アニメ様の『タイトル未定』
183 アニメ様日記 2018年11月25日(日)~

2018年11月25日(日)
WOWOWの「惑星大戦争」「宇宙からのメッセージ」を流しつつ原稿作業中。この2本を連続で放送するのは、いいプログラムだなあ。いつも行く公園の猫の1匹がもらわれていったことを知る。誰かの家で飼われるほうが、猫にとっては幸せなんだろうけど、さよならが言えなかったのがちょっと悲しい。

2018年11月26日(月)
来年出版するある書籍のための取材。帰りにササユリカフェの「人狼 JIN-ROH 沖浦啓之展」をのぞく。展示物は多くはないが、レアな資料がいくつも。今さら言うまでもないことかもしれないが、やはり、沖浦さんの画力は凄まじい。

2018年11月27日(火)
「アニメスタイル014」のある記事のために、ある会社で打ち合わせ。その帰りに「2018神宮外苑 いちょう祭り」に。売店でSuicaなどのカードが使えるようになり、非常に便利になっていた。ロングインタビューのチェックが戻ってくる。本人の直しも、メーカーの直しも、一箇所もなし。体調がいまひとつなので病院に。治りかかった風邪が治りきらない状態が続いてるらしい。風邪薬をもらった。

2018年11月28日(水)
午前中はDVD『DETONATORオーガン』を流しながら作業をした。「アニメ産業レポート2018」が12月に刊行されることを知る。刊行が遅れているようなので、ちょっと心配していた。いや、他の人の心配をしている場合ではないんだけど。

2018年11月29日(木)
まだ風邪が治りきらない。と言っても休んでいるわけにもいかないので、ジワジワと作業を進める。作業をしながら、近々に配信が終わるらしい「飛びだす冒険映画 赤影」をAmazon Prime Videoで観る。当時劇場で観ているはずだけど、小さい頃のことで、まるで内容を覚えていない。赤影が観客にメガネをかけるように言うのだけは覚えていた。最後に立体メガネを使わない立体視があって、それをネタに赤影が映画館にいるお客さんに語りかけて「ハハハハハ」と笑って終わるのね。これも覚えていなかった。続けて「飛び出す人造人間キカイダー」「飛び出す立体映画 イナズマン」を観る。考えてみると、劇場版の『プリキュア』でミラクルライトについて観客に呼びかけるのは、「東映まんがまつり」の一連の立体映画がルーツだなあ。

2018年11月30日(金)
今度はAmazon Prime Videoで近々に配信が終わるらしい『悪魔くん』(劇場版・第1作)を視聴。Amazon Prime Videoの配信タイトルをチェックしていて、シンエイ動画版の『怪物くん』を見つける。前から観返したかった「カミキル博士とハイタ氏」を視聴する。「カミキル博士とハイタ氏」は前後編で、前編にはリアルタッチのプロレスラー達が出てくるのだが、その作画が凄い。その作り込みゆえに相当な異色編となっている。Amazon Prime Videoではエンディングがカットされているが、検索してみたところ、この話の原画の筆頭が木上益治さんであったようだ。多分、特に作画がいいところが木上さんの原画なのだろう。その後、『怪物くん』で木上さんが作画で参加している回を再生する。

2018年12月1日(土)
やらなくてはいけないことが山のようにあるけれど、今日は明日以降に作業を進める準備をする。というつもりだったのだけど、その準備もあまり進まず。

第153回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(2)

 2019年1月13日に開催するトークイベントは「第153回アニメスタイルイベント 『この世界の片隅に』に至る道(2)」だ。
 「『この世界の片隅に』に至る道」は、片渕監督が『この世界の片隅に』を手がけるまで、どのような道をたどってきたのかについて、じっくりとうかがうイベントシリーズである。今回は彼が若き日に関わった『NEMO』のトークの中心となる予定だ。

 会場は前回の阿佐ヶ谷ロフトAではなく、新宿のLOFT/PLUS ONEだ。くれぐれもお間違えなきように。また、今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は12月8日(土)から発売開始。詳しくは以下のリンクLOFT/PLUS ONEのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/105121

第153回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(2)

開催日

2019年1月13日(日)
開場12時00分 開演13時00分 

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となるLOFT/PLUS ONEはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第590回 アニメーターという職人

 そういえば何回か話題に上げた「1カットだけ原画を描いた『ポケモン』」が放映されたようですね(自分はまだ観てませんが)。飯島正勝先生(第585回)らの「東デ(東京デザイナー学院)OBで1本やろう」という呼びかけに応じての参加。「1カット1発原画なら」とお引き受けしたんですが、上手く描けなかったかも(汗)。『深夜バカボン』の時もそうでしたが「忙しい、忙しい!」と言いながらも飛び込みで入ってきた原画の仕事をササッ! とこなせる職人でありたいと常々思ってます、コンテも演出も作監も。ただでさえ人手不足の業界で「俺様は作家だから高いよー」とアーティスト気取りでもったいぶったって何も寄与しないと思うから。自分は常に

技術を持つことの素晴らしさ!!

を後輩らに伝えていきたいと思っているのです。

アニメ様の『タイトル未定』
182 アニメ様日記 2018年11月18日(日)~

2018年11月18日(日)
早朝に新文芸坐に。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル Vol. 109 宇宙の星よ永遠に 『無敵超人ザンボット3』の終盤に立ち合う。上映も少し観た。画も綺麗になっているが、音もいい。最終回のラストシーンは波の音がよかった。昼と午後は、冬に出す書籍のためのテキスト作業。

2018年11月19日(月)
この日も、冬に出す書籍のためのテキスト作業。

2018年11月20日(火)
明日の映画のチケットを購入。この映画に行くためには今日中に原稿を終わらせなくては。作業をしながら、劇場版『魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語』と『[後編] 永遠の物語』を観返す。やっばりよくできているし、面白い。序盤の(TVシリーズだと1話の部分)の何気ないセリフが、伏線になっているのも巧い。
打ち合わせで「『電脳コイル』のデンスケの名前って、コメディアンのデン助(大宮敏充)からきているのかなあ」と話したのだが、その場にいる人達には通じなかった。その話から思い出したのだけど、『アキハバラ電脳組』でパタPiにデンスケという名前がつけられた時も「今どき、分かんないですよ」とスタッフが言い合っていた(自分も言ったかもしれない)。『アキハバラ電脳組』から20年経っているんだから、通じなくても仕方がないか。あ、『アキハバラ電脳組』のデンスケも、『電脳コイル』のデンスケも電脳ペットだ。それから『アキハバラ電脳組』のデンスケはテープレコーダーのデンスケからとられている可能性もあるなあ。

2018年11月21日(水)
早朝、事務所で『終電後、カプセルホテルで、上司に微熱伝わる夜。 』をまとめて観る。これは観ていて照れるなあ。午後はユナイテッド・シネマとしまえんでIMAX「ボヘミアン・ラプソディ」を観る。クライマックスのライヴエイドのスケール感、臨場感は凄まじいほどのものだった。IMAXで観てよかった。よい企画と予算と才能とがあればここまで凄いものが作れるのだなあ。

2018年11月22日(木)
確認することがあって『月刊少女野崎くん』1話を観直す。やっぱり面白い。そして、『多田くんは恋をしない』がようやく分かったような気がした。午後は冬に出す書籍のために、二度目の取材。

2018年11月23日(祝・金)
午前中に「ボンズ20周年記念展」のPart2に行く。午後は学生さんの面接。東映チャンネルで放映中の『空飛ぶゆうれい船』を観る。いやあ、綺麗だなあ。

2018年11月24日(土)
トークイベント「第151回アニメスタイルイベント 馬越嘉彦の仕事を語る!2」を開催。今回の出演は馬越嘉彦さん、長濵博史さん、長峯達也さん、西位輝実さん。今回も楽しいイベントになった。『十兵衛ちゃん2 -シベリア柳生の逆襲-』制作時の西位さんのニックネームがジャブであるのは前から知っていたが、目の前で長濵さんが「ジャブ」と呼ぶのを見ることができたのはちょっと嬉しかった。トークでは「ジャブ」というニックネームがついた経緯を長濵さんに語っていただいた。

第152回アニメスタイルイベント
井上俊之の作画を語ろう・2019

 2019年最初のトークイベントは「第152回アニメスタイルイベント 井上俊之の作画を語ろう・2019」だ。
 「井上俊之の作画を語ろう」はカリスマのニックネームで親しまれているスーパーアニメーターの井上俊之に、作画について思う存分に語ってもらう企画である。2018年7月に第一弾を開催し、今回は第二弾だ。トークでは様々なテーマが語られるはずだが、そのうちのひとつが『電脳コイル』となる予定だ。井上俊之以外の他の出演者については、決まり次第発表する。

 今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は2018年12月1日(土)から発売開始。詳しくは、以下のリンクの阿佐ヶ谷ロフトAのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/105124

第152回アニメスタイルイベント
井上俊之の作画を語ろう・2019

開催日

2019年1月6日(日)
開場18時00分 開演19時00分 

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

井上俊之、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第589回 動画と原画と作監

 前回からの続き。アニメーターとして動画・原画・作監とひととおりキャリアのある方なら、口に出さないまでも薄々感じてる方のほうが多いと思うのですが

動画が早くてキレイな人が巧い原画マンになるとは限らないし、その激巧な原画マンが必ずしも良い作画監督になるとは限らない!

