第766回 髪は切ったものの……

ヤバい! ようやく髪を切れたものの、その程度ではやり切れないほどの仕事量に圧し潰されそう!

 いや、“仕事量=作品数”ではないです、今は。ホントはもっと作品を創りたいけど、今は「スタッフを育ててスタジオ(会社)を作る」のを優先にしています。だからここ数年は、ひとつの作品に関わってる間、職種を選ばず「人手が足りないところに自ら手を入れる」スタイル。予想以上にマズいモノが上がってくれば、俺の仕事は際限なく増え続けます。それこそ、作画だけでなく背景に手を入れることもしますし、ダビング(録音)までに画が全然上がらなければ音響監督もやる。
 社内のスタッフが良いモノ(仕事)を上げてくれれば、ちょっと休み時間が増える。しかし、手取り(給料)は増えない。これを10年くらい繰り返しています。それでも、良い現場が作れればこの先、長く作品を創り続けることができるはずです。大手で雇われ監督をやるより現状の方が、板垣向き——ということで、またコンテ・チェックに戻ります。

アニメ様の『タイトル未定』
357 アニメ様日記 2022年3月27日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年3月27日(日)
毎日寝ているし、まだ昼間なのに、徹夜続きの午前5時みたいな状態になってしまった。自覚はなかったけど、疲れが溜まっているようだ。

2022年3月28日(月)
「アニメスタイル016」の作業が大詰め。午前1時45分に出社。午前5時半までデスクワークをした後、朝の散歩に。散歩の途中でさっき仕上げた原稿について「こういったことを書かなくてはいけなかったのではないか」と気づき、書き直すことにする。その後は短めの散歩をはさみながら、デスクワーク。20時頃に帰宅。すぐに就寝。
『明日ちゃんのセーラー服』最終回は単独で観たらそうでもなかったけれど、ラス前から続けて観たら、ちょっと泣けた。

2022年3月29日(火)
仕事の合間にワイフとグランドシネマサンシャインへ。「ナイトメア・アリー」【字幕版】を鑑賞。僕にとって今観たいタイプの映画ではなかったけれど、それは作品の問題ではない。ワイフはかなり楽しめたようで、満足していた。
3月終了の深夜アニメを片っ端から観る。

2022年3月30日(水)
『おじゃる丸25年スペシャル』を観る。深夜に観たせいか「深夜アニメっぽい」と思ってしまった。ニチアサっぽいと思うところもあり(あくまで印象です)。
録画した「300 〈スリーハンドレッド〉」をながら観しているつもりだったけど、エンディングが始まったところで、観ていたのが「300 〈スリーハンドレッド〉 ~帝国の進撃~」だったことに気がついた。朴璐美さんがよかった。「テミストクレス、男が鍛え合うのを眺めて、自分の股間をさすっているのか」という凄いセリフがあった。

2022年3月31日(木)
午前中で自分の「アニメスタイル016」の編集作業は終わったが、その後は編集作業以外の作業。『忍たま乱太郎』特番を観る。新しいエンディングの作画がよさそう。

2022年4月1日(金)
イベントの予習で長濵さんの『フルーツバスケット』『今、そこにいる僕』『十兵衛ちゃん』(2ではなく1)に目を通す。「この人に話を聞きたい」を読み直す。
「観たい時はレンタル店で借りればいいや」と思っていた有名原作のOVAが近くのレンタル店にない。というか、そもそもレンタル店が激減している。その作品については配信もない。中古でパッケージを買っておいたほうがいいのか。いや、なんでもかんでも買っておくわけにはいかないぞ。

2022年4月2日(土)
イベントの予習で『十兵衛ちゃん2 -シベリア柳生の逆襲-』を再見。今観ると、菜ノ花自由の声が羽川翼に聞こえる。逆だ。配信だと、エンドカードがカットされている模様。『シスター・プリンセス Re Pure キャラクターズ』も観る。
配信イベント「第187回アニメスタイルイベント この人にもっと話を聞きたい 長濵博史」を開催。関係者として参加するはずだったワイフはトークが楽しみ過ぎて、熱を出して休むことに。前にも長濵博史さん関係で似たことがあったはず。

第765回 さくらと巨人

アニメ様、アニメスタイル様
『カードキャプターさくら』アーカイブス、ありがとうございました!

 分厚い! 会社に届いた時点では“箱”状態でした。『グレンラガン』アーカイブスや『ナデシコ』画集同様、隅から隅まで片っ端からぶち込んだ感じの、アニメスタイルさん流石のいい仕事だと思います。特に浅香守生監督のOPコンテが素晴らしい! OP映像を良く覚えていただけに、懐かしくもあり「あ、やっぱりコンテで計算し尽くされてる!」と思いました。浅香監督には自分が監督した『デビルメイクライ』(2007年)でエンディングのコンテを描いていただきました(キャラデザ・阿部 恒さんからの紹介で)。その時もカッコよくてクールなコンテで痺れました。大雑把な画、且つ編集時にアドリブでイジり倒すこと前提の俺のコンテと違い、浅香さんのコンテは画が柔らかく丁寧で、“F.O(フェードアウト)消え切らないところでカット”──とか、指示書きも非常に細かかったと記憶しています。
 そう言えば、『カードキャプターさくら』には参加できませんでしたが(テレコム在籍中だった故)、浅香&阿部コンビの『ちょびっツ』は最終回の原画をやりました(フリーになってたから)。その作打ちで初めて阿部さんと浅香監督にお会いした気がします。また、20年程前の懐かしい話でした。
 で話は飛びますが、ぴあ『巨人の星』、全話視聴終了! 何せ自分が生まれる前の作品で、小学生の頃、朝の再放送で観たのが初めてです。それから40年経っての今回のDVD BOOKシリーズで再鑑賞。長かったけど、面白かったです! 梶原一騎先生独自の説明山盛り台詞の応酬や、“男らしさ”中心の昭和的価値観に100%感情移入できる訳ないけど、とにかく

後にも先にも、梶原先生にしか描けないエンターテインメント

であることは間違いありません! 梶原ワールドでは「愛と誠」も自分は好きで、三池崇史監督による2012年劇場版(傑作!)もBlu-rayで持ってます。勿論、松竹劇場版3部作(1974〜1976)も!

 また、短くて内容薄くてすみません。コンテ・チェックに戻ります。ラストスパート!

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.138
『この世界の片隅に』六度目の夏

 新文芸坐とアニメスタイルは、今夏も片渕須直監督の作品を集めたオールナイトを開催します。上映タイトルは『うしろの正面だあれ』『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の3本です。

 『うしろの正面だあれ』は1991年に公開された劇場アニメーションで、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』と同じく、太平洋戦争中の日本を舞台にした作品です。本作において片渕さんは監督ではなく、画面構成の役職で参加。その仕事ぶりがマッドハウス(当時)の丸山正雄プロデューサーに認められたことが、後の『マイマイ新子と千年の魔法』や『この世界の片隅に』に繋がることになります。

 トークのゲストは片渕須直監督を予定。チケットは7月30日(土)から発売開始です。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要。入場時には検温・手指の消毒を行います。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.138
『この世界の片隅に』六度目の夏

開催日

2022年8月6日(土)

開演・終演

開演/22時30分、終演/6時10分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般3000円、各種割引・友の会2800円

トーク出演

片渕須直、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『うしろの正面だあれ』(1991/90分/BD)
『マイマイ新子と千年の魔法』(2009/93分/DCP)
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019/168分/DCP)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第235回 聴いてみなイカ? 〜侵略!イカ娘〜

 腹巻猫です。先週(7月18日)からNHKで放送されている帯番組「TAROMAN」がすごい。岡本太郎の絵画や彫刻をモデルにした怪獣が登場する1回5分の特撮活劇です。昭和の特撮ヒーロー番組の空気感を再現した映像がインパクト抜群。単なるパロディに終わらず、岡本太郎イズムとも言うべき常識破壊の爆発力があります。全10本で終わってしまうのがもったいない。見逃し配信も実施中。
https://www.nhk.jp/p/taroman/ts/M7359Q6PQY/


 7月18日の「海の日」に合わせて、アニメ『侵略!イカ娘』シリーズ第1期と第2期の配信がインターネットTVのABEMAでスタートした。あわせて、期間限定全話無料配信が実施されている。
 第1期の無料配信はすでに終了し、現在は第2期が無料配信中だ(7月25日から1週間限定)。
https://abema.tv/channels/anime-live2/slots/EQBaETK4eTZ4PR
(全12話が1本の動画で配信されている)

 その波に乗って、今回は『侵略!イカ娘』の音楽を聴いてみよう。
 『侵略!イカ娘』は2010年10月から12月まで放送されたTVアニメ。 安部真弘の同名マンガを原作に、監督・水島努、シリーズ構成・横手美智子、アニメーション制作・ディオメディアのスタッフで映像化された。2011年には第2期『侵略!?イカ娘』が放送されている。
 海を汚し続ける人類に怒りを燃やし、地上を侵略するために海からやってきたイカ娘。10本の触手を自在にあやつり、口からはイカ墨を吐き、体を発光させる能力を持っている。しかし、その姿は人間の少女そっくり。頭から生えた触手は髪の毛に見える。手始めに最初に目についた海の家「れもん」を制圧し、侵略の拠点にしようとしたイカ娘だが、店を切り盛りする栄子と千鶴の姉妹にまともに相手にされず、いつのまにか海の家の手伝いをすることになってしまった。人類侵略を夢見るイカ娘の、人間社会での奇妙な生活が始まる。
 『オバケのQ太郎』や『怪物くん』などに通じる「異界の友だち」ものの変形であり、一種の「ファーストコンタクト」ものである。海から来たイカ娘が未知の人間の文化と出会ったときの反応が面白く、イカ娘が一所懸命になるほど笑いを生む。そして、人類の敵であるはずのイカ娘をちょっとけなげに感じてしまう。

