128 アニメ様日記 2017年11月5日(日)~

2017年11月5日(日)
三連休3日目。午前2時に事務所へ入り、昼まで「アニメスタイル012」のページ構成。ある作品の美術設定(線画)を見て、ニヤニヤする。作業をしつつ、アニマックスの『無敵超人ザンボット3』の一挙放送を観る。映像が綺麗だなあ。ロボットアニメのコクピット内のカットだと、金田伊功さん作画の勝平が一番好きだ。それを確信した。昼過ぎから、TOHOシネマズ新宿で「ブレードランナー 2049」を観る。予想していたのとは随分違ったけれど、楽しめた。雰囲気が魅力の映画だと思った。

2017年11月6日(月)
11時に有楽町方面で打ち合わせ、事務所に戻って打ち合わせが2件、15時から西武池袋線方面で打ち合わせ。有楽町方面と西武池袋線方面の打ち合わせは来年の仕事関連。
 朝のTOKYO MXの『あらいぐまラスカル』が最終回を迎えた。今回の再放送では、ほぼ全話をリアルタイムで視聴した。毎日観ているうちに、朝ドラ視聴と同様に、登場人物が「隣人」のように思えてきた。物語を楽しむというよりは、隣人の言動に触れてなごんだり、感心したりする感じ。通常の意味での「物語を楽しむ」というのとはちょっと違うかもしれないが、楽しんだことは間違いない。
 アニマックスの『空手バカ一代』の1、2話を録画で観たのだけど、これも猛烈に綺麗。セルの部分はまるでデジタルアニメのようだ。1話は木村圭市郎さんの色が濃い。2話とあわせて、原画は『タイガーマスク』経験者ばかり。3話から変わっていくんだろうなあ。

2017年11月7日(火)
11時から西武新宿方面で打ち合わせ。これも来年の仕事関連。TOKYO MXの『あらいぐまラスカル』の後番組は『ペリーヌ物語』。『ラスカル』からの流れで改めて1話を観ると、これが実に新鮮。「新番組が始まったぞ」という感じ。 ペリーヌのキャラ立ても、お母さんとの対比も抜群に上手い。デザインや色遣いも『ラスカル』とは随分違う。全体に華やかで楽しい。やっぱり『ラスカル』はストイックな作品だったんだなあ。

2017年11月8日(水)
荻窪方面で打ち合わせ。その後、吉松さんと焼き鳥屋で「アニメスタイル012」の取材。イベントの予習で『あずきちゃん』再視聴中。35話「ナイショ! 赤ちゃんはどこからくるの」はキスしたことで、あずきを妊娠させたかもしれないと思い込んだ勇之助が「子どもが産まれたら一緒に育てよう」と言い出す話。絶好調の面白さ。演出・絵コンテは片渕須直さん。そのひとつ前が34話「ドキッ! 夢のなかのファーストキス」。あずきと勇之助のキスのところも凄いんだけど、キスをした後、家でずっと呆然としているあずきがいい。エピローグの落とし方も上手い。演出・桜井弘明さんの大ホームラン。

2017年11月9日(木)
TOKYO MXの『ペリーヌ物語』3話は「おかあさんのちから」。1話と2話で頼りなかったペリーヌの母親が、旅先でお世話になった家のお産で頼れるところを見せる。この構成も上手いなあ。仕事の方は「アニメスタイル012」と「設定資料FILE」でてんやわんや。ベテランアニメーターの激ウマ原画を見てニヤニヤする。

2017年11月10日(金)
12月のオールナイトを発表した。次回のオールナイトは「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 99 湯浅政明の長編アニメーション!」。99回目を湯浅さんの特集にしたくて、それを実現するために11月のオールナイトを休んだのである。

2017年11月11日(土)
イベントの予習で『あずきちゃん』を再視聴中。『あずきちゃん』3期1話から大迫みちえという名の校長先生が赴任してくる。初老の女性で、かつてはケンの父の担任でもあった。演じている伊倉一恵さんは当時三十代半ばだったはずで、初老の役を演じるにはかなり若い。ケンの父は小学校の時に、大迫先生にラブレターを出しており、今でもそれを照れくさく思っている。そんなエピソードもあるので、初老ではあるけれど、どこか若さを感じさせるキャスティングを狙ったのだろう。野山けい子(あずきの母)が皆口裕子さん、ケンの父が矢尾一樹さん。お二人とも当時、三十代半ば。お母さん役、お父さん役をやっておかしくないともいえるけれど、やはり若々しいお母さん、お父さんを狙ったキャスティングだったはずだ。伊倉さんのキャスティングは、皆口さん、矢尾さんのキャスティングの延長線上にあるのだろう。そのあたりのことを丸山正雄さんに聞きたいけど、覚えていないだろなあ。
 同じく89話「再会! お父さんの恋人」に登場する美千代は、あずきの父親の初恋相手だったのではないかと思われた女性。千住で「たぬき」というもんじゃ焼き屋をやっている気っ風のいい人で、演じているのは兵藤まこさん。息子の貞男は、トモちゃん役でレギュラーのゆきじさんが演じた。両役とも存在感たっふりで、ナイスキャスティング。貞男は主人公感あり。

第539回 また途中までで……

自分がやりたくない仕事は必ず誰かがやってくれている!

 アニメ作りってそういうものだし、まぁ他の業種でも、いや世の中規模でそーゆーもんだと思います。「私は原画だけやってたいし、原画だけ描いていれば幸せなの!」という若手、それこそ数えきれないほど会ったことがあります。ところが「じゃ、自分が描いた原画を自分で動画にしてくれる?」と訊くと、大概の人の答えがNOです。当たり前な話、誰かが動画をやらなければアニメにはなりません。一方でこんな人も。「人の原画を修正するのは大変なだけで面白くない! 演出も作画も監督も絶対やりたくない!」実力的に無理なら仕方ないにしても、他の人より巧いのに頑にNOを言い続けてる中堅、結構います。「では、あなたの描いた原画は、演出チェックも作督」チェックもなしに使えているのでしょうか?」と。当然ですが、誰かがチェックしてくださることでアニメになっているのです。つまり何が言いたいかとゆーと、

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 99
湯浅政明の長編アニメーション!

 2017年最後のオールナイトは湯浅政明監督の特集だ。今年は『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』と、彼の長編劇場作品が2本も公開された。いずれもアニメーションならではの楽しさに満ちた作品だった。
 今回のプログラムはその2作品に湯浅政明の本格的監督デビュー作の『MIND GAME』、そして、短編『キックハート』を加えた4本立てだ。アニメスタイルではこれまで何度も湯浅監督作品のプログラムを企画してきたが、監督作品だけのプログラムはこれが初となる。魅惑の湯浅ワールドを堪能していただきたい。
 トークのゲストは湯浅政明監督。前売り券は11月18日(土)から新文芸坐とチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 99
湯浅政明の長編アニメーション!

開催日

2017年12月23日(土)
開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5:25(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

湯浅政明、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

キックハート(2013/12分/BD)
夜明け告げるルーのうた(2017/113分/DCP)
夜は短し歩けよ乙女(2017/92分/DCP)
MIND GAME マインド・ゲーム(2004/103分/35mm)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第119回 暗黒のオペラ ~NOIR~

 腹巻猫です。菅野祐悟トークライブ、いよいよ今週末開催となりました。11月18日(土)阿佐ヶ谷ロフトで19時開演です。『PSYCHO-PASS』で出会った岩浪美和音響監督とのお仕事(『ジョジョの奇妙な冒険』『亜人』『BLAME!』など)の話や『ガンダム Gのレコンギスタ』の富野監督とのやりとりなどもお話しいただく予定。これまで菅野さんがインタビューなどで語りきれなかったとっておきの秘話をうかがいますよ。当日は特典つき物販や抽選会も予定しています。前売券はe+で発売中!

菅野祐悟トークライブ
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/76470


 今回取り上げるのは『NOIR』。『魔法少女まどか☆マギカ』や『ソードアート・オンライン』シリーズで知られる梶浦由記が音楽を手がけたTVアニメ作品だ。
 高校時代からバンド活動を行っていた梶浦由記は、1993年、ボーカルの石川智晶らとともに音楽ユニットSea-Sawとしてデビュー。作詞・作曲・編曲とキーボードを担当する。2年ほどでSea-Sawの活動はいったん休止になり、メンバーはソロ活動を開始。梶浦由記は劇場作品やゲームの音楽で活躍を始めた。1996年、劇場アニメ『新きまぐれオレンジ☆ロード』の音楽を担当。これがアニメ音楽デビューとなった。
 1997年、梶浦由記は真下耕一監督のTVアニメ『EAT-MAN』の音楽をEBBY、米田和民とともに担当。それが縁で2001年に真下監督の『NOIR』の音楽を単独で手がける機会を得る。以降、『.hack』シリーズ(2002~)、『MADLAX』(2004)、『コゼットの肖像』(2004)、『ツバサ・クロニクル』(2005)、『エル・カザド』(2007)と真下監督作品の音楽を続けて担当している。ほかに『舞-HiME』(2004)、『舞-乙HiME』(2005)、『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)、『Fate/Zero』(2011)、『ソードアート・オンライン』シリーズ(2012~)、『僕だけがいない街』(2016)などのアニメ作品の音楽を担当。また、ソロユニットFictionJunctionやボーカルユニットKalafinaでも楽曲を発表し、独自のサウンドでアニメファン・音楽ファンを魅了してきた。アニメ以外でも、NHK「歴史秘話ヒストリア」(2009~)の音楽や連続テレビ小説「花子とアン」(2014)の音楽を担当するなど活躍の場を広げている。
 実は筆者が初めて梶浦由記の名前に注目したのは『機動戦士ガンダムSEED』だった。この作品では梶浦由記はエンディングテーマと挿入歌を担当。悲愴な感情がみなぎるクライマックスシーンなどに梶浦由記が書いたボーカル曲が流れ、佐橋俊彦のパワフルなBGMを圧倒するほどの鮮烈な効果を上げていた。その後、『舞-HiME』『舞-乙HiME』を観て「むむっ!」と思い、放送当時観てなかった『NOIR』はあとから追いかけることになった。

 『NOIR』は2001年4月から同年9月までテレビ東京系で放送されたTVアニメ作品。『神秘の世界エルハザード』(1995)などの脚本を手がけた月村了衛(現在は小説家として活躍中)が原案・構成・脚本を担当したオリジナル作品だ。
 パリで一匹狼の暗殺代行人として活動するミレイユは一通のメールに導かれて日本の女子高生・霧香と出会う。霧香の抜群の戦闘能力に驚いたミレイユは、失った記憶を取り戻したいという彼女とコンビを組むことを決意。「NOIR」のコードネームで仕事を開始した。
 当初の印象は、銃を持った2人の女のバディもの。女暗殺者といえばリュック・ベッソン監督の劇場作品「ニキータ」(1990)が思い浮かぶが、その影は本作にもちらちらしている。ヨーロッパ映画のような味わいのある映像とハードボイルドタッチの脚本・演出。『AIKa』(1997)の菊地洋子らが手がけたキャラクターデザインと抑制の効いた演出のおかげで、暗殺を題材にしていても生々しさがなく、スマートなアクション作品として観られるのが好印象だ。物語が進むにつれてミレイユの過去と霧香の記憶の謎が明らかになり、終盤は悲痛なドラマが展開する。緻密な構成と映画的な演出ががっちりはまった、見応えのある作品である。
 本作の中で音楽の存在感は圧倒的である。見せ場となるアクションシーンを始め、ドラマの要となる重要な場面に梶浦由記の音楽が流れ、観る者の心をかきたてる。
 何より印象深いのはボーカルをフィーチャーした曲。歌がドラマを盛り上げる趣向は『機動戦士ガンダムSEED』に受け継がれている。
 もともとSea-Sawで作詞・作曲を手がけていた梶浦由記は、何をおいても「歌を書く作家」である。歌が梶浦音楽のルーツと言ってよいだろう。
 過去のインタビューによれば、梶浦由記の音楽活動の始まりは歌好きの父に奨められてピアノを習い始めたことだったという。父親が好んで歌ったのはドイツの歌曲やオペラの曲。梶浦は小学生のときからシューマンやシューベルトの音楽を聴いて育った。ドイツに在住していた少女時代は本場の劇場でたびたびオペラを鑑賞した。
 そのためか、梶浦由記の音楽からはオペラの匂いがする。それもモーツァルトなどの明るいオペラではなく、ワーグナーのような祝祭的で神話的な楽劇の世界の匂いが。加えて、梶浦が選ぶ旋律やリズムには、聴くものの本能に訴える原始的な音楽のエッセンスが宿っている気がする。これは梶浦が少女時代を過した異国の風土がもたらしたものだろうか。
 梶浦由記の音楽は、アニメで描かれたシーンをオペラの一場面のような劇的な場面に変える力を持っている。とりわけ、ボーカルをフィーチャーした曲は聴く者の心をゆさぶり、ドラマの情感を2倍にも3倍にも増幅させるのだ。おそるべき梶浦マジックである。
 『NOIR』は、梶浦由記のアニメ音楽のスタイルが確立されたと言ってよい作品。その後の作品に受け継がれる要素がほとんど盛り込まれている。ファン必聴の作品だ。
 サウンドトラック・アルバムはビクターエンタテインメントから「NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK I」と「同 II」のタイトルで2枚発売された。
 1枚目から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. コッペリアの柩(歌:ALI PROJECT)
  2. les soldats
  3. snow
  4. canta per me
  5. corsican corridor
  6. ode to power
  7. solitude by the window
  8. romance
  9. silent pain
  10. lullaby
  11. melodie
  12. chloe
  13. whispering hills
  14. zero hour
  15. liar you lie
  16. sorrow
  17. salva nos
  18. きれいな感情(歌:新居昭乃)

 オープニング主題歌とエンディング主題歌を冒頭と最後に置き、その間にBGM16曲を配置。オーソドックスな構成だが曲順はよく考えられている。物語の流れよりも、続けて聴いたときの心地よさを優先した構成だ。本作の雰囲気と音楽にはこういう構成がよく合っている。
 1曲が長い。どの曲も2分から3分台。真下監督は自ら音響演出も担当し、長い曲を生かした演出を行っていた。キャラクターの心情がしだいに変化し、アクションに突入していくような場面でも、細かく音楽を切らずに1曲をずっと続けて使って情感を途切れさせない。画よりも音楽がシーンを引っ張っているような印象さえ受ける。
 トラック2の「les soldats」はミレイユたちを狙う謎の組織ソルダのテーマ。毎回、冒頭に流れるナレーションのバックに使われていた。宗教儀式のコーラスのような混声合唱からリズムが加わり、妖しくエスニカルなロックに変貌する。ジャンルに収まらない梶浦音楽の特徴が表れた曲だ。
 トラック3「snow」は一転して、淡々としたピアノの旋律が奏でる寂しげな曲。第3話でミレイユが命を狙ってきた女殺し屋を倒したあとに思い出の墓地を訪れる場面に流れた。シンプルな編成に美しいメロディが映える曲である。
 トラック4の「canta per me」は本作の音楽の中でももっとも印象深い曲のひとつ。チェロとギターの強いリズムをバックに女声ボーカル(貝田由里子)の美しく哀感を帯びた歌声が流れる。曲名はイタリア語で「私のために歌って」の意。愛する人に「別れの歌を歌って」と呼びかける切ない歌だ。
 悲しい別れの歌がミレイユたちが暗殺を実行する場面やソルダの刺客と戦う場面のバックに流れ、緊迫したアクションシーンに悲しみの影が落ちる。音楽の力が映像に情感を添える名場面になっている。悲しい歌は感情を殺して暗黒世界に生きるミレイユと霧香の心の声のようである。
 トラック5「corsican corridor」は「コルシカ回廊」と名づけられた民族音楽風の曲。ケーナ風の音が異国情緒を演出する。第17話でミレイユが故郷コルシカに帰るシーンに流れていた。ヨーロッパ、中東、台湾と世界各地を舞台にしたエピソードのために、エスニックなサウンドがふんだんに取り入れられているのも本作の音楽の特徴だ。
 トラック6「ode to power」は暗い情念を表現するサスペンス調の曲。「ode to joy」が「歓喜の歌」だから本曲は「力の歌」だろうか。暗黒社会にうごめく闇の力を表したような曲である。
 「窓辺の孤独」と題されたトラック7「solitude by the window」はピアノとアコーディオンが哀愁たっぷりに奏でる曲。ミレイユや霧香の心情を表現する曲としてよく使われている。フランス映画の一場面に似合いそうな雰囲気の曲である。
 トラック8「romance」はギターとアコーディオンによる心情曲。イタリアの映画音楽作家ルイス・バカロフあたりが書きそうな、スパニッシュな香りのする曲だ。霧香が絵を描く青年ミロシュと交流を深めていく第13話で流れていたのが印象的。
 ピアノとシンセサイザーの音色が複雑に絡み合うトラック9「silent pain」は、ひりひりするような緊迫感や心の動揺、苦悩を表現する曲。ピアノのメロディの間にさまざまな音が現れては消え、抽象絵画のように乱れる心を映しだす。これもジャンルに収まらない現代音楽のような曲だ。
 トラック10の「lullaby」は英語詞で歌われるボーカル曲。本作の音楽の中でも屈指の美しいメロディを持った曲だ。別れの歌――というより死にゆく者の思いを歌った歌のように聴こえる。本編では物語終盤の重要な舞台となる「荘園」絡みの場面によく流れていた。
 トラック11「melodie」はミレイユと霧香の過去をつなぐ重要なアイテムである懐中時計のオルゴールの曲。懐中時計のオルゴールが過去の因縁を呼び起こす趣向はセルジオ・レオーネ監督の劇場作品「夕陽のガンマン」を彷彿させる。その「夕陽のガンマン」のエンニオ・モリコーネの音楽に漂う血と硝煙の匂いは、本作の梶浦由記の音楽では涙と雨の匂いに置き換わっているようである。
 「真のNOIR」を名乗って現れる女殺し屋クロエのテーマ「chloe」、マカロニウェスタンの音楽のような「whispering hills」、ピアノが静かに美しく奏でる「zero hour」、エスニックなリズムと妖しいボイスの組み合わせが緊張感を生む「liar you lie」など、味わい深い曲が続く。いわゆる捨て曲のない濃密なアルバムである。
 チェロのソロが厳かに奏でるレクイエム「sorrow」に続き、本作の音楽のハイライト「salva nos」が登場する。
 さまざまな音が入り乱れる導入部から四つ打ちのリズムがスタートし、女声ボーカルが讃美歌風のメロディを歌い始める。曲名の「salva nos」を英語にすると「save us」。「私たちに救いを」と祈る歌だ。しかし、曲調はアップテンポで激しい。エレキギター、パーカッション、ヴァイオリンなどの音が散りばめられたバックトラックは現代ロック調で美しいメロディを際立たせる。
 「canta per me」と並んで、暗殺シーンやアクションシーンにくり返し使用された重要曲である。本作を観た者なら必ず耳に残っている曲だろう。その曲の歌詞とメロディが讃美歌風に作られているところに深い意味を感じる。作詞も自ら手がけて本作のテーマを結晶させた梶浦由記の音楽作りの巧みさ、その音楽を生かした真下監督の音響演出の的確さに唸らされる。アルバムの締めくくりにふさわしい名曲である。

