新刊「22/7 あの日の彼女たち Animation note」の本文ページのサンプルを公開します!

 アニメスタイルの新刊「22/7 あの日の彼女たち Animation note」の本文サンプルページを公開します。

「22/7 あの日の彼女たち Animation note」は12月30日(木)~31日(金)に東京ビッグサイトで開催される「コミックマーケット99」で複製原画付きのバージョンで先行販売します。「アニメスタイル ONLINE SHOP」でも複製原画付きで注文を受け付けています。

●関連リンク
【C99先行発売】レア資料満載!「22/7 あの日の彼女たち Animation note」が発売。堀口悠紀子さんの複製原画付きもあります!!
http://animestyle.jp/news/2021/12/17/21079/

「アニメスタイル ONLINE SHOP」特設ページ

https://animestyle-shop.sakura.ne.jp/main/


▲「原画・レイアウト」のコーナーから。「day01 滝川みう」のレイアウト、レイアウト修正、原画、修正原画


▲「原画・レイアウト」のコーナーから。「day03 立川絢香」の堀口悠紀子さんによる修正原画


▲「原画・レイアウト」のコーナーから。「day05 斎藤ニコル」の原画とレイアウト


▲「原画・レイアウト」のコーナーから。「day04 佐藤麗華」の原画と修正原画


▲「原画・レイアウト」のコーナーから。「day06 丸山あかね」の修正原画


▲キャラクターデザインのコーナーから。滝川みう、斎藤ニコルのキャラクターデザイン


▲「絵コンテコメンタリー」のコーナーから「day01 滝川みう」の絵コンテ。全8話の絵コンテを収録した


▲書籍の「イントロダクション」から

第736回 2021年も終わり

自分に関わりのある方々がお亡くなりになったここ1年間——

去年(2020年)末、TVシリーズ版『Hellsing』(2001)で超迫力ある作画を見せて下さった村田俊(峻)治さん、2021年に入ると板垣にとって業界で最初に付いた先生である大塚康生さん、『GAD GUARD』(2003年)以来のお付き合いさせて頂いてたアニメーション監督のコバヤシオサムさん、『ベルセルク』の原作者でアニメ化の際大変お世話になった三浦建太郎先生、学生時代の同期で業界でも制作として色々助けてくれた冨高恒夫君、——そして、自分の父親。

 村田さんは自分がテレコム・アニメーションフィルムを退社してフリーになったばかり——ぺーぺーの演出なり立てでTV『Hellsing』時に仕事を御一緒しました。「俺を拘束するには○○万は必要だから!」と豪語し、実際そのギャラ分の実務作業量をこなして見せた数少ない尊敬できる腕を持った極巧アニメーターでした。「次の作品では君ら若手に教えてやるよ!」その言葉どおり、速くうまく描くコツを教えていただきかったです、本当に。
 大塚さん。ここで何度も語った正にアニメ界のレジェンド。テレコム出身のアニメーター全員の先生で、正式な——大塚さんが直に研修を担当した最後の研修生が板垣だったと思います。自分が動画時代に見よう見まねで描いた原画もどきをニコニコ笑って、対応・修正して下さりありがとうございました! 大塚さんの達筆な修正、まだ大切に保管してあります。
 コバヤシオサム(小林治)さんは、いつも現場で誰よりもテンション高くて、描かれる画も仕上がるフィルムも超絶カッコよくてシャレてスタイリッシュでした。『GAD GUARD』では、俺は一演出としてオサムさんにレイアウトを面倒見ていただいた立場でしたが、その後の『天元突破グレンラガン』(2007年)や『はなまる幼稚園』(2010年)『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』(2010年)『ダンタリアンの書架』(2011年)ではお互い脚本・コンテ・演出・作画同士ということで、自分より10も若い俺に対して「負けないぞ!」とライバル心を剥き出しに(するフリを)して下さるとても優しい方でした。自身のTwitterに書いてあったとおり、早く生まれ変わっておシャレなフィルム作って下さい!
 三浦先生。再々アニメ化『ベルセルク』(2016・2017年)時、原作のロスト・チルドレン編が放送規制関係上アニメ化不可能のため、その間を繋ぐオリジナル・ストーリー(第3話)を描(書)いていただきありがとうございました。そのアイデアを基に切った板垣コンテに対し「画に躍動感ありますね!」と褒めて下さって、板垣が前述の“大塚門下”だと説明すると「なるほど、だからですね~」と納得されたくらい、実はアニメにお詳しかった三浦先生。是非もう一度アニメで御一緒できたら、その時は俺の「作画の方の腕」も見ていただきたかったです。
 冨高君。東京デザイナー学院で共にアニメ作りを学んだ同期。学生制作で一緒にアニメ作ったし、一緒にお酒飲んで彼女の写真見せてのろけられたし、何度か俺らの前から姿を消したりもしたけど必ず再び姿を現し、その度に性格的にも見た目的にも丸くなっていった男でした。ここ数年は、某アニメ制作会社の海外動仕上撒き担当で、うち(ミルパンセ)も何度も助けてもらってました。「板ちゃんのは断れないよ(笑)」と言って——。

関わり方は様々でしたが皆様、板垣の恩人です!

 そして、前回・前々回と語らせて頂いた、自分の父親。最後の最後に言葉は交わせなかったものの、額に手を当てまだ残っていた体温は感じました。自分の知っているいつもの寝顔の様に安らかな表情ではありつつも、血の浸みた歯が覗く僅かに開いた口元からは癌との苦闘の跡が見て取れて、それが父の全てを凝縮している様でした。表っ面は温厚で寡黙、その実内面は誰よりもいろんなことに耐えている。「それで何とかなる!」と。何事にも理屈っぽく「こうあるべき!」と構え他人に説教しがちな俺に、学も金もなく、ただ一所懸命働き週に半日だけ遊び、名もなく普通にシンプルな人生を全うするということの尊さを最後に身を持って伝えようとしているかのようでした。

葬儀の時にも言いましたが、もう一度言わせて下さい。

「幸せ」をありがとうございました!

アニメ様の『タイトル未定』
332 アニメ様日記 2021年10月3日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年10月3日(日)
デスクワークの後、吉松さんとやきとんひなた池袋東口店で呑む。リアルで吉松さんと呑むのは数ヶ月ぶり。ひなたに行ったのも数ヶ月ぶり。その後、西口の千登里に移動して、また呑む。ワイフも千登里で合流。このままずっと外呑みができるといいなあ。

2021年10月4日(月)
新番組を片っ端から観る。『海賊王女』における中澤一登さんのOPでの役職は原作(共同)、キャラクター原案、絵コンテ、総作画監督、音響監督、監督(共同)、さらに1話の作画監督(共同)、OPアニメーションは原画・作画監督の大活躍。絵コンテは全話分を描くのだろうか(後日追記。全話分を描かれたようだ)。監督が複数人クレジットされているのも面白い。『カードファイト!! ヴァンガード overDress Season 2』は深夜アニメなのね。1期も大人向けの味つけがあったから、納得ではある。
「機動戦艦ナデシコ画集」は編集作業が大詰め。4度目の校正紙が出て、最後の入稿の準備を進める。「佐藤順一の昔から今まで」の原稿まとめも進める。

2021年10月5日(火)
「佐藤順一の昔から今まで」の取材の予習をスタート。『たまゆら』最初のOVA2本の後、TVシリーズ『たまゆら~hitotose~』を5話まで観る。最初のOVAがかなりよくできている。『hitotose』も悪くない。

2021年10月6日(水)
この日の早朝散歩は一人で。池袋から上野まで、主に山手線沿いに歩く。歩きながら、散歩中の写真をツイートする(その時のツイートはこちら)。上野駅で自分とワイフの駅弁を買って、山手線で帰る。「機動戦艦ナデシコ画集」の校正紙が出る。これが最後の校正紙になる。ひとつの書籍で校正紙を5回出したのは、アニメスタイル編集部としては新記録のはず。「機動戦艦ナデシコ画集」で使用している素材はセルイラスト現物、画像データ、セルイラストを撮影したポジフィルム、ポジフィルムのデュープと多岐にわたっており、更にそれぞれの素材の状態も違っており、色々と試しながら編集を進めた。
「佐藤順一の昔から今まで」の予習は『たまゆら~hitotose~』が終了。『hitotose』の未放送分も観た。『たまゆら~もあぐれっしぶ~』に入る。『hitotose』は渡辺はじめさんの総作監がとてもいい。当時はちょっと違うかも、と思っていたはずだけど。

TOHOシネマズ池袋で『ルパン三世 カリオストロの城』4K+7.1chを観る。IMAX版の『GHOST IN THE SHELL』と同じく、動画の線が見づらくなっているところがあった。色についてはセルよりも明るくなっているようだけど、僕的には許容範囲。音は7.1chだからといって、音がグルグルと回ったり、後ろから音が迫ったりはしないけど、ひとつひとつの音が聴きやすくなっていたと思う。
以下は『カリオストロの城』について思いつくまま。北の塔のてっぺんで、クラリスを前にしたルパンの芝居は、宮崎さんがラフを入れまくっているんだろうなあ。まさしく「演出している」という感じ。
こちらが年をとったせいか、ルパンとクラリスの見え方も変わった。クラリスはこの時、こんなことを考えているんだろうなあ、とか。なんだかんだで、ルパンはいい思いをしているなあ、とか。ルパンがクラリスと一緒にいた時間は短いんだけど、あれで充分なんじゃないの、とか。あるいは、この流れでこんなことを言われたら、そりゃあ、五ェ門もやられちゃうよなあ、とか。
「なんと気持ちのいい連中だろう」「あなたの心です」のあたりも、当時とは印象が違う。今は宮崎さんがどんなテンションであのセリフを言わせたのかが気になる。
同時上映だった『ルパンは今も燃えているか?』は『旧ルパン』『新ルパン』の強敵が続々と登場するという内容で、ファンサービスのショートムービーといった感じ。「五ェ門がルパンの仲間にならず、ニンジャアサシンとして活躍しており、不二子は五ェ門のサポート担当。銭形は五ェ門を追っていて、利き腕をやられた次元はルンペン。ルパンは冴えないこそ泥(らしい)世界」の部分が面白かった。あれだけで1本作ってほしいくらい。

2021年10月7日(木)
仕事の合間に新文芸坐で「Mr. ノーバディ」(2021・米/92分/DCP/PG12)を観る。予告が面白そうだったので観る気になった。予告を見て、男が事件に巻き込まれて街のチンピラをやっつけてしまうが……といった内容の社会派テイストのアクション物かと思ったら、予告で使われている映像は映画の前半のみ。予告で想像したよりもずっと派手なアクション映画だった。音が新文芸坐の音響に合っていて、迫力があり、よかった。事務所では「機動戦艦ナデシコ画集」の校正紙のチェックが続く。「アニメスタイル016」の準備もじわじわと進める。
「佐藤順一の昔から今まで」の予習で『たまゆら~もあぐれっしぶ~』を最終回まで視聴。その後、『たまゆら~もあぐれっしぶ~』のOVA、『わんおふ -one off-』全2巻、『絶滅危愚少女 Amazing Twins』全2巻を視聴。その後、『M3~ソノ黒キ鋼~』に入る。『たまゆら~もあぐれっしぶ~』を連続視聴していて、エンディングの前に「ああ、この回のコンテは佐藤さんだな」と思ったら正解。よかった、勘は鈍っていなかった。

2021年10月8日(金)
「佐藤順一の昔から今まで」の予習。『M3~ソノ黒キ鋼~』は中盤を観た後、終盤を観る。『ファイ・ブレイン 神のパズル』の1期序盤、終盤を観た後、2期を観る。ひょっとして、『ファイ・ブレイン』って『マリー&ガリー』から始まって『クラシカロイド』に続く、NHKの「偉人モチーフ・アニメ」なのかな。
午前中の散歩でAmazon Music「ルパン三世 アニメ・ソングス」を聴いた。これはいいなあ。『新ルパン』中心のプレイリストも欲しい。

2021年10月9日(土)
午前中は散歩と取材の予習。13時からZoomで「佐藤順一の昔から今まで」の佐藤さんの取材。遂に現在に辿り着く。この取材が記事として更新されるのは2022年になるはず。最初の取材が2020年6月だから、足かけ3年の記事となる。

第221回 リンクの外で 〜ユーリ!!! on ICE〜

 腹巻猫です。コミックマーケット99に参加します。12月30日(木)東L-40a「劇伴倶楽部」です。新刊なし。既刊在庫分を頒布します。持ち込み数少なめですので早期撤収するかも。コミケ参加はこれで最後の予定です。なお、いつもと参加条件が異なりますので、参加される方は下記も参照ください。
https://www.comiket.co.jp/info-a/C99A/C99ANotice2.html


