第246回 家族の肖像 〜SPY×FAMILY〜

 腹巻猫です。生誕50周年を記念した「THE仮面ライダー展」の東京会場(池袋・サンシャインシティ)での開催が始まりました。会期は2022年12月23日〜2023年1月15日。意外と短く、年末年始のあわただしさに追われているうちに会期末になってしまいそうです。音楽関連の展示も充実しているそうなので、興味のある方はぜひ忘れずに観覧を。
https://www.kamen-rider-official.com/kr50th/exhibition/


 今年話題を集めたTVアニメ『SPY×FAMILY』のサウンドトラック・アルバムが12月21日に発売された。今回はこの音楽を聴いてみよう。
 『SPY×FAMILY』は遠藤達哉のマンガをWIT STUDIOとCloverWorksがアニメ化した作品。シーズン1が2022年4月〜6月、および10月〜12月の分割2クールで放映された。2023年のシーズン2放映と、劇場版の制作が発表になっている。
 世界各国が水面下で情報戦をくり広げる冷戦の時代。西国(ウェスタリス)の情報局員・黄昏は、偽りの家族を作って隣国・東国(オスタニア)の要人に近づき、その動向を探る任務を命じられる。ロイド・フォージャーと名乗ることになった黄昏は、急いで家族を用意するが、実は、娘となったアーニャは人の心が読める超能力者、妻となったヨルは暗殺を請け負う殺し屋だった。3人はそれぞれの秘密を抱えたまま、家族として暮らし始める。
 一見平凡に見える家族が実は凄腕のエージェント、という設定は「トゥルーライズ」「Mr.&Mrs. スミス」「スパイキッズ」などの影響がありそうだ。本作のユニークなところは超能力を持つ娘アーニャの存在。アーニャだけがすべてを知っていて、切実に家族を求めている。そのアーニャに影響されて、ロイド(黄昏)とヨルの気持ちに変化が生まれる。スパイもののパロディのように見えて、実は家族の物語になっているのが本作の魅力である。

 音楽はアニメ音楽クリエイティブチームの(K)NoW_NAMEが担当。実質的には、アニメ『ワンパンマン』などの音楽を手がける宮崎誠と『リコリス・リコイル』などの音楽を手がける睦月周平の2人が作曲・編曲を担当している。
 曲調は「スパイものの音楽ならこうだろう」と期待するとおりのスタイル。軽快なリズムとキレのよいブラスのフレーズで聴かせるジャジーな音楽だ。楽器編成はドラム、ベース、ギター、ピアノのリズムセクションに、木管(フルート、オーボエ、クラリネット、サックス)、金管(トランペット、トロンボーン)、ストリングスなどを加えた構成。ビッグバンドと呼ぶほどの大編成ではないが、迫力あるサウンドが聴ける。
 スパイものの音楽のお手本となったのは、なんといっても60年代に登場した「007シリーズ」。特にジョン・バリーが得意としたビートの効いたブラスサウンドは、その後のスパイ映画やスパイドラマに大きな影響を与えた。
 ただ、『SPY×FAMILY』の音楽は、本家007シリーズよりも、もっと軽いタッチで作られた「電撃フリント/GO!GO作戦」やアメリカ製ドラマ「0011 ナポレオン・ソロ」、最近の劇場作品だと「オースティン・パワーズ」なんかのノリに近い。シリアスな物語ではないから、音楽も軽快なタッチのほうが似合う。
 聴きどころは、アーニャが家族のために奮闘するときに流れる「可愛いスパイ音楽」とも呼ぶべき曲。メインテーマ「STRIX」のメロディをアレンジした「Plan B」などは、アーニャの可愛さを思い出して悶絶してしまうような曲だ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは、2022年6月に「TVアニメ『SPY×FAMILY』オリジナル・サウンドトラック Vol.1」が配信限定で、同年12月に「TVアニメ『SPY×FAMILY』オリジナル・サウンドトラック」がCDと配信で、いずれも東宝からリリースされた。前者の「オリジナル・サウンドトラック Vol.1」は第1クール用に作られた47曲を収録したアルバム。後者は「Vol.1」の内容に第2クール用の楽曲などを追加した66曲入りのアルバム。CD版は2枚組だ。
 最初に配信された「Vol.1」の収録曲を中心に、本作の音楽を紹介しよう。CD版収録曲は下記参照。

https://spy-family.net/music/music_ost.php

 1曲目「STRIX」は本作を代表する曲。次回予告にも使われているおなじみの曲だから、メインテーマと呼んで差し支えないだろう。「STRIX」はロイドが遂行しようとしている作戦の名前(オペレーション「梟(ストリクス)」)である。ドラムソロの導入に続いて金管のワイルドなフレーズが開幕を告げる。ウッドベースのリズムの上でブラスとサックスが躍動感たっぷりの演奏を展開する。60年代スパイ映画、スパイドラマをイメージさせる、完璧なテーマ曲だ。
 次の「WISE」も同様のイメージの曲。「WISE」はロイドが所属する情報機関の名前だ。ロイドの活動シーンによく流れていた。
 このスタイルの曲では「Bondman」(ディスク2:トラック1)も秀逸だ。アーニャが観ているTVアニメ『スパイウォーズ』のテーマ曲で、まさにスパイドラマ音楽。第10話ではアーニャがドッジボールの特訓をする場面にこの曲が流れている。
 トラック3「transient calm」はストリングスやピアノを使った、謎めいたスリリングな曲。第2話でロイドとヨルが初めて出会う場面や第4話でロイドが何者かの視線を感じる場面などに使われ、「これからどうなる?」と緊張感を盛り上げた。
 トラック4「Liar」は「STRIX」と同じ系統のジャジーなブラスの曲。こちらは第3話でヨルがロイドの家に引っ越してくる場面などに流れ、秘密を抱えた家族を軽快な曲調で描写している。
 ブルージーなギターとリズムがメインのトラック5は「Disguise」=「変装」と名づけられた曲。第2話でヨルがロイドに恋人のふりを頼む場面など、「秘密が暴かれるのでは?」とスリルを演出するシーンに使われている。同様のリズムパターンを使った曲が、ヨルの弟ユーリが姉のパートナーを探ろうとする場面に流れた「No one knows」(ディスク2:トラック5)。軽妙なリズムと木管のフレーズが緊張感とともにユーモラスな雰囲気をかもし出す。
 次の「Plan B」からの3曲はアーニャをイメージした「可愛いスパイ音楽」。スネアドラムがリズムを刻む「Plan B」はアーニャが名門イーデン校の入学試験に挑む場面に使用。笛がメインテーマのメロディを、ピアノが「Liar」のメロディを奏でる「Crisis of my home」は、アーニャの受験準備のシーンなどに流れた。第1話でロイドがアーニャと町を歩く場面に使われたトラック8「Girl’s pastime」は3拍子の遊園地音楽風。この曲はシーンの展開と曲の展開がぴったり一致していて、フィルムスコアリングで作られたように聴こえる。
 本作の音楽には、ほかにもフィルムスコアリング? と思われる曲がいくつかある。
 トラック12「without tears」は第1話のクライマックス、ロイドがアーニャを危険にさらしたことを悔やみ、アーニャを警察に託そうとするシーンに使われている。緊迫した導入部は変装したロイドがアーニャを助ける場面、それに続くしっとりしたピアノのフレーズはロイドがアーニャと別れようとするシーンの心情描写、中間部の妖しいコーラスはロイドが敵を倒す場面、そして、終盤の温かいギターのメロディはアーニャがロイドに駆け寄る場面に流れていた。本作の隠れテーマである(隠れてないかもしれないが)「家族の絆」を印象付ける、みごとな音楽演出である。
 トラック14「Thorn Princess」もフィルムスコアリングと思しき曲。曲名は「いばら姫」の意味で、ヨルが殺し屋として活動するときのコードネームだ。第2話でヨルが「仕事」をするシーンに映像とタイミングを合わせて使用されていた。
 同じく第2話のクライマックス、襲撃に合ったロイドとヨルが協力しあって敵を倒し、正式に結婚の契約をすることを約束するシーンに流れていたのがトラック17「Strange Marriage」。曲は緊迫からアクションへと展開し、終盤は女声コーラスとストリングスの美しいメロディが2人の「婚約」を祝福するように流れる。
 音楽に注意しつつ観ていると、物語の転換点となる重要なシーンの曲をフィルムスコアリングで制作しているようなのである。

 こうして聴いていくと、本作の音楽で重要なのは、実はスパイ映画風の音楽ではなく、心情曲のほうではないかと気づく。
 ロイドもヨルも嘘をついて生きている。他人をあざむくために必要と思って家族になる。しかし、アーニャを中心に暮らすうちに、もしかして、この生活はかけがえのないものではないかと感じ始める。その気持ちが嘘でないことを表わすのは、言葉よりも表情であり、音楽だ。絵で描き切れない想いを伝える音楽の比重は大きい。
 公園でひと休みするロイド一家など、ひとときの安らぎを表現する「try again」(トラック21)、第3話ラストの家族でお茶を飲むシーンに流れた「teacups」(トラック23)、第7話で受験勉強をしながら寝てしまったアーニャの姿にやさしく重なる「little by little」(トラック24)、第6話でヨルがアーニャを見ながら「もっと母親らしくしてあげたい」と思う場面の「As a mother. As a wife.」(ディスク2:トラック7)、同じく第6話でヨルがアーニャから「母みたいになりたい」と言われ胸がいっぱいになる場面の「Small Daily Life」(ディスク2:トラック8)など、どれもシンプルな曲調ながら、しみじみと心に残る。
 特に印象深いのは、第3話でロイド一家が町で出会った老婦人から「すてきな家族ね」と言われる場面に流れた「Looks like a nice family」(トラック22)。ピアノとストリングス、フルートが静かに奏でるやさしい曲である。第9話でロイドがヨルに「そのままでいてください」と言い、ヨルが「結婚相手がロイドさんでよかったです」と返す場面にも流れていて、「もうこれで終わってもいいんじゃない?」と思ってしまうくらい感動的だった。
 『SPY×FAMILY』は、スパイもの、家族の物語、学園ドラマ(!)など、さまざまな楽しみ方ができるアニメである。サウンドトラックもさまざまな顔を持っている。あるときはノリのよい音楽集として、またあるときは家族のドラマを彩るやさしい音楽集として、ときにはアーニャの学園生活を活写するユーモラスな音楽集として、気分に合わせて楽しむことができる。ひとつの顔だけを見ないで、別の顔にも注意を向け、その魅力を発見する。そういう楽しみ方が『SPY×FAMILY』の音楽にはふさわしい。

