第493回 先輩として教えられる事

所詮、先輩が後輩に教えられる知識(情報?)には、
ほとんど価値がない!

 ミルパンセで新人の指導をしていて、つくづく感じる事です、コレ。例えば想像してください。「歩く」「走る」「投げる」のモーション(動き)なんて、俺が教えなくても最近のアニメ教本を見たり、スマホでもこすれば大概情報が出てくるでしょう? 基が人間の動きである以上、誰が教えても同じハズ。若い人たちはそれを本能的に知ってて、目の前で俺の喋ってる内容が意味分かんなくてもPCやスマホから回答が返ってくるんです。特にスマホなどは何処にも持っていけるドラ○もん、もうスマえもんですから。困った時はなんでも助けてくれるもんです。我々以上の世代にとっては寂しい話かもしれませんが、その事を覚悟して教え続けるしかないんです!! じゃ、その教える話・情報に価値皆無の現代において、我々先輩側が何を教えられるのか?
 それは

仕事を楽しむ姿勢そのもの!!

なのではないでしょうか? 思えば学生時代にお世話になった小田部羊一先生や、テレコムで指導してくださった大塚康生様、友永和秀師匠らから教わった事も、突き詰めるとそーゆー事かと。小田部先生も大塚さんも「歩き」や「走り」を教えてくださいました。でもモーションの説明自体はそのへんの本のものと大差ありません。ただ、

何十年もアニメをやってきた大先輩が語る
「仕事の面白さ」に感銘を受けた!

んです。お二方とも俺の描いた原画もどきを「あっ、面白い、面白い!」と喜んでくださって「ここをもう少し、こうひねった方がもっと気持ちよく動くよ」とアドバイスしてくださる際、

ね、アニメって面白いでしょ!?

って感じで言葉に出さず優しく微笑んでくださるんです。友永師匠も描いた画に対して厳しくはありましたが、基本「アニメという仕事」自体に楽しく取り組まれる方で、板垣はその背中を見て育ったんです。自分も自分を育ててくださった先輩方のように、後輩にアニメの楽しさを教えられるようになりたいと思ってます!! 以上。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 89
年忘れ!クレヨンしんちゃんまつり


 2016年最後のオールナイトは、お馴染みの『映画 クレヨンしんちゃん』の特集だ。タイトルは「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 89 年忘れ!クレヨンしんちゃんまつり」で、開催は12月17日(土)。

 上映作品は『映画 クレヨンしんちゃん』の第4作『ヘンダーランドの大冒険』、同じく第23作『オラの引越し物語 ~サボテン大襲撃~』、第24作『爆睡!ユメミーワールド大突撃』。初期の傑作と、近年の作品2本を揃えたプログラムだ。

 トークのゲストは『オラの引越し物語 ~サボテン大襲撃~』の橋本昌和監督を予定。年末の一晩を『クレヨンしんちゃん』で楽しんでいただきたい。前売り券は11月30日(水)からチケットぴあ、新文芸坐で発売開始となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 89
年忘れ!クレヨンしんちゃんまつり

開催日

2016年12月17日(土)
開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5時05分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

橋本昌和、小黒祐一郎(司会)

上映タイトル

『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(1996/35mm)監督:本郷みつる
『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 ~サボテン大襲撃~』(2015/DCP)監督:橋本昌和
『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』(2016/DCP)監督:高橋渉

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

103 『この世界の片隅に』絵コンテについて

 『この世界の片隅に』を多くの方が劇場でご覧になっているようです。公開後も評判は上々。本当によかったです。このまま大ヒット作となる事を祈っています。

 今回はアニメスタイルが編集をお手伝いした「この世界の片隅に 劇場アニメ絵コンテ集」について、少し書いておきます。
 お気づきの方もいると思いますが、この絵コンテ本のサイズはちょっと変わっています。A5サイズの本と比べてもらうと分かりやすいですが、通常のA5よりも縦が少し短くて、横が少しだけ長い。絵コンテを読みやすいかたちでページに収めるために、色々と調整してたどりついたサイズです。これはデザインをお願いした井上則人さんのアイデアです。

 カバーの下の書籍本体の表紙デザインも、なかなかかっこいいですよ。絵コンテ本らしい、そして、『この世界の片隅に』らしい、真面目なテイスト。しかも、重厚さもあります。これについては、僕からオーダーは出してはおらず、井上さんのアイデアです。絵コンテ本をお買い求めいただきカバーを外していない方は、一度カバーを外して見てください。

 僕自身の感想としては、各ページの印刷が綺麗に出てよかった。印刷が綺麗に出るなんて当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、そもそも絵コンテというものは(アニメの原画もそうですが)印刷して本にするために描かれているわけではないのです。綺麗なかたちで本にするために、工夫や試行錯誤が必要な場合もあるわけです。

 以下は、まだこの絵コンテ本を購入していない方にお伝えする情報です。絵コンテ本の巻末には「片渕須直監督による絵コンテ解説」と「片渕須直監督インタビュー」を収録。メイキングに興味がある方にとって、読み応えのあるものになっているはずです。この部分の取材とテキストは僕が担当しています。

 『この世界の片隅に』の絵コンテは演出意図がしっかりと記されているだけでなく、描かれている画も大変に魅力的です。この画を誰が描いたのか、どのように絵コンテが作成されたのかについては「片渕須直監督インタビュー」で触れています。それから、制作現場で使われていた絵コンテは第2稿で、絵コンテ集に収録されているのは第2.5稿。第2稿と第2.5稿の違いについても、インタビューをお読みくださいませ。

 現在、Amazonでは在庫切れになっているようですが、大きな書店ではまだ購入できるようですよ。

(2016年11月28日)

102 株式会社カラー10周年記念展

 昨日「株式会社カラー10周年記念展」に行ってきました。もうね、ウハウハですよ。展示のメインは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の原画類。セレクトがとてもよく、見応え満点。

 他には「シン・ゴジラ」『日本アニメ(ーター)見本市』「巨神兵東京に現わる」の関連の資料。さらには「ウルトラ」シリーズのミニチュア、『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』の原画の展示もあり。どうして、「ウルトラ」シリーズや『宇宙戦艦ヤマト』の展示を? と思う方もいるかもしれませんが、カラーが中心となって、アニメと特撮の資料をアーカイブとして残すためのNPOを立ち上げようとしているのだそうですよ。

 新作短編アニメ「よい子のれきしえほん おおきなカブ(株)」の上映もあり。これは安野モヨコさんがこの展示会のために描き下ろした「監督不行届」の番外編を映像化したもので、主人公は庵野秀明さん。モヨコさんの眼差しが温かく、観ていてほっこりする作品でした。これは展示会で観るからこそ、楽しめるものだと思うので、是非とも会場で観てください。
 
 入場料は500円で、来場者全員特典として「株式会社カラー10周年記念冊子」付き。この小冊子もなかなかのボリュームです。なんだか宣伝みたいになってしまったけれど、株式会社カラーのファン、作画マニアなら行って損はないでしょう。残念な点は11月23日(水)から11月30日(水)までと開催期間が短い事くらいです。

 今回の展示の素晴らしい点は、写真撮影がOKだという事(原画等に接近しての撮影はNGだそうです)。僕も沢山写真を撮ってきました。以下がその写真です。




 最近はアニメ関連の展示会も少なくないですが、「株式会社カラー10周年記念展」はよいものをきちんと整理して、観やすく展示しているのもよかったです。

(2016年11月25日)

[関連リンク]
株式会社カラー10周年記念展
http://www.khara.co.jp/khara_10th/

第492回 デジタルで描いてみる

前回のイラストに続きデジタルで描いてみるとします!

といっても文章に関しては、紙と鉛筆の時同様、手描きのものを送りつけて、アニメスタイルのスタッフ様によりテキスト化していただくという、デジタル化したのかなんなのかよく分からない状態になってます。つまり、絵を描くのと同じに「文字を書くのも好き」なんでしょう、自分。だからコンテのト書きも時間的余裕がある限り手書きにしたいのです。もちろん

手書きである事自体がコンテの目的ではないので、そこに拘って作画の時間を食い潰すのは最低ですが!

