作成者アーカイブ: アニメスタイル編集部
アニメ様の『タイトル未定』
379 アニメ様日記 2022年8月28日(日)
2022年8月28日(日)
Amazonから届いたBlu-rayソフトの「リオの男」を、吹き替えで少し観る。山田康雄さんの芝居がどのくらいルパン的なのかを確認したかったのだ。昼はワイフと、偶々席がとれた吉祥寺の肉山に。4ヶ月遅れの誕生日祝いだった。今回も美味しくて満足。肉山の待ち時間などで「犬王 アニメーションガイド」に目を通した。
2022年8月29日(月)
録画してあった「saku saku 2022」を観る。楽しい。月に一度くらいやってほしいくらい。
2022年8月30日(火)
『王様ランキング』のBlu-rayソフトを大きなモニターで視聴。『王様ランキング』はキャラクターがシンプルだし、線もしっかりしているので、配信で観るのとあまり変わらないのではないかと思っていたのだけれど、これが大違い。画がパキッとすると見映えがまるで違う。色使いも分かりやすくなる。これが本来の『王様ランキング』のビジュアルなんだろうなあ(後日追記。後で気がついたのだが、『王様ランキング』はBlu-rayソフトと配信で随分と色が違うようだ)。
久しぶりに遠出をして、ワイフと散歩。日暮里の繊維街をのぞいてから、谷根千に。
2022年8月31日(水)
グランドシネマサンシャインに。吉松さんと一緒に「トップガン マーヴェリック」【4DXSCREEN吹替】を観る。午前8時10分からの回なのにかなりお客が入っていた。4DXで、なおかつScreenXという仕掛けが多い上映だけど、それがこの映画に合っていた。僕的には序盤の没入感が深かった。
2022年9月1日(木)
ワイフとグランドシネマサンシャインに。午前9時からの回で「ブレット・トレイン」【IMAXレーザーGT字幕】を鑑賞。この映画はワイフが観たがっていたので行くことになった。予告から予想した内容の数倍は面白かった。それから、日本の文字を使ったテロップがかっこよかった。特にエンディングがいい。劇中で表示される作品タイトルは「弾丸列車 Bullet Train」で「Bullet Train」よりも「弾丸列車」のほうが大きい。それがデザイン的なものであるのは分かっているけれど、邦題が「弾丸列車」でもよかったのではないかな、と思った。
ワイフの希望で池袋西口の「カレーうどん ひかり TOKYO」でランチをいただく。今まで何度も店の前は通っていて「5人も入れば満員のカウンターだけの店だろう」と思っていたのだけれど、入ってみたら店は広い。しかも、お洒落で美味しい。新しい店かと思ったら歴史のある店だった。
2022年9月2日(金)
WOWOWの『Free!』連続放映を大きめのモニターで視聴。やっぱりWOWOWは映像が綺麗だ。さすがはフルハイビジョン(念のために書いておくと、基本的に地デジはフルハイビジョンではない。また、BSのチャンネルでフルハイビジョンで放送しているのはNHK BSプレミアム、WOWOW、BS11のみのはず)。印象としてはBlu-rayソフトでの視聴に近い。ただし、自分の環境では早い動きでモザイクが起きたりするので、そこはBlu-rayソフトのほうが強いか。
Production I.Gから石川光久さんが会長になり、和田丈嗣さんが社長に就任したという報せが届く。いきなり何かが変わるわけではないだろうけれど、ひとつの時代が終わっていく。
2022年9月3日(土)
「第194回アニメスタイルイベント ここまで調べた片渕監督次回作11【どんどん広がる平安探求編】」を開催した。
散歩中にあることを思いついた。今なら旧『新世紀エヴァンゲリオン』から『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』までの総解説が書けるかもしれない(前にも同じことを書いたような気がする)。
以下は「アニメ大全」についてネガティブなことを書きたいわけではなくて、こういうことになっているというメモとして記しておく。「アニメ大全」だと、『ギャラクシーエンジェル』のタイトル表記は以下のようになっている。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
ギャラクシー エンジェル
ギャラクシー エンジェル[Z][第2期]
ギャラクシー エンジェル[A][第3期]
ギャラクシー エンジェル S [第3期]
ギャラクシーエンジェル(第4期)
ギャラクシーエンジェル ミュージックコレクション ギャラクシーエンジェる~ん
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
1期と2期の表記については納得。3期後半の『ギャラクシーエンジェルAA』は無くていいのかとか、シリーズ毎のタイトル表記が整合性がとれてないがいいのかとか、色々と考える。
「アニメ大全」のことだけでなく、『ギャラクシーエンジェル』のタイトル表記は意外と難物だ。少しだけ説明すると、ビデオソフト化の際にタイトルに「Z」や「A」などのアルファベットが足されたのだ。劇中のタイトルロゴは変わっておらず、ソフトの商品名に「Z」や「A」が足されている。ちなみに3期はDVDソフトだと、1話~13回が『ギャラクシーエンジェルA』、14回~26回が『ギャラクシーエンジェルAA』。スペシャルが『ギャラクシーエンジェルS』だ。配信だと、バンダイチャンネルは1話~26回をまとめて『ギャラクシーエンジェルA』としていて、dアニメストアは同じ内容を『ギャラクシーエンジェルA/AA』にしている。dアニメストアは妙に丁寧だ。
第789回 アニメは宇宙!
飛雄馬の右腕が大暴投の唸りを上げている
今週(TMS公式の『新・巨人の星』より)、
1月28日——49歳を迎える板垣です!
毎年言ってる、同日誕生日を迎える「水島精二監督、西見祥示郎先輩! お誕生日おめでとうございます!」ってことで、いよいよ俺も40代最後に突入。相変わらずのめちゃくちゃな忙しさですが、精神的には年々穏やかになっていってる気がします。
当然、腹の立つことはありますが、原画描いたり修正してたりすると、なんとなく忘れていきます。
なんでしょう? 30年近く続けてきたアニメーターという仕事、最近ますます面白がっている自分がいることに気付かされているのです!
原作かオリジナルか? マンガ原作かラノベ原作か? はたまた脚本だコンテだキャラ表だと、前提としてどんな素材があろうとも、そこには“動き”がありません。ところが白紙から原画を描き、動画にして、声が入るとたちまち“生命”が宿ります。このある種“宇宙の誕生”的な感覚——アニメーターをやったことある方なら少なからず一度は感じた喜びではないでしょうか。個人差はあると思いますが、その喜び・快感をいつまでも忘れられない方々が、アニメーターを続けられているのだと信じています。
この歳になった俺も、自分で描いたカット、もしくは修正したカットのラッシュ(撮影上り)チェックする毎日がいまだに楽しみです。特に今ウチの会社はLO・原画を含む全てがデジタル素材。
ラッシュを見て気に入らないところは、作画・美術問わず自分で直せる!
訳で「あ、これ俺直すから!」と。そういった意味でも49歳になってもまだまだ「楽しく」描けそうです。後はスタジオ(会社)を育て、かつ体力を付けて“企画”を考えたいと思っています。
これ考え方次第だと思うのですが、自分の場合は“面白いオリジナル企画”を持って各会社を回るには歳が行き過ぎているし、“実績がない”と自覚しています。よしんば何処かの会社が企画を買ってくれたとして、他所(よそ)様の会社・スタッフを統率するのにも、やはり実績がない“監督”という肩書きだけでは、必ずしも現場は言うことを聞いてくれないし、聞く義理すらもある筈もないのです。なぜならそのお借りする会社にもれっきとした“若手監督候補”が在籍している訳で。現実、ファンに知られず表沙汰にならないように、クレジットの“監督”は残したまま、現場で“実質監督”に挿げ替えてなんとか事なきを得たアニメ作品って結構あり、業界人なら大抵そんなタイトルの10本や20本挙げられます。知りたい方は、例えばシリーズで言うならWikipediaなどで各話スタッフ・リストを調べてください。途中から監督自身のコンテ回が消えたり、同スタジオの次作以降、コンテのお手伝いすらしていない場合は「何かがあった?」と想像するに難しくありません。勿論、例外はいくつもある前提の話ですが。
まあそんな訳で、今は
いただいた企画を丁寧に作り込める現場を育てる!