 音楽はギタリスト、作・編曲家として活躍する菊谷知樹が担当。アニメソングやポップスなどの作曲やアレンジの仕事が多く、大ヒットした『妖怪ウォッチ』の主題歌「ゲラゲラポーのうた」も菊谷の作曲・編曲作品。また、前回の当コラム冒頭で紹介した『KJファイル』で毎回の怪獣の歌を作っているのも菊谷知樹である。
 映像音楽では、TVアニメ『ひだまりスケッチ』シリーズ(2007〜2012)、『狂乱家族日記』(2008)、『ニセコイ』シリーズ(2014〜2015)などの劇伴を担当。特に『ひだまりスケッチ』は代表作と言ってよいだろう。
 その『ひだまりスケッチ』では、いわゆる「渋谷系」を意識したようなポップなサウンドの音楽が印象的だった(全曲がそうではないが)。
 『侵略!イカ娘』の音楽はというと、サントラを聴いて思ったのは「昭和のアニメみたいじゃなイカ」ってこと。それも70年代の。
 まず曲が短い。サントラ盤にはBGM56曲が収録されているが、半分以上は長さが1分に満たない。近年のアニメサントラの曲としては異例の短さではなイカ。
 しかし、昭和の、特に60〜70年代のアニメのBGMは短かった。数10秒の曲をたくさん作るのが作曲家の仕事だった。それを思い出す。
 楽器編成はギター(兼ウクレレ)、ドラムス、パーカッション、ストリングス、サックス(兼フルート)にシンセの打ち込みを加えたスタイル。近年は打ち込みで処理されることが多いドラムスとパーカッションが生で入って、生演奏のグルーブが感じられるのも昭和っぽいところだ。
 そして曲調は、日常、サスペンス、ドタバタ、アクション等バラエティに富んでいるのは当然として、ちょっと大げさにも聴こえるホラー映画風の曲やメロドラマ風の曲が耳に残る。「○○風」の音楽を模倣する、いわゆるパスティーシュが巧みに採り入れられている。昭和の映画音楽をほうふつさせて、ユーモアとともにノスタルジックな香りがただよう。
 あと、BGMではないが、オープニング主題歌「侵略ノススメ☆」が主人公の特徴と名前をがっちり歌いこんでいるのも昭和っぽい。すごくキャッチーだ。
 もちろん、これは演出のねらいに沿ってのことだろう。本編がテンポよく進むから、長い曲はそんなに必要ではない。その代わり、さまざまなシチュエーションが描かれるので、バラエティ豊かな曲が必要になる。
 歌ものを多く手がける菊谷知樹の音楽は、シンプルな編成でメロディが立ったものが多い。口ずさめるようなメロディの曲がたくさんある。コミカルな曲であっても、変わった音を強調したり、やたらにぎやかにしたりするのでなく、メロディとアレンジでコミカルな雰囲気を出している。そういう曲作りが、とてもうまいなと思う。

 本作のサウンドトラック・アルバムは、2010年12月に「TVアニメ『侵略!イカ娘』オリジナルサウンドトラック」のタイトルでランティス(現・バンダイナムコミュージックライブ)から発売された。主題歌のTVサイズを含む全58曲入り。収録曲は下記(メーカーサイトの商品ページ)を参照いただきたい。
https://www.lantis.jp/release-item/LHCA-5122.html
 構成は、最初から数曲は第1話で使用された曲を並べて物語への導入とし、以降は劇中での使用にこだわらない曲順となっている。音楽的流れを重視し、変化に富んだ曲をテンポよく配置して、リズム感のあるアルバムをねらった印象だ。
 1曲目は第1話のアバンタイトルで流れた「海からの使者」。「許さないでゲソ……」と人間を恨むイカ娘の声が海中に響くシーンだ。ピアノとギターなどで演奏される、ややメランコリックな曲である。
 続く2曲目はオープニング主題歌。これも第1話と同じ流れだ。
 トラック3の「海の家 れもん」とトラック4の「夏の海日和」は、イカ娘の侵略の拠点となる海の家「れもん」のシーンに流れる日常曲。軽快でユーモラスな曲調は『ひだまりスケッチ』にも似合いそう。
 トラック5の「イカの脅威」からは、モンスターとしてのイカ娘を描写する曲が続く。「悪役登場!」といった曲調のトラック6「人類よ、平伏すがいいでゲソ」など、シリアスな曲なのに笑ってしまうところだ。トラック7「私について来いでゲソ」はイカ娘が調子に乗っている場面に流れるマーチ調の曲。「ジョーズ」風のリズムが刻まれるトラック8「恐怖の侵略者」もおかしい。トラック9「激突!イカ娘」は第1話のイカ娘と千鶴の対決場面に流れた激情的な曲で、『ベルサイユのばら』みたいな雰囲気だ。
 『ひだまりスケッチ』に通じる、しゃれたサウンドの曲もある。
 トラック10「イマイチでゲソ」は、イカ娘のとまどいや困惑を表現するジャジーな曲。第2話でイカ娘を偏愛する早苗がイカ娘の写真を撮りまくる場面などに使われた。
 同じく第2話でイカ娘が(適当に決めた)誕生日を祝ってもらう場面の曲がトラック25「誕生日パーティでゲソ」。明るくはずんだ曲調の中にリリカルな味わいもあって、日常曲として完成度が高い。なんとなく『サザエさん』っぽくなイカ?
 バイオリンと軽やかなリズムが奏でるトラック31「海を護ろうじゃなイカ」は、心地よいラウンジミュージック風。第10話でイカ娘が満塁ホームランを打つ場面や第11話で初めて登山をしたイカ娘が山頂から見える景色に歓声を上げる場面など、よろこびの場面に使用されていた。
 それから、『イカ娘』らしいユーモラスな曲。
 トラック12「これは何でゲソ?」は、第1話でイカ娘が吐いたイカ墨入りのスパゲッティが店で大人気になる場面で使用。シンプルな構成の曲だが、聴いていてニヤニヤしてしまうような面白さがある。
 トラック22「妙でゲソ」も同じ雰囲気の曲。第1話で栄子に考えの甘さを指摘されたイカ娘が「軍隊ってなんでゲソ?」と聞く場面に使用。イカ娘の天然な一面がうまく表現されている。
 トラック33「エビを食べたいでゲソ」はタイトルどおり、第4話でイカ娘がエビを食べまくる場面に流れた。とぼけたピアノの伴奏とテンポの速いシンセのフレーズの組み合わせが、なんともいえない「おかしみ」をかもしだしている。
 パスティーシュ風な曲では、なんといっても、トラック36の「能面ライダーのテーマ」とトラック37「能面ライダーのテーマ(INST)」が秀逸。劇中のヒーロー番組の主題歌という設定の曲で、ヒーローショーの場面にはインスト版が流れる。『KJファイル』もそうだけど、こういう「それっぽい歌」を作るのがうまいなあ。
 ほかには、ホーンセクションが活躍するスカ風のトラック40「イカ・スカ・リズム」、スパイ映画音楽や「謎の円盤UFO」を思わせるクールなサウンドのトラック41「ィヤッホゥー!イカ星人」、60年代ジャズファンクっぽいトラック42「危険じゃなイカ?」など、『イカ娘』の曲と知らなければ単純に「カッコいい!」と思ってしまう曲がある。
 アルバムの中で異彩を放っているのがトラック30「ミニイカ娘な日々」だ。この曲だけは6分を超える長さで作られている。というのも、第5話のエピソード「飼わなイカ?」のために映像に合わせて作曲された曲なのである。エピソード中で流れた音楽が、まるごと組曲として収録されているのだ。こういう遊び心とこだわりのある音楽演出が、本作の魅力のひとつである。
 実は最終話(第12話)のエピソード「もっとピンチじゃなイカ?」でもフィルムスコアリングで音楽が作られた。が、その曲は発売日の関係もあって、本アルバムには収録されていない。代わりに第2期のサントラに2曲収録されているので、ファンはぜひ、2枚ともそろえてほしい。
 最後に、美しいメロディを持つ曲を紹介しよう。
 トラック35「悲しいじゃなイカ…」はピアノが奏でる悲しみの曲。第4話のエピソード「ニセモノじゃなイカ?」で、偽イカ娘がイカ娘に敗北する場面など、しんみりするシーンで流れた定番曲だ。この曲にチェンバロを加えたのが、より深い哀感を表現する「やっぱり悲しいじゃなイカ…」。こちらは第10話の早苗とイカ娘のエピソード「好かれなイカ?」で使用。笑いながらも感動してしまう名場面に流れている。
 トラック47「今日の侵略はお休みでゲソ」は軽快なリズムに乗ってストリングスがさわやかなメロディを奏でる曲。第2話でイカ娘が栄子たちと夜空の花火を見上げる場面、第9話でイカ娘が偶然知り合った少女・清美と友だちになる場面に流れた。心が温かくなるいい曲だ。
 トラック56「淋しいでゲソ」はピアノによる哀愁のテーマ。第8話でイカ娘が「死んでもエビが食べたい」とうったえる場面など、イカ娘が落ち込んだり、弱気になったりする場面にたびたび選曲されている。
 BGMパートのラストを飾るのは、トラック57「青い海へ愛を込めて」。ピアノとストリングスが演奏する、やさしいメロディの曲だ。第1話のエピソード「同胞じゃなイカ? 」でイカ娘が仲間が死んだと思って悲しむ場面などに流れている。優雅な曲調は、なるほどアルバムを締めくくるのにふさわしい。
 こういう作品の場合、サウンドトラック・アルバムをどう終わるのか、迷うことがある。コミカルな曲で終わっても、のんびりした日常曲で終わっても、それなりにまとまる。本作は、美しくロマンティックな曲で終わらせている。コミカルな作品には似合わないようにも思えるが、本作を観て、イカ娘にキュートな魅力を感じたファンなら納得できるだろう。本作に流れるほっこりした心情やペーソスをすくい取った、みごとな構成だと思わなイカ?

