佐藤順一の昔から今まで (2)大学時代のマンガと自主制作アニメ

小黒 大学は日本大学藝術学部映画学科でしたよね。日大のこの学科を選ばれた理由は?

佐藤 進路を考える頃には「アニメをやろう」と思ってたんです。今までも取材で何度か言ってるんですけど、高校の時に、昭和38年から40年ぐらいまでの白黒アニメーションのオープニングだけを流すような特番があったんですよ。

小黒 以前のインタビューでも話題に出していましたね。TBS系列でやっていた「日曜☆特バン」という番組だと思います。

佐藤 ああ、そうかもしれない。

小黒 「日曜☆特バン」は懐かしのアニメや特撮番組を何度か特集しているようです。そのうちのひとつがオープニングの特集だったのでしょうね。

佐藤 そうだったんだろうね。『8マン』(TV・1963年)とか『鉄人28号』(TV・1963年)のオープニングが心に残ってて、凄くかっこいいと思ってたんですけど、特番で実際に見返すとかなりしょぼいわけですよ。でも、それを観ていると、じわじわと心に盛り上がってくる感情があったんです。それはどういうことかと考えて、どうやら自分が価値観や正義感といった人生の基本となるものをアニメからもらってたんだということに気づいたんです。意識しないでそういうものを得て、自分の中に残っていた。そういうことができるアニメというのは凄いメディアだなと感じたんですよ。それで「あっ、これやってみたい」と思ったのがきっかけなんですね。

小黒 その頃、アニメーションの専門学校が既にあると思うんですけど、日大の藝術学部映画学科に行ったのは、どうしてなんでしょうか。

佐藤 親が「行くんだったら、大学行け」と言っていたというのもあったんですけど、いくつか受けた中で、日芸が一番ちゃんとアニメーションの勉強ができそうだったというのが大きいですね。武蔵美(武蔵野美術大学)にも、撮影台があるって話を聞いたんですけど、授業のカリキュラムが整っていたのが、日大の藝術学部だったんですね。

小黒 そこに池田宏さんがいらっしゃったんですね。

佐藤 はい。それに、自分が大学に入ったその年から月岡貞夫さんが講師を始めておられたりと、そういう意味ではついてるんです。

小黒 映画学科だから、アニメだけじゃなくて、映画の勉強もしてるんですよね。

佐藤 そうです。映画学科の映像コースのさらに分科としてアニメーションがあったんですよね。僕は映画マニアだったわけではないし、観た本数も多くなかったので、そこで映画について凄く勉強できたのは、かなりプラスになってますよね。

小黒 なるほど。

佐藤 そこに行ってなければ、モンタージュ理論なんて、おそらく言葉として聞くこともなかったと思いますしね。

小黒 同級の方で今でも業界で仕事をされている方はいらっしゃいますか。

佐藤 『(それいけ!)アンパンマン』(劇場・TV)等をやってる矢野博之。彼が同期で同じクラスです。東映で製作をやっていた堀川(和政)も同期ですが、業界に残ってるのはそのぐらいですかねえ。

小黒 大学では具体的にどんな勉強をされたんでしょうか。

佐藤 池田さんの授業というのはやっぱりアカデミックで、さっきの「TVアニメ1本をそのまま絵コンテに起こしてこい」というのも池田さんの課題なんですよね。池田先生は分析的、理論的で、モンタージュ等も教わりました。月岡先生は実習で、何か画を描く、動かすような課題が多くて、東映時代の裏話とかも面白かったですね(笑)。

小黒 日芸時代は短編を作られているんですか。

佐藤 短編はアニドウのフィルムフェスティバルだったか、ぴあフィルムフェスティバルだったかで、8mmの映画を1本作りましたね(編注:「ぴあアニメーション・サマーフェス」に出品。後にアニドウの「プライベート・アニメフェス」でも上映)。たまに話題になりますけど『凍った夜』という、子供が親を殺すやつです。

小黒 タイトルは聞いたことがあります。

佐藤 大学のカリキュラムじゃなく、応募しようと思って作ったやつです。それ以外にも作っていますが、あまり手元に残ってないですね。どこにあるか分からないというか。

小黒 『凍った夜』は「アニメージュ」でも載っていましたよね。どんな内容なんですか。

佐藤 佐藤順一特集みたいな記事をやってもらった時に載ったと思います(1994年4月号)。幼児が鳥を拾ってくるんですけど、母親に見せたらその鳥を踏みつけて殺してしまうんですよね。母親が「そんなことより、他にやることがあるでしょ」といった感じで教科書とかを積み上げるんです。その子はしばらくして、ものも言わずにカッターナイフで母親を後ろから斬りつける。そしてそこだけフルアニメーションで、母親が血を吹き出しながら昏倒する。母親の顔が餓鬼のような表情にグワーッと変わっていってドンっと倒れるんです。少年が命を奪うことの恐ろしさみたいなものをビジュアルで体験するという内容です。

小黒 なるほど。その作品で佐藤さんは監督なんですか。

佐藤 全部自分でやっています。画も描いてますね。セルじゃなくて切り紙でやってます。

小黒 フルアニメーションということは、作画で動かしてるところもあるんですね。

佐藤 吹き出す血だけセルを使って、あとは紙で作っています。割り箸アニメみたいな感じですね。

小黒 止め画を組み合わせるような?

佐藤 ええ。組み合わせて、動かして、みたいなやつですね。

小黒 どうしてそういった刺激の強いものを作ったんですか。

佐藤 元々は「短編ってどういうものだろう」ということに興味があったと思うんです。刹那的に面白いものではなく、「100人観たら100人全員に何かが伝わるのはどういうものなんだろう?」といったことを考えていたんです。だから理屈っぽいんだけれども「観た人に言いたいことがちゃんと伝わるものを作ろう」という考えがあったと思いますね。「生命に対する意識が希薄になっている子供達がいるのではないか」と思うような事件が、当時あったんじゃないのかなと思います。

小黒 なるほど。

佐藤 それで「命を奪った時の怖さ」がビジュアルにならないかなと思ってやった記憶があります。だからカットが凄く説明っぽいです(苦笑)。こういうことがありまして、それがこうなりまして、みたいな繋ぎで。今もそういう説明したがるようなところがありますけど(笑)。

小黒 分かりやすくする?

佐藤 そうそう。なるべくちゃんと伝えておこうみたいな。

小黒 なるほど。大学の3年間はずっと真面目に勉強や課題をこなし、アニメーションを作ったりしていたわけですか。

佐藤 そうですね。授業は普通に受けていました。映画学科の授業は面白いんですよ。映像コースは、ビデオでの撮影や編集の授業もあったりして。週に1回映画鑑賞をしよう、というのがあって、大講堂で映画を観せてくれるんですね。それを批評しなきゃいけないんですけど、多分、自分からは観ないような映画を沢山観せられたんですよ。あれはねえ、やっぱりよかったですね。

小黒 芸術的な映画が多かったんですか。

佐藤 芸術的な映画もあるし、「祭りの準備」(1975年/黒木和雄監督)みたいなものもありましたね。

小黒 ATG(日本アート・シアター・ギルド)の映画ですね。

佐藤 「切腹」(1962年/小林正樹監督)とかも観ましたよ。ヴィットリオ・デ・シーカ監督の作品とか、自分だったら絶対観ない映画を観せてもらえて、面白かったです。

小黒 大学在学中にマンガも描かれたんですよね?

佐藤 そうですね。そこそこ時間もあったので「ちょっと応募しようかな」と、小学館の新人マンガ家募集に向けてちょっと描いたのが、最初で最後ぐらいのマンガですね。

小黒 それは何歳の時なんですか。

佐藤 忘れましたけど、学生の時だから二十歳とか?

小黒 大学に入った年、ではないですよね。大学の2年目か3年目の時でしょうね。

佐藤 そうですね。蕎麦屋でずっとバイトしてたんですけど、バイトしながら描いてた記憶がありますね。それが佳作をもらって、編集部と「もう1本描いてみますか?」とやりとりしてる時に東映に入ることが決まったので、マンガの道はフェードアウトするような感じになりましたね。

小黒 内容は少年マンガだったけど、青年マンガ部門に応募してしまったんでしたっけ。

佐藤 いや、一般部門っていうのがあったんです。自分の作品は青年マンガでも少年マンガでもないし、一般ということはなんでもありなところかなと思って、その部門で応募したと思うんです。それが「ビッグコミック」とか「スピリッツ」のカテゴリーだったのかどうか、実はよく分かってなかった。

小黒 10年ぐらい前、そのマンガの原稿が発掘されたって言ってましたよね?

佐藤 1回出てたんですけどね、今ではどこにあるか分かんないですね(笑)。

小黒 今度出てきたら、ちゃんととっておいてくださいよ。

佐藤 いやいや、あれは消したい過去になりますね(笑)。

小黒 いやいやいや。画としては、どんな画なんですか。

佐藤 当時ですから、やっぱり高橋留美子系の画だったと思います。

小黒 おお。

佐藤 コメディなんですけどね。群像劇的なものにしようとして、主人公が決まってないままだったと思うんですけど。

小黒 コメディでもない?

佐藤 一応、コメディのカテゴリーのつもりなんですけどね。別に大きなテーマがあるわけではないという。

小黒 登場人物は高校生ぐらいなんですか。

佐藤 高校生の学園もので、タイトルは「夕日だよ、野郎ども」ですね。

小黒 青春っぽいですねえ。

佐藤 そうなんですよ。色んなことがあって夕日で方をつけるぐらいの、あまり考えなくても読めるマンガにした気がしますね。

小黒 雑誌に載ったんですか。

佐藤 マンガ自体は載ってないんじゃないんですかね。

小黒 佳作になった時は「佐藤順一さん」として誌面に載ってるんですか。

佐藤 佳作のコーナーに受賞者として名前が出ているはずです。

小黒 載った雑誌は「スピリッツ」なんですか。

佐藤 小学館の他の雑誌にも載ったかもしれないですけど、「スピリッツ」で見た記憶はありますねえ。

小黒 ちょっとそれは探してみますよ。

佐藤 はい(笑)。

小黒 話は前後しますが、日本大学在籍中に東映動画が第1期研修生を募集して、それに応募をされたわけですね。

佐藤 はい。月岡さんは東映動画との繋がりがあったから「こういうのがあるよ」と教えてくれて、それで応募したんだと思います。

小黒 まだ在学中だったはずですが、現場に入れるなら現場に入ろうということで受けてみたということでしょうか。

佐藤 ですね。ここで受かって就職したら、4年目の学費が掛からなくていいなと思ったので。

小黒 親御さんのことを考えて?

佐藤 ええ(笑)。日芸の学費って、そんなに安くないですからね。映画学科は特にですけど、皆さんの暮らし向きが凄くよくて、びっくりしましたね。学生なのに普通に車で来る奴とかいて、住む世界が違うから「これは付き合ってられないな」と思っちゃって。

小黒 上京してから上映会で『ホルス』や『どうぶつ宝島』を観ていたというお話がありましたが、大学時代はある程度はアニメを観ていたんですか。

佐藤 当時のTVアニメはあまり観ていないんですよ。それまで観ていなかった昔の東映の長編や『ナーザの大暴れ』(劇場・1979年)のような海外の映画を機会がある度に観ていました。アニドウの上映会も行っていたし、色々なアニメの成分を摂取する努力はしていましたね。

小黒 古今の名画名作を上映会等で観ていたと。

佐藤 「観られるものは観ておこう」みたいな。

小黒 佐藤さんの大学時代って1978年から80年だから、アニメブーム真っ盛りの頃じゃないですか。アニメブームの代表的なタイトルには触れてないんですか。

佐藤 映画はやっぱり観てたかな。

小黒 『ルパン三世 カリオストロの城』(劇場・1979年)が公開されたのは大学時代ですよね。

佐藤 『カリオストロ』は観てるね。『地球へ…』(劇場)もそう?

