佐藤順一の昔から今まで(45)
『あまんちゅ!』と『泣きたい私は猫をかぶる』

小黒 2015年は『たまゆら~卒業写真~』(OVA・2015年)、『ARIA The AVVENIRE』(OVA・2015年)。

佐藤 はいはい。

小黒 そして、2016年は『たまゆら~卒業写真~』が続いていて、それから『あまんちゅ!』(TV・2016年)。『あまんちゅ!』はとてもよい環境で作ることができたのではないかと思うんですが、どうでしたか。

佐藤 そうね。環境がよすぎて、逆にどうしていいか分かんなくなるっていう (笑)。

小黒 『あまんちゅ!』はスルスルッと観れますよね。

佐藤 『あまんちゅ!』は原作の物語をちゃんとアニメにできているところがありますよね。『ARIA』の時は、大量の原作をワンクールでまとめなきゃいけなかったから、結構改変をしてるんですよね。原作の2つの話を合わせて1つにして、TVのお話を作ってるんだけど、『あまんちゅ!』の時には、基本的に原作のストーリーにちゃんと沿ってやろうっていう意図を持ってやってるんですよ。

小黒 なるほど。

佐藤 『ARIA』の時も「原作の『AQUA』からちゃんと観たいな」という声がやっぱりあったんです。なので、『あまんちゅ!』ではそうやっていこうと。その代わり、「原作が続く限りずっとアニメ作ってくださいよ」って松竹に言ってたんだけど、なかなかそうならなかった。ただ、J.C.(STAFF)の現場が、我々が知らないぐらいクオリティを求める人達で(笑)、リテイクが多かった。ラッシュチェックとかになると、こっちの胃が痛くなってくるぐらい直しを出してね。「え、それはそのままでもよくないスか?」ってつい言いたくなっちゃうみたいな。

小黒 『あまんちゅ!』は本当に綺麗にできてますよね。海の中の描写も綺麗ですよ。

佐藤 そうなんですよ。綺麗です。作画もちゃんと人を用意しているし、コンスタントにこれを作っていくのはやっぱ凄いなあという、これまで見たことのない世界で(笑)。

小黒 2017年はスタジオコロリドの『FASTENING DAYS 3』(配信・2017年)で音響監督をやっていらっしゃる。

佐藤 『FASTENING DAYS 3』は、YKKの企業PVみたいなやつですね。

小黒 そうです。これは音響監督だけの参加なんですか。

佐藤 そうですそうです。『泣き猫(泣きたい私は猫をかぶる)』(配信・2020年)をやってくれてる柴山(智隆)君が監督のやつで、音響をちょっと面倒見ましょうかって感じでやってるやつですね。そんなに長くもないですし。

小黒 そうか。この年からツインエンジンの所属なんですね。その前はどこにいたんですか。

佐藤 TYOアニメーションズです。TYOを離れて、1年ちょっとぐらいはフリーでいたのかな。

小黒 ということは『たまゆら』の途中でフリーになってるんですか。

佐藤 2016年の『卒業写真』でリテイク作業をやってる途中に、フリーになったんですよ。7月でリテイク作業が終わるので、そのタイミングで会社を辞めてフリーになって、というつもりだったんですよ。

小黒 なるほど。

佐藤 でも、リテイクが10月まで続いちゃったんですよね。コロリドには、シナリオ構成のアドバイスとかで、ちょいちょい行ってはいたんだけど、ツインエンジンに正式に入ったのは2017年からですね。

小黒 ツインエンジンと関わったのは、山本(幸治)プロデューサーからのお声がけなんですか。

佐藤 大元は岡田麿里さんだと思います。岡田麿里さんがツインエンジンで映画をやるにあたって、サトジュンを呼んでくれたんだと思っていますね。その映画が『泣き猫』になるんですけど。

小黒 『泣き猫』の参加は岡田さんのほうが先なんですね。

佐藤 同時かな。「サトジュンさんと岡田さん、ツインエンジンで映画やりましょう」って感じで、ゆるっと始まってるんです。その前から『ペンギン・ハイウェイ』の監督の石田(祐康)さんがオリジナル作品を準備していて、若干行き詰まってる時に、構成会議に岡田さんと僕が行ってアドバイスしたりしつつ、自分達の作品をどうしようかという話をしている。そんな期間が結構あるんです。

小黒 なるほど。

佐藤 最終的には映画をやろうねっていう気分で入ってて、その前に石田君の協力をするっていう感じでしたかね。

小黒 『ペンギン・ハイウェイ』では、クリエイティブアドバイザーなんですね。

佐藤 『ペンギン・ハイウェイ』もコンテでのアドバイスをして、最近情報が出た『(雨を告げる)漂流団地』も一応アドバイザーはしているという感じです。

小黒 佐藤さんが所属することになったのはツインエンジンで、コロリドはツインエンジンの関連会社だから繋がりがあると。

佐藤 そうですね。コロリドチームと組ませたいっていう意図はあったんじゃないかな。石田君達を育てるって意味もあるけれども、僕はずっとコロリド班のような役割だったのかな。

小黒 それは山本プロデューサーの采配ですか。

佐藤 ですね。作品の適性的にはこっちじゃないのっていう振り方だと思いますけど、他のスタジオは全然知らないので本当の狙いは分からないですね。

小黒 次に『HUGっと!プリキュア』ですが、アニメスタイルの紙の本のほうでも伺ってるので、具体的なことはみんなそっちを読んでねって感じですけど(編注:「アニメスタイル インタビューズ 01」で『HUGっと!プリキュア』についてのインタビューを掲載)。

佐藤 はい。

小黒 『HUGっと!』(TV・2018年)をやってる時は、ツインエンジンの所属だったわけですね。

佐藤 そうですそうです。

小黒 現状はツインエンジンの所属で、どこのスタジオで仕事しても構わないみたいというかたちではある?

佐藤 基本的にそのやり方ですね。『あまんちゅ!』の第1期はフリーだけど、『(あまんちゅ!)~あどばんす~』(TV・2018年)の時は確かツインエンジンです。

小黒 じゃあ、ギャラはまずツインエンジンに入るんですか。

佐藤 そうです。

小黒 比べてみると、TYOにいた頃より動きやすくはなった?

佐藤 それはあまり変わらないですね。ただ、ちゃんと制作に向き合える感じにはなりましたよね。TYOの時は、監督なのにプロデューサーのサポートしたりとか、そういうこともせざるを得なかったので。

小黒 2020年頃から、佐藤さんは長編を次々手がけたりして、仕事が活発になってるじゃないですか。これはTYOから離れたから、というだけではない?

佐藤 それは、時代的に劇場作品のほうが、ビジネス的に読める流れになったせいでしょうね。

小黒 話は前後しますが『HUGっと!プリキュア』の手応えはいかがでしたか。

佐藤 『HUGっと!プリキュア』はやっぱり勉強になりましたね。この時は、目標があったんですよ。

小黒 目標ですか。

佐藤 これまで『どれみ』とか『セーラームーン』をやってきて自分が得てきたものがあるわけですよ。「女児ものでは、こういうふうにやるといいよ」とか、「おもちゃ屋さんとのやりとりでは、こういうやり方があるよ」とか、あるいは「音楽はこう付けましょう」「こういうツールがあるよ」。それを若手とか次世代に伝えられればいいなと思った。思ったよりも現場の人達にちゃんと継承されているものもあったけれども、なくなってるものも結構あったんですよね。
 『セーラームーン』より昔だと、おもちゃメーカーとアニメの現場スタッフとのやりとりは、そんなになかったんですよね。自分が東映で演出助手をやってる頃は「おもちゃメーカーはおもちゃのことは分かるがアニメのことは素人だよね」という感じで、向こうも「アニメの人はおもちゃのことは分からないよね」というふうだったから、あんまりキャッチボールがなかった。それが、ちゃんとキャッチボールをして子供のほうを向いて楽しいものを一緒に作りましょうよ、というふうに協力できるようになっていったんですね。『どれみ』でもそういうふうにやって、多分、自分が離れた後も、五十嵐(卓哉)もそうやってたと思うんだけど、『HUGっと!』で久しぶりに東映の現場に入ってみたら、また分断してんですよ。

小黒 なるほど。

佐藤 おもちゃについてはこちらの意図が届かないし、おもちゃ会社側の意図もこっちでは汲みきれない、という感じになってて、それは驚きでもあったけれども「元に戻っちゃうのか」と残念に思ったのが大きかったです。
 アフレコは昔と変わらずに演出がやってるけど、自分で現場を取り仕切ってやる方法が伝えられてなくて。ミキサーである川崎(公敬)君が、ディレクションに近いことをやらざるを得なくなってて、演出さん達は、例えば役者の気分を上げるとか、盛り上げるということに気持ちが向いてない。役者とキャッチボールするのは、演出じゃなくて川崎君がやってた。これは1年で修正できるとこでもないので、様子を見ていただけだったけれど、残念は残念だったかなと。

小黒 で、アニメーターは抜群に巧くなってたと。

佐藤 アニメーターはめちゃめちゃ巧くて。「こんなすげえことやる人達いたんや」ってことをやってて、画面は凄くいいんです。
 自分が女児ものに参加したのは久々だったこともあって、色んなことが再確認できたんです。子供達を呼んで、前のシリーズを上映して、子供達の反応を見るといったこともやってるんだけど、例えば『プリキュア』の変身の部分って映像は豪華だけど、結構長いでしょ。

小黒 長いですね。

佐藤 「短くしたほうがいいんじゃないのかな」って思ったんだけど、プロデューサーとかは「この変身シーンを子供達は楽しみに観ているんだ」と言うのでそうかそうかと思ってたんですよ。でも、実際に子供達の反応を見てると、変身シーンを観てる子は観てるんだけど、長いとよそ見するをする子もいるんだよね。「初めての時は観るかもしんないけど、何度目かだとやっぱりそうなるよね」と確認ができる、とかね。『HUGっと!』を観た子供達がどう感じたかっていうのは、20年後になんないと分かんないなと思う。でも、まず目の前の子供達に向けて作るということはできたと思ってんだけどね。

小黒 はい。

佐藤 だから、凄くのびのびやったって感じでもないけど、やりにくさは別になかったっていうかね。


佐藤順一の昔から今まで(46)『泣きたい私は猫をかぶる』と岡田真理 に続く


●イントロダクション&目次

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 159】
熱烈再見!クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望

 2月の『ヘンダーランドの大冒険』、4月の『アクション仮面VSハイグレ魔王』に続き、新文芸坐とアニメスタイルは5月も劇場版『クレヨンしんちゃん』をお届けします。

 5月20日(土)と21日(日)に上映するのはシリーズ第3作の『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』です。20日(土)は19時50分からのレイト上映で、21(日)は14時50分からの上映となります。  

 20日(土)には本郷みつる監督と原恵一さんのトークを予定しています。また、今までと同様に、トークの後に本郷監督が刊行した同人誌「本郷みつる/足跡」の販売をする予定です。

 チケットは開催日の1週間前から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 159】
熱烈再見!クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望

開催日

2023年5月20日(土) 開演/19時50分~
2023年5月21日(日) 開演/14時50分~

会場

新文芸坐

料金

20日(土):一般1900円、各種割引・友の会1500円
21日(日):一般1500円、各種割引・友の会1100円

トーク出演

本郷みつる(監督)、原恵一(脚本・絵コンテ)、
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』(1995/96分/35mm)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第802回 『いせれべ』佳境!

『いせれべ』の制作も佳境で(汗)!

 なんとなく前回に続き、もう少々オープニングの話——カット頭から。
 冒頭の異世界への扉が開く【c-001~004】、まあベタにやりました。で、【c-005】歌詞の一部とリップシンクロ。初監督『BLACK CAT』でも似たことをやってました、そう言えば。
続いて【c-006】例によって“OP内サブタイトル”。これも初期の監督作品からずっとやってます。『てーきゅう』までも全期これ。たとえワンパターンだと揶揄されようとも、フィルム全体の構成として、やっぱりサブタイトルはOP内なのが好き。単純に

OPでそのアニメが始まったのに、CM開けに“もう一度改めて始める”感がまだるっこしい!