TVアニメ『SPY×FAMILY』オリジナル・サウンドトラック
Amazon

配信版(各種サービスへのリンク)
https://nex-tone.link/VK9ouj9AO

アニメ様の『タイトル未定』
375 アニメ様日記 2022年7月31日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年7月31日(日)
午前中から「中村豊 アニメーション原画集 vol.3」の校正紙をチェックする。入稿前にPDFを見て、そのうえで校正紙を見ているんだけど、最終的なところは製本が終わらないと分からないなあ。通常の書籍でもそうなんだけど、Flip Bookだとさらに分からない。それから、緻密に描かれたメカの原画はしっかり見せようと思ったら、1枚のサイズがB6でギリギリOKなくらいだなあ。
上とは別件。これから企画を進めようかと思っていた書籍を、企画の初っ端で中止することに。最初がダメだと、上手くいく気がしないものね。

2022年8月1日(月)
『ONE PIECE FILM RED』って、『名探偵コナン』の劇場版で、原作やTVシリーズより先に赤井と安室が顔を合わせたようなかたちの仕掛けがある、ということになるのかな(後日追記。仕掛けがありました)。
ワイフと「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」を観る予定だったのだけど、ワイフの体調がいまひとつで中止。スケジュールを空けていたので同じ劇場で『劇場版アイカツプラネット!』を観る。

2022年8月2日(火)
レンタル掲示板teacup.のサービスが終了した。teacup.でないと連絡がつかない人とか、生存確認ができない人がいるのだ。さあ、どうする。
『僕の心のヤバイやつ』アニメ化が発表された。原作ファンなので、基本的には嬉しい。「あの部分はどうするんだろう」とか色々と思うが、それはまた先の話。基本的には原作通りになるのだろうけど、原作にない描写とか番外編とかもやってほしい。

2022年8月3日(水)
新文芸坐の10:10 ~12:21の回で「奇跡」を観る。プログラム「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー」の1本。かなり良かった。正直言うと、終盤の展開はよくわからないし、共感もできなかったんだけど、映画としては凄かった。事務所に戻って打ち合わせをした後、シネ・リーブル池袋の『GのレコンギスタIV/激闘に叫ぶ愛』がこの日で上映終了すると知る。慌ててチケットをとって15:10~17:00の回で観る。今回も上級者向けの作品だった。

2022年8月4日(木)
文芸坐で「裁かるゝジャンヌ」を観る。「奇跡」と同じく、プログラム「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー」の1本。これは凄い。演出がキレキレ。昨日観た「奇跡」が全身を映したカットを基本として映画を設計していたのに対して、こちらはアップショットを基本とした設計。役者の芝居も(それを引き出した演出も)カメラも素晴らしい。それから、画的な情報のコントールが抜群に巧い。終盤は決まりすぎるくらい決まった構図が続出し、それも見どころ。トータルの印象としては非常に前衛的。今まで観た全ての映画の中で、最も前衛的かもしれない。それと、終盤の構図は非常にアニメ的だと思った。何に近いかというと金田伊功さんの作品や新房昭之監督の『幽★遊★白書』や『The Soul Taker』に近い。メリハリの効いた構図を追求していくと似ていくということなんだと思うけど。

2022年8月5日(金)
グランドシネマサンシャインの08:10~10:52の回で「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」【IMAXレーザーGT3D字幕版】を鑑賞。相変わらず恐竜のCGは凄い。ドラマが弱めなのはしかたないかもしれないけど、「?」と思うところもあり。事務所に戻ってZoom打ち合わせなど。14時から西口の居酒屋の八丈島で業界のある人と吞む。その後はデスクワーク。この日記を読むと映画はかり観ているようだけど、実際にはやることが多くて忙しい。

2022年8月6日(土) 
1980年代から1990年代前半に、戦時中の市民を描いたアニメ作品(実写とアニメによる作品を含む)がいくつか作られている。分かる範囲でリストを作ってみた。
…………
1982年『象のいない動物園』(東京)
1982年『対馬丸 ―さようなら沖繩―』(沖縄)
1983年『はだしのゲン』(広島)
1986年『はだしのゲン2』(広島)
1988年『火垂るの墓』(神戸市と西宮市近郊)
1988年『白旗の少女 琉子』(沖縄)7月21日
1988年『夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~』(広島)8月7日
1988年『火の雨がふる』 (九州)9月15日
1989年『かんからさんしん』(沖縄)
1990年『クロがいた夏』(広島)
1991年『うしろの正面だあれ』(東京)
1993年『ヒロシマに一番電車が走った~300通の被爆体験手記から~』(広島)
…………

 戦時中の話ではないので、リストには入れていないが、1984年に『黒い雨にうたれて』がある。中沢啓治さんが原作、企画、製作、さらに共同で脚本を務めており、これも『はだしのゲン』や『はだしのゲン2』に連なる作品だろう。
 上のリストのうち、マッドハウスが制作したのが『はだしのゲン』『はだしのゲン2』『夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~』『ヒロシマに一番電車が走った~300通の被爆体験手記から~』だ。それらの作品群の延長線上に『この世界の片隅に』がある。

 ワイフが「『らんま1/2』 POP UP SHOP in 渋谷ロフト」で買い物をするのに付き合って、朝から渋谷に行く。この日がPOP UP SHOPの初日で、初日でないと購入できないグッズがあるらしいのだ。買い物は無事に終了。ワイフの希望でIKEAの中をウロウロしてから、昼からやっている焼き鳥屋で吞む。値段はちょっとお高めだっただけど「これこれ焼き鳥」って感じで満足。
 夜は新文芸坐でオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.138 『この世界の片隅に』六度目の夏」を開催。今回のプログラムは『うしろの正面だあれ』『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の3本立て。片渕さんが監督でなく、画面構成の役職で参加した『うしろの正面だあれ』を上映するのが、このプログラムのポイント。
 以下はトークの内容のメモ。片渕さんが『うしろの正面だあれ』に参加した時、既に制作は始まっており、序盤のシーンは作画に入っていた。片渕さんの仕事はレイアウトチェックであり、そのあとの工程には関わっていない。大半のカットではレイアウトに手を入れるか、描き直しをしている。最初は原画マンが描いたレイアウトを直していたが、途中から先回りして原画マンが描く前にレイアウトを描いて渡すようになった。レイアウト段階で絵コンテになかった考証を足すこともあった。絵コンテにないカットを、レイアウト段階で足したこともあった。芝居を足したり、カメラワークを変えたりもしている。画面に空間を与えることは心がけた(言い方は違っていたはず)。考証的な部分で、調べれば分かることなのに、時間がなくて調べられないところはあった。例えば空襲の日に東京に雪が残っていたのか、といったこと。そういった部分を『この世界の片隅に』では徹底して調べた。

第199回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作13【映画を作ろうとして見つけ出した新しいこと・総まとめ編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、タイトルは発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に、平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。これまでのイベントでも新しい視点から見つけた、これまであまり語られていなかった「枕草子」の側面について語られてきました。

 2023年1月14日(土)に開催する第13弾のサブタイトルは「映画を作ろうとして見つけ出した新しいこと・総まとめ編」。今回のイベントでは、国文学関係での講演依頼も増えてきた片渕監督が、新発見についてまとめて語ってくださるそうです。より濃密なトークになるのではないかと思われます。出演は片渕須直監督、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回も会場にお客様を入れての開催となります。イベントは「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた片渕須直監督次回作」もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは12月28日(火)19時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT  https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/238594
会場チケット  https://t.livepocket.jp/e/aw4fb
配信チケット  https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/207459

 なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr

第197回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作13【映画を作ろうとして見つけ出した新しいこと・総まとめ編】

開催日

2023年1月14日(土)
開場12時30分/開演13時 終演15時~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第784回 今年最後の現場四方山話

これも今まで何回か話題にした、

アニメ監督(演出家)が、実務に手を出すべきか否か?

 自分の答えは“基本的に人それぞれのケースバイケース、ただし現場とスケジュールに合わせて臨機応変に!”です。
 以前はよく、先輩の監督・演出家の方々から「自分で描いたら演出じゃないよ」とか「演出家は描かせるのが仕事でしょ!」などと諭されたものです。が、そう言った方々はその後間もなく現場から消え、現在自宅籠りコンテマンになられています。別にコンテ専門職を悪く言うつもりはありません。ただ、実務は他人(ひと)にさせるを是と説く方が、現在のアニメ制作現場を仕切りづらくなっているのは確かなようですし、そういう話をよく耳にします。
 そう言う自分も以前は「コンテが全て! コンテが演出であり監督!」つまり、出﨑統監督スタイルを信仰していたものです。
ところが近年の制作現場で求められるコンテとは、“拡大してレイアウトになるくらいの緻密なラフ原画の連続”のことです。いやそれどころか、現場でご活躍のスタッフの方々は

緻密に清書されて、必要な画は全て描き込まれたコンテでなければ原画を描いてくれない!

