第716回 『蜘蛛ですが、なにか?』まとめて、続きの続きの続き

 前回からの続き。ソフィア役の竹達彩奈さんは、『ベン・トー』(2010年)のあせび役でもご一緒しました。あ、間に『ヴァンキッシュド・クイーンズ』(2013年・『クイーンズ・ブレイド』のビジュアルブックに付くOVA)で回想シーンのアルドラ役もありました。あと、『迷い猫オーバーラン!』(2010年)の希役でも——といっても自分の監督話数(#01)ではラストの「ニャオ」だけでした、たしか。意外にちゃんと声を張った役で演じていただくのは初めてかも。最終話でユーゴーをつかみ上げての「は?」は最高に怖くて迫力満点でした!
 魔王・アリエル役は上坂すみれさん。前作『COP CRAFT』の吸血鬼役に続きご出演いただけました。ラジオドラマ版では「私」・蜘蛛子役をやられていたというのは偶然だったと思います。あと音響現場裏話でいうと、ギュリエやDらが喋る異世界語は、ロシア語が堪能な上坂さんがロシア語風なイントネーションで演じたガイド収録を行い、浪川大輔さん(ギュリエ役)や早見沙織さん(D役)にはそれを聴きつつ演じていただきました。今作は音響監督も兼ねていたので自分から提案してやってもらった方法です。
 スー役は小倉唯さん。オーディションで板垣も推しました。イメージどおりの”妹”になっててとても好きなキャラになってたのですが、今シリーズでは退場が早かったのが残念。『てーきゅう』ではトマリン役。
 ハイリンス役は興津和幸さん。落ち着いたカッコいいお兄さん。俺がご一緒した作品の『ベン・トー』の二階堂(ピアス)、『ベルセルク』(2016、2017年)セルピコ、『ユリシーズ〜ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』(2019年)ベドフォード、なんとなく共通する雰囲気があります。
 ラース役は逢坂良太さん。『てーきゅう』の陽太(ユリの弟)役でお会いして、『ユリシーズ〜』では主人公・モンモランシ役を演じていただき、そして今作も。普段のリラックスした空気感がとても好印象です。

アニメ様の『タイトル未定』
311 アニメ様日記 2021年5月9日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月9日(日)
「佐藤順一の昔から今まで」の原稿作業。確認することがあって『魔法使いTai!』のOVAとTVに目を通した。さらに伊藤郁子さんの「この人に話を聞きたい」を読み返したり。

2021年5月10日(月)
15時から駅前の喫茶店で、あるプロジェクトについての打ち合わせ。例によって打ち合わせ後半はアニメ話。
近々に埼玉に行く用事があり、あれ、埼玉だったら店で酒が呑めるじゃない。わざわざ呑みに行くのではなくて「仕事で行ったら呑めた」というのはありなんじゃない。まずいなあ、ダイエット中なのに、とニヤニヤして、念のため、ネットで検索してみたら、行く先も「まん延防止等重点措置」で酒の提供は自粛中であった。残念。

2021年5月11日(火)
午後はあるアニメプロダクションを訪れてある方にご挨拶。リアルにお話するのは数年ぶり。お元気そうでよかった。同行していた人達と別れて、かなり久しぶりに株式会社スタイルの倉庫に。目当てのものがあることを確認する。段ボール箱に入っている本は傷んでいたりするけど、ラックに入れてある本は問題なし。
『花咲くいろは』を最終回まで視聴。改めて観ると、当時とは違って見えるところも。とにかく素晴らしいクライマックス。
「よふかしのうた」7巻を読了。本筋ではないけれど、小繁縷(コハコベ)ミドリとその彼氏がいい。というか彼氏に対する小繁縷ミドリがいい。

2021年5月12日(水)
新文芸坐で「怪談せむし男」(1965/81分)を観る。これも「映画デビュー70周年 西村晃のスーパー演技!!」の1本。この前に観た「散歩する霊柩車」と同じく、監督が佐藤肇、音楽が菊池俊輔。菊池さんの曲が聴きたくて鑑賞することにした。怪奇ものだけど、内容が派手すぎてあまり怖くはない。いや、子どもが観たら充分に怖いか。加藤武さんはかなり等々力警部っぽい。中盤に霊媒師が出てくるのだけど、その演技が圧倒的。霊媒師役は鈴木光枝さん。それから、亡霊の声がやたらとイケメン。新文芸坐ロビーに貼られていた資料だと「ナレーター 大平透」とあるけれど、あの声が大平さんなんだろうな。
映画が終わった後、iPhoneを再起動させたら、カメラに不具合が。Appleの窓口とチャットでやりとりして修理に出すことに。
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』未視聴分を最新話数まで観る。思っていた展開とちょっと違った。

2021年5月13日(木)
石浜真史さんとTシャツについての打ち合わせ。新しいiPhoneが届く。早いなあ。修理ではなくて新品と交換してくれたらしい。前のiPhoneのバックアップを使って、ほとんどそのまま使えるようになった。日本映画専門チャンネルで、テレビドラマ版の「砂の器」(1977年版)をやっていた、仲代達矢さんが後藤隊長のようだ。逆である。

2021年5月14日(金)
13時くらいにProduction I.Gに。ある作品の資料をチェックする。物量を考えると三日はかかると思っていたのだけど、しっかりと整理されていたのと、作業をフォローしてもらえたので3時間で終了。ありがたい。事務所に戻ってからが猛烈な忙しさ。
ワイフが高校時代に荒木経惟さんに撮ってもらった写真と、写真が掲載された新聞を見せてもらった。

2021年5月15日(土)
床屋に行ったところ、床屋のオバチャンが「凄く痩せたね! どうしたの?」と美味しい反応をしてくれた。昼から「第175回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作【初級編】」を開催。今回は緩急も含めて、まとまりのいい感じだったと思う。お客さんがいたら、トークのテンポや構成が違っただろうなあ。次回作の主人公のついて、少し明らかになった。「枕草子」とは逆で、藤原定子が主人公で、彼女の視点で清少納言を描くのかと思ったら、そんなに単純ではなかった。2時間半のイベントの後、アニメスタイルチャンネル用のミニコーナーを収録。

第178回アニメスタイルイベント
『映画大好きポンポさん』を語ろう!2

 6月に開催し、ご好評をいただいた『映画大好きポンポさん』トークイベント。その第2弾を開催します。出演は平尾隆之監督と松尾亮一郎プロデューサー、そして、演出の居村健治さんを予定しています。

 開催日は8月1日(日)昼。会場はLOFT/PLUS ONEです。イベントは平尾監督達にお客さんからの質問に答えていただくパート、メイキングについて語っていただくパート等で構成。今回のイベントも配信を行います。そして、配信のない、会場だけのコーナーも予定しております。

 質問は会場でも受け付けますが、先行してネットでも募集します。平尾監督達に質問のある方は、WEBアニメスタイルのTwitterアカウント( @web_anime_style )にリプライのかたちでお送り下さい。当日、会場に来られない方の質問もお受けします。ただし、いただいた質問の全てに答えるのは難しいかもしれません。答えられなかった場合は申しわけありません。ネットでの質問はイベント当日の朝8時まで受け付けます。

 配信は先行してLOFTグループによるツイキャスで行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。チケットは7月27日(火)18時から発売。チケットは「会場でのイベント観覧+ツイキャス配信視聴」と「ツイキャス配信視聴」の2種類を用意します。アニメスタイルチャンネルでの配信は、同チャンネルの会員の方が視聴できます。チケットに関して詳しくは、以下にリンクしたLOFTグループのページをご覧になってください。

 LOFT/PLUS ONEを含むLOFTの会場は厚生労働省が定めた、新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインを遵守し、さらにガイドラインよりも厳しいLOFT独自の基準を設けて、万全を期してイベントを開催しています。
 来場されるお客様にはマスクの着用、手指の消毒をお願いしています。消毒液は会場に用意してあります。また、体調の優れないお客様は来場をお控えください。 

■関連リンク
『映画大好きポンポさん』公式サイト
https://pompo-the-cinephile.com/

LOFTグループのイベントページ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/186956

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第178回アニメスタイルイベント
『映画大好きポンポさん』を語ろう!2

開催日

2021年8月1日(日)
開場11時30分 開演12時 終演15時予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

平尾隆之(監督)、松尾亮一郎(プロデューサー)、居村健治(演出)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長・聞き手)

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信視聴/1,500円 ツイキャス配信視聴のみ/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
  アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
310 アニメ様日記 2021年5月2日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月2日(日)
この日の作業は、月曜以降の編集作業の整理、素材の確認など。自分の原稿は翌日以降で。Kindleで「新婚よそじのメシ事情【カラー増量版】(3)」を読了。まさかの展開。驚きつつもちょっと感動。知り合いのご夫婦のおめでたとも、ちょっと違った感情だなあ。『宇宙戦艦ヤマト』の続きを観る。やはりメチャメチャ面白い。

2021年5月3日(月)
散歩中に、何故かワイフにOVAの歴史について説明する。
大物原稿に手をつける。こういった感じの原稿を書くのは相当に久しぶり。ノリを取り戻すまでに時間がかかりそうだ。
『宇宙戦艦ヤマト』を25話まで観る。1970年代に観た印象とも、その後に観返した印象とも違う。1980年代に観返した時に垢抜けないと思った部分を、今では魅力として感じたり。ああ、この部分は『宇宙戦艦ヤマト2199』では上手くやっていたなあと思うところもある。
最近、AmazonでCD「ANIMEX 1200シリーズ」を次々に購入している。ウォーキング時に、ネックスピーカーでアニメのサントラを聴くようになって、買っていないCDや持っているはずだけど見つからないCDが欲しくなったのだ。この日に届いたのは「組曲 銀河鉄道999」と「TVオリジナルBGMコレクション 科学忍者隊ガッチャマン」「同・UFOロボ グレンダイザー」「同・宇宙海賊キャプテンハーロック」。

2021年5月4日(火)
「設定資料FILE」の構成に手をつける。素材を見てちょっと考えた後、とりあえず作業を始める。新文芸坐で「クラッシュ 4K無修正版」(1996・カナダ/100分/DCP/R18+/2K上映)を観る。ブログラム「車にまつわる危ない話 クラッシュ | ヒッチャー」の1本。日本で公開された頃、打ち合わせでこの映画が話題になった。僕は観ていなかったので、話題についていけなかったのを覚えている。そして、予想していた内容とは随分と違った。今回のは4K版だったけれど、レンタルVHSでブラウン管のテレビで観た方が「らしい」んじゃないかな。

2021年5月5日(水)
ワイフとの早朝散歩は続いている。この日は明治神宮を歩いた。午前5時過ぎの山手線で代々木まで移動して、代々木から明治神宮に。本殿まで歩いて参拝。その後、代々木公園に行ってお茶を飲み、また明治神宮の中を歩いて代々木駅に。早朝の明治神宮に行きたいというのは昨年からのワイフの要望で、それがようやく実現した。
「設定資料FILE」の構成の続き。次号の「設定資料FILE」は『映画大好きポンポさん』だ。この作品の売りは、タイトルにもなっているポンポさんなんだけど、ポンポさんの設定画は1枚しかない。立ちポーズと表情が1枚にまとめられているうえに、服の替えがないのだ。それに対してジーンやナタリーは衣装換えがあるので、数点ずつ設定画がある。これを素直に構成してしまうと、誌面において、ポンポさんよりもジーンやナタリーの面積のほうが大きくなり、結果としてポンポさんの印象が弱くなってしまう。資料集ならそれでいいのかもしれないけれど、「設定資料FILE」は作品を紹介する記事でもあるので、ポンポさんを目立たせなくてはいけない。という辺りが今回の腕の見せどころだ。
シネマ・ロサで、ジャン=ポール・ベルモンド主演の「大頭脳」を観る。確かにジャン=ポール・ベルモンドはルパンっぽいし、コブラっぽい。「大頭脳」はあらすじだけ取り出すと面白いけれど、映画としてはあまり面白くはない。ただ、劇中で展開する作戦はこの映画が作られた頃だと、斬新なものではあったかもしれない。吹き替えが観たいのでBlu-rayは購入しよう。

