第816回 モブとポーズ~『いせれべ』の話(8)

もう、忙しくてどこまで語ったのか忘れた! ま、とりあえず3話!

 いきなりですが3話はEDのスタッフ表記から、自分と木村(博美)の名前が漏れています。コンテ・演出に板垣、作画監督に木村、背景にも板垣がそれぞれ併記されるはずでしたが、あまりの忙しさにスタッフ表未確認で、気付いた時にはV編も終わっていたので、結局そのまま。
 つまり1話2話と同じくらい板垣・木村で修正した話数だということ。自分が憶えている中で一番大変だったのは「モブ」。ショッピングモール内の買い物客とか。たとえ作画的には“止め”でも、人をたくさん配置するのはやっぱり大変なモノです。
 最近のアニメーターや演出は、交通機関での移動中や歩いてる時もスマホばっか見て、普段街行く人々を観察していないせいか、1枚の画の中に何十人のポーズのバリエーションを描ける人がなかなかいなくて、「こっち向いてこんなポーズだってあるし、あっち見てあんなポーズもあるでしょう?」とスタッフの前で実演・説明して描き直してもらう。で、修正してもらったらもらったで、今度はデッサン・パースがダメ。結局、自分で直しに直しての連続。もう本当にクタクタになってしまい、皆が普段どれだけ“職業人としての観察”を怠っているか? を思い知った話数でした。このモブとの孤軍奮闘は後の話数でも繰り返されることに(汗)。
 俺はテレコム新人時代、大塚康生さんから

『太陽の王子 ホルス(の大冒険)』で、哀しみに暮れる村人らのモブシーンを描く時、宮崎(駿)は周りのスタッフたちに声を掛けて、各々演じてもらってポーズのバリエーションを作ってた~

と聞いたことがあります。後に原画修行中、田中敦子・友永和秀両師匠方にも「周りの人たちの観察を普段から怠ってはいけない!」と異口同音に言われていました。そのお陰で癖として「年がら年中観察眼」が備わっているようで、未だに電車に乗ってもイヤホンで音楽も聴かず、スマホも見ずに周りの乗客を観察する癖が抜けません。

そのあたりのスタッフ指導も、次作以降の課題です(ホント疲れた)!

他、3話では“イケメンモデルを投げ飛ばす優夜”のシーンは篠衿花さんが、大魔境での優夜アクションは中島楽人君がコンテの意図を拾ってカッコよく纏めてくれました。まだまだ、力足らずな部分はありつつも、社内スタッフが育っていくのは本当に嬉しいことです。
 「全員新人から会社を作る!」と決めたミルパンセでの作品作りは早10年越え。以前は余所様の会社(スタジオ)で好き勝手な凝ったコンテでアニメを作って来た30代——確かに演出や監督でそれなりに動画枚数を掛けたアクションものを作らせてもらえましたし、海外のアニメイベントに招待されるといった副産物(?)にもありつけたりしました。
 でも、その頃みたいな贅沢を捨てて、多少不本意ながら枚数を抑えてでも、自ら育成したスタッフで一から作るアニメ作り……今はまだ30点でもこれから40点50点と現場を成長させながら、“理想の作り方”を考え模索し続ける毎日の方が、本来俺の性に合ってるみたいです。過去よさようなら(冗談)!

第262回 進めばふたつ 〜機動戦士ガンダム 水星の魔女〜

 腹巻猫です。8月11日にサントリーホールで開催されたコンサート「オルガン×ベルサイユのばら」を聴きました。TVアニメ『ベルサイユのばら』の音楽をパイプオルガンで演奏し、俳優の七海ひろきさんがストーリーを朗読するという企画。TVアニメ版に準拠した内容で、パイプオルガンの演奏、七海ひろきさんの熱演がすばらしかったです。8月18日から24日までアーカイブ配信が1000円で視聴できるので、会場に行けなかった方、興味のある方はぜひどうぞ!
公演詳細
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20230811_M_3.html
視聴券購入
https://suntoryhall.pia.jp/ticket/zanmai-verbara.jsp


 7月26日に『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のサウンドトラック・アルバムが発売された。物理メディアとしてCD初回限定盤、CD通常盤、アナログ盤と3タイプをリリースする攻めた商品展開。なかでも、もっとも高価なアナログ盤が早々に売り切れ、9月に追加生産分がリリースされるというから驚きである(もともと生産数が少なかったかもしれない)。サウンドトラック・ビジネスの刺激になったという意味でも、注目のタイトルだった。
 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は2022年10月から12月までシーズン1が、2023年4月から7月までシーズン2が放送されたTVアニメ作品。
 モビルスーツ産業の最大手「ベネリットグループ」が運営するアスティカシア学園。学園内では生徒間の問題をモビルスーツ同士の「決闘」で解決するルールが定められていた。水星から編入してきた少女、スレッタ・マーキュリーは、なりゆきでベネリットグループの一翼を担うジェターク社の御曹司グエルと決闘することになり、水星から持ち込んだモビルスーツ・エアリエルを操縦してグエルに圧勝してしまう。それをきっかけにベネリットグループの総裁デリングの娘ミオリネと「婚約」したスレッタは、徐々に学園内で居場所を見つけ、友人を増やしていった。いっぽう、父からの独立・自立を目指すミオリネはスレッタたちを巻き込んで株式会社ガンダムを設立。仲間とともにガンダム技術を平和利用する道を切り拓こうとするが、ベネリットグループの勢力争いとガンダム技術をめぐる陰謀に巻き込まれていく。
 母から教えられた「逃げればひとつ、進めばふたつ」の言葉を胸に果敢に挑戦し、前に進んでいくスレッタの姿は、青春ドラマを見るようで勇気づけられる。スレッタとミオリネ、ふたりの女性キャラクターが中心になってドラマが展開するところも現代的で新鮮だった。

 音楽は大間々昂が担当。洗足学園音楽大学音楽学部で作・編曲を渡辺俊幸に師事、実写劇場作品「スマホを落としただけなのに」(2018)、TVドラマ「アトムの童」(2022)などの音楽で活躍する作曲家だ。アニメでは『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』(2017)、『君を愛したひとりの僕へ』『僕が愛したすべての君へ』(2022)などの作品がある。
 大間々昂のインタビューによれば、『水星の魔女』の音楽制作はTVシリーズに先がけて公開されたエピソード「PROLOGUE」からスタートした。「PROLOGUE」の音楽は画に合わせたフィルムスコアリングの手法で作られている。テクノ的なシンセのリズムを使ったサスペンス曲やピアノの旋律による心情描写曲、女声ボーカルをフィーチャーしたガンダムのテーマなど、『水星の魔女』の音楽の基本的なイメージが「PROLOGUE」で確立されている。
 TVシリーズの音楽は溜め録り方式で制作された。「PROLOGUE」で登場したモチーフも使いつつ、50曲ほどを制作。第2クールでは新たに必要になる音楽を補う形で20曲あまりが追加された。
 本作の音楽の特徴のひとつは、ガンダムシリーズでは珍しい、学園ものっぽい楽曲が作られていること。アスティカシア学園のテーマをはじめ、学園生活を描写する軽快な曲やユーモラスな曲などが日常シーンを彩る。こうした音楽が、ほかのガンダムシリーズにない味になっている。
 もうひとつ、株式会社ガンダムにまつわる音楽も特徴的だ。ミオリネを中心に結束していく学生たちを描写する曲や株式会社ガンダムの社歌なども、本作ならではの音楽と呼べるだろう。
 キャラクターをイメージした音楽では、スレッタの不器用な性格を表現する曲、ミオリネのツンデレぶりを表現する曲、デリング総裁の野心と冷たさを表現する曲などが性格描写に効果を上げている。スレッタの母プロスペラは複雑な背景と性格を持ったキャラクターであるだけに、同じモチーフで雰囲気の異なるバリエーションが作られ、シーンに応じて使い分けられていた。
 そして、本作の、またガンダムシリーズの音楽の醍醐味と呼べるのが、モビルスーツ戦の曲。本作では「決闘」としてモビルスーツ同士の対戦が描かれるため、特にシーズン1では、悲壮感よりもスポーツ的な躍動感を持ったモビルスーツ戦の曲が見せ場を盛り上げていた。「Get Ready for the Duel」と名づけられた「決闘」のテーマは本作を代表する楽曲のひとつである。
 「さすがガンダムだなあ」と思うのは、録音のぜいたくさだ。生楽器の録音は「PROLOGUE」のセッションが東京で、シリーズ本編のセッションはブダペスト、ウィーン、ローマで行われた。マスタリングもロサンゼルスのスタジオで行っている。各都市で楽曲をまるごと録るスタイルではなく、ブダペストでは木管とストリングス、ウィーンでは金管とストリングスと民族楽器、ローマでは女声ボーカルという具合に、都市ごとに異なる楽器を収録している。結果、メインテーマ「The Witch From Mercury」は、ブダペストで録った木管、ウィーンで録った金管とストリングス、ローマで録ったボーカルが共演する国際色豊かな楽曲になった。
 民族楽器を随所に使用しているのも本作の音楽の特色のひとつ。小林寛監督から「土くさい音楽がほしい」とのオーダーを受けて、南米のパンフルートやアルメニアのドゥドゥク、オーストラリアのディジュリドゥ、アイルランドのティンホイッスルといった多彩な民族楽器が使われた。古今東西の楽器を混ぜ合わせたサウンドは「新時代のガンダム音楽」という印象だ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは7月26日に「機動戦士ガンダム 水星の魔女 Original Soundtrack」のタイトルでバンダイナムコミュージックライブから発売された。CDアルバムは4枚組で、ディスク1に「PROLOGUE」の音楽、ディスク2と3にシーズン1で収録された音楽(セッション1)、ディスク3にシーズン2で追加された音楽(セッション2)を収録している。
 ディスク2&3に収録されたセッション1の音楽から紹介しよう。
 収録曲は下記を参照(ページ下のTrack List)。
https://sunrise-music.co.jp/list/detail.php?id=783

