6月に開催し、ご好評をいただいた『映画大好きポンポさん』トークイベント。その第2弾を開催します。出演は平尾隆之監督と松尾亮一郎プロデューサー、そして、演出の居村健治さんを予定しています。
開催日は8月1日(日)昼。会場はLOFT/PLUS ONEです。イベントは平尾監督達にお客さんからの質問に答えていただくパート、メイキングについて語っていただくパート等で構成。今回のイベントも配信を行います。そして、配信のない、会場だけのコーナーも予定しております。
質問は会場でも受け付けますが、先行してネットでも募集します。平尾監督達に質問のある方は、WEBアニメスタイルのTwitterアカウント( @web_anime_style )にリプライのかたちでお送り下さい。当日、会場に来られない方の質問もお受けします。ただし、いただいた質問の全てに答えるのは難しいかもしれません。答えられなかった場合は申しわけありません。ネットでの質問はイベント当日の朝8時まで受け付けます。
配信は先行してLOFTグループによるツイキャスで行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。チケットは7月27日(火)18時から発売。チケットは「会場でのイベント観覧+ツイキャス配信視聴」と「ツイキャス配信視聴」の2種類を用意します。アニメスタイルチャンネルでの配信は、同チャンネルの会員の方が視聴できます。チケットに関して詳しくは、以下にリンクしたLOFTグループのページをご覧になってください。
LOFT/PLUS ONEを含むLOFTの会場は厚生労働省が定めた、新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインを遵守し、さらにガイドラインよりも厳しいLOFT独自の基準を設けて、万全を期してイベントを開催しています。
来場されるお客様にはマスクの着用、手指の消毒をお願いしています。消毒液は会場に用意してあります。また、体調の優れないお客様は来場をお控えください。
■関連リンク
『映画大好きポンポさん』公式サイト
https://pompo-the-cinephile.com/
LOFTグループのイベントページ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/186956
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle
第178回アニメスタイルイベント
『映画大好きポンポさん』を語ろう!2
開催日
2021年8月1日(日)
開場11時30分 開演12時 終演15時予定
会場
LOFT/PLUS ONE
出演
平尾隆之(監督)、松尾亮一郎(プロデューサー)、居村健治(演出)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長・聞き手)
チケット
会場での観覧+ツイキャス配信視聴/1,500円 ツイキャス配信視聴のみ/1,300円
■アニメスタイルのトークイベントについて
アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。
編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月2日(日)
この日の作業は、月曜以降の編集作業の整理、素材の確認など。自分の原稿は翌日以降で。Kindleで「新婚よそじのメシ事情【カラー増量版】(3)」を読了。まさかの展開。驚きつつもちょっと感動。知り合いのご夫婦のおめでたとも、ちょっと違った感情だなあ。『宇宙戦艦ヤマト』の続きを観る。やはりメチャメチャ面白い。
2021年5月3日(月)
散歩中に、何故かワイフにOVAの歴史について説明する。
大物原稿に手をつける。こういった感じの原稿を書くのは相当に久しぶり。ノリを取り戻すまでに時間がかかりそうだ。
