アニメ様の『タイトル未定』
415 アニメ様日記 2023年5月7日(日)

2023年5月7日(日)
ゴールデンウィーク最終日。「名探偵コナン 祝祭の天空都市(サンシャインシティ)」のキャラクター撮影会の最終日で、この日のみ灰原哀の着ぐるみが来る。ワイフが灰原の着ぐるみを見たいというので、付き合いで行った。撮影会の参加者(整理券をもらって撮影をする人)は見た限りでは若い女性が大半で、子供は母子連れがいたくらい。UTのコナン灰原シャツ(白地に線画)の着用率が異様に高かった。
購入したものの開封していなかった『モブサイコ100 III』のBlu-ray BOXをチェックした。気になっていたのが映像特典の「厳選・原撮映像」だ。必ずしも観たかったカットの原撮が入っていたわけではないけれど、収録されたカットの数は多かった。他の特典も盛り沢山。本編映像も綺麗だった。
北米版『メタルスキンパニック MADOX-01』Blu-rayにも目を通した。こちらも画質は好印象。映像特典も多く、特に線画設定の満足度が高かった。このくらい綺麗に収録できるなら、他のパッケージでも収録してほしい。
ゴールデンウィークは目標としていた作業の75%くらいを達成。ただ、調子が出てきたので気分は悪くない。

2023年5月8日(月)
ワイフと西武池袋本店に。最終日の「東京カレーカルチャーDX GWにっぽんカレー列島」でカレーをいただく。自分はインディアゲート(京都)で「鰹出汁のゴボウビリヤニ牛肉載せ炙り」と「鯛出汁のチキンビリヤニ(麻婆豆腐付き)」の合盛りをいただいた。量は少なめだけど、食感が面白い。今回のカレーイベントは面白かった。ダイエットを考えなければ毎日でも行きたかったくらい。
ゴールデンウィークに予定していた作業が終了。
「アニメスタイル017」関連で某プロダクションの対応スピードの早さに驚く。窓口とのやりとりをお願いしている外部スタッフの方に「この資料について問い合わせしてください」とお願いすると、あっという間に素材が届く。いやあ、素晴らしい。
朝の散歩では『新ルパン』のサントラ1~3を聴いた。今だと、1のセリフありも楽しく聴ける。
『ダロス』のBlu-rayに目を通す。画質は良好。DVDの映像特典の再録(インタビュー集)が貴重だ。

2023年5月9日(火)
「アニメスタイル017」の作業が進む。書籍も色々と進む。「アニメ様の『タイトル未定』」のためのテキスト整理。「アニメ様日記」が入院の話になって、当時のことを思い出す。

2023年5月10日(水)
朝の散歩では『君は放課後インソムニア』のサントラを聴いた。面白いアルバムだった。
WOWOWで放映されていた実写映画「3月のライオン 前編」「3月のライオン 後編」を流し観。ああ、実写になるとこうなるのか。原作をなぞってはいるけど、全体に重たい感じ。桐山零も二海堂晴信も外見を原作に寄せているんだけど、ちょっと違う。その違いは意図されたものなのだろう。川本家三姉妹と父親の決着に桐山君が関わらない(三姉妹に関わることを拒否される)のにも納得できた。
「熱風」5月号の「薪を運ぶ人 もうひとつのスタジオジブリ物語」第16回を読んだ。細田守版『ハウルの動く城』についての話が興味深い。僕の知らないエピソードがいくつもあった。僕が細田さんをジブリに紹介した話題も記事化された。

2023年5月11日(木)
この日の作業は「設定資料FILE」がメインで、並行して「アニメスタイル017」関連。そして、これから作る書籍関連。「設定資料FILE」は水曜から実作業に入った。最後のページの構成から始めたのだけど、延々と試行錯誤を続けた。自分が設定したハードルが高すぎた。
『スキップとローファー』の1話から6話を連続して観た。原作を読んでから観ると、びっくりするくらい上手に作っていることが分かる。監督がシリーズ構成を兼ねているのが上手く行っている理由のひとつなのだろう。スルスルと物語が進みすぎるのでは? というのは贅沢過ぎる感想か。
「設定資料FILE」の構成をやりながら、配信で「地獄の花園」と「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(吹替版)」を流し観。「地獄の花園」は前から気になっていた映画なのだけど、イメージ通りの映画だった。よく作ったなあ。

2023年5月12日(金)
映画「はい、泳げません」を作業をしつつながら観。映画館で予告を何度か観ていて「こんな映画なんだろうなあ」と思っていた。綾瀬はるかさんが演じる水泳コーチと泳げない男性の恋をコメディタッチで描いたものだと思っていたわけだけど、そうではなかった。あれー。
「アニメスタイル017」の編集作業でデザイン&編集のスタッフから「このページに載っているのは第二原画ですが、文字の書き方が違っているから、レイアウトを描いた人と載っている原画を描いた人は別の人なのではないですか」という突っ込みが入り、またまたタイムシートまで戻って確認する。
最近はマメに歩いているので腰痛とは縁がなかったのだけれど、この日は午前7時半から14時くらいまで座りっ放しだったので、腰の具合がヤバそうになった。慌てて何度か歩いた。
この日の作業は「アニメスタイル017」がメインで、連絡いろいろ。それ以外は進行中の書籍の件、「WEBアニメスタイル」の簡単な原稿など。
Netflixの「サンクチュアリ -聖域-」をながらだけど、全話一気観した。よくできていた。特に役者がいい。

2023年5月13日(土)
SNSで年齢が近い方が『トニカクカワイイ』をどう楽しめばいいのか分からないと書いていたけれど、僕は楽しんでいる。夫婦で温泉に入る話も微笑ましくてよかった。自分が若くて独身だったら、違った観え方をするんだろうなあ。
TOKYO MX2で「J-BOT ケロ太」という番組が始まった。飯能でケロ太というロボットが活躍するドラマで、印象としては東映の不思議コメディーに近い。どこかの局でやっていた番組なのかと思ったら、これが本放送らしい。
朝の散歩の後、朝のツイートを挟んでワイフと「春バラの早朝開園」をやっている旧古河庭園に。旧古河庭園は「緑に触れたい」というワイフの要望だった。薔薇を見ているうちに雨が降ってきた。しばらく雨宿りをしてから旧古河庭園を出る。旧古河庭園の後に六義園に行く予定だったけれど、それは中止。
新文芸坐で「翔んだカップル オリジナル版」(1980/122分/35mm)を鑑賞。プログラム「二十三回忌 哀惜・相米慎二」の1本だ。

以下は半月くらい経ってから書いた「翔んだカップル オリジナル版」の感想だ。
映像内で表示される作品タイトルは以下の通り。
…………
翔んだ
カップル
ラブコールHIROKO※オリジナル版
…………
相米慎二監督のデビュー作。これが初見と思って観始めたのだけれど、モグラ叩きのシーンを始め、記憶にあるシーンや展開があったので、観たことがあったようだ。テレビ放映で断片的に観たのかもしれない。
鑑賞中には「演出としてはやりきれていないのではないか」と思っていたけれど、鑑賞してからしばらく経って振り返ってみると、「突出した演出的」と「青春映画のバランス」がいいと思うようになった。公開当時、映像に関してかなり新しかったはずで、その新しさは今となっては体感はできないが、想像はできる。今観ても凄いのは間違いない。物語に関してはやや説明不足。ただし、想像で補える範囲だ。登場人物の描写や言動に「あの時代」の空気感、気分が色濃い。
一番よかったのが、それぞれ別にデートをしていた田代勇介(鶴見辰吾)と杉村秋美(石原真理子)、山葉圭(薬師丸ひろ子)と中山わたる(尾美としのり)が合流してダブルデートになるところ。高層ビルと鯨のアドバルーンの使い方がお洒落。この時代のお洒落だ。アニメで言うと『魔法の天使 クリィミーマミ』とか『魔法のスター マジカルエミ』に感覚が近い。高層ビルのカフェ(?)で4人がお茶をするカットがあるのだが、ちょっと気怠い感じで、これもいい。このカットはもっと長いショットだったのを、つまんで短くしたのかもしれないし、ダブルデートで別のシークエンスも撮っていたのではないかという気もする。もっと長いバージョンがあるなら観てみたかった。
最初の公開版が106分で、オリジナル版が122分。最初の公開版は観ていないはずだけど、そちらのほうがまとまりがよかったのではないかと想像。
これも想像だけど、オリジナル版にはプロデューサーからの「薬師丸ひろ子のアップを増やせ」というオーダーで足したのではないかと思われるシーンがふたつある(公開版からあるのかもしれないけど、観ていないので分からない)。ひとつが勇介が秋美のマンションに行っている日に、圭が窓ガラスにスプレーで「勇介 バカ」と書く数カット。もうひとつが、秋美のマンションから帰った直後の、圭が階段を降りるだけの謎の場面。両方ともそこまでの演出から浮いているし、後者は物語的に意味のない描写だ。Wikipediaでも触れられ、DVDの特典のトークでも話題になっていたけれど、モグラ叩きのシーンについて、プロデューサーから「アップカットを入れて撮り直すように」という指示があったが、相米監督は同じような長回しの1シーン・1カットで撮ったのだそうだ。それと同様に薬師丸ひろ子のアップを増やせ」というオーダーが出たのではないだろうか。
圭が自転車で坂を走り降りてゴミ箱に突っ込んで、その後に立ち上がって勇介と歩き出す場面もよかった。ここも長回しの1シーン・1カットなのでスタントマンを使うことは不可能。こんなに「体当たりの演技」という言葉が相応しいものも珍しい。
若々しい魅力に溢れた映画で、それは若者4人の恋愛模様を描いているからということもあるのだけれど、それだけでなく、役者の元気さ、撮影現場の楽しさが反映されているのだろう。

第824回 『いせれべ』の話(14)~アニメ作りは全て計算、今は!

11話はまたREVOROOTさんのグロス話数。4話同様、大変お世話になりました!

 6話に続き、筆安一幸君の脚本。そしてこの辺りにくると、社内リソースをラスト2本(12・13話)に向けて送り出すことが必須になるため、ここでスケジュール的にも作画的にも安定したグロス班は、本当に有難いのです。よって、ラストの優夜・ナイト・ルナ大暴れもミルパンセ側の作画修正は最小限。カメラワークを駆使するなどして撮影メインの調整が多かったと思います。が、とどめのボディーブローは板垣の方で原画から修正させてもらいました。あと、異世界側・王都のモブ作画や、毎度お馴染みBG修正は社内の長谷川(千夏)さんに助けられました(ありがとうございます!)。
 あと、アーノルド王の大塚明夫さんは最高でした!『Devil May Cry』(2007)ではダンディーでちょい悪なモリソン、『ベルセルク』(2016)では怪しく重量感あり且つカッコイイ髑髏の騎士、そして今作では威厳ある国王でありつつも娘に頭の上がらないコミカル親父。御一緒させていただく度、その幅の広さに驚かされます。この11話でも優夜が布団を出してから、アーノルド王が徐々にキレて爆発するまでが、「来る、来る、……キタ——!!」のテンポ感が絶妙なんですよね~。各シーンの“面白さの核”みたいなものを完璧に理解されている感じで、大塚さんが持って入られるプランで基本一発OK!『Devil~』の時から「~な感じでください」とか「ここのシーンの意図は~」などでテイクを重ねたことが、大塚さんに限っては記憶にありません。て、業界の大ベテランに大して当たり前なことばかり、大変失礼しました。

12話・13話はラスト2本纏めて自分が脚本書きました! コンテは監督・田辺(慎吾)と共同!

 てか、コンテは田辺監督のモノに、俺の方が多めに手を加えた感じ。つまり、田辺君の方から「アクションは板垣さんが手を入れるでしょ?」とかなりラフで提出。で、俺が全体のコンテやってる時、彼の方は現場の打ち合わせや演出処理を進めていた訳で、そういう意味では監督・総監督の分業は上手くいってました。そして、総監督・監督体制でやる代わりに他社のシリーズより各話演出の人数が少ないハズです。つまり、監督と名の付く人(板垣も含む)が半分のコンテ・演出を担当するのがウチ(ミルパンセ)のやり方。ま、“業界的に人手不足”は何度もここで話題にしているとおりで、フリーの演出さんに電話掛けまくり、隙間を見つけてねじ込んだりするくらいなら、社内の新人アニメーターに教えて、演出も兼任してもらったりした方がよっぽどマシ!「俺がフォローするから、演出もやってみる?」と。
 あと、今現在ウチの演出スタイルは、いくつかの工程をショートカットしているので、各話演出がそれほどの人数が必要ないんです。もちろんグロスに出す場合は、そのスタジオ(会社)で立てられた演出の方で作ってくださればOKです。ただ我々の場合はほぼ全員社員給で雇っているため、あらゆる作業工程の所要時間を測って、給料分の仕事をしてもらわなければなりません。
 例えば画コンテ。全話・全カット、コンテに俺の方で難易度を“△・○・◎”でランク付けして作業INします。ちなみにコンテは“アニメ制作における作家的ポジション”であることより先に、“アニメ事業の設計図”であるべきと考えており、“画面作りの面白さ”と“その作業工程における費用対効果”の両立ができてないコンテは、自分の方で手を入れる! あえて、今はコレでやってます。
 その難易度で一番軽い“△”カットの原画は、所謂“止め・口パク・目パチ”のみ。こちらは1カット¥4000で計算すると、「1日2~3カットは上げてください。ラフではなく、一発原画で」と。これで、土・日休みで1ヶ月22日働くと、最低賃金に届く計算です。
 作監。こちらもラフと清書、同じカット(画)に2回作監修正なんて入れません。一発原画に一発作監。このショートカットで固定給を実現している訳です! 今は。
 これを演出に当てはめると、

レイアウトのチェックにざっと10分、原画チェックとタイムシート&撮影指定チェックにそれぞれ10分ずつ。1カット計30分程度!