のです。いつの時代でも先達らは「今の若いモンは」「俺らが新人の時は」などと叱咤し、自身が味わったのと同じ苦労を後輩・新人にも課そうとするものです。アニメーターで言うと

動画は月1000枚で1人前!
原画は月で半パートが基本!
作監になるには最低原画5年のキャリアが必要!

などなど。これらは実際、自分が新人の頃、先輩に言われた事柄です。ちなみに俺が新人の頃は、動画月300〜400枚で3年間、原画は月5〜60カット(ただしテレコムはアメリカの合作時は秒換算になるので月6〜70秒)で4年間。その後フリーで演出2年ほどやって、監督をやらせてもらえるようになり、監督キャリアはもうぼちぼち15年でしょうか。ね? 月1000枚も月半パートもこなせてなくても、なんとかやってます。要するに、例えば「動画何百枚を何ヶ月続けたら原画試験を受けられて、原画何年で作監へ」と決まってる会社(スタジオ)があったとして、多分そこにはそれほど根拠などなく、ただただスタジオの作画の長が「自分の若かった頃は」の根性論を当てはめて「自分と同じ苦労を味わっていない人は上へ上げたくない」を実践してるだけな場合が多いと思うのです。体育会系的な。だから、これはあくまで私見ですが

昨今、人での足りないアニメ業界で必要なことは「アニメの本数を減らせば人手が足りる」理論などではなく、動画マン・原画さん・作監様の階級意識を少々考え直し、そのスタッフが今できることを会社側が適材適所に上手く配置して、とにかく「画の生産量」を上げる——極端に言うと、アニメ一筋の職人だけで画を作ろうとするのではなく、パート・アルバイトもPCを使ってアニメ作りに参加してもらうべきでは?

と。PC・デジタル作業を使えば比較的単純作業を増やすことができますから。自動中割りとか。それに重労働なアニメ作りはイヤでも、パート・アルバイト感覚の距離感でならアニメ作りに参加してみたい! という人は結構いると思いますから。そもそも、良い動画マンと良い原画マンと良い作監にはなんの因果関係もない——あ、ここまで言うとぶっちゃけ過ぎか!? 申し訳ありません。 

第145回 音楽に託された陰影 〜METROPOLIS〜

 腹巻猫です。12月19日にディスクユニオンのCINEMA-KANレーベルから特撮TVドラマ「電光超人グリッドマン」の完全版サウンドトラックが発売されます。当コラムで「いつの日か完全版サントラを」と書いた夢が、アニメ版放映中というまたとないタイミングで実現! 初収録音源も収録されるそうなので楽しみです。

電光超人グリッドマン オリジナル・サウンドトラック
https://www.amazon.co.jp/dp/B07K298VFZ/


 去る10月に劇場作品「2001年宇宙の旅」(1968)の70ミリ上映とIMAX上映が相次いで行われ、映画ファン、SFファンの間で話題になった。公開当時は遠い未来に思えた2001年がもう10年以上昔なのだから時の経つのは早い。
 今回は、その2001年に公開された劇場アニメ『METROPOLIS』の話。

 『METROPOLIS』は、手塚治虫が1949年に発表した同名マンガ作品を原作に、大友克洋が脚本、りんたろうが監督を手がけたSF劇場アニメ。アニメーション制作はマッドハウスが担当した。
 「2001年宇宙の旅」とは対照的に、本作の舞台となる未来世界は、手塚マンガの描線を受け継ぐ、丸っこく懐かしく感じられるデザインで描かれている。レトロフューチャーというやつである。2003年から放映されたTVアニメ『ASTRO BOY 鉄腕アトム』も同様の世界観で作られていた。手塚治虫作品にカクカクしたフォルムは似合わないということだろう。
 ロボットと人間が共に暮らす未来の大都市メトロポリス。私立探偵の叔父・ヒゲオヤジと一緒にメトロポリスを訪れた少年ケンイチは、火事の現場から人造人間の少女ティマを助け、仲良くなる。が、ティマはやがてロボットを率いて反乱を起こし、悲劇的な最期を遂げる。ティマは原作のミッチィにあたるキャラクター。骨格となるプロットはマンガ版と同じだが、細かい設定や人物配置などはアレンジされている。CGで緻密に作り込まれた背景と名倉靖博がデザインした繊細なタッチのキャラクターとの共演が見どころだ。

 音楽は本多俊之。りんたろうからはジャズを基調にした音楽がリクエストされた。もともと音楽好きで虫プロ時代は田代敦巳らとジャズバンドを組んでいたというりんたろう。本作ではなんとバスクラリネット奏者としてサントラの演奏に参加までしている。
 本多俊之は1957年生まれのサックス奏者・作曲家。プレーヤーとして活躍しながら、「マルサの女」(1987)、「ガンヘッド」(1989)などの映画音楽を手がけている。中でも一連の伊丹十三監督作品の音楽は映画ファンに広く知られる代表作だ。
 アニメでは1994年にOVA『真・孔雀王』の音楽を担当。このときの監督がりんたろうだった。音響監督の三間雅文とも『METROPOLIS』で再び組むことになる。『METROPOLIS』以降は、劇場アニメ『茄子 アンダルシアの夏』(2003)、OVA『太陽の黙示録』(2006)等の音楽を担当。りんたろう監督とのコラボは劇場アニメ『よなよなペンギン』(2009)を経て、プライベート短編アニメ『アブラカダブラ』まで続いている。
 レトロフューチャーとジャズは相性がいい。同じくレトロフューチャー的世界観を打ち出したTVアニメ『Project BLUE 地球SOS』(2006)の大島ミチルの音楽もビッグバンドジャズを基調にしたものだった。音楽をジャズで、というアイデアは「手塚治虫の描いた“輝かしい未来”をジャズで包みたい」というりんたろうの思いから生まれたものだった。
 しかし、ジャズの専門家である本多俊之は、安易にジャズを導入しなかった。ここからが本作の音楽の面白いところである。
 メインテーマはディキシーランドスタイルのジャズ。しかし、場面によってはクラシカルな管弦楽スタイルの曲も併用されている。また、ジャズの曲でも、陽気なジャズからクールなジャズまで、スタイルがさまざまに変化する。ジャズミュージシャン・本多俊之ならではの音楽設計が聴きどころだ。

 サウンドトラック・アルバムは映画公開と同じ2001年5月にキングレコードから発売された。初回盤はスリーブケース入りで、りんたろう監督と本多俊之の対談が掲載されたブックレットが付属していた。

  1. METROPOLIS
  2. FOREBODING
  3. ZIGGURAT
  4. GOING TO “ZONE”
  5. SNIPER
  6. EL BOMBERO
  7. THREE-FACED OF “ZONE”
  8. “ZONE” RHAPSODY
  9. HIDE OUT
  10. RUN
  11. ST.JAMES INFIRMARY
  12. SYMPATHY
  13. SNOW
  14. PROPAGANDA
  15. CHASE
  16. JUDGEMENT
  17. AWAKENING
  18. FURY
  19. AFTER ALL
  20. THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE -THE THEME OF METROPOLIS-

