アニメ様の『タイトル未定』
180 アニメ様日記 2018年11月4日(日)~

2018年11月4日(日)
午前中からワイフと新宿御苑で散歩。午後、事務所に戻ったら、映画・チャンネルNECOでOVA『ブラック・ジャック』の一挙放送中だった。途中から途中までを観ただけなのだけど、非常に映画的だったし、登場人物に人間的な厚みが感じられ、それが素晴らしかった。今まで自分はこの作品のどこを観ていたのだろうか、きちんと対峙していなかったのではないかと思った。この日、僕が観たのはシリーズ前半の話数で、ビスタサイズでの放映だった。Blu-ray化の際に、スタンダードサイズだったエピソードをビスタサイズで収録したという話は聞いていたが、それと同じバージョンだったのだろう。

2018年11月5日(月)
バルト9の10時10分からの回で『映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』を観る。出だしの初代コンビの活躍だけでも劇場で観たかいがあった。映画自体の感想とはズレるけれど、稲上晃さんのオリジナルキャラクターをもっと観たいと思った。『プリキュア』シリーズ以外の作品で観たいなあ。
事務所に戻って、録画してあったOVA『ブラック・ジャック』の1話から3話を観る。今、観ると、ブラック・ジャックが出崎さんに見えるところがある。特に女子高生との距離の取り方とか。思い出したけど、OVAリリース当時にも、エンディングの笑みを浮かべている止め絵のブラック・ジャックは、出崎さん自身が投影されていると思っていた。

2018年11月6日(火)
来年刊行予定の絵コンテ本、原画集についての打ち合わせ。

2018年11月7日(水)
午前中は取材の予習で『メガロボクス』Blu-rayを観る。映像特典の新作短編がいい。ほぼ止め絵ではあるのだけど、森山洋濃度が高い。13時から「この人に話を聞きたい」で森山さんの取材。『メガロボクス』のことだけでなく、『進撃の巨人』『ギルティクラウン』などのイメージボードやビジュアルデザインの役職で参加した作品についても。

2018年11月8日(木)
昼は、事務所で「孤独のグルメ」のドラマを観ながら、カロリーメイトを食べる。わざわざ寂しい気持ちに浸りたかったわけではないけれど、そんな状況になってしまった。午後は、八王子で開催されていた特別展「王立宇宙軍 オネアミスの翼展 SFアニメができるまで」に。初見の資料が山のようにあった。若きクリエイター達の才能と情熱が溢れていた。ムックに小さいサイズで載っていたデザイン画を、原寸で見られたのもよかった。
紙のアニメ雑誌の終焉が近いのかもしれない、と思う出来事が、今週ふたつあった。それ以外も、この数か月、紙のアニメ雑誌のピンチを感じることが多かった。「急にきた」感じだ。単純に雑誌が売れないから、というのとは少し違った問題だ。

2018年11月9日(金)
冬に出す書籍のためのインタビュー取材。

2018年11月10日(土)
TOHOシネマズ上野の9時20分からの回で『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観た。ありとあらゆる意味で予想していたのと違う映画だった。ロボットアニメの枠組みとか、今までの『エウレカセブン』から「脱出しようとした作品」という印象だった。気になる点がいくつかあったので、TVシリーズを観直したい。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110
〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション

 奇想とリアリティの共存、作り込まれた密度の高いビジュアル、観客を惹きつける演出的な手腕。今 敏監督が手がけた作品は斬新であり独創的。そして、今 敏は「映画」らしい「映画」を撮ってくれる監督だった。

 12月22日開催のオールナイトは「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110 〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション」。今 敏監督の中から『PERFECT BLUE』『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』の3本を上映する。イベントタイトルの〈聖夜の奇跡〉は、クリスマスの晩に物語がはじまる『東京ゴッドファーザーズ』にちなんだものだ。

 トークコーナーのゲストは『千年女優』と『東京ゴッドファーザーズ』に参加しているアニメーターの井上俊之を予定。前売り券は11月17日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

※チケットは完売しました。当日券の販売はありません

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 110
〈聖夜の奇跡〉今 敏のアニメーション

開催日

2018年12月22日(土)

会場

新文芸坐

料金

当日一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

井上俊之、小黒祐一郎

上映タイトル

『PERFECT BLUE』(1998/81分/BD)
『千年女優』(2001/87分/35mm)
『東京ゴッドファーザーズ』(2003/91分/BD)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第587回 作画監督の話、続き

