第720回 懐かしい動画

 先日、金曜ロードショーで懐かしい宮崎駿監督作品『もののけ姫』(1997年)が放送されていたようです。「ようです」と言うのは今回も自分、観ていませんでしたから。Blu-ray持ってるし。ただ、若い頃動画で参加している数少ないジブリ作品の1つ。他は『耳をすませば』と『On Your Mark』(1995年)、それぞれに少々の思い入れがあります。各作品、描いた動画枚数は何百枚ずつだったと思いますが、安藤雅司さんや近藤喜文さんら超絶巧い方々が描かれた生の原画や作監修正に自分の動画の線を載せて、劇場の大画面で公開される緊張感(汗)! 特に『耳をすませば』は自分が研修明けすぐのド新人での動画でかなり緊張しました(そのせいか最初のカットもはっきり覚えており、聖司が教室にやってきて「聖司君……」と呟く雫のアップがそれです)。

 そして、今回は『もののけ姫』話。

ずう~っと前(10年以上前?)にもここで『もののけ姫』の動画の話題をさせて頂きました(例の◯揺らしてみたって話)。で、ここからの話はその時も話題にしたかも知れません。確認しようにも現在700回以上あるこの連載の内の第何回かも憶えてないので、もし同じ話を繰り返していたらご容赦下さい。あれは、山犬の走りリピートの動画を描いていた時、大塚(康生)さんが通りかかり、俺の机に貼ってあった『もののけ姫』のキャラ表を見つつ、雑談開始。

大塚「板垣君、こーゆーのすきでしょう?」

当時、よく大塚さんに「画、観てください!」と言っては黒澤明監督作品の名場面を鉛筆画にして持って行ってた俺。その板垣の黒澤好きを意識した上での話の振りです。

板垣「ああ、はい。そうですね~」
大塚「(原画を覗き見て)犬の走り描いてんの?」
板垣「まあ、でも全部中割参考入ってますしね~、この通りやるだけですね」
大塚「ん~~、ちょっと貸してみて」


と、大塚さんは板垣の席を奪って、他所様の山犬の走り原画の上に自ら勝手に修正を載せ始めたのです!何しろ『太陽の王子 ホルスの大冒険』の冒頭でド迫力の狼の群れ対ホルスを描いた大塚さんが、俺の目の前でジブリの山犬にサラサラ~ッといつもの達筆な一発描きで修正を入れてるのです! そりゃ痺れました! 周りの先輩らも覗きに来てザワザワ。

つまり、大塚さんの説明は「俯瞰アングルでの山犬の走りの原画から原画へ中割り5枚、その全部で胸部が見えるのはおかしい!」と。要は、前脚が着くと腰部が上がるわけで、となるとその際俯瞰では胸部が見えないはず、との事でした。

 もちろん、その時の大塚修正は本番の動画に反映するわけにも行かず(ジブリ様の中割参考を無視するのはマナー違反ですから)、板垣の自宅に現在も大事に保管してあるのでご安心を。
 あと、完成後の打ち上げパーティーでは、動画チェックの舘野(仁美)さんより、

「板垣さんの動画は線が綺麗で中割も丁寧で助かりました。田中(敦子)さんから聞いた んですけど、原画になられたそうですね。今度は板垣さんの原画を私が動画にするかも 知れないので、その時は宜しくお願します」

とのお言葉を頂き(社交辞令でも嬉しい)、一緒に記念写真も撮っていただきました。その写真も、同じくその打ち上げパーティーに参加されていた高畑勲監督と板垣とのツーショットと一緒に、今でも板垣の宝物として保管してあるので、こちらもご安心を!
テレコム辞めて数年後、監督やらせてもらえるようになった際、『耳をすませば』~『もののけ姫』あたりでジブリに居らっしゃったスタッフさん——鶴岡耕次郎さん、桑名郁朗さん、有富興二さんらと仕事でご一緒出来たのも、更に嬉しかったです。

アニメ様の『タイトル未定』
315 アニメ様日記 2021年6月6日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年6月6日(日)
午後は事務所でデスクワーク。必要なデータが半分しかなかったことが分かって、予定していた作業は断念。それは月曜以降にやることにして、スケジュールの調整をしたり、事務所を片づけたり。いつも「1日が短い」と思っているけど、急ぎの作業がないと結構長い。
「新美の巨人たち」の「和田誠×清水ミチコ 一枚の絵」を録画で観る。「週刊文春」の仕事についての部分もよかったけれど、学生時代に描かれたものがあまりにも巧いので驚く。
「キネマ旬報」2021年6月上旬号の「追悼 大塚康生」に目を通す。映画雑誌としては充分以上の内容であるけれど、取材で参加している叶精二さんによる総論的な文章があれば、更によかったと思う。
「お近づきになりたい宮膳さん」3巻を読む。松林と宮膳さんの恋愛前のドキドキを延々と描くマンガかと思ったら、そうではなかったようだ。これからはお付き合い初期のドキドキを描くのだろう。まあ、それはそれで楽しみ。

2021年6月7日(月)
外部の方達とのZoom打ち合わせで、何故かやたらと持ち上げていただいた。お世辞なんだろうけど、ちょっと嬉しい。散歩時に「宝島 完全版音楽集」を聴く。TSUTAYAのレンタルで済ましてしまったけれど、これは購入しないといけないCDだった。反省。

2021年6月8日(火)
仕事の合間にワイフと、新文芸坐で「燃ゆる女の肖像」(2019・仏/122分/DCP/PG12)を観る。プログラム「私は今、本当の私を生きているだろうか 燃ゆる女の肖像 | 聖なる犯罪者」の1本。演出が素晴らしく、特に映画前半の映像とテンポがよかった。ラストカットもいい。ただ、先に「ラストカットが凄い」と言われてから観たら、印象が違ったかもしれない。スカートに火がついた後のシーンの切り替わりと、そこでのドラマも飛躍も面白かった。
以下は、最近買ったあるアニメ映画のパンフレットに目を通して感じたこと。パンフレットでスタッフインタビューが異様に充実していると「この作品はムックが出る予定がないのね」と思ってしまう。パンフレットの作りとしては間違ってないけど、ちょっと寂しい。

2021年6月9日(水)
グランドシネマサンシャインで『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を観る 。BESTIA enhancedでの上映だった。これはアバンギャルドアニメの最先端だ。華恋とひかりが、カメラ目線で「観客」について言及したところで「やるなあ、すげえ」と思った。

2021年6月10日(木)
グランドシネマサンシャインで『シドニアの騎士 あいつむぐほし』を観る。こちらはDolby Atmosでの上映だった。音響が凄い。しっかりと楽しませる娯楽作であり、満足度は高い。ただし、自分の感覚ではあそこまでハッピーエンドにならなくてもよかった。
進行中の書籍の作業が終盤で、同じメンバーによる社内打ち合わせを13時と17時で2回やる。

2021年6月11日(金)
仕事の合間に、グランドシネマサンシャインで『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を観る。これは素晴らしい。20年ぶりくらいに「アニメのリアル」が更新されたのではないか。演出や作画もかなりのもの。「あっ」と驚く箇所がいくつもあり、キャラクターの人格描写も凄みがあった。

2021年6月12日(土)
散歩以外はデスクワーク。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の劇場限定版Blu-ray、パンフレットに目を通す。

アニメ様の『タイトル未定』
314 アニメ様日記 2021年5月30日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月30日(日)
散歩以外は原稿作業。引き続き、散歩時にネックスピーカーでアニメのサントラを聴いている。この日聴いたのは「タッチ music flavor 1」。『タッチ』のサントラを聴いたのは、多分、初めて。大半の曲は記憶にあったのだけど、まとめてBGMのみを聴くと作品自体の印象とズレる。それが面白かった。

2021年5月31日(月)
散歩以外はデスクワーク。散歩時に「ルパン三世 ルパンVS複製人間マモー BGM集」を聴いた。確認したいことがあって『プラネテス』を1話から観る。

2021年6月1日(月)
5月1日の起床時の体重が78.3キロで、今日の起床時の体重が73.5キロだから、ひと月でだいたい5キロ落ちた。コツを掴んだとはいえ、落ちすぎかもしれない。6月以降は体重を落とすことよりも、維持することを考えたほうがいいかもしれない。
『プラネテス』の視聴は続いている。千羽由利子さんの画はやっぱり新しかった。今の目で観てもイケている。以下は視聴しながら書いたメモだ。

7話「地球外少女」は放送当時よりも楽しめた。
13話「ロケットのある風景」は当時も面白いと思ったけれど、抜群の仕上がり。ハチマキとタナベがキスしそうになるところの大胆なまわり込み(Bセルがスライドして画面一杯になっている間に、Aセルを差しかえる)は絵コンテ段階のアイデアだろうか。同シーンは、二人が恋愛に至っていないのに「確かにキスしそうだ」と思えるところが面白い。
当時、自分は序盤のタナベを「愉快なやつだ」と思っていたはずだけど、今の目で観ると「こんな部下がいたら、面倒だな」と思う。危なげなところが気になってしまう。

テレビをつけたらWOWOWで『名探偵コナン ゼロの執行人』を放送していた。何度観てもあの状況で、コナンが「安室さんって恋人いるの?」と訊くのが凄い。勿論、いい意味で。

2021年6月2日(火)
デジタルでの画像のコピーと違って、フィルムはコピーをすると劣化することを事務所のスタッフに説明する。次の次の次の次の次くらいに刊行する書籍の企画書の進行などを考える。夕方、ユニクロに行く。採寸してもらったところ、ウエストは91センチ。ユニクロの店頭にあるジーパンが入るようになっていた。
榎本温子さんが『サイバーフォーミュラ』のアニメイトカセットコレクションが好きだというのは、前から知っていたけれど、それを榎本さんがTwitterで話題にしてくれた。ちょっと嬉しい。ちなみに『サイバーフォーミュラ』のアニメイトカセットコレクションの台本は僕の仕事だ。かなりノって書いた。
『プラネテス』を最終回まで視聴。今回の再見で一番よかったのはハチマキ、タナベの存在感。特にシリーズ中盤以降にタナベが、地に足のついた「女性」に変貌していくのが凄い。ハチマキは、やりたいことをやりたいようにやる「若者」ではなくなっていく。勿論、アニメ作品ではあるんだけど、狭義の「アニメ」ではなくて「ドラマ」寄りの作品なのだろう。もう8話くらい観たかった。
千羽由利子さんの画はシリーズ序盤が尖っていて、次第に観やすくなっていった感じか。彼女の仕事史としては『フィギュア17 つばさ&ヒカル』のリアル感をさらに押し進めたものという位置づけになるはず。その後、千羽さんは『ブレイブ・ストーリー』で柔らかい方向に行くのだけど、『プラネテス』の発展形の仕事も観てみたかった。この頃の千羽さんのリアル感は大友克洋系とも、黄瀬和哉系とも違う。『人狼』っぽいわけではないけれど『人狼』以降のデザインではある、のだろう。

2021年6月3日(木)
仕事の合間に、新文芸坐に行って「穴」(1957/102分/35mm)を観る。プログラム「三回忌追善 大映映画の大輪の華(はな) 京マチ子 Part2」の1本だ。話がとてもよくできている。京マチ子さんが演じる主人公は頭がよくて、何度もピンチに陥るのだけれど、ノリとか運ではなくて、知恵を使って突破する。そういった部分の作り込みが巧い。事件が解決した後で、おそらくは観客のほとんどが気にしていなかったであろう、犯人側の作戦の疑問点についての説明が入る辺りはいかにもこだわって作っている感じ。最後に主人公が、そんなには接点がなかった男性と仕事仲間になるか結婚するかという話になって、そこは無理矢理感があったかな。
ワイフが紫陽花の鉢植えが欲しいと言う。夕食の後、それを探してあちこちの花屋を見て歩く。

