アニメ様の『タイトル未定』
263 アニメ様日記 2020年6月7日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年6月7日(日)
早朝散歩と午前中の散歩で散歩2本立て。午前中の散歩はワイフと飛鳥山公園に。「ぐるぐるてくてく」3巻で話題になっていた飛鳥山公園の紫陽花も見る。ワイフは帰り道に花屋で紫陽花の鉢植えを買う。陽射しは強めで、日光が苦手なワイフはくたくた。ぐるぐるくたくた。午後、事務所に入って「設定資料FILE」の素材の読み込みなど。

2020年6月8日(月)
早朝散歩は大塚公園に。ここは昭和3年に開園した公園だそうで、施設も充実。ラジオ体操発祥の地とも言われているらしい(後で知人に教えてもらったのだが、この公園は『ユリ熊嵐』の舞台にもなっているのだそうだ)。大塚公園に行ったのも「ぐるぐるてくてく」3巻がきっかけだった。事務所に入って「設定資料FILE」の構成。他は事務的な作業とか。
YouTubeで配信中の『美少女セーラームーンR』を24話まで視聴。あまり意識したことがなかったけれど、第1シリーズに比べて展開が遅い。

2020年6月9日(火)
Zoom打ち合わせの後、BONESで打ち合わせ2本立て。電車に乗ったのは2ヶ月ぶりか3ヶ月ぶり。久しぶりの高田馬場、久しぶりの井荻。皆がマスクをしている以外は何かが大きく変わったわけではない。この3ヶ月くらいはのんびりしていたなあ。色々とスピードアップさせなくては。

2020年6月10日(水)
諸般の事情で、事務作業が急増しており、書籍編集の実作業の時間がなかなかとれない。土曜に予定していた無観客配信イベントが延期に。他にも色々と。
ある女性声優のイベントについて、参加者の人数を絞り、チケット価格を倍近くの金額にすると告知されていた。現在の状況では、会場に以前と同じ人数を入れることはできないだろうし、それでイベントを成立させるにはチケット価格を上げるしかない。今後はこういうことも増えていくんだろうなあ。
午前中にNetflixで『GREAT PRETENDER』CASE2(全5話)を観た。

2020年6月11日(木)
「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」の初回生産分の発送が終わる。このところ、事務所二階は在庫でいっぱいだったが、床が見えるようになった。
Disney+のサービスが始まったので「アバター」を観てみる。その後、Twitterの【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】を書くために、Amazon Prime Videoで『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』『雲のむこう、約束の場所』を視聴する。例によってながら観だけど。『秒速5センチメートル』の映像が記憶にあるほどはみっちりしていなかった。単純に画の密度だけでいったら、『君の名は。』のほうが上かもしれない。ではあるが『秒速』はいい構図が沢山ある。物語よりも表現に力を入れた作品であるのも間違いない。その後、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』を観る。

2020年6月12日(金)
早朝散歩の黒猫スポットで子猫を発見。あのスポットには黒猫が8匹もいたのか。デスクワークとデスクワークの間に、新文芸坐で「大人は判ってくれない」(1959/99分)を観る。特集「世界の映画作家Vol. 213 フランソワ・トリュフォー」の1本だ。新文芸坐で映画を観るのも久しぶり。仕事の合間にふらりと新文芸坐に行くのはもっと久しぶり。それから、仕事をお休みしていた支配人の矢田庸一郎さんが復帰されていた。
「大人は判ってくれない」は前にオールナイトで観ているはずなんだけど、かなり忘れていた。長回しのカットは、今の目でも大変なことをやっていると思う。最後のストップモーションは鮮烈。

2020年6月13日(土)
無観客トークイベントの準備で『鉄腕バーディー DECODE:02』を観る。そして、事務作業の引き継ぎ。引き継ぎが夕方までかかることは分かっていたので、定例となっていた土曜の吉松さんとのSkype飲みはおやすみ。

第669回 リモート会議ってゆーの?

 最近はもっぱらリモート会議! ホン読み(脚本打ち)も作打ちも。移動時間のロスがないぶん、他にできる仕事が増えました。大変良いことです!

こないだは、サンジゲンの松浦裕暁社長とリモート会議! 
いい景色を背負った松浦さんと!

 ウチの若手にCGと撮影を教えてくださる松浦さんとサンジゲンさんには、本当に感謝です。板垣個人的松浦さんとの初仕事は『砂ぼうず』(2004年/GONZO制作)。俺がコンテ切ったホバー戦車のCGを松浦さんが作ってくださいました(土煙込みで)。当時は自分も若かったので「ああして欲しい」「ここは直して」とズバズバ言ったような気がするのですが、数年後に再会した際はウルトラ・スーパー・ピクチャーズの偉い社長になっていました(汗)。
 今思えば、松浦さんに限らず20代終わり〜30代はフリーであちこちのスタッフと知り合い・友達になり、一緒に仕事をし、結果「人脈作り」の時期でした。そして40代は「後輩を育てる」時期! で、50代になったら、その育てた現場で後輩らが作品を作る中、隙間で自分の作品を作らせてもらえたらと思ってます。

アニメ様の『タイトル未定』
262 アニメ様日記 2020年5月31日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年5月31日(日)
ワイフとの早朝散歩は、頑張って巣鴨まで。Twitterの【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】を書くために、Amazon Prime Videoで『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を観直す。

2020年6月1日(月)
午前中はツイキャスの「佐藤家が関わったアニメ雑談」を聴きながらキーボードを叩く。佐藤順一夫妻のトークである。印刷会社からの提案で、先週金曜に入稿した書籍の製本方法を変えることになった。アジロからPURに。僕とスタッフ4人の計5人でZoom打ち合わせをする予定だったのだけれど、通販用在庫の搬入手伝いで4人中3人が出社してしまったので、Zoom打ち合わせは延期に。

2020年年6月2日(火)
仕事は原稿やラフ描きではなく、事務作業を優先。午前中はNetflixで『GREAT PRETENDER』を視聴。それと作業をしながら、iTunesとAmazon Musicで山口百恵さんの歌を聴いた。年齢を重ねてから聴くと、おじさん達の「この子にこんな歌を(Hな歌とか不良っぽい歌とかを)歌わせたい」というスタンスがあからさまで凄いと感じる。それを本人が受けとめて歌唱しているところを含めて楽しむべきなのか。当時のことが知りたくて、Amazonで「蒼い時」の古本を注文する。
年末にコミケがあるかどうかは分からないが、あってもなくても、準備中のある書籍を今年の12月末発売目標で進めることを決める。

2020年年6月3日(水)
グランドシネマサンシャインの10:30からの回で『AKIRA【IMAXレーザーGT版】』を鑑賞。劇場で映画を観たのは2月27日の『劇場版 Gのレコンギスタ II ベルリ撃進』以来かな。とにかくひさしぶりの映画館だ。『AKIRA』の内容は知っているので、冷静に画や音を確認しながら観た。「ああ、スクリーンがデカいなあ」と思った。リマスター画面が鮮明になっているため、場面によっては「目の前に巨大なセルがあるような感覚」になる。それから、鮮明さのため動画の粗いカットのきびしさが増す。勿論、リマスターで印象がよくなった部分もある。
「吉成曜画集 ラクガキ編[手塚治虫キャラクター]」の校正紙が出る。自宅作業のスタッフが出勤して校正紙を確認する。

2020年年6月4日(木)
仕事は事務的な作業がメイン。「吉成曜画集 ラクガキ編[手塚治虫キャラクター]」が校了。Amazon Prime Videoで「ここは退屈迎えに来て」を視聴した後、『イエスタデイをうたって』の未視聴分を観る。「ここは退屈迎えに来て」と『イエスタデイをうたって』で「何者かになりたい」というセリフを続けて聞く。その後、『アバター 伝説の少年アン』を1話から数本観る。海外の作品で、作画に元気がある。
Amazonから届いた「蒼い時」に目を通す。最後の山口百恵さん自身の手書きパートが圧巻。際どい歌詞についての言及もあった。

2020年6月5日(金)
事務所でデスクワーク。Netflixで『バキ 大擂台賽編』を最終回まで視聴。刑務所の話はマホメド・アライJr.との対決の後なのね。中国大擂台賽の次が刑務所の話かと思っていた。さらに言うと、刑務所の話は原作だと「範馬刃牙」ではなくて、次のシリーズの「バキ」だった。まあ、それとともかく、連載でもそういった展開になっているはずだけど、マホメド・アライJr.と刃牙が対決する前の積み重ねが数話分あるのに、試合そのものはあっという間に終わる。連載時よりも、アニメの一気観のほうが「もう終わりなの」という驚きがあった。原作「バキ」に相当する部分も映像化するなら、烈海王のボクシング編を膨らませてほしいなあ。
特に理由はないけれど、『地獄先生ぬ~べ~』劇場3本とOVA3本を視聴。歴代アニメ『地獄先生ぬ~べ~』を整理すると以下のかたちとなるはず。
…………
1996年4月13日~1997年6月21日 TVシリーズ『地獄先生ぬ~べ~』
1996年7月6日 劇場『地獄先生ぬ~べ~』
1997年3月8日 劇場『地獄先生ぬ~べ~ 午前0時 ぬ~べ~死す!』
1997年7月12日 劇場『地獄先生ぬ~べ~ 恐怖の夏休み!! 妖しの海の伝説!』
1998年9月21日 OVA『地獄先生ぬ~べ~ 決戦!陽神の術vs壁男』
1998年10月21日 OVA『地獄先生ぬ~べ~ なぞなぞ七不思議・ブキミちゃん』
1999年10月21日 OVA『地獄先生ぬ~べ~ 史上最大の激戦! 絶鬼来襲!!』
…………
面白かったのは『史上最大の激戦! 絶鬼来襲!!』。前にCSでたまたま観て、感心したのはこれだな。作画もいい。 『地獄先生ぬ~べ~ 午前0時 ぬ~べ~死す!』はファーストカットで監督が貝澤幸男さんだと分かった。他にも凝ったところが多かった。

2020年6月6日(土)
ほぼ休日。散歩、昼風呂、昼寝、昼読書。事務所に入って作業。夕方から吉松さんとSkype吞み。「ぐるぐるてくてく」3巻を読む。今回は毎朝行っている公園や、よく行く公園、ワイフが大好きな公園が舞台となっていて、ちょっと嬉しい。
【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】を書くために『るろうに剣心 星霜編』を視聴。改めて確認したら『星霜編』は、クレジットではタイトルに「‐明治剣客浪漫譚‐」が入らないのね。

第187回 伝統を超えて 〜ULTRAMAN〜

 腹巻猫です。Netflixで配信されている劇場アニメ『泣きたい私は猫をかぶる』を観ました。音で織られたタペストリーのような窪田ミナさんの音楽が素敵。サウンドトラックは主要音楽配信サイトで配信中。CDアルバムはAmazon限定のようです。
https://www.amazon.co.jp/dp/B089M61JJG/


 昨年(2019年)、Netflixで配信されたアニメ『ULTRAMAN』のサウンドトラック・アルバムが7月8日に発売された。発売を待ち望んでいただけに、うれしいリリースだ。
 『ULTRAMAN』のテーマ曲には格別の思い出がある。今年(2020年)2月下旬、新型コロナウイルスの影響でコンサートやライブが次々と中止や延期になる前に、最後に足を運んだコンサートで聴いたのが『ULTRAMAN』のメインテーマだったのだ。
 コンサートのタイトルは「SUPER HEROES」。FILM SCORE PHILHARMONIC ORCHESTRA(通称フィルフィル)の演奏による、国内外のヒーロー劇場作品、ヒーロー番組の音楽を集めたコンサートだった。このフィルフィルこそ、『ULTRAMAN』の音楽を手がけた戸田信子が代表・音楽監督を務めるオーケストラ。『ULTRAMAN』の音楽録音にも参加している。
 今回は、その『ULTRAMAN』の音楽を取り上げたい。