ことこそが自分の仕事だと思い、頑張っています。で、50歳を迎えるころには自分たちから企画が提案出来る会社になって——いるといいな……(遠い目)。何にしてもまだまだアニメの宇宙は続きそうです。
第248回 音楽のバトン 〜LUPIN ZERO〜
腹巻猫です。「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を観ました。映画音楽作曲家エンニオ・モリコーネの人生と仕事をインタビューと資料映像でふりかえるドキュメンタリー。モリコーネの音楽を聴いてサントラファンになった筆者には、たまらない内容でした。モリコーネの名曲が次々と登場するので、音楽を聴いているだけでも幸せ。映画ファン、映画音楽ファン必見です。
DMM TVで配信中のアニメ『LUPIN ZERO』がなかなかいい。
1960年代の日本を舞台にルパン三世の少年時代を描く作品。主人公のルパンは13歳の中学生。泥棒になるつもりがなかったルパンが、「ルパン三世」を名乗るようになるまでが全6話で語られる。アニメーション制作はテレコム・アニメーションフィルム。昭和の「テレビまんが」を思わせるキャラクターやアクションが楽しく、高畑勲と宮崎駿が演出を手がけた『ルパン三世』第1作(旧ルパン)の後半の雰囲気を受け継いだ印象だ。
音楽は大友良英が担当。『ルパン三世』第1作の山下毅雄の音楽のリメイクをベースに新曲を加えて音楽を構築した。
『LUPIN ZERO』の音楽作りについて、大友はこう語っている。
「初代ルパンの音楽は完全には残っていません。アニメについている劇伴の断片をもとに欠けているピースを想像で埋めつつオリジナルに近い感じで録音、さらに『LUPIN ZERO』で必要な新たな要素を、ヤマタケさんへのアンサーのつもりで新たに作り足しました。」(WEBサイト「音楽ナタリー」2022年12月13日)
このニュースを聞いたとき、「これ以上ない人選だ」と思った。
大友良英はヤマタケファンを自認し、1999年にはトリビュートアルバム「山下毅雄を斬る」をリリースしている。『ルパン三世』「ジャイアントロボ」『ガンバの冒険』などのヤマタケ作品をリメイクしたアルバムだ。原曲に忠実な再現ではなく、大友流の解釈とアレンジが加えられているのだが、即興演奏を取り入れたサウンドが本家ヤマタケ音楽を思わせ、なかなかの名盤に仕上がっている。
2002年には、山下毅雄の次男・山下透によるヤマタケルパン音楽のリメイクアルバム「LUPIN THE THIRD TAKEO YAMASHITA Rebirth」もリリースされている。大友良英版とは方向性の異なる名盤で、アバンギャルドな大友版に対し、山下透版はおしゃれでカッコいいジャズ&ロックという印象だ。
ヤマタケルパン音楽をリメイクするなら、この2人だろうと思っていた。
しかし、そうであっても、これはなかなかハードルの高い仕事である。
NHK BSプレミアムで不定期に放送されている「大岡越前」(主演・東山紀之)では、70年代に作られた山下毅雄の音楽(劇伴)をリメイクして使用している。しかし、原曲を忠実に再現しようとすればするほど、ヤマタケらしいサウンドから離れていく。ヤマタケサウンドのかなりの部分がミュージシャンの即興(アドリブ)によって作られているからである。
山下毅雄の音楽にはきっちりしたスコアがない。メロディだけが決まっていて、おなじみのミュージシャンが山下毅雄の指示に沿って演奏すると、あのヤマタケ音楽になるのだ。
大友良英はかつて、山下毅雄の音楽作りについてこう書いている。
「彼(=山下毅雄)がより重点をおいたのは録音現場でのハプニングだったのだ。気心の知れた即興演奏の出来る演奏家を集め、時には簡単なモチーフ程度の譜面だけで、ひと番組分の音楽を作ってしまう。メロディだけの譜面を前にした演奏家は、彼の指揮を見ながら自分のパートをその場ででっちあげなくてはならない。(中略)事故のように生まれた偶然のサウンドが生きた音楽に変貌してゆく。いい加減にも見えるこの方法から『悪魔くん』のアバンギャルドな音楽や、『七人の刑事』の緊張感あふれる世界が生まれたわけだ」(「STUDIO VOICE」2001年2月号)
だが、大友良英なら誰よりも山下毅雄のような音楽作りができるはずだ。もともと前衛的なジャズを得意とし、即興を重視した音楽作りをしていた音楽家なのだから。
『LUPIN ZERO』の音楽は、かつて大友が作った「山下毅雄を斬る」とはだいぶ印象が異なるものになった。「山下毅雄を斬る」は大友良英のアルバム作品という意味合いが強く、サンプリング音やノイズを加えるなど前衛音楽的な手法も使っている。『LUPIN ZERO』の音楽はもっとシンプルだ。セリフや効果音とぶつからないよう余分な音を省き、映像音楽として機能するよう作られている。
おそらく、「山下毅雄を斬る」のあとにドラマ「あまちゃん」(2013)や「いだてん」(2019)、劇場アニメ『犬王』(2022)といった、幅広い世代が観る話題作・ヒット作の音楽を手がけた経験が、『LUPIN ZERO』の音楽に反映されているのだろう。
「山下毅雄を斬る」の曲は「ヤマタケサウンドに挑戦!」みたいな意気込みが感じられるが、『LUPIN ZERO』の曲はすごく楽しそうな、リラックスした音楽なのである。そのリラックスして作っている雰囲気が、「山下毅雄を斬る」以上にヤマタケっぽい。
本作のサウンドトラック・アルバムは、「LUPIN ZERO オリジナルサウンドトラック Vol.1」が2022年12月25日に、「同 Vol.2」が2023年1月13日に、トムス・ミュージックよりリリースされた。配信のみでCDは発売されていない。
「Vol.1」の収録曲は以下のとおり。
- AFRO “LUPIN’68″ Opening Ver.
- 危険なハイウェイ ※
- DEEP SUSPENSE&サスペンスB
- アクションゼロ ※
- ルパン荒野へ ※
- ルパン三世主題歌II Slow Vocal Ver.
- AFRO “LUPIN’68″ 口笛 Ver.
- MOODY AFTERNOON&ハードアフタヌーン
- ルパン三世主題歌II Male Vocal Ver.
- DARK EYES & Dark.Night
- ルパン三世主題歌I Innocent Ver.
- AFRO “LUPIN’68″ Arrange Ver.
- 不穏 ※
- ルパン三世主題歌II Ending 口笛Ver.
- リズム&ノイズ ※
- ルパン三世主題歌3 ver 1.
- LUPIN’S HEART ※
- ルパン三世主題歌II Blues Harp Ver.
- ルパン三世主題歌I Slow Vocal Ver.
- HAPPENING 1
- 一件落着&一件落着B
- ルパン三世主題歌I Notice Ver.
- ルパン三世主題歌II Ending Ver.(歌:七尾旅人)
※=大友良英による新曲
中心になっているのは「ルパン三世主題歌I」「ルパン三世主題歌II」「AFRO “LUPIN’68″」のメロディ。この3曲のさまざまなアレンジが登場し、「旧ルパン」っぽさをかもしだす。といっても、ノスタルジックなサウンドではない。
勢いのある音楽だ。特にドラムがいい。抜群にいい。
配信アルバムなのでミュージシャンクレジットは付いてないが、大友良英がtwitterで録音に参加したミュージシャンを紹介している。
ドラムはモダンチョキチョキズなどに参加していたジャズドラマーの芳垣安洋。大友良英の音楽になくてはならないメンバーとして「あまちゃん」「いだてん」『犬王』などの音楽にも参加している。実はアルバム「山下毅雄を斬る」「LUPIN THE THIRD TAKEO YAMASHITA Rebirth」でもドラムを叩いていた、ヤマタケ音楽リメイクに縁の深いミュージシャンだ。
エンディングに流れる「ルパン三世主題歌II」(トラック23)は何度もリメイクされている名曲だが、本作ではこれまでのリメイクにない疾走感で演奏されている。ドライブ感満点のドラムが演奏をリードする。
大人のルパン三世だったら、この疾走感は合わなかったかもしれない。
しかし、今回は13歳のルパン。ストレートに感情をぶつけ、目標を決めたら全力で向かっていく。少年らしいまっすぐなルパンに、このリズムがぴったりだ。若いルパンだからこそ、シンガーソングライターの七尾旅人によるボーカルが似合う。チャーリー・コーセイではアダルトすぎるだろう。
その疾走感そのままに、メロディを口笛に変えたトラック14「ルパン三世主題歌II Ending 口笛Ver.」もいい。山下毅雄のオリジナル版にはなかった味わいがある。
オープニングに流れるのは「AFRO “LUPIN’68″」(トラック1)。山下毅雄の原曲は意外とリズムはあっさりしている。「山下毅雄を斬る」ではアバンギャルドに、「LUPIN THE THIRD TAKEO YAMASHITA Rebirth」ではアダルトなジャズタッチにリメイクされていた。今回はエンディング同様にドライブ感のある演奏になっていて、少年ルパンのイメージと重なる。
トラック4「アクション ゼロ」は大友良英によるアクション曲。第1話のクライマックスでルパンたちが乗りこんだ船が沈没し始める場面に流れている。ドラムとパーカッション、キーボードのスリリングな競演が聴きものだ。シンプルなメロディをアドリブを生かした演奏でカッコいい音楽に仕上げた、まさにヤマタケ的な楽曲である。
キーボードとハーモニカは「あまちゃん」「いだてん」『犬王』の録音にも参加した近藤達郎。パーカッションは芳垣安洋の名パートナー・岡部洋一。息のあった演奏が聴ける。
トラック15「リズム&ノイズ」は芳垣安洋のドラムと岡部洋一のパーカッション、大友良英のギターがセッションする緊張感とグルーヴ感満点のナンバーである。
エンディング主題歌のメロディを女声スキャットが歌うトラック6「ルパン三世主題歌II Slow Vocal Ver.」は妖しくメロウな雰囲気。ヤマタケルパン好きにはぞくぞくっとするナンバーだ。
同じメロディを男声スキャットで演奏したのがトラック9の「ルパン三世主題歌II Male Vocal Ver.」。ボーカルはエンディング主題歌の七尾旅人ではなく、百々和宏が担当している。
『LUPIN ZERO』によく似合うと思ったのが、トラック16「ルパン三世主題歌3 ver 1.」。『ルパン三世』第1作の後期オープニングに使われていたラテン風の楽しい曲である。明るい曲調がルパンと次元のコミカルなアクションにぴったり。第1話ではルパンと次元が歌姫・洋子を連れてヤクザから逃げる場面に流れている。
トラック17「LUPIN’S HEART」は第1話の中盤、出会って間もないルパンと次元のあいだに友情が芽生え始める場面に使用。6/8拍子のピアノのアルペジオから始まり、サックスがフレーズの断片を奏で、トロンボーンやトランペットが寄りそっていく。とりわけ泣けるメロディではないのに、なんともいえない切ない感情が胸に染みわたっていく。この切なさが、実にヤマタケ的。風変わりな音楽、奇抜な音楽という文脈で語られることが多い山下毅雄作品だが、その核には心を打つメロディがある。それを早くから指摘していたのも大友良英だった。
同じく6/8拍子(もしくは12/8拍子)のピアノのアルペジオをバックにした「ルパン三世主題歌II Blues Harp Ver.」(トラック18)は、ビブラフォンとブルースハープをフィーチャーしたジャズバラード。オリジナルの山下毅雄版にも同様のアレンジがあるが、本作では映画音楽っぽいムーディな演奏になっている。
トラック22「ルパン三世主題歌I Notice Ver.」は口笛メロによるスローテンポのアレンジ。ヤマタケといえば口笛というくらい、ヤマタケサウンドにとって口笛は大事な音色だ。口笛演奏は国際口笛コンクール優勝経験もある柴田晶子。「いだてん」の音楽にも参加しているプロの口笛奏者である。この曲は第1話のラスト近く、座礁した船の上でルパンたちがひと息つく場面に流れていた。そういえば、「旧ルパン」ってこういうのんびりムードの曲が似合うシーンが多かったなと思い出す。
サウンドトラック「Vol.2」も合わせて聴いてもらいたい。オリジナル版で人気があった「SCAT THEME」「Lupin Walkin’」のほか、「YEAH! LUPIN」「TRAGEDY」などを収録。これまでリメイクの機会に恵まれなかった曲も選ばれているのがうれしい。
『LUPIN ZERO』は今のところDMM TV独占配信なので全話観ている人は少ないかもしれない。が、無料配信されている第1話を観るだけでも、アニメと音楽の相性のよさがわかる。それに、たとえ本編を観てなくても、オリジナルのヤマタケサウンドを知らなくても、きっとこのサントラは楽しめる。
大友良英は先に引用したコメントに続いて「この世代を超えた音楽のバトンを楽しんでいただけたら幸いです」と語っている。そう、これはリメイクでも再演奏でもない。「ヤマタケ的なるもの」を受け継いだ大友良英による新しいルパンサウンドだ。
LUPIN ZERO オリジナルサウンドトラック Vol.1
Amazon
LUPIN ZERO オリジナルサウンドトラック Vol.2
Amazon
第421回 「アニメージュとジブリ展」に行って来ました!
