第569回 大塚さんのお言葉

7月11日は大塚康生さんのお誕生日、87歳おめでとうございます!!

 大塚さんは自分にとってアニメ業界に入っていちばん最初の先生です。専門学校では小田部羊一先生に作画を教わり、プロになってからは大塚さん! 我ながら運がいいアニメ人生の滑り出しでした。板垣がテレコムでお世話になったのは1994〜2001年まで。小田部先生より「僕の教え子」との触れ込みがあったせいか、大塚さんは最初から気さくに話しかけてくださいました。「とにかく画を描いたら何でも大塚さんに見せに行きなさい」と小田部先生にも言われていたので、研修期間からちょくちょくスケッチや原画もどき(原画の習作)を見ていただきました。研修課題だけで手一杯な新人が多い中、寝る時間・遊ぶ時間を削って画を描いては見せにくる新人が、その当時は珍しかったのでしょう。後に後輩づてに聞いた話では、板垣の話題が出ると「アイツは画を見てくれと、しょっちゅう持ってくるんで困った(笑)」と話してたそうで、照れくさくもあり嬉しくもありました。以下は数ありすぎる、そして忘れられない大塚さんのお言葉の抜粋。

「あんた、動画向いてないね〜。早く原画になりなさい」
(緊張でガチガチな板垣の動画を見ての一言)

「今度1日かけてじっくり見てやるよ」
(原画の習作を何回か持っていった時の嬉しい一言)

「あ、燃えてる燃えてる〜、気分(雰囲気?)出てますよ」
(炎の課題を提出した際のこれまた嬉しかった一言)

「うん、ここの水の切り方いいね〜」
(板垣の『CYBERSIX』の原画を指差して……同上)

「こないだ宮崎(駿監督)に会ったら、巧いアニメーター貸してくれないか? 
って言われたんで、馬鹿言うな! って返してきたよ、ひひひ(笑)」
(イタズラっぽく話されてましたが、「巧いアニメーター」はけして俺のことではありません!)

で、何より忘れられないのは、演出家になりたくて退社を決意した時の一言。

あわてることはないんじゃない?

「止めてくださってる!」と感激したものですが、「でも、やっぱり」と自分の意志を伝えました。その時の一言が、

第135回 超人ふたたび 〜電光超人グリッドマン〜

 腹巻猫です。90年代に放送された特撮TVドラマ「電光超人グリッドマン」を原作とするアニメ『SSSS.GRIDMAN』が10月からTV放映されるというニュースが入ってきました。『アニメ(ーター)見本市』で発表された短編アニメ『電光超人グリッドマン boys invent great hero』がパイロット版になった形でしょうか。音楽は鷺巣詩郎が担当するというから期待が高まります。


 今回は短編アニメ版でも主題歌が引用されていたオリジナル版「電光超人グリッドマン」の音楽を紹介しよう。久しぶりに特撮作品の音楽がテーマだ。
 「電光超人グリッドマン」は1993年4月から1994年1月まで放映された円谷プロ制作の特撮TVドラマ。コンピュータ・ワールド(今でいう電脳世界=サイバースペース)を舞台に、異次元の魔王カーンデジファーと戦う電光超人グリッドマンの活躍を描く特撮ヒーローものだ。パソコンやインターネットが広く普及していない時代に電脳世界の戦いを描いた先駆的な作品である。CG技術が成熟していなかったこともあり、コンピュータ・ワールドの描写はほとんどミニチュア(と言っていいのか……?)特撮を利用して行われている。今観てもなかなか新鮮だ。
 グリッドマンと協力しあって電脳世界の危機を救うのは、直人、ゆか、一平の3人の少年少女。いっぽう、カーンデジファーに誘惑されて電脳世界を破壊する怪獣を作り出すのも、人付き合いの苦手な少年・武史。いずれも14歳、中学2年の少年少女たちが物語の中心となるのが本作の大きな特徴である。少年ドラマ的な味わいがある特撮ドラマだった。
 音楽は戸塚修が担当している。

 戸塚修は1952年生まれ。ご本人のサイトに掲載されたプロフィールによれば、慶應義塾大学在学中にポップス理論を林雅彦に、ジャズ理論を北川祐と渡辺貞夫に師事。また、ジャズピアノを藤井貞泰に、アンサンブルを大森明に師事した。70年代からキーボード奏者、作・編曲家として活動を始め、八神純子「思い出は美しすぎて」(1978)、近藤真彦「愚か者」(1987)など、数々のポップスの編曲を手がける。
 アニメ音楽(BGM)の仕事では、『星銃士ビスマルク』(1984)を皮切りに、『超獣機神ダンクーガ』(1985/いけたけしと共作)、『鎧伝サムライトルーパー』(1988)、『魔法のエンジェル スイートミント』(1990)、『あしたへフリーキック』(1992)、『十二戦支 爆烈エトレンジャー』(1995/池毅と共作)などを手がけている。現在は“トッツィー戸塚”、“悠木大”の名でも活躍中。
 戸塚修がアレンジしたアニメ・特撮ソング——「風のノー・リプライ」(『重戦機エルガイム』1984)、「不思議CALL ME」(『星銃士ビスマルク』)、「City Hunter 〜愛よ消えないで〜」(『CITY HUNTER』1987)、「ジライヤ」(「世界忍者戦ジライヤ」1988)、「サムライハート」(『鎧伝サムライトルーパー』)など——を聴けば、その作風がなんとなくわかる。バンド編成をベースにロックのリズムとシンセをブレンドしたサウンド、楽曲を特徴づける巧みなコーラス、キラキラしたポップス風味。80年代の戸塚修アレンジはそんなイメージだった。
 「電光超人グリッドマン」の音楽にもそのサウンドが継承されている。作品内容からすればシンセをふんだんに使ったテクノポップ風であってもおかしくないし、そういう曲もあるのだが、基本はロックサウンドを基調にした王道のヒーロー音楽だ。
 サウンドトラック・アルバムは1993年9月にビクターエンタテインメントから発売された。収録内容は以下のとおり。

  1. 夢のヒーロー(歌:坂井紀雄)
  2. 平和な街角
  3. ふたつの勇気(インストゥルメンタル)
  4. 小さな悪意
  5. 怪獣出現!
  6. 僕たちの秘密基地
  7. ジャンク
  8. 魔王カーンデジファー
  9. ハートブレイク
  10. パサルートを駆け抜けろ!
  11. バグッた!
  12. ふたつの勇気(歌:コンポイドスリー)
  13. 怪獣のダンス
  14. ああ、大失敗
  15. グリッドマン危うし
  16. 敗北
  17. アクセスコードはGRIDMAN
  18. 決意
  19. 負けるなジャンク
  20. ともだち
  21. がんばれ! 3人組
  22. 侵略
  23. アシスト・ウェポン発進せよ!
  24. 破壊
  25. 超神合体! サンダーグリッドマン
  26. 電光雷撃剣グリッドマンソード
  27. もっと君を知れば(歌:坂井紀雄)

 1曲目がオープニング主題歌、ラストの27曲目がエンディング主題歌。ともにフルコーラスで収録されている。
 12曲目は少年3人組が歌う挿入歌だ。
 オープニングは鈴木キサブローの作曲。キャッチーな歌い出しから、いつまでも続くようなサビまで、鈴木キサブローらしいメロディの曲だ。戸塚修のアレンジはシンセを強調したテクノロックの趣。歌い出しのボーカルとコーラスのかけあいが強烈に印象に残る。ハードな曲調の中にふっと哀愁が漂う中間部のコーラスの入れ方もうまい。90年代特撮ソングの名曲のひとつである。
 トラック2「平和な街角」は直人たちの平和なひとときを描写する曲。軽快なリズムの上でサックスとストリングスがメロディを奏でる。物語の開幕にふさわしい明るい曲だ。
 トラック3は戸塚修作・編曲の挿入歌「ふたつの勇気」のストレートなインストゥルメンタル。ゆかと一平がグリッドマンを助ける支援プログラムをコンピュータ・ワールドに送り込む場面などに流れていた。戸塚修が設定した「主役トリオのテーマ」である。
 トラック4「小さな悪意」は武史のテーマとも呼ぶべき曲。直人たちの同級生・武史は、魔王カーンデジファーに心の弱さを突かれて電脳怪獣を創り出し、さまざまな事件を引き起こす。今でいうブラックハッカー(クラッカー)のような少年だ。シンセのミステリアスな音色と妖しいメロディが不穏な雰囲気をかもしだす。心の闇を描写する曲だ。
 トラック5はコンピュータ・ワールドを破壊する怪獣を描写する「怪獣出現!」。くり返されるエレキギターのリフにシンセの緊迫したフレーズが絡み、危機感を盛り上げる。挿入されるピアノの高音が効果を上げている。怪獣好きとしてはついつい気持ちが高ぶってしまう曲。
 トラック6「僕たちの秘密基地」は「もっと君を知れば」のメロディによる主役トリオのテーマ。直人たちは、一平の両親が経営するインテリアスペースの地下に、自作のパソコンを組み立てる秘密の作業場を持っているのだ。ウエスタン的なリズムにブラスのメロディと弦の流麗な対旋律。高揚感のある爽やかな曲である。グリッドマンの戦闘場面にもたびたび選曲されている。
 次のトラック7「ジャンク」は3人が組み立てたパソコン「ジャンク」のテーマ。ジャンクはグリッドマンにエネルギーを供給する生命線である。デジタルなリズムの上でリコーダー風のシンセのメロディが踊る。後半にアドリブっぽいソロが登場するから、メロディは打ち込みではなく手弾きのようだ。
 トラック8は「魔王カーンデジファー」。悪の親玉の登場である。カーンデジファーはハイパーワールドからこの世界にやってきて武史のパソコンに棲みついた魔王。対するグリッドマンはハイパーワールドからカーンデジファーを追ってきたエージェントという設定。彼らはプログラムではなく、異次元からやってきた生命体なのだ。そのため、怪獣やカーンデジファーがコンピュータ・ワールドから現実世界へ出てこようとする描写もある。本作が他の電脳SFものと異なるユニークなところである。曲の冒頭はカーンデジファー登場を表現するショック音楽。続いてエレキギターとエレピが奏でる重いリズムにストリングスのメロディがうねり、カーンデジファーの恐ろしさを描写する。
 トラック9「ハートブレイク」はサックスとアコースティックギター、エレピなどが奏でる「ふたつの勇気」のバラードアレンジ。メロウな演奏は大人っぽすぎる気もするが、少年少女らしい悩みや寂しさを描写する曲として、とてもいい雰囲気に仕上がっている。
 トラック10「パサルートを駆け抜けろ!」のパサルートとはコンピュータ・ワールドへつながる通路のこと。グリッドマンはパサルートを通って事件が起きたシステムへ急行するのだ。映像では光り輝くトンネルの形状で描写されていた。エレキギターの緊迫したフレーズからシンセによる「ふたつの勇気」のメロディへと展開する疾走感たっぷりの曲。
 次のトラック11「バグッた!」は4リズムとファンキーなシンセが奏でるコミカル曲。トラック13「怪獣のダンス」、トラック14「ああ、大失敗」とともに、直人たちのほのぼのするシーンを彩る曲である。
 トラック12「ふたつの勇気」は戸塚修が設定した主役トリオのテーマに歌詞をつけて歌にしたもの。少年ドラマっぽい歌詞がなかなか泣ける。歌っているコンポイドスリーは正体不明だが、主人公たちと同世代の少年を集めたグループだそうだ。本作のドラマの肝は、グリッドマンと直人たちの間に友情が芽生えること。その友情をテーマにした曲だ。
 トラック15「グリッドマン危うし」は冒頭から緊迫感あふれる危機描写曲。エレキギターが刻むリズムにブラスとストリングスの切迫したフレーズがくり返される。中間部のエレキギターのアドリブが聴きどころ。手弾き楽器ならではの生々しい緊張感がいい。第25話のラスト、グリッドマンが倒され、世界はカーンデジファーに支配されてしまうのか? という危機感に満ちた場面に流れていた。
 トラック16「敗北」はオープニング主題歌のメロディをピアノソロでしっとりと演奏した悲しみの曲。第26話でグリッドマンとともに倒れた直人をゆかが介抱する場面に流れている。トラック15からこの曲を経てトラック18に至るまでの構成が実にうまい。
 トラック17「アクセスコードはGRIDMAN」は敗北ムードを吹きとばパワーみなぎる曲だ。戸塚修が設定したグリッドマンの主題、本作のメインテーマとなるメロディが登場する。エレキギターとブラスのかけあいで展開する軽快なロックナンバーである。
 ドラムロールからスタートするトラック18「決意」はブラスとストリングスを主体にしたオープニング主題歌の勇壮なアレンジ。グリッドマン勝利のイメージの曲だ。マカロニウエスタン風のリズムが燃える。ヒーローものの音楽はこうでなくては! と思わずひざをたたきたくなるような胸躍る曲。
 次から3曲はひと休みの雰囲気。トラック19「負けるなジャンク」はシンセ主体のテクノポップ風の曲。本作ではこういうシンセ主体の音楽は意外に少ない。
 トラック20「ともだち」はピアノソロが奏でる友情のテーマ。エンディング主題歌のスローアレンジである。第2話でグリッドマンが自分の使命を語り、直人、一平、ゆかの3人がグリッドマンとともに戦う決意を固める場面に流れていた。
 トラック21「がんばれ! 3人組」は「ふたつの勇気」のエレキギターメロによるアップテンポアレンジ。青春ドラマ音楽のような明るくポジティブなナンバーだ。
 トラック22から最終決戦の雰囲気になる。「グリッドマン危うし」の変奏である「侵略」は、焦燥感をあおるエレキギターのリズムをバックに、ブラス、エレキギター、ストリングスがスリリングなセッションをくり広げる曲。グリッドマン絶体絶命! といったシーンに流れる危機描写曲だ。
 トラック23「アシスト・ウェポン発進せよ!」はゆかと一平がジャンクを通して送り込むグリッドマン支援プログラム=アシスト・ウエポンのテーマ。少年少女たちがヒーローを助けてともに戦う構図が本作のドラマの燃えるところである。ブラスのイントロに続いて、オープニング主題歌のメロディを引用したストリングスのリフがくり返される。心をかき立てるトランペットソロ、ストリングスのリフを挟んでサックスのアドリブが続き、再びトランペットソロ、サックスのアドリブという構成。熱気あふれるセッションを聴くような、本アルバムの中でもいちばんの聴きどころのひとつ。
 ワイルドな曲調のトラック24「破壊」はコンピュータ・ワールドを蹂躙する怪獣を描写する曲。エレキギターとオルガンが暴れまくるロックナンバーだ。電脳世界が破壊され、現実世界が大混乱に陥る場面などに流れた。
 トラック25「超神合体! サンダーグリッドマン」はグリッドマンのテーマを変形した重厚な曲。ミディアムテンポの重いリズムに低音のシンセとエレキギター、ピアノが絡む。合体というより、反撃のチャンスを待つグリッドマンという雰囲気。
 最後のBGMはグリッドマンのテーマをブラス主体に演奏した「電光雷撃剣グリッドマンソード」。グリッドマンの出動シーンや戦闘シーンを盛り上げた本作のメインテーマである。エレキギターのアドリブから、たたみかけるようなブラスのリフに展開する間奏がエキサイティング。アルバムの構成としては、この曲ですぱっと終わるのが特撮サントラらしくて好印象だ。
 ラストはエンディング主題歌「もっと君を知れば」。オープニングと同じ鈴木キサブロー作曲による、明るく爽やかな青春ポップスである。

