第667回 短いけど続き

 ま、前回のような理由で、我々世代ではかなり重要な位置を占めるはずの受験は、自分にとって不要なものでした。大学受験を「しない」と決めてからは、成績下がりましたよ〜、というより「下げました」よ。それこそ担任の先生に「何かあったのか?」と心配されたくらい。その時、俺「受験しない自分より、大学行きたい人が良い成績とるべきでしょう?」って返したのを今でも憶えています。呆れたような、ガッカリしたような担任の先生の顔も。前回も言ったように、受験が必要だと思って勉強した人たちをとやかく言うつもりはありません。目的を持って努力することは何においても報われるべきだし、素晴らしいことだと思っています。要は、自分——板垣伸にとって必要かどうか? の話。世間で「大学受験が当たり前」という風潮だからとか、どっかの権威ある方がそれぞれの家庭の事情など無視して、公共の電波で発した「大学くらい行っとけ」の一言に影響されたとかの理由でなく、「自分で判断する」ことこそが重要なんだと思うんです。
 ミルパンセに見学に来たアニメーター志望の高校生に「大学や専門学校に行ったほうがいいのでしょうか? 高卒じゃダメですか?」と訊かれたことがあります。この比較的業界ではポピュラーな質問に対して俺が答えるのは、

自分で出す答えならば、高卒だろうが大卒だろうがどちらでも正解! 要は己の将来を切り開くため、なんでも一所懸命にやる覚悟があるなら、後になって「大学行っときゃよかった〜」なんて後悔はしないはずだから!

です。その人にとって必要かそうでないか? はその人個人の決断に「他人のせいには絶対にしないという覚悟」が伴ってさえいれば、どれをとっても正解なんです。そういう意味では、自分、生まれて46年、幾度となく反省はしましたが、後悔した憶えはほとんどありません。

アニメスタイルTALK 続・沓名健一と語るアニメ作画の20年

 7月19日(日)11時から開催する無観客トークイベントは「続・沓名健一と語るアニメ作画の20年」。アニメーター、演出として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さんに、この20年間のアニメ作画を振り返ってもらう企画の第2弾です。

 第1弾「沓名健一と語るアニメ作画の20年」もアニメスタイルチャンネルでアーカイブ配信中です。併せてお楽しみください。なお、このトークの内容は後に加筆・修正し、雑誌「アニメスタイル」に掲載する予定です。

 今回のトークも、リアルタイムで中継したうえに、1週間配信。その後、アーカイブとしてしばらく視聴できるかたちとする予定です。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 125
『この世界の片隅に』四度目の夏

 新文芸坐とアニメスタイルは2017年、2018年、2019年に続き、本年の夏も片渕須直監督の作品を集めたオールナイトを開催する。上映タイトルは『この世界の片隅に』『マイマイ新子と千年の魔法』『アリーテ姫』。片渕監督の作品をまとめて鑑賞するチャンスだ。

 トークのゲストは片渕監督。会場では片渕監督のサイン入り「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」を販売する予定だ。

 新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要であり、入場時に検温・手指の消毒を行う。前売り券の発売方法を含めて、詳しくは新文芸坐のサイトを見ていただきたい。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 125
『この世界の片隅に』四度目の夏

開催日

2020年8月15日(土)

開場

開場:22時10分/開演:22時30分 終了:翌朝6時00分(予定)

会場

新文芸坐

料金

当日・一般3000円、友の会2800円(オンライン購入は+50円)

トーク出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会)

上映タイトル

『この世界の片隅に』(2016/126分/DCP)声:のん
『マイマイ新子と千年の魔法』(2009/93分)声:福田麻由子
『アリーテ姫』(2001/99分/35mm)声:桑島法子

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

●関連記事
『この世界の片隅に』絵コンテの決定版 [長尺版]よりも長い [最長版]で刊行!
http://animestyle.jp/news/2019/11/11/16619/

第186回 非情な宇宙 〜シドニアの騎士〜

 腹巻猫です。7月6日、数々の映画音楽を手がけた作曲家、エンニオ・モリコーネが亡くなりました。私にとっては、初めて「サウンドトラック」というものを、ひいては「音楽」というものを意識させてくれた作曲家でした。小学生のときにラジオから流れてきたモリコーネの音楽に出会わなければ、今の仕事はしていなかったかも。残念です。


 劇場アニメ『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の制作と2021年の公開予定が発表された。これに合わせて、7月11日からTOKYO MXとBS11でTVシリーズ『シドニアの騎士』の再放映が始まる。7月18日からはニコニコ生放送でも配信される予定だ。
 「おや?」と思ったのは、『あいつむぐほし』では音楽担当がTVシリーズの朝倉紀行から片山修志に交代していること。TVシリーズの音楽が印象的だっただけに意外だった。ただ、筆者は『幼女戦記』などを手がけた片山修志の音楽にも大いに期待している。
 しかし、今回はTVシリーズ『シドニアの騎士』の音楽をふり返ろう。

 『シドニアの騎士』は2014年4月から6月まで放送されたTVアニメ。第2期『シドニアの騎士 第九惑星戦役』が2015年4月から6月まで放送された。
 原作は弐瓶勉が『月刊アフタヌーン』に連載したマンガ作品。アニメーション制作はポリゴン・ピクチュアズが担当した。3DCGを駆使した、21世紀ならではのリアリティを持った宇宙SFアニメだ。
 対話不能の外宇宙生命体・奇居子(ガウナ)により太陽系が破壊されてから1000年。人類は小惑星を母体にした巨大な宇宙船(播種船)に乗り込んで太陽系を脱出し、宇宙を放浪しながら生き残る道を模索していた。その播種船のひとつ「シドニア」の下層で育った少年・長道(ながて)は、シドニアを守る人型戦闘機・衛人(もりと)の操縦士となり、仲間とともに、襲い来る奇居子と戦い始める。
 絶望的な設定、次々と人が死んでいく容赦ない展開、CGで描かれる天体やメカニックの硬質な感触。緊迫感あふれるハードな描写とドラマに引き込まれる。いっぽうで、長道をはじめとするキャラクターの多くが妙にのんびりしていて、ラブコメ風展開があるのが面白い。
 ハードな世界観を支えた音楽は、朝倉紀行が担当。バンド・朝倉紀幸&GANGでデビューしたのち作曲家に転向、さまざまアーティストやアイドルへの楽曲提供を経て、映像音楽の世界に活躍の舞台を移した。TVアニメ『るろうに剣心 —明治剣客浪漫譚—』(1995)やTVドラマ「悪党 重犯罪捜査班」(2011)、PlayStation用ゲーム「天誅」(1998)などの音楽で知られ、海外にも熱心なファンを持つ作曲家だ。
 アジアや中東、南米などの民族音楽の要素を取り入れ、トランスやロックのリズムを加えたサウンドは「アジアのプログレ」とも評される。シンセサイザーと生楽器の音を融合し、とことんこだわって練り上げた緻密なサウンドが魅力。作品ごとにサウンド感を変えてアプローチする意欲的な曲作りが持ち味だ。
 『シドニアの騎士』で耳に残るのは、SE的なシンセの音と生楽器のフレーズで構築されたスリリングな曲の数々。奇怪な敵・奇居子の襲来や衛人隊の壮絶な戦いを圧倒的なサウンドで盛り上げている。激しい戦闘場面や破壊場面では、効果音と音楽が一体となって迫ってくる。音楽が浮き立つことなく、世界の一部となっている印象だ。
 そのいっぽうで、日常場面に流れるピアノ曲やアコースティックギターの曲など、シンプルな編成のBGMも印象的。ここでも、音楽は主張しすぎることなく、シドニアの風景に溶け込んでいる。

 本作のサウンドトラック・アルバムは3タイトルが発売されている。1枚目は「シドニアの騎士 オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2014年6月に、2枚目は「シドニアの騎士 第九惑星戦役 オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2015年6月に発売された。以上2枚はCDアルバム。3枚目は2015年11月に発売された「シドニアの騎士 コンプリート・サウンドトラック」。これはCDではなく、Blu-rayディスクに音楽を収録したBDM(Blu-ray Disc Music)アルバムである。いずれも発売はキングレコード。
 1枚目の「シドニアの騎士 オリジナル・サウンドトラック」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. 深き宇宙へ (M03)
  2. シドニア (M04)
  3. 長道のシドニア (M11)
  4. 平和 (M08)
  5. 平和そして愛 (M13)
  6. 透明星白 (M23A)
  7. 象形星白 (M23B)
  8. エナ星白 (M23C)
  9. 一雫の愛 (M14)
  10. 浮遊 (M05)
  11. 温もり (M13X)
  12. それぞれの迷走 (M09)
  13. 想い (M15A)
  14. 友情 (M12)
  15. 相対性葛藤 (M06)
  16. 長道の葛藤 (M40)
  17. 衛人出撃 (M07)
  18. 胎動 (M19B)
  19. 掌位のジンクス (M10)
  20. 悪夢 (M19A)
  21. 奇居子 (M18)
  22. 出現 (M21)
  23. 船員会 (M30)
  24. 任務 (M28)
  25. 不安と緊張 (M32A)
  26. 非武装主義者 (M34)
  27. 宇宙の淵 (M36&M38)
  28. 発艦 (M35)
  29. 錯乱 (M39)
  30. 恐怖 (M43)
  31. 狂気 (M41)
  32. 栄光の継衛 (M42)
  33. 脅威のカビザシ (M01)

※()内はMナンバー

 第1期『シドニアの騎士』用に制作された約50曲の楽曲から33曲をセレクトした内容。大きく前半と後半に分かれる構成となっている。
 トラック1からトラック14までは、宇宙船シドニアとシドニアに生きる人々を描写する曲が並ぶ。平和な航海をイメージさせる内容だ。
 不穏な予兆を響かせる「相対性葛藤」「長道の葛藤」を挟んで、トラック17からは奇居子との戦いがテーマになる。不安を盛り上げる曲や危機感に富んだ曲が続き、前半とは大きく印象が変わる。アナログレコードのA面、B面のように、対比感が際立つ構成である。
 トラック1「深き宇宙へ」は宇宙の壮大な神秘性を表現する曲。巨大な宇宙船シドニアを描写する「シドニア」「長道のシドニア」の2曲が続いてアルバムの導入部となる。
 シドニアの画像からインスピレーションを受けて書いたという「シドニア」は、第1話で長道が初めてシドニアの外に出る場面などに使用。「長道のシドニア」は第5話で漂流する長道と星白を救いに衛人隊が現れる場面、第9話で衛人隊の班長となった長道が出撃する場面などで使用されたのが印象深い。『シドニアの騎士 第九惑星戦役』最終話(第12話)のラストシーンで流れたのもこの曲だった。
 「平和」「平和そして愛」は、タイトルどおりシドニアの平和な日常を彩った曲。いずれも「深き宇宙へ」のバリエーションで、バイオリン・ソロやソプラノサックスをフィーチャーして情感豊かに仕上げられている。「平和そして愛」は第6話で長道と星白がシドニアの海(海水槽)で語らう場面に流れたほか、第1期の最終話(第12話)のラストシーン、長道が研究所に収容されたエナ星白に会いに行く場面でも使用された。長道と星白の愛のテーマといった趣の曲である。
 次の3曲「透明星白」「象形星白」「エナ星白」は、物語の上で重要な役割を担うヒロイン(?)・星白のテーマのバリエーション。朝倉紀行は第1期の音楽制作では星白に感情移入してしまったそうだ。3つの曲のモチーフは共通だが、アレンジとサウンドを変えて星白の変化を表現している。第10話では長道がエナ星白とコミュニケートする場面に「エナ星白」ではなく「透明星白」が流れ、長道にとって星白の存在が特別なものであることを暗示している。
 トラック13「想い」のリリカルなフレーズは劇中でもたびたび流れて耳に残る。本曲はピアノとトランペットがフィーチャーされているが、劇中ではピアノ・ソロ・バージョンの「透」(「コンプリート・サウンドトラック」に収録)のほうがよく使われていた。
 日常描写や心情表現の曲が続いたあと、不安な曲調のトラック15、16で雰囲気が変わり、後半へ。
 トラック17「衛人出撃」は本作を代表する楽曲のひとつ。曲名どおり、衛人隊の出撃場面によく使われている。静野孔文監督の「決死の覚悟をした、まるで片道切符の特攻隊のような想いを入れた曲にしてほしい」とのオーダーに応えて書かれた。
 明快なメロディを持たず、SE的なサウンドが不気味な雰囲気をかもし出す「胎動」と、そのミックス違いの「悪夢」も本作の音楽の特徴をよく伝える楽曲。静かな緊張感がみなぎる、緻密に構成された曲だ。
 続く、「奇居子」「出現」を聴くと本編の映像が脳裏に浮かぶファンも多いだろう。「奇居子」は初めて奇居子の画を見たときの衝撃からインスピレーションを得て生まれた曲だそうだ。
 トラック24「任務」も衛人隊出撃場面によく流れた悲壮感ただよう楽曲。勇壮さよりも死を賭した出撃の覚悟と緊張感が伝わってくる。
 トラック27「宇宙の淵」は次回予告に多用された楽曲。ピアノ、ドラム、エレキギターのフレーズが絡み合い、スリリングなセッションをくり広げる。
 奇居子との戦闘場面などに使われた「発艦」に続いて、「錯乱」「恐怖」「狂気」と、戦いの恐怖や混乱を表現する曲が並ぶ。本編の雰囲気を再現するうまい構成だ。
 本作の音楽録音には、ストリングス(バイオリン、ビオラ、チェロ)、トランペット、ソプラノサックス、ギター、ベース、ピアノ、オルガンなどの楽器が使用されている。が、その音をそのまま使うのではなく、デジタル処理で音色を変えたり加工したりして楽曲に仕上げているケースが多い。これも朝倉紀行の音楽作りの特徴で、ミックスや音作りにとことんこだわって楽曲を完成させていくのだ。加工された楽器の音とシンセの音が溶け合い、唯一無二のサウンドを生み出す。本作のサスペンス系の楽曲に、そのこだわりがよく表れている。
 アルバムを締めくくるのは、衛人隊の活躍を描く2曲、「栄光の継衛」と「脅威のカビザシ」。M01の番号が振られた「脅威のカビザシ」はもともとファイナルバトルの曲として制作されたものだ。2曲とも勇壮さやカッコよさは抑えられ、死と隣り合わせの緊迫した空気感が表現されている。いわゆるロボットアニメの戦闘曲とは一線を画した、本作ならではの楽曲だ。そして、『シドニアの騎士』にあっては、この抑えた曲調こそがカッコいい。
 音楽で情感をふくらませるというより、SEを含めたサウンドで視聴者を作品世界の中に放り込むのが本作の音響演出のスタイルだ。感情よりも感性に訴える音楽。「宇宙のロマン」とは無縁の非情な宇宙を舞台にした本作には、この音楽がなによりも合っている。
 ただ、CDアルバムでは聴き応えのある戦闘曲やサスペンス曲を優先したためか、静かなピアノ曲やギターの曲などがもれてしまったのは残念。