第201回アニメスタイルイベント
作画を語る上で重要なこと・改
2月12日(日)昼に開催するトークイベントは「第201回アニメスタイルイベント 作画を語る上で重要なこと・改」です。出演はアニメスタイル編集長の小黒祐一郎、アニメーター、演出家として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さん、『Sonny Boy』『四畳半タイムマシンブルース』等で監督を務めた夏目真悟さん。「作画を語る」をキーワードにして、いくつかの話をする予定です。
昨年の12月19日に開催した「第198回アニメスタイルイベント 作画を語る上で重要なこと」では、急病のために小黒が出演することができませんでした。今回のイベントでは、小黒が昨年の12月のイベントで語ることができなかったことを改めて語ります。小黒がメインでトークを進めることになります。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。お客さんが会場で観覧する形式のイベントですが、トークのメイン部分は配信も行います。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは1月23日(月)18時から発売。購入方法については、以下のリンクをご覧になってください。
■関連リンク
阿佐ヶ谷ロフトA https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/241170
会場チケット https://t.livepocket.jp/e/9vw72
配信チケット https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/212634
第201回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2023年2月12日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
小黒祐一郎、沓名健一、夏目真悟 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別) |
アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。
アニメ様の『タイトル未定』
378 アニメ様日記 2022年8月21日(日)
2022年8月21日(日)
確認することがあって『夏服の少女たち ~ヒロシマ・昭和20年8月6日~』、OVA『ファイナルファンタジー』1話を観る。『ファイナルファンタジー』はゲームのイメージに近いかどうかは置いておいて、ビジュアルが面白い。りんたろう監督の狙いははっきりしている。キャラデザインもいい。ちなみに、リリース当時は「ゲームと違う」ことが気になっていた。
2022年8月22日(月)
今度は『ヒロシマに一番電車が走った』をDVDで観る。「この人に話を聞きたい」の丸山正雄さんの回の本文が仕上がった。
2022年8月23日(火)
原稿を進めながら『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『:破』『:Q』『シン』を一気観した。
2022年8月24日(水)
「この人に話を聞きたい」のテキストに関して丸山さんのチェックが終了。本文の直しは無く、「この情報を追加してほしい」というオーダーがあり。いい原稿になったと思う。
『明日ちゃんのセーラー服』をBlu-rayソフトと大きなモニターで視聴中。やっぱりよくできている。TVアニメの限界に挑んでいると言っていいくらい。原作を読みながら本編を観て、4話のエンディングだけが縄跳びバージョンだった理由が分かった。
2022年8月25日(木)
新文芸坐で「リオの男」(1964・仏=伊/116分/DCP)を観た。プログラム「アクション! ベルモンド!!」の1本。盛り沢山なアクションもので、洒落たところもある。公開した頃に観たら、今よりもずっと楽しめたのだろうなあ。吹き替えでは山田康雄さんがベルモンドを演っている。吹き替え版を観るためにBlu-rayソフトを購入するかどうかをちょっと考える。
昨日の『継母の連れ子が元カノだった』で「読みたかった昔のラノベ」として東頭いさなが喜んで読んだのが「涼宮ハルヒの憂鬱」だった。確かに20年前の刊行だから「昔の」なんだけど。
ネットで「アニメ大全」が公開された。まずは気になる作品のタイトル表記を確認。『攻殻機動隊』劇場1作のタイトルは『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、『パトレイバー』劇場1作目のタイトルは『機動警察パトレイバー 劇場版』、劇場2作目のタイトルは『機動警察パトレイバー2 the Movie』になっていた。ふむふむ(後日追記。この後、自分のTwitterのタイムラインで「アニメ大全」がしばらくの間、話題になった)。
2022年8月26日(金)
グランドシネマサンシャインでワイフと「NOPE/ノープ」【IMAXレーザーGT字幕】を観る。IMAXフルサイズの場面は比較的多め。映画としては、というかお話としてはそんなには楽しめなかったのだけれど、「IMAXで観てよかった」と思える場面があったので、それだけでも満足。
先日の『ちびまる子ちゃん』を観ていて「そういえば『ちびまる子ちゃん』のサントラって聴いたことがなかったなあ」と気がついて、AmazonでCD「ちびまる子ちゃん MUSIC COLLECTION」を購入して散歩時に聴いた。よく知っている曲をきちんと聴く喜びがあった。聴き覚えない曲もあり、それも楽しい。トータルで満足感高し。「火事を振り払え永沢くん」とか「愛をつかめ藤木くん」とか曲名も面白い。サントラを聴いた後で、改めて腹巻猫さんの連載を読み返す。しっかりした原稿だ。さすがは腹巻猫さん。
■サントラ千夜一夜 / 腹巻猫(劇伴倶楽部)第50回 まる子の出番だよ! ~ちびまる子ちゃん~
http://animestyle.jp/2015/01/13/8522/
2022年8月27日(土)
土曜昼の焼き鳥屋で吉松さんの誕生日を祝う。たっぷり食べて吞む。吉松さんと渋谷TSUTAYAに行って、VHSレンタルコーナーを見たり。
第788回 いただきました!
先日アニメスタイル様より、またまた新刊を送っていただきました。どちらも良い本! まず、
『梅津泰臣 KISS AND CRY[資料集]』!!
梅津泰臣監督のキャラクターデザイン&イメージボード集! さすがに巧い! キャラも完成画面のイメージもド直球に伝わりますが、やはり本編——もちろん、劇場アニメーションで観たいものです。梅津さんと言うと自分、お会いしたことはないのですが過去に一度、梅津監督のTVシリーズに制作経由でコンテ・演出で声が掛かったのを思い出します。その制作が学生時代の同期なもので、「是非やらせて——」といい返事をしかけたのですが、当時『砂ぼうず』制作中かつ初監督『BLACK CAT』が控えていたため、結局断らざるを得ず、本当に申し訳ございませんでした! 当時の制作N君もごめんなさい!
で、もう一冊が
『機動戦士GUNDAM逆襲のシャア 友の会』!!
「この本をもう一度手にできるとは!」と感激に震えるほどの名著の復刻!
1993年にこれまた学友(現在某撮影会社にて撮影監督をしている友人)から、「これ、めちゃめちゃ読み応えあるから読んで!」と無理矢理貸された本著。庵野秀明監督が『逆シャア』スタッフ&業界著名人に敢行したロングインタビューで、言われたとおり確かに抜群の読み応えでした。熟読して返却したものの、それから数年後急に読み返したくなり、アニメ様・小黒祐一郎編集長に「あの『逆シャア』本、もう手に入りません?」とお訊きしたところ、確か「もうウチにもないよ~」と言われてガッカリしたものです(でしたよね、小黒さん?)。
という訳で今回の復刻は本当に嬉しく思います。まず、裏表紙に挙げられてる名前の豪華さは改めて驚愕!
富野由悠季——會川昇・あさりよしとお・幾原邦彦・出渕裕・井上伸一郎・内田健二・大月俊倫・押井守・北爪宏幸・ことぶきつかさ・此路あゆみ・サムシング吉松・鈴木敏夫・鶴田謙二・永島収・早見裕司・ふくやまけいこ・藤田幸久・美樹本晴彦・むっちりむうにい・山賀博之・結城信輝・ゆうきまさみ(アイウエオ順)
——責任編集 庵野秀明(以上敬称略)
現在制作中のシリーズが落ち着いたトコで、じっくり読みたいと思います。ちなみに、自分も富野由悠季監督作品の中では『逆シャア』がいちばん好きです!
あと、話は飛びますが、一所懸命TVシリーズの制作に取り組んでいる現在、放映中の新作アニメを観る時間がほとんどありません。そんな中、観たい時間に手軽に観れるYouTube——TMS(トムス・エンタテインメント)公式で毎週上がっている『新・巨人の星』が密かに……と言うか、かなり楽しみになっています。
『新・巨人の星』は1977〜78年放送の、俺が3歳の時のTVアニメ。流石にリアルタイムで、たとえ観ていたとしても記憶にあるはずがなく、つい最近まで毎月買っていた“ぴあDVDBOOKシリーズ『巨人の星』全16巻”からの続きの気分で毎週視聴中(毎週4話分ずつの全話配信)。
特にスポ根というジャンルが好きと言うよりは、好きなのは“昭和”の方。『新・巨人~』も破天荒な反則技の応酬に「いやいや、ちゃんと野球しなさい!」とツッ込むなんて野暮ってもので、昭和の庶民の望みは野球ルール云々の細かいことよりも“毎週毎週の新しい驚き”こそが最も必須ってことで、令和の世では考えられない強引な感情劇、そして転がりまくるストーリー展開に目が離せません。お馴染みの旧作オープニング曲のリメイクも良いのですが、なんと言ってもエンディングが最高! 梶原一騎先生の詞「よ~みがえれ~、よ~みがえれ~」の繰り返しに、昭和TV番組の毎週締めにある、そこはかとなく何処か物悲しい“二度と返って来ない一日の終わり”感が漂ってて切なくて本当に良い!!
