2024年2月18日(日)昼にトークイベント「第218回アニメスタイルイベント 作画マニアが語るアニメ作画史 1963~2000 PART2」を開催します。
このイベントは「作画マニアが語るアニメ作画史 1963~2000」の続編で、1963年から2000年までのアニメ作画を、作画マニア寄りの目線で振り返ります。
出演はアニメスタイル編集長の小黒祐一郎。監督、アニメーターとして知られる羽原信義さん。アニメーター、演出として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さんです。主に小黒が語り、羽原さん、沓名さんにコメントしていただくかたちになるはず。
※2024年2月2日追記:アニメーターの今村亮さんにも出演してもらえることになりました。
第一部では1970年代末からの「名作画監督の時代」と1980年代前半の作画の流行などがテーマ。第二部はアニメ作画の大きな流れをテーマにする予定です。また、それら以外の話題にも触れるかもしれません。
なお、前回と今回のトークの内容を加筆修正して書籍化するかもしれません。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回はいつものイベントよりもスタート時間が早く、11時半開場、12時開演となります。配信もありますが、配信するのはメインのパートのみです。会場にいらした方だけが観覧できるパートも用意しています。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは1月26日(金)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク(会場・チケット関係)
LOFT https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/275139
LivePocket(会場) https://t.livepocket.jp/e/ne28z
ツイキャス(配信) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/288056
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第218回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2024年2月18日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
小黒祐一郎、羽原信義、沓名健一、今村亮 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別) |
アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。
【新文芸坐×アニメスタイル vol. 170】
アニメ映画の音を愉しむ『BLUE GIANT』
新文芸坐とアニメスタイルの共同企画プログラムで『BLUE GIANT』を上映します。『BLUE GIANT』はジャズをモチーフにした同名マンガを映像化したアニメーション映画。青春ドラマとしても、音楽映画としても充実した作品です。特に音響が素晴らしく、是非とも映画館で楽しんでいただきたいと思います。監督は『モブサイコ100』シリーズ、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』等を手がけた立川譲監督です。
日時は2024年2月3日(土)、9日(金)、10日(土)、11日(日)。10日(土)は上映後に、立川監督のトークを予定しています。チケットはそれぞれ、上映の1週間前から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。
■新文芸坐
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2024-02-03-3
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【新文芸坐×アニメスタイル vol. 170】 |
開催日 |
2024年2月3日(土)、9日(金)、10日(土)、11日(日) |
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会場 |
新文芸坐 |
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料金 |
一般1500円、各種割引 1100円(10日(土)のみ、一般1900円、各種割引 1500円) |
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トーク出演 |
立川譲(監督)、小黒祐一郎(聞き手) |
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上映タイトル |
『BLUE GIANT』(2023/120分) |
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備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
第273回 もう一度メタモルフォーゼ 〜キボウノチカラ オトナプリキュア’23〜
腹巻猫です。1月28日(日)に浅草・ニュー酒場フレンズで開催されるサントラDJイベント・サントラサーカス!2にDJとして参加します。ぜひおいでください! 詳細は下記を参照。
https://www.gekiban.soundtrackpub.com/news/2024/01/20240122.html
プリキュアシリーズ放映開始20周年を記念して、昨年からさまざまなイベントが開催されている。「全プリキュア展」「全プリキュア 20th Anniversary LIVE!」などなど。今回は20周年記念の施策のひとつとして放映された『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』を取り上げよう。
『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』は2023年10月から12月までNHK Eテレで放映されたTVアニメ。2007年と2008年に放映された『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』の主人公・夢原のぞみたちの成長した姿を描く作品である。
『プリキュア5GoGo!』の戦いからおよそ10年後(明確な年代は語られていない)。成長したのぞみたちは、それぞれの夢を実現したいっぽうで、現実の厳しさに悩む日々を送っていた。そんなある日、のぞみたちの街に謎のモンスター「シャドウ」が出現し、人々を襲い始める。今はプリキュアに変身する力を失ったのぞみたちは、シャドウに対抗することができない。しかし、大切な未来を守りたいと願うのぞみの前に光る蝶が現れ、のぞみはふたたびプリキュアに変身する力を手にする。オトナになったプリキュア5の新たな戦いが始まった。
まず、『Yes!プリキュア5GoGo!』では中学生だったのぞみたちの成長した姿が見られるのが本作の見どころ。声優も全員オリジナルのメンバーが再登板して、「あののぞみたちがこうなるのか」という驚きと感慨があった。そして、成長したのぞみたちがふたたびプリキュアに変身するのがもうひとつの見どころ。そのとき、のぞみたちが中学生の姿に戻るのが2番目の驚きだった。このアイデアはスティーブン・キングのホラー小説『IT』からヒントを得たのだという。
物語の前半ではオトナになったのぞみたちの日常が描かれ、思い通りにいかない現実に悩む姿が見られる。SNSの反応を見ていると、子どもの頃に『プリキュア5』を観ていた世代の女性は、のぞみたちを現在の自分と重ねて、共感するところが多かったようである。なお、公式では一貫して「大人」ではなく「オトナ」と表記しているので本稿もそれに倣うことにする。
プリキュア5のメンバーがひとりずつプリキュアに変身する力を取り戻し、さらに『ふたりはプリキュア Splash☆Star』のキャラクターも参戦して、物語は佳境を迎える。第9話でSplash☆Starのふたりが変身する場面は、そうなるだろうとわかっていても心にぐっとくるものがあった。
さて、音楽はプリキュアシリーズ第1作『ふたりはプリキュア』(2004)から『Yes!プリキュア5GoGo!』(2008)まで5作品の音楽を手がけた佐藤直紀が担当。TVシリーズとしては15年ぶり、『映画プリキュアオールスターズDX3』(2011)から数えても12年ぶりのプリキュアシリーズ復帰である。個人的には、これが本作一番のトピックスだった。
佐藤直紀は本作で、オトナになったのぞみたちの日常・心情を描く音楽や新たな敵シャドウを描写する音楽など30曲余りを書き下ろしている。旧作のBGMをリアレンジした曲もいくつかあるが、約30曲が新曲だ。
さらに、本編では『ふたりはプリキュア』から『Yes!プリキュア5GoGo!』までのオリジナルBGMも使用されている。プリキュアの変身シーンやアクションシーンはもっぱら旧作BGMが使用されるので、いやがうえにも盛り上がった。プリキュアシリーズ開始当初から選曲を手がけている水野さやかが、本作でも選曲を担当。プリキュア音楽を熟知した水野氏ならではの、旧作へのリスペクトあふれる音楽演出に唸らされた。
佐藤直紀は本作の音楽を担当するにあたり、旧作の音楽を聴きなおした上で作曲に臨んだという。旧作の音楽はストレートで勢いのある曲調だったが、本作はその路線を踏襲するのではなく、「オトナプリキュア」の世界観をしっかり打ち出そうと考えた、とインタビューで語っている。
その方向性がよく表れているのが、のぞみたちの心情を描く曲である。中学生時代ののぞみたちの気持ちは「よろこび」「悲しみ」「怒り」など、色分けのはっきりした、わかりやすい音楽で表現できた。しかし、オトナになったのぞみたちの心情は、ひとつのトーンでは表現しきれない。楽しい中にも不安や迷いが、悲しみの中にも希望が宿る。ひとつの色に染めきれない想いが複雑で繊細な響きで奏でられる。
また、この10年で佐藤直紀の音楽も変化(進化)している。
実写劇場作品『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)に代表されるように、佐藤直紀の書く音楽の魅力のひとつが、心に響くメロディだった。しかし、近年の佐藤直紀はメロディを抑え、複雑な和声(ハーモニー)を用いたサウンド志向の曲を書く傾向にある。2023年に公開された『レジェンド&バタフライ』『ゴジラ-1.0』の佐藤直紀の音楽と『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』の音楽には共通する要素が多い。これが現在の佐藤直紀サウンドなのである。
本作のサウンドトラック・アルバムは「キボウノチカラ オトナプリキュア’23 オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで、1月10日にマーベラスからCDと配信でリリースされた。CDは2枚組。収録内容は以下のとおり。
ディスク1
- 未来の鼓動
- 夢をかなえた先に
- Cafe & Bar TIME
- サブタイトル
- ベル
- ほろ苦い現実
- 輝いていたあの頃
- 仲間を迎えて(2023version)
- 不穏な予兆
- シャドウ
- 心に刺さるトゲ
- 進めない一歩
- 心の迷宮
- ベルの怒り
- ふたたびつかむ光
- 未来への約束
- ほほえみのエピローグ
- 夢でいっぱい(歌:春日野うらら[CV:伊瀬茉莉也])
ディスク2
- サブタイトル(Btype)
- はじける時間
- 迷う心(2023version)
- のぞみとココ
- 夢でいっぱい 〜Acoustic ver.〜(歌:春日野うらら[CV:伊瀬茉莉也])
- タイムフラワー
- ベルの記憶
- 絶望の未来
- 暴走するシャドウ
- 爆発する怒り
- 信じる仲間とともに(2023version)
- シャドウの猛威
- プリキュア登場(2023version)
- 戦うチームプリキュア
- バタフライエフェクト〜希望の力
- 素直な気持ちで
- 未来の選択
- 雫のプリキュア(歌:キュア・カルテット)
本作のために新たに録音されたBGM33曲とエンディング主題歌(「雫のプリキュア」)、挿入歌(「夢でいっぱい」)を収録。
構成は筆者が担当した。ディスク1はのぞみたちの日常描写からシャドウが出現し、プリキュアが復活するまでのイメージで、ディスク2は最終決戦に向けての展開をイメージして構成した。BGMは全曲収録を前提に進めていたが、諸事情により未収録が数曲ある。
1曲目「未来の鼓動」は本作のメインテーマとして書かれた曲。第1話の冒頭、のぞみのモノローグのバックに使用された。佐藤直紀は、この曲で「オトナになったキャラクターの物語であることをしっかり演出したいと思った」と語っている。ピアノとストリングスの静かな導入から、女声ボーカリーズが加わり、最後は心臓の鼓動の音で終わる。女声ボーカルはオトナの雰囲気を、鼓動は未来への希望と不安を象徴しているようだ。
ただ、ブックレット所収のインタビューでも語られているように、本編では女声ボーカルはオミットされ、鼓動の部分も流れなかった。また、最終話のラストシーンもこの曲で終わる構想があったのだが、実際には使用されていない。そのため、メインテーマとしての性質があいまいになってしまったのが残念なところ。代わりに本アルバムでじっくりと聴いていただきたい。
続く「夢をかなえた先に」(トラック2)と「Cafe & Bar TIME」(トラック3)は、のぞみたちの日常シーンに流れた曲。いずれも第1話から使われている。
トラック5「ベル」は物語のカギとなるキャラクター・ベルのテーマ。プリキュアと敵対するキャラだが、音楽は悲しみをたたえた重厚な響きで書かれている。物語が進むにつれ、その悲しみの理由が明らかになる。本曲のバリエーションである「ベルの怒り」(ディスク1:トラック14)、「ベルの記憶」(ディスク2:トラック7)、「爆発する怒り」(同:トラック10)は、ベルの心境の変化に合わせたアレンジである。
