84 近況報告

 「アニメスタイル010」の編集作業が進行中だ。昨日は『映画 聲の形』で山田尚子監督のインタビューだった。ロングインタビューではないけれど、聞きたい事をしっかりと聞く事ができた。どんな記事になるのかは、本ができてからのお楽しみ。それとは別に「アニメスタイル010」の巻頭特集関連の取材、他の記事の取材がいくつか終わっている。

 発売日は調整中だが「アニメスタイル010」は年内刊行予定だ。それと並行して、前にもお知らせした「平松禎史アニメーション画集(仮)」、クラウドファンディングで応援してくださった方々にお届けする「アニメスタイル000」もじわじわと進行中。

 来年刊行する本の企画もいくつか動いているのだが、それとは別に年内にもう1冊の本を出す予定だ。早ければ11月に刊行する。これはちょっと意外なタイトルになるはずだ。

 ええっ、そんなに色々出して大丈夫なのか、アニメスタイル。マンパワーも、それ以外のパワーも足りないのではないか。ただでも仕事が遅いのに。そんな突っ込みが入りそうだ。いやいや、大丈夫ですよ。きっと大丈夫です。大丈夫だといいなあ。大丈夫になるように頑張ります。何だか書いているうちに心配になってきた。

 よろしければ、応援してください!

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映画『聲の形』公式サイト
http://koenokatachi-movie.com

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 88
アニメファンなら観ておきたい200本 今 敏のアニメーション

 「アニメファンなら観ておきたい200本」はアニメファン初心者にお勧めの作品を上映するオールナイトの連続企画だ。11月19日(土)のプログラムでは今 敏監督の作品をピックアップする。
 
 奇想とリアリティの共存、作り込まれた密度の高いビジュアル、観客を惹きつける演出的な手腕。今 敏監督が手がけた作品は斬新であり独創的。そして「映画」らしい「映画」を撮ってくれる監督だった。

 上映作品は彼が遺した作品から『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』をセレクトした。トークのゲストは『千年女優』でキャラクターデザイン・作画監督を勉めた本田雄、アニメ研究家の氷川竜介を予定。前売り券は10月15日(土)からチケットぴあと新文芸坐の窓口で発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 88
アニメファンなら観ておきたい200本 今 敏のアニメーション

開催日

2016年11月19日(土)
開場:22時45分/開演:23時00分 終了:翌朝5時05分(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

本田雄、氷川竜介、小黒祐一郎(司会)

上映タイトル

『千年女優』(2001/89分/35mm)
『東京ゴッドファーザーズ』(2003/91分/BD)
『パプリカ』(2006/90分/BD)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

83 「この人に話を聞きたい」第百九十回はのんさんでした

 アニメージュ最新号(2016年11月号 VOL.461)の「この人に話を聞きたい」では『この世界の片隅に』で主役を務めた女優ののんさんに登場していただいた。

 信じてもらえないかもしれないが、『この世界の片隅に』の出演が決まる前から「この人に話を聞きたい」で、彼女の取材を検討していた。

 彼女はかつてネットで好きなアニメについて発言しており、その中で『ef – a tale of melodies.』についても話題にしていた。3年ほど前にそれを目にして「へえ、あんなマニアックな作りの作品を観るんだ」とちょっと驚いた。それ以来、「好きなアニメ」をテーマに、彼女に取材する記事をどこかの媒体がやらないかと思っていた。

 今年の春に、彼女がネットで『おそ松さん』の凝りに凝ったコスプレ写真を披露した時に「この人に話を聞きたい」で取材するのはどうだろうかと思いついた。長く続いている連載だし、たまには変化球の企画もいいのではないかと「アニメージュ」の川井久恵編集長と話していたのだ。のんさんへの取材について川井編集長も快諾してくれたのだが、よく考えてみると好きなアニメの話だけで4ページは埋まらないだろうし、それを「アニメージュ」に載せるのは不自然だよなあと思い、その時はご本人にオファーをする前に、自分で企画を却下してしまった。

 ところがその後、のんさんが『この世界の片隅に』で主役を演じる事が決定。しかも、試写で作品を拝見したところ、その芝居が素晴らしかった。他にも多くの方が同じ内容のコメントをしているが、映画を観ている間「主人公のすずさんという人物が本当にいる」と思えたのだ。素晴らしい。これだけの仕事をしたのだから「この人に話を聞きたい」でお話を聞くのも問題がない。

 取材前には『この世界の片隅に』についての話を聞いて、後半で好きなアニメの話にもっていって、そこから今後の仕事についての話に繫いでいこうと思っていた。ところが記事を読んでくださった方はご存知の通り、取材の途中で『この世界の片隅に』監督の片渕須直さんが登場。「一瞬だけ口を挟んでよい?」と前起きして、のんさんについて語り、そして、去って行った。ライターとしては、こんな美味しいネタを逃すわけにはいかない。記事で片渕監督の乱入を活かす事にした。
 
 片渕監督が現れる前に、好きなアニメについての話もうかがっていたのだが、記事の流れとしておさまりがよくないので、その分は本文ではカット。うかがった話の一部を、普段は作品リストを掲載している部分にコラムとして掲載した。「この人に話を聞きたい」としては取材相手だけでなく、記事の構成も変化球の回となった。

 『この世界の片隅に』はアニメーションとして豊かな作品だ。そして、のんさんの芝居も素晴らしい。是非とも劇場で観ていただきたい。今回の「この人に話を聞きたい」は具体的に個々の場面の演技について聞いている。劇場で鑑賞する前に目を通して、鑑賞した後にまた改めて読むといいかもしれない。

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「この世界の片隅に」公式サイト
http://konosekai.jp

「この世界の片隅に」劇場アニメ絵コンテ集(仮) [Amazon]
https://www.amazon.co.jp/dp/4575311871/style0b-22/ref=nosim

82 アニメ史に残る名悪役

 『亜人』の劇場版最終章『-衝突-』を観た。

 今回もしっかり楽しめた。極めてドライな感覚とエキセントリックさ。先が読めない展開と山盛りのアクション。ハードで刺激的な大人のための娯楽作という印象は最終章まで変わらなかった。作り手の「徹底的にやってやるぜ」という姿勢に拍手を送りたい。

 映像的な事で言うと、3DCGによるキャラクター表現は一段と磨きがかかった印象。ドラマに関しては放映中のTVシリーズ第2クールの方がしっくりくるところがあるかもしれないが、それは放映を観てみないと分からない。

 個人的な好みの話になるが、亜人の一人である下村泉に見せ場があったのも嬉しい。彼女は大変な萌えキャラだと思った。見た目も魅力的だけど、報われない事を分かっていて、命がけで戸崎優に尽くすところが愛おしい。クライマックスで、彼女のドラマについて演出的にもう一押しあったら、僕は泣いていたかもしれない。

 そして、今回も大塚芳忠さんが演じる佐藤が素晴らしかった。インパクト抜群。大塚芳忠さんの演技と、佐藤のキャラクターがぐいぐいと作品を引っ張っていった印象だ。最終章でも凄みのある芝居がたっぷり。これは大塚芳忠まつりだなあ、と思いながらスクリーンを見つめていた。彼の代表作になったのは間違いないだろう。そして、佐藤はアニメ史に残る名悪役になったと思う。

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『亜人』公式サイト
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第91回 1000年は夢〜1000年女王〜

 腹巻猫です。『かみちゅ!』『TIGER&BUNNY』『神撃のバハムート GENESIS』などのBGMを手がけた作曲家・池頼広さんのトークライブ、いよいよ来週末になりました! 音楽制作の苦心、スタッフとの思い出などを話していただきます。追加ゲストも予定しています!

