第526回 巧くなるということ

 先週はアニメスタイル様よりお盆休みをいただいたのですが、自分の仕事にお盆休みはありませんでした。で、唐突に

遮二無二描く!
画が巧くなりたいならこれしかない!

と。これは自分がテレコム・アニメーションフィルム在籍中、大塚康生さんよりしょっちゅう聞かされた言葉です。以前よく周りの人たちから「板垣さんて”アニメ(業界で)の育ち”がいい方ですよね〜」と言われたりしました。確かに、だいぶ前にも説明したとおり、学生時代は小田部羊一先生、テレコム時代は大塚さん始め、友永和秀さん、田中敦子さんらに教わることができたという幸運! これで「そんなことぁありませんよぉ」と謙遜してたら、師匠方に失礼にあたると思うので、自慢に聞こえるのを覚悟の上「まぁ、そうかもしれませんね」と肯定するようにしています(現在進行形)。
 ただ俺にとっては、その「アニメの育ちのよさ」云々はコンプレックスでもあるんです。なぜなら、広く一般のアニメーター修行時期をいわゆる「動画1枚200円」の出来高制ではなく、社員制の固定給でいただいていたので、同期の友人たちからも「それでもアニメーターか」とか「卑怯者」だの、ま、冗談まじりにですが言われたりしました。つまり、こんな温室育ちでは「1日何十枚描いてギリギリ食える」くらい過酷な状況で鍛えられたであろう同年代のアニメーターに太刀打ちできるハズがない! と。テレコムの時はそればっかり考えていたのです。贅沢な話、テレコムを辞めて、出来高制のフリーになって背水の陣を敷かないと、自分は巧くなれないのではないか? と思ったりもしました。そんな時、大塚さんの「遮二無二描く」という言葉は、その後の板垣の道標になってくれて

巧くならないことを環境のせいにするんじゃない!
四の五の言う前にとにかく描くべし!

と。これは現在ウチ(ミルパンセ)の新人によく話してます! で、他にも大塚さんから聞いた「巧くなるには」の話……てとこでスミマセン、つづきは次回!

オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 97
アニメファンなら観ておきたい200本 沖浦啓之と 『人狼 JIN-ROH』」


 9月23日(土)開催のオールナイトは、アニメーター&監督として活躍する沖浦啓之の特集だ。ずば抜けた画力で知られる彼の代表作を一挙上映するプログラムである。

 上映作品は彼がキャラクターデザイン、作画監督等の役職で参加した『走れメロス』、監督作品の『人狼 JIN-ROH』『ももへの手紙』(以上、いずれも劇場作品)。そして、原案・監督・脚本・作画監督等を務めた『日本アニメ(ーター)見本市』の短編「旅のロボから」。
 トークの出演は沖浦啓之と、アニメーターとして『人狼 JIN-ROH』『ももへの手紙』に参加している西尾鉄也。前売り券の発売日は決まり次第お伝えする。

 なお、「アニメファンなら観ておきたい200本」はアニメファン初心者にお勧めの作品を上映するオールナイトの連続企画である。勿論、初心者でない観客も大歓迎だ。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 97
アニメファンなら観ておきたい200本 沖浦啓之と 『人狼 JIN-ROH』

開催日

2017年9月23日(土)
開場:未定/開演:未定 終了:未定

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

沖浦啓之、西尾鉄也、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『走れメロス』
『人狼 JIN-ROH』
『ももへの手紙』
『日本アニメ(ーター)見本市/旅のロボから』

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

114 アニメ様日記 平成29年7月30日(日)~

2017年7月30日(日)
 早朝、新文芸坐に。着いた時には「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95 BONES NIGHT『アクションアニメ』はいいぞ!」の最後のプログラム『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』の終盤だった。前に上映した時よりもフィルムの状態がよかったんじゃないかな。
 去年の夏に中古ソフトで「スーパーロボット大戦A」を購入して、プレイしている。2001年にリリースされたゲームボーイアドバンスのソフトだ。どうして数ある「スパロボ」の中から「A」を選んだのかというと、『ファーストガンダム』や『マジンガーZ』等、「スパロボ」初期からのお馴染みのユニットが出てくるゲームをプレイしたかったのだ。1年と少しやって、今は四度目のプレイの途中だ。空き時間にたまにやるだけなのでなかなか進まない。二度目のプレイから攻略本を片手にやっていて、今回の目標は東方不敗を仲間にすることだった。東方不敗はいわゆる隠れキャラで、いくつかの条件を満たさないと味方にならないのだ。今日、ようやくその東方不敗が仲間になったのだが、これが篦棒に強い(ユニットとしてはマスターガンダム+風雲再起で使用している)。「あてる・よける」のうえに、長距離攻撃もできれば必殺技も強大。さらにEN消費ゼロで弾数制限なしで使える武装がある。ゲームバランスを崩しかねない強さだ。動かしていて楽しい。

2017年7月31日(月)
 東武百貨店池袋店で開催中の「タツノコプロ55周年GO!GO!記念展」を見に行く。イラストやラフが沢山展示されていて、しかも、撮影がOK。昔から印刷物で何度も見たイラストの現物があるのが嬉しかった。
 「『君の名は。』Blu-rayコレクターズ・エディション 4K Ultra HD Blu-ray同梱5枚組」の特典ディスクを観た。ビデオコンテ、メイキングドキュメンタリー、 ビジュアルコメンタリー、新海誠監督講演映像、イベント記録映像集等々。特典のボリュームが凄まじいし、ひとつひとつのコンテンツの作りも丁寧。値段に見合った充実した内容だ。
 「週刊プレイボーイ web comic」の「キン肉マン」を楽しみにしている。今日の更新分ではウルフマンに加えて、ティーパックマン、カナディアンマンといった懐かしい面々が襲来した敵に立ち向かう。「おお、まだその手があったか」と思った。「週刊プレイボーイ web comic」の「キン肉マン」は話を練っているし、ファンの期待に応えようとしている感じがよい。

2017年8月1日(火)
 「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」の告知開始。pixiv Zingaroの『リトルウィッチアカデミア』展をチラっとのぞきに行く。

2017年8月2日(水)
 昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では20位を放映。『PARTIII』37話「父っつぁん大いに怒る」だった。先週放映の21位に続いて銭形メインのエピソードだ。出来が悪いわけではないし、見どころがないわけではないけれど、ベスト24に入ったのは少し意外だった。
 書店でアニメ本をごっそり買い込む。『メアリと魔女の花』絵コンテ本、「The Art of メアリと魔女の花」等々。「ありがとう、うちを見つけてくれて 『この世界の片隅に』公式ファンブック」は書き手の愛と熱意にあふれた1冊。

2017年8月3日(木)
 「平松禎史のうすい本 2017夏」「磯光雄 Flip Book」の編集作業の大詰め。例によって大詰めで忙しいのは僕ではなくて、編集部のスタッフだ。
 発売からちょっと遅れて事務所に届いた「Megami MAGAZINE」2017年9月号に目を通す。これは18周年記念号で「エッチなアニメで振り返る メガミマガジンの18年」という記事が興味深かった。例えば、2004年6月~2006年6月の同誌についての記事の見出しは「誌面から乳首が消え、18禁OVAページも抹消」というもの。2014年4月~2017年7月についての記事の見出しは「メガミマガジンある限り エッチアニメを追い求める」。清々しい。

2017年8月4日(金)
 『ガンダムビルドファイターズ バトローグ』の配信が始まったので、Amazonビデオで観る。リバーシブルガンダムのパイロットがリボンズ・アルマークからアムロ・レイに変わるという変化球パロディで、エンディングは古谷徹さんと蒼月昇の両方がクレジットされていた。さらに、シャア・アズナブル(=キャスバル・レム・ダイクン)を演じるのは『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でシャア・アズナブル(=キャスバル・レム・ダイクンが入れ替わる前の本物のシャア)を演じた関俊彦さんというひねり技。

2017年8月5日(土)
 仕事で必要な資料が見つからないので、入手のために、中野のまんだらけへ。まんだらけに入る前に昔からの知り合いのデザイナーさんに、まんだらけを出たところで学生時代からの知人にバッタリ。さすがは中野。さすがはブロードウェイ。

第112回 萌えるアクションサウンド 〜きらめき☆プロジェクト〜

 腹巻猫です。いよいよ今週末、8月11日(金)19時より阿佐ヶ谷ロフトで「渡辺宙明トークライブ Part11」を開催します。アニメ・特撮作品で活躍する脚本家・荒川稔久さんをゲストに迎え、荒川さん作詞×宙明先生作曲のアニメソングの制作秘話や宙明先生の最新動向をうかがう予定。その翌日12日は、コミックマーケット92に「劇伴倶楽部」で出展します。新刊はありませんが、『海のトリトン』『伝説巨神イデオン』の音楽研究本と委託で「サンダーマスク」のライブラリ音楽研究本を頒布する予定。両日とも、お時間ありましたらぜひお立ち寄りください!

「渡辺宙明トークライブ Part11 〜宙明音楽夜話 featuring 荒川稔久〜」 http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68971


 荒川稔久の代表作のひとつ「特捜戦隊デカレンジャー」(2004)は東映スーパー戦隊シリーズの中でも人気作のひとつだ。放送10周年となる2014年にはVシネマ「特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER」が公開され、今年2017年にはデカレンジャーが宇宙刑事ギャバンと共闘するVシネマ「スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー」が公開された。「スペース・スクワッド」のテーマソングは渡辺宙明の書き下ろし。劇中音楽は渡辺宙明と「デカレンジャー」の音楽を手がけた亀山耕一郎が連名でクレジットされている。
 亀山耕一郎はスーパー戦隊シリーズ「未来戦隊タイムレンジャー」(2000)、「動物戦隊ジュウオウジャー」(2016)でも音楽を手がけた作曲家。テクノとプログレの要素を取り入れた「タイムレンジャー」、刑事ドラマ風の「デカレンジャー」、生パーカッションを使ってワイルドな味を出した「ジュウオウジャー」と、それぞれに工夫を凝らした音楽が印象に残る。今回は、その亀山耕一郎の作品を紹介したい。

 亀山耕一郎は1962年生まれ、兵庫県神戸市出身。子どもの頃から音楽好きでミュージシャンになりたいと思っていた。小学生時代はピアノを習い、6年生になってバンドを始めた。中学、高校とバンドを続けるが、演奏ではうまいやつにかなわないとミュージシャンになる夢は挫折。作曲家を志す。  高校卒業後、浪人して東京藝術大学音楽学部作曲科に進学。前回紹介した三宅一徳や佐橋俊彦と同時期に東京藝大で学んだ。在学中からバンド仲間の紹介でCM音楽を作るようになり、作曲家としての道が開ける。
 いっぽうで大学時代からシンセサイザーに興味を持ち、自身で機材を買い、打ち込みに取り組んでいた。その知識と技術が認められて、『忍者戦士 飛影』(1985)などの作曲家・川村栄二のもとでシンセサイザーオペレーターとして2年ほど活動した。川村が手がけた「仮面ライダーBLACK」(1987)やスーパー戦隊シリーズの音楽に亀山が作った音が生かされている。
 TVのクイズ番組の音楽作りなどを経て、本格的な映像音楽デビューとなったのは1992年に制作されたイタリア=日本合作アニメ『冒険者』(日本では2002年放送)。以降、ドラマ、アニメを中心に活躍している。
 アニメの代表作は、イメージアルバムから手がけた『炎の蜃気楼』(2002)、『ポポロクロイス』(2003)、『ボボボーボ・ボーボボ』(2003)、『銀盤カレイドスコープ』(2005)、『BUZZER BEATER』(2005)、『コヨーテ ラグタイムショー』(2006)、『ぷるるんっ!しずくちゃん』(2006)、『ビーストサーガ』(20013)、『金色のコルダ Blue♪Sky』(2014)など。
 「タイムレンジャー」や「デカレンジャー」のクールでカッコいい音楽のイメージが強いが、ご本人は熱狂的な阪神タイガースファンという関西人。そのギャップが楽しい。趣味はトライアスロン。健康に気を遣ってスポーツをやる作曲家はいるが、トライアスロンにまで参加するツワモノは他に聞いたことがない。アクションものからギャグ、ファンタジー、美少女ものまで、幅広くこなす作曲家である。  しかし、ご本人が好きなのはどちらかといえばアクションものだという。「音楽とはカッコいいもの」という思いがあるのだそうだ。