 全27トラックのうち、歌が3曲。BGMは23曲が収録されている。曲の流れは、平和⇒主人公たち⇒悪のたくらみ⇒事件発生⇒出動⇒初戦の勝利⇒束の間の平和⇒大ピンチ⇒逆転勝利というヒーローものサントラのオーソドックスな構成。カタルシスのある、何度も聴きかえしたくなるサントラだ。
 「電光超人グリッドマン」の音楽はおよそ100曲が録音された。本アルバムと2005年発売のDVD+CD BOXに同梱された「モア・サウンドトラック」でその楽曲はほぼ網羅されている。が、どちらも現在は入手困難。アニメ版放映を機会に、完全版での復刻を期待したい。この際、配信オンリーでもいいから。アクセスコードはもちろん「GRIDMAN」で!

電光超人グリッドマン オリジナル・サウンドトラック
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電光超人グリッドマン DVD+CD! HYPER COMPLETE BOX
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アニメ様の『タイトル未定』
161 アニメ様日記 2018年6月24日(日)~

2018年6月24日(日)
強制休養2日目。朝は『HUGっと!プリキュア』や『ゲゲゲの鬼太郎』をのんびりと観る。午前中にビーチサンダルで砂浜を歩いた以外は、ほとんど一日、ホテルで寝ていた。

2018年6月25日(月)
昼まで強制休養。午後から事務所に戻ってデスクワーク。話は変わるけれど、Twitterで、10年近く前に亡くなられた緒方賢美さんの画をアップするアカウントを見つける。緒方賢美さんは同人誌で活躍されていた方で、猛烈に画が巧かった。巧いだけでなく、画に「アニメごころ」があった。僕はアニメージュの仕事で、彼に何度かイラストを描いてもらっている。アニメーターに発注する描きおろしイラストのラフをお願いしたこともある。『新世紀GPX サイバーフォーミュラ』では彼のラフを原画として使い、吉松さんに修正を入れてもらってセルイラストにしたこともあった(ちなみに、そのアカウントでアップしているアカウントはエロチックなものが多い。苦手な方はご注意を)。

2018年6月26日(火)
デスクワークの日々。気になることがあって『HUGっと!プリキュア』1話から10話を観る。ところで、うちのMacが「あの」で出す変換候補は『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『あの夏で待ってる』でした。

2018年6月27日(水)
デスクワークの日々。『HUGっと!プリキュア』11話から最新21話を観る。展開が早いなあ。15話「迷コンビ…? えみるとルールーのとある一日」はその後の展開を知って観ると、まるで違う話だった。観直して『HUGっと!』のシリーズ構成が丁寧に組まれているのが分かった。

2018年6月28日(木)
「週刊少年チャンピオン」最新号を買う。「ドカベン」シリーズの完結編である「ドカベン ドリームトーナメント編」の最終回が掲載されている号だ。試合は終わるにしても、どうやってドラマを完結させるのだろうかと思っていたら、回想で「ドカベン」の1話に戻ってそのまま終わってしまうという、まさかのループ落ち。このまま「ドカベン」1話から「ドカベン ドリームトーナメント編」の最終回までを繰り返して読み続ければ、永遠に「ドカベン」は終わらないのだ……というのは半分くらい冗談だけど、1話に戻ったところはちょっとぐっときた。僕が「ドカベン」をきちんと読んでいたのは長いシリーズの途中までで、決して熱心なファンだったとは言えないけれど、少なくとも最初の「ドカベン」は抜群に面白い作品であったし、中学高校の頃の僕はこのマンガの登場人物が大好きだった。水島新司先生、お疲れ様でした!
「アニメスタイル013」の見本が届く。作っている時から思っていたけど、今号は誌面が専門誌っぽい。『さよならの朝に約束の花をかざろう』大特集でインタビューイの写真がなく、取材記事で文字がぎっちり詰まっているためでもあるのだろう。
夜は、デジタルハリウッド大学[DHU]公開講座【監督・プロデューサーが語る 映画「名探偵コナン ゼロの執行人」ができるまで】に参加。諏訪道彦プロデューサーと立川譲監督による講義で、興味深い話をいくつもうかがうことができた。だけど、もっと聞きたいことがある。

2018年6月29日(金)
取材とイベントとデスクワークの日々。深夜アニメの最終回をいくつか観る。夕方から、夏に出す書籍のために三鷹の魚民で取材。居酒屋チェーン店の魚民である。インタビューイが吞みながら話したいということで、店を探すことになったのだが、色々あたって、最初に提案してもらった魚民を使うことになった。行く前は、取材に向かないのではないかと思っていたのだけど、立派な個室があって、むしろ、取材向きだった。

2018年6月30日(土)
取材とイベントとデスクワークの日々。昼間はデスクワーク。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 104 東映長編の名作」。トークのゲストとして映像研究家で、高畑勲・宮崎駿作品研究所代表の叶精二さんに来ていただいた。叶さんのトークは内容が整理されており、話題も豊富。素晴らしい解説だった。また、叶さんに来ていただきたい。

第148回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(1)

 片渕須直監督をメインゲストにお迎えするトークイベントの新シリーズがスタートする。タイトルは「『この世界の片隅に』に至る道」。片渕監督が『この世界の片隅に』を手がけるまで、どのような道をたどってきたのかについて、じっくりとうかがうイベントシリーズである。
 第1回は2018年8月5日(日)昼に開催。彼が学生時代に関わった『名探偵ホームズ』のトークの中心となるようだ。

 今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。前売り券は7月7日(土)から発売開始。詳しくは以下のリンクの阿佐ヶ谷ロフトAのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/93278

第148回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(1)

開催日

2018年8月5日(日)
開場12時00分 開演13時00分 

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 105
『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事

 先日開催したトークイベント「井上俊之の作画を語ろう」に続き、カリスマの名前で親しまれているスーパーアニメーター、井上俊之にスポットをあてたオールナイトを開催する。タイトルは「『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事」。2018年7月21日(土)の開催だ。

 上映作品は、岡田麿里が監督を務めた大作『さよならの朝に約束の花をかざろう』、大友克洋が総指揮・原作などを務めたオムニバス『MEMORIES』、沖浦啓之監督の初監督作品であり、Production I.Gの代表作でもある『人狼』の3本。
 「アニメスタイル013」の巻頭特集でも話題になっているが『さよならの朝に約束の花をかざろう』で、井上は1300カット中の400カットのレイアウトやラフ原画を担当。つまり、1本の映画の1/3近くの作画に関わり、アニメーションとしての完成度について大きく貢献した。素晴らしい仕事だった。
 『MEMORIES』ではその中の「彼女の想いで」において、キャラクターデザイン・作画監督を担当。『人狼』では副作画監督、原画などの役職で腕を振るっている。上映する3作品は井上俊之の代表的な仕事というだけでなく、いずれも内容、映像の両面で見応えのある作品だ。

 トークコーナーのゲストは、井上俊之を予定。他のゲストついては決まり次第、告知する。前売り券は7月7日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 105
『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事

開催日

2018年7月21日(土)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

叶精二、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018/115分/DCP)
『MEMORIES』(1995/113分/35mm)
『人狼』(1999/98分/BD)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

●関連書籍 『さよ朝』大特集の「アニメスタイル013」が発売中!
http://animestyle.jp/news/2018/07/04/13784/

第568回 カフェ打ち合わせでした!

 本日、某里見哲朗プロデューサーのカフェにて、来年のシリーズの脚本打ち(ホン読み)。もちろん『ユリシーズ』の次の仕事。現在第1話のコンテ中、脚本は第4話!

 タイトルはまだ発表できません。年内にPVが発表できるように頑張りましょう!
 てとこで、スミマセン! コンテに戻ります(汗)。

アニメ様の『タイトル未定』
160 アニメ様日記 2018年6月17日(日)~

2018年6月17日(日)
デスクワークの日々。昨日の編集後記はやっぱり書き直した。Amazonのマーケットプレイスで購入した文庫「ぷにぷに☆ぽえみぃ~小林伝説~」が届く。『クレヨンしんちゃん』のしんのすけ役を小林由美子さんが引き継ぐことになり、小林由美子さんと言えば『ぷにぷに☆ぽえみぃ』だよなあと思って(そんなふうに思っている人は少ないだろうけれど、僕にとってはそうなのだ)『ぷにぷに☆ぽえみぃ』について検索をしていて、小説版が出ているのを知ったのである。巻末に小説を書いた黒田洋介さんによるあとがきと、ワタナベシンイチ監督による解説と、北山茂プロデューサーによる解説と、小林由美子さんによる解説があり、それを読んで、ああ、『ぷにぷに☆ぽえみぃ』ってこういうノリだったよなあと思った。

2018年6月18日(月)
デスクワークの日々。Amazonで中古で購入した「xxxHOLIC DVD-BOX [上]」が届く。目当ては封入されたイラスト集。TVアニメ『xxxHOLiC』と『xxxHOLiC◆継』のイラストを集めたもので、何とA4サイズの上製本。1枚1枚のイラストが大きく掲載されており、僕的にはかなりの満足度。単独商品でもこれだけのアニメイラスト集はなかなかない。

2018年6月19日(火)
デスクワークの日々。朝から猛烈にダルいので「風邪の引きはじめか」と思って病院に行ったら「風邪ではないです」とのこと。疲労か。疲労だな。週末に休みをとるつもりだったが、その前に、ガツンと来てしまった。ネットでマクセルのカセットHDD「iV」の販売が終了することを知る。これはショックだ。この数年、僕の録画のメインはこのカセットHDDだった。録画量の多い僕にとっては最高のフォーマットだった。もうしばらくは続くと思っていたのだが。カセットHDDを買いだめして、あと数年は録画を続けたい。

2018年6月20日(水)
デスクワークの日々。「アニメスタイル013」が校了。その一方で「この人に話を聞きたい」原稿作業を続ける。

2018年6月21日(木)
デスクワークの日々。昼までに「この人に話を聞きたい」の原稿を仕上げる。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 4KリマスターBOX」の解説書をパラパラとめくる。時間に余裕がないので、じっくりと読むのはまたの機会に。ラーメン屋で隣のお客さんが頼んだ中華丼が、色も質感も細部も、セルで再現できそうな感じだった。色は劇画っぽいというか、ちょっとリアル寄りのアニメの色だった。