2021年5月6日(木)
作業が片付いたら午後から映画に行くつもりだったけれど、連休明けで用事が多かったために断念。WOWOWの『あしたのジョー』を観る。36話のゴルフ場で力石がランニングをしているシーン。望遠で撮ったイメージのカットがあるなあ。1シーン内でレンズを換えている想定だろう。出崎さんのコンテ回。

2021年5月7日(金)
ある方からのメールで、アニメージュでお世話になった亀山修さんが亡くなられたことを知る。僕が駆け出しの頃にお世話になった方だ。10年ほど前に電話で話をしたのが最後になった。心よりご冥福をお祈り致します。

新文芸坐で「散歩する霊柩車」(1964/88分)を観る。プログラム「映画デビュー70周年 西村晃のスーパー演技!!」の1本だ。かなり面白い。騙し騙されが延々と続く構成で、中盤までは展開が読めなかった。クライマックスまでくると「最後にあいつがなにかするな」と分かっちゃうんだけど、それでも楽しめた。物語の大半がある一夜の出来事なんだけど、一晩に事件が起こりすぎだろうとは思った。音楽は菊池俊輔さんで、曲を聴いているだけでも楽しかった。菊地さんとしてはデビュー数年後の仕事なのね。ベタベタな曲の付け方もいい。西村晃さんの特集上映だけど、奥様役の春川ますみさんも強烈。ちょっと不気味さを感じさせる渥美清さんも印象に残る。

2021年5月8日(土)
昼間は散歩と原稿。夕方に吉松さんとSkype呑み。
かなり久しぶりに『花咲くいろは』を視聴。1話を観て『若おかみは小学生!』のようだと思ったけれど、『花咲くいろは』より『若おかみは小学生!』の原作のほうが古い。『花咲くいろは』は「地に足がついたドラマ」と「深夜アニメ的なサービス」が入り混じらないでぶつかりあっている感じ。『花咲くいろは』7話はハッチャケ系で際立ったエピソード。気になって「月刊アニメスタイル」第6号のインタビューを読み返したら、ちゃんとこの話の脚本について聞いていた。偉いぞ、自分。

第211回 魔法を継ぐもの 〜終末のイゼッタ〜

 腹巻猫です。『竜とそばかすの姫』をIMAXレーザー上映で鑑賞しました。これは、ぜひIMAXで体験してほしい劇場作品。映像と音の中に吸い込まれるような没入感を味わえます。電脳空間の映像に目を奪われますが、高知出身者としては現実パートの美しい情景描写(特に川)にもぐっときました。そして、ドラマの軸となる音楽が本当にすばらしい。サントラ発売は8月。楽しみです。


 前回の『BEM』の音楽を手がけたもうひとりの作曲家・未知瑠。今回は彼女が初めて手がけたTVアニメーション作品『終末のイゼッタ』の音楽を聴いてみよう。
 『終末のイゼッタ』は2016年10月から12月まで放送されたオリジナルTVアニメ。監督は藤森雅也、アニメーション制作を亜細亜堂が担当した。
 舞台は1940年、ヨーロッパをモデルにした架空の国々。小国エイルシュタットの公女フィーネは、秘密会談のために訪れた隣国ヴェストリアで軍事大国ゲルマニアの憲兵に捕らえられる。軍用機に乗せられてゲルマニアへと連行されるフィーネを救ったのは、幼い頃に出会った魔女イゼッタだった。イゼッタはフィーネのために、また、この戦争を終わらせるために、魔法の力を使って戦うことを約束する。
 赤い髪の少女イゼッタは魔女の末裔。イゼッタが戦闘機や戦車を魔法の力で撃破していく場面は大きな見どころだ。架空戦記ものに魔法の要素を持ち込んだ思考実験SFとしても楽しめる(ポール・アンダースン『大魔王作戦』みたいだ)。
 しかし、いちばんのポイントは、イゼッタが魔女というよりも、素朴で自分の気持ちに素直な少女として描かれていることだろう。イゼッタとフィーネが立場を超えた友情で結ばれていく展開が本作のドラマの核になっている。ミリタリーものと見せて、本質は少女たちの友情ストーリーというニクい作品である。

 ユニークな設定のオリジナル作品であるため、音楽も個性を出したいという意向から、音楽担当はアニメ音楽をあまり手がけたことがない若手作曲家で「エキセントリックなものを作ってくれる人」を探すことになった(音楽プロデューサー・福田正夫の証言より)。
 たまたま目に留まったのが未知瑠の公式サイト。インディーズでリリースされていた2枚のオリジナル・アルバムを聴いてみると、求めている音楽イメージにぴったりで、スタッフの満場一致で音楽を依頼することに決まったという。
 未知瑠は1980年生まれ。幼少の頃から自然や鳥の声などを真似てピアノを弾いて遊んでいた。東京藝術大学音楽学部作曲科を首席で卒業。クラシック音楽をルーツとしながら、ジャズやロック、エレクトロ、民族音楽、現代音楽などを取り入れ、ジャンルを超えた個性的な音楽を創造している。2009年に1stソロアルバム「World’s End Village —世界の果ての村—」、2015年に2ndソロアルバム「空話集 〜アレゴリア・インフィニータ」をリリース。どちらも、異国の民話や伝説を題材にしたような独特の世界を作り出している。なるほど『終末のイゼッタ』はこういうイメージだったのか、とひざを打つ内容だ。
 未知瑠のプロフィールでもうひとつ語られているのが、作曲家・佐橋俊彦のアシスタントを務めていたという経歴。『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』や『ウルトラマンメビウス』『仮面ライダー電王』の時期と重なるというから、2004年から2006年頃にかけてだろう。音楽制作の実際と「バトル音楽ひとつとってもこんなにバリエーション豊かに作れるのだ」といったことを学んだ、とインタビューで語っている。
 そんな未知瑠が生み出す映像音楽は、ボーカリーズや民族音楽を取り入れた個性的なサウンドと、ツボを心得たダイナミックなオーケストレーションでサントラファンを魅了する。いわば彼女は「サントラの魔法」を受け継いだ作曲家。「よくぞ、こちら(サントラ)の世界に来てくれたなあ」と思ってしまう。いま期待の作曲家である。
 映像音楽の代表作は、劇場作品「あさひなぐ」(2017)、『賭ケグルイ』(2019)、スタジオジブリ短編アニメ『たからさがし』(2011)、TVアニメ『刻刻』(2018)、『BEM』(2019)、『ギヴン』(2019)、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(2020)、『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』(2021)など。
 『終末のイゼッタ』の音楽を任された未知瑠は設定やキャラクターなどの資料を見た時点からイメージが刺激され、メインとなるテーマ曲など数曲のデモを制作して打ち合わせにのぞんだ。しかし、スタッフからは「普通の劇伴だね」と言われてしまう。スタッフが求めていたのは、視聴者が「なにか変だな」とひっかかる、映像を異化するような音楽だったのである。そこで、ソロアルバムで作り上げた自身の音楽をイゼッタの世界に持ち込むことにした。未知瑠はこのときスタッフから求められたことを「アニメの世界観に寄り添ってばかりでなく、世界観を音楽で推し広げていくことも必要」と表現している。映像音楽が持つ役割や力を考えさせられる言葉である。
 最終的にできあがった音楽は、オーケストラをベースにしながら、女声ボーカル(ボイス)や古楽器を取り入れた、時代や国・地域を超越した音楽。ファンタジー音楽と女声ボーカル、民族楽器は相性がよく、過去にも例があるが、『イゼッタ』の音楽は一歩踏み込んでいる。ファンタジー作品でよく聴かれる中世から近世のヨーロッパ風音楽ではなく、もっと古代の音楽を思わせる、土俗的とも呼べる音楽だった。
 余談だが、本作でリュート、サントゥール、サルテリ、サズなどの古楽器の演奏を担当しているのは上野哲生。TVアニメ『ほえろブンブン』『おはよう! スパンク』などの音楽を担当した作曲家である。数年前にインタビューする機会があり、現在は古楽器奏者としても活動していることは聞いていたが、こうして新作TVアニメのサントラにも参加していることを知ってうれしかった。
 音楽全体は、イゼッタのテーマでもあるメインテーマとフィーネのテーマを中心に、幻想的な魔女関係の曲、戦争映画風のクラシカルな曲、そして、心情曲、情景描写曲などから構成されている。
 特徴的なのが、魔女に関係する楽曲だ。先に紹介したように、女声ボーカルや古楽器をフィーチャーし、いつの時代のどこの国とも知れないサウンドで伝説の魔女のイメージを音楽化している。ゲルマニア軍を描写するクラシカルな楽曲と対照的で、魔法と科学、古代と現代、自然と文明の対比を音楽が表現しているかのようだ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「TVアニメーション『終末のイゼッタ』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2016年12月21日にフライングドッグから発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. いつか見た夢
  2. 終末のイゼッタ
  3. 出撃せよ!
  4. 白き魔女の伝説
  5. 追跡
  6. 大脱出
  7. フィーネ 愛のテーマ
  8. In The Air
  9. ME・ZA・ME
  10. ライフルの翼
  11. 姫様への想い
  12. 夜明け前
  13. 敗色濃厚
  14. 出逢い
  15. 決死の覚悟
  16. 反撃の火蓋
  17. 非情なる皇帝
  18. イゼッタの秘密
  19. あの日の記憶
  20. 作戦開始
  21. Set Me Free!
  22. ゾフィーの魔力
  23. 異端者
  24. エイルシュタット国歌
  25. バトルモード突入
  26. ゲールの猛攻
  27. 一進一退
  28. 魔石の力
  29. 最後の戦い
  30. フィーネ 愛のテーマ 〜piano solo〜