2021年6月4日(金)
ワイフとグランドシネマサンシャインで『映画大好きポンポさん』を観る。自分は試写に続いて、二度目の鑑賞。以下は、二度目の鑑賞後のツイートの文面。

『映画大好きポンポさん』はいいですよ。まず、映画として面白い。間口は広く、映画ファンでなくても楽しめるはず。相当にテクニカルな映画であり、そして、テクニカルであることが魅力に繋がっている。アニメーション映画として、新しいタイプの作品でもあるはず。

『無限のリヴァイアス』の再視聴をスタート。

2021年6月5日(土)
仕事の合間にSHIBUYA TSUTAYAへ。Amazonでプレミアが付いてたCD「交響組曲 科学忍者隊ガッチャマン」「テレビオリジナル BGMコレクション 人造人間キカイダー/キカイダー01」、それから『TO-Y』のVHSを借りる。『TO-Y』のVHSをレンタルするのは10数年ぶり。夕方、事務所で進行中の書籍で使うポジフィルムをチェックする。
散歩中に『プラネテス』のサントラを聴く。これは名盤だ。次に『プラネテス』を観る時はもっと曲を気にして観ることにしよう。

第213回 思わず胸がキュッとなる 〜あしたへアタック!&リトル・ルルとちっちゃい仲間〜

 腹巻猫です。SOUNDTRACK PUBレーベル第28弾「あしたへアタック!/リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集」を8月25日に発売します。1977年放送の『あしたへアタック!』と1976〜77年放送の『リトル・ルルとちっちゃい仲間』、日本アニメーション制作のTVアニメ2作品をカップリングした2枚組CDアルバムです。音楽はどちらも越部信義。BGMは全曲初商品化! 堀江美都子が歌う主題歌・挿入歌とオリジナル・カラオケも収録しました。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B09BDT9HSF/

以下で試聴用ダイジェスト動画を公開中です。


 今回は、サウンドトラック初リリースとなる『あしたへアタック!』と『リトル・ルルとちっちゃい仲間』の音楽を紹介しよう。
 収録曲は下記を参照いただきたい。
https://www.soundtrack-lab.co.jp/products/cd/STLC043.html
 ディスク1に収録した『あしたへアタック!』は、バレーボールに打ち込む高校生の少女たちを主人公にしたスポーツ青春もの。1977年11月に日本でバレーボール・ワールドカップが開催されることに合わせて企画された作品で、アイキャッチにワールドカップの告知が出るのが当時をしのばせる。
 主人公の聖美々はバレーボールが大好きな高校3年生。部員がいなくなって廃部寸前だった橘高校バレーボール部を再建し、猛練習を重ねて、ライバルチームとの試合に挑んでいく。原案は『サインはV』の原作者・神保史郎、監督に『アタックNo.1』の演出を担当した黒川文男。60年代の人気バレーボール番組を手がけたスタッフがタッグを組んだ作品である。

  越部信義は「おもちゃのチャチャチャ」等の子どもの歌やTVアニメ『マッハGoGoGo』(1967)、『サザエさん』(1969〜)、『昆虫物語みなしごハッチ』(1970)、『ジムボタン』(1974)、『ジェッターマルス』(1977)等の音楽を手がけた作曲家。歯切れのよいリズムと快活な中にペーソスただようメロディの音楽が持ち味だ。
 越部信義が手がけたアニメ作品の中で、「少女向け」と呼べるものは意外に少ない。本作と『風船少女テンプルちゃん』(1977)、『リトル・ルルとちっちゃい仲間』(1976)があるくらい。いや、『テンプルちゃん』と『リトル・ルル』は女の子が主人公ではあるが、どちらかといえば「子ども向け/ファミリー向け」に近いから、「少女向け」と呼べるのは本作だけかもしれない。『あしたへアタック!』は越部作品の中でも貴重な、ティーンエイジャーの少女たちを主人公にした作品なのである。
 『ジムボタン』のエンディング主題歌「ボッコちゃんが好き」や『ジェッターマルス』の挿入歌「キライ!スキ!」を聴くと、越部信義がアイドル歌謡的な曲も得意だったことがわかる。もし、越部信義が魔法少女アニメや『キャンディ・キャンディ』のような少女アニメを手がけていたらどんな曲を書いただろう……。書いてほしかったなあと思うのだ。
 そんな「もしも」が実現した気分を味わえる作品が『あしたへアタック!』である。
 美々たちの青春を彩るさわやかな曲や、ゆれ動く心情を表現するリリカルな曲、試合シーンを盛り上げるアップテンポの緊迫感のある曲など。越部信義のほかの作品ではあまり聴けない曲調の音楽がたっぷり聴けて、思わずにんまりしてしまう。
 試聴動画で聴ける「丘の上の学園」は第1話の冒頭で橘高校が紹介される場面に流れる曲。軽快なリズムにストリングスの流麗なメロディ、フルートの対旋律。「これぞ青春アニメ」と言いたくなる曲だ。
 同じく試聴動画で聴ける「友と呼べるなら」はギターとフルートのメロディが美々の切ない気持ちを表現する曲。亡き友の無念を晴らすために橘高校に挑戦してきた白バラ学園の花房みつる。激しい闘いを経て、美々とみつるのあいだに友情が芽生える。第10話で2人が手を取り合う感動的な場面に流れた曲だ。
 試合シーンの曲も充実している。試聴動画では重い曲想の「苦しい闘い」が紹介されているが、リズム主体のスピーディな曲「白熱のラリー」やトランペットとストリングスが熱い闘志を表現する「猛攻」など、越部信義がヒーローものや巨大ロボットものを手がけていたらこんな曲を書いていたかも(これも書いてほしかった)と思わせる曲調だ。
 筆者が本編で印象深かった曲の筆頭が、エンディング主題歌「バレーボールが好き」をアレンジした「美々の想い」である。しっとりとしたストリングスとピアノの演奏が美々の秘めた想いを表現する。第1話で美々が開かずの間になっていたバレーボール部の部室の扉を開ける場面、第9話で試合に破れた美々が「私にとってバレーとは何?」と自問する場面、第17話で美々の同級生・伏島一郎が「青春は短すぎる」と美々に語る場面、そして、第22話で決戦を前にした美々が一郎に心の弱さを指摘されて我に返る場面など、数々の名場面に流れた。
 本作のオープニング主題歌は「あしたへアタック」だが、もともとは「バレーボールが好き」のほうがオープニング用に作られた曲だった。「バレーボールが好き」は美々たちのバレーボールへの想いとバレーボールから得られるよろこびや友情を歌った曲。そのことから想像できるように、本作が描こうとしたのは60年代スポ根的な「試練に打ち克って勝利をつかむ」ドラマではなく、少女たちが悩んだりぶつかったりしながら、それぞれの明日を見つけていく物語なのである。「美々の想い」は、その象徴のような曲だ。
 もう1曲、試聴動画で聴ける「勝利へのアタック」はオープニング主題歌のピアノとストリングスなどによる力強いアレンジ。使用回数は多くないが、これも印象深い曲で、最終回では美々たちのインターハイ優勝を賭けた試合シーンを盛り上げた。
 ディスク1の終盤には、主題歌・挿入歌のフルサイズと主題歌のオリジナル・カラオケを収録。挿入歌「美しい今日」と「会うのは明日」は堀江美都子が歌うさわやかなアイドル歌謡風の曲。初出は放送当時に発売された4曲入りコンパクト盤だが、CD化される機会が少なく、これまで「堀江美都子 歌のあゆみ3」と「日本アニメーションの世界 主題歌・挿入歌大全集 第2集 〜スポーツアニメ編〜」に収録されたぐらい。貴重な音源なのである。

 ディスク2には『リトル・ルルとちっちゃい仲間』の歌と音楽を収録した。本作の原作は1930年代からアメリカの新聞に連載された人気漫画「Little LuLu」。アメリカの小さい町を舞台に、7歳くらいのいたずら好きの女の子ルルと仲間たちの日常を描くコミカルな作品だ。
 「Little LuLu」は海外でも何度かアニメ化されているが、本作は日本向けにライセンスを取得してアニメ化したもの。現在は映像ソフト化や再放映、映像配信等がされておらず、本編を観ることがかなわない。キャラクターの画像も使用できない。いわば、「幻の作品」である。しかし、音楽だけなら商品化できるとのことで今回のリリースになった。実は『キャンディ・キャンディ』サントラ発売に匹敵する画期的なことなのだ。

 越部信義の仕事の中で大きな位置を占めるのが「おかあさんといっしょ」や「ひらけ!ポンキッキ」といった幼児向け番組の楽曲である。「おかあさんといっしょ」内で放送された着ぐるみ劇「にこにこぷん」の音楽をずっと手がけていたし、「はたらくくるま」「ぼくは電車」などの歌も子どもたちに親しまれた。
 小さい子どもたちを主人公にした『リトル・ルルとちっちゃい仲間』は、そんな越部信義の本領発揮!とも言える作品だ。
 本作のもうひとつのポイントは、これが越部信義初の日本アニメーション作品であること。それまでは『マッハGoGoGo』『昆虫物語みなしごハッチ』等のタツノコプロ作品や『サザエさん』『ジムボタン』等のエイケン作品が多かった。で、筆者の想像だが、越部先生、けっこう気合を入れて取り組んだのではないかと思うのだ。
 まず、BGMの1曲が長い。2分を超える曲もけっこうある(逆に『あしたへアタック!』は1分未満の曲が多い)。そして、曲がバラエティ豊かで、変化に富んだメロディとさまざまなスタイルのアレンジが聴ける。演奏もノッている。「楽しんで作っているなあ」と思わせる音楽なのである。
 試聴動画で紹介した「いたずらの種はつきず」はクラビネット(エレキピアノの一種)の音色が印象的なユーモラスな曲。クラビネットは70年代の洋楽によく使われた楽器で、アニメ音楽では1977年放送の『野球狂の詩』のテーマ曲や1978年放送の『はいからさんが通る』の主題歌で使われて「アニメソングのポップス化」を印象づけた。それを1976年放送の本作のBGMに使っているとは、越部先生、さすがのセンスである。試聴動画には入っていないが、クラビネットを使った主題歌アレンジのBGMもある。
 続いて試聴動画で紹介している「昼さがりの街角」はソプラノサックス、フルート、クラリネットなどの木管楽器が交代でメロディを奏でるのんびりムードの曲。ちょっと『サザエさん』を思わせる曲調だ。
 ギター(クラビか?)とブラスによる「角を曲がれば」は、ちょこまかと動くルルたちが目に浮かぶような軽快な曲。本作のBGMは60曲余りが録音されており、そのほとんどがテイク1でOKになっている。当時の音楽作りは「せーの」で全楽器が演奏を始める一発録音。ノリのよい演奏から、スタジオセッションの勢いと楽しさが伝わってくる。
 試聴動画では、ほかにエンディング主題歌「わたしはルル」をアレンジした「スキップ」と名づけられた曲を2バージョン紹介している。1曲は口笛ソロによるバージョン。この手のコミカルな作品に口笛ソロを採用するセンスにしびれる。口笛の音色がほのかな哀愁をただよわせ、胸がキュッとなる。これぞ越部サウンド。もう1曲はピアノとリズム(ウッドベース、ギター、ピアノ、ドラム)によるバージョン。ジャズ風のしゃれた雰囲気で聴かせる。どんな場面に流れているのか観てみたいものだ。
 ディスク2の終盤には、主題歌2曲のフルサイズとオリジナル・カラオケ、そして、ディスク1に収録できなかった『あしたへアタック!』の主題歌のTVサイズ・カラオケと挿入歌2曲のオリジナル・カラオケを収録。『あしたへアタック!』の主題歌TVサイズは、カラオケ、ヴォーカルともにレコード用フルサイズとは別録音である。今回はTVサイズもステレオマスターから収録した(初商品化)。
 BGMとともにぜひ味わってただきたいのが、主題歌・挿入歌のカラオケのすばらしさ。歌のバックに隠れていた対旋律やリズムを聴くと、越部信義がいかに精巧に楽曲を構築しているかがわかる。カラオケだけで音楽になっているのだ。歌うもよし、聴くもよし、である。