 全20曲。本編で使用された曲のほとんどが劇中使用順に収録されている。
 アクション系作品のサウンドトラックでは30曲以上の音楽が使われることも珍しくないが、本作の音楽の使い方は実にストイック。サントラ盤の全曲を合わせても60分にしかならない。本当に音楽が必要なシーン、効果のあるシーンに限定して音楽が流れている。この巧みな音楽演出も本作の特徴のひとつだ。
 本作の音楽はすべて絵に合わせたフィルムスコアリングで作られている。2分を超える長い曲が多く、ひとつの曲の中でも、場面の展開に合わせて曲調が次々と変わっていく。ドラマを想起しながら聴けば、いっそう味わい深い。
 超高層ビル「ジグラット」とメトロポリスの威容を映し出すオープニングのバックに流れるのが1曲目の「METROPOLIS」。本作のメインテーマである。ディキシーランドジャズスタイルの軽快な曲だ。メトロポリスとジグラットが象徴する「輝かしい未来像」を表現する明るく浮かれた音楽になっている。本多俊之はこのメロディを、最初に打ち合わせした帰りの車の中で思いついたという。
 事件の始まりを予感させる2曲目「FOREBODING」はジャズではなく、オーケストラによる管弦楽スタイルで書かれている。メトロポリスを牛耳るレッド公の強大な権力を表現する「ZIGGURAT」、サスペンスタッチの「SNIPER」「HIDE OUT」「CHASE」「JUDGEMENT」「AWAKENING」なども同様のスタイルで書かれた伝統的な映画音楽風の曲。「ジグラットを中心とする地上世界」はクラシカルなオーケストラで描こうというのが本多俊之のアイデアだったそうだ。メインタイトルや地下世界を描写するジャズタッチの音楽と対照的で、本多俊之の映画音楽作家としての力量を感じさせる。
 ケンイチとヒゲオヤジがメトロポリスの地下世界「ZONE」へと降りていく場面に流れるのがトラック4「GOING TO “ZONE”」。ジャズタッチではあるが、陽気なディキシーランドスタイルではなく、退廃的でダークなスタイルのアレンジになっている。ここで聴こえるバスクラリネットがりんたろう監督の演奏だろうか。
 ティマを創り出した博士の研究所が燃え上がり、消防士ロボットが出動する場面に流れるのがトラック6の「EL BOMBERO」。曲名はスペイン語で「消防士」の意味だ。コーラスをフィーチャーしたアバンギャルドなスタイルのジャズで書かれている。緊迫した場面のはずなのだが、音楽のおかげでユーモラスな空気がただよう。シリアスな場面に突然マンガチックなキャラが登場する手塚治虫の原作マンガを思わせる。未来世界の歪んだ一面を描くための異化効果をねらったものだろう。映像と音楽がコラボした名シーンのひとつである。
 トラック7「THREE-FACED OF “ZONE”」もZONEを描く音楽。「GOING TO “ZONE”」と同様に陰のあるミステリアスなジャズで書かれている。ZONEは、メトロポリスの繁栄を支える下級労働者の居住区や下水処理施設などが置かれた地下区域。大都市の暗部を象徴するサウンドである。
 この曲では、後半に登場するピアノによる美しいティマのテーマも聴きどころだ。ピアノは、TVアニメ『宇宙船サジタリウス』の音楽でも知られるピアニスト・作曲家の美野春樹。メインテーマと並ぶ、本作の音楽を構成する重要なテーマのひとつである。
 ケンイチとヒゲオヤジがレッド公の養子・ロックの行動を怪しんで尾行する場面のトラック8「”ZONE” RHAPSODY」はメインテーマをアレンジしたジャズ。ディキシーランド風の陽気な曲調で地下街に住む住民のバイタリティを表現したあと、ダークな曲調に転じて、より深い階層のZONEの秘密めいた雰囲気を表現する。
 ロックの追跡からケンイチとティマが逃げる場面のトラック10「RUN」は、メインテーマのモチーフを使った現代的なスタイルのジャズ。後半に登場するピアノのアドリブがぞくぞくするほどスリリングで、音楽的にも聴きごたえのあるナンバーになっている。
 このあとのシーンで、ティマが拾ったラジオからエンディング主題歌「THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE」が一瞬流れる。音楽的な伏線とも呼べる秀逸な場面だ。
 トラック11の「ST.JAMES INFIRMARY」はアメリカの古典的なブルース。本作用に新録された音源が使われている。ケンイチとティマがかくまわれた、革命家アトラスのアジトで流れる曲だ。アジトの屋根に立つティマの肩に鳩が止まり、光に照らされたティマが天使のように見える。しかし、そこに流れる曲は、亡くなった子(娘)に会うために病院を訪れる悲しい男の歌。ここでも音楽が物語の展開を暗示する伏線になっている。
 ピアノと弦によるティマのテーマのアレンジ曲「SYMPATHY」(トラック12)は、ケンイチとティマの束の間のふれあいの場面に流れる曲。アルバム全体の中でもとびきり心に沁みる、しっとりと美しいナンバーである。
 物語の折り返しとなる重要な場面に流れるトラック13「SNOW」は、6分を超える長い曲。アトラスが主導した革命が失敗し、破壊されたロボットや傷ついた人々が倒れる街に雪が降る。茫然としたケンイチたちが街をさまよう場面に流れる曲だ。メインテーマをディキシーランドジャズ風にアレンジしたメランコリックなマーチが葬送行進曲のように聴こえる。
 ケンイチたちの前にロックが現れると音楽は弦楽器中心のクラシカルな曲調に変わり、ロックの暗い情念を映し出す。ケンイチ、ティマとロック、そしてレッド公との対立と葛藤が音楽で表現される。これこそ映画音楽の醍醐味だ。この一連の場面は、りんたろう監督自ら「キャラクターの芝居のテンションと音楽がシンクロしている」と語る名場面。ちなみにオーケストラ曲のコンダクターを務めたのは中谷勝昭。70年代から数々のアニメ・劇場作品の音楽の指揮者として活躍する名指揮者である。
 ここからはジャズは影をひそめ、管弦楽スタイルの曲が続く。激しい怒りを意味する「FURY」というタイトルがついたトラック18は、全編の大詰め、ティマがロボットたちを率いて反乱を起こす場面に流れる曲。オーケストラを駆使したドラマティックでシリアスな音楽になっている。アルバム全体の大詰めとなる曲である。
 本作のクライマックスはCGを駆使して描かれるジグラット崩壊シーン(りんたろうが監督した劇場版『銀河鉄道999』の惑星メーテル崩壊シーンを彷彿させる!)。そこにはレイ・チャールズが歌う「I Can’t Stop Loving You」が流れるのだが、残念ながらサントラ盤には収録されていない。劇中で流れるほかの楽曲はすべて本作のために録音された音源だが、本曲だけは1962年にヒットしたオリジナル音源が使われている。おそらくは権利関係から収録が難しかったのだと思うが、未収録が惜しまれる。
 「I Can’t Stop Loving You」は、別れた恋人を想う切ない愛の歌だ。この曲をバックに展開するクライマックスは、スリルと悲哀と解放感とが入り混じったビターな味わいのシーンになっている。ケンイチとティマのドラマを締めくくる曲としては、あまりにも大人びていて、悲しい。この曲には、りんたろうが本作に込めた思いが象徴されているようである。
 エピローグの音楽「AFTER ALL」(トラック19)はメインテーマを軽やかにアレンジしたジャズ。スイングする曲調がロボットと人間が共存する明るい未来を予感させ、作品全体をほっとした雰囲気で締めくくってくれる。
 そして、エンドクレジットに流れる「THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE」(トラック20)は、本作のために本多俊之が書いたオリジナルのジャズソング。冒頭から聴こえているメインテーマのメロディが実はこの曲の旋律であったことがわかる。歌詞は、ティマからケンイチへのメッセージ。「I Can’t Stop Loving You」へのアンサーとも受け取れる内容だ。歌詞を知って聴くと、いっそうぐっとくる。

 近年はポジティブな面が強調されることの多い手塚治虫作品だが、もともとは人間の暗い面や歪んだ面を取り込んだ、ハッピーエンドに収まらない複雑な味わいが魅力だった。
 本作でも、メトロポリスの光と影、人間とロボットの間で揺れるティマ、ロボットと人間の共存と断絶など、多面的なテーマが物語と映像の奥に垣間見える。さまざまなスタイルを駆使した本多俊之の音楽は、映像だけでは描ききれない陰影とほろ苦い情感をみごとに表現している。つい映像に目を奪われてしまう本作だが、音楽が果たす役割もとても大きい。りんたろう監督の音楽へのこだわりが結実したサントラである。

メトロポリス オリジナル・サウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
181 アニメ様日記 2018年11月11日(日)~

2018年11月11日(日)
池袋HUMAXシネマズの10時20分の回で『続・終物語』を観る。長い作品ではあったけれど、長さは気にならなかった。イベント上映ということは、おそらくはTVシリーズとして作られたものの、劇場公開版なのだろう。映画らしいメリハリはなかったけれど、楽しめた。冬に出す書籍のためにバンダイチャンネルで『ムダヅモ無き改革』を観る。

2018年11月12日(月)
作業をしながら、昨日の『サザエさん』の録画を観る。好きな食べ物を聞かれたワカメが「ご飯のおこげのところと、お魚の目玉。それから、お茶に梅干し入れて飲むの」と答えていた。これは原作を使ったパートで「お茶に梅干し入れて」の部分はオリジナルだと「お茶におしょうゆ入れてのむの」だったようだ。原作が発表された頃と違って、ワカメが好みの渋い子になっている(魚の目玉は、渋いのとも違う気がするが)。『クレヨンしんちゃん』も観る。しんのすけ(小林由美子さん)とぶりぶりざえもん(神谷浩史さん)が会話をしていたけど、違和感ないなあ。凄いなあ。