2018年6月22日(金)
デスクワークの日々。『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』を5.5話まで観る。観やすいし、面白い。5.5話で、Aパート最後のCMの入り方をギャグにしているんだけど、配信だとCMが入らないのでギャグがわかりづらくなっている。前にも別のシリーズで似たことがあった。配信が普及しても、まだTV放映をメインと考えて作品を制作しているのだと受けとめたい。

2018年6月23日(土)
「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」を最新話まで観る。昼から「強制休養」で鎌倉方面に。休むつもりでも池袋にいるとつい仕事をしてしまうので、自分に強制的に休養をとらせるために遠出したのだ。

第567回 続・リテイクのコツ

 前回の続き。『WUG! 新章』のパッケージ(BD)リテイクのやり方。上のように作打ちをしっかりとして、

・原画から描き直しカット
・作監修正カット
・T.P(動画・仕上げ)修正カット

に区分けします。そうすると、だいたい次の日からT.P修正→作監修正→原画の順で上がってきて、朝6〜7時、誰もいない会社に入った俺の机にカット袋が積まれているわけです。

 ひとまずこの連載の原稿に少し手をつけて、

 その後、粛々とリテイクのカットのチェックをします。T.PがOKの場合はそのままセル検→撮影へ。再リテイクの場合はその内容を指示書きします。「この中割りはラフを入れた方が早いな」と思った時は自分でラフを入れて再リ。同じく原画や作監修正もOKなものと再リのものとに区分け。さらに同じく難しいカットは俺のほうでラフを入れます。もちろん「原画・作監OK」なものは、後日「T.P上がり」として机に置かれる。この繰り返し。それが20〜30カット(多い時は40カット以上)です。


 要するに、撮影上がり(ラッシュ)を観て、「まだ顔が崩れとるじゃないか! 動画……いや作監修からやり直し!」と仰る監督様は、1カットの原・動・仕をやり直すのに何千円〜何万円かかることを知らないんです。ところが監督と制作が力を合わせて管理・確認をすれば、もっと具体的に

と書けるわけ。こう言うとバブル期の巨匠監督を例に「○○監督は何千万かかったシーンを丸ごと灰にした」だの昔の話を持ち出して「金を贅沢に使った武勇伝」を、嬉々として自身の体験であるかのように語って「アニメはこうあるべき!」と仰られる監督様もいます。でもそれは、まず全国何百万人が楽しみにしてる作品を監督する巨匠になってから言うべきです。自分みたいな監督は「お金を上手く使う」ことが必須。「アニメの制作費を上げろ!」と訴えるより先に「どーやったら上手に制作費を使えるか?」を考えるところからでしょう。分不相応な贅沢っていちばん格好悪いと両親から教わった板垣です。

第134回 大物登場 〜幻魔大戦〜

 腹巻猫です。『タッチ』の芹澤廣明さんがアメリカで歌手デビューするというニュースが飛び込んできました。アメリカでお仕事しているらしいとは聞いていましたが、そんなプロジェクトが進んでいたとは。すばらしいです。それに合わせて、「芹澤廣明 ANIME GOLDEN HITSTORY」なるベストアルバムが発売されることに。『タッチ』などのアニメ作品を集めた2枚組。『ナイン』の主題歌が一堂にそろうのは貴重です。

〈作曲家35周年記念〉芹澤廣明 ANIME GOLDEN HITSTORY
https://www.amazon.co.jp/dp/B07C5HJ2YV/


 1976年の「犬神家の一族」を皮切りに70年代後半〜80年代の映画界を席巻した角川映画。出版社のノウハウと強みを生かし、出版、TV、ラジオ等のメディアを駆使した宣伝で、「人間の証明」「野生の証明」「戦国自衛隊」など、次々とヒット作を送り出した。
 そんな角川映画が70年代末からブームとなったアニメに目をつけないはずがなく、1983年3月、満を持して劇場アニメを公開する。『幻魔大戦』である。
 宇宙のすべてを破壊しようとする幻魔とそれに対抗する超能力戦士たちの壮絶な戦いを描くSF作品。平井和正と石ノ森章太郎の原作をりん・たろう監督で映像化した。アニメーション制作はマッドハウス。大友克洋がデザインしたキャラクターや高層ビル街が廃墟と化していくさまを描く美術、そうそうたるアニメーターが手がけた作画など、見どころ満載の作品である。

 角川映画といえば、主題歌を印象づける宣伝戦略も印象深い。観てなくても、あるいは観たあとで内容は忘れてしまっていても、主題歌だけは口ずさめる作品がたくさんある。「復活の日」ではマイルス・デイビスのプロデューサーを務めたテオ・マセロを音楽プロデューサーに起用し、主題歌にはジャニス・イアンが歌う「ユー・アー・ラヴ」を使用。南極ロケとともに国際的スケールの映画作りを印象づけている。
 本作も例外ではなく、音楽監督にプログレッシブ・ロックバンド、エマーソン、レイク&パーマー(ELP)のキース・エマーソンを起用。主題歌をアメリカの女性シンガー、ローズマリー・バトラーに歌わせて(1982年の角川映画「汚れた英雄」主題歌に続いての起用)話題をさらった。
 しかし……いっぽうで話題作り優先の角川映画には首をひねるところもあった。たとえば「復活の日」では、テオ・マセロのプロデュースによるサントラ・アルバムやシンフォニー・アルバムを発売したにもかかわらず、作中で使用された曲のほとんどはレコードに入っていない羽田健太郎の曲で、サントラファンを悩ませた。『幻魔大戦』でも多くの場面は青木望が作曲した曲が使われている。
 『銀河鉄道999』の音楽などで知られる青木望は本作では「音楽」とクレジットされている。キース・エマーソンの曲の隙間を埋める映画音楽的楽曲を提供する重要な役割だ。青木望らしいメロディアスな曲もあるいっぽう、キース・エマーソンの音楽に寄せたシンセ音楽もたくさんあり、音楽世界の統一を図っている。
 「音楽監督」とクレジットされたキース・エマーソンの仕事はどのようなものだったのだろうか。
 映画音楽作品集「Keith Emerson at the movies」のライナーノーツでキース・エマーソンが『幻魔大戦(HARMAGEDON)』について語っている。それによれば、キースは作品が完成するまで映像を見ることができなかったのだそうだ。最初から6曲だけ書いてくれという注文で、送られてきたのは、いくつかの画と大まかなストーリーラインだけ。本来なら映像を観て、絵にタイミングを合わせて作曲するところだが、それはかなわなかった。作曲を進めながら音楽がフィットするように願っていた、とキースは語っている。映画音楽というより、イメージ音楽的な作り方だったようだ。
 それでも、「『幻魔大戦』といえばキース・エマーソンの音楽」というファンは多い。実際、見せ場となるシーンにはキース・エマーソンの曲が流れ、エンドクレジットに流れる主題歌の印象も強い。「復活の日」に比べると、本作のキース・エマーソンの音楽は期待された仕事をみごとに果たしているのだ。
 サウンドトラック・アルバムはキャニオンレコードから発売された。1998年にカルチュア・パブリッシャーズのボルケーノ・レーベルでCD化されている(販売はワーナーミュージック)。
 収録曲は以下のとおり。

  1. ハルマゲドン序曲
  2. 啓示(フロイのテーマ)/THEME OF FLOI
  3. 失われた惑星〜J.S.バッハ トッカータとフーガ ニ短調より〜
  4. サイオニクス・プリンセス
  5. フライング、フライング/JOE AND MICHIKO
  6. 甦る使命
  7. 光の天使/CHILDEN OF THE LIGHT
  8. 幻魔咆哮
  9. ソニー・ザ・キッド/SONNY’S SKATE STATE
  10. 遙かなる時
  11. 幻魔の攻撃/ZAMEDY STOMP
  12. 地球を護る者/CHALLENGE OF THE PSIONICS FIGHTERS

 レコードでは6曲目までがA面、7曲目からB面になる。全12曲のうち、キース・エマーソンの曲が6曲、青木望の曲が6曲という構成。
 曲順は作中での使用順と異なるが、情感主体のA面、アクション主体のB面と、コンセプトを感じさせる曲順は聴きごたえがある。
 トラック1「ハルマゲドン序曲」はタイトルバックに使われた導入の音楽。青木望の曲である。
 鼓童の演奏する長い太鼓ソロから始まる。佐渡を拠点に活動する和太鼓集団・鼓童は、キース・エマーソン、ローズマリー・バトラーとともに、本アルバムのフィーチャリング・アーティストとしてクレジットされていて、この曲と「幻魔咆哮」の2曲の演奏に参加している。これが縁……なのかどうかわからないが、鼓童の前身・鬼太鼓座の創設者・林英哲は1985年の角川劇場アニメ『カムイの剣』の音楽を宇崎竜童とともに担当している。
 作中では太鼓ソロをバックに女預言者が不気味な予言を語る。続いて、幻魔の声が響き、タイトルが大きく映し出される。曲はシンセによる不安な曲想へ展開。これから始まるドラマへの期待をあおった。
 トラック2「啓示(フロイのテーマ)/THEME OF FLOI」はキース・エマーソン作曲。シンセのアタックから始まり、夢幻の世界をさまようような幻想的なフレーズが続く。単調になりそうな曲想を青山純のドラムが引き締めている。
 爆発したジェット機から宇宙空間にテレポートしたプリンセス・ルナ(小山茉美)が、宇宙生命体フロイ(美輪明宏)の声を聴く場面に流れた曲である。
 トラック3「失われた惑星〜J.S.バッハ トッカータとフーガ ニ短調より〜」はバッハの曲を青木望が編曲した。悲壮感を宿したドラマティックな曲想にアレンジされている。
 フロイがルナに幻魔とサイオニクス戦士ベガのことを語るバックに流れた。宇宙の黙示録を思わせる幻魔との戦いの歴史を伝える曲である。
 トラック4は青木望作曲の「サイオニクス・プリンセス」。エレピのアルペジオをバックにアルトフルートが美しいメロディを奏でる。アコースティックギターとオーボエが受け継ぎ、ストリングスの流麗な演奏が続く。青木望の持ち味が生かされた叙情的な曲だ。
 フロイからサイオニクス戦士としての使命を伝えられたルナが、地球で眠りについていた戦士ベガ(江守徹)とめぐり遭う場面に使用されている。
 トラック5はキース・エマーソン作曲の「フライング、フライング/JOE AND MICHIKO」。ストリングス風のシンセの音が神秘的な旋律を奏でるロマンティックな曲だ。
 丈の超能力を知った姉・三千子(池田昌子)が丈を励ます場面、それに続いて、丈が三千子と一緒に超能力で空を飛ぶ場面に流れている。
 トラック6は青木望作曲の「甦る使命」。弦による悲しみのメロディから始まり、弦と木管楽器による切ない旋律に展開。劇場版『銀河鉄道999』の音楽を思わせる青木望らしい曲想が胸を打つ。
 クライマックス前、富士山に巣食う幻魔を攻撃しようとした丈が力尽き、炎に包まれた樹海をさまよう場面に使用。迫り来る滅亡を前にした丈が苦悩し、再び使命に目覚めて立ち上がる場面に流れてドラマを盛り上げている。
 トラック7「光の天使/CHILDEN OF THE LIGHT」はキース・エマーソン作曲、ローズマリー・バトラーが歌う本作の主題歌である。角川映画の主題歌は記憶に残る曲ぞろいだが、本作も一度聴いたら忘れられない名曲。美しいメロディラインが耳に残る。LPのライナーノーツで角川春樹は本曲を“シンセサイザーによる讃美歌”と評している。キースもまた「宇宙の拡がりを意識した曲で、テーマには讃美歌に通じるものがあるのではないか(大意)」と答えている。
 青山純がドラムスで参加。ラストシーンからエンドクレジットに流れて作品のフィナーレを飾った曲である。
 トラック8「幻魔咆哮」は青木望作曲による幻魔の接近を表現するサスペンス曲。バックでは鼓童の太鼓が鳴り続け、不安感をあおる。
 地球に潜む幻魔の手下が廃寺でたくらみをめぐらす場面に使用。緊張感のある映像とうらはらに永井一郎と滝口順平のやりとりがユーモラスで笑える場面だ。
 トラック9「ソニー・ザ・キッド/SONNY’S SKATE STATE」はキース・エマーソン作曲。ニューヨークのスラム街に暮らす超能力少年ソニーのテーマである。
 たたみかけるようなシンセのメロディが型破りではじけた雰囲気を演出。跳躍する高音のフレーズは「地球を護る者」にも登場する。中間部のロックっぽいシンセ・ソロが聴きどころ。
 トラック10「遙かなる時」は青木望作曲。サックスとエレキギターが甘いメロディを奏でるロマンティックな曲だ。終盤はビブラフォンが引き継ぐ。本編未使用曲だが、アルバムの中ではクライマックス前にひとときの安らぎを演出する曲になっている。
 トラック11「幻魔の攻撃/ZAMEDY STOMP」はキース・エマーソン作曲。シンセによる多彩なメロディが絡み合うサスペンス&アクション曲だ。作品の後半、三千子が幻魔の手下に襲われる場面から、超能力に目覚めた三千子が反撃する場面まで、ほぼフルサイズで使用されている。次の曲へ向けて最終決戦の雰囲気を盛り上げる曲である。
 トラック12「地球を護る者/CHALLENGE OF THE PSIONICS FIGHTERS」は主題歌シングルのB面にも収録された本アルバムのハイライト曲。もちろんキース・エマーソンの曲である。
 シンセが奏でる勇壮なメロディがサイオニクス戦士たちの勇姿を描写する。エレクトリカルパレードみたいな部分もあるが、それが意外に絵に合っているのだから面白い。4分にわたる大曲である。青山純がドラムスで、SHOGUNの芳野藤丸がギターで参加している。
 もともとニューヨークの戦闘シーンに流す予定だった曲で、実際そのシーンにも使われているが、りん・たろう監督が曲にほれこみ、クライマックスの炎の竜(幻魔)対サイオニクス戦士の死闘場面にたっぷり流れることになった。