 ディスク2の1曲目はシーズン1のオープニング主題歌「祝福」のTVサイズ。ディスク3の末尾にシーズン1のエンディング主題歌「君よ 気高くあれ」のTVサイズを収録するオーソドックスな構成となっている。
 曲順は物語の流れに沿った形。ライナーノーツには大間々昂自身による全曲コメントが掲載されているので、「聴けばわかる」「読めばわかる」という内容だ。
 ディスク2の構成は、アスティカシア学園にやってきたスレッタがさまざまな出会いと経験を重ねて、友人を増やしていくイメージ。第1話冒頭で流れた「Cockpit」(トラック2)から始まり、学園のテーマ「Asticassia」(トラック3)が続く。「Cockpit」は本作の音楽の特徴のひとつであるテクノ的なシンセのリズムを使った緊張感のある曲。「Asticassia」は弦と金管がさわやかに奏でる曲。スレッタたちの胸に宿る希望や期待感を象徴する音楽である。このメロディはアレンジされて他の曲でも使われている。
 トラック3「Earth House」はスレッタが身を寄せる地球寮のテーマ。ギターや民族楽器を使い、素朴で温かいサウンドに仕上げられた。スレッタの「憩いの場所」みたいなイメージである。
 トラック7「Jeturk House」はグエルの横暴なイメージを重ねたジェターク寮のテーマ。第1話でスレッタとミオリネがグエルの決闘に巻き込まれそうになる場面からさっそく使われた。
 日常曲や心情曲を挟んで、ミオリネのテーマ「Miorine」(トラック8)、エランのテーマ「Elan Ceres」(トラック10)、スレッタのテーマ「Suletta」(トラック12)とキャラクターテーマが次々と現れる構成は学園ものっぽくていい。
 複数の顔を持つエランには、同じモチーフでいくつかの楽曲が作られている。中でもピアノと弦と木管をメインに奏でられる「Tell Me More About You」は、エラン(強化人士4号)とスレッタの交流の場面にたびたび使われて記憶に残る曲である。
 ディスク2の終盤には「決闘」シーンで流れた曲が登場する。
 「ジャジャジャジャン!」と勢いのあるイントロから始まる決闘準備の曲「Get Ready for the Duel」(トラック18)、決闘開始を告げる「フィックス・リリース」のセリフを受けて流れるバトル曲「Fix Release」(トラック19)、そして、メインテーマ「The Witch From Mercury」(トラック20)。この流れは完璧で、「『水星の魔女』といえばこうだよね!」と思わせる。
 「決闘」はルールに則ったバトルなので、「Get Ready for the Duel」や「Fix Release」は勇ましさはあっても悲壮感は薄い、スポーツもの的な曲調で書かれているのが特徴。
 メインテーマ「The Witch From Mercury」はスレッタとエアリアルのテーマでもある。カッコよさと同時に、スレッタの悲哀や心の叫びも表現する曲になっている。イタリア人歌手Clara Soraceによるボーカルがフィーチャーされて強烈な印象を残す。大間々昂は「登場人物の声にならない声、自分を曝け出す叫びのような物」を表現した、とライナーノーツで語っている。アルバムの中でもいちばんの聴きどころだ。
 ディスク2のラストを飾るのは「Will You Marry Me?」(トラック24)。ピアノとストリングスによるやさしい曲で、第3話でスレッタがグエルとの決闘に勝利した場面に流れた。第6話などでは、この曲のピアノのトラックだけを抜き出して使用している。
 ディスク3の構成はシーズン1の後半のイメージ。ミオリネが株式会社ガンダムを立ち上げ、仲間とともに困難を乗り越えていく。しかし、武装組織「フォルドの夜明け」の襲撃があり、スレッタたちは本物の戦闘に巻き込まれる……という展開だ。
 ミオリネの温室をイメージした「Greenhouse」(トラック1)、ミオリネのツンデレのイメージの「Tsundere」(トラック2)、仲間たちとの友情のテーマ「You are My Crew」(トラック3)と序盤は平和な曲が続く。
 トラック4の「Standing Up」は第8話で地球寮の生徒たちがカルド・ナボ博士のビデオを見てその理念に共感し、新会社の方向性を決める場面に流れていた感動的な曲。第8話ではそのあと株式会社ガンダムのPVが登場し、社歌「GUND-ARM Inc.」(トラック27)が流れる。社歌はボーナストラック扱いで、歌のないカラオケで収録されている。
 シーズン1の中盤から後半にかけて印象深い曲といえば、ガンダムの「呪い」を表現する「The Curse of GUNDAM」(トラック19)とエアリアルと対戦するガンダム・ファラクトのテーマ「GUNDAM PHARACT」(トラック9)だろう。
 チェロの音色が耳に残る「The Curse of GUNDAM」は第9話でエランがエアリアルのコクピットに座る場面などに使用。途中から民族楽器が入り、ミステリアスで不安な雰囲気をかもしだす。
 「GUNDAM PHARACT」は第6話のエラン対スレッタの決闘や第9話の地球寮対グラスレー寮の集団戦の場面に流れたバトル曲。クワイア風のコーラスが入り、重厚さと悲壮感がただよう。第12話の「フォルドの夜明け」の襲撃シーンにも使われていて、「決闘」だけでなく、実戦も想定した曲であることがわかる。
 ディスク3の終盤はスレッタたちが戦闘に巻き込まれる展開に合わせた緊迫した曲の連続になる。
 「Terrorism」(トラック23)は、武装組織の脅威を描写するサスペンス曲。敵の猛攻を描写する「Enemy Onslaught」(トラック24)は、第12話で襲撃に気づいた生徒たちが「訓練じゃないよね」「戦争だ」と身構える場面に流れている。
 ディスク3のBGMパートを締めくくるのは5分を超える長い曲「AERIAL REBUILD」(トラック25)。「PROLOGUE」のラストで流れた曲「Happy Birthday to You」のイメージを受け継いだ、改修型エアリアル登場シーンの曲である。この曲にもClara Soraceのボーカルが入っている。大間々のコメントによれば、「底知れぬ怖さみたいなものを表現したかったので魔女の兵器として覚醒したことを明確に現すために呪文のようなコーラスを入れました」とのこと。第12話では映像の展開と曲の展開がぴったりあって、シーズン1の終幕にふさわしい名場面を作り出していた。
 サウンドトラックとしては申し分ない内容と構成である。
 「本編で流れたあの曲が、サントラに入ってない?」と思うことがあるが、そういう場合はたいてい、楽曲から一部の楽器だけを抜き出したステム音源が使われている。楽器編成を薄くしたり、ピアノの演奏のみを使ったりして、音楽演出の幅を広げているのだ。本編の中で楽曲がどんな形で使われているか分析してみるのも興味深いだろう。
 ただ、第12話で使われた主題歌「祝福」のピアノアレンジ版は収録されていないようだ。「ここで主題歌アレンジか!?」と思ったインパクトのあるシーンだっただけに、未収録が惜しまれる。
 ディスク4はシーズン2の展開に合わせて、緊迫感のある曲や哀感をたたえた曲が多く収録されている。クライマックスに流れる「Liberation from the Curse」(トラック22)や「Wish」(トラック19)が圧巻だ。ディスク1からトータルで聴くと、『水星の魔女』の音楽がどのように進化・展開していったかがうかがえる。CD4枚組の「全部入り」ならではの楽しみである。

 冒頭に書いたように、このサントラ、商品としてのバリエーションの多さも目を引いた。初回限定盤、通常盤、アナログ盤の3種が同時発売されたのである(配信も含めると4種になる)。
 初回限定盤と通常盤はいずれもCD4枚組。初回限定盤はLPサイズジャケット仕様。通常盤はCD4枚をマルチケースに収納したタイプだ。アナログ盤はLP2枚組で、CD収録曲からセレクトした18曲が収録されている。CD初回限定盤とアナログ盤には早期予約特典としてカセットテープがついていた。
 CD、アナログレコード、カセットテープと3種類のメディアを使った商品展開は、話題性だけでなく、世界的にもアナログメディアが再流行していることを意識したものだろう。
 ニクいなあと思うのは、それぞれのジャケットイラストが異なることである。初回限定盤のLPサイズジャケットは正面を向いたスレッタのイラスト。アナログ盤のジャケットは正面を向いたミオリネのイラスト。スレッタは両手のひとさし指を(つまり指2本を)、ミオリネは右手のひとさし指を(指1本を)立てたポーズで描かれている。スレッタのモットーである「逃げればひとつ、進めばふたつ」の言葉が連想される。通常盤のジャケットは、同じポーズのスレッタとミオリネが向き合う姿を横から描いた絵になっている。
 とりあえずCDでほしいという人なら通常盤で十分だ。ジャケットの大きさや限定盤に魅力を感じる人はLPサイズジャケット仕様の限定盤を選ぶだろう。アナログ盤は収録曲も少ないし、よほどアナログの音にこだわりのある人か、熱心なファン向けだと思っていたのだが……予想を上回る人気のようである。
 しかし、わからなくもない。限定盤のスレッタのジャケットを手にすると、アナログ盤のミオリネのジャケットもそろってないと落ち着かなくなってくる。通常盤のジャケット画を見ればわかるとおり、ふたりそろって意味がある絵なのだ。片方だけだと、幸せなふたりが泣き別れになったような気分になる。だから、スレッタとミオリネ、片方を手に入れたら、もう片方も手に入れたくなる。ええ、買いましたよ、アナログ盤も。「逃げればひとつ、進めばふたつ」とはこのことだったのか!

機動戦士ガンダム 水星の魔女 Original Soundtrack(限定盤/LPサイズジャケット仕様)
Amazon

機動戦士ガンダム 水星の魔女 Original Soundtrack (通常盤)
Amazon

機動戦士ガンダム 水星の魔女 Original Soundtrack(アナログ盤)
Amazon

第815回 これからは…の話と、『いせれべ』の話(7)

さて、『いせれべ』の制作が終わったばかりなのに、なぜかもう忙しい~!

 なぜか次々企画がやってきて、すでに50代半ばくらいまでの仕事が決まりそうな勢い。でも、残りの人生から逆算して“自分発の企画”も考えたいので、お話をいただいた際それぞれの作り方は考えて受けるようにしています。ただ単に何も考えず「本来のアニメ作りはこうだから!」と我々世代がやってきた、保守的・旧態依然とした制作体制に固執した作り方では、増え続けるであろう需要に付いていけないからです。
 残念ながら未だに「ほら、制作会社が人手不足で番組落ちてんじゃん!」「だから、アニメ作りは終わりだ!」など、“ご自身が付いて行けない故のネガキャン”を垂れ流す業界の方々がいらっしゃいます。
安心してください。これからのエンターテイメント供給は、否が応でもAIなどの導入によって、回転・スピードは上がっていきます。例えば「人手不足で~」も、“手描きの動画”に固執しなければ……。
 もっとはっきり言うと

どんな手を使ってでも、“ムービー”にさえなっていれば、エンタメの供給は可能!

である訳だし、それを実現できるようにあれこれ考えるのが自分らの仕事のハズ。人手が何百人いなければ作れない前提というのは、アニメ業界人として怠慢以外の何物でもありません。

アニメは時代のニーズに応じて、どんなふうにも化けます!

 という訳で板垣は、来年1月28日から始まる50代も毎年毎年すし詰め状態に何某かの作品を作り続けられるように、作り方の試行錯誤をしている真っ最中。もちろん、社内スタッフらと新しい企画も考えています。
 で、これからの作り方を工夫——『いせれべ』でも一歩前進させました。それは、

各話の制作進行を無くした!

