。1月14日(月・祝)14時から、神保町・楽器カフェで開催されるイベント「サントラさんの逆襲〜ラジオみゅーらぼ出張篇〜」に出演します。昨年も開催したサントラ・トークイベントの続編です。出演者はほかに、貴日ワタリ、早川優、那瀬ひとみ他。ゲスト・麻宮騎亜。入場料は1000円+ドリンク代500円。お時間ありましたら、ぜひご来場ください!

 詳細・予約は下記から。

https://airrsv.net/gakki-cafe/calendar/menuDetail/?schdlId=T000AECE54


 2018年12月末、ネットをざわつかせる出来事があった。TVアニメ『サザエさん』の初期エピソードがデジタル化されて、Amazonプライム・ビデオなどで一挙に配信されたのだ。
 『サザエさん』は、長谷川町子のマンガを原作にエイケンが制作したTVアニメ。1969年10月から現在まで、途切れることなく放映されている長寿作品である。放映枠も日曜午後6時半という夕食時間帯に固定され、日本人なら観たことのない人はいないとも言われる国民的アニメだ。
 本作はこれまで映像パッケージとして発売されたことがなく、再放映以外で過去のエピソードを手軽に観る機会はなかった。それだけに、今回の初期エピソードの配信はちょっとした事件だったのだ。

 と書いておいてなんだが、実は筆者は子どもの頃に『サザエさん』を観た記憶がない。放映開始当時は生まれていたのに。
 調べてみると、筆者の生まれ育った地元では1990年代まで『サザエさん』を放映していなかったのである。筆者が『サザエさん』を観たのは、大学入学と同時に上京してからだった。だから、今回配信された初期エピソードは、どれも新鮮な気持ちで観た。
 初期の『サザエさん』は、今の『サザエさん』とずいぶん違った雰囲気である。キャラクターはひょろっとしていて、表情がめまぐるしく変わる。ドタバタあり、きわどいセリフありで、「テレビまんが」の香りが濃厚に漂う。現在のホームドラマっぽいおだやかな作風と比べると、『天才バカボン』か60年代のカートゥーン(海外アニメ)のような印象だ。今回の配信はTVアニメ史研究の上でも意義深い。

 長らく映像商品に恵まれなかった『サザエさん』だが、主題歌・挿入歌についてはレコード、CDが流通していた。
 オープニング、エンディングは放映開始当初から変わっていない。林春生作詞、筒美京平作・編曲による「サザエさん」と「サザエさん一家」である。1969年に東芝レコードから発売されたシングル盤の音源は、1989〜90年にかけて、コンピレーションアルバム「ぼくらのテレビ探偵団」のシリーズでCD化されている。同じく作・編曲を筒美京平が手がけた挿入歌「カツオくん(空を見上げて)」と「レッツ・ゴー・サザエさん」も同様だ。
 1975年から1997年まで続いた再放映『まんが名作劇場 サザエさん』(通称「火曜日サザエさん」)の主題歌はオープニング、エンディング各4種類、計8曲。作曲は渡辺宙明、宇野誠一郎、小林亜星、松山祐士というアニメソングのヒットメーカーが手がけている。こちらは日本コロムビアと東芝EMIからレコードがリリースされ、90年代からCD化が進んだ。ただし、水森亜土が歌った「愛しすぎてるサザエさん」「サザエさんの出発進行」の2曲はいまだCD化されていない(一説には原作者から「イメージに合わない」と苦情が出たためとか)。
 いっぽう、『サザエさん』の劇中音楽(BGM)については、商品化を待望する声はあったものの、なかなか実現しなかった。筆者の周囲からも、企画を出しても通らない、頓挫した、という声を何度か聞いた。
 その難関を突破してリリースされたのが、CD「サザエさん 音楽大全」だ。東芝EMIの音源を受け継ぐユニバーサルミュージックから2013年に発売されたアルバムである。放映開始から実に40年以上経ってからの発売だった。
 『サザエさん』の音楽を担当したのは、当コラムの『ジェッターマルス』の回でも取り上げた越部信義。1998年には河野土洋作曲によるBGMの追加録音が行われたが、越部の作った音楽は今でも使用されている。
 「サザエさん 音楽大全」の解説書によれば、『サザエさん』の選曲は、放映初期を除いて、録音演出の岡本知(グロービジョン)が担当していたという。2003年に岡本知が亡くなった後は、放映開始から効果を担当している柏原満が選曲も務めている。柏原満は『宇宙戦艦ヤマト』の効果音を作った人物。タラちゃんの走る音など、『サザエさん』の印象的な効果音は『ヤマト』と同じスタッフが作っているのだ。柏原満は解説書のインタビューで「特徴的な音はあえて作っていない」と語っているが、十分特徴的だと思う。
 話がそれたが、「サザエさん 音楽大全」には柏原満監修のもと、30曲以上のBGMが初めて収録された。さらに、「タマの鳴き声」や「タラちゃんの足音」といった効果音も収録。「大全」の名にふさわしいバラエティに富んだ内容である。
 収録トラックは以下のとおり。

  1. サザエさん(歌:宇野ゆう子)
  2. 楽しい磯野家
  3. 明るい磯野家
  4. 磯野家の団欒1
  5. 磯野家の団欒2
  6. 磯野家の団欒3
  7. 磯野家のおでかけ
  8. タマの鳴き声1(ノーマル)
  9. レッツ・ゴー・サザエさん(歌:加藤みどり)
  10. サブタイトル1
  11. サブタイトル2
  12. サブタイトル3
  13. サブタイトル4
  14. サブタイトル5
  15. カツオくん(星を見上げて)/(歌:高橋和枝)
  16. スケッチ1
  17. スケッチ2
  18. スケッチ3
  19. スケッチ4
  20. タマの鳴き声2(どうして?)
  21. サザエさんのうた(歌:堀江美都子、サニー・シンガーズ、コロムビアゆりかご会)
  22. エンディング1
  23. エンディング2
  24. エンディング3
  25. エンディング4
  26. あかるいサザエさん(歌:堀江美都子)
  27. サザエのテーマ1
  28. サザエのテーマ2
  29. サザエのテーマ3
  30. サザエのテーマ4
  31. タマの鳴き声3(甘え声)
  32. ウンミィの歌(歌:古賀ひとみ、ヤング・フレッシュ)
  33. カツオのテーマ1
  34. カツオのテーマ2
  35. カツオのテーマ3
  36. カツオのテーマ4
  37. カツオのテーマ5
  38. タマの鳴き声4(戸外から「開けてよー」)
  39. 天気予報(歌:猪股裕子、ヤング・フレッシュ)
  40. 波平のテーマ1
  41. 波平のテーマ2
  42. タラちゃんの足音A
  43. タラのテーマ1
  44. タラのテーマ2
  45. タラのテーマ3
  46. タラちゃんの足音B
  47. ハッピーデイ・サザエさん(歌:松尾香)
  48. テーマアレンジA
  49. テーマアレンジB
  50. テーマアレンジC
  51. テーマアレンジD
  52. ひまわりみたいなサザエさん(歌:松尾香)
  53. サザエさん<カラオケ>
  54. 星を見上げて<カラオケ>
  55. レッツ・ゴー・サザエさん<カラオケ>
  56. サザエさん一家(歌:宇野ゆう子)
  57. 予告用BGM

 CDに収録されたBGMは番組でよく流れるおなじみのものがほとんどだ。
 昨年末に配信された初期の『サザエさん』を観ると、このCDに収録されていない曲がたくさん流れていることに気がつく。作風の変遷とともに、使われるBGMも変わっているのである。今ではなかなか聴けない『トムとジェリー』風のスラップスティック曲や、サスペンスタッチの曲、主題歌のディキシーランドジャズ風アレンジやチンドン屋風アレンジなどが流れているのが興味深い。
 そんなふうに音楽演出の変遷をたどりながら、初期の『サザエさん』を観るのも楽しいものである。筆者は冨田勲っぽい音楽が流れる「サザエ万博へ行く」のエピソードが印象に残った。
 「サザエさん 音楽大全」はホームドラマ的になった現在の『サザエさん』のイメージで編まれてるために、あまりとんがった音楽は選曲されていない。
 しかし聴けば、「あ、聴いたことある」と思う曲が現れるのが楽しい。それほど熱心に『サザエさん』を観ていない筆者でもそう思うのだから、毎週観ているファンならなおさらだろう。
 トラック2の「楽しい磯野家」から「聴いたことある」感いっぱいである。軽快なテンポでメロディを奏でる楽器はクラビネットとチェンバロのようだ。
 次のトラック3「明るい磯野家」は「楽しい磯野家」と同じコード進行による変奏。トラック4「磯野家の団欒1」にも同じメロディが使われている。まさに「磯野家のテーマ」という曲。
 トラック6「磯野家の団欒3」はビブラフォン(風のエレピかも?)とピアノとギターのアンサンブルによるしゃれた雰囲気の曲。フランス映画で流れていても違和感のない曲調である。
 昭和の懐かし音楽の代表のように聴かれる『サザエさん』の音楽だが、放映が始まった当時は、むしろ、モダンでおしゃれな音楽だったのだ。
 音楽制作は「音楽企画センター」。三木鶏郎が主宰する「冗談工房」が分裂して生まれた事務所のひとつで、越部を中心に複数の作曲家が所属していたという(CD「マッハGoGoGo ミュージックファイル Round-1」の越部信義インタビューより)。
 今回の配信で、初期は「演奏 スクリーンミュージック」のクレジット表記があることが確認できた。スクリーンミュージックは、特撮TVドラマ「人造人間キカイダー」(1972)にもクレジットされている演奏家コーディネート(いわゆるインペク)会社である。
 アルバムの内容に戻ろう。「サブタイトル」「スケッチ」「エンディング」と汎用の日常曲が続く。「サブタイトル」と曲名がついているが、どれも1分近い長さがあり、一般的に「サブタイトル」として作られる5秒〜10秒ほどの短い曲とは大きく印象が違う。『サザエさん』の場合、サブタイトル前の短いコント風シーンから、サブタイトルを挟んで本編に入るまで、途切れずに音楽が流れていることが多い。だから、こういう曲になっているのだろう。
 そのあとは、「サザエのテーマ」「カツオのテーマ」「波平のテーマ」「タラのテーマ」とキャラクターテーマが並ぶ。フルートやシロフォン、バイオリン、クラリネット、エレピなど、楽器の音色を生かした小粋なアレンジが楽しい。それぞれが同じモチーフの変奏ではなく、違ったメロディを持っているのが特徴的だ。

