アニメ様の『タイトル未定』
428 アニメ様日記 2023年8月6日(日)

2023年8月6日(日)
吉松さんとワイフと大塚 幸龍軒で吞む。セルフの350円缶アルコール飲料に始まり、ヤカンサワーに。沢山食べて吞む。21日ぶりの飲酒だった。
ずっと書いてきたけれど、いまだに仕上がっていないコラム。ここまでの書き方をやめて、違った感じでまとめることにする。

2023年8月7日(月)
「キン肉マン」の最新話をネットで読む。相変わらず意表を突きまくっていて面白いんだけど、マリキータマンって劇中の時間だと、つい最近に倒されたんじゃなかったっけ。と思って検索したら、やっぱり倒されたのは最近のようで、しかも、串刺しになって死んでいた。
病院Bに行く。この日は採血とCTスキャン。原稿以外の作業多くて、原稿は進まず。今週は通院が二度あるし、外出も多いので、どこかで原稿だけをやる時間を作らないと。
WOWOWの『タッチ 背番号のないエース』を録画で観た。

2023年8月8日(火)
ワイフと一緒に『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』を鑑賞。平日昼間の割りにお客は入っていて、子連れやカップルよりも、女性単独や女性2人組が多かった。いいところもよくないところもあるけれど、プラスとマイナスを合算するとプラスだった。CGに関してはイケないところもあるけれど、「『クレヨンしんちゃん』が3DCGになった面白さ」はあった。その域に達していた。美術がよい感じで、人物の表情は改善の余地あり。巨大物と比較したロングショットの人物も見どころのひとつ。細部だけど、まつざか先生のシャツとトレパンの着こなしがよかった。
内容に関しては、今までの映画『クレヨンしんちゃん』とは似て非なるものだけれど、こういう『クレヨンしんちゃん』があってもいいとは思った。プロットと脚本については明らかに練れていないと思った。文句をつけようと思えばつけられるけれど、上にも書いたようにプラスとマイナスを合算するとプラスだった。今までの映画『クレヨンしんちゃん』よりも面白いと思った人はいるはず。

WOWOWの『タッチ2 さよならの贈り物』『タッチ3 君が通り過ぎたあとに -DON’T PASS ME BY-』を録画で観た。以下は1、2、3の感想だ。TVシリーズと同時進行で作られた『タッチ』の劇場版であり、3本とも過去にも視聴している。今回の放送は恐らくは最新のビデオマスター。配信も同じマスターかもしれないけど、配信は解像度を落としているようだし、Blu-rayソフトは出ていないはずなのでこの放送は貴重かもしれない。
『タッチ 背番号のないエース』は終盤まではいい感じなのだけれど、達也が死んだ和也の代わりにマウンドに立つ展開はかなり強引だ。90分前後で1本の映画にまとめるにはこれしかないと思うくらいの見事なアイデアだし、インパクトはあるんだけど、この展開に持っていくまでの積み重ねが必要なはず。だけど、前知識無しに映画館で観たら納得するんだろうなあ。
『タッチ2 さよならの贈り物』は3本の中では一番ラブストーリーの色、青春物の色が濃い。『背番号のないエース』は『タッチ2』があるかどうか分からないで作っているけど、『タッチ2』は『タッチ3』があるのが分かって作ってる感じ。南が達也に傘を渡すところで、観たことがないような面白いカット繋ぎがあった。面白いし、成功している。「南が甲子園に連れていって欲しいと言った」ので、達也は頑張っているのだと誤解している人がいるが、それは『タッチ2 さよならの贈り物』のせいかもしれないと思った。
『タッチ3 君が通り過ぎたあとに -DON’T PASS ME BY-』は画面で確認すると、確かにタイトルに「-DON’T PASS ME BY-」の文字がある。柏木の話(と須見工との試合)に絞り込んでいて、それゆえに見応えあり。初見時にはダイジェストのように感じて「TVシリーズのほうが面白い」と思ったはずだけど、TVシリーズと比較しなければ充分以上に面白い。新田との最後の対決は手に汗握った。ただし、試合が終わったところで本編が終わってしまうので、そこは物足りない。柏木のその後と、達也の南への告白はエンディングで、セリフ無しの画だけで表現されている。ちなみに新田の妹の由加の出番は無し。由加絡みの人間関係もなく、そのためにスッキリしているとも言えるはず。
色々と端折ってはいるけれど、90分ほどの映画3本で、劇中時間の3年分を描いて、それをまとめて観ると「3年分のドラマを描いている」と思えるのだから大したものだ。演出的なことで言うと、TVシリーズのほうが色々なことをやっていて、作品として「豊か」であるはず。
以下は余談。当たり前といえば当たり前だけど、『MIX』を観た後だと、西村と原田が若い。逆に言うと『MIX』だと見事に年をとっている。それから、この頃の原田は理性的だし、言っていることがロジカルだ。どうして、ああなった。それから『タッチ』の時に大人だったキャラクターって、『MIX』にはほとんど出ていないんだなあ。映画3本だと、南の見せ場ってあまりないんだけど、それでもやっぱり華がある。それに関しては、後のあだち充作品のヒロインは逆立ちしても敵わないのではないか。
さらに余談は続く。Wikipediaの劇場版『タッチ』3本の記述は「劇場アニメ70年史」が出典元になっているんだけど、「70年史」の劇場版『タッチ』の原稿って誰が書いたんだっけ。ひょっとして自分が書いているかもしれない。

2023年8月9日(水)
その気にならないと原稿の時間がとれないので「ここからの2時間は他のことはやらないで取材原稿のまとめをやる」と決めて、作業を始める。午後は病院Bに。先日の検査の結果を聞いた。年末の入院の後に肺炎になっていたらしい。そして、すでに治っているらしい。
「この人に話を聞きたい」の今千秋さんの回の原稿のためにYouTubeで「りぼんオリジナルアニメ」をチェックする。これは僕が知らなかった世界だ。ネット配信のみの作品で、映像中にスタッフクレジットが無いし、公式サイトも無いようなので、版権元か制作会社に問い合わせないと誰が作ったものなのかも分からない。遂にネット配信のために作られた作品について調べなくてはいけない日がやってきた。同じく「この人」原稿のために『BLEACH』15話、33話、『tactics』7話、17話を観た。インタビューで今石洋之さんの『小さな巨人ミクロマン』の影響を受けているという話が出たのだが、確かに33話は今石さんの影響らしき部分があった。
「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」と「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の見本が印刷会社から届いた。
暑いかと思ったら、雨、やたらと蒸したり、涼しくなったり。目まぐるしい一日だった。

2023年8月10日(木)
「文藝春秋」2023年9月号の本田雄さんの記事をkindleで読む。『君たちはどう生きるか』で本田さんがしっかり修正を入れたと思われる場面、本田さんが原画を描いたと思われるカットの多くが話題になっていて、その意味で満足。
渋谷TSUTAYAがCD、DVDのレンタルを終了することを知る。店頭でレンタルできる時代が終わりに近づいた。ネットレンタルはいつまで続くのか。
夕方に新文芸坐に。『マジンガーZ対デビルマン』と『マジンガーZ対暗黒大将軍』を観て、余力があったので『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』も観た。
「『マジンガーZ対暗黒大将軍』でグレートマジンガーに乗っていたのは不動明だった」という冗談がある。『マジンガーZ対暗黒大将軍』のグレートマジンガーのパイロットは声が田中亮一さんだし、素顔は見せないし、自分の名前を名乗っていないのだ。前作『マジンガーZ対デビルマン』で「俺でよかったらいつでも手を貸すぜ」と言った不動明がグレートマジンガーに乗って助けにきた、というわけだ。その冗談を念頭に置いて『マジンガーZ対デビルマン』と『マジンガーZ対暗黒大将軍』を連続して観ると、本当に不動明がグレートマジンガーに乗っているように見える。悪霊型戦闘獣ダンテの声が野田圭一さんだというのが、さらに事態を複雑化させている。

2023年8月11日(金)
「この人に話を聞きたい」の原稿を進めるつもりだったのだけど、他の用事が多くてあまり進めることができず。まずい。
僕の勘違いでなければサブスクにある「スーパーロボット魂」系の楽曲が減っている。これは困った。今のうちにCDを買っておいたほうがいいのか。

東映チャンネルの「Gメン’75」の19話、20話を録画で観た。19話「デカ部屋の悪霊」(脚本/高久進、新井光 監督/佐藤肇)では山田刑事(藤木悠)の弟が誘拐される。山田刑事はおそらくは40代で、弟は大学受験を控えていて、まだ少年の面影を残している。それくらい年齢が離れた兄弟もあるだろうけど、親子と言われたほうがしっくりくる。そのあたりには劇中の誰も突っ込まない。弟が誘拐された後、身代金として2000万円が必要になり、黒木警視(丹波哲郎)がその金を用意してくれる。その時のセリフが凄い。「Gメン全員の退職金を担保にしてな、警視庁から融通してもらったんだ。遠慮はいらん」。これは笑った。無茶苦茶すぎる。最後の「遠慮はいらん」も凄い。遠慮するよ。細かい見どころとしては、響圭子刑事(藤田美保子)が、山田刑事の弟をもてなすために、山田刑事のアパートにやってきて、手料理を振る舞ったこと。家庭的なところを見せることもあるのね。作った料理がオムレツ、焼肉、サラダ。料理が上手過ぎず、慣れていないわけでもない感じが絶妙だった。
20話「背番号3長島対Gメン」(脚本/池田雄一 撮影/下村和夫 監督/深作欣二)は「Gメン’75」で4本しかない深作欣二監督回の1本。サブタイトルのインパクトがかなりのものだが、勿論、Gメンと長嶋茂雄が戦うわけではなく、野球にちなんだ事件にGメンが挑む。前半にプロ野球選手の写真が何度か送られてきて、その写真に秘められた暗号をGメンが読み解くという展開があり、その部分が「Gメン’75」には珍しいコメディタッチ。推理の途中で黒木警視が昔の野球選手に関する知識を披露するのも可笑しい。「Gメン’75」ファンのサイトで「『バーディー大作戦』を思い起こさせるような」と書かれていたけれど、確かに「バーディ大作戦」だ。

2023年8月12日(土)
コミックマーケットの1日目であったが、新文芸坐でのトークが入ってしまったため、この日のコミケ会場は事務所スタッフに任せて、僕は不参加となった。新文芸坐のプログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 162】映画館で出逢うアニメの傑作『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』」と「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 163】公開25周年!『劇場版 機動戦艦ナデシコ』」の2本立て。順番としては劇場版『マジンガー』2本を上映した後に、羽原信義さんと僕のトーク。次が佐藤竜雄さんと僕のトークで、その後が『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』の上映だった。
いつものように新文芸坐さんに関係者席を用意してもらっていたのだけれど、8月10日(木)の上映で劇場版『マジンガー』2本は前の席で観たほうがいいことが分かったので、自分と羽原さんのために前の席のチケットを購入して、その席で鑑賞した。トークでは自分はアニメ映画史における2作の位置づけ、TVシリーズとの関係などを簡単に説明。TVシリーズでマジンガーが初めて空を飛んだ4日前に、『マジンガーZ対デビルマン』でマジンガーが飛んだと言ったところ、羽原さんから34話の予告で飛ぶことは分かっていたとナイスな突っ込み。羽原さんには主に技術的な部分を語っていただいた。『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』を初めて観たお客さんが半分近く。予定していた前説をやらなくてよかった。トークの間、ずっと頷き続けているベテランファンらしき女性がいて印象に残った。
『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』は作品未見の人は1割くらい。こちらのトークは初心に返って、劇場版を作ることになった理由、大月俊倫さんからどんなオーダーがあったのか、佐藤竜雄監督とXEBECスタッフのモチベーション等について。そして、アキトに過酷な運命を与えた理由について。当時のパンフレットやムックで話してもらえなかったことについて話してもらえた。それから「ルリが初登場時に『こんにちは』と言うのは観客に挨拶しているということでよいのか」「ルリがハーリー君と一緒に寝たのはどういうつもりだったのか。その描写の意味は」といった意外と訊いていなかった(はずの)ことについて。トークの後、佐藤竜雄監督と羽原さんと軽く呑んだ。

第838回 50代の抱負

さて、1月28日で50歳になりました!
水島精二監督、そしてテレコム・アニメーションフィルム時代の先輩・西見祥示郎監督、同日誕生日でおめでとうございます!