 前回の続きと言いつつ、重複する部分があってもご容赦ください。作画監督とは本来は原画の監督。日本で初めて作画監督制が導入されたことで有名な『わんぱく王子の大蛇退治』(1963年)ではクレジット上でも「原画監督・森康ニ」とあります。テレコム時代、大塚康生さんは「作画ちゅうのは演出の意図を汲んで『ここはこうした方がいいかな』ってトコを直す、つまり原画の直し屋」と仰ってました。さらに「なんでもかんでも全部直すなんてできないから、僕はその話数(例えば『旧ルパン三世』)でいちばん多く原画を担当した人の画に合わせる。そうするとその人の原画は直さなくていいでしょ?」とかも。あと「『旧ルパン三世』の○話は僕、修正入れてませんから」とも。まあ、たぶんそれらは大塚さんのサービストークだと思います。だってあれだけ手の速い方がそんな手抜きする必要はありませんから。それは「キャラだけ似せるのが作画の仕事じゃないよ」の大塚さん流の言い方だったのかもしれません。
 でも出崎統監督作品における杉野昭夫さんの作画はキャラ+表情芝居の全直し。全部杉野さんの画のアニメを作る! しかもTVシリーズで! 80年代のは本当に全部だったと思います。つまり出崎アニメの杉野作監は、実写に置き換えると全登場人物を1人で演じ分けるようなものかと。杉野さんだけでなくもちろん大塚さん、そして学生時代の恩師・小田部羊一先生らがそれを可能であると証明したからでしょうか? 実際90年代に入ると、アニメの、特にTVアニメの花形は「キャラデ総作監」という時代になったんだと思います。自分の同期でも、夢としてそれを語ってる人は多かったですから。ところがそれは作監ではなく「総作監」!

第144回 異世界に流れる音楽 〜王立宇宙軍 オネアミスの翼〜

 腹巻猫です。サントラDJイベントSoundtrack Pub【Mission#37】の開催が決まりました。12月15日(土)15時〜20時、いつもの蒲田studio80(オッタンタ)にて。特集は「80年代アニメサントラ群雄割拠時代〜キャニオン編(完結編)」と11月・12月発売の注目盤を紹介する「サントラ最前線」。サントラDJを募集します。DJ未体験という方もこの機会にどうぞ! 募集期間は11月末まで。詳細は下記をご覧ください。
http://www.soundtrackpub.com/event/2018/12/20181215.html


 今回取り上げるのは、1987年3月に公開された劇場アニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(公開時タイトルは『オネアミスの翼 王立宇宙軍』)。山賀博之監督をはじめ、当時は無名だった貞本義行、庵野秀明、樋口真嗣ら若手スタッフが結集して作り上げた、今や伝説的作品となっている劇場用長編SFアニメである。
 架空のオネアミス王国を舞台に、人類初の宇宙飛行士に志願した宇宙軍の若き士官シロツグが宇宙に飛び立つまでを描いた物語。
 言語、宗教、文化、建築、風俗、日用品、工業品に至るまで、膨大な設定とデザインを起こして描かれた異世界描写が見どころだ。その製作資料・設定資料を展示する展覧会「王立宇宙軍 オネアミスの翼展 SFアニメができるまで」が、11月11日まで八王子市夢美術館で開催されていた。筆者も駆け込みで観に行って圧倒されたのだが、ちょっと残念だったのが音楽関係の資料がなかった点だ。
 若いスタッフが集まった本作だが、音響監督はベテラン・田代敦巳が務めている。効果は柏原満という『宇宙戦艦ヤマト』のコンビ。声の出演もシロツグ役・森本レオをはじめ、実力派俳優・声優が多くキャスティングされた。若いスタッフが創り上げた映像をベテランスタッフ・キャストによる「音」がしっかり支えた形だ。
 本作の音響面のトピックスは音楽監督に坂本龍一を招いたことである。坂本龍一にとっては、「戦場のメリークリスマス」(1983)、「子猫物語」(1986)に次ぐ映画音楽の仕事。アカデミー賞作曲賞を受賞した「ラストエンペラー」(1988)の直前の作品だった。
 異世界のリアリティを重視する本作の方針は音楽においても貫かれ、「○○風」でない音楽=どこの世界の音楽とも、既成の映画音楽とも異なる音楽が求められた。現代音楽から民族音楽まで幅広い音楽ジャンルに造詣が深く、テクノポップグループ・YMOで一世を風靡した坂本龍一は、そんな音楽を創り出すのにまさにうってつけの作曲家。結果、エキゾティックな香りを漂わせつつも、どこの国の音楽ともつかない不思議な音楽、それでいて、現代的なサウンドやリリシズムをあわせもった音楽が生まれた。
 また、音響監督の田代敦巳は森本レオらに対し「アニメ風でない演技」を求めたそうだが、それは音楽にも共通している。「悲しい場面には情緒的な曲」「アクションシーンには高揚感のある曲」といった類型的なイメージをくつがえす、抑制の効いた、とてもユニークな音楽だ。それが、本作の音楽を30年を経ても古びないものにしていると思う。
 音楽は、坂本龍一が核となる4つのテーマを設定し、そのアレンジを中心に、坂本龍一、上野耕路、野見祐二、窪田晴男の4人の作曲家が各シーンの音楽を書き下ろすスタイルで作られた。音楽の印象がバラバラになりそうだが、それもまた、多彩な要素が渾然となった本作の世界観にフィットしている。

