第832回 少年の頃、山形

2023年ももう残り僅かで、年内にこなさなきゃならない仕事がまだまだある!

のです。でもまぁ、なるようにしかならないので、できるだけ片付けて、年末は念願の山形へ!
 山形県は両親の実家で、俺が生まれた場所は山形で(母親がお産のために帰省していたとか)、育ちは愛知県名古屋市になります。小・中学生の頃は毎年夏休みか冬休みに家族で山形に行くのが一大イベントでした。
 夏休みの大きな盆踊り大会やその帰りに見上げた満天の星空、冬休みの一階が埋まるほどの大雪とその奥に広がっていたまるで水墨画の様な山々、と子供の頃瞼に焼き付き、未だ忘れない風景の数々。多少の想い出補正が掛かっているかも知れませんが(汗)。
高校生になると夏・冬休みは進路関係で潰れていき(当時はまだ美大受験のため、河合塾美術研究所とか通ってて)、そのまま東京の専門学校。つまり30数年、山形行ってない! 『Wake Up,Girls! 新章』制作前の取材(2016年?)でも余りの慌ただしさに、宮城県の隣なのに行く時間が取れませんでした。

 で2年前、父親が亡くなった時、山形から叔父と従兄がやって来て「山形さ、遊び来い」と。それからというもの、「山形行きたい熱」が高まってきて今年年末に実行! となったわけ。やっぱり、歳を取って日一日と死に近付くことを感じてくると、自分のルーツに思いを馳せるものなのでしょうか、人間って。

来年自分も50歳。来年以降は山形に限らず、あちこち見て回る時間を作るのが目標!

で、そのためには会社を育てねばなりません。みんな頑張りましょう。

 で、また短い上にアニメの話でなくてすみません。でも実は自分の中ではこれからのアニメ作りに、今回の「山形行き」は大いに関係するんですがね。

第216回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』4 【これまでの作品では、何をどう調べてきたか。最初から現在まで 編】

 片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。

 『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などの調査研究を進めています。今までアニメスタイルは「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルでイベントを開催し、現在は「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」のタイトルでイベントを続けています。

 2024年1月6日(土)に開催する「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』4」では、片渕監督が今まで作品を作るにあたって、何をどのように調べてきたかを語っていただきます。トークは片渕さんが学生時代に参加した『名探偵ホームズ』から始まるはずです。「片渕須直の調査の歴史」が語られるわけです。

 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは12月13日(水)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/271493
会場(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/2mmql
配信(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/278549

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

 なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr

第216回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』4【これまでの作品では、何をどう調べてきたか。最初から現在まで 編】

開催日

2024年1月6日(土)
開場12時30分/開演13時 終演15時~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第831回 コンテという仕事

現在、社内スタッフの画(絵)コンテの面倒を見ています!

 前作『いせれべ』に続き、社内に於ける“コンテマンの育成”です。つまり、『蜘蛛ですが、なにか?』までのように自分が率先して全話のコンテを切る(描く)のではなく、社内の演出志望者に先ずコンテを走らせて、後でチェック(という名の全面的修正)を俺の方がする。「あ、ここはこのまま使える!」とか「こっちのシーンは描き直すか」とか、時には「ほぼ1本丸々描き直しじゃ——!」と格闘中。
 ただ、“自分好みに直す”のではありません。「貴方のカット割りだと、視聴者に上手く伝わらないよ」てな箇所を分かりやすく、さらに“面白くなるように”描き直すのです。
 勿論チェック後、作業者に“修正した理由”をちゃんと説明して戻します。それは自分の主義として、

いくら監督だからと言って、ただ“気に入らなかった”から~だけで、作業者の仕事に手を加えるのは卑怯だ!

という考えがあるからです。それだったら最初から己で描けって話だし、もし俺の方がそんな適当に修正される側だったら、到底納得できないと思うからです。ちなみにコンテに限らず、原画チェックの際も同様の理由から、原画マンに対して“何処がおかしい?”“直した理由”“アドバイス”をちゃんと説明するよう心掛けています。
 逆の話で、コンテをただ無修正で通すだけなら、「監督」を名乗ってはいけない! とも思っています。だから、個人的な理想としては全体の2~3割手を入れたくらいで使える画コンテを上げて頂けるのがベストかと! そのコンテ戻し説明の際、“演出処理”の打ち合わせを兼ねます。
 あ! あと、画コンテに関して現状自分は、

費用対効果の高いカット割りと、原画マンが描きやすいアングルを優先——“止める所はバシッと止めて”、動くところは丁寧に動かす!

ことを必須にしてチェック・修正しており、コンテマンたちにも「取り敢えず、今は!」と説得。

つまり、
働き方改革・8時間勤務・社員雇用・時給換算による固定給、諸々の理由で、今は“社内”且つ“予算内”で作り切れる内容にするため、画コンテ段階で徹底的に計算し尽くす!

わけです。ミルパンセ以前の演出・監督作品みたいに「俺がやるなら7~8000枚使って動かしまくる!」はハッキリやめたんです! それで「板垣は手抜きコンテ」と言うなら、勝手に言えばいいでしょう。こちとら、制作現場の総合監督として、

まず、現状の戦力・予算で戦いに挑み、各セクション・役職のギャラ見直しが何より必須! 非難したい人はすればいい! 批判も悪評も全て俺が受ける!

覚悟を持って取り組んでおります。前作『いせれべ(異世界でチート能力[スキル]を手にした俺は、現実世界をも無双する)』もその考えでコンテ切ってて、それはある一定の効果はあったかと。故に“新アニメ化”も決定したのですから。

この際、ハッキリ言っておきます!今の板垣はフリーや他社の巨匠監督・演出家にゲスト的位置でコンテを依頼するつもり、金輪際ありません!

結局、今現在のウチの作画リソースに合ったコンテを社内で作って、クオリティーを安定させることが最優先。そして、皆が巧くなってきたら、それから各スタッフの給料から計算して、徐々に“動きまくる”本来のアニメーションらしいアニメーションを目指せばいい、と。
そして、この後も(現状決まっている仕事3~4本は)こんな感じで原画マンだけでなく、“新人演出家・監督”も育成しつつ、板垣は総監督に徹する予定です! その間に、“面白いコンテが切れる演出家”や“動きが描けるアニメーター”が育って行くことを祈りつつ。

 で、明日はまたアフレコです!

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 168】
2本の劇場版『鋼の錬金術師』

 12月にお届けする新文芸坐とアニメスタイルの共同企画プログラムは「2本の劇場版『鋼の錬金術師』」。12月8日(金)から10日(日)の3日間で『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』と『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』を上映します。
 12月8日(金)と10日(日)は上映のみ。9日(土)は2本トーク付きで上映します。『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』のトークのゲストは會川昇さん(ストーリー・脚本)、水島精二監督。『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』のトークのゲストは小西賢一さん(キャラクターデザイン、総作画監督)、夏目真悟さん(演出)、亀田祥倫さん(原画)となります。いずれも聞き手はアニメスタイル編集長の小黒が務めます。

 チケットは既に発売中。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 168】
2本の劇場版『鋼の錬金術師』

開催日

2023年12月8日(金)20時10分~ 『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』
2023年12月9日(土)13時30分~ 『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(トーク付き)
2023年12月9日(土)16時40分~ 『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』(トーク付き)
2023年12月10日(日)15時~  『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』

会場

新文芸坐

料金

2023年12月8日(金)、10日(日) 一般1500円、各種割引 1100円
2023年12月9日(土) 各回   一般1900円、各種割引 1500円

トーク出演
(12月9日(土))

『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』 會川昇(ストーリー・脚本)、水島精二(監督)
『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』 小西賢一(キャラクターデザイン、総作画監督)、夏目真悟(演出)、亀田祥倫(原画)

上映タイトル

『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(2005/105分/35mm)
『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』(2011/110分)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第270回 ヒットの理由 〜鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎〜

 腹巻猫です。SOUNDTRACK PUBレーベル第34弾として、「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!/魔法少女ちゅうかないぱねま! オリジナル・サウンドトラック」を11月29日に発売しました。1989年に放送された東映不思議コメディーシリーズ「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!」と「魔法少女ちゅうかないぱねま!」の主題歌と音楽を集大成した初のサウンドトラック・アルバムです。本間勇輔が手がけたBGMは全曲初商品化! ぜひお聴きください!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMVPBXJD


 11月17日に公開された劇場アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が予想以上の盛り上がりを見せている。
 ゲゲゲの鬼太郎の誕生秘話を描いた作品である。水木しげるのマンガにも「鬼太郎誕生」というエピソードがあるが、本作はそれとは異なるオリジナルストーリー。2018年から2020年まで放映されたアニメシリーズ第6期の前日譚という位置づけになっている。
 昭和31年。帝国血液銀行に勤める水木は、日本の政財界を裏であやつる龍賀一族に近づくために哭倉村を訪れる。その途中に出会ったのが、行方不明の妻を探して哭倉村に向かっていた男、ゲゲ郎(のちの鬼太郎の父)だった。哭倉村に入った2人を待っていたのは、龍賀一族をめぐる連続殺人事件。水木とゲゲ郎は、それぞれの目的を果たすために手を組むことを約束し、陰謀と怪奇が渦巻く龍賀一族の謎に迫っていく。
 観る前はもっと水木しげる的な世界を想像していたが、別な方向に振り切った作品だった。けっこう凄惨な描写もあり、アニメの鬼太郎ファンにはどうなのかなーと思っていたら、女性ファンに支持されていると知って驚いた。実際、筆者が観に行った回は観客の8割くらいが女性で、終映後に泣いている人もけっこういた。この反響はスタッフも想定していなかったのではないか。パンフレットもサントラ盤も入手困難が続いている(増産しているようなので未入手の方はお待ちいただきたい)。
 音楽はゲゲゲの鬼太郎シリーズの音楽を初めて手がける川井憲次が担当。これまで『ゲゲゲの鬼太郎』と川井憲次を結びつけて考えたことはなかったが、スタッフが発表になって、「なるほど」と膝を打った。考えてみれば、これほどぴったりの組合せはない。
 『ゲゲゲの鬼太郎』は妖怪もの、ホラーである。川井憲次は実写劇場作品「リング」(1998)、「仄暗い水の底から」(2002)など、ホラー作品の音楽を多く手がけていて、この分野の第一人者と言ってもよい。また、アニメ『BLUE SEED』(1994)、『吸血姫美夕』(1997)など、妖怪退治もの系の作品もある。本作には激しいバトルシーンもあるが、川井憲次はウルトラマンシリーズや仮面ライダーシリーズの音楽も担当しており、ヒーローアクション系の音楽も得意なのだ。
 『ゲゲゲの鬼太郎』は川井憲次にうってつけの題材ではないか。
 音楽への期待に胸ふくらませて劇場に行った。