 去年入ったミルパンセの新人・Nさんも同じ誕生日、とのことでした。ま、当たり前な話ですが誕生日なんて365しかなく、こじつければ誰でもどこかの有名人と被る訳で、どーってことない話題でしょう。ただ、何か「あの人もこの人も、今日俺と一緒に歳を取るのか~」と想いを馳せてしまうのは自分だけでしょうか?
 特に前述の西見先輩もそうですが、『けいおん!』キャラクターデザインの堀口悠紀子さんや業界大先輩『長靴をはいた猫』の森康二さんらといった超巧い同業者と誕生日が同じだと、何か光栄な感じがするのは、これも自分だけでしょうか? 勿論、御二方とも面識は全くありませんが(汗)。
 そんな感じで50代に突入して、まだまだ監督をやらせていただけるようなので増々頑張っていくには違いないのですが、今までどおりではダメなこともあります。それは、

もっと能動的に仕事を作る!

 まあ単純に言うと「自分のやりたいことを積極的に探す」のです。こちらについては何度も語ってると思いますが、俺は“出﨑統監督憧れ”で業界に入ってきた人間なので、

原作かオリジナルか拘らず、来た仕事は何でもやる!

というスタンスで40代終わりまでやりとおしたつもりで、それ自体には全然不満はなかったのです。それは生前の出﨑監督がインタビューで周りのスタッフに「来た仕事は全部やれ! 仕事を断るなんて10年早い!」的な檄を飛ばしていると仰ってたので、その影響は大きかったと思います。
 で、それは基本これからも変えるつもりはないのですが、50歳を迎えたこれからはそれに加えて「自分はこれがやりたい!」をもっと言っていこうと。

問題はその自分がやりたいモノが観る人にとって面白いかどうか? で(汗)

アニメ様の『タイトル未定』
427 アニメ様日記 2023年7月30日(日)

2023年7月30日(日)
朝の散歩で午前4時半に事務所を出て、渋谷を目指す。宮下公園のラジオ体操に参加できるのでは? と思ったのだけれど、6時半に宮下公園は間に合いそうもなかったので、明治神宮の宝物殿前のラジオ体操に参加。その後、明治神宮を歩いた。朝の6時台から明治神宮のベンチで読書をしている人を二人ほど見かけた。優雅だなあ。
取材の予習で『美少女戦士セーラームーンCrystal』第3部と『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』を観た。
時間に余裕があったら、午前中に新文芸坐で映画を観るつもりだったけど、無理だった。やっぱり校了前日と取材前日が重なるとハードだ。

2023年7月31日(月)
社内打ち合わせで『ポケットの中の戦争』のタイトル表記は『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ではなくて『MOBILE SUIT GUNDAM 0080 ポケットの中の戦争』が正しいのではないですか、という話になる。校了直前になってタイトル表記の話か。だったら、僕も気になるところがあるぞ。ちなみに「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」の話だ。
「この人に話を聞きたい」で今千秋さんの取材。JCスタッフで「この人」の取材をするのは2012年4月号の神戸守さん以来かな。かなり予習したつもりだったけど、各話演出時代の仕事について予習が足りなかったかもしれない。事務所に戻って「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の校正紙をざっと見て、Zoom打ち合わせ。その後も編集作業。
夕方にWOWOWでやっていた実写映画「百花」を流し観。前にも途中から途中まで観たけれど、今回はながら観とはいえ、最初から最後まで観た。雰囲気はいい。主人公の母親で認知症の百合子(原田美枝子)に妙に色気がある。いや、主人公と百合子の関係に色気があるのか。主人公の妻役の長澤まさみさんもよかった。映画的なムードが濃くて、その意味では楽しめた。映画館で観たら楽しめたかなあ。ロードショー時に映画館で観るかどうか悩んで、行きそびれたのだった。
Amazonから届いた『未来少年コナン』のムックに目を通す。

2023年8月1日(火)
グランドシネマサンシャインの11時40分からの回で『おそ松さん 魂のたこ焼きパーティーと伝説のお泊り会』を鑑賞。平日の割りにはお客が入っていた。女性客が多いが、男性客もチラホラ。つまらなくはないけれけど、話を詰めきれていない感じだと思った。SNSで感想をいくつか読んだけど、評判は悪くない。これもSNSで得た情報だけど、劇場限定版Blu-rayに付いた絵コンテを読むと、トト子がたこ焼きパーティーに参加し、奇行に走った理由が分かるらしい(すいません。あくまで「らしい」です)。
「ザ・フラッシュ」をU-NEXTのレンタルで視聴。現状でのレンタルは1980円もするので、映画館で観るのとほぼ同額。ポイントを使っているので懐は痛まないけれど。レンタルしたのはサッシャ・カジェのスーパーガールをもう一度観たかったのと、吹き替えがどうなってるのかが気になっていたため。結論だけ書くと、橋本愛さんのスーパーガールはかなりよかった。キャラクターの魅力を維持している。橋本愛さんのイメージとキャラクターのイメージも近い。バットマンは山寺宏一さん。劇中に出てきた全てのバットマンを山寺さんが吹き替えているわけではなく、時間を遡った世界での老バットマンを山寺さんが演じている。これは面白かった。字幕で観た印象とかなり違っている。字幕だと老バットマンはポンコツなイメージなのだけど、吹き替えだと言動がスマートで、頭も冴えている感じに。

2023年8月2日(水)
仕事の合間に、ワイフと新文芸坐で「若き仕立屋の恋 Long version」(2004・香港/56分/DCP/PG12)と「花様年華」【4K上映】(2000・香港/98分/DCP)を鑑賞。「花様年華」【4K上映】は去年の11月にも観ているが、ワイフの付き合いで再見。「若き仕立屋の恋 Long version」は初見。短いけれど、内容を絞り込んでいるため物足りなさはない。予想以上にエロティック。演出が強い作品で、その意味で映画充できた。ラスト寸前に主人公の背中を見せるカットがあって「次は正面から撮って主人公の表情を見せるカットだな」と予想できたのだけど、正面のカットの表情が思っていたのと違ったのでちょっと驚く。本編最後に「完」の文字が出るタイミングもいい。キレキレ。
「花様年華」については前に観た時のほうが楽しめたかな。前回の鑑賞ではラストの展開がよく分からず、あとでWikipediaで確認したのだけれど、今回も同じことをやった。お話としてはそんなに楽しめないのだけれど「映画を観たぞ」という気になる。ワイフの目当てはヒロインのチャイナ服で、劇中で着るチャイナ服が何着あるかを数えながら観たそうだ。たしか、22着だったかな。自分も衣装に注目して観たのだけれど、ひとつのカットで「チャイナ服の柄とカーテンの柄と画面奥のソファーの柄と持っているカップの柄を全部花柄にする」なんてことをやっているのね。他にもこだわりは多そうだ。
Netflixで『範馬刃牙』の「外伝ピクル+野人戦争編」を全話観る。気になって、kindleで原作を確認しながら観た。この辺りの原作は連載で読んでいるのだけれど、それでも驚くくらいに面白かった。原作とやっていることは同じなのに、より面白くなっている。これは作りが上手い。感心した。
「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の編集作業が終了。

2023年8月3日(木)
深夜の散歩はワイフと。午前3時過ぎにマンションを出て要町方面に。水天宮の公園で、母猫と子猫3匹の親子に出逢う。子猫はまだ小さくて可愛い。要町まで歩いて、次は谷端川南緑道を歩く。緑道の近くでやたらと人なつっこい猫に会う。お腹が空いているのか、ニューニャーと鳴きながら近づいてきた。可愛い首輪をつけていたから飼い猫だろう。
時間があったら、新文芸坐で「にせ刑事」(1967/92分/35mm)を観るつもりだったのだけど、やることが多いのであきらめた。ちょっと残念だったので、Amazon prime videoでKADOKAWA channel対象作品チャンネルに再入会して「にせ刑事」を観た。本筋とはあまり関係ないんだけど、劇中で子どもが描いた絵が大魔神。途中で映画館で観た映画も大魔神(3本ある「大魔神」のどれかは確認していない)。
「Gメン’75」の17話と18話を流し観。17話「死刑実験室」は脚本/高久進、演出/小西通雄。時効目前の強盗殺人事件の容疑者(谷村昌彦)を、草野刑事(倉田保昭)が追い詰める。昔のドラマだから気にしないでネタバレを書くけど、容疑者を外界から切り離し、少しずつ時計を速めて、時効の前日に時効になったと思わせる。容疑者が凶器の隠し場所を明かしたところで、彼を逮捕。トンデモ話になると思うけど、盛り上がるし面白い。子どもの頃、自分は「Gメン’75」のこういう話が好きだったんだろうなあ。最初に「刑事訴訟法 第二百五十条」の文面を黒地に白抜き文字を見せるのもインパクトがあっていい。18話「警察の中のギャング」は脚本/高久進、撮影/林七郎、演出/鷹森立一。こちらは街の撮り方がよかった。
WOWOWで放送していた「シコふんじゃった。」を流し観。間違いなく過去に観ているんだけど、随分と忘れているなあ。

2023年8月4日(金)
朝の散歩ではサブスクで配信が始まったばかりの「電子戦隊デンジマン MUSIC COLLECTION」を聴いた。その次に聴いたのが「スーパー戦隊 主題歌・挿入歌大全集I」。
午前8時25分からの回で『特別編 響け! ユーフォニアム ~アンサンブルコンテスト~』を鑑賞。お話に関しては原作未読なのでノーコメント。ただ、1本の映画としては物足りない。気になっていたのは映像だ。残されたスタッフ達が健闘しているのはよく分かる。ただ、あの事件で失われたものの大きさを改めて噛みしめた。
ユニクロで、この日に発売された『チェンソーマン』の原画Tシャツを購入。デスクワークとZoom打ち合わせを挟んで、再びグランドシネマサンシャインに。14時40分の回で「トランスフォーマー ビースト覚醒」【IMAXレーザーGT3D字幕版】を鑑賞。例によって3DCGのロボットの変形とバトルは見事なもので、それだけでも入場料分は楽しめた。個々のロボットの活躍をもっとヒロイックに描いてくれたら、さらに嬉しかった。物語は緩めだけど、観ていてイライラするほどではない。エピローグ部分は「おお、そうきたのか」という感じ。クロスオーバーよりも、主人公の弟についての決着の付け方がよかった。

2023年8月5日(土)
トークを前にして『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を配信で視聴。『君たちはどう生きるか』を観た後なので、北條家の庭に鷺が現れたところで「え、やばいじゃん」と思ってしまう。続けて『マイマイ新子と千年の魔法』を観る。午後に「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 161】『この世界の片隅に』七度目の夏」を開催。お客さんは『マイマイ新子と千年の魔法』初見の方が6割くらい、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は初見の方が3割くらい。このプログラムと同日同時間に同じ池袋で「丸山正雄のお蔵出し」が開催されていた。行けるものなら行きたかった。
以下はこの日のトークの内容から。片渕さんは『マイマイ新子と千年の魔法』の後、続編を考えていた。続編のタイトルは『マイマイ新子と二つの塔』か『マイマイ新子と青ひげ』(『マイマイ新子と押し入れの中の青ひげ』かもしれない)。続編は構想レベルの話であり、企画まではいっていない。新子のその後を描くなら、なぎこ(清少納言)のその後も描く必要があると考えて、海外の映画祭(アヌシーだったかな)に行く際に「枕草子」と関連書籍を大量に持って行き、それを読破したことで、なぎこのその後だけで映画を作ることができると確信。それが『この世界の片隅に』を挟んで『つるばみ色のなぎ子たち』に結実する。

第837回 今度の日曜日

なんと、1月28日で50歳になる板垣です!

 50歳ですよ、50歳。現在、希望に満ちた将来の夢を語っている10~20代の方たちも、やりがいのある自分の仕事をモノにして充実した毎日を送っている30~40代の方たちも、間違いなくやってくる50代! しかも、あっという間に! です。
 バカみたいな話、俺自身若い時は、まさか自分が50歳になるなんて思ってもみませんでした。が、いざなってみると、身体が重くなったこと以外はそれほど悪いことはなく、それどころか

20歳で業界入って30年間、今まで一度も後悔した事はありません!

 テレコム(・アニメーションフィルム)でアニメーターとしての情操教育を受け、フリーとして脚本・コンテ・演出から監督へ、そして現在まで一度も干されることもなく仕事を続けさせてもらえてて、本当に運が良い半生でした。正直「同じ苦労は二度としたくない!」と言うほど、苦労もしてこなかったので、もう一度20~49歳をやり直しても良いくらい、楽しく生きてきました。
 って言うか50歳になろうってのに現状自分、今までで一番と言っていいくらい超ド級の忙しさです。少なくとも2027年までは監督でいっぱい! 4月からはまた新入社員の指導・育成も乗っかってきて……。

さて、どうやって乗り切ろうか!?