 歌の収録はなく、BGMのみ30曲、75分のボリューム。
 曲順は、全12話の物語を俯瞰する流れである。未収録曲もあるが、劇中で印象的な曲はほぼ収録されている。
 1曲目「いつか見た夢」は第1話のアバンタイトルで使用されたピアノとフルート、オーボエなどによるメインテーマの変奏曲。幼いフィーネとイゼッタとの出逢いを紹介する回想シーンに流れた。第1話では女声ボーカルが重ねられている。
 2曲目「終末のイゼッタ」は本作のメインテーマ。演奏時間5分以上の長い曲である。幻想的な女声ボーカルとオーケストラによる導入部から、古楽器によるテーマメロディの変奏に展開。ピアノや管弦楽器がメロディを引き継いでいく。中間部は女声ボーカルによる別のメロディ。緊張感に富んだオーケストラの間奏のあと、ピアノと弦楽器、ボーカルなどがテーマを反復し、力強い全合奏で終わる。組曲的構成のドラマティックな曲だ。
 劇中ではシーンに合わせて編集して使われることが多いが、第11話や最終回(第12話)では、映像の展開と曲の展開をたくみに合致させ、フィルムスコアリングで書かれた曲のように使用している。演出する上でも使い甲斐のある曲だろう。
 トラック3「出撃せよ!」はタイトルどおり、ゲルマニア軍と戦うイゼッタの場面によく流れたメインテーマのアレンジ曲。呪文のような女声ボーカルからオーケストラの勇ましい曲に変化する。「戦うイゼッタ」という雰囲気だ。
 次の「白き魔女の伝説」は魔女の伝承をテーマにした幻想的な曲。チェレスタの音色や弦楽器のメロディが妖しい香りをただよわせる。中間部はリリカルな曲調に変化。この部分は、第9話の山の上の城塞で語らうイゼッタとフィーネの場面で効果的に使用されていた。終盤は女声ボーカルが愛らしいメロディを歌い、時の流れの中に消え去るように静かに終わる。一篇の伝説を聞き終えたような気分になる曲である。
 続くトラック5「追跡」とトラック6「大脱出」はユニークなオーケストレーションの曲。パーカッションとピアノを中心にした「追跡」は明確な旋律を持たない現代音楽的な曲である。「追跡」というタイトルに反して、第2話でイゼッタがフィーネとの楽しい日々を回想するシーンや第7話でゲルマニア軍の兵士たちがポーカーをしてくつろいでいるシーンに選曲されている。「大脱出」も即興的なパーカッションと弦楽器による現代音楽的な曲。どちらもいわゆる「劇伴的」な曲ではないため、使いにくかったのではないかと想像するが、もっと使ってほしかった曲だ。
 トラック7「フィーネ 愛のテーマ」は本作のもうひとつのメインテーマとも呼べる曲。古楽器の爪弾きを導入に、弦楽器とピアノ、フルートなどによる美しいメロディに展開していく。第1話から使用されているが、名場面は第11話。ゲルマニア帝国に降服する決意を固めたフィーネが、泣いて抗議するイゼッタの想いに打たれ、「ともに戦おう」と言う場面で使用されている。そして、最終回のラストシーンに流れたのもこの曲だった。
 トラック8「In The Air」はため息みたいな女性ボイスを中心に構成されたふしぎな曲。第1話でカプセルに閉じ込められていたイゼッタが目覚めるシーンに流れている。次の「ME・ZA・ME」は女声ボーカルと打ち込みのリズム、エレキギター、ストリングスなどを組み合わせた浮遊感と疾走感のある曲。どちらも空を舞うイゼッタの姿が目に浮かぶような楽曲だ。しかしながら、2曲とも数回しか使われなかったのが惜しい。もっと使ってほしかったなあ。
 トラック10「ライフルの翼」は印象の強いバトル音楽のひとつ。緊迫感のあるリフの繰り返し、吐息風の女性ボイス、トランペットの勇壮なメロディ、エレキギターのうなりなど、さまざまな音楽要素が混然一体となって、魔女と戦闘機が戦う異様な戦闘空間を描写する。バトル音楽としてのカッコよさも味わえる、本アルバムの聴きどころのひとつ。
 トラック11の「姫様への想い」は使用回数は少ないながら重要な曲。第11話でイゼッタがフィーネにうながされて、それまで「姫様」と読んでいたフィーネを初めて名前で呼ぶ場面に流れていた曲だ。本作の乙女チックな一面を象徴する曲であり、本作の音楽の魅力が、幻想的な曲やバトル曲ばかりでないことを教えてくれる。
 アルバムの後半は、ストーリーの流れに従い、ミリタリー的な曲や重厚な曲が多くなる。「敗色濃厚」「決死の覚悟」「反撃の火蓋」「非情なる皇帝」「作戦開始」「ゲールの猛攻」「一進一退」などである。正統派サウンドトラック風のダイナミックなサウンドを聴くことができる。
 そんな中、異彩を放っているのが、トラック21「Set Me Free!」だ。呪文風の女性ボイスとロック的なリズムが合体し、妖しいカッコよさを持った曲に仕上がっている。第3話でイゼッタが魔力で戦車を投げ飛ばすシーンくらいにしか使用されなかったのがもったいない。
 終盤に登場するもうひとりの魔女ゾフィーのテーマ「ゾフィーの魔力」、魔女の秘密が語られる場面などに使われたミステリアスな「異端者」、即興的な古楽器の演奏と呪文的なヴォイスを組み合わせた「魔石の力」など、幻想的な音楽を散りばめて、いよいよ物語は最終決戦へ。
 トラック29「最後の戦い」はメインテーマをモチーフにした3分を超える戦いの曲。この曲も、次々と曲調が変化する組曲的な構成で作られている。最終回ではゾフィーとイゼッタとの決戦場面に長尺で使用され、メインテーマ「終末のイゼッタ」と同様に、曲の展開と映像の展開をマッチさせたフィルムスコアリング的演出でクライマックスを盛り上げていた。
 アルバムを締めくくるのは「フィーネ 愛のテーマ」のピアノソロ・バージョン。戦争が終わったあと、イゼッタとフィーネの物語を回想するイメージだろうか。本編では第4話でフィーネが父の死を看取る場面に使用されていた。イゼッタのテーマ(メインテーマ)に始まり、フィーネのテーマに終わる構成が味わい深い。

 本アルバムは、TVアニメ『終末のイゼッタ』の音楽世界を凝縮した充実の1枚である。本作の音楽を特徴づける女声ボーカル(ボイス)や古楽器をフィーチャーした楽曲が(使用頻度によらず)多く収録されているし、オーケストラによるダイナミックなバトル音楽や重厚な音楽も堪能できる。そして、イゼッタとフィーネの友情を彩る美しいメロディもある。これがTVアニメ初担当とは思えない(いや、初めてだからこそかも)、創意と才気にあふれた作品である。
 選曲に関して欲を言えば、イゼッタとメイドのロッタが笑いあう場面などに流れる明るい日常曲も入れてほしかったなあと思う。思い切ってミリタリー的な曲をいくつかはずして、日常曲や心情曲を増やしてもよかった。サントラ盤のジャケットを見てもわかるとおり、本作の本質は戦争ものではなく、少女たちの友情ドラマなのだから。

TVアニメーション「終末のイゼッタ」オリジナルサウンドトラック
Amazon

第715回 『蜘蛛ですが、なにか?』まとめて、続きの続き

おお、更新日が7月15日で715回!
ま、別にどーでもいいか

 役者(声優)さんの話。ユーゴー役の石川界人さんは、以前(2013年)自分が監督・脚本・絵コンテ・演出をやった『アークIX』というラノベに付く短編アニメの時にご一緒させていただいたと思いますが、メインキャラでお付き合いするのは初めてかと。7話のアフレコ後、悪役の怒りの鎮め方について議論、というほどでもない話し合い(?)をしたのが印象的で「自分で納得できない芝居はしたくない」という強い意志を感じました。
 ユーリ役の田中あいみさんも初めて。残念ながら後半は極端に出番が少なくなってしまうのですが、前半の学園編での「殺すから♡」は忘れられません。
 フィリメス役の奥野香耶さんは『Wake Up, Girls! 新章』でもご一緒。『COP CRAFT』のまゆしぃ(吉岡茉祐さん)もそうでしたが、あくまでオーディションによって決まったキャスティングです。奥野さんにもオーディション時は東山(奈央)さん同様、カティア役とその転生前の男子学生(大島叶多)役もやっていただき(汗)、ご苦労をおかけしました。でも、やっぱり奥野さんのフィリメス、可愛かったです!
 で、ソフィア役の——以下次週。短くてスミマセン! 次の打ち合わせ(来年の監督作)もすでに始まってて……。

アニメ様の『タイトル未定』
309 アニメ様日記 2021年4月25日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年4月25日(日)
早朝の新文芸坐で、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 129 大友克洋監督のアニメーション」の終幕を見届ける。その後、事務所でデスクワーク。睡眠が足りていなかったようで作業は捗らず。午後は新文芸坐で「少女ムシェット」(1967・仏/80分/DCP/PG12)を鑑賞する。プログラム「ブレッソン、鋼の傑作2本立て 少女ムシェット | バルタザールどこへ行く」の1本。

2021年4月26日(月)
グランドシネマサンシャインの朝の回で、IMAXの「るろうに剣心 最終章 The Final」を観る。グランドシネマサンシャインで「るろうに剣心 最終章 The Final」を観るか、新文芸坐で「バルタザールどこへ行く」を観るかでちょっと悩んだ。グランドシネマサンシャインは27日(火)から休業で、「バルタザールどこへ行く」の国内上映はこの日までだった。「るろうに剣心 最終章 The Final」はかなりよかった。アクションの見応えはかなりのものだし、役者についても原作の再現度が高い。街の描写等も凝っている。終盤になってスケールダウンした感があったけれど、全体としては好印象。午後はずっとデスクワーク。新文芸坐は27日(火)以降も営業を行うというアナウンスがあった。

2021年4月27日(火)
Zoom打ち合わせの後、あるアニメプロダクションに。これから作る書籍のために資料を見せてもらう。資料が入っているカット袋に「スタジオ雄 小黒様へ」と宛名が書かれているものがあった。20数年前に仕事で僕が関わった作品の資料だ。

2021年4月28日(水)
新文芸坐の9時40分からの回で、ワイフと「82年生まれ、キム・ジヨン」(2019・韓国/118分/DCP)を観る。プログラム「私の人生、誰のもの? 82年生まれ、キム・ジヨン | ハッピー・オールド・イヤー」の1本。よくできた映画ではあったけれど、「?」と思うところも。公開時に原作との違いが話題になっていたようだ。そのうちに原作をチェックしてみよう。15時から喫茶店で、あるクリエイターの方と、これから出す書籍についての打ち合わせ。事務所に戻ってまたデスクワーク。19時過ぎまでキーボードを叩く。
「上坂すみれの新東宝シアター ―天知茂、痺れるほどキザで、ニヒルで―」を録画で観た。全部ではなくて、トークと映画の一部だけを観た。面白い企画だなあ。トークはナチュラルな感じでよかった。

2021年4月29日(木)
Zoomで、遠藤一樹君と土曜のイベント「アニメ様の1990年代」についての打ち合わせ。どんな内容について話すかを説明しているうちに、予定した内容を全部話そうとすると、イベントが3時間あっても足りないことが分かる。同イベントのために、雑誌「Looker」のバックナンバーをチェック。しかし、トークで話題にしたかったマンガが見当たらず。あれ? 「Looker」ではなかったのか。

2021年4月30日(金)
連休直前で、イベント前日なので用事が多い。昼飯にすき家で、やきそば牛丼を食べる。『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』とのコラボメニューなので、本当は映画を観た後で食べるつもりだった。「アニメV」のバックナンバーをチェックして、イベントで話題にしたいマンガが見つかった。吉松さんが自身の連載マンガの中で、僕のことをアニメ様と命名したのだ。

2021年5月1日(土)
57歳になった。誕生日を迎える度に、仕事を続けられていることをありがたいと思う。お世話になっている皆さんに感謝。幸運に感謝。
イベント「第174回アニメスタイルイベント アニメ様の1990年代」を開催。イベントは司会を遠藤君に頼んで、メインのゲストが吉松さん。サブのゲストが亀田祥倫さん、祥太さん。皆のお陰で気持ちよく話すことができた。吉松さんがイベント中に、僕と吉松さんの動画を流すと言っていて、どんな映像なのか分からないのでハラハラしたけれど、お客さんに受けていた。