 アルバムを通して聴くと、やはり、キース・エマーソンの曲が耳に残る。ただ、映像をしっかり支える音楽を提供した青木望の仕事も評価されてほしいところだ。
 イギリスで発売された『幻魔大戦』のサウンドトラックLPには、キース・エマーソンの曲のみが収録されている(A面が『幻魔大戦』、B面に他の作曲家によるTV番組サントラを収録したカップリング盤)。青木望の音楽を愛する日本のファンとしてはちょっと寂しいのである。
 角川戦略が生みだした『幻魔大戦』の音楽は、日本映画のスケールを越えようとする大物アーティスト起用が空回りせず、うまくはまった成功作だと思う。けれど、純粋に映画音楽を愛するものとしては、もやもやしたものが残る。が、仕方ない。それも角川映画の魅力のひとつなのだから。

幻魔大戦 オリジナル・サウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
159 アニメ様日記 2018年6月10日(日)~

2018年6月10日(日)
デスクワークの日々。『xxxHOLiC』を最終回まで観た。観ていない話もあるのではないかと思っていたが、大半の話が記憶にあった。ちゃんと観ていたんだ。シリーズ終盤にキャラクターの頭身がますます伸びていた。最終回とか笑っちゃうくらい伸びている。水島努監督らしい「どんどん頭身が伸びていく」というお遊びなのか。それとも描き手がノッて伸ばしてしまったのか。

2018年6月11日(月)
デスクワークの日々。今度は『xxxHOLiC◆継』を観る。これもかなり覚えてる。昼の打ち合わせで『パルムの樹』『銀色の髪のアギト』『ブレイブ ストーリー』が話題になる。あるテキストを仕上げる。急いで書いたけど、いい原稿になった。これがライターさんが書いてくれた原稿なら100点満点で200点。編集長が自分で書いた原稿としては80点くらい。

2018年6月12日(火)
デスクワークの日々。 6月8日が今年の上半期で一番忙しい日になるかと思ったら、この日も匹敵するくらい忙しかった。昨日、話題になった流れで、当時購入したDVDで『銀色の髪のアギト』『ブレイブ ストーリー』を観る。千羽由利子さんの作監作品をもっともっと観たいなあ。『銀色の髪のアギト』は映像特典のパイロットも観た。ところで、『蟲師』の「日蝕む翳」を辞書登録したのだけど、そもそも読みが難しいので、なにも見ないでタイプできる自信がない。「ひはむかげ」と読む。

2018年6月13日(水)
デスクワークの日々。 TVシリーズ『xxxHOLiC』『xxxHOLiC◆継』に続き、OAD『xxxHOLiC春夢記』『xxxHOLiC・籠』『xxxHOLiC・籠 あだゆめ』を視聴。いずれも後でBlu-rayにまとまったバージョンで観た。『xxxHOLiC・籠 あだゆめ』のラストが最終回らしくてとてもよかった。

2018年6月14日(木)
デスクワークの日々。 dアニメストアの『お伽草子』を観る、スタンダードサイズとiPad Proの組み合わせはなかかなよい。『お伽草子』は本放映時にはちょっと物足りないと感じていたんだけど、連続して観たせいか楽しめた。Netflixで『ひそねとまそたん』を再生しながら「設定資料FILE」の構成をする。

2018年6月15日(金)
取材でProduction I.Gに。早めに着いて、久しぶりに武蔵野カンプスでランチ。事務所に戻っても大忙し。

2018年6月16日(土)
疲れが溜まっているので、休むつもりだったのだけど、なんだかんだで仕事をしてしまう。いつもは深夜とか早朝に書く編集後記を、土曜の昼に書いた。調子にのって長文のエッセイみたいなものを書いてしまった。これは後で書き直すことになるはず。

第566回 リテイクのコツ

 先日「『Wake Up, Girls!』2019年3月で解散」が発表されました。自分たちは2ヶ月ほど前にプロデューサーから聞いていたのですが、WUG!さんたちとエイベックスとの話し合いはもっと前からあったそうです。プロデューサー曰く「基本的には彼女たちの意思を尊重するかたちで」とのこと。ご本人たちが決めた答えなら、それを応援するしかありません。いつまでも続けてほしい! というのはこちら側のワガママというもの。ユニットとしては解散しても声優としては続けていくわけですから、また一緒にアニメを作れたら嬉しく思います。来年3月まで頑張ってください、WUG!さんたち!!
 で、『WUG! 新章』リテイク作業も終わったところで、今回は「リテイク版」についてのお話を少々。前回説明したとおり各話200カット前後、作監・原画・動画・仕上げ・撮影、何かしら修正しました。それだけ聞くと当たり前に出てくるのが費用の問題。まず最初に断っておきますが、

リテイク用に追加の費用などは頂いておりません! そもそも費用の有無に関わらず、「全体的に直したい!」 いや直さねば!」と自分もスタッフも思ったからやったんです!!

 そうは言ってもお金はかかります。そこで社長(白石)が綿密に計算。まず基本的に、最初に頂いた制作費の中にリテイク費用はキープしておくものです。もちろんそれは放映時の通常納品のための最低限、例えば、動画の割り間違いや色パカ・撮影ミスなどを救うくらいの費用です。今作はそのリテイク費を奇しくも(?)ほぼ使わずに済みました(使う時間がなかったとも言う)。次に、なるべく内製率を高める、つまり社員にできることなら何でもやってもらう! ウチは、制作が動画・仕上げだけでなく背景の直しもやってます。もちろん社長自身も自動中割りで、動画から仕上げまで参加しました。俺も原画・動画の修正をやりました。社内の人員は何より「いつ入って、どのくらいの物量をこなしてくれるのか?」をちゃんと把握することができます。ところが、原画とかを

フリーのスーパーアニメーターにお願いすると、その方の他の仕事と仕事の合間にやってもらうことになるのでスケジュールが読めません。いつ上がるか分らないまま眠ってるカットは、ゆくゆくは演出・作監のチェックの時間をも奪ってゆき、作監の人数を増やさざるを得なくなってン10万飛ぶ

 これが現在のアニメ業界の現状。つまりどの役職においても「眠るカット×時間=制作費の無駄使い」という方程式が成り立つわけです。実はその無駄をなくせば、少ない制作費の中でも結構いろんなことができるんです。

制作費が安すぎる云々言ってる間に、まずはお金を上手く使うことがウチの会社のテーマですから!

 もちろん、本当のスーパーアニメーターは、演出チェックも作監修正も必要ないのですよ! と同時に「なんでこれでフリー? しかも自宅作業してんの?」ってアニメーターが本当に多くなってきたのも事実なんです。
 てとこで最後にパッケージ(BD)リテイクのコツ。それは

必ず「演出」から見直すこと!

間違っても監督が「ここの顔、変じゃないか? 総作監、修正入れておきたまえ〜」と修正カットを上から目線で指差すだけでは、結果、絶対に直って見えません! キャラが少々綺麗になるだけ。フィルムには一方向に流れる力学が働く宿命があるので、目線・ポーズ・芝居・カメラワークなど、すべて見直してから作監修正を入れないと、感情も流されていっちゃいます。だから、

監督(演出家)も作画スタッフと一緒の目線に立って、自らの失敗を認め新たに作打ち(作画の発注)をし、そしてちゃんと意図どおりに直されてるかどうかをしっかり確認してから初めて撮影に入れる! これ必須です!!

アニメ様の『タイトル未定』
158 アニメ様日記 2018年6月3日(日)~

2018年6月3日(日)
確認することがあって、Amazonのプライムビデオで『ボールルームへようこそ』最終回を観たら「次のエピソード」として「Shall we ダンス?」を勧められた。昼からトークイベント「第146回アニメスタイルイベント 僕たちのアニメ雑誌」を開催。ゲストは高橋望さん、渡邊隆史さん、松下俊也さん。前売りの数字がのびなくて、どうなることかとハラハラしたけれど、当日券のお客さんもいてガラガラにはならなかった。トークは色々な話題が出て、楽しかった。お客さんは初めて聞く話も多かったのではないかと思う。僕も1998年のリニューアルで判型を変えた理由は知らなかった。渡邊さんや松下さんに、昔の自分がアニメージュに貢献したという話をしてもらい、それはお世辞でも嬉しかった。ところで、アニメージュ史は誰かに書いてもらいたいと思っている。イベントのトークをお聞きになった方は分かると思うけど、僕は関係者なので、客観的な歴史は書けないはずなのだ。

2018年6月4日(月)
デスクワークの日々。数時間で事務所に戻れるところで、長期の夏休みをとることを決意する(数日後にそれは無理だと気づく)。

2018年6月5日(火)
デスクワークの日々。WOWOWで録画した新海誠監督特集を流しつつ、作業をする。特番にはじまり、『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』を観た。『星を追う子ども』は公開時よりも楽しめた。フランス帰りの吉松さんと、知音食堂でマンガの打ち合わせ。

2018年6月6日(水)
デスクワークの日々。この数か月でいちばん頑張らなくてはいけない原稿が書けた。昨日に続き、『言の葉の庭』『君の名は。』を観た。やはり『言の葉の庭』はメジャー感があるなあ。『君の名は。』には爆発的なパワーがある。好き嫌いで言ったら『言の葉の庭』が好きだ。

2018年6月7日(木)
デスクワークの日々。この日だけではないけど、「アニメスタイル013」と夏に出す書籍3冊の作業が同時進行。今、一番忙しいのは「アニメスタイル013」。

2018年6月8日(金)
おそらく今年の上半期で一番忙しい日。作業をしながら『xxxHOLiC』を1から6話をDVDで再生。面白い。本放映時よりもずっと面白い。パソコンを辞められない主婦の話は当時も印象的だった。

2018年6月9日(土)
『犬ヶ島』の吹き替え版をユナイテッド・シネマ豊洲で観る。字幕やスクリーンサイズの問題があり、吹き替えで観たほうがいいらしいと聞いていて、しかし、吹き替え版の公開が終わってしまいそうだったので、慌てて観にいったのだ。『犬ヶ島』はかなりよかった。とにかく映像が魅力的。作り込みが凄まじい。語り口は一般的な意味での娯楽作のものとは違うかもしれないけれど、それもよかった。キャラクターでいうと、チーフとナツメグがよかった。
 この数日でレンタルDVDで邦画も観た。「勝手にふるえてろ」は、ある方が公開時にSNSで誉めていた映画。これは映画館で観ればよかった。10年前か15年前に観ていたらハマったかも。「DESTINY 鎌倉ものがたり」は映画館で何度も予告を観た作品。画ぢからがあるので、もっと大きなモニターで観ればよかった。

第147回アニメスタイルイベント
井上俊之の作画を語ろう

 2018年7月1日(日)に開催するトークイベントは「第147回アニメスタイルイベント 井上俊之の作画を語ろう」。カリスマの名前で親しまれているスーパーアニメーター、井上俊之の仕事にスポットをあてたトークイベントだ。勿論、メインのゲストは井上俊之。他の出演者は決まり次第発表する。
 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。会場では「アニメスタイル013」の先行発売も予定している。「アニメスタイル013」の巻頭特集は『さよならの朝に約束の花をかざろう』だ。同作品についての井上俊之のインタビューも掲載されている。
 今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は2018年6月16日(土)から発売開始。詳しくは以下のリンクの阿佐ヶ谷ロフトAのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/91609

第147回アニメスタイルイベント
井上俊之の作画を語ろう開催日

開催日

2018年7月1日(日)
開場12時00分 開演13時00分 

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

井上俊之、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第565回 ありがとう!!

今週から来週にかけて、仕事が徐々に片付きつつあります!