2018年11月13日(火)
『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観た後、色々と気になることがあって『交響詩篇エウレカセブン』のながら観を始めた。今観ると初々しさのある作品だ。 今日は1話から15話の途中まで観た。前にも書いたけれど、学生アルバイトさんに事務所の倉庫の整理をお願いしている。また、文庫本が入った段ボール箱が出てきた。角川mini文庫の「機動戦艦ナデシコ チャンネルはルリルリで★(ハートマーク)」が湿気でゴワゴワになっていた。古本で買い直そう。

2018年11月14日(水)
『交響詩篇エウレカセブン』を15話終盤から30話まで観た。仕事の合間に、池袋マルイで開催されている「魔神英雄伝ワタル30周年記念展」に行く。見どころは当時のセル画だった。キャラクター設定も懐かしかった。キャラクター設定には芦田豊雄さん(あるいはスタジオライブ)の個性が色濃く出ている。

2018年11月15日(木)
年末年始にギッチリと作業をしなくてはいけないことが分かった。9月、10月に割と余裕があったのでプラマイゼロだ。

2018年11月16日(金)
『交響詩篇エウレカセブン』ラスト2話を観る。今までの視聴で一番楽しめた。すでに内容を知っている4クールのアニメを、連続で観るのもいいなあ。現在の仕事が一段落したら、他の作品でもやってみよう。『おおきく振りかぶって』を12話から観始める。前にどこまで観たのかが分かるところも、ネット配信のありがたいところだ。今回の視聴ではお母さんなどの試合に参加しない人達に感情移入した。

2018年11月17日(土)
急に打ち合わせが決まって、中央線方面のスタジオで、冬に出す書籍関連の打ち合わせ。夜、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル Vol. 109 宇宙の星よ永遠に 『無敵超人ザンボット3』を開催。トークのゲストは氷川竜介さん。内容の濃いトークになったのではないかと。『ザンボット3』の劇場版についての詳細は僕も初めて知った。

第588回 もう少し作監話

 昨今のアニメ作品は作画監督・総作画監督の人数が増えまくってて、「こんなに修正する人ばかり増えたらキャラクターもバラバラになって、作監だろうが総作監だろうが意味を成さないじゃん!」なんて言われて久しい状況です(汗)!

 この件に関して今さら鬼の首を取ったかのように「あれが問題だ! それも問題だ! こっちもなんとかしなきゃ!」と業界の中心でわめき散らしてもしょうがないし、じゃあ簡単に「アニメ作る本数減らせば云々」を仰る方々にも数えきれないくらい会いましたが、そんな単純な話で片付くとも思えません。そもそも俺程度のアニメ監督が何言ったって業界に耳を傾けてもらえるわけもないし。だから自分は

社内スタッフと一緒に、現状に合った——例えば作監が足りないなりの作り方を模索する!

と。ミルパンセ立ち上げは最初からそれが目的だったから、いくら巧くても旧態依然とした作り方に拘る人には声をかけずに、すべて新人を育てるところからと決めてたんです(あ、キャリアのある方でも新しい作り方の模索を面白がってくれるのであれば当然ウェルカムですよ!)。
 なので、ウチは「良い作監を探してくるのが制作の仕事だろう!」と叱責する前に、まず新人を見渡して

板垣の指導ありで作監の仕事ができそうな人を持ち上げる! もちろん本人がやりたがるかどうかを聞いた上でです!

 これはアニメーターとして動画・原画・作監とひととおりのキャリアのある方なら、口に出さないまでも薄々は感づいている方のほうが多いと思うのですが——てとこでまだ次回も作監の話が続きそう。そして今回も短くてすみません!

アニメ様の『タイトル未定』
180 アニメ様日記 2018年11月4日(日)~

2018年11月4日(日)
午前中からワイフと新宿御苑で散歩。午後、事務所に戻ったら、映画・チャンネルNECOでOVA『ブラック・ジャック』の一挙放送中だった。途中から途中までを観ただけなのだけど、非常に映画的だったし、登場人物に人間的な厚みが感じられ、それが素晴らしかった。今まで自分はこの作品のどこを観ていたのだろうか、きちんと対峙していなかったのではないかと思った。この日、僕が観たのはシリーズ前半の話数で、ビスタサイズでの放映だった。Blu-ray化の際に、スタンダードサイズだったエピソードをビスタサイズで収録したという話は聞いていたが、それと同じバージョンだったのだろう。

2018年11月5日(月)
バルト9の10時10分からの回で『映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』を観る。出だしの初代コンビの活躍だけでも劇場で観たかいがあった。映画自体の感想とはズレるけれど、稲上晃さんのオリジナルキャラクターをもっと観たいと思った。『プリキュア』シリーズ以外の作品で観たいなあ。
事務所に戻って、録画してあったOVA『ブラック・ジャック』の1話から3話を観る。今、観ると、ブラック・ジャックが出崎さんに見えるところがある。特に女子高生との距離の取り方とか。思い出したけど、OVAリリース当時にも、エンディングの笑みを浮かべている止め絵のブラック・ジャックは、出崎さん自身が投影されていると思っていた。

2018年11月6日(火)
来年刊行予定の絵コンテ本、原画集についての打ち合わせ。

2018年11月7日(水)
午前中は取材の予習で『メガロボクス』Blu-rayを観る。映像特典の新作短編がいい。ほぼ止め絵ではあるのだけど、森山洋濃度が高い。13時から「この人に話を聞きたい」で森山さんの取材。『メガロボクス』のことだけでなく、『進撃の巨人』『ギルティクラウン』などのイメージボードやビジュアルデザインの役職で参加した作品についても。

2018年11月8日(木)
昼は、事務所で「孤独のグルメ」のドラマを観ながら、カロリーメイトを食べる。わざわざ寂しい気持ちに浸りたかったわけではないけれど、そんな状況になってしまった。午後は、八王子で開催されていた特別展「王立宇宙軍 オネアミスの翼展 SFアニメができるまで」に。初見の資料が山のようにあった。若きクリエイター達の才能と情熱が溢れていた。ムックに小さいサイズで載っていたデザイン画を、原寸で見られたのもよかった。
紙のアニメ雑誌の終焉が近いのかもしれない、と思う出来事が、今週ふたつあった。それ以外も、この数か月、紙のアニメ雑誌のピンチを感じることが多かった。「急にきた」感じだ。単純に雑誌が売れないから、というのとは少し違った問題だ。

2018年11月9日(金)
冬に出す書籍のためのインタビュー取材。

2018年11月10日(土)
TOHOシネマズ上野の9時20分からの回で『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観た。ありとあらゆる意味で予想していたのと違う映画だった。ロボットアニメの枠組みとか、今までの『エウレカセブン』から「脱出しようとした作品」という印象だった。気になる点がいくつかあったので、TVシリーズを観直したい。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110
〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション

 奇想とリアリティの共存、作り込まれた密度の高いビジュアル、観客を惹きつける演出的な手腕。今 敏監督が手がけた作品は斬新であり独創的。そして、今 敏は「映画」らしい「映画」を撮ってくれる監督だった。

 12月22日開催のオールナイトは「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110 〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション」。今 敏監督の中から『PERFECT BLUE』『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』の3本を上映する。イベントタイトルの〈聖夜の奇跡〉は、クリスマスの晩に物語がはじまる『東京ゴッドファーザーズ』にちなんだものだ。

 トークコーナーのゲストは『千年女優』と『東京ゴッドファーザーズ』に参加しているアニメーターの井上俊之を予定。前売り券は11月17日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

※チケットは完売しました。当日券の販売はありません

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110
〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション

開催日

2018年12月22日(土)

会場

新文芸坐

料金

当日一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

井上俊之、小黒祐一郎

上映タイトル

『PERFECT BLUE』(1998/81分/BD)
『千年女優』(2001/87分/35mm)
『東京ゴッドファーザーズ』(2003/91分/BD)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第587回 作画監督の話、続き

 前回の続きと言いつつ、重複する部分があってもご容赦ください。作画監督とは本来は原画の監督。日本で初めて作画監督制が導入されたことで有名な『わんぱく王子の大蛇退治』(1963年)ではクレジット上でも「原画監督・森康ニ」とあります。テレコム時代、大塚康生さんは「作画ちゅうのは演出の意図を汲んで『ここはこうした方がいいかな』ってトコを直す、つまり原画の直し屋」と仰ってました。さらに「なんでもかんでも全部直すなんてできないから、僕はその話数(例えば『旧ルパン三世』)でいちばん多く原画を担当した人の画に合わせる。そうするとその人の原画は直さなくていいでしょ?」とかも。あと「『旧ルパン三世』の○話は僕、修正入れてませんから」とも。まあ、たぶんそれらは大塚さんのサービストークだと思います。だってあれだけ手の速い方がそんな手抜きする必要はありませんから。それは「キャラだけ似せるのが作画の仕事じゃないよ」の大塚さん流の言い方だったのかもしれません。
 でも出崎統監督作品における杉野昭夫さんの作画はキャラ+表情芝居の全直し。全部杉野さんの画のアニメを作る! しかもTVシリーズで! 80年代のは本当に全部だったと思います。つまり出崎アニメの杉野作監は、実写に置き換えると全登場人物を1人で演じ分けるようなものかと。杉野さんだけでなくもちろん大塚さん、そして学生時代の恩師・小田部羊一先生らがそれを可能であると証明したからでしょうか? 実際90年代に入ると、アニメの、特にTVアニメの花形は「キャラデ総作監」という時代になったんだと思います。自分の同期でも、夢としてそれを語ってる人は多かったですから。ところがそれは作監ではなく「総作監」!