アニメ様の『タイトル未定』
308 アニメ様日記 2021年4月18日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年4月18日(日)
仕事の合間に、新文芸坐で「有りがたうさん」(1936/76分/35mm)を観る。プログラム「天才と呼ばれた男 名匠・清水宏」の1本。タイトルになっている「有りがたうさん」は山間から街まで行くバスの運転手のニックネームだ。彼はバスに道を開けてくれた人に、必ず「有りがたうさん」と言うのだ。有りがたうさんが運転するバスが終点に着くまでを描いた群像劇で、話も面白いし、映画としてもよくできている。ラストの展開について「え、それでいいの?」と思ったけれど、再見したら印象が変わるかもしれない。原作は川端康成の「有難う」。帰宅してからKindleで読んでみたけれど、ラストの展開は映画の創作であったようだ。「有難う」が収録されているのは「掌の小説」という掌編集で、少し読んでみたがどの作品もよかった。

『BECK』や『Paradise Kiss』を手がけた小林治さんが亡くなったことを知る。少し前からSNSで小林さんの発言がなくなり、心配で、彼と親しい人に様子を探ってもらっていたのだけど、その返事が届く前の訃報だった。小林さんとは取材やイベントでご一緒したし、『ケモノヅメ』『はなまる幼稚園』では同じ作品に参加した。彼のオリジナル作品の企画書を途中まで作ったこともある。気さくで、思いやりがあって、そして熱い人だった。心よりご冥福をお祈り致します。

2021年4月19日(月)
進行中の書籍の作業、「佐藤順一の昔から今まで」の取材予習を進める。
イベントのために「アニメ様の1999年代年表」を作り始める。『THE END OF EVANGELION』『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』『アキハバラ電脳組 2011年の夏休み』で、『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』だけがビデオ、LD、DVD同時リリースだったのね。確かに同じ内容で3種類のパッケージを同時進行で作った覚えがある。『THE END OF EVANGELION』の時はビデオ、LDが同時だけど、DVDは同時ではなかった。『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』『アキハバラ電脳組 2011年の夏休み』はビデオとDVDが同時だったけれど、LDは出なかった(はず)。

2021年4月20日(火)
Zoom打ち合わせが始まる前の待ち時間に「僕の心のヤバイやつ」の最新話を読んで、ミーティング画面にニヤニヤした顔をさらしてしまった。
「佐藤順一の昔から今まで」で佐藤さんの取材。この企画で4度目のインタビューだ。色々と謎が明らかになった。15時40分から新文芸坐で「花形選手」(1937/64分/16mm)を観る。これも「天才と呼ばれた男 名匠・清水宏」の1本。「有りがたうさん」は面白かったけど、こっちはピンとこなかった。笠智衆さんが学生役で出ていた。見た目は若者だけど、声は僕らが知っている笠智衆のものだった。

2021年4月21日(水)
仕事の合間に、新文芸坐で「蜂の巣の子供たち」(1948/85分/35mm)を鑑賞。これも「天才と呼ばれた男 名匠・清水宏」の1本。映画としては悪くないけれど、公開当時にあったに違いない「新しさ」については想像するしかない。就寝前に萩尾望都さんの「一度きりの大泉の話」をKindleで読む。萩尾さんの作品は数冊と短編数本を読んだだけだが、ガツンときた。
『serial experiments lain』の再見を始める。

2021年4月22日(木)
緊急事態宣言で、外食で酒が呑めなくなるらしい。これは困った。いや、僕らよりもお店のほうがずっと大変なんだけど。

2021年4月23日(金)
グランドシネマサンシャインの9時15分からの回で『映画ヒーリングっど プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』を鑑賞。プリキュア5チームの扱いが「強力な先輩プリキュア」でしかなくて、それが残念。同時上映の短編『映画 トロピカル~ジュ!プリキュア プチ とびこめ!コラボ ダンスパーティ!』はよかった。『トロピカル~ジュ!』だったら、まんが映画が作れるのではないか、という気がした。
三省堂書店に行って判型とか文字詰めの参考になりそうな本をチェックして購入。それと別に、小説「男の子になりたかった女の子になりたかった女の子」を買った。表題作を読んだら大層面白くて、最後のセンテンスがまるで『少女革命ウテナ』のようだと思ったら、作者は『少女革命ウテナ』のファンだったらしい。
SNSを見ると、イベントや映画館や美術館の「中止」「休業」の話題が並んでいてキツい。

2021年4月24日(土)
ワイフと築地食堂源ちゃん東池袋店で食事。昼から吞む。緊急事態宣言のため、この後、しばらくホッピーが呑めなくなる。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 129 大友克洋監督のアニメーション」を開催。トークのゲストは橋本敬史さんと井上俊之さん。会場はほぼ満員。今回も井上さんが積極的に話をしてくださった。
『MEMORIES』の「彼女の想いで」において、井上俊之さんがかなりの量の原画を描き直したという話は、以前のオールナイトでも出たはずだけれど、今回のトークでは「直さなかったのは2人だけ」とさらに話が具体的になった。

佐藤順一の昔から今まで(26) 「親子のないしょ」と「のんちゃんのないしょ」

小黒 もう1作品だけ聞いて今日の取材を終わりにしたいんです。

佐藤 はい。

小黒 『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』(OVA・2004年)です。2本やられていて、両方とも絵コンテだけですよね。

佐藤 はい。

小黒 7話「タイヤキダイスキ! ~親子のないしょ~」は、多分、ニコニコしながら絵コンテを描いたのではないかと想像するんですけれども。

佐藤 そうですね。

小黒 深刻なところがないですし、ノリノリでやられたんじゃないかと思います。

佐藤 割と楽しくやらせてもらったエピソードだよね。

小黒 で、問題は12話「7人目の魔女見習い~のんちゃんのないしょ~」ですね。

佐藤 うん。

小黒 これを観た時に『魔法使いサリー』の「ポニーの花園」だな、と思ったわけですよ。

佐藤 (笑)。「ポニーの花園」よりも、もっとハードだものね。これは、関プロデューサーの子供の頃の実体験が元になっているんですよ。

小黒 関さんのお友達が亡くなったんですか。

佐藤 そうなんです。子供の頃にあったことがベースになっていて、さすがにTVシリーズではできなかったんだけど、OVAでこれをやりたいと思ったのは関さんだと思う。

小黒 なるほど。

佐藤 難しいネタだからね。

小黒 これは以前にちょっとうかがったんですけど、シナリオだと、のんちゃんのお母さんとどれみが雪合戦やるとこで終わっているんですよね。

佐藤 そう。そこで「のんちゃん、ありがとう」と言う感じで終わってる話だったよね。

小黒 その後に、もう1人の入院していた子供がMAHO堂を訪れる展開を絵コンテで足した。

佐藤 そこはコンテで足した部分だね。

小黒 最後に、のんちゃんの声が聞こえるかどうかは、絵コンテ段階では保留だったんですね。

佐藤 保留。亡くなった人の声が聞こえる描写を、視聴者がどう受け止めるかが分からなかった。リアルに考えたら、亡くなった人は一言も喋らないのが当たり前なんだけど、記憶に残ってる子の声が聞こえることはあるかもしれない。それで、関さんに任せますと。

小黒 そうか、佐藤さんはこの話の演出処理をしていないから、判断を委ねたんですね。

佐藤 そう。アフレコも行っていないんですよね。

小黒 そして、関さんが「残す」というジャッジをされたわけですね。プロデューサーなら、そう判断すると思います。

佐藤 そうね。「やっぱりセリフがあったほうが全然いいわよ」と。自分の感覚だと、声が聞こえないほうがしっくりきてはいたんだけどね。結構リアルなことをやっているのに、最後をそうするとドラマ的な「作り」を残すことになる。落とし方としては綺麗なんだけど、そんなドラマ的なパーツを残しちゃっていいんだろうかと。

小黒 死に至るまでのカットの積み重ねは相当気を遣ってやられているわけですね。

佐藤 そうですね。シナリオではもっと長くて、1回やってみたら映えないところが多くて、大分切ったんだけど。

小黒 使われなかったエピソードやシーンがあったわけですね。

佐藤 中山しおりちゃんのエピソードがもうちょっとあったんだと思うな。しおりちゃんが病院に入ったところとか、院内学級の描写もあったかもしれない。結構バサバサと切っていかないと入りきらないぐらいの物量のシナリオだったので。

小黒 脚本も力作であったと。

佐藤 「思い入れが凄い!」っていう感じで。

小黒 (笑)。

佐藤 多分、色々リサーチもしてシナリオを書いてるんだけど、リサーチしてるうちにどんどん入り込んでいっちゃって、逃げ場をなくしちゃうんだよね。逃げ場がないっていうのは変だけど、「これも書かなきゃ。あれも入れなきゃ」と、膨大なシナリオになっていったんだろうと思います。

小黒 とはいえ、絵コンテでぎゅうぎゅうに詰め込むのも違うわけですよね。ある程度、ゆったりしたテンポが必要な話ですから。

佐藤 そう、情感も必要だから間尺もちゃんとないと。この話の絵コンテは一度、(中村)隆太郎さんに振ってみたんだけど、色々難しかったので、「俺がやります」ということになったんだよね。

小黒 佐藤さんの『おジャ魔女どれみ』はこれで終わるはずだったんですね。

佐藤 そうですね。小説(「おジャ魔女どれみ16」シリーズ)をやってることも知らなかったからね。

小黒 TVシリーズとしてきちんと終わってる上に、OVAで『ナ・イ・ショ』を作って、さらにもう1回どれみちゃんの主役で作るのも難しいですよね。

佐藤 『魔女見習いをさがして』の時は、誰に対してどう作って、どう面白がってもらえるかが、なかなか掴めなかったんですよ。「何を観たいの、みんな?」と思っていて(笑)。

小黒 『ナ・イ・ショ』だと、佐藤さんは「監修」でクレジットが出ているようですが、これはどういうお仕事だったんですか。

佐藤 シナリオ打ち合わせには、全話じゃないけど結構出てるんだよね。おんぷちゃんの話(4話「ノンスタンダード~おんぷのないしょ~」)は、ホン読みに立ち会ってた気がするんだよな。ただ、監督ではなかったから、自分の話数以外に、がっつりと入り込んでいたわけではない。

小黒 誰にどの話を振るか、みたいなことには関わってない。

佐藤 それは関わってないよね。関プロデューサーがやるにあたって、「監督目線でチェックする人が必要だから、見てよ」という感じでした。だから、シナリオが送られてきて、何か意見を出したこともあったかもしれない。シナリオ打ち合わせ全部には立ち会っていない記憶があるから。


●佐藤順一の昔から今まで(27) に続く


●イントロダクション&目次

第714回 『蜘蛛ですが、なにか?』まとめて、続き

 放送開始直後にも話題にした「私」——蜘蛛子役の悠木碧さんは『ベン・トー』以来9年ぶり。『ベン・トー』の白粉花役の時にも「悠木さん、天才だね」との感想を収録時に言った憶えがある板垣。白粉の中身を自身でしっかり作り込んできてて、一言一言にもの凄く説得力があり、毎週の収録が楽しみでした。
 で、9年経って今度は主役でもっと凄くなっての再会! だって蜘蛛子のシーンはほとんど一人語り。それがテストの段階で1話分通しての抑揚、メリハリを悠木さんのほうで計算してすでに作り込んできているのが分かるんです。最初は自分も今泉(雄一)音響監督もあれこれ注文を出してみたのですが、何か悠木さんのほうでやりにくそうに見えて、途中からは画面作りの意図から外れていない限り、リテイクを控えるようにしました。例えば「ここはもっと声を張るイメージでコンテ切っていた」と俺のほうが思っても、そのまま芝居を通して聴いてると、後でもっと大声を出す箇所が出てきて、「あ、なるほど。こちらを立てるために前は抑えてたのか」と納得させられることが何回かあり、

この作品は悠木さんの作ってきた流れで駆け抜けてもらったほうが絶対面白くなる!