小黒 『地球へ…』は1980年4月の公開ですから、佐藤さんは大学3年ですね。

佐藤 そうすると劇場公開された映画はひととおり観てますね。『ヤマト』は『さらば(さらば宇宙戦艦ヤマト ―愛の戦士たち―)』(劇場・1978年)で観なくなったけど。

小黒 「これはここまででいいだろう」と。

佐藤 そうですね。「ほしかったものじゃないな」と思ったんですよね。

小黒 それは、当時既に大人だったってことですね。

佐藤 そうです。多分そうです。

小黒 本郷みつるさんも近しいことを言ってますね。

佐藤 ああ、分かりますよねえ。「月刊OUT」とかが全盛期だった頃?

小黒 全盛期ですね。「アニメージュ」も創刊してますね。

佐藤 そっか。じゃあ、観るものはふんだんにあったんだね、きっと。

小黒 この頃は上映会も増えてますから、摂取するものは多かったんじゃないんですかね。

佐藤 ああ、そうですね。

小黒 この頃の東映の研修生は、アニメーター部門と演出部門があるんでしたね。試験はどんなものだったんですか。

佐藤 アニメーター部門の試験は分からないですけど、演出部門はひとコマの画があって、そこから「絵コンテ4枚ぐらいで短編の物語を作れ」というものでした。それと論文だったかなあ。どういうコンテにしたかは忘れましたけど、短い尺の中で確実にメッセージが伝わるようなことをした気がするので、その時も説明っぽいものだったんじゃないかと思いますよね。

小黒 論文は何を書いたんですか。

佐藤 忘れましたねえ。全然覚えてないです(苦笑)。

小黒 それで、受かって大学を辞めるにあたって、池田先生が引き止めたりはしなかったんですか。

佐藤 そうですね。基本的には、学費も払わずにただ行かなくなっただけなので。

小黒 正式に退学したわけではないんですね。

佐藤 そうなんです。退学手続きもしていないので。


●佐藤順一の昔から今まで (3)演助進行時代と演出デビュー に続く


●イントロダクション&目次

アニメ様の『タイトル未定』
273 アニメ様日記 2020年8月16日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年8月16日(日)
早朝の新文芸坐に行って、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 125 『この世界の片隅に』四度目の夏」の終幕に立ち合う。『アリーテ姫』の終盤を観たのだけど、フィルムの痛みがいい味わいになっていた。元々、往年の名画のような作品であるのだが、その印象が強まっていた。
ちなみに、今回のオールナイトのお客さんは『アリーテ姫』初見の方が5割、『マイマイ新子と千年の魔法』初見の方が4~4.5割、『この世界の片隅に』初見の方が数人。つまり、リピーターばかりではなかった。何度も同じことを書いているかもしれないが、新文芸坐とアニメスタイルのオールナイトが作品との出会いの場になっているということだ。

2020年8月17日(月)
「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」の先行入稿分の校正紙が出た。「アニメスタイルちゃんのうすい本」の表紙デザインがFIXした。朝から夕方まで、テレ朝チャンネル2の「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」で『ドラえもん』を浴びるように観た。

2020年8月18日(火)
ワイフと一緒に『Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song』を観に行くつもりでチケットも取っていたのだが、ワイフの夏バテのため、鑑賞を延期。新文芸坐オールナイトの企画書を4本、書いた。今日も「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」を流しながら仕事。原恵一さんの演出と思しきショートアニメ(夏のスペシャルのイントロ)があった。
確認することがあって、アニメージュ1995年4月号の特集「セーラームーンと佐藤順一の世界」に目を通す。へえ、こんな特集だったんだと他人事のように読んでいたら、総論を自分が書いていた(ギャフン)。なんだかマイルドな原稿だけど、今はこんなふうには書けないかもしれない。1995年は自分がアニメージュの仕事をしていない時期だから、総論だけ依頼されたのだろう。原稿の中で、佐藤順一の真価は作品の方向性が彼の資質にあわなかった時にこそ発揮されるとあって、これはこの原稿が掲載された時点では放送が始まっていない『新世紀エヴァンゲリオン』での仕事を意識して書いたものであるはず。

2020年8月19日(水)
グランドシネマサンシャインの午前8時35分からの回で『映画ドラえもん のび太の新恐竜』を観る。一昨日、昨日と「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」を観続けて、さらに新作劇場版を観たので『ドラえもん』の世界で暮らしている気分。デスクワークをはさんで、16時からワイフと新文芸坐で「スキャンダル」を観る。これは公開時にもワイフが観たがっていて、行きそびれた映画だ。

2020年8月20日(木)
この日の「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」は楽しみにしていた「スタッフセレクション <テレビシリーズ編>」だった。今までの『ドラえもん』TVシリーズの中から、スタッフがセレクトしたエピソードをコメント付きで放送した。中村英一さんのセレクションは「ミサイルが追ってくる」「ジャイアンのファンクラブ」「しずかのネックレス」で、いずれも中村さんが一人で原画を描いた話で、コメントでも一人原画に触れていた。
僕個人で大きかったのは原恵一さん演出回の「ハリーのしっぽ」(セレクトとコメントは山田俊秀プロデューサー)。これは原さんから思い出深いエピソードだと聞いていたもので、ようやく観ることができた。渡辺歩さん担当回だと、渡辺さんに絵コンテを見せてもらったことはあるけど、映像は未見だった「人間モトクロス」と「人間機関車」を観ることができた。一番インパクトがあったのが、芝山努さんコンテの「あべこべの星」だった(これもセレクトとコメントは山田俊秀プロデューサー)。メインキャラの性別や性格が入れ替わってしまう話で、かなりの怪作。渡辺歩作品としてセレクトされたわけではないけれど、彼が絵コンテを担当した「あの窓にさようなら」「45年後…未来のぼくがやってきた~」がよかった。今になって観ると、彼の成熟した仕事だ。

以下はこの日の放送分だけでなく、「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」全体の感想。面白かったのは、同じ原作のエピソードを何度もやったところだ。例えば「ぞうとおじさん」は1980年版、2007年版、2017年版を放送し、「白ゆりのような女の子」は1979年版、2005年を放送したはず(年度が間違っていたら申しわけない)。そんなふうに有名エピソードを見比べることができる構成だった。それも含めてアニメ『ドラえもん』の変化や作品の幅を確認できた。

さらに余談。アニメ『ドラえもん』を大山のぶ代時代と水田わさび時代に分けると、デザインが変わったとか、映像の縦横比率が変わっただけでなく、視聴者とキャラクターの距離感が違うのではないかと思った。大山のぶ代時代のほうが近い。そして、必ずしも近いほうが優れているというわけではない。これについてはいつかちゃんと文章にしたい。

2020年8月21日(金)
この日の「祝!ドラえもん 歴代アニメ100時間完全保存版スペシャル」は「スタッフセレクション <映画編>」をメインにしたプログラム(20日(木)に続いて、テレビシリーズのスタッフセレクションも放送した)。『のび太のパラレル西遊記』から『のび太とふしぎ風使い』の画作りの変化が凄まじい。目眩がするくらいだ。『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~ 』は浅野直之作画監督の手描き感が素晴らしい。

2020年8月22日(土)
無観客のトークイベント「アニメスタイルTALK アニメをもっと楽しむための撮影講座2020」の開催日。ゲストは言うまでもなく、泉津井陽一さん。今までの泉津井さんの撮影についてのトークの中でも、具体的で網羅的なものだったのではないか。

第192回 響きあう時間線 〜STEINS;GATE〜

 腹巻猫です。クリストファー・ノーラン監督の最新作「TENET」を観ました。圧倒的な映像と音響はIMAXシアターで体験する価値あり。音楽はノーラン監督とコンビを組んできたハンス・ジマーから「ブラックパンサー」などのルドウィグ・ゴランソンに交替。劇中では音楽が逆再生で流れるシーンがあり、ユニークな試みに耳を奪われました。難点は一度観ただけではストーリーがよくわからないこと(笑)。もう何度か観ることになりそうです。


 「TENET」は時間を逆行して未来からやってきた敵と戦い、世界の破滅を阻止しようとするエージェントたちの物語。時間旅行は宇宙旅行と並ぶSFの人気ジャンルのひとつで、日本のアニメにも、『時をかける少女』をはじめ、時間移動や時間の反復をあつかった作品が多い。
 今回は21世紀の時間SFアニメの代表作のひとつ、『STEINS;GATE』の音楽を取り上げよう。
 『STEINS;GATE』は5pb.(現・MAGES.)の同名ゲームソフトを原作にしたTVアニメ。2011年4月から9月まで全24話が放送された。
 舞台は2010年の秋葉原。厨二病から抜け出せない大学生・岡部倫太郎は仲間とともに「未来ガジェット研究所」を立ち上げ、怪しげな発明に日々打ち込んでいた。ある日、倫太郎は偶然に過去へメールを送る方法を発見し、それを「Dメール」と名づけて実験を始める。が、過去への干渉をくり返した結果、謎の秘密組織から狙われるようになり、とうとう未来ガジェット研究所の仲間・椎名まゆりが命を落としてしまう。倫太郎は過去を改変して、まゆりの死を回避しようとするが……。
 プレイヤーの選択がストーリーを変化させるゲームの特性を時間SFに結びつけたアイデアが秀逸。巧妙に張られた伏線といくつものエピソードがからみあった緊張感に満ちた物語に引き込まれる。ゲーム版を知らなくても楽しめる、多彩な魅力的を持った作品である。2013年にはオリジナル・ストーリーによる劇場アニメ『劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』が公開され、2018年には、続編ゲーム「STEINS;GATE 0」を原作としたTVアニメ『STEINS;GATE 0』が放送されている。

