
第472回 最近はもっぱらMeta Quest

昨今、アニメがまったく観れていません! 昨今と言うかもうここ10年!
これは別に「今のアニメは観るに値しない!」と憤慨してるからとか、「昔のアニメの方が面白かった!」の懐古主義でもありませんし、かつて昭和から活躍されている先輩アニメーターの方々からしょっちゅう言われた「アニメを仕事にしたら、アニメじゃなく実写を観ろ!」の説教を実践してるとかじゃ更々ありません。もちろん、テレビ・劇場・ネット問わず、面白いアニメがたくさんあるのも想像がつくし、観れるものなら観たい気持ちは山々なんですが、ただただ本当にリアルにアニメ観てる時間がないんです!
まあ、元々幼少の頃から“ひねくれ者”の俺。どのみち、能動的に自分から「観たい!」と思うまでは観ない性格で、実を言うと今話題の世界一有名な日本人アニメ監督の大作をまだ観ていないばかりか、2024年も今のところ、観に行く予定すらありません。ついでに白状するなら、その巨匠の作品は2004年作品から観ていません。観たくないというのではなく、観る気にならないのです。あと、ついでに“実は未だ観てないカミングアウト”をすると、まだ本線のシリーズが終わってもいないのに、頭っから作り直そうとしている某シリーズも25年間で1話も観たことがありません。
別にそれらの作品を否定する気は全くありません! 間違いなく、凄く面白いんだと思います! でも、
世界中の皆が「面白い!」と絶賛する作品なら、
俺が観なくてもいいじゃん!
と思うし、これまで50年その価値観で生きてきたのが板垣という人間なんです。
でも、そうとばかりは言ってられません。新しいアニメを観ないと、アニメ界の現状が見えなくなるので、何とか「アニメを観る」努力をしようと、飯の時間とかで、いきあたりバッタリに新番のPVだけでも観るようにしています。で、最近ようやく『SPY✕FAMILY』の何話かを珍しく丸々1話分観ました。非常に無駄なく整理され、落ち着いたカット割りで、やっぱり“予想どおり”面白かったです。「これはウケるし、売れるわ!」と。
ほらね? どーせ面白いんです、アニメは!
そんなことは知ってるんです!
そして、またアニメスタイル様より『カードキャプターさくら』髙橋久美子さん関連本&「今村亮ラクガキ画集」などを頂きまして、ありがとうございます! こういう本を頂けると、アニメ観るより手軽にいつでも巧い方々の画を見れるので非常に嬉しいのです!
——という訳で、年末年始、山形に行ってきました!
山形県鶴岡市は自分の両親の実家で、中学生の頃までは夏休みか冬休み、両親の帰省に毎年連れて行かれたものです。夏休みの場合は20数日、冬は10数日ほど滞在しました。夏は海や盆踊りを楽しみました。冬の雪山はまるで水墨画のように綺麗で、一階が埋まるほどの大雪にも子供の頃は歓喜したものです。正に山形は自分にとってもう一つの大好きな故郷。
そんな俺は1992年に上京したのもあり、仕事という仕事に夢中で好きな山形になかなか行けないまま、30数年も経ってしまいました。一昨年、父親が亡くなって以来「山形に行きたい」熱が高まってた自分ですが、今回ようやく実現した山形行き。母方の実家である田代も、父方の実家・水沢も、30数年振りの懐かしい景色の連続。そして、両家の従兄らとも再会し、皆さんの手厚い歓迎に感激しました。
無理くり仕事にこじつける訳ではありませんが、こういう郷愁や懐かしい日本の風景と、そこで人と合う喜び~みたいなのをいつかアニメで描けたらなぁ、と思っています。
と、従兄らとのドライブの最中、突如スマホからの警報!
地震により被害を受けられた皆様、心よりお見舞い申し上げます。
腹巻猫です。本年もよろしくお願いいたします。1月20日にサントラDJイベント・Soundtrack Pub Mission#44を開催します。特集は「2023年劇伴大賞」。参加を希望する方は、2023年に発表された映像音楽、もしくは映像音楽商品(旧作含む)の中から、特に印象に残った1曲をお持ちください(持ってこなくても参加できます)。詳細は下記イベントページをご覧ください。
https://www.soundtrackpub.com/event/2024/01/20240120.html
今回は昨年末にサンドトラック・アルバムがリリースされた『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』を取り上げたい。筆者はTVアニメ版を観ていて「サントラ出ないのかなー」と思っていたから、劇場版のサントラが出ると知って歓喜したのである。
『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』はフランス、韓国、日本の共同製作による3DCGアニメ。日本のTVアニメの影響をうかがわせる変身ヒロインものである。2015年からフランスや韓国、アメリカなどで放映され、日本では2018年からCSのディズニーチャンネルで吹替版の放映が開始された。その後、BS11やテレビ東京系でも放映されている。国内ではプリキュアシリーズなどの人気に隠れてあまり目立たないが、世界各国で放映され、現在シーズン5まで制作されている人気作品だ。今回取り上げる『ザ・ムービー』はその劇場版である。日本では劇場公開はされず、Netflixで配信されている。
ミラキュラスは驚くべき力を秘めた魔法の宝石。何世紀ものあいだ、世界を悪の手から守る偉大なヒーローに与えられてきた。
パリに住む高校生の少女マリネットと同級生の少年アドリアンは、ミラキュラスの持ち主として選ばれ、それぞれ、レディバグとシャノワールに変身する力を手に入れる。2人はマスクに隠された互いの素顔を知らないまま、ホーク・モスが町に放つアクマから人々を守るために、力を合わせて戦い始めた。
キャラクター設定や変身シーンなどに『美少女戦士セーラームーン』へのオマージュが感じられて楽しい。いっぽうで、レディバグのコスチュームはテントウ虫柄のボディスーツという、日本の変身ヒロインとは一線を画すデザイン。日本とのセンスの違いがうかがえて興味深いところだ。
