【ARCHIVE】 「この人に話を聞きたい」
第51回 平田敏夫(前編)


「この人に話を聞きたい」は「アニメージュ」(徳間書店)に連載されているインタビュー企画です。
このページで再録したのは、2003年1月号掲載の第五十一回 平田敏夫(前編)のテキストです。




『花田少年史』のオープニングを見て「おおっ!」と思った人は少なくないだろう。イラスト調に描かれたキャラクターが奔放に動く、アーティスティックな味わいのフィルムである。このフィルムを作ったのが彼、平田敏夫だ。彼は『金の鳥』『ボビーに首ったけ』等、既成の枠にはまらぬ面白味のある作品をいくつも残してきた。また、個人作家として活動するのではなく、職人的に様々な作品に関わり、その中で時折実験的な手法等を見せる、というスタンスも興味深い。今月と来月のふた月かけて、今までの仕事についてじっくりとお聞きする事にしよう。



PROFILE

平田敏夫(Hirata Toshio)

 1938年(昭和13年)2月16日生まれ。血液型A型。山形県天童市出身。武蔵野美術大学洋画科を卒業後、東映動画に入社。その後、虫プロダクションへ籍を移す。次いでジャガードでCM制作に関わり、やがてアニメ界に復帰。ズイヨー映像、サンリオを経て、マッドハウスへ。監督としての代表作は『ユニコ』『グリム童話 金の鳥』『ボビーに首ったけ』『はだしのゲン 2』『リトルツインズ』等。変わった仕事として、『あずきちゃん』全話におけるエピローグのイラストレーションがある。

2002年11月12日
取材場所/東京・マッドハウス
取材・構成/小黒祐一郎


―― 今日は、平田さんの今までのお仕事について、うかがいたいんですが。

平田 いいですよ。でも僕はね、ポリシーとかそういうものってあんまりないの。やっている仕事に関しても系統とかないでしょ。なんでもかんでも、おいしいものをやっている感じで。

―― でも、平田さんのお仕事は、はっきりしていますよね。汗臭いものとか、暑苦しいものはやらないんですね。

平田 「正解!」だね(笑)。時々絵コンテを描いて、監督とかチーフディレクターに言われる事があるの。「ええ! この場面、そんなにサーっと行っちゃっていいの?」とか、「もっと舐めるようにPANすればいいのに」と言われて。僕、体質的にそういうのはできないんですね。

―― マッドハウスが手塚治虫さんの『火の鳥』を3本作っているじゃないですか。りん(たろう)さん、川尻(善昭)さん、平田さんで。川尻さんが『宇宙編』をハードな感じでやって。(注1)

平田 そうでしたね。ケレン味のあるやつを、りんたろうさんがやって。

―― ええ。で、見やすいやつと言うか、喉越しのいい『ヤマト編』を平田さんがお作りになっているんですよね。

平田 うん。自己流だけど、基本的に綺麗に撮ろうかなあとは思っていて……。つい数日前に、今度の『鉄腕アトム』の監督の小中(和哉)さんに「『火の鳥』を観ました。平田さんってニューシネマだったんだ」と言われて、なるほど……と。僕はアニメーションでも赴くままカメラを回してみようとか、ちょっとアドリブで撮ったのをインサートしちゃうとか、そういうのを割と平気でやっちゃうの。ルールを無視しちゃうんですよ。映画のモンタージュ理論みたいなのを勉強してないから、自己流なんだよね。それにしても、ニューシネマって、いい言葉だなあ。

―― ドラマに関しても、過剰にドラマを盛り上げる、という事もあんまりなさらないのではないかと。

平田 嫌いなんですよ。

―― 嫌いなんですか(笑)。

平田 ええ。所詮作り物だし、エンターテインメントなんだから、「さあ、ここで泣いてくれよ」みたいに作っていくのもあるんだろうけど。でも、そういうのは嫌い。積み上げて盛り上げて、押して押して押しまくるのは嫌いというか、体質に合わないというか。「余韻とかニュアンスとか雰囲気で、十分伝わるんじゃないの?」なんて思うんですよ。僕は映画にしても、そういう系統の映画が好きですから。そんな好みが、つい出てしまうかもしれない。やっぱり、昔、夢中になったのはヌーベルバーグなんだよね(笑)。

―― なるほど。

平田 ハリウッド映画とヨーロッパ映画のどちらが好きかといえば、絶対的にヨーロッパ映画。ヨーロッパ映画って言い方も変だけど、アメリカ以外の映画の方が好きでしたね。イギリス映画も好きだし、フランス映画も好き、イタリア映画も大好きだし。ひと頃のポーランド映画とかね。そういったものに夢中になりましたね。

―― 昔の事からうかがっていいですか。平田さんは元々アニメーターで、東映出身なんですよね。

平田 そうなんです。東映に入って、最初に森康二さんのとこに配属されたのね(注2)。これが運命の分かれ目だった。今思うと森康二さんのところへ配属されなかったら、もうアニメをやっていないかもしれない。森さんは芸大を出てるんだよね。だけど、アニメーションを馬鹿にしてないというか、アニメーションというものをすごく厳しい目で見ていた。人間的にもとても素敵な人でしたよ。人を怒った事がない。僕は森さんが、怒ったところを見た事がない。だけど、すごく恐いというか(笑)。ニコニコした森さんに澄んだ目でじぃ~っと見られると、誤魔化しが効かない。そういう人だった。

 森さんはアニメーションというものを高度に捉えていたんだと思うんです。僕はアニメーションのアの字も知らないで森班に入って、その影響で、アニメーションって高級なものなんだと思うようになったんだと思う。今でもその想いはありますよ。

―― 話が前後しますが、平田さんは学校はどちらだったんですか。

平田 武蔵美です。油絵をやっていました。

―― 平田さんも美大卒なんですね。アニメの仕事を選んだ理由は何なんですか。

平田 出会い頭。

―― そうなんですか(笑)。

平田 大学4年の夏休みが終わって学校へ出ていくと、就職の募集が掲示板に張り出されていて、その中に「東映動画スタジオ」とていうのがあったんです。みんな、「なんだ、アニメーションスタジオって?」「漫画を描いて給料もらえるんだってよ」って、そういうノリだったね。それで何人か一緒に受けたんだと思う。受験者は、すごい人数でしたよ。

―― 他にも美大から東映動画に入った人は多かったんですか。

平田 うん。女子美、多摩美、芸大、日大。まるで美大生のたまり場みたいな感じでしたね。だから、あの頃の東映は面白かったんじゃないかな。大塚(康生)さんみたいに麻薬の捜査官をやってた人もいたし、宮崎(駿)さんや高畑(勲)さんみたいみたいな……。

―― 学習院と東大ですね。

平田 そうそう。早稲田や立教もいたね。芸大卒にしてもグラフィックデザインをやってた奴や、僕みたいに漫画じゃなくて油絵を描いてた奴もいて。画を描くにしても、みんな違う目的を持ってたから、人材の幅が広かったんでしょうね。その中にはアニメーションが好きで好きでしょうがない月岡貞夫とか、ひこねのりおとか。そういうアニメーションの仕事を目指して東映に入った連中もいた。宮崎さんもその口なのかな? 僕には分かんないんですけど。

―― そうだと思います。宮崎さんは『白蛇伝』を観て東映に入ったそうですから。

平田 そうだよね。それに高畑さんは、映画が作りたくって東映に入ったんでしょうね。あの頃は、そういう映画青年もいたんです。そんな人達に対して、僕は志が低かった。映画を撮りたいわけでもないし、アニメーションに関する知識もゼロに近かった。東映に入るまで、アニメーションなんて、日本で公開されたディズニーの映画を観た事があるくらいのものでしょ。試験を受けた時に、森さんや大塚さんが、どういう基準で僕を選んだのか未だに分かんない。結果的には、今も続けているんだから(笑)、きっと……。

―― アニメに向いてたんでしょうねえ。

平田 向いてたんでしょうね。でも僕以外にも、高畑勲、宮崎駿、りんたろう、杉井ギサブロー、月岡貞夫、ひこねのりおとか、当時の連中にはしぶとく生き残ってるのがいっぱいいますから。彼等の事を思い出すと「ああ、才能集団だったんだあ」と思うんです。「アニメーションというのは、アートである」みたいな志を持った人達もゴロゴロいましたよ。

―― 「アートである」と語るのは、どなただったんですか。たとえば月岡貞夫さんとか?

平田 そうでした。それから、永沢まことという人(注3)。彼は、今、スケッチ講座をやったり本を出したりしているんだけどね。彼なんかは「アニメーションはアートだ」と言っていたね。ユーゴスラビアの実験映画の上映会や草月ホールのアニメフェスティバルなどに、みんなを強引に連れて行ってましたよ。「アニメーションでこんなすごい事やってるんだ。もっと勉強しよう」って。

―― 率先してみんなを連れていったのが、永沢さんなんですね。他にはどなたが、そういった上映会に行っていたんですか。

平田 小田克也とか、白川大作とか。そういうところには、森卓也さんや手塚治虫さんもいて。そういう事があって、僕はアニメーションに実験映画的なものもあるんだと知ったんだ。それはその時に自分達がやっている仕事とは全然違うものかもしれないけれど、僕はそれでアートフィルム的なアニメーションに興味を持つようになったんです。そういう事に興味を持つ事に関して、同じ会社の中に「何を気取ってるんだよ」と思っていた人がいたのかもしれないけれどね。あるいはディズニーこそが至上の世界だという人もいたし、『雪の女王』が好きな人もいたなあ。僕はエンターテインメント系統の劇場作品だと、『やぶにらみの暴君』が好きだった。やっぱり、アメリカよりも、フランスの方がいいんだね(笑)。短編アニメーションだとトルンカとかゼーマンが大好きでね。そういう風に当時の東映や、あるいはちょっと後の虫プロにも色んな人がいた。だけど、『アトム』以降、テレビアニメって隆盛になって、大勢の人がアニメの世界に入れるようになると、逆に間口が狭くなったかなあ、と思うんだよね。

―― なるほど。テレビアニメ時代になってからの方が、入ってくる人材の幅が狭くなったかもしれないという事ですね。

平田 うん。そんな気がする。でも、今頃になって、短編アニメが見直されてきたみたいでね。ラピュタ阿佐ヶ谷とかで、新人が面白い短編を発表したりしているじゃない。ああ、やっぱりそうは変わっていないんだ。僕の見えるところになかっただけで、作っている人はいたんだ、みたいに思ったりしたね。

 大藤信郎とか川本喜八郎とか、日本の短編アニメーション、実験アニメーションにもすごい人は沢山いたんだよね。だけど、アートとしてグレードの高い作品を作る場所ってあまりなかったみたいで、そういう事をやりたい人がコマーシャルの方に行く事があったの。僕も虫プロから離れた後に、4年ぐらいコマーシャルの世界に行っているんだ。

―― 話はちょっと脇道にそれますが、『わんぱく王子の大蛇退治』と『ガリバーの宇宙旅行』って、ちょっとアートフィルム寄りの部分があるじゃないですか。

平田 そうですね。

―― やっぱり当時、原画をお描きになっていた方達に、そういう志向性があったんですよね。

平田 ありました。当時の東映では、班システムっていうのがあって、原画をチーフにして第二原画がついてチームを組むんです。班によって傾向の違いがありましたね。『わんぱく王子』や『ガリバー』で、だいたい永沢まことがチーフの班は、そんな事をやってましたね。

―― 踊ったりとか歌ったりとか(笑)。

平田 そうそう。で、ある時期は僕もそこへ入れられていたと思います。永沢班にいる時に、草月のアニメフェスティバルに誘われたりしたのかもしれない。それから永沢班と別に、月岡貞夫、杉井ギサブロー、りんたろう達のグループがあって。あの連中は、絶えず欲求不満というか。「もっと新しい事したい」と思っていた。彼等とつき合ったら、これがまた面白かった。彼等は才能の塊だから、みんな、キラキラと光っていて。僕なんか、どんどん引っ張られていったんですよ。20代の青春時代に馬鹿をやりながら刺激し合って。そういう事があったから僕みたいな凡人でも、色んな発想をできるような訓練ができた。今思えば、そう言えるという事ですけどね。

―― 東映にいる間は、ずっと動画なんですか。

平田 月岡貞夫が『狼少年ケン』というテレビシリーズをやった時に、初めて原画を描かせてもらった。その頃には手塚さん達が『鉄腕アトム』を始めていて、そちらに誘われて「チャンスだ」と思って虫プロに行くんです。東映の方は徒弟制度の段階を踏んで、第二原画になって、原画になってと上がっていくんだけど。手塚さんのところは過酷な状況で制作していましたから、もう……。

―― いきなり原画になれたわけですね。

平田 入ったらすぐに原画でしょ。東映では『狼少年ケン』で、数カットしか原画の経験がないのに、虫プロに行ったら即原画。今考えると、相当乱暴だったと思うんですけど。でも、4年間動画をやって、それが基礎になってたんでしょうね。虫プロに行ったら、そこにも才能の塊みたいな連中がゴロゴロしていた。

―― りんさん達はもう先に、虫プロに行ってたわけですよね。

平田 そうそう。りんさんとかギサブローさんがすでに先輩としていた。僕はいつもそういうスタイルなんですよ。あの連中の後をくっついてって、「来いよ」と言われるとついていく。自分から決して行動取らないっていうかね。虫プロには、富野由悠季がいて、出崎統がいて、高橋良輔がいて、丸山正雄がいた。みんな同世代なんだよね。そこにも「新しい事をやりたい」っていう欲求不満の連中が大勢いて。僕もそれに巻き込まれてしまった。彼等もしぶとく生き残ってるんだよね。

―― りんさんや富野さん、今、60歳ぐらいの方達ですね。

平田 そう。還暦を過ぎて、しぶとく「過激なオッサン」をやってるっていうのがすごいなあ。僕は全然違いますよ。その連中とは。

―― そうなんですか。

平田 違いますよ。その連中の後をトコトコとついてきているだけだから(笑)。

―― 虫プロで原画をお描きになって、演出デビューしたという事ですよね。

平田 そうです。だけど、演出の勉強なんてしてない。「エイゼンシュテインなんて全然知りません。モンタージュ理論って何ですか?」という感じでね。そういう奴に「明日から演出やれ」と言うのが虫プロのすごいところでね。そう言われたら、普通はビビるんでしょうけど、「やります」って言っちゃうのが、僕の浅はかさというか(笑)。でも、虫プロの面白さっていうのはそういうところにあったんだと思う。

―― 虫プロ時代には、演出の師匠にあたる方はいらっしゃるんですか。

平田 演出の師匠は山本暎一ですね(注4)。虫プロには漫画家出身の人や、アニメーターから演出家になった人など、色んなタイプの演出家がいましたが、その中で「監督ってのはこういうものなんだ」という事を教えてくれたのが、山本暎一だと思います。

―― それは仕事に対しての取り組み方みたいなものですか。

平田 そうです。「あ、監督って、こういう事をやるんだ」というのを初めて目の当たりにした、みたいな感じかな。

―― 虫プロ時代で、何かお気に入りの作品とかありますか。

平田 自分の仕事というわけじゃないけれど、『ジャングル大帝』で「アニメーションの背景ってのは、こういう発想していいんだ」と知って、目からうろこが落ちた。グラフィックデザインやってた松本強と伊藤信治を起用して、とんでもない発想で美術をやったんですよ。あの起用をした山本暎一って、すごい人だなあと思いますよ。あれはひとつのアニメーションの美術の転換期じゃないかと思うんですけど。

―― とんでもない発想って、色づかいについて、ですか。

平田 いや、背景として克明に描写するだけじゃなくって、「舞台感覚で、フォルムや色彩を使って再構成してしまおう」という発想がすごかった。『ジャングル大帝』ってアフリカが舞台だから、普通にやったら、アフリカの大自然をしっかり描写していくんだろうけど、彼等はそれをデザインで再構成してしまっている。僕はそれに関して、とんでもないカルチャーショックがありました。それくらいのインパクトがあったものは他にはないですね。

―― ご自身の仕事としては、虫プロ時代に思い出深いものはないんですか。

平田 虫プロ時代は色々やったけれど、その中で楽しんでやったのは『ジャングル大帝』ですね。その後、虫プロの経営がうまくいかなくなった頃には、僕はもう「やっぱりコマーシャルをやろうかなあ」と思って、コマーシャルの方に行きましたから。

―― 作品リストを見ると『国松さまのお通りだい』の頃まで、虫プロの仕事をおやりのようですが。

平田 いや、『国松さま』はコマーシャルをやってる時期に、アルバイトでやってんじゃないかなあ。コマーシャルの会社が銀座にあったんですけど、そこまで丸山が追っかけてきて、仕事を持ってきていた。『あしたのジョー』のコンテもバイトだと思う。

―― そうなんですか。

平田 この前、出崎(統)さんと話したんだけど、僕、『あしたのジョー』を結構やってるんだよね。それが半分以上はペンネームなんですよ。で、そのペンネームは、みんな丸山さんが付けてるんです。

―― 結構いい加減なものなんですか?

平田 うん。当時、僕は千葉に住んでて、千葉の隅っこにいるから「千葉すみこ」とかね。何の意味もなく「本田元男」とか。全部丸さんが付けたペンネームです。

―― お作りになっていたCMって、アニメを使ったCMだったんですよね。

平田 そうです。だけど、実写と合成だったりね。一般的なキャラクターを動かすアニメーションもやったけど、あの頃はポップアートがすごい盛んで、ポップアート的なアニメーションを作ったり、オプティカルアート的なアニメーションをやったり。やっぱりコマーシャルの世界って、すごく進んでて、やるものが全部実験アニメーションみたいな感じだった。

―― オプティカルアート的なアニメーションって、例えばどんなものなんですか?

平田 「トヨタサスペンス劇場」という番組のオープニングがあって、それなんか苦労しました。タイムトンネルみたいなところを主観映像でただ突き進んでいく、線と市松模様だけの映像でね。今ならCGでやっちゃうんだけど、そういうものが無い時代だから全部手描きで。

―― タイムトンネルの壁面が市松模様なんですか?