TVアニメ『侵略!イカ娘』オリジナル・サウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
356 アニメ様日記 2022年3月20日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年3月20日(日)
「炎の4日間」の2日目。散歩以外はひたすらデスクワーク。
ある劇場アニメのBlu-rayソフト。監督の作家性が濃くに出ている作品なのに、解説書はなし、特典ディスクはキャスト関係の映像特典のみ。それと別の深夜アニメのBlu-ray BOX。こちらも意欲的な作品だったけれど、スタッフのコメントはオーディオコメンタリーだけかな。ファンの好みに合わせてこういった内容になっているのだろうけど、ちょっと寂しい。

2022年3月21日(月)
「炎の4日間」の3日目。午前2時20分に出社して、散歩を挟んで18時半までデスクワーク。事務所の裏の自販機の缶コーヒーが全てアイスになった。毎年思うけど、僕的にはちょっと早い。

スターチャンネルの「黄金の七人 木曜洋画劇場版」「続・黄金の七人/レインボー作戦 土曜映画劇場版」を録画とオンエアで流し観。「続」は小学生の時にこの吹き替えで観ているんじゃないかな。自分が面白いと思ったのは「新・黄金の七人 7×7」かなあ。1作目は音楽がお洒落。それから、小原乃梨子さんが凄くよかった。

突然、思い出したけれど、20年以上前の話。脚本の仕事やっていた友人が、自宅で暖房を使っていないと言っていた。寒い時はどうするの? と聞いたら「腕立て伏せをするんだよ」と応えた。当時は変わった人だなあと思ったけれど、自分が仕事の合間にショート散歩を入れる生活を続けていると、仕事中に運動を挟むと身体も温まるだけでなく、目が冴えるというメリットがあることが分かる。今になって、あいつは大したやつだったんだなあと思う。その彼も結婚したらしいので、今は暖房を使っているに違いないけれど。

2022年3月22日(火)
「炎の4日間」の最終日。午前1時30分に出社。散歩を挟んで19時半までデスクワーク。新しい原稿を書くのは深夜から朝までで、午前中と午後は他の作業。
ながらでスターチャンネルの「ヴァージン・スーサイズ」「ブリングリング」吹き替えをながら観。ああ、こういう感じの映画なのか。洋画の吹き替えばかり観ているのは、仕事で扱っている作品と別のアニメを観ると混乱してしまいそうだから。

2022年3月23日(水)
午前2時に出社。散歩をはさんで18時45分までデスクワーク。「炎の4日間」は終わったけれど、忙しいことに変わりはない。同じくらい疲れた。
Amazon prime videoの「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で「続エマニエル夫人(吹替版)火曜映画劇場版」を視聴。小原乃梨子さんのエマニエルが凄くいい。理想の小原さんだ。

ネットで公開された「片渕須直監督新作 紹介映像第一弾」を観てほっとする。制作が進んでいることは知っていたし、考察についてはイベントで山のようにうかがってきたのだけれど。作品としてのかたちを少し観ることができて嬉しかった。

2022年3月24日(木)
昼間は自宅で休んで、夕方から「第186回アニメスタイルイベント 【合田浩章スケッチブック刊行記念】合田浩章 TALK LIVE」に。アニメスタイルイベントではあるけれど、今回は出演はしないで、観客席から見る。自分が出演しなかったのは「合田浩章スケッチブック」の編集を編集部スタッフに任せていたため(自分がやったのは企画と、表紙カバーのデザインのデザイナーさんへの依頼くらいだ)。本の編集を任せていたのに、イベントにしゃしゃり出るのは違うなあと思ったのだ。充実したイベントになっていたのではないかと思う。

2022年3月25日(金)
「アニメスタイル016」のページ構成はこれで最後(のはず)。この作品のこの資料は「アニメスタイル016」に載らなければ、この後、世に出ないかもしれない。そう思うと、本来なら時間をかけて選びたいところだけど、校了も近く、使える時間は僅かだ。

2022年3月26日(土)
半休の日。グランドシネマサンシャインの朝の回で「THE BATMAN-ザ・バットマン-」【MAXレーザーGT字幕】を鑑賞。物語については好みでないところもあるが、ここぞというところの映像と演出は大したもの。映画館で映画を観たのは久しぶりで、いい環境でいい画を観て、いい音を聴けただけで満足。「合田浩章スケッチブック」の販売会&ミニ展示会を開催中のGinger&Starに寄ってから、大塚へ。「うまうま」で食べて吞む。差し入れにフルーツ大福を買って、再びGinger&Starに。在廊していた合田さんにご挨拶。事務所に戻って作業を進める。

第764回 グロスのお手伝い

 放映済。自分は現場のレイアウト・作画・演出の管理的役割でチェックのお手伝いをしていました。毎日の上りをチェックし、まずいレイアウトを見つけると、翌朝原画マン本人に解説しつつ戻す——時には参考ラフ原を描いて見せたり。勿論あくまで、アドバイス・指導寄りな仕事なのでノンクレジットですが。REVOROOTの小嶋慶祐監督は自分が出て行くのと入れ違いでガイナックスに新人として入ってきた方らしく、「あ、自分も歳取ったな」とまた思ってしまいました。後半でもう1本ミルパンセがグロスのお手伝いしました。
 あと、同時期に別会社のシリーズもグロスでお手伝いし、そちらは自分もアクションとエフェクトの作監をお手伝い。こちらは現時点でまだ未放映ですが、間もなく放映されるかと。あとさらに、別会社のCGアニメ作品で「エフェクトが描けるアニメーターを」との要望に「板垣が面倒みる新人でよければ」と作画お手伝い。こちらも前述のグロス同様、いろいろ参考を入れたり解説して戻したり。既に公開済かどうか分からないので、今度調べておきます。
 以上、現在制作中・元請けシリーズのシリーズ構成・脚本作業中に“社内のアニメーターを手空きにしないため”に受けた外注お手伝いの話でした。

アニメ様の『タイトル未定』
355 アニメ様日記 2022年3月13日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年3月13日(日)
午前中は「設定資料FILE」の構成。散歩の途中でTAAF2022アニメ功労部門の展示を見る。午後はサンシャインで「『漁港の肉子ちゃん』スペシャルトークイベント」に出演。オファーを受けた時には、自分は司会進行だと思ったのだけれど、実際にはコメンテーターだった。僕と別に司会がいて、僕が書いた質問状を呼んで、その方が質問をするという変則的な進行。メインの出演者は渡辺歩監督と石井いづみさん。ワイフと義弟、甥も観覧。アニメスタイルのイベントでよく顔を見る方達もいらしていた。後で知ったけど、五味洋子さん、谷口隆一さんも来場していた模様。事務所に戻って吉松さんとSkype吞み。途中でZoom吞みに切り換える。吞みの途中で仕事の打ち合わせもあり。

2022年3月14日(月)
午前1時20分に出社。散歩と休憩をはさんで、18時半まで事務所に。午前中の散歩では『ワンダーエッグ・プライオリティ』のサントラ、『彼氏彼女の事情』のサントラを聴く。

2022年3月15日(火)
午前1時40分に出社。とにかくやることが多い。いや、やることが多いのは自分のせいなんだけど。ガシガシと片づける。作業を少しスピードアップさせたい。
スターチャンネルの吹き替え映画を流しっぱなしで作業をする(録画を含む)。「奴らを高く吊るせ!日曜洋画劇場版」「ロスト・イン・トランスレーション」「ノマドランド」「1971 命をかけた伝令」「勇気ある追跡 日曜洋画劇場版」等々。「ロスト・イン・トランスレーション」は吹き替えで観ると、不思議な感じになるけど、これも吹き替え版の醍醐味かなあ。「1971 命をかけた伝令」はテレビで、しかも、ながし観すると普通の映画のように思える。「勇気ある追跡 日曜洋画劇場版」は清川元夢さんがよかった。

2022年3月16日(水)
午前0時半に出社。散歩をはさんで17時45分まで作業。

2022年3月17日(木)
午前1時に出社。散歩をはさんで18時半まで作業。体感としては普段の2倍か3倍の作業をこなした。
録画してあった「シン・コンプリート・サンダーバード」を観る。構成自体の印象はソフト版と変わらず。当時から庵野さんはBGMについて不満があると言っていた。それを今になってやり直して、思った通りのかたちにしたのだから凄い。「シン・ゴジラ」を作り、「シン・ウルトラマン」や「シン・仮面ライダー」を作っているのも、勿論凄いんだけど、改めてこの編集ビデオを作り直したのも凄い。

2022年3月18日(金)
スターチャンネルで「タクシー運転手 約束は海を越えて」の吹き替え版を流し観。続けて「夜の訪問者 水曜ロードショー版」を録画で流し観。最近、頻繁に武藤礼子さんの声を聞いている気がする。
「夜明けに書いたラブレター」みたいな原稿を、昼から夕方にかけて書こうとしたけれど、それは失敗。明日か明後日に「昼間に書いた冷静な原稿」として書き直そう。

2022年3月19日(土)
「アニメスタイル016」の作業でワタシが一番忙しい時期。「炎の4日間」と名付けた。この日が1日目だった。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.137
渡辺歩&小西賢一の劇場アニメーション

 7月23日(土)のオールナイトは、渡辺歩監督とアニメーターの小西賢一さんコンビの特集です。上映するのは二人が監督、作画監督として手がけた『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』『漁港の肉子ちゃん』『海獣の子供』の3本。いずれも、映画としても、アニメーションとしても見応えのある作品です。

 トークのゲストは渡辺監督を予定。チケットは7月16日(土)から発売開始です。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。なお、新型コロナウイルス感染予防対策で、観客はマスクの着用が必要。入場時には検温・手指の消毒を行います。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.137
渡辺歩&小西賢一の劇場アニメーション

開催日

2022年7月23日(土)

開演・終演

開演/22時30分、終演/5時30分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般3000円、各種割引・友の会2800円

トーク出演

渡辺歩、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』(2006/107分/DCP)
『漁港の肉子ちゃん』(2021/97分/DCP)
『海獣の子供』(2019/111分/DCP)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第763回 アニメーター自身も、です!

