前回の続き。
アニメーターじゃない人間が“アニメーターの労働環境を改善”とか言うのを、俺は信じません!
それを仰る方——プロデューサーでも監督でもなんとか協会の偉い方々でも、まず“動画でひと月の稼ぎを得て”みてください! いや、“1日分(8時間)の労働”でいいから動画に取り組んでみてください。それからです、“アニメーターという仕事”について語るのは。動画1枚にかかる時間は、それぞれの内容次第で全然変わります。それこそ、“口パク・目パチ”みたいに10〜15分で上がるモノから、10数人描き込まれたモブシーンや画面いっぱい大爆発のように1枚描くのに数時間(1日3枚しか上がらない)モノでも一律1枚200円。流石にここ10数年は“内容がそこそこ大変な動画の場合”会社が気を遣って300〜800円位まで引き上げたり、各会社(スタジオ)毎で対応している所も増えました。にしても1日の労働分が2000~3000円てこともザラにあるって話。制作費と人件費の帳尻が合っていない——
会社で新人を育成する(動画を育てる)分の予算がない業界だ!
と。そしてその長時間労働・低賃金の中、さらに働き方改革で“描ける時間”すらも短くされて、八方塞がり。本当に動画を一度は経験してみてほしい!(因みにミルパンセは新人も含めて、今は基本的に固定給[社員契約]です。)
いや、画描きを志していない人たちや他業種の方々に対しての「できるもんならやってみろ!」が大人げなく、ナンセンスな発言だということは分かっています。でも、それを言わざるを得ないほど、動画から新人育成することって難しく、毎年頭を悩ませられています。その傍らで、何処かの協会やら会社社長・業界の有識者ぶった監督やプロデューサーが簡単に“待遇改善”とか言ってると、俺はこう言い返したくなるんです。
じゃあ、偉い方々は見返りなど求めないでください!「業界のため」とか仰るなら当然ですよね?
と。なぜなら自分、アニメ業界においてアニメーターの2~3倍、下手すると10倍以上稼げるセクションを知ってますから。例えば……と下手にその役職を言うと問題ありそうなので、自らの体験上ハッキリ言えるのは監督を続けてやってれば、まず普通に暮らせます。薄~く、ちょこちょこコンテチェックで監督と名乗るモノを2~3本掛け持ちしてたら? そこからは想像してください。
だ・か・ら! アニメーター出身でない監督さんの仰る“業界待遇改善”発言やら提案とかは個人的に眉唾だし、前回言ったように
描いてくれる人がいなくなったら
自分がアニメ監督できなくなるじゃないか!
と、その実、自分のことしか考えていない人達に思えるんですよね。すみません!あくまでも私見です。
念のために付け加えると、ギャラが安く仕事がない時期のタレント業とか芸能人(声優も含む)の方々とは低賃金の中身(?)が違います。なぜなら売れない新人タレントの方は“暇(時間)がある=バイトができる”のですから。アニメーターの場合は1日中机にしがみついて月給10万円前後であり、勿論バイトする時間(暇)もありません。
当たり前ですが、いくら優れた企画・脚本・コンテがあっても、
アニメーターがいなかったら“アニメの商売”はできないのですよ!
当然この先、3DCGとかのパートが増えてくるとは思っていますが、少なくとも“今現在”はアニメーターがまだまだ必要なはず。まずそこのところを踏まえた上で、アニメの制作本数に見合わない人数のアニメーターが、巧い下手の個人差はあろうとも各々一所懸命描いて、それでも追いつかないと足掻いてる姿を想像して下さい。そして、
今、どのセクションに制作費を積むべきか? を考え、且つ労働時間の割に高給なセクションの人件費を整理してから、“アニメ業界の労働環境・待遇改善”の話やらをしよう!
ではありませんか。