 本作の音楽アルバムは2枚リリースされている。坂本龍一による4つのテーマのプロトタイプを収録したミニアルバム「オネアミスの翼〈イメージスケッチ〉」が劇場公開に先立って1987年2月に発売され、映画音楽15曲を収録したアルバム「オネアミスの翼—王立宇宙軍— オリジナル・サウンド・トラック」が公開に合わせて1987年3月に発売された。発売はいずれもミディレコード(MIDI RECORDS)。ミディレコードは坂本龍一が矢野顕子らと1984年に設立したレコード会社である。
 「オリジナル・サウンド・トラック」を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. メイン・テーマ(M-1)
  2. リイクニのテーマ(M-B)
  3. 国防総省(M-21)
  4. 喧騒(M-4)
  5. 無駄(M-8)
  6. 歌曲「アニャモ」(SE-1A)
  7. グノォム博士の葬式(M-19)
  8. 聖なるリイクニ(M-17)
  9. 遠雷(M-24)
  10. シロツグの決意(M-31)
  11. 最終段階(M-34)
  12. 戦争(M-35)
  13. 離床(M-36)
  14. OUT TO SPACE(M-37)
  15. FADE(M-38)

 カッコ内はMナンバー。LPレコードではトラック1〜8がA面、トラック9〜15がB面だった。
 Mナンバーが前後していることから分かるとおり、アルバムの曲順は劇中使用順ではない。A面は本作の世界観を音楽で表現したイメージサントラ、B面はロケット打ち上げに向うクライマックスを音楽で再現した正統派サントラ、という雰囲気だ。
 「メイン・テーマ」はメインタイトルとそれに続くオープニングクレジットに流れる曲。坂本龍一が設定したテーマAを坂本自身がアレンジしたものである。シンプルで短いフレーズをくり返す坂本龍一らしい曲。アルバムでは3分40秒を超えるフルサイズで収録されているが、本編では2分30秒ほどでフェードアウトされる。
 2曲目の「リイクニのテーマ」は、本作のヒロインとなる少女・リイクニのテーマ。Mナンバー「M-B」は誤植ではなく、「テーマB」の意。アルバムでは本編で使用された音源ではなく、アルバム用のバージョンを収録している。曲の構成は「イメージスケッチ」に収録されたプロトタイプと同じだが、生のフルートやクラリネットが入ってぐっと色彩感豊かになった。
 トラック3「国防総省」は中盤、宇宙軍を指揮する将軍が貴族たちと会談する場面に流れる曲。4つのテーマのいずれにも当てはまらない坂本龍一のオリジナル曲である。
 トラック4「喧噪」も坂本龍一のオリジナル。序盤で、車に乗ったシロツグたちが夜の街を騒ぎながら走る場面に流れる民族音楽風の曲だ。ありきたりの作品なら軽快な音楽が流れそうなところだが、このはずし具体がいかにも坂本龍一らしく、『王立宇宙軍』らしい。
 本作の音楽はミスマッチの面白さを狙った、とサントラ盤のライナーノーツに書かれている。映像にストレートに音楽をつけるのではなく、ちょっとはずした違和感やスリリングな印象を狙ったということだろう。これも、本作の音楽のユニークな点である。
 はずし具合という意味では次のトラック5「無駄」も最高だ。シロツグが宇宙飛行の訓練に励む場面に流れるのだが、曲調は力の抜けたコミカルな印象。しかもタイトルは「無駄」。大真面目な訓練シーンと組み合わさって絶妙なユーモアが生まれている。坂本龍一が設定したテーマCを、サエキけんぞうらとのユニット「パール兄弟」で知られるギタリスト・窪田晴男がアレンジした。
 トラック6の歌曲「アニャモ」は、現実音楽として作られた歌。民謡風、歌謡曲風、クラシック風、いずれにも聴こえていずれでもない。歌詞も架空の「オネアミス語」で歌われている。「子猫物語」にも参加した野見祐二の作・編曲。野見はのちに劇場アニメ『耳をすませば』(1995)、『猫の恩返し』(2002)、TVアニメ『ぼくらの』(2007)などの音楽を手がけている。
 シロツグが一目置いていた宇宙旅行協会のリーダー・グノォム博士の葬式場面に流れる「グノォム博士の葬式」は、シンセサイザーが奏でる葬送の曲。音楽ユニット「ゲルニカ」で活躍した上野耕路のオリジナルである。葬送の曲としてはユーモラスにも聴こえる不思議な曲調。しかし、シロツグの複雑な心境を表現する曲としては見事にマッチしている。アンバランスのように聴こえて実は計算しつくした音作りは上野耕路の真骨頂である。
 レコード盤ではA面最後の曲となるトラック8「聖なるリイクニ」は「リイクニのテーマ」を野見祐二がアレンジしたもの。シロツグがリイクニから渡された聖典を読む場面に流れ、オネアミスの世界の宗教が観客に提示される。シロツグの心に芽ばえたリイクニへの想いが大きくなる重要な場面。シンセサイザーによる聖歌といった曲調で、ここは「ミスマッチ」ではなくストレートな音楽演出が効果を上げている。
 レコード盤のB面はリリカルな「遠雷」という曲から始まる。シロツグが突然の夕立に見舞われたリイクニを迎えに出て、2人で雨の中を帰ってくる場面に流れる上野耕路のオリジナル曲だ。上野耕路の作品は、当コラムでも過去に『ファンタジックチルドレン』を取り上げたことがある。この曲も『ファンタジックチルドレン』同様に透明感のある繊細で美しい曲である。場面展開に合わせて曲調も変化し、シロツグとリイクニの心情を表現する。本作のファンにも人気の高い曲だ。ただ、2人の気持ちは劇中ではなかなか交差しない。そのもどかしい感じもこの作品の特徴である。
 トラック10「シロツグの決意」は本編未使用曲。敵国の妨害を避けるためにロケット打ち上げを早める命令が下り、宇宙軍隊員たちが騒然とする中、シロツグが「オレ、行きますよ」と平然と言う場面での使用が想定されていた。ファンファーレから始まる威勢のいい曲で、窪田晴男のオリジナルである。本作では全体に音楽で盛り上げるような演出が排除されており、この曲もそうした演出意図から未使用になったのではないかと思われる。
 ただ、アルバムとしては、ここで「シロツグの決意」が入ることで次の曲からの展開が大いに生きてくる。
 トラック11「最終段階」〜トラック15「FADE」は、クライマックスからエンディングまでの曲が続けて収録されている。
 ロケット発射準備の緊迫感を描く「最終段階」(野見祐二作・編曲)に続いて、窪田晴男作曲、窪田と上野耕路の共同編曲による「戦争」が登場。本編の中でも重要な見せ場のひとつとなる戦闘シーンに流れる曲だ。よくあるアニメの戦闘音楽とはまったく異なるタイプの曲で、アニメ音楽を聴き慣れた耳には奇妙にすら感じられるかもしれない。ロック的であり、現代音楽的でもあり、エキゾティックなメロディとサウンドも聴こえてくる。なんだか盛り上がらないようでいて、聴いていると次第に脳が沸き立ってくる。クセになる音楽だ。もし、オネアミスの世界に映画音楽があったらこんな音楽ではないか……と思わせる、本アルバムの聴きどころのひとつ。
 ロケット打ち上げ場面に流れる「離床」は坂本龍一のテーマCとテーマAをベースに上野耕路が編曲。サイズは2分30秒あるが、本編では1分を過ぎたあたりから使われている。ということは、最初の1分間ほどは、もともと音楽を入れる予定だったのが音楽を入れない演出に変更されたということになる。ロケット打ち上げの瞬間からの音楽抜きの演出はまるでドキュメンタリー映像のようで、実にスリリングだった(作画も凄い)。もし、あの場面に音楽があったら……と思いながら聴いてみるのも面白い。
 シロツグが衛星軌道に乗った宇宙船から地球を眺める場面の「OUT TO SPACE」とエンディングクレジットに流れる「FADE」は坂本龍一の作・編曲。「OUT TO SPACE」ではリイクニのテーマの変奏が流れたあと、メインテーマの変奏に変わっていく。人類の歴史がフィードバックされる場面に流れるクラシカルな後半部分が続く。
 そして最後を飾る「FADE」は、ここまで抑えてきた心情を一気に解き放つかのようなビートの効いたテクノポップ。メインテーマのフュージョン風アレンジである。劇場版の終り方はやはりこうでなくては。この爽快感は『機動警察パトレイバー2 the Movie』に匹敵するのではなかろうか。

