第174回 音楽もキラやば〜☆ 〜スター☆トゥインクル プリキュア〜

 腹巻猫です。1月11日に赤坂・草月ホールで開催された林ゆうきさんの初ソロ・コンサート「林ゆうき10th Anniversary Concert〜劇伴食堂はやし屋〜」に足を運びました。2部構成で、前半はドラマ音楽、後半はアニメ音楽を演奏。林ゆうきの世界が凝縮されたステージを堪能しました。クリックを聴きながらの演奏、電子ドラムの使用、シンセ打ち込み音源との同期など、スタジオワークを思わせるステージは現代のサウンドトラック・コンサートならでは。いっぽうで、生のストリングスやサックス、トランペット、アコーディオン、ウッドベースなども入って、生音感も充実。YouTubeでのライブ配信も話題になりました。YouTubeにアーカイブが残っているようなので、未体験の方もぜひ視聴ください。

 来週は菅野祐悟さんの「PSYCHO-PASS サイコパス IN CONCERT」。こちらもデジタルサウンドがどう再現されるか、めちゃ楽しみです。
https://psycho-pass-concert.com


 筆者が林ゆうきの名を意識したのはTVドラマ「トライアングル」(2009)。テーマ曲がジャズピアニストの上原ひろみ。劇中音楽は澤野弘之と林ゆうきの共作という、今思えばすごい作品だった。筆者はこの作品がきっかけで上原ひろみのライブを何度か聴きに行った。
 林ゆうきは「トライアングル」が映像音楽デビュー作。劇中音楽のメインテーマ「Cocoon」は林ゆうきの曲だ。サントラ盤を買った筆者は「なに? このカッコいい曲」と衝撃を受けて林ゆうきの名を覚えたのである。
 2011年に放送されたTVドラマ「DOCTORS〜最強の名医〜」のサントラ盤の仕事で林ゆうきに初めてインタビューする機会があった。そのときは、まだアニメ音楽はほとんど手がけてなくて、「アニメもやりたいんです」と話してくれたのだが、すぐに状況は一変。『ガンダムビルドファイターズ』(2013)、『ハイキュー!!』(2014)、『僕のヒーローアカデミア』(2016)、『ボールルームへようこそ』(2017)、『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』(2018)、『からくりサーカス』(2018)、そして、『ポケットモンスター』(2019)と、話題作、人気作を次々手がけるアニメ音楽の人気作家になってしまった。ほかにも多くのアニメ作品を手がけている。
 京都出身の林ゆうきは新体操選手出身という変わった経歴の持ち主。選手として活躍する中で新体操の演技のバックに流れる音楽を作るようになり、しだいに音楽が本業になっていった。
 爽やかな感動を生む青春ものやスポーツものから、サスペンス、スリラー、SFアクション、『ポケットモンスター』みたいなキッズ向けアニメまで幅広いジャンルを手がける。しかし、ジャンルによって器用に書き分けるタイプではなく、どの作品にも林ゆうきらしい個性が刻印されている。とりわけ、躍動感に富んだ曲やスピード感のある曲は、これぞ林ゆうきサウンド! と思わせる魅力的なものだ。
 そんな林ゆうきの作品の中でも異彩を放つのが『プリキュア』シリーズの音楽である。林ゆうきが手がけるアニメ作品は「少年もの」が多いイメージがある。可愛い、キラキラよりは、カッコいい、爽やか、ときどきダークの感じ。だからこそ、林ゆうきが作る『プリキュア』の音楽は新鮮だった。
 今回はまもなく最終回を迎える『スター☆トゥインクル プリキュア』の音楽を取り上げよう。

 『スター☆トゥインクル プリキュア』は2019年2月から放映されている『プリキュア』シリーズ第16作目となるTVアニメ作品。星空観測が好きな中学生・星奈ひかるがプリキュアに変身する力を得て、仲間とともに、宇宙から襲来する敵・ノットレイダーと戦う物語である。
 ひかるがプリキュアに変身するきっかけとなったのは、宇宙生物のフワとプルンス、宇宙人のララとの遭遇。プリキュアの仲間に宇宙人が加わり、ひかるたちはロケットで宇宙の星々を訪問する。これまでの『プリキュア』シリーズにない新機軸だ。冒険の舞台となる宇宙がポップでカラフルな世界に描かれているのも面白い。50〜60年代の宇宙冒険もののセンスに80年代ポップカルチャーをブレンドしたような世界観である。
 音楽もユニークだ。本作の前期エンディング主題歌「パペピプ☆ロマンチック」は80年代テクノポップ風サウンドを取り入れて話題を呼んだが、劇中音楽(BGM)も同様のコンセプトで作られている。
 現代的なデジタルシンセとは異なるアナログっぽいシンセサウンド。『プリキュア』を観ている子どもたちには新鮮で、お父さん・お母さん世代には懐かしく響く音である。『スター☆トゥインクル プリキュア』のポップな宇宙には、この音がぴったりマッチしていた。
 林ゆうきにとっては本作が3作目の『プリキュア』シリーズ。初参加となった『キラキラ☆ プリキュア アラモード』(2017)では明るく元気な音楽、2作目となった『HUGっと! プリキュア』(2018)では豊かな情感をたたえた音楽が印象的だった。3作目はプリキュアサウンドの集大成、となりそうなところを、まったく違う方向性で挑戦してきたことに驚いた。
 『スター☆トゥインクル プリキュア』の音楽には、林ゆうきとともに橘麻美が参加している。橘麻美は林ゆうきと多くの作品で共作している作曲家で、数々のTVドラマのほか、アニメ『ガンダムビルドファイターズトライ』(2014)、『ソウルイーターノット!』(2014)などにも参加。ダークなサスペンスから軽快なアクション、爽やかな日常曲まで書ける才能を生かして、本作の音楽世界を広げている。

 『スター☆トゥインクル プリキュア』のサウンドトラック・アルバムはマーベラスから2枚発売されている。1枚目は「スター☆トゥインクルプリキュア オリジナル・サウンドトラック1 プリキュア・トゥインクル・サウンド!!」のタイトルで2019年5月に発売。2枚目は「同2 プリキュア・サウンド・イマジネーション!!」のタイトルで2019年12月に発売された(一部のサイトでタイトルが「プリキュア・スタートゥインクル・イマジネーション!!」と表記されているのは誤り)。
 今回は2枚目の「プリキュア・サウンド・イマジネーション!!」を紹介しよう。
 収録曲は以下のとおり。

  1. スターカラーペンダント!カラーチャージ!(キュアコスモ・ヴァージョン)
  2. プリキュア・レインボースプラッシュ!
  3. キラリ☆彡スター☆トゥインクル プリキュア(TVサイズ)(歌:北川理恵)
  4. 宇宙航路異状なし
  5. 不思議な力だフワ
  6. ララの里帰り
  7. 惑星サマーンの憂鬱
  8. 星空連合の使命
  9. 対立する正義
  10. ダークネスト
  11. 宇宙を絶望に染めよ
  12. 灼熱の攻防
  13. 悲劇の星
  14. コズミック☆ミステリー☆ガール(氷柱ヴァージョン)
  15. 星に想いを
  16. 星空ティータイム(ギター&ヴァイオリン・ヴァージョン)
  17. 宇宙は大混乱
  18. オヨ〜
  19. 観星町星まつり
  20. この胸に星は輝く(ピアノ・ソロ・ヴァージョン)
  21. トゥインクル・イマジネーション
  22. 星を追われし者
  23. 消えた星座からの挑戦
  24. 激突!大宇宙
  25. 大いなる闇
  26. 闇に沈む心
  27. 滅びに立ち向かう戦士たち
  28. スターカラーペンダント!カラーチャージ!(クインテット・ヴァージョン)
  29. プリキュア・流星のごとく
  30. プリキュア・スタートゥインクル・イマジネーション!
  31. ずっと忘れない
  32. この胸に星は輝く
  33. 宇宙に架ける虹
  34. 教えて…!トゥインクル☆(TVサイズ)(歌:吉武千颯)
    〈ボーナストラック〉
  35. スターカラーペンダント!カラーチャージ!(インストゥルメンタル・ショートサイズ)

 選曲・構成は筆者が担当した。サントラ盤のタイトルも筆者がつけている。
 『プリキュア』TVシリーズのサントラは年に2枚出るのが通例で、1枚目は番組のオーソドックスなフォーマットに沿った内容、2枚目は追加録音分を中心に、シリーズ中盤から終盤の展開をイメージした内容でまとめている。先日放送されたばかりの第48話「想いを重ねて! 闇を照らす希望の星☆」では、大半のBGMが2枚目のアルバムから選曲されていた。
 以下、第48話の内容に触れる部分があるので、ネタバレは見たくないという未見の方は、ご覧になってから読んでください。
 それにしても、第48話は驚いた。オープニングなし、サブタイトルもアイキャッチもなし。オープニングが省略されるのは昨今のアニメでは珍しくはないが、『プリキュア』シリーズでは初。『宇宙戦艦ヤマト』へのオマージュかと思っちゃいましたよ。本編は最終決戦から別れまでをぎゅっと詰め込んだ、実質的最終回と呼べる内容。音楽的にも聴きどころ満載だった。
 アルバムの話に戻ろう。
 1曲目に収録した「スターカラーペンダント!カラーチャージ!(キュアコスモ・ヴァージョン)」は第20話から加わった新しいプリキュア=キュアコスモの変身テーマ。次の「プリキュア・レインボースプラッシュ!」はキュアコスモの浄化技(ヒーローもので言うところの必殺技)の曲だ。サントラ2枚目の開幕の曲として2曲続けて収録した。
 プリキュアたちが歌いながら変身するのが本作のユニークな趣向である。『プリキュア』シリーズでは、これまでもコーラスが入った変身BGMはあったが、ずばり「歌」入りの変身BGMは初めて。音楽演出としての「歌入りBGM」ではなく、劇中でキャラクターが実際に歌っている設定なのだ。番組スタート当初は「歌って変身!?」ととまどう声もあったが、放映が進むにつれ、変身の歌を子どもたちが遊びに取り入れるなど、すっかり定着した。
 本作の変身BGMは、変身するキャラクターとその組み合わせよって、さまざまなバージョンがある。1枚目のサントラ盤には4人変身バージョンと、キュアスター、キュアミルキー、キュアソレイユ、キュアセレーネ、それぞれの1人変身バージョンを収録。2枚目にはキュアコスモの1人変身バージョンと5人変身バージョンを収録した。1枚目にはインスト・バージョン(カラオケ)も収録しているので、自分で歌ってプリキュアになりきることも可能だ。
 トラック4「宇宙航路異状なし」は、本作のメインテーマの変奏曲。本作は主題歌とは別にBGMにおけるメインテーマが設定されており、そのアレンジ曲が全編に散りばめられている。中でもこの曲は、本作の音楽の特徴がよく出た80年代テクノポップ風のアレンジ。ひかるたちの日常シーンやロケットで宇宙を旅する場面によく流れていた。
 トラック5「不思議な力だフワ」は宇宙妖精フワが不思議なパワーを使ってロケットをワープさせる場面などに流れていた曲。サントラ1枚目に収録した「フワのテーマ」のアレンジである。
 続く「ララの里帰り」「惑星サマーンの憂鬱」「星空連合の使命」は追加録音分からの選曲。ララが故郷の星に帰るエピソードで流れた曲を集めた。
 トラック9の「対立する正義」は、ひかるたちと宇宙人とが価値観や主張の違いから対立してしまう場面にたびたび流れた曲。本作のテーマのひとつである「多様性」が生む確執を表現する曲である。
 トラック10からの3曲はノットレイダーとの戦いをイメージ。「ダークネスト」「宇宙を絶望に染めよ」は第1回録音の曲だが、第21話で敵の首領・ダークネストがよみがえってからは、もっぱらダークネストの脅威を描写する曲として選曲されている。トラック12「灼熱の攻防」は追加録音で収録された激しい戦いを描写するアクション曲。第46話のスターパレスの攻防などに流れている。
 トラック13「悲劇の星」はキュアコスモ=ユニの過去が明らかになる第20話、21話で印象的に使われた悲しみの曲。
 次の「コズミック☆ミステリー☆ガール(氷柱ヴァージョン)」はユニが変身したアイドル・マオが歌う挿入歌をアレンジしたエキストラ曲。第24話でひかるたちとユニの心が通う重要な場面で流れていた。
 トラック15に収録したメインテーマアレンジの曲「星に想いを」は、ひかるたちの友情をイメージしての選曲。この曲は第48話でも、闇に呑み込まれたひかるたちが互いの無事を確認する場面に使用されている。
 トラック16から19まではひかるたちの日常に流れる曲。穏やかな曲やコミカルな曲を集めた。「星空ティータイム(ギター&ヴァイオリン・ヴァージョン)」はサントラ1枚目にフルバージョンを収録しているが、劇中ではこちらのバージョンがよく使われているので2枚目に収録した次第。
 トラック20と21は終盤の展開のカギとなる「トゥインクル・イマジネーション」をテーマにした曲。ひかるたちの心から生まれるイマジネーションの力を表現する曲だ。
 「この胸に星は輝く」のピアノ・ソロはひかるたちの繊細な心情が描かれる場面で使用。オーケストラが壮大に奏でる「トゥインクル・イマジネーション」はトゥインクル・イマジネーションが覚醒する場面で使用されていた。第48話では、変身する力を失ったひかるたちが、自らの心からあふれ出たイマジネーションの力で変身を遂げるシーンに流れている。
 トラック22「星を追われし者」はノットレイダーたちの過去をイメージした曲。虐げられた者の悲しみや理不尽な正義への怒りを表現するシリアスな曲である。こういう曲が用意されているのが、『スター☆トゥインクル プリキュア』の奥深いところだ。
 トラック23「消えた星座からの挑戦」は敵の首領・ダークネストの正体であるへび使い座のプリンセスのテーマ。音楽メニューにも「へび使い座のプリンセス」と書かれているのだが、サントラが発売される12月の時点ではまだ正体が明かされていないので、曲名や解説書のテキストではそこを伏せて表記している。
 実はこの曲、サントラ1枚目に収録した「スターパレス」という曲をダークなイメージにアレンジした曲調・構成になっている。スターパレスは12星座のプリンセスが集う聖域。その曲と共通性を持たせることで、敵も星座のプリンセスのひとりであることを暗示しているのだ。
 トラック24からは最終決戦をイメージした構成である。宇宙規模の総力戦と巨大な闇の力、その闇に呑まれた絶望感を表現する曲を続けた。「激突!大宇宙」と「闇に沈む心」は第47話で、「大いなる闇」は第48話で使用されている。
 トラック27「滅びに立ち向かう戦士たち」は絶望から立ち上がるプリキュアたちのイメージ。第1回録音の曲であるが使用回数は少なく、第30話でララのロケットのAIが復活する場面など、ここぞという見せ場でしか使われない重要曲である。第48話では、復活したプリキュアたちがへび使い座のプリンセスの攻撃を押し戻し、全宇宙から集まる想いを重ねた浄化技を放つクライマックスに流れている。
 トラック28からの3曲は、5人バージョンの変身BGM、スピード感みなぎるプリキュア活躍曲「プリキュア・流星のごとく」、5人合体技の曲「プリキュア・スタートゥインクル・イマジネーション!」と続けて、アルバムのクライマックスにした。