 その不満に応えたのが、BDMアルバムでリリースされた「シドニアの騎士 コンプリート・サウンドトラック」である。Blu-rayディスクの大容量を生かして、未収録曲を含む全曲を収録。音源は96kHz/24bitのハイレゾ音質。2チャンネル・ステレオと5.1チャンネル・サラウンドの2種類のフォーマットで聴ける仕様になっている。
 この「コンプリート・サウンドトラック」の魅力は全曲収録とハイレゾ音質だけではない。ほかにも画期的な試みが盛り込まれている。
 ひとつは、楽曲を複数の構成(曲順)で聴けるようにしたこと。メニューからは「コンプリート・サウンドトラック」「シドニアの騎士 オリジナルサウンドトラック」「シドニアの騎士 第九惑星戦役 オリジナルサウンドトラック」の3つから再生順を選ぶことができる。「コンプリート・サウンドトラック」は第1期と第2期のために作られたBGM全95曲を新構成でまとめたもの。残る2つは既発アルバムそのままの構成。複数の構成(曲順)を収録するのは、ありそうでなかったアイデアだ。既発アルバムの曲順に思い入れがあるファンにはうれしい仕様である。
 ふたつ目は、朝倉紀行による全曲コメントが読めること。楽曲制作秘話を読みながら曲を聴くのはサントラファンの大きな楽しみだ。惜しむらくは、BDの再生画面上でしかコメントが読めないこと。できればコメント集をPDFファイルで用意してほしかった。
 3つ目は、MP3データ形式の音源も収録されていること。携帯プレーヤーで聴くことも可能だ。この配慮はうれしい。
 さらに特典映像として、アニメ動画つきプレイリスト(名場面を観ながら音楽が聴ける)や「シドニア百景」プレビュー、楽曲収録メイキング写真スライドショーなども収録されている。
 ファンのさまざまな要望に対応した充実の仕様である。Blu-rayの大容量を生かしたハイレゾ収録と全曲収録、映像特典等を実現しただけでなく、複数の構成で聴けるようにしたことや作曲家コメントを収録したことが大きなポイントだ。サントラファンにとっては、構成も解説も重要な商品の一部なのである。このスタイルはサントラ盤の新しいスタンダードになるのではないかと期待させる。今のところ、後続する商品が見当たらないのが残念だが……。
 ともかく、2枚のCDアルバムに収録されなかった心情曲や日常曲、サスペンス曲などは、「コンプリート・サウンドトラック」に収録されている。これからサントラを買って聴こうという方には、こちらのほうがだんぜんお得だ。サントラを聴きつつ、再放映でおさらいして、来年の劇場公開を待ちたい。

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新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇&螺巌篇

 『天元突破グレンラガン』は今石洋之監督、アニメーション制作GAINAXによるTVアニメーションであり、2006年に全27話が放映された。それに新作を加えて再編集した劇場作品が『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』と『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』だ。

 4月ぶりとなるアニメスタイルと新文芸坐の合同企画はその『紅蓮篇』『螺巌篇』の2本立て上映だ。
 開催日時は2020年7月23日(木・祝)。昼の部、夜の部の2階建て興行となる。今回は上映のみでスタッフによるトークの予定はない。また、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要であり、入場時に検温・手指の消毒を行う。前売り券の発売方法を含めて、詳しくは新文芸坐のサイトを見ていただきたい。

 また、会場では「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」通常版を販売する予定だ。

新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇&螺巌篇

開催日

2020年7月23日(木・祝)

スケジュール(昼の部)

開場:10時00分/開演:10時20分/15時00分

スケジュール(夜の部)

開場:16時00分/開演:16時20分/終映:21時00分

会場

新文芸坐

料金

一般2000円、シニア・友の会1800円(招待券不可/オンライン購入は+50円)

上映タイトル

劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇(2008/113分/35mm)
劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇(2009/130分/35mm)

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

●関連記事
今石洋之アニメ画集 スペシャルセット(通常版)の販売について
http://animestyle.jp/news/2020/05/21/17458/

【ARCHIVE】今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!/第1話 お前のドリルで天を突け!
http://animestyle.jp/2013/01/22/3584/

【ARCHIVE】今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!/紅蓮篇 第1部 最初は総集編1本にしようと思っていた
http://animestyle.jp/2013/08/23/5822/

【ARCHIVE】今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!/螺巌篇 第1部 『紅蓮篇』の盛り上がりを超えるために
http://animestyle.jp/2013/09/02/5963/

アニメ様の『タイトル未定』
259 アニメ様日記 2020年5月10日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年5月10日(日)
自宅でワイフに頭を刈ってもらう。ワイフは大喜びでやってくれた。事務所で「設定資料FILE」の構成を進める。いつも作業に使ってる大きな机を「アニメスタイル ONLINE SHOP」の在庫を置くために片づけてしまったので、小さな机でちまちまやる。
このところ、Twitterで【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】というハッシュタグをつけて、ネットで無料配信されているアニメを紹介している。今日は『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!! 黄金のデジメンタル』だった。以下がそのテキスト(すでに無料配信は終わっているので、映像へのリンクは削除した)。お気に入りの文章だ。

…………
【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!! 黄金のデジメンタル』が無料配信中(5/16(土)23:59まで)。会員登録不要です。『デジモン』劇場版第3作で監督は山内重保さん。凄まじい作品ですよ。
…………
細田守監督の『デジモン』劇場版第1作、第2作がリアリティを基調としているのに対して、山内重保監督の劇場版第3作は感覚重視の作品です。「ムードを楽しむ」作品であり、「セリフや理屈以外の部分が重要」な作品です。
…………
作画を含めた画作りも、音楽も素晴らしい(音楽の使い方も凄い)ですが、演出家の映画です。圧倒的に。後半の悪夢的な部分は本当は劇場で楽しみたいところ。なるべく集中してご覧になるのをお勧めします。
…………

 Amazon Prime Videoで「晴れた家」を観る。これは「トニー滝谷」のメイキングだ。撮影風景が観られただけでもよかった。その後は「YESTERDAY」の吹き替え版から『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』に。意図せず「YESTERDAY」つながりとなった。『オトナ帝国の逆襲』って「過去と未来の対立」の物語ではなくて、理想化された過去という「幻想」を、地に足のついた「現実」が打ち砕く話なのね。どこかで誰かが書いていると思うけど。
 市川準監督の「つぐみ」を観た流れで、吉本ばななさんの「日々のこと」を読み始める。本文1行目で市川準監督の名前が出て「おおっ」となる。1980年的な文章のノリが懐かしく、照れくささを感じた。

2020年5月11日(月)
早朝散歩で、朝5時から営業している手作りパン屋でパンを買う。15時半から事務所スタッフとSkype打ち合わせ。16時からある書籍について、ビデオ会議(こちらはSkypeではなかった)。自宅マンションに10年以上あった段ボール箱10個を、事務所スタッフに手伝ってもらって事務所に運ぶ。段ボール箱の中身はCDや本だ。在庫でいっぱいの事務所にますますモノが増える。

2020年5月12日(火)
Twitterの【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】では『デビルマン 誕生編/妖鳥死麗濡編』を紹介する。「設定資料FILE」の作業が終わった。今回の「設定資料FILE」は『BNA ビー・エヌ・エー』だった。近年は表情集の少ない作品が多いのだけど、『BNA ビー・エヌ・エー』は表情集がかなり多い。人間の姿と獣人の姿で別の表情集があり、さらにポーズ設定も多い。構成していて楽しかった。
Amazon Prime VideoのNHKオンデマンドで「これは経費で落ちません!」を視聴する。放送中にも話題になっていたのだけれど、確かにこれは面白い。
近所の居酒屋「築地食堂源ちゃん 東池袋店」が営業再開。ただし、営業時間は20時まで。これで毎日ホッピーが飲める。いや、さすがに毎日飲みはしないけど。今日は源ちゃんではなく、同じく時間短縮で営業を再開した某店に。久しぶりにホッピーらしいホッピーを飲んだ。不思議なもので、自宅で吞むホッピーは何か違うのだ。

2020年5月13日(水)
この日も基本的にデスクワーク。「アニメスタイル ONLINE SHOP」で「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」初回生産分の第2次受付を開始。「これは経費で落ちません!」を7話から最終回の10話まで観る。主人公・森若沙名子の恋愛模様は思っていたのと違ったなあ。これは単純に好みの問題です。早めの晩飯は源ちゃんで。

2020年5月14日(木)
朝から寒気がして熱っぽい。あまり外出はしないで、事務所でデスクワーク。散歩に行かなかった分だけ、作業が進んだ。『イエスタデイをうたって』『八男って、それはないでしょう!』『波よ聞いてくれ』をそれぞれ最新6話まで配信で観た。

2020年5月15日(金)
ずっと事務所でデスクワーク。宅配サービスで晩飯を注文したのだが、到着予定時間に「注文された店が休みだったので、届けられません」という電話があった。宅配サービスの会社と飲食店の連携が上手くいってないようだ(後日、その飲食店の前を通ったら、コロナ対策でしばらくは営業を休むとあった)。
手塚治虫さんの「バンパイヤ」をKindleで最終巻まで読んだ。以下は「バンパイヤ」について思ったことだ。知らない人もいるはずなので先に説明しておくと、作者である手塚治虫さんは「バンパイヤ」の主要登場人物でもある。

…………
手塚治虫の「バンパイヤ」を読み返した。最初に読んだのは小学生の頃だった。当時はとにかく面白い作品だと思った。今読んでもスピーディな展開は飽きることがなく、小学生の自分が楽しんだのもよく分かる。ファンの多くが同様だと思うが、当時はロックの悪魔的なところに惹かれていた。
ただ、読み返すと粗いところが気になる。大きな部分は、第1部の後半で描かれるバンパイヤ革命だ。今ひとつ計画の全体像が分からないし、計画が上手くいってしまうことに無理があると思う。当初の計画通り、バンパイヤがマッドPAを使って人間を原始人のようにしてしまうほうが自然だったのではないか(そして、手塚治虫達が同じマッドPAを使って逆転するとか)。実際にそういうつもりで描いていて、段取りの都合でマッドPA無しでバンパイヤ革命が成功してしまうことになったのかもしれない。
読み返して笑ったのが、ロックと岩根山ルリ子が帰国した際の展開だ。たまたま手塚治虫が作ったバンパイヤの正体を暴く映画がテレビ放映されており、空港にいた人達が映画の指示に従ってルリ子に玉ねぎを投げるのである。なんでたまたま空港にいた人達が玉ねぎを持っているんだ、と突っ込まずにはいられない。まあ、マンガらしいと言えばマンガらしいが。
「バンパイヤ」の第2部は未完で終わっている。小学生の時は続き読みたくてたまらなかったが、読み返すと、続いたとしても第1部ほどは面白くなかっただろうと思える。
さて、以下が本題。
ずっと気になっていたことだ。

物語の序盤で、主人公のトッペイは虫プロで働いている。彼の机の引き出しには大量の電信柱の写真があり、それを知った手塚治虫は「へんたい性じゃないかしら」と言うのである。この場合の「へんたい性」のへんたいは「変態性欲」のことだろう。最初に読んだ頃から、このセリフが気になっていた。小学生の僕は、いくらなんでも電信柱と変態を結びつけるのはあんまりじゃないの、と思ったわけだ。今ならそのくらいの人はいるかもしれないと思えるし、少なくともフィクションで描くのはありだと思う。
ここから先は(中学生の頃からなんとなく考えていた)想像なのだが、作者としての手塚治虫はバンパイヤの変身に、自慰行為のイメージを重ねていたのではないか。登場人物の1人である岩根山ルリ子の変身は明らかにエロチックなものとして描かれているし、彼女が最初に変身する時に、トッペイに対して「あっちをむいて!!」と言うのも、トッペイが顔を赤くするのもそれを思わせる(人間の姿になった時、一度は裸になるはずなので、そのために「見ないで」と言った可能性もあるのは分かっている)。
バンパイヤにはそれぞれに変身するきっかけがある。「コショウをかぐと」とか「おへそをくすぐられると」とかそういったきっかけだ。つまり、「それぞれに性癖がある」ということなのだろう。バンパイヤ秘密本部での集会の後に、大コマで大勢のバンパイヤが人間に戻ろうとして苦心するという描写があるのだが、自慰のイメージを重ねているとすると大変な場面だ。岩根山ルリ子の変身のきっかけは玉ねぎの匂いだ。秘密本部での集会の前に、玉ねぎの匂いが弱くて、なかなか変身できないというくだりがある。オカズの刺激が足りなかったのだろう。
行方不明になっていたトッペイの父親は電信柱を見ると変身するらしい。トッペイの父親にとっては電信柱の写真がオカズだったのだ。トッペイは父親にとって必要かもしれないと考えて電信柱の写真を集めていたのだろう。
つまり、何を言いたいのかというと、電信柱の写真を見た手塚治虫の「へんたい性じゃないかしら」という発言は、この作品の本質的な部分に関わるセリフだったのではないかということだ。
…………

2020年年5月16日(土)
自分の体調はよくなったのだけど、今度はワイフが頭痛。早朝散歩はおやすみ。事務所でキーボードを叩く。雨が続いたため、Eテレで劇場版『若おかみは小学生!』を観る。放送中に『若おかみは小学生!』についてツイートをしていたら、Twitter上で豊田智紀プロデューサーに、編集作業中の原画集の遅れについて突っ込まれる。すいません。急ぎます。その後、吉松さんとSkype吞み。
YouTubeで『美少女セーラームーン』を観る。33話から35話が月のプリンセスがらみの連続エピソードで、中でも34話は演出・作画も充実で見応えあり。 【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】関連のツイートで「34話でうさぎが変身する前に顔を赤らめるのは、衛に裸を見せるのを決意したため」と書く。ソースは自分が記事を担当した「アニメージュ」1993年5月号の鼎談だ。