 坂本龍一は本作の音楽について遠回しに満足していないようなコメントをしているが、作曲者の思いとは別に、本作の音楽は充分すばらしい。「異世界の音楽」という難題に応えつつ、映画音楽としてもユニークで魅力的な楽曲を創り上げている。
 惜しむらくは、リイクニが初めて登場する場面の「リイクニのテーマ」のピアノとバイオリンによるアレンジや、シロツグが飛行訓練をする場面の曲、シロツグが暗殺者に狙われる場面の不穏なタッチの曲など、映像的にも音楽的にも重要な曲がサントラ盤に収録されていないことだ。
 2枚のアルバムのライナーノーツに掲載された音楽資料によれば、本作の音楽は未使用曲も含め50〜60曲ほどが用意されたはず。
 本作の北米版DVDには映像特典のBGMとして、劇中で使用されたBGM42曲が収録されたことがあるが、それもすでに入手困難。音源があるなら、なんらかの形で完全盤を……。それが本作の音楽に魅せられたファンの共通の願いだろう。

オネアミスの翼—王立宇宙軍— オリジナル・サウンド・トラック
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オネアミスの翼〈イメージ・スケッチ〉
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アニメ様の『タイトル未定』
179 アニメ様日記 2018年10月28日(日)~

2018年10月28日(日)
早朝、新文芸坐に。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 108 押井守映画祭2019 第一夜《パト2&攻殻機動隊》編」の最後を見届ける。午後はササユリカフェの「テレコムアニメーションワークス展」に。ルパンのコスプレをしたお客さんがいた。