てだけ。
 【c-007】雑踏の中の優夜、変身前~変身後。自分がどれだけ変わっても、世界にはなんの影響もないモノです。【c-008~010】ナイト・アカツキ・ウサギ師匠ら、モフモフ系マスコットキャラの紹介~矢継ぎ早に。ウサギ師匠対優夜のアクションはコンテに自分で画を足してラフ原、森亮太君がそれを清書した後、木村(博美)作監。勢いだけ……。
 【c-012】デブ~イケメンに劇的変身——サンジゲンさんの撮影に助けられたカットです。本当に感謝! 【c-013~015】メインキャラ紹介。とにかく“走って! 回り込んで! 髪・スカートなびく!”紹介だけはやりたくない、と!
 【c-016】またリップシンクロから、今度はレクシア。正直ここ苦労した記憶があります。何しろ今回のアニメ化範囲に於いて、ネタバレしない範疇で描いていいアクションが、各キャラの内容的に限られているからです。だからカット尻、珍しく歌詞に合わせて大量の“花弁”が舞ってる訳。ここも木村作監に救われてます!
 【c-017】やっぱり、優夜の人格形成に多大な影響を及ぼしたはずのお爺ちゃんの死は入れたかったです。【c-018】双子の弟妹に見下され続ける優夜(変身前)。“虐め”についてはまた改めて回を設けるつもりです。【c-019】矢を放つ少女~寄ってリップシンクロ。ここは原画まで自分で描きました。

 ——てとこで、残り&総括はまた次回。仕事に戻ります。

アニメ様の『タイトル未定』
393 アニメ様日記 2022年12月4日(日)

2022年12月4日(日)
引き続き、体調がよくない。ラジオ体操も散歩も休んで、事務所で作業を進める。途中でマンションに戻って2時間ほど横になる。作業をしながら、買ったものの空けていなかった「王立宇宙軍 オネアミスの翼 4Kリマスターメモリアルボックス」に目を通す。就寝前に、気楽なマンガが読みたくて「めんつゆひとり飯」を読む。

2022年12月5日(月)
病院に行ってCTスキャンを撮る。薬ももらう(後日追記。数日後に肺に問題があったことが分かるのだが、この段階では自分も病院の先生も肺が原因だとは思わなかった)。19時にネットで「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会」復刻の告知をする予定だったのだけれど、それまでに体力を使い切ってヘロヘロになったため、告知を事務所のスタッフに任せて帰宅。入浴した後、暖房を入れて重ね着をして就寝。
話は前後するが『僕とロボコ』1話を観た。テンポがいい。あっという間に終わった。Netflixで「バイオレンスアクション」と「トロール」を観た。「バイオレンスアクション」はやっぱり原作とは随分違った。「トロール」は4K作品で映像がやたらと鮮明。
「OTOMO THE COMPLETE WORKS 23『Animation AKIRA Layouts & Key Frames 1』」にざっと目を通す。面白い作りの書籍だ。

2022年12月6日(火)
体調はよくなったけど、全快ではない。散歩を休んで事務所でキーボードを叩く。今が年末刊行の書籍作業のピークかもしれない。体力が尽きて18時に帰宅。Netflixで「ウェンズデー」をながら観。ながら観なのでストーリーはノーコメント。女の子が可愛いし、画面の設計がいい。今まで観た4Kのドラマで、一番4K映えしていたかも。

2022年12月7日(水)
『チェンソーマン』9話がよかった。今までの『チェンソーマン』で一番よかったかもしれない。面白かったし、雰囲気もアクションもよかった。コベニもよかった。早めの夕食はワイフとしゃぶ葉に。栄養をつけるつもりで、野菜を食べて、肉を食べた。ロボットの猫が肉を持ってきてくれたのも楽しかった。ワイフはデザートのワッフルで大喜びしていた。

2022年12月8日(木)
午前4時30分に出社して、キーボードを叩く。体調が悪くなって帰宅。体温を計ったら38℃だった。今までの人生で、こんな高熱になったのは初めてだ。発熱外来のある病院を探して、そこに行く。病院の外のテントで検査をしてもらったところ、コロナでもインフルエンザでもなかった。レントゲンを撮ってもらい、肺に問題があることが分かった。その病院ではCTスキャンができないので、紹介状を書いてもらって、別の病院に移動。すでに歩くのもしんどくなっていた。CTスキャンを撮ったところ、心臓と肺に炎症ができているらしいことが分かる。その病院ではこれ以上の対応はできないとのことで、先生があちこちの病院に電話をして、引き取り手を探してくれる。このまま救急車で運ばれて入院することになるだろうと言われて、慌ててワイフにLINEでメッセージを送る。生まれて初めて車椅子に乗り、生まれて初めて患者として救急車に乗る。マンションから駆けつけたワイフも救急車に乗り込む。ワイフはノートパソコンとタブレットと充電用のケーブルを持って来てくれた。
救急車で都内の大きな病院に到着。病院のスタッフに「一人で歩けますか」と訊かれて、そんなこと訊かれるくらいの状態なのかと驚く。緊急治療室で検査が進む。担当の医師が若い男性で、熱い言動がマンガかドラマの主人公のようだった。看護師の受け答えもまるでキャラクターのようだった。検査が終わった後、しばらくその場で待機してから病室に。病室に移ってからも検査が続く。合間に事務所に電話をして事情を告げる。編集作業が大詰めの「KISS AND CRY 資料集」の作者である梅津泰臣さんに電話をして事情を話す。日曜に湯浅さんの特集上映がある新文芸坐に電話して、担当の花俟良王さんと話す。編集作業が大詰めの「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会」「KISS AND CRY 資料集」に関して、自分が病室でできることをする。いきなりの入院で作業の続きができたのは、ワイフがノートパソコンを持ってきてくれたのと、病室にWi-Fiがきていたのと、クラウドサービスのおかげだ。コロナ禍で家族も病室には入れないので、色々な人とLINEでやりとり。慌ただしいまま、夜に就寝。

2022年12月9日(金)
入院2日目。病室で目覚める。大部屋に移る予定だったけれど、熱が下がらなかったので別の個室に移る。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会」「KISS AND CRY 資料集」の作業を進める。井上則人デザイン事務所に電話をして、事情と今後の進行について話す。誉められたことではないけれど、普段と変わらないくらい仕事をした(後日追記。そんなことをしているから、熱が下がらなかったのだ。ただ、ここで作業をしなければ「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会」「KISS AND CRY 資料集」の仕上がりがボロボロになっていたはず)。ワイフが歯ブラシやマグカップを持ってきてくれた。ただ、上記と同じ理由で、顔を合わせることはできず。
ネットで池田憲章さんが亡くなられたことを知る。勿論、ショックだし、悲しかったけれど、現在の自分の状況が状況なので、悲しさよりも心細さのほうが大きかった。

2022年12月10日(土)
入院3日目。午前中はKindleで「作りたい女と食べたい女」1~3巻を読んだ。面白いけど、予想外の展開に。延々と料理を作って食べるだけのマンガだと思っていた。その後は「先生、今月どうですか」2巻を読む。午後に大部屋に移る。身体中に点滴、酸素注入の管、心電図等のコードが付いていて、トイレに行くのも一苦労だった。

後日追記。12月8日(木)と9日(金)の段階で「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会」「KISS AND CRY 資料集」の編集作業は大詰めだった。残っている作業は「逆襲のシャア 友の会」のほうが多かった。当時のメールを読み直したら、病室で「逆襲のシャア 友の会」の奥付ページ等のテキストを作成していた。本文に使う紙も病室で選んでいた。特にピンチだったのが「逆襲のシャア 友の会」のリーフレットだった。テキストがかたちになって、もう一度、手を入れようと思っているところでの入院だった。病室でテキストを整理して、社内でそれを流し込んだラフを作ってもらい、その後、デザイナーさんに作業に入ってもらった。8日(木)と9日(金)で自分が抱えていた作業を終わらせて、後は事務所スタッフに進行してもらえるところまで持っていった。その後はネット経由でのチェックがメインとなった。

第255回 眠れない夜に 〜君は放課後インソムニア〜

 腹巻猫です。4月29日に国立代々木競技場で「東京伴祭 -TOKYO SOUNDTRACK FESTIVAL- 2023」が開催されました。林ゆうきさんが立ち上げた、アニメの劇伴だけを演奏する音楽フェスティバルです。昨年京都で「京伴祭 -KYOTO SOUND TRACK FESTIVAL-」が開催され、無観客・配信のみの公演ながら、大いに注目を集めました。今回は東京に会場を移し、有観客での初の公演。会場にはアニメファンやサントラファンが集まり、大いに盛り上がったようです。
 「ようです」と書いたのは、実は筆者は当日会場に行けなかったからです。早くからチケットを取って楽しみにしていたのに、開催数日前から38度の熱が出てダウンし、当日も外出できるまでには快復せず、涙を呑みました。しかし後日、チケット購入者が観られる動画配信のサービスがあり、自宅で公演の映像を観ることができました。配信万歳。今回は、このフェスで出会った音楽について書いてみます。


 この20年ほどのあいだに、アニメの劇伴を演奏するコンサートは珍しくなくなってきた。人気のある作品や作曲家にフォーカスしたコンサートがたびたび開催されている。
 しかし、さまざまな作品、作曲家の音楽が聴ける、劇伴に特化した音楽フェスは珍しい。きっかけは、ロックやジャズで行われているような音楽フェスティバルがアニメ劇伴でできないか、という発想だったという。その企画が作曲家の発案で立ち上がり、実現したところが「京伴祭」「東京伴祭」のユニークなところである。劇伴の作曲家が自ら作品を発信していく時代になった——。そう実感させてくれるイベントだ。
 さて、「東京伴祭 2023」に参加した劇伴作曲家は、林ゆうき、高梨康治、宮崎誠、小畑貴裕の4人。各作曲家が40分〜1時間ほどの持ち時間で自作を演奏する構成で、休憩時間を含めると4時間を超える長いフェスになった。
 ミュージシャンは、キーボード、ギター、ベース、ドラムスにストリングス、ホーンセクションなどを加えた、サウンドトラック録音と同様の編成。実際に録音に参加したメンバーも多く、サントラと同じ音が聴けるのもうれしいところだ。
 トップバッターは宮崎誠。『ONE PUNCH MAN』と『SPY×FAMILY』からアクション系の軽快な曲を中心に演奏。エレキギターがうなるロックサウンドの『ONE PUNCH MAN』とウッドベースがジャジーな『SPY×FAMILY』の対比もよかった。
 2人目は高梨康治。『FAIRY TAIL』と『NARUTO疾風伝』を中心にした選曲。ケルトメタルの『FAIRY TAIL』と和ロックの『NARUTO』という、こちらもサウンドの違いが楽しめる構成。スピード感のある熱いナンバーで盛り上がった。
 3人目は小畑貴裕。開催直前に参加が決まった関係で出演時間は短く、『約束のネバーランド』と『ニンジャラ』から1曲ずつの演奏。『約束のネバーランド』はメインテーマに「イザベラの唄」を組み合わせた、「約ネバ」ファンにはたまらないアレンジを聴かせてくれた。
 トリは林ゆうき。前半は『ガンダムビルドファイターズ』『シャーマンキング』『からくりサーカス』などから1曲ずつ、後半は『ハイキュー!!』と『ぼくのヒーローアカデミア』から3曲ずつというバラエティに富んだ内容。上映される映像とのマッチングにもこだわり、観客にめいっぱい楽しんでもらおうという意欲が伝わるステージだった。

 それぞれ代表作をしっかり聴かせるのはもちろん、「隠し玉」とも呼べる意外な作品が混じっていたのが印象に残った。
 高梨康治は、現在シーズン2が放送中の『東京ミュウミュウにゅ〜【ハート】』からメインテーマ「地球の未来にご奉仕するにゃん【ハート】」を演奏。サントラ盤は6月に発売予定だから、このフェスが先行お披露目である(昨年開催された高梨康治のライブ「CureMetalNite2022」でも演奏されていたからライブ初演ではないけれど)。この曲、コーラスに主役声優が参加しているのがポイントで、今回のステージでも桃宮いちご役の天麻ゆうきがサプライズで出演してキュートなコーラスを聴かせてくれた。作品とサントラ盤のよい宣伝になったのではないか。
 小畑貴裕が演奏した『ニンジャラ』は不勉強にして観たことがなかった。テレビ東京系で2022年から放送されている、ゲーム原作のTVアニメである。演奏されたのは「Final Battle」というスリリングなビッグバンドの曲。サントラは配信のみでアルバム2タイトルが発売されていた(「Final Battle」はVol.2に収録)。
 こういう、知らなかった作品との出会いがあるのが、ライブやコンサートの醍醐味。多彩な作曲家、作品の音楽が聴けるフェスならではの楽しさだ。
 フェスで演奏された曲は、アップテンポのノリのよいナンバーが多い。ライブやコンサートではそういう曲が盛り上がるので、選曲もそういう傾向になりがちだ。
 しかし、林ゆうきが演奏した1曲目はしっとりした情感豊かな曲だった。今風に言えば「エモい」曲で、意表をつかれた。
 それが『君は放課後インソムニア』のメインテーマ「君は放課後インソムニア」だったのである。

 『君は放課後インソムニア』は2023年4月から放送されているTVアニメ。石川県の高校を舞台に、不眠症に悩む高校生・中見丸太と曲伊咲が、校舎の屋上にある天文台で出会い、ふたりだけの天文部員として活動を始める物語だ。
 筆者はこの作品も観ていなかった。今さらながら配信で第1話から最新話までを追いかけて観た(配信万歳)。昨年(2022年)『よふかしのうた』という、やはり不眠に悩む中学生が主人公のTVアニメが放送されていたが、本作はその『よふかしのうた』から吸血鬼要素を除いたような印象である(お話はだいぶ違うが)。本作は「部活もの」でもあり、格別天文に興味のなかった主人公が、なりゆきで天文部員になってしまう展開が面白い。
 4月スタートの作品なのでサウンドトラックはまだ発売されていないだろうと思ったら、4月19日にCDと配信でリリースされていたので驚いた。さっそくCDを入手した。気になった音楽がすぐに買えるのがネット時代のいいところだ。まんまと乗せられた気もするが、これも出会いである。
 林ゆうきが手がけたアニメ作品には、スポーツものや冒険もの、SFアクションものが多く、躍動感のある音楽にファンが多い。いっぽうで、林ゆうきは劇場作品やTVドラマなどの実写作品で、繊細な心情描写に重点を置いた青春もの、恋愛ものもけっこう手がけている。『君は放課後インソムニア』は、青春もの・恋愛もの寄りの林ゆうきが楽しめるアニメ作品である。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「君は放課後インソムニア オリジナル。サウンドトラック」のタイトルでポニーキャニオンからリリースされた。全49曲収録。CDは2枚組になっている。収録曲は下記を参照。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BX41M43S

