オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95
BONES NIGHT 『アクションアニメ』はいいぞ!」


 7月29日(土)開催のオールナイトは、BONES関連作品を集めたプログラムだ。上映するのは『ストレンヂア 無皇刃譚』『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』『COWBOY BEBOP 天国の扉』の3本。いずれも見応えたっぷりのアクション映画だ。
 トークコーナーでは、公開10周年を迎えた『ストレンヂア 無皇刃譚』にスポットを当てる。『ストレンヂア 無皇刃譚』はハードな、そして骨太の時代劇であり、BONESの人物アクションの集大成とも言えるフィルムだ。トークのゲストは南雅彦プロデューサー、安藤真裕監督を予定。前売り券はチケットぴあと新文芸坐の窓口で、7月8日(土)から発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 95
BONES NIGHT 『アクションアニメ』はいいぞ!

開催日

2017年7月29日(土)
開場:22時15分/開演:22時30分 終了:翌朝5:30(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

南雅彦さん(プロデューサー)、安藤真裕監督(『ストレンヂア 無皇刃譚』監督)、
小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『ストレンヂア 無皇刃譚』(2007/102分/35mm)
『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(2005/105分/35mm)
『COWBOY BEBOP 天国の扉』(2001/114分/35mm)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

108 アニメ様日記 2017年6月18日~

2017年6月18日(日)
アヌシー国際アニメ映画祭で『夜明け告げるルーのうた』が長編部門クリスタル賞(グランプリ)を受賞、『この世界の片隅に』が審査員賞を受賞。日本人の作品が長編部門クリスタル賞を受賞したのは1995年の『平成狸合戦ぽんぽこ』以来で、22年ぶりだそうだ。これは嬉しい。  録画したDlifeの『X-ファイル2016』で『ファイアボール』のステーションIDを確認。3DCGのTVアニメ『ファイアボール』の新作映像である。ステーションIDは2種類あったけど、あっいう間に終了。『ファイアボール』の旧シリーズを観直したくなった。
 同じく録画で、チャンネルNECOで放映された『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』を観る。1991年放映の『じゃりン子チエ』第2シリーズで、関東地方では未放映。僕も動いている映像を観るのはこれが初めてかもしれない。映像を観るのは初めてかもしれないけれど、当時、「アニメージュ」で記事を担当した。1話が始まった途端に、セル撮した記憶のあるカットがあった。このシリーズの各話に片渕さんが参加しているんだけど、ネットの情報によると、序盤は絵コンテだけの参加なのね。

2017年6月19日(月)
早朝、24時間営業の山下書店大塚店で『ユーリ!!! on ICE』公式ファンブックと公式ガイドブックを購入。早めに買っておかないと買い逃すかもしれないと思ったのだ。ところで、アニメムックをファンブックと呼称するのはいつから定着したのだろうか。文句をつけるわけではないけれど、気になる。
 カップヌードルCM「HUNGRY DAYS 魔女の宅急便 篇」が公開された。緻密な背景と凝った光の処理。流行のスタイルを、さらに過剰にした画作りだ。作り手が映像の完成形を設定して、それを作り切っているという印象。

2017年6月20日(火)
『進撃の巨人』Season 2の後半を一気観。きちんと検証したわけでなく、印象だけで書いてしまうと、物語の語り方も、画作りも前シリーズから少し変わっているのではないか。物語についてはピリピリした感じが軽減されたのではないか。画作りに関しては、意識して変えたのだろうと思う。『正解するカド』も最新話まで、数話分まとめて観る。シリーズ終盤にきて、お話がキャラクター寄りになった。悪くはないけど、ちょっと意外だった。

2017年6月21日(水)
『エロマンガ先生』11話「二人の出会いと未来の兄妹」を観る。竹下良平監督が絵コンテ、演出を担当した回で、とにかくよくできている。それから1カット、とんでもない構図があった。  仕事の合間に「サムシネ!」第267回 1983年の吉松孝博(6)で話題になった、学生時代の吉松さんの写真が載った記事を探すため、当時の「アニメージュ」「マイアニメ」「ジ・アニメ」をひっくり返すが見当たらない。それを探す過程で、吉松さんが初めて表紙を描いたアニメ誌を発見する。

2017年6月22日(木)
TOKYO MXの再放送で『母をたずねて三千里』7話「屋根の上の小さな海」。ロッシ一家の引っ越しと、屋根の上でのフィオリーナとの交流。印象的なエピソードだし、高畑勲監督が『母をたずねて三千里』で絵コンテを担当した最後のエピソード。キャラクターの感情の流れもよいし、「いい画」が山ほどある。
 午後は井上デザインさんで夏に出る書籍の打ち合わせ。

2017年6月23日(金)
Amazonから「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標 原画集」が届く。最初に『次元大介の墓標』を観た時に「あ、このあたりカットの作監修正原画が見たい」と思った原画がきっちりと載っていて、満足。具体的に言うと、見たいと思ったのは、S.25/C.035のルパンのアップなど。

2017年6月24日(土)
公開初日早朝の新宿ピカデリーで『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第二章 発進篇』を観る。アクションの見せ場が何度もあって、その意味でサービス満点。発進シーンを含めて押さえるべきところをちゃんと押さえているのも嬉しい。1978年の『さらば宇宙戦艦ヤマト ―愛の戦士たち―』で、いくらなんでも地球の復興が早すぎないかと思ったのだけど、その疑問が40年近く経って解消された。『宇宙戦艦ヤマト2199』との比較で言うと、『2199』にあったオーラのようなものがなくなっている。女子クルーを何人も降ろして「女の子が大勢乗っている艦」でなくしたのも、オーラがなくなった理由のひとつだろう。オーラがなくなっているからといって、作品に魅力がなくなっているわけではない。

「第131回アニメスタイルイベント 長濱博史、THE REFLECTIONを語る!!」トーク抜粋

 TVアニメ『THE REFLECTION WAVE ONE』はアメコミの巨匠であるスタン・リーと共に『蟲師』『惡の華』で知られる長濱博史が原作を務めている作品だ。7月から放映開始となる本作だが、どういった経緯で制作されることになったのか、どんな内容の作品なのか等はまだ公になっていなかった。
 その一部が、2017年5月21日(日)に開催されたトークイベント「第131回アニメスタイルイベント 長濱博史、THE REFLECTIONを語る!!」によって語られた。以下はそのトークの抜粋である。

■「THE REFLECTION WAVE ONE」データ

2017年7月22日(土)より放映開始
NHK総合テレビにて、毎週土曜日午後11:00~11:25(全12回)

原作:スタン・リー 長濱博史
監督:長濱博史
脚本:鈴木やすゆき
音楽:トレヴァー・ホーン
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
EDテーマ:9nine
アニメーション制作:スタジオディーン
制作・著作:THE REFLECTION製作委員会
©スタン・リー, 長濱博史/THE REFLECTION製作委員会

公式サイト
http://thereflection-anime.net/


■イベントトーク抜粋


●アメコミを日本のアニメにする夢

―― 『THE REFLECTION』の企画はどんなかたちで成立したのでしょうか。

長濱 元々自分はマーベル作品の大ファンなんです。それこそ日本のマンガより好きなくらいです。そういうことをアメリカで開催された日本アニメのイベントに呼ばれた際に言い続けていたら、向こうの方が「そんなに好きならスタン・リーに会おうか」と言って、機会を設けてくださって、そこから企画が動き出しました。

―― スタン・リーさんの印象は。

長濱 とても明確なビジョンを持っている、明晰な人だなと感じました。その一方で、アメコミの神様のような存在でありながら、こちらと対等にやろうとしている感じがありました。これは凄いことです。通常この手の大御所から感じられる近寄りがたさというものは一切感じませんでした。それから、今年で94歳ですが、まだまだ若いです。

―― 初めて会った時から企画が動いたのですか。

長濱 実は今回の『THE REFLECTION』は2回目の企画なんですね。1回目は『蟲師』の監督をするより前、10年以上昔になります。1回目の時がスタンと初対面で、その時はその場で決定しました。スタン自身が以前から日本と組んで幾つか企画をやってみたいと思っていたんだと話してくれました。アメリカでは基本的に、「やる?」と聞かれて「やる」と即答すれば企画が始まりますし、「考えます」と答えれば企画は流れます。僕がその場で「やります」と言ったら企画が始まった、ということですね。

―― 2回目の企画となる今回の経緯は。

長濱 今回はあちらから、「前回は企画が流れてしまったがもう一度やってみないか」と打診がありました。これももう4、5年前の話です。1回目の企画の時はスタンが積極的に、「日本とやるのだから日本とアメリカのいいところを混ぜたい」と主張していて、日本を舞台にし、さらに『パワーレンジャー』のような日本的なヒーロー像を下敷きにキャラを作っていたんです。でも今回はアメリカを舞台にアメコミをアニメにしようということで、日本の要素は削ろうとはしていないですが、積極的に取り込むということもしていません。アメコミをアニメーションにしたいというのが、今回の企画の成り立ちなんですよ。ブルース・ティムの『バットマン』のような例外はあるんですが、アメコミをきちんとアニメーションにした作品というものは存在しないんです。アメリカはどうしてもカートゥーン(アメリカ風の児童向けアニメーション)から抜け出せない。ちゃんとアメコミをアニメーションで観たいという思いが自分の中にあったんですね。