 ドラマをそんなにたくさん観ているわけではないが、今年放映されたドラマの中で特に面白かったのが坂元裕二脚本の「大豆田とわ子と三人の元夫」だった。音楽的にも、音楽担当の坂東祐大が自ら選曲と音楽演出を担当していたり、STUTSが担当したエンディング主題歌がエピソードごとにバージョンが変わったりと凝っていた。
 坂東祐大は今年話題になった劇場アニメ『竜とそばかすの姫』にも参加している。岩崎太整率いる作曲チームの一員として、竜の登場シーンに流れるチェロの曲「竜」や神秘的でエキゾチックな「竜の城」、クライマックスに流れるボーカリーズ曲「素顔」といった重要な曲を担当しているのだ。
 その坂東祐大が音楽を手がけたTVアニメがある。2016年に放送された『ユーリ!!! on ICE』である。同作の音楽担当には梅林太郎と松司馬拓の2人がクレジットされているのだが、その松司馬拓こそ、坂東祐大の別名義なのだった。今回はその音楽を聴いてみよう。
 『ユーリ!!! on ICE』はフィギュアスケートを題材にしたオリジナル作品。主人公の勝生勇利(ゆうり)は実力が発揮できず不審に悩む23歳のフィギュアスケーター。その勇利のコーチを申し出たのが世界トップクラスのフィギュア選手ヴィクトル・ニキフォロフだった。勇利はヴィクトルの指導で練習を重ね、世界の強豪選手と競いながらグランプリシリーズ戦に挑む。勇利をライバル視し、闘志を燃やすのが、ロシアの金メダリスト、ユーリ・プリセツキー。2人のユーリとヴィクトルの3人を中心に描かれるスポーツ青春アニメである。

 音楽は梅林太郎と松司馬拓(坂東祐大)の共作。ドラマの背景に流れる劇伴音楽だけでなく、フィギュアスケート競技のシーンに使われるオリジナル曲(スケートプログラム曲)も制作している。
 坂東祐大は1991年、大阪府出身。東京藝術大学作曲科を首席で卒業し、同修士課程作曲専攻を修了。現代音楽の作家として活躍する作曲家・音楽家だ。ドラマ「美食探偵 明智五郎」や劇場作品「来る」(共作)といった映像音楽作品もあるが、あくまで主戦場は純音楽、というより、映像音楽も現代音楽の一ジャンルとして取り組んでいる印象を受ける。
 梅林太郎もまた東京藝術大学音楽学部作曲科出身の作曲家で、TVアニメ『スペース☆ダンディ』や『キャロル&チューズデイ』の音楽に参加するなど、多方面で活躍中。本作では、梅林がポップミュージック系の楽曲、松司馬拓(坂東祐大)がクラシック系の楽曲を手がける形で分担している。
 音楽プロデューサーの冨永恵介の証言によれば、本作の音楽制作はスケートプログラム曲から始まった。曲に合わせて作画をするため、作画の前段階から制作に取りかかり、推敲に推敲を重ねて完成度を上げていったという(「Febri」VOL.40のインタビューより)。
 各選手のために書かれたスケートプログラム曲は一種のキャラクターソングであり、その選手のテーマ曲ととらえることもできる。曲調もバラエティに富んでおり、楽曲の構成や編曲も凝っている。本作におけるスケートプログラム曲は、音楽の主役。いわばミュージカルにおけるミュージカルナンバーのような位置づけなのだ。
 こうして作られたスケートプログラム曲は放映当時から話題になり、スケートプログラム曲だけを集めたアルバム「Oh! スケトラ!!! ユーリ!!! on ICE/オリジナル・スケートソングCOLLECTION」が2016年12月にエイベックス・ピクチャーズから発売された。本作の音楽に関するインタビューやコメントもスケートプログラム曲に関するものがほとんどだ。

 が、当コラムではあえて劇伴音楽のほうに注目してみたい。
 本作ではスケートプログラム曲も劇伴も同じ作家が手がけている。スケートプログラム曲のフレーズが使われた劇伴があったりして、スケートプログラム曲と劇伴がリンクしているのが面白いところだ。が、ほとんどの劇伴音楽はスケートプログラム曲とはまったく離れたコンセプトで作られている。
 緻密に作りこまれたスケートプログラム曲と比べると、劇伴音楽の多くはシンプルな編成とアレンジで書かれている。ピアノソロの曲やバンド編成の曲が多い。いくつかの楽曲では、坂東祐大が2016年に立ち上げた演奏家グループ「Ensemble FOVE」が演奏に参加している。
 音楽演出に目を向けると、曲を長く使う場面もあるが、数秒から数十秒程度に曲を短く切って流す演出が印象に残る。メロディを聴かせるというよりも、楽器の音色や短いフレーズを聴かせることで映像に感情の彩りを加えたり、テンポ感を与えたりする演出が多いと感じた。
 劇伴のシンプルな作りとストイックな使い方は、主役であるスケートプログラム曲を際立たせることにもなっている。が、スケートプログラム曲に対して劇伴が聴きごたえの面で劣るかというと、けしてそうではない。劇伴にはスケートプログラム曲とは異なる魅力と面白さがあるのだ。
 本作の劇伴音楽を収録したサウンドトラック・.アルバムは「ユートラ ユーリ!!! on ICE/オリジナルサウンドトラック COLLECTION」のタイトルで2017年7月にエイベックス・ピクチャーズから発売された(正式には「ユートラ」のあとに温泉マークが付く)。
 収録曲は以下のとおり。

  1. History Maker (TV size)/DEAN FUJIOKA
  2. Serenade for two (reprise)/松司馬拓
  3. Fanfare on ICE/松司馬拓
  4. Kiss and Sky/梅林太郎 & y0c1e & ハヤシベトモノリ
  5. Let’s Go Skatin’/梅林太郎
  6. Warming Up!/松司馬拓&ハヤシベトモノリ
  7. Right Next Door to A Tiger/松司馬拓
  8. 3+2/松司馬拓
  9. ゆ〜とら/梅林太郎
  10. Reverie/松司馬拓
  11. Memories on Ice/松司馬拓
  12. Tweeting/松司馬拓
  13. Showdown/松司馬拓
  14. 5+7/松司馬拓
  15. Garden of April/松司馬拓
  16. Gigue in St.Petersburg/松司馬拓
  17. Minako’s mood/松司馬拓
  18. Tense 1/松司馬拓
  19. Kamome/松司馬拓
  20. Drifter/松司馬拓
  21. Tiger Hole/梅林太郎
  22. Run & Run & Run/松司馬拓
  23. Hug Tight/松司馬拓
  24. ピアノ練習曲ロ短調 (Piano etude in h-moll)/松司馬拓
  25. Poppo/松司馬拓
  26. F.Chopin Prelude in E moll Op.28-4/梅林太郎
  27. Afternoon Waltz/松司馬拓
  28. Yuri on ICE (1st sketch)/梅林太郎
  29. Tense 2/松司馬拓
  30. Heartbeats/梅林太郎
  31. Passacaille in Barcelona/松司馬拓
  32. At The Airport /松司馬拓
  33. Prism/松司馬拓
  34. Circles/梅林太郎
  35. Yeah Yeah Yeah/ハヤシベトモノリ
  36. Piano Trio Appasionato/梅林太郎
  37. You Only Live Once (#7 TV size version)/YURI!!! on ICE feat. w. hatano