 アルバムの構成は、カテゴリごとに数曲のBGMをまとめ、その合間に挿入歌とSEを収録するスタイル。
 サウンドトラック・アルバムは、本編の基本フォーマットやストーリー展開に合わせて構成されることが多い。同じく日常系のTVアニメ『ちびまる子ちゃん』や『ドラえもん』のサントラも、大まかな物語の流れや印象的なエピソードを意識した曲順で構成されていた。
 「サザエさん 音楽大全」はまったく違うコンセプトである。時系列よりも全体を俯瞰する図鑑的な構成になっている。2次元のパノラマを見るような印象だ。
 『サザエさん』の本編は30分・3エピソードの構成。劇中に四季は訪れ、磯野家の周囲に多少の変化はあるものの、大きな意味では時間は止まっている。どこから観てもよいし、順番を入れ替えてもかまわない。そんな『サザエさん』の世界には、こうした図鑑的な構成がフィットする。「音楽大全」というタイトルも象徴的である。
 筆者がとりわけ印象に残ったのは、最後の方に収録された4曲の「テーマアレンジ」。
 どれも女声スキャットをフィーチャーした軽快な曲で、華やかさの中にちょっぴり哀愁がただよう大人びた曲に仕上がっている。リズムとペーソスの作家・越部信義らしい、胸の奥をツンと刺激するようなアレンジである。
 昭和から平成を経て、おそらく次の元号の時代も放映が続いていくに違いない『サザエさん』。その歴史が「サザエさん 音楽大全」には凝縮されている。
 本アルバムを水先案内に、配信された初期エピソードと現行放映を、音楽に注目しながら見比べてみてはいかがだろう。

サザエさん 音楽大全
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
186 アニメ様日記 2018年12月16日(日)

2018年12月16日(日)
Amazon Prime Videoで「レディプレイヤー1」再見の続き。やっぱり、ジェームズ・ハリデーに感情移入してしまう。僕はあそこまで自己愛が強くはないけど、彼の想いは理解できる。いや、理解できているつもりだ。『ヤマノススメ』第一シリーズをまとめて観る。あまりにも本編が短くて、こちらの気持ちが入ったところでエンディングが始まってしまう。それは当時の印象と同じ。

2018年12月17日(月)
「アニメスタイル014」のテキスト作業。『ヤマノススメ』再視聴は『サードシーズン』から『セカンドシーズン』に。夕方から新文芸坐打ち合わせ。『バキ』最新話まで3話分を観た。これは全4クールのシリーズなのかな。録画を2018年分のハードディスクに保存するか、2019年分のハードディスクに保存するかで悩む(後日追記。12月末放映分で最終回を迎えた。この後も作られるのかもしれないけれど、今回のシリーズは2クールだった。2018年のハードディスクに保存した)。

2018年12月18日(火)
「アニメスタイル014」のテキスト作業。Twitterでアニメスタイルの新刊「谷口淳一郎 アニメーション画集」について告知する。

2018年12月19日(水)
池袋マルイで開催中の「機動警察パトレイバー30周年記念展」を見に行く。初期デザインが興味深かった。それから高田明美さんのイラストの迫力が凄い。

WEBで音楽プロデューサーの須賀正人さんが亡くなられたことが公になった。須賀さんとは『ああっ女神さまっ』の前後に少しだけ接点があった。その仕事について詳しく知っているわけではないが、大変に濃厚な仕事をされた方であるのは間違いない。『らんま1/2』や『ああっ女神さまっ』に関しては音楽だけにとどまらず、作品自体の印象に、須賀さんの仕事が影響を与えているはずだ。心よりご冥福をお祈り致します。

2018年12月20日(木)
『ドラゴンボール超 ブロリー』をIMAXで観る。『ドラゴンボール』ファンのための娯楽作。超ハイカロリーなアクション作画が延々と、本当に延々と続く。思い切りのよい展開で、娯楽に徹している点に価値がある。その娯楽性の高さゆえに「一線を越えた作品」だと思った。僕個人としては、千葉繁さんのちびラディッツと、久川綾さんのブルマもポイントが高かった。

2018年12月21日(金)
取材の予習で『宇宙よりも遠い場所』を数話分観る。もう何度も観ているから、と思って観始めたのだが、改めて観ても新鮮で、楽しむことができた。夕方から取材。

2018年12月22日(土)
オールナイトの予習で『東京ゴッドファーザーズ』を観る。やっぱりよくできているし、面白い。病院の長回しの部分で、登場人物が作画の凄さに驚いているように見えた。いや、そんなわけはないんだけど。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110 〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション」。今回のトークのゲストは井上俊之さん、本田雄さん。盛り沢山で楽しいトークになったと思う。楽屋でもお酒を飲んでいた本田さんが、トークの終盤でトイレに行き、トークが延長になるというハプニングがあり、それも楽しかった。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 111
押井守映画祭2019 第二夜《天使のたまご&御先祖様》編

 2019年1月26日(土)にオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 111 押井守映画祭2019 第二夜《天使のたまご&御先祖様》」を開催する。「押井守映画祭」は鬼才・押井守監督の作品を数回に分けて上映する連続プログラムだ。

 今回の「押井守映画祭2019 第二夜」では、濃密なアニメーション作品を揃えた。『天使のたまご』は発表時に多くのファンを驚かせた作品。物語ではなく、表現で魅せる前衛的なアニメーションである。『御先祖様万々歳!』は演劇的な演出を取り入れたコメディで、アバンギャルドと娯楽性を両立させたOVAだ。そして、さらにもう1本の作品を上映する予定だ。

 トークコーナーの出演は、押井監督とアニメーターの西尾鉄也。前売り券は2018年12月29日(土)から、新文芸坐の窓口とチケットぴあで発売開始となる。なお、会場では「西尾鉄也画集」を始め、アニメスタイルの画集を販売する。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 111
押井守映画祭2019 第二夜《天使のたまご&御先祖様》編

開催日

2019年1月26日(土)

会場

新文芸坐

料金

当日一般3000円、前売・友の会2800円

トーク出演

押井守、西尾鉄也、小黒祐一郎

上映タイトル

『天使のたまご』(1985/75分/35mm)
『御先祖様万々歳!』全6話
他1本

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第593回 現状40代の自分

 2018年、最後の原稿。どうやら今年も「アニメ作りは面白い!」と思ったまま幸せに年を越せそうな板垣です。ご理解いただけない方もいらっしゃるかもしれませんが、

世の中には友達と遊んだり仲間と飲んだりすることより、何か「モノを作る」ことのほうが楽しいし幸せを感じる人間が、ある一定数いるのです! なぜなら俺がその内の1人だから!

 だいぶ(何年も)前にここで言ったと思いますが、俺、子どもの頃から「今日ウチで遊ぼ〜」と友達を自宅に呼んでおきながら、ふと良いアイデアが浮かぶと「ごめん、マンガ描きたくなったから」と追い返して、ひとりで描き始めたりするくらい、常に何かを作りたがっていました。時にはそれが「マイコン(現在で言うところのPC)でゲーム作り」だったり。

 今はそこまで極端なのはありませんが、誰かと楽しくダベってる時に「あ〜早く席に戻ってコンテ切りたい!」と思ってしまうのはよくあります! もちろん遊んだり飲んだりするのも好きだし、友達や仲間にも感謝しております。あくまで一番は「モノ作り」だってこと。ある時こっち(東京)の友人にそのことをカミングアウトした際、その友人から「ああ、そんなの見てりゃ分る」と返されました。要するに「一緒にいること事態は楽しそうでも遊びそのものには興味はなさそう」と。いや、よく分ってくれてます、そのとおり! まあその友人らともここ何年も会えていません、忙しくて。それも良し。もう20年の間に恐らく40年分はしゃべったので、10年や20年会わないくらいでちょうどいい。50歳過ぎたらまた飲もう! それより「今、この瞬間自分が作れるモノ」を大事にしたいから。
 20代は友人・仕事仲間らと散々飲んだし遊んだし、当時の新作アニメ・映画について語りに語り尽くしました。仕事的にもそれほど責任は重くなかったし、人様の作品にもあーだこーだ言って、朝までコースとかは当たり前でした。それだけで当時やっと人並みな原画が描ける程度の自分らでも「業界人の仲間入り」「アニメクリエイター候補生」だと勘違いして夢見心地でウマい酒が飲めたんです。でも20代も終わり、監督をやらせてもらうようになってから迎えた30代は、飲んで遊ぶが生活のメインになってはダメ(だと思う)。

監督は自分と一緒に作品を作ったスタッフを
良いトコへ連れて行く義務がある!

と考えていましたから。で、30代にヒット作を頂けなかった——それどころか降板も経験した板垣は、40代を迎える際「自分にはもう友人・仕事仲間を作品作りに誘う資格はない」と分ったのです。『てーきゅう』以降の作品になると、同期・友人・仲間に声をかける率が極端に減るのはこういう理由です。つまり『てーきゅう』は誰も誘わず一からの出直し。40代は自分の経歴などまるで知らない新人から仕事仲間を育てる。で、現在はその真っ最中!
 正直、50代はどうなるか分りませんが少なくとも

「80〜90年代のアニメより今のアニメのほうが面白い!」
とハッキリ思えるような自分でいたい!

と。「ワシらが若かった頃のアニメはのお」と後輩に説教しかしない”昔は良かった人間”なロートルだけにはなりたくない! いつの時代にもその時を生きる若い人たちに「希望」を語れる大人でいたいのです。とか思ってコレ書いてると

との話が飛び込んできました! こーなったら、もっと速くコンテ切れるように! もっと速くレイアウトが描けるようにさらに鍛えるしかない!

よし! 40代半ばになっても、まだまだ向上心健在!!
待ってろ2019年45歳! という訳で良いお年を!!