―― 「これこそがアメコミ」というアニメを作りたかった。

長濱 そういうことです。

―― 長濵さんが、以前からずっと言い続けていたために企画が成立したと受けとめてよいでしょうか。

長濱 そうですね。僕は言い続けていれば叶うとずっと思っているんです。『蟲師』もそうです。アニメ化は難しい企画でしたが実現した。『蟲師』も夢が実現した例です。この『THE REFLECTION』もそうですね。

馬越 普通は願っていれば叶うというものでもないんですが、長濱さんの場合、既に動いているんです。自分から呼び込んでいるという表現が正しいかと。

長濱 願うだけでは叶いませんが、口にすれば叶いますよ。時間差はあるかもしれないし、違ったかたちで叶うかもしれない。それでも、自分の好きという気持ちが相手に影響を与えているわけですよ。この影響を及ぼすというのが、好きということを口に出すことの力なんです。話はかなり戻りますが、私が初めてアメリカのイベントに参加したきっかけも、ずっとアメコミが好きだと言い続けていたところ、同時多発テロの影響でアメリカの日本アニメのイベントのゲストに欠員が出たので参加してみないか、という話が回ってきて掴んだものだったんです。

馬越 長濱さんは人の10倍ほど口に出していると思います。

長濱 今回音楽をトレヴァー・ホーンさんというイギリスの音楽プロデューサーにお願いしているんですが、これもスタジオディーンの野口(和紀)さんとこの作品が動き出す前から、いつかトレヴァー・ホーンの音楽でアニメをやりたいね、と語り合っていたところ、この企画が動き出してから彼とのパイプが見つかり、それで依頼したんです。向こうがその場で快諾してくれたことには驚きました。


●『THE REFLECTION』で描きたいもの

―― トレヴァー・ホーンさんがプロデュースした楽曲に合わせた新しいPVを拝見しました。独特の色使いだと感じましたが、アニメ本編でも同じようになるのでしょうか。

長濱 そうですね。その場面ごとに色のトーンがあり、シーンや時間でそのトーンが変わります。アメコミの作風ですね。結局、アメコミをアニメにするにしても、自分が『蟲師』や『惡の華』で経験したものと同じプロセスを通っている。作品独自の何かがあるのか、それとも通常の方法でなんとかなるのか、それを考えるプロセスです。僕が好きなアメコミはシルバーエイジ(1950年代から1960年代)の作品で、この頃のグラデーションなどを再現してみたかったんです。ところが、いざ実際に取り組んでみると、『蟲師』並みに徹底的にやり尽くさないと、ウソが浮いて見えてくることが分かったんです。撮影段階で様々な処理を加えれば加えるほど、ウソが目立つ。なので無駄なものを一切足さない、引き算のアニメにすることにしたんです。こういう方向性に舵を切れるのも、馬越さんが色々とやってみてくれているからですね。

―― 色使いがとてもシンプルなんですね。空にしても、ベタ塗りというか、濃淡がない。

長濱 ないんです。でも表現として成立しています。

―― 馬越さんの名前が出ましたが、馬越さんがキャラクターデザインとして参加し始めたのはいつ頃だったのでしょうか。

馬越 最初から参加する流れはありました。が、初めて打診された時は断りました。

長濱 馬越さんが、「スタン・リーと一緒に作品を作るというあなたの夢が叶うのだから、キャラクターの原案は自分で作るべきだ」と主張したんです。デザインをアニメ的に動かせるようにアレンジする作業はしてもよいが、自分が一から作ることはしない、と。もっとも、馬越さんはそのデザインのアレンジをすることにも渋っていましたが。

馬越 長濱さんが凄いことをやっている、というのを遠くから眺めていたかったんです。

長濱 そういうわけで、ティザーPVに出てきた止め画のキャラクターは、自分が元を作っています。当初は影が付くのかどうかも分からない状態でした。結局黒の影だけを付けることになりました。

―― 随分とスタイリッシュなビジュアルになりそうですね。

長濱 というよりシンプル。動かすのは難しいのですが、スタッフが渋らずやってくれています。

―― ビジュアル面以外で、長濱さんが描きたかったものとはなんだったのでしょうか。

長濱 今回僕がやりたかったことというのは、スタンが生み出したマーベルの宇宙(ユニバース)というものを彼に返したい、ということだったんです。アメコミの世界では、原作者がキャラを保有できず、出版社がその権利を抱えています。しかし、マーベルの宇宙のかなりの部分は、スタンが作り上げたものなんです。なので、それを違ったかたちで翻訳して、彼に返したかったんです。今回原作として僕がスタンと連名でクレジットされていますが、これは僕が彼に軽く言ったら、相手がそれを快諾してくれたのが理由です。嬉しかったですが、アニメを作っている過程では、スタンを仮想の原作者、僕を一人の読者としてイメージしながら制作しています。もうひとつ、僕はアニメで『アベンジャーズ』のようなことをしたかったというのもあります。『アベンジャーズ』に登場するヒーローは誰もが独立したタイトルの主人公であるわけですが、観客はその個別のタイトルに触れた経験がなくとも『アベンジャーズ』を楽しむことができるわけです。今回の『THE REFLECTION』はその逆の過程を辿っています。個々のキャラクターについては誰も何も知らないが、それでもキャラクターを楽しみながら見ることができる、そういう作品を目指しています。なので、登場するキャラの数はとても多いですし、すぐ死ぬような悪役にも名前を付けバックボーンを設定として与えています。


●スタン・リーと長濱博史が企画の中心にいるということ

―― NHKで夏から放映することになっているようですが、これにはどういう経緯があったのでしょうか。

長濱 詳しいことは舞台脇にいる野口さんに聞いてみましょう。

(野口和紀プロデューサーが登壇する)

野口 スタジオディーンの野口です。NHK総合で今年の7月から毎週土曜夜に放映となります。詳しい日程はまだ確定していませんが、6月にはお伝えできるかと思います(編注:イベントの後、放映開始日等が告知された)。

―― 7月放映開始ということは、もうすぐですね。

野口 特殊な状況で決定しました。元は配信だけの予定だったのですが、NHKさんから企画を認めてもらい、急遽放映できることになりました。よろしくお願いします。

(野口プロデューサーが降壇する)

―― なぜ当初は配信だけで考えていたのでしょうか。

長濱 原作者の一人がアメリカ在住、音楽プロデューサーはイギリス人ということで、必然的に「自分たちのところでも作品を観られるようにしてほしい」ということを言われるわけです。なので、世界同時に公開できる配信を考えていた。今回の企画に日本の出版社が関わっていないのも大きいかもしれません。

―― 今回のプロジェクト自体、内容以外の部分も長濱さんが動かしているわけですね。

長濱 企画の中心にスタンと自分がいるという点で、今回の企画は特殊だと思います。スタジオディーンで制作することになった理由も、スタン側から「確実に企画を遂行できる人を連れてきてほしい」と言われ、野口さんに連絡したところ、すぐOKの返事があったからですし。他にも、先ほど音楽の話をしましたが、それもこちらから打診しました。9nineというチームにEDを歌ってもらうのですが、トレヴァー・ホーンが日本のユニットをプロデュースするのは初めてなんですよ。これは凄いことです。9nineは作中で日本のヒーローチームとしても登場しますね。

―― チームですか。

長濱 チームです。『プリキュア』シリーズにせよ、『パワーレンジャー』にせよ、日本のヒーローやヒロインはチームを組む場合が多いんです。そういった日本のヒーロー・ヒロイン像を投影しています。そう、投影なんです。英単語のreflectionには確かに反射という意味があるんですが、それだけではない。投影という意味もあります。イメージとしては水面のきらきらとした光です。そういったイメージを持ちながらタイトルや作中でのある事件名にreflectionを用いています。


●あらゆる箇所に見どころが

―― アクションは毎回あるのでしょうか。

長濱 ない回もあるかもしれませんが、基本的にはあります。

―― 登場するヒーロー的なキャラクターは、皆が特殊能力を持っているのでしょうか。

長濱 持っています。悪者も持っています。悪者の方が面白いですね、様々な意味で。キャラ立ちしています。デザイン的にはヒーロー側のキャラクターは……。

馬越 アイガイというヒーローがいるんですが、そのキャラクターを描くだけでも大変です。

長濱 デザインが複雑なのは、僕が元を描いたからです。

馬越 監督の指示が細かい。

―― キャラの数も多いとのことでしたが。

長濱 削ったんですが、それでもまだ多い。先ほども言いましたが、どれほど出番が少なかろうと、キャラには名前と設定を与えています。アメコミでは使い捨ての戦闘員は許されませんし、そうした設定があるからこそ後に別の作品で再登場できるわけです。