 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の音楽は、一部にいずみたくによる『ゲゲゲの鬼太郎』の主題歌のメロディを引用しながら、しっかり川井サウンドに仕上がっている。期待どおり、『ゲゲゲの鬼太郎』と川井憲次の相性は抜群だった。
 川井憲次はゲゲ郎のキャラクターに注目し、ゲゲ郎と水木の語らいのシーンの曲から作っていったという(パンフレット所収のインタビューより)。ゲゲ郎のテーマには、特製のクロマチック・カリンバを使用している。カリンバとは木の板に平たい金属棒を並べて固定し、それを指ではじいて音を出す民族楽器。オルゴールのような素朴な音がする。ふつうのカリンバは2オクターブくらいしか音が出せないのだが、本作に使用された特製のカリンバは4オクターブをカバーするのだそうだ。シンセサイザーでもカリンバの音は出せるが、あえて生楽器を使用したところにこだわりがある。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで2023年11月29日に日本コロムビアから発売された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. ゲゲゲの鬼太郎 ‐警告‐
  2. 水木の野望
  3. 物思い
  4. 幻の里・哭倉村
  5. 龍賀一族
  6. 動揺・混乱
  7. 一人目の犠牲者
  8. 村の違和感
  9. 時弥 ‐未来をみつめて‐
  10. 沙代 ‐水木への想い‐
  11. “M” ‐克典の誘い‐
  12. ゲゲ郎を追って
  13. 襲い来る化物
  14. 二人目の犠牲者
  15. 最後の二人
  16. “M” ‐妖しい力‐
  17. 水木とゲゲ郎 ‐考察‐
  18. 沙代 ‐告白‐
  19. 水木とゲゲ郎 ‐月夜の語らい‐
  20. 襲い来る裏鬼道
  21. “M” ‐その正体‐
  22. 一族の務め
  23. 沙代 ‐懇願‐
  24. 沙代 ‐絶望‐
  25. 宿怨
  26. 「行こうぜ」
  27. 窖で見たもの
  28. 妻をさがして
  29. やっと逢えた
  30. 狂骨、圧倒的な力
  31. 終焉
  32. ゲゲゲの鬼太郎 ‐幽霊族の力‐
  33. 水木とゲゲ郎 ‐友へ‐
  34. ゲゲゲの鬼太郎 ‐最後の者‐
  35. 時弥 ‐その願い‐
  36. カランコロンのうた ‐鬼太郎誕生‐

 川井憲次の言葉によれば、音楽メニューでオーダーされた曲は36曲。アルバムにはそのすべてが収録されているようだ。
 同じモチーフの曲には同じ曲名をつけ、うしろに副題を添えて区別してある。曲リストを眺めると音楽全体の構成がわかる。
 1曲目の「ゲゲゲの鬼太郎 ‐警告‐」は冒頭のシーンに流れる曲。『ゲゲゲの鬼太郎』の主題歌「ゲゲゲの鬼太郎」のアレンジだ。いかにも何かが起こりそうなホラーっぽいサウンドで、作品全体の雰囲気を象徴している。
 「ゲゲゲの鬼太郎」をアレンジした曲はほかに2曲。終盤に流れる「ゲゲゲの鬼太郎 ‐幽霊族の力‐」(トラック32)と「ゲゲゲの鬼太郎 ‐最後の者‐」(トラック34)がある。意外に少ないのは、本作の主人公がゲゲゲの鬼太郎ではないためだろう。「ゲゲゲの鬼太郎」のメロディは本作のメインテーマではなく、鬼太郎というキャラクターのテーマとして使用されているのだ。
 トラック2「水木の野望」からしばらくは、妖しい曲調が続く。物語の舞台や事件の始まりを描写する音楽だ。「幻の里・哭倉村」(トラック4)、「龍賀一族」(トラック5)などはさすがのうまさで、ぞくぞくする。
 トラック9からの3曲、「時弥 ‐未来をみつめて‐」「沙代 ‐水木への想い‐」「“M” ‐克典の誘い‐」で、本作の音楽を構成する重要なモチーフが提示される。
 「時弥」は龍賀一族の血を継ぐ少年の名。ピアノによるリリカルな旋律が充てられている。「沙代」は水木と交流する龍賀家の少女の名。しっとりとした中に謎めいた香りもあるメロディだ。そして「M」は龍賀一族が製造する謎の血液製剤の名。凶事を連想させる不穏な曲調である。
 これらのモチーフがアレンジを変えて劇中に反復されていく。特にヒロイン・沙代のテーマは、沙代の心情の変化を表現する重要な曲だ。時弥のテーマは物語のラストまで再登場しないのだが、そのストイックな使い方が非常に効果的。「時弥 ‐その願い‐」(トラック35)が流れるシーンは、思わずはっとさせられる。
 アクション系の曲もいい。トラック12「ゲゲ郎を追って」は水木がゲゲ郎のあとを追う場面のアップテンポの曲。切迫感のある曲調に民族楽器風の音色を挿入して変化をつけている。
 次のトラック13「襲い来る化物」は不気味な妖怪描写音楽。トラック20「襲い来る裏鬼道」は人間同士のバトルを描く曲で、当然ながら「襲い来る化物」とは音の構成を変えてある。
 トラック25「宿怨」も妖怪襲来の曲なのだが、妖怪よりも人間の恐ろしさがテーマ。パーカッションのリズムに弦楽器のうねりやブラスの咆哮、不穏なコーラスなどが重なる、スケールの大きな曲になっている。終盤曲調が変化するのはシーンの展開に合わせたもの。本作の見せ場のひとつである。
 トラック30「狂骨、圧倒的な力」とトラック31「終焉」はクライマックスのバトルシーンに流れる曲。「終焉」ではストリングスとコーラスを主体にしたサウンドで水木とゲゲ郎の悲壮な想いが描写されている。
 主要な楽曲を紹介してきたが、本作のメインテーマと呼べるのは「水木とゲゲ郎」のテーマだと思う。川井憲次が特殊楽器(クロマチック・カリンバ)を使って奏でた曲である。
 トラック17「水木とゲゲ郎 ‐考察‐」は2人が協力し合うことを約束する場面に流れる曲。ここでは素朴な曲調で奏でられる。
 トラック19「水木とゲゲ郎 ‐月夜の語らい‐」は月夜の墓場で水木とゲゲ郎が語らう場面の曲。カリンバとピアノがテーマを奏で、ストリングスが引き継ぐ。2人のあいだに芽生える友情がしみじみとした曲調で表現される。演奏時間3分30秒と聴きごたえのある曲だ。
 トラック33「水木とゲゲ郎 ‐友へ‐」はラスト近くの感涙必至の場面に流れる曲。「友へ」というタイトルからして泣ける。この曲ではカリンバではなくピアノとストリングスによってメロディーが奏でられている。
 実は「水木とゲゲ郎」とは名づけられていないけれども同じモチーフを使った曲がほかにもある。トラック26「「行こうぜ」」は決意を胸に禁域の小島に向かう2人の場面に流れた、力強くエモーショナルな曲だ。
 そして、エンディング(エンドクレジット)に流れる「カランコロンのうた ‐鬼太郎誕生‐」にも「水木とゲゲ郎」のモチーフが登場する。この曲は『ゲゲゲの鬼太郎』の副主題歌「カランコロンのうた」のフレーズと「水木とゲゲ郎」のテーマを組み合わせた曲になっているのだ。「水木とゲゲ郎」のテーマが本作のメインテーマであると考えるゆえんである。

 ホラーあり、アクションあり、熱い人間ドラマもある本作の音楽。川井憲次サウンドのファンにとっても充実の1枚になっている。
 そして、あらためてサントラを聴いてみると、本作が「何を語ろうとした物語」であるかは明白。女性ファンに人気があるのも納得できるのだった。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』オリジナル・サウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
420 アニメ様日記 2023年6月11日(日)

2023年6月11日(日)
新文芸坐で映画を観る予定だったが、原稿を進めたほうがいいと判断してデスクワーク。間違いなく、今までの人生で一番時間がかかっている原稿だ。

6月10日の「アニメーター・キャラクターデザイン 木村貴宏 追悼上映会」に関連して思い出話。かなり以前のことになるけれど、木村さんに「この人に話を聞きたい」で取材を申し込んだことがある。木村さんは「この人」の連載についてご存知で「自分に次の代表作と言える作品ができた時に取材を受けたい」という、とても前向きな理由で、取材をお断りになった。その後、木村さんが新しい作品に参加する度に「この作品は木村さんの代表作といえるだろうか」と考えながら、僕は作品を観ていた。結局、取材を申し込むきっかけがつかめず、「この人に話を聞きたい」で取材することはなかった。本人がどうおしゃっても、取材を申し込んでおけばよかったと思っている。

アニメージュ最新号の「設定資料FILE」を、紙の誌面で老眼鏡とルーペを使って確認。最近の「設定資料FILE」の構成では「現在の印刷技術でどこまで線画設定を小さく載せられるか」に挑むことが多いのだが、今回の号の構成が限界ギリギリだろう。「設定資料FILE」は26年続いているわけだが、26年前に比べると線画設定の作りが緻密になり、書き文字も極小サイズのものを見かけるようになった。それと同時に、印刷の精度も上がり、緻密な線画設定を縮小しても再現できるようになった。だから、構成についての考え方も変えていかなくてはいけない。
同じアニメージュを複数の電子配信で確認した。プラットホームによって、極小サイズの書き文字が読めるところと読めないところがあった。
ちなみに僕がいまだに設定資料ページの構成を縮小コピーの切り貼りでやっているのは、常にそのサイズの誌面で画や文字が潰れていないかを確認しながら作業を進めるためでもある。

2023年6月12日(月)
午後は病院Bで内視鏡検査。1月に大腸のポリープを切った跡を確認して、組織の一部を採取。今回も自分の腸内をリアルタイムで見たけれど、自分の体内での切除を見るのは落ち着かないなあ。診察の結果が分かるのはしばらく先。会計で診察費に驚く。組織の切除をしたので、手術をしたことになるのだそうだ。

2023年6月13日(火)
「時間に余裕があるうちに、色んな店でランチを食べておこうシリーズ」の第一弾で「定食 美松」に。タカベ塩焼き定食をいただく。美松は池袋の定食屋としては有名な店で、今まで何度か前を通ったけれど、いつも店頭にお客さんが並んでいたので敬遠していた。料理はどれもしっかりしていて、満足度高し。料理が出てくるのも早いし、接客も好印象。顔馴染みらしいお婆ちゃんが、今日のメニューにないものを注文しても、瞬時に対応していた。
グランドシネマサンシャインで『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』岩浪美和音響監督監修 BESTIA enhancedを鑑賞。爆発音が凄かった。ラストがよかった。
『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を配信で全話観た。ラス前の妹を家の外に連れ出す前後が、なんとなく『CLANNAD』的だと思った。

2023年6月14日(水)
朝の散歩で「聖闘士星矢 ETERNAL EDITION File 01 & 02 [Disc 1]」「同・ 05 & 06 [Disc 1]」を聴いた。「05 & 06 [Disc 1]」で「序章; 北欧の神話」と「アスガルドの兄妹」の間に「ペガサス幻想 (T.V. Size S.E. Mix)」が入っているのが、とてもよかった。ところで『聖闘士星矢 神々の熱き戦い』のタイトルは邦画の「神々の深き欲望」をなぞっているのだろう。既存作品のなぞりだが、単なるなぞりになっていないのがよい。
「アニメスタイル017」の見本が届く。いやあ、長かった。ようやくできた。表紙は再々校をとってよかった。
『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』を配信で観た。

2023年6月15日(木)
新文芸坐で「さらば愛しき大地」(1982/135分)を鑑賞。「Impact! 日本映画の80年代 J Movie 80s」の1本。新文芸坐のサイトには上映素材についての表記がなかったが、DCPかBlu-ray上映と思われる。恐らくは、伝えるべきことをきっちりと伝えきった作品であり、その意味で力作。ただし、自分的には没入感が薄く、「このカットはこんなに秒数いるかなあ」とか「このカットはもっとじっくり観せてほしい」などと思いながら観た。ただ、若い頃に観たらガツンときたと思う。役者はかなりいい。特に愛人役の秋吉久美子さんがよかった。悲劇的な役なんだけれど、演りがいがあっただろうし、演じていて楽しかったに違いない。そんな目線で観ていたので、愛人が命を落とすクライマックスも、ドラマとしてどうかではなく、芝居としてどうかで観てしまった。
「時間に余裕があるうちに、色んな店でランチを食べておこうシリーズ」の第二弾で「魚の旨い店 池袋店」に。こちらも行例ができていることが多くて、入ったことがなかった。いただいたのは「廻舩ゴロゴロねぎとろ丼」の特盛り。

2023年6月16日(金)
TOHOシネマズ池袋で『劇場版美少女戦士セーラームーンCosmos ≪前編≫』を鑑賞。総集編的な内容になっているのは間違いないけれど、楽しめた。画もいいところがあった。意外なくらいラストから予告のあたりが盛り上がった。Zoom打ち合わせなどを挟んで、吉祥寺の「なみきたかしの どうらく宝島展」に。書籍を2冊ほど買う。

2023年6月17日(土)
「アニメーションプロデューサー・丸山正雄のお蔵出し 竹宮惠子原作『夏への扉』 上映+トークセッション」に参加。『夏への扉』 はビデオやDVDで繰り返し観ているけれど。スクリーンでの上映で鑑賞するのはロードショー以来。トークは役者の方々の思い出が中心で、大変に楽しかった。それにしても、皆さん、今もお若い。トークで話題になった三ツ矢雄二さんの配役については、僕も「この時期にこの配役は凄い」と思っていた。トークでは誰の判断でその配役が決まったのかは判明しなかった。お客さんも役者の方々が目当ての人が多いはずだから仕方がないけれど、丸山さん自身のトークは少なめ。次回は丸山さんのお話をたっぷり聞けるといいなあ。

第830回 どうやらどこも大変なようです(汗)!