 本作の音楽打ち合せで真下監督から「好きにやっていい」と言われた梶浦由記は、アニメのための音楽ということを意識せずに作曲を進めたという。結果、既成のアニメ音楽の枠に収まらない音楽が生まれた。歌とインストゥルメンタルが渾然となった梶浦サウンドはここから始まったのだ。
 『NOIR』の音楽には魔術的な梶浦音楽の原型が詰まっている。『魔法少女まどか☆マギカ』や『ソードアート・オンライン』で梶浦サウンドにはまったというファンも、ぜひ、このアルバムから梶浦由記の音楽世界をたどってほしい。

NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK I
Amazon

NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK II
Amazon

127 アニメ様日記  2017年10月29日(日)~

2017年10月29日(日)
早朝に新文芸坐に。着いた時には、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98 岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」の最後のプログラム『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』の終盤だった。人物アクションの音が凄まじいほどで、迫力倍増。いや、3倍くらいになっていた印象。
 この3日間で、ゆうきまさみさんの「白暮のクロニクル」をkindleで一気読みした。完結してからまとめて読んだ方が面白いだろうと思って、読むのを我慢していたのだ。集中して読んだおかげて、単行本を1冊1冊読むよりも、キャラクターにより愛着がもてた気がする。もっともっとゆうきさんのマンガを読みたい。
 夜は橋本敬史さん、谷口淳一郎さん、泉津井陽一さんと打ち合わせと食事。このメンバーなら肉。肉を食べた。

2017年10月30日(月)
学生編集スタッフに「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.2」のための資料のスキャンをやってもらう。ただし、入稿に使うためのスキャンではなく、ページ構成のためのスキャンだ。スキャンの日々は、ここからしばらく続くはず。

2017年10月31日(火)
Production I.Gで打ち合わせ。移動中に、花村ヤソさんの「アニメタ!」1巻から最新4巻をまとめて読む。これもkindleで読んだ。新人アニメーターを主人公にしたマンガで、かなり取材して描いているようだ。アニメスタイルの読者にもお勧め。
 「アニメスタイル012」の表紙デザインがAmazonにあがる。慌てて急いで編集を進めなくては。

2017年11月01日(水)
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』試写に。ストップモーションアニメで、とにかく映像表現が素晴らしい。それだけでも観る価値あり。アクションは日本のアニメ的というか、今風のアクション映画的というか、ケレンがあってそれもよい。

2017年11月02日(木)
『DEVILMAN crybaby』の試写。配信前ということで、どこまで書いていいのか分からないけれど、湯浅政明さんらしいし作品だし、新しさもある。『デビルマン』らしさもおさえている。その後、移動して「アニメスタイル012」の特集のための湯浅さんへの追加取材。

2017年11月03日(金)
三連休1日目。この連休は「アニメスタイル012」のページ構成を進める予定だ。パソコンでひたすら画像をひらいた。作業をしながら『ボールルームへようこそ』を1話から最新17話までを再視聴。

2017年11月04日(土)
三連休2日目。「アニメスタイル012」のページ構成の続き。その途中で外出。イオンシネマ板橋で『ヤマノススメ おもいでプレゼント』を鑑賞する。上映時間は28分と短いものだが、僕的には満足感あり。演出も作画も丁寧だった。あおいとひなたの関係に対して感じていた(この映画を観ていても感じていた)違和感が、ラストで払拭できたのもよかった。

【ARCHIVE】 「この人に話を聞きたい」
第9回 原恵一


●「この人に話を聞きたい」は「アニメージュ」(徳間書店)に連載されているインタビュー企画です。
このページで再録したのは、1999年7月号掲載の第九回 原恵一のテキストです。




僕が、彼に最初に取材したのは13年前。当時の彼は『ドラえもん』で傑作、異色作を生む若手演出家だった。その後、傑作『エスパー魔美』を手がけ、現在、『クレヨンしんちゃん』のチーフディレクターを務めている。「日常性」にこだわり、常に精緻でリアルな演出を見せてくれる彼。13年前からずっと、僕にとって「気になる演出家」なのである。




PROFILE

原恵一(Hirata Toshio)

 1959年(昭和34年)7月24日生まれ。群馬県出身。血液型B型。東京デザイナー学院アニメーション科卒業、CM制作会社を経て、シンエイ動画入社。現在に至る。代表作は『エスパー魔美』『21エモン』(チーフディレクター)、1996年秋以降は『クレヨンしんちゃん』の2代目チーフディレクターを務めている。趣味は、映画、温泉。ちなみに独身。

取材日/1999年5月12日 | 取材場所/東京・シンエイ動画 | 取材・構成/小黒祐一郎





―― ご無沙汰していました。13年ぶりですね。前回の取材は、確か「ルーキー登場」というタイトルのコラムでの取材でした。(注1)

  (笑)すっかりオヤジになりまして。

―― いえいえ。原さんの外見が全然変わっていないので驚きました。

  あんまり苦労してないからかな。でも、だんだん不安になってきますよね。人並みに老けないと(笑)。

―― 苦労していないというのは、同じ業界の他の人に比べて、という事ですか。

  そうだと思いますね。TVシリーズの『クレヨンしんちゃん』は安定しちゃっていますから。あんまり普段の仕事に関しては苦労がないんです。申し訳ないなあと思います。

―― 今までの原さんお作品って基本的には、『ドラえもん』、『エスパー魔美』、『21エモン』、『クレヨンしんちゃん』、映画の『ドラミちゃん』で、ほぼ全部ですか。(注2)

  ほぼ、そうですね。

―― シンプルな作品歴ですね。

  履歴書を書くのも簡単ですね。

―― 作品リストを作ったら、同年輩の人の3分の1くらいの量だったりして(笑)

  でしょうね。みんな、いっぱいやっているからなあ。僕は、基本的にものぐさなんだと思うんです。あれがやりたいとかこれがやりたいとかいう気持ちが、そんなにないんですよ。ずっと今の会社に所属してるからやってこれたけど、フリーでこんなに呑気にしてたら、不安になっちゃってどうしようもないでしょうね。

―― 不安というか、食えなくなっちゃうかもしれないですよ。

  食えないですよね(笑)。

―― 改めて昔の話から聞かせてください。この仕事を志したきっかけは何ですか。

  高校生の時だったかな、本屋で、専門学校の案内が載っている雑誌を立ち読みしていたら、東京デザイナー学院が載っていて、「アニメーションを教える学校があるのか。それも面白いなあ」と思ってですね。その専門学校へ行って、現在に至るという感じなんですよ。

―― (笑)。アニメは特にお好きだったんですか。

  嫌いじゃなかったですね。他の人に比べりゃ、観ていた方なんだろうけど。「あの作品のあのキャラがどうの」というような見方は全然していなくて。周りにもそんな人は誰もいなかったから。専門学校へ来たら、そういう人がいてビックリしましたけどね。

―― 『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』の世代ですよね。

  そうですね。やっぱり『ヤマト』は一生懸命見てたんですよ。面白くて。

―― あ、そうなんですか。

  でも、あれは、アニメ好きじゃなくても観てましたよね、割とね。

―― あの頃は、そうでしたね。後のアニメファンとは、ちょっとニュアンスが違いますね。

  中学生だったと思うんだけど、割と話題でしたからね。

―― 本放送でご覧になっていたんですか。

  うん、本放送です。あれは日曜日の7時半ですか。だから、名作劇場と同じ時間でね。

―― 『アルプスの少女ハイジ』の裏でしたね。

  妹がいるんですけど、妹は『ハイジ』が観たくて、僕は『ヤマト』が観たい。1週交代で観るという約束にして。でも、『ヤマト』って連続ものだから、次回に話を引っ張るじゃないですか。「ああ、来週も観たい!」と思って、妹に「来週も観るから、その次は2週連続で観ていいよ」とかって言って。だけど、『ハイジ』を観ていいと約束した週になっても「やっぱり今週も見せてくれ」とかね。

―― 貸しが溜まっていくんですね。

  そう。どんどん溜まっていく(笑)。専門学校に入った頃に『ガンダム』が始まったんです、確か。

―― 同級生とかは『ガンダム』で盛り上がって。

  僕も結構、観ましたよ。「面白いなあ」と思って。新鮮でしたよね。「あ、アニメでこんな、ドラマみたいなものが作れるんだ」と。

―― 卒業してすぐ、シンエイ動画ですか。

  いえいえ。その頃はね、アニメの業界って職がほとんどなかったんですよ。悲惨なくらい、どこも人を採らなかった。それで『ど根性ガエル』とかが好きだったから、東京ムービーに入れてもらおうと思って。当時、東京ムービーが見学コースというのをやっていたんですよ。それに行ってですね、『ルパン三世』の第2シリーズをやっているスタッフルームで「東京ムービーに入りたいんですけど、どうすればいいんですか」と、監督の御厨恭輔さんに聞いたんです。

―― 大胆ですね。それは卒業してからなんですよね。

  卒業制作とかが大変だったから、就職活動が全然できなくて。要領のいいヤツは学生の間に顔をつないでね、スタジオに潜り込んじゃっていたんです。「マズいなあ、俺も何かしなきゃ」と思ってね。それでそういう行動をとったんでしょうね。今、考えるとなんてあんな事やったんだろうと思うけど。御厨さんに「やる気があるんだったら、絵コンテ描いてきて見せてみなよ」と言われて、必死になってコンテを描いてですね、持って行ったんですよ。そうしたら、「東京ムービーはダメかもしれないけど、何かあったら教えてやるから」って言われて。当時はアパート住まいで、電話なんかなかったから住所を教えたんです。しばらくしてから、御厨さんから往復ハガキが来て(笑)。

―― (笑)。

  で、「偶然知り合いが人を探している。君がよければ紹介する。でも、アニメじゃないんだ」と。それはTVCMとか企業のPR映画を作っている会社だったんですよね。でも、働かなきゃいけないなと思っていたから、アニメじゃなくてもいいかと思って、そこに入って。CMの現場でこき使われてですね。1年半ぐらいしたら、社長から「君は向いてないよ」と言われて(笑)。で、その社長さんが元々アニメをやっていた人なんですよ。それで、シンエイ動画を紹介してくれたんです。それからずっと。

―― 在籍してるんですか。

  ええ。なんだか、ふとした事でどんどん流れていきますね、人生は(笑)。

―― シンエイ動画は演出志望で入ったんですか。

  ええ、一応。最初は『怪物くん』で制作進行だったんですよ。半年ぐらいかな。その後が、『フクちゃん』だったと思うけど。『フクちゃん』の途中で、演出助手として『ドラえもん』へ行ったのかな。ちょっと、その辺はもう記憶がボヤけてるんですけど。

―― 『ドラえもん』ではいつぐらいで演出になったんですか。

  その時に、もとひら了さんという方がチーフディレクターだったんですが、僕が演助になって、すぐにお辞めになったんですよ。それで芝山努さんが監督になって、その下に演出を二人置くシステムになったんですね。

―― じゃあ、『ドラえもん』に移られて早々に演出になった。

  うん。そうだったと思います。コンテもすぐに描き始めちゃったんじゃなかったかな。

―― 初コンテは『ドラえもん』なんですね。

  『ドラえもん』ですよ。

―― 初コンテって覚えてます?

  覚えてますよ、勿論。「悪魔のイジワール」という話です。(注3)

―― それはどういう話なんですか。

  飲み薬でそれを飲むと悪党になってしまうというような話だった。今、思い出すと、恥ずかしい出来ですけど。

―― この時期の原さんは『ドラえもん』で問題作、異色作を次々と連発して。

  うん。……だったんですかねえ。あの頃、リピートの長さが変わっていたんですよね。(注4)僕らがやってた時にリピートの尺が短くなっていって、新作の尺が長くなっていったんですよ。12分ぐらいあったと思うんですよね。だから、結構好きな事が入れられたんですよ。それもありがたかったんですよね。

―― かなりメリハリのある内容で。

  無我夢中でしたよね、あの頃は。

―― 「地球下車マシン」とか凄かったですよね。SF的でしたよ、画面作りが。(注5)

  ありがとうございます。

―― あれ、重力がなくなって地球から落ちちゃうんでしたっけ?

  そうそう。元々、僕は藤子・F・不二雄先生の作品が大好きだったんで。藤子さんが観てどう思われたか知らないですけど、僕なりに「先生は、もっと、こういう事がやりかったに違いない」とか勝手に思い込んで、どんどん膨らませていったんです。

―― SFだという事は、ずいぶん意識しました?

  ……かもしれないですね。本当は小さい子供に向けた、優しいものが求められていたんだろうけど、それからちょっと外れていたものを作っていたのかもしれないですね、僕らは。

―― リアルっぽい事も、おやりになってるんですよね。

  どっちかというと、そういうものの方に興味があったので。まあ、外枠は『ドラえもん』だけど、変なところにこだわってみようとか。そういういやらしい試みをしていたと思うんですよ(笑)。

―― 原さんの回で、乾いている屋根が映っていてピトンピトンと雨が降ってくるという描写があって、屋根が濡れた感じが凄くよくって驚いた覚えがあります。

  あれはダブラシでやったんですよ。

―― 覚えてます?

  覚えてます。多分ね「強いイシ」ってやつだったと思いますよ。(注6)

―― 「強いイシ」ですか。もうビンビンの時期の作品ですよね。

  ビンビン(笑)。

―― 原さんの『ドラえもん』は「あっ、『ドラえもん』でこのカメラワークは初めて観たな」とか「この表現は初めてだ」なんて、発見が多くて楽しかったですよ。

―― 今、思えば、ですか。

  でも、いやらしいですよね。「自分さえよければ」という感じで。

―― 今、思えば、ですか。

  うん。今、思えば。

―― 『ドラえもん』で印象に残っているエピソードってありますか。

  そうですね。結構、真面目なやつで、「ハリーのしっぽ」というやつ。(注7)

―― 彗星のやつ?

  そうそう。あれがね、凄い夢中になってやったなあ。コンテが定尺の倍くらいになっちゃったんですよ。「バカか、お前は!」って怒られて。枝葉がメチャメチャ膨らんじゃって。で、またそれを刈り込んで、ようやく尺に収めて。

―― 最初のコンテだと24分ぐらいあったんですね。

  うん。もうびっくりしちゃうくらいあったんですよ。もう十何年も演出やってますけど、コンテ尺は、未だに全然合わないんですよ。いつも長くなっちゃって。全然、読めなくてね。

―― 『ドラえもん』時代に何か他に印象的だった事とかあります?