 アニメ版の音楽を手がけたのは阿保剛と村上純。
 阿保剛はMAGES.に所属する作曲家で、ゲーム版の音楽の生みの親。『STEINS;GATE』シリーズの音楽を一貫して手がけている。小学生の頃からプログラミングを覚えて音楽を作るようになり、ゲーム業界に入った。「メモリーズオフ」シリーズや「CHAOS;HEAD」「ROBOTICS;NOTES」などのゲーム音楽を手がける人気作曲家である。ゲーム作品のアニメ化ではゲーム版と異なる作曲家が音楽を担当するケースも少なくないが、本作は同じ作曲家が参加してイメージの統一を図っているのが特徴だ。
 村上純もMAGES.所属の作曲家・音楽プロデューサー。乙一原作の実写劇場作品「GOTH」(2008)の音楽やTVアニメ『CHAOS;CHILD』(2017)、『ゆるキャン△』(2018)などの音楽プロデューサーを担当している。
 本作の音楽には、ゲーム版から引き継がれたものと新たに作曲されたものがある。ゲーム版の音楽を使うことで、ゲームを楽しんだファンも違和感なくアニメの世界に入っていけるわけだ(声優もゲーム版と同じメンバーが参加している)。
 ゲーム版のメインテーマとして設定されたのが「GATE OF STEINER」という曲。「STEINS;GATE」シリーズ全体のテーマとして続編ゲームやアニメ作品にも登場する、ファンにはおなじみの曲である。
 それとは別に、TVアニメ『STEINS;GATE』のメインテーマとして「Promise」という新曲が作られた。
 このふたつのメインテーマを中心に、キャラクターテーマや心情曲、サスペンス曲、日常曲などを加えて、TVアニメ『STEINS;GATE』の音楽は構成されている。ゲーム版の音楽を継承しつつ、独自の音楽世界を打ち出したのがアニメ版の音楽だ。
 劇中で印象深いのがピアノの音色。繊細な心情表現には必ずと言ってよいほどピアノの曲が使用されている。一般的なアニメ音楽だと、心理描写の曲に弦楽器やアコースティック・ギター、木管楽器などもよく使われているが、本作では控えめである。ピアノの音は鳴ったあとに残響を残して消えていく。それが、本作で描かれる挿話のはかなさ、切なさにマッチして心に残る。音楽演出として、意識してピアノの音を多く使っている印象だ。
 阿保剛はインタビューの中で「ピアノは鍵盤を叩く強さで感情表現できるので、アドベンチャーゲームが描くドラマ性を表現しやすい」と語っており、表現手段としてピアノを大切にしていることがうかがえる。心情描写だけでなく、サスペンス曲でもピアノの音色が耳に残る曲が多い。
 アニメ版の音楽制作について、阿保は「アニメ版もゲームと同じ世界として受け取ってもらいたかったので、ゲームかアニメか区別がつかないくらい馴染むアレンジにした(大意)」と発言している。いっぽうで、ゲーム音楽とアニメ音楽の違いについて、「ゲーム音楽は1曲の中で起承転結をつけづらいが、アニメ音楽はシチュエーションに合わせて盛り上がる曲が作れる(大意)」と語っていて興味深い。
 本作のサウンドトラック・アルバムは単独盤としては発売されず、Blu-ray初回限定版の特典ディスクとしてリリースされた。Blu-rayの2巻と8巻にサウンドトラック・アルバムが同梱されており、それぞれ、サウンドトラック「バタフライ・エフェクト」、サウンドトラックII「イベント・ホライズン」と名づけられている。
 なお、アニメ版『STEINS;GATE』のサウンドトラックは、劇場版もBlu-ray同梱でリリースされ、単体CDで発売されたのはTVアニメ『STEINS;GATE 0』のみ。配信もされていない。サントラファンには悩ましい作品だ。
 1枚目の「バタフライ・エフェクト」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. Promise -piano-
  2. Confrontation with fear
  3. 秋葉原 ※
  4. Experiment
  5. Tajitaji
  6. Adrenaline
  7. Science Of The Strings ※
  8. 未来ガジェット研究所 ※
  9. かえり道 ※
  10. Gate of steiner -piano-
  11. 鈴羽 ※
  12. Dメール ※
  13. Disquiet
  14. 厨二病のタンゴ ※
  15. Tender affection
  16. 冷めた視線 ※
  17. ジョン・タイター ※
  18. Silence eyes
  19. No joke! ※
  20. @Channel
  21. オカリンのサスペンス ※
  22. 事件 ※
  23. Operation G-Back
  24. Lab-members

 ※=作曲:村上純
 ※以外=作曲:阿保剛

 物語は、倫太郎がDメールを発明し、過去への干渉をくり返した結果、まゆりの死を招いてしまうまでの前半(第12話まで)と、まゆりの死を回避するために倫太郎が過去を改変しようとする後半(第13話以降)に大きく分けられる。
 サントラ盤もそれに合わせ、1枚目は前半の、2枚目は後半の物語をイメージした内容になっている。
 構成は物語の流れに大まかに沿っているが、必ずしも使用された順に曲が並べられているわけではない。音楽アルバムとしてのまとまりと聴きやすさを重視した曲順だ。
 1曲目の「Promise -piano-」はアニメ版メインテーマのピアノ・ソロ・バージョン。ギターや弦楽器が加えられたフル・バージョンはサウンドトラック2枚目「イベント・ホライズン」に収録されている。が、劇中ではこのピアノ・ソロの使用頻度が圧倒的に高い。
 阿保剛によれば、「Promise」はまゆりの存在を象徴しつつ、穏やかで安堵感を出す曲として作ったそうだ。そのねらいどおり、第4話でまゆりが空に向かって手を伸ばす(倫太郎が「スターダスト・シェイク・ハンド」と名づけた)印象的な場面をはじめ、まゆりと倫太郎が語らうシーンなどによく使用されている。「まゆりのテーマ」と呼びたくなる曲である。
 2曲目の「Confrontation with fear」は、不穏で不気味なサウンドのサスペンス曲。第1話で倫太郎が血まみれで倒れている女性研究者・牧瀬紅莉栖を発見する場面に使用された。物語の発端となる重要な場面の曲であり、サントラ盤の中でも、プロローグの役割を果たしている。
 紅莉栖はまゆりと並ぶ本作のもう1人のヒロインで、物語の後半は倫太郎と紅莉栖のエピソードに焦点が当てられていく。その紅莉栖のテーマ「Christina I」「Christina II」はサウンドトラック2枚目に収録されている。こちらもピアノの音色が印象的な美しい曲だ。
 3曲目「秋葉原」からは、未来ガジェット研究所の日常を描写する曲が続く。テクノポップとエスニック音楽が合体したような「秋葉原」、実験をテーマにしたアンビエントな「Experiment」、倫太郎がたじたじとなる場面に流れるコミカル曲「Tajitaji」、新しい思いつきに高揚する気分を描写する「Adrenaline」など、倫太郎たちの行動が目に浮かぶような音楽が楽しい。
 弦楽器をメインに奏でられる「Science Of The Strings」は第4話で倫太郎と紅莉栖が幻のレトロPC「IBN5100」を運ぶ場面に流れる曲で、ピチカートが刻む落ち着きのないリズムとバイオリンのゆったりしたメロディの対比が面白い効果を出している。
 ずばり「未来ガジェット研究所」と名づけられたトラック8は、ギターのリズムとチープなシンセの音が合奏をくり広げるユーモラスな曲だ。くだらない(と言われる)ことに夢中になっている青春の恥ずかしさと一途さも伝わってくる。
 トラック9の「かえり道」はピアノ・ソロで演奏されるリリカルな曲。倫太郎とまゆりが歩きながら話すシーンなどに使われていた。2人の心のふれあいを表現する、本アルバムの中でもひときわ愛しく聞こえる曲である。
 トラック10「Gate of steiner -piano-」はゲーム版メインテーマのピアノ・ソロ・バージョン。ピアノは打ち込みではなく、グランドピアノによる生演奏である。
 阿保剛によれば、メインテーマ「GATE OF STEINER」はゲームのシナリオを読んで感銘を受け、どこに使うとも考えずに最初に作った曲だという。ミステリアスな導入から始まり、情感に富んだ切ない曲調に展開、ふたたびミステリアスなメロディがくり返され、コーダへ。曲の展開には、因縁や宿命、自分の進む道といった、物語とリンクしたテーマが込められている。前半は謎の組織に狙われたりする怖いイメージ、後半は世界線を越えて未来を変えていくイメージが反映されているそうだ。
 この曲もサウンドトラック2枚目「イベント・ホライズン」にフルバージョンが収録されているが、劇中ではピアノ・ソロが多く使用されている。特に最終話(第24話)で、過去を修正し、目的とする時間線にたどりついた倫太郎がタイムマシンで現代に戻っていくシーンに流れたのが印象深かった。
 トラック11「鈴羽」は未来ガジェット研究所のメンバーに加わるバイト娘・鈴羽のテーマ。アコースティック・ギターをメインにしたサウンドが心地よい。複雑な過去を持った鈴羽の秘めた心情を、哀愁を帯びた曲調が表現している。
 「Dメール」「Disquiet」はタイムトラベルにからむミステリーやサスペンスを描写する曲。「Dメール」は第6話で紅莉栖がDメールのしくみを倫太郎たちに説明する場面に、「Disquiet」は第3話で謎の組織SERNにハッキングを行った倫太郎たちが怪しい実験レポートを発見する場面に使用されている。
 スパニッシュなバイオリンととぼけたパーカッションが奏でるトラック14「厨二病のタンゴ」は、アニメ版ならではの遊び心満点の曲だ。第5話で倫太郎が自分を「鳳凰院」と呼べと紅莉栖に強く迫るシーンや、第8話でまゆりが神社の宮司の息子・るかを女装させる場面などに使われた。大げさな曲調は聴いただけで笑ってしまう。
 次の「Tender affection」は「優しい愛情」という曲名どおりの、ほっと温かくなる曲。第11話の月夜の公園で倫太郎と紅莉栖が話をする場面など、倫太郎と紅莉栖の心が接近するシーンに流れている。物語後半の展開を予感させる曲である。
 トラック16からは、コミカルな「冷めた視線」、未来人を名乗る謎の人物のミステリアスなテーマ「ジョン・タイター」、緊迫感ただようホラー音楽風の「Silence eyes」、明るいオトボケ曲「No joke!」と脱力系の曲とサスペンス曲が交互に登場しながら、クライマックスに向かっていく。
 「@Channel」は劇中の匿名掲示板「@ちゃんねる」を表題にした曲。電脳空間を利用したやり取りやネットワークそのもののイメージだ。ピアノが怪しく奏でる「オカリンのサスペンス」が続き、なにかが起こりそうな空気がただよう。
 トラック22「事件」はシンセを主体にした凶事を連想させるサスペンス曲。第11話で、外出していた倫太郎が突然胸騒ぎを感じて未来ガジェット研究所に駆け戻る場面に流れた。アルバムの中では、まゆりの悲劇のイメージが重ねられている。
 「Operation G-Back」はアップテンポの軽快なデジロック。第4話で倫太郎が秋葉原の猫耳メイド・フェイリスとゲーム対戦する場面に1度だけ使われた(曲名は「自爆」とかけたしゃれになっている)。ここは、劇中使用場面よりもアルバムの中での盛り上がりを意識した選曲だろう。
 最後の曲「Lab-members」は未来ガジェット研究所のメンバー、通称「ラボメン」の日常をイメージした曲。軽やかなリズムに乗って木管楽器がさわやかなメロディを奏でる。未来ガジェット研究所で倫太郎たちがたわいもない話をする場面やコミカルなやりとりをする場面によく流れた、物語前半を象徴する曲だ。
 牧歌的で平和な雰囲気とともにサウンドトラック1枚目は終わる。緊迫した曲で2枚目につなぐ構成もありえたと思うが、この終わり方はとてもいい。未来ガジェット研究所の一員になったような気分が味わえる締めくくりである。

 実は筆者はゲーム版の『STEINS;GATE』をプレイしたことはない。が、アニメ版のサントラを聴いて、ゲーム版のサントラも聴いてみたくなった。
 ゲームを原作にした作品ではあるが、アニメ版はアニメ独自の表現と演出で人気を得て、新しいファンを獲得した。『STEINS;GATE』にならって言うなら、ゲーム版とアニメ版は別々の世界線を進みながら互いに影響しあって発展している。音楽もそうだ。ゲーム音楽とアニメ音楽がリンクした幸福な例として、記憶に残る作品である。

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佐藤順一の昔から今まで (1)裏方的なことがやりたかった

小黒 佐藤さんは還暦を迎えたこの2020年に『泣きたい私は猫をかぶる』『魔女見習いをさがして』という2本の劇場作品を手掛けているわけですね。素晴らしい仕事ぶりですね。

佐藤 ありがとうございます(笑)。そうなんですよ。

小黒 2本同時に作るというのはどのようなかたちで?