早いもので、今年もあと1ヶ月!

 現在、『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』こと『沖ツラ』のコンテ作業が折り返し地点ほどで、アフレコが始まったくらいのトコです。音響も始まり、毎度お馴染みの1週間単位の監督ルーチンに突入。
 で、最近ますます業界全体が大変みたいです。と言うのは、今年も俺の個人ケータイ(スマホ)に原画やコンテ・演出の依頼が何件も来ていたからです。当然、時間があれば会社(ミルパンセ)を通した上でお受けするつもりなのですが、現状忙しく無理(汗)。その旨をお伝えして丁重にお断りしていました。
 気になったのは、その電話がごく一部の親しい制作プロデューサーさんらを除き、ほとんどが新人の制作進行からばかりなこと。無論、自分程度の無名なアニメーター演出、普通に進行さんからの電話で当たり前だし、それで問題ないのです。それより、どう話を聞いても会社で共有しているアニメーター連絡先リストに索引順で闇雲に電話を掛けまくってるだけなんです。だから、例えば原画なら俺から「コンテ・演出はどなたですか? 作監は?」と訊いても、「……ちょっと、まだコンテ作業中で、自分は聞かされていないんです」と。要するに先輩(上司)からリストを渡され「電話掛けてアニメーター捕まえなさい」と言われてるだけなのでしょう。それゆえ、同じ会社(スタジオ)の別作品から着信があったり、それどころか同じシリーズの話数違いの制作さんから依頼、とかもありました。
 時々俺は他社の社長や制作プロデューサーさんらと情報交換するようにしています。今や自分の同期や同年代は、社長や部長・プロデューサーと皆偉くなってて、その方らと話して会社や業界の流れ、そしてそれに対する自分の考えを定期的に纏める為に。で聞くと、近年の制作進行の離職率は中々大変らしいとのこと。一方アニメーターはアニメーターでインボイス制反対運動するは、社員雇用にしたらしたで、給料分の物量が全然上がらない、と。
 何処も「困ってるんだろうな~、何とかしてあげたい」気持ちはありつつも、自社の作品を優先しなければなりません。近年自分はそんな時、手は埋まってるので貸せないにしても、相談には乗ったり、現状の戦力で戦う知恵は提案するようにしています。例えば、

闇雲に作監探したって、どーせすぐにはつかまらないから、こんな電話する時間をまず半分にして、もう半分の時間を使って、コンテのアングルに近いキャラ表や他話数の総作監修正をラフ原の上に貼って下敷き作りを制作の方でしたら? それで作監が見つかるまでの時間稼ぎをして、もし作監をつかまえることができなかったとしても、その下敷きを基に社内の原画マンを作監に上げて、演出が付きっ切りで指示出し、でどう?

といった感じです。そして、

ごめんなさい、今の自分にできるのはこれくらいです!

と、心の中で謝罪しつつ「健闘を祈る!」しかありません。アニメ作りが好きならお互い頑張って乗り切りましょう!!

アニメ様の『タイトル未定』
419 アニメ様日記 2023年6月4日(日)

2023年6月4日(日)
ワイフが旅行に。駅まで一緒に行って見送った。昼は吉松さんと焼肉に。食べて吞む。SNSで新作『マクロス』をサンライズが制作することが告知される。『ラブライブ!』っぽい『マクロス』になるのか?

「マクロス」公式アカウント(X[当時はTwitter])
https://x.com/macrossD/status/1665296153288613888?s=20

2023年6月5日(月)
「アニメスタイル017」校了日。最終版PDFを頭から目を通す。ワイフは引き続き、旅行中。旅行先から次々に写真を送ってくる。6月4日(日)の『ちびまる子ちゃん』は小杉が活躍する話でやたらと面白かった。「来週からこの番組の主役は自分だ」と登場人物が言い合うのをかなり久しぶりに観た。「さくらももこ原作まつり」 の1本だから、原作にある話なのね。過去にも同じ話のアニメ化も観たような気がする。
「ほぼ日刊イトイ新聞」が25周年だそうだ。実は「WEBアニメスタイル」を始める時に、お手本にしたのが「ほぼ日」だった。「ほぼ日」が1998年6月6日創刊以来で「WEBアニメスタイル」が2000年12月6日スタートだから、「WEBアニメスタイル」が始まった時に、すでに「ほぼ日」は二年半の歴史があったわけだ。

2023年6月6日(火)
『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』を鑑賞する。よくできていた。「目の名前にキャラクターがいる」感じが強かった。CGによるキャラクターの表現もよかった。旧来的な意味での「映画」としてではなくて、「キャラクター使った娯楽」として非常に優れている。その意味で最尖端の作品であるし、これから発展していく可能性を感じた。その後、アニメイトの「モブサイコ100原作&アニメ展覧会~軌跡」に立ち寄る。ちょっと不思議な感じのイベントだった。『モブサイコ100』らしいといえばらしい。
『PSYCHO-PASS』1、2に続き、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』を観る。この映画は劇場でもソフトでも観ている。1、2を観た後だと劇場版の位置づけが分かるような気がする。
東映チャンネルで録画したモノクロ版『サイボーグ009』の3話、4話を観る。ああ、子どもの頃、サイボーグ戦士が世界から集結するシチュエーションは燃えたなあ、とか、007が好きだったなあ、とか、やっぱり他の白黒アニメよりも好きだったなあ、とか、色々と思い出す。改めて大きなモニターで観て、若い人に「これを観ろ」と言うのは難しいかなとも思った。

2023年6月7日(水)
午前中に新文芸坐で「コミック雑誌なんかいらない!」(1986/127分/35mm)を鑑賞。プログラム「Impact! 日本映画の80年代 J Movie 80s」の1本だ。これもタイトルだけ知っていて、観たことがなかった映画だった。終盤の展開に既視感があったけれど、どこかで読んだ記事とごっちゃになっているのかもしれない。三浦和義が本人役で出演しているのは、今観ても凄い。映画中盤までは「この映画はダメかもしれない」と思っていたのだけれど、クライマックスの豊田商事会長刺殺事件をモチーフにしたパートが大変に刺激的。いきなり「映画」になった感じ。度々挿入されていた主人公が野球をやっているイメージシーンを、最後の最後で意味あるものにしたのも見事。終盤で大暴れをして殺人を犯す男をビートたけしが演っている。大変な熱演で素晴らしいのだけど、「怪しい男が現れた」ではなくて「ビートたけしが現れた」にしか見えない。この配役がプラスかマイナスかでいったら、プラスではあるのだけれど。今回の上映に関して素晴らしかったのが、新文芸坐が上映終了直後に、頭脳警察の「コミック雑誌なんか要らない」を館内で流したこと。「コミック雑誌なんかいらない!」のタイトルは頭脳警察のこの楽曲からとられているのだそうだが、映画で主題歌として使われているわけではない。映画が終わって「この映画のタイトルはこういう意味なんだろうなあ」と思っていたところに、それを解説するかのように頭脳警察の「コミック雑誌なんか要らない」を流したのだ。新文芸坐さんの至れり尽くせりの上映には畏れ入る。
午後はワイフとサンシャイン60展望台 てんぼうパークに。サンシャインでは「名探偵コナン 祝祭の天空都市(サンシャインシティ)」を開催中で、てんぼうパークでも『名探偵コナン』関係のコーナーがあった。
実写の『ホリック xxxHOLiC』を少し観た。よくできていると思った。

2023年6月8日(木)
マメに視聴していた東映チャンネルの「Gメン’75」が150話で終了。少し前に東映チャンネルのサイトを見て「あれ、150話までしかリストがないなあ」と思っていたけど、本当に終わってしまった。今朝の放映が1話と2話だったから、また150話までやるのかなあ。「隔週刊 Gメン’75 DVDコレクション」が現在のところ、162話までいっているから続きが観たい人は「DVDコレクションをどうぞ」ということなのかしら。
仕事の合間にグランドシネマサンシャインで「クリード 過去の逆襲」【IMAXレーザーGT字幕版】を鑑賞。前作も前々作も観ていないのだけれど、意外と楽しめた。演出がしっかりしていて、画作りがいい。役者だと、主人公の娘がよかった。お客は入っていないみたいで、確かに本筋が魅力的とはいい難い。引退して悠々自適の暮らしをしていたクリードが、ボクサーに復帰する理由が弱い。観ていて、あまり彼を応援する気にはならない。それに対して、18年間も刑務所生活を送り、刑務所で自分を鍛えてきたディミアンが、中年でありながらプロのボクシングに挑戦し、タイトルを手にするのは面白いし、応援したくなる。実際にこの映画で一番面白いのはディミアンの最初の試合だった。タイトルを獲った後、ディミアンがは悪役になるのだけれど、無理矢理な感じはあった。映画は基本がスコープサイズで、一部のシーンがIMAX画角。IMAX画角の試合の見せ方が巧かった。僕の目当ては本編終了後の新作アニメだった。映像の感じは『メガロボクス』風。内容はSFボクシングアニメの予告編みたいな感じ。クリードの魂(魂ではなく血だったかもしれない)を引き継いだ若者達の物語って感じ。

2023年6月9日(金)
このところ体調がよくない。数日前にランチで食べた料理がよくなかったのかもしれない。
録画で衛星劇場の『ウォナビーズ』を観る。リリース当時に一度観たけれど、印象は変わらず。リアルタイムで衛星劇場の『KO世紀 ビースト三獣士』を途中から観て、後で1話から録画で観る。気になることがあって、『KO世紀 ビースト三獣士』『KO世紀 ビースト三獣士II』のDVDを引っぱり出して確認する。『KO世紀 ビースト三獣士』の1作目には「音楽」のクレジットがない。実際に本編を観ても、音楽が薄い。薄い上にアクションシーンに曲がついていなかったりする。ネットで同作のサントラの画像を見ると、帯に「音楽プロデューサー:ニック・ウッド」とある。ネットでニック・ウッドについて調べる。
昼にワイフと新文芸坐に。「その男、凶暴につき」(1989/103分/35mm)を鑑賞した。「コミック雑誌なんかいらない!」と同じく、プログラム「Impact! 日本映画の80年代 J Movie 80s」の1本。「その男、凶暴につき」は公開当時に劇場で観ている。当時の衝撃はないが、今観ても充分に面白い。16時半に帰宅して、すぐに就寝。途中で起きてメール対応。それ以外はひたすら眠る。

