アニメ様の『タイトル未定』
342 アニメ様日記 2021年12月12日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年12月12日(日)
午前中はデスクワーク。昼飯はワイフと大塚へ。目当ての店が休みだったので、前から何度も前を通っているけれど、一度も入ったことがなかった居酒屋に。昔風の作りの店で、メニューも昔風なんだけど、どれも美味しかった。やはり老舗は侮れない。午後は年末に刊行する書籍の作業。15時くらいで終わらせて、早めに休むつもりだったけれど、そんなわけにはいかなかった。

2021年12月13日(月)
1月8日(土)にレイトショー「新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL フリクリ レイト」を開催することを告知する。アニメスタイルは2005年に『フリクリ』のトークイベントをやって、2010年と2015年に新文芸坐で『フリクリ』のオールナイトをやった。5年に一度の『フリクリ』イベントということで、2020年にもオールナイトやるつもりだったのだが、コロナのために実現しなかった。1年遅れで今年の秋にやるつもりで動いていたのだけれど、諸般の事情で2022年1月の開催となった。そして、オールナイトがレイトショーになった。チケットは元旦から発売開始だ。
仕事中の流し観で「騙し絵の牙」を観た。こういう映画だったの? 犯罪もので詐欺師と詐欺師が騙し合って、騙し合いにつぐ騙し合いで、最後に全てをひっくり返して高らかに笑う主人公、みたいな映画だと思っていた。何度も劇場で予告を観ていたのに勘違いしていた。話題の「浅草キッド」も観た。確かによくできている。
先週の金曜に「今日は今年で一番忙しい日だな」と思ったけれど、今日も負けないくらいに忙しい。

2021年12月14日(火)
午前中に配信で「怪猫トルコ風呂」をながら観。確かに変な映画なんだけど、最初から「この作品はカルトだ」と思って観るのは、ちょっと違うなあ。録画してあった「Gメン’75」1話をちょっと観る。すっげえいい。めちゃめちゃ力入っているなあ。1話だけで、どんだけフィルム使っているんだ、という感じ。

令和3年12月15日(水)
年末刊行の書籍編集作業の大詰め。

八奈見乗児さんが亡くなられたことを知る。数々の作品で素晴らしい仕事をされた名優だ。特に印象に残っているのが『巨人の星』の伴宙太役、『ヤッターマン』のボヤッキー役、『DRAGON BALL』のナレーターだ。仕事で少しだけご一緒させていただいたこともある。心よりご冥福をお祈り致します。

2021年12月16日(木)
仕事の合間に「和田誠展」に。ワイフの希望で行く計画を立てたのだけれど、本人は仕事疲れのため行くことができず。だけど、この日に行くため、打ち合わせのスケジュールをズラしていたので、行かないのも勿体ないと思って、1人で行くことにした。入場までに時間はかかったけれど、中はそれほどは混んでいなかった。展示物はかなりの数。そして、多岐にわたる。展示の仕方についてもアイデアが豊富だ。「庵野秀明展」でも庵野さんの学生時代の作品が残っているのに驚いたけど、こちらも凄い。そして、学生時代の落書きすら巧い。売店はまるで「和田誠書店」のようになっており、それも楽しかった。図録と共に「和田誠 日活名画座ポスター集」を購入する。
「Gメン’75 DVDコレクション」の1号を開封。先日1話を観たあとに、すぐにAmazonで注文したのだ。1話から3話の途中まで観る。面白いなあ。ずっとBGVとして流すのもいいな。
配信が始まった『アグレッシブ烈子』シーズン4を全話観る。これはシーズン5が本番かな。

2021年12月17日(金)
前にも似たことを書いているかもしれないけれど、年内に刊行する書籍本体の編集作業は一段落しているし、1月発売のアニメージュの作業も終わっているのに、猛烈に忙しい。これか、これが年末か。
最近、インタビューの質問状を書くのに凝ってしまって、数時間かけてしまったりするのだけど、今日は30分で仕上げたよ。いや、それでも時間をかけすぎか。