第666回 自分にとっての不必要

 前回からの続き。で、俺が受験を止めた経緯の話。前述(第665回)のとおりクラスのほとんどが塾に通う中、それに背を向け高校受験も入試前1週間のみの勉強、というか「暗記」で挑んだ俺と、小・中学と真剣に塾で勉強した友達が、結果同じ高校に3年間通ったんです。「なんじゃこりゃ?」と。こんな適当な俺と、まじめに受験世代のルールに乗っかった友人がなんで同じ高校なのか? と。その気持ちの悪さが俺の高校3年間をさらに受験勉強から遠ざけることになり、「受験するならせめて美大」と考えるようになりました。絵の受験勉強なら自分でもやる気になるかと思って。
 てなわけで、自分は高校時代、河合塾美術研究所というところの夏期講習と冬期講習のみ通い、デッサンやらクロッキーやらを勉強しました。でも本当の本音を言うと、受験のためというより夏・冬長期休暇のヒマ潰し感覚だったのかもしれません。でも、その講習でよかったのは、最後に進路相談をする時間が設けられていたことで、以下はその時の講師の方々のお話。

講師1「(板垣のデッサンを見て)うん、君の場合デッサン的には問題ないけど、あとは数」
講師2「高校、惟信てことは普通科でしょ。例えば旭丘(高校)の美術科とかは週何時間美術の授業があるか? 1枚何時間のデッサンを年間何百枚クラスが美大受験にはゴロゴロいるから」
講師1「週2時間の美術の成績がいくら良くても、問題は高校3年間で描いてるデッサンの量なんだよ」
講師2「でも絵的には可能性、十分あるよ。1年間浪人して(ウチで)デッサンみっちりやれば、たいがいの美大合格すると思う」
板垣「1浪ですか(嫌)」
講師1「将来的に何やりたいの?」
板垣「アニメの監督です」
講師2「あ、アニメだったら美大行く必要ないよ。アニメはとにかく実践。東デ(東京デザイナー学院)のアニメ科行きな。ただ東京校ね」
板垣「はい!」


 で、嬉々として飛んで帰り、母親に報告。講師さんに言われたことを説明して

 無事、皆と同じ受験ムーブメント(?)に乗らずに済んだのでした。何しろアニメ作りができる道が見えれば、受験勉強をしなくて済むと。一応、念のために言っておきますが、自分は今まで知らなかったことを知る・教わるのは大好き。即ち勉強は好きなんです。成績は良い方でしたから。ただ、

なんとなくでも絵を描くことが好きで、なんとなくそちら方面でやっていけそうであるなら、ただでさえ猫も杓子も大学受験で、皆が「大学行きたい」時代なら、自分は身を引こう! 俺は大卒という鎧を身にまとわずとも社会に出て行ける! 覚悟完了!

と。
 もちろん、受験・大卒が必要な人はいます。だからこそそういう方に、小さいけど俺1人分の席は空けたほうが世の中のためだと思ったのです。本当に必要な人にこそ、その必要な事・物がまわる世の中が自分は良いと考えています。俺は自分自身の腕を磨くために大卒(鎧)は不要だった。ただそれだけのことです。

アニメスタイルTALK データ原口のアニメ講座/「日本最初のテレビアニメ」「トレスマシンの歴史」

 7月5日(日)に開催する無観客トークイベントは「アニメスタイルTALK データ原口のアニメ講座/「日本最初のテレビアニメ」「トレスマシンの歴史」です。
 データ原口の愛称で親しまれている原口正宏は、国産商業アニメ研究の第一人者であり、アニメのデータ収集に人生を捧げてきた人物です。「データ原口のアニメ講座」は彼の膨大な知識や研究成果を披露してもらうトークシリーズ。
 今回のテーマは「日本最初のテレビアニメはなにか」と「トレスマシンの歴史」となります。

 今回のトークは新宿ロフトプラスワンで、7月5日(日)11時から無観客トークイベントとして開催し、同時にアニメスタイルチャンネルで配信。1週間配信した後、アーカイブとして視聴できるかたちとする予定です。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

アニメ様の『タイトル未定』
258 アニメ様日記 2020年5月3日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年5月3日(日)
憲法記念日。ある書籍の編集作業のために画像データの整理をはじめる。このペースなら、ゴールデンウィーク中に終わりそうだ。『美少女セーラームーン』11話から19話をYouTubeの配信で観た。やはり初々しい感じがよい。15話「うさぎアセる! レイちゃん初デート」のAパート(レイが衛を逆ナンするあたり)が猛烈な面白さ。当時も笑ったけど、今観ても笑う。『セーラームーン』19話「うさぎ感激! タキシード仮面の恋文」。危機に陥ったタキシード仮面が言ったセリフが「それまで、なにか話をして気をまぎらわすんだ」。すごい。すごすぎる。富田祐弘さんならでは。

2020年5月4日(月)
みどりの日。雨天のため、早朝散歩はおやすみ。引き続き、事務所で画像データの整理。今日も作業が進んだ。気持ちいいなあ。
YouTubeで『美少女セーラームーン』20話「夏よ海よ青春よ! おまけに幽霊もよ」を観る。ダーク・キングダムも妖魔も出てこない番外編的なエピソードで、しかも、水着回。ホラー回なのに楽しい仕上がりだ。香川久さんの作画もいいけど、竹之内和久さんの演出もいい。『美少女セーラームーン』について、こんな気楽なエピソードを作り続けてもよかったかもしれないなあとは思う。その後、『機動武闘伝Gガンダム』を21話から26話まで観る。
「OL進化論」38巻を読み始める。4年ぶりの新刊である。安定の面白さ。登場人物は年をとっていないはずなのに、作品の対象年齢はあがっている感じだ。ちなみに僕のKindleには「OL進化論」が全巻入っている。

唐突だけど「今石洋之アニメ画集」について。現在のアニメスタイル編集部の画集を作るテンションが10年後にも維持されているとは思えないし(10年後にアニメスタイル編集部があるかどうかも分からない)、5年後だって怪しいだろう。テンションが高まってる時期にこの本が作れてよかった。現在のアニメスタイル編集部らしいツメの甘さもあるんだけど、5年前だったらできなかったことをいくつも実現している。

2020年5月5日(火)
こどもの日。画像データの整理が一段落。ひとつの作業だけを毎日続けるというのは久しぶりで、それも楽しかった。『機動武闘伝Gガンダム』を配信で34話まで観る。

2020年5月6日(水)
ゴールデンウィーク最終日。主に事務所の片づけ。通販用の「今石洋之アニメ画集」が事務所に届くので、置き場所をつくらなくてはいけないのだ。途中からNHK-FMの「今日は一日ガンダム三昧Z」を聴きながら、作業を続けた。 『機動武闘伝Gガンダム』は36話まで観た。スマホのKindleで読んでいた春日太一さんの「時代劇入門」を読了。第二部の「時代劇の歩み」が興味深かった。他人ごとではあるけれど、売れるといいなあ。
緊急事態宣言で、散歩以外に外出のないゴールデンウィークだったが、退屈ではなかった。

2020年5月7日(木)
久しぶりの通常業務。連休明けはやっぱり慌ただしい。「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」と複製色紙が、印刷会社から事務所に届く。事務所内に本を積み上げるために事務所スタッフが出勤して作業。
『機動武闘伝Gガンダム』を最終回まで視聴。本放送でもレインが可哀想だと思っていたけど、今観てもやっぱり可哀想だ。作画はシリーズを通じて記憶よりもよかった。『BNA』の7話以降を観はじめる。

2020年5月8日(金)
通常業務。15時半からSkype打ち合わせ。『BNA』を最終回まで観た後、Amazon Prime Videoで市川準監督の「つぐみ」を観る。その後、YouTubeの『美少女セーラームーン』21話と22話を観る。

2020年5月9日(土)
午前も午後もデスクワーク。西口のうどん居酒屋でランチ。夜の営業だけだった店でランチがいただけるのは嬉しいけれど、お店に活気はなかった。夕方から土曜の恒例となった吉松さんとSkype吞み。Skype吞みだと、話題になっているアニメについて、その場で映像やセリフを確認できるのがいいな。いや、居酒屋でも観ようと思えば配信を観られるんだけど。「そこはボクの作画で、アドリブでセリフを増やしました」とか教えてもらったり。作画でセリフを増やすなんてありなんだ。
南Q太さんの「今日も夫婦やってます」を読了。これはマンガではなくてエッセイ集。面白かった。目線が南Q太さんのマンガの主人公に近い。四人目の子どもの出産のエピソードがよかった。

第665回 自分にとって必要か?

40代も半ばにもなると、あらゆる物事に対し、これからの自分の人生において必要なものかどうかを見極める目がさらにハッキリしてきた気が、最近とみにしています!

 子どもの頃から、俺は周りの友人たちが必要としている物事に関して「果たしてそれらは友人らにとって必要だったとしても、自分にとって本当に必要か?」と常に考える癖があって、例えばプロレス、プロ野球、ゲーム類全般、週刊少年マンガ誌。それらは俺の生活に不必要なものでした。もちろん、それらが大好きで必須と思っている人たちを否定する気など毛頭ないし、逆にいつも周りの皆と同じムーブメントに乗れない板垣は、友人たちから呆れられていました。そして皆が乗っかれば乗っかるほど、自分がそのムーブメントにとって不必要な人間だと分かるから、尚のことそれらから俺は離れる。この性格は未だに変わっておらず、近年興行収入が桁違いの大ヒット映画ほど、まだ観ていません。あのアニメ映画もこのアニメ映画も。2〜3年遅れて観たりはします。ブームが去った頃にこっそりBOOK・●FFで。反対に興行的に完敗した映画の方が大好物かも。よく話題にする『あしたのジョー』を始めとする出崎アニメも、本放送から10年遅れてハマったくらいで、多分リアルタイムでファンになったのは80年代の藤子不二雄アニメくらいだと思います。
 もっと言うと、我々世代では当然のムーブメント(?)である”受験”にも乗れませんでした。第2次ベビーブーム・団塊ジュニア世代は「高学歴→大企業に就職→一生安泰」を目指すのが当たり前で、中学も高校も運動部よりも塾通いが優先。そして少しでもいい高校・大学へと。地元名古屋の友人は皆その道を進みました。そんな中、とりあえず自分は小学校の時、クラスの大半が塾ブームに乗っかった際も「塾には絶対に行かない!」と決めていたのです。別に成績が悪かったわけではないのに、不学校以外でさらに勉強のために親に金を出させ、かつ自分の時間まで失う。俺にとってその時点で塾は不必要なものだったわけです。ハッキリ言って

学校の勉強だけでは入学できない高校や大学って、それは全国的に席が足りてないことの方が問題なハズで、その数限りある席を”勉強合戦”で勝ち取るってなんかおかしくない? しかも俺に言わせると受験勉強は勉強ではなく”暗記合戦”! そんな記憶力の優劣で、その後の人生が決まるなんて嘘だろ!

と小学校の頃から思ってて、友人が皆塾に通い始める中、板垣はマンガ描いたりパソコン触ったりゴルフやったりしてたわけです。

 重ねて言いますが、塾行って受験勉強していた友人らを当時から否定したりはしてなかったと思います。ただ、俺自身にとっては不要だった、というだけです。
 だから、小・中学では塾ブームにも乗らず、高校受験ですら試験前に1週間ほどしか勉強(暗記)しませんでした。それでもまあ、普通のいわゆる当時では進学校と呼ばれる高校に入り、最初は美大を目指して河合塾美術研究所という所に夏期講習と冬期講習だけ受けて、デッサンやらクロッキーやらをやりに行ってました。

 で、いつものごとくなんの話だったか分かりづらくなったところで時間なので、また次週(汗)。

「アニメスタイル20周年展」を開催
展示第1弾は川元利浩さんのスケッチブック

 2000年に刊行した雑誌「アニメスタイル」第1号からアニメスタイルの歴史が始まりました。今年でアニメスタイルは20周年を迎えます。

 それを記念して、ササユリカフェで「アニメスタイル20周年展」を開催することとなりました。アニメスタイルの書籍と関連した資料を展示し、アニメスタイルの書籍を販売します。開催期間は7月2日(木)~9月末を予定。開催期間内に展示内容は変わっていきます。

 第1弾の7月2日(木)~7月20日(月)では、川元利浩さんがキャラクターデザインの初期稿を描いたスケッチブックの現物を展示します。作品タイトルは『WOLF’S RAIN』『天保異聞 妖奇士』『GOSICK -ゴシック-』『トワノクオン』『テンカイナイト』『ノラガミ』『血界戦線』。どのデザイン初期稿も、書籍「川元利浩 SketchBook」で資料として収録したものです。

 なお、開催期間中のササユリカフェは終日立ち見営業となります。入場料はいただきませんが、ワンドリンクの注文をお願いします。

■関連リンク
ササユリカフェ
http://sasayuricafe.com

【アニメスタイルの書籍】「川元利浩 SketchBook」一般販売開始! 「アニメスタイル ONLINE SHOP」では小冊子付き!!
http://animestyle.jp/news/2020/01/09/16901/

第185回 フィルムスコアリングの復活 〜バジリスク 甲賀忍法帖〜

 腹巻猫です。先日、実に3ヶ月ぶりに顔を合わせての打ち合わせに参加しました。始まるまで、ちょっと緊張しました(笑)。少しずつ、サントラ仕事も回復に向かってほしいです。


 昨年(2019年)話題になったTVアニメ『鬼滅の刃』では、毎回、映像に合わせて音楽を作曲する「フィルムスコアリング」と呼ばれる手法が採られている。劇場作品や単発TV作品ではあたりまえの作り方だが、毎週放映される連続TVアニメでフィルムスコアリングが採用されるのは珍しい。
 といっても、前例がないわけではない。そもそも、TVアニメの黎明期からフィルムスコアリングによる音楽作りは行われていた。『宇宙エース』(1965)や『ジャングル大帝』(1965)、『悟空の大冒険』(1967)、『リボンの騎士』(1967)、『マッハGoGoGo』(1967)などは、フィルムスコアリングで音楽がつけられている。
 現在のTVアニメ音楽は「溜め録り&選曲」方式が主流である。あらかじめ音楽をまとめて録音しておき、その中から毎回映像に合った曲を選んで音楽をつけていく手法だ。
 溜め録りがいつから始まったかはさだかでないが、60年代にはすでに行われていた。たとえば『ジャングル大帝』と同時期のTVアニメ『ハッスルパンチ』(1965)の音楽は溜め録りである。TVアニメ初期は溜め録りとフィルムスコアリングが併走していた。これが、70年代には溜め録りが主流になる。TVドラマの音楽も初期はフィルムスコアリングで作られているが、70年代にはNHKの番組や民放の一部の作品をのぞいて溜め録りがほとんどになっていた。
 本来、映像音楽はフィルムスコアリングが望ましいとされている。溜め録り方式が採られるのは、制作スケジュールと予算の制約によるところが大きい。毎週ぎりぎりのスケジュールで制作されるTVアニメでフィルムスコアリングを採用するのは現実的ではないというわけなのだ。
 ところが近年、『鬼滅の刃』のようにTVアニメでもフィルムスコアリングを採用する作品が見られるようになった。
『Fate/stay night [Unlimited Blade Works] 』(2014/音楽・深澤秀行)や『神撃のバハムート GENESIS』(2014/音楽・池頼広)などがそうだ。
 そのさきがけと呼べる作品が、2005年に放送された『バジリスク 甲賀忍法帖』である。