『宇宙戦艦ヤマト』を25話まで観る。1970年代に観た印象とも、その後に観返した印象とも違う。1980年代に観返した時に垢抜けないと思った部分を、今では魅力として感じたり。ああ、この部分は『宇宙戦艦ヤマト2199』では上手くやっていたなあと思うところもある。
最近、AmazonでCD「ANIMEX 1200シリーズ」を次々に購入している。ウォーキング時に、ネックスピーカーでアニメのサントラを聴くようになって、買っていないCDや持っているはずだけど見つからないCDが欲しくなったのだ。この日に届いたのは「組曲 銀河鉄道999」と「TVオリジナルBGMコレクション 科学忍者隊ガッチャマン」「同・UFOロボ グレンダイザー」「同・宇宙海賊キャプテンハーロック」。
2021年5月4日(火)
「設定資料FILE」の構成に手をつける。素材を見てちょっと考えた後、とりあえず作業を始める。新文芸坐で「クラッシュ 4K無修正版」(1996・カナダ/100分/DCP/R18+/2K上映)を観る。ブログラム「車にまつわる危ない話 クラッシュ | ヒッチャー」の1本。日本で公開された頃、打ち合わせでこの映画が話題になった。僕は観ていなかったので、話題についていけなかったのを覚えている。そして、予想していた内容とは随分と違った。今回のは4K版だったけれど、レンタルVHSでブラウン管のテレビで観た方が「らしい」んじゃないかな。
2021年5月5日(水)
ワイフとの早朝散歩は続いている。この日は明治神宮を歩いた。午前5時過ぎの山手線で代々木まで移動して、代々木から明治神宮に。本殿まで歩いて参拝。その後、代々木公園に行ってお茶を飲み、また明治神宮の中を歩いて代々木駅に。早朝の明治神宮に行きたいというのは昨年からのワイフの要望で、それがようやく実現した。
「設定資料FILE」の構成の続き。次号の「設定資料FILE」は『映画大好きポンポさん』だ。この作品の売りは、タイトルにもなっているポンポさんなんだけど、ポンポさんの設定画は1枚しかない。立ちポーズと表情が1枚にまとめられているうえに、服の替えがないのだ。それに対してジーンやナタリーは衣装換えがあるので、数点ずつ設定画がある。これを素直に構成してしまうと、誌面において、ポンポさんよりもジーンやナタリーの面積のほうが大きくなり、結果としてポンポさんの印象が弱くなってしまう。資料集ならそれでいいのかもしれないけれど、「設定資料FILE」は作品を紹介する記事でもあるので、ポンポさんを目立たせなくてはいけない。という辺りが今回の腕の見せどころだ。
シネマ・ロサで、ジャン=ポール・ベルモンド主演の「大頭脳」を観る。確かにジャン=ポール・ベルモンドはルパンっぽいし、コブラっぽい。「大頭脳」はあらすじだけ取り出すと面白いけれど、映画としてはあまり面白くはない。ただ、劇中で展開する作戦はこの映画が作られた頃だと、斬新なものではあったかもしれない。吹き替えが観たいのでBlu-rayは購入しよう。
2021年5月6日(木)
作業が片付いたら午後から映画に行くつもりだったけれど、連休明けで用事が多かったために断念。WOWOWの『あしたのジョー』を観る。36話のゴルフ場で力石がランニングをしているシーン。望遠で撮ったイメージのカットがあるなあ。1シーン内でレンズを換えている想定だろう。出崎さんのコンテ回。
2021年5月7日(金)
ある方からのメールで、アニメージュでお世話になった亀山修さんが亡くなられたことを知る。僕が駆け出しの頃にお世話になった方だ。10年ほど前に電話で話をしたのが最後になった。心よりご冥福をお祈り致します。
新文芸坐で「散歩する霊柩車」(1964/88分)を観る。プログラム「映画デビュー70周年 西村晃のスーパー演技!!」の1本だ。かなり面白い。騙し騙されが延々と続く構成で、中盤までは展開が読めなかった。クライマックスまでくると「最後にあいつがなにかするな」と分かっちゃうんだけど、それでも楽しめた。物語の大半がある一夜の出来事なんだけど、一晩に事件が起こりすぎだろうとは思った。音楽は菊池俊輔さんで、曲を聴いているだけでも楽しかった。菊地さんとしてはデビュー数年後の仕事なのね。ベタベタな曲の付け方もいい。西村晃さんの特集上映だけど、奥様役の春川ますみさんも強烈。ちょっと不気味さを感じさせる渥美清さんも印象に残る。