マリネットとアドリアンの関係にも『セーラームーン』の影響が感じられる。マリネットはアドリアンに惹かれているが、アドリアン(シャノワール)はレディバグに惹かれている。互いに正体を知らないので、アドリアンはマリネットの気持ちに応えることができず、レディバグもシャノワールの気持ちに応えることができない。海外アニメではあまり見たことがない、日本の少女マンガみたいな展開にキュンとする。そういうところが、日本の視聴者にも支持されているのだろう。
劇場版『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』はTVアニメ版の続編や外伝ではなく、同じ設定とキャラクターを使った、独立した作品として作られている。レディバグとシャノワールの誕生から始まり、マリネットとアドリアンの関係に大きな進展があって終わる。TVアニメ版をぎゅっと圧縮したようなストーリーだ。たとえて言うなら、TVアニメ『銀河鉄道999』に対する劇場版『銀河鉄道999』、もしくはTVアニメ『新・エースをねらえ!』に対する劇場版『エースをねらえ!』のような作品。TVアニメ版を観ていない人にもお奨めである。
ただ、『ザ・ムービー』にはTVアニメ版にはない驚きの趣向がある。ミュージカルじたてになっているのだ。要所要所で、マリネットやアドリアンの心情が挿入歌として披露される。マリネットが初めてレディバグになる場面も、妖精ティッキーがヒーローの使命を歌で伝える演出になっている。TVアニメ版の設定を初見の人にも楽しみながら理解してもらうための工夫だろう。うまいアレンジだと思った。
音楽を手がけたのは、TVアニメ版から本作の監督と音楽を担当しているジェレミー・ザグ(Jeremy ZAG)。ジェレミー・ザグはノアム・カニエル(Noam Kaniel)と共同で主題歌の作曲も手がけている。ノアム・カニエルは日本のアニメのフランス語版主題歌を歌ったり、テーマソングの作曲を手がけたりしている歌手・作曲家である。
『ザ・ムービー』では、そのTVアニメ版主題歌のメロディが挿入歌や劇中音楽に組み込まれていることに感心した。TVアニメ版の主題歌は、一度聴くと耳に残るキャッチーなメロディが特徴。TVアニメ版に親しんでいるファンは、なじみのあるメロディが聞こえてくることで『ザ・ムービー』の世界にすっと入っていくことができる。
演奏は「DREAM TOWN ORCHESTRA」。70人以上の編成のフルオーケストラである。劇場版にふさわしいシンフォニックサウンドが魅力だ。
本作のサウンドトラック・アルバムは「ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで2023年12月20日にランブリング・レコーズからCDと配信でリリースされた。CDは2枚組。ちなみにCDが発売されているのは日本とドイツだけのようである。収録曲は以下のとおり。
ディスク1
ディスク2
歌と劇中音楽(BGM)を別のディスクに収めた2枚組。配信版も同様の曲順になっている。
個人的には歌とBGMを区別せずに劇中使用順に並べてほしかったと思うが、そこは聴く人によって好みの分かれるところだろう。
日本語版でマリネットの歌を吹き替えているのはメロディ・チューバック(Melody Chubak)。TVアニメ版の日本語版主題歌も歌っているアーティストだ。マリネットを演じる奈波果林と声質が似ているので、セリフから歌、歌からセリフに移っても違和感はない。メロディ・チューバックの表現力豊かな歌唱は説得力があって、ミュージカルじたての本作にはぴったりだと思った。
さて、本作の音楽は、メインテーマとなる主題歌のメロディのほかに、いくつかのメインとなるモチーフが設定されている。
劇場版が始まって最初に流れる曲は、ディスク2の1曲目「The Legend of the Miraculous(ミラキュラスの伝説)」。魔法のパワーを秘めた宝石・ミラキュラスの伝説がナレーションで紹介されるプロローグの場面だ。この曲の中に本作の音楽の主要なモチーフが登場する。
最初に現れるのはメインテーマ(TVアニメ版主題歌)のメロディ。次に悪役ホーク・モスの愛のテーマが短く奏でられる。続いて、マリネットとアドリアンの愛のテーマ(挿入歌「Now I See」のモチーフ)。最後は「Now I See」のモチーフのオーケストラとコーラスによる壮大な変奏で終わる。
この曲が全体の序曲になっていて、提示されたモチーフが以降の音楽の中にさまざまに形を変えて現れる。実に映画的な音楽設計だ。
たとえば、マリネットとアドリアンがミラキュラスの力を秘めたアイテムを手に入れる重要な場面。使用される曲「The Ring and the Cat(指輪と猫)」(ディスク2:トラック8)と「Who Saves a Life Saves the World(一人を救う者は世界を救う)」(同:トラック9)にはメインテーマのメロディが挿入されて、2人がヒーローになる運命にあることを暗示する。
マリネットの前に妖精ティッキーが現れ、マリネットにレディバグの使命を伝える場面でも、ティッキーが歌う挿入歌「You Are Ladybug(ユー・アー・レディバグ)」にメインテーマのメロディが使われている。
そして、レディバグになることを迷っていたマリネットが、遊園地の危機を見て、変身する覚悟を固める場面。マリネットが歌う「Courage in Me(わたしの中の勇気)」の最後にメインテーマのメロディが現れ、マリネットの決意を表現する。歌詞とメロディと歌声が一体となって感動を呼ぶ名場面になっている。
また、マリネットとアドリアンの恋心は挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」のメロディで表現されている。このメロディが初めて登場するのは、本編が始まってまもなく、マリネットがアドリアンと図書室で出会う場面の曲「Regrets and Secrets(後悔と秘密)」(ディスク2:トラック5)。フルートが「Now I See」のモチーフをやさしく奏でて、2人のこれからを予感させる。さりげなく巧みな音楽演出である。