2018年10月29日(月)
池袋のファミレスで、海外のある会社の方と打ち合わせ。

2018年10月30日(火)
このところ、学生アルバイトさんに事務所の倉庫の整理をお願いしている。見つかったアニメ関連文庫を持ってきてもらったのだけど、全然足りないなあ。見つかっているものの倍は、事務所のどこかにあるはず。気になって、Amazonでアニメージュ文庫を検索して、意外と持っていないものがあることが分かった。朝日ソノラマのアニメ文庫に関しては持っているほうが少ないなあ。流れで、文春文庫ビジュアル版を確認。持っていないものを数冊、注文する。僕も詳しくはないのだが、文春文庫ビジュアル版について説明すると、1980年代から1990年代に刊行されていた文庫のシリーズである(はずだ)。アニメとは関係ない。マンガを文庫化したものもあったが、それよりも「大アンケートによる洋画ベスト150」「スーパーガイド 東京B級グルメ」等の、雑誌の特集をボリュームアップさせたような内容のものが印象的だ。編集が巧みで、本としての完成度が高かった。

2018年10月31日(水)
仕事の合間に「ボンズ20周年記念展」へ行く。会場は広くはないが、展示物はたっぷり。BONESの「作画ぢから」がたっぷりと楽しめるイベントだった。『機巧奇傳ヒヲウ戦記』は描きおろしセル、そのラフなどの展示もあり、セルが猛烈に綺麗だった。改めてセルの魅力を確認した。展示は撮影がOKだったので、スマホで写真を撮りまくった。

2018年11月1日(木)
『ゴブリンスレイヤー』と『あかねさす少女』を最新話まで観る。13時10分から、TOHOシネマズ新宿で『2001年宇宙の旅』のIMAX上映で観る。凄まじいまでの臨場感で満足。まさしく「体験」だった。上映開始前と終了後、及び、休憩に曲を流すのも新鮮だった。それから、TOHOシネマズ新宿の通路にあった「ボヘミアン・ラプソディ」のデコレーションに感心した。箱形のガラスケースが5つ並び、その中にステージ衣装が飾られており、ガラスケースの前面に映像が映し出される。映像がステージ衣装を見せたり、隠したりする。映像自体も凝ったものだった。立ち止まってしばらく見ていた。「ボヘミアン・ラプソディ」はIMAX版の予告もよかった。

2018年11月2日(金)
「アニメスタイル014」で、ある作品の取材。どんな取材だったかについてはまた改めて。ポケモンGOで「いつでも冒険モード」がはじまる。これはポケモンGOのアプリを開いていない時でも歩いた距離が記録され、ポケモンのアメを手に入れたり、タマゴを孵化させることができるというものだ。さらに歩いた距離でリワードを獲得できるそうだ。毎日、ウォーキングをやっている僕としては嬉しい機能だ。

2018年11月3日(土)
dアニメストアでは『君のいる町』OADの総監督/吉浦康裕、監督/小林寛による2012年版(全2話)と、山内重保監督による2014年版(全2話)を同じシリーズとして配信している。普通に再生すると、両作品が連続再生になるんだけど、凄まじく作風が違うので、大変なインパクト。2012年版はDVDを持っていないので、配信が嬉しい。夜は新宿で、お世話になっているアニメーターさん達と食事。前から予定していたもので、去年、実現しなかったので、2年ぶりの食事会だった。

第586回 作画監督は大変

今日日、どこの会社(スタジオ)も
作画監督が不足しているようです(汗)!

 作画監督とは早い話「原画を直す」役職。つまり大塚康生さんです。『未来少年コナン』における大塚さんの作監修正は、今のように神経質な修正でなく、凄く達筆な一筆書きのようなおおらかさで、どちらかというといわゆる「キャラ修正」というより芝居全般を見直した「原画の描き直し」に近いのです。そりゃあ今のアニメよりも線が少ないとはいえ、この修正で全話作監とはとてつもない速さと巧さだ! と衝撃を受けたものです。あ、前に話題にしたとおりテレコムの新人研修課題が『未来少年コナン』の生原画を動画にするものだったわけで、当然本放送時にスタッフとして参加してる年代ではありませんよ、俺は。一応念のため。
 で、とりあえず現在では作品数がめちゃめちゃ増えたぶん、

本来なら、まだ動画がやっとなくらいのアニメーターを続々原画マンに昇格させているため、そのまだ稚拙な原画を作監が血まなこになって修正、いや描き直して無理矢理アニメを作ってる!

と。我々の現場も例外ではないのですが、つらい時だからこそ「新しい作り方が模索できる」のも確かなこと。デジタルコンテで俺がラフ原から背景原図まで一気に描いちゃったり、デジタル作画、自動中割りを導入するのもその一環。あと最後の追い込みの時は自分も手伝う! と。多分これからのアニメ制作は単にお金とスケジュールを解決するだけでは保たないでしょう。で、また時間切れです(汗)! 作監の話は、