第147回 癒しでなく、なぐさめ 〜ホーホケキョ となりの山田くん〜

 腹巻猫です。冬のコミックマーケットに参加します。1日目、12月29日(土)東J-04b「劇伴倶楽部」です。新刊は渡辺宙明先生インタビューの総集編「渡辺宙明INTERVIEWS 2000〜2012」。既刊「THE MUSIC OF YAMATO 1974 宇宙戦艦ヤマト(1974)の音楽世界」も一部を改訂して第3版としました。コミケ参加のみなさま、会場でお会いしましょう。


 今年最後の更新となる今回は、劇場アニメ『ホーホケキョ となりの山田くん』を取り上げよう。
 『ホーホケキョ となりの山田くん』は、1999年7月に公開されたスタジオジブリ制作の劇場用アニメ作品。いしいひさいちが朝日新聞に連載している4コママンガ『となりのやまだ君』『ののちゃん』を原作に、今年4月に惜しくも亡くなった高畑勲監督が映像化した。山田家の家族=中学生・のぼる、小学生・のの子の兄妹と、父・たかし、母・まつ子、祖母・しげの5人を中心にした日常ギャグ作品だ。
 ジブリ作品の中ではちょっと地味な存在だが、筆者は気に入っている。深刻なテーマはないけれど、笑いながら観ているうちにじわじわと沁みてくるものがある。簡素に見える映像は、実は恐ろしく手が込んでいて、つい、繰り返し観てしまう。高畑監督の劇場作品では『じゃりン子チエ』と並んで好きな作品だ。

 音楽はシンガーソングライターの矢野顕子が担当した。
 独特の感性と音楽性を生かして国際的に活躍する矢野顕子は、「シンガーソングライター」のひと言では表現しきれない音楽家。10代からプロミュージシャンとして活動を始め、YMOとも共演。90年代からは坂本龍一と共にニューヨークに拠点を移し、アルバム制作、楽曲提供、ライブ、コンサートなど、ニューヨークと日本を行き来しながら、幅広く活躍している。しかし、本作以前に映像音楽の経験はほとんどなく、CM音楽や楽曲提供をした作品があるくらいだった。
 矢野顕子を抜擢したのは高畑監督の希望だった。矢野顕子に渡した音楽メモの中で、高畑監督は矢野の音楽をこんな風に評している。
 「矢野さんの歌は(中略)、音楽と戯れていて、遊び心がいっぱいです。そして、ふしぎな飛翔感・浮遊感があって想像力に訴えるくせに、いつも現実感覚を失っていない」
 「この映像には、矢野顕子さんの音楽のような、自由でくつろいだ、風の吹き通うゆとりの音楽がほしいと思います」
 高畑勲監督が『ホーホケキョ となりの山田くん』でめざしたのは、観客に架空のファンタジーの世界に浸ってもらう劇場作品ではなく、現実を肯定する作品、「癒し」ではなく「なぐさめ」を提供する劇場作品だった。この「癒しではなく、なぐさめ」というキーワードが矢野顕子の心にヒットしたという。矢野は高畑の言葉に共感し、「よしッ、一緒に作るぞ」と思ったと語っている。
 作中では、矢野の音楽とともに、クラシック音楽や既成の歌謡曲などがふんだんに使用されている。クラシック音楽も、多くはこの作品のために新録された音源だ。音楽録音は、ニューヨーク、プラハ、東京にまたがって行われた。音楽好きの高畑監督らしい、全編を音楽が彩るカラフルな作品である。
 サウンドトラック・アルバムは徳間ジャパンコミュニケーションズから、1999年7月に3種類が同時に発売された。
 劇中で使用されたクラシック音楽やオーケストラ曲を集めた「ホーホケキョ となりの山田くん クラッシック・アルバム」、矢野顕子が作曲・演奏した楽曲を集めた「ホーホケキョ となりの山田くん スペシャル・サウンドトラック」、そして、劇中に流れた音楽を使用順に収録した2枚組「ホーホケキョ となりの山田くん オリジナル・フル・サウンドトラック」である。各アルバムにはそれぞれ、「〜楽に生きたら。〜」「〜よし、ジブリと一緒に作るぞ!〜」「家内安全は世界の願い。」と副題が表記されている。
 「オリジナル・フル・サウンドトラック」には、「クラッシック・アルバム」と「スペシャル・サウンドトラック」に収録された曲を含めて、作中で使用された曲がほぼ完全収録されている(ただし、デパートで流れる環境音楽風の曲や中華料理店で流れる二胡の曲「YUEYA WUGENG」、ラジオから聴こえる五木ひろしの歌「細雪」などは未収録)。だから、どれか1タイトルというなら、「オリジナル・フル・サウンドトラック」を入手するのがお奨めだ。
 しかし、実は「スペシャル・サウンドトラック」も大事なのである。ブックレットには、先に引用した、高畑監督が矢野顕子に渡した音楽メモ(高畑監督の著書『映画を作りながら考えたことII』徳間書店にも再録)や矢野顕子のコメント、そして、高畑監督と矢野顕子の対談インタビューなどが掲載されているのだ。おまけに「フル・サウンドトラック・アルバム」に未収録の本編未使用楽曲も収録されている。音楽作りの背景まで知りたいファンなら見逃せないアルバムである。

 以下、「オリジナル・フル・サウンドトラック」をベースに本作の音楽を紹介しよう。
 2枚組、全47曲と曲数が多いので、収録曲は以下の徳間ジャパンの商品詳細ページを参照していただきたい。

http://www.tkma.co.jp/release_detail/id=3541

 音楽は大きく、矢野顕子のオリジナル楽曲と既成曲に分かれる。既成曲はクラシック音楽からポピュラー音楽(歌謡曲、童謡、テレビ主題歌など)まで幅広く選曲されているが、ほとんどの場合、キャラクターへの共感より、シーンと音楽とのギャップの面白さをねらって使用されている。
 たとえば、山田家のなんでもない日常の場面に、マーラーの重厚な交響曲やバッハの静謐な「プレリュード」が流れる。音楽がまじめで大げさであればあるほど、日常のおかしさが際立つ。また、往年の人気TV映画『月光仮面』の主題歌「月光仮面は誰でしょう」は、暴走族に毅然とした態度が取れなくかったたかしが落ち込む場面に流れ、たかしの傷心を強調する効果を上げている。
 いっぽう、矢野顕子の楽曲は、本作に春風のような心地よい空気を吹き込み、明るくほがらかなタッチで映画の世界観を支えている。
 特に印象に残るのが、3つの主題(テーマ)である。ひとつ目は主題歌「ひとりぼっちはやめた[QUIT BEING ALONE]」のメロディ。ふたつ目は「愉快な音楽」と名づけられたモチーフ。3つ目は「カッコウ」のモチーフだ。
 冒頭に流れる「テーマI お話がはじまるよ」で、さっそく主題歌のメロディが使われている。のの子のナレーションで山田家の家族が紹介される導入部の曲だ。
 その後も、山田家の出発をイメージした、たかしとまつ子の船出のシーンに「となりの山田くんのテーマ〜オーケストラバージョン〜」、海を行く山田家のイメージシーンに「テーマによるワルツ〜オーケストラバージョン〜」、迷子になっていたのの子の無事がわかるシーンに「テーマII よかったね」、帰宅中に雨に降られたたかしを傘を持った一家が迎えに来るシーンに「テーマIII 春の雨」が流れている。山田家のほのぼのとした日常を象徴する曲と言ってよいだろう。そして、エンディングを飾るのも、矢野顕子のピアノと歌による主題歌「ひとりぼっちはやめた[QUIT BEING ALONE]」だ。
 劇場作品の主題歌というと、とかく大きなテーマを歌い上げるものやシリアスなものになりがちだが、本作の場合は違う。軽快で親しみやすい曲調で、身近に見つかるささやかな幸福が歌われる。矢野顕子は、初めての打ち合せで高畑監督と話しているうちからメロディが浮かび、帰り車の中でそれを忘れないようにしていたという。共同プロデュース&アレンジは、セリーヌ・ディオンのグラミー賞受賞アルバムなどを手掛けたジェフ・ボーバ。聴けばすぐ口ずさめるようなメロディだけど、アレンジとサウンドは本格的だ。そのサウンドが、作品のラストにリッチな余韻を与えている。
 「愉快な音楽」は、主題歌の頭4小節のフレーズの変奏。矢野顕子のヴォーカル(ヴォーカリーズ)をフィーチャーした、軽快でユーモラスな曲である。冒頭の曲「テーマI お話がはじまるよ」に続いて、まつ子が「今日こそカレーにしよ」とつぶやくシーンから「愉快な音楽I 猪突猛進」が流れ始める。その後は、まつ子が慌ててバスの降車ボタンを押す場面の「愉快な音楽II とりあえず、押さないで下さい」、のぼるが家族に追われる場面の「愉快な音楽III 辛口だね」、のぼるが同級生の女生徒と傘の取り合いをする場面の「愉快な音楽V 学園は楽し」と変奏曲がくり返される。キャラクターのコミカルなシーンに流れて笑いを加速する曲である。
 矢野顕子のボーカルが効果的だ。もともと矢野顕子の声は親しみやすく、耳にすっとなじむ。矢野のボーカルが作品の空間を満たすと、ニコニコと笑いかけられているような気分になる。高畑監督がこの作品にほしかったという「ニコヤカサさ」とはこれなのだろう。
 「カッコウ」のモチーフはレオポルド・モーツァルト作曲とされる「玩具の交響曲 第2楽章 メヌエット」から採られている。カッコウの鳴き声を模したフレーズを矢野顕子のピアノが変奏していく。ウグイスが飛んでメインタイトルが現われるシーンの「カッコウI らしくないメインタイトル」で初めて流れ、以下、まつ子がのぼるに作らせたうどんを一緒に食べようとする場面の「カッコウII あ、おかえりなさい」、しげがビーフストロガノフを作ろうとして失敗する場面の「カッコウIII ストロガフガフ」、たかしが残り物の朝食を食べる場面の「カッコウIV ご名答」と繰り返されていく。コミカルな場面に流れるのは「愉快な音楽」と同様だが、こちらは一歩引いてオチをつける感じ。『ちびまる子ちゃん』のキートン山田のナレーションのような役割で使われている印象だ。
 「愉快な音楽」も「カッコウ」も、同じモチーフの変奏をしつこく使うことで「くり返しの笑い」の効果が生まれている。音楽をよく知る高畑勲監督ならではの演出である。
 ほかにも、たかしとまつ子がタンゴを踊るイメージシーンに流れる「たかしとまつ子のタンゴ」、山田家の忘れ物騒動を描写する「忘れ物のロンド」、矢野顕子のボーカリーズで高揚した気分を表現する曲「陽気な音楽」など、印象的な曲は多い。
 矢野顕子の音楽の特徴は、カッチリと譜面で固めて曲を作るのではなく、セッションスタイルでプレイしながら曲を作り込んでいくこと。その作り方からくるライブ感、楽曲から感じられる息づかいが、本作に生き生きとした人間味を与えている。加えて、矢野顕子がこだわったレコーディング環境——ニューヨークの馴染みのスタジオ、マイクをはじめとする録音機材、作品にふさわしい音を求めて選んだピアノ、少数精鋭のスタッフによる録音など——から生まれる洗練された響きが上質の料理のような味わいを生んで、音を聴いているだけで幸せな気分になるのだ。