 まず、『ユリシーズ〜ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』のキービジュアルのラフと背景原図が上がり。じき発表になると思います。ちなみに『ユリシーズ』は現在第11話のコンテ中。先週、先々週とレイアウト・ラフ原チェックほか打ち合わせ類も重なり、コンテがやや難航したのですが、今週・来週でテストまで駆け抜けたい(汗)! コンテ撮でのカッティング(編集)も10話まで終了。ま、アフレコを落とすことはないでしょう。放映開始3ヶ月前に、コンテ&カッティングが全話終わっているというのは、かなり順調かと。
 で、何より今週の目玉は

『Wake Up, Girls! 新章』のパッケージリテイク、全話終了!!

本放送時、実現できなかったカットの復活と、修正が行き届かなかった作画の直し、その他、動画・仕上げ・撮影も合わせて2〜11話までは各話150〜200カット前後リテイクが入ってます。『WUG! 新章』は1話あたりの総カット数が240カット前後なので、かなりの修正量になるでしょう。ちなみに1話と最終話は50〜100カットくらいでしょうか? 最終話のRun Girls, Run!「カケル×カケル」はモーションキャプチャーから作り直しました! いい出来です、CGスタッフの皆様、本当にありがとうございました! あ、あと「コンテから描き足した云々」はありません。去年上がったコンテに忠実な仕上がりを目指しました。「なぜ去年の本放送時にはコンテどおりにできなかったのか?」をここで語るつもりはありません。何を言おうと言い訳にしかならないし、力不足はすべて自分のせいですから。今言えることは、

スタッフ一同、今現在持てるすべての力を注いで修正しました!
『Wake Up, Girls! 新章』リテイク版、是非観てください!!

と。そして、

第133回 旅する者の想い 〜マルコ・ポーロの冒険〜

 腹巻猫です。6月6日に発売されたTVアニメ『ヒナまつり』の音楽集「花も嵐も踏み越えて」の構成を担当しています。音楽は『みなみけ』(2007)、『ココロコネクト』(2012)などを手がけた三澤康広さん。音楽集は2枚発売予定で、これは1枚目。2枚にわたってブックレットに三澤さんのインタビューが掲載されます。ぜひお聴きください&お読みください。

ヒナまつり音楽集〜花も嵐も踏み越えて〜
http://www.amazon.co.jp/dp/B07CHGDC6V/


 『マルコ・ポーロの冒険』について書いておきたい。1979年4月から1980年4月までNHKで放送された『アニメーション紀行 マルコ・ポーロの冒険』のことである。
 『東方見聞録』で知られる13世紀ベネチアの商人マルコ・ポーロ。その25年間にわたる旅の物語をアニメと実写ドキュメンタリーを組み合わせて映像化したTVアニメ作品だ。と書くと教育番組みたいだが、堅苦しい作品ではない。マルコが父・ニコロと叔父・マテオとともにベネチアを旅立つのは17歳のとき。多感なマルコが経験する出逢いと別れが、ときにドラマティックに、ときに詩情豊かに描かれ、ロマンあふれる冒険物語になっていた。
 アニメーション制作はマッドハウス。杉野昭夫がキャラクターデザインを手がけ、コンテや作画に川尻善昭、もりまさき(真崎守)、村野守美らが参加。アニメパートの見応えは抜群だった。コントラストを強調したスタイリッシュな表現や独特の色調で描かれた背景(美術は石津節子)も印象に残っている。
 実写パートはNHKが現地で取材した映像をもとに構成。当時は目にする機会が少なかった中東や中国奥地の映像に惹きつけられた。NHKは1980年4月からマルコの旅とほぼ同じ道をたどるドキュメンタリー番組「シルクロード」を放送する。こちらの音楽を担当して一躍注目されたのが、のちに劇場アニメ『1000年女王』(1982)の音楽を手がける喜多郎だった(これは余談)。
 声優陣の充実も印象深い。主人公のマルコは富山敬。『宇宙戦艦ヤマト』の古代進役で人気絶頂の頃で、「マルコのキャラクターが古代進に似ている」とも話題になった。マルコとともに旅する父・ニコロは俳優として、また洋画を中心に声優としても活躍した久松保夫(「宇宙大作戦(=スター・トレック)」のミスター・スポックの声)。同じくマルコとともに旅する叔父・マテオは豪快なおじさんならこの人、名バイプレーヤーの富田耕生(またまた余談だが『Cutie Honey Universe』で45年ぶりに早見団兵衞を演じて違和感がないのがすごい)。ナレーターはアクの強い役をこなす俳優として活躍する一方、刑事コロンボの声で人気を博した小池朝雄(アニメファンには『長靴をはいた猫』(1969)の魔王役でおなじみ)。マルコたちが旅の途上で出逢うゲストキャラクターにも当代一流の名優がキャスティングされている。映像で眼福、声でも耳福という楽しみな番組だった。
 当時のアニメ誌も『マルコ・ポーロの冒険』をたびたびカラーページで取り上げていた。アニメファンにも人気の作品だった。が、残念なことに、本作の思い出を共有するのは当時リアルタイムに放送を観た世代に限られている。NHKには本作のビデオ原盤が残っておらず、再放送もパッケージ化もされていないのだ。
 しかし、本作の雰囲気を追体験できるものが残っている。それが音楽だ。

 本作の音楽はシンガーソングライターの小椋佳が担当している。
 小椋佳は1971年にデビュー。1970〜80年代に台頭した歌謡曲の新しい潮流「ニューミュージック」を代表するシンガーソングライターのひとりである。文学的とも呼べる繊細な言葉づかいの歌詞と独特の抒情をたたえたメロディで数々の名曲を紡いだ。布施明に提供した「シクラメンのかほり」は日本レコード大賞の大賞を受賞。TVドラマ「俺たちの旅」(1975)の主題歌・挿入歌として中村雅俊が歌った「俺たちの旅」「ただお前がいい」も70年代TV世代には忘れられない名曲だ。80年代には美空ひばり「愛燦燦」、梅沢富美男「夢芝居」などのヒット曲を手がけた。味わいのある歌声も魅力で、筆者は1972年のTVドラマ「大いなる旅路」の主題歌が大好き(オープニングは作詞・小椋佳、作曲・渡辺岳夫の名曲)。
 そんな小椋佳がアニメ音楽を手がけるのは、当時、ちょっとした事件だった。ニューミュージックなんか聴かない特撮・アニメ好き少年だった筆者も「俺たちの旅」などで小椋佳の名や作風は知っていたから、「あの小椋佳がアニメの音楽を!?」と思ったのを覚えている。1978年頃から急激に進んだアニメ音楽の変化を象徴する出来事である。
 当時のアニメ誌に掲載されたNHKの担当ディレクターのコメントによれば、本作の音楽担当はアニメ音楽も劇伴も未経験のニューミュージック系の人で、マルコの成長を描ける人、というポイントで人選したのだそうだ。小椋佳と吉田拓郎の名が挙がり、過去にNHK作品で縁のあった小椋に決まった。発注にあたっては特に注文はせず、「小椋佳のマルコを」とお願いしたという。
 オファーを受けた小椋佳は「マルコ・ポーロをテーマに自由に曲を書いていい」という注文に、逆に苦労した。「東方見聞録」をくり返し読み、シルクロードに関する文献を70冊も読んだが1曲も書けず、1978年夏にシルクロードを回る10日間の取材旅行に旅立つ。
 小椋は時が止まったようなシルクロードの情景に圧倒される。そして、旅の経験をもとに1978年12月までに10数曲の歌を書き上げた。その多くは、少年マルコが旅を通して感じたはずの驚きや感動をそのまま歌にしたものだった。それが本作の主題歌となった「いつの日か旅する者よ」をはじめとする楽曲である。最終的に小椋佳が作った歌は25曲にもなったが、番組に採用されたのはそのうちの12曲だった。
 小椋佳の歌は番組のオープニング、エンディングだけでなく、本編にもたびたび挿入された。とりわけ、実写パートに流れたのが記憶に残っている。大陸の雄大なスケールと悠久の時を感じさせる映像をバックに小椋佳の歌が流れる。「紀行」のタイトルにふさわしい、心に残る演出だった。今でも、『マルコ・ポーロの冒険』は小椋佳の歌とともに思い出される作品である。
 なお、本作の音楽担当には作・編曲家の小野崎孝輔もクレジットされている。小野崎は小椋佳が書いた歌の編曲を担当したほか、アニメに必要な映画音楽的なスコアを提供する役割を担った。小野崎孝輔は本作以前にTVアニメ『おらぁグズラだど』(1967)や『ピンク・レディー物語 栄光の天使たち』(1978)の音楽を担当して、アニメ音楽は経験済みだった。小野崎の創り出した詩情豊かなサウンドも本作の雰囲気を決定づける重要な要素である。
 本作の音楽商品としては、主題歌・副主題歌を収録したシングル盤2枚と小椋佳が書いた歌を集めたアルバム「マルコ・ポーロの冒険」がキティレコードから発売されている。アルバムは番組名と同じタイトルがつけられているものの、あくまで小椋佳の作品として発表された点がそれまでのアニメ音楽とは異なっていた。残念ながら劇中音楽は商品化されていない。
 ただ、BGMを聴くことができる商品はあった。本編音声を収録したドラマ編アルバムが2枚発売されていたのだ。こちらの発売元はキティレコードではなく日本コロムビア。内容はいくつかのエピソードを選んで構成したダイジェストで、メインライターを務めた金子満の構成によるもの。主題歌はオリジナルではなく、川津恒一が歌うカバーが収録されている。本編の視聴がかなわない現在、ドラマ編アルバムは『マルコ・ポーロの冒険』がどのような作品であったかを伝える貴重な資料である。名だたる声優陣が出演した作品だけに、音だけを聴いても楽しめる。カラー図番をふんだんに使ったインナーも見応えがある。CD化されていないのが惜しまれるアルバムである。
 小椋佳のアルバム「マルコ・ポーロの冒険」を紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. 大空から見れば
  2. 蒼き狼
  3. また旅仕度
  4. 誰でもいいから
  5. 望郷
  6. キシェラック ヤイラック
  7. マティオ・ニコロ そしてマルコ・ポーロ
  8. ひとすくいの水
  9. 大地は
  10. 黄金のパイザ
  11. いつの日か旅する者よ

 全曲の作詞・作曲・歌は小椋佳。編曲は小野崎孝輔と星勝が担当している。編曲にあたっては、ありきたりのオリエンタルな音作りではなく、なるべく現地の民族楽器などを使って本物のシルクロードの音楽に近づけるよう試みたという。
 ジャケットは砂漠を旅するラクダと旅人を遠景で描いたイラスト(写真を加工したものかも)。砂漠と空の広大さを強調したデザインで、アルバムタイトルは左上に目立たなく配されているだけだ。かろうじて、帯にある番組タイトルロゴと「NHK『マルコ・ポーロの冒険』主題歌・挿入歌作品集」の表記がアニメとのつながりを示している。
 11曲のうち、「キシェラック ヤイラック」「大地は」「黄金のパイザ」の3曲を除く8曲が主題歌または挿入歌として番組内で使用された(「ロマンアルバム・デラックス38 マルコ・ポーロの冒険」徳間書店、1980年による情報)。
 また、後期に流れたエンディング主題歌「それが夢ならば」は発表時期が遅かったのでこのアルバムには収録されていない(のちに小椋佳のシングル・コレクション・アルバムに収録された)。
 1曲目の「大空から見れば」はエンディングにたびたび使用された歌。本編でも流れている。ケーナがメロディを奏でるイントロが印象的。大地の上では小さな存在にすぎない人間たちが、汗を流し、新しい道を切り拓いていく姿を愛情と敬意を込めて歌った歌である。タイトルどおり「大空から」見た視点が本作のスケール感を伝えて、「アニメーション紀行」の名にふさわしい歌になっている。この曲は「いつの日か旅する者よ」と並ぶ主題歌候補のひとつだった。
 2曲目「蒼き狼」はモンゴル帝国の初代皇帝チンギス・カンをテーマにした歌。アップテンポのロック調の曲である。マルコが旅に出たときチンギス・カンはすでに没しており、これは伝説の英雄を歌ったイメージソングといった趣。リリカルな曲ばかりでなく、こういう曲も混じっていることが本アルバムの味わいを多彩にしている。
 3曲目「また旅仕度」もエンディングや本編でたびたび流れた印象深い曲だ。たどりついた地で旅装を解き、この地でくつろごうと思ったのも束の間、また旅へのあこがれが湧き上がる。淡々とした曲調で旅人の気持ちを歌ったじんわりと心に沁みる歌だ。当時、高校生だった筆者は、この曲を聴くとなんともいえない、いてもたってもいられないような気分になったことを思い出す。
 4曲目の「誰でもいいから」もエンディングなどで使用された曲。小椋佳がアフガニスタンを旅したとき、路上で自動車のタイヤがパンクし、どうしようもない疲労感と心細さに襲われた経験をもとに生まれた曲だった。中村雅俊が歌った「ただお前がいい」にも通じる、青春歌謡としても聴ける1曲。
 6曲目「キシェラック ヤイラック」はちょっと変わった歌だ。羊を追う羊飼いの姿を歌うほのぼのしたパートと、星光る幻想的な夜の情景を歌う叙情的なパートが交互に現れる。本編では流れなかったが、シルクロードのエキゾティズムを伝える、本アルバムの中でも秀逸な曲のひとつだと思う。
 マルコたちのキャラクターを歌う7曲目「マティオ・ニコロ そしてマルコ・ポーロ」はややユーモラスな雰囲気の軽快な曲。バリトンサックスを使った陽気なアレンジが効果を上げている。かけあいのようなコーラスも楽しい。まだ「テレビまんが主題歌」と呼ばれていた時代のアニメソングに寄せた印象もあり、「小椋佳ってこんな曲も書くんだ」と思った1曲である。
 10曲目「黄金のパイザ」は本作ならではの題材を取り上げた歌。黄金のパイザとは、シルクロードを旅する者の立場を保証するフビライ・ハーンの通行証のことだ。パイザのことを歌っているだけなのに、大元帝国のスケールと旅の緊張感が伝わってくる。これも本編では流れなかったが、印象に残る曲のひとつ。
 11曲目の「いつの日か旅する者よ」が本作のオープニング主題歌である。主題歌をアルバムの最後に配するのは、従来のアニメ音楽アルバムにはない発想だった。アーティストのアルバムならではの構成である(この発想は『伝説巨神イデオン』のサントラ1枚目に受け継がれている)。
 主題歌には、この曲と「大空から見れば」の2曲が候補として検討された。迷っている小椋佳とスタッフに、哲学的深さを持つ「いつの日か……」の方がオープニングにふさわしいと提言したのは小野崎孝輔だった。「大空から見れば」はエンディングに回されることになった。
 「いつの日か旅する者よ」は何度聴いても聴き飽きない、複雑な魅力を持った曲である。歌われているのは、旅への強い想い。旅人の見るイリュージョンを歌い込んだ詩はファンタジー小説の一節のようにも読める。「魔法使い」や「まぼろし」といった、ほかの歌にはないフレーズが登場するのが特徴だ。
 歌は3番まであり、オープニングには3番の歌詞が使われている。タイトルの「いつの日か旅する者」とは、いつか自分や先人が歩いた道をたどるであろう未来の旅人のこと。これから大人になっていく少年や若者たちに向けた言葉とも受け取れる。旅がそうであるように、人生もまた、誰かが歩いた道を歩き、新しい道に自ら踏み出していくものだ。そんな哲学的な感慨が歌詞からただよってくる。まさにオープニングにふさわしい、味わいの尽きない歌である。