 まあ、なんにしても俺自身もいろいろ「デジタル化」が始まっております。まずは社内の新人からと思って、今年始めから進めてきた「社内完全デジタル作画化」計画。デジタル化、つまりPCとタブレットで原画から演出・作画修正まで、ずべて紙と鉛筆を使わない! これ、我々より上の世代が10数名いるだけで、かなり困難な大改革なんですよね。なぜって年配な方ほど、デジタルへの移行を否む率が高く、若手がいくらデジタルで作画しても、その年配の方の演出・作監が紙作業を押しとおしてるうちは、いちいち紙にプリントアウトする必要があり、「そんな手間が増えるくらいなら、最初から紙で原画描けよ!」と。実際、一部紙が混じるならデジタル化はかえって不経済なんです。よって大手の会社ほど難しいのがデジタル作画化で、ウチ(ミルパンセ)みたいな、板垣以外は全員20代(10代も1人いますが)の会社はこれ幸いと人数がすくないうちに早いとこデジタル化を!! で、最初は動画の人にPCを揃えて研修に通わせました。続いて原画、作監にも覚えてもらい、最後は俺の番。自分はもともと小学生の頃からコンピュータって大好きなので楽しくやってます。

第94回 神様に祝福された音楽 〜火の鳥2772 愛のコスモゾーン〜

 腹巻猫です。11月12日、「冨田勲追悼特別講演 ドクター・コッペリウス」に足を運びました。トミタサウンドに包まれる至福の時。同時に冨田先生がもういないという寂しさも……。いや、冨田先生は「イーハトーヴ交響曲」と「ドクター・コッペリウス」で描かれた夢幻の世界にいるに違いありません。
 このコンサートに間に合わせるためにスタッフが心血を注いだCD-BOX「冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集」が会場で販売されていました。『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『どろろ』『千夜一夜物語』などの音楽を5枚のCDに収録。初商品化曲満載のBOXです。100ページに及ぶ解説書も圧巻。全アニメ音楽ファンにお奨めしたい。

冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集
http://www.amazon.co.jp/dp/B01LZ090JZ/


 手塚治虫アニメ作品の音楽を手がけた作曲家の中で、とりわけ印象深いのが冨田勲、宇野誠一郎、樋口康雄の3人である。3人とも「天才」と呼んで差し支えのないすばらしい才能の持ち主だが、中でも少年時代から「天才」と呼ばれたのが樋口康雄だ。
 今回は樋口康雄が手がけた劇場アニメ『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』の話。

 樋口康雄は1952年生まれ、東京都出身。音楽好きでバイオリンを趣味にしていた父親の影響を受け、幼少時から音楽に親しんだ。小学校時代にピアノ曲、鼓笛アンサンブル曲を作曲。中学校時代はビートルズに傾倒し、バンドを結成する。高校時代には慶応大、立教大のジャズ研に参加し、ピアニスト、コーラス・アレンジャーとして活動していた。高校在学中にボーカル・インストゥルメンタル・グループ〈シングアウト〉のメンバーとしてNHK「ステージ101」に出演、「ピコ」の愛称で人気を集める。これがプロの音楽家としてのスタートになった。
 高校卒業後は上智大学に進学し、在学中から作曲・編曲・演奏家として活躍して注目される。1972年に作曲・編曲・ボーカル・キーボード演奏を1人で手がけたアルバム「abc/ピコ・ファースト」を発表してソロデビューを果たした。
 その後、TVドラマ、劇場作品等の映像音楽やCM音楽、舞台音楽、アーティストへの楽曲提供・プロデュース等で幅広く活躍。純音楽作品やポップスのオリジナル作品も発表するなど、ジャンルを超えた活動を続ける音楽家である。
 樋口康雄の映像音楽作品では、NHK少年ドラマシリーズ「つぶやき岩の秘密」(1973)が鮮烈だ。筆者にとってもこのドラマが樋口康雄初体験。石川セリが歌う主題歌「遠い海の記憶」は一度耳にしたら忘れられないTV音楽史に残る傑作である。沖雅也が主演したNHK時代劇「ふりむくな鶴吉」(1974)の音楽も時代劇音楽のイメージを軽やかに裏切るクールでとんがった作品だった。ほかにTVドラマ「となりのとなり」(1974)、「七人の刑事」(1978)、「さらばかぐわしき日々」(1981)、劇場作品「哀愁のサーキット」(1972)、「赤い鳥逃げた」(1973)などの作品がある。
 アニメでは『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』(1980)のほか、24時間テレビのアニメスペシャル『ブレーメン4 地獄の中の天使たち』(1981)、『小公女セーラ』(1985)、『機動新世紀ガンダムX』(1996)、『リーンの翼』(2005)等の音楽を担当。1980年のカラー版『鉄腕アトム』の際には音楽を担当する話があったが実現せず、そのときに用意した主題歌がのちにアルバム「ミュージック フォー・アトム エイジ」に収録されている。
 また、『ママは小学4年生』(1992)の主題歌で益田宏美が歌った「愛を+ワン」も樋口康雄の音楽性が堪能できるすばらしい楽曲だ。樋口はこの歌をアメリカから日本に向かう飛行機の中で作曲し、帰国してからすぐにオーケストレーションをして録音したのだそうだ。樋口康雄の天才を証明するようなエピソードである。
 樋口康雄は、映画音楽では「エデンの東」で知られるレナード・ローゼンマンに、管弦楽はゴードン・ヤコブに影響を受けたそうである。しかしそれは影響を受けたというだけで、樋口康雄が作り出す音楽は誰にも似ていない。華麗で色彩感豊か、音は厚いのに印象は軽やか、自由奔放に動き回る旋律、美しい建築のようなオーケストレーション、上品でポップな感覚。神様に祝福された音楽があるとしたら、こういう音楽ではないのかと思うのだ。

 さて、『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』は1980年3月に公開された劇場アニメ。未来の宇宙と地球を舞台に、宇宙生命体2772=火の鳥を捕えようとする人間たちの愛と苦悩と争いを描くSFファンタジーである。「火の鳥」といえば手塚治虫のライフワークだが、本作はマンガ原作ではなく、オリジナル・ストーリー。原案・構成・総監督・脚本を手塚治虫が担当(原画にも参加)。フルアニメーションやロトスコープ、スリット・スキャン等を取り入れて映像にもこだわり抜いた手塚治虫入魂の作品だ。妙に艶めかしいメタモルフォーゼや人間とロボットの恋など手塚治虫作品にはおなじみの要素が本作にも刻印されている。
 1979年、樋口康雄がニューヨーク・フィルハーモニア管弦楽団の委嘱を受けて作曲した新作が東京とニューヨークで演奏された。その公演を聴きに来ていた手塚治虫が樋口のバイオリン協奏曲「KOMA」を気に入ったことから、本作の音楽を樋口康雄が担当することになったという。
 『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』の音楽はポップスのリズムセクションを入れない純粋な管弦楽編成。演奏は「オーケストラ2772」名義。指揮は樋口康雄自身が務めた。バイオリン・ソロを当時高校2年生だった千住真理子が担当している。録音は、今はなくなってしまった一口坂スタジオで行われた。
 サウンドトラック・アルバムは公開に合わせた1980年3月、「火の鳥2772 オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで日本コロムビアから発売された。劇中音楽を14トラックにまとめて収録した組曲風のアルバムである。2004年に〈ANIMEX1200シリーズ〉の1枚としてCD化された。
 収録曲は以下のとおり。