 以降はエピローグ。ひかるたちを待つ別れと友情をイメージした構成である。
 トラック31「ずっと忘れない」はメインテーマの悲しいアレンジ。第12話で、映画撮影に参加していたひかるとララが別れの演技をするうちに真情があふれ出し、「ずっと一緒にいたい」と泣き出してしまう場面があまりにも印象的。
 トラック32「この胸に星は輝く」はトゥインクル・イマジネーションの曲。ひかるたちが悩んだ末に自分の道を見出す場面によく流れていた。第48話では、戦いを終えたひかるたちがフワを復活させるためにプリキュアの力を注ぐ場面に使用されている。
 そして「宇宙に架ける虹」は大団円をイメージしたオープニング主題歌アレンジ。第48話では上記の場面に続くひかるたちの別れの場面にたっぷりと流れて、ラストシーンを飾る曲となった。この曲自体は第20話や第31話にも流れているので、これが初出というわけではない。しかし、第48話ではオープニング主題歌が流れなかったぶん、主題歌のメロディを使ったこの曲が深く印象に残る。秀逸な選曲である。
 なお、第47話ではオープニング主題歌をアップテンポにアレンジしたBGMが流れるが、これは『映画 スター☆トゥインクル プリキュア 星のうたに想いをこめて』の音楽の流用。TV版のサントラには収録されていない。
 アルバムのボーナストラックには変身BGMのインスト・バージョンのショートサイズを収録した。1人変身用に用意されたバージョンである。
 第48話では、復活したプリキュアがへび使い座のプリンセスに向かっていく場面に変身BGMのインストが流れる。変身BGMが変身以外のシーンに流れるのは異例で、この演出は驚きだった。この回は変身シーンにいつものBGMが流れないので、インスト版を戦闘シーンに持ってきたのだろう。これも神がかった選曲というほかない。

 以上でサントラ2枚目の紹介は終わり。これで第48話に流れた曲はほぼそろった。しかし、まだ大事な曲が残っている。
 第48話のハイライトは、プリキュアに変身する力を失ったひかるたちが、変身BGMの歌をアカペラ(途中からピアノ伴奏入り)で歌って変身するシーン。「歌って変身」の設定が生かされた感動の名場面である。
 このアカペラ変身の曲はサントラ盤には収録されていない。しかし、1月22日発売のアルバム「スター☆トゥインクルプリキュア ボーカルベスト」に「スターカラーペンダント!カラーチャージ!(スペシャル・ヴァージョン)」のタイトルで収録されているのだ。第48話で感動にむせび泣いたファンのための、うれしいプレゼントである。
 キラやば〜☆な音楽とともに1年間楽しませてくれた『スター☆トゥインクル プリキュア』。放送はあと1回残っている。最終話ではどんなドラマが描かれ、どんな音楽が流れるのか? サントラ盤を手元に置いて、お楽しみいただきたい。

スター☆トゥインクルプリキュア オリジナル・サウンドトラック1
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アニメ様の『タイトル未定』
235 アニメ様日記 2019年11月24日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2019年11月24日(日)
早朝の新文芸坐に。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 120 スクリーンで観る『モブサイコ100 II』」の最後を見届ける。その後は、散歩とデスクワーク。「アニメスタイル015」と「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の追い込み。
オールナイトでお客さんにいただいたプレゼントを開けたら、中に立川譲監督、亀田祥倫さん、僕の人形が入っていた。僕の人形はちゃんとアニメスタイルのTシャツを着ていた。これは凝っているなあ。ありがとうございます。立川監督と亀田さんも同じものをもらっているはず。

2019年11月25日(月)
早朝から編集作業と原稿。12時から中央線方面で打ち合わせ。事務所に戻って「アニメスタイル015」の校了作業など。『AKIRA』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』等をながら観する。『パプリカ』が面白かった。何度目かの視聴かわからないくらいだけど、今までで一番面白い。公開時はこの作品に対して、色々と不満があった。なんて贅沢だったんだろう。

2019年11月26日(火)
嵐のような忙しさ。月曜の23時半に起きて、風呂に入って午前1時に事務所。10時までデスクワークで、11時から平賀スクエアで「川元利浩 SketchBook」表紙のための撮影。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」用の未使用コンテの再撮影もやってもらう。13時に事務所に戻って、原稿とラフ描き。14時半から事務所で打ち合わせ。16時から中央線方面で打ち合わせ。事務所に戻ってまたデスクワーク。この日、「アニメスタイル015」の編集作業が終了した。

2019年11月27日(水)
「アニメスタイル015」の編集作業は終わったし、取材や外での打ち合わせはないし、のんびり仕事ができるかと思ったら、やっぱり嵐のような忙しさ。「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」の見本が届く。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の校正紙が出る。
いつでもレンタルで観られると思って、DVDを買っていなかったある劇場アニメ(僕の認識では有名なタイトル)が、池袋、新宿のTSUTAYAでレンタルがなくなっていることが判明。検索すると、渋谷TSUTAYAにもないんだけど、同店舗は同シリーズ別作品はあるみたいなので、店まで足を運んだら、意外とあったりするのかもしれない。ネットレンタルはあるはずなので、いよいよとなったら、それに頼ればいいんだけど「いつでも観られると思ったものが観られなくなる」は今後も増えるのかもしれないとは思った。

2019年11月28日(木)
またまた嵐のような一日。雨が降っていたこともあり、まとまった散歩もできず。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」表紙カバーの校正紙が届く。午後はシルフィルWOWOW「世界がふり向くアニメ術」での、『うる星やつら2 ★ビューティフル・ドリーマー★』のコメンタリー収録。出演は押井守監督、上坂すみれさん、そして、僕。シルフィルWOWOWで戦争映画をコメンタリー付きで放映する企画があり、それで上坂さんが『★ビューティフル・ドリーマー★』のファンだということが分かり、このコメンタリーの企画に繋がったのだそうだ。
僕にとっての今回の収録の目的のひとつが、面堂の台詞「大笑い海水浴場」が「喜劇新思想体系」からの引用なのかどうかを、押井さんに確認することだった。それについてだけは、コメンタリーが始まる前に押井さんに「聞きますね」と言っておいた。おかげで、収録で押井さんが自分から話してくれた。他にも確認したいことをいくつも話してもらえた。ただし、話の流れで聞けなかったこともある。それはまた別の機会で。収録後、事務所に。
以下はコメンタリーとは別の話。コメンタリーの前に『★ビューティフル・ドリーマー★』を観直して思ったことだ。メガネ達に対して、僕は今でも「俺達の仲間」だと思える。より具体的に書くと、当時は自分達と同年輩の仲間で、今となっては「思い出の中の仲間」だ。
あの映画で自分が憧れを感じていたのは、学園祭の前日が延々に続くという状況よりも、あたるの家での共同生活だった。劇中のモラトリアムの塊のような日々は、心地よいだけでなく、観ている自分達を映画が肯定してくれていると思えた。それが重要だったのではないか。

2019年11月29日(金)
やっぱり嵐のような一日。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」校正作業と、「川元利浩 SketchBook」と「馬越嘉彦 仕事集 第一巻」の進行。16時から某スタジオで打ち合わせ。事務所に戻ってまた作業。Netflixの『ケンガンアシュラ』の第2期を観始める。面白い。映像もよくできている。
忙しいけれど、馬越嘉彦さんに描きおろしのラフを依頼したら2時間で超ステキなラフがあがったり、デザイナーさんから予想以上にいいデザインが届いたり、編集部スタッフがきちんと資料を読み込んで校正をしてくれたり、嬉しいことがいくつもあった。

2019年11月30日(土)
「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」の発売日で、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 121 『海獣の子供』とSTUDIO4℃」開催日であり、さらにトークイベント「第165回アニメスタイルイベント 『この世界の片隅に』に至る道(4)」とオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 122 Rexamination of PATLABOR the Movies」の前売り開始日だった。
昼間は年末進行で後まわしにしていた用事を片づける。その後は原稿作業。日曜いっぱいかかるかと思っていた原稿がだいたい終わる。事務所で『クレヨンしんちゃん』『ドラえもん』『僕のヒーローアカデミア』『名探偵コナン』をリアルタイム視聴した。夜は新文芸坐に。

第8回 カースタントマンが映画を撮ると

こんなんなっちゃいました(笑)ていう感じの作品『バニシングイン60(邦題)』。
とにかく尺の殆どがカーチェイスで、パトカーを壊す壊す。
エレノアと呼ばれる1973年式マスタングもボッコボコ。
当時スーパーカーブームの日本でもTV放送された今作品を観た自分はいたく衝撃を受けまして、
アメ車好きになりました。
とにかくマスタングサイコーwな人間になりました。

■関連リンク
【アニメスタイルの書籍】アニメーター・村田峻治による車輌デザイン集を刊行!
http://animestyle.jp/news/2019/10/03/16389/

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第642回 令和も働きます!

 今年も監督作品を発表できそうで、風邪を引いてても朝6時起きでコンテ中。こんなサイクルを何年続けてるんだか、と思って気づけばもう10数年間、1年と空けず毎年作品が発表できてるのは幸せなことだと思いつつ机にしがみついています。ま、でも自分小学生の頃から早起き(たいがい5〜6時起き、夢中な時は3〜4時起き)でマンガ描いたり、パソコンでゲーム作ったり(元祖パソコン少年世代)してました。なので両親が今のワークスタイルを見たら、たぶん「昔から変わっとらんな」と言うに違いありません。ここ数年はご存知のとおりデジタル作画・コンテなので、なんの因果か一回りして、また小学生の頃のパソコン少年に戻った気分だったりもしてます。子どもの頃、気づいたら好きになってた絵を描くこと・何かを作ることが、いつの間にか遊びから仕事にオーバーラップしてそれで食えてる今、自分は最近よく父親のことを考えます。父親は自分に「あーしろこーしろ! 何々するな! 勉強しろ!」とか一度も言ったこともなく、無干渉で放任主義。小・中・高校生の間、通知表(通信簿?)的なものすら一度も見たことがなかったと記憶しています。父自身中卒で、山形から名古屋に就労に来た出稼ぎ組だったようで、やりたい仕事云々とかより、何も考えず「労働=食うための時間の切り売り」と思った人なので、今の俺の仕事にもまったく興味がないはず。だけど自分のほうは、朝6時に家を出て夜8時過ぎまで週休半日(日曜の午後だけ休み)、40年以上無遅刻無欠勤で働き続けた父親を、今は素直に感謝・尊敬しております。だって、どう考えても朝から晩まで工場でセメントこねてコンクリートを作る肉体労働が、子どもの頃からの夢が叶って就いた職とは思えないし、「ただただ家族を食わせなきゃ」の昭和的義務感で働き続けたのだと思うから。それに比べて、仮にも自分は好きな仕事で食えてるだけでも幸せ者だと思って、「しっかり毎日働く!」で令和もやっていきます。企画やスタッフを選ぶより(そもそも自分にはそんな資格もないですが)「ありがたくやらせていただきます!」と。出崎統監督も昔のインタビューで「仕事選ぶなんて10年早い! 来た仕事は全部やれ!」と仰ってました。逆上上等! 現状以上の贅沢を望んだら将来必ずバチが当たりますから。というわけで、今年もSNSとかやる時間もやる気もありません。

アニメ様の『タイトル未定』
234 アニメ様日記 2019年11月17日(日)

2019年11月17日(日)
14時半までデスクワーク。原稿作業に集中できて嬉しかった。15時10分から、ワイフとグランドシネマサンシャインで「ターミネーター:ニュー・フェイト【IMAXレーザーGT字幕版】」を観る。映画館に行ったのは久しぶり。「映画を観た」という実感あり。娯楽作としては充分な仕上がりなのだけど、大ヒットしてないのも分かる。新しいビジュアルがないし、色気がない。こう書くと不満があるみたいだけど、そんなことはない。

2019年11月18日(月)
「アニメスタイル015」と「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の追い込み。午前1時半に事務所に入り、散歩や食事等をはさんで19時まで作業。たっぷりと仕事をした。夕方に風呂に入ってから、いきなり!ステーキで食事。ドーピングって感じだった。

2019年11月19日(火)
月曜に続いて「アニメスタイル015」と「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の追い込み。『∀ガンダム』を流しながら作業。1話から18話の途中まで観た。16話「ターンAのすべて」がなかなかのインパクト。総集編なんだけど、テロップの入り方がバラエティ番組みたい。「この時代ならではのもの」という気もする。

2019年11月20日(水)
「アニメスタイル015」と「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の追い込みは続く。散歩と食事以外はデスクワーク。気分を変えるために、ユニクロで普段は着ない色のセーターとシャツを買う。夜は磯丸水産で鯖カレー。鯖カレーは美味しかった。これはあり。
ネットで「パルプ・フィクション」の原案者であるロジャー・エイヴァリーさんが『映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』を絶賛していることを知る。「私のこれまでの映画体験のなかでも最高のひとつ。映画はこの作品のために発明されたと言っても過言ではない」 だそうだ。マジか。いや、さすが分かっていると言うべきか。

2019年11月21日(木)
水曜の23時半に起きて、風呂に入ってから午前1時に事務所へ。「アニメスタイル015」の追い込み。同時進行で別の作業も。昼飯は箱買いしたプロテインバー。仕事の追い込みが続いていて、変な時間に起きたりしているけど、毎日散歩して、ラジオ体操して、野菜ジュースを飲んで、養命酒を飲んで、なるべくいろんな食材をとって、ゆっくり風呂に入っているためか、やたらと体調がいい。

2019年11月22日(金)
「アニメスタイル015」と年末に出す書籍Aの打ち合わせ。書籍Aで宿題(僕の新しい作業)が増えた。増えたのだ。マンガ家の清野とおるさんとタレントの壇蜜さんが入籍したことを知る。これはおめでたい。僕は「壇蜜日記」が好きで一時期はよく読んでいた。今は「壇蜜DIARY」というタイトルなのかな。いずれ結婚のことも書かれるだろう。楽しみだ。

2019年11月23日(土)
「アニメスタイル015」の追い込み。校正作業のために助っ人に事務所へ入ってもらう。夕方に床屋。マンションで休んでから、夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 120 スクリーンで観る『モブサイコ100 II』」に。若い女性のお客さんが多いので、それを意識してトークのテーマを選ぶ。
『∀ガンダム』を最終回まで観たので、今度は『ガンダム Gのレコンギスタ』を1話から視聴。めちゃくちゃ面白い。『∀ガンダム』の放映が終わった頃、富野由悠季監督はこれから『∀ガンダム』の(世界観、作品の根底にある価値感、演出についての)発展形のものを作るのだろうと思ったんだけど、そうはならなかった。そうならなかったのも面白いところではあるけれど。『∀ガンダム』が富野作品の到達点だとして、『ガンダム Gのレコンギスタ』はどうなのか。別の進化ルートの作品なのか、『∀ガンダム』の次のステップなのか。それが分かるのはしばらく先なのだろうと思う。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 123
中村豊のスーパーアクション vol .1

 2020年最初のオールナイトは「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 123 中村豊のスーパーアクション vol .1」。多くの作品で素晴らしいアクションシーンを手がけ、ファンを魅了し続けているアニメーターの中村豊にスポットを当てる。本オールナイトは「中村豊 アニメーション原画集 vol.1」刊行を記念して企画されたプログラムである。

 上映作品は中村豊がクライマックスの原画を担当した『ストレンヂア 無皇刃譚』、冒頭のアクションシーンを担当した『エスカフローネ[劇場版]』、そして、アクション絵コンテとアクション作画監督の役職で参加した『COWBOY BEBOP 天国の扉』だ。

 トークのゲストは中村豊と、『ストレンヂア 無皇刃譚』で監督を務めた安藤真裕。前売り券は新文芸坐窓口では既に発売中。チケットぴあでは1月15日(水)から発売となる。

 新文芸坐の売店では「中村豊 アニメーション原画集 vol.1」を発売している。オールナイト当日にも販売する予定だ。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 123
中村豊のスーパーアクション vol .1

開催日

2020年1月25日(土)

開場

開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5時35分(予定)

会場

新文芸坐

料金

当日・一般2800円、前売・友の会2600円

トーク出演

中村豊、安藤真裕、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

ストレンヂア 無皇刃譚(2007/35mm)
エスカフローネ[劇場版](2000/BD)
COWBOY BEBOP 天国の扉(2001/DCP)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第641回 帰省(名古屋)〜京都〜風邪

正月、実家に帰って風邪を引いて戻ってきました(汗)!