―― 最後に一言ずつお願いします。

馬越 現段階では多くは話せませんが、私自身も楽しみにしています。

長濱 アメコミ好きなら楽しめる作品になっていると思います。悪い奴をやっつけるという単純なストーリーではありません。音楽や声優にも力が入っています。長く続けていきたいと考えていますのでよろしくお願いします。

■プロフィール

長濱博史(Hiroshi Nagahama)
アニメ監督・演出家。1970年3月15日生まれ。マッドハウスに入社しアニメ業界に入り、現在はフリー。1997年『少女革命ウテナ』でコンセプトデザインを担当。『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』『十兵衛ちゃん2 ―シベリア柳生の逆襲―』など大地丙太郎作品への参加が2000年代前半に多かった。2005年『蟲師』で初監督、注目を集める。以降の監督作としては『デトロイト・メタル・シティ』『惡の華』『蟲師 続章』など。2017年7月から放送予定の『THE REFLECTION』では監督をこなすと同時に原作者(スタン・リーと共同)としてもクレジットされている。

馬越嘉彦(Yoshihiko Umakoshi)
アニメーター、キャラクターデザイナー、作画監督。1968年7月30日生まれ。日曜朝の少女マンガ原作アニメ三部作『ママレード・ボーイ』『ご近所物語』『花より男子』でキャラクターデザインを手がけ、『おジャ魔女どれみ』シリーズではキャラクターコンセプトデザインを担当。近年では『ハートキャッチプリキュア!』『僕のヒーローアカデミア』でキャラクターデザインを担っている。長濱博史監督とのコンビは、長濱がチーフディレクターを務めた『十兵衛ちゃん2 ―シベリア柳生の逆襲―』から。その後、長濱が監督した『蟲師』『蟲師 続章』でもキャラクターデザインを受け持った。2017年『THE REFLECTION』でもキャラクターデザインとして長濱監督と組んでいる。

■イベントデータ
日時:2017年5月21日(日)
会場:阿佐ヶ谷ロフトA
登壇者:長濱博史、馬越嘉彦、小黒雄一郎(アニメスタイル編集長)

■記事構成
深川和純、アニメスタイル編集部

第520回 やっぱり「ほどほどに」!

 なんとなく前回言い足りず重ねますが

「ほどほどに」です!!

 俺の理想のデジタル化は。なんでもカンでも無条件に「デジ最高!!」ではなく、作品を面白くするため、制作費を効率よく使うために、我々制作者側は新しい技術に対して、単に好き嫌いではなく研究して勉強して「これ、作品作りに使える!」と思ったらほどほどに使ってみる姿勢って大事なのではないでしょうか? と。別に「全編CGでキメるべき!」と言いたいわけでも「手描き作画はすべて滅ぶ!」とアニメーターの危機感を煽りたいのでもありません。

「ほどほど」の割合で折り合いがつくのが理想!

と思うだけ。いくら世の中デジタル化だっつったって、すべてが0か1、もしくは「ある・なし」で片づくはずはないでしょう。作画アニメに一部CGまたはその逆でも、要は「効果的に使えているか?」が問題なのだと思います。
 で、『ベルセルク』は最終回を迎えたわけですが、今まで監督してきた作品とは違った意味で疲れましたし、それと同時に楽しませてもらいました。何しろ、ここでも何度か報告したとおり、コンテは昨年末で最終回まで上がっており、今年始めにはCGの発注がいつでもできる状態。そんな中、作画パートをコツコツ進めつつCGを発注し、かなりの時間差で上がってくるモーションをチェック。これがまた当たりもあれば「アレ?」な上がりもあり一喜一憂。とにかく良くも悪くも自分の思ったように上がってこない。もちろん素晴らしいアクションカットもいっぱいありました! それらが上がってきた時は「CG凄えっ!」と興奮します。が、上手くいってないものが上がってくる時もままあるわけ。その時は当然「リテイクお願いします!」とはなるものの……これはCGアニメーターさんが悪いわけではないんですが

上手くいってないカットほど納品ギリギリ!!

 でモーションの修正ができないんです。「レンダリング時間的に無理です!」となり、あとは撮影処理で対応するしかありません。まあでも、2クールで詰め込めるだけ詰めた内容だけに、CGスタッフの皆さんもパッツンパッツンの余裕がまったくない状態で本当によく頑張っていただきました。現場をヒーヒーにしてしまったのはすべて自分の力不足によるものです。スタッフの皆さん、申し訳ありませんでした。そして、

お疲れさまでした!!

第109回 一陣の風 〜ちはやふる〜

 腹巻猫です。8月11日(金)夜、阿佐ヶ谷ロフトにて「渡辺宙明トークライブPart11」を開催します。脚本家の荒川稔久さんをトークゲストに迎え、宙明先生の最新作や作詞とメロディとの関係などについて語っていただきます。コミケ初日の夜ですので、打ち上げも兼ねてぜひおいでください。前売券は7月1日(土)10時より発売! 詳細は下記を参照ください。
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68971


 6月24日、前回紹介したコンサート「作曲家の祭典2017」に足を運び、4人の作曲家の音楽とパフォーマンスを大いに堪能した。
 今回は、そのコンサートでも取り上げられたTVアニメ『ちはやふる』の音楽を紹介しよう。
 TVアニメ『ちはやふる』は2011年10月から2012年3月まで放映された作品。原作は末次由紀の同名少女マンガ。『カードキャプターさくら』(1998)、『NANA』(2006)等を手がけた浅香守生が監督、アニメーション制作をマッドハウスが担当している。深夜枠の放映だったが人気作品となり、第2期『ちはやふる2』が、2013年1月から6月まで放送された。2016年には広瀬すず主演の実写劇場作品も公開されている。
 美人だがかるた以外目に入らない「かるたバカ」の高校生・綾瀬千早を主人公に、競技かるたの世界で腕を競う少年少女たちが描かれる。技を磨き、ライバルと闘うスポ根的な要素と少女マンガらしい繊細な心情描写の融合が絶妙で、ぐいぐい引き込まれる。この作品で競技かるたがどういうものか具体的に初めて知ったというファンも多いだろう(筆者もそうだ)。
 音楽は山下康介が担当した。シンプルな楽器編成で試合の緊迫感や焦燥感、静かな闘志、仲間への友情や恋心などを描写している。派手なサウンドで自己主張する音楽ではないが、耳に残る。『ちはやふる』という作品にふさわしい、端正なたたずまいと躍動感を兼ねそなえた音楽である。