平田 そう。ハイウェイみたいになっていて、それが蛇行すると下のセンターラインが移動したり……。定規で描いたような、クレバーなアニメーション。一方で、横尾忠則、宇野亜喜良、黒田征太郎といったイラストレーターと組んで、そのイラストをそのまま動かしちゃうとか。そういう仕事が、また刺激になった。レナウンの「イエイエ」もそういう仕事だったよね。

―― 「イエイエ」は有名なCMシリーズですよね。

平田 そうですね。僕がやったのは、川村みづえという女性のイラストレーターの画を活かすCMでした。画用紙に水彩で描いて動かしていくような事をするんです。イラストレーションの味を壊さないでやるためには、画力が必要。CMの4年間で覚えた事が結構、財産になってるのかもしれないという気がするんですよ。

―― その後、CMの世界からアニメに戻ってくるわけですよね。

平田 うん。やっぱりストーリーが欲しくなったというのかなあ。CMっていうのは、勿論、長いストーリーがないわけで。

―― 一度CMをやって、アート的な事をやりたいという気持ちは、ある程度晴れたんですね。

平田 晴れてもないんですよ。逆に、欲求不満になっていった。元々「アニメーションで、色んな可能性に挑戦しているのはコマーシャルじゃないか」と思ってコマーシャルの世界に行ったのね。でも、ある時期になるとパターンが読めてきてしまったというか。ある程度覚えしまったら、後はそのアレンジであり、組み合わせをしていく作業になるんです。で、そこで覚えた技術や発想の仕方を、テレビアニメーションや劇場用アニメーションに活かせないのかなあ、活かしてみたいなあと思ったんです。物語世界の中で、そういうような事ができたら面白いだろうなあと思って、また戻ってきたというわけです。

―― なるほど。

平田 コマーシャルも面白かったけど、やっぱりTVや劇場の方に自分の居場所がありそうだなあという気がしたのね。それから、もう1回演出をしてみたいとも思った。コマーシャルでは、自分では演出してないから。

―― CMではアニメーターとしての参加だったんですね。

平田 そうです。スポンサーと代理店があって、ディレクターがいて、という仕切りの中での仕事ですから。CMディレクターになるためには、とんでもなく沢山の勉強をしなくてはいけないし、感覚も鋭くなくてはならない。僕はとても、そちらのディレクターができるとは思わなかった。

―― アニメに戻られてからのお仕事だと、短編『ユニコ』が印象的でした(注5)。

平田 あれは若気の至りというか。

―― そうなんですか。画的な見応えはかなりのものでしたよね。まるで海外の作品を観ているような。

平田 丁寧ないい出来だとは思うんだけど。一番の問題は、僕は何を考えてたんだろうなあ、という事で。手塚さんの原作にそういう部分があったという事で、公害問題みたいな部分を、ちょっとストレートに、生っぽくやりすぎたんですよ。

―― ああ、そうでしたよね。ユニコが、煙を出す工場を壊したりするんですよね。

平田 そうそう。サンリオの社長の辻信太郎さんも「ちょっとまずいよね」と言って(笑)。もうちょっとひねる事はできたよね、と思うんです。だから、ちょっと若気の至り。僕はあれは完璧な失敗作だと思うんです。だから、できれば思い出したくないの。

―― それではサンリオ時代の作品で、よい手応えがあったものは?

平田 サンリオ時代では、その次に作った『ユニコ』。それしかないね。

―― 長編の『ユニコ』ですね。

平田 うん。サンリオの作品だったけれど、制作現場はマッドハウスだった。サンリオ時代には、短編も色々作ったりしたんですけど、辻信太郎さんの想いにどう応えるかという事に汲々としてたんじゃないかな。一応作品らしくなったのかな? と思えるのが『ユニコ』。長いものを演出したのも、あれが最初だし。演出家としての僕は、あそこからスタートしてるのかもしれない。サンリオとしても、実写で「キタキツネ物語」とかは作っていたけれど、アニメーションとしては『ユニコ』が最初の長編だったと思う。

―― サンリオは、人形アニメも作ってましたよね。

平田 はい、ありましたね。あれを作っていた人形アニメのスタッフの方達も、立派なプロの人達で。あの人達と僕らも波長が合って。だから、あちらの作品にも僕はスタッフとして参加させていただいたりね。

―― 設定協力の役職でしたよね(注6)。

平田 そう。イメージボードを描いたりしたの。でも、あの頃の自分の作品としては『ユニコ』しかない。『ユニコ』も、丸山さんが設定として参加していて、彼の力が大きかった。作品に足りない部分を、外から人材を加える事で補充してくれた。構成的に、僕ひとりでやったら弱い部分に村野守美を連れてきたり。美術監督に男鹿和雄を起用したり。作画監督は杉野昭夫ですしね。それは幸せな、人員配置だったね。

―― この場合、村野さんは何をしたんですか。

平田 村野さんは、色んなエピソードを膨らませてくれました。

―― 脚本段階で?

平田 いや、コンテで。

―― コンテ段階なんですか。

平田 うん。脚本はそのままなんです。ユニコーンがペガサスになるときに「変身シーンはこうやった方がもっと面白い」とか。ユニコの相手役として悪魔の子が登場するんですが、「この子はこういう風にした方が、ドラマが広がるんじゃないの」とか。絵コンテという形でサジェスチョンしてくれているんです。

―― 先に平田さんのコンテがあって、それに村野さんが手を入れるんですか?

平田 そうです。

―― 監督が描いたコンテに他のスタッフが手を入れるなんて、随分と特殊なやり方ですね。

平田 マッド作品にはそういうのがいっぱいあります。

―― そうなんですか。

平田 『浮浪雲』もそう。

―― 竜馬暗殺シーンですね。(注7)

平田 それもそうだし、『浮浪雲』では、つまんないとこなんだけど、浮浪雲が新之助と将棋を指して諍いをやるところは、僕がコンテを描いてるし。『夏への扉』も、僕がどこか一部分のコンテを描いてるし。マッドの作品ってそういうやり方をしていたんですよ。

―― あの一時期、そうだったんですね。

平田 そうです。『浮浪雲』も『夏への扉』も、僕は部分参加。そうするのは丸山プロデュースですよ。彼が絵コンテを持ってきて「ここんとこが弱いから、コンテを描いて」って。

―― それはすごいですねえ。

平田 りんたろう作品以外は、結構色んな作品に参加してますよ。

―― それはすごく大事な話ですね。『夏への扉』では、平田さんの役職は演出補佐になっているんですが。具体的にはそういった事をやられていたんですね。

平田 『夏への扉』はコンテは真崎守で、レイアウトに関しては全部川尻がやって、「このシーンはこんな色合いにした方がいいんじゃないか」と私がサジェスチョンしたりとか。

―― そうなんですか。あの作品は、色づかいがかなり大胆で面白いじゃないですか。黒地の背景で、手前に真っ赤な花が咲いていたりするのは……。

平田 ああ~、あったね。それは川尻のセンスだと思う。僕は、どこかのシーンに関して「赤紫系の薄い色を使うと、ちょっと夢幻的でいいんじゃないかなあ」とか、そういう提案をした覚えがある。作画に関しても「ここは、こうした方がいいんじゃない?」って、原画をいじくった覚えもあるんだ。要するに「なんでも屋」。コンテであったり、色であったり、原画であったり。とにかく色々と手伝う。

―― ものすごく興味がある話なんで、もう少し聞かせてください。マッドハウスの歴史を考えると、出崎・杉野時代が終わって、りんさんが長編を作るようになるまでの数年間がありますよね。

平田 ありますね。

―― それが『夏への扉』や『浮浪雲』、あるいは『ユニコ』みたいな、おいしい作品が続出してる時期なんですよ。

平田 そうそう(笑)。

―― 昔のマッドハウス作品って変わった役職が多いんですよね。具体的な仕事分担が分からないんですよ。「これ、どうやって作ってるの?」みたいなところがあって(笑)。(注8)

平田 あれこそが適材適所だよね。ひとつの作品のひとつのシーンに、突然とんでもない人を丸山が起用する。だから、『浮浪雲』の竜馬暗殺シーンを、村野守美と川尻に「好きなようにやれ」と言って渡すとか(笑)。僕は、どの作品か忘れたけれど、エンディングだけに参加したものもある。僕だけじゃなくて、みんなが好き勝手にのさばってたような気がする。勿論、監督さんはちゃんといて、最終的に選ぶのは監督で、僕らはブレーンとしてアイデアを出す役目だった。

―― なるほど。

平田 今、一番おいしい時期とおっしゃいましたけど、その少し前に『まんが世界昔ばなし』がありましたよね。フリーのりんたろうさんが参加して、川尻もいるし。出崎さんもやってるんだよね。

―― やってますね。

平田 僕のコンテで、川尻がレイアウトから原画まで全部やった作品が、2本ぐらいあるんですよ。あれもマッドハウスのおいしい時代だよね。全て丸山の仕切りなんですよ。「これができるのは、あなたしかいない。だから、あなたやって」という彼のプロデュース。人材のはめ込みの妙というか。未だにそれは生きてるんだけど。

―― そういう仕事をしているのに、あの頃の丸山さんの役職って「設定」なんですよね。「設定って何?」って思いますけど。

平田 そうそう(笑)。丸山のやっている「設定」って、大きく言えば、作品の基本構成なんですね。監督よりも前に、全体のレールを敷く仕事というか。

―― 作品内容とスタッフの両方のレールですか。

平田 いや、最初の頃は、作品作りに魂を入れるためのレール敷きをする仕事で、それを監督に渡す仕事だったんでしょうね。その後、人材派遣までもやるようになったんじゃないかな。

―― ありがとうございます。今日は謎がいくつも解けました。平田さんの『金の鳥』も、そういう体制に近いんですか。

平田 『金の鳥』は、僕は滅茶苦茶、楽しかったんです。あれは演出的な事に関しては、どなたにも手伝ってもらってない。アニメーターを活かした作品なんです。だから、今度は僕が丸山的な立場で、人材を活かすシーンをいっぱい作ったんです。それに関して、演出不在だと言う人もいるんだけど。

―― そうなんですか。

平田 うん。仲間で「あれは演出不在だ」と言う人がいるの。同じように『ボビーに首ったけ』を演出不在って言う人もいるんだけど。

―― 『ボビーに首ったけ』は、演出家の映画ですよ。

平田 そうだよね。『金の鳥』も完璧に演出のワガママ作品だと思うんですけど、見る人によっては、あれは演出不在という風に見えちゃうらしい。あれほどプライベートフィルム的な作品もなかなかないと僕は思うんですけどね。

―― プライベートフィルム的というのは、どちらの事ですか。『金の鳥』ですか、『ボビー』ですか。

平田 両方。それなのに「演出不在だよね」と言う人がいて(笑)。「ええ~!? 逆じゃないかな」と思うんだけど。

―― じゃあ、いよいよ『金の鳥』の話をお願いします。


【ARCHIVE】 「この人に話を聞きたい」 第51回、第52回 平田敏夫(2)へ続く


(注1)
マッドハウスが86年~87年に3本の『火の鳥』を制作した。りんたろうが『鳳凰編』の、川尻善昭が『宇宙編』の、平田敏夫が『ヤマト編』の監督を務めた。

(注2)
森康二は東映動画の設立以前から活躍していた、名アニメーター。素晴らしい仕事を数多く残しており、また後進に与えた影響も大きい。

(注3)
永沢まこと(当時は永沢詢)は、東映動画の初期作品にアニメーターとして参加。現在はイラストレーターとして活躍している。

(注4)
山本暎一は、虫プロダクションで『ジャングル大帝』『千夜一夜物語』等、数多くの作品を手がけたアニメーション監督。後に『宇宙戦艦ヤマト』など手がけている。

(注5)
ここで話題になっている、短編『ユニコ』とはパイロットフィルムとして制作された作品。一般には未公開であったが、後年になって『ユニコ 黒い雲と白い羽』のタイトルでソフト化された。

(注6)
人形アニメ『くるみ割り人形』に、宮本貞雄等とともに設定協力の役職で参加している。

(注7)
『浮浪雲』の坂本竜馬暗殺シーンは、コンテを村野守美が、作画を川尻善昭が担当。鮮烈な映像が話題となった。このシーンの担当に関しては村野守美の名前のみクレジットされている。

(注8)
例えば『ユニコ[長編第1作]』では「設定」の役職で丸山正雄と斉藤次郎が、「設定協力」の役職で村野守美と川尻善昭がクレジットされている。

120 アニメ様日記  2017年9月10日(日)~

2017年9月10日(日)
トークイベント「第135回アニメスタイルイベント 磯光雄の作画を語る!」を開催。ゲストの井上俊之さん、橋本敬史さん、今石洋之さん、平松禎史さんに加えて、第二部では関係者席にいた吉成曜さん、中村豊さん、久保田誓さんからもコメントをいただいた。今石さんも言っていたけれど、出演した僕らにとっても楽しいイベントだった。それまでも充分に濃かったのだけど、僕にとってのクライマックスは、第二部で井上さんが吉成さんに質問した瞬間だった。

2017年9月11日(月)
とある事情があって、事務所の若手スタッフに『宇宙戦艦ヤマト』の続編に『さらば宇宙戦艦ヤマト ―愛の戦士たち―』と『宇宙戦艦ヤマト2』があることを説明する。その前に「『宇宙戦艦ヤマト』がアニメブームをおこして、アニメが『ヤングの娯楽』になったんだ」と言ったら「へえ」と感心されて、うおおっ、ここから説明しなくてはいけないのかと思った。
 「平田敏夫作品集」に掲載する絵コンテを選ぶ。選びながら、この本がどうすれば「本になるか」を考える。物理的に本のかたちになっても、内容的に「本になっていない」場合がある。特に資料中心の本だと、そうなる可能性が高いのだ。編集者としてはそこを考えなくては。

2017年9月12日(火)
取材の予習で『エロマンガ先生』を1話から観る。やっぱりよくできているなあ。演出も作画も。本放映時には、11話の次にあの最終回がくるのがピンとこなかったんたけど、改めて観て、あれでいいんだと思えた。

2017年9月13日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では14位を放映。『旧ルパン』2話「魔術師と呼ばれた男」だった。傑作中の傑作なので、ベストセレクションに入るのは納得なんだけど、1位とか2位でもよかった。というか、1位や2位にはどれが入るんだ? 以下が現在までの順位。やはり『旧ルパン』が驚くほど少ない。

24位『旧ルパン』第3話「さらば愛しき魔女」
23位『PARTIII』第44話「ボクたちのパパは泥棒」
22位『新ルパン』第26話「バラとピストル」
21位『新ルパン』第69話「とっつぁんの惚れた女」
20位『PARTIII』第37話「父っつぁん大いに怒る」
19位『PARTIII』第50話「原潜イワノフの抹殺指令」
18位『新ルパン』第137話「華麗なるチームプレー作戦」
17位『旧ルパン』第13話「タイムマシンに気をつけろ!」
16位『PARTIII』第1話「金塊はルパンを呼ぶ」
15位『新ルパン』第32話「ルパンは二度死ぬ」
14位『旧ルパン』第2話「魔術師と呼ばれた男」

 午後は『エロマンガ先生』の竹下良平監督に取材。どんな内容になったかは「アニメスタイル012」で。

2017年9月14日(木)
確認したいことがあって『鎧伝サムライトルーパー』の1話と2話を観る。カップヌードルCM 「HUNGRY DAYS ハイジ 篇」が公開される。今回も丁寧に作り込まれている。「ジャンプSQ.」に掲載された「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚・北海道編-」1話を読む。なんだろう、この幸福感。楽しいなあ。こうやって書くと、まるで遊んでばかりいるみたいだけど、ちゃんと仕事もしていますよ。

2017年9月15日(金)
昨日に続いて『鎧伝サムライトルーパー』を3話から19話まで観る。物語と人物造形がシンプルでとてもわかりやすい。そして、シンプルだからといって物足りないわけではない。今でもリメイクをやったら、かなりイケるんじゃないかな。黄瀬和哉さんの作監回をチェックするために観ていたのだけど、色々と他の部分も楽しい。言うまでもないけど、塩山紀生さんの作監回はいい。当時、雑誌に載ったスチルで「いいな」と思ったカットが逢坂浩司さんの作監回であることを知った。

2017年9月16日(土)
最近「週刊少年ジャンプ」は「ジャンプ+」で読むことが多いのだけど、久しぶりに紙の本で購入。「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の新作を読むためである。面白い。素晴らしい安定感。「こち亀用の『ストック扉』がまだ余ってんだよ」もよかった。それから、やっぱりマンガ雑誌は紙のほうがいいな。パラパラめくって気になったところから読むのが、いかにも雑誌っぽい感じだ。

 声優、音響監督の中嶋聡彦さんが亡くなられた。僕は『ケモノヅメ』でお世話になった。心よりご冥福をお祈り致します。

第531回 同時進行が心地よく

アニメ監督の仕事は、やることなすこと「同時進行」が基本!

になります。今回の『Wake Up, Girls! 新章』も例外ではありません。コンテ作業ひとつとっても、本編を描いているとオープニング・エンディング曲が上がってきて、即コンテIN。本編の合間を縫って同時進行。OP・EDが終わると、アイドルものの常、ダンスパートのコンテが新曲が上がってくるたびに同時進行となります。その作業効率を2倍、とまではいかないまでも1.5倍くらい(?)には上げてくれたのが、以前もここで紹介した”コンテ作業のデジタル化”、「Storyboard Pro」です! OP・ED曲がくると、Storyboard Proの方にインポートして、タイムラインにのせて(ダンスパートなどは、使用する部分をこの段階で仮編集します)、それに合わせてカットを割ってカメラワークと尺を決めます。なにしろ、

コンテを切りながら簡易ムービーが次々できていくわけ!
つまり、編集用・アフレコ用のいわゆる「コンテ撮」が必要なくなる!

のです。さらにコンテのパネル(1コマ)を拡大・縮小・回転・コピペなどもでき、レイヤーに分けて着引き(素材別にスライド)まで。だからこれ「アニメーター出身の演出家」の手に渡ったら、そーとー便利! なにせ、

コンテ切りながらレイヤー重ねて清書すればレイアウトになり、
尺内でパネルを増やしてラフ原まで描けます!