 『ULTRAMAN』は2019年4月にNetflixで全世界同時配信された3DCGアニメ。2020年4月から7月にかけて、TOKYO MXとBS11でTV放映もされた。
 原作は清水栄一と下口智裕による漫画。1966年から放送された特撮TVドラマ「ウルトラマン」の40年後の世界を描く作品だ。
 ウルトラマンが去った後の地球では、さまざまな異星人が地球を訪れ、地球人と共存していた。が、異星人が関わる凶悪犯罪が勃発。科学特捜隊がひそかに開発を進めていた強化服・ウルトラマンスーツを装着した若者たちが、新たな“ウルトラマン”として地球を守る任務につく。
 主人公は「ウルトラマン」に登場する早田(ハヤタ)隊員の息子・早田進次郎。諸星弾(ウルトラセブン)、北斗星司(ウルトラマンエース)といった、ウルトラシリーズでおなじみのキャラクターも、本作独自のアレンジで登場するのが見どころだ。本作のウルトラマンは「変身」するのではなく、強化服をまとって戦う。異星人との戦いだけでなく、ヒーローの力を身に付けた若者たちの葛藤や対立が物語の軸になっている。劇場作品「アベンジャーズ」を思わせる、新時代のウルトラマンの物語である。
 音楽を手がけたのは、戸田信子×陣内一真。東京とロサンゼルスを拠点に活躍する作曲家ユニットだ。代表作は、ゲーム「メタルギアソリッド」シリーズ、「Halo 5: Guardians」(2015)、劇場作品「太秦ライムライト」(2014)、TVドラマ「タイムスクープハンター」(2009〜2014)など。戸田信子は、TVアニメ『一週間フレンズ。』(2014)、『宝石商リチャード氏の謎鑑定』(2020)などの音楽も手がけている。
 先に紹介したFILM SCORE PHILHARMONIC ORCHESTRA(フィルフィル)は、サウンドトラックを専門に演奏するオーケストラとして戸田信子が2016年に創設した管弦楽団だ。筆者は何度かコンサートに足を運んだが、楽団員もみな映画音楽ファンで、サントラ愛にあふれた演奏に胸が熱くなった。また、戸田信子は映画音楽作曲家の貴重な証言を集めた劇場作品「すばらしき映画音楽たち」(2017)の製作総指揮も務めている(マット・シュレーダーと共同)。
 戸田信子と陣内一真は、バークリー音楽大学の映画音楽作曲科とコンテンポラリーライティング&プロダクション科を卒業した作曲家。現代のハリウッド映画音楽の技術とノウハウを本格的に学び、作品に昇華させている。『ULTRAMAN』の音楽も、21世紀のハリウッド映画音楽の香りがする。演奏にはフィルフィルだけでなく、数々の映画音楽の演奏で知られるプラハ・シティ・フィルハーモニー管弦楽団(The City of Prague Philharmonic Orchestra)も参加。ミックスをアラン・マイヤーソンが手がけるなど、音作りも国際的だ。
 本作の音楽制作については、『ULTRAMAN』公式サイトで公開されているインタビューで詳しく語られている。
 それによれば、2人は過去のウルトラマンシリーズの音楽を参考にはしなかったという。むしろ監督から「聴かなくていい」と言われていた。『ULTRAMAN』の音楽からは「過去にとらわれず、新しいウルトラマンの音楽を作ろう」という意気込みが伝わってくる。
 楽器編成はオーケストラとシンセサイザーのハイブリッド。どちらが主でも、どちらが従でもなく、生楽器と電子楽器が混然となって響き合う。3DCGで作られた映像にフィットし、強化スーツをまとった新たなウルトラマンのイメージにもマッチする現代的なサウンドだ。
 本作の音楽は、映像に合わせたフィルムスコアリングで制作された。同時に、主要キャラクターごとにテーマを設定するライトモチーフの手法も採用されている。
 ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンエース、それぞれに異なるテーマが用意されている。特徴は、メロディで差別化するだけでなく、音色から変えて色分けしていること。ウルトラマンは正統派のシンフォニックサウンド。ウルトラセブンはエレキギターとシンセがリードするクールな曲。ウルトラマンエースはシンセと弦楽器主体のロックバラード風。ヒーローそのものではなく、ヒーローになる(なろうとする)人間のキャラクターに合わせたサウンドが設定されている。そのため、音楽がドラマに直結している。
 また、異星人や怪獣にも、それぞれテーマが与えられている。キャラクターが異なるのだからあたりまえなのだが、溜め録り方式の音楽では、毎回登場する異星人や怪獣それぞれに異なるテーマを用意することは難しい。フィルムスコアリングならではのぜいたくな作り方である。

 本作のサウンドトラック・アルバムは2020年7月にバンダイナムコアーツ(ランティスレーベル)から発売された。CD2枚組。BGM53曲に加え、ボーナストラックとして主題歌・挿入歌4曲が収録されている。
 収録曲は下記を参照。
https://www.lantis.jp/release-item/LACA-9758.html
 完全収録ではなく、主要楽曲をセレクトし、ほぼ劇中使用順に沿って収録した構成である。ディスク1に第1話〜5話、ディスク2に第6話〜13話(最終話)の楽曲を収録している。
 印象深いトラックを紹介しよう。まずはディスク1から。
 1曲目は本作のメインテーマ「ULTRAMAN」。
 メインテーマは「変身」シーンをイメージして作られた。冒頭にキャッチーなフレーズを配し、1、2小節を聴いただけで印象に残る楽曲にしているのがさすがだ。この短いフレーズを聴いただけでウルトラマンのテーマであることがわかる。
 本編では、第2話で進次郎が初めてウルトラマンスーツを身に付ける場面をはじめ、必殺技スペシウム光線を放つ場面、ウルトラマンが初めて空を飛ぶ場面など、ここぞという見せ場に使用されている。まさしくメインテーマであり、ウルトラマンのテーマだ。
 第1話冒頭のプロローグ部分に流れるのがトラック2「光の巨人」。ホルンの響きが雄大なスケールを感じさせる曲で、ウルトラマンの世界への導入としてはこの上ない。冬木透らが作り上げた過去のウルトラマン音楽との共通性も感じられる。この曲を導入に、以降は本作独自のウルトラマン・サウンドが展開することになる。
 「科学特捜隊」(トラック4)は『ウルトラマン』に登場する地球防衛チーム・科学特捜隊のシーンに流れた曲。ウルトラマンが地球を去ったあと、科学特捜隊は解体されたが、記念館となった基地の地下には作戦室が設けられ、ひそかに活動を続けていた。高揚感を抑えたクールな曲調が本作の科学特捜隊像を示している。
 「早田進次郎」(トラック6)は主人公・進次郎の宿命を象徴する曲。高校生としてふつうの学園生活を送る進次郎は、自身がウルトラマンの因子を受け継いでいることをまだ知らない。本編では、進次郎の父・早田進が自分がウルトラマンであったことを思い出す場面から流れている。
 その早田進の戦いを描くのが「私がウルトラマンだ」(トラック11)と「ベムラー vs ウルトラマン」(トラック12)。弦の速いパッセージをバックに低音を強調したブラスセクションが重厚なフレーズを奏でる。危機感あふれるスリリングなバトル音楽である。
 そして、ついに進次郎がウルトラマンスーツをまとって戦うときが訪れる。「ウルトラマン・スーツ」(トラック13)は進次郎が父を助けるためにウルトラマンスーツを装着することを決意する場面の曲。進次郎の葛藤と決意を表現する弦楽器主体の曲だ。
 本編ではこのあとメインテーマが流れ、「ファースト・ミッション」(トラック14)が続く。
 「ファースト・ミッション」は4分近くに及ぶバトル曲。映像に沿った構成で進次郎=ウルトラマンの初めての戦いを描写する。スピード感と緊迫感に富んだ曲調は、強化スーツをまとった等身大のウルトラマンの戦いにふさわしい。
 初めての敵を倒したあと力尽きて倒れるウルトラマン(進次郎)のシーンに流れたのが「避けられない運命」(トラック15)。曲の後半にメインテーマのモティーフが引用され、新たなウルトラマンとなった進次郎を待つ苦闘が暗示される。
 ここまでが、いわば「ウルトラマン誕生編」。第1話と第2話で使用された楽曲である。
 第3話からは異星人が関係する事件と、それを捜査する科学特捜隊およびウルトラマンの活躍が物語の中心になる。本アルバムも、トラック16以降は不気味な異星人のテーマや事件発生シーンに流れるミステリアスな曲、進次郎の日常を彩るポップな曲などが登場。バラエティに富んだ構成になってくる。
 トラック29「ライバル」は、第5話で進次郎と諸星弾が科特隊基地の屋上で話をする場面の曲。2人の意見の違いが明らかになる場面で、音楽もメロディを抑えた不穏なサウンドで作られている。曲の後半に、メインテーマのモティーフがそっと顔を出す。進次郎の心に芽生える迷いを表現する巧妙なアレンジである。

 続いてディスク2。
 1曲目は「SEVEN」。諸星弾がウルトラセブンのスーツを装着し、異星人を退治する場面の曲だ。特撮ヒーロー版のウルトラセブンとはまったくイメージの異なる曲調で本作のセブンのキャラクターを明確にする。
 次の「怪獣レッド」(トラック2)は正統派怪獣映画音楽風で筆者の好きな曲だ。ブラスとパーカッションを主体にした重厚な曲調。市街地で暴れる怪獣とウルトラマン(進次郎)との戦いをたっぷり5分近くにわたって描写する。バトルの展開に応じて曲調が変化するフィルムスコアリングの醍醐味が味わえる。
 物語が進むにつれて重要な役割を担うキャラクターが、進次郎が親しくなるアイドル歌手・レナである。
 トラック8「出発」は第8話ラストで使用されたレナの心情を表現する曲。ギターとストリングスを主体にしたぬくもりのあるサウンドでレナのモティーフが奏でられる。
 第11話で進次郎とレナが心を通わせるシーンに流れる「そのままの君でいてね」(トラック11)では、ピアノが同じフレーズを奏でる。曲の終盤にはメインテーマのフレーズが現れ、レナの想いを察した進次郎の気持ちを表現する。2人のライトモチーフが絡み合う映画音楽的な構成が聴きどころだ。
 トラック16「罠」からは、全編のクライマックスに向けての曲が並ぶ。ウルトラマン抹殺をめざすエースキラーとウルトラマンの死闘を描く楽曲群だ。
 強敵エースキラーの脅威を描写する「エースキラー」(トラック17)は5分を超える曲。エースキラーとウルトラマンエースの戦いを描く「エースキラー vs ウルトラマン」も6分を超える。アルバムのクライマックスとしても聴きごたえ満点だ。
 「エースキラー vs ウルトラマン」では、エレクトロニカ風のサウンドとパーカッションによるリズムが主体となって、息詰まる激闘が描写される。ここでピンチ感が盛り上がるおかげで、次の曲、ウルトラマンとセブンが反撃に転じる場面の「ウルトラマンの戦い」(トラック19)が高揚感たっぷりに迫って来る。
 アルバムを締めくくるのは、伝説の光の巨人の再来を暗示する「光の戦士」とエピローグに流れる「光の中へ」の2曲。「光の戦士」(トラック20)はディスク1の「光の巨人」に通じるイメージ。シンセ主体の幻想的な曲調で謎めいたヒーローの姿を描く。「光の中へ」(トラック21)はメインテーマのモティーフを変奏しながら、進次郎の決意をイメージさせる力強い曲調でコーダへ。ヒーローものの終わり方はこうでなくては、と思わせる終曲だ。
 ボーナストラックでは、劇中でレナが歌うアイドルソング「星の欠片」がフルサイズで聴けるのがうれしいところ。ほかにNetflix版主題歌1曲(ショートサイズ)とTVアニメ版主題歌2曲(アニメサイズ)が収録されている。
 欲を言えば、最終話の楽曲をもう少し手厚く収録してほしかった気がする。が、全体のバランスと聴きやすさを考えての構成だろう。
 ウルトラマンの物語に新しい解釈で挑んだ『ULTRAMAN』の音楽。半世紀を超えるウルトラマン・サウンドの伝統に新たなページを加える意欲作である。

 戸田信子×陣内一真の最新作は、2020年4月からNetflixで配信されているアニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』の音楽。こちらも、過去の『攻殻機動隊』の音楽とは異なるアプローチで新たなサウンドを紡ぎ出している。さらに、『ULTRAMAN』のシーズン2の特報も公開された。今後の展開に注目したい。

ULTRAMAN ORIGINAL SOUNDTRACK
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攻殻機動隊 SAC_2045 O.S.T.
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
261アニメ様日記 2020年5月24日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年5月24日(日)
ラジオ体操と散歩以外は原稿作業。日曜のわりには作業が進んだ。13時から「アニメスタイルTALK 001 沓名健一が語る 僕のアニメ人生」の収録。アニメスタイルチャンネルで配信するコンテンツだ。僕は事務所で、沓名さんは自宅で、ビデオ通話を使ってトークをした。やっぱり、顔を合わせてのトークとは勝手が違うなあ。会話のテンポがつかみづらい。単純に慣れの問題かもしれないけれど。
ちなみに編集部スタッフが色々と考えて、今回はビデオ通話と同時にビデオカメラを使って双方が録画をし、あとでビデオカメラの録画を編集して1本の映像にまとめるというかたちとなった。
夕方からワイフと外食。目当ての店は土日がお休みになっていた。今まで何度も通り過ぎていたけれど、中に入ったことがなかったお好み焼き屋に入る。この店も緊急事態宣言を受けて、昼間の営業に切り替えたのだろう。池袋の駅前は割と人がいて、マスクをしていない人も少なくなかった。