 山下康介は1974年生まれ、静岡県浜松市出身。小さい頃からピアノを習っていたが格別音楽好きというわけではなかった。転機は中学生になって吹奏楽部に入部したこと。楽器のアンサンブルの楽しさを知り、自分でも曲を書くようになった。高校生時代には自作のスコアを見てもらおうと作曲家・すぎやまこういちの事務所に送ったところ、本人から電話がかかってきて励まされたという逸話が残っている。本格的に作曲家を志して勉強を重ね、東京音楽大学音楽学部に入学。作曲専攻/映画・放送音楽コースに進んだ。
 在学中から山下のオーケストレーションの技術は評価が高く、山下が師事した羽田健太郎は山下のことを「百点満点の学生」と評したという。世に出たきっかけも、羽田健太郎のコンサートのアレンジを1曲まかされたことだった。卒業後、TVドラマ、アニメ、劇場作品、ゲーム音楽の作曲家として、また、ポップス、クラシックのアレンジャーとして活躍。代表作には、ゲーム「信長の野望」シリーズ(1996〜2009)、TVドラマ「花より男子」(2005〜2007)、「クロサギ」(2006)、「有閑倶楽部」(2007)、「小暮写眞館」(2013)、特撮ドラマ「魔法戦隊マジレンジャー」(2005)、「海賊戦隊ゴーカイジャー」(2011)、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(2015)、「宇宙戦隊キュウレンジャー」(2017)、アニメ『Xenosaga THE ANIMATION』(2005)、『ガラスの艦隊』(2006)、『デジモンクロスウォーズ』(2010)、『パズドラクロス』(2016)などがある。2009年公開の劇場アニメ『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』では、宮川泰、羽田健太郎の跡を継いで新作BGMを書き下ろしている。
 山下康介といえば、オーケストラを巧みに鳴らす、華やかで勢いのある音楽というイメージがある。出世作となったゲーム「信長の野望」がそうだし、一連のスーパー戦隊シリーズの音楽もそうだ。アニメでも、壮大な宇宙SFや冒険ものをよく手がけている。少女マンガ原作のTVドラマ「花より男子」や「有閑倶楽部」だって、メインテーマはミュージカル音楽のような華やかさにあふれている。
 しかし、山下康介を語る上で、もうひとつ忘れてはならないことがある。それは、山下康介が大林宣彦監督の作品とずっと寄り添ってきたことである。
 音楽にこだわることでも知られる大林監督は、1996年のTV映画「三毛猫ホームズの推理」でアレンジャーとして山下康介を起用。以降、山下は作・編曲家として、ほぼすべての大林作品の音楽制作に関わってきた。「あの、夏の日 〜とんでろ じいちゃん〜」(1999)、「理由」(2004)、「転校生 —さよなら あなた—」(2007)、「この空の花 長岡花火物語」(2012/メインテーマ作曲・久石譲)、「野のなななのか」(2014)などなど。そのほとんどは、學草太郎と並んで音楽担当にクレジットされている。學草太郎とは大林宣彦の作曲家としての筆名。大林監督が紡ぎ出したメロディを、山下康介がシーンに合わせてオーケストレーション、補作し、映画音楽として完成させているのである。
 大林監督は独特の音楽の付け方をする。心の中で何かが動くとき、その気持ちと連動するような音楽が鳴る。とまどいやひらめき、歓び、失意。感情に音楽がついているのではなく、音楽が感情を導いているような印象を受けることすらある。そういうときの山下康介の音楽は、心にすっと入り込んでくる。音楽が流れるシーンが多いのに、押しつけがましくない。どこか懐かしくて少しさびしい。
 『ちはやふる』の音楽は、そんな大林映画の音楽に感触が似ている。煌びやかな宇宙SFやヒーローものとは違った、山下康介の抒情的な持ち味が生かされた作品である。
 サウンドトラック・アルバムは、第1期に「ちはやふる オリジナル・サウンドトラック&キャラクターソング集 第1首」と「同 第2首」の2枚が、第2期に「ちはやふる2 オリジナル・サウンドトラック」が1枚(Webラジオとのカップリングで2枚組)発売された。
 今回はサントラ1枚目の「第1首」から紹介しよう。収録曲は以下のとおり。

  1. YOUTHFUL (TVサイズ)(歌:99RadioService)
  2. かるた日和
  3. 高ぶるキモチ
  4. まなざし
  5. 心構え
  6. 秘めた想い
  7. 「ちはやふる」メインテーマ
  8. かるたの目
  9. 過去の記憶
  10. かるたなんて
  11. 勝利への道
  12. 焦り
  13. 思わぬ展開
  14. 本当の実力
  15. 和美人
  16. 曇りココロ
  17. 大きな存在
  18. 活動開始!
  19. おさななじみ
  20. チームちはやふる
  21. 「ちはやふる」メインテーマ〜p.f.ver.〜
  22. full throttle(歌:綾瀬千早[CV:瀬戸麻沙美])
  23. 夢への地図(歌:綿谷新[CV:細谷佳正])
  24. NICK MAN!(歌:西田優征[CV:奈良徹])
  25. そしていま(歌:瀬戸麻沙美)

 オープニング主題歌のTVサイズで始まり、エンディング主題歌のフルサイズで終わる構成。トラック22〜24の3曲は声優が歌うキャラクターソングである。
 山下康介がラジオ「山下康介の作曲夜話」で語ったところによれば、本作の音楽メニューはTVアニメとしては曲数が少なく、初回録音は30曲程度だったそうである。
 楽器編成は、ストリングスとハープ、木管がフルート、オーボエ、クラリネット1本ずつ、金管もトランペット、トロンボーン1本ずつにホルンが2本。加えて、近年は打ち込みですませることが多い4リズム=ドラムス、ベース、ギター、ピアノが生で入っている。スーパー戦隊シリーズなどの音楽と比べるとシンプルな編成だ。
 このシンプルな編成が効果を上げている。百人一首の札を一瞬の判断で取り合う競技かるたの世界に雄大重厚な音楽は似合わない。颯颯とした一陣の風のような音楽がふさわしい。ほとんどの曲はドラムス、ベース、ギターを伴わないクラシカルなスタイルで統一されている。リズムセクションが入る曲も生楽器でバンド的な躍動感を出し、現代の少年少女が活躍する作品らしい軽快さを表現している。
 トラック2「かるた日和」は軽い雰囲気の日常テーマ。ピアノのリズムの上でバイオリンのメロディが軽やかに歌う。ドラムスが入って、弦と木管が楽しく絡み合うバンド音楽風に展開。高校でかるた部を作ろうと意気込む千早が幼馴染の太一と再会する場面や千早たちがかるた部の部員を勧誘する場面などに流れた。浮き立つ気持ちを描写する曲だ。
 トラック3「高ぶるキモチ」はかるたの対戦に向けて高揚する気持ちを表現する曲。弦の刻みが胸の鼓動の高まりを表し、ピアノがメインテーマのモティーフの断片を繰り返す。後半には金管が同じモティーフを奏して心に情熱があふれていくようすを描き出す。第1話では、小学生の千早が転校生の新とかるたの対戦をし、初めてかるたの面白さを知る場面にフルサイズ流れていた。対戦中、劣勢から逆転のチャンスをつかむ場面などにも流れた印象的な曲だ。
 トラック4「まなざし」は木管とストリングスが繊細に奏でる心情曲。中盤からピアノがメロディを引き継ぎ、暖かく奏される。第1話で太一と再会した千早が小学生時代を思い出す場面に使われている。
 トラック5「心構え」では、かるたに向かう気持ちが弦と木管のアンサンブルで描写される。ひとつのモティーフがさまざまに変奏されて繰り返され、試合に挑む期待と不安、静かな闘志が伝わってくる。
 次のトラック6「秘めた想い」は全篇を通して印象深い曲だ。ホルン、ストリングス、木管がゆったりと奏でる3拍子のメロディ。抒情的な旋律がしみじみと胸を打つ。第1話のラストで千早がかるたで日本一になりたいと思い立つ重要なシーンにほぼフルサイズ流れていた。山下康介によればもともとは新の想いを表現する曲だったとのことだが、新だけでなく、広くキャラクターの心情を表わす曲として多くの感動的な場面を飾っている。
 そして、続くトラック7が「ちはやふる」メインテーマ。サントラ盤ではメインテーマを冒頭に持ってくることが多いが、本アルバムはここでようやくメインテーマが登場する。新との出会い、かるたとの出会いを経て、千早の胸にかるたの女王=クイーンになりたいという夢が芽生える。その展開を受けてのメインテーマである。よく考えられた曲順だ。
 メインテーマのモティーフとなっている5音のフレーズは、山下康介がタイトルの「ちはやふる」の5音を象徴するものとして考えたとのこと。このフレーズが決まるまで2週間ほどを費やしたが、決まってから後の作曲はスムーズに進んだという。『ちはやふる』の音楽では、この5音のモティーフがさまざまな楽曲の中に登場する。曲数が少ないこともあり、本作ではキャラクターごとのテーマなどは設けず、メインテーマを中心に全体が構築されている。映画音楽のような音楽設計が特徴である。
 トラック8「かるたの目」は筆者が本作の中でももっとも印象に残っている曲。一瞬の緊迫、心の揺れを表現するような冒頭の弦とピアノの動きが鮮烈である。緊張した心が徐々に動き始め、しだいに新しい風景が見えてくる。最後に登場するのはホルンと木管が奏でるメインテーマのメロディ。2分間の演奏時間にドラマが凝縮されている。大林作品にもこのような音づかいで心情を表現するシーンがたびたび登場する。大林流音楽演出を経験した山下康介らしい映画的な楽曲だ。
 本作の音楽の特徴のひとつは、1曲1曲が長く作られていること。アルバム収録用に長く録ったわけではなく、音楽設計の必然から長くなっている点が重要だ。本アルバムに収録されたBGM20曲の中でも1分台の曲は4曲しかなく、あとはすべて2分以上である。
 これもラジオで山下が語っていた話だが、かるた競技には糸が張り詰めたような緊張感から、上の句が詠まれたときの一瞬の勝負、試合の中での駆け引きなど、静と動の対比と大きなうねりを持った流れがある。競技の中の心と体の動きを音楽でも表現するため、1曲の中で展開のある長い曲になった。歌もののように1コーラスを繰り返す曲ではなく、次々と新しい曲想に展開していく曲が多い。最後まで緊張感を保ちながら、じっくり聴ける曲ばかりである。
 アルバム中盤は、かるたを辞めてしまった新との確執、かるた部員勧誘の苦心などをイメージした楽曲が並ぶ。
 トラック12「焦り」は曲名通り、焦燥感を表現する曲。ほとんど弦とピアノだけの編成で不安といらだちの心情が表現される。シンプルだが山下の曲作りの巧みさが際立つ曲である。
 木琴と木管が奏でるトラック13「思わぬ展開」は、猪突猛進する千早などを描写したちょっとユーモラスな曲。フルート奏者・赤木りえのアドリブが効いている。第14話では現クイーン・詩暢(しのぶ)と対戦した千早が詩暢のレアなTシャツの柄に気づく場面に流れていた。
 呉服屋の娘・かなちゃんこと奏の登場シーンに流れたトラック15「和美人」は、ほっと一息つける曲。邦楽器風の演奏で雅な雰囲気を出している。
 アルバムの終盤は千早たちのかるた部の活動が本格化したイメージで盛り上がっていく。
 アクティブなトラック18「活動開始!」は、かるた部の部員がそろい始める場面などに流れた軽快な曲。アコースティックギターのカッティングを導入にドラムス、ベース、ピアノが加わり、弦と木管楽器がさわやかにメロディを奏で始める。青春の躍動感を表現するバンドサウンドが心地よい。
 トラック19「おさななじみ」は千早と太一と新の友情をイメージした曲。ピアノのアルペジオをバックに弦とクラリネットがノスタルジックなメロディを奏でる。懐かしくてどこかさびしい。ここにも『転校生』などの大林作品の香りがただよっている。
 トラック20「チームちはやふる」は、かるた部の快進撃を予感させる勢いのある曲。4リズムをバックに弦、木管、金管がメインテーマのモティーフを歌い継いでいく。それぞれの楽器がかるた部メンバーを表現しているようにも聴こえる。コーダは一転して静かな曲調になり、ピアノがそっとメインテーマを奏でて終わる。余韻のある心憎いアレンジである。
 BGMパートの最後はメインテーマのピアノ・バージョン。本編を観てから聴くと、かるたへの想い、友情、秘めた恋心、さまざまな想いが詰まった曲に聴こえてくる。
 少ない曲数の中で練り上げられた充実したサウンドトラックだ。アルバムを聴き終えた印象もさわやかで、まさに一陣の風を浴びたような気分になる。