 今回、アニメの代表作を取り上げようと思ってちょっと困った。ダークな『炎の蜃気楼』、RPG風ファンタジー『ポポロクロイス』、メルヘンタッチの『しずくちゃん』、クラシカルな『銀盤カレイドスコープ』、ギャグ満載の『ボボボーボ・ボーボボ』、高校の管弦楽部を舞台にした『金色のコルダ Blue♪Sky』等、どれも魅力的だが、特撮作品のような突き抜けたカッコよさとインパクトのある作品がなかなかない。今回は筆者の趣味で『きらめき☆プロジェクト』を取り上げよう。
 『きらめき☆プロジェクト』は、2005年から2006年にかけて発表されたOVA作品。
 『AIKa』(1997)、『ナジカ電撃作戦』(2001)、『ストラトス・フォー』(2003)などを手がけたスタジオ・ファンタジアの原作・制作によるオリジナル作品だ。美少女ゲームのようなタイトルだが、巨大ロボットが活躍するロボットアニメである。
 日本企業が作った巨大ロボット・ビッグマイティがヨーロッパの小国・ジュネス王国に現われ、ロボットバトルを挑む。迎え撃つのはジュネス王国の巨大ロボット・ファンシーロボ。ビッグマイティは渋いおじさんチームが操縦する無骨なロボット。いっぽうのファンシーロボはひきこもりがちなお姫様カナの指令で動く身長45メートルの美少女お人形ロボット。ロボットアニメの定番である少年パイロットが登場しないのがユニークだ。代わりに、ハイパースーツをまとって空を飛ぶカナの妹ネネや、美少年4人組の薔薇騎士団、変形自在な美少女アンドロイド・リンクルなど多彩なキャラクターが華をそえる。『AIKa』でおなじみのお色気シーンもあるが、ビッグマイティを操るおじさんたちの心意気と、王国を守ろうとする少女たちのけなげさが心に残る。3DCGによる重量感のある巨大ロボット表現も見応えがある。アクションとギャグと熱血と萌えが渾然一体となった娯楽作品だ。
 亀山耕一郎の音楽は、巨大ロボットのカッコよさ、重厚さ、美少女の可憐さ、お嬢様のほんわかした雰囲気、おじさんの哀愁など、さまざまな要素をイキのいいサウンドで演出する。クラシックからロック、演歌までカバーする亀山の音楽性が生かされた快作である。
 サウンドトラック・アルバムは2005年8月にコロムビアミュージックエンタテインメント(現・日本コロムビア)から発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. 1.キミノハートニコイシテル(ビデオ・サイズ)
  2. 2.プロローグ・謎の怪ロボット
  3. 3.ジュネス王城の朝
  4. 4.ビッグマイティ出現
  5. 5.ハイパー・ネネ
  6. 6.ジュネス王国の危機
  7. 7.ビッグマイティの脅威
  8. 8.出動!ファンシーロボ
  9. 9.リンクルのテーマ
  10. 10.カナのテーマ
  11. 11.最大の敵
  12. 12.ロボット・バトル
  13. 13.ファンシーロボの戦い
  14. 14.オヤジの哀愁
  15. 15.栄光らしき脱出
  16. 16.薔薇騎士団のテーマ
  17. 17.リンクルのテーマ2
  18. 18.リンクルのフライヤー・チェンジ
  19. 19.コミカル・サスペンス
  20. 20.大矢・出張のテーマ
  21. 21.オヤジたちの挽歌
  22. 22.父の国・日本
  23. 23.オヤジ大感動
  24. 24.ザ・パーフェクト・バトル
  25. 25.ファンシーロボ最後の戦い
  26. 26.大団円
  27. 27.SETSUNASAコミュニケーション(ビデオ・サイズ)

 構成と解説はミュージックファイルシリーズでおなじみの高島幹雄。Mナンバー入りの解説がサントラファン向けでうれしい。トラック1からトラック10までは第1巻の物語をベースにした構成、トラック11以降は最終巻までを想定したイメージアルバム的な構成となっている。
 1曲目と最後の曲はオープニングとエンディング主題歌。歌は実写ドラマ版「美少女戦士セーラームーン」の主題歌を歌った、当時19歳の歌手・小枝(さえ)。オープニング曲「キミノハートニコイシテル」は亀山耕一郎が作・編曲している。
 このオープニング主題歌、なかなかの名曲である。
 アイドルポップ風のさわやかで軽快な曲調。小枝の透明感のあるボーカルとあいまって、本作のキュートな一面を象徴する曲になっている。ハンドクラップを取り入れたアレンジも心地よい。亀山耕一郎は歌作りも巧みで、「タイムレンジャー」の正副主題歌を手がけたほか、多くの作品で挿入歌やキャラクターソングを担当。『キューティーハニーF』(1997)主題歌などアレンジのみを担当したアニメソングも多い。
 トラック2「謎の怪ロボット」は、ビッグマイティが他国の巨大ロボットにバトルを挑んで勝利するアバンタイトルに流れた曲。戦隊シリーズの巨大ロボ戦を彷彿させるダイナミックな曲調で、開幕からわくわくする。
 トラック3「ジュネス王城の朝」はチェンバロが奏でる優雅なジュネス王国のテーマ。よく聴くとオープニング主題歌の変奏になっている。後半は明るいワルツ。第1話のうららかな朝の場面をはじめ、ジュネス王国三王女の登場シーンにたびたび使用されている。ロック調の曲が印象的な亀山耕一郎だが、『銀盤カレイドスコープ』でも聴けるこうしたクラシック調の曲もうまい。
 トラック4はビッグマイティがジュネス王国に現れるシーンのサスペンス曲。ジュネス王国側の緊迫感を伝える曲調で、これも特撮作品の敵出現曲を思わせる。
 キーボードとエレキギターをメインにしたトラック5「ハイパー・ネネ」はハイパースーツをまとった美少女ネネの活躍をイメージした曲だ。ジュネス王国の三女ネネは好奇心旺盛で猪突猛進。スーパーヒロイン気取りで謎の敵に突進していく。亀山耕一郎の原点であるバンド音楽スタイルで作られた勢いのある曲である。
 上下動する弦の動きが危機感をあおるトラック6「ジュネス王国の危機」とトラック7「ビッグマイティの脅威」を挟んで、トラック8「出動!ファンシーロボ」でいよいよ美少女お人形ロボット・ファンシーロボが出動する。
 リコーダー風の素朴な笛の音がメロディを奏でるメルヘンタッチの可愛い曲調。ロボットの出動曲といえばブラスが鳴り響くアップテンポの曲、という常識を裏切る意表をついたテーマである。この曲が流れるシーンでは大爆笑してしまった。後半は「らららんらん」と可愛い女声ボーカルが同じメロディをくり返す。コミカルにも聴こえるが、それだけではない。『きらめき☆プロジェクト』という作品の雰囲気とファンシーロボのキャラクターを象徴するテーマであり、本作の音楽の聴きどころと言ってよいだろう。作品世界と遊び心がガッチリかみあった音楽設計だ。こういうセンスがとてもよい。  トラック9「リンクルのテーマ」はクラリネット、フルート、ファゴットなどを主体にしたユーモラスな曲。カナが作ったお友だちロボ・リンクルは飛行機、自動車、潜水艇など、さまざまな形態に変身できる美少女型アンドロイド。ご主人のカナを慕うあまり挙動不審のようなふるまいを見せるのが可愛く楽しい。
 そのカナを描写するトラック10「カナのテーマ」は同じく木管をメインに、ややミステリアスな曲調を聴かせる3拍子の曲。天才的科学者でありながら人づきあいは苦手、ロボットが友だちという風変わりなキャラクターと愛らしさを表現する曲である。
 弦がしみじみと歌うトラック14「オヤジの哀愁」は、マイティロボットをまかされた日本企業の課長・大矢の心情を表す曲だ。出張の多い大矢は家庭では妻と娘とすれ違い気味。現場では頑固な技術者と無理を押し付ける上司の板挟みになって苦労が絶えない。そんな大矢がジュネス王国でカナと出逢い心を通わす第4話のシーンで使用されたのが印象深い。後半部分は第5話でマイティロボがファンシーロボとリンクルを助けに現れる感動的な場面に使用されている。
 トラック20「大矢・出張のテーマ」やトラック21「オヤジたちの挽歌」も、同じく男の哀愁をただよわせる曲。ジュネス王国側のリリカルな曲調と対比して、おじさん側のドラマを象徴する曲になっている。
 最終話は大矢たちを見捨てた島田部長が、最強ロボ「ザ・パーフェクト」を操縦してジュネス王国に乗り込んでくる展開。アルバム終盤はクライマックスの激闘を演出する曲が続く。
 トラック24「ザ・パーフェクト・バトル」はザ・パーフェクトの脅威を描く曲。エレキギターが唸る激しい曲調は悪の憎々しさ全開で、対決への期待を盛り上げる。
 トラック25「ファンシーロボ最後の戦い」は、ジュネス王国の危機を察知したファンシーロボが自らの意思で出動する場面に流れた悲壮感あふれる曲。まるで60年代特撮ドラマ「ジャイアントロボ」(1967)のような展開で、ぐっとくる場面だ。
 曲順は前後するが、大矢たちが最後の意地を見せてザ・パーフェクトに挑む場面には、トラック23「オヤジ大感動」が使用された。ホルンと弦が奏でる哀愁を帯びたメロディが、おじさんチームの熱い気持ちを表現する。そうそう、ロボットアニメやヒーローものにはこういう曲がなくては!  サウンドトラック・パートを締めくくるのは、オーケストラがゆったりと演奏する平和曲「大団円」。最終話のラストシーンに流れた曲である。弦の大きなうねりと金管の大らかな響きが安らぎを表現する。
 カッコよさと可愛さと感動がパッケージされた満足度の高いサントラである。本編を観ていなくても、音楽を聴くだけで作品の楽しさが伝わってくる。翳りのないストレートな音楽は亀山耕一郎の人柄を反映しているようだ。

 昨年から今年にかけて、特撮作品「動物戦隊ジュウオウジャー」「スペース・スクワッド」で健在ぶりを示した亀山耕一郎。アニメでもキラキラしたイキのいいアクション作品での活躍を期待したい。

きらめき☆プロジェクト オリジナルサウンドトラック
Amazon

113 アニメ様日記 2017年7月23日(日)~

2017年7月23日(日) 
「この人に話を聞きたい」の原稿を進める。
 録画で『REFLECTION』1話を観る。予想以上にビジュアルが独特。他にはないものを作るという意味では長濵博史さんらしい。バンダイチャンネルで『生徒会役員共』を1話から観る。いやあ、楽しいなあ。メインの女の子は3人とも好きだなあ。数年前に観返した時よりも好きになっていた。
 15時30分からバルト9で『劇場版 生徒会役員共』を観る。観る前から、冒頭にカメラワークが凝ったシークエンスとやたらと動くモブシーンがあるだろうと思っていたのだけど、それについては予想通り。劇場公開されているけれど、『生徒会役員共*』シリーズの2話分という位置づけだったらしく、劇中で話数表示がある。冒頭と、終盤のオリジナルエピソードと思われる部分以外は、TVシリーズと同じノリ。だからと言って物足りないわけではない。これからも年に一度くらいのペースで新作を劇場にかけてくれたら観にいきたいと思う。ただ、オープニングは作り直してくれると嬉しい。

2017年7月24日(月) 
午前1時30分頃に事務所に入る。タイプミスではなく、午前1時30分である。1時50分から、テレビ東京で「アニメ『ポケットモンスター』プレミア10」が始まる。20周年を迎えたアニメ『ポケットモンスター』の中から、ポケモンに縁の深い10人が選んだ10エピソードを10週連続で放映するのだそうだ。一回目の今回は湯山邦彦監督が選んだ第1シリーズ1話「ポケモン!きみにきめた」。第1シリーズ72話の「ニャースのあいうえお」は10エピソードに入るんだろうなあ。
 午前中に「この人に話を聞きたい」の本文原稿を終える。「この人に話を聞きたい」の本文は1万2000文字が目安で、テープおこしは4万文字から6万文字くらい。つまり、4万文字から6万文字のおこしを1万2000文字に圧縮するわけだ。以前は2万文字くらいにまとめて、そこから削って1万2000文字にすることが多かったが、最近は頭からまとめていって最後までいくときれいに1万2000文字になっていることが多い。今回もそうだった。

2017年7月25日(火)
相変わらず慌ただしい日々。Twitterで「平松禎史 SketchBook」の告知開始。ムック「未来警察ウラシマン COMPLETE BOOK」をいただく。1983年に放映された『未来警察ウラシマン』のムックである。初期デザインなど、初めて見る資料がいくつも載っていた。イラストの再録も嬉しかった。

 アニメーターの増尾昭一さんが亡くなられた。素晴らしい仕事を沢山残してくださった方だ。僕は『ふしぎの海のナディア』のロマンアルバムと「月刊アニメスタイル」第2号の『ふしぎの海のナディア』特集でお世話になった。心よりご冥福をお祈り致します。

2017年7月26日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では21位を放映。『新ルパン』第69話「とっつあんの惚れた女」だった。銭形メインの代表的なエピソードで、ここまで納得のエピソードばかりが入っていて嬉しい。1位から20位までに同じく銭形メインの『新ルパン』85話「ICPO(秘)指令」は入るのだろうか。