と思ったのでした。ある日の収録で自分が「なるべく一気に演ってもらうよう、(収録)止めないから」と言うと、悠木さんからは「助かります!」と。結果は全話通して見ても上手くいったと思います。
 シュン役の堀江瞬さんは今泉音響監督の推薦。「名前が同じなのは偶然で、(役柄的に)合うと思ったから」と今泉音監。板垣も思いました、「ピッタリ!」って。ご本人とお話したところ、名前よりも雰囲気自体がやはりシュンに似てました!
 カティア役の東山奈央さんは、堀江さん同様、自分とは初めて(ですよね?)。男言葉の凛々しさと、お嬢様言葉のギャップが素敵でした。実は転生前の大島叶多役もやってみようってことで、オーディションの時は男子高校生声にチャレンジしていただいたりと御無理をさせてしまいました。ごめんなさい。

第210回 橋の向こうとこちら 〜BEM〜

 腹巻猫です。「ゴジラvsコング」を観ました。楽しみましたが、「え、これでいいの?」と思うところもいろいろあり。日米怪獣(映画)観の違いを考えさせられました。


 くり返しリメイクされるアニメ作品がある。『ゲゲゲの鬼太郎』が代表的なものだし、ほかにも『鉄腕アトム』『ひみつのアッコちゃん』『天才バカボン』『キューティーハニー』などが挙げられる。その中には「こうきたか!」と驚くようなアレンジの作品がある。近年では『おそ松さん』がそうだった。
 『妖怪人間ベム』をリメイクした『BEM』を観たときも驚いた。オリジナルは1968年放映の怪奇アニメ。筆者はリアルタイム世代だが、独特の絵柄が心底怖かった。1982年に『妖怪人間ベム パートII』が企画されるもパイロット版のみに終わって実現していない。2006年に『妖怪人間ベム -HUMANOID MONSTER BEM-』のタイトルでリメイク版が放送された。これはオリジナル版のテイストを残したストレートなリメイク作品だった。
 2011年には実写ドラマ版「妖怪人間ベム」が放映される。なかなかよくできていて、筆者も楽しんで観ていた。杏が演じるベラがはまっていたし、サキタハヂメの音楽もよかった。
 で、『BEM』である。監督・小高義規、アニメーション制作・ランドック・スタジオのスタッフで制作され、2019年に放映されたTVアニメ作品だ。驚いたのはベラが美少女になっていること。「その手があったか!」とひざを打つと同時に現代的なアレンジだと納得がいった。設定やストーリーも工夫されている。リメイクする意味があったと思える作品だった。そう思う理由のひとつに音楽も挙げられる。
 今回は『BEM』の音楽を聴いてみよう。

 『BEM』の舞台は湾港都市リブラシティ。街は政治・経済・文化の中心である「アッパーサイド」と、汚職や犯罪にあふれた「アウトサイド」のふたつのエリアに分かれている。アッパーサイドからアウトサイドに転任してきた女刑事ソニアは、人間のしわざとは思えない奇怪な事件に遭遇する。その怪事件の現場に現れ、人間を守る3つの影があった。妖怪人間ベム、ベラ、ベロである。
 アッパーサイドとアウトサイドのあいだには運河が流れており、ふたつのエリアは橋によって結ばれている。運河は分断の象徴であり、本作の物語も、富める者と貧しき者、正義と悪、人間と妖怪人間、さまざまな対立をテーマに展開する。ベムたちがしばしば橋のアーチの上にいて街を観察したり、語らったりしているのも象徴的である。
 音楽を担当したのはSOIL&”PIMP”SESSIONSと未知瑠。SOIL&”PIMP”SESSIONSはライブやオリジナル・アルバムで活躍するインスト・ジャズバンド。未知瑠はアニメ『終末のイゼッタ』(2016)、『ギヴン』(2019)、ドラマ「賭ケグルイ」(2018)などの音楽を手がける作曲家である。リブラシティがアッパーサイドとアウトサイドに分かれているように、音楽も個性の異なる2組のクリエイターによって作られている。
 本作の舞台は80年代後半のニューヨークのブルックリン区をイメージして描かれている。SOIL&”PIMP”SESSIONSの起用は、そのブルックリンの雰囲気をねらってのことだったそうだ。
 といっても、SOIL&”PIMP”SESSIONS(以下、SOIL)がめざしたのは80年代のサウンドではなく、ヒップホップや最新の音楽のトレンドを取り入れた現代的なサウンドだった。スタイリッシュで、映像音楽の枠にはまらないエッジの効いた音楽。映像を観ていても、SOILの音楽が流れてくるとハッとして耳をすましてしまうほどの存在感がある。
 いっぽう、未知瑠が担当した楽曲は、サスペンスや心情、日常、アクションなどを描写する、ストーリーを語る上で必要不可欠な音楽だ。しかし、未知瑠もデビューはオリジナル・アルバムであり、映像音楽だけでなく、ジャンルを超えた現代音楽シーンで活躍する作曲家である。クラシックからロック、ジャズ、民族音楽まで取り入れたサウンドで、こちらも映像音楽の枠に収まりきらない個性的な音楽を生み出した。とりわけ、女声スキャットをフィーチャーした曲は印象に残る。
 音楽発注は、最初からSOIL用と未知瑠用の音楽メニューが用意されていたという。SOILの楽曲も「自由に曲を作ってもらって映像にはめていく」という作りではなく、使用場面を想定したメニューに沿って制作されている。ただ、一般的なサウンドトラックのような短い曲ではなく、起承転結のあるひとつの楽曲として完結させてほしいとのオーダーがあったそうだ。
 こうして作られた楽曲であるが、実際の作品を観ると(聴くと)、SOILの曲と未知瑠の曲を明確に使い分けてはいないようである。たとえば、街の描写にSOILの曲が、サスペンスシーンや心情描写に未知瑠の曲が使われるというわけではない。個々のシーンをどう見せたいか、というねらいを優先して選曲している印象を受けた。そういう意味では、SOILの曲と未知瑠の曲のあいだに分断(区別)はなく、音楽演出上はフラットなのである。
 その上で、SOILの楽曲は映像にある種の異化効果を生んでいると感じた。サウンドトラック的でないSOILの曲が流れると、観ているほうは気分が高揚し、「なんだか尋常でない場面に立ち会っている」と感じる。端的に言えば、ドキドキするのである。それは、物語に香りや刺激を加えるスパイスのようだ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは、SOIL&”PIMP”SESSIONSの楽曲が「TVアニメ『BEM』オリジナルサウンドトラック OUTSIDE」のタイトルで、未知瑠の楽曲が「TVアニメ『BEM』オリジナルサウンドトラック UPPERSIDE」のタイトルで、いずれもフライングドッグから発売された。
 ひとつの作品の音楽を複数の作曲家が担当することは近年では珍しくない。本作のように、2組のどちらがメインということではなく、共作で担当するケースもある。が、サウンドトラック・アルバムを作家ごとに分けて発売するのは珍しい。一般的には、両者の音楽を混ぜて収録したり、分けるとしても2枚組にしてひとつのアルバムとして発売することが多いからだ。本作の場合は「それぞれを独立したアルバムとして聴いてもらいたい」という意図があったのだろう。
 今回は「OUTSIDE」に収録されたSOIL&”PIMP”SESSIONSの音楽を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. Phantom of Franklin Avenue
  2. Blue Eyed Monster
  3. Tracking
  4. The Light and The Shadowland
  5. Shapeshifter
  6. Before The Dawn
  7. Wanna Be A Man
  8. Out of Control
  9. Thinking of you
  10. In The Gloom of The Forest
  11. Inside
  12. A Sence of…

 全12曲。1曲が2分から4分と長い。まさにジャズのオリジナル・アルバムのような聴きごたえのある1枚である。
 1曲目の「Phantom of Franklin Avenue」は作品全体をイメージして書かれたメインテーマ的な曲。曲名にはブルックリンの実在の地名(駅名)が使われている。第1話の冒頭、夜の街にベムたちが現れるシーンに流れていたのが印象的だ。テナーサックスがくり返すリフにトランペットのけだるいフレーズがからむ。最近のトレンドであるトラップミュージックのビートが使われている。中盤のピアノの浮遊感のあるプレイもいい。退廃した街の雰囲気を描写すると同時に、何か起こりそうな不穏な空気もかもしだす。『BEM』の開幕にふさわしい曲だ。
 トラック2「Blue Eyed Monster」はベムのテーマとして書かれた曲。第1話で車にはねられそうになったソニアをベムが助けるシーンに使用された。曲タイトルはBEMの由来である「Bug-eyed Monster(虫の眼の怪物)」をもじったものだ。SOILのインタビューによれば、「ドラムが主役になるような、崩したブロークンビーツを生音でやる」アプローチで骨格を作ったとのこと。そのビートの上で吹き鳴らされるホーン(トランペット、サックス)がベムのイメージを描いていく。この曲も中盤のピアノのアドリブがいい。後半はシンセストリングスが重なり、重厚感を表現する。闇の中に立つベムの姿が似合う曲だ。
 トラック3「Tracking」は逃走のテーマとして書かれた曲。第2話でベラが夜の墓場を訪れる場面など、サスペンスシーンによく使われた。打ち込みのビートとピアノが刻むリフが続いたあとに、トランペットとベース、ピアノ、ドラムなどによる生っぽいセッションに展開。さらにスピード感のある演奏に変化していく。映像音楽として使い勝手がよかったのか、悪の匂いを感じるベム、ベムと怪人との闘い、ベムたちの危機など、さまざまな場面に使用されている。
 トラック4「The Light and The Shadowland」は、これも近年のトレンドであるLAビーツ風の曲。もともとはプロコル・ハルムの「青い影」みたいな曲というオーダーだったそうだが、まったく違う曲に仕上がった。輪郭の丸いふわっとしたサウンドが日常と幻想が入り混じったような雰囲気を演出する。第1話で着任したばかりのソニアがアウトサイドの街を案内してもらう場面や第4話でベラが学園の同級生と語らう場面などに使われた。
 トラック5の「Shapeshifter」はバトルシーンを想定した曲。現代的なビートの上でトランペットやサックスのアドリブが炸裂する。普通にジャズのセッション曲として聴けるノリのよい演奏だ。第4話で電撃をあやつる怪人・感電男が酒場で男を感電させる場面に流れていた。
 トランペットの音色が胸にしみるトラック6「Before The Dawn」は、「大人っぽいバーでかかる曲」のイメージで書かれた。実際に第9話のバーの場面でくり返し流れている。オールドスタイルのジャズという感じで、レコードから選曲したと言われても納得してしまいそうだ。
 次の「Wanna Be A Man」は「Blue Eyed Monster」のメロディをスローテンポにアレンジした曲。ピアノとトランペットの演奏が憂いや迷いを表現し、思いにふけるベムの姿が目に浮かぶ。しかし、バックではずっとリズムが刻まれ、悩みながらも前に進む意志が示される。最終話となる第12話で、ベムが「人間が好きだ」と語る重要なシーンに選曲されている。
 ベムたちのアクション曲としてたびたび使われた「Out of Control」をはさんで、トラック9「Thinking of you」はピアノソロによるしっとりとした曲。後半にサックスがそっと音を重ねてくるところが、誰かが寄りそってくるようでぞくぞくする。第6話でベラが重力男と少女ハラジーを逃がそうとする場面や第7話でベロが檻の中の動物たちを解き放つ場面など、妖怪人間の人間以上に人間らしい心情を表現する曲としてしばしば使用された。
 ラストナンバーとなる「A Sence of…」もまたベムたちの心情にフォーカスした曲である。人間を守って戦っても人間には受け入れてもらえない。そのむなしさと悲哀をトランペットとサックスのゆったりとしたメロディが表現する。しかし、この曲もバックではリズムが力強く刻まれ、希望を感じさせる。もの思うベムたちのシーンにたびたび選曲され、最終話では、姿を消したベムたちのことを彼らを知る人々が心配するラストシーンに流れていた。幕切れの余韻を感じさせる曲である。