※「/」以降はアーチストまたは作家名(アルバム解説書のクレジットより)。

 1曲目はオープニング主題歌、最後の曲はエンディング主題歌。エンディング主題歌は第7話で使われた特別編集版だ。この回は本編ラストからイントロが流れ始め、そのままエンディングに突入していく。冨永恵介はインタビューの中で、この編集バージョンを自身のお気に入り曲のひとつとして挙げている。
 実は本作の劇伴では、こうした音楽の編集が多くの場面で行われている。冨永恵介は音楽プロデューサーとして楽曲制作を指揮するだけでなく、毎週ダビング現場に通って、各話の選曲と音楽の編集まで手がけていたという。
 そのため、サウンドトラックを聴くと「こんな曲だったのか」と思う曲も多い。シーンによってはリズム抜きやストリングスのみといったミックス違いが使われていて、本編とサントラとで印象が異なる曲がある。
 アルバムの構成は『ユーリ!!! on ICE』の世界と物語を音楽で再現するイメージサントラ風。同時に本アルバムは、スケートプログラム曲を集めたアルバム「スケトラ!!!」と対をなすアルバムにもなっている。
 2曲目の「Serenade for two (reprise)」からして意味深だ。「reprise」は「くり返し」のことで、音楽アルバムやミュージカルの中で前に演奏された曲がもう一度出てきたときに使われる表記。だから通常はアルバムやミュージカルの後半で使われることが多い。ところが2曲目から「reprise」である。なんの「reprise」かといえば、「スケトラ!!!」に収録されたスケートプログラム曲「Serenade for Two」の。「Serenade for Two」と同じメロディが「Serenade for two (reprise)」で使われているのである。本アルバムが「スケトラ!!!」の続編として作られていることが、こんなところからうかがえる。ちなみにこの曲はTV放送時の提供バックに使われた。
 3曲目「Fanfare on ICE」はフィギュアスケート大会のファンファーレとして使われた曲。
 続いて高揚感たっぷりの「Kiss and Sky」が登場する。第1話の冒頭、ヴィクトルが大会で優勝する場面に流れていた曲である。スケートプログラム曲として使えるような華やかな雰囲気があり、同時に第6話や第11話では大きな見せ場に向かっていく物語を盛り上げる劇伴としても機能している。アルバムの開幕を飾るにふさわしい勢いのある曲だ。
 次の曲からは勇利たちの日常を彩るユーモラスな曲や心情描写曲が並ぶ。
 本作の日常音楽で印象的なのがエレキギターを中心にしたバンド編成の曲。5曲目「Let’s Go Skatin’」はその代表で、第1話の勇利の自己紹介シーンをはじめ、エピソード冒頭の「これまでのあらすじ」のバックやフィギュアスケート競技の説明のバックなどに流れている。軽快なリズムが映像にほどよいテンポとユーモラスな空気を加えてくれる。
 オルガンとバンドによる「Warming Up!」(トラック6)、ピアノとバンドによる5拍子の曲「3+2」(トラック8)、予告音楽としても使われたピアノとパーカッションによる変拍子の曲「5+7」(トラック14)、バンドとブラスセクションによる「Run & Run & Run」(トラック22)なども同様だ。コミカルなシーンや楽しいシーンに使われているので印象に残っている人も多いだろう。
 同じバンド編成でもワイルドなサウンドを聴かせるのが「Right Next Door to A Tiger」(トラック7)と「Tiger Hole」(トラック21)。ギターの「キュイーン」という唸りが特徴的。これらはユーリの登場場面に使われることが多く、エレキギターで「キュイーン」とくればユーリの顔が浮かぶ。
 初期のエピソードで流れていい感じを出していたのがトラック9の「ゆ〜とら」(正式には曲名の最後に温泉マークが入る)。笛の音色でゆる〜く奏でられる、ちょっとトロピカルな、のんびりムードの曲である。日本に来たヴィクトルが温泉につかる場面やカツ丼を食べる場面などに使われていた。梅林太郎によれば、自身が手がけた曲の中で一番すぐにメロディができたのがこの曲だったという(『アニメディア』2019年3月号のインタビューより)。
 アコースティック・サウンドで爽やかに奏でられる曲もある。トラック10の「Reverie」だ。「Reverie」とは「夢想」を意味する英語。夢見心地のように心が揺れ動くシーン、くつろぎのシーンなどに使われている。ゆったりしたコードストロークから始まり、リズムが加わって心のさざめきを表現、後半はグラスハープの音色が重なり「夢想」のイメージが強く打ち出される。第1話でヴィクトルが勇利に「今日からお前のコーチになる」と宣言するシーンなどに使われた。
 クラリネットとストリングスによる「Garden of April」(トラック15)は古楽的雰囲気のある軽快な曲。劇中ではストリングスのパートのみが使われた(第6話)。トラック27の「Afternoon Waltz」はバイオリンとピアノによる優雅な曲で、リンクを離れた勇利たちのひとときを演出している。第10話で勇利とヴィクトルがバルセロナ観光を楽しむ場面の使用が印象的だ。同じく第10話で勇利がヴィクトルためにプレゼントを買う場面の「Kamome」(トラック19)もピアノとストリングスの穏やかな響きが耳に残る。こうしたクラシカルな曲は映像に上品な香りを添える役割を果たしているようだ。
 「Reverie」で使われたグラスハープはトラック11の「Memories on Ice」にも使われている。グラスハープとはガラス製のグラス(ワイングラス)に水を入れ、濡らした指でグラスの縁に触れることで音を出す楽器。シンセでは再現できないような神秘的・幻想的な音色が出る。演奏は日本では珍しいグラスハープ奏者・大橋エリ。この曲は勇利やユーリが過去を回想するシーンに流れていた。冨永恵介は「スケートとの親和性を考じて、グラスハープの録音を採り入れたことが個人的には新鮮でした」と語り、「その刹那的で、アナログなサウンドが回顧的な雰囲気、繊細な緊張感などを生んでいたとも思います」とふり返っている。
 本作の劇伴音楽でエレキギターの音とともに記憶に残るのがピアノの音である。繊細な心情曲からドラマティックな曲まで、幅広いピアノ曲が映像を彩ることになった。
 にぎやかなピアノ曲の代表が「Showdown」(トラック13)。強いアタックで奏でられるジャジーな曲だ。曲名の「Showdown」とは「対決」の意。ワイルドな曲調がユーモラスな効果を上げている。本編では第3話冒頭の「これまでのあらすじ」や第8話のロシア大会でユーリがリンクメイトたちと再会する場面などに流れていた。
 トラック16の「Gigue in St.Petersburg」はピアノと弦楽器が演奏するロマンティックかつドラマティックな曲。大げさな曲調がかえってユーモラスだ。第2話でヴィクトルがロシアから日本へ旅立つ場面、第4話のリリア・バラノフスカヤ登場場面などに流れ、強烈な印象を残した。
 同じくロマンティックなピアノ曲がトラック23「Hug Tight」。第3話でヴィクトルの演技を見た勇利が「男と女の物語」を妄想する場面、第5話で演技前に緊張している勇利をヴィクトルが抱きしめる場面に使用された。ユーモラスな感じもあるが、シリアスな空気もただよう。松司馬拓が演奏するピアノも情感たっぷり。聴いていてドキドキする曲である。
 いっぽうで軽いジャズタッチの「Minako’s mood」(トラック17)は心が華やぐような3拍子の曲。こちらもピアノ演奏は松司馬拓。浮き立つ気持ちが伝わってくる。
 ピアノ曲の変わり種に、トラック24の「ピアノ練習曲ロ短調 (Piano etude in h-moll)」とトラック28の「Yuri on ICE (1st sketch)」がある。前者は第4話でユーリが演技の練習に使っていた曲。「スケトラ!!!」に収録された「ピアノ協奏曲 ロ短調 アレグロ・アパッショナート」のピアノソロ・バージョンだ。後者は同じく「スケトラ!!!」収録の勇利のフリースケーティング用曲「Yuri on ICE」の原曲である。劇中でも勇利がこの曲を演技用にブラッシュアップしていく描写がある(第4話)。いわば「スケトラ!!!」の舞台裏が聴けるわけで、本アルバムと「スケトラ!!!」とのつながりを意識させる。
 演技前の緊張感もピアノで表現される。トラック29「Tense 2」はリンクインする前のユーリの心情表現などに使われた曲。ピアノの低音と中高音が交互に鳴らされるだけのシンプルな曲だが、そのシンプルさが張りつめた心情や決意を伝える。実に劇伴的で実に効果的な音楽だ。
 その次の「Heartbeats」もピアノソロによる心情描写曲。劇中では勇利の気持ちが動く場面にピアノソロの短いフレーズがしばしば使われているが、その多くがこの曲の一部をアレンジしたものである。ただ、曲がそのまま使われているのは、たぶん第10話だけ。ほかの場面では別ヴァージョンか、もしかしたらそのシーン用に演奏したテイクが使われているようだ。が、サントラでこの曲を聴くと、傷心の勇利、自身のネクストステージについて思いを巡らす勇利、ヴィクトルに決意を伝える勇利などが思い出される。
 サウンドトラックの終盤には重要な曲が集められている。トラック31「Passacaille in Barcelona」はピアノとストリングスによる、フランス映画音楽のような切なく美しい曲。第10話の終盤、バルセロナの海岸でヴィクトルがもの思うシーンに流れていた。勇利とヴィクトルの関係の変化を予感させる音楽だ。
 次の「At The Airport」(トラック32)は第9話のラスト、勇利とヴィクトルの再会シーンに1度だけ流れたピアノソロの曲。淡々と降る雪を思わせるピアノの旋律が、後半では恋人同士の邂逅を描くようなロマンティックなタッチに変化する。本作の中でも音楽とドラマが一体になった名場面のひとつ。
 トラック33「Prism」はEnsemble FOVEのストリングスをフィーチャーした曲。弦合奏が少しずつ響きを変えながら鳴り続け、終盤から入るピアノが光のきらめきにも似た鮮やかな音色を聴かせる。印象派音楽を思わせる現代音楽風の曲だ。本編では第4話で勇利がヴィクトルと出逢って以来すべてが新鮮に見え始めたと思う場面、第5話で首位を獲得した勇利が勝利をかみしめる場面、第9話のグランプリファイナル開幕直前で盛り上がる会場の場面など、「ここぞ」という場面に使われている。
 次のトラック34「Circles」はシンセとストリングス、ピアノ、パーカッションなどによる軽快な楽曲。キラキラした音色が奏でる、軽やかに踊るメロディが心地よい。第3話のラスト、勇利がグランプリファイナルでの優勝を誓う場面で使われた。最終話(第12話)のラスト、勇利がヴィクトルにコーチを続けてほしいと伝えるシーンにもこの曲のアレンジ、もしくはミックス違いが流れている。曲名の「Circles」は円の複数形だが、勇利たちが氷上で描く円と、勇利たちが作る友情のサークル、そして物語が一周まわってもう一度始まる円環の意味をかけている気がする。
 ここまでで物語は完結。次のトラック35「Yeah Yeah Yeah」はアンコールのような曲だ。バンドとヴォーカルが演奏する陽気なお祭り騒ぎの音楽。第10話の特殊エンディング曲として、バンケット(大会後の選手たちの交流パーティ)のダンス合戦で盛り上がる勇利たちのモンタージュをバックに流れた。インパクト抜群だったので、アニメをご覧になった方なら覚えているだろう。冨永恵介はこの曲もお気に入り曲のひとつに挙げている。
 そしてもう1曲、トラック36「Piano Trio Appasionato」はジャズのピアノトリオ編成で演奏されるエネルギッシュな曲。「Appasionato」は「激情的」という意味で、その通り熱量の高い演奏がくり広げられる。使用されたのは第5話のラスト、勇利が「愛を知って強くなった僕をグランプリファイナルの金メダルで証明します」と宣言する場面。「明日への挑戦」とでも呼ぶべき場面で、曲の熱さが勇利の心に燃える思いを表現している。この曲がサウンドトラックの締めくくりに置かれたのは、勇利の挑戦がまだまだ続くことを示唆しているのだろう。実際、本アルバムが発売される3ヵ月前の2017年4月、『ユーリ!!! on ICE』の完全新作劇場版の制作が発表された。劇場版はいまだ制作中である。

 華やかなスケートプログラム曲に彩られた『ユーリ!!! on ICE』の世界。その「B面」とも呼べる劇伴音楽は、スケートプログラム曲とは異なる魅力を放って輝いている。リンクの中は勇利たちが命を燃やす青春の舞台。しかし、リンクの外にも青春がある。リンクの中と違って、素顔のまま、ときには弱さを見せたり、ときには人とぶつかったり、ときには羽目をはずしてみたり。それも青春だ。「ユートラ」はそういう曲を集めたアルバムである。

ユートラ ユーリ!!! on ICE/オリジナルサウンドトラック COLLECTION
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Oh! スケトラ!!! ユーリ!!! on ICE/オリジナル・スケートソング COLLECTION
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
331 アニメ様日記 2021年9月26日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年9月26日(日)
早朝散歩時にAudibleで「化物語」上の続きを聴いた。「ひたぎクラブ」が終わって「まよいマイマイ」に突入。神谷浩史さんの八九寺真宵も悪くない。
午前中は「色んな図書館に行ってみる旅」の第2弾。ワイフと江東区立豊洲図書館に行く。テラス席は確かに快適。テラス席でなくても、図書館内から海が見えるのも凄い。蔵書量は普通かな。大型の美術書が手に取りやすいところにあるのがよかった。子ども本のコーナーに大型絵本に「モチモチの木」の大型本があって、これもよかった。図書館を出た後、スーパーで弁当と酒を買って、海を見ながらそれをいただく。その後、ららぽーと豊洲を見て歩き、書店で本を買う。事務所に戻ってからデスクワーク。

2021年9月27日(月)
『ゲッターロボ アーク』を最終回まで観る。いつか1話から観直そう。
昨日の『サザエさん』のBパート「親孝行のススメ」。脚本は浪江裕史さん。波平とフネに親孝行するために、サザエは波平を蕎麦屋の昼吞みに誘い、マスオはフネと甘味処に行く。マスオがフネに「僕、前から一度、お義母さんとデートしたいと思ってたんです」と言う。シチュエーションもセリフも新鮮。これはマスオのイケメン発言と受けとめたい。マスオの母親を絡めたオチも綺麗だった。原作があるのかもしれないけど。

2021年9月28日(火)
早朝散歩時にAudibleを聴く。「化物語」が終了して、「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」を聴き始める。朗読はアニメ『ガンバの冒険』で主人公のガンバを演じた野沢雅子さん。朗読なので、基本的にキャラクターの演じ分けはしていない(後日追記。ボーボ役の水城蘭子さんの芝居を意識している思しき箇所があり、嬉しくなった)。色んなキャラクターの声がガンバの声で、ちょっと混乱したけれど、聴いていると『ガンバの冒険』に触れている気分になる。野沢さんの仕事としては、地の文章に感情をこめて読むところがとてもよかった。
「機動戦艦ナデシコ画集」の作業が大詰め。
緊急事態宣言が解除される前に書いておくと、酒が呑めないので外食でこってりしたもの、美味しいものを食べるモチベーションが落ちて、おかげでダイエットが成功。外食で使うお金も減って、お金の余裕もできた。
『Sonny Boy』を1話から最新11話まで観た。

2021年9月29日(水)
新文芸坐で「太陽の下の18才」を観る。プログラム「緊急最終上映! カトリーヌ・スパークに惑わされたい」の1本。群像劇であり、肝心のカトリーヌ・スパークの出番は多くはない。だけど、カトリーヌ・スパークは魅力的だった。あれはツイストでいいのかな、中盤の踊りの場面が素晴らしかった。新文芸坐ロビーに貼ってあったポスターを観るとコピーに「スパークする魅惑の18才!」とある。やっばり、スパークという名前をコピーに使うよね。僕が宣伝スタッフだとしたら、やっぱり使う。
「レジェンズ 甦る竜王伝説 Blu-ray BOX発売記念 第1話スペシャル放送!」を観る。本放送以来の視聴だけど、元気なアニメでとてもよかった。影中作画もいい。
「ちょっと粗いかな。余裕があったら書き直そう」と思った原稿があったのだけれど、InDesignに流し込んだ後、本の最初から最後までを目を通したら、気になった部分も「これでいいじゃん。上手に書けてるよ」と思えた。本ができあがって、数年経って読んだらどう思うかは分からない。

2021年9月30日(木)
Netflixで『範馬刃牙』の新シリーズを観ようかと思ったら、まだ配信が始まってないようだったので『ブルーピリオド』の再生を始めたら、能力者バトルが始まって、あれ、『ブルーピリオド』ってこんな内容だっけ。しかも、観たことのあるキャラや設定だなあと思いつつ、1話の最後まで観たら、間違って別タイトルを再生していたことが判明。
仕事で『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』の線画設定を見て、あまりの情報量の多さに驚く。僕が知る限りにおいて「かつてない情報量」。ページ構成をする立場としては燃える。いや、燃えるのは僕だけかもしれないけど。
「庵野秀明展」のプレス内覧会に行く。作画ファン的には「え、この原画が残っていたんですか!」「まさか生きているうちにこのカットの原画が見られるとは!」と思う資料が山盛りであり、夢のようだった。展示物もいいのだけれど、展示の仕方もよかった。感想を一言で言うと「圧倒的」だった。他にも思ったことはあるけれど、それはまた改めて。

2021年10月1日(金)
美味しいアジフライ定食を食べるために、ワイフと高田馬場に。予約をして行ったのだけど、よいアジが入荷しなかったために、この日は休業となった模様(本当にそういう店なのだ)。
高円寺方面で取材。アニメスタイルの書籍としては珍しく、インタビュアーは僕ではない。僕はインタビューに同席し、時々「それはこうではないですか」と確認したり、追加の質問を入れる感じ。1人目が1時間、2人目が3時間。合計4時間の取材となった。
斎藤佑樹さんが現役引退することを知る。『さよなら絶望先生』でハンカチ王子のネタがあって、原作で扱われた段階で、既に少し前の話題だったはず。他にも旬から外れたネタはあったけれど、特にハンカチ王子は気になったのを覚えている。『【俗・】さよなら絶望先生』の脚本打ち合わせで「これはこのままでいいんですかね」と訊いたら、新房監督が「10年後とかに観返した時に、そういえばそんなことがあったと思えるからいいんだよ」と言っていたのをよく覚えている。実際にそういう味わいになっているんだろうなあ。
Netflixで『範馬刃牙』の1話から10話まで観る。

2021年10月2日(土)
緊急事態宣言が解除され、営業を再開した築地食堂源ちゃん東池袋店に。ホッピーも呑む。その後、池袋を歩くと、磯丸水産をはじめ、色々な飲み屋で昼間から人が呑んでいて、酒呑みとしてはそれだけで嬉しくなる。15時55分から、ワイフと新文芸坐で「ときめきに死す」(1984/105分/BD)を観る。ブログラム「森田芳光70祭 in 新文芸坐 家族ゲーム|ときめきに死す|黒い家」の1本。タイトルだけを知っている映画だった。こんな内容だったのか。想像とまるで違った。登場人物と演出、それから当時の日本の風景がよかった。

第735回 父の最後

 前回に引き続き私事です。父が“癌でステージ4”だと知らされたのは2年前でしたか? 姉からの電話で。俺も浅い知識で高齢者は癌の進行が遅いと聞いていたし、既に80も過ぎていたので、緩やかに寿命を迎える時期かとくらいに思ってました、本音を言うと。実際、治療に入ったばかりの時は抗がん剤も効いていたらしく、その後の姉とのやり取りでも「お父さん、元気だよ」と、去年までは言っていたのです。しかし今年に入ってコロナワクチン接種のため、抗がん剤治療を一時中断したあたりから、徐々に「具合が悪い」との報告が来るようになって、奈良に嫁に行った姪(姉の長女)のフォト・ウェディング撮影が行われる際(家族が一同に会する最後の機会)も、本来12月に予定していたところを、父の体調から前倒しの10月になりました。

ところが、そのラスト・チャンス、自分は仕事が忙しく、不参加……!