ということ。グロス(外注)話数はそれぞれの会社(スタジオ)の回し方にお任せしてましたが、社内班には制作進行のクレジットがありません。外のフリーアニメーターに振っていない以上、旧態依然の“車で外回り”も不要な訳。さらに社内のカット回しは、全カットカット袋を棚に並べて、自分らスタッフ各々で取りに行くシステムにしました。
 これが巧くいったかどうかは、次の作品でも続けてみて、微調整しつつってことで。まあ、他愛もない小さな一歩ですが、トライアル・アンド・エラーを繰り返すの——板垣は好きみたいです。

アニメ様の『タイトル未定』
406 アニメ様日記 2023年3月5日(日)

2023年3月5日(日)
入院7日目。午前2時40分頃に目を覚ます。二度寝はしないで「傘寿まり子」の続きをkindleで読む。「傘寿まり子」を最終巻まで読んで、他のマンガを挟んで「大奥」を1巻から読み始める。
若い男性の先生(主治医ではない)によれば、6日(月)午前中の血液検査で結果がよければ、最速でその日の午後に退院できるそうだ。ただし、退院が7日(火)以降にズレこむ可能性あり。血中酸素を計る機器が外れた。心電図とのコードも外れた。
病室のベッドの上で「アニメスタイル017」での作業を進める。『モブサイコ100 III』の取材のおこしに手を入れて、原稿まとめを手伝ってくれる外部スタッフに渡すことができるようにする。プロダクションから借りる資料についてもまとめた。事務所で作業していると、ながら観をしたりして、適度に緊張を緩めながら進めることができるんだけど、病室だと集中してやってしまうので、休む時間を挟まないといけない。

2023年3月6日(月)
入院最終日。朝の採血の結果、この日のうちに退院することになった。数日前に主治医の先生に「切って腎臓が小さくなっているので、酒の吞みすぎ、塩分の摂り過ぎは控えて。難しいと思うけど、仕事のやり過ぎ、疲れすぎも避けてください」と言われていた。さらに退院にあたって、次の通院で傷口を塞いでいるビニールを剥がすまではやってはいけないことが記されたリストをもらう。それと「手術から最低10年は通院してください」と言われた。10年かあ。後でワイフにそれを言ったら「これから10年は生きられるってことじゃない」と妙にポジティブシンキング。
ワイフに預けていた財布を持ってきてもらい、支払いをすませる。入院前の見積もりよりも3万円も安く済んだ。あんなに凄い機材と最先端の技術で手術と治療をしてもらったのだから、見積もりのままでも充分に安かったと思う。今回の入院では術後の段取りの確かさに感心した。タクシーでマンションに戻って、荷物を整理。上でも書いたように手術の跡にはビニールが貼ってあるのだけれど、服を脱ぐと、その周りに大きな痣ができており、大変な見た目になっていた。ワイフに見せたら、嬉々として写真を撮っていた(ワイフは手術が終わった直後も、手術跡や切りとった患部の写真を熱心に撮っており、主治医の先生に「奥さん、凄く沢山写真を撮っていましたよ」と言われた)。ワイフと餃子の王将に。どうして王将にしたかというと、入院中に読んだマンガにラーメンと瓶ビールの組み合わせが出てくることが多かったのと、SNSで最近の王将が美味しいという投稿を見ていたから。だけど、入店してから気がついたけど、今の王将には瓶ビールがないのね。ラーメンも思っていたようなものではなかった。
夕方から事務所に。椅子に座ると脇腹(手術の跡)が痛いので「椅子に座ってキーボードを叩く」のに慣れるところから始めないといけない。録画で『機動戦士ガンダムNT』TVエディション、『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』、『ちびまる子ちゃん』、『サザエさん』を観る。この回からタラちゃん役が愛河里花子さんに変わったのだけど、上手いなんてものじゃない。神業だった。

2023年3月7日(火)
主治医の先生には「とにかく歩け」「ラジオ体操をやっても大丈夫」と言われているのだけれど、まだラジオ体操は無理だ。この日は歩いた距離も普段の半分くらい。近くのスーパーマーケットまで買い物に行ったのだけど、それだけでもかなり疲れた。昼食はワイフと焼肉屋のランチに。量が多いメニューを選んだこともあるけれど、食が細くなっていて、食べきることができなかった。自分が食べきれなった分をワイフに食べてもらったのは初めてかもしれない。
入院中の『うる星やつら』『お兄ちゃんはおしまい!』『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』を録画でながし観。自分も天使様に駄目人間にされている感あり。先週のTOKYO MXの『新世紀エヴァンゲリオン』『マジンガーZ』を流し観。第弐拾壱話「ネルフ、誕生」は今観ても面白い。第弐拾壱話に関してはリテイクが入ったバージョンが地上波で流れたのはこれが初めてかもしれない。TOKYO MXの『X Anime さみしいあなた』も観る。ネットアニメを地上波で流したのかと思ったら、これはCBCテレビで放映中のTVアニメで、TOKYO MXでそれをまとめて放映したということらしい。衛星劇場の『アーバンスクウェア ~琥珀の追撃~』『Spirit of Wonder』の録画も流し観。
Amazon prime videoのシネフィルWOWOW プラス で『リトル・ニモ』のパイロットが配信されているのに気づく。テレコム版も出崎監督版もある。『ルパン三世』のパイロットもあって、しかも、シネスコ版とスタンダード版の両方がある。これは便利だなあ。ずっと配信してくれるとありがたいけど。劇場版『エースをねらえ!』があるのも嬉しい。『2』『ファイナルステージ』も配信してほしい。

2023年3月8日(水)
事務所に入ってTVを点けたら、衛星劇場で『プラスチックリトル』が放映中だった。そのまま流し観した。朝の散歩でいつものコースを歩いてみる。今までの1.5倍くらいの時間がかかった。そして、普段よりも疲れた。散歩では沢山の馴染みの猫に会った。人なつっこい「なっちゃん」は手にスリスリしてくれた。しばらくキーボードを叩いてから新文芸坐に。「冬の旅」(1985・仏/105分/DCP)を観る。淡々とした映画だった。淡々とした映画だろうと思って観たので、その点では問題なし。ただ、30~50分くらい短くてもよかった。午後はデスクワーク。17時過ぎに帰宅して、早めに就寝。
取材の予習で「日本アニメ(ーター)見本市」の「POWER PLANT No.33」「ヒストリー機関」、『機動警察パトレイバーREBOOT』をBlu-rayで視聴。コメンタリーも聴いた。

2023年3月9日(木)
この日の仕事は取材の予習と、別の取材のための質問状づくりを進めた。予習のために配信で観たあるアニメの画質の低さに驚く。そんなに昔の作品ではない。スマホで観る分には問題ないけど、大きめのモニターで観るとかなり厳しい。放映やパッケージはハイビジョンで、配信用に解像度の低い動画を作り、その後もその動画で配信しているとかそんな感じかなあ。僕が気づいていないだけで、他にもそういった作品はあるのかもしれない。
ホテルの店頭で弁当三個とサラダを買って、弁当のひとつとサラダはマンションに持っていってワイフに渡す。残りの二つは自分の昼飯と夕食のために買ったのだけど、ひとつを食べて「これはカロリーが高すぎて、翌日に後悔するやつだ」と気づいて、ひとつを事務所スタッフに食べてもらうことにした。美味しくて安くていい弁当なんだけど。
朝の散歩では「ラブひな OKAZAKI COLLECTION」を聴く。これはよかった。続けてプレイリスト「はじめての岡崎律子」を聴く。

木村貴宏さんが亡くなられたことを知る。木村さんは魅力的なキャラクターを数多く生み出してきたアニメーターだ。好きな作品が何本もある。20年ほど前に「この人に話を聞きたい」で取材を申し込んだのだけれど、その時には「自分の代表作と呼べるものができたら取材を受けたい」と言って断られた。その後も、僕はいつかまとまったかたちで取材をしたいと思っていた。心よりご冥福をお祈り致します。

2023年3月10日(金)
この日の朝の散歩ではアニメ『ジョゼと虎と魚たち』サントラを、続けて実写映画「ジョゼと虎と魚たち」サントラを聴いた。午後は「この人に話を聞きたい」で金子雄司さんの取材。取材場所への移動中に取材開始が1時間ズレることが分かり、近くの喫茶店で時間を潰す。せっかく時間ができたので、改めて質問事項を書きだす。金子さんが社長を務める青写真はお洒落なスタジオだった。スタッフは手描きで背景を描いている人とPCで作業をしている人が混在。写真は室内と室外の両方で撮ったのだけど、どちらもロケーションがよくて、面白い写真になりそう。最近は言われることが多いのだけれど、金子さんにも「若い頃にアニメスタイルを読んでいました」と言われた。
この日の起床時の体重が64.1キロ。入院前が65~66キロだった。退院直後が65.1キロだったので、そこからさらに1キロ落ちた。入院中に規則正しい生活をしていたので体重が落ちやすくなっているのだろう。だけど、ここまで落とせるとは思わなかった。

2023年3月11日(土)
退院してから初のラジオ体操。飛び跳ねる運動で手術跡が痛いのは想定内だったけれど、予想以上に身体が鈍っていた。これはいかん。ちなみに散歩は毎日続けている。朝9時にいつもの床屋に行って頭を刈ってもらう。オバチャンに手術や体調のことを色々と聞かれる。床屋で鏡に映った自分の顔をマジマジと見る。いやあ、顔が変わったなあ。
13時から「第202回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作14【人物の名前を覚えてもらうのは諦めました編】」を開催。今回は新潟国際アニメーション映画祭のためにコントレールが作った小冊子を配り、それについての話も。キャラクターデザインを見ながら話を進めるが、いまだに主人公が誰なのか分からない(以前のイベントで中宮定子、清少納言、もう1人の3人が主人公だという話題は出ていた)。そして、今さら、『マイマイ新子と千年の魔法』に登場した諾子(なぎこ)についての疑問が生じているという話も。トーク終了後、雑誌「アニメスタイル」の本文にアンダーラインをいっぱい引いている読者の女性が「映画的な時間と空間とはなんですか」と訊いてきた。面白い質問だったので、楽しく答えた。
録画で『異世界おじさん』最終回を観た。何かが悪いわけではないけれど、なんだか、しっくりこない。

以下は、10日(金)と11日(土)にSNSに書いた内容。
ある作品のキャラクターデザイナーによる修正原画を見た。線がカリカリしていて、そのためにエッヂが効いた印象になっている。いかにも鉛筆が走っている感じ。これこれ。「この人が描いた画」として取り上げるならこういう原画だよね。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の原画を見ると、田中将賀さんの修正原画はふわっとした力のない線で描かれている。特にめんまの髪とか。ご本人に伺うと、自分の画の個性が分かっているので、あえて力を入れすぎないようにして描いているとのこと。そういうことが分かるのが、原画を見る楽しみでもあるわけだ。
そして、そういった原画の線の面白さは第二原画になったところで、ほとんど無くなってしまう。
作画ファンが見たいのは巧いアニメーターの巧い原画であるはずだ。そして、巧い原画がどのように描かれているかを知りたいはずだ。だから、原画展で第二原画が展示されていたり、原画集に第二原画が掲載されているのは、ほとんどの場合において意味があるとは思えない。Blu-rayソフトのブックレットで第二原画ばかりが載っているとガッカリする。勿論、原画マンが第二原画まで描いた場合は別だけれど(レイアウトを描いた原画マンが描いた第二原画は、第二原画ではなくて「原画」と呼ぶべきだと言われそうだけど、まあ、それはそれとして)。
原画展を開催する方達や、原画集を編集する方達にその辺りを分かっていただきたい。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 164】
真夏の『Sonny Boy』Night

 8月19日(土)にTVアニメ『Sonny Boy』全話上映のオールナイトを開催します。新文芸坐×アニメスタイルの共同企画プログラムとしては、昨年の10月以来のオールナイトとなります。

 『Sonny Boy』は夏目真吾さんが原作、監督、脚本を務めたオリジナルアニメ。異次元に漂流することになった中学生達を描いた群像劇であり、物語についても、ビジュアルついても非常に斬新な作品です。真夏の夜に相応しいと考えて、このプログラムを企画しました。

 トークのゲストは夏目真吾監督。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。チケットは8月12日(土)から発売開始。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 164】
真夏の『Sonny Boy』Night