  1. PROLOGUE〜BIRTH プロローグ〜ゴドー
  2. TRIALS 試練
  3. SHE 憧れ
  4. ADULTHOOD ぼくは大人になった
  5. LOVE AND SUFFERING 愛と苦悩の時
  6. THE EVILS OF THE WORLD 地上悪
  7. IN SEARCH OF SALVATION 旅立ち
  8. THE MERRY BUNCH 愉快な仲間たち
  9. THE ENCOUNTER 出逢い
  10. THE POWER OF LOVE 愛の戦い
  11. RETURN TO THE EARTH 帰還
  12. DESTRUCTION 地球の最期
  13. DEATH 死
  14. REBIRTH 復活

 曲順はほぼ劇中使用順だが、複数の曲を使用順にこだわらずに1曲にまとめたトラックもある。「樋口康雄オリジナル作品」としても聴ける、完成度の高いアルバムである。
 1曲目のプロローグの音楽から圧倒される。本編の冒頭、火の鳥が極彩色の幻想的な空間を舞う場面に流れる曲だ。劇中で何度も変奏される「火の鳥のモチーフ」が提示される。
 2分を過ぎて、千住真理子のバイオリンをフィーチャーしたバイオリン協奏曲風の音楽が登場。白地に黒い文字でスタッフ・キャストが映し出されるタイトルバックの音楽である。古風な曲調が本作に格調高い雰囲気を与えている。
 3分45秒あたりからは、主人公ゴドーの誕生から成長の過程を描く一連の場面の音楽。このシークエンスにはセリフと効果音はいっさい入らず、音楽と映像だけでゴドーの成長と女性型ロボット・オルガとの出逢いと交流が描かれる。ここで「オルガのモチーフ」が登場。映画音楽でありながら、まるでクラシック音楽のような構成になっていることに唸らされる。映像に合わせた音楽なのだが、説明的な印象はなく、音楽だけでもイメージが広がる。今、観直すと、むしろ映像が音楽に負けている印象すらある。
 2曲目の「試練」は成長したゴドーが宇宙ハンター訓練所で訓練を受ける場面の曲。厳しい訓練場面のモンタージュに付けられた音楽だが、曲調は軽やかで躍動的。ユーモラスな木管、きらびやかな金管、疾走感のあるストリングス。最初から最後まで飽きさせないみごとなオーケストラ作品になっている。
 3曲目「憧れ」はゴドーをしごく訓練所の教官をオルガが懲らしめる場面の曲。タイトルの「憧れ」は、オルガのゴドーへの想いを表しているのである。この時期の樋口康雄作品に特徴的な、飛び跳ねるような弦のピチカートが心地よい。
 4曲目の「ぼくは大人になった」は、ゴドーが上流階級の美しい娘・レナと出逢い恋心を抱く場面に流れるロマンティックな曲。序盤はゴドーがエアカーを飛ばす場面の躍動的な曲。中盤から花畑のシーンになり、ハープのアルペジオをバックに木管とストリングスの美しいメロディがゴドーの初々しい心情を表現する。樋口の紡ぐ音楽は下世話にならず、どこまでも上品で夢見るよう。音楽自体が恋のときめきに身を震わせているような心くすぐられる曲だ。
 アルバムの聴きどころのひとつが、火の鳥との遭遇を描く「出逢い」。火の鳥が登場する3つの場面の曲が1曲にまとめられている。バラバラの場面の曲を繋げた印象はなく、はじめから1曲として構想された曲のようにしか聴こえない。最初に登場するのは火の鳥が初めてゴドーの前に姿を現す場面に流れる神秘的な曲。続いて、オルガが火の鳥と戦う場面に流れるストラビンスキー的な音楽。火の鳥の恐ろしい怪物としての一面を表現する曲だ。最後にふたたび火の鳥の神秘的なイメージが提示されて終わる。「火の鳥のモチーフ」を中心にしたソナタ形式のような展開が美しい。
 次の「愛の戦い」も、人間と火の鳥が戦う場面の曲を集めた聴きごたえのあるトラック。5つの場面の曲が1曲にまとめられている。戦闘場面の音楽らしい激しさ、緊迫感を持ちながらも、いたずらに不安感や闘争心をあおる音楽ではない。むしろ、変化に富んだ展開と精緻なオーケストレーションに聴き入ってしまう。映像と遊離せず、映像のイメージを2倍にも3倍にも引き立てる音楽でありながら、単独の音楽作品としても聴ける完成度。樋口康雄が生み出す音楽の奇跡にただただ感嘆するしかない。
 筆者が以前、樋口康雄にインタビューした際に聴いた話では、本作の音楽はすべて絵コンテをもとに作曲し、映像はいっさい観ていないそうである。それがかえって、映像に制約されない豊かな音楽を生み出すことになったのかもしれない。完成した映像も力作だが、樋口康雄の音楽は、映画音楽とか純粋音楽とかいう枠を軽く超えている。音楽に身を浸すよろこびや音楽の官能性までをも体験させてくれるすばらしい作品だ。ワーグナーの楽劇やチャイコフスキーのバレエ音楽に匹敵するような普遍性を持った音楽作品である。
 「天才」樋口康雄の代表作として、アニメファン、映画音楽ファンのみならず、すべての音楽ファンに聴いていただきたい1枚だ。

 なお、本作の音楽商品としては、ほかに「プロローグ」と「愛の戦い」を収録したシングル盤と2枚組のドラマ編LPが発売されている。このドラマ編が意外に聴きものである。
 ドラマ編LPは映画の物語を90分ほどに編集した内容。現在のDVD版ではカットされているシーンの音声も収録されている。音声は本作のモノラル音声をそのまま収録したものではなく、音楽をステレオで新たにダビングしたもの。音楽の入るタイミングも少し異なっている。「音楽・レコード構成」として樋口康雄の名がクレジットされているので、音楽の聴きどころに主眼を置いて構成されたのだろう。音楽集(オリジナル・サウンドトラック)に未収録の曲もステレオで聴くことができる貴重なアルバムなのだ。
 いつの日か、未収録曲を含めた『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』のサウンドトラック完全版が実現することを心から願いたい。

火の鳥2772 オリジナル・サウンドトラック

Amazon

101 今 敏監督作品のオールナイトで拍手が

 先週の土曜にオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 88 アニメファンなら観ておきたい200本 今 敏のアニメーション」を開催しました。

 チケット完売の大入り満員でした。さらに嬉しかったのは、来場されたお客さんの大半が20代だった事。若い人が今監督の作品に興味を持ってくれているという事ですよ。また『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』の3本を上映したのですが、上映が終わるたびに客席から拍手が起きたそうです(『パプリカ』終了後の拍手は、僕も会場で聞きました)。嬉しいですねえ。

 トークコーナーの出演はアニメーターの本田雄さん、アニメ研究家の氷川竜介さんで、例によって僕が司会を務めました。トークの中で『妄想代理人』と『パプリカ』と『夢みる機械』の企画の関連性や前後関係について話題になったのですが、そこで関係者席にいたプロデューサーの丸山正雄さんが登場。僕たちの間違いを訂正してくださいました。丸山さんは今回のトークは僕達に任せて、登壇はしないはずだったのです。これも嬉しいハプニングでした。

 トークでも次回のオールナイトの企画についてちょっと話が出ました。可能なら、来年も今監督のオールナイトを開催したいと思います。『妄想代理人』『パプリカ』『夢みる機械』の企画の関連性や前後関係については、もう少し詳しく知りたいので、次回のイベントまでに調べておきます。

 最後に写真を1枚お見せします。2枚の色紙は今回のオールナイトでロビーに飾られていたもの。いずれも生前の今監督に、オールナイトに来ていただいた時に描いてもらったものです。「新文芸坐×アニメスタイル」のタイトルでオールナイトを始めるより前のイベントですね。片方については僕自身が忘れていたのですが、どちらのオールナイトでも、僕はトークの聞き手を務めているようです。

(2016年11月21日)