 ところで、監督が矢野顕子に伝えた「癒しではなく、なぐさめを」とはどういう意味だろうか。
 「癒し」というワードは90年代頃からよく見るようになり、「癒し系」という呼び方に発展した。本来は病やケガからの回復を意味する言葉のはずだが、90年代からは、なんとなく心地よい、気分が落ち着いてリラックスする、といった意味で使われている気がする。「ヒーリング・ミュージック(癒しの音楽)」という呼称も同様である。
 矢野顕子は「癒し」という言葉を「消極的で、何かずるい感じのする言葉なので」好きではなかったと「スペシャル・サウンドトラック」のブックレットのコメントで語っている。
 「なぐさめ」には悪い状態を回復させる意味はない。高畑勲によれば、現実を受け入れて、この世でもう少し楽に生きるためのものだという。そのヒントは作品の中にある。
 ラスト、山田家の人々たちがマイクを持って歌うのはドリス・デイの歌唱で大ヒットした「ケ・セラ・セラ」。日本語訳詩を高畑監督自らが手がけている。未来はわからなくても、なるようになる、と歌うポジティブな歌だ。その歌をバックにしたシーン、のの子の担任の先生・藤原ひとみ(演じるは矢野顕子!)が生徒から「今年の決意」を聞かれて半紙に書く言葉は「適当」。このふたつから、高畑監督のメッセージが伝わってくる。
 世の中は思いどおりにいかない。悪いことも悲しいこともあるけれど、笑って生きていきましょう。「なぐさめ」とは、痛みを抱えたままこの世界を生きる人々への励ましなのだと筆者は受け取った。矢野顕子の音楽は、だから明るく、胸に沁みる。

 みなさん、よいお年を。

ホーホケキョ となりの山田くん オリジナル・フル・サウンドトラック
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ホーホケキョ となりの山田くん スペシャル・サウンドトラック 〜よし、ジブリと一緒に作るぞ!〜
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ホーホケキョ となりの山田くん クラッシック・アルバム 〜楽に生きたら。〜
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アニメ様の『タイトル未定』
185 アニメ様日記 2018年12月9日(日)~

2018年12月9日(日)
この土日は久しぶりにテキスト作業に専念できた。正直言って楽しかった。テキストだけをやれるのって、なんて楽しいんだろう。作業をしながら『やがて君になる』を最新話数まで観る。それから、Amazon Prime Videoのジャンクフィルムでドラマ「009ノ1」を観始めた。「009ノ1」は石森章太郎(現・石ノ森)原作の女性アクションもので、1969年に放送されたものだ。そういったドラマがあるのは知っていたが、観る機会に恵まれるとは思わなかった。3話「裏切り寝返り大合戦」は辻真先さんの脚本で、盲目の超能力少女が登場する。オチも含めて印象的だった。

2018年12月10日(月)
アニメージュ2019年1月号(vol.487)の発売日。「この人に話を聞きたい」第二百二回は森山洋さん。監督作の『メガロボクス』だけでなく、『ギルティクラウン』や『進撃の巨人』のイメージボードやデザインの話もたっぷりうかがった。「谷口淳一郎 アニメーション画集」校了。しかし、ひと休みする時間はなく、別の作業に。『レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~』を1話から観返す。寝る前にKindleで、平野耕太さんの「ドリフターズ」の最新の6巻を読む。猛烈に面白かった。

2018年12月11日(火)
引き続き『レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~』を観る。寝る前にKindleで、吉田戦車さんの「忍風! 肉とめし(1)」を読む。主人公はくノ一のハコベという女の子で、このハコベがいい。可愛いというのとはちょっと違う。あえていうと、存在感があるかな。いや、それだけでもないか。とにかくいい。それと、マンガの中に登場する「肉とめし」を食べたくなる。ちなみに「肉とめし」とは肉とご飯だけの食事のことだ。

2018年12月12日(水)
『レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~』を最新話まで観る。宇宙人の話(32話)と小説の中の謎を解く話(33話)が傑作で、そこから「レイトン教授と秘宝レリクス エピソード3」(34話)に繋がる流れが最高だった。「設定資料FILE」の構成をする。猛スピードで、なおかつ丁寧に。

2018年12月13日(木)
映画「ピクセル」をAmazon Prime Videoで観た。ながら観だったし、正直言うと、ゲームのネタもよく分からなかったかけれど、楽しかった。柳沢慎吾さんと神谷明さんの吹き替えがよかった。神谷さんの「俺だよ。モッコリちゃん」は『CITY HUNTER』パロディだけど、きれいにハマっていた。オタクの自己実現の話としては、それでいいの? とは思ったけれど、文句を言うほどの違和感ではない。オタクの自己実現の流れで、続けて「レディ・プレイヤー1」を再見する。

2018年12月14日(金)
特典小冊子「谷口淳一郎のうすい本」校了。「アニメスタイル014」と来年刊行する書籍の作業が進行中だ。

2018年12月15日(土)
WOWOWで綾瀬はるかさん関連作品の連続放送をやっていて、それを流しながら作業をする。「プリンセス トヨトミ」って、タイトルだけは知っていたけど、こんな内容の映画だったのか。寝る前にKindleで、植芝理一さんの「大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック」の3巻を読む。諸般の事情で、実の母親にときめいてしまう男の子の話だ。1巻を読んだ時には「ついていけない」と思ったのだけど、気がついたらその主人公に共感してしまっている。

アニメ様の『タイトル未定』
184 アニメ様日記 2018年12月1日(土)~

2018年12月1日(土)
事務所で作業しながら、Amazon Prime Videoの『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』を1話から観る。地に足のついた物語で、丁寧に作られている。その印象は変わらず。ただ、今回の再見の方が楽しめた。もう1クール観たいなあ。

2018年12月3日(月)
「アニメスタイル014」の取材。来年出す書籍の資料をお借りする。夕方、居酒屋でホッピーを飲みながら、印刷費、印税、編集費などを計算しつつ、あっ、これならかなり豪華な作りにしてもいいんじゃね、と思ったり。分厚くて、オールカラーの書籍を実現するために変化球の判型を考えて、見積もりをとったのだけど、それだとかえって印刷費がかかることが分かった。

2018年12月4日(火)
年末に出す書籍の総ページ数を変更。印刷スケジュールも変更。

2018年12月5日(水)
年末に出す書籍が、内容やスケジュール以外のところでピンチに。

2018年12月6日(木)
年末に出す書籍の入稿。入稿したからといって、一段落するわけではない。
2019年春に『響け!ユーフォニアム』シリーズの原作の新刊が出ることを知る。タイトルは「北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章」。これは3年生になった久美子達達の物語だそうだ。なお、僕はアニメを観た後で読むつもりなので、原作についてはまだ3冊目までしか読んでいない。2019年4月公開予定のアニメ版『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』は久美子達が2年生時代の話である。ということは『~誓いのフィナーレ~』は、タイトルに『フィナーレ』という言葉が入っているが、完結編でない可能性がある。前から、2年生時代の話で『フィナーレ』とついているのが気になっていたのだ。『フィナーレ』の後に3年生時代をアニメでやるとしたら、タイトルに『アンコール』がつくのだろうか。

2018年12月7日(金)
12月5日(水)のピンチがなんとかなりそうだ。なんとなく、仕事をしながらAmazon Prime Videoで映画「しなの川」を観る。由美かおるさんが目立てだ。Amazon Prime Videoにジャンクフィルムというチャンネルがあり、東映の昔の映画が観られる。入会してみる。

2018年12月8日(土)
作業をしながら、ネット配信で『やがて君になる』を観る

第591回 石塚運昇さんと第9話

『ユリシーズ』第9話の放映を観て何かお気づきになった方、
違和感を感じられた方、いらっしゃるのではないでしょうか?
それには訳があります

 たしか6月中旬か下旬のこと、以前にも説明したとおり『ユリシーズ』は毎週ノンストップでコンテを上げていた(最終話脱稿が8月上旬)ので、アフレコもかなり快調にこなしていた最中だったと思います。「運昇さんが入院される」と委員会から報告があったのは。その時の話では「最低で2ヶ月ほど」と言われたので「9話のダビング直前ギリまで待ちます」と俺。それから1ヶ月後くらいでしたか。再度委員会より「『運昇さんが現場に戻ってこられないかもしれない』と事務所から連絡があり、残った9話と最終話のナレ録りが、できなくなる可能性もあります(10、11話はもともとナレーション部分がありませんでした)。そこでまだ放映開始前なので、ナレーションを別の方にして1話からすべて録り直しますか、監督?」と。

いや、まだ闘病中でいらっしゃるのに、縁起でもない最悪の事態を想定して、最初から他の人で録り直すなんて自分はしたくないです! やっぱりこちらが熱望してお願いした側なら、希望をもって待つのが礼儀だと思うし、それでもし万が一のことがあったとしても、ナレーションではないやり方で乗り切るのがプロの仕事でしょう! もしそうなったら俺が編集でなんとか埋めますので、ナレーションは石塚運昇さんのままでいきましょう!

が俺の答え。
 そして8月中旬、訃報が届きました。思えば『ベルセルク』に続いてナレーションをお願いしたのですが、あとで聞いた話によると、その頃も病院からスタジオに通われていたそうです。『ベルセルク』よりもさらに「歴史もの」の風格を『ユリシーズ』に与えてくださった運昇さん。ナレーションは本当に運昇さんでよかったです。

謹んでご冥福をお祈りいたします

 ゆえに、9話の冒頭は歴史パートに前回までのあらすじをコラージュして、エンディングを30秒長くして、ナレーション分の尺を埋めたというわけでした。
 で、最終話は——観てください!