 発売時期が早いためだろう。曲順や曲名は劇中の使用場面にこだわらず、イメージアルバム的にまとめられている。これはこれで、楽曲を純粋に聴くことができるよさがある。「この曲がどんな場面で使われるのだろう」と思いながら放送を観る楽しみもある。
 サントラを聴いて感じたのは、「不眠症」と「天体(宇宙)」を意識したサウンドになっているということ。ピアノやシンセのキラキラした音色を使い、深いエコー(リバーブ)やディレイをかけて浮遊感のあるサウンドに仕上げた空間系の曲が多い。「空間系」とは「空間の広がりを感じさせる」くらいの意味である。眠りと覚醒のあいだでゆらゆらする不安定な心情と星空の幻想的な情景を空間系のサウンドで表現しているのだろう。
 それに対し、リズムを主体にした軽快な曲、ユーモラスな曲もけっこう作られている。こちらは学校生活や明るい日常の場面で流れることが多い。リズム系の曲を「昼の音楽」、空間系の曲を「夜の音楽」と呼ぶこともできる。昼と夜が音楽的に対比されており、しかも夜の音楽ほうが主役になっているのが、本作の音楽の特徴だ。
 第1話で使用された楽曲を中心にサントラを聴いてみよう。
 第1話の冒頭、眠れない中見丸太の描写に流れた曲が「能登星」(ディスク2のトラック1)。しっとりとしたピアノソロによる、夜の雰囲気の1曲。このメロディは、メインテーマ「君は放課後インソムニア」にも登場する。本作の音楽の核となるモティーフである。
 続く学校生活の場面では、「夜ふかしなやつら」(ディスク1のトラック4)、「了解チョップ」(同じくトラック10)といったリズム系の曲やユーモラスな曲が活躍。「明るい高校生活」というイメージで、その明るさについていけない丸太の孤独感を強調している。
 丸太が「どうしておれだけが変なんだろう?」と悩む場面に流れる曲は「半分だけの音」(ディスク2のトラック16)。ゆらめくシンセの音とアコースティックギターの音を組み合わせた空間系の曲である。ふわふわしたサウンドが丸太の気持ちを表現する。
 丸太が校舎の屋上にある今は使われていない天文台に入り、その居心地のよさに感動したあと、思いがけなく曲伊咲と出会う場面。アコースティックギターとフルート、シンセなどが奏でる「朝が来る」(ディスク1のトラック3)が聴こえてくる。空間系の夜の音楽からさわやかな朝の音楽へと移行していく、展開のある曲である。
 伊咲が不眠に悩んでいることを丸太に打ち明けるシーンでは、アコースティックギターとピアノ、シンセなどによる「今日の空は二度とない」(ディスク2のトラック14)が流れて、ふたりの気持ちの触れ合いを描写する。深い残響音が言葉にできない心情を表現する、リリカルな空間系の曲だ。
 そのあと、天文台の中で語らううちにふたりが寄りそって眠ってしまう場面には、シンセと女声スキャットが幻想的に響きあう曲「星のじゅうたん」(ディスク1のトラック22)が選曲されている。プラネタリウムで流れていそうな、本作らしい空間系の曲のひとつである。スペーシィなサウンドがふたりにおとずれた「眠り」の幸福感を描写して、こちらも夢を見ているような気持ちにさせられる。
 ふたりが天文台を出たあとは、リズム系の日常曲「活動準備!」(ディスク1のトラック8)、猫のツーちゃんのユーモラスなテーマ「ツーちゃん」(ディスク2のトラック5)が流れ、ふたたび昼の世界が描かれる。
 第1話の終盤、伊咲が丸太に「夜のおたのしみ会を発足します」と宣言する場面。いよいよ満を持してメインテーマ「君は放課後インソムニア」(ディスク1のトラック1)が流れる。アコースティックギター、ピアノ、シンセ、ストリングス、女声スキャットなどによる、空間系のサウンドと青春アニメらしいさわやかさが合体した楽曲だ。「眠れないことを悩むより、楽しめばいいじゃない」と言われているみたいで、心が洗われる。
 丸太と伊咲が夜の町を散歩するシーンには、軽快な「おもしろくしよう!」(ディスク2のトラック6)。夜のシーンなのにリズム系の「昼の音楽」が流れる選曲の妙が味わえる。夜こそふたりの「日常」であることが伝わってくる音楽演出だ。
 第1話のラストは、ふたりが夜空を見上げて、伊咲が「こんな景色が見れるなら、眠れないのも悪くないね」とつぶやく場面。シンセとピアノ、ストリングスなどによるファンタジックな曲が感動的なシーンを彩る。曲名は伊咲のセリフと同じ「こんな景色が見れるなら、眠れないのも悪く無いね。」(ディスク1のトラック24)。夜の世界と星の世界の奥深さを感じさせる、神秘的な空間系の曲だ。
 CDアルバムのディスク1の最後も、この曲で締めくくられている(厳密にはそのあとにアイキャッチ曲が収録されているが)。音楽だけ聴いても心地よいが、本編の映像を思い浮かべながら聴くと、なんとも切なく、温かく、輝く星の海に浮かんでいるような、複雑な気分になる。同じような曲調であっても、「ヒーリングミュージック」と呼ばれるジャンルの曲を聴いてもこういう気分にはならない。映像や物語と一体となることで心をゆさぶる、劇伴というジャンルの不思議である。
 「東京伴祭 2023」で林ゆうきが『君は放課後インソムニア』の曲を取り上げてくれて、本当によかった。このフェスで曲を聴かなければ、もしかしたらこの作品を観ることも、サントラを聴くこともなかったかもしれない。同じような出会いが、「東京伴祭 2023」に集まった人たちにもあればいいなと思う。

 林ゆうきは、この劇伴フェスに参加する作曲家をもっと増やし、海外からも観客が集まってくるような大きなフェスに育てたいと考えているそうだ。筆者も今後の公演が楽しみだし、こんどこそ会場で演奏を聴きたいと思っている。
 そして、フェスではアップテンポのノリのよい曲ばかりでなく、『君は放課後インソムニア』のようなしっとりした癒やし系の曲も演奏する機会を設けてほしいなと思う。熱い曲でガンガンと盛り上がるステージがあるいっぽうで、別のステージではゆったりとした曲が演奏されて、気分を休めている人や夢見心地になっている人がいる。そんなフェスになるといいなと思うのだ。

君は放課後インソムニア オリジナル・サウンドトラック
Amazon

佐藤順一の昔から今まで(44)
『絶滅危愚少女』と『ソノ黒キ鋼』

小黒 『SHORT PEACE「武器よさらば」』(劇場・2013年)では、ストーリーアドバイジングという役職ですが、これはどういう仕事だったんですか。

佐藤 カトキ(ハジメ)さんが演出をするにあたって、「自分だけの目線では分からないことがあるので、技術的な観点で1回見てくれないですか」というオファーをもらって、カトキさんのコンテを見るっていう役目ですね。でも、全然問題なくてなにも言うことがなかったので、「カトキさん、なにも言うことはないです」って言うことぐらいしかしてない (笑)。

小黒 なるほど。カトキさんとは、カトキさんが『ケロロ軍曹』でコンテを描いた頃からのお付き合いなんですか。

佐藤 『ケロロ』からですね。コンテ担当のカトキさんがホン読みに来られて、そこでの打ち合わせで議論をしたところが大きくて、コンテ自体ではそんなにやりとりはなかったですけどね。本当に面白かったので、勉強になりましたって感じでした。

小黒 なるほど。次にいきますと『絶滅危愚少女 Amazing Twins』(OVA・2014年)ですが、成り立ちが非常に分かりづらい作品ですよね。

佐藤 まあ、そうですね。池田東陽がこの時は生きていたんですけど、彼の会社エンカレッジフィルムズで作品をやりたいっていう話がずっとあった。それを実現させようという流れと、田坂さんと「次作どうしましょうね」と相談しているタイミングがあったんだと思うんですよね。それで、じゃあ一緒にどうですかと提案しました。これも『たまゆら』と同じように最初はOVAからスタートして、上手くいったら展開して、というざっくりとしたプランで進めてたやつです。
 ただ、当時エンカレッジの制作システムがかなりガタガタになってる時だったので。お披露目上映会みたいなところで観せるはずだったんだけど、その上映会の1時間前までV編をやってて(笑)。その何時間か前には「カットがないです」みたいなことをやってたぐらいの現場だったんですよね。

小黒 なるほど。作品内容について、池田プロデューサーの意向は沢山入ってるんですか。

佐藤 いや、東陽も一緒に議論はしてますが、ベースになるものは僕のほうから出しています。プロデューサーや制作デスクと話をして、エンカレッジとしてどうしたいのかを聞いて「それを俺がまとめてやるよ」という気分ではあったんですよね。途中で池田が倒れてしまったので、とにかく作品を作りきらなければならなくなっていったんだけど、現場がドタバタしてて、カットの持ち運びもやる羽目になるっていう感じだね(笑)。

小黒 佐藤さんが制作進行みたいな仕事を。

佐藤 そうそう。制作デスクがそこまで回ってなかったから、「じゃあ、俺が直接行って聞いてくるんで」と、アニメーターのところに行って、「すいません、今日出さないといけないんで、手放してください!」ってお願いをしたりしました(笑)。

小黒 そこまでやられていたんですね。佐藤さんの企画的な狙いはどうだったんですか。

佐藤 双子だったけれど、片方が生まれることができなくて、脳内に意識だけが残ってる姉妹の話です。『バビル2世』が好きなので、超能力ものをやりたいなとは思ってたんですよね。それで、女子超能力活劇的ななにかをやりたいなって思ってやってる作品ですね。

小黒 てっきり池田さんが変身美少女ものをやりたくって企画したのかと思ってました。

佐藤 元々ずっと企画で動いていた『ウィッシュエンジェル(-翼は小さいけれど-)』っていう作品もあって、池田の好みはどっちかっていうと、そっちでしょうね。だけど、ビジネス的なところ考えると着地しやすいのはこっちだろうなっていうことでやることになったんです。でも、池田が死ぬことが分かっていたら、そちらをやればよかったと思わなくもないですけどね。

小黒 作品がスタートした時にはご存命で、完成する時には亡くなられていたわけですね。

佐藤 そうですね。そんな制作体制ボロボロのところになったので、それをなんとかしようとしてて、体を壊したんだろうとは思うんですけど。

小黒 岡田麿里さんはまとめ役だったんですか。

佐藤 そうですね。これも『たまゆら』の時の玲子さんと同じで、田坂さん的にはトピックになる人に参加してほしいということだったので、岡田さんにちょっと協力してくださいとお願いして。でも、忙しいのもあって、3回くらい構成を書いてもらったぐらいで、そんなに沢山キャッチボールをする感じではなかったです。

小黒 あ、そうかそうか。佐藤さんがいきなりコンテを描いてるから、岡田さんの仕事はプロットまでなんだ。

佐藤 そうですね。かなりラフなプロットまで、です。

小黒 画が、かなりいいじゃないですか。

佐藤 画は追ちゃん(追崎史敏)の画ですね。追ちゃんが作品のエンジンになってバリバリやってましたから。

小黒 追崎さんがラフ入れまくり、修正しまくりという感じなんですか。

佐藤 そんな感じです。伊藤(郁子)さんが作画と作監で入ってくれていて、相当密度を上げてくれたんですが、そうすると今度は制作が追いつかないっていう感じでもありましたけどもね。

小黒 これも『カレイドスター』ファンに向けて作ったという、ニュアンスはあったんですか。

佐藤 気分的にはそうですね。

小黒 おなじみのキャストも登場しますもんね。そうそう、子安(武人)さんが、ちょっと変態的なキャラクターを演じていて、そのキャラが「次回はブルマとユルユル体操着! レオタードもいいかな、カレイドスター的な」と言っているんです。

佐藤 言ってた?

小黒 「セリフで言っちゃうんだ!」って思いました。アドリブなんですかね。

佐藤 いや、どっちだろう。でも、子安さんだからアドリブで言ってる可能性もあるな。覚えてない(笑)。

小黒 佐藤さん、前に「変身美少女ものは大人が観て面白いと思う理由が分からない」みたいなことをおっしゃってましたけど、超能力バトルはOKなんですね。

佐藤 超能力は好きなんですよ。

小黒 その差が分からない!(笑)

佐藤 やっぱり『バビル2世』が好きなんですよ。作りながら『バビル2世』のリメイクって難しいんだなっていうことが実感できましたね。色んな人が何度かトライしてるけど、なかなか上手くいかない。

小黒 『バビル2世』と『マーズ』は難しいですね。

佐藤 難しいんだなって、分かりましたよ。

小黒 『M3 ~ソノ黒キ鋼~』(TV・2014年)ですが、佐藤さんはどういう関わりなんでしょうか。

佐藤 僕は原作なんですよ。『ARIA』繋がりでマッグガーデンさんとの作品ですね。アニメとマンガのどっちが先か忘れてしまいました。

小黒 アニメの前に「Mortal METAL 屍鋼」っていうマンガがあって、これは原案が佐藤さんで、メカデザインが河森(正治)さんで、製作協力がサテライトとなっています。マンガは貞松龍壱さんという方ですね。この後にアニメの『M3』が始まるみたいなんですよ。

佐藤 マンガのスタッフに河森さんが入ってるので、その段階でアニメのプランは動いてますね。「屍鋼」の簡単な企画書があって、先出しがマンガになっただけだったと思います。

小黒 マンガが2バージョンあって、後に始まったマンガの作者は港川(一臣)さんですね。

佐藤 そうかそうか。港川さんのほうはアニメーションのシナリオからマンガにしていたのを覚えています。

小黒 まず、アニメの企画であって、それを元にして貞松さんがマンガを連載した。そして、TVアニメを始めることになって、港川さんのマンガが始まった。港川さんのマンガはアニメのコミカライズということでしょうか。

佐藤 そうだね。マンガ単独で動いてたことはないから。

小黒 で、元々のお話は佐藤さんが作ってたんですね。

佐藤 物語は、岡田さんがキャラクター造形も含めてシリーズ構成の時に作ったんですよ。だから、僕のはただの原案ですよね。

小黒 なるほど。じゃあ、世界観や物語の構成には、佐藤さんと岡田さんの両方のアイデアが入ってる。

佐藤 基本的な柱を組んでくれたのは岡田さんですね。例えば主人公のアカシのキャラクターは、性格設定も含めて岡田さんですね。

小黒 劇中に「無明領域」という異空間が出てきますが、あれはなにかの象徴だったんですか。

佐藤 全部終わってから「そうか」と思ったことがあるんですよ。無明領域って「明かりが無い」って書くんですけど、岡田さん的にはきっと「名前がない」でもあったんだよね。最初に上がってきた最終回のシナリオは、名前を失ったことが結構キーになってたんだけど、最終回までのストーリーは、そこに向けて作ってなかったので、違う方向の話にして着地させたんですよ。そういう意味では、最終回辺りの作り込みは岡田さんのものではなくて、僕のものになってる。

小黒 そういうことなんですね。

佐藤 うん。確かにそう言われてみると、「無明領域=名前がない」ってことを最初から重視しておけば、岡田さんが書こうと思った物語になったんだろうなということに後から気づいて、ごめんねって思ったやつです。

小黒 岡田さんがやろうとしてたのは、もっと観念的なことだった?