池頼広トークライブ〜ベストアルバム発売記念!〜
10月22日(土)12:00開場/13:00開演
会場:阿佐ヶ谷ロフトA
チケット:前売り¥2,100/当日¥2,400
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/50010
※最新ベストアルバム2タイトルを会場で販売します。


 今回取り上げるのは『1000年女王』。1982年3月に公開された松本零士原作の劇場アニメだ。
 原作はサンケイ新聞に連載された同名マンガ作品。1981年4月から『銀河鉄道999』の後番組としてTVアニメ版『新竹取物語 1000年女王』が放送された。劇場版はTVアニメ版の終了より2週間ほど早く公開されている。TVアニメの総集編ではなく、完全新作による劇場用長編作品である。
 舞台は1999年。1000年周期で太陽をめぐる惑星ラーメタルが地球に接近し、地球の危機が予見される。その混乱を背景に、ラーメタルから1000年ごとに地球に派遣される1000年女王と地球の少年・雨森始との交流を描く物語。TVアニメ版と劇場版では基本的な物語は同じだが、一部の設定や筋立てが異なっている。アニメーション制作は東映動画(現・東映アニメーション)が担当した。
 TVアニメ版が雨森始の視点から描かれているのに対し、劇場版は1000年女王こと雪野弥生の視点を中心に描かれる。母星ラーメタルと地球、ふたつの星の運命のはざまで苦悩する弥生の心情がドラマの中心になり、TVアニメ版と比べて大人向けの印象の作品になった。あらためて観直すと、劇場のスクリーンに映えるロングを多用した画作り、地球の天変地異を描くエフェクト作画満載のスペクタクルシーン、金田伊功がメカニック作画監督を担当した宇宙戦シーン、潘恵子、戸田恵子、 麻上洋子、杉山佳寿子、増山江威子、武藤礼子、松島みのり、来宮良子、池田昌子らが一堂に会する声の出演陣など、見どころ聴きどころが多い作品である。

 聴きどころといえば、本作のセールスポイントのひとつになったのが音楽だった。音楽を担当したのは喜多郎。70年代からシンセサイザー奏者・作曲家として活躍し、現在も世界を舞台に活動している音楽家である。
 喜多郎は1953年、愛知県豊橋市生まれ。1978年にシンセサイザーによる初のソロアルバム「天界」を発表。翌1979年にソロアルバム「大地」「OASIS」をリリース。1980年にNHK特集「シルクロード」の音楽を担当して注目され、アルバム「シルクロード・絲綢之路」も大ヒットした。
 1982年の劇場アニメ『1000年女王』を皮切りに劇場作品・アニメのサウンドトラックも担当するようになる。この分野の代表作には、映画「喜多郎の十五少女漂流記」(1992)、「天と地」(1993)、「宋家の三姉妹」(1997/ランディ・ミラーと共作)、TVアニメ『獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇』(2003)などがある。
 1986年に発表したアルバム「天空」がアメリカで絶賛され、グラミー賞に初ノミネート。アメリカ国内だけで200万枚のセールスを記録した。以来、「古事記」「MANDARA」「空海の旅」などのアルバムを発表。2006年よりアメリカ・カリフォルニア州に移住し、アメリカを拠点に音楽活動を展開している。
 『1000年女王』は喜多郎が初めて手がけた劇場用音楽である。松本零士がアルバム「OASIS」のライナーノーツに寄稿した縁もあり、松本零士の希望でオファーされた。喜多郎自身も『銀河鉄道999』以来の松本零士ファンであったことから快諾。本作の音楽は喜多郎自身も気に入っているという。
 『1000年女王』は全編シンセサイザー主体の音楽を採用した先駆的な作品でもある。細野晴臣の『銀河鉄道の夜』が登場するのは1985年だし、久石譲の『風の谷のナウシカ』と『BIRTH』の公開はともに1986年。『1000年女王』はそれらに先駆けた、シンセサイザーによるアニメ音楽だった。
 喜多郎の音楽担当が決まったのは1981年7月。作曲は絵コンテをもとに行われ、1982年1月には音楽は完成していた。アフレコでも音楽を聴きながら録音が行われたというエピソードが残っている。
 音楽商品としては、ニール・セダカの娘デラ・セダカが歌った主題歌「星空のエンジェル・クイーン」が、劇場公開に先駆けて1982年2月5日に発売されている。サウンドトラック・アルバムは2月21日に発売。3月にはロスアンジェルス・シンフォニック・オーケストラが演奏するスコア盤「1000年女王組曲 Symphonic Suite Queen Millennia」が発売された。発売元はいずれもキャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)。ほかに2枚組ドラマ編LPも発売されており、キャニオンレコードがいかに本作に力を入れていたかがうかがえる。
 サウンドトラック・アルバムの収録曲は以下の通り。

  1. プロローグ〜スペース・クイーン
  2. 星雲
  3. 光の園
  4. まぼろし
  5. コズミックラブ(宇宙の愛)
  6. 自由への架橋
  7. プロメシュームの想い
  8. 未来への賛歌〜エピローグ

 LPでは4曲目までがA面、5曲目からB面になる。
 音楽はストーリーに沿った音楽メニューをもとに作曲されているが、アルバムは単独の音楽作品として聴けるように構成されている。制作された音楽の中から楽曲として完成度が高いものを選び、劇中の使用順にはこだわらずにまとめられた。喜多郎のソロアルバムとしての側面が強いアルバムである。

 1曲目は短いプロローグに続いてメインテーマが演奏される開幕の曲。「星空のエンジェル・クイーン」のメロディだ。M-22のMナンバーで作曲されたが、映画ではM-1後半として、長い導入部に続いて始まるタイトルバックに使用されている。バックでアルペジオを刻む高音の弦の音はインドのサントゥールという楽器。本作の音楽はすべてがシンセサイザーの音ではなく、部分的に生楽器の音もミックスして作られている。
 このメロディは1000年女王のテーマとして、劇中でも幾度か登場する。作品を観ていなくても、音楽は覚えていなくても、このメロディだけは記憶に残っているという人も多いのではないだろうか。80年代アニメソングの中でもトップに数えられる美しいメロディである。
 曲はメロディが終わったあと、静かにフェードアウトしていき、切れ目なく次の曲に続く。2曲目「星雲」の始まりである。
 楽曲と楽曲をクロスフェードして切れ目なしに収録するのは、喜多郎のソロアルバム「大地」「天界」でも見られた手法だ。アルバム全体をひとつの楽曲のように聴いてもらいたいという作家の意図の表れだろう。同時に、本作では、いつ始まり、いつ終わるとも知れない1000年女王のさだめを表現しているようでもある。
 「星雲」は本編では使用されていないアルバムだけのオリジナル曲。ホルン系の音色がゆったりとメロディを奏で、シンセによる泡立つような音や風のような音、鐘の音などが挿入される。タイトル通り、無限の星雲の中を旅しているような気分になる曲である。
 続く3曲目は「光の園」。シンセによる低音のリズムから始まり、リコーダー風の木管系の音がさびしげなメロディを演奏する。時折、流星をイメージしたようなシュワーッという音が右から左、左から右によぎる。M-23のナンバーで作曲され、本編の終盤、ラーメタルの指導者ラーレラの最期を描く場面に使用された。ラーメタル人の悲しいさだめをイメージさせる曲である。
 4曲目は「まぼろし」。ピアノとシンセのキラキラした音がリズムを刻み、クリスタルを思わせる透明感のある音が甘美なメロディを奏で始める。本作の音楽の中でも際立ってロマンティックな曲だ。中盤は木管系とストリングスの音で盛り上げる。M-4のナンバーで作曲され、物語序盤で弥生がラーメタルの恋人ファラの写真を見る場面に流れた。恋人の目覚めを1000年待ち続けた弥生の想いを表現する曲。その後の展開を思うと、「まぼろし」というタイトルが切ない。
 B面の開幕となる5曲目「コズミックラブ(宇宙の愛)」は本作の愛のテーマとも呼ぶべき曲。風の効果音の中から木管系のシンセの音が奏でる美しくももの悲しいメロディが浮かび上がってくる。MナンバーはM-6。惑星ラーメタルに1000年に一度の春が訪れ、冬眠していたラーメタル人が目を覚まし始める場面に使用された。
 切れ目なしに続く6曲目は「自由への架橋」。金管系のシンセの音が歌い上げる雄大で悲壮なメロディは、1000年女王の決意と地球人の運命の急転を表現している。M-25として作曲され、劇中では、1000年女王が指揮をとるノアの方舟=大空洞船が関東平野から離陸するシーンにM-17として使用された。『宇宙戦艦ヤマト』でいうならヤマト発進の曲に相当する聴きどころ。クライマックスへの展開を大いに盛り上げた1曲だ。
 続けて演奏される7曲目「プロメシュームへの想い」は、メインテーマの変奏曲。プロメシュームは1000年女王の本名である。木管系の音色が奏でるメロディにシンセ・ストリングス、ピアノ、きらめくようなシンセの音が絡み合う美しいアレンジ。M-24のナンバーで作曲され、始たちがラーメタル軍を迎撃する終盤の戦闘シーンに使用された。
 アルバムのラストを飾る8曲目「未来への賛歌〜エピローグ」は、オカリナ風のシンセの美しい導入部に続いて、木管系のシンセがノスタルジックなメロディを奏でる曲。バックのピアノとアコースティックギターが故郷への想いをいや増すようだ。M-26のナンバーで作曲され、実際はM-20として、惑星ラーメタルから巨大な宮殿船が発進する場面に使用されている。永遠の春を求めるラーメタル人の憧憬、未来への希望を表す曲とも受け取れる。
 シンセサイザーでしか生み出せない独特の音色を駆使したスペーシィで神秘的で美しい音楽。喜多郎の音楽性が生かされた作品だ。いっぽうで、劇場用音楽らしくない印象が残る不思議な作品である。
 戦いの場面に勇ましい音楽、危機の場面に緊迫感を盛り上げる音楽、といった劇場作品の定番的表現は、本作の音楽には見られない。どの曲も3分を超える長尺で作られているが、シーンの変化に合わせて曲調を変える、いわゆるフィルムスコアリング的な手法も取られていない。
 とりわけ印象に残るのは、地球の大災害を描くスペクタクルシーンや、ラーメタル軍対地球人との戦闘シーン。ふつうなら音楽で大いに盛り上げる場面だが、本作では悲しげでゆったりした曲が、静かに、淡々と流れ続ける。勇ましさよりも悲しみを強調したような音楽演出が印象的だ。
 これは、始たち地球人の気持ちに寄り添った音楽ではない。
 悠久の時を生きる1000年女王とラーメタル人の側に立った音楽なのである。