2023年6月10日(土)
「アニメーター・キャラクターデザイン 木村貴宏 追悼上映会」の【昼の部】に参加する。トークでは故人の人柄が感じられてよかった。上映作品の映像の画質は『ダーティペアFLASH』と『同・2』が断トツによかった。Blu-ray BOXを買ってしまおうかと思ったくらいだ。次いで『コードギアス 反逆のルルーシュ』。その次が『勇者王ガオガイガー』。『ベターマン』の映像の状態はよろしくなかったのだけど、これは上映前に米たにヨシトモ監督から断りが入っていたし、現状で一番いいマスターがあれならしかたない。トークに関してつけ加えると、初めてお顔を見る方もいたし、かなり久しぶりに顔を見た方もいて、それも嬉しかった。

第269回 宇宙の日常 〜地球外少年少女〜

 腹巻猫です。11月11日からNHK総合でアニメ『地球外少年少女』の放映が始まりました。劇場公開とNetflixでの配信はありましたが、地上波での放映は初。この機会に多くの人に観てもらいたいです。


 『地球外少年少女』は2022年1月に公開された全6話のアニメ作品。Netflixで世界独占配信され、日本では全6話を前編・後編の2本にまとめたものが劇場上映された。
 TVアニメ『電脳コイル』(2007)を手がけた磯光雄の原作・脚本・監督によるオリジナルアニメである。アニメーション制作は、この作品のために設立されたProduction +h(プロダクション・プラスエイチ)が担当した。
 舞台は2045年。日本製宇宙ステーション「あんしん」に地球からシャトルに乗った3人の子どもたちが宇宙旅行にやってくる。「あんしん」には月で生まれた14歳の少年・相模登矢と同じく月生まれの14歳の少女・七瀬・Б・心葉がいた。登矢と心葉の脳には史上最高のAI「セブン」が設計したインプラントが埋め込まれているのだが、インプラントには隠れた欠陥があり、登矢はそれを直すためにハッキングをくり返しているのだった。登矢と心葉が地球の子どもたちを迎えた日、「あんしん」に彗星のかけらが衝突。宇宙ステーション内に取り残された子どもたちは、生き延びるための奮闘を始める。
 宇宙で事故にみまわれた少年少女たちのサバイバル……とくれば、「スペースキャンプ」(1986)やTVアニメ『銀河漂流バイファム』(1983)といった作品が思い出される。『地球外少年少女』では、磯光雄監督らしい細部までこだわった設定と描写で、最新の知見に基づいた宇宙の冒険が描かれる。全6話の前半は、ユーモアをまじえたハラハラドキドキの展開が見どころだ。が、しだいに物語はAIの進化、人類の未来といった本格SF的なテーマに切り込んでいく。その先は……これからご覧になる方のために伏せておこう。
 筆者は公開時に劇場で観た。そのあとNetflixでも観た。一度観ただけでは消化しきれないくらい内容の濃い作品なのだ。といっても、難しいわけではない。ジュブナイルSF風の味わいも楽しく、面白くて一気に観てしまう。観たあとで、「あれはどういうことだったのか?」ともう一度観たくなる作品である。

 音楽は石塚玲依が担当。東京音楽大学作曲指揮専攻芸術音楽コースを卒業後、現代音楽、映像音楽、アニメやアーティストへの楽曲提供などで幅広く活躍している作編曲家である。アニメ音楽(劇伴)では、TVアニメ 『プリパラ[39話以降]』(2015)、『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』(2019)、『カッコウの許嫁』(2022)、『あやかしトライアングル』(2023)などを手がけている。
 磯光雄はサウンドトラックCDの解説書で、石塚玲依の音楽について「現代音楽をベースとする石塚さんの楽曲の最初の印象はちょっと虚無的な、大人っぽい曲が多く、ジュブナイルのBGMとしてはあまり一致しなかったので、何度も細かくしつこく直しをお願いした」とコメントしている。
 いっぽうの石塚玲依は、同じくサントラの解説書で「2年以上にわたり磯監督をはじめとしたスタッフの方とスタジオに定期的に赴いては綿密な打ち合わせを幾度も重ねてきました」と語り、「今回の音楽は間違いなく僕1人だったらなし得なかっただろうという世界にあふれています」と結ぶ。
 監督と作曲家、2人のディスカッションが生んだ音楽である。
 楽器編成は34人の弦楽器にフルート、オーボエ、クラリネットが各1人、ホルンが3本、トランペット2本、トロンボーン2本、ピアノ、エレキギター、それにシンセサイザー。生楽器がたっぷり入っているが、音楽はシンセサウンドの印象が強い。特にシンセで作った(と思われる)マリンバ風の音。明快なメロディを持たないリズム的なフレーズが多く使われている。
 音楽を作るにあたって磯光雄監督が示したキーワードが「スマホ的音楽」だった。宇宙にスマホがある時代にふさわしい音楽ということだ。
 本編を観ていると、聞こえてくる音が音楽なのか効果音(SE)なのか、区別がつかないことがある。宇宙ステーション「あんしん」内で聞こえる環境音、計器の音やアラーム音、通信機の着信音、機器を操作する音など、そうした音と音楽とが混じって聞こえる。
 一般に映像音楽は効果音とぶつからないように作ることが多い。劇中で鳴っている音が効果音か音楽か区別がつかないと、観客も混乱するからだ。けれども、本作の場合はあえて両者にサウンド的な違いをつけていないようである。
 それはなぜか。筆者なりに考えてみた。
 管楽器や弦楽器、打楽器といった昔ながらの楽器の音は自然界に存在する音の延長線上にある。木管や金管の音は風の音や動物の鳴き声に似ているし、弦楽器は葉ずれの音や波の音のように聞こえる。打楽器は木や石に何かが当たって鳴る音である。都会にいても、自然の音は身近にある。
 しかし、宇宙ではどうか。宇宙空間は真空で音はないし、宇宙ステーション内にも人工的に作られた風しか吹かない。身の回りにあるのは計器の音である。宇宙で育った子どもたちにとって、機械が作り出す音は生まれたときから身近にある自然の音なのではないか。磯光雄監督が求めた「スマホ的音楽」は、宇宙生まれの子どもたちの日常の音楽なのである。筆者は、本作の音楽のコンセプトをそんなふうに受け止めた。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「地球外少年少女 オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2022年1月26日にエイベックス・ピクチャーズから発売された。配信でも聴くことができる。収録曲は以下のとおり。

  1. たゆたう宇宙
  2. 明ける空
  3. 地球
  4. 未来の記憶
  5. 日常と重力
  6. あんしんアトモスフィア
  7. あれれれれれ
  8. AQUA SEQUENCE
  9. RANDOM SEQUENCE
  10. ユーモアのスイングバイ
  11. すれ違い、物思い
  12. あんしん音頭
  13. あんしんくん
  14. 緊迫と屈折
  15. 肯定的な歩み
  16. いくつかの問題点
  17. 出発と彗星の飛来
  18. HIGHER VELOCITY
  19. SYSTEM DOWN
  20. ACCESS&CONTROL
  21. CRISIS FREQUENCY
  22. COUNTDOWN TEMPO
  23. 暗闇と危機の干渉
  24. 脅威のクラスター
  25. UNLIMITED ORBIT
  26. FORCED TERMINATION
  27. 憂いの薄明
  28. 七瀬・Б・心葉 “ensemble”
  29. 七瀬・Б・心葉 “piano”
  30. WHALE SEQUENCE
  31. セカンド・セブン
  32. Sパターン
  33. ルナティック
  34. どこでもない場所の中間
  35. 誰にもわからない未来
  36. はじまりの時代
  37. Oarana(Short Size)(歌:春猿火)
  38. Oarana(歌:春猿火)

 BGM(劇伴)36曲に主題歌「Oarana」のショートサイズとフルサイズを収録。
 公式サイトには「BGMを完全収録」とある。本編では一部の楽器の音を抜いた別バージョンが使われているケースがしばしばあり、「この曲サントラに入ってないなあ」と思うと、それはだいたい別バージョンなのだった。
 CDの解説書には石塚玲依による全曲解説を掲載。音楽について詳しく知りたい方はぜひCDを購入して読んでいただきたい。
 全6話の作品であれば全編映像に合わせて音楽を作ってもおかしくない。が、本作ではフィルムスコアリングと溜め録りを組み合わせたハイブリッド方式が採用されている。純粋なフィルムスコアリングの楽曲が数曲。溜め録りの曲も多くは具体的なシーンを想定して書かれた曲だ。
 1曲目の「たゆたう宇宙」は第1話でメインタイトルが出るシーンの曲。地球の子どもたちを乗せたシャトルが宇宙ステーション「あんしん」に近づく。「あんしん」の中にいる登矢。浮遊感のあるサウンドに着信音のような音が挿入される。タイトルロゴが出るタイミングで雰囲気が変わり、シンセの音が宇宙的な広がりを聴かせる。監督が求めた「スマホ的音楽」の回答のひとつなのだろう。最終話のエピローグでこの曲がもう一度流れる。
 2曲目の「明ける空」は第3話のラストシーンで使用。シンセと弦と木管が奏でるスペーシィな楽曲である。石塚玲依の解説によれば13/4拍子という特殊な拍子を使っているとのこと。重力を意識させないフワフワした感じを出すために変拍子を採用したそうだ。
 3曲目「地球」は第1話で地球から来た姉弟・美衣奈と博士が「あんしん」の窓から地球を間近に見て感動するシーンに流れた曲。40秒と短い曲だが木管と弦のアンサンブルが地球の美しさ、瑞々しさを表現している。この曲は生楽器主体のシンフォニックなサウンドで作られていて、1曲目、2曲目とは印象が異なる。「スマホ的音楽」とは別に「宇宙の要素はシンフォニックなサウンドで表現したい」という監督の希望に沿った曲である。
 4曲目「未来の記憶」は第1話の冒頭、登矢の見る夢のシーンに流れていた曲。これもシンフォニックサウンドによる曲で、不安の中に希望の光が差してくるような独特の曲調。第5話ではこの曲の編成の薄いバージョンが使われている。
 ここまで紹介してわかるとおり、アルバムの曲順は劇中使用順ではなく、『地球外少年少女』という作品を音楽で表現するコンセプトアルバム的な構成になっている。
 以下、気になる曲を紹介していこう。
 本作の音楽の特徴のひとつがマリンバ、もしくはマリンバ風のパーカッシブな音を使った曲が多いこと。「日常と重力」(トラック6)、「あんしんアトモスフィア」(トラック7)といった日常系の楽曲では、マリンバが少しユーモラスなテイストで使われている。
 「あれれれれれ」(トラック7)も同系統の曲だが、こちらはピアノと木管を主体にしたアコースティックなサウンド。インドの民族楽器ウドゥも用いられている。民族楽器を加えることで、どこの国の音楽とも判別できないサウンドになった。宇宙の描写に民族楽器を使う例はアニメ『ΠΛΑΝΗΤΕΣ[プラネテス]』でもあり(こちらは邦楽器を使用)、意外と相性がいいのである。
 シンセ主体の「RANDOM SEQUENCE」(トラック9)も日常シーンを想定した同じ系統の曲。シンセで一定のフレーズがランダムに繰り返されるように設定し、バックのリズムもランダムに生成されている。実に現代的で実験的。こういう曲が日常曲として用意されているのが本作の面白いところである。
 「ユーモアのスイングバイ」(トラック10)はシンセのパーカッシブな音とピアノなどを組み合わせた、のんびり系の日常曲。第3話くらいまでは、こういう曲が流れる場面が多い。
 第1話の終盤で宇宙ステーション「あんしん」にトラブルが発生し、緊迫した状況になる。緊張感が高まる場面や危機をはらんだスリリングな場面に使われたのが、「HIGHER VELOCITY」(トラック18)以降の英語タイトルの楽曲群だった。
 アルバムでは、「HIGHER VELOCITY」「SYSTEM DOWN」「ACCESS&CONTROL」「CRISIS FREQUENCY」「COUNTDOWN TEMPO」とサスペンス系の曲が続く。シンセのパーカッシブな音に弦や木管、ピアノなどがからみ、メロディよりもリズムやサウンドで不安感や緊迫感を表現する曲になっている。緊張感と同時に、どこか軽やかさもあるのが特徴である。
 同じサスペンス系の曲でも「出発と彗星の飛来」(トラック17)はストレートな映画音楽風。第3話で登矢たちがステーションの外に出て活動を始める場面のためにフィルムスコアリングで作られた。ほかにも第2話や第4話で使用されている。弦楽器のフレーズがじわじわと緊迫感を盛り上げ、金管とパーカッションが加わって危機感をあおる。手に汗にぎるような状況をオーケストラが描写していく。ここぞという場面にシンフォニックな音楽が流れる効果は抜群で、聴きごたえがある1曲だ。
 トラック28の「七瀬・Б・心葉 “ensemble”」は、本作のヒロイン、七瀬・Б・心葉のテーマ。心葉の少し神秘的で儚いイメージがストリングスとフルートで表現される。第1話の心葉登場シーンから使われている曲である。
 その変奏である「七瀬・Б・心葉 “piano”」(トラック29)は、物語終盤の心葉の場面のために用意されたが、そのシーンでは使われなかった。代わりに最終話のラストでこの曲の冒頭部分が流れる。ぜひ、耳を澄ませて観ていただきたい。
 トラック31以降に収録された楽曲は、いずれも第4話以降の展開に向けて用意された曲である。前半で多用されるパーカッシブな楽曲とはがらりと雰囲気が変わっている。
 「セカンド・セブン」(トラック31)と「ルナティック」(トラック33)はAIの進化をテーマにした曲。ゆったりとしたメロディがオーケストラによるシンフォニックなサウンドで奏でられる。この曲調にたどりつくまでにそうとうな苦心があったことが解説書で語られている。「Sパターン」(トラック32)もAIがらみの曲だが、こちらはシンセとオーケストラが奏でるミニマルミュージックだ。
 トラック34「どこでもない場所の中間」は第6話(最終話)で登矢とAIが対話をするシーンに使用された曲。「未来の記憶」(トラック4)や「セカンド・セブン」と共通する雰囲気がある。「どこでもない場所の中間」とはAIのセリフに出てくる言葉だ。最終話ではこの曲がいくつかのシーンで使用されている。本作のテーマに結びつく重要な曲のひとつと言えるだろう。
 「誰にもわからない未来」(トラック35)は最終話のクライマックスとなる登矢と心葉のシーンで使われた。劇場上映に合わせてBSフジで放送された特番「メイキングオブ『地球外少年少女』後編」に、この曲について打ち合わせするシーンが映っている。「スマホ的音楽を作るときは理詰めで考える部分があったが、最後(の曲)は感情の勝負になりました」という石塚玲依の言葉が印象深い。本作の音楽の中でもとりわけ美しいメロディを持つ曲である。
 続いて流れたのが「はじまりの時代」(トラック36)。大団円の曲である。正統派の映画音楽を思わせるスケールの大きな曲だ。スマホ的音楽からスタートし、この曲に着地する振り幅の広さが『地球外少年少女』の魅力を象徴している。