2020年5月25日(月)
非常事態宣言が解除されたことと関係あるのかどうか分からないけど、色々なことが動き出す。進行中の書籍でデザインのOKが出たり、随分前のある書籍に関しての振り込みがあったり。夕方は電話で打ち合わせ。事務所に「アニメスタイル ONLINE SHOP」用の在庫がどっさりと届く。
TwitterとFacebookでアニメーターのどなたかが亡くなったという話題が流れた。ひょっとして体調がよくないと聞いているあの方のことではないか。恐る恐るLINEでメッセージを送って様子をうかがう。結果としては、亡くなったのはその方ではないことが分かったのだが、他の病気をされている方のことも気になってしまい、ある監督にメッセージを送る。もうひとり具合がよくない方がいるのだけど、その方はメールもSNSもやっていないので、どこかのタイミングで電話を入れよう。
親戚の娘さんが小学校2年生で『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』と『私、能力は平均値でって言ったよね!』を観て、気に入ったのだそうだ。それで、Amazon Prime Videoで観られる他の異世界転生ものを教えてほしいという。そういう質問なら任せてよ。まずは『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』を勧める。『転生したらスライムだった件』もいいと思うんだけど、Amazon Prime Videoでは見放題ではないのね。他にも数本のタイトルを挙げる。続けて映画『クレヨンしんちゃん』のお勧めも聞かれる。『慎重勇者』が好きだったら、このあたりかなと探ってから答える。
また、別の話題。Twitterで知った「水戸黄門 助さん格さん大暴れ」をAmazon Prime Videoで観る。確かにこれはアイドル映画だ。おじさんの僕でも松方弘樹さん、北大路欣也さんを可愛いと思ってしまう。

2020年5月26日(火)
ワイフとの早朝の散歩コースに、黒猫が何匹もいるスポットがある。今までそこにいるのは6匹だと思っていたけど、7匹目がいることが判明。そこの猫は全部が黒猫なのである。仕事をしながら、Amazon Prime Videoで市川崑監督の「東京オリンピック」を流す。やっぱり凄いんだけど、劇場で鑑賞するのとは別作品だなあ。『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』を1期を改めて1話から視聴。

2020年5月27日(水)
早朝散歩の後はずっとデスクワーク。『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』1期を最終回まで観る。『魔動王グランゾート』のBlu-ray BOXを開封。まずは編集ビデオ『ノン・ストップ・ラビ』を観る。タイトルとパッケージイラストが洒落ていて、当時からなんとなく気になっていた。内容は普通の総集編だったけど、それが確認できただけでも満足。『魔動王グランゾート』Blu-ray BOXの本編は画質も良好。解説書はパラパラとめくっただけだけど、しっかりした出来のようだ。初回特典の「25周年お祝いぶっく」がこの作品らしい楽しい感じでよかった。

2020年5月28日(木)
午前中も午後もデスクワーク。ひとつひとつのプロジェクトはあまり進んでいないのに、なんでこんなに用事があるんだと思ったら、編集作業進行中の書籍が4タイトルで、それと別に編集初期段階の書籍が数点。さらに「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」増刷の作業があって、イベントの準備もあるのだった。
『天気の子』の「Blu-rayコレクターズ・エディション 4K Ultra HD Blu-ray同梱5枚組」を開封。本編を観てから、特典ディスク1のビデオコンテとメイキングドキュメンタリーを観る。今回も盛り沢山。特典ディスクの2と3はまた改めて。
緊急事態宣言の間は昼吞みができた店が、解除された途端に昼吞みができなくなってしまった。通常営業に近い状態になったということであり、店にとっては喜ばしいことなんだけど、ちょっと残念。

2020年5月29日(金)
ワイフとの早朝散歩は続けている。その途中で朝5時からやっている手作りパンの店で、出来たてのパンを買って食べる。午前中はこの20年くらい事務所スタッフに任せていた作業を自分でやった。これは大変だ。20年前と作業量がまるで違う。午後は例によって数冊の書籍の編集作業とイベントの準備。6月に出す「吉成曜画集 ラクガキ編[手塚治虫キャラクター]」の入稿が終わる。以前、Blu-ray Disc付きで出した書籍からBlu-ray Discをオミットしたものだ。収録したラフスケッチは同じだが、本の幅が少しだけ広がった。
YouTubeの『美少女セーラームーンR』の5~14話を観る。楽しかった。このあたりの話数はあまり観返していないのだけど、観てよかった。7話「衛とうさぎのベビーシッター騒動」はタイトル通り、衛とうさぎが赤ちゃんの面倒をみる話。当時はピンとこなかったけれど、今のほうが楽しめる。むしろ、大人目線の話だったのかもしれない。脚本は富田祐弘さん。

2020年5月30日(土)
Twitterの【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】を書くために、ABEMAで『るろうに剣心 ‐明治剣客浪漫譚‐ 追憶編』を観る。夕方から吉松さんとSkype吞み。非常事態宣言が解除されてもSkype吞みは続く。

第668回 残念な話とおめでたい話

 コ●ナの影響により、現在制作中のシリーズの放映が来年(2021年)にズレ込んでしまいました。残念ですが現状の世の中的に仕方ありません。自分の記憶では2005年『BLACK CAT』(監督デビュー)以来、監督作の発表がなかった年は2008年に次いで2度目でしょうか? その分また絵コンテをたくさん切ろう(描こう)と思って、現在9話目。作画も随時打ち合わせして、今6・7・8話に入ったとこ。順調かどうかは分かりませんが、楽しくやってます!
 あ、『BLACK CAT』で思い出しましたが、矢吹健太朗先生の新連載「あやかしトライアングル」始まりましたね! こないだ応援メールしたところ、矢吹先生ご自身も楽しんで描かれてるようで何よりでした。「コ●ナ落ち着いたら、また飯でも!」というより「また一緒にアニメ作りましょう!」と。
 あ、そうだ! もひとつおめでたいの思い出した。『てーきゅう』シリーズでお世話になった花澤香菜さんがご結婚されたそうで、本当におめでとうございます! 『てーきゅう』5期主題歌「Qunka!」にコーラスで参加したのは今となっては楽しい思い出です。当時は正直イヤでした。自分は歌下手だし、まず声が汚いので、プロの花澤さんを邪魔するに決まってるし。従って、未だにあの曲フルで聴いてません。とあるスタッフより「監督の声、すぐ分かりますよ(笑)」と言われたこともあり、恥ずかしくて(汗)。

何しろ、色々おめでとうございます!
矢吹先生も花澤さんもまた一緒に仕事しましょう!

「アニメスタイル20周年展」を開催中
第2弾は吉成曜さんのラクガキの展示です

 「アニメスタイル」の20周年を記念して、ササユリカフェで「アニメスタイル20周年展」を開催しています。開催は9月末までの予定で、開催期間内に展示内容は変わっていきます。第1弾は川元利浩さんがキャラクターデザインの初期稿を描いたスケッチブックの現物の展示で、7月20日(月)まで開催。

 第2弾では、アニメーター、監督として活躍する吉成曜さんが、プライベートで描いてきたラフスケッチを展示します。開催期間は7月23日(木・海の日)から8月3日(月)※8月10日(月)まで展示の期間を延長することになりました 。展示するラフスケッチは1000枚以上。2016年に開催した「吉成曜展~ラクガキ編~」にはなかった手塚治虫キャラクターのラフスケッチも展示します。なお、展示物は全て生の原画ではなく、コピーとなります。

 「アニメスタイル20周年展」では「吉成曜画集 イラストレーション編」「吉成曜画集 ラクガキ編」「吉成曜画集 ラクガキ編[手塚治虫キャラクター]」をはじめ、アニメスタイルの書籍を販売。吉成さんのラクガキを使ったポストカードも販売します。

 なお、開催期間中のササユリカフェは終日立ち見営業となります。入場料はいただきません。入場時に持ち帰りドリンクのオーダーが必要です。営業時間は11時30分から18時。火曜と水曜が定休日です。

■関連リンク
ササユリカフェ
http://sasayuricafe.com

「アニメスタイル20周年展」を開催 展示第1弾は川元利浩さんのスケッチブック
http://animestyle.jp/2020/06/24/17630/

【アニメスタイル ONLINE SHOP】「吉成曜画集 ラクガキ編」
http://animestyle.jp/shop/archives/964

「吉成曜画集 ラクガキ編[手塚治虫キャラクター]」新バージョンで再刊行
http://animestyle.jp/news/2020/06/19/17576/

アニメ様の『タイトル未定』
260 アニメ様日記 2020年5月17日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年5月17日(日)
13時からZOOMを使ったトークのテスト。他はデスクワーク。ところで、ゼロ年代の深夜アニメで「主人公達のクラスの担任で、若くて美人なんだけど、独身であることをやたらと気にしている(あるいは生徒達が意識している)女性教師」が何度か登場した。ルーツはどの作品なのだろうか。深夜アニメじゃないけど、『美少女セーラームーン』の春田先生もちょっとだけそのニュアンスがあった。

2020年5月18日(月)
仕事の遅れを取り戻すため、午前中の散歩は休んで、デスクワーク。Amazonから荷物が4つも届く。その前に届いたものも空けてない。仕事は色々ときびしいけれど、嬉しい提案があった。実現できるか。

2020年5月19日(火)
午前1時に事務所に入り、食事をはさんで18時までデスクワーク。雨天のため早朝の散歩と午前中の散歩はおやすみ。
U-NEXTで「金田一耕助の冒険」を観る。前にも観たはずなんだけど、ほとんど覚えていなかった。その後はAmazon Prime Videoで「ドキュメント72時間(NHKオンデマンド)」を流す。27.「囲碁の魔力に囚(とら)われて」が面白かった。24時間営業の碁会所に取材した回で、色々な客が登場する。20時間連続で打ち続けている人とか、「エンジェル鈴木」というニックネームの常連さんとか。登場した人達の時間の感覚(人生の使い方)が羨ましい。今、どうなっているか気になって検索したら、やはりコロナでお休み中だった。
同じく34. 「大都会 モンスターに沸く公園で」。2016年10月の放送分で、テーマは「ポケモンGO」。番組はゲームに興じる人達を撮っている。「ポケモンGO」が始まった頃、それは「事件」だったんだなあ。ドキュメンタリーとして残す意味があったと思う。
『邪神ちゃんドロップキック』の画像がTwitterやブログで使用できるようになったのを知る(Twitterでそれが告知されたのは5月18日)。広報用に用意した本編カットを、ファンが使えるようにしたのだろう。これは新しい。一般化したら、色々と変わるはず。

2020年5月20日(水)
「今石洋之アニメ画集」の一般販売が始まる。6月の新刊の編集作業が進む。「アニメスタイル ONLINE SHOP」の発送スタッフがひとり増えて、毎日4人体制に。
「天気の子 新海誠絵コンテ集 6」って定価6,050円(本体5,500円+税)なのね。ちなみに「君の名は。 新海誠絵コンテ集 2」は定価3,740円(本体3,400円+税)。ページ数は前者が784ページで、後者が640ページ。「天気の子 新海誠絵コンテ集」のほうが適正価格なのだろう。アニメスタイルで販路を絞って出したとしても、フルカラー600ページ越えの絵コンテ本を3400円では出せない。ちなみに、アニメスタイルの「劇場版『若おかみは小学生!』絵コンテ 高坂希太郎」は、フルカラー488ページで3500円+税。これでもかなり頑張った値付けだった。

2020年5月21日(木)
昼飯は福しんへ。外食でラーメンを食べるのは久しぶり。ラーメンも半チャーハンも旨い。事務所近くの人気のやきとん屋で昼間の営業とテイクアウトが始まっていたので、やきとん丼を買って晩飯にする。これも美味しい。

2020年5月22日(金)
早朝の散歩は続いている。大塚駅前にある24時間営業の山下書店で文藝別冊の「総特集 星野之宣冊」を購入。社内の打ち合わせをZoomにしてみた。昨日のやきとん屋で明るいうちに早めの晩飯。この店に昼間に入るのも、店内がガラガラなのも新鮮だった。お店の方はコロナで苦労されているので、暢気に喜ぶのも申しわけないけど。YouTubeで『美少女セーラームーン』41話から46話、『美少女セーラームーンR』1話と2話を視聴。
安達祐実さん写真集「私生活」をKindleで購入。これはよかった。撮っているのは安達さんの夫の桑島智輝さんで、夫が撮った妻の写真のよさがある。この前に「我我」という写真集も買ったのだけど、「私生活」のほうがよかった。