アニメ様の『タイトル未定』
178 アニメ様日記 2018年10月21日(日)~

2018年10月21日(日)
今日放映の『HUGっと!プリキュア』37話「未来へ!プリキュア・オール・フォー・ユー!」は歴代プリキュア全員集合のうえに、それぞれに見せ場を作ったスペシャルなエピソードであり、大変な力作だった。個性の近いプリキュアをまとめて活躍させているのがポイントであり、見どころのひとつ。情報量が多く、やっていることはマニアックなのに、ノリがマニアに向けたものになっていないのは、このエピソード全体の明るさ、元気のよさのためか。そして、その明るさ、元気のよさのために「テレビまんが」的なところのある仕上がりになっていると思った。
昨日に続いて「この人に話を聞きたい」原稿を進める。『若おかみは小学生!』のノベライズもチェックした。ノベライズだと、真月の自宅の図書室をおっこが訪れた際に、誰が灯りを消したのかが分かるようになっていた。あの本だらけの部屋が、旅館の一部ではなく、真月の自宅の図書室だということも分かった。

2018年10月22日(月)
「この人に話を聞きたい」の本文がようやく終わる。TOKYO MXの「ヒーリングタイム&ヘッドラインニュース」の「ねこの足跡&看板猫」をリピート再生しながら作業を進めた。要するに猫動画を流しながら作業をした。

2018年10月23日(火)
木村圭市郎さんがなくなったことを知る(木村タカヒロさんとネオメディアプロダクションによるTwitterでの発表は10月22日の夜)。素晴らしいお仕事を残されて、後続のクリエイターに多くの影響を与えた方だ。アニメスタイルでインタビューをさせていただき、イベントも開催した。豪快な人柄が印象的だった。心よりご冥福をお祈り致します。

「この人に話を聞きたい」のテキストをチェックに出す。年末に出す書籍のため、西武池袋方面のプロダクションで打ち合わせ。

2018年10月24日(水)
「アニメスタイル014」で『ヤマノススメ』取材。若いアニメーターさんが多く、新鮮だった。印刷会社から束見本が届く。編集作業どころかまだ企画書も書いていない書籍のための束見本だ。

2018年10月25日(木)
あるインタビューのための質問状を書く。前にも話題にしたかもしれないが、最近はインタビューの前に質問状を提出することが多い。今回の質問状は気合いを入れて書いたので、かなり長いものとなった。他のインタビュアーの質問状は見たことがないが、平均よりもずっとボリュームのあるものになったのではないか。

2018年10月26日(金)
新文芸坐で今後のオールナイトについての打ち合わせ。事務所でこれから出す本についての打ち合わせ。最近、Facebookでオセロをやっているのだけど、今日、対戦した相手が自分と似た打ち方をするタイプで「こいつ、俺と打ち方が似ているな。ならばそれなりの戦い方がある」と思考して対応。ちょっと富野キャラっぽい。

2018年10月27日(土)
バルト9で『若おかみは小学生!』を観る。目当ては、高坂希太郎監督、渡邊洋一美術監督、加藤道哉撮影監督・VFXスーパーバイザーによるトークだ。いつか特集をすることがあるかもしれないので、トークを聞いておきたかった。後でSNSで確認したが、会場には知り合いが何人もいた模様。その後、神保町ブックフェスティバルに。本の雑誌が「拡大版 絶景本棚」を販売するというので、それが気になって見に行った。既存の書籍を倍のサイズで印刷したものだ。実物を見たところ、確かに大きくなっている。これは面白いなあ。本の雑誌ブースで、名誉店長の池澤春菜さんから購入。池澤さんとは初対面だったが、堺三保さんが帰国したら、何キロ増えているかについて話をした。堺さんと知り合いというだけで、話題に困らない。
夜は「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 108 押井守映画祭2019 第一夜《パト2&攻殻機動隊》編」を開催。ゲストは押井守監督と黄瀬和哉さん。押井さんの黄瀬さんについて、作画についての語りが素晴らしかった。普段のトークよりも時間を10分、多めにとっていたのだけれど、それでも20分オーバーした。

第585回 差し入れと来訪者

10月某日、学生時代の担任(?)だった飯島正勝先生が来社!
お互いの近況報告&よもやま話!


 専門学校時代から20数年、当時からざっくばらんにお話できるキサクな先生。こないだ先生のコンテ・演出回に原画で参加しました。たった1カットでしたが。今度は頑張ります(汗)!

さらに10月某日、『ユリシーズ』のジャンヌ役・大野柚布子さんより「スタッフの皆さんで」と差し入れをいただきました!


 これで元気をつけてスタッフ一丸となって年内乗り切りまーす!! 後ほど打ち上げでっ!

で、さらに10月末某日、元エイベックス、現サイバーエージェントの田中宏幸プロデューサー来訪! こちらも楽しくよもやま!