で、1話分。平均300カット×30分で150時間。1日8時間勤務で計算すると18日ほどで1話分の原画チェックが終わります。もちろん、打ち合わせやリテイク処理まで入れると1ヶ月で1話。つまり給料から逆算すると、1シリーズの作画期間で演出1人で6話分は処理できるる。これも、あくまで今は、です。
 ま、当然これは机上の計算。現役の演出の方は仰るでしょう。「1カット30分なんて!? レイアウトだって、ダメなものは全部描き直しで1時間じゃ済まない時だってあるんだぞ!」とか。そんなこと俺が知らないとでもお思いですか!? それが分かった上で「全修つったって、全カットじゃないですよね?」と俺は返します。そもそも、

脚本・コンテ・演出・作監・原画・動画、自分でやったことがある作業の所要時間くらいは把握済み!

だから、逆に止め・口パク程度の軽いカットは10分とかからず「作監様シクヨロでーす」で終わるということも承知している訳です。しかも、従来のフリー演出は作品掛け持ちのせいで、毎日スタジオ(会社)に入りもせず、

簡単な10分「シクヨロ~」を何10カット×何日も机に眠らせ、作監作業の時間を奪うと!

大体、演出を作家か何かと勘違いした人に限って、「演出を時間で測れるか! こちとら“作品”を作ってんだぞ!」とか言って自身の怠惰なワークスタイルを正当化しようとするんです! フリーを決め込み、週2~3回2~3時間ずつしか社内に入らず9割「作監シクヨロ~」で……。さらにその“平成”演出スタイルで3~4社掛け持ちして、月50万以上稼ぐと。このような演出を何人も雇ってる会社——ハッキリ言います。「製作委員会さん、そこの会社お金(製作費)余ってますよ!」これを業界に横行させてる内は我々「製作費が足りない」「人手が足りない」云々言えた義理じゃないと思います。
 ちなみにウチの場合はその机上の計算から零れた分を、板垣が引き取ります。すると『いせれべ』スタッフ・クレジットの出来上り。これも、あくまでも“今は”で、これからももっとスタッフを指導して、何とかしないといけないと考えています(自戒)。
 ……と、久々に結構ぶちまけました故、最後に。

 今回みたいのに対して

奔放な発想・作家性とその法外な金銭感覚で活躍された“昭和の巨匠”方をご本人無許可で引用しては、無計画とピュアな作家性を混合して「そんなの創作じゃない!」とかのたまう方々

が何か言いたいのはよく分かります。でも、考え方は人それぞれ。そのそれぞれで、まず板垣個人が今やらなきゃならないと思っていることは、アナログからデジタルに各工程が進化した“令和”において、

“デジタルフル活用で各作業者をちゃんと固定給で食わせられるアニメ作り”! そのために妥当な製作費と人員数の算出! そしてそれに付随し“昭和~平成”と続いた業界一部の既得権益層の見直し!

だと考えています(今は)。当然日々の作品作りと同時進行で、です。何々団体作ったり、プラカード掲げて運動家になるつもりは自分にはありません。で、これもその運動に懸ける方たちを否定するつもりは全くありません。業界各人が業界のことを思って——であること前提で、そのために取る手段は人それぞれですから。
 今回はあくまでも「今の板垣がやるべき事」を言ったまでです。

 で、また話が逸れたので、12・13話は次回、仕切り直しましょう(汗)!

第266回 仕込まれた毒 〜ヨルムンガンド〜

 腹巻猫です。先月のことになりますが、9月16日に京都で林ゆうきさん、高梨康治さんらが参加する劇伴フェス「京伴祭」が開催されました。京都まで行く気満々だったのですが、残念ながら当日仕事が入って上洛がかなわず、後日配信で視聴しました。今回特に注目していたのが初参加となる岩崎琢さんのステージ。『天元突破グレンラガン』『文豪ストレイドッグス』『刀語』『ジョジョの奇妙な冒険[戦闘潮流]』などにまじって『ヨルムンガンド』の曲が演奏され、「おおっ!」と思いました。なぜか。それは本文で。


 『ヨルムンガンド』は2012年4月から6月にかけて放映されたTVアニメ。高橋慶太郎の同名マンガを原作に、監督・元永慶太郎、アニメーション制作・WHITE FOXのスタッフで映像化された。2012年10月から12月にかけて第2期『ヨルムンガンド PERFECT ORDER』が放映され、原作のラストまでを映像化して完結している。
 この作品のことがひっかかっていたのは、庵野秀明監督が『ヨルムンガンド』の音楽を気に入って、実写劇場作品「シン・仮面ライダー」の音楽担当に岩崎琢を選んだと聞いたからである。岩崎琢が作曲の参考に見せてもらったフィルムには、すでにいくつかのシーンに仮の音楽として『ヨルムンガンド』の曲がつけられていたという。
 オリジナルの『仮面ライダー』の菊池俊輔による音楽をこよなく愛する筆者であるが、『シン・仮面ライダー』に関しては、旧作の音楽を使わず、全編岩崎琢の音楽でよかったんじゃないか、と思った。それくらい、岩崎琢のサウンドが新しい仮面ライダーの世界観と映像に合っていると感じたのだ。
 その音楽の原点とも言える『ヨルムンガンド』とはどんな作品なのか。
 戦争で両親を失い、少年兵として生きていたヨナ(ジョナサン)は、武器商人の女性ココ・ヘクマティアルに預けられ、彼女の護衛と任務の遂行を担うチームの一員となる。世界の紛争地域でビジネスを展開するココは、年中トラブルに巻き込まれ、命をねらわれていた。ココとともに世界を旅するヨナは、心の中では武器を憎みながらも、各地で激しい戦闘を経験していく。いっぽうココは「世界平和」のためにある計画を実現しようとしていた。

 音楽をつけるのが難しそうな作品である。ガンアクション、とひと口に言いきれない。銃を使ったバトルはあるが、スカッとする作品ではない。主人公は武器商人。正義や人助けのために戦っているわけではない。カッコいい曲をつけて盛り上げるのは向かないだろう。かといって、劇場作品「ダンケルク」のようなシリアスでリアルな雰囲気にしてしまうと後味が悪い。フィクションとしての面白さを損なわないようにしつつ、カッコよくなりすぎない、でも魅力のある音楽がほしいところだ。
 岩崎琢の音楽が、なかなか意欲的である。
 まず気になるのが、ボーカルが入った曲が多いこと。第1話冒頭に流れる曲「Jormungand」もそうだし、毎回の次回予告で流れるラップを使った曲「Time to attack」も耳に残る。
 アクション曲にもボーカルが使われている。人の声が入った曲が劇中に流れるとセリフと重なったり、歌詞が気になったりして、じゃまになることが多い。本作のラップは外国語の歌詞なので聞き流すこともできるが、気になるといえば気になる。その「気になる感じ」、ある種の違和感が、戦闘の非日常性と混沌とした状況を感じさせ、アクションシーンを必要以上に盛り上げず、ココたちをヒロイックに見せないようにしている。
 世界各地を旅するストーリーに合わせて、ヨーロッパや中東、東南アジアなど、エスニックなサウンドを取り入れた曲が多いことも本作の音楽の特徴だ。これもまた、音楽を「洗練されたカッコよさ」から遠ざける独特の味つけになっている。
 多くの作品でエッジの立ったクールな曲を聴かせてくれる岩崎琢だが、本作ではクールになりすぎない絶妙なラインをねらっているようだ。クールというよりドライ。スタイリッシュというより土臭い。でもカッコいい。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「ヨルムンガンド オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2012年6月にジェネオン・ユニバーサル・エンタテイメントから発売された。2012年12月には第2期のサントラ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER オリジナルサウンドトラック」が同じメーカーからリリースされている。
 第1期のサントラから聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. Jormungand
  2. Time to Rock and roll
  3. Jonathan
  4. cul-de-sac
  5. Hard drive music
  6. H.W.Complex no’3
  7. Colmar
  8. Insert
  9. H.W.Complex no’4
  10. “Cogito, ergo sum”
  11. Masala Dosa
  12. Mad symphony
  13. The crafty jewelry
  14. Poached egg
  15. Mania Butterfly
  16. Lamento
  17. Essentia
  18. Alligator
  19. MIM-40-12
  20. H.W.Complex no’5
  21. Rock’ n roll boobs
  22. Tristeza
  23. Meu mundo amor
  24. Time to attack

 主題歌は収録されず、劇伴(BGM)のみで構成。
 1曲目の「Jormungand」は番組タイトル「ヨルムンガンド」を曲名にしたナンバー。本作のメインテーマと言えるだろう。ヨルムンガンドは北欧神話に登場する毒蛇の名だが、本作における意味は物語の終盤でようやく明らかになる。この曲は、第1話の冒頭、第7話、第11話で使用され、第2期の最終話でまた登場する。福岡ユタカが作詞とボーカルを担当。福岡ユタカは「シン・仮面ライダー」の音楽にも参加している。9月の「京伴祭」でも岩崎琢のステージにゲスト出演していた。
 トラック2「Time to Rock and roll」はアクションシーンにたびたび流れた曲。リズムから始まり、女性ボーカリストSANTAによるラップへと展開する。劇伴にラップを取り入れる手法は『天元突破グレンラガン』ですでに試みられているが、より劇伴と一体になった形に進化している。
 録音はニューヨークで行われた。SANTAのラップをフィーチャーしたねらいは、音楽が単なる「スタイリッシュ」に流れてしまわないように「強めの毒」を仕込むことだった、と岩崎琢はアルバムのライナーノーツで語っている。
「違和感と、幾許かの羨望の念を抱かせること、そしてこの作品に不可欠な、キナ臭さと一触即発的なヤバさを音楽をもって補完させるために、Santaのラップはどうしても必要だったのだ」
 トラック3「Jonathan」はヨナのテーマ。もの憂い雰囲気のギターの調べがヨナの無口なキャラクターを伝える。ギターサウンドは日常描写によく使われており、トラック7「Colmar」やトラック14「Poached egg」などもギターによるリラックスムードの曲だ。
 ここまでが、いわばアルバムの導入部。3曲で本作の世界観と音楽のコンセプトが伝わってくる。
 トラック4「cul-de-sac」からはサスペンス、アクション描写曲が続く。男声ボーカルをフィーチャーしたエスニカルな「cul-de-sac」はトラブルの前兆などに使用されたサスペンス系の曲。疾走感のあるトラック5「Hard drive music」は第4話でココたちが殺し屋「オーケストラ」の襲撃にあう場面に流れた。ノイジーなエレキギターのリフから始まるトラック6「H.W.Complex no’3」は第1話から使われている戦闘曲。曲名が共通する「H.W.Complex no’4」(トラック9)、「H.W.Complex no’5」(トラック20)とともに、アクションシーンに流れた本作の代表的な曲だ。
 トラック10「”Cogito, ergo sum”」は、シンセとバイオリンなどが奏でるエキゾチックでミステリアスな曲。曲名は哲学者デカルトの有名な言葉「我思う、ゆえに我あり」から。ココの心情を描写するシーンにしばしば選曲されている。ココは何を想い、何を自分の存在証明とするのか……? そう考えると味わい深い曲だ。第1期の最終話(第12話)の本編ラストに流れたのもこの曲だった。
 トラック11「Masala Dosa」の曲名「マサラ・ドーサ」とは南インド料理の名。タイトルどおり、ボーカルの入ったインド風の曲である。第8話で元女優の兵器ブローカー、アマーリア・トロホブスキーとココが話をする場面に流れている。インドが関係するシーンではなく、民族音楽による異化効果をねらった演出だろう。
 ギターとハーモニカが奏でるトラック12「Mad symphony」は、第3話に登場する殺し屋「オーケストラ」のテーマ的に使われた曲。その後も狂気を宿した殺し屋の登場シーンなどにしばしば選曲された。「狂ったシンフォニー」とはうまい曲名である。
 トラック13「The crafty jewelry」はアマーリアのテーマ的に使われたストリングスによるタンゴ風の曲。
 トラック15「Mania Butterfly」は蝶マニアの科学者Dr.マイアミのテーマ。優雅なストリングスの曲だ。
 やはりストリングスが奏でるトラック16「Lamento」は「哀歌」を意味するタイトルの曲。第5話でヨナがココとの出会いを思い出すシーンに使用された。
 トラック17「Essentia」は第4話で殺し屋「オーケストラ」のひとりチナツが師匠を撃たれて動揺するシーンに選曲された。これもストリングスの曲だ。
 こんなふうに、ストリングスの曲がけっこう重要なテーマとして使われているのも本作の特徴である。
 次のトラック18「Alligator」はエレピとフルート、リズム、ストリングスなどによるセッション曲。ラウンジ風の曲想だが、全体に不穏な雰囲気がただよう。ココと武器商人が話をする場面によく使われていて、曲名「Alligator(=ワニ)」の意味を考えさせられる。
 トラック19「MIM-40-12」から3曲は、サスペンス〜バトルという流れ。トラック21「Rock’ n roll boobs」はユーロビート風のリズムと女声ボーカルを組み合わせたダンサブルな曲で、これがバトルシーンに合うのだから面白い。第6話の銃撃戦の場面などに使われた。
 トラック22「Tristeza」からはアルバムを締めくくる流れとなる。
 「Tristeza」は「悲しみ」を意味するスペイン語・ポルトガル語。曲名どおり、哀感をたたえたストリングスの曲である。第11話の冒頭でココのチームの一員であるバルメが辛い過去を回想するシーンに流れていた。
 続くトラック23「Meu mundo amor」は第12話でバルメがヨナをかばって銃弾を受けるシーンに流れた挿入歌。タイトルはポルトガル語で「私の世界の愛」といった意味だ。岩崎琢はこの曲について「『この世界は愛に満ちて素晴らしい』という、物語に対して全く逆の意味の歌詞がついている」とSNSでコメントしている。作詞とボーカルはSilvio Anastacio。
 最後の曲となるトラック24「Time to attack」は女声ラップによるココのテーマと呼べる曲。トラック2「Time to Rock and roll」のラップを担当したSANTAが作詞とボーカルを担当。歌詞にココの名が読み込まれている。次回予告で流れたほか、劇中でもたびたび使われた印象深い曲だ。戦闘的な曲ではないけれど、本作の雰囲気と世界観をもっともよく表現してるのがこの曲だと思う。岩崎琢の言葉を借りるなら「キナ臭さと一触即発的なヤバさ」が宿った曲だ。