 年始は名古屋で過ごし、5日に風邪とともに名古屋を出て京都へ。6日、GAINAX京都を訪問するプランでしたが、板垣のほうはあえなくホテルでダウン。GAINAX京都への挨拶は白石(直子)に任せて部屋でじっとしてました。
 GAINAX京都・武田康廣さま、昨年『コップクラフト』での銃器関係の協力、本当にありがとうございました! また改めてご挨拶に伺います。

 そして現在もまだ風邪の真っ最中。仕事も激遅れのため、本日は短く失礼します。

アニメ様の『タイトル未定』
233 アニメ様日記 2019年11月10日(日)

2019年11月10日(日)
デスクワークの日。仕事が進んでないわけではないけど、予定ほどは進んでいない。いかんいかん。散歩は池袋と高田馬場の往復。

2019年11月11日(月)
デスクワークの日。来年出す本についての打ち合わせ。もしも、実現したらなかなか素敵なことになるのだけれど、どうなるだろうか。編集作業中の書籍については、いろいろと進むが、全体的には遅れ気味。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の編集作業だけはぐいぐいと進む。監修が異様に速いのがありがたい。『WOLF’S RAIN』のサントラが届いたので聴き始める。

2019年11月12日(火)
社内打ち合わせと外部での打ち合わせ。それ以外はデスクワーク。引き続きいくつもの仕事が同時進行で落ち着かない。『WOLF’S RAIN』のサントラを聴きながら作業。ランチは最近できたタイ料理屋で「ガパオライスとミニカレー」のセットを食べる。「ガパオライスとミニカレーとミニラーメンのセット」というメニューもあった。感想としてはやっぱりガパオライスだけで充分だった。

2019年11月13日(水)
散歩以外はデスクワーク。「アニメスタイル015」の写真選びでいちばん手間がかかるところが終わった。18時くらいに、マンションへ戻ってそのまま就寝。21時40分くらいに起きて、風呂に入ってから事務所に。

2019年11月14日(木)
夕方からの打ち合わせ以外はデスクワーク。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の束見本に、表紙カバーのプリントを巻いて見てもらうと、あまりにもの厚みに皆が驚いてくれる。仕事をしながら『ダンベル何キロ持てる?』の一気観をした。「ドラゴンクエストウォーク」はレベル45に。

2019年11月15日(金)
デスクワークの日。仕上がった「アニメスタイル015」のデザインを見て、自分は天才ではないかと思う。老後はひたすら、アニメの本編カットを並べるだけの仕事をやりたい(そんな老後はこない)。珍しく23時近くまで事務所に。色々とこなしたけれど、遅れ気味。やらなくてはいけないことが山盛りだ。と言いつつ「Renta!」を始めてみた。

2019年11月16日(土)
デスクワークの日。『伝説巨神イデオン』TVシリーズを最終回まで観た。21世紀になってから、全話通して観たのは三度目のはず。本当にながら観だったせいか、前回や前々回ほどの没入感はなかった。キャラクターについてより深く分かるようにはなったけれど、作品自体の印象はあまり変わっていない。事務所の裏にシェラスコ食べ放題の店ができたことを知る。いったい行けるのはいつになるのか。

第173回 とっとこ楽しいサントラなのだ 〜劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険〜

 腹巻猫です。新年あけましておめでとうございます。ありがたいことに年末年始も仕事漬けでした。本年もよろしくお願いします。


 今年はねずみ年。ねずみのアニメといえば、誰もが思い浮かべる名作がある。出崎統監督の『ガンバの冒険』だ。
 しかし、今回は同じ出崎監督の別の作品を取り上げたい。劇場版『とっとこハム太郎』だ。ハムスター(キヌゲネズミ科)が主人公のアニメである。
 『とっとこハム太郎』は河井リツ子の同名マンガを原作にトムス・エンタテインメントが映像化したアニメ作品。TVアニメが2000年7月からスタートした。2期、3期と続く人気シリーズとなり、第5期が2013年3月まで放送されている。TVアニメ版の監督は鍋島修。劇場版が4作作られ、4作すべてを出崎統が監督した。
 筆者は第1作から第3作まで、公開当時劇場で観た。ゴジラと併映だったからだ。ハム太郎の劇場版を出崎統が監督する話も聞いていた。ゴジラと出崎アニメが一緒に劇場で観られるのか! とわくわくしたことを覚えている。
 劇場版『とっとこハム太郎』は期待にたがわぬ出来だった。『あしたのジョー』や『エースをねらえ!』のような作品を期待する出崎ファンには物足りなかったかもしれない。しかし、筆者はすごく満足した。その証拠に、DVDもサントラ盤も買ってしまったのだ。
 『とっとこハム太郎』は、ハム太郎を中心にハムスターたちの日常や小さな冒険を描くほのぼのアニメ。ハム太郎の飼い主は小学5年生の女の子・ロコちゃんだ。TVアニメではロコちゃんの日常も描かれている。
 しかし、劇場版は少し趣が違う。ハム太郎たちが日常を離れた世界でスケールの大きな冒険をするファンタジー作品になっている。といっても、楽しく可愛い冒険だ。
 その映像が、どこを切りとっても出崎アニメなのがたまらない。ハム太郎はガンバみたいな走り方をするし、随所に出崎統らしい絵作りや演出が観られる。子ども向きと思わず、ぜひ観てほしい作品なのだ(特に海賊ハムクックが登場する3作目がいい)。

 音楽はTV版、劇場版ともに岩崎元是が担当している。
 岩崎元是は1986年にポップバンド・岩崎元是&WINDYでデビューした音楽家。バンド解散後、作・編曲家、スタジオミュージシャンとして活動を開始した。音楽を担当したアニメ作品には、劇場版『キン肉マンII世』(2001)、『まめうしくん』(2007)、『そらのおとしもの』(2009)などがある。主題歌・挿入歌等の楽曲提供も多い。『機甲警察メタルジャック』(1991)、『勇者警察ジェイデッカー』(1994)等の音楽を手がけた作曲家・岩崎文紀は実兄である。
 今回は劇場版第1作『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』(2001)の音楽を紹介しよう。
 タイトルにある「ハムハムランド」とはハムスターだけが住む夢の国。ハムスターのユートピアだ。ハム太郎たちは偶然ハムハムランドにつながる扉を開いてしまい、大冒険を繰り広げることになる。
 劇場版の公開は2001年12月。サントラ盤は2002年3月に日本コロムビアから発売された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. ハム太郎とっとこうた(歌:ハムちゃんず)
  2. ここは楽しいハムハムランド
  3. とっとこほじほじ、やけほじりなのだ!
  4. ハッピーロコちゃんバースデイ(歌:ロコちゃん、ハム太郎、パーティに来たみんな)
  5. おとめちっく!ロコちゃん
  6. ひまわりタネ寿司、ネタはタネ!(歌:板前ハム&すっし〜ず)
  7. 舞い降りた妖精
  8. ここでもさすらう?トンガリくん
  9. とっとこ参上、ニンハムず!
  10. 魔王ハムだハ〜ム〜!
  11. 幸せならハムスター(ラップ:DJハム/スクラッチ:ピストン西沢)
  12. とっとこ集合、ハムちゃんず
  13. タネはどこなのだ?(歌:ハム太郎)
  14. ハムハム大学へ進路を取れ!
  15. とっとこ授業だ、ハムハム大学
  16. 歓びの歌 〜向日葵交響曲第86番〜(コーラス:ジャンガリアン聖歌隊)
  17. 逃がすもんか、ドラゴン!
  18. 魔王さまはコレクター!?
  19. ハムハムランド、またあした
  20. 時空を越えろ、ドラゴンゴーン!
  21. 再会の時
  22. ロコちゃんの日記
  23. HAMUTARO THE MOVIE

 歌いっぱいの楽しいサントラだ。
 この劇場版自体が、全編歌に彩られた楽しい作品である。出崎アニメで、これほどたくさんの歌が流れる作品は珍しい。
 劇中には、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)とのタイアップで「ミニハムず」なるハムスターのアイドルグループが登場する。演じたのはハロプロのアイドルグループ「ミニモニ。」の4人(矢口真里、辻希美、加護亜依、ミカ)。ミニハムずは劇中で「ミニハムず愛の唄」という歌も披露している(作詞・作曲はミニモニ。のプロデューサー・つんく♂が担当)。残念ながらミニモニ。の所属レーベルの関係でミニハムずの歌はサントラ盤には収録されなかった。代わりにマキシシングル盤がゼティマ(現・アップフロントワークス)から発売された。もちろん、筆者はそちらも買っている。
 劇場版らしく、音楽は絵に合わせたフィルムスコアリングで作られている。50分ほどの長さだが、サントラ盤は全曲収録ではない。曲順も劇中使用順ではなく、いくつかの曲の順序を入れ替え、モティーフが同じ複数の曲を1トラックにまとめたりしている。
 しかし、これはこれでよい構成である。おそらく、子どもたちが聴いても楽しめるようにと配慮した結果なのだろう。
 たとえば1曲目に収録された主題歌「ハム太郎とっとこうた」は、劇場版では冒頭には流れない。ハム太郎たちがハムハムランドへの扉を開くまでの導入部分——サントラ盤の曲目で言えば、トラック5「おとめちっくロコちゃん」のあとにタイトルが出て、主題歌が流れるのだ。けれど、1曲目に主題歌が流れるほうが、子どもたちには「ハム太郎のアルバムだ」とわかりやすい。
 また、2曲目の「ここは楽しいハムハムランド」は、いくつかの場面に登場するハムハムランドの曲を1トラックにまとめたものだ。これも、開幕の長い曲として収録ことで「ハムハムランドの劇場版(のアルバム)なんだよ」とアピールしている。
 アルバムの構成を担当したのは本作の音楽プロデューサーである吉田隆。作品と音楽を熟知したスタッフならではの構成である。劇中使用順と違っていても、通して聴けば「こういう作品なんだ」と伝わるアルバムになっている。
 それに曲名がいい。「とっとこほじほじ、やけほじりなのだ!」「ここでもさすらう?トンガリくん」など、本編の楽しさとキャラクターの魅力が表現された、すてきなタイトルなのだ。なかなかこういうタイトルは思いつかない。
 岩崎元是はTVシリーズのBGMのモティーフも散りばめながら、バラエティに富んだ音楽で劇場版をにぎやかに盛り上げている。耳に残るメロディが多く、聴いていて飽きない。飽きないどころか、思わず耳をそばだてたり、曲を口ずさんだりしてしまう。
 TVシリーズでも使われている主題歌「ハム太郎とっとこうた」は、原作者・河井リツ子が口ずさんだ歌をそのまま採用したもの。編曲を岩崎元是が手がけた。一度聴いたらぐるぐると脳内ループしてしまうメロディと歌詞もすごいが、岩崎元是のアレンジもワクワク感を2倍にも3倍にもする手練れの技である。
 トラック2「ここは楽しいハムハムランド」は、ハム太郎たちの冒険の舞台となるハムハムランドの曲。しっとりした曲調からスケールの大きなファンタジックな曲調、躍動的な曲調など、ひとつのモティーフをさまざまにアレンジし、組曲風にまとめたトラックになっている。
 トラック3の「とっとこほじほじ、やけほじりなのだ!」は、ロコちゃんの誕生日を祝おうとしたハム太郎が仲間はずれにされてすねてしまう場面の曲。主題歌「ハム太郎とっとこうた」のアレンジだ。オルガンの音色でバロック風に聞かせて、ハム太郎の悲嘆を強調する。
 トラック4「ハッピーロコちゃんバースデイ」はロコちゃんの誕生日を祝う歌。いくつかの場面で歌われた歌が1曲にまとめられている。最初からこういう構成の曲だったかのように自然に聞けてしまうのがすごい。曲はOVA『ハム太郎のおたんじょうび 〜ママをたずねて三千てちてち〜』の主題歌「ハッピーハムハムバースデイ」の流用だ。
 トラック5「おとめちっく!ロコちゃん」は、ボーイフレンドを気にするロコちゃんの乙女心を表現する曲。TVシリーズのBGM「ごきげんロコちゃん」を劇場用にアレンジした曲である。
 TVシリーズのBGMをアレンジした曲はほかにも見られる。トラック8の「ここでもさすらう?トンガリくん」は「さすらいの旅ハム、とんがりくん」という曲のアレンジ。トラック12の「とっとこ集合、ハムちゃんず」はTVシリーズの同じ曲名のBGMのアレンジである。TVで使われた曲と同じメロディが劇場に流れることで、TVシリーズのファンもスムーズに劇場版の世界に入っていくことができる。
 トラック6「ひまわりタネ寿司、ネタはタネ!」はハムハムランドの寿司屋の場面で歌われるラップ風の劇中歌。この曲とトラック11のラップ曲「幸せならハムスター」の作詞は出崎統監督が自ら手がけている。きっと、コンテを書きながら自然に言葉が出てきたのだろう。本作をはじめ、劇場版『とっとこハム太郎』4作品には出崎統作詞の劇中歌が必ず登場する。これも出崎統ファンには見逃せない(聴き逃せない)ポイントなのだ。
 トラック7「舞い降りた妖精」はハム太郎たちをハムハムランドに導いた妖精ハムのテーマ。ときには小さな空飛ぶハムスターの姿で、ときには美しいお姉さんの姿で登場する妖精ハムは、映画の中で重要な役割を担うキャラクターだ。やさしく美しいメロディがファンタジックな音色のシンセやピアノ、ストリングスなどで奏でられる。登場場面は少ないが、耳に残る旋律である。
 妖精ハムのテーマとともに重要なのが魔王ハムのテーマ。魔王ハムはハム太郎たちが探す魔法のタネをねらう憎めない仇役である。
 サントラではトラック10「魔王ハムだハ〜ム〜!」で初登場。重厚で恐怖感をあおる曲調だが、どこか愛嬌があり、本気で怖くはない。
 その魔王ハムの手先となって活動するのが4人組の忍者ハム、通称・ニンハムず。トラック9「とっとこ参上、ニンハムず!」はニンハムずのテーマだ。ミニハムずが歌う「ミニハムずの愛の唄」のメロディが引用されている。
 ミニハムずは4人組。ニンハムずも4人組。ニンハムずの行動場面にはたびたび「ミニハムずの愛の唄」のメロディが流れて、「ニンハムずの正体はミニハムずでは?」と思わせる。これは音楽によるミスリードで、最後まで観ていくと、ミニハムずとニンハムずは別人(別ハム)だとがわかる。ちょっと変わった音楽演出だ。
 中盤、ハム太郎たちは魔法のタネの情報を求めてハムハム大学へ行く。この描写が面白い。ハム太郎たちは大学の授業を受けることになり、ユニークな授業のようすが、クラシック風、ロック風、中国風など次々と曲調が変わる音楽とともに描かれる。授業は本筋と関係ないのだが、音楽も手伝って楽しめる場面になっている。その場面の曲がトラック15の「とっとこ授業だ、ハムハム大学」。
 きわめつきは次の「歓びの歌 〜向日葵交響曲第86番〜」。ハムハム大学の卒業式で歌われる混声合唱の曲である。ハム太郎たちはハムハム大学の卒業生になったのだ。タイショーくん(ハム太郎の仲間のハムスター)ならずとも、「え!? もう卒業?」と突っ込みたくなる展開である。その場面に「向日葵交響曲第86番」と副題がついた格調高い曲が流れて、ハム太郎たちを祝福する。これまた、頭の中でループしてしまいそうな中毒性のある曲。
 終盤は魔法のタネを奪った魔王ハム(ドラゴン)とハム太郎たちとの追っかけで盛り上がる。音楽もテンポの速い緊迫感のある曲が続く。サントラ盤では終盤の曲をいくつか省いて、よりテンポ感を出している。
 ハムハムランドを訪れたハムスターたちが元の世界に帰る時間がやってきた。トラック19「ハムハムランド、またあした」は、ハム太郎たちが妖精ハムたちに見守られて旅立つ場面に流れた、ちょっぴり切ない別れの曲である。短い曲だが、このメロディも心に残る。
 本当のクライマックスは、夜になってもハム太郎を探すロコちゃんとハムハムランドから帰還したハム太郎との再会のシーン。まさに出崎演出と呼びたくなる再会場面に、なんとも美しく感動的な「再会の時」が流れる。これも、ずっと聴いていたくなるようないい曲だ。
 劇場版は、TVシリーズにならって、ロコちゃんが日記を書く場面で締めくくられる。いなくなったハム太郎との再会を日記に綴るロコちゃん。その場面に流れるトラック22「ロコちゃんの日記」は、TVシリーズの同じ曲名のBGMのアレンジ曲。オルゴール風の音色でドリーミィに奏でられる、エピローグにふさわしいやさしい曲である。
 トラック22は2つの曲に分かれている。ラストシーンに使われたのは後半部分。前半にはピアノ・ソロによる「ロコちゃんの日記」のアレンジ曲が収録されている。これは本作の中盤、ハムハムランドに上がる花火を見たハム太郎がロコちゃんのことを思い出す切ない場面に流れた曲。2つの場面の曲がつながることで、ハム太郎とロコちゃんの心が通い合ったことが示唆される。サントラ盤でしか味わえない感動がじわじわと胸にこみ上げてくる。秀逸な構成だ。
 最後に収録された「HAMUTARO THE MOVIE」は「ハム太郎とっとこうた」をアレンジした短いファンファーレ風の曲。本編では流れていないと思う(違っていたらすみません)。エンディングには「ミニハムずの愛の唄」が流れるが、それは収録できない。「ロコちゃんの日記」で終わると少ししんみりしてしまう。サントラ盤は、元気なこの曲で終わるのが正解だろう。