ま、今回も誰も興味がなさそうな話題ですみませんでした。だって、まだ新作の話を語る訳には行かないもので。
第420回 カメラ屋さんで最近よく見る風景
アニメ様の『タイトル未定』
377 アニメ様日記 2022年8月14日(日)
2022年8月14日(日)
コミックマーケット100の2日目。ブースは編集部のスタッフに任せて、自分は遅い時間に会場に行く。
今日の『ONE PIECE』は1029話 映画連動エピソード「淡い記憶 ルフィと赤髪の娘ウタ」。山内重保さん演出回で、とてもよかった。間の取り方、あるいは空気感の表現が素晴らしい。劇場版は既に観ているのに、この後のウタのことを応援したくなるくらいよかった。脚本がどうなっているのかが気になる。あまりにもよかったので山内さんにLINEを送ったら、すぐに返信がきた。
2022年8月15日(月)
8月14日(日)放映の『サザエさん』Bパートで、また、好きな食べ物を聞かれたワカメが「ご飯のおこげのところと、お魚の目玉。それから、お茶に梅干し入れて飲むの」と言っていた(「アニメ様日記」2018年11月12日(月)の項も参考 http://animestyle.jp/2018/11/27/14690/ )。
14時からZoomで佐藤裕紀さんの取材(後日追記。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版]」のリーフレットのための取材だった)。
新文芸坐で「血と砂」(1965/132分/35mm)を観る。先日の「どぶ鼠作戦」と同じく、プログラム「映画を通して歴史や社会を考える 反骨の映画作家・岡本喜八の流儀」の1本。鑑賞したのはこれも30年ぶりくらい。「面白かった」という記憶だけがあったが、今回の再見でも面白かった。三船敏郎、佐藤允もいいが、それに負けないくらい、お春を演じた団令子がよかった。とにかく映画充した。
朝の散歩時にサブスクにあった『天空のエスカフローネ』サントラの1、3を聴いた。何故かその時は2が見つからなかった。
2022年8月16日(火)
前に購入して観ていなかったBlu-rayソフトで『THE IDEON 接触篇』『同・発動篇』(『THE IDEON A CONTACT』『THE IDEON Be INVOKED』)を視聴。新作パートの映像は非常に鮮明で「まるで目の前にセルがある」ようだった。それはそれとして、やっぱりながら観する映画ではないと思った。それから観るなら深夜がいいかも。
2022年8月17日(水)
朝9時から地方在住の編集者と電話で打ち合わせ。彼女には東京在住時にも、地方に行ってからも、アニメスタイルの仕事を手伝ってもらっていた。随分と助かっていたけれど、アニメスタイルの仕事を引退することになった。残念だけど、仕方がない。
買い物時にサンシャインシティの「シン・ウルトラマン」のウルトラマンの10mバルーンの前で写真を撮る。15時に病院に行って3度目のワクチンを打ってもらう。
2022年8月18日(木)
仕事が一段落したワイフの休養のため、久しぶりにドーミーイン池袋に連泊している。朝食ビュッフェで料理を取るときのビニール手袋がなくなっていた。ホテルのスタッフに確認したところ、「(手袋を)つけなくてもよくなったんですよ」とのこと。それから、久しぶりに事務所近くの中華料理屋で食事をしたところ、カウンターで客と客の間にあった仕切りがなくなっていた。大丈夫なのか、とちょっと思った。個々のホテルや店への不満ではなくて、記録として記しておく。
新文芸坐で「TITANE/チタン」(2021・仏/108分/DCP/R15+)を観る。強烈な映画だったけれど、一緒に観たワイフが「最近、観た映画の中で一番面白かった。楽しかった。主人公が可愛かった」と言っていたのが印象的。「面白かった」は分からなくはないけど「楽しかった」の? 「可愛かった」の?
2022年8月19日(金)
先日、取材をした佐藤裕紀さんが東京にいらした。食事をご一緒させていただく。
2022年8月20日(土)
ロフトプラスワンで「第193回アニメスタイルイベント 中村豊 ファン・ミーティング」を開催。今回のイベントのポイントは「ミーティング」的な感じになるかどうかで、それについて、ちょっとだけ工夫をした。安藤真裕監督と大薮芳広プロデューサーの「中村愛」とお客さんからのメッセージがとてもよかった(安藤監督のコメントは、配信がないパートがまさしく「ラブコール」という感じ。顔を合わせていても、普段は言わないようなことを言ってくださった)。会場に来ていない大平晋也さんのコメントもよかった。
第787回 そんなわけで
シリーズ制作中に別の仕事(イラスト)を受けるとこうなるって例!!
すみません。仕事が多すぎて手が追い付いておらず、今年も始まったばかりなのに、“お茶濁し”。やっぱり仕事、断りたくないんです。今回いただいたイラストの仕事も面白そうだったので「自分でよければ是非に!」と己から前のめりで受けた訳だし。
この連載に初期の頃からお付き合いして頂いてる方々(いる?)であればお気づきかも知れませんが、板垣が30代~40代入ってから~そして、50代目前の現在——確実に“口数が減っている”ことにお気づきかと思います。現場の話は依然としてネタにしますが、業界人の話とか、他者のアニメ作品の批評的な感想とか、意識的にしないようにしています。なぜなら、今の歳まで代表作のひとつも作れていない自分に語る資格などないと思っているからです(そこらへんの自制はきく人間です)。
だから、先ず目の前のあらゆる仕事から逃げずに、成果を出すこと! それができないうちは俺程度のアニメ監督兼アニメーターに訊きたい話など、お客さんにとってある筈がないと思っているから、とにかく“デカい口を叩かない”!
で、黙々と描き続けます。今年も——いや、50代になっても!
第200回アニメスタイルイベント
ANIMATOR TALK 今石洋之&吉成曜
ついにアニメスタイルのトークイベントも第200回を迎えます。記念すべき第200回のゲストはアクション系アニメーターであり、監督として『プロメア』『サイバーパンク: エッジランナーズ』等を手がけた今石洋之さん。そして、アニメーター、デザイナー、イラストレーターとして幅広く活躍し、監督として『リトルウィッチアカデミア』『BNA ビー・エヌ・エー』を手がけた吉成曜さん。
今回のイベントのテーマは「アニメーターが語るアニメーター」です。お二人が影響を受けたアニメーターを中心にトークを展開する予定です。会場はLOFT/PLUS ONE。トークの前後に「今石洋之アニメ画集」「吉成曜画集 イラストレーション編」のサイン本を販売する予定です。
お客さんが会場で観覧する形式のイベントですが、トークのメイン部分は配信も行います。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは1月14日(土)午前10時から発売。購入方法については、以下のリンクをご覧になってください。
■関連リンク
LOFT/PLUS ONE
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/239961
第200回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2023年1月22日(日) |
会場 |
LOFT/PLUS ONE | 出演 |
今石洋之、吉成曜、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別) |
アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。
第247回 子どもたちのリアル 〜かがみの孤城〜
腹巻猫です。新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
年末年始に観た劇場作品の中で、とりわけ心に残った作品が『かがみの孤城』でした。大学生時代、児童文学研究会に顔を出していた筆者には、ひときわ刺さるものがありました。富貴晴美さんの音楽がすごくよかった。
今回はそのお話。
『かがみの孤城』は2022年12月に公開された劇場アニメ。辻村美月の同名ベストセラー小説を原恵一監督、 A-1 Pictures制作でアニメ化した作品である。
学校に通えなくなり、家に引きこもっていた中学1年生の少女・こころ。ある日、こころの部屋の鏡が突然光りだし、こころは鏡の中に吸い込まれてしまう。鏡の向こうにあったのは、孤島にそびえる城。狼の面をかぶった少女・オオカミさまに導かれて、こころは6人の少年少女に引き合わされた。オオカミさまによれば、この城のどこかに「願いの部屋」があり、その部屋に入る鍵を見つけることができれば、どんな願いも叶うのだという。こころたちは、とまどいながら城で時間を過ごし、鍵を探し始める。
異世界ファンタジーか? と思わせる出だしだが、そう思って期待するような大冒険にはならない。こころたちは鏡を通っていつでも元の世界に帰ることができる。「通える異世界」というのが『ナルニア国物語』みたいで面白い。しだいに、城は子どもたちの心の寄りどころになっていく。
ちりばめられた謎が解き明かされ、子どもたちの真実が明らかになる終盤の展開はドラマティックで感動的。子どもから大人まで、幅広い世代の人に観てほしい作品だ。
音楽は原恵一監督とは4作目のタッグとなる富貴晴美。といっても、1作目の「はじまりのみち」は実写作品、2作目の『百日紅』は富貴が途中で体調を崩し、音楽の大半を辻陽が補った。劇場アニメでがっつり組むのは『バースデー・ワンダーランド』に続いて2作目である。
2022年の富貴晴美はアニメ作品の活躍がめざましかった。劇場アニメ『鹿の王 ユナと約束の旅』『夏へのトンネル、さよならの出口』、TVアニメ『新米錬金術師の店舗経営』、それに本作と、4作品を担当している。たまたま公開年が同じになったのかもしれないが、実写作品よりアニメが多いのは珍しい。
本作の音楽を聴いて、「富貴晴美はやはり映画の人だなぁ」と思った。TV用の溜め録りの音楽でもよい曲をたくさん聴かせてくれるが、映像に合わせて作曲する映画音楽のほうが本領発揮の印象がある。作品全体を通しての音楽の構成や演出意図を的確に汲み取った音楽作りがみごとで、まさに水を得た魚のようだ。
それだけではない。『鹿の王 ユナと約束の旅』では異世界ファンタジーらしい壮大でエスニカルな音楽、『夏へのトンネル、さよならの出口』ではリズムやシンセサイザーを多用した現代的な音楽と、作品によってスタイルやサウンドを変えている。
『かがみの孤城』は生楽器主体のクラシカルな編成の音楽。異世界ファンタジー的な壮大な曲も一部あるが、子どもたちの日常や繊細な心情を描く小編成の曲が中心である。中盤まではしっとりした心情曲とユーモラスな曲が入れ替わり登場して飽きさせない。終盤は子どもたちの気持ちの昂りを表現するドラマティックな曲が多くなる。クライマックスに向かって徐々に気持ちを高めていく音楽設計がすばらしい。
本作のサウンドトラック・アルバムは公開の2日前、12月21日に配信(ダウンロード&ストリーミング)とCD(SHOCHIKU RECORDSレーベル)でリリースされた。収録内容は同じで、全35曲。作品の中で使用された全楽曲を収録している。
- 夢
- 奇跡が起こりますように
- The Solitary Castle
- 7人の子供たち
- 城の中
- かがみの外へ!
- こころ
- ティータイム
- 穏やかな城
- クッキーとウレシノ
- 悲しみ
- ゲームタイム
- ほっとする人
- とまどい
- 喜多嶋先生
- 願いの鍵探し
- 怖い記憶
- 溢れる涙
- 雪科第5中学
- 理解なき担任
- クリスマスとケーキ
- みんなは…?