第146回 切なく愛しいユートピア 〜楽しいムーミン一家〜

 腹巻猫です。いよいよ12月15日にサントラDJイベント・Soundtrack Pub【Mission#37】開催です。サントラDJ募集にたくさんの応募ありがとうございました。4人の方に回していただきます。特集「80年代アニメサントラ群雄割拠時代〜キャニオン編(完結編)」と「サントラ最前線」もお楽しみに。詳細は下記をご覧ください。

http://www.soundtrackpub.com/event/2018/12/20181215.html


 脚本家・監督の宮崎晃が11月25日に亡くなった。実写出身で、TVアニメ『あらいぐまラスカル』(1977)からアニメ脚本に進出。『ペリーヌ物語』(1978)、『トム・ソーヤーの冒険』(1980)、『牧場の少女カトリ』(1984)、『愛の若草物語』(1987)など、「世界名作劇場」でのすばらしい仕事が忘れられない。『ラスカル』以降、多くの作品をともに手がけた監督・斉藤博とは名コンビとも呼ばれた。
 今回は宮崎晃×斉藤博の最後のコンビ作品となった『楽しいムーミン一家』を取り上げよう。

 『楽しいムーミン一家』は、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンとその弟でマンガ家のラッセ・ヤンソンの原作をもとに製作されたTVアニメ作品。1990年4月から1991年10月までテレビ東京ほかで全78話が放送された。続いて、続編『楽しいムーミン一家 冒険日記』全26話が放送されているが、こちらには宮崎晃と斉藤博は参加していない。
 筆者は『ムーミン』といえば岸田今日子がムーミンの声を担当した旧アニメ版(1969、1972)を思い出す世代。宇野誠一郎作曲の主題歌「ねえ!ムーミン」も頭に刷り込まれている。『楽しいムーミン一家』が始まった当初は、思い出が塗り替えられていくような、ちょっとさみしい気持ちになったものだ。しかし、諸事情により旧アニメ版が観られなくなってしまった現在、アニメ版『ムーミン』として多くの人が思い浮かべるのは、この『楽しいムーミン一家』のほうだろう。
 新アニメ版は、キャラクターデザインを『とんがり帽子のメモル』の名倉靖博が手がけ、シリーズ構成とメインライターを宮崎晃が、監督を斉藤博が務めた。端正な線のキャラクターと淡い色彩の美術で描かれる世界は、どの場面を取っても絵本の1ページのように絵になっている。
 原作は単純に子ども向けとは言えないクセのある作品で、その抽象的・観念的な部分を映像化するのに苦心したと斉藤博は語っている。いっぽう、宮崎晃は「ムーミンはまったく人間的」と語り、「やりやすい仕事だった」と振り返っているのが面白い。キャラクターの言動からにじみでるユーモアや淡々とした描写で綴るドラマは世界名作劇場に通じるものがあり、旧アニメ版とはまったく別のムーミンの世界として楽しめる作品である。

 音楽は、主題歌を歌った白鳥英美子の夫である白鳥澄夫が担当した。
 白鳥英美子(旧姓・山室)は1969年に結成されたポップスデュオ「トワ・エ・モワ」の1人として活躍。1973年にトワ・エ・モワが解散したあとは、一時音楽活動から遠ざかっていたが、元ブルーコメッツの白鳥澄夫と結婚後、1977年に白鳥とともにユニット「鴉鷺(あろ)」を結成して3枚のアルバムを発表。現在はソロ活動を中心に活躍している。本作では、主題歌・挿入歌の作詞と歌唱を担当したほか、本編のナレーションも担当していた。
 白鳥英美子とアニメ音楽の縁は1980年に遡る。鴉鷺時代に松本零士原作のTVアニメ・スペシャル『マリンスノーの伝説』の主題歌「海に還る」「ふたりの郷(ふるさと)」の2曲を作詞し、歌っているのだ。この2曲の作曲を手がけたのが白鳥澄夫だった。2005年には、渡辺俊幸のプロデュースで『銀河漂流バイファム』のイメージソング集「白鳥英美子バイファムを歌う(EMIKO SHIRATORI SINGS VIFAM)」というアルバムを発表している。
 主題歌・挿入歌全曲とBGMの作曲を担当した白鳥澄夫は、本作以前にCM音楽などを手がけたことはあったが、本格的に映像音楽を担当するのはこれが初めてだった。キングレコードの担当者から声をかけられて本作に参加することになり、最初にオープニング&エンディング主題歌となる「夢の世界へ」と「遠いあこがれ」の2曲を作った。これをトーベ・ヤンソンに送ったところ、気に入ってもらえて、自信を得たという。
 本作の音楽作りは一般的なアニメ音楽の作り方とは違っている。音楽メニューをもとに音楽を作っていくのではなく、初めは音響監督との打ち合せもなく、放送の3ヶ月くらい前から、ほぼおまかせで音楽を作っていったのだそうだ。音響監督(斯波重治、浅梨なおこ)から注文がくるようになったのは放送が始まってから。放送開始後も番組を観ながら音楽を作り続け、放送期間中「ずっと作っていた」(白鳥英美子の言葉)というから驚く。書いた曲は140曲にもなり、そのうち本編で使用されたのはおそらく4分の1ぐらい(白鳥澄夫の言葉)。しかし、実際はもっと多くの曲が使われていると思われる。
 白鳥澄夫の音楽は、リリカルで素朴で透明感があり、やさしく耳に残る。もともとソングライターだけあって、どの曲も口ずさめるような親しみやすいメロディを持っているのが特徴だ。作曲にあたっては、子どもが聴くだけでなく、一緒に観ている大人たちにも聴けるような音楽作りを心がけたという。
 こういうファンタジー/メルヘン作品の音楽は生楽器中心のサウンドで作られることが多いが、本作はシンセがふんだんに使われている。それがかえって、ふわふわした非日常感をかもしだしていて、人間世界と隔絶したムーミンの世界に合っていた。
 本作の音楽アルバムは、放送当時、キングレコードから3枚発売されている。
 1枚目は1990年7月に発売された「楽しいムーミン一家 VOL.1」。主題歌2曲と挿入歌「ムーミン谷に春が来た」のほか、BGM6トラックが収録されたサントラ・アルバムである。BGMには一部ナレーションが重なっているが、ほとんどの曲はフルで音楽のみを聴くことができる。
 2枚目は1990年12月に発売された「楽しいムーミン一家 スナフキンの旅立ち」というアルバム。ドラマ編と思われがちだが、これもサントラ・アルバム(実質的な「VOL.2」)である。全8トラックに主題歌2曲のTVサイズとBGMを収録。これも一部の曲にナレーションとドラマが重なっているが、大半は音楽だけをフルサイズで聴くことができる。
 3枚目が1992年7月に発売された「ムーミン・セレクション〜ムーミン主題歌集〜」。『冒険日記』を含むTVシリーズの主題歌・挿入歌7曲と劇場版『ムーミン谷の彗星』の主題歌2曲に、BGM11トラックを加えた全20曲を収録。このアルバムにはナレーションやドラマは入っていない。白鳥英美子と白鳥澄夫のコメントも掲載された、本作の集大成的なアルバムである。
 この3タイトル、パッケージもそれぞれ凝っていた。1枚目はケースの裏にインレイ(CDトレイの下に入れる紙)が入ってなくて、外からCDの盤面が見えているタイプだが、ジャケットを開くとインレイが別に入っていて、自分でケース裏にセットできるようになっている。2枚目の「スナフキンの旅立ち」は白い紙箱入り。3枚目の「ムーミン・セレクション」はブックレットが絵本かと見まがうような美しく手の込んだデザインだった。どれも、本作に対するスタッフの愛情が伝わってくるパッケージである。
 2014年9月、突然、「楽しいムーミン一家 ベスト・セレクション」というアルバムがキングレコードから発売された。トーベ・ヤンソン生誕100年にちなむ企画だったようだ。「TVエイジ」シリーズを展開する濱田高志が企画・構成を手がけたベストアルバムである。内容は「ムーミン・セレクション」をベースに未収録BGMを追加した全33トラック。ブックレットには白鳥英美子と白鳥澄夫の最新インタビューも掲載されている。『楽しいムーミン一家』ファンには思わぬプレゼントとなった1枚だった。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 旅人・スナフキン(ハーモニカ・ヴァージョン)
  2. 夢の世界へ(歌:白鳥英美子)
  3. さあ出航※
  4. ムーミン谷に春が来た(歌:白鳥英美子)
  5. さんぽ※
  6. 春の風はやさしくて※
  7. 遠いあこがれ(歌:白鳥英美子)
  8. 春になれば
  9. ねむりの国へ
  10. おまじないのうた(歌:ポンピン隊〜ムーミン谷の仲間たち〜)
  11. さすらいのスナフキン※
  12. いつかすてきな旅(歌:白鳥英美子)
  13. ゆかいなピクニック
  14. 旅立つ日に
  15. 二人の誓い
  16. 君がすべてさ※
  17. ヘソまがりんちょ(歌:水森亜土&タイロン橋本)
  18. ゆかいな仲間たち※
  19. ムーミン’S マーチ(歌:esウィンド・シンガーズ)
  20. 元気を出して※
  21. ダンス
  22. 新しい冒険
  23. そして、日が暮れて
  24. スナフキンの旅立ち※
  25. せまりくる危機だ※
  26. 旅人・スナフキン※
  27. 星の河
  28. 明日への希望※
  29. しあわせのモルガーネ(歌:白鳥英美子)
  30. ムーミン谷に春が来た(インストゥルメンタル)※
  31. 旅立ち※
  32. この宇宙へ、伝えたい(歌:白鳥英美子)
  33. この宇宙へ、伝えたい(ハーモニカ・ヴァージョン)