 本作は、アニメ音楽としても、喜多郎のアルバムとしても、ファンの多い作品だ。しかし、音楽の復刻は難航した。
 サントラは、1984年12月に発売されたCD「喜多郎 BEST SELECTION」に「プロローグ〜スペース・クイーン」と「未来への賛歌〜エピローグ」の2曲が収録されただけで、長らくCD化の機会に恵まれなかった。初のCD化は、2000年に日本コロムビアから発売された10枚組CD-BOX「松本零士音楽大全」の1枚。TVアニメ版の朝川朋之の音楽とのカップリングの形で、サウンドトラック・アルバム全曲が収録された。2005年に東映ビデオから発売されたTVアニメ版DVD-BOXには、このCDのマスターを使用した特典CDが同梱されているので、そちらでも同じ音源を聴くことができる。単独盤としてのCD復刻は国内では実現していない。
 主題歌「星空のエンジェル・クイーン」も長くCD化されなかったが、コンピレーション・アルバム「オアシス2」(2002)とデラ・セダカのベストアルバム「ガール・フレンド」(2004)に収録されて手軽に聴くことができるようになった。
 「1000年女王組曲 Symphonic Suite Queen Millennia」は現在も未CD化のままである。
 東映ビデオから発売されたレーザーディスクには、サントラ・アルバム未収録曲も含めた劇場用音楽が副音声に収録されているので、再生機をお持ちの方は入手して聴いてみるのも興味深いだろう。

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ガール・フレンド/デラ・セダカ

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81 1981年の「アニメージュ」付録のポスター

 古本屋で昔のアニメ雑誌の付録が1点100円で売られているのを見つけ、ポスターを数点購入した。購入したのはいずれも「アニメージュ」の付録だ。僕の仕事場には「アニメージュ」本誌は創刊号から最新号まで揃っているが、付録は無くなったりして、全部があるわけではない。古本屋で手にとって、ああ、こんな付録もあったよなあと思ったのだ。
 
 ひとつが「IDEON SPACE RUNAWAY SPECIAL FILM PHOTOGRAPHS 104 NOT YET ON AIR(伝説巨神イデオンテレビ未公開フィルム)」。これは1981年7月号の付録だ。『伝説巨神イデオン』は物語途中の39話で、TVシリーズの放映が打ち切られており、後に劇場版で完結する事になる。放映されなかった40話以降の4話分をダイジェストしたフィルムが、イベント「アニメグランプリ」で上映された。ポスターはそのダイジェストフィルムの画像で構成したものである。
 ポスターのサイズはB2で、そこに104枚のスチールが並んでいる。製作途中のラッシュフィルムを使ったのだろう。原撮カット、動撮カットも掲載されている。その色が塗られていない線画だけのスチールが何なのか分からなかった読者も多かったに違いない。分からなかったとしても、制作現場の生々しさは伝わったのではないかと思う。
 作画のよい表情芝居のカットを連続して載せており、アニメーションディレクターである湖川友謙さんの巧さを愉しむ事のできるアイテムでもある。未放映分のフィルムでポスターを作ったという点でも、原撮カットや動撮カットまで収録したという点でも、湖川さんのいい画をチョイスしたという点でも、実にマニアック。

 もうひとつが『Le Garcon 夏への扉』。こちらは1981年6月号の付録だ。こちらもたっぷりとスチール写真を使ったものだ。竹宮惠子原作の劇場アニメーション『夏への扉』のファーストシーンからラストシーンまでの本編カットを並べている。キャプションもついていて、物語が追えるようになっている。『夏への扉』は画作りに非常に凝った作品で、その突出ぶりはアバンギャルドですらあった。このポスターはその映像の魅力をたっぷり詰め込んでいる。
 このポスターの凄いところは、掲載したカットの選びを、監督である真崎守自身が担当している事だ。さらにポスターの下部には、真崎監督が『夏への扉』の演出についてコメントしている。いいねえ。かっこいいねえ。いかにもこの頃の「アニメージュ」らしい。今だったら尾石達也監督にカットを選んでもらい、それで『傷物語』のボスターを作るような企画だ。

 今回取り上げたポスター以外にも、創刊から数年間の「アニメージュ」には意欲的な企画、マニアックな企画が多い。編集者がアニメの面白さだけでなく、メイキング的な部分の楽しみ方を伝えようとしている。現在のアニメ雑誌編集者として見ても、実に刺激的だ。

 と、ここまで書くと「『アニメージュ』の付録と言えば、アレとかアレも凄かったよ」と言われそうだ。分かります分かります。アレとかアレですね。それについてはまた改めて紹介したい。

サムシング吉松のコラムinコラム

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80 リアルさと理想化のバランス

 TVアニメ『NEW GAME!』は好ましいシリーズだった。ビジュアルに関しては、キャラクターデザインが洗練されていて、フォルムが綺麗だった。芝居に凝ったところがあるのもよかった。特に1話はお気に入りで、何度も録画を観直した。

 『NEW GAME!』を好ましいと思った一番の理由は、リアルさと理想化のバランスのよさだった。この作品は、ゲーム会社を舞台にした「お仕事もの」だ。ある程度、ゲーム会社での仕事をリアルに描いている。だけど、リアルにはしすぎない。登場するのは可愛らしい女の子ばかりだけど、まあ、このくらい可愛い子ばかりがいる職場もあるかもしれないなあと思わせるくらいの絶妙のバランス。女の子達は抽象化されており、同時に理想化もされている。要するにマンガやアニメならではのキャラクターであるのだが、お仕事ものとしてのリアルさが、登場人物に適度な存在感を与えている。

 そういったリアルさと理想化のバランスが心地よかった。僕にとっては存在感が大事なのだ。理想化されているだけなら、そんなに好ましいとは思わなかっただろう。

 勿論、『NEW GAME!』のバランスが唯一の正解だというわけではない。

 過去に深夜アニメで、もっとリアル寄りの「お仕事もの」もあったし、もっと現実味の薄い「お仕事もの」もあった。それぞれ違った面白さがあった。『NEW GAME!』のバランスはいくつかある正解のひとつなのだ。

 それから、20代の女性を「可愛い女の子」として扱っている点も、僕が『NEW GAME!』を好ましいと思った理由のひとつだ。現在の女性の様子を見ていると、これも充分にアリだと思う。

●イラスト/サムシング吉松

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第486回 アニメとお金

 タイトルはいちいち言いませんが、近頃アニメ映画がかなり大ヒットしてたりします。これは当たり前ですが、アニメ業界にとってはいい話に決まっているし、自分も喜んでおります。中には「次こそは僕も大ヒットを飛ばしてナントカ賞をもらって文化人の仲間入りを!」と野心を燃やしてたり、「俺だってチャンスさえあれば!」と嫉妬(?)したりの「作家」扱いされたがってるアニメ監督さんもいるようですが、板垣には縁のない話。何故なら俺は、この連載でも10年近く言い続けてるとおり「作家」→「賞」→「権威」→「金」には全く興味がないからです。あ、一応前もって言っておきますが、それらに拘る監督さんが悪いなどと言うつもりはもーとーありません! 他人の価値観をとやかく否定してもしょうがないですから。あくまで板垣個人の話です、ここからは。
 思えば自分の金銭感覚は、大概の人と同様に家庭環境に因るもので、単純に「貧乏」で「学のない家系」と整理できるでしょう。ま、食うのに困るくらいの貧乏ではなかったから、「金持ちじゃない」が丁度いい表現かもしれません。で、学のなさは、少なくとも自分が実家を出るまでの18年間で、両親とも本1冊読んでるトコを見た事がないし、もちろん活字の本は家に1冊もなかった程度。あと、東北の田舎育ちの父と母は、中学もろくに通わせてもらえず、家の手伝いばかりだったと聞きます。よって自分が活字を読む楽しさを知ったのは高校2〜3年くらいからと、「学歴社会」だ「受験戦争」だ言われた我々第2次ベビーブーム世代の中ではやや遅かったと思います。だから俺の人生では、親と学問らしい学問の話をした記憶は皆無。ゆえに東京で一人暮らしをするまでは、両親に対して感謝はするも尊敬はしていませんでした。「一人暮らしをするまでは」と限定したのは、今はそう思ってないからで。
 あれは専門学校を卒業して寮を出て、アパートを探し契約する際、連帯保証人の年収を書く欄があり、母親に電話したんです、「年収は?」と。すると意外なほど安い額を言われ(早い話、アニメーターでも動画マンくらいの年収)、キョトンとなって「そんなハズないでしょ!」とちょっと語気を荒げました。さらに母は「今は定年延長してるから半分になってるけど、あんたらが子どもの時だってそんなに稼いどらんって」と。訊けばいちばん貰ったピークですら今の俺の半分以下の年収だったのです。

その時、心底両親を尊敬しました!