- リオン
- マサムネの推理
- オオカミ様
- Friendship
- 5時を過ぎて狼が
- ×のありか
- 大時計への階段
- 全員の真実
- かがみの孤城
- 秘密の答え
- 姉ちゃん
- いつかどこかで
- 未来へ歩き続けて
1曲目の「夢」は導入部に流れる短いピアノ曲。
こころのモノローグからタイトルが出るシーンのトラック2「奇跡が起こりますように」で、本作のメインテーマのメロディが提示される。
次の「The Solitary Castle」は城としての「かがみの孤城」のテーマ。こころが初めて城を訪れる場面に流れる曲だ。女声コーラスをともなった壮大なイントロから民族音楽風の曲調に展開する。異世界ファンタジーを思わせる音楽だが、すぐにオオカミさまが現れ、コミカルな曲調に変わる。このメリハリの付け方がうまい。
トラック4「7人の子供たち」は7人の子どもたちが初めて勢ぞろいする場面に流れる曲。ファンタジー風味のミステリアスな曲想で「何が起きているのか?」と謎めいた雰囲気を強調する。
しかし、緊張感は長くは続かない。次の場面で、ユーモラスな「城の中」(トラック5)が流れてほっとさせる。子どもたちが城の中で過ごす場面では、のんびりした曲や穏やかな曲がたびたび流れて「居心地よさ」を表現している。「こころ」(トラック7)、「ティータイム」(トラック8)、「穏やかな城」(トラック9)、「クッキーとウレシノ」(トラック10)、「ゲームタイム」(トラック12)などだ。子どもたちの心がほぐれていくシーンであり、音楽が果たす役割も大きい。
子どもたちの切ない心情を表現する曲もいい。富貴晴美は心に染みるメロディを次々と繰り出して、観客の気持ちをゆり動かす。「とまどい」(トラック14)、「喜多嶋先生」(トラック15)、「理解なき担任」(トラック20)、「みんなは…?」(トラック22)などなど。子どもたちの悲しみや動揺を表現するだけでなく、音楽としても美しい曲に仕上げている。曲によって楽器編成を変えて、同じような印象にならないようにしているのも、うまいなあと思うところだ。
映画音楽らしい「ライトモティーフ」の手法(特定の人物や状況に同じメロディを割り当てる技法)も使われている。
サッカーが得意な少年・リオンとこころの交流のシーンに流れる「ほっとする人」(トラック13)と「リオン」(トラック23)は同じメロディで書かれている。「ほっとする人」ではピアノと中低音域の弦でやさしく演奏されていたメロディが、「リオン」では弦合奏による豊かな音色で奏でられ、こころとリオンの気持ちがより近くなったことが示される。映画音楽の醍醐味を感じさせる演出である。
ライトモティーフの例をもうひとつ。冒頭の曲「夢」と同じメロディがあとでもう一度登場する。たぶん本作の物語の核心に触れる部分だろうから説明は控えるが、作品を観たあとで、サウンドトラックを聴きながら確認してほしい。「なるほど」と思わせる趣向だ。
メインテーマの使い方にも注目したい。すでに紹介したように、初めてメインテーマのメロディが現れるのは2曲目「奇跡が起こりますように」。それからしばらくメインテーマは使われず、映画の中盤、トラック18「溢れる涙」でふたたび現れる。こころの心情が大きく変化する重要なシーンだ。
次にメインテーマが現れるのはクライマックスに流れる「大時計への階段」(トラック29)。以降は、「かがみの孤城」(トラック31)、「秘密の答え」(トラック32)、「いつかどこかで」(トラック34)、「未来へ歩き続けて」(トラック35)と、堰を切ったようにメインテーマのアレンジが続く。
本当に大事な場面でしか使わず、しかし、重要なシーンでは控えることなく積極的にメインテーマを打ち出していく。これも(くり返しになるが)映画音楽の醍醐味であり、音楽にとっても幸せな使われ方だと思う。富貴晴美はこのメインテーマが決まるまでに12回も書き直したそうである。なかなかOKをくれなかった原恵一監督も最後には絶賛してくれたそうだ。
メインテーマのバリエーションの中でも「かがみの孤城」とタイトルがつけられたバージョンは、もっとも重要なシーンに流れる曲。女声スキャット(ボーカリーズ)と躍動的なリズムが印象的なアレンジだ。劇中のほかの曲はクラシカルなタッチで書かれているのに、この曲だけはポップス的なアレンジになっていて驚かされるが、それだけに印象に残る。こういうセンスもうまいと思うところである。
「かがみの孤城」と並ぶ本作の音楽の聴きどころが「全員の真実」(トラック30)。なんと9分超え、10分近い長さの曲である。子どもたちの真実が明らかになる、心をゆさぶる場面。原監督は9分あまりの一連の場面を「1曲で包んでほしい」とオーダーしたそうだ。富貴晴美は次々と展開する映像に合わせて曲調を変化させながら、しっかりとひとつの曲として音楽を作り上げている。映画を観ているあいだは、どうしても映像や物語に集中してしまうが、2度目に観る機会があれば、ぜひ音楽にも耳を傾けてもらいたい。
筆者はこの作品を劇場で2回観た。
最初に観たときは、感動しつつも、音楽のスケール感が少し気になった。たとえば、「The Solitary Castle」「かがみの外へ」「5時を過ぎて狼が」「×のありか」といった曲は、ほかの曲よりも壮大でボリューム感のある音楽になっている。「ロード・オブ・ザ・リング」みたいな本格的異世界ファンタジー風とでも言おうか。本作のテーマや物語のスケールを考えると、壮大すぎるのではないか。もう少し抑えめの、繊細な音楽のほうがふさわしいのではないかと思ったのだ。
しかし、一晩寝て、考え直した。
これでよかったのだ。日常で生きづらい思いをしている子どもたちが、いきなり見知らぬ城の中に放り出される。現実にはありえない試練に向き合い、挑むことになる。音楽のスケールが大きいのは、子どもたちの心の中の衝撃や恐怖感の反映だ。それはたぶん、子どもたちが現実の世界でさまざまな不条理に出会ったときの感情と同じなのだろう。こころの回想シーンに流れる「怖い記憶」(トラック17)という曲が、やはり非日常的なスケール感で書かれていることからも、それは明らか。この音楽が子どもたちのリアルなのである。
映画『かがみの孤城』オリジナル・サウンドトラック
Amazon
https://lnk.to/kagami_ost
第419回 今年もよろしく おねがいしますぴょん
アニメ様の『タイトル未定』
376 アニメ様日記 2022年8月7日(日)
2022年8月7日(日)
早朝の新文芸坐に行って、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.138 『この世界の片隅に』六度目の夏」の閉幕を見届ける。その後は散歩とデスクワーク。劇場で発売されているBlu-ray「富野由悠季の暗号」について、シネ・リーブル池袋に電話で問い合わせたところ「今日いっぱいでなくなるかもしれない」と言われて、慌ててシネ・リーブルに。後日観るつもりだった『Gのレコンギスタ Ⅴ/死線を越えて』も鑑賞する。『V』は受け止めきれないところもあったけれど、今までの『Gのレコンギスタ』で一番満足度が高かった。ロボット物らしいロボット物を観ている気分になったし、TVと同じシーンがTVよりもずっと面白くなっているのに感心した。
2022年8月8日(月)
Apple musicにあった『超魔神英雄伝ワタル』のサントラを聴き始める。『魔神英雄伝ワタル』じゃなくて『超』がつくほう。予想以上に聴き応えがあり、ちょっと驚いた。
TOKYO MXの「ゲゲゲの鬼太郎」歴代セレクション【水木しげる生誕100周年記念】は異様にマニアックな番組だ。今は「だるま」セレクションをやっていて、つまり、歴代アニメ『鬼太郎』から「だるま」を映像化したエピソードを毎週1本ずつ放送している。この日は4期105話「迷宮・妖怪だるま王国」。これは細田守さんの演出回で20数年ぶりに観た。先週が5期93話「おばけビルの妖怪紳士!」。来週が3期8話「だるま妖怪相談所」。『ゲゲゲの鬼太郎』ならではの企画だ。1期が白黒作品だったとか、4期はデジタル制作だけど、画面比率が4対3で解像度が低いとか、そういったシリーズ毎の違いも楽しめる。
2022年8月9日(火)
午前中はデスクワーク。午後は吉松さんと三鷹の森ジブリ美術館に。目的は「未来少年コナン」展だ。『未来少年コナン』に関して、多分、初めて観た資料はなかったと思うけれど、若き日の宮崎駿のエネルギーを感じだ。才気とパワーの迸りを感じた。「もっと描きたい」「もっと作りたい」という想いで作品に臨んでいたのだろうなあ。展示してあるものが載っているだけでいいので、図録が欲しい。
2022年8月10日(水)
8月9日(火)の散歩から、Apple musicの『ブレンパワード』サントラを聴き始めた。これもサントラを聴いたのは初めて。大変に聴き応えがあった。素晴らしい。だけど、こんな曲が使われていたっけ? と思って配信で『ブレンパワード』本編の再見を始める。
「中村豊 アニメーション原画集 vol.3」の見本を持ってBONESに。間違って下井草で降りてしまったので、暑い中、下井草から井荻まで歩く。
大竹宏さんが亡くなられたことを知る。僕としては『キテレツ大百科』のブタゴリラをはじめとする雪室俊一さんの作品の太目のガキ大将タイプのキャラクターの印象が強い。『マジンガーZ』のボス役も好きだった。心よりご冥福をお祈り致します。
2022年8月11日(木)
仕事の合間に、新文芸坐で「どぶ鼠作戦」(1962/102分/35mm)を観る。プログラム「映画を通して歴史や社会を考える 反骨の映画作家・岡本喜八の流儀」の1本。この映画を最初に観たのは30年くらい前。『トップをねらえ!』『ふしぎの海のナディア』関係で岡本喜八作品を観まくっていた時に観た。細部は忘れていたが、面白かったことだけは覚えていた。30年前にも同じように思ったはずだけど、とにかく佐藤允がいい。最後の展開はそれまでの流れからすると無茶苦茶なんだけど、痛快。シーンの繋ぎが面白い。セリフでシーンとシーンを繫いだり、動きでシーンとシーンを繫いだり。これは『ふしぎの海のナディア』でもやっていた。
2022年8月12日(金)
グランドシネマサンシャインで『ONE PIECE FILM RED』【IMAXレーザーGT】を観た。ちょっとひっかかるところもあったけれど、作品をアテにいって、その方向で作りきっているのに感心した。
2022年8月13日(土)
コミックマーケット100の1日目。自分は8時40分くらいにブースに到着。中村さんは9時過ぎに到着。「中村豊 アニメーション原画集 vol.3」にサインを入れていただく。サイン本は途中で追加したが、追加分を含めて13時前に完売。その後は通常版を売り続ける。中村さんは途中で帰る予定だったけれど、最後までブースにいてくださった。
第786回 2023年開始!