第144回 異世界に流れる音楽 〜王立宇宙軍 オネアミスの翼〜

 腹巻猫です。サントラDJイベントSoundtrack Pub【Mission#37】の開催が決まりました。12月15日(土)15時〜20時、いつもの蒲田studio80(オッタンタ)にて。特集は「80年代アニメサントラ群雄割拠時代〜キャニオン編(完結編)」と11月・12月発売の注目盤を紹介する「サントラ最前線」。サントラDJを募集します。DJ未体験という方もこの機会にどうぞ! 募集期間は11月末まで。詳細は下記をご覧ください。
http://www.soundtrackpub.com/event/2018/12/20181215.html


 今回取り上げるのは、1987年3月に公開された劇場アニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(公開時タイトルは『オネアミスの翼 王立宇宙軍』)。山賀博之監督をはじめ、当時は無名だった貞本義行、庵野秀明、樋口真嗣ら若手スタッフが結集して作り上げた、今や伝説的作品となっている劇場用長編SFアニメである。
 架空のオネアミス王国を舞台に、人類初の宇宙飛行士に志願した宇宙軍の若き士官シロツグが宇宙に飛び立つまでを描いた物語。
 言語、宗教、文化、建築、風俗、日用品、工業品に至るまで、膨大な設定とデザインを起こして描かれた異世界描写が見どころだ。その製作資料・設定資料を展示する展覧会「王立宇宙軍 オネアミスの翼展 SFアニメができるまで」が、11月11日まで八王子市夢美術館で開催されていた。筆者も駆け込みで観に行って圧倒されたのだが、ちょっと残念だったのが音楽関係の資料がなかった点だ。
 若いスタッフが集まった本作だが、音響監督はベテラン・田代敦巳が務めている。効果は柏原満という『宇宙戦艦ヤマト』のコンビ。声の出演もシロツグ役・森本レオをはじめ、実力派俳優・声優が多くキャスティングされた。若いスタッフが創り上げた映像をベテランスタッフ・キャストによる「音」がしっかり支えた形だ。
 本作の音響面のトピックスは音楽監督に坂本龍一を招いたことである。坂本龍一にとっては、「戦場のメリークリスマス」(1983)、「子猫物語」(1986)に次ぐ映画音楽の仕事。アカデミー賞作曲賞を受賞した「ラストエンペラー」(1988)の直前の作品だった。
 異世界のリアリティを重視する本作の方針は音楽においても貫かれ、「○○風」でない音楽=どこの世界の音楽とも、既成の映画音楽とも異なる音楽が求められた。現代音楽から民族音楽まで幅広い音楽ジャンルに造詣が深く、テクノポップグループ・YMOで一世を風靡した坂本龍一は、そんな音楽を創り出すのにまさにうってつけの作曲家。結果、エキゾティックな香りを漂わせつつも、どこの国の音楽ともつかない不思議な音楽、それでいて、現代的なサウンドやリリシズムをあわせもった音楽が生まれた。
 また、音響監督の田代敦巳は森本レオらに対し「アニメ風でない演技」を求めたそうだが、それは音楽にも共通している。「悲しい場面には情緒的な曲」「アクションシーンには高揚感のある曲」といった類型的なイメージをくつがえす、抑制の効いた、とてもユニークな音楽だ。それが、本作の音楽を30年を経ても古びないものにしていると思う。
 音楽は、坂本龍一が核となる4つのテーマを設定し、そのアレンジを中心に、坂本龍一、上野耕路、野見祐二、窪田晴男の4人の作曲家が各シーンの音楽を書き下ろすスタイルで作られた。音楽の印象がバラバラになりそうだが、それもまた、多彩な要素が渾然となった本作の世界観にフィットしている。

 本作の音楽アルバムは2枚リリースされている。坂本龍一による4つのテーマのプロトタイプを収録したミニアルバム「オネアミスの翼〈イメージスケッチ〉」が劇場公開に先立って1987年2月に発売され、映画音楽15曲を収録したアルバム「オネアミスの翼—王立宇宙軍— オリジナル・サウンド・トラック」が公開に合わせて1987年3月に発売された。発売はいずれもミディレコード(MIDI RECORDS)。ミディレコードは坂本龍一が矢野顕子らと1984年に設立したレコード会社である。
 「オリジナル・サウンド・トラック」を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. メイン・テーマ(M-1)
  2. リイクニのテーマ(M-B)
  3. 国防総省(M-21)
  4. 喧騒(M-4)
  5. 無駄(M-8)
  6. 歌曲「アニャモ」(SE-1A)
  7. グノォム博士の葬式(M-19)
  8. 聖なるリイクニ(M-17)
  9. 遠雷(M-24)
  10. シロツグの決意(M-31)
  11. 最終段階(M-34)
  12. 戦争(M-35)
  13. 離床(M-36)
  14. OUT TO SPACE(M-37)
  15. FADE(M-38)