 2045年の宇宙時代の子どもたちはどんな音楽を聴いているだろう。スマホ的な音楽に囲まれているかもしれないし、昔ながらの生楽器の音楽も残っているかもしれない。『地球外少年少女』のために石塚玲依が作り上げた音楽は、宇宙の日常に流れる音楽を先取りした、ちょっと未来の音楽なのだと思う。

地球外少年少女 オリジナルサウンドトラック
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【新文芸坐×アニメスタイル vol. 167】
2013年と2023年のTRIGGER!!

 11月25日(土)に新文芸坐とアニメスタイルの共同企画で『リトルウィッチアカデミア』(2013年)、『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』(2015年)と『グリッドマン ユニバース』(2023年)を上映します。ブログラムタイトルは「2013年と2023年のTRIGGER!!」です。

 『リトルウィッチアカデミア』のトークのゲストは吉成曜監督、アニメーターの金子雄人さん、坂本勝さん、半田修平さん。『グリッドマン ユニバース』のトークのゲストは雨宮哲監督。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。
 『リトルウィッチアカデミア』は若手アニメーター育成プロジェクト「アニメミライ2013」の一作として制作されたもので、金子さん、坂本さん、半田さんは若手アニメーター枠で参加しています。その後、三人はアニメーターとして活躍。坂本さんは『グリッドマン ユニバース』ではキャラクターデザイン 、総作画監督を担当しています。そんなかたちで、TRIGGERの10年ほどを振りかえるプログラムとして企画しました。

 チケットは11月18日(土)から発売です。タイムテーブル、チケットの発売方法については新文芸坐のサイトをご覧になってください。なお、当日は「吉成曜画集 イラストレーション編」「吉成曜画集 ラクガキ編」等のアニメスタイルの書籍を販売する予定です。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 167】
2013年と2023年のTRIGGER!!

開催日

2023年11月25日(土)

会場

新文芸坐

料金

『リトルウィッチアカデミア』『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』 一般2800円、各種割引 2400円
『グリッドマン ユニバース』 一般1900円、各種割引 1500円

トーク出演

『リトルウィッチアカデミア』『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』吉成曜、金子雄人、坂本勝、半田修平
『グリッドマン ユニバース』雨宮哲

上映タイトル

『リトルウィッチアカデミア』(2013/26分)、『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』(2015/56分)
『グリッドマン ユニバース』(2023/118分)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第829回 『いせれべ』の話(16)~新アニメ企画

 お茶濁しやら別のネタやらが挟まり、先延ばしになっていた

『いせれべ(異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する)』の話!

 大雑把にですがいったん締めたいと思います。
 田辺(慎吾)監督の方が先に走って、総監督(俺)が修正で追っかけてきたこのシリーズも、当然最後は追いつき共同監督(演出)作業に。且つ自分の方は作画も兼任。実際の話、作画の質を守ろうとすると本来は演出から手を出さなければならないはず。結局、自分のようなアニメーター出身監督は最終的には演出・作画両方を攻めに行かざるを得なくなるわけです。昨今のスポンサーサイドは、暗黙でそれに期待してたりします。
 『いせれべ』に関しては全話通して、芝居の調整・チェックや撮影・リテイク対応は田辺、アクション系作画サポートとそれらに付随する撮影・リテイク対応は板垣、キャラ修は木村(博美)。おおむねこの布陣で、各話数のそれぞれの状況に応じた作画スタッフを、木村と相談しつつ俺の方で配置。100~200の未着手カット&リテイクカットの交通整理。つまり、その中から板垣ラフ原担当カットを先に抜き、原画に撒くカットと作監に入れるカット、はたまた仕上げデータに直接作監修正するカット、撮影処理も駆使して費用対効果のよい直し方を考えて、最短距離のショートカットを指示するのが自分の仕事でした。1カットでも多く木村作監カットを増やすため、無駄に眠るカットはこちらで解決してしまおうというのが狙いでした(※余談ですが、以前お手伝いした某作に於ける“プロダクションアドバイザー”なる役職はこれに近い仕事内容だったかと)。
 今作『いせれべ』ではEDクレジットで“総作画監督”として木村と連名になっていますが、自分がやってた作業で一番重要だったのはむしろこういった、作画コーディネーター的立ち回りの云わば“作画総指揮”。例えば、エフェクト作画があったら、まず撮影さんのとこに行って「俺の方で煙まで作画するので、画面右上にボケ処理と、ゴミ(タタキ)散らしてください」とお願いし、それを持って「作画スタッフの○○さんに俺のラフを直動画にしてもらって~!」と手配したり。10話のテニスシーンとかも、木村さんの方に「林(隆文)さんのラフを△△さんと□□君に清書してもらうので、その上に顔と手だけキャラ修正お願い! 追い付かないようだったら2人に清書のリテイク出していいから!」と、そこまで指示したりもしました。

何はともあれ、ミルパンセのスタッフ全員、本当によく頑張ってくださり、ありがとうございました!

 現在は『沖ツラ(沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる)』の制作に移っていますが、『いせれべ』の制作体制をさらに効率よく進化させた作り方を色々模索しながらコンテチェックしています。こちらの方も語れる時期が来たら、ということで。

 『いせれべ』に関しては新アニメ企画の告知も発表された以上、また後程続きを語ることになるでしょう。

アニメ様の『タイトル未定』
418 アニメ様日記 2023年5月28日(日)

2023年5月28日(日)
新文芸坐で「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を観るつもりだったが、片づけなくてはいけない用事が沢山あって、映画に行くと翌日がヤバいと判断してあきらめる。
朝の散歩では、サブスクで「TVアニメ『ヒーラー・ガール』オリジナルサウンドトラック」と、同作の劇中歌アルバム「Singin’ in a Tender Tone」を聴いた。

今までの『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの流れを確認する。
…………
2012~2013年/PSYCHO-PASS サイコパス
2014年/PSYCHO-PASS サイコパス 新編集版
2014年/PSYCHO-PASS サイコパス 2
2015年/劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス
2019年/PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System「Case.1 罪と罰」
2019年/PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System「Case.2 First Guardian」
2019年/PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System「Case.3 恩讐の彼方に__」
2019年/PSYCHO-PASS サイコパス 3
2020年/PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR
2023年/劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE
…………
劇中の時系列を確認すると『Sinners of the System』の「Case.1」と『PROVIDENCE』以外は制作順と劇中の時系列が合っていて、「Case.1」は第1期の前の話。『PROVIDENCE』が「Case.3」と『サイコパス 3』の間なのね。自分が観てないのがどれなのかも分かった。と言いつつ、第1期の記憶も淡くなっているなあ。

2023年5月29日(月)
仕事の合間に、グランドシネマサンシャインで「雄獅少年/ライオン少年」【吹替版】 を観る。SNSでやたらと評判がよかった映画だ。現時点でのCGアニメーション映画としては物量が凄い。特に背景部分。通常の劇映画のように、ガンガンとカットを割って、背景を見せるロングショットも作る。ロングショットで感心したところもあった。CGアニメーション映画で「映画らしい映画」を作れるようになったのだと思った。この映画のドラマについては誉めることもできるし、文句も言える感じ。ビジュアルがリアル寄りで、話もアニメーション映画としてはわりとリアルで、そんな作品でどんな面白さを提供していくのかが難しいとも思った。しかし、この「難しい」というのは10年も経てば「あの頃はそんなことを考えていた」と思うようなことかもしれない。
『トニカクカワイイ』8話が面白かった。特に他の客が帰った銭湯で、夫婦二人で女湯に入るシチュエーションがよかった。原作由来の面白さなんだろうけど。実写だと成り立たないラブコメだ。

2023年5月30日(火)
『PSYCHO-PASS』シリーズを観直すことにして、第1シリーズから観るか、新編集版から観るかでちょっと悩んで、第1シリーズを観ることに。1話を観て「この子(常守朱)があんなに立派になって」と思ったり。16話の途中まで流し観。『PSYCHO-PASS サイコパス』ってどの層に受けているんだろうと思っていたら、事務所の女性スタッフが、モニターに『PSYCHO-PASS』が映っているのに気づいて「きゃあ」と声を上げた。最近『PSYCHO-PASS』にハマってAmazon prime videoで繰り返し観ているのだそうだ。やっばり狡噛のファンであるらしい。今、タイプしていて気がついたけど、ATOKの変換候補に「狡噛」があった。
仕事の合間にグランドシネマサンシャインで「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を観る。ワイフが観たがっていて、付き合いで観た。TVドラマの番外編としては豪華な作品で、1本の映画としては少し物足りない感じ。かなりゆったりと物語を進めていて、それ自体はいいんだけど、ここはテンポアップしてもいいかなと思うところもあり。映像については、バストアップやアップカットが多くて、普通なら「映画的でない」と思うところだけど、不思議とスクリーン映えした。一部のカットを別とすれば「こういう撮り方の映画もあり」と思えた。ルーヴルが舞台になっている部分よりも、露伴が若かった頃の回想のほうが力が入っていて、そのシークエンスは楽しめた。回想に出てくる女性が官能的なのもよかった。平日の昼間の回だったが、意外とお客は入っていて、若い女性が多かった。姿は見ていないけど、お年を召した女性もいたようだ。役者のファンだろうか。