 だって、その低収入で俺ら3人(姉・自分・妹)を不自由なく育て上げたうえ、3人とも大学進学もしくは専門学校に進学できるくらいの貯金もしてくれたんですから。特に母はパートで家計を補いつつも、趣味でバレーボールをやったり、友人とお茶したり、毎日楽しそうに過ごしているとしか、少なくとも俺の目には映っていませんでした。「伸を遊びに連れてって!」と母に言われて、シブシブ俺の手を引いて連れて行く先が、いつもパチンコ屋、立ち飲み屋だった父の事も、今ではなんとなく理解できるようになってますと。
 そんなわけで、自分にとって何千万〜何億といったアニメの制作費を雑に使うなんて考えられないし、「こんなに安いの受けなきゃいいだろ!」とか先輩監督から説教されても、俺はなんとかやろうとしてしまうんです。特にとても普通のアニメ監督風情が工面できないほどの金が動いて作った作品を「僕の作品」「君の作品」などと言い合って監督同士が楽しく批評し合うなんて、

自分の名前ひとつで全制作費を集める事ができるほどの大監督になって、ようやくその資格を持てるのであって、普通の(並の)監督は己で作ってるアニメが個人の「作品創り」である前に「会社の一大事業」だという緊張感を持って仕事をすべきだと思う!

んです。つまり、板垣にはその資格がありません。同年代の監督様たちはどうお考えでしょうか? ま、俺が小心者なだけなんでしょうね。

79 「平松禎史アニメーション画集(仮)」!

 新番組『ユーリ!!! on ICE』の放映が始まりました。少なくとも、昨夜放映された1話に関して言えば、期待以上の仕上がりでしたよ。フィギュアスケートのシーンは本当に見事な出来で、それだけでも一見の価値あり。それだけでなく、表情や芝居、画面構成も凝っており、見応えがあった。それから、全体的にメジャー感があるところがよかった。いいものを観させていただきました。
 BSでの放送はこれからだし、各動画配信サイトでの配信も始まります。未見の方は、是非チェックしてみてください。

 さて、以下が今日の本題です。

 アニメスタイルの新刊の企画を発表します。その『ユーリ!!! on ICE』でキャラクターデザイン・総作画監督を務めている平松禎史さんの仕事をまとめた書籍「平松禎史アニメーション画集(仮)」です。
 アニメスタイルとしては「吉成曜画集 イラストレーション編」「田中将賀アニメーション画集」「西尾鉄也画集」に続く、画集シリーズの1冊となります。

 現在、編集作業が始まったところです。どんな作品が収録されるのか、いつ発売されるのか等は、また改めてお伝えします。お楽しみに!

●イラスト/サムシング吉松

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西尾鉄也画集[Amazon]
https://www.amazon.co.jp/dp/4902948184/style0b-22/ref=nosim

田中将賀アニメーション画集[Amazon]※現在品切れ中
http://www.amazon.co.jp/dp /4902948176/style0b-22/ref=nosim

吉成曜画集 イラストレーション編[Amazon]
http://www.amazon.co.jp/dp/4902948168/style0b-22/ref=nosim

吉成曜画集 ラクガキ編[Amazon] https://www.amazon.co.jp/dp/4902948192/style0b-22/ref=nosim

78 「アニメスタイル010」の編集作業が始まった

 「アニメスタイル010」の編集作業が始まった。1本目の取材が先週の土曜。今日の夕方にも取材があり、明日以降も連日取材だ。巻頭特集が何なのかは、まだここで書くわけにはいかないが、「アニメスタイル010」でも今年の新作を数本取り上げる予定だ。

 発売日もだいたい決まっているが、発表はもう少し先にする。もしも、年内に発売されれば、2016年に雑誌「アニメスタイル」は3冊刊行される事になる。今のアニメスタイルチームの体力と瞬発力で、画集等の出版物と同時進行で、現在のボリュームの雑誌「アニメスタイル」を出し続けるとなると、年に3冊くらいが丁度いいようだ。

 作る側としては年に3冊くらいがいいのだが、作品の事を考えると、年に4冊以上出したほうがいい。年に3冊だと、作品をとりあげるタイミングを逸してしまう事がある。こちらが特集したいと思っても、時期が合わないと取材を受けてもらえない場合があるのだ。今までも、それで特集を断念した事が何度かあった。このあたりは非常に難しい。

 自分で言うのもおかしいけれど、前号「アニメスタイル009」は充実した内容だったと思う。ではあるが、びっくりするくらい広告が入らなかった。「010」では少しでもいいから広告を増やしたい。広告についてはまた改めて告知します。皆さま、よろしくお願いします!

●イラスト/サムシング吉松

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77 アニメ視聴は戦いだ

 2016年の現在、僕にとってアニメ視聴は戦いである。戦いになってしまうのは、放映中のTVアニメを一通り観ようとしているからだ。好きな作品、あるいは気になるタイトルだけを観ているだけなら、戦いでもなんでもない。単純にアニメを楽しむだけだったら、放映が終わってから人に勧められた作品や、評判のいいタイトルをネット配信やパッケージでまとめて鑑賞すればいい。それも理想的な視聴スタイルのひとつだと思う。

 残念な事に僕は、TVアニメを一通り観たい人なのだ。実際には全てを視聴するのは難しいのだが、理想としては全部を観たい。

 今さら言うまでもない事かもしれないけれど、現在、放映されている新作TVアニメの本数は多い。アニメスタイル編集部の調べによれば、この10月にスタートする新番組は70本を越える。
 
【情報局】新作アニメピックアップ[TV編]160928 秋の新作は70本超!
http://animestyle.jp/news/2016/09/28/10518/

 という事は、新番組をチェックするだけでも、1日あたり10本のTVアニメを視聴しなくてはいけない。それ以外に継続作品もあるのだから、1日に観るべき本数はもっともっと多いわけだ。さらに言うと、僕の場合は仕事で過去の作品を観る事が多い。例えば、取材前にそのクリエイターの作品を何本も観る。場合によっては数クール分を視聴する。その分だけ、新作アニメを観る時間が削られてしまう。
 1週間は7日しかないし、1日は24時間しかない。睡眠はとらなくてはいけないし、仕事もしなくてはいけない。ここ数年、ウォーキングをやっているのだけど、それも時間がかかる趣味だ。残された時間で効率的にTVアニメを視聴しなくてはいけない。ノルマという言葉が、頭をよぎる。嫌だなあ。本来は趣味であり、人生を豊かにするためのものであるはずのアニメ視聴で「効率的」とか「ノルマ」なんて言葉は使いたくないなあ。本数が多ければ、その多さを楽しむくらいの余裕がほしい。いや、これは自分で自分に向かって言っているんですよ。
 7月新番は「これは後でじっくり観よう」と思って視聴を後回しにしてしまったため、いまだに消化できていないタイトルが数本ある。10月新番は溜め込まずにどんどん観ていきたい。

 放映作品が多いという事は、新しい魅力のある作品、派手ではないが丁寧に作られた作品、創意工夫や熱意の感じられる作品等が、注目を集める事がないまま過去のものになってしまう可能性が高いという事でもある。よいものを見つけて、それを紹介するのがアニメ雑誌編集者の仕事だ。本数が多くても、放映されているアニメに目を通したいのは、それをやり続けたいからでもある。

●イラスト/サムシング吉松

76 「設定資料FILE」と「この人」が20年目を迎える

 知らない読者もいるかもしれないので説明しておくと、僕は出版社の株式会社スタイルの社長で、雑誌「アニメスタイル」の編集長でありながら、ライターとして徳間書店の「アニメージュ」で「設定資料FILE」「この人に話を聞きたい」を担当している。
 「設定資料FILE」はアニメの線画設定を掲載するコーナーで、「この人に話を聞きたい」はインタビュー連載だ。

 来年、つまり、2017年に雑誌「アニメージュ」が40年目を迎える。若い人からすれば「そんな昔からある雑誌なんだね」という事だろうし、創刊号から読んでいる読者は「もう40年か」と思うのではないだろうか。
 アニメージュの創刊号が1978年7月号(VOL.1)。1998年7月号(VOL.241)にリニューアルが行われ、判型がそれまでのA4サイズから、横が広いA4変型となった。そこから現在にいたるまで、アニメージュの判型はA4変型である。
 