 前回の続き。でも、いくら長時間労働・低賃金だからと言って、

なんでも無条件で現状のアニメーターを高収入にするべきだ! とは微塵も思いません!

例えば作品・コンテンツの増加に対してのアニメーターの希少性を武器に、「丸チョンのラフ原(下描きにも至ってないレベル)を描くだけに月30万拘束なら雇われてあげてもいい」的、上から目線で変なギャラ設定しているアニメーターの話を耳にしたことがあります。

これハッキリ、雇う方(制作会社)・雇われる方(アニメーター)、両方“馬鹿”です!

これ15〜20年昔なら、まだ有望な新人に「その大ラフを基にパーツやディティールを足しながら清書(第二原画)して~」で任せられたし、動画も同様にできました。ただ現状のアニメーター不足状態はアニメ業界全体「キャリア3ヶ月でも早く原画に回せ!」になってるため、“巨匠のお描きになる大ラフ(丸チョン)”は何処の現場でも引き取り手がなく、ハッキリ言ってイイ迷惑。この場合いちばんの被害者は作画監督。で、最近はそういう“現場で迷惑この上ない大ラフ”にパーツやディティール足しをするべく、納品直前に「1週間でいいから!」と制作が引っ搔き集めてきた作監(作監補佐)8〜10人の言い値(何カットやっても1週間で10万)とかに応えた挙句、毎話数80〜100万(動画・仕上げ代も含むと200〜300万)の赤字を作っています。これ、友人・知り合いの制作プロデューサー何人かに確認したところ「そのとおりになってる」と、皆異口同音でした。
 つまり、フリーの超上手大ラフに“言い値”を払って、その清書要員としてフリーの作監に“言い値”を払うと。そもそもそこまでお金がかかるなら、逆に最初から各会社(スタジオ)、「新人から社員としてアニメーター育成できるじゃん!」てこと。
 いいですか?

フリーの1人は、実は0.5人だと思うべき! なぜなら必ず別作品を掛け持ちしているから!

即ち「フリーのアニメーターを2人捕まえた!」とドヤ顔している制作さん、その戦力“期限付きの1人分”と認識していますか? “言い値”を払ってもらえたアニメーター側もその後のことを考えると、得はしていません。そんな制作会社の足元を見るギャラ設定をしていると、“クソ高いラフ代+クソ高い作監代”が十分“3DCG”を超えた時、さすがの制作会社も「CGの方が安くて正確」と、あと数年で気付くでしょうから(もう既に気付いて社内でCGによるラフ原を生産中の会社も自分は知っています)。
 要は互いに未来の見えない(?)価格設定~赤字スパイラル。こんなことを繰り返してる制作会社がなんとか協会と手を組んで「もっと制作費を上げて!」と訴えたとて——ねえ? と。有効に使われる気がしませんよね。
 だから、アニメーターの方も現状の悲惨さをTwitterとかで愚痴ってばかりじゃなく、己を律して、

会社に協力するし、新人育成も手伝います! 且つ毎日定時に入るから専属の社員か固定給で雇って!

と付き合いのある会社(スタジオ)に申し出てみませんか? 何も一方的に会社に頭下げろと言っているのではありません。“一緒にアニメ作ろう!”と、話し合って、一旦は会社(スタジオ)の利益に繋げてから、その上で正当に報酬を上げていく交渉をする方が“今は”良いと思います。“今は”と強調しているのは、自分自身が30〜40代半ばまでフリーでやってたから分かるのですが、現状の業界が“テクノロジーの過渡期”に見えるからです。アニメーターに限らず演出家も会社に毎日入って仕事する方が「日進月歩のテクノロジー最新情報」が知れるし、それを使うことができて、即制作体制に反映させられるからです。因みに板垣は現在、ミルパンセの社員。毎日毎日“新しい作り方”の模索中です。作り方から改造できると、監督のやり方も常に新しくしていけて、結構……いや、かなり面白い!

そろそろ、各会社側も“その所属アニメーター○○人でできるパフォーマンスを計算した上”で、それに見合った作品作りをするべきではないでしょうか?

第234回 直球ストライクへの挑戦 〜DRAGON BALL超 スーパーヒーロー〜

 腹巻猫です。7月11日から始まったTVアニメ『KJファイル』が予想の斜め上をいく面白さでした。アニメといっても、いわゆるゲキメーション(切り紙アニメ)。劇画風の絵でオリジナル怪獣を紹介する1回5分のミニ番組です。ゲキメーション自体は『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』や「妖怪シェアハウス」などに使われていて、いまやそんなに珍しくないのですが、本編中に怪獣のテーマソングが流れてきて、あっけにとられました。毎回、怪獣の特徴を歌で紹介する番組らしい。60年代のソノシートみたいな雰囲気があり、クセになりそうです。


 今回紹介するのは、6月から公開中の劇場アニメ『DRAGON BALL超 スーパーヒーロー』の音楽。というのも、けっこう軽い気持ちでこの作品を観に行って衝撃を受けたからだ。
 正直に告白すると、筆者は『DRAGON BALL』の劇場版をそんなに観ていない。シリーズ自体、熱心に追いかけているとは言えない(ファンのみなさん、ごめんなさい)。なので、最近の劇場版も観ていなかった。
 本作を観に行った動機は、佐藤直紀が音楽を担当しているからだった。
 佐藤直紀がDRAGON BALLシリーズの音楽を手がけるのは本作が初めてである。
 かつてはプリキュアシリーズの音楽も手がけたことがある佐藤直紀だが、近年は、実写劇場作品を中心に活躍し、本作のような(一応)子ども向けアニメ作品の音楽は手がけていない。
 そんな佐藤直紀が『DRAGON BALL』の音楽を担当する。どんな音楽を書いてくれるのか? がぜん興味がわいた。
 実際に観て……、セルルック(手描き風)3DCGアニメーションを駆使した映像に圧倒された。声優陣の演技もすばらしかった。そして、音楽に感動した。みごとに「映画音楽」になっていた。

 『DRAGON BALL超 スーパーヒーロー』は2022年6月11日に公開された東映アニメーション制作の劇場アニメである。鳥山明の人気漫画「DRAGON BALL」を原作とするアニメシリーズの最新作だ。
 かつて孫悟空たちの活躍で壊滅した悪の組織「レッドリボン軍」がひそかに復活し、新たな計略を進めていた。天才科学者Dr.ヘドを仲間に引き入れ、悟空たちに匹敵する力を持つ人造人間を誕生させたのだ。その動きを察知したピッコロはレッドリボン軍の基地に潜入。悟空の息子・悟飯とともに悪の陰謀を阻止しようとする。
 本作、「アベンジャーズ」に代表されるマーベル作品をけっこう意識している印象がある。全体の雰囲気や物語の組み立て、キャラクターの描き方など。しかし、真似しているとは思わない。マーベル作品をお手本に、世界に通用するエンターテインメントを作ろうという意欲が伝わってくるのだ。
 音楽も同様である。世界をターゲットにした娯楽映画音楽の王道をねらった感がある。
 『DRAGON BALL』は世界中の幅広い年代層にファンを持つ作品だ。実験的な音楽やこれまでの印象をがらっと変えるような変化球の音楽はふさわしくない。
 サントラ盤のライナーノーツで、佐藤直紀は「今回の挑戦は直球ストライクをどれだけ速く投げられるか。」と語っている。
 本編自体が剛速球を思わせるパワフルな作品。音楽も直球勝負になった。
 アニメ音楽としての直球というより、映画音楽としての直球である。佐藤直紀が数々の映画音楽で蓄積してきた経験と技法が、本作に生かされている。
 音楽の中心になるのは、「スーパーヒーローのテーマ」とでも呼ぶべきメインテーマ。このモチーフがさまざまにアレンジされて、主にバトルシーンに使用されている。
 ほかには、レッドリボン軍のテーマやDr.ヘドのテーマ、人造人間ガンマのテーマらしきものが聴ける。が、キャラクターが登場すれば、そのテーマが流れる、といったライトモチーフ的な使い方ではない。全体としてはキャラクターよりも状況に音楽を当てていく手法が採られている。
 唸ったのは、音楽の入れ方の巧みさである。
 こういうタイプの作品では、全編に隙間なく音楽を入れてしまうケースが多い。本作はそうではなく、音楽が入るタイミングと曲の長さを絶妙に設定し、最大限の効果を上げようとしている。音楽自体も、曲の途中で編成を変えたり、アレンジに変化を加えたりして、メリハリを効かせている。
 結果、セリフや効果音と音楽が重なっても音楽が耳に残るし、「ここぞ」というところで音楽が流れることで観客の気持ちがぐっとドラマの中に入っていく。これが「映画音楽らしい」と思うところだ。
 また、やたらに音楽で盛り上げようとせず、映像や芝居だけで感情移入できる場面は音楽を控えめにしている。「映像でわかるところは音楽で説明しない」という実写的な演出なのだ。
 そういう音楽なので、子どもが楽しめる作品ではあるけれど、大人っぽい雰囲気がただよう。「マーベル作品っぽいなぁ」と感じる理由のひとつだ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは6月8日に「映画『DRAGON BALL超 スーパーヒーロー』オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで日本コロムビアから発売された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. アバンタイトル
  2. Dr.ヘド
  3. ヒーローの出番
  4. ピッコロとパン
  5. 人造人間ガンマ
  6. レッドリボン軍
  7. ビルス星の庭
  8. ビルスとチライ
  9. 神龍
  10. 忠告
  11. 悟飯vsガンマ
  12. 覚醒
  13. 悪の組織?
  14. オレンジの光
  15. マゼンタの暴走
  16. 最悪、起動
  17. ガンマ2号の決意
  18. 怪光線
  19. 覚悟
  20. 死闘
  21. クライマックス
  22. 明日へ
  23. スーパーヒーロー