 ドライでエスニカルなサウンド、そして、ラップに仕込まれた違和感という「毒」。「シン・仮面ライダー」が必要とした音楽はそれだったのではないか、と筆者は考えている。
 そして、『ヨルムンガンド』を聴いたあと、全編岩崎琢の音楽による特撮ヒーロー作品も観てみたいなあと思うのだ。

ヨルムンガンド オリジナルサウンドトラック
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ヨルムンガンド PERFECT ORDER オリジナルサウンドトラック
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アニメ様の『タイトル未定』
414 アニメ様日記 2023年4月30日(日)

2023年4月30日(日)
ゴールデンウィーク2日目。朝の散歩では池袋から日暮里の一由そばまで歩く。到着したのは午前7時過ぎだったのだけど、店の前に行列ができていてびっくり。その後は昼過ぎまで事務所でデスクワーク。この日の作業はページ構成だった。14時過ぎにワイフとドーミーイン池袋にチェックイン。マンガを読んで、温泉に入って、缶ハイボールを吞む。ホテルの部屋でワイフと吞みながら『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『BLEACH 千年血戦篇(再放送)』「ナニコレ珍百景 3時間SP 系列局対抗!!日本一決定戦」等を観る。『BLEACH』は字幕付きで観ると、面白さが増すなあ。就寝したのは20時過ぎかな。

2023年5月1日(月)
誕生日を迎えて59歳になった。この一年も仕事を続けることができました。ありがとうございます。数年前から「60歳まで今の仕事を続ける」を目標にしています。60歳になったからといって、仕事をやめるわけではないですが、まずは60歳まで現役を目指したいと思います。

ゴールデンウィーク3日目。会社は通常業務なので、早朝と昼間は仕事。夕方はワイフと池袋西口の落ち着いた店で誕生祝い。パルコで「名探偵コナンプラザ」が始まったことを知って立ち寄る。ワイフがグッズを買い込んだ。
以下は妄想の話。「めんつゆひとり飯」がアニメになるならシリーズ構成をやりたい。途中の話をオリジナルで3本くらい書くのでもいい。保ヶ辺と舞ちゃんの話だけでもいい。なんなら、保ヶ辺単体のエピソードでもいい。十越さんでオリジナルを作れたら楽しいだろうなあ。まあ、そんな話はこないだろうし、きてもやっている時間がとれるのかというとそれも難しい。妄想の話でした。

2023年5月2日(火)
ゴールデンウィーク4日目。この日も会社は通常業務。昼にドーミーイン池袋をチェックアウト。この日も色々と進めたのだけど、連絡関係が多いので「仕事をやったぞ」という感じはあまりない。
Netflixで「あいの里」という番組の配信が始まった。ジャンルとしては恋愛リアリティショーらしい。予告動画(サンプル動画)にロトスコープの映像があった。本編を観てみると、ロトスコープはかなりちゃんとしている。技術がある人がやっている。1話のスタッフクレジットを見ると、ロトスコープをやっているのはロッケンロール・マウンテンだ。ロッケンロール・マウンテンは『音楽』の岩井澤健治監督の会社である。2話、3話もロトスコープ部分はあった。
現行のアニメだと『君は放課後インソムニア』が引き続き、好印象。『桜蘭高校ホスト部』を1話から6話まで観る。何度も観ているのに1話が新鮮だった。各話の演出もトバしているところがある。

2023年5月3日(水)
ゴールデンウィーク5日目。午前中はワイフと「春のバラフェスティバル」開催中の旧古河庭園に。帰りは西武池袋本店の「東京カレーカルチャーDX GWにっぽんカレー列島」に寄った。午後はずっと原稿。原稿作業だけ進められるのが嬉しい。数時間キーボードを叩いたら調子が出てきた。

2023年5月4日(木)
ゴールデンウィーク6日目。この日の作業は主に「アニメスタイル017」の写真選び。それにあわせてテキスト作業。苦労すると思っていた作業だけど、やってみたら楽しかったし、それほどは時間はかからなかった。ただし、全体の予定としては遅れ気味。
Twitterで、2024年5月3日昼に阿佐ヶ谷ロフトAで「アニメ様イベント(仮)」を開催することを告知する。サンシャインシティに行ったら『名探偵コナン』関係のデコレーションが大変なことになっていた。 特にサンシャインまでの地下道が凄い。
東映チャンネルの「Gメン’75」。141話「団地奥様族の犯罪」と142話「エレベーター密室殺人事件」をオンエアと録画で視聴。141話のラストは記憶にあるなあ。142話はGメンを含めた数人がエレベーターに閉じ込められて、ドラマが進行するという内容で、着想が面白い。本編の後に「劇中のエレベーターは、旧タイプで、現在は使われていません。今のエレベーターは、安全設計になっています。念の為。」のテロップが出た。さらに次回予告と別に「ヨーロッパ・ロケシリーズ」の特報付き。別枠で倉田保昭さんのインタビューをやっていて得した気分。
『異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する』最新話で総監督の板垣さんが、背景でもクレジットされていた。僕が気づかなかっただけで、今までの話数でもやっていたのかもしれない。

2023年5月5日(金)
ゴールデンウィーク7日目。昼間は仕事をしたり、食事に行ったり。15時くらいにマンションに戻って横になる。少し休んで仕事を続けるつもりだったのだけど、熟睡。そのまま翌日の午前1時まで寝てしまう。

2023年5月6日(土)
ゴールデンウィーク8日目。目を覚ましてスマホを見ると、ご家族からメールがあり、片渕さんの体調が思わしくないとのこと。午前1時50分に出社。片渕さんの件にメールで対応。イベント中止も考える。その後、片渕さんの体調がよくなり、朝にはイベントに出演できることになった。昼から「第204回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作15【タイトル発表直前、どんな題名になるのかな?編】」を開催。熱がひいたとはいえ、片渕さんの体調はやはりよくない。イベントの最初にそれをお断りする。今回は新作の作品タイトル発表直前の開催だった。お客さんにタイトルの予想をアンケート用紙に書いてもらい、イベント後半ではそれを読み上げながらトークを展開。片渕さんの体調のこともあり、アフタートークはごく短めに。イベント全体も2時間弱のショートバージョンとなった。
『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』に「ワシは(オタクではなくて)マニアじゃ」というセリフがあり、懐かしくてよかった(なお、括弧内は筆者の補足)。
『王様ランキング』を観た後で『モブサイコ100 III』の資料を見ていて、自分が櫻井孝宏さんのファンだということに気がついた。

第823回 佳境は乗り越えて『いせれべ』の話(13)

 前回、“佳境”とお伝えした脚本(シナリオ)作業は無事、最終話まで書き終わりました。後は委員会チェックと原作者先生チェックをいただき、調整・修正をする流れに。もちろん、修正も自分でやります。そして、その作品はと言うと、現在制作中『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』(こちらはすでに制作発表済)より、さらに次のシリーズになりますゆえ、タイトルも内容もまだ言えません、アシカラズ。

ということで、既にお忘れかも知れませんが『いせれべ』話の続きに戻ります。

9話は田辺慎吾/脚本・コンテ・演出、作画監督/木村博美・吉田智裕!

 作監に関しては、最初から木村さんでスタートした話数ではあったものの、彼女が総作監の方で他話数の面倒を見続けていたため、原画作監を吉田君フォロー、だったと思います。
 こちらも4話同様、REVOROOTさんの原画は本当に助かりました。皆、巧い! 本話前半Aパートをまるまるやっていただき、木村作監からも(チェックの)上がりがスルスルと出ました。やっぱり、土台(原画)が巧いと作監修(キャラ修正)がやり易い、という当たり前の話。
 お風呂シーンのレンズ(画面)に着いた水滴は1987年以降の出﨑統監督OVA(『エースをねらえ!2』『華星夜曲』など)っぽくて大変気に入ってます。ちなみに自分が要望したのではありません。要は“大事な部分を隠す”手練手管の一種として載せてきた、撮影さんのファインプレーでした!
 サッカーのアクションシーンは作画をローカロリーにするため、レイアウト全修とポーズ全修を総作監としての俺が入れまくりました。“止めで持つ”ポージングを駆使した訳です。

 続いて10話。こちらも、

脚本・コンテとも板垣の方でかなり手を入れさせてもらいました、スミマセン!

まず、脚本の方で「物量的にエピソードが全て入らない」とのことで、こちらで引き取らせていただきました。確かにざっと並べただけでも、

「芸能界勧誘を断る優夜」+「ウサギ師匠登場~修行~聖VS.邪の説明~キングミスリルボアに勝つ!」+「球技大会~卓球~バレー~テニス」+「優夜と佳織のラブ下校」、そして「ユティ登場」

と、盛沢山のエピソード。でも全13話で“ユティとの対決”まで到達(製作委員会の決定)するためにはこの話数をテンポで乗り切らなければ、エピソード自体をまるまる削ることになってしまいますから。これは自分で責任を持って纏めるしかありません。
 でも最初シリーズ構成を纏めていた時、ボリューム的に多少キツイのは分かってはいたものの、

各エピソードの“面白い部分”をテンポ良く整理して繋げば1本になる!

というビジョンは自分的に見えていたので正直、脚本が難航しているのを見て「え? 何で出来ないの?」と、俺はなってしまうのです、いつも。
 例えば、ウサギ師匠との修行から巨大魔物に勝利するまでは、修行シーンの繰り返しにカットバック的に時系列を弄れば色々同時進行させられます。球技大会も卓球で“超力”を発揮したなら、同じことを繰り返しても意味がないので、バレーボールのシーンは“大爆音OFF”で通過など。

“各件(くだり)要点のトリミング”と“画面&音声の2段レイヤーを自在に操る”のが演出!

と、自分は出﨑アニメで学びました。主に『劇場版エースをねらえ!』(1979)で!
 アニメじゃなくマンガの方でも手塚治虫先生は「16ページあればなんでも描ける」と仰ってましたが、これも同様の話かと思います。だって、手塚先生の「ブラック・ジャック」16~18ページ(1話分)って、1冊の小説や2時間の長編映画にできる密度がありますから。
 次にコンテも同様のことが起こってきて、全部足すと440カット越えのコンテが上がってきて「おいおい……(汗)」と。結局、自分の方で360程? に切り直しました。

 また次週で。

アニメ様の『タイトル未定』
413 アニメ様日記 2023年4月23日(日)

2023年4月23日(日)
レイトショー「新文芸坐×アニメスタイル Vol.158 30周年! クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王」を開催。本郷みつる監督と一緒に関係者席で『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』を鑑賞。トークの前の作品をフルで鑑賞することができたのが嬉しかった。いつもは上映の前後には打ち合わせがあって上映をフルで観ることができないのだ。35ミリフィルムは映画序盤には傷があったが、その後は比較的良好。特に終盤は綺麗だった印象だ。上映の次がトークコーナー。お客さんは若い人が多くて『アクション仮面VSハイグレ魔王』が公開した年に生まれていない人も多かった。記憶が正しければ、この日にこの映画を劇場で初めて観た人が8割くらい。この映画を観るのが初めての人も2割か3割くらい。質問コーナーで最初に当てた方が、感動のあまり涙ながらに本郷監督に感謝の言葉を伝えたところから、トークが暖かい雰囲気に。ハッピーなプログラムとなった。企画してよかった。

2023年4月24日(月)
この日の午前3時16分に出社。出社時間が少し遅かったのと、月曜でやることが多かったので、あまり作業は進まず。焦る。
FODで「私のバカせまい史」の「カラオケビデオ俳優史」を観る。日曜の昼にたまたま地上波で再放送を観て、あんまりにも面白かったので、配信で観直した。
朝の散歩でサブスクにあった『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』のサントラを聴く。これはいい。作品世界に浸れるサントラだ。聴いた後で腹巻猫さんのコラムを読み直したけれど、「ディスク1だけで世界が完結している感もあるので、ディスク2は特典ディスクみたいな印象だ。」の記述に納得。
ネットレンタルで届いたCDをパソコンに次々と入れる。『YAWARA! a fashionable judo girl!』のサントラが数枚あったので借りたのだけど、「YAWARA! サウンド・セレクション」というタイトルのアルバムがおかしい。データを見ていたら、浅香唯さんが歌ってる楽曲がある。実写映画版のサントラだったようだ。店舗でCDを借りたらジャケットを目にするから、こんな失敗はないよあ。
新番組は引き続き、可能な限り視聴し続けている。

2023年4月25日(火)
この日は午前2時8分に出社。仕事のピークは深夜から早朝までだった。午前中も集中して作業ができたが、午後は集中力が落ちて、主にメール作業。
以下は最近あった話。あるアニメスタジオの女性スタッフが、仲間と一緒に自主企画でアニメ上映会をやることになって、僕も誘われたのだけど行くことができなかった。それとは別のアニメスタジオ制作さんから連絡があり、内々で作品の上映会をやるので相談にのってほしいとのこと。あんまりにもマニアックで、僕のツボを押してくる上映内容だったので、忙しかったのに色々と説明してしまった。どちらもアニメスタジオの若い人が企画した勉強会のようだ。頼もしい。

2023年4月26日(水)
『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の話題。「少年サンデー」22・23合併号の付録[黒鉄の書]と「少年サンデーS」6月号の[魚影の書]をチェックした。どちらも満足。だけど、逆に知りたいことが増えてしまった。どこかで取材できる機会があるといいなあ。
仕事の合間に新文芸坐で「狂った野獣」(1976/78分/35mm)を鑑賞。特集「中島貞夫 遊撃の美学 ネチョネチョ生きろ!」の1本。この映画は二度目の鑑賞だ。面白かった記憶があって再見したのだけど、やっぱり面白かった。前にも観た時もそう思ったけど、後半はメチャクチャ。どうして爆発したのか分からない自動車とか、どうして血まみれになっているのか分からない人とか、何のために走って転んだのか分からないバイクとか。勢いを出そうとしてメチャメチャやっている。いい気分転換になった。電車を乗り継いで病院Bに。レントゲンを撮った後に診察。去年の緊急入院からの肺の病気と、そこから治療が始まった呼吸器の問題が一段落したらしい。
スタッフクレジットを確認するために、あるシリーズのOADを確認。この作品にはオープニングがついていない。ひょっとしてこれって、作品タイトルの表示がない? 作品公式サイトでも単にOADとしか表記されていないなあ。とりあえずは「作品タイトル[OAD]」とかそんな表記にしておけばいいのか。
スターチャンネルの「続・青い体験 ゴールデン洋画劇場版」をながら観。「青い体験」よりも楽しい感じで、こちらのほうが観やすい。主人公の家のメイドの吹き替えが麻上洋子さん。これは聴いていて分かった。主人公の友達の1人の吹き替えが古川登志夫さん。