2017年7月27日(木)
「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」の校了日。同時進行で「磯光雄 Flip Book」「平松禎史のうすい本 2017夏」の作業も進む。平松さんと電話で打ち合わせをして、さらに「平松禎史のうすい本 2017夏」の掲載資料を増やすことになった。この時期に素材の追加。間に合うだろうか。ちょっとハラハラ。 
 編集スタッフDに事務所のロッカーを片づけてもらった。いらないもの、よくわからないもの、事務所では使い道のないものでいっぱいだったロッカーが随分と片付いた。15年~20年くらい前に取材で使っていたテープレコーダーがいくつも出てきた。それから、ゲキガンガー3のソフビのフィギアがでてきた。僕が持っている唯一のフィギュアだ。編集スタッフDに『ゲキガンガー3』でうちがやった仕事について説明する。編集スタッフDは『機動戦艦ナデシコ』放映時に一歳だったというから、知らなくても仕方がない。ついでに『ゲキガンガー3』のムック「ロマンアラスジ」を見せる。
 ロッカーの話をもう少し続ける。ロッカーの中から「A-kuei&Gatchinpo THE MOVIE」(「チェルシーの逆襲」「アークエと魔法のハンマー」)の先着プレゼントでもらった「アークエ オリジナルトイレットペーパー」が出てきた。自分のブログを検索したら、2005年5月7日にもらったもののようだ。あんまりにも面白いので、これは捨てずにロッカーに戻した。

2017年年7月28日(金)
慌ただしい日が続く。「設定資料FILE」と「この人に話を聞きたい」の大詰め。いや、アニメージュのこのふたつの記事で、この日に忙しかったのは僕ではなくて、他の編集スタッフです。

2017年年7月29日(土)
早朝に24時間営業の書店に行って、「月刊flowers」を購入する。本当に『少女革命ウテナ』の新作が載っていた。ウテナカフェも開催されるし、グッズも色々と出るみたいだし、20周年にふさわしい感じになっているのかな。次に『少女革命ウテナ』の書籍を自分で作るとしたら、25周年か30周年だろうか。午後はオールナイトの予習で『ストレンヂア 無皇刃譚』を観直す。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95 BONES NIGHT『アクションアニメ』はいいぞ!」。当日券も動いて、新文芸坐はほぼ満員。前に『ストレンヂア 無皇刃譚』や『COWBOY BEBOP 天国の扉』を上映した時よりも入りがいい。それを不思議に思ってトークの最初に質問をし、お客さんに挙手をしてもらったところ、中村豊さんのファンで、Twitterで彼をフォローしている方が大勢いた(印象としては4割くらい)。つまり、中村さんがTwitterで『ストレンヂア 無皇刃譚』についてずっと書き続けたことで、興味をもったファンが大勢いたということだ。凄いぞ、中村さん。その中村さんも会場に来ていたのだけれど、登壇はなし。出演の南雅彦プロデューサーと安藤真裕監督が、中村さんが聞いているのを承知で誉めまくるという、不思議なトークになった。

第525回 日曜日のコンテ

 7月30日、日曜日は幕張でワンフェスの「Wake Up, Girls! 新キャラお披露目会」に登壇し、終わって即帰社してコンテに戻りました。元来小心者で照れ屋な自分。しかし、オーディションで選ばれた3人をお祝いするのも現場の代表である監督の仕事、とばかりにつたないながらも人前に出たわけですが、やっぱり上手く喋れずどうもすみませんでした。劇場版『ヴァンガード』の舞台挨拶同様、周りの人たちに助けられっぱなし(汗)。ま、何はともあれ

「Wake Up, Girls!」ともども
「Run Girls, Run!」応援よろしくお願いします!!

 で、日曜日のコンテ作業、最高です! 誰はばかることなくとはこのことで、スタッフが休日の時に描くコンテは楽しくて楽しくてしょうがありません。自分にとってはどっかに旅行したり、美味い飯食いに行ったりするよりよっぽど面白いんです。ま、人それぞれですから。思えば俺は3〜4歳の幼少期から「モノを作る」ことが寝るより大好きで、朝早4〜5時に起きてラクガキ帳に絵ばっか描いてました。小学生の時などは、それに加えてゴルフクラブを作ったり、パソコン(当時はマイコン)でゲームのプログラム作ってたり、マンガを描いたり、空き箱を見つけては紙工作をしてました。「今日家で遊ぼー!」と自ら友達を誘っておきながら、遊んでる最中、面白いゲームのアイデアや描きたいマンガのアイデアを思いつくと

て、帰ってもらったりもしてました(酷い)。そのくらい、遊ぶより「何かを作る!」ことの方が喜びな板垣です。それが仕事になったんだから、これはもう(歓喜)!! ちょっと前にアニメ様が開いてくださったイベントで、俺が「まぁ何があっても、あと40年の辛抱ですから云々」と言ったのを、やけにネガティブに受け取られた方がいたみたいと後で聞きましたが、本当は

自分の今までの人生——43年は本当に、あっ! と言う間で、恐らく残りの40年もすぐ過ぎ去ってしまうはずだから、どんなに辛いことがあっても、それは同じくあっと言う間のはず! だったら小さいことを気にして喧嘩したり、落ち込んだりする暇があるなら、黙々と何かを作っていたい!!

と、至ってポジティブなニュアンスで言ったつもりでした。上手く伝わらないもんですね。つまり俺は

一生、呼吸するのと同じくらい自然に、
何か(アニメに限らず)モノを作り続けたい!!

てだけなんです。

112 アニメ様日記 2017年7月16日(日)~

2017年7月16日(日)
トークイベント「第133回アニメスタイルイベント元祖 ここまで調べた『この世界の片隅に』 平成29年夏編」を開催。珍しく打ち合わせをしたから、というわけではないだろうけど、このシリーズとしても内容がみっちり詰まったイベントとなった。新事実(しかも、まだ結論は出ていない)もあってそれも面白かった。
 最初の「ここまで調べた『この世界の片隅に』」がクラウドファンディングを応援するために企画したもので、だけど、その時にはクラウドファンディングが始まらず、そのままイベントを続けることになった、という経緯は今回のイベントで話題になるまで忘れていた。ちなみに第1回は2013年12月23日開催。

2017年7月17日(月)
世間では振替休日。僕は昼までデスクワーク。13時頃から新文芸坐で実写映画「彼らが本気で編むときは、」を観る。数日前まで同時上映の「湯を沸かすほどの熱い愛」を鑑賞するつもりだったのだけど、新文芸坐の花俟良王のお勧めでこちらを観ることに。小学生の女の子が、叔父、叔父の恋人と暮らすことになる。叔父の恋人は元男性だった。好きか嫌いかは別にして、印象に残りそうな映画。映画そのものよりも登場人物が僕の記憶に残るかもしれない。一目惚れした相手が元男性であることを知り、それを自然に受け入れた叔父さんが素敵だ。撮りっぷりもよく、長回しのいいカットがいくつもあった。劇中の食べ物や室内もよかった。

2017年7月18日(火)
入稿、チェック、連絡で大忙しの1日。
 午後ちょっと事務所を出たら、突然の雨と風。そして、雹。大粒の雹がガンガンと振ってきた。サンシャインシティで雨宿りしていたのだけど、外の景色はまるで特撮映画のようだった。すぐに雨も風も雹もやんだのだけど、地面のあちこちに大量の氷が残っていた。

2017年7月19日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では22位を放映。『新ルパン』26話「バラとピストル」だった。次元にスポットが当たった話で、ゲスト美女との絡みもあり、次元とルパンとの対決もありというエピソード。この上の順位に次元主役の話、五右ェ門主役の話が入りそうだ。プロードウェイシリーズは入るだろうか。
 夕方からのある方と打ち合わせ。その席で『メアリと魔女の花』が話題になった。彼はラストでメアリが魔法を捨てたことについて「米林監督達が、これからスタジオジブリのスタイルを捨ててやっていく決意を示したものだ」と受けとめて感動したという。確かにインタビューやテレビの特番で、西村プロデューサーや米林監督は、スタジオジブリの存在を魔法に喩えた発言をしていた。米林監督達が『メアリと魔女の花』のラストにそういった意味を込めていたかどうかは分からないが、もしも、そうだとしたら面白い。

2017年7月20日(木)
夏に出す本(「平松禎史 SketchBook」ともう1冊)、その付録小冊子(「平松禎史のうすい本 2017夏」ともう1冊)、アニメージュの「設定資料FILE」「この人に話を聞きたい」が同時進行でてんやわんや。
 「平松禎史 SketchBook」の校正紙と束見本の作り直しが届いたが、今日から平松さんはイベントのためにマレーシアだ。帰国するまでに校了しなくてはいけないので、校正紙を見てもらう時間はとれない。校正紙の前に試し刷りを出して、平松さんに見てもらっておいてよかった。

2017年年7月21日(金)
引き続きてんやわんや。マレーシアにいる平松さんにメールを送って確認をしたり。夏に出す本の付録小冊子(「平松禎史のうすい本 2017夏」ではない方)の打ち合わせをしている時に、印刷会社の方が紙の見本を持ってきてくれた。打ち合わせに参加していた皆で紙を触って「この紙だと薄すぎるんじゃないですか」「上質紙にしましょうよ」「中とじではない方が」等と、その場で意見を出し合って、印刷会社の方に伝える。

2017年7月22日(土)
「この人に話を聞きたい」の原稿を進める。午後、TVをつけたらキッズステーションで『ミラクル☆ガールズ』をやっていた。ぼんやり観ていたのだけど、面白いなあ。僕は本放映当時には『ミラクル☆ガールズ』を「ちょっと薄味だ」と思ったはずだけど、その薄味なところすらも心地よい。これは1990年代的なノリなのかなあ。今日観たのは47話「傷だらけの天使」の途中からで、劇中劇のTVドラマ「ミラクル☆ガールズ」の撮影に絡んだ話のようだった(TVドラマ「ミラクル☆ガールズ」の主役の二人のキャスト三石琴乃さんと富沢美智恵さん)。脚本の愛知拳って誰だろう。
 キッズステーション繋がりで、続けてハードディスクレコーダーに残っていた『GATCHAMAN』を観る。『科学忍者隊ガッチャマン』のリメイクで、1994年のOVAである。リリース当時は新しいデザインに対する違和感が大きかったんだけど、今はまるで気にならない。キャストもいいですよ。特にベルク・カッツェ役の塩沢兼人さん。

第524回 幸せですか?

 現在作ってる作品が「幸せとは何か?」を問いかけるところから始まるので、唐突に思い立ち、今回タイトルにブチ込んでみました。昔、自分はある年上の友人から「幸せとは『やりたいこと』と『やらなくてはいけないこと』が一致している状態だ!」と言われたことがあります。当時学生だった俺は「なるほどな〜」とその友人の哲学に傾倒したもんだし、正直今でもこれは一理あると思ってるし、その範疇で言うなら、

自分は今、十分幸せです!

 やらなきゃいけない仕事が山のように机に積み上がっていて、そのすべてが「自分のやりたい仕事」なんですから。何々賞をとったり、何万本売ったなどの栄冠のない監督でも作品を作り続けさせてもらえてる——これ以上の幸せを望む人間がいるなら、その人は余程のお坊ちゃんだと思います。
 俺も20代の頃は人並みに野心に満ちてたと思うし、「自分には才能があるはず!」と信じてました。いや、正確に言うとそう思いたかったんでしょう。20代の終わりに監督をやらせてもらったとこまでは、そこそこまだ才能というものを信じてました。ところが30代に入って「おや? 雲行きが怪しいぞ?」となり、40前で

あ、俺の才能なんて大したことなかったんだ!

と分かった時、何かいろんなことが楽になった気がします。もう、ホンっとうに男ってしょうがないもんで

自分という人間が生まれてきたのは世界の必然。
自分は何かをするべくして生まれてきたはずだ!

と皆なんの根拠もない使命感を持って生まれてきてる、ような気がします。実はそれ自体は悪いことではなく、それを信じて全うし、それなりの評価をもらえた人たちだけが所謂「天才」なのでしょう。でも大半の人間は、その人生の途中で鼻をへし折られ、己の分をわきまえる。そして「上手に分をわきまえた人」は必ず幸せになれる、と思うんです! なぜなら、週休半日で働いて働いて働き尽くし、定年を迎えて退職し、実家で立派にTVの番人を勤め上げてる父親は、俺から見ると幸せそうに見えるからです。まぁでも、才能がなくても、それを自ら認める勇気もなく、トンガってツッパって喧嘩を売りまくって生きる人生ってのも、なかなかオツなものかも知れません(笑)。だって

人生は大したもんではなくても、素晴らしいもんですから!!

