2023年8月8日(火)
ワイフと一緒に『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』を鑑賞。平日昼間の割りにお客は入っていて、子連れやカップルよりも、女性単独や女性2人組が多かった。いいところもよくないところもあるけれど、プラスとマイナスを合算するとプラスだった。CGに関してはイケないところもあるけれど、「『クレヨンしんちゃん』が3DCGになった面白さ」はあった。その域に達していた。美術がよい感じで、人物の表情は改善の余地あり。巨大物と比較したロングショットの人物も見どころのひとつ。細部だけど、まつざか先生のシャツとトレパンの着こなしがよかった。
内容に関しては、今までの映画『クレヨンしんちゃん』とは似て非なるものだけれど、こういう『クレヨンしんちゃん』があってもいいとは思った。プロットと脚本については明らかに練れていないと思った。文句をつけようと思えばつけられるけれど、上にも書いたようにプラスとマイナスを合算するとプラスだった。今までの映画『クレヨンしんちゃん』よりも面白いと思った人はいるはず。
WOWOWの『タッチ2 さよならの贈り物』『タッチ3 君が通り過ぎたあとに -DON’T PASS ME BY-』を録画で観た。以下は1、2、3の感想だ。TVシリーズと同時進行で作られた『タッチ』の劇場版であり、3本とも過去にも視聴している。今回の放送は恐らくは最新のビデオマスター。配信も同じマスターかもしれないけど、配信は解像度を落としているようだし、Blu-rayソフトは出ていないはずなのでこの放送は貴重かもしれない。
『タッチ 背番号のないエース』は終盤まではいい感じなのだけれど、達也が死んだ和也の代わりにマウンドに立つ展開はかなり強引だ。90分前後で1本の映画にまとめるにはこれしかないと思うくらいの見事なアイデアだし、インパクトはあるんだけど、この展開に持っていくまでの積み重ねが必要なはず。だけど、前知識無しに映画館で観たら納得するんだろうなあ。
『タッチ2 さよならの贈り物』は3本の中では一番ラブストーリーの色、青春物の色が濃い。『背番号のないエース』は『タッチ2』があるかどうか分からないで作っているけど、『タッチ2』は『タッチ3』があるのが分かって作ってる感じ。南が達也に傘を渡すところで、観たことがないような面白いカット繋ぎがあった。面白いし、成功している。「南が甲子園に連れていって欲しいと言った」ので、達也は頑張っているのだと誤解している人がいるが、それは『タッチ2 さよならの贈り物』のせいかもしれないと思った。
『タッチ3 君が通り過ぎたあとに -DON’T PASS ME BY-』は画面で確認すると、確かにタイトルに「-DON’T PASS ME BY-」の文字がある。柏木の話(と須見工との試合)に絞り込んでいて、それゆえに見応えあり。初見時にはダイジェストのように感じて「TVシリーズのほうが面白い」と思ったはずだけど、TVシリーズと比較しなければ充分以上に面白い。新田との最後の対決は手に汗握った。ただし、試合が終わったところで本編が終わってしまうので、そこは物足りない。柏木のその後と、達也の南への告白はエンディングで、セリフ無しの画だけで表現されている。ちなみに新田の妹の由加の出番は無し。由加絡みの人間関係もなく、そのためにスッキリしているとも言えるはず。
色々と端折ってはいるけれど、90分ほどの映画3本で、劇中時間の3年分を描いて、それをまとめて観ると「3年分のドラマを描いている」と思えるのだから大したものだ。演出的なことで言うと、TVシリーズのほうが色々なことをやっていて、作品として「豊か」であるはず。
以下は余談。当たり前といえば当たり前だけど、『MIX』を観た後だと、西村と原田が若い。逆に言うと『MIX』だと見事に年をとっている。それから、この頃の原田は理性的だし、言っていることがロジカルだ。どうして、ああなった。それから『タッチ』の時に大人だったキャラクターって、『MIX』にはほとんど出ていないんだなあ。映画3本だと、南の見せ場ってあまりないんだけど、それでもやっぱり華がある。それに関しては、後のあだち充作品のヒロインは逆立ちしても敵わないのではないか。
さらに余談は続く。Wikipediaの劇場版『タッチ』3本の記述は「劇場アニメ70年史」が出典元になっているんだけど、「70年史」の劇場版『タッチ』の原稿って誰が書いたんだっけ。ひょっとして自分が書いているかもしれない。