シャドウのテーマである「シャドウ」(ディスク1:トラック10)はサスペンスや脅威をストレートに表現するのではなく、シンプルな音型をくり返すミニマルミュージック的な曲想で書かれている。『ゴジラ-1.0』の音楽との共通点を見出すことも可能だ。「暴走するシャドウ」(ディスク2:トラック9)、「シャドウの猛威」(同:トラック12)は同じテーマのバリエーション。注目すべきは、ベルの曲が3拍子で書かれていて、シャドウの曲も8分の6拍子もしくは3拍子のリズムを基調に書かれていること。ベルとシャドウのあいだにつながりがあることが音楽的に表現されているのだ。
「ほろ苦い現実」(ディスク1:トラック6)は、本作の中でも重要な、オトナになったのぞみたちの心情を表現する曲。第1話で夏木りんが仕事のことで悩む場面や第2話でのぞみが転校した生徒・るみを心配する場面などに使用された。ニュートラルな(特定の感情を想起させない)淡々としたピアノのフレーズから始まり、ストリングスが重なって徐々に情感がふくらんでいく。不安とも悲しみともつかない複雑な響きから、終盤は希望的なトーンに転じて終わる。この重層的な響きは、過去のプリキュア音楽にない、「オトナプリキュア」ならではのものだ。「心に刺さるトゲ」(ディスク1:トラック11)、「進めない一歩」(同:トラック12)も同じタイプの楽曲である。
本編で筆者が特に印象に残ったのは「ふたたびつかむ光」(ディスク1:トラック15)という曲。成長したのぞみたちが、ふたたびプリキュアに変身する力を手に入れる場面に必ずと言ってよいほど流れていた。
細かく刻むストリングスのフレーズと低音の管弦楽器の唸りが、徐々に高まる緊張感と決意を表現。終盤に登場するホルンのメロディがプリキュアの力の復活を歌うが、少し陰りが感じられる。そこがいい。
「未来への約束」(ディスク1:トラック16)と「未来の選択」(ディスク2:トラック17)は、メインテーマの流れをくむ曲である。どちらも、のぞみたちが未来へ一歩踏み出そうとする場面などに使われている。不確かで、希望あふれる未来ではないかもしれないけれど、のぞみたちは手探りで歩き出そうとする。そんなシーンを彩った曲。最終話では戦い終わったあとのエピローグ(Bパート)に、「未来の選択」と「未来への約束」が続けて流れた。本作を代表する楽曲と言えるだろう。
あと大事な曲としては、最終話の決戦シーンを盛り上げた「戦うチームプリキュア」(ディスク2:トラック14)と「バタフライエフェクト〜希望の力」(同:トラック15)がある。「戦うチームプリキュア」は本作の音楽の中では珍しいストレートなバトル曲。「バタフライエフェクト〜希望の力」はプリキュアが最後の技を放つ場面で使用された。未来を変えていこうとする人々の想いが集まり、大きな力となる。本作のタイトルである「キボウノチカラ(希望の力)」を感じさせる壮大な曲だ。どちらも、シナリオから使用場面をイメージして書かれた曲である。次の「素直な気持ちで」(同:トラック16)も同様に、最終話のココのプロポーズの場面を想定して書かれた曲だ。
旧作BGMのリアレンジの中では、「信じる仲間とともに(2023version)」(ディスク2:トラック14)に耳を傾けてほしい。原曲はプリキュアが力を合わせて敵に立ち向かう場面をイメージした熱い曲なのだが、本作ではしだいに劣勢になっていくイメージにアレンジされている。
旧作BGMの使用では、『プリキュア5』『プリキュア5GoGo!』からの選曲が多いのは当然として、『ふたりはプリキュアSplash☆Star』と『ふたりはプリキュア』『ふたりはプリキュアMax Heart』の曲もけっこう使われている。第1話でのぞみがるみと話をする場面に『ふたりはプリキュア』の「未来を信じて」という曲が流れるなど、随所に「これは!」と思う選曲がされている。とりわけ、最終話の決戦シーンで『ふたりはプリキュアMax Heart』の「三人の絆」が流れたのは感動した。旧作のサウンドトラック・アルバムは現在、配信で聴くことができるので、劇中で流れた曲を探してみるのも楽しいだろう。
ただ、物語が進むにつれて、成長したのぞみたちの心情を描く曲の出番が少なくなり、旧作BGMが使用される場面が増えてきたのは、本作の独自性が薄まったようで少し惜しいなと思った。歴代プリキュアが共闘する「プリキュアオールスターズ」とあまり変わらなくなってしまうからだ。キャラクターの成長を描くこととプリキュアを描くことのバランスを取るのは難しい。答えは見つからないけれど。
オール新曲で構成された本アルバムは、いわば純度100%の「オトナプリキュア」の世界。佐藤直紀が構想した、オトナになったのぞみたちの音楽を味わってほしい。
キボウノチカラ オトナプリキュア’23 オリジナル・サウンドトラック
Amazon
第472回 最近はもっぱらMeta Quest
アニメ様の『タイトル未定』
426 アニメ様日記 2023年7月23日(日)
取材の予習で『世界一初恋』第1期を全話観た。1話から4話がぶっちぎりの面白さ。4話まではエメラルド編集部編集者の小野寺律と同編集部編集長の高野政宗の話だ。本放送時に5話でマンガ家の吉野千秋が主人公になって、当惑したのを思い出した。あれ、前回までの話は? と思ったのだ。今回も当惑した。8話と9話はエメラルド編集部編集者の木佐翔太と書店バイトの雪名皇の話。雪名は大学生のイケメンで女性客にモテモテ。その彼が木佐が担当したマンガのファンで、木佐が担当したマンガには共通するものがあると言う。木佐が雪名の自宅に行くと、本棚に木佐が担当したマンガの単行本がズラリと並んでいた。雪名は書店バイトとして木佐が担当したマンガを売りまくっており、さらにこれからもキャンペーンをやって売ってくれると言う。木佐は雪名の顔が好きで、片想いしていたのだが、雪名も木佐が好きだと言ってくれる。本放送時にもSNSで書いたはずだけど、これは編集者としては夢だよね。自分の好みの相手が、自分が編集を担当した作品が好きで、名前を出していないのに自分が担当した作品に共通するものを見つけて、全てを好きだと言ってくれる。さらに書店員として売りまくってくれる。その上で自分のことを好きだと言ってくれる。妄想の純度が高い。
ネットで長濵博史監督の『うずまき』のPVを観る。凄い出来になりそうだ。就寝前に「事情を知らない転校生がグイグイくる。」15巻を読む。よかった。正直に言うと感動した。話もいいんだけど、コマ割り(ページ構成)も素晴らしかった。
2023年7月24日(月)
マッドハウス50周年記念上映イベントのための人気投票の結果を見る。作品部門の上位にりんたろう監督作品がないところに時代が変わったことを感じた。人気投票のキャラクター部門で得票数上位の10人のうち『ギャラクシーエンジェル』のキャラが3人、『宇宙よりも遠い場所』のキャラが3人だった。おお、そうなのか。ちょっと嬉しい。特に、今でも『ギャラクシーエンジェル』を好きな人がいるのが嬉しい。
ワイフとグランドシネマサンシャインで「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」【IMAXレーザーGT字幕版】を鑑賞。作りが豪華でそれはそれでいいのだけど、ひとつひとつの描写がたっぷりしすぎかな。165分の作品だけど、お話だけだったら90分くらいにまとまったのでは。いや、そのたっぷりした感じがいいと思う人もいるんだろうけど。トム・クルーズはやはりお年を感じさせて「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」に続けて、ベテランが頑張っているのを応援しながら観る映画だった。ネガティブなことを書いているみたいだけど、配信で観るよりも劇場で観たほうがよかったし、IMAXで観てよかった。「ミッション:インポッシブル」の前にやっていた「デューン 砂の惑星PART2」のIMAX版予告が凄かった。ほぼ全カットがフルサイズIMAX画角(1.43:1)だった。これは楽しみ。
取材の予習で『純情ロマンチカ』と『ひぐらしのなく頃に』を数話ずつ観る。『純情ロマンチカ』と『世界一初恋』だと、やっぱり『世界一初恋』のほうが観やすい。『ひぐらしのなく頃に』のトゲトゲした感じが今となっては新鮮。
2023年7月25日(火)
取材の予習で『ゴールデンタイム』1話から7話を観た。編集作業中の「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」で、確認したいことがあって『トップをねらえ2!』全話を流し観した。
2023年7月26日(水)
朝の散歩の途中で、大塚公園でラジオ体操に参加。この公園には何度か来ているけど、ラジオ体操に参加したのは初めて。公園として広いし、陽射しと日陰のコントラストもいいし、人が多いし、子どももいるし、蝉の鳴き声も大きいし、実に夏らしい時間だった。午後は検査のために病院Bに。移動と病院での待ち時間で「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン ―実績・省察・評価・総括―」に目を通す。これが『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を総括する書籍になるのだろうか。
2023年7月27日(木)
「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」についての打ち合わせで「『ケモノヅメ』の話数は話をカタカナのワで表記するのが正しいのではないですか」という意見が出た。つまり、第1ワ「初めての味」とか、第2ワ「辛酸の決別」とか、第3ワ「しょっぱい新月の夜」と表記するのが正しいのではないか、ということだ。確かにそんな表記を見たなあと思って確認する。本編ではサブタイトル画面に話数表記はない。しかし、バンダイチャンネルの表記は第1ワ、第2ワ、第3ワ……だ。おそらくこれは放映当時の『ケモノヅメ』公式サイトで、第1ワ、第2ワ、第3ワ……と表記していたことの名残であるに違いない。そして、その表記は公式サイトを構成していたワタシが決めたことなのである。この混乱はワタシか、ワタシのせいか。バンダイチャンネルが話数表記にこだわっているのも偉いと思った。
新文芸坐で「ノートルダム 炎の大聖堂」をどんな内容か知らないで観た。観る前にはノートルダム大聖堂再建の映画かと思っていたけど、ポスターを観るとミステリ映画のようでもある。上映が始まってから火災をモチーフにしたドキュメンタリー風の映画だということが分かった。どうやって撮ったんだ? と思う映画でもあった。 『サイボーグ009』(1968)の19、20話を観た。やたらと作画がいいところがあった。取材の予習で『極主夫道』を数時間分観た。Amazon prime videoの「Creator’s Time アニメ監督 今千秋」1から3も観た。
2023年7月28日(金)
朝の散歩では池袋から新宿まで歩いた。そして、新宿中央公園でラジオ体操に参加した。散歩中は「魔法の天使クリィミーマミ80′s J-POPヒッツ」を聴いた。よかった。太田貴子さんが凄い。同アルバムの「優と俊夫からのメッセージ」は優と俊夫のかけあいなんだけど、俊夫が年齢を重ねている感じがよかった。かけあいの中で、 みどりや木所さんも歌いたがっていたという内容の台詞があった。如月みどりを演じた安西正弘さんも、木所隼人を演じた亀山助清さんも、既に亡くなっているのだ。それを聞いてしんみりする。
デスクワークを挟んで快活CLUBに。初めてなので会員登録をした。ここって店員と話をしないで入店、退出できるシステムなのね。『純情ロマンチカ』『世界一初恋』の原作に目を通す。取材の予習で『Back Street Girls』『クールドジ男子』を数時間分ずつ観た。
2023年7月29日(土)
新文芸坐で「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999・独=米/105分/BD/ドキュメンタリー)を鑑賞。プログラムのフルタイトルは「オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」Vol. 6」。やらなくてはいけない作業が多くて、映画を観ている場合ではなかったのだけど、気分転換が必要と感じて新文芸坐に足を運んだ。この映画を観たのは二度目で、前に観たのは新文芸坐で開催された音楽ドキュメンタリーのオールナイトだった。今回の上映に関して言うと、音がかなりよかった。
取材の予習で『魔界王子 devils and realist』『アルカナ・ファミリア La storia della Arcana Famiglia』『映画 ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』を観た。
第836回 アニメを観るというのも仕事
昨今、アニメがまったく観れていません! 昨今と言うかもうここ10年!
これは別に「今のアニメは観るに値しない!」と憤慨してるからとか、「昔のアニメの方が面白かった!」の懐古主義でもありませんし、かつて昭和から活躍されている先輩アニメーターの方々からしょっちゅう言われた「アニメを仕事にしたら、アニメじゃなく実写を観ろ!」の説教を実践してるとかじゃ更々ありません。もちろん、テレビ・劇場・ネット問わず、面白いアニメがたくさんあるのも想像がつくし、観れるものなら観たい気持ちは山々なんですが、ただただ本当にリアルにアニメ観てる時間がないんです!
まあ、元々幼少の頃から“ひねくれ者”の俺。どのみち、能動的に自分から「観たい!」と思うまでは観ない性格で、実を言うと今話題の世界一有名な日本人アニメ監督の大作をまだ観ていないばかりか、2024年も今のところ、観に行く予定すらありません。ついでに白状するなら、その巨匠の作品は2004年作品から観ていません。観たくないというのではなく、観る気にならないのです。あと、ついでに“実は未だ観てないカミングアウト”をすると、まだ本線のシリーズが終わってもいないのに、頭っから作り直そうとしている某シリーズも25年間で1話も観たことがありません。
別にそれらの作品を否定する気は全くありません! 間違いなく、凄く面白いんだと思います! でも、
世界中の皆が「面白い!」と絶賛する作品なら、
俺が観なくてもいいじゃん!