 リニューアルが行われた1998年7月号で「設定資料FILE」が始まった。「アニメージュ」のリニューアルの一環として、「設定資料FILE」が始まったのだ。それと同時に「キャラクターデザイナーの肖像」というコーナーがスタートしている。「設定資料FILE」も「キャラクターデザイナーの肖像」も僕が企画を出している。1998年7月号で新編集長に就任する松下俊也さんに依頼されて、リニューアルのアイデアを出したのだ。「キャラクターデザイナーの肖像」はアイデアだけで、僕は編集には関わっていない。当初は文章主体の「設定資料FILE」と、ビジュアル主体の「キャラクターデザイナーの肖像」で1セットのイメージだった。
 「設定資料FILE」から4ヶ月遅れて、1998年11月号(VOL.245)から「この人に話を聞きたい」が始まる。「この人」がスタートした時に「1年は続けたいなあ」と思ったと記憶している。

 それから、たまに諸般の事情でお休みする月はあったが、「設定資料FILE」と「この人に話を聞きたい」はずっと続いている。「アニメージュ」が40年目を迎える来年に「設定資料FILE」と「この人」は20年目を迎える。つまり、「アニメージュ」の歴史の半分続いた事になる。再来年まで続けば、「設定資料FILE」と「この人」は「アニメージュ」の半分以上の歴史を持つ事になるわけだ。
 長く続けばよいというわけではないけれど、それだけ多くの線画設定を紹介し、多くの方に話をうかがってきたわけだ。長く続く事にも価値がある。来年、再来年まで続くとよいなあ、と思っている。

 ところで、今月号(2016年11月号 VOL.461)の「この人に話を聞きたい」は登場していただく方も意外な人物だし、記事の構成もちょっとトリッキーなものとなっている。お楽しみに。

●イラスト/サムシング吉松

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75 西尾さん、こんなに描いていたの!?

 「西尾鉄也画集」の一般発売が始まって4日経った。本を手に取られたファンの方々は「え~、西尾さんってこんなに沢山のイラストを描いていたの?」「こんな作品にも参加していたの?」と驚かれたに違いない。編集をしていた僕達も驚いた。


 『NARUTO ‐ナルト‐』のイラストは多いだろうと思っていたけれど、それでも予想よりも多かった。『攻殻機動隊』シリーズもこんなに描いていたのか! 『BLOOD+』も描いていたのか! そして、アニメ以外のイラストも多い。「教科書よりやさしい日本史」「教科書よりやさしい世界史」等、学習参考書のために描いたイラストは数も多いし、西尾さんの画風が歴史上の偉人というコンセプトとマッチしているのも面白い。

 「西尾鉄也画集」は、彼が参加したアニメ作品の版権イラストをメインに構成し、そのデザイン画、絵コンテ、原画等も掲載。さらに、1話の作画に入る直前に企画がなくなってしまったアニメ作品のキャラクター、ゲームムービー用のデザイン画、押井守監督関連書籍用のイラスト、TVのバラエティ番組のために描いたイラスト、役者の藤木義勝さんの結婚お知らせハガキ用のイラスト、Production I.G忘年会用のビンゴのために描いたイラスト等々。読者の方に「こんなに描いていたの!?」と驚いてもらえるように、関係各所に許可をいただき、可能な限り収録した。

 これだけの量を載せるのには並々ならぬ苦労があった。「苦労があった」なんて言うと自分が大変だったみたいだが、決してそうではない。全ては、西尾さん自身とProduction I.G、各プロダクションやメーカー等、そして、編集スタッフとして参加してくれたライターの小林治さんのお陰だ。ここで改めてお礼を言いたい。

 今後、アニメスタイルが何冊の画集を出す事になるのか分からないが、「西尾鉄也画集」以上にボリュームがあり、掲載作品がバラエティに富んだ画集を出す事は、もうないだろうと思う。

●イラスト/サムシング吉松

  ……というわけで、一昨日の更新でどちらか片方をあげればいいイラストを、2枚ともあげてしまいました。吉松さん、すいません!

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【NEWS】西尾鉄也の集大成「西尾鉄也画集」ネット書店、一般書店で9月26日発売!
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(2016/09/30)

第485回 2017年に続く!

『ベルセルク』2017年春、次篇降臨!!
はい、もともとその予定で制作してました!

と。もうバラしてもいいでしょう。最初からそう決まってて、制作は現在ももちろん続行中、且つ自分もまだコンテ中であります。12話までの完成フィルムを観るとCGのクオリティがどんどん上がってるので、今コンテ切ってる次篇もどんな凄い映像が上がってくるのか楽しみなんです。でもまあ、断罪の塔(モズクズ)篇の名キャラクター何人かとお別れしなきゃならないのは寂しいものですね。ニーナとかジェロームとか。特にホン読みの時もコンテ切ってた時も、ニーナは気になって仕方がなかったんですよ! 本当に人間の弱さだけで出来てるようなキャラで、気がつくと感情移入してしまう自分がいました。だから、できるだけエピソードも台詞も削りたくなかったのを思い出します。ホン読みの際は「ニーナ絡みをもう少し削っては?」との意見もあったのですが、なるべく守ろうとしました。で、ルカ姉もいい! やっぱり手を放そうとする(?)ニーナより先に、己から手を放すルカの慈愛ときたらもう! 三浦先生はなんでこんなキャラが描けるんだろう? あと、

イシドロが俺は好きです!
コンテ描いてて楽しかったし、和みましたホント!

 基本原作に沿って描いていたのですが、コマとコマを繋ぐ画を考えるのが面白かったです。もしかすると、ガッツの次に作画(手描き)カットが多いのはイシドロかも? CGチームの方から「この表情は作画で」と表情・ポーズ・ディティール的に作画の方が活きると判断されたものが、こちらの作画チームにまわされるんですが、イシドロはやっぱり自分のコンテからして、かなり表情豊かに描かれてたって事なんでしょう。ま、イシドロは次篇でも出てくるので、これもコンテ切る楽しみのひとつですね。

74 西尾鉄也さんと竹内順子さんと『停電少女』

 今度の土曜に開催するオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 87 西尾鉄也の仕事」の上映作品の1本が『停電少女と羽蟲のオーケストラ/灯屋夏便リ』だ。このタイトルを目にして「どんな作品なんだろうか」と思われたファンもいる事だろう。

 『停電少女と羽蟲のオーケストラ』はドラマCDシリーズのタイトルで、主人公のひとりであるネムというキャラクターを演じているのが、『NARUTO ‐ナルト‐』シリーズのナルト役等で知られる竹内順子さんだ。竹内さんから『停電少女と羽蟲のオーケストラ』のイベント用ショートフィルムの制作の依頼があり、西尾鉄也さんが手がける事になった。それが今回上映される『灯屋夏便リ』なのだ。

 西尾さんは『灯屋夏便リ』でコンテ、演出、原画のみならず、背景まで担当。どうして背景まで描く事になったのか等については「月刊アニメスタイル」第4号に掲載された「西尾鉄也の明日には 間違いなく あがります」で彼が描いている。西尾さんはその原稿を「(『灯屋夏便リ』を)いつかパッケージ化してもらって、もっと多くの人に観てもらいたいなあと思う次第です」という言葉で締めている。その後『灯屋夏便リ』はDVD「停電少女と羽蟲のオーケストラ 停電夏祭り」に収録されたが、今回のオールナイトは、さらにそれとも違ったかたちでファンに作品を観てもらう機会である。

 「西尾鉄也画集」には『停電少女と羽蟲のオーケストラ/灯屋夏便リ』のキャラクターや背景も収録している。画集を作るにあたって、僕も初めて『灯屋夏便リ』を観た。可愛らしいデフォルメキャラが登場する作品であり、リアル系の作品とはまた違ったかたちで、西尾さんらしさが出ていると思う。

●イラスト/サムシング吉松

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【EVENT】新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 87 西尾鉄也の仕事
http://animestyle.jp/2016/09/06/10428/

【NEWS】西尾鉄也の集大成「西尾鉄也画集」ネット書店、一般書店で9月26日発売!
http://animestyle.jp/news/2016/08/16/10363/

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イベントDVD「停電少女と羽蟲のオーケストラ 停電夏祭り」[Amazon]
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(2016/09/29)

73 コラムの内容とイラストが違いすぎ!

 第66回から期間限定で、サムシング吉松さんにこのコラムのためにイラストを描いてもらっている。

 初めはコラムの内容に合わせたイラストを描いてくれていたのだが、そんなに内容に合っている必要もないと思ったので「コラムの内容とイラストがちょっとズレているくらいがいいんじゃないの」と彼に伝えた。そうしたら、思いっきりズレはじめた。

 最初にズレたのが第69回。昨日更新した第70回なんて、コラムの内容はクラウドファンディング用小冊子についてなのに、イラストは13星座についてだよ。

 それで「びっくりするくらい本文と関係なくて、潔いです」とメールしたら「すでに何を描いたのか覚えてない!」と返信があった。返信があった段階で、イラストをもらってまだ3時間しか経っていなかったよ。3時間前に描いたイラストを覚えていないなんて、吉松さん、大丈夫? 内容がズレている事なんかより、吉松さんの健康の方が心配だよ!