2020年5月23日(土)
アニメスタイルチャンネル用のトークの録画のためのセッティング。背景があまりに殺風景なので、アニメスタイル関連書籍の背表紙が見えるようにする。夕方は定例となった吉松さんとのSkype吞み。吞みながらアニメスタイル20周年記念関連の打ち合わせをする。
YouTubeで『美少女セーラームーンR』3話と4話を視聴。その後は『メダロット』を観る。

第667回 短いけど続き

 ま、前回のような理由で、我々世代ではかなり重要な位置を占めるはずの受験は、自分にとって不要なものでした。大学受験を「しない」と決めてからは、成績下がりましたよ〜、というより「下げました」よ。それこそ担任の先生に「何かあったのか?」と心配されたくらい。その時、俺「受験しない自分より、大学行きたい人が良い成績とるべきでしょう?」って返したのを今でも憶えています。呆れたような、ガッカリしたような担任の先生の顔も。前回も言ったように、受験が必要だと思って勉強した人たちをとやかく言うつもりはありません。目的を持って努力することは何においても報われるべきだし、素晴らしいことだと思っています。要は、自分——板垣伸にとって必要かどうか? の話。世間で「大学受験が当たり前」という風潮だからとか、どっかの権威ある方がそれぞれの家庭の事情など無視して、公共の電波で発した「大学くらい行っとけ」の一言に影響されたとかの理由でなく、「自分で判断する」ことこそが重要なんだと思うんです。
 ミルパンセに見学に来たアニメーター志望の高校生に「大学や専門学校に行ったほうがいいのでしょうか? 高卒じゃダメですか?」と訊かれたことがあります。この比較的業界ではポピュラーな質問に対して俺が答えるのは、

自分で出す答えならば、高卒だろうが大卒だろうがどちらでも正解! 要は己の将来を切り開くため、なんでも一所懸命にやる覚悟があるなら、後になって「大学行っときゃよかった〜」なんて後悔はしないはずだから!

です。その人にとって必要かそうでないか? はその人個人の決断に「他人のせいには絶対にしないという覚悟」が伴ってさえいれば、どれをとっても正解なんです。そういう意味では、自分、生まれて46年、幾度となく反省はしましたが、後悔した憶えはほとんどありません。

アニメスタイルTALK 続・沓名健一と語るアニメ作画の20年

 7月19日(日)11時から開催する無観客トークイベントは「続・沓名健一と語るアニメ作画の20年」。アニメーター、演出として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さんに、この20年間のアニメ作画を振り返ってもらう企画の第2弾です。

 第1弾「沓名健一と語るアニメ作画の20年」もアニメスタイルチャンネルでアーカイブ配信中です。併せてお楽しみください。なお、このトークの内容は後に加筆・修正し、雑誌「アニメスタイル」に掲載する予定です。

 今回のトークも、リアルタイムで中継したうえに、1週間配信。その後、アーカイブとしてしばらく視聴できるかたちとする予定です。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 125
『この世界の片隅に』四度目の夏

 新文芸坐とアニメスタイルは2017年、2018年、2019年に続き、本年の夏も片渕須直監督の作品を集めたオールナイトを開催する。上映タイトルは『この世界の片隅に』『マイマイ新子と千年の魔法』『アリーテ姫』。片渕監督の作品をまとめて鑑賞するチャンスだ。

 トークのゲストは片渕監督。会場では片渕監督のサイン入り「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」を販売する予定だ。

 新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要であり、入場時に検温・手指の消毒を行う。前売り券の発売方法を含めて、詳しくは新文芸坐のサイトを見ていただきたい。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 125
『この世界の片隅に』四度目の夏

開催日

2020年8月15日(土)

開場

開場:22時10分/開演:22時30分 終了:翌朝6時00分(予定)

会場

新文芸坐

料金

当日・一般3000円、友の会2800円(オンライン購入は+50円)

トーク出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会)

上映タイトル

『この世界の片隅に』(2016/126分/DCP)声:のん
『マイマイ新子と千年の魔法』(2009/93分)声:福田麻由子
『アリーテ姫』(2001/99分/35mm)声:桑島法子

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

●関連記事
『この世界の片隅に』絵コンテの決定版 [長尺版]よりも長い [最長版]で刊行!
http://animestyle.jp/news/2019/11/11/16619/

第186回 非情な宇宙 〜シドニアの騎士〜

 腹巻猫です。7月6日、数々の映画音楽を手がけた作曲家、エンニオ・モリコーネが亡くなりました。私にとっては、初めて「サウンドトラック」というものを、ひいては「音楽」というものを意識させてくれた作曲家でした。小学生のときにラジオから流れてきたモリコーネの音楽に出会わなければ、今の仕事はしていなかったかも。残念です。


 劇場アニメ『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の制作と2021年の公開予定が発表された。これに合わせて、7月11日からTOKYO MXとBS11でTVシリーズ『シドニアの騎士』の再放映が始まる。7月18日からはニコニコ生放送でも配信される予定だ。
 「おや?」と思ったのは、『あいつむぐほし』では音楽担当がTVシリーズの朝倉紀行から片山修志に交代していること。TVシリーズの音楽が印象的だっただけに意外だった。ただ、筆者は『幼女戦記』などを手がけた片山修志の音楽にも大いに期待している。
 しかし、今回はTVシリーズ『シドニアの騎士』の音楽をふり返ろう。

 『シドニアの騎士』は2014年4月から6月まで放送されたTVアニメ。第2期『シドニアの騎士 第九惑星戦役』が2015年4月から6月まで放送された。
 原作は弐瓶勉が『月刊アフタヌーン』に連載したマンガ作品。アニメーション制作はポリゴン・ピクチュアズが担当した。3DCGを駆使した、21世紀ならではのリアリティを持った宇宙SFアニメだ。
 対話不能の外宇宙生命体・奇居子(ガウナ)により太陽系が破壊されてから1000年。人類は小惑星を母体にした巨大な宇宙船(播種船)に乗り込んで太陽系を脱出し、宇宙を放浪しながら生き残る道を模索していた。その播種船のひとつ「シドニア」の下層で育った少年・長道(ながて)は、シドニアを守る人型戦闘機・衛人(もりと)の操縦士となり、仲間とともに、襲い来る奇居子と戦い始める。
 絶望的な設定、次々と人が死んでいく容赦ない展開、CGで描かれる天体やメカニックの硬質な感触。緊迫感あふれるハードな描写とドラマに引き込まれる。いっぽうで、長道をはじめとするキャラクターの多くが妙にのんびりしていて、ラブコメ風展開があるのが面白い。
 ハードな世界観を支えた音楽は、朝倉紀行が担当。バンド・朝倉紀幸&GANGでデビューしたのち作曲家に転向、さまざまアーティストやアイドルへの楽曲提供を経て、映像音楽の世界に活躍の舞台を移した。TVアニメ『るろうに剣心 —明治剣客浪漫譚—』(1995)やTVドラマ「悪党 重犯罪捜査班」(2011)、PlayStation用ゲーム「天誅」(1998)などの音楽で知られ、海外にも熱心なファンを持つ作曲家だ。
 アジアや中東、南米などの民族音楽の要素を取り入れ、トランスやロックのリズムを加えたサウンドは「アジアのプログレ」とも評される。シンセサイザーと生楽器の音を融合し、とことんこだわって練り上げた緻密なサウンドが魅力。作品ごとにサウンド感を変えてアプローチする意欲的な曲作りが持ち味だ。
 『シドニアの騎士』で耳に残るのは、SE的なシンセの音と生楽器のフレーズで構築されたスリリングな曲の数々。奇怪な敵・奇居子の襲来や衛人隊の壮絶な戦いを圧倒的なサウンドで盛り上げている。激しい戦闘場面や破壊場面では、効果音と音楽が一体となって迫ってくる。音楽が浮き立つことなく、世界の一部となっている印象だ。
 そのいっぽうで、日常場面に流れるピアノ曲やアコースティックギターの曲など、シンプルな編成のBGMも印象的。ここでも、音楽は主張しすぎることなく、シドニアの風景に溶け込んでいる。

 本作のサウンドトラック・アルバムは3タイトルが発売されている。1枚目は「シドニアの騎士 オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2014年6月に、2枚目は「シドニアの騎士 第九惑星戦役 オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2015年6月に発売された。以上2枚はCDアルバム。3枚目は2015年11月に発売された「シドニアの騎士 コンプリート・サウンドトラック」。これはCDではなく、Blu-rayディスクに音楽を収録したBDM(Blu-ray Disc Music)アルバムである。いずれも発売はキングレコード。
 1枚目の「シドニアの騎士 オリジナル・サウンドトラック」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. 深き宇宙へ (M03)
  2. シドニア (M04)
  3. 長道のシドニア (M11)
  4. 平和 (M08)
  5. 平和そして愛 (M13)
  6. 透明星白 (M23A)
  7. 象形星白 (M23B)
  8. エナ星白 (M23C)
  9. 一雫の愛 (M14)
  10. 浮遊 (M05)
  11. 温もり (M13X)
  12. それぞれの迷走 (M09)
  13. 想い (M15A)
  14. 友情 (M12)
  15. 相対性葛藤 (M06)
  16. 長道の葛藤 (M40)
  17. 衛人出撃 (M07)
  18. 胎動 (M19B)
  19. 掌位のジンクス (M10)
  20. 悪夢 (M19A)
  21. 奇居子 (M18)
  22. 出現 (M21)
  23. 船員会 (M30)
  24. 任務 (M28)
  25. 不安と緊張 (M32A)
  26. 非武装主義者 (M34)
  27. 宇宙の淵 (M36&M38)
  28. 発艦 (M35)
  29. 錯乱 (M39)
  30. 恐怖 (M43)
  31. 狂気 (M41)
  32. 栄光の継衛 (M42)
  33. 脅威のカビザシ (M01)