 『ベルセルク』のOP・EDや『WUG! 新章』の第1話も、レイアウトまで自分で描けたのはStoryboard Proのおかげ。あ、そうそう、ストップウォッチを握る機会もだんぜん減りましたね!
 しかし、コンテのデジタル化、問題がまったくないわけではありません。デジタル作画と同じで、際限なく拡大できるため、却って作業効率が下がるとか。そこは「拡大していいのは何%まで!」などと自分を律して対応するしかありません。ただいちばんの問題点は、意外に

てな、我々世代までが憧れる「作家気取り」ができなくなるってことかと(笑)。まぁ冗談はさておき、「デジタル」コンテは同時作業がしやすいという話。つまりデスクトップに現在作業中のコンテ類のフォルダーをいくつも作って、脚本や設定資料類を一緒に置いておき、毎朝会社に入ったとこで「○○時〜○○時まで『WUG! 新章#○○』」と次々に開いて、1日の時間割をするわけ。紙類と違って資料類の出し入れは本当に楽。この連載も描きやすくなって、大変心地いい毎日を送ってます。
 で、デジタル化については人それぞれご意見があると思いますが、俺個人が考えているのは純粋に、

こんなに便利で楽しいツールを、今、小・中学生が遊びで使いこなして、10年後業界に入ってきた時、「アニメのコンテは紙に描くと昔から決まっとる! ワシは紙じゃなきゃコンテは切らん!」と仰る年配を見てどう思うのでしょう?

ってことだけです。ウチの会社を受けにくる若い人にも、志望動機を聞くと「デジタルで作業してるスタジオだから」って答える人が増えてきたし。ちなみに自分は「紙」も大好きです!

第115回 おかしくも切なく愛おしい 〜中二病でも恋がしたい!〜

 腹巻猫です。9月13日に「女王陛下のプティアンジェ 音楽集」が発売されました。マンガ家・吾妻ひでおも愛した美少女探偵アニメ(1977年放送)の初の音楽集です。音楽は小林亜星×筒井広志の黄金コンビ! 『花の子ルンルン』や『超電磁ロボ コン・バトラーV』をほうふつさせて昭和アニメファン必聴です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B074TGMZ5P/


 また、9月23日(土)に蒲田studio80でサントラDJイベント「Soundtrack Pub【Mission#32】」を開催します。テーマは「80年代アニメサントラ群雄割拠時代〜ビクター編Part II」。前回に続いて80年代ビクターアニメ音楽をふり返ります。ぜひ、ご来場ください!
http://www.soundtrackpub.com/event/2017/09/20170923.html

 この夏に観た劇場アニメの中でひときわ心に残ったのが『きみの声をとどけたい』だった。
 90分ほどのコンパクトな作品ながら、青木俊直がデザインしたキャラクター、新人発掘オーディションで選ばれた声優たちの瑞々しい演技、「コトダマ」をキーワードにした物語などが好印象で、じわじわと胸にしみてくる。
 ストーリーの中で重要なモチーフになっているのが音楽だ。背景に流れる劇中音楽(BGM)やラジオから流れる曲、主人公たちが歌う歌などが作品の爽やかな印象を後押ししている。
 本作の音楽を担当したのが松田彬人。『響け!ユーフォニアム』の音楽などで知られる作曲家である。以前は「虹音(にじね)」という名前(ソロユニット名)で活動していた。
 不覚にもわたくし、『きみの声をとどけたい』のパンフレットを読んで初めて松田彬人と虹音が同一人物だと知りました。それで、はたとひざを打った次第。
 というのも、虹音の作る音楽に以前から注目していたのです。

 虹音=松田彬人は1982年生まれ、大阪府出身(とプロフィールの多くではなっているが、本人のFacebookでは奈良県出身と記されている)。高校生時代からDTMに取り組み、大阪の音楽専門学校に進学。在学中にプロデビューを果した。アイドルやゲームへの曲提供を経て、TVアニメ『ぴちぴちピッチ ピュア』(2004)の挿入歌「MOTHER SYMPHONY」で初めてアニメソングを手がける。以降、ゲーム音楽、アニメ音楽を中心に活躍。虹音の名でTVアニメ『Gift eternal rainbow』(2006)、『アイドルマスター XENOGLOSSIA』(2007)、『こどものじかん』(2007)、『喰霊 —零—』(2008)などに楽曲を提供。アレンジャーとしても多くのアニメソングのアレンジを任されている。
 劇中音楽を担当するのは2009年放送のTVアニメ『アキカン!』が皮切りだろうか。『初恋限定。』(2009)、『バカとテストと召喚獣』(2010)、『そふてにっ』(2011)、『ましろ色シンフォニー』(2011)、『夏色キセキ』(2012/伊藤真澄と共作)、『中二病でも恋がしたい!』(2012)などの音楽を担当して実力を示した。
 2012年12月27日にSNSで本名を公表。これからは松田彬人の名で活動していくと宣言した。それまで名前と作品の印象から虹音=女性だと思っていた人もいたらしく、けっこうな衝撃だったようだ。
 松田彬人としては、『ディーふらぐ!』(2014)、『のうりん』(2014/菊谷知樹と共作)、『僕らはみんな河合荘』(2014)、『グラスリップ』(2014)などの音楽を手がけたのち、『響け!ユーフォニアム』(2015)で注目を集めた。少女の日常を描く作品が多かったが、近年は『最弱無敗の神装機竜』(2016)、『ゼロから始める魔法の書』(2017)などファンタジー作品にも活躍の場を広げている。最新作『天使の3P!』(2017)が放映中だ。
 根っからのアニメファンだという松田彬人は、学生時代からずっとアニメ番組を想定した曲づくりをしていたという。松田が少年期を過した80年代〜90年代は、アニメ音楽が多様化し、新しい作家が次々と登場してきた時期。ちょうどバブル期を挟んで、アニメの音楽予算も増えていた。第一線のアーティスト、プレイヤーが作り上げたアニメ音楽を浴びて松田彬人は育ったのだ。まさにアニメ世代の作曲家である。
 今回は松田彬人が虹音の名で手がけた『中二病でも恋がしたい!』を取り上げよう。

 『中二病でも恋がしたい!』は2012年に放送されたTVアニメ作品。京都アニメーション大賞の奨励賞に選ばれた虎虎の同名小説を原作に、『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006)の石原立也が監督、京都アニメーションの制作でアニメ化された。2013年には劇場版が公開され、2014年にTVアニメ第2期を放映、2018年1月には新作劇場版の公開が予定されている。
 中二病とは思春期を迎えた中学2年生の頃にかかってしまう恐ろしくも愛すべき病。過剰な思い込みや夢想で空想のキャラになりきったり、おかしな行動を取ってしまうというものだ。
 主人公は中二病だった過去を封印して明るい高校生活を送ろうとしている少年・勇太と高校生になっても中二病を発症中の少女・六花。2人の出逢いと恋の進展を軸に、個性的な同級生や先輩、下級生らを巻き込んだおかしくも切ない高校生活が描かれる。中二病ならではの妄想バトルがアニメーションならではの表現で描かれるのが見どころだ。
 本作以前に少女を主人公にした学園ものアニメを多く手がけている虹音=松田彬人は、その経験を生かして明るいタッチの日常音楽や繊細な心情描写音楽を提供。さらに中二病の妄想を描くファンタジックで壮大な楽曲を加えて作品世界を音楽で表現した。虹音=松田としても、ひとつ突き抜けた、新境地を拓く作品となったのではないだろうか。
 サウンドトラック・アルバムは2013年1月にランティスから2枚組で発売された。
 トラック数が多いので収録内容は下記を参照されたい。

http://www.amazon.co.jp/dp/B009S8D46M/

 2枚組61曲収録のボリュームがうれしい。本編未使用曲も含めて、本作のために作られた楽曲のフルバージョン全曲が収録されているようだ。
 1枚目はオープニング主題歌で始まり、2枚目はエンディング主題歌で終わる構成。2枚を通して本編の物語を音楽で再現する流れになっている。
 1枚目はオープニング主題歌のTVサイズに続いて「Welcome to the Chu-2 byo world!」という曲からスタート。はねたリズムに乗せて明るい音色のシンセが楽しげなメロディを奏でる。『中二病』ワールドの開幕を告げる曲だ。第1話の本編冒頭で勇太が高校の入学式に向かう場面で流れている。
 次は「中二病とはなんぞや」と題されたラテン風の軽快な曲。第1話のアバンタイトルで大塚芳忠が「中二病とは」と説明するバックに流れた曲のフルバージョンである。実際にはギターとパーカッションのみのバージョンが使用された。中二病の狂熱とほろ苦さをちょっと哀愁を帯びた陽気な曲調で描いているのが秀逸。
 トラック4は「神秘の少女との出逢い」。タイトル通り、勇太がマンションのベランダで六花と初めて出会う場面に流れた幻想的な曲である。六花が中二病だと見抜いて警戒する勇太だが、六花は勇太の中二病の過去を知っていた。こうして、物語は動き出す。
 トラック5からは勇太と六花を中心にした学園コメディ的な曲が並ぶ。ピアノとリズムセクションが奏でる「憧れの普通生活よ」、クラリネットのメロディがユーモラスで愛らしい「Cute and chu-2 byo」、コミカルな「comical boys」「上手く行かないこともあるってもんで」「ガッカリ学生時代」「おいおい、大丈夫か?」など。ひねりの効いた曲名の付け方もうまい。
 そんな中異彩を放っているのが中二病の妄想描写に使われた曲である。
 「The Dark Hero」は第1話で六花が勇太に眼帯の下の目を見せようとする場面や第2話で六花が姉・十花の恐ろしさを語る場面などに流れた曲。チェンバロと細かく刻む弦の響きがゴシック的な香りを漂わせる。ファンタジー作品を思わせる華麗なイメージの曲で、六花の妄想世界と現実との対比を際立たせている。
 3種類収録された「魔王降臨」は悪魔的な雰囲気を持つ短いブリッジ。
 そして「妄想凸守旋律」は六花を慕う女子中学生・凸守の妄想世界を表現する曲。ロボットアニメ音楽のパロディ的な曲調になっていて笑いを誘う。アニメファンを自認する虹音=松田の趣味が表れた楽曲だろう。
 筆者は「夕暮れと寄り添う感情」というピアノとアコースティックギターによるやさしい曲が気に入っている。勇太が六花を心配する場面や2人の距離が近づいていく場面によく使用された曲で、とりわけ印象深いのは第9話で校舎の屋根から落ちそうになった六花を勇太が助け、六花が勇太に抱きつく場面。温もりのあるメロディから、勇太への気持ちを意識し始めた六花の心情が伝わってくる。
 1枚目のラストに置かれた「そして明日も中二病は続くのであった」は第6話までのエンディング曲として定番のように使用された曲。アコースティックギターとピアノを中心にした明るいミドルテンポの曲で、学園青春もののエンディングにはぴったりという曲調だ。
 2枚目はがらっと雰囲気が変わって、4種類の「妄想バトル」と題された曲から始まる。いずれも六花の妄想バトルを想定した曲。凸守の妄想曲と違って、こちらはシリアスで本格的なファンタジー音楽のように作られている。中でも、緊迫したピアノと弦のフレーズから始まる「妄想バトル 〜カタルシス〜」は激しいバトルをイメージさせるテンションの高い曲で、使用頻度も高く記憶に残る。
 本作の音楽打ち合わせの際、虹音=松田は石原監督から「印象に残る音楽」「主張する音楽」を求められ、「劇伴という枠にとらわれず冒険してほしい」と言われたそうだ。妄想バトルの曲はまさにそのねらいがはまった印象がある。ここまで突き抜けた曲だからこそ、六花の妄想の本気度が伝わってくるし、物語後半になると、妄想に逃げ込む六花の心の痛みが観る者の胸に刺さってくる。
 2枚目は第7話以降の展開に合わせ、勇太や六花の心の揺れを描く曲が多くなる。
 ピアノとバイオリンによる「すれ違う心と心」は深い哀しみや苦悩を表現する曲。第11話のラストで凸守が勇太に六花の気持ちを訴える場面や最終話で六花がもう戻ってこないつもりだと知った勇太が飛び出していく場面などに使われた。
 そのあと、劇中の重要なシーンに流れた挿入歌「始まりの種」(第8話)、「君のとなりに」「見上げてごらん夜の星を」(第10話)が、物語の流れに沿って収録されているのもいい構成だ。
 トラック12「悲しき妄想バトル」は第11話で六花を引き留めようとする凸守が六花に闘いを挑む場面で流れた曲。次の「悲しき妄想バトル 〜piano〜」は勇太と凸守が田舎へと旅立って行く六花を見送る場面に流れ、凸守の切ない心情を鮮烈に表現している。
 勇太と六花の物語はいよいよクラマックスへ。ここからは本編を観ていたファンなら泣ける絶妙の構成だ。
 トラック14「手放したものを取り戻しに」は最終話で勇太がくみん先輩から六花が自分を選んだ理由を聞かされる場面に流れた弦とピアノの曲。スリリングな曲調で勇太の乱れる気持ち、迷い、決意へと変る心情が描かれる。
 次の「想う者同士の再開」は六花を迎えに行った勇太の胸に六花が飛び込んでくる場面、それに続く2人の逃避行の場面に流れた。ピアノと弦による淡々とした導入から曲調が変わり、大きなうねりを持ったメロディで2人の心が通いあうさまを表現。終盤はロマンティックな曲調に展開し、希望を感じさせて終わる。本アルバムに収録されたBGMの中でももっとも長い、聴きごたえのある1曲である。
 ブックレットのコメントで虹音が特に思い入れのある曲として挙げているのが次の曲「それは本当にあったんだ」。上記の場面に続いて勇太が六花に「不可視境界線」を見せる場面に使われた。ピアノと弦、フルートが神秘的で美しいアンサンブルを聴かせる。現実とフィクションが重なり合う感動的な場面を彩った印象深い曲である。
 次のトラック17「理解と愛情と優しい眼差し」は1枚目の「夕暮れと寄り添う感情」とともに筆者が好きな曲。これもピアノと弦による美しいナンバーで、六花や勇太にやさしく寄り添うような愛情に満ちたメロディがじんわりと心に響く。第9話で六花が勇太のことを意識し始める場面や第11話で勇太が中二病から卒業しようとする六花の心情を気遣う場面、最終話で勇太が過去の自分から届いた手紙を読んで迷っていた気持ちを振り払う場面など、重要なシーンにたびたび選曲された。虹音=松田彬人の創り出す音楽のロマンティックな一面を代表する、しみじみとよい曲だと思う。
 そして、トラック18は最終話のラストシーンに流れた「恋は続いていく」。勇太と六花の未来を祝福するような慈しみに満ちた曲調が胸を打つ。この曲をはじめ、最終話に使用されたいくつかの曲は、このエピソードのために作られた曲なのだろうか。そう思うしかないほど、映像にぴたりと合い、すぐれた映画音楽のような感動を与えてくれる。
 アルバム2枚目のトラック19以降はボーナストラック的な内容で、PV用の楽曲や劇中に流れるゲームの音楽、映画のBGM、アイキャッチ曲などが収録されている。サントラではオミットされてしまうことが多いこうした楽曲がしっかり収録されているところに、ファンへの配慮を感じてうれしくなる。いろいろな面でファンの気持ちに沿った、よいアルバムだ。

 「痛い」とか「忘れたい過去」とか言われてしまう中二病だが、本作は中二病をコミカルに描きながらも、中二病をいたずらに恥じることはない、空想には人を救う力があると教えてくれる。虹音=松田彬人の音楽は思いきり振り切った曲調で中二病ワールドを描きつつ、勇太や六花たちへの視線はまっすぐで愛情に満ちている。中二病だった過去を持つ人もそうでない人も、このおかしくも切なく愛おしい音楽を味わってもらいたい。

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中二病でも恋がしたい!戀 オリジナルサウンドトラック
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119 アニメ様日記 2017年9月3日(日)~

2017年9月3日(日)
新宿文化センターで開催された「渡辺岳夫音楽祭」に行く。会場には業界の方や、アニメイベントでよく見かける方が何人も。プログラムのメインは『巨人の星』『天才バカボン』『機動戦士ガンダム』『白い巨塔』等の楽曲の演奏だ。選曲もいいし、オリジナル楽曲の再現性が高いのが嬉しい。特に『天才バカボン』の主題歌が凄かった。それとは別に前川陽子さんによる『魔女っ子メグちゃん』『キューティーハニー』の歌唱もあり。充実したイベントだった。

2017年9月4日(月)
「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」テスト印刷がでる。校正紙ではなく、校正前のテスト印刷である。今回は全ページを、製版のやり方を変えて2バージョン出してもらった。午後はササユリカフェに。「平松禎史 スケッチブック展」をちょっとだけのぞく。

2017年年9月5日(火)
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN V 激突 ルウム会戦』を観る。ラストで「ええっ、ここで終わり? もうちょっと続きが観たい」と思った。ラストが『機動戦士ガンダム THE ORIGIN シャア・セイラ編 I 青い瞳のキャスバル』冒頭に繋がるのかと思って、改めて『青い瞳のキャスバル』の冒頭を観直してみたら、微妙に繋がっていない感じ。次回作で普通に続きをやるのだろう。
 平田敏夫さんは「絵本 野坂昭如戦争童話集」シリーズの「年老いたメス狼と女の子の話」でイラストを描いている。ひょっとして同シリーズの他の絵本でも平田さんが描いているかもしれないと思い、ネット検索で他の描き手を確認してみる。以下がそのリスト。タイトルの後がイラスト担当者の名前だ。

「年老いたメス狼と女の子の話」平田敏夫(1993/3)
「干からびた象と象使いの話」門野真理子(1993/3)
「青いオウムとやせた男の子の話」栗原玲子(1993/3)
「焼けあとの、おかしの木」百瀬義行(1993/3)
「馬と兵士」山崎勝彦(1993/3)
「ぼくの防空ごう」真崎守(1993/3)

「絵本 野坂昭如戦争童話集」シリーズで、1993年に刊行された6冊はいずれもアニメ関係者がイラストを描いているようだ。平田さんが描いたのは「年老いたメス狼と女の子の話」のみだった。

2017年9月6日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では15位を放映。『新ルパン』32話「ルパンは二度死ぬ」だった。「ルパンVS殺し屋編」の代表的なエピソードだ。この話がベストに入るのは納得。
 昨日の「絵本 野坂昭如戦争童話集」シリーズに続き、田中舘哲彦・著の「チャレンジ!Jリーグ」という小説シリーズのイラストについて、ネット検索で確認する。以下のリストも、タイトルの後がイラスト担当者の名前だ。