 物語の後半、「チームちはやふる」で高校かるた選手権地区大会を勝ち抜いた千早たちは、全国大会に挑む。サントラ2枚目「第2首」には、そんな展開に合わせた楽曲が収録されている。試合の駆け引きや強敵の出現を描写する音楽はドラマティックさを増して聴きごたえも十分。さらに「ちはやふる2 オリジナル・サウンドトラック」には千早たちが高校2年生となった第2期の追加楽曲がまとめられている。ぜひ「第1首」とあわせて聴いていただきたい。
 「作曲家の祭典2017」では、メインテーマの変奏のひとつ「かるたとともに」(「第2首」に収録)がコンサート用のオーケストラ・アレンジで演奏された。昨年の「作曲家の祭典2016」では「メインテーマ」が演奏されている。いつか、『ちはやふる』だけでボリュームのある組曲を作って演奏してくれないだろうか。それだけ魅力的な作品であり、音楽だと思うのだ。

ちはやふる
オリジナル・サウンドトラック&キャラクターソング集 第1首
Amazon

ちはやふる
オリジナル・サウンドトラック&キャラクターソング集 第2首
Amazon

ちはやふる2 オリジナル・サウンドトラック
Amazon

107 アニメ様日記 2017年6月11日~

2017年6月11日(日)
午前3時45分に事務所入りはいつものこととして(超朝型なのです)、午前7時から堺三保さんと打ち合わせ。午後はオールナイト関連で確認する事があって『カラフル』を鑑賞。いやあ、面白かった。初見時よりも楽しめた。物語の語り手として腰が据わっているところが素晴らしい。今、原恵一監督の劇場作品でどれが一番好きかと聞かれたら『カラフル』と応えてしまうに違いない。

2017年6月12日(月)
新宿バルト9で『KING OF PRISM PRIDE the HERO』を鑑賞。午前8時40分の回だった。今回は尺も長いし、広げた風呂敷を畳まなくてはいけないという事もあり、1作目『KING OF PRISM by PrettyRhythm』とは作りがやや違う。僕的には1作目に感じた驚きはなかったけれど、トンデモない映画であるのは間違いないし、ファンの期待に応えた作品になっているはず。
 昼間は「設定資料FILE」の構成。夜は会食。業界の先輩のある方に、5月3日の「第130回アニメスタイルイベント アニメ様のイベント 雑誌デザインのこだわり編」のトークに感銘を受けたと言っていただく。「小黒君は本当に『編集』が好きなんだね」とのこと。酔っ払いが好き勝手に話したイベントだったので、呆れられたと思っていた。よかった。

2017年6月13日(火)
午前中から夕方まで「設定資料FILE」の構成。設定資料と縮小コピーにまみれる。

2017年6月14日(水)
朝6時からのTOKYO MXの『母をたずねて三千里』1話を観る。ドラマづくりが大人目線で驚く。これは高畑勲監督の作品が客観的であるのとは、また別の話なのだろう。この年齢になって観ても『母をたずねて三千里』は凄い。
 午後は『山村浩二 右目と左目でみる夢』の試写会に。全9本で約57分の短編集。僕が内容を理解できたのかどうかは置いておくとして、贅沢な時間を味わった。気に入ったのは「古事記 日向篇」と「干支 1/3」。

2017年6月15日(木)
東京アニメセンターの「ポッピンQ展 POP IN MUSEUM」に行く。展示は設定資料、絵コンテ、原画など。原画は原画マンが描いたもので、僕が見たかった作監修正原画ではない模様。ただ、レイアウト段階での作監修正を元にして原画が描かれているはずで、展示されていた原画から作監修正の線がどんなものかを想像してみた。

2017年6月16日(金)
新宿ピカデリー『劇場版 黒子のバスケ LAST GAME』最終上映が朝の8時50分からで、観に行こうかと思ってサイトで確認したら、すでに完売していた。朝なのに。
 病気で休まれてた藤原啓治さんが、仕事を再開されることになったそうだ。ああ、よかった。ずっと心配していた。また新作であの声を聞ける日が楽しみだ。
 池袋に改装中のビルがあり、少し前から「すごいTSUTAYAができる」と掲示されていた。すごいTSUTAYAってなんだ? 店舗の大きさから考えて「レンタルの在庫が日本一ですごい」はないだろうなあと思っていたのだが、どうやら、アイドル&アニメ&コミック専門の店舗らしい。池袋だから、乙女ロード的な意味で女性ファンに特化した店ができるのではないかと予想していたのだけど、外れたかな。

2017年6月17日(土)
早朝、24時間営業の山下書店大塚店で雑誌を数冊買い込む。「EX大衆」7月号は「サンライズ栄光の全史」という記事の富野由悠季監督インタビューが目当て。『無敵超人ザンボット3』についてのコメントが印象に残った。
 夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 94 アニメファンなら観ておきたい200本 原恵一監督のアニメーション映画」。原恵一監督は缶のハイボールを片手に楽屋入り。トークは公開10周年を迎えた『河童のクゥと夏休み』がメインで、進めているうちに『河童のクゥ』から『ドラえもん』の話に流れた。『河童のクゥと夏休み』は「平凡な日常に非日常が入ってくる」という意味では『ドラえもん』と同じ。かつて、アニメ業界に『ドラえもん』を子どものものだからと馬鹿にする人達がいて、それがあったので『ドラえもん』のリアリティを増したものを作りたいという気持ちがあったのだそうだ。原さんが若手演出家として『ドラえもん』に参加していた頃、子ども騙しの作品ではないという意気込みで臨んでいたのも、それとリンクしている。それから、30数年前の僕との出会いの話になり「小黒さんは見るからに胡散臭かったけど、最初に自分の仕事を取り上げてもらったので恩を感じている」と言っていただいた。
 聞こうと思って用意していた話のいくつかは聞けなかったけれど、リラックスムードで気持ちよく話ができたので、僕的には満足。復帰が決まった藤原啓治さんについても話ができたし、トークの最後に原さんが「トイレ行きたくなっちゃった」と言って、慌てて席を立ったのも可笑しかった。用意していた質問はまたの機会に。
 明け方に新文芸坐に戻って、オールナイトの終了を見届ける。

第519回 手描きの有りよう


と、今週のイボ事情も最終回を迎えたトコで、今回は単刀直入に

動画を100枚も描いたことない人に
「やっぱりアニメは手描きでしょ!」と言ってほしくありません!

って。モブシーンやアクションシーン、メカやダンス、楽器演奏シーンに至るまで、動画100枚すら描いたことない監督に、そう易々と「やっぱりここは手描きじゃないとなー」とか「なんで皆なんでもCGにしちゃうのかなぁ」「アニメの監督なんだから、もっと手描きを大事にしないとさぁ」などなど。まあ、絶対言うなというのは言い過ぎですが、少なくとも

一度、手描き動画の「手間」を想像くらいしてみてください!