状態になっていることは当然ご存知かと思います。
「それは本来のコンテではないし、そんなんは本当のアニメ制作じゃない!!」と憤慨している演出家は現場の制作P・デスクらから敬遠されます。
 動画を海外に撒く際も、作監が中割参考を密に入れた原画でなければ、すでに制作側から「このカットは動画にできません」と戻されています。そこまで来ました。俺自身は「じゃ、その諸条件下でどうやって作ろうか?」と考えると言うだけ。Twitterを始めて喚く気など、さらさらありません。それこそが本来、制作現場・体制などはその時代時代の条件に合わせて変えていくものでしょう? 動画を割れないなら動画の中割り不要な作品にするだけ(『てーきゅう』)。
 所詮は自分らの嫌な面倒臭い仕事——動画を他人・他国に40年押し付けてきたツケが回ってきただけ、という気がします。ここは基本に返って、コツコツやることにしましょう、業界の皆様。

アニメ様の『タイトル未定』
374 アニメ様日記 2022年7月24日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年7月24日(日)
オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.137 渡辺歩&小西賢一の劇場アニメーション」のトークを終えた後、『のび太の恐竜2006』の上映を少し観る。自宅での休憩を挟んで、再び新文芸坐に。今度はワイフも一緒だ。午前3時40分からの『海獣の子供』を観る。関係者席ではなく、チケットを購入して中央の席で鑑賞した。新文芸坐の新上映システムでの『海獣の子供』の映像と音響を確認したかったのだ。リニューアル前の上映をしっかりと覚えているわけではないけれど、特に音響の迫力が増していたのではないか。オールナイト終了後、ワイフと朝の散歩に。
Eテレでやっていた「アニメ シュームの大冒険」を偶々観る。色使いと画面構成がよかった。

2022年7月25日(月)
アニメスタイルのアーカイブシリーズで出したい新刊の企画を思いついた。有名なタイトルだけど、過去にイラストや設定画がまとめられたことはないはず。というか、メインキャラの線画設定もほとんど世に出てはいないのではないか(確認したら、キャラクターの色見本はDVD BOXの解説書に載っていた)。自分が雑誌の記事や映像ソフトの解説書を作った時も、線画設定は各話のゲストは小道具ばかり載せていたような気がする。この企画が実現したとして、500部くらいは売れるはず。数年かければ800部くらいは出るか。アーカイブシリーズのフォーマットだと、その部数では企画が成立しない。打ち合わせで「売れないとは思うけど、やりたい本がある」と言って話したけれど、編集部の皆の反応はよくなかった。

2022年7月26日(火)
朝の散歩以外はデスクワーク。PDFとテキストとマンガ原稿の画像がネット経由で飛び交う。夏の書籍のクライマックスが今日かもしれない。
録画がたまっていた「Gメン’75」を6話分を作業をしながら観た(28~33話)。その間、「Gメン’75」の世界にいた気がする。ひとつのエピソードで同じ歌謡曲を何度も使うのがよかった。

2022年7月27日(水)
ここ数日、「この人に話を聞きたい」取材の予習で過去のマッドハウス作品をセレクトして視聴している。この日に観たのは『妖獣都市』『YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!』『YAWARA! a fashionable judo girl!(1話)』『はだしのゲン』『はだしのゲン2』。
あまり意識していなかったけど『はだしのゲン』(1983年)は『夏への扉』(1981年)、『浮浪雲』(1982年)に続く、真崎守監督(演出)作品ということになる。アニメーションの作りとしては一貫性があるかも。何度も話していることだけど、『はだしのゲン2』の井上俊之パートは笑っちゃうくらいに巧い。ほぼ『AKIRA』だ。

『妖獣都市』のBlu-rayを4K大型モニター視聴(ディスクは4Kではない)。映像は鮮明ではあるけれど、バキバキになっているわけではなく、少し柔らかさがある。黒と青(そして、赤)のコントラスが効いていてそれが心地よい。これはこれで理想のリマスターなのではないかと。

U-NEXTで『YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!』を視聴。レギュラーキャラではなく、ゲストの子供達の話なので、観ていてテンションが上がらないのは公開当時の印象と変わらず。花園薫が子供達と話す時に、自分のことを「おじさん」と言うのだが、それでいいのか、大学生。ライバルの柔道チームの少年達のキャストはメインの少年が浪川大輔さんで、他の4人が林原めぐみさん、矢島晶子さん、高乃麗さん、頓宮恭子さんと、今となっては異様に豪華。序盤の作画がキャラクターだけでなく、動きまで兼森義則さんの作画に見えて、気合いを入れて直しているのかと思ったら、作画監督は君塚勝教さん。兼森さんは原画の筆頭でクレジットされていた。かなりの量の原画を描いているのでは?
続けて『YAWARA! a fashionable judo girl!』TVシリーズ1話。アバン(Aパートのサブタイトルが出るまで)の演出がよい。今回の取材とはあまり関係ないけど、これから確かめたいテーマができた。

2022年7月28日(木)
今度は『花田少年史』を観る。1話はくまいもとこ、田中真弓、竹内順子、桑島法子、松本梨香、亀井芳子と少年役声優大集合。父親役の矢尾一樹もいいキャステイングだし、祖父役の野沢那智は放送当時も贅沢だと思った(以上、敬称略)。1話は作画もいい。マッドウス史の中でもなにかが極まった作品。

『異世界おじさん』4話がよかった。女子キャラの描写に本気を感じた。絵コンテ・演出は中山奈緒美さん、作画監督は坂井久太さん。カット単位で言うと、酔ったおじさんに連れて行かれる場面での、ツンデレさんが「手を離しなさ……」と言うカットが驚くくらいによかった。

仕事の合間にドラマ「家庭教師のトラコ」1話、2話も観た。橋本愛さんに色んなタイプの役をやらせるドラマかな。「メリーポピンズみたいな橋本愛」「熱血教師の橋本愛」「色っぽい女教師の橋本愛」の中だと、意外と熱血教師がハマっていた。トラコの素の部分はあんまり描かれてないんだけど、これからなんだろうなあ。

YouTubeにアップされている『湘南爆走族』の映像がかなり鮮明で驚く。

2022年7月29日(金)
取材の予習で『METROPOLIS』を観る。『METROPOLIS』はDVD BOXの仕事をしたので本編は何度も観ている。今回はBlu-rayで大型4Kモニター(ソフトは4Kではない)で視聴。公開当時は「クラシカルな物語と世界観」を「最先端の技術と空前の密度感の映像」で劇場アニメーションとして制作したものという印象だったのだけれど、今の目だと「最先端の技術」や「空前の密度感のある映像」を含めてレトロなアニメーションに見える。つまり、「レトロだけど、作り込まれていて密度感のあるアニメーション」に見える。おそらく、そういう見え方が正解なのだと思う。『METROPOLIS』の後は『カムイの剣』を少し観た。
12時過ぎに事務所を出て、新宿で「この人に話を聞きたい」取材。今回の取材させていただいたのは丸山正雄さんだ。今までにも何度か取材のオファーをしたのだが、断られ続けてきた。遂に実現した取材だ。興味深い話をいくつかうかがうことができたが、可能なら、これを丸山さんインタビューの第一弾としたい。

2022年7月30日(土)
新文芸坐で「100発100中」(1965/92分/35mm)を観る。プログラム「東宝の看板スター 永遠の二枚目、宝田明さんを偲んで」の1本。宝田明さんが主人公のアクションもので、宝田明さんが演じる謎の男、浜美枝さんの「爆弾娘」、有島一郎さんの刑事が主人公側のトリオ。敵側の殺し屋は平田昭彦さん。初見だと思って観ていたけど、終盤の逆転劇とラストの主人公と刑事の別れには激しく既視感があった。
物語については「ええっ、どうしてそうなるの?」と思う箇所があったし、設定を活かしきっているとも思わないが、軽いノリの作品だし、そういったところで文句を言うのも何か違う気がする。「爆弾娘」のユミが「パラシュートで地上に降りた時に服が脱げて裸になっちゃった」という理由で、クライマックスのアクションシーンで水着姿になるのには感心。いや、本当に感心した。ラストは主人公とユミの海中ラブシーンになるのだが、主人公がカメラマン(この映画を撮っているカメラマン)に自分達をフレーム外にするように指示して、スタッフの詫びの言葉を画面に表示して終わるというメタオチ。
ちなみに「爆弾娘」とは、ユミが爆弾を自在に使うことからついたニックネームで、劇中で平田昭彦さんが演じている殺し屋が「アカツキの爆弾娘(アカツキは組織の名前で、表記は「暁」と思われる)」とユミを呼ぶ。ユミは笛を吹くことで仕掛けた爆弾を爆発させることができるのだけれど、その効果音がおそらくは特撮作品でお馴染みの音源で、そこだけSFドラマ風味になっていた。

第783回 50年男?

 以前話題にした、“某雑誌のインタビュー取材”、

「昭和50年男」が発売されました!

 俺が尊敬する漫画家“藤子不二雄Ⓐ先生特集”で『プロゴルファー猿』について語ってくださいとの要請がメールにて会社に届き、「写真NGで良いなら是非OKで!」と。写真は苦手だけど、『猿』については是非語りたい板垣です。昔からこの連載にちょくちょく飛び出す『プロゴルファー猿』を編集の方が読んでくださってたことにより実現したインタビュー、しかも4ページ分も!
 いやぁ、何事も続けるもんだな~と思ったし、全てアニメ様・小黒祐一郎さんのお陰です。ありがとうございます!
 決してオーバーに表現しているつもりもなく、『あしたのジョー2 Blu-ray BOX2』のコラムといい、子供の頃からの純粋にファンだった方・その作品に関して“公式公認”でインタビューを受けたり、作品について書ける——これは、この歳になっても心底嬉しいことです。Twitterなどでゲリラ的に語ったり、コッソリイラスト上げたりするのが当たり前になった世の中で(別にそれはそれで良いことですよ!)、公式で自分を“ファン”として扱ってくださるのは光栄なことだし、どれだけ忙しくとも必ず受けなければならない案件でしょう。

休日とかじゃダメでしょうか?

と、控えめにお願いしてみると「OKです、是非」とので実現。
 もともと「昭和○○年男」という雑誌はコンビニとかで見かけてたので知ってはいましたが、一つの疑問を抱えつつ、編集・ライターさんをお迎えしました。

「自分、昭和49年生まれですけど大丈夫なんですか?」
「“ほぼ”50年でしょう」

 俺の最大の疑問が軽く躱されたところから、始まったそのインタビュー。一応「板垣がどれだけ『プロゴルファー猿』と藤子不二雄Ⓐ先生に思い入れがあるか」をしこたま語ったので、その内容は是非本を買って読んでください。山本俊輔さん・金丸公貴さん、とても綺麗に纏めていただきありがとうございました!
 で、「藤子不二雄キャラ(Ⓐ・F問わず)は今でもそらで描ける!」と『猿』のイラストも描かせていただき、藤子スタジオ公認(ですよね、金丸さん?)で載せていただけました! 更にそのイラストに“再アニメ化希望!”と書いたせいか、後日「藤子スタジオさんから、アニメ化楽しみにしています」との返事があったそうなことを、金丸さんより会社にメールをいただきました! 感激です! 子供の頃から憧れの藤子スタジオ様からそんなこと言っていただけるなんて! そんなん言われたら、

『猿』アニメ化したくなるじゃないですか!
誰かやらせて下さい!!

