今月18日と25日は、1月期新番組における主題歌CD発売のピークで、30曲50種以上のリリースが予定されている。その中で特に注目しているのが、TVアニメ『幸腹グラフィティ』のED主題歌CD「笑顔になる」だ。収録曲は「笑顔になる」「ごはんの練習」「しあわせグラフィティ」の3曲で、メインキャラクターの町子リョウ・森野きりんそれぞれの歌唱バージョン、および2人バージョンが収録されているため、合計9トラックも入っていてお得感がある。
北川勝利の作編曲によるタイトル曲も、お洒落かつゴージャスな渋谷系ナンバーで聴き応え十分なのだが、僕が注目しているのは、番組後の提供画面のテーマとして使用されている「ごはんの練習」だ。この曲には、食琴演奏ユニットのkajiiがフィーチャーされている。食琴というのは、茶碗などの食器から音程のよいものを選びだし、箸で叩いて演奏する楽器(?)らしい。意外にもこれが石琴とグロッケンシュピールの中間のような、美しく澄んだ音色なのだ。素朴なボーカルメロディとも相まって、実にキッチュかつ可愛らしい仕上がりとなっている。
TVアニメ『幸腹グラフィティ』 エンディング主題歌「笑顔になる」
VTCL-35201/1,404円/フライングドッグ
2月25日発売予定
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1月9日から公開されている『劇場版 PSYCHO-PASS』を遅ればせながら観てきた。本来ならば、サントラ第2弾の発売日ぎりぎりまで粘ってから鑑賞し、映画の印象が残っているうちにサントラのレビューを書きたかったのだが、2月13日をもってTOHOシネマズ系列の多数の劇場で公開が終了してしまった。系列のうち東京では錦糸町とお台場を残すのみとなったため、そろそろ待つのも限界だと悟った次第。
ということで今回紹介するのは、3月18日に発売予定の「PSYCHO-PASS サイコパス Complete Original Soundtrack 2」である。CD3枚組で、DISC 1がTVシリーズ第2期である『PSYCHO-PASS|2』の楽曲、DISC 2とDISC 3が『劇場版 PSYCHO-PASS』の楽曲という構成になっている。音楽担当に菅野祐悟、主題歌に凜として時雨、EGOISTという布陣は第1期から継続。主題歌はTVサイズ・映画サイズながら全曲を収録し、劇場版エンディングテーマとして、TVシリーズ第1期ED主題歌だった「名前のない怪物」が再び使用されている。
限定版では特典として第2期のノンテロップOP・EDと、劇場版の予告編などを収録したBlu-rayディスクが付属し、さらに劇場版冒頭部分の画コンテが同梱される予定だ。2013年に発売された第1期サントラ限定版も、CD2枚組にBlu-rayとコンテブックが付属していたので、その商品構成を踏襲したのだろう。発売まで1ヶ月以上あるためサントラの実物は入手できていないが、おそらくは第1期サントラと同様、紙製トールケースにコンテブックとデジパック仕様のCD&BDが収納されるのではないか。第1期サントラについては、2013年5月の本連載にて紹介しているので、そちらも参考にしていただきたい。
皆さんご存じのとおり『PSYCHO-PASS』という作品は、各話で事件の発生から犯人の逮捕までを描く刑事ドラマのフォーマットに、シビュラシステムやドミネーターといった近未来的なSFガジェットを組み合わせたところに妙味がある。さらにクセの強い公安局の面々を中心とした、心理劇や人間ドラマの側面も見逃せない。音楽においてもこの3つの要素を、かなり明示的に描き分けているのが特徴だ。つまり近未来感の象徴としてシンセサウンドやテクノビートを使い、刑事たちのアクションはエレキギターやリズム楽器で、キャラクターの心情はオーケストラやピアノなど生楽器によって表現している。
ところが劇場版においては、舞台が日本からSEAUn(シーアン/東南アジア連合)という海外に移行したこと、反体制ゲリラとSEAUn政府軍との内戦が物語の背景となっていることから、作風に変化が見られる。ドミネーターやドローンといった近未来的兵器を駆使するシーンや、ハッキングなどサイバー戦の要素が減退し、銃撃や砲撃を中心とする従来型の戦闘描写が増えた。ややミリタリー色が強くなったと言えるかもしれない。このような変化に伴ってか、菅野祐悟の生み出す音楽からもSF色の象徴たるシンセやテクノの要素が減退し(アンビエント的な使い方は少なくないが)、オーケストラを中心とした現実感のあるサウンドを指向している。もちろん、劇場作品らしいスケールやスペクタクル感を狙った意図もあるのだろう。
また劇場版BGMの中には、「Movie Mix」と題してTVシリーズの楽曲をアレンジしたものが含まれている。第1期からは「望み」「槙島聖護」「命の在り方」「PSYCHO-PASS」の4曲、第2期からは「人と法を守るために」「PSYCHO-PASS feat.AKANE」「生み出された怪物」の3曲だ。これらは劇中の要所に配置されており、「命の在り方」は物語序盤の反体制勢力とSEAUn政府軍との大規模な戦闘シーンで、「PSYCHO-PASS feat.AKANE」は終盤で主人公・常守朱がドミネーターを得て戦闘に加わるシーン、「PSYCHO-PASS」は物語のクライマックスで使用されている。特に「PSYCHO-PASS」は上述したシンセ、エレキギター、オーケストラの3要素を融合させ、シリーズ全体の顔とでも言うべき楽曲だけに、「待ってました!」と言いたくなるような使われ方をしている。「Movie Mix」におけるアレンジの変更点としては、たとえば「PSYCHO-PASS」ではエレキギターの追加、リズムトラックの差し替えなどによって、よりソリッドなサウンドに生まれ変わっている。第1期サントラと聴き比べてみるとより楽しめるだろう。(和田穣)
PSYCHO-PASS サイコパス Complete Original Soundtrack 2(音楽:菅野祐悟)
【完全生産限定盤】SRCL-8753〜8756/4,980円/ソニー・ミュージックレコーズ
3月18日発売予定
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