「それいけ!レイソル (チャレンジ!Jリーグ)」平田敏夫(1995/12)
「パワフル!セレッソ (チャレンジ!Jリーグ!)」八木信治(1995/12)
「ワイルド!アビスパ (チャレンジ!Jリーグ) 」佐藤雄三(1996/3)
「ファイティング!ヴィッセル (チャレンジ!Jリーグ)」兼森義則(1996/3)
「スピーディ!サンガ(チャレンジ!Jリーグ) 」小島正幸(1996/3)
「アタック!フューチャーズ (チャレンジ!Jリーグ)」浅香守生(1996/4)

 おそらく八木信治という方だけ、アニメ関係者ではないのだろう(もしも、違っていたらすいません)。せっかくなので「平田敏夫のできなくてかんにん」という書籍についてもここで記述しておく。ひょっとして、平田さんの本かと思って、「平田敏夫のできなくてかんにん」という書籍(古本)をネット書店で入手したのだが、これは「京都市議を八期つとめ、老人ホーム『こぶしの里』をつくったくだもの屋のおっちゃんのはなし(書籍の帯より)」であり、この平田さんはアニメーション監督の平田さんとは別人であった。

2017年9月7日(木)
TOKYO MXの『あらいぐまラスカル』は10話「はじめての探検」。いいカットが多いなあと思ったら「作画」の一枚目のテロップでクレジットされているのが、宮崎駿さんと羽根章悦さんのお二人。後でじっくり観直したい。

2017年9月8日(金)
アニメージュ発売日。2017年10月号の「設定資料FILE」vol.227は『NEW GAME!!』。「この人に話を聞きたい」はおやすみ。また、『あずきちゃん』を観る。25話「がんばって! トモちゃんの初デート」。うわっ、照れくさい。しかし、この後には、これくらい照れくさい話が続出するはず。

2017年9月9日(土)
アニメではなくて、実写映画の話。新文芸坐の「新作『花筐/HANAGATAMI』完成記念! ワンダーランドの映画作家 大林宣彦映画祭2017」で「ねらわれた学園」(1981)と「時をかける少女」(1983)の2本立てを観る。「ねらわれた学園」は斬新すぎる超能力描写をおいておいても、月日が熟成した魅力があって、かなり楽しめた。「時をかける少女」では作り手の「原田知世への愛」にノックアウトされる。今観ると、作り手の「この子を撮らずにどうする!」という意気込みがよく分かる。日本映画史に残る「女優映画」だ。原田さんの最高の瞬間をフィルムに残してくれてありがとう。ラストシーンまでも充分に素晴らしいのだけど、この映画の魅力の半分以上はエンディング(の幸福感)だろうと思う。

第530回 BGMとコンテ

MONACAさんより『Wake Up, Girls! 新章』の劇伴(BGM)が届き、それを聴きながらコンテ作業中。これが結構はかどるのです!

 自分からの発注内容はザックリと「今までのシリーズを踏襲しつつ、新しく勢いのある劇伴を!」でした。その想像を上回る仕上がりで、さすがのMONACAさん! コンテ切ってる時は、その劇伴がいちばん心地よいです、俺の場合。だから毎作品BGMは楽しみ! とにかくコンテ描き上げて全面的に作画もやりたい(第1話はほぼ全カット、レイアウトやりました)! やっぱ楽しい、作画は。

レイトショー「新文芸坐×アニメスタイル 特別編
平田敏夫監督の珠玉のアニメーション『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』」

 故・平田敏夫監督が遺した『ボビーに首ったけ』と『グリム童話 金の鳥』は「珠玉」という言葉が相応しい、アニメーションの魅力が詰め込まれた傑作だ。

 『ボビーに首ったけ』(1985年)は、片岡義男の同名小説を原作とした中編の劇場アニメーションで、写真のコラージュ、線画による背景動画など、様々な手法を駆使した尖鋭的な作品である。1980年代の空気が濃厚な青春ドラマでもあり、その意味でも魅力的なフイルムだ。
 『グリム童話 金の鳥』(1987年)は「東映まんがまつり」の1本として公開された作品で、これも中編の劇場アニメーションだ。飄々とした登場人物、ポップなキャラデザイン、絵本の1ページのような背景美術。ドラマに関しても映像に関しても、楽しさいっぱいの作品だ。

 「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」の刊行を記念して、この2本を上映するレイトショーを開催する。『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』の両作で作画監督を務めた大橋学がトークコーナーのゲストだ。
 会場では「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」を先行販売する。また、このレイトショーで「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」をお買い上げの方には、イベント用小冊子「平田敏夫作品集(仮)」を差し上げる予定だ。

●関連リンク
TVアニメ『あずきちゃん』のエピローグイラストを収録した画集が刊行!
http://animestyle.jp/news/2017/09/07/11936/

平田敏夫監督追悼イベント 「平田敏夫とあずきちゃんイラスト展」を開催!
http://animestyle.jp/news/2017/09/06/11924/

新文芸坐×アニメスタイル 特別編
平田敏夫監督の珠玉のアニメーション『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』

開催日

2017年9月29日(金)
開場:19時30分/開演:19時45分 終了:22時30分予定

会場

新文芸坐

料金

一般1800円、学生1700円、友の会・シニア・前売1600円

トーク出演

大橋学、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『ボビーに首ったけ』
『グリム童話 金の鳥』

備考

※トークショーは映画上映後に行います
※当日は整理番号順でのご入場となります

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

118 アニメ様日記 2017年8月27日(日)~

2017年8月27日(日)
アニメではなくて、実写映画の話。新文芸坐で「赤ちょうちん」(1974)と「妹」(1974)を観た。企画「没後20年 藤田敏八 あの夏の光と影は ~ 20年目の八月」の1日目で秋吉久美子さん、樋口尚文さんのトーク付き。両作とも流行歌をモチーフにした作品だが、いずれもタイトルや元の歌からイメージするものとはかなり違った映画に仕上がっており、それが刺激的だった。特に「妹」はギラギラしていてよかった。ラストのぶっとび方も鮮烈。「赤ちょうちん」は序盤で「えっ、こんな話なの?」と驚いた。藤田敏八監督の作品は「修羅雪姫」「野良猫ロック ワイルド・ジャンボ」くらいしか観ていなかったのだけど、もっと観たいと思った。新文芸坐のロビーには当時のプレスリリースのコピーが貼られていた。おそらくプレスリリースのあらすじは脚本からおこしたものだろう。映画の内容で「?」と思った部分はプレスリリースのあらすじにはない。例えば、「赤ちょうちん」で唐突に「マスターの義眼」というアイテムが出てきて、主人公が酒と一緒に飲んでしまうのだが、あらすじだと「マスターの義眼」に相当するアイテムは「瀬戸物のかけら」なのである。「妹」だと、あらすじでは天ぷら屋の娘の「高校生のみどり」となっているキャラクターが、完成した映画では仕事のしすぎで腱鞘炎になったソープ嬢(劇中のセリフだと、ソープではなくてトルコ)になっている。いや、長くなるのでここでは書かないけれど、「妹」のラストを含めて、もっと大きなところも違っている。脚本はおそらく、モチーフになった流行歌に近い内容で、そこから演出で飛躍させていったのだろう。その飛躍に僕は惹かれた。トークは秋吉久美子さんのお話が楽しかった。映画で裸になることに関して、監督や助監督に「脱ぐんだぞ、お前、分かっているのか」と言われたけれど、彼女自身は洋画で女優が脱ぐ映画を観て、憧れを感じていたので「この人達、なに言ってんだろ」と思った。その話が素敵だった。

2017年8月28日(月)
録画で8月26日に放映された『ONE PIECE エピソードオブ東の海 ~ルフィと4人の仲間の大冒険!!~』を観る。全編新作画で、話も詰まっている。リアルタイムで家族で一緒に観ると、より楽しいんだろうなあ。

2017年8月29日(火)
朝に帯枠でやっていた『けものフレンズ』の再放送が終わった。何だかんだで毎日観ていた。子どもが観ても問題ない内容ではあるのだけど、朝観るのはちょっとシュールだった。
 録画で『女川中バスケ部 5人の夏』を観る。今年の夏は『きみの声をとどけたい』と『女川中バスケ部 5人の夏』で、青木俊直さんがキャラクターをデザインしたアニメが2本あったことを記憶に留めたい。その後、dアニメストアで『劇場版総集編 前編「ハイキュー!! 終わりと始まり」』を流しながら、デスクワーク。その後はWOWOWの「Kalafina Arena LIVE 2016 at 日本武道館」。と書いていると、まともに仕事をしているように思えないけど、していますよ。
 午後は平田敏夫さん関連の素材を回収するために外出。

2017年8月30日(水)
dアニメストアで『劇場版総集編 後編「ハイキュー!! 勝者と敗者」』を観る。今日も平田敏夫さん関連の素材を回収するために外出。
 昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では16位を放映。『PARTIII』1話「金塊はルパンを呼ぶ」だった。えー、これは意外。しかし、『PARTIII』が強いなあ。これより上位に「ニューヨークの幽霊」や「カクテルの名は復讐」が入るのだろうか。ちなみに僕の中では「金塊はルパンを呼ぶ」は『新ルパン』ではまだ若手で端役をやっていた若本規夫さん(当時は紀昭)が、ルパンのライバルに昇格したエピソードだ。
 池袋ジュンク堂書店池袋本店で、アニメ関連本をごっそり買い込む。「Little Witch Academia Chronicle ―リトルウィッチアカデミア クロニクル―」「今 敏 絵コンテ集 パプリカ 」「芸術新潮」等。まだパラパラとめくっただけだけど「Little Witch Academia Chronicle」は充実の1冊。記録全集のボリュームとムックのパラエティ感を両立させている。判型を活かした構成も上手い。「芸術新潮」の特集は「日本のアニメベスト10」。

2017年8月31日(木)
新文芸坐で、9時45分からの回で「八月の濡れた砂」を観る。先日の「赤ちょうちん」「妹」と同じく、プログラム「没後20年 藤田敏八 あの夏の光と影は ~ 20年目の八月」の1本。これが公開当時、若者に支持されたのはよく分かる。脚本は三人で書いていて、大和屋竺は最後にクレジットされているのだけど、その個性が色濃く出ているのではないかと思った。
 ネットで購入した古本「びあシネマクラブ 1996洋画篇」が届く。僕が愛読したのはもっと古い年度の「びあシネマクラブ」なんだけど、それでも懐かしい。必要な情報だけが書かれている作品紹介がいい。書籍づくりで刺激を受けたくて購入したのである。
 それから、確認することがあって『あずきちゃん』の途中の話を再生。あんまり面白いので連続視聴してしまう。

2017年9月1日(金)
打ち合わせ中に「アイジーで、タイトルに『夜』が入る作品って何でしたっけ」と聞かれて、瞬時に『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』と答えた。最近はこれくらいでは「さすがですね」と言ってもらえない。
 昨日の続きで、『あずきちゃん』を1話から観はじめる。序盤はちょっと大人しい感じ。DVD-BOXの解説書を作った時も、こうして頭から観たなあ。今観るとヨーコちゃんが可愛い。本放送の頃は苦手なタイプだったかもしれない。今だと、勇之助みたいな男の子もいそうだなあと思える。15話であずきは交換日記を通じて勇之助が借金を申し込んできたと勘違いするのだけど、それへの対応が大人びていてやたらと可笑しい。これも雪室マジック。

2017年9月2日(土)
早めの時間に谷口淳一郎さんと吉松さんと打ち合わせしつつ、晩飯。吉松さんはその後、マッドハウスに戻って仕事。0時頃に新宿に行って『魔神英雄伝ワタル』のイベントに出演。またマッドハウスに戻って日曜の午前中まで仕事をして、アイドルのコンサートで広島に行ったらしい。タフだなあ。

第529回 この原稿とルーチン

ここ数ヶ月、朝7時起きで会社にIN!


してこの原稿を書いてます。何年か前にも説明した記憶があるのですが、原稿は1日30分くらい、休憩中にコツコツ書いて1週間で1回分。この間あまりに忙しくて全然手が着けられなかったら「ゴメンナサイ!」のお茶濁しイラストになるわけ。けして、1日丸々かけて書くわけではなく、あくまで「チリツモ」——日々5〜10行ずつ書きためて毎週半ばに提出しています。当初アニメ様(小黒祐一郎編集長)より「書けなかったらイラストでも」と本業のペースを崩さないようにとのお気遣いがあり、お言葉に甘えさせていただいてるからこその連載11年目なのです(ここまで9月1日朝時点)。
 このルーチンは紙で書いてる頃からずっと続けております。作画机にいつもA4コピー用紙が置いてあり、仕事の合間に書くと。それが今はデスクトップになり、常に隅っこに「第○○回原稿」のフォルダを置く、に変わりました。そーいえば、俺が各話演出の頃、お世話になった監督さんからこんな話を聞いたんです。

「僕の知ってる演出の人は、1日の仕事の締めにコンテを10ページ切らないと寝ない!」と決めてる人がいて、そうすればコンスタントに2週間で1話分のコンテができるんだって!

と(ここまで9月2日)。まぁこれもあくまでひとつのやり方で、大塚康生さんの「カット数と経験値」の話に通じるトコがあると思います。自分は夏休みの宿題も、初日に全部片付けるより、毎日毎日コツコツやるタイプでした。夏休みの宿題なんて1〜3日でやればできます。要領のいい人間は、誰でもそうするでしょう。ただ俺的には、

毎日の努力ができない自分に直面するのが怖い!

んです(ここまで9月3日)。この考え自体は今でも変わりません。人間なんて年を取れば取るほど、どこかで律している自分がいないと、生活はどんどん怠惰になっていくし、仕事に対する集中力も散漫になります。仕事にも休憩は必要。たまには遊ぶのもいいし、飲み歩くのもあり! でも

今晩、遊んじゃった分、明日ちょっと早めに入ろう!

と思えないような、堕落した自分に会いたくないのです(ここまで9月4日)。酒・タバコ類も同様で、「それらがないと生活できないような自分に30代〜40代でなってどうするのか? 残り40年もあるのに」と。嗜好品なのだから「いつでも止められる、何日どころか何年なくても大丈夫」くらいの”ほどほど”に自分を律するべき。ま、他人に強要はしません。あくまで板垣個人の主義です(ここまで9月5〜6日、作業優先で手着かず、スミマセン)。

第114回 地平線のかなたへ 〜トム・ソーヤーの冒険〜

 腹巻猫です。9月17日(日)に『超時空要塞マクロス』35周年、羽田健太郎没後10年を記念したコンサート「超時空管弦楽」が東京国際フォーラムで開催されます。『超時空要塞マクロス』に的を絞った本格的なコンサートはこれが初めて。リン・ミンメイ役の飯島真理やオリジナル・レコーディング・メンバーの直居隆雄(ベース)も参加するとあって、マクロスファンならずとも聴き逃せません。詳細は下記を参照ください!
http://macross.jp/special/orchestra2017/

 服部隆之(前回)を取り上げて、父上の服部克久を忘れるわけにはいかない。作曲家・服部良一の長男として生まれた服部克久は、作・編曲家、音楽プロデューサーとして現在も第一線で活躍する日本ポップス界の大御所のひとりである。
 服部克久は1936年、東京生まれ(誕生日は昭和11年11月1日と1並び)。6歳でピアノを始め、高校卒業後パリ国立高等音楽院に留学。1958年秋に帰国し、日本テレビの「ハニー・タイム」で作編曲家としてデビューした。以来、TV・劇場作品の音楽やポップスの作編曲、ステージ音楽、オリジナル・アルバム等で活躍。宮川泰や前田憲男らとともに日本のポピュラー音楽の発展期を支えた。売れっ子の頃は年間3000曲を手がけ、これまで書いたスコアは6万曲にもなるという。
 父・服部良一は「別れのブルース」「蘇州夜曲」「湖畔の宿」「東京ブギウギ」「青い山脈」などを作曲した昭和を代表する作曲家。しかし、服部克久は流行歌の作曲家になろうとは思わなかった。歌づくりよりもサウンドに魅力を感じて、ポップスオーケストラに境地を拓いた。1993年には国内唯一のプロのスタジオ・ミュージシャンによるオーケストラ「東京ポップスオーケストラ」を結成し、国内外で演奏活動を行っている。
 代表作に「新世界紀行」(1987-1992)テーマ曲「自由の大地」、「ザ・ベストテン」(1978-1989)テーマ曲、TVドラマ「光速エスパー」(1967)、「江戸の旋風II」(1976)、NHK連続テレビ小説「わかば」(2004)、劇場作品「連合艦隊」(1981)の音楽など。1983年からスタートしたオリジナルアルバム「音楽畑」のシリーズは2014年に21作目を数え、ライフワークとなっている。
 アニメでは、『トム・ソーヤーの冒険』(1980)を皮切りに、TVアニメ『愛の学校クオレ物語』(1981)、『ワンワン三銃士』(1981)、『家なき子レミ』(1996)、『星界の紋章』(1999)、『無限のリヴァイアス』(1999/M.I.D.と共作)、『アルジェントソーマ』(2000/DJ K. HASEGAWAと共作)、劇場版『北斗の拳』(1986)などの音楽を担当。
 今回は、服部克久が初めて手がけたTVアニメ作品『トム・ソーヤーの冒険』を取り上げよう。