同じモチーフは、アドリアンがレディバグを想う場面の曲「Alone in the World(世界にひとりぼっち)」(同:トラック18)と「Since I’ve Met You(君と出逢ってから)」(同:トラック19)にも挿入されている。さらにアドリアンとマリネットがデュエットする挿入歌「Stronger Together(ふたりなら強くなれる)」の中でも同じモチーフがくり返され、アドリアンの切なさを強調する。
クライマックスは、これらのモチーフが集結してドラマを盛り上げる。音楽的にも聴かせどころとなっている。
ホーク・モスにミラキュラスを奪われてしまったレディバグ(マリネット)が、ふたたび立ち上がる場面。「The True Hero Is Behind the Mask(本当のヒーローは仮面の下に)」(ディスク2:トラック23)が流れ、コーラスをともなったメインテーマのメロディがヒーローの復活を讃える。
ホーク・モスが正体を現し、アクマが浄化されていく場面では、哀感を帯びた「Moment of Truth(真実の瞬間)」(同:トラック25)が流れる。序盤で流れたホーク・モスの愛のテーマ「The Love of a Lifetime(人生をかけた愛)」(同:トラック4)の変奏である。
そして、戦い終わったあと、レディバグがミラキュラスの力で破壊された町を復旧する場面。「Now I See」の壮大な変奏「The Power of Love(愛のちから)」(同:トラック26)が平和と希望を歌い上げる。
物語のエピローグでは、マリネットとアドリアンの関係に進展がある。シャノワールの正体を知ったマリネットが仮面舞踏会の会場に現れる場面は、挿入歌「Now I See」のメロディをアレンジした「Le bal de l’Opera(仮面舞踏会)」(ディスク2:トラック27)で彩られる。ここではリズムを伴った力強いアレンジになっていて、マリネットの心の高揚が伝わってくる。それに続く、2人が相対する場面の曲「Drop the Masks(仮面をはずして)」(同:トラック28)。「Now I See」のメロディがピアノによる繊細なアレンジからオーケストラとコーラスによる雄大な曲想に展開し、大団円の余韻とともに作品を締めくくる。
このあとのエンドクレジットは、いわばカーテンコール。劇中では使用されなかった3曲が続けて流れる。
挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」と「Alone Again(アローン・アゲイン)」、それにインスト曲「Courage in Me (Alternative Version)(わたしの中の勇気[別バージョン])」(ディスク2:トラック24)である。マリネットとアドリアンの愛のテーマである「Now I See」とアドリアンの心情を歌う「Alone Again」、そして、メインテーマを変奏した「Courage in Me (Alternative Version)」が選ばれていることから、本作の音楽の中心がこの3つのモチーフにあることがうかがえる。
『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』はヒーローの物語であると同時に、なにより、マリネットとアドリアンの物語なのである。
ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー オリジナルサウンドトラック
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2024年1月13日(土)にお届けする新文芸坐とアニメスタイルの共同企画プログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】映画監督 原恵一『カラフル』」です。『カラフル』は2010年に公開された劇場アニメーションで、原作は森絵都の同名小説。淡々とした語り口で日常描写を積み重ね、真摯に物語を紡いだ原監督ならではの作品です。トークコーナーのゲストは原監督。聞き手はアニメスタイル編集長の小黒が務めます。
「映画監督 原恵一」は原監督が手がけた作品を上映するシリーズ企画です。2月以降の開催も予定しています。お楽しみに。
チケットは1月6日(土)から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。
■関連記事(公開当時のインタビュー)
【アニメスタイル特報部】『カラフル』原恵一監督インタビュー
http://www.style.fm/as/02_topics/tokuhou/tokuhou_007.shtml
【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】 |
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開催日 |
2024年1月13日(土)13時~ |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
一般1900円、各種割引 1500円 |
トーク出演 |
原恵一(監督)、小黒祐一郎(聞き手) |
上映タイトル |
『カラフル』(2010/127分) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
今年もシリーズが発表できて、来年もシリーズ(制作中)。さらに、再来年(制作中)も!
多少の放映開始時期の都合などで空いて見える年もありましたが、2005年から隙間なく監督をやってこられました。これだけでも幸せなことだと思っています。監督降板があった時ですら、その翌月には仕事を振ってくださったプロデューサーさんらには未だ感謝の念に堪えません。
この連載の初期にはちょくちょく語って(書いて)いたと思いますが、自分はアニメーターより先に監督がやりたくて業界に入ってきたので、アニメーターとしてより“監督として作品が作りたい”と思ってきたし、それはこれからも変わらないと思います。
30歳で監督やり始めて来年(年明け早々)50歳を迎えるということは——早20年!