 『バジリスク 甲賀忍法帖』は2005年4月から9月まで放送されたTVアニメ。山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』を原作としたアニメ作品だ。キャラクターや物語のアレンジは、同作品をせがわまさきがマンガ化した『バジリスク 甲賀忍法帖』がベースになっている。監督は木崎文智、アニメーション制作はGONZOが担当した。
 慶長19年、徳川家康の時代。混乱を極める徳川三代将軍の世継ぎ問題に決着をつけるため、忍法合戦が行われることになった。甲賀・伊賀それぞれから10人の忍者を選び、最後の1人になるまで戦わせる。どちらが生き残ったかによって、世継ぎを決めるというのだ。
 奇想天外な忍法を身につけた忍者同士の対決がすさまじい。忍者というより、魔人対魔人の戦いである。アニメ版でも、この忍法対決の描写が見どころになっている。同時に、忍者1人ひとりのキャラクターを掘り下げることで、原作小説以上に情感豊かな物語になった。
 本作の音楽を担当したのは中川孝。1970年生まれ、北海道出身。舞台、イベントなどの音楽活動を経て、1997年に劇場作品「女囚処刑人マリア」で映画音楽デビューした作曲家だ。
 TVドラマ「真・女神転生デビルサマナー」(1997)、「仮面天使ロゼッタ」(1998)、「エコエコアザラク〜眼〜」(2004)、劇場作品「楳図かずお 恐怖劇場」(2005)、「富江 アンリミテッド」(2011)など、怪奇幻想ものやアクションものを多く手がける中川孝は、山田風太郎作品にはまさに適任。アニメでは『少年陰陽師』(2006)、『のらみみ』(2008)などの作品がある。近年では、ちばてつや原作の劇場アニメ『風のように』(2016)の音楽を手がけ、そのサウンドトラックCDがクラウドファンディングによってリリースされたことが記憶に新しい。
 『バジリスク 甲賀忍法帖』の音楽は、依頼を受けた中川孝がマンガ版を読み、そこからインスパイアされた20分ほどのデモ楽曲を制作することから始まった。それを聴いた木崎監督と助監督の西本由紀夫は「これだよ! これ!」と絶賛したという。音楽の方向性は決まった。さらに木崎監督は、当時のTVアニメとしては異例の、画に合わせた音楽作りをリクエストする。この作品には「アニメ音楽」ではなく「映画音楽」がほしいと考えたからだった。
 かくして作られた音楽は、全24話で200曲以上。演奏時間にして8時間近くになった。予告編音楽さえも使いまわしされず、毎回、内容に合わせて作られている。
 楽器編成はシンセサイザーを主体に、生のギターと篠笛が加わる。シンセによる和楽器の音色で和風テイストを出しているのが特色のひとつだ。
 フィルムスコアリングを可能にした背景には、90年代から2000年代にかけてのデジタル音楽制作環境の進歩がある。スタジオにミュージシャンを集めずとも、大半の音楽制作がコンピュータ上でできるようになった。また、一度制作した素材を再利用できるようになったことも効率化につながっている。『ジャングル大帝』の時代には、毎週フィルムを上映しながらオーケストラが演奏していたそうだから、隔世の感である。
 フィルムスコアリングとはいえ、核となる曲想やモチーフは存在する。本作の場合は、まず全体のメインテーマと呼べるメロディがある。「音絵巻 〜第一章〜」に収録された「殲 其ノ壱」に登場するモチーフだ。そのフルバージョンと呼べるのが、第22話の甲賀弦之介対薬師寺天膳の対決場面で流れた曲「忍者夢想剣」(「音絵巻 〜第三章〜」に収録)である。
 もうひとつは、忍法対決の異様な迫力を表現するために人の声を使ったこと。特にアクション曲や不死身の忍者・薬師寺天膳登場場面などで聴かれる不気味なコーラスは圧巻。中川孝はこれを「お経ラップ」と呼んでいる。「音絵巻 〜第一章〜」に収録された「殲 其ノ弐」(第2話で使用)では、16人の男女による混声コーラスを聴くことができる。山田風太郎忍法帖の雰囲気を音楽化する秀逸な表現だ。
 加えて、激しい闘いの合間に描かれる忍者同士の恋や親子・師弟の愛情を表現する美しくも切ない音楽も本作の聴きどころのひとつである。

 本作のサウンドトラック・アルバムはキングレコードから3枚発売された。タイトルは「バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第一章〜」「同〜第二章〜」「同〜第三章〜」。「第一章」には第1話〜第8話、「第二章」には第9話〜第16話、「第三章」には第17話〜第24話の音楽を収録している。さらにそれぞれの巻末には新録ドラマを収録。各CDのジャケットは、「第一章」が甲賀忍者10人衆、「第二章」が伊賀忍者10人衆、「第三章」は主人公である甲賀弦之介と伊賀の女忍者・朧の2人のイラストで飾られる粋なデザインとなっている。
 「バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第一章〜」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  一.宿怨
  二.甲賀忍法帖(TVサイズ)(歌:陰陽座)
  三.忍法御上覧
  四.悲絆—きずな—
  五.春夢
  六.殲 其ノ弐
  七.月下終焉
  八.和睦之舞
  九.殲 其ノ惨
  十.デッドヒート
 十一.変幻
 十二.寂滅
 十三.胡蝶の涙
 十四.哀別、鮮血の檻にて
 十五.殲 其ノ壱

 ※十六〜二十にドラマを収録。

 1曲目の「宿怨」は毎回のアバンタイトルに流れる音楽。重厚な弦合奏にコーラスが加わり、緊迫した曲調に転じる。忍者同士の非情の戦いを象徴する序曲だ。
 続いてオープニング主題歌「甲賀忍法帖」が流れる構成は番組フォーマットと同じ。
 その「甲賀忍法帖」は、山田風太郎作品をこよなく愛するバンド・陽炎座の作・演奏による曲。陽炎座は本作参加以前から山田風太郎の忍法帖作品をテーマにした曲を発表している。本作の主題歌を手がけたのは運命とも必然とも呼ぶべき出来事だった。この主題歌は、現在もパチスロ「SLOTバジリスク 甲賀忍法帖」シリーズのテーマ曲として使用されている。
 トラック3以降は第1話から第8話のために作られた曲になる。その使用場面を紹介すると——。
 「忍法御上覧」第1話冒頭、徳川家康御前での甲賀対伊賀の忍法対決。
 「悲絆−きずな−」第1話後半の回想シーン。甲賀弾正と伊賀のお幻との過去の因縁。
 「春夢」第2話冒頭、甲賀弦之介と伊賀の朧との逢瀬の場面。
 「殲 其ノ弐」第2話、甲賀の鵜殿丈助と伊賀の小豆蝋斎との忍法対決。
 「月下終焉」第3話、甲賀の地虫十兵衛が伊賀の薬師寺天膳に敗れる場面。
 「和睦之舞」第4話で甲賀弦之介が笛を吹き、朧が舞うシーンの笛の音。
 「殲 其ノ惨」第4話、鵜殿丈助と伊賀の女忍者・朱絹の対決場面。
 「デッドヒート」第5話、森の中で伊賀のお胡夷が不審な忍者(服部響八郎)を追跡する場面。
 「変幻」第6話、甲賀の忍者・如月左衛門が声色を使って伊賀の夜叉丸をだます場面。
 「寂滅」 第6話、伊賀の女忍者・蛍火が遠く離れた夜叉丸の死を察する場面。
 「胡蝶の涙」第7話、如月左衛門が化けた夜叉丸を見て、蛍火が思わず抱きつく切ない場面。
 「哀別、鮮血の檻にて」第8話、如月左衛門が妹のお胡夷と最後の会話をする場面。
 「殲 其ノ壱」第8話のラスト、甲賀弦之介が甲賀と伊賀の不戦の約定が解かれたことを知る場面。
 フィルムスコアリングの曲なので、場面に合わせてテンポや曲調が変わる。そのダイナミズムも聴きどころのひとつだ。ただし、一部の曲は、複数の場面の曲を1トラックにまとめたり、曲の一部を編集したりと、聴きやすいように手が加えられている。そういう意味では、劇中に使用されたままのサウンドトラックではなく、アルバム・バージョンとして聴くのがよいだろう。
 ハイライトは「殲」とタイトルにつけられた3曲のアクション曲。いずれも緊迫したリズムに重厚な管弦楽のサウンド、さらにエレキギターや篠笛、コーラスなどが絡む迫力満点の曲である。
 曲名は「殲 其ノ壱」「殲 其ノ弐」「殲 其ノ惨」となっているが、同じモチーフのアレンジというわけではない。それぞれに工夫を凝らして描かれた忍法対決場面に合わせて、音楽も変幻自在に組み立てられている。フィルムスコアリングの醍醐味である。「殲」は激しい忍法勝負の曲の総称なのだろう。「音絵巻」の2枚目以降にも「殲」と名づけられた曲は登場し、「殲 其ノ七」まで収録されている。忍者アクションものとしての本作を代表する楽曲だ。
 本作のリリカルな部分を代表する曲としては、「悲絆—きずな—」「春夢」「寂滅」「胡蝶の涙」「哀別、鮮血の檻にて」がある。凄惨な死闘の場面にも哀感がただようのが本作の魅力。悲恋の場面やはかない死の場面を美しい音楽が彩ることで、忍者の世界の非情さが際立つ。
 「寂滅」の中世教会音楽風のコーラスは哀愁と幻想味をただよわせて、人知を超えた忍法の不可思議を感じさせる。和の要素だけでなく、さまざまな民族音楽の要素も取り入れられているのが本作の音楽の特徴である。

 アルバム全体としては、ストーリーの流れに沿って曲を配し、アクションだけでなく、情感にも重きを置いた内容になっている。音楽アルバムとしてのバランスを考慮したうまい構成だ。ただ、もともと制作された楽曲数が多いため、未収録に終わった曲もたくさんある。第1話〜第8話までだけでも74曲、3時間半の音源があったそうだ。ほっとひと息つく場面に流れるほのぼのした曲などが収められなかったのは残念だ。
 とはいえ、本作が2000年代にフィルムスコアリングによるTVアニメ音楽を復活させた意義は大きい。その音楽を聴きごたえのある構成・編集でまとめたアルバム作りのお手本としても、『バジリスク 甲賀忍法帖』はアニメ音楽史に残る作品である。

バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第一章〜
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バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第二章〜
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バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第三章〜
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アニメ様の『タイトル未定』
257 アニメ様日記 2020年4月26日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年4月26日(日)
ニチアサのアニメは『ヒーリングっど※プリキュア』も『デジモンアドベンチャー:』も『ONE PIECE』も再放送だ(※はハートマーク)。午前中は散歩など。13時からSkypeで打ち合わせ。その後はAmazon Echoでハイ・ファイ・セットの曲を聴きながら事務所を片づける。Amazonから届いていた箱で、開けていなかったものをまとめて開けた。その中のひとつが「テレビマガジン完全復刻コレクション マジンガーZ」だ。高額商品なんだけど、この内容でこの価格は「アリ」だと思った。
Kindleで「お近づきになりたい宮膳さん」1巻と「よふかしのうた」3巻を読む。「お近づきになりたい宮膳さん」は、自分はこの年齢でこれを読んで喜んでいいのかとは思うが、かなりよかった。「よふかしのうた」は意外な展開。こっち方向で話を広げていくのか。登場人物が増えた分だけ、ナズナさんの出番は少ないんだけど、今まででいちばんナズナさんが可愛かった。

2020年4月27日(月)
日曜の22時半に起床して入浴。0時50分に事務所。4時からワイフと早朝散歩に。その後はずっと事務所に。Skype打ち合わせが1件。18時まで事務所に。
Netflixで『未来少年コナン』を1話から21話まで観た。ながらとはいえ、一日で21話分も観てしまった。8話はやっぱり作り手の想いが迸っているんだけど、今は冷静に視聴できる。21話ラストで「きっと戻ってくる。死ぬな」と言うコナンがイケメン過ぎるし、言われたモンスリーがどんな顔をしたのか気になる。気がついたら、自分はダイスよりも年上になっていた。本放送当時の印象よりも、ずっとダイスが若い。当然、モンスリーの見え方も、昔とまるで違う。観ている間に、NHKでの『未来少年コナン』再放送の告知があり、再放送の予習をしているみたいになってしまった。

2020年4月28日(火)
午前3時半に事務所に入ってメールチェックなど。4時半からワイフと早朝散歩。これからもなるべく早朝散歩をするつもりだ。公園でラジオ体操をした後は事務所でデスクワーク。Skypeで社内打ち合わせ。「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット(初回生産分)」の追加販売について「WEBアニメスタイル」で発表する。
Netflixで『未来少年コナン』を最終回まで視聴。自分の中では神格化された作品ではあるけれど、8話だけでなく、他の話数も冷静に視聴した。40年以上も前のものにしてはあまり古びていない(放映当時から「新しい作品」ではなかったのも大きい)が、やはり「往年の名作感」はある。
『未来少年コナン』制作時に宮崎さんは37歳のはず。物語や人物像だけでなく「アニメでこんな画をつくりたい」という想いも強かったのだろう。同じ舞台が連続する『赤毛のアン』でレイアウトマンを続けられなくなったのは、そのためでもあるかもしれない。Netflixでの配信の映像は16:9版だ。上下が切れて映画的になっているカットもあるのだけど、「ここは4:3で見たかった」というカットもある。
最終回のダイスとモンスリーの結婚式が大変な名場面であることに間違いはない。なにかが極まった瞬間だ。それから、シリーズ全体として、いいカットのラナの作画はかなり極まっている。モンスリーがどんどん美人になっていくのは一気観よりも、週イチで観たほうが楽しめるかもしれない。最終回の話に戻るが、結婚に対して迷いが生じたダイスが逃げだそうとして、コナンに対して「お前も今に分かる」と言う。自分が『未来少年コナン』を観たのは中学生の頃で、大人になったらダイスの気持ちが分かるかと思ったけれど、分からなかったなあ。当然、コナンにも分からなかっただろう。
Amazon Prime Videoのレンタルで「トニー滝谷」を観る。好きなタイプの映画だ。その後、「あにめたまご2020」の完成披露特別配信を観る。完成披露上映会とは違って、大勢のスタッフが顔を出すわけではないけれど、じっくりと話が聞けるということで今回の番組も悪くない。さらにその後、『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』の1話、2話を観る。どんだけ配信を観ているんだ。