 全部自分で原画描くショート・アニメでもいいから作らせてくれないかな?

第245回 トムの胸の中には 〜トム・ソーヤーの冒険 音楽集〜

 腹巻猫です。SOUNDTRACK PUBレーベル第31弾として、12月21日に「トム・ソーヤーの冒険 音楽集」を発売します。1980年に放送された「世界名作劇場」第6作『トム・ソーヤーの冒険』の歌と音楽を集大成した2枚組CDアルバムです。音楽は惜しくも2020年に他界した服部克久が担当。アニメ音楽の代表作と呼べる作品でした。ぜひ、お聴きください!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNDKPSVH


 当コラムでは5年前にも『トム・ソーヤーの冒険』を取り上げたことがある。そのときは放送当時発売された音楽アルバム(LPレコード)の曲に内容を絞って紹介した。そして最後に「未収録のBGMを含めた完全版サントラの発売が待望される」と書いた。それがようやく実現した。

 「トム・ソーヤーの冒険 音楽集」は過去に発売されたレコードやCDの内容に未収録の音源を加えた完全版。今回はこのアルバムを取り上げて、『トム・ソーヤーの冒険』の音楽の全貌と聴きどころを紹介したい。

詳しい収録内容は下記を参照。
https://www.soundtrack-lab.co.jp/products/cd/STLC050.html

こちらで試聴用動画も公開中。
https://youtu.be/OMBF72idXJE

 「トム・ソーヤーの冒険 音楽集」の第1の注目ポイントは、1980年にキャニオン・レコードから発売された音楽アルバム「トム・ソーヤーの冒険」の完全復刻である。同アルバムには主題歌・挿入歌6曲とインストゥルメンタル6曲が収録されているが、過去にCD化されたのは歌ものだけ。インストゥルメンタルは1度もCD化されていなかったのだ。
 復刻にあたって、オリジナルのままの構成を再現することにこだわり、曲間(曲と曲のあいだの無音部分)の長さもLPレコードと同じ秒数になるように調整してもらった。アルバムは頭からまるごと聴くことを想定して作られているので、曲間も曲の雰囲気や曲の終わり方(フェードアウトなど)に応じて、曲ごとに微調整しているものなのだ。パソコンや携帯音楽プレーヤーに取り込んで聴く方も多いと思うが、機会があればぜひCDプレーヤーで頭から再生して、オリジナル盤の雰囲気を味わってみてほしい。
 実は本アルバムに収録された6曲のインストゥルメンタルは劇中では1度も使われていない。本編で「アルバムの曲では?」と思う曲は、もとになったオリジナルBGMのほうなのだ。アルバムの曲は1曲が長く、編成も厚く、アレンジも凝っているため、劇中では使いづらかったのではないかと想像する。服部克久は、アルバムは純粋に音楽作品として楽しんでもらいたいと思っていたのかもしれない。
 「トム・ソーヤーの冒険 音楽集」の第2の注目ポイントは、劇中で使用されたオリジナルBGMを完全収録したこと。オリジナルBGMは1999年発売のCD「懐かしのミュージッククリップ トム・ソーヤーの冒険」(東芝EMI)で40曲あまりが商品化されているが、今回は未収録曲を60曲以上増補した完全版とした。
 本作のBGM録音は2回行われている。1回目は1979年12月10日、2回目は1980年3月17日。1回目と2回目のあいだにアルバム用の録音が行われた(詳しい日付は不明)。
 2回の録音で収録されたBGMは100曲以上。そのうちわけは、トムのテーマ(主題歌「誰よりも遠くへ」のアレンジ)、ハックのテーマ、ポリーおばさんのテーマ、物語の舞台である19世紀のアメリカ中西部をイメージさせるジャズ風の曲、ゆったりとした情景描写曲、トムのいたずらシーンに流れるコミカルな曲、インジャン・ジョーの登場場面などに流れるサスペンスタッチの曲などである。19世紀に活躍したアメリカの作曲家スティーブン・フォスターの楽曲も3曲用意された。
 なかでも印象深いのは、トムがいたずらをしかけたり、失敗したりする場面のコミカルな曲。ずばり「先生に叱られるトム」と名づけられた曲もある(この曲名はマスターテープに記載されていた)。タイトルどおり、トムが先生に叱られる場面によく流れた、とぼけたマーチ調の曲だ。
 また、本作では数秒から数十秒ほどの短い音楽(いわゆるブリッジ)が40曲ほど作られ、効果的に使われている。コミカルなシーンにブリッジを重ねることで笑いを誘う、古典的なギャグアニメ風の使い方である。過去の「世界名作劇場」ではこういう演出はあまり見られず、本作で「あ、なんか雰囲気変わったな」と思ったところのひとつだ。ブリッジ曲の大半は今回のアルバムが初収録である。
 BGMの構成は、基本的に物語に沿って使用曲を並べる形にした。といっても、本作は全体をつらぬく大きなストーリーがあるわけではないので、エピソード順と使用順にはそれほどこだわっていない。自由にストーリーや場面を思い浮かべながら聴いてもらいたい。
 BGMコレクションの頭には「物語の始まり」「ミシシッピー川のほとりで」「風わたる緑の丘」の3曲を収録した(ディスク1のトラック14〜16)。「物語の始まり」はオープニング主題歌のメロディをオーケストラで演奏した雄大な曲。曲名はマスターテープに記載されていたもので、服部克久は物語の序曲のイメージで書いたのだろう。この曲は実際は本編では使用されなかった。続く「ミシシッピー川のほとりで」「風わたる緑の丘」の2曲は初期のエピソードで使用された、しっとりとした曲調の情景描写曲。いずれも服部克久らしい、さわやかで品のよい曲である。物語が進むにつれて、こうした曲に合う場面が少なくなったためか、使われなくなったのがもったいない。
 次の「トムとハックのディキシー」(トラック17)からいよいよ『トム・ソーヤーの冒険』らしい雰囲気になる。この曲はハックのテーマとして書かれたメロディをディキシーランドジャズ風に演奏した曲。ハックだけでなくトムのシーンにもたびたび使用されている。「トム・ソーヤーらしい」と感じる曲のひとつだ。
 トムのいたずらシーンに流れる曲が続いたあと、フォスターの名曲「金髪のジェニー」(トラック22)で雰囲気は一転。トムとベッキーの出逢いを彩るロマンティックな曲を続けてみた。ストリングスとピアノによるオープニング主題歌の美しいアレンジ「トム、ロマンティック」(トラック23)は初収録である。
 ジャジーな「なまけものトム」(トラック27)からふたたびユーモラスなムードに。次の曲「猫のように忍び足」から「トムのお葬式」(トラック34)までは、トムたちが家出してミシシッピー川の小島で気ままな日々を送る第13話〜16話のイメージで構成した。このブロックに収録した「冒険者たち」(トラック31)は『トム・ソーヤーの冒険』の音楽の中でもちょっと変わったタイプの曲である。クロスオーバージャズ風のしゃれたサウンドが大野雄二の『ルパン三世』の音楽みたい。本編では2回しか使われていないが、印象に残る曲だ(初収録)。
 次回予告音楽とエンディング用の曲をまとめた「冒険はつづく」(トラック35)でディスク1は終わる。

 ディスク2は第2回録音の楽曲を中心に収録した。
 ハーモニカやギターが奏でる「毎日が夏休み」(トラック3)が抜群にいい。ブルージーなメロディを使った、のんびりムードの曲である。この曲をアップテンポにしたのがトラック23の「トムは人気者」(初収録)。第2回録音におけるトムのテーマとも呼べるメロディーだ。服部克久は洗練された品のよい曲を書く作家というイメージがあるが、こういうとぼけた曲やユーモラスな曲もうまいのだなあ、と認識をあらためた。
 トラック10「星降る夜の祈り」は第31話で1度だけ使われた曲(初収録)。ハックが亡き母のために祈りを捧げるラストシーンで流れている。ピアノとストリングスを主体にした美しい曲だ(服部克久の曲といえばこういうイメージですよ)。このエピソードはトムがポリーおばさんのスプーンの数をごまかすコミカルなシーンが見どころなのだが、最後は感動的に締めくくられる。
 トラック11「気球がやってきた」からトラック14「あこがれを胸に」までの4曲は、トムたちの村に気球がやってきて騒ぎになる第34〜37話のイメージで構成。ダイナミックな曲調の「気球がやってきた」はもともと蒸気船のイメージで書かれた曲。アルバム「トム・ソーヤーの冒険」では、この曲をアレンジした「はるかなる蒸気船」という曲がB面の1曲目に収録されている。本作の音楽の中でも、とびきり華やかで躍動感のある曲である。「空からの眺め」(トラック13)と「あこがれを胸に」(トラック14)の2曲もいい。トムたちが気球に乗って飛ぶ場面、そして村に帰ってくる場面に流れた。いかにも「空の旅」というイメージのさわやかで広がりのある曲調に胸が熱くなる(ともに初収録)。
 音楽集の終盤、トラック30「インジャン・ジョーのゆくえ」からトラック34「希望の光」までの5曲は、インジャン・ジョーの復讐を恐れていたトムが洞窟の中でインジャンに遭遇するエピソード、第46話〜48話のイメージで構成した。トラック32の「せまる危機」はトムのピンチをスリリングに描写する音楽。サスペンス映画のクライマックスみたいでドキドキする。アップテンポのアクション曲「勇気ある追跡」(トラック33)を経て、ストリングスがおだやかに奏でる「希望の光」(トラック34)がトムのほっとした気持ちを表現する。聴きながら絵が浮かぶような流れを意識した。
 BGMコレクションの最後のパートは、トムと仲間たちのテーマを集めた。オープニング主題歌のメロディをフルートがやさしく演奏する「トムの胸の中には」(トラック35)、ハックのテーマの変奏「はだしで走ろう」(トラック36)、軽快な行動曲「トムとハックと仲間たち」(トラック37)。
 「トムの胸の中には」は、Mナンバー「M-1」が振られたBGMである。マスターテープに記載されたタイトルは単に「トムのテーマF」となっていたが、「M-1」は多くの場合メインテーマなど重要な曲に振られる番号なので、収録する位置と曲名は少し悩んだ。考えたすえ、大事件を経験して、少し成長したトムをイメージして収録した。
 締めくくりの曲はオープニング主題歌のディキシーランドジャズ風アレンジ「調子のいいトム」。やはりトム・ソーヤーの物語のラストは明るくにぎやかでなくては。
 ディスク2の末尾にはボーナストラックとして主題歌2曲のオリジナル・カラオケを収録した。歌う前に、まずはじっくりとカラオケに耳を傾けたい。特に「ぼくのミシシッピー」は1番と2番とリフレインがすべて違うアレンジになっているのが感動的。「音楽の料理人」と呼ばれた服部克久のみごとなアレンジを味わってほしい。
 ようやく実現した『トム・ソーヤーの冒険』の完全版音楽集。追悼盤と呼ぶには遅くなってしまったが、メモリアルの思いを込めてリリースする。服部克久の代表作のひとつを収めたアルバムとして、愛聴していただければ幸いである。

 ところで「トムの胸の中には」何があるのだろう?
 勇気? 希望? 夢?
 もちろん、それもあるだろうけど、それだけじゃない。トムの胸の中には、いつもミシシッピー川が流れているのさ。

トム・ソーヤーの冒険 音楽集
Amazon

第782回 出﨑『コブラ』30年振り?