100 「平松禎史アニメーション画集(仮)」編集作業が進行中

 「平松禎史アニメーション画集(仮)」の編集作業が進行中です。一昨日と昨日は平松さんに取材をしてきましたよ。
 
 「田中将賀アニメーション画集」や「西尾鉄也画集」を編集した時もそうだったのですが、今回の書籍でも参考資料として大量の書籍を古本で購入しています。
 主には掲載するイラストの情報を洗い出すためです。本人が描いた事を忘れているイラストもあるし、画像データそのものは残っているけれど、どの媒体で発表されたのか分からないケースもある。初出時にどういったかたちで掲載されたのかも知りたいし、背景や仕上げのスタッフが表記されているならそれもチェックしたい。そういった事を調べるために、過去のアニメ雑誌やムックを買い込むわけです。

 アニメ関連書籍ばかりではありません。「田中将賀アニメーション画集」の時は解説書で確認する事があってDVDソフトを買ったし、「西尾鉄也画集」では学習参考書や押井守監督関係の本を購入しました。

 今回の変わり種としては「ガイナックス連続殺人事件(エロ本)」があります。「ガイナックス連続殺人事件(エロ)」というタイトルの成人向けゲームがあり、それと関連して作られた冊子です。アニメスタイルの編集スタッフが、この本にも平松さんのイラストが載っているらしいという情報を持ってきたのですよ。それでネットオークションでゲット。確かに平松さんのイラストが載っていました。ついでに言うと、鶴巻和哉さんと鶴田謙二さんのイラストも掲載されています。

 これも平松さん自身が覚えていなかった仕事のひとつでした。本をお見せしたところ、「ああ、描いたね」とイラストを描いた事を思い出してくれました。

 そんなふうに過去の平松さんの仕事を探りながら本を作っているわけです。なお、そのイラストが画集に掲載できるかどうかはまだ分かりません。まだまだ編集作業は続きます。

[関連リンク]
「田中将賀アニメーション画集」[Amazon]
https://www.amazon.co.jp/dp/4902948176/style0b-22/ref=nosim

「西尾鉄也画集」[Amazon]
https://www.amazon.co.jp/dp/4902948184/style0b-22/ref=nosim

第491回 楽しい楽しい同窓会

ワシが若い頃はこうじゃった!

的な昔話が俺は嫌い、いや大嫌いです。といっても自分でもたまに言っちゃうんですが。アニメ業界でよく耳にする話、「昔は制作がしっかりしていた」とかを自分自身でも口にしそうになると、即座に塞ぐようにしてます。なぜって、今の制作は今の制作なりのよさがあるのに

「自分にとって都合がいい制作がいなくなった」などのボヤキを、もっともらしく理屈をつけて「俺は警鐘を鳴らしてやってる」つもりになったって、誰も聞く耳を持たないと思うから!! その前に「自分自身が10年前より成長したかどうか?」を省みる事の方が先でしょう!?

と。どんな場でもどんな時でも、自分側が反省する要素はあるはずですから、大概の事例において。なのに昔天下をとった(業界的にはソフト何万本売ったとか)クリエイター様ほど、最近の業界に不満を漏らしてる気がします。板垣はその点、天下をとった事は皆無なので、SNSなどでその警鐘(戦い?)を目にすると、「この方は何が理想なんだろう?」と考えてしますので。自分を持ち上げてくれる制作がいい制作なのでしょうか? 車で送迎してくれる制作が? 夜中2時過ぎたら牛丼買ってきてくれる制作がご希望? いったいそれはいつの昭和で、いつのバブルですか? 例えば制作現場をお借りして作品を作ってるアニメ監督が、自分でスタッフの育成に関わってもいないのに「この会社はいいスタッフがいない! スタッフを育てるのは制作の仕事だろ? 俺は監督だぞ!」ってずいぶん勝手な話だと思いませんか? 例えば「金(制作費)を持ってこれるプロデューサーがいない」? それは

まず「あなたの監督名で金が集められる」ようになってから言いません?

 ちなみに俺自身は、そんな資格があるわけないので、スタッフを育てられる会社を自分らで作るしかないと思ってるわけです。業界全体に向けて「番組落ちるのは誰のせい!」と誰かのせいにする前に、スタッフの育成を買ってでるべきではありませんか? 業界のためを思うなら!!
 と業界四方山にイヤ気がさしてたところ、

11月13日、中学校の同窓会に出席してきました!

 もう28年ぶりに会う同窓生らに興奮し、とても楽しいひとときでした。自分の富とか名誉のためではなく、彼らが素直に面白がってくれるアニメを作りたいと思いました。

99 「フリクリ アーカイブス」が完成した

 昨日の夕方に「フリクリ アーカイブス」の見本が編集部に届いた。今晩、阿佐ヶ谷ロフトAのトークイベントで先行販売し、来週の火曜から一般販売を開始する。

 見本を手にした時の感想は「分厚い! 重い!」だった。

 前にも書いたように、この本の企画は「『フリクリ』の設定資料をきちんとしたかたちで書籍に収録したい」というところから始まっている。それもあって最初は「本文96ページ(全て1色)」くらいのボリュームで考えていた。
 編集の実作業を始める頃には、カラーページにイラストを収録して「本文112ページ(カラー32ページ、1色80ページ)」くらいにするつもりになっていた。編集作業が進むうちに次々に新しい資料が見つかり、また、編集スタッフから「このイラストも載せましょうよ」といった声もあがった。掲載する資料が増えるのは結構な事だし、編集スタッフの要望にもOKを出し続けたため、ページ数は増えていった。そして、最終的に「本文248ページ(カラー72ページ、1色176ページ)」になってしまったのである。

 ここまで書いて気がついたのだが、今回のこのコラムを読んだ人から「なんて計画性がないんだ」と突っ込みが入りそうだ。確かに計画性はないけれど、充実した本にするのが最優先だったのだ。だって、資料が沢山載っている方がいいじゃないですか。

 「フリクリ アーカイブス」には、イラストについては「こんなイラストがあったのか」とファンが驚くようなものまで載っているはずだ。線画設定やデザインラフについては、きちんと「画として楽しむ事ができるサイズ」で掲載できた。編集者としての僕だけでなく、アニメマニアとしての僕も満足できる1冊になった。

[関連リンク]
資料集「フリクリ アーカイブス」が11月22日に発売!!
http://animestyle.jp/news/2016/11/15/10743/

フリクリ アーカイブス[Amazon]
https://www.amazon.co.jp/dp/4902948206/style0b-22/ref=nosim

98 『この世界の片隅に』が公開される

 いよいよ明日、劇場アニメーション『この世界の片隅に』が公開される。完成までに7年。片渕須直監督による入魂の作品である。

 僕は『この世界の片隅に』とは企画書作成以来のお付き合いだ。片渕監督に「WEBアニメスタイル」で連載をしてもらい、イベントを開催した。距離が近かったために、客観的に観られないところがあるのだが、この作品がアニメーションとして非常に豊かなものであるのは間違いない。それだけでも観る価値のある作品だ。

 片渕監督が手がけた『名犬ラッシー』『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』も、非常に丁寧に作られた、そして、愛すべき作品だった。ではあるが、決して誰もが知っているようなメジャーな作品にはなっていない。僕はもっと多くの人に観てもらいたいと思ってきた。

 系譜で言えば『この世界の片隅に』は『アリーテ姫』や『マイマイ新子と千年の魔法』に連なる作品であるはずだ。試写で観た方達の評判は大変によい。僕のTwitterのタイムラインには絶賛のツイートが流れている。『アリーテ姫』や『マイマイ新子』の事があるので、僕は評判のよさに驚いている。『この世界の片隅に』という作品がこのまま多くの人のところに届くのなら、それは喜ばしい事だ。
 
 しかし、安心してはいけない。絶賛のツイートが流れているのは、僕と周囲の人達のタイムラインだけかもしれない。さらに言えば、ネットの評判がよかったからといって、実際に多くの人達が劇場に足を運ぶとは限らないのだ。

 アニメスタイルの読者には、是非とも映画館で観てもらいたい。そして、気に入ったら、周りの人にも勧めてほしい。僕も初日に観に行くつもりだ。

[関連リンク]
劇場長編アニメ『この世界の片隅に』公式サイト
http://konosekai.jp

第490回 続・絵コンテの役割?