2023年8月9日(水)
その気にならないと原稿の時間がとれないので「ここからの2時間は他のことはやらないで取材原稿のまとめをやる」と決めて、作業を始める。午後は病院Bに。先日の検査の結果を聞いた。年末の入院の後に肺炎になっていたらしい。そして、すでに治っているらしい。
「この人に話を聞きたい」の今千秋さんの回の原稿のためにYouTubeで「りぼんオリジナルアニメ」をチェックする。これは僕が知らなかった世界だ。ネット配信のみの作品で、映像中にスタッフクレジットが無いし、公式サイトも無いようなので、版権元か制作会社に問い合わせないと誰が作ったものなのかも分からない。遂にネット配信のために作られた作品について調べなくてはいけない日がやってきた。同じく「この人」原稿のために『BLEACH』15話、33話、『tactics』7話、17話を観た。インタビューで今石洋之さんの『小さな巨人ミクロマン』の影響を受けているという話が出たのだが、確かに33話は今石さんの影響らしき部分があった。
「磯光雄 ANIMATION WORKS preproduction」と「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の見本が印刷会社から届いた。
暑いかと思ったら、雨、やたらと蒸したり、涼しくなったり。目まぐるしい一日だった。
2023年8月10日(木)
「文藝春秋」2023年9月号の本田雄さんの記事をkindleで読む。『君たちはどう生きるか』で本田さんがしっかり修正を入れたと思われる場面、本田さんが原画を描いたと思われるカットの多くが話題になっていて、その意味で満足。
渋谷TSUTAYAがCD、DVDのレンタルを終了することを知る。店頭でレンタルできる時代が終わりに近づいた。ネットレンタルはいつまで続くのか。
夕方に新文芸坐に。『マジンガーZ対デビルマン』と『マジンガーZ対暗黒大将軍』を観て、余力があったので『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』も観た。
「『マジンガーZ対暗黒大将軍』でグレートマジンガーに乗っていたのは不動明だった」という冗談がある。『マジンガーZ対暗黒大将軍』のグレートマジンガーのパイロットは声が田中亮一さんだし、素顔は見せないし、自分の名前を名乗っていないのだ。前作『マジンガーZ対デビルマン』で「俺でよかったらいつでも手を貸すぜ」と言った不動明がグレートマジンガーに乗って助けにきた、というわけだ。その冗談を念頭に置いて『マジンガーZ対デビルマン』と『マジンガーZ対暗黒大将軍』を連続して観ると、本当に不動明がグレートマジンガーに乗っているように見える。悪霊型戦闘獣ダンテの声が野田圭一さんだというのが、さらに事態を複雑化させている。
2023年8月12日(土)
コミックマーケットの1日目であったが、新文芸坐でのトークが入ってしまったため、この日のコミケ会場は事務所スタッフに任せて、僕は不参加となった。新文芸坐のプログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 162】映画館で出逢うアニメの傑作『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』」と「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 163】公開25周年!『劇場版 機動戦艦ナデシコ』」の2本立て。順番としては劇場版『マジンガー』2本を上映した後に、羽原信義さんと僕のトーク。次が佐藤竜雄さんと僕のトークで、その後が『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』の上映だった。
いつものように新文芸坐さんに関係者席を用意してもらっていたのだけれど、8月10日(木)の上映で劇場版『マジンガー』2本は前の席で観たほうがいいことが分かったので、自分と羽原さんのために前の席のチケットを購入して、その席で鑑賞した。トークでは自分はアニメ映画史における2作の位置づけ、TVシリーズとの関係などを簡単に説明。TVシリーズでマジンガーが初めて空を飛んだ4日前に、『マジンガーZ対デビルマン』でマジンガーが飛んだと言ったところ、羽原さんから34話の予告で飛ぶことは分かっていたとナイスな突っ込み。羽原さんには主に技術的な部分を語っていただいた。『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大将軍』を初めて観たお客さんが半分近く。予定していた前説をやらなくてよかった。トークの間、ずっと頷き続けているベテランファンらしき女性がいて印象に残った。