 だから板垣は楽しいアニメ、バカなアニメ、そしてたまに感動するアニメを、作って作って作り尽くして生を全うしたい、それが幸せです。「そんな意味のないアニメ作りたくない」って格調高き高尚アニメを作りたい監督様を否定する気はまったくありませんが、アニメ業界人全員が、同じ理想を掲げて作品を作らなきゃならない理由はないハズですよね。

第111回 何かが始まる予感 ~二十面相の娘~

 腹巻猫です。前回お知らせした横山菁児先生に続いて、「仮面の忍者 赤影」(1967)、『ピュンピュン丸』(1967)などの音楽を手がけた小川寛興先生、『宇宙海賊キャプテンハーロック』(1978)、『銀河鉄道999』(1978)、『サイボーグ009』(1979)などの主題歌・挿入歌を作曲した平尾昌晃先生の訃報が相次いで飛び込んできました。アニメ音楽史に残る名曲を遺した先生方が相次いで天に。寂しい夏です。


 8月2日と3日に池袋の東京芸術劇場で「セーラームーン クラシック コンサート」が開催される。『美少女戦士セーラームーン』誕生25周年を記念したオーケストラ・コンサートだ。『セーラームーン』とオーケストラといえば渡辺俊幸が編曲した「交響詩 美少女戦士セーラームーンR」があるが、今回はそれとは異なる構想による新アレンジ。『セーラームーン』の歴代アニメ、ミュージカル作品から選曲されているというから90年代アニメファンもセラミュファンも聴き逃せない。故・有澤孝紀さんのアニメBGMも演奏されるとか……。
 http://sailormoon-official.com/information/25th_classic_concert.php
 その「セーラームーン クラシック コンサート」にアレンジャーとして参加しているのが三宅一徳。アニメや東映特撮作品の音楽でも活躍する作・編曲家だ。今回は三宅一徳の仕事を紹介したい。

 1963年生まれの三宅一徳は沖縄出身。すぐに東京に引っ越したので東京育ちだ。幼少期からピアノ、オルガンを習って音楽教育を受けたが小学校2年で辞めてしまう。その後、ロック、ポップス、映画音楽、海外TVドラマの音楽など、さまざまな音楽を吸収して育った。少年時代は音楽家より飛行機のパイロットになりたかったという。高校生になり、航空大学を目指そうとしたが視力が低下して断念。小さいころからなじんでいた音楽の道に舵を切りなおした。
 少し回り道をしたが、晴れて東京藝術大学作曲科に入学。純音楽を勉強するいっぽうで商業音楽の世界に傾倒していった。本当は、アカデミックな純音楽よりも、ロックや映画音楽のような商業音楽がやりたかったのだ。
 この東京藝大時代に知り合ったのが、1年先輩にいた佐橋俊彦。『機動戦士ガンダムSEED』や「仮面ライダー電王」の作曲家である。趣味が一致した2人は意気投合して現在まで続く交友がスタートする。2人のエピソードは面白いのだが字数の都合もあるので割愛しよう。
 藝大卒業後、三宅は現代音楽と古典音楽のハイブリッドのようなユニークな音楽活動を始めた。シンセサイザーと邦楽器、クラシックとロック。邦楽器奏者ユニット・箏座のメンバーとして活動した時期もある。そんな中で徐々に映像音楽やオーケストラアレンジの仕事が増えていった。
 実は三宅は、1995年リリースのアルバム「美少女戦士セーラムーンSuperS in Paris」(日本コロムビア)で、一度『セーラームーン』の楽曲をアレンジしている。同じ年に手がけたのがTVアニメ『ぼのぼの』(1995)の音楽。そして、三宅一徳の名をサントラファンに知らしめたのが、2002年の東映スーパー戦隊シリーズ「忍風戦隊ハリケンジャー」の音楽だ。大編成オーケストラに邦楽器。三宅の指向にぴたりとあった編成で繰り出されるダイナミックな音楽は新時代のスーパー戦隊音楽の誕生を印象づけるものだった。
 その後も、「仮面ライダー剣」(2004)、「獣拳戦隊ゲキレンジャー」(2007)、「天装戦隊ゴセイジャー」(2010)と東映特撮作品の常連として活躍。アニメでは『ふたつのスピカ』(2003)、『エリア88』(2004)、『妖逆門』(2006)、『ライブオン CARDLIVER 翔』(2008)などを手がけている。
 オーケストラ、ロック、シンセサイザー、邦楽器。異なる音楽要素を自在に操る三宅一徳の音楽は、ひとつの枠では語りがたい。密林の中に多様な動物や植物が共生するように、多様な音楽が渾然となって自然に共存する現代のクロスオーバー音楽のような印象がある。

 そんな三宅一徳の作品から、今回は2008年に放送されたTVアニメ『二十面相の娘』を紹介しよう。
 『二十面相の娘』は2008年4月から9月まで、全22話が放送されたTVアニメ作品。小原愼司の同名マンガを原作に富沢信雄が監督。アニメ制作はボンズとテレコム・アニメーションフィルムが担当した。
 戦後復興期の日本を舞台に、怪人二十面相の仲間となった少女・美甘千津子(チコ)が二十面相の遺産をねらう怪人や博士を相手に活躍する冒険活劇。幾度も危機に陥りながらも二十面相を信じ、慕い続けるチコの心情が胸を打つ。チコ(声・平野綾)が二十面相を呼ぶ「おじさん」を聞いていると、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスがルパンについていったらこんなふうだったのでは……と想像してしまうのは筆者だけではないだろう。
 三宅一徳の音楽は時代背景に沿ったレトロな雰囲気を醸し出しつつも、それにとらわれず、二十面相のキャラクターにふさわしい変幻自在な表情を見せる。カッコよさ、サスペンス、叙情。冒険活劇の要素を押さえながら現代的なサウンドに仕上げた意欲作だ。
 サウンドトラック・アルバムは2008年9月にランティスから発売された。2枚組63曲収録のボリュームがうれしい。曲数が多いため、収録曲は下記リンクを参照されたい。

 TVアニメ「二十面相の娘」オリジナルサウンドトラック
 https://www.amazon.co.jp/dp/B001DC6RIS

 ブックレットは見開き4ページのみのシンプルなものながら、作曲者のコメント入り。「二十面相号外」と題された投げ込みリーフレットで4人のプロデューサーのコメントも読むことができる。コストを抑えながら必要な情報がしっかり入っている。
 主題歌の収録はなく、全曲、三宅一徳作品で構成。サブタイトル音楽や同一テーマのバリエーションも網羅した、ファンにはうれしい内容である。
 曲順は劇中使用順とは関係なく、曲調重視で並べられているようだ。本編とは別の、サントラだけのアナザーストーリーを音楽で楽しむ構成になっている。
 Disc1の1曲目に配されたのは「華麗なる盗みのテーマ」。本作のメインテーマとも言うべき曲だ。サックスとブラスをフィーチャーした8分の6拍子のジャズ。バックはピアノ、ウッドベース、ドラムスという王道の編成にストリングスが加わる。レトロなビッグバンドの香りを漂わせつつ、演奏は現代風にスタイリッシュ。スリリングで優雅な雰囲気も感じさせるみごとなテーマだ。第1話アバンタイトルで二十面相が天使のオルゴールを盗み出す場面から使用。チコが二十面相の誘いに応じて外の世界へと飛び出していく名場面にも使用されて鮮烈な印象を遺した。
 Disc2の最後にはこの曲のバリエーション「華麗なる盗みのテーマ Not BRASS」が配されて、シンメトリーをなしている。しゃれた構成である。
 二十面相やその仲間たちが活躍する場面には「AcTionN」と題された「華麗なる盗みのテーマ」の変奏が流れる。サントラでは「AcTioN -動-」「AcTioN -動 02-」「AcTioN -迷-」「AcTioN -迷 02-」「AcTioN -静-」と5曲のバリエーションが収録されている。「動」はスマートに軽快に、「迷」はピアノでしっとりと、「静」はフルートとギターをメインにミステリアスに。メインテーマを印象づける巧みな音楽設計だ。
 その「AcTionN -静-」でDisc1が締めくくられ、Disc2は「スリルの風をきって」と題された軽快なジャズナンバーから開幕する。サックスとブラスが華麗に奏でるのはメインテーマとは異なる旋律による二十面相のテーマ。第1話でチコを乗せた二十面相の車がパトカーとカーチェイスを繰り広げる場面に使用された。
 「二十面相 SMOKY」はサックスが二十面相のテーマを奏でるジャズバラード。「二十面相 COOL」では、サックスの代わりにビブラフォンがフィーチャーされている。
 かと思うと、同じ「二十面相」のタイトルがついた曲でも「二十面相/Arranged B-type」はメインテーマのバリエーション、「二十面相 ~香りを残して~」は劇中歌「Bonne Justice」の変奏、「二十面相 Silence」はまた別の旋律と、二十の顔を持つ男のように音楽も変幻自在なのが面白い。
 メインテーマ、二十面相のテーマと並んで印象深いのが、チコのテーマである「チコ-二十面相の娘 one」だ。軽快なリズムに導かれて素朴な笛の音がフォークロア調のメロディを奏でる曲で、チコの活躍場面にたびたび使用された。
 この素朴なの笛の音――クレジットにはケーナ、パンフルート、リコーダーと書かれているが曲ごとにどの楽器かは特定しづらい――が出色で、本作に懐かしさと異国情緒をブレンドしたような独特の空気感を添えている。大団円によく使われた「東の空が光るころ」にも笛がフィーチャーされているし、チコと親友の春華、チコの世話をするメイドのトメさんらがガールズトークを繰り広げる心休まる場面にも、「イスを並べて」「風に吹かれて」「スープを囲んで」など、明るい雰囲気の笛の曲が流れる。
 ライナーノーツの三宅一徳のコメントによれば、自由を求めるものの象徴としてジャズとトラディショナルミュージックの要素を本作の音楽の核に置いたのだそうだ。そのトラディショナルミュージックの部分を代表しているのが、こうしたリコーダー系の笛の曲なのだろう。
 二十面相一味が盗みを働く場面のスリリングな曲も耳に残る。ピアノとパーカッションのリズムが緊迫感を生む「作戦開始 Code-A」、ウッドベースとラテンパーカッションの絡みが秘密の活動を暗示する「作戦開始 Code-B」、ピアノ、ギター、ストリングスだけのシンプルな編成の「合図とともに」など。抑えた曲調が効果を上げている。
 忘れてはならないのが「少女探偵団」と題された一連の曲。少女探偵団とは冒険に憧れる春華が自分とチコとトメさんの探偵活動を妄想して名づけたチーム名。ジャジーで遊び心満点の曲調に仕上がっている。スキャットこそフィーチャーされていないが、雰囲気はアルマンド・トロバヨーリの「黄金の七人」! 少女探偵団はエンディング映像にもメインで取り上げられているのに、劇中では第15話「少女探偵団」と最終話くらいしか活躍の場がなかったのが残念だ。この曲が流れる華やかな場面をもっと観たかった。
 世界大戦の遺産が悲劇を招くシリーズ中盤から後半にかけての展開では、超人的な能力を身につけた怪人やマッドサイエンティストが暗躍を始める。そうした場面に流れるのが「大戦の暗部」「人間タンク」「白髪鬼」「教授」といった楽曲。いずれも、ミステリアスな曲調の中に悲しみを宿しているのが特徴だ。彼らは大戦によって人生を変えられてしまった悲しい犠牲者でもあるのだ。
 本作の音楽の白眉は、実はアクション曲よりも、こうした哀感を帯びた曲ではないかと思う。チコの苦悩を表現するピアノ曲「心の瓦解」や淡々としたピアノの音色に静かな悲しみがにじむ「孤独(Sepia)」、世間の噂とは異なる二十面相の秘めた想いを暗示するメインテーマのアレンジ「巷間の噂」、チコや春華が悲壮な決意を固める場面に流れた「背に雨音が響き」、そして、第6話でのチコと仲間との別れや第14話でのチコと二十面相との別れの場面に流れた、ずばり「別れ」と題された弦合奏の曲。大人びた曲調でチコたちの複雑な心情を表現し、ドラマに深みを与えている。こうした曲が、本作を単なる冒険活劇にとどまらない人間ドラマに昇華させていると思うのだ。
 ボーナストラックに収録された「Bonne Justice」は物語の鍵となる重要な曲である。フランスの詩人ポール・エリュアールの詩「よき正義」に三宅一徳が曲をつけた。劇中では秘密の暗号を宿した歌として登場し、二十面相とチコが口ずさむシーンがある。サウンドトラックに収録されたのはMeriが歌うシャンソン風のバージョン。まるでミシェル・ルグランかフランシス・レイかと思うようなおしゃれでロマンティックなサウンドに仕上がっている。このバージョンは実質的な最終話となった第21話で二十面相とチコとの最後の別れの場面で使用され、フランス映画の一場面のような名シーンを創り出している。

 『二十面相の娘』は、三宅音楽の大人カッコいい一面が聴ける渋い作品である。東映特撮作品のケレン味たっぷりのストレートな音楽や『ふたつのスピカ』のハートウォーミングな音楽とはひと味もふた味も異なる、アクの強い音楽を聴くことができる。ジャズに民族音楽にオーケストラ。異なる音楽の出逢いがダイナミズムを呼び、闇と光の間でもがく人間のドラマを陰影豊かに描き出す。劇中の二十面相とチコの台詞を引くなら「何かが始まりそうな」予感に満ちた、刺激的で心を動かされる音楽だ。