2021年5月8日(土)
昼間は散歩と原稿。夕方に吉松さんとSkype呑み。
かなり久しぶりに『花咲くいろは』を視聴。1話を観て『若おかみは小学生!』のようだと思ったけれど、『花咲くいろは』より『若おかみは小学生!』の原作のほうが古い。『花咲くいろは』は「地に足がついたドラマ」と「深夜アニメ的なサービス」が入り混じらないでぶつかりあっている感じ。『花咲くいろは』7話はハッチャケ系で際立ったエピソード。気になって「月刊アニメスタイル」第6号のインタビューを読み返したら、ちゃんとこの話の脚本について聞いていた。偉いぞ、自分。
腹巻猫です。『竜とそばかすの姫』をIMAXレーザー上映で鑑賞しました。これは、ぜひIMAXで体験してほしい劇場作品。映像と音の中に吸い込まれるような没入感を味わえます。電脳空間の映像に目を奪われますが、高知出身者としては現実パートの美しい情景描写(特に川)にもぐっときました。そして、ドラマの軸となる音楽が本当にすばらしい。サントラ発売は8月。楽しみです。
前回の『BEM』の音楽を手がけたもうひとりの作曲家・未知瑠。今回は彼女が初めて手がけたTVアニメーション作品『終末のイゼッタ』の音楽を聴いてみよう。
『終末のイゼッタ』は2016年10月から12月まで放送されたオリジナルTVアニメ。監督は藤森雅也、アニメーション制作を亜細亜堂が担当した。
舞台は1940年、ヨーロッパをモデルにした架空の国々。小国エイルシュタットの公女フィーネは、秘密会談のために訪れた隣国ヴェストリアで軍事大国ゲルマニアの憲兵に捕らえられる。軍用機に乗せられてゲルマニアへと連行されるフィーネを救ったのは、幼い頃に出会った魔女イゼッタだった。イゼッタはフィーネのために、また、この戦争を終わらせるために、魔法の力を使って戦うことを約束する。
赤い髪の少女イゼッタは魔女の末裔。イゼッタが戦闘機や戦車を魔法の力で撃破していく場面は大きな見どころだ。架空戦記ものに魔法の要素を持ち込んだ思考実験SFとしても楽しめる(ポール・アンダースン『大魔王作戦』みたいだ)。
しかし、いちばんのポイントは、イゼッタが魔女というよりも、素朴で自分の気持ちに素直な少女として描かれていることだろう。イゼッタとフィーネが立場を超えた友情で結ばれていく展開が本作のドラマの核になっている。ミリタリーものと見せて、本質は少女たちの友情ストーリーというニクい作品である。
ユニークな設定のオリジナル作品であるため、音楽も個性を出したいという意向から、音楽担当はアニメ音楽をあまり手がけたことがない若手作曲家で「エキセントリックなものを作ってくれる人」を探すことになった(音楽プロデューサー・福田正夫の証言より)。
たまたま目に留まったのが未知瑠の公式サイト。インディーズでリリースされていた2枚のオリジナル・アルバムを聴いてみると、求めている音楽イメージにぴったりで、スタッフの満場一致で音楽を依頼することに決まったという。
未知瑠は1980年生まれ。幼少の頃から自然や鳥の声などを真似てピアノを弾いて遊んでいた。東京藝術大学音楽学部作曲科を首席で卒業。クラシック音楽をルーツとしながら、ジャズやロック、エレクトロ、民族音楽、現代音楽などを取り入れ、ジャンルを超えた個性的な音楽を創造している。2009年に1stソロアルバム「World’s End Village —世界の果ての村—」、2015年に2ndソロアルバム「空話集 〜アレゴリア・インフィニータ」をリリース。どちらも、異国の民話や伝説を題材にしたような独特の世界を作り出している。なるほど『終末のイゼッタ』はこういうイメージだったのか、とひざを打つ内容だ。