『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』は作品未見の人は1割くらい。こちらのトークは初心に返って、劇場版を作ることになった理由、大月俊倫さんからどんなオーダーがあったのか、佐藤竜雄監督とXEBECスタッフのモチベーション等について。そして、アキトに過酷な運命を与えた理由について。当時のパンフレットやムックで話してもらえなかったことについて話してもらえた。それから「ルリが初登場時に『こんにちは』と言うのは観客に挨拶しているということでよいのか」「ルリがハーリー君と一緒に寝たのはどういうつもりだったのか。その描写の意味は」といった意外と訊いていなかった(はずの)ことについて。トークの後、佐藤竜雄監督と羽原さんと軽く呑んだ。
2023年8月2日(水)
仕事の合間に、ワイフと新文芸坐で「若き仕立屋の恋 Long version」(2004・香港/56分/DCP/PG12)と「花様年華」【4K上映】(2000・香港/98分/DCP)を鑑賞。「花様年華」【4K上映】は去年の11月にも観ているが、ワイフの付き合いで再見。「若き仕立屋の恋 Long version」は初見。短いけれど、内容を絞り込んでいるため物足りなさはない。予想以上にエロティック。演出が強い作品で、その意味で映画充できた。ラスト寸前に主人公の背中を見せるカットがあって「次は正面から撮って主人公の表情を見せるカットだな」と予想できたのだけど、正面のカットの表情が思っていたのと違ったのでちょっと驚く。本編最後に「完」の文字が出るタイミングもいい。キレキレ。
「花様年華」については前に観た時のほうが楽しめたかな。前回の鑑賞ではラストの展開がよく分からず、あとでWikipediaで確認したのだけれど、今回も同じことをやった。お話としてはそんなに楽しめないのだけれど「映画を観たぞ」という気になる。ワイフの目当てはヒロインのチャイナ服で、劇中で着るチャイナ服が何着あるかを数えながら観たそうだ。たしか、22着だったかな。自分も衣装に注目して観たのだけれど、ひとつのカットで「チャイナ服の柄とカーテンの柄と画面奥のソファーの柄と持っているカップの柄を全部花柄にする」なんてことをやっているのね。他にもこだわりは多そうだ。
Netflixで『範馬刃牙』の「外伝ピクル+野人戦争編」を全話観る。気になって、kindleで原作を確認しながら観た。この辺りの原作は連載で読んでいるのだけれど、それでも驚くくらいに面白かった。原作とやっていることは同じなのに、より面白くなっている。これは作りが上手い。感心した。
「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」の編集作業が終了。
2023年8月3日(木)
深夜の散歩はワイフと。午前3時過ぎにマンションを出て要町方面に。水天宮の公園で、母猫と子猫3匹の親子に出逢う。子猫はまだ小さくて可愛い。要町まで歩いて、次は谷端川南緑道を歩く。緑道の近くでやたらと人なつっこい猫に会う。お腹が空いているのか、ニューニャーと鳴きながら近づいてきた。可愛い首輪をつけていたから飼い猫だろう。
時間があったら、新文芸坐で「にせ刑事」(1967/92分/35mm)を観るつもりだったのだけど、やることが多いのであきらめた。ちょっと残念だったので、Amazon prime videoでKADOKAWA channel対象作品チャンネルに再入会して「にせ刑事」を観た。本筋とはあまり関係ないんだけど、劇中で子どもが描いた絵が大魔神。途中で映画館で観た映画も大魔神(3本ある「大魔神」のどれかは確認していない)。