2023年5月31日(水)
新文芸坐で「モリコーネ 映画が恋した音楽家」(2021・伊/157分/DCP/ドキュメンタリー)を鑑賞。エンニオ・モリコーネについてはほとんど知らなかったのだけど、映画が観ながら「ああ、この曲は知っている」「この曲も聴いたことがある」と思って感心する。ドキュメンタリーとしての構成は巧みで、集めた映像の量も凄い。それから音がいい。どんな魔法を使っているのか分からないけど、昔の録音も音がクリアで立体感がある。映画としては長めだけれど、この長さも作品の主張の内だと受け止めたい。
事務所では引き続き『PSYCHO-PASS』を流し観。この日は1期の17話から『2』の3話まで。朝の散歩ではサブスクで『PSYCHO-PASS』のサントラを聴いた。

2023年6月1日(木)
午前中でこの日の作業を終えて、ワイフと日比谷に。TOHOシネマズ日比谷で「TAR/ター」を鑑賞する。TOHOシネマズ日比谷のスクリーン12はスクリーンも大きくて、音響もよくて、非常に贅沢な鑑賞だった。これで通常料金でいいの? と思ったくらいだ。「TAR/ター」は物語そのものはシンプルで、雰囲気を楽しむ映画だと思った。映画としての満足度は高い。ワイフの希望で日比谷から新橋まで歩いて、路に置かれたテーブルで呑める居酒屋で呑んだ。風があったのでなかなか快適だった。

2023年6月2日(金)
仕事の合間に新文芸坐で「海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版」【4K上映】(1999/伊=米/121分/DCP)を鑑賞。プログラムタイトルは「オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐」vol. 3」。プログラム「映画音楽の巨人 モリコーネの遺産」との連携企画だ(後日追記。このあたりは毎日映画館に行っていて、自分で読み返して驚く。「アニメスタイル017」の編集作業が一山越えて、安心して映画館に行ってるのだろう)。「海の上のピアニスト」はタイトルと物語の概略だけ知っていて、観るのは初めて。主人公のピアニストは繊細で、運命に弄ばれているような青年なのだろうと勝手に思っていたけれど、ピアニストはグイグイいくタイプの変わり者だった。それから、想像してたよりも年齢が上だった。映画全体としてはエンタメ寄りで、これも予想と違った。人物とシチュエーションは面白いんだけど、ラストの展開は納得できなかった。ただ、自分が若い頃に観たら、あの展開に納得したかもしれない。「海の上のピアニスト」は170分版と121分版があるらしいけれど、「4Kデジタル修復版」は121分版。確かに設定や描写に対して物語の量が少ない感じはある。船のセットは素晴らしい。終盤のピアニストと友人が会話するシーンで、1カットだけ背景がセットではなく、セットの写真を使ったものになっていた(はず)。何かの理由で後から撮り直したカットか。背景が写真であるのは「4Kデジタル修復版」の4K上映でなければ気がつかなかったかもしれない。新文芸坐での上映は特に音響を調整したもので、全体に聴き応えあり。序盤で登場人物の1人が楽器屋でトランペットを吹くのだけれど、その音がびっくりするくらいよく響いていた。
SNSで映画「20世紀ノスタルジア」が話題になっていて、配信にあったので観てみる。主演の広末涼子さんは猛烈に可愛いし、ほぼ全編出ずっぱり。しかも、僕っ子だ。広末さんを楽しむという意味では100点満点のフィルム。ただし、公開時に出来に不満を持った人がいるのも分かる。Wikipediaには「広末涼子がブレイクする前の1995年8月に撮影が開始されたものの、制作は一時中断。広末がブレイクした後の1997年1月に撮影を再開した。それに合わせてシナリオも改変され、1995年撮影分の多くが夏休みのシーンとなり、1997年には主に2学期のシーンが撮影された。」とある。1995年8月なら広末さんは15歳、1997年1月なら16歳。劇中で広末さんがかなり若く見えるところがあるけど、それは15歳の時の撮影とか、そういうことだろうか。

2023年6月3日(土)
「第205回アニメスタイルイベント ANIMATOR TALK 亀田祥倫」を開催。アニメスタイルのイベントとしては、コロナ以降で初めてMaxまでお客さんを入れる設定だった。一般客席が90人で関係者席が10人。関係者席は少し余裕があったけれど、一般客席は完売。若い女性のお客さんが多いので、四半世紀前の話が中心で大丈夫かとも思ったが、気にしないで進める。第一部は亀田祥倫さんの自身のルーツについて。『新世紀エヴァンゲリオン』から『彼氏彼女の事情』。本田雄さんから今石洋之さん。そして、今石さん追っかけの日々。『フリクリ』。そして『るろうに剣心 星霜編』『幽★遊★白書』。当時の雑誌の切り抜きなどを見せながら話が進む。「この人に話を聞きたい」の今石さん回が亀田さんに影響を与えたことが判明。「金田伊功Special」の表紙が見える写真を使ってよかった。注で金田さんのことを書いておいてよかった。とにかく亀田さんが話が上手いので淀みなくトークが進む。配信のない第二部では亀田さんが作監修正に描いているラクガキを披露。直す必要のない原画で、何も描かないで戻すのが申し訳ないので、関係ないアニメやマンガのキャラを描いている場合、修正した原画の空いているところに関係ないアニメのキャラを描いている場合、さらにポーズや構図の直しを関係ないキャラで描く(例えば、Aという作品のBというキャラクターの修正を、Cという作品のDというキャラで描く)。その後はお客さんに書いてもらったアンケートの話題。僕が『王様ランキング 勇気の宝箱』の亀田演出回について話したり。ラクガキ披露が盛り上がったので、亀田さんが用意してくれたもうひとつのネタは次回のイベントに持ち越し。全体として楽しいイベントとなったはず。

以下は、この頃にSNSで書いた相米慎二監督作品の感想だ。
「翔んだカップル オリジナル版」の感想は「アニメ様の『タイトル未定』 415 アニメ様日記 2023年5月7日(日)」の文末に載せた。

(1)「セーラー服と機関銃 完璧版」(1982/131分/35mm)
相米慎二監督の第2作。「完璧版」でないほうの、最初のバージョンは公開時に劇場で観ている。同時上映が「燃える勇者」で真田広之ファンの女友達に付き合って観に行ったのだ。当時の自分は高校生で、相米慎二監督の演出に感心はしたのだけれど、「邦画ってこんな感じなんだ」とヌルい感想を抱いた。
再見すると、究極のアイドル映画なのではないか思えるほどの充実した仕上がり。実際には「大人目線」が強過ぎるので、通常の意味でのアイドル映画の枠からははみ出しているのかもしれない。公開時はその大人目線がちょっと嫌だった。今では大人目線で映画を作ったスタッフ達の気持ちが分かってしまう。この映画も長回しが多いのだけれど、長回しでもバストアップやアップを入れており、この前に撮った「翔んだカップル」と比べるとずっと観やすい。作家性と娯楽性の合致という意味でも成功作。
高校生トリオに対する言動がもっとも色濃いのだけど、星泉(薬師丸ひろ子)は「あの頃のマンガ、アニメによく登場していた独特の少女像そのもの」である。その少女像を言葉にすると「自意識が強くて、芝居がかった言動をとる」といった感じか。
いいシーンはいくつもあり、大仏の掌の上で、星泉が仏様みたいなポーズをとって、まわりでヤクザの子分達と高校生トリオが騒いでいる場面なんて、画を観ているだけでも楽しい。現場のアドリブでああいったシチュエーションになったのだろうけど、相米監督の才能の迸りを感じた。
そもそもが女子高校生がヤクザの組長になるというプロットであるから当然ではあるのだけど、リアルな話ではない。マンガ的と言ってもいい。その作り物っぽい物語とリアルさを追求する相米演出のバランスが意外と相性がいい。
この映画はクライマックスで星泉に(すなわち、薬師丸ひろ子に)「カイ、カン」と言わせるために、様々な描写を積んでいるのだということが今回の鑑賞で分かった(それが上に書いた「大人目線」と繋がっている)。最後にマリリン・モンローのパロディが入るのも意味があるのだ。このあたりのことは、もっと詳しく書いておきたいけれど、それはまた別の機会に。

(2)「魚影の群れ」(1983/140分/35mm)
相米監督の第4作。フィルモグラフィとしては「セーラー服と機関銃」と「魚影の群れ」の間に「ションベン・ライダー」が入る。「ションベン・ライダー」は10数年前に新文芸坐で観ており、その時に感銘を受けた。「魚影の群れ」はここまでの作品と違い、主要登場人物を大人で固めており、アイドル映画でもない。物語の決着については共感できないが、説明不足で分からないような部分はほとんどなかった。今回も長回しが多いけれど、作品にとってプラスに働いている。
主人公の小浜房次郎(緒形拳)はマグロを捕らえるのに夢中になり、船上で血まみれになって倒れている娘の恋人の存在を忘れてしまう。そのマグロを捕らえるところが長回しなのだが、長回しのおかげで、房次郎の「やっちまった」という気持ちが観客にダイレクトに伝わったと思う。
房次郎の娘のトキ子(夏目雅子)は、房次郎と縁を切って、前述の恋人と所帯を持つ。映画のクライマックス直前で、トキ子は房次郎に海で行方不明になった夫を探して欲しいと頼み込むのだが、その時に房次郎がトキ子にズボンやセーターを着せてもらうのが凄く嫌だった。別の言い方をすると刺さった。映画の序盤でも、房次郎がトキ子に面倒を見てもらっている描写があって、ああ、男っぼくて無骨なのに、娘に服を着せてもらうのか。というか着せてもらいたいんだろうなあ。気持ちは分かるけど、と思った。そういえば「セーラー服と機関銃」でも、星泉が「言わせていただきますと、ママが死んでからってものは、私はパパの娘であり、妻であり、母親ですらあったんですから、一応は。最後の面倒までしっかり見ておきたかったわけ」と言っていたなあ。

(3)「雪の断章 ―情熱―」(1985/100分/35mm)
相米監督の第7作。フィルモグラフィとしては「魚影の群れ」と「雪の断章 ―情熱―」の間に「ラブホテル」と「台風クラブ」が入る。「台風クラブ」は随分前に新文芸坐で観た。言うまでもなく、感心した。「雪の断章 ―情熱―」は以前にざっと観たけれど、きちんと作品に向き合ったのは今回の鑑賞が初めて。
まず、冒頭で主人公3人の回想を「14分間の18シーン・1カット」で撮っているのがとんでもない。「1シーン・1カット」が18あるのではなく、「1カットで18シーン」を撮っているのである。映像が凄すぎて、物語が頭に入ってこなかった。
「14分間の18シーン・1カット」で出てきた謎の人形が、映画のラストでも出てくるのだけれど、これの意味が分からない(好意的に解釈すると、運命に翻弄されるヒロインの別の姿か)。中盤で出てくる謎の道化師(?)と謎の人形は関係しているのだろうけど、やっぱり分からない。
独身男性の広瀬雄一(榎木孝明)が、辛い日々を送っていた幼い少女(8歳くらい)である夏樹伊織を養女にする。雄一の親友である津島大介(世良公則)も伊織と親しくする。10年後、伊織は高校生になった(ここから斉藤由貴が演じる)。雄一は女性として伊織を見ており、伊織も雄一を愛していた。しかし、育ての親と育てられた子という関係ゆえ、二人は気持ちを示すことができない。その一方で、伊織が殺人事件に巻き込まれ、刑事が伊織を追いかける。さらに大介が伊織にプロポーズをし、伊織は彼と結婚することになる。
本編も長回しの嵐。そして、小鳥を助けるために伊織が川に入る場面と、伊織がテトラポッドを降りていく場面が相当な体当たり。どちらも長回しで、後者は観ていてハラハラした。よくもアイドルにこんな撮影をやらせたものだ。
「14分間の18シーン・1カット」をはじめ、演出的にもドラマ的にもコテコテの映画。無茶苦茶と言えば無茶苦茶なんだけど、愛おしい映画でもあった。雄一と大介の気持ちがよく分かった。瞬間風速的に伊織の感情が高まるところがあって、それもよかった。
「翔んだカップル」も「セーラー服と機関銃」も「雪の断章」も高校生が酒を吞む場面があるんだけど、「雪の断章」は伊織が吞むシーンが多くて、楽しそうに吞んでいた。

(4)まとめ
「ラブホテル」は観ていないので何とも言えないけど、相米監督ヒストリーとしては「翔んだカップル」で始まって「ションベン・ライダー」「台風クラブ」で高まって、「雪の断章 ―情熱―」で勢いがついてやり過ぎちゃったという感じなのだろうか。次は「ションベン・ライダー」「台風クラブ」を再見して「ラブホテル」も観たい。その次は「光る女」以降を。

第828回 色々整理中

どこかのCMでAIタレント(この呼び方正しいのか?)を起用して話題になり、さらにそれに対して批判的なコメントを流した役者さんが炎上したとかしないとか……!