開催日

2023年8月19日(土)22時45分~5時20分

会場

新文芸坐

料金

一般 3000円、各種割引 2800円

トーク出演

夏目真吾(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『Sonny Boy』全12話(2021)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第208回アニメスタイルイベント
沓名健一の作画語り 2023年夏

 8月27日(日)に「第208回アニメスタイルイベント 沓名健一の作画語り 2023年夏」を開催します。出演は沓名健一さん、ちなさん、小黒編集長。ちなさんは『エロマンガ先生』『ヤマノススメ Next Summit』をはじめ、様々な作品で活躍するアニメーターで、アニメスタイルイベントはこれが初出演となります。

 トークの内容はマニアックな作画語りです。新刊「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」で話題になる「WEB系、ポストWEB系、その次の世代」について、そして「素朴系」について、さらに突っ込んで語る予定です。また、ちなさんのプロフィールや自身の作画史についても話していただきます。

 会場では「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」を販売。また、「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」をお持ちになった全員に、沓名さんがサインを入れてくれます。コミケやAmazonで購入された分でもサインを入れてくれます。欲しい方がいらしたら、小黒もサインをするそうです。  

 会場はLOFT/PLUS ONE。チケットは8月9日(水)18時から発売。購入方法については、以下の「チケット関係リンク」をご覧になってください。

 今回のイベントも配信を予定しています。配信するのはメインパートのみです。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

■関連リンク
【アニメスタイルの新刊】沓名健一のマニアック作画語りが書籍に!「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」発売!!
http://animestyle.jp/news/2023/08/04/24886/

■チケット関係リンク
LOFT     https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/259463
会場チケット https://t.livepocket.jp/e/wwg79
配信チケット https://twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/253045

第208回アニメスタイルイベント
沓名健一の作画語り 2023年夏

開催日

2023年8月27日(日)
開場12時/開演13時、終演15時~16時頃予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

沓名健一、ちな、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
405 アニメ様日記 2023年2月26日(日)

2023年2月26日(日)
入院前日。入院の準備を進める。無印良品でピルケースを買ったり。夕方から「入院前に行きたい店に行っておこう」シリーズのクライマックスで、吉松さんと駒込の「もつ焼 高賢」に。ワイフも行く予定で予約を入れていたのだが、彼女は体調がいまひとつで自宅で待機することに。ワイフは「最後の晩餐なのに行けないのが残念」と言っていた。そういう意味で言っているのは分かるけど、縁起でもないなあ。「もつ焼 高賢」で色々といただいた後、「猫本山」でたいにゃきを買って食べる。ワイフのお土産に「にゃーむくーへん 白猫抹茶味」を買う。
話は前後するけど、午前中の散歩では『スカイ・クロラ』と「紅い眼鏡」のサントラを聴いた。作業をしながら「紅い眼鏡」をAmazon prime videoで視聴。「紅い眼鏡」は21世紀になってからは、5年に一度くらいのペースで観返しているはず。配信の画質はよくないのだけど、大きな画面で観ると、それが味わいに思える。まるで戦前の映画を観ているようだ。内容は詰まっていて、今の押井さんが撮ったら、半分の内容(半分の脚本)で90分くらいの長さにまとめるのではないかしら。押井さんの熱意も感じられた。当時はそんな感想は抱かなかったはず。

2023年2月27日(月)
『サザエさん ひな祭り1時間スペシャル』は前半が30分の長編「大好き、ひな祭り」。日常を舞台にした話で、イベント性はあまりない。展開がゆったりしているのが、普段と違う点かな。後半は通常の構成の3本立てで「カツオ銀幕デビュー」「風雅なご趣味」「わが子と遊べば」。先週のBパート「姉さん、噂の女」、Cパート「磯野家は五つ星」が『サザエさん』を総括するような内容だったのは、実はそれらの脚本がスペシャルでの放映を前提にしたものであり、結果的に通常枠での放映になったのではないかと妄想する。

入院1日目。午前中は入院の準備と仕事関係のメール。事務所で1週間分の録画予約をする。入院前の最後の食事は「いきなり!ステーキ」でサーロイン300グラムとハイボール。ライスは少し。今回はワイフも一緒だった。もしも、これからの自分の人生で入院や手術が当たり前のことになるのなら「あの時は手術の前に頑張って、色々と食べに行ったなあ」と思うのだろうなあ。いや、そうならないほうがいいんだけど。
14時に病院Bに到着。患者サポートセンターで説明を聞く。レントゲンと歯の検査。病室に入ったのが15時くらい。その後、エコー検査。更に話を聞くと、集中治療室から出られるまで時間がかかるとか、手術時には荷物を部屋に置いておけないとか、新情報がどっさり。病院内のセブンイレブンでT字帯などを購入。その後は仕事関係のメールを書きまくる。消灯は21時だけど、22時までメールを書いていた。

2023年2月28日(火)
入院2日目。午前中はメールなど。「アニメスタイル017」の描きおろしイラストのためのラフを描いたり。手術は昼の予定だったが、諸般の事情でスタートが遅れる。病室から手術室までの移動にワイフが付き添ってくれた。付き添っているワイフがやたらと楽しそうだったが、後で聞いたら楽しかったのではなく、緊張していたのだそうだ。手術が始まる前はシチュエーションがショッカーで改造手術を受けるみたいだとか、手術室の機材のデザインが洗練されていてSFアニメみたいだとか思ったり。つまり、自分の手術なのに、どこか他人事のように感じていた。麻酔を打たれたら、電灯が消えるようにストンと意識がなくなる。目が覚めたのは19時か19時半。ワイフがペッドの脇にいた。身体も頭もぼんやりしている。ワイフが色々と話をしてくれたが、少ししか頭に入らない。手術そのものは上手くいったらしい。

2023年3月1日(水)
入院3日目。午前中は集中治療室。頭がすっきりしているのに読む本もないし、スマホもないので退屈だった。午前11時半に病室に戻る。メールを数本。点滴スタンドを持ってトイレまで歩くが、かなりしんどい。本を読む気も起きず、なるべく寝るようにした。昼飯は重湯を含めた流動食。ブドウジュースが旨かった。晩飯はお粥が中心の献立。

2023年3月2日(木)
入院4日目。1日夜から2日朝にかけて同じ夢を何度も見た。編集作業中の「アニメスタイル017」のことで悩んでいる夢で、同じ内容を別バージョンで何度も見た。新しく入ってくる情報が少ないので、同じ夢を何度も見てしまうのだろうなあ。点滴が取れる。痛み止めを注入する管、血抜きの管が抜けた。試しに10メートルくらい歩いてみた。しんどい。
Kindleでマンガを読み始める。「天幕のジャードゥーガル」1巻、2巻。「地獄楽」1巻から13巻。「MIX」1巻から7巻。「地獄楽」はキャラクターに魅力があったし、話も悪くない。満足。「MIX」は読んでいる間、幸せだった。

2023年3月3日(金)
入院5日目。2日夜から3日朝にかけて色んなイメージのコラージュみたいな夢が延々と続いた。マンガで読んだ内容の夢を見たわけではないけれど、マンガを読んで色んな情報が頭に入ったため、夢の内容が変わったのだろう。堺三保さんから、お願いしていたお勧めマンガのリストがSNS経由で届いた。「完結している作品で面白いもの」を基準に選んでもらった。「MIX」を最新20巻まで読んでから、堺さんのリストにあった「ゆりあ先生の赤い糸」1巻から読み始める。

2023年3月4日(土)
入院6日目。深夜に目が覚めて「ゆりあ先生の赤い糸」の続きを読み始めて、最終巻まで読む。これはいいマンガだった。その後は堺さんお勧めの「大砲とスタンプ」「さんかく窓の外側は夜」「青の花 器の森」等を読む。明け方、今後の仕事のやり方について考えた。それは自分の生活パターンについて考えることでもある。これから無理ができなくなるけど、どうするのか、という話。病院内のセブンイレブンに「Pen」の「シン・仮面ライダー」特集があったので購入して、ざっと目を通す。悪くない特集だと思った。歯科に呼ばれて検査。問題なし。kindleで「傘寿まり子」1巻を読む。面白い。面白いけど、これって16巻もあるの? 病室でできる範囲で取材の予習を始める。
退院後の毎日のタイムスケジュールを組んでみる。「自分の作業量を減らして、尚かつ、トータルでの成果を減らさない」が目標なのに、組んでいるうちに「いかに自分の作業量を増やすか」が目標になっていた。ダメじゃん。

★本文抜粋・4(2006年の一部)

小黒 『のび太の恐竜』を『のび恐』って言うんだ。
沓名 そうです(笑)。『のび恐』はキャラクターと声優をリファインした1発目の劇場映画で、作画監督が小西賢一さん、監督は渡辺歩さんでした。中盤で森久司さんが恐竜のバトルシーンを描いてるんですけど、そのヤバさに痺れた人が沢山いましたね。僕らの世代も『SAMURAI 7 』の頃から注目し始めていましたから、森さんのシーンを観てテンションが上がりましたね。他には牧原亮太郎さんが原画をやっています。
会場の関係者 佐々木政勝さんもあります。
小黒 宮沢康紀さんの謎の作画とかね。
沓名 そうだ、宮沢さんもいました。佐々木政勝の爆発が明確に観られるのが、この『のび恐』なんですよね。ミサイルが谷の間を飛んでいくところで爆発がクルッと綺麗に回るんですけど、「吉成さんの爆発が複雑すぎて理解できないよ」という人は、この佐々木さんの爆発を観ると、理解する足がかりになると思います。構造が少しシンプル化されて描かれています。僕もこれを観て大変勉強させてもらいました。
小黒 一応説明しておくと、それまでの『ドラえもん』や藤子アニメは、線をシンプルにして描きやすくしていたんだよ。
沓名 そうですね。
小黒 ここから物凄くハンドメイド感が強い、「手で描いてますよ!」ということを異様に強調するラインになった。小西さんがやった『のび太と恐竜』だけかなと思ったら、その後もそういう 感じが残り続けていくのね。

★本文抜粋・3(2005年の一部)

沓名 というわけで『BECK』の現場にりょーちもと林祐己君、 僕がちょっとだけ参加する。小林治さんのスタンスもあって「外から巧い人を入れちゃおうよ」というノリで現場に入れてくれたんです。
小黒 治さんはフットワークが軽いからね。
沓名 掲示板があれば書き込んで「原画やんない?」と声をかける。治さんは「ちょっと明日、飯行こう」というぐらいのフランクさで、素人を現場に引きこみました。りょーちもと林君は東京近郊にいたので『BECK』にがっつり参加して勉強していた。僕はまだ名古屋の大学生だったので、休みを利用して東京に来ている間にちょこっと原画を手伝ったんです。それがWEB系の始まりなんですね。
小黒 WEB系アニメーターの特徴としては、まずは「動きが巧い」。
沓名 デジタルで動きを作るというのは、クイックチェッカーで常に結果を確認しながら動きを作っていくようなスタイルなの で、動きは巧いですが原画枚数も多い。アニメ業界のルールにもあまり詳しくなくて、勝手に描いたりするので、ちょっと作監を載せづらいなど、弊害もあるんですけど、総じて動きは巧いという感じでした。

★本文抜粋・2(2000年の一部)

