COLUMN

第784回 今年最後の現場四方山話

これも今まで何回か話題にした、

アニメ監督(演出家)が、実務に手を出すべきか否か?

 自分の答えは“基本的に人それぞれのケースバイケース、ただし現場とスケジュールに合わせて臨機応変に!”です。
 以前はよく、先輩の監督・演出家の方々から「自分で描いたら演出じゃないよ」とか「演出家は描かせるのが仕事でしょ!」などと諭されたものです。が、そう言った方々はその後間もなく現場から消え、現在自宅籠りコンテマンになられています。別にコンテ専門職を悪く言うつもりはありません。ただ、実務は他人(ひと)にさせるを是と説く方が、現在のアニメ制作現場を仕切りづらくなっているのは確かなようですし、そういう話をよく耳にします。
 そう言う自分も以前は「コンテが全て! コンテが演出であり監督!」つまり、出﨑統監督スタイルを信仰していたものです。
ところが近年の制作現場で求められるコンテとは、“拡大してレイアウトになるくらいの緻密なラフ原画の連続”のことです。いやそれどころか、現場でご活躍のスタッフの方々は

緻密に清書されて、必要な画は全て描き込まれたコンテでなければ原画を描いてくれない!

状態になっていることは当然ご存知かと思います。
「それは本来のコンテではないし、そんなんは本当のアニメ制作じゃない!!」と憤慨している演出家は現場の制作P・デスクらから敬遠されます。
 動画を海外に撒く際も、作監が中割参考を密に入れた原画でなければ、すでに制作側から「このカットは動画にできません」と戻されています。そこまで来ました。俺自身は「じゃ、その諸条件下でどうやって作ろうか?」と考えると言うだけ。Twitterを始めて喚く気など、さらさらありません。それこそが本来、制作現場・体制などはその時代時代の条件に合わせて変えていくものでしょう? 動画を割れないなら動画の中割り不要な作品にするだけ(『てーきゅう』)。
 所詮は自分らの嫌な面倒臭い仕事——動画を他人・他国に40年押し付けてきたツケが回ってきただけ、という気がします。ここは基本に返って、コツコツやることにしましょう、業界の皆様。