結局、最後に父親と言葉を交わすことも出来ず終いに。
 そして、先月末(11月28日[朝])「お父さんが吐血した」と連絡が入り、次の連絡を待つように姉に言われて待機。結局その日の午後、「今すぐどうこうなる訳ではなさそう」と連絡が入りました。が即、次の日(月曜日)の夜、会社で会議中、甥(姉の長男)から「伸兄ちゃん、今すぐ(名古屋に)来れる!?」との電話。また、直ぐに出れる状況ではなく次の日(11月30日)の朝早く、名古屋に向かいました。10時、名古屋駅着。もう一人の甥(姉の次男)の車で迎えに来てもらい、そのまま病院に直行。到着した際、自分が父の額に手を当てるとまだ体温が残ってましたが、すでに父の意識はなく、間もなく担当医の先生が生命反応の確認。「11時38分、死亡確認とさせて頂きます」と仰り退室。
 ——本当に泣きました。亡くなるまで本当に何もしてやれなかった情けない長男で、申し訳ありません。せっかく息子として生まれたのに、父と男同士の会話とかなんてほぼ皆無。自身が好きだった野球にもプロレスにも相撲にも俺は完璧に無関心! 碌に一緒に遊んだ思い出もなく、ようやく一緒に酒でも飲めるようになるかと思えば、その前に上京。東京で専門学校からアニメーターになり忙しくて2~3年に1回くらいしか帰れていませんでした。こういうのを親不孝と呼ぶのでしょう。月並みですが、孝行したいときには親はなしで、もっと頻繁に実家に帰って一緒に酒酌み交わしたりしてたくさん話しておきたかった、とこれも後悔も先に立たずでした。父も俺に失望はしていたんじゃないでしょうか。
 ただ、そんな俺にあの不器用な父の方から積極的にニコニコと話しかけて来た時の事を憶えています。あれは、専門学校のアニメ制作のため、長期休暇中実家に帰らず、春・夏・冬休みは寮を追い出されるので本来は実家に帰るのがルールだったところ、友人の伝手で東京・墨田区で1ヶ月半ほど住み込みで新聞配達をやらせて貰い、無事制作を終え、帰省した時のことでした。自室で腰を下ろして荷物を片付けてた時、ニコニコと上機嫌で俺の前に座り、「新聞配達やってきたのか?」と。母の方から新聞配達の件を聞いたらしく、父は“知らないところで一人新聞を配って生活出来るようになった息子”と話がしたかったようでした。子供の頃、細くて色白、目が大きくてまつ毛も長く、画を描いたりパソコンのキーボードを叩いたりしていた自分の指の長い手を見ては「女の子みたいだ」と父が良く言ってたくらいひ弱だったはずの息子が「少しは逞しくなったか!」と。それと父の山形の生家は元々新聞屋をやってたので息子もその体験をして来たこと(多分、父も経験済み)が嬉しかったのでしょう。「何件回った?」「自転車か?」など、やっと息子と話が合ったので暫く話しました。
 ちなみにアニメの話にまた無理やり繋げると、『迷い猫オーバーラン!』(2010年/制作・AIC)で脚本・監督した第1話に出てくる少年は板垣の幼少期がモデル。自分が4〜5歳の頃、山形の父の実家で早朝ちょくちょくお爺ちゃん(父の父)の新聞配達に付き合って散歩した思い出が元になってます。
 後は帰省した際に、何回か(本当に数えるほど)一緒に酒飲んだけど、何話したのかは憶えていません。

 「父から見たら俺なんかつまらない息子だったに違いない」などと思いつつ、病院から自宅に父を連れて帰ると、ほどなくして山形から叔父(父の弟)と従兄(父の兄の息子)が駆けつけて来て、父の傍らで一緒に飲みました。叔父・従兄と会うのも何十年振りでしたから。その時、叔父から意外な話を聞きました。叔父曰く、

(父を指して)この人、伸の名前が出てるジブリの本さ持って来て、自慢してたぁ

と言うのです。本と言うのは多分『もののけ姫』の映画パンフレットのことかと。つまり、父が山形に帰省した際、パンフレットを持って「息子の名前が出てる」と皆に見せてたらしいのです。もちろん、板垣が監督した作品なんか観たこともないはずで、というか俺の仕事なんて無関心だとばかり思ってた父が、俺のことを人に自慢したことがあったらしいのです。

 それ聞いた時は、また泣けてきました。

 ……だめだ、またイラストなしで、且つまとまらなかった。

次回はアニメの話しますので、続かせて下さい……!

第734回 温厚な人柄

 また私事の続きで申し訳ありません。先週火曜日、82歳で亡くなった父親の話。WEBアニメスタイルの連載に相応しくない話かも知れませんが、アニメ監督・板垣 伸という人間の人格形成に深く関わる話なので、もう少々お付き合い下さいませ。興味のない方は飛ばして下さい。
 自分の両親は共に山形県出身。父親は集団就職で母親と一緒に名古屋に居着いたようです。因みに自分も生まれた場所は山形(血筋的には完全に東北の人間)。10代の頃までは毎年山形に帰っていた俺にとって山形は第二の故郷のような感じで、夏休みもしくは冬休み(年越し)に家族揃って山形に帰るのが大きな楽しみだったものです。でも、自分が18歳で東京に来てから30年間、一度も山形に行けてないのが本当に残念。むしろ物理的には近付いたはずなのに……。
 ここで無理やりアニメの話にするなら『Wake Up,Girls! 新章』でも、仙台まで取材に行ったのですが、時間的にも金銭面的にも余裕がなく、隣の山形に寄って行けなかった、てのも重ね重ね悔まれます。
 まあ、そんな感じで山形県出身のうちの父は学歴的には中卒(母も)。少なくとも俺の目の前で本の一つでも読んでいる姿を見たことがありません。時代・年代的なものでしょう。そもそも自分らの父親世代で大学卒というのは“学がある”云々より、“お金に余裕がある家の子”の象徴だったのだと思います。そのせいもあってか、父親の口から「勉強しろ」とか「大学行け」とか、これまた聞いたことはありませんでした。それどころか小・中・高の12年間、毎学期末出される成績表(通知表)すら、一度も見たことはなかったと記憶しています。
 かと言って、何かの事柄に関して強く説教されたことも、逆に物心付いた頃ならではの自分の悩みとか相談にのってもらったことも一切ありません。俺のこと、父自身のことに関わらず何事に対しても「な~にを言っとるか(笑)」「だ~いじょーぶだ(笑)」でやり過ごすのが父の性格。母親も傍らでよく呆れてたりイライラしてたりしました。
 つまり、父を一言で言い表すなら、

温厚な人柄!

です。大らかで温厚、細かいことに拘らない楽天家なザ・O型。因みに母はAB、姉・妹はB、そして自分はA。別に血液型性格判断なんて信じてないし、興味もないけどまあまあ“こじつけると面白い(by奥山玲子先生)かと思います。
 そんな、父の趣味はTV(野球・プロレス・相撲)を観るかパチンコ。後は晩酌くらい。それに対して俺の好きなことは、本読んでパソコン(昔の呼称はマイコン)でプログラムを作ったり、絵・マンガを描いたり、ゴルフやったりで、全く趣味が噛み合わず、少年の頃、父親と遊んだ記憶が殆どありません。多分、息子と遊ぶことを夢見る昭和オヤジの父はがっかりしていたと思います。現に俺が小学生になると即、(当時、欲しくもなかった)野球のグローブを無理やり買い与えたくらいです。微かな記憶では1~2回(?)一緒にキャッチボールをやったとは思いますが、ほぼそれが最後。以降、自分が父と同じ目線で遊ぶことはなかった?
 あと、幼少の頃で思い出されるのは、「お父さん、日曜くらい息子をどっか遊びに連れてって」と母が言うと、うちの父が俺を連れて行くのは大概パチンコ屋。父がパチンコに興じてる時、自分は面白がって、知らない大人達の足元に落ちている玉を一つ二つとかき集めては、父に持って行ったり、こっそり自分も打たせてもらったり(令和の今やると世間に怒られるけど)。で、パチンコ終わるとその足で立ち飲み屋。そこでも知らない大人達の足に囲まれてる俺にオレンジジュースを渡してくれる父。でも、その時垣間見た“雑多な大人の世界”は今でも瞼に焼き付いています。だって、普通にヤ●ザとか居ましたから。
 とにかく今思うと、不器用でそんな所にしか連れて行けなかったんでしょう、子供が面白がることや遊びをまるで知らなかった父は。
 ヤク●と言えば、確か自分が中学生の時、それまで無遅刻無欠勤だった父が1ヶ月程、会社を休んで家に居たことがありました。それはある日、父とその友人ら数名で花見をしていた時のこと。その友人の内の一人が酔っ払って、その辺に居た●クザらと喧嘩になり、父一人が「止めなさい、止めなさい」と割って入ったんです。すると喧嘩してた友人らは父一人を残し隙を見て退散(警察を呼びに行ったのでもありませんでした)。結局、残された父が肩を骨折するまでボコられるという事件があり、1ヶ月休職。その時の父は友人らに裏切られたと思ったのか、ちょっと落ち込んだように見えました。静かに耐えてたのでしょう。
 でも、休みが明けたと思うや否や、その友人らを今度は自宅に招き入れて一緒に酒盛り。つまり、父はその友人らを結局許すんです。そこへ肴を出す母が、相当苛立ってたのを自分は覚えています。「お人好しにもほどがある」と。
 今更ですが、父が働いていた会社は名古屋の某コンクリート製品製造会社。コンクリートを捏ねたり、フォークリフト使ったりの肉体労働系会社員で、消して高給取りではありませんし、自分は子供の頃から一度も父親に関する自慢話を他人(ひと)にしたことがありません。ただ、前述の骨折した時以外は風邪一つ引かず無遅刻無欠勤で45年?(定年延ばしてもらったとか言ってたのでもう5年プラス?)。月曜~土曜日が朝6時半に家を出て夜8時半まで、日曜日が昼までの週休半日(?)。今ではこんな働き方を国が許してくれませんが、昭和から見ても、うちの父は働き者だったと思うし、その影響は自分、多大に受けてると思います。更に父からは仕事の愚痴を聞いたことがありません。そりゃあ、たまには「○○さんはダメだぁ~(笑)」とか「○○が悪い~(笑)」的な人並みの陰口は当然出ますが、そんなに陰湿なものでなく、あくまで“(笑)”付き、気持ちよく諦めるためのもののようでした。
 基本的に相手の陽性な部分を信じて他人と付き合い、多くは期待せず、許し、自身の主義・主張は決して相手に押し付けず、愚痴ることなく、いつもニコニコしていた父。そして多くは語らない所で実は耐えていたんだと思います。
 また、ちょっとアニメの話ですが、以前某プロデューサーさんから、ネットでの板垣や会社に対する誹謗中傷について「あのまま放置でいいんですか?」的な訊かれ方をしたことがあります。自分は「放って置きます」と。無意識の内に父と同じ、黙って耐える——を選択します。理屈や言い訳する暇があったらとにかく耐えて、何しろ楽しく働く! そして学識も哲学も語彙力も関係ない——父の口癖、「大丈夫だ!」と。そんな人間になりたい。

 ……だめだ、まとまらない。

次回に続かせて下さい!