 ⋯⋯とネタを振ったところで、吉松さん、イラストをどうぞ。

 今回も関係なさすぎっ!

●イラスト/サムシング吉松

(2016/09/28)

第90回 空飛ぶ円盤にのっかって 〜UFO戦士ダイアポロン〜

 腹巻猫です。10月22日(土)13時から阿佐ヶ谷ロフトAで「池頼広トークライブ」を開催します。アニメでは『かみちゅ!』『宇宙ショーへようこそ』『COBRA THE ANIMATION』『TIGER&BUNNY』『神撃のバハムート GENESIS』など、TVドラマでは「相棒」「家政婦のミタ」などの人気作・話題作を手がける作曲家・池頼広さんのトークライブ。ベストアルバム2タイトルの発売を記念して、音楽作りの裏話や作品の思い出などをうかがいます。あまりメディアに登場しない池さんの素顔に触れるチャンス。会場でベストアルバムも販売します。前売り券発売中!

池頼広トークライブ 〜ベストアルバム発売記念!〜 http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/50010


 去る9月1日にアニメ制作会社エイケンが発表したニュースに驚いた。「UFO戦士ダイアポロン 放送40周年プロジェクト始動!!」というニュースである。
 詳細は不明だが、初の全話映像ソフト化実現か? など期待がふくらむ。
 そこで今回のテーマは、『UFO戦士ダイアポロン』!

 『UFO戦士ダイアポロン』は1976年4月から9月まで全26話が放送されたTVアニメ作品。作・雁屋哲、作画・海堂りゅう(現・土山しげる)のマンガ「銀河戦士アポロン」を原作にしたロボットアニメだ。
 地球人に育てられたアポロン星人の少年タケシが、巨大ロボット・ダイアポロンを操って故郷の星を滅ぼしたダザーン軍団と戦う物語。マンガ原作となっているが、原作にはロボットは登場しない。アニメでは3体のロボットが合体してダイアポロンとなり、タケシがダイアポロンに「合身」する。そのとき、タケシがダイアポロン内部で巨大化する描写がインパクト抜群だった。『宇宙戦艦ヤマト』をほうふつさせる芦田豊雄のキャラクターデザインと作画が見どころである。

 音楽は、主題歌の作詞・作曲を山本正之、劇中音楽を武市昌久が担当した。
 山本正之と武市昌久は1975年の『タイムボカン』でもコンビを組んでいる。本作は2人にとって『タイムボカン』に次ぐアニメ作品であり、武市昌久が初めて単独で音楽を担当した作品でもある(『タイムボカン』のBGMは山本正之と共作だった)。
 武市昌久は日本コロムビアの洋楽部出身。約2年間勤務したコロムビアを退社後に竜崎孝路に師事し、作・編曲家として活躍を始めた。「いちひさし」「市久」のペンネームも併用して、70年代後半から80年代に多くのアニメソングの作・編曲を手がけている。音楽を担当した作品としては、本作のほかに映画「仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王」(1980/菊池俊輔と共作)、劇場アニメ『機動戦士ガンダム』(1980/渡辺岳夫、松山祐士と共作)、TVアニメ『百獣王ゴライオン』(1981)などがある。サックス奏者としても活動している。
 本作のBGMを収録したサントラアルバムは発売されていない。主題歌と挿入歌を収録したLPアルバム「UFO戦士ダイアポロン」が1976年7月にポリドールレコードから発売された。
 このアルバムは長らくCD化されず、中古市場で高値を読んでいたが、2011年に日本コロムビアから発売されたCD6枚組「スーパーロボット主題歌BOX+(プラス) 」にすべての歌曲が収録された。ただし、1曲だけインストゥルメンタル曲が収録されていない。また、CD化の際に曲順も変えられていた。
 オリジナル盤の収録内容と曲順は次のとおり。

1.UFO戦士ダイアポロン
 作詞・作曲:山本正之 歌:子門真人
2.必殺アポロンデストロイ
 作詞:やまもとゆう 作曲・編曲:武市昌久 歌:村上明
3.かあさんの星
 作詞:港大介 作曲・編曲:東久 歌:川島和子、コラール・エコー
4.あおぞら園の人気者
 作詞:港大介 作曲・編曲:東久 歌:千々松幸子、松金よね子
5.UFO少年団
 作詞・作曲:山本正之 歌:子門真人、ブッシュ・シンガーズ
 歌:子門真人
6.ダザーン総統のテーマ
 作曲:山本正之 編曲:西崎 進 演奏:ポリドール・オーケストラ
7.ダザーン軍団の歌
 作詞:吉川惣司 作曲・編曲:武市昌久 歌:ポリドール男声合唱団
8.アポロン星よ安らかに
 作詞:(株)エイケン 作曲:山本正之 編曲:西崎進 歌:村上明、ポリドール男声合唱団
9.星物語
 作詞:吉川惣司 作曲・編曲:東久 歌:川島和子
10.あおぞら園のうた
 作詞:寺尾たけし 作曲・編曲:武市昌久 歌:ブッシュ・シンガーズ