「Gメン’75」の17話と18話を流し観。17話「死刑実験室」は脚本/高久進、演出/小西通雄。時効目前の強盗殺人事件の容疑者(谷村昌彦)を、草野刑事(倉田保昭)が追い詰める。昔のドラマだから気にしないでネタバレを書くけど、容疑者を外界から切り離し、少しずつ時計を速めて、時効の前日に時効になったと思わせる。容疑者が凶器の隠し場所を明かしたところで、彼を逮捕。トンデモ話になると思うけど、盛り上がるし面白い。子どもの頃、自分は「Gメン’75」のこういう話が好きだったんだろうなあ。最初に「刑事訴訟法 第二百五十条」の文面を黒地に白抜き文字を見せるのもインパクトがあっていい。18話「警察の中のギャング」は脚本/高久進、撮影/林七郎、演出/鷹森立一。こちらは街の撮り方がよかった。
WOWOWで放送していた「シコふんじゃった。」を流し観。間違いなく過去に観ているんだけど、随分と忘れているなあ。
2023年7月27日(木)
「作画マニアが語るアニメ作画史 2000~2019」についての打ち合わせで「『ケモノヅメ』の話数は話をカタカナのワで表記するのが正しいのではないですか」という意見が出た。つまり、第1ワ「初めての味」とか、第2ワ「辛酸の決別」とか、第3ワ「しょっぱい新月の夜」と表記するのが正しいのではないか、ということだ。確かにそんな表記を見たなあと思って確認する。本編ではサブタイトル画面に話数表記はない。しかし、バンダイチャンネルの表記は第1ワ、第2ワ、第3ワ……だ。おそらくこれは放映当時の『ケモノヅメ』公式サイトで、第1ワ、第2ワ、第3ワ……と表記していたことの名残であるに違いない。そして、その表記は公式サイトを構成していたワタシが決めたことなのである。この混乱はワタシか、ワタシのせいか。バンダイチャンネルが話数表記にこだわっているのも偉いと思った。
新文芸坐で「ノートルダム 炎の大聖堂」をどんな内容か知らないで観た。観る前にはノートルダム大聖堂再建の映画かと思っていたけど、ポスターを観るとミステリ映画のようでもある。上映が始まってから火災をモチーフにしたドキュメンタリー風の映画だということが分かった。どうやって撮ったんだ? と思う映画でもあった。
『サイボーグ009』(1968)の19、20話を観た。やたらと作画がいいところがあった。取材の予習で『極主夫道』を数時間分観た。Amazon prime videoの「Creator’s Time アニメ監督 今千秋」1から3も観た。
2023年7月28日(金)
朝の散歩では池袋から新宿まで歩いた。そして、新宿中央公園でラジオ体操に参加した。散歩中は「魔法の天使クリィミーマミ80′s J-POPヒッツ」を聴いた。よかった。太田貴子さんが凄い。同アルバムの「優と俊夫からのメッセージ」は優と俊夫のかけあいなんだけど、俊夫が年齢を重ねている感じがよかった。かけあいの中で、 みどりや木所さんも歌いたがっていたという内容の台詞があった。如月みどりを演じた安西正弘さんも、木所隼人を演じた亀山助清さんも、既に亡くなっているのだ。それを聞いてしんみりする。
デスクワークを挟んで快活CLUBに。初めてなので会員登録をした。ここって店員と話をしないで入店、退出できるシステムなのね。『純情ロマンチカ』『世界一初恋』の原作に目を通す。取材の予習で『Back Street Girls』『クールドジ男子』を数時間分ずつ観た。
2023年7月29日(土)
新文芸坐で「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999・独=米/105分/BD/ドキュメンタリー)を鑑賞。プログラムのフルタイトルは「オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」Vol. 6」。やらなくてはいけない作業が多くて、映画を観ている場合ではなかったのだけど、気分転換が必要と感じて新文芸坐に足を運んだ。この映画を観たのは二度目で、前に観たのは新文芸坐で開催された音楽ドキュメンタリーのオールナイトだった。今回の上映に関して言うと、音がかなりよかった。
取材の予習で『魔界王子 devils and realist』『アルカナ・ファミリア La storia della Arcana Famiglia』『映画 ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』を観た。
Opening Credits Of The Series(Milaculous Ladybug VA remix)(ミラキュラスTVシリーズ オープニング・テーマ)
ディスク2
The Legend of the Miraculous(ミラキュラスの伝説)
La vie a Paris !(パリでの生活!)