 前回の続きのつもりで書き始めますが、どーなるか分かりません。つまり、自分らが学生〜業界入り立てだった頃(20数年前)はいわゆる「アニメーター上がりではないアニメ演出家・監督」の丸チョン大ラフコンテがあたかも「本来のアニメのコンテ」であるかのように語られ、むしろ描き込んだコンテが悪! と解説してる巨匠もいらっしゃったと記憶してます。さらに自分は「演出家は絵を描くべきではない!」との力説を某監督から聞いた事があります。俺もそれを信じていたし、そもそも、

自分自身も演出家・監督になった時点で、アニメーターからは身を引くつもりでしたから!

 でも今は「演出は積極的に絵を描くべきだ! 描ける描けないに関わらず!!」と思ってます。その宗旨替えの最大の要因は、自分的に「デジタル化」だと考えています。演出家はコンテ用紙、作画はパラパラマンガ、美術は背景、仕上げは色塗りのみ、といった分業は、素材を作るための道具が各セクションバラバラのアナログ時代だから効果的だったのであって、現在のデジタル時代では

素材作りのすべてでPCを使用しているため、1人のスタッフができる職種を増やし、兼業して素材の受け渡し工程をより少なくした方が効率的!!

なんです。例えば動画と仕上げ、CGと背景、強引に編集と撮影ってのも全然あり。じゃあ作画とコンテ、レイアウトとコンテは? つまりこれこそが現在のアニメにおけるコンテの役割になるのではないか? 要は

絵がしっかり描ける人にPC上で拡大すればレイアウト(背景原図)にも使えるコンテを!

だから「演出は演出、絵描きではない!」といまだにおっしゃる演出の方々、覚悟しておいた方がいいですよ。もう何年もしないうちに、小学生のころからPCのアニメツールで遊び倒した作画もコンテも描ける恐ろしい新人が、今の演出家の仕事をドンドン奪っていきますから! いや、もう始まってるようですよ(汗)。

第93回 セッションを聴くように 〜パンダコパンダ〜

 腹巻猫です。《SOUNDTRACK PUB》レーベル最新作「劇場版 エースをねらえ! 総音楽集」を11月30日に発売します。主題歌とBGMを収録した2枚組。11月20日に阿佐ヶ谷ロフトで開催する「『Bugってハニー』サントラ発売記念トークライブ」にて先行販売を行います。同トークライブ内では『ジャングル黒べえ』のサントラ盤に収録できなかった秘蔵音源も紹介する予定。ふるってご参加ください! 前売券発売中!

『Bugってハニー』サントラ発売記念トークライブ 〜東京ムービーレコードの逆襲!〜
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/51789


 2008年5月25日、東京ムービーレコード第1弾として「パンダコパンダ オリジナルサウンドトラック〜完全版〜」が発売された。1972年公開の劇場アニメ『パンダコパンダ』の初のサントラ盤だ。いろいろな意味でインパクトのあるリリースだった。
 インパクトのその1は、映画公開から30年以上経っての突然のサントラ発売だったこと。1982年にキングレコードからドラマ編LPが発売されているが、そのときはBGMは収録されていない。音楽のみの商品化は初だった。
 インパクトのその2は、発売元が「東京ムービーレコード」という初めて聞くレーベルだったこと。過去に東宝レコードや大映レコードなど、映画制作会社の名を冠したレーベルは存在したが、アニメ制作会社の名を冠したレーベルは初だ。
 そして、インパクトのその3がざっくりした作りのパッケージ。手作り感ただようジャケットやライナー。曲名も音楽リストの表記をそのままタイトルにしたような感じ。「東京ムービーレコード」ってどんなレーベルなんだろう? と興味はいや増した。
 その興味のほうは11月20日のトークライブで深く突っ込むことにして、今回は『パンダコパンダ』の音楽について語りたい。

 『パンダコパンダ』は1972年12月に「東宝チャンピオンまつり」の1本として公開された劇場アニメ。原案・脚本・場面設定が宮崎駿、監督は高畑勲、作画監督は大塚康生と小田部羊一が担当した。両親のいない少女ミミ子と動物園を抜け出してきたパンダの親子との交流を描くコミカルタッチのメルヘンである。1973年3月には続編『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』が公開されている。どちらも40分足らずの短編作品だが、日常と非日常が同居する物語、生き生きと動き回るキャラクター、レイアウトや作画の魅力など、アニメーションの楽しさがぎゅっと詰まっている。丹念な日常描写が1974年の『アルプスの少女ハイジ』にもつながる作品だ。
 音楽は2作ともジャズピアニストとして知られる佐藤允彦が担当した。
 佐藤允彦は1941年、東京生まれ。高校時代からクラブでピアノを弾き始め、慶応義塾大学在学中にジョージ川口ビッグ4+1のメンバーに抜擢された。1966年よりバークリー音楽院に留学。帰国後はニュージャズ運動の先頭に立って活躍する。現在も、作曲・編曲・演奏に多彩な活動を続けるジャズ・ミュージシャンである。
 この連載でも以前紹介したことがあるが、慶應義塾大学に「慶応三羽ガラス」と呼ばれた名ジャズピアニストが3人いた。『ルパン三世』の大野雄二、『海のトリトン』の鈴木宏昌、そして佐藤允彦である。佐藤允彦はフリージャズなどの先鋭的な音楽活動をする傍ら、60年代から映像音楽の仕事もこなしていた。アニメでは『パンダコパンダ』のほかに虫プロの劇場アニメ『哀しみのベラドンナ』(1973)、TVドラマでは「アタック拳」(1966)、「お荷物小荷物」(1970)、「火曜日の女」(1969-1973)、「水戸黄門外伝 かげろう忍法帖」(1995)など、劇場作品では「神田川」(1974)、「夜叉」(1984)といった作品を手がけている。
 『パンダコパンダ』の音楽はジャズというより、ノンジャンルのバンド音楽といった趣。ドラムス、ベース、ギター、キーボード、トランペット、トロンボーン、パーカッションなどの中編成で、解説書には「12名程度」書かれているが、もっと小編成に聴こえる。音はシンプルだが、スカスカ感はない。息の合ったノリのよい演奏が聴いていて気持ちいい。佐藤允彦がいつも一緒に演奏しているメンバーを集めて「せーの」で一発録りしたのだろう。もちろん、打ち込みなどない時代だから、すべて手弾きの音楽。人間臭くてライブ感のある魅力的な音楽だ。
 本作の音楽商品は、公開当時、主題歌「ミミちゃんとパンダコパンダ」と挿入歌「ねんねんパンダ」を収録したEPレコード(品番:DT-1004)が東宝レコードから、歌とドラマを収録したソノシート(品番:APM-4036)が朝日ソノラマから発売されている。「ねんねんパンダ」は『パンダコパンダ』では使用されず、『雨ふりサーカス』で初めて使用された。
 サウンドトラック・アルバムは2008年に初めて東京ムービーレコードから発売された。
 収録曲は以下のとおり。

1.ミミちゃんとパンダコパンダ(歌:水森亜土)
2.ミミちゃんとパンダコパンダ(カラオケ)
3.ミミちゃんとパンダコパンダ(モノラル)
4.〜31.『パンダコパンダ』BGM(M01〜M30)
32.〜64.『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』BGM(M01〜M30)
65.ねんねんパンダ(歌:水森亜土)
66.ねんねんパンダ(カラオケ)
67.ねんねんパンダ(モノラル)