 レコードでは5曲目までがA面、6曲目からB面になる。A面の最後にエンディングテーマが現れる、ちょっと変わった曲順である。
 多彩な作家・歌手が参加した面白いアルバムだ。子門真人は2曲のみの参加だが、主役のタケシ役・村山明が2曲、『宇宙戦艦ヤマト』のスキャットで有名な川島和子が2曲歌っている。作詞には本編の脚本家、やまもとゆう(山本優)と吉川惣司が参加。作曲は山本正之と武市昌久に加え、歌謡曲畑の東久が参加している。
 収録曲中一番の聴きどころは、やはりオープニングテーマとエンディングテーマだろう。
 「UFO戦士ダイアポロン」は、山本正之特有の和のテイストを持ったロック・ナンバー。勇壮なイントロにかぶさる子門真人の「合身!」のシャウトからわくわくする。Aメロは長い音符を使ったやや牧歌的な導入部。8小節を経てBメロに入ると、リズムがウエスタンになって高揚感が増す。ワウギターをバックにたたみかけるCメロを経て、ロボットの名前が次々登場するDメロでは子門のボーカルとシャウトのかけあいが楽しめる。「合身」のサビからはふたたびウエスタン風になり、子門の高音の伸びがたっぷり聴ける。みごとな構成だ。
 エレキギターがメロディを奏でる間奏は、武市も音楽作りを手伝ったと言う竜崎孝路の代表作「必殺」シリーズのBGMを思わせる。劇中ではメインのバトル曲としてこの曲の歌入りかメロディ入りカラオケが使用されていた。
 エンディングテーマ「UFO少年団」はクラビネットのリズムから始まる、オープニング以上にロックテイストあふれるナンバー。子門真人の歌唱もファンク風で、オープニングとは違ったカッコよさがある。ブラックミュージックを意識した武市昌久のアレンジが冴える1曲。
 2曲目の「必殺アポロンデストロイ」は主題歌についで重要な曲。劇中後半になって登場するダイアポロンの新必殺技アポロンデストロイの曲だ。このメロディはダイアポロンの合体シーンや戦闘シーンに流れるBGMにも使用されている。
 アポロンデストロイの登場に合わせて作られた曲とも思えるが、劇中では第5話からこのメロディのBGMが流れ始めるので、もしかしたら当初からBGMとして用意されていた曲に歌詞をつけたものかもしれない。
 シンバルのソロから始まり、ワウギターとブラスが重なって徐々に盛り上がるイントロがドラマティック。村山明のボーカルの合いの手に入る「イヤァ!」のかけ声はどう聞いても子門真人。終始緊張感を持続するバッキングも聴きどころ。劇中のBGMのテイストも味わえる楽曲である。
 村山明はもう1曲、「アポロン星よ安らかに」という挿入歌も歌っている。こちらは山本正之が作曲、西崎進が編曲したミディアム・テンポのムーディなバラード。メロディックな曲想に村山明の端正なボーカルがマッチして、歌謡曲風の魅力的なナンバーになっている。
 川島和子が歌う「かあさんの星」は、東久作・編曲による抒情的な曲。川島和子といえば『宇宙戦艦ヤマト』のスキャットがあまりにも有名で、『グランプリの鷹』『聖闘士星矢』などのスキャット・ワークばかりが注目されがちだが、歌詞つきの曲も歌っているのだ。この曲では、やさしく語りかけるようなAメロと、透んだ高音を生かして歌い上げるBメロ以降の対比がみごと。サビではコーラスをバックにたっぷりと美声を聴かせてくれる。
 川島和子が歌うもう1曲「星物語」は、吉川惣司が作詞、東久が作・編曲を担当したポップなナンバー。アコースティックギターとフルート、フリューゲルホルンなどを使ったアレンジが美しいフォークソング風の曲だ。「ルルル」で歌われるハミング風の部分が『宇宙戦艦ヤマト』のスキャットとは違うやさしい味わいでぐっときます。
 川島和子といえば、今年7月に川越で開催されたコンサート「ウェスタ川越まつり アニソンヒーローズ THE LEGEND」にも出演して美しいスキャットを聴かせてくれた。70年代と変わらぬ歌声にうっとりしたものだ。終演後少しお話しする機会があったが、元気でお仕事を続けているそうなので、音楽関係者のみなさん、女神のスキャットをお願いするチャンスですよ。
 B面1曲目の「ダザーン総統のテーマ」は、山本正之が作曲、西崎進が編曲したインストゥルメンタル曲。クラビネット、エレキギター、サックス、シンセサイザーをフィーチャーしたクロスオーバー風のカッコいいナンバーだ。シンセサイザーが妖しいメロディを奏で、サビでは男声コーラスが「ダザーン」と繰り返す。メロディは悪のテーマというより歌謡曲風(梓みちよの「二人でお酒を」という曲にちょっと似てる)。劇中で使用された印象がなく、アルバムだけのイメージ曲かもしれない。未CD化なのが惜しまれる1曲。
 ポリドール男声合唱団が歌う「ダザーン軍団の歌」は、吉川惣司が作詞、武市昌久が作・編曲した悪のテーマ。オペラ音楽を思わせる重厚なボーカル曲である。エフェクトをかけたコーラスが不気味さを演出している。
 主題歌「UFO戦士ダイアポロン」はもともと子門真人とは別の歌手が歌う予定になっていたがイメージが違うことで録り直しになった、というのは有名な話。そのとき最初に歌った歌手は、オペラ歌手風の朗々とした歌い方だったという。もしかしたら、本曲のソロみたいなイメージだったのかなと想像してしまう。
 「あおぞら園の人気者」は、タケシを助けるUFO少年団のちびっ子チョコ松(千々松幸子)とチョコ松を慕う妹分マコ(松金よね子)が歌う歌。曲調はいわゆるピョンコ節。芸達者の2人が歌っているので、キャラソンとして安心して聴ける楽しい1曲。
 そして、アルバムのラストを飾る「あおぞら園のうた」は脚本の寺尾たけしが作詞、武市昌久が作・編曲した歌。口笛風のシンセをフィーチャーした8ビートの軽快な曲だ。メロディはさわやかな青春歌謡風。しかし、歌うブッシュ・シンガーズの微妙な感じはなんでしょう(笑)。「UFO少年団」のコーラスもそうだが、ちゃんとした少年合唱団ではなく、そのへんの子どもたちを連れてきて歌わせたような適当な感じがする。特にサビの「あおぞら園」のかけあいが、すごく微妙。アルバムとしても、この曲がラストでよいのでしょうか? まあ、いいか。
 これらの挿入歌は、本編中にはほとんど使用されていない。本編の音楽でもっとも印象深い曲は、タケシたちが乗る戦闘機の発進シーンや3体のロボットの発進から合体シーンに流れるBGMだろう。エレキギターとトランペットで演奏されるマカロニウエスタン風の勇壮な曲だ。残念ながらその曲はアルバムに収録されていないが、放送当時発売された朝日ソノラマのソノシートのドラマ「魔獣バグラドンの襲撃!!」の中でたっぷり聴くことができる。

 本アルバムは、資料によっては「主題歌以外はパッとしない」とあんまりな言われ方をされている。しかし、そんなことはない。曲によっては微妙なところはあるが、なかなか味わいのあるアルバムだ。村山明の「必殺アポロンデストロイ」「アポロン星よ安らかに」をはじめ、川島和子が歌う2曲、インスト曲「ダザーン総統のテーマ」など、聴きどころも多い。発売当時のままの形で復刻されていないのはもったいない作品だ。
 「UFO戦士ダイアポロン 放送40周年プロジェクト」の一環として、本アルバムのCD復刻をぜひ期待したいところである。

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72 「アニメスタイル000」を作ります

 雑誌「アニメスタイル」の定期刊行化のためのクラウドファンディングで、大勢の方に応援していただきました。そのクラウドファンディングのリターンのひとつが、特別小冊子「アニメスタイルのうすい本(仮)」です。

 お送りするのが遅れに遅れてしまいました。誠に申しわけありません。現在、編集作業が進行中です。

 小冊子のサイズについて、随分と考えたのですが、雑誌「アニメスタイル」に合わせる事にしました。B5サイズで、表紙の紙も同じにするつもりです。雑誌「アニメスタイル」を応援してくれている方達に差し上げる本なら、クラウドファンディング用に作った雑誌「アニメスタイル」をお送りするのがよいのではないか、と思ったわけです。
 タイトルも雑誌「アニメスタイル」に合わせて「アニメスタイル000」にします。ひょっとしたら、仮題も活かして「アニメスタイル000 アニメスタイルのうすい本」にするかもしれません。

 内容は雑誌「アニメスタイル」と全く同じというわけにはいきません。どんな本になるかは、まだ秘密ですが、色々な方に原稿を依頼しています。ある監督は、依頼した次の日に原稿を送ってきてくださいました。嬉しいなあ。

 クラウドファンディング第二弾について、Twitterでアンケートをとっています。よろしかったら参加してください。

https://twitter.com/animesama/status/779499354599993344


●イラスト/吉松孝博

(2016/09/27)

71 それはユニクロTシャツに始まった

 今日「西尾鉄也画集」と「吉成曜画集 ラクガキ編」の一般発売が始まった。「西尾鉄也画集」の企画開始は随分前になる。

 2011年1月1日にユニクロと『NARUTO ‐ナルト‐』がコラボレーションしたTシャツが発売になった。『NARUTO ‐ナルト‐』のオリジナルDVDが付録になっていた商品だと言えば、ああ、あれかと思い出すファンもいるだろう。Tシャツは11種類で、そのうちの2枚は原作者の岸本斉史先生による描き下ろしイラストを使用。5枚はアニメスタッフの描き下ろしだと告知されていた。
 アニメスタッフの描きおろしなら、そのどれかが西尾さんの描き下ろしに違いないと僕は思った。当時、何かの用事で西尾さんに会った時に、どのTシャツが彼が描いたものなのかを聞いてみた。しかし、理由はよくわからないのだが、その時には教えてもらえなかった。誰がどれを描いたのかが公に告知されていないから、外部の人間に言ってはいけないと思ったのかもしれない。西尾さんには、そういうマジメなところがある。
 Tシャツのイラストについて話をした時に、西尾さんが「いつか画集が出れば、どれを描いたのか明らかにできるかもしれないですね」と言った。それを言った事を彼自身は覚えていないそうだが、僕はよく覚えている。なるほど、画集か、それはいいなあ。その時には、自分が編集して自分の会社で西尾さんの画集を出す事になるとは思わなかった。
 だけど、待てど暮らせど、西尾さんの画集が出るという噂は聞こえてこなかった。だったら、自分で企画・編集をやって出せばいいじゃないかと思いつき、西尾さんに画集の提案をしたのが、2013年か14年。それから企画が二転三転し、今回の「西尾鉄也画集」になったのである。

 画集の編集作業中に『NARUTOT ‐ナルト‐』のユニクロTシャツで、どれが西尾さんのイラストだったのかが判明した。僕の「これが西尾さんのイラストではないか」という読みは見事に外れていた。そのイラストは「西尾鉄也画集」に掲載されている。西尾さんはこのイラストを線画で納品しており、Tシャツにはそれを加工したものが使われている事も分かった。さらに複雑な事に、画集には元の線画をセルテイストに彩色したものを収録した。ユニクロTシャツをお持ちの方は、是非画集に掲載されたイラストと見比べてほしい。


●イラスト/吉松孝博

西尾鉄也の集大成「西尾鉄也画集」ネット書店、一般書店で9月26日発売!
http://animestyle.jp/news/2016/08/16/10363/

西尾鉄也画集[Amazon]
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(2016/09/26)

第122回アニメスタイルイベント 田中将賀 ANIMATOR TALK

 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』等で知られるアニメーターの田中将賀。公開中の『君の名は。』でもキャラクターデザインを担当している。
 キャラクターデザイン10周年を迎えた彼をメインゲストにしたトークイベントを開催する。イベントの内容は作品や仕事についてのトーク。ファンからの質問にもたっぷりと答えてもらう予定だ。開催日は2016年10月10日(月・祝)。会場は阿佐ヶ谷ロフトAだ。

 今回のイベントでは田中将賀本人に加えて、『魔法少女まどか☆マギカ』『月刊少女野崎くん』等で知られるアニメーターの谷口淳一郎も出演。二人は専門学校時代の同期なのだ。司会はアニメスタイル編集長の小黒が務める。