 完全収録盤ではない。佐藤直紀の証言によれば、発注された音楽の箇所は約30。音楽アルバムとしてのまとまりを考えて、23曲を厳選したのだろう。
 トラック1「アバンタイトル」は冒頭、これまでのあらすじがナレーションで語られる場面に流れる曲。観客を惹きつけるために派手な音楽で始めてもよさそうだが、抑えた曲調で静かに始まる。なかなか渋い。
 トラック2「Dr.ヘド」は序盤で、刑務所から出てきたDr.ヘドがレッドリボン軍に誘拐される場面の曲。現代のスパイ映画音楽のような、クールで緊張感のある曲。これがDr.ヘドのテーマとも受け取れるが、どちらかといえばシーンに合わせた音楽なのだろう。
 次の「ヒーローの出番」は、Dr.ヘドがレッドリボン軍にそそのかされて人造人間を造る気になる場面の曲。緊迫した曲調で危険なたくらみが表現される。この場合の「ヒーロー」はレッドリボン軍から見たヒーロー=人造人間のことである。
 開幕から渋めの曲が続いて、筆者は「ずっとこういうスタイルでいくのかな。それはそれですごいな」と思っていた。
 雰囲気が変わるのは、トラック5「人造人間ガンマ」。人造人間ガンマ2号がピッコロを襲撃し、激しい戦闘になる場面の曲だ。音楽はストリングスを生かした危機描写からダイナミックな曲調に展開。途中、勇壮なメロディが挿入される。人造人間ガンマのテーマである。
 トラック6の「レッドリボン軍」はピッコロがレッドリボン軍の基地に潜入する場面に流れるミリタリー調のレッドリボン軍のテーマ。アバンタイトルのあとに一度、同じモチーフの曲が流れるのだが、サントラでは割愛されている。ここで敵の全貌が明らかになる、という物語の展開に合わせた構成だろう。
 「スーパーヒーローのテーマ」が本格的に登場するのは、トラック11の「悟飯vsガンマ」。娘のパンを誘拐された悟飯がレッドリボン軍の基地に乗り込み、ガンマ1号と激しい戦いになる場面の曲である。
 このモチーフ(「スーパーヒーローのテーマ」)も本編ではもっと前に聴くことができる。ピルス星で悟空とベジータが模範試合をする場面、サントラでいえばトラック8「ビルスとチライ」の次のシーンに、同じモチーフを使った曲が流れるのだ。劇場でその場面の音楽を聴いたとき、「うわあ」と血がたぎるような気持ちになったことを思い出す。渋めの大人っぽい音楽で通すのかと思っていたら、剛速球のヒーロー音楽が聴けて胸がいっぱいになった。ヒーローアニメの音楽はこうでなくては。
 サウンドトラックでは本編よりさらに引っ張って、アルバム全体の約半分のところで「スーパーヒーローのテーマ」が登場する。これは悟飯が覚醒する場面の感動をサントラでも再現するためだろう。映像のないサウンドトラックならではの演出である。
 以降は戦いに次ぐ戦いの連続。一気呵成にドラマが展開する。音楽も、トラック12「覚醒」、トラック13「悪の組織?」と「スーパーヒーローのテーマ」のモチーフを使った曲が続く。
 トラック15「マゼンタの暴走」とトラック16「最悪、起動」はピンチ描写の曲。トラック17「ガンマ2号の決意」で、「人造人間ガンマ」で登場したガンマのテーマがふたたび現れる。敵のテーマとしてはカッコいい曲調だったのが、このシーンで生きてくる。
 トラック19「覚悟」からトラック21「クライマックス」までが、本作のクライマックスの音楽。絶体絶命のピンチから戦いの決着までに流れる曲だ。思い切り感情をゆさぶり、盛り上げる音楽になりそうなところだが、ここでは悟飯やピッコロの心情に寄り添う、静かな緊張感に満ちた曲を付けている。渋い。「こうくるか!」という感じ。音楽だけではその真価が伝わりづらいが、映像と一体となったときの効果は絶大である。
 戦い終わったあとの平和を描写するトラック22「明日へ」を挟んで、エンドクレジットの音楽、トラック23「スーパーヒーロー」になる。
 実はこの作品でいちばん驚き、感動したのが、エンドクレジット(エンディング)の曲だった。
 劇場アニメのエンディングといえば、いや、アニメだけでなく、昨今の日本の劇場作品のエンディングといえば主題歌が流れるのがあたりまえである。
 ところが、本作のエンディングに主題歌は流れない。エンディングのみならず、劇中にもテーマソングや挿入歌が流れる場面はない。本作は、日本の劇場アニメとしては異例の「歌の流れない作品」なのである。
 主題歌の代わりにエンディングを飾るのは、佐藤直紀が作曲したメインテーマだ。「スーパーヒーローのテーマ」のさまざまな変奏がメドレーとなって流れる。本編をプレイバックするように。この演出もマーベル作品っぽい。
 思い切った演出である。音楽に対する信頼がなければ、できないことだ。そして、佐藤直紀の音楽はみごとにそれに応えている。本家マーベル作品のアラン・シルヴェストリやマイケル・ジアッキーノの音楽にもぜんぜん負けていない。直球ストライクへの挑戦は、世界に届く剛速球となって実を結んだのだ。

 『DRAGON BALL超 スーパーヒーロー』はパワフルで野心的な作品である。映像もすごいし、音楽もすごい。「世界で戦える作品」だと思う。ぜひ劇場で、映像と音楽のパワーを体験してほしい。

映画『DRAGON BALL超 スーパーヒーロー』オリジナル・サウンドトラック
Amazon

第762回 どうしても信じられない!

 前回の続き。

アニメーターじゃない人間が“アニメーターの労働環境を改善”とか言うのを、俺は信じません!

 それを仰る方——プロデューサーでも監督でもなんとか協会の偉い方々でも、まず“動画でひと月の稼ぎを得て”みてください! いや、“1日分(8時間)の労働”でいいから動画に取り組んでみてください。それからです、“アニメーターという仕事”について語るのは。動画1枚にかかる時間は、それぞれの内容次第で全然変わります。それこそ、“口パク・目パチ”みたいに10〜15分で上がるモノから、10数人描き込まれたモブシーンや画面いっぱい大爆発のように1枚描くのに数時間(1日3枚しか上がらない)モノでも一律1枚200円。流石にここ10数年は“内容がそこそこ大変な動画の場合”会社が気を遣って300〜800円位まで引き上げたり、各会社(スタジオ)毎で対応している所も増えました。にしても1日の労働分が2000~3000円てこともザラにあるって話。制作費と人件費の帳尻が合っていない——

会社で新人を育成する(動画を育てる)分の予算がない業界だ!

と。そしてその長時間労働・低賃金の中、さらに働き方改革で“描ける時間”すらも短くされて、八方塞がり。本当に動画を一度は経験してみてほしい!(因みにミルパンセは新人も含めて、今は基本的に固定給[社員契約]です。)
 いや、画描きを志していない人たちや他業種の方々に対しての「できるもんならやってみろ!」が大人げなく、ナンセンスな発言だということは分かっています。でも、それを言わざるを得ないほど、動画から新人育成することって難しく、毎年頭を悩ませられています。その傍らで、何処かの協会やら会社社長・業界の有識者ぶった監督やプロデューサーが簡単に“待遇改善”とか言ってると、俺はこう言い返したくなるんです。

じゃあ、偉い方々は見返りなど求めないでください!「業界のため」とか仰るなら当然ですよね?

と。なぜなら自分、アニメ業界においてアニメーターの2~3倍、下手すると10倍以上稼げるセクションを知ってますから。例えば……と下手にその役職を言うと問題ありそうなので、自らの体験上ハッキリ言えるのは監督を続けてやってれば、まず普通に暮らせます。薄~く、ちょこちょこコンテチェックで監督と名乗るモノを2~3本掛け持ちしてたら? そこからは想像してください。
 だ・か・ら! アニメーター出身でない監督さんの仰る“業界待遇改善”発言やら提案とかは個人的に眉唾だし、前回言ったように

描いてくれる人がいなくなったら
自分がアニメ監督できなくなるじゃないか!