 はい、今回も短くてすみません(汗)。

【情報局】新作アニメピックアップ[劇場編]240124
待望の新作劇場長編『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

 新年最初の劇場アニメ情報をお届けしよう。



 12日(金)から『傷物語  ―こよみヴァンプ―』が公開。「化物語」から始まる西尾維新の人気小説「物語」シリーズの第2弾にして前日譚にあたる作品のアニメ化だ。阿良々木暦が高校生3年に進級する前、吸血鬼と出会った春休みの顛末を描く。2016年から翌年にかけ3回に渡って上映された作品を1本に再編集。3作の総上映時間は216分だが、今回の上映時間は144分となっている。著名建築が次々登場するなど、美意識の高い映像も見所のひとつ。監督・脚本は尾石達也、アニメーション制作はシャフト。



 同じく12日(金)より『セマンティックエラー[短編アニメ版]』が上映スタート。原作は韓国のボーイズラブ小説で、実写ドラマシリーズがヒットし、劇場版前後編が作られた。日本で劇場公開に際して、実写化の前に作られた短編アニメーション全4話もあわせて上映される。12日スタートの前編には第1~3話が、26日(金)スタートの後編には第4話がつくかたちだ。アニメファンとしては、配給をブシロードの子会社とトムス・エンタテインメントが担当しているところも気になる。



 翌週19日(金)からは『メカアマト MOVIE』が公開。『メカアマト』はマレーシア製のキッズ向けTVシリーズ。あらゆるものをメカに変える能力をもつメカボットと少年アマトの活躍を描く3DCG作品だ。今回の劇場版では、邪悪なグラカカス将軍が登場し、メカボットたちを追いつめる。

≪劇場アニメリスト≫
2024年1月10日現在、編集部調べ

公開中作品

2024年1月12日(金)

『傷物語  ―こよみヴァンプ―』※『傷物語』劇場3部作を再構成した総集編

【公式サイト】https://www.kizumonogatari-movie.com/

『セマンティックエラー[短編アニメ版]』※実写版と同時上映

【公式サイト】https://semaera.jp/anime/

2024年1月19日(金)

『メカアマト MOVIE』

【公式サイト】https://www.mechamato-movie.jp/

2024年1月26日(金)

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

【公式サイト】https://www.gundam-seed.net/freedom/

2024年1月27日(土)

『映画 ギヴン 柊mix[前編]』

【公式サイト】https://given-anime.com/

2024年2月2日(金)

『大室家 dear sisters』

【公式サイト】https://ohmuroke.com/

『鬼滅の刃 絆の奇跡、そして柱稽古へ』※ TVシリーズ刀鍛冶の里編11話+柱稽古編1話先行上映

【公式サイト】https://kimetsu.com/anime/worldtour2024/

2024年2月16日(金)

『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』

【公式サイト】https://haikyu.jp

2024年3月1日(金)

『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』

【公式サイト】https://doraeiga.com/2024/

『パリピ孔明 Road to Summer Sonia』※TVシリーズの総集編

【公式サイト】https://paripikoumei-anime.com/

2024年3月8日(金)

『映画しまじろう ミラクルじまのなないろカーネーション』

【公式サイト】https://kodomo.benesse.ne.jp/open/movie/2024/

『恐竜超伝説2 劇場版ダーウィンが来た!』

【公式サイト】https://kyouryu2-darwin.com/

2024年3月15日(金)

『FLY! フライ』

【公式サイト】https://fly-movie.jp/

『私ときどきレッサーパンダ』※劇場初上映

【公式サイト】https://www.disney.co.jp/movie/lesserpanda

2024年3月20日(水)

『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒よ』
『映画おしりたんてい なんでもかいけつ倶楽部 対 かいとうU』

【公式サイト】https://oshiri-movie.com

2024年3月22日(金)

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション[前章]』

【公式サイト】https://dededede.jp/

2024年3月29日(金)

『あの夏のルカ』※劇場初上映

【公式サイト】https://www.disney.co.jp/movie/luca

2024年4月12日(金)

『クラユカバ』
『クラメルカガリ』

【公式サイト】https://www.kurayukaba.jp/

『ソウルフル・ワールド』※劇場初上映

【公式サイト】https://www.disney.co.jp/movie/soulfulworld

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』

【公式サイト】https://www.conan-movie.jp/2024/

2024年4月19日(金)

『映画きかんしゃトーマス 大冒険! ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』

【公式サイト】https://movie2024.thomasandfriends.jp/

『劇場版ブルーロック ―EPIOSODE凪―』

【公式サイト】https://bluelock-pr.com

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション[後章]』

【公式サイト】https://dededede.jp/

2024年4月19日(金)

『映画きかんしゃトーマス 大冒険! ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』

【公式サイト】https://movie2024.thomasandfriends.jp/

2024年5月10日(金)

『トラペジウム』※全4幕

【公式サイト】https://trapezium-movie.com/

2024年5月10日(金)

『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』

【公式サイト】https://movie-umamusume.jp/

2024年5月

『コードギアス 奪還のロゼ』※全4幕

【公式サイト】https://geass.jp/roze/

2024年6月14日(金)

『RABBITS KINGDOM THE MOVIE』

【公式サイト】https://tsukiuta-movie.com/

2024年6月28日(金)

『それいけ! アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』

【公式サイト】https://anpan-movie.com/2024/

2024年7月19日(金)

『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第1章 黒の侵略』※全7章

【公式サイト】https://starblazers-yamato.net

2024年初夏

『i☆Ris the Movie – Full Energy!!–』

【公式サイト】https://iris.dive2ent.com/movie/

『めくらやなぎと眠る女』

【公式サイト】http://www.eurospace.co.jp/BWSW/

2024年夏

『メイク ア ガール』

【関連サイト】https://xenotoon.com/studio

『劇場版 モノノ怪』

【公式サイト】https://mononoke-movie.com

『劇場総集編 ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』

【公式サイト】https://bocchi.rocks/

『インサイド・ヘッド2』

【公式サイト】https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2

『きみの色』

【関連サイト】https://www.toho.co.jp/movie/lineup

『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』

【公式サイト】https://www.shinchan-movie.com/2024/

『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE[第4作]』

【公式サイト】https://heroaca-movie.com/

2024年秋

『ふれる。』

【公式サイト】https://fureru-movie.com/

2024年冬

『劇場版 僕とロボコ』

【関連サイト】https://boku-to-roboco.com/

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』

【公式サイト】https://www.madoka-magica.com/

公開予定

『蒼きウル』

【公式SNS】https://twitter.com/uruinblue

『ビブリア古書堂の事件手帖』

【関連サイト】http://biblia.jp/

『ユーリ!!! on ICE劇場版 ICE ADOLESCENCE』

【公式サイト】http://yurionice-movie.com/

『零世紀エメラルダス』

【公式サイト】http://zero-century.net/

『活撃 刀剣乱舞』

【公式サイト】http://katsugeki-touken.com/

『僕はロボットごしの君に恋をする』

【関連サイト】http://www.kawade.co.jp/bokurobo/

『センコロール3』

【公式サイト】https://www.cencoroll.com/

『ORBITAL ERA』

【公式サイト】http://orbital-era.com/

『ククリレイジュ ―三星堆伝奇―』
『ジュエルペット あたっくとらべる!』

【公式サイト】http://kukuriraige.com/
【公式サイト】http://kukuriraige.com/jp-attack/

『囀る鳥は羽ばたかない The storm breaks[第二章]』

【公式サイト】http://saezuru.com/

『CHERRY AND VIRGIN』

【公式SNS】https://twitter.com/candvMovie

『劇場版 OVERLOAD 聖王国編』

【公式サイト】http://overlord-anime.com/

『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース[Part2]』

【公式サイト】https://www.spider-verse.jp/

『魔法使いの夜』

【公式サイト】https://mahoyo-movie.com/

『ベルサイユのばら』

【公式サイト】https://verbara-movie.jp/

『アイゼンフリューゲル』

【公式サイト】https://eisen-flugel.com/

『テンカウント』

【公式サイト】https://10count-anime.com/

『劇場版 ソードアート・オンライン』新作

【公式サイト】https://sao10th.net/

『JUNK WORLD』

【公式サイト】https://junkworld-movie.com/

『映画 ギヴン 柊mix[後編]』

【公式サイト】https://given-anime.com/

『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』

【公式サイト】https://nakedpeak.jp/

『熊出没 バック・トゥ・アース大作戦』

【公式サイト】http://dianying.jp/den_ei_sai/film/F_1xx411c7XB

『つるばみ色のなぎ子たち』

【公式サイト】https://tsurubami.contrail.tokyo/

『王様ランキング[完全新作劇場版]』

【関連サイト】https://osama-ranking.com/

『ZAN』

【関連サイト】http://www.jaymentokyo.com/

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会[劇場上映シリーズ3部作]』

【関連サイト】https://www.lovelive-anime.jp

『ロボット・ドリームズ』

【関連SNS】https://twitter.com/KlockworxInfo/status/1670156425254010880

『大室家 dear friends』

【公式サイト】https://ohmuroke.com/

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女[続編]』

【公式サイト】http://anime.prisma-illya.jp/movie/3/

『リンダはチキンがたべたい!』

【関連サイト】https://www.asmik-ace.co.jp/works/17093

『星つなぎのエリオ』

【公式サイト】https://portal.symphogear.com/

『戦姫絶唱シンフォギア[劇場版]』

【公式サイト】https://portal.symphogear.com/

『ユニコーン・ウォーズ』

【公式SNS】https://twitter.com/UnicornWars_jp

『劇場版 チェンソーマン ―レゼ篇―』

【公式サイト】https://chainsawman.dog/movie_reze/

『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ QUARTET NIGHT編』

【公式サイト】http://utapri-movie.com

『劇場版 陰の実力者になりたくて! 残響編』

【公式サイト】https://shadow-garden.jp

『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!  前編 春の陽だまり、迷い猫』

【公式サイト】https://anime.bang-dream.com/mygo/

『BanG Dream! It’s MyGO!!!!! 後編 うたう、僕らになれるうた & FILM LIVE』

【公式サイト】https://anime.bang-dream.com/mygo/

第218回アニメスタイルイベント
作画マニアが語るアニメ作画史 1963~2000 PART2

 2024年2月18日(日)昼にトークイベント「第218回アニメスタイルイベント 作画マニアが語るアニメ作画史 1963~2000 PART2」を開催します。

 このイベントは「作画マニアが語るアニメ作画史 1963~2000」の続編で、1963年から2000年までのアニメ作画を、作画マニア寄りの目線で振り返ります。
 出演はアニメスタイル編集長の小黒祐一郎。監督、アニメーターとして知られる羽原信義さん。アニメーター、演出として活躍し、さらに作画研究家でもある沓名健一さんです。主に小黒が語り、羽原さん、沓名さんにコメントしていただくかたちになるはず。
※2024年2月2日追記:アニメーターの今村亮さんにも出演してもらえることになりました。

 第一部では1970年代末からの「名作画監督の時代」と1980年代前半の作画の流行などがテーマ。第二部はアニメ作画の大きな流れをテーマにする予定です。また、それら以外の話題にも触れるかもしれません。

 なお、前回と今回のトークの内容を加筆修正して書籍化するかもしれません。

 会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回はいつものイベントよりもスタート時間が早く、11時半開場、12時開演となります。配信もありますが、配信するのはメインのパートのみです。会場にいらした方だけが観覧できるパートも用意しています。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

 チケットは1月26日(金)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク(会場・チケット関係)
LOFT  https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/275139
LivePocket(会場)  https://t.livepocket.jp/e/ne28z
ツイキャス(配信)  https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/288056

第218回アニメスタイルイベント
作画マニアが語るアニメ作画史 1963~2000 PART2

開催日

2024年2月18日(日)
開場11時30分/開演12時 終演15時30分~16時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

小黒祐一郎、羽原信義、沓名健一、今村亮

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 170】
アニメ映画の音を愉しむ『BLUE GIANT』

 新文芸坐とアニメスタイルの共同企画プログラムで『BLUE GIANT』を上映します。『BLUE GIANT』はジャズをモチーフにした同名マンガを映像化したアニメーション映画。青春ドラマとしても、音楽映画としても充実した作品です。特に音響が素晴らしく、是非とも映画館で楽しんでいただきたいと思います。監督は『モブサイコ100』シリーズ、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』等を手がけた立川譲監督です。

 日時は2024年2月3日(土)、9日(金)、10日(土)、11日(日)。10日(土)は上映後に、立川監督のトークを予定しています。チケットはそれぞれ、上映の1週間前から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

■新文芸坐
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2024-02-03-3

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 170】
アニメ映画の音を愉しむ『BLUE GIANT』

開催日

2024年2月3日(土)、9日(金)、10日(土)、11日(日)

会場

新文芸坐

料金

一般1500円、各種割引 1100円(10日(土)のみ、一般1900円、各種割引 1500円)

トーク出演

立川譲(監督)、小黒祐一郎(聞き手)

上映タイトル

『BLUE GIANT』(2023/120分)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第273回 もう一度メタモルフォーゼ 〜キボウノチカラ オトナプリキュア’23〜