※印は「ムーミン・セレクション」に収録されていなかったトラック。

 印象的な曲をいくつか紹介しよう。
 トラック1「旅人・スナフキン(ハーモニカ・ヴァージョン)」はスナフキンが吹くハーモニカの曲。旧アニメ版のスナフキンはギターを弾いていたが、本作ではハーモニカを吹いているのだ。郷愁を誘うノスタルジックなメロディと響きがムーミンの世界への導入になっている。
 トラック3「さあ出航」はアルバム「スナフキンの旅立ち」で「ムーミンと仲間たち」というトラックの後半に収録されていた曲。単独では初収録になった。ドリーミィなイントロからシンセリードの音が奏でる哀愁を帯びたメロディに続くリリカルな曲だ。第59話「パパの思い出」で若きムーミンパパが「海のオーケストラ号」に乗って出航する場面や第77話「完成! 空飛ぶ船」でスノークが自作の飛行船で大空を飛ぶ場面に流れていた。胸がキュンとなるような魅力的なメロディは本作の音楽の大きな特徴である。
 トラック5「さんぽ」はリコーダー風の音で奏でられる可愛くはずんだ曲。第36話「クリスマスって何?」でクリスマスツリーの飾りつけをするムーミンたちなど、ユーモラスなシーンに流れていたのが記憶に残る。
 トラック6「春の風はやさしくて」はアルバム「楽しいムーミン一家 VOL.1」に収録されていた同名トラックからナレーション部分をカットしたもの。口笛の音が奏でる楽しいマーチである。第1話「ムーミン谷の春」でムーミンたちが春の山道を歩く場面に流れている。
 白鳥英美子のスキャットがフィーチャーされたトラック9「ねむりの国へ」はタイトル通り子守唄風の曲。この曲をはじめ、本編中ではスキャットの曲がたびたび流れて映像を温かく彩っている。これらの曲は白鳥澄夫が基本のメロディだけを書き、白鳥英美子が自由に歌って録音していたそうだ。
 トラック11「さすらいのスナフキン」は、白鳥澄夫が自分でも好きな曲と語るマカロニウエスタン風のスナフキンのテーマ。本作では珍しいアクション系の曲である。
 切ないメロディが胸にじーんとくるトラック14「旅立つ日に」は、白鳥澄夫のメロディメーカーとしての才能が発揮された名曲のひとつ。やさしく包み込むようなサウンドと切ない旋律を聴いていると甘酸っぱい気持ちになる。第59話でムーミンパパがムーミンたちに自分の生い立ちを語り始める場面にたっぷりと流れていた。
 スキャットとギターによるトラック16「君がすべてさ」はフランス映画音楽のようなロマンティックな曲。恋人たちのイメージなのだろう。「大人も聴ける」という本作の音楽の方向性を象徴する1曲だ。
 トラック24「スナフキンの旅立ち」は、アルバム「スナフキンの旅立ち」に収録されていた同名トラックからドラマとナレーション部分をカットしたもの。前半はマカロニウエスタン風のメロディをシンセリードが奏でる曲。第2話「魔法の帽子」の飛行オニの登場シーンや第78話(最終話)「ムーミン大空へ」でスナフキンとスノークが飛行船に乗って飛ぶシーンなどに使われていたカッコいい曲である。後半はふわっとしたストリングスのアンサンブルから始まる叙情的な曲になる。「ナレーション部分をカットした」と書いたが、この後半に入るところにナレーションが重なって収録されている。BGMだけの素材がなかったのだろうか。惜しいところである。
 トラック26「旅人スナフキン」は、ハーモニカとチェレスタ、ピアノ、弦楽器などが奏でるスナフキンのテーマ。アルバム「楽しいムーミン一家 VOL.1」に収録されていた同名トラックからナレーション部分をカットしたもので、「VOL.1」ではハーモニカ・バァージョンとメドレーで収録されていた。本作のスナフキンは旧アニメ版の大人びたキャラとはちょっと違って、ムーミンたちと一緒に遊んだりする親しみやすいキャラクターになっている。
 アルバムの中でもとりわけファンタジックな曲想のトラック27「星の河」は、幻想的なシンセのサウンドにミステリアスなスキャットがからむ曲。第68話「ママと運命の出会い」で、若きムーミンパパが夜の荒れる海でムーミンママと初めて出逢う場面に流れた重要な曲だ。
 トラック28「明日への希望」は、ややエキゾティックなメロディラインを持つ希望の曲。第21話「スナフキンの旅立ち」で、ムーミンが夢の中でスナフキンと一緒に空飛ぶ船に乗る場面に使われていた。
 トラック31の「旅立ち」はアルバム「スナフキンの旅立ち」の「川のほとりで」というトラックの前半に収録されていた曲。同アルバムでは旅立ちを前にしたスナフキンとムーミンが語らうセリフのバックに流れていた。ムーミンのさびしさを表現するもの悲しいメロディに胸が締めつけられる。
 その「旅立ち」に代表されるように、本作の音楽は、主題歌を含め、どこかさびしい味わいを持つ愁いを帯びた曲が多い。丸っこく温かいムーミンの世界に似つかわしくないような気もするが、その曲と映像が一体となることで、懐かしくて不思議なムーミンの世界を完成させているのだ。音楽から感じるさびしさは、永遠のユートピアを生きるムーミンたちの世界に触れたときに私たちが感じるさびしさ、「そこにはけしてたどりつくことはできない」という切ない気持ちなのではないだろうか。

 今回取り上げた「ベスト・セレクション」に収録されなかった曲の中にも名曲が残っている。第1話の冒頭に流れていた冬のムーミン谷を描く長い曲「ムーミン谷・冬」(第13話「地球最後の龍」では龍のテーマとしても使われた)はアルバム「楽しいムーミン一家 VOL.1」に収録。第1話〜3話で使われた重要な曲のいくつかを同アルバムで聴くことができる。また、アルバム「スナフキンの旅立ち」にも、主題歌のインスト版や劇場版で流れていた曲など、「ベスト・セレクション」に入らなかった曲が多数収録されている。「ベスト・セレクション」だけでは物足りないという方は、ぜひほかのアルバムもお聴きいただきたい。

楽しいムーミン一家 ベスト・セレクション
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ムーミン・セレクション〜ムーミン主題歌集〜
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楽しいムーミン一家 スナフキンの旅立ち
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楽しいムーミン一家 VOL.1
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アニメ様の『タイトル未定』
183 アニメ様日記 2018年11月25日(日)~

2018年11月25日(日)
WOWOWの「惑星大戦争」「宇宙からのメッセージ」を流しつつ原稿作業中。この2本を連続で放送するのは、いいプログラムだなあ。いつも行く公園の猫の1匹がもらわれていったことを知る。誰かの家で飼われるほうが、猫にとっては幸せなんだろうけど、さよならが言えなかったのがちょっと悲しい。

2018年11月26日(月)
来年出版するある書籍のための取材。帰りにササユリカフェの「人狼 JIN-ROH 沖浦啓之展」をのぞく。展示物は多くはないが、レアな資料がいくつも。今さら言うまでもないことかもしれないが、やはり、沖浦さんの画力は凄まじい。

2018年11月27日(火)
「アニメスタイル014」のある記事のために、ある会社で打ち合わせ。その帰りに「2018神宮外苑 いちょう祭り」に。売店でSuicaなどのカードが使えるようになり、非常に便利になっていた。ロングインタビューのチェックが戻ってくる。本人の直しも、メーカーの直しも、一箇所もなし。体調がいまひとつなので病院に。治りかかった風邪が治りきらない状態が続いてるらしい。風邪薬をもらった。

2018年11月28日(水)
午前中はDVD『DETONATORオーガン』を流しながら作業をした。「アニメ産業レポート2018」が12月に刊行されることを知る。刊行が遅れているようなので、ちょっと心配していた。いや、他の人の心配をしている場合ではないんだけど。

2018年11月29日(木)
まだ風邪が治りきらない。と言っても休んでいるわけにもいかないので、ジワジワと作業を進める。作業をしながら、近々に配信が終わるらしい「飛びだす冒険映画 赤影」をAmazon Prime Videoで観る。当時劇場で観ているはずだけど、小さい頃のことで、まるで内容を覚えていない。赤影が観客にメガネをかけるように言うのだけは覚えていた。最後に立体メガネを使わない立体視があって、それをネタに赤影が映画館にいるお客さんに語りかけて「ハハハハハ」と笑って終わるのね。これも覚えていなかった。続けて「飛び出す人造人間キカイダー」「飛び出す立体映画 イナズマン」を観る。考えてみると、劇場版の『プリキュア』でミラクルライトについて観客に呼びかけるのは、「東映まんがまつり」の一連の立体映画がルーツだなあ。

2018年11月30日(金)
今度はAmazon Prime Videoで近々に配信が終わるらしい『悪魔くん』(劇場版・第1作)を視聴。Amazon Prime Videoの配信タイトルをチェックしていて、シンエイ動画版の『怪物くん』を見つける。前から観返したかった「カミキル博士とハイタ氏」を視聴する。「カミキル博士とハイタ氏」は前後編で、前編にはリアルタッチのプロレスラー達が出てくるのだが、その作画が凄い。その作り込みゆえに相当な異色編となっている。Amazon Prime Videoではエンディングがカットされているが、検索してみたところ、この話の原画の筆頭が木上益治さんであったようだ。多分、特に作画がいいところが木上さんの原画なのだろう。その後、『怪物くん』で木上さんが作画で参加している回を再生する。

2018年12月1日(土)
やらなくてはいけないことが山のようにあるけれど、今日は明日以降に作業を進める準備をする。というつもりだったのだけど、その準備もあまり進まず。

第153回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(2)

 2019年1月13日に開催するトークイベントは「第153回アニメスタイルイベント 『この世界の片隅に』に至る道(2)」だ。
 「『この世界の片隅に』に至る道」は、片渕監督が『この世界の片隅に』を手がけるまで、どのような道をたどってきたのかについて、じっくりとうかがうイベントシリーズである。今回は彼が若き日に関わった『NEMO』のトークの中心となる予定だ。

 会場は前回の阿佐ヶ谷ロフトAではなく、新宿のLOFT/PLUS ONEだ。くれぐれもお間違えなきように。また、今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は12月8日(土)から発売開始。詳しくは以下のリンクLOFT/PLUS ONEのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/105121

第153回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(2)

開催日

2019年1月13日(日)
開場12時00分 開演13時00分 

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となるLOFT/PLUS ONEはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第590回 アニメーターという職人

 そういえば何回か話題に上げた「1カットだけ原画を描いた『ポケモン』」が放映されたようですね(自分はまだ観てませんが)。飯島正勝先生(第585回)らの「東デ(東京デザイナー学院)OBで1本やろう」という呼びかけに応じての参加。「1カット1発原画なら」とお引き受けしたんですが、上手く描けなかったかも(汗)。『深夜バカボン』の時もそうでしたが「忙しい、忙しい!」と言いながらも飛び込みで入ってきた原画の仕事をササッ! とこなせる職人でありたいと常々思ってます、コンテも演出も作監も。ただでさえ人手不足の業界で「俺様は作家だから高いよー」とアーティスト気取りでもったいぶったって何も寄与しないと思うから。自分は常に

技術を持つことの素晴らしさ!!

を後輩らに伝えていきたいと思っているのです。

アニメ様の『タイトル未定』
182 アニメ様日記 2018年11月18日(日)~

2018年11月18日(日)
早朝に新文芸坐に。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル Vol. 109 宇宙の星よ永遠に 『無敵超人ザンボット3』の終盤に立ち合う。上映も少し観た。画も綺麗になっているが、音もいい。最終回のラストシーンは波の音がよかった。昼と午後は、冬に出す書籍のためのテキスト作業。

2018年11月19日(月)
この日も、冬に出す書籍のためのテキスト作業。

2018年11月20日(火)
明日の映画のチケットを購入。この映画に行くためには今日中に原稿を終わらせなくては。作業をしながら、劇場版『魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語』と『[後編] 永遠の物語』を観返す。やっばりよくできているし、面白い。序盤の(TVシリーズだと1話の部分)の何気ないセリフが、伏線になっているのも巧い。
打ち合わせで「『電脳コイル』のデンスケの名前って、コメディアンのデン助(大宮敏充)からきているのかなあ」と話したのだが、その場にいる人達には通じなかった。その話から思い出したのだけど、『アキハバラ電脳組』でパタPiにデンスケという名前がつけられた時も「今どき、分かんないですよ」とスタッフが言い合っていた(自分も言ったかもしれない)。『アキハバラ電脳組』から20年経っているんだから、通じなくても仕方がないか。あ、『アキハバラ電脳組』のデンスケも、『電脳コイル』のデンスケも電脳ペットだ。それから『アキハバラ電脳組』のデンスケはテープレコーダーのデンスケからとられている可能性もあるなあ。

2018年11月21日(水)
早朝、事務所で『終電後、カプセルホテルで、上司に微熱伝わる夜。 』をまとめて観る。これは観ていて照れるなあ。午後はユナイテッド・シネマとしまえんでIMAX「ボヘミアン・ラプソディ」を観る。クライマックスのライヴエイドのスケール感、臨場感は凄まじいほどのものだった。IMAXで観てよかった。よい企画と予算と才能とがあればここまで凄いものが作れるのだなあ。