 現在、観に行きたい映画は色々あるけど、それらよりも真っ先に行きたい

公開40周年記念 特別4K上映
『SPACE ADVENTURE コブラ』!

 勿論、出﨑統監督作品です。公式で“40周年”と謳ってるのに、なぜ自分に取っては「30年振り」なのか?
 憶えている方もいらっしゃると思いますが、本公開の1982年からほぼ10年後の1992年、“ビデオ&LD発売記念上映”がテアトル池袋で行われ、自分はそれを観て以来だからです。
 逆に本公開のリアルタイム時、俺はまだ8歳とかで、劇場には『コブラ』より『ドラえもん』を観に行くのが当然という年代。その後、水曜ロードショー(『金曜~』の前番組)で、『あしたのジョー2』を観て以来の出﨑ファン入り、の順番なので、出﨑劇場初体験は17歳の時のテアトル池袋、となる訳です。
 その上映期間と東京デザイナー学院の説明会の日が重なっていたので、当時喜び勇んで上京~御茶ノ水で学校説明会に参加し、その足で池袋へ。観ましたよ、大画面で『コブラ』を! 体感しましたよ、躍動感ある出﨑アニメを!
 繰り返しPANやダイナミックな流背引きなどに代表される出﨑演出も「大画面で観ると目が回る?」とか想像してましたがそんなことは全くなく、眼前で次々に繰り広げられる画面の楽しさに酔いしれた100分間でした。その後、劇場版『BLACK JACK』(1996年)も興奮の連続で3回劇場に行きました!

出﨑作品程、「観て感じる」と言う楽しみに満ちたアニメを自分は未だに知りません!

で、今回公開されている“4K”版は30年のテアトル池袋や4K Blu-ray版(当然購入済)とは、また違った“体験”をさせてくれるに違いありません。でも……、

 PVも公開になり、納品も始まった総監督としての責任上、4K『コブラ』に限らず他の映画も観に行っている暇が無いのです。ごめんなさい、出﨑監督! もう少しスタジオ(現場)を育てて、自分が付いていなくても回るようになった時、またやって欲しいな。

アニメ様の『タイトル未定』
373 アニメ様日記 2022年7月17日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年7月17日(日)
オールナイトを前にして「WEBアニメスタイル[旧サイト]」の『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』のインタビューを久しぶりに読む。

渡辺歩・小西賢一が語る『のび太の恐竜2006』
http://www.style.fm/as/13_special/mini_060417.shtml

面白かった。この頃はネットの記事でこのノリが出せたんだな。今でも出せなくはないけど、難しいはず。インタビュアーは私だけど、インタビュアーの「大塚康生さんに始まる美意識を捨てている」という発言が凄すぎる。渡辺さんの「我々スタッフが最初に登った天王山だったかもしれません」もいいなあ。気になるアニメーターさんの仕事を満遍なく聞いているので、その意味でも充実。「最後の闘技場から逃げるところって、欠番カットが出ていませんか?」と聞くのも凄い。

2022年7月18日(月)
ワイフとグランドシネマサンシャインに。「ミニオンズ フィーバー」【吹替版】を観る。今回だけのことではないけれど、キャラクター(&世界観)と物語と映像技術の一致が素晴らしい。その後は池袋をあちこち歩く。ミクサライブ東京の「モヤさまドイヒー展」に寄ったり、サンシャインシティの「ガシャポンのデパート池袋総本店」に行ったり。なんだか夏休みっぽい。「少年ジャンプ+」で連載を再開した「チェンソーマン」を読む。

2022年7月19日(火)
先日の「出没!アド街ック天国」の「千川・要町」の回を録画で観た。要町は散歩でたまに行くんだけど、知らない店が沢山紹介されていた。驚いたのはチェーンの中華料理屋の「福しん」について。「福しんこだわりは各店舗に“名物おばちゃん”となるようなスタッフを置くこと(以上はテロップから)」だという。ええっ、マジか。会社の方針なの? 閉店した事務所近くの福しんにも、確かに印象に残るおばちゃんがいた。最近使っている店舗にも印象的な女性定員がいるんだけど、その人はおばちゃんと呼ぶのは申しわけないくらい若い(はず)。これから「名物おばちゃん」になる「おばちゃん候補」なのだろうか。
今日で『THE END OF EVANGELION』公開から25周年であることを知る。『戦え!!イクサー1』のBlu-rayを流していたのだけれど、『THE END OF EVANGELION』に切り換える。Blu-rayだと、通常再生と別に「試写会上映版」をPLAYできるのだけど、「試写会上映版」だと、本編の後に「ラブ&ポップ」の予告(特報?)がついている。試写会の時はこの構成だったんだ。すっかり忘れていた。

2022年7月20日(水)
『映画 バクテン!!』を観る。面白かった。展開が予想外だったのもよかった。詳しくは再見した時に改めて。
『THE END OF EVANGELION』に続いて、TV『新世紀エヴァンゲリオン』をBlu-ray BOXで視聴。第壱話でミサトが「システムは利用するためにあるものね」と言う。このセリフは小説「愛と幻想のファシズム」からの引用だったはず。引用といっても、同じセリフがあるわけではなかったと思うけど。「愛と幻想のファシズム」に読んで確認しようとしたら、電子書籍になっていないのね。いつか紙の本で確認しよう。
『怪盗グルーの月泥棒』を配信で流し観。未見かと思ったら、記憶にある場面がいくつも。怪盗グルーの長編は5本あって、そのうちの数本は観ていないはずなんだけど、観てないのはどれだ?

2022年7月21日(木)
身近な人に聞いた話。仕事の打ち合わせで「あなた、2コロ? 3コロ?」と聞かれたらしい。2コロは新型コロナに2回感染、3コロは3回感染の意味だそうだ。これだけ感染者が出ているだから、複数回感染している人もいるはずだけど、ちょっと怖い言い方だ。
朝の散歩で毎日のように見かけている猫が数匹いて、そのうちの一匹の名前が分かった。マイケルだそうだ。その猫は辺りのボス猫のはずだし、見た目がタフな感じだから、もっとケンカに強そうな名前を想像していた。

2022年7月22日(金)
『5億年ボタン』の2話を観た。かなり面白かった。だけど、これは全話を一気に観たほうが面白いかもしれない。で、これは作品の本質とは関係ないけど、2話は野沢雅子さんをキャスティングしている意味があった。それからオマケコーナーでの野沢さんのイジられ方が凄かった。
『RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる』を鑑賞。前編と合わせての感想になるけれど、オリジナルの物語やキャラクターを大事にした作品だと思った。幾原邦彦監督の完全新作劇場長編が観たくなるのは前編と同じ。

2022年7月23日(土)
『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』を配信で視聴。映像がかなりパキパキしている。配信版の映像はフィルムに落とす前のデータでマスターを作っているのだろうか。
夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.137 渡辺歩&小西賢一の劇場アニメーション」を開催。トークは充実。「ここだけの話」も多かった。それから、今まで語られていなかったノンクレアニメーターさんの話題も。

新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
湯浅政明の超傑作『マインド・ゲーム』と『犬王』

 12月11日(日)の14時から、新文芸坐とアニメスタイルの共同企画で「湯浅政明の超傑作『マインド・ゲーム』と『犬王』」を開催します。

 上映するのは湯浅政明さんにとって初の長編監督作品の『マインド・ゲーム』(2004年)と最新作にして、話題作の『犬王』(2022年)。『マインド・ゲーム』はロビン西の同名マンガを映像化したもので、アニメーションの快楽に満ちたフィルム。『犬王』は古川日出男の小説「平家物語 犬王の巻」を原作としており、室町時代に実在した犬王を活躍をロックオペラとして描いた野心的な企画。両作とも芸術性と娯楽の両立が素晴らしく、また、是非とも劇場のスクリーンで観てもらいたい作品です。
 『マインド・ゲーム』は、過去に新文芸坐とアニメスタイルのオールナイトで何度か上映しましたが、今回は昼間の上映となります。

 トークコーナーのゲストは湯浅監督を予定。トークコーナーは作品上映の後となります。チケットは12月4日(日)から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。なお、新型コロナウイルス感染予防対策で観客はマスクの着用が必要。入場時には検温・手指の消毒を行います。

 ※トークコーナーにつきまして、出演予定でした小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)は体調不良のため登壇を見送らせていただきます。代わりに岡本敦史(ライター・編集者)さんが聞き手を務めます。直前のお知らせとなってしまい誠に申し訳ありませんが、何卒ご理解賜りますようお願いいたします。(12/9追記)

新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
湯浅政明の超傑作『マインド・ゲーム』と『犬王』

開催日

2022年12月11日(日)

開演

14時

会場

新文芸坐

料金

一般2200円、各種割引・友の会2000円

トーク出演

湯浅政明(『マインド・ゲーム』『犬王』監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)岡本敦史(ライター・編集者)

上映タイトル

『マインド・ゲーム』(2004/103分/35mm)
『犬王』(2021/97分/DCP)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第781回 背景30年振り?