2023年4月27日(木)
仕事の合間に新文芸坐で「ベネデッタ」(2021・仏=オランダ/131分/R18+)を鑑賞。中盤まではお話も楽しめたのだけれど、後半はそうでもないかな。美術とか撮り方がよくて満足。女優もいい。映画充した。最近、映画で女性の裸をあまり観ていなかったんだけど、主人公と副主人公の美人が豪快に脱ぎまくる。ライトシーンなんて服を着ててもいいのにオールヌードだ。その意味でも満足度高し。
この日の作業は主に「アニメスタイル017」のページ構成。

2023年4月28日(金)
進行中の書籍であちこちに問い合わせて分かったこと。20年くらい前に某社から出た、あるアニメーターさんの画集。今、作り直したら、当時は載せられなかったあれとかあれとか載せられるらしい。勿論、資料が残っていればだけど。例えて言うならば「安彦さんの画集に『ガンダム』が載っていない」みたいなことがあったのだ。
去年からずっと拗れていたある件が一応の決着を見る。いやあ、長かった。気が重かった。ずっとどんよりしていた。

2023年4月29日(土)
ゴールデンウィーク1日目。基本的には事務所でデスクワーク。15時から板垣さん、アニメスタイル編集部の松本君とZoom座談会。「WEBアニメスタイル」の「板垣伸のいきあたりバッタリ!」の特別編として掲載するための座談会だ。どうして座談会をやることになったのかについても、後に更新した記事の中で語っているので、そちらを読んでもらいたい。

「板垣伸のいきあたりバッタリ!」
第804回 特別編・いきあたりバッタリ座談会(1)
http://animestyle.jp/2023/05/25/24355/

この日はゴールデンウィークにしては仕事が進んだ。夕方はワイフとイケ・サンパークのSUNSET BEER GARDENに。缶ハイボールを飲む。

第822回 ゴメンナサイとストップウォッチ崩壊!

 いきなりですが、最初に謝らせてください。

脚本(シナリオ)作業の佳境のため、今回また短いお茶濁し話で申し訳ありません!

こないだ発表された『沖ツラ』からさらに次のシリーズの、です。こちらはまだ何も語れません。

 あと、個人的に非常にショックな近況報告です。テレコム・アニメーションフィルム時代から使用していたストップウォッチが、『沖ツラ』コンテ作業中に壊れました! 原画試験に合格した22歳の秋、「自分へのご褒美!」と7000円で買った手巻きのストップウォッチ(ってことは27〜8年使っていた)です。今までのコンテ・監督作品全ての“尺”を一緒に計った相棒でした。

 ありがとう。そして、さようなら。近いうちに新しいのを買いに行きます。

 で、また次週へ。

第213回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』3 【着る物から見えてくる『平安時代中期人』はどんな人たちだったか 編】

 片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。

 『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などの調査研究を進めています。今までアニメスタイルは「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルでイベントを開催し、15回にわたって調査研究の結果を語っていただきました。現在は「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」のタイトルでイベントを続けています。

 2023年11月5日(日)に開催する「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』3」では、片渕監督や前野秀俊さんに加えて、平安時代の装束や文化を研究されている承香院さんをゲストに迎えます。【着る物から見えてくる『平安時代中期人』はどんな人たちだったか 編】のサブタイトル通り、衣装についてディープなお話をうかがうことができるはずです。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 「ここまで調べた~」イベントは土曜の開催が多いのですが、今回の開催日は日曜です。お気をつけください。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。イベントは「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは9月30日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT  https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/264706
会場(LivePocket)  https://t.livepocket.jp/e/k1inc
配信(ツイキャス)  https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/263738

アニメスタイルチャンネル  https://ch.nicovideo.jp/animestyle

 なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr

第213回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』3 【着る物から見えてくる『平安時代中期人』はどんな人たちだったか 編】

開催日

2023年11月5日(日)
開場12時30分/開演13時 終演15時~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、承香院、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第265回 アリスとテレスとウルトラQ 〜アリスとテレスのまぼろし工場〜

 腹巻猫です。公開中の劇場アニメ『アリスとテレスのまぼろし工場』を観ました。タイトルから、アリスとテレスというふたりの子どもが活躍する児童文学風の(「チャーリーとチョコレート工場」みたいな)お話かと思っていたら、思春期の少年少女の心情を大胆な設定の物語で描く、心に深く刺さる作品でした。今回はその音楽を聴いてみます。


  『アリスとテレスのまぼろし工場』は、2023年9月に公開された劇場アニメ。監督と脚本は、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011)や『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018)などで知られる岡田麿里。アニメーション制作はMAPPAが担当した。
 菊入正宗は14歳の中学生。ある冬の日、町にある製鉄所が爆発し、正宗たちは時の止まった世界に閉じ込められてしまう。一見以前と変わらない町だが、住民は町から一歩も外に出ることができず、季節も冬のまま変化しなくなってしまったのだ。町の人々はいつか元の世界に戻ることができると信じて、爆発前と何も変わらない生活を続けようとする。そんな日々に閉塞感を抱く正宗は、あるとき同級生の佐上睦実に連れられて製鉄所の奥に入り、ひとりの少女と出会う。正宗は少女の正体に気づき、自分と世界を変えようと思い始める。

 音楽は、『心が叫びたがってるんだ。』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(2015)、『迷家』(2016)、『空の青さを知る人よ』(2019)など、岡田麿里脚本作品にたびたび参加している横山克。『うる星やつら』(2022)のようなポップな作品もある一方で、『四月は君の嘘』(2014)、『劇場版ツルネ —はじまりの一射—』(2022)のような、ストイックで繊細な音楽も得意な作曲家である。本作も後者の系統の作品で、登場人物の心情に寄り添い、空気感や情感を音で表現するみごとな音楽を提供している。
 まず特徴的なのは、横山克作品ではあまり聴かないタイプの抒情的なメロディが聴けること。岡田麿里監督は音楽を依頼するにあたり、「自分が子供の頃に憧れた“大人の邦画”の雰囲気がほしい」と伝えたという。本作の音楽に昭和の映画音楽のようなロマンティックな旋律が登場するのはそのせいだろう。特に最初に公開されたPV「超特報」では、本作のメインテーマと呼べる切ないメロディの曲が使われている。心をざわつかせる音楽が本作の雰囲気を伝え、作品への期待感をあおる。このメロディを横山克はウィーン滞在時に思いついて書き留めたという。
 もうひとつの特徴は、ボーカルやコーラスがふんだんに使われていること。コーラスは埼玉栄中学&高等学校コーラス部によるもの。10代の少年少女の歌声にはプロの合唱団にはない瑞々しさ、生々しさがあり、それが楽曲に繊細でウェットな味わいを加えている。
 さらに、本作の音楽全体にさりげなく散りばめられた重要な音がある。金属を叩いて鳴らした音である。横山克がサウンドトラックに寄せたコメントによれば、安曇野ちひろ美術館にあるシデロイホスというインスタレーションの音を挿入したのだそうだ。
 シデロイホスは金属彫刻家・原田和男と打楽器奏者・山口恭範の共同製作によって生まれた金属打楽器。「シデロイホス」はギリシャ語で「鉄の響き」を意味する。本来は楽器の名前ではなく、金属で作られた構造そのものにつけられた名称である。金属の楽器というと、鋭い音や重い音を連想するが、シデロイホスは親しみやすく心地よい音がする。
 金属の音を挿入したのは、本作で鉄工所が重要な舞台装置となっているからだろう。金属音を音楽に使う試みは古くからあり、ヨーゼフ・シュトラウス作曲の「鍛冶屋のポルカ」は金床が打楽器として使われ、アレクサンドル・モソロフは金属板や金鎚を使った「鉄工場」を作曲している。1970年代以降には機械音や金属音を取り入れたインダストリアル・ミュージックが発展した。しかし、多くは金属音を効果音的、ノイズ的に使ったものだった。シデロイホスの音には耳ざわりな鋭さがなく、音楽と調和する。
 実は過去にも音楽にシデロイホスを使った作品があった。1990年に公開された実写劇場作品「ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説」である。この作品では、実相寺昭雄監督の依頼で作曲家・石井眞木が「オーケストラとシデロイホスのための交響詩『遥かなる響き』」を書き下ろし、それを自由に抜粋する形で音楽がつけられた。岡田監督や横山克がこの作品を意識したとは思わないが、『アリスとテレスのまぼろし工場』は「ウルトラQ」の1エピソードであってもおかしくないSF幻想譚。ふしぎなつながりである。
 なお、本作の音楽に挿入された金属音がすべてシデロイホスによるものか、あるいは、ほかの金属製パーカッションやシンセの音なのか自信がないので、以下の楽曲紹介では単に「金属音」と表記している。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「『アリスとテレスのまぼろし工場』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで9月13日にヤマハミュージックコミュニケーションズから発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. 1991
  2. My Smoky Hometown
  3. Detective Hero
  4. Cold Skirt
  5. Wolf Girl
  6. Runaway Stories
  7. Your Name Is Itsumi
  8. Complicated Family
  9. maboroshi
  10. SHIN-KI-ROU
  11. Love and Hate
  12. World of Cicadas
  13. Mifuse Countdown
  14. Steel Days
  15. Vapored Away
  16. Piece of Summer
  17. Monochrome Confession
  18. Parking Lot Hearts
  19. Rain Kiss Explosion
  20. Her Name Is Saki
  21. Gymnasium Hypothesis
  22. Choo Choo Escape
  23. Raging Impulse
  24. Borderland Express
  25. Fragile Distance
  26. One Desire
  27. WE ARE ALIVE
  28. Sweet Pain Factory
  29. Matsuri-Bayashi
  30. 心音(しんおん)(歌:中島みゆき)

 中島みゆきが歌う主題歌「心音」も収録。トラック29の「Matsuri-Bayashi」は終盤で聞こえる祭囃子で、いわゆる現実音楽=ソースミュージックである。トラック1〜28が実質的な映画音楽だ。曲は物語の流れに沿って並べられている。
 1曲目の「1991」は冒頭の導入部に流れる曲。「超特報」で流れたメインテーマのメロディが使われている。頭には金属音、そして合唱とピアノによる切ないメロディ。本作の音楽の三大要素がすべて含まれている。タイトルの「1991」は本作の物語の始まりが1991年であることを示唆している。
 メインテーマのメロディーは「Cold Skirt」(トラック4)、「Complicated Family」(トラック8)、「maboroshi」(トラック9)、「Steel Days」(トラック14)などで変奏される。そのいずれにも、金属音がさりげなく仕込まれている。特に「maboroshi」は印象深い。正宗の同級生・園部裕子が心を乱したことで空がひび割れ、狼の姿に似た煙が現れる場面に流れる曲である。
 このメロディは正宗たちが心に抱く閉塞感と焦燥感、切なさなどを象徴している。物語が進み、正宗たちがこれまでと違う日常を歩もうとし始めると、この旋律は使われなくなる。
 正宗が鉄工所で謎の少女に出会う場面の「Wolf Girl」(トラック5)は、金属音とコーラスを中心に構成されたミステリアスな曲。金属音が鉄工所の風景をイメージさせ、コーラスが謎めいた雰囲気を表現する。金属音と人間の声との融合がユニークだ。
 正宗が少女を「五実」と名づける場面の曲が「Your Name Is Itsumi」(トラック7)。チェレスタやパーカッション、ギターなどによる愛らしいメロディにボーカルが重なって、五実のキャラクターを印象付ける。五実のテーマと呼べる曲だ。
 空がひび割れたときに現れる狼の姿をした煙は「神機狼」と名づけられている。鉄工所の煙突から現れ、世界のほころびを修復する、ふしぎな存在である。トラック10「SHIN-KI-ROU」は、その神機狼に当てられた曲。不穏なコーラスとピアノが妖精とも妖怪ともつかない妖しい存在を表現する。この曲では金属音が不安感、緊張感を高める効果を担っている。
 正宗が五実を鉄工所の外に連れ出すと、風景にひびが入り、向こうに「夏の風景」が見える。その衝撃的な場面に流れる「World of Cicadas」(トラック12)は「Ha〜」と歌う女声ボーカルが印象的な曲。哀感を帯びたメインテーマとは対照的に、夏の開放感、明るさをボーカルとリズムだけのシンプルなサウンドで表現している。
 「Ha〜」と歌うボーカルは、正宗が駐車場で佐上睦実に告白するシーンに流れる「Monochrome Confession」(トラック17)と「Parking Lot Hearts」(トラック18)でも使われている。凍った心が溶けていく音なのだろう。この2曲に続いて流れるのが「Rain Kiss Explosion」(トラック19)。本作の中盤のクライマックスとなる長いキスシーンの曲だ。この3曲にも通奏低音のように金属音が使われている。ここでは、金属音は動き始めた世界が鳴らすきしみや身震いの音のように聞こえる。
 正宗が五実の正体を確信する場面の「Her Name Is Saki」(トラック20)は、ピアノとストリングス、ギター、女声ヴォーカルなどが奏でる切なさと希望が入り混じったナンバー。ストイックで繊細で心の奥深くに響いてくる。これぞ横山克サウンドと思わせるエモーショナルな曲である。
 終盤は「Choo Choo Escape」(トラック22)、「Raging Impulse」(トラック23)、「Borderland Express」(トラック24)など疾走感のある曲が多くなる。 「Borderland Express」はテンポの速いピアノに合唱が重なり、身もだえするような焦燥感と哀感が表現される。横山克のコメントにある「ヒリヒリした合唱曲」とはこのことか。本作の音楽の聴きどころのひとつ。
 トラック26「One Desire」は、メインテーマのメロディの希望的な変奏。閉塞感を表現していたメロディーが希望を宿した曲に変わる。ギターと一緒に鳴る金属音も軽快に聞こえる。同じ旋律がさまざまに変奏されていく映画音楽の醍醐味が味わえる曲だ。
 物語終盤の正宗と睦実のシーンに流れる「WE ARE ALIVE」(トラック27)は大団円(と言ってよいのか迷うが)の曲。この曲だけボーカルが「ラララ」と歌っているのがいい。
 次の「Sweet Pain Factory」(トラック28)はエピローグの曲。ピアノと金属音のみのシンプルなサウンドだ。金属音は音楽の一部でもあり、鉄工所で聞こえる環境音のようでもある。この音がなくても音楽としては成り立つが、たぶん、まったく異なる印象になるだろう。