  一度、ある原画の人とかなりぶつかった事があって。「あなたのは『ドラえもん』じゃない。やりたくない」って、面と向かって言われた事がありますね。

―― その方は、ベテランの方だったんですね。

  うん。かなりベテランの人でした。作監の中村(英一)さんが、まあまあと言って間に入ってくれて。こっちはもうこうなってる(自分の視界が狭くなってる)から、「これはこうなんだから、こうしてください」と言って。……うん、今は反省してますけど(笑)もう、ほとんど今はないですよ、そういうのは。

―― その時は、自分が思った通りにしよう、という気持ちが強かった?

  そうですね。それでちょっと感情的になって、その人に出さなくてもいいリテイクまで出したりしていたかもしれないですね。嫌な思い出なんですけど。それは覚えていますね。

―― いい思い出はないんですか。

  (笑)苦しかった事の方が多いですよ。絵コンテを描けるのは確かに嬉しい事だけど、何か変わったものを作りたいと思っているから、始終、絵コンテの事しか考えていないんですよ。コンテ中毒というかね。自分なりに「あ、そこそこ上手くできたな」とか思ったりするのが楽しい事で。後はずっと「どうしよう、どうしよう」と思っていた事しか覚えていないですね。

―― その後、『ドラえもん』を離れて『エスパー魔美』でチーフディレクターになられるわけですが。

  『魔美』はね、凄く大事にしたい作品ですね。

―― 原作は前からお読みになってたんですか。

  読んでましたよ。で、「まさか、これができるとは」と思うくらい嬉しかったですね。27、8 歳だったと思うんですけど。シンエイ動画としても、『魔美』は大事に作りたい作品だったようなんですけど、「そんなのを俺に任せて大丈夫かい?」という感じで(笑)。

―― ファン側でも「ついにアニメ化か!」という感じでしたよね。

 『魔美』をやると聞いていたので「ちょっと関われればいいな」くらいには思っていたんですよ。そうしたら「君にチーフディレクターをやってもらおうかと思っているんだ」と言われて、ギョギョっと。でも、まだ若かったから「よーし、やるぞ!」って、すぐにやる気が出てきたんだけど。みんなが思い入れをしている原作だったから、放映が始まったら、すぐにあっちこっちから叩かれて(笑)。

―― あ、そうなんですか!? 「『魔美』はこんなんじゃない」とか言われたんですか。

  うん。そういう作品だったんですよ。だから、始まってすぐに「こら、タマらんわ」という時期がありました。何とか乗り切ったんですけど。

―― あの当時の藤子アニメとしては画期的に渋かったですよね。画面の作りも。

  僕は基本的に変わってないと思いますよ。『ドラえもん』やっても、『しんちゃん』をやっても、画作りは意識して変えていなくて。とにかく同じようなものしか作れないんですよ、僕は。キャラクターの画が違ったりね、美術の画の雰囲気が違ったりしてるけど、絵コンテを見るとほとんど同じような事をやってるんですよ。

―― キャラクターの色使いとか、背景の感じとかに関してはどうですか。

  ああ、あの辺もですね、特別注文したつもりはないけど、大体、思った通りになっていたので「よかったよかった」と思いましたけどね。

―― 全体にちょっとリアルめで。

  ええ、そうそう。ちょっとリアルめにやりたかったから。美術もちょっと淡い色使いのものを描いてくれていたので。『魔美』はいろいろな試みができたんじゃなかったかなあ。あの頃は一所懸命働いていたんですよ(笑)。

―― 各話の脚本に関しては、いかがでした。

  あの頃は、僕はシナリオがキチンと読めていなかった頃でしょうね。ま、今も読めてるかどうか分からないんだけど。何か、本当に枝葉の部分にしか目が行かないような感じで。「こうじゃない方がいい」というのは分かるんだけど、どうしたらいいのか分からないとかね。『魔美』はシナリオ会議がメチャメチャ長かったですよ。

―― そうでしょうね。

  大変でしたね。昼過ぎから夜までずっと喫茶店にいて、結局、1本もOKにならなかったりとかも。

―― シリーズ中盤を過ぎると凄い話が続出しましたよね。例えばゲストキャラが、駅のホームで上り電車が来るか、下り電車が来るかで思いつめるという話があったじゃないですか。(注8)。あれなんか、どうしてそういう話をアニメでやろうと思うかな、と不思議に思いました。

  (笑)。アレはね、新聞の投書か何かでそういうのがあったらしいんですよ。いつもこっち側のホームに早く電車が来ればいいなと思ってるんだけど、なぜか反対側が先に来る。で、調べたら時刻表がそうなっていた、というのをライターさんが読んでね、「これを作っちゃえ」と言って作った話なんです。後半になると段々、オリジナルの話が多くなってきて……。

―― どんどん、魔美と関係のない話が。

  そうそう(笑)。主人公が活躍しなくなっちゃってね。

―― 「アニメのお話は、普通こうだろ」と思って観てると、却って足下をすくわれるような話が続出してですね。

  申し訳ない。

―― いえいえ。脚本の桶谷(顕)さんは最初は文芸だったんでしたっけ。途中からシリーズ構成になるんですか。

  最初からシリーズ構成だったかなあ。ちょっとその辺は覚えてないんですけど、とにかく、途中から凄く頼りになるライターさんになったんですよね。

―― キメの話は桶谷さんみたいな。

  うん。そういう風になってた。シリアスな話とか。「そうそう、こういうのがやりたかったんだよ」というのを結構、書いてくれましたからね。

―― 具体的には?

  やっぱり、「たんぽぽのコーヒー」とかね。(注9)

―― あの話は御自身で演出もやられましたよね。

  あれは結構ね、夢中になってやりましたよ。『魔美』はドラマらしい事ができたのも、嬉しかったですね。

―― しかも、ゴールデンタイムで。

  ねえ。あんな地味なの(笑)。

―― 『魔美』は80年代の後半の作品なんですけど、気分的にはもう7、8年前というか。ちょっと古い青春ドラマみたいでしたよね。

  NHKの少年ドラマシリーズみたいなね。

―― 後にも先にも『エスパー魔美』みたいなアニメはないですからね。

  あれはやれてよかったシリーズだと思います、本当に。

―― 大事にしたいと。

  そうですね。大事にして、何かあったらあそこに戻って(笑)、反省しながらやっていきたいですね。

―― 悩んだ時に『魔美』を観るとか。

  「お前、こんなに真面目にやっていたのに、今はどうしたんだ?」と、自分に言ったりね(笑)。

―― アニメの『魔美』のベースになっているのは、淡々とした日常ですよね。「平穏な日常っていうのはなんと価値があるものか」という気分が、作品のベースにあったような気がしますね。

  僕は基本的に日常の話が好きなんですよ。だからどうしてもやっぱり、地味なものが多くなっちゃうんですよね。

―― その「日常」というのは別に、アニメスタジオで徹夜して絵コンテ描く「日常」じゃなくて(笑)。お父さんとお母さんがいて、子供がいて、焼き魚を食べたりとか、という「日常」ですよね。

  勿論、そうです。僕らが考える「普通の人達の普通の日常」です。

―― それは憧れなんですか。

  憧れ……があるんでしょうね、きっとね。確かに僕らの生活サイクルは、真っ当な人生を送っているとは言えないです(笑)。(注10)

―― 話がズレちゃいますけど、『アルプスの少女ハイジ』で黒パンに溶かしたチーズを乗せて食べるとか、山羊の乳を飲んだりするとか、そういう生活描写がありますよね。あれは「こういう生活こそが豊かな生活なのだ」という主張が作品の根幹にあって、やっているわけですよね。それに通じているのかもしれない。「普通の日常をアニメで描く事」で、その価値を提示するというか。

  僕にとってはそういった描写が、他の人にとってのアクションシーンや、お色気シーンの代わりで、そういうのを作る事に快感を覚えていたのかもしれないですね。『魔美』だけじゃなくて、藤子Fさんの描く家族というのは、東京の郊外に家を持っていて、食事はみんな一緒でね。ああいうのに憧れがあったのかもしれないですね。僕の実家は商売をやっていて、家族揃って飯食った記憶ってほとんどないんですよ。親父は朝早く出かけて、夜遅く帰ってくるような仕事だったし。「チャコとケンちゃん」とか「ケーキ屋ケンちゃん」とか、あの辺のドラマの中の生活というものに、憧れがあったのかもしれないですね。(注11)

―― 僕なんかも、思い浮かべる「家族の食卓」って『サザエさん』の中のものなんですよね。今時、お父さんがわざわざ着物に着替えて、ご飯食べるわけないと思うんだけど。

  『おもひでぽろぽろ』の世界みたいな。

―― 「ファンタジーとしての日常」を描いてるんですね。

  多分、そうですね。そういうのに縁がなかったから。

―― 『魔美』が終わった後って、原さんの名前をしばらく見なくなりますが。

  東南アジアに一人で旅行に行ってました。

―― どのぐらいの期間だったんですか。

  7ヶ月くらいでしたかね。

―― それは『魔美』が終わって休むという事だったんですか。

  いつか行きたいと思ってたんですよ。普段は旅をするといっても、年末年始に1週間くらいがせいぜいじゃないですか。実はね、『魔美』が始まった頃に、あちこちから叩かれまくって「もう逃げ出しちゃおうかな」と思って、その時に計画したんですよ。

――でも、さすがに放映中には行く事ができず。

  何とか自分をなだめつつ。一応、終わりまでやって。終わるのが決まった時に「ちょっと、休ませてもらいたいんだけど」と言ったら、会社の方も許してくれたので。

―― 最初から7ヶ月の予定だったんですか。

  本当は1年間休もうと思ってんたんですよ。でもなんかね、一人でリュック担いで旅行してるとくたびれるんですよね(笑)。

―― その間、ずっと移動していたんですか。

  気に入ったらしばらくいて、飽きたら別のところへ移動して、とかね。本当は東南アジア以外も行こうと思ってたんですけど、結局、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールを行ったり来たりしていただけですね。

―― 『魔美』に続いて、『チンプイ』のチーフディレクターをやるという話はなかったんですか。

  それはね、あったんですよ。でも、旅行に行くのは今しかないと思って。あの旅行は行ってよかったと思いますよ。僕は、旅行が大好きなんでね。1年に1ヶ月くらいは休みが取れるような世の中になって欲しいなあ、と思いますね。

―― でも、それはアニメをやってると無理でしょうね。

  うん。多分、無理なんだろうね。

―― 帰国後、『21エモン』でTVのチーフディレクターですね。

  『21エモン』は準備期間が短くて、大変でしたね。(セル画の)枚数も削ってですね。あれが初めてですね、枚数に制限が入ったのは。

―― それは制作スケジュール的な問題だったんですか。

  ええ。あれでSFの連続ものというのは大変だなあ、と分かりました。このくらいのものでもこんなに大変なんだから、サンライズとかでやるようなハードなヤツだったら、どんなに大変だろうかと。

―― ご自分の中でこういうところが狙いだったとか、というのはあります?

  『魔美』とは違って、とにかくテンポを出そうと意識してやっていたとは思うんですよ。でも、元々、僕の中には足りないというか……。

―― パンチがない?

  (笑)パンチがない、ですね。淡々としている方が向いているみたいで。

―― 『21エモン』が終わって『クレヨンしんちゃん』が始まり、各話演出として参加するわけですね。

  『しんちゃん』が始まった時、スタッフの誰も、こんなに長く続くと思っていなかったと思いますよ。アニメーターさんが面白がって、あれこれやってくれてたのが大きかったんじゃないかなあ。最初は、動かないアニメを作るというのが目標だったんです。

―― えっ!? そうなんですか。それは全体の総意として。

  うん。チーフディレクターの本郷(みつる)さんも、そのつもりだったはずです。『しんちゃん』は画も簡単、動きも少なく、スケジュールも楽に、という感じで始めたんだと思うんですよ。でも、段々原画の人達が暴走し始めて、演出もそうかな。いつの間にか変わっていってしまったんですね。

―― TVでも、動く時は動きまくりですもんね。

  ええ、そうですね。その辺は本当に贅沢にやっています。

―― 原さん自身も、最初の頃はあんまりノレてなかったとか?

  う~ん。そうですね。平面的な画作りという約束だったから。でも、段々我慢できなくなって。徐々に徐々に……。

―― 自分の中で『しんちゃん』に関する印象が変わった話はあるんですか。

  「これで開眼したぜ」とか、そういうのはないんですよ。何話だったか忘れちゃったけど、台風が来る話があって、それが「『しんちゃん』も面白いかな」と思えた話数でしたね。(注12)

―― 映画版はどうなんですか。御自身の中だと。

  『しんちゃん』の映画は凄く楽しみながらやってきています。

―― 映画は最新作が7作目ですが、最初の4本は本郷さんが監督で、原さんは演出、本郷さんと共同で絵コンテでしたよね。実際の仕事の分担はどのようなかたちで。

  原作者の臼井(儀人)さんのメモを基に、本郷さんがプロットを起こして、一緒にコンテに入るというやり方でした。

―― 同時進行で、原さんが前半を描いて、本郷さんが後半を描いているみたいな。

  うん、そうそう。1本目は前半後半ではっきり分けちゃったんですけどね。2本目以降は結構、入り乱れてますよ。

―― 1本目の『アクション仮面VSハイグレ魔王』では、前半は本当に淡々と日常を描写していて。

  ええ。あの辺は僕がやったんです。

―― 後半の本郷さんのパートはアクションシーン山盛り。分かりやすい構成ですよね。『雲黒斎』はどうなんですか。

  時代劇シーンは、ほぼ僕がやりました。時代劇という事もあって、相当入れ込んでやってましたね。

―― 時代劇がお好きなんですね。

  うん、そうですね。メチャメチャ好きな人に比べれば、僕はそんなに観てる方じゃないと思うんだけど、一度やってみたかった。原画にもそういう人がいてね、助かったんですよ。模擬刀を横に置いて、コンテやってましたよ(笑)。

―― 自分で刀を持って、ポーズをとりながら。

  うん。分からなくなると誰かに相手してもらって、「こう来てこう来たら、次はこうか」とかね。チャンバラはかなり燃えてましたね。また機会があったら、やりたいですね(笑)。

――  5作目以降は、本郷さんが抜けて、原さんが監督としておやりになっているわけですが。

  そうですね、割と好き勝手に遊ばせてもらっていますね。「今度はこんなのにしよう」という上からの声みたいなものが、ほとんどないんですよ。僕みたいなタイプからすると、誰かから「今度はこんなの」と言われて、やった方がいいのかもしれないけれど。

―― 最新作の『温泉わくわく大決戦』ですが。

  今回、個人的に一番燃えたのは丹波哲郎ですよ。これはもう大興奮でしたね。

―― 今回は随分と「邦画」でしたよね。

  それは思いました。「俺は日本映画をやっているんだよなあ」と。丹波さんに出演交渉をした時に、丹波さんが「その映画に自分が必要なら出てもいい」と言ってくれたらしいんです。その話を聞いた時にね、ちょっと感動したんですよ。「映画? ……映画なんだよ! さすが映画人、言う事が違うなあ」って。「『しんちゃん』とはいえ、日本映画なんだ」って。

―― なるほど。

  若いスタッフは、丹波さんお名前を聞いてもピンと来なかったみたいですけど、声や出来上がったものを観て、「丹波さんでよかったですね」と言ってくれる人が多かった。

―― 存在感ありますからね。

  ありますね。ちょっと、あり過ぎたという話もあるんですけど(笑)。

―― 全部、持っていっちゃいますからね。

  持っていかれちゃった。

―― 「丹波さんが活躍すれば、しんちゃんいらないじゃん」とか(笑)。 

  「俺が来たら、もう大丈夫だ」と丹波さんが言えば「そうだろうな」って納得しちゃえるとこってありますからね。

―― 今回は温泉の話と言いつつ、ついに女性の裸は出しませんでしたね。

  そうですね~。その辺は「子供は観てもあんまり嬉しくないだろう」というところかな。

―― 出したかったけど、セーブしたというわけではない。

  いや、そんなに出すつもりもなかったし。『しんちゃん』のあの画でヌードシーンやって「どうだ、凄いだろう!」って言ってもね。そんなの……。

―― かえって、ガッカリしてしまう?