未知瑠のプロフィールでもうひとつ語られているのが、作曲家・佐橋俊彦のアシスタントを務めていたという経歴。『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』や『ウルトラマンメビウス』『仮面ライダー電王』の時期と重なるというから、2004年から2006年頃にかけてだろう。音楽制作の実際と「バトル音楽ひとつとってもこんなにバリエーション豊かに作れるのだ」といったことを学んだ、とインタビューで語っている。
そんな未知瑠が生み出す映像音楽は、ボーカリーズや民族音楽を取り入れた個性的なサウンドと、ツボを心得たダイナミックなオーケストレーションでサントラファンを魅了する。いわば彼女は「サントラの魔法」を受け継いだ作曲家。「よくぞ、こちら(サントラ)の世界に来てくれたなあ」と思ってしまう。いま期待の作曲家である。
映像音楽の代表作は、劇場作品「あさひなぐ」(2017)、『賭ケグルイ』(2019)、スタジオジブリ短編アニメ『たからさがし』(2011)、TVアニメ『刻刻』(2018)、『BEM』(2019)、『ギヴン』(2019)、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(2020)、『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』(2021)など。
『終末のイゼッタ』の音楽を任された未知瑠は設定やキャラクターなどの資料を見た時点からイメージが刺激され、メインとなるテーマ曲など数曲のデモを制作して打ち合わせにのぞんだ。しかし、スタッフからは「普通の劇伴だね」と言われてしまう。スタッフが求めていたのは、視聴者が「なにか変だな」とひっかかる、映像を異化するような音楽だったのである。そこで、ソロアルバムで作り上げた自身の音楽をイゼッタの世界に持ち込むことにした。未知瑠はこのときスタッフから求められたことを「アニメの世界観に寄り添ってばかりでなく、世界観を音楽で推し広げていくことも必要」と表現している。映像音楽が持つ役割や力を考えさせられる言葉である。
最終的にできあがった音楽は、オーケストラをベースにしながら、女声ボーカル(ボイス)や古楽器を取り入れた、時代や国・地域を超越した音楽。ファンタジー音楽と女声ボーカル、民族楽器は相性がよく、過去にも例があるが、『イゼッタ』の音楽は一歩踏み込んでいる。ファンタジー作品でよく聴かれる中世から近世のヨーロッパ風音楽ではなく、もっと古代の音楽を思わせる、土俗的とも呼べる音楽だった。
余談だが、本作でリュート、サントゥール、サルテリ、サズなどの古楽器の演奏を担当しているのは上野哲生。TVアニメ『ほえろブンブン』『おはよう! スパンク』などの音楽を担当した作曲家である。数年前にインタビューする機会があり、現在は古楽器奏者としても活動していることは聞いていたが、こうして新作TVアニメのサントラにも参加していることを知ってうれしかった。
音楽全体は、イゼッタのテーマでもあるメインテーマとフィーネのテーマを中心に、幻想的な魔女関係の曲、戦争映画風のクラシカルな曲、そして、心情曲、情景描写曲などから構成されている。
特徴的なのが、魔女に関係する楽曲だ。先に紹介したように、女声ボーカルや古楽器をフィーチャーし、いつの時代のどこの国とも知れないサウンドで伝説の魔女のイメージを音楽化している。ゲルマニア軍を描写するクラシカルな楽曲と対照的で、魔法と科学、古代と現代、自然と文明の対比を音楽が表現しているかのようだ。
本作のサウンドトラック・アルバムは「TVアニメーション『終末のイゼッタ』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2016年12月21日にフライングドッグから発売された。収録曲は以下のとおり。
いつか見た夢
終末のイゼッタ
出撃せよ!
白き魔女の伝説
追跡
大脱出
フィーネ 愛のテーマ
In The Air
ME・ZA・ME
ライフルの翼
姫様への想い
夜明け前
敗色濃厚
出逢い
決死の覚悟
反撃の火蓋
非情なる皇帝
イゼッタの秘密
あの日の記憶
作戦開始
Set Me Free!
