COLUMN

第843回 スケジュールは皆のモノ

 先程この原稿に着手する前、制作定例(全体会議)で、

スケジュールを“自分だけのモノ”と勘違いしないように!

という話をしました。
 例えば社内のアニメーター、「僕(私)はこうこうこれだけバッチリ下描きを敷かないと描けないんです」と。それはもちろん技術レベルには個人差がある故、あくまで“徐々に慣れて~”としか言えませんが、

基本、“原画”とは丸チョンでレイアウトと動き(タイミング含む)を決めたら、後は“一発描き”!

なんです。当然カット(シーン)の難易度にもよりますが、“巧い人ほど下描き(ラフ)が少ない”のは現実問題としてあります。つまり、巧い人が数(物量)を上げられるのは“答えを出すまでの速度”が早い。それに対して、力量が追い付かないアニメーターが「私はこうでないと描けない」とか「俺はこう描きたい」とかの主義をいつまでも通し、幾度となく下描きを重ねれば各々のスケジュールだけではなく、ひいては全体スケジュールをも食い潰していきます。
 現状まだアニメ業界に蔓延っている“フリー(業務委託)8割で作るテレビシリーズ”の問題点はここにあります。“下手なのにフリー”ってのが多過ぎるんです、この業界。いや、“下手だから”か? 他の業界に比べて多い気がします、下手フリー。巧いか下手か? 且つ何本掛け持ちしているかも分からないフリーにばら撒いて、上がってくるのが約束した原画UP日ではなく、“納品”の寸前。そりゃあ当然、作監修(作画監督の修正)の手が追い付かずに放映されて崩壊は当たり前。
 ウチ(ミルパンセ)は今、フリーに撒かないようにし、さらに脚本・コンテ段階からカット内容のカロリーコントロールをして、できる限り社内で作る! にしています。社内のアニメーターであればこそ、作打ち(作画打ち合わせ)後でも、停滞しているパートを「ごめん、これ俺持っていくー」と引き上げて、「次の話数進めて~」と別スケジュールに乗せ換えることができますから。

早い話、各アニメーターが貰っているスケジュールは、各自のモノでありつつも“スタッフ皆のモノ”——全体スケジュールでもある!

訳です。例えば原画マンたちに、

各自、1日の作業量を1カット……いや、半カットでもいいから多く上げる工夫をして!

と鼓舞すると、全員合計して1日数カットずつ上りが増えます。
 こういう時、土台無理な数——「各自1日10カットずつ多く上げること!」とか言うと、アニメーターは拗ねます、「どーせ無理……」と。半カット、「いつもの作業量にラフまででもいいから追加・前進することを目指して~」だと、頑張ってくれたりするもんです。

「各々半カット増」を1ヶ月(実労働20日)続ければ、結構生産量増えると思いません?

昨今限られた人員で作品を作らざるを得ない、我々みたいな中小アニメ企業こそ、「スタジオの総合力」で安定を図るべきかと。 勝ち名乗りを上げている業界人員獲得合戦の勝ち組大手プロダクションさんらには、健闘を祈ります! ファンの御期待に応えて、業界を盛り上げてください。