 で、イラストもなくて申し訳ありません。

アニメ様の『タイトル未定』
330 アニメ様日記 2021年9月19日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年9月19日(日)
1978年のNHKのラジオドラマ「銀河鉄道999」がラジオアーカイブスで放送されることを知り、他のラジオドラマ「銀河鉄道999」が気になって検索したら、「キリン夜の図書館」版の「銀河鉄道999」がネットにあった。吉田理保子さんがメーテルを演じているものだ。「キリンラジオ劇場」ではなくて「キリン夜の図書館」だったか。鉄郎の配役は記憶と違っていた。以前、コラムで間違って書いてしまった。
午前8時からの回で『劇場版 Free!-the Final Stroke-  前編』を観る。カット割りがロング、バストショット、アップショット、ロング、バストショット、アップショットのようなかたちを繰り返していることに気づき、そこに注目して観る。「ロング、バストときたから次はアップだな」という感じ。

2021年9月20日(月)
スケジュールを作成しながら、新文芸坐のブログラム「波乱と官能 大島渚」は行けそうもないなあ、と思っていたところで、いや、今からなら行けると気づいて、9時40分からの回で「御法度」(1999/100分/35mm)を観る。この映画は初めて観た。役者に魅力があるのだけれど、物語としてはもう一押し、二押し欲しかった。新文芸坐に掲示されていたこの映画のポスターがかなり派手なもので、インパクトあり。当時も劇場で見て同じことを思ったはず。
昼はワイフと外食。初めて入った店で、自分達の階は貸し切り状態。風通しがよく、他の階のお客さん達が騒いでいる声が遠くから聞こえてきて、それも心地よかった。「色んな図書館に行ってみる旅」の第1弾で、ワイフと豊島区立中央図書館に行く。図書館で執事喫茶とのコラボ企画があるのはさすがは池袋。トキワ荘関連のコーナーもあり、手塚治虫、藤子不二雄の作品が充実。「アポロの歌」「やけっぱちのマリア」「空気の底」といった最近のB5判単行本がズラリとあったのは驚き。アニメ関連だと、ジブリのコンテ本が充実。弊社の本だと『バケモノの子』『サマーウォーズ』のコンテ本、「この人に話を聞きたい」の単行本もあった。ありがたい。それから「アニメスタイル」の『おそ松さん』特集号がトキワ荘のコーナーにあった。

2021年9月21日(火)
グランドシネマサンシャインの8時20分からの回で『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』4Kリマスター版【IMAXレーザーGT】を鑑賞。公開当時に『GHOST IN THE SHELL』の映像について「作り込んである、リアルだ」と思ったし、それは事実だったわけだけれど、今回の4Kリマスター版【IMAXレーザーGT】を観ると、映像についての感想が「手描きの味わいがある」になる。半分は4Kリマスターで映像が細密になり、スクリーンが巨大化したためであろう。演出(絵コンテ)については、当時は「特殊なスタイルだけど、かっこいい」だったはずで、今では「絵コンテが巧いね。流石だね」となる。これは我々の感覚とアニメの演出が変わったためだろう。物語については、一部の用語をのぞけば古びておらず、むしろ、理解しやすくなっていると感じた。押井さんは「100年残る作品を作った」と言ったそうだけれど、狙い通りの映画になっているのではないかと。
「僕の心のヤバイやつ」の最新回を読む。気になっているのは、市川が「山田に釣り合う存在」になるため、努力を始めるのかどうかだ。努力するのもあり、しないのもありだと思う。

2021年9月22日(水)
いかん。『映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』を観直したばかりなので「私の名は☆☆☆☆。☆☆☆☆であり、☆☆☆☆する者なり」なんてセリフを聞くと、紅魔族の人かと思ってしまう。
体組成計を購入。早速使ってみる。乗るだけで、こんなに色々な情報が分かってしまうの? これは未来だなあ。体脂肪はもうちょっと落としてもいいなあ、内臓脂肪は徐々に改善できるといいなあ。体内年齢は43歳らしい。
年末に出す予定の書籍3冊のスケジュールを練り直す。そのうちのひとつの編集作業の工程を見直す。
深夜アニメの最終回を片っ端から観る。『スター・ウォーズ:ビジョンズ』は全9話中7話を観た。

2021年9月23日(木)
秋分の日。昼から映画に行こうかとも思ったけれど、翌日の仕事が大変になりそうだったので見送る。15時からワイフと外出。缶ハイボール等を買って、某所の芝生の上で呑んで、移動してまた呑む。休日らしい時間でワイフは大層喜んでいた。
小冊子表紙まわりのラフを描き上げて、iPad Proのアプリ内を見たら、同じラフを5日前に書いていた。表1の指示のみがバージョンアップしているけど、他は同じだった。
散歩時に「美少女戦士セーラームーンS 音楽集」を聴いた。これは自分が曲構成をしたCDで、構成を失敗したような気がしてずっと聴いていなかった。改めて聴いたら悪くない。というか好みのサントラだった。

2021年9月24日(金)
午前8時20分から「レミニセンス」【IMAXレーザーGT字幕版】を観る。思っていた映画と随分と違った。都市が水没した世界という設定なのだけれど、それは物語の大筋にはほぼ絡まないのね。愛した女性を探し求めてグタグタになっていく主人公は、自分的には感情移入しやすいタイプなんだけど、それだけにちょっと観ていてきびしかった。
告白すると「FGO」と「FOD」の区別がついていない時期がありました。「Fate/Grand Order」と「フジテレビオンデマンド」ね。似てるじゃん。全然違うけど。
ちまちまと読んでいた「文庫解説ワンダーランド」を読了。著者は斎藤美奈子さん。大変に面白く、刺激にもなった。やる気も湧くけれど、本を書いたり、解説を書いたりするハードルが高くなるなあ。

2021年9月25日(土)
バルト9で「カラミティ」を観る。画作りは魅力的。見当外れの感想かもしれないけれど、お話としてはラストシーンの後を観たかった。
突然だけど、映画『幻魔大戦』について。「徹底したリアリズム」で始めて、それによって世界観を構築し、クライマックスに金田伊功作画を投入して「リアリズム VS 自由奔放なアニメーション」の構図にもっていく。その発想は100点満点で200点だったと思う。
散歩中にAudibleで「化物語」上巻を聴き始める。これはいいかも。

第220回 夢と冒険の始まり 〜ふしぎの海のナディア〜

 腹巻猫です。六本木の国立新美術館で開催中の「庵野秀明展」。展示物の量も内容すごいし、ほとんどの展示品が撮影可なのがうれしい。筆者はすでに2回行きました。アニメ・特撮ファンは必見です。いよいよ東京会場の会期は12月19日まで。これから観ようという方は時間とカメラのバッテリーに余裕を持って行くことをお奨めします。あと、図録は買ったほうがいいですよ。重いけど……。


 今回は庵野秀明の初期の監督作品『ふしぎの海のナディア』の音楽を聴いてみよう。
 『ふしぎの海のナディア』は1990年4月から1991年4月までNHKで放映されたTVアニメ作品。ジュール・ベルヌの「海底二万マイル」が原案としてクレジットされているが、内容は大幅にアレンジされている。
 物語の始まりは1889年のフランス。パリで開催された万国博覧会にやってきた発明好きの少年ジャンはサーカスの少女ナディアと出逢い、ひとめぼれ。怪しい3人組に追われるナディアをジャンが助けたことから2人の冒険が始まる。やがて、ジャンとナディアはネモ船長が指揮をとる万能潜水艦ノーチラス号に窮地を救われて乗船、ノーチラス号と世界征服をもくろむ秘密組織ネオ・アトランティスとの戦いに巻き込まれていく。
 19世紀を舞台に個性的なキャラクターや超科学兵器が活躍するちょっとレトロな雰囲気の大冒険物語だ。放映終了後も劇場映画が作られるなど根強い人気があり、今年(2021年)は放映開始30周年記念の「ふしぎの海のナディア展」が開催された。

 音楽はのちに『新世紀エヴァンゲリオン』に参加する鷺巣詩郎が担当。本作が庵野秀明監督との出逢いになった。
 放送当時発売されたサウンドトラック・アルバム「ふしぎの海のナディアVol.3」のライナーノーツで庵野秀明が本作の音楽について語っている。それによると、『ふしぎの海のナディア』は絵柄や設定デザイン、世界観、セリフ回し等、すべてにおいて「70年代」にこだわった作品。音楽もあえて「70年代から80年代のもの」をリクエストしたそうだ。いわく、
 「’70年代のフォークやロック。そして、クラシックとジャズ。それと私が好きな曲。後はいわゆる劇伴。これらで『ナディア』の音楽は構築されています」
 実際、『ふしぎの海のナディア』の音楽を聴くと、後年の鷺巣詩郎作品のゴージャスな感じとはずいぶん違う。オーケストラの編成は大きくないし、シンセサイザーや現代的なリズムはほとんど使用せず、古典的な音楽スタイルで書いている。
 もっとも筆者が「70年代」のSF映像音楽と聞いてイメージするのは、ワイルドなブラス、グルーブ感満点のエレキベース、エフェクトを効かせたエレキギターなどが鳴り響く、70年代ロボットアニメや特撮ヒーロー番組の音楽。それに対して『ナディア』の音楽はもっとオーソドックスでクラシカルだ。同じ70年代でも『未来少年コナン』や世界名作劇場、あるいはもう少し時代が古い東宝特撮劇場作品の音楽に雰囲気が近い。たぶん、70年代ロボットアニメ風だと物語の時代設定に合わないし、かえってカッコ悪くなるという判断なのだろう。結果的に『ナディア』の音楽はレトロだけれど時代を経ても色あせない普遍性のある音楽になった。
 本作のサウンドトラック・アルバムは1990年5月に「ふしぎの海のナディア」のタイトルでユーメックス/東芝EMIから発売された。同年9月にはサントラ第2弾が「ふしぎの海のナディアVol.2」のタイトルで、同年12月に第3弾が「ふしぎの海のナディアVol.3」のタイトルで発売。放送中に3枚のサントラ盤がリリースされたことからも、当時の人気の高さがうかがえる。
 上記3枚のアルバムに未収録のBGMは、1991年1月発売の企画アルバム「ふしぎの海のナディア MUSIC IN BLUE WATER」と1992年1月発売のカラオケ集「ふしぎの海のナディア KARAOKE COLLECTION」で補完された。
 ふつうならこれで終わりとなるところだが、『ナディア』の人気はまだまだ衰えない。1993年3月に、歌もの、ドラマ、BGMなどすべての音源を集めた11枚組CDセット「ふしぎの海のナディア The Complete Blue Water」が発売された。そのうち4枚がBGM編で、残っていた未収録曲を含むすべてのBGMがMナンバー順に収録されたのである。この4枚はのちに「ふしぎの海のナディア オリジナル・サウンドトラック ツインベストVol.1」「同Vol.2」の2タイトルに再編されてリリースされている。
 「結局どれを聴けばよいの?」ということになるが、基本は放送当時発売された3枚のアルバム(3枚をセットにした「Forever NADIA」というパッケージもある)。ひととおりの楽曲はそろうし、『ナディア』の世界をイメージした曲順で聴くことができる。全BGMをコンプリートしたいなら、「オリジナル・サウンドトラック ツインベスト」の2タイトルをそろえればよいだろう。こちらはライナーノーツにBGMリストと使用話数が掲載されているのでマニア向けだ。ただし歌は収録されていないから、主題歌などが聴きたい場合は別のアルバムを入手する必要がある。
 今回は最初に発売されたアルバム「ふしぎの海のナディア」を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. ブルーウォーター(歌:森川美穂)
  2. 物語の始まり
  3. 羽ばたけ大空へ
  4. ノーチラス号、大海原をゆく
  5. 快適な艦内
  6. Real Heart(歌:松下里美)
  7. 黎明
  8. 万能潜水艦
  9. The Secret of Blue Water(アイキャッチ)
  10. 海のたたかい
  11. ノーチラス号出撃!
  12. 恋人がいる時間(歌:松下里美)
  13. パリ万博
  14. サーカスの少女
  15. 孤独とやすらぎ
  16. 寛ぎの時
  17. グランディスの追跡
  18. Yes!I will…(歌:森川美穂)