 カッコ内はMナンバー。LPレコードではトラック1〜8がA面、トラック9〜15がB面だった。
 Mナンバーが前後していることから分かるとおり、アルバムの曲順は劇中使用順ではない。A面は本作の世界観を音楽で表現したイメージサントラ、B面はロケット打ち上げに向うクライマックスを音楽で再現した正統派サントラ、という雰囲気だ。
 「メイン・テーマ」はメインタイトルとそれに続くオープニングクレジットに流れる曲。坂本龍一が設定したテーマAを坂本自身がアレンジしたものである。シンプルで短いフレーズをくり返す坂本龍一らしい曲。アルバムでは3分40秒を超えるフルサイズで収録されているが、本編では2分30秒ほどでフェードアウトされる。
 2曲目の「リイクニのテーマ」は、本作のヒロインとなる少女・リイクニのテーマ。Mナンバー「M-B」は誤植ではなく、「テーマB」の意。アルバムでは本編で使用された音源ではなく、アルバム用のバージョンを収録している。曲の構成は「イメージスケッチ」に収録されたプロトタイプと同じだが、生のフルートやクラリネットが入ってぐっと色彩感豊かになった。
 トラック3「国防総省」は中盤、宇宙軍を指揮する将軍が貴族たちと会談する場面に流れる曲。4つのテーマのいずれにも当てはまらない坂本龍一のオリジナル曲である。
 トラック4「喧噪」も坂本龍一のオリジナル。序盤で、車に乗ったシロツグたちが夜の街を騒ぎながら走る場面に流れる民族音楽風の曲だ。ありきたりの作品なら軽快な音楽が流れそうなところだが、このはずし具体がいかにも坂本龍一らしく、『王立宇宙軍』らしい。
 本作の音楽はミスマッチの面白さを狙った、とサントラ盤のライナーノーツに書かれている。映像にストレートに音楽をつけるのではなく、ちょっとはずした違和感やスリリングな印象を狙ったということだろう。これも、本作の音楽のユニークな点である。
 はずし具合という意味では次のトラック5「無駄」も最高だ。シロツグが宇宙飛行の訓練に励む場面に流れるのだが、曲調は力の抜けたコミカルな印象。しかもタイトルは「無駄」。大真面目な訓練シーンと組み合わさって絶妙なユーモアが生まれている。坂本龍一が設定したテーマCを、サエキけんぞうらとのユニット「パール兄弟」で知られるギタリスト・窪田晴男がアレンジした。
 トラック6の歌曲「アニャモ」は、現実音楽として作られた歌。民謡風、歌謡曲風、クラシック風、いずれにも聴こえていずれでもない。歌詞も架空の「オネアミス語」で歌われている。「子猫物語」にも参加した野見祐二の作・編曲。野見はのちに劇場アニメ『耳をすませば』(1995)、『猫の恩返し』(2002)、TVアニメ『ぼくらの』(2007)などの音楽を手がけている。
 シロツグが一目置いていた宇宙旅行協会のリーダー・グノォム博士の葬式場面に流れる「グノォム博士の葬式」は、シンセサイザーが奏でる葬送の曲。音楽ユニット「ゲルニカ」で活躍した上野耕路のオリジナルである。葬送の曲としてはユーモラスにも聴こえる不思議な曲調。しかし、シロツグの複雑な心境を表現する曲としては見事にマッチしている。アンバランスのように聴こえて実は計算しつくした音作りは上野耕路の真骨頂である。
 レコード盤ではA面最後の曲となるトラック8「聖なるリイクニ」は「リイクニのテーマ」を野見祐二がアレンジしたもの。シロツグがリイクニから渡された聖典を読む場面に流れ、オネアミスの世界の宗教が観客に提示される。シロツグの心に芽ばえたリイクニへの想いが大きくなる重要な場面。シンセサイザーによる聖歌といった曲調で、ここは「ミスマッチ」ではなくストレートな音楽演出が効果を上げている。
 レコード盤のB面はリリカルな「遠雷」という曲から始まる。シロツグが突然の夕立に見舞われたリイクニを迎えに出て、2人で雨の中を帰ってくる場面に流れる上野耕路のオリジナル曲だ。上野耕路の作品は、当コラムでも過去に『ファンタジックチルドレン』を取り上げたことがある。この曲も『ファンタジックチルドレン』同様に透明感のある繊細で美しい曲である。場面展開に合わせて曲調も変化し、シロツグとリイクニの心情を表現する。本作のファンにも人気の高い曲だ。ただ、2人の気持ちは劇中ではなかなか交差しない。そのもどかしい感じもこの作品の特徴である。
 トラック10「シロツグの決意」は本編未使用曲。敵国の妨害を避けるためにロケット打ち上げを早める命令が下り、宇宙軍隊員たちが騒然とする中、シロツグが「オレ、行きますよ」と平然と言う場面での使用が想定されていた。ファンファーレから始まる威勢のいい曲で、窪田晴男のオリジナルである。本作では全体に音楽で盛り上げるような演出が排除されており、この曲もそうした演出意図から未使用になったのではないかと思われる。
 ただ、アルバムとしては、ここで「シロツグの決意」が入ることで次の曲からの展開が大いに生きてくる。
 トラック11「最終段階」〜トラック15「FADE」は、クライマックスからエンディングまでの曲が続けて収録されている。
 ロケット発射準備の緊迫感を描く「最終段階」(野見祐二作・編曲)に続いて、窪田晴男作曲、窪田と上野耕路の共同編曲による「戦争」が登場。本編の中でも重要な見せ場のひとつとなる戦闘シーンに流れる曲だ。よくあるアニメの戦闘音楽とはまったく異なるタイプの曲で、アニメ音楽を聴き慣れた耳には奇妙にすら感じられるかもしれない。ロック的であり、現代音楽的でもあり、エキゾティックなメロディとサウンドも聴こえてくる。なんだか盛り上がらないようでいて、聴いていると次第に脳が沸き立ってくる。クセになる音楽だ。もし、オネアミスの世界に映画音楽があったらこんな音楽ではないか……と思わせる、本アルバムの聴きどころのひとつ。
 ロケット打ち上げ場面に流れる「離床」は坂本龍一のテーマCとテーマAをベースに上野耕路が編曲。サイズは2分30秒あるが、本編では1分を過ぎたあたりから使われている。ということは、最初の1分間ほどは、もともと音楽を入れる予定だったのが音楽を入れない演出に変更されたということになる。ロケット打ち上げの瞬間からの音楽抜きの演出はまるでドキュメンタリー映像のようで、実にスリリングだった(作画も凄い)。もし、あの場面に音楽があったら……と思いながら聴いてみるのも面白い。
 シロツグが衛星軌道に乗った宇宙船から地球を眺める場面の「OUT TO SPACE」とエンディングクレジットに流れる「FADE」は坂本龍一の作・編曲。「OUT TO SPACE」ではリイクニのテーマの変奏が流れたあと、メインテーマの変奏に変わっていく。人類の歴史がフィードバックされる場面に流れるクラシカルな後半部分が続く。
 そして最後を飾る「FADE」は、ここまで抑えてきた心情を一気に解き放つかのようなビートの効いたテクノポップ。メインテーマのフュージョン風アレンジである。劇場版の終り方はやはりこうでなくては。この爽快感は『機動警察パトレイバー2 the Movie』に匹敵するのではなかろうか。

 坂本龍一は本作の音楽について遠回しに満足していないようなコメントをしているが、作曲者の思いとは別に、本作の音楽は充分すばらしい。「異世界の音楽」という難題に応えつつ、映画音楽としてもユニークで魅力的な楽曲を創り上げている。
 惜しむらくは、リイクニが初めて登場する場面の「リイクニのテーマ」のピアノとバイオリンによるアレンジや、シロツグが飛行訓練をする場面の曲、シロツグが暗殺者に狙われる場面の不穏なタッチの曲など、映像的にも音楽的にも重要な曲がサントラ盤に収録されていないことだ。
 2枚のアルバムのライナーノーツに掲載された音楽資料によれば、本作の音楽は未使用曲も含め50〜60曲ほどが用意されたはず。
 本作の北米版DVDには映像特典のBGMとして、劇中で使用されたBGM42曲が収録されたことがあるが、それもすでに入手困難。音源があるなら、なんらかの形で完全盤を……。それが本作の音楽に魅せられたファンの共通の願いだろう。

オネアミスの翼—王立宇宙軍— オリジナル・サウンド・トラック
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オネアミスの翼〈イメージ・スケッチ〉
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アニメ様の『タイトル未定』
179 アニメ様日記 2018年10月28日(日)~

2018年10月28日(日)
早朝、新文芸坐に。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 108 押井守映画祭2019 第一夜《パト2&攻殻機動隊》編」の最後を見届ける。午後はササユリカフェの「テレコムアニメーションワークス展」に。ルパンのコスプレをしたお客さんがいた。

2018年10月29日(月)
池袋のファミレスで、海外のある会社の方と打ち合わせ。

2018年10月30日(火)
このところ、学生アルバイトさんに事務所の倉庫の整理をお願いしている。見つかったアニメ関連文庫を持ってきてもらったのだけど、全然足りないなあ。見つかっているものの倍は、事務所のどこかにあるはず。気になって、Amazonでアニメージュ文庫を検索して、意外と持っていないものがあることが分かった。朝日ソノラマのアニメ文庫に関しては持っているほうが少ないなあ。流れで、文春文庫ビジュアル版を確認。持っていないものを数冊、注文する。僕も詳しくはないのだが、文春文庫ビジュアル版について説明すると、1980年代から1990年代に刊行されていた文庫のシリーズである(はずだ)。アニメとは関係ない。マンガを文庫化したものもあったが、それよりも「大アンケートによる洋画ベスト150」「スーパーガイド 東京B級グルメ」等の、雑誌の特集をボリュームアップさせたような内容のものが印象的だ。編集が巧みで、本としての完成度が高かった。

2018年10月31日(水)
仕事の合間に「ボンズ20周年記念展」へ行く。会場は広くはないが、展示物はたっぷり。BONESの「作画ぢから」がたっぷりと楽しめるイベントだった。『機巧奇傳ヒヲウ戦記』は描きおろしセル、そのラフなどの展示もあり、セルが猛烈に綺麗だった。改めてセルの魅力を確認した。展示は撮影がOKだったので、スマホで写真を撮りまくった。

2018年11月1日(木)
『ゴブリンスレイヤー』と『あかねさす少女』を最新話まで観る。13時10分から、TOHOシネマズ新宿で『2001年宇宙の旅』のIMAX上映で観る。凄まじいまでの臨場感で満足。まさしく「体験」だった。上映開始前と終了後、及び、休憩に曲を流すのも新鮮だった。それから、TOHOシネマズ新宿の通路にあった「ボヘミアン・ラプソディ」のデコレーションに感心した。箱形のガラスケースが5つ並び、その中にステージ衣装が飾られており、ガラスケースの前面に映像が映し出される。映像がステージ衣装を見せたり、隠したりする。映像自体も凝ったものだった。立ち止まってしばらく見ていた。「ボヘミアン・ラプソディ」はIMAX版の予告もよかった。

2018年11月2日(金)
「アニメスタイル014」で、ある作品の取材。どんな取材だったかについてはまた改めて。ポケモンGOで「いつでも冒険モード」がはじまる。これはポケモンGOのアプリを開いていない時でも歩いた距離が記録され、ポケモンのアメを手に入れたり、タマゴを孵化させることができるというものだ。さらに歩いた距離でリワードを獲得できるそうだ。毎日、ウォーキングをやっている僕としては嬉しい機能だ。

2018年11月3日(土)
dアニメストアでは『君のいる町』OADの総監督/吉浦康裕、監督/小林寛による2012年版(全2話)と、山内重保監督による2014年版(全2話)を同じシリーズとして配信している。普通に再生すると、両作品が連続再生になるんだけど、凄まじく作風が違うので、大変なインパクト。2012年版はDVDを持っていないので、配信が嬉しい。夜は新宿で、お世話になっているアニメーターさん達と食事。前から予定していたもので、去年、実現しなかったので、2年ぶりの食事会だった。

第586回 作画監督は大変

今日日、どこの会社(スタジオ)も
作画監督が不足しているようです(汗)!