Friends and Frenemies(友だちと嫌なヤツ)
The Love of a Lifetime(人生をかけた愛)
Regrets and Secrets(後悔と秘密)
Let Darkness Rise(闇を甦らせる)
Running Away(逃げろ)
The Ring and the Cat(指輪と猫)
Who Saves a Life Saves the World(一人を救う者は世界を救う)
Tikki a Magical Encounter(魔法の使者ティッキー)
The Ladybug Destiny(レディバグの運命)
Stoneheart(ストーンハート)
Two Halves Are Stronger as a Whole(ふたりなら最強)
Secrets Between Friends(友だち同士の秘密)
The Heist(強盗)
Le jardin des Tuileries(チュイルリー公園)
Rollercoasters!(ジェットコースターの危機)
Alone in the World(世界にひとりぼっち)
Since I’ve Met You(君と出逢ってから)
The Empty Heart Behind the Mask(仮面の奥のからっぽな心)
The Akumas Attack(アクマの攻撃)
All Is Lost(すべて失った)
The True Hero Is Behind the Mask(本当のヒーローは仮面の下に)
Courage in Me (Alternative Version)(わたしの中の勇気[別バージョン])
Moment of Truth(真実の瞬間)
The Power of Love(愛のちから)
Le bal de l’Opera(仮面舞踏会)
Drop the Masks(仮面をはずして)
歌と劇中音楽(BGM)を別のディスクに収めた2枚組。配信版も同様の曲順になっている。
個人的には歌とBGMを区別せずに劇中使用順に並べてほしかったと思うが、そこは聴く人によって好みの分かれるところだろう。
日本語版でマリネットの歌を吹き替えているのはメロディ・チューバック(Melody Chubak)。TVアニメ版の日本語版主題歌も歌っているアーティストだ。マリネットを演じる奈波果林と声質が似ているので、セリフから歌、歌からセリフに移っても違和感はない。メロディ・チューバックの表現力豊かな歌唱は説得力があって、ミュージカルじたての本作にはぴったりだと思った。
さて、本作の音楽は、メインテーマとなる主題歌のメロディのほかに、いくつかのメインとなるモチーフが設定されている。
劇場版が始まって最初に流れる曲は、ディスク2の1曲目「The Legend of the Miraculous(ミラキュラスの伝説)」。魔法のパワーを秘めた宝石・ミラキュラスの伝説がナレーションで紹介されるプロローグの場面だ。この曲の中に本作の音楽の主要なモチーフが登場する。
最初に現れるのはメインテーマ(TVアニメ版主題歌)のメロディ。次に悪役ホーク・モスの愛のテーマが短く奏でられる。続いて、マリネットとアドリアンの愛のテーマ(挿入歌「Now I See」のモチーフ)。最後は「Now I See」のモチーフのオーケストラとコーラスによる壮大な変奏で終わる。
この曲が全体の序曲になっていて、提示されたモチーフが以降の音楽の中にさまざまに形を変えて現れる。実に映画的な音楽設計だ。
たとえば、マリネットとアドリアンがミラキュラスの力を秘めたアイテムを手に入れる重要な場面。使用される曲「The Ring and the Cat(指輪と猫)」(ディスク2:トラック8)と「Who Saves a Life Saves the World(一人を救う者は世界を救う)」(同:トラック9)にはメインテーマのメロディが挿入されて、2人がヒーローになる運命にあることを暗示する。
マリネットの前に妖精ティッキーが現れ、マリネットにレディバグの使命を伝える場面でも、ティッキーが歌う挿入歌「You Are Ladybug(ユー・アー・レディバグ)」にメインテーマのメロディが使われている。
そして、レディバグになることを迷っていたマリネットが、遊園地の危機を見て、変身する覚悟を固める場面。マリネットが歌う「Courage in Me(わたしの中の勇気)」の最後にメインテーマのメロディが現れ、マリネットの決意を表現する。歌詞とメロディと歌声が一体となって感動を呼ぶ名場面になっている。
また、マリネットとアドリアンの恋心は挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」のメロディで表現されている。このメロディが初めて登場するのは、本編が始まってまもなく、マリネットがアドリアンと図書室で出会う場面の曲「Regrets and Secrets(後悔と秘密)」(ディスク2:トラック5)。フルートが「Now I See」のモチーフをやさしく奏でて、2人のこれからを予感させる。さりげなく巧みな音楽演出である。
同じモチーフは、アドリアンがレディバグを想う場面の曲「Alone in the World(世界にひとりぼっち)」(同:トラック18)と「Since I’ve Met You(君と出逢ってから)」(同:トラック19)にも挿入されている。さらにアドリアンとマリネットがデュエットする挿入歌「Stronger Together(ふたりなら強くなれる)」の中でも同じモチーフがくり返され、アドリアンの切なさを強調する。