ゾフィーの魔力
異端者
エイルシュタット国歌
バトルモード突入
ゲールの猛攻
一進一退
魔石の力
最後の戦い
フィーネ 愛のテーマ 〜piano solo〜
歌の収録はなく、BGMのみ30曲、75分のボリューム。
曲順は、全12話の物語を俯瞰する流れである。未収録曲もあるが、劇中で印象的な曲はほぼ収録されている。
1曲目「いつか見た夢」は第1話のアバンタイトルで使用されたピアノとフルート、オーボエなどによるメインテーマの変奏曲。幼いフィーネとイゼッタとの出逢いを紹介する回想シーンに流れた。第1話では女声ボーカルが重ねられている。
2曲目「終末のイゼッタ」は本作のメインテーマ。演奏時間5分以上の長い曲である。幻想的な女声ボーカルとオーケストラによる導入部から、古楽器によるテーマメロディの変奏に展開。ピアノや管弦楽器がメロディを引き継いでいく。中間部は女声ボーカルによる別のメロディ。緊張感に富んだオーケストラの間奏のあと、ピアノと弦楽器、ボーカルなどがテーマを反復し、力強い全合奏で終わる。組曲的構成のドラマティックな曲だ。
劇中ではシーンに合わせて編集して使われることが多いが、第11話や最終回(第12話)では、映像の展開と曲の展開をたくみに合致させ、フィルムスコアリングで書かれた曲のように使用している。演出する上でも使い甲斐のある曲だろう。
トラック3「出撃せよ!」はタイトルどおり、ゲルマニア軍と戦うイゼッタの場面によく流れたメインテーマのアレンジ曲。呪文のような女声ボーカルからオーケストラの勇ましい曲に変化する。「戦うイゼッタ」という雰囲気だ。
次の「白き魔女の伝説」は魔女の伝承をテーマにした幻想的な曲。チェレスタの音色や弦楽器のメロディが妖しい香りをただよわせる。中間部はリリカルな曲調に変化。この部分は、第9話の山の上の城塞で語らうイゼッタとフィーネの場面で効果的に使用されていた。終盤は女声ボーカルが愛らしいメロディを歌い、時の流れの中に消え去るように静かに終わる。一篇の伝説を聞き終えたような気分になる曲である。
続くトラック5「追跡」とトラック6「大脱出」はユニークなオーケストレーションの曲。パーカッションとピアノを中心にした「追跡」は明確な旋律を持たない現代音楽的な曲である。「追跡」というタイトルに反して、第2話でイゼッタがフィーネとの楽しい日々を回想するシーンや第7話でゲルマニア軍の兵士たちがポーカーをしてくつろいでいるシーンに選曲されている。「大脱出」も即興的なパーカッションと弦楽器による現代音楽的な曲。どちらもいわゆる「劇伴的」な曲ではないため、使いにくかったのではないかと想像するが、もっと使ってほしかった曲だ。
トラック7「フィーネ 愛のテーマ」は本作のもうひとつのメインテーマとも呼べる曲。古楽器の爪弾きを導入に、弦楽器とピアノ、フルートなどによる美しいメロディに展開していく。第1話から使用されているが、名場面は第11話。ゲルマニア帝国に降服する決意を固めたフィーネが、泣いて抗議するイゼッタの想いに打たれ、「ともに戦おう」と言う場面で使用されている。そして、最終回のラストシーンに流れたのもこの曲だった。
トラック8「In The Air」はため息みたいな女性ボイスを中心に構成されたふしぎな曲。第1話でカプセルに閉じ込められていたイゼッタが目覚めるシーンに流れている。次の「ME・ZA・ME」は女声ボーカルと打ち込みのリズム、エレキギター、ストリングスなどを組み合わせた浮遊感と疾走感のある曲。どちらも空を舞うイゼッタの姿が目に浮かぶような楽曲だ。しかしながら、2曲とも数回しか使われなかったのが惜しい。もっと使ってほしかったなあ。
トラック10「ライフルの翼」は印象の強いバトル音楽のひとつ。緊迫感のあるリフの繰り返し、吐息風の女性ボイス、トランペットの勇壮なメロディ、エレキギターのうなりなど、さまざまな音楽要素が混然一体となって、魔女と戦闘機が戦う異様な戦闘空間を描写する。バトル音楽としてのカッコよさも味わえる、本アルバムの聴きどころのひとつ。