と。こう言うとアニメーターではない制作出身の監督さんで「失敬な! 自分は制作時代、何カットも動画をやったことくらいはある!」と仰る方、何人も知ってます。が、その方々がやったことある動画って、せいぜい「各話演出時代に足りない目パチ・口パクを描いたことがある!」だったり「中割りを2〜3枚足したぜ!」くらい。いいとこ「原トレ(原画のトレス)のみの止めは描いたことある」です。俺が言いたいのは

原トレ何十枚、中割り何十枚の「普通の動画」のこと!!

です。アニメーター出身でない監督さん、分かります? 動画用紙にビッシリ埋められたモブや爆発、髪・フリルの嵐のようななびき美少女、ロボットアクション。これ動画1枚何時間かかって、1日何枚描けるか!? ヘビーな内容のヤツは1日3枚しか上がらないとかあるんですよ! 昔の名作○場的な、線が少なくカゲなしキャラで繰り返し鑑賞しないこと前提な動画なら「ワシの若い頃は1日30枚は当たり前じゃった!」とか言ってられますが、現在のブルーレイやネット配信で何回こすってもボロが出ない、カゲ付きロボやフリフリ美少女の中割り動画を、1日30枚描けると思いますか? もうその基準自体が現代に相応しくないでしょう? あと

手描きの動画だから無条件に高尚なアニメ!

とかってのもどうですか? 1970年代生まれなら、いちばん多感な時期にジブリアニメを見て以来、今の今まで手描きアニメ素晴らしき! となるのは自由ですが、2000年生まれの若者に「手描き=高尚」は通じますかね? こーゆーと今度は「だからこそ手描きの素晴らしさを伝えなければならんのじゃろ!」とか言われそうですが違います。俺が言いたいのは「ほどほどに!」です。今の視聴者さんは、子どもの頃からCGバリバリ回り込みのゲームとかで遊んでるわけで、つまりは「画が動くなんて普通のこと」。その人たちに手描きの素晴らしさを伝えたいなら、ある程度——それこそほどほどに普段彼らが慣れ親しんだ映像をベースにするところから始めなきゃならないはず。その上で、手描きの魅力を味わえる作品を監督は作らなきゃなりません。でないと、作っても古くてまず観てもらえないでしょう。そしてさらにアニメータ側からすると

監督さん、そんなに「手描き、手描き」言うなら、あなたのコンテはこれだけの手間と労力のかかる手描き動画を十分に活かせる内容なんですか!? 本当に信じていい、このコンテ? 自分の何週間分の労力、絶対に無駄になりませんよね?

なんですよ。ご理解いただけますでしょうか、無条件手描き至上主義監督の方々様。

第134回アニメスタイルイベント
公開30周年 山賀博之が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を語る

 2017年2月18日(土)のオールナイトに続き、公開30周年を迎えた『王立宇宙軍 オネアミスの翼』にスポットをあてたトークイベントを開催する。オールナイトでも山賀監督に『王立宇宙軍』について話をうかがったが、もっともっとたっぷりとお話をうかがいたい。そのように考えてアニメスタイル編集部は、今回のトークイベントを企画した。

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』はガイナックスの第一作であり、公開時に24歳であった山賀博之監督をはじめ、貞本義行、庵野秀明といった若いスタッフが中心となって作り上げた劇場アニメーションだ。作り手のエネルギーが迸ったフィルムであり、映像についても作劇についても非常に先進的。今の目で観ても充分に見応えのある作品だ。未見の方はDVDなどで作品を鑑賞してから、イベントに足を運んでほしい。

 今回のイベントもトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。前売り券は2017年6月24日(土)から発売開始だ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68416

第134回アニメスタイルイベント
公開30周年 山賀博之が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を語る

開催日

2017年8月6日(日)
開場18時 開演19時 終演22時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

山賀博之(『王立宇宙軍 オネアミスの翼』監督)
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第133回アニメスタイルイベント
元祖 ここまで調べた『この世界の片隅に』 平成29年夏編

 多くの観客に受け入れられ、ロングランが続いている劇場アニメーション『この世界の片隅に』。先日、アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門審査員賞を受賞したばかりだ。

 片渕須直監督と制作スタッフは『この世界の片隅に』の制作過程で、舞台となる地域や時代風俗について綿密な調査研究を行った。それに裏付けされた臨場感や登場人物の存在感が本作の魅力のひとつだ。
 その調査研究の結果を披露していただくのが、トークイベント「ここまで調べた『この世界の片隅に』」シリーズだ。今回の出演者には片渕監督を予定している。今までのイベントでも「そんなところまで調べるの?」「当時の日本の風俗って、そうだったの!」と観客から驚きの声を頂戴した。今回のイベントも深い話をうかがうことができるはずだ。

 今回もトークのメイン部分を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。前売り券は2017年6月22日(木)から発売開始だ。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/68348

第133回アニメスタイルイベント
元祖 ここまで調べた『この世界の片隅に』 平成29年夏編

開催日

2017年7月16日(日)
開場18時 開演19時 終演22時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直(『この世界の片隅に』監督)
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

106 アニメ様日記 2017年6月4日~

2017年6月4日(日)
国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2017」に行く。お目当ては、なかむらたかし監督の新作『イリオンとカリシア』。なかむら監督としては初の3DCG作品で、7分ほどの短編だ。元々、セルルックの3DCG作品を作るテストとして作られたもので、本来は一般公開する予定ではなかったのだという。キャラクターを含めて、なかむら監督らしいビジュアル。アクションも「アニメ」的。この延長線上で作れば、なかむら監督作品として、見応えのある長編が3DCGで作れるのではないかという可能性を感じた。同イベントでは、他にも印象に残る作品があった。愉快だったのがドイツの「素晴らしきかな、自然!-カメレオン編」。韓国の「グリーン・ライト」は画作りにいいところがいくつも。
 夕方は池袋の家電量販店に。4Kのモニターで『君の名は。』のプロモーションを流していたのだけど、驚くくらいに映像が鮮明。というか驚いた。これは凄いなあ。モニターを買うのは少し後になると思うけど、『君の名は。』は4K Ultra HD Blu-ray同梱版を購入してもいいかもしれない。

2017年6月5日(月)
ネットで『響け!ユーフォニアム』の完全新作劇場作品が2本作られることを知る。山田尚子監督による「みぞれと希美の物語」と、石原立也監督による「2年生になった久美子たちの物語」だそうだ。これは楽しみだなあ。

2017年6月6日(火)
『ポッピンQ』のBlu-rayを流しながら作業。『ポッピンQ』は僕にとっては愛おしい作品だ。名作とか傑作とかではなくて、愛おしい。アニメーションとして丁寧に作られているし、作品全体にもキャラクターにも初々しさがある。作画に関しては、キャラクターデザイン・総作画監督の浦上貴之さんはかなり丁寧な仕事をしているに違いない。線の感じもよい。修正原画が見てみたい。それから、集団ヒーローものとしてもいいところが沢山ある。最初に主人公4人が能力を発現させたところは高揚感が素晴らしくて、観る度にワクワクする。最後の戦いで伊純(特殊能力が俊足)が、あさひ(柔道と合気道の遣い手)をおんぶして、ボスキャラがいるところまで駆け上がるんだけど、そういう「特殊能力以外の部分は普通の女の子」な感じもいい。客観的に見ると、作品としてツッコミどころもあるんだけど、それと愛おしさはあまり関係ない。
 それから『ポッピンQ』は、僕の「セーラームーンアンテナ」にビビっとくるものがあるのだ。ちなみに、セーラームーンアンテナとは、アニメ『美少女戦士セーラームーン』濃度の高いものに反応するアンテナで、『セーラームーン』ファンに備わっている機能である。そのビビっときたのが、作画監督として伊藤郁子さんが参加しているのと関係しているのかどうかは、まだ解明できていない。「この人に話を聞きたい」で宮原直樹監督に取材をして伊藤さんの仕事ぶりについて聞いたのだが、まだ確信はもてないのだ。

2017年6月7日(水)
ドラマ「怪獣倶楽部」1話を観た。僕よりも上の世代の特撮ファンの方々をモデルにした作品だ。世代が違うので、感覚がズレているかもしれないが、時代の気分がちゃんと出ていると思った。それでいて、カジュアルな作りになっているのもいい。
 「三つ目がとおる オリジナル版大全集」が刊行されるそうだ。その告知で、今までの単行本で写楽と和登さんの入浴シーンがカットされていたことを知る。ああ、なるほど。なんとなく単行本は淡白になっている印象だった。他にも連載と単行本の違いは多かったはず。オリジナル版の刊行は嬉しいなあ。
 平松禎史さんとの打ち合わせのために吉祥寺に。目的地の町を目指してウロウロしていると、同行した編集スタッフCが、あるお店を指さして「小黒さん、ウッドベリーズがあります!」と言ったのだった。おお、これが『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』でりょーたすが行きたがっていたウッドベリーズか。『オカルティック・ナイン』は吉祥寺が舞台だったものなあ。思わぬところで聖地巡礼。