佐藤 同時と言っても、スケジュールはいい感じにズラしてもらっているので、そんなにバタバタな感じではなかったです。それから、作品の性格が違うじゃないですか。それに『泣きたい私は猫をかぶる』は劇場オリジナルで、スタジオコロリドという看板を背負っていて、『魔女見習いをさがして』は『おジャ魔女どれみ』の映画化じゃないですか。スタンスも観客も違うので、重複したことで混乱することもなかったし、それで悩むこともなかったかなあ、と思いますけどね。

 どちらも現場のことは共同監督に任せているんです。『泣きたい私は猫をかぶる』は柴山(智隆)君がバリバリ動いてくれましたし、『魔女見習いをさがして』のほうは、鎌谷(悠)さんが今もバリバリやっています。彼らとの作業の棲み分けも比較的上手くできていたんです。とはいえ、緊急事態になるとどっちかに掛かり切りになってしまうので、その都度どちらかに迷惑を掛けつつ進んでいった感じです。

小黒 それでは、そんなふうにエネルギッシュに仕事を続ける佐藤さんの、今までのお話をうかがいたいと思います!

佐藤 はい。お願いします。

小黒 生年月日は1960年3月11日ですね。出身はどちらでしょうか。

佐藤 愛知県名古屋市ですね。

小黒 ずっと名古屋なんですか。

佐藤 小学校までは名古屋市内ですけれども、中学校から今のあま市に引っ越して、東京に出るまでいました。今も実家はあま市ですね。

小黒 ご兄弟は何人ですか。

佐藤 4つ下の妹が1人です。

小黒 はい。このインタビューで『魔法使いTai!』(OVA・1996年)が話題になった時に、妹さんがいることが重要になってくるんじゃないかと思います。

佐藤 そうですか(笑)。

小黒 子供の頃はマンガが好きだったんですか。

佐藤 普通に好きでしたよ。活字よりはマンガが好きでしたね。

小黒 プロになってから、佐藤さんが「活字の本は頭が痛くなるのであまり読まない」と言っているのを聞きましたよ。

佐藤 「頭が痛い」と言いましたか。そうですね、苦手な部類ですね。

小黒 それはずっとそうだったんですか。

佐藤 そうですね。活字をそのまま頭に取り込める人もいると思うんですが、自分はそうではなくて、活字を1回映像に変換してるんでしょうね。その手間があるので、スルスルと頭に入ってこない感じがあったんです。

小黒 どんなマンガが好きだったんですか。

佐藤 割と普通でしたね。小学生の頃であれば、赤塚不二夫。中学生辺りだと石ノ森章太郎や横山光輝とか。普通にみんなが読んでいたようなマンガですね。妹が購入していた「りぼん」を読むようになって、少女マンガにハマってたりしましたけどね。

小黒 後にプロになってから、佐藤さんは同世代のアニメ監督と比べると「そんなにおたくじゃない」ということが分かるわけですが、ご自身としてはおたくタイプだったと思います?

佐藤 僕は中学、高校の頃にアニメをすげえ追っ掛けていたわけじゃないんですよ。マンガも濃いものよりも、ストレスなく読めるものが好きだったりしますし、TVではアニメばかりでなく、青春ドラマとか刑事ドラマや時代劇も観てました。
 アニメでは、東京ムービーの『ど根性ガエル』(TV・1972年)や『ジャングル黒べえ』(TV・1973年)等のストレスが掛からずに観られるものが好きでしたね。マンガでは松本零士の「男おいどん」等も好きだったので、『宇宙戦艦ヤマト』(TV・1974年)が始まると「これは松本零士の世界だ」と思って、楽しんで観ていたんですよ。だけど、業界に入ってから色んな人と『宇宙戦艦ヤマト』の話をすると全然話が合わなかったんですよ。他の人は「主砲を撃つ時に船体が傾くのが、かっこいい」とか、SF的なテイストで楽しんでいたらしい。僕は「松本零士の画が好きだ」「『宇宙戦艦ヤマト』の題字が筆文字でかっこよかった」といった感じだったので「観てたとこが違うのかな?」と思いましたね。そして、意外とみんなが『(機動戦士)ガンダム』(TV・1979年)を好きで観ているということに驚いた。

小黒 佐藤さんは本放送時には『ガンダム』に触れてないんですよね。

佐藤 『ガンダム』は触れてないです。

小黒 取材の前に「佐藤順一年表」を作ったんですけど、『ガンダム』が始まった時に佐藤さんは大学2年になっているんです。当時の大学2年だと、意識してアニメを追ってないと『ガンダム』は観ないかもしれないですね。

佐藤 そうなんですよねえ。東映に入ってからも、例えば、西尾大介とかが『ガンダム』の話をするのについていけなかったですしね。大学2年の時にTVアニメを1本、そのまま絵コンテに起こしてくるという課題があったんです。それで「何を観ようかな?」と思っていたら、クラスメイトが選んでいたのが『ガンダム』のガルマが死ぬ回だったんです。そこで初めて『ガンダム』を観たという感じです。

小黒 なるほど。「みんなが言ってるのは、これかあ」みたいな感じだったわけですね。

佐藤 いや、『ガンダム』が話題になってるということも知らずに貸してもらって観たんです。それで、次を観たいという気にもならず。

小黒 それほどは興味を持たなかったということですね。根掘り葉掘り聞きますが、多分、佐藤さんは、高畑勲さんの作品が好きだと思うんですけど。

佐藤 はいはい。

小黒 なんとなく『赤毛のアン』(TV・1979年)がお好きなのではという気もするんですが、高畑さんの作品は観ていたんですか。

佐藤 そんなすげえ追っ掛けていたわけではないんです。『母をたずねて三千里』(TV・1976年)も『アルプスの少女ハイジ』(TV・1974年)も観てますが、観たのは再放送ですからね。TVの映画枠で『ホルス(太陽の王子 ホルスの大冒険)』(劇場・1968年)を観たりして、徐々に認識していくみたいな感じでした。

小黒 高畑さんの名前を意識したのは業界に入ってからですか。

佐藤 大学に入る頃には、ある程度アニメに興味があって、ちょうどその頃に「日本アニメーション映画史」というゴツい本が出たんですよね(編注:1978年、有文社刊。渡辺泰、山口且訓の共著)。

小黒 背表紙が赤っぽい本ですね。

佐藤 そうです。あれを食い入るように読んでいて「あれもこれも高畑勲なんだ」と気づく、その辺から高畑さんを意識したんだと思います。大学に通うために東京に来てから、色々なところで上映会があったんです。そういうところで『ホルス』や『どうぶつ宝島』(劇場・1971年)を観に行ったりしましたね。

小黒 もう少し手前の話も聞かせてください。ファンとしては、佐藤さんがどこで『エースをねらえ!』に引っ掛かってるのかを知りたいんですが。

佐藤 『エースをねらえ!』は高坂真琴さんの声です。

小黒 そうなんですか!

佐藤 意外とそっからなんです(笑)。

小黒 そっからなんですね(笑)。

佐藤 まず『(勇者)ライディーン』(TV・1975年)を観てたんですよ。

小黒 いきなりアニメファンらしい話になってきましたね(笑)。

佐藤 そうそう(笑)。『ライディーン』の前半や『コンバトラー(超電磁ロボ コン・バトラーV)』(TV・1976年)の前半は、面白いなと思って観ていたんですね。これも気楽に観てたのかもしれませんけど、ライディーンはデザインがかっこいいなと思っていました。その辺りで「(桜野マリの)声、なんかいいな」と感じていて、その声の役者さんががっつり出ている『エースをねらえ!』(TV・1973年)を観るみたいな流れだったんじゃないですかね。確か作品からは入ってないはずです。

小黒 なるほど。じゃあ最初は旧『エース』の再放送で入ってるわけですね。

佐藤 再放送でしょうね。

小黒 『新・エースをねらえ!』(TV・1978年)も観てるわけですね?

佐藤 『新・エース』はそんなでもないです。そこまで追っ掛けてない(笑)。

小黒 『魔法使いTai!』のサブタイトルが『新・エース』を踏襲しているじゃないですか。「ツリガネと高倉先輩と空とぶ魔法」みたいな。

佐藤 あれの元ネタは多分「部屋とYシャツと私」です(編注:平松愛理の歌のタイトル)。

小黒 そうなんですか!? 『新・エース』じゃないんですか。

佐藤 ええ(笑)。『エース』じゃないですね。

小黒 今までそうだと信じていました。考えすぎたか。

佐藤 そうそう(笑)。

小黒 これまで活字になってないと思うので確認したいんですけど、一時期まで佐藤さんの作品に常にいた、主人公の脇にいる気のいい友達っていうのは。

佐藤 ピザ食べに行きたがるやつですか(笑)。

小黒 そんな子です。『(美少女戦士)セーラームーン』の大阪なるちゃんとか。

佐藤 はいはい。

小黒 『魔法使いTai!』の中富七香とか。その後も続く、佐藤順一作品で主人公の隣にいる気のいい友達の源流は『エースをねらえ!』の愛川マキじゃないんですか。

佐藤 それは、多分そうだと思います。一番クリアな元ネタは『エース』のマキかなあと思いますけど、当時の少女マンガには割といた気がするんですよね。

小黒 主人公のフォローをする立場のああいう女の子が。

佐藤 そうそう、それで違和感なく普通にやってた気がするし、ああいうニュートラルな子は扱いやすいんです。

小黒 この前、『美少女戦士セーラームーン』第1シリーズ(TV・1992年)の14話を観返して「あっ、佐藤さんが珍しくアニパロやってる!」と思ったんです。

佐藤 ああ、テニスだから?

小黒 テニスだから(笑)。「自然にネタが出てきてる!」みたいな。

佐藤 パロだったのかな、どうだっけ?(笑)

小黒 セーラームーンが「コートでは誰でも1人っきり」とか言ってましたよ。

佐藤 それはシナリオにあったんじゃないかなあ(苦笑)。

小黒 また、話は変わりますが、中学、高校の頃はインドア派だったんですか。

佐藤 インドアです。外で何かやる感じではなかったですね。

小黒 マンガは描いてたんですか。

佐藤 いや、マンガ家になりたいとは考えてなかったので、描いてはいなかったと思うんです。何やってたんだろう? 画は描いてましたけどね。意外と思い出せないものですね。きっと、たいしたことやってないですよ。

小黒 部活は何やってたんですか。

佐藤 部活はね、美術部です。美術部で何をやっていたんだろう。普通にデッサンとかやってたんでしょうけどねえ。

小黒 ある程度は画の勉強をしてたんですね。

佐藤 勉強になるほどの部活ではなかったですけど、一応やっていましたよね。あとは、高校生の時にちょっとだけギターにハマっています。暇があればギターを弾いていたかな。

小黒 友達が大勢いるタイプだったんですか。

佐藤 友達はそんないないですね。あまり周りに人がいないのがありがたいタイプでした。

小黒 中学、高校の学園祭等で大きなイベントはあったんですか。

佐藤 うちの学校は、学園祭に他校の人が来るのが禁止で、父兄もほぼ来なくて。学生だけでやる文化祭だったので、そんなにお祭り感ないんですよね。だから、そんなに楽しい感じでもなく(笑)。元々、運動系は苦手で体育祭も別に楽しくはなかったので、高校時代はろくな思い出がないです。

小黒 なるほど。でも鬱屈してたってわけでもない?