第785回から正月休み挟むかと思ったら、ちょうど1週間後で第786回。とりあえず、
今年はシリーズの放映もある上、さらに次の後輩による監督作品をプロデュース・総監督する仕事、そして自分の監督作品も準備しなければなりません。アニメ作りでいっぱいの2023年も宜しくお願いします!
で、正月の間はその社内若手・後輩がメインに立つシリーズの原作の読み込みをしていました。週明けから構成案とキャラクターデザインの開発を仕切らなければなりません。“仕切る”とは描き手のスケジュール管理——早い話“せっつき”です。近年社内の若手と話しているのは、
“作業者”自身がスケジュール管理に乗り出すべき!
という話です。これは単純な話、作業内容・難易度に応じて「これとこれは纏めて今日中」「この内容なら明日夕方まで」とか。つまり、ウチ(ミルパンセ)はもうすでに全員社員給(時給換算)なので、スタッフの皆に各々の実力に合わせた公平な仕事の配分が必須なわけです。特にアニメは作業内容・難易度に不公平が生じがち。「○○君は遅いから」と制作側から一蹴されるところを、俺の方は「でも、あの内容なら3日かかってもしようがない」とフォローも入れられ、さらにその逆「△△さんは手が速い」の場合でも「速くても雑だから、かえって作監で時間食ってる」と指摘し「上りを□□さんにチェックしてもらおう」といった手配もできます。よって、繰り返しますが、
やはり“作業者”自身、
つまり、俺がスケジュール管理に乗り出すべき!
なんです。昔、先輩らから「スケジュールなんて制作が考えるべきことで、我々アニメーターが気にすることじゃない!」と聞かされたものですが、それは“昭和のモノ作り”の話。令和の今、我々描き手に望まれるのは自分でやれることは自分で動き、スケジュールもしっかりと自己管理をする。これをモットーに掲げると制作の仕事を軽減でき、ひいては制作進行の人数を減らせる、ということはその分アニメーターを社員として雇える、と。
令和のアニメ作りは“数字で見る”社長と“作業の質で見る”作業者側代表の両方の目が必要。すなわち、板垣も制作管理に参加せざるを得ない……と、色々並べてみると2022年よりさらに今年は忙しくなりそう。
第785回 2022年最後の回
時が経つのは早いもので、父親が亡くなってもう1年越え。そして、今年も後数日。
今年も色々と仕事をさせていただいた1年!
関係各位様ありがとうございました!
この歳までやってると、いただける仕事はなんでも感謝でやらせていただきます。てかスケジュールがある限り端から断る気すらありません。
この主義も出﨑統監督の影響大で、20年以上前に「仕事を選ぶなんて10年早い、来た仕事は全部やれ!」と出﨑監督が語ったインタビュー記事を、自分は今でも憶えているからです。もちろん、3年おきにオリジナル作品をこしらえる作家さんも偉大だとは思いますが、俺個人的には“ジャンル・原作問わず1年とキャリアを空けず新作を発表”し続けた上、その全てが「出﨑統監督作品」として成り立っている創作スタイルにずっと憧れているのです。
ということで、今年最後の仕事は“某雑誌からの依頼によるイラスト——の打ち合わせ”。自分的には、今までやったことない感じのイラスト——しかも10枚! でも楽しく描けそうなのでお受けしました。また詳細は発表(雑誌発売)時に改めて話題にするとしましょう。
来年は現在制作中のシリーズが放映され、さらに次作の準備~制作とまた忙しい年になると思います。では良いお年を!
第246回 家族の肖像 〜SPY×FAMILY〜
腹巻猫です。生誕50周年を記念した「THE仮面ライダー展」の東京会場(池袋・サンシャインシティ)での開催が始まりました。会期は2022年12月23日〜2023年1月15日。意外と短く、年末年始のあわただしさに追われているうちに会期末になってしまいそうです。音楽関連の展示も充実しているそうなので、興味のある方はぜひ忘れずに観覧を。
https://www.kamen-rider-official.com/kr50th/exhibition/
今年話題を集めたTVアニメ『SPY×FAMILY』のサウンドトラック・アルバムが12月21日に発売された。今回はこの音楽を聴いてみよう。
『SPY×FAMILY』は遠藤達哉のマンガをWIT STUDIOとCloverWorksがアニメ化した作品。シーズン1が2022年4月〜6月、および10月〜12月の分割2クールで放映された。2023年のシーズン2放映と、劇場版の制作が発表になっている。
世界各国が水面下で情報戦をくり広げる冷戦の時代。西国(ウェスタリス)の情報局員・黄昏は、偽りの家族を作って隣国・東国(オスタニア)の要人に近づき、その動向を探る任務を命じられる。ロイド・フォージャーと名乗ることになった黄昏は、急いで家族を用意するが、実は、娘となったアーニャは人の心が読める超能力者、妻となったヨルは暗殺を請け負う殺し屋だった。3人はそれぞれの秘密を抱えたまま、家族として暮らし始める。
一見平凡に見える家族が実は凄腕のエージェント、という設定は「トゥルーライズ」「Mr.&Mrs. スミス」「スパイキッズ」などの影響がありそうだ。本作のユニークなところは超能力を持つ娘アーニャの存在。アーニャだけがすべてを知っていて、切実に家族を求めている。そのアーニャに影響されて、ロイド(黄昏)とヨルの気持ちに変化が生まれる。スパイもののパロディのように見えて、実は家族の物語になっているのが本作の魅力である。
音楽はアニメ音楽クリエイティブチームの(K)NoW_NAMEが担当。実質的には、アニメ『ワンパンマン』などの音楽を手がける宮崎誠と『リコリス・リコイル』などの音楽を手がける睦月周平の2人が作曲・編曲を担当している。
曲調は「スパイものの音楽ならこうだろう」と期待するとおりのスタイル。軽快なリズムとキレのよいブラスのフレーズで聴かせるジャジーな音楽だ。楽器編成はドラム、ベース、ギター、ピアノのリズムセクションに、木管(フルート、オーボエ、クラリネット、サックス)、金管(トランペット、トロンボーン)、ストリングスなどを加えた構成。ビッグバンドと呼ぶほどの大編成ではないが、迫力あるサウンドが聴ける。
スパイものの音楽のお手本となったのは、なんといっても60年代に登場した「007シリーズ」。特にジョン・バリーが得意としたビートの効いたブラスサウンドは、その後のスパイ映画やスパイドラマに大きな影響を与えた。
ただ、『SPY×FAMILY』の音楽は、本家007シリーズよりも、もっと軽いタッチで作られた「電撃フリント/GO!GO作戦」やアメリカ製ドラマ「0011 ナポレオン・ソロ」、最近の劇場作品だと「オースティン・パワーズ」なんかのノリに近い。シリアスな物語ではないから、音楽も軽快なタッチのほうが似合う。
聴きどころは、アーニャが家族のために奮闘するときに流れる「可愛いスパイ音楽」とも呼ぶべき曲。メインテーマ「STRIX」のメロディをアレンジした「Plan B」などは、アーニャの可愛さを思い出して悶絶してしまうような曲だ。
本作のサウンドトラック・アルバムは、2022年6月に「TVアニメ『SPY×FAMILY』オリジナル・サウンドトラック Vol.1」が配信限定で、同年12月に「TVアニメ『SPY×FAMILY』オリジナル・サウンドトラック」がCDと配信で、いずれも東宝からリリースされた。前者の「オリジナル・サウンドトラック Vol.1」は第1クール用に作られた47曲を収録したアルバム。後者は「Vol.1」の内容に第2クール用の楽曲などを追加した66曲入りのアルバム。CD版は2枚組だ。
最初に配信された「Vol.1」の収録曲を中心に、本作の音楽を紹介しよう。CD版収録曲は下記参照。
https://spy-family.net/music/music_ost.php
1曲目「STRIX」は本作を代表する曲。次回予告にも使われているおなじみの曲だから、メインテーマと呼んで差し支えないだろう。「STRIX」はロイドが遂行しようとしている作戦の名前(オペレーション「梟(ストリクス)」)である。ドラムソロの導入に続いて金管のワイルドなフレーズが開幕を告げる。ウッドベースのリズムの上でブラスとサックスが躍動感たっぷりの演奏を展開する。60年代スパイ映画、スパイドラマをイメージさせる、完璧なテーマ曲だ。
次の「WISE」も同様のイメージの曲。「WISE」はロイドが所属する情報機関の名前だ。ロイドの活動シーンによく流れていた。
このスタイルの曲では「Bondman」(ディスク2:トラック1)も秀逸だ。アーニャが観ているTVアニメ『スパイウォーズ』のテーマ曲で、まさにスパイドラマ音楽。第10話ではアーニャがドッジボールの特訓をする場面にこの曲が流れている。
トラック3「transient calm」はストリングスやピアノを使った、謎めいたスリリングな曲。第2話でロイドとヨルが初めて出会う場面や第4話でロイドが何者かの視線を感じる場面などに使われ、「これからどうなる?」と緊張感を盛り上げた。
トラック4「Liar」は「STRIX」と同じ系統のジャジーなブラスの曲。こちらは第3話でヨルがロイドの家に引っ越してくる場面などに流れ、秘密を抱えた家族を軽快な曲調で描写している。
ブルージーなギターとリズムがメインのトラック5は「Disguise」=「変装」と名づけられた曲。第2話でヨルがロイドに恋人のふりを頼む場面など、「秘密が暴かれるのでは?」とスリルを演出するシーンに使われている。同様のリズムパターンを使った曲が、ヨルの弟ユーリが姉のパートナーを探ろうとする場面に流れた「No one knows」(ディスク2:トラック5)。軽妙なリズムと木管のフレーズが緊張感とともにユーモラスな雰囲気をかもし出す。
次の「Plan B」からの3曲はアーニャをイメージした「可愛いスパイ音楽」。スネアドラムがリズムを刻む「Plan B」はアーニャが名門イーデン校の入学試験に挑む場面に使用。笛がメインテーマのメロディを、ピアノが「Liar」のメロディを奏でる「Crisis of my home」は、アーニャの受験準備のシーンなどに流れた。第1話でロイドがアーニャと町を歩く場面に使われたトラック8「Girl’s pastime」は3拍子の遊園地音楽風。この曲はシーンの展開と曲の展開がぴったり一致していて、フィルムスコアリングで作られたように聴こえる。
本作の音楽には、ほかにもフィルムスコアリング? と思われる曲がいくつかある。
トラック12「without tears」は第1話のクライマックス、ロイドがアーニャを危険にさらしたことを悔やみ、アーニャを警察に託そうとするシーンに使われている。緊迫した導入部は変装したロイドがアーニャを助ける場面、それに続くしっとりしたピアノのフレーズはロイドがアーニャと別れようとするシーンの心情描写、中間部の妖しいコーラスはロイドが敵を倒す場面、そして、終盤の温かいギターのメロディはアーニャがロイドに駆け寄る場面に流れていた。本作の隠れテーマである(隠れてないかもしれないが)「家族の絆」を印象付ける、みごとな音楽演出である。
トラック14「Thorn Princess」もフィルムスコアリングと思しき曲。曲名は「いばら姫」の意味で、ヨルが殺し屋として活動するときのコードネームだ。第2話でヨルが「仕事」をするシーンに映像とタイミングを合わせて使用されていた。
同じく第2話のクライマックス、襲撃に合ったロイドとヨルが協力しあって敵を倒し、正式に結婚の契約をすることを約束するシーンに流れていたのがトラック17「Strange Marriage」。曲は緊迫からアクションへと展開し、終盤は女声コーラスとストリングスの美しいメロディが2人の「婚約」を祝福するように流れる。
音楽に注意しつつ観ていると、物語の転換点となる重要なシーンの曲をフィルムスコアリングで制作しているようなのである。
こうして聴いていくと、本作の音楽で重要なのは、実はスパイ映画風の音楽ではなく、心情曲のほうではないかと気づく。
ロイドもヨルも嘘をついて生きている。他人をあざむくために必要と思って家族になる。しかし、アーニャを中心に暮らすうちに、もしかして、この生活はかけがえのないものではないかと感じ始める。その気持ちが嘘でないことを表わすのは、言葉よりも表情であり、音楽だ。絵で描き切れない想いを伝える音楽の比重は大きい。