 『マルコ・ポーロの冒険』の物語は、新しい土地とそこで出逢う人々に心を動かされ、成長していくマルコの視点から描かれる。これはマルコの青春の旅を描いた作品なのだ。そして、青春こそ、小椋佳がくり返し取り上げてきたテーマだった。小椋佳の歌はマルコの青春に寄り添う歌になった。だからこそ、若いアニメファンの心にも響き、作品の印象とともに、時を経ても長く愛聴される歌になったのだろう。アルバム「マルコ・ポーロの冒険」を自身の青春の思い出と重ねて聴くファンは筆者だけではないと思う。
 本アルバムは現在もCDが流通していて、手軽に入手して聴くことができる。本編の鑑賞はかなわないが、せめて歌だけでも聴いて、本作の雰囲気と、作品に込められた想いに触れてもらいたい。

マルコ・ポーロの冒険
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小椋佳 コンプリート・シングル・コレクション1977〜1988
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アニメ様の『タイトル未定』
157 アニメ様日記 2018年5月27日(日)~

2018年5月27日(日)
早朝に、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 103 岩浪音響監督ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! エクストリームブースト!!!」開催中の新文芸坐に戻る。『ガールズ&パンツァー 劇場版』の終盤を上映しているところだった。トークが20分押しで、休憩時間の調整もあり、予定よりも30分遅れで終了。その後は事務所でデスクワーク。午後に居酒屋でキーボードを叩いていたら、有線で「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」が流れてきた。

2018年5月28日(月)
デスクワークの日々。WOWOWでの放映を録画した『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』を流しつつ作業。これを観るのは劇場公開以来。時間泥棒(映画泥棒)のネタは、オンエアだとちょっと弱くなっているけど、意味が分からないわけではない。夕方から、事務所を卒業するスタッフの送別会。お疲れ様でした。ありがとう。

2018年5月29日(火)
デスクワークの日々。『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』を流しつつ作業。頭から観るのはかなり久しぶりで、楽しかった。『逆襲のシャア』のシャアも、若い頃はこんなにスマートだったんだなあ、と思ってしまって、自分で驚く。いや、逆だ。これからの2ヶ月くらい、今までの予定よりも自分の作業が増えそうだ。

2018年5月30日(水)
デスクワークの日々。『THE IDEON A CONTACT 接触 篇』『THE IDEON BE INVOKED 発動 篇』を流しつつ作業。これはながら観には向かなかった。その後に観た『わが青春のアルカディア』は面白かった。劇場公開時よりも楽しめた。多分、今までは誰に感情移入すればいいのか分からなかったのだろう。今回はトチローに感情移入して観た。そうしたら、人間関係やドラマの印象が随分と変わった。先週の金曜から体調が今ひとつなので、堺三保さん、早川優さんと、池袋西口の知音食堂という中華料理店で辛い料理を食べる。おかげで体調がよくなった。Amazonに「アニメスタイル013」の表紙がアップされる。

2018年5月31日(木)
デスクワークの日々。『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』を流しつつ作業。これもながら観には向かなかった。夕方は『機動戦士ガンダムF91』を再生。うわあ、尖っているなあ。ある意味、『逆シャア』より尖っている。そして、公開当時も思ったけれど、アニメーションとしてかなり大変なことをやろうとしている。そして、必ずしもやり切れていない。ちなみに過去の作品ばかり観ているのは、最新の作品は観るといろいろと考えてしまって、作業が捗らないからだ。

2018年6月1日(金)
デスクワークの日々。午前中は『からかい上手の高木さん』のサントラを聴きながら、午後はDVDで『人狼 JIN-ROH』を流しながら作業を進める。マスタリングのせいなのか、解像度のためなのか、DVDの『人狼 JIN-ROH』は今の目で観ると、映像が甘い感じなんだけど、今日はこの感じも悪くないと思った。
ネットで矢島晶子さんが『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけ役を降板することを知る。理由は「しんのすけの声を保ち続けることが難しくなり、キャラクターの声を作る作業に意識が集中して、役としての自然な表現がしづらくなった。」というものだ。長いことお疲れ様でした。

2018年6月2日(土)
デスクワークの日々。『ひそねとまそたん』最新3話を観る。『多田くんは恋をしない』最新3話も観る。あるアニメの本編カット(宣伝素材として抜き出したもの)を見て、カットとコマの選びの素晴らしさに感心する。まさしくプロの仕事。 「うおっ、このカットでこのコマを選ぶか」という感じ。

アニメ様の『タイトル未定』
156 アニメ様日記 2018年5月20日(日)~

2018年5月20日(日)
デスクワークの日々。Huluの【劇場公開記念】安室透特集を観ながら、作業をする。「命を賭けた恋愛中継」については大筋は覚えていたけど、最初と最後に安室が出ているのは忘れていた。

2018年5月21日(月)
デスクワークの日々。引き続き【劇場公開記念】安室透特集を観ながら、作業をする。本放映時にも思ったけれど「漆黒の特急」シリーズは作監修正がいいなあ。線がいい。

2018年5月22日(火)
デスクワークの日々。引き続き【劇場公開記念】安室透特集を観ながら、作業をする。まるで『名探偵コナン』ばかりを観ているようだけど、他のものも観ていますよ。仕事で使っているApple Magic Trackpadを新しいものにかえた。最近は1年ももたない。急いである作業をやることになり、先週『僕のヒーローアカデミア』を一気観しておいてよかった、と思った。

2018年5月23日(水)
デスクワークの日々。Huluの【劇場公開記念】安室透特集を全話観た。ほとんどの話が記憶にあった。実は安室関係で、見逃した話があるのではないかと思って、気になっていたのだ。まだHuluで配信していない話もあるのだけど、少なくとも『名探偵コナン 純黒の悪夢』公開以前のエピソードは確認できた。本放映時にも「緋色」シリーズで安室と沖矢が(本当は沖矢ではないのだが)顔を合わせたあたりで「あれ、大事な話を見逃しているのかな」と思って、知人に確認したのを思い出した。

2018年5月24日(木)
デスクワークの日々。『ひなまつり』を1話からまとめて観る。面白い。原作がどんな感じなのか気になる。

2018年5月25日(金)
珍しく体調がよくない。急に『風の大陸』を観る必要が生じ、検索してみるとDVD化はされていないらしい。さて、どうしようかと思ったら、dアニメストアで配信されていた。よかった。夕方から「高畑勲さんを偲ぶ会」に。アニドウらしい温かみのある催しだった。だけど、イベント中にまた体調が悪くなって、途中で退出させていただいた。

2018年5月26日(土)
午前中はデスクワーク。それから、オールナイトの予習で『BLAME!』『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』を観る。「アニメディア」の最新号が届く。表紙と巻頭特集が『名探偵コナン ゼロの執行人』のこの号は、店頭でもネットショップでも完売しており、買い逃していたのだ。僕のところに届いたのは刷り増し分のはず。まだ、パラパラとめくっただけだが『ゼロの執行人』のプロデューサー座談会が面白そうだ。
 夜は「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 103 岩浪音響監督ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! エクストリームブースト!!!」を開催。イベントのトークでも話題にしたのだが、実は昨年10月28日のオールナイトも『BLAME!』を上映するつもりで企画したのだった。今回のオールナイトで、それが実現した。ゲストの岩浪美和さん、『BLAME!』監督の瀬下寛之さん、副監督の吉平“Tady”直弘さん。このお三方は『BLAME!』公開時に何度も舞台挨拶をされていたそうで、今回のトークもスムーズに進行。僕はほとんど何もしないですんだ。ただ、ノリのよいトークを途中で止めることができず、20分オーバーしてしまった。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 104
東映長編の名作

 2018年6月30日(土)に開催するオールナイトは「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 104 東映長編の名作」だ。東映動画(現・東映アニメーション)の初期長編アニメーションから、名作中の名作をお届けする。いずれもアニメファンなら観ておきたい作品だ。
 『わんぱく王子の大蛇退治』(1963)はアニメーター各人のアイデアを集めたバラエティに富む映像構成、伊福部昭の重厚な音楽と、見どころ多い作品。大塚康生と月岡貞夫が腕を振るったクライマックスは語りぐさになっている。
 『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968)は高畑勲、大塚康生、宮崎駿らの若きの仕事であり、鮮烈な表現が素晴らしい。アニメーション表現史におけるエポックとなった作品だ。『長靴をはいた猫』(1969)と『どうぶつ宝島』(1971) は明朗まんが映画。森やすじ、宮崎駿といったアニメーター達の仕事も楽しんでいただきたい。
 今回の作品は全て35ミリフィルムによる上映となる。なお、『わんぱく王子の大蛇退治』のフィルムは国立映画アーカイブの提供によるものだ。

 上映前のトークは映像研究家で、高畑勲・宮崎駿作品研究所代表の叶精二。上映作品について解説をしていただく。聞き手はアニメスタイル編集長の小黒祐一郎が務める。前売り券は6月2日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 104
東映長編の名作

開催日

2018年6月30日(土)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

叶精二、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『わんぱく王子の大蛇退治』(1963/86分)
『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968/82分)
『長靴をはいた猫』(1969/80分)
『どうぶつ宝島』(1971/89分)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第563回 OVA大好き!

 ちょっと前になりますが、金月龍之介さん(『ユリシーズ〜ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』のシリーズ構成・脚本)より、

「OVA(オリジナルビデオアニメ)80′S〜テープがヘッドに絡まる前に〜」
という本をいただきました! この場を借りてお礼申し上げます、ありがとうございました!