と、その実、自分のことしか考えていない人達に思えるんですよね。すみません!あくまでも私見です。
 念のために付け加えると、ギャラが安く仕事がない時期のタレント業とか芸能人(声優も含む)の方々とは低賃金の中身(?)が違います。なぜなら売れない新人タレントの方は“暇(時間)がある=バイトができる”のですから。アニメーターの場合は1日中机にしがみついて月給10万円前後であり、勿論バイトする時間(暇)もありません。
 当たり前ですが、いくら優れた企画・脚本・コンテがあっても、

アニメーターがいなかったら“アニメの商売”はできないのですよ!

 当然この先、3DCGとかのパートが増えてくるとは思っていますが、少なくとも“今現在”はアニメーターがまだまだ必要なはず。まずそこのところを踏まえた上で、アニメの制作本数に見合わない人数のアニメーターが、巧い下手の個人差はあろうとも各々一所懸命描いて、それでも追いつかないと足掻いてる姿を想像して下さい。そして、

今、どのセクションに制作費を積むべきか? を考え、且つ労働時間の割に高給なセクションの人件費を整理してから、“アニメ業界の労働環境・待遇改善”の話やらをしよう!

ではありませんか。

アニメ様の『タイトル未定』
354 アニメ様日記 2022年3月6日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年3月6日(日)
散歩以外はデスクワーク。「連休中にやる作業のC」「同じくD」を片づける。
『明日ちゃんのセーラー服』9話を鑑賞。意欲的な絵コンテだなあ、と思いつつ観ていたら、絵コンテが舛成孝二さん。特に冒頭のバス内部のパートがよかった。読書好きメガネ少女の回を舛成さんが担当するというのもポイント高い。 女の子がハンバーガーを食べた後に顔を赤くするのは『かみちゅ!』でもやっていた。

2022年3月7日(月)
定例Zoom打ち合わせで、調子に乗って「自分の『ああっ女神さまっ』史」を語ってしまう。『バブルガムクライシス』8話から「三神デビュー・パック」を経て、OVA『ああっ女神さまっ』に続いてOVA『逮捕しちゃうぞ』に至る。話すだけ話して、次回のトークイベントのノリはこれではないな、というところに落ち着いた。
仕事の合間に、グランドシネマサンシャインで『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』を観る。

2022年3月8日(火)
午前3時にアクション作画を、スロー再生で何度もガン見する。これも仕事である。

定例Zoom打ち合わせで、今まで『カードキャプターさくら』の47話として扱われていた「さくらと不思議な転校生」が、現在の配信サイトでは『カードキャプターさくら さくらカード編』1話になっているという話から、『らんま1/2 熱闘編』の最初のエピソードは1話として扱われるのと19話として扱われるので、どちらが都合がいいか(「正しいか」ではない)という話に。気になって配信サイトを確認すると、現在の配信サイトの『らんま1/2』は第1シリーズと『熱闘編』の区別がなく、両方をまとめて「らんま1/2 デジタルリマスター版」というタイトルになっている。しかも、第1シリーズのエピソードとして作られ、『熱闘編』の7~9話として放送された格闘フィギュアスケート編が、本来の制作話数である14話~16話として扱われている。おお、なるほど。

CSでたまたまやっていた「秘密のデカちゃん」を1話分だけ観る。1981年に放送されたTVドラマだ。「噂の刑事トミーとマツ」第1シリーズと第2シリーズの間に放送された番組だから、当時、一度くらい観ていてもおかしくないんだけど、記憶にあったのはタイトルだけ。中年刑事の日暮庄助(石立鉄男)と婦警の日暮祥子(大場久美子)は血が繋がっていない親子で、実際には夫婦。そして、周りには夫婦であることを隠している。「おくさまは18歳」に刑事物をプラスした感じで、設定が盛り盛り。1本観た限りの印象だと、「おくさまは18歳」的な楽しさは薄い。祥子がもっと子どもっぽかったり、頼りなかったりしたほうが番組としては観やすいかも。まあ、これは好みの問題かもしれない。

作業をしながら、録画してあったスターチャンネルの「ジャイアンツ」吹き替え版をながら観。タイトルだけ知っていた映画で、観るのは初めて。こんな話だったのね。吹き替えメンバーはジョーダン・“ビッグ”・ベネディクト2世(ロック・ハドソン)が羽佐間道夫、レズリー・ベネディクト(エリザベス・テイラー)が武藤礼子、ジェット・リンク(ジェームズ・ディーン)が野沢那智。ジョーダンとレズリーの子どもが、吉田理保子、池田秀一、榊原良子かな。ながら観で演出を語るのもひどい話だけれど、最後のレストランでの殴り合いの演出がよかった。続けて、スターチャンネルの「エアポート’80」を流し観。

2022年3月9日(水)
ホテルでの打ち合わせで、同席した方達はショコラアフタヌーンティーを頼む。ケーキがかなりのボリューム。自分はダイエット中だったので、見ているだけだったが、見ただけで満足。
自分で組んだスケジュールに自分が振り回された印象の1日。いかんいかん。
寝る前に、2週前のモーニングの「相談役 島耕作」最終回を読む。会社を離れても普通に働きそうだなあ。フィクションの人物ではあるけれど、お疲れさまと思った。

2022年3月10日(木)
この日も深夜から事務所でデスクワーク。深夜から明け方にかけてでないと書けない原稿が書けた。東映チャンネルやスターチャンネルやWOWOWを流しつつ作業。『魔女っ子メグちゃん』とか「Gメン’75」とか映画の『ドラえもん』とか。

2022年3月11日(金)
「アニメスタイル016」のページ構成と原稿を猛烈な勢いでやっていた(はず)。この「アニメ様日記」は当時のメモ、自分のSNSの書き込みをまとめてテキストにしているのだけれど、この日はメモがひとつも残っていなかった。

2022年3月12日(土)
阿佐ヶ谷ロフトAで「第185回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作8【お姫様たちを待っていた運命について考えてみる編】」を開催。今回も配信のみのイベントとなった。イベント開始前に事務所でデスクワーク。イベントがある日の割りに作業が進んだ。

第761回 俺は信じない!

 以前というか、もう20数年前なのでハッキリ“昔”ですか。たまたま俺が、某大手アニメ会社の忘年会に出席した(その年1回だけ)際、あるアニメ作品の原作者先生による提案で、先生ご自身が“賞金”を出して会場の皆でジャンケン大会をすることになったのです。賞金は1・2・3等賞の3段階で、1等賞が新人アニメーターの1ヶ月分の給料くらいでした。その時、会場にはプロデューサー以下アニメ制作スタッフ、アニメーター、監督、声優、アーティストなどなど、数百人入る中勝ち残って1等賞を手にした若者はアニメーター(確か動画マン)で、その際、壇上にてMCを務められた声優の方との会話が、以下のように記憶しています。

MC「ご職業は?」
若者「あ、アニメーターです」
MC「そうですかぁ、良かったですね。普段大変でしょうから、——ねぇ、これで何か美味しいモノでも食べて下さい」 
若者「あ、はい──」(MCの先導で場内拍手~)

 そのMCさんとの他愛のない会話に、第三者の立場ながらも、同じアニメーターを生業にしている自分は、複雑な心境になったのを憶えています。別にそのMCさんは何も悪気なく「おめでとう」を言ったつもりだと思うのですが、自然とその方の口から発せられた言葉に当時自分も若かった故、「え?アニメーターって普段そんなに良いモノ食ってないと思われてるの?」と。一緒にいた先輩も「何か、嫌な感じ」と呟いていました。実際そのMCの声優さん自身が高額ギャラを要求することで有名な大御所だったのも“嫌な感じ”の要因ではあったのですが。
 今度は近年のアフレコ現場で、コ●ナ禍でどの作品も“打ち上げ”がなくなったとの話題を、某声優さんとしていたのですが、その際もその声優さんから「アニメーターさん達の労をねぎらうことができなくて~」との気遣いの言葉が。
 まあ、何が言いたいのか分かる人にはご理解いただけると思うのですが、単純に、

アニメって皆一緒に作っている仲間なはずなのに、アニメーター(作画マン)はそんなに貧困に喘いでいると思われること自体、何だか切なくて、残念!

なんです。別に俺自身はアニメーターとして同情も哀れみも受ける云われはなく、作画の仕事に誇りを持ってやっています。前述の大御所声優様のギャラ分を作画に回して~と言う気もさらさらありません。
 確かに、アニメ制作におけるあらゆるセクションの中で“デジタル化による作業の効率化”が実現しなかった(道具をPCに持ち替えても絵を描く速度自体は対して変わらなかった)セクションが“アニメーター(作画)”です。仕上げもデジタル化のお陰で、“セル・筆”時代より数倍枚数が上がるようになりました。何せクリック・ポンで一気に面が塗れるようになった訳ですから。撮影も“アナログカメラ&フィルム”時代より、1作にかかるスタッフの人数が段違いに減り、期間も圧縮できてデジタル化の恩恵を受けました。美術も素材のコピペやBANKがかなり作業効率を上げました。
 ところが作画はと言うと、想像に難しくないかと思いますが、道具がPCに変わってよくなったのは、せいぜい“消しゴムのカスが出なくなった”くらいです。もちろん、データとクラウド上で設定や素材のやり取りができるようになったのは、デジタル化の恩恵と言えなくもないと思います。でも、それはどちらかと言うと“制作進行の効率化”の成功と言うべきでしょう。むしろアニメーターにとっては、デジタル化により、

高解像度に耐えうる動画線に気を遣い、増え続ける情報量との戦いを余儀なくされた!