2017年6月8日(木)
またまた吉祥寺。昼から駅前のルノアールである監督と打ち合わせ。何故かその監督とは縁もゆかりもない山田尚子監督の素晴らしさについて熱弁を振るってしまった気がするが、多分、気のせいではない。
 Amazonから事務所に「日本アニメ(ーター)見本市資料集Vol.3 カセットガール 全記録全集」が届く。表紙デザインはBetaのビデオケースをモチーフにしたもので、編集部の若いスタッフに「これ、分かる?」と聞いたところ「Betaってなんですか?」と返された。それはそうだよなあ。

2017年6月9日(金)
「カセットガール 全記録全集」をパラパラとめくる。巻頭言に「トラディショナルなアニメムックのスタイルをイメージしながら編集」とある。アニメムック的かどうかは分からないけど、確かに何だか懐かしい部分がある。スタッフ座談会の文字組みの感じとか。最初と最後の実写のページはSTUDIO VOICEあたりの雑誌っぽいと思ったり。
 11時から南阿佐ヶ谷で打ち合わせがあり、2時間ちょっとかけて池袋から歩いた。

2017年6月10日(土)
土曜だけど、事務所で作業。急いでやらなくてはいけない仕事もあるのだけど、あえて、急いでやらなくてもいい仕事に手をつける。やってみるとこれが難しい。作業をしながら、NHK-FMの「アニソン・アカデミー」を流す。ピンチヒッターパーソナリティが前川陽子さんで、ゲストが「ひょっこりひょうたん島」つながりで久里洋二さん、若山弦蔵さんという濃さ。若山弦蔵さん関連曲として『プロゴルファー猿』の「夢を勝ちとろう」が流れたんだけど、これはヒネり過ぎかな。若山さんがミスターXを演じたのは『プロゴルファー猿』のスペシャル版だけで、その時は「夢を勝ちとろう」は使われていないはず。

第518回 イボと作画と最終回

イボを切除してきました!


 術後、痛くて口が7割しか開かず、飯が食いづらい食いづらい。けど休んでる暇はありません。なぜなら『ベルセルク』最終回の作画が大忙しだから! 以前某プロデューサーに言われました。

板垣さんは現場で最前線を突っ走り過ぎなんですよ。監督ってのは本来、最後尾で作品を守る立ち位置でしょう?

とか。うーむ、なるほど。それも一理ある。というか正確に言うと「そーゆー管理で成立する現場もある!」です。コンテ切って打ち合わせして発注したら上がるのを待つだけ。そもそも、その某Pにも言ったんだけど「そんな現場で作った事ない、俺!」と。しかし、それは決してPのせいではなく、すべて「自分のせい!」だって自分の名前にお金を集める力がなく、スタッフを集める人望もない。それを他人のせいにしたってカッコ悪いだけ!

どのような悪条件でも、作品の出来不出来の責任はすべて俺がとる!
そう言えない人は監督名乗っちゃダメ!!

そうだからこそ、スタッフは監督のワガママを少〜しだけ聞いてくれるんだと思いますが、どう?
 あとまぁ、ぶっちゃけ板垣は現場が好きなんで、俺の画がまだ使えるんなら若手に交じって原画描きたいんです。そのうち必ず「板垣の画なんて必要ない」と言われるんだから、そう言えるまでは描かせてもらえたらなぁと。それと若いスタッフには、そんな先頭に立ってもがく今の俺を見て、

責任をとれるって楽しそう、俺(私)も責任を負いたい!

と思ってもらえたら嬉しい限りです。だってアニメ作りは、本当にどこを切り取ってもシンプルに面白いので、皆ただ原画だけ描いて喜んでないで、コンテでも監督でもドンドン「やりたい!」って手を挙げればもっと楽しいですから。って、ああ、また中途半端だ。

 そんなわけで『ベルセルク』の作画に戻ります(汗)! 短くて申し訳ありません。

第108回 安息の地を求めて 〜ウォーターシップダウンのうさぎたち〜

 腹巻猫です。6月24日に洗足学園前田ホールにてコンサート「作曲家の祭典2017」が開催されます。渡辺俊幸、田中公平、植松伸夫、山下康介の4人が自作のオーケストラ作品を自らの指揮で披露するコンサート。今回はアニメ音楽やゲーム音楽がたっぷり演奏されるので、サントラファンも聴き逃せません。詳細は下記公式サイトを参照ください。
http://www.senzoku-online.jp/concert2017/


 前々回『ニルスのふしぎな旅』、前回『おはよう!スパンク』と動物が準主役を務めるアニメの話題が続いたので、今回は動物つながりで海外のアニメーション作品を取り上げよう。
 本国公開は1978年、日本では1980年に公開されたイギリスの劇場アニメーション『ウォーターシップダウンのうさぎたち』である。
 原作はイギリスの作家リチャード・アダムスが1972年に発表した同名のベストセラー小説。動物が主人公の作品なので児童文学と思われがちだが、どちらかといえば大人に向けた作品だ。
 主人公はイギリスの田園地帯に暮らす野うさぎたち。危険を察知する力にすぐれたファイバーは「恐ろしいことが起こる。野原が血だらけになる」と災厄を予言する。平和に慣れた大人のうさぎたちは信じないが、ファイバーの兄ヘイゼルと一部のうさぎたちはその言葉を信じ、故郷を捨てて、平和に暮らせる土地をめざして旅を始める。タイトルの「ウォーターシップダウン」は、うさぎたちがたどりつく安息の地の名である。
 水彩画で描かれたイギリスの田園風景、渋い色合いのリアルな動物たち。ピーターラビットの世界を大人向けにしたような画作りは日本のTVアニメを見慣れた目にはなじみにくいが、観ているとすぐに気にならなくなる。動物のアニメートを指導したのは、『バンビ』や『ファンタジア』に参加したアメリカのアニメーター、フィリップ・ダンカン。動物のリアルな動きが、死と隣り合わせの旅の緊迫感を支えている。戦う力を持たないうさぎたちが、知恵と勇気で苦難を乗り越えていく物語は深い感動を呼ぶ。生と死、信頼と裏切り、支配と自立、世代交代など、多彩なテーマが織り込まれた端正で味わい深い作品である。

 筆者は1980年の公開当時、劇場で観た。同じ年に『ヤマトよ永遠に』『地球へ…』『サイボーグ009 超銀河伝説』などの劇場アニメが公開され、どれも観に行った記憶があるが、ふり返るともっとも心に残っているのが本作品である。
 日本公開は、古川登志夫、杉山佳寿子、はせさん治、森山周一郎、檀ふみらが出演した吹き替え版。筆者はのちに日本語版レーザーディスクも買った(今でも持っている)。
 音楽もすばらしい。音楽を担当したのはイギリスの作曲家アンジェラ・モーレイとマルコム・ウィリアムソン。主題歌はマイク・バットの曲をサイモンとガーファンクルの片割れ、アート・ガーファンクルが歌っている。日本語版ではその主題歌を井上陽水が訳して歌ったことも話題になった。
 公開当時、主題歌と音楽を収録したサウンドトラックLPが日本でも発売された。その後、国内ではCD化されていないが、海外では90年代に一度CDになり、つい先ごろ、2016年12月にSACDとCDのハイブリッド仕様で再発売された。公開当時と比べると話題にする人は少なくなったが、今でも世界中に熱心なファンがいる作品なのだ。輸入盤はAmazonやタワーレコードで購入することができる。
 サウンドトラック・アルバムの収録曲は以下のとおり。

  1. Prologue And Main Title/プロローグ&メインタイトル
  2. Venturing Forth/決意の前進
  3. Into The Mist/霧の中へ
  4. Crossing The River And Onward/河を越えて
  5. Fiver’s Vision/ファイバーの見解
  6. Through The Woods/森を通って
  7. The Rat Fight/ラット・ファイト
  8. Violet’s Gone/スミレの季節が去って
  9. Climbing The Down/逆境を乗り越えて
  10. Bright Eyes And Interlude/ブライト・アイズ
  11. Bigwig’s Capture/ビッグウィッグの捕獲
  12. Kehaar’s Theme/キーハーのテーマ
  13. The Escape From Efrafa/エフラファからの脱出
  14. Hazel’s Plan/ヘイゼルの計画
  15. Final Struggle And Triumph/最後の奮闘と勝利
  16. The End Titles/エンドタイトル