“総監督”とはいったい何をする役職か?
これが問題です!

 自分は学生時代のグループ制作では美術監督と背景をやっていました。当時はもちろん、画用紙にポスターカラーで。というか、30年前も今と変わらず何でもやってた板垣です。筆やペンを使ってのレタリングも得意だったため、タイトルも(セルに)描いたし、仕上げも手伝いました。
 現在ではデジタル・ツール(CLIP STUDIO)で何でもできるので、もっと色々やれます! アニメ業界は作画の人手不足ばかり取沙汰されがちですが、実は現状、背景・美術の人員も結構深刻なのです。

ってことで、また短いのですが“背景”作業に戻ります。

アニメ様の『タイトル未定』
372 アニメ様日記 2022年7月10日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年7月10日(日)
配信の『ソウルイーター』を流しながら作業。今になって、作り手のマカに対する愛情の深さを感じる。

2022年7月11日(月)
午前8時から13時に集中して原稿を進めた。その前後はあまり集中しなくてもできる作業。
早朝散歩で『さらば宇宙戦艦ヤマト ―愛の戦士たち―』のサントラを聴いて、急に本編が観たくなり、Blu-rayソフトを注文しようとしたら、Amazon先生が「君はそのBlu-rayを購入しているよ」と教えてくれた。ありがとう、Amazon先生。ラックにあった『さらば』のBlu-rayを再生。あ、これって4:3収録なんだ。16:9収録でもやっぱり文句を言うと思うけど、16:9のほうがいいカットもあるなあ。

2022年7月12日(火)
この日も午前8時から13時に集中して作業を進めた。前後はあまり集中しなくてもできる作業。
年末に開催される海外でのイベントに、ゲスト出演のお誘いがあった。声をかけてもらったのは嬉しいけれど、その時期に8日も事務所をあけるのは無理だなあ。それとは別にアニメ企画お手伝いの話が舞い込む。

2022年7月13日(水)
買うだけ買って再生していなかった(当時は事務所に4K再生環境がなかった)『君の名は。』4K Ultra HD Blu-rayを4Kモニターで再生してみる。これは凄い。映像が鮮やかで、かなりの見応え。国立新美術館の「新海誠展」でモニターで流れていた『君の名は。』も色が鮮やかだったけれど、その印象に近い。実際に4Kで映像を作っているわけではなく、アプコンなのだろうと思うけれど、満足度は高い。作画に関して言うと、ロングショットでも顔がちゃんと描いてあるのがいい。多少は省略してあるけど、破綻はない。
『新テニスの王子様 U-17 WORLD CUP』2話で観客席の観客が背景描きで、背景の人物に目鼻まできちんと描いているカットあった。前からこんな処理があったっけ。そのうちに確認してみよう。
この日のデスクワークは先週校了した書籍関連の作業、進行中の書籍の作業(これが多い)、それに関連した連絡、「この人に話を聞きたい」の原稿、イベント関係の連絡、今後の書籍の企画、「WEBアニメスタイル」の作業等。とにかくやることが多い。

2022年7月14日(木)
早朝散歩で雑司ヶ谷を歩く。パラパラと雨が降っており、涼しくて非常に快適。ちょっとしたバカンス気分だった。池袋HUMAXシネマズの15時半からの回で『神々の山嶺』を観る。谷口ジローの同名マンガをフランスでアニメーション映画にしたもので、画作りがいい。キャラクターは日本のリアル系作画に近い。過去の日本も舞台になっているのだけれど、その描写が丁寧であり、時代考証的な粗は少ない。現代の劇映画として考えると、もう一押しかもう一ひねり欲しいところだけど、観てよかったと思える作品だった。
『ヒーラー・ガール』を再見。ながら観で全話を観た。

2022年7月15日(金)
散歩以外はデスクワーク。事務所の近くに、金曜だけランチにカレーライスを出し、そのカレーライスのために行列ができるうなぎ屋がある。正確にはうなぎが売りの居酒屋だ。行列に並ぶのが嫌で金曜には入ったことがなかったのだけれど、この日は行列が短くて、すぐに入店できそうだったので並んでみた。カレーライスを注文して食べてみたところ、予想通りの「昭和のカレーライス」だった。懐かしい味だし、食べようと思ってもなかなか食べられないのかもしれないけど、僕は二度目はないかなあ。
『機動戦士ガンダムF91』を4Kで観た。

2022年7月16日(土)
仕事の合間に、新文芸坐で「MEMORIA メモリア」(2021・コロンビアほか/136分/DCP)と「MONOS 猿と呼ばれし者たち」(2019・コロンビアほか/102分/DCP/R15+)の2本立てを観た。プログラム名は「大地から呼ぶ者、大地で叫ぶ者」だ。新文芸座アカウントの「(略)特に『MEMORIA メモリア』は音が物語の一部になっていると言っても過言ではありません。家では聞こえない音が聞こえ、そこに意味が持たされています。」等のツイートを目にして観る気になった。確かに「MEMORIA メモリア」は劇場か、音響が整った場所で観ないと成立したないと思われるシーンがあった。「MONOS 猿と呼ばれし者たち」も気になるところがあったので、両作のパンフレットを購入した。

第244回 再会を待ちながら 〜花の詩女 ゴティックメード〜

 腹巻猫です。12月2日にNHKホールで「渡辺宙明 追悼コンサート」が開催されます。今年6月、96歳で亡くなった渡辺宙明先生のメモリアルコンサート。ご子息の渡辺俊幸さんが音楽監督と指揮、一部の楽曲のアレンジも担当。私が好きな『戦え!!イクサー1』からも選曲されているそうなので楽しみです。まだ若干チケットが残っているようなので、迷っている方はぜひ。
https://chumei2022.com/


 少し前のことになるが、11月1日から10日間限定でリバイバル上映された劇場アニメ『GOTHIC MADE 花の詩女』を劇場に観に行った。
 永野護が原作・脚本・監督を務めた作品。初公開は2012年11月で、今回は10周年記念の上映だった。
 本作は永野護の意向により、映像ソフト化や配信はされていない。12Kの解像度で制作された映像とこだわりぬいた音響を劇場で体験してほしいということらしい。
 大スクリーンで観る映像は格別で、作画や色彩の美しさを堪能した。音響はドルビーアトモスだったので、これも極上。音楽のすばらしさにも感動した。
 作品は劇場でしか観られないが、サウンドトラック・アルバムはCDで発売されている。今回は『GOTHIC MADE 花の詩女』の音楽を聴いてみたい。

 音楽を手がけたのは長岡成貢。「ストライクウィッチーズ」シリーズの音楽でもおなじみの作曲家である。
 本作の企画が決まったときから音楽は長岡成貢に頼もうと決めていた、と永野護がサウンドトラック・アルバムの解説書で明かしている。
 永野の妻でもある声優・歌手の川村万梨阿が、1997年に発売されたOVA『神秘の世界エルハザード2』の主題歌「眠れない夜には」を歌った。作・編曲を担当したのが長岡成貢だった。その曲を聴いて、「いつかこの作曲家と仕事をしたい」と思っていたそうだ。
 さらに2004年、長岡成貢が故郷・三重県の明和町で開催される「斎王まつり」で川村万梨阿をゲストボーカルに迎えたコンサートを行った。それに同行した永野護が、斎王の伝説からヒントを得て思いついたのが『花の詩女 ゴティックメード』の物語だった。
 余談になるが、筆者が長岡成貢にインタビューしたとき、雑談の中で斎王まつりの話を聞いたことがある。長岡成貢は長年、斎王まつりに音楽を提供していて、CDも発売している。故郷の祭りに音楽で参加できることに格別な想いがあるようだった。
 それから間もなく、筆者は第55回日本SF大会「いせしまこん」に参加するために三重県を訪れた。斎王まつりの時期ではなかったので祭りは見られなかったが、伊勢の雰囲気に触れることができた。ついでに鳥羽水族館を見学して帰ってきた。水族館はおまけだが、この風景と空気が長岡成貢の音楽を育てたのだろうかと考えたことを思い出す。
 話を戻すと、『GOTHIC MADE 花の詩女』では川村万梨阿が主役を務め、挿入歌や主題歌を歌っている。
 物語の舞台は植民惑星カーマイン。惑星の歴史の語り部である「詩女(うため)」は、代々記憶を受け継ぎ、都へ登る儀式を行うことになっている。新しい詩女になった少女ベリンが都に旅立つ日、ドナウ帝国の皇子トリハロンが彼女を警護するために現れた。2人は互いの考え方や立場の違いにとまどいながら、都への旅を続けていく。
 音楽づくりは川村万梨阿が歌う曲の制作が先行した。特に劇中でベリンが数え歌を歌うシーンは、曲に合わせて作画することになっていた。
 永野護は音楽について、ひと言「いい曲を作ってください」と長岡成貢に依頼したという。
 まるっとおまかせみたいな言い方だが、曲づくりは大変だったそうだ。永野護は自分がほしい音楽にこだわり、長岡成貢も自分がイメージする音楽にこだわった。ひとつの曲に複数のアレンジが作られ、何人ものミュージシャンが演奏し、録音スタジオをいくつも使い、テイクを重ねた。「昨今のアニメ映画では桁外れの予算と時間をかけて『花の詩女』の音楽が作られた」と永野護はふり返っている。
 その音楽が収録されたサウンドトラック・アルバムは、2012年10月に日本コロムビアから発売された。劇中音楽と川村万梨阿の歌3曲を収録した充実盤だ。
 収録曲は以下のとおり。

  1. ベリンのテーマ
  2. 詩女の旅立ち
  3. セイラーソング
  4. 歴史の闇〜ウォーキャスター
  5. 湖水地方
  6. トレーサー
  7. 暗雲〜太陽風の気まぐれ
  8. 種の理由
  9. ゴティックメード V1
  10. ゴティックメード V2
  11. GTM・カイゼリン
  12. 巨大な陰謀
  13. 都にて…
  14. ベリンの数え歌
  15. 茜の大地
  16. 空の皇子 花の詩女