 『とっとこハム太郎』の音楽は、魅力的なメロディの宝庫。楽しく、幸せな気分になれるサントラである。お正月はこういうサントラを聴いて一年を始めたい。
 『とっとこハム太郎』は今もキャラクターグッズが売られ、公式サイトや公式Twitterアカウントも活動している。ねずみ年の今年は『とっとこハム太郎』の新作アニメも観られるのじゃないかとちょっと期待している。

劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険 オリジナル・サウンドトラック
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ミニハムずの愛の唄[MAXI]
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第166回アニメスタイルイベント
スタッフが語る『海獣の子供』

 2019年に公開され、凄まじいクオリティで観客を圧倒した『海獣の子供』。そのスタッフによるトークイベントを開催する。開催日は同作Blu-ray & DVDソフト発売の3日後にあたる2020年2月1日。会場は新宿のLOFT/PLUS ONEだ。

 現在のところ、田中栄子(『海獣の子供』プロデューサー)、渡辺歩(監督)、小西賢一(キャラクターデザイン・総作画監督・演出)の出演が決定しており、他のスタッフの登壇もある予定だ。見どころの多いこの作品について、たっぷり語っていただこう。

(1/20追記)追加ゲストとして、秋本賢一郎(CGI監督)、平野浩太郎(CGI)の出演が決定した。

 これまでのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は2019年12月26日(木)に発売が開始した。詳しくは以下のリンクLOFT/PLUS ONEのページを見てもらいたい。また、会場では『海獣の子供』を特集した「アニメスタイル015」等の物販を行う予定だ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/136121

【アニメスタイルの新刊】「アニメスタイル015」の巻頭特集は『モブサイコ100 II』!!
http://animestyle.jp/news/2019/11/15/16650/

第166回アニメスタイルイベント
スタッフが語る『海獣の子供』

開催日

2020年2月1日(土)
開場12時00分 開演13時00分

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

田中栄子(『海獣の子供』プロデューサー)、渡辺歩(監督)、小西賢一(キャラクターデザイン・総作画監督・演出)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて
 会場となるLOFT/PLUS ONEはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

アニメ様の『タイトル未定』
232 アニメ様日記 2019年11月3日(日)

2019年11月3日(日)
三連休2日目。知人とランチに行った以外はデスクワークで、主には「アニメスタイル015」の構成の詰め。
『WOLF’S RAIN』を最終回まで視聴。TV未放映分のラスト4話は、二度目の視聴かな。最終回ラストは覚えていたけど、その前の数話はほとんど覚えていなかった。最終回ラストシーンについては、シリーズ初期からのプランしていたものだろうと思うけど、そこまでの展開は作りながら考えていった感じかな。と思って、確認のため、岡村天斎さんの「この人に話を聞きたい」を読み返す。当然、そのことに触れていた(えらいな、自分)。最後が現代の東京になるのは、最初から決まっていたわけではない。オープニングに現代の東京が出てくるのは岡村さんのアドリブで、それを脚本で信本さんがリンクさせたとのこと。他にも「信本さんは、最初から現代の東京のような場所を舞台にしたいと考えていた」「岡村監督としては『狼』や『楽園』について象徴性や寓意は持たせていない」「脚本では、その場面で主人公達が狼の姿か、人間の姿かは書かれていない。文脈で判断して映像化している」等々。
「なつぞらSP 秋の大収穫祭」も観始める。

2019年11月4日(月)
三連休3日目。外食以外はデスクワーク。「なつぞらSP 秋の大収穫祭」後半を観て、「ちはやふる ー結びー」「ちはやふる-繋ぐ-」「ちはやふる-学び-」を観る。「-繋ぐ-」は実写劇場版第2作と3作の間のエピソードで、ネット配信オンリーのコンテンツ(後に映像特典としてソフトに入った)。全5話で、各話が新作ドラマとメイキングの2本立ての構成。新作ドラマは短いけれど、ファンサービスとしてはなかなかいい。屋台のラーメンの話はコントみたいだった。
午後はYouTubeで「東京国際映画祭のTIFF マスタークラス『アニメ映画史、最重要変化点を語る』」を流しつつ作業。話を分かりやすくするために大胆にまとめてはいるが、商業アニメの歴史について考えるきっかけとしては充分な内容だ。
この三連休は進んでいなかった作業が色々と進んだ。「自分だけで進める作業」が沢山できて、嬉しい。

2019年11月5日(火)
事務所で打ち合わせ2本、16時半から馬越嘉彦さんと打ち合わせ。他は進行中の「アニメスタイル015」、書籍、イベントの準備のあれやこれやで大騒ぎ。ボケモンGOは初日午前中にコバルオンをゲット。
イベントに向けて『おジャ魔女どれみ』を再見中。11話「早起き少女まりなと心の花たば」は『魔法使いサリー』の「ポニーの花園」を意識した話かも。いや、ハーフの女の子が出てくるわけではないけど。それから、『おジャ魔女どれみ』には意外と『ちびまる子ちゃん』の影響があるのではないか(影響を受けているとしたら、サトジュンさん自身)。脱力の描写とか、はづきちゃんの描写とか。6話「ウソつきは友情の始まり」。冒頭シーンで「あ、演出助手は長峯さん?」と思ったら、当たっていた。
20話「ライバル登場!MAHO堂大ピ~ンチ!!」はライバルの「元祖MAHO堂」ができる話。ぼんやりした記憶だと、この展開を、当時、サトジュンさんが「飛び出せ!青春」を意識したと言っていたはず。「飛び出せ!青春」だと、頭師佳孝(柴田良吉)が本家鶴亀堂の息子で、保積ペペ(山本大作)が元祖鶴亀堂の息子。 ちゃんと21話でネタとして「本家MAHO堂」が出てきた。
34話「お母ちゃんに逢いたい!」。来たなあ。ぐいぐいくる。今さらだけど、あいこ親子のモチーフは『じゃりン子チエ』なんだろうなあ。父親と娘が暮らしていて、母親は別に暮らしている。そして、母親は美人(劇中でどれみ達が指摘している)。さらに関西弁。それで「うちは日本一不幸な少女やねん」のセリフが、どれみの「世界一不幸な美少女」になるというかたちのはず(後日追記。『じゃりン子チエ』の件についてサトジュンさんに「それはどうだろうか」と言われた)。

2019年11月6日(水)
午後に「劇場版シティーハンター PRIVATE EXHIBITION」へ。それ以外はデスクワーク。午前中に「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」の校正紙が出て、午後に「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の束見本が出た。それから「中村豊描き下ろしエフェクトTシャツ」の完成品先行分が届く。

2019年11月7日(木)
12時半に社内打ち合わせ。14時に荻窪で打ち合わせ。打ち合わせ相手に『この世界の片隅に』の応援カードを渡す。その後、MAPPAに寄ってから事務所に。それ以外はデスクワーク。
『おジャ魔女どれみ』47話「お父ちゃんのお見合い」は新年のご挨拶から始まるのね(『ど根性ガエル』の正月回みたいなやつ)。本放送は1月2日。お見合いの席で、あいこが相手に嫌われそうなことを言うんだけど、妙にリアルでそれがいい。脚本がノリノリ。見合い相手もいい人で、なんだか邦画っぼいところもあった。ドラマ的にはクライマックスにもうひと押しほしいんだけど、ひと押しがないところが逆に大人の仕事っぽい。
48話「おんぷのメールはラブレター?」。先生がパソコンのメールを使えなかったり、パソコンが使える男子がちょっと尊敬されたり。その男子はリアル世界ではおんぷちゃんと口をきいたことがないのだけれど、おんぷちゃんの公式サイトにメールを送って、返信をもらってたことで友達になったつもりに(実際にはおんぷちゃんからの返信ではなかった)。「この時代」ならではの話ではある。モチーフがトンガっているけど、ギリギリで「痛い話」ではなくしている。いや、「これは痛い」と言う人もいるだろうけど。
49話「パパに会える!夢を乗せた寝台特急」。ぶっちぎりの山内重保演出。これこそ演出アニメ。当時はカット割りが凄いと思ったけど、今観ると感情線と音楽の使い方が凄い。前半の空気感は『花より男子』とか『キャシャーンSins』に近い。
『おジャ魔女どれみ♯』2話「赤ちゃん育ては、もう~たいへん!」は風呂場のシーン(回想含む)が濃くて大変よろしい。『♯』4話「どれみはママ失格!?」は五十嵐先輩のデートシーンがとても山内さん。どれみママのどれみへの平手打ちが素敵(風邪の音と洗濯物で、平手打ちの音と叩く瞬間は隠す)。その後、ハナちゃんの鼻水を、どれみが口ですする展開に。すごい、本気だ。話の本気を、演出が受けとめている。

2019年11月8日(金)
昼までデスクワークで、12時に事務所で打ち合わせ。13時半からSTUDIO4℃で取材。バスと電車で移動して16時からBONESで打ち合わせ。高田馬場で食事をして、事務所に。移動中に連絡をいくつか。自分は行けなかったけど、進行中の書籍に関するブツ撮りもあった。慌ただしい一日。
『おジャ魔女どれみ♯』15話「母の日とお母さんのにがお絵」は「母親のいない子の母の日」の話で、関先生も母子家庭で育っており、そのためにある学校で働くことができなかったというエピソードがメチャ重い。栗山緑脚本はまたまたグイグイいく。選曲もいい。『おジャ魔女どれみ』は旧『魔法使いサリー』や旧『アッコちゃん』を意識しているところがあると思う。スタッフの総意なのか、各スタッフの意図なのか。
『♯』40話「春風家にピアノがやってくる!」。どれみ達の父親は釣り雑誌のライターで、ぽっぷのピアノのために原稿料の前借りを頼むがそれは実現しなかった。次に思い出の竿を釣り雑誌の編集スタッフに売ろうする。アニメ雑誌ライターだったら、セルのコレクションをアニメ雑誌編集部で売るとかそんな感じだ。それはともかく、これも傑作。すしおさんが原画で参加したことも当時、話題になった。
ポイントの回のみ視聴だけど『おジャ魔女どれみ♯』を完走。『♯』の最終回は去年の今頃、確認したいことがあって、レンタルDVDで観た。レンタルDVDもdアニメストアも『♯』最終回に『も~っと!』1話の予告がついていない。