 ふだんは映像音楽とは異なるフィールドで活躍するSOIL&”PIMP”SESSIONSの楽曲は、いわば、橋の向こう側から越境してきた音楽。スタイリッシュなサウンドで『BEM』の映像に刺激を加える役割を果たしていた。この音楽が気に入ったら、こんどは橋を逆に渡って、SOILのオリジナル作品を聴いてみるとよいだろう。
 今回紹介できなかった未知瑠の音楽も『BEM』にはなくてはならないものだ。特に女声スキャットが妖しく歌う「アウトサイドの蠢き」とメロウな「あの橋の向こう側」は本作を代表する曲と言ってよい。アルバム「UPPERSIDE」もぜひ合わせて聴いてもらいたい。

TVアニメ「BEM」オリジナルサウンドトラック OUTSIDE
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TVアニメ「BEM」オリジナルサウンドトラック UPPERSIDE
Amazon

新文芸坐×アニメスタイル スクリーンで観たいアニメ映画vol. 2
『魔女見習いをさがして』

 「スクリーンで観たいアニメ映画」の第2弾は『魔女見習いをさがして』のレイトショーです。『魔女見習いをさがして』は「おジャ魔女どれみ20周年記念作品」として作られた劇場アニメーションで、佐藤順一監督をはじめ、『どれみ』のスタッフが集結。『どれみ』ファンの女性達を主人公にした物語です。

 開催日時は2021年7月10日(土)。トークのゲストはゲストは関弘美プロデューサーと佐藤順一監督のお二人を予定。ただし、佐藤さんはレイトショーの前に予定があり、途中からの参加になるかもしれません。

 当日は先着50名に『魔女見習いをさがして』のポスターをプレゼントします。また、11日(日)朝にトーク無しの上映を予定しており、こちらでも先着50名にポスターをプレゼントします。

 チケットは7月7日(水)からオンラインと新文芸坐窓口で発売します。詳しくは新文芸坐のサイトをご覧になってください。

 なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要。入場時に検温・手指の消毒を行います。

新文芸坐×アニメスタイル スクリーンで観たいアニメ映画vol. 2
『魔女見習いをさがして』

開催日

2021年7月10日(土)

開場

開場:18時30分/開演:18時50分/上映終了:20時20分(トークは上映終了後の予定)

会場

新文芸坐

料金

一般1500円、学生・友の会・シニア1300円(招待券不可)

上映タイトル

『魔女見習いをさがして』(2020/91分/DCP)

備考

※トークコーナーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

佐藤順一の昔から今まで(25) あひるの自己肯定感の低さと王子様

小黒 『プリンセスチュチュ』って、変身ヒーローものの体裁をとっているじゃないですか。そういったかたちでやったほうがよかったんですか。

佐藤  「変身美少女もののカテゴリーの中にある作品」でありたいというのはありました。

小黒 それは佐藤さんの中に?

佐藤 伊藤さん的にもそうだと思うけどね。伊藤さんは「バレエで戦う少女もの」だと考えていた。よく分からなかったので「それは『説得』になっちゃうのかな?」と聞くと「説得じゃないんです」と。あくまでバレエのやりとりの中で決着をつけていきたい、ということでした。

小黒 『チュチュ』を観ていて、これ(編注:「私と踊りましょう」のポーズをやって見せて)は覚えましたよ。

佐藤 そうそう。バレエのネタを見つけてきてお話に組み込むとか、音楽をどうするのかということを考えて、シリーズ構成を作っていったんだよね。だから、探り探りの綱渡りで作ってる感は常にありましたね。

小黒 観返しても綱渡り感はちょっと感じます。

佐藤 うん。進んでいくうちに、シナリオとコンテも変わってくるしね。

小黒 シナリオと絵コンテで内容が違うんですね。

佐藤 そうそう。シナリオも一度は納得できるかたちでまとまっているんだけど「前の話数を絵コンテ段階で変えたら、次の話数も変えなきゃいけないじゃん」ということになっていって。シナリオ完成後のコンテ作業の時にも、伊藤さんの意見やアイデアを可能な限り盛り込もうと思ってたので。

小黒 主人公のあひるちゃんって凄く自己評価が低いじゃないですか。伊藤さんに聞いたら「人間とは、万人がそういうものではないか」と言われました(「この人に話を聞きたい」第五十三回・アニメージュ2003年3月号掲載)。佐藤さんはどう思われますか。

佐藤 伊藤さんの中で、少女ものの原点がそういうことなんじゃないですかね。

小黒 普通の少女マンガは「取り柄のない私が、素敵な彼と恋人になってハッピーエンド」となるんですけど、そうはならないじゃないですか。最終的にみゅうとは、るうと結ばれてしまうわけで。

佐藤 伊藤さんの感覚として「頑張っても、結局美味しいとこは誰かが持ってっちゃうことってあるよな。でも、それでもいいんだよね」というのがあるんじゃないかな。頑張ったのに主人公が変わらないという展開は、物語としては着地がしにくいんだけれども、伊藤さんとしてはそれが凄くしっくりきてた記憶がある。
 伊藤さん自身にもそういう経験があるんだと思うんです。アニメーターって裏方的なところがあるから、凄く頑張っても、結局誰かが美味しいところを持ってっちゃうことがいくらでもあるんでしょうね。だけど、誰かに持っていかれても、自分がやったことの価値は変わらない。だから、それはそれで別にいいんだという意味のことを伊藤さんが言っていたんです。僕には、その時の伊藤さんの姿とチュチュが被って見えるんですよ。

小黒 なるほど。今観返すと、みんながみゅうとのことを、どうしてそこまで好きなのかと気になったんですが、そんなことは問うてはいけないんですね。

佐藤 そうそう。そこは疑問に思っちゃいけない。「彼は王子様だから。王子様のことはみんなが好き。以上終了」でないと。『まほTai!』の話に戻るけれども、伊藤さんが沙絵のことが分からない一番の理由は「なんで高倉のことが好きなのか」だったんです。前にも言ったように、沙絵が頑張るにためには丘の上の王子様が必要であるということで、伊藤さんのイメージで、ジェフ君という子供の頃に会った素敵な魔法使いのお兄さんを足してるんですよ。『チュチュ』はそれの逆バージョンだよね(笑)。分かんないからといって好きな理由を足しちゃうと、存在が王子様じゃなくなっちゃうでしょ。雨の日に不良が猫を可愛がっていたみたいなエピソードを入れちゃうと、王子様じゃなくなっちゃう。

小黒 それも含めて、伊藤さんの感覚とか価値観に寄り添って作られた作品だということですね。

佐藤 そうですね。こちらも探りながら「こういうことなの?」とアイデアを出していく。『チュチュ』はね、やっていて面白かった。お話を作るのも面白かったけど、音楽ベースでの画作りがやっぱり面白かったよね。

小黒 岸田今日子さんや三谷昇さん等、キャスティング的にも異色の作品ではありましたね。

佐藤 そうですね。その辺りも伊藤郁子さんに「ナレーション誰がいい?」みたいに聞いて、決めていきました。あひる役の加藤奈々絵さんにしても、伊藤さんが「『魔法使いTai!』で生徒Aをやっていたあの子の声が聞きたい」と言ったところからのオファーだしね。

小黒 なるほど。

佐藤 伊藤さんが「ナレーションは岸田今日子さんみたいな人がいいな」と言ったら、たまたまハルフィルムの社長が、岸田さんの円企画と接点があったので、「ちょっと聞いてみます」と言ってくれて。岸田今日子さんは一声ン百万円の人だから簡単には頼めないんだけど「企画を見て面白そうだったら相談にのってくれますよ」と言われて、その結果やってくれることになったんです。ただ、さすがに毎週ナレーションを録りに来てもらうわけにはいかないので、岸田今日子さんはまとめて全部録るっていう条件でやってくれることになって、「おお! やってくれるんや~!」となりました。そして、円企画に三谷昇さんがいて、ドロッセルマイヤーをやってくれることになった。それで決まったキャストです。

小黒 この頃の水樹奈々さんは、まだ若手なんですね。

佐藤 人気が出始めてた頃だったと思います。『プリンセスチュチュ』で唯一、キングレコードから提案されたのが水樹さんでした。お芝居もお上手だし、NOと言う理由はありませんでした。水樹さんに、るうをやってもらって正解だったと思う。

小黒 当時、『チュチュ』のDVDで取材をした時に水樹さんはスターの風格がありましたよ。

佐藤 アニメ以前に、歌手として芸能活動をやっていたんだものね。

小黒 あひる役の加藤さんは、さっき言ったように『まほTai!』の端役で出てたわけですね。

佐藤 そうそう。その声がちょっと面白かったんで使いたいって言ったけど、キャリアがないし、いきなり主人公やらせて大丈夫かなと思ったんで、試しにセリフを読んでもらったりしました。ただ、アフレコが始まってからは収録に相当時間がかかって、簡単にはいかなかった。加藤さんの収録だけは夜遅くまで、特訓に近い収録になっていたね。

小黒 『チュチュ』は制作的には遅れ気味でしたよね。

佐藤 そうですね。後半にいくにつれてどんどんスケジュール食われていきました。確か放映枠が変わったんだよね。

小黒 そうです。途中から「動画大陸」の枠で、2本立ての1本としてやることになりました。

佐藤 15分枠で続きをやることになったので、話の丁度真ん中にCMが入るように作らなくてはいけないという面倒くささはあったけどね。

小黒 AパートBパートの長さを変えられないわけですね。

佐藤 できないからね。毎回11分ぐらいで引きを作っていく作り方が結構大変で、それもあって、後半になってからはシナリオに時間がかかった。

小黒 佐藤さんは『チュチュ』では数話ごとに絵コンテを書くかたちですね。

佐藤 『チュチュ』はコンテチェックで結構手を入れてるんですよ。さっきも言ったように、伊藤さんはシナリオ打ち合わせにも参加しているんだけど、上がったコンテを読んで意見をもらうこともあったから、コンテチェック時に手を入れるパーセンテージの高いシリーズですね。

小黒 なるほどなるほど。

佐藤 なんだかんだで、ほぼほぼ素上がりコンテから変わってしまった話数もあるんですよ。それに、『チュチュ』の音楽シーンだと、場合によっては3分以上の曲に画を合わせる作業になる。ほとんどの演出さんは、そんなことをやった経験がないから、やり方が分かんないんだよね。そこに関しては、コンテが上がったところで僕のほうで音楽に合わせて切り直したりもしているので、かなり絵コンテに食い込んではいる。