 森川美穂が歌う主題歌2曲と松下里美が歌うイメージソング2曲、そしてBGM14曲、計18曲を収録。収録時間は46分ほどで、CDアルバムとしてはコンパクトだ。
 本作の音楽が70年代、80年代を意識していることはすでに紹介したが、アルバムの作りも70〜80年代のアニメサントラをほうふつさせる。
 ユーメックスは、キングレコードで『機動戦士ガンダム』などの音楽制作を担当し、スターチャイルドレーベルを立ち上げた藤田純二氏が興した会社。なんとなく作りがスターチャイルド時代のアルバムに似ているのである。サントラ1枚目に主題歌をフルサイズで入れ、2枚目にTVサイズを入れる構成や、アイキャッチを挟んで前半(Side-1)と後半(Side-2)に分ける構成など、懐かしいスターチャイルドのアニメサントラの匂いがする。なによりアルバムのタイトル。メディアによっては「ふしぎの海のナディア オリジナル・サウンドトラック」と表記されているケースがあるが、正式なタイトルは「ふしぎの海のナディア」。2枚目以降も「ふしぎの海のナディアVol.2」「同Vol.3」と続き、「サウンドトラック」や「音楽集」の表記は付かない。これも「伝説巨神イデオン」なんかと同じである。あえて80年代サントラ・アルバムのスタイルにこだわったのではないだろうか。
 収録内容は、発売が放送開始から約2ヶ月後(第7話放送のあと)ということもあってか、イメージアルバム的構成になっている。
 トラック2「物語の始まり」は、第1話のアバンタイトルに使われた、物語の幕開けを告げる曲。Mナンバーは「A-1」が割り当てられている。不安な曲調で世界の危機を表現する音楽である。
 その不安を吹き払うようにトラック3「羽ばたけ大空へ」が続く。空を飛ぶジャンをテーマにした曲である。第2話のラストでジャンが自作の飛行機にナディアを乗せて飛ぶ場面に流れた。ピアノソロの序奏から始まり、ストリングスや管楽器が加わって盛り上がっていく。メインとなる旋律は別の曲にアレンジされてジャンやナディアの心情を描写する場面などに使われているので耳なじみがある人も多いだろう。サントラVol.2に収録された「明日へ」という曲である。
 続いては南の海を連想させる曲「ノーチラス号、大海原をゆく」。海洋を悠々と進む船の姿が目に浮かぶ曲調だ。第9話でジャンたちの前にノーチラス号が現れる場面が初出。次のトラック「快適な艦内」はノーチラス号の館内生活をイメージしたヨーロピアンロック風の明るい曲だ。
 イメージソング「Real Heart」をはさんで、トラック7「黎明」は夜明けのイメージの曲。ホルンをはじめとする金管楽器のアンサンブルにストリングスが加わり、重厚な雰囲気で演奏される。「さわやかな朝」というよりも緊張をはらんだ旅の始まりといったイメージ。本編では第26話のラスト近く、ジャンがネモ船長の夢を見るシーンで初めて使われた。
 トラック8「万能潜水艦」もノーチラス号のテーマだ。高揚感たっぷりの序奏部分から躍動的なリズムをバックにしたジャジーな曲に展開する。第4話でジャンとナディアを乗せたノーチラス号が航行を開始する場面に流れたのが初出。海洋冒険アニメらしい名曲のひとつである。本編では、ほかに第10話、12話、36話でしか使われず、出番が少なかったのが惜しい。
 アイキャッチ音楽に続くトラック10は「海のたたかい」。戦闘シーンを描写するスリリングな曲である。第3話、第4話でのノーチラス号対ネオ・アトランティス潜水艦の戦いの場面などに使われた。弦と金管とピアノが複雑にからみあう現代音楽的なオーケストレーションが緊迫感を盛り上げる。
 勇壮なファンファーレから始まるトラック11「ノーチラス号出撃!」はタイトルどおりノーチラス号の出撃をイメージした曲。超科学兵器の活躍を流麗な曲調で描写するカッコいい曲だ。第8話でノーチラス号が浮上する場面にファンファーレ部分が流れたほかは、第23話のアバンタイトルに使われただけという、ちょっと不遇な曲でもある。
 ここまでが、本編へのプロローグとなるイメージアルバム的構成の部分。
 筆者の解釈ですが、ここまではジャンがナディアと出逢う前、つまり、アニメ本編で描かれる以前の物語を音楽で表現したパートではないかと思う。世界の危機〜主人公ジャンの紹介〜人知れずネオ・アトランティスと戦っているノーチラス号。『ナディア』の見せ場であるノーチラス号の活躍を本編にさきがけて音楽で紹介するために、このような構成にしたのではないかな。

 物語はここから始まる。
 イメージソング「恋人がいる時間」に続いては、第1話と第2話で使われた曲が収録されている。
 トラック13「パリ万博」は第1話冒頭でジャンがパリ万博を訪れる場面に流れた曲。次の「サーカスの少女」は同じく第1話でジャンがサーカスの会場でナディアを探す場面に使われた。どちらもアコーディオンやストリートオルガンの音色を効果的に使った、19世紀のフランスで実際に流れていそうな曲だ。こういう「○○風」の音楽を書かせても鷺巣詩郎は実にうまい。
 アコースティックギターとフルート、オーボエ、ピアノなどがリリカルに奏でるトラック15「孤独とやすらぎ」はナディアのさびしい心情を表現する曲。第1話でサーカスを抜け出してきたナディアがパリの街並みを眺めてもの思う場面に流れている。美しいメロディと音色がちりばめられた、思わず胸がキュンとなるようないい曲だ。本アルバムの聴きどころのひとつである。
 次の「寛ぎの時」はフルートとハープを中心に奏でられる穏やかな曲。第2話でナディアがジャンの故郷で朝を迎える場面に使われた。音楽メニューは「お茶の時間(バロック調、室内音楽)」。世界名作劇場風の1曲だ。
 トラック17「グランディスの追跡」は使用頻度の高い追っかけの曲。初期のエピソードでは怪しい3人組——グランディス、サンソン、ハンソンがナディアをとらえようとする場面に使われていた。ジャンとナディアの運命は? まだまだ物語はこれから、というところでアルバムは終わる。

 『ふしぎの海のナディア』を観終わったあとでこのアルバムを聴くと、よく使われる曲があまり入っていないので物足りなく感じるかもしれない。が、当時サントラを手にした人は「これからどんな展開が待っているだろう」とわくわくしたはずだ。その期待にたがわず、2枚目と3枚目のサウンドトラック・アルバムにはネオ・アトランティス側の曲やジャンをとりまくさまざまなキャラクターの曲がたっぷり収録されている。サントラとしての満足度はこちらのほうが高い。
 しかし、それでも1枚目のアルバムは魅力的だ。CDの帯には「ファン待望の大型アニメ。ナディアを取りまく夢と冒険、陰謀と謎!」の文字が躍る。このアルバムには、これから展開する壮大な物語を予感させる音楽が集められている。夢と冒険はここから始まったのだ。

ふしぎの海のナディア
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ふしぎの海のナディア オリジナル・サウンドトラック ツインベスト Vol.1
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ふしぎの海のナディア オリジナル・サウンドトラック ツインベスト Vol.2
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アニメ様の『タイトル未定』
329 アニメ様日記 2021年9月12日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年9月12日(日)
Facebookで亡くなられた福田淳さんの誕生日を知り、寂しい気持ちになる。生きておられたら今日で50歳。お若かったんだなあ。

原稿の合間に新文芸坐へ。ワイフと「緑の光線」(1985・仏/98分/DCP)を観る。プログラム『「エリック・ロメール 「六つの教訓話」+「喜劇と格言」+3』の1本であり、ワイフが前から観たがっていた映画だ。新文芸坐では何度か上映されており、その度に観ようとしたのだが、仕事が入ったり、ワイフの体調がよくなかったりして、今まで観ることができなかった。タイトルから予想する内容と、随分と違っていたけれど、観ることができてよかった。16時から吉松さんとSkype飲み。

2021年9月13日(月)
「この人に話を聞きたい」の原稿と、進行中の書籍の作業。原稿の参考で、映画「ハッシュ!」をレンタルDVDで観る。原稿とは関係ないけど、Amazon prime videoで『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』も観る。

2021年9月14日(火)
作業をしながら、Amazon prime videoで「私をくいとめて」を視聴。主役ののんさんは役柄に対して若すぎないかな。見た目も、実年齢も。役にあってないというわけではないのだけど。それは別として、のんさんのファンとしては楽しめた。橋本愛さんとの共演は「あまちゃん」ファンとしてはかなり嬉しい。他にも実写映画、海外のCGアニメ等を観た。

2021年9月15日(水)
ネットで、安彦良和さんの新作映画として『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が制作されることを知る。「安彦良和 マイ・バック・ページズ」の最後で話題になっていた、安彦さんが監督を務める「新作アニメーション」が、この作品なのだろう。同書籍では『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』本編の映像化がなくなったこともにも触れられていた。『ガンダム』ファンとしては「ククルス・ドアンの島」が劇場作品として新たに作られるだけでも驚く。しかも、安彦さんにとって、これが最後の監督だという覚悟があるのではないか。どんな作品になるのか楽しみだ。
午前9時からTOHOシネマズ池袋で「座頭市物語(4Kデジタル修復版)」を鑑賞。「午前十時の映画祭11」の1本だ。観たい新作映画もあったのだけど、上映時間が合わず、この映画を観ることにした。上映が始まってから気づいたけれど、この映画は前にも観ていた。以下が感想。演出がいい。影を作った画作りもいい。長回しカットの構図もよかった。話について、蓼吉の立ち位置が分かりづらいのが気になったけれど、それ以外は満足。4K上映だけあって、映像もよかった。4Kの威力が発揮されたのは市のアップ等。
9ヶ月ぶりか、1年ぶりにラーメンを食べた。ダイエットをしていたので、食べるのを控えていたのだ。あすけんで入力してみると数値的には問題がないのだけれど、気分的にはギルティ。

2021年9月16日(木)
早朝散歩は続いている。散歩ルートに、いつも同じ場所にいる猫がいる。声をかけても、不機嫌そうに睨みつけてくる。今までは近づくと逃げていたのだけど、なんとなく今日は触れるのではないかと思って手を伸ばしたら、頭をなでることができて、さらにお尻ポンポンを要求してきた。ワイフがポンポンをしたら、頭をスリスリしてきた。身体を持ち上げても怒らない。目つきは悪いけど、意外と甘えん坊だった。ツンデレだったのか。諦めないで、彼に挨拶し続けてきてよかった。
ワイフとグランドシネマサンシャインに。午前8時45分からの回で「シャン・チー/テン・リングスの伝説」【 IMAXレーザーGT字幕版】を観る。これはよくできている。物語が常に淀みなく進む。観客にストレスを与えない。飽きさせない。主人公は悩んでもいい状況なんだけど、悩まない。かと言って薄っぺらいかというと、そんなこともない。同じストーリーで、もっと退屈な出来になってもおかしくないはずだ。
事務所に戻ってデスクワーク。気になって配信で「アイアンマン3」を観た。「シャン・チー/テン・リングスの伝説」の途中で出てきた役者の男って「アイアンマン3」にも出ているのね。

2021年9月17日(金)
午前中の散歩で『リズと青い鳥』のサントラを聴く。いいね。これはいい。
TVアニメ『らんぽう』がDVD BOXになることを知った。これは1984年に放送されたギャグアニメで、作画的な見どころは多かったはず。いつか再見できると思っていたのだけれど、ビデオソフトにならず、観る機会がなかった。だから、今回のソフト化は嬉しい。
この日に読んだわけではないけれど、雑誌「Casa BRUTUS」の2021年10月号「大人も読みたい藤子・F・不二雄100」に目を通した。かなりよい。雑誌好き、書籍好きとしては痺れた。 画集のような、美術展の図録のような落ち着いた作りでありながら、実は雑誌の特集でしかありえないもの、というところがいい。

2021年9月18日(土)
池袋HUMAXシネマズの9時45分からの回で『岬のマヨイガ』を観る。「血の繋がらない3人の疑似家族」「大震災の後の人々の暮らし」「意志をもった家」「妖怪たちのいる世界」「主人公と父親の関係」「喋ることができなくなった少女」「妖怪バトル」と、驚くくらいに盛り沢山。無理にまとめている感じはあったけれど、破綻はしていなかったと思う。一番面白かったのは河童達が登場する場面だ。演出的にはロングショットを多用しており、歩くカットが多い。SNSで話題になった大平晋也さん風の昔話パートは、おそらく太平さんの作画ではないだろう。
午後はデスクワーク。この三連休は休み休み作業をするつもりだったのだけど、ある作業に手をつけたところ、集中して一気に進めたほうがよさそうだったので、休まずにやって終わらせてしまう。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 133
2021年の傑作!! ポンポさん・肉子ちゃん・ハサウェイ

 2021年は劇場アニメーションが豊作の年であり、見応えのある作品が何本も公開されました。12月18日(土)のオールナイトでは、その中から3本を選んで上映します。上映作品は『映画大好きポンポさん』『漁港の肉子ちゃん』『閃光のハサウェイ』です。

 なお、『映画大好きポンポさん』はクラウドファンディングで実現した35mmフィルムバージョンでの上映となります。

 トークのゲストは『映画大好きポンポさん』さんの平尾隆之監督、『漁港の肉子ちゃん』の渡辺歩監督。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 チケットは12月11日(土)から発売開始。前売り券の発売方法については、新文芸坐のサイトでご確認ください。なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要です。入場時に検温・手指の消毒を行います。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.133
2021年の傑作!! ポンポさん・肉子ちゃん・ハサウェイ

開催日

2021年12月18日(土)

開場

開場:22時10分/開演:22時30分 終了:翌朝5時00分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般3300円、友の会2800円