2020年4月29日(水)
昭和の日。昼間はデスクワークで午後に散歩。次の書籍の作業に入らなくてはいけないのだけど、作業に入る準備で時間がかかる。
『美少女戦士セーラームーン』をYouTubeで1話から10話まで視聴。当時の記事のノリで亜美ちゃん、レイちゃんと書くのは照れくさいのでフルネームで書くけど、水野亜美も火野レイも初々しい。その初々しさは声の力も大きい。セーラームーンが単体ヒーローだった時期も独特の味わいがあるのだけど、面白くなるのは3人揃ってから。この10話前後で、当時、世間話的に聞いたけれど記事にできなかったある制作上のエピソードがある。いつか記事にしたいと思っていたけれど、まだできていない。僕が現役でいる間にそのチャンスはめぐってくるのか。配信の映像は猛烈に綺麗だった。当日のセル撮のポジより綺麗じゃないかと思うくらいだ。
『未来少年コナン』と『ふしぎの海のナディア』について気がついたことがあるので記しておく。『未来少年コナン』2話でおじいが言ったセリフが「人間は一人では生きていけない。いや、一人で生きてはならないのだ」。『ふしぎの海のナディア』13話でサンソンが言ったセリフが「人は一人では生きてはいけないし、一人で生きてちゃいけないんだ」。『ナディア』で「人は一人で生きていけない」と同じ意味のセリフを他のキャラクターも言っている。これは意識した引用ではなく、記憶に残っていて、スタッフが無意識に引き出しから出したセリフの可能性もある。

2020年4月30日(木)
金曜までに終わらせたい作業がいくつかあるのだけれど、そのうちのひとつに関して素材が足りないことが判明。作業の続きができるのはゴールデンウィーク明けだな。ギャフン。配信で『機動武闘伝Gガンダム』を観始める。1話は本放送時の10倍は面白かった。天野由梨さんの芝居もいい。

2020年5月1日(金)
56歳になった。誕生日を迎える度に、仕事を続けられている事をありがたいと思う。お世話になっている皆さんに感謝。幸運に感謝。
早朝散歩で、午前5時からやっているパン屋に。できたてのアンパンを買う。できたてだと、アンコが温かいのだ。その後はデスクワーク。ゴールデンウィークの本番に突入する前に、色々なことを片づける。他の方も同じことを考えているようで、あちこちから連絡がくる。「今石洋之アニメ画集」の見本が印刷会社から届く。『機動武闘伝Gガンダム』を17話まで観た。旧シャッフル同盟についてはスパロボで記憶が上書きされていて、登場した途端に死ぬんだと思っていた。

2020年5月2日(土)
ゴールデンウィーク本番の1日目。誕生日の翌日ということもあり、ほぼ休日。作業はMacのフォルダの整理、事務所の片づけなど。Kindleで「バーナード嬢曰く。」最新5巻を読む。満足満足。以前の記述と重複するけれど、この作品を読むと自分の学生時代を思い出す。あんなに本を読んでいたわけではないのだし、登場人物のように理知的だったわけではないのだが、気持ちが重ねやすい。自分があんな学生時代を送っていたような気になってしまう。続けて1巻に戻って、読み直す。夕方から吉松さんとSkype吞み。

アニメ様の『タイトル未定』
256 アニメ様日記 2020年4月19日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年4月19日(日)
午前10時くらいから料理をつくりながら焼酎を吞んで、つくった料理を食べながらまた吞む。日曜日らしいと言えば日曜日らしい。午後は事務所に入り、今朝の『ONE PIECE』『デジモンアドベンチャー:』を観ながらキーボードを叩く。それから、Amazon Musicを聴きながら、事務所のテーブル上などを片づける。過去の書籍の校正紙を捨てたり、最近の作業で使ったコピーを捨てたり。
この日記でも前に書いた西巣鴨の豚丼屋が、新型コロナウィルスの影響で閉店することを知る。これから通うつもりだったのに。残念だ。

2020年4月20日(月)
雨天のため、いつもは公園でやっているラジオ体操を自宅でやる。その後は散歩も行かず、ずっとデスクワーク。編集以外の仕事も進める。夕方、このところ人と話をしていないという吉松さんとリモート飲み会。ワイフも参加した。居酒屋で飲むのと違って「最近、これを買ったんだ」と言って、家にあるものを見せられるのが面白い。その後、事務所に戻ってデスクワーク。事務所スタッフのパソコンがモニターごとなくなっていて、何事かと思ったら、金曜に自宅に持って帰ったのだそうだ。そう言えば、会社のパソコンがあれば自宅でも同じように仕事ができると言っていたなあ。
『ちはやふる3』を未視聴分を観る。第十二首、第十五首、第十六首、第十八首で「監督協力」の役職で、いしづかあつこさんの名前があるけど、話数単位での助監督みたいな仕事だろうか。最終回は『4』をやる気満々の終わり方。アニメ『ちはやふる』は総話数「第百首」で最終回になるプランなのだろうか。『3』で総集編を「第十五、五首」としているのは『3』の最後を切りよく「第七十五首」にするためなのだろうか。

2020年4月21日(火)
散歩以外はデスクワーク。「パンスト 今石洋之マンガ全集」の作業が大詰め。他の仕事もいろいろ。ではあるが少しのんびりモード。いや、のんびりしていてはいけないんだけど。『宝島』を10話から観る。2019年5月25日に9話まで観たのでその続き。

2020年4月22日(水)
朝のラジオ体操の後、西友に。ワイフはこの数日、UCCのエヴァ缶を探していたのだけど、西友のレジ前にどっさりと置いてあった。ワイフは「あった!」と声を出す。3缶購入でクリアファイルがひとつもらえるとのことで、9缶も買っていた。帰路で「嬉しいなあ、嬉しいなあ」と何度も言っていた。翌日もあったらまた買うそうだ。
「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業が終了。「今石洋之アニメ画集」告知の準備。他にも「今石洋之アニメ画集」の作業がいろいろ。
『宝島』を最終回まで視聴。名作であることにかわりはないが、今の若い人が観たら「往年の名画」になるのだろう。この日記で前に書いたように、脚本段階では、ジムはもう少し大人びたイメージだったのかもしれない。シルバーは未成年だと思わずにジムに酒を呑ませたと言っているが、フィルムでのジムは見た目も言動も、いかにも少年といった感じだ。キャラクターデザインと清水マリさんの声で、脚本段階のイメージよりも幼い感じになっているのではないか。そして、ジムがもっと大人びた感じであったなら、物語は同じでも、シリーズ後半のシルバーとジムの濃密な関係に別のニュアンスが付加されていたに違いない。
それから『宝島』についてもうひとつ。『赤毛のアン』をマリラの目線で観るようになり、『エースをねらえ!』を宗方の目線で観るようになっても、『宝島』をシルバーの目線で観ることはできないようだ。

2020年4月23日(木)
ワイフはまたUCCのエヴァ缶を購入。今日の出勤は二階は自分ひとり、三階は事務スタッフがひとり。他は全員が自宅作業。来週もこの体制が続くはず。銀行に行くために久しぶりに駅方面に。閉まっている飲み屋の前でお兄ちゃんがマスクを売っていたり、ドン・キホーテの店員さんが「マスクが入荷しました」と道行く人に呼びかけていたり。
午前中に『MEMORIES』をながら観。今さら言うまでもないが「彼女の想いで」は画がよい。観る度に好きになる。「最臭兵器」は今までよりも面白く感じた。いや、面白いは適切ではないな。「楽しい」だ。続けて『さよならの朝に約束の花をかざろう』を観る。いやあ、いいなあ。井上俊之さんのパートもいいし、平松禎史さんパートの入り方も最高。『攻殻機動隊SAC_2045』がNetflixで配信開始。11話まで観た。ネットの反応は上々の模様だ。

2020年4月24日(金)
用事があって、テレワークになっているはずのデザイン事務所に電話をしたら、スタッフがいて、社長もいた。他のスタッフは自宅作業で、2人だけ出勤しているのだそうだ。世間話で「どこも大変だ」と話す。「今石洋之アニメ画集」の詳細を発表し、「アニメスタイル ONLINE SHOP」で「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」の注文受付を開始。「スペシャルセット」はコミックマーケット98で販売する予定でつくったものだが、「アニメスタイル ONLINE SHOP」での販売がメインになった。受付開始後、サーバーが落ちて、編集部スタッフが対応する。

2020年4月25日(土)
午前5時半にワイフとマンションを出て、池袋西口のドン・キホーテに。コロナ対策のための消毒液などを購入。その後はデスクワーク等。17時から吉松さんとリモート飲み会。
U-NEXTで、大島渚監督の「夏の妹」を視聴。1972年の映画だ。予想していた内容とは随分違ったし、受けとめきれないところもあった。それはともかく、映画の中盤で、主人公の素直子(栗田ひろみ)と鶴男(石橋正次)が飲み屋街を歌いながら歩く場面があって、2人が「シルバー仮面」の主題歌「故郷は地球」を歌う。これがなかなかいい。歌いっぷりがいいし、劇中の二人の関係を歌詞と重ねるかたちにもなっている。解説するのもヤボだけど、「アイアンキング」の静弦太郎が「シルバー仮面」の主題歌を歌っているわけだ。鶴男が立ち去る時に「ふふ、さすらい仮面だからね」と言うのも気が利いている(ちなみに「夏の妹」の公開日が1972年8月5日で、「アイアンキング」は同年10月8日から放送開始)。それから「夏の妹」の石橋正次は非常にチャーミングだった。

アニメスタイルTALK 002 沓名健一と語るアニメ作画の20年

 アニメスタイルの配信トーク第2弾は「アニメスタイルTALK 002 沓名健一と語るアニメ作画の20年」です。アニメーター、演出として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さんに、この20年間のアニメ作画を振り返っていただきます。なお、このトークの内容は後に加筆・修正し、雑誌「アニメスタイル」に掲載する予定です。

 今回のトークは新宿ロフトプラスワンで、6月14日(日)11時から無観客トークイベントとして開催し、同時にアニメスタイルチャンネルで配信。1週間配信した後、アーカイブとしてしばらく視聴できるかたちとする予定です。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第663回 杉井監督のMV

こないだ話題にした大塚康生さんに関する原稿を上げた流れで、そのままこちらの原稿に入ります!

 先日、なんとなくYouTubeを観てたら

杉井ギサブロー監督・コンテの『ナンバアナイン』というMVが目に留まりました!

観ると「やっぱり杉井監督は凄えっ!」と。いつの間にUPされてたアニメか知りませんが(ごめんなさい。ネットに疎いもんで)、あまりのカッコよさに感嘆して、繰り返し擦ってました(てか、これ書いてる最中も擦り中!)。黒の中に赤が映える色彩で、月と桜。着物で疾走する美少女。すべてが幻想的かつスタイリッシュで美しく。あと作画技術に頼りすぎないで、ちゃんと「演出の技で見せる」ところが大ベテランならでは。つまりこの手のMVを若いクリエイターに作らせると、必ず作画が死ぬほど頑張ることが大前提の大暴れ何十ページコンテを上げがちなんですが、杉井監督の場合は、これまで手がけられたオープニング・エンディングの仕事を観ても分かるように「MV(TVアニメのOP・EDも含む)の半分は楽曲(歌)が埋めてくれる」ということをとてもよく計算されています。むしろスーパー・ヤンチャ・アニメーターのドタバタ作画など杉井監督には不要なのかと。『ナンバアナイン』も走る少女のリピート数パターンの編集と、くり返す度に微妙な変化を加えて1カット1カットが演出で制御されているフィルムで、そこが個人的に好きなんです。こんな瑞々しいフィルムを作られる方が、間もなく御年80歳になられるとか。信じられません。どういう経緯で今回のMVを手がけられたのか知りませんが、お年を召されて尚もジャンル問わず自身の「色」を滲ませたアニメを作れる杉井監督は本当に凄い方だと思います。
 ちなみに何年も前にこの連載で話題にしましたが、自分は杉井監督の『タッチ』(1985〜87年)OP・EDアニメが大好きで、当時小・中学生だった俺から見て、他のアニメにない「センス」を感じたんです。ただでさえ1分半〜2分しかないフィルムに何カットもBGオンリー(キャラなしの背景のみ)が入る大胆さ! ディゾルブ効果(残像をいくつも重ねる)によるストップモーション! そして、これでもかと寄るドアップの部分ショット! で最後に「総監督・杉井ギサブロー」のクレジット! 誰がどう見てもカッケー! です。
 実際、プロになって『キャプテン翼』(2001〜2002)でお会いした時、作品どおりカッコイイ印象の方でした、杉井監督は。『キャプテン翼』はシリーズ後半からコンテのみで参加させていただき、後半26本(3・4クール)中、計8本(その内1本はコンテ・演出・作監)、つまり2〜3本おきにコンテを切らせていただきました。本当によかったのか? でも制作終了後にプロデューサーに聞いた話では「杉井さんはとにかく”板垣さん指名”だったんです」とのことでとても嬉しい話。確かに2本目(第30話)の打ち合わせの際、1本目(第27話)のコンテを褒めてくださったし、杉井監督的には「まあ楽しそうに描いてるからローテーションで使ってやろうか」くらいには思っていただけたのでは? と好意的に受け取っておくことにしました。で、そのコンテの打ち合わせでも杉井監督は仰ってました。

板垣さんはアニメーターだけど、演出家になったんだから、作画じゃなく”演出で魅せる”箇所を作るようにね

と。コンテを切る際のアドバイスほか、大塚さんとの話、虫プロ興亡記など、杉井監督に教わった話はまた今度!