クライマックスは、これらのモチーフが集結してドラマを盛り上げる。音楽的にも聴かせどころとなっている。
ホーク・モスにミラキュラスを奪われてしまったレディバグ(マリネット)が、ふたたび立ち上がる場面。「The True Hero Is Behind the Mask(本当のヒーローは仮面の下に)」(ディスク2:トラック23)が流れ、コーラスをともなったメインテーマのメロディがヒーローの復活を讃える。
ホーク・モスが正体を現し、アクマが浄化されていく場面では、哀感を帯びた「Moment of Truth(真実の瞬間)」(同:トラック25)が流れる。序盤で流れたホーク・モスの愛のテーマ「The Love of a Lifetime(人生をかけた愛)」(同:トラック4)の変奏である。
そして、戦い終わったあと、レディバグがミラキュラスの力で破壊された町を復旧する場面。「Now I See」の壮大な変奏「The Power of Love(愛のちから)」(同:トラック26)が平和と希望を歌い上げる。
物語のエピローグでは、マリネットとアドリアンの関係に進展がある。シャノワールの正体を知ったマリネットが仮面舞踏会の会場に現れる場面は、挿入歌「Now I See」のメロディをアレンジした「Le bal de l’Opera(仮面舞踏会)」(ディスク2:トラック27)で彩られる。ここではリズムを伴った力強いアレンジになっていて、マリネットの心の高揚が伝わってくる。それに続く、2人が相対する場面の曲「Drop the Masks(仮面をはずして)」(同:トラック28)。「Now I See」のメロディがピアノによる繊細なアレンジからオーケストラとコーラスによる雄大な曲想に展開し、大団円の余韻とともに作品を締めくくる。
このあとのエンドクレジットは、いわばカーテンコール。劇中では使用されなかった3曲が続けて流れる。
挿入歌「Now I See(ナウ・アイ・シー)」と「Alone Again(アローン・アゲイン)」、それにインスト曲「Courage in Me (Alternative Version)(わたしの中の勇気[別バージョン])」(ディスク2:トラック24)である。マリネットとアドリアンの愛のテーマである「Now I See」とアドリアンの心情を歌う「Alone Again」、そして、メインテーマを変奏した「Courage in Me (Alternative Version)」が選ばれていることから、本作の音楽の中心がこの3つのモチーフにあることがうかがえる。
『ミラキュラス レディバグ&シャノワール ザ・ムービー』はヒーローの物語であると同時に、なにより、マリネットとアドリアンの物語なのである。
2023年7月14日(金)
グランドシネマサンシャインの8時15分からの回で、ワイフと『君たちはどう生きるか』をDolby Atmosで視聴。事前の情報がほとんどなかったので、どんな映画が始まるのか分からないで観た。ここまで事前の情報無しで映画を観るのは初めてで、上映が始まった瞬間のワクワクはかなりのものだった。内容に関してはどう受け止めていいのか分からないところもあったけれど、充分に楽しむことができた。先が分からないので楽しめたというところもある。作画はかなりよかった。本田雄さんがいい仕事をしているとは聞いていたが、予想以上だった。巧いし、やりきっているところが凄い。
東映株式会社から「宇宙海賊キャプテンハーロック Blu-ray BOX 豪華版」についてメールがあった。予約数が設定した数に達しなかったため、特典として制作する絵コンテが1冊になったのだそうだ。サイトを見ると「予約数が200に達した場合、復刻版絵コンテは2冊!」「予約数が400に達した場合、復刻版絵コンテは3冊!」とある。予約数が200に達しなかったのだろう。残念だ。それにしても寂しい数字だ。
2023年7月15日(土)
『君たちはどう生きるか』の感想がネットに出始めた。「肯定派」も「否定派」も、「分かる派」も「分からない派」も言っていることがバラバラで非常に面白い。むしろ、バラバラなところが、この作品らしいか。作品についての感想はバラバラだれど、作画ファンの作画についての感想は肯定的なものが多い。基本的には「本田雄さんが凄い」。それから「大平さんが目立っている」。
WHITE CINE QUINTOで『マルセル 靴をはいた小さな貝』を鑑賞。予告から想像したよりもずっとよかった。主人公が貝なのにどうして喋れるのか、どうして歩けるのかについては触れないで、しかも、それで違和感なしに物語を進めているところが巧い(ネット動画を観ている人達が、貝が喋っているので驚いているのか、マルセルがキュートなので感心しているのかを曖昧にしている)。悪党に主人公が誘拐されてとか、主人公が自宅に戻るまでの大冒険とか、有りがちなところに流れないで、静かで穏やかな世界を保ったのも好印象。描くべきことを決めて、それを描ききって、きちんと映画になった。そういうことなのだろう。気になったのは終盤に出てきたマルセルの仲間達。貝でないと思しきキャラクターがいた。作っている側が個々のキャラクターの設定を決めているなら、公開してほしい。いや、よく分からないのも魅力なんだろうけど。WHITE CINE QUINTOに行ったのは初めてかな。素敵な映画館だった。