 80年代後半から90年代初頭、自分はレンタルビデオ屋に足しげく通ってOVAを借りまくりで、おそらくTVアニメよりよく観てたと思います。OVAにハマった要因は、もちろんその時期の出崎統監督作品のメインがOVAだったからで、『エースをねらえ!2』『エースをねらえ! ファイナルステージ』『1ポンドの幸福』『華星夜曲』『B.B』『修羅之介斬魔劍』『創竜伝』、もう夢中で観ました。『BLACK JACK』は正確にはOVAバブル期からは外れてて、もう東京に出てきてからコツコツお金をためてソフトを買って観てたもので、「夢中で」ってのとちょっと違うかも。
 で、話をOVAバブルの頃に戻しましょう。特に「出崎作品以外は観ない」と決めていたわけではなく、あらゆるジャンルを観ました。『妖獣都市』『魔界都市〈新宿〉』などのハードボイルドな川尻善昭監督作品、杉井ギサブロー監督による『タッチ』っぽい『のぞみウィッチィズ』とか、もちろん『機動警察パトレイバー』やその他『イクサー1』などの美少女(?)ものも。あ、あと出崎哲監督&マジックバス制作の『哭きの竜』『力王』『マッドブル34』なども楽しく観ました。『To-y』『迷宮物件』『江口寿史のなんとかなるでショ!』、挙げたらキリがないし、順番バラバラ。レンタル屋にブラ〜っと入って、気軽に手に取って借りて、自宅で菓子食いながら観る幸せ。ただ当たりハズレも大きく、酷いヤツはホントに酷い! でもその時代は当然セルでアナログ撮影だし、一説によると最ピーク時は年間200本以上出てたって話を聞いたことがあります。だからこそ有象無象入り乱れる中、アニメのピンキリが5〜6年にギュッと凝縮されたOVA作品を色々と観て、そして考えさせられたんです。「なぜこんなダメな作品が世に出たのか? これとジブリ映画の差はなんだろう?」と。数年後アニメ業界に入って、周りの先輩方に「なぜ?」と訊いてみました。理由は様々で、白黒ハッキリはしないのが常。今思うとそれは当たり前で、予算・スケジュール・人手、条件はまちまち、すべてがグチャグチャ。学生時代の、宮崎さんがどーした、高畑さんはああ言ったことだの、「俺はやっぱ押井さんみたいになるのかな〜」「俺がコンテ切ると自然と庵野さんアングルに」とかのプロごっことは訳が違うんです! 今書き出しただけでも恥ずかしい作家気取りの議論の数々なぞ、本当に役に立たない問答無用の世界、

作ってから文句を言え!

これが業界に入った時に感じたことでした。ちなみに俺自身は、宮崎・高畑・押井だ〜な議論には参加しましたが、自分をその巨匠方と重ねるようなみっともないマネは決してしませんでした。当時からその辺は分をわきまえてましたから。
 板垣が他者様作品を公で批評だ論評だしないのも、そこらが理由です。別に「言い返されたら怖い」とか「委員会に怒られるから」ではなく、はたまた謙遜などでもさらさらなく、ただただ、

自分にはまだその資格がない!

からに他なりません。本当に世の中の人が喜ぶ作品を作り上げられたなら、ほっといても周りから「○○について板垣さんはどう思います?」と感想を求められるでしょう。そうなってないってことは、当たり前の話「誰も板垣の感想・批評など知りたくない」わけですから、無理矢理ブログやTwitterでクダ巻いてもしょうがないと。それよりも作るのが先! じゃ、仕事に戻ります!

第132回 メガロポリスの妖怪 〜ゲゲゲの鬼太郎[第3期]〜

 腹巻猫です。6月10日(日)サントラDJイベントSoundtrack Pub【Mission#35】を開催します。特集は、80年代アニメサントラ群雄割拠時代〜キャニオン編(前編)と追悼〜井上堯之・木下忠司・東海林修。詳細は下記URLからどうぞ。

http://www.soundtrackpub.com/event/2018/06/20180610.html


 放映中のTVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎[第6期]』が好評だ。音楽は高梨康治と刃 -yaiba-が担当している。『ゲゲゲの鬼太郎』の音楽は、本連載でも第1・2期のいずみたく版、第4期の和田薫版を紹介してきた。今回は第3期の川崎真弘の音楽を紹介したい。「どれだけ鬼太郎好きなんだ?」と言われそうだが、昭和40年代の「少年マガジン」連載時から愛読していた筆者にとって、妖怪は怪獣と並ぶ少年時代の心の友なのだから仕方ない。
 『ゲゲゲの鬼太郎[第3期]』は、1985年10月から1988年2月まで全108話が放送された。歴代アニメ版鬼太郎の中でも視聴率トップを誇る人気作である。過去2作のアニメ版と比べると、絵柄はポップになり、ユメコちゃんという人間の少女がレギュラー入りして鬼太郎と人間の距離が近づいた。人間に味方するヒーロー的な鬼太郎像や鬼太郎ファミリーも本作から定着している。80年代という時代を反映した現代的な鬼太郎だった。
 その現代感覚は音楽にも表れている。いずみたくのおなじみのメロディを吉幾三が歌った主題歌は、マイケル・ジャクソン「スリラー」風のリズムとシンセの響きが印象的なポップス調アレンジ。レーザー光のような光が飛びかうオープニング映像も80年代的だ。劇中音楽は竜童組のキーボーディストとして活躍した川崎真弘が手がけた。

 川崎真弘は1949年、福岡県出身。小さい頃からの愛称はラッキー。成長し、プロのミュージシャンになってからも仲間からそう呼ばれた。少年時代は映画音楽やアメリカン・ポップスなどを聴きまくる。小学生の頃からクラシックギターを弾いていたが、ビートルズに出会い、中学生時代はエレキギターを手にバンド活動に明け暮れた。ピアノは習ったことがなく、本人によれば「バイエルも弾いたことがない」。子供の頃から学校の音楽室に忍び込んでピアノで遊んでいるうちに弾けるようになったのだという。
 70年代は、イエロー、カルメン・マキ&OZ、金子マリ&バックスバニー等のグループや数々のセッションで、ハモンドオルガンを得意とするキーボード奏者として活動。小室等バンドでは、多くの劇場作品やドラマの音楽録音に参加し、刺激を受けた。1984年、宇崎竜童の呼びかけで竜童組の結成に参加。6年間にわたって、日本各地や海外を公演で回った。
 1990年に竜童組が活動停止してからは作曲家としての活動に重点を移し、数々のドラマ・映画音楽を手がける。1995年公開の松竹作品「RAMPO」と2000年公開の角川作品「金融腐蝕列島 呪縛」で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。代表作はほかに「ドン松五郎の生活」(1986/朝川朋之と共作)、「子連れ狼 その小さき手に」(1993)、「KAMIKAZE TAXI」(1995)、朝の連続テレビ小説「まんてん」(2002)、ドキュメンタリー「グレートジャーニー」(1995〜2002)など。アニメでは『天上編 宇宙皇子』(1990)、『おちゃめなふたご クレア学院物語』(1991)、『ご近所物語』(1995)、『ひみつのアッコちゃん[第3作]』(1998)、『あした元気にな〜れ! 半分のさつまいも』(2005)などの音楽を手がけている。富野由悠季原作によるラジオドラマ「ガイア・ギア」(1992)の音楽も担当した。
 『ゲゲゲの鬼太郎[第3期]』は川崎真弘がまだ竜童組で活動中に手がけた作品。クレジットでは「川崎真弘(from 竜童組)」と表記されている。もともと竜童組は劇場『カムイの剣』(1985)の音楽を宇崎竜童と林英哲が担当した際に集まったミュージシャンが母体となって結成されたバンド。その林英哲が本作の音楽に和太鼓奏者として参加している。
 川崎真弘版鬼太郎音楽の大きな特徴は、シンセサイザーが大きくフィーチャーされていることだ。すでに『うる星やつら』(1981-1986)や『1000年女王』(1982)、『GALACTIC PATROL レンズマン』(1984)などでシンセ色の濃いアニメサントラは登場していた。しかし、シンセ=SFというイメージが強く、本作の妖怪ものとシンセを組み合わせる感覚は斬新だ。とはいえ、古来、映画音楽では妖怪などの怪異表現にテルミンやクラビオリン、ミュージカルソーといった特殊楽器を用いて、この世のものならぬ存在を描いてきた歴史がある。それがシンセサイザーという新しい楽器に代わったと考えれば、シンセと妖怪の結びつきも意外なものではない。実際、1979年に森下登喜彦が妖怪をシンセサイザーで表現したアルバム「水木しげる 妖怪幻想」を発表している。が、本作の場合はむしろ、妖怪が現れる80年代の日本を表現するのにシンセサウンドが不可欠だった、と考えた方がよいだろう。

 本作のサウンドトラック・アルバムは徳間ジャパンのアニメージュレーベルから発売された。1985年5月に「ゲゲゲの鬼太郎 音楽編 VOL.1」が、1986年7月に「ゲゲゲの鬼太郎 音楽編 VOL.2」がリリースされ、2枚のアルバムでTVシリーズの音楽はほぼ網羅されている。ほかに劇場版2作の音楽を集めた「ゲゲゲの鬼太郎 映画音楽編 VOL.3」が1986年8月に、出演声優たちが歌うキャラクターソング・アルバム「燃えろ!鬼太郎」が1986年3月に発売されている。
 1枚目の音楽集から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. ゲゲゲの鬼太郎(歌:吉幾三)
  2. メガロポリス
  3. 闇のとばりの影
  4. 鬼太郎のテーマ
  5. 仲間たち—父親とユメコ—
  6. 妖怪出現〜鬼太郎笛
  7. 冥府をゆるがす戦い
  8. ムーンライト・ドリーム
  9. ゲゲゲの鬼太郎(インストゥルメンタル)
  10. 妖怪の里
  11. ねずみ男のテーマ
  12. ロンリー・ナイト
  13. 魔界からの敵
  14. 決勝〜勝利
  15. おばけがイクゾ〜(歌:吉幾三)

 1曲目と15曲目がオープニング&エンディング主題歌。レコード盤では8曲目までがA面、9曲目からB面になる。
 A面、B面とも鬼太郎対妖怪の戦いをクライマックスに置いた構成。特撮ヒーローもののサントラのようなツボを心得た構成がうれしい。解説は特撮作品のサントラ構成・解説を多く手がける浅井和康が担当している。「メガロポリス」「ムーンライト・ドリーム」など横文字の曲名が現れるのが80年代鬼太郎らしいところである。
 特筆すべきはアルバムジャケットである。水木しげるによるジャケットイラストは、鬼太郎と妖怪たちが不気味な雲がたなびく墓場の上を飛んでいる、おどろおどろしさとユーモアが入り混じったインパクト抜群の絵柄。CDの小さいジャケットではそのインパクトは伝わりにくいが、LPレコードの30センチ角サイズで見るとアニメ版とは大きく印象の異なる迫力満点の絵に圧倒される。このジャケットのためだけでもLPレコードを手に入れたくなる。
 BGM1曲目は「メガロポリス」。8ビートを刻むギターのリズムにシンセのメロディが乗るテクノポップ風の曲から始まる。第1話冒頭の高層ビルが立ち並ぶ大都会の情景とも呼応する、80年代鬼太郎を象徴するサウンドである。2曲目はエレキギターがもの憂いメロディを奏でる4ビートのブルージーな曲。大都会の退廃的な面が表現される。エレキギター演奏は『鉄人28号』(1980)のレコーディングにも参加している土方隆行。
 次の「闇のとばりの影」は都会の闇に潜む影を描くトラック。1曲目は笛の音と効果音風のシンセサウンドが絡み合って怪異を描写する。シンセサイザーを駆使した妖気表現が新しい。フルート演奏は川崎真弘作品の常連・西沢幸彦。2曲目は不気味なシンセのリズムにシンセブラスの緊迫したフレーズが絡むサスペンス曲。妖怪あらわる!という雰囲気が盛り上がる。
 トラック4「鬼太郎のテーマ」でいよいよ鬼太郎登場である。ドラムとエレキギター、和太鼓が共演するロックのリズムが超絶カッコいい。和太鼓はすでに紹介したとおり、林英哲。ドラムスは渡嘉敷祐一。この曲は主題歌のメロディを使わない鬼太郎のテーマで、哀愁を帯びたヒロイックな旋律は「鬼太郎にはカッコよすぎるんでは?」と思ってしまうほど。川崎真弘は『ひみつのアッコちゃん』でも「アッコちゃんにはカッコよすぎ!?」の曲を書いている。竜童組の血のなせるわざだろうか。前半はシンセが、後半は笛の音が川崎真弘版鬼太郎のテーマを演奏する。現代的な電子楽器と日本古来の伝統楽器との融合が新しい鬼太郎にぴったりだ。
 トラック5「仲間たち—父親とユメコ—」は鬼太郎の父・目玉おやじのほのぼのしたテーマとリリカルなユメコのテーマのメドレー。わらべ歌風の目玉おやじのテーマは鬼太郎の土俗的世界を象徴するものだ。中盤からの美しい展開が目玉おやじには不似合いなくらいぐっとくる。2曲目のユメコのテーマは透明感のあるシンセの音色が奏でる3拍子の愛らしい曲。メリーゴーランドの音楽のようなドリーミィな雰囲気がユメコのイメージに合っている。
 何かが近づいてくるような不気味な描写から始まる「妖怪出現〜鬼太郎笛」は、妖怪出現と危機の到来を表現するトラック。1曲目、2曲目と重苦しい雰囲気が続いて緊張感が高まる。最後に鬼太郎の笛が響き、仲間たちに危機を伝える。
 トラック7「冥府をゆるがす戦い」は出陣のテーマから始まる。ボレロのリズムにシンセのメロディが重なり、鬼太郎たちの決意を表現する。2曲目は三味線風のギターのカッティングが印象的な戦いのテーマ。シンセやエレキ楽器をメインにしながら、随所に和の雰囲気を忍ばせているのが川崎真弘版鬼太郎音楽の特徴である。
 レコードのA面を締めくくるのは、戦いのあとの平和を描くトラック8「ムーンライト・ドリーム」。1曲目はエレピをバックにシンセがやすらぎの旋律を奏でる都会ムード満点の曲。夜景の見えるレストランのBGMなどにぴったりの曲調で、これも80年代鬼太郎らしい曲のひとつ。2曲目はトラック4に登場した川崎真弘版鬼太郎のテーマのアレンジ。人知れずゲゲゲの森に帰っていく鬼太郎のイメージだ。
 レコードB面の頭には、いずみたくが作曲した主題歌のアレンジ曲が収録されている。シンセのメロディにジャジーなピアノが絡む1曲目。主題歌のメロディをピアノがしっとりと奏でる2曲目。おなじみの主題歌がおしゃれな曲に生まれ変わっていて驚嘆する。川崎真弘のアレンジセンスが生かされたトラックである。
 トラック10「妖怪の里」では、短い怪異描写に続いて、わらべ歌風の妖怪のテーマが登場する。和太鼓をバックに奏でられるノスタルジックなメロディは、トラック5の目玉おやじのテーマと共通する雰囲気。郷愁をかき立てられる曲調だが、ファンタジックなシンセの音色がこの世ならぬ妖怪の里を描き出している。サウンドデザインにも注目したい曲である。
 トラック11は「ねずみ男のテーマ」。第3期のねずみ男は富山敬の軽妙な演技が印象的だった。この曲では、ギターとバイオリンによる妖しいメロディが、ねずみ男の悪だくみを表現する。アニメのコミカルなイメージよりも大人びた雰囲気になっているのがポイントで、曲だけ聴くと美形悪役のテーマのようだ。ストリングスアレンジはハープ奏者で作曲家の朝川朋之。彼も竜童組に参加していたひとりである。
 トラック12「ロンリー・ナイト」は、ピアノとアコースティックギターが奏でる哀しみの曲。川崎真弘版鬼太郎のテーマのアレンジ曲である。中間部からバイオリンが加わり、哀感を盛り上げる。妖怪や人間たちの孤独を表すテーマだ。アコースティックギターは川崎真弘作品の常連のひとり佐久間純平(順平)。
 トラック13「魔界からの敵」は怪異ムードを盛り上げる妖怪出現のテーマである。「妖怪の里」に登場したわらべ歌風の妖怪のテーマがシンセサイザーによって怪しく変奏される。
 続くトラック14「決勝〜勝利」では、ファンファーレが戦いの始まりを告げ、鬼太郎と妖怪の戦いをダイナミックに描き出す。エレキギター、エレピ、シンセなどによる激闘の曲を経て、ヴァイオリンとエレキギターが美しいメロディを奏でる平和音楽へ。BGMパートのラストを飾るのは、都会的な哀愁と希望を感じさせる曲だ。これも「鬼太郎にはおしゃれすぎ」と言いたくなるような曲。