小黒 佐藤順一ヒストリーの中でも、相当手間の掛かる作品だった。

佐藤 そう。

小黒 その一方で、佐藤順一カラーはそんなに濃くない。

佐藤 濃くないはずですね。絵コンテレベルでは、よく見るカット割とかはあるかもしんないけどね。

小黒 そうですね。芝居の付け方とかには、佐藤さんらしさがいっぱいあるんですけど。全てを明快に描いていくのが、佐藤順一アニメだとすると、『チュチュ』はそうではない。観念的な作品ですよ。

佐藤 観念的なところは横手さんから出てくるものも多かったけれども、コンテでさらに象徴的にしたりとかもやってたりもします。基本的に、絵コンテも含めて考えることの多いシリーズだったよね。めちゃめちゃ脳を使う仕事。


●佐藤順一の昔から今まで(26)「親子のないしょ」と「のんちゃんのないしょ」 に続く


●イントロダクション&目次

アニメ様の『タイトル未定』
307 アニメ様日記 2021年4月11日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年4月11日(日)
グランドシネマサンシャインで「シン・エヴァンゲリオン劇場版 舞台挨拶中継付」のライブビューイングを、ワイフと一緒に観る。庵野さん達の舞台挨拶は新鮮だった。二度目の鑑賞で『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の印象は変わらず。映画の後に居酒屋へ。1週間ぶりの酒は旨い。

2021年4月12日(月)
原稿は後回しにして、それ以外の作業を次々に片づける。新番組『シャドーハウス』1話を視聴。キービジュアルだけ、キャラクターがシルエットなのだろうと思っていたのだけれど、本編もそうなのね。まるで前衛作品だ。「オフセット印刷サンプルBOOK」がAmazonから届く。これはヤバい。仕事で色んな印刷を試したくなる。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の二度目の鑑賞から1日経って思ったことがある。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が完成したことで『新世紀エヴァンゲリオン』TVと劇場版がなんだったのかがはっきりしたと思う。作品の輪郭が明確になった。今なら、自分はこれまでよりも上手にTV版と劇場版の解説が書けるはず。

2021年4月13日(火)
事務所で仕事を片づけてから、新文芸坐の10時30分からの回で「ミッドナイト・ファミリー」(2019・米=メキシコ/81分/DCP/ドキュメンタリー)を鑑賞。途中外出券をもらって、事務所に戻る。Zoom打ち合わせ、テキスト作業等をこなしてから、再び新文芸坐に。15時35分からの回で「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」(2020・米/84分/DCP/ドキュメンタリー)を観る。新文芸坐の外出券は、コロナ禍で映画と映画の間の休憩が長くなり、その休憩中に外に行って煙草を吸ったり、食事をするためのものであり、今回のように朝と午後に分けて映画を観るためのものではないのだけど、新文芸坐のスタッフの方が「現在のルールでは、そういった使い方もOK」と言ってくれたので、裏技的な鑑賞をしてみた。ただし、ルールは今後変わるかもしれないとのこと。
今日のプログラム名は「「命」をかける女、「命」を運ぶ家族 スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち | ミッドナイト・ファミリー」。ドキュメンタリーの2本立てである。「ミッドナイト・ファミリー」はメキシコの民間の救急搬送事業者である家族を描いた作品。カメラの存在をあまり感じさせない劇映画的な作りだ。「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」は多数のインタビューと過去の映画やドラマ映像等を組み合わせたドキュメンタリーらしい作り。好対照の2本だった。

この日は以下の新番組の1話を観た。今期は挑戦的な画作りの作品がいくつもある。
『不滅のあなたへ』
『美少年探偵団』
『EDENS ZERO』
『BLUE REFLECTION RAY/澪』
『すばらしきこのせかい The Animation』
『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω』
『ゾンビランドサガ リベンジ』
『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』
『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』

2021年4月14日(水)
「林修の今でしょ!講座 特別編」の「プロが選ぶ!日本のアニメの歴史を変えたスゴいアニメ 14」を録画で観る。アニメのメイキングを取り上げる番組をゴールデンタイムでやったのは画期的。プリキュアの変身作画と『風立ちぬ』の効果の話は面白かった。
Netflixの『極主夫道』がキレキレ。ほとんど止めなんだけど、普通に動かしたらこんなに面白くならなかっただろう。
ダイエットを続けている。体重を落とすと決意したのが去年の9月28日(月)で、その日から7.4キロ落とした。この日はチートデイ。チートデイという言葉の使い方が正確ではないかもしれないけれど、とにかくチートデイ。上野で吉松さんと肉を食べて吞む。

2021年4月15日(木)
「アニメージュとジブリ展」内覧会に参加。ちょっとしたアニメージュ関係者の同窓会だった。鈴木敏夫さんの仕事を中心にした展示だと思い込んでいたけれど、必ずしもそういうわけではなかった。アニメージュファンとしての展示の見どころは初期の付録、そして、電車の中吊り広告。アニメージュファンとしてではなく、アニメマニア的な視点だと、レイアウト等のアニメーションの制作資料の展示があり、これがかなりよかった。特に『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』 の「さらば愛しきルパンよ」のレイアウトがよかった。ただ、この展示とは別に、いつか、ジブリがメインでない「アニメージュ展」をやってほしいとは思う。
事務所を片づけていたら、淀川長治さんの映画解説DVDが出てきた。一度も再生していなかったので、ちょっと観てみる。1本1本の解説が短くて、それが大量に入っている。1本の映画に時間を使って語ってもらったほうが、見やすいだろうなあ。正確な引用ではないと思うけれど「映画を勉強している人は」というフレーズがあって、いいなあと思った。僕も機会があったら、イベントとかで使おう。「アニメを勉強している人はここに注目したいほうがいいですよ」とか。

2021年4月16日(金)
グランドシネマサンシャインで、ワイフと『名探偵コナン 緋色の弾丸』を鑑賞する。感想はいずれまた。
確認したいことがあって、DVDで『宇宙戦艦ヤマト』を数話分だけ視聴した。ヤバい。めちゃめちゃ面白い。前に再見した時の数倍面白い。よく沖田艦長の年齢が印象より若いと話題になるけど、改めて観ると、声は若いね。

2021年4月17日(土)
デスクワークと散歩の日。原稿作業には手をつけず、現状の仕事の整理。それから、新しい書籍の企画のプランを練る。思いつくのは簡単だけど、かたちにするのは難しい。取材の予習で『スケッチ ブック ~full color’s~』を数本視聴。面白いなあ。『うみものがたり ~あなたがいてくれたコト~』を1話から観る。

第177回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕須直監督次回作【覚えておいてほしい人の名 編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、作品のタイトルや内容は発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督は平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。

 2021年7月17日(土)に開催する第4弾のサブタイトルは【覚えておいてほしい人の名 編】。出演は片渕須直さん、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、今回は配信のみのイベントとなりました。先行してロフトグループによるツイキャス配信を行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルではトーク本編とは別に「ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク」も配信する予定です。

 ツイキャス配信のチケットについては、以下の「LOFT/PLUS ONEのイベントページ」のリンクをご覧になってください。ところで、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。

■関連リンク
LOFT/PLUS ONEのイベントページ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/184367

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第177回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕須直監督次回作【覚えておいてほしい人の名 編】

開催日

2021年7月17日(土)
開演12時 終演15時予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

ツイキャス配信/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
  アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 131
『この世界の片隅に』五度目の夏

 新文芸坐とアニメスタイルは、今夏も片渕須直監督の作品を集めたオールナイトを開催する。上映タイトルは『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』『マイマイ新子と千年の魔法』『アリーテ姫』の3本だ。
 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は『この世界の片隅に』に改めてシーンを追加した作品で、新文芸坐とアニメスタイルのオールナイトで上映されるのはこれが初となる。

 トークのゲストは片渕須直監督。会場では片渕監督のサイン入り「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」を販売する予定だ。

 なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要。入場時に検温・手指の消毒を行う。前売り券の発売方法については、新文芸坐のサイトで確認していただきたい。
(7/16追記)このプログラムは客席数50%で開催することになりました。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 131
『この世界の片隅に』五度目の夏

開催日

2021年7月31日(土)

開場

開場:22時20分/開演:22時40分 終了:翌朝6時20分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般3000円、友の会2800円 一般、友の会共に3000円均一

トーク出演

片渕須直(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019/168分/DCP)声:のん
『マイマイ新子と千年の魔法』(2009/93分/DCP)声:福田麻由子
『アリーテ姫』(2001/105分/35mm)声:桑島法子、小山剛志

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第713回 『蜘蛛ですが、なにか?』まとめて

『蜘蛛ですが、なにか?』最終話の納品を終えて

 本来ならば今までもっと『蜘蛛』について書くべきだったのですが、ここ半年間、毎週の納品に追われる中、気づくと木曜日(原稿の締め切り)! 話がまとまらずお茶濁しの連続。単純な話、とても忙しくて書けませんでした。あと、『蜘蛛』はネタバレしたら全てが台なしな話なので、下手なことは語れなかったってのもあります。
 ま、そんな感じで思いつく順にアニメ『蜘蛛ですが、なにか?』について。制作現場はミルパンセ。これは何ヶ月か前にもここで書いたかと思いますが、『コップクラフト』をやってる最中、会社にではなく自分の方にオファーがきて、全体の半分をミルパンセが手伝う話から始まり、紆余曲折を経て全体を受けるかたちになりました。もちろんグロスには出しますが、制作元請けがミルパンセに決まったのは、自分が監督に決まってしばらく後でした。
 シリーズ構成に関しては、自分が入った時、すでに百瀬祐一郎さんのものが12話分まであり、それに沿ってホン読み(脚本作り)を始め、後半12本の構成案が原作者の馬場(翁)先生から上がってきて、後半からはそちらに沿うかたちで最終回、ラストの締めは——観てください。
 コンテはいつもどおり基本自分。社内に入って演出処理もしくは作画などの参加が望める方であれば振りますが、コンテオンリーの方、つまりコンテの稼ぎのみで生計を立ててる量産コンテマンさんには振らないようにしています。そういうコンテマンの存在を否定する気は毛頭ありません。量産コンテマンがいると助かると言ってる監督さんも知ってますし、その方が直して使いやすいシリーズがあるのも分かります。しかし「少しでも変わった画作りを」とか「前よりも面白いカット割りを!」などと常日頃考えてる板垣にとっては、結局直すほうが時間がかかってしまうことになる場合が多いのです。よって全部白紙から自分で、と。「アニメはひとりで作るものじゃない」とか当たり前のことを言う人は後を絶ちませんが、コンテを切る(描く)ことだけは基本的に傲慢な仕事だし、そうでなきゃ本来面白いフィルムは作れないと思います。自分にとって都合のいいコンテが上がってくるのを待っていられる性格じゃないだけかも。
 キャラクターデザインの田中紀衣さん、助監督・上田慎一郎氏は櫻井(崇)・制作Pからの紹介。制作開始時はお二人のおかげでスムーズに制作が進みありがたかったです。サブキャラや衣装デザイン、メインアニメーターは社内で。海外撒き分の直し(修正)も社内。
 音響面では共同で音響監督にクレジットされている今泉雄一さんがメインで、ちょっといつもの監督より多めに口を出すといったかたちの俺でした。後半からは画作りが忙しくなり、キャスティングや選曲は今泉さんにお任せにはなってしまったものの、板垣の好みは汲み取ってくださり、選曲プランなども送っていただき、前もってチェックさせてもらうなどしました。特にキャスティングは近藤隆さんや森川智之さんら、初期の自分の監督作品で主役をやられた方々も呼んでいただき嬉しい限りでした。