佐藤 そうですね。人に言うほど、鬱屈してたわけじゃないですけれども、1人で好きなことやってるのが、楽しかったみたいですね。ギターはやったけど、誰かとバンドを組もうとも思わないし、1人で練習するのがちょうどいいぐらいだったから。

小黒 なるほど。

佐藤 マンガは好きだったので、自転車で回れる範囲の本屋を次々回って、面白そうなマンガを買って読んだりしてましたね。

小黒 マンガは主に読むほうだった?

佐藤 読むほうですね。小学校ぐらいの頃はクラス新聞とかにマンガを描いたりとかしましたけど、そんな程度ですね。

小黒 大恋愛があったりはないんですか。

佐藤 ないですね。割とぼんやりした中高生時代(笑)。

小黒 中高の頃の将来の展望は、どんな感じだったんですか。

佐藤 あんまり目立つことはしたくなかったので「裏方的なことがやりたいな」とは思っていたんですよね。商売やお金を扱うことも、人と接する仕事も苦手だなと思うので、裏方がいいなと。例えば、雑誌で「コマーシャルのできるまで」みたいな特集があって、その裏方がすげえ楽しそうだな、と思ったりとか。だから、TV番組のセットを作ったり、特撮で怪獣の着ぐるみを作るのが楽しそうだなと思ったり(笑)。当時はあまり人と接しない仕事をやりたいと思っていたみたいです。


●佐藤順一の昔から今まで (2)大学時代のマンガと自主制作アニメ に続く


●イントロダクション&目次

佐藤順一の昔から今まで イントロダクション&目次

 佐藤順一は1980年代から活躍し、『美少女セーラームーン』『ケロロ軍曹』をはじめとする様々な作品を手がけてきたベテラン監督であり、この2020年だけでも『魔女見習いをさがして』『泣きたい私は猫をかぶる』の2本の長編を発表するという精力的な活動を続けている。
 本企画「佐藤順一の昔から今まで」は、佐藤順一にアニメ演出デビュー以前から現在までの歩みについて、ざっくばらんに話をしていただく、インタビュー記事である。

●目次
佐藤順一の昔から今まで (1)裏方的なことがやりたかった
http://animestyle.jp/2020/10/12/18246/

佐藤順一の昔から今まで (2)大学時代のマンガと自主制作アニメ
http://animestyle.jp/2020/10/19/18309/

佐藤順一の昔から今まで (3)演助進行時代と演出デビュー
次週更新予定

●佐藤順一プロフィール
監督、演出家。1960年3月11日生まれ。愛知県出身。日本大学藝術学部映画学科在籍中に、東映動画(現・東映アニメーション)の研修生募集試験を受けて、1981年に同社へ。『メイプルタウン物語』で初めてSD(シリーズディレクター)を務める。その後『きんぎょ注意報!』『美少女戦士セーラームーン』等にSDとして参加し、1998年に東映を退社。フリー等を経て、現在はツインエンジンに所属している。主な監督(SD)作品に『おジャ魔女どれみ』『カレイドスター』『ケロロ軍曹』『たまゆら』等がある。2020年は6月18日に長編アニメーション『泣きたい私は猫をかぶる』(柴山智隆と共同で監督)が配信スタート。11月13日より劇場アニメーション『魔女見習いをさがして』(鎌谷悠と共同で監督)が公開される。

●取材日時
第1回~第7回/2020年6月28日

●編集スタッフ
取材・構成/小黒祐一郎
構成協力/芦田忠明
編集作業補佐/アニメスタイル編集部、高山和伸
タイトルイラスト/追崎史敏

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 126
没後10年 鬼才・今 敏の世界『妄想代理人』

 先日、新文芸坐は今 敏監督の没後10年の企画として、昼間の興行で『PERFECT BLUE』『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』を上映した。それに続くかたちで、今 敏監督が手がけたTVシリーズ『妄想代理人』の全13話一挙上映オールナイトを開催する。
 開催日は2020年10月17日(土)。トークのゲストは本作に原画等の役職で参加した井上俊之を予定。前売り券は10月10日(土)からオンラインと新文芸坐窓口で販売する。

 なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要であり、入場時に検温・手指の消毒を行う。前売り券の発売方法を含めて、詳しくは新文芸坐のサイトを見ていただきたい。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 126
没後10年 鬼才・今 敏の世界『妄想代理人』

開催日

2020年10月17日(土)

開場

開場:22時10分/開演:22時30分 終了:翌朝5時40分(予定)

会場

新文芸坐

料金

当日・一般3000円、友の会2800円(オンライン購入は+50円)

トーク出演

井上俊之、小黒祐一郎(司会)

上映タイトル

『妄想代理人』全13話

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第678回 絵(画)コンテを発注するということ

 絵(画)コンテの話。前々回放りっぱなしだった「様々なコンテ打ち(合わせ)」のガチタイプの次、

ポンと脚本を放って「君の好きなように描いていいよ」タイプ!

 前述の「ガチ脚本めくりながら綿密にやるタイプ」がアニメーター出身ではない監督に多いのに対して、「ポンと脚本」タイプはアニメーター出身の監督に多く見られる気がします、板垣の経験則的には。その代表格の監督は——ま、内緒にしときます。じゃあなぜアニメーター監督は「ポン脚」になりやすいのか? 要は

元々アニメーターなんだから、画を描くストレスは制作あがりの監督よりも圧倒的に低いわけで、「他人から上がってきたコンテ、良くなきゃ全部描き直すだけ!」

だからでしょう。実を言うと、俺のタイプはこの「ポン脚」に近いと思います。「この脚本、要はここが見せ場で、とにかく好きに描いてくれていいけど、何か質問ある?」と。制作サイドはどう計算してるか分かりませんが、自分の脳内では「自分のコンテも他人のコンテをチェックするのも、スケジュールは同じ1週間」と思ってますから。念のために断っておきますが、最初から全修する(全部描き直す)つもりで他人にコンテを振ったことは一度もありません。元のコンテの面白いところやカッコいいところは画ヅラを全修しても段取りやカット割りは残してたり、ケースバイケースです。ただ前にも語ったとおり、コンテを切り(描き)たくて監督を目指した自分なので、初監督作『BLACK CAT』を受けた際も制作プロデューサーに

第1話の処理(演出)をやるより、コンテを多く、できたら(24本中)10本は切り(描き)たい!

と進言したくらい「アニメ監督=絵(画)コンテ」と思っています。結果、半分以上自分でやったほうが早いは早いかも。じゃあなぜ他人に振るのか? と問われれば、制作的には(板垣が)躓いた時の保険(?)だと思います。俺自身の理由はというと——すみません。また次回!

アニメ様の『タイトル未定』
272 アニメ様日記 2020年8月9日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年8月9日(日)
三連休2日目。書籍の企画書を2本書く。他は「アニメスタイル20周年展」のちょっとした作業。Netflixで『Re:ゼロから始める異世界生活 新編集版』を視聴中。18話でレムが語る「二人の将来」の話は本放送でもグッときた。

2020年8月10日(月)
三連休3日目。ワイフとの早朝散歩は続いている。暑さのせいで、猫達が道路の上で身体をのばして涼んでいた。その後は基本的にデスクワーク。書籍の原稿以外の作業を進める。
『Re:ゼロから始める異世界生活 新編集版』を最終回まで視聴。25話「ただそれだけの物語」が31分57秒もあって「あれ?」と思ったら、エピローグ部分に追加映像があった(『2nd season』1話冒頭と同じ内容のようだ)。Netflixでは劇場公開された「Memory Snow」が『新編集版』の26話に、同じく「氷結の絆」が27話(最終話)になっている。
Amazonから届いた古本「逃げるは恥だが役に立つ シナリオブック」に目を通す。巻末の野木亜紀子さんのあとがきは文章に熱があってよかった。劇中で沼田(古田新太)が「ハートフル坊主」の名前でクックパッドにレシピを投稿しているのだが、実際にクックパッドにはハートフル坊主のアカウントがあり、レシピを投稿しているという話が面白かった。しかも、ハートフル坊主は他の人のレシピで料理をつくり、つくれぽをアップしている。芸が細かいなあ。

2020年8月11日(火)
「アニメスタイルちゃんのうすい本」の今石さんの取材原稿をまとめる。あっという間に原稿が仕上がった。それと、まとめていて楽しかった。

2020年8月12日(水)
仕事は「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」のデザインの進行と、「アニメスタイルちゃんのうすい本」のテキスト作業と構成の微調整など。数年間、事務所の隅で埃をかぶっていたエアサーキュレーターを稼働させる。
YouTubeで配信中の『カレイドスター』40話から51話までを観る。その後、dアニメストアでOVA『笑わない すごい お姫様』と『レイラ・ハミルトン物語』を観る。47話で盲導犬訓練士の女性が出てくるんだけど、そのキャラクターが出てきた途端に「このキャラクターを演じたのはセーラーチームの声優だったな」という偏った記憶が蘇る。『カレイドスター』にセーラーチームの声優が多いのは、故・池田東陽プロデューサーの想いによるものだったはず。気になって、WEBアニメスタイルの「池Pの すごい? カレイドスター回想録」を読み直してみると、連載第14回で「その前に!! 次回は“クレッセントビーーーーーム!!!”が炸裂でございます。……小黒編集長、フォローして(懇願)。」とある。こう書かれているということは、このコラムが書かれるよりも前に、僕は池田さんと「セーラー戦士の声優の起用」について話をしているわけだ。

池Pの すごい? カレイドスター回想録 第14回 シッポを立てろ! 「冒険者(愚か者)たち」
http://www.style.fm/as/05_column/ikeda14.shtml

池田さんは面白い人物だった。最近、彼のことを思い出すことが多い。

2020年8月13日(木)
主には「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」の作業。Amazon prime videoで岡本喜八監督の「殺人狂時代」を観てから、「アンナチュラル」を1話から7話まで観る。ビデオ(DVD)レンタルの時代なら、月に1万円分以上の量をAmazon prime videoで観ているなあ。

2020年8月14日(金)
土曜のオールナイトに備えて床屋へ。床屋の待ち時間に「ユリイカ」の「今 敏の世界」に目を通す。読み応えのある記事が何本もあった。アニメ制作スタッフの発言が多いのもよかった。

2020年8月15日(土)
オールナイトの予習で『マイマイ新子と千年の魔法』を配信で観る。東映チャンネルの『空飛ぶゆうれい船』4Kリマスター版を、冒頭だけ確認するつもりが最後まで観てしまう。『空飛ぶゆうれい船』は最近の上映用フィルムも状態がよかったので「見違えるほど綺麗になった」とは思わないけど、やっぱり綺麗だ。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 125 『この世界の片隅に』四度目の夏」。片渕さんと顔をあわせるのは、1月4日のトークイベント以来。お元気そうでよかった。トークの主なテーマは2016年版と『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の違いについて。それから新スタジオについてなど。

第677回 小田部先生と『三千里』

 すみません。本当は前回の続きで「絵(画)コンテという仕事」を書こうと思ったのですが時間的にまとめられず、

今回は高畑勳監督作品『母をたずねて三千里』の話!