沓名 『人狼』の前後で、技術的に大きな影響を与えたと思われるのが『フリクリ』(OVA・2000年)なんです。
小黒 そうなんだね。
沓名 『フリクリ』で特筆すべきなのは、『人狼』のスタイルを取り入れた平松禎史さんの描くキャラクターですよね。『彼氏彼女の事情』(TV・1998年)を観て、平松スタイルのイメージがなんとなく見えてきてはいたんです。『人狼』にどのタイミングで参加していたか、僕は分からないんですが。
小黒 『人狼』は『彼氏彼女の事情』の後だろうね。

【注】右の発言は小黒の事実誤認である。「この人に話を聞きたい」第四十八回(アニメージュ2002年 月号)で、平松禎史自身が『人狼』と『彼氏彼女の事情』は制作が同時期であり、『彼氏彼女の事情』のシワの処理は『人狼』を参考にしていると語っている。また、『彼氏彼女の事情』のデザインは『七つの海のティコ』(TV・1994年)の森川聡子の影響も濃いともコメントしている。

沓名 そうでしたか。『カレカノ』のデザインを手がけた平松さんが、それをさらにアップデートさせたのが『フリクリ』です。平松さんの色気のある画は、リアル系と美少女系の中間地点ですね。絵柄的には萌えとしても成立するようなスタイル。
小黒 一応、ツッコミを入れると『フリクリ』のキャラクターデザインは貞本義行さんで、平松さんは各話の作監なんだけど、1話を始めとした担当話数で示した作画美意識が非常に重要である、ということですね。
沓名 確かにキャラデザインは貞本さんでしたね! ついつい平松キャラデザインの作品だと思い込んでいました。でも、1話で提示された平松テイストは、作品全体にも反映されていると思います。鶴巻和哉監督がどの程度コントロールしていたのかは分からないですが、目の中の処理に特徴があります。彩色ツールのAnimoで鉛筆のタッチが見えるようにするスタイルが出てきていますね。平松さんの影響を受けた絵描きが、この後大量に出てくることになります。自分もその一人ですね。

★本文抜粋・1(2000年の一部)

小黒 20年前と言えば『人狼 JIN-ROH』(劇場・2000年)が世に出たわけですけども、作画史的にはどんな位置づけになるんですか。
沓名 『人狼』は、うつのみやさんや磯さんから始まった「リアル作画」の集大成と思われがちですが、実はそうではないんですよね。リアルな描き方にも色々な流派がありますが、『人狼』は綺麗に動かすタイプのリアルですね。うつのみやさんや大平さん、橋本晋治さんがやっていた方向とはまた違っている。『人狼』以前の作品だと、押井守さんの『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(劇場・1995年)が該当するのかな。リアルの追求という意味では、『攻殻』には詰めきれていない部分がありましたが、『人狼』では一片の隙もないぐらいちゃんとやりきっていた。
 それと、シワの描き方ですよね。コテコテと線を入れるのではなく、シルエットを全体で捉えていく。服のシワの盛り上がりを描く時に、服の中に線を入れないでポコッポコッとシルエットを描くやり方ですが、現代では一般化していると言えるぐらい普及していますね。『人狼』のスタイルが、服と布類の描き方に関して与えた影響は、うつのみやさんが首の下に影を落としたのと同じぐらい大きい気がしますね。
小黒 『人狼』は手描き作画の最高峰のひとつですね?
沓名 完全に最高峰です。作画監督が西尾鉄也さんですが、『人狼』以前は「トリッキーな天才アクションアニメーター」と言えるようなスタイルでした。西尾さんの作風が『人狼』から変わったのも、作画史的には面白いポイントですね。

第814回 『いせれべ』の話(6)~背景直し

『いせれべ』第2話は背景(BG)の修正とアクション原画の修正が大変でした(汗)!

 これは仕方のないことです。“画が描けなくてもアニメ演出はできる!”“演出は画を描く仕事じゃない!”つまり、

レイアウト・原画の修正程度の画すら己で描けない人をどうアニメ演出として扱うか?

という、昭和から令和の現在までの(業界全体が見て見ぬふりをして惰性で続けている)アニメ演出・監督業のやり方がすでに問題あるからです。
 分かり易い話をすると、大塚(康生)さんや小田部(羊一)先生、そして宮崎駿さんがいなければ高畑勲監督作品は生まれていない、ということです。同様に押井守監督作品の黄瀬和哉さんや西尾鉄也さん、その他“アニメーターではない名監督”の作品の陰には常にその女房役になるべく名アニメーターが存在してきたのが日本アニメ史の真実だとも言えます。
 未だアニメファンの方々の中にはよく理解されていない場合があるのですが、

演出・監督はアニメーターの誰より画が巧いからなるモノではありません! むしろ現在は“アニメーター出身ではない演出・監督”は、(極々一部の天才を除いて)その修正画の下手さに心底困っている作画監督は数知れず——てのが現状です!

 実際、高畑・押井監督ら超大物の“アニメーターじゃない監督”には制作プロデューサーが血眼になってその“画描き役”を探してくれようってものでしょうが、それは今までの監督作品という実績があるからこそ、巧いアニメーターを選ばせてもらえる訳で、実績のない普通の演出・監督はどんなアニメーターに対してでも、至って低姿勢に“お願いして描いていただく”立場にしか成りようがありません。しかも、作品がこれからもドンドン増え続ける中、アニメーターの人数はこれから我々団塊ジュニア世代が抜けていく時代に突入する訳で、これでは各演出にそれぞれ巧い作監がついてくれるなんてあるはずないでしょう。
 もちろん、ウチの会社でもそれは例外ではなく、

アニメーター出身じゃない演出・監督がどうやってアニメーターより巧くレイアウト・原画を修正するか? は毎作品の至上命題な訳です!

 で、話を最初に戻します。つまり、出来の悪い背景が上がってきたのは、不出来な背景原図を通した演出がいたから。それはつまり、自分の演出指導不足(汗)!

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 163】
公開25周年!『劇場版 機動戦艦ナデシコ』

 公開25周年を記念して『機動戦艦ナデシコ』の劇場版である『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』を新文芸坐とアニメスタイルの共同企画のプログラムで上映します。
 『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』は演出も映像も凝りに凝っており、見応えのある作品です。貴重な35ミリフィルムでの上映となります。

 日時は8月10日(木)と8月12日(土)。12日(土)の上映では佐藤竜雄監督のトークを予定しています。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。また、当日はアニメスタイルが刊行した「機動戦艦ナデシコ画集」の販売も予定しています。

 チケットは10日(木)分は8月3日(木)から、12日(土)分は5日(土)から発売開始です。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

 なお、8月10日(木)も12日(土)も、同じ新文芸坐とアニメスタイルの共同企画のプログラムで『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』の上映があります。よろしければこちらもどうぞ。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 163】
公開25周年! 『劇場版 機動戦艦ナデシコ』

開催日

2023年8月10日(木)21時00分~22時20分
2023年8月12日(土)14時45分~16時55分

会場

新文芸坐

料金

2023年8月10日(木) 一般1500円、各種割引 1100円
2023年8月12日(土) 一般1900円、各種割引 1500円

トーク出演

佐藤竜雄(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』(1998/80分/35mm)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 162】
映画館で出逢うアニメの傑作『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』

 『マジンガーZ対デビルマン』と『マジンガーZ対暗黒大将軍』は日本のアニメ史に残るアクションアニメの傑作です。いずれもTVシリーズの人気キャラクターが活躍する劇場アニメーションであり、ドラマも映像も見どころたっぷり。スコープサイズで制作されており、是非とも劇場で観たい作品です。
 この2本を新文芸坐とアニメスタイルの共同企画のプログラムで上映します。日時は8月10日(木)と12日(土)。12日(土)の上映ではファン代表として、監督&アニメーターとして活躍する羽原信義さんのトークを予定しています。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 チケットは8月10日(木)分は3日(木)から、12日(土)分は5日(土)から発売開始です。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

 なお、8月10日(木)も12日(土)も、同じ新文芸坐とアニメスタイルの共同企画のプログラムで劇場版『機動戦艦ナデシコ』の上映があります。よろしければこちらもどうぞ。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 162】
映画館で出逢うアニメの傑作『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』

開催日

2023年8月10日(木)19時10分~20時35分
2023年8月12日(土)12時05分~13時40分

会場

新文芸坐

料金

2023年8月10日(木) 一般1500円、各種割引 1100円
2023年8月12日(土) 一般1900円、各種割引 1500円

トーク出演

羽原信義(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『マジンガーZ対デビルマン』(1973/43分)
『マジンガーZ対暗黒大将軍』(1974/43分)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第261回 4つの音 〜青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない〜

 腹巻猫です。「リバー、流れないでよ」を観ました。時間ループをあつかった実写劇場作品です。巧みなアイデアと脚本、役者陣の達者な演技に引き込まれて、スクリーンから目が離せなくなる快作でした。上映劇場が少ないようですが、機会があればぜひ。
 アニメで時間ループものといえば、『うる星やつら2 ★ビューティフル・ドリーマー★』(1984)という名作があり、2000年代にもTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(2009)のエピソード「エンドレスエイト」が話題になりました。SFとしては古くからあるアイデアですが、近年、あつかう作品が増えてきた気がします。
 今回は、時間ループのエピソードを描いた作品のひとつ、『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を取り上げます。


 『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』は、2018年10月から12月まで放映されたTVアニメ。鴨志田一によるライトノベルを原作に、監督・増井壮一、アニメーション制作・CloverWorksのスタッフで映像化された。
 高校生の梓川咲太は、ある日、図書館内をバニーガール姿で歩いている少女を見て驚く。しかも、少女がそこにいることに誰も気がついていないようなのだ。その少女は咲太と同じ高校の1年先輩で、女優としても活動している桜島麻衣だった。麻衣の話によれば、女優を休業し、周囲の人々が自分のことを忘れていくにつれ、存在も認識されなくなったのだという。麻衣のことを覚えている者が1人もいなくなれば、麻衣は誰にも見えなくなってしまうだろう。咲太は、その現象が思春期特有の心理状態が生み出す不思議な現象=思春期症候群であると考え、大胆な手段で麻衣の存在を取り戻した。その事件以降、咲太は思春期症候群を発症した少女たちとたびたびかかわることになる。
 日常に起きる不思議な現象を解決していくSFアニメである。その現象が思春期症候群と名づけられていることが象徴するように、青春ものとしての側面が強い作品だ。少女たちの悩みが解決するとともに、不思議な現象は解消する。そのためには、何かを受け入れたり、あきらめたりして、「成長」という苦いステップを踏む必要がある。物語にただようほろ苦さが、本作独特の味わいになっている。
 TVアニメ終了後、2019年に劇場『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』が公開された。劇場第2作『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』が2023年6月に公開。2023年12月には劇場第3弾の公開が予定されている人気作である。
 音楽は、本作で初めてアニメ音楽に挑戦したfox capture planが担当。本作以降の「青ブタ」シリーズ全作品の音楽を手がけている。