と思うし、これまで50年その価値観で生きてきたのが板垣という人間なんです。
でも、そうとばかりは言ってられません。新しいアニメを観ないと、アニメ界の現状が見えなくなるので、何とか「アニメを観る」努力をしようと、飯の時間とかで、いきあたりバッタリに新番のPVだけでも観るようにしています。で、最近ようやく『SPY✕FAMILY』の何話かを珍しく丸々1話分観ました。非常に無駄なく整理され、落ち着いたカット割りで、やっぱり“予想どおり”面白かったです。「これはウケるし、売れるわ!」と。
ほらね? どーせ面白いんです、アニメは!
そんなことは知ってるんです!
そして、またアニメスタイル様より『カードキャプターさくら』髙橋久美子さん関連本&「今村亮ラクガキ画集」などを頂きまして、ありがとうございます! こういう本を頂けると、アニメ観るより手軽にいつでも巧い方々の画を見れるので非常に嬉しいのです!
第471回 新作アニメ発表まであと2ヶ月強!
アニメ様の『タイトル未定』
425 アニメ様日記 2023年7月16日(日)
ワイフの希望で深夜から散歩に行くことになった。前にも書いたけれど、ワイフは暑さと陽射しが苦手で、このくらいの時期はラジオ体操前後の陽射しでも辛いようだ。午前2時20分に出社して、メールチェック等。午前3時頃にワイフと外出。大塚や雑司ヶ谷を歩く。こんな時間でも馴染みの猫達に会うことができた。その後はデスクワークとか昼寝とか。夕方から吉松さん、ワイフと大塚の「焼鳥 クロウタドリ」で呑む。大層美味しかったけど、僕と吉松さんはちょっと足りなかったので、大塚 幸龍軒でチャーシューエッグ等をいただく。店の中に「セルフ どれでも1缶 350円」と書かれた大きな冷蔵庫があった。客が勝手に冷蔵庫を開けて酒を呑んで、最後にまとめて精算するシステムらしい。この店は前にも来ているが、その時もこのシステムだったかどうかは覚えていない。
作画過激派の人と『君たちはどう生きるか』についてLINEでやりとりした。彼はあの作品の作画について不満が山盛りで、理由を説明してもらっているうちに『紅の豚』以降の宮崎アニメの作画についての謎が氷解した(ような気がした)。
スターチャンネルの「シザーハンズ」の吹き替え版を録画で少し観る。エドワードの吹き替えは塩沢兼人さん。こういった感じの塩沢さんもいいなあ。
2023年7月17日(月)
録画で東映チャンネルの『サイボーグ009』(1968)を流し観。15話「悲劇の獣人」と16話「太平洋の亡霊」の2本立て。濃いなあ。どちらも脚本は辻真先さん。どちらもサイボーグ戦士が敵を倒していないところもポイントか。「悲劇の獣人」は原作「移民編」をアレンジしたものだ。核戦争の結果、異形の存在として産まれた未来人が現代に現れる話で、今の目で観ると、脚の無い未来人の少女が「憎らしい脚」と言って、003の脚を撃つところが凄い。「太平洋の亡霊」は言わずとしれた芹川有吾演出の傑作。他の話数と比べると、緊張感がケタ違い。話も凄いんだけど、セリフのテンションと選曲、それらの畳みかけが素晴らしい。前から気になっていたけど、情報量が多すぎて、Aパートでセリフが太平洋戦争兵器本のネームみたいになってしまっている。
WOWOWでやっていた「流浪の月」を途中から最後まで観る。前にも途中から最後まで観た。話として好きなタイプではないんだけど、映画としては好きなタイプの作品ではないかと思った。
タブレットでKindle Unlimitedとdマガジンの雑誌に目を通す。書店の店頭で見かけて、いいなと思った雑誌のほとんどがサブスクにあってなんだか罪悪感が。いや、読み放題でもお金は動いているんだから、罪悪感を感じる必要はないんだけど。
2023年7月18日(火)
ひたすら事務所で作業をした日。事務所からちょっと離れた寿司屋でランチを食べるつもりだったのだけど、酷暑でそこまで歩くのが辛そうなのであきらめる。
2023年7月19日(水)
仕事の合間にTOHOシネマズ池袋で『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』を鑑賞。基本的には地に足がついた話だった。長い会話のやりとりで物語を進めるのはラノベ原作のアニメではよくあるが、この映画はその会話で話題になるのが受験だったり、通信制高校のシステムだったりするところが、ちょっと異色。最後の決意の部分は劇的で面白かったけど、1本の映画としては物足りない。原作を順に映像化していくシリーズであるはずだから「1本の映画として」考えるのが間違いだと言われるかもしれないけど。
2023年7月20日(木)
午前2時45分に出社。午前3時55分に原稿が届いて、LINEでやりとり。夜型の人と極端な朝型の人が両方とも活動している時間の出来事だった。『君たちはどう生きるか』を【IMAXレーザーGT版】で鑑賞。作品に対する理解が深まった気がする。
2023年7月21日(金)
前夜の『呪術廻戦 懐玉・玉折』はアクションもよかったけれど、カヌー、食事、水族館等のシーンをまとめて見せるパートもよかった。仕事で確認することがあって『涼宮ハルヒの消失』を少し観る。その後、『涼宮ハルヒの憂鬱』2006年版を観始めて、あまりにも面白いので7話まで観てしまう。
2023年7月22日(土)
午前2時に出社。事務所に入った時点で『AIの遺電子』が放映中だった。『デキる猫は今日も憂鬱』もリアルタイムで観る。散歩を挟んで、夕方までデスクワーク。ワイフと出かけて鬼子母神の盆踊りに。自分達は踊らないで、盆踊りの雰囲気を楽しむ。
第835回 2024年の始まり~
——という訳で、年末年始、山形に行ってきました!
山形県鶴岡市は自分の両親の実家で、中学生の頃までは夏休みか冬休み、両親の帰省に毎年連れて行かれたものです。夏休みの場合は20数日、冬は10数日ほど滞在しました。夏は海や盆踊りを楽しみました。冬の雪山はまるで水墨画のように綺麗で、一階が埋まるほどの大雪にも子供の頃は歓喜したものです。正に山形は自分にとってもう一つの大好きな故郷。
そんな俺は1992年に上京したのもあり、仕事という仕事に夢中で好きな山形になかなか行けないまま、30数年も経ってしまいました。一昨年、父親が亡くなって以来「山形に行きたい」熱が高まってた自分ですが、今回ようやく実現した山形行き。母方の実家である田代も、父方の実家・水沢も、30数年振りの懐かしい景色の連続。そして、両家の従兄らとも再会し、皆さんの手厚い歓迎に感激しました。
無理くり仕事にこじつける訳ではありませんが、こういう郷愁や懐かしい日本の風景と、そこで人と合う喜び~みたいなのをいつかアニメで描けたらなぁ、と思っています。
と、従兄らとのドライブの最中、突如スマホからの警報!
地震により被害を受けられた皆様、心よりお見舞い申し上げます。
第272回 ふたりの物語 〜ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー〜
腹巻猫です。本年もよろしくお願いいたします。1月20日にサントラDJイベント・Soundtrack Pub Mission#44を開催します。特集は「2023年劇伴大賞」。参加を希望する方は、2023年に発表された映像音楽、もしくは映像音楽商品(旧作含む)の中から、特に印象に残った1曲をお持ちください(持ってこなくても参加できます)。詳細は下記イベントページをご覧ください。
https://www.soundtrackpub.com/event/2024/01/20240120.html
今回は昨年末にサンドトラック・アルバムがリリースされた『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』を取り上げたい。筆者はTVアニメ版を観ていて「サントラ出ないのかなー」と思っていたから、劇場版のサントラが出ると知って歓喜したのである。
『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』はフランス、韓国、日本の共同製作による3DCGアニメ。日本のTVアニメの影響をうかがわせる変身ヒロインものである。2015年からフランスや韓国、アメリカなどで放映され、日本では2018年からCSのディズニーチャンネルで吹替版の放映が開始された。その後、BS11やテレビ東京系でも放映されている。国内ではプリキュアシリーズなどの人気に隠れてあまり目立たないが、世界各国で放映され、現在シーズン5まで制作されている人気作品だ。今回取り上げる『ザ・ムービー』はその劇場版である。日本では劇場公開はされず、Netflixで配信されている。
ミラキュラスは驚くべき力を秘めた魔法の宝石。何世紀ものあいだ、世界を悪の手から守る偉大なヒーローに与えられてきた。
パリに住む高校生の少女マリネットと同級生の少年アドリアンは、ミラキュラスの持ち主として選ばれ、それぞれ、レディバグとシャノワールに変身する力を手に入れる。2人はマスクに隠された互いの素顔を知らないまま、ホーク・モスが町に放つアクマから人々を守るために、力を合わせて戦い始めた。
キャラクター設定や変身シーンなどに『美少女戦士セーラームーン』へのオマージュが感じられて楽しい。いっぽうで、レディバグのコスチュームはテントウ虫柄のボディスーツという、日本の変身ヒロインとは一線を画すデザイン。日本とのセンスの違いがうかがえて興味深いところだ。
マリネットとアドリアンの関係にも『セーラームーン』の影響が感じられる。マリネットはアドリアンに惹かれているが、アドリアン(シャノワール)はレディバグに惹かれている。互いに正体を知らないので、アドリアンはマリネットの気持ちに応えることができず、レディバグもシャノワールの気持ちに応えることができない。海外アニメではあまり見たことがない、日本の少女マンガみたいな展開にキュンとする。そういうところが、日本の視聴者にも支持されているのだろう。
劇場版『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』はTVアニメ版の続編や外伝ではなく、同じ設定とキャラクターを使った、独立した作品として作られている。レディバグとシャノワールの誕生から始まり、マリネットとアドリアンの関係に大きな進展があって終わる。TVアニメ版をぎゅっと圧縮したようなストーリーだ。たとえて言うなら、TVアニメ『銀河鉄道999』に対する劇場版『銀河鉄道999』、もしくはTVアニメ『新・エースをねらえ!』に対する劇場版『エースをねらえ!』のような作品。TVアニメ版を観ていない人にもお奨めである。
ただ、『ザ・ムービー』にはTVアニメ版にはない驚きの趣向がある。ミュージカルじたてになっているのだ。要所要所で、マリネットやアドリアンの心情が挿入歌として披露される。マリネットが初めてレディバグになる場面も、妖精ティッキーがヒーローの使命を歌で伝える演出になっている。TVアニメ版の設定を初見の人にも楽しみながら理解してもらうための工夫だろう。うまいアレンジだと思った。
音楽を手がけたのは、TVアニメ版から本作の監督と音楽を担当しているジェレミー・ザグ(Jeremy ZAG)。ジェレミー・ザグはノアム・カニエル(Noam Kaniel)と共同で主題歌の作曲も手がけている。ノアム・カニエルは日本のアニメのフランス語版主題歌を歌ったり、テーマソングの作曲を手がけたりしている歌手・作曲家である。
『ザ・ムービー』では、そのTVアニメ版主題歌のメロディが挿入歌や劇中音楽に組み込まれていることに感心した。TVアニメ版の主題歌は、一度聴くと耳に残るキャッチーなメロディが特徴。TVアニメ版に親しんでいるファンは、なじみのあるメロディが聞こえてくることで『ザ・ムービー』の世界にすっと入っていくことができる。
演奏は「DREAM TOWN ORCHESTRA」。70人以上の編成のフルオーケストラである。劇場版にふさわしいシンフォニックサウンドが魅力だ。
本作のサウンドトラック・アルバムは「ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで2023年12月20日にランブリング・レコーズからCDと配信でリリースされた。CDは2枚組。ちなみにCDが発売されているのは日本とドイツだけのようである。収録曲は以下のとおり。
ディスク1
- If I Believed in Me(自分を信じてみたら)‐日本語版‐
- Alone Again(アローン・アゲイン)
- You Are Ladybug(ユー・アー・レディバグ)
- My Lady(マイ・レディ)‐日本語版‐
- Chaos Will Reign Today(カオスが今日やってくる)‐日本語版‐
- Courage in Me(わたしの中の勇気)‐日本語版‐
- Stronger Together(ふたりなら強くなれる)‐日本語版‐
- Reaching Out(わたしらしく)‐日本語版‐
- Now I See(ナウ・アイ・シー)
- Opening Credits Of The Series(Milaculous Ladybug VA remix)(ミラキュラスTVシリーズ オープニング・テーマ)
ディスク2
- The Legend of the Miraculous(ミラキュラスの伝説)
- La vie a Paris !(パリでの生活!)