 「あしたへアタック!/リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集」は越部信義が生み出した歌と音楽がたっぷり楽しめる2枚組。はずむリズムとペーソスただようメロディの魅力を堪能してほしい。越部信義大好きの筆者が自信を持ってお奨めします。

あしたへアタック!/リトル・ルルとちっちゃい仲間 音楽集
Amazon

第179回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕須直監督次回作【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、作品のタイトルや内容は発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督は平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。

 2021年9月4日(土)に開催する第5弾のサブタイトルは【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】。前回は清少納言や藤原定子の周りにいた女性達をとりあげました。今回は男性達が話題となるようです。
 会場は新宿のLOFT/PLUS ONE。チケットは〈会場での観覧+配信視聴〉と〈配信視聴〉の2種類を販売しますが、コロナの感染状況を鑑みて、配信のみのイベントとなる可能性もあります。その場合、〈会場での観覧+配信視聴〉のチケットは払い戻しいたします。チケットは8月18日(水) 18時から発売となります。
 詳しくは以下にリンクしたLOFT/PLUS ONEのイベントページをご覧になってください。

 ※新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑みて、本イベントを無観客配信のみの開催に切り換えさせていただきます。〈会場での観覧+配信視聴〉のチケットは払い戻しさせていただきます。詳しくは以下のページをご覧になってください。
 直前のお知らせとなってしまい誠に申し訳ありませんが、何卒ご理解賜りますようお願いいたします。(09/01追記)

【重要変更あり】ここまで調べた片渕須直監督次回作【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】(LOFT/PLUS ONE)
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/188574

 出演は片渕須直さん、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 配信は先行してロフトグループによるツイキャス配信を行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルではトーク本編とは別に「ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク」も配信する予定です。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。  

 また、アニメスタイルチャンネルでは過去の「ここまで調べた片渕須直監督次回作」をアーカイブ配信しています。以下のリンクをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT/PLUS ONEのイベントページ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/188574

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

■過去の「ここまで調べた片渕須直監督次回作」配信
アニメスタイルTALK011 ここまで調べた片渕須直監督次回作【基礎知識編】
https://www.nicovideo.jp/watch/so38425053

第175回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作【初級編】
https://www.nicovideo.jp/watch/so38783833

ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク1
https://www.nicovideo.jp/watch/so38784040

第177回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作【覚えておいてほしい人の名 編】
https://www.nicovideo.jp/watch/so39087228

ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク2
https://www.nicovideo.jp/watch/so39087276

第179回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕須直監督次回作【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】

開催日

2021年9月4日(土)
開場11時半 開演12時 終演15時予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
  アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第718回 『蜘蛛ですが、なにか?』の話、映像編

 今回もWordデータによる入稿になります。で、映像の話でしたっけ。ま、放送開始時にも語ったかも知れませんが(忘れた)、改めて。
 アニメ監督とかやってると二言目には「映像が~映像が~」とやたら口にする演出志望の新人に出くわすことがあります。おそらく“演出=映像”と分かった振りをするのに必死なのかと思うのですが、画描きであるはずの自分が、なぜか普段殆ど「映像」などとは口にしません。演出とは本来、キャラクターそれぞれの心情とシチュエーションに沿って被写体のサイズやアングルを選んで感情の旋律みたいなものをコンテに描き連ねていくものだと自分は思っていて、そこに「映像」という言葉を使ってしまうと途端に“光のフレア”だ“影を落とす”だなどと画面のデコレーションのみを演出だと思い込んでしまいそうで、意識して安易に使わないように心がけていたら、自然と日常会話から消えていったんです。
 そんな俺が今回敢えて「映像」という言葉から始めたのは、パッケージリテイクも終盤に差し掛かり、改めて全体像を見渡したところで、今作『蜘蛛ですが、なにか?』はいつもよりちょっと余分に「映像」に拘っていたようだと自分で気づいたからです。特に蜘蛛子パートのモンスター・バトルシーンは、蜘蛛子目線のローアングルから3DCGをふんだんに使ってのカメラの回り込みや、マザー(クイーンタラテクト)に代表されるスケール感のあるモーションなど、TVアニメの枠で出来得る限りの「映像スペクタクル」的なものを意識してコンテを切って(描いて)いたように思います。多少オーバーに言うなら第1話、転生して卵から生まれたとこから、視聴者に蜘蛛子になってもらって、その主観でサバイバルを味わって欲しかったし、俺自身も蜘蛛子になりきってコンテやってましたから。で、レベルUPによる視界表現の変化も分かりやすくするため、いつもはやらない画面分割とかもシリーズ通して何度もやりましたし、スキル・ステータス表記もシーン毎で規則(ルール)に縛られない且つパターンにハマらないように、とにかく自由な映像表現をいつも以上にやったつもりです。制作方面から伝え聞くところによると、板垣の少々捻ったカメラアングルや同ワークのコンテが勉強になるとCGスタッフさんらが仰って下さってたそうで、社交辞令的なものでしょうが嬉しかったです。ま、「分かり辛い」とハッキリ仰る方もいるのも事実ですが。ま、それは初監督『BLACK CAT』(2005年)からの頃から変わっていません。単純な話、

常日頃から変なカット割りや一風変わった見せ方をしたい!

と考えているからです。実写と違い偶然は起こる事がなく、全部計算で作り上げるアニメーションだからこそ「コンテを切ってる自分ですらどう繋がるのか分からない部分」を仕込んでおきたいんです。それはもちろんこれだけ映像コンテンツに溢れかえったご時世で、誰もやっていない表現などは残されていないのは十分に分かってるし、「それこそが演出だ!」なんて思ってもいません。ただ、そんなことは承知の上で、「一瞬でもお客(視聴者)さんに見たことがないモノを見せたい」という開拓精神は枯渇させたくないんです。それは、フィルムにとってある種のエネルギーみたいなものになる! と数々の出﨑(統)監督のアニメで教えられたことなので。『BLACK CAT』でやった結果を先に見せてから時間を戻して説明するアクション(#20 セフィリアVSクリード)や、『ベン・トー』(2011年)の“視界を覆う闇”を黒モヤで可視化するスーパーのカゴ・アクション(#10 槍水VSオルトロス)なども同様の思考から生まれてくる表現でした。特に『ベン・トー』の頃はシナリオ(脚本)も自分でやった上で、でした。
 『蜘蛛』を観直す機会がもしありましたら、そんな変な箇所を探してみてください。では、今日はこのへんで。

アニメ様の『タイトル未定』
313 アニメ様日記 2021年5月23日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月23日(日)
午前中の散歩で、ワイフと高田馬場方面に。自分があちこちを歩いている間、ワイフはおとめ山公園の池のほとりでのんびりしていたのだが、小学生の美少女姉妹(双子らしい)に「この場所がお好きなのですか」と声をかけられて、更に「私達と友達になってもらえませんか」と言われたそうだ。アニメみたいだ。午後は事務所で原稿作業。夕方は吉松さんとSkype呑み。呑みと言いつつ、打ち合わせもした。

2021年5月24日(月)
確認することがあって、配信されている『宇宙海賊キャプテンハーロック』を数本観る。りんたろう演出、小松原一男作監回は、今観ても素晴らしい。以下は余談。本放送時はハーロックをはじめ、アルカディア号の乗組員を凄い人達だと思っていたけど、今観ると意外と普通の人達だなあ。ハーロックは若いし、やることも危なっかしい。作品中で描かれている地球政府はそんなに腐敗していないのではないか。悪口を言っているわけではない。歳月を重ねると、受け手の感覚が変わるという話だ。それから、あの原作は、TVアニメとしてはお話が作りづらかったのだろうなあと思った。
この日から26日まで、ワイフとドーミーイン池袋に泊まった。宿泊した主な理由は「外呑み」をするため。緊急事態宣言のために店で呑むことができず、最近、ワイフと話すのは酒のことばかりだった。ホテルの部屋なら自宅呑みではないし、気分が変わるのではないかと思ったわけだ。やってみたところ、確かに自宅で呑むよりも旨かった。

2021年5月25日(火)
深夜にドーミーイン池袋で起きて、温泉に入ってから事務所に。ドーミーイン池袋は池袋のホテルなのに温泉があるのだ。温泉と飲酒以外の生活パターンは普段と変わらず。
日曜に続けて、ある企画の大物原稿を進める。とにかく書き進めて、全体像を掴みたい。『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』を1話から配信最新話まで視聴。観るのを後回しにしていたけれど、面白い。

2021年5月26日(水)
この日も深夜にドーミーイン池袋で起きて、温泉に入ってから事務所に。声優博士が事務所に顔を出したので世間話。深夜アニメや今年の劇場版『名探偵コナン』のことなど。『不滅のあなたへ』を1話から配信最新話まで観る。面白いけど、これは先が長そうだなあ。
ワイフの勧めでスマホにアプリ「あすけん」を入れてみる。初日は「摂取カロリーが少ない」と言われる。

2021年5月27日(木)
自分が事務所で使っているハードディスクレコーダー4号機は、ケーブルテレビ会社から借りているものだ。それを修理のために返却するかもしれないことになり、後で観るつもりで残していた大量の録画に目を通すことになった。
モスバーガーで「モスの菜摘」を食べてみる。美味しい上に、異様にカロリーが低い。今まで「モスの菜摘」って、興味を持てないというか、理解できなかったけれど、ダイエットを始めると心強いメニューだ。

少し前の話だけど、『カードファイト!! ヴァンガード overDress』2話Aパートの喫茶店のシーンについて記しておきたい。主人公の近導ユウユと、桃山ダンジが喫茶店でヴァンガードについて話しているのを、近くの席で大倉メグミが聞いていて、同性の2人がつきあっていると勘違いしてしまう。近導ユウユは可愛い感じ男の子で、桃山ダンジは兄貴系の男性。大倉メグミはダンジを慕っている少女だ。シチュエーションとしては珍しくないものかもしれないけれど、セリフの練り込みが凄い。「フフフ、可愛かったぜ……」「あの、昨日の夜、眠れないくらい興奮して」。あるいは「攻められてると思ったら、いつの間にか逆になってたこととか」「フッ、正直、お前も……やりたくなったろ」。演出もノリノリ。役者の芝居も濃かった。かなりのインパクトだった。

