COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
375 アニメ様日記 2022年7月31日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年7月31日(日)
午前中から「中村豊 アニメーション原画集 vol.3」の校正紙をチェックする。入稿前にPDFを見て、そのうえで校正紙を見ているんだけど、最終的なところは製本が終わらないと分からないなあ。通常の書籍でもそうなんだけど、Flip Bookだとさらに分からない。それから、緻密に描かれたメカの原画はしっかり見せようと思ったら、1枚のサイズがB6でギリギリOKなくらいだなあ。
上とは別件。これから企画を進めようかと思っていた書籍を、企画の初っ端で中止することに。最初がダメだと、上手くいく気がしないものね。

2022年8月1日(月)
『ONE PIECE FILM RED』って、『名探偵コナン』の劇場版で、原作やTVシリーズより先に赤井と安室が顔を合わせたようなかたちの仕掛けがある、ということになるのかな(後日追記。仕掛けがありました)。
ワイフと「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」を観る予定だったのだけど、ワイフの体調がいまひとつで中止。スケジュールを空けていたので同じ劇場で『劇場版アイカツプラネット!』を観る。

2022年8月2日(火)
レンタル掲示板teacup.のサービスが終了した。teacup.でないと連絡がつかない人とか、生存確認ができない人がいるのだ。さあ、どうする。
『僕の心のヤバイやつ』アニメ化が発表された。原作ファンなので、基本的には嬉しい。「あの部分はどうするんだろう」とか色々と思うが、それはまた先の話。基本的には原作通りになるのだろうけど、原作にない描写とか番外編とかもやってほしい。

2022年8月3日(水)
新文芸坐の10:10 ~12:21の回で「奇跡」を観る。プログラム「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー」の1本。かなり良かった。正直言うと、終盤の展開はよくわからないし、共感もできなかったんだけど、映画としては凄かった。事務所に戻って打ち合わせをした後、シネ・リーブル池袋の『GのレコンギスタIV/激闘に叫ぶ愛』がこの日で上映終了すると知る。慌ててチケットをとって15:10~17:00の回で観る。今回も上級者向けの作品だった。

2022年8月4日(木)
文芸坐で「裁かるゝジャンヌ」を観る。「奇跡」と同じく、プログラム「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー」の1本。これは凄い。演出がキレキレ。昨日観た「奇跡」が全身を映したカットを基本として映画を設計していたのに対して、こちらはアップショットを基本とした設計。役者の芝居も(それを引き出した演出も)カメラも素晴らしい。それから、画的な情報のコントールが抜群に巧い。終盤は決まりすぎるくらい決まった構図が続出し、それも見どころ。トータルの印象としては非常に前衛的。今まで観た全ての映画の中で、最も前衛的かもしれない。それと、終盤の構図は非常にアニメ的だと思った。何に近いかというと金田伊功さんの作品や新房昭之監督の『幽★遊★白書』や『The Soul Taker』に近い。メリハリの効いた構図を追求していくと似ていくということなんだと思うけど。

2022年8月5日(金)
グランドシネマサンシャインの08:10~10:52の回で「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」【IMAXレーザーGT3D字幕版】を鑑賞。相変わらず恐竜のCGは凄い。ドラマが弱めなのはしかたないかもしれないけど、「?」と思うところもあり。事務所に戻ってZoom打ち合わせなど。14時から西口の居酒屋の八丈島で業界のある人と吞む。その後はデスクワーク。この日記を読むと映画はかり観ているようだけど、実際にはやることが多くて忙しい。

2022年8月6日(土) 
1980年代から1990年代前半に、戦時中の市民を描いたアニメ作品(実写とアニメによる作品を含む)がいくつか作られている。分かる範囲でリストを作ってみた。
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1982年『象のいない動物園』(東京)
1982年『対馬丸 ―さようなら沖繩―』(沖縄)
1983年『はだしのゲン』(広島)
1986年『はだしのゲン2』(広島)
1988年『火垂るの墓』(神戸市と西宮市近郊)
1988年『白旗の少女 琉子』(沖縄)7月21日
1988年『夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~』(広島)8月7日
1988年『火の雨がふる』 (九州)9月15日
1989年『かんからさんしん』(沖縄)
1990年『クロがいた夏』(広島)
1991年『うしろの正面だあれ』(東京)
1993年『ヒロシマに一番電車が走った~300通の被爆体験手記から~』(広島)
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 戦時中の話ではないので、リストには入れていないが、1984年に『黒い雨にうたれて』がある。中沢啓治さんが原作、企画、製作、さらに共同で脚本を務めており、これも『はだしのゲン』や『はだしのゲン2』に連なる作品だろう。
 上のリストのうち、マッドハウスが制作したのが『はだしのゲン』『はだしのゲン2』『夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~』『ヒロシマに一番電車が走った~300通の被爆体験手記から~』だ。それらの作品群の延長線上に『この世界の片隅に』がある。

 ワイフが「『らんま1/2』 POP UP SHOP in 渋谷ロフト」で買い物をするのに付き合って、朝から渋谷に行く。この日がPOP UP SHOPの初日で、初日でないと購入できないグッズがあるらしいのだ。買い物は無事に終了。ワイフの希望でIKEAの中をウロウロしてから、昼からやっている焼き鳥屋で吞む。値段はちょっとお高めだっただけど「これこれ焼き鳥」って感じで満足。
 夜は新文芸坐でオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.138 『この世界の片隅に』六度目の夏」を開催。今回のプログラムは『うしろの正面だあれ』『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の3本立て。片渕さんが監督でなく、画面構成の役職で参加した『うしろの正面だあれ』を上映するのが、このプログラムのポイント。
 以下はトークの内容のメモ。片渕さんが『うしろの正面だあれ』に参加した時、既に制作は始まっており、序盤のシーンは作画に入っていた。片渕さんの仕事はレイアウトチェックであり、そのあとの工程には関わっていない。大半のカットではレイアウトに手を入れるか、描き直しをしている。最初は原画マンが描いたレイアウトを直していたが、途中から先回りして原画マンが描く前にレイアウトを描いて渡すようになった。レイアウト段階で絵コンテになかった考証を足すこともあった。絵コンテにないカットを、レイアウト段階で足したこともあった。芝居を足したり、カメラワークを変えたりもしている。画面に空間を与えることは心がけた(言い方は違っていたはず)。考証的な部分で、調べれば分かることなのに、時間がなくて調べられないところはあった。例えば空襲の日に東京に雪が残っていたのか、といったこと。そういった部分を『この世界の片隅に』では徹底して調べた。