 前売りチケットは9月24日(土)から発売となる。前売りチケットについて、詳しくは以下にリンクした阿佐ヶ谷ロフトAのサイトで確認してもらいたい。なお、今回のイベントでも、その一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。

アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/49907

 会場ではアニメスタイルが刊行した「田中将賀アニメーション画集」を発売する。画集の詳細については以下の記事をどうぞ。

お待たせしました! 「田中将賀アニメーション画集」は2月26日に販売開始!![WEBアニメスタイル]
http://animestyle.jp/news/2016/01/08/9691/

第122回アニメスタイルイベント
田中将賀 ANIMATOR TALK

開催日

2016年10月10日(月・祝)
開場18時 開演19時 終演22時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

田中将賀、谷口淳一郎、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

70 アニメはいいぞ、オールナイトを開催

 10年ちょっと前に、やたらと映画館に通っていた。当時の僕はアニメの仕事をするためには実写の映画も観なくてはいけないと感じていて、半分は勉強のつもりだった。新作も観たが、名画座で過去の作品を観る事が多かった。土曜の夜はオールナイトに通っていた。根が凝り性なので、始めたら徹底的にやった。
 現在の僕達は予告を観たり、雑誌やネットで情報を仕入れてから映画館に行く場合が多い。だいたいどんな映画なのかを事前に知っているわけだ。期待以上に楽しめたなら大喜びだし、そうでなければガッカリだ。名画座等で過去の作品を手当たり次第に観ると、それがどんな映画なのかよく知らないでスクリーンに向かう事になる。それが面白かった。タイトルだけ見てアクション物かと思ったら、作家性の強い難解な映画だったとか。貼り出されたポスターを見て、渋い映画かと思ったら、シンプルなラブロマンスだったとか。オールナイトの役者特集(たとえばジョニー・デップ主演作品三本立てとか)のようなプログラムにフラリと入ると、次に始まるのがどんなジャンルの作品かも分からず、それがスリリングで楽しかった。
 事前に情報を集めてから映画を観るのも悪くないが、どんな作品なのかよく知らないで鑑賞するのも悪くない。予想もしなかった作品との出会いが楽しい。これも名画座やオールナイトの醍醐味かもしれないと思いつつ、通っていた。
 
 前置きが長くなってしまったが、先週末の土曜にオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 86 アニメはいいぞ。『同級生』『百日紅』『花とアリス』『ガルパン』!」を開催した。

 丁寧に作り込まれた珠玉のBLもの『同級生』、江戸情緒と緩やかな語り口が魅力の『百日紅~Miss HOKUSAI~』、瑞々しさと意欲的な試みが共存した『花とアリス殺人事件』、少女と戦車の取り合わせによる超痛快娯楽作『ガールズ&パンツァー 劇場版』の4本立てである。
 繊細な女性向き作品から、マニアックな男性向き作品まで。あるいはコアなアニメファン向きから、映画好きな人向けの作品まで。技法で言えば、手書きアニメもあり、ロトスコープと3DCGのハイブリッドもあり。内容も方向性もバラバラであるが、それぞれが見応えのある作品だ。

 こういったテーマを絞らないプログラムは集客が難しいのだが、今回のオールナイトはチケット完売となった。上映後のSNSの反応を見ると、お客さんの反応は上々だ。『ガルパン』を目当てに劇場に来て『百日紅』に感心した人もいるだろう。『花とアリス殺人事件』再見のために足を運んで『同級生』に惚れ込んだ人もいるのではないか。

 最近、アニメスタイルのオールナイトで観客と作品の出会いを提供できているなあと思う事が多い。今回もそれができたのが嬉しい。タイトル通りに「アニメはいいぞ」という事を伝えられたと思う。


●イラスト/吉松孝博

(2016/09/23)

69 続・吉成曜ポストカードの秘密

 どんなに忙しくても落書きをしないと落ち着かない。吉成曜が落書きするのは、その時間だけが仕事の義務から自由になれるからなのだそうだ。彼が今まで描き続けてきた落書きを1冊の本にまとめたのが書籍「吉成曜画集 ラクガキ編」である。

 この書籍を編集するために、大量の落書きを集めた。勿論、吉成さん自身からもお借りしたし、それだけでなく、他のアニメーターや吉成さんの友人からも貸していただいた。周りの人達が、放っておいたら本人が捨ててしまうかもしれない落書きを保存していたのだ。皆がそれに価値を見出していたのだろう。
 ちなみに業界中を走り回って、落書きを集めたのは「日本で一番吉成さんに詳しいファン」を自称する、アニメスタイルの村上修一郎君だ。「吉成曜画集 ラクガキ編」の構成も、素材のスキャンや補正も彼が担当している。

 「吉成曜画集 ラクガキ編」は、吉成さんの要望で近年の(この10年くらいの)落書きで構成する事になった。ササユリカフェで開催中のイベント「吉成曜展~ラクガキ編~」では、そのセレクトからこぼれた過去の落書きも展示している。

 「吉成曜展~ラクガキ編~」で販売しているポストカードの中に、ドラゴンのようなモンスターの頭の上に女性が乗っているイラストを使ったものがある。このイラストも友人からお借りしたもので、吉成さんが専門学校時代に描いた落書きだ。巧い人は若い頃から巧い。そう思うしかない。

 書籍「吉成曜画集 ラクガキ編」とイベント「吉成曜展~ラクガキ編~」については以下のリンクをどうぞ。

吉成曜のラフスケッチを大量収録!「吉成曜画集 ラクガキ編」が9月26日に発売!!
http://animestyle.jp/news/2016/08/17/10369/

ササユリカフェで「吉成曜展~ラクガキ編~」を開催
http://animestyle.jp/news/2016/09/02/10427/


●イラスト/吉松孝博

(2016/09/21)

68 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が終わった

 今回はアニメでなくて、マンガの話だ。

 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が連載40周年にして最終回を迎えた。僕は、連載が始まる前の読み切り版から「こち亀」を読んでいる。その後もずっと読み続けて、ムック「Kamedas」には自ら志願してライターとして参加させてもらうくらいの「こち亀」のファンだった。

 「こち亀」のフィナーレは華やかだった。最終回が掲載された「週刊少年ジャンプ」は「こち亀」ポスター、「こち亀」第1話のカラー版を収録した豪華版。それと同日にコミックス最終巻(200巻)の特装版が発売。さらに翌日には「こち亀」のアニメスペシャル「THE FINAL 両津勘吉 最後の日」が放映。関連書籍も刊行され、前後してイベントも開催。連載が終わるのが寂しくないとは言わないが、そんな「こち亀」らしいお祭り騒ぎの中で完結したのが嬉しい。
 「少年ジャンプ」版の最終回の中で「『少年ジャンプ』と『コミックス200巻』では『オチ』が違っています」と両津が発言しており、確認してみると確かにラスト4ページの内容がまるで違う。その後の秋本治先生によるコメントも別原稿だ。「こち亀」ならではの遊び心である。しかし、これでは最終回が載った「ジャンプ」が捨てられない。

 捨てられないと言えば、今年は四年に一度しか起きない日暮熟睡男が登場する年であったが、2016年版の日暮登場エピソードは増刊の「こち亀ジャンプ」にのみ掲載。その話はコミックスに収録されないのだという。だから「こち亀ジャンプ」も捨てられない。

 最終回はバラエティ番組ノリの賑やかなエピソードだった。むしろ、実質的な最終回かもしれないと思ったのが、ラス前の「永遠の腕時計の巻」だった。エピソードの前半は腕時計のウンチクで、後半、両津は擬宝珠夏春都(ぎぼしげぱると)からアンティークの腕時計をもらう。それは夏春都の亡夫が残した軍用のものだった。これからコミックスで読む人もいるだろうから具体的な事は書かないが、腕時計に関連して両津がある事をする。
 「永遠の腕時計の巻」の冒頭は、擬宝珠家の庭で、両津、纏(まとい)、檸檬(れもん)が一緒にヒマワリを見る場面だ。最近ずっと両津が擬宝珠家にいるので、纏は「あいつが警官なのを忘れていた」と口にする。ラストシーンは、来年も再来年も擬宝珠家に平和な夏が来るだろうという事を予感させるものだった(この話の最終ページは、コミックスでも雑誌掲載時と同じ煽り文句が入っている)。
 長い連載の中で、何人ものヒロインが登場したが、両津は彼女達の誰とも結婚しなかった。当然、彼が子どもを作る事もなかった。両津には実家もあるのだが、その実家と別に、彼は擬宝珠家という居場所を得た。擬宝珠家は両津にとって大事なものになっており、その日々は最終回の後も続くのだろう。「永遠の腕時計の巻」を読んでほろりときた。


●イラスト/吉松孝博

(2016/09/20)