 主題歌「ミミちゃんとパンダコパンダ」とそのバリエーションをアルバム頭に置き、アルバムのラストは挿入歌「ねんねんパンダ」とそのバリエーション。BGMパートは前半に『パンダコパンダ』、後半に『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』をMナンバー順に収録する構成になっている。BGMの詳細は省略したが、1曲1トラック形式である。
 第一の聴きどころはなんといっても主題歌「ミミちゃんとパンダコパンダ」だ。軽快でユーモラスな一度聴いたら忘れられないメロディ。作詞の真田巌は、当時、佐藤允彦夫人だった中山千夏のペンネーム。同じく真田巌名義で「ねんねんパンダ」の作曲も手がけている(作曲補・佐藤允彦)。歌の水森亜土は『ひみつのアッコちゃん』(1969)の「すきすきソング」や『Dr.スランプ アラレちゃん』(1981)の「ワイワイワールド」などの歌唱でも印象深いイラストレーター・歌手・女優のマルチタレント。この主題歌を得たことで、本作の音楽の成功は決まったようなものだ。
 BGMは、主題歌のメロディを中心に、いくつかのモチーフのバリエーションで作られている。
 明るく素朴な「M01 マリンバによるテーマ」は『パンダコパンダ』の冒頭シーン、ミミ子が田舎に帰るお祖母ちゃんを見送ってから帰宅するまでに流れた曲。ミミ子のテーマともいうべき曲だ。
 このモチーフはミミ子とパンダ親子が公園で過ごす場面の「M19 シロフォン・テーマ〜スロー」で再び登場する。
 次の「M02 シンセ・コミカル」はミミ子がコパンダ=パンちゃんと初めて出会う場面のユーモラスな曲。このモチーフはコミカルなシーンの定番として映画全編にわたって使われている。続編の『雨ふりサーカス』にも継続して登場する本作の主要モチーフのひとつである。
 挿入曲「ねんねんパンダ」は『パンダコパンダ』では歌入りでは使われていない。しかし、そのメロディだけはミミ子がお祖母ちゃんに手紙を書く場面の「M09 ED〜ミュージック・ボックス」などいくつかの曲で使用されている。「ED」と表記されているので、当初は「ねんねんパンダ」がエンディング主題歌候補だったのかもしれない(実際は「ミミちゃんとパンダコパンダ」がオープニングとエンディング双方に使用された)。
 ところで、サントラ盤では上記のように曲名が「Mナンバー+テーマ+楽器(もしくは曲調)」で表記されている。どんな曲かわかりやすい反面、「どの場面で流れた曲」かはさっぱりわからない。ここはやはり、「イメージが広がる曲名」をつけてほしかったなあと思うところだ。
 そこで参考までに劇中使用曲と使用場面をリストにして紹介しよう。本作の音楽はすべて画に合わせたフィルムスコアリングで、同じ曲を2度使う等の使い回しはしていない。『パンダコパンダ』と『雨ふりサーカス』はどちらもM01からスタートするが、別の曲である。

『パンダコパンダ』
M01:お祖母ちゃんを見送って買い物をしながら帰るミミ子
M02:ミミ子、縁側のパンちゃんを見つける
M03:「私たちきっと友だちになれるわね」と逆立ちするミミ子とパンちゃん
M04:ミルクを飲むパンちゃんとミミ子
M07:たずねてきたパパンダと話すミミ子
M05:パパンダがお父さんになると言ってくれて、ミミ子大よろこび
M06:パパンダに帽子をかぶせ、パイプをくわえさせ、抱きつくミミ子
主題歌カラオケ:竹を食べるパパンダとパンちゃん〜上機嫌のミミ子
M09:お祖母ちゃんに手紙を書くミミ子
M10:朝のしたくをするミミ子
M11:パパの会社はお休みだと言うミミ子
M12:学校へ行くミミ子についていくパンちゃん
M13:パンちゃんが先生に見つかってごまかすミミ子
M14:給食の調理室に入っていくパンちゃん
M15:パンちゃんのせいで大混乱の調理室
M16:調理室から逃げ出すパンちゃん〜職員と生徒たちに追われるパンちゃん
M17:お祖母ちゃんに手紙を書くミミ子
M18:ミミ子の家でパンダに出くわしてぎょっとするおまわりさん
M19:パンダ親子と公園で過ごすミミ子〜ミミ子の家を取り囲む警察官たち
M20:なわとびをするミミ子とパンダ親子
M22:パンちゃんにとびかかる犬
M23:犬を手玉にとるパンちゃん〜逃げていく犬と少年
M24:動物園のことをパパンダに聞くミミ子
M25:警官と動物園の職員に囲まれるパパンダとミミ子
M26:(未使用)
M27:川を流されて水門に近づいていくパンちゃん〜川に飛び込むミミ子
M28:パンちゃんをつかんだまま急流に流されそうなミミ子
M29:パパンダに助けられるミミ子とパンちゃん
M30:動物園に戻ったパンダ親子〜出勤するパパンダ

『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』
M01:ミミ子の手紙を読むお祖母ちゃん〜ミミ子の家を訪れる男たち(サーカス団員)
M02:大中小の歯ブラシを見つける男
M03:巨大な生きものがいると感づいておびえる男
M04:窓の外からのぞくパンちゃん、ミミ子
M05:家に入ってくるミミ子とパンダ親子〜泥棒が来たとはしゃぐミミ子たち
M06:夕食を食べるミミ子とパンダ親子
M07:家の中を探索するパンちゃん〜あちこちに小さな足跡
M08:鉢合わせして大慌てのパンちゃんとトラちゃん
M11:トラちゃんを見つけるミミ子とパパンダ〜トラちゃんを歓迎するミミ子たち
M27:夕食を食べるトラちゃんとミミ子たち〜パンちゃんとトラちゃんを寝かせるミミ子
M10:洗濯物を干すミミ子〜買い物に行くミミ子とパンちゃん、トラちゃん
M13:サーカスのようすをうかがうトラちゃんとパンちゃん〜玉で遊ぶパンちゃんとトラちゃん
M15-3:玉に乗ろうとするパンちゃん
M15-2:玉から落ちて転げるパンちゃん
M09:玉に乗ってサーカスの中を走り回るパンちゃん
M15-4:トラの檻に入ってしまうパンちゃん
M15-1:探しに来たミミ子に飛びつくトラちゃん
M16:パンちゃんをくわえて檻を出るトラ〜トラと対面するミミ子
M17:トラに抱き着くトラちゃん、ミミ子に抱きつくパンちゃん〜ミミ子の顔をなめるトラ
M18:雨が降り始める〜サーカスを心配するパンちゃん
M19:トラ型のクッキーをもらってご機嫌のパンちゃん
M20:降り続く雨〜浸水しているミミ子の家
挿入歌「ねんねんパンダ」:パンちゃんを眠らせるミミ子
M21:雨が上がる〜一面水に覆われているミミ子の家の周り
M22:屋根の上で朝食を食べるミミ子たち
M23:ミミ子に頼まれて水没した家の中へジャムを取りに行くパパンダ
M14:流れてくるサーカスの玉〜玉を広い上げるパンちゃん
M24:トラちゃんを助けにベッドの船で出発するミミ子たち
M25:取り残されている動物たちを助けに行くミミ子たち
M12:動物たちに「もう大丈夫」と呼びかけるミミ子〜トラちゃんと再会するパンちゃん〜動物たちを助けるパパンダとミミ子
M26:汽車の火室に石炭を入れるトラちゃんとパンちゃん
M28:汽車で町に帰ってくるミミ子と動物たち
M29:丘を越えて森を抜けて進む汽車〜汽車を追う団長たちの車
M30:暴走する汽車を止めたパパンダを讃えるミミ子と町の人々

 一部、Mナンバーと劇中使用順が一致していない部分がある(特に『雨ふりサーカス』はそれが多い)。アルバムはMナンバー順収録なので、劇中使用順に並べ直して聴いてみるのも一興だろう。

 本作の音楽は「独立した楽曲として完成している」といったタイプの音楽ではない。画に合わせた音楽で、ほとんどの曲が1分未満の長さ。昔の漫画映画っぽい効果音的表現も聴かれる。基本的には「画と一緒に楽しむ音楽」だ。
 それでも、本作の音楽には映像から独立してもつい聴き入ってしまうような魅力があふれている。『雨ふりサーカス』の「M08 ゴーゴー〜ピアノ」や「M09 ゴーゴー〜バンド」などはその魅力がストレートに伝わる好ナンバーだ。音楽を作る楽しさ、演奏する楽しさまでが伝わってくる。それは佐藤允彦とその仲間たちが作り出す音楽の力なのだろう。手練れたちの息の合ったセッションを間近で聴くような気分で楽しめる、愛すべき作品である。