TVアニメ「二十面相の娘」オリジナルサウンドトラック
Amazon

111 アニメ様日記 2017年7月9日(日)~

2017年7月9日(日)
アニメイト池袋本店の前で「『世界一初恋 アニメイトの場合』はアニメにならないのかなあ」という話から、「『世界一初恋』の前にやっていたやつなんだっけ。『極悪エロティスト』みたいなタイトルの」「それは『純情ロマンチカ』だ! なんだ、エロティストって。エロいテロリストか!」と会話が展開。そんな日曜の昼。念のため書いておくけど、僕は『世界一初恋』も『純情ロマンチカ』も好きですよ。それから「世界一初恋 アニメイトの場合」はアニメイト池袋本店が舞台になっているらしいです。
 作業をしながら「午後のロードショー」の「シャークネード サメ台風2号」を観る。オンエアでは途中からの視聴だったけど、全編を観たら予想以上の馬鹿映画。しかも、男の馬鹿映画。ブラボー。

2017年7月10日(月)
アニメージュ発売日。今月は「この人に話を聞きたい」はお休み。「設定資料FILE」は『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』。この作品の設定は充実している。デザインそのものもいいし、設定の数も多い。特にニーナがいい。表情もいいし、ポーズもいい。スタッフの愛情が注がれている感じだ。ニーナのラフのポーズ集はどうしても載せたくて掲載した。
 作曲家の横山菁児さんが亡くなられた事を知る。iTunesに「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」を入れてなかったので、改めてAmazonに発注する。

2017年7月11日(火)
SNSで知人に「小黒さん的には『宇宙戦艦ヤマト2199』『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』はどうなのよ」と聞かれたので「『2199』にあったオーラのようなものが『2202』はなくなっている。そのオーラがないから『2202』がつまらないというわけではない」と答えて、さらに「自分の中では、オリジナルの『宇宙戦艦ヤマト』との関係性という意味で『宇宙戦艦ヤマト2199』と『超時空要塞マクロス』の位置づけは近い」と話す。さらに『ヤマトよ永遠に』のアルフォン少尉と『2202』のキーマンの関係はどうなんだろうかと話が転がっていく。説明しておくと、アルフォン少尉の初期名がキーマンなのである。

2017年7月12日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では23位を放映。『ルパン三世PARTIII』44話「ボクたちのパパは泥棒」だった。以下は過去に書いたコラムからの抜粋。
……………………
 これは僕が好きな話でもある。とある街でルパン、次元、五右ェ門のところに、彼らを父親と呼ぶ子どもが現れる。つまり、ルパン、次元、五右ェ門が過去に関係した女性が子どもを産み、その子が転がり込んできたわけだ。身に覚えのあるルパンは、彼らの存在を否定できない。女性に対して堅い次元や、超堅物の五右ェ門まで、指折り数えて、その子が本当に自分の子どもなのか考えるところが、無闇におかしい。劇中では描かれていないが、彼らもやる事はやっているわけだ。ルパン達の私生活の、生臭い面が垣間見えたエピソードだ。
 最初に隠し子が発覚したのはルパンで、その時の次元のハシャギっぷりが凄い。「きたー! きたきたきたきた、ついにきました。ルパンさーん!」と大喜び。俺はいつかこんな日がくると思っていたんだよ、というわけだ。長い事、独身貴族を気取って遊んできたけれど、ツケが回ったきた。彼らが長年遊んできたからこそ成立する話である。少なくとも、脚本の狙いとしては、この話の彼らは20代ではない。
……………………
 キャラクターとしてのルパンファミリー好きとしては、大変に楽しいエピソードだ。いい話がランクインしたなあ。ますます他の順位が楽しみだ。

2017年7月13日(木)
水曜の22時から23時のTOKYO MXはショート番組の密集地帯。『カイトアンサ』『イケメン戦国 時をかけるが恋ははじまらない』『アニュ研!秋葉原アニメ・アミューズメント研究所』『クリオネの灯り』『てーきゅう9期』『ノラと皇女と野良猫ハート』『ラファンドール国物語』の7本立て。録画をまとめて視聴したけど、なかなかカオス。静止画で話が進む『ラファンドール国物語』にはちょっと驚いた。

2017年7月14日(金)
ここ数日は編集作業の大わらわ。自分でページ構成をやっているわけでも、原稿を書いているわけでもないのに、ずっと忙しい。どうでもいいけど、大わらわって「大童」って書くんですね。

2017年7月15日(土)
池袋HUMAXシネマズで『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』を観る。サトシとピカチュウの出会いから描く内容で入りやすかった。僕的にはもっともっと話がシンプルでもよかった。副監督で、絵コンテでもクレジットされている矢嶋哲生さんのカラーも出ていたと思う。

第523回 基本、出たくありません

自分は出たがりではないのです!

 大前提として、TVに出たがりだったりSNSで出たがりな方々を非難する気はもーとーありません。むしろその度胸には敬服するばかりで、俺にはその度胸も度量もないだけ。かなり前にもここで説明したとおり、作品の宣伝だったり、その他自分だけ出ないわけにはいかないような場合を除き、基本写真取材もNGにさせていただいてます(海外とかで不意に撮られたりしましたが)。地元名古屋の友人なら、板垣がかなりの「照れ屋」なのを皆知ってると思います。小学生の頃、友人の何人かが「天○クイズ」(1967〜2004年/CBC)に出演したことがありました。それは小学生が何人かのグループで申し込む視聴者参加型クイズ番組で、当時そこに出た友人の1人から「伸くん、誘ってあげなくてゴメンね(笑)」と自慢げに言われたんですが、正直羨ましくもなんとも思わなかった記憶があります。
 でもまあ我々昭和生まれにとって、TVや雑誌は絶対権力! TVに出たことがあればタレント気取り。本や新聞で取り上げられたりすれば、それを自慢するためにそれを持ち歩く。そーゆー友人、何人もいました。度胸のない俺の場合、自分が関わった作品は「見て〜」と電話やメールしたりしますが、己自身が出演した番組とかは誰にも教えません、恥ずかしいから。以前某○HKで「ラノベのアニメ化」云々の特集(ホラ、特集タイトルすら憶えていない)に出ざるをえなかった時、それも親姉弟にすら伝えていなかったのに、山形の母方の従兄弟から「伸くん、TV出とった?」と。ぐぁ〜

見られたくなかった〜っ!!

と悶えたもんです(汗)。いや、本来仕事絡みでカメラを向けられるのは光栄なこと。それが分かってても苦手は苦手。というわけなので、監督としての責任感のみで、頑張ってしゃべりに出てきたとしても、けして「格好よい出で立ち」も「面白いお話」も期待しないでください。板垣より。

110 アニメ様日記 2017年7月2日(日)~

2017年7月2日(日)
事務所に篭もって「この人に話を聞きたい」取材の予習でDVDを観る。あれとかこれとか『ビーストウォーズメタルス 超生命体トランスフォーマー』とか。予習とはあまり関係ないけど、先日途中まで観た『僕だけがいない街』をラストまで観る。それで気がついたのだけど、僕は雛月加代が助かったところで満足して、その後の話数を観ていなかったようだ(最初の数話は二度か三度ずつ観ているのに)。誰に対して申し訳ないのかよくわからないけど、申し訳ない気持ちになった。主人公の藤沼悟が十数年眠り続けた後のシリーズ終盤は、それまでと手触りが違っていて新鮮だった。

2017年7月3日(月)
午前中は取材の予習の続き。昼から取材。「この人に話を聞きたい」の第百九十五回は音響監督の岩浪美和さん。どんな取材になったのかは「アニメージュ」9月号が発売されるまでのお楽しみ。

2017年7月4日(火)
録画で「ルパン三世ベストセレクション」の第1回を観る。第1シリーズ、第2シリーズ、第3シリーズから人気投票で選ばれたエピソードを放映するようだ。昨夜の放映は24位の第1シリーズ3話「さらば愛しき魔女」だった。これは渋い話がきたなあ。他の23本も渋めの話が多いのだろうか。楽しみだ。
 取材には間に合わなかったけれど、『超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズリターンズ』DVDのコメンタリーを聞く。出演者は岩浪さんとキャストの方々。これが猛烈に面白かった。言いたい放題で「そんなことまで言って大丈夫か」と思うほど。アニメのコメンタリーの中でも傑作だろう。特に1話はコメンタリーを聞いてから本編を観たら面白さが倍増。

2017年7月5日(水)
中野で佐藤順一さんの取材。取材に向いている喫茶店が見つからなかったので、カラオケBOXで話をうかがった。何の作品についての取材なのかは、掲載される本がまだ発表になっていないのでここにも書けない。誰も観たことのないアニメについての取材である。取材の帰りに、まんだらけ中野店によってアニメ雑誌やアニメムックの古本をチェック。今は制作プロダクションが刊行して、イベントなどで販売する資料集も多いのだけど、まんだらけにはそういった書籍も置いてあった。つまり、一般書店で購入できない本を売っていたのだ。もう少しで数万円分をまとめて買ってしまうところだったけれど、計画を練ってから再び来ることにした。少しは僕も大人になった。事務所でボロボロになった「アニメージュ」を一冊だけ買い直す。

2017年7月6日(木)
夏に出す書籍の特典小冊子に、ある作品の制作資料を相当にマニアックなかたちで収録できることになった。自分でも楽しみ。それにしても今週は具体的なことが書けない話題が多い。ごめなさい。
 7月5日深夜の『天元突破グレンラガン』再放送の枠内で、錦織敦史監督、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀さんの新作『ダーリン・イン・ザ・フランキス』が発表になった。TRIGGER&A-1 Pictures共同制作だそうだ。面白い顔ぶれだ。  そして、7月6日には岡田麿里さんの監督作品『さよならの朝に約束の花をかざろう』、山賀博之監督&キャラクターデザイン・貞本義行さんの『零世紀 エメラルダス』。それから『プリセンスチュチュ』のBlu-ray化も発表される。岡田麿里さんには「自分の作品」をやってほしいと思っていたので、監督作品は嬉しい。

2017年7月7日(金)
朝から新番組の1話をガンガン観る。『最遊記RELOAD BLAST』はなんだか懐かしい。『アクションヒロイン チアフルーツ』は丁寧な作画が好印象。午後、テレビをつけたら「午後のロードショー」で「シャークネード サメ台風2号」という映画をやっていた。腰が抜けるほど豪快な馬鹿映画で見入ってしまう。後日、改めて観よう。「午後のロードショー」は毎日録画しているのだ。

2017年7月8日(土)
夕方から、片渕須直監督と『この世界の片隅に』イベント打ち合わせ。アニメスタイルのトークイベントはほとんど事前の打ち合わせはしないし、『この世界の片隅に』イベントではこれが初めて。具体的なトークの内容ではなく、方向性の再確認をした感じ。

第522回 放映開始、9期!

『てーきゅう』第9期、放映スタート
今回エンディングがあります!

 曲を聴いた時「あ、面白い」と思って、どーせなら変なことやろーと絵柄をリアルにしてみました。実はいつぞやこの連載でだいぶ前(第386回?)に描いたリアル版イラストをスタッフに渡して描いてもらったんですが、作監・木村博美さん(まだ10代!)の手によりさらにリアルに(笑)! 『ベルセルク』でも十分に発揮されたデッサン力がここでも活かされてます。彼女は一旦任せると、とにかく考えて描いてくれるから安心。第8期のうどん子オープニングのラスト、まりもの頭上にのっかるかまぼこが両サイドがかじられたパンツ型になってたのは、木村さんのアドリブです。そしてOPや本編も演出・豊島英太くん、総作監・吉田智裕くんはじめ、スタッフは全体的に新人がメインにくり上げられてる感じでしょうか。この調子で板垣からコンテも奪っていく若手が現れるのもそんなに遠くない未来かもしれません。あ、念のため

EDが付いても本編尺(OP・ED抜き)は90秒と変わらず!

です。最悪、再放送などでEDをカットすることがあっても、ちゃんと今までどおり2分枠でいけますから。まあなんにしても第9期、でもって5周年の『てーきゅう』! ここまで来れたのはあくまで結果であって、計算してたわけではないんですが、少なくとも俺の場合単純な話で、

喜んでくださる方たちがいるなら
できる限り続けよう!

と思ってたのは確か。だって気取ったところゼロで気軽に観れる『てーきゅう』が好きだから、断る理由が皆無でしょ? 自分が作りたいのは何かの賞をとる高尚なアニメではなく

残業帰りのサラリーマンがシャワー浴びて
ビールに枝豆で観れるアニメ

ですから。あと『てーきゅう』って「人間が追求すべき幸せとは何か?」というやや哲学的なテーマを感じてます。これは冗談でもなんでもなく、ルーツ先生の原作を読んでると

結局、人間たいがいのことがどーでもいい!!