公園でひと休みするロイド一家など、ひとときの安らぎを表現する「try again」(トラック21)、第3話ラストの家族でお茶を飲むシーンに流れた「teacups」(トラック23)、第7話で受験勉強をしながら寝てしまったアーニャの姿にやさしく重なる「little by little」(トラック24)、第6話でヨルがアーニャを見ながら「もっと母親らしくしてあげたい」と思う場面の「As a mother. As a wife.」(ディスク2:トラック7)、同じく第6話でヨルがアーニャから「母みたいになりたい」と言われ胸がいっぱいになる場面の「Small Daily Life」(ディスク2:トラック8)など、どれもシンプルな曲調ながら、しみじみと心に残る。
特に印象深いのは、第3話でロイド一家が町で出会った老婦人から「すてきな家族ね」と言われる場面に流れた「Looks like a nice family」(トラック22)。ピアノとストリングス、フルートが静かに奏でるやさしい曲である。第9話でロイドがヨルに「そのままでいてください」と言い、ヨルが「結婚相手がロイドさんでよかったです」と返す場面にも流れていて、「もうこれで終わってもいいんじゃない?」と思ってしまうくらい感動的だった。
『SPY×FAMILY』は、スパイもの、家族の物語、学園ドラマ(!)など、さまざまな楽しみ方ができるアニメである。サウンドトラックもさまざまな顔を持っている。あるときはノリのよい音楽集として、またあるときは家族のドラマを彩るやさしい音楽集として、ときにはアーニャの学園生活を活写するユーモラスな音楽集として、気分に合わせて楽しむことができる。ひとつの顔だけを見ないで、別の顔にも注意を向け、その魅力を発見する。そういう楽しみ方が『SPY×FAMILY』の音楽にはふさわしい。
TVアニメ『SPY×FAMILY』オリジナル・サウンドトラック
Amazon
配信版(各種サービスへのリンク)
https://nex-tone.link/VK9ouj9AO
アニメ様の『タイトル未定』
375 アニメ様日記 2022年7月31日(日)
2022年7月31日(日)
午前中から「中村豊 アニメーション原画集 vol.3」の校正紙をチェックする。入稿前にPDFを見て、そのうえで校正紙を見ているんだけど、最終的なところは製本が終わらないと分からないなあ。通常の書籍でもそうなんだけど、Flip Bookだとさらに分からない。それから、緻密に描かれたメカの原画はしっかり見せようと思ったら、1枚のサイズがB6でギリギリOKなくらいだなあ。
上とは別件。これから企画を進めようかと思っていた書籍を、企画の初っ端で中止することに。最初がダメだと、上手くいく気がしないものね。
2022年8月1日(月)
『ONE PIECE FILM RED』って、『名探偵コナン』の劇場版で、原作やTVシリーズより先に赤井と安室が顔を合わせたようなかたちの仕掛けがある、ということになるのかな(後日追記。仕掛けがありました)。
ワイフと「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」を観る予定だったのだけど、ワイフの体調がいまひとつで中止。スケジュールを空けていたので同じ劇場で『劇場版アイカツプラネット!』を観る。
2022年8月2日(火)
レンタル掲示板teacup.のサービスが終了した。teacup.でないと連絡がつかない人とか、生存確認ができない人がいるのだ。さあ、どうする。
『僕の心のヤバイやつ』アニメ化が発表された。原作ファンなので、基本的には嬉しい。「あの部分はどうするんだろう」とか色々と思うが、それはまた先の話。基本的には原作通りになるのだろうけど、原作にない描写とか番外編とかもやってほしい。
2022年8月3日(水)
新文芸坐の10:10 ~12:21の回で「奇跡」を観る。プログラム「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー」の1本。かなり良かった。正直言うと、終盤の展開はよくわからないし、共感もできなかったんだけど、映画としては凄かった。事務所に戻って打ち合わせをした後、シネ・リーブル池袋の『GのレコンギスタIV/激闘に叫ぶ愛』がこの日で上映終了すると知る。慌ててチケットをとって15:10~17:00の回で観る。今回も上級者向けの作品だった。
2022年8月4日(木)
文芸坐で「裁かるゝジャンヌ」を観る。「奇跡」と同じく、プログラム「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー」の1本。これは凄い。演出がキレキレ。昨日観た「奇跡」が全身を映したカットを基本として映画を設計していたのに対して、こちらはアップショットを基本とした設計。役者の芝居も(それを引き出した演出も)カメラも素晴らしい。それから、画的な情報のコントールが抜群に巧い。終盤は決まりすぎるくらい決まった構図が続出し、それも見どころ。トータルの印象としては非常に前衛的。今まで観た全ての映画の中で、最も前衛的かもしれない。それと、終盤の構図は非常にアニメ的だと思った。何に近いかというと金田伊功さんの作品や新房昭之監督の『幽★遊★白書』や『The Soul Taker』に近い。メリハリの効いた構図を追求していくと似ていくということなんだと思うけど。
2022年8月5日(金)
グランドシネマサンシャインの08:10~10:52の回で「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」【IMAXレーザーGT3D字幕版】を鑑賞。相変わらず恐竜のCGは凄い。ドラマが弱めなのはしかたないかもしれないけど、「?」と思うところもあり。事務所に戻ってZoom打ち合わせなど。14時から西口の居酒屋の八丈島で業界のある人と吞む。その後はデスクワーク。この日記を読むと映画はかり観ているようだけど、実際にはやることが多くて忙しい。
2022年8月6日(土)
1980年代から1990年代前半に、戦時中の市民を描いたアニメ作品(実写とアニメによる作品を含む)がいくつか作られている。分かる範囲でリストを作ってみた。
…………
1982年『象のいない動物園』(東京)
1982年『対馬丸 ―さようなら沖繩―』(沖縄)
1983年『はだしのゲン』(広島)
1986年『はだしのゲン2』(広島)
1988年『火垂るの墓』(神戸市と西宮市近郊)
1988年『白旗の少女 琉子』(沖縄)7月21日
1988年『夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~』(広島)8月7日
1988年『火の雨がふる』 (九州)9月15日
1989年『かんからさんしん』(沖縄)
1990年『クロがいた夏』(広島)
1991年『うしろの正面だあれ』(東京)
1993年『ヒロシマに一番電車が走った~300通の被爆体験手記から~』(広島)
…………
戦時中の話ではないので、リストには入れていないが、1984年に『黒い雨にうたれて』がある。中沢啓治さんが原作、企画、製作、さらに共同で脚本を務めており、これも『はだしのゲン』や『はだしのゲン2』に連なる作品だろう。
上のリストのうち、マッドハウスが制作したのが『はだしのゲン』『はだしのゲン2』『夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~』『ヒロシマに一番電車が走った~300通の被爆体験手記から~』だ。それらの作品群の延長線上に『この世界の片隅に』がある。
ワイフが「『らんま1/2』 POP UP SHOP in 渋谷ロフト」で買い物をするのに付き合って、朝から渋谷に行く。この日がPOP UP SHOPの初日で、初日でないと購入できないグッズがあるらしいのだ。買い物は無事に終了。ワイフの希望でIKEAの中をウロウロしてから、昼からやっている焼き鳥屋で吞む。値段はちょっとお高めだっただけど「これこれ焼き鳥」って感じで満足。
夜は新文芸坐でオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.138 『この世界の片隅に』六度目の夏」を開催。今回のプログラムは『うしろの正面だあれ』『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の3本立て。片渕さんが監督でなく、画面構成の役職で参加した『うしろの正面だあれ』を上映するのが、このプログラムのポイント。
以下はトークの内容のメモ。片渕さんが『うしろの正面だあれ』に参加した時、既に制作は始まっており、序盤のシーンは作画に入っていた。片渕さんの仕事はレイアウトチェックであり、そのあとの工程には関わっていない。大半のカットではレイアウトに手を入れるか、描き直しをしている。最初は原画マンが描いたレイアウトを直していたが、途中から先回りして原画マンが描く前にレイアウトを描いて渡すようになった。レイアウト段階で絵コンテになかった考証を足すこともあった。絵コンテにないカットを、レイアウト段階で足したこともあった。芝居を足したり、カメラワークを変えたりもしている。画面に空間を与えることは心がけた(言い方は違っていたはず)。考証的な部分で、調べれば分かることなのに、時間がなくて調べられないところはあった。例えば空襲の日に東京に雪が残っていたのか、といったこと。そういった部分を『この世界の片隅に』では徹底して調べた。
第199回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作13【映画を作ろうとして見つけ出した新しいこと・総まとめ編】
片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、タイトルは発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
新作の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に、平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。これまでのイベントでも新しい視点から見つけた、これまであまり語られていなかった「枕草子」の側面について語られてきました。
2023年1月14日(土)に開催する第13弾のサブタイトルは「映画を作ろうとして見つけ出した新しいこと・総まとめ編」。今回のイベントでは、国文学関係での講演依頼も増えてきた片渕監督が、新発見についてまとめて語ってくださるそうです。より濃密なトークになるのではないかと思われます。出演は片渕須直監督、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回も会場にお客様を入れての開催となります。イベントは「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた片渕須直監督次回作」もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは12月28日(火)19時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
LOFT https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/238594
会場チケット https://t.livepocket.jp/e/aw4fb
配信チケット https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/207459
なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr
第197回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2023年1月14日(土) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別) |
アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。
第418回 吉松的2022年重大ニュース
第784回 今年最後の現場四方山話
これも今まで何回か話題にした、
アニメ監督(演出家)が、実務に手を出すべきか否か?