※()内はMナンバー

 第1期『シドニアの騎士』用に制作された約50曲の楽曲から33曲をセレクトした内容。大きく前半と後半に分かれる構成となっている。
 トラック1からトラック14までは、宇宙船シドニアとシドニアに生きる人々を描写する曲が並ぶ。平和な航海をイメージさせる内容だ。
 不穏な予兆を響かせる「相対性葛藤」「長道の葛藤」を挟んで、トラック17からは奇居子との戦いがテーマになる。不安を盛り上げる曲や危機感に富んだ曲が続き、前半とは大きく印象が変わる。アナログレコードのA面、B面のように、対比感が際立つ構成である。
 トラック1「深き宇宙へ」は宇宙の壮大な神秘性を表現する曲。巨大な宇宙船シドニアを描写する「シドニア」「長道のシドニア」の2曲が続いてアルバムの導入部となる。
 シドニアの画像からインスピレーションを受けて書いたという「シドニア」は、第1話で長道が初めてシドニアの外に出る場面などに使用。「長道のシドニア」は第5話で漂流する長道と星白を救いに衛人隊が現れる場面、第9話で衛人隊の班長となった長道が出撃する場面などで使用されたのが印象深い。『シドニアの騎士 第九惑星戦役』最終話(第12話)のラストシーンで流れたのもこの曲だった。
 「平和」「平和そして愛」は、タイトルどおりシドニアの平和な日常を彩った曲。いずれも「深き宇宙へ」のバリエーションで、バイオリン・ソロやソプラノサックスをフィーチャーして情感豊かに仕上げられている。「平和そして愛」は第6話で長道と星白がシドニアの海(海水槽)で語らう場面に流れたほか、第1期の最終話(第12話)のラストシーン、長道が研究所に収容されたエナ星白に会いに行く場面でも使用された。長道と星白の愛のテーマといった趣の曲である。
 次の3曲「透明星白」「象形星白」「エナ星白」は、物語の上で重要な役割を担うヒロイン(?)・星白のテーマのバリエーション。朝倉紀行は第1期の音楽制作では星白に感情移入してしまったそうだ。3つの曲のモチーフは共通だが、アレンジとサウンドを変えて星白の変化を表現している。第10話では長道がエナ星白とコミュニケートする場面に「エナ星白」ではなく「透明星白」が流れ、長道にとって星白の存在が特別なものであることを暗示している。
 トラック13「想い」のリリカルなフレーズは劇中でもたびたび流れて耳に残る。本曲はピアノとトランペットがフィーチャーされているが、劇中ではピアノ・ソロ・バージョンの「透」(「コンプリート・サウンドトラック」に収録)のほうがよく使われていた。
 日常描写や心情表現の曲が続いたあと、不安な曲調のトラック15、16で雰囲気が変わり、後半へ。
 トラック17「衛人出撃」は本作を代表する楽曲のひとつ。曲名どおり、衛人隊の出撃場面によく使われている。静野孔文監督の「決死の覚悟をした、まるで片道切符の特攻隊のような想いを入れた曲にしてほしい」とのオーダーに応えて書かれた。
 明快なメロディを持たず、SE的なサウンドが不気味な雰囲気をかもし出す「胎動」と、そのミックス違いの「悪夢」も本作の音楽の特徴をよく伝える楽曲。静かな緊張感がみなぎる、緻密に構成された曲だ。
 続く、「奇居子」「出現」を聴くと本編の映像が脳裏に浮かぶファンも多いだろう。「奇居子」は初めて奇居子の画を見たときの衝撃からインスピレーションを得て生まれた曲だそうだ。
 トラック24「任務」も衛人隊出撃場面によく流れた悲壮感ただよう楽曲。勇壮さよりも死を賭した出撃の覚悟と緊張感が伝わってくる。
 トラック27「宇宙の淵」は次回予告に多用された楽曲。ピアノ、ドラム、エレキギターのフレーズが絡み合い、スリリングなセッションをくり広げる。
 奇居子との戦闘場面などに使われた「発艦」に続いて、「錯乱」「恐怖」「狂気」と、戦いの恐怖や混乱を表現する曲が並ぶ。本編の雰囲気を再現するうまい構成だ。
 本作の音楽録音には、ストリングス(バイオリン、ビオラ、チェロ)、トランペット、ソプラノサックス、ギター、ベース、ピアノ、オルガンなどの楽器が使用されている。が、その音をそのまま使うのではなく、デジタル処理で音色を変えたり加工したりして楽曲に仕上げているケースが多い。これも朝倉紀行の音楽作りの特徴で、ミックスや音作りにとことんこだわって楽曲を完成させていくのだ。加工された楽器の音とシンセの音が溶け合い、唯一無二のサウンドを生み出す。本作のサスペンス系の楽曲に、そのこだわりがよく表れている。
 アルバムを締めくくるのは、衛人隊の活躍を描く2曲、「栄光の継衛」と「脅威のカビザシ」。M01の番号が振られた「脅威のカビザシ」はもともとファイナルバトルの曲として制作されたものだ。2曲とも勇壮さやカッコよさは抑えられ、死と隣り合わせの緊迫した空気感が表現されている。いわゆるロボットアニメの戦闘曲とは一線を画した、本作ならではの楽曲だ。そして、『シドニアの騎士』にあっては、この抑えた曲調こそがカッコいい。
 音楽で情感をふくらませるというより、SEを含めたサウンドで視聴者を作品世界の中に放り込むのが本作の音響演出のスタイルだ。感情よりも感性に訴える音楽。「宇宙のロマン」とは無縁の非情な宇宙を舞台にした本作には、この音楽がなによりも合っている。
 ただ、CDアルバムでは聴き応えのある戦闘曲やサスペンス曲を優先したためか、静かなピアノ曲やギターの曲などがもれてしまったのは残念。

 その不満に応えたのが、BDMアルバムでリリースされた「シドニアの騎士 コンプリート・サウンドトラック」である。Blu-rayディスクの大容量を生かして、未収録曲を含む全曲を収録。音源は96kHz/24bitのハイレゾ音質。2チャンネル・ステレオと5.1チャンネル・サラウンドの2種類のフォーマットで聴ける仕様になっている。
 この「コンプリート・サウンドトラック」の魅力は全曲収録とハイレゾ音質だけではない。ほかにも画期的な試みが盛り込まれている。
 ひとつは、楽曲を複数の構成(曲順)で聴けるようにしたこと。メニューからは「コンプリート・サウンドトラック」「シドニアの騎士 オリジナルサウンドトラック」「シドニアの騎士 第九惑星戦役 オリジナルサウンドトラック」の3つから再生順を選ぶことができる。「コンプリート・サウンドトラック」は第1期と第2期のために作られたBGM全95曲を新構成でまとめたもの。残る2つは既発アルバムそのままの構成。複数の構成(曲順)を収録するのは、ありそうでなかったアイデアだ。既発アルバムの曲順に思い入れがあるファンにはうれしい仕様である。
 ふたつ目は、朝倉紀行による全曲コメントが読めること。楽曲制作秘話を読みながら曲を聴くのはサントラファンの大きな楽しみだ。惜しむらくは、BDの再生画面上でしかコメントが読めないこと。できればコメント集をPDFファイルで用意してほしかった。
 3つ目は、MP3データ形式の音源も収録されていること。携帯プレーヤーで聴くことも可能だ。この配慮はうれしい。
 さらに特典映像として、アニメ動画つきプレイリスト(名場面を観ながら音楽が聴ける)や「シドニア百景」プレビュー、楽曲収録メイキング写真スライドショーなども収録されている。
 ファンのさまざまな要望に対応した充実の仕様である。Blu-rayの大容量を生かしたハイレゾ収録と全曲収録、映像特典等を実現しただけでなく、複数の構成で聴けるようにしたことや作曲家コメントを収録したことが大きなポイントだ。サントラファンにとっては、構成も解説も重要な商品の一部なのである。このスタイルはサントラ盤の新しいスタンダードになるのではないかと期待させる。今のところ、後続する商品が見当たらないのが残念だが……。
 ともかく、2枚のCDアルバムに収録されなかった心情曲や日常曲、サスペンス曲などは、「コンプリート・サウンドトラック」に収録されている。これからサントラを買って聴こうという方には、こちらのほうがだんぜんお得だ。サントラを聴きつつ、再放映でおさらいして、来年の劇場公開を待ちたい。

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新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇&螺巌篇

 『天元突破グレンラガン』は今石洋之監督、アニメーション制作GAINAXによるTVアニメーションであり、2006年に全27話が放映された。それに新作を加えて再編集した劇場作品が『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』と『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』だ。

 4月ぶりとなるアニメスタイルと新文芸坐の合同企画はその『紅蓮篇』『螺巌篇』の2本立て上映だ。
 開催日時は2020年7月23日(木・祝)。昼の部、夜の部の2階建て興行となる。今回は上映のみでスタッフによるトークの予定はない。また、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要であり、入場時に検温・手指の消毒を行う。前売り券の発売方法を含めて、詳しくは新文芸坐のサイトを見ていただきたい。

 また、会場では「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」通常版を販売する予定だ。

新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇&螺巌篇

開催日

2020年7月23日(木・祝)

スケジュール(昼の部)

開場:10時00分/開演:10時20分/15時00分

スケジュール(夜の部)

開場:16時00分/開演:16時20分/終映:21時00分

会場

新文芸坐

料金

一般2000円、シニア・友の会1800円(招待券不可/オンライン購入は+50円)

上映タイトル

劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇(2008/113分/35mm)
劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇(2009/130分/35mm)

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

●関連記事
今石洋之アニメ画集 スペシャルセット(通常版)の販売について
http://animestyle.jp/news/2020/05/21/17458/

【ARCHIVE】今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!/第1話 お前のドリルで天を突け!
http://animestyle.jp/2013/01/22/3584/

【ARCHIVE】今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!/紅蓮篇 第1部 最初は総集編1本にしようと思っていた
http://animestyle.jp/2013/08/23/5822/

【ARCHIVE】今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!/螺巌篇 第1部 『紅蓮篇』の盛り上がりを超えるために
http://animestyle.jp/2013/09/02/5963/

アニメ様の『タイトル未定』
259 アニメ様日記 2020年5月10日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年5月10日(日)
自宅でワイフに頭を刈ってもらう。ワイフは大喜びでやってくれた。事務所で「設定資料FILE」の構成を進める。いつも作業に使ってる大きな机を「アニメスタイル ONLINE SHOP」の在庫を置くために片づけてしまったので、小さな机でちまちまやる。
このところ、Twitterで【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】というハッシュタグをつけて、ネットで無料配信されているアニメを紹介している。今日は『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!! 黄金のデジメンタル』だった。以下がそのテキスト(すでに無料配信は終わっているので、映像へのリンクは削除した)。お気に入りの文章だ。

…………
【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!! 黄金のデジメンタル』が無料配信中(5/16(土)23:59まで)。会員登録不要です。『デジモン』劇場版第3作で監督は山内重保さん。凄まじい作品ですよ。
…………
細田守監督の『デジモン』劇場版第1作、第2作がリアリティを基調としているのに対して、山内重保監督の劇場版第3作は感覚重視の作品です。「ムードを楽しむ」作品であり、「セリフや理屈以外の部分が重要」な作品です。
…………
作画を含めた画作りも、音楽も素晴らしい(音楽の使い方も凄い)ですが、演出家の映画です。圧倒的に。後半の悪夢的な部分は本当は劇場で楽しみたいところ。なるべく集中してご覧になるのをお勧めします。
…………

 Amazon Prime Videoで「晴れた家」を観る。これは「トニー滝谷」のメイキングだ。撮影風景が観られただけでもよかった。その後は「YESTERDAY」の吹き替え版から『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』に。意図せず「YESTERDAY」つながりとなった。『オトナ帝国の逆襲』って「過去と未来の対立」の物語ではなくて、理想化された過去という「幻想」を、地に足のついた「現実」が打ち砕く話なのね。どこかで誰かが書いていると思うけど。
 市川準監督の「つぐみ」を観た流れで、吉本ばななさんの「日々のこと」を読み始める。本文1行目で市川準監督の名前が出て「おおっ」となる。1980年的な文章のノリが懐かしく、照れくささを感じた。

2020年5月11日(月)
早朝散歩で、朝5時から営業している手作りパン屋でパンを買う。15時半から事務所スタッフとSkype打ち合わせ。16時からある書籍について、ビデオ会議(こちらはSkypeではなかった)。自宅マンションに10年以上あった段ボール箱10個を、事務所スタッフに手伝ってもらって事務所に運ぶ。段ボール箱の中身はCDや本だ。在庫でいっぱいの事務所にますますモノが増える。

2020年5月12日(火)
Twitterの【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】では『デビルマン 誕生編/妖鳥死麗濡編』を紹介する。「設定資料FILE」の作業が終わった。今回の「設定資料FILE」は『BNA ビー・エヌ・エー』だった。近年は表情集の少ない作品が多いのだけど、『BNA ビー・エヌ・エー』は表情集がかなり多い。人間の姿と獣人の姿で別の表情集があり、さらにポーズ設定も多い。構成していて楽しかった。
Amazon Prime VideoのNHKオンデマンドで「これは経費で落ちません!」を視聴する。放送中にも話題になっていたのだけれど、確かにこれは面白い。
近所の居酒屋「築地食堂源ちゃん 東池袋店」が営業再開。ただし、営業時間は20時まで。これで毎日ホッピーが飲める。いや、さすがに毎日飲みはしないけど。今日は源ちゃんではなく、同じく時間短縮で営業を再開した某店に。久しぶりにホッピーらしいホッピーを飲んだ。不思議なもので、自宅で吞むホッピーは何か違うのだ。

2020年5月13日(水)
この日も基本的にデスクワーク。「アニメスタイル ONLINE SHOP」で「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」初回生産分の第2次受付を開始。「これは経費で落ちません!」を7話から最終回の10話まで観る。主人公・森若沙名子の恋愛模様は思っていたのと違ったなあ。これは単純に好みの問題です。早めの晩飯は源ちゃんで。

2020年5月14日(木)
朝から寒気がして熱っぽい。あまり外出はしないで、事務所でデスクワーク。散歩に行かなかった分だけ、作業が進んだ。『イエスタデイをうたって』『八男って、それはないでしょう!』『波よ聞いてくれ』をそれぞれ最新6話まで配信で観た。

2020年5月15日(金)
ずっと事務所でデスクワーク。宅配サービスで晩飯を注文したのだが、到着予定時間に「注文された店が休みだったので、届けられません」という電話があった。宅配サービスの会社と飲食店の連携が上手くいってないようだ(後日、その飲食店の前を通ったら、コロナ対策でしばらくは営業を休むとあった)。
手塚治虫さんの「バンパイヤ」をKindleで最終巻まで読んだ。以下は「バンパイヤ」について思ったことだ。知らない人もいるはずなので先に説明しておくと、作者である手塚治虫さんは「バンパイヤ」の主要登場人物でもある。