本当に自分は運がいいのでしょう。出﨑統監督憧れで基本きた仕事はどんなジャンルでもお受けしてきましたが、本音を言うとジャンル云々より監督という職でアニメが作りたいし、もっと端的に自分のコンテ(または自分がチェックしたコンテ)でアニメが作りたい! と。ただ、おそらく2024・2025年辺り、アニメ業界はもっと荒れそうです。荒れそうってのは別に何処かの著名人な方の仰る「アニメ業界が滅ぶ」とか考えているのではありません。むしろ、再三言ってるようにアニメの本数は増え続けると思います。それより俺が危惧しているのは、アニメーターやコンテ・演出が徐々にアニメ会社から、●られて行くのではないか? ということです。と言うのも、
業界の人手不足と働き方改革に付け込んで、分不相応な拘束料を貰いつつも、制作会社に対して唾棄するようなSNS発信するアニメーターらに、反撃もしないで沈黙を貫き通している会社側が何を考えているのか? 先週話題にしたAIを我々アニメーターや演出は甘く見ない方がいいですよ!
系の“荒れ”方です。正直、業界総掛かりでもこなせない本数(物量)の企画が回ってて、“一刻も早いAI導入急務!”状態です。そんな時、金は持っていくのに仕事の手は遅いわ、不満ばかりぶちまけるわ、裏で結託して突然大量離脱とかするわ~なアニメーターたちを使わないで、アニメが作れる方法を現在模索中な大手会社(スタジオ)の話がちょくちょく聞えてきます。それはCGかライブ2DかAIかは分かりませんが、旧態依然としたワークスタイルに変に意固地なアニメーターたちに頼らなくて済むアニメーション制作方法を身に付けた時、アニメーターだけでなく演出家も●り捨てられる可能性は高いと思います。しかし現状、それを裏で企むアニメ会社を、どの口が責められるでしょう? 多分、フリーの自宅作業アニメーターらには一々話して回らないでしょう。
ちなみにウチみたいな中小企業は、そんなことを企む余裕はありません(汗)。今いるスタッフでできる限りのパフォーマンスを見せることが先、と考えています。ま、いろいろ問題は山積み……だけでなく、さらにもっともっと積み上り中ではありますが、そんな中まだまだ監督やらせてもらえるってだけで、嬉しい50代が迎えられそうです!
では——。
2024年1月28日(日)夜にトークイベント「第217回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史 PART2」を開催します。
アニメスタイル編集長の小黒祐一郎が、独自の視点でアニメの歴史について語るイベントです。このトークは2023年9月9日(土)に開催した「第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史」の続編で、前回のトークで触れられなかった話題について語ります。前回のトークで話した内容を前提にして進めるパートは、なるべくおさらいをしながら進めたいと考えています。また、今回のトークもレジュメを用意して、会場にいらしたお客さんに配布する予定です。
話の聞き手は今回も、プロデューサーとして活躍し、かつてはアニメージュの編集者として腕を振るっていた高橋望さんにお願いします。なお、前回と今回のトークの内容を加筆修正して書籍化するかもしれません。
会場はLOFT/PLUS ONE。今回は昼間ではなく、夜のイベントとなります。ご注意ください。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
なお、前回の「第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史」のトークは現在もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは12月29日(金)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク(会場・チケット関係)
LOFT https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/272817
LivePocket(会場) https://t.livepocket.jp/e/ltrhy
ツイキャス(配信) https://twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/282056
■関連リンク(アニメスタイルチャンネル)
第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史
https://www.nicovideo.jp/watch/so42764339
第217回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2024年1月28日(日) |
会場 |
LOFT/PLUS ONE |
出演 |
小黒祐一郎、高橋望 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別) |
現在、画コンテの指導を2シリーズ同時にしています!
制作中の『沖ツラ(沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる)』と、その次作品(こちらのタイトルはまだ未発表)、2シリーズのコンテマン(ディレクター)の指導・育成を平行してやってる感じです。
ま、指導だ育成だとか言うほど、自分の場合「こーゆー場合は、あーしてこーせい」って感じの教え方はしません。まず「脚本を基に、自分なりに面白く描いてみて~」と割に大雑把な渡し方をする代わりに「2週間で!」と、早く描くことのほうを重視します。
2週間の根拠はと言うと“TVシリーズ1話分のコンテは(1ページに6フレームのコンテ用紙で)概ね80~100ページ”ってことは土曜・日曜は休日なので月~金の5日×2週間(=10日)で100ページと。つまり、“1日10ページ”がノルマ。「ある程度ラフでもいいので、スケジュール内で上げ切ること!」を目標にコンテを切らせ(描かせ)て、必要なだけ俺の方で手を入れて、第831回で前述したように、「加筆・修正をした理由」を描いた本人にちゃんと説明してから決定稿にするという訳です。
ここのところ、ミルパンセでというより板垣個人的にも、
社内スタッフの脚本とコンテの指導に力を注いでいます!
というのも、アニメ会社はこれからAI(人工知能)の導入をしなければ、作り続けられません。単純な話「企画・コンテンツはこれからも増え続けるのに、描き手は減る一方だから」です。我々より上の世代から徐々に引退していく上、我々より後の世代は出生率的に見ても、どんどん減っていく一方。業界的に新人アニメーター育成は必須というのが大前提としたって、これから成人を迎える日本中の若者らの半分以上がアニメーターになってくれでもしない限り、企画に対するスタッフの人数が圧倒的に足りなくなる勘定でしょう。
例えばこの現状で、まだ本線が終わってもいないシリーズを、別スタッフで頭っから作り直すなんて“業界的なアニメーター不足に輪を掛ける”という意味で、どうかと——あ! あくまで例えばです、例えば(失笑)!