 なんか最近、某動画配信サイトで配信されているのを見つけて、最終話まで観てしまい「やっぱり良い!」と。自分、確かに出崎統フリークで通ってますが、いわゆる「宮崎駿、高畑勳」両監督も大好きです。特に『三千里』はLD-BOXを定価で買ったくらいよく観てました。で、最近になってネットで見返したと。
 で、もちろん『三千里』は高畑アニメであることは間違いないのですが、板垣個人としては小田部羊一先生のキャラクターデザイン・作画監督作品であるのも重要ポイント。なぜなら自分の学生時代の先生で、当時(1993〜1994)その「動画構成」の授業で『三千里』のアメデオ(猿)のしっぽ振りなど、先生御自身も課題としてキャラクターで遊ばれたりしてた思い出深い作品だからです。他にも『アルプスの少女ハイジ』のキャラを使ったレイアウト講義などもありました。小田部先生はまさしく描かれるキャラクターまんまな方。とても純朴で優しい癒し系な雰囲気。ハイジやマルコのように素直でまっすぐなリアクションをお見せになります。例えば顔のある車(機関車で言うとトーマスのような)の「つけPAN」の課題で、自分が勝手に「太陽の熱で溶けてしまう」ように描いてみせた時の反応が今でも忘れられません。

 自分としては、ちょっとしたブラックユーモア風にまとめた感じだったんですが、小田部先生は素直に「溶けた」ことに驚かれ、見てくださった後、「溶ける寸前に太陽を憎らしそうに睨んだら?」と、これまたニッコリ笑ってアドバイスをしていただけました。小田部先生、楽しい学生生活をありがとうございました!

第191回 パズルはダンス 〜ファイ・ブレイン 神のパズル〜

 腹巻猫です。最近、ドラマや劇場作品で妖怪ものが流行っているようす。NHKでは7〜8月にドラマ「大江戸もののけ物語」を放映していたし、テレビ朝日では8〜9月にドラマ「妖怪シェアハウス」を放映。劇場では9月から実写劇場作品「妖怪人間ベラ」が公開中です。
 妖怪ものとはちょっと違うけれど、東海テレビ制作のドラマ「恐怖新聞」も放映中だし、日本テレビはドラマ版「怪物くん」を再放映している。そして、先日、三池崇史監督の「妖怪大戦争 ガーディアンズ」が2021年公開予定で制作されることが発表されました。
 コロナ禍で妖怪アマビエが注目されたおかげかも……。
 妖怪もの好きの筆者は可能な限り追いかけていますが、中でも「妖怪シェアハウス」が痛快で面白かった。妖怪の描き方が現代的で、妖怪をネガティブにとらえない筋立てもよかった。音楽は筆者が注目している作曲家のひとり、井筒昭雄が担当。遊び心たっぷりの音楽で楽しませてもらいました。


 今回取り上げるのは妖怪もの……ではなく、「妖怪シェアハウス」の音楽を手がけた井筒昭雄の作品。2011年に放送されたTVアニメ『ファイ・ブレイン 神のパズル』である。
 井筒昭雄は1977年生まれ、徳島県出身。幼少時はドラムに興味を持っていたが、中学生になってギターに転向、高校生時代から曲を作り始めた。1999年、1人多重録音ソロユニットFab Cushionとしてデビュー。これをきっかけに、CM音楽、TV・映画音楽を手がけるようになる。Fab Cushionの活動は現在も継続中で、中路あけ美とのポップグループ ・LEMOでも活躍中だ。
 映像音楽の代表作に、テレビドラマ「ブラッディ・マンデイ」(2008)、「ジョーカー 許されざる捜査官」(2010)、「ジウ 警視庁特殊犯捜査係」(2011)、「99.9 刑事専門弁護士」(2018)などがある。ドラマ版「怪物くん」(2010)の音楽も井筒昭雄だった。ほかにも忍者時代劇「猿飛三世」(2008)や宮藤官九郎脚本の「11人もいる!」(2011)、マンガ原作の「死神くん」(2014)、今をときめく池井戸潤原作の「民王」(2015)、昨年放映されて話題を集めた「トクサツガガガ」(2019)など、「ん、これは?」と思う注目作や話題作の音楽を数多く手がけている。
 以前、筆者がインタビューしたときにうかがった話によれば、井筒昭雄は筒美京平やレイモンド・スコットの音楽に影響を受けたという。歌謡曲的なキャッチーなメロディと、ちょっと懐かしい感じのソフトロック風のサウンドは井筒昭雄の持ち味のひとつ。また、レイモンド・スコットはさまざまな電子楽器を発明し、それを自在に操ってユニークな音楽を生み出した音楽家。1人多重録音ソロユニットとしてデビューした井筒昭雄と重なるものがある。
 作品ごとに個性的な発想で工夫を凝らした音楽を聴かせてくれる作曲家なのだ。

 『ファイ・ブレイン 神のパズル』は井筒昭雄がはじめて手がけたアニメ作品である。2011年に第1シリーズが放映され、2012年に第2シリーズ、2013年に第3シリーズが放映された。アニメーション制作はサンライズ。井筒昭雄は3シリーズを通して音楽を担当している。
 主人公は√(ルート)学園に通うパズル好きの高校生・大門カイト。ある日、脳を活性化させる、オルペウスの腕輪を手に入れたカイトは、世界のどこかにある、神のパズルを解くことができる存在ファイ・ブレインの候補者となってしまう。カイトはほかのファイ・ブレイン候補者や学園の仲間と競いあい、協力しあいながら、謎の頭脳集団POGとの命がけのパズル・バトルに挑んでいく。
 ゲームを題材にしたアニメは多いが、パズルをテーマにした作品は珍しい。本放映時は本編に登場したパズルの解説コーナーや連動データ放送で視聴者がパズルに挑戦する趣向も設けられていた。パズルの面白さだけでなく、カイトを中心とした人間ドラマや謎の集団PODをめぐるミステリアスな展開も見どころだ。
 パズルへの挑戦が毎回の見せ場となる作品。こういう場合、クールな頭脳戦を連想させるリズム主体の曲やアンビエント系の音楽が流れることが多い。が、本作はまったく違うアプローチだ。
 カイトがパズルに挑む場面では、中南米音楽風のエネルギッシュな曲が流れる。また、カイトが全国をめぐってパズルを解くストーリーから、エスニックな要素も加味されている。音楽だけ聴くと、南米の遺跡をめぐる冒険もの? と思ってしまうようなユニークな作品だ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは、第1シリーズ放送終了直前の2012年3月28日に「ファイ・ブレイン 神のパズル オリジナル・サウンドトラック Quebra Cabeca」のタイトルで発売された。また、サントラ第2弾「ファイ・ブレイン 神のパズル オリジナル・サウンドトラック2」が、第3シリーズ終了直前の2014年3月19日に発売されている。発売元はいずれもフライングドッグ。
 サウンドトラック1枚目から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. Quebra Cabeca(歌:シキーニョ)
  2. オルペウスの腕輪
  3. 汝、精神と頭脳の刃を持て
  4. Brain Diver (TV edit)(歌:May’n)
  5. ナチュラルモチベーション
  6. 魂の閃き
  7. PZLアディクション
  8. 円卓の天才たち
  9. LET’S PUZZLE TIME
  10. ピタゴラスの封印
  11. Φ Brain
  12. √学園
  13. 赤い覚醒
  14. 未知へ誘う風
  15. 情熱とロジック
  16. 欲望のパズル
  17. Boooost!!
  18. 追憶の草原
  19. スウィーツ・パンチ
  20. 賢者と愚者
  21. 蝶のみる夢
  22. RED signal
  23. mystic musk
  24. 時のない遺跡
  25. GENIUS A GO GO
  26. DOPAMINE
  27. タルタロスに咲く花
  28. 愛する才能
  29. Tune Up Your Brain
  30. POG
  31. 永劫回帰アルゴリズム
  32. 真実を求める者へ
  33. 恋のパズルを解いて(歌:中島愛)
  34. Secret Labyrinth
  35. ホログラム(#25 version)(歌:清浦夏実)

 全35曲、たっぷり74分収録。オープニング主題歌の「Brain Diver」とエンディング主題歌の「ホログラム」以外は井筒昭雄の曲だ。
 1曲目に置かれた「Quebra Cabeca」が目を引く。アルバムのタイトルにもなっているこの曲は、ポルトガル語で歌われる挿入歌。「Quebra Cabeca」とはポルトガル語で「パズル」のことだ(最後から2番目の”c”は正しくは下にひげのようなセディーユがついた文字)。ポルトガル語はブラジルの公用語である。
 作詞と歌はブラジル人歌手のシキーニョ。歌詞はパズル・バトルを題材にしたものだ。思わず踊り出したくなるような陽気でにぎやかなサンバ調の歌。第2話でカイトがパズルを解く場面に流れた。
 トラック2の「オルペウスの腕輪」はコーラスとパーカッションをメインした民族音楽風の曲。南米の古代の祭礼音楽の雰囲気だ。第1話でカイトがオルペウスの腕輪を入手するシーンに使用されている。
 トラック3「汝、精神と頭脳の刃を持て」は、ギター、カバキーニョ、パーカッションなどにホーンセクション、ストリングス、コーラスがからむ、エキゾティックなダンス音楽。
 アルバム冒頭の3曲で『ファイ・ブレイン〜神のパズル』の音楽の方向性が伝わってくる。
 カイトたちがパズル・バトルに挑む場面には、こうしたブラジル音楽風の情熱的な曲やパーカッション主体の民族音楽風の曲がよく流れる。「魂の閃き」「PZLアディクション(=パズル中毒の意)」「LET’S PUZZLE TIME」「Φ Brain」「赤い覚醒」「情熱とロジック」「永劫回帰アルゴリズム」など、いずれも同じテイストの曲だ。「LET’S PUZZLE TIME」は、第1話でカイトが「パズルタイムの始まりだ」と言って難問に向かっていく、曲名そのままのシーンで使われていた。
 サンバとパズル。結びつかないように思えるが、パズルを解くときの脳が沸騰するような感覚をイメージした曲調なのだろう。パズルは脳のダンスなのだ。
 パズルを解くタイムリミットが迫ったり、カイトたちが危機に陥ったりするシーンでは、ロック的な「Boooost!!」「RED signal」や弦楽器主体の「DOPAMINE」「Tune Up Your Brain」「タルタロスに咲く花」といった曲が流れて、緊迫感、焦燥感を盛り上げている。「タルタロスに咲く花」は第1シリーズの最終話(第25話)でカイトが「神のパズル」に挑む場面に使用された。
 アルバムでは、これらの曲を中心に、日常曲や不安曲などをちりばめて、パズル・バトルの雰囲気を再現している。日常曲では、学園生活のシーンに流れる「ナチュラルモチベーション」「√学園」、パズルマニアの変人ぶりを伝えるユーモラスな「円卓の天才たち」「GENIUS A GO GO」などが楽しい。アップテンポの曲の合間に脱力系の曲がはさまって、聴き飽きない、メリハリの効いた構成になっている。
 いっぽうで、しんみりしたシーンに流れる曲にも印象に残るものがある。
 トラック10「ピタゴラスの封印」は第17話で、カイトが両親の正体を知らされる場面に流れた曲。ミステリアスな導入部からストリングスによる哀感ただよう曲調に展開。後半は女声コーラスが加わり、情感を盛り上げる。メランコリックな弦のアンサンブルが、カイトが受けた衝撃と動揺を表現していた。
 第17話の上記に続くシーンに流れたのがトラック32「真実を求める者へ」。淡々としたピアノのリズムにストリングスが奏でる悲劇的な旋律が重なり、ホルンも加わって重厚な音のうねりを作っていく。カイトが自身の生い立ちと両親についての真実を聞かされ、心を乱す場面をドラマティックに彩った。シリーズのターニングポイントとなるエピソードを支えた重要な曲である。
 次のトラック33には劇中歌「恋のパズルを解いて」が収録されている。これは第10話から登場するアイドル・姫川エレナが歌う曲。劇中のパズル番組「パズルキングダム」の中で流れていた。歌っているのはエレナの声も担当した中島愛。ちょっと切ない、大人びた曲調のアイドルソングである。
 井筒昭雄はこうしたパスティーシュ風の「○○っぽい曲」もたいへんうまい。本作では、ほかに劇中特撮ドラマ「パズルクィーンエレナ」のテーマ曲がある(サントラ未収録)。ドラマ「トクサツガガガ」の劇中ヒーロー番組「救急機エマージェイソン」のテーマやドラマ「妖怪シェアハウス」の中で座敷童子が語る「日本妖怪むかし話」の曲も同様の趣向。どれも、思わずニヤリとしてしまう曲だ。
 サントラパートを締めくくるのはトラック34「Secret Labyrinth」。勢いのあるラテン調で始まり、ギターとストリングスがかけあうスリリングな曲調に転じる。文句なしにカッコいい1曲。第1話のラストでカイトがパズルの解をひらめく場面などに流れた、いわば、カイト勝利の曲だ。パズル・バトルを勝ち抜いたよろこびと高揚感に満たされて、アルバムは大詰めへ。
 最後に収録されたエンディング主題歌「ホログラム」は、最終回にのみ流れた歌詞2番バージョン。本編の余韻を思い出させる、ニクイ構成である。