佐藤 多分、そうなんですよね。ラストはすっきりと後味よく終わらせましたけど(笑)。最終回辺りのシナリオが全然上がんなかった。岡田さんの持ってたものと、アニメで描かれていたものが、ずれてたからなんだろうね。

小黒 特に序盤からしばらくの間にどんよりとした感じがあるじゃないですか。あれは岡田さんの狙いなんですか。

佐藤 いや、岡田さんのシナリオよりも強調してますね。重苦しくしたい、よく見えないぐらい暗くしたいって。

小黒 暗くしたいっていうのは、映像のことじゃなくて、雰囲気のことですね。

佐藤 そう、そうですね。

小黒 どうしてそっちのほうにいきたかったんでしょうか。

佐藤 それは、ひだまりのような、朗らかな作品を作り続けてきたので、揺り戻しで(笑)。

小黒  (笑)。じゃあ、これは「黒佐藤」だったんですか。

佐藤 「こういうものもやるんだよ」っていうのを、ちょっとアピールしたかった (笑)。

小黒 なるほどなるほど。

佐藤 それでも、最後はほんわかしちゃったけど。

小黒 でも、どんよりはしてるけど、どこか冷静な感じがありますよね。

佐藤 そうなんですよね。2014年の作品だから、震災の余韻がまだまだ残ってる時期でしょ。作品内で言ってることが、自然に結びついてるんだよね、やっぱり。「大人達が勝手に始めたものが悲惨なことを起こして、俺達に迷惑を掛けて、それを俺達に片付けさせてる」みたいなことっていうのは、どっか時代の叫びでもあるわけですよ。そういうことを作品に載せてやろうとしていることもあって、浮き足立ちきれないっていうか、ファンタジーのほうに寄せきれないものがどこか残ってるんですね。

小黒 これはサテライトさんの3DCGで作るというのも前提だったんですね。

佐藤 そうですね、河森さん含めたチームがいるので、ロボットアクションに関しては、ほぼほぼなにもしないで安田監督とCGチームにお任せしてやってる感じです。

小黒 なるほど。

佐藤 でも、河森さんがお忙しくて。仲間メカが3体くらいいるんですけど、メカデザインが間に合わなかったので、最初は1機だけでやってますね。8話ぐらいまでかな。でも、河森さんのデザインが上がってくると、3Dチームから「こう変形するんですよね」ってモデリングが速攻で上がってくるんですよね。そういうチームが作られてるのには、ちょっと驚きました。

小黒 アニメーションキャラクターデザインが井上英紀さんですね。

佐藤 金子プロデューサーが井上さんを気に入ってて、折に触れて一緒にやろうと思ってる時期ですよね。

小黒 なるほど。手応えはいかがでしたか。

佐藤 探り探りではあったんで、ロボットものはやっぱり難しいんだなっていう反省を得た作品ですね。

小黒 難しいというのは、見せ方ですか。

佐藤 そうですね。見せ方で言うと、まともなメカものにしちゃうと、メカが得意でない人間が作っているのがバレるので、ちょっとホラーテイストに振っといたほうがよさそうだなと思ってたんだけど、ホラーとメカとの相性がそもそもあんまりよくないということが、やってみて段々と分かっていった。


佐藤順一の昔から今まで(45)『あまんちゅ!』と『泣きたい私は猫をかぶる』 に続く


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アニメ様の『タイトル未定』
392 アニメ様日記 2022年11月27日(日)

2022年11月27日(日)
『ぼっち・ざ・ろっく!』の8話がとてもよかった。文句のつけようがない。特に演出がよかった。
取材の予習をしつつ、質問状を書く。1人目の質問状を書くのに1日半かかった。時間のかけ過ぎだ。おかげで面白い質問状が書けた。いや、今回のものに限らず、質問状が面白くてもしかたないのだけれど。仕事の合間にワイフと新宿御苑に行く。イチョウは盛りを過ぎていたけど、モミジはまだこれからのようだ。
朝の散歩では『王様ランキング』のサントラの続き。2枚目から3枚目の途中まで聴いた。

2022年11月28日(月)
新文芸坐で「レインマン 4K上映」(1988・米/134分/DCP)を観る。プログラム「80年代の名編 アカデミー作品賞2本立て」の1本。初めて観る映画だと思っていたのだけれど、いくつかのシーンが記憶にあった。TV放映で観たのかなあ。映画としては悪くはないんだけど、今の感覚で作ったら、物語の構成がかなり変わるのだろうなあと思った。
マンションで10数年使った液晶テレビに引退してもらって、新しい液晶テレビを設置。価格は前のものよりもずっと安く、そして、画質は猛烈によくなった。それから、物理的に軽くなった。前のテレビは「家具」って感じだったけど、今度のは大きなタブレットのような印象。どちらもサイズは32インチだ。
朝の散歩で『王様ランキング』のサントラの続き。3枚目の途中から最後まで聴いた。

2022年11月29日(火)
取材で三鷹に。「この道で中澤一登さんや中村健治さんとバッタリ会ったなあ」と思いながら歩いていたら、亀田祥倫さんとバッタリ会った。この日は取材3本立てだった。

2022年11月30日(水)
「チェンソーマン」8話は力作。冒頭の作画が特によかった。
グランドシネマサンシャインで「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」【IMAXレーザーGT3D字幕版】を鑑賞。ワイフと行くつもりでチケットをとっていたのだけど、彼女が行けなくなったので、吉松さんを誘った。内容の好き嫌いはおいておいて、161分は長いなあ。色々と端折って100分くらいにまとめたほうが観やすかったのではないかなあ。
TOKYO MXの『新世紀エヴァンゲリオン』と『マジンガーZ』の2本立てを2週分視聴。11月22日の『エヴァ』は第八話「アスカ、来日」。言うまでもなく、アスカ初登場で弐号機大活躍のエピソード。『マジンガーZ』は8話「大魔神 アブドラの正体!!」。アフロダイAを戦闘用に改造するかどうかが議論され、最終的にさやかはアフロダイAの改造をあきらめて、甲児に「アフロダイAはマジンガーZの恋人ですもの。少し控え目にしなくちゃ」と言う。少女キャラが主人公よりも活躍する『エヴァ』と、ヒロインがロボットで戦うのあきらめて女の子らしくなると言ってしまう『マジンガーZ』。いかにも1990年代のアニメと、1970年代のアニメという感じだし、それを連続して放映するのが面白い。11月29日の『エヴァ』は第九話「瞬間、心、重ねて」で、碇指令が留守中のエピソード。『マジンガーZ』9話「デイモスF3は悪魔の落し子」は弓教授がニューヨークで開かれる科学会議のため研究所を留守にした際のエピソード。
以下は別の話。『マジンガーZ』の再放送で『マジンガーZ』関連のCMが大量に流れるのが、TV番組らしくていい。22日の放送だと「超合金魂」「渡辺宙明 追悼コンサート」「メガトン級ムサシX(クロス)」。最後には『マジンガーZ』Blu-ray BOXのプレゼントのお報せまであった。
ブラックフライデーで購入した「犬神家の一族 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】」を4Kモニターで再生。「えっ、いったい何が起きたの?」と驚くくらいに綺麗だった。ネットでの商品紹介から引用すると「究極の画質を収録するために、UHD-BDは三層ディスク(100GB)を採用」だそうだ。東宝ワイドでの収録も納得。圧巻は同梱された書籍「市川崑 犬神家の一族 完全資料集成」。かなりデカい。A4判で本文192ページ。既存の映像の再録が多いようだが、映像特典も充実。書籍でも映像特典でも、編集の長田千鶴子さんのインタビューがあり、僕が気になっていた部分について触れられていて、その点でも満足。

2022年12月1日(木)
『恋愛フロップス』。前回も「えっ、そういう話だったの?」と思ったけど、最新回も引き続いて「え~」と思った。ラノベ原作だと思っていたら、オリジナルだったのね。これからの興味はどうやって終わらせるのか、だな。

2022年12月2日(金)
16時からあるプロダクションでインタビュー。「90分で」と言われていたので、90分きっかりで終わらせたのだけれど、終わった後で90分で終わらせる必要はなかったことが判明。取材の後に1時間ほど世間話をした。取材の帰り道で、いきなり体調が悪くなる。

2022年12月3日(土)
昨夜に続いて体調がよくない。熱があるわけではないけど、風邪の初期症状か。グランドシネマサンシャインで『THE FIRST SLAM DUNK』をDolby Atmosで鑑賞。予告から想像した数倍はよかった。まだ考えがまとまっていないが、原作者が監督だから成立した映画だろうし、3DCGだから作ることができた作品だろうと思う。レイトショー「新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL アバンギャルドアニメの最先端 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」を開催。トークはまとまりのいい感じになった。
「事情を知らない転校生がグイグイくる。」最終13巻を読む。今巻もよかった。脚本を書きたい気持ちが湧いてくる。これから始まるTVシリーズに参加したいというわけではないし、自分が書けばいいものになるというわけではなくて、単純に脚本にしてみたいという欲求がある。どのくらいリアルな世界にするのかなどを考えたい。

佐藤順一の昔から今まで(43)
『わんおふ』と『宇宙戦艦ヤマト2199』

小黒 作品の話をすると、『ファイ・ブレイン』って登場人物も生真面目だし、作品としても生真面目に思えるんですが、これはどうしてなんでしょうか。

佐藤 生真面目? 最初に話をもらった時に「『パズルを使ったアニメ』って、どうやって作ればいいんだろう」と考えたんです。それが一番の悩みどころで。パズルデザインの郷内(邦義)先生が、物語作りのことも含めてパズルを考えてくれる方だったのでなんとかなったんですけど。例えば「迷路をネタにしたパズル」をやるとすると、主人公がそれを失敗させるのが難しいんです。

小黒 物語を作る上で、パズルに失敗する展開も必要になってくるわけですね。

佐藤 そうそう。1度目は上手くいかないけど、主人公の努力なり頑張りで切り抜けて解決するっていう流れが欲しいんですけど、迷路でそれをやろうとすると、その迷路がインチキか、主人公がなにか見落としとするぐらいしかなくて、それも1回ぐらいだったらなんとかなるんだけど。

小黒 ええ。

佐藤 毎週色んなパズルで必ずピンチと切り抜けを設定しなければいけないのを、どうやってクリアすればいいのかっていうのが分からなかった。シナリオを書いてからパズルを決めるのも変だし、パズルを決めてからシナリオを書くのも難しいし、どうすればいいんだろうねっていうところのスタート。だから、若干生真面目な感じになってるかもしれないですよね (笑)。弾けすぎて、パズルが成立してないのもダメだし、データ放送があるので、パズルをちゃんと見せる必要もあるから、途中を省略して「なんとかなりました」もダメ。パズルもパズルとして成立しなきゃいけない。

小黒 例えばマンガ原作で同じような作品だと、主人公達にもうちょっと遊びというか、崩してるところがあると思うんですけど、『ファイ・ブレイン』はきっちりと作られてる感じがするんですよね。

佐藤 そのテイストは脚本の関島(眞頼)さんかな。キャラクター造形をメインでやってくれたのは関島さんなんですよね。例えば主人公のカイトの両親が、パズルで死ぬっていう話が出てくるんですけど、本物の両親じゃないという展開を提案したのは僕なんですよ。悪者の組織がカイトを育てるために遣わした構成員だった可能性を提案して、それを元に先の展開がわーって変わっていったんです。関島さんはきちっと作っていくタイプだったので、僕がそれを散らかしていく役目だったことはありましたね。

小黒 放送が始まった頃に、佐藤さんは「自分が少年ものをやるのは珍しいから嬉しい」というようなことをおっしゃってたんですよ。やってみて新鮮でしたか。

佐藤 そうだね。ただ、想定していた少年ものって、もっと低学年向けだったんだよね。『どれみ』と同じぐらいの世代の男の子向け作品をやるという気分だったので、それよりは対象年齢が高いですよね。なので、思っていたのとは違うんですけど、主人公が男の子で、友情とかをちゃんと口に出しつつ戦うってアニメはわりと楽しかったです。

小黒 よしやるぞ、みたいなノリがありますもんね。

佐藤 そうそう。でも、結局、ルーク君がカイト大好きってなって (笑)。

小黒 1期の最後でちょっといい仲になりますよね。

佐藤 ラブラブ感が出ちゃったんだよね(笑)。あれは友情のつもりでやってるんですけど、なんとなくその。

小黒 大人アニメの雰囲気が。

佐藤 (笑)。どうしてもそんな感じになっちゃうんだなって思いましたね。

小黒 次が『わんおふ -one off-』(OVA・2012年)です。オリジナル作品ですが、お話も佐藤さんが作ったんですか。

佐藤 これはTYOアニメーションズと広告代理店で作った企画で、お話作りからやってほしいという依頼が来たんです。一応原案から作ったんですけど、色々と大変でしたね。

小黒 大変だったというのは?