 作画監督とは早い話「原画を直す」役職。つまり大塚康生さんです。『未来少年コナン』における大塚さんの作監修正は、今のように神経質な修正でなく、凄く達筆な一筆書きのようなおおらかさで、どちらかというといわゆる「キャラ修正」というより芝居全般を見直した「原画の描き直し」に近いのです。そりゃあ今のアニメよりも線が少ないとはいえ、この修正で全話作監とはとてつもない速さと巧さだ! と衝撃を受けたものです。あ、前に話題にしたとおりテレコムの新人研修課題が『未来少年コナン』の生原画を動画にするものだったわけで、当然本放送時にスタッフとして参加してる年代ではありませんよ、俺は。一応念のため。
 で、とりあえず現在では作品数がめちゃめちゃ増えたぶん、

本来なら、まだ動画がやっとなくらいのアニメーターを続々原画マンに昇格させているため、そのまだ稚拙な原画を作監が血まなこになって修正、いや描き直して無理矢理アニメを作ってる!

と。我々の現場も例外ではないのですが、つらい時だからこそ「新しい作り方が模索できる」のも確かなこと。デジタルコンテで俺がラフ原から背景原図まで一気に描いちゃったり、デジタル作画、自動中割りを導入するのもその一環。あと最後の追い込みの時は自分も手伝う! と。多分これからのアニメ制作は単にお金とスケジュールを解決するだけでは保たないでしょう。で、また時間切れです(汗)! 作監の話は、

アニメ様の『タイトル未定』
178 アニメ様日記 2018年10月21日(日)~

2018年10月21日(日)
今日放映の『HUGっと!プリキュア』37話「未来へ!プリキュア・オール・フォー・ユー!」は歴代プリキュア全員集合のうえに、それぞれに見せ場を作ったスペシャルなエピソードであり、大変な力作だった。個性の近いプリキュアをまとめて活躍させているのがポイントであり、見どころのひとつ。情報量が多く、やっていることはマニアックなのに、ノリがマニアに向けたものになっていないのは、このエピソード全体の明るさ、元気のよさのためか。そして、その明るさ、元気のよさのために「テレビまんが」的なところのある仕上がりになっていると思った。
昨日に続いて「この人に話を聞きたい」原稿を進める。『若おかみは小学生!』のノベライズもチェックした。ノベライズだと、真月の自宅の図書室をおっこが訪れた際に、誰が灯りを消したのかが分かるようになっていた。あの本だらけの部屋が、旅館の一部ではなく、真月の自宅の図書室だということも分かった。

2018年10月22日(月)
「この人に話を聞きたい」の本文がようやく終わる。TOKYO MXの「ヒーリングタイム&ヘッドラインニュース」の「ねこの足跡&看板猫」をリピート再生しながら作業を進めた。要するに猫動画を流しながら作業をした。

2018年10月23日(火)
木村圭市郎さんがなくなったことを知る(木村タカヒロさんとネオメディアプロダクションによるTwitterでの発表は10月22日の夜)。素晴らしいお仕事を残されて、後続のクリエイターに多くの影響を与えた方だ。アニメスタイルでインタビューをさせていただき、イベントも開催した。豪快な人柄が印象的だった。心よりご冥福をお祈り致します。

「この人に話を聞きたい」のテキストをチェックに出す。年末に出す書籍のため、西武池袋方面のプロダクションで打ち合わせ。

2018年10月24日(水)
「アニメスタイル014」で『ヤマノススメ』取材。若いアニメーターさんが多く、新鮮だった。印刷会社から束見本が届く。編集作業どころかまだ企画書も書いていない書籍のための束見本だ。

2018年10月25日(木)
あるインタビューのための質問状を書く。前にも話題にしたかもしれないが、最近はインタビューの前に質問状を提出することが多い。今回の質問状は気合いを入れて書いたので、かなり長いものとなった。他のインタビュアーの質問状は見たことがないが、平均よりもずっとボリュームのあるものになったのではないか。

2018年10月26日(金)
新文芸坐で今後のオールナイトについての打ち合わせ。事務所でこれから出す本についての打ち合わせ。最近、Facebookでオセロをやっているのだけど、今日、対戦した相手が自分と似た打ち方をするタイプで「こいつ、俺と打ち方が似ているな。ならばそれなりの戦い方がある」と思考して対応。ちょっと富野キャラっぽい。

2018年10月27日(土)
バルト9で『若おかみは小学生!』を観る。目当ては、高坂希太郎監督、渡邊洋一美術監督、加藤道哉撮影監督・VFXスーパーバイザーによるトークだ。いつか特集をすることがあるかもしれないので、トークを聞いておきたかった。後でSNSで確認したが、会場には知り合いが何人もいた模様。その後、神保町ブックフェスティバルに。本の雑誌が「拡大版 絶景本棚」を販売するというので、それが気になって見に行った。既存の書籍を倍のサイズで印刷したものだ。実物を見たところ、確かに大きくなっている。これは面白いなあ。本の雑誌ブースで、名誉店長の池澤春菜さんから購入。池澤さんとは初対面だったが、堺三保さんが帰国したら、何キロ増えているかについて話をした。堺さんと知り合いというだけで、話題に困らない。
夜は「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 108 押井守映画祭2019 第一夜《パト2&攻殻機動隊》編」を開催。ゲストは押井守監督と黄瀬和哉さん。押井さんの黄瀬さんについて、作画についての語りが素晴らしかった。普段のトークよりも時間を10分、多めにとっていたのだけれど、それでも20分オーバーした。

第585回 差し入れと来訪者

10月某日、学生時代の担任(?)だった飯島正勝先生が来社!
お互いの近況報告&よもやま話!


 専門学校時代から20数年、当時からざっくばらんにお話できるキサクな先生。こないだ先生のコンテ・演出回に原画で参加しました。たった1カットでしたが。今度は頑張ります(汗)!

さらに10月某日、『ユリシーズ』のジャンヌ役・大野柚布子さんより「スタッフの皆さんで」と差し入れをいただきました!


 これで元気をつけてスタッフ一丸となって年内乗り切りまーす!! 後ほど打ち上げでっ!

で、さらに10月末某日、元エイベックス、現サイバーエージェントの田中宏幸プロデューサー来訪! こちらも楽しくよもやま!


 こちらもよもやま〜。ゲームとアニメの話。で「またお仕事しましょう!」と締め。

 さて、仕事に戻るか。

第143回 もう一度、宝島を 〜宝島 オリジナル・サウンドトラック〜

 腹巻猫です。日本コロムビアの「Columbia Sound Treasure Series」の1タイトルとして「宝島 オリジナル・サウンドトラック」の発売が決定しました。TVアニメ『宝島』の主題歌・挿入歌・BGM等、現存する音源を網羅した2枚組完全版。発売日は11月28日です。
 本コラムでも一度『宝島』を取り上げています。2013年7月2日更新の第13回、5年も前でした。そのとき本文の最後で“「『宝島』完全版サントラ」がファンの悲願”と書いた夢が実現する日が、ついに来たのでした。
 そこで今回は、この「宝島 オリジナル・サウンドトラック」の気になる内容について紹介したいと思います。『宝島』は2度目の登場となりますが、5年ぶりということでお許しを。


 出崎統監督のベストに推すファンも多い名作『宝島』が放映されたのは、1978年10月〜1979年4月。今年が放映40周年の節目になる。その記念すべき年に完全版サウンドトラックが実現したのは本当にめでたい。今回のアルバムは筆者が企画を持ち込み、構成・解説・デザイン案の提示など、全面的に制作に関わらせていただいた。
 発売日が近いわりには、まだジャケット画像やトラックリストが公開されておらず、気をもんでいるファンも多いだろう。以下、宣伝を兼ねて、全体の構成と今回初めて収録される予定の音源について紹介していきたい。

 『宝島』の主題歌・挿入歌・BGMはすべて羽田健太郎によるもの。当コラム第13回でも書いたとおり、その音楽は過去に3種類のアルバムで発売されている。

 LP「宝島(ヒット曲集)」(1978年発売)
 LP「テレビ・オリジナルBGMコレクション 宝島」(1980年発売)
 CD「FOREVER SERIES 宝島」(1992年発売)