2019年11月9日(土)
トークイベント「第163回アニメスタイルイベント 馬越嘉彦の仕事を語る!3」を開催。床屋に行ってから、新宿に。トークのメインテーマは『おジャ魔女どれみ』。参加が難しいと言われていた五十嵐卓哉さんも出演してくれることになり、出演者は馬越嘉彦さん、佐藤順一さん、山内重保さん、五十嵐卓哉さん、長峯達也さん。豪華な顔ぶれとなり、トークも充実。どんなイベントも同じことを二度やることはできないのだけれど、これはまさしく二度はできないイベントになった。
以下は、イベント直前に観た『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』12話「7人目の魔女見習い~のんちゃんのないしょ~」について。『おジャ魔女どれみ』の作劇の方向を考えれば、あってもおかしくない「子供が死ぬ話」。あってもおかしくないけれど、通常のシリーズでやるのは難しいはずで『ナ・イ・ショ』でやったのは順当。あのエピローグ(別の子供がMAHO堂を訪れるのと、死んだ子のセリフ)を入れたのが正解かだったかどうかは難しい。エピローグについては楽屋でサトジュンさんに聞いたのだけど、その話はいずれどこかで。

第172回 あなたの人生のBGM 〜なつぞら〜

 腹巻猫です。コミックマーケット97に参加します。

 1日目・12月28日(土)
 南ホール ケ-07b 劇伴倶楽部

です。新刊は「THE MUSIC OF “Anne of Green Gables” 赤毛のアンの音楽世界」。TVアニメ『赤毛のアン』の音楽研究本です。本文106ページ。ほかに既刊数種持っていきます。よろしくお願いします。


 今年公開されたアニメ作品の中で、ちょっと変わった観点からアニメファンに注目された作品があった。
 ドラマ「なつぞら」の劇中アニメである。
 今回はその劇中音楽について書こうと思う。
 「なつぞら」は、2019年4月1日から9月28日まで放送されたTVドラマ。NHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」の第100作目の作品である。
 北海道で育ったヒロイン・なつがアニメーターにあこがれて上京し、アニメ制作会社に入社。女性アニメーターとなって活躍する話だ。
 時代は1950年代半ば。なつが入社した東洋動画では日本初の長編カラー漫画映画の制作が進められていた。アニメーターとなったなつは、東洋動画が制作する数々の漫画映画づくりに参加。やがてTV時代が到来すると、東洋動画にもテレビ漫画制作班が立ち上がり、なつはそこで活躍することになる。
 言うまでもなく、東洋動画は東映動画(現・東映アニメーション)がモデルになっている。なつたちが作る作品も、アニメ好きなら「あの作品がモデルでは?」と思う作品ばかり。日本のアニメーションがどのように作られ、発展してきたか、その歴史を追体験できるドラマだった。「細部が史実と異なる」という声もあったが、多くの視聴者が観る「朝の連続テレビ小説」という枠の中で劇場アニメの歴史と制作現場を描いた意義は大きい。
 で、そのドラマの劇中作品として登場するアニメが、どれもよく作られているのである。
 「なつぞら」には「アニメーション時代考証」として『アルプスの少女ハイジ』等で知られるアニメーターの小田部羊一が参加しているほか、劇中アニメの制作には日本の第一線級のアニメーターやアニメ制作スタッフが参加していた。
 そうやって作られた劇中アニメは、モデルになった(と思われる)アニメの絵柄や雰囲気をうまく再現していた。プロのアニメーターが旧作のパスティーシュを作ったような形だ。そのこだわりぶりがアニメファンの間で話題になった。
 筆者も「なつぞら」を毎回観ていて、劇中アニメが登場するたびに「おお〜」と思っていたひとりである。
 「なつぞら」劇中アニメについては、すでにさまざまな評価や検証がされている。その多くが映像に着目したものだ。筆者が気になったのは、劇中アニメとともに流れている音楽である。
 劇中アニメとともに流れる音楽。これは、「なつぞら」のBGMなのだろうか。それとも、劇中アニメ用に作られた曲なのであろうか。また、それは「なつぞら」の登場人物にも聴こえている現実音楽(劇中アニメの劇中音楽)なのか、ドラマの演出としての音楽なのか?
 そんなことを気にする人はあまりいないかもしれないが、筆者は気になった。そして、調べてみた。その結果を紹介したい。

 「なつぞら」の音楽を担当したのは橋本由香利。TVアニメ『とらドラ!』(2008)、『輪るピングドラム』(2011)、『おそ松さん』(2015)、『3月のライオン』(2016)、『さらざんまい』(2019)などの音楽で活躍し、多くのアニメソングやアーティストへの楽曲提供でも知られる音楽家である。「なつぞら」では素朴な音色のアコースティックな音楽から、ロック、ジャズ・テイストのポップな曲まで、ドラマの展開に合わせて幅広い曲調の楽曲を提供している。
 「なつぞら」のサウンドトラックは、「北海道編」「東京編」「完結編」の3つのアルバムに分けて音楽配信で先行発売された。のちに配信版の内容にボーナストラックを加えた3枚組CD「NHK連続テレビ小説『なつぞら』オリジナル・サウンドトラック【BEST盤】」が発売されている(発売元はキングレコード)。
 今回の考察にあたってはCD版のサウンドトラック・アルバムを参考にした。
 あらかじめ結論めいたことを述べておくと、劇中アニメとともに流れる音楽には、「なつぞら」のドラマのために書かれたBGMと劇中アニメのために用意されたBGMの2種類がある。音楽の使い方については、劇中アニメの音楽ともドラマの音楽ともとれるケースがあるのが面白いところだ。
 なお、これから筆者がする話はあくまで趣味の結果であり、筆者の想像や妄想も含まれることを断りしておきます(「時効警察」の霧山修一朗風に)。

●『白蛇姫』(「なつぞら」第11週・第64回に登場/以下同様)
 東洋動画の長編第1作。1957年公開。なつがアフレコを見学しているシーンにアニメ映像(白蛇姫と法師の対決)が登場し、前のシーンから続けて音楽が流れる。これは『白蛇姫』の劇中音楽ではなく、ドラマの演出としての音楽である。東京編用に書かれた「こころの底の風景」という曲だ。「なつぞら」のサントラに収録されている。

●『わんぱく牛若丸』(第13週・第78回)
 東洋動画制作の長編。1958年公開。牛若丸が乗った馬が急坂を駆け降りる場面の作画をなつが手がけた。なつが完成した作品を劇場で鑑賞するシーンがあり、スクリーンになつの作画したカットが映る。
 このとき、30秒足らずの短い曲が流れる。おそらく『わんぱく牛若丸』の劇中音楽だろう。パーカッションのみの躍動的な音楽だ。「なつぞら」サントラには未収録。

●『ヘンゼルとグレーテルと魔法の森』(第16週・第96回)
 東洋動画制作の短編。1959年完成。なつたちがアフレコに立ち会うシーンに映像が登場する。
 このとき、明らかにアニメの劇中音楽と思われる音楽が流れる。効果音も入っている。アフレコ・シーンだから本来音楽は入っていないはずなのだが、劇中アニメの完成した姿も同時に見せようという演出なのだろう。
 音楽が流れる場面はふたつある。ひとつは、ヘンゼルとグレーテルが魔法の森から逃げ出す場面。弦楽器をメインにした緊迫感のある曲だ。これはオリジナル曲ではなく、冒頭の部分はサンサーンス作曲の組曲「動物の謝肉祭」の1曲「雌鶏と雄鶏」の流用。続く部分もクラシック音楽の流用っぽい(未確認)。この選曲は東洋動画が作曲予算を抑えるために既成曲を使ったという設定なのだろうか。それとも、実際にドラマの制作上の都合で既成曲で間に合わせたのだろうか。演出であるとしたら、なかなか気が利いている。この曲は「なつぞら」のサントラには収録されていない。
 音楽が流れるもうひとつの場面は、ヘンゼルとグレーテルが脱出に成功する場面。木管とストリングス主体の抒情的な曲が流れる。アニメの劇中音楽だと思って聴いていると、アフレコを見守るなつの表情にも音楽が流れ続け、そのままドラマの音楽になっていく。ドラマの背景音楽だったのだ。これは「なつぞら」サントラに収録されている「大地の目覚め」という曲。アニメの劇中音楽ともドラマの背景音楽とも受け取れる演出が面白い。

●『百獣の王子サム』(第17週・第102回)
 東洋動画が制作した連続テレビ漫画第1作。1963年放送開始。オープニング映像が登場し、主題歌が流れる。劇中アニメ用に作られたオリジナル曲である。
 『百獣の王子サム』は『狼少年ケン』をモデルにしたと思われる作品。主題歌も『狼少年ケン』の主題歌を思わせる曲調に作られているのが楽しい。この主題歌は「百獣の王子サム」のタイトルで「なつぞら」サントラのボーナストラックに収録されている。作曲は設楽哲也。「なつぞら」の一部の劇中曲は橋本由香利と同じ音楽事務所に所属する設楽哲也が手がけている。

●『魔法少女アニー』(第20週・第119回)
 東洋動画制作のテレビ漫画。1967年放送開始。なつが観ているTVにアニメの1シーンが映る。アニーが魔法を使う場面である。音楽が流れるが、これはドラマの背景音楽。なつの心情を描写する演出としての音楽である。サントラに収録されている「強くて、弱い」という曲だ。

●『キックジャガー』(第22週・第130回)
 東洋動画制作のテレビ漫画。1969年放送開始。ジャガーのマスクをかぶったキックボクサーを主人公にしたアクションアニメだ。『タイガーマスク』を思わせる劇画調の作画がみどころ。最終回のキックジャガーの闘いがTVに映る。そこに流れるのが『キックジャガー』の主題歌と思われる曲。『百獣の王子サム』同様にオリジナル曲が作られている。『タイガーマスク』主題歌「行け!タイガーマスク」を思わせる曲調が楽しい。歌声(歌手不明)も「行け!タイガーマスク」を歌う新田洋の声によく似ている。並々ならぬこだわりを感じる曲である。この歌は残念ながら「なつぞら」サントラには収録されていない。

●『魔界の番長』(第23週・第133回)
 東洋動画制作のテレビ漫画。1973年放送開始。魔界から来た魔物に体を乗っ取られた番長が、魔界を裏切り、人間のために闘う異色のヒーローアニメ。なつが娘のゆうと一緒に観ているテレビに番長が魔物に変身するシーンが映る。その場面に流れている音楽は、おそらく『魔界の番長』のBGM。ただし、効果音や台詞に邪魔されてよく聴き取れないので、たしかなことは不明である。

 以上、東洋動画時代の劇中アニメ音楽は「なつぞら」のBGMではなく、アニメのために用意された曲が中心になっている。遊び心あふれるアニメ音楽のパスティーシュが楽しい。

 次は、なつがマコプロダクションに移って制作に参加した『大草原の少女ソラ』の音楽である。

●『大草原の少女ソラ』(第24週〜第26週)
 マコプロダクション制作のテレビ漫画。1974年放送開始。ローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』を原案に、北海道に生きる開拓者一家を描く。ミルコス食品工業がスポンサーの「ミルコスまんが広場」枠で放送された。モデルになったのは「カルピスまんが劇場」(のちの「世界名作劇場」)だろう。
 「なつぞら」の中では、まとまったアニメ映像が登場する回が4回ある。
 最初に登場するのは『大草原の少女ソラ』の放送第1回の映像だ(第24週・第144回)。この回は、「なつぞら」本編が『大草原の少女ソラ』のオープニング映像から始まり、それが終わるとそのまま「なつぞら」のオープニングが続くという凝った演出がされていた。
 『大草原の少女ソラ』の主題歌「大草原の少女ソラ」は劇中アニメ用のオリジナル曲。歌っているのは歌手の煙カスミ役で出演していた戸田恵子。戸田恵子はアニメソングも歌っているし、その中には名作アニメ(『子鹿物語』)の主題歌も含まれているのだから、この上もないキャスティングである。
 この歌には原曲がある。「なつぞら」のサントラに収録されている「おはよー!」という曲だ。もともとは、なつの家族となった北海道・柴田牧場の人々が元気よく働き出す場面を想定して書かれた曲である。
 『大草原の少女ソラ』のオープニングでは「ミルコスまんが広場」のタイトルに短い笛(ソプラノリコーダー)のメロディが流れ、主題歌に続く。「カルピスまんが劇場」(「世界名作劇場」)のフォーマットそのままだ。この笛のメロディも「おはよー!」の冒頭に入っている。最初から劇中アニメの主題歌にすることを想定していたような曲である。
 しかし、「なつぞら」サントラ解説書の橋本由香利のコメントによれば、作曲したときは劇中アニメでの使用は想定していなかったという。冒頭の笛のメロディは朝を告げる鳥の声のイメージだった。ただ、早い段階でプロデューサーが「この曲に歌を乗せたら良いのでは」と言っていたのだそうだ。残念ながらオープニング主題歌の歌入りは「なつぞら」のサントラには収録されていない。代わりに、「なつぞら」の公式サイトでオープニング映像が音楽入りで公開されている。
 「おはよー!」には「おはよー!〜小編成 ver.〜」というバリエーションがあり、それに「ルルル」の歌詞でボーカルを乗せた曲が『大草原の少女ソラ』のエンディングテーマになった(ボーカルは渡部沙智子)。こちらのほうは、「なつぞら」サントラに「大草原の少女ソラ 〜エンディング〜」のタイトルで収録されている。
 『大草原の少女ソラ』の第1回。広大な大地をソラの一家が馬車で進む場面にゆったりした曲調の爽やかな音楽が流れる。物語の幕開けにぴったりの曲である。これは『ヘンゼルとグレーテルと魔法の森』のアフレコ・シーンに選曲されていた「大地の目覚め」という曲。北海道編のために書かれた、十勝平野の朝をイメージしたBGMだ。「なつぞら」のBGMが『大草原の少女ソラ』のBGMとして使われているわけである。
 『大草原の少女ソラ』の舞台も北海道だから、「なつぞら」北海道編のBGMが流用されてもおかしくはない。が、ドラマのBGMが劇中アニメのBGMとして流れ、なつがそれを聴いているという構造が面白い。
 続いて、旅の途中に出逢った少年レイが逃げだそうとするのをソラが引き止める場面。木琴とリコーダー、アコースティック・ギターなどによるさみしげな曲が流れる。これは『魔法少女アニー』の場面でも使われた「強くて、弱い」という曲。もともとは北海道編で、なつが柴田牧場を逃げだそうとする場面をイメージして書かれた曲である。「哀しい強がりの曲」と橋本由香利はコメントしている。ここでは、なつとレイが重なる。
 そのレイとソラが牛に追いかけられる場面。ちょっとユーモラスな追っかけの曲が流れる。これも「なつぞら」サントラに収録された「モー、怒った!!」という北海道編の曲だ。タイトルどおり、怒った牛たちが走り回る場面を想定して書かれている。アニメの場面にもぴったり。
 怒った牛をソラがなだめ、レイとソラが笑い合う場面。ホルンとトランペットがメロディを奏でる明るく楽しいマーチの曲がふたりの心情を表現する。「なつぞら」サントラに収録された「十勝晴れ」という曲である。十勝の風景をイメージして書かれた北海道編のBGMだ。