だけでした。さらに近年は働き方改革なる、労働時間制限で、もう挟み撃ち状態です。
 この話は次回に続かせて頂きたいのですが、今回の締めに取り敢えずは言いたいこと。

アニメーターじゃない人間が“アニメーターの労働環境を改善”とか言うのを、俺は信じません!

多分、その方達は「描いてくれる人がいなくなったら自分の作品が作れなくなるじゃないか!」と、その実、自分のことしか考えていない人達に板垣からは見えるから。そんなのに利用されるくらいなら、アニメーターが自分で営業・プロデュースができるようになった方が“アニメーターの高給化”には近道かと思います。

第192回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作10【世紀末の京都を歩き回ってみよう編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、タイトルは発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に、平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。これまでのイベントでも、あっと驚くような新しい解釈が語られてきました。

 2022年7月9日(土)に開催する第10弾のサブタイトルは「世紀末の京都を歩き回ってみよう編」。今回は主な舞台になるはずの京都がテーマとなるようです。どんな話題が飛び出すのでしょうか。出演は片渕須直さん、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回は会場にお客さんを入れての開催となります。ただし、会場の定員は少なめの人数に設定します。今回のイベントは「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのは基本的にメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 ※片渕監督の近しい方に濃厚接触者が出たため、片渕監督はリモートで出演されることになりました。また、イベントを配信のみの開催に切り換えさせていただきます。会場での観覧チケットをお買い求めの方には、払い戻しが始まっているはずです。会場での観覧チケットを購入された方は改めて配信チケットを購入していただけるでしょうか。
 直前のお知らせとなってしまい誠に申し訳ありませんが、何卒ご理解賜りますようお願いいたします。(07/08追記)


 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた片渕須直監督次回作」もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは6月30日(木)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT PROJECT
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/220219

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第192回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作10【世紀末の京都を歩き回ってみよう編】

開催日

2022年7月9日(土)
開場11時30分/開演12時 終演14時~15時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第233回 人の命は尽きるとも 〜最強ロボ ダイオージャ〜

 腹巻猫です。『マジンガーZ』「秘密戦隊ゴレンジャー」等で知られる作曲家の渡辺宙明先生が6月23日に亡くなりました。その音楽に勇気づけられ、取材や音源発掘、資料提供等でお世話になり、イベントにも何度もご出演いただきました。ただただ、感謝しかありません。ありがとうございました。


 以前にも当コラムでお知らせしたが、2014年にCDで発売された「最強ロボ ダイオージャ 総音楽集」が、今年3月より配信(ストリーミング&ダウンロード)で聴けるようになった。タイトルは「最強ロボ ダイオージャ オリジナルサウンドトラック」となっているが、内容は「総音楽集」と同一である。
 今回は、渡辺宙明追悼の意を込めて、この作品を紹介したい。
 『最強ロボ ダイオージャ』は1981年1月から1982年1月まで放映された日本サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)制作のTVアニメ。
 イプロン星系51の星々を支配するエドン国のミト王子は、王宮での堅苦しい生活がいやになり、身分を隠して領地の星をめぐる旅を始める。旅のおともをするのが教育係のスケードと剣術指南役のカークス。ミト王子は訪れた星々で庶民が悪政に苦しめられていることを知り、王家に伝わる巨大ロボット・ダイオージャを操縦して支配者を懲らしめるのだ。
 とあらすじを紹介すればわかるとおり、「水戸黄門」のロボットアニメ版である。
 『機動戦士ガンダム』の人気が盛り上がっていた時代に現れた、明るく楽しく痛快なロボットアニメだった。
 その音楽担当に選ばれたのが渡辺宙明。まさに適任! と言いたいところだが、本作は渡辺宙明がそれまで手がけてきたロボットアニメとはひと味違う。シリアス寄りのドラマもたまにあるが、基本的に明朗でユーモラスな作品。悲壮感や悲劇的な要素は薄い。渡辺宙明が手がけてきたロボットアニメや特撮ヒーロー作品でも、こういうテイストはあまりなかった。
 しかし、それがストレートで勢いのある音楽を生み出す結果になった。カッコいい曲は文句なしにカッコよく、ロマンティックな曲はうっとりするほどロマンティック。コミカルな曲やほのぼのした曲も多い。のびのびと書いていることが伝わってくるような爽快な音楽だ。

 配信中の「最強ロボ ダイオージャ オリジナルサウンドトラック」は、CD版の「総音楽集」とまったく同じ構成。主題歌も挿入歌もカラオケもCDと同じ並びで配信されている。ありがたいことである。
 アルバムは全51曲(51トラック)。配信元によって、トラックリストをCDと同様にディスク1とディスク2に分けて表記しているケースとディスクを分けずに表記しているケースがある(Amazon Musicなどが後者)。便宜上、以下ではディスク分けなしの表記を基本にしよう。
 トラックリストだけからはわかりづらいが、アルバムは大きく4つのブロックに分かれている。
 トラック1〜13は、放映当時発売されたアルバム「最強ロボ ダイオージャ BGM集」の復刻。トラック14〜29はこれが初蔵出しとなった「未収録BGMコレクション」。トラック30〜39(ディスク2のトラック1〜10)は、放映当時発売されたアルバム「スペース ファンタジー ダイオージャ」の復刻。トラック40(ディスク2のトラック11)以降は主題歌・挿入歌のレコードサイズとカラオケなどを集めた「ソングコレクション&ボーナストラック」だ。
 最初のブロックの「最強ロボ ダイオージャ BGM集」は氷川竜介による構成。都合によりオリジナル盤ではフルサイズで収録されていた主題歌をTVサイズに差し替え、挿入歌を割愛している(これらはアルバムの後半に収録している)が、BGMの構成はそのままである。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 最強ロボ ダイオージャ(TVサイズ)(歌:たいらいさお)
  2. 胸に輝く王者の印
  3. 広い宇宙を一直線に
  4. 星から星への旅ぐらし
  5. 苦しみの人びと
  6. 敵地へ急げ
  7. 幸せの星空
  8. 乙女の涙
  9. ズッコケ珍道中
  10. 悪領主の逆襲
  11. 正義の刃を受けてみよ
  12. 平和の祈り
  13. ヨカッタネ宇宙(TVサイズ)(歌:たいらいさお)

 オープニング主題歌「最強ロボ ダイオージャ」は、合いの手コーラスが楽しい人気曲。コンサートで歌われると、必ず観客の合唱が入って盛り上がる。渡辺宙明はこういう「一緒に歌いたくなる曲」を書くのがとてもうまかった。
 トラック2「胸に輝く王者の印」はサブタイトル音楽に続けて戦闘BGMを2曲続けている。ノリノリのアクション音楽から始まるのが燃えるところだ。アクション系作品のサントラの構成は、頭から「来た来た!」と思わせるのが大切なのである。
 軽快な曲調のトラック3「広い宇宙を一直線に」、ほのぼのムードのトラック4「星から星への旅ぐらし」が続く。軽妙なリズムやシンセサイザーのユーモラスな音色が印象的だ。
 トラック5「苦しみの人びと」は、哀愁や悲哀を表現する音楽。ここでもシンセサイザーの音色が効果的に使われている。シンセサイザーの全面的な導入が本作の音楽的特徴のひとつなのである。
 トラック7「幸せの星空」は筆者の気に入っている曲。前半部分のリリカルなメロディは、ほかの宙明作品であまり聴けない曲調。ノスタルジックでもあり、淡い恋心のような甘酸っぱい香りもある。胸がキュンとなる旋律だ。後半部分はトランペットとストリングスが奏でる清々しいメロディ。こういう曲が聴けるのが本作の魅力である。
 次のトラック8「乙女の涙」も情感たっぷりの美しい音楽だ。前半はストリングスやビブラフォンによるロマンティックな曲。後半はアコースティックギターとストリングスが奏でる哀しみのテーマ。本作の抒情的な一面が表現されている。
 トラック10「悪領主の逆襲」とトラック11「正義の刃を受けてみろ」は「BGM集」のクライマックスとなる部分。サスペンス〜ピンチ〜ダイオージャ登場〜戦闘〜勝利という流れになる。ロボットアニメの高揚感が凝縮された聴きごたえ抜群のトラックだ。
 平和描写音楽を集めたトラック12「平和の祈り」がBGMパートを締めくくる。事件が解決してミト王子たちが星を去っていく、ちょっぴり感傷的な場面が目に浮かぶ。
 トラック13はエンディング主題歌「ヨカッタネ宇宙」。これまた、ほかの渡辺宙明ロボットアニメ作品ではあまり聴けない、ほのぼのとやさしい味わいの名曲である。
 ここまでが放映当時のBGM集を再現した内容。BGMの聴きどころを集め、メリハリの効いた構成にまとめた名盤だった。
 トラック14〜29の「未収録BGMコレクション」は、「BGM集」に未収録曲の中からステレオ音源が残っていたものをまとめた。もし、放映当時「BGM集Vol.2」が発売されていたら……というイメージだ。構成は筆者が担当した。
 筆者のお気に入りはトラック16の「人恋し旅の空」。ハーモニカをフィーチャーした2曲を1トラックに編集した。ハーモニカは渡辺宙明の音楽人生の原点となった楽器でもある。哀愁を帯びた音色と旋律がしみじみと胸にしみる。この原稿を書くために聴き返しながら、渡辺宙明がイベントに出演した際に持参したハーモニカを吹いてくれたことを思い出した。
 トラック30〜39(ディスク2のトラック1〜10)の「スペース ファンタジー ダイオージャ」は、劇中での使用を想定せず、鑑賞用の組曲として録音されたアルバム。それまで作られた主題歌・挿入歌・BGMのモティーフをもとにアレンジされている。特徴は生楽器とシンセサイザーサウンドの濃密な融合。宇宙刑事シリーズ以降の宙明サウンドにつながる音楽的試みが、この段階でなされている。70年代宙明サウンドと80年代宙明サウンドをつなぐ重要アルバムなのだ。
 筆者のおすすめは、宇宙刑事サウンドをほうふつさせるトラック36「ファイト アンド ビクトリー」と、ミト王子役の古川登志夫が歌った挿入歌「HEARTへようこそ」をアレンジしたトラック37「ウエルカム トゥ マイハート」。渡辺宙明自身も気に入っているというこのアルバム、もっと聴かれ、評価されてほしいと思う。
 トラック40(ディスク2のトラック11)以降には主題歌・挿入歌のレコードサイズとそのカラオケ、前半部分に収録しきれなかったBGM(モノラル音源)を収録した。「終わったかと思ったら、まだおまけがあった」みたいなお得感をねらった構成だ。ガイドメロディが入っていないオリジナル・カラオケは初商品化。これをバックに歌ってみるのもよいが、ぜひ、アレンジの巧みさにも耳を傾けていただきたい。