と思えてくるんです。たとえそれ程笑えないギャグであっても、それを読んでる己自身のくだらなさ、しょーもなさに笑いがこみ上げてきます。要は人間ってそんなに偉くないと。けして作者が読者を馬鹿にしてるのではなく、読者自身に「あ、俺(私)馬鹿でいいんだ!」と気づかせてくれ、

もっとリラックスして生きれば周りはそんなに敵ばかりじゃない!

と教えてくれる。それが「てーきゅう」です。アニメもそれを目指して10期、11期と続けていきたいと考えてます。

第110回 凛々しく、たおやかに 〜機動戦士ガンダム MS IGLOO〜

 腹巻猫です。『宇宙海賊キャプテンハーロック』『聖闘士星矢』等の音楽で活躍された横山菁児先生が7月8日に亡くなりました。2014年に広島のご自宅にうかがってお話を聞いたのが、お会いした最後になりました。残念です。心より哀悼の意を表します。


 2003年に東映スーパー戦隊シリーズ『爆竜戦隊アバレンジャー』の音楽を羽田健太郎が担当したとき、4人の作曲家からなる作曲家チーム「ヘルシー・ウィングス」を編成して共同で作曲にあたった。そのとき、東京音楽大学出身の若手作曲家3人をチームメンバーに抜擢している。1人は前回紹介した山下康介。もう1人は『侍戦隊シンケンジャー』や『魔法つかいプリキュア!』などで活躍する高木洋(本連載の第58回で紹介)。3人目が大橋恵である。  今回は大橋恵が手がけた『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の音楽を紹介したい。

 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』は2004年から2006年にかけて発表されたサンライズ制作のフルCGアニメ作品。1話30分のフォーマットで作られたミニシリーズである。2004年に第1期「1年戦争秘録」全3話がバンダイミュージアムで限定上映され、2006年に第2期「黙示録0079」全3話がOVAとして発売された。2008年には続編『機動戦士ガンダム MS IGLOO 2 重力戦線』全3話がOVAとして発売されている。
 『機動戦士ガンダム』(1979)と同じ1年戦争の時代を背景に、新兵器開発に携わるジオン公国の軍人たちを描いた異色の作品だ。「ガンダム」のタイトルがついているのにガンダムは1カットしか登場しない。戦争の前線ではなく、兵器開発の現場に焦点を当てた発想がうまい。ジオン公国側に立って描かれるドラマも新鮮で、観ているとついジオンに肩入れしてしまう。
 各話で描かれる兵器は、歴史の表舞台には登場しない試作機や大量生産が見送られた失敗作ばかり。技術者とテストパイロットを中心に描かれる、苦い挫折と報いのない闘いの物語なのだ。今西隆志監督は本作を「挫折する『プロジェクトX』」と表現したそうだが、むしろ、松本零士の「戦場まんがシリーズ」のような味わいがある。

 本作の音楽を手がけたのは大橋恵。1975年生まれの女性作曲家である。
 大橋恵は広島県呉市出身。実家はレコード店。レコードは試聴ができるので、子供の頃から音楽は聴き放題だった。エレクトーンを学び、中学生時代から自分で曲をアレンジするようになる。作曲家を志して東京音楽大学に進学。東京音大で映像音楽の作曲家をめざす学生は作曲指揮専攻の「映画放送音楽コース」を選ぶことが多いが、大橋は「芸術音楽コース」を選択。池辺晋一郎に師事した。もともと映画音楽に興味があったが、高校時代の恩師から「純音楽を学んでおいたほうが勉強になる」とアドバイスされたためだという。とはいえ池辺信一郎も映画音楽をたくさん手がけているので、映画音楽の考え方や現場も教えてもらうことができた。
 大橋の師匠にあたる作曲家がもう1人いる。『GS美神』『機動戦士ガンダムSEED』『仮面ライダー電王』などの音楽で知られる佐橋俊彦である。エレクトーンの先生が佐橋俊彦と知り合いで、その縁で佐橋のアシスタントを5年ほど務めた。池辺信一郎と佐橋俊彦。映像音楽の最高の師のもとで学んだことが大橋恵の財産になった。
 その大橋が初めて単独で1本の作品を手がけたのが『機動戦士ガンダム MS IGLOO』である。いわゆる「本格的デビュー作」。しかし、デビュー作にありがちなぎこちなさや硬さはみじんもない。もう第1作から傑作。歴代ガンダム音楽の伝統を継ぐ、堂々たるスコアを書いている。
 大橋恵の作風を評する言葉でよく聞くのが「男性以上に男らしい」というフレーズ。豪快でダイナミックなオーケストレーションに誰もが驚く。筆者も『MS IGLOO』の音楽を聴いたとき、サントラファンのツボをつく音づくりに一発で魅せられてしまった。
 しかし、その感触はやはり男性作曲家のものとは微妙に違う。宝塚歌劇の男役が発する、女性が演じる男性ならではの凛々しさ、清々しさのようなものが、大橋恵の音楽にはあると思うのだ。
 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』のサウンドトラック・アルバムは、公開時に19曲入りのものがバンダイミュージアムで限定販売されていた。2005年4月に、31曲入りの拡大盤がビクターエンタテインメントより発売され、全国で買えるようになった。2008年には「重力戦線」用の追加録音を収録したサウンドトラックも発売。「重力戦線」のサントラは通常版と特装盤の2種類があり、特装盤には1作目のサントラが同梱されている。これから買おうという方は、「重力戦線」特装盤がだんぜんお得である。
 今回は、31曲入りの「機動戦士ガンダム MS IGLOO ORIGINAL SOUNDTRACK」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. 「603」 のボレロ
  2. 新月の中
  3. 宇宙の進軍
  4. 輔(かまち) 其ノ弐
  5. 堅忍不抜
  6. 激突警報
  7. ターニングポイント
  8. 進出ス!
  9. まだか?
  10. 降ろし方始め!
  11. 舫解ケ
  12. Z.w.P.A
  13. 哀しみの鉄槌
  14. 死守セヨ!
  15. 機動戦
  16. 失探
  17. 決戦兵器
  18. 感度かすかに
  19. 上陸の夢
  20. 重い夕陽
  21. 柵越えのメリーさん
  22. 遭遇
  23. オン タイム
  24. 蜃気楼
  25. ある技術士官
  26. 続航セヨ
  27. 「帰航ヲ祝ス」
  28. 記載事項なし
  29. 流星
  30. 半旗たなびく
  31. 時空(そら)のたもと 〜 Full Ver.-MS IGLOO 主題歌-(歌:Taja)

 本アルバムの初回盤は、透明プラケースではなく、モスグリーン(ザク・カラー)の不透明のプラケース入り。ケースの表面には黄色いジオンのマーク。裏面は劇中の一場面を捉えたCGイラストのステッカーが貼られている(もしかしたらこっちが表なのだろうか)。曲目は帯に表記。ジオン軍の兵器の装甲をイメージしたような凝ったパッケージである。
 曲名のつけ方もユニークだ。「進出ス!」などの電信文風表記や「降ろし方始め!」などの命令形のタイトル。曲名だけで場面が目に浮かぶようなインパクトがある。
 トラック1「「603」 のボレロ」は本作のメインテーマ。「603」とは新兵器の試験を任務とするジオン軍の部隊、603技術試験部隊のこと。物語はこの603部隊を中心に展開する。
 曲調はボレロ。「ラテン民族的なスピリットを表現したい」という今西監督のリクエストに応えたものだ。ベースとスネアドラムのリズムの上に金管と弦のメロディ。勇壮さよりも静かな決意や悲壮感を感じさせる曲調である。
 ガンダムの歴史上でジオン軍が連邦軍に敗れることは決まっている。しかし、音楽は敗戦に向かっていく暗さよりも逆境の中で努力する人間の姿を描こうとしたという。ひとつの目標に向けて力を尽くす人間の意地が伝わってくるような胸にしみるテーマだ。
 トラック2「新月の中」は弦楽器を中心にした不安な曲。第1期第1話「大蛇はルウムに消えた」のアバンタイトルで宇宙空間に603部隊の試験支援艦ヨーツンヘイムが登場する場面に流れている。  トラック3「宇宙の進軍」はジオン軍の快進撃を表現するかのような明るいマーチ。
 続くトラック4は「輔 (かまち) 其ノ弐」と題された弦楽器による沈痛な曲。1曲前のマーチと対照的で、期待とは異なる戦場の現実を突き付けられたような哀感がただよう。
 トラック5「堅忍不抜」では重いリズムと上下動する弦に重なる金管群のメロディが苦しい闘いを描写する。リズムとカウンターメロディの使い方がうまい。第1期第1話のクライマックスで使用された印象深い曲だ。
 トラック6「激突警報」は、緊迫した状況を描写する短いサスペンス曲。第1期第2話「遠吠えは落日に染まった」で地上に降りた603部隊が連邦軍と遭遇する場面に流れている。
 トラック7「ターニングポイント」はメインテーマのアレンジ曲。第1期第1話でジオン艦隊と連邦艦隊が交戦する場面に流れた。悲壮感を帯びた曲調が兵士たちの勇壮さとともに戦争の虚しさを描き出す。大橋恵の持ち味が発揮された秀逸な曲だ。
 次のトラック8「進出ス!」は、第2期第1話「ジャブロー上空に海原を見た」のクライマックスなどで使用された燃える曲。打ち込みを交えたスタイルながら、流麗なメロディと緊迫したリズムで宇宙世紀時代の接近戦を鮮やかに描き出す。ここでも、勇壮さだけでなく哀しみの感触が胸に刺さる。
 後続の楽曲も聴きごたえがある。ピアノの淡々としたリズムが焦燥感をあおるトラック9「まだか?」、モビルタンク・ヒルドルブと連邦軍との死闘場面に使用されたトラック14「死守セヨ!」、モビルスーツ・ヅダの決死の宇宙戦シーンに流れたトラック15「機動戦」、哀感を帯びた美しいメロディのトラック18「感度かすかに」など。劇中のニュース映画のBGMなどを挟んでメリハリをつけた構成も巧みで、飽きずに聴けるアルバムになっている。
 アルバムの白眉はラスト前に置かれたトラック30「半旗たなびく」。毎回のエピローグで、603部隊のオリヴァー・マイ中尉が技術試験観測の結果を報告書にまとめる場面に流れた曲だ。試験結果は失敗だったり、テストパイロットの死を伴っていたりと、いつも苦い余韻を残す。メインテーマの哀しみを湛えた変奏がオリヴァーの気持ちを代弁している。本作を象徴する曲である。最後に主題歌「時空のたもと」で締めくくる流れもいい。
 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の音楽は、戦場の人間ドラマにフォーカスした音楽である。愁いを帯びたメロディが兵士たちの苦悩を、緊迫した曲調が激戦の中の感情の高ぶりを表現する。情感とスケール感は、そうそうたる作曲家が手がけた歴代ガンダム音楽と比べてもひけをとらない。

 本作で実力を認められた大橋恵は、TVアニメ『うた∽かた』(2004)、『トランスフォーマー ギャラクシーフォース』(2005)、『ザ・サード 蒼い瞳の少女』(2006)、『BLUE DRAGON』(2007)などを立て続けに担当。スーパー戦隊シリーズでも『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)、『特命戦隊ゴーバスターズ』(2011)を担当して“凱旋帰国”を果たした。ほかにも『夢色パティシエール』(2009)、『ドラゴンコレクション』(2014)などの作品がある。
 アクションものを多く手がけ、ダイナミックな作風が注目される大橋恵だが、自身は『うた∽かた』のような日常性のある作品のほうが書きやすいそうだ。女性らしい目線と男性的カッコよさをあわせ持った、凛々しくたおやかな音楽が大橋恵作品の魅力。もっともっと活躍し、評価されてほしい作家である。

機動戦士ガンダムMS IGLOO 2 重力戦線 O.S.T.特装盤
Amazon

109 アニメ様日記 2017年6月25日(日) ~

2017年6月25日(日)
トークイベント「第132回アニメスタイルイベント アニメをもっと楽しむための撮影講座2」を開催。今回のイベントでは、こちらから泉津井さんに「基本中の基本」から話してもらうようにお願いしており、実際にアニメの撮影の基本についてきっちりとお話ししてもらえたので、その意味では成功。ただ、「応用編」については時間が足りず、泉津井さんが話したかったことを全て話してもらうことはできなかった。それについては次の機会に。それにしても、客席に業界の方が多かったなあ。

2017年6月26日(月)
3月に始まった深夜アニメが次々と終了。片っ端から最終回を観る。
 午後は外出。30年以上もお世話になった方が定年になったと聞き、中野の東映アニメーションに。90分ほど世間話。長いお付き合いだけど、こんなにたっぷりと話をしたのは初めてかもしれない。ササユリカフェさんに行って、 「小池健監督作品『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』テレコムスタッフの手仕事展」をチラと覗いてから、吉松君との打ち合わせに。