- Friends and Frenemies(友だちと嫌なヤツ)
- The Love of a Lifetime(人生をかけた愛)
- Regrets and Secrets(後悔と秘密)
- Let Darkness Rise(闇を甦らせる)
- Running Away(逃げろ)
- The Ring and the Cat(指輪と猫)
- Who Saves a Life Saves the World(一人を救う者は世界を救う)
- Tikki a Magical Encounter(魔法の使者ティッキー)
- The Ladybug Destiny(レディバグの運命)
- Stoneheart(ストーンハート)
- Two Halves Are Stronger as a Whole(ふたりなら最強)
- Secrets Between Friends(友だち同士の秘密)
- The Heist(強盗)
- Le jardin des Tuileries(チュイルリー公園)
- Rollercoasters!(ジェットコースターの危機)
- Alone in the World(世界にひとりぼっち)
- Since I’ve Met You(君と出逢ってから)
- The Empty Heart Behind the Mask(仮面の奥のからっぽな心)
- The Akumas Attack(アクマの攻撃)
- All Is Lost(すべて失った)
- The True Hero Is Behind the Mask(本当のヒーローは仮面の下に)
- Courage in Me (Alternative Version)(わたしの中の勇気[別バージョン])
- Moment of Truth(真実の瞬間)
- The Power of Love(愛のちから)
- Le bal de l’Opera(仮面舞踏会)
- Drop the Masks(仮面をはずして)
歌と劇中音楽(BGM)を別のディスクに収めた2枚組。配信版も同様の曲順になっている。
個人的には歌とBGMを区別せずに劇中使用順に並べてほしかったと思うが、そこは聴く人によって好みの分かれるところだろう。
日本語版でマリネットの歌を吹き替えているのはメロディ・チューバック(Melody Chubak)。TVアニメ版の日本語版主題歌も歌っているアーティストだ。マリネットを演じる奈波果林と声質が似ているので、セリフから歌、歌からセリフに移っても違和感はない。メロディ・チューバックの表現力豊かな歌唱は説得力があって、ミュージカルじたての本作にはぴったりだと思った。
さて、本作の音楽は、メインテーマとなる主題歌のメロディのほかに、いくつかのメインとなるモチーフが設定されている。
劇場版が始まって最初に流れる曲は、ディスク2の1曲目「The Legend of the Miraculous(ミラキュラスの伝説)」。魔法のパワーを秘めた宝石・ミラキュラスの伝説がナレーションで紹介されるプロローグの場面だ。この曲の中に本作の音楽の主要なモチーフが登場する。
最初に現れるのはメインテーマ(TVアニメ版主題歌)のメロディ。次に悪役ホーク・モスの愛のテーマが短く奏でられる。続いて、マリネットとアドリアンの愛のテーマ(挿入歌「Now I See」のモチーフ)。最後は「Now I See」のモチーフのオーケストラとコーラスによる壮大な変奏で終わる。
この曲が全体の序曲になっていて、提示されたモチーフが以降の音楽の中にさまざまに形を変えて現れる。実に映画的な音楽設計だ。
たとえば、マリネットとアドリアンがミラキュラスの力を秘めたアイテムを手に入れる重要な場面。使用される曲「The Ring and the Cat(指輪と猫)」(ディスク2:トラック8)と「Who Saves a Life Saves the World(一人を救う者は世界を救う)」(同:トラック9)にはメインテーマのメロディが挿入されて、2人がヒーローになる運命にあることを暗示する。
マリネットの前に妖精ティッキーが現れ、マリネットにレディバグの使命を伝える場面でも、ティッキーが歌う挿入歌「You Are Ladybug(ユー・アー・レディバグ)」にメインテーマのメロディが使われている。
そして、レディバグになることを迷っていたマリネットが、遊園地の危機を見て、変身する覚悟を固める場面。マリネットが歌う「Courage in Me(わたしの中の勇気)」の最後にメインテーマのメロディが現れ、マリネットの決意を表現する。歌詞とメロディと歌声が一体となって感動を呼ぶ名場面になっている。
また、マリネットとアドリアンの恋心は挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」のメロディで表現されている。このメロディが初めて登場するのは、本編が始まってまもなく、マリネットがアドリアンと図書室で出会う場面の曲「Regrets and Secrets(後悔と秘密)」(ディスク2:トラック5)。フルートが「Now I See」のモチーフをやさしく奏でて、2人のこれからを予感させる。さりげなく巧みな音楽演出である。
同じモチーフは、アドリアンがレディバグを想う場面の曲「Alone in the World(世界にひとりぼっち)」(同:トラック18)と「Since I’ve Met You(君と出逢ってから)」(同:トラック19)にも挿入されている。さらにアドリアンとマリネットがデュエットする挿入歌「Stronger Together(ふたりなら強くなれる)」の中でも同じモチーフがくり返され、アドリアンの切なさを強調する。
クライマックスは、これらのモチーフが集結してドラマを盛り上げる。音楽的にも聴かせどころとなっている。
ホーク・モスにミラキュラスを奪われてしまったレディバグ(マリネット)が、ふたたび立ち上がる場面。「The True Hero Is Behind the Mask(本当のヒーローは仮面の下に)」(ディスク2:トラック23)が流れ、コーラスをともなったメインテーマのメロディがヒーローの復活を讃える。
ホーク・モスが正体を現し、アクマが浄化されていく場面では、哀感を帯びた「Moment of Truth(真実の瞬間)」(同:トラック25)が流れる。序盤で流れたホーク・モスの愛のテーマ「The Love of a Lifetime(人生をかけた愛)」(同:トラック4)の変奏である。
そして、戦い終わったあと、レディバグがミラキュラスの力で破壊された町を復旧する場面。「Now I See」の壮大な変奏「The Power of Love(愛のちから)」(同:トラック26)が平和と希望を歌い上げる。
物語のエピローグでは、マリネットとアドリアンの関係に進展がある。シャノワールの正体を知ったマリネットが仮面舞踏会の会場に現れる場面は、挿入歌「Now I See」のメロディをアレンジした「Le bal de l’Opera(仮面舞踏会)」(ディスク2:トラック27)で彩られる。ここではリズムを伴った力強いアレンジになっていて、マリネットの心の高揚が伝わってくる。それに続く、2人が相対する場面の曲「Drop the Masks(仮面をはずして)」(同:トラック28)。「Now I See」のメロディがピアノによる繊細なアレンジからオーケストラとコーラスによる雄大な曲想に展開し、大団円の余韻とともに作品を締めくくる。
このあとのエンドクレジットは、いわばカーテンコール。劇中では使用されなかった3曲が続けて流れる。
挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」と「Alone Again(アローン・アゲイン)」、それにインスト曲「Courage in Me (Alternative Version)(わたしの中の勇気[別バージョン])」(ディスク2:トラック24)である。マリネットとアドリアンの愛のテーマである「Now I See」とアドリアンの心情を歌う「Alone Again」、そして、メインテーマを変奏した「Courage in Me (Alternative Version)」が選ばれていることから、本作の音楽の中心がこの3つのモチーフにあることがうかがえる。
『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』はヒーローの物語であると同時に、なにより、マリネットとアドリアンの物語なのである。
ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー オリジナルサウンドトラック
Amazon
アニメ様の『タイトル未定』
424 アニメ様日記 2023年7月9日(日)
ワイフとほおずき市開催中の浅草に。露店のほおずきを見て、浅草寺に参拝する。ほおずきは買わないで、ワイフのために風鈴を買った。浅草は午前10時台から吞み屋が営業していた。若いカップルや女性で賑わっている居酒屋もあった。ホッピー通りの店で呑んで、その後、鈴芳に移動して生ホッピーを吞んだ。ワイフの希望で壽々喜園 浅草本店で「世界で一番濃い抹茶ジェラート」をいただく。事務所に戻って書籍の作業をやるつもりだったけれど、アルコールが入っていたので、それ以外の作業を進めた。
7月以降は土曜から日曜にかけての深夜アニメがかなり多い。以下がそのタイトル(小黒の観測範囲内)。
⋯⋯⋯⋯
『レベル1だけどユニークスキルで最強です』
『ライアー・ライアー』
『BLEACH 千年血戦篇 訣別譚』
『ホリミヤ -piece-』
『Atelier Ryza ANIMATION 常闇の女王と秘密の隠れ家』
『TIGER & BUNNY 2』
『魔王学院の不適合者II ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』
『EDENS ZERO[第2期]』
『AYAKA ‐あやか‐』
『てんぷる』
『うちの会社の小さい先輩の話』
『実は俺、最強でした?』
⋯⋯⋯⋯
2023年7月10日(月)
CSで録画した「ビューティ・ペア 真赤な青春」を観た。1977年の映画だ。ビューティ・ペアをビューティ・ペアが演じるドキュメンタリー風のフィクション。試合シーンの映像は大味だけど、映画館で観たら臨場感があったかも。
書籍「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の校正等を進める。17時から伊東食堂でライターの前田久さん、事務所のメンバーと食事。前田さんにたっぷりと食べてもらう。ワイフが新潟で探して見つからなかった『らんま1/2』のカップ酒が伊東食堂にあった。
中古で購入した「鋼の錬金術師 BOX SET-ARCHIVES-」について。これは凄い。書籍ではなくて映像・音楽・書籍のセットなのだが、ムックとも記録全集とも違うアニメ書籍の理想のかたちかもしれない。作品に対する愛情と誇りが詰まった商品だと感じた。一番イケてると思ったのは、イベントポスターを含めた公式ポスターの収録とパッケージ用イラストの収録。劇場版チケット等のグッズの復刻も凄い。デザインが垢抜けているのもよい。
『BLACK★ROCK SHOOTER』のPILOT Editionを観る必要が生じて、Amazonを検索してみたところ「購入回数: 2回。」の文字が。購入回数2回だとお。ジャケット画像を見てみると、確かに事務所で見かけた記憶がある。
ライターの廣田恵介さんが亡くなったことを知る。自分の仕事にプライドを持っており、体当たりで仕事をしている。彼についてはそのように思っていた。廣田さんがキュレーターを務めた「GIANT ROBOTS 日本の巨大ロボット群像」で資料協力をしたのが、最後の付き合いになった。その時にもっと話をしておけばよかった。彼の昔のブログが好きだった。ご冥福をお祈りいたします。
2023年7月11日(火)
朝の散歩の途中で、大塚の山下書店で編集中の書籍に関して、製本のサンプルになりそうな本を買い込む。赤本も買った。赤本買うなんて、大学受験以来だ。新文芸坐の13時5分からの回で「ヨーヨー」(1964・仏/98分/DCP)を鑑賞。プログラム「世界の映画作家Vol. 236 ピエール・エテックス」の1本。洒落た描写が多くて、それが楽しい。映画前半のほうが楽しめた。父親が豪邸を出て、親子3人で旅を始めたあたりが一番よかった。終盤はよく分からなかった。どうして、象? お父さんとお母さんは? ピエール・エテックス監督の作品はこれしか観ていないので無責任な発言になるが、同じような作りなら、短編のほうがいいかもしれない。監督の短編も観てみたい。映画の後でジュンク堂に。朝に続いて製本のサンプルになる本を買い込む。就寝前に『君たちはどう生きるか』初日のチケットをネットで購入する。
2023年7月12日(水)
「わく 別誂 寄り路処ふう」でお世話になっているある方と吞む。この店はランチで入ったことはあるけど、夜に来たのは初めて。いい店だった。
2023年7月13日(木)
朝の散歩はワイフと。普段と散歩の時間をズラして、午前4時くらいにマンションを出る。このくらいの時間なら、暑さと陽射しが苦手なワイフも大丈夫のはず。カルチュア・エンタテインメント株式会社から出ていた「季刊エス」と「SS」が、株式会社パイ インターナショナルから発売・発行されることを知る。次々に出版社を変えて出し続けているところがすごい。いやあ、大したものだ。