トラック11の「姫様への想い」は使用回数は少ないながら重要な曲。第11話でイゼッタがフィーネにうながされて、それまで「姫様」と読んでいたフィーネを初めて名前で呼ぶ場面に流れていた曲だ。本作の乙女チックな一面を象徴する曲であり、本作の音楽の魅力が、幻想的な曲やバトル曲ばかりでないことを教えてくれる。
アルバムの後半は、ストーリーの流れに従い、ミリタリー的な曲や重厚な曲が多くなる。「敗色濃厚」「決死の覚悟」「反撃の火蓋」「非情なる皇帝」「作戦開始」「ゲールの猛攻」「一進一退」などである。正統派サウンドトラック風のダイナミックなサウンドを聴くことができる。
そんな中、異彩を放っているのが、トラック21「Set Me Free!」だ。呪文風の女性ボイスとロック的なリズムが合体し、妖しいカッコよさを持った曲に仕上がっている。第3話でイゼッタが魔力で戦車を投げ飛ばすシーンくらいにしか使用されなかったのがもったいない。
終盤に登場するもうひとりの魔女ゾフィーのテーマ「ゾフィーの魔力」、魔女の秘密が語られる場面などに使われたミステリアスな「異端者」、即興的な古楽器の演奏と呪文的なヴォイスを組み合わせた「魔石の力」など、幻想的な音楽を散りばめて、いよいよ物語は最終決戦へ。
トラック29「最後の戦い」はメインテーマをモチーフにした3分を超える戦いの曲。この曲も、次々と曲調が変化する組曲的な構成で作られている。最終回ではゾフィーとイゼッタとの決戦場面に長尺で使用され、メインテーマ「終末のイゼッタ」と同様に、曲の展開と映像の展開をマッチさせたフィルムスコアリング的演出でクライマックスを盛り上げていた。
アルバムを締めくくるのは「フィーネ 愛のテーマ」のピアノソロ・バージョン。戦争が終わったあと、イゼッタとフィーネの物語を回想するイメージだろうか。本編では第4話でフィーネが父の死を看取る場面に使用されていた。イゼッタのテーマ(メインテーマ)に始まり、フィーネのテーマに終わる構成が味わい深い。
本アルバムは、TVアニメ『終末のイゼッタ』の音楽世界を凝縮した充実の1枚である。本作の音楽を特徴づける女声ボーカル(ボイス)や古楽器をフィーチャーした楽曲が(使用頻度によらず)多く収録されているし、オーケストラによるダイナミックなバトル音楽や重厚な音楽も堪能できる。そして、イゼッタとフィーネの友情を彩る美しいメロディもある。これがTVアニメ初担当とは思えない(いや、初めてだからこそかも)、創意と才気にあふれた作品である。
選曲に関して欲を言えば、イゼッタとメイドのロッタが笑いあう場面などに流れる明るい日常曲も入れてほしかったなあと思う。思い切ってミリタリー的な曲をいくつかはずして、日常曲や心情曲を増やしてもよかった。サントラ盤のジャケットを見てもわかるとおり、本作の本質は戦争ものではなく、少女たちの友情ドラマなのだから。
TVアニメーション「終末のイゼッタ」オリジナルサウンドトラック
Amazon
おお、更新日が7月15日で715回! ま、別にどーでもいいか
役者(声優)さんの話。ユーゴー役の石川界人さんは、以前(2013年)自分が監督・脚本・絵コンテ・演出をやった『アークIX』というラノベに付く短編アニメの時にご一緒させていただいたと思いますが、メインキャラでお付き合いするのは初めてかと。7話のアフレコ後、悪役の怒りの鎮め方について議論、というほどでもない話し合い(?)をしたのが印象的で「自分で納得できない芝居はしたくない」という強い意志を感じました。
ユーリ役の田中あいみさんも初めて。残念ながら後半は極端に出番が少なくなってしまうのですが、前半の学園編での「殺すから♡」は忘れられません。
フィリメス役の奥野香耶さんは『Wake Up, Girls! 新章』でもご一緒。『COP CRAFT』のまゆしぃ(吉岡茉祐さん)もそうでしたが、あくまでオーディションによって決まったキャスティングです。奥野さんにもオーディション時は東山(奈央)さん同様、カティア役とその転生前の男子学生(大島叶多)役もやっていただき(汗)、ご苦労をおかけしました。でも、やっぱり奥野さんのフィリメス、可愛かったです!