2021年5月28日(金)
ワイフと新文芸坐で「ホモ・サピエンスの涙」(2019・スウェーデン他/76分/DCP)を観る。ブログラム「北欧の時間は静かに流れ… ホモ・サピエンスの涙 | わたしの叔父さん」の1本だ。全33シーンで、それぞれのシーンが1カットで構成されている映画である。予告から想像していたのとはちょっと違ったけれど、楽しめた。「いい画」が沢山あった。ワイフはかなり満足していた模様。
Zoom打ち合わせ、デスクワークの後、「今石洋之の世界 『グレンラガン』『キルラキル』『プロメア』を作った男」の内覧会に行く。色々な資料があって盛り沢山な内容。特に学生時代の作品が超レアだ。同人誌の表紙の展示も見応えがあった。今石さん本人もいたのでご挨拶。奥様にお会いしたのは10数年ぶりだ。会場になったのは、ところざわサクラタウン。その外観はネットで何度も見ていたが、実際に見ると「これは凄い」と思う。
ハードディスクレコーダー4号機の録画の整理で「初体験/リッジモント・ハイ」の吹き替え版を観る。聴きどころは潘恵子さんと堀江美都子さんかな。フィービー・ケイツのヌードは時間は短いけど、かなりのインパクト。「絶対監督主義 シネマラボ 押井守たちの挑戦」を再見。映画レーベルのCinema Labと、完成したものの未だに公開されていない押井監督の実写映画「血ぃともだち」の制作過程を追ったドキュメンタリーだ。僕は「血ぃともだち」は未見だけれど、この映画を観た後だと『ぶらどらぶ』が「血ぃともだち」のパロディのように観えるのかもしれない。

2021年5月29日(土)
午前中の散歩は、またワイフとおとめ山公園に。事務所に戻って原稿作業。その後、レイトショーの準備。前説トークで話す内容を丁寧に書き出す。「アニソンアカデミー」の菊池俊輔さんの特集の前半を聞いた後、「映画『プロメア』2周年記念! アンコール上映会&“作った男たち”トークショー」のトーク部分の配信を観る。夜はレイトショー「新文芸坐×アニメスタイル スクリーンで観たいアニメ映画vol. 1 『プロメア』」を開催。お客さんはリピーターが多くて、初めて観る方が4割くらい。前説トークは新文芸坐の花俟さんと一緒に。今回はゲストの話を聞くのではなく、僕が作品の解説をするかたちだった。

第717回 Wordデータと『グレン』本と『蜘蛛ですが、なにか?』の話

 多分いつも通りに見えると思いますが、実は本日の原稿は初のWordデータによる入稿になります。第1回から前回分までは板垣による手書きの文章をpngデータで送り、アニメスタイル編集部様にテキスト化して頂いていたのですが、最近また脚本を書き始めたので、キーボードを叩く習慣を身に付けようとちょっとやってみました。調子よければこの後も。しかし、今更ながらよく考えたら、開始から14年越えになるこの連載を毎週テキスト化して下さっているアニメスタイル編集部様には感謝しかありません。この場を借りてお礼申し上げたく思い、本当にありがとうございます!
 あまり話題にはしていませんが、自分は監督より脚本家デビューの方が先(『この醜くも美しい世界』[2004年・GAINAX × SHAFT制作]の第7話)なわりに、普段全くメールなども打たないし、せいぜいやってもスマホ擦ってショートメールくらいだったこれまでの10数年間。よって、テキスト作業に慣れるまで、暫く変換ミスや脱字が多くなる可能性があるかもしれないのでその辺はご容赦ください。アニメスタイル編集部様、これからも引き続き確認&添削の方、宜しくお願い致します!
 ま、メールに関しては各プロデューサーさんや友人らより「板垣さんメールやって~」と、今迄散々言われてきたのですが、考えてみて下さい。「板垣、メール開通したよ!」と関係者各位に一報したら最後、1~2時間のメール返信ワークが毎日付きまとう訳じゃないですか? こちとら「描く」事が仕事。業務連絡が普段の仕事の一部である制作さんらと違い、「画を描く」我々にとっての1~2時間の差は大きいんです。自分が以前お付き合いした方で、手帳の月間予定表に打ち合わせのスケジュールだけでなく会合やら取材とかでいっぱいな超社交的な監督さんがいらっしゃいました。その方が過密スケジュールの合間を縫って、ちゃんとコンテチェックや現場の監督作業が出来ていたのかは知りませんが、「自分には到底無理だ」と。

何しろ板垣は電話から逃げる事はほぼ皆無です。ご用のある方は電話で。もし出られなくても必ず折り返す性格なので、メールはよっぽど必要に駆られない限り“今は”やりません。資料などの送り先は会社の制作宛に宜しくお願いします!

あと、TwitterやLINEなども仕事・私用関わらずやってませんし、“今のところ”やる予定もありません。

で、話は変わりますが


 『天元突破グレンラガン』では、第6話のコンテ・演出と第7話のコンテ、あと第24話の原画、更に『グレパラ』なる短編も1本——フル○ンでラップのやつをコンテ・演出・原画やって、とても楽しんだ作品。言い方は変ですが、新刊なのになんとも懐かしい本です。俺が描いた6話のコンテ表画が載ってて、重ね重ね懐かしい。

 そして、『蜘蛛ですが、なにか?』の話の続き。『蜘蛛』は映像の半分がCGで、今回は『Wake Up,Girls!~新章』でもお世話になったexsa様。次々上がってくるモンスターバトル映像に驚愕・歓喜しておりました! 今作もほぼ全話自分でコンテ切った(描いた)ので、全カット意図や拘りがそれなりにあるのですが、かなりイメージに近い——もしくはイメージ以上の映像にして頂き、本当に素晴らしかったです。ここで映像に関してですが——て、すみません。時間切れです(汗)。

アニメ様の『タイトル未定』
312 アニメ様日記 2021年5月16日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月16日(日)
配信での『妖獣都市』の画質を確認したくて、Prime Videoチャンネルの「MEN’S NECO+オンデマンド」に入会。同チャンネルにOVA『みこすり半劇場』があったので観てみる。原作の4コママンガをそのまま映像に置き換えたものだと思うが、よくできている。4コママンガ原作で、ここまで原作の印象に近い映像作品は珍しいはず。とはいえ、原作ファンでない方にお勧めはしない。
作業は「佐藤順一の昔から今まで」の原稿等。
夕方、吉松さんとのSkype飲み。アテは吉野家の「ライザップ辛牛サラダ」だ。「ライザップ辛牛サラダ」は吉野家とスポーツジムのライザップのコラボメニューで、牛肉と鶏肉が入っていて、わずか468キロカロリー。美味しいし、そこそこ食べ応えがあるし、値段も高くない。素晴らしい。凄いぞ、ライザップ。以前、同じライザップとのコラボメニューの「ライザップ牛サラダ」(こっちは「辛」がつかない)を食べたけど、ダイエットを始める前だったのでピンとこなかった。ちなみに「ライザップ牛サラダ」は「ライザップ辛牛サラダ」よりもさらにカロリーが低い。

2021年5月17日(月)
散歩、デスクワーク、Zoom打ち合わせ、税理士さんと打ち合わせ。
新文芸坐で「神田川淫乱戦争」(1983/60分/35mm/R18+)を観る。プログラム「そして”世界のクロサワ”へ 神田川淫乱戦争 | ドレミファ娘の血は騒ぐ | 蛇の道 | 蜘蛛の瞳」の1本。この映画は、前に新文芸坐のオールナイトで「ドレミファ娘の血は騒ぐ」と一緒に観た。面白かった記憶があって再見したかったのだ。才気溢れる作品で、若々しい力が漲っている。それから、あの時代の気分もある。舞台としての川の使い方は見事なものだし「これは映画だなあ」と思う瞬間もある。若い女の子二人が、母親によって色々な意味で囚われている浪人生の男の子を助け出すという筋立てだ。クライマックスで女の子の一人、母親、男の子が川の中で格闘して、倒した母親を板に乗せて流してしまうのにも驚く。40年近く前の映画だから、ネタバレを気にしないで書くけど、ラストカットでいきなり理由らしい理由もなく、女の子と男の子がビルの屋上から落ちてしまう(死んでいるか大怪我)。話は前後するけど、母親を倒した後で、女の子と男の子がズブ濡れのまま街を歩くところもよかった。他にもいいところが沢山あった。

2021年5月18日(火)
前日の「神田川淫乱戦争」からの流れで「ドレミファ娘の血は騒ぐ」を配信で観ようと思って再生を始めたが、昼間から仕事場で観るものではなかった。いつか改めて観よう。

2021年5月19日(水)
仕事の合間にワイフと、シネマ・ロサで「カサブランカ」吹き替え版を観る。リック(ハンフリー・ボガート)が池田秀一さん、イルザ・ラント(イングリッド・バーグマン)が潘恵子さん、ヴィクトル・ラズロ(ポール・ヘンリード)が古谷徹さん。芝居だけでなく、3人の関係もシャア、ララァ、アムロを思わせるところがあった。池田秀一さんの芝居をたっぷり聞くことができる吹き替えでもあった。ラズロとイルザに声をかけた男が、指輪を売りつける振りをして協力者であることを伝える部分は、説明の少なさが素敵で『ガンダム』にありそうな描写だと思った。
散歩中に「キューティーハニー」を聴く。主題歌アレンジと女声コーラスがよかった。かなり満足。

2021年5月20日(木)
ワイフと新文芸坐で「スパイの妻」(2020/115分/DCP)を観る。ブログラム「二人の映画作家が見つめた、流転の果て 朝が来る | スパイの妻〈劇場版〉」の1本。ワイフの希望で足を運んだのだが、観てよかった。役者もいいんだけど、役者に対する芝居の付け方も含めて演出がいい。受けとめきれなかったところもあったけど、物語もよかった。そうした理由も分からなくはないんだけど、終盤になって虚構性が高まるのはピンとこなかった。
あるアニメーターさんとZoom打ち合わせ。その後はデスクワーク。『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』を改めて1話から観る。

2021年5月21日(金)
前Qさんに相談したいことがあってLINEをしたら、たまたま池袋にいたので事務所まで来てもらって、近くの喫茶店で話をする。
『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の残りの話数を観る。『86―エイティシックス―』を1話から最新話数を観る。『灼熱カバディ』の未視聴分を観る。
散歩時に「交響組曲 サイボーグ009~テレビ・オリジナル・サウンドトラック~」と「交響組曲 宇宙からのメッセージ」を聴く。後者は中学の頃に、何度も聴いた。その頃に流行っていた「宇宙のロマン」が感じられるところが好きだったのだろう。

2021年5月22日(土)
最近は、早朝と午前中に散歩をしている。この日の午前中の散歩は、池袋から新宿まで。散歩時に「BEST COLLECTION 魔法の天使クリィーミーマミ」の1枚目と「おジャ魔女CD2 BGMコレクション!!」を聴く。
『美少年探偵団』を1話から6話まで視聴。演出の基本スタイルは今までのシャフトと変わらないばずだけど、手触りは随分と違う。

第212回 唯一無二の光 〜宝石の国〜

 腹巻猫です。4月に亡くなった俳優・田村正和追悼企画として、1972年放送のTV時代劇「眠狂四郎」のサウンドトラック・アルバムを8月11日にSOUNDTRACK PUBレーベルより発売します。音楽は『アルプスの少女ハイジ』『機動戦士ガンダム』等を手がけた渡辺岳夫。女声スキャットを使ったフランス映画音楽のような美しく妖艶な曲が聴きものです。詳細・購入は下記を参照ください。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B09BDT9HSF/

以下で試聴用ダイジェスト動画を公開中です。
https://www.youtube.com/watch?v=Rt2qf9_rJaM


 注目作がそろった6月公開の劇場アニメの中でも、熱心なファンに支持されて快進撃を見せたのが『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』だ。タイトルに「歌劇」とつくだけに音楽が重要な作品だった。TVシリーズに続いて音楽を担当したのは藤澤慶昌と加藤達也の2人。
 今回は『ラブライブ!』など数々のアニメ音楽で活躍している藤澤慶昌の作品を聴いてみよう。取り上げる作品は『宝石の国』である。