 腹巻猫です。1月28日(日)に浅草・ニュー酒場フレンズで開催されるサントラDJイベント・サントラサーカス!2にDJとして参加します。ぜひおいでください! 詳細は下記を参照。
https://www.gekiban.soundtrackpub.com/news/2024/01/20240122.html


 プリキュアシリーズ放映開始20周年を記念して、昨年からさまざまなイベントが開催されている。「全プリキュア展」「全プリキュア 20th Anniversary LIVE!」などなど。今回は20周年記念の施策のひとつとして放映された『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』を取り上げよう。

 『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』は2023年10月から12月までNHK Eテレで放映されたTVアニメ。2007年と2008年に放映された『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』の主人公・夢原のぞみたちの成長した姿を描く作品である。
 『プリキュア5GoGo!』の戦いからおよそ10年後(明確な年代は語られていない)。成長したのぞみたちは、それぞれの夢を実現したいっぽうで、現実の厳しさに悩む日々を送っていた。そんなある日、のぞみたちの街に謎のモンスター「シャドウ」が出現し、人々を襲い始める。今はプリキュアに変身する力を失ったのぞみたちは、シャドウに対抗することができない。しかし、大切な未来を守りたいと願うのぞみの前に光る蝶が現れ、のぞみはふたたびプリキュアに変身する力を手にする。オトナになったプリキュア5の新たな戦いが始まった。
 まず、『Yes!プリキュア5GoGo!』では中学生だったのぞみたちの成長した姿が見られるのが本作の見どころ。声優も全員オリジナルのメンバーが再登板して、「あののぞみたちがこうなるのか」という驚きと感慨があった。そして、成長したのぞみたちがふたたびプリキュアに変身するのがもうひとつの見どころ。そのとき、のぞみたちが中学生の姿に戻るのが2番目の驚きだった。このアイデアはスティーブン・キングのホラー小説『IT』からヒントを得たのだという。
 物語の前半ではオトナになったのぞみたちの日常が描かれ、思い通りにいかない現実に悩む姿が見られる。SNSの反応を見ていると、子どもの頃に『プリキュア5』を観ていた世代の女性は、のぞみたちを現在の自分と重ねて、共感するところが多かったようである。なお、公式では一貫して「大人」ではなく「オトナ」と表記しているので本稿もそれに倣うことにする。
 プリキュア5のメンバーがひとりずつプリキュアに変身する力を取り戻し、さらに『ふたりはプリキュア Splash☆Star』のキャラクターも参戦して、物語は佳境を迎える。第9話でSplash☆Starのふたりが変身する場面は、そうなるだろうとわかっていても心にぐっとくるものがあった。

 さて、音楽はプリキュアシリーズ第1作『ふたりはプリキュア』(2004)から『Yes!プリキュア5GoGo!』(2008)まで5作品の音楽を手がけた佐藤直紀が担当。TVシリーズとしては15年ぶり、『映画プリキュアオールスターズDX3』(2011)から数えても12年ぶりのプリキュアシリーズ復帰である。個人的には、これが本作一番のトピックスだった。
 佐藤直紀は本作で、オトナになったのぞみたちの日常・心情を描く音楽や新たな敵シャドウを描写する音楽など30曲余りを書き下ろしている。旧作のBGMをリアレンジした曲もいくつかあるが、約30曲が新曲だ。
 さらに、本編では『ふたりはプリキュア』から『Yes!プリキュア5GoGo!』までのオリジナルBGMも使用されている。プリキュアの変身シーンやアクションシーンはもっぱら旧作BGMが使用されるので、いやがうえにも盛り上がった。プリキュアシリーズ開始当初から選曲を手がけている水野さやかが、本作でも選曲を担当。プリキュア音楽を熟知した水野氏ならではの、旧作へのリスペクトあふれる音楽演出に唸らされた。
 佐藤直紀は本作の音楽を担当するにあたり、旧作の音楽を聴きなおした上で作曲に臨んだという。旧作の音楽はストレートで勢いのある曲調だったが、本作はその路線を踏襲するのではなく、「オトナプリキュア」の世界観をしっかり打ち出そうと考えた、とインタビューで語っている。
 その方向性がよく表れているのが、のぞみたちの心情を描く曲である。中学生時代ののぞみたちの気持ちは「よろこび」「悲しみ」「怒り」など、色分けのはっきりした、わかりやすい音楽で表現できた。しかし、オトナになったのぞみたちの心情は、ひとつのトーンでは表現しきれない。楽しい中にも不安や迷いが、悲しみの中にも希望が宿る。ひとつの色に染めきれない想いが複雑で繊細な響きで奏でられる。
 また、この10年で佐藤直紀の音楽も変化(進化)している。
 実写劇場作品『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)に代表されるように、佐藤直紀の書く音楽の魅力のひとつが、心に響くメロディだった。しかし、近年の佐藤直紀はメロディを抑え、複雑な和声(ハーモニー)を用いたサウンド志向の曲を書く傾向にある。2023年に公開された『レジェンド&バタフライ』『ゴジラ-1.0』の佐藤直紀の音楽と『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』の音楽には共通する要素が多い。これが現在の佐藤直紀サウンドなのである。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「キボウノチカラ オトナプリキュア’23 オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで、1月10日にマーベラスからCDと配信でリリースされた。CDは2枚組。収録内容は以下のとおり。

ディスク1

  1. 未来の鼓動
  2. 夢をかなえた先に
  3. Cafe & Bar TIME
  4. サブタイトル
  5. ベル
  6. ほろ苦い現実
  7. 輝いていたあの頃
  8. 仲間を迎えて(2023version)
  9. 不穏な予兆
  10. シャドウ
  11. 心に刺さるトゲ
  12. 進めない一歩
  13. 心の迷宮
  14. ベルの怒り
  15. ふたたびつかむ光
  16. 未来への約束
  17. ほほえみのエピローグ
  18. 夢でいっぱい(歌:春日野うらら[CV:伊瀬茉莉也])

ディスク2

  1. サブタイトル(Btype)
  2. はじける時間
  3. 迷う心(2023version)
  4. のぞみとココ
  5. 夢でいっぱい 〜Acoustic ver.〜(歌:春日野うらら[CV:伊瀬茉莉也])
  6. タイムフラワー
  7. ベルの記憶
  8. 絶望の未来
  9. 暴走するシャドウ
  10. 爆発する怒り
  11. 信じる仲間とともに(2023version)
  12. シャドウの猛威
  13. プリキュア登場(2023version)
  14. 戦うチームプリキュア
  15. バタフライエフェクト〜希望の力
  16. 素直な気持ちで
  17. 未来の選択
  18. 雫のプリキュア(歌:キュア・カルテット)

 本作のために新たに録音されたBGM33曲とエンディング主題歌(「雫のプリキュア」)、挿入歌(「夢でいっぱい」)を収録。
 構成は筆者が担当した。ディスク1はのぞみたちの日常描写からシャドウが出現し、プリキュアが復活するまでのイメージで、ディスク2は最終決戦に向けての展開をイメージして構成した。BGMは全曲収録を前提に進めていたが、諸事情により未収録が数曲ある。
 1曲目「未来の鼓動」は本作のメインテーマとして書かれた曲。第1話の冒頭、のぞみのモノローグのバックに使用された。佐藤直紀は、この曲で「オトナになったキャラクターの物語であることをしっかり演出したいと思った」と語っている。ピアノとストリングスの静かな導入から、女声ボーカリーズが加わり、最後は心臓の鼓動の音で終わる。女声ボーカルはオトナの雰囲気を、鼓動は未来への希望と不安を象徴しているようだ。
 ただ、ブックレット所収のインタビューでも語られているように、本編では女声ボーカルはオミットされ、鼓動の部分も流れなかった。また、最終話のラストシーンもこの曲で終わる構想があったのだが、実際には使用されていない。そのため、メインテーマとしての性質があいまいになってしまったのが残念なところ。代わりに本アルバムでじっくりと聴いていただきたい。
 続く「夢をかなえた先に」(トラック2)と「Cafe & Bar TIME」(トラック3)は、のぞみたちの日常シーンに流れた曲。いずれも第1話から使われている。
 トラック5「ベル」は物語のカギとなるキャラクター・ベルのテーマ。プリキュアと敵対するキャラだが、音楽は悲しみをたたえた重厚な響きで書かれている。物語が進むにつれ、その悲しみの理由が明らかになる。本曲のバリエーションである「ベルの怒り」(ディスク1:トラック14)、「ベルの記憶」(ディスク2:トラック7)、「爆発する怒り」(同:トラック10)は、ベルの心境の変化に合わせたアレンジである。
 シャドウのテーマである「シャドウ」(ディスク1:トラック10)はサスペンスや脅威をストレートに表現するのではなく、シンプルな音型をくり返すミニマルミュージック的な曲想で書かれている。『ゴジラ-1.0』の音楽との共通点を見出すことも可能だ。「暴走するシャドウ」(ディスク2:トラック9)、「シャドウの猛威」(同:トラック12)は同じテーマのバリエーション。注目すべきは、ベルの曲が3拍子で書かれていて、シャドウの曲も8分の6拍子もしくは3拍子のリズムを基調に書かれていること。ベルとシャドウのあいだにつながりがあることが音楽的に表現されているのだ。
 「ほろ苦い現実」(ディスク1:トラック6)は、本作の中でも重要な、オトナになったのぞみたちの心情を表現する曲。第1話で夏木りんが仕事のことで悩む場面や第2話でのぞみが転校した生徒・るみを心配する場面などに使用された。ニュートラルな(特定の感情を想起させない)淡々としたピアノのフレーズから始まり、ストリングスが重なって徐々に情感がふくらんでいく。不安とも悲しみともつかない複雑な響きから、終盤は希望的なトーンに転じて終わる。この重層的な響きは、過去のプリキュア音楽にない、「オトナプリキュア」ならではのものだ。「心に刺さるトゲ」(ディスク1:トラック11)、「進めない一歩」(同:トラック12)も同じタイプの楽曲である。
 本編で筆者が特に印象に残ったのは「ふたたびつかむ光」(ディスク1:トラック15)という曲。成長したのぞみたちが、ふたたびプリキュアに変身する力を手に入れる場面に必ずと言ってよいほど流れていた。
 細かく刻むストリングスのフレーズと低音の管弦楽器の唸りが、徐々に高まる緊張感と決意を表現。終盤に登場するホルンのメロディがプリキュアの力の復活を歌うが、少し陰りが感じられる。そこがいい。
 「未来への約束」(ディスク1:トラック16)と「未来の選択」(ディスク2:トラック17)は、メインテーマの流れをくむ曲である。どちらも、のぞみたちが未来へ一歩踏み出そうとする場面などに使われている。不確かで、希望あふれる未来ではないかもしれないけれど、のぞみたちは手探りで歩き出そうとする。そんなシーンを彩った曲。最終話では戦い終わったあとのエピローグ(Bパート)に、「未来の選択」と「未来への約束」が続けて流れた。本作を代表する楽曲と言えるだろう。
 あと大事な曲としては、最終話の決戦シーンを盛り上げた「戦うチームプリキュア」(ディスク2:トラック14)と「バタフライエフェクト〜希望の力」(同:トラック15)がある。「戦うチームプリキュア」は本作の音楽の中では珍しいストレートなバトル曲。「バタフライエフェクト〜希望の力」はプリキュアが最後の技を放つ場面で使用された。未来を変えていこうとする人々の想いが集まり、大きな力となる。本作のタイトルである「キボウノチカラ(希望の力)」を感じさせる壮大な曲だ。どちらも、シナリオから使用場面をイメージして書かれた曲である。次の「素直な気持ちで」(同:トラック16)も同様に、最終話のココのプロポーズの場面を想定して書かれた曲だ。
 旧作BGMのリアレンジの中では、「信じる仲間とともに(2023version)」(ディスク2:トラック14)に耳を傾けてほしい。原曲はプリキュアが力を合わせて敵に立ち向かう場面をイメージした熱い曲なのだが、本作ではしだいに劣勢になっていくイメージにアレンジされている。

 旧作BGMの使用では、『プリキュア5』『プリキュア5GoGo!』からの選曲が多いのは当然として、『ふたりはプリキュアSplash☆Star』と『ふたりはプリキュア』『ふたりはプリキュアMax Heart』の曲もけっこう使われている。第1話でのぞみがるみと話をする場面に『ふたりはプリキュア』の「未来を信じて」という曲が流れるなど、随所に「これは!」と思う選曲がされている。とりわけ、最終話の決戦シーンで『ふたりはプリキュアMax Heart』の「三人の絆」が流れたのは感動した。旧作のサウンドトラック・アルバムは現在、配信で聴くことができるので、劇中で流れた曲を探してみるのも楽しいだろう。
 ただ、物語が進むにつれて、成長したのぞみたちの心情を描く曲の出番が少なくなり、旧作BGMが使用される場面が増えてきたのは、本作の独自性が薄まったようで少し惜しいなと思った。歴代プリキュアが共闘する「プリキュアオールスターズ」とあまり変わらなくなってしまうからだ。キャラクターの成長を描くこととプリキュアを描くことのバランスを取るのは難しい。答えは見つからないけれど。
 オール新曲で構成された本アルバムは、いわば純度100%の「オトナプリキュア」の世界。佐藤直紀が構想した、オトナになったのぞみたちの音楽を味わってほしい。