新文芸坐で「CURE 4Kデジタル修復版」を【4K上映】で鑑賞。1997年の映画だ。以下、ネタバレあり。評判がいい映画であることと、役所広司さんが刑事役をやっているくらいの事前情報で鑑賞した。途中までオカルトテイストの推理物かと思っていたけど、ホラーだった。主人公の高部(役所広司)が刑事で、犯人が間宮(萩原聖人)。捜査に協力するのが精神科医? の佐久間(うじきつよし)。それと高部の妻、19世紀末の人物の伯楽陶二郎。このあたりが主要登場人物(伯楽陶二郎は声だけが登場)。高部の妻は精神を患っており、高部は妻を愛しているが、その存在が重荷にもなっている。佐久間の設定上の位置づけはよく分からない。中盤までは殺人事件の描写、謎の提示、間宮の特異なキャラクターで、かなりの面白さ。後半も悪くない。高部が間宮を躊躇なく撃つところ等がよかった。怪奇事件が能力者による能力によるものだったみたいなところに落ち着いたのは、いまひとつしっくりこなかった。鑑賞後、Wikipediaやネットにあった監督インタビュー、いくつかの記事に目を通した。当初は「伝道師」のタイトルで制作が進んでいたが、当時の実際の事件に配慮して「CURE」のタイトルに変更したのだそうだ。劇中でも「癒し」という言葉が出ていたはずだけど、ある種の人達にとっては殺人が癒し(あるいは治療)になるということなのだろう。映画の途中で、間宮に誘導されて殺人を犯した女医が、殺人によって自分を解放した(と思われる)ように。映画のラスト、伯楽陶二郎から能力を受け継いだ高部は妻を殺害して(あるいはそれに近い状態にして)、次のシーンでそれまでになく、上機嫌になっていた。あれもCUREということなのだろう。演出は全体によい。特にエンドロール直前のラストカットの切れ味のよさは素晴らしい。よくぞ、あそこで終わらせた。実際にはあの後の展開も撮影されていて、そこは使わなかったらしい。個人的なことを書くと、高部の奥さんに感情移入して観た。
2023年7月14日(金)
グランドシネマサンシャインの8時15分からの回で、ワイフと『君たちはどう生きるか』をDolby Atmosで視聴。事前の情報がほとんどなかったので、どんな映画が始まるのか分からないで観た。ここまで事前の情報無しで映画を観るのは初めてで、上映が始まった瞬間のワクワクはかなりのものだった。内容に関してはどう受け止めていいのか分からないところもあったけれど、充分に楽しむことができた。先が分からないので楽しめたというところもある。作画はかなりよかった。本田雄さんがいい仕事をしているとは聞いていたが、予想以上だった。巧いし、やりきっているところが凄い。
東映株式会社から「宇宙海賊キャプテンハーロック Blu-ray BOX 豪華版」についてメールがあった。予約数が設定した数に達しなかったため、特典として制作する絵コンテが1冊になったのだそうだ。サイトを見ると「予約数が200に達した場合、復刻版絵コンテは2冊!」「予約数が400に達した場合、復刻版絵コンテは3冊!」とある。予約数が200に達しなかったのだろう。残念だ。それにしても寂しい数字だ。
2023年7月15日(土)
『君たちはどう生きるか』の感想がネットに出始めた。「肯定派」も「否定派」も、「分かる派」も「分からない派」も言っていることがバラバラで非常に面白い。むしろ、バラバラなところが、この作品らしいか。作品についての感想はバラバラだれど、作画ファンの作画についての感想は肯定的なものが多い。基本的には「本田雄さんが凄い」。それから「大平さんが目立っている」。
WHITE CINE QUINTOで『マルセル 靴をはいた小さな貝』を鑑賞。予告から想像したよりもずっとよかった。主人公が貝なのにどうして喋れるのか、どうして歩けるのかについては触れないで、しかも、それで違和感なしに物語を進めているところが巧い(ネット動画を観ている人達が、貝が喋っているので驚いているのか、マルセルがキュートなので感心しているのかを曖昧にしている)。悪党に主人公が誘拐されてとか、主人公が自宅に戻るまでの大冒険とか、有りがちなところに流れないで、静かで穏やかな世界を保ったのも好印象。描くべきことを決めて、それを描ききって、きちんと映画になった。そういうことなのだろう。気になったのは終盤に出てきたマルセルの仲間達。貝でないと思しきキャラクターがいた。作っている側が個々のキャラクターの設定を決めているなら、公開してほしい。いや、よく分からないのも魅力なんだろうけど。WHITE CINE QUINTOに行ったのは初めてかな。素敵な映画館だった。
第470回 久々に実家で年越し
【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】
映画監督 原恵一『カラフル』
2024年1月13日(土)にお届けする新文芸坐とアニメスタイルの共同企画プログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】映画監督 原恵一『カラフル』」です。『カラフル』は2010年に公開された劇場アニメーションで、原作は森絵都の同名小説。淡々とした語り口で日常描写を積み重ね、真摯に物語を紡いだ原監督ならではの作品です。トークコーナーのゲストは原監督。聞き手はアニメスタイル編集長の小黒が務めます。
「映画監督 原恵一」は原監督が手がけた作品を上映するシリーズ企画です。2月以降の開催も予定しています。お楽しみに。
チケットは1月6日(土)から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。
■関連記事(公開当時のインタビュー)
【アニメスタイル特報部】『カラフル』原恵一監督インタビュー
http://www.style.fm/as/02_topics/tokuhou/tokuhou_007.shtml
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【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】 |
開催日 |
2024年1月13日(土)13時~ |
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会場 |
新文芸坐 |
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料金 |
一般1900円、各種割引 1500円 |
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トーク出演 |
原恵一(監督)、小黒祐一郎(聞き手) |
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上映タイトル |
『カラフル』(2010/127分) |
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備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
第834回 2023年も終わり
今年もシリーズが発表できて、来年もシリーズ(制作中)。さらに、再来年(制作中)も!
多少の放映開始時期の都合などで空いて見える年もありましたが、2005年から隙間なく監督をやってこられました。これだけでも幸せなことだと思っています。監督降板があった時ですら、その翌月には仕事を振ってくださったプロデューサーさんらには未だ感謝の念に堪えません。
この連載の初期にはちょくちょく語って(書いて)いたと思いますが、自分はアニメーターより先に監督がやりたくて業界に入ってきたので、アニメーターとしてより“監督として作品が作りたい”と思ってきたし、それはこれからも変わらないと思います。
30歳で監督やり始めて来年(年明け早々)50歳を迎えるということは——早20年!
本当に自分は運がいいのでしょう。出﨑統監督憧れで基本きた仕事はどんなジャンルでもお受けしてきましたが、本音を言うとジャンル云々より監督という職でアニメが作りたいし、もっと端的に自分のコンテ(または自分がチェックしたコンテ)でアニメが作りたい! と。ただ、おそらく2024・2025年辺り、アニメ業界はもっと荒れそうです。荒れそうってのは別に何処かの著名人な方の仰る「アニメ業界が滅ぶ」とか考えているのではありません。むしろ、再三言ってるようにアニメの本数は増え続けると思います。それより俺が危惧しているのは、アニメーターやコンテ・演出が徐々にアニメ会社から、●られて行くのではないか? ということです。と言うのも、
業界の人手不足と働き方改革に付け込んで、分不相応な拘束料を貰いつつも、制作会社に対して唾棄するようなSNS発信するアニメーターらに、反撃もしないで沈黙を貫き通している会社側が何を考えているのか? 先週話題にしたAIを我々アニメーターや演出は甘く見ない方がいいですよ!
系の“荒れ”方です。正直、業界総掛かりでもこなせない本数(物量)の企画が回ってて、“一刻も早いAI導入急務!”状態です。そんな時、金は持っていくのに仕事の手は遅いわ、不満ばかりぶちまけるわ、裏で結託して突然大量離脱とかするわ~なアニメーターたちを使わないで、アニメが作れる方法を現在模索中な大手会社(スタジオ)の話がちょくちょく聞えてきます。それはCGかライブ2DかAIかは分かりませんが、旧態依然としたワークスタイルに変に意固地なアニメーターたちに頼らなくて済むアニメーション制作方法を身に付けた時、アニメーターだけでなく演出家も●り捨てられる可能性は高いと思います。しかし現状、それを裏で企むアニメ会社を、どの口が責められるでしょう? 多分、フリーの自宅作業アニメーターらには一々話して回らないでしょう。
ちなみにウチみたいな中小企業は、そんなことを企む余裕はありません(汗)。今いるスタッフでできる限りのパフォーマンスを見せることが先、と考えています。ま、いろいろ問題は山積み……だけでなく、さらにもっともっと積み上り中ではありますが、そんな中まだまだ監督やらせてもらえるってだけで、嬉しい50代が迎えられそうです!
では——。
第217回アニメスタイルイベント
アニメマニアが語るアニメ60年史 PART2
2024年1月28日(日)夜にトークイベント「第217回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史 PART2」を開催します。
アニメスタイル編集長の小黒祐一郎が、独自の視点でアニメの歴史について語るイベントです。このトークは2023年9月9日(土)に開催した「第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史」の続編で、前回のトークで触れられなかった話題について語ります。前回のトークで話した内容を前提にして進めるパートは、なるべくおさらいをしながら進めたいと考えています。また、今回のトークもレジュメを用意して、会場にいらしたお客さんに配布する予定です。
話の聞き手は今回も、プロデューサーとして活躍し、かつてはアニメージュの編集者として腕を振るっていた高橋望さんにお願いします。なお、前回と今回のトークの内容を加筆修正して書籍化するかもしれません。
会場はLOFT/PLUS ONE。今回は昼間ではなく、夜のイベントとなります。ご注意ください。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
なお、前回の「第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史」のトークは現在もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは12月29日(金)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク(会場・チケット関係)
LOFT https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/272817
LivePocket(会場) https://t.livepocket.jp/e/ltrhy
ツイキャス(配信) https://twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/282056
■関連リンク(アニメスタイルチャンネル)
第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史
https://www.nicovideo.jp/watch/so42764339
|
第217回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2024年1月28日(日) |
会場 |
LOFT/PLUS ONE | 出演 |
小黒祐一郎、高橋望 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別) |
アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。
第469回 2023年重大ニュース!