 『アリスとテレスのまぼろし工場』を観たあと、「どんな音楽だったろう?」と振り返ってまず思い出すのが、切ないメロディと合唱である。メロディはシーンによって異なる雰囲気にアレンジされ、合唱も曲によって表情や歌い方が変わっている。その違いを意識しながらサウンドトラックを聴くと興味深い。
 そして、作品を観ているあいだはほとんど気にならないが、サウンドトラックを聴くと「ここにも、こんなところにも使われている」と気づかされるのが、曲の背景で鳴っている金属音、シデロイホスの音である。あるときは不安に、あるときは温かく、あるときは軽快に響いて、作品世界を象徴するサウンドを作り上げている。横山克は「作曲の終盤でこの音を入れ込んだ時、まぼろし工場の音楽世界がしっかり出来上がった実感がありました」とコメントしている。本作は、横山克による「ピアノと合唱とシデロイホスのための交響詩」と呼んでもよいかもしれない。

『アリスとテレスのまぼろし工場』オリジナルサウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
412 アニメ様日記 2023年4月16日(日)

2023年4月16日(日)
イベント前に、OVA『ああっ女神さまっ』を観返す。当時はベルダンディーが降臨したこと自体が幸福なことだと思ったけれど、この年齢になると「ここはまだまだスタートラインだなあ」と思ってしまう。OVAの1話、2話は「このカットはセル撮したなあ」とか、そんなことばかり思い出す。1話に関してはムックを作ったわけでもないのに、かなりの量のセル撮をやっているなあ。OVAの1話、2話の後に、TV『ああっ女神さまっ』1話、2話を観る。OVAとTVでは絵作りの方向がかなり違う。TVの2話で願いが受け入れられて、ベルダンディーと一緒に暮らすことになった螢一が自分は貧乏だけどいいのか、バイトもしなくちゃいけないんだけどいいのか、とベルダンディーに問うところが、今の深夜アニメを観慣れた目で観ると、やたらと地に足が着いていて、むしろ、新鮮。OVAだと1話で螢一とベルダンディーが他力本願寺に落ち着くところまでやって、螢一の妹の恵まで登場するが、TVは2話が寮を追い出されて、螢一とベルダンディーが自動車の中で夜を明かすところまで。他力本願寺に落ち着くのは3話。OVAは話を圧縮していて、TVは膨らませている。
昼に「第203回アニメスタイルイベント ANIMATOR TALK 合田浩章&松原秀典」を開催。お客さんとして黄瀬和哉さんが来るのは分かっていたのだけれど、それ以外に業界の方が何人も。荒牧伸志さんもいらしていた。トーク自体は楽しいものになった。今回のイベントで松原秀典さんの姓の読みが「まつばら」ではなく「まつはら」だったということが判明した。戸籍上の名前は「まつはら」。ご本人は「まつはら」と呼ばれるのが嫌なので「まつばら」と呼んで欲しいそうだ。イベント終了後、駅に戻る途中で、もんじゃ焼きの店にいたアニメスタイルイベントの常連さん達に声をかけられる。実はその方達に謝ることがあって、お邪魔して少し吞む。

2023年4月17日(月)
疲れていたので、低空飛行にした日。散歩のついでに、高田馬場で翌日に打ち合わせで使う喫茶店の下見をした。仕事関係でまたまた大き目のアクシデントが発生。「やばい」とか言っている場合ではない。
例によってながら観だけど、録画で現行のアニメをひたすら観る。この日だけで1クール分以上の本数を観た。『六道の悪女たち』が楽しい。配信で『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』も観た。

2023年4月18日(火)
あるアニメーターさんと打ち合わせ。お宝資料を沢山お借りする。作業は沢山やっているのだけれど、原稿が進められないと、仕事をしている気があんまりしない。現行のアニメを観て、Amazon prime videoにあった「東京大学映画祭」を数本観て、「式日」が観たくなってDVDで視聴。それから、TOKYO MXでやっていた『ARMORED SAURUS アーマードサウルス』の1話を観た。映像に関してかなり頑張っていた。メカメカしい。
『アリス・ギア・アイギス Expansion』3話。劇中のセリフで、キャラクターの日向リンというキャラクターについて、セリフで「ひむかいっち」と呼ぶべきところで、誤って「ひなたっち」と呼んでしまったのだそうだ。作品公式サイトでそれについてのお知らせを読んでから、3話を観たので、申し訳ないけれど、笑わなくていいところで笑ってしまった。特に最後のセリフ。
『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が初週3日間で興収31億4,638万7,340円だそうだ。4月14日(金)の初日朝イチで『黒鉄の魚影』を鑑賞した後、ワイフは『名探偵コナン』にどっぷり浸かって、サブスクでTVシリーズを観て、劇場版を観て、Kindleで原作も読んで、17日(月)の朝は一人で『黒鉄の魚影』のおかわりにいった。終盤の灰原と蘭のキスがいいらしい。確かにあれには驚いた。Twitterで「ファンを殺しにきた映画だ」という発言を見たけれど、確かに殺しにきているなあ。「映画館で何度も殺されたい」って感じなんだろうなあ。自分の『黒鉄の魚影』の感想はまた改めて。

2023年4月19日(水)
この日でワイフは朝の散歩が4日連続。連続して散歩に行けるくらい元気になったのは、半分は『名探偵コナン 黒鉄の魚影』のおかげらしい。自分はダイエットを続けたためか、この数日はスタミナ不足。
昼の買い物中に、サンシャイン60の「てんぼうパーク」がオープンしていることを思い出し(オープンは4月18日(火)だった)、あまり人が並んでいないかったので、入場して一回りする。座るところが多いので時間を潰すのにもいいかも。
『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』を1話から14話まで流し観する。

2023年4月20日(木)
『贄姫と獣の王』1話がよかった。2話以降もあのテンポと雰囲気なのかな。仕事の合間に新文芸坐で『マッドゴッド』(2021・米/84分/PG12)を観る。尖った内容のストップモーションアニメ。これが一般映画として公開されていることが凄い。今の自分にとっては観たいタイプの映画ではなかったけれど、高校生の頃に観たらかなり楽しんだかもしれない。
「Gメン’75」の137話「’78新春大脱獄!」、138話「復顔術」の録画をながら観。137話で劇中でかけられたレコードが「Gメン’75」のテーマ曲で、シーンが変わってもテーマ曲が流れ続ける。つまり、劇中曲兼BGMとして使っているところが面白かった。

2023年4月21日(金)
かなり久しぶりにOVA『人魚の傷』を視聴。主人公が山寺宏一さんだ。OVA『人魚の傷』は1993年9月発売で『獣兵衛忍風帖』は1993年6月5日公開だ。『獣兵衛忍風帖』が山寺さんの初めての主人公だという記事を読んだ記憶があるけど、その直後の作品なのね。『D・N・A2 ~何処かで失くしたあいつのアイツ~』1話も観る。
午後はWOWOWの「暗殺者[吹替補完版]」「デッドフォール[吹替補完版]」を流し観。特集「吹替で楽しむ!シルヴェスター・スタローン×ささきいさお」のプログラムで、他には「コブラ」「スペシャリスト(1994)[吹替補完版]」を放映していた模様。「デッドフォール」でシルヴェスター・スタローン演じる主人公が、冒頭で「ランボーのつもりか」という意味のことを言われて「ランボーはひよっこさ」と言うのがちょっと面白かった。「デッドフォール」は二人の刑事のバディ物で、佐々木功さんとコンビを組むのが、安原義人さん。二人の掛け合いが楽しかった。

2023年4月22日(土)
朝から昼過ぎまでみっちり作業をした。ざくざくとラフを作成して、Chatworkに送った。最近は複数の作業を並行して進めることが多くて、ひとつの作業を長時間やったのは久しぶり。その後はワイフと外出。六義園でツツジを見てから「もつ焼 高賢」で食べて吞む。話は変わるけど、『カワイスギクライシス』は引き続き、登場人物が馬鹿で可愛くて楽しい。

第821回 役職掛け持ち~『いせれべ』の話(12)

 まだ、『いせれべ』話の続きです。

8話の脚本・コンテ・演出は長谷川千夏さん!

 『蜘蛛ですが、なにか?』(2021)制作中に入社した、若手アニメーター。現在でも原画・動画・仕上げ・背景となんでもアグレッシブにこなしてもらっています。本人がもともと演出志望であると、面接時からそう言っていました。という訳で、今回は「脚本やってみる? 俺が面倒見ることが条件になるけど」と誘ったところ、「いいんですか!?」と。やりたいと言ってくれるのなら、ガッツリ最後まで付き合っていただこう! で、ちょっと背伸びさせるつもりで“脚本・コンテ・演出1本まるまる”任せてみました。
 ちなみにそれを言うと「アニメーター3年目で脚本・コンテ・演出なんてやらせ過ぎだろ!」と仰る業界人(特に我々同世代より上)が必ずいらっしゃいます。でも考えてみて下さい。我々が20代だった頃の数倍(小さいのを入れると10倍以上?)の本数のアニメが作られてる昨今、それに対し業界全体でアニメーターの人数は30年以上変わっていないと聞いています。ということは各制作チーム(会社)が業界全体の人材を互いで奪い合ってアニメ作ったって、現状付け焼き刃に過ぎません。なぜなら我々団塊ジュニアが早ければあと10年もすると使いものにならなくなるからです。さらにそれにオーバーラップして、2000年以降の出生数から計算しても“アニメーターを目指す人”自体が減り続けるのは間違いないと思います。加えて“働き方改革”による労働時間制限では、

40年は続いたであろう旧態依然とした“監督1人に脚本3〜4人、演出6人、以外作業者100人”のなだらかなピラミッド体制で作り続けられるハズがありません! 脚本家・演出家の権威どーのこーのなんて言ってる場合じゃない!

でしょう。よって、ウチは複数の役職を掛け持ちしてもらうのであり、全員時給換算の社員雇用であればこそ可能な作り方です。業務委託のアニメーターに作画以外の仕事を振るのはルール上NGなので。
 実作業の話に戻ります。脚本作業は初めてにしては順調でした。もちろん、シリーズ構成の立場からホン読み(脚本打ち)で少々揉ませてもらいましたが、長谷川さん自身賢い人なので特段問題なく普通にこなしてくれました。
 続いてコンテ。こちらは数回に割って、それぞれのブロックでラフ段階に修正・アドバイス入れて戻す。それを反映させた清書を彼女が上げて行く、な感じでチェックしました。基本、長谷川さんのやりたいことをベースに、俺の方が「こう見せたいならカット割った方が作画しやすい」とかの部分修から、「このシーンのカット割りはこう!」などと大きな流れから直したものまであったりしましたが、長谷川さんのは他話数のコンテに比べると比較的直しが少なかったように思います。どちらかと言うと、凝り過ぎている芝居内容を「ここ止めて」「ここBG ONLYのOFFで」などの整理してた感じの修正でした。
 レイアウト・原画のチェックは田辺(慎吾)監督が長谷川さんにアドバイスをしていたようです。自分、任せるところは大雑把に任せる性格です。
 が、任せっぱなしには絶対にしません! 納品前のリテイク作業は自分が仕切り、且つ手伝いました。例えば、“沢田先生の髪の毛クルクル”はラッシュ(撮影上がり)を見て、動画の(と言うより原画から)の上りが良くなかったので、俺の方が仕上げデータに直修正を入れて、長谷川さんに仕上げてもらいました。他ディティールの甘い部分の修正も同様に板垣修正・長谷川仕上げでやりました。最後は前回話題にした“撮影張り付き”も。
 あと印象的なのは、長谷川さん演出・作画の料理のシーンや食材のディティールの描き込み、大変良かったと思います!
 そして、3話でも見事な“投げアクション”を描いてくれた篠衿花さん、今回は“熊の投げ飛ばし”で大活躍!ありがとうございました!