佐藤 TYOは元々CMの会社で、HONDAがスポンサー的なかたちで関わることは決まっていたんですよ。僕は早い段階でHONDAの意見を聞いておきたいと言ったんだけど、TYOの山口(聰)社長によれば「内容はお任せする、好きにやってもらっていいと言われている」ということだったんです。それで書いたプロットは、女の子がバイクに乗って世界が広がるとか、バイクって素敵だなと感じるというものでした。だけど、そのプロットを持っていったら、HONDAさんから「バイクを高校生にお勧めするアニメにはしないでくれ」と言われて。

小黒 ああ。それで、いまひとつバイクの存在感がないんですね。

佐藤 そうです。「だから、最初に話を聞こうと言ったじゃない!」ということも含めて(笑)、色々と面白かったです。

小黒 実際の制作はどうだったんですか。

佐藤 最初はプロット、構成までやったら、現場は監督に任せることになっていたんだけど、色々あってコンテにもかなり手を入れることになりました。

小黒 さっきも話題になったように『わんおふ』では儀武さんが犬の役をやってるんですね。それに緒方(恵美)さんも出てますね。

佐藤 出てます。その辺のキャストに関しては『たまゆら』と同じで、「この役はこの人に」と思った分は、ほとんど決め打ちでお願いしてますね。

小黒 キャストに関しては、小林ゆうさんの弾けっぷりが印象に残りますね。

佐藤 小林ゆうさんはオーディションだったかと思います。苦労が多かった作品なので、キャストと音周りでは、やりたいことをきちんとやりたいと思ってやってましたね。

小黒 2013年は『宇宙戦艦ヤマト2199』(TV・2013年)の絵コンテがありますね。戦闘シーンの少ない回を希望されたんでしょうか。

佐藤 これは総監督の出渕(裕)さんから最初七色星団の話を振られていたんですが、スケジュールが合わなかったのか、やっていないです。

小黒 そうなんですね。

佐藤 それで、次に「これは是非」って言われたのが、イスカンダル到着の回(第24話「遥かなる約束の地」)でした。その時も、スケジュールがばっちり空いてるわけじゃなかったんだけども、これはやるしかないだろうと思って引き受けて。結局、打ち合わせしてからコンテが上がるまで、1年近くかかってるんです(笑)。なかなか手が付けられなかったんだけど、催促もなかった。

小黒 でも、公開には間に合ってますよね(笑)。

佐藤 そう(笑)。もう何ヶ月も経ってるのに催促がないとおかしい、これ誰か別の人がやったのかなと思ったけど、お仕事として受けているのでコンテをまとめて「遅くなりましたけども一応終わりました」と言ったら、「前の話数がまだ上がってません」って。だから、意外と早かったそうです。

小黒 前半で女子の水着シーンがあるじゃないですか。佐藤さんのコンテでもあんなにたっぷりした分量があるんですか。

佐藤 ありますあります。でも、やっぱりSFは向いてないなと思った。飛び込んだ子達が第三艦橋の窓から見えるというかたちなんだけど、実際に寸法を測ると相当な深度だから、素潜りで行けねえだろって(笑)。そういうことに気づかないっていうね。

小黒 あー。

佐藤 第三艦橋まで素潜りで行くって相当なスキルで、スキューバでもないと行けないだろうし、光も届かないから見えないかもしれないということに、後で気づく。SFは向いてないなって思うんですよ (笑)。

小黒 なるほど。コンテに出渕さんの直しは入ってるんですか。

佐藤 そんなに入ってないですね。まんまに近い感じだったと思います。

小黒 結論としては『ヤマト』に参加できてよかったと。

佐藤 よかったですね。最初のTVシリーズを観返して、沖田艦長が「ありがとう、以上だ」って言うところでは、アングルをなるべく合わせるようにして(笑)。他にもイスカンダルから出発するシーンは、沖田艦長が「帰ろう、故郷へ」と言った後、真田さんが「錨を上げーい」って言ったところで音楽が始まるようにコンテで指定してる。

小黒 なるほど。

佐藤 完成したら違う音楽が付けられていて、「ええっ」となった (笑)。その後のバージョンでは直っていたから「そう、これこれ」と満足しました 。

小黒 『2199』はベテランのお歴々が参加しましたよね。

佐藤 そうですね。みんな思い出を、思いの丈を語る感じが面白かったですね。「俺もヤマトをやれる」っていうね。それ程の作品ですよね、僕らにとっては。


佐藤順一の昔から今まで(44)『絶滅危愚少女』と『ソノ黒キ鋼』 に続く


●イントロダクション&目次

第801回 そして、801回!

『異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する~レベルアップは人生を変えた』
公式略称『いせれべ』!

 今回もオープニングは俺がコンテ切り(描き)、さらにそこから自分でレイアウトを起こしタイミングを付けたラフ原画を基に、社内の動かし系アニメーター・森 亮太君と篠 衿花さんに原画にしてもらうのが数カット。あと残りは同じく板垣コンテからキャラデ・木村博美さんが直原画。ここのところウチの作品はそういったショートカットなやり方が主流で、板垣コンテから直原画はもはや木村の得意技。
 今回特に木村に感心したのは、#01とOPで出てくる変身前のデブ優夜です。俺から“リアルに情報量を盛って~”との注文どおり、妙に現実味のある肉付き感——服のしわの付き方などでちゃんと“贅肉”が表現できているところには本当に「スゲー!」と思いました。泣きの表情芝居も描けていて、『COP CRAFT』の頃からさらにその画力に磨きがかかってる感じです。ちなみに『COP CRAFT』の時のオーダーは今回とは真逆で“線少なめ”。当初は里見哲朗プロデューサーの提案も入って“影なし”まで試みましたが、木村自身が線をどんどん増やしていったのでした。
 エンディングの方も、ほぼほぼ各キャラのラフを俺が描いて木村“直作監”でした。

 ってとこですみません。800回越えてもこの体たらく。現在、毎週納品納品サイクルの毎日! 当然本日もバタバタしておりそろそろお時間。仕事に戻ります(汗)。

アニメ様の『タイトル未定』
391 アニメ様日記 2022年11月20日(日)

2022年11月20日(日)
『ぼっち・ざ・ろっく!』は7話もよかった。お話に関してはかなり痛い(はずの)展開が、観ていて痛く感じないところが凄い。この話だけのことではないけれど、実験的な手法が実験に見えないところにも感心した(実験的手法が実験に見える作品も好きだけど)。
新文芸坐で「花様年華」4K上映(2000・香港/98分/DCP)を鑑賞。プログラム「胸焦がす4K体験 陶酔のウォン・カーウァイDAY」の1本。予告も観ないで行ったのだけれど、こういう内容だったのね。イケてる演出のモヤモヤするラブロマンス。見どころのひとつがヒロインの多彩なファッションで、不自然にくらい衣装が変わる。1962年の香港で物語が進んで、終盤でシンガポールやカンボジアに舞台が移るので少し驚く。初見なので元の映像とは比べられないけど、映像は綺麗。音響もよかった(後日追記。数日経ってから、この映画の登場人物や彼等の生活について思い出すことがあった。結構気に入ったみたいだ)。
朝の散歩で『地球少女アルジュナ』のサントラ1、2を聴く。

2022年11月21日(月)
午前中の散歩で要町の「無印良品 板橋南町22」まで行く。無印良品としては「無印良品 東京有明」「無印良品 銀座」に次ぐ、関東最大級の大型路面店だそうだ。
小川びい君が事務所にきて「Newtype mk. II」はないか、と言う。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会」復刻版のリーフレットのための調べ物をしているのだろう。彼は「事務所のラックに立っていた」と言うのだけれど、それって10年以上前の話じゃないか。多分、段ボール箱のどれかの中に入っているはず。「Newtype mk. II」は事務所スタッフが持っていたので、なんとかなった。
朝の散歩では「海街diary」のサントラ、『アクエリオンEVOL』のボーカルアルバム、午前中の散歩ではTV『たまこまーけっと』のサントラを聴いた。
ABEMAで「見える子ちゃん 全話一挙」を流し観。本放映中も思ったけど『見える子ちゃん』はおじさん向きのアニメだなあ。いや、正確に言うと、おじさんも楽しめるアニメか。ABEMAはフルハイビジョンなので、ちょっと得した気分。

2022年11月22日(火)
『BLEACH 千年血戦篇』は6話もよかったし、昨夜の7話もよかった。物語の密度とスピード感がよかった。僕的には映像を観ている時の感覚が、連載で原作を読んでいた時の感覚に近かった。オリジナル要素の入れ方を含めて、丁寧に作られている印象。夕方は仕事の合間に、目白庭園の紅葉ライトアップを観に行った。予想していたよりも綺麗だった。
WOWOWで放映されたドキュメンタリー映画「オードリー・ヘプバーン」の吹き替え版を録画で観る。ナレーションは池田昌子さんだ。この映画での池田さんの声は、亡くなった頃のヘプバーンよりも年上の感じで、それがヘプバーンが長生きして自身の人生を振り返っているかのように受け取ることができて、それがよかった。
散歩時にサブスクで『疾風!アイアンリーガー』のサントラ1、2、3と『疾風!アイアンリーガー 銀光の旗の下に』のサントラを聴く。

2022年11月23日(水)
散歩時にサブスクで「NEON GENESIS EVANGELION SOUNDTRACK 25th ANNIVERSARY BOX」のDISC1、DISC2、DISC3を聴く。これが染みた。こんなに『エヴァ』の楽曲が染みるとは思わなかった。「残酷な天使のテーゼ」はリリーズ時よりもよかった。話は前後するが、サントラBOXがサブスクに上がっているのに驚いた。

2022年11月24日(木)
SNSで話題になっていた「トルコ110番 悶絶くらげ」をU-NEXTで視聴。若き日の千葉繁さんが出演したピンク映画だ。Wikipediaの千葉さんページでは、この映画で演じたキャラクターについて「本人によれば、ぐりぐり眼鏡の学生で、コトに及んで『僕知ってるよぉ!』などと叫んでいるようなキャラクターだった。」と書かれている。情報元はアニメージュの記事だ。実際に観てみると、そこまで個性的なキャラクターではない。千葉さんが取材の時に大袈裟に言ったのか、あるいは撮影時にそういった演技もやったのだけれど採用されなかったのか。

2022年11月25日(金)
病院で大腸癌の検査を受ける。癌ではなかったらしい。内視鏡検査はかなりきつかった(後日追記。検査後に病院の先生が癌ではないだろうと言ったのだが、実は大腸癌だった。それが分かるのはしばらく先のことだ)。
配信で『リコリス・リコイル』を1話から観た。本放映時よりも楽しめた。

2022年11月26日(土)
この日は主に取材の予習をしていたのだけれど、調べることが多くて、なかなか苦戦。同じTVシリーズの最初の数話を何度も観る。就寝前に原作を読んで、また最初の数話を観なくてはいけないことに気づく。
前から『王様ランキング』について「配信とBlu-rayソフトで色が違うなあ」と思っていて、それを確認してみる。同じモニターで配信とBlu-rayソフトを見比べたけれど、かなり違う。Blu-rayソフトがスタッフの理想の色なのだろうなあ。朝の散歩ではサブスクの『王様ランキング』のサントラを聴いた。前にも聴いたけど、CD3枚分なのですごいボリューム。この日、聴いたのはサントラの1枚目。

第254回 サントラ・マルチバース 〜グリッドマン ユニバース〜

 腹巻猫です。5月3日に中野サンプラザで開催される「資料性博覧会16」に「劇伴倶楽部」で参加します。パンフレットのサークル紹介で「SOUNDTRACK PUBレーベルの新譜を頒布予定」と書いたのですが、間に合いませんでした。ごめんなさい。その代わり、2015年に発売した『カレイドスター』の完全版サントラを放送20周年記念で再プレスして持ち込みます。
 資料性博覧会の詳細は下記を参照ください。
https://www.mandarake.co.jp/information/event/siryosei_expo/


 『グリッドマン ユニバース』は面白かったなあ。マルチバース、メタバースの設定をフルに活用して、めちゃめちゃ燃える劇場作品になっていた。期待以上だった。
 2023年3月24日に公開された劇場アニメ『グリッドマン ユニバース』は、TVアニメ『SSSS.GRIDMAN』(2018)と『SSSS.DYNAZENON』(2021)の世界を受け継いだ新作劇場版。『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』のキャラクターが集合して新たな敵に立ち向かう、両番組を観ていたファンにはたまらない作品だ。
 音楽はもちろん『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』を手がけた鷺巣詩郎。本作のために新曲を提供している。
 鷺巣詩郎の代表作といえば「エヴァンゲリオン」シリーズだが、このところ鷺巣は『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』、そしてこのグリッドマンシリーズと怪獣(ヒーロー)ものを立て続けに手がけている。まるで水を得た魚のように力の入った音楽を書きまくっている。
 鷺巣詩郎の父は特撮TVドラマ「マグマ大使」や「快傑ライオン丸」を制作したピープロダクションの社長・鷺巣富雄(マンガ家・うしおそうじ)。鷺巣は子どもの頃から撮影スタジオの中で育ち、特撮映画や特撮ドラマに親しんでいた。もちろん怪獣映画音楽にも。そんな鷺巣が書く怪獣映画音楽が、60〜70年代の特撮映画・特撮ドラマ音楽を受け継いだ本格的なものになるのは、きわめて当然のなりゆきだった。といったことを、鷺巣は『SSSS.GRIDMAN』のサントラCDのライナーノーツに書いている。鷺巣詩郎は、大編成のゴージャスな怪獣(ヒーロー)映画音楽を「誇りを持って」書き続けているのだ。
 『SSSS.GRIDMAN』の音楽も『SSSS.DYNAZENON』の音楽も、怪獣映画ファンをうならせるダイナミックなサウンドだった。『SSSS.GRIDMAN』には80年代テクノ風サウンドが取り入れられていたり、『SSSS.DYNAZENON』はロック色が強かったりと、それぞれ特色はあるものの、中心になっているのはオーケストラサウンド。60年代の怪獣映画音楽は映画スタジオで録音されたこともあって、ちょっと泥臭い印象があるが(それが味わいだが)、鷺巣詩郎が作る現代の怪獣映画音楽は、ロンドンやワルシャワといった海外のオーケストラで録音され、洗練された音に仕上がっている。いかにも現代的だし、世界に打って出る作品に必要なサウンドである。その音がTVアニメで聴けるのが、『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』のぜいたくなところだった。