 fox caputure planは、カワイヒデヒロ(ベース)、井上司(ドラムス)、岸本亮(ピアノ)の3人で2011年に結成されたバンドである。現代版ジャズ・ロックをコンセプトに、オリジナルアルバムのリリース、国内外でのライブ、映像音楽などで、幅広く活動している。
 映像音楽では、TVドラマ「カルテット」(2017)、「コンフィデンスマンJP」(2018)、「ブラッシュアップライフ」(2023)などを担当。弦楽四重奏団のドラマをあえてストリングスを入れない編成の音楽で演出した「カルテット」、スパイ映画音楽のようなブラスサウンドを効かせた「コンフィデンスマンJP」、コミカルな人生やり直しドラマを軽妙なサウンドで彩る「ブラッシュアップライフ」など、センスのよい軽快な音楽が印象に残る。アニメでは『ルパン三世 VS. CAT’S・EYE』(2023)で、大谷和夫が手がけたTVアニメ『CAT’S・EYE』の音楽を現代的なサウンドでよみがえらせてくれたのがうれしかった。
 本作の音楽は、ジャズ・ロック的な軽快な曲もあるが、しっとりとしたクラシック的な曲が多い。ユーモラスな描写も多い作品なので、ジャズ的な曲でもはまったと思うが、fox capture planは青春ものの側面にフォーカスすることにしたようである。
 楽器編成はfox caputure planの3人によるピアノ、キーボード、ベース、ドラムスのほかに、ストリングスとギター、フルート、オーボエというミニマムな構成。シンセサイザーも限定的に使われている。
 ピアノとストリングスによるリリカルで繊細な楽曲が耳に残る。アニメ音楽というより実写ドラマ音楽のような、落ち着いたタッチの作品である。
 サウンドトラックのライナーノーツに、fox caputure planが面白いコメントを寄せている。
 音楽作りのポイントは、ストーリー中の“日常の中で起こる不思議な出来事”を音楽でどう印象づけるかという点だった。高校生という、大人とも子どもとも言えない、不安定な年代の心情を表現することも必要だった。作曲を進める中で、メンバーのカワイヒデヒロが書いた“ラミレラ”というシンプルなモティーフが、本作のストーリーをうまく表現していると感じた。そこで、このフレーズをもとに、メンバーそれぞれが、さまざまなシーンに寄り添える曲を作っていった……というのだ。
 映像音楽では、キャラクターに固有のモティーフを持たせる「ライトモティーフ」という手法がしばしば使われるが、本作の“ラミレラ”のモティーフはそれとは異なる。作品全体のテーマとなるモティーフである。すぎやまこういちがTVアニメ『伝説巨神イデオン』(1980)の音楽を担当したとき、4音からなる「イデのモティーフ」を設定して全体の音楽を構築したが、その手法に通じるものがある。
 楽曲にちりばめられた“ラミレラ”のモティーフは、意識して聴いていないと気づかないかもしれない。しかし、一度意識すると「この曲にも」「こんなところにも」と多くのところに使われていることがわかる。
 本作のサウンドトラック・アルバムは2018年11月に「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない Original Soundtrack」のタイトルでアニプレックスから発売された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 青春ブタ野郎
  2. 麻衣さん
  3. カップル
  4. 水平線
  5. 大事なこと
  6. 変態
  7. 江の島
  8. ホショウ
  9. 異分子
  10. 都市伝説
  11. 助けてくれ
  12. 大真面目
  13. 薄気味悪い空間
  14. ひとり
  15. 東浜海水浴場
  16. バカ咲太!
  17. こうして、世界は桜島麻衣を取り戻した
  18. 朝です…
  19. 忍者ごっこ
  20. 双葉
  21. 乙女ちっく
  22. 嫌悪感
  23. 打ち上げ花火
  24. 受話器の向こう
  25. 2回目
  26. ピンクのビキニ
  27. 乙女心
  28. 入れ替わった姉妹
  29. わだかまり
  30. 初恋の人

 主題歌等は収録せず、fox capture planによる音楽(劇伴)のみで構成されている。
 トラック1からトラック18までは、アニメ第1話から第3話で描かれた桜島麻衣のエピソードをイメージした構成のようだ。トラック19以降には、第4話以降のエピソードで印象的に使われた曲が収録されている。全話を観終わったあとで聴くと「あの曲も入れてほしかったなあ」と思う曲がいくつかある。これは放映中に発売されるサントラの宿命だろう。
 本アルバムの聴きどころのひとつは、曲にちりばめられた“ラミレラ”のモティーフである。
 1曲目「青春ブタ野郎」はさっそく“ラミレラ”の音から始まる。くり返される“ラミレラ”のモティーフをバックにストリングスが加わり、後半はゆったりと流れるような弦合奏に展開。最後にふたたび“ラミレラ”のモティーフが反復されて終わる。咲太のテーマとして、あるいは作品全体のメインテーマとして重要な場面に使用された曲である。最終話(第13話)の本編のラストに流れたのもこの曲だった。
 トラック2「麻衣さん」は桜島麻衣のテーマ。ピアノソロから始まるリリカルな曲で、中間部はストリングスが入った弾むような曲調になる。麻衣のキャラクターを描写するシーンにしばしば使われた。
 ギターとフルートがさわやかなトラック3「カップル」をはさんで、トラック4「水平線」は、また“ラミレラ”の曲。薄いストリングスをバックにピアノが“ラミレラ”から始まるフレーズを奏でていく。波が打ち寄せるような音が重ねられているのが印象的だ。この曲は第2話や第6話の七里ヶ浜のシーンで使われたほか、咲太が七里ヶ浜で出会った少女・牧之原翔子を回想する場面にも流れていた。
 次のトラック5「大事なこと」にも“ラミレラ”のモティーフが挿入されている。第1話の冒頭、めざめた咲太が自分が書いたノートを読んで「彼女って誰だっけ?」と自問するシーンで初使用。曲名どおり、大事なことを思い出したり、大事なことのために走り出したりするシーンに使われた。後半からストリングスが細かく刻む緊張感のある曲調に変わる。この部分が、切迫したシーンの描写にたいへん効果的だった。
 トラック6「変態」はちょっと色っぽいシーンなどに使われたコミカル曲。やはり“ラミレラ”のモティーフを中心に作られている。「青春は恥ずかしい」といったイメージの曲だ。
 さわやかで弾んだ曲調のトラック7「江の島」。この曲にも“ラミレラ”を忍ばせているのだから感心する。咲太が麻衣や古賀と外出するシーンなど、華やいだ場面によく使われた。
 第3話で麻衣が咲太に勉強を教えるシーンに使われたトラック8「ホショウ」。シンセによる“ラミレラ”の音がくり返される、ミステリアスな曲だ。
 しんみりした曲調で麻衣の孤独を表現するトラック9「異分子」、思春期症候群の説明や描写などに使われたトラック10「都市伝説」、第1話で咲太が自分の胸の傷を麻衣に見せるシーンのトラック11「傷」、第4話で咲太が同級生の双葉に助けを求める場面のトラック13「大真面目」、同じく第4話で咲太が時間ループに気づく場面のトラック14「薄気味悪い空間」。いずれも“ラミレラ”の音が組み込まれている。
 ここまで聴いてきただけでも、“ラミレラ”のモティーフがいたるところにちりばめられていることがわかる。これらの曲は、麻衣のエピソードで使われたあと、ほかの少女たちのエピソードでも使用されている。“ラミレラ”のモティーフが聞こえてくると、麻衣のエピソードがフラッシュバックし、思春期症候群のイメージが反復される。そんな効果を上げているようだ。
 ピアノとストリングス、オーボエなどが奏でるトラック17「バカ咲太!」は、「青春ブタ野郎」と並ぶもうひとつの咲太のテーマ、もしくは、麻衣の咲太への想いを象徴する曲である。第3話のクライマックスで、咲太の奮闘によって麻衣がふたたびその存在を取り戻したシーンに流れていた。その後も、古賀や双葉、のどかといった思春期症候群の少女の心情を描写するシーンにたびたび使われている。しっとりとした曲の中盤から“ラミレラ”のモティーフが現れ、「青春ブタ野郎」と同様の展開でコーダを迎える。最終話のエンディング後のエピローグでラストに流れていたのもこの曲だった。
 次のトラック18「こうして、世界は桜島麻衣を取り戻した」は麻衣編のハッピーエンドをイメージさせるタイトルの曲。実際にはそのシーンには使用されず、第8話や第12話で使用されている。やさしくゆったりとしたストリングスのメロディに心癒される、幸福感のある曲である。
 トラック19以降には、古賀、双葉、のどか、かえでといった少女たちのエピソードで流れる曲が並んでいる。しかし、そこに“ラミレラ”のモティーフはほとんど登場しない。そのため、トラック18までとそれ以降で、アルバムが分断されているような印象を受けるのがちょっと残念だ。どのエピソードも思春期症候群がテーマになっていることは共通なのだから、“ラミレラ”のモティーフが入った曲を後半にもちりばめて、アルバムのイメージを統一したほうがよかったのではないかな。
 アルバムのラストを締めくくる曲はトラック31「初恋の人」。咲太の初恋の少女・牧之原翔子のテーマである。その後の劇場版で語られる物語を予感させる終わり方で、なかなかいい。
 その劇場版のサウンドトラックの中で、“ラミレラ”の音はふたたび聴こえてくるのである。

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない Original Soundtrack
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
404 アニメ様日記 2023年2月19日(日)

2023年2月19日(日)
朝の散歩では「クレヨンしんちゃん TV・映画主題歌集だゾ」を聴いた。その後、サブスクにあったアルバム「クレヨンしんちゃん」「同・2」「同・3」で気になった曲を聴く。『新世紀GPX サイバーフォーミュラ』関連の歌を歌っていたダイナマイト・シゲが『クレヨンしんちゃん』のアルバムにも参加している。さらにダイナマイト・シュウ、ダイナマイトヨウも参加。『サイバーフォーミュラ』の頃はダイナマイト・シゲを謎のシンガーだと思っていたけど、ネットで検索をしたらあっという間に正体が分かった。
昼の散歩ではApple Musicのプレイリスト「はじめての『プリキュア』シリーズ」を聴く。これはいい。テンションが上がる。『プリキュア』シリーズは10作目の『ドキドキ!プリキュア』辺りまではレンタルCDをパソコンに入れて、主題歌をまとめたプレスリストを作っていた。今はサブスクで、もっと凄いプレイリストを聴くことができるのね。

2023年2月20日(月)
前日の『サザエさん』Bパート「姉さん、噂の女」(脚本:浪江裕史)はサザエさんの失敗が街中の人達の笑顔に繋がっているという話で、伊佐坂先生がそんなサザエさんのことを新聞に書いて「彼女は街の太陽のようだ」と評する。もしも、『サザエさん』に最終回があるなら、こんな話ではないかなあと思える内容だった。サブタイトル前と、最後の部分が原作パートなんだろうけど、最後の部分とメインパートとの繋がりがよくなかったのだけが残念。Cパート「磯野家は五つ星」(脚本:小林英造)はタイトル通りの「磯野家は五つ星級の楽しい一家だ」という話で、これも『サザエさん』の総括っぽいエピソード。ちなみにAパート「カツオ引退づくし」(脚本:雪室俊一)は「スタジャン」「野球」「引退」の三題噺みたいな話。雪室さんらしいモチーフの選び方とそれを使った展開が流石だった。
TOHOシネマズ新宿の9:30からの回で『BLUE GIANT』(Dolby-ATMOS)を鑑賞。音がとにかくいい。それだけで観てよかったと思えた。ただし、CGはきびしいところがあり。話も途中まではかなりいい。終盤で「あれ?」と思うところがあったけど、トータルでの印象は悪くない。この映画を観て、缶コーヒーが飲みたくなったし、ジャズを聴きたくなった。事務所に戻ってサブスクで検索したら、既にこの映画のサントラがあって、さらに原作関連のアルバムが何枚も上がっていた。便利すぎる。こんなに便利でよいのか。
午後は「アニメスタイル017」で『モブサイコ100 III』の蓮井隆弘監督の取材。『モブサイコ100 III』の取材は先週の立川総監督、亀田祥倫さんに続く、3本目。蓮井監督が語る亀田さんの仕事が興味深かった。
先週の放送でもアナウンスされていたけど、TOKYO MXの『新世紀エヴァンゲリオン』の第弐拾話「心のかたち 人のかたち」は通常枠ではなく、深夜の放送だ(放送は2月21日)。深夜に放送されることは前からアナウンスされていて、特番でも入るのかなと思っていたのだけれど、レコーダーの番組表で確認したら、セットで放送されている『マジンガーZ』はいつもの枠のままだ。これは内容に配慮した時間移動なのね。やるなあ、TOKYO MX。正しい判断です(霊幻風)。