 「なつぞら」の以降の回では、『大草原の少女のソラ』のその後のエピソードが描かれている。
 第25週・第147回では、レイが牛の乳しぼりを教えられる場面が登場する。ここでは「なつぞら」サントラに収録されている「陽だまり」という曲が使われている。北海道編で、なつが絵が得意な少年・天陽と語らう場面をイメージして書かれた曲だ。このシーンでは、アニメの映像から、それを観ているなつと家族の姿にカットが切り替わり、なつの娘ゆうが「私も乳しぼりしてみたいな」とつぶやく場面まで同じ曲が流れ続ける。アニメの劇中音楽ともドラマの背景音楽とも受け取れる演出がここでも見られる。
 第26週・第152回。獣医になる夢を抱いたレイがソラたちのもとを離れる決意をし、ソラの父と話す場面が登場する。北海道編でのなつの旅立ちと重なるシーンである。この場面では、『大草原の少女のソラ』第1回に使用された「大地の目覚め」がふたたび流れる。この曲は『大草原の少女ソラ』では希望や旅立ちのテーマとして設定されているようだ。
 そして、『大草原の少女ソラ』の最終回。成長したソラとレイが時を経て再会するクライマックスの映像が登場する(第26週・第153回)。BGMはピアノ・ソロから始まり、トランペット、リコーダー、ハープなどが加わって、大団円を感動的に盛り上げる。これは「なつぞら」サントラに収録された「なつぞら賛歌 〜空へ〜」の終盤の部分。まるで、アニメの映像に合わせて作曲したとしか思えないはまりようである。きっと「なつぞら」の世界では『大草原の少女ソラ』最終回のために追加録音が行われたという設定なのだろう(そう考えたほうが楽しい)。
 橋本由香利のコメントによれば、この曲は「なつが出会った全ての人、土地、生き物、物、に感謝を込め空に向かって謳う曲」「東京と北海道、過去〜未来を繋ぐ曲」だそうだ。その曲が、『大草原の少女ソラ』のフィナーレの曲として使用されている。そして、「なつぞら」の最終回(第26週・第156回)も、この曲と主題歌「優しいあの子」が続けて流れて締めくくられるのだ。
 『大草原の少女ソラ』のBGMで面白いのは、「なつぞら」のBGMがそのまま劇中アニメのBGMとして使用されていることである。オリジナル曲を作る余裕がなかったのかもしれないが、意図した演出とも考えられる。
 「なつぞら」北海道編のなつの物語と『大草原の少女ソラ』のソラとレイの物語はシンクロしている。ソラの物語を通して、なつは自分の少女時代を生き直しているわけだ。そう考えると、ソラの物語に、なつの物語のために書かれた音楽が流れるのは不思議ではない。視聴者も音楽を通して、ふたつの物語を重ねていく。ソラの物語となつの物語が同じ曲で締めくくられるのは偶然ではないのだろう。

 ただ、なつが「なつぞら」のBGMを自分が作ったアニメの音楽として聴いている姿は、見ていて不思議な気持ちになる。そもそもドラマの中に背景音楽が流れるのもフィクションである。リアルな人生では状況に合わせて音楽が流れることはない。なつももちろん、自分の人生の背景に流れるBGMを聴いてはいない。けれど、『大草原の少女ソラ』のBGMは聴いている。それはなつ自身の人生のBGMになっていく。もしかしたら、なつは『大草原の少女ソラ』のBGMを口ずさむことがあるかもしれない。自分の物語のBGMであることは知らずに。この入れ子構造はちょっと目がくらむようだ。
 しかし、サウンドトラックというのはそういう機能を持っているのである。われわれは劇場作品やドラマやアニメの中で流れる曲を独立した音楽として聴いて、勇気づけられたり、感情をゆさぶられたりする。そのとき、その曲は映像作品のための音楽であることを超えて、自分の人生の音楽になっていく。音楽はフィクションとリアルを結びつける。「なつぞら」の音楽演出を考察していくと、そんなことを考える。そして、今、自分の人生にはどんな音楽が流れているのだろうと思ってしまう。
 とはいえ、そんな難しいことを考えるために「なつぞら」劇中アニメの音楽を調べたわけではない(あくまでも趣味なので)。本当の興味は、「なつぞら」劇中アニメの音楽を単独で聴きたいということなのだ。NHKには、サントラ未収録曲を含む「「なつぞら」アニメ音楽集」をぜひリリースしてもらいたいと思う。その際は、『キックジャガー』の主題歌と『大草原の少女ソラ』の主題歌も必ず収録して。

※劇中アニメの確認には、原口正宏さんによる『月刊アニメージュ』2019年11月号の記事「なつぞらを彩った開拓者の魂」を参考にさせていただきました。

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第7回 日本版チンクチェント?

どうなんでしょう?
パクったのかな?
スバル360は、サイズといい、RRのメカニズムといい、FIAT500にそっくりなのは。
まあ、当時の日本車はデザイン的に外車のデザインをパクったような車が多数なので、そうなのかな。
でも、現代の軽自動車より愛らしいデザインですよね。
自分が乗ったら頭つかえそうですが(笑)

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第640回 来年もコンテに夢中

 先週は出崎統監督作品について書いたので、もう少し自分の出崎愛を。まず、出崎ファンなら誰しもが思うこと、それは

出崎演出の核はその個性的な絵コンテにある!

ということ。自分はそれに憧れて業界に入ったし、「監督はコンテ」だと今でも思ってます。出崎監督も「俺にとっての現場ってのはコンテだよね」とオーディオコメンタリーではっきり仰ってたし。ぶっちゃけ出崎コンテでなら、誰が監督や演出をやろうとも紛うことなき「出崎フィルム」に仕上がります。好例は『ASTRO BOY 鉄腕アトム』第9話「フランケン」(監督・小中和哉、脚本・村井さだゆき、コンテ・出崎統、演出・吉村文宏/2003年6月1日放映)でしょう。「コンテでここまで支配できるんだ!」と感動したものです。それはもう”監督が出崎さんじゃないだけの出崎アニメ”!
あと出崎監督、「変なコト(変な画作り)をいっぱいやって」とか「変てことはそれだけ観る人の印象に残るんだ」的なことも(たしか劇場『ゴルゴ13』['83]のパイオニアLDC版のDVD、山本又一朗Pとの対談オーディオコメンタリー)お話しされてました。『ブラックジャック FINAL』特典映像でも宇田川純男P×桑原智監督×西田正義監督鼎談でも「(出崎)監督は”次のカットが(観客に)読まれたら自分は飽きられちゃう”と、常に新しい画面を作ろうとしてた」的なお話が出てました。「変なこといっぱい」とか「飽きられない新しい画作り」などと聞くと、教本を読んで勉強して高尚なコンテを切ろうとしてるインテリな方々には「巨匠にしてはやけに単純で俗っぽい言い方するな〜」と映るかもしれません。でも、そもそもアニメはマンガより音楽に似てます。なぜならマンガは見開いた分はすべてのコマが一望できる上、画が流れるスピードは読者に任せっきりで何度でも前のコマを見返せるのに対し、アニメは音楽と同じで「情報が時間とともに次々と入れ替わって消えていく」のみ。画像とメロディーの違いだけで、観る人・聴く人が次にくる画なり音なりの予想ができないことが基本事項。どちらもその時間を楽しむ代物だからです。つまり出崎監督の「変なコトをする」「次のカットを読まれない」などは、フィルムというものの本質的な面白さに極めて近い価値基準と言うべきでしょう。出崎監督はフィルムという文化を頭デッカチに考えず、生理的にとらえる演出を開闢したのだと思います。しょせん映像やコンテ・演出などの教本に書いてあるイマジナリーラインが何ちゃらどーたらなんて、セオリーではあってもルールじゃない。そんなもの一読もせずBOO OFFに売って「こんなの読んだって監督になれない!」ってことに気づくべき。教本なんぞ読んでる時間があったら、自分の好きな小説でもマンガでも自ら監督するつもりでコンテを切ってみたほうが余程勉強になります(これ何年か前にも1度書きましたよね?)。

絵コンテとは、先達らが勝手に解説した映像文法を盾に、他人の描いたモノにケチつけるだけで自分じゃ年間数分しか描かないインテリより、誰が読んでも「面白いもの」をたくさん描いたモン勝ちです(板垣持論)!

 だってプロデューサーが教本や巨匠のインタビュー集片手にコンテ読むと思います? 「このカット繋ぎ正しい!」とか「このアングル不正解!」「この画面分割の意味ある?」なんてジャッジ、お客さん(視聴者)の何割がそんなこと考えながら観るんでしょうか? そこからして、何様だか分からない人が勝手に決めた文法に従ったら、面白いフィルムになるなんて方程式はウソだと分かるでしょう。
 テレコムの先輩の中でも出崎演出について「あんなケレン味ばっかりな云々」「コンテ何が描いてあるか分からん」などと語った方がいました。出崎監督は『リトル・ニモ(パイロットフィルム)』(’87)でテレコムと仕事をしてたため、先輩方にとってはその時の印象が強かったのかと。何せ80年代前半のテレコムを育てたのは宮崎駿監督や高畑勳監督らで、その後の出崎版『ニモ』に参加された先輩方が戸惑うのは当たり前だったのではないでしょうか? しかしそんなことはどーだっていいのです! フィルムの作り方は監督ごとに違うもの。出崎監督のコンテは面白くてカッコいい! それだけで良し!
 少なくとも板垣は、アニメは普通にいろいろ観たけど「フィルムとして面白い!」と感じたのは出崎アニメだけだし、出崎アニメがなかったらアニメ業界にも入らなかったと思います。だから自分も、もちろん出崎監督のようには絶対無理ですが、とにかくコンテ! 1本でも多くコンテを描きたいんです! 最近は嬉しいことに各スポンサーさんやプロデューサーさんらに「板垣さんにはコンテをたくさん描いてほしい」との要望があり、文字どおり「たくさん」描かせていただいてます。『ユリシーズ』も『コップクラフト』も。

ということで、来年もコンテ・監督をやらせていただけそうなので、何卒よろしくお願いします!

アニメ様の『タイトル未定』
231 アニメ様日記 2019年10月27日(日)

2019年10月27日(日)
原稿を書いて、散歩して、原稿を書いて、昼寝して、原稿を書いて、寝た。要するに原稿メインの一日。最近、原稿に集中できる時間が少ないので幸せだった。

2019年10月28日(月)
昼にこの数日やっていたテキスト作業が終了。時間をかけてしまったけれど、仕上がりとしては満足。午後は色々な用事を片づける。ページ構成のやり直しもあり。

2019年10月29日(火)
一日、デスクワーク。打ち合わせ中に「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」の製本で使う紐を選んだ。同時進行のプロジェクトが多すぎて、作業やってもやっても進まない感じ。次の次の次の次の次につくる本の編集を、ある方に任せることにした。『Dr.STONE』最新話まで観た。面白い。原作はまだまだ先があるみたいだけど、どこかで一区切りつけるのか。

2019年10月30日(水)
次の次の次の書籍の表紙ラフを描いたり、イレギュラーなページ構成の作業をしたり。午後はササユリカフェで打ち合わせ。「小林治(ススキダトシオ)展」の展示を少し見せてもらった。僕の目からすると、かなりマニアック。新作の色紙もかなりよい。
これから出す書籍の価格を決めなくてはならないのだけど、定価3700円に消費税がつくと、お客さんが払う額は4000円をこえてしまう。定価3600円と3700円の差は、買う側としては大きいなあ。
ながら観で、Amazon Prime Videoのレンタルで「ビリティス」を視聴。デイヴィッド・ハミルトン監督の実写映画だ。自分の初見は木曜洋画劇場だったらしい。ネットで検索してみたら1981年1月29日の放映だったようだ。今となっては、これをテレビでやったことに驚き。当時の自分は高校生だった。

2019年10月31日(木)
午前中はデスクワーク。13時に社内打ち合わせで、14時に荻窪で打ち合わせ。その後、荻窪から井荻まで歩いて、井荻で打ち合わせ。『モブサイコ100 II』ラスト3話を観直したら、かなり面白かった。本放映時はシリーズ前半のインパクトが強すぎた。キャラクタードラマも、アクション描写も上々の出来。

2019年11月1日(金)
外での打ち合わせがないので、一日、デスクワーク。次の次の次に出す本のラフをデザイナーさんに出して、カメラマンさんとブツ撮りの相談をして、次の次の次の次の次に出す本のページフォーマットのためのラフ出し。それから、次の次に出す本の台割りの見直し。インタビューテキストの再整理。集中してやらなくてはいけない作業は連休に持ち越し(ヤバイ)。
少し前に、仕事で必要なBlu-rayソフトが数日探しても見つからなくて、仕方なくて同じソフトを買ったのだけど、事務所スタッフが倉庫に平積みになっていた雑誌の中からそのソフトを発見した。何故、そんなところに!
『WOLF’S RAIN』を再見中。4話で食べるものがないなら、4人のうちの誰かを食べればいいという話になり、ツメが「食べるなら、トオボエかヒゲだ」という意味のことを言い、それに対して「どうしてキバは(食べられる中に)入ってないんだよ」と問われると「こいつは食えねえやつだからだ」とツメは答える。ツメとしては「こいつは⋯⋯」は気が利いた冗談を言ったつもりだと思うんだけど、誰も突っ込まない。いや、突っ込む作品ではないんだけど。言った後に、ヒューっと風が吹くのは「ギャグが滑った」という意味の、作り手による突っ込みだろうか。

2019年11月2日(土)
三連休1日目。「自分だけで進める作業」をやった。『WOLF’S RAIN』は終盤まで観た。東映チャンネルで『どうぶつ宝島』4Kレストア版を放映していた。これは綺麗だなあ。その後、『銀河鉄道999 永遠の旅人エメラルダス』をやっていたのだけど、メチャメチャ面白い。自分がどうしてあの頃に松本アニメが好きだったのかが、ちょっと分かった気がする。主題歌が劇場版だった。すっかり忘れていた。

第6回 吉野家の駐車場に

スピンターンで吉野家の駐車場に入れるとは、漫画家の西風さんの名言ですが。
ストラトスは、曲がるためだけに開発されたって感じのスペックで、ホイールベース・トレッド比が限りなく正方形になるようになっています。
乗り味はピーキーそのもので、アクセルのON・OFFでスピンできるようです。
近年は現代版にリメイクされたモデルが登場していますが、オリジナルのストラトスの方が好きですね。

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第639回 第何次? 出崎ブーム

前々回(第637回)で話題にしたYouTubeの手塚プロダクション公式チャンネルで公開中の出崎統監督作品『おにいさまへ…』の話!