トーク出演

渡辺歩監督、平尾隆之監督、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『映画大好きポンポさん』(2021/94分/35mm)
『漁港の肉子ちゃん』(2021/97分/DCP)
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021/95分/DCP)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第182回アニメスタイルイベント
アニメ様と仲間達の酔っ払いトーク

 2021年最後のトークイベントは「アニメ様と仲間達の酔っ払いトーク」。本誌の小黒編集長とゲストの方々が、アニメについて語るというものです。

 現在のところ決まっているゲストは、『海獣の子供』『漁港の肉子ちゃん』等の監督で知られる渡辺歩さん、撮影監督の泉津井陽一さん、「サムシネ!」でもお馴染みのアニメーター&マンガ家のサムシング吉松さんです。追加のゲストが決まった場合は改めて告知します。

 今回のイベントはパートごとにゲストが登場し、パートごとに別の話題でトークを展開するかたちとなります。渡辺歩さんには近況とこれからの仕事、泉津井さんには主に2021年のアニメの撮影について話をしていただく予定です。

 気楽で肩の凝らないイベントになるはずです。今回のイベントも配信しますが、配信するのはイベントの一部、あるいは半分ほどになるかもしれません。

 開催日時は12月11日(土)の昼で、会場はAsagaya / Loft A。チケットは〈会場での観覧+配信視聴〉と〈配信視聴〉の2種類を販売します。配信は先行してロフトグループによるツイキャス配信を行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。  

 チケットについては11月27日(土)からチケット発売となります。詳しくはLOFT PROJECTのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT PROJECT
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/broadcast/198402

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第182回アニメスタイルイベント
アニメ様と仲間達の酔っ払いトーク

開催日

2021年12月11日(土)
開演12時 終演15時予定

会場

Asagaya / Loft A

出演

小黒祐一郎、渡辺歩、泉津井陽一、サムシング吉松

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
  アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第732回 『巨人』と『ばら』と長浜アニメ

「ぴあ」から出ているDVD-BOOKシリーズ、『巨人の星』と『ベルサイユのばら』毎月買ってます!

 俺的にはこの“ぴあシリーズ”、『あしたのジョー』から始まり『宝島』『ガンバの冒険』『スペースコブラ』『エースをねらえ!』『家なき子』で一旦休止(終了?)になった出﨑統監督作品シリーズの流れで買い始めた『巨人の星』、そして『ベルサイユのばら』! これらは偶然なのか? 狙いなのか? 両作とも長浜忠夫監督作品。厳密にいうと『巨人の星』は第1~85話までは役職クレジットが“構成”(まあやってる仕事内容は後半同様“演出”のはずですが)、あとこれは今更語るまでもないことかとも思うのですが『ベルばら』の方は第13話で降板(第19話以降は出﨑統監督作品)です。
 順番に説明すると、『巨人の星』は何せ1968年放送開始のアニメ、1974年生まれの自分がリアルタイムで楽しんでいたはずがなく、もちろん再放送でした。確か名古屋で朝7時30分~とか学校行く準備してる時間帯にアニメの再放送枠があり、それで観ていた気がします。特に野球に全然興味がなかった俺にとっては、着替えたり飯食ったり登校準備の方がよほど重要で、内容は殆ど憶えていません(スミマセン)。ただ、何故か「大人って、魔球やら特訓やら色々あって大変なんだな〜」という空気を感じていたように思います。
 そして、『ベルばら』に関しては自分が出﨑ファンになってからバックナンバーとして、当時ビクターが出していたビデオ全集(VHS)全10巻をビデオレンタルで借りて観て——なので、正直「出﨑監督作品以外のアニメに用がなかった」当時の自分は、確か5巻から見始めてて、前半の長浜監督話数はノーチェックでした(これまたスミマセン)。演出家(監督)の違いなんて興味まるでなしのウチの姉貴は、最初から全話じっくり楽しんでましたが。
 で、この機会に毎月買って全話追っかけて観直しているんですが、素直に

面白いじゃないかっ!!!

と。失礼ながら、我々小学校高学年になると『タッチ』とかがアニメになった世代だけに、『巨人の星』のオーバー・リアクションな長浜演出って、やっぱり恥ずかしかったです。ところが逆に今、大人になってから見返してみると、自在に変化する色使いや動物にメタモル! といった、一歩間違えると笑いになりそうな演出が、団塊ジュニアの俺らから見た当時の大人の怖さ・威圧感をよく表現していると思い、「わかる、わかる!」でした。同様のことが長浜版『ベルばら』にも言えて、美しく可憐な少女漫画の世界に激しく、そして“恥ずかしい!”劇的な演出のオンパレードで、今観ると、後半の出﨑『ベルばら』とは違った魅力に溢れています!

そう!“大人って恥ずかしいもの”なんだ! ただ、その“恥ずかしい”を真正面から受け入れて一所懸命生きるしかないのが、所詮「人生」ってもの! 過剰な演出を照れているようではまだまだ子供だ!

 いや、板垣は反省しました。出﨑監督が生前インタビューで「『巨人の星』は劇画じゃない」や「(前半の『ベルばら』は)捉え方が少女漫画的過ぎる」などの否定的な意見を、“崇拝している出﨑監督が仰るんだから”とよく観もせず鵜呑みにしていた、ということを! やっぱり、

自分が尊敬する巨匠が仰ることに対してでも、己の意見はちゃんと持ってその是非を判断する冷静な目を持つ!

ということが大切なのだと思いました。
 そして、来月発売分から出﨑統監督作品の『ベルばら』が始まります。

アニメ様の『タイトル未定』
328 アニメ様日記 2021年9月5日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年9月5日(日)
早朝散歩は続いている。この日は歩きながら「蟲師 オリジナルサウンドトラック 蟲音 全」を聴いた。夜明け前とか、早朝とか、静かな時間に向いているサントラだ。その後は原稿作業。早く終わらせて映画に行くことを目標にして、サクサクと進める。
10時40分から新文芸坐で「コレクションする女(1967・仏/87分/DCP)」を観る。プログラム『エリック・ロメール 「六つの教訓話」+「喜劇と格言」+3』の1本。エリック・ロメールの映画は新文芸坐でやる度に行こうかと思っていたのだけれど、観たのはこれが初めて。これは観たかったタイプの映画だ。男と女の話で、女優がよくて、その撮り方もよい。ちょっとエロい。語り口もいい。テンポもよい。フレームの使い方もいい。こういう映画を観ると「スタンダードサイズでも映画は映画だ」と思う。主人公には共感できないし、セリフや感情の流れに分からないところもあったけれど、トータルでは満足。久しぶりに「映画を観たい欲」が満たされた。
就寝前に「ルックバック」をKindleで再読。やっぱり終盤の二人で部屋にいるところが最高にいい。ネットで公開されている間に修正された部分が、単行本で更に修正されており、その修正もよかった。
散歩をして、仕事をして、映画を観て、マンガを読んだ。いい1日だった。

2021年9月6日(月)
この日の起床時の体重が65.8キロ。65キロ台に突入した。これで目標は達成。しかも、今年になってから数度目の目標達成だ。この後は65~68キロを上下する感じにしたい。

今まで、20年以上もの間、劇場版『機動戦艦ナデシコ』のタイトルを『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』と表記していたのだけど、事務所スタッフから「-」は入らないのではないですか、という突っ込みが入った。ええ~、そんな馬鹿な。確認とすると、確かに劇中で表示されるタイトルには「-」がない。映画ポスターに使われているロゴも「-」がない。映像パッケージの表1にも「-」はない模様。これでは「-」を入れる根拠がない。
いや、そもそもデザイナーの根津典彦さんにタイトルロゴを発注したのは僕だ。この日記を書いていて思い出したけれど、ロゴのデザインが上がってきた時に「 – がなくなったなあ」と思った気がする。ということはロゴ作成以前の段階では「-」があって、デザインでなくなったのか。とにかく、パソコンの辞書登録をやり直した。

放送中のアニメの最新話に片っ端から目を通した。そのタイトルは以下の通り。
『探偵はもう、死んでいる。』10話
『死神坊ちゃんと黒メイド』10話
『ちびまる子ちゃん』
『サザエさん』
『BORUTO』
『キングダム』(第3シリーズ)20話
『ジャヒー様はくじけない!』5話
『RE-MAIN』8話
『EDENS ZERO』21話
『BLUE REFLECTION RAY/澪』21話
『八月のシンデレラナイン(2021)』10話
『ラブライブ!スーパースター!!』8話
『NIGHT HEAD 2041』8話
『チート薬師のスローライフ 異世界に作ろうドラッグストア』9話

2021年9月7日(火)
業界のある方とこれから作る書籍のことでZoom打ち合わせ。その人と話するのは久しぶりで、世間話が楽しい。あちらも自宅作業が続いていて会話に飢えていたそうだ。

2021年9月8日(水)
病院に行って血液検査の結果を聞いてきた。「全ての数値が正常になった」だそうだ。ダイエットに成功したおかげだ。病院の先生も驚いてた。偉いぞ、ワタシ。おめでとう、ワタシ。

2021年9月9日(木)
15時半までデスクワーク。猛烈なスピードで作業を進める。書籍の編集作業だけでなく、記事の企画書、イベント関係の連絡等。15時半に事務所を出て、ワイフと『ふしぎの海のナディア』展の内覧会に。制作資料が好きな人にとっては、かなり充実した展示だ。線画設定の原本、貞本さん達のイメージボード、かなりいい場面の原画。こんなに資料が残っていたのか。一番驚いたのは、庵野さんの手描きプロットだった。前にコピーを見たことがあったけれど、まさか生原稿が残っていたとは。展示会としては、庵野さんや貞本さんのコメントがあると、もっとよかったと思う。

2021年9月10日(金)
叶精二さんがTwitterで取材の成果を発表した。河内日出夫さんが『侍ジャイアンツ』のオープニング、エンディングでどのカットを担当したのかについてだ。今まで『侍ジャイアンツ』のオープニング、エンディングの原画は大半を河内さんが担当したのではないかと言われていて、僕もいつか確認したいと思っていたのだけれど、叶さんが疑問を解決してくれた。素晴らしい。

https://twitter.com/seijikanoh/status/1436116234169315336?s=20

昼飯は、恐らくは一年半ぶりとなるカツカレー。カレーライス自体がだいたい1年ぶりのはず。病院でダイエットを勧められた際に、カレーは避けるように言われていたのだ。具体的に言うと「カレーは月に二食までにしないさい」と言われた。カレーを食べないほうがいいならと、ずっと食べないでいた。

放送中の深夜アニメの最新話に片っ端から目を通した。そのタイトルは以下の通り。
『平穏世代の韋駄天達』8話
『白い砂のアクアトープ』10話
『NIGHT HEAD 2041』9話
『SHAMAN KING』22廻
『SDガンダムワールド ヒーローズ』22話
『うらみちお兄さん』10話
『IDOLY PRIDE』10話
『パズドラ』170話
『ミュークルドリーミー みっくす!』22話
『マジカパーティ』23話
『デュエル・マスターズ キング!』20話
『遊☆戯☆王SEVENS』64話
『ぼくたちのリメイク』9話
リアルタイムでながら観したアニメ
『パウ・パトロール ベストセレクション』(52話)
『妖怪ウォッチ♪』22話
『ポケットモンスター』80話
『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』20話

2021年9月11日(土)
散歩以外は「この人に話を聞きたい」の原稿作業を進めた。Amazon prime videoで実写映画の「野球狂の詩」を観た。スチールは観たことがあったけれど、映像で観るの初めて。予想よりも原作の再現度が高かった。木之内みどりさんも可愛い。だけど、公開された頃に映画館で観たら、きっと不満を口にしたんだろうなあ。WOWOWプラスの「アニメーション作家 岡本忠成の世界」「アニメーション作家 川本喜八郎」を録画で観る。これはよかった。4K修復版だそうで、映像がとても綺麗だった。
就寝前に、Kindleの「僕の心のヤバイやつ ツイヤバまとめ2集」を読了。満足満足。これが無料でいいの? って感じ。申しわけないので「僕ヤバ」に課金できる機会があったら課金しよう(単行本は買っています)。

アニメ様の『タイトル未定』
327 アニメ様日記 2021年8月29日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年8月29日(日)
新宿ピカデリーの午前7時40分からの回で『GのレコンギスタIII 宇宙からの遺産』を鑑賞。上級者向けの作劇だと感じた。
「『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』10周年記念イベント ANOHANA 10YEARS AFTER Fes. 」のトークを配信で視聴。ぽっぽ役の近藤孝行さんのコメントで、藤原啓治さんが『あの花』の大ファンだったという話が出た。ああ、なるほど、そうだったのか。『心が叫びたがってるんだ。』公開の後、原恵一さん、藤原さんを招いたアニメスタイルのトークイベントがあり、楽屋の世間話で『心が叫びたがってるんだ。』の話題になった。藤原さんが「いやあ、あの監督がどうしても出てほしいというから出たんですよ」と変な言い方をしていて引っかかっていた。あれって「藤原さん、自分から出たいと言ったんじゃないですか」と突っ込むところだったのかもしれない。
昨日始めた15万4746文字の原稿のチェックが終了。15万2994文字になった。ここまでで2日かかった。表記の統一は後回し。判断保留の部分もいくつか。あ~、疲れた。
この日は映画に行って、散歩に行って、床屋にも行って、原稿も進んだ。充実した一日だった。ただし、原稿以外のタスクを進めてないので、明日の午前中が大変だ。