 こちらもよもやま〜。ゲームとアニメの話。で「またお仕事しましょう!」と締め。

 さて、仕事に戻るか。

第143回 もう一度、宝島を 〜宝島 オリジナル・サウンドトラック〜

 腹巻猫です。日本コロムビアの「Columbia Sound Treasure Series」の1タイトルとして「宝島 オリジナル・サウンドトラック」の発売が決定しました。TVアニメ『宝島』の主題歌・挿入歌・BGM等、現存する音源を網羅した2枚組完全版。発売日は11月28日です。
 本コラムでも一度『宝島』を取り上げています。2013年7月2日更新の第13回、5年も前でした。そのとき本文の最後で“「『宝島』完全版サントラ」がファンの悲願”と書いた夢が実現する日が、ついに来たのでした。
 そこで今回は、この「宝島 オリジナル・サウンドトラック」の気になる内容について紹介したいと思います。『宝島』は2度目の登場となりますが、5年ぶりということでお許しを。


 出崎統監督のベストに推すファンも多い名作『宝島』が放映されたのは、1978年10月〜1979年4月。今年が放映40周年の節目になる。その記念すべき年に完全版サウンドトラックが実現したのは本当にめでたい。今回のアルバムは筆者が企画を持ち込み、構成・解説・デザイン案の提示など、全面的に制作に関わらせていただいた。
 発売日が近いわりには、まだジャケット画像やトラックリストが公開されておらず、気をもんでいるファンも多いだろう。以下、宣伝を兼ねて、全体の構成と今回初めて収録される予定の音源について紹介していきたい。

 『宝島』の主題歌・挿入歌・BGMはすべて羽田健太郎によるもの。当コラム第13回でも書いたとおり、その音楽は過去に3種類のアルバムで発売されている。

 LP「宝島(ヒット曲集)」(1978年発売)
 LP「テレビ・オリジナルBGMコレクション 宝島」(1980年発売)
 CD「FOREVER SERIES 宝島」(1992年発売)

 「宝島(ヒット曲集)」は放映中に発売された唯一の音楽集で、ステレオ録音の主題歌・挿入歌・BGMを収録。「テレビ・オリジナルBGMコレクション」は放映終了後にファンの熱心な声に応えて発売されたアルバムで、劇中で使用されたモノラル録音のBGMを収録。「FOREVER SERIES」はステレオ音源とモノラル音源をミックスして、1枚で『宝島』の音楽の全体像がつかめるように構成されたアルバムだった。
 3種類のアルバムの収録内容は少しずつ重なっている(重複して収録されている曲がある)。その上、3種類そろえても未収録曲があるのがファンには悩ましいところだった。
 今回は、ステレオ録音のアルバム「宝島(ヒット曲集)」をオリジナルの曲順で復刻することと、モノラル録音のオリジナルBGMを完全収録すること、このふたつをテーマに全体の構成を考えた。
 2枚組のうち1枚目が「宝島(ヒット曲集)」の復刻。2枚目がオリジナルBGM集。これが基本的な構成である。
 「宝島(ヒット曲集)」は『宝島』の記念すべき音楽アルバム第1弾。子ども向けを意識した歌が入っていたりして、やや本編とはイメージが異なるが、唯一のステレオ音源であり、羽田健太郎の初ソロアルバムとしても重要な1枚だ。音源自体は「FOREVER SERIES」ですべてCD化されているものの、これまでオリジナルのままの形(曲順)でCD化されたことは一度もなかった。
 なので、1枚目は「宝島(ヒット曲集)」を当時のままの形で復刻してもらった。ちなみに曲順は次のとおり。

  1. 宝島(歌:町田よしと、コロムビアゆりかご会)
  2. ベンボーと僕(歌:藤田修、コロムビアゆりかご会)
  3. 海は僕の生命(いのち)さ(インストゥルメンタル)
  4. シルバー船長はすごい奴(インストゥルメンタル)
  5. ゆかいな船旅〜遠い南の島(コーラス:トロピカル・シンガーズ)
  6. 小さな船乗り(歌:町田よしと)
  7. まだ見ぬ世界へ(歌:町田よしと、コロムビアゆりかご会)
  8. 不気味な宝島(インストゥルメンタル)
  9. 俺たちゃ海賊(歌:こおろぎ’73、シージャック)
  10. 遠い故郷(ふるさと)(インストゥルメンタル)
  11. 航海日誌(歌:町田よしと)
  12. 大海戦〜夕陽の大船団(インストゥルメンタル)

 レコードでは1〜6がA面で、7〜12がB面。A面の最後にエンディング主題歌「小さな船乗り」が置かれ、アルバムの最後を「大海戦〜夕陽の大船団」という迫力満点のインストゥルメンタル曲が締めくくるドラマティックな構成になっている。
 曲順には作曲家やディレクターの意図が反映する。A面とB面の対比や、曲と曲のつながりなど、音楽的な流れと物語を意識しながら聴くと、より味わい深い。何より、ハネケンの瑞々しい宝島サウンドをステレオで一気呵成に聴く快感は格別である。レコード盤を知る人もそうでない人も、放映当時を偲びながらお聴きいただきたい。
 2枚目は『宝島』BGM集の決定版をめざし、モノラル音源のBGMとTVサイズ主題歌のみで構成した。
 今回発掘した『宝島』のオリジナルBGMはバージョン違いも含めて約90曲。そのうち、これまで商品化されたのは45曲くらい。およそ半数にあたる45曲ほどが今回初収録となった。
 BGMの構成については大いに悩んだ。『宝島』のBGM集としては、「テレビ・オリジナルBGMコレクション」と「FOREVER SERIES」という2枚の先例がある。どちらもファンの思いを汲んで構成されたもので、よく練られた曲順である。その2枚を参考にさせていただきつつ、本編で使用されたBGMをすべて精査した上で、『宝島』の雰囲気と物語を追体験できるようにと完全新構成でまとめた。
 実は当初は2枚目にオリジナルBGMが完全収録できると考えていたのだが、予想していた以上に音源があり、CD1枚は収まらないことがわかった。そこで、本編未使用曲や同一Mナンバーのバリエーション(テイク違いやサイズ違い)の一部を別にし、本編でなじみのある曲だけで75分超にまとめている。その分、テンポよく引き締まった構成になったと思う。はみ出した分は1枚目のボーナストラックに収録してあるのでご安心を。
 今回の作業でわかったのだが、『宝島』にはいわゆる流用曲やライブラリ音源の使用はない。劇中で流れた曲はすべてハネケンのオリジナルである。過去の音楽集を聴いて、「あの曲が入ってないな」と思っていたファンの方も、今回は全部入ってるので楽しみにしていただきたい。