松本零士先生が亡くなられたことを知る。素晴らしい作品を沢山残された方だ。それだけでなく、僕らの世代に与えた影響があまりにも大きい。僕達にとっての「オタク的なもの」のかなりの部分が松本先生がルーツであると思う。心よりご冥福をお祈り致します。

2023年2月21日(火)
体調のこともあって引き籠もり気味なワイフを連れ出して、パスタ屋でランチ。店に入ってから気がついたけど、パスタ屋でパスタを食べたのはかなり久しぶり。その後、「ヤマノススメ Next Summit展 in AKIHABARA」に行った。原画の展示もあったけれど、作画マニア向けではなくて、作品のファンのためのイベントだった。それ自体は問題ない。松本憲生さんの原画を見ることができただけでも行ってよかった。
『コタローは1人暮らし』3話を観る。この話に限ったことではないけれど、他の深夜アニメと並べると「普通の面白さ」が際立つ。ぼんやりとテレビをつけていたら、バラエティ番組「ぽかぽか」に花澤香菜さんにしか見えない人が出ていて、確認したらやっぱり花澤香菜さんだった。1月から番組レギュラーをされていたのね。たった一度だけ観た印象で書いてしまうが、「声優さんがバラエティに出ている」のではなく、「綺麗なタレントがバラエティに出ている」という感じで、それに感心した。
新作鑑賞の前に、前作「アントマン&ワスプ」を配信で視聴。最初のほうでかかる曲は「人気家族パートリッジ」の主題歌だね。

2023年2月22日(水)
原画集や原画の展示について色々と考える。自分の会社で原画集を作るのもいいけど、原画集や原画展示のお手伝いをする仕事もしてみたい。
吉松さんとグランドシネマサンシャインで「アントマン&ワスプ:クアントマニア」【IMAXレーザーGT3D字幕版】を鑑賞。映画の感想としては、主人公の娘が可愛い。冒頭の日常描写の立体視がよくできていた。作品全体としては話と音楽も地味だったかな。

2023年2月23日(木)
『うる星やつら』を観る。あたるの声が阿良々々木さん(失礼、かみました)阿良々木さんみたいにだと思った。それも悪いことではない。
事情があって、DVDレンタルで「28 1/2 妄想の巨人」と舞台「鉄人28号」を鑑賞。いずれも押井守監督の作品だ。「28 1/2 妄想の巨人」は公開当時に映画館で観ているし(試写会で観たのかもしれない)、舞台「鉄人28号」は映像ではなく、生の舞台を劇場で観た。「28 1/2 妄想の巨人」の前半はあまり覚えていなかった。そして、そのパートになるまで忘れていたのだけれど、色々な人が舞台『鉄人28号」の感想をコメントするパートがあって、これが面白い。特に鈴木敏夫さんのコメントが凄い。押井さんが敏夫さんのことをどう思っているのかがよく分かる。舞台「鉄人28号」は細部は覚えていなかったけど、だいたい記憶どおり。だけど、舞台「鉄人28号」の後に「28 1/2 妄想の巨人」を観るべきだった。そこは失敗した。
新文芸坐で「月はどっちに出ている」(1993/109分/DCP)を鑑賞。プログラム「追悼・崔洋一 境界線に立ち続けた表現者」の1本。観たことのない作品だと思っていたけれど、いくつも記憶にある場面があったので、以前に鑑賞していたようだ。新文芸坐でやたらと映画を観ていた頃に観たのだろう。それはともかく、作品としては楽しめた。映像もよかったし、登場人物もよかった。ヒロインのルビー・モレノがとてもよかった。可愛いなあ。ただし、若い頃の自分だと、可愛いとは思えなかったかもしれない。イケイケの若き社長達も愛らしい。これも若い頃は愛らしいとは思わなかっただろう。主人公は在日朝鮮人で、公開当時は現在よりも、その部分がセンセーショナルだったのだろうなあ。
就寝前にドラマ「名建築で昼食を」の関連書籍「名建築で昼食を オフィシャルブック」と、原作の「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」に目を通す。オフィシャルブックは基本的にアニメのフィルムブックみたいな作りだけど、画がいいので、本編カットを数点置いただけでもページが保つ。本当は脚本家とか監督のインタビューが読みたかったのだけど。

2023年2月24日(金)
入院までにやっておきたい作業を次々に片づける。「100カメ」の「アニメ進撃の巨人」を録画で観た。面白かったし、よくできていた。通常は映像として残らない場面が沢山映っていた。
午前中にHuluで「血ぃともだち」を観る。話は変わるけど、映像配信サイトで「押井守」で検索して、最初にヒットするのが「花束みたいな恋をした」なのはいかがなものか。それだけ「花束みたいな恋をした」が観られているということなんだろうけど。「血ぃともだち」はこれが初見。『ぶらどらぶ』は「血ぃともだち」のギャグバージョンなんだろうと思っていたけれど、「血ぃともだち」も想像していたほどはシリアスではなかった。午後はバンダイチャンネルで「トーキング・ヘッド」を観る。こちらは数度目の視聴。
珍しく若い人の相談にのって色々と話した。「面白いものを見つけて、それを人に伝えるのが編集者の仕事なんだから、まずは面白いものを見つけるところから始めるのがいい」が結論だった。
某作品の線画設定が制作会社にないかもしれないという話になって、事務所スタッフの一人が「ムックを作った時のデータがMOに入っているんじゃないですか。前にMOを事務所で見ましたよ」と言う。いや、「ムックを作った時」って、20年以上前の話でしょ。MOを見たのって10年前とか15年前じゃないの。と思っていたら、別の事務所スタッフが倉庫から設定のコピーが入った封筒を発掘してくれた。その20年以上前のムックを編集した時のコピーだ。出てくるものはすぐに出てくるなあ。

配信でドラマ「名建築で昼食を」を最終回まで観る。最終回がよかった。この後にスペシャルの横浜編、第2期の大阪編があるらしいけど、第1期最終回で終わりでいいんじゃないのかなあ。具体的には春野藤(池田エライザ)が弟子をやめたいと言った後の植草千明(田口トモロヲ)の芝居(主に目の芝居)と、その後の藤の反応がよかった。2人は恋愛関係には至っていないのだけれど、2人とも少しだけそれを期待していたということが、ここで分かる。期待していたのは恋人ではなくて、友達と恋人の中間くらいの関係だったのかもしれないけれど。その後のシーンで、藤の「ちょっと生々しい感じ」の描写があったのもよかった。ラストシーンで千明の前に再び現れた藤が、女っぼい感じ(大人っぽい感じ)になってるのは、これからの関係の変化を予想させるもので、それを感じさせる演出が素晴らしかった。だから、ここより後は描かないほうがいいんじゃないの、と思った。
さらに「名建築で昼食を」の話を続ける。ずっと気になっていたのだけど、藤と千明が食事をした時にランチ代はどちらが出していたのだろうか。普通に考えたら、千明が出すはずだけど、そうするとオジさんが若い女の子を可愛がっている感じが出てしまってよくないのだろうなあ。どうして僕がこのドラマにこだわるのかというと、千明と藤の関係が、地味な、あるいはオタク的な趣味に生きる中年以上の年齢の男性としては夢のシチュエーションのひとつだと思えたのだ。さえないけれど、自分の趣味については一家言ある男性が、その趣味を通じて若くてセンスがよくて、美人の女性と知り合う。その女性は男性の言うことに感心してくれて、さらに彼自身にも興味をもってくれる。まあ、嬉しいよね。それはよく分かる。千明と藤の関係がよかったのは、千明が女性に対してガッついていないところと、藤が元カレと別れていて、今は恋愛モードでなかったということ。現実にもああいった関係はあると思うけど、どちらかが色気を出して、恋愛以上の関係になるか破綻するだろうと思う。

2023年2月25日(土)
「入院前に行きたい店に行っておこう」シリーズで、早めの時間に「いきなり!ステーキ」に。昼に新文芸坐で「勝手にしやがれ 60周年4Kレストア決定版」【4K上映】(1960・仏/90分/DCP)を鑑賞。プログラム「表象のグラデーション ゴダールからストーンズへ ゴダール」の1本。「勝手にしやがれ」は二度目の鑑賞。前回は新文芸坐でフィルム上映だった。もっとノイズがあるというか、ゴチャゴチャした作品の印象があったのだけれど、今回はDCP上映のためか随分とすっきりした印象だった。前回は作り手がノリノリで撮っている印象だったけれど、今回はそうでもなかった。
映画以外はほぼ1日、コラム原稿を書いていた。大変に充実した1日だった。
ちなみに入院は27日(月)から。手術は28日(火)の予定だ。

第813回 『いせれべ』の話(5)~総監督

えっと、どこまで話したでしょう——『いせれべ』?

 ま、とりあえず先週は総監督についてだったと思いますが、手っ取り早く1話からやりますか? その際、スタッフ・キャスト絡みの話が自然と混ざってくるでしょうから。
 1話は、自分の脚本です。基本原作準拠ではありますが、気にしたのは“虐め(イジメ)”という言葉を使わないようにしたこと。
 中・高校生時、自分は集中的な虐めを受けた記憶はないけど、いわゆる不良らにはよく絡まれました。世代的に不良・非行ブームの学生時代だったので。
で、不良らに理不尽な絡まれ方・虐めを受けて、泣かされて帰宅した時とか、家族(両親・姉妹ら)に「虐められた」なんて絶対に言えなかったんです。言うと余計惨めになるから~とか心配させたくないから~とか、色々理由はありましたが、とにかく俺は“虐められて”とか、口にするのはおろか、例えモノローグ(心の声)でも考えたくないくらいでした。同情もされたくないし、解決してくれとも思わなかった、ということを覚えています。
 それについて思い出されるのが、昭和62年(?)のある日のこと、「伸が3年生に泣かされてた!」と、校内でたまたま耳にした姉(当時自分が中学1年、姉が3年)が、「ウチの伸が虐められた~」と担任の先生に報告。たまたま俺に絡んだ3年が姉の同級生だったこともあり、姉の担任がその虐めた3年生を連れて、自宅まで謝りに来るという話になってしまいました。その話を姉から聞いて、リアタイで虐められた時より“大泣き”してしまったのです。
その時の心境——“虐められた”ことすらも忘れ去りたいと考えてた自分は、姉なりの厚意から出た解決策に“感謝できない自分”が悲しくなっての号泣だったのです。
 ま、話は逸れましたが、とにかく昨今コンプライアンス的にやりづらくなってきた“虐め”を描かなきゃならない題材。

なるべく尺を短く、「虐め」という言葉は使わない! その残酷描写より、異世界へ行っての変身・逆転劇までを1話に入れて、できるだけ気持ちよく次週(2話以降)に繋ぐ!