で話を戻します。別にAI導入で手描きアニメーターをなくすという気は全くありませんし、なくなるとも思っていません。ただ、内容的に「歩く・走る」だ「手を上げる・下げる」だ程度のどうってことない芝居は人手を掛けずAIに任せて、本当に必要な“演出意図から凝った芝居やアクション”、所謂“作家的素養”が必要なモノこそ、“巧いアニメーター”に描いてもらう! とかです。
つまり、「勤勉・実直な職人こそアニメーターの鑑」的な昭和価値観を言い訳に、本物のモノ作りから照れて逃げ回ってきた我々アニメーターも、そろそろ限界。
「AI導入反対!」とかプラカード掲げる前にもうひと勉強して、
少しでも“アニメーション作家”に近づいてAIを使いこなす側になろう!
と自分自身でも考えているし、周りのスタッフにも「いきなりお話作りは難しくても、脚本やコンテとかから勉強してみない?」と声を掛けている訳です。
繰り返しますが、いつまでも「真面目に描き続けるだけのアニメーターのままで、僕(私)は満足~」では、その仕事皆AIに持って行かれますよ! 4~5年とか、で?
(次週2023年ラストです……。)
腹巻猫です。12月23日(土)に明大前のカフェバーLIVREでサントラDJイベント劇伴倶楽部忘年会2023を開催します。特集「松本零士メモリアル」と題して、松本零士作品の音楽をいろいろ流す予定。早川優さんと腹巻猫のトークコーナーもあります。12:30〜17:00の開催ですので、夜予定がある方もぜひどうぞ!
詳細は下記。
https://www.soundtrackpub.com/event/2023/12/20231223.html
作曲家・菅野祐悟の映画監督デビュー作品「DAUGHTER」が公開されると聞いて、さっそく観に行った。デビュー作とは思えない完成度の高さで、キューブリックを思わせるシンメトリーにこだわった構図や計算された配色など、絵画でも才能を発揮する菅野祐悟ならではの作品に仕上がっていて感心した。ヒューマントラストシネマ渋谷では12月21日まで舞台挨拶&ミニコンサートつきで上映しているので、興味のある方はぜひこの機会にご覧いただきたい。
映画『DAUGHTER』公式サイト
https://saigate.co.jp/daughter/
今回は、その菅野祐悟が音楽を手がけたアニメ『PLUTO』のサウンドトラックを聴いてみよう。
『PLUTO』は2023年10月26日にNetflixで全6話が配信されたアニメ作品である。
原作は浦沢直樹による同名マンガ。手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』の1エピソード「地上最大のロボット」を大胆にリメイクした作品だ。「地上最大のロボット」の大枠はそのままに、キャラクター、ストーリーを大きくふくらませた独自の作品になっている。筆者は原作発表時に単行本で読んでいたので、アニメ化のニュースを聞いて完成を楽しみにしていた。
世界最高水準のロボットが次々と破壊される事件が発生。ロボット刑事のゲジヒトは事件を調査するうちに、第39次中央アジア紛争時に国連平和維持軍として派遣された7体のロボットが標的になっていることに気づく。ゲジヒトは狙われているロボットをたずねて警告をするが、事件は止まらない。そして、日本のロボット、アトムも犠牲になってしまう。犯人は強大な力を持つ謎のロボット、プルートゥだった。
オリジナルの「地上最大のロボット」はアトムが主人公なのだが、『PLUTO』ではロボット刑事のゲジヒトが狂言回しの役割で、前半の主人公的扱いになっている。連続ロボット殺人(破壊)事件を追うミステリー風展開の中で、キャラクターの背景や葛藤が描かれていく。アニメ版は原作を忠実に映像化していて、見ごたえたっぷり。個人的には出演声優陣の豪華さもうれしかった。
音楽は数々の劇場作品・ドラマ・アニメ音楽で活躍する菅野祐悟が担当。
生楽器を中心とした、王道の映画音楽スタイルの音楽である。菅野祐悟のアニメ作品といえば、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや『PSYCHO-PASS』シリーズなど、「おっ」と思わせるカッコいい曲やエッジの効いた曲が聴けるのが楽しみだが、本作はそういうタイプとはちょっと違う。アニメの音楽というより、余分な装飾や過剰な演出を抑えた、実写劇場作品を思わせる音楽だ。
主要キャラクターであるゲジヒトには、レトロなジャズ調のテーマが設定されている。ジャズ調にしたのはミステリードラマの雰囲気をねらったと同時に、原典である『鉄腕アトム』へのオマージュの意図もありそうだ。劇場アニメ『METROPOLIS』(2001)を観てもわかるように、手塚治虫が描いた未来世界にはジャズサウンドがよく似合うのである。
ゲジヒトのテーマとともに記憶に残るのが、プルートゥにつけられた曲だ。こちらはコントラバスやブラスの低音のサウンドが強調された曲で、1フレーズ鳴っただけで「プルートゥだ」と思わせるモチーフが効果的。劇中でもそれを生かした巧みな演出がされている。本編の頭に原作マンガの絵を使ったマーベル作品のようなイントロがついているが、そのバックに流れているのもプルートゥのモチーフである。
サウンド的には、菅野祐悟自身が演奏するピアノの音が印象的。本作ではピアノがキャラクターの心情を表現する役割を担い、音楽の肝になっている感がある。そのピアノを作曲家自身が弾くことで、スコアに書ききれない微妙なニュアンスまでも音にすることができる。いわば魂がこもった音楽になっているわけだ。