 解説書では永野護が各曲解説を書き、使用された場面や音楽制作の裏話を紹介している。
 1曲目は「ベリンのテーマ」。本作のメインテーマでもある。金属の弦を張ったイランの民族楽器サントゥールが使われている。サントゥールの澄んだ響きにストリングスが重なり、詩女の神秘性を描写する。エスニックで美しい曲調は『神秘の世界エルハザード』にも共通するものだ。
 永野護の解説によれば、この曲のイメージに合う音を探すのが大変だった。サントゥールの音色にたどりつくまでに世界中の楽器がスタジオに集められ、試されたそうだ。
 2曲目「詩女の旅立ち」はベリンたち一行が都に旅立つシーンに流れる女声スキャット(ボーカリーズ)の曲。のちに登場する「ベリンの数え歌」のスキャットバージョンである。ボーカルはベリンを演じた川村万梨阿。やさしくノスタルジックなメロディと川村万梨阿の歌声の組み合わせが絶品で、このシーンを観て、聴いて、心をわしづかみにされた人も多いのではないか。序盤の聴きどころである。
 トラック3「セイラーソング」はベリンとトリハロンの旅の描写、惑星カーマインの風景が紹介されるシーンで流れる曲。ピアノとサントゥールとベースのトリオで奏でられる。音数が少ないぶん、楽器の音色が際立ち、メロディーの優美さにぞくぞくする。
 トラック5の「湖水地方」も同じ曲想の情景描写曲。ピアノの代わりにハープがアルペジオを奏でる。ハープ奏者は朝川朋之。朝川は作曲家として永野護原作の劇場アニメ『The Five Star Stories』(1989)の音楽を担当していた。奇しき縁である。『The Five Star Stories』も昨年(2021年)、角川映画祭で上映されていたのを観たので記憶に新しい。
 次の曲「トレーサー」で雰囲気が一変する。前の曲までは生楽器による演奏だったが、これはシンセサイザーのみで作られた曲。ほとんどリズムだけで構成されている。ベリンとトリハロンを監視する謎の追跡者の登場場面(だったと思う)に流れて緊迫感をあおる。実は劇中に使用されたのはデモバージョンで、もっとヘビーな音の「完成版」もあったのだそうだ。デモを使ったのは「音がもっともソリッドだった」からと永野護は解説している。サントラファンとしては完成版もボーナストラックで入れてほしかったなぁと思う。
 トラック8「種の理由」はピアノとハープが奏でる可憐で優雅な曲。エンニオ・モリコーネやニーノ・ロータが好きだという長岡成貢の音楽性がよく表れている。『ストライクウィッチーズ』のような作品ではアクション系の曲が印象に残りがちだが、長岡成貢は本当にきれいな曲を書く人なのである。この曲は、ベリンとトリハロンのあいだのわだかまりが消え、ふたりが微笑む場面に流れた。緊迫したシーンのあいだでほっとひと息つくところである。
 トラック9「ゴティックメード V1」と次の「ゴティックメード V2」は後半の聴きどころ。
 ゴティックメード(GTM)は本作に登場する巨大ロボットの名称。GTMの起動シーンは作品全体の中でも見せ場になっている。「ゴティックメード V1」では金属的なシンセの音と強いリズムが敵GTMの威容を描写。この曲では永野護が自らベースを弾いている。
 「ゴティックメード V2」は「V1」のオーケストラバージョン。激しくうねるストリングスとリズムが緊迫感を表現する。トリハロンのGTM・カイゼリンの起動シーンに使用された。ゴティックメードの曲はいくつものバージョンが作られたが、その中からGTMの起動音をじゃましないものとして採用されたのがこのバージョンである。
 カイゼリンの戦闘シーンに使われたのがトラック11の「GTM・カイゼリン」。シンセサイザーのみで演奏されたリズム主体のテクノロックである。このシーンには別の曲が用意されていたのだが、予備として作っておいたこちらの曲が採用された。「カイゼリンのエンジン音を邪魔せず、イケイケムードを盛り上げる」という理由なのだそうだ。映像音楽は映像や効果音やセリフと合致してこそなのだなぁとあらためて思う。
 トラック13「都にて…」は都にたどりついたベリンとトリハロンが語らう場面に流れる曲。アコースティックギターのソロで奏でられる。ギター奏者・嘉多山信のほぼアドリブなのだそうだ。おだやかな演奏から、言葉にしきれないふたりの気持ちが伝わってくるようで、みごとだ。
 アルバムのラストには川村万梨阿が歌う曲が3曲続けて収録されている。ベリンが花の種をまきながら歌う「ベリンの数え歌」、エンディングに流れる「茜の大地」、そして主題歌「空の皇子 花の詩女」。作中でも、ラストにこの3曲が続けて流れる。しかもすべてフルサイズ。ちょっとした音楽映画みたいで、ゴージャスな趣向である。
 しかし、そうしたくなる気持ちもわかる。3曲とも実にいい曲だからだ。
 作詞はすべて川村万梨阿が担当。「ベリンの数え歌」はわらべ歌みたいに始まるが、サビでぐっと感情が入ってきて、胸をつかれる。もうひとつのベリンのテーマとも呼べる曲だ。
 「茜の大地」はエンドクレジットのバックに流れる歌。少しさみしげな曲だが、その曲調ゆえに、物語が終わったあとの余韻に静かにひたることができる。夕陽に照らされた大地の前でベリンがさみしく歌っているイメージの曲である。
 主題歌「空の皇子 花の詩女」はベリンとトリハロンのテーマ。ピアノとシンセの幻想的なイントロから川村万梨阿の歌が始まり、しばらくは浮遊感のあるサウンドが続く。2コーラス目からドラムのリズムとエレキギターが加わり、曲は急に力強い雰囲気になる。まるでベリンの強い意志を示すように。この変化が鮮やかで感動的だ。歌に込められた願いと希望とともに作品は幕を下ろす。

 『花の詩女 ゴティックメード』を観る機会は、またしばらくないかもしれない。手にすることができるのは音楽だけである。だからこそ、このアルバムをくり返し、深く味わいたい。
 本アルバムは、一時CDショップで在庫切れになっていたが、現在は在庫が復活している。映像の代わりと思わずに、音楽が作り上げる世界、音楽でしか体験できない世界をぜひ楽しんでほしい。劇場で再会できる日を待ちながら。

花の詩女 ゴティックメード オリジナル・サウンドトラック
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第780回 話せるトコまで、とその他!

新作のPV、発表されました。以上!

 その他、スタッフ・キャスト等に関しては、また公式からの続報が出次第ってことで!

 いつものことですが、公式の許諾を得ずに勝手に新情報を書(描)いたりはできないので、公式の情報開示に合わせたかたちで、落ち着いて話題にさせていただきます。で、本日はさらに次の作品(別タイトル)のキャラクターのラフを描いて提出。年が明けたら、3シリーズ分のホン読み(脚本開発)が始まることでしょう。何か色々頭の中で作品がグルグル回ってる状態で、フリーの演出・監督業で駆けずり回っていた頃を思い出します。慢性的に忙しい状態が、おそらく生理的に好きなんでしょう、俺は。ガイナックスにいた頃、板垣の働き方を見て「ワーカホリックというヤツだな~」と仰った庵野(秀明)監督を思い出します。当時、社長の山賀(博之)監督にも同様のことを言われた記憶があります。
 まあ、どうなんでしょう? 自分的には“働き過ぎ”とは思っていません。ちょうど1年前に亡くなった父親は、俺が名古屋にいた頃(上京前)の18年間ずっと、朝6時前後~夜8時半頃まで毎日(月~土曜日)に加え日曜日も昼まで働きに出て、の今では国から怒られそうな週休半日(!)で、月給20万円でしたから。細かい事情は多く語らずに死んだのですが、東北(山形)から中卒の出稼ぎ集団就職組で、我々家族を食わせるために遮二無二働いたんだと思います。が、少なくとも会社(工場)の愚痴一つ自分は聞いたことがありませんでした。
 そんな働き詰めの父を見て育ったせいか、自分だけでなくウチの実家は姉も妹も、そして姪・甥(姉の子供ら一姫二太郎)らも含め皆「働かざる者食うべからず」と言わんばかりに、ホントによ~く働くようです。各々稼ぎが多いかは? ですが。
 で、自分は——別にアニメの仕事を卑下するつもりはないのですが、「好きが高じて」の職であると自負しているし、実家で独り立ちした姉らよりは「運が良く、得してる」と思っている分、金が入り用だとの一報が入ると直ぐお金送るようにしています(己が金持ちでもないのに)。なぜなら、自分が好きを仕事にできているのも実家の母・姉・妹ら家族あってこそだと思っているからです。好きな仕事だからこそ、いくら働いても苦にならないし、また金がなくなったら、いくらでも好きな仕事をして稼げばいいだけのことですからね。
 ま、それをワーカホリックと言うなら——そうなんでしょうね。さて、仕事に戻ります。

第198回アニメスタイルイベント
作画を語る上で重要なこと

 12月19日(月)にトークイベント「第198回アニメスタイルイベント 作画を語る上で重要なこと」を開催します。出演はアニメーター、演出として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さん、『Sonny Boy』『四畳半タイムマシンブルース』等で監督を務めた夏目真悟さん、アニメスタイル編集長の小黒祐一郎です。

 今回のイベントでは「作画を語る」をキーワードにして、いくつかの話をする予定です。 小黒は「マニア目線の作画史で、1980年代前半のアクション作画は空白になっているのではないか」といった話をするつもりだそうです。
 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。お客さんが会場で観覧するかたちでの開催です。配信もあり、トークのメイン部分を配信します。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

 チケットは11月25日(金)19時から発売。購入方法については、以下のリンクをご覧になってください。

  ※トークの聞き手として、アニメスタイルの小黒編集長が出演する予定でございましたが、体調不良のため、出演を見合わせることとなりました。心よりお詫び申し上げます。沓名健一さん、夏目真悟さんは予定どおり出演していただきます。直前のお知らせとなってしまい誠に申し訳ありませんが、何卒ご理解賜りますようお願いいたします。(12/15追記)

■関連リンク
阿佐ヶ谷ロフトA
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/235674

第198回アニメスタイルイベント
作画を語る上で重要なこと

開催日

2022年12月19日(月)
開場18時30分/開場19時 終演22時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