アニメ様の『タイトル未定』
423 アニメ様日記 2023年7月2日(日)
朝の散歩でワイフと第十三回すがも朝顔市に行く。この朝顔市は午前6時30分からやっている。ワイフが一鉢買った。昼間はジュンク堂と三省堂書店に寄って本を見る。読む本を探していたわけではなく、これから作る本の判型と文字組みの参考になるものを探したのだ。しっくりとくるものは見つからなかった。
7月の新番組を片っ端から観る。この日に観たのは『ホリミヤ -piece-』『Atelier Ryza ANIMATION 常闇の女王と秘密の隠れ家』『AYAKA ‐あやか‐』『うちの会社の小さい先輩の話』『実は俺、最強でした?』。
2023年7月3日(月)
『青のオーケストラ』がどんどんよくなっている。昨日の回は演出がよかった。話を進める以上のことをやっていた。グランドシネマサンシャインの10時10分からの回で『劇場版美少女戦士セーラームーンCosmos≪後編≫』を鑑賞。『Crystal』以降の『セーラームーン』で一番充実した仕上がりだったと思う。ただし、≪後編≫より≪前編≫のほうが面白かった。とにかく終わってよかった。難しいとは思うけれど、10年後くらいに再々アニメ化があるといいなあ。イケ・サンパーク近くの寿司屋でランチ。前から入ってみたかった店で、頻繁に前を通っているのに中に入ったのは初めて。これも「時間に余裕があるうちに、色んな店でランチを食べておこうシリーズ」だった。
Zoom打ち合わせ、そして、歯医者。歯医者の後で中央線沿線の某プロダクションに行く予定だったけれど、それが無くなったので新文芸坐に。15時10分からの回で「祈り」(1967・ジョージア/78分/DCP)を鑑賞する。プログラム「日本最終上映 ジョージアの巨匠テンギズ・アブラゼ「祈り三部作」」の1本。画作りはよかったけど、映画としては入りづらかった。オールナイトの1本として観たい感じ。
2023年7月4日(火)
新文芸坐の9時45分からの回で「茶飲友達」(2022/135分/PG12)を鑑賞。予告を何度か観て、気になって鑑賞した。高齢者売春を斡旋するグループとそこで働く老婆達の話で役者がよく、演出もいい。老人同士の行為を素敵なものとしてあつかっているのも、老婆達を愛らしく描いているのもいい。高齢男性にとっては扱いづらい若い女性よりも、落ち着いて接してくれる高齢者女性のほうが好ましいということを、それをセリフでは言わず、ドラマを通じて描いているのもよい。「これは巧いなあ」と感心するセリフがいくつもあった。映画前半は「大変な傑作ではないか」と思いながら観ていたのだけれど、話を広げ過ぎたのかもしれない。1本の映画として上手く着地しなかった印象。高齢者になっても他人との触れ合いが欲しいし、性愛も必要かもしれない。ひょっとしたら、人生の終幕近くに楽しい時間があるかもしれない。それを前半でポジティブなものとして提示しただけで、充分に価値のある映画だと思う。午前中の回にしては客が入っていたが、9割くらいがお年を召した方だった。ご夫婦で来ているお客さんも何組かいた。どんな気持ちでこの映画を観たのか気になる。
午後はワイフと出かけて、先日も行ったラーメン屋の浮浪雲に。美味しかったので、ワイフを誘ったのだ。普段は通らない道で自転車修理の店の前に人なつっこい猫がいた。近くに寄っても逃げない。ワイフは猫を撫で回していた。
劇場で録画した『GUN SMITH CATS』を視聴した。1話と2話以降で随分とキャラ作画が違う。3話は作画メンバーが豪華。あれ? これってDVDを買っていなかったっけ? と思ったらDVDを買ったのは『ライディング・ビーン』だった。
2023年7月5日(水)
打ち合わせで「『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』にはOVAがあるけど、最初のTVシリーズの『鋼の錬金術師』にはOVAが無いですよね」という話になって、それに対して、僕が「いやいや、あるよ。『国家錬金術師とホムンクルスの宴会大会』みたいなタイトルのやつ。それから実写編と現代編とか」と返した。打ち合わせの後で確認したら、正しくは「七大ホムンクルスVS国家錬金術師軍団」だった。それと別に短編で「宴会篇」があって、それとごっちゃになっていたようだ(さらに付け加えると「七大ホムンクルスVS国家錬金術師軍団」はUSJで上映されたイベントムービーであって、OVAではなかった。「宴会篇」等はOVA扱いのはず)。
駒込の「もつ焼 髙賢」に。業界のある方と食事。吞んで食べる。
『好きな子がめがねを忘れた』の1話はかなりインパクトだった。素晴らしい。凝った映像が好きな人、尖った作品が好きな人は必見だと思う。
ドラマ『DIY!!』1話も視聴。アニメ版を徹底的に再現しようとして、ちょっと驚く。アニメと実写の違いについて、改めて考えるきっかけにもなった。
2023年7月6日(木)
夕方、ワイフと鬼子母神の夏市に行く。途中で、朝の散歩で顔馴染みの猫が物陰でだらーんと昼寝をしているのを目撃する。夏市は賑やかで、子どもも多かった。ワイフは金魚掬いで金魚を掬いまくった。
引き続き新番組を片っ端から観る。『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』が凄い内容だった。主人公が本当に自動販売機なのだ。録画で東映チャンネルの『サイボーグ009』(1968)の13話、14話。「Gメン’75」9話、10話を視聴。『サイボーグ009』13話は作画がいいところがあった。木村圭市郎さんの作画が金田伊功さんのルーツだということがよく分かる。
2023年7月7日(金)
仕事の合間に新文芸坐で「蛇の道」(1998/85分/35mm)を鑑賞。ブログラム「呼応する二つのビート 北野武と黒沢清」の1本だ。画像がやたらと粗かったけれど、16ミリフィルムをブローアップしたものだそうだ。その粗さも味わいだと思えた。愛娘を殺された宮下(香川照之)の復讐を、新島という男(哀川翔)が手伝う。二人は犯人と思しきヤクザを拉致監禁するが、さらにもう一人のヤクザを拉致することになり、さらにもう一人⋯⋯。元がVシネマなのも関係しているかもしれないけど、映画として贅肉がほとんどないのに感心した。ロケーションもいい。前半は緊張感があってそれがよかった。最後のどんでん返しは物語としては面白かったけど、映画とてしてはもっとパンチが効いてもよかったと思う。細部に関しては受け止めきれないところがあったけれど、印象に残る作品だ。
『呪術廻戦 懐玉・玉折』1話(25話)を観た。いいものを観せてもらった。画的な見どころが山盛りで、演出もよい。「画がいい」以上の仕上がりだった。原画も見たいけど、演出修正も見てみたい。
2023年7月8日(土)
「第207回アニメスタイルイベント ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」を開催。トークはタイトル『つるばみ色のなぎ子たち』の解説に始まり、つるばみ色の説明。清少納言の衣装設定も公開。YouTubeにも上がっているメイキング動画。さらにメイキング動画のコメンタリー。「枕草子」の研究が進んだために生じた謎について。清少納言の記述はレトリックが入っているのでなく、視覚を優先して書いているのではないか。片渕監督達が作っている映画とはどんなものなのか、どこがドラマの核になるのか。等々。体調不良だった前回と比べると、片渕さんの話は三倍くらいの密度があった。お客さんは今までよりも人数が多かった。
アニメ様の『タイトル未定』
422 アニメ様日記 2023年6月25日(日)
「第206回アニメスタイルイベント ANIMATOR TALK 磯光雄」を開催した日。午前中はイベントの準備など。12時半から16時まで、マンションで休む。17時35分にロフトプラスワンへ到着。楽屋で世間話をすると、トークの前に燃えつきてしまうので、イベント前は僕と磯さんは顔を合わせないことになっていて、僕は開場前からステージで待機していた。トークの内容については満足。開催できてよかった。23時くらいにトークが終了。イベント中に何も食べなかっていなかったので、ワイフと飲食笑商何屋ねこ膳に寄る。
2023年6月26日(月)
沓名さんと書籍「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の追加パートのためのZoom対談。対談は2時間ほどで終了。
Kindleの「昭和50年男 Vol.23」について。紙の本では表紙と巻頭が『超時空要塞マクロス』なんだけど、Kindleではアニメの画像は無し。紙の本でアニメの画像が入っているところはグレーになっている。これはなかなかのインパクトだった。サンライズの作品も同様。
イベントの予習で後まわしにしていた深夜アニメを片っ端から視聴。『山田くんとLv999の恋をする』最終回は、エンディングとその後のエピローグが最高だった。具体的には喫茶店の窓ガラスを、花の模様が回転しながら上に滑っていくカット、その後の「大人の女(と書かれた石)」が地面に落ちるカット、「やめだやめだ」のカットがよかった。
2023年6月27日(火)
事務所に入る前に、午前3時過ぎの池袋を歩いた。道路の角ごとにアイドルみたいなコスプレをしている女の子が、ポツンと立っていた。不思議で面白い光景だった。飲食店の呼び込みなんだけど、コスプレをしているのが池袋らしい。大通りで、コスプレをしている女の子三人がこそこそと世間話をしているのも面白かった。
午前9時から病院Bで診察。先日の内視鏡検査の結果を聞いたのだが、結論としては問題がなかった。1月に大腸癌の手術をして、その後、転移等はしていなかったということだ。よかった。ではあるが、また検査はある。
TOHOシネマズ池袋の15時からの回で『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY』を鑑賞。30分の作品だと分かっていたが、やはり短い。ロケハンと構図に面白いところがあった。
深夜アニメの最終回を次々に視聴。『江戸前エルフ』が終わったのがちょっと寂しい。
2023年6月28日(水)
ワイフと新文芸坐で「別れる決心」を鑑賞。演出が面白いし、力がある監督が作っているのは分かるけど、ノレない映画だった。自分はああいうタイプの男女関係の物語にはノレない。不倫もののほうが楽しめるかも。ワイフは楽しんでいたようだ。
昨年後半から自分用の録画はBlu-rayレコーダーの外付けハードディスクに残しているのだが、地上波のアニメを5倍録画で片っ端から録画して残すと、半年でだいたい4TBを使いきることが判明。
2023年6月29日(木)
グランドシネマサンシャインで「ザ・フラッシュ」【IMAXレーザーGT字幕版】を鑑賞。同作の同劇場での最後のIMAX上映だった。冒頭のヒーロー大活躍はとてもよかった。だけど、冒頭でこれだけ楽しませてくれるということは、実はここがピークなのでは? と思っていたら、その後はマルチバースの話に。またマルチバースか、と思ったらやっぱりその後はスッキリしない展開。ゾッド将軍達とのバトルも、あんなに何度も観せておいて、結局は勝ってないし。スーパーガールのキャラクターがとてもよかった。スーパーガールは僕にとって「かなりアニメ」だった。スーパーガールで単独映画を作ってもらいたいくらいよかった。首をひねるところはあるけれど、最近のヒーロー映画の中では、自分にとって満足度が高い作品だった。
2023年6月30日(金)
公開日のIMAX最初の上映で「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」【IMAXレーザーGT字幕版】を鑑賞。そんなに急いで観るつもりはなかったのだけれど、ワイフが初日に観たいというので、この日に観ることとなった。自分はこのシリーズは断片的にしか観ていないのだけれど、なかなか楽しめた。「アニメスタイル017」の激務後のリハビリのつもりで6月はなるべく映画館に行くようにした。6月に映画館で観た映画は20本。多すぎる気もするけれど、これでも行けなかった映画は多い。
Netflixでアニメ『大奥』を視聴。1話はなんとびっくりの79分。2話が29分、3話が27話。4話が29分。これは配信に特化した企画なんだろうなあ。
2023年7月1日(土)
コラムを書き進める。完成したはずの原稿に手を入れる。ながら観用に色々と映画を流したけれど、しっくりこない。たまたまWOWOWでやっていた「カイジ ファイナルゲーム」にしたら、これがよかった。中国映画の「カイジ 動物世界」も少し観る。
第833回 コンテと脚本の指導
現在、画コンテの指導を2シリーズ同時にしています!
制作中の『沖ツラ(沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる)』と、その次作品(こちらのタイトルはまだ未発表)、2シリーズのコンテマン(ディレクター)の指導・育成を平行してやってる感じです。
ま、指導だ育成だとか言うほど、自分の場合「こーゆー場合は、あーしてこーせい」って感じの教え方はしません。まず「脚本を基に、自分なりに面白く描いてみて~」と割に大雑把な渡し方をする代わりに「2週間で!」と、早く描くことのほうを重視します。
2週間の根拠はと言うと“TVシリーズ1話分のコンテは(1ページに6フレームのコンテ用紙で)概ね80~100ページ”ってことは土曜・日曜は休日なので月~金の5日×2週間(=10日)で100ページと。つまり、“1日10ページ”がノルマ。「ある程度ラフでもいいので、スケジュール内で上げ切ること!」を目標にコンテを切らせ(描かせ)て、必要なだけ俺の方で手を入れて、第831回で前述したように、「加筆・修正をした理由」を描いた本人にちゃんと説明してから決定稿にするという訳です。
ここのところ、ミルパンセでというより板垣個人的にも、
社内スタッフの脚本とコンテの指導に力を注いでいます!
というのも、アニメ会社はこれからAI(人工知能)の導入をしなければ、作り続けられません。単純な話「企画・コンテンツはこれからも増え続けるのに、描き手は減る一方だから」です。我々より上の世代から徐々に引退していく上、我々より後の世代は出生率的に見ても、どんどん減っていく一方。業界的に新人アニメーター育成は必須というのが大前提としたって、これから成人を迎える日本中の若者らの半分以上がアニメーターになってくれでもしない限り、企画に対するスタッフの人数が圧倒的に足りなくなる勘定でしょう。
例えばこの現状で、まだ本線が終わってもいないシリーズを、別スタッフで頭っから作り直すなんて“業界的なアニメーター不足に輪を掛ける”という意味で、どうかと——あ! あくまで例えばです、例えば(失笑)!
で話を戻します。別にAI導入で手描きアニメーターをなくすという気は全くありませんし、なくなるとも思っていません。ただ、内容的に「歩く・走る」だ「手を上げる・下げる」だ程度のどうってことない芝居は人手を掛けずAIに任せて、本当に必要な“演出意図から凝った芝居やアクション”、所謂“作家的素養”が必要なモノこそ、“巧いアニメーター”に描いてもらう! とかです。
つまり、「勤勉・実直な職人こそアニメーターの鑑」的な昭和価値観を言い訳に、本物のモノ作りから照れて逃げ回ってきた我々アニメーターも、そろそろ限界。
「AI導入反対!」とかプラカード掲げる前にもうひと勉強して、
少しでも“アニメーション作家”に近づいてAIを使いこなす側になろう!
と自分自身でも考えているし、周りのスタッフにも「いきなりお話作りは難しくても、脚本やコンテとかから勉強してみない?」と声を掛けている訳です。
繰り返しますが、いつまでも「真面目に描き続けるだけのアニメーターのままで、僕(私)は満足~」では、その仕事皆AIに持って行かれますよ! 4~5年とか、で?