 さて、ファンが気になるのは、初収録音源にどんなものがあるかということだろう。
 ここからは、『宝島』の音楽の全体像に触れつつ、初収録音源を紹介していきたい。
 まず、歌曲に関しては劇中で幾度となく歌われている「海賊の合唱」という歌がある。同じメロディに別の歌詞がついた「俺たちゃ海賊」という歌が「宝島(ヒット曲集)」に収録されているのだが、こちらは劇中で使われていない。劇中使用されたバージョンは「FOREVER SERIES」に収録されているのだが、さらにいくつかのバリエーションがあることがわかった。こおろぎ’73によるアカペラ版とピアノ弾き語り版である。ピアノ弾き語り版は歌詞が一部異なるデモ版と思われるバージョン。聴いて驚きのお宝音源である。
 また、正副主題歌のメロオケが何タイプか発見された。このうちエンディング主題歌のサックスによるメロオケは劇中で使用され、商品化もされているのだが、オープニング主題歌のメロオケもあったのだ。本編未使用の初公開音源である。
 次回予告音楽にはオープニング主題歌アレンジが使用されている。これはメロオケとは別に録られた「TVスポット用音楽」というもので、6タイプが確認された。TVで流れる番組宣伝スポットに使われたものと思われる(残念ながら映像は未確認)。
 そしてBGM。当コラムの第13回で書いた「大海戦」の別バージョンももちろん収録。加えて、追加録音BGMを一挙収録した。そう、本作には追加録音BGMがあったのである。以前は「追加録音とおぼしきBGM」と、もやっとした書き方をしたが、今回の音源探索でハネケンのオリジナルであることが明らかになった。
 追加録音BGMが使用され始めたのは第15話「シルバー式降伏のすすめ」から。宝島での財宝争奪戦がいよいよ激しくなってきた時期だ。おそらくはジムの活躍を描写する曲や海賊の恐怖を描写する曲が足りないということで追加録音が計画されたと思われる。
 たとえば第15話で海賊たちが砦の井戸に動物の死骸を投げ込んだことにジムが気づく場面のショック音楽。同じく第15話でジムが砦を抜け出して川へ水を汲みに行く場面の軽快なフュージョン風の曲。第16話で海賊たちの砲撃を止めるためにジムが皮舟をこいでヒスパニオラ号へ向かう場面のコミカルな曲。第17話での海賊たちの仲間割れの場面に流れたジャジーなサスペンス曲。いずれも宝島での冒険を盛り上げた重要曲だ。
 これまで追加録音BGMは一度もレコードやCDになっておらず、すべて今回が初収録になる。『宝島』ファンにとっては、待ちに待った商品化。「生きててよかった」「おれの一番大切なものは……今はこのCDだ」と思わず言いたくなる涙の初収録である。
 上記のうち、「海賊の合唱」の各種音源と主題歌メロオケ、TVスポット用音楽等は1枚目のボーナストラックにまとめ、追加録音BGMは基本的に2枚目のBGM集に組み込む形で構成した。
 ブックレットには過去の音盤に羽田健太郎が寄せたコメントの再録や筆者自身がハネケンから聞いた話を盛り込んだ解説、BGMリスト等を掲載。放映40周年にふさわしい宝物と呼べる内容になったと思う。

 前にも書いたが、筆者にとって『宝島』完全版音楽集の実現は、昨年末リリースされた「家なき子 総音楽集」と並ぶ長年の悲願だった。未収録音源というお宝を探す旅は、長い年月を経て、ようやくゴールにたどりついた。満足とともに、「これで旅も終わりか」という一抹の寂しさも禁じ得ない。
 が、冒険の旅に終わりはない。いつの間にか、ジムよりもシルバーに近い年齢になってしまったが、その気になれば、フリントはまだまだ飛べるんだ。過去をふり返るためではなく、新しい旅へ出るためにこのアルバムを。そんな風に、明日への勇気をもらえる音楽集として、「宝島 オリジナル・サウンドトラック」を聴いていただけたら最高だ。

宝島 オリジナル・サウンドトラック
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