沓名健一、夏目真悟、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
アバンギャルドアニメの最先端 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

 12月3日(土)に新文芸坐とアニメスタイルの共同企画で『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』のレイトショーを開催します。
 『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は、TVシリーズ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の続編として制作された劇場アニメーションです。TVシリーズも奇抜な設定や表現が魅力の作品でしたが、劇場版はそれが数倍にパワーアップし、非常に「攻めた」作品となっています。雑誌「アニメスタイル016」でも「アバンギャルドアニメの最先端」として特集を組みました。

 劇場のスクリーンと音響で楽しみたい作品でもあります。是非とも劇場でご覧になってください。トークコーナーのゲストは古川知宏監督を予定。トークコーナーは上映の後となります。
 チケットは11月26日(土)から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。なお、新型コロナウイルス感染予防対策で観客はマスクの着用が必要。入場時には検温・手指の消毒を行います。

新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL
アバンギャルドアニメの最先端 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

開催日

2022年12月3日(土)

開演

19時20分

会場

新文芸坐

料金

1900円均一

トーク出演

古川知宏(『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2021/120分/DCP)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

【最新号の詳細発表!】「アニメスタイル016」の巻頭特集は中村豊!
http://animestyle.jp/news/2022/03/31/21779/

アニメ様の『タイトル未定』
371 アニメ様日記 2022年7月3日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年7月3日(日)
ワイフとグランドシネマサンシャインに。午前7時35分からの回で「バズ・ライトイヤー」【IMAXレーザーGT吹替版】を鑑賞。子ども向けの冒険活劇かと思ったら、予想よりもずっと大人向けだった。フルサイズIMAX画角(1.43:1)のシーンは多かった。そして、後半のフルサイズIMAX画角がよかった。
新番組を色々と観る。『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』の「!」の数は15個。ちぃ、覚えた。

2022年7月4日(月)
この日は早朝ではなくて、深夜から散歩に。午前3時にワイフとマンションを出て、目的地を決めずに新宿に向かって歩く。ドン・キホーテ新大久保駅前店で買い物をして、ワイフが島寿司が食べたいというので、歌舞伎町の磯丸水産で朝食。午前5時の磯丸は若い男女が元気に語らっていて、不思議と楽しいムードだった。
この日に録画で観たTVアニメの1話は「BLEACH ANIMATION BEST」『ユーレイデコ』『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』『RWBY 氷雪帝国』『シュート! Goal to the Future』『森のくまさん、冬眠中。』。この日に録画で観たTVアニメの最終回は『魔法使い黎明期』『まちカドまぞく 2丁目』。他には継続番組の『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』の最新話を観た。『森のくまさん、冬眠中。』はやたらと濃かった。『シュート! Goal to the Future』って原作の再アニメ化ではなくて、その後の話なのね。『RWBY 氷雪帝国』の1話は好印象。『魔法使い黎明期』最終回は演出がベテランの波多正美さんだったことに驚き。

2022年7月5日(火)
書籍編集のスケジュールを組み直すのも零細出版社の社長&編集長の仕事なんだけど、根が編集者兼ライターなので、こういうことばかりやっていると仕事をしている気にならない。自分の原稿も進まない。
仕事の合間に新文芸坐で「天使のはらわた 赤い淫画」(1981/67分/35mm/R18+)を観る。プログラム「追悼・石井隆 堕ちゆく者たちの美学Vol. 1」の1本。これは面白かった。いきなり話は飛躍するけど、最近のTVアニメは分かりやすさが最優先で、変わった構図とか、変わった演出とか激減したなあと思った。勿論、分かりやすさを優先すること自体は悪くないのだけれど。

2022年7月6日(水)
緊急社内Zoom打ち合わせがあったりして、慌ただしい日。ではあるが、夕方はワイフと鬼子母神の夏市に。夏市は賑わっていた。池袋でこんなに中学生や高校生が大勢いるのを見たのは久しぶり。
「マツコの知らない世界」の「世界から見る!アニソンの世界」が面白かった。番組としても面白かったんだけど、ゲストのユリコタイガーさんが面白かった。『ダンベル何キロ持てる?』のジーナ・ボイドのようだった(悪口ではない。ジーナよりも「こっち側」だけど)。ユリコタイガーさんは自分の名前について百合子と『とらドラ!』の大河の合成だと言っていたけど、『無責任艦長タイラー』の「ユリコ・スター」と「タイラー」のひっかけもあるのではないかなあと思った。

2022年7月7日(木)
グランドシネマサンシャインで「エルヴィス」【IMAXレーザーGT字幕版】を観た。長い映画なので観るのを躊躇していたが、観てよかった。凝りに凝った豪華な映画で、物語も楽しめた。コンサートシーンの臨場感もよかった。映画終了後に、ロビーで昔からの友人であるライターさんとバッタリ。同じ回を観ていたらしい。
『異世界おじさん』1話を観た。原作既読。僕個人としては100点満点以上の内容だった。子安さんの声も芝居も素晴らしい。少なくとも僕にとってはイメージが原作のおじさんから外れていないし、なおかつ、人間的な魅力が増している。演出もよかった。細かいところだけど、おじさん、たかふみが椅子に座る前に「椅子を引く」、座った後で「椅子ごと前に出る」をやっているのが、かなりよかった。

2022年7月8日(金)
グランドシネマサンシャインで「ソー:ラブ&サンダー」【字幕】ATMOSを観る。娯楽作としては充分によくできているし、文句を言いたいポイントはあまりないんだけど、ちょっとだけ物足りない感じはある。我ながら贅沢な感想だなあ。
片渕さんの近しい方に濃厚接触者が出たため、7月9日(土)のイベントは配信のみに切り換えることになった。朝からその対応。
「中村豊 アニメーション原画集 vol.3」が校了した。

2022年7月9日(土)
アニメージュの「設定資料FILE」vol.256『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を紙の雑誌で確認。自分的に攻めた構成だったのだったので、きちんと紙で確認したかった。書き文字もフォントの文字がかなり小さくなっているけれど、僕的にはOKな大きさ。画の並べ方を含めて、同じコーナーを四半世紀も続けたからできた構成だと思う。
「第192回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作10【世紀末の京都を歩き回ってみよう編】」を開催。今回は片渕さんがリモートでの参加となり、配信だけのイベントとなった。
朝買った文庫本のひとつが「コンビニ人間」。あっという間に読了。予想よりもずっと面白かった。自分でも意外だったけれど、主人公に共感できるところがあった。乱暴な言い方になるけれど、いわゆるオタク的な人で、共感できる人は多いのでは。

第779回 逸れて逸れて、読みにくく

先日、某アニメ会社社長の友人からの電話で、お互いの近況報告をしました、30分ほど!

 その彼曰く「働き方改革で、アニメはもう作れない! 間もなくアニメ会社の9割が潰れる!」とのこと。現れます、定期的に“アニメ業界終末論”を語る人。数年前にも「“世界一有名な日本のアニメ監督”である某巨匠が引退したらアニメは5年で滅ぶ」発言をした監督さんもいらっしゃいました。それらを聞くにつれ、俺が思うのは生前の黒澤明監督によるお言葉、

映画が生まれてまだ100年しか経ってないんですよ!
まだまだこれからですよ!
——ダメになったのは映画じゃなくて、映画会社だ!

です。映画業界なら映画、アニメ業界ならアニメ、表現方法それ自体に惚れ込んでるクリエイターはそう簡単に生業にしているジャンルを「滅ぶ」とか言わないものだと思います。
 冒頭の友人社長の言葉聞いても、正直俺は「あ、そう」って答えしか出ません。少なくとも板垣は

「パラパラ漫画」をコツコツ描いて
ムービー再生することが無性に好きで、
それを繋いでフィルムを作ることがさらに無性に大好きなだけ!

ですから。黒澤監督程の映画好きとは比べ物にならないでしょうが、自分は自分なりにアニメーションというか表現手段それ自体が好きで作り続けている訳で、業界自体が滅ぶだ何だ言われたとて、全く動じません。だって“表現”は死なないでしょう? 仮に最後の一人になっても、自分は「パラパラ漫画」をネットに上げたりしてでも、パラパラ遊ぶと思いますから。
 あと、「手描きの作画が存続し得るのか?」的な問題も、俺にとっては全く関係ありません。3DCGでろうがライブ2Dであろうが、“コマ単位で画(情報)の操作(コントロール)が意のままになるならそれはアニメ”! よって、

予算内でその画を動かすのに最適な方法(テクノロジー)を選べば良いだけの話!

ハッキリ言って、俺に取ってここ10年はそれを計算に入れてないコンテは上げていません。現状、ウチの制作チームでこなせる枚数(1話4000枚)で収まるコンテを自分自身は切って(描いて)います。コンテを社内の新人や外注に撒く場合——特に外注(フリー)に任せるとその辺の制御が大変なので、近年は全話自分コンテになったりする訳です。因みに現在制作中のシリーズもそういう意味で、社内新人のコンテはかなり手を入れさせて貰いました。
 話は逸れましたが早い話、予算・受注内容に合わせて制作方法自体を変えれば良いだけの話を、デジタル作画ツールすら覚える気もない不勉強な監督や、予算配分の見直しすらできない同じく不勉強なプロデューサーらが簡単に「アニメはもうダメだ!」とか言って欲しくないし、聞きたもくない。さらに、その戯言をいちいち「問題だ~問題だ~」とネット記事にするなとは言いませんが、それらの意見が、“現在の制作現場に於いて、上手く活躍できている人によって発せられた意見かどうか?”くらい、ちゃんと調べてから記事を上げて欲しいモノです(無理か……)。勿論、全部とは言いませんが、中には誰かのフォローなしでは碌に監督できていない人の意見を、誰もが知ってる代表作あり(かのように振るまってるだけ?)という権威をくっ付けて、無造作に「○○監督が語るアニメ業界の大問題~」風にでっち上げられた記事もありますから。ま、代表作すら碌にない自分が偉そうに言うことではありませんでしたね、——て、また逸れました。
 つまり、それでも作れなくなるなら、やっぱり「パラパラ漫画」をネットに上げたりしてパラパラ遊びます。即ち、少なくとも俺が生きている間はアニメという表現が終わることはないと思いますよ(残念ながら)。