2017年6月27日(火)
立川シネマシティで『BLAME!』の【極上爆音上映】を鑑賞。ちなみに劇場で『BLAME!』を観るのはこれで二度目。前回はお話が気になって途中から音響に気持ちが行かなかったのだけれど、今回は音を体感するのが目的だった。で、当たり前すぎるくらい当たり前の感想になってしまうけれど、爆発関係の音が凄かった。ストーリーの印象が変わってしまうくらい凄い。例えば、あるシーンにおける主人公が放つ銃の威力が、通常の音響の5倍くらいに感じられた。3DCGの質感と音響が合っているのもいい。

2017年6月28日(水)
『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』をバルト9で観る。確か午前8時30分からの回だったはず。こんな時間なのにお客さんはそこそこ入っていた。皆さん、映画を観てから出勤するのかな。ライバル的な立ち位置でアンジェリーナ゠クドウ゠シールズという少女が出てきて「あれ? このキャラクターはTVシリーズにいたっけ?」と思って映画を観た後で確認した。TVシリーズ『魔法科高校の劣等生』は原作7巻「 横浜騒乱編〈下〉」までの映像化で、今回の『星を呼ぶ少女』は原作11巻「来訪者編〈下〉」の後の話。そして、アンジェリーナは原作では9巻「来訪者編〈上〉」で初登場しているらしい。アニメで登場したのは『星を呼ぶ少女』が初めてだったのだろう。原作ファン向け作品らしい思い切った作りだ。むしろ、アンジェリーナを「今までも出ていたキャラクター」としてきちんと描けているところが面白いと言うべきか。パンフレットは完売しており、購入できなかったのだけど、そのあたりにも触れられていたのだろうか。アンジェリーナ以外についても「あれ?」と思ったところがあった。機会があったら確認したい。

2017年6月29日(木)
午前1時に事務所へ入って(タイプミスではなく、本当に午前1時)、昼までデスクワーク。午後は三鷹の森ジブリ美術館に。目当ての企画展示「食べるを描く。」では、ジブリ作品の劇中の食事シーンを原画とともに紹介。改めて宮崎駿作品の「セルの塗り分けによる表現」の巧みさに感心した。土星座の上映は『ちゅうずもう』。大変に出来がよくて感心。お客さんの反応もいい。カフェ「麦わらぼうし」では企画展示に合わせた新メニューがあり、その中から、お城のベーコンエッグ(パン付き)をいたただく。美味しかったんだけど、『ハウルの動く城』劇中のベーコンエッグのようにベーコンが分厚いわけではなかった。あれをお店でだすのは現実的でないのかもしれない。そのうち、自分でやってみよう。

2017年6月30日(金)
仕事の合間に、新文芸坐でスウェーデンの実写映画「幸せなひとりぼっち」を観る。Twitterで本郷みつるさんが「激しくオススメ」していたのがきっかけで観る気になった。長年勤めた会社を突然解雇されて、自殺しようとする老人の物語。回想で描かれた亡き妻との出逢いがよい。本郷さんは「観終わると、ちょっといい人になります」と言っていたけれど、その通りの映画だった。

2017年7月1日(土)
試写会で『メアリと魔女の花』を観る。スタジオジブリ出身のスタッフが、ジブリのスタイルで制作した作品である。どうしても、ジブリ作品や宮崎駿監督作品と比べられるはずで、その意味において不利な作品である。僕もちょっと厳しめの感想を抱いてしまった。スタジオジブリ出身のスタッフが作ったと思わなければ「大変な力作だ」と素直に思ったはずだ。
 試写会は上映の後で、背景美術会社「でほぎゃらりー」の株主である川上量生さん、庵野秀明さん、西村義明さんの鼎談があった。鼎談の内容はでほぎゃらりーの成り立ち、アニメの背景美術について等。

オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95
BONES NIGHT 『アクションアニメ』はいいぞ!」


 7月29日(土)開催のオールナイトは、BONES関連作品を集めたプログラムだ。上映するのは『ストレンヂア 無皇刃譚』『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』『COWBOY BEBOP 天国の扉』の3本。いずれも見応えたっぷりのアクション映画だ。
 トークコーナーでは、公開10周年を迎えた『ストレンヂア 無皇刃譚』にスポットを当てる。『ストレンヂア 無皇刃譚』はハードな、そして骨太の時代劇であり、BONESの人物アクションの集大成とも言えるフィルムだ。トークのゲストは南雅彦プロデューサー、安藤真裕監督を予定。前売り券はチケットぴあと新文芸坐の窓口で、7月8日(土)から発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95
BONES NIGHT 『アクションアニメ』はいいぞ!

開催日

2017年7月29日(土)
開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5:30(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

南雅彦さん(プロデューサー)、安藤真裕監督(『ストレンヂア 無皇刃譚』監督)、
小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『ストレンヂア 無皇刃譚』(2007/102分/35mm)
『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(2005/105分/35mm)
『COWBOY BEBOP 天国の扉』(2001/114分/35mm)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

108 アニメ様日記 2017年6月18日~

2017年6月18日(日)
アヌシー国際アニメ映画祭で『夜明け告げるルーのうた』が長編部門クリスタル賞(グランプリ)を受賞、『この世界の片隅に』が審査員賞を受賞。日本人の作品が長編部門クリスタル賞を受賞したのは1995年の『平成狸合戦ぽんぽこ』以来で、22年ぶりだそうだ。これは嬉しい。  録画したDlifeの『X-ファイル2016』で『ファイアボール』のステーションIDを確認。3DCGのTVアニメ『ファイアボール』の新作映像である。ステーションIDは2種類あったけど、あっいう間に終了。『ファイアボール』の旧シリーズを観直したくなった。
 同じく録画で、チャンネルNECOで放映された『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』を観る。1991年放映の『じゃりン子チエ』第2シリーズで、関東地方では未放映。僕も動いている映像を観るのはこれが初めてかもしれない。映像を観るのは初めてかもしれないけれど、当時、「アニメージュ」で記事を担当した。1話が始まった途端に、セル撮した記憶のあるカットがあった。このシリーズの各話に片渕さんが参加しているんだけど、ネットの情報によると、序盤は絵コンテだけの参加なのね。

2017年6月19日(月)
早朝、24時間営業の山下書店大塚店で『ユーリ!!! on ICE』公式ファンブックと公式ガイドブックを購入。早めに買っておかないと買い逃すかもしれないと思ったのだ。ところで、アニメムックをファンブックと呼称するのはいつから定着したのだろうか。文句をつけるわけではないけれど、気になる。
 カップヌードルCM「HUNGRY DAYS 魔女の宅急便 篇」が公開された。緻密な背景と凝った光の処理。流行のスタイルを、さらに過剰にした画作りだ。作り手が映像の完成形を設定して、それを作り切っているという印象。

2017年6月20日(火)
『進撃の巨人』Season 2の後半を一気観。きちんと検証したわけでなく、印象だけで書いてしまうと、物語の語り方も、画作りも前シリーズから少し変わっているのではないか。物語についてはピリピリした感じが軽減されたのではないか。画作りに関しては、意識して変えたのだろうと思う。『正解するカド』も最新話まで、数話分まとめて観る。シリーズ終盤にきて、お話がキャラクター寄りになった。悪くはないけど、ちょっと意外だった。

2017年6月21日(水)
『エロマンガ先生』11話「二人の出会いと未来の兄妹」を観る。竹下良平監督が絵コンテ、演出を担当した回で、とにかくよくできている。それから1カット、とんでもない構図があった。  仕事の合間に「サムシネ!」第267回 1983年の吉松孝博(6)で話題になった、学生時代の吉松さんの写真が載った記事を探すため、当時の「アニメージュ」「マイアニメ」「ジ・アニメ」をひっくり返すが見当たらない。それを探す過程で、吉松さんが初めて表紙を描いたアニメ誌を発見する。

2017年6月22日(木)
TOKYO MXの再放送で『母をたずねて三千里』7話「屋根の上の小さな海」。ロッシ一家の引っ越しと、屋根の上でのフィオリーナとの交流。印象的なエピソードだし、高畑勲監督が『母をたずねて三千里』で絵コンテを担当した最後のエピソード。キャラクターの感情の流れもよいし、「いい画」が山ほどある。
 午後は井上デザインさんで夏に出る書籍の打ち合わせ。

2017年6月23日(金)
Amazonから「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標 原画集」が届く。最初に『次元大介の墓標』を観た時に「あ、このあたりカットの作監修正原画が見たい」と思った原画がきっちりと載っていて、満足。具体的に言うと、見たいと思ったのは、S.25/C.035のルパンのアップなど。

2017年6月24日(土)
公開初日早朝の新宿ピカデリーで『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第二章 発進篇』を観る。アクションの見せ場が何度もあって、その意味でサービス満点。発進シーンを含めて押さえるべきところをちゃんと押さえているのも嬉しい。1978年の『さらば宇宙戦艦ヤマト ―愛の戦士たち―』で、いくらなんでも地球の復興が早すぎないかと思ったのだけど、その疑問が40年近く経って解消された。『宇宙戦艦ヤマト2199』との比較で言うと、『2199』にあったオーラのようなものがなくなっている。女子クルーを何人も降ろして「女の子が大勢乗っている艦」でなくしたのも、オーラがなくなった理由のひとつだろう。オーラがなくなっているからといって、作品に魅力がなくなっているわけではない。

「第131回アニメスタイルイベント 長濱博史、THE REFLECTIONを語る!!」トーク抜粋

 TVアニメ『THE REFLECTION WAVE ONE』はアメコミの巨匠であるスタン・リーと共に『蟲師』『惡の華』で知られる長濱博史が原作を務めている作品だ。7月から放映開始となる本作だが、どういった経緯で制作されることになったのか、どんな内容の作品なのか等はまだ公になっていなかった。
 その一部が、2017年5月21日(日)に開催されたトークイベント「第131回アニメスタイルイベント 長濱博史、THE REFLECTIONを語る!!」によって語られた。以下はそのトークの抜粋である。

■「THE REFLECTION WAVE ONE」データ

2017年7月22日(土)より放映開始
NHK総合テレビにて、毎週土曜日午後11:00~11:25(全12回)

原作:スタン・リー 長濱博史
監督:長濱博史
脚本:鈴木やすゆき
音楽:トレヴァー・ホーン
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
EDテーマ:9nine
アニメーション制作:スタジオディーン
制作・著作:THE REFLECTION製作委員会
©スタン・リー, 長濱博史/THE REFLECTION製作委員会

公式サイト
http://thereflection-anime.net/


■イベントトーク抜粋


●アメコミを日本のアニメにする夢

―― 『THE REFLECTION』の企画はどんなかたちで成立したのでしょうか。

長濱 元々自分はマーベル作品の大ファンなんです。それこそ日本のマンガより好きなくらいです。そういうことをアメリカで開催された日本アニメのイベントに呼ばれた際に言い続けていたら、向こうの方が「そんなに好きならスタン・リーに会おうか」と言って、機会を設けてくださって、そこから企画が動き出しました。

―― スタン・リーさんの印象は。

長濱 とても明確なビジョンを持っている、明晰な人だなと感じました。その一方で、アメコミの神様のような存在でありながら、こちらと対等にやろうとしている感じがありました。これは凄いことです。通常この手の大御所から感じられる近寄りがたさというものは一切感じませんでした。それから、今年で94歳ですが、まだまだ若いです。

―― 初めて会った時から企画が動いたのですか。

長濱 実は今回の『THE REFLECTION』は2回目の企画なんですね。1回目は『蟲師』の監督をするより前、10年以上昔になります。1回目の時がスタンと初対面で、その時はその場で決定しました。スタン自身が以前から日本と組んで幾つか企画をやってみたいと思っていたんだと話してくれました。アメリカでは基本的に、「やる?」と聞かれて「やる」と即答すれば企画が始まりますし、「考えます」と答えれば企画は流れます。僕がその場で「やります」と言ったら企画が始まった、ということですね。

―― 2回目の企画となる今回の経緯は。

長濱 今回はあちらから、「前回は企画が流れてしまったがもう一度やってみないか」と打診がありました。これももう4、5年前の話です。1回目の企画の時はスタンが積極的に、「日本とやるのだから日本とアメリカのいいところを混ぜたい」と主張していて、日本を舞台にし、さらに『パワーレンジャー』のような日本的なヒーロー像を下敷きにキャラを作っていたんです。でも今回はアメリカを舞台にアメコミをアニメにしようということで、日本の要素は削ろうとはしていないですが、積極的に取り込むということもしていません。アメコミをアニメーションにしたいというのが、今回の企画の成り立ちなんですよ。ブルース・ティムの『バットマン』のような例外はあるんですが、アメコミをきちんとアニメーションにした作品というものは存在しないんです。アメリカはどうしてもカートゥーン(アメリカ風の児童向けアニメーション)から抜け出せない。ちゃんとアメコミをアニメーションで観たいという思いが自分の中にあったんですね。