 はい、また次週へ。

アニメ様の『タイトル未定』
411 アニメ様日記 2023年4月9日(日)

2023年4月9日(日)
朝の散歩でサブスクに入った『地球防衛企業ダイ・ガード』のサントラ1、2を聴いた。BGMもいいんだけど、オープニングテーマ、エンディングテーマがいい。歌としていいだけでなく、これがアニメの主題歌だというのがいい。「あの時代」の感じだ。
午前10時からグランドシネマサンシャインで「 『シン・仮面ライダー』大ヒット御礼舞台挨拶 ライブビューイング」を鑑賞。仕事のスケジュール的には行けないはずだったのだけど、チェックする原稿が届かなかったので、当日になって行くことにした。行ってよかった。庵野さんが数十年ぶりに今後のスケジュールを白紙にしたという意味のことを言っていて、とてもよいと思った。たっぷりと休んでもらいたい。「シン・仮面ライダー」を再見して、庵野秀明作品として色が濃いことを確認した。本郷にとって一文字隼人がどういう存在なのかが分かったし、本郷がルリ子と距離をとっている理由もわかった。
新番組では『異世界召喚は二度目です』『おとなりに銀河』『異世界ワンターンキル姉さん 姉同伴の異世界生活はじめました』の1話を観た。『天国大魔境』2話も『地獄楽』2話もよかった。天国もよかった、地獄もよかった。深夜アニメではないけれど、『ぐんまちゃん』シーズン2の1話も観た。
身体を休めるのが目的で、ワイフとドーミーイン池袋に泊まる。15時にチェックインして温泉に入って、16時に就寝。

2023年4月10日(月)
午前1時40分に出社して午前5時40分までデスクワーク。その後はドーミインに戻って昼までベッドで横になる。身体を休めるのが目的なので、途中でメールを書いたりしないで、積極的に休んだ。午後は事務所で作業。「アニメスタイル017」で困ったことがあって悩む。アニメ雑誌の仕事をはじめて40年近いけど、こんなことになったのは初めてだ。アニメ雑誌で突っ込んだ記事をやるのが難しくなったことを痛感する。仕事関係のストレスでどかんと飲みたいところだけど、晩飯時にハイボールを一杯だけ。
新番組は『事情を知らない転校生がグイグイくる。』『ワールドダイスター』『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』『青のオーケストラ』を観る。それから『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期1話を観た。『事情を知らない転校生がグイグイくる。』は太陽君も西村さんもイメージしていたよりも声に抑揚があるんだけど、それはそれとして声がついた嬉しさがあった。特に西村さん。録画で「藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ」の「おれ、夕子」「メフィスト惨歌」を観た。
SNSでan・anの『名探偵コナン』描きおろしイラストを見た。素晴らしかった。

2023年4月11日(火)
13時から池袋西口の新珍味で、吉松さんと「アニメスタイル017」のマンガの内容についての打ち合わせ。
仕事をしながら何か映像を流そうかと思ったけれど、アニメだと余計なことを考えてしまいそうだし、録画してある映画、配信の気になる映画はじっくり観たいものばかりだし、録画してあった「Gメン’75」を再生したら、安楽死をテーマにした重たい話でどんよりしてしまったので、Amazon Prime Videoチャンネルの「マイ★ヒーロー」に入り直して特撮ドラマの「ジャイアントロボ」を再生。4話まで観た形跡があるから、前にも「何か観るものは」と思って観たのだろうなあ。「ジャイアントロボ」は今観てもよくできている。敵ロボット(怪獣)のバリエーションもいい。U6(マリー花村)が登場したところで、本放映当時、この子が苦手だと感じていたのを思い出した。いや、苦手だったのは覚えていたけど、その感覚を思い出した。別に悪い子じゃないんだけど。それから「ジャイアントロボ」は自分にとって、BGMが一番耳に馴染んでいる番組のひとつだった。
新番組は『彼女が公爵邸に行った理由』『デッドマウント・デスプレイ』『君は放課後インソムニア』の1話を観た。

2023年4月12日(水)
午前1時28分に出社。深夜から昼まで集中して原稿を進めた。疲れたのでマンションに戻って20分だけ横になる。その後は主にメール作業。用事があって、ある方に電話をして、そのついでに「シン・仮面ライダー」について熱く語る。グランドシネマサンシャインの15時35分から16時25分の回で「イントゥ・ザ・ネイチャー 自然が教えてくれること」【IMAXレーザーGT吹替版】を鑑賞。全編がIMAX(R)フルサイズで、その意味では満足。単に綺麗な景色を観せてくれるだけの映画かと思ったら、半端に内容があって、しかしそれがとりとめがない。IMAXカメラで撮っているらしいけど、映像に精緻さが足りないと思ったところもあった。ラスト直前の雄大な景色をしっかり見せるようなカット(絵はがきみたいなカット)を並べるだけの部分が嬉しかった。
配信で太陽の塔のドキュメンタリーを流し観。「Gメン’75」を3話分流し観。

2023年4月13日(木)
TOKYO MXの『新世紀エヴァンゲリオン』最終回を録画で視聴。本放映時から思っていたけど、ケンスケの「平和だねえ」のセリフの次にくるのが自動車のタイヤのカットなのは、高度なアニメギャグだ(ギャグではなくて、カット割りの引用と受け取るべきかもしれないけど)。
「Gメン’75」の録画を流しながら作業。131話「少女餓死」(脚本/池田雄一、監督/小西通雄)が面白かった。サブタイトルからして凄い。障害のある娘を死なせてしまった母親をめぐり、所轄署警部補とGメンが対立する。重たい話だなあと思っていたら、母親を責めていた警部補には植物人間の娘がおり、彼が仕事を優先させたために娘が死んでしまい、その責任をとって警部補が自殺するという大どんでん返し。いやあ、驚いた。「Gメン’75」本放映時にも、自分はこういった刺激が強い部分が好きだったんだろうなあ。136話「X’マスイブ21時のトリック」(脚本/池田雄一、監督/山内柏)はGメンが警視庁の警視を殺人事件の犯人として追い詰める話。警視が同じ内装の部屋をふたつ用意し、それを使ってアリバイ作りをしていたことをGメンが暴く。警視のキャラクターとトリックのギャップもいい。クリスマスの雰囲気もよかった。ネットで検索して、136話が49話「土曜日21時のトリック」(脚本/池田雄一、監督/佐藤純弥)のバージョンアップ版らしいことに気づいた。49話も録画が残っていたので観てみた。こちらはGメンが弁護士を追い詰めるというもので、トリックを暴いたうえで、意外な物的証拠で弁護士を逮捕。その物的証拠は黒木警視が捏造したものであったことが、ラスト数カットで判明する。49話の弁護士も136話の警視も演じたのは内田朝雄。どちらも女Gメンが彼に挑む(49話では響圭子刑事、136話では速水涼子刑事)。
新番組は『魔術士オーフェンはぐれ旅 聖域編』『【推しの子】』1話を観た。『【推しの子】』は映画館で観るよりも、CMが入るTV放映のほうが観やすいかもしれない。劇場は劇場ならではの没入感があったけれど。
コピーはしない、トークの内容をメモしたいだけです、と言うので、10年近く前にトークイベントを録画したディスクを貸したことがある。その貸した相手が、映像の一部をTwitterにアップしていた。これは困ったなあ。

2023年4月14日(金)
グランドシネマサンシャインの午前8時からの回で、ワイフと『名探偵コナン 黒鉄の魚影』をBESTIA enhanced上映で鑑賞。映画が始まる前に、去年が安室で、一昨年が赤井で、その前がキッドと京極だから、来年は★★のはず。今の『名探偵コナン』だと、★★単体だと物足りないから★★と☆☆を絡ませるのでは? と話していたのだけど、本編後の告知を観るとその予想が当たっていた模様。蕎麦屋で吞みながら、映画の内容について色々と文句を言ったら、ワイフに「文句を言っている祐一郎さんが本当に楽しそう。こんなに楽しそうにしているのは久しぶりに見た」と言っていたので、不満はあるけど、かなり楽しんだのだろう。ワイフは『黒鉄の魚影』について「胸キュンが強すぎて吐きそうになった」と言っていた。自分の不満はともかく、これは100億いくかもしれないなあ。作品内容とは別の話だけど、予告で気になっていた輪郭線のジャギジャギは無くなっていた。
その後、ワイフとユニクロに行ってジーパンとチノパンを買う。セレクトはワイフの意見を反映させた。ジーパンのサイズはL。チノパンはウエスト85センチ。この日まで履いていたジーパンのウエストは91.5センチでブカブカになっていた。事務所に戻ってデスクワークと定例Zoom打ち合わせ。ウドン社のエリックさんが来日して、堺三保さんと食事をしているところにお邪魔してご挨拶。「シン・仮面ライダー」についてどう思うか、と聞かれたので、自分の作品についての印象を伝える。何度か人に話したので上手に説明できた。

2023年4月15日(土)
新文芸坐で『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の「ワイルドスクリーンバロック・ライティング上映【拍手OK】」を観た。鑑賞というか観劇。上映というか上演。映像にあわせて、天井と壁のライトが点灯するのだが、光の色や動きがきちんと「演出」されていた。主にレヴュー(バトル)のシーンでライティングされるのだが、レビューごとに演出が違う。特殊上映としては100点満点で300点くらい。作品を殺さず、いいところを強化する上映だった。ライティングで、新文芸坐のステージを華恋とひかりの舞台に見立てる演出があり(劇中で二人が舞台に立った時に、新文芸坐のステージ上のポジションゼロとその左右にスポットライトがあたる)、さらに上映が終わった後で、劇場スタッフが華恋とひかりの衣装をステージに配置するという凝り方。僕は見ていないけど、上映前にも衣装は置かれていたようだ。ステージに華恋とひかりがいると想像させることで、劇中で二人が「観客」について言及することの面白さが強化されるわけだ。作品がアバンギャルドなら、映画館もアバンギャルドだ。いつにも増して音響もよくて、クライマックスの東京タワーが飛んでいくところは身体がビリビリ震えるくらいだった。
『バブルガムクライシス』5巻~8巻を観た。8巻のサブタイトルは「SCOOP CHASE」。改めて画面を確認すると「SCOOP CHASE」の後に「LISA」という文字が出る。「アニメポケットデータ2000」を確認したら、同書での表記は『MEGA TOKYO 2033 BUBBLEGUM CRISIS[8]SCOOP CHASE LISA』になっている。凄いぞ、さすがだ。リスト制作委員会。ただし、バッケージのロゴは「BUBBLEGUM CRISIS 8 SCOOP CHASE」みたいだし、画面で「SCOOP CHASE」と「LISA」の書体が違うところも気になる。小川びい君が作品リストを作成した書籍「キャラクターボイスコレクション 女性編1」の富沢美智恵さんのリストを見ると、タイトル表記が『MEGA TOKYO 2033 BUBBLEGUM CRISIS[8]SCOOP CHASE』になっている。「LISA」はつけていない。このリストはリスト制作委員会の表記を参考にしているはずで「LISA」をつけていないのは、リスト制作委員会の表記を参考にした上で、「LISA」は作品タイトルではないと判断したのだろうか。
『終末のワルキューレII』1話、『ポケットモンスター』新シリーズ1話を観る。『ポケットモンスター』新シリーズは世界観が現実寄りになった。林原めぐみさんはニャオハ役でレギュラー。大谷育江さんもレギュラーだけど、ピカチュウではなく、キャプテンピカチュウ。

第212回アニメスタイルイベント
ANIMATOR TALK 黄瀬和哉&西尾鉄也

 「ANIMATOR TALK」はアニメーターの方達に話をうかがうトークイベントシリーズです。今回は『機動警察パトレイバー[劇場版]』『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』等で知られる黄瀬和哉さん、『NARUTO ‐ナルト‐』『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』等を手がけた西尾鉄也さんをゲストに迎えて開催します。
 お二人がリスペクトするアニメーターについての話を中心にトークをしていただく予定です。

 開催は10月8日(日)昼。会場はLOFT/PLUS ONEです。チケットは9月19日(火)18時から発売。購入方法についてはLOFT/PLUS ONEのサイトをご覧になってください。 また、会場では「黄瀬和哉 アニメーション画集」「西尾鉄也画集」のサイン本を販売する予定です。


 イベントは「メインパート」のみを配信します。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。このイベントに関してはアニメスタイルチャンネルでの配信も期間限定となる予定です。
 なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

■関連リンク
LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/263599

■商品情報
【アニメスタイルの新刊】「黄瀬和哉 アニメーション画集」の一般販売が開始!!
http://animestyle.jp/news/2018/08/21/14114/

西尾鉄也の集大成「西尾鉄也画集」ネット書店、一般書店で9月26日発売!
http://animestyle.jp/news/2016/08/16/10363/

第212回アニメスタイルイベント
ANIMATOR TALK 黄瀬和哉&西尾鉄也

開催日

2023年10月8日(日)
開場12時30分/開演13時 16時頃終演予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

黄瀬和哉、西尾鉄也、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 166】
映画館で出逢うアニメの傑作 劇場版『機動警察パトレイバー』1&2

 9月23日(土)と30日(土)に、新文芸坐とアニメスタイルの共同企画で『機動警察パトレイバー[劇場版]』『機動警察パトレイバー2 the Movie』を上映します。いずれの作品も押井守さんが監督を務めた傑作です。両作ともサウンドリニューアル版での上映となります。

 23日(土)は上映前に、作画監督を務めた黄瀬和哉さん、プロデューサーの石川光久さんのトークを予定。聞き手はアニメスタイル編集長の小黒が務めます。

 23日(土)分のチケットは16日(土)から、30日(土)分のチケットは23日(土)から発売となります。発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 166】
映画館で出逢うアニメの傑作 劇場版『機動警察パトレイバー』1&2

開催日

2023年9月23日(土)14時~18時35分
2023年9月30日(土)19時~22時45分

会場

新文芸坐

料金

2023年9月23日(土) 一般 2800円、各種割引 2400円
2023年9月30日(土) 一般 2600円、各種割引 2200円

トーク出演
(9月23日)

黄瀬和哉(アニメーター)、石川光久(プロデューサー)、
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

機動警察パトレイバー[劇場版](1989/99分)
機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/113分)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第820回 寺沢先生、ご冥福を~『いせれべ』の話(11)

 『コブラ』の原作(ジャンプコミックス版)を全巻持っています。自分の場合、週刊少年ジャンプ連載時にリアルタイム読みするには、年齢的にちょっと子供だったので、出﨑統監督のアニメ——しかも再放送ぐらいから(中学生?)ハマった感じで、そこから全18巻揃え、何回も読み返していました。その後『MIDNIGHT EYEゴクウ』も大好きで、こちらも全巻持ってます! どれもカッコよくて、男なら皆寺沢作品が好きだったと思います。

『コブラ』の原作者・寺沢武一先生のご冥福を心からお祈り申し上げます

 そして、『いせれべ』話の続き。

7話の脚本は2話と同じ竹田裕一郎さん!