 『トム・ソーヤーの冒険』は、「世界名作劇場」第6作として1980年1月から12月まで放映された日本アニメーション制作のTVアニメ作品。マーク・トウェインの同名小説をもとに『あらいぐまラスカル』『ペリーヌ物語』の斎藤博監督が映像化した。
 本作以前の「世界名作劇場」の主人公はいわゆる“いい子”が多かった。それに対し、トム・ソーヤーはいたずら好きで学校を抜け出したりするわんぱくなキャラクター。関修一によるキャラクターデザインも表情豊かで親しみやすく、「これまでの世界名作劇場となんか変わったな」という印象を受けた。
 音楽も新鮮だった。渡辺岳夫、坂田晃一、三善晃、毛利蔵人らが手がけた過去のシリーズの音楽は文芸路線とも呼べる落ち着いた雰囲気のもの。本作の音楽は動的で軽快、ぐっとポップス寄りになっている。本作からレコードの発売メーカーが日本コロムビアからキャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)に移ったこともサウンドの変化を後押ししていた。キャニオンレコードは本作から10年間にわたって「世界名作劇場」の音楽商品をリリースしていくことになる。
 服部克久はカントリー&ウェスタンやジャズの要素を取り入れて、舞台となる19世紀アメリカの雰囲気を表現。当時はなかったロックンロールやオールディーズ風のサウンドも加えて、現代的な音楽を創り出した。「世界名作劇場」の新たな音楽イメージを打ち立てた作品である。
 本作の音楽アルバムは1980年4月に『トム・ソーヤーの冒険』のタイトルで発売された。このアルバムはオリジナルのままの内容ではCD化されたことはない。1999年に東芝EMIから「懐かしのミュージッククリップ トム・ソーヤーの冒険」が発売されたが、レコードサイズの歌4曲以外は収録内容は異なっていた。
 今回は放映当時発売されたアナログレコード盤を紹介しよう。キャニオンレコードがアニメ音楽に本格参入するきっかけになった記念すべきアルバムである。収録内容は以下のとおり。

  1. 誰よりも遠くへ(歌:日下まろん)
  2. セントピーターズバーグの夜明け
  3. ぐうたらマン・ハック(歌:スラップスティック、日下まろん)
  4. トム・ソーヤーはよんでいる
  5. 恋するベッキー(歌:潘恵子)
  6. 星の恋人
  7. はるかなる蒸気船
  8. 行こうぜ兄弟!(歌:日下まろん)
  9. いたずら行進曲(マーチ)
  10. 地獄のジョー(歌:若子内悦郎)
  11. 冒険と友情
  12. ぼくのミシシッピー(歌:日下まろん)

 レコードではトラック6までがA面、以降がB面になる。作編曲は全曲、服部克久が担当している。
 歌6曲とBGM6曲を収録した歌と音楽集。歌とBGMを交互に配した構成は日本コロムビアやキングレコードの商品と異なる独特のスタイルだった。同時期にビクターから発売された『ニルスのふしぎな旅』も同様の構成で、以降、この形式はアニメ音楽アルバムのフォーマットのひとつとして定着していく。
 BGMはすべてステレオ録音。短い曲を1トラックに編集したものではなく、アルバム用に2分〜4分ほどの長尺の曲を録音したものである。のちの「懐かしのミュージッククリップ」には放映用のモノラル音源が収録されたので、このレコードのみで聴けるステレオ音源は貴重だ。
 オープニング主題歌「誰よりも遠くへ」とエンディング主題歌「ぼくのミシシッピー」の作詞を手がけたのは、今年7月に亡くなった作詞家・山川啓介。山川はTVアニメ『キャプテン・フューチャー』の主題歌「夢の舟乗り」や劇場版『銀河鉄道999』の主題歌「銀河鉄道999(Galaxy Express 999)」(奈良橋陽子と共作)で少年の心の成長をテーマにしたすばらしい詩を提供している。
 本作の歌詞もみごとだ。オープニングでは少年のまだ見ぬ世界へのあこがれを強く打ち出し、エンディングではこれから人生に漕ぎ出していく少年たちの希望と勇気を歌い上げる。どちらの歌も、ただやみくもに夢を語るのではなく、少年が心に秘めたさびしさ(トムの実の両親は亡くなっている)、今はかなわないけれどいつか……という切ない心情が歌いこまれているのが胸にしみる。
 オープニング曲「誰よりも遠くへ」は浮遊感のある飛び跳ねるようなイントロからスタート。どこか懐かしいカントリー風の曲調でトムの冒険心を描き出す。途中、ふとさみしい心情が顔を出す部分にペーソスただようメロディと伴奏を配して絶妙のアクセントにしている。最後はウェスタン調の元気なコーダで締めくくる。「世界名作劇場」主題歌の中でも根強い人気を誇る名曲である。
 歌手の日下まろんはレコーディング当時14歳の中学生。当時の月刊アニメージュには4人の候補からオーディションで選ばれてこの歌でデビューを飾ったと顔写真入りで紹介されている。本作のあと『ワンワン三銃士』でも主題歌を歌っているが、その後の活躍は確認できていない。まだ色のついていない真っ白で飾り気のない歌声が『トム・ソーヤー』という題材にぴったりだった。
 トラック2「セントピーターズバーグの夜明け」は「懐かしのミュージッククリップ」に収録されたBGM「M-33」のロングバージョン。地平線に差す光をイメージさせるギターとシンセによる導入部からポップスオーケストラによる美しい情景描写曲に展開する。第1話冒頭の場面など、タイトル通りに夜明けのシーンにたびたび選曲されている。
 トラック3「ぐうたらマン・ハック」はトムの親友ハックルベリー・フィンのテーマ。ハックの声は『未来少年コナン』のジムシー役で好評を得た青木和代が担当しているが、本曲は青木ではなくスラップスティックと日下まろんが歌っている。
 エレキギターのリフに続いてサックスが軽快に歌い出すイントロに心をつかまれる。ブギウギ調のリズムが楽しいロックンロール風の曲である。
 スラップスティックは70年代後半にデビューした5人の声優で結成されたバンド。本作当時は曽我部和行、古川登志夫、野島昭生、古谷徹、三ツ矢雄二がメンバーだった。スラップスティックのアルバムはすべてキャニオンレコードから発売されており、本曲への参加もその流れだろう。
 トラック4「トム・ソーヤーはよんでいる」は「誰よりも遠くへ」をディキシーランド・ジャズ風にアレンジした曲。BGM「M-8」のロングバージョンである。第1話でトムが学校から脱走してハックと遊びに行く場面など、2人の愉快な活躍シーンによく選曲されている。アドリブをまじえたはじけた演奏がトムとハックの破天荒なキャラクターにぴったりだ。
 トラック5「恋するベッキー」はトムのガールフレンド・ベッキーのテーマ。ベッキー役の潘恵子が歌う、本アルバムのハイライトともいうべき曲である。
 女声コーラスがふんだんに入ったオールディーズ風のノリのよい曲調。お嬢様だけど失敗したり、やきもちを焼いたりするベッキーの愛くるしいキャラクターがみごとに曲で表現されている。そこに潘恵子のチャーミングな歌声が合体したとき、なんともキュートな、それまでのアニメソングにない破壊力を持った歌が生まれた。「演じて歌えるアイドル声優」の誕生を告げる歌である。
 1977年に『サザエさん』でアニメ声優デビューした潘恵子は、『超人戦隊バラタック』(1977)のヒロイン・ユリ、『女王陛下のプティアンジェ』(1977)の主人公アンジェなどを演じたあと、『機動戦士ガンダム』(1979)のララァ役で注目を浴び、本作放映当時は人気が急上昇していた。
 歌手経験のない潘恵子に「歌ってみて」と声をかけたのは服部克久だった。レコーディング時、隣のスタジオには同じ年の6月に「哀愁でいと」でレコードデビューする田原俊彦がいたという。潘恵子の歌声に可能性を感じたキャニオンレコードは「恋するベッキー」はシングルカットして発売。これが潘恵子の歌手デビューになった。  潘恵子はこのあと、『新竹取物語 1000年女王』イメージソング「星空のメッセージ」、『ふしぎな島のフローネ』主題歌、『アルプス物語わたしのアンネット』主題歌などをキャニオンレコードから相次いでリリース。ソロアルバムも4枚リリースし、歌手としても活躍の場を広げていく。アイドル声優の登場は1990年代という説もあるが、筆者は潘恵子こそアイドル声優第一号だと思っている。
 余談ですが、筆者も1981年当時、潘恵子のデビューアルバムを買いました。タイトルがずばり「潘恵子」。それまで歌謡曲やアイドル歌手のレコードを買ったことがなかったので、アイドルのアルバム風に作られたこのレコードは、聴くたびにちょっとこそばゆかったのを覚えています。
 トラック6「星の恋人」はいかにも服部克久らしい、上質のイージーニスリング風のロマンティックな楽曲。キラキラしたサウンドとムードのあるサックスの響き。曲の後半ではストリングスが豊かに歌い、恋人たちの語らいを見守るかのよう。本編ではこういう大人びた雰囲気の曲は活躍の機会がなかったが、トムとベッキー、メアリーとアーサーなど、恋人たちの姿を思い浮かべながら聴いてみたい曲である。
 エルマー・バーンスタイン風のダイナミックな導入部から始まるトラック7「はるかなる蒸気船」はBGM「M-37」のロングバージョン。ウェスタン調のAパートから流麗なストリングスによるBパートを経て、エレキギターがソロを聴かせるクロスオーバー・サウンド風のCパートへと展開。変化に富んで飽きさせない。
 タイトルは「はるかなる蒸気船」だが、セントピーターズバーグに気球が飛んでくる第34〜37話のエピソードで使用されたのが印象深い。ミシシッピー川の上空に気球が現れるシーンをはじめ、トムが夢の中で気球に乗って空を飛ぶシーン、技師のアーサーが気球に乗ってセントピーターズバーグを去るシーンなど、気球がらみの場面に繰り返し使用されている。地平線の向こうへの旅をイメージさせる雄大な曲である。
 日下まろんが歌う「行こうぜ兄弟!」も山川啓介の作詞。トムやハックの何ものにも縛られない自由な心をテーマにした明るい曲調の歌だ。
 次の「いたずら行進曲」はタイトルどおりのユーモラスなマーチ。BGM「M-9」のロングバージョンで、第3話でトムが仲間たちとロビン・フッドごっこに興じる場面などに使用されている。「トム・ソーヤーはよんでいる」とともに、本作のユーモラスな面を代表する楽曲のひとつ。
 トラック10「地獄のジョー」は悪漢インジャン・ジョーをテーマにしたマカロニウェスタン調の曲。歌手の若子内悦郎は1960年代にGSバンド、ザ・バロンのメンバーとしてデビュー。「ヤング101」を経て、芹澤廣明とのデュオ、ワカ&ヒロを結成して活躍した。その後、スタジオワークを中心に活動。アニメソング関連では「謎の円盤UFO」(1970)のイメージソングや若木ヒロシ名義で歌った「サンダーマスク」(1972)の主題歌、ちのはじめ名義で歌った『はじめ人間ギャートルズ』(1974)エンディング主題歌「やつらの足音のバラード」などで知られている。
 本曲は第三者の視点からインジャン・ジョーを歌った歌で、劇中では得体の知れない恐ろしい人物として描かれているジョーを、妙にカッコいい曲調の歌に仕上げているのが面白い。
 トラック11「冒険と友情」はクロスオーバー風のポップなナンバー。未知の世界へ歩み行っていくようなファンタジックな導入部に続いて、ストリングスのスマートなメロディがリズムに乗って登場する。木管とミュートした金管によるしゃれた間奏を挟んで2コーラスめに突入。コーダはエレキギターのアドリブが入って大人びた雰囲気で締めくくられる。
 3分を超える聴きごたえのある演奏だが、「星の恋人」同様に劇中では活躍の場面がなかったのが残念。トム・ソーヤーの世界を広げる音楽アルバムならではの聴きどころである。
 最後はエンディング主題歌「ぼくのミシシッピー」。郷愁を誘うメロディと味わい深い歌詞。蒸気船を追いかけて川岸を走るトムとハックの映像が目に浮かぶ。主題歌とともに人気の高い名曲である。

 服部克久は2009年にリリースしたデビュー50周年記念アルバム「服部克久」に「誰よりも遠くへ」を新録音して収録している。数多い仕事の中でも思い出の作品のひとつなのだろう。
 ジャズからカントリー&ウェスタン、オールディーズ、クロスオーバーまで、さまざまな音楽スタイルを聴かせる「トム・ソーヤーの冒険」は、子どもたちにポップスオーケストラの魅力を伝える好アルバムである。アルバムそのままの復刻、そして、「懐かしのミュージッククリップ」に未収録のBGMを含めた完全版サントラの発売が待望される作品だ。
 キャニオンレコードは本作のあと、『うる星やつら』『パタリロ』『北斗の拳』『タッチ』『ハイスクール!鬼面組』『めぞん一刻』など、人気作・話題作の音楽アルバムを次々リリースして、日本コロムビアともキングレコードともビクターとも異なる路線でアニメ音楽の地平を切り開いていく。アニメ音楽史の転換期を知る上でも、忘れてはならない1枚である。

懐かしのミュージッククリップ トム・ソーヤーの冒険
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日本アニメーション 世界名作劇場 主題歌・挿入歌大全集I
※本作の主題歌・挿入歌全曲を収録。
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服部克久
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117 アニメ様日記 2017年8月20日(日)~

2017年8月20日(日)
早朝、新文芸坐に。着いた時には「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 96 片渕須直 長編アニメーション16年の歩み」の最後のプログラム『この世界の片隅に』の終盤だった。今回のオールナイトでは、何度もお客さんにお礼を言われた。帰り道でもお客さんに呼び止められて、ずっと前からこのプログラムを予告し、それを公言していたことについてお礼を言われた。照れくさいなあ。その後、池袋HUMAXシネマズで『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』を観る。

2017年8月21日(月)
今までお付き合いのなかった取次に行って話をうかがう。零細出版社の社長らしいお仕事。

2017年8月22日(火)
午前11時から新文芸坐で打ち合わせ。その後、事務所で打ち合わせが2本。移動して阿佐ヶ谷で打ち合わせ。次は西荻窪で打ち合わせ。さらに西荻窪で別の打ち合わせ。平田敏夫さんの小冊子のために探していた絵コンテ(制作会社に残っていなかったもの)を借りることができた。

2017年8月23日(水)
原稿作業をまとめてやらなくてはいけないので、8月22日(火)の22時に起きて、23時半に事務所へ。リアルタイムで「ルパン三世ベストセレクション」17位を確認。『旧ルパン』13話「タイムマシンに気をつけろ!」だった。このエピソードがベストに入るのは納得。途中にウォーキングと食事をはさんで、昼までキーボードを叩く。

2017年8月24日(木)
TOKYO MXの『母をたずねて三千里』が最終回。今回の再放送では、ながらではあるけれど、全話を観た。まとめて観るよりも1日1本を観た方が「旅している感」がある。週に1本の本放送時はそれがもっと強かったはずだ。『ペリーヌ物語』の再放送でも感じたが、少なくとも一部の名作劇場の作品においては、放送と放送の間の1週間も「作品の一部」だったのだ。今回の視聴で感じたのは、大人の描写がしっかりしているということ。過度に美化されているわけではない。だが、信頼できる大人が大勢出てくる。マルコの「素晴らしかったんだ、僕の旅」というセリフが全てを物語る。

2017年8月25日(金)
TOKYO MXの『母をたずねて三千里』の後番組は『あらいぐまラスカル』の再放送。引き続き視聴する予定。『あらいぐまラスカル』は観ていないエピソードもあるはず。

2017年8月26日(土)
「銀魂」実写版を観る。公開から随分経ってからの鑑賞となった。『銀魂』の実写化としては100点満点で120点の仕上がりだと思う。原作、アニメ版をリスペクトしたうえで、なおかつ面白い。コント風のダラっとしたところを含めて、テンポ感がいい。登場人物の再現度も高い。「きちんとお客さんの方を向いている作品」であり、その方向で作り切っている。素晴らしい。映画を観た後、dTVで配信されている同監督、同キャストによるドラマ「銀魂 -ミツバ篇-」を視聴した。

第528回 アニメに惚れた!

 大塚康生さんのお話をもう少し。といっても前回、前々回での大塚さんからいただいたお話は、この連載のかなり前の回で何度も紹介したものをギュッとまとめただけだったのですが、まあ何しろ10年も書かせてもらってるコラムなので、多少の重複はご容赦ください。
 とにかく小学3年生の頃に観た再放送から俺は

『未来少年コナン』が大好き!!

で、テレコムに入社した際の研修課題が『コナン』だった時はもう歓喜でした。しかもコピーでなく生原画! 1978年当時の生原画をトレスして中割りの練習をするんです。コナンがラナを抱いて三角塔から飛び降りて、ズシーン! と足が痺れる。小学生の自分が胸躍らせたあの名シーンで実際に使われた生の原画が目の前にあるのです! それを『コナン』の作監・大塚さんご自身が

と解説してくださるんです。パラパラめくりながら「ここの着地に1枚入れたくなるでしょう? 実は要らないんですよ! INを見せたら中無しで画ブレを入れた方が気持ちいいんス!」と。大塚さんは劇場スケールの作画だけでなく、大量生産のリミテッドTVアニメでも動きを限定する面白さを追求された巨匠なので、中ヌキ(中割り無し)のドタバタアクションも「要はポーズの変化だよ」と。アニメのド新人だった自分に「アニメーション(作画)の面白さ」を本当に惜し気もなく教えてくださったのです。思えばもともと、出崎統監督に憧れて演出志望だった俺が、いまだにアニメーターをやってるのは、この頃の体験が影響してると言えるでしょう。富野由悠季監督も著書「だから僕は…」の中で、大塚さんに接して「この人はアニメに惚れている」と感じられたそうですが、自分もそう思いました。もしかすると「おもちゃ」かな? そう、大塚さんにとってアニメは「おもちゃ」かもしれません。後に俺が原画になった時もちょくちょく見てくださっては「あ、面白い!」とか「ここ気持ちいいネ〜」ととてもシンプルに楽しまれるんです。いつぞや『ルパン三世』のことも「おもちゃ」と表現してたのを聞きましたし、昔出された大塚さんの同人誌のタイトルも「大塚康生のおもちゃ箱」でした。よく、

アニメーターは遊び心が大事!