2021年8月30日(月)
早朝散歩は続いている。この日はワイフと雑司ヶ谷を歩いた。
半月くらい前に、デザイナーさんに「9月末は同じ週に祝日が二度あるので、その辺りに入稿日を設定すると大変ですよ」と言われた。「今回はスケジュールに余裕を持たせているので大丈夫ですよ」と答えたのだけど、全然、大丈夫ではなかった。ヤバいよ、祝日。
dアニメストアに『琉球タイムライン~未来少女と古の王~』という作品があったので観てみる。沖縄県浦添市が作った作品であるらしい。YouTubeでも同じものを流している模様。dアニメストアってこういったものも配信するんだ。

2021年8月31日(火)
グランドシネマサンシャインの午前10時30分からの回で『劇場版 アーヤと魔女』を観る。TV放送時にぼんやりと観てしまったので、きちんと作品と向き合うつもりで劇場で鑑賞。ではあるが、作品の印象そのものはあまり変わらず。ちなみに映像ではタイトルに『劇場版』の文字は入らなかった。
その後はZoom打ち合わせとデスクワーク。夜は吉祥寺に。トークの前に渡辺歩さん、業界のある方とくぐつ草で打ち合わせ。その後、アップリンク吉祥寺で『漁港の肉子ちゃん』のトークに渡辺歩さんと出演。今回はオファーを受けた時から話す内容を決めていて、それは問題なかったのだけれど、トークの時間が予想よりも短くて、ちょっと駆け足になった。トークの後にサイン会があって、何故か自分もサインをすることになり、焦る。

2021年9月1日(水)
じわじわと『かげきしょうじょ!!』を視聴中。いやあ、面白いね。メジャー感があるところもいい。11時、14時、17時にほぼ同じメンバーでZoom打ち合わせ。この日はあまり外出をしないで、作業を色々と進めた。

2021年9月2日(木)
進行中の書籍、イベント、これからの書籍の企画等々。16時からBONESで打ち合わせ。事務所に戻って、また作業。
押井守さんの著作「誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版」を読了。面白かった。前のバージョンにも目を通していたけれど、今回はきちんと読んだ。押井さんの発言について、大筋としては同意。そもそも押井さんの作品の見方が面白い。宮崎駿さんとその作品について、押井さんがよく考えているのが分かる。高畑勲さんにはあまり興味がないのだろうなあ。この本については他にも書きたいことがあるのだけれど、それはまた改めて。

2021年9月3日(金)
日本映画専門チャンネルの「ゴジラ対ヘドラ<4Kデジタルリマスター版>」(2Kダウンコンバートにて放送)の冒頭を録画で観る。あまりに鮮明で、印象としては公開時とも別物。その後はWOWOWプラスでやっていた「トリック 劇場版」を少し観る。仲間由紀恵さんが可愛い。以前から美人だと思っていたけれど、可愛いとは思わなかった。これも自分が年齢を重ねたせいか。
噂に聞いていた山田尚子監督の『平家物語』が発表になった。サイエンスSARUで山田尚子さんが監督をすると知った時には驚いた。先行して公開された映像を観るとかなりよさそうだ。以下は自分がTwitterで書いたテキストだ。

『平家物語』のPVを観て感心したのは「山田尚子監督が今まで仕事をしてきたのとは別の制作現場で、きっちりと『自分の表現』をしている」と思えるものだったことです。今までの作品の延長線上のものであり、更に新しさもある。素晴らしい。期待大です。

2021年9月4日(土)
忘れる前にメモをしておく。佐藤順一さんが監督、平松禎史さんがキャラデで進められていたものの、制作初期で頓挫した『あらいぐまラスカル』。その演出を渡辺歩さんがやるはずだったことが判明した。佐藤さんに平松さんを紹介したのは僕だ。そして、渡辺さんに声をかけたのは佐藤さんで、佐藤さんが渡辺さんと知り合いになったのは、僕が企画した飲み会の席だったのだそうだ。

2時間はかかるかと思った原稿が20分で終了。気持ちに余裕がある時に書いてよかった。12時から無観客トークイベント「第179回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕須直監督次回作【誰が味方で、誰が敵なのか? 男性人名編】」を開催。今回も濃い内容だった。

第731回 構成と脚本

 前回のお茶濁し原稿でも書いたとおり、現在シリーズ構成を書いており、その流れで脚本も少々(2~3本?)書く予定です。今回のシリーズはシリーズ構成・総監督。普段は自分、監督・コンテ・演出・作画をメインで仕事させて頂いてますが脚本もたまにやります。初脚本はガイナックスに入ってやった『この醜くも美しい世界』(2004年)の第7話の脚本で、もちろんコンテ・演出・作画監督(プラス一部原画)も自分でやり、現場では一人外注と呼ばれました。意外に思われるかもしれませんが監督デビューより先なんです、脚本デビューの方が。いや、単純にアニメーター出身は監督になってから、やや強引に「監督の僕が脚本も書きます」という場合がほとんどで、アニメーターから直で脚本デビューって周りがなかなかやらせたがらないんです。多分、プロデューサーや制作側からすると、「画描きに文章が書けるわけない」と思っているからなのではないでしょうか? いや、世間的にも、はたまた当のアニメーター本人までもがそう思っていることでしょう。
が、俺自身の数少ない脚本経験値から言わせて頂くと、

脚本って、小説(文学)とかより、画コンテに近い!

ていうのが実感です。はっきり言って自分は作詞や小説が書けると思っていませんし、書きたいと思った事もありません。『Wake Up,Girls! 新章』の監督をお受けする条件の一つに「作詞は出来ませんけど……」とつけたくらいです。自己顕示だ作家性の誇示だには興味皆無なので、自分ができないと分かっていることは、ハッキリ「できない」と言う主義で47年生きてきました。だから運転免許も取らないのです、事故るイメージしか頭に浮かばないから(関係ないか)。
 でも、画コンテを切って(描いて)みると「脚本はできそうだし書いてみたい」と思えたのです。『まほろまてぃっく~もっと美しいもの~』(2003年)の演出の後、「次はオリジナル」と聞いて「脚本書かせてください」と佐伯昭志監督に申し出たのでした。幸いガイナックス・山賀(博之)さんは「アニメーターでも書きたい人には書かせよう」という考え方のようで、すんなり毎週のホン読み(脚本打ち)に参加させて頂き、本当に楽しい仕事ができました。因みにこの『この醜~』7話が好きだと言うプロデューサーさんから名指しで振られた仕事が、『コップクラフト』(2019年)でした。10数年前の作品なのに。

やっぱり、各話の仕事はしっかりやっとくもんですね、こうやって後から実りますから!

あと、アニメーターや演出の方々、「書いてみたい」と思ったら、恥知らずに手を挙げることをお勧めします! 書いてクレジットにのったら「貴方はもう画も描ける(演出も出来る)脚本家」です! 話を広げて昨今のアニメ事情的に言っても、昔と違い大半の作業工程が皆同じパソコン(PC)というツールを使っての仕事になる訳だから、「原画しか描かない」とか「色しか塗らない」とか「コンポジット組むしかしない」などと決めてかからないで、副業までは言わなくても「1.5職」! 例えばアニメーターなら、次に当て込んでるシリーズの作画INまで時間が空いたら脚本1本入れる、とかです(はっきり、脚本の方が同じ時間で倍稼げます!)。制作さんも進行ができて脚本も書ければ、会社的にも「社員の手空き」を埋めるのに一役買うでしょう。メインの職以外に出来ることを増やしていけば収入も増えるし、社員・スタッフの人数ももっと減らせるはずなんです。そうすれば、もっと必要なところに人手が回せるでしょう。業界皆助け合い! 間違ってもデジタル化に応じず「原画しか描けない」を貫くスタッフのために“スキャン~タップ貼り”に何人も制作進行の人数と時間を費やすのはもうやめましょう! 特に職人さんの「○○しかできない」は分かるのですが(俺もそうだし)、もう半歩「○○も少しならできる」を身に着けてみては? と言いたいだけ。あくまで板垣の私見として(※一般の方々には専門的過ぎてすみません、今度改めて解説します)。

 ——さて、今回も短くて申し訳ないのですが、また構成作業(修正)に戻らせて頂きます(汗)。

アニメ様の『タイトル未定』
326 アニメ様日記 2021年8月22日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年8月22日(日)
ダイエットは順調に進んでいる。この日の起床時の体重が66.9キロ。20歳を過ぎてから、今が一番体重が少ない。多分、高校の頃よりも軽い。体感としてはまだ落ちそうなので、もう少し続けてみる。
仕事の合間に、新文芸坐で「台北ストーリー」(1985・台/119分/DCP)を観る。これはもうちょっと若い頃に観たかったかなあ。

2021年8月23日(月)
グランドシネマサンシャインの8時20分からの回で『劇場版 きんいろモザイクThank you!!』を鑑賞。自分がノレたかどうかは別にして、なにかの結晶のような作品。混じりっけなしだ。20年前に作ったら、何か不純物が入っていただろう。日本のアニメ関連文化を語る上でのサンプルになる作品かもしれない。
夏バテ気味のワイフのために、ドーミーイン池袋に連泊することにした。夜はホテルで借りたBlu-rayプレイヤーで、ワイフに『きまぐれオレンジ☆ロード』を観せる。43話「傷心のひかる! 追いかけて冬海岸」と1話。ワイフのひかる評が面白かった。それから、最初に43話を観せたのは間違いだった。普通の回を数本観てから「追いかけて冬海岸」を観るのが正しい。

2021年8月24日(火)
早朝散歩で『ヱヴァ:Q』と『シン・エヴァ』について天啓を得た。要するに『エヴァ』のことを考えながら散歩していたのだ。
ワイフと池袋HUMAXシネマズで『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』を観る。自分は二度目、ワイフはこれが初鑑賞。ワイフも楽しんだ模様。この作品の感想は前にも書いたけれど、以下は前に書かなかったポイント。この作品は「阿月チシオちゃんのコンプレックスの克服」も素晴らしい。ギャグタッチにしてはいるけれど、問題から逃げずに正面からぶつかっているのがいい。
大きな仕事になるはずだったある企画が頓挫。頭を切り替えて、今日から次のステージに向かおう。頓挫は仕方ないけど「待ち」の時間が勿体なかった。
頓挫とは別の話で、トークイベント、上映企画が次々と延期に。いろいろとズレて、10月にはアニメスタイルのトークイベントと上映企画が合計で7回もあることに。いや、冷静に考えれば月に7回は無理だ。だけど、10月でないと成立しない企画もあるのだ。さあ、どうなる(後日追記。さらに延期や中止が続いて、10月のトークイベントは1回、上映企画は2回となった)。

2021年8月25日(水)
進行中の書籍で、デザインのラフ出しをする。他にも進行中の書籍に関する作業がいくつか。自社の書籍の在庫についても色々。業界のある方と長電話。

2021年8月26日(木)
これから作る本のこと、作っている本のこと、会社のこと、在庫の整理などで色々。落ち着かない。
ワイフの付き合いで、就寝前に『機動警察パトレイバー2 the Movie』を少し観る(ワイフは最後まで観たはず)。『パト2』は(おそらくは『パト1』も)舞台になった年代を過ぎてから、作品の普遍性が強固なものとなっているはず。これは特殊な事例であると思う。それはさておき、「普遍性が強固」と書こうとしたら「普遍性が響子」と変換されたことを記憶に留めたい。

2021年8月27日(金)
『月が導く異世界道中』を1話から配信最新話まで観る。なんだか楽しいぞ。『天地無用!』っぽいなあ、魎呼と阿重霞みたいだなあと思って、検索したら同じことをツイートしている人がいた。ちなみに「りょうこ」と「あえか」はちゃんと変換できた。
仕事の合間に渋谷マルイで開催されている「PATLABOR artworks展」に行った。田島照久さんのアートワークスの展示だ。メディアミックスとしての『機動警察パトレイバー』に関して、やはり田島さんの存在は大きい。アニメ関連のポスターやパッケージのビジュアルについて、当時、『パトレイバー』が最先端だった。そして、それを受け継ぐものは現れなかったのだ。などと思った。今回の展示に関して言うと、展示物についての解説にもっともっとボリュームがほしかった。

2021年8月28日(土)
この土日は原稿以外の作業を進めるつもりだったのだけど、大物原稿に手を入れ始めたら、作業がとまらなくなる。