ただ、情報不足でわからないのが、この音楽がどのように作られたかという点。場面展開に合わせて曲調が次々と変化していく曲が多く、映像に合わせたフィルムスコアリングで(もしくは台本や絵コンテを手がかりに)作られたと思われる。が、そういう曲がひとつの場面でなく、複数の場面で使われていたりする。つまり、個々の楽曲はフィルムスコアリング的だが、音楽演出としては溜め録り的なのである。
想像するに、過去に当コラムで取り上げた『地球外少年少女』のケースと同じように、溜め録りとフィルムスコアリングのハイブリッドになっているのではないだろうか。つまり、ゲジヒトのテーマのようなくり返し使う音楽と、特定のシーンに合わせたフィルムスコアリング的な音楽の両方を作り、フィルムスコアリング的音楽もライブラリとして使っていく方式だ。60分×全8話分の音楽をフィルムスコアリングで作ると、劇場作品4本分くらいのボリュームになる。作曲するのも録音するのも(予算的にも)大変である。そういうことでハイブリッド方式が採用されたのではないか(想像です)。
本作のサウンドトラック・アルバムは2023年10月25日に「PLUTO オリジナルサウンドトラック」のタイトルでフライングドッグからCD(2枚組)とデジタル配信でリリースされた。全46曲収録。収録曲は下記を参照。
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A022609/VTCL-60581.html
構成(曲順)はちょっとふしぎである。
本編の流れと曲順とは必ずしも合致していない。個人的には本編の流れに沿った構成にしてほしかったなあと思う。音楽がすばらしいだけに惜しまれる点だ。
ディスク1の1曲目はゲジヒトのテーマ「Clues to the Truth」。レトロなジャズタッチの曲だ。ゲジヒトの登場場面に曲の頭数小節がブリッジ的に流れる演出もあり、ライトモチーフとしても機能している。第1話から第5話までは、この曲がメインテーマ的扱いで、エンディング曲として使用されている。
トラック2の「Spirit of Love」はピアノの前奏からコーラスの入ったエモーショナルな曲調に展開する曲。筆者の想像だが、これは「アトムのテーマ」、もしくはアトムに象徴される「ロボットの心」を表現する曲だと思う。ディスク2のトラック21「Get Close to Each Other」はその変奏で、劇中ではこちらのほうがよく使われている。第2話でアトムがゲジヒトのために泣く場面や第5話で天馬博士がアトムの誕生を回想するシーン、最終話のラストシーン直前など重要な場面に流れた曲である。
トラック3の「Restless Period」はピアノ、フルート、ストリングスなどが奏でる心情曲。ゲジヒトの悲しみのテーマ的に使用されていた。第5話のゲジヒトの回想シーン、第6話でゲジヒトの妻ヘレナがゲジヒトを想う場面での使用が心に残る。
トラック4「Feel Elegant」はピアノとバンドが演奏するジャズタッチの曲。これもまた筆者の想像であるが、これはアトムの妹ウランのテーマではないかと思っている。ディスク2のトラック16「Already Alive at Heart」は同じメロディをピアノとフルートとストリングスでしっとりと奏でた曲で、そちらは第3話や第5話のウランのシーンに選曲されているからだ。ジャズ調の「Feel Elegant」のほうは、第3話のレストランのシーンのBGMとして使用されていた。
ここまでがアルバムの導入部で、トラック5から物語が始まる感じになる。
トラック5「Panic Sense」、トラック「Puzzled Mind」と事件発生を思わせる不穏な曲が続く。次のトラック7「Non-Existence」は、過去に犯した事件のために幽閉されているロボット、ブラウ1589の登場シーンに使われていた。
ここからはアルバムの構成から離れて、本編の展開に沿って印象深い曲を紹介していこう。
第1話の後半は、盲目の作曲家ダンカンとロボット、ノース2号のエピソードである。ノース2号の協力を得て完成した曲をダンカンが演奏するシーン。ディスク2のトラック3「Cherished Memories」が流れる。曲の途中でノース2号とプルートゥとの戦闘になり、いったん別の曲(ディスク1のトラック21「Looming Crisis」)が流れるが、戦いの終盤から「Cherished Memories」に戻る。音楽と映像が一体となった名シーンだ。このエピソードではディスク2のトラック2「母の口ずさむ歌」も重要な役割を果たしている。
第2話は格闘技ロボットとして活躍するブランドのエピソード。ブランドと家族の場面に流れるにぎやかな曲がディスク2のトラック6「Ordinary but Precious Day」。ブランドとプルートゥの戦闘場面にはディスク1のトラック15「A Tactic We Can’t Lose」。ブランドの最後のシーンにはストリングスによる悲しみの曲「The Sorrow is World」(ディスク1:トラック12)が流れていた。「The Sorrow is World」は、第1話で山岳ガイドロボット、モンブランの死を市民が悼むシーンにも選曲されている。
ブランドの好敵手であったヘラクレスは、ブランドの仇を討とうとプルートゥに挑戦する。その戦いが描かれる第5話。戦闘シーンに流れるのはディスク2のトラック20「Final Showdown」。続いてディスク1のトラック19「Solitary Combat」。どちらも緊迫感に富んだバトル曲である。