第184回 50億の幸せのために 〜サイボーグ009 怪獣戦争〜

 腹巻猫です。マニアックなサントラを続々リリースしているディスクユニオンのCINEMA-KANレーベル。7月1日発売のタイトルとして60年代の劇場アニメ『サイボーグ009』と『サイボーグ009 怪獣戦争』をカップリングしたサントラ盤が発表されました。折しも、東映チャンネルでは5月から7月にかけて、この2本を4Kリマスター版で放映。劇場版とサントラを同時に楽しむチャンスです。

サイボーグ009 劇場版/怪獣戦争 オリジナル・サウンドトラック
https://www.amazon.co.jp/dp/B087Z8JFBK/


 『サイボーグ009』の原作は、石ノ森章太郎が1964年から描き続けたライフワークと呼べるマンガ作品。悪の組織ブラック・ゴーストによってサイボーグ戦士にされた9人の若者たちが、ギルモア博士の協力を得てブラック・ゴーストから逃れ、平和と自由を守るために戦う物語だ。
 『サイボーグ009』はたびたびアニメ化されている。TVアニメだけでも1968年版、1979年版、2001年版と3度。近年では、フル3DCGアニメ『009 RE:CYBORG』(2012)、『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』(2016)などが劇場公開された。
 そのオリジンと呼べるのが、東映動画が制作した2本のアニメ映画。1966年公開の劇場版『サイボーグ009』と1967年公開の『サイボーグ009 怪獣戦争』だ。いずれも演出(監督)は『わんぱく王子の大蛇退治』(1963)を手がけた芹川有吾が担当。007のキャラクターが子どもになっているなど、子ども向けにアレンジされた部分もあるが、巧みなストーリーテリングと演出でアニメ独自の魅力を持つ作品に仕上がった。特に2作目の『サイボーグ009 怪獣戦争』は、スパイとして009たちに近づいた敵のサイボーグ少女ヘレナの苦悩と悲劇がドラマの軸となり、芹川有吾の持ち味が最大限に発揮された作品になっている。
 今回は、この『サイボーグ009 怪獣戦争』の音楽を紹介しよう。

 音楽は2作とも、伊福部昭門下の小杉太一郎が担当している。
 芹川有吾は『わんぱく王子の大蛇退治』に続いて本作の音楽も伊福部昭に依頼することを考えていたが、実現しなかった。当時の伊福部昭は「東映動画何十周年記念の大作」でなければ使えないクラスの作曲家で、芹川は会社からダメだと言われるのをわかっていて希望したそうだ。代わりに伊福部昭の推薦で選ばれたのが小杉太一郎だった(「東映動画長編アニメ音楽大全集」解説書所収の芹川有吾インタビューより)。
 小杉太一郎は1927年生まれ、宮城県出身。宮城は石ノ森章太郎の出身地でもあり、小杉の生地・石巻市には現在「石ノ森萬画館」が建てられているという奇しき縁がある。
 少年時代から作曲に興味を持った小杉太一郎は、東京音楽学校作曲科(現・東京藝術大学音楽学部)に入学。池内友次郎に対位法と和声学を、伊福部昭に作曲法と管弦楽法を学んだ。1953年、劇場作品「健児の塔」で映画音楽作曲家デビュー。その後、「血槍富士」(1955)、「森と湖のまつり」(1958)、「愛と死を見つめて」(1964)、内田吐夢監督の宮本武蔵シリーズ(東映)、日活の渡り鳥シリーズなど300本を超える映画音楽を作曲した。惜しくも、1976年に49歳の若さで世を去っている。アニメ作品は少なく、2本の劇場版『サイボーグ009』とTVアニメ版『サイボーグ009』(1968)、劇場アニメ『パンダの大冒険』(1973)があるくらい。近年は純音楽の作曲家としての再評価も盛んで、「カンタータ 大いなる故郷石巻」「小杉太一郎の純音楽」などのCDアルバムが発売されている。
 そんな小杉作品の中でも抜群の人気を誇り、くり返し商品化されているのが『サイボーグ009』の音楽である。
 劇場版『サイボーグ009』の音楽は、2本とも画に合わせたフィルムスコアリングで作られている。1作目は上映時間64分の映画に対して音楽が71曲、43分。2作目は60分の本編に対して音楽が52曲、42分。どちらも劇中の大半に音楽が流れる演出だ。芹川有吾は小杉の音楽について、「小杉さんの音楽は非常によかったですね。(中略)神経質に細かく区切って(音楽を)つけたんですけど、そのとおりフォローしてくださいました」と語っている(「東映動画長編アニメ音楽大全集」解説書所収のインタビューより)。
 1作目『サイボーグ009』のストーリーは、サイボーグ009の誕生からサイボーグ戦士の脱出、ブラック・ゴーストとの戦い、ブラック・ゴースト本部の壊滅までを描く、危機また危機のスパイ映画的展開。音楽もアクション音楽やサスペンス音楽が中心だ。カットに合わせた短い曲が多く、曲数も多い。その中で、003の回想場面に続いて流れる女声コーラスをともなった美しい音楽(M-33)が印象に残る。エンディング曲(M-72)でも変奏される、反戦の想いを込めた「祈りのテーマ」だ。
 2作目の『サイボーグ009 怪獣戦争』でもアクション曲は活躍するが、より心情的な音楽が多くなっている。重要なのが、悲劇の美少女ヘレナの登場場面に流れる「ヘレナのテーマ」(M-38など)。女声コーラスをともなう美しい曲想は「祈りのテーマ」の発展形とも呼べる。ヘレナのドラマに沿って随所に使用されることで、「祈りのテーマ」以上に観客の心に残る曲になった。
 ダイナミックなアクション音楽と「祈りのテーマ」「ヘレナのテーマ」に代表される美しく荘重なメロディの共存。これが、2本の劇場版『サイボーグ009』の音楽の聴きどころである。のちの純音楽作品「カンタータ 大いなる故郷石巻」(1973)でも聴かれる小杉太一郎の音楽性が存分に発揮された作品と言える。

 小杉太一郎が手がけた『サイボーグ009』の音楽は過去に3度、商品化されている。最初は1996年に日本コロムビアから発売されたCD10枚組「東映動画長編アニメ音楽大全集」の1枚。これは劇場版2作品の音楽を抜粋してCD1枚に収録したものだった。次に、1999年に日本コロムビアから発売された「石ノ森章太郎萬画音楽大全」シリーズの1巻「サイボーグ009 オリジナル・サウンドトラック[1]」。劇場版2作の音楽とTV版音楽を収録したCD2枚組である。そして、2009年にウルトラヴァイブから発売された「アニメ・ミュージック・カプセル サイボーグ009」。これはTVアニメ版の音楽集で、劇場版の音楽はTV用にコピーされた数曲が収録されているだけだった。今回のCINEMA-KANレーベルのリリースは、劇場版音楽の3度目の商品化ということになる。
 「石ノ森章太郎萬画音楽大全」版をもとに本作の音楽を紹介しよう。2枚組のうちの2枚目が『サイボーグ009 怪獣戦争』に充てられている。収録トラックは以下のとおり。

  1. サイボーグ009 [映画ヴァージョンII]
  2. 怪獣プレシオザウルス
  3. 世界に散る仲間たち
  4. サイボーグ戦士 出動!
  5. プレシオザウルス追撃
  6. 悪魔の罠〜対決!0011
  7. 美しき戦士
  8. 宿命の戦い
  9. 地底の大宮殿〜サイボーグ戦士の危機
  10. ヘレナの愛
  11. 009登場〜甦った幽霊
  12. 50億の幸せのために…
  13. エンディング

 ※トラック14〜25にTVアニメ版音楽を収録。

 構成は「東映動画長編アニメ音楽大全集」版をベースに未収録曲を補完したもの。複数曲を1トラックに収録するスタイルで劇中使用順にまとめられている。
 1曲目の「サイボーグ009」は男声コーラス(マイスタージンガー)が歌う劇場版主題歌。小杉は主題歌のメロディを2曲書き、その中から現在のものが選ばれたそうだ(小杉太一郎の長男・小杉隆一郎氏の証言より)。この主題歌はTV版にも使用された。
 アニメ版『サイボーグ009』の主題歌といえば、TVアニメ2作目の「誰がために」を推すファンが多いが、この1作目の主題歌も根強い人気を持っている。力強い中に哀愁を感じさせる名曲である。
 トラック2「怪獣プレシオザウルス」は本作の導入部、謎の怪獣が船を襲う場面の音楽。プレシオザウルスの猛威を表現する曲には劇場版第1作の恐竜ロボットの音楽が受け継がれている。
 本作の音楽は古典的な編成のオーケストラに電子オルガン(エレクトーン?)と女声コーラスを加えたスタイル。アクション系の曲では、小杉太一郎が敬愛するストラビンスキーや師匠・伊福部昭の音楽を思わせるダイナミックな響きを聴くことができる。
 トラック3「世界に散る仲間たち」は、世界各地でそれぞれの生活を送っていたサイボーグ戦士たちが異変を知って再び集まる一連の場面の音楽。英国風、中国風、西部劇風など、サイボーグ戦士の出身国を表現するパスティーシュ風音楽が楽しい。バレリーナとして活躍する003の登場場面では、劇場1作目と同様にチャイコフスキーの「白鳥の湖」が引用される。それに続く、003が戦いに参加することをためらう場面の哀愁を帯びた音楽(M-14)が胸にしみる。
 トラック4〜6の「サイボーグ戦士 出動!」「プレシオザウルス追撃」「悪魔の罠〜対決!0011」では、サイボーグ戦士の出動からブラック・ゴーストが送り出すさまざまな敵との戦いが緩急に富んだ音楽で描かれる。007が活躍するユーモラスな場面ではジャズ的な軽快な表現が現れるのも小杉音楽の特徴のひとつ。
 「サイボーグ戦士 出動!」のラストに登場する抒情的な調べ(M-22)は、ヘレナと009が語らう場面の曲。最後にヘレナのテーマが木管で奏される。ヘレナの心情の変化を予感させる重要な曲である。
 そして、ヘレナの正体が明らかになる場面のトラック7「美しき戦士」。ヘレナが真の姿を現すと、女声コーラスをともなったヘレナのテーマが流れる。ヘレナの美しさと音楽の美しさ、両者が相乗効果で際立つ名場面だ。
 ヘレナの正体を知った009とヘレナとの戦いを描写するトラック8「宿命の戦い」では、緊迫感に富んだM-39に続いて、ヘレナのテーマが変奏される(M-40)。地割れに落ちかけたヘレナを009が助け、2人の心が通う場面だ。ハープと弦楽器、フルートなどによるアンサンブルがヘレナの乱れる気持ちを表現する。
 トラック10「ヘレナの愛」は、プレシオザウルスとの戦いで地底湖に沈んだ009をヘレナが助ける場面の曲。水中を泳ぐヘレナの姿とその胸に秘めた想いが心に残る名場面。ここでは、ヘレナのテーマの変奏がたっぷりと長く流れる。幻想的でロマンティック。音楽的にも聴きどころのひとつである。
 トラック12「50億の幸せのために…」はクライマックスの戦いの音楽。ヘレナが命をかけてサイボーグ戦士を助ける場面に流れるヘレナのテーマ(M-51)が胸を打つ。「これぞ芹川演出!」と思わずこぶしを握ってしまう場面である。009の怒りとともに音楽は勇壮な主題歌アレンジ(M-52)に突入。007のコミカルな活躍に合わせて曲調が変化するフィルムスコアリングならではのアレンジが聴ける。
 本編を締めくくるトラック13「エンディング」(M-56)では、ヘレナのテーマが女声コーラスによって奏される。1作目の「祈りのテーマ」の役割を本作ではヘレナのテーマが担っているのだ。本作のもう1人の主人公がヘレナであり、ヘレナこそが本作のテーマを体現するキャラクターであることが音楽でも明確になる。
 『サイボーグ009 怪獣戦争』はヘレナのために作られたと言ってもよい作品だ。音楽的にもヘレナのテーマが柱になっている。小杉太一郎による美しい音楽がなければ、本作の印象は違うものになっていたのではないか。それほど、本作における音楽の役割は大きい。
 「石ノ森章太郎萬画音楽大全」版のアルバムが入手困難になって久しいだけに、CINEMA-KANレーベルから再び本作の音楽がリリースされるのは朗報だ。今回はTV版の音楽は収録されないようなので、劇場版の未使用曲、別テイク、主題歌の別バージョンなどの収録を期待したい。
 なお、東映チャンネルでは6月に、小杉太一郎が音楽を手がけたもう1本の劇場アニメ『パンダの大冒険』も放送される予定だ。これも芹川有吾監督作品。劇場版『サイボーグ009』に魅せられたファンなら押さえておきたい作品だ。

サイボーグ009 劇場版/怪獣戦争 オリジナル・サウンドトラック
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石ノ森章太郎萬画音楽大全 サイボーグ009 オリジナル・サウンドトラック[1]
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
255 アニメ様日記 2020年4月12日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年4月12日(日)
ラジオ体操と午前中の散歩以外はデスクワーク。フキダシの中に文字が入ったバージョンで「パンスト今石洋之マンガ全集」を最初から最後まで目を通した。相当な濃さだ。 NHKの「もういちど、日本」の「池袋の老舗映画館」を観る。新文芸坐がとりあげられた回だ。冒頭の「昭和の匂いを残す街」として新文芸坐と周辺を撮ったカットは、画面を暗めにしているせいか本当に昭和っぽい。新文芸坐の内外を撮ったカットではアニメスタイルオールナイトの掲示が映っていた。15歳から45年間、2日に一度の頻度で新文芸坐で通ってきた若井信二という方が登場。若井信二さんは新文芸坐チラシの作品解説を書いている模様。
『メジャーセカンド』を21話まで観た。実は第2シリーズを観るつもりで、間違って第1シリーズを観始めてしまったのだけど、面白い。
マンガ「めんつゆひとり飯」2巻を読んだ。デブ目線で保ヶ辺勉の人間関係を見ると、面堂露は気さくだし、太っていることを気にしていないし、適度にツッコミを入れてくれるし、話題もあうし、理想の女友達なのではないか。白田舞は保ヶ辺が太っていても痩せていても好きだというところがファンタジー強めだけど、実際に付き合ったら破綻するような気もする。いや、マンガだからファンタジー強めでいいんだけど。1巻を読んで、いやいや面堂露はちゃんと料理しているよ、と思っていたら、2巻で本当に料理をしない彼女の姉が同じことを劇中でコメントしていて納得。