…………
手塚治虫の「バンパイヤ」を読み返した。最初に読んだのは小学生の頃だった。当時はとにかく面白い作品だと思った。今読んでもスピーディな展開は飽きることがなく、小学生の自分が楽しんだのもよく分かる。ファンの多くが同様だと思うが、当時はロックの悪魔的なところに惹かれていた。
ただ、読み返すと粗いところが気になる。大きな部分は、第1部の後半で描かれるバンパイヤ革命だ。今ひとつ計画の全体像が分からないし、計画が上手くいってしまうことに無理があると思う。当初の計画通り、バンパイヤがマッドPAを使って人間を原始人のようにしてしまうほうが自然だったのではないか(そして、手塚治虫達が同じマッドPAを使って逆転するとか)。実際にそういうつもりで描いていて、段取りの都合でマッドPA無しでバンパイヤ革命が成功してしまうことになったのかもしれない。
読み返して笑ったのが、ロックと岩根山ルリ子が帰国した際の展開だ。たまたま手塚治虫が作ったバンパイヤの正体を暴く映画がテレビ放映されており、空港にいた人達が映画の指示に従ってルリ子に玉ねぎを投げるのである。なんでたまたま空港にいた人達が玉ねぎを持っているんだ、と突っ込まずにはいられない。まあ、マンガらしいと言えばマンガらしいが。
「バンパイヤ」の第2部は未完で終わっている。小学生の時は続き読みたくてたまらなかったが、読み返すと、続いたとしても第1部ほどは面白くなかっただろうと思える。
さて、以下が本題。
ずっと気になっていたことだ。

物語の序盤で、主人公のトッペイは虫プロで働いている。彼の机の引き出しには大量の電信柱の写真があり、それを知った手塚治虫は「へんたい性じゃないかしら」と言うのである。この場合の「へんたい性」のへんたいは「変態性欲」のことだろう。最初に読んだ頃から、このセリフが気になっていた。小学生の僕は、いくらなんでも電信柱と変態を結びつけるのはあんまりじゃないの、と思ったわけだ。今ならそのくらいの人はいるかもしれないと思えるし、少なくともフィクションで描くのはありだと思う。
ここから先は(中学生の頃からなんとなく考えていた)想像なのだが、作者としての手塚治虫はバンパイヤの変身に、自慰行為のイメージを重ねていたのではないか。登場人物の1人である岩根山ルリ子の変身は明らかにエロチックなものとして描かれているし、彼女が最初に変身する時に、トッペイに対して「あっちをむいて!!」と言うのも、トッペイが顔を赤くするのもそれを思わせる(人間の姿になった時、一度は裸になるはずなので、そのために「見ないで」と言った可能性もあるのは分かっている)。
バンパイヤにはそれぞれに変身するきっかけがある。「コショウをかぐと」とか「おへそをくすぐられると」とかそういったきっかけだ。つまり、「それぞれに性癖がある」ということなのだろう。バンパイヤ秘密本部での集会の後に、大コマで大勢のバンパイヤが人間に戻ろうとして苦心するという描写があるのだが、自慰のイメージを重ねているとすると大変な場面だ。岩根山ルリ子の変身のきっかけは玉ねぎの匂いだ。秘密本部での集会の前に、玉ねぎの匂いが弱くて、なかなか変身できないというくだりがある。オカズの刺激が足りなかったのだろう。
行方不明になっていたトッペイの父親は電信柱を見ると変身するらしい。トッペイの父親にとっては電信柱の写真がオカズだったのだ。トッペイは父親にとって必要かもしれないと考えて電信柱の写真を集めていたのだろう。
つまり、何を言いたいのかというと、電信柱の写真を見た手塚治虫の「へんたい性じゃないかしら」という発言は、この作品の本質的な部分に関わるセリフだったのではないかということだ。
…………

2020年年5月16日(土)
自分の体調はよくなったのだけど、今度はワイフが頭痛。早朝散歩はおやすみ。事務所でキーボードを叩く。雨が続いたため、Eテレで劇場版『若おかみは小学生!』を観る。放送中に『若おかみは小学生!』についてツイートをしていたら、Twitter上で豊田智紀プロデューサーに、編集作業中の原画集の遅れについて突っ込まれる。すいません。急ぎます。その後、吉松さんとSkype吞み。
YouTubeで『美少女セーラームーン』を観る。33話から35話が月のプリンセスがらみの連続エピソードで、中でも34話は演出・作画も充実で見応えあり。 【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】関連のツイートで「34話でうさぎが変身する前に顔を赤らめるのは、衛に裸を見せるのを決意したため」と書く。ソースは自分が記事を担当した「アニメージュ」1993年5月号の鼎談だ。

第666回 自分にとっての不必要

 前回からの続き。で、俺が受験を止めた経緯の話。前述(第665回)のとおりクラスのほとんどが塾に通う中、それに背を向け高校受験も入試前1週間のみの勉強、というか「暗記」で挑んだ俺と、小・中学と真剣に塾で勉強した友達が、結果同じ高校に3年間通ったんです。「なんじゃこりゃ?」と。こんな適当な俺と、まじめに受験世代のルールに乗っかった友人がなんで同じ高校なのか? と。その気持ちの悪さが俺の高校3年間をさらに受験勉強から遠ざけることになり、「受験するならせめて美大」と考えるようになりました。絵の受験勉強なら自分でもやる気になるかと思って。
 てなわけで、自分は高校時代、河合塾美術研究所というところの夏期講習と冬期講習のみ通い、デッサンやらクロッキーやらを勉強しました。でも本当の本音を言うと、受験のためというより夏・冬長期休暇のヒマ潰し感覚だったのかもしれません。でも、その講習でよかったのは、最後に進路相談をする時間が設けられていたことで、以下はその時の講師の方々のお話。

講師1「(板垣のデッサンを見て)うん、君の場合デッサン的には問題ないけど、あとは数」
講師2「高校、惟信てことは普通科でしょ。例えば旭丘(高校)の美術科とかは週何時間美術の授業があるか? 1枚何時間のデッサンを年間何百枚クラスが美大受験にはゴロゴロいるから」
講師1「週2時間の美術の成績がいくら良くても、問題は高校3年間で描いてるデッサンの量なんだよ」
講師2「でも絵的には可能性、十分あるよ。1年間浪人して(ウチで)デッサンみっちりやれば、たいがいの美大合格すると思う」
板垣「1浪ですか(嫌)」
講師1「将来的に何やりたいの?」
板垣「アニメの監督です」
講師2「あ、アニメだったら美大行く必要ないよ。アニメはとにかく実践。東デ(東京デザイナー学院)のアニメ科行きな。ただ東京校ね」
板垣「はい!」


 で、嬉々として飛んで帰り、母親に報告。講師さんに言われたことを説明して

 無事、皆と同じ受験ムーブメント(?)に乗らずに済んだのでした。何しろアニメ作りができる道が見えれば、受験勉強をしなくて済むと。一応、念のために言っておきますが、自分は今まで知らなかったことを知る・教わるのは大好き。即ち勉強は好きなんです。成績は良い方でしたから。ただ、

なんとなくでも絵を描くことが好きで、なんとなくそちら方面でやっていけそうであるなら、ただでさえ猫も杓子も大学受験で、皆が「大学行きたい」時代なら、自分は身を引こう! 俺は大卒という鎧を身にまとわずとも社会に出て行ける! 覚悟完了!

と。
 もちろん、受験・大卒が必要な人はいます。だからこそそういう方に、小さいけど俺1人分の席は空けたほうが世の中のためだと思ったのです。本当に必要な人にこそ、その必要な事・物がまわる世の中が自分は良いと考えています。俺は自分自身の腕を磨くために大卒(鎧)は不要だった。ただそれだけのことです。

アニメスタイルTALK データ原口のアニメ講座/「日本最初のテレビアニメ」「トレスマシンの歴史」

 7月5日(日)に開催する無観客トークイベントは「アニメスタイルTALK データ原口のアニメ講座/「日本最初のテレビアニメ」「トレスマシンの歴史」です。
 データ原口の愛称で親しまれている原口正宏は、国産商業アニメ研究の第一人者であり、アニメのデータ収集に人生を捧げてきた人物です。「データ原口のアニメ講座」は彼の膨大な知識や研究成果を披露してもらうトークシリーズ。
 今回のテーマは「日本最初のテレビアニメはなにか」と「トレスマシンの歴史」となります。

 今回のトークは新宿ロフトプラスワンで、7月5日(日)11時から無観客トークイベントとして開催し、同時にアニメスタイルチャンネルで配信。1週間配信した後、アーカイブとして視聴できるかたちとする予定です。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

アニメ様の『タイトル未定』
258 アニメ様日記 2020年5月3日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年5月3日(日)
憲法記念日。ある書籍の編集作業のために画像データの整理をはじめる。このペースなら、ゴールデンウィーク中に終わりそうだ。『美少女セーラームーン』11話から19話をYouTubeの配信で観た。やはり初々しい感じがよい。15話「うさぎアセる! レイちゃん初デート」のAパート(レイが衛を逆ナンするあたり)が猛烈な面白さ。当時も笑ったけど、今観ても笑う。『セーラームーン』19話「うさぎ感激! タキシード仮面の恋文」。危機に陥ったタキシード仮面が言ったセリフが「それまで、なにか話をして気をまぎらわすんだ」。すごい。すごすぎる。富田祐弘さんならでは。

2020年5月4日(月)
みどりの日。雨天のため、早朝散歩はおやすみ。引き続き、事務所で画像データの整理。今日も作業が進んだ。気持ちいいなあ。
YouTubeで『美少女セーラームーン』20話「夏よ海よ青春よ! おまけに幽霊もよ」を観る。ダーク・キングダムも妖魔も出てこない番外編的なエピソードで、しかも、水着回。ホラー回なのに楽しい仕上がりだ。香川久さんの作画もいいけど、竹之内和久さんの演出もいい。『美少女セーラームーン』について、こんな気楽なエピソードを作り続けてもよかったかもしれないなあとは思う。その後、『機動武闘伝Gガンダム』を21話から26話まで観る。
「OL進化論」38巻を読み始める。4年ぶりの新刊である。安定の面白さ。登場人物は年をとっていないはずなのに、作品の対象年齢はあがっている感じだ。ちなみに僕のKindleには「OL進化論」が全巻入っている。

唐突だけど「今石洋之アニメ画集」について。現在のアニメスタイル編集部の画集を作るテンションが10年後にも維持されているとは思えないし(10年後にアニメスタイル編集部があるかどうかも分からない)、5年後だって怪しいだろう。テンションが高まってる時期にこの本が作れてよかった。現在のアニメスタイル編集部らしいツメの甘さもあるんだけど、5年前だったらできなかったことをいくつも実現している。

2020年5月5日(火)
こどもの日。画像データの整理が一段落。ひとつの作業だけを毎日続けるというのは久しぶりで、それも楽しかった。『機動武闘伝Gガンダム』を配信で34話まで観る。

2020年5月6日(水)
ゴールデンウィーク最終日。主に事務所の片づけ。通販用の「今石洋之アニメ画集」が事務所に届くので、置き場所をつくらなくてはいけないのだ。途中からNHK-FMの「今日は一日ガンダム三昧Z」を聴きながら、作業を続けた。 『機動武闘伝Gガンダム』は36話まで観た。スマホのKindleで読んでいた春日太一さんの「時代劇入門」を読了。第二部の「時代劇の歩み」が興味深かった。他人ごとではあるけれど、売れるといいなあ。
緊急事態宣言で、散歩以外に外出のないゴールデンウィークだったが、退屈ではなかった。

2020年5月7日(木)
久しぶりの通常業務。連休明けはやっぱり慌ただしい。「今石洋之アニメ画集」「今石洋之アニメ資料集[コンテ・原画編]」「パンスト 今石洋之マンガ全集」と複製色紙が、印刷会社から事務所に届く。事務所内に本を積み上げるために事務所スタッフが出勤して作業。
『機動武闘伝Gガンダム』を最終回まで視聴。本放送でもレインが可哀想だと思っていたけど、今観てもやっぱり可哀想だ。作画はシリーズを通じて記憶よりもよかった。『BNA』の7話以降を観はじめる。

2020年5月8日(金)
通常業務。15時半からSkype打ち合わせ。『BNA』を最終回まで観た後、Amazon Prime Videoで市川準監督の「つぐみ」を観る。その後、YouTubeの『美少女セーラームーン』21話と22話を観る。

2020年5月9日(土)
午前も午後もデスクワーク。西口のうどん居酒屋でランチ。夜の営業だけだった店でランチがいただけるのは嬉しいけれど、お店に活気はなかった。夕方から土曜の恒例となった吉松さんとSkype吞み。Skype吞みだと、話題になっているアニメについて、その場で映像やセリフを確認できるのがいいな。いや、居酒屋でも観ようと思えば配信を観られるんだけど。「そこはボクの作画で、アドリブでセリフを増やしました」とか教えてもらったり。作画でセリフを増やすなんてありなんだ。
南Q太さんの「今日も夫婦やってます」を読了。これはマンガではなくてエッセイ集。面白かった。目線が南Q太さんのマンガの主人公に近い。四人目の子どもの出産のエピソードがよかった。

第665回 自分にとって必要か?