第6話、ゲジヒトはついにプルートゥと対峙する。宿命的なシーンを彩る曲はディスク1のトラック10「Armful of Flowers」。哀感をたたえたピアノとストリングスが、ゲジヒトが感じたプルートゥの心を表現する。「Armful of Flowers」は第7話のプルートゥ対エプシロンの戦いのクライマックスにも使われていた。曲名から考えても、プルートゥの内面のテーマと受け取ってよいだろう。
第7話は、戦いを嫌うロボット、エプシロンのエピソードである。エプシロンと子どもたちの心温まる場面のバックに流れたのはディスク2のトラック1「Warrior’s Family」。子どもたちが歌う「ボラーの歌」(ディスク2:トラック24)も同じ場面に使われた。
エプシロン対プルートゥの戦いの場面にはスリリングな「Death Battle」(ディスク2:トラック18)。プルートゥを退けたエプシロンが無事帰還する場面にピアノとストリングスによるフランス印象派的な曲「Tragic Beauty」(ディスク1:トラック17)が流れている。「Tragic Beauty」は第3話でエプシロンが登場したときにも選曲された、エプシロンのテーマとも呼べる曲だ。
プルートゥ対エプシロンの決戦の場面にはプルートゥのテーマ「Tremendous Twist」(ディスク2:トラック10)が流れて、その強さを印象づける。子どもを守ろうと最後のパワーをふりしぼるエプシロンの場面にディスク2のトラック17「Catastrophic Spiral」。死闘の決着にはディスク1のトラック16「Ray of Hope」(ドラムなし)が使用された。エプシロンとプルートゥの戦いはほぼ互角で、息詰まるような緊張感に満ちている。
こんなふうに、本編を追体験しようとするとディスク1とディスク2を行き来しないといけないのが、本アルバムのちょっと困ったところ。
しかし、最終話(第8話)のクライマックスは、アルバムの構成と本編の音楽の流れがほぼ一致しているので安心(?)してほしい。
第8話は復活したアトムが地球を危機を救う展開になる。ヘラクレスの戦いの場面にも使われた「Final Showdown」(ディスク2:トラック20)が地球の運命をかけて飛び立つアトムを描写する。この曲は本来、この最終決戦のシーン用に書かれた曲ではないかと思う。
地底で地上最大のロボットと対決するアトムの場面に「Love of Science」(ディスク2:トラック22)。本作の音楽の中でも随一のヒロイックな曲想が聴ける音楽である。この曲が流れるのはこのシーンだけで、溜めに溜めた心情があふれ出すような使い方がうまい。
すべてが終わったあと、アトムとお茶の水博士が星空を見上げて語らう場面に、先に紹介したアトムのテーマとも言うべき「Get Close to Each Other」(ディスク2:トラック21)。このシーンでは、これまで登場したロボットたちの記憶がよみがえって、アトムならずとも涙がこぼれそうになる。
そして、ラストシーンには「Zeal for Life」(ディスク2:トラック23)。5分を超える大曲である。ストリングスの静かな導入から、ピアノが奏でるやすらぎの旋律、そして、力強いリズムに支えられたホルンとストリングスによるメロディへと展開し、終幕の余韻を残す。第6話以降は、ゲジヒトのテーマに代わって、この曲がエンディングに流れていた。そう考えると、この曲が本来の(映画音楽的な意味での)メインテーマと呼べるのではないか。聴き終えたとき、交響曲を聴いたような満足感と感動がある。
『PLUTO』は、ロボットの物語を通じて「心とはなにか」「人間らしさとはなにか」という古くて新しい問題に迫った意欲作である。その音楽は、ドラマ性と繊細な表現をあわせもった、菅野祐悟渾身の作品に仕上がった。あえて生楽器主体のクラシカルともいえるスタイルをとり、自らが演奏するピアノを中心に据えたところに、菅野祐悟の本気を感じる。この音楽、ぜひ、世界に届いてほしい。
PLUTO オリジナルサウンドトラック
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2023年ももう残り僅かで、年内にこなさなきゃならない仕事がまだまだある!
のです。でもまぁ、なるようにしかならないので、できるだけ片付けて、年末は念願の山形へ!
山形県は両親の実家で、俺が生まれた場所は山形で(母親がお産のために帰省していたとか)、育ちは愛知県名古屋市になります。小・中学生の頃は毎年夏休みか冬休みに家族で山形に行くのが一大イベントでした。
夏休みの大きな盆踊り大会やその帰りに見上げた満天の星空、冬休みの一階が埋まるほどの大雪とその奥に広がっていたまるで水墨画の様な山々、と子供の頃瞼に焼き付き、未だ忘れない風景の数々。多少の想い出補正が掛かっているかも知れませんが(汗)。
高校生になると夏・冬休みは進路関係で潰れていき(当時はまだ美大受験のため、河合塾美術研究所とか通ってて)、そのまま東京の専門学校。つまり30数年、山形行ってない! 『Wake Up,Girls! 新章』制作前の取材(2016年?)でも余りの慌ただしさに、宮城県の隣なのに行く時間が取れませんでした。
で2年前、父親が亡くなった時、山形から叔父と従兄がやって来て「山形さ、遊び来い」と。それからというもの、「山形行きたい熱」が高まってきて今年年末に実行! となったわけ。やっぱり、歳を取って日一日と死に近付くことを感じてくると、自分のルーツに思いを馳せるものなのでしょうか、人間って。
来年自分も50歳。来年以降は山形に限らず、あちこち見て回る時間を作るのが目標!