パンダコパンダ オリジナルサウンドトラック〜完全版〜

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97 OVA『ああっ女神さまっ』1巻

 「アニメージュ」2016年12月号(vol.462)の「この人に話を聞きたい」第百九十一回のゲストは松原秀典だ。その取材の予習のために、松原さんの代表作である『ああっ女神さまっ』を観返した。今観ても凄かった。いやむしろ、同傾向の作品が幾つも作られた後だからこそ、その価値がはっきりと分かる。

 念のために説明しておくと、『ああっ女神さまっ』は藤島康介の同名マンガを原作にした作品である。大学生の森里螢一と女神のベルダンディーの二人を軸にして展開するラブコメディだ。1993年にリリースが始まったOVAシリーズで、監督はこの後も『ああっ女神さまっ』の映像化を手がけ続ける合田浩章。キャラクターデザインは松原秀典だ。

 OVA『ああっ女神さまっ』はあまりにも出来がよかったため、「ハイ・クオリティ・アニメーション・ビデオ」というキャッチコピーがつけられた。リリースが始まった頃、僕も作画等の完成度の高さに「大変な作品が始まった」と思ったものだ。

 1巻では螢一とベルダンディーの出逢いから二人が一緒に暮らし始めるまでが描かれている。1巻の絵コンテは合田監督が担当。クレジットはないが、演出も彼がやっているのだろう。作画監督は松原秀典と北島信幸。1巻に、OVA『ああっ女神さまっ』の魅力が凝縮されている。ますなりこうじが絵コンテ・演出を、本田雄が総作画監督を務めた2巻もいいところが沢山あるのだが、1巻は別格だ。中でもベルダンディーが螢一の前に姿を現したシーンの仕上がりは凄まじいほどのものだ。女神が地上に現れるというのはこういう事か。目の前に女神がいるというのはこういう事か。手で描いた画でそれを表現している。モニターを観ていて思わず、息を飲む。

 合田監督はこの1巻で衒いなく、まっすぐに「理想的なヒロインを魅力的に描く」という事をやっている。それだけでなく、彼女が降臨した世界を爽やかで瑞々しいものとして描いている。さっきも述べたように、ヒロインを魅力的に描く事を主な目的とした作品が何本も作られたが、ここまでやりきったものは少ないのではないか。Pureという言葉がぴったりだ。OVA『ああっ女神さまっ』1巻は非常にPureな作品である。

 作画は端正であり、主要場面においては緻密ですらある。リリース当時にベルダンディーの複雑な髪の毛をきっちりと、しかも立体的に描いているのに驚いたのを覚えている。色彩設計、美術も上品でいい。そして、ベルダンディーを演じる井上喜久子はハマリ役中のハマリ役。本作における彼女の力は非常に大きい。『ああっ女神さまっ』は1990年代半ばに始まる声優ブームのきっかけとなった作品のひとつであり、井上喜久子の代表作となる。原作とアニメスタッフ、キャストがいいタイミングで出会ったのだろう。

 1巻の物語は原作の1話から3話に相当するものだ。螢一の妹の恵は原作だと3話よりも後で登場するのだが、OVAでは1巻終盤に顔を出す。当時は原作の話を端折り過ぎていると思ったが、観返すと30分に内容をギュッと詰め込んでいる感じがいい。『ああっ女神さまっ』には劇場版、TVシリーズ、OAD等もあるのだが、未見の方にはまずはOVAをお勧めしたい。

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96 「LO画集 2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS-」

 今日はアニメではなくて、本についての話。

 最近買った本の中で、よかったのが「LO画集 2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS-」だ。マンガ雑誌「COMIC LO」の表紙イラストを集めた画集である。タイトルが示す通りに、これは2冊目の画集だ。1冊目の「LO画集」には 「COMIC LO」vol.50までの表紙イラストが、「LO画集 2-A」にはvol.100までの表紙イラストが収録されている。

 先に断っておくが、「COMIC LO」は成人向け雑誌である。画集の帯には、この雑誌について「ちょっと変わった趣味の漫画雑誌(意訳)」とある。入りやすい表紙のイメージとは違い、ガチな内容であるので、そういった本が苦手な方はご注意を。

 「COMIC LO」の表紙は漫画家、イラストレーターのたかみちによるイラストが使われている。モチーフになっているのは常に少女だ。背景もしっかりと描かれており、季節感のある絵が多い。シチュエーションも凝っている。表紙ではそのイラストにコピーがつけられている。コピーの入れ方も含めて、デザインも決まっている。「COMIC LO」の表紙には作り手のクリエイティブが詰まっている。

 イラストもいいのだが、コピーもいい。イラストの内容に寄り添ったコピーもあるし、飛躍しているものもある。どのコピーもキレがよく、緩急自在な感じがいい。飛躍しているコピーをふたつ、紹介しよう。

 「COMIC LO」vol.21の表紙イラストは、曇天の下で手を繫いで歩いている制服を着た2人の少女だ。手前の少女は傘を持っている。傘はまだ閉じておらず、雨が止んだばかりのようだ。それにつけられたコピーは「ほら。拍手が止んだ。」である。
 何度かこの表紙を見て、拍手とは雨音の事だろうと思い至った。雨に降られて帰宅できなくなった2人は、どこかで雨宿りをしながら、雨音を聞いていた。その音を誰かの拍手だと思って、自分達を慰めていたのかもしれない。だとしたら、何についての拍手だと思っていたのだろうか。そんな想像が広がっていく。雨がやむ事を「拍手が止む」と表するのが詩的であるし、イラストとコピーがひとつになったこの表紙は素敵だ。

 「COMIC LO」vol.52の表紙イラストは、椅子に座ったおさげ髪の少女。つけられたコピーは「母は、少女であった。」である。つまり、少女はコピーの内容を呟いている誰かの母親であり、描かれているのは過去の姿だという事だ。最初に絵を見て、可愛い女の子だなあと思い、その次にコピーを見て、今では彼女が成長し、お母さんになっているらしい事を知る。これも考えさせられるコピーだ。たとえば僕は、少女という存在は女性が成長していく過程の一時期でしかなく、儚いからこそ輝いているのだな、と改めて思った。この女の子なら、優しくて綺麗なお母さんになったのだろうなとも考えた。
 そして、たかみちさんは、誰かの母親の若い姿のイメージでイラストを描いたわけではないのだろう。それがまた面白い。

 このふたつのコピーはイラストからの飛躍が大きなものであり、見る者が解釈するタイプのものだ。 「COMIC LO」の表紙にはそんなふうに解釈を楽しめるコピーがある。そうではないシンプルなコピーも、それはそれで味わい深い。

 「LO画集」にはタイトルロゴやコピーが添えられていないイラストそのものと、コピー等がついた表紙デザインの両方が載っている。1冊目は表紙デザインが小さかったが、2冊目は大きく掲載されており、僕としては2冊目の方が満足度が高い。
 画集の巻末には「LO創作ノート」として各イラストのラフ、デザインラフも収録。たかみちさん、編集W(コピーを考えている編集者であるようだ)、デザイナーの宮村和生さんのコメントも載っており、至れり尽くせりだ。

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第125回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『この世界の片隅に』 その調査・考証の全て!?

 こうの史代原作の長編アニメーション『この世界の片隅に』が11月12日(土)に公開となる。試写会で観た観客の評判は非常に高く、公開を心待ちにしているファンも多い事だろう。

 片渕須直監督と制作スタッフは『この世界の片隅に』の制作過程で、舞台となる地域や時代風俗について綿密な調査研究を行った。その結果を披露していただくのが、このイベントだ。出演者には片渕監督とキャラクターデザインの松原秀典を予定している。

 制作中に開催した同作のイベントでも「そんなところまで調べるの?」「当時の日本の風俗って、そうだったの!」と観客から驚きの声を頂戴した。今回のイベントは作品完成後という事で、調査研究の総決算をお届けできるはずだ。

 今回のイベントもトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。前売り券は11月3日(木・祝)から発売開始だ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/51928

第125回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『この世界の片隅に』 その調査・考証の全て!?