 脚本(シナリオ)の竹田裕一郎さん——自分とは『砂ぼうず』(2004)、『BLACK CAT』(2005)の連投で御一緒しました。当時、連絡先を交換しないままお別れしてその後ご縁がなかったのですが、今回、前述の筆安一幸君(6話・脚本担当)より、ホン読み(脚本打ち)前に「板垣さん、竹田さん知ってますよね、声掛けましょうか?」と切り出され今回の運びに。つまり、もともと筆安君が竹田さんと繋がっていたお陰で、またお仕事できました、感謝です! 筆安君も竹田さんも、様々なタイトルをこなしてきたベテランの貫禄で、仕事が早く助かりました。
 この7話はルナ初登場で、木村(博美)総作監が結構粘っていた気がします。自分の方は、他話数同様アクション原画~レイアウト全般のフォロー。あと、この辺りから“撮影張り付き”が仕事のメインに入ってきました(汗)。撮影張り付きとは本来、原画と一緒に提出される撮影指定やタイムシートでそのカットで欲しい画面処理、光や影・カメラワークなどを指示するのが基本なのですが、今作みたいに画ができ上がってからのリテイクが少々多い場合、時間的に間に合わせるためのショートカットとして、

撮影監督・撮影スタッフのモニターに向かい、そこに張り付いて直接指差し指示をする!

という、撮影スタッフによっては嫌がる人は嫌がる強行演出スタイルです。
 が、今回は撮影が物理的にウチの上の階にある白石社長のもう一つの会社──lxlxl(エルエルエル)だったからできた技(?)でした。つまり、階段上れば指示出しに行ける理想的な環境だった訳で、最終回まで納品前日は張り付きまくりました! ありがとう、田中翔太君、大見有正さん!
 撮影張り付きの話が出たついでにぶっちゃけると、この話数も納品前の直しがかなり大変でした。前半はBG(背景)修正、2話や5話と同じく森が“大魔境になっていない!”と、また俺も参加して直し、後半は現実世界での校外学習。こちらはバス内のシーンから、モノによってはレイアウトから全修正も。現実世界の森や川周りは、またまた中島楽人君や長谷川千夏さんにBG修正を助けてもらい(ありがとう!)、さらに他話数と同じく俺の要望に合わせて、木村総作監がレイアウト・原画から容赦なく描き直してくれたので、何とか事なきを得られました。スタッフの皆本当にありがとう!

 じゃ、また次週へ。

第211回アニメスタイルイベント
「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」刊行記念トーク

 アニメスタイルが8月に刊行した「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」は磯光雄さんが描いた企画書、アイデアメモ、シナリオ、設定、絵コンテ等をたっぷり収録した資料集です。この書籍の刊行を記念してトークイベントを開催します。磯光雄さんに今までのお仕事を振り返っていただきます。

 開催は9月23日(土)夜。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。チケットは9月16日(土)正午12時から発売。購入方法については、ロフトグループのサイトをご覧になってください。なお、今回のイベントは現在のところ、配信を予定していません。

■関連リンク
LOFT  https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/263312
LivePocket(チケット)  https://t.livepocket.jp/e/6910-

■商品情報
「磯光雄 ANIMATION WORKS」第3弾の予約受付開始!コミックマーケット102で先行販売!
http://animestyle.jp/news/2023/07/20/24746/

第211回アニメスタイルイベント
「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」刊行記念トーク

開催日

2023年9月23日(土)
開場18時/開演19時 22時頃終演予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

磯光雄、小黒祐一郎

チケット

前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第264回 君たちはどう聴くか 〜君たちはどう生きるか〜

 腹巻猫です。劇場アニメ『君たちはどう生きるか』は、観た直後はお腹一杯と思いながら、しばらく経つとまた観たくなるふしぎな作品です。「面白いからリピートする」のとはちょっと違う(面白いのですが)。観ると心の奥をかき回され、「死と再生」を体験したような気持ちになります。そう感じる理由は、これまでの宮崎アニメとは異質のストイックな音楽にもありそうです。


 『君たちはどう生きるか』は2023年7月に公開されたスタジオジブリ制作の劇場アニメ。
 『風立ちぬ』以来10年ぶりとなる宮崎駿監督の長編劇場アニメであり、公開前に内容を一切明かさない大胆な宣伝手法も話題になった。
 第二次世界大戦中の日本。病院の火事で母を亡くした少年・眞人(まひと)は、父とともに東京を離れ、母の実家に疎開する。そこには父の再婚相手で、母の妹である夏子が待っていた。新しい母にも疎開先の学校にもなじめない眞人は、奇妙な青サギによって森の中の古い洋館に導かれ、生と死が混然一体となったふしぎな世界へと迷い込んでいく。
 音楽は宮崎アニメになくてはならない作曲家・久石譲。
 宮崎アニメでおなじみだった、親しみやすいメロディと大編成のオーケストラを使った音楽とはがらりと作風を変え、久石譲の原点でもあるミニマルミュージックの手法を取り入れた音楽で、全編を演出している。
 サウンドトラックのブックレットには、宮崎監督と鈴木敏夫プロデューサーのコメントが掲載され、久石譲が映画音楽をミニマルミュージックで統一したことへの驚きが表明されている。
 しかし、本作の音楽のすべてがミニマルミュージックかと言われると、たぶん違う。少なくとも、テリー・ライリーやスティーブ・ライヒに代表されるようなスタイルのミニマルミュージックばかりではない。単純な音型の反復がミニマルミュージックの典型だとしたら、『君たちはどう生きるか』の音楽には、わかりやすいメロディを持つ曲もあるし、どんどん展開していく曲もある。ただ、どの曲も編成は薄く、音数も少なく、メロディも控えめ。大きく盛り上がる展開もない。「ミニマルミュージックの手法を取り入れた音楽」で全編が彩られているのはたしかだ。

 ミニマルミュージックは久石譲の原点である。久石は過去の映像音楽作品でもミニマルミュージックの手法をたびたび使っている。まず思い出されるのは『風の谷のナウシカ』(1984)の腐海の曲。シンセサイザーによる単純なフレーズの反復はまさにミニマル的だった。OVA『BIRTH』(1984)ではロックとミニマルの融合とも呼べる音楽が聴けるし、『となりのトトロ』(1988)ではミニマル的な音楽が幻想と隣り合わせの童話的な日常を演出していた。ふしぎな感じや浮遊感を表現するのに、ミニマルミュージックの手法は有効なのである。
 また、余分な音をそぎ落としたミニマル的な音楽は、映画音楽の手法として古くから使われている。シンプルな旋律で淡々と奏でられるピアノソロの曲などは、繊細な心情描写や静かな情景描写に効果を発揮する。坂本龍一の晩年の映画音楽が、そういう、音を極限まで減らしたストイックな音楽だった。
 しかし、それは作品のテーマや演出が要求した必然的な音楽スタイルである。
 『君たちはどう生きるか』で驚くのは、ふつうならミニマル的な音楽がつくとは思えないシーンもミニマル的な音楽で通していること。
 たとえば、映画の冒頭、母を亡くした眞人が東京を離れて疎開するシーン。眞人の気持ちに寄り添うなら悲しい曲や不安な曲をつけるところだが、穏やかなテーマ「Ask me why」が静かに流れる。また、クライマックスの世界崩壊シーン。劇場アニメ『銀河鉄道999』の惑星メーテル崩壊シーンのような壮大な曲が流れそうなのに、最小限の音で演出している。従来のファンタジー作品の音楽を思い浮かべると、とても「らしくない」音楽なのである。
 本作におけるミニマル的な音楽は、演出の必然から採用されたスタイルというより、もう少し大きなコンセプト、もしくは、ある種のこだわりから採用されたスタイルだと思うのだ。
 音楽打ち合わせで宮崎監督と話した久石譲は、本作が監督の自伝的要素が強い作品だと理解し、それならピアノ1本とか、シンプルに主人公の心に寄り添う音楽がよいかもしれない、と提案したという。そこからミニマルミュージックという発想が自然に出てきた。
 久石譲は2000年代後半からミニマルミュージックに回帰する姿勢を見せ、オーケストラと共演したミニマルミュージック・アルバム「ミニマリズム」のシリーズを意欲的にリリースしている。一連のアルバムでは「シンプルなフレーズのくり返し」にとどまらない、ミニマルミュージックの久石譲流の解釈を聴くことができる。こうした挑戦、あるいは実験が、本作の音楽の下地になったのだろう。
 が、それだけで作品全体をミニマル的な音楽で彩るのは冒険である。
 本作の手法を予感させる作品があった。2019年に公開された劇場アニメ『海獣の子供』だ。この映画を観たとき、久石譲の音楽に大きな感銘を受けた。見せ場となる幻想的なシーンをピアノを使ったミニマル的な音楽で演出している。生命の神秘に迫る作品のテーマと音楽がみごとにマッチして、新鮮な体験をもたらしてくれた。
 久石譲はこの作品で、ファンタジーでもミニマルミュージックの手法が有効だと手ごたえを感じたのではないか。
 もうひとつ忘れてはならない先行作品がある。高畑勲監督の遺作となった『かぐや姫の物語』(2013)である。高畑監督と初めてタッグを組んだこの作品で、久石譲は「登場人物の気持ちを表現してはいけない」「状況につけてはいけない」「観客の気持ちをあおってはいけない」と求められたという。
 『君たちはどう生きるか』の音楽は、まさしく、気持ちを表現せず、状況を説明しない音楽である。表現も説明もしない音楽を聴いていると、観客は無意識に、この場面は何を表現しているのだろう、どういう意味なのだろう、と考える。
 音数を減らし、メロディを抑え、シンプルなフレーズのくり返しで紡いだ音楽は、観客に「この作品をどう観るか」と問いかけてくるようだ。
 本作には謎が多い。音楽もまた、観客に向けて放たれた謎である。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「君たちはどう生きるか サウンドトラック」のタイトルで、2023年8月9日に徳間ジャパンコミュニケーションズから発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. Ask me why(疎開)
  2. 白壁
  3. 青サギ
  4. 追憶
  5. 青サギII
  6. 黄昏の羽根
  7. 思春期
  8. 青サギIII
  9. 静寂
  10. 青サギの呪い
  11. 矢羽根
  12. Ask me why(母の思い)
  13. ワナ
  14. 聖域
  15. 墓の主
  16. 箱船
  17. ワラワラ
  18. 転生
  19. 火の雨
  20. 呪われた海
  21. 別れ
  22. 回顧
  23. 急接近
  24. 陽動
  25. 炎の少女
  26. 眞人とヒミ
  27. 回廊の扉
  28. 巣穴
  29. 祈りのうた(産屋)
  30. 大伯父
  31. 隠密
  32. 大王の行進
  33. 大伯父の思い
  34. Ask me why(眞人の決意)
  35. 大崩壊
  36. 最後のほほえみ
  37. 地球儀(歌:米津玄師)

 鈴木敏夫がライナーノーツに面白いことを書いている。
 久石譲は毎年、宮崎駿の誕生日に新曲をプレゼントしている。それのほとんどがミニマルミュージックだった。そして、本作には宮崎駿にプレゼントした曲が使われているというのだ。
 ただし、そのプレゼント曲は基本的に公開されていないので、全貌はわからない。が、このエピソードだけでも、本作の音楽が従来の宮崎アニメとは違う形で作られたことがうかがえる。
 1曲目の「Ask me why」は本作のメインテーマと呼べる曲。ピアノソロと薄いストリングス、パーカッションで奏でられる。シンプルな音とフレーズで構成された曲は、ミニマル的ではあるが、温かく、心を動かす。映画の重要な場面で、この曲の変奏が登場する。本作のタイトルは「君たちはどう生きるか」なのに、曲名は「私に理由をきいて」。これも音楽に秘められた謎のひとつだ。
 トラック2「白壁」は落ち着いたトーンのピアノソロの曲。眞人が疎開先の屋敷に到着する場面に流れた。これもミニマル的ではあるが、むしろサティが書いた「家具の音楽」に近い印象がある。
 トラック3の「青サギ」は、主人公・眞人を旅に導き、ときにはトリックスターの役割も果たす青サギの登場シーンに流れる曲。初めて登場したときはピアノが短いフレーズを奏でるだけだが、「青サギII」(トラック5)、「青サギIII」(トラック8)と、くり返し登場するたびに曲が長くなっていく。単純なフレーズとリズムで構成されたミニマル的な曲である。「青サギIII」では眞人の動揺にあわせて曲が展開し、典型的なミニマルミュージックのスタイルからは逸脱していく。が、心がしだいに波立っていくような感じは、ミニマル的な曲想の効果である。
 青サギと眞人が池で対峙する場面に流れたトラック10「青サギの呪い」も「青サギ」の変奏。眞人と青サギが対話し、眞人の動揺は最高潮に達する。「青サギ」から順に聞いていくと、ミニマルな響きが徐々にダイナミックに変化していくようすが興味深く面白い。一連の青サギの曲は「青サギのテーマ」というより、青サギが象徴するなにか、おそらく「異界」を表現している。眞人が青サギとともに旅を始めてからは、このテーマは聴こえなくなる。
 トラック11「矢羽根」は筆者が魅力を感じた曲のひとつ。眞人が弓と矢を自作するシーンに流れていた。ストリングスとピアノ、フルートなどが、単純な音型をくり返す曲だ。弦のピチカートがアクセントになっている。大きな起伏も展開もない曲想は、とてもミニマル的で気持ちいい。こういうモンタージュ場面にもミニマルミュージックは合っている。
 トラック13「ワナ」は眞人が古い洋館の奥に誘い込まれ、偽物の母を見つけるシーンに流れる曲。ふつうなら緊迫感に富んだ音楽で盛り上げるところだが、ここでも音楽はミニマル的。ストリングスやピアノがシンプルなフレーズをくり返す構成が、張り詰めた緊張感を醸成する。観客は「なにが起こっているのか」と息を呑んで見つめることになる。「青サギの呪い」の発展形とも呼べる曲である。
 次の曲「聖域」(トラック14)がいい。眞人の前に広がる異世界の情景。ファンタジー作品の常道なら、幻想的で壮大な音楽を流すところだ。久石譲が付けた曲は、ピアノが淡々と同じ音型を奏で続ける、静謐とも呼べる音楽。ミニマルミュージックの手法がこの上ない効果を上げている。静かで、感情的でないからこそ、生と死が混然となったふしぎな世界の印象が伝わってくる。本作の音楽の聴きどころのひとつだと思う。
 ここから本作の主な舞台は異世界になるわけだが、音楽のトーンは変わらない。現実世界と異世界とで、音楽を分けていないのだ。
 緊迫した場面に流れる「墓の主」(トラック15)、「箱船」(トラック16)なども、ミニマル的なアプローチを崩していない。
 後半の音楽の中でもほっとするのが、丸くふわふわした生き物ワラワラにつけられた曲「ワラワラ」(トラック17)。シンセサイザーとパーカッションを主体にした可愛い曲である。ミニマル的な曲想をベースに、声やリズムを加えて、ユーモラスな味を出している。これまでの宮崎アニメに登場した、小さくふしぎな生き物たちを連想させる曲だ。
 後半の音楽で印象的なのが、火を操る娘ヒミにつけられた曲。女声ヴォーカルが歌うモティーフが「火の雨」(トラック19)の終盤に初めて登場する。「炎の少女」(トラック25)では、そのモティーフがくり返され、活気のある神秘的な娘ヒミのイメージを印象づける。エキゾティックなフレーズのくり返しは呪文のようでもあり、祈りのようでもある。「回廊の扉」(トラック27)はその変奏で、ピアノとコーラスだけのアレンジによって神秘性が増している。
 女声ボーカルが入った曲想に『風の谷のナウシカ』の「ナウシカ・レクイエム」を連想する人もいるだろう。本曲のボーカルも「ナウシカ・レクイエム」と同じ麻衣(久石譲の娘)が担当している。ヒミは本作のヒロインと呼べるキャラクター。ナウシカの曲との相似は偶然ではないはずだ。
 眞人が夏子と再会するシーンに流れる「祈りのうた(産屋)」(トラック29)は原典が判明している。2015年にリリースされたアルバム「ミニマリズム2」に「祈りのうた for Piano」という曲が収録されているのだ。メーカーによるアルバムの説明には「戦後70周年を迎えたこの日本のために書かれた」とある。もともとは久石譲が宮崎駿にプレゼントした曲だという。このシーンの映像はドラマティックだが、音楽はストイックで、内面に深く斬り込んでいくようなすごみがある。
 「大叔父」(トラック30)は、旅路の果てに眞人が対面する大叔父の曲。パーカッションのリズムにピアノの強いアタック、ストリングス、木管などが重なり、大叔父の存在感を示す。明快なメロディはなく、ミニマル的な進行だ。「大叔父の思い」(トラック33)はその変奏。インコ大王と大叔父が世界の後継者をめぐって対峙するシーンに流れる。音楽は緊迫感をあおらず、ストリングスと木管による単純な音型のくり返しで、観客にこの場面を静かに見守ることをうながす。
 そして、クライマックスの曲「大崩壊」(トラック35)。これも大叔父のテーマの変奏である。「大崩壊」というタイトルに反して、悲壮感やスペクタクル感は感じられない。このシーンが哀しみよりも希望に彩られているという事情もあるだろう。無駄な音をそぎ落としたミニマルな音楽を聴きながら、観客は大崩壊の意味と、その先にある眞人たちの人生に思いをはせることになる。
 「最後のほほえみ」(トラック36)は本作を締めくくる曲。ストリングスとピアノ、パーカッションなどによるモティーフのくり返しが、いくたびも打ち寄せる波を思わせる。ミニマルというより、オスティナートと呼ぶほうがふさわしいように思える。オスティナートは同じフレーズを反復する手法で、音楽史的にはミニマルミュージックよりも古くからある。終幕に至って、久石譲はふたたび気持ちを表現する音楽、観客の情感を刺激する音楽に回帰したように感じた。この曲は眞人たちを、そして観客を、異界から現実へ送り出す役割を果たしている。