 『グリッドマン ユニバース』でうれしいのは、TVアニメ版(『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』)の音楽の中でもとりわけ燃えるヒロイックな曲がリメイク(リミックス、リマスタリング)されて使用され、さらに新曲も聴けること。鷺巣作品で重要なピアノソロの新曲もある。グリッドマンシリーズの「音楽いいとこ取り」みたいな作品なのである。
 本作のサウンドトラック・アルバムはポニーキャニオンより「グリッドマン ユニバース オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2023年3月22日に発売された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. HL pinch no vocals 2023)
  2. 1144 Fob 02 2023)
  3. all this fanfare 2023)
  4. all this human 2023)
  5. 1144 Fob 02 CH 2023 incomplete)
  6. peaceful 1805 no piano melody)
  7. HL 29 mysterious no vocals 2023)
  8. 00320 piano alterna 01)
  9. grid and dyna 108bpm choir only 2023)
  10. Human Love instrumental 2023)
  11. 1803 ending option 2023)
  12. all this monster 2023)
  13. Human Love CH edm 02 2023)
  14. dyna march 108bpm 2023)
  15. all this metal 2023)
  16. Human Love CH edm 04 2023)
  17. 1187 am suspense)
  18. 2201 suffocation)
  19. M10 emotion strings edit)
  20. Human Love CHHF 2023
  21. 11141 overture)
  22. GRIDMAN UNIVERSE full)
  23. M10 galaxy gridman edit)
  24. 1801 GALAXY)
  25. 1144 Fob 02 CH 2023 guitar finish)
  26. 00320 piano alterna 02)
  27. peaceful universe)
  28. 1801 GALAXY hiskool demo)
  29. 1144 Fob02 no choir)
  30. Human Love Robot Love 2023)
  31. GRIDMAN UNIVERSE choir logo)

 収録されているのはTVアニメ版音楽をリミックス/リマスタリングした曲と、新たに録音された曲。本編の中で使用されていない曲も含まれている(とライナーノーツに書いてある)。また、作中ではこのアルバムに収録されていないTVアニメ版音楽も使用されているようだ。本編使用曲を登場順に並べたオーソドックスなサウンドトラック・アルバムではない。ユニークな構成である。
 CDのブックレットには鷺巣詩郎自身による解説が掲載されており、TVアニメ由来の曲はどこが変わったのか、新曲はどんな意図で制作したのかなどが細かく語られている。楽曲は配信で聴くことができるが、CD版のブックレットを読むと、より興味深く聴くことができるだろう。
 1曲目の「HL pinch no vocals 2023」は『SSSS.GRIDMAN』の危機描写曲「HL_pinch」のボーカル抜きリミックスバージョン。頭から緊迫した曲で危機感をあおる大胆な構成だ。曲名に「2023」とついているのは、TVアニメ版の曲をリミックス/リマスタリングして、より進化させたバージョンである(とライナーノーツに書いてある)。
 次のトラック2「1144 Fob 02 2023」からトラック5「1144 Fob 02 CH 2023 incomplete」までは予告編で使用された楽曲(これもライナーノーツに書いてある)。
 「1144 Fob 02 2023」は『SSSS.GRIDMAN』のメインテーマとも呼ぶべき勇壮なヒーロー音楽。トラック3「all this fanfare 2023」は『SSSS.DYNAZENON』を代表するオーケストラ音楽。トラック4「all this human 2023」も同じく『SSSS.DYNAZENON』を代表するEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)風のイケイケ音楽。トラック5「1144 Fob 02 CH 2023 incomplete」は「1144 Fob 02」をブツ切りにして再構成した本作のための新曲。本編で流れた完成版はトラック25に収録されている。
 ここまで、燃える音楽のつるべ打ち。オーソドックスなサントラの構成だとこうはならないところを、「予告編で使用された曲」を並べることで最高の導入になった。このアイデアはすばらしい。
 トラック6「peaceful 1805 no piano melody」は『SSSS.GRIDMAN』の曲「peaceful」をピアノ抜きでリミックスした日常コミカル曲。トラック7「HL 29 mysterious no vocals 2023」は『SSSS.GRIDMAN』の曲「HL 29 mysterious」をボーカル抜きでリミックスした疑念・不安描写曲。曲名でどういう由来の曲かわかるようになっている。
 トラック8「00320 piano alterna 01」は本作のための新曲。学校で裕太が六花と話す場面に流れるデリケートなピアノソロの曲である。トラック26に収録された「00320 piano alterna 02」は同じ曲の演奏の異なるバージョンだ。
 トラック9「grid and dyna 108bpm choir only 2023」からトラック16「Human Love CH edm 04 2023」までは、TVアニメ版の曲のリミックス/リマスタリング版。原曲と聴き比べてみると、もとは同じ音源なのに別曲に聴こえるくらい大胆に音が変えられている。音響テクノロジーの進化の反映であると同時に、同じようで異なるものがいくつも存在するマルチバースを意識した表現である(という話もライナーノーツに書いてあった)。
 トラック17「1187 am suspense」からトラック28「1801 GALAXY hiskool demo」までは劇場作品のために制作された新曲。終盤に向けてしだいに曲調が盛り上がっていく。
 トラック17、18とサスペンス描写曲が続き、緊張感が高まる。トラック19「M10 emotion strings edit」はアコースティックギターとストリングスによるしっとりとした心情曲。後半で裕太がグリッドマンと会話する場面に流れていた。グリッドマンと裕太の心のつながりを描写する感動的な曲である。
 トラック20「Human Love CHHF 2023」からは、最終決戦に流れる怒涛のクライマックス曲の連続。
 「Human Love CHHF 2023」は『SSSS.GRIDMAN』を代表する曲「Human Love」の最新ハード・フュージョン風アレンジ。ノリノリのバトル曲だ。アレンジは鷺巣詩郎の盟友であるCHOKKAKU。曲名の「CHHF」は「CHOKKAKU HARD FUSION」の略なのだろう。
 トラック21「11141 overture」からは壮大なオーケストラ&コーラスの曲が並ぶ。「ぜんぶメインテーマ?」と言われてもうなずいてしまうくらい、濃厚で高揚感のある曲ばかりだ。
 トラック23「M10 galaxy gridman edit」とトラック24「1801 GALAXY」の2曲は、本作の壮大な世界観にちなんで、ジョン・ウィリアムズのSF映画音楽風アレンジがほどこされている。これはTVアニメ版にはなかったテイストで、劇場版ならではの味だ。
 そして戦いが終わり……。
 トラック26「00320 piano alterna 02」とトラック27「peaceful universe」は、いずれもラストのしみじみとしたシーンに流れた曲。ピアノソロによる「00320 piano alterna 02」はアカネとグリッドナイト(アンチ)の会話のバックに、アコースティックギターによる「peaceful universe」はグリッドマンと裕太の別れの場面に流れていた。
 トラック28「1801 GALAXY hiskool demo」は、学園祭で上演されるグリッドマンの劇のシーンに流れていた曲。トラック24に収録されている「1801 GALAXY」のデモバージョンである。高校生が作った曲という設定だからあえて未完成のデモのほうを使ったのだ(これもライナーノーツの受け売り)。本編で流れた曲が劇中劇のBGM(現実音楽)としても流れるというメタ構造が、いかにもグリッドマンらしい。
 収録曲の別バージョンを集めたボーナストラック(トラック29〜31)でアルバムは締めくくられる。

 燃える曲の連続で始まり、燃える曲の連続で終わる。本編の流れそのままではないが、劇場の興奮がよみがえる、とても充実したアルバムだ。『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』から選りすぐった楽曲(のリミックス/リマスタリング版)に新録音の楽曲を加えた内容が満足度を高めている。
 本作を映像ソフトや配信で楽しめるようになったら、本アルバムに収録されていない劇中使用曲を『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』のサウンドトラックから探して、完全版サントラを構成してみるのもよいかもしれない。
 そのときは、学園祭準備のシーンで流れていた曲「ふたつの勇気(インストゥルメンタル)」もぜひ入れておきたい。グリッドマンシリーズのオリジンである特撮TVドラマ「電光超人グリッドマン」(1993)の挿入歌のインスト版である。作・編曲は戸塚修。「電光超人グリッドマン」のサウンドトラック・アルバムに収録されている。本作には、実写とアニメの垣根を越え、作曲家もレーベルも異なる楽曲が共演しているのだ。グリッドマンシリーズは、サントラもマルチバースなのである。

グリッドマン ユニバース オリジナルサウンドトラック
Amazon

佐藤順一の昔から今まで(42)
『クロワーゼ』と『ファイ・ブレイン』

小黒 次が『異国迷路のクロワーゼ』(TV・2011年)です。これはシリーズ構成と音響監督としての参加ですね。

佐藤 そうですね。随分前に1回企画として立ち上がったことがあって、監督をやるように言われたんです。原作の画が緻密で、これを再現しないと『クロワーゼ』という作品になんないけど、カロリーが相当高いから難しいだろうと言って、二の足踏んでた記憶があるんですよね。それが、安田(賢司)監督でやることが決まったところで、当時サテライトにいた金子文雄プロデューサーから、「シリーズ構成をやりませんか」って話をもらって。

小黒 ここまでで何度かお名前の出ている金子さんですね。

佐藤 そうそう。その金子の作品なので、基本的にはノーとは言わないという流れです。だから、原作の先生にシリーズ構成をプレゼンするところぐらいから入ってますね。

小黒 では、現場のことはやらないで、お話作りとか。

佐藤 うん。脚本発注とホン読みまではやるけど、絵コンテ以降は安田さんでしたね。原作者の先生にプレゼンに行った時に、凄く構成を褒めていただいたんですよ。で、褒めてもらって気持ちよくなっている帰り道で、金子プロデューサーとご飯食べている時に「佐藤さん、音響もやるべきですよ」って言われて、なし崩しでやることになって、仕事が増える (笑)。

小黒 これも『ARIA』的な、静かな曲を上品にずっと付けている作品でしたね。

佐藤 そうですね。音楽的にはそんな感じです。

小黒 「佐藤順一作品には松竹というジャンルがある」と言いましたけど、フライングドッグというジャンルもあるんですよね。

佐藤 そういえばそうですね(笑)。

小黒 『クロワーゼ』はめちゃめちゃ作画がよかったですよね。キャラデが『ARIA』で超ハイクオリティ作画をやった井上(英紀)さんですか。

佐藤 そうです。井上さんにキャラクターデザイナーと総作監で入ってもらってますね。制作がサテライトで、フランス人スタッフがいたんですよね。

小黒 ロマン・トマさんとか。

佐藤 ええ。何人かいて、その方達が凄い密度の設定を上げていて、そこに驚くわけですよ。

小黒 その精緻な設定がしっかり画面に反映されてますよね。

佐藤 そうなんですよね。フランスのことをよくご存知なので、正しいフランスが描かれている。

小黒 この取材にあたって佐藤さんがコンテを描いた回は全部観るつもりだったんですけど、配信だと『クロワーゼ』の佐藤さんコンテ回がないんですよ。これは映像ソフトを買わないと観れないんですね。

佐藤 そうですそうです。

小黒 どんな作品なんですか。

佐藤 音楽回ですね。中島愛さんが演じるボヘミアンの女の子が来て、日本の歌を披露する。湯音が懐かしいって興味を持って交流していると、その子のおじいちゃんが日本に繋がりがあって、さらに湯音のお姉さんとも接点があるかもね、という感じで歌と歌が繋がっていく、いい話ですね。これは「シナリオ=コンテ」なので、脚本家がいないはずです。

小黒 それは原作にある話なんですか。

佐藤 ないです。これはオリジナル。

小黒 じゃあ、なんとかして観ますよ(編注:取材の後で観ました)。

佐藤 たまに観返すんです(笑)。ネット配信では観られないので自分用のやつを持っています。

小黒 次が『ファイ・ブレイン 神のパズル』(TV・2011年)。これも謎アニメですけれども。

佐藤 そうなんですよねえ。『ケロロ』と同じスタートの仕方をした作品なんですよね。サンライズの内田(健二)さんに呼ばれて「実はこんな企画があるんだけど」と言われるというね。NEP(NHKエンタープライズ)の作品で、パズルを使ったアニメということは決まっていました。ラフストーリーや設定についてはプレゼンが終わった頃に呼ばれているので、言ってみれば東映時代の作品の入り方と似てるんですよね。

小黒 なるほど。じゃあ、企画立ち上げには関わってはいない。

佐藤 そうですね。サンライズ的には、NHKの作品をやりたいとは思っていて、NEPにプレゼンをしていた。データ放送が重視され始めた頃で、パズルをデータ放送で楽しめるようにして参加者を増やしていく。そんな感じで動いていた企画だろうなというのは想像してましたけど。