自分の答えは“基本的に人それぞれのケースバイケース、ただし現場とスケジュールに合わせて臨機応変に!”です。
以前はよく、先輩の監督・演出家の方々から「自分で描いたら演出じゃないよ」とか「演出家は描かせるのが仕事でしょ!」などと諭されたものです。が、そう言った方々はその後間もなく現場から消え、現在自宅籠りコンテマンになられています。別にコンテ専門職を悪く言うつもりはありません。ただ、実務は他人(ひと)にさせるを是と説く方が、現在のアニメ制作現場を仕切りづらくなっているのは確かなようですし、そういう話をよく耳にします。
そう言う自分も以前は「コンテが全て! コンテが演出であり監督!」つまり、出﨑統監督スタイルを信仰していたものです。
ところが近年の制作現場で求められるコンテとは、“拡大してレイアウトになるくらいの緻密なラフ原画の連続”のことです。いやそれどころか、現場でご活躍のスタッフの方々は
緻密に清書されて、必要な画は全て描き込まれたコンテでなければ原画を描いてくれない!
状態になっていることは当然ご存知かと思います。
「それは本来のコンテではないし、そんなんは本当のアニメ制作じゃない!!」と憤慨している演出家は現場の制作P・デスクらから敬遠されます。
動画を海外に撒く際も、作監が中割参考を密に入れた原画でなければ、すでに制作側から「このカットは動画にできません」と戻されています。そこまで来ました。俺自身は「じゃ、その諸条件下でどうやって作ろうか?」と考えると言うだけ。Twitterを始めて喚く気など、さらさらありません。それこそが本来、制作現場・体制などはその時代時代の条件に合わせて変えていくものでしょう? 動画を割れないなら動画の中割り不要な作品にするだけ(『てーきゅう』)。
所詮は自分らの嫌な面倒臭い仕事——動画を他人・他国に40年押し付けてきたツケが回ってきただけ、という気がします。ここは基本に返って、コツコツやることにしましょう、業界の皆様。
第417回 復刻版「逆シャア本」が楽しみ
アニメ様の『タイトル未定』
374 アニメ様日記 2022年7月24日(日)
2022年7月24日(日)
オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.137 渡辺歩&小西賢一の劇場アニメーション」のトークを終えた後、『のび太の恐竜2006』の上映を少し観る。自宅での休憩を挟んで、再び新文芸坐に。今度はワイフも一緒だ。午前3時40分からの『海獣の子供』を観る。関係者席ではなく、チケットを購入して中央の席で鑑賞した。新文芸坐の新上映システムでの『海獣の子供』の映像と音響を確認したかったのだ。リニューアル前の上映をしっかりと覚えているわけではないけれど、特に音響の迫力が増していたのではないか。オールナイト終了後、ワイフと朝の散歩に。
Eテレでやっていた「アニメ シュームの大冒険」を偶々観る。色使いと画面構成がよかった。
2022年7月25日(月)
アニメスタイルのアーカイブシリーズで出したい新刊の企画を思いついた。有名なタイトルだけど、過去にイラストや設定画がまとめられたことはないはず。というか、メインキャラの線画設定もほとんど世に出てはいないのではないか(確認したら、キャラクターの色見本はDVD BOXの解説書に載っていた)。自分が雑誌の記事や映像ソフトの解説書を作った時も、線画設定は各話のゲストは小道具ばかり載せていたような気がする。この企画が実現したとして、500部くらいは売れるはず。数年かければ800部くらいは出るか。アーカイブシリーズのフォーマットだと、その部数では企画が成立しない。打ち合わせで「売れないとは思うけど、やりたい本がある」と言って話したけれど、編集部の皆の反応はよくなかった。
2022年7月26日(火)
朝の散歩以外はデスクワーク。PDFとテキストとマンガ原稿の画像がネット経由で飛び交う。夏の書籍のクライマックスが今日かもしれない。
録画がたまっていた「Gメン’75」を6話分を作業をしながら観た(28~33話)。その間、「Gメン’75」の世界にいた気がする。ひとつのエピソードで同じ歌謡曲を何度も使うのがよかった。
2022年7月27日(水)
ここ数日、「この人に話を聞きたい」取材の予習で過去のマッドハウス作品をセレクトして視聴している。この日に観たのは『妖獣都市』『YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!』『YAWARA! a fashionable judo girl!(1話)』『はだしのゲン』『はだしのゲン2』。
あまり意識していなかったけど『はだしのゲン』(1983年)は『夏への扉』(1981年)、『浮浪雲』(1982年)に続く、真崎守監督(演出)作品ということになる。アニメーションの作りとしては一貫性があるかも。何度も話していることだけど、『はだしのゲン2』の井上俊之パートは笑っちゃうくらいに巧い。ほぼ『AKIRA』だ。
『妖獣都市』のBlu-rayを4K大型モニター視聴(ディスクは4Kではない)。映像は鮮明ではあるけれど、バキバキになっているわけではなく、少し柔らかさがある。黒と青(そして、赤)のコントラスが効いていてそれが心地よい。これはこれで理想のリマスターなのではないかと。
U-NEXTで『YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!』を視聴。レギュラーキャラではなく、ゲストの子供達の話なので、観ていてテンションが上がらないのは公開当時の印象と変わらず。花園薫が子供達と話す時に、自分のことを「おじさん」と言うのだが、それでいいのか、大学生。ライバルの柔道チームの少年達のキャストはメインの少年が浪川大輔さんで、他の4人が林原めぐみさん、矢島晶子さん、高乃麗さん、頓宮恭子さんと、今となっては異様に豪華。序盤の作画がキャラクターだけでなく、動きまで兼森義則さんの作画に見えて、気合いを入れて直しているのかと思ったら、作画監督は君塚勝教さん。兼森さんは原画の筆頭でクレジットされていた。かなりの量の原画を描いているのでは?
続けて『YAWARA! a fashionable judo girl!』TVシリーズ1話。アバン(Aパートのサブタイトルが出るまで)の演出がよい。今回の取材とはあまり関係ないけど、これから確かめたいテーマができた。
2022年7月28日(木)
今度は『花田少年史』を観る。1話はくまいもとこ、田中真弓、竹内順子、桑島法子、松本梨香、亀井芳子と少年役声優大集合。父親役の矢尾一樹もいいキャステイングだし、祖父役の野沢那智は放送当時も贅沢だと思った(以上、敬称略)。1話は作画もいい。マッドウス史の中でもなにかが極まった作品。
『異世界おじさん』4話がよかった。女子キャラの描写に本気を感じた。絵コンテ・演出は中山奈緒美さん、作画監督は坂井久太さん。カット単位で言うと、酔ったおじさんに連れて行かれる場面での、ツンデレさんが「手を離しなさ……」と言うカットが驚くくらいによかった。
仕事の合間にドラマ「家庭教師のトラコ」1話、2話も観た。橋本愛さんに色んなタイプの役をやらせるドラマかな。「メリーポピンズみたいな橋本愛」「熱血教師の橋本愛」「色っぽい女教師の橋本愛」の中だと、意外と熱血教師がハマっていた。トラコの素の部分はあんまり描かれてないんだけど、これからなんだろうなあ。
YouTubeにアップされている『湘南爆走族』の映像がかなり鮮明で驚く。
2022年7月29日(金)
取材の予習で『METROPOLIS』を観る。『METROPOLIS』はDVD BOXの仕事をしたので本編は何度も観ている。今回はBlu-rayで大型4Kモニター(ソフトは4Kではない)で視聴。公開当時は「クラシカルな物語と世界観」を「最先端の技術と空前の密度感の映像」で劇場アニメーションとして制作したものという印象だったのだけれど、今の目だと「最先端の技術」や「空前の密度感のある映像」を含めてレトロなアニメーションに見える。つまり、「レトロだけど、作り込まれていて密度感のあるアニメーション」に見える。おそらく、そういう見え方が正解なのだと思う。『METROPOLIS』の後は『カムイの剣』を少し観た。
12時過ぎに事務所を出て、新宿で「この人に話を聞きたい」取材。今回の取材させていただいたのは丸山正雄さんだ。今までにも何度か取材のオファーをしたのだが、断られ続けてきた。遂に実現した取材だ。興味深い話をいくつかうかがうことができたが、可能なら、これを丸山さんインタビューの第一弾としたい。
2022年7月30日(土)
新文芸坐で「100発100中」(1965/92分/35mm)を観る。プログラム「東宝の看板スター 永遠の二枚目、宝田明さんを偲んで」の1本。宝田明さんが主人公のアクションもので、宝田明さんが演じる謎の男、浜美枝さんの「爆弾娘」、有島一郎さんの刑事が主人公側のトリオ。敵側の殺し屋は平田昭彦さん。初見だと思って観ていたけど、終盤の逆転劇とラストの主人公と刑事の別れには激しく既視感があった。
物語については「ええっ、どうしてそうなるの?」と思う箇所があったし、設定を活かしきっているとも思わないが、軽いノリの作品だし、そういったところで文句を言うのも何か違う気がする。「爆弾娘」のユミが「パラシュートで地上に降りた時に服が脱げて裸になっちゃった」という理由で、クライマックスのアクションシーンで水着姿になるのには感心。いや、本当に感心した。ラストは主人公とユミの海中ラブシーンになるのだが、主人公がカメラマン(この映画を撮っているカメラマン)に自分達をフレーム外にするように指示して、スタッフの詫びの言葉を画面に表示して終わるというメタオチ。
ちなみに「爆弾娘」とは、ユミが爆弾を自在に使うことからついたニックネームで、劇中で平田昭彦さんが演じている殺し屋が「アカツキの爆弾娘(アカツキは組織の名前で、表記は「暁」と思われる)」とユミを呼ぶ。ユミは笛を吹くことで仕掛けた爆弾を爆発させることができるのだけれど、その効果音がおそらくは特撮作品でお馴染みの音源で、そこだけSFドラマ風味になっていた。