開催日

2016年12月11日(日)
開場18時 開演19時 終演22時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、松原秀典、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

95 インターネットという便利な手段

 9月16日更新の66回「吉成曜ポストカードの秘密」からの一月半、土日と祭日をのぞいた毎日、この「アニメ様の『タイトル未定』」を更新した。

 編集部内の行き違いで更新できない日があり、翌日に二回分更新する事もあった。あるいは新刊告知のような内容もあったから、毎回がコラムらしい内容だったわけではないけれど、とにかく一月半分のテキストを書いた。Twitterのツイートよりはまとまったかたちで、アニメの感想や日々の事をテキストにしていきたい。とにかく毎日、サクっと原稿を書きたいなあと思ったのだ。

 月に一本、あるいは週に一本くらいのペースで、まとまった原稿を書くのもいいけれど、現在の僕はそれだとペースが作りづらい事が分かった。常に抱えている作業(遅れると誰かに迷惑をかける作業)があるので、まとまった原稿を書く時間が作りづらいのだ。
 最新の作品について「時間をかけてしっかりと文章を書こう」と思い、結局、書かずにタイミングを逸してしまう事が何度かあった。そうならないためにも定期的にテキストを書くようにしたかった。

 テキストを発表する事に関して、現在はインターネットという便利な手段があるのだから、是非とも使っていきたいというのもある(とても便利なものなのに、最近の自分はその便利さを使い切れていないと思っているのです)。前回の94回『ポケットモンスター XY&Z』のようなかたちで、タイミングを外さずに「観ましたか? あれはいいですよ」とサクっと書くのが理想のかたちのひとつだ。

 一月半続けて、ノリがつかめてきた。もうちょっと軽快に書きたい。このままずっと毎日書き続けていきたいところだが、「アニメスタイル010」の原稿作業が本格化するので、11月はお休みが続くはずだ。

 連載に勢いをつけるため、第66回から今日までサムシング吉松さんにコラムinコラムのかたちでイラストを描いてもらったけれど、それもひとまず今日で終了。吉松さん、ありがとうございました。それでは最後の「コラムinコラム」をよろしくお願いします。

●サムシング吉松のコラムinコラム

第124回アニメスタイルイベント 帰ってきたデータ原口のアニメ講義
「クレジットから見る 東映アニメーション60年」

 あの原口正宏のトークイベントが帰ってきた。12月4日(日)昼に「第124回アニメスタイルイベント 帰ってきたデータ原口のアニメ講義 『クレジットから見る 東映アニメーション60年』」を開催するのだ。

 原口正宏は、国産商業アニメ研究の第一人者であり、アニメのデータ収集に人生を捧げてきた人物である。彼をメイン出演者としたこのイベントは、いわば「日本で一番アニメに詳しい人物による日本で一番濃いアニメイベント」である。

 12月4日(日)のテーマはイベントタイトルにあるように「クレジットから見る 東映アニメーション60年」。東映アニメーション作品のクレジット画面を次々と見つつ、その表示形式や表示順の推移、手書きから活字への変化、脚本クレジットのEDへの移動、絵コンテの分離表示といった「クレジットの行間」から、東映アニメの社風(制作体制)の特徴と、歴史の流れを読み取るという試みである。

 今回のイベントもトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。前売り券は10月29日(土)に発売開始だ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/51928

第124回アニメスタイルイベント 帰ってきたデータ原口のアニメ講義
「クレジットから見る 東映アニメーション60年」

開催日

2016年12月4日(日)
開場12時 開演13時 終演16時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

原口正宏、小黒祐一郎

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

94 『ポケットモンスター XY&Z』

 昨日の午前中に『ポケットモンスター XY』『同・XY&Z』の矢嶋哲生監督に取材をしてきた。掲載予定媒体は「アニメスタイル010」。取材のテーマは『ポケットモンスター XY&Z』だ。

 『XY&Z』は話題の多いシリーズだった。ビジュアルに関して言えば、作画の充実ぶりが素晴らしい。『XY』もよいところが沢山あったが、『XY&Z』はさらによかった。アクション作画の充実は驚くばかりで、しかも、シリーズ全体としてのアベレージも高い。バトル以外でも、ヒロインのセレナによるポケモンを使ったパフォーマンスのシーンも見応えがあった。また、アクションだけでなく、日常芝居にも力が入っていた。

 作画や刺激的な映像が好きな人で『XY&Z』を観ていないとしたら「ライバル決戦! サトシゲッコウガVSメガジュカイン!!」だけでもいいので観てほしい。HuluやAmazonビデオでも視聴できます。ゲッコウガがいいんですよ。ゲッコウガが。

 『XY&Z』は昨日の放送で最終回を迎えた。これから観るファンもいると思うので、具体的な事は書かないが、ちょっと驚く、そして嬉しい展開があった。それも含めて3年にわたるシリーズの結末に相応しい最終回だった。

●サムシング吉松のコラムinコラム

[関連リンク]
アニメスタイル010 (メディアパルムック) [Amazon]
https://www.amazon.co.jp/dp/4802151381/style0b-22/ref=nosim

テレビアニメ ポケットモンスターオフィシャルサイト
http://www.pokemon.co.jp/anime/tv/

93 帰ってきたデータ原口のアニメ講義

 12月04日(日)の昼に「第124回アニメスタイルイベント 帰ってきたデータ原口のアニメ講義 『クレジットから見る 東映アニメーション60年』」を開催する。

 データ原口こと、原口正宏についてよく知らない人もいるかと思うので、改めて紹介したい。彼は日本の全商業アニメの放映&スタッフのデータを記録している人物だ。学生時代からその活動をしているので、30年以上もデータを取り続けている。活動を始める以前の作品も遡って調査しているので、少なくとも日本のTVアニメに関してはその歴史の始まりから全てを把握しているはずだ。

 彼のデータに対する情熱は並外れたものだ。オープニングやエンディングの全テロップをテキスト化し、オープニングやエンディング、アイキャッチ等の変更もチェック。各話で使われた挿入歌までチェックしている。朝のワイドショー内で放映されているミニアニメ等もチェックしている。さらにそのミニアニメが地方によってバージョンが違う場合は、各地方のバージョンを手に入れて記録するという徹底ぶりだ。

 過去にどんな国産アニメがあったのかについて、あるいはプロダクションの変遷、スタジオ間のスタッフの移動等について、最もよく知っているのが彼だろう。いわば「日本で一番アニメに詳しい人物」である。

 そのこだわりの強さ、徹底した仕事ぶりゆえに、僕にとっては彼は偉人、怪人の範疇にある人物である。偉人と怪人ではまるで違うではないかと突っ込みが入りそうだが、データ原口は、偉人でもあり、怪人でもあるのだ。
 原口さんは語りも、本人のキャラクターも面白い。その面白さが世間に伝わり、彼が注目を集めるようになればいい。あるいは彼が全力を振るえるような仕事があればいいと思っている。「データ原口の平和利用」は僕の長年の課題だ。

 アニメスタイルの原口さん関連のイベントは、彼の存在を世に知らしめる事が目的のひとつだ。今年の6月に足かけ3年続いたイベントシリーズが一段落して、12月04日(日)開催の「帰ってきたデータ原口のアニメ講義」が半年ぶりの彼のイベントとなる。今回の企画が成功すれば、また次の機会があるはずだ。

●サムシング吉松のコラムinコラム

[関連リンク]
第124回アニメスタイルイベント 帰ってきたデータ原口のアニメ講義
『クレジットから見る 東映アニメーション60年』[阿佐ヶ谷ロフトA]
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/51928