  うん。ガッカリしちゃうでしょ。みさえのお尻は出てるんですよ。

―― 伊福部マーチも話題になりましたね。(注13)

  今回は本当にね、「日本映画」というのを意識しましたよ。丹波さんでしょ。伊福部昭さんでしょ。それから、映画とは関係ないけどエンディングが「いい湯だな」。あれをエンディングに使うのが念願だったんですよ。エンディング観て、自分で感動しちゃいましたからね、「ついにやったぜ。ついにできた!」って(笑)。(注14)

―― ドリフ世代なんですね。

  勿論ですよ。どっぷりですよ。温泉の話だからエンディングは「いい湯だな」を使いたい。これはもう最初に決まってたんですよ。しんちゃん達で「いい湯だな」を新録音する、これが果たせた。多分、僕が一番嬉しかったんだろうなあ(笑)。

―― 原さんが監督になってからの3本は、家族愛の比重が強くなってると思うんですけど。

  そうかもしれないですね。家族が力を合わせて何かをする、というね。それは原作の臼井(儀人)さんからの要望もあるんですよ、僕もそういうのは嫌いじゃないので。しんちゃん一人の活躍は、あんまり得意じゃないのかもしれない。むしろ、つい気持ちが大人の方に行ってしまうんですよ。

―― 『暗黒タマタマ』と『温泉わくわく』は、ひろしの方に行ってますね。

  ひろしはね、割と僕はやりやすいんですよ。年齢も近いし。ま、いつの間にかひろしの方が年下になっちゃいましたけど、35歳の設定ですから。

―― だったら、僕はひろしと同じ歳か。やだなあ(笑)。

  ひろしって、だらしないじゃないですか。だらしないけど、たまにはちょっとカッコいいところも作ってやるかとか、結構ね、素直にやれるんですよ。

―― 素直に?

  自分の憧れの部分ですね。自分も多分、情けない奴だろうから。「ひろし、がんばれ!」というような気持ちでね。

―― 僕はここ3作だと『暗黒タマタマ』が一番好きなんですよ。ゲストキャラもいい味出してるし。最後の歌って踊るところも泣けるし(笑)。

  毎回、感動を狙ってるんですけどね。どんなおバカな事をやりながらも、体育会計の熱さみたいなのを『しんちゃん』の映画に関しては常に心掛けてはいるんですよ。だから、コンテの温度を上げる事を、自分に課しているんですよ。

―― 「コンテ温度」ですか。新しい言葉ですね(笑)。例えば『巨人の星』というのは、凄く温度が高いんですね。

  温度高いですよ、メチャメチャ(笑)。

―― 『タイガーマスク』とかも高いんですね。

  高いですね。常に『しんちゃん』の映画のコンテに入る時には「よ~し、コンテ温度を上げるぞ!」と自分に言い聞かせるんですよ。

―― 温度ですか。

  体育会系のノリかなあ。光線とかに頼らない、頼りたくない。

―― なるほど。原さんになってから、クライマックスで光線はないですね。

  今回のもそうですが、敵を倒すのは、とにかく体当たり(笑)。それで何とか、熱く盛り上げたいと思ってるんですよ。「汗をかけっ!」「走れっ!」とかね、そういうのが好きなんです。

―― なるほど。原さんにとって、本郷さんは、どういう存在なんですか。

  技巧派ですね。

―― 凝るという事ですか。

  凝るというか、……何かこう、面白くするためにはいくらでも飾りをつけていくというか……。

―― 料理で言うと、同じシャケの切り身があったとして、本郷さんはクリーム煮にしちゃうとか。原さんは塩焼きとか。

  僕は「生でもいいわい」とか(笑)。

―― 本郷さんは、さらに海鮮スープまでつけたり。

  ああ、そうかもしれない。本郷さんは演出する事にも凄く貪欲だとは思いますね。観てる人の事を凄くよく考えていると思います。僕は割と自分さえよければ、みたいな作りになっちゃうので。

―― 本郷さんが映画『しんちゃん』でやっていた、ファンタジー的なモチーフを否定するわけじゃないんですね。

  そうではないです。ただ、僕が不得手だという事です。あんまり興味を持ってやれない世界なので。

―― 『暗黒タマタマ』も、ギリギリで現実世界の中でとどまってますよね。

  『しんちゃん』で初めての監督だったので、夢中でやったんですよ。徹底的にファンタジー的な要素を排してやろうと思ってやっていました。あれができたお陰で、その後がやりやすくなったような気がしますね。

―― じゃあ、『温泉わくわく』は意識的にちょっとファンタジー的な要素を足してみた?

  う~ん、自分ではあんまりファンタジーのつもりはないんです。段々、道具が大きくなってきてはいるんですよね。だから、地味なのが好きとは言いつつ、どこか不安で戦車何十台とか、身長何十メートルのロボットを、出してしまっているのかもしれないですね。

―― 『暗黒タマタマ』は伝奇物風ですよね。現実世界を舞台にしていて、SFまでいかないという。

  そう。SF一歩手前みたいなのが好きですね。キャラにしても、カッコいい奴が出てきて、カッコいい事を言う、というようなのにあんまり興味が持てないというか。カッコ悪い奴らがカッコ悪い事をやってるってのが、何か好きですね。カッコ悪いなりにがんばったりとか。

―― TVシリーズの『しんちゃん』も、本郷さんから原さんいバトンタッチされて、テイストが変わったと思うんですけど。

  どうなんでしょうね。……劇中劇みたいなものは減りましたよね。

(注15)

―― その辺りは、スッパリなくなりましたね。

  子供は、あんまり面白くないんじゃないかな、と思ったんですよ。

―― なるほど。

  やってる人と、ちょっとマニアックな人は面白いかもしれないけど、観てるのは大部分が子供だから。あとはね、OLのお姉さんとかが観てくれているみたいだから。そういう人はああいう劇中劇とかをやっても面白くないんじゃないかな、と思って。

―― 全体のテイストを意識的に変えようとはしてないんですか。

  特にはないですね。まあ、家族構成は変わっちゃったけど、それぐらいで(注16)。ただ、映画と同様に野原一家の話を中心にしようと思ったかもしれない。さっきの話に戻るけれど、家族の他愛もない話は、僕は嫌いじゃないですから。さっき、上手い言い方をしましたよね。

―― 「ファンタジーとしての日常」ですか。

  そうそう(笑)。

―― 今後って……まあ、『しんちゃん』は今後も続くと思うんですけど、それは置いておいて、こういう事をしてみたい、というのはないんですか。

  う~ん。一度ね、メチャメチャにプラトニックな恋愛ものをやってみたいと思ってはいるんですよ。観てる人がもう恥ずかしくて、照れちゃうようなのを。

―― 作品世界的には『エスパー魔美』に近い感じですか。

  ああ、近いですね。

―― 自分で新作の企画書を書いたりとかはしないんですか。こういう事をやりたい、とか。

  たまーにありますけどね。なかなか採用されないですね。

―― 活動はしてるんですね。

  細々とですが。ただ、僕がやりたいものっていうのは、どう考えても売れないんですよ(笑)。「コレが売りだ」というものが、どうしてもなくてね。ないから好きなんだけどななあ、自分では(苦笑)。



(注1) 
インタビュアーの小黒が、前に原恵一に取材したのは、1986年の年末。アニメージュ1989年2月号の「TVアニメーションワールド」のルーキー登場というコラム記事だった。

(注2) 
実際には、次ページのリストにあるように『チンプイ』『化粧師』『景山民夫のダブルファンタジー』にも絵コンテ等で参加している。とはいえ、これが原さんが手がけたアニメのほとんど全てであり、中堅演出家としては参加した本数はかなり少ない。

(注3)
 「悪魔のイジワール」は1984年1月20日放映の第112回Cパート。

(注4) 
『ドラえもん』は1本新作、1本再放送で構成されている。原さんが参加していた頃の『ドラえもん』は再放送分の時間が短く、その分、新作が長かった。

(注5)
 『地球下車マシン』は1985年1月4日放映の第159回Aパート。

(注6)
 「強いイシ」は1985年9月6日放映の第191回Aパート。

(注7)
「ハリーのしっぽ」は1984年12月21日放映の第157回Aパート。

(注8)
 103話「日曜日のトリック」。駅で上りの電車がくれば、その日はツイていると思い込んでいるゲストキャラの少年。だが、来る日も来る日も、下りの電車ばかりが来る。実は、上りと下りの本数が同じでも、上りの電車が来てから下りがくるまでの方が間隔は長く、「次に来る電車」は下りである確率が高かったのだ。というお話。

(注9)
 54話「たんぽぽのコーヒー」。マーラーの「交響曲第2番」を効果的に使用した事でも話題になったエピソード。

(注10)
昼夜逆転していたり、会社に泊まり込んだりするという事。

(注11)
 「チャコとケンちゃん」と「ケーキ屋ケンちゃん」は、いずれも昭和40年代に放映されたホームドラマ「ケンちゃんシリーズ」。

(注12) 
19話Aパート「台風がやってくるゾ」。

(注13)
『爆発!温泉わくわく大決戦』では「ゴジラ」と「怪獣大戦争」から伊福部昭の曲が流用され、特撮ファンの間で話題になった。この曲の使用も原さんのアイデアだった。

(注14)
 「いい湯だな」は。往年の人気バラエティ「8時だよ!全員集合」でエンディングに使われたドリフターズの有名な歌。

(注15)
実際には、今後の『クレヨンしんちゃん』で、新しい劇中劇をやるかもしれないそうだ。

(注16)
 原さんがチーフディレクターとなった前後で、しんちゃんの妹のひまわりが生まれた。

第538回 答えを出すスピード

今年も気がつけば、残り1ヶ月半!

 ま、毎年毎年同様なフレーズが飛び交う時期が来ましたとさ。今年もたくさんコンテ切りました。単純な話、自分は

作画がカット数なら、コンテは本数! 尺数と言ってもいい!

という主義です。以前ここで書いた大塚康生さんの話、「3秒のカットは3秒で描くべき」理論。つまり、芝居やアクションは、現実のスピードに近い時間で描き上げるほど、いいカットになると。これをコンテの話に置き換えると「20数分のコンテなら」となるわけです。これって俺の場合、後輩らに「答えを出すスピード(速さ)」と説明してます。事実、大塚さんは答えを出すスピードがとにかく速い。自分が悩んでいると横から覗いて「板垣くん、ここはこーゆー画を入れないと」と目の前でサササッと描いて見せてくださるんです。

即、答えが出せる職人、カッコイイ!

 こんな大先輩が悠々自適でいてくださったから、アニメーターたちに真っ当な夢を与えることができるんだと思います。だって「これくらい巧くなれば、お金に困ることはない」と体現してくださってるのですから。その「これくらい巧くなったら」の技も見せることができず、私生活の贅沢を見せびらかすだけの先輩は、後輩から尊敬などされません。それは理念・観念を語るだけではダメなんです。実務、実務! とにかくコンテも実務が先。ごく1部の天才を除き、コンテは量を描けてナンボ。

来年もシリーズが控えており、コンテいっぱい描けますようにっ!!

126 アニメ様日記  2017年10月22日(日)~

2017年10月22日(日)
川崎市民ミュージアムで行われた国産アニメーション100周年記念イベントの記念講演「アニメーション史を訪ねた男、100年を語る」に行く。「日本アニメーション映画史」の著者の一人である山口且(旦)訓さんの仕事について、原口さんとの対談形式で語られた。初めて知る話ばかりで、大変に興味深いものだった。「日本アニメーション映画史」のあとがきでも触れられているが、山口さんがこの本で担当した「第一部 日本アニメの歴史(I)」は、彼の卒業論文が元になっている。山口さんは先行する書籍や研究がほとんどない中、独自の調査で日本のアニメーションに関する事柄を、ひとつひとつ調べていったのだ。

2017年10月23日(月)
この日記の7月30日(日)の項でも書いたけれど、2016年の夏から、中古ソフトで「スーパーロボット大戦A」をプレイしている。今日、五度目のプレイが終わった。五度目では、ザンボット3を中心にスーパーロボットに資金を投入して、主力ユニットとした。スーパーロボットが前に出て、後方からリアルロボットが援護するといういかにも「スパロボ」らしいプレイができて満足。今回はゴッドガンダムを風雲再起に乗せたのだが、これが猛烈に強くて楽しかった。

2017年10月24日(火)
ヴィレッジヴァンガードの池袋サンシャインシティアルタ店が「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」を沢山入荷してくれていると知り、仕事の合間に様子を見に行く。『美少女戦士セーラームーン』等の少女マンガと並ぶかたちで、どっさり置いてあった。Twitter用の写真を撮らせてもらうために店の人に声をかけたところ、POPを書いてほしいと言われた。POP用の紙を持って帰り、事務所スタッフに描いてもらうことに。

2017年10月25日(水)
仕事の合間に『いぬやしき』1話、2話を観る。よくできている。 さとうけいいちさんと恩田尚之さんは『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』を作りながら、『いぬやしき』の準備を進めていたわけで、それもすごい。この作品は、おそらく原作のテイストをきちんと再現しているのだろう。放映が終わったところで原作を読もう。

2017年10月26日(木)
朝から『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』Blu-rayのコメンタリー、インタビュー等をチェックする。午後にはサイエンスSARUで、チェ・ウニョンさんに取材。

2017年10月27日(金)
バルト9で『コードギアス 反逆のルルーシュI 興道』を観る。話が詰まっているのに、ダイジェスト感があまりなく、よくできた総集編だ。TVシリーズよりも、ロボットアニメの部分を押し出している印象で、それを含めて楽しめた。

2017年10月28日(土)
昼間は原稿作業、オールナイトのトークの予習等。この日も池袋ではコスプレイベントがあったのだけれど、見に行く時間がとれなかった。ただ、事務所近くで『るろうに剣心』の志々雄真実が傘を差して歩いているのとすれ違った。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98 岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」。ちなみにこのイベントタイトルも岩浪さんにつけていただいた。トークの出演は岩浪さんに加えて、杉山潔プロデューサー(『ガールズ&パンツァー』)、瀬下寛之監督(『シドニアの騎士』)、塩谷直義監督(『PSYCHO-PASS サイコパス』)といった方々。皆さんがどんどん話を進めてくださって、司会の僕としては楽をさせてもらった。

第118回 輝きを宿す音 〜コメットさん☆〜

 腹巻猫です。11月18日(土)19時より阿佐ヶ谷ロフトで「菅野祐悟トークライブ」を開催します。アニメでは『図書館戦争』『鉄腕バーディー DECODE』『PSYCHO-PASS』『ガンダム Gのレコンギスタ』『ジョジョの奇妙な冒険[2期・3期]』『亜人』『BLAME!』などの音楽を手がける作曲家・菅野祐悟さん。その音楽史や作曲秘話などをうかがう予定です。前売券はe+で発売中!

菅野祐悟トークライブ
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/76470


 今年は「ウルトラセブン」(1967)など、放映50周年を迎えた作品がいくつかある。TVアニメでは『リボンの騎士』『パーマン[白黒版]』『悟空の大冒険』『マッハGoGoGo』など。TV特撮だと「ジャイアントロボ」「仮面の忍者 赤影」「キャプテンウルトラ」などがそうだ。そんな50周年作品のひとつに「コメットさん」がある。
 「コメットさん」は1967年にTBS系で放映された国際放映制作の特撮TVドラマ作品。星から来たコメットさんが地球の家のお手伝いさんになり、魔法のバトンの力で難題を解決しながら子どもたちと交流を深めていく物語だ。実写版魔法少女もの(あるいはその元となった「奥様は魔女」の日本版)というべき作品である。歌手の九重佑三子が主演し、1年半にわたって放映された。放映終了から10年後の1978年には大場久美子の主演でリメイクされ、こちらも1年以上放映されている。現在も根強いファンを持つ作品だ。
 そのコメットさんをアニメ化したのが、2001年に放送されたTVアニメ『Cosmic Baton Girl コメットさん☆』(以下『コメットさん☆』と表記)。今回はこのTVアニメ版を取り上げよう。

 TVアニメ『コメットさん☆』は2001年4月から2002年1月までテレビ大阪/テレビ東京系で全43話が放映された。アニメーション制作は日本アニメーション。アニメーション協力としてシナジージャパンが参加している。のちに『エルフェンリート』(2004)、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』(2010)、『すべてがFになる』(2015)などを手がける神戸守が監督を務めた。
 トライアングル星雲にあるハモニカ星国(ほしくに)のプリンセス・コメットさんは逃げ出した隣国の王子さまを探すために地球にやってくる。地球で星力(ほしちから)を使い果たしてしまったコメットさんは双子の子ども剛(つよし)と寧々(ねね)に助けられ、その家に居候させてもらうことに。コメットさんは地球の人々が持つ「輝き」に魅せられ、王子さま探しよりも地球で輝きを持つ人を見つけ、応援することによろこびを見出していく。
 実写版ではほとんど描かれなかったコメットさんの故郷の設定を大きくふくらませ、アニメ版独自の世界を作り上げている。大きなトピックスは、コメットさんの母親である王妃役を初代コメットさん=九重佑三子が演じ、第19話から登場するコメットさんの叔母・スピカ役を2代目コメットさん=大場久美子が演じていること。2人は若い頃に一度地球で暮らしたことがあり、星に帰ったあともその思い出をとても大切にしていた。王妃=1作目のコメットさん、スピカ=2作目のコメットさんとも受け取れる設定と配役で、実写版から観ているファンは胸が熱くなる。
 ユーモラスな場面をまじえながら、キャラクターの心情が丁寧に描かれているのが印象的だ。毎回、コメットさんやコメットさんが関わる人々の小さな成長が描かれて爽やかな感動を呼ぶ。「良心的」という言葉がこれほど似合う作品はない。実写版ファンの間ではあまり話題に上らないようだが、旧作の精神を受け継ぎ、新しい解釈のコメットさん像を示して見せたすばらしい作品である。