40代も半ばにもなると、あらゆる物事に対し、これからの自分の人生において必要なものかどうかを見極める目がさらにハッキリしてきた気が、最近とみにしています!

 子どもの頃から、俺は周りの友人たちが必要としている物事に関して「果たしてそれらは友人らにとって必要だったとしても、自分にとって本当に必要か?」と常に考える癖があって、例えばプロレス、プロ野球、ゲーム類全般、週刊少年マンガ誌。それらは俺の生活に不必要なものでした。もちろん、それらが大好きで必須と思っている人たちを否定する気など毛頭ないし、逆にいつも周りの皆と同じムーブメントに乗れない板垣は、友人たちから呆れられていました。そして皆が乗っかれば乗っかるほど、自分がそのムーブメントにとって不必要な人間だと分かるから、尚のことそれらから俺は離れる。この性格は未だに変わっておらず、近年興行収入が桁違いの大ヒット映画ほど、まだ観ていません。あのアニメ映画もこのアニメ映画も。2〜3年遅れて観たりはします。ブームが去った頃にこっそりBOOK・●FFで。反対に興行的に完敗した映画の方が大好物かも。よく話題にする『あしたのジョー』を始めとする出崎アニメも、本放送から10年遅れてハマったくらいで、多分リアルタイムでファンになったのは80年代の藤子不二雄アニメくらいだと思います。
 もっと言うと、我々世代では当然のムーブメント(?)である”受験”にも乗れませんでした。第2次ベビーブーム・団塊ジュニア世代は「高学歴→大企業に就職→一生安泰」を目指すのが当たり前で、中学も高校も運動部よりも塾通いが優先。そして少しでもいい高校・大学へと。地元名古屋の友人は皆その道を進みました。そんな中、とりあえず自分は小学校の時、クラスの大半が塾ブームに乗っかった際も「塾には絶対に行かない!」と決めていたのです。別に成績が悪かったわけではないのに、不学校以外でさらに勉強のために親に金を出させ、かつ自分の時間まで失う。俺にとってその時点で塾は不必要なものだったわけです。ハッキリ言って

学校の勉強だけでは入学できない高校や大学って、それは全国的に席が足りてないことの方が問題なハズで、その数限りある席を”勉強合戦”で勝ち取るってなんかおかしくない? しかも俺に言わせると受験勉強は勉強ではなく”暗記合戦”! そんな記憶力の優劣で、その後の人生が決まるなんて嘘だろ!

と小学校の頃から思ってて、友人が皆塾に通い始める中、板垣はマンガ描いたりパソコン触ったりゴルフやったりしてたわけです。

 重ねて言いますが、塾行って受験勉強していた友人らを当時から否定したりはしてなかったと思います。ただ、俺自身にとっては不要だった、というだけです。
 だから、小・中学では塾ブームにも乗らず、高校受験ですら試験前に1週間ほどしか勉強(暗記)しませんでした。それでもまあ、普通のいわゆる当時では進学校と呼ばれる高校に入り、最初は美大を目指して河合塾美術研究所という所に夏期講習と冬期講習だけ受けて、デッサンやらクロッキーやらをやりに行ってました。

 で、いつものごとくなんの話だったか分かりづらくなったところで時間なので、また次週(汗)。

「アニメスタイル20周年展」を開催
展示第1弾は川元利浩さんのスケッチブック

 2000年に刊行した雑誌「アニメスタイル」第1号からアニメスタイルの歴史が始まりました。今年でアニメスタイルは20周年を迎えます。

 それを記念して、ササユリカフェで「アニメスタイル20周年展」を開催することとなりました。アニメスタイルの書籍と関連した資料を展示し、アニメスタイルの書籍を販売します。開催期間は7月2日(木)~9月末を予定。開催期間内に展示内容は変わっていきます。

 第1弾の7月2日(木)~7月20日(月)では、川元利浩さんがキャラクターデザインの初期稿を描いたスケッチブックの現物を展示します。作品タイトルは『WOLF’S RAIN』『天保異聞 妖奇士』『GOSICK -ゴシック-』『トワノクオン』『テンカイナイト』『ノラガミ』『血界戦線』。どのデザイン初期稿も、書籍「川元利浩 SketchBook」で資料として収録したものです。

 なお、開催期間中のササユリカフェは終日立ち見営業となります。入場料はいただきませんが、ワンドリンクの注文をお願いします。

■関連リンク
ササユリカフェ
http://sasayuricafe.com

【アニメスタイルの書籍】「川元利浩 SketchBook」一般販売開始! 「アニメスタイル ONLINE SHOP」では小冊子付き!!
http://animestyle.jp/news/2020/01/09/16901/

第185回 フィルムスコアリングの復活 〜バジリスク 甲賀忍法帖〜

 腹巻猫です。先日、実に3ヶ月ぶりに顔を合わせての打ち合わせに参加しました。始まるまで、ちょっと緊張しました(笑)。少しずつ、サントラ仕事も回復に向かってほしいです。


 昨年(2019年)話題になったTVアニメ『鬼滅の刃』では、毎回、映像に合わせて音楽を作曲する「フィルムスコアリング」と呼ばれる手法が採られている。劇場作品や単発TV作品ではあたりまえの作り方だが、毎週放映される連続TVアニメでフィルムスコアリングが採用されるのは珍しい。
 といっても、前例がないわけではない。そもそも、TVアニメの黎明期からフィルムスコアリングによる音楽作りは行われていた。『宇宙エース』(1965)や『ジャングル大帝』(1965)、『悟空の大冒険』(1967)、『リボンの騎士』(1967)、『マッハGoGoGo』(1967)などは、フィルムスコアリングで音楽がつけられている。
 現在のTVアニメ音楽は「溜め録り&選曲」方式が主流である。あらかじめ音楽をまとめて録音しておき、その中から毎回映像に合った曲を選んで音楽をつけていく手法だ。
 溜め録りがいつから始まったかはさだかでないが、60年代にはすでに行われていた。たとえば『ジャングル大帝』と同時期のTVアニメ『ハッスルパンチ』(1965)の音楽は溜め録りである。TVアニメ初期は溜め録りとフィルムスコアリングが併走していた。これが、70年代には溜め録りが主流になる。TVドラマの音楽も初期はフィルムスコアリングで作られているが、70年代にはNHKの番組や民放の一部の作品をのぞいて溜め録りがほとんどになっていた。
 本来、映像音楽はフィルムスコアリングが望ましいとされている。溜め録り方式が採られるのは、制作スケジュールと予算の制約によるところが大きい。毎週ぎりぎりのスケジュールで制作されるTVアニメでフィルムスコアリングを採用するのは現実的ではないというわけなのだ。
 ところが近年、『鬼滅の刃』のようにTVアニメでもフィルムスコアリングを採用する作品が見られるようになった。
『Fate/stay night [Unlimited Blade Works] 』(2014/音楽・深澤秀行)や『神撃のバハムート GENESIS』(2014/音楽・池頼広)などがそうだ。
 そのさきがけと呼べる作品が、2005年に放送された『バジリスク 甲賀忍法帖』である。

 『バジリスク 甲賀忍法帖』は2005年4月から9月まで放送されたTVアニメ。山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』を原作としたアニメ作品だ。キャラクターや物語のアレンジは、同作品をせがわまさきがマンガ化した『バジリスク 甲賀忍法帖』がベースになっている。監督は木崎文智、アニメーション制作はGONZOが担当した。
 慶長19年、徳川家康の時代。混乱を極める徳川三代将軍の世継ぎ問題に決着をつけるため、忍法合戦が行われることになった。甲賀・伊賀それぞれから10人の忍者を選び、最後の1人になるまで戦わせる。どちらが生き残ったかによって、世継ぎを決めるというのだ。
 奇想天外な忍法を身につけた忍者同士の対決がすさまじい。忍者というより、魔人対魔人の戦いである。アニメ版でも、この忍法対決の描写が見どころになっている。同時に、忍者1人ひとりのキャラクターを掘り下げることで、原作小説以上に情感豊かな物語になった。
 本作の音楽を担当したのは中川孝。1970年生まれ、北海道出身。舞台、イベントなどの音楽活動を経て、1997年に劇場作品「女囚処刑人マリア」で映画音楽デビューした作曲家だ。
 TVドラマ「真・女神転生デビルサマナー」(1997)、「仮面天使ロゼッタ」(1998)、「エコエコアザラク〜眼〜」(2004)、劇場作品「楳図かずお 恐怖劇場」(2005)、「富江 アンリミテッド」(2011)など、怪奇幻想ものやアクションものを多く手がける中川孝は、山田風太郎作品にはまさに適任。アニメでは『少年陰陽師』(2006)、『のらみみ』(2008)などの作品がある。近年では、ちばてつや原作の劇場アニメ『風のように』(2016)の音楽を手がけ、そのサウンドトラックCDがクラウドファンディングによってリリースされたことが記憶に新しい。
 『バジリスク 甲賀忍法帖』の音楽は、依頼を受けた中川孝がマンガ版を読み、そこからインスパイアされた20分ほどのデモ楽曲を制作することから始まった。それを聴いた木崎監督と助監督の西本由紀夫は「これだよ! これ!」と絶賛したという。音楽の方向性は決まった。さらに木崎監督は、当時のTVアニメとしては異例の、画に合わせた音楽作りをリクエストする。この作品には「アニメ音楽」ではなく「映画音楽」がほしいと考えたからだった。
 かくして作られた音楽は、全24話で200曲以上。演奏時間にして8時間近くになった。予告編音楽さえも使いまわしされず、毎回、内容に合わせて作られている。
 楽器編成はシンセサイザーを主体に、生のギターと篠笛が加わる。シンセによる和楽器の音色で和風テイストを出しているのが特色のひとつだ。
 フィルムスコアリングを可能にした背景には、90年代から2000年代にかけてのデジタル音楽制作環境の進歩がある。スタジオにミュージシャンを集めずとも、大半の音楽制作がコンピュータ上でできるようになった。また、一度制作した素材を再利用できるようになったことも効率化につながっている。『ジャングル大帝』の時代には、毎週フィルムを上映しながらオーケストラが演奏していたそうだから、隔世の感である。
 フィルムスコアリングとはいえ、核となる曲想やモチーフは存在する。本作の場合は、まず全体のメインテーマと呼べるメロディがある。「音絵巻 〜第一章〜」に収録された「殲 其ノ壱」に登場するモチーフだ。そのフルバージョンと呼べるのが、第22話の甲賀弦之介対薬師寺天膳の対決場面で流れた曲「忍者夢想剣」(「音絵巻 〜第三章〜」に収録)である。
 もうひとつは、忍法対決の異様な迫力を表現するために人の声を使ったこと。特にアクション曲や不死身の忍者・薬師寺天膳登場場面などで聴かれる不気味なコーラスは圧巻。中川孝はこれを「お経ラップ」と呼んでいる。「音絵巻 〜第一章〜」に収録された「殲 其ノ弐」(第2話で使用)では、16人の男女による混声コーラスを聴くことができる。山田風太郎忍法帖の雰囲気を音楽化する秀逸な表現だ。
 加えて、激しい闘いの合間に描かれる忍者同士の恋や親子・師弟の愛情を表現する美しくも切ない音楽も本作の聴きどころのひとつである。

 本作のサウンドトラック・アルバムはキングレコードから3枚発売された。タイトルは「バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第一章〜」「同〜第二章〜」「同〜第三章〜」。「第一章」には第1話〜第8話、「第二章」には第9話〜第16話、「第三章」には第17話〜第24話の音楽を収録している。さらにそれぞれの巻末には新録ドラマを収録。各CDのジャケットは、「第一章」が甲賀忍者10人衆、「第二章」が伊賀忍者10人衆、「第三章」は主人公である甲賀弦之介と伊賀の女忍者・朧の2人のイラストで飾られる粋なデザインとなっている。
 「バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第一章〜」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  一.宿怨
  二.甲賀忍法帖(TVサイズ)(歌:陰陽座)
  三.忍法御上覧
  四.悲絆—きずな—
  五.春夢
  六.殲 其ノ弐
  七.月下終焉
  八.和睦之舞
  九.殲 其ノ惨
  十.デッドヒート
 十一.変幻
 十二.寂滅
 十三.胡蝶の涙
 十四.哀別、鮮血の檻にて
 十五.殲 其ノ壱