キボウノチカラ オトナプリキュア’23 オリジナル・サウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
426 アニメ様日記 2023年7月23日(日)

2023年7月23日(日)
取材の予習で『世界一初恋』第1期を全話観た。1話から4話がぶっちぎりの面白さ。4話まではエメラルド編集部編集者の小野寺律と同編集部編集長の高野政宗の話だ。本放送時に5話でマンガ家の吉野千秋が主人公になって、当惑したのを思い出した。あれ、前回までの話は? と思ったのだ。今回も当惑した。8話と9話はエメラルド編集部編集者の木佐翔太と書店バイトの雪名皇の話。雪名は大学生のイケメンで女性客にモテモテ。その彼が木佐が担当したマンガのファンで、木佐が担当したマンガには共通するものがあると言う。木佐が雪名の自宅に行くと、本棚に木佐が担当したマンガの単行本がズラリと並んでいた。雪名は書店バイトとして木佐が担当したマンガを売りまくっており、さらにこれからもキャンペーンをやって売ってくれると言う。木佐は雪名の顔が好きで、片想いしていたのだが、雪名も木佐が好きだと言ってくれる。本放送時にもSNSで書いたはずだけど、これは編集者としては夢だよね。自分の好みの相手が、自分が編集を担当した作品が好きで、名前を出していないのに自分が担当した作品に共通するものを見つけて、全てを好きだと言ってくれる。さらに書店員として売りまくってくれる。その上で自分のことを好きだと言ってくれる。妄想の純度が高い。
ネットで長濵博史監督の『うずまき』のPVを観る。凄い出来になりそうだ。就寝前に「事情を知らない転校生がグイグイくる。」15巻を読む。よかった。正直に言うと感動した。話もいいんだけど、コマ割り(ページ構成)も素晴らしかった。

2023年7月24日(月)
マッドハウス50周年記念上映イベントのための人気投票の結果を見る。作品部門の上位にりんたろう監督作品がないところに時代が変わったことを感じた。人気投票のキャラクター部門で得票数上位の10人のうち『ギャラクシーエンジェル』のキャラが3人、『宇宙よりも遠い場所』のキャラが3人だった。おお、そうなのか。ちょっと嬉しい。特に、今でも『ギャラクシーエンジェル』を好きな人がいるのが嬉しい。
ワイフとグランドシネマサンシャインで「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」【IMAXレーザーGT字幕版】を鑑賞。作りが豪華でそれはそれでいいのだけど、ひとつひとつの描写がたっぷりしすぎかな。165分の作品だけど、お話だけだったら90分くらいにまとまったのでは。いや、そのたっぷりした感じがいいと思う人もいるんだろうけど。トム・クルーズはやはりお年を感じさせて「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」に続けて、ベテランが頑張っているのを応援しながら観る映画だった。ネガティブなことを書いているみたいだけど、配信で観るよりも劇場で観たほうがよかったし、IMAXで観てよかった。「ミッション:インポッシブル」の前にやっていた「デューン 砂の惑星PART2」のIMAX版予告が凄かった。ほぼ全カットがフルサイズIMAX画角(1.43:1)だった。これは楽しみ。
取材の予習で『純情ロマンチカ』と『ひぐらしのなく頃に』を数話ずつ観る。『純情ロマンチカ』と『世界一初恋』だと、やっぱり『世界一初恋』のほうが観やすい。『ひぐらしのなく頃に』のトゲトゲした感じが今となっては新鮮。

2023年7月25日(火)
取材の予習で『ゴールデンタイム』1話から7話を観た。編集作業中の「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」で、確認したいことがあって『トップをねらえ2!』全話を流し観した。

2023年7月26日(水)
朝の散歩の途中で、大塚公園でラジオ体操に参加。この公園には何度か来ているけど、ラジオ体操に参加したのは初めて。公園として広いし、陽射しと日陰のコントラストもいいし、人が多いし、子どももいるし、蝉の鳴き声も大きいし、実に夏らしい時間だった。午後は検査のために病院Bに。移動と病院での待ち時間で「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン ―実績・省察・評価・総括―」に目を通す。これが『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を総括する書籍になるのだろうか。

2023年7月27日(木)
「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」についての打ち合わせで「『ケモノヅメ』の話数は話をカタカナのワで表記するのが正しいのではないですか」という意見が出た。つまり、第1ワ「初めての味」とか、第2ワ「辛酸の決別」とか、第3ワ「しょっぱい新月の夜」と表記するのが正しいのではないか、ということだ。確かにそんな表記を見たなあと思って確認する。本編ではサブタイトル画面に話数表記はない。しかし、バンダイチャンネルの表記は第1ワ、第2ワ、第3ワ……だ。おそらくこれは放映当時の『ケモノヅメ』公式サイトで、第1ワ、第2ワ、第3ワ……と表記していたことの名残であるに違いない。そして、その表記は公式サイトを構成していたワタシが決めたことなのである。この混乱はワタシか、ワタシのせいか。バンダイチャンネルが話数表記にこだわっているのも偉いと思った。
新文芸坐で「ノートルダム 炎の大聖堂」をどんな内容か知らないで観た。観る前にはノートルダム大聖堂再建の映画かと思っていたけど、ポスターを観るとミステリ映画のようでもある。上映が始まってから火災をモチーフにしたドキュメンタリー風の映画だということが分かった。どうやって撮ったんだ? と思う映画でもあった。 『サイボーグ009』(1968)の19、20話を観た。やたらと作画がいいところがあった。取材の予習で『極主夫道』を数時間分観た。Amazon prime videoの「Creator’s Time アニメ監督 今千秋」1から3も観た。

2023年7月28日(金)
朝の散歩では池袋から新宿まで歩いた。そして、新宿中央公園でラジオ体操に参加した。散歩中は「魔法の天使クリィミーマミ80′s J-POPヒッツ」を聴いた。よかった。太田貴子さんが凄い。同アルバムの「優と俊夫からのメッセージ」は優と俊夫のかけあいなんだけど、俊夫が年齢を重ねている感じがよかった。かけあいの中で、 みどりや木所さんも歌いたがっていたという内容の台詞があった。如月みどりを演じた安西正弘さんも、木所隼人を演じた亀山助清さんも、既に亡くなっているのだ。それを聞いてしんみりする。
デスクワークを挟んで快活CLUBに。初めてなので会員登録をした。ここって店員と話をしないで入店、退出できるシステムなのね。『純情ロマンチカ』『世界一初恋』の原作に目を通す。取材の予習で『Back Street Girls』『クールドジ男子』を数時間分ずつ観た。

2023年7月29日(土)
新文芸坐で「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999・独=米/105分/BD/ドキュメンタリー)を鑑賞。プログラムのフルタイトルは「オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」Vol. 6」。やらなくてはいけない作業が多くて、映画を観ている場合ではなかったのだけど、気分転換が必要と感じて新文芸坐に足を運んだ。この映画を観たのは二度目で、前に観たのは新文芸坐で開催された音楽ドキュメンタリーのオールナイトだった。今回の上映に関して言うと、音がかなりよかった。
取材の予習で『魔界王子 devils and realist』『アルカナ・ファミリア La storia della Arcana Famiglia』『映画 ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』を観た。

第836回 アニメを観るというのも仕事

昨今、アニメがまったく観れていません! 昨今と言うかもうここ10年!

 これは別に「今のアニメは観るに値しない!」と憤慨してるからとか、「昔のアニメの方が面白かった!」の懐古主義でもありませんし、かつて昭和から活躍されている先輩アニメーターの方々からしょっちゅう言われた「アニメを仕事にしたら、アニメじゃなく実写を観ろ!」の説教を実践してるとかじゃ更々ありません。もちろん、テレビ・劇場・ネット問わず、面白いアニメがたくさんあるのも想像がつくし、観れるものなら観たい気持ちは山々なんですが、ただただ本当にリアルにアニメ観てる時間がないんです!
 まあ、元々幼少の頃から“ひねくれ者”の俺。どのみち、能動的に自分から「観たい!」と思うまでは観ない性格で、実を言うと今話題の世界一有名な日本人アニメ監督の大作をまだ観ていないばかりか、2024年も今のところ、観に行く予定すらありません。ついでに白状するなら、その巨匠の作品は2004年作品から観ていません。観たくないというのではなく、観る気にならないのです。あと、ついでに“実は未だ観てないカミングアウト”をすると、まだ本線のシリーズが終わってもいないのに、頭っから作り直そうとしている某シリーズも25年間で1話も観たことがありません。
 別にそれらの作品を否定する気は全くありません! 間違いなく、凄く面白いんだと思います! でも、

世界中の皆が「面白い!」と絶賛する作品なら、
俺が観なくてもいいじゃん!

と思うし、これまで50年その価値観で生きてきたのが板垣という人間なんです。
 でも、そうとばかりは言ってられません。新しいアニメを観ないと、アニメ界の現状が見えなくなるので、何とか「アニメを観る」努力をしようと、飯の時間とかで、いきあたりバッタリに新番のPVだけでも観るようにしています。で、最近ようやく『SPY✕FAMILY』の何話かを珍しく丸々1話分観ました。非常に無駄なく整理され、落ち着いたカット割りで、やっぱり“予想どおり”面白かったです。「これはウケるし、売れるわ!」と。

ほらね? どーせ面白いんです、アニメは!
そんなことは知ってるんです!

 そして、またアニメスタイル様より『カードキャプターさくら』髙橋久美子さん関連本&「今村亮ラクガキ画集」などを頂きまして、ありがとうございます! こういう本を頂けると、アニメ観るより手軽にいつでも巧い方々の画を見れるので非常に嬉しいのです!

アニメ様の『タイトル未定』
425 アニメ様日記 2023年7月16日(日)

2023年7月16日(日)
ワイフの希望で深夜から散歩に行くことになった。前にも書いたけれど、ワイフは暑さと陽射しが苦手で、このくらいの時期はラジオ体操前後の陽射しでも辛いようだ。午前2時20分に出社して、メールチェック等。午前3時頃にワイフと外出。大塚や雑司ヶ谷を歩く。こんな時間でも馴染みの猫達に会うことができた。その後はデスクワークとか昼寝とか。夕方から吉松さん、ワイフと大塚の「焼鳥 クロウタドリ」で呑む。大層美味しかったけど、僕と吉松さんはちょっと足りなかったので、大塚 幸龍軒でチャーシューエッグ等をいただく。店の中に「セルフ どれでも1缶 350円」と書かれた大きな冷蔵庫があった。客が勝手に冷蔵庫を開けて酒を呑んで、最後にまとめて精算するシステムらしい。この店は前にも来ているが、その時もこのシステムだったかどうかは覚えていない。
作画過激派の人と『君たちはどう生きるか』についてLINEでやりとりした。彼はあの作品の作画について不満が山盛りで、理由を説明してもらっているうちに『紅の豚』以降の宮崎アニメの作画についての謎が氷解した(ような気がした)。
スターチャンネルの「シザーハンズ」の吹き替え版を録画で少し観る。エドワードの吹き替えは塩沢兼人さん。こういった感じの塩沢さんもいいなあ。

2023年7月17日(月)
録画で東映チャンネルの『サイボーグ009』(1968)を流し観。15話「悲劇の獣人」と16話「太平洋の亡霊」の2本立て。濃いなあ。どちらも脚本は辻真先さん。どちらもサイボーグ戦士が敵を倒していないところもポイントか。「悲劇の獣人」は原作「移民編」をアレンジしたものだ。核戦争の結果、異形の存在として産まれた未来人が現代に現れる話で、今の目で観ると、脚の無い未来人の少女が「憎らしい脚」と言って、003の脚を撃つところが凄い。「太平洋の亡霊」は言わずとしれた芹川有吾演出の傑作。他の話数と比べると、緊張感がケタ違い。話も凄いんだけど、セリフのテンションと選曲、それらの畳みかけが素晴らしい。前から気になっていたけど、情報量が多すぎて、Aパートでセリフが太平洋戦争兵器本のネームみたいになってしまっている。
WOWOWでやっていた「流浪の月」を途中から最後まで観る。前にも途中から最後まで観た。話として好きなタイプではないんだけど、映画としては好きなタイプの作品ではないかと思った。
タブレットでKindle Unlimitedとdマガジンの雑誌に目を通す。書店の店頭で見かけて、いいなと思った雑誌のほとんどがサブスクにあってなんだか罪悪感が。いや、読み放題でもお金は動いているんだから、罪悪感を感じる必要はないんだけど。

2023年7月18日(火)
ひたすら事務所で作業をした日。事務所からちょっと離れた寿司屋でランチを食べるつもりだったのだけど、酷暑でそこまで歩くのが辛そうなのであきらめる。

2023年7月19日(水)
仕事の合間にTOHOシネマズ池袋で『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』を鑑賞。基本的には地に足がついた話だった。長い会話のやりとりで物語を進めるのはラノベ原作のアニメではよくあるが、この映画はその会話で話題になるのが受験だったり、通信制高校のシステムだったりするところが、ちょっと異色。最後の決意の部分は劇的で面白かったけど、1本の映画としては物足りない。原作を順に映像化していくシリーズであるはずだから「1本の映画として」考えるのが間違いだと言われるかもしれないけど。

2023年7月20日(木)
午前2時45分に出社。午前3時55分に原稿が届いて、LINEでやりとり。夜型の人と極端な朝型の人が両方とも活動している時間の出来事だった。『君たちはどう生きるか』を【IMAXレーザーGT版】で鑑賞。作品に対する理解が深まった気がする。

2023年7月21日(金)
前夜の『呪術廻戦 懐玉・玉折』はアクションもよかったけれど、カヌー、食事、水族館等のシーンをまとめて見せるパートもよかった。仕事で確認することがあって『涼宮ハルヒの消失』を少し観る。その後、『涼宮ハルヒの憂鬱』2006年版を観始めて、あまりにも面白いので7話まで観てしまう。

2023年7月22日(土)
午前2時に出社。事務所に入った時点で『AIの遺電子』が放映中だった。『デキる猫は今日も憂鬱』もリアルタイムで観る。散歩を挟んで、夕方までデスクワーク。ワイフと出かけて鬼子母神の盆踊りに。自分達は踊らないで、盆踊りの雰囲気を楽しむ。

第835回 2024年の始まり~

——という訳で、年末年始、山形に行ってきました!