ともおっしゃってました。で、また途中ですみません。打ち合わせの時間です。

116 アニメ様日記 2017年8月13日(日)~

2017年8月13日(日)
コミックマーケット92最終日。「平松禎史 SketchBook」 も「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」も搬入分をほとんど売り切って終了。皆さま、ご来場、ありがとうございました。
 事務所に戻って、用事を片づけてから居酒屋に。隣のテーブルのお客さん達がコミケ帰りの男性数名のグループで、買ってきた同人誌を片手にトークを展開。聞くつもりはないんだけど、話が耳に入ってくる。うわっ、コミケが終わった気がしないよ。

2017年8月14日(月)
池袋HUMAXシネマズの11時30分からの回で、実写映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」を観る。力作。ロケ地をスペインにしたのはよいアイデアだ。原作キャラクターの再現度も高い。康一は背が高すぎるのではないかとか、承太郎は渋すぎるのではないとか気になるところもあるけれど、そういうツッコミどころを含めて面白かった。
 特によかったのが、終盤における仗助の「少年マンガの主人公っぽさ」。そして、仗助と億泰とのやりとり(億泰が借りを返すあたり)。あの演出力で色んなマンガの実写化が観たいと思ったくらいだ。それと、形兆と億泰の父親が出たあたりから、ちょっとカルトな味わいが出ていた。最後のバトルが終わってからがたっぷりしていた印象で、それが演出の狙いだということは分かっているけど、あそこがもっとテキパキと進んでいたら、僕にとってもっと好きな映画になった。
 1日休みの日にするつもりだったのだけど、片づける用事があって事務所に。

2017年8月15日(火)
コミケで出した新刊の送本、2刷りの準備、流通とのやりとりなどで、目が回るほど忙しい。
 8月12日(土)、8月13日(日)に放映された『終物語』2時間スペシャル2本をまとめて観る。戦場ヶ原さんが出てくると落ち着くなあ。実は今、ガハラさんと書くか、戦場ヶ原さんと書くかで、ちょっと悩みました。悩んで戦場ヶ原さんと書きました。原作は『終物語』の後も続いているわけだけど、アニメは続くのだろうか。公式サイトを見に行ったら「阿良々木暦の高校生活――完結。」とあるから、完結したのは高校時代であって、アニメ「〈物語〉シリーズ」が完結したわけではないのか。

2017年8月16日(水)
TOKYO MXの『母をたずねて三千里』再放送は46話「牛車の旅」。ドライな感じが富野さんっぽいなあ、と思ったら富野喜幸(由悠季)さんのコンテ回。といっても、このあたりは2回に1回は富野さんのコンテなので、当てても自慢にはならない。画作りは直されているかもしれないけど、ドラマの流れは富野さんのコンテの感じが残っているのではないかなあ。
 昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では18位を放映。『新ルパン』137話「華麗なるチームプレー作戦」だった。『新ルパン』を代表する傑作のひとつだ。同じく『新ルパン』における傑作の148話「ターゲットは555M」はもっと上位にくるかな。しかし、ここまで驚くくらい『旧ルパン』が少ない。以下が現在までの順位。

24位『旧ルパン』第3話「さらば愛しき魔女」
23位『PARTIII』第44話「ボクたちのパパは泥棒」
22位『新ルパン』第26話「バラとピストル」
21位『新ルパン』第69話「とっつあんの惚れた女」
20位『PARTIII』第37話「父っつぁん大いに怒る」
19位『PARTIII』第50話「原潜イワノフの抹殺指令」
18位『新ルパン』第137話「華麗なるチームプレー作戦」

 Amazonで「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」「平松禎史 SketchBook」の予約が始まる。

2017年8月17日(木)
『NEW GAME!』原作5巻、最新刊の6巻前半に目を通し、アニメ2期の5話と最新の6話を観る。6話「あぁ……すごいなあ……」のラスト(エンディングの前)がとてもよかった。その場面自体もいいし、そこにもっていくまでの構成もいい。キャラクターの芝居も猛烈にいい。誤解をまねく言い方かもしれないけれど「あ、青葉が人間になった」と思った。今まで人間でないと思っていたわけではない。ただ、リアルな感情を持った存在として感じられることができたのだ。スタッフに拍手!

2017年8月18日(金)
TOKYO MXの『母をたずねて三千里』再放送は48話「ロバよ死なないで」。最終回がどうなるのか分かっているのに、マルコが早くお母さんに会えるといいなあと思ってしまう。

 アニメーターの椛島義夫さんが亡くなられた。『ガンバの冒険』、劇場版『ルパン三世』、『さすらいの少女ネル』等、印象的なお仕事がいくつもある。僕は『ガンバの冒険』LDBOX解説書でお世話になった。心よりご冥福をお祈り致します。

2017年8月19日(土)
オールナイトの予習で久しぶりに『アリーテ姫』を観る。改めてボックスのセリフは味わいがあっていいなあと思って、気になって確認したところ、ボックスを演じた小山剛志さんは『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の片隅に』にも出演していた。今晩上映する3作品の全てに出演しているのは小山剛志さんだけのはずだ。小山さんを起用し続けている理由があるはずなので、トークで話題にすることにした。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 96 片渕須直 長編アニメーション16年の歩み」。ようやく実現した片渕須直監督長編だけのオールナイト。チケットは早々に完売。新文芸坐スタッフの方が個人的に集めていたらしい『この世界の片隅に』関連記事の展示もあり。初めて『アリーテ姫』を観るお客さんが多いのも嬉しかった。それから、トークの前に片渕監督ではなく、僕がお客さんから花束をいただいてしまった。いただいたお手紙を読むと、今回のオールナイト企画に対するお礼であるらしい。ありがたいけど、いいのかな。

第527回 巧くなるには、の続き

 前回の「遮二無二描く」云々同様、大塚康生さんからいただいたお話。

皆、今持ってる巧い先輩の描いた原画のコピーとか有名なアニメーターの原画集なんかは、箱に詰めて押し入れの中にしまいなさい! そして2〜3年開けなかったモノは、どーせ必要ないんだから捨てなさい! そーいったモノは「持ってるだけで自分が巧くなったと勘違いする」から! 結局自分が描けるようにならなきゃ意味ないんですよ!

 これは思い当たる人、多いのでは? 俺の場合、もともと友達から貰うことはあっても、自ら欲しがってコレクションする趣味がなかったので捨てるモノもなかったんですが、この話を同期のアニメーターにしたら「耳が痛い」と言ってました。「アニメーターはまずどんな物でも自ら描き出せる技術を持っていなければならない」ってこと! 「水? ああ、僕いい原画のコピー持ってるよ!」「爆発? それなら○○様の原画集を見るべきだ!」と誰かの参考がないと描けないってアニメーター、結構いるんです。もちろん誰でも最初は模倣から入るわけで、大塚さんだってそんなことは百も承知のハズです。大塚さんが仰りたいのは「巧い人の画を見るのもほどほどに!」ってだけで、原画集をめくっただけで描きもしない、アニメ教養主義に警鐘を鳴らしているのだと思います。「アニメーターは描いてナンボだからね」ともよく仰ってました。

宮崎(駿監督)は僕より10若いけど、会った時点で
「あ、この人は僕より(画を)描いてる!」とすぐ分かった!

 大塚さんは自分らの前では宮崎駿監督のことを、雑誌などのコメントによくある「宮さん」とかではなく、先輩らしく「宮崎」と呼び捨てにされてましたが、敬意は感じました。ま、この言葉も「描いている量」ですね、つまりは。あと、

月10カットしか描けない人と、月100カット描く人とでは、
10倍の経験値の差ができる!

とも。話される度に100が300になったり数字は異なりましたが、これも大塚さんがいかに「仕事とは量である」ということに拘ってらしたのか、な言葉でしょう。俺個人はもっとダイレクトにこう言われました。

 当時、手が遅かった自分に今でも突き刺さっている言葉です。これ何回か言われました、たしか。恐らく「板垣は遅ぇ遅ぇ」と社長から大塚さんに伝わってたんでしょう。

3秒のカット(動き)は3秒で描くつもりで!
3秒はオーバーでもね(笑)、せめて3時間! 3日、3週間と
延びれば延びるほど、何か違った動きになる!

って話もありました。つまり「実際目で見えるスピード感を大事にしなさい」ってこと。そういえば大塚さんはよく「この秒数ではそんなとこ見えないよ」と仰ってました。別に大塚さんは手抜きを推奨してるのではなく、「視聴者に見せたいところをハッキリさせるため、見えない部分はほどほどに引きなさい!」という意味のことだと思います。これは俺も演出をやって何百カットもチェックするようになった時、本当に実感しました! 本編全体で見ても「カットの尺に合わせた情報量の操作」は究極のテーマなんです。かと思うと大塚さんは、

アニメーションは妥協の産物だ!

と誤解を招きかねないことを言ったりもします。実はこれも深い言葉で、「アニメは”ほどほどに拘って作る”べき!」ってことかと。これは板垣が後輩によく言う、

現在50点の自分を自ら認めた上、65点ぐらいまで頑張って直し、
「まだ巧く描けてない」と分かってても作業を先へ進めなきゃ作品は完成しない!!

てのとよく似てると思います。大塚さんご自身も「僕でも10カット中1〜2カットですよ、巧くいったと思えるカットは」と。ね? あのキャリアの大師匠・アニメ業界の最重鎮をして「ある程度の妥協は必要である」と提唱してるんですよ。深い。

第113回 ただよう『風格』 ~機動戦艦ナデシコ~

 腹巻猫です。9月2日(土)13時より、神保町・楽器カフェにて「テレビまんがソノシート大放談!」なるトークイベントを開催します。タツミムック『日本懐かしソノシート大全』(水落隆行著/辰巳出版)が9月5日に発売されることを記念してのイベント。著者の水落隆行さんと早川優さん、腹巻猫が出演し、ソノシートよもやま話のほか、珍しいソノシートの現物も紹介する予定です。お時間ありましたら、ぜひご来場ください!

「テレビまんがソノシート大放談!」
http://gakki-cafe.com/events/event/『日本懐かしソノシート大全』発売記念-テレビま/
予約はこちらから。
https://airrsv.net/gakki-cafe/calendar/menuDetail/?schdlId=T0007A6733

 9月2日に『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の第5話「激突 ルウム会戦」が劇場公開される。今回は、その音楽を担当している服部隆之の作品を紹介したい。
 服部隆之といえば、昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」や大きな評判を呼んだTVドラマ「下町ロケット」の音楽も記憶に新しい、劇場作品・TVドラマ音楽の第一人者である。ダイナミックで明るく、胸がスカッとする音楽を書かせたら右に出るものはいない。日本を代表する映像音楽作曲家のひとりだ。
 服部隆之は1965年生まれ。祖父は服部良一、父は服部克久という音楽一家。幼少時から音楽教育を受けて育った。ピアノの練習は嫌いだったそうだが、少年時代はブラスバンドや洋楽系のバンドで活動。高校を2年で中退し、パリ国立高等音楽院に5年間留学する。パリで音楽を学びながら、各国の本物の音楽や文化に触れて感性を磨いた。
 帰国後、さだまさしのアルバムアレンジで編曲家としてデビュー。ポップス、ゲーム音楽等のアレンジやTV、ステージの音楽などでキャリアを積んだ。1990年、TVドラマ「代表取締役刑事」で映像音楽デビュー(矢野立美、米光亮と共作)。1994年にはTVドラマ「お金がない!」、劇場作品「ゴジラvsスペースゴジラ」で音楽を担当し、サントラファンの注目を集めた。
 以降、音楽を担当したTVドラマ・劇場作品はサントラファンならずともご存知のものばかり。TVドラマでは、「王様のレストラン」(1995)、「正義は勝つ」(1995)、「総理と呼ばないで」(1997)、「HERO」(2001)、「新選組!」(2004)、「のだめカンタービレ」(2006)、「華麗なる一族」(2007)、「半沢直樹」(2013)、「下町ロケット」(2015)、「真田丸」(2016)、劇場作品では、「ラヂオの時間」(1997)、「ゴジラ2000 ミレニアム」(2000)、「みんなのいえ」(2001)、「電車男」(2005)、「宇宙兄弟」(2012)など、話題作、ヒット作を挙げればきりがない。アニメでは、劇場版『スレイヤーズ』(1995)、『機動戦艦ナデシコ Martian Successor NADESICO』(1996)、『シスター・プリンセス』(2001)、『キャプテンハーロック』(2003)、『大正野球娘。』(2009)、『CODE:BREAKER』(2012)といった作品を手がけている。
 今回は、服部隆之が手がけた初のTVアニメ『機動戦艦ナデシコ』を紹介しよう。

 『機動戦士ナデシコ』は1996年10月から1997年3月まで放送されたTVアニメ作品。『飛べ!イサミ』(1995)の監督を務め、のちに『学園戦記ムリョウ』(2001)、『宇宙のステルヴィア』(2003)などを手がける佐藤竜雄が監督。アニメ制作はXEBECが担当した。
 ナノテクノロジーや重力制御技術の発達で人類が地球以外の惑星に進出するようになった22世紀末。謎の敵が来襲し、人類の拠点を次々と制圧していく。木星蜥蜴と名づけられた敵の圧倒的な戦力に地球連合軍は苦戦し、反撃の機がつかめない。そんなとき、火星に残された住民を救うべく、地球の民間企業が建造した宇宙戦艦ナデシコが発進した。ミスマル・ユリカ艦長以下、個性的なクルーを乗せたナデシコの波乱に満ちた航海が始まる。

 設定はシリアスながら、キャラクターや物語展開は破天荒でギャグも多い。SFとラブコメ、メカと美少女という80~90年代SFアニメ王道の要素を盛り込んだにぎやかな作品である。
 服部隆之の音楽は、スケール豊かなオーケストラ編成の曲から、室内楽風の小品、ラウンジ音楽風、ポップス風と多彩。コミカルな要素はほとんどなく、じっくり聴かせる音楽になっている。巧みなオーケストレーション、耳に残る旋律、それらを包みこむように、大らかで品のよい風格のようなものが感じられる。祖父・服部良一から受け継がれてきた音楽性だろうか。
 当時の服部隆之は、大作「ゴジラvsスペースゴジラ」でその力量を示し、「王様のレストラン」で高い評価を得て、まさに勢いに乗っていた時期。『機動戦艦ナデシコ』の音楽からは、そんな服部の意気込みが伝わってくる。
 サウンドトラック・アルバムは1996年12月に第1弾「機動戦艦ナデシコ CD-001」がキングレコードから発売された。「CD-001」は劇中のナデシコの機体番号「ND-001」のもじりで、「CD-002」「CD-003」と続くわけではない。三方背スリーブケース入り、CDブックレットとは別に作品の設定やキャラクター&メカニック紹介をまとめた24ページ・フルカラーブックレットが同梱されている。『BLUE SEED』や『新世紀エヴァンゲリオン』のサントラ盤の仕様を引き継いだスタイルで、本作への力の入れようがうかがえる。
 サントラ盤2枚目は「機動戦艦ナデシコ~これがホントの『三枚目』?」のタイトルで1997年6月に発売された。これもスリーブケース入り。放送終了後の発売となったことで、2枚目には最終話までの音楽使用状況が反映されている。ファンにとっては理想的な発売スケジュールと言えるのではないだろうか。
 今回は1枚目「機動戦艦ナデシコ CD-001」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. YOU GET TO BURNING(歌:松澤由実)
  2. スキャパレリ・プロジェクト
  3. Enemy from Jupiter
  4. ナデシコのワルツ
  5. YURIKA
  6. 強襲
  7. ナデシコ発進す!
  8. いまはおやすみを…
  9. チェンジ!ゲキ・ガンガー1.2.3!!
  10. 必殺パワー!ゲキガンパンチ
  11. キョアック星人の野望
  12. 戦いの野に夕陽が沈む
  13. レッツゴー・ゲキ・ガンガー3(歌:金田めろん[タフ・ラフ])
  14. アイキャッチ
  15. Three Angels
  16. ゴート・ホーリー
  17. 哀しい記憶
  18. 戦闘領域突入
  19. アキト、起つ
  20. Go! エステバリス
  21. 虚空のトライアングル
  22. 勇荘なるナデシコ
  23. 新たなる航海
  24. 私らしく(歌:桑島法子)
  25. 次回もみんなでみよう!