 『宝石の国』は2017年10月から12月まで全12話が放送されたTVアニメ作品。市川春子の同名マンガを原作に、監督・京極尚彦、アニメーション制作・オレンジのスタッフでアニメ化された。
 はるか未来。人類が滅亡したあと、地上に人の姿をした「宝石」が現れた。彼らは不死身で、体が砕け散っても破片を集めれば再生するのである。そんな宝石をねらって月から謎の敵「月人」が飛来する。宝石たちは月人と戦いながら、「学校」と呼ばれる建物で日々を送っていた。
 ユニークきわまりない作品である。主要キャラクターは数百年、数千年を生きる宝石たち。個別の名前はないらしく、ダイヤモンド、アメシスト、ジェード(翡翠)など、体を構成する宝石の名で呼ばれている。彼らは繁殖も老化もしないので、人類が決めた基準からすれば生物ではない。しかし、知性や感情を持ち、人間と同じようにふるまう。SFとして考えると疑問に思う点もあるが、一種のメルヘンと思えばとても魅力的だ。J・G・バラードの破滅SFの傑作「結晶世界」を連想させるところにも惹かれる。
 また、こんなにCGアニメが似合う作品もない。宝石たちのスマートでシュッとした風貌や宝石が放つ美しい光の描写などにCGの特性が生かされてる。
 加えて、宝石たちの心情(?)がとても人間臭く描かれているのも魅力のひとつ。主人公のフォスフォフィライト(フォス)は宝石の中でも硬度が弱く、ちょっとした衝撃で割れてしまうため、月人との戦いに参加することができない。フォスの傷つきやすさや劣等感がまるで人間の思春期の少年少女のようで共感を呼ぶ。
 こういう作品にどんな音楽を付ければよいだろう?
 ひとつ思いつくのは、シンセのキラキラした音色を使って、宝石の硬質感や輝きを表現する方法。CG映像とも相性がよさそうに思える。
 しかし、音楽担当の藤澤慶昌が選んだ方向性は違った。ピアノやストリングス、木管などのアコースティックな楽器を使って、『宝石の国』の美しい世界を表現している。宝石たちが暮らす地上は、草原を風がわたり、浜辺に波が打ち寄せ、空を雲が流れる自然あふれる世界。宝石もまた自然の一部であることを思うと、生楽器によるクラシカルなアプローチは正解だと納得できる。そのサウンドは品よくストイックで美しく、ドビュッシーやラベルに代表されるフランス印象主義音楽のような香りがある。

 藤澤慶昌は1981年生まれ、福岡県出身。4歳のときにエレクトーンを始め、学生時代はバンド活動に没頭した。京都の大学を卒業後、作家事務所に所属し、プロデビューを果たす。初期の仕事のひとつに、川井憲次が音楽を手がけた劇場作品「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」(2010)のオーケストレーションがある。2013年のTVアニメ『ラブライブ! School idol project』で一躍脚光を浴び、以降、数々のアニメ音楽で活躍。代表作に、TVアニメ『有頂天家族』(2013)、『RAIL WARS!』(2014)、『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』(2015)、『宇宙よりも遠い場所』(2018)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2018/加藤達也と共同)、劇場アニメ『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』(2017)、『クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』(2020/荒川敏行と共同)など。
 近年、活躍が気になる作曲家である。音楽もの、青春もの、異世界ファンタジー、コメディなど、手がける作品ジャンルは幅広く、アーティストへの楽曲提供や歌曲アレンジの仕事も多い。
 そんな中でも『宝石の国』は個性的な作品だ。
 藤澤慶昌の証言によれば、本作の音楽担当はコンペによって決まったという。まだCG画像もできていない段階だったので、原作を読んだ印象から「壮大な感じ」の音楽を提案したとのこと。音楽担当に決まってからは、「世界観を包括するような曲」というリクエストを受けて音楽作りを進めていった。そこで選んだのが、「音をそぎ落としていく」アプローチだった。
 映像が華麗であれば、音楽を厚くする必要はない。隙間の多い、シンプルな音楽のほうが映像を引き立てるし、ひいては音楽も際立つことになる。
 結果、生まれたのが、オーケストラを使いながらも華美にならず、シンプルなサウンドで透明感や色彩感を表現する音楽である。
 印象的なのはピアノの音。そして、弦の澄んだ響きだ。
 一般的なアニメのような喜怒哀楽を表す心情描写音楽は本作にはない。宝石にも感情がある(らしい)。が、それを表現する音楽は控えめで、一歩下がって宝石たちを見守っているような趣がある。実際、音楽への注文の中に「情感的になりすぎない、感情が出過ぎない」という点があったという。
 音楽の作り方も独特だった。
 基本は、あらかじめメニューで発注された曲をまとめて作曲・録音し、シーンに合わせて選曲していく「溜め録り」の音楽なのだが、一部はフィルムスコアリングで作られている。後半用に作った曲は「完全にフィルムスコアで」録音したと藤澤慶昌はインタビューで語っている。放送開始後もアニメの制作と音楽の制作がほぼ並行して進んでいたという。
 溜め録り・選曲方式は同じ曲がくり返し使われるので視聴者の耳に残りやすい。「こういうシーンには、この曲が流れる」と刷り込まれるため、音楽で情感をリードする演出が可能になる。本作では、月人襲来シーンに流れる「黒点」が耳に残る曲の代表格。「黒点」が流れると「来るぞ、来るぞ」と心がざわめくのだ。
 いっぽう、シーンに合わせて曲を作るフィルムスコアリング方式では、映像や心情の変化と曲の展開を一致させ、ドラマに寄り添った音楽を提供できる。本作では物語後半のキーとなる場面の曲がフィルムスコアリングで作られ、名場面を生み出していた。第8話の氷原でフォスが月人と戦う場面の曲「届かない」や最終回の終盤に流れる曲「フォスとシンシャ」などである。
 本作の音楽は、溜め録り方式とフィルムスコアリングが合体した「いいとこ取り」になっているのだ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは、Blu-rayの特典ディスクとしてリリースされたのち、2018年1月に収録曲を増補した2枚組CDが「TVアニメ『宝石の国』サウンドトラック コンプリート」のタイトルで東宝より発売された。BGMのほか、キャラクターソング「liquescimus」(第8話のエンディングに使用)と主題歌「鏡面の波」のオーケストラ・バージョン(最終話で使用)が収録されている。
 2枚組CDのうちわけは、ディスク1が主に物語前半(第1話〜6話)で使用された楽曲、ディスク2が主に後半(第7話以降)で使用された楽曲。劇中で流れた曲はほぼ網羅されている。
 ディスク1を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. メインテーマ
  2. 昼下がり
  3. アイデア
  4. フォスフォフィライト
  5. 月人
  6. 黒点
  7. 戦い
  8. 危機
  9. 砕かれる
  10. ちょっとひと息
  11. なんなのさ!
  12. ウェントリコスス
  13. Sea
  14. 孤高
  15. シンシャ
  16. 深海
  17. 驚異
  18. Ground
  19. 覚醒する力
  20. 金剛先生
  21. 眠る季節
  22. なにもできない
  23. Night
  24. 秘密
  25. あーもう!

 1曲目の「メインテーマ」は本作の世界観を象徴する曲。静かな弦の導入をバックにピアノの旋律が聞こえてくる。弦合奏とピアノのかけあいになり、ピアノのメロディが反復される。中間部はホルンも加わり、悠久の時間を感じさせるスケール豊かなサウンドと宝石の輝きをイメージさせる繊細なピアノのメロディが対比される。壮大さと儚さが同居した、『宝石の国』にふさわしい美しい音楽だ。劇中では第1話の冒頭や第4話でフォスがこの世界のなりたちを聞く場面、第7話でフォスが雪原を歩く場面などに使用されている。
 トラック2の「昼下がり」と次の「アイデア」は宝石たちの日常に流れるちょっとユーモラスな曲。木琴などのパーカッションを使ったサウンドが「石」っぽくていい。本編では意外とこういう曲が流れるシーンが多かった。トラック10「ちょっとひと息」やトラック11「なんなのさ!」も同様のテイストの曲である。
 トラック4「フォスフォフィライト」は主人公フォスのテーマ。ピアノの音に弦とピッコロがからみ、色彩感豊かに、躍動的に発展していく。フォスの明るい一面を描いたような曲調だが、ふっと陰りがさしたように曲調が変わる部分がある。まるで角度によって輝きを変える宝石のようだ。第1話のフォス登場場面などに使用された。
 トラック5「月人」からトラック9「砕かれる」までは、月人の襲来と戦いの曲。注目はインドネシアの楽器ガムランを使ったトラック6「黒点」。ガムランのアイデアは音響監督の長崎行男から出たものだという。仏像を思わせる月人の姿とあいまって、インパクト抜群のシーンを作りだした。
 トラック7「戦い」も記憶に残る曲だ。ピアノと弦によるアタック感のあるイントロから流麗なストリングスのメロディに展開し、宝石たちのバトルが描写される。次回予告にも流れたカッコいい曲である。カラフルな光をきらめかせながら華麗に戦う宝石たちにぴったりの名曲だ。「黒点」と並んで本作を代表する楽曲のひとつ。
 トラック12「ウェントリコスス」は、海から来た軟体生物ウェントリコススにフォスが呑み込まれる場面などに使われた。フォスにとっては未知との遭遇になる場面で、音楽もサスペンス寄りではなく、神秘的、幻想的な曲想で書かれている。
 トラック14「孤高」と次の「シンシャ」は、月人と戦う宝石たちの覚悟や誇り、孤独感などが感じられる曲。うねるストリングスと強いタッチのピアノが奏でる「孤高」、弦とピアノに二胡を加えた編成の「シンシャ」。どちらも、ほのかに哀感がただよう。藤澤は、ずっとシンシャは「二胡だ!」と思っていて、この曲で使ったのだそうだ。
 トラック16以降は、第4話から第6話のストーリーをイメージしたような構成になっている。
 フォスがウェントリコススと海と命について語らう場面のトラック16「深海」。フォスが月人に捕らえられる場面のトラック17「驚異」とトラック22「なにもできない」。失った脚の代わりに新しい脚を付けてもらったフォスが草原を走る場面のトラック19「覚醒する力」。「深海」と「覚醒する力」では、多彩な光を感じさせるような緻密なオーケストレーションが印象的だ。
 トラック21「眠る季節」とトラック24「秘密」は、シンプルな中に静謐さと緊張感をたたえた曲。メロディらしいメロディはほとんど登場せず、リズム的な音型をメインに構成されている。こういう曲もすごく『宝石の国』らしい。
 ディスク1を締めくくるトラック25「あーもう!」は、第5話で、宝石たちが総出で海を探しても見つからなかったフォスが学校で見つかる場面に流れたユーモラスな曲。ほのぼのした雰囲気で終わるのがほっとする。
 このあと、第7話で宝石たちは冬眠に入り、物語は新たな展開を見せる。それを反映して、ディスク2に収録された楽曲はディスク1とは少し違うテイストになっている。ディスク2にはフィルムスコアリングで作られた曲が多く、より映像とドラマに密着した音楽を聴くことができる。
 ディスク2のラストには「宝石の国」と題した組曲風のトラックが収録されている。演奏時間は5分以上。これは「メインテーマ」「黒点」「危機」など、いくつかの楽曲をメドレーにしたもので、物語全体をふり返るフィナーレの曲と考えられる。サウンドトラック・アルバムにこういうトラックが収録されるのは珍しく、本作の音楽へのこだわりがうかがえる。