 「宝島(ヒット曲集)」は放映中に発売された唯一の音楽集で、ステレオ録音の主題歌・挿入歌・BGMを収録。「テレビ・オリジナルBGMコレクション」は放映終了後にファンの熱心な声に応えて発売されたアルバムで、劇中で使用されたモノラル録音のBGMを収録。「FOREVER SERIES」はステレオ音源とモノラル音源をミックスして、1枚で『宝島』の音楽の全体像がつかめるように構成されたアルバムだった。
 3種類のアルバムの収録内容は少しずつ重なっている(重複して収録されている曲がある)。その上、3種類そろえても未収録曲があるのがファンには悩ましいところだった。
 今回は、ステレオ録音のアルバム「宝島(ヒット曲集)」をオリジナルの曲順で復刻することと、モノラル録音のオリジナルBGMを完全収録すること、このふたつをテーマに全体の構成を考えた。
 2枚組のうち1枚目が「宝島(ヒット曲集)」の復刻。2枚目がオリジナルBGM集。これが基本的な構成である。
 「宝島(ヒット曲集)」は『宝島』の記念すべき音楽アルバム第1弾。子ども向けを意識した歌が入っていたりして、やや本編とはイメージが異なるが、唯一のステレオ音源であり、羽田健太郎の初ソロアルバムとしても重要な1枚だ。音源自体は「FOREVER SERIES」ですべてCD化されているものの、これまでオリジナルのままの形(曲順)でCD化されたことは一度もなかった。
 なので、1枚目は「宝島(ヒット曲集)」を当時のままの形で復刻してもらった。ちなみに曲順は次のとおり。

  1. 宝島(歌:町田よしと、コロムビアゆりかご会)
  2. ベンボーと僕(歌:藤田修、コロムビアゆりかご会)
  3. 海は僕の生命(いのち)さ(インストゥルメンタル)
  4. シルバー船長はすごい奴(インストゥルメンタル)
  5. ゆかいな船旅〜遠い南の島(コーラス:トロピカル・シンガーズ)
  6. 小さな船乗り(歌:町田よしと)
  7. まだ見ぬ世界へ(歌:町田よしと、コロムビアゆりかご会)
  8. 不気味な宝島(インストゥルメンタル)
  9. 俺たちゃ海賊(歌:こおろぎ’73、シージャック)
  10. 遠い故郷(ふるさと)(インストゥルメンタル)
  11. 航海日誌(歌:町田よしと)
  12. 大海戦〜夕陽の大船団(インストゥルメンタル)

 レコードでは1〜6がA面で、7〜12がB面。A面の最後にエンディング主題歌「小さな船乗り」が置かれ、アルバムの最後を「大海戦〜夕陽の大船団」という迫力満点のインストゥルメンタル曲が締めくくるドラマティックな構成になっている。
 曲順には作曲家やディレクターの意図が反映する。A面とB面の対比や、曲と曲のつながりなど、音楽的な流れと物語を意識しながら聴くと、より味わい深い。何より、ハネケンの瑞々しい宝島サウンドをステレオで一気呵成に聴く快感は格別である。レコード盤を知る人もそうでない人も、放映当時を偲びながらお聴きいただきたい。
 2枚目は『宝島』BGM集の決定版をめざし、モノラル音源のBGMとTVサイズ主題歌のみで構成した。
 今回発掘した『宝島』のオリジナルBGMはバージョン違いも含めて約90曲。そのうち、これまで商品化されたのは45曲くらい。およそ半数にあたる45曲ほどが今回初収録となった。
 BGMの構成については大いに悩んだ。『宝島』のBGM集としては、「テレビ・オリジナルBGMコレクション」と「FOREVER SERIES」という2枚の先例がある。どちらもファンの思いを汲んで構成されたもので、よく練られた曲順である。その2枚を参考にさせていただきつつ、本編で使用されたBGMをすべて精査した上で、『宝島』の雰囲気と物語を追体験できるようにと完全新構成でまとめた。
 実は当初は2枚目にオリジナルBGMが完全収録できると考えていたのだが、予想していた以上に音源があり、CD1枚は収まらないことがわかった。そこで、本編未使用曲や同一Mナンバーのバリエーション(テイク違いやサイズ違い)の一部を別にし、本編でなじみのある曲だけで75分超にまとめている。その分、テンポよく引き締まった構成になったと思う。はみ出した分は1枚目のボーナストラックに収録してあるのでご安心を。
 今回の作業でわかったのだが、『宝島』にはいわゆる流用曲やライブラリ音源の使用はない。劇中で流れた曲はすべてハネケンのオリジナルである。過去の音楽集を聴いて、「あの曲が入ってないな」と思っていたファンの方も、今回は全部入ってるので楽しみにしていただきたい。

 さて、ファンが気になるのは、初収録音源にどんなものがあるかということだろう。
 ここからは、『宝島』の音楽の全体像に触れつつ、初収録音源を紹介していきたい。
 まず、歌曲に関しては劇中で幾度となく歌われている「海賊の合唱」という歌がある。同じメロディに別の歌詞がついた「俺たちゃ海賊」という歌が「宝島(ヒット曲集)」に収録されているのだが、こちらは劇中で使われていない。劇中使用されたバージョンは「FOREVER SERIES」に収録されているのだが、さらにいくつかのバリエーションがあることがわかった。こおろぎ’73によるアカペラ版とピアノ弾き語り版である。ピアノ弾き語り版は歌詞が一部異なるデモ版と思われるバージョン。聴いて驚きのお宝音源である。
 また、正副主題歌のメロオケが何タイプか発見された。このうちエンディング主題歌のサックスによるメロオケは劇中で使用され、商品化もされているのだが、オープニング主題歌のメロオケもあったのだ。本編未使用の初公開音源である。
 次回予告音楽にはオープニング主題歌アレンジが使用されている。これはメロオケとは別に録られた「TVスポット用音楽」というもので、6タイプが確認された。TVで流れる番組宣伝スポットに使われたものと思われる(残念ながら映像は未確認)。
 そしてBGM。当コラムの第13回で書いた「大海戦」の別バージョンももちろん収録。加えて、追加録音BGMを一挙収録した。そう、本作には追加録音BGMがあったのである。以前は「追加録音とおぼしきBGM」と、もやっとした書き方をしたが、今回の音源探索でハネケンのオリジナルであることが明らかになった。
 追加録音BGMが使用され始めたのは第15話「シルバー式降伏のすすめ」から。宝島での財宝争奪戦がいよいよ激しくなってきた時期だ。おそらくはジムの活躍を描写する曲や海賊の恐怖を描写する曲が足りないということで追加録音が計画されたと思われる。
 たとえば第15話で海賊たちが砦の井戸に動物の死骸を投げ込んだことにジムが気づく場面のショック音楽。同じく第15話でジムが砦を抜け出して川へ水を汲みに行く場面の軽快なフュージョン風の曲。第16話で海賊たちの砲撃を止めるためにジムが皮舟をこいでヒスパニオラ号へ向かう場面のコミカルな曲。第17話での海賊たちの仲間割れの場面に流れたジャジーなサスペンス曲。いずれも宝島での冒険を盛り上げた重要曲だ。
 これまで追加録音BGMは一度もレコードやCDになっておらず、すべて今回が初収録になる。『宝島』ファンにとっては、待ちに待った商品化。「生きててよかった」「おれの一番大切なものは……今はこのCDだ」と思わず言いたくなる涙の初収録である。
 上記のうち、「海賊の合唱」の各種音源と主題歌メロオケ、TVスポット用音楽等は1枚目のボーナストラックにまとめ、追加録音BGMは基本的に2枚目のBGM集に組み込む形で構成した。
 ブックレットには過去の音盤に羽田健太郎が寄せたコメントの再録や筆者自身がハネケンから聞いた話を盛り込んだ解説、BGMリスト等を掲載。放映40周年にふさわしい宝物と呼べる内容になったと思う。

 前にも書いたが、筆者にとって『宝島』完全版音楽集の実現は、昨年末リリースされた「家なき子 総音楽集」と並ぶ長年の悲願だった。未収録音源というお宝を探す旅は、長い年月を経て、ようやくゴールにたどりついた。満足とともに、「これで旅も終わりか」という一抹の寂しさも禁じ得ない。
 が、冒険の旅に終わりはない。いつの間にか、ジムよりもシルバーに近い年齢になってしまったが、その気になれば、フリントはまだまだ飛べるんだ。過去をふり返るためではなく、新しい旅へ出るためにこのアルバムを。そんな風に、明日への勇気をもらえる音楽集として、「宝島 オリジナル・サウンドトラック」を聴いていただけたら最高だ。

宝島 オリジナル・サウンドトラック
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