正直、それに関する是非を語るつもりはありません。ただ、あくまで個人的な意見としては、AI(人工知能)に人間の仕事を奪われることを極端に否定する方たちは「AI断固反対!」のプラカードを掲げて運動する前に、自身の守りたい仕事内容について、もう一度落ち着いて考えた方がよいとだけは思います。
 アニメ業界においても昨今、“AI導入”について話題になることが多いのも事実で、最近我が社にも「アニメ制作にAI導入するため、現状のアニメーター作業を教えて欲しい」との相談がありました。もちろん、自分は反対プラカードを掲げる側ではないので当然協力し、開発の方に“現状の原画作業と動画作業について”を詳しく説明し、「こんな作画ツールがあると、動画人員不足を補えるのでは?」との提案をさせていただきました。
 つまり、時代が一回りして昭和の既得権益を維持しようとしている、選ばれしお金持ち人間が現状維持を叫び、俺みたいに儲かった経験もない人間は

AIに限らず新しい技術をどんどん取り込んで、新しい制作体制でアニメを作りたい!!

と、非常にシンプルに考えています。究極の究極、AIの導入により、自分の仕事に需要がなくなって食えなくなったら「仕事を辞める?」と、自問してみると「稼げなくても続けたい」という答えしかないのですよ、板垣は。
 間違っても、

「現状のやり方を変えたくないし、現状の仕事内容に+αを課すことも拒否するくせに、収入も減らしたくないし、勉強も努力もしたくない」だけの人に、“進化”を止められるのだけは本気でゴメンです!!

 元々、金持ちになった経験のない俺にとって“相次ぐ作業工程の変化”や“月15〜20万生活”など怖くもなんともありません。AI拒否を謳ってる方々の中でも、今現在なかなか上手く生活できていない人が「食えなくなる」と悲鳴を上げるのは理解できるし、それこそは国が何がしかの支援を考えるべきだと自分も思います。ただ、現状好きなこと・得意なことを職業にし、かつ莫大に稼いで豪遊している一部の富裕層らが仰る「AIに仕事を取られてなるものか!!」は、俺からすると「AIなんか出回っちゃったら、“今までみたいに楽しく稼げる仕事が回ってこなくなる”じゃないか!!」と目くじら立ててるようにしか聞こえないのです。だって、十分貯えがあるのなら、それを切り崩して暫く生活できるはずで、(稼ぎは減るけど)次の手を考えればいいだけでしょ?

第268回 ギフトの気持ち 〜北極百貨店のコンシェルジュさん〜

 腹巻猫です。劇場『北極百貨店のコンシェルジュさん』を観ました。イマドキの日本のアニメっぽくない小粋な作品でした。絵作りがヨーロッパの絵本みたいで、観ていて気持ちがいい。ストーリーも、昔の、笑わせてちょっとホロっとさせる劇場作品みたいで後味がいい。実際ホロっとしてしまいました。
 派手なアクションもないし、美少女が活躍するわけでもないけれど、心に残るものがある。大切にしたいなと思わせる作品です。もう上映終了している劇場も多いようですが、たくさんの人に観てほしいです。


 『北極百貨店のコンシェルジュさん』は2023年10月に公開された劇場アニメ。西村ツチカによる同名マンガを、監督・板津匡覧、アニメーション制作・Production I.Gのスタッフで映像化した。
 従業員は人間だが、お客はすべて動物という不思議な「北極百貨店」。そこで新人コンシェルジュとして働き始めた秋乃は、慣れない接客にとまどったり、気持ちが先走ったりして失敗続き。しかし、先輩のコンシェルジュやフロアマネージャーに見守られて、少しずつ成長していく。今日も北極百貨店には、大切なプレゼントやお気に入りの品を探す動物たちがやってくる。
 ユニークな設定の物語である。北極百貨店を訪れる動物は人間と同じように話をするし、その中には「絶滅種」と呼ばれる、地球上からすでに絶滅した動物もいる。いったいどういうからくりになっているのか、SFファンとしては説明を求めたいところだが、そういう作品ではないのだろう。筆者も、メルヘン、もしくは一種の寓話として楽しんだ。
 童話を思わせる設定の作品だから、音楽もアコースティックなサウンドのほんわかとしたものが似合いそうだ。ところが、作品を観たら、シンセサウンドを中心にしたビートの効いた曲が多い。これは意外だった。

 音楽を担当したのは、音楽プロデューサー、DJ、トラックメーカーとして活躍し、多くのアーティストに楽曲を提供しているtofubeats。2018年に映画「寝ても覚めても」の音楽を担当しているが、劇場アニメの音楽を手がけるのは本作が初めてである。
 tofubeatsの参加は板津監督の希望だったという。監督が以前からtofubeatsが好きで聴いていたことから、本作の音楽を担当してもらうことになった。板津監督はインタビューで、「電子音楽のもつ、現代的であるけどちょっと懐かしいような印象がほしいと思った」と語っている。
 実はtofubeatsと原作者の西村ツチカとは高校生の頃からの知り合い。監督はそのことを知らずに音楽を依頼したというから面白い。
 板津監督が希望したとおり、本作の音楽はシンセサイザーを使ったテクノ風の曲がメインになっている。現代的なテクノではなく、少しレトロな、懐かしい感じのテクノだ。北極百貨店という現実離れした空間に、テクノサウンドが不思議となじんでいる。たぶん、舞台が牧歌的な空間ではなく、百貨店という近代的な商業施設だからだろう。メルヘンではあるけれど、現代と通底する物語であるから、電子音楽が違和感なく聴こえる。そして、テクノの音が持つクールな響きが、洗練された、小粋な印象につながっている。もし、全編生楽器の音楽だったら、もっと古風な印象になったのではないか。
 本作のサウンドトラック・アルバムは、「映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』Original Soundtrack」のタイトルで2023年10月20日にアニプレックスから発売された。CDと配信の2形態である。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 北極百貨店のテーマ
  2. Gift(メインテーマ)
  3. エルルのテーマ
  4. 秋乃のテーマ(真剣)
  5. 北極百貨店のテーマ(春)
  6. クジャクたちのワルツ
  7. 全力疾走
  8. 求められること
  9. 秋乃のテーマ(一歩ずつ)
  10. ピメントスとひよこ豆のジュをあしらって
  11. この曲線の美しさ!
  12. 給仕長より
  13. ワルツよりおだやかに
  14. 背中を押せない
  15. ウーリーのテーマ
  16. サプライズ大作戦
  17. 北極百貨店のテーマ(秋)
  18. 秋乃のテーマ(お客様は神様)
  19. 厄介なお客様
  20. 絶滅種と人間
  21. クリスマス
  22. 秋乃のテーマ(悩み)
  23. 百貨店の思い出
  24. JOY TO THE WORLD
  25. 背中を押してくれる場所
  26. 飛べ!エルル
  27. 北極百貨店のテーマ(冬)
  28. Good King Wenceslas
  29. 【BONUS TRACK】
  30. 先輩コンシェルジュさん
  31. 秋乃のテーマ(背中を押したい)

 最後に収録された2曲のボーナストラックは未使用曲。トラック1〜28には、本編使用曲が使用順に収録されている。
 CDのブックレットにはtofubeatsによる全曲解説を掲載。それを読めば、各曲の作曲意図や聴きどころがわかる。気になる方はぜひCDを買って読んでいただきたい。
 以下、筆者の心に残った曲を紹介していこう。
 1曲目の「北極百貨店のテーマ」は冒頭のプロローグに流れる曲。北極百貨店のCMソングである。観終わったあと、つい口ずさんでしまいたくなる曲だ。
 本作のメインテーマは2曲目に収録された「Gift」という曲なのだが、映画音楽としては「北極百貨店のテーマ」のほうがメインと言ってよい。劇中にこの曲の変奏がたびたび登場するからだ。「北極百貨店のテーマ(春)」(トラック5)、「北極百貨店のテーマ(秋)」(トラック17)、「北極百貨店のテーマ(冬)」(トラック27)などである。それぞれ、シーンに合わせたアレンジがされているのがいい。終盤に流れる「北極百貨店のテーマ(冬)」は、のちに登場する「ウーリーのテーマ」と「北極百貨店のテーマ」を合体させたもので、感動的な曲に仕上がっている。
 「Gift(メインテーマ)」(トラック2)はtofubeatsの作曲による主題歌「Gift」のインストゥルメンタル版。歌入りは別売でサントラには収録されていない。インストゥルメンタルはメインタイトルから流れるが、ここでは控え目な印象だ。
 「北極百貨店のテーマ」と同様に本編でたびたび流れるのが主人公・秋乃のテーマ。「秋乃のテーマ(真剣)」(トラック4)、「秋乃のテーマ(一歩ずつ)」(トラック9)、「秋乃のテーマ(お客様は神様)」(トラック18)、「秋乃のテーマ(悩み)」(トラック22)と4曲のバリエーションが作られている。曲調はリズム主体のテクノ。tofubeatsのコメントによれば、「シンキングタイムみたいなテイストが秋乃かなと思って」こういう曲にしたのだそうだ。「考える秋乃のテーマ」といった趣で、メロディで主張しないところが本作の音楽らしい。
 北極百貨店に現れる個性的な動物たちに付けられた曲も印象深い。
 まず、「エルルのテーマ」(トラック3)。エルルは北極百貨店内をいつも歩いている謎のペンギン。どうやら客ではなく、北極百貨店の重要人物(動物)らしい。そのテーマは、シンセサイザーによるエキゾチックな舞曲みたいな曲。初登場時の、少しコミカルで謎めいた雰囲気が表現されていて楽しい。
 「クジャクたちのワルツ」(トラック6)は、店内で求愛行動を始める孔雀カップルの曲。宝塚歌劇風のゴージャスな音楽は、いっぱいに広がった孔雀の羽根の華麗なイメージだ。
 「ウーリーのテーマ」(トラック15)は、tofubeatsが「個人的に一番好き」とコメントしている曲。ウーリーは絶滅したケナガマンモス。造形作家であり、北極百貨店内に作品が展示されている。そのテーマ曲は、キラキラした音を使った浮遊感のあるサウンドで奏でられる。ウーリーの芸術性を表現したのだそうだ。
 本作を観て心に残るシーンのひとつが、「絶滅種と人間」(トラック20)が流れる場面だと思う。なぜ北極百貨店に絶滅した動物が客として訪れ、人間がおもてなしをしているのか。そんな疑問への回答がエルルの口から語られる。この曲は「北極百貨店のテーマ」の変奏のひとつ。聴いていると、絶滅した動物への哀悼や人間の罪深さへの嘆きなど、さまざまな感情が呼び起こされる。しかし重くはなく、シンセサイザーの音色は未来に向かってすべきことを問いかけているようだ。本作の隠されたテーマを表現した曲とも言えるだろう。
 トラック24「JOY TO THE WORLD」とトラック28「Good King Wenceslas」は、クリスマスを迎える北極百貨店内のBGM。「JOY TO THE WORLD」は「もろびとこぞりて」の曲名で有名な讃美歌。「Good King Wenceslas(ウェンセスラスはよい王様)」は古いクリスマス・キャロルである。どちらも、うたたね歌菜がオーケストラ曲にアレンジしている。本編の音楽がテクノなので、オーケストラサウンドが聞こえてくるのは特別感があってよかった。特に「Good King Wenceslas」は本編のラストを飾る曲。最後に思い切り盛り上げて終わる音楽設計がうまい。
 作品はこのあとエピローグになり、プロローグに使われた「北極百貨店のテーマ」がもう一度流れる。エンディングは主題歌「Gift」の歌入り。主題歌とサントラを両方入手すれば、プレイリストを作って本作の曲順を再現することも可能だ。