 音楽は音楽ユニットMOKA☆として活躍する小西香葉、近藤由紀夫の2人が担当している。
 筆者がMOKA☆の名をはじめて意識したのは2008年に放送されたTVアニメ『ポルフィの長い旅』だった。ヨーロッパの旅を描く物語に、エキゾティックな香りを漂わせる、素朴でふしぎな浮遊感のある音楽がよく合っていた。MOKA☆の小西香葉はこの作品で次回予告のナレーションも担当している。
 MOKA☆は異なった音楽背景を持つサウンドクリエイター近藤由紀夫と小西香葉のユニット。作詞・作曲・編曲・演奏・歌唱等のサウンドプロデュースをこなし、アーティストへの楽曲提供や映像音楽を手がけるほか、オリジナルアルバムも発表している。映像音楽の代表作に、映画「恋文日和」(2004)、TVドラマ「R-17」(2001)、「火消し屋小町」(2004)、「だいすき!! ゆずの子育て日記」(2008)、「チャレンジド」(2009)、「僕とスターの99日」(2011)、TVアニメ『エルフェンリート』(2004)、『しにがみのバラッド。』(2006)、『純情ロマンチカ』(2008)、『さらい屋 五葉』(2010)、『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』(2014)、『pupa』(2014)などがある。
 『コメットさん☆』の音楽は楽器の響きを生かした、やさしく温かい曲が中心。魔法少女アニメっぽい華やかなサウンドやポップなサウンドは控えめだが、心に残るメロディと巧みな音使いが印象的だ。
 サウンドトラック・アルバムは「コメットさん BGM集I」「同II」の2枚がNECインターチャネルから発売された。
 「BGM集I」から紹介しよう。収録内容は以下のとおり。

  1. 星のトレイン
  2. オープニングテーマ〜君にスマイル(TVサイズ)
  3. ヘンシン!
  4. JOY OF LOVE
  5. 終わらない夜
  6. HORIZON
  7. Looking For Your Heart〜君のハートはどこ?〜
  8. マジカルコメット
  9. 輝きをさがして
  10. ワクワク惑星
  11. 涙の雨音
  12. へなちょこラグ
  13. ミステリアス・メテオ
  14. ハロー!ハロー!
  15. Feeling Soul
  16. いつもの笑顔
  17. らぶりーラバボー
  18. はじめての好き
  19. エンディングテーマ〜トゥインクル☆スター(TVサイズ)

 ドラムス、ベース、ギターにストリングスと木管(フルート、クラリネット、サックス)、ハープを加えた小規模な編成。浮遊感のあるシンセサイザーの音が加わって独特のサウンドを生んでいる。
 トラック1「星のトレイン」は第1話でコメットさんが地球へやってくるときに乗った星のトレインのテーマ。ファンタジックなイントロに導かれ、軽快なリズムに乗ってストリングスがメロディを奏でる。爽やかな躍動感にあふれた曲だ。第2話以降も、星のトレインの登場シーンやコメットさんが星のトンネルで空を駆ける場面などによく使われた。そして、最終話(現行版)のエンドクレジットに流れるのもこの曲。コメットさんの輝き探しはまだ終わらない。そんなことを感じさせる旅の始まりの曲である。
 2曲目はオープニング主題歌「君にスマイル」のTVサイズ。放送ではイントロに「コメットさーん」「はーい」という実写版から受け継がれた子どもたちとコメットさんのかけあいの声が入っていたが、CDでは採用されていない。ぜひ入れてほしかったところだ。
 トラック3「ヘンシン!」はタイトル通り、コメットさんがバトンを使ってミニドレス姿に変身する場面に使われた曲。キラキラしたイントロから上昇する音階をくり返すミステリアスでワクワク感のある曲調に展開。コメットさん登場を印象付ける。3曲目に変身BGMを持ってくる思い切った構成が効果的だ。
 次の「JOY OF LOVE」は本作の音楽の中でももっとも重要な、メインテーマとも呼べる曲である。コメットさんが決意を胸に行動を始める場面や星力で輝きを持つ人々を応援する場面によく流れていた。ストリングスとシンセが奏でるシンプルで力強いメロディが心の中にわき上がるよろこびや希望を表現する。バックのエスニカルなリズムに胸が躍る。このリズムの使い方はMOKA☆の特徴のひとつだ。
 このメロディをマーチ調にアレンジした「MARCH OF LOVE」やしっとりとしたスローアレンジ「JOY OF LOVE,again」も劇中の名場面によく使われていた。また、コーラス入りアレンジの「JOY OF LOVE, forever」は最終話でコメットさんが地球に戻る場面に流れて印象深い曲になった(いずれもサントラ2枚目に収録)。
 トラック5「終わらない夜」は第13話でコメットさんが病院で行われる手術に立ち会って青ざめる場面など、少し緊迫した場面に使われたサスペンス曲。アルバムの中ではほんわかした雰囲気を引き締めるスパイスのような曲になっている。
 ピアノとクラリネットが奏でるトラック6「HORIZON」は落ち着いた曲調の情景描写曲。それだけにとどまらない、なかなか味わい深い曲だ。第19話で高原に寝そべってくつろぐコメットさんの前にスピカおばさんが現れる場面、第29話でコメットさんがほら貝を耳に当てて遠く離れた少年ケースケの声を聞く場面など、日常の中で心がふっと波立つようなシーンに流れている。
 トラック7「Looking For Your Heart 〜君のハートはどこ?〜」とトラック15「Feeling Soul」は、シンガーソングライターの少年イマシュンこと今川瞬が劇中で歌っている曲のエレキギターによるメロオケ。歌入りはソングアルバムに収録されている。MOKA☆は「売れなさそうな歌」というオーダーに応えて渋いブルースを書いたそうだ。
 コメットさんが魔法(星力)を使う場面の定番曲「マジカルコメット」に続いて、シンセのふわっとした音色が耳に残る「輝きをさがして」。曲の頭の部分はサブタイトル音楽としても使用されている。細野晴臣が手がけた『銀河鉄道の夜』(1985)というアニメサントラの名盤があるが、この曲はそのサウンドや雰囲気を連想させる。星くずの中を自分だけに見える輝きを探して旅するような、新しい出会いへの期待と少しの不安とさびしさが一緒になったような、ふしぎな気持ちに包まれる曲である。
 バイオリンの優雅なメロディとエスニックなリズムを組み合せた「ワクワク惑星」は高揚する心を表現する曲。楽しい場面に流れる曲だが、コメットさんとケースケの絡みの場面にも使われて、コメットさんのケースケへの気持ちの変化を表現していた。登場人物の心情をすくいとる音楽演出のうまさが光る。
 トラック11「涙の雨音」は悲しみや寂しさを表現する曲。シンセとピアノをメインにした淡々とした曲調で、コメットさんたちの気持ちに寄り添う繊細な曲だ。使用頻度は高く、数々の名場面に流れている。なんといっても記憶に残るのは最終話前の第42話で、カスタネット星国の王女メテオが地球でお世話になった老夫婦とさよならする場面。コメットさんになにかと競争心を燃やすメテオはわがままで高慢に見えるけれど、実はやさしい気持ちを持った少女。そのメテオが地球を去る前に仮の両親にきちんと別れを告げようとする場面は涙なしに観られない。ああ、思い出すと涙が……。
 トラック13「ミステリアス・メテオ」はそのメテオのテーマだが、妖しくミステリアスな曲調を生かして、謎の人影が現れる場面や心が不安でざわざわする場面などによく使用されていた。
 「へなちょこラグ」「ハロー!ハロー!」「らぶりーラバボー」はややエキセントリックなサウンドと強めのリズムを使ったコミカルな曲。劇中ではあまり使われなかったが、アルバムの中では楽しい雰囲気をかもし出してメリハリをつける格好のアクセントになっている。
 トラック16の「いつもの笑顔」はコメットさんと双子の日常シーンによく流れた曲だ。ピアノのリズムにオカリナ風の音色の素朴なメロディが重なる。本作のほんわかした、やさしい空気感をよく表わしている。同じメロディをアレンジした「雲のおさんぽ」という曲(サントラ2枚目に収録)もいい曲で、第9話「雲のゆりかご」でコメットさんと双子が雲のベッドに乗って空の散歩を楽しむシーンに使われていた。
 エンディング主題歌の前に置かれた「はじめての好き」は、「JOY OF LOVE」と並ぶ本作を代表する楽曲のひとつである。
 コメットさんは地球で輝き探しをするうちに、星国の王子さまでなく地球の少年に恋をしてしまう。プリンセスとしての責任と自分の気持ちとの間で揺れるコメットさん。まるで『ローマの休日』のようなロマンティックで切ない心の動きが物語後半の見どころだ。コメットさんだけでなく、コメットさんのお付きの妖精ラバボーにも、メテオにも、恋の季節が訪れる。「はじめての好き」はそんな恋する想いを美しいメロディで表現する曲。胸の奥がキュンとなるようないい曲である。
 2枚目の「BGM集II」についても書いておこう。すでに紹介した「JOY OF LOVE」のバリエーションや「雲のおさんぽ」、メテオのテーマをストリングスが妖しく奏でる「PRINECSS METEO」、コメットさんの新変身テーマ「REBORN」、「はじめての好き」をアレンジした「さいごの好き」など、1枚目に劣らず名曲が詰まった1枚だ。中でも重要なのは「胸に住む人」と題された曲。コメットさんが初めて「好き」と言われてとまどう場面やケースケへの気持ちを意識する場面など、揺れ動く心を表現する曲として全編を通してよく使われた。最終話でコメットさんが地球でお世話になった人たちと別れる場面にも流れている。これも本作を代表する楽曲のひとつである。

 『コメットさん☆』のサントラは1枚目も2枚目も収録時間は40分少々。CDとしては短めだ。もっと曲を入れてほしかったとも思うが、その分、凝縮されたアルバムになっている。1枚目のライナーノーツでMOKA☆の二人が「1曲1曲私たちが感じている輝きをこめて音楽を創らせていただきました」と書いているように、じっくり聴くほどにキラッと輝くものが見つかる音楽である。
 しかし、こんな良質のサウンドトラックが今では入手困難とは。配信でもよいから、いつでも手に入るようにしてほしいったら、してほしいものですよ(とメテオさんの口調で)。

コメットさん☆ BGM集I
Amazon

コメットさん☆ BGM集II
Amazon

125 アニメ様日記  2017年10月15日(日)~

2017年10月15日(日)
今週は事務所に入った時間を、この日記に書くことにする。早朝というか深夜に出社して、朝あるいは昼まで集中して原稿作業をするようにしている。実はこの超朝型生活に切り替えてから、睡眠時間は増えた。この日は午前2時45分に事務所に入った。
 『DRAGON BALL超』は先週に続き、ジレンの強さをアピール。面白い。TOHOシネマズ新宿で『Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower』を観る。原作ゲームをプレイしていないので、内容についてあれこれと言うことはできないが、ボリュームたっぷりでアクションも山盛り。エネルギーを感じる作品だった。

2017年10月16日(月)
午前2時40分に事務所に入って原稿作業。「この人に話を聞きたい」の原稿まとめに着手。

2017年10月17日(火)
午前0時40分に事務所へ入って原稿作業。午前6時まで原稿。その後、朝飯と軽い散歩などを挟んで、池袋から中野まで歩く。電車で移動して、10時半から南阿佐ヶ谷で打ち合わせ。11時半に事務所に戻って、打ち合わせが2本。14時くらいには、そろそろ1日の仕事が終わってもいい感じになっていた。いや、終わらなかったけど。

2017年10月18日(水)
午前1時20分に事務所へ入って原稿作業。「ルパン三世ベストセレクション」では9位を放映。『PARTIII』5話「五右ェ門無双」だった。10位の『PARTIII』第24話「友よ深く眠れ」に続き、2週連続『PARTIII』の五右ェ門メインのエピソードだった。銭形や五右ェ門にスポットがあたった回が強いなあ。ということは、これから「哀しみの斬鉄剣」もくるか。

2017年10月19日(木)
午前1時40分に事務所へ入って原稿作業。作業が一区切りついたところで『生徒会役員共』原作15巻限定版のOADを観る。いつもの通りの面白さ。それから『少女終末旅行』の2話がよかった。1話もよかったけど、2話はもっとよかった。かつて僕が思い描いた「こういうアニメがあったらいいな」に近い。午後は中野で「アニメスタイル012」の取材兼打ち合わせ。ICレコーダーは回さず、話を聞きながらキーボードを叩く。その後、まんだらけに寄って、見当たらなくなったアニメ雑誌のバックナンバーを購入。それと、刊行当時に購入し損なって、ずっと手に入れる機会のなかった「杉野昭夫 作品集」も買った。30数年かけてようやく入手できた。

2017年10月20日(金)
午前2時50分に事務所へ入って原稿作業。夕方に仮眠。夜は新文芸坐へ。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98 岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」のための、岩浪さんによる音響セッティングに立ち合う。セッティングにより、音が一段と立体的になった印象。さすがです。以前、オールナイトで『劇場版 シドニアの騎士』を音量増しで上映した際には音が割れてしまったが、今回はそんなことはなさそうだ。

2017年10月21日(土)
新文芸坐での立ち合いを終えて、午前1時00分に事務所へ入って原稿作業。紀伊国屋書店新宿本店で「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」が販売されていると聞いて、昼に行って確認する。マンガコーナーやアニメコーナーではなく、画集コーナーに平積みになっていた。嬉しい。

第536回 朝が好き!

久々に晴れた朝はやっぱり気持ちいいですね。
今日も6時起き!

以前解説したとおり、朝が大好きな板垣です。とにかく「朝」には思い出がいっぱい。
 幼稚園の頃は、山形のおじいちゃんと一緒に新聞配達(という名の散歩)をしてジュースをおごってもらった思い出。自分、プロフィール上は愛知県名古屋市出身だけど、両親は山形県出身。姉は名古屋で生まれたらしいのですが、俺は母親が帰省してる時に生まれたそうなので「生まれた場所は山形だ」と。よって、幼い頃は毎年、夏か正月に山形で過ごした思い出が多く、朝と言えば山形での朝がいちばん好きです。その時から早起きで(朝4時〜5時?)、ひとり縁側で一面の田んぼをボケ〜っと眺めてたもんです。冬の雪景色などは、遠くの山々まで、まるで水墨画のように綺麗だったのを思い出します!
 小学生になると早朝ゴルフ(笑)。この連載のかなり初期に語った、手作りクラブで公園にて。これも「朝4時集合!」と友人らに声をかけて、自分は3時に公園行って、ひとりでクラブを振って夜明けを待ってました。すると友人らは5時近くにやってきて合流。平日の学校行く前でも、そーやって遊んでたんです。
 あとは、マンガも早朝描いてたし、パソコンでゲーム作ったりするのももっぱら朝。そして、今現在は朝コンテ!

いくつになっても、朝は自分にとっていちばん楽しい時間!

なんです。
 そしてやっぱりアニメの再放送枠。我々世代が子供の頃は、家庭用のビデオデッキもそれほど普及しておらず、好きなアニメを「もう一度観たい!」となると、再放送を待つのみ。80年代、名古屋(に限らないと思いますが)では早朝アニメの再放送枠があちこちにありました。主に朝5時〜6時半頃とか。自分が生まれる前に作られたアニメは、これらの再放送で観たものばかりです。『アタック NO.1』や『タイガーマスク』『ど根性ガエル』『バビル2世』、あと『巨人の星』とか。
 あ、ちなみに徹夜明けとかで「あ〜あ、朝になっちゃった……」と不本意ながら迎えてしまう朝は、あまり好きではありません。せっかくの朝が力いっぱい楽しめないから。

どんなに忙しくても「朝を楽しむ」ため、
たとえ3時間でも必ず寝る主義です!