 元のCDアルバム「最強ロボ ダイオージャ 総音楽集」発売の際(2014年)に、オリジナル盤に関わった渡辺宙明、藤田純二、氷川竜介の3人をゲストを迎えてトークイベントを行ったのも懐かしい思い出である。ステージ上に3人が並ぶ姿は胸が熱くなるものがあった。そういう意味でも、筆者にとって深く印象に残る作品だ。
 ところで『最強ロボ ダイオージャ』の音源はこれで全部と思っていたのだが、「総音楽集」の発売後、キングレコードで未収録の音源が見つかった。主題歌「最強ロボ ダイオージャ」のメロオケと挿入歌「HEARTへようこそ」のアコースティックギターによるインストゥルメンタルである。どうやら、BGM録音とは別に、レコード用の録音の際にスタジオで録られたインスト曲があったらしいのだ。2曲とも劇中では未使用。まったくの未発表音源だった。
 この2曲は2015年に発売されたCD「渡辺宙明コレクション CHUMEI RARE TREASURES 1957-2015」に収録されている。
 こうして作品を聴き返していると、人の命は尽きるとも音楽は不滅なのだとあらためて感じる。聴く人、演奏する人がいる限り、音楽は死なない。筆者がいなくなっても、渡辺宙明の音楽は残り続けるだろう。音楽という命を後世に伝えるお手伝いができたことを光栄に思う。

最強ロボ ダイオージャ オリジナルサウンドトラック[Amazon Music]
https://www.amazon.co.jp/music/player/albums/B09SYJR5KR

各種配信サイトへのリンク
https://lnk.to/aFk3aZbJ

渡辺宙明コレクション CHUMEI RARE TREASURES 1957-2015
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
353 アニメ様日記 2022年2月27日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年2月27日(日)
土曜夜のTOKYO MXのアニメを録画で観る。『明日ちゃんのセーラー服』8話と『その着せ替え人形は恋をする』8話がとてもよかった。いいものを観た。DVDで『ああっ女神さまっ』OVA1巻から4巻を観る。

2022年2月28日(月)
明け方に「アニメスタイル016」の中村豊特集のために『僕のヒーローアカデミア』のデクの技の名前を調べる。ユナイテッド ステイツ オブ スマッシュではなくて、ユナイテッド ステイツ オブ ワールド スマッシュだった。
グランドシネマサンシャインで「ナイル殺人事件」をIMAXで観る。話が面白いわけではないし、登場人物にも共感はできないけど、なんとなく満足。映像は必ずしもIMAX向けではなかった。原作未読だし、今までの映像化作品も観ていないのでなんとも言えないのだけど、ここはアレンジした部分なのだろうなあという部分がいくつかあった。分かりやすくエロティックな男女が出てくる映画を久しぶりに観た気がする。
OVA『ああっ女神さまっ』5巻、劇場版『ああっ女神さまっ』をDVDで観る。劇場版DVDに合田監督のイメージボードが収録されているなんてすっかり忘れていた。

2022年3月1日(火)
28日の22時に起床して、23時に出社。散歩などを挟んで、1日の夕方まで作業。さすがに色々と進んだ。年に一度は『ソウルイーター』と『The Soul Taker』のタイトルの言い間違いをする。この日も間違えた。
『ああっ女神さまっ』のCDはOVA時代に何枚も持っていて、かなり聴いていたのだけれど、1枚もパソコンに入れていなかったことが判明。CD「決定盤『ああっ女神さまっ』アニメ主題歌&キャラソン大全集」を購入して聴く。時代の楽曲だなあ。懐かしいとか、そういう言葉では片づけられない。しかし、このCD、「放っとけないのさ」が入っていないのに「放っとけないのさ全員集合」が入っているのはいいのか。
『その着せ替え人形は恋をする』の最新の8話を三回くらい流し観した後、1話から8話まで観る。

2022年3月2日(水)
午前0時半に起床して、午前1時半に出社。早朝散歩は続いている。この日は温かくなったせいか、散歩ルートで大勢の猫に会った。いつも会う「なっちゃん」がいないなあと思っていたら、どこからか猫の鳴き声が。声がするほうに歩いて行ったら、散歩コースから外れたところで、なっちゃんが日なたぼっこをしていた。日なたぼっこをしていて、僕らが来たのに気づいて「こっちにいるよ」と声をかけてきたのだ。賢い猫だなあ。ワイフが頭をなでたら、喜んでいた。
3度目のワクチン接種のために豊島区役所に。前2回の接種は行きつけの病院で、どこか家庭的な雰囲気だったけど、区役所での接種はイベントって感じ。

2022年3月3日(木)
先日、「アニメスタイル016」の中村豊さんに取材して、映像を観ながら担当パートについて話をうかがった。その音声おこしについて「話題になっている映像が分かるかたちでおこしのテキストを作成できないか」と相談したら、話題になっているカットのキャプチャー画像がついたおこしが上がってきた。凄い、ムックみたいだ。これをこのまま販売したほうがいいのではとさえ思った。
ようやく、頭の中で『その着せ替え人形は恋をする』の文字を「そのビスク・ドールはこいをする」という音に変換できるようになった。

2022年3月4日(金)
3日と4日の朝で、Blu-ray 「富野由悠季の世界」を視聴した。本編、本編ディスクの映像特典、特典ディスク、早期予約特典ディスクの全てを観た。かなりのボリュームだった。富野監督の発言を大量に残したという意味でも、意義のあるソフトだ。そして、改めて「富野由悠季の世界展」が富野監督にとっても、関係者にとっても、ファンにとってもハッピーな企画だったのだと思った。今回の一気観は不思議な没入感があって、それもよかった。

2022年3月5日(土)
午前11時まで「連休中にやる作業のA」を片づける。11時から14時まではワイフと散歩。14時に事務所に戻って「連休中にやる作業のB」を進める。

第760回 作画の研究

アニメスタイル様が、ちょくちょく送って下さる、著名な方々の原画集やイラスト・画集! この場を借りて纏めてお礼申し上げます! 本当にありがとうございます!

 実際、自分よりもミルパンセ社内のアニメーターたちの教本として非常に役立たせていただいています。俺自身も若い頃、友人アニメーターらと同人誌系の原画集やイラスト集などを肴に朝まで酒を酌み交わす、みたいなことをして、巧い方たちの“作画を研究”したりしていました。
 この連載の超初期から語っているとおり、業界に入る際の板垣は、最初から“監督・演出”志望でした。そもそも自分のアニメ好きは“出﨑アニメ”に特化し過ぎていて、出﨑統監督のコンテには興味があっても、原画やアニメーターにはそれほど興味がなかったんです。ところが、専門学生時代に小田部羊一先生に作画を教わったり、皆でアニメを作ったりしてるうちに、何と言うか……性に合ったんでしょう。作画が面白くなって、卒業する頃にその小田部先生から「板垣君なら、大塚(康生)さんのところが良いよ!」とテレコム・アニメーションフィルムを勧められて、取り敢えずは「アニメーターとして」アニメ業界入りとなったわけです。
 つまり、学生時代は周りの友人らより、アニメーターや作画について全然知りませんでした。どのくらい知らなかったかと言うと、後に原画をみっちり教わることになる、友永和秀師匠のこともテレコム入社時は知らなかったくらいで、青山浩行さんら先輩方から「お前は何しにテレコム来たんだ?」と言われたものです。多分、その頃知ってたアニメーターは杉野昭夫さん・大塚康生さんまでだったと思います。
 なので、テレコム時代は“作画職人を目指す”ため、友人らの後を追うように作画に関する情報を収集したり、その時代時代の作画の傾向を探ったり、友人所有の原画集を見せて貰ったりで、一気に作画オタクに仲間入りした訳です。
 そんな訳で、いつの時代もある職業を目指してその業界に入ってくる若者たちは、技の研究に余念がないもの(だと思う!)。こと、アニメ業界におけるアニメスタイル様の書籍類は、ウチの会社に限らず、新人アニメーターたち皆、大好物だと思います。

また、何か良い本ができたら送ってくださると、ウチの新人(と自分)が喜びますゆえ、宜しくお願いします!