小黒 NHK側から「こういう話にしてほしい」という要望はあったんですか。

佐藤 それはないですね。基本的にはサンライズが作ってNEPを通してNHKにプレゼンをして、何回かキャッチボールをしてるようでしたけど、サンライズサイドが主だったと思います。
 冒険活劇の中にパズルを取り入れることは決まっていたけど、そのパズルをどうするかは、まだ探ってる途中だったと思うんですよね。僕が入った時点では、テーブルパズルじゃなくて、主人公達が洞窟に入っていく感じのパズルが想定されていましたね。

小黒 なるほど。僕がなにを気にしているかというとですね、劇中でアインシュタインの称号とか、ガリレオの称号とかが出てきたじゃないですか。これが、NHKの要望だったのかなと気になってるんですよ。

佐藤 要望ではなかったと思うけれども、NHKだからということで、多少忖度があったかもしれないですね(笑)。

小黒 この前の、2009年頃に『マリー&ガリー』っていうのがあって。

佐藤 はいはい。

小黒 馬越(嘉彦)さんのキャラデザインの東映のアニメで、ガリレオとかキュリー夫人、ニュートンと、歴史上の偉人をモチーフにしたキャラクターが出てくるんですよ。サンライズが『ファイ・ブレイン』の後に作った『クラシカロイド』というアニメは、ベートーヴェンやモーツァルト等の世界的な音楽家をモチーフにしたキャラクターが出てくるんですよ。この頃、NHKのアニメはそういった作品をやる方針があったのかな、と思っていたんですよ。

佐藤 放送もEテレだから、そうだった可能性はあったかもね。NHKって、未就学児や低学年の定番コンテンツはいっぱいあるんだけど、もう少しティーンの視聴者欲しいという希望があって、その一連の企画ではあったと思うんですね。映像ビジネスのできるコンテンツが欲しいと考えていたんだと思いますね。

小黒 1期のクレジットを見ると、佐藤さんの役職は監督で、ディレクターとして遠藤広隆さんがいらっしゃいます。これは総監督的な仕事をしていたんですか。

佐藤 はい、そうですね。

小黒 現場のことはディレクターの遠藤さんがやってた。

佐藤 全部遠藤君ですね。デザインの発注とかも含めてですね。スタート時の作品のベースは多分、プロデューサーがやってますけど、遠藤君が入ってから以降は、デザイン発注やジャッジは全部彼ですね。僕がデザインについてあれこれ言ったことはないかな。

小黒 『ファイ・ブレイン』は長寿作品となり第3シリーズまで続くわけですが、佐藤さんが監督だったのは第1シリーズだけで、第2シリーズ以降はシリーズ構成と、各話の絵コンテですね。

佐藤 いや、ずっと仕事内容は同じなんですよ。1期は実際には総監督。第2期は遠藤君を監督にすると決めていたので、自分は総監督や監修とかの役職にして、遠藤君を監督として立たせてほしいっていう話をしたんです。でも、NHKにクレジット縛りみたいなものがあるから、「総監督っていうクレジットは認められない」と言われたんですよ。

小黒 「総監督」がダメなんですね。

佐藤 そうそう。遠藤君を監督としてクレジットしたいので、NHKが無理だと言うんだったら、僕はもうこの先は参加できないなっていうくらいのことを言ってたんだけど、結局NHKの方から「総監督は絶対認められません」という回答が来た。それで、妥協案として受け入れたのが、シリーズ構成。だから、やってることは変わんないんですよ。

小黒 なるほど。

佐藤 選曲の仕事は佐藤恭野がやってるんだけど、NHKの編成部のレギュレーションから「選曲」としてクレジットするのは無理だと言われて、音響スタッフのようなクレジットになってる(編注:「音響効果」としてクレジット)。

小黒 なるほど。

佐藤 前例がないからダメという説明を受けたんだけど、「そうだっけ?」と思ってNHKでやってた『キャプテン・フューチャー』を観たら、ちゃんと「選曲」ってクレジットが入ってたから「大丈夫だったんじゃん」とは思ったけど (笑)。

小黒 それでいうと『(ふしぎの海の)ナディア』の時に庵野(秀明)さんが総監督ですよ。

佐藤 そうなんですよね。昔はやってたのが、今はなぜかダメになってる。これは規則だからしかたないんだなと思うことにしました。


佐藤順一の昔から今まで(43)『わんおふ』と『宇宙戦艦ヤマト2199』 に続く


●イントロダクション&目次

第800回 800回だそうです!

 今回で何と800回! ——はい、だからどうした状態でしょうが、とりあえず話題にしてみました。800回って事は単純な話、1年50数回×16年! 監督でクレジットされるようになって間もなく(『BLACK CAT』と『Devil May Cry』の間くらい?)に始まってる連載なので、最初から読み返すと“板垣の監督キャリア”がほぼ網羅されている訳です! が、読み返すことは多分ないでしょう(汗)。
 以前、『てーきゅう』原作・ルーツ先生に「あの連載、書籍化しないんですか?」と訊かれ、「そんな気、ありません」と即答しました。所詮は毎週毎週いきあたりバッタリ! に書(描)いてるだけの駄文。そんなの売れる訳ありませんから。そんな文章も稚拙な駄文を10数年続けさせて下さるWEBアニメスタイル様には本当に感謝しかありません。ありがとうございます! もし、許されるならもう少々お付き合いいただけるともっと嬉しいのです。現状、仕事尽くしの毎日には丁度よい“気分転換”になっているから。今後ともよろしくお願いいたします!

 で、放映開始した新シリーズ、

『異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する~レベルアップは人生を変えた』
略称は『いせれべ』!

 間もなくまた仕事に戻らなきゃならない時間のため、手当たり次第に話題を探ることとします。
 企画自体をいただいたのは前に説明したとおり、前作『蜘蛛ですが、なにか?』の最後辺りにKADOKAWAさんより「次の企画を~」といただいたんだと思います。社長(白石)の記憶とは少々ズレがあるかも知れませんが、大体そんな感じだったかと。で、いただいた話ではありますが、「ウチも新しい監督(田辺慎吾君)を育成したいから」と、監督2人(総監督&監督)体制を願い出て承諾された、という流れ。さらにシリーズ構成も自分が兼ねることで、脚本も社内の演出・アニメーターにやってもらおうと。周りのプロデューサー間でも忘れられがちですが、板垣は監督になるより脚本デビューの方が先(『この醜くも美しい世界』[2004]の#07)なため、演出やアニメーターでも脚本を書きたいと言う若手には書かせてやりたいと思ってしまうのです。
 キャラクターデザインは『COP CRAFT』(2019)において二十歳でキャラデ・デビューを果たした木村博美さん。彼女は本当になんでも描ける天才です。もちろん、自分の20代の頃より断然“巧い”です。今回、話数によって一緒に総作画監督をやっています(EDテロップにのみ表記)が、これはあくまで“美麗なメインキャラのアップ”の木村作監を活かすため、その周りで巧くいってないレイアウト・芝居・アクションその他の原画描き直し・作監修正・背景修正を一手に引き受けるかたちでのフォロー役。

 ——ってとこですみません、時間になってしまいました。仕事に戻ります。

第204回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作15【タイトル発表直前、どんな題名になるのかな?編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、タイトルは発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に、平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。これまでのイベントでも新しい視点から見つけた、これまであまり語られていなかった「枕草子」の側面について語られてきました。

 2023年5月6日(土)に開催する第15弾のイベントは「タイトル発表直前、どんな題名になるのかな?編」。遂に片渕監督が制作中の作品のタイトルが発表されるようです。今回はそのタイトル発表直前のイベントとなります。作品タイトルを含めて、作品の全体像について語られることでしょう。そして、最新の調査の結果も語られるはず。出演は片渕須直監督、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。イベントは「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた片渕須直監督次回作」もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは4月22日(土)昼12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT  https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/248798
会場チケット https://t.livepocket.jp/e/fdzn1
配信チケット https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/230193

 なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr

第204回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作15【タイトル発表直前、どんな題名になるのかな?編】

開催日

2023年5月6日(土)
開場12時30分/開演13時 終演15時~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
390 アニメ様日記 2022年11月13日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年11月13日(日)
紅葉を見るために、ワイフと光が丘公園に。ワイフは途中で寄ったフリーマーケットに熱中になっていた。公園を歩いて、紅葉を見て、お茶を飲む。

2022年11月14日(月)
『映画 ゆるキャン△』を配信で視聴。公開時にも気になったんだけど、冒頭で現在の(TVシリーズと同年齢と思われる)なでしこ達が「大人になったら……」といった内容の話をしたところでオープニングが始まり、オープニングが終わると、なでしこ達が社会人になった本編が始まる。つまり、『映画 ゆるキャン△』の本編は現在のなでしこ達が想像した未来の自分達という位置づけだと考えることができるわけで、原作やTVシリーズの彼女達の未来が、映画の通りになるとは限らないのだ。どこかですでに言及されていたら、すいません。

SNSで自分の発言の間違いを指摘されて確認したのだけれど、現行のTVアニメ『うる星やつら』4話の「口づけと共に契らん!!」って、原作14巻の1話「クラマ再び!!」、2話「口づけと共に契らん!!」、3話「掟、おさらば!!」の映像化なのね(参照したのは新装版。以下同)。原作14巻の1~3話は、過去エピソード(原作2巻7話)であたると目覚めの口づけをしてしまったクラマが、目覚めの口づけをやり直そうとするが、またしてもあたると口づけをしてしまって、という話だ。現行のTVアニメでは、あたるとの最初の口づけをした話をやらないで、原作の二度目の口づけを最初の口づけにした。大きなアレンジはそれくらいのはず。原作14巻3話で目覚めの口づけの掟が根拠のないものだと分かるので、目覚めの口づけの話はこれでお終いのはず。原作だと何度かあるクラマの話を1話でやりきったわけだ。

2022年11月15日(火)
新文芸坐で「にっぽん昆虫記」(1963/123分/35mm)を観る。プログラム「師弟特集 今村昌平(イマヘイ)と長谷川和彦(ゴジ)」(新文芸坐のサイトではイマヘイとゴジがルビになっている)の1本。タイトルだけ知っている映画で、さらに言うと、小学生の頃に手塚治虫の「人間昆虫記」を手に取って、面白いタイトルだなあと思った後で、その元ネタらしいこの映画の存在を知った。今まで何度も新文芸坐で上映していたのだけれど、いつもタイミングが合わず、観ることができなかった。今回ようやく観ることができたわけだが、かなりよかった。物語構成も演出もよかった。役者もいいんだけど、多分、メイクも凄い。物語としてはあまり共感できないんだけど、映画としては楽しめた。1人の女性の半生をねっとりと描いた作品で、体感時間が異様に長い。実際には123分の作品で、体感としては3時間以上。冗長で体感が長いのではなくて、内容が濃いのでたっぷりとした印象になってるのだと思う。主人公の母親は夫以外の男性の子を産み、映画終盤に主人公の娘もこれから結婚する青年とは別の男性の子を妊娠するのだけれど、2人の妊娠の意味は違っている、という構成が面白かった。映像も凝っていて、光の感じも、長回しも、構図もいい。飛んでくる飛行機から始まって登場人物の芝居を撮ってから、走って行くバスを追っていく1カットには驚いた。それから、ラストカットについては「えっ、ここで終わるの?」と思った。新文芸坐のロビーに貼ってあった粗筋を見ると、プランとしては、もう少し先まで話があったようだ。演出的な判断で、その手前でスパンと切ったのだろうか。
散歩時にサブスクにあった『機動戦士Vガンダム』のサントラを聴く。プレイリストの1、それから2枚目の途中まで。

2022年11月16日(水)
「WEBアニメスタイル」の腹巻猫さんのコラムは『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』。今回も大充実の内容で、僕が読みたい記事でもあった。

サントラ千夜一夜 / 腹巻猫(劇伴倶楽部)第243回 スタンダードの証明 ~機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島~
http://animestyle.jp/2022/11/15/23122/

事務所で使っているスマートテレビでDisney+が視聴できることが判明。リモコンにDisney+のボタンがないので視聴できないのかと思っていたが、ホーム画面まで行くとDisney+を選ぶことができるのだ(勿論、Disney+に加入していないと観ることはできない)。4K&IMAX Enhancedで「エターナルズ」を視聴。続けて『ズートピア+』を観る。『ズートピア+』って『ズートピア』の主人公達の「その後」の話ではないのね。

2022年11月17日(木)
ワイフと「フジオプロ旧社屋をこわすのだ!! 展」に参加。ワイフは参加者がハンマーで壁を壊すような企画だと思ってたらしい。故・赤塚不二夫が設立したフジオプロの旧社屋が取り壊される前に、そこで原稿の展示等を行うという企画だ。展示内容もいいし、展示方法も凝っていて楽しかった。赤塚不二夫が写っているホームビデオを、そのホームビデオが撮られた部屋(リビングルームだったかな)で観るというシチュエーションが感動的だった。

2022年11月18日(金)
Amazon prime videoで「DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン」を視聴。凄い。今観ても、よくできている。そして、燃える。続けて「シン・ウルトラマン」を再生してたのだけれど、両作の地続き感が凄い。
「お目が高い」と書こうとしたら「オメガ高い」と変換された。『ぱにぽにだっしゅ!』か!