 この作品、クリスマス頃に公開したほうがよかったのではないかなと思う。そのほうがクリスマスの音楽が生きるし、気分も盛り上がるだろう。
 作品の中でくり返し描かれるのは、大切な人へ贈り物を届けたいという想いである。tofubeatsらによる音楽も、劇場作品への、そして作品を観に来た観客への贈り物=ギフトだ。サウンドトラックを聴けば、ギフトをもらったときの温かい気持ちがよみがえる。その気持ちを、また誰かに渡したくなる。

映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」Original Soundtrack
Amazon

第827回 ファンが拘るところ

4Kレストアによる高画質化! ファン待望の第33話以降の初Blu-ray化の実現!

ということで、少々遅ればせながら『あしたのジョー』Blu-ray1・2を買いました。”第33話以降の初Blu-ray化”というのは、以前発売されていたBlu-ray BOXは途中で発売中断になったからです。それを聞いていたため「全巻揃ってから買おう」と思っていた俺は結局買わずじまいでした(ぴあDVDも出たし)。
 で、今度は「全話揃う初Blu-ray化」とあったので纏めて購入。

確かに昭和45年当時の“セル重ね”まで全て見渡せるほどの超高画質!!

本当に数々の名場面が鮮明な画面で蘇るって感動! 素晴らしい!!

——ですが、信じたくないことに、

各話エンディングが! まさかオープニングも!? レーザーディスク版のほうに戻ってる!?

 説明すると、DVD BOX版の際に「可能な限り、当時のクレジットを再現しよう」と、発掘された「各話に合った正確なOP・ED」が収録されていないのです! 一体どーなってるのですか!?
 以前(VHS/レーザーディスク)版のEDテロップは、出﨑統監督名物(?)“脚本を使わない”で、脚本家さんより「テロップを外してくれ」との要請があり、再放送用に“脚本テロップ間”を前後のジョーの走りカットで潰したバージョン、さらにその際“演出クレジットを基準のローテーション”で各話を差し替えたため、原画マンを始めとするスタッフクレジットが各話数に付合していない——つまり、クレジットが“半分デタラメ”ってことです。
 DVD BOX版ではその拘りから、全話本物のEDを収録(脚本家クレジットも復活)! 正規のEDが発見できなかった話数(3本ほど?)に関しては、演出クレジットのみを載せたWOWOW放送用特別編集版を収録したくらい、”間違いクレジットを正す”が徹底されていたのです。DVD BOXのライナーノートにはその旨が詳しく書かれており、DVDが最新版だった頃の自分は、そのオリジナル再現度に歓喜したモノでした。

 それが、今回待望のBlu-ray化なのにコリャないですぜ……(涙)。

だって、本来第1話に使用した“演出 出崎統”のクレジットも、それ以降の出﨑監督のペンネーム“演出 崎枕”クレジット版のEDに統一されていたり……。もっと悔しいのは当時ファン待望力石徹登場を祝した(?)“力石版インストED(第9話のみ使用)”までもが、せっかくDVD版で発掘されていたにも拘わらず、こちらも今回のBlu-rayには未収録。

どうしてこうなったのか、誰か教えてください!!

※ただ、悪い事ばかりではなく、WOWOW放送版をマスターとしたDVD BOX版では本編から消されていた(こちらは各話ラストカットを“尻止め”て雑に潰されていました)、シリーズ後半で毎話ラストの「次週へ」の締めは今回Blu-rayで復活していました(嬉)!!!

第215回アニメスタイルイベント
演出家トーク 本郷みつる&原恵一

 12月2日(土)昼に本郷みつる監督、原恵一監督のトークイベントを開催します。

 数々の作品を手がけてきたお二人に若き日の作品についてのお話をうかがう企画で、『クレヨンしんちゃん』以前の作品が中心になると思われます。今回も聞き手はアニメスタイル編集長の小黒が務めます。お楽しみに。

 今回のイベントもトークの一部を配信します。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。
 アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

 チケットは11月4日(土)正午12時から発売。購入方法については阿佐ヶ谷ロフトAのサイトをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/268265
Livepocket(会場) https://t.livepocket.jp/e/bjg1p
ツイキャス(配信) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/271338

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第215回アニメスタイルイベント
演出家トーク 本郷みつる&原恵一

開催日

2023年12月2日(土)
開場12時30分/開演13時 終演15時~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

本郷みつる、原恵一、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
417 アニメ様日記 2023年5月21日(日)

2023年5月21日(日)
前夜の『僕の心のヤバイやつ』がよかった。気持ちを乗せて観ることができた。
14時から17時半まで午睡。MAPPA STAGE 2023に途中から参加。片渕さんの新作コーナーと『アリスとテレスのまぼろし工場』のコーナーを見る。片渕さんの新作のタイトルが発表になった。『つるばみ色のなぎ子たち』だ。アニメスタイルの「ここまで調べた~」イベントは次回から「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」になるはず。

2023年5月22日(月)
『青のオーケストラ』のCGのキャラクターと手描きキャラクターの印象の近さは画期的だなあ。
以下は別の話題。どの作品かは書かないけど、数日前、ある深夜アニメを観て「演出がないとはこのことか」と思った。原作にあるセリフをキャラクターがそのまま言っているんだけど、原作未読の人にはそのセリフの意味が分かりづらいはず。そのセリフは文字で読むと面白さが分かりやすいが、音だけだと分かりづらいのだ。やりとりを足して、それが面白いセリフであることを強調することもできるだろうし、セリフを足さなくても、役者さんがちょっと含みを持たせた芝居をすれば、面白さが分かりやすくなったはず。「演出がない」と言ったけど、プロデューサーや音響監督が指示すれば済むことだ。それとも、強調すらせず、原作のセリフをそのまま言わせるという方針なのか。これは大きな問題に繋がっている話かもしれない。
寝不足で体調もよろしくなかったので、マンションに戻って横になる。18時半くらいに起きて事務所に。新文芸坐の19時30分からの回で「セーラー服と機関銃 完璧版」(1981/131分/35mm)を鑑賞。ブログラム「二十三回忌 哀惜・相米慎二」の1本。かなり面白かった。詳しくは、また改めて。

2023年5月23日(火)
まとまったテキスト作業はないのだけれど、やることが多い。
ワイフとグランドシネマサンシャインで「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」【字幕版】を鑑賞。IMAXも上映中だったが、ワイフが3D上映を避けたいと言うので通常上映で観た。SNSでの評判がよかったのだけれど、それも納得の出来。キャラ立ても、各キャラの見せ場の作り方も上手いし、見せ場の数も多い。キャラクターもののお手本みたいな仕上がりだと思った。クライマックスの集団バトルは作りが上手かった。通常上映でも充分に楽しめた。

2023年5月24日(水)
WOWOWでやっていた「ミュージカル『るろうに剣心 京都編』」をチラと観る。キャラの再現度がなかなか。特に志々雄がよい。相楽左之助と悠久山安慈がラップバトル(?)をやったのも面白かった。
この日は久しぶりに余裕をもって仕事が進められた。

2023年5月25日(木)
SNSで実写版『超電磁マシーン ボルテスV』の動画の断片を観る。今までに観た動画も原作アニメのファンである自分にとって嬉しい仕上がりだったけれど、今回の動画もロボットの描写が素晴らしく、アニメじゃないけど「これぞ、アニメっ!」という感じ。作り手の「ロボットアニメ愛」が素晴らしい。
グランドシネマサンシャインで『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』【IMAXレーザーGT3D吹替版】を鑑賞。吉松さんも同行。シンプルな話で、尺も短めだけど、ちゃんと面白い。原作ゲームについては殆ど知らないのだけど、ゲーム要素の取り込み方も上手いのだろう。ピーチ姫の生い立ちについて何かあるらしいことが仄めかされていたけど、それは続編でやるのかな。
お客さんが事務所を訪れたので、近くのコーヒーショップに。近況を聞いたり話したり。
「アニメスタイル017」で大変なアクシデントが発生。アニメ雑誌の仕事は長いけれど、こんなことは初めてだ。

2023年5月26日(金)
やたらと忙しかった日。主には「アニメスタイル017」の作業。昨日のアクデントのためにページ数を大幅に変更することになり、どうするかを検討する。余裕があったら、新文芸坐で映画を観るつもりだったが、そんな時間はなかった。
亀田祥倫さんが演出した『王様ランキング 勇気の宝箱』の7話が、アニメーションとしてよかった。「演出はここまでできるんだ」とも思った。前日に観た入江泰浩さんが演出の『推しの子』7話もよかった。
ドラマ「名建築で昼食を 大阪編」の配信が全話始まっていたので、ながらで一気観。全6話なのですぐに終わった。お嬢さんっぽい感じだった春野藤(池田エライザ)が髪を切って大人びた感じになっていて、それだけでなく、物語中での藤の扱いが変わっていて、最初のシリーズにあった「初々しい若い女性と文系マニアおじさんの、同じ趣味を持った師匠と弟子だけど、ひょっとしたら恋愛になるかもと思わせる関係」が維持されていないのが残念。いや、前作からの続きなら、その関係がないのは当然だし、作品に対して誠実とも言えるんだけど。

2023年5月27日(土)
80%くらい休日だった日。午前1時頃に起床。まだ起きていたワイフが「こってりしたラーメンが食べたい」と言うので付き合うことにした。一度、事務所に入ってメールチェックをしてから、ワイフと外出。いくつかの候補の中からワイフが博多天神を選んで、そちらでラーメンをいただく。その後はワイフと深夜の散歩。朝の散歩やデスクワークを挟んで、昼はHUMAXシネマズで『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』を鑑賞。池袋の公開終了前日の鑑賞となった。内容について首を捻るところがあったのだけれど、劇場を出た時に、同じ回を観ていた子どもが親に対して「すっごく面白かった!」と言っていて、本来の対象である子どもが喜んでいるなら、自分が文句を言うべきではないかもなと思った。夕方は前から気になっていた「新時代 池袋西口店」でワイフと吞む。串が50円で、生中が190円の店なので、あまり期待してなかったのだけど、なかなかよかった。安くて美味しくて酒が進む。店構えからして、客はサラリーマン中心かと思ったけれど、自分達が行った時は若い女性ばかりだった。就寝前、ワイフにDVDとBlu-rayで「翔んだカップル」で薬師丸ひろ子が自転車でゴミ箱に突っ込む長回しのカット、「ションベンライダー」のファーストカット、「雪の断章 ―情熱―」の「18シーン・14分長回し」や、テトラポッドのシーン等を観せる。相米慎二ブームは続く。