 『宝石の国』の音楽は、いわゆる、わかりやすい音楽、聴きやすい音楽ではないかもしれない。しかし、作品と映像にインスパイアされた、個性的で美しい音楽だ。そのサウンドは、あまたあるサントラの中でも、唯一無二の光を放っている。

TVアニメ『宝石の国』サウンドトラック コンプリート
Amazon

第716回 『蜘蛛ですが、なにか?』まとめて、続きの続きの続き

 前回からの続き。ソフィア役の竹達彩奈さんは、『ベン・トー』(2010年)のあせび役でもご一緒しました。あ、間に『ヴァンキッシュド・クイーンズ』(2013年・『クイーンズ・ブレイド』のビジュアルブックに付くOVA)で回想シーンのアルドラ役もありました。あと、『迷い猫オーバーラン!』(2010年)の希役でも——といっても自分の監督話数(#01)ではラストの「ニャオ」だけでした、たしか。意外にちゃんと声を張った役で演じていただくのは初めてかも。最終話でユーゴーをつかみ上げての「は?」は最高に怖くて迫力満点でした!
 魔王・アリエル役は上坂すみれさん。前作『COP CRAFT』の吸血鬼役に続きご出演いただけました。ラジオドラマ版では「私」・蜘蛛子役をやられていたというのは偶然だったと思います。あと音響現場裏話でいうと、ギュリエやDらが喋る異世界語は、ロシア語が堪能な上坂さんがロシア語風なイントネーションで演じたガイド収録を行い、浪川大輔さん(ギュリエ役)や早見沙織さん(D役)にはそれを聴きつつ演じていただきました。今作は音響監督も兼ねていたので自分から提案してやってもらった方法です。
 スー役は小倉唯さん。オーディションで板垣も推しました。イメージどおりの”妹”になっててとても好きなキャラになってたのですが、今シリーズでは退場が早かったのが残念。『てーきゅう』ではトマリン役。
 ハイリンス役は興津和幸さん。落ち着いたカッコいいお兄さん。俺がご一緒した作品の『ベン・トー』の二階堂(ピアス)、『ベルセルク』(2016、2017年)セルピコ、『ユリシーズ〜ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』(2019年)ベドフォード、なんとなく共通する雰囲気があります。
 ラース役は逢坂良太さん。『てーきゅう』の陽太(ユリの弟)役でお会いして、『ユリシーズ〜』では主人公・モンモランシ役を演じていただき、そして今作も。普段のリラックスした空気感がとても好印象です。

アニメ様の『タイトル未定』
311 アニメ様日記 2021年5月9日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月9日(日)
「佐藤順一の昔から今まで」の原稿作業。確認することがあって『魔法使いTai!』のOVAとTVに目を通した。さらに伊藤郁子さんの「この人に話を聞きたい」を読み返したり。

2021年5月10日(月)
15時から駅前の喫茶店で、あるプロジェクトについての打ち合わせ。例によって打ち合わせ後半はアニメ話。
近々に埼玉に行く用事があり、あれ、埼玉だったら店で酒が呑めるじゃない。わざわざ呑みに行くのではなくて「仕事で行ったら呑めた」というのはありなんじゃない。まずいなあ、ダイエット中なのに、とニヤニヤして、念のため、ネットで検索してみたら、行く先も「まん延防止等重点措置」で酒の提供は自粛中であった。残念。

2021年5月11日(火)
午後はあるアニメプロダクションを訪れてある方にご挨拶。リアルにお話するのは数年ぶり。お元気そうでよかった。同行していた人達と別れて、かなり久しぶりに株式会社スタイルの倉庫に。目当てのものがあることを確認する。段ボール箱に入っている本は傷んでいたりするけど、ラックに入れてある本は問題なし。
『花咲くいろは』を最終回まで視聴。改めて観ると、当時とは違って見えるところも。とにかく素晴らしいクライマックス。
「よふかしのうた」7巻を読了。本筋ではないけれど、小繁縷(コハコベ)ミドリとその彼氏がいい。というか彼氏に対する小繁縷ミドリがいい。

2021年5月12日(水)
新文芸坐で「怪談せむし男」(1965/81分)を観る。これも「映画デビュー70周年 西村晃のスーパー演技!!」の1本。この前に観た「散歩する霊柩車」と同じく、監督が佐藤肇、音楽が菊池俊輔。菊池さんの曲が聴きたくて鑑賞することにした。怪奇ものだけど、内容が派手すぎてあまり怖くはない。いや、子どもが観たら充分に怖いか。加藤武さんはかなり等々力警部っぽい。中盤に霊媒師が出てくるのだけど、その演技が圧倒的。霊媒師役は鈴木光枝さん。それから、亡霊の声がやたらとイケメン。新文芸坐ロビーに貼られていた資料だと「ナレーター 大平透」とあるけれど、あの声が大平さんなんだろうな。
映画が終わった後、iPhoneを再起動させたら、カメラに不具合が。Appleの窓口とチャットでやりとりして修理に出すことに。
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』未視聴分を最新話数まで観る。思っていた展開とちょっと違った。

2021年5月13日(木)
石浜真史さんとTシャツについての打ち合わせ。新しいiPhoneが届く。早いなあ。修理ではなくて新品と交換してくれたらしい。前のiPhoneのバックアップを使って、ほとんどそのまま使えるようになった。日本映画専門チャンネルで、テレビドラマ版の「砂の器」(1977年版)をやっていた、仲代達矢さんが後藤隊長のようだ。逆である。

2021年5月14日(金)
13時くらいにProduction I.Gに。ある作品の資料をチェックする。物量を考えると三日はかかると思っていたのだけど、しっかりと整理されていたのと、作業をフォローしてもらえたので3時間で終了。ありがたい。事務所に戻ってからが猛烈な忙しさ。
ワイフが高校時代に荒木経惟さんに撮ってもらった写真と、写真が掲載された新聞を見せてもらった。

2021年5月15日(土)
床屋に行ったところ、床屋のオバチャンが「凄く痩せたね! どうしたの?」と美味しい反応をしてくれた。昼から「第175回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作【初級編】」を開催。今回は緩急も含めて、まとまりのいい感じだったと思う。お客さんがいたら、トークのテンポや構成が違っただろうなあ。次回作の主人公のついて、少し明らかになった。「枕草子」とは逆で、藤原定子が主人公で、彼女の視点で清少納言を描くのかと思ったら、そんなに単純ではなかった。2時間半のイベントの後、アニメスタイルチャンネル用のミニコーナーを収録。

第178回アニメスタイルイベント
『映画大好きポンポさん』を語ろう!2

 6月に開催し、ご好評をいただいた『映画大好きポンポさん』トークイベント。その第2弾を開催します。出演は平尾隆之監督と松尾亮一郎プロデューサー、そして、演出の居村健治さんを予定しています。

 開催日は8月1日(日)昼。会場はLOFT/PLUS ONEです。イベントは平尾監督達にお客さんからの質問に答えていただくパート、メイキングについて語っていただくパート等で構成。今回のイベントも配信を行います。そして、配信のない、会場だけのコーナーも予定しております。

 質問は会場でも受け付けますが、先行してネットでも募集します。平尾監督達に質問のある方は、WEBアニメスタイルのTwitterアカウント( @web_anime_style )にリプライのかたちでお送り下さい。当日、会場に来られない方の質問もお受けします。ただし、いただいた質問の全てに答えるのは難しいかもしれません。答えられなかった場合は申しわけありません。ネットでの質問はイベント当日の朝8時まで受け付けます。

 配信は先行してLOFTグループによるツイキャスで行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。チケットは7月27日(火)18時から発売。チケットは「会場でのイベント観覧+ツイキャス配信視聴」と「ツイキャス配信視聴」の2種類を用意します。アニメスタイルチャンネルでの配信は、同チャンネルの会員の方が視聴できます。チケットに関して詳しくは、以下にリンクしたLOFTグループのページをご覧になってください。

 LOFT/PLUS ONEを含むLOFTの会場は厚生労働省が定めた、新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインを遵守し、さらにガイドラインよりも厳しいLOFT独自の基準を設けて、万全を期してイベントを開催しています。
 来場されるお客様にはマスクの着用、手指の消毒をお願いしています。消毒液は会場に用意してあります。また、体調の優れないお客様は来場をお控えください。 

■関連リンク
『映画大好きポンポさん』公式サイト
https://pompo-the-cinephile.com/

LOFTグループのイベントページ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/186956

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第178回アニメスタイルイベント
『映画大好きポンポさん』を語ろう!2

開催日

2021年8月1日(日)
開場11時30分 開演12時 終演15時予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

平尾隆之(監督)、松尾亮一郎(プロデューサー)、居村健治(演出)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長・聞き手)

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信視聴/1,500円 ツイキャス配信視聴のみ/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
  アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
310 アニメ様日記 2021年5月2日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年5月2日(日)
この日の作業は、月曜以降の編集作業の整理、素材の確認など。自分の原稿は翌日以降で。Kindleで「新婚よそじのメシ事情【カラー増量版】(3)」を読了。まさかの展開。驚きつつもちょっと感動。知り合いのご夫婦のおめでたとも、ちょっと違った感情だなあ。『宇宙戦艦ヤマト』の続きを観る。やはりメチャメチャ面白い。

2021年5月3日(月)
散歩中に、何故かワイフにOVAの歴史について説明する。
大物原稿に手をつける。こういった感じの原稿を書くのは相当に久しぶり。ノリを取り戻すまでに時間がかかりそうだ。
『宇宙戦艦ヤマト』を25話まで観る。1970年代に観た印象とも、その後に観返した印象とも違う。1980年代に観返した時に垢抜けないと思った部分を、今では魅力として感じたり。ああ、この部分は『宇宙戦艦ヤマト2199』では上手くやっていたなあと思うところもある。
最近、AmazonでCD「ANIMEX 1200シリーズ」を次々に購入している。ウォーキング時に、ネックスピーカーでアニメのサントラを聴くようになって、買っていないCDや持っているはずだけど見つからないCDが欲しくなったのだ。この日に届いたのは「組曲 銀河鉄道999」と「TVオリジナルBGMコレクション 科学忍者隊ガッチャマン」「同・UFOロボ グレンダイザー」「同・宇宙海賊キャプテンハーロック」。

2021年5月4日(火)
「設定資料FILE」の構成に手をつける。素材を見てちょっと考えた後、とりあえず作業を始める。新文芸坐で「クラッシュ 4K無修正版」(1996・カナダ/100分/DCP/R18+/2K上映)を観る。ブログラム「車にまつわる危ない話 クラッシュ | ヒッチャー」の1本。日本で公開された頃、打ち合わせでこの映画が話題になった。僕は観ていなかったので、話題についていけなかったのを覚えている。そして、予想していた内容とは随分と違った。今回のは4K版だったけれど、レンタルVHSでブラウン管のテレビで観た方が「らしい」んじゃないかな。