が、目的の1話でした。作画他は次週また。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 161】
『この世界の片隅に』七度目の夏

 新文芸坐とアニメスタイルは毎年、オールナイトのかたちで片渕須直監督の作品を上映してきましたが、今年はオールナイトではなく昼間のプログラムで上映します。

 日時は8月5日(土)。上映するのは片渕監督の『マイマイ新子と千年の魔法』と『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の2本。午前10時に上映スタートです。2本を上映した後に、トークコーナーで片渕監督にお話をうかがいます。

 チケットは7月29日(土)から発売開始です。会場では『この世界の片隅に』の絵コンテを収録した書籍「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」を販売します。この書籍については以下の記事をどうぞ。

●『この世界の片隅に』絵コンテの決定版 [長尺版]よりも長い[最長版]で刊行!
http://animestyle.jp/news/2019/11/11/16619/

 チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 161】
『この世界の片隅に』七度目の夏宝

開催日

2023年8月5日(土) 10時~15時35分

会場

新文芸坐

料金

一般 2800円、各種割引 2400円

トーク出演

片渕須直(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『マイマイ新子と千年の魔法』(2009/93分/DCP)
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019/168分/DCP)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第812回 『いせれべ』の話(4)~総監督

 『いせれべ』は監督・田辺慎吾、総監督・板垣のダブル監督体制です。役割分担の内容はと言うと、脚本(シナリオ)の主導は板垣。その後、コンテ発注は板垣・田辺間の打ち合わせで細かい流れを伝えた後、コンテ・演出・作画・美術に対しての打ち合わせは全て田辺監督。で、コンテの修正は田辺コンテも含め全話板垣。このやり方を決めたのはもちろん、俺です。自分の持論が「監督の仕事の半分は“発注”である」だからです。特に田辺君の場合、俺のようにアニメーター出身じゃないので、なおのこと「発注がほぼ全てだ」と教えていました。
 で、ここからが問題で、頭の話数から徐々に上がってくるラッシュ(撮影済フィルム)を見ると、お世辞にも良い上りとは言えず「これじゃ納品出来ない(汗)」と。そりゃ無理のない話で、まだ画作り的に見ても未熟なスタッフをアニメーターじゃない監督が制御しきれる訳がありませんから。
 ということで、納品前に慌てて作り方変更! 田辺監督と他のスタッフは先話数を進めて(作り続けて)、板垣と木村(博美)は1話から順次レイアウトから原画・作監修正。話数によってはほぼ作り直し。
 例えば、1話で柵の中から絶槍でゴブリンを突くところは板垣の描き直し原画。同話数の調理・食事シーンは板垣の指示に合わせて木村全修正。変身した優夜の翌朝登校カットの縦PAN↑はレイアウトが板垣、原画・木村で全修。2話の森の中・アクション原画とBG(背景)はほぼ板垣の描き直し。クレープ屋の芝居・キャラ修全て木村。とにかく1話・2話は木村キャラ総作監も板垣アクション原画&BG(背景)修正も全体かなりの割合を占めたと思います。
 つまり、毎週毎週修正しまくっての納品だったのです。それ故、総作監や原画、さらには背景にまで俺の名前がクレジットされてる訳です。ご納得頂けましたでしょうか?

 そんな訳で、正直今回は“総監督”と名乗るには——変な言い方になりますが、仕事をし過ぎました(汗)。

 続きはまた次週。

アニメ様の『タイトル未定』
403 アニメ様日記 2023年2月12日(日)

2023年2月12日(日)
「第201回アニメスタイルイベント 作画を語る上で重要なこと・改」を開催した日。2022年12月19日の「第198回アニメスタイルイベント 作画を語る上で重要なこと」に僕が参加できなかったので、改めて沓名健一さん、夏目真悟さんに来てもらって、イベントをやり直した。話したい内容について話すことができた。
新宿駅構内の書店が閉店していたのが、軽くショックだった。新刊のチェックがしやすくて、よい店だった。

2023年2月13日(月)
『機動戦士ガンダム サンダーボルト』TVエディションの1話を録画で観る。いやあ、画がコッテリしてるなあ。『閃光のハサウェイ』と同じく、テレビで観ると非常に贅沢だ。『水星の魔女』もTVシリーズとしては充分に贅沢だったんだけど。
15時から「アニメスタイル017」で『モブサイコ100 III』の立川譲総監督の取材。盛り沢山で楽しい取材になった。

2023年2月14日(火)
仕事の合間に、新文芸坐で「線は、僕を描く」(2022/106分/DCP)を鑑賞。プログラム「認めて、受け入れて、強くなる青春」の1本で、もう1本の上映作品は「メタモルフォーゼの縁側」だった。「線は、僕を描く」は題材も面白いし、役者も映像もいい。中盤から、映画としてちょっと弱くなった印象。終盤は分かりやすいエンタメ演出で盛り上げてしまって、ちょっとのれなかった。主人公の青山霜介(横浜流星)はいかにも今どきの男の子で、それがよかった。自分の年齢のこともあって、師匠の篠田湖山(三浦友和)に感情移入した。篠田が青山を弟子にしたのは才能もあるんだろうけど、青山の人柄を可愛いと思ったからではないかと思った。
衛星劇場の「はばたけ!真理ちゃん」を録画で2回分流し観。児童文学を天地真理主演でドラマ化したものをメインにしたバラエティ。画質はかなり粗いのだけど、むしろ、よく映像が残っていたと思うし、これ放映しているのも凄い。ちなみにパベットのキャラクターの声はピッピ(人間の女性)がつかせのりこさん、バッハ(犬っぽい動物)が富田耕生さん。『魔法の天使 クリィミーマミ』のマミのアイドル像って天地真理さんっぽいところがあるかも、と思った。

2023年2月15日(水)
『PLUTO』制作決定PVが公開された。期待以上の仕上がりだ。ちなみに僕は企画書制作で少しだけ関わっている。企画書を作ったのはかなり前だ。
16時から「アニメスタイル017」で『モブサイコ100 III』の亀田祥倫さんの取材。亀田さんは、僕がこれから入院することを知っていて、プレゼントを用意してくれていた。こちらも、バレンタインのチョコを用意しておけばよかった。立川総監督と同様に、楽しい取材になった。
「線は、僕を描く」のことを思い出す。意識していなかったが、自分に刺さっていたようだ。篠田の自宅兼仕事場がよかった。弟子達との暮らしもよかった。ある意味において理想的な暮らしだと思った。

2023年2月16日(木)
朝から病院Bに行く。この日は入院前の検査で、採尿、採血、レントゲン、歯の検査、エコー検査、入院前問診等。検査が多かったので会計がなかなかの額に。移動時と病院の待ち時間に、小野寺史宜 の「ひと」を紙の文庫本で読了。帯に「本の雑誌が選ぶ2021年度文庫ベストテン第1位」とあって、それで読む気になった。流行の本を読んでみる試みのひとつだ。面白いし、巧いと思った。ただ、何となく若い人の恵まれない境遇を娯楽として消費している気がして、居心地が悪かった。
「熱風」の高橋望さんのインタビュー連載を読む。これはいいなあ。自家製本でもいいので単行本にするべきだと思った。

植竹須美男さんが亡くなったことを知る。植竹さんは脚本家だが、僕と彼の関係はアニメ雑誌編集者と脚本家ではなく、アニメファン仲間だった。町田知之さんに紹介してもらったのだと思う。その町田さんも既にこの世の人ではない。心よりご冥福をお祈り致します。
https://twitter.com/koyamatakao194/status/1626092172243238912?s=20

2023年2月17日(金)
新文芸坐で「秘密の森の、その向こう」(2021・仏/73分/DCP)と「アフター・ヤン」(2021・米/96分/DCP)を鑑賞。プログラム名「記憶の森を散歩する」の2本立て。最初は「秘密の森の、その向こう」だけ観るつもりだったけれど、新文芸坐さんの「手前味噌ですが、ちょっと凄い2本立てだと思います。どうぞ映画館で…。」のツイートを読んで「アフター・ヤン」も観ることにした。ああ、なるほど。これは上映プログラムを組んだ人がニヤリとする2本立てだ。「秘密の森の、その向こう」は少女が森の中で、自分と同い年の母親と出会うという筋立てで、「アフター・ヤン」は起動しなくなった家庭用アンドロイドの記憶を探っていく、という内容のSF。モチーフは全然違うのだけれど、センスのよさ、短編小説的なまとまりなど、なんとなく似ている。どちらも親子がカメラに対して真正面に座った、カメラ目線のカットで終わるのも同様。家が主な舞台なのだけど、家の外見をほとんど見せてないのも同じだった。
昨夜の『うる星やつら』(18話)の「き・え・な・い ルージュマジック!!」の冒頭では、サブタイトルの元ネタになった「い・け・な・い ルージュマジック」を流して、ラムが口紅を作っている様子をセリフ無しでじっくりと見せた。「い・け・な・い ルージュマジック」を流したことよりも、フィルムとしてのユルい感じが新鮮だった。そのユルさが1980年代的だと思った(旧TVシリーズ『うる星やつら』にそういったユルさがあったわけではない)。
アニドウが出版したマンガ雑誌「月刊ベティ(Betty)」について確認したいことがあって「確か倉庫にしまってないよなあ。よく事務所内で見かけたような」と思ったら、自分が作業している後ろのラックに立っていた。探し始めて、15秒くらいで見つかった。速い時は速い。
そろそろ、うちの会社(株式会社スタイル)も設立から20年くらい経つなあと思って確認したら、去年で20周年だった。

2023年2月18日(土)
昼飯はワイフと『ガールズ&パンツァー』コラボ開催中の「肉汁餃子のダンダダン 池袋東口店」に。コラボメニューをいただいた。
レイトショー「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 156】名作再見!クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険」を開催。ゲストは本郷みつる監督と茂木仁史プロデューサー。トークは細かいネタに触れつつ、作品の総括もありで、充実したものに。お客さんは『ヘンダーランドの大冒険』を初めて観る方が25%~30%、ビデオやTV放映では観たことがあったけれど、劇場での鑑賞は初めてだった人が50%以上。トークの後に本郷さんによる同人誌の手売りがあり、大変な行列。本郷さんが持ってきてくれた資料の展示もあり、盛り沢山でハッピーなイベントだった。
『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』でス・ノーマン・パーが言った「彼氏、手抜きのアニメみたいにぼーっと突っ立てんじゃないよ」はアニメ史に残る名セリフだと思う。「お前は止め画のモブキャラみたいだよ」とアニメキャラが言っているわけだ。10年前のオールナイトでも話題にしたかもしれないが、この日のトークで、それが原恵一さんが創り出したセリフであると本郷さんが証言してくれた。雛形あきこさんが演じた雛形あきこさんが、何度も出てきてその度に同じセリフを言う理由についても判明。