 原題の後に添えた日本語タイトルは当時の日本版サウンドトラックLPの曲名。音楽と主題歌をほぼ劇中使用順に並べた構成である。ただし、鑑賞用であることを配慮して一部曲順が入れ替えられている。
 トラック1「Prologue And Main Title/プロローグ&メインタイトル」は本作の冒頭に流れる曲。うさぎたちの伝説を語る絵物語風のプロローグの曲とうさぎたちが暮らす土地を映し出すメインタイトルの曲が1曲になっている。叙事詩的な格調を感じさせる、始まりにふさわしい曲だ。
 プロローグとメインタイトルを作曲したのはマルコム・ウィリアムソン。もともとは彼が全編の音楽を担当する予定だったが都合により降板。指揮を担当していたマーカス・ドッズがアンジェラ・モーレイを推薦した。以降の主題歌を除く全曲がアンジェラ・モーレイの作である。
 マルコム・ウィリアムソンは1931年生まれ。オーストラリア、シドニー出身。1950年からロンドンに移住した。「吸血鬼ドラキュラの花嫁」(1960)などの映画音楽を手がけているが、本来は純音楽の作曲家で、1975年にマスター・オブ・クィーンズ・ミュージックという英国王室付きの音楽師範に任ぜられている。プロローグとメインタイトルを聴いただけでも、彼が創り出す音楽の格調高さが伝わってくる。交響曲、舞台音楽、室内楽など多くの作品を遺して2003年に逝去した。
 アンジェラ・モーレイは1924年生まれ。イギリス、ヨークシャー州出身の作曲家。クラリネットとサキソフォンの奏者として活動したのちに作・編曲家に転身。「ネモ船長と海底都市」(1969)や「八点鐘が鳴るとき」(1971)などの映画音楽を手がけた。当初はウォルター・ストットの名で活動していたが、1972年に性転換して女性になり、アンジェラ・モーレイと名を替えて活躍。日本でも放映されたTVドラマ「ダラス」(1978-1991)、「ダイナスティ」(1981-1989)などの音楽を担当している。2009年に逝去。
 モーレイは本作の音楽を電気楽器やシンセサイザーを使わないクラシカルなオーケストラ編成で書き上げた。木管やハープのデリケートな音色を活かした素朴で自然の匂いのするサウンドである。それが柔らかい色調で描かれた田園地帯の情景にマッチしている。
 アルバムの前半はヘイゼルたちの旅を綴る音楽。霧の中の旅立ち、熊やふくろうが潜む森を抜け、知恵を働かせて川を渡る。休息をとるために潜り込んだ小屋ではねずみたちとひと騒動。うさぎたちの冒険を、モーレイは落ち着いた、けれど緊張感の途切れない音楽で彩っていく。
 モーレイが書いた音楽の中に、本作のメインテーマと呼ぶべき重要なメロディがある。アルバムではトラック4「Crossing The River And Onward/河を越えて」の後半に登場するメロディである。
 川の向こう岸にたどりついたうさぎたちは、もう故郷には帰れないと決意を固める。そこに流れるのがフルートとクラリネットが奏でる前進のテーマ。CDのライナーノーツでは“QUEST”(探究)のテーマと書かれている。この旋律はトラック6「Through The Woods/森を通って」にも登場するほか、本編のさまざまな場面で使用されている。
 マーチというほど力強い曲調ではない。けれど、静かに、たしかに、旅を続けるうさぎたちの希望と決意が伝わってくる。本作を代表する名曲だ。
 このメロディは30数年前から筆者の耳に染みついていて、自分を元気づけたいときなどに、ふと口をついて出ることがある。すぐれた音楽とは、そういうものではないだろうか。
 そのメインテーマが力強く感動的に鳴り響くのが、トラック9「Climbing The Down/逆境を乗り越えて」。うさぎたちがウォーターシップダウンにたどりついた場面に流れる曲である。曲名は「あの丘を登れ」という直訳のほうがしっくりくる。アルバム前半のハイライトである。
 曲名といえば、トラック8「Violet’s Gone」は「スミレの季節が去って」と訳されているが、本来はメスうさぎのヴァイオレットの死とそれに続くシークエンスにつけられた曲。「ヴァイオレットの死」と訳したほうが適切だろう。しかし、「スミレの季節が去って」というタイトルもダブルミーニングの味があり、雰囲気があって悪くない。
 トラック10の「Bright Eyes And Interlude/ブライト・アイズ」はアート・ガーファンクルが歌う主題歌。農夫の鉄砲に撃たれたヘイゼルをファイバーが探しに行く場面に流れる。アレンジはモーレイが担当し、間奏にメインテーマのメロディが挿入されている。
 ファイバーは霧の中でうさぎたちの死神=死の黒うさぎの姿を見る。その幻がファイバーをヘイゼルのもとに導いてくれる。生と死の幻想と愛する者を想う気持ちが溶け合ったような、静謐で美しい曲である。透明感のあるアート・ガーファンクルの歌声がその印象をより強くしている。
 日本語版では同じ場面に井上陽水がカバーしたバージョンが流れる。こちらもガーファンクル版に劣らず、すばらしい出来。この井上陽水版はCD化の機会に恵まれず、高価なCD-BOXにしか収録されていないのがもったいない。
 物語の後半は、獰猛なうさぎの将軍が支配する恐怖政治の国エフラファとヘイゼルたちとの対決が中心になる。スネアドラムがリズムを刻むミリタリー調の曲がエフラファの脅威を表現する。エフラファへの潜入と脱出、ヘイゼルの死を賭した作戦、将軍との決戦。緊迫感に富んだ音楽をバックに描かれるうさぎたちの闘いは壮絶だ。
 そんな中、ほっと一息つけるのが、トラック12「Kehaar’s Theme/キーハーのテーマ」。キーハーはヘイゼルたちの友人となるちょっと風変りなカモメだ。吹き替え版では藤村俊二の軽妙な演技がいい味を出していた。
 キーハーのテーマはユーモラスで明るいワルツ。このテーマは、エンドタイトルの最後にも登場する。メインテーマや「Bright Eyes」と並ぶ、本作を代表する曲のひとつである。
 ラストに置かれた「The End Titles/エンドタイトル」はオリジナル版のエンドタイトル曲。メインテーマと劇中に現れたいくつかのメロディがメドレーで演奏され、最後にキーハーのテーマで明るく締めくくられる。日本語版ではこの曲の代わりに井上陽水の「ブライト・アイズ」がたっぷり流れる。高揚感のあるオリジナル版としっとりとした余韻を残す日本語版。どちらもそれぞれによさがあり、甲乙つけ難い。
 本作のラストシーン。季節がめぐり、年老いたヘイゼルの前に見覚えのある黒いうさぎが現われる。生きることの意味を考えさせられる場面だ。今の年齢になって観返すと、公開当時よりも深い感慨を覚える。自分にとって死がより身近なものになったからだろう。そんなふうに、観る年齢に応じて発見があるのが本作の魅力である。

 本作の音楽は、日本のアニメ音楽に影響を与えたというわけではない。けれども、筆者にとっては特別な位置を占める映画音楽のひとつである。イギリスの伝統に根差した格調のある音楽は時代を超えた普遍性を持っている。それは、『ウォーターシップダウンのうさぎたち』という作品が持つ普遍性と一体のものだ。本編を未見の方は、ぜひDVDなどでご覧になってほしい。

Watership Down
Amazon

ウォーターシップダウンのうさぎたち [DVD]
Amazon

第517回 時間ありません!

今、めっちゃ忙しいです! 吐きそうなくらい(汗)!

 現在放映中の『ベルセルク』ラストの作画追い込み、『てーきゅう』第9期のコンテ、そして『Wake Up, Girls! 〜新章』のホン読み(脚本打ち合わせ)とコンテ作業! で、この原稿を書いてます(汗)。
 まあ、ここでは毎度お馴染みの忙しいアピール——「ああ、またか」と思ってください。実は本心を言うと「幸せアピール」だったりするので。何しろ今の俺は世に言う「楽しくて楽しくてしょうがない」状態で、新人育成をしつつ、そのスタッフたちと一緒に作ったフィルムが次々できあがってゆく。これで幸せを感じなければバチが当たるというものでしょう? もちろん「どんな作品を作るのか?」の方が重要という人がいるのも分かります。ただ、今の板垣、今のミルパンセがやらなきゃいけないのは作品を作る力を鍛える事。これをまずやってるだけです。正直30代は「なんとか自分の代表作を作らねば!」と意気込んで、身勝手に各スタジオのスタッフを振り回してた自分ですが、その結果、代表作らしいものもできなければ、居着くスタジオもなかったわけ。そこで40代は基本に立ち返り、「自分の作品を作ってくれるスタッフ」などというアニメ監督にありがちな驕りではなく、「自分と一緒に作品を作って、一緒に喜べるスタッフ」を育てていこうと。今現在は板垣の監督作品が立て続けではありますが、それは自分が先輩だからというだけで、もう何年もしないうちに、社内で育った監督のもと板垣が原画で参加する作品ができると思うのです。

アニメはやはり監督だけのものではありません! スタッフ皆のもの!!
そしてスタッフ皆の代表作を作りたいと思うのです!!