 山形県鶴岡市は自分の両親の実家で、中学生の頃までは夏休みか冬休み、両親の帰省に毎年連れて行かれたものです。夏休みの場合は20数日、冬は10数日ほど滞在しました。夏は海や盆踊りを楽しみました。冬の雪山はまるで水墨画のように綺麗で、一階が埋まるほどの大雪にも子供の頃は歓喜したものです。正に山形は自分にとってもう一つの大好きな故郷。
 そんな俺は1992年に上京したのもあり、仕事という仕事に夢中で好きな山形になかなか行けないまま、30数年も経ってしまいました。一昨年、父親が亡くなって以来「山形に行きたい」熱が高まってた自分ですが、今回ようやく実現した山形行き。母方の実家である田代も、父方の実家・水沢も、30数年振りの懐かしい景色の連続。そして、両家の従兄らとも再会し、皆さんの手厚い歓迎に感激しました。
 無理くり仕事にこじつける訳ではありませんが、こういう郷愁や懐かしい日本の風景と、そこで人と合う喜び~みたいなのをいつかアニメで描けたらなぁ、と思っています。

 と、従兄らとのドライブの最中、突如スマホからの警報!

地震により被害を受けられた皆様、心よりお見舞い申し上げます。

第272回 ふたりの物語 〜ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー〜

 腹巻猫です。本年もよろしくお願いいたします。1月20日にサントラDJイベント・Soundtrack Pub Mission#44を開催します。特集は「2023年劇伴大賞」。参加を希望する方は、2023年に発表された映像音楽、もしくは映像音楽商品(旧作含む)の中から、特に印象に残った1曲をお持ちください(持ってこなくても参加できます)。詳細は下記イベントページをご覧ください。
https://www.soundtrackpub.com/event/2024/01/20240120.html


 今回は昨年末にサンドトラック・アルバムがリリースされた『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』を取り上げたい。筆者はTVアニメ版を観ていて「サントラ出ないのかなー」と思っていたから、劇場版のサントラが出ると知って歓喜したのである。
 『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』はフランス、韓国、日本の共同製作による3DCGアニメ。日本のTVアニメの影響をうかがわせる変身ヒロインものである。2015年からフランスや韓国、アメリカなどで放映され、日本では2018年からCSのディズニーチャンネルで吹替版の放映が開始された。その後、BS11やテレビ東京系でも放映されている。国内ではプリキュアシリーズなどの人気に隠れてあまり目立たないが、世界各国で放映され、現在シーズン5まで制作されている人気作品だ。今回取り上げる『ザ・ムービー』はその劇場版である。日本では劇場公開はされず、Netflixで配信されている。
 ミラキュラスは驚くべき力を秘めた魔法の宝石。何世紀ものあいだ、世界を悪の手から守る偉大なヒーローに与えられてきた。
 パリに住む高校生の少女マリネットと同級生の少年アドリアンは、ミラキュラスの持ち主として選ばれ、それぞれ、レディバグとシャノワールに変身する力を手に入れる。2人はマスクに隠された互いの素顔を知らないまま、ホーク・モスが町に放つアクマから人々を守るために、力を合わせて戦い始めた。
 キャラクター設定や変身シーンなどに『美少女戦士セーラームーン』へのオマージュが感じられて楽しい。いっぽうで、レディバグのコスチュームはテントウ虫柄のボディスーツという、日本の変身ヒロインとは一線を画すデザイン。日本とのセンスの違いがうかがえて興味深いところだ。
 マリネットとアドリアンの関係にも『セーラームーン』の影響が感じられる。マリネットはアドリアンに惹かれているが、アドリアン(シャノワール)はレディバグに惹かれている。互いに正体を知らないので、アドリアンはマリネットの気持ちに応えることができず、レディバグもシャノワールの気持ちに応えることができない。海外アニメではあまり見たことがない、日本の少女マンガみたいな展開にキュンとする。そういうところが、日本の視聴者にも支持されているのだろう。
 劇場版『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』はTVアニメ版の続編や外伝ではなく、同じ設定とキャラクターを使った、独立した作品として作られている。レディバグとシャノワールの誕生から始まり、マリネットとアドリアンの関係に大きな進展があって終わる。TVアニメ版をぎゅっと圧縮したようなストーリーだ。たとえて言うなら、TVアニメ『銀河鉄道999』に対する劇場版『銀河鉄道999』、もしくはTVアニメ『新・エースをねらえ!』に対する劇場版『エースをねらえ!』のような作品。TVアニメ版を観ていない人にもお奨めである。
 ただ、『ザ・ムービー』にはTVアニメ版にはない驚きの趣向がある。ミュージカルじたてになっているのだ。要所要所で、マリネットやアドリアンの心情が挿入歌として披露される。マリネットが初めてレディバグになる場面も、妖精ティッキーがヒーローの使命を歌で伝える演出になっている。TVアニメ版の設定を初見の人にも楽しみながら理解してもらうための工夫だろう。うまいアレンジだと思った。

 音楽を手がけたのは、TVアニメ版から本作の監督と音楽を担当しているジェレミー・ザグ(Jeremy ZAG)。ジェレミー・ザグはノアム・カニエル(Noam Kaniel)と共同で主題歌の作曲も手がけている。ノアム・カニエルは日本のアニメのフランス語版主題歌を歌ったり、テーマソングの作曲を手がけたりしている歌手・作曲家である。
 『ザ・ムービー』では、そのTVアニメ版主題歌のメロディが挿入歌や劇中音楽に組み込まれていることに感心した。TVアニメ版の主題歌は、一度聴くと耳に残るキャッチーなメロディが特徴。TVアニメ版に親しんでいるファンは、なじみのあるメロディが聞こえてくることで『ザ・ムービー』の世界にすっと入っていくことができる。
 演奏は「DREAM TOWN ORCHESTRA」。70人以上の編成のフルオーケストラである。劇場版にふさわしいシンフォニックサウンドが魅力だ。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで2023年12月20日にランブリング・レコーズからCDと配信でリリースされた。CDは2枚組。ちなみにCDが発売されているのは日本とドイツだけのようである。収録曲は以下のとおり。

ディスク1

  1. If I Believed in Me(自分を信じてみたら)‐日本語版‐
  2. Alone Again(アローン・アゲイン)
  3. You Are Ladybug(ユー・アー・レディバグ)
  4. My Lady(マイ・レディ)‐日本語版‐
  5. Chaos Will Reign Today(カオスが今日やってくる)‐日本語版‐
  6. Courage in Me(わたしの中の勇気)‐日本語版‐
  7. Stronger Together(ふたりなら強くなれる)‐日本語版‐
  8. Reaching Out(わたしらしく)‐日本語版‐
  9. Now I See(ナウ・アイ・シー)
  10. Opening Credits Of The Series(Milaculous Ladybug VA remix)(ミラキュラスTVシリーズ オープニング・テーマ)

ディスク2

  1. The Legend of the Miraculous(ミラキュラスの伝説)
  2. La vie a Paris !(パリでの生活!)
  3. Friends and Frenemies(友だちと嫌なヤツ)
  4. The Love of a Lifetime(人生をかけた愛)
  5. Regrets and Secrets(後悔と秘密)
  6. Let Darkness Rise(闇を甦らせる)
  7. Running Away(逃げろ)
  8. The Ring and the Cat(指輪と猫)
  9. Who Saves a Life Saves the World(一人を救う者は世界を救う)
  10. Tikki a Magical Encounter(魔法の使者ティッキー)
  11. The Ladybug Destiny(レディバグの運命)
  12. Stoneheart(ストーンハート)
  13. Two Halves Are Stronger as a Whole(ふたりなら最強)
  14. Secrets Between Friends(友だち同士の秘密)
  15. The Heist(強盗)
  16. Le jardin des Tuileries(チュイルリー公園)
  17. Rollercoasters!(ジェットコースターの危機)
  18. Alone in the World(世界にひとりぼっち)
  19. Since I’ve Met You(君と出逢ってから)
  20. The Empty Heart Behind the Mask(仮面の奥のからっぽな心)
  21. The Akumas Attack(アクマの攻撃)
  22. All Is Lost(すべて失った)
  23. The True Hero Is Behind the Mask(本当のヒーローは仮面の下に)
  24. Courage in Me (Alternative Version)(わたしの中の勇気[別バージョン])
  25. Moment of Truth(真実の瞬間)
  26. The Power of Love(愛のちから)
  27. Le bal de l’Opera(仮面舞踏会)
  28. Drop the Masks(仮面をはずして)