124 アニメ様日記  2017年10月8日(日)~

2017年10月8日(日)
なんということだ。先週の日記で『それいけ!アンパンマン』について書くのを忘れていた。10月6日(金)に放映された「アンパンマンとどろんこ魔王」が見応えのある仕上がりだったのだ。内容はアンパンマンの誕生、バイキンマンの幼少期を回想で描き、ミュージカルパート、カレーパンマンとしょくぱんまんが人々にパンを届ける描写もあり。後半ではアンパンマン達がどろんこ魔王と戦うのだが、どろんこ魔王は劇場版第1作『それいけ!アンパンマン キラキラ星の涙』に登場したキャラクターだ。この話は筋立てから豪華で、それだけでなく画面構成もしっかりとしていた。大きさや広さを感じさせるレイアウトになっていた。オンエア時に途中から観たのだが、劇場版をテレビ放映しているのかと思った。エピローグ部分では、アンパンマンがやなせうさぎを助ける。やなせうさぎは、原作者の故やなせたかしが自分をモデルにしたキャラクターだそうだ。エピローグの舞台となっているのが、ウユニ塩湖をイメージしたと思われる場所であり、その情景がまた美しい。最後のシーンまでスペシャルな回だった。この話の脚本は米山正二、絵コンテが永丘昭典、演出が山内東生雄。監督の永丘さんがTVシリーズで絵コンテを担当するのは珍しいはずだ。アンパンマンを演じる戸田恵子さんのブログによれば、この「アンパンマンとどろんこ魔王」で『それいけ!アンパンマン』が30年目に突入したのだそうだ(2017年7月31日のエントリー「さんじゅうねんめにとつにゅう。」)。その節目を記念したエピソードなのだろう。
 以下が10月8日(日)の話題。『DRAGON BALL超』のスペシャル「これぞ全宇宙一の究極バトル! 孫悟空VSジレン!!」がかなりよかった。なんと言っても面白い。話の密度が高いうえに展開が速い。テンションは高いし、次回への引きもいい。圧倒的な強さのジレンに対して悟空が苦戦し、新しい力「身勝手の極意」を会得したにも関わらず、それでもジレンに負けてしまうのがいい。作画もいいところがあった。今までの『DRAGON BALL』のオリジナルストーリーで、一番満足度が高かったと思う。
 昼から阿佐ヶ谷ロフトAでトークイベント「第136回アニメスタイルイベント アニメスタイルのアニメファン(アニメ雑誌ライター)講座 初級編」。出演者は僕と吉松さんのみ。レジュメを作ってあったし、喋ることも決めていたので話がサクサク進んだ。トーク最初のブロックが「10分で分かる『アニメファンのアニメの歴史』だった。さすがに10分では終わらなかったけど、10分と少しで終わった。第二部の「アニメファンなら観ておきたい200本」を紹介するパートは、予定通りにポイントのみを話すかたちになった。  

2017年10月9日(月)
体育の日。昼までデスクワーク。午後はTOHOシネマズ 新宿で、ワイフと実写映画「ドリーム」を観る。SNSで知人が誉めていたので観にいく気になったのだ。よくできていたし、楽しめた。3人の主要登場人物のうち、メアリーがクライマックスのドラマにほとんど絡まなかったのがちょっと意外だった。エピローグで主人公のモデルになった女性の、現在の様子が紹介されるのがよかった。ドラマと現実がリンクした感じだった。  

2017年10月10日(火)
『おそ松さん[第2期]』1話と2話をまとめて観る。2話Aパートで、チョロ松以外の六つ子の乳首がなくなってしまった。これから、六つ子が裸になった時に、5人は乳首が作画されないのだろうか。『おそ松さん』は「男性アニメキャラにおける乳首問題」において重要な作品なので気になる(「男性アニメキャラにおける乳首問題」を気にしているのは、僕を含めて数人しかいないのかもしれないが)。それにしても「乳首がなくなったわね。おそ松」は凄いセリフだなあ。
 他も次々と10月の新番組をチェックする。いつも、後で落ち着いて観ようと思って、チェックが後回しになるのだけど、今期は先に一通り目を通したかったので、ながら観もありで、ガンガンとチェックすることにした。  

2017年10月11日(水)
iPhoneを5sから8Plusに乗り換えた。予想していたことではあるが、メインで使っている歩数計アプリから、2日分の歩行記録が消えた。まあ、全部が消えなくてよかった。
 打ち合わせで、仕事を手伝ってもらっている学生さんに「この前のイベントで、誰の原画か当てられることは重要ではないと言われたばかりですが、この『セーラームーン』の版権イラストはどなたが描いたのか分かりますか」と言って、スマホで画像を見せてきた。それに対して「スマホで『セーラームーンS LD』で画像検索してごらん。ほら、それが元のイラストだよ。つまり、伊藤郁子さんのイラストをトレースして色を付け直したものだ」と答える。いやあ、すぐに答えられる質問でよかった。
 昨日に続き、10月の新番組をガンガンとチェックする。この日に1話をチェックしたタイトルは『戦刻ナイトブラッド』『お酒は夫婦になってから』『食戟のソーマ 餐の皿[第3期]』『あめこん!![雨色ココア第4期]』『TSUKIPRO THE ANIMATION』『このはな綺譚』『大正ちっちゃいさん』『UQ HOLDER! 魔法先生ネギま!2』『アニメガタリズ』『妹さえいればいい。』『ブレンド・S』『アイドルマスター Side M』『鬼灯の冷徹[第弐期]』『王様ゲーム The Animation』『Just Because!』。  

2017年10月12日(木)
『夜明け告げるルーのうた』展 in ササユリカフェを訪れる。原画やイメージボードは勿論、壁にかけられたタブレットで流れていたメイキング映像も見応えがあった。  

2017年10月13日(金)
昼から夜まで、打ち合わせ4本立て。新文芸坐の打ち合わせで、11月のオールナイトはお休みすることになった。「新文芸坐×アニメスタイル セレクション」の「Vol.100」は来年1月になりそう。  

2017年10月14日(土)
ネットで“映画「この世界の片隅に」に関わったチーム一同”が第65回菊池寛賞を受賞したことを知った。日本文学振興会のTwitterアカウント(@shinko_kai)のツイート(ツイートがあったのは10月12日)によればこの「一同」には、原作のこうの史代さん、片渕須直監督、制作・製作スタッフのみなさん、そしてクラウドファンディングに参加された皆様が含まれます”とのこと。僕もクラウドファンディングに参加しているので、菊池寛賞を受賞したことになる。それはともかく、クラウドファンディングに参加した人達が「一同」に含まれているのはいいな。  

第535回 尊敬するクリエイター

 前回、時間切れというか疲労で力尽きたので、もう少し出崎監督話! 疲れた時は出崎監督話に限りますから。
 まず、誤解されてるかもしれないのでひとつ断っておきますが、

自分がいくら出崎ファンでも、「出崎作品すべて大絶賛」ってわけではありません! むしろ駄作も多いと思ってます!

 そもそも俺、黒澤監督や小津安二郎監督作品もDVDやBDで全部買ってるほど大好きだけど、こちらも「半分は駄作だ!」と。

でも、黒澤監督も小津監督も大好きなんです!

 それでいいでしょう?

人間なんて所詮50点! 良いところも悪いところもあれば、作品においても成功・失敗は誰でもある! むしろ尊敬するクリエイターであればあるほど、出来の悪い作品も受け入れた上で敬愛したい!

のです。だから自分、目の前で出崎作品を否定されても目くじら立てたことは一度もありません。そんなこと、俺程度が鬼の首を取ったように言わなくても、出崎監督ほどの巨匠は、

作品づくりとは「作って、観せて、賛否されるまでがワンセット」

であることくらい、とっくに覚悟されてるハズ。ゆえに俺ら風情が何を否定しても揺らがないんです。俺も出崎作品の批判をここで書くのは簡単だけど、そんなんことをしても意味がない! 少なくとも今の自分は、コンテ切って作画してフィルムを作り続けるのみ! です。

第137回アニメスタイルイベント
絵本刊行記念 あずきちゃん同窓会

 「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」の刊行を記念して、アニメ『あずきちゃん』のトークイベントを開催する。出演者は小島正幸監督、丸山正雄プロデューサーをはじめとするスタッフ、キャストの方々。当時の思い出をたっぷりと語っていただこう。また、会場ではイベント特典小冊子「平田敏夫作品集」付きで「平田敏夫画集 あずきちゃん絵本」を販売する。

 開催日は2017年11月12日(日)。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントもトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。前売り券は10月21日(土)10時から発売となる。詳しくは以下の阿佐ヶ谷ロフトAのリンクを見ていただきたい。

■関連リンク
TVアニメ『あずきちゃん』のエピローグイラストを収録した画集が刊行!
http://animestyle.jp/news/2017/09/07/11936/

アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/76213

第137回アニメスタイルイベント
絵本刊行記念 あずきちゃん同窓会

開催日

2017年11月12日(日)
開場:18時/開演:19時 終演:22時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

小島正幸(監督)、丸山正雄(プロデューサー)をはじめとする『あずきちゃん』のスタッフ、キャスト、
小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて
 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第117回 女神が届ける音楽 〜ああっ女神さまっ〜

 腹巻猫です。10月28日から公開される『映画 キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』のサウンドトラックが10月25日に発売されます。構成・解説を担当しました。カメオ出演するあのゲストキャラクターの曲も収録。本編とともにお楽しみください!

映画 キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ! オリジナル・サウンドトラック http://www.amazon.co.jp/dp/B0756MWWT3/


 前回『かんなぎ』を取り上げたので、こちらも取り上げないわけにいかないだろう。男の子のもとに女神がやってきて同居することになる『ああっ女神さまっ』である。
 原作は藤島康介の同名マンガ作品。1988年から2014年まで『月刊アフタヌーン』に連載された。1993年にOVAとして初映像化。以来、1998年の外伝TVアニメ、2000年の劇場版、2005年のTVアニメ第1期、2006年のTVアニメ第2期、2007年のTVアニメ特別編と、数回にわたってアニメ化されている。息の長い作品だ。長期にわたって多くの作品が作られているのに、外伝を除いて、合田浩章監督をはじめとするメインスタッフはずっと変わっていない。メインキャストも同じだ。スタッフ、キャストの愛を感じる作品である。
 音楽はOVA版を安田毅、外伝を村山達哉が担当。劇場版以降は一貫して浜口史郎が担当している。今回は浜口史郎が手がけたTVアニメ第1期の音楽を紹介しよう。

 モテない大学生・森里螢一は偶然「お助け女神事務所」の女神ベルダンディーを呼び出してしまう。ベルダンディーから「一つだけ願いごとをかなえることができる」と言われた螢一は、とっさに「君にずっとそばにいてほしい」と口にする。その願いが聞き届けられ、ベルダンディーと螢一との共同生活が始まる。……というのが物語の発端。やがて、ベルダンディーの姉ウルド、妹のスクルド、魔族のマーラーらが登場して、螢一は天界・下界・魔界を巻き込む大騒動に巻き込まれていく。純粋で天真爛漫なベルダンディーが人間世界の生活にとまどいながら螢一と心を通わせていく展開が見どころだ。
 このTVアニメ版、最初のOVA版で描かれた物語の始まりからをもう一度描く、いわゆるリブート作品である。先行する劇場版は螢一とベルダンディーの関係が確立したあとの物語だったので、TVアニメで話が巻き戻されたことになる。劇場版から参加した浜口史郎はその点をふまえて、『ああっ女神さまっ』の音楽世界をあらためて構築したという。
 浜口史郎は1969年生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科を卒業後、ビクターエンタテインメントに制作ディレクターとして入社。1996年より作曲活動を開始した。アニメ、ゲームの音楽を中心に活躍するほか、歌曲のアレンジやコンサート用のオーケストラアレンジも多く手がけている。アニメでは、『ONE PIECE』(1999〜/田中公平と共作)、劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズ(1999〜)、『おおきく振りかぶって』(2007)、『ジュエルペット』シリーズ(2009〜2011)、『ロザリオとバンパイア』(2008)、『ガールズ&パンツァー』(2012)、『SHIROBAKO』(2014)などの作品がある。
 スケール豊かなオーケストラサウンド持ち味だが、シンセの打ち込みを使った音楽もうまい。『ガールズ&パンツァー』では吹奏楽を意識した音作りで「戦車+女子高生部活もの」の雰囲気を巧みに演出していた。大編成の音楽でも暑苦しくなく、明朗でキラキラ感のある上品なサウンドが魅力だ。筆者は『ジュエルペット てぃんくる』と『ジュエルペット サンシャイン』のサントラ構成を担当させていただいたが、メロディラインのくっきりした可愛い音使いの曲が多く、「小さい女の子はこういう音楽好きだろうな」と思ったことを思い出す。
 『ああっ女神さまっ』では、クラシカルで上品な音楽を中心に、ロックサウンドやテクノ風のサウンドも取り入れている。劇場版はワルシャワ・フィルが演奏した壮大な音楽が印象的だったが、TVシリーズはぐっと現代的になっているのが特徴だ。
 また、物語をあらためて始めることになるので、浜口史郎は各キャラクターをちゃんと説明するための音楽を書いたという。サントラには「ベルダンディー」をはじめ、「ウルド」「スクルド」「沙夜子」などのキャラクターをイメージしたテーマが収録されている。
 サウンドトラック・アルバムはジェネオンエンタテインメントから「Original Soundtrack-1」「同-2」のタイトルで2枚発売された。1枚目の限定版には2枚をまとめて収納するスリーブケースが付属している。ブックレットは8ページと簡素ながら、1枚目には浜口史郎の、2枚目には音響監督の岩浪美和のインタビューが掲載されて資料性も高い。ジャケットは実景を映した写真とアニメ画を組み合わせるなど、凝ったパッケージになっている。こんなこだわりも、本作がスタッフに愛されているなあと感じるところだ。
 1枚目の内容から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. OPEN YOUR MIND 〜小さな羽根ひろげて〜 (On Air Ver.)(歌:石田耀子)
  2. プロローグ
  3. 自動車部
  4. レース
  5. ウルド
  6. お色気攻撃
  7. 田宮、大滝先輩
  8. 大騒ぎ
  9. ドキドキ
  10. 恋する気持ち
  11. トラブルメーカー
  12. 2級神1種限定
  13. tiny waltz
  14. 強制力
  15. アイキャッチA
  16. ベルダンディー
  17. 優しい心
  18. 悲しみ
  19. 愛する人のために
  20. 微かな胸騒ぎ
  21. 沙夜子
  22. 静かな対決
  23. 迫り来る恐怖
  24. 魔法バトル
  25. 1級神2種非限定 〜Sanctus〜
  26. 友情
  27. ハッピーエンド
  28. 予告
  29. 願い (On Air Ver.)(歌:石田耀子)

 オープニング主題歌に始まり、エンディング主題歌で終わる、TV放映のフォーマットを再現した構成。アイキャッチ音楽や予告音楽がちゃんと収録されているのがうれしい。
 オープニング主題歌は浜口史郎とのコラボ作品も多い田中公平が作曲。異国の空を舞うような優雅でエキゾティックなメロディで女神と天界のイメージを広げる。岸村正実と浜口史郎によるケルトミュージック風アレンジもすばらしい。歌手の石田耀子は作詞も担当。彼女の代表作と呼べる曲になった。
 トラック2からがBGMパート。「プロローグ」は第1話の冒頭、大宇宙を描く映像をバックに運命の不可思議をナレーションが語る場面に流れた曲だ。
 トラック3「自動車部」とトラック4「レース」は螢一の大学生活を描写する活気のある音楽。「レース」は第10話の大学対抗ラリーの場面に使用されていた。
 次のトラック5からの構成はちょっと変わっている。物語の流れからすればベルダンディーのテーマを頭のほうに持ってくるところだが、ベルダンディーの姉ウルドのテーマが登場。グラマラスなお姉さまキャラに螢一が翻弄される場面の「お色気攻撃」が続く。
 この構成についてちょっと考えてみた。
 アイキャッチをはさんで前半と後半に分けると、前半には冒頭の「自動車部」「レース」をはじめ、「田宮、大滝先輩」「大騒ぎ」「トラブルメーカー」「tiny waltz」などコミカルな曲やアクティブな曲が多い。
 いっぽう後半は「ベルダンディー」「優しい心」「悲しみ」「愛するの人のために」「友情」など、じんわりと胸にしみる曲が多く収録されている。
 これは前半を明るく活動的な雰囲気に、後半をしっとりした雰囲気にまとめようとしたのではないか。レコードでいうなら、A面とB面を雰囲気を変えて対比させるような感じに。
 もちろん別の意図がある(もしくは何もない)可能性もあるけど、そんな風に考えながら聴くのもサントラの愉しみのひとつだ。
 トラック12の「2級神1種限定」は女神の資格を表す言葉。「2級神1種限定」はスクルドの資格だ。トラック25の「1級神2種非限定」はベルダンディーの、2枚目に収録された「2級神管理限定」はウルドの資格を表している。曲調から三姉妹のサブテーマか法術(魔法)を使う場面を想定した曲とも思われるが、実際にはほとんど(もしくはまったく)使用されなかった。
 トラック14「強制力」はベルダンディーと螢一の契約が生む強制力をオペラ音楽的な曲調で表現する曲。タイトルどおりの場面には使われず、第13話で螢一とスクルドが協力してバグ取りマシンを作る場面に使用された。本作では意外にファンタジー的な曲の出番は少ない。
 魔法系の曲やサスペンス曲、戦いの曲などがあまりシリアスにならず、使用頻度も少なめなのが本作の音楽設計の特徴である。劇場版のクライマックスがシリアスで壮大に描かれていたのと対照的に、TVシリーズは日常の中のドタバタに主眼が置かれている。
 だから、アルバム後半に登場する「静かな対決」「迫り来る恐怖」「魔法バトル」といった曲もビリビリするほどの緊迫感はない。そういう狙いなのだ。
 本作の音楽のハイライトは心情描写音楽である。美しく胸に沁みる曲の宝庫だ。
 トラック9「ドキドキ」は夢見るような恋の始まりをイメージさせる曲。チェレスタの音色にフルートがやさしくメロディを添え、ストリングスの流麗な旋律へと展開する。第1期の最終話となった第24話で螢一の危機を救ったベルダンディが「出会えてよかった」と泣くクライマックスに流れて涙を誘った。
 トラック10「恋する気持ち」はピアノが奏でるロマンティックな曲。後半はストリングスが控えめに加わって合奏になる。昔日の恋の想い出がよみがえるような、切なく甘い曲である。
 トラック17「優しい心」もピアノが美しい曲。螢一のベルダンディーへの思いやりや二人の気持ちが通い合う場面などに流れて、しみじみとした余韻を残した。
 トラック18「悲しみ」はヴァイオリンとアコースティックギターだけのシンプルな編成による情感曲。第12話で螢一への自分の気持ちに気づいたベルダンディーが迷う場面や第20話で体調を崩したベルダンディーを螢一が介抱する場面など、「悲しみ」というより、泣きたくなるような切ない気持ちを表現する曲として使われている。
 トラック19「愛する人のために」はオルガンとアコースティックギターをバックにケーナが哀愁を帯びたメロディを奏でるフォルクローレ風の曲。異国の丘に1人立つ、という雰囲気で、爽やかな風を浴びているような気分になる。
 トラック26の「友情」は大事な曲だ。ピアノのシンプルな導入からストリングス、木管が加わり、美しいアンサンブルになる。心の大切な部分を温かく包みこむようなメロディ。「友情」というタイトルがつけられているが、実際には、第5話でベルダンディーが螢一に幸せになってほしいと願う場面、第12話で螢一がベルダンディーに契約とか関係なくずっとそばにいてほしいと伝える場面、そして第24話のラストでベルダンディーが契約は消滅したけれどずっとこの世界に留まりたいと螢一に話す場面など、螢一とベルダンディーの絆が深まる重要な場面に使用された。天界と人間界の境界を超えた2人の愛情を表現する曲である。
 トラック27「ハッピーエンド」はタイトルどおり、明るいエンディングによく使われた曲。なかなか進展しない螢一とベルダンディーの関係を中心に、明日もドタバタが続く。そんな作品の雰囲気をよく表わしたエンディング曲だ。