 『おにいさまへ…』は1991〜92年にNHK衛星第2で放送された手塚プロ制作の出崎アニメで、平素出崎ファンを公言して憚らない板垣にとって、おそらく「監督の名前を意識して観た初めての出崎アニメのTVシリーズ」です。俺の場合、『あしたのジョー』(’80年)や『スペースコブラ』(’82年)の頃には物心はついてたものの、監督名を意識した上でのリアルタイム視聴ではないし、『ガンバの冒険』(’75年)や『宝島』(’78)の頃はもちろん幼すぎておそらくリアルタイムでは観てないと思います(たとえ観ていたとしても憶えてない!)。つまり、『ガンバ』から『スペースコブラ』までの作品は、後年『エースをねらえ!2』(’88)や『同・ファイナルステージ』(’89)『B.B』(’90)『修羅之介斬魔剣』(’90)などのOVAで監督・出崎統を認識してから、再放送やビデオ(レンタル)で観たパターン。よって『おにいさまへ…』は自分にとって初めて毎週リアルタイムで楽しんで観た出崎TVシリーズに……なるはずだったんです(涙)! 当時「アニメージュ」誌上に告知が載って即、池田理代子先生の原作を買い、「この耽美な少女マンガを名匠・出崎統監督がどんなアニメにするのか?」と予習までし、放送開始日をマジで指折り数えて待っていた自分の最大の問題点が、そう、

ウチ(実家)が衛星放送を契約していなかったのです!

「どうしても観たい番組があるから」くらいでウチの両親が衛星放送など契約してくれるはずもなく。そこで「衛星放送を契約していて『おにいさまへ…』を録画してくれる知り合い」を探したら、いました近所に。こども会の会長で、俺のマイコンの世話をしてくれたNさん! ウチの親父の友人でもあり、よく遊びに来ていたので、自分のほうから「NHK衛星第2で観たい番組があるんだけど」と。するとNさん「じゃあビデオに録っといてあげるからテープ(VHS)渡しな」と言ってくれました。渡した俺、

 けしてオーバーとかデフォルメではなく、当時の自分にとって、その辺のジ○リアニメより出崎アニメの新作のほうが、泣くほど嬉しかったのです。で録画した第1話は、出崎監督と原作者・池田理代子先生も出演している特番仕様。TV画面で動いて喋る出崎監督にまず感激! 続いて本編を観てあまりの美しさ・カッコよさに感動!

 縦書きのメインタイトルから、クルクル回る奈々子へ! サンジェストに手を引っ張られ全面透過光バックにスローモーションのカメラ回り込みでバスを下車する奈々子、薫の君のバスケシーン、全部が躍動感ある出崎カットで、もう何十回観返したことか! 1シーン1シーンがまるで美しい詩のよう。『エースをねらえ!』のテニスがない版と言うより、自分的には『華星夜曲』(’89・OVA)の若者向けな印象でした。『華星夜曲』は大人の女を、『おにいさまへ…』は学生の女子をそれぞれ描いてます。出崎さんのコンテはいわゆる照れが一切ありません! 思いっきり自らが女になりきって、各キャラの心情の揺れをストレートにカット割りに落とし込んでいったのでしょう。だから、我々世代の映像インテリ気取りたちによる「FIX(カメラが動かない)至上主義」なぞ聞く耳持たなくてもいいのだし、万人に向けて「映像の持つ迫力・美しさ、そして映像の楽しさ・面白さとは何か?」と問いかけるような出崎作品は、誰がなんと言おうとも映像作品(フィルム)の本質というものを追究しているのです(断言)! などとまた出崎作品を語ると熱くなってしまう板垣です。
 ま、とにかく『おにいさまへ…』第1話を擦り切れるほど観た当時17歳の俺は、ビデオテープをNさんにまた渡しました。第2話を録画してもらおうと。

 その後、Nさんの録り忘れが幾度も(涙)。そしてできた歯抜けビデオテープ。

 つまり自分、リアルタイム(本放送)では半分くらいの話数しか観れませんでしたというオチ。しかし、たとえ話数歯抜けとはいえ、こちらのお願いというか単にわがままを聞いてくれたNさんには感謝しかありません。
 そして去年帰省した際、親父より「Nさん、亡くなったよ」と知らされました。小学生だった自分に中古のマイコンを譲ってくれ、さらには『おにいさまへ…』の録画までしてくれたNおじさん、本当にありがとうございました。

第171回 テクノポップがいちばん 〜うる星やつら〜

 腹巻猫です。12月19日(木)19時より神保町・楽器カフェでイベント「ゴーゴー!サントラさんV(ファイブ)」を開催します。Webラジオのサントラ・バラエティ番組レッツゴー!サントラさんのイベント第5弾です。出演は貴日ワタリ、腹巻猫、早川優。アシスタントは那瀬ひとみ。平日ですが、22時までやってますので、お時間ありましたら、ぜひご来場ください! 詳細・予約は下記からどうぞ。
https://gakki-cafe.com/event/20191219/


 上野の国立科学博物館で開催中の企画展「電子楽器100年展」に足を運んだ。「100年展」というタイトルから想像していた規模よりはコンパクトな展示だったが、詳細に記述された年表や電子楽器を科学の切り口でとらえた解説はなかなか興味深かった。冨田勲の直筆スコアが展示されているのも見逃せない。

電子楽器100年展(12月15日まで開催)
http://www.kakehashi-foundation.jp/activity/concert/20191203/


 この企画展では電子楽器メーカー・ローランドの創始者・梯郁太郎の業績が大きく取り上げられている。ローランドは電子楽器の開発、MIDI規格の実用化等で電子音楽の分野に多大な貢献をした会社。そのローランドの技術開発室に少年時代からアルバイトとして通っていたのが、作編曲家の安西史孝である。彼が手がけた代表作のひとつが『うる星やつら』の音楽だ。
 『うる星やつら』は高橋留美子の同名漫画を原作に1981年10月から1986年3月まで放映されたTVアニメ作品。浮気性の高校生・諸星あたると宇宙から来た美少女・ラムを中心に、個性的なキャラクターたちが巻き起こす騒動を描くSFラブコメディだ。
 アニメ版の製作はキティ・フィルム。シリーズ前半は押井守が監督、アニメーション制作をスタジオぴえろ(現・ぴえろ)が担当。後半から監督はやまざきかずおに、アニメーション制作はスタジオディーンに交代している。
 当初は原作とアニメの違いに違和感を抱くファンもいたが、しだいにアニメならではの面白さが爆発。4年半にわたって全195回が放送される人気作品になった。劇場版6本が公開され、多数のOVAも制作されている。
 筆者はといえば、スラップスティックなラブコメが苦手で、放映当時はそれほど熱心に観ていなかった。しかし、友人に熱心なファンがおり、その人気は身近に感じていた。その友人に奨められて観た劇場『うる星やつら2 ★ビューティフル・ドリーマー★』の衝撃はいまも鮮烈な記憶として残っている。
 今回はTVアニメ版『うる星やつら』の話である。

 アニメ版『うる星やつら』の音楽事情はなかなか込み入っている。
 なんといってもアニメファンの記憶に残るのは主題歌だろう。オープニング主題歌「ラムのラムソング」は今でもカラオケで歌われる人気曲だし、エンディング主題歌「宇宙は大ヘンだ!」はある意味オープニング以上に本作の雰囲気をみごとに描き出した曲だ。
 そして、当時のアニメファンを驚かせたのは、番組の顔である主題歌が次々と変わっていくという画期的な趣向である。初代オープニング主題歌だけは2年近く使われたが、それ以外の曲はおよそ2クールか1クールで交代している。しかも、「DANCING STAR」「パジャマ・じゃまだ!」「心細いな」「星空サイクリング」など、どれもキャッチーなメロディと新鮮なサウンドで作られた名曲ぞろいだった。
 その多くの作曲・編曲を手がけたのが Flying Mimi Band などで活躍したシンガーソングライターの小林泉美。本作以降、アニメソングでは『さすがの猿飛』(1982)、『ストップ!!ひばりくん!』(1983)、『ふしぎの国のアリス』(1983)などの主題歌を担当している。主題歌歌手には松谷祐子、ヘレン笹野、CINDYら多彩なアーティストが参加し、レコードの発売レーベルもキャニオンレコード、東芝EMI、キティレコード(ポリドール)、徳間ジャパンなど多岐にわたる。これも、従来のアニメソングにはなかったことだ。音楽制作をキティ・ミュージック(キティ・エンタープライズ)が手がけていたために、キティゆかりのアーティストがレーベルを越えて続々と参加した結果である。この趣向は後番組の『めぞん一刻』でさらに加速され、アニメ音楽ビジネスの新しい潮流を確立することになる。
 いっぽう、BGMに参加した作曲家も多彩である。
 放映開始当初の音楽担当は、風戸慎介と安西史孝。劇場『うる星やつら オンリー・ユー』で西村コージ、天野正道が参加。劇場版は星勝(第2作『ビューティフル・ドリーマー』)、ミッキー吉野(第3作『リメンバー・マイ・ラヴ』)、板倉文(第4作『ラム・ザ・フォーエバー』)、大森俊之(第5作『完結篇』)、小滝満(第6作『いつだってマイ・ダーリン』)とすべて音楽担当が異なる。TVシリーズと劇場版は別物とはいえ、これだけ作曲家が異なるケースも珍しい。『オンリー・ユー』『ビューティフル・ドリーマー』『リメンバー・マイ・ラヴ』の音楽はTVシリーズにも流用されているため、なんとも豪華な顔ぶれがTVシリーズにそろうことになった。
 そんな本作の音楽を収録したアルバムの代表は、キャニオンレコードから発売された「うる星やつら MUSIC CAPSULE」(1982年10月発売)、「うる星やつら MUSIC CAPSULE 2」(1983年9月発売)の2枚。ほかに、西村コージによる楽曲を収録した「うる星やつら MUSIC TOUR」がキティレコードから1984年11月に発売されている。そして、1985年9月には2枚組アルバム「うる星やつら ミュージック・ファイル 〜未発表TV・BGM集〜」がキティレコードから発売。これは風戸慎介、安西史孝、西村コージらが手がけた未商品化曲を集めた音楽集で、メーカーをまたがったディスコグラフィまで付属したマニア向け商品だった。
 CD時代になっても『うる星やつら』の勢いは止まらず、1994年12月には、劇場版も含む主題歌・挿入歌・BGMの全楽曲収録をうたった15枚組CD-BOX「うる星やつら コンプリート・ミュージック・ボックス」がキティレコードから限定版で発売された。既発盤収録楽曲にExtra楽曲(いわゆる流用曲)まで加えた内容だが、それでも完全収録ではないというから、『うる星やつら』の音楽は奥が深い(音響監督の斯波重治によれば、オリジナル楽曲以外にキティレコードの音源も使用させてもらっていたのだそうだ)。

 かくのごとく膨大な『うる星やつら』の音楽であるが、そのオリジンとなったのは、やはり最初に作られた風戸慎介、安西史孝の楽曲だろう。特にテクノポップを取り入れた安西史孝の楽曲は革新的だった。
 映像音楽において、シンセサイザーがまだ生楽器の中のスパイス的な味つけとして使われていた時代。シンセサイザーを使った映像音楽といえば、「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」のウォルター(ウェンディ)・カーロスや「シルクロード —絲綢之路—」の喜多郎など、クラシック的な楽曲がほとんどだった時代。YMOに代表されるテクノポップのセンスをいち早くTVアニメに持ち込んだのが安西史孝だったのだ。
 「うる星やつら オンリー・ユー」サウンドトラック盤のライナーノーツに安西史孝が寄せたコメントによれば、以前から「『うる星』狂い(自称)」だった安西は『うる星やつら』のTV版がスタートすると聞いて「アセッテ『僕に音楽(BGM)をやらしてクレー!!』といって売り込みに行った」のだそうだ。
 「こういうアニメのSF的ドタバタシーンには絶対テクノポップがあうと思い、一部反論を押し切り、テクノミュージックを作ってしまいました」と安西史孝はふり返っている。
 安西史孝は自宅のスタジオでアナログ・シンセサイザーを使用して楽曲を制作。小林泉美の「ラムのラムソング」のデモ制作にも関わったことが、近年になって明かされている。
 安西と共にクレジットされている風戸慎介は本名の川辺真名義で純音楽作品も発表している作曲家で、映像音楽では『キン肉マン』(1983)、『未来警察ウラシマン』(1983)、『ウルトラマンG』(1990)などの仕事で知られる。『うる星やつら』では生楽器を使ったオーソドックスな楽曲を風戸慎介が、シンセサイザーによるテクノサウンドを安西史孝が担っていた印象である。個性の異なるサウンドが同居し、ひとつの色に染まらないカラフルな音楽世界を作り出しているところが、本作の魅力だ。
 最初の音楽集「うる星やつら MUSIC CAPSULE」から紹介しよう。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 宇宙は大へんだ!(歌:松谷祐子)
  2. 錯乱坊の不吉な予感 ★
  3. UFO出現1 ★
  4. UFO出現2 ★
  5. ラム登場 ☆
  6. 空飛ぶラム ★
  7. テンちゃん登場 ★
  8. 金太郎登場 ★
  9. ラムのラブソング(インストゥルメンタル1) ★
  10. 平安朝シリーズ1 ☆
  11. 平安朝シリーズ2 ★
  12. ハチャメチャ大混乱1 ☆
  13. ハチャメチャ大混乱2 ★
  14. ハチャメチャ大混乱3 ★
  15. ハチャメチャ大混乱4 ☆
  16. あたるの大決意1 ☆
  17. あたるの大決意2 ☆
  18. 心細いなサウンドステッカー ※
  19. ラムの思いやり ☆
  20. ラムのラブソング(歌:松谷祐子)
  21. ハワイシリーズ1 ☆
  22. マルガリータ(歌:ヘレン笹野)
  23. ハワイシリーズ2 ☆
  24. ラムのラブソング(インストゥルメンタル2) ☆
  25. 抜き足差し足… ★
  26. 不安のたかまり ★
  27. 事件だ事件だ大事件 ★
  28. サスペンスタッチ1 ☆
  29. サスペンスタッチ2 ☆
  30. サスペンスタッチ3 ★
  31. それ行けやれ行け大追跡1 ★
  32. それ行けやれ行け大追跡2 ★
  33. それ行けやれ行け大追跡3 ☆
  34. それ行けやれ行け大追跡4 ☆
  35. 怪獣動物園 ★
  36. むなしい毎日 ☆
  37. 悩めるあたる ☆
  38. 心細いな(歌:ヘレン笹野)