 歌と劇中音楽(BGM)を別のディスクに収めた2枚組。配信版も同様の曲順になっている。
 個人的には歌とBGMを区別せずに劇中使用順に並べてほしかったと思うが、そこは聴く人によって好みの分かれるところだろう。
 日本語版でマリネットの歌を吹き替えているのはメロディ・チューバック(Melody Chubak)。TVアニメ版の日本語版主題歌も歌っているアーティストだ。マリネットを演じる奈波果林と声質が似ているので、セリフから歌、歌からセリフに移っても違和感はない。メロディ・チューバックの表現力豊かな歌唱は説得力があって、ミュージカルじたての本作にはぴったりだと思った。
 さて、本作の音楽は、メインテーマとなる主題歌のメロディのほかに、いくつかのメインとなるモチーフが設定されている。
 劇場版が始まって最初に流れる曲は、ディスク2の1曲目「The Legend of the Miraculous(ミラキュラスの伝説)」。魔法のパワーを秘めた宝石・ミラキュラスの伝説がナレーションで紹介されるプロローグの場面だ。この曲の中に本作の音楽の主要なモチーフが登場する。
 最初に現れるのはメインテーマ(TVアニメ版主題歌)のメロディ。次に悪役ホーク・モスの愛のテーマが短く奏でられる。続いて、マリネットとアドリアンの愛のテーマ(挿入歌「Now I See」のモチーフ)。最後は「Now I See」のモチーフのオーケストラとコーラスによる壮大な変奏で終わる。
 この曲が全体の序曲になっていて、提示されたモチーフが以降の音楽の中にさまざまに形を変えて現れる。実に映画的な音楽設計だ。
 たとえば、マリネットとアドリアンがミラキュラスの力を秘めたアイテムを手に入れる重要な場面。使用される曲「The Ring and the Cat(指輪と猫)」(ディスク2:トラック8)と「Who Saves a Life Saves the World(一人を救う者は世界を救う)」(同:トラック9)にはメインテーマのメロディが挿入されて、2人がヒーローになる運命にあることを暗示する。
 マリネットの前に妖精ティッキーが現れ、マリネットにレディバグの使命を伝える場面でも、ティッキーが歌う挿入歌「You Are Ladybug(ユー・アー・レディバグ)」にメインテーマのメロディが使われている。
 そして、レディバグになることを迷っていたマリネットが、遊園地の危機を見て、変身する覚悟を固める場面。マリネットが歌う「Courage in Me(わたしの中の勇気)」の最後にメインテーマのメロディが現れ、マリネットの決意を表現する。歌詞とメロディと歌声が一体となって感動を呼ぶ名場面になっている。
 また、マリネットとアドリアンの恋心は挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」のメロディで表現されている。このメロディが初めて登場するのは、本編が始まってまもなく、マリネットがアドリアンと図書室で出会う場面の曲「Regrets and Secrets(後悔と秘密)」(ディスク2:トラック5)。フルートが「Now I See」のモチーフをやさしく奏でて、2人のこれからを予感させる。さりげなく巧みな音楽演出である。
 同じモチーフは、アドリアンがレディバグを想う場面の曲「Alone in the World(世界にひとりぼっち)」(同:トラック18)と「Since I’ve Met You(君と出逢ってから)」(同:トラック19)にも挿入されている。さらにアドリアンとマリネットがデュエットする挿入歌「Stronger Together(ふたりなら強くなれる)」の中でも同じモチーフがくり返され、アドリアンの切なさを強調する。
 クライマックスは、これらのモチーフが集結してドラマを盛り上げる。音楽的にも聴かせどころとなっている。
 ホーク・モスにミラキュラスを奪われてしまったレディバグ(マリネット)が、ふたたび立ち上がる場面。「The True Hero Is Behind the Mask(本当のヒーローは仮面の下に)」(ディスク2:トラック23)が流れ、コーラスをともなったメインテーマのメロディがヒーローの復活を讃える。
 ホーク・モスが正体を現し、アクマが浄化されていく場面では、哀感を帯びた「Moment of Truth(真実の瞬間)」(同:トラック25)が流れる。序盤で流れたホーク・モスの愛のテーマ「The Love of a Lifetime(人生をかけた愛)」(同:トラック4)の変奏である。
 そして、戦い終わったあと、レディバグがミラキュラスの力で破壊された町を復旧する場面。「Now I See」の壮大な変奏「The Power of Love(愛のちから)」(同:トラック26)が平和と希望を歌い上げる。
 物語のエピローグでは、マリネットとアドリアンの関係に進展がある。シャノワールの正体を知ったマリネットが仮面舞踏会の会場に現れる場面は、挿入歌「Now I See」のメロディをアレンジした「Le bal de l’Opera(仮面舞踏会)」(ディスク2:トラック27)で彩られる。ここではリズムを伴った力強いアレンジになっていて、マリネットの心の高揚が伝わってくる。それに続く、2人が相対する場面の曲「Drop the Masks(仮面をはずして)」(同:トラック28)。「Now I See」のメロディがピアノによる繊細なアレンジからオーケストラとコーラスによる雄大な曲想に展開し、大団円の余韻とともに作品を締めくくる。
 このあとのエンドクレジットは、いわばカーテンコール。劇中では使用されなかった3曲が続けて流れる。
 挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」と「Alone Again(アローン・アゲイン)」、それにインスト曲「Courage in Me (Alternative Version)(わたしの中の勇気[別バージョン])」(ディスク2:トラック24)である。マリネットとアドリアンの愛のテーマである「Now I See」とアドリアンの心情を歌う「Alone Again」、そして、メインテーマを変奏した「Courage in Me (Alternative Version)」が選ばれていることから、本作の音楽の中心がこの3つのモチーフにあることがうかがえる。
 『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』はヒーローの物語であると同時に、なにより、マリネットとアドリアンの物語なのである。

ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー オリジナルサウンドトラック
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
424 アニメ様日記 2023年7月9日(日)

2023年7月9日(日)
ワイフとほおずき市開催中の浅草に。露店のほおずきを見て、浅草寺に参拝する。ほおずきは買わないで、ワイフのために風鈴を買った。浅草は午前10時台から吞み屋が営業していた。若いカップルや女性で賑わっている居酒屋もあった。ホッピー通りの店で呑んで、その後、鈴芳に移動して生ホッピーを吞んだ。ワイフの希望で壽々喜園 浅草本店で「世界で一番濃い抹茶ジェラート」をいただく。事務所に戻って書籍の作業をやるつもりだったけれど、アルコールが入っていたので、それ以外の作業を進めた。

7月以降は土曜から日曜にかけての深夜アニメがかなり多い。以下がそのタイトル(小黒の観測範囲内)。
⋯⋯⋯⋯
『レベル1だけどユニークスキルで最強です』
『ライアー・ライアー』
『BLEACH 千年血戦篇 訣別譚』
『ホリミヤ -piece-』
『Atelier Ryza ANIMATION 常闇の女王と秘密の隠れ家』
『TIGER & BUNNY 2』
『魔王学院の不適合者II ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』
『EDENS ZERO[第2期]』
『AYAKA ‐あやか‐』
『てんぷる』
『うちの会社の小さい先輩の話』
『実は俺、最強でした?』
⋯⋯⋯⋯

2023年7月10日(月)
CSで録画した「ビューティ・ペア 真赤な青春」を観た。1977年の映画だ。ビューティ・ペアをビューティ・ペアが演じるドキュメンタリー風のフィクション。試合シーンの映像は大味だけど、映画館で観たら臨場感があったかも。
書籍「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の校正等を進める。17時から伊東食堂でライターの前田久さん、事務所のメンバーと食事。前田さんにたっぷりと食べてもらう。ワイフが新潟で探して見つからなかった『らんま1/2』のカップ酒が伊東食堂にあった。
中古で購入した「鋼の錬金術師 BOX SET-ARCHIVES-」について。これは凄い。書籍ではなくて映像・音楽・書籍のセットなのだが、ムックとも記録全集とも違うアニメ書籍の理想のかたちかもしれない。作品に対する愛情と誇りが詰まった商品だと感じた。一番イケてると思ったのは、イベントポスターを含めた公式ポスターの収録とパッケージ用イラストの収録。劇場版チケット等のグッズの復刻も凄い。デザインが垢抜けているのもよい。
『BLACK★ROCK SHOOTER』のPILOT Editionを観る必要が生じて、Amazonを検索してみたところ「購入回数: 2回。」の文字が。購入回数2回だとお。ジャケット画像を見てみると、確かに事務所で見かけた記憶がある。

ライターの廣田恵介さんが亡くなったことを知る。自分の仕事にプライドを持っており、体当たりで仕事をしている。彼についてはそのように思っていた。廣田さんがキュレーターを務めた「GIANT ROBOTS 日本の巨大ロボット群像」で資料協力をしたのが、最後の付き合いになった。その時にもっと話をしておけばよかった。彼の昔のブログが好きだった。ご冥福をお祈りいたします。

2023年7月11日(火)
朝の散歩の途中で、大塚の山下書店で編集中の書籍に関して、製本のサンプルになりそうな本を買い込む。赤本も買った。赤本買うなんて、大学受験以来だ。新文芸坐の13時5分からの回で「ヨーヨー」(1964・仏/98分/DCP)を鑑賞。プログラム「世界の映画作家Vol. 236 ピエール・エテックス」の1本。洒落た描写が多くて、それが楽しい。映画前半のほうが楽しめた。父親が豪邸を出て、親子3人で旅を始めたあたりが一番よかった。終盤はよく分からなかった。どうして、象? お父さんとお母さんは? ピエール・エテックス監督の作品はこれしか観ていないので無責任な発言になるが、同じような作りなら、短編のほうがいいかもしれない。監督の短編も観てみたい。映画の後でジュンク堂に。朝に続いて製本のサンプルになる本を買い込む。就寝前に『君たちはどう生きるか』初日のチケットをネットで購入する。

2023年7月12日(水)
「わく 別誂 寄り路処ふう」でお世話になっているある方と吞む。この店はランチで入ったことはあるけど、夜に来たのは初めて。いい店だった。

2023年7月13日(木)
朝の散歩はワイフと。普段と散歩の時間をズラして、午前4時くらいにマンションを出る。このくらいの時間なら、暑さと陽射しが苦手なワイフも大丈夫のはず。カルチュア・エンタテインメント株式会社から出ていた「季刊エス」と「SS」が、株式会社パイ インターナショナルから発売・発行されることを知る。次々に出版社を変えて出し続けているところがすごい。いやあ、大したものだ。
新文芸坐で「CURE 4Kデジタル修復版」を【4K上映】で鑑賞。1997年の映画だ。以下、ネタバレあり。評判がいい映画であることと、役所広司さんが刑事役をやっているくらいの事前情報で鑑賞した。途中までオカルトテイストの推理物かと思っていたけど、ホラーだった。主人公の高部(役所広司)が刑事で、犯人が間宮(萩原聖人)。捜査に協力するのが精神科医? の佐久間(うじきつよし)。それと高部の妻、19世紀末の人物の伯楽陶二郎。このあたりが主要登場人物(伯楽陶二郎は声だけが登場)。高部の妻は精神を患っており、高部は妻を愛しているが、その存在が重荷にもなっている。佐久間の設定上の位置づけはよく分からない。中盤までは殺人事件の描写、謎の提示、間宮の特異なキャラクターで、かなりの面白さ。後半も悪くない。高部が間宮を躊躇なく撃つところ等がよかった。怪奇事件が能力者による能力によるものだったみたいなところに落ち着いたのは、いまひとつしっくりこなかった。鑑賞後、Wikipediaやネットにあった監督インタビュー、いくつかの記事に目を通した。当初は「伝道師」のタイトルで制作が進んでいたが、当時の実際の事件に配慮して「CURE」のタイトルに変更したのだそうだ。劇中でも「癒し」という言葉が出ていたはずだけど、ある種の人達にとっては殺人が癒し(あるいは治療)になるということなのだろう。映画の途中で、間宮に誘導されて殺人を犯した女医が、殺人によって自分を解放した(と思われる)ように。映画のラスト、伯楽陶二郎から能力を受け継いだ高部は妻を殺害して(あるいはそれに近い状態にして)、次のシーンでそれまでになく、上機嫌になっていた。あれもCUREということなのだろう。演出は全体によい。特にエンドロール直前のラストカットの切れ味のよさは素晴らしい。よくぞ、あそこで終わらせた。実際にはあの後の展開も撮影されていて、そこは使わなかったらしい。個人的なことを書くと、高部の奥さんに感情移入して観た。

2023年7月14日(金)
グランドシネマサンシャインの8時15分からの回で、ワイフと『君たちはどう生きるか』をDolby Atmosで視聴。事前の情報がほとんどなかったので、どんな映画が始まるのか分からないで観た。ここまで事前の情報無しで映画を観るのは初めてで、上映が始まった瞬間のワクワクはかなりのものだった。内容に関してはどう受け止めていいのか分からないところもあったけれど、充分に楽しむことができた。先が分からないので楽しめたというところもある。作画はかなりよかった。本田雄さんがいい仕事をしているとは聞いていたが、予想以上だった。巧いし、やりきっているところが凄い。
東映株式会社から「宇宙海賊キャプテンハーロック Blu-ray BOX 豪華版」についてメールがあった。予約数が設定した数に達しなかったため、特典として制作する絵コンテが1冊になったのだそうだ。サイトを見ると「予約数が200に達した場合、復刻版絵コンテは2冊!」「予約数が400に達した場合、復刻版絵コンテは3冊!」とある。予約数が200に達しなかったのだろう。残念だ。それにしても寂しい数字だ。

2023年7月15日(土)
『君たちはどう生きるか』の感想がネットに出始めた。「肯定派」も「否定派」も、「分かる派」も「分からない派」も言っていることがバラバラで非常に面白い。むしろ、バラバラなところが、この作品らしいか。作品についての感想はバラバラだれど、作画ファンの作画についての感想は肯定的なものが多い。基本的には「本田雄さんが凄い」。それから「大平さんが目立っている」。
WHITE CINE QUINTOで『マルセル 靴をはいた小さな貝』を鑑賞。予告から想像したよりもずっとよかった。主人公が貝なのにどうして喋れるのか、どうして歩けるのかについては触れないで、しかも、それで違和感なしに物語を進めているところが巧い(ネット動画を観ている人達が、貝が喋っているので驚いているのか、マルセルがキュートなので感心しているのかを曖昧にしている)。悪党に主人公が誘拐されてとか、主人公が自宅に戻るまでの大冒険とか、有りがちなところに流れないで、静かで穏やかな世界を保ったのも好印象。描くべきことを決めて、それを描ききって、きちんと映画になった。そういうことなのだろう。気になったのは終盤に出てきたマルセルの仲間達。貝でないと思しきキャラクターがいた。作っている側が個々のキャラクターの設定を決めているなら、公開してほしい。いや、よく分からないのも魅力なんだろうけど。WHITE CINE QUINTOに行ったのは初めてかな。素敵な映画館だった。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】
映画監督 原恵一『カラフル』

 2024年1月13日(土)にお届けする新文芸坐とアニメスタイルの共同企画プログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】映画監督 原恵一『カラフル』」です。『カラフル』は2010年に公開された劇場アニメーションで、原作は森絵都の同名小説。淡々とした語り口で日常描写を積み重ね、真摯に物語を紡いだ原監督ならではの作品です。トークコーナーのゲストは原監督。聞き手はアニメスタイル編集長の小黒が務めます。

 「映画監督 原恵一」は原監督が手がけた作品を上映するシリーズ企画です。2月以降の開催も予定しています。お楽しみに。

 チケットは1月6日(土)から発売。チケットの発売方法については、新文芸坐のサイトで確認してください。

■関連記事(公開当時のインタビュー)
【アニメスタイル特報部】『カラフル』原恵一監督インタビュー
http://www.style.fm/as/02_topics/tokuhou/tokuhou_007.shtml

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 169】
映画監督 原恵一『カラフル』

開催日

2024年1月13日(土)13時~ 

会場

新文芸坐

料金

一般1900円、各種割引 1500円

トーク出演

原恵一(監督)、小黒祐一郎(聞き手)

上映タイトル

『カラフル』(2010/127分)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第834回 2023年も終わり

今年もシリーズが発表できて、来年もシリーズ(制作中)。さらに、再来年(制作中)も!