2020年4月13日(月)
引き続き「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業が同時進行中。色校正紙が出て、デザインチェックがあり、入稿作業もあり。ついでに線画のセル塗りの追加作業も(塗っているのは僕ではないです)。
『メジャーセカンド』第2シリーズの1話まで視聴。Netflixが第1シリーズ最終回の次に第2シリーズ1話の自動再生を始めたので、あまりの飛躍に驚いた。
配信で次に何を観るかでちょっと悩む。『未来少年コナン』と『宇宙戦艦ヤマト』も観返したいと思っているけれど、次の再見は「ながら観」でないかたちで観たい。そもそも『宇宙戦艦ヤマト』は配信にない。旧作の『あしたのジョー』から『あしたのジョー2』の流れは、今だとちょっと重たい。なんて思いながら『宇宙よりも遠い場所』の1話を観てから『けいおん!』の1話から最終回までを観る。さらに『けいおん!』の番外編を観る。改めて観ると(観なくても分かっていたことだけど)『けいおん!』1話の平沢唯と真鍋和の個性と関係性、『宇宙よりも遠い場所』1話の玉木マリと高橋めぐみの個性と関係性はよく似ている。唯もキマリもやりたいことが見つからず、和とめぐみはそれに対して的確なアドバイスをする。唯は律たちに出会ったので軽音部に入ったし、キマリは報瀬に出会ったので南極を目指す。キマリも出会った相手が別人ならバンドをやっていたかもしれない。しかし、1話の印象が近しいとはいえ、和とめぐみのキャラクターはまるで違っていて、物語が進めば進むほど、めぐみは『けいおん!』ではありえない方向に掘り下げられていく。
『けいおん!』本編の配信はいまだに画面の左右がカットされたスタンダード(4:3)だった。つまり、TBS地上波本放送版。dアニメストアでもU-NEXTでも番外編の「冬の日!」は4:3で、「ライブハウス!」は16:9。「冬の日!」は情緒がメインの話で当時からお気に入り。
『けいおん!』についてもう少し。本放送時に「面白い」と思った部分が今ではそれほどでもなかったり、「あれ?」と思った部分について違和感がなくなったり。これは『けいおん!』的な価値感が当たり前になったということなのだろう。他にも思ったことがあるけれど、まだ整理がついていない。

2020年4月14日(火)
散歩以外はデスクワーク。引き続き「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業が同時進行。用事があって池袋の西口に行ったら、ドン・キホーテのレジの脇でマスクが売られていた。お得な価格ではないけれど、販売制限などはなし。東口のカバンを売っている店では手作りのマスクを売っていた(1年後にはなんのことだか分からなくなっているかもしれないが、手に入らなくなっていたマスクを店で見かけるようになったということだ)。
配信で『ふしぎの海のナディア』を第1回から第10回まで観た。誰かが指摘していると思うけど、ネモ船長のナディアに対する不器用さと碇ゲンドウのシンジに対する不器用さは通じるものがある(少なくとも両作品の序盤では)。ゲンドウとリツコ(とレイ)の関係と、ネモとエレクトラ(とナディア)の関係も意外と似ている。
『ナディア』第2回を超オタク男子のジャンが、自分の得意分野で非オタク女子であるナディアの気を惹こうする話と見ることもできる。当然、男子のオタク自慢で、非オタクの女子が心から感心することはない。

2020年4月15日(水)
引き続き「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業が同時進行。「今石洋之アニメ画集」は大詰め。
朝はワイフと散歩。ワイフはコロナを気にして、このところ、外出をしていなかった。飛鳥山公園まで歩いて、缶コーヒーを飲んで、東池袋に歩いて戻る。飛鳥山公園で水筒とデザートを持参し、ベンチで日なたぼっこをしつつ、4コママンガ誌を読んでいる男性がいて、いかにもその雑誌を楽しんでいる感じが印象に残った。午後は編集以外の作業。
『ふしぎの海のナディア』の第11回から第20回を観る。第12回 「グランディスの初恋 」は水着回。演出・絵コンテが窪岡俊之さんで、作画監督が鈴木俊二さん。本田雄さんの原画も素晴らしい。水谷優子さんの名アドリブ「スットコドッコイ」もこの回。いかにもアドリブで入れた感じのタイミングで入る。 第13回「走れ!マリー」は摩砂雪さんのコンテに亜細亜堂の作画がマッチ。本放映時にも思ったけれど、OVAのような仕上がり。第11回、第12回、第13回はキャラクターの魅力も増し、作画的にも見どころたっぷり。本放送時にも高揚感があった。第16回「消えた大陸の秘密」はパロディ満載なんだけれど、知らなければカッコいいセリフとシチュエーションがいっぱいのエピソードに見える。第17回「ジャンの新発明」は綺麗な話。テーマやモチーフは全然違うんだけど、僕の中では『新世紀エヴァンゲリオン』の第七話「人の造りしもの」に印象が近い。第19回「ネモの親友」。イリオンの声は高木均さん。新旧ムーミンパパ対決になっているのは、ロマンアルバムでも触れたはず。『ふしぎの海のナディア』という作品のベーシックなイメージはこのあたり(第11回から第20回)ではないかと。遊びもあるけれど、抑制を効かせて作っている。とはいえ、僕は第21回以降のほうが好きだ。

2020年4月16日(木)
午前中の散歩以外はデスクワーク。「今石洋之アニメ画集」の編集作業はほぼ終了。「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業は大詰め。午後は編集とは別の作業も。
『ふしぎの海のナディア』は21話から33話まで観る。やっぱり「島編」で面白いのは第24回、第25回、第26回。特に第25回、第26回のセンスとネタの詰め込み方が素晴らしい。第27回で「ルアーブルのレイちゃん」として、この時点では『ふしぎの海のナディア』にはまるで関係のない佐久間レイさんの名前が出てくるのは知っていても驚く。なお、佐久間レイさんは、後にCD「Good Luck Nadia ~Bye Bye Blue Water PART2」のドラマパートで、ちょっと驚く役名で登場する。

藤原啓治さんが亡くなったことをネットで知る。藤原さんは名優であり、人柄も素晴らしかった。原恵一監督のイベントで、何度かご一緒させていただいた。新文芸坐のオールナイトに原監督が酔っ払って現れたことがあり、藤原さんもそれに付き合ってステージ上で飲みながらトークを進めた。それがあまりにも楽しかったので、半年後にトークイベント「原恵一監督、藤原啓治さんとお酒を飲む会」を開催させていただいた。藤原さんは、どのイベントの企画についても「原監督のためになるなら」と言って、二つ返事で引き受けてくださった。
楽屋でも飲み屋でも、藤原さんの軽妙さ、味わいのある語りは変わらなかった。何度も会っているのに僕は藤原さんに取材したことはなかった。どんな質問をしても答えてくれるに違いないが、微妙なところで躱されてしまうのではないかと思っていたのだ。もう少しご一緒させていただいて、切り込んでいくきっかけをつかめたところで「この人に話を聞きたい」で取材を申し込みたいと思っていた。心よりご冥福をお祈り致します。

2020年4月17日(金)
午前中の散歩以外はデスクワーク。「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」が校了。「パンスト 今石洋之マンガ全集」の作業が続く。
『ふしぎの海のナディア』は第34回から最終回まで観る。「第34回 いとしのナディア※」(※はハートマーク)は歌の回。今観ても凝り凝りの編集がいい。この段階でサンソンにとって大事な人はグランディスだけど、愛しい人はマリーだと,編集で示しているのも凄い。「ABC」の部分はパンチがありすぎ。
『ふしぎの海のナディア』には物語の大筋で語られるテーマと、キャラクターや表現で語られるテーマがある。当然、前者と後者で重複している部分はある。前者は理屈で語ることはできるけれど、視聴者にはいまひとつ届いていないかもしれない。後者のほうが視聴者は届いているはずだ。『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズも普通に作っていたらそうなっていたかもしれない。
『ふしぎの海のナディア』からの流れで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を視聴。BGMと高雄コウジ(大塚明夫)のおかげで、冒頭は『ナディア』テイスト強し。衝撃を受けたところで「なんだいなんだい」というセリフが聞こえそうだ。
話は変わるが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』はやっぱり特別な「気分」の映画だ。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が完成したら、違った見え方をするのだろうか。

2020年4月18日(土)
「パンスト 今石洋之マンガ全集」の作業。それから電卓を叩く、じゃなくて、表計算ソフトに数字を打ち込む。日テレの『時をかける少女』を観る。色がちょっと濃い気がするけど、高画質。近所の料理屋がテイクアウトの弁当を始めていて、それを買って食べる。
CD「Bye Bye Blue Water」「Good Luck NADIA~Bye Bye Blue Water PART2」を聴いた。「Bye Bye Blue Water」は、『ふしぎの海のナディア』本編視聴からの流れで聴くと染みる。
ドラマ「捨ててよ、安達さん。」1話を観る。これはヤバイ。ドラマとしてはまるでヤバくないのだけど、安達祐実さんがヤバイ。ひょっとしたら僕だけがヤバイと思っているだけかもしれないけれど、安達祐実さんの写真集を買いたくなるくらいにヤバイ。
この日記の2020年4月8日(水)でも書いたように、コミックマーケット98の中止が決まる前から、中止になった時のために「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」の販売会用に都内に広い会場を借りていたのだが、それはNGになった。それと別の販売計画も進めていたのだが、それもNGになりそうだ。

アニメ様の『タイトル未定』
254 アニメ様日記 2020年4月5日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年4月5日(日)
基本的に事務所にこもって原稿作業。外出は朝のラジオ体操、昼飯の買い出しくらい。月曜朝までかかるかと思った「今石洋之アニメ画集」の巻末インタビューの原稿が15時くらいに終わった。原稿をまとめていて、自分はインタビュアーとして天才なのではないかと思った。勿論、勘違いである。偶々取材で上手く転がっただけだ。
新番組『アルテ』『LISTENERS リスナーズ』『トミカ絆合体 アースグランナー』『ギャルと恐竜』『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『イエスタデイをうたって』の1話を観た。それからAmazon Prime Videoで『アイアン・ジャイアント』と「仮面ライダー」。

2020年4月6日(月)
事務所にこもってデスクワーク。原稿の推敲、デザイナーさんに出すラフ描きなど。新番組『もっと!まじめにふまじめ かいけつゾロリ』『キングダム(第3シリーズ)』『ミュークルドリーミー』『波よ聞いてくれ』『俺の指で乱れろ。~閉店後二人きりのサロンで…~』『グレイプニル』『新サクラ大戦 the Animation』『継つぐもも』を観た。

2020年4月7日(火)
緊急事態宣言が発令される。我が社も自宅勤務が始まって、自宅で作業ができるスタッフは出社しないかたちに。自分は自宅がすぐ近くなので、今まで通りに毎日出社する。「今石洋之アニメ画集」と関連書籍の編集作業は続く。新番組『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』『プリンセスコネクト! Re:Dive』『邪神ちゃんドロップキック’』を観る。「ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々」はアニメではなかった。

2020年4月8日(水)
猛烈に忙しかった日。散歩もお休み。「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の編集作業を進めつつ、「設定資料FILE」の構成を一気に片づける。
コミックマーケット98の中止が決まる前から、コミケが中止になった時のために「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」の販売会用に都内に広い会場を借りていたのだが、その施設が新型コロナウイルス感染症対策で休館となった。またまた大ピンチ。
作業をしながらひたすら『仮面ライダー』を観る。
以下は「仮面ライダー」の話題。36話「いきかえったミイラ怪人エジプタス」で、エジプタスについて「4000年前に生きていたと言われる怪人だ」との説明が。ああ、この世界にはショッカー怪人以外の怪人もいるのね。37話「毒ガス怪人トリカブト」で「怪獣サイン会」で子供達が集まったのだが、サイン会に来たのは怪獣ではなく、ショッカーの怪人達だった。この世界だと「怪獣」はフィクション世界のキャラクターとして認知されているということなんだろうなあ。

2020年4月9日(木)
この日もデスクワーク。初めて事務所スタッフだけでSkype打ち合わせをやる。「小黒さんの声が途切れる」と言われてMacBookを持って別のフロアに移動したり。他は進行中の書籍の作業など。
新番組『BNA』『シャドウバース』『フルーツバスケット 2nd season』1話を観る。「ファンファンキティ」はアニメ番組ではなかった。
『地縛少年花子くん』の終盤を観る。シリーズを通じて画作りがとてもよかった。25年前だったら「夢のようなアニメ」だ。勿論、今の作品としても凄い。
Amazon Prime Videoの日本映画NETで、森田芳光監督の「キッチン」を観た。これは凄い。公開当時に観たとしても凄いとは思わなかったかもしれないけれど、今の目で観るとかなり凄い。

2020年4月10日(金)
この日もデスクワーク。「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」の作業が同時進行。校正紙がいくつも出る。そして、この3冊の告知を開始する。
Amazon Prime Videoで「東京公園」を観た後、U-NEXTで「傷だらけの天使」1話。なんてこった。萩原健一さんを「可愛い」と思ってしまった。そんな日がくるとは。Amazon Prime Videoのプラス松竹で「蒲田行進曲」と「時代屋の女房」を観る。「蒲田行進曲」を観初めてから「あれ?」と思った。頭の中で「蒲田行進曲」と「時代屋の女房」がごっちゃになっていたようだ。

2020年4月11日(土)
朝、昼、夜に事務所に入って作業をした。午前中に飛鳥山公園まで散歩。通常は夜から朝までの営業で、一度も入ったことがなかったラーメン屋(店頭にホッピーの張り紙あり)が、コロナの影響で昼の営業を始めていたので入ってみる。お酒のつまみも豊富。また来たい。
SNSでタイトルを見かけたマンガ「めんつゆひとり飯」1巻を読む。内容としては会社員食事マンガ。主人公の面堂露はめんどうくさがりということになっているけど、いやいやマメですよ。雑だけど、ちゃんと料理を作っているし、工夫もしている。人妻で美人秘書で料理好きの十越いりこはかなり素敵なんだけど、面堂露の「心の十越さん」の方が萌える。元美形で現在はデブ男子の保ヶ辺勉は共感できるし、彼に片想い中の白田舞も現実にいたらかなり可愛いはずだ(作品中ではめんどくさい人扱い)。
『メジャーセカンド』を1話から観始める。

アニメスタイルTALK 001「沓名健一が語る 僕のアニメ人生」

 まだまだトークイベントを開催するのは難しい状況が続いています。アニメスタイルは無観客イベントの配信、あるいはビデオ通話を使ったトークの配信を始めます。シリーズタイトルはアニメスタイルTALKです。

 その第1回は「沓名健一が語る 僕のアニメ人生」。アニメーター、演出として活躍しており、同時に熱心な作画研究家でもある沓名健一さんに、ご自身の「作画体験」を語ってもらいます。
 これはトークイベントとして予定していた「沓名健一と語るアニメ作画の20年」とは別の企画です。「沓名健一と語るアニメ作画の20年」はまた改めて配信したいと考えています。

 「沓名健一が語る 僕のアニメ人生」は、2020年5月30日(土)の昼12時からアニメスタイルチャンネルで配信を始める予定です。アニメスタイルチャンネルの会員は6月30日まで視聴できます。

 なお、6月中にはアニメスタイルTALKの第2回を配信する予定です。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第661回 またまた大塚さん

僕が『ルパン三世』描いてて面白かったのは「劇中劇」なんだよ。ルパンが銭形とかいろんなモンにバケる(変装する)でしょ? 中身はルパンだと分かった上で銭形の芝居を描くのが楽しかったんだよね〜

 これもどこかのインタビューで語られているかもしれませんが、俺が大塚さんから生でこのお話を聞いた時はまだアニメーターの駆け出し。ただ動かすだけでなく、キャラの内側(内面)を考えて描くということ、「なるほど〜」と嬉しかったのと、大塚さんの仰ることが逐一「アニメーターの矜持」として自分の胸に刻み込まれていった時期だった気がします。

板垣くん、カニ買ってきたよ〜!