佐藤順一の昔から今まで(24) 『スレイヤーズぷれみあむ』と『プリンセスチュチュ』

小黒 この頃に『スレイヤーズぷれみあむ』(劇場・2001年)もあります。『プリーティア』が2001年4月新番で、同じ年の暮れですね。

佐藤 『ぷれみあむ』ってもう少し先かと思ったけど、そんなもんだったかもね。

小黒 佐藤さんは『スレイヤーズ』のことをあまり知らずに手掛けたんですよね。それもあってか、リナが可愛いんですよ。ちょっと女の子っぽい。

佐藤 (笑)。そうしてるかもね。原作もアニメも凄い量があるじゃない。

小黒 ええ。

佐藤 自分に与えられた時間がなかったので、まず映画を全部観て、あとはファンジンとかファンサイトとかを漁るように読んで、みんなが何を楽しんでるのかを探って。

小黒 おお、若手監督みたいだ(笑)。

佐藤 原作も全部読んでる余裕はなかったんだよね。とにかく「みんなが何を楽しんでるか」が、まず知りたくて。そこで引っかかったのが、あんまりクローズアップされてないんだけど、「リナとガウリイの関係って、ちょっとよさげじゃない?」ということだったんです。このカップリングについて、ときめいてる人もいたようだったので、これかなと思って。

小黒 それで、ガウリイが「アイラブユー」と言ってリナがドキッとするんですね。

佐藤 そうそう。今回はこれかなと思ってやったんじゃないかな。

小黒 なるほど。あの当時、『スレイヤーズ』のアニメは既に沢山作られていましたが、その中で新鮮な感じはしましたよ。

佐藤 まあね、せっかくやるんで今回のトピックが何か欲しいなと。劇場版にTVのキャラクター達が出ることが、今回のトピックだって言われていたので、TVシリーズも色々観たんです。みんなが喜んでくれそうなものはこれかなと思ったのが、リナとガウリイやゼルガディスとアメリアのラブコメテイストですね。そう思って取り組んでいたかな。

小黒 脚本もお書きじゃないですか。

佐藤 はいはい。

小黒 脚本に関して、原作者の方とやりとりしたんですか。

佐藤 ショートの劇場作品をやるにあたって、どういう方向がよいのか分からなかったので、プロットを3本書いたんですよ。

小黒 ほお。

佐藤 凄いシリアスな方向のものと、シリアスなんだけどTVシリーズノリのコミカルなところもあるやつと、コミカル寄り一辺倒なタコの話を作って。タコの話だけは、流石にこれはないだろうと思ったんだけど、「これが面白いです」と言われたので、それになったというわけですね。

小黒 別に誰かがタコの話をやろうって言ったわけじゃないんですね。

佐藤 じゃない。いくつか書いた中で、原作者の神坂(一)先生とあらいずみ(るい)先生が「これが是非観たい」とおっしゃったので(笑)、じゃあこれでやりますと。脚本にもクレジットされてるけど、プロットの次がコンテだったので、シナリオそのものは書いてないんですよ。

小黒 なるほど。

佐藤 その後の『ARIA (The ANIMATION)』(TV・2005年)や『たまゆら』(OVA・2010年)とかもそうだけど、脚本はほぼ書いてなくって、プロットでOKをもらったらそれでいきなりコンテに入るっていうやり方なので。

小黒 手応えはいかがでしたか。

佐藤 いや、全然分かんなかったよね。それこそファンムービー的な、ファンが喜んでくるかどうかが勝負みたいなところがあるから、もうドキドキですよ(笑)。

小黒 なるほど。

佐藤 どれぐらい喜んでもらったのか、データでもらったわけじゃないので分かりませんけど、喜んでもらえたらいいなと思いました。

小黒 いや、喜んでもらえたんじゃないでしょうか。

佐藤 そしたら、ありがたいですよ(笑)。とりあえず神坂先生とあらいずみ先生には喜んでいただけたようなので、そこは一安心でしたね。

小黒 これも制作の現場がハルだったんですね。

佐藤 北海道にあった時のサテライトスタジオも結構入ってくれていたはず。

小黒 この前後だと『七人のナナ』(TV・2002年)の絵コンテ、『ゲートキーパーズ21』(OVA・2002年)の絵コンテがありますが。

佐藤 それはこれまでやってきた仕事の流れですね。『七人のナナ』は、『まる子』をやってたスタッフが作っていた作品で、オファーをもらってやりましたね。制作のA・C・G・Tはトラスタの制作連中が作ってた会社でもあったので。『ゲートキーパーズ21』は山口さんが監督としてGONZOとやってたので、1本引き受けてる感じですね。

小黒 『ゲートキーパーズ21』は、作画もハルで請けてるんですか。

佐藤 そうそう。1本グロスでまるっとやる感じで。熊谷(哲矢)さんが作監だったかな。

小黒 佐藤さんはこの頃、ハルに机があって、社内で作業をされていたんですか。

佐藤 この頃、ハルをベースにして作業してるよね。

小黒 『THE ビッグオー』(TV・2003年)は、最終回前の絵コンテだけを担当(25話「The War of the Paradigm City」)。

佐藤 『ビッグオー』も、『ウテナ』に続いて……。

小黒 「分からない」ですか。

佐藤 「どうやったらいいんだろう」って思いながらやった(笑)。メタフィクション的なところがあるから、言われたようにやるしかないかという感じでやってたかもしれないですけどね。

小黒 むしろ小中さんは、こっちが自分のフィールドな感じですよね。

佐藤 そうなんですよ。「小中さんのフィールドってこういうことか!」と思ってやってた気がするな。

小黒 じゃあ、割と手探りでやった感じですか。

佐藤 手探り。分かんないところは「とりあえず書いてあるとおりにちゃんとやっていこう」と思ってやってるはず。

小黒 そして、今日の取材のクライマックスが『プリンセスチュチュ』(TV・2002年)ですよ。

佐藤 はい。

小黒 どのぐらい前からやってるんですか。

佐藤 ハルフィルムで、次の作品を何にしようかという時に『プリンセスチュチュ』という企画があると提案したんです。これは伊藤郁子さんが企画としてずっと持っていたもので、『セーラームーン』をやってる頃から、ずっとスケッチをしてたと思うんだよね。それがオリジナルのバレエものであることまでは聞いてたけど、企画内容までは見せてもらってなかったので、「これはサトジュンでやる作品ではないんだな」と思って、あんまり触れないようにしてたんです。それから、結構時間が経っていたので、伊藤さんに声を掛けたら「じゃあやってみようかな」という気持ちになってくれたので、プレゼンして動かしてみましょうかといった感じかな。

小黒 なるほど。基本的には伊藤さんの中にあるものが、スタートラインにあるわけですよね。

佐藤 そう。伊藤さんのアニメを作るっていう企画ですからね。

小黒 『魔法使いTai!』では佐藤さんがやりたいことを伊藤さんが手伝ったので、『プリンセスチュチュ』では伊藤さんがやりたいことを佐藤さんが手伝うかたちだと、当時、うかがいました。

佐藤 そうですね。そういう感じで間違いない。

小黒 伊藤さんの中に、やりたいキャラクターや世界とかはあったと思うんですけど、物語のかたちもあったんですか。

佐藤 がっちりと櫓を組んだ状態ではないんだけど、伊藤さんの中にはやりたいパーツがいっぱいあって、ぐるぐるしてた状態だと思うんですよね。「これはこうですか?」って聞くと答えが返ってくるんだけど、それと一緒にあれもこれもと出てくる感じだったので、ディレクションをするにあたって、上手にやらないと散らかっていくなっていう印象があったんです。だから、全体像としては伊藤さんのやりたいものをリサーチして、それをフィルムに載っけていくっていう作業に近いかな。

小黒 『チュチュ』って、観ていてもどうなっていくのかが分かりづらいですよね。これは狙いなんですか。

佐藤 それが狙いってことではないんだけれど、伊藤郁子さんには「エンターテイメントでありたい」ということがベースにあるんですよ。だから、「ここでこんなキャラがこんなことしたら面白いな」といったパーツも沢山持ってるんだよね。伊藤さんはホン読みにも参加しているので、そのお持ちのものを出してもらって、組み立てていくから、そのテイストが出ているとは思うけどね。

小黒 足元がふわふわした道を歩いてるみたいでしたね。「物語の中の王子」ってどういうことだろう、と思ったりしました。

佐藤 (笑)。割と後半まで探り探りで、「これどうしたいの?」と考えるようなことはありましたね。例えば、「動物キャラが毎回何か出ます」と伊藤さんが言うので、まずアリクイ美さんを作ったんです。伊藤さん的にはワンカット出てくるぐらいのつもりで考えてたんだけど、(シリーズ構成の)横手さんが探り探りの中で、アリクイ美さんっていうキャラクターを凄く立ててくれたので、それはそれで面白くていいかとなって進んでいくような感じですね。その後「動物キャラはワンカット出ればいいくらいです」となって、アルマジロとかは、ちらっと一瞬だけ出る。

小黒 オンエアの途中にあった総集編で「ここに出ていたこの動物!」みたいなコーナーがあって、あれで初めて出ていることを知った動物もいましたね。

佐藤 (笑)。スタッフルームに「珍しい生きもの大辞典」みたいな本があって、ネタ本として使ってました。伊藤さんが思っていることをかたちにしていくと、ちょいちょい誤解が生まれるんだけど「それはそれで面白いかな」と活かしていく感じでしたね。

小黒 誤解というのは、今のアリクイ美さんのようなことですね。

佐藤 そう。アリクイ美さんはそんなに出すつもりじゃなかったけど、出してみたら面白かったのでそれでいこう、みたいな作り方。毎回バレエで着地するのに関しても、これはどう決着するんだろうと詰めながら作っていました。


●佐藤順一の昔から今まで(25)あひるの自己肯定感の低さと王子様 に続く


●イントロダクション&目次

第712回 学生時代の友人——訃報

 ……なんか、学生時代の友人・T君の訃報を聞いて落ち込んでいます。今年に入って自分がお世話になった先輩や先生らがお亡くなりになられ、今度は友人。事故と聞き、本当に無念です。ここ数年は仕事が忙しく、会う機会は減ったものの、某アニメスタジオのデジタル作画部の制作をしていた彼は、ウチ(ミルパンセ)のデジタル化に際し、デジタル作画ツールによる原画の指導を手配してくれたり、最近でも動仕撒き(動画&仕上げの外撒き)の相談にものってくれ、本当にこちらが一方的に助けてもらってばかりでした。ウチの社長・白石には「板ちゃんのじゃ断れない」と言ってくれてたそう。今、頭に浮かぶのは、学生時代一緒に作った短編アニメ『アラスカの母さん』でのこと(彼はプロデューサーで、板垣は美術監督)や、その後皆就職してからも一緒に飲んだ時のこと。そしてその時付き合ってた彼女との写真をノロケながら見せてくれたTのことです。仕事が落ち着いたところで、Tを知る友人らと語り合いたいと思いつつ——慎んでご冥福をお祈りいたします。