 音響監督の岩浪美和は音楽発注に際してあまり具体的な指定はせず、キーワードを提示するくらいで自由な発想で作曲してもらったそうである。浜口史郎は自分なりの解釈で作った曲を合田監督に聴いてもらいながら作曲を進めた。結果、音楽的な遊びもありつつ作品イメージを裏切らない絶妙のバランスの楽曲が生まれた。サウンドトラックであると同時に、その枠にとどまらないイメージアルバム的な面白さもある。原作ファンにも楽しめるサントラだと思う。
 サントラ1枚目は日常のドタバタや螢一とベルダンディーとのふれあいをイメージした曲が多かったが、2枚目は魔界や天界を描いた曲が登場し、ファンタジー色が濃くなる。もちろん、キャラクターの心情を描写するしみじみした曲も収録されている。ぜひ2枚セットで、欲を言えば劇場版も加えて3枚まとめて聴いてもらいたい。女神がやさしく幸せを届けてくれるような音楽である。

ああっ女神さまっ Original Sound Track-1
Amazon

ああっ女神さまっ Original Sound Track-2
Amazon

劇場版 ああっ女神さまっ ORIGINAL SOUNDTRACK
Amazon

123 アニメ様日記  2017年10月1日(日)~

2017年10月1日(日)
『プラスティック・メモリーズ』を最終回まで観る。面白かった。本放映時には何となく、作品に入りづらかったと記憶している。まとめて観たほうが面白いのかもしれない。新文芸坐で実写映画「8 1/2」を観る。帽子と眼鏡の男がバスタブに浸かっているスチールは印象的だったが、どんな内容の映画かはまるで知らなかった。断片的に知ってはいるけど、きちんとは観たことのない映画をなるべく観ておきたいと思っていて、これもその1本だった。
 山田尚子監督の新作のタイトル、キービジュアルが発表されたのを知る(実際に発表されたのは9月30日)。発表されているタイトルは『響け!ユーフォニアム リズと青い鳥』ではなく、シンプルに『リズと青い鳥』。キービジュアルを見ても『ユーフォニアム』シリーズの一作とは気づかないのではないか。というか、僕も「あれ、『ユーフォニアム』ではないの?」と思った。トバしているなあ。公開が楽しみだ。  

2017年10月2日(月)
引き続き、取材の予習で『GJ部』等を観る。『GJ部』の最終回はよく覚えている。あ、こんな最終回になるんだ、と思ったのだった。

 声優の槐柳二さんが亡くなったことが報じられた。亡くなったのは9月29日(金)だそうだ。『赤毛のアン』のマシュウ、『天才バカボン』のレレレのおじさんなどが印象に残っている。心よりご冥福をお祈り致します。

2017年10月3日(火)
「この人に話を聞きたい」で藤原佳幸監督の取材。動画工房の入り口で山崎みつえ監督にバッタリ。取材は話題が多岐にわたり、充実したものになった。撮った写真のバリエーションも多めで、マジメなものもあり、愉快なものもあり。どれを選ぶかで迷いそうだ。

2017年10月4日(水)
「アニメスタイル012」で『有頂天家族2』の吉原正行監督の取材。自分で「アニメスタイルらしい」と言うのもおかしいけれど、アニメスタイルらしい取材となった。
 池田憲章さんから事務所に電話があった。ご病気されたと聞いていて、それは本当のようだったが、声はお元気そうだった。電話で教えていただいたのが、「池田憲章の外国TVメモランダム」というブログだった。以下のリンクをどうぞ。

池田憲章の外国TVメモランダム
https://kenshoikeda.blogspot.jp/

2017年10月5日(木)
日曜のイベントで話題にする「アニメファンなら観ておきたい200本」のために、OVA『逮捕しちゃうぞ』などを観る。

2017年10月6日(金)
昼まで作業をして日曜のイベントで使うレジュメのテキスト、「アニメファンなら観ておきたい200本」のリストを仕上げる。「200本」から『プラスチックリトル』を落としたのだけれど、そのことを事務所の女子スタッフ2人に話したところ、「ええ、どうして落としたんですか!」と驚かれる。そこまで言うならと、リストに手を入れて『プラスチックリトル』を「200本」に加える。だけど、そんなに『プラスチックリトル』が好きだと思われているのか。
 「200本」は選びたいものはだいたい入っているけれど、それでも全部が入っているわけではない。300本を選んでもまだ漏れるかな。「アニメファンなら観ておきたい作品50」に入っていて「200本」に入っていない作品があるのも面白い。

2017年10月7日(土)
早朝、レジュメと「アニメファンなら観ておきたい200本」のデザインが完成。プリントアウトをしてもらう。
 Netflixで『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』の配信が始まっていたことを知る。DVD化されておらず、視聴が難しかった作品。力作であり、『きまぐれオレンジ☆ロード』としては異色作である。「アニメファンなら観ておきたい作品50」に入っていて「アニメファンなら観ておきたい200本」に入っていないタイトルのひとつが『あの日にかえりたい』だった。

第534回 人生は出崎アニメ

人それぞれ——仕事のやり方には色々あっていいんじゃないかな……

 これ、出崎統監督の劇場版『BLACK JACK』のラストシーン、B・J最後の台詞です。1996年公開当時に聞いた時はピンとこなかった台詞だけど、今はとても沁みますね。この言葉、議論好き、論破好きな方が聞くと、まず「人それぞれ」に引っかかるんだと思います。「人それぞれと言ってしまったら議論の放棄だ!」と。自分も学生の頃、その手の議論は好きだったので、そのスジの友人と朝まで議論しました。で、今はとっくに止めてます。せめて30代半ばくらいまでに実績を作ってれば、議論・討論・論破で文化人を気取れたかもしれませんが、俺の場合はそのへん皆無なので、粛々と仕事をしています。まあ、もともと文化人に対する憧れも皆無ですが。
 「仕事のやり方は人それぞれ」。この言葉って、出崎監督ご自身のアニメ作りまんまな感じがして好きなんです。例えば90年代に入って「オリジナルをやったアニメ監督こそが勝ち組」的な風潮が蔓延してきても、出崎監督は原作ものがメイン。『白鯨伝説』くらいでしょう? オリジナル作品は。恐らく、これはあくまで板垣の憶測ですが、出崎監督にとって素材はなんでもよく、原作ものかオリジナルかなんてどーでもよかったのではないか?

描きたいのは「テーマ」じゃなくて「人間」である!

と。あと周りの監督がやらなくなった3回PANや止めハーモニーも最後までやり続けた姿勢にもシビレます! 生前録られたオーディオコメンタリーでも「何が正しくて何が間違ってるかを決めつけちゃいけないと、俺は思う」とも仰られてたのも印象的! だめだ、疲れると出崎アニメを語りたくなる。

122 アニメ様日記  2017年9月24日(日)~

2017年9月24日(日)
早朝に新文芸坐。着いた時にはオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 97 アニメファンなら観ておきたい200本 沖浦啓之と『人狼 JIN-ROH』」の最後のプログラム『ももへの手紙』の終盤。上映終了後、朝までいらした沖浦さんと舞台から挨拶をする。
 昼間は事務所に入るが、あまり作業は進まず。夕方から「平松禎史スケッチブック展記念トーク&サイン会」に。リラックスムードのイベントになった。平松さんがスケッチブックの「新作」を持ってきてくれたので、トーク終了後に、それをお客さんにめくってもらった。

2017年9月25日(月)
取材の予習で、今日から明日にかけて深夜アニメを2クール分を観る予定だったのだけど、急に取材が延期になった。延期自体はいいのだけれど、意気込んで視聴していたので、気持ちのもっていきどころがなくて、ちょっと困った。

2017年9月26日(火)
ネットでは、たつき監督の『けものフレンズ』から外れることになった件が話題になっている(たつき監督ツイートは9月25日20時のもの)。それと前後して『ワンパンマン』第2期で監督や制作会社が交代することが発表された。こちらもちょっと寂しい。
 朝にテレビで放映していた韓流ドラマで、映像とセリフに違和感があった。口パクがあっていないというだけの理由ではない。おそらくリアリティレベルの問題だ。吹き替えセリフのリアリティと映像中のリアリティがあっていない。ちょっと話が長くなるけど、日本人にとって(少なくとも僕にとって)洋画の吹き替えは誇張された芝居でも構わない。その意味ではアニメと同じなのだ。韓流ドラマは登場人物が、日本人と同じアジアの人なので、誇張された芝居があわない(と感じてしまう)。つまり、生身の人間と誇張された芝居のギャップがはっきりと出てしまう(と感じてしまう)。沢山の事例で確認したわけではないけれど、韓流ドラマであっても、時代劇だと誇張された芝居でもそんなに違和感がない気がする。今朝放映されていたものに関しては、音響演出が割り切って「アニメっぽい」芝居をつけている印象で、違和感が出るのは覚悟しているのではないかと思った。

2017年9月27日(水)
昨夜の「ルパン三世ベストセレクション」では12位を放映。『新ルパン』7話「ツタンカーメン三千年の呪い」だった。これはかなり意外。インパクトのある話だったのは間違いないけれど。ますますここから先が読めなくなった。
 取材の予習で『未確認で進行形』を観る。楽しい。まとめて観た方が楽しめるのかもしれない。「アニメージュ」10月10日発売号の「設定資料FILE」が諸般の事情で掲載できないことになった。かなり自信のある構成だったので非常に残念だ。

2017年9月28日(木)
ササユリカフェの「平田敏夫とあずきちゃんイラスト展」初日。夕方、のぞきに行く。ササユリカフェから出たところで、ビルの前でイラスト展を訪れた『あずきちゃん』関係者の方とばったり。ササユリカフェに案内した。

2017年9月29日(金)
昼間は『エロマンガ先生』の2度目の取材。夜はレイトショー「新文芸坐×アニメスタイル セレクション 特別編 平田敏夫監督の珠玉のアニメーション『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』」。上映を全部観ることはできなかったけれど、やはり2本とも素敵な映画だ。トークのゲストは大橋学さんと丸山正雄さん。客席には福島敦子さん、石川山子さんの姿も。トークでは大橋さんが当時の制作現場の様子を録音した音声を披露してくださった。丸山さんから『グリム童話 金の鳥』のキャスティングについてうかがえたのも嬉しかった。

2017年9月30日(土)
9月終了の深夜アニメの最終回をいくつか観る。取材の予習で『プラスティック・メモリーズ』を4話まで観る。

第116回 ほんわかしっとり 〜かんなぎ〜 

 腹巻猫です。10月9日(月)19時より阿佐ヶ谷ロフトで「川井憲次トークライブ」を開催します。これまでインタビュー等であまり語られていない川井さんの少年時代の音楽体験や『機動警察パトレイバー』以前の初期作品の話、川井さん自身の思い出の作品や音楽制作の舞台裏などをうかがう予定です。最新作「ウルトラマンジード」「仮面ライダービルド」の話も。ぜひご来場ください!

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/73759


 この夏の劇場アニメでは岩井俊二監督の実写作品をベースにした新房昭之総監督の『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』も見応えがあった。オリジナル実写版の音楽は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を手がけたREMEDIOS。アニメ版は『化物語』を始めとする「物語」シリーズで新房監督と組んだ神前暁が担当している。
 今回はその神前暁作品の話。

 神前暁(こうさき・さとる)は1974年生まれ、大阪府出身。保育園に通っていた頃にヤマハ音楽教室でピアノを弾き始め、中学・高校時代は吹奏楽部で活動(楽器はトランペット)。少年時代は80年代のアイドルポップスやフュージョン系の音楽を好んで聴いていたとインタビューで語っている。アニメ音楽も自然に聴いていた。印象に残る作品に『ニルスのふしぎな旅』(1980)、『スプーンおばさん』(1983)、『トップをねらえ! GunBuster』(1988)など、最近筆者のまわりで話題になることが多い80年代ビクター作品のタイトルを挙げているのが興味深い。
 大学は京都大学工学部に進学。大学内のサークル・吉田音楽製作所で楽曲制作やバンド活動に精を出し、音楽にのめりこんでいった。
 大学卒業後、ゲーム制作会社のナムコ(現・バンダイナムコスタジオ)に入社。ゲーム音楽制作の現場で鍛えられ、実践的な経験を積んだ。2005年にナムコを退社後、音楽制作集団MONACAに参加。神前暁の名で本格的に活動を開始した。
 そして手がけた初のTVアニメ作品『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006)が大ヒット。神前が作曲したBGMと挿入歌も注目を集めた。次に手がけた『らき☆すた』(2007)では主題歌・BGMと劇中歌のほとんどを手がけ、ポップで耳に残る音作りで一躍アニメファンに知られるようになった。
 その後は『かんなぎ』(2008)、『化物語』(2009)、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2010)、『STAR DRIVER 輝きのタクト』(2010/MONACAと共同)、『偽物語』(2012)、『〈物語〉シリーズ セカンドシーズン』(2013)、『Wake Up, Girls!』(2014/MONACAと共同)、『傷物語』(2016)、『暦物語』(2016)などの音楽で活躍。主題歌・挿入歌のみを提供した作品も多い。
 神前暁といえば、『らき☆すた』のオープニング主題歌「もってけ!セーラーふく」に代表される歌ものの印象が圧倒的だ。しかし、ナムコ時代は歌ものは数えるほどしか作っておらず、けして歌ものが得意なわけではなかった。それどころか、作曲・編曲の専門的な教育を受けたことはなくて、ほとんどが独学だというから驚く。これはもう天性のセンスというほかないだろう。
 『化物語』では作・編曲を手がけた5曲の主題歌が出色でアニソンファンを唸らせた。緻密に作り込んだBGMの完成度も高く、神前の初期のアニメ音楽の完成形と呼べる。『化物語』の歌とBGMはCD「化物語 音楽全集Songs&Soundtracks」にまとめられているので、ぜひお聴きいただきたい。
 今回はその『化物語』を紹介しようかと迷ったのだが、あえてはずして、2008年に放映された『かんなぎ』を紹介したい。