2021年5月5日(水)
ワイフとの早朝散歩は続いている。この日は明治神宮を歩いた。午前5時過ぎの山手線で代々木まで移動して、代々木から明治神宮に。本殿まで歩いて参拝。その後、代々木公園に行ってお茶を飲み、また明治神宮の中を歩いて代々木駅に。早朝の明治神宮に行きたいというのは昨年からのワイフの要望で、それがようやく実現した。
「設定資料FILE」の構成の続き。次号の「設定資料FILE」は『映画大好きポンポさん』だ。この作品の売りは、タイトルにもなっているポンポさんなんだけど、ポンポさんの設定画は1枚しかない。立ちポーズと表情が1枚にまとめられているうえに、服の替えがないのだ。それに対してジーンやナタリーは衣装換えがあるので、数点ずつ設定画がある。これを素直に構成してしまうと、誌面において、ポンポさんよりもジーンやナタリーの面積のほうが大きくなり、結果としてポンポさんの印象が弱くなってしまう。資料集ならそれでいいのかもしれないけれど、「設定資料FILE」は作品を紹介する記事でもあるので、ポンポさんを目立たせなくてはいけない。という辺りが今回の腕の見せどころだ。
シネマ・ロサで、ジャン=ポール・ベルモンド主演の「大頭脳」を観る。確かにジャン=ポール・ベルモンドはルパンっぽいし、コブラっぽい。「大頭脳」はあらすじだけ取り出すと面白いけれど、映画としてはあまり面白くはない。ただ、劇中で展開する作戦はこの映画が作られた頃だと、斬新なものではあったかもしれない。吹き替えが観たいのでBlu-rayは購入しよう。

2021年5月6日(木)
作業が片付いたら午後から映画に行くつもりだったけれど、連休明けで用事が多かったために断念。WOWOWの『あしたのジョー』を観る。36話のゴルフ場で力石がランニングをしているシーン。望遠で撮ったイメージのカットがあるなあ。1シーン内でレンズを換えている想定だろう。出崎さんのコンテ回。

2021年5月7日(金)
ある方からのメールで、アニメージュでお世話になった亀山修さんが亡くなられたことを知る。僕が駆け出しの頃にお世話になった方だ。10年ほど前に電話で話をしたのが最後になった。心よりご冥福をお祈り致します。

新文芸坐で「散歩する霊柩車」(1964/88分)を観る。プログラム「映画デビュー70周年 西村晃のスーパー演技!!」の1本だ。かなり面白い。騙し騙されが延々と続く構成で、中盤までは展開が読めなかった。クライマックスまでくると「最後にあいつがなにかするな」と分かっちゃうんだけど、それでも楽しめた。物語の大半がある一夜の出来事なんだけど、一晩に事件が起こりすぎだろうとは思った。音楽は菊池俊輔さんで、曲を聴いているだけでも楽しかった。菊地さんとしてはデビュー数年後の仕事なのね。ベタベタな曲の付け方もいい。西村晃さんの特集上映だけど、奥様役の春川ますみさんも強烈。ちょっと不気味さを感じさせる渥美清さんも印象に残る。

2021年5月8日(土)
昼間は散歩と原稿。夕方に吉松さんとSkype呑み。
かなり久しぶりに『花咲くいろは』を視聴。1話を観て『若おかみは小学生!』のようだと思ったけれど、『花咲くいろは』より『若おかみは小学生!』の原作のほうが古い。『花咲くいろは』は「地に足がついたドラマ」と「深夜アニメ的なサービス」が入り混じらないでぶつかりあっている感じ。『花咲くいろは』7話はハッチャケ系で際立ったエピソード。気になって「月刊アニメスタイル」第6号のインタビューを読み返したら、ちゃんとこの話の脚本について聞いていた。偉いぞ、自分。

第211回 魔法を継ぐもの 〜終末のイゼッタ〜

 腹巻猫です。『竜とそばかすの姫』をIMAXレーザー上映で鑑賞しました。これは、ぜひIMAXで体験してほしい劇場作品。映像と音の中に吸い込まれるような没入感を味わえます。電脳空間の映像に目を奪われますが、高知出身者としては現実パートの美しい情景描写(特に川)にもぐっときました。そして、ドラマの軸となる音楽が本当にすばらしい。サントラ発売は8月。楽しみです。


 前回の『BEM』の音楽を手がけたもうひとりの作曲家・未知瑠。今回は彼女が初めて手がけたTVアニメーション作品『終末のイゼッタ』の音楽を聴いてみよう。
 『終末のイゼッタ』は2016年10月から12月まで放送されたオリジナルTVアニメ。監督は藤森雅也、アニメーション制作を亜細亜堂が担当した。
 舞台は1940年、ヨーロッパをモデルにした架空の国々。小国エイルシュタットの公女フィーネは、秘密会談のために訪れた隣国ヴェストリアで軍事大国ゲルマニアの憲兵に捕らえられる。軍用機に乗せられてゲルマニアへと連行されるフィーネを救ったのは、幼い頃に出会った魔女イゼッタだった。イゼッタはフィーネのために、また、この戦争を終わらせるために、魔法の力を使って戦うことを約束する。
 赤い髪の少女イゼッタは魔女の末裔。イゼッタが戦闘機や戦車を魔法の力で撃破していく場面は大きな見どころだ。架空戦記ものに魔法の要素を持ち込んだ思考実験SFとしても楽しめる(ポール・アンダースン『大魔王作戦』みたいだ)。
 しかし、いちばんのポイントは、イゼッタが魔女というよりも、素朴で自分の気持ちに素直な少女として描かれていることだろう。イゼッタとフィーネが立場を超えた友情で結ばれていく展開が本作のドラマの核になっている。ミリタリーものと見せて、本質は少女たちの友情ストーリーというニクい作品である。

 ユニークな設定のオリジナル作品であるため、音楽も個性を出したいという意向から、音楽担当はアニメ音楽をあまり手がけたことがない若手作曲家で「エキセントリックなものを作ってくれる人」を探すことになった(音楽プロデューサー・福田正夫の証言より)。
 たまたま目に留まったのが未知瑠の公式サイト。インディーズでリリースされていた2枚のオリジナル・アルバムを聴いてみると、求めている音楽イメージにぴったりで、スタッフの満場一致で音楽を依頼することに決まったという。
 未知瑠は1980年生まれ。幼少の頃から自然や鳥の声などを真似てピアノを弾いて遊んでいた。東京藝術大学音楽学部作曲科を首席で卒業。クラシック音楽をルーツとしながら、ジャズやロック、エレクトロ、民族音楽、現代音楽などを取り入れ、ジャンルを超えた個性的な音楽を創造している。2009年に1stソロアルバム「World’s End Village —世界の果ての村—」、2015年に2ndソロアルバム「空話集 〜アレゴリア・インフィニータ」をリリース。どちらも、異国の民話や伝説を題材にしたような独特の世界を作り出している。なるほど『終末のイゼッタ』はこういうイメージだったのか、とひざを打つ内容だ。
 未知瑠のプロフィールでもうひとつ語られているのが、作曲家・佐橋俊彦のアシスタントを務めていたという経歴。『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』や『ウルトラマンメビウス』『仮面ライダー電王』の時期と重なるというから、2004年から2006年頃にかけてだろう。音楽制作の実際と「バトル音楽ひとつとってもこんなにバリエーション豊かに作れるのだ」といったことを学んだ、とインタビューで語っている。
 そんな未知瑠が生み出す映像音楽は、ボーカリーズや民族音楽を取り入れた個性的なサウンドと、ツボを心得たダイナミックなオーケストレーションでサントラファンを魅了する。いわば彼女は「サントラの魔法」を受け継いだ作曲家。「よくぞ、こちら(サントラ)の世界に来てくれたなあ」と思ってしまう。いま期待の作曲家である。
 映像音楽の代表作は、劇場作品「あさひなぐ」(2017)、『賭ケグルイ』(2019)、スタジオジブリ短編アニメ『たからさがし』(2011)、TVアニメ『刻刻』(2018)、『BEM』(2019)、『ギヴン』(2019)、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(2020)、『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』(2021)など。
 『終末のイゼッタ』の音楽を任された未知瑠は設定やキャラクターなどの資料を見た時点からイメージが刺激され、メインとなるテーマ曲など数曲のデモを制作して打ち合わせにのぞんだ。しかし、スタッフからは「普通の劇伴だね」と言われてしまう。スタッフが求めていたのは、視聴者が「なにか変だな」とひっかかる、映像を異化するような音楽だったのである。そこで、ソロアルバムで作り上げた自身の音楽をイゼッタの世界に持ち込むことにした。未知瑠はこのときスタッフから求められたことを「アニメの世界観に寄り添ってばかりでなく、世界観を音楽で推し広げていくことも必要」と表現している。映像音楽が持つ役割や力を考えさせられる言葉である。
 最終的にできあがった音楽は、オーケストラをベースにしながら、女声ボーカル(ボイス)や古楽器を取り入れた、時代や国・地域を超越した音楽。ファンタジー音楽と女声ボーカル、民族楽器は相性がよく、過去にも例があるが、『イゼッタ』の音楽は一歩踏み込んでいる。ファンタジー作品でよく聴かれる中世から近世のヨーロッパ風音楽ではなく、もっと古代の音楽を思わせる、土俗的とも呼べる音楽だった。
 余談だが、本作でリュート、サントゥール、サルテリ、サズなどの古楽器の演奏を担当しているのは上野哲生。TVアニメ『ほえろブンブン』『おはよう! スパンク』などの音楽を担当した作曲家である。数年前にインタビューする機会があり、現在は古楽器奏者としても活動していることは聞いていたが、こうして新作TVアニメのサントラにも参加していることを知ってうれしかった。
 音楽全体は、イゼッタのテーマでもあるメインテーマとフィーネのテーマを中心に、幻想的な魔女関係の曲、戦争映画風のクラシカルな曲、そして、心情曲、情景描写曲などから構成されている。
 特徴的なのが、魔女に関係する楽曲だ。先に紹介したように、女声ボーカルや古楽器をフィーチャーし、いつの時代のどこの国とも知れないサウンドで伝説の魔女のイメージを音楽化している。ゲルマニア軍を描写するクラシカルな楽曲と対照的で、魔法と科学、古代と現代、自然と文明の対比を音楽が表現しているかのようだ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「TVアニメーション『終末のイゼッタ』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2016年12月21日にフライングドッグから発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. いつか見た夢
  2. 終末のイゼッタ
  3. 出撃せよ!
  4. 白き魔女の伝説
  5. 追跡
  6. 大脱出
  7. フィーネ 愛のテーマ
  8. In The Air
  9. ME・ZA・ME
  10. ライフルの翼
  11. 姫様への想い
  12. 夜明け前
  13. 敗色濃厚
  14. 出逢い
  15. 決死の覚悟
  16. 反撃の火蓋
  17. 非情なる皇帝
  18. イゼッタの秘密
  19. あの日の記憶
  20. 作戦開始
  21. Set Me Free!
  22. ゾフィーの魔力
  23. 異端者
  24. エイルシュタット国歌
  25. バトルモード突入
  26. ゲールの猛攻
  27. 一進一退
  28. 魔石の力
  29. 最後の戦い
  30. フィーネ 愛のテーマ 〜piano solo〜