 久石譲は、なぜ本作の音楽をミニマルミュージックの手法で通したのか。
 作品を説明しないため、シーンに意味を与えないためだと筆者は思う。観客それぞれの頭と心で、考え、感じ取ってもらうためだと。
 もちろん、音楽に(作品にも)正解はない。このコラムも筆者が妄想した考察のひとつにすぎない。
 この音楽を君たちはどう聴くか。

君たちはどう生きるか サウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
410 アニメ様日記 2023年4月2日(日)

2023年4月2日(日)
ワイフと雑司ヶ谷でのランチの後、東池袋中央公園でコスプレイベントを見る。自分が目にした範囲で言うと、今回は『ONE PIECE』『ブルーロック』『僕のヒーローアカデミア』が多かった。『名探偵コナン』のコスプレグループにいた蘭が、特徴的な髪型を「細いツノ」として表現していたのが印象的。17時から業界のある方とリモートで世間話。いろいろと話す。
この日に観た新番組は『僕の心のヤバイやつ』『地獄楽』『天国大魔境』『山田くんとLv999の恋をする』『逃走中 グレートミッション』 『きゃらトビ!』『デュエル・マスターズ WIN 決闘学園編』『冒険大陸アニアキングダム』。

2023年4月3日(月)
グランドシネマサンシャインで『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』を鑑賞。アニメーションとしては通常のTVアニメよりも少し凝っている感じ。中盤の絵コンテが作画の手間をかけないで観客を退屈させないカット割りになっていると感じた。クライマッスで「影の付け方が黄瀬和哉さんみたいだなあ」と思ったところがあって、エンディングを見たら、いくつかの役職で黄瀬さんの名前があった。ただし、そこが黄瀬さんかどうかは分からない。観ていて幾つかの魔法少女物を思い出して、特に『赤ずきんチャチャ』を観返したくなった。堺三保さんと近所の蕎麦屋で早めの昼飯。
この日に観た新番組は『マイホームヒーロー』『転生貴族の異世界冒険録 ~自重を知らない神々の使徒~』『漣蒼士に純潔を捧ぐ』。この日に観た最終回は『KJファイル』『ノケモノたちの夜』『もういっぼん!』『Buddy Daddies』。それからDVDでOVA『東京BABYLON』を観た。

2023年4月4日(火)
5月頭までの仕事スケジュールを作成。それにあわせて生活パターンを少し変えることにした。DVDで『東京BABYLON 2』『不思議の国の美幸ちゃん』『X2(Xの二乗)』『聖伝』を観た。『不思議の国の美幸ちゃん』は今観ると随分と印象が違うなあ。『聖伝』の後編はアニメアールが作画のメインなのね。谷口守泰さんに見える画は谷口さんの作画なんだろうなあ。冒頭のアクションの作画は誰だろう。
この日に観た新番組は『くまクマ熊ベアーぱーんち!』『アリス・ギア・アイギス Expansion』『絆のアリル』『異世界はスマートフォンとともに。2』。

2023年4月5日(水)
午前1時頃に起床して、午前1時46分に出社。散歩以外はずっと作業を進めていたのだけど、13時くらいでかなり疲れた。やっぱり作業が多い日は途中で休みを入れたほうがいいなあ。
アニメミライ版『リトルウィッチアカデミア』を観る必要があったのだけれど、気がついたら配信で視聴できなくなっていた。慌てて事務所スタッフに頼んで社内のどこかにあるBlu-rayソフトを探してもらった。アニメミライ版『リトルウィッチアカデミア』は「文化庁若手アニメーター育成プロジェクト」の1本として制作された作品だけれど、今観ると原画のクレジットがとても豪華に見える。豪華に見えるということは、当時の若手が活躍しているということで、育成に成功したということなのだろう。『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』も観た。Amazon prime videoで『とつくにの少女』を全話観た。
この日に観た新番組は『スキップとローファー』と『東京ミュウミュウ にゅ~※[2期]』(※はハートマーク)。『スキップとローファー』1話はかなりの好印象。『SHIRANAMI THE TV』1話も観たけど、これはアニメではない、ということになるのだろうなあ。

2023年4月6日(木)
「この人に話を聞きたい」の原稿で確認することがあり、色々と観る。久しぶりに『ひそねとまそたん』を数話観る。この作品のOL感は面白いなあ。キャラ作画もいい。アクション物としてはやっぱりちょっと物足りない。
夜は新宿で知人と食事。退院祝いと「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会」刊行祝いで食事を奢っていただいた。
この日に観た新番組は『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』『この素晴らしい世界に爆焔を!』『神無き世界のカミサマ活動』。『U149』1話はかなり凝った作りだった。『この素晴らしい世界に爆焔を!』も楽しかった。

2023年4月7日(金)
午前1時に起きて、午前1時42分に出社。散歩以外は「この人に話を聞きたい」の原稿作業。それからZoom打ち合わせを2本。午後はちょっと気怠い感じ。
テレビをつけたら東映チャンネルで「プレイガール」をやっていた。ゲストが天本英世さんで、天本さんがセリフを言う度に得した気分になる。次回予告のナレーションも面白かった。うろ覚えだけど「次回は5周年記念で~~のシャワーシーンもバッチリです」とか、そんな感じだった。
『かぐや様は告らせたい -ファーストキッスは終わらない-』を録画で視聴。劇場での先行上映も鑑賞している。先行上映では4話分を上映したけど、TV放映は2話ずつ二度に分けて放映するバージョンと、4話をまとめて放映するバージョンがあるらしい。TOKYO MXは4話をまとめてだけど、2話毎にOPとEDがつく。TVで4話まとめては長いなあ。劇場で観た時と体感時間が随分と違う。2話ずつ二度に分けて観たほうが楽しめたかも。
朝の散歩とその後で聴いたのはサブスクで配信が始まった「妖刀伝 -破獄の章-」「妖刀伝 -炎情の章-」「ぼくの地球を守って」のサントラ。「ぼくの地球を守って」はいいアルバムだった。
この日に観た新番組は『私の百合はお仕事です!』『Opus.COLORs』『異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する』『勇者が死んだ!』『魔法使いの嫁 SEASON2』『Dr.STONE NEW WORLD』。『私の百合はお仕事です!』はタイトルだけ知っていたけど、思っていたのと随分と違った内容だった。

2023年4月8日(土)
外部のライターさんが午前3時までに送ると言ってくれていた取材まとめ原稿が届いたのが午前3時50分。冗談でなく、かなり優秀だ。しかも、あまり手を入れなくてもチェック出しできる仕上がりで助かった。考えてみたら深夜の原稿待ちは久しぶりだった。その後は散歩、原稿、ランチ。16時から新文芸坐で劇場版『銀河鉄道999』の上映があり、4K上映の映像と音響を確認するために足を運ぶ。仕事もあるので、タイタンでアンタレスに会う辺りまで観て退散した。映像と音響はDolby Cinemaには及ばないかもしれないけれど、これはこれで贅沢な上映だった。Dolby Cinemaを観ていなければ「うわあ、すげえ」と思っていたはず。
この日も午前2時台から作業したけど、原稿以外の作業(スケジュールの確認、素材の確認等)が多くて「仕事したぞ」って感じではなかった。
この日に観た新番組は『六道の悪女たち』『女神のカフェテラス』『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』『江戸前エルフ』『カワイスギルクライシス』『マッシュル -MASHLE-』『トニカクカワイイ(シーズン2)』『BIRDIE WING -Golf Girls’ Story-(Season 2)』。

第819回 ちょっと、次の仕事の話~『いせれべ』の話(10)

 昨日発表があったので、ちょっと解禁。ミルパンセの次のシリーズは

『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』(略称『沖ツラ』)

になります!
 また少々長めのタイトルで、沖縄が舞台のコメディてとこまでで、後は続報をお待ちください。ちなみにちょくちょく話題にしていますが、さらにこの次の作品も準備中。そちらは今まで自分がやってこなかったジャンルで、脚本(シナリオ)が半分上がった(折り返し地点を越えた)ところです。
 正直、50を目の前にしてこんなに忙しくなるとは思っていなかった(汗)。「もっと早くに振ってくださればよかったのに!」「何で10年前に持ってきてくれなかったの?」などと、現状非常にアタフタ中。

 で、『いせれべ』話の続き。

【5話は監督・田辺慎吾君の脚本・コンテ・演出、
たくらんけさんのグロス話数!】

 脚本(シナリオ)の割り振りの際、「小動物のモフモフがやりたい!」と田辺君自ら名乗り出たのを記憶しています。たくらんけグロスは毎回安定の出来で、非常に有り難いです。俺的には脚本より、コンテ・作画段階で少々手を出しました。ひったくり犯を捕まえる辺りの優夜&ナイトとか。“ひったくりを追いかけるナイト”は久々に描いた動物の走りでした。同じくアクション系では大魔境でクリスタル・ディアー(鹿型の魔物)に爪を振り下ろすナイトも板垣が原画を描き直しました(放映前のPVでも使用したカットです)。あと、木村(博美)総作監の修正が入ったナイトは、毛並みも骨格もめちゃめちゃリアルでカッコよかったですね。

【6話は作画監督・吉田智裕君のコンテ・演出話数!】

 この話の脚本は『ベン・トー』(2011)で一緒にやった筆安一幸(ふでやすかずゆき)君で、お久し振り! 脚本時に手は入れてないのですが、コンテ時に“非常階段と警備員の件”を追加しました。“退路を断たれた優夜”を画的に分かりやすくするためです。非常口を通れなくしないと、大炎上中の10階フロアを横切らなきゃならない必然がなくなってしまうので。
 その大炎上と床ぶち抜き・超全力疾走など、6話のアクションシーンを担当したのが社内の中堅アニメーター・森亮太君。彼のシーンはキャラ修正こそ入るものの、動きはほぼそのまま。他話数のアクションも森君大活躍しています。
 あと、ノンクレジットですがコンテは俺の方でそれなりに修正させてもらいました。やっぱ、これも学園の生徒だ、デパート客だと“モブ”で苦労した話数。最後、女子たちの救出劇~消化後の大団円辺りの消防隊員や救護班などのシーンも撮影上りを観て「これじゃあマズい」と、自分と木村でレイアウトから大直し——大変でした。モノによっては、あまり大きな声では言えませんが、

納期までに修復可能なアングルにカット内容自体コンテから組み直し

もしました。他話数も同様なのが何箇所もあります。それに合わせて現場(社内)の動画・仕上げスタッフもギリギリまで付き合ってくれて、感謝しかありません。

 そして、また次週へ。