 ※十六〜二十にドラマを収録。

 1曲目の「宿怨」は毎回のアバンタイトルに流れる音楽。重厚な弦合奏にコーラスが加わり、緊迫した曲調に転じる。忍者同士の非情の戦いを象徴する序曲だ。
 続いてオープニング主題歌「甲賀忍法帖」が流れる構成は番組フォーマットと同じ。
 その「甲賀忍法帖」は、山田風太郎作品をこよなく愛するバンド・陽炎座の作・演奏による曲。陽炎座は本作参加以前から山田風太郎の忍法帖作品をテーマにした曲を発表している。本作の主題歌を手がけたのは運命とも必然とも呼ぶべき出来事だった。この主題歌は、現在もパチスロ「SLOTバジリスク 甲賀忍法帖」シリーズのテーマ曲として使用されている。
 トラック3以降は第1話から第8話のために作られた曲になる。その使用場面を紹介すると——。
 「忍法御上覧」第1話冒頭、徳川家康御前での甲賀対伊賀の忍法対決。
 「悲絆−きずな−」第1話後半の回想シーン。甲賀弾正と伊賀のお幻との過去の因縁。
 「春夢」第2話冒頭、甲賀弦之介と伊賀の朧との逢瀬の場面。
 「殲 其ノ弐」第2話、甲賀の鵜殿丈助と伊賀の小豆蝋斎との忍法対決。
 「月下終焉」第3話、甲賀の地虫十兵衛が伊賀の薬師寺天膳に敗れる場面。
 「和睦之舞」第4話で甲賀弦之介が笛を吹き、朧が舞うシーンの笛の音。
 「殲 其ノ惨」第4話、鵜殿丈助と伊賀の女忍者・朱絹の対決場面。
 「デッドヒート」第5話、森の中で伊賀のお胡夷が不審な忍者(服部響八郎)を追跡する場面。
 「変幻」第6話、甲賀の忍者・如月左衛門が声色を使って伊賀の夜叉丸をだます場面。
 「寂滅」 第6話、伊賀の女忍者・蛍火が遠く離れた夜叉丸の死を察する場面。
 「胡蝶の涙」第7話、如月左衛門が化けた夜叉丸を見て、蛍火が思わず抱きつく切ない場面。
 「哀別、鮮血の檻にて」第8話、如月左衛門が妹のお胡夷と最後の会話をする場面。
 「殲 其ノ壱」第8話のラスト、甲賀弦之介が甲賀と伊賀の不戦の約定が解かれたことを知る場面。
 フィルムスコアリングの曲なので、場面に合わせてテンポや曲調が変わる。そのダイナミズムも聴きどころのひとつだ。ただし、一部の曲は、複数の場面の曲を1トラックにまとめたり、曲の一部を編集したりと、聴きやすいように手が加えられている。そういう意味では、劇中に使用されたままのサウンドトラックではなく、アルバム・バージョンとして聴くのがよいだろう。
 ハイライトは「殲」とタイトルにつけられた3曲のアクション曲。いずれも緊迫したリズムに重厚な管弦楽のサウンド、さらにエレキギターや篠笛、コーラスなどが絡む迫力満点の曲である。
 曲名は「殲 其ノ壱」「殲 其ノ弐」「殲 其ノ惨」となっているが、同じモチーフのアレンジというわけではない。それぞれに工夫を凝らして描かれた忍法対決場面に合わせて、音楽も変幻自在に組み立てられている。フィルムスコアリングの醍醐味である。「殲」は激しい忍法勝負の曲の総称なのだろう。「音絵巻」の2枚目以降にも「殲」と名づけられた曲は登場し、「殲 其ノ七」まで収録されている。忍者アクションものとしての本作を代表する楽曲だ。
 本作のリリカルな部分を代表する曲としては、「悲絆—きずな—」「春夢」「寂滅」「胡蝶の涙」「哀別、鮮血の檻にて」がある。凄惨な死闘の場面にも哀感がただようのが本作の魅力。悲恋の場面やはかない死の場面を美しい音楽が彩ることで、忍者の世界の非情さが際立つ。
 「寂滅」の中世教会音楽風のコーラスは哀愁と幻想味をただよわせて、人知を超えた忍法の不可思議を感じさせる。和の要素だけでなく、さまざまな民族音楽の要素も取り入れられているのが本作の音楽の特徴である。

 アルバム全体としては、ストーリーの流れに沿って曲を配し、アクションだけでなく、情感にも重きを置いた内容になっている。音楽アルバムとしてのバランスを考慮したうまい構成だ。ただ、もともと制作された楽曲数が多いため、未収録に終わった曲もたくさんある。第1話〜第8話までだけでも74曲、3時間半の音源があったそうだ。ほっとひと息つく場面に流れるほのぼのした曲などが収められなかったのは残念だ。
 とはいえ、本作が2000年代にフィルムスコアリングによるTVアニメ音楽を復活させた意義は大きい。その音楽を聴きごたえのある構成・編集でまとめたアルバム作りのお手本としても、『バジリスク 甲賀忍法帖』はアニメ音楽史に残る作品である。

バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第一章〜
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バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第二章〜
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バジリスク 甲賀忍法帖 音絵巻 〜第三章〜
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アニメ様の『タイトル未定』
257 アニメ様日記 2020年4月26日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。

2020年4月26日(日)
ニチアサのアニメは『ヒーリングっど※プリキュア』も『デジモンアドベンチャー:』も『ONE PIECE』も再放送だ(※はハートマーク)。午前中は散歩など。13時からSkypeで打ち合わせ。その後はAmazon Echoでハイ・ファイ・セットの曲を聴きながら事務所を片づける。Amazonから届いていた箱で、開けていなかったものをまとめて開けた。その中のひとつが「テレビマガジン完全復刻コレクション マジンガーZ」だ。高額商品なんだけど、この内容でこの価格は「アリ」だと思った。
Kindleで「お近づきになりたい宮膳さん」1巻と「よふかしのうた」3巻を読む。「お近づきになりたい宮膳さん」は、自分はこの年齢でこれを読んで喜んでいいのかとは思うが、かなりよかった。「よふかしのうた」は意外な展開。こっち方向で話を広げていくのか。登場人物が増えた分だけ、ナズナさんの出番は少ないんだけど、今まででいちばんナズナさんが可愛かった。

2020年4月27日(月)
日曜の22時半に起床して入浴。0時50分に事務所。4時からワイフと早朝散歩に。その後はずっと事務所に。Skype打ち合わせが1件。18時まで事務所に。
Netflixで『未来少年コナン』を1話から21話まで観た。ながらとはいえ、一日で21話分も観てしまった。8話はやっぱり作り手の想いが迸っているんだけど、今は冷静に視聴できる。21話ラストで「きっと戻ってくる。死ぬな」と言うコナンがイケメン過ぎるし、言われたモンスリーがどんな顔をしたのか気になる。気がついたら、自分はダイスよりも年上になっていた。本放送当時の印象よりも、ずっとダイスが若い。当然、モンスリーの見え方も、昔とまるで違う。観ている間に、NHKでの『未来少年コナン』再放送の告知があり、再放送の予習をしているみたいになってしまった。

2020年4月28日(火)
午前3時半に事務所に入ってメールチェックなど。4時半からワイフと早朝散歩。これからもなるべく早朝散歩をするつもりだ。公園でラジオ体操をした後は事務所でデスクワーク。Skypeで社内打ち合わせ。「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット(初回生産分)」の追加販売について「WEBアニメスタイル」で発表する。
Netflixで『未来少年コナン』を最終回まで視聴。自分の中では神格化された作品ではあるけれど、8話だけでなく、他の話数も冷静に視聴した。40年以上も前のものにしてはあまり古びていない(放映当時から「新しい作品」ではなかったのも大きい)が、やはり「往年の名作感」はある。
『未来少年コナン』制作時に宮崎さんは37歳のはず。物語や人物像だけでなく「アニメでこんな画をつくりたい」という想いも強かったのだろう。同じ舞台が連続する『赤毛のアン』でレイアウトマンを続けられなくなったのは、そのためでもあるかもしれない。Netflixでの配信の映像は16:9版だ。上下が切れて映画的になっているカットもあるのだけど、「ここは4:3で見たかった」というカットもある。
最終回のダイスとモンスリーの結婚式が大変な名場面であることに間違いはない。なにかが極まった瞬間だ。それから、シリーズ全体として、いいカットのラナの作画はかなり極まっている。モンスリーがどんどん美人になっていくのは一気観よりも、週イチで観たほうが楽しめるかもしれない。最終回の話に戻るが、結婚に対して迷いが生じたダイスが逃げだそうとして、コナンに対して「お前も今に分かる」と言う。自分が『未来少年コナン』を観たのは中学生の頃で、大人になったらダイスの気持ちが分かるかと思ったけれど、分からなかったなあ。当然、コナンにも分からなかっただろう。
Amazon Prime Videoのレンタルで「トニー滝谷」を観る。好きなタイプの映画だ。その後、「あにめたまご2020」の完成披露特別配信を観る。完成披露上映会とは違って、大勢のスタッフが顔を出すわけではないけれど、じっくりと話が聞けるということで今回の番組も悪くない。さらにその後、『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』の1話、2話を観る。どんだけ配信を観ているんだ。

2020年4月29日(水)
昭和の日。昼間はデスクワークで午後に散歩。次の書籍の作業に入らなくてはいけないのだけど、作業に入る準備で時間がかかる。
『美少女戦士セーラームーン』をYouTubeで1話から10話まで視聴。当時の記事のノリで亜美ちゃん、レイちゃんと書くのは照れくさいのでフルネームで書くけど、水野亜美も火野レイも初々しい。その初々しさは声の力も大きい。セーラームーンが単体ヒーローだった時期も独特の味わいがあるのだけど、面白くなるのは3人揃ってから。この10話前後で、当時、世間話的に聞いたけれど記事にできなかったある制作上のエピソードがある。いつか記事にしたいと思っていたけれど、まだできていない。僕が現役でいる間にそのチャンスはめぐってくるのか。配信の映像は猛烈に綺麗だった。当日のセル撮のポジより綺麗じゃないかと思うくらいだ。
『未来少年コナン』と『ふしぎの海のナディア』について気がついたことがあるので記しておく。『未来少年コナン』2話でおじいが言ったセリフが「人間は一人では生きていけない。いや、一人で生きてはならないのだ」。『ふしぎの海のナディア』13話でサンソンが言ったセリフが「人は一人では生きてはいけないし、一人で生きてちゃいけないんだ」。『ナディア』で「人は一人で生きていけない」と同じ意味のセリフを他のキャラクターも言っている。これは意識した引用ではなく、記憶に残っていて、スタッフが無意識に引き出しから出したセリフの可能性もある。

2020年4月30日(木)
金曜までに終わらせたい作業がいくつかあるのだけれど、そのうちのひとつに関して素材が足りないことが判明。作業の続きができるのはゴールデンウィーク明けだな。ギャフン。配信で『機動武闘伝Gガンダム』を観始める。1話は本放送時の10倍は面白かった。天野由梨さんの芝居もいい。

2020年5月1日(金)
56歳になった。誕生日を迎える度に、仕事を続けられている事をありがたいと思う。お世話になっている皆さんに感謝。幸運に感謝。
早朝散歩で、午前5時からやっているパン屋に。できたてのアンパンを買う。できたてだと、アンコが温かいのだ。その後はデスクワーク。ゴールデンウィークの本番に突入する前に、色々なことを片づける。他の方も同じことを考えているようで、あちこちから連絡がくる。「今石洋之アニメ画集」の見本が印刷会社から届く。『機動武闘伝Gガンダム』を17話まで観た。旧シャッフル同盟についてはスパロボで記憶が上書きされていて、登場した途端に死ぬんだと思っていた。

2020年5月2日(土)
ゴールデンウィーク本番の1日目。誕生日の翌日ということもあり、ほぼ休日。作業はMacのフォルダの整理、事務所の片づけなど。Kindleで「バーナード嬢曰く。」最新5巻を読む。満足満足。以前の記述と重複するけれど、この作品を読むと自分の学生時代を思い出す。あんなに本を読んでいたわけではないのだし、登場人物のように理知的だったわけではないのだが、気持ちが重ねやすい。自分があんな学生時代を送っていたような気になってしまう。続けて1巻に戻って、読み直す。夕方から吉松さんとSkype吞み。