(次週2023年ラストです……。)
第271回 心のありか 〜PLUTO〜
腹巻猫です。12月23日(土)に明大前のカフェバーLIVREでサントラDJイベント劇伴倶楽部忘年会2023を開催します。特集「松本零士メモリアル」と題して、松本零士作品の音楽をいろいろ流す予定。早川優さんと腹巻猫のトークコーナーもあります。12:30〜17:00の開催ですので、夜予定がある方もぜひどうぞ!
詳細は下記。
https://www.soundtrackpub.com/event/2023/12/20231223.html
作曲家・菅野祐悟の映画監督デビュー作品「DAUGHTER」が公開されると聞いて、さっそく観に行った。デビュー作とは思えない完成度の高さで、キューブリックを思わせるシンメトリーにこだわった構図や計算された配色など、絵画でも才能を発揮する菅野祐悟ならではの作品に仕上がっていて感心した。ヒューマントラストシネマ渋谷では12月21日まで舞台挨拶&ミニコンサートつきで上映しているので、興味のある方はぜひこの機会にご覧いただきたい。
映画『DAUGHTER』公式サイト
https://saigate.co.jp/daughter/
今回は、その菅野祐悟が音楽を手がけたアニメ『PLUTO』のサウンドトラックを聴いてみよう。
『PLUTO』は2023年10月26日にNetflixで全6話が配信されたアニメ作品である。
原作は浦沢直樹による同名マンガ。手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』の1エピソード「地上最大のロボット」を大胆にリメイクした作品だ。「地上最大のロボット」の大枠はそのままに、キャラクター、ストーリーを大きくふくらませた独自の作品になっている。筆者は原作発表時に単行本で読んでいたので、アニメ化のニュースを聞いて完成を楽しみにしていた。
世界最高水準のロボットが次々と破壊される事件が発生。ロボット刑事のゲジヒトは事件を調査するうちに、第39次中央アジア紛争時に国連平和維持軍として派遣された7体のロボットが標的になっていることに気づく。ゲジヒトは狙われているロボットをたずねて警告をするが、事件は止まらない。そして、日本のロボット、アトムも犠牲になってしまう。犯人は強大な力を持つ謎のロボット、プルートゥだった。
オリジナルの「地上最大のロボット」はアトムが主人公なのだが、『PLUTO』ではロボット刑事のゲジヒトが狂言回しの役割で、前半の主人公的扱いになっている。連続ロボット殺人(破壊)事件を追うミステリー風展開の中で、キャラクターの背景や葛藤が描かれていく。アニメ版は原作を忠実に映像化していて、見ごたえたっぷり。個人的には出演声優陣の豪華さもうれしかった。
音楽は数々の劇場作品・ドラマ・アニメ音楽で活躍する菅野祐悟が担当。
生楽器を中心とした、王道の映画音楽スタイルの音楽である。菅野祐悟のアニメ作品といえば、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや『PSYCHO-PASS』シリーズなど、「おっ」と思わせるカッコいい曲やエッジの効いた曲が聴けるのが楽しみだが、本作はそういうタイプとはちょっと違う。アニメの音楽というより、余分な装飾や過剰な演出を抑えた、実写劇場作品を思わせる音楽だ。
主要キャラクターであるゲジヒトには、レトロなジャズ調のテーマが設定されている。ジャズ調にしたのはミステリードラマの雰囲気をねらったと同時に、原典である『鉄腕アトム』へのオマージュの意図もありそうだ。劇場アニメ『METROPOLIS』(2001)を観てもわかるように、手塚治虫が描いた未来世界にはジャズサウンドがよく似合うのである。
ゲジヒトのテーマとともに記憶に残るのが、プルートゥにつけられた曲だ。こちらはコントラバスやブラスの低音のサウンドが強調された曲で、1フレーズ鳴っただけで「プルートゥだ」と思わせるモチーフが効果的。劇中でもそれを生かした巧みな演出がされている。本編の頭に原作マンガの絵を使ったマーベル作品のようなイントロがついているが、そのバックに流れているのもプルートゥのモチーフである。
サウンド的には、菅野祐悟自身が演奏するピアノの音が印象的。本作ではピアノがキャラクターの心情を表現する役割を担い、音楽の肝になっている感がある。そのピアノを作曲家自身が弾くことで、スコアに書ききれない微妙なニュアンスまでも音にすることができる。いわば魂がこもった音楽になっているわけだ。
ただ、情報不足でわからないのが、この音楽がどのように作られたかという点。場面展開に合わせて曲調が次々と変化していく曲が多く、映像に合わせたフィルムスコアリングで(もしくは台本や絵コンテを手がかりに)作られたと思われる。が、そういう曲がひとつの場面でなく、複数の場面で使われていたりする。つまり、個々の楽曲はフィルムスコアリング的だが、音楽演出としては溜め録り的なのである。
想像するに、過去に当コラムで取り上げた『地球外少年少女』のケースと同じように、溜め録りとフィルムスコアリングのハイブリッドになっているのではないだろうか。つまり、ゲジヒトのテーマのようなくり返し使う音楽と、特定のシーンに合わせたフィルムスコアリング的な音楽の両方を作り、フィルムスコアリング的音楽もライブラリとして使っていく方式だ。60分×全8話分の音楽をフィルムスコアリングで作ると、劇場作品4本分くらいのボリュームになる。作曲するのも録音するのも(予算的にも)大変である。そういうことでハイブリッド方式が採用されたのではないか(想像です)。
本作のサウンドトラック・アルバムは2023年10月25日に「PLUTO オリジナルサウンドトラック」のタイトルでフライングドッグからCD(2枚組)とデジタル配信でリリースされた。全46曲収録。収録曲は下記を参照。
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A022609/VTCL-60581.html
構成(曲順)はちょっとふしぎである。
本編の流れと曲順とは必ずしも合致していない。個人的には本編の流れに沿った構成にしてほしかったなあと思う。音楽がすばらしいだけに惜しまれる点だ。
ディスク1の1曲目はゲジヒトのテーマ「Clues to the Truth」。レトロなジャズタッチの曲だ。ゲジヒトの登場場面に曲の頭数小節がブリッジ的に流れる演出もあり、ライトモチーフとしても機能している。第1話から第5話までは、この曲がメインテーマ的扱いで、エンディング曲として使用されている。
トラック2の「Spirit of Love」はピアノの前奏からコーラスの入ったエモーショナルな曲調に展開する曲。筆者の想像だが、これは「アトムのテーマ」、もしくはアトムに象徴される「ロボットの心」を表現する曲だと思う。ディスク2のトラック21「Get Close to Each Other」はその変奏で、劇中ではこちらのほうがよく使われている。第2話でアトムがゲジヒトのために泣く場面や第5話で天馬博士がアトムの誕生を回想するシーン、最終話のラストシーン直前など重要な場面に流れた曲である。
トラック3の「Restless Period」はピアノ、フルート、ストリングスなどが奏でる心情曲。ゲジヒトの悲しみのテーマ的に使用されていた。第5話のゲジヒトの回想シーン、第6話でゲジヒトの妻ヘレナがゲジヒトを想う場面での使用が心に残る。
トラック4「Feel Elegant」はピアノとバンドが演奏するジャズタッチの曲。これもまた筆者の想像であるが、これはアトムの妹ウランのテーマではないかと思っている。ディスク2のトラック16「Already Alive at Heart」は同じメロディをピアノとフルートとストリングスでしっとりと奏でた曲で、そちらは第3話や第5話のウランのシーンに選曲されているからだ。ジャズ調の「Feel Elegant」のほうは、第3話のレストランのシーンのBGMとして使用されていた。
ここまでがアルバムの導入部で、トラック5から物語が始まる感じになる。
トラック5「Panic Sense」、トラック「Puzzled Mind」と事件発生を思わせる不穏な曲が続く。次のトラック7「Non-Existence」は、過去に犯した事件のために幽閉されているロボット、ブラウ1589の登場シーンに使われていた。
ここからはアルバムの構成から離れて、本編の展開に沿って印象深い曲を紹介していこう。
第1話の後半は、盲目の作曲家ダンカンとロボット、ノース2号のエピソードである。ノース2号の協力を得て完成した曲をダンカンが演奏するシーン。ディスク2のトラック3「Cherished Memories」が流れる。曲の途中でノース2号とプルートゥとの戦闘になり、いったん別の曲(ディスク1のトラック21「Looming Crisis」)が流れるが、戦いの終盤から「Cherished Memories」に戻る。音楽と映像が一体となった名シーンだ。このエピソードではディスク2のトラック2「母の口ずさむ歌」も重要な役割を果たしている。
第2話は格闘技ロボットとして活躍するブランドのエピソード。ブランドと家族の場面に流れるにぎやかな曲がディスク2のトラック6「Ordinary but Precious Day」。ブランドとプルートゥの戦闘場面にはディスク1のトラック15「A Tactic We Can’t Lose」。ブランドの最後のシーンにはストリングスによる悲しみの曲「The Sorrow is World」(ディスク1:トラック12)が流れていた。「The Sorrow is World」は、第1話で山岳ガイドロボット、モンブランの死を市民が悼むシーンにも選曲されている。
ブランドの好敵手であったヘラクレスは、ブランドの仇を討とうとプルートゥに挑戦する。その戦いが描かれる第5話。戦闘シーンに流れるのはディスク2のトラック20「Final Showdown」。続いてディスク1のトラック19「Solitary Combat」。どちらも緊迫感に富んだバトル曲である。
第6話、ゲジヒトはついにプルートゥと対峙する。宿命的なシーンを彩る曲はディスク1のトラック10「Armful of Flowers」。哀感をたたえたピアノとストリングスが、ゲジヒトが感じたプルートゥの心を表現する。「Armful of Flowers」は第7話のプルートゥ対エプシロンの戦いのクライマックスにも使われていた。曲名から考えても、プルートゥの内面のテーマと受け取ってよいだろう。
第7話は、戦いを嫌うロボット、エプシロンのエピソードである。エプシロンと子どもたちの心温まる場面のバックに流れたのはディスク2のトラック1「Warrior’s Family」。子どもたちが歌う「ボラーの歌」(ディスク2:トラック24)も同じ場面に使われた。
エプシロン対プルートゥの戦いの場面にはスリリングな「Death Battle」(ディスク2:トラック18)。プルートゥを退けたエプシロンが無事帰還する場面にピアノとストリングスによるフランス印象派的な曲「Tragic Beauty」(ディスク1:トラック17)が流れている。「Tragic Beauty」は第3話でエプシロンが登場したときにも選曲された、エプシロンのテーマとも呼べる曲だ。
プルートゥ対エプシロンの決戦の場面にはプルートゥのテーマ「Tremendous Twist」(ディスク2:トラック10)が流れて、その強さを印象づける。子どもを守ろうと最後のパワーをふりしぼるエプシロンの場面にディスク2のトラック17「Catastrophic Spiral」。死闘の決着にはディスク1のトラック16「Ray of Hope」(ドラムなし)が使用された。エプシロンとプルートゥの戦いはほぼ互角で、息詰まるような緊張感に満ちている。
こんなふうに、本編を追体験しようとするとディスク1とディスク2を行き来しないといけないのが、本アルバムのちょっと困ったところ。
しかし、最終話(第8話)のクライマックスは、アルバムの構成と本編の音楽の流れがほぼ一致しているので安心(?)してほしい。
第8話は復活したアトムが地球を危機を救う展開になる。ヘラクレスの戦いの場面にも使われた「Final Showdown」(ディスク2:トラック20)が地球の運命をかけて飛び立つアトムを描写する。この曲は本来、この最終決戦のシーン用に書かれた曲ではないかと思う。
地底で地上最大のロボットと対決するアトムの場面に「Love of Science」(ディスク2:トラック22)。本作の音楽の中でも随一のヒロイックな曲想が聴ける音楽である。この曲が流れるのはこのシーンだけで、溜めに溜めた心情があふれ出すような使い方がうまい。
すべてが終わったあと、アトムとお茶の水博士が星空を見上げて語らう場面に、先に紹介したアトムのテーマとも言うべき「Get Close to Each Other」(ディスク2:トラック21)。このシーンでは、これまで登場したロボットたちの記憶がよみがえって、アトムならずとも涙がこぼれそうになる。
そして、ラストシーンには「Zeal for Life」(ディスク2:トラック23)。5分を超える大曲である。ストリングスの静かな導入から、ピアノが奏でるやすらぎの旋律、そして、力強いリズムに支えられたホルンとストリングスによるメロディへと展開し、終幕の余韻を残す。第6話以降は、ゲジヒトのテーマに代わって、この曲がエンディングに流れていた。そう考えると、この曲が本来の(映画音楽的な意味での)メインテーマと呼べるのではないか。聴き終えたとき、交響曲を聴いたような満足感と感動がある。
『PLUTO』は、ロボットの物語を通じて「心とはなにか」「人間らしさとはなにか」という古くて新しい問題に迫った意欲作である。その音楽は、ドラマ性と繊細な表現をあわせもった、菅野祐悟渾身の作品に仕上がった。あえて生楽器主体のクラシカルともいえるスタイルをとり、自らが演奏するピアノを中心に据えたところに、菅野祐悟の本気を感じる。この音楽、ぜひ、世界に届いてほしい。
PLUTO オリジナルサウンドトラック
Amazon
第468回 複合現実を体感!!