2022年11月19日(土)
20周年ということもあって(それだけではないけど)『ラーゼフォン』の1話~3話を視聴。U-NEXTでの配信を43インチモニターで観た。多分、映像はアプコンで、くっきりはっきりとはいかないけれど、この時期のTVアニメとしては悪くない感じ。画作りは今観てもリッチで、というか、今のほうがその価値が分かる。1話のガラスの破片は今観ても凄い。デジタルが当たり前になれば、こういった表現がどんどん出てくるのかと思ったけれど、そうはならなかった。
知人とZoomで打ち合わせ。最近、レスポンスが遅いなあと思っていたら、コロナで療養中とのこと。しかも、彼は今年になって二度目の感染だそうだ。これが「2コロ」というやつか。

佐藤順一の昔から今まで(41)
『たまゆら』で勉強になったこと

小黒 シリーズ最終作の『たまゆら~卒業写真~』(OVA・2015年)は劇場公開されていますが、OVAということになっていますね。

佐藤 アニメーションの届け方、ディストリビュートの仕方をずっと探っていました。TVの4クールがいい時代もあったし、1クールがいい時代もあった。あるいはTVが難しい時代、OVAの時代、映画館のイベント上映がいい時代と色んな時代がありましたよね。『卒業写真』の時は映画館のイベント上映で観てもらってパッケージに繋げるのが、ビジネスモデルとして最適解だった時代だと思うので、その流れに合わせていったはずですね。

小黒 最初に松竹のマークがバーンと出るので、観ている側としては「映画が始まった感」はありましたよ。

佐藤 TVとOVAと劇場作品で、音響費やキャスト費等の予算って違うんですよ。劇場作品と謳うと、劇場作品の予算規模で作らないといけないんです。この作品はOVAとして作って、イベント上映をするというかたちになってますが、限りなく映画っぽい作り方になってるんですよね。松竹は小屋(映画館)を持っていて、新宿ピカデリーのように500人も入るスクリーンで上映できるから、そこを使っていきたいね、という話はあったと思うんですよね。

小黒 『卒業写真』は公開の後、画に手を入れているんですよね。

佐藤 配信しているのは多分手を入れてないやつですよね。いくつかバージョンがあると思うんですが、Blu-rayBOXが最終形です。会社都合もあって、公開当時はリテイクが充分にできなかったんです。

小黒 公開と同時に映画館で売っていたディスクでは、充分でなかったと。

佐藤 そうです。BOX用に改めて手を入れ直してるんです。

小黒 第4部の前半で、楓がお母さんとおばあちゃんに「東京に行きたい」と言う場面が凝ってるんですよ。彫刻とか小物が凄く綺麗に描いてあるんです。

佐藤 あの辺に僕は手を入れてないので、名取(孝浩)君のコンテがほぼ残ってると思いますね。「茶房ゆかり」というカフェがモデルになっていて、お店のものをそのまま使ってるんですよね。

小黒 写真参考で絵コンテを描いたり、写真レイアウトにしたりしたことが上手くいった?

佐藤 そうかもしれないですね。

小黒 『卒業写真』は各章がTVシリーズの2話分のボリュームでしたが、TVシリーズ1本単位で制作していたのだろうと思います。佐藤さんはどの章でも絵コンテでクレジットされていますが、前半か後半のどちらかを担当しているということですか。

佐藤 そうですね。

小黒 第4部後半は「これぞ最終回!」という感じでしたね。

佐藤 「卒業写真」というシリーズの最後にユーミンの「卒業写真」を使おうと決めてやっていましたからね(笑)。

小黒 この最終回をやるための構成だったわけですね。

佐藤 第4部に、お父さんの葬式で楓が嗚咽している画がありますけど、あのイメージは最初のOVAの頃からありました。それをどこで見せるのか、あるいは見せないのか。ずっと考えてたんだけど、やっぱり最後に入れようと思って入れました。だから、最初から画のイメージがあったことはあるんですよね。

小黒 そういえば、『たまゆら』って「なにか」をする話じゃなかったんですね。

佐藤 そう。「なにか」をしないですね。

小黒 なにかを克服するまでの物語とか、卒業に向かってなにかをする話じゃないですよね。一つ一つの出来事があって、終わっていく。

佐藤 そう。そういう感じですね。お父さんが亡くなって歩みを止めた子が、また歩き出すまでの話ですね。ちょっとずつ、じわりじわりと這い出すように歩き始めて、自分の力で歩く。歩き始めたよ、東京に行ったよ、までがストーリーの軸なので、大したことはしないです(笑)。

小黒 むしろ劇的なことは起きない。

佐藤 起きないです。

小黒 佐藤さんが常々言っている「物語がなくても、キャラクターがいれば作品は成立する」ということですね。いかにもお話めいた展開があるとかえって違うものになってしまう。

佐藤 そうなんですよね。そうすると、やろうとしていることがずれていっちゃいますね。

小黒 さっき「卒業写真」の話が出ましたけど、既存曲を使うことが多かった作品ですよね。

佐藤 そうですね。「やさしさに包まれたなら」はフライングドッグの福田さんから提案してもらいましたね。その後で、坂本真綾さんがユーミンのファンだったという情報が入ってきて、曲を作ってもらう話が実現する。

小黒 なるほど。佐藤さんもユーミンは好きだったんですか。

佐藤 特別な思い入れがあるほどの好きではなかったけど、「ユーミンならみんなが幸せになるよね」という気持ちはありますよね。まさか新曲まで作ってもらえるとは思わなかったけど。

小黒 そういう点でも、音楽に相当恵まれた作品になったわけですね。

佐藤 本当にそうですね。

小黒 『たまゆら』を振り返ってみるといかがですか。

佐藤 『たまゆら』は色々勉強になりました。お客さんとの距離をここまで詰めていったのも、『たまゆら』が初めてだと思うし、イベントでも色んなことをやりましたよね。宣伝にならなきゃいけないので、自分は監督だけど「ちゃんとイベントでお客さんが呼べるようにならなきゃな」という感じで、立ち振る舞いを研究したりね。他の人の横に並んでオチ担当になれるように、スキルを持たなければと(笑)。

小黒 東映動画時代の佐藤さんからすると、考えられないような変化ですね。

佐藤 考えられないですよ。そういうのができないから、演出やってるってところがあったのに、イベント出まくって着ぐるみだって着ちゃいそうな勢いですからね。
 『たまゆら』で、みんなと一緒に作品を楽しむということが、なんとなく見えたかな。その後の『ARIA』でも、ここで得た感覚を大事にしていると思うので、転機の作品ですね。

小黒 話は変わりますが、Wikipediaの佐藤さんのページを見ると『ピュアドラゴン』のパイロットフィルムが2011年に公開されたとあります。これはどういう作品なのでしょうか。

佐藤 GENCOさんの企画に協力したやつですね。ハルフィルムとGENCOさんが一緒にやる流れがあったので、お手伝いしたという感じですね。ポケモンデザイナーの1人である、にしだあつこさんのデザインしたキャラクターを元に世界観を作って、アニメにしていくという企画だったと思うんですね。パイロットフィルムはそこそこ尺があったので、起承転結のあるお話になっています。

小黒 これは公開されたんですか。

佐藤 公開はしてないんじゃないかなあ。これもハルフィルムで作ってたんですよ。

小黒 佐藤さんはコンテと監督をやったんですね。

佐藤 そうですね。演出は別にいたと思いますね。

小黒 Wikipediaのリストを作った人はよくこれを知ってましたね。

佐藤 なんでだろうね。(編注:2011年に配信ゲーム「TWIMON」と連動するかたちで、YouTubeとニコニコ動画で公開された)


佐藤順一の昔から今まで(42)『クロワーゼ』と『ファイ・ブレイン』 に続く


●イントロダクション&目次

第799回 KADOKAWAとTMSと略称

『異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する~レベルアップは人生を変えた』
略称は『いせれべ』!

 いよいよ放映開始! 現在、毎週納品の緊張が走っています!
 前作『蜘蛛ですが、なにか?』後(正確に言うと制作中?)に、続いていただいたKADOKAWAさん案件。そして、“UNLIMITED PRODUCE by TMS”のクレジット。つまり、トムスエンタテインメントさんによるプロデュースとなります。
 よく話題にしている、板垣の古巣——テレコム・アニメーションフィルムはトムスエンタテインメントの系列会社。ちなみに自分が入社した時は“(株)東京ムービー新社 三鷹スタジオ(株)テレコム・アニメーションフィルム”。入社1~2年目で“(株)キョクイチ 東京ムービー事業本部 三鷹スタジオ(株)テレコム・アニメーションフィルム”に変わり、自分が退社後~現在は“(株)トムスエンタテインメント”。東京ムービー新社の頭文字“TMS”をさらに“トムス”に呼び変えたのだと思います。よって、トムスといえばある意味、自分にゆかりのある会社。KADOKAWAさんにTMS……色々な縁によって、いただいた企画と言えると思います。
 で、今作も『蜘蛛~』に続いて、音響監督も兼任。選曲はすべて俺がやって、要所を共同音監の納谷僚介さんに相談し調整していくスタイル。納谷さんとは『ユリシーズ~ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』(2018)でご一緒して以来。今回も大変楽しく仕事させていただいています。
 主役・天上優夜役・松岡禎丞さんとは、『てーきゅう』の野球部員役でご一緒しました。野球ボールをオスとメスに分類して「な!」とドヤ顔する補欠部員を面白くやっていただきましたが、本格的にメイン・キャストでお付き合いするのは今回が初めて。

 で、すみません、また次週。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 158】
30周年!クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王

 4月の新文芸坐とアニメスタイルの共同企画ブログラムは、2月に続いて劇場版『クレヨンしんちゃん』をお届けします。今回上映するのは1993年に公開された、記念すべき劇場版第1作の『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』です。

 4月23日(日)の10時からと、19時20分からの2回の上映を予定しています。なお、貴重な35mmフィルムによる上映となります。
 19時20分からの回では、上映後に本郷みつる監督のトークを予定しています。また、2月のブログラムと同様に、トークの後に本郷監督が刊行した同人誌「本郷みつる/足跡」の販売を予定しています。

 チケットは開催日の1週間前から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 158】
30周年!クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王

開催日

2023年4月23日(日)

開演

10時~、19時20分~

会場

新文芸坐

料金

10時の回:一般1500円、各種割引・友の会1100円
19時20分の回:一般1800円、各種割引・友の会1400円

トーク出演(19時20分)

本郷みつる(監督)、
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』(1993/93分/35mm)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

アニメ様の『タイトル未定』
389 アニメ様日記 2022年11月6日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年11月6日(日)
朝の散歩時にはサブスクで『パリピ孔明』のサントラとボーカル集を聴く。サントラが新鮮だった。「こんな曲もあったんだ」って感じ。

2022年11月7日(月)
北米版Blu-rayで『プロジェクトA子2 大徳寺財閥の陰謀』を視聴中。ちょっとゴミが目立ったり、フィルムの質感が出すぎていると思ったりもするけど、とにかく映像が綺麗。映像特典も山盛りで「こんなものまで入っているの?」と驚く。海外のファンとメーカーの熱意と愛情には頭が下がる。話は変わるけど、C子のことが好きすぎるB子は、当時は変な人として扱われていたはずだけど、今となってはC子のことが好きすぎること自体は普通だよなあ。時代がB子に追いついたんだな。
『プロジェクトA子2』で、アニメ美少女描写史として重要なのが、A子が水着に着替える部分だ。一度も裸にならずに、私服から水着に着替える様子を丹念に描いている。望月智充さんの入魂の仕事だと聞いている。

2022年11月8日(火)
TOHOシネマズで『花の詩女 ゴティックメード』(Dolby-ATMOS)を鑑賞。前に観た時と同様に「えっ、ここで終わりなの」と思った。あと40分~50分は観たい。1本の映画としては物足りないけど、作家が自作を自身の手で映像化した映像として価値がある。夜はワイフとIKE・SUNPARKの「皆既月食池袋天体観測会」に。これは公園の真ん中で、ビックカメラが用意してくれた双眼鏡で月を見るというもの。それだけではなく、大きなモニターで月の様子を映し出していた。列に並ぶのも面倒なので、双眼鏡は使わず、芝生で横になって月食を見た。

2022年11月9日(水)
午後は新宿に。ワイフが行きたがっていた「るーみっくわーるどPOPUPSTORE in 紀伊國屋書店新宿本店」に寄ってから新宿御苑に。就寝前に確認することがあって「チェンソーマン」の原作に目を通したら、一度読んだものなのに、あんまりにも面白くて3冊分くらい読んでしまう。

2022年11月10日(木)
『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』6話も『モブサイコ100 III』6話もよかった。午前中の散歩では『装甲騎兵ボトムズ』のサントラを聴く。

2022年11月11日(金)
進行中の書籍のテキストチェックを進める。僕が粘ると全体の進行が遅れるので、ここは丁寧さよりもスピード優先。
『すずめの戸締まり』をBESTIA enhancedで観る。新海監督の熱意と意欲が素晴らしく、アニメーションとしての完成度も高い。作画に関しては映画前半の日常的な芝居がよかった。モチーフやテーマに関しては、まだ、自分の中で整理がついていない。他の人がどう受け止めるかが気になる映画だ。

2022年11月12日(土)
朝の散歩では『戦闘メカ ザブングル』のサントラ1、2を聴く。2人の方と『すずめの戸締まり』についてチャットで話をする。互いに疑問点をぶつけあったり。
「第197回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作12【平安中期 何がどれくらいの大きさだったのか 編】」を開催。片渕さんの話が事前に聞いていた方向に転がらず、ちょっとだけ焦る。のんびりした空気のイベントだった。チラリと美術のデザインやキャラクターのデザインがスクリーンに映し出された。美術デザインはこれから変更されるものもあった。トーク中に、次回の正月のイベントをどうするかが話題になった。いつも通りのイベントにするのか、それともちょっと変わった趣向にするのか。
ディズニープラスで『-禅- グローグーとマックロクロスケ』を視聴。短編だった。これからのスタジオジブリの活動に関する布石として作られたものなのだろうか。