多少の放映開始時期の都合などで空いて見える年もありましたが、2005年から隙間なく監督をやってこられました。これだけでも幸せなことだと思っています。監督降板があった時ですら、その翌月には仕事を振ってくださったプロデューサーさんらには未だ感謝の念に堪えません。
 この連載の初期にはちょくちょく語って(書いて)いたと思いますが、自分はアニメーターより先に監督がやりたくて業界に入ってきたので、アニメーターとしてより“監督として作品が作りたい”と思ってきたし、それはこれからも変わらないと思います。

30歳で監督やり始めて来年(年明け早々)50歳を迎えるということは——早20年!

本当に自分は運がいいのでしょう。出﨑統監督憧れで基本きた仕事はどんなジャンルでもお受けしてきましたが、本音を言うとジャンル云々より監督という職でアニメが作りたいし、もっと端的に自分のコンテ(または自分がチェックしたコンテ)でアニメが作りたい! と。ただ、おそらく2024・2025年辺り、アニメ業界はもっと荒れそうです。荒れそうってのは別に何処かの著名人な方の仰る「アニメ業界が滅ぶ」とか考えているのではありません。むしろ、再三言ってるようにアニメの本数は増え続けると思います。それより俺が危惧しているのは、アニメーターやコンテ・演出が徐々にアニメ会社から、●られて行くのではないか? ということです。と言うのも、

業界の人手不足と働き方改革に付け込んで、分不相応な拘束料を貰いつつも、制作会社に対して唾棄するようなSNS発信するアニメーターらに、反撃もしないで沈黙を貫き通している会社側が何を考えているのか? 先週話題にしたAIを我々アニメーターや演出は甘く見ない方がいいですよ!

系の“荒れ”方です。正直、業界総掛かりでもこなせない本数(物量)の企画が回ってて、“一刻も早いAI導入急務!”状態です。そんな時、金は持っていくのに仕事の手は遅いわ、不満ばかりぶちまけるわ、裏で結託して突然大量離脱とかするわ~なアニメーターたちを使わないで、アニメが作れる方法を現在模索中な大手会社(スタジオ)の話がちょくちょく聞えてきます。それはCGかライブ2DかAIかは分かりませんが、旧態依然としたワークスタイルに変に意固地なアニメーターたちに頼らなくて済むアニメーション制作方法を身に付けた時、アニメーターだけでなく演出家も●り捨てられる可能性は高いと思います。しかし現状、それを裏で企むアニメ会社を、どの口が責められるでしょう? 多分、フリーの自宅作業アニメーターらには一々話して回らないでしょう。
 ちなみにウチみたいな中小企業は、そんなことを企む余裕はありません(汗)。今いるスタッフでできる限りのパフォーマンスを見せることが先、と考えています。ま、いろいろ問題は山積み……だけでなく、さらにもっともっと積み上り中ではありますが、そんな中まだまだ監督やらせてもらえるってだけで、嬉しい50代が迎えられそうです!

 では——。

第217回アニメスタイルイベント
アニメマニアが語るアニメ60年史 PART2

 2024年1月28日(日)夜にトークイベント「第217回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史 PART2」を開催します。

 アニメスタイル編集長の小黒祐一郎が、独自の視点でアニメの歴史について語るイベントです。このトークは2023年9月9日(土)に開催した「第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史」の続編で、前回のトークで触れられなかった話題について語ります。前回のトークで話した内容を前提にして進めるパートは、なるべくおさらいをしながら進めたいと考えています。また、今回のトークもレジュメを用意して、会場にいらしたお客さんに配布する予定です。

 話の聞き手は今回も、プロデューサーとして活躍し、かつてはアニメージュの編集者として腕を振るっていた高橋望さんにお願いします。なお、前回と今回のトークの内容を加筆修正して書籍化するかもしれません。

 会場はLOFT/PLUS ONE。今回は昼間ではなく、夜のイベントとなります。ご注意ください。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

 なお、前回の「第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史」のトークは現在もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは12月29日(金)18時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク(会場・チケット関係)
LOFT  https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/272817
LivePocket(会場)  https://t.livepocket.jp/e/ltrhy
ツイキャス(配信)  https://twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/282056

■関連リンク(アニメスタイルチャンネル)
第210回アニメスタイルイベント アニメマニアが語るアニメ60年史
https://www.nicovideo.jp/watch/so42764339

第217回アニメスタイルイベント
アニメマニアが語るアニメ60年史 PART2

開催日

2024年1月28日(日)
開場18時/開演18時30分 終演21時30分~22時頃予定定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

小黒祐一郎、高橋望

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
423 アニメ様日記 2023年7月2日(日)

2023年7月2日(日)
朝の散歩でワイフと第十三回すがも朝顔市に行く。この朝顔市は午前6時30分からやっている。ワイフが一鉢買った。昼間はジュンク堂と三省堂書店に寄って本を見る。読む本を探していたわけではなく、これから作る本の判型と文字組みの参考になるものを探したのだ。しっくりとくるものは見つからなかった。
7月の新番組を片っ端から観る。この日に観たのは『ホリミヤ -piece-』『Atelier Ryza ANIMATION  常闇の女王と秘密の隠れ家』『AYAKA ‐あやか‐』『うちの会社の小さい先輩の話』『実は俺、最強でした?』。

2023年7月3日(月)
『青のオーケストラ』がどんどんよくなっている。昨日の回は演出がよかった。話を進める以上のことをやっていた。グランドシネマサンシャインの10時10分からの回で『劇場版美少女戦士セーラームーンCosmos≪後編≫』を鑑賞。『Crystal』以降の『セーラームーン』で一番充実した仕上がりだったと思う。ただし、≪後編≫より≪前編≫のほうが面白かった。とにかく終わってよかった。難しいとは思うけれど、10年後くらいに再々アニメ化があるといいなあ。イケ・サンパーク近くの寿司屋でランチ。前から入ってみたかった店で、頻繁に前を通っているのに中に入ったのは初めて。これも「時間に余裕があるうちに、色んな店でランチを食べておこうシリーズ」だった。
Zoom打ち合わせ、そして、歯医者。歯医者の後で中央線沿線の某プロダクションに行く予定だったけれど、それが無くなったので新文芸坐に。15時10分からの回で「祈り」(1967・ジョージア/78分/DCP)を鑑賞する。プログラム「日本最終上映 ジョージアの巨匠テンギズ・アブラゼ「祈り三部作」」の1本。画作りはよかったけど、映画としては入りづらかった。オールナイトの1本として観たい感じ。

2023年7月4日(火)
新文芸坐の9時45分からの回で「茶飲友達」(2022/135分/PG12)を鑑賞。予告を何度か観て、気になって鑑賞した。高齢者売春を斡旋するグループとそこで働く老婆達の話で役者がよく、演出もいい。老人同士の行為を素敵なものとしてあつかっているのも、老婆達を愛らしく描いているのもいい。高齢男性にとっては扱いづらい若い女性よりも、落ち着いて接してくれる高齢者女性のほうが好ましいということを、それをセリフでは言わず、ドラマを通じて描いているのもよい。「これは巧いなあ」と感心するセリフがいくつもあった。映画前半は「大変な傑作ではないか」と思いながら観ていたのだけれど、話を広げ過ぎたのかもしれない。1本の映画として上手く着地しなかった印象。高齢者になっても他人との触れ合いが欲しいし、性愛も必要かもしれない。ひょっとしたら、人生の終幕近くに楽しい時間があるかもしれない。それを前半でポジティブなものとして提示しただけで、充分に価値のある映画だと思う。午前中の回にしては客が入っていたが、9割くらいがお年を召した方だった。ご夫婦で来ているお客さんも何組かいた。どんな気持ちでこの映画を観たのか気になる。
午後はワイフと出かけて、先日も行ったラーメン屋の浮浪雲に。美味しかったので、ワイフを誘ったのだ。普段は通らない道で自転車修理の店の前に人なつっこい猫がいた。近くに寄っても逃げない。ワイフは猫を撫で回していた。
劇場で録画した『GUN SMITH CATS』を視聴した。1話と2話以降で随分とキャラ作画が違う。3話は作画メンバーが豪華。あれ? これってDVDを買っていなかったっけ? と思ったらDVDを買ったのは『ライディング・ビーン』だった。

2023年7月5日(水)
打ち合わせで「『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』にはOVAがあるけど、最初のTVシリーズの『鋼の錬金術師』にはOVAが無いですよね」という話になって、それに対して、僕が「いやいや、あるよ。『国家錬金術師とホムンクルスの宴会大会』みたいなタイトルのやつ。それから実写編と現代編とか」と返した。打ち合わせの後で確認したら、正しくは「七大ホムンクルスVS国家錬金術師軍団」だった。それと別に短編で「宴会篇」があって、それとごっちゃになっていたようだ(さらに付け加えると「七大ホムンクルスVS国家錬金術師軍団」はUSJで上映されたイベントムービーであって、OVAではなかった。「宴会篇」等はOVA扱いのはず)。
駒込の「もつ焼 髙賢」に。業界のある方と食事。吞んで食べる。
『好きな子がめがねを忘れた』の1話はかなりインパクトだった。素晴らしい。凝った映像が好きな人、尖った作品が好きな人は必見だと思う。
ドラマ『DIY!!』1話も視聴。アニメ版を徹底的に再現しようとして、ちょっと驚く。アニメと実写の違いについて、改めて考えるきっかけにもなった。

2023年7月6日(木)
夕方、ワイフと鬼子母神の夏市に行く。途中で、朝の散歩で顔馴染みの猫が物陰でだらーんと昼寝をしているのを目撃する。夏市は賑やかで、子どもも多かった。ワイフは金魚掬いで金魚を掬いまくった。
引き続き新番組を片っ端から観る。『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』が凄い内容だった。主人公が本当に自動販売機なのだ。録画で東映チャンネルの『サイボーグ009』(1968)の13話、14話。「Gメン’75」9話、10話を視聴。『サイボーグ009』13話は作画がいいところがあった。木村圭市郎さんの作画が金田伊功さんのルーツだということがよく分かる。

2023年7月7日(金)
仕事の合間に新文芸坐で「蛇の道」(1998/85分/35mm)を鑑賞。ブログラム「呼応する二つのビート 北野武と黒沢清」の1本だ。画像がやたらと粗かったけれど、16ミリフィルムをブローアップしたものだそうだ。その粗さも味わいだと思えた。愛娘を殺された宮下(香川照之)の復讐を、新島という男(哀川翔)が手伝う。二人は犯人と思しきヤクザを拉致監禁するが、さらにもう一人のヤクザを拉致することになり、さらにもう一人⋯⋯。元がVシネマなのも関係しているかもしれないけど、映画として贅肉がほとんどないのに感心した。ロケーションもいい。前半は緊張感があってそれがよかった。最後のどんでん返しは物語としては面白かったけど、映画とてしてはもっとパンチが効いてもよかったと思う。細部に関しては受け止めきれないところがあったけれど、印象に残る作品だ。
『呪術廻戦 懐玉・玉折』1話(25話)を観た。いいものを観せてもらった。画的な見どころが山盛りで、演出もよい。「画がいい」以上の仕上がりだった。原画も見たいけど、演出修正も見てみたい。

2023年7月8日(土)
「第207回アニメスタイルイベント ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」を開催。トークはタイトル『つるばみ色のなぎ子たち』の解説に始まり、つるばみ色の説明。清少納言の衣装設定も公開。YouTubeにも上がっているメイキング動画。さらにメイキング動画のコメンタリー。「枕草子」の研究が進んだために生じた謎について。清少納言の記述はレトリックが入っているのでなく、視覚を優先して書いているのではないか。片渕監督達が作っている映画とはどんなものなのか、どこがドラマの核になるのか。等々。体調不良だった前回と比べると、片渕さんの話は三倍くらいの密度があった。お客さんは今までよりも人数が多かった。