アニメ様の『タイトル未定』
421 アニメ様日記 2023年6月18日(日)
朝からデスクワーク。ワイフと新文芸坐の14時50分の回で「六月の蛇」(2002/77分/BD)を鑑賞。ワイフの希望で観ることになった。エロチックホラーだということ以外は全く前知識無しで観た。「エロチックな内容のエッヂの効いた映画」だと思って観ていたけれど、途中から理解不能な展開に。あのサイバーパンクっぽい人達の集会はなに? とか。カメラマンの飴口(塚本晋也)の身体から伸びた触手みたいなものはなに? とか。最後のラブシーンの直前は何が起きているのかもよく分からなかった。分からないところを含めて印象に残る映画だった。話は前後するけど、主人公の辰巳りん子(黒沢あすか)は地味眼鏡の時も、派手な美人になったところもよかった。それから、新文芸坐の音響が凄かった。特にファーストシーンのシャッター音の響きは、ロードショーを含めて、今年観た映画の中で一番凄かった。
夜は同じ新文芸坐で「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 160】30年目のクレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝」を開催。トークのゲストは本郷みつる監督と湯浅政明さん。今回のお客さんも若かった。『ブリブリ王国の秘宝』初見の方が半分くらい。劇場で観るのが初めての方が90%以上。トークは盛り沢山なものとなった。トーク終了後に本郷さんの同人誌販売。今回販売した同人誌は増補改訂版の「足跡+」。今までよりも沢山の在庫を持ってきてくださったが完売。
以下は一連の『クレヨンしんちゃん』上映に関するメモ。
この日の『ブリブリ王国の秘宝』で、本郷みつる監督による初期映画『クレヨンしんちゃん』第1作から第4作までの上映が終了。最初は第2作と第4作を同じ日に上映し、ひと月後くらいに第1作と第3作を上映するプランだったのだけど、諸般の事情で4回に分けて、第4作、第1作、第3作、第2作の順で1本ずつ上映するかたちになった。完走できてよかった。
初期4本は2012年のオールナイトでもやっているのだが、その時と違うのはお客さんが入れ替わっていて、初めて初期『しんちゃん』を観る人が多かった。トークの内容も懐かしい作品を振り返るというニュアンスが強まった。トータルでイベントとしての幸福度が上がっていた。トークでは2012年のオールナイトで話題にできなかった細部を拾うことができた。『ヘンダーランドの大冒険』で雛形あきこさんが演じる雛形あきこさんが同じセリフを繰り返す理由とか、『ブリブリ王国の秘宝』で小宮悦子さんの出演の経緯とか。本郷監督と原監督の仕事分けについては、第1作の反省を活かした第2作があり、第3作の反省があって第4作があったとか、そういった流れが分かった。企画をしてトークの進行を担当した自分にとっても、達成感のあるプログラムだった。
2023年6月19日(月)
「アニメスタイル017」発売日。ジュンク堂とアニメイトに行って「アニメスタイル017」が売られていることを肉眼で確認した。
グランドシネマサンシャインで『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』【吹替版】を岩浪美和音響監督監修 マルチバースサウンド in BESTIAで鑑賞。期待し過ぎていたのかもしれないけれど、ちょっと残念な仕上がりだった。物語の展開がやたらと遅い。そんなに盛り上がっていないのに「続く」で終わってしまった。後編に期待したい。
以下は「アニメスタイル017」についてのメモ。
「アニメスタイル017」の特集は『王様ランキング』『モブサイコ100 III』『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』『サイバーパンク: エッジランナーズ』の4本。いずれも特集の最初の見ひらきは記事タイトルとキービジュアルで、次の見ひらきが「本編カットを並べただけ」のページとなっている。このふたつの見ひらきが特集の導入部で、作品の基本を読者に伝えるためのものだ。「本編カットを並べただけ」のページは、自分にとって「編集者として『表現』をやっているページ」である。今回は以下のようなコンセプトで構成した。
『王様ランキング』は「この作品を未見の人」が主なターゲットで「『王様ランキング』って面白そうじゃん」と思ってもらうのが狙いだ。2ページを使って1話からラス前までのダイジェストにしたが、物語を追うのではなく「こんなエモい作品です。こんな個性的なキャラが出ます」とアピールするのが目標。いつも上下左右で似た構図のカットが並ばないように気をつけているが、ここはそれが特に大変だった。
『モブサイコ100 III』は「『モブサイコ100』をある程度は知っている人」がターゲットで「3期はドラマチックだったよね」ということを伝えるのが狙い。話数を絞りに絞って6話、8話、12話だけで構成。アクションのカットはほとんど拾わなかった。それから、インタビューで話題になった「大胆に顔をのっぺらぼうにしたカット」をちゃんと入れた。
『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』は「この作品のことをあまり知らない人」が主なターゲットで「作品の楽しい感じを伝える」「DIYシーンのカットを入れる」「影無しが基本の作品であることをアピールする」「作画好きが見たら感心するカットを入れる」「メインキャラは全キャラを入れるが、せるふとぷりんがメインであることが一目で分かるようにする」「インタビューで話題になるキツツキの写真も入れる」等、課題が多かった。
『サイバーパンク: エッジランナーズ』は上記3作とまるでコンセプトが違う。この作品だとストーリーを追うのも違うし、キャラクターを追うのも違う。構成に入る前に相当に悩んだ。どのくらい悩んだかというと、自分で構成する前に、編集部スタッフに使用する写真のノミネートをやってもらったくらいだ。散々悩んだ挙げ句に「色使いが独特であり、その鮮やかさが魅力の作品である」と「エッヂが効いていること」だけを突き詰めることにした。さらに説明すると、通常の印刷では『サイバーパンク: エッジランナーズ』の鮮明な色は再現できないはずで、色が派手な写真を複数並べてその写真と写真のコントラストで、結果として、この作品の色の魅力を表現するという手段を選んだ。『サイバーパンク: エッジランナーズ』の色にどれだけこだわったかというと、通常入稿の前に、この作品の折だけテスト入稿をするくらいにはこだわった。
2023年6月20日(火)
14時から駅前の喫茶店でインタビュー。リモート取材の予定だったのだけど、急に対面の取材になって、喫茶店でやることになった。
2023年6月21日(水)
『スキップとローファー』最終回を観た。このあたりの原作は未読。今回のシリーズは原作途中で終わっているはずだし、そんなに最終回らしかったわけではないのだけれど、これで終わってもいいと思える最終回だった。小学生か中学生の頃に観たら、自分が爽やかな青春を送ることができるのではないかと勘違いしてしまうようなシリーズだった。
朝の散歩では「『蟲師』オリジナルサウンドトラック 蟲音 全」を聴いた。まだ薄暗い時間の散歩で『蟲師』のサントラはなかなか効いた。
ワイフと銀座のTOHOシネマズ日比谷のSCREEN12で「怪物」を観る。かなりよかった。映画としての狙いが面白いし、とにかくよくできている。映画そのものもよかったけれど、パンフレットもよかった。編集者の力かデザイナーの力か分からないが、本の作り手としてのロマンを感じた。この映画は池袋や新宿でもやっているのだが、同じSCREEN12で観た「TAR/ター」がよかったので、同じ劇場の同じスクリーンで観た。入場料はTOHOウェンズデイのサービスで一人1300円。「TAR/ター」の時も似たようなことを書いたはずだが、こんないい映画を、いい環境で、1300円で鑑賞できるなんて申し訳ないくらいだ。
2023年6月22日(木)
朝の散歩では「ロボットアニメ大鑑 下巻」を聴いた。J9シリーズのボーカル曲は半年に一度くらい聴きたくなる。正月から書いていたコラムが、第4回まで終わった。まだ手を入れると思うけど、とにかく第4回まで終わった。
宅配レンタルで『新竹取物語 1000年女王』のDVDが届いたので、とりあえず、1話、8話、9話を観る。『新竹取物語 1000年女王』はDVD BOXを購入したはずなのだが、DVD BOXが見つからないのでレンタルしてしまった。
2023年6月23日(金)
グランドシネマサンシャインの午前8時からの回で『映画 ブラッククローバー 魔法帝の剣』を観る。既にNetflixで配信が始まっているのだが、せっかくなら映画館で観ようと思って配信は観ないようにしていた。Zoom打ち合わせを挟んで新橋に。吉松さんと合流して新橋の居酒屋を見ながら歩く。ちょっとした観光気分だ。屋外座席のある店が並んでいるあたりで吞む。途中で別の店に移動。移動したけど、お勧めの料理以外はメニューが全く同じ(印刷されたメニューだった)で、ちょっとずっこける。ではあるけれど、屋外での吞みは楽しかった。
『新竹取物語 1000年女王』の続きを観た。
2023年6月24日(土)
散歩の途中で、前から入ってみたかったラーメン屋の浮浪雲で昼食。美味しかった。店構えが渋い。これも「時間に余裕があるうちに、色んな店でランチを食べておこうシリーズ」だった。ワイフと新文芸坐の15時40分の回で「戦場のメリークリスマス 4K修復版」(1983・日=英ほか/123分)を4K上映で鑑賞。オリジナル版は公開時に鑑賞している。当時の印象としては話を絞りこんでいて、起承転結やメッセージが分かりやすい映画だったのだけれど、改めて観て、色々なことを盛り込んでいるし、解釈が必要な映画であると思った。個々の登場人物についての印象も当時とは随分と違った。ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)の回想は他のシーンと別映画のような質感。他のシーンと差別化する意図でそのように撮ったものと思われるが、リマスターで他のシーンとの差が際立ったのではないか。
第832回 少年の頃、山形
2023年ももう残り僅かで、年内にこなさなきゃならない仕事がまだまだある!
のです。でもまぁ、なるようにしかならないので、できるだけ片付けて、年末は念願の山形へ!
山形県は両親の実家で、俺が生まれた場所は山形で(母親がお産のために帰省していたとか)、育ちは愛知県名古屋市になります。小・中学生の頃は毎年夏休みか冬休みに家族で山形に行くのが一大イベントでした。
夏休みの大きな盆踊り大会やその帰りに見上げた満天の星空、冬休みの一階が埋まるほどの大雪とその奥に広がっていたまるで水墨画の様な山々、と子供の頃瞼に焼き付き、未だ忘れない風景の数々。多少の想い出補正が掛かっているかも知れませんが(汗)。
高校生になると夏・冬休みは進路関係で潰れていき(当時はまだ美大受験のため、河合塾美術研究所とか通ってて)、そのまま東京の専門学校。つまり30数年、山形行ってない! 『Wake Up,Girls! 新章』制作前の取材(2016年?)でも余りの慌ただしさに、宮城県の隣なのに行く時間が取れませんでした。
で2年前、父親が亡くなった時、山形から叔父と従兄がやって来て「山形さ、遊び来い」と。それからというもの、「山形行きたい熱」が高まってきて今年年末に実行! となったわけ。やっぱり、歳を取って日一日と死に近付くことを感じてくると、自分のルーツに思いを馳せるものなのでしょうか、人間って。
来年自分も50歳。来年以降は山形に限らず、あちこち見て回る時間を作るのが目標!
で、そのためには会社を育てねばなりません。みんな頑張りましょう。
で、また短い上にアニメの話でなくてすみません。でも実は自分の中ではこれからのアニメ作りに、今回の「山形行き」は大いに関係するんですがね。