 歌の収録はなく、BGMのみ30曲、75分のボリューム。
 曲順は、全12話の物語を俯瞰する流れである。未収録曲もあるが、劇中で印象的な曲はほぼ収録されている。
 1曲目「いつか見た夢」は第1話のアバンタイトルで使用されたピアノとフルート、オーボエなどによるメインテーマの変奏曲。幼いフィーネとイゼッタとの出逢いを紹介する回想シーンに流れた。第1話では女声ボーカルが重ねられている。
 2曲目「終末のイゼッタ」は本作のメインテーマ。演奏時間5分以上の長い曲である。幻想的な女声ボーカルとオーケストラによる導入部から、古楽器によるテーマメロディの変奏に展開。ピアノや管弦楽器がメロディを引き継いでいく。中間部は女声ボーカルによる別のメロディ。緊張感に富んだオーケストラの間奏のあと、ピアノと弦楽器、ボーカルなどがテーマを反復し、力強い全合奏で終わる。組曲的構成のドラマティックな曲だ。
 劇中ではシーンに合わせて編集して使われることが多いが、第11話や最終回(第12話)では、映像の展開と曲の展開をたくみに合致させ、フィルムスコアリングで書かれた曲のように使用している。演出する上でも使い甲斐のある曲だろう。
 トラック3「出撃せよ!」はタイトルどおり、ゲルマニア軍と戦うイゼッタの場面によく流れたメインテーマのアレンジ曲。呪文のような女声ボーカルからオーケストラの勇ましい曲に変化する。「戦うイゼッタ」という雰囲気だ。
 次の「白き魔女の伝説」は魔女の伝承をテーマにした幻想的な曲。チェレスタの音色や弦楽器のメロディが妖しい香りをただよわせる。中間部はリリカルな曲調に変化。この部分は、第9話の山の上の城塞で語らうイゼッタとフィーネの場面で効果的に使用されていた。終盤は女声ボーカルが愛らしいメロディを歌い、時の流れの中に消え去るように静かに終わる。一篇の伝説を聞き終えたような気分になる曲である。
 続くトラック5「追跡」とトラック6「大脱出」はユニークなオーケストレーションの曲。パーカッションとピアノを中心にした「追跡」は明確な旋律を持たない現代音楽的な曲である。「追跡」というタイトルに反して、第2話でイゼッタがフィーネとの楽しい日々を回想するシーンや第7話でゲルマニア軍の兵士たちがポーカーをしてくつろいでいるシーンに選曲されている。「大脱出」も即興的なパーカッションと弦楽器による現代音楽的な曲。どちらもいわゆる「劇伴的」な曲ではないため、使いにくかったのではないかと想像するが、もっと使ってほしかった曲だ。
 トラック7「フィーネ 愛のテーマ」は本作のもうひとつのメインテーマとも呼べる曲。古楽器の爪弾きを導入に、弦楽器とピアノ、フルートなどによる美しいメロディに展開していく。第1話から使用されているが、名場面は第11話。ゲルマニア帝国に降服する決意を固めたフィーネが、泣いて抗議するイゼッタの想いに打たれ、「ともに戦おう」と言う場面で使用されている。そして、最終回のラストシーンに流れたのもこの曲だった。
 トラック8「In The Air」はため息みたいな女性ボイスを中心に構成されたふしぎな曲。第1話でカプセルに閉じ込められていたイゼッタが目覚めるシーンに流れている。次の「ME・ZA・ME」は女声ボーカルと打ち込みのリズム、エレキギター、ストリングスなどを組み合わせた浮遊感と疾走感のある曲。どちらも空を舞うイゼッタの姿が目に浮かぶような楽曲だ。しかしながら、2曲とも数回しか使われなかったのが惜しい。もっと使ってほしかったなあ。
 トラック10「ライフルの翼」は印象の強いバトル音楽のひとつ。緊迫感のあるリフの繰り返し、吐息風の女性ボイス、トランペットの勇壮なメロディ、エレキギターのうなりなど、さまざまな音楽要素が混然一体となって、魔女と戦闘機が戦う異様な戦闘空間を描写する。バトル音楽としてのカッコよさも味わえる、本アルバムの聴きどころのひとつ。
 トラック11の「姫様への想い」は使用回数は少ないながら重要な曲。第11話でイゼッタがフィーネにうながされて、それまで「姫様」と読んでいたフィーネを初めて名前で呼ぶ場面に流れていた曲だ。本作の乙女チックな一面を象徴する曲であり、本作の音楽の魅力が、幻想的な曲やバトル曲ばかりでないことを教えてくれる。
 アルバムの後半は、ストーリーの流れに従い、ミリタリー的な曲や重厚な曲が多くなる。「敗色濃厚」「決死の覚悟」「反撃の火蓋」「非情なる皇帝」「作戦開始」「ゲールの猛攻」「一進一退」などである。正統派サウンドトラック風のダイナミックなサウンドを聴くことができる。
 そんな中、異彩を放っているのが、トラック21「Set Me Free!」だ。呪文風の女性ボイスとロック的なリズムが合体し、妖しいカッコよさを持った曲に仕上がっている。第3話でイゼッタが魔力で戦車を投げ飛ばすシーンくらいにしか使用されなかったのがもったいない。
 終盤に登場するもうひとりの魔女ゾフィーのテーマ「ゾフィーの魔力」、魔女の秘密が語られる場面などに使われたミステリアスな「異端者」、即興的な古楽器の演奏と呪文的なヴォイスを組み合わせた「魔石の力」など、幻想的な音楽を散りばめて、いよいよ物語は最終決戦へ。
 トラック29「最後の戦い」はメインテーマをモチーフにした3分を超える戦いの曲。この曲も、次々と曲調が変化する組曲的な構成で作られている。最終回ではゾフィーとイゼッタとの決戦場面に長尺で使用され、メインテーマ「終末のイゼッタ」と同様に、曲の展開と映像の展開をマッチさせたフィルムスコアリング的演出でクライマックスを盛り上げていた。
 アルバムを締めくくるのは「フィーネ 愛のテーマ」のピアノソロ・バージョン。戦争が終わったあと、イゼッタとフィーネの物語を回想するイメージだろうか。本編では第4話でフィーネが父の死を看取る場面に使用されていた。イゼッタのテーマ(メインテーマ)に始まり、フィーネのテーマに終わる構成が味わい深い。

 本アルバムは、TVアニメ『終末のイゼッタ』の音楽世界を凝縮した充実の1枚である。本作の音楽を特徴づける女声ボーカル(ボイス)や古楽器をフィーチャーした楽曲が(使用頻度によらず)多く収録されているし、オーケストラによるダイナミックなバトル音楽や重厚な音楽も堪能できる。そして、イゼッタとフィーネの友情を彩る美しいメロディもある。これがTVアニメ初担当とは思えない(いや、初めてだからこそかも)、創意と才気にあふれた作品である。
 選曲に関して欲を言えば、イゼッタとメイドのロッタが笑いあう場面などに流れる明るい日常曲も入れてほしかったなあと思う。思い切ってミリタリー的な曲をいくつかはずして、日常曲や心情曲を増やしてもよかった。サントラ盤のジャケットを見てもわかるとおり、本作の本質は戦争ものではなく、少女たちの友情ドラマなのだから。

TVアニメーション「終末のイゼッタ」オリジナルサウンドトラック
Amazon

第715回 『蜘蛛ですが、なにか?』まとめて、続きの続き

おお、更新日が7月15日で715回!
ま、別にどーでもいいか

 役者(声優)さんの話。ユーゴー役の石川界人さんは、以前(2013年)自分が監督・脚本・絵コンテ・演出をやった『アークIX』というラノベに付く短編アニメの時にご一緒させていただいたと思いますが、メインキャラでお付き合いするのは初めてかと。7話のアフレコ後、悪役の怒りの鎮め方について議論、というほどでもない話し合い(?)をしたのが印象的で「自分で納得できない芝居はしたくない」という強い意志を感じました。
 ユーリ役の田中あいみさんも初めて。残念ながら後半は極端に出番が少なくなってしまうのですが、前半の学園編での「殺すから♡」は忘れられません。
 フィリメス役の奥野香耶さんは『Wake Up, Girls! 新章』でもご一緒。『COP CRAFT』のまゆしぃ(吉岡茉祐さん)もそうでしたが、あくまでオーディションによって決まったキャスティングです。奥野さんにもオーディション時は東山(奈央)さん同様、カティア役とその転生前の男子学生(大島叶多)役もやっていただき(汗)、ご苦労をおかけしました。でも、やっぱり奥野さんのフィリメス、可愛かったです!
 で、ソフィア役の——以下次週。短くてスミマセン! 次の打ち合わせ(来年の監督作)もすでに始まってて……。

アニメ様の『タイトル未定』
309 アニメ様日記 2021年4月25日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年4月25日(日)
早朝の新文芸坐で、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 129 大友克洋監督のアニメーション」の終幕を見届ける。その後、事務所でデスクワーク。睡眠が足りていなかったようで作業は捗らず。午後は新文芸坐で「少女ムシェット」(1967・仏/80分/DCP/PG12)を鑑賞する。プログラム「ブレッソン、鋼の傑作2本立て 少女ムシェット | バルタザールどこへ行く」の1本。

2021年4月26日(月)
グランドシネマサンシャインの朝の回で、IMAXの「るろうに剣心 最終章 The Final」を観る。グランドシネマサンシャインで「るろうに剣心 最終章 The Final」を観るか、新文芸坐で「バルタザールどこへ行く」を観るかでちょっと悩んだ。グランドシネマサンシャインは27日(火)から休業で、「バルタザールどこへ行く」の国内上映はこの日までだった。「るろうに剣心 最終章 The Final」はかなりよかった。アクションの見応えはかなりのものだし、役者についても原作の再現度が高い。街の描写等も凝っている。終盤になってスケールダウンした感があったけれど、全体としては好印象。午後はずっとデスクワーク。新文芸坐は27日(火)以降も営業を行うというアナウンスがあった。

2021年4月27日(火)
Zoom打ち合わせの後、あるアニメプロダクションに。これから作る書籍のために資料を見せてもらう。資料が入っているカット袋に「スタジオ雄 小黒様へ」と宛名が書かれているものがあった。20数年前に仕事で僕が関わった作品の資料だ。

2021年4月28日(水)
新文芸坐の9時40分からの回で、ワイフと「82年生まれ、キム・ジヨン」(2019・韓国/118分/DCP)を観る。プログラム「私の人生、誰のもの? 82年生まれ、キム・ジヨン | ハッピー・オールド・イヤー」の1本。よくできた映画ではあったけれど、「?」と思うところも。公開時に原作との違いが話題になっていたようだ。そのうちに原作をチェックしてみよう。15時から喫茶店で、あるクリエイターの方と、これから出す書籍についての打ち合わせ。事務所に戻ってまたデスクワーク。19時過ぎまでキーボードを叩く。
「上坂すみれの新東宝シアター ―天知茂、痺れるほどキザで、ニヒルで―」を録画で観た。全部ではなくて、トークと映画の一部だけを観た。面白い企画だなあ。トークはナチュラルな感じでよかった。

2021年4月29日(木)
Zoomで、遠藤一樹君と土曜のイベント「アニメ様の1990年代」についての打ち合わせ。どんな内容について話すかを説明しているうちに、予定した内容を全部話そうとすると、イベントが3時間あっても足りないことが分かる。同イベントのために、雑誌「Looker」のバックナンバーをチェック。しかし、トークで話題にしたかったマンガが見当たらず。あれ? 「Looker」ではなかったのか。

2021年4月30日(金)
連休直前で、イベント前日なので用事が多い。昼飯にすき家で、やきそば牛丼を食べる。『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』とのコラボメニューなので、本当は映画を観た後で食べるつもりだった。「アニメV」のバックナンバーをチェックして、イベントで話題にしたいマンガが見つかった。吉松さんが自身の連載マンガの中で、僕のことをアニメ様と命名したのだ。

2021年5月1日(土)
57歳になった。誕生日を迎える度に、仕事を続けられていることをありがたいと思う。お世話になっている皆さんに感謝。幸運に感謝。
イベント「第174回アニメスタイルイベント アニメ様の1990年代」を開催。イベントは司会を遠藤君に頼んで、メインのゲストが吉松さん。サブのゲストが亀田祥倫さん、祥太さん。皆のお陰で気持ちよく話すことができた。吉松さんがイベント中に、僕と吉松さんの動画を流すと言っていて、どんな映像なのか分からないのでハラハラしたけれど、お客さんに受けていた。