 井筒昭雄のユニークな発想と曲作りの巧みさが味わえるサウンドトラックだ。音楽アルバムとしても、明るくホットな気分になる1枚。聴けば脳が活性化する。
 テレビドラマでは引っ張りだこの井筒昭雄だが、アニメ作品は現在のところ本作だけ。あまりにもったいない。今後のアニメ音楽での活躍を期待したい。

ファイ・ブレイン 神のパズル オリジナル・サウンドトラック
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ファイ・ブレイン 神のパズル オリジナル・サウンドトラック2
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アニメ様の『タイトル未定』
271 アニメ様日記 2020年8月2日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年8月2日(日)
自分の作業を進める連休の2日目。台割りを作り直して、その後は原稿作業。やることを絞ったので、気持ちよく作業ができた。
『ハクション大魔王2020』14話「元祖カンちゃんが帰ってきた!の話」を観る。大魔王とアクビが、旧シリーズ『ハクション大魔王』のカンちゃんと再会する。現在のカンちゃんは58歳らしい。再会の場面そのものはドラマチックなものとなっているが、それ以降の場面は淡々としている。旧シリーズ『ハクション大魔王』最終回のテンションを考えると、あっさりしすぎていると思ったけれど、むしろ、これくらいの感じのほうがリアルなのかもしれない。

2020年8月3日(月)
ワイフとの早朝散歩は続いている。ワイフの提案で普段よりも早めに外出し、自宅近くのある場所で陽が昇るのを見る。なんというか夏らしい。その後はデスクワーク。夏らしい映画ということで『宇宙ショーへようこそ』と『虹色ほたる ~永遠の夏休み~』を観る。『虹色ほたる』はビデオマーケットで観たのだけど、多分、今まで観た『虹色ほたる』の中で一番映像が鮮明。監督の意図としては鮮明すぎるのかもしれないけれど、好印象。

2020年8月4日(火)
早朝散歩以外はずっとデスクワーク。3書籍の編集作業を進める。「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」のラフと追加キャプション。「アニメスタイルちゃんのうすい本」の原稿が届く。別の書籍のテキスト作業、ラフのチェック。印刷会社とのやりとり、流通についてのやりとり等。
YouTubeで配信中の『カレイドスター』を27話から39話まで視聴。第3クールも面白いなあ。レオン、メイ、ロゼッタのコントラストがいい。自分は本放送当時、メイの人格にイラっとしていたかもしれない。

2020年8月5日(水)
引き続き、3書籍の編集作業を進める。「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」のラフを描いたり、テキストをチェックしたり、入稿スケジュールを作ったり。今日も「アニメスタイルちゃんのうすい本」のイラストが1点届く。
Amazon prime videoで「逃げるは恥だが役に立つ」を視聴する。放送時に話題になっていたのは知っていたけど、観ていなかった。確かによくできているし、面白い。登場人物の反応からすると森山みくり(新垣結衣)って、劇中では「わりと可愛い」くらいであって美人ではないのね。「あまちゃん」の劇中だと天野アキが美人ではないらしいのと同じ。

2020年8月6日(木)
ずっとデスクワーク。休んでいた事務所スタッフがひさしぶりに出勤。これからはたまに出てきてもらうことになりそうだ。「逃げるは恥だが役に立つ」の最終回を観て、有料配信が始まった『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』、そして、劇場版『若おかみは小学生!』を観る。
「逃げるは恥だが役に立つ」の「好きの搾取」の話は面白かった。「職業としての主婦」の話で始まって、そういった展開になるのは納得。視聴者が考えたり、議論したりするきっかけを提供するドラマだと思った。

2020年8月7日(金)
連休前だけあって慌ただしい。「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」のテキストやラフの作業は一段落した(この本の原画のページの構成は事務所スタッフに任せている。念のために記しておく)。「アニメスタイルちゃんのうすい本」は依頼原稿が全て届いた。色々な方にアニメタイルちゃんを描いてもらう企画のイラストは全部で10点。表紙も描きおろしなので、合計で11点。アニメスタイルの本としては描きおろしが多めだ。一番の見どころは井上俊之さんの下ネタかもしれない。
Netflixで『Re:ゼロから始める異世界生活 新編集版』を1話から視聴。序盤の辺りはすでに懐かしい。

2020年8月8日(土)
三連休1日目。事務所で「アニメージュ」の京都アニメーション特集に目を通す。その後はゆるくデスクワーク。夕方から吉松さんとSkype飲み。
Netflixで『Re:ゼロから始める異世界生活 新編集版』の続きを数話観た後、YouTubeの「ポケットモンスター ソード・シールド」オリジナルアニメ『薄明の翼』を改めて1話から観る。

「アニメスタイル20周年展」が開催中
第5弾は劇場版『若おかみは小学生!』の展示です

 「アニメスタイル」の20周年を記念して、ササユリカフェで「アニメスタイル20周年展」を開催しています。開催は9月末までとお伝えしてきましたが、もう少し続けさせていただくことになりました。

 書籍「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」の刊行を記念して、「アニメスタイル20周年展」の第5弾「メイキング・オブ『劇場版 若おかみは小学生!』」を開催します。展示物は制作初期に高坂希太郎監督が描いた「キャラクターラフ」をはじめ、原画、イメージボード、レイアウト、絵コンテです(「キャラクターラフ」は生原画。他は複製画となります)。

 「メイキング・オブ『劇場版 若おかみは小学生!』」は10月1日(木)~10月19日(月)まで。営業時間は午前11時30分~午後6時(午後5時30分最終入場)で、火・水曜が定休日です。開催期間中のササユリカフェは終日立ち見営業となります。入場料はいただきませんが、ワンドリンクの注文をお願いしています。
 会場では「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」をはじめ、アニメスタイルの書籍を販売します。



■関連リンク
ササユリカフェ
http://sasayuricafe.com

「アニメスタイル20周年展」が開催中 第4弾は馬越嘉彦さんの原画、デザイン画などの展示です
http://animestyle.jp/2020/08/27/18022/

【アニメスタイルの書籍】「劇場版 若おかみは小学生! 原画集」は名場面をたっぷり収録!
http://animestyle.jp/news/2020/09/09/18105/

レイトショー「新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL 現代アニメの傑作 劇場版『若おかみは小学生!』」
http://animestyle.jp/2020/08/26/18008/

第676回 絵(画)コンテという仕事・回想編

他人の描いた絵(画)コンテを直す(修正する)というのは、いちから自前で描くより下手をすると時間がかかるものです!

 かれこれ10年以上前にも書いたテーマですが、現在はすでに考えが変わってたりもするので、もう一度改めて話題にしてみようと思います。いちファンの方々でも「コンテって監督はどの程度関わってるの?」と考えたことがあるのではないでしょうか(ないかな)? つまり「この画作りカッケーッ!」「アクションのカット割り、迫力あるぅ!」と感動した時、その手柄は本当になんでも監督にあるのか? 実際自分が若い頃、何人もの監督のコンテをお手伝いしましたが、コンテ打ち合わせのやり方など千差万別。本当、ガチで脚本めくりながらやるタイプから、ポンと脚本放って「君の好きに描いていいよ」な監督まで。はたまた雑談だけな場合も。例えばガチタイプでは『鉄人28号』(2004年)の今川泰宏監督や『ミチコとハッチン』(2008年)の山本沙代監督。お二方とも写真参考やビデオ資料などを山ほど渡してきて「このシーンはこうしたい」とか「このキャラクターのモデルは〜」などと、非常に具体的に俺(各話コンテマン)に対して「こう描いてください!」とはっきり伝える打ち合わせだったと記憶しています。要は今川監督や沙代監督は

“自分の作りたいフィルムを、いかに他人に描いてもらうか?”が監督の仕事!

と考えてるのだと思います。これはこれで実に監督らしいやり方で、アニメーター出身でない方が多いように思います。
 で、脚本ポンの好きにやってタイプは、アニメーター監督に多く見られます。てとこで毎度の時間切れ。

アニメ様の『タイトル未定』
270 アニメ様日記 2020年7月26日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年7月26日(日)
連休最終日。この4日間は外出はほとんどなし。仕事は進んだし、睡眠もたっぷりとった。OVA『今日から俺は!!』の最終10話を視聴。シリーズを通じて作画は丁寧。ただし、画風はシリーズ中に変わっている。『幽★遊★白書』と時期とスタッフが重複していて、画的に通じるところがある。それから、ネットで公開された佐藤順一夫妻の「きんぎょ注意報 第1話コメンタリー」を聴いた。
紙の本で「天人唐草」を読む。「吉祥天女」と同じく、タイトルだけ知っている作品だった。こういった内容のものだったのか。描かれた当時は今よりも衝撃的な内容だったのだろう。読んでよかった。

2020年7月27日(月)
ワイフとの早朝散歩は続いている。サンシャインの裏で建設中だった新しい公園が中に入れるようになっていた。公園の名前はとしまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)。かなり広い公園だ。ワイフは「池袋なのに空が広い」と大喜び。15時から新宿で進行中の書籍で取材。それ以外はデスクワーク。
7月26日(日)の『ちびまる子ちゃん』の「ヨッちゃんの彼女」の巻を観る。タイトルになっているヨッちゃんの彼女は、美人で性格がよくて清純派で、天然なところもある。老若男女が惹かれる女性だ。演じているのは久川綾さん。後で知ったのだけど、このエピソードはリメイクで、初代のヨッちゃんの彼女役は井上喜久子さんだったようだ。