2018年11月22日(木)
確認することがあって『月刊少女野崎くん』1話を観直す。やっぱり面白い。そして、『多田くんは恋をしない』がようやく分かったような気がした。午後は冬に出す書籍のために、二度目の取材。

2018年11月23日(祝・金)
午前中に「ボンズ20周年記念展」のPart2に行く。午後は学生さんの面接。東映チャンネルで放映中の『空飛ぶゆうれい船』を観る。いやあ、綺麗だなあ。

2018年11月24日(土)
トークイベント「第151回アニメスタイルイベント 馬越嘉彦の仕事を語る!2」を開催。今回の出演は馬越嘉彦さん、長濵博史さん、長峯達也さん、西位輝実さん。今回も楽しいイベントになった。『十兵衛ちゃん2 -シベリア柳生の逆襲-』制作時の西位さんのニックネームがジャブであるのは前から知っていたが、目の前で長濵さんが「ジャブ」と呼ぶのを見ることができたのはちょっと嬉しかった。トークでは「ジャブ」というニックネームがついた経緯を長濵さんに語っていただいた。

第152回アニメスタイルイベント
井上俊之の作画を語ろう・2019

 2019年最初のトークイベントは「第152回アニメスタイルイベント 井上俊之の作画を語ろう・2019」だ。
 「井上俊之の作画を語ろう」はカリスマのニックネームで親しまれているスーパーアニメーターの井上俊之に、作画について思う存分に語ってもらう企画である。2018年7月に第一弾を開催し、今回は第二弾だ。トークでは様々なテーマが語られるはずだが、そのうちのひとつが『電脳コイル』となる予定だ。井上俊之以外の他の出演者については、決まり次第発表する。

 今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は2018年12月1日(土)から発売開始。詳しくは、以下のリンクの阿佐ヶ谷ロフトAのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/105124

第152回アニメスタイルイベント
井上俊之の作画を語ろう・2019

開催日

2019年1月6日(日)
開場18時00分 開演19時00分 

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

井上俊之、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第589回 動画と原画と作監

 前回からの続き。アニメーターとして動画・原画・作監とひととおりキャリアのある方なら、口に出さないまでも薄々感じてる方のほうが多いと思うのですが

動画が早くてキレイな人が巧い原画マンになるとは限らないし、その激巧な原画マンが必ずしも良い作画監督になるとは限らない!

のです。いつの時代でも先達らは「今の若いモンは」「俺らが新人の時は」などと叱咤し、自身が味わったのと同じ苦労を後輩・新人にも課そうとするものです。アニメーターで言うと

動画は月1000枚で1人前!
原画は月で半パートが基本!
作監になるには最低原画5年のキャリアが必要!

などなど。これらは実際、自分が新人の頃、先輩に言われた事柄です。ちなみに俺が新人の頃は、動画月300〜400枚で3年間、原画は月5〜60カット(ただしテレコムはアメリカの合作時は秒換算になるので月6〜70秒)で4年間。その後フリーで演出2年ほどやって、監督をやらせてもらえるようになり、監督キャリアはもうぼちぼち15年でしょうか。ね? 月1000枚も月半パートもこなせてなくても、なんとかやってます。要するに、例えば「動画何百枚を何ヶ月続けたら原画試験を受けられて、原画何年で作監へ」と決まってる会社(スタジオ)があったとして、多分そこにはそれほど根拠などなく、ただただスタジオの作画の長が「自分の若かった頃は」の根性論を当てはめて「自分と同じ苦労を味わっていない人は上へ上げたくない」を実践してるだけな場合が多いと思うのです。体育会系的な。だから、これはあくまで私見ですが

昨今、人での足りないアニメ業界で必要なことは「アニメの本数を減らせば人手が足りる」理論などではなく、動画マン・原画さん・作監様の階級意識を少々考え直し、そのスタッフが今できることを会社側が適材適所に上手く配置して、とにかく「画の生産量」を上げる——極端に言うと、アニメ一筋の職人だけで画を作ろうとするのではなく、パート・アルバイトもPCを使ってアニメ作りに参加してもらうべきでは?

と。PC・デジタル作業を使えば比較的単純作業を増やすことができますから。自動中割りとか。それに重労働なアニメ作りはイヤでも、パート・アルバイト感覚の距離感でならアニメ作りに参加してみたい! という人は結構いると思いますから。そもそも、良い動画マンと良い原画マンと良い作監にはなんの因果関係もない——あ、ここまで言うとぶっちゃけ過ぎか!? 申し訳ありません。 

第145回 音楽に託された陰影 〜METROPOLIS〜

 腹巻猫です。12月19日にディスクユニオンのCINEMA-KANレーベルから特撮TVドラマ「電光超人グリッドマン」の完全版サウンドトラックが発売されます。当コラムで「いつの日か完全版サントラを」と書いた夢が、アニメ版放映中というまたとないタイミングで実現! 初収録音源も収録されるそうなので楽しみです。

電光超人グリッドマン オリジナル・サウンドトラック
https://www.amazon.co.jp/dp/B07K298VFZ/


 去る10月に劇場作品「2001年宇宙の旅」(1968)の70ミリ上映とIMAX上映が相次いで行われ、映画ファン、SFファンの間で話題になった。公開当時は遠い未来に思えた2001年がもう10年以上昔なのだから時の経つのは早い。
 今回は、その2001年に公開された劇場アニメ『METROPOLIS』の話。

 『METROPOLIS』は、手塚治虫が1949年に発表した同名マンガ作品を原作に、大友克洋が脚本、りんたろうが監督を手がけたSF劇場アニメ。アニメーション制作はマッドハウスが担当した。
 「2001年宇宙の旅」とは対照的に、本作の舞台となる未来世界は、手塚マンガの描線を受け継ぐ、丸っこく懐かしく感じられるデザインで描かれている。レトロフューチャーというやつである。2003年から放映されたTVアニメ『ASTRO BOY 鉄腕アトム』も同様の世界観で作られていた。手塚治虫作品にカクカクしたフォルムは似合わないということだろう。
 ロボットと人間が共に暮らす未来の大都市メトロポリス。私立探偵の叔父・ヒゲオヤジと一緒にメトロポリスを訪れた少年ケンイチは、火事の現場から人造人間の少女ティマを助け、仲良くなる。が、ティマはやがてロボットを率いて反乱を起こし、悲劇的な最期を遂げる。ティマは原作のミッチィにあたるキャラクター。骨格となるプロットはマンガ版と同じだが、細かい設定や人物配置などはアレンジされている。CGで緻密に作り込まれた背景と名倉靖博がデザインした繊細なタッチのキャラクターとの共演が見どころだ。

 音楽は本多俊之。りんたろうからはジャズを基調にした音楽がリクエストされた。もともと音楽好きで虫プロ時代は田代敦巳らとジャズバンドを組んでいたというりんたろう。本作ではなんとバスクラリネット奏者としてサントラの演奏に参加までしている。
 本多俊之は1957年生まれのサックス奏者・作曲家。プレーヤーとして活躍しながら、「マルサの女」(1987)、「ガンヘッド」(1989)などの映画音楽を手がけている。中でも一連の伊丹十三監督作品の音楽は映画ファンに広く知られる代表作だ。
 アニメでは1994年にOVA『真・孔雀王』の音楽を担当。このときの監督がりんたろうだった。音響監督の三間雅文とも『METROPOLIS』で再び組むことになる。『METROPOLIS』以降は、劇場アニメ『茄子 アンダルシアの夏』(2003)、OVA『太陽の黙示録』(2006)等の音楽を担当。りんたろう監督とのコラボは劇場アニメ『よなよなペンギン』(2009)を経て、プライベート短編アニメ『アブラカダブラ』まで続いている。
 レトロフューチャーとジャズは相性がいい。同じくレトロフューチャー的世界観を打ち出したTVアニメ『Project BLUE 地球SOS』(2006)の大島ミチルの音楽もビッグバンドジャズを基調にしたものだった。音楽をジャズで、というアイデアは「手塚治虫の描いた“輝かしい未来”をジャズで包みたい」というりんたろうの思いから生まれたものだった。
 しかし、ジャズの専門家である本多俊之は、安易にジャズを導入しなかった。ここからが本作の音楽の面白いところである。
 メインテーマはディキシーランドスタイルのジャズ。しかし、場面によってはクラシカルな管弦楽スタイルの曲も併用されている。また、ジャズの曲でも、陽気なジャズからクールなジャズまで、スタイルがさまざまに変化する。ジャズミュージシャン・本多俊之ならではの音楽設計が聴きどころだ。

 サウンドトラック・アルバムは映画公開と同じ2001年5月にキングレコードから発売された。初回盤はスリーブケース入りで、りんたろう監督と本多俊之の対談が掲載されたブックレットが付属していた。

  1. METROPOLIS
  2. FOREBODING
  3. ZIGGURAT
  4. GOING TO “ZONE”
  5. SNIPER
  6. EL BOMBERO
  7. THREE-FACED OF “ZONE”
  8. “ZONE” RHAPSODY
  9. HIDE OUT
  10. RUN
  11. ST.JAMES INFIRMARY
  12. SYMPATHY
  13. SNOW
  14. PROPAGANDA
  15. CHASE
  16. JUDGEMENT
  17. AWAKENING
  18. FURY
  19. AFTER ALL
  20. THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE -THE THEME OF METROPOLIS-