で、ソフィア役の——以下次週。短くてスミマセン! 次の打ち合わせ(来年の監督作)もすでに始まってて……。
編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年4月25日(日)
早朝の新文芸坐で、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 129 大友克洋監督のアニメーション」の終幕を見届ける。その後、事務所でデスクワーク。睡眠が足りていなかったようで作業は捗らず。午後は新文芸坐で「少女ムシェット」(1967・仏/80分/DCP/PG12)を鑑賞する。プログラム「ブレッソン、鋼の傑作2本立て 少女ムシェット | バルタザールどこへ行く」の1本。
2021年4月26日(月)
グランドシネマサンシャインの朝の回で、IMAXの「るろうに剣心 最終章 The Final」を観る。グランドシネマサンシャインで「るろうに剣心 最終章 The Final」を観るか、新文芸坐で「バルタザールどこへ行く」を観るかでちょっと悩んだ。グランドシネマサンシャインは27日(火)から休業で、「バルタザールどこへ行く」の国内上映はこの日までだった。「るろうに剣心 最終章 The Final」はかなりよかった。アクションの見応えはかなりのものだし、役者についても原作の再現度が高い。街の描写等も凝っている。終盤になってスケールダウンした感があったけれど、全体としては好印象。午後はずっとデスクワーク。新文芸坐は27日(火)以降も営業を行うというアナウンスがあった。
2021年4月27日(火)
Zoom打ち合わせの後、あるアニメプロダクションに。これから作る書籍のために資料を見せてもらう。資料が入っているカット袋に「スタジオ雄 小黒様へ」と宛名が書かれているものがあった。20数年前に仕事で僕が関わった作品の資料だ。
2021年4月28日(水)
新文芸坐の9時40分からの回で、ワイフと「82年生まれ、キム・ジヨン」(2019・韓国/118分/DCP)を観る。プログラム「私の人生、誰のもの? 82年生まれ、キム・ジヨン | ハッピー・オールド・イヤー」の1本。よくできた映画ではあったけれど、「?」と思うところも。公開時に原作との違いが話題になっていたようだ。そのうちに原作をチェックしてみよう。15時から喫茶店で、あるクリエイターの方と、これから出す書籍についての打ち合わせ。事務所に戻ってまたデスクワーク。19時過ぎまでキーボードを叩く。
「上坂すみれの新東宝シアター ―天知茂、痺れるほどキザで、ニヒルで―」を録画で観た。全部ではなくて、トークと映画の一部だけを観た。面白い企画だなあ。トークはナチュラルな感じでよかった。
2021年4月29日(木)
Zoomで、遠藤一樹君と土曜のイベント「アニメ様の1990年代」についての打ち合わせ。どんな内容について話すかを説明しているうちに、予定した内容を全部話そうとすると、イベントが3時間あっても足りないことが分かる。同イベントのために、雑誌「Looker」のバックナンバーをチェック。しかし、トークで話題にしたかったマンガが見当たらず。あれ? 「Looker」ではなかったのか。
2021年4月30日(金)
連休直前で、イベント前日なので用事が多い。昼飯にすき家で、やきそば牛丼を食べる。『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』とのコラボメニューなので、本当は映画を観た後で食べるつもりだった。「アニメV」のバックナンバーをチェックして、イベントで話題にしたいマンガが見つかった。吉松さんが自身の連載マンガの中で、僕のことをアニメ様と命名したのだ。
2021年5月1日(土)
57歳になった。誕生日を迎える度に、仕事を続けられていることをありがたいと思う。お世話になっている皆さんに感謝。幸運に感謝。
イベント「第174回アニメスタイルイベント アニメ様の1990年代」を開催。イベントは司会を遠藤君に頼んで、メインのゲストが吉松さん。サブのゲストが亀田祥倫さん、祥太さん。皆のお陰で気持ちよく話すことができた。吉松さんがイベント中に、僕と吉松さんの動画を流すと言っていて、どんな映像なのか分からないのでハラハラしたけれど、お客さんに受けていた。
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