 当時、代々木アニメーション学院の講師をされていた大塚さん。地方校を精力的に回った際、必ずお土産を買ってきてくださいました。好評だったのは札幌校帰りの毛ガニ。田中敦子さんや青山浩行さんら先輩方と黙々といただきました!

よし、コツが分かった! ちょっと持ってきなさい

 自分のテレコム時代、その頃は原画・動画の簡易再生機はクイック・アクション・レコーダーというマシンで、原画の確認をしていると、ちょくちょく大塚さんが覗き込んで「何描いてんの?」と訊いてくださいます。で、自分が例えば「濁流に矢を投げるんですが、どんな飛沫(しぶき)になるんですかね〜?」とか相談すると、「分かった」と大塚さんの机に促し、目の前で解説しながらササッと参考を入れて教えてくださるんです。作品はなんであれ、です。とにかく大塚さんはサービス精神旺盛! 作品の壁などお構いなしでなんでも教えてくださいました。この時期の大塚さんを見習って、ミルパンセ社内スタッフの育成に取り組んでいるのです。

 短くてゴメンナサイ!

第183回 キルかキラれるか 〜キルラキル〜

 腹巻猫です。『ヒーリングっど プリキュア』 のオリジナル・サウンドトラックCDが5月27日に発売されます。今年は新型コロナウイルスの影響で春の劇場版が公開延期になり、TVシリーズも4月26日から「おさらいセレクション」を放送中。でも、TVシリーズのサントラ盤は予定どおり発売されるのでご安心を。プリキュアシリーズ初登板となる作曲家・寺田志保の音楽がたっぷり楽しめる1枚。構成・解説・インタビューを担当しました。「おさらいセレクション」のおともにぴったりです。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0863V6FRL/


 今いちばん勢いがある作曲家といえば澤野弘之である。
 『機動戦士ガンダムUC』(2010)、『進撃の巨人』(2013)、『七つの大罪』(2014)、『機動戦士ガンダムNT』(2018)、昨年公開の『プロメア』(2019)など、人気作・話題作を次々と手がけ、自身のライブやコンサートを積極的に開催している。筆者もコンサートに足を運んだことがあるが、若い熱心なファンで会場はぎっしり。いわゆるサントラファンとは違った層のファンがついている印象を受けた。
 映像音楽(いわゆる劇伴)の作曲家は、あまり表に出ず、裏方に徹する職人的な作家が多い。澤野弘之は違うタイプである。自身のプロデュースする音楽プロジェクト「SawanoHiroyuki[nZk]」名義で楽曲を発表し、オリジナルアルバムもリリースするなど、自身が前面に出た活動に意欲的だ。2017年にはリットーミュージックからCD付きアーティストブックまで発売された。
 今回は、澤野弘之が2013年に手がけた『キルラキル』を紹介しよう。

 『キルラキル』は2013年10月から2014年3月まで放映されたTVアニメ。『天元突破グレンラガン』(2007)を手がけた監督・今石洋之と脚本・中島かずきのコンビがふたたびタッグを組んで作り上げた学園SFアクションアニメだ。
 父の死の謎を追って本能字学園に転校してきた少女・纏流子。学園は「極制服」と呼ばれる特殊な服をまとった生徒たちによって支配されていた。その頂点に立つのが生徒会長の鬼龍院皐月。皐月と生徒会の支配に反発する流子は、命を持つセーラー服「鮮血」をまとって皐月に反旗をひるがえす。
 全編が激しいアクションの連続。極制服を着た生徒と流子との激しくエキセントリックな戦いが見どころだ。音楽もアップテンポの熱い曲が多い。澤野弘之らしい、勢いのある曲が満載である。
 澤野弘之の音楽の特徴のひとつにボーカル曲がある。映像音楽(劇伴)は台詞と重ねて使用されることが多いため、歌のないインストゥルメンタルで作られるのが通常だが、澤野弘之はあえて劇伴用に歌入りの曲を作るのだ。この手法はTVアニメ『ギルティクラウン』(2011)から意識して採用するようになったという。もっとも、それ以前から澤野は「テーマ的な曲を書くときは歌を想定して書いている」と発言している(2009年のオリジナルアルバム「musica」ライナーノーツより)。
 『キルラキル』の音楽においても、ボーカル曲は重要な位置を占めている。サントラアルバムの1曲目に置かれた「Before my body is dry」は歌詞のあるボーカル曲であり、同時にメインテーマでもある。
 劇中の盛り上がる場面には、必ずこの曲のメロディが流れる。「Before my body is dry」であることもあるし、それをBGM用にリメイクした曲であったり、インストにアレンジした曲であったりする。どのバージョンが使われるにせよ、サビのメロディが強調され、耳に残る。昨今のアニメ音楽はメロディが豊富でバラエティに富んでいる反面、明快なメインテーマが設定されず、音楽の印象が薄まってしまうケースがあるが、『キルラキル』は逆。メインテーマが牽引する力強い音楽である。
 メインテーマとともに重要な主題となっているのが、流子と対立する皐月のテーマだ。こちらは歌ではなく、インストゥルメンタルの曲。劇中に流れる回数はこちらのほうが多い。メインテーマと皐月のテーマ、ふたつの主題が対立構造を明確にし、ドラマの流れを作っている。  2クール目からはラスボスと呼ぶべき皐月の母・鬼龍院羅暁のテーマが登場(追加録音と思われる)。これが、第3の主題となって物語にうねりを与える。テンポのよい展開とダイナミックなアクションに目を奪われがちだが、音楽に注目するのも本作の楽しみ方のひとつである。
 本作のサウンドトラック・アルバムは2013年12月25日に「キルラキル オリジナル・サウンドトラック」のタイトルでアニプレックスから発売された。アニメ本編は1クール目が終わり、物語の折り返しとなる時期。2クール目で印象が強い羅暁のテーマや後期の対決シーンによくかかっていた曲などは、このアルバムには収録されていない。未収録曲は、完全生産限定版ブルーレイ&DVD第5巻の特典CD「オリジナルサウンドトラック Vol.2」に収録された。サントラファン泣かせのリリース形態だが、2019年6月に上記2枚のアルバムを含む3枚組CD「キルラキル コンプリートサウンドトラック」が発売された。これから買うなら、こちらがだんぜんお得だ。
 今回は1枚目の「キルラキル オリジナル・サウンドトラック」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. Before my body is dry(Vocal:Mika Kobayashi/Rap:David Whitaker)
  2. goriLLA蛇L
  3. 犬Kあ3L
  4. Blumenkranz(Vocal:Cyua)
  5. AdラLib
  6. 鬼龍G@キLL
  7. KILL7la切ル
  8. Suck your blood(Vocal:Benjamin Anderson & mpi)
  9. Kiっ9=KELL
  10. k1ll◎iLL
  11. Light your heart up(Vocal:Aimee Backschleger)
  12. 昼裸lilL♪
  13. 斬LLLア生LL
  14. キ龍ha着LL
  15. I want to know(Vocal:Benjamin Anderson)
  16. 寝LLna聴9
  17. Kiる厭KiLL
  18. Till I Die(Vocal:CASG)

 全18トラック。そのうち歌詞のついたヴォーカル曲が6曲。12曲がインスト曲だ。
 ここで澤野弘之のサントラ・アルバムの特徴である「曲名」に触れないわけにいかない。
 ボーカル曲はオーソドックスな英語タイトルがつけられているが、インスト曲は一見、どう読めばよいかわからない、ユニークなタイトルがつけられている。これについて澤野はインタビューの中で、「タイトルによって曲の世界観を限定したくない」「もともとは英語で曲名をつけていたが、だんだん英語の意味を調べるのが面倒くさくなり、今のような形になった」と語っている。加えて、「こういうタイトルをつけておけば、過去に作った曲のタイトルとかぶることがないから安心」なのだそうだ。
 ユニークな試みだが、サントラファン的には悩ましい。どう読めばよいかわからなくて、曲名と曲がすぐに結びつかない。ただ、JASRACのデータベースには読み方も登録されているので、調べれば正式な読み方を知ることは可能だ。本作は言葉遊びのような曲名のつけ方が特徴で、「鬼龍G@キLL(キリュウガキル)」「Kiっ9=KELL(キックワケル)」くらいならなんとか読めるが、「犬Kあ3L(イヌカサル)」「KILL7la切ル(キルナラキル)」などはそうとう難読度が高い。もっとも、澤野弘之の熱心なファンはこういう曲名も楽しんでいるのだろう。
 アルバムの1曲目はすでに紹介したとおり、本作のメインテーマでもあるボーカル曲「Before my body is dry」。劇中では劇伴用にアレンジした「劇伴特化型1☆極★服(ゲキバントッカガタ ヒトツボシ ゴクセイフク)」(サントラVo.2に収録)もよく使われている。
 ドイツ語で歌われる4曲目「Blumenkranz」は鬼龍院羅暁の登場場面によく流れた曲。ボーカル曲の中では、この2曲が特に本編での印象が強い。
 15曲目の「I want to know」は、第20話と21話で、心が傷つき苦悩する流子の場面に流れたバラード。使用されたのはこの2話のみだが、心に残るナンバーである。
 インスト曲は本能字学園四天王の1人・蟇郡苛のテーマとも呼べる「goriLLA蛇L(ゴリラジャル)」がまず登場。エレキギターのリフを強調したワイルドなナンバーだ。後半はミリタリーマーチ調になる。ここは生徒会の学園支配を象徴するような曲調。
 続く「犬Kあ3L(イヌカサル)」は、軽快なリズムとシンセの特徴的なサウンド、歌ともかけ声ともとれるヴォーカルを組み合わせたダンサブルなナンバー。初期のエピソードで反制服ゲリラ組織ヌーディス・トビーチのメンバーでもある学園の教師・美木杉愛九郎の登場場面に流れていた。
 「AdラLib(アドラリブ)」と名づけられた5曲目は、ピアノ・ソロによるしっとりした曲。流子やマコの心情描写によく使われて印象深い。本作にはストレートな心情曲が少なく、特にさびしげな曲は、この曲を含めて数曲しかない。そのぶん、同じ曲がくり返し使われて耳に残る。
 澤野弘之にとって、ピアノは「声と同じくらい大好きな楽器」だそうだ(アルバム「musica」ライナーノーツより)。自身でピアノを弾くことも多く、本アルバムも「Piano:HIROYUKI SAWANO」とクレジットされている。曲名からすると、アドリブで弾いたのだろうか。
 トラック6「鬼龍G@キLL(キリュウガキル)」は曲名が示すとおり、鬼龍院皐月のテーマ。第1話の皐月登場場面から使用されている。細かく刻まれる弦の緊迫したフレーズから始まり、生徒会の脅威を表現する圧迫感のある曲調に展開。続いて、ダークヒーロー的なカッコよさを秘めた皐月のモティーフが現れる。皐月の強い意志と暗い闘志を表現する曲だ。
 トラック10「k1ll◎iLL(キルワ イル)」は中盤以降のバトルシーンでよく使われた重要な曲。軽快なリズムから始まるが、弦が入って緊迫した曲調に。シンセベースとギターによるブリッジを経て、女声ボーカリーズがフィーチャーされた美しくも悲壮な曲調に変化する。第12話で流子と鮮血が暴走する場面や第18話で流子が生命繊維の精神介入を破る場面、第23話で流子と皐月が共闘する場面など、流子のすさまじい闘志を表現するシーンに選曲されている。メインテーマと並ぶ、ここぞという場面のキメの曲だ。
 弦のピチカートから始まるトラック12「昼裸lilL♪(ヒルラリル)」は日常シーンを彩るユーモラスな曲。流子の親友マコとその家族のシーンによく流れていた。戦いに次ぐ戦いの中でほっとひと息つく曲。
 トラック13の「斬LLLア生LL(キルラキル)」は流子の戦いの場面にたびたび使用されたインスト版メインテーマと呼べる曲。特に「Before my body is dry」のサビのメロディを管楽器が力強く演奏する部分は「流子の決意のテーマ」的に使われている。これが流れたら勝利確実、というとっておきのBGMである。
 しかし、後半は曲調が変わり、重いリズムをともなった不穏なムードに転じる。このパートはヌーディスト・ビーチのメンバー・黄長瀬紬の登場場面などに使われていた。
 次の「キ龍ha着LL(キリュウハキル)」はふたたび鬼龍院皐月のテーマ。頭から力強い曲調で皐月と生徒会の強大な力と闘志を表現する。第21話の流子と皐月の対決場面の使用が印象深い。後半は弦楽器主体の不安な曲調になり、金管楽器群の緊迫したメロディが危機感をあおる。この部分は第12話、13話の三都制圧襲学旅行の場面で効果的に使用されている。
 トラック16「寝LLna聴9(ネルナ キク)」はいろいろな要素が混然としたカオスのような曲。民族音楽風だったり、不気味だったり、ユーモラスだったり、サスペンスタッチだったりと、さまざまな顔を見せる。ある意味、『キルラキル』らしいトラックだ。
 アルバムのクライマックスのはトラック17の「Kiる厭KiLL(キルアキル)」。「ダダン!」と緊迫した導入からじわじわとサスペンスが盛り上がり、危機感に満ちたメロディがコーラスをともなって奏される。強大な敵を描写し、決戦ムードを盛り上げるスケールの大きな曲だ。このパートは次回予告にも使用されている。
 後半はチェレスタの音色をともなうファンタジックな曲調に。女声ボーカルが加わり、狂気を秘めた熱情的な曲に展開する。この後半パートは、第11話から登場する流子の宿敵・針目縫の登場場面に使われ、激しく妖しい戦いの場面を彩った。
 アルバムのラストはクールダウンをうながすようなやさしいボーカル曲「Till I Die」で締めくくられる。
 テンションの上がるアルバムだ。倒れても立ち上がり、戦って戦って戦い抜く流子のイメージがアルバムに反映されている。BGMパートが強敵登場で盛り上がる曲で終わるのがいい。
 もっとも、本アルバムはストーリーを離れて、『キルラキル』にインスパイアされたコンセプトアルバムとして聴くほうがよいだろう。本編では映像の軽快なテンポにあわせて音楽もめまぐるしく切り替わるが、サントラ盤では1曲1曲をじっくり聴くことができる。曲を聴くうちに心と体が動き出す。気分を奮い立たせたいときに格好の音楽である。

キルラキル コンプリートサウンドトラック
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