 川崎真弘版鬼太郎音楽をひとことで言うと「カッコいい」。第1・2期のいずみたくの音楽とははっきりと違う方向性を示すサウンドだ。そのサウンドは、土俗的な妖怪譚に現代的な色づけをする重要な役割を果たしている。第4期や第6期が原点回帰的な色合いを出しているのとは対照的である。歴代アニメ版鬼太郎の中でも第3期がひときわ個性的な輝きを放っているのは、音楽の印象によるところも大きいのだ。
 鬼太郎のイメージを一新する音楽を提供した川崎真弘は、2006年5月4日に56歳の若さで逝去した。まだまだこれからという若さでの死は残念でならない。

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アニメ様の『タイトル未定』
155 アニメ様日記 2018年5月13日(日)~

2018年5月13日(日)
ネット配信で『ゲゲゲの鬼太郎[第6期]』を、改めて1話から5話まで観る。その後、オンエアで7話「幽霊電車」を観る。かなり出来がいい。ブラック企業や学生のいじめなどを採り入れており、今風になっているし、ちゃんと怖い。ビジュアルにも力がある。昼から吉松さんと『宇宙よりも遠い場所』と縁のある居酒屋で打ち合わせ。「アニメスタイル013」のこととか、『宇宙よりも遠い場所』のこととか。

2018年5月14日(月)
11時から阿佐ヶ谷方面で打ち合わせ。13時から事務所で打ち合わせ3本立て。17時半から新文芸坐で打ち合わせ。朝から『メガロボクス』を1話から観る。放映が始まった時から思っているのだが、設定がまるで違うのに、かなり『あしたのジョー』っぽい。それが面白い。午後は昨日の「仮面ライダービルド」「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』の録画を再生しながら作業をする。月曜の午後に、ニチアサや日曜の顔ともいえる番組を観るのはなんだか新鮮だった。僕の場合は、ライダーと戦隊は平日昼間に観たほうが印象がいいかもしれない。

2018年5月15日(火)
午前中に「高畑勲 お別れの会」に。前にコラムに書いたけれど、僕は『火垂るの墓』の制作時に鈴木敏夫さんに「制作進行をやらないか」と言われたことがある。僕は高畑勲さんには取材をする機会もなかったが、もしも、あの時に制作進行をやっていたら、色々とお話をうかがうこともあったのだろうな。そう思った。

2018年5月16日(水)
ひたすら、「アニメスタイル013」の素材の整理、ページ構成、スケジュールの確認。それから、『僕のヒーローアカデミア』の1期を観る。

2018年5月17日(木)
今度は『僕のヒーローアカデミア』2期の前半を観る。23話「轟焦凍:オリジン」は本放映時にも観たけれど、1話から順に観ていって、この話を視聴したほうが感動するな。試写会で『ニンジャバットマン』を鑑賞。アメリカではネット配信がメインの作品だそうだが、ネット配信がメインのものとしては100点満点の仕上がりだと思う。イケイケな内容については、中島かずきさんのカラーが濃いのだろう。3DCGのキャラクターの造型、動かし方もよかった。作画マニア的にコメントしたいところもあるのだが、公開までは触れてはいけないらしいので、それについてはまた改めて。今までショートアニメを中心に活躍してきた神風動画が、2018年に『ポプテピピック』と『ニンジャバットマン』を世に送り出した。どちらもパンチが効いた作品だった。今後の作品にも期待したい。

2018年5月18日(金)
『僕のヒーローアカデミア』2期後半を観る。それ以外はとにかく仕事。観に行きたかった映画に行きそびれる。年に20回くらい思うのだけど、もう少し仕事が早ければ、もっと映画館で映画が観られるんだけどなあ。印刷会社から、これから作る原画集の束見本が届く。今回は紙を変えて3バージョン。束見本ができあがると「夏が近い」と思う。
映画に行けなかったとか書いているくせに、「だがしかし」の原作最終巻がKindleで配信された途端に読んでしまう。僕の予想とは随分違った最終回だった。最終回では、誰かと誰かの別れが描かれるだろうと思っていたのだ。モラトリアムの終わりが描かれるのだろうと思っていた。そうではなかったけれど、ファンの気持ちにそった最終回になっているのだろうと思う。ちなみにハジメちゃんが好きでした。

2018年5月19日(土)
ネット配信で『ゲゲゲの鬼太郎[第6期]』の6話「厄運のすねこすり」を観る。これは力作。「ザ・東映」という感じ。観てから気がついたけど、この話数は放映された時にSNSで話題になっていた。自分の意志と関係なく、人間の気力を奪い取っていまう妖怪すねこすりのシロと、彼を可愛がっている老婆マサエ、そして、マサエの息子である翔の物語。悲劇的な内容であるのだけれど、むしろ、互いを思いやる気持ちを描いているのがいい。脚本も演出もいい。作画もいい。話の構成については、余分な段取りを端折って、観せたいところをたっぷり描いているところがいい。ラストシーンで、鬼太郎が無言で山を観るカットもいい。脚本は井上亜樹子、演出は古賀豪、作画監督は小泉昇。なお、テロップでクレジットされた原画マンは小泉昇と泉恭子の二人のみ。

第562回 絵コンテマラソン!


 今回は他所様の会社での仕事なので、久々に紙のコンテ用紙に鉛筆で描いてます。スピードはデジタル(Storyboard Pro)と大差ありません。ま、週1本ペース、1話1話物語を追っていく作業は楽しい限り。そして各話のレイアウト監督チェックも始まり、多少ペースが乱れつつありますが、なんとか駆け抜けないと! 何せ、6月中に自社(ミルパンセ)のシリーズのコンテ第1話を上げなきゃならないのです(7月1日に作画IN、2019年春新番予定)。
 でも、このコンテ地獄な時に限って、サイドメニューのお絵描き仕事が飛び込んでくるのが常。先々週は「アニメディア」、先週は「アニメージュ」のそれぞれの読者プレゼント用サイン色紙2〜3枚ずつ。で、今週は『WUG! 新章』BDジャケットラフ(あとは未夕と夏夜)。さらに後輩がこぼした某バ○ボンの原画も、責任上やらなきゃならなくなってしまい……死なない程度に頑張ります(汗)! 以上毎度お馴染みお茶濁し的状況報告終わり。

154 アニメ様日記 2018年5月6日(日)~

2018年5月6日(日)
マチアソビ最終日。ブースを見て歩き、ロープウェイで眉山に登ったり。昼に食事をしながらの打ち合わせがあった。なんと、4月15日(日)に京都でやった打ち合わせの続きである。京都の続きが徳島だったのだ。夕方、食事をするためにホテルを出ようとしたら、エレベーターの前で知り合いの方達に出会い、入った居酒屋では隣の席に座っていたのが、仕事でお世話になったことのある方だった。マチアソビでは業界の方によく会うと聞いていたけど、本当だなあ。
 僕はマチアソビは初めてだった。エネルギーに満ちたイベントだ。それから、徳島がいいところで食べ物が美味しいのもよくわかった。

2018年5月7日(月)
徳島から東京に戻る。空港でも業界の方達と出逢った。そのうちの1人は10数年ぶりだった。徳島の空港の売店で、東京で買い損なっていた「少年サンデー」の最新号を見つける。綴じ込みで『名探偵コナン ゼロの執行人』のミニブック「ゼロの書」が着いている号だ。喜んで購入する。
 取材の予習で『ノーゲーム・ノーライフ』を観る。シリーズ前半を徳島のホテルで、後半を東京で観た。

2018年5月8日(火)
取材の予習でひたすらアニメを観る。『プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ』、『青い文学シリーズ』の「蜘蛛の糸」と「地獄変」、『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』。それからショートアニメ。『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』はよくできている。力作だ。

2018年5月9日(水)
昼までに『SUPERNATURAL: THE ANIMATION』のいしづかあつこ監督回を全話観る。念のために説明しておくと、『SUPERNATURAL: THE ANIMATION』は、シリーズ中に宮繁之監督回といしづか監督回があるのだ。イベントで吉松さんも言っていたけど、いしづか監督回には傑作が何本もある。その後、『宇宙よりも遠い場所』1話、2話を改めて観る。後の展開を知っていると、めぐっちゃんのひとことひとことがグッとくる。
 午後から「この人に話を聞きたい」の、いしづかあつこさんの取材。たっぶり予習したかいがあった。僕がいしづかさんに取材したのは、多分、14年ぶり。

2018年5月10日(木)
「Animage」の2018年6月号(vol.480)が届く。「この人に話を聞きたい」第百九十八回は佐藤卓哉さん。「設定資料FILE」vol.234は『ルパン三世 PART5』。今回の「この人」は自分にとって達成感のある記事となった。自分が関連していない記事で言うと、巻頭に高畑勲さんの追悼特集がある。まだきちんと目を通してはいないが、しっかりした作りの記事のようだ。リスト制作委員会が執筆を担当しているらしい。
 池袋HUMAXシネマズで『さよならの朝に約束の花をかざろう』を観る。試写会を含めると、スクリーンでの鑑賞は3回目だった。今まででいちばん楽しむことができた。そして、アニメーションとして、凄まじい仕上がりであることを再確認した。お話についても、ちょっと気づいたことがあった。最初にマキアが「跳ぶことができない少女」であり、レイリアは「跳べる少女」であることが提示される。普通なら、跳べなかったマキアが跳べる話になりそうだけど、マキアが跳べないなりの人生を歩んでいく。そういうところも面白いと思った。

2018年5月11日(金)
ゴールデンウィーク前からやっていたテキスト作業の大詰め。事務所スタッフに目を通してもらって、チェックに出す。

2018年5月12日(土)
「パシフィック・リム:アップライジング」をようやく観る。先に「レディ・プレイヤー1」を観たせいで、白いロボット像が出てきたところで「まさか、これに乗り換えるのか」と思ってしまった。「パシフィック・リム」の第1作公開時には「ロボットアニメの基準が変わった。今後はこれを目標にしなくてはいけないのか」と思ったのだが、今回はそういった危機感はなかった。と書くとビジュアルの出来が悪かったようだが、決してそんなことはなく、映像だけで入場料を払ってもOKなくらいの質とボリュームだった。