 全20曲。本編で使用された曲のほとんどが劇中使用順に収録されている。
 アクション系作品のサウンドトラックでは30曲以上の音楽が使われることも珍しくないが、本作の音楽の使い方は実にストイック。サントラ盤の全曲を合わせても60分にしかならない。本当に音楽が必要なシーン、効果のあるシーンに限定して音楽が流れている。この巧みな音楽演出も本作の特徴のひとつだ。
 本作の音楽はすべて絵に合わせたフィルムスコアリングで作られている。2分を超える長い曲が多く、ひとつの曲の中でも、場面の展開に合わせて曲調が次々と変わっていく。ドラマを想起しながら聴けば、いっそう味わい深い。
 超高層ビル「ジグラット」とメトロポリスの威容を映し出すオープニングのバックに流れるのが1曲目の「METROPOLIS」。本作のメインテーマである。ディキシーランドジャズスタイルの軽快な曲だ。メトロポリスとジグラットが象徴する「輝かしい未来像」を表現する明るく浮かれた音楽になっている。本多俊之はこのメロディを、最初に打ち合わせした帰りの車の中で思いついたという。
 事件の始まりを予感させる2曲目「FOREBODING」はジャズではなく、オーケストラによる管弦楽スタイルで書かれている。メトロポリスを牛耳るレッド公の強大な権力を表現する「ZIGGURAT」、サスペンスタッチの「SNIPER」「HIDE OUT」「CHASE」「JUDGEMENT」「AWAKENING」なども同様のスタイルで書かれた伝統的な映画音楽風の曲。「ジグラットを中心とする地上世界」はクラシカルなオーケストラで描こうというのが本多俊之のアイデアだったそうだ。メインタイトルや地下世界を描写するジャズタッチの音楽と対照的で、本多俊之の映画音楽作家としての力量を感じさせる。
 ケンイチとヒゲオヤジがメトロポリスの地下世界「ZONE」へと降りていく場面に流れるのがトラック4「GOING TO “ZONE”」。ジャズタッチではあるが、陽気なディキシーランドスタイルではなく、退廃的でダークなスタイルのアレンジになっている。ここで聴こえるバスクラリネットがりんたろう監督の演奏だろうか。
 ティマを創り出した博士の研究所が燃え上がり、消防士ロボットが出動する場面に流れるのがトラック6の「EL BOMBERO」。曲名はスペイン語で「消防士」の意味だ。コーラスをフィーチャーしたアバンギャルドなスタイルのジャズで書かれている。緊迫した場面のはずなのだが、音楽のおかげでユーモラスな空気がただよう。シリアスな場面に突然マンガチックなキャラが登場する手塚治虫の原作マンガを思わせる。未来世界の歪んだ一面を描くための異化効果をねらったものだろう。映像と音楽がコラボした名シーンのひとつである。
 トラック7「THREE-FACED OF “ZONE”」もZONEを描く音楽。「GOING TO “ZONE”」と同様に陰のあるミステリアスなジャズで書かれている。ZONEは、メトロポリスの繁栄を支える下級労働者の居住区や下水処理施設などが置かれた地下区域。大都市の暗部を象徴するサウンドである。
 この曲では、後半に登場するピアノによる美しいティマのテーマも聴きどころだ。ピアノは、TVアニメ『宇宙船サジタリウス』の音楽でも知られるピアニスト・作曲家の美野春樹。メインテーマと並ぶ、本作の音楽を構成する重要なテーマのひとつである。
 ケンイチとヒゲオヤジがレッド公の養子・ロックの行動を怪しんで尾行する場面のトラック8「”ZONE” RHAPSODY」はメインテーマをアレンジしたジャズ。ディキシーランド風の陽気な曲調で地下街に住む住民のバイタリティを表現したあと、ダークな曲調に転じて、より深い階層のZONEの秘密めいた雰囲気を表現する。
 ロックの追跡からケンイチとティマが逃げる場面のトラック10「RUN」は、メインテーマのモチーフを使った現代的なスタイルのジャズ。後半に登場するピアノのアドリブがぞくぞくするほどスリリングで、音楽的にも聴きごたえのあるナンバーになっている。
 このあとのシーンで、ティマが拾ったラジオからエンディング主題歌「THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE」が一瞬流れる。音楽的な伏線とも呼べる秀逸な場面だ。
 トラック11の「ST.JAMES INFIRMARY」はアメリカの古典的なブルース。本作用に新録された音源が使われている。ケンイチとティマがかくまわれた、革命家アトラスのアジトで流れる曲だ。アジトの屋根に立つティマの肩に鳩が止まり、光に照らされたティマが天使のように見える。しかし、そこに流れる曲は、亡くなった子(娘)に会うために病院を訪れる悲しい男の歌。ここでも音楽が物語の展開を暗示する伏線になっている。
 ピアノと弦によるティマのテーマのアレンジ曲「SYMPATHY」(トラック12)は、ケンイチとティマの束の間のふれあいの場面に流れる曲。アルバム全体の中でもとびきり心に沁みる、しっとりと美しいナンバーである。
 物語の折り返しとなる重要な場面に流れるトラック13「SNOW」は、6分を超える長い曲。アトラスが主導した革命が失敗し、破壊されたロボットや傷ついた人々が倒れる街に雪が降る。茫然としたケンイチたちが街をさまよう場面に流れる曲だ。メインテーマをディキシーランドジャズ風にアレンジしたメランコリックなマーチが葬送行進曲のように聴こえる。
 ケンイチたちの前にロックが現れると音楽は弦楽器中心のクラシカルな曲調に変わり、ロックの暗い情念を映し出す。ケンイチ、ティマとロック、そしてレッド公との対立と葛藤が音楽で表現される。これこそ映画音楽の醍醐味だ。この一連の場面は、りんたろう監督自ら「キャラクターの芝居のテンションと音楽がシンクロしている」と語る名場面。ちなみにオーケストラ曲のコンダクターを務めたのは中谷勝昭。70年代から数々のアニメ・劇場作品の音楽の指揮者として活躍する名指揮者である。
 ここからはジャズは影をひそめ、管弦楽スタイルの曲が続く。激しい怒りを意味する「FURY」というタイトルがついたトラック18は、全編の大詰め、ティマがロボットたちを率いて反乱を起こす場面に流れる曲。オーケストラを駆使したドラマティックでシリアスな音楽になっている。アルバム全体の大詰めとなる曲である。
 本作のクライマックスはCGを駆使して描かれるジグラット崩壊シーン(りんたろうが監督した劇場版『銀河鉄道999』の惑星メーテル崩壊シーンを彷彿させる!)。そこにはレイ・チャールズが歌う「I Can’t Stop Loving You」が流れるのだが、残念ながらサントラ盤には収録されていない。劇中で流れるほかの楽曲はすべて本作のために録音された音源だが、本曲だけは1962年にヒットしたオリジナル音源が使われている。おそらくは権利関係から収録が難しかったのだと思うが、未収録が惜しまれる。
 「I Can’t Stop Loving You」は、別れた恋人を想う切ない愛の歌だ。この曲をバックに展開するクライマックスは、スリルと悲哀と解放感とが入り混じったビターな味わいのシーンになっている。ケンイチとティマのドラマを締めくくる曲としては、あまりにも大人びていて、悲しい。この曲には、りんたろうが本作に込めた思いが象徴されているようである。
 エピローグの音楽「AFTER ALL」(トラック19)はメインテーマを軽やかにアレンジしたジャズ。スイングする曲調がロボットと人間が共存する明るい未来を予感させ、作品全体をほっとした雰囲気で締めくくってくれる。
 そして、エンドクレジットに流れる「THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE」(トラック20)は、本作のために本多俊之が書いたオリジナルのジャズソング。冒頭から聴こえているメインテーマのメロディが実はこの曲の旋律であったことがわかる。歌詞は、ティマからケンイチへのメッセージ。「I Can’t Stop Loving You」へのアンサーとも受け取れる内容だ。歌詞を知って聴くと、いっそうぐっとくる。

 近年はポジティブな面が強調されることの多い手塚治虫作品だが、もともとは人間の暗い面や歪んだ面を取り込んだ、ハッピーエンドに収まらない複雑な味わいが魅力だった。
 本作でも、メトロポリスの光と影、人間とロボットの間で揺れるティマ、ロボットと人間の共存と断絶など、多面的なテーマが物語と映像の奥に垣間見える。さまざまなスタイルを駆使した本多俊之の音楽は、映像だけでは描ききれない陰影とほろ苦い情感をみごとに表現している。つい映像に目を奪われてしまう本作だが、音楽が果たす役割もとても大きい。りんたろう監督の音楽へのこだわりが結実したサントラである。

メトロポリス オリジナル・サウンドトラック
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アニメ様の『タイトル未定』
181 アニメ様日記 2018年11月11日(日)~

2018年11月11日(日)
池袋HUMAXシネマズの10時20分の回で『続・終物語』を観る。長い作品ではあったけれど、長さは気にならなかった。イベント上映ということは、おそらくはTVシリーズとして作られたものの、劇場公開版なのだろう。映画らしいメリハリはなかったけれど、楽しめた。冬に出す書籍のためにバンダイチャンネルで『ムダヅモ無き改革』を観る。

2018年11月12日(月)
作業をしながら、昨日の『サザエさん』の録画を観る。好きな食べ物を聞かれたワカメが「ご飯のおこげのところと、お魚の目玉。それから、お茶に梅干し入れて飲むの」と答えていた。これは原作を使ったパートで「お茶に梅干し入れて」の部分はオリジナルだと「お茶におしょうゆ入れてのむの」だったようだ。原作が発表された頃と違って、ワカメが好みの渋い子になっている(魚の目玉は、渋いのとも違う気がするが)。『クレヨンしんちゃん』も観る。しんのすけ(小林由美子さん)とぶりぶりざえもん(神谷浩史さん)が会話をしていたけど、違和感ないなあ。凄いなあ。

2018年11月13日(火)
『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観た後、色々と気になることがあって『交響詩篇エウレカセブン』のながら観を始めた。今観ると初々しさのある作品だ。 今日は1話から15話の途中まで観た。前にも書いたけれど、学生アルバイトさんに事務所の倉庫の整理をお願いしている。また、文庫本が入った段ボール箱が出てきた。角川mini文庫の「機動戦艦ナデシコ チャンネルはルリルリで★(ハートマーク)」が湿気でゴワゴワになっていた。古本で買い直そう。

2018年11月14日(水)
『交響詩篇エウレカセブン』を15話終盤から30話まで観た。仕事の合間に、池袋マルイで開催されている「魔神英雄伝ワタル30周年記念展」に行く。見どころは当時のセル画だった。キャラクター設定も懐かしかった。キャラクター設定には芦田豊雄さん(あるいはスタジオライブ)の個性が色濃く出ている。

2018年11月15日(木)
年末年始にギッチリと作業をしなくてはいけないことが分かった。9月、10月に割と余裕があったのでプラマイゼロだ。

2018年11月16日(金)
『交響詩篇エウレカセブン』ラスト2話を観る。今までの視聴で一番楽しめた。すでに内容を知っている4クールのアニメを、連続で観るのもいいなあ。現在の仕事が一段落したら、他の作品でもやってみよう。『おおきく振りかぶって』を12話から観始める。前にどこまで観たのかが分かるところも、ネット配信のありがたいところだ。今回の視聴ではお母さんなどの試合に参加しない人達に感情移入した。

2018年11月17日(土)
急に打ち合わせが決まって、中央線方面のスタジオで、冬に出す書籍関連の打ち合わせ。夜、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル Vol. 109 宇宙の星よ永遠に 『無敵超人ザンボット3』を開催。トークのゲストは氷川竜介さん。内容の濃いトークになったのではないかと。『ザンボット3』の劇場版についての詳細は僕も初めて知った。