2020年7月28日(火)
早朝散歩でまた、としまみどりの防災公園に行ってみる。TOHOシネマズ池袋の10時からの回で、ワイフと『風の谷のナウシカ』を鑑賞。週イチで映画館で映画を観るようにしていたのだけど、来週は無理かもしれない。Zoom打ち合わせをはさんで、午後はデスクワーク。
以前、「アニメ様365日」で『風の谷のナウシカ』について「いまだに映画として向き合っていない気がする」と書いたけれど、今回の鑑賞で向き合うことができた気がする。次にコラムや解説を書くときは、あまり悩まなくて済みそうだ。
以下はそれとは別の話。今だと、自分はミトとかお爺さん達に気持ちを重ねて観てしまう。お爺ちゃん気分で観ると、彼らがナウシカを慕う気持ちがよく分かる。僕にとって『風の谷のナウシカ』は当時から気持ちの置き場所がつかみづらい映画だった。つまり、感情移入できるキャラクターがいなかった。今回の鑑賞が一番感情移入ができたかもしれない。

2020年7月29日(水)
午後は西武新宿線のアニメスタジオで打ち合わせを2本立て。
Amazon prime videoの日本映画NETで『ハッピ-バ-スデ- 命かがやく瞬間』を観る。同じく、Amazon prime videoのプラス松竹で「二階の他人」を観る。『ハッピ-バ-スデ- 命かがやく瞬間』は親による児童虐待、いじめ、障害などをモチーフにした劇場アニメーション。淡々とした作品だけど、インパクトのある場面も。「二階の他人」は実写映画。山田洋次さんの監督デビュー作だそうだ。60分にも満たない作品だけれど、ちゃんと面白い。

2020年7月30日(木)
夕方まで書籍編集の進行、グッズの作成、棚卸し、月末の振り込み、家賃の支払い等。説明しておくと、事務をやっているスタッフが休んでいるため、この数ヶ月、僕の仕事が増えているのだ。
『メジャーセカンド』を1話から10話まで視聴。楽しんで観た。最初の『メジャー』がEテレで始まったのが2004年。その頃は「これをNHKでやる意味があるのかなあ」と疑問を感じていたのだが、今では「誰でも楽しめる作品をNHKでやってくれるのがありがたい」と思っている。

2020年7月31日(金)
原稿作業を進めるはずだったが、デザイナーさんへ依頼、イベント関連の連絡など、それ以外の作業が多くて原稿に手をつけられなかった。
10年前に作った「さよなら絶望先生全書」の在庫の残りが14冊になったと事務所スタッフからの報告があった。よかったよかった。在庫は社内資料をとして残すこととし、Amazonへの出荷を止めて、「アニメスタイル ONLINE SHOP」の販売も止めるように指示を出す(しかし、後日になって倉庫に数百冊の在庫があることが判明。Amazonへの出荷と「アニメスタイル ONLINE SHOP」での販売を再開した)。

2020年8月1日(土)
平日は自分の作業(主に原稿)がなかなか進められないので、この土日は自分の作業に集中することにした。「金曜ロードSHOW!」でやった『聲の形』を録画で視聴。Netflixで『トランスフォーマー:ウォー・フォー・サイバトロン・トリロジー(Transformers: War for Cybertron Trilogy)』の数話分を視聴。画作りがいい。YouTubeで期間限定リバイバル配信の『サンフェス応援上映リターンズ オンライン!』も観る。要するにサンライズ作品のオープニング、エンディング集だ。昔からサンライズのこういうビデオがほしいと思っていた。商品化は難しいのだろうか。
録画で観たのでちょっと無責任な発言になるけれど、『聲の形』はテレビ放送にハマリがいいのではないかと思った。土曜や日曜の午後とか深夜に放送するのもいいかもしれない。今回の放送のエンディングは、オリジナルのものではなく、テレビ用に編集されたものだったけど、本編の終わり方は悪くないと思った。エンディングの直後に『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の予告が入るのがよかった。予告が始まった瞬間に少し感動した。「金曜ロードSHOW!」で京都アニメーションの作品とSHAFTの作品が続くのはどのくらい意図されたものなのだろうか。その後にスタジオジブリの作品(『となりのトトロ』『コクリコ坂から』『借りぐらしのアリエッティ』)が続くのもとてもよいと思う。

第675回 絵(画)コンテという仕事

 昔、何年も前に興味本位で手相を見てもらった際、易者さんに

あなた、二重生命線で人の倍生きるよ!

と言われました。信じる信じないは別として、悪い気はしない程度。本気で人の倍生きること前提の人生設計を組むハズもなく、今現在の自分は46歳、十分人生の折り返し地点を越えたと認識しております。で、その現時点では

生命を半分使い切ってなお、ひとつのやりたい仕事で食っていけることの幸せたるや!

と感慨。そう、絵(画)コンテという仕事がそれです! 大変辛い反面、こんなに面白い仕事はありません。何しろ単純な話、自分の思ったアングル・タイミング・カット割りに動きがつき色が塗られ、役者(声優)さんにより声が吹き込まれ、効果音や音楽までもつけてもらえる! こんな唯我独尊で勝手で楽しい仕事は他にあるでしょうか? ちなみに同じ内容のことを出崎統監督もインタビューで仰ってました、というか俺の方が出崎監督(のお言葉)の受け売りっぽい。でも自分もそう思ってるのは本当です。

 ま、ついでなのでもう少しコンテの話を続けます。まず自分がコンテを切る際、一番に考えるのは

いかにリミッターを外してフリーダムにイメージを広げられるか?

ということ。「アレやっちゃいけない!」「コレ描いちゃダメ!」から何か新しいモノが生まれた歴史などかつて一度もないはず。監督として人にコンテを振る際も、できるだけ「脚本読んで好きに描いてみてください」と言います。あ、さらについでなので

監督自ら切るコンテと他人に振る(任せる)コンテの違い!

について語っておこうと思います。通常アニメファンの方々は、その作品の面白さの手柄をなんでもかんでも監督に還元しがちですが、意外とそうでもないという話、はまた次回。

アニメ様の『タイトル未定』
269 アニメ様日記 2020年7月19日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年7月19日(日)
午前9時半に池袋を出て新宿に。ロフトプラスワンで無観客配信イベント「アニメスタイルTALK 続・沓名健一と語るアニメ作画の20年」を開催。終盤駆け足になったが、とにかく2020年まで到達した。よかった。「続々・沓名健一と語るアニメ作画の20年」をやることになるのではないかと思っていた。新宿駅はこの日、東西自由通路が開通。駅の印象がかなり変わった。

2020年7月20日(月)
午前1時過ぎに事務所へ入って原稿作業。仕事の合間に自宅の粗大ゴミを出したり、夏布団を買いに行ったり。仕事でも片づけることが多くて、夕方にはクタクタ。
『CLANNAD AFTER STORY』を最終回まで視聴。今回は朋也と汐が旅行に行くあたりが染みたなあ。終盤の展開については色々と思うことがあるのだけれど、それはいずれきちんと文章にしたい。番外編 「一年前の出来事」も視聴。dアニメストアには「もうひとつの世界 杏編」だけないのね。

2020年7月21日(火)
13時までデスクワーク。13:35から、ワイフとグランドシネマサンシャインで「ダークナイト【IMAXレーザーGT字幕】」を鑑賞。フルサイズIMAXのシーンは少ないのだが、その少ないシーンはかなりガツンときた。IMAX上映は映像が鮮明になった分だけ、登場人物が誇張された存在だということが強調された気がした。
YouTubeで配信中の『カレイドスター』を視聴中。7話「笑わない すごい 少女」は今観ても凄いし、面白い。テロップで和田高明さんの役職が「演出・作画」になっていて、どうしてこうなったんだっけと思って、「WEBアニメスタイル」の過去記事を見たら、その理由をインタビューで訊いていた。偉いぞ、自分。

animator interview 和田高明(3)[WEBアニメスタイル・旧サイト]
http://www.style.fm/as/01_talk/wada03.shtml

「WEBアニメスタイル」で、吉松さんの「サムシネ!」の連載が再開。

2020年7月22日(水)
11時からササユリカフェでとある取材。昼飯を食べてから池袋に。入れ替わりで事務所スタッフがササユリカフェで「吉成曜ラクガキ」の設営作業。午後はデスクワーク。連休前も慌ただしい。

2020年7月23日(木)
連休1日目。「新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL 劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇 & 螺巌篇」開催日。今回はトークがなかったので、物販を事務所スタッフに任せて、自分は事務所でデスクワーク。dアニメストアで配信が終わるというので『科学冒険隊タンサー5』を数話分観る。途中でバンダイチャンネルでは引き続き見放題であるのに気づく。

2020年7月24日(木)
連休2日目。早朝散歩以外は外出はしないで、ずっとデスクワーク。インタビューまとめを続ける。さすがに作業が進んだ。
dアニメストアでOVA『今日から俺は!!』1話から4話を観る。このシリーズは未見だった。もりたけしさんは1話の監督で、2話以降の全ての絵コンテを担当。初期話数はガイナックスのメンバーも作画で参加している。ガイナックススタッフが入っているかどうかは別にして、作画がいい。動画の線も綺麗だ。ビデオリマスターの力が大きいのだろうと思うけど、映像が鮮明だ。いきなり声優の話になるけれど、屋良有作さんが高校生役をやっていて、すっごい味のあるキャラクターになっている。

2020年7月25日(土)
連休3日目。夕方までデスクワーク。16時にワイフと近所の立ち飲み屋に行って、Skype吞み用の焼き鳥や揚げ物を買う。できるのを待っている間にもちょっと吞む。16時半から吉松さんとSkype吞み。ゴールデンウィークの頃に戻った感じ。そして、居酒屋呑みよりもリラックスして呑める。

第674回 躍動するコンテ

 最近、コンテでいよいよ忙しくなりました(2クール目突入)。毎日毎日コンテコンテ。普通に言って遊ぶ暇がありません。端から見ると苦しそうに見えるかもですが、作品づくりが何より好きなので全然苦にはなりません。自分でも驚くくらい、46歳にもなって何か(主にコンテや原画)を描いてるだけで幸せなんです、板垣という男は。世に言う晩酌的なものも30代後半あたりで週1〜2回ほどになり、40越えてからは、打ち上げやたまに会う友人との会合以外はまったく呑まなくなりました。呑んでもノンアルです。「普段何が楽しみなの?」と問われるとやっぱり仕事!
 中学の頃、出崎統監督のアニメを観て興奮し、

俺もこんな躍動感のあるモノが作りたい!

と思ったんです。「モノ」とはその当時その正体が「アニメ」だと分からなかったから、そう表現するしかなかったわけで、今ならはっきり「躍動感のあるアニメを作りたい!」と言います。

 自分が出崎監督のフィルムで好きなのはその躍動感なんです。それはアニメートのみではなくカメラワークやアングルも含む、フィルム全体の。もちろん画面には直接映らない、キャラクターの感情も激しく、時に優しく、もう本当にすべてのことが動いています。それは画が止まっても!

「アレやっちゃいけない」「コレをやっちゃ映画じゃない」と絶対に否定しない、無制限に自由な表現で緩急自在にドラマを操る出崎コンテの技は、俺にとって永遠の憧れです!

 で、その出崎監督の「ぴあCOMPLETE DVD BOOKシリーズ」でいよいよ名作『家なき子』が10月29日より5ヶ月連続(全5巻)でリリースされるそうで、仕事以外の楽しみがまたできました! まだ観たことがない方は、この機会に是非買って観てください。俺の言ってる意味が分かりますから!

 さて、コンテコンテ……。