―― 「これこそがアメコミ」というアニメを作りたかった。

長濱 そういうことです。

―― 長濵さんが、以前からずっと言い続けていたために企画が成立したと受けとめてよいでしょうか。

長濱 そうですね。僕は言い続けていれば叶うとずっと思っているんです。『蟲師』もそうです。アニメ化は難しい企画でしたが実現した。『蟲師』も夢が実現した例です。この『THE REFLECTION』もそうですね。

馬越 普通は願っていれば叶うというものでもないんですが、長濱さんの場合、既に動いているんです。自分から呼び込んでいるという表現が正しいかと。

長濱 願うだけでは叶いませんが、口にすれば叶いますよ。時間差はあるかもしれないし、違ったかたちで叶うかもしれない。それでも、自分の好きという気持ちが相手に影響を与えているわけですよ。この影響を及ぼすというのが、好きということを口に出すことの力なんです。話はかなり戻りますが、私が初めてアメリカのイベントに参加したきっかけも、ずっとアメコミが好きだと言い続けていたところ、同時多発テロの影響でアメリカの日本アニメのイベントのゲストに欠員が出たので参加してみないか、という話が回ってきて掴んだものだったんです。

馬越 長濱さんは人の10倍ほど口に出していると思います。

長濱 今回音楽をトレヴァー・ホーンさんというイギリスの音楽プロデューサーにお願いしているんですが、これもスタジオディーンの野口(和紀)さんとこの作品が動き出す前から、いつかトレヴァー・ホーンの音楽でアニメをやりたいね、と語り合っていたところ、この企画が動き出してから彼とのパイプが見つかり、それで依頼したんです。向こうがその場で快諾してくれたことには驚きました。


●『THE REFLECTION』で描きたいもの

―― トレヴァー・ホーンさんがプロデュースした楽曲に合わせた新しいPVを拝見しました。独特の色使いだと感じましたが、アニメ本編でも同じようになるのでしょうか。

長濱 そうですね。その場面ごとに色のトーンがあり、シーンや時間でそのトーンが変わります。アメコミの作風ですね。結局、アメコミをアニメにするにしても、自分が『蟲師』や『惡の華』で経験したものと同じプロセスを通っている。作品独自の何かがあるのか、それとも通常の方法でなんとかなるのか、それを考えるプロセスです。僕が好きなアメコミはシルバーエイジ(1950年代から1960年代)の作品で、この頃のグラデーションなどを再現してみたかったんです。ところが、いざ実際に取り組んでみると、『蟲師』並みに徹底的にやり尽くさないと、ウソが浮いて見えてくることが分かったんです。撮影段階で様々な処理を加えれば加えるほど、ウソが目立つ。なので無駄なものを一切足さない、引き算のアニメにすることにしたんです。こういう方向性に舵を切れるのも、馬越さんが色々とやってみてくれているからですね。

―― 色使いがとてもシンプルなんですね。空にしても、ベタ塗りというか、濃淡がない。

長濱 ないんです。でも表現として成立しています。

―― 馬越さんの名前が出ましたが、馬越さんがキャラクターデザインとして参加し始めたのはいつ頃だったのでしょうか。

馬越 最初から参加する流れはありました。が、初めて打診された時は断りました。

長濱 馬越さんが、「スタン・リーと一緒に作品を作るというあなたの夢が叶うのだから、キャラクターの原案は自分で作るべきだ」と主張したんです。デザインをアニメ的に動かせるようにアレンジする作業はしてもよいが、自分が一から作ることはしない、と。もっとも、馬越さんはそのデザインのアレンジをすることにも渋っていましたが。

馬越 長濱さんが凄いことをやっている、というのを遠くから眺めていたかったんです。

長濱 そういうわけで、ティザーPVに出てきた止め画のキャラクターは、自分が元を作っています。当初は影が付くのかどうかも分からない状態でした。結局黒の影だけを付けることになりました。

―― 随分とスタイリッシュなビジュアルになりそうですね。

長濱 というよりシンプル。動かすのは難しいのですが、スタッフが渋らずやってくれています。

―― ビジュアル面以外で、長濱さんが描きたかったものとはなんだったのでしょうか。

長濱 今回僕がやりたかったことというのは、スタンが生み出したマーベルの宇宙(ユニバース)というものを彼に返したい、ということだったんです。アメコミの世界では、原作者がキャラを保有できず、出版社がその権利を抱えています。しかし、マーベルの宇宙のかなりの部分は、スタンが作り上げたものなんです。なので、それを違ったかたちで翻訳して、彼に返したかったんです。今回原作として僕がスタンと連名でクレジットされていますが、これは僕が彼に軽く言ったら、相手がそれを快諾してくれたのが理由です。嬉しかったですが、アニメを作っている過程では、スタンを仮想の原作者、僕を一人の読者としてイメージしながら制作しています。もうひとつ、僕はアニメで『アベンジャーズ』のようなことをしたかったというのもあります。『アベンジャーズ』に登場するヒーローは誰もが独立したタイトルの主人公であるわけですが、観客はその個別のタイトルに触れた経験がなくとも『アベンジャーズ』を楽しむことができるわけです。今回の『THE REFLECTION』はその逆の過程を辿っています。個々のキャラクターについては誰も何も知らないが、それでもキャラクターを楽しみながら見ることができる、そういう作品を目指しています。なので、登場するキャラの数はとても多いですし、すぐ死ぬような悪役にも名前を付けバックボーンを設定として与えています。


●スタン・リーと長濱博史が企画の中心にいるということ

―― NHKで夏から放映することになっているようですが、これにはどういう経緯があったのでしょうか。

長濱 詳しいことは舞台脇にいる野口さんに聞いてみましょう。

(野口和紀プロデューサーが登壇する)

野口 スタジオディーンの野口です。NHK総合で今年の7月から毎週土曜夜に放映となります。詳しい日程はまだ確定していませんが、6月にはお伝えできるかと思います(編注:イベントの後、放映開始日等が告知された)。

―― 7月放映開始ということは、もうすぐですね。

野口 特殊な状況で決定しました。元は配信だけの予定だったのですが、NHKさんから企画を認めてもらい、急遽放映できることになりました。よろしくお願いします。

(野口プロデューサーが降壇する)

―― なぜ当初は配信だけで考えていたのでしょうか。

長濱 原作者の一人がアメリカ在住、音楽プロデューサーはイギリス人ということで、必然的に「自分たちのところでも作品を観られるようにしてほしい」ということを言われるわけです。なので、世界同時に公開できる配信を考えていた。今回の企画に日本の出版社が関わっていないのも大きいかもしれません。

―― 今回のプロジェクト自体、内容以外の部分も長濱さんが動かしているわけですね。

長濱 企画の中心にスタンと自分がいるという点で、今回の企画は特殊だと思います。スタジオディーンで制作することになった理由も、スタン側から「確実に企画を遂行できる人を連れてきてほしい」と言われ、野口さんに連絡したところ、すぐOKの返事があったからですし。他にも、先ほど音楽の話をしましたが、それもこちらから打診しました。9nineというチームにEDを歌ってもらうのですが、トレヴァー・ホーンが日本のユニットをプロデュースするのは初めてなんですよ。これは凄いことです。9nineは作中で日本のヒーローチームとしても登場しますね。

―― チームですか。

長濱 チームです。『プリキュア』シリーズにせよ、『パワーレンジャー』にせよ、日本のヒーローやヒロインはチームを組む場合が多いんです。そういった日本のヒーロー・ヒロイン像を投影しています。そう、投影なんです。英単語のreflectionには確かに反射という意味があるんですが、それだけではない。投影という意味もあります。イメージとしては水面のきらきらとした光です。そういったイメージを持ちながらタイトルや作中でのある事件名にreflectionを用いています。


●あらゆる箇所に見どころが

―― アクションは毎回あるのでしょうか。

長濱 ない回もあるかもしれませんが、基本的にはあります。

―― 登場するヒーロー的なキャラクターは、皆が特殊能力を持っているのでしょうか。

長濱 持っています。悪者も持っています。悪者の方が面白いですね、様々な意味で。キャラ立ちしています。デザイン的にはヒーロー側のキャラクターは……。

馬越 アイガイというヒーローがいるんですが、そのキャラクターを描くだけでも大変です。

長濱 デザインが複雑なのは、僕が元を描いたからです。

馬越 監督の指示が細かい。

―― キャラの数も多いとのことでしたが。

長濱 削ったんですが、それでもまだ多い。先ほども言いましたが、どれほど出番が少なかろうと、キャラには名前と設定を与えています。アメコミでは使い捨ての戦闘員は許されませんし、そうした設定があるからこそ後に別の作品で再登場できるわけです。

―― 最後に一言ずつお願いします。

馬越 現段階では多くは話せませんが、私自身も楽しみにしています。

長濱 アメコミ好きなら楽しめる作品になっていると思います。悪い奴をやっつけるという単純なストーリーではありません。音楽や声優にも力が入っています。長く続けていきたいと考えていますのでよろしくお願いします。

■プロフィール

長濱博史(Hiroshi Nagahama)
アニメ監督・演出家。1970年3月15日生まれ。マッドハウスに入社しアニメ業界に入り、現在はフリー。1997年『少女革命ウテナ』でコンセプトデザインを担当。『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』『十兵衛ちゃん2 ―シベリア柳生の逆襲―』など大地丙太郎作品への参加が2000年代前半に多かった。2005年『蟲師』で初監督、注目を集める。以降の監督作としては『デトロイト・メタル・シティ』『惡の華』『蟲師 続章』など。2017年7月から放送予定の『THE REFLECTION』では監督をこなすと同時に原作者(スタン・リーと共同)としてもクレジットされている。

馬越嘉彦(Yoshihiko Umakoshi)
アニメーター、キャラクターデザイナー、作画監督。1968年7月30日生まれ。日曜朝の少女マンガ原作アニメ三部作『ママレード・ボーイ』『ご近所物語』『花より男子』でキャラクターデザインを手がけ、『おジャ魔女どれみ』シリーズではキャラクターコンセプトデザインを担当。近年では『ハートキャッチプリキュア!』『僕のヒーローアカデミア』でキャラクターデザインを担っている。長濱博史監督とのコンビは、長濱がチーフディレクターを務めた『十兵衛ちゃん2 ―シベリア柳生の逆襲―』から。その後、長濱が監督した『蟲師』『蟲師 続章』でもキャラクターデザインを受け持った。2017年『THE REFLECTION』でもキャラクターデザインとして長濱監督と組んでいる。

■イベントデータ
日時:2017年5月21日(日)
会場:阿佐ヶ谷ロフトA
登壇者:長濱博史、馬越嘉彦、小黒雄一郎(アニメスタイル編集長)

■記事構成
深川和純、アニメスタイル編集部

第520回 やっぱり「ほどほどに」!

 なんとなく前回言い足りず重ねますが

「ほどほどに」です!!

 俺の理想のデジタル化は。なんでもカンでも無条件に「デジ最高!!」ではなく、作品を面白くするため、制作費を効率よく使うために、我々制作者側は新しい技術に対して、単に好き嫌いではなく研究して勉強して「これ、作品作りに使える!」と思ったらほどほどに使ってみる姿勢って大事なのではないでしょうか? と。別に「全編CGでキメるべき!」と言いたいわけでも「手描き作画はすべて滅ぶ!」とアニメーターの危機感を煽りたいのでもありません。

「ほどほど」の割合で折り合いがつくのが理想!

と思うだけ。いくら世の中デジタル化だっつったって、すべてが0か1、もしくは「ある・なし」で片づくはずはないでしょう。作画アニメに一部CGまたはその逆でも、要は「効果的に使えているか?」が問題なのだと思います。
 で、『ベルセルク』は最終回を迎えたわけですが、今まで監督してきた作品とは違った意味で疲れましたし、それと同時に楽しませてもらいました。何しろ、ここでも何度か報告したとおり、コンテは昨年末で最終回まで上がっており、今年始めにはCGの発注がいつでもできる状態。そんな中、作画パートをコツコツ進めつつCGを発注し、かなりの時間差で上がってくるモーションをチェック。これがまた当たりもあれば「アレ?」な上がりもあり一喜一憂。とにかく良くも悪くも自分の思ったように上がってこない。もちろん素晴らしいアクションカットもいっぱいありました! それらが上がってきた時は「CG凄えっ!」と興奮します。が、上手くいってないものが上がってくる時もままあるわけ。その時は当然「リテイクお願いします!」とはなるものの……これはCGアニメーターさんが悪いわけではないんですが

上手くいってないカットほど納品ギリギリ!!

 でモーションの修正ができないんです。「レンダリング時間的に無理です!」となり、あとは撮影処理で対応するしかありません。まあでも、2クールで詰め込めるだけ詰めた内容だけに、CGスタッフの皆さんもパッツンパッツンの余裕がまったくない状態で本当によく頑張っていただきました。現場をヒーヒーにしてしまったのはすべて自分の力不足によるものです。スタッフの皆さん、申し訳ありませんでした。そして、

お疲れさまでした!!