 『かんなぎ』は武梨えりの同名マンガを原作にしたTVアニメ作品。『らき☆すた』の監督を4話まで務めた山本寛が監督し、神前暁と再びコンビを組んだ。アニメーション制作はA-1 Picturesが担当している。
 高校1年生の美術部員・御厨仁が彫り上げた木の精霊像の中から現れた少女ナギ。彼女はこの土地と人々を古くから見守る産土神(うぶすながみ)で、土地に現れて災厄を招くケガレを退治する力があるという。ナギのケガレ退治を手伝った仁は、ひとり暮らしをしていた家で彼女と共同生活を始めることになる。
 少年と少女がコンビを組んだ悪霊退治もの……かと思いきや、ケガレ退治には大して重きは置かれず、ナギを中心とした学園ドタバタラブコメの展開になるのが楽しい(どちらかというと『うる星やつら』みたい)。
 高飛車だったり奥ゆかしかったり、ころころ性格が変わる(ように見える)天然少女ナギ、そのナギに振り回される仁、仁を慕う幼なじみの少女つぐみ、なにかとナギに対抗心を燃やすナギの妹ざんげちゃん、クセのある同級生や美術部の先輩など、個性的なキャラクターが繰り広げる、ドタバタあり恋のさや当てありのにぎやかな日常描写が見どころだ。
 神前暁の音楽も明るく、楽しい曲が多い。山本監督からの注文は「80年代ドラマのノリで」。それを受けて80年代風に作られたサウンドは、どこか懐かしく、ちょっと浮世離れした雰囲気がただよう。その中で、ナギの神秘性を描写するファンタジックな音楽やキャラクターの心情を表現する繊細な心情曲が鮮烈な印象を残す。キャッチーなメロディを抜群のセンスとアイデアで聴かせる神前暁の持ち味が発揮された快作である。
 サウンドトラックは当初、DVDの特典CDの形でリリースされた。2012年に特典CDに未収録の曲を含む2枚組CD「『かんなぎ』 なぎおと+なぎうた 完全盤」がアニプレックスからリリースされ、すべての音楽が手軽に聴けるようになった。
 トラック数が多いので収録曲は下記を参照されたい。

https://www.amazon.co.jp/dp/B007BRSKMU/

 完全収録を謳った「完全盤」だが、劇中では一部の楽器を抜いた別バージョンが使用されていることがあり、本編で流れた楽曲がすべて収録されているわけではない。
 1曲目は「かみのき」。第1話のアバンタイトル、子ども時代の仁が神社で初めて“神様”と出会う場面に流れる曲だ。ピアノと弦の神秘的な導入部に続いてピアノが穏やかなメロディを奏で始める。木を鳴らすようなパーカッションの音と太鼓の音が日本古来の神様のイメージを表現している。ナギの神秘的な側面を象徴する曲である。
 2曲目「はじまり」は放映前に公開されたPV(トレーラー映像)に使用された曲。アコースティックギターのカッティングをバックにシンセが和風のフレーズをくり返す。リズムやストリングスが加わり、爽やかで躍動的な音楽に展開していく。夜明けの風景にしだいに光があふれ、世界が目覚めてさまざまな音が聞こえてくるようなイメージ。物語の始まりにふさわしい曲だ。本編では第2話で朝を迎えたナギと仁の場面に流れたのが初出。第3話で仁が美術部でひとときを過ごす場面などにも使用されている。
 3曲目の「こもれび」はアコースティックギターをバックにフルートが歌う軽快な日常曲。第1話で仁が徹夜で彫り上げた精霊像を持って家を出る場面に流れた。高校生・仁の学園生活を描写する曲だ。
 4曲目からはユーモラスな曲が続く。ナギのエキセントリックな言動を描写するピアノとパーカッションによる「わらわは」、ストリートオルガンとパーカッションのアンサンブルがフランス映画音楽みたいで小粋な「ひだまり」、シンセのとぼけた音色が笑いを誘う「ぐだぐだ」、テナーサックスが仁のピンク色の妄想を描写する「ぼんのう」など、聴くだけで本編のコミカルなシーンが目に浮かぶ。
 9曲目の「まじかる」は第1話でナギがスティックを手にして魔女少女っぽくポーズを取る場面に流れた魔法少女アニメ風の曲。本編では頭の数秒しか使われていないが、サントラではフルサイズ聴くことができる。
 12曲目「けがれだ」と13曲目「おんねん」は神木が伐り倒されたために活性化したケガレをイメージした曲。和のサウンドを取り入れたサスペンス音楽である。『化物語』の音楽に通じる雰囲気がある。
 アコーディオンのメロディがノスタルジックな「ゆうぐれ」は第2話のラストシーン、傷ついたナギを仁がおぶって帰る場面に流れたリリカルな曲。劇中ではハープのアルペジオのパートだけが使用された。ナギと仁の心のふれあいを表わす心温まる曲である。
 次の「いっしょに」はフルートがやさしいメロディを奏でる心情曲。第3話でナギと仁の関係を気にかけるつぐみの気持ちを表わす曲として使用され、ちょっと切ない場面を彩った。
 ほかに1枚目で印象深い曲といえば、はねたリズムにアコースティックギターの軽やかなメロディが乗る18曲目「おちゃのま」。第4話でざんげちゃんが仁の家に突然押しかけてきて同居を宣言するシーンや第6話でナギとつぐみが街で買いものをするシーンなどに使われている。
 チェンバロがフィーチャーされたバロック音楽風の24曲目「おほほほ」も一度聴いたら忘れられない曲。ざんげちゃんの小悪魔的なキャラクターを描写する曲だ。
 ピアノをメインにしたシンプルな編成の27曲目「はつこい」もいい。第6話でメイド喫茶でバイトしている現場を仁に目撃されたナギが仁に胸の内を語る場面や第9話でつぐみが仁への気持ちを意識する場面に流れて、少女の揺れる心を表現した。しみじみと胸に沁みる曲である。
 1枚目のラストには、オープニング&エンディング主題歌の歌入りとインスト・バージョン(カラオケ)がまとめて収録されている。2曲とも作詞は山本寛監督(辛矢凡名義)、作・編曲は神前暁、歌はナギ役の戸松遥が担当している。
 オープニングはキラキラした曲調の80年代アイドルポップス風。エンディングは古謡のような雰囲気の素朴で神秘的な曲。対照的な曲調で『かんなぎ』という作品のふたつの面が巧みに表現されている。この「作品への寄り添い具合」が本作の音楽の大きな魅力だ。
 CD2枚目の前半には第10話で使用された劇中歌を収録。ナギと美術部員たちがカラオケをする場面に使用されたオリジナル曲である。本編で使われたちょっとヘタなTVバージョンと声優さんが真剣に歌ったアルバムバージョン、カラオケの3種類を収録。こういうマニアックなこだわりがうれしい。
 続いて収録されている「きゅーてぃー」「ひっさつ」「かみかい」の3曲は、劇中のTVアニメ『ロリッ子キューティー』のBGMとして作られた曲。第7話のエンディングでたっぷり聴くことができる。このあたりは、劇中の自主映画の音楽や学園祭ライブの曲をオリジナルで作った『涼宮ハルヒの憂鬱』を思わせる音楽演出だ。
 次の曲から雰囲気が変わり、物語終盤の展開で使われた重要曲が続く構成となる。
 31曲目の「こうりん」はタイトル通り神様の降臨を表す曲。幻想的なシンセのサウンドの中から端正なピアノの旋律が聞こえてきて、深い森に迷い込んだような気分になる。第8話でナギの別人格が現れる場面に使用された。
 32曲の「ははなる」は、「はじまり」のメロディのピアノによる変奏曲。最終話でナギが仁との日々をふり返る場面などに流れ、ナギの心情をしっとりとした曲調で表現している。
 神様として自信が持てなくなったナギの心細さをヴァイオリンの愁いのある響きが描写するエンディング主題歌アレンジ「むすひの」、第12話で仁が家出したナギを心配する場面に流れた切ないピアノ曲「ふあんな」、雨の中でナギを探し回る仁の哀しみが伝わる「ひとり…」。明るい曲が多い1枚目とはうって変わって哀感を帯びた曲が並ぶ。
 ストリングスの美しい前奏から始まる40曲目「そうだよ」は最終話でつぐみが自分の恋心を隠して仁にナギを探しに行かせる感動的な場面に流れた曲。「そうだよ」という曲名に迷いが晴れた仁の心情が簡潔に表現されている。いいタイトルだ。
 次の41曲目「なのはな」は最終話でナギが昔見た菜の花畑を思い出す場面に流れたピアノ曲。音数の少ないシンプルな曲だが、生死を超えた人の思いを淡々と表現して深い余韻を残す。
 曲順は前後するが、最終話のクライマックス、仁がふたたびナギと一緒に暮らす決意をして一緒に家に帰る場面に流れたのが39曲目「ふたりは」。ピアノとストリングスによる美しいメロディで2人の心の絆を描写する、本作の音楽の中でもベストに数えたい感動的なナンバーである。
 アルバムのラストにはもう1曲「へんきゃく」と題した曲が収録されている。ストリングスと金管の合奏がしだいに盛り上がっていく熱い曲だ。これは未放映の第14話で仁たちが延滞したDVDを返すために嵐の中をレンタルショップに向う場面の曲。ギャグ回の曲だけどドラマティックな曲調はアルバムの最後にふさわしい。これも『かんなぎ』らしくてよいでしょう。
 本作の音楽制作はスケジュールがタイトで、神前は50曲余りを短期間で一気に書き上げたという。けれど、そんな苦心を感じさせないほど、どの曲も印象深く、聴いていて心地よい。コミカルな曲でもふざけすぎず、シリアスな曲でも深刻になりすぎない。そして、神前暁らしい心に残る旋律が星のように散りばめられている。『かんなぎ』のほんわかしっとりした世界にぴったりの音楽である。

 2017年7月、中断を挟みながら約12年間にわたって連載された原作漫画『かんなぎ』が完結した。コミックス最終巻の特装版にはアニメ版キャストによるドラマCDが付属。このCDには神前暁も戸松遥(ナギ)が歌う新曲の作曲で参加している。ぜひ同じスタッフ・キャストでTVアニメ完結編も制作してほしい。

「かんなぎ」 なぎおと+なぎうた 完全盤
Amazon

化物語 音楽全集Songs&Soundtracks
Amazon

121 アニメ様日記 2017年9月17日(日)~

2017年9月17日(日)
『カードキャプターさくら クリアカード編』単行本の特装版同梱の「プロローグ さくらとふたつのくま」を観る。オールキャラ、オールキャストで旧作の印象を再現。キャラクターデザインは新しい解釈でちょっと違った味わいに。今後の展開に期待。
 「マクロスオーケストラコンサート」に行く。イベントの正式タイトルは「マクロス35周年×羽田健太郎 10th Memorial 『超時空管弦楽』remember ヘルシー・ウィングス・オーケストラ」。全体に豪華で盛り沢山。イベント構成が作品愛に満ちていた。曲の再現性も、曲と映像のシンクロも凄い。終盤は飯島真理さんの生歌「愛・おぼえていますか」の背後で、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のクライマックス映像が流れて、最後は飯島真理さんと故・藤原誠さん(当時の音声)のデュエットで「ランナー」だった。コンサートというよりは「超アニメイベント」。

2017年9月18日(月)
昼間は第20回文化庁メディア芸術祭のトークイベント「功労賞・飯塚正夫『アニメーション文化の立役者』」に。お元気そうでなにより。僕もアニメ雑誌の仕事でお世話になった。駆け出しの頃に「挨拶は大きな声で」など叱られたのもいい思い出だ。
 夕方から湯浅政明さんの取材でサイエンスSARUに。実はサイエンスSARUに行ったのはこれが初めて。湯浅さんが新作制作中で、取材時間をたっぷりとることはできなかったのだけど、写真撮影も含めて決められた時間内にきっちりとおさめた。

2017年9月19日(火)
配信で「孤独のグルメ」を観ていて、いかん、これでは腹が減って仕事にならないと思って、録画してあった深夜アニメの再生をはじめたら、『異世界食堂』にたどりついてやっぱり腹ペコに。『異世界食堂』は最終回まで面白かった。

2017年9月20日(水)
放送中の「ルパン三世ベストセレクション」は『新ルパン』148話「ターゲットは555M」。これもベストに入るのは納得のエピソード。もっと上位でもいいくらいだ。
 WOWOWで午前11時から『文豪ストレイドッグス』の一挙放送。それを流しながら作業を続ける。途中で出かけて、事務所に戻ってもまだやっている。なんとなく贅沢している気分だ。『文豪ストレイドッグス』の手触りは一風変わっていると思っていたのだけれど、それは作劇と演出のバランス感覚から生まれているのだろうと思った。要するに整っていて品がいいのだ。

2017年9月21日(木)
SNSで「インタビュー前に提出する質問状」について話題になっていた。最近では取材を申し込むと、事前に「質問状」を提出することになる場合が多い。僕は質問状を書くのはそんなには嫌いではない。取材で質問状に書いてないことを聞いてはいけないということはないしね。取材数日前に聞くことを一度まとめて、当日までにさらに考えるのも悪いことではない。たまにノリにノって面白い質問状を書くこともある。関係ない人にも読ませたいくらいに面白いのだけど、関係ない人に読んでもらうわけにはいかないのが残念だ。

2017年9月22日(金)
「設定資料FILE」のネーム作業と「平田敏夫作品集」編集の大詰めで大忙し。

2017年9月23日(土)
昼にTOHOシネマズ新宿で『ダンケルク』を観る。お勧めする人が多いのでIMAXで鑑賞。凄かった。好きか嫌いかという話は別にして、凄かったのは間違いない。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 97 アニメファンなら観ておきたい200本 沖浦啓之と『人狼 JIN-ROH』」を開催。その前に、事務所で『走れメロス』を観直したのだけど、とてもよかった。公開当時よりもずっと楽しめた。脚本が練り込まれているし、登場人物の描写がしっかりしている。トークではゲストの西尾鉄也さんがいかに『走れメロス』が好きだったかを語ってくれて、それが面白かった。

第532回 睡眠とアニメ

「『Wake Up, Girls! 新章』第1話先行上映会」、
やっぱり緊張しました!

 まぁ、緊張はいつものことなのですが、当日は頭痛がひどく、たぶん気圧の変化というよりは単なる寝不足が原因かと? 俺は子どもの頃からいわゆる「頭痛持ち」とゆーヤツで、結構悩まされてきました。もちろん学生時代は○ファリン常備。そう頻繁には使用しません。基本我慢です。寝不足と言えば睡眠時間の話。自分の場合は、

1日6時間睡眠! これがベスト、子どもの頃から変わりません!

 徹夜した後とか、よ〜っぽど疲れた時は8時間寝ることがありますが、たぶん年に10日あるか? くらい。通常6時間で充分。ただ、適正な睡眠時間は個人差があるらしく、「どうしても10時間は寝ないと保たない」という人もいるようで、それ自体は仕方のないこと。もちろん仕事の出来不出来には関係ないと思います。が、俺みたいな凡庸な人間は、6時間睡眠で保つ身体に生まれたのは運が良かったなと。なぜなら10時間寝る人より単純に4時間長く絵が描けるわけで、1週間で1日分は多く何か作れるのです(じゃ、1年では?)!
 ところが、最近は来年のシリーズ(ちなみに久々の別会社制作作品)のホン読みが始まったし、睡眠時間が5時間を切る日も多くなってきまして、

と、飯の後とか15〜30分ほど落ちたりします。これがまた本当に気持ちいいのです!
 あと、自分は子どもの頃から親に起こしてもらったこと、ほとんどないし、学校も寝坊で遅刻はまずありませんでした。そのへんで親に手を焼かせない子でした。朝(深夜)3〜4時に起きて、外に遊びに行ったりするのは怒られたりしたけど。その時知りました。

早起きし過ぎても親を怒らせると!

 え? 子どもが早朝何して遊んでたか? そりゃあ公園でゴルフやったりパソコン(マイコン)でゲーム作ったり、マンガ描いたり、竹とんぼ作ったり! 学校行く前の時間も充実させてました。
 そうそう、話は飛びますが、「Run Girls, Run!」のデビュー曲「カケル×カケル」素晴らしいですね! 神前暁先生、只野菜摘先生天才! YouTubeで試聴できるようなので、是非!

オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98
岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!」

 2017年10月28日(土)開催のアニメスタイルオールナイトは様々な作品を手がけ、ファンを魅了している音響監督の岩浪美和の特集だ。
 上映作品は『ガールズ&パンツァー 劇場版』『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』『劇場版 シドニアの騎士』の3本。劇場ならではの迫力満点の音響を楽しんでいただきたい。トークのゲストは勿論、岩浪美和。ゲストに追加がある場合は改めてお伝えする。

 前売り券は9月29日(金)から新文芸坐で、9月30日(土)からチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 98
岩浪音響監督 ワンナイト・センシャラウンド! 一夜限定東亜重音!! ドミネーターサウンド!!!

開催日

2017年10月28日(土)
開場:22時30分/開演:22時45分 終了:翌朝6:25(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

岩浪美和さん(音響監督)、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015/120分/DCP)
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』(2014/113分/DCP)
『劇場版 シドニアの騎士』(2015/134分/DCP)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/