★=安西史孝担当曲
☆=風戸慎介担当曲
※=「心細いな」(小林泉美作曲)の星勝アレンジ曲

 LPレコードではトラック1〜20がA面、トラック21〜38がB面。
 オープニング主題歌でなく、エンディング主題歌の「宇宙は大ヘンだ!」から始まるのが痛快だ。オープニング「ラムのラブソング」はA面のラストに収録されている。B面に収録された「マルガリータ」は挿入歌、「心細いな」は2代目エンディング主題歌である。
 1曲目に「宇宙は大ヘンだ!」が配されていることからも、本アルバムの主軸がラブコメの「ラブ」よりも「コメディ」に置かれていることがうかがえる。
 トラック2「錯乱坊の不吉な予感」から「UFO出現1」「UFO出現2」と安西史孝によるシンセサイザー楽曲が続き、アルバムの雰囲気を決定づける。「錯乱坊の不吉な予感」と「UFO出現1」は劇中でよく使われた、事件を予感させるミステリアスな曲だ。シンプルなメロディとシンセの音色が怪しくコミカルな空気をかもし出す。
 トラック5「ラム登場」は風戸慎介によるラムのテーマ。フルートがメロディを奏でる爽やかな曲で、「あこがれの美少女」といったイメージ。
 続く「空飛ぶラム」「テンちゃん登場」「金太郎登場」は安西史孝の曲。「テンちゃん登場」「金太郎登場」は本編でもおなじみのユーモラスなキャラクター描写曲である。
 キラキラしたシンセの音色を使ったドリーミィなオープニング主題歌アレンジ曲「ラムのラブソング(インストゥルメンタル1)」と和風の情景描写曲「平安朝シリーズ1」「同2」(第11回「あたる源氏平安京にゆく」で使用)をはさんで、トラック12から「ハチャメチャ大混乱1」〜「同4」が並ぶ。『うる星やつら』になくてはならないドタバタ曲だ。
 とりわけ、安西史孝による「ハチャメチャ大混乱2」と「同3」は「これぞ『うる星やつら』BGM!」と呼べる使用頻度の高い曲。アニメBGMでコミカルな曲というと、60〜70年代はジューズハープやクイーカ、ミュートしたトランペットなどの特徴的な音色を使用して雰囲気を出す手法が多かった。本作では、アナログ・シンセサイザーの音がその役目を果たしている。これは『うる星やつら』の発明かもしれない。
 トラック19の「ラム思いやり」は「ラム登場」と並ぶ風戸慎介によるラムのテーマ。オーボエの音色とストリングスが奏でるメロディが胸にしみる。第26回「テンちゃんの恋」、第39回「どきどきサマーデート」など、ちょっとほろりとさせるエピソードに使用されている。こういう曲も『うる星やつら』には大切な要素である。
 B面は、風戸慎介によるフュージョン風の楽曲「ハワイシリーズ1」「同2」(第13回前半「ハワイアン水着ドロボウ」で使用)とヘレン笹野が歌うラテン風味の挿入歌「マルガリータ」で、ちょっと大人びた気分のスタート。しっとりと聴かせる「ラムのラブソング(インストゥルメンタル2)」でひと息つく。
 トラック25からの3曲「抜き足差し足…」「不安のたかまり」「事件だ事件だ大事件」は安西史孝作曲のユーモラスなサスペンス曲。ドタバタ描写になくてはならない使用頻度の高い曲だ。
 アルバムのクライマックスは、ラムとあたるの追っかけっこなどに流れる「それ行けやれ行け大追跡1」〜「同4」の4連発。一聴して「ああ、『うる星やつら』の音楽!」とわかる印象深い曲ばかりである。
 BGMパートのラストは、あたるがラム以外の女性を追いかけるも結局うまくいかず「トホホ…」というイメージの3曲。安西史孝作曲の「怪獣動物園」、風戸慎介作曲の「むなしい毎日」「悩めるあたる」、いずれも耳に残るBGMだ。
 最後にトロピカルなエンディング主題歌「心細いな」が流れて終幕。『うる星やつら』本編の雰囲気をうまく再現した、うまい構成である。

 こうして聴いてみると、風戸慎介曲と安西史孝曲の配分が絶妙である。風戸慎介の曲だけだと普通すぎるし、安西史孝の曲だけだとエキセントリックすぎる。両者をうまく混ぜ合わせて、日常の中に非日常がまぎれ込むスリルとドキドキ感が音楽アルバムとして表現されている。それは『うる星やつら』の世界観そのものだ。
 『うる星やつら』の音楽は、放送期間中に技術的にも音楽的にも変化している。1983年2月公開の『うる星やつら オンリー・ユー』では日本に初めて上陸したデジタル・シンセサイザー・フェアライトCMIが導入され(安西史孝によれば、当時の価格で1500万円もしたという)、音色が一新された。その後にリリースされた「うる星やつら MUSIC CAPSULE 2」には、シンセサイザーを使った曲でも抒情的な曲やロマンティックな曲が多く収録され、1枚目の音楽アルバムとはコンセプトが変わっている。「うる星やつら MUSIC CAPSULE」「うる星やつら オンリー・ユー オリジナル・サウンドトラック」「うる星やつら MUSIC CAPSULE 2」と発売順に聴くと、その音楽的変遷がうかがえて興味深い。『うる星やつら』の音楽アルバムは、日本の電子音楽史を語る上でも無視できない重要な作品なのである。
 『うる星やつら』というなんでもありのアニメに集った多彩な作曲家、アーティスト。そこで生み出されたのは、個性的なキャラクターが大集合する『うる星やつら』にふさわしい、キュートでポップな、お祭りのような音楽世界だった。「うる星やつら MUSIC CAPSULE」はその斬新で魅惑的な音楽世界をアルバムとして結晶させた記念碑的な1枚である。
 2019年9月、『うる星やつら』関連楽曲の配信が Apple Music、iTunes、レコチョク、LINE MUSIC などの主要音楽配信サービスでスタートした。主題歌・挿入歌のほかに、音楽集「MUSIC CAPSULE」「MUSIC CAPSULE 2」の2枚も配信されている。CDが入手困難になっているだけに、ファンにはうれしいリリースだ。残念ながら「MUSIC CAPSULE」からはヘレン笹野が歌う「マルガリータ」と「心細いな」の2曲が割愛されているが……。それでも、この歴史的音楽集の価値は不変である。

うる星やつら MUSIC CAPSULE (音楽配信)
Amazon

うる星やつら MUSIC CAPSULE 2 (音楽配信)
Amazon

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.122
Rexamination of PATLABOR the Movies

 2019年最後のオールナイトは劇場版『機動警察パトレイバー』特集だ。『機動警察パトレイバー[劇場版]』『機動警察パトレイバー2 the Movie』『ミニパト』『WXIII 機動警察パトレイバー』の4本。いずれも貴重な35ミリフィルムによる上映である。

 第1作の『機動警察パトレイバー[劇場版]』の公開が1989年であり、今年で30周年を迎えた。この機会に、『機動警察パトレイバー』と劇場版シリーズの魅力を振り返りたい。

 トークのゲストについては調整中。決まり次第に発表する。前売り券は12月7日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 122
Rexamination of PATLABOR the Movies

開催日

2019年12月21日(土)

開場

開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝6時(予定)

会場

新文芸坐

料金

3300円均一(特別料金)

トーク出演

企画中

上映タイトル

機動警察パトレイバー the Movie(1989/99分/35mm)
機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/113分/35mm)
ミニパト(2001/38分/35mm)
WXIII 機動警察パトレイバー(2001/101分/35mm)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第638回 津田健次郎さんと吉岡茉祐さん

『COP CRAFT』スペシャルイベント!
ツダケンさん、まゆしぃ、お二人とも面白い!


 関西出身な津田健次郎さんと吉岡茉祐さんの掛け合いが本当に楽しかったイベント! パッケージリテイク作業を駆け抜けるまでイベント系はパスしてきた俺。今回ようやく観に行きました。音泉のラジオはちょくちょく聴いてたし、アフレコ時や食事会などで一緒に雑談はしましたが、ステージ上から客席に向かってするお二人のパフォーマンスを自分は初めて観たのでとても新鮮でした! 自動車メーカーで「日立」とか「象印」などと宣うまゆしぃのポンコツ発言を、ツダケンさんが終始上手くまとめ、お二人だけで2時間近く持たせるなんて「プロだなぁ」と。
 イベントの最後、真っ赤なサイリウムの中でエンディング主題歌「Connected」とカップリング曲「Nonfiction」を熱唱するまゆしぃは、自分の中では『WUG!』と被ってて、且つ大人っぽいカッコよさも加わりつつも、誰もがいつまでも見ていたいと思う愛らしさは健在で素晴らしかったです!

津田さん、吉岡さん、また一緒にお仕事させてください!
てか、また『COP CRAFT』作りましょう!

 そしてイベント後は賀東招二さん、村田蓮爾さん、その他TV局のプロデューサーさん、出版社の編集さんらと食事という名の飲み会。創作についてのエロい話から単なるエロい話までいろいろ語りつつ、そこでも先生方やプロデューサーさんらと「続きやりたい!」話を。で、皆さまとお別れしたほろ酔いな俺は、賀東さんのあまり好きではないBOOK OFFへ!

「蒲田行進曲」(監督・深作欣二/1982年・松竹)の
Blu-rayを買って帰りました!

アニメ様の『タイトル未定』
230 アニメ様日記 2019年10月20日(日)

2019年10月20日(日)
午前2時頃に事務所に入って原稿作業。ワイフの希望で、午前中は散歩に。まずは池袋から要町に。谷端川南緑道を歩いて、下板橋駅に。東武東上線で大山まで移動。大山の商店街を歩く。大山は板橋区民まつりで賑やかだった。昼から激安ホルモン焼き屋で飲み食いした後、ワイフはお気に入りのクレープ屋でクレープを食べる。大山から池袋まで歩いて帰った。要するにたっぷり歩いた。午後は事務所に戻って原稿を書く。

2019年10月21日(月)
ながらでWOWOWで録画した「ボヘミアン・ラプソディ」の吹き替え版を観る。吹き替え自体は悪くないのだけど、やっぱり吹き替えで観る映画ではないのかも。ドキュメンタリータッチで作られた映画だと思うのだけど、吹き替えだと、作り物感が強まってしまう。午後はドラマの「深夜食堂」を連続再生。

ネットで吾妻ひでおさんが亡くなったことを知る。好きな作家だったし、好きな作品も沢山あった。だけど、それだけではない。僕にとっては価値感を提示してくれた方だ。その価値感が何なのかは言葉にしづらいが、大きなところで言えば、世界に対してどんなふうに向き合えばいいか、ということを示してくれた。その価値感は作中の美少女やSF的な部分と密接に繋がっていた。僕の血肉となっている。心よりご冥福をお祈り致します。

2019年10月22日(火)
祭日。昼間は基本的にデスクワーク。終わったはずの原稿に目を通したら、手を入れ始めて、延々と手を入れ続ける。事務所が寒くて、数か月ぶりに暖房を入れる。DVDで『逮捕しちゃうぞ』OVAを観て、次に『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』を観る。その後、連想ゲーム的に『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』をAmazon Prime Videoで再生する。16時から阿佐ヶ谷で打ち合わせ。

2019年10月23日(水)
社内打ち合わせ以外はデスクワーク。ドラマの『深夜食堂』を流したり、DVDで『BIRTH』を流したり。次の次の次に作る本で、予定していた本文用の紙が使えないことが判明。ここで粘る必要はないので、普通の紙に変更。

2019年10月24日(木)
一日、デスクワーク。夜が明けるまでにひと仕事できたのがよかった。昼前後は『トワノクオン』を再生しながら作業をする。

2019年10月25日(金)
事務所に入ったら、『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の放映中だった。打ち合わせが2件あった以外はデスクワーク。事務所スタッフは「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」の編集作業の追い込み。それから「アニメスタイル015」の編集作業、「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」の準備、「この人に話を聞きたい」のテキスト作業が並走する。 
一昨日決めた書籍の紙の件。また別の紙に変えることに。ごくあたりまえの普通の紙に着地した。「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」は今日、関連各所にデザインのチェック出しをするはずだったのだけれど、編集スタッフが直前になって資料の掲載順を入れ替えたいと言い出す。プリントしたデザインをハサミで切って、パズルのように入れ替えつつ、順番を検討していた。それから「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」で製本に使う糸のサンプルが届く。紙のサンプルよりもずっと数が多い。「アニメスタイル015」をフルカラーにすることを決める。
ハロウィン用の衣装を納品して、クタクタになったワイフは郷里に帰って数日休む予定だったのだけど「新幹線に乗る体力もない」とのことで、隣駅のホテルに泊まって、月曜朝までひたすら眠ることになった。夕方、ホテルに様子を見に行って、一緒に近くのラーメン屋でラーメンを食べて事務所に戻る。

2019年10月26日(土)
15時に西武新宿線方面で打ち合わせした以外は、原稿作業。

第165回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(4)

 2020年最初のトークイベントは「第165回アニメスタイルイベント 『この世界の片隅に』に至る道(4)」だ。「『この世界の片隅に』に至る道」は、片渕監督が『この世界の片隅に』を手がけるまで、どのような道をたどってきたのかについて、じっくりとうかがうイベントシリーズであり、今回が最終回となる。

 「『この世界の片隅に』に至る道(4)」では『アリーテ姫』以降の劇場作品がテーマとなる。その中でも『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を含む『この世界の片隅に』ついての話題がメインとなる予定だ。このイベントで初めて語られる話題もあるはずだ。

 会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻も販売する。この書籍を手にして話を聞くことで、トークの理解が深まる部分があるはずだ。

 会場は新宿のLOFT/PLUS ONE。これまでのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は11月30日(土)から発売開始。詳しくは以下のリンクLOFT/PLUS ONEのページを見てもらいたい。

■関連リンク
『この世界の片隅に』絵コンテの決定版 [長尺版]よりも長い[最長版]で刊行!
http://animestyle.jp/news/2019/11/11/16619/

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/133794

第165回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(4)

開催日

2020年1月4日(土)
開場12時00分 開演13時00分

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて
 会場となるLOFT/PLUS ONEはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第5回 ハードボイルド? ハードコア?

いよいよ、明日(11月30日(土))に『逮捕しちゃうぞ』『ああっ女神さまっ』等の作品のためにデザインした車輌設定画を集めた書籍「村田峻治 ANIMATION WORKS 車輌設定資料」が発売となります。
コラム共々よろしくお願いします。
書籍の詳細は下記のURLからご確認ください。

さて、今回はケータハム スーパーセブンです。
スーパーセブンは、ハードボイルドとハードコアのどっちなんでしょう?
どっちもか(笑)
何しろ500kgそこそこのボディに200ps以上のエンジンですから。
とにかくその乗り味はスパルタン!!
ハンドリングマシーンと言ったところでしょうか。
今じゃスーパーチャージャー付きのモデルまで存在します。
軽さは正義と言ったところですかね。

■関連リンク
【アニメスタイルの書籍】アニメーター・村田峻治による車輌デザイン集を刊行!
http://animestyle.jp/news/2019/10/03/16389/

Amazon
https://amzn.to/2pusZlW

第637回 ガトーさまへ…

 そこはかとなく前回の続き。先週の『コップクラフト』打ち上げにて、原作者・賀東招二さんより、ご自身がお当てになった景品のロボット掃除機を「ミルパンセで使ってください」とのことでいただきました。ありがとうございます!

 打ち上げで賀東さんより「また続きをやりたい!」と言っていただき、「原作書いてください! コンテならいくらでも描きますから」と自分。博報堂様&ポニーキャニオン様、続編よろしくお願いします!

 で、まあ現在はまた出崎統監督ブーム! 永遠に定期的にきます出崎さんは。今、YouTubeの手塚プロダクション公式チャンネルで『白鯨伝説』『BLACK JACK』(OVA)に続き、いよいよ

『おにいさまへ…』(’91)!

が毎日更新となってます。これがもう楽しみ! え? 円盤持ってるでしょって?

もちろんVHS、LD、DVD、BD、すべて買いましたよ! 当たり前でしょ!