 オープニング主題歌に始まり、エンディング主題歌と次回予告音楽で終わる構成。トラック9~13は劇中アニメ『ゲキ・ガンガー3』のBGM集。本編と同じくバラエティに富んだ内容で飽きさせない。
 構成・解説は早川優。ツボを押さえた曲順と文字数オーバーに違いない濃厚な楽曲解説で繰り返し楽しめるアルバムだ。
 オープニング曲「YOU GET TO BURNING」は、『GS美神』(1994)主題歌「GHOST SWEEPER」の作曲や『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)主題歌「残酷な天使のテーゼ」のアレンジなどを手がけた大森俊之の作・編曲。
 TV版はミステリアスなアバンタイトル曲から始まり、トランペットのハイトーンで一気に曲の色彩が変わったあと歌がスタートするのが印象的。本アルバムにはアバンタイトル部分のないフルサイズが収録されている。ここはTVサイズのほうが雰囲気が出たと思うが、サントラ盤の1枚目には主題歌のフルサイズを収録するのが『機動戦士ガンダム』以来のキングレコードの伝統だった。TVサイズは2枚目のアルバム「機動戦艦ナデシコ~明日の艦長はキミだ!」(ソングアルバム)に収録されている。
 トラック2「スキャパレリ・プロジェクト」はアルバム全体のプロローグとなるトラック。曲名はナデシコの初期任務につけられたプロジェクト名。「スキャパレリ」は火星の地図を作ったイタリアの天文学者の名前である。本トラックは2曲を1トラックに編集。1曲目はポップス・オーケストラ風の地球連合司令部のテーマ。雄大で温かみのあるオーケストレーションが服部隆之らしい。2曲目はナデシコの勇姿をイメージしたエモーショナルなテーマだ。
 トラック3「Enemy from Jupiter」は謎の侵略者を描写するミステリー曲。豪快な音楽の印象が強い服部隆之だが、インタビューによれば、「HERO」のような曲は本来の好みではなく、実はすごく暗い世界観が好きなのだそうだ。侵略SFものならではのダークな曲に、「華麗なる一族」などにつながる服部隆之音楽の奥深い面が表れている。
 続く2曲は雰囲気を変えて、優雅な「ナデシコのワルツ」とラウンジ音楽風の「YURIKA」。「王様のレストラン」にも通じる、しゃれたヨーロッパ音楽の味わいがあるナンバーだ。単なるSFアクションものでない『機動戦艦ナデシコ』の音楽設計の妙を感じさせる楽曲である。アルバムの序盤にこの2曲を置いた構成もうまい。
 次のトラック6「強襲」は『ナデシコ』のロボットアニメとしての一面を代表するスリリングな楽曲。2曲を1トラックに編集している。1曲目は木星蜥蜴の出現を描写する曲で、複雑にからみあうオーケストラが得体の知れない敵の襲来を表現する。緊迫感の中に聴こえる軽妙な音の動きに、服部隆之が学んだフランス音楽の香りがただよう。2曲目はナデシコ劣勢を描写する緊迫曲。激しいリズムとかけあいを演じる弦のフレーズは主題歌「YOU GET TO BURNING」のモティーフを崩したもの。ナデシコ危機の場面をたびたび盛り上げた、全編を通して印象深い曲である。筆者お気に入りの1曲だ。
 トラック7「ナデシコ発進す!」はM-1のMナンバーが付された本作のメインテーマ。主題歌のオーケストラによるアレンジ曲である。金管群のファンファーレに始まる堂々たるアレンジでオーケストラが主題を奏していく。演奏時間は3分を超え、聴きごたえ満点。ポップスのアレンジやステージ音楽を手がけてきた服部隆之の手腕が発揮された、まさにメインテーマと呼ぶにふさわしい仕上がりである。
 バンドスタイルによる主題歌の瀟洒なアレンジ「いまはおやすみを……」でアルバムの3分の1が終了。
 トラック9から5曲は『ゲキ・ガンガー3』BGMコレクションになる。
 「テレビ・BGMコレクション ゲキ・ガンガー3」という設定で設けられたこのブロック、早川氏の解説も暴走気味で、『ナデシコ』という作品にふさわしい。
 楽曲は70年代ロボットアニメの典型的スタイルを踏襲。あえてチープな音作りで「100年前のロボットアニメ」の空気感を演出している。
 アイキャッチを挟んで、アルバムは終盤へ。
 服部隆之節全開の軽快なトラック15「Three Angels」から、ブルージーな「ゴート・ホーリー」、ピアノが奏でる悲哀曲「哀しい記憶」とメリハリの効いた曲順でつないでいく構成がいい。
 トラック18「戦闘領域突入」から危機感が盛り上がり、主人公テンカワ・アキトの決意を表現する悲壮な「アキト、起つ」、人型機動ロボット・エステバリスのクールな活躍テーマ「Go! エステバリス」、弦合奏による主題歌のメランコリックな変奏曲「虚空のトライアングル」とドラマティックに展開。SFメカ戦を描くダイナミックな音楽とキャラクターの心情を描く繊細な音楽が対比され、戦場の人間ドラマが際立つ。起伏に富んだ人間ドラマで真価を発揮する服部隆之音楽の魅力が存分に味わえるトラック構成である。
 トラック22「勇壮なるナデシコ」は4分30秒を超える大曲。まるで大河ドラマのテーマ曲のような、本アルバム中の白眉とも呼べる曲である。雄大な曲想の中、ピアノとホルンの音色が深く胸に響く。本作の時点では服部隆之はまだ大河ドラマを手がけていないが、8年後の「新選組!」、20年後の「真田丸」での活躍を予感させるトラックだ。
 サウンドトラック・パートの締めくくりは、大団円を思わせる主題歌のロマンティックな変奏曲「新たなる航海」。これも4分50秒に及ぶ長い曲で、オーケストラ音楽の醍醐味をたっぷり味わうことができる。

 音楽、パッケージ、解説と三拍子がそろったアルバムである。服部隆之の初期作品としても、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』へとつながる音楽性がすでに表れていて聴き逃せない。90年代アニメ音楽を代表する名盤のひとつと呼んでよいだろう。何より、悠々たるサウンドを聴かせる服部隆之の音楽に名盤の「風格」がただよっている。サントラ2枚目「これがホントの『三枚目』?」には、追加録音曲やエキストラ曲もフォローされているので、ぜひ、2枚セットで聴いていただきたい。

機動戦艦ナデシコ CD-001
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機動戦艦ナデシコ~これがホントの『三枚目』?
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機動戦艦ナデシコ コンプリートCD‐BOX
※サントラ、ソングアルバム、ドラマ盤などをセットにした10枚組
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第135回アニメスタイルイベント
磯光雄の作画を語る!

 『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』『BLOOD THE LAST VAMPIRE』『新世紀エヴァンゲリオン』等における超絶作画で、業界内外で高く評価されている磯光雄。彼の仕事にスポットをあてたトークイベントを開催する。
 今回のイベントでは磯光雄自身は出演せず、彼の仕事をリスペクトする業界の方々が会場に集い、トークを展開する。現在決まっている出演者は、エフェクト作画のエキスパートとして知られる橋本敬史、『天元突破グレンラガン』『キルラキル』で監督を務めた今石洋之。他の出演者が決まった場合は改めてお伝えする。会場ではアニメスタイルの新刊「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」を販売する予定だ。

 今回のイベントもトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。開催日は2017年9月10日(日)。前売りチケットは発売中。詳しくは阿佐ヶ谷ロフトAの公式サイトを見ていただきたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/72737

第135回アニメスタイルイベント
磯光雄の作画を語る!

開催日

2017年9月10日(日)
開場12時 開演13時 終演16時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

橋本敬史、今石洋之、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

115 アニメ様日記 2017年8月6日(日)~

2017年8月6日(日)
「第134回アニメスタイルイベント公開30周年 山賀博之が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を語る」開催日。公開前にガイナックスで購入したスタッフ同人誌を持って会場に。第一部は山賀博之監督にたっぷりと語っていただき、第二部では貞本義行さんにも登壇していただいた。第一部、第二部まとめてひとつのインタビューとしてとらえると、充実したものになったのではないかと思う。こういった過去作品についてのトークイベントも面白い。可能ならまたやりたい。

2017年8月7日(月)
取材の企画のためにある作品をひたすら観る。たっぷり観たうえで出した結論は「今はこの企画はやめておいたほうがいいかな」だった。たまにはそんなこともある。
 昨日のイベントで参考にするために注文した『王立宇宙軍 オネアミスの翼』LDBOXが届く。ああ、やっぱりLDBOXの解説書に山賀さんのラフコンテと完成コンテの比較が載っていた。もう1日早く届いていれば使えたのに。惜しい。
 仕事の合間に「イントゥ•アニメーション7」へ。着いた時には最後のプログラムの終盤だった。小冊子「日本アニメーション100年史 ~なまくら刀からこの世界の片隅に…~」をいただく。個人作家のアニメーション側から見た「100年史」といった内容で、僕にとっては新鮮だった。『なまくら刀』から始めるなら、商業アニメ中心の「100年史」よりもまとまりがいいかもしれない。

2017年8月8日(火)
『NEW GAME!!』を1話から最新話まで観る。2話で藤原佳幸監督が演出処理を担当していて、それがよかった。絵コンテでなく、演出処理を担当したのがよかったのだ。
 コミックマーケットでアニメスタイルの販売スタッフが着るTシャツが届いた。絵柄は「平松禎史 SketchBook」で収録したイラストの1枚を使わせていただいた。これはいいな。単独商品として売り物にしてもいいくらい。

2017年8月9日(水)
早朝に24時間営業の書店に行って、何冊か雑誌を購入する。1冊が「ユリイカ」の幾原邦彦特集。
 昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では19位を放映。『PARTIII』50話(最終話)「原潜イワノフの抹殺指令」だった。ここまで発表された19位から24位の6本の中で『PARTIII』が3本。『PARTIII』はほとんど入らないのではないかと思っていたので意外。

2017年8月10日(木)
午前中に『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 1』の試写に。大胆な物語構成、大胆な画面構成。観終わって思ったことは「ここで終わり? 早く『2』を観せて」だった。
 製本された「平松禎史のうすい本 2017夏」と「磯光雄 Flip Book」が編集部に届く。「磯光雄 Flip Book」は製本的にも豪華な仕上がりに。

2017年8月11日(金)
コミックマーケト92第1日目。今回の新刊は「平松禎史 SketchBook」と「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」。それぞれコミケ特典の「平松禎史のうすい本 2017夏」「磯光雄 Flip Book」付き。Twitterを見ると、購入された方達に好評のようだ。よかった。誤算は販売スタッフが首にタオルを巻いているので、平松さんの画を使った販売スタッフ用Tシャツの画がよく見えないということ。

2017年8月12日(土)
コミックマーケット92第2日目。事務所に戻ったら日本映画専門チャンネルで『たまこラブストーリー』をやっていた。あれ、この作品の撮影ってこんな感じだったっけ。面白いなあ。機会を見つけて観直そう。

第526回 巧くなるということ

 先週はアニメスタイル様よりお盆休みをいただいたのですが、自分の仕事にお盆休みはありませんでした。で、唐突に

遮二無二描く!
画が巧くなりたいならこれしかない!

と。これは自分がテレコム・アニメーションフィルム在籍中、大塚康生さんよりしょっちゅう聞かされた言葉です。以前よく周りの人たちから「板垣さんて”アニメ(業界で)の育ち”がいい方ですよね〜」と言われたりしました。確かに、だいぶ前にも説明したとおり、学生時代は小田部羊一先生、テレコム時代は大塚さん始め、友永和秀さん、田中敦子さんらに教わることができたという幸運! これで「そんなことぁありませんよぉ」と謙遜してたら、師匠方に失礼にあたると思うので、自慢に聞こえるのを覚悟の上「まぁ、そうかもしれませんね」と肯定するようにしています(現在進行形)。
 ただ俺にとっては、その「アニメの育ちのよさ」云々はコンプレックスでもあるんです。なぜなら、広く一般のアニメーター修行時期をいわゆる「動画1枚200円」の出来高制ではなく、社員制の固定給でいただいていたので、同期の友人たちからも「それでもアニメーターか」とか「卑怯者」だの、ま、冗談まじりにですが言われたりしました。つまり、こんな温室育ちでは「1日何十枚描いてギリギリ食える」くらい過酷な状況で鍛えられたであろう同年代のアニメーターに太刀打ちできるハズがない! と。テレコムの時はそればっかり考えていたのです。贅沢な話、テレコムを辞めて、出来高制のフリーになって背水の陣を敷かないと、自分は巧くなれないのではないか? と思ったりもしました。そんな時、大塚さんの「遮二無二描く」という言葉は、その後の板垣の道標になってくれて

巧くならないことを環境のせいにするんじゃない!
四の五の言う前にとにかく描くべし!

と。これは現在ウチ(ミルパンセ)の新人によく話してます! で、他にも大塚さんから聞いた「巧くなるには」の話……てとこでスミマセン、つづきは次回!

オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 97
アニメファンなら観ておきたい200本 沖浦啓之と 『人狼 JIN-ROH』」


 9月23日(土)開催のオールナイトは、アニメーター&監督として活躍する沖浦啓之の特集だ。ずば抜けた画力で知られる彼の代表作を一挙上映するプログラムである。

 上映作品は彼がキャラクターデザイン、作画監督等の役職で参加した『走れメロス』、監督作品の『人狼 JIN-ROH』『ももへの手紙』(以上、いずれも劇場作品)。そして、原案・監督・脚本・作画監督等を務めた『日本アニメ(ーター)見本市』の短編「旅のロボから」。
 トークの出演は沖浦啓之と、アニメーターとして『人狼 JIN-ROH』『ももへの手紙』に参加している西尾鉄也。前売り券の発売日は決まり次第お伝えする。

 なお、「アニメファンなら観ておきたい200本」はアニメファン初心者にお勧めの作品を上映するオールナイトの連続企画である。勿論、初心者でない観客も大歓迎だ。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 97
アニメファンなら観ておきたい200本 沖浦啓之と 『人狼 JIN-ROH』

開催日

2017年9月23日(土)
開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5時40分

会場

新文芸坐

料金

一般2800円、前売・友の会2600円

トーク出演

沖浦啓之、西尾鉄也、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『走れメロス』
『人狼 JIN-ROH』
『ももへの手紙』
『日本アニメ(ーター)見本市/旅のロボから』

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

114 アニメ様日記 2017年7月30日(日)~

2017年7月30日(日)
早朝、新文芸坐に。着いた時には「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95 BONES NIGHT『アクションアニメ』はいいぞ!」の最後のプログラム『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』の終盤だった。前に上映した時よりもフィルムの状態がよかったんじゃないかな。
 去年の夏に中古ソフトで「スーパーロボット大戦A」を購入して、プレイしている。2001年にリリースされたゲームボーイアドバンスのソフトだ。どうして数ある「スパロボ」の中から「A」を選んだのかというと、『ファーストガンダム』や『マジンガーZ』等、「スパロボ」初期からのお馴染みのユニットが出てくるゲームをプレイしたかったのだ。1年と少しやって、今は四度目のプレイの途中だ。空き時間にたまにやるだけなのでなかなか進まない。二度目のプレイから攻略本を片手にやっていて、今回の目標は東方不敗を仲間にすることだった。東方不敗はいわゆる隠れキャラで、いくつかの条件を満たさないと味方にならないのだ。今日、ようやくその東方不敗が仲間になったのだが、これが篦棒に強い(ユニットとしてはマスターガンダム+風雲再起で使用している)。「あてる・よける」のうえに、長距離攻撃もできれば必殺技も強大。さらにEN消費ゼロで弾数制限なしで使える武装がある。ゲームバランスを崩しかねない強さだ。動かしていて楽しい。

2017年7月31日(月)
東武百貨店池袋店で開催中の「タツノコプロ55周年GO!GO!記念展」を見に行く。イラストやラフが沢山展示されていて、しかも、撮影がOK。昔から印刷物で何度も見たイラストの現物があるのが嬉しかった。
 「『君の名は。』Blu-rayコレクターズ・エディション 4K Ultra HD Blu-ray同梱5枚組」の特典ディスクを観た。ビデオコンテ、メイキングドキュメンタリー、 ビジュアルコメンタリー、新海誠監督講演映像、イベント記録映像集等々。特典のボリュームが凄まじいし、ひとつひとつのコンテンツの作りも丁寧。値段に見合った充実した内容だ。
 「週刊プレイボーイ web comic」の「キン肉マン」を楽しみにしている。今日の更新分ではウルフマンに加えて、ティーパックマン、カナディアンマンといった懐かしい面々が襲来した敵に立ち向かう。「おお、まだその手があったか」と思った。「週刊プレイボーイ web comic」の「キン肉マン」は話を練っているし、ファンの期待に応えようとしている感じがよい。

2017年8月1日(火)
「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」の告知開始。pixiv Zingaroの『リトルウィッチアカデミア』展をチラっとのぞきに行く。

2017年8月2日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では20位を放映。『PARTIII』37話「父っつぁん大いに怒る」だった。先週放映の21位に続いて銭形メインのエピソードだ。出来が悪いわけではないし、見どころがないわけではないけれど、ベスト24に入ったのは少し意外だった。
 書店でアニメ本をごっそり買い込む。『メアリと魔女の花』絵コンテ本、「The Art of メアリと魔女の花」等々。「ありがとう、うちを見つけてくれて 『この世界の片隅に』公式ファンブック」は書き手の愛と熱意にあふれた1冊。

2017年8月3日(木)
「平松禎史のうすい本 2017夏」「磯光雄 Flip Book」の編集作業の大詰め。例によって大詰めで忙しいのは僕ではなくて、編集部のスタッフだ。
 発売からちょっと遅れて事務所に届いた「Megami MAGAZINE」2017年9月号に目を通す。これは18周年記念号で「エッチなアニメで振り返る メガミマガジンの18年」という記事が興味深かった。例えば、2004年6月~2006年6月の同誌についての記事の見出しは「誌面から乳首が消え、18禁OVAページも抹消」というもの。2014年4月~2017年7月についての記事の見出しは「メガミマガジンある限り エッチアニメを追い求める」。清々しい。

2017年8月4日(金)
『ガンダムビルドファイターズ バトローグ』の配信が始まったので、Amazonビデオで観る。リバーシブルガンダムのパイロットがリボンズ・アルマークからアムロ・レイに変わるという変化球パロディで、エンディングは古谷徹さんと蒼月昇の両方がクレジットされていた。さらに、シャア・アズナブル(=キャスバル・レム・ダイクン)を演じるのは『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でシャア・アズナブル(=キャスバル・レム・ダイクンが入れ替わる前の本物のシャア)を演じた関俊彦さんというひねり技。

2017年8月5日(土)
仕事で必要な資料が見つからないので、入手のために、中野のまんだらけへ。まんだらけに入る前に昔からの知り合いのデザイナーさんに、まんだらけを出たところで学生時代からの知人にバッタリ。さすがは中野。さすがはブロードウェイ。

第112回 萌えるアクションサウンド 〜きらめき☆プロジェクト〜

 腹巻猫です。いよいよ今週末、8月11日(金)19時より阿佐ヶ谷ロフトで「渡辺宙明トークライブ Part11」を開催します。アニメ・特撮作品で活躍する脚本家・荒川稔久さんをゲストに迎え、荒川さん作詞×宙明先生作曲のアニメソングの制作秘話や宙明先生の最新動向をうかがう予定。その翌日12日は、コミックマーケット92に「劇伴倶楽部」で出展します。新刊はありませんが、『海のトリトン』『伝説巨神イデオン』の音楽研究本と委託で「サンダーマスク」のライブラリ音楽研究本を頒布する予定。両日とも、お時間ありましたらぜひお立ち寄りください!