で、そのためには会社を育てねばなりません。みんな頑張りましょう。
で、また短い上にアニメの話でなくてすみません。でも実は自分の中ではこれからのアニメ作りに、今回の「山形行き」は大いに関係するんですがね。
片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。
『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などの調査研究を進めています。今までアニメスタイルは「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルでイベントを開催し、現在は「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」のタイトルでイベントを続けています。
2024年1月6日(土)に開催する「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』4」では、片渕監督が今まで作品を作るにあたって、何をどのように調べてきたかを語っていただきます。トークは片渕さんが学生時代に参加した『名探偵ホームズ』から始まるはずです。「片渕須直の調査の歴史」が語られるわけです。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは12月13日(水)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
LOFT https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/271493
会場(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/2mmql
配信(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/278549
アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle
なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr
第216回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2024年1月6日(土) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA |
出演 |
片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別) |
現在、社内スタッフの画(絵)コンテの面倒を見ています!
前作『いせれべ』に続き、社内に於ける“コンテマンの育成”です。つまり、『蜘蛛ですが、なにか?』までのように自分が率先して全話のコンテを切る(描く)のではなく、社内の演出志望者に先ずコンテを走らせて、後でチェック(という名の全面的修正)を俺の方がする。「あ、ここはこのまま使える!」とか「こっちのシーンは描き直すか」とか、時には「ほぼ1本丸々描き直しじゃ——!」と格闘中。
ただ、“自分好みに直す”のではありません。「貴方のカット割りだと、視聴者に上手く伝わらないよ」てな箇所を分かりやすく、さらに“面白くなるように”描き直すのです。
勿論チェック後、作業者に“修正した理由”をちゃんと説明して戻します。それは自分の主義として、
いくら監督だからと言って、ただ“気に入らなかった”から~だけで、作業者の仕事に手を加えるのは卑怯だ!
という考えがあるからです。それだったら最初から己で描けって話だし、もし俺の方がそんな適当に修正される側だったら、到底納得できないと思うからです。ちなみにコンテに限らず、原画チェックの際も同様の理由から、原画マンに対して“何処がおかしい?”“直した理由”“アドバイス”をちゃんと説明するよう心掛けています。
逆の話で、コンテをただ無修正で通すだけなら、「監督」を名乗ってはいけない! とも思っています。だから、個人的な理想としては全体の2~3割手を入れたくらいで使える画コンテを上げて頂けるのがベストかと! そのコンテ戻し説明の際、“演出処理”の打ち合わせを兼ねます。
あ! あと、画コンテに関して現状自分は、
費用対効果の高いカット割りと、原画マンが描きやすいアングルを優先——“止める所はバシッと止めて”、動くところは丁寧に動かす!
ことを必須にしてチェック・修正しており、コンテマンたちにも「取り敢えず、今は!」と説得。
つまり、働き方改革・8時間勤務・社員雇用・時給換算による固定給、諸々の理由で、今は“社内”且つ“予算内”で作り切れる内容にするため、画コンテ段階で徹底的に計算し尽くす!
わけです。ミルパンセ以前の演出・監督作品みたいに「俺がやるなら7~8000枚使って動かしまくる!」はハッキリやめたんです! それで「板垣は手抜きコンテ」と言うなら、勝手に言えばいいでしょう。こちとら、制作現場の総合監督として、
まず、現状の戦力・予算で戦いに挑み、各セクション・役職のギャラ見直しが何より必須! 非難したい人はすればいい! 批判も悪評も全て俺が受ける!
覚悟を持って取り組んでおります。前作『いせれべ(異世界でチート能力[スキル]を手にした俺は、現実世界をも無双する)』もその考えでコンテ切ってて、それはある一定の効果はあったかと。故に“新アニメ化”も決定したのですから。
この際、ハッキリ言っておきます!今の板垣はフリーや他社の巨匠監督・演出家にゲスト的位置でコンテを依頼するつもり、金輪際ありません!
結局、今現在のウチの作画リソースに合ったコンテを社内で作って、クオリティーを安定させることが最優先。そして、皆が巧くなってきたら、それから各スタッフの給料から計算して、徐々に“動きまくる”本来のアニメーションらしいアニメーションを目指せばいい、と。
そして、この後も(現状決まっている仕事3~4本は)こんな感じで原画マンだけでなく、“新人演出家・監督”も育成しつつ、板垣は総監督に徹する予定です! その間に、“面白いコンテが切れる演出家”や“動きが描けるアニメーター”が育って行くことを祈りつつ。
で、明日はまたアフレコです!
12月にお届けする新文芸坐とアニメスタイルの共同企画プログラムは「2本の劇場版『鋼の錬金術師』」。12月8日(金)から10日(日)の3日間で『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』と『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』を上映します。
12月8日(金)と10日(日)は上映のみ。9日(土)は2本トーク付きで上映します。『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』のトークのゲストは會川昇さん(ストーリー・脚本)、水島精二監督。『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』のトークのゲストは小西賢一さん(キャラクターデザイン、総作画監督)、夏目真悟さん(演出)、亀田祥倫さん(原画)となります。いずれも聞き手はアニメスタイル編集長の小黒が務めます。
チケットは既に発売中。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。
【新文芸坐×アニメスタイル vol. 168】 |
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開催日 |
2023年12月8日(金)20時10分~ 『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』 |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
2023年12月8日(金)、10日(日) 一般1500円、各種割引 1100円 |
トーク出演 |
『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』 會川昇(ストーリー・脚本)、水島精二(監督) |
上映タイトル |
『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(2005/105分/35mm) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/