「渡辺宙明トークライブ Part11 〜宙明音楽夜話 featuring 荒川稔久〜」
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68971


 荒川稔久の代表作のひとつ「特捜戦隊デカレンジャー」(2004)は東映スーパー戦隊シリーズの中でも人気作のひとつだ。放送10周年となる2014年にはVシネマ「特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER」が公開され、今年2017年にはデカレンジャーが宇宙刑事ギャバンと共闘するVシネマ「スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー」が公開された。「スペース・スクワッド」のテーマソングは渡辺宙明の書き下ろし。劇中音楽は渡辺宙明と「デカレンジャー」の音楽を手がけた亀山耕一郎が連名でクレジットされている。
 亀山耕一郎はスーパー戦隊シリーズ「未来戦隊タイムレンジャー」(2000)、「動物戦隊ジュウオウジャー」(2016)でも音楽を手がけた作曲家。テクノとプログレの要素を取り入れた「タイムレンジャー」、刑事ドラマ風の「デカレンジャー」、生パーカッションを使ってワイルドな味を出した「ジュウオウジャー」と、それぞれに工夫を凝らした音楽が印象に残る。今回は、その亀山耕一郎の作品を紹介したい。

 亀山耕一郎は1962年生まれ、兵庫県神戸市出身。子どもの頃から音楽好きでミュージシャンになりたいと思っていた。小学生時代はピアノを習い、6年生になってバンドを始めた。中学、高校とバンドを続けるが、演奏ではうまいやつにかなわないとミュージシャンになる夢は挫折。作曲家を志す。  高校卒業後、浪人して東京藝術大学音楽学部作曲科に進学。前回紹介した三宅一徳や佐橋俊彦と同時期に東京藝大で学んだ。在学中からバンド仲間の紹介でCM音楽を作るようになり、作曲家としての道が開ける。
 いっぽうで大学時代からシンセサイザーに興味を持ち、自身で機材を買い、打ち込みに取り組んでいた。その知識と技術が認められて、『忍者戦士 飛影』(1985)などの作曲家・川村栄二のもとでシンセサイザーオペレーターとして2年ほど活動した。川村が手がけた「仮面ライダーBLACK」(1987)やスーパー戦隊シリーズの音楽に亀山が作った音が生かされている。
 TVのクイズ番組の音楽作りなどを経て、本格的な映像音楽デビューとなったのは1992年に制作されたイタリア=日本合作アニメ『冒険者』(日本では2002年放送)。以降、ドラマ、アニメを中心に活躍している。
 アニメの代表作は、イメージアルバムから手がけた『炎の蜃気楼』(2002)、『ポポロクロイス』(2003)、『ボボボーボ・ボーボボ』(2003)、『銀盤カレイドスコープ』(2005)、『BUZZER BEATER』(2005)、『コヨーテ ラグタイムショー』(2006)、『ぷるるんっ!しずくちゃん』(2006)、『ビーストサーガ』(20013)、『金色のコルダ Blue♪Sky』(2014)など。
 「タイムレンジャー」や「デカレンジャー」のクールでカッコいい音楽のイメージが強いが、ご本人は熱狂的な阪神タイガースファンという関西人。そのギャップが楽しい。趣味はトライアスロン。健康に気を遣ってスポーツをやる作曲家はいるが、トライアスロンにまで参加するツワモノは他に聞いたことがない。アクションものからギャグ、ファンタジー、美少女ものまで、幅広くこなす作曲家である。  しかし、ご本人が好きなのはどちらかといえばアクションものだという。「音楽とはカッコいいもの」という思いがあるのだそうだ。

 今回、アニメの代表作を取り上げようと思ってちょっと困った。ダークな『炎の蜃気楼』、RPG風ファンタジー『ポポロクロイス』、メルヘンタッチの『しずくちゃん』、クラシカルな『銀盤カレイドスコープ』、ギャグ満載の『ボボボーボ・ボーボボ』、高校の管弦楽部を舞台にした『金色のコルダ Blue♪Sky』等、どれも魅力的だが、特撮作品のような突き抜けたカッコよさとインパクトのある作品がなかなかない。今回は筆者の趣味で『きらめき☆プロジェクト』を取り上げよう。
 『きらめき☆プロジェクト』は、2005年から2006年にかけて発表されたOVA作品。
 『AIKa』(1997)、『ナジカ電撃作戦』(2001)、『ストラトス・フォー』(2003)などを手がけたスタジオ・ファンタジアの原作・制作によるオリジナル作品だ。美少女ゲームのようなタイトルだが、巨大ロボットが活躍するロボットアニメである。
 日本企業が作った巨大ロボット・ビッグマイティがヨーロッパの小国・ジュネス王国に現われ、ロボットバトルを挑む。迎え撃つのはジュネス王国の巨大ロボット・ファンシーロボ。ビッグマイティは渋いおじさんチームが操縦する無骨なロボット。いっぽうのファンシーロボはひきこもりがちなお姫様カナの指令で動く身長45メートルの美少女お人形ロボット。ロボットアニメの定番である少年パイロットが登場しないのがユニークだ。代わりに、ハイパースーツをまとって空を飛ぶカナの妹ネネや、美少年4人組の薔薇騎士団、変形自在な美少女アンドロイド・リンクルなど多彩なキャラクターが華をそえる。『AIKa』でおなじみのお色気シーンもあるが、ビッグマイティを操るおじさんたちの心意気と、王国を守ろうとする少女たちのけなげさが心に残る。3DCGによる重量感のある巨大ロボット表現も見応えがある。アクションとギャグと熱血と萌えが渾然一体となった娯楽作品だ。
 亀山耕一郎の音楽は、巨大ロボットのカッコよさ、重厚さ、美少女の可憐さ、お嬢様のほんわかした雰囲気、おじさんの哀愁など、さまざまな要素をイキのいいサウンドで演出する。クラシックからロック、演歌までカバーする亀山の音楽性が生かされた快作である。
 サウンドトラック・アルバムは2005年8月にコロムビアミュージックエンタテインメント(現・日本コロムビア)から発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. キミノハートニコイシテル(ビデオ・サイズ)
  2. プロローグ・謎の怪ロボット
  3. ジュネス王城の朝
  4. ビッグマイティ出現
  5. ハイパー・ネネ
  6. ジュネス王国の危機
  7. ビッグマイティの脅威
  8. 出動!ファンシーロボ
  9. リンクルのテーマ
  10. カナのテーマ
  11. 最大の敵
  12. ロボット・バトル
  13. ファンシーロボの戦い
  14. オヤジの哀愁
  15. 栄光らしき脱出
  16. 薔薇騎士団のテーマ
  17. リンクルのテーマ2
  18. リンクルのフライヤー・チェンジ
  19. コミカル・サスペンス
  20. 大矢・出張のテーマ
  21. オヤジたちの挽歌
  22. 父の国・日本
  23. オヤジ大感動
  24. ザ・パーフェクト・バトル
  25. ファンシーロボ最後の戦い
  26. 大団円
  27. SETSUNASAコミュニケーション(ビデオ・サイズ)

 構成と解説はミュージックファイルシリーズでおなじみの高島幹雄。Mナンバー入りの解説がサントラファン向けでうれしい。トラック1からトラック10までは第1巻の物語をベースにした構成、トラック11以降は最終巻までを想定したイメージアルバム的な構成となっている。
 1曲目と最後の曲はオープニングとエンディング主題歌。歌は実写ドラマ版「美少女戦士セーラームーン」の主題歌を歌った、当時19歳の歌手・小枝(さえ)。オープニング曲「キミノハートニコイシテル」は亀山耕一郎が作・編曲している。
 このオープニング主題歌、なかなかの名曲である。
 アイドルポップ風のさわやかで軽快な曲調。小枝の透明感のあるボーカルとあいまって、本作のキュートな一面を象徴する曲になっている。ハンドクラップを取り入れたアレンジも心地よい。亀山耕一郎は歌作りも巧みで、「タイムレンジャー」の正副主題歌を手がけたほか、多くの作品で挿入歌やキャラクターソングを担当。『キューティーハニーF』(1997)主題歌などアレンジのみを担当したアニメソングも多い。
 トラック2「謎の怪ロボット」は、ビッグマイティが他国の巨大ロボットにバトルを挑んで勝利するアバンタイトルに流れた曲。戦隊シリーズの巨大ロボ戦を彷彿させるダイナミックな曲調で、開幕からわくわくする。
 トラック3「ジュネス王城の朝」はチェンバロが奏でる優雅なジュネス王国のテーマ。よく聴くとオープニング主題歌の変奏になっている。後半は明るいワルツ。第1話のうららかな朝の場面をはじめ、ジュネス王国三王女の登場シーンにたびたび使用されている。ロック調の曲が印象的な亀山耕一郎だが、『銀盤カレイドスコープ』でも聴けるこうしたクラシック調の曲もうまい。
 トラック4はビッグマイティがジュネス王国に現れるシーンのサスペンス曲。ジュネス王国側の緊迫感を伝える曲調で、これも特撮作品の敵出現曲を思わせる。
 キーボードとエレキギターをメインにしたトラック5「ハイパー・ネネ」はハイパースーツをまとった美少女ネネの活躍をイメージした曲だ。ジュネス王国の三女ネネは好奇心旺盛で猪突猛進。スーパーヒロイン気取りで謎の敵に突進していく。亀山耕一郎の原点であるバンド音楽スタイルで作られた勢いのある曲である。
 上下動する弦の動きが危機感をあおるトラック6「ジュネス王国の危機」とトラック7「ビッグマイティの脅威」を挟んで、トラック8「出動!ファンシーロボ」でいよいよ美少女お人形ロボット・ファンシーロボが出動する。
 リコーダー風の素朴な笛の音がメロディを奏でるメルヘンタッチの可愛い曲調。ロボットの出動曲といえばブラスが鳴り響くアップテンポの曲、という常識を裏切る意表をついたテーマである。この曲が流れるシーンでは大爆笑してしまった。後半は「らららんらん」と可愛い女声ボーカルが同じメロディをくり返す。コミカルにも聴こえるが、それだけではない。『きらめき☆プロジェクト』という作品の雰囲気とファンシーロボのキャラクターを象徴するテーマであり、本作の音楽の聴きどころと言ってよいだろう。作品世界と遊び心がガッチリかみあった音楽設計だ。こういうセンスがとてもよい。  トラック9「リンクルのテーマ」はクラリネット、フルート、ファゴットなどを主体にしたユーモラスな曲。カナが作ったお友だちロボ・リンクルは飛行機、自動車、潜水艇など、さまざまな形態に変身できる美少女型アンドロイド。ご主人のカナを慕うあまり挙動不審のようなふるまいを見せるのが可愛く楽しい。
 そのカナを描写するトラック10「カナのテーマ」は同じく木管をメインに、ややミステリアスな曲調を聴かせる3拍子の曲。天才的科学者でありながら人づきあいは苦手、ロボットが友だちという風変わりなキャラクターと愛らしさを表現する曲である。
 弦がしみじみと歌うトラック14「オヤジの哀愁」は、マイティロボットをまかされた日本企業の課長・大矢の心情を表す曲だ。出張の多い大矢は家庭では妻と娘とすれ違い気味。現場では頑固な技術者と無理を押し付ける上司の板挟みになって苦労が絶えない。そんな大矢がジュネス王国でカナと出逢い心を通わす第4話のシーンで使用されたのが印象深い。後半部分は第5話でマイティロボがファンシーロボとリンクルを助けに現れる感動的な場面に使用されている。
 トラック20「大矢・出張のテーマ」やトラック21「オヤジたちの挽歌」も、同じく男の哀愁をただよわせる曲。ジュネス王国側のリリカルな曲調と対比して、おじさん側のドラマを象徴する曲になっている。
 最終話は大矢たちを見捨てた島田部長が、最強ロボ「ザ・パーフェクト」を操縦してジュネス王国に乗り込んでくる展開。アルバム終盤はクライマックスの激闘を演出する曲が続く。
 トラック24「ザ・パーフェクト・バトル」はザ・パーフェクトの脅威を描く曲。エレキギターが唸る激しい曲調は悪の憎々しさ全開で、対決への期待を盛り上げる。
 トラック25「ファンシーロボ最後の戦い」は、ジュネス王国の危機を察知したファンシーロボが自らの意思で出動する場面に流れた悲壮感あふれる曲。まるで60年代特撮ドラマ「ジャイアントロボ」(1967)のような展開で、ぐっとくる場面だ。
 曲順は前後するが、大矢たちが最後の意地を見せてザ・パーフェクトに挑む場面には、トラック23「オヤジ大感動」が使用された。ホルンと弦が奏でる哀愁を帯びたメロディが、おじさんチームの熱い気持ちを表現する。そうそう、ロボットアニメやヒーローものにはこういう曲がなくては!  サウンドトラック・パートを締めくくるのは、オーケストラがゆったりと演奏する平和曲「大団円」。最終話のラストシーンに流れた曲である。弦の大きなうねりと金管の大らかな響きが安らぎを表現する。
 カッコよさと可愛さと感動がパッケージされた満足度の高いサントラである。本編を観ていなくても、音楽を聴くだけで作品の楽しさが伝わってくる。翳りのないストレートな音楽は亀山耕一郎の人柄を反映しているようだ。

 昨年から今年にかけて、特撮作品「動物戦隊ジュウオウジャー」「スペース・スクワッド」で健在ぶりを示した亀山耕一郎。アニメでもキラキラしたイキのいいアクション作品での活躍を期待したい。

きらめき☆プロジェクト オリジナルサウンドトラック
Amazon

113 アニメ様日記 2017年7月23日(日)~

2017年7月23日(日) 
「この人に話を聞きたい」の原稿を進める。
 録画で『REFLECTION』1話を観る。予想以上にビジュアルが独特。他にはないものを作るという意味では長濵博史さんらしい。バンダイチャンネルで『生徒会役員共』を1話から観る。いやあ、楽しいなあ。メインの女の子は3人とも好きだなあ。数年前に観返した時よりも好きになっていた。
 15時30分からバルト9で『劇場版 生徒会役員共』を観る。観る前から、冒頭にカメラワークが凝ったシークエンスとやたらと動くモブシーンがあるだろうと思っていたのだけど、それについては予想通り。劇場公開されているけれど、『生徒会役員共*』シリーズの2話分という位置づけだったらしく、劇中で話数表示がある。冒頭と、終盤のオリジナルエピソードと思われる部分以外は、TVシリーズと同じノリ。だからと言って物足りないわけではない。これからも年に一度くらいのペースで新作を劇場にかけてくれたら観にいきたいと思う。ただ、オープニングは作り直してくれると嬉しい。

2017年7月24日(月) 
午前1時30分頃に事務所に入る。タイプミスではなく、午前1時30分である。1時50分から、テレビ東京で「アニメ『ポケットモンスター』プレミア10」が始まる。20周年を迎えたアニメ『ポケットモンスター』の中から、ポケモンに縁の深い10人が選んだ10エピソードを10週連続で放映するのだそうだ。一回目の今回は湯山邦彦監督が選んだ第1シリーズ1話「ポケモン!きみにきめた」。第1シリーズ72話の「ニャースのあいうえお」は10エピソードに入るんだろうなあ。
 午前中に「この人に話を聞きたい」の本文原稿を終える。「この人に話を聞きたい」の本文は1万2000文字が目安で、テープおこしは4万文字から6万文字くらい。つまり、4万文字から6万文字のおこしを1万2000文字に圧縮するわけだ。以前は2万文字くらいにまとめて、そこから削って1万2000文字にすることが多かったが、最近は頭からまとめていって最後までいくときれいに1万2000文字になっていることが多い。今回もそうだった。

2017年7月25日(火)
相変わらず慌ただしい日々。Twitterで「平松禎史 SketchBook」の告知開始。ムック「未来警察ウラシマン COMPLETE BOOK」をいただく。1983年に放映された『未来警察ウラシマン』のムックである。初期デザインなど、初めて見る資料がいくつも載っていた。イラストの再録も嬉しかった。

 アニメーターの増尾昭一さんが亡くなられた。素晴らしい仕事を沢山残してくださった方だ。僕は『ふしぎの海のナディア』のロマンアルバムと「月刊アニメスタイル」第2号の『ふしぎの海のナディア』特集でお世話になった。心よりご冥福をお祈り致します。

2017年7月26日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では21位を放映。『新ルパン』第69話「とっつあんの惚れた女」だった。銭形メインの代表的なエピソードで、ここまで納得のエピソードばかりが入っていて嬉しい。1位から20位までに同じく銭形メインの『新ルパン』85話「ICPO(秘)指令」は入るのだろうか。

2017年7月27日(木)
「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.1」の校了日。同時進行で「磯光雄 Flip Book」「平松禎史のうすい本 2017夏」の作業も進む。平松さんと電話で打ち合わせをして、さらに「平松禎史のうすい本 2017夏」の掲載資料を増やすことになった。この時期に素材の追加。間に合うだろうか。ちょっとハラハラ。 
 編集スタッフDに事務所のロッカーを片づけてもらった。いらないもの、よくわからないもの、事務所では使い道のないものでいっぱいだったロッカーが随分と片付いた。15年~20年くらい前に取材で使っていたテープレコーダーがいくつも出てきた。それから、ゲキガンガー3のソフビのフィギアがでてきた。僕が持っている唯一のフィギュアだ。編集スタッフDに『ゲキガンガー3』でうちがやった仕事について説明する。編集スタッフDは『機動戦艦ナデシコ』放映時に一歳だったというから、知らなくても仕方がない。ついでに『ゲキガンガー3』のムック「ロマンアラスジ」を見せる。
 ロッカーの話をもう少し続ける。ロッカーの中から「A-kuei&Gatchinpo THE MOVIE」(「チェルシーの逆襲」「アークエと魔法のハンマー」)の先着プレゼントでもらった「アークエ オリジナルトイレットペーパー」が出てきた。自分のブログを検索したら、2005年5月7日にもらったもののようだ。あんまりにも面白いので、これは捨てずにロッカーに戻した。

2017年年7月28日(金)
慌ただしい日が続く。「設定資料FILE」と「この人に話を聞きたい」の大詰め。いや、アニメージュのこのふたつの記事で、この日に忙しかったのは僕ではなくて、他の編集スタッフです。

2017年年7月29日(土)
早朝に24時間営業の書店に行って、「月刊flowers」を購入する。本当に『少女革命ウテナ』の新作が載っていた。ウテナカフェも開催されるし、グッズも色々と出るみたいだし、20周年にふさわしい感じになっているのかな。次に『少女革命ウテナ』の書籍を自分で作るとしたら、25周年か30周年だろうか。午後はオールナイトの予習で『ストレンヂア 無皇刃譚』を観直す。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95 BONES NIGHT『アクションアニメ』はいいぞ!」。当日券も動いて、新文芸坐はほぼ満員。前に『ストレンヂア 無皇刃譚』や『COWBOY BEBOP 天国の扉』を上映した時よりも入りがいい。それを不思議に思ってトークの最初に質問をし、お客さんに挙手をしてもらったところ、中村豊さんのファンで、Twitterで彼をフォローしている方が大勢いた(印象としては4割くらい)。つまり、中村さんがTwitterで『ストレンヂア 無皇刃譚』についてずっと書き続けたことで、興味をもったファンが大勢いたということだ。凄いぞ、中村さん。その中村さんも会場に来ていたのだけれど、登壇はなし。出演の南雅彦プロデューサーと安藤真裕監督が、中村さんが聞いているのを承知で誉めまくるという、不思議なトークになった。