「中村豊 アニメーション原画集 vol.2」についてのメモ。この書籍セットがどれくらいマニアックかというと、Flip Bookに原画が載っているカットのラフ原画がBookletに載って、さらにラフ原画の前の没ラフ原画まで載るということですよ(全部動きを追って載せています)。「中村豊 アニメーション原画集 vol.2」がどれくらい大人げないかというと、本文16ページの予定で編集作業が始まったBookletが、出来上がったら、96ページになっていることですよ。

2021年12月18日(土)
東映チャンネルで『キン肉マン 晴れ姿!正義超人』をやっている。『キン肉マン』もリマスターするとビスタサイズになるのね。いや、劇場公開時もビスタだったはずだけど。映像はかなり綺麗だった。
午前中に「中村豊 アニメーション原画集 vol.2」の特典小冊子「中村豊の白黒エフェクトの描き方」の校正紙を受け取って、午後はBONESへ。中村さんに校正紙を見てもらう。事務所に戻って「佐藤順一の昔から今まで」の原稿を進める。少し休んでから新文芸坐に。オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 133 2021年の傑作!! ポンポさん・肉子ちゃん・ハサウェイ」を開催。トークでは平尾隆之さんが積極的に語ってくださった。

第749回 つまらない答え

 この間、大好きなYouTubeを観ていたら、

貴方にとって“アニメ”とは何ですか?

的なCMが流れていました。もちろん、これは一視聴者に向けて発された言葉だと思われるので、我々アニメ業界人が考えることではないのでしょうが、敢えてふと考えてみたのです——自分にとってアニメとは? と。そしたら、ふたつ答えが出ました。
 ひとつは一視聴者としての自分にとって、アニメとはハッキリ“出﨑統”です! 人生の全てを“出﨑アニメ”から学んだと言っても過言ではない板垣にとって、当たり前な答えです。少なくとも自分は、出﨑アニメ以外不要論!
 もうひとつの答え、業界人である自分にとって、やはり

アニメとは“仕事”!

です。まあ、世間的に好きなことを生業にしている者が軽々しく“仕事”とか言うと、これまた打算的で良いイメージでは受け入れられないのは分かっているのですが、板垣個人としては“仕事”って決して打算でも悪いイメージでもありません。単純に言って生活費を稼いで人生を成立させる手段が“仕事”なはずです。自分の場合、たまたま運よくそれがアニメだったと。「食う為にやってる~」? 全然結構な話じゃない! むしろアニメを“皆に褒め称えられるための手段”とか“アニメ著名人として富と名声を得て芸能人同様の扱いをされたい”か、ましてや“~賞を取るため”などと捉えてる方がよっぽど歪だと思います。そもそも、

別に誰に褒められなくても、日々の生活を送ること自体が、皆に平等に許された人生!

が人間の基本でしょう。そういったメッセージを教えてくれるのもまた“出﨑アニメ”で、人生を半分以上消化したこの歳になるとさらに実感できてきます。
 仕事としてもアニメ程面白いものはなく、

二次元の中にペン一本で空間とキャラクターを作り出し、さらにそれを動かす!

という快感は何者にも勝る魅力に満ちていますし、これからも続けたいと思う仕事! たぶん、どこからも仕事がこなくなっても、一人で作画ツールを使ってアニメ作ってると思います。だから板垣に取っては、

面白くて楽しくて絶対に辞めたくない仕事——それがアニメです!

と今のところ、断言!

 後、近況報告として、今ミルパンセ制作中の作品(シリーズ構成・総監督)に関してはまだ発表できないのです、スミマセン。が、去年夏頃~今年初めに掛けて、作画の指導やら原画作業したもの、そして演出処理のお手伝いをした下請け仕事の方は近々放映されると思うので、よかったら観てください(そちらもまだタイトルは言えませんが)。そもそもノンクレジットのもあるか?

第187回アニメスタイルイベント
この人にもっと話を聞きたい 長濵博史

 4月2日(土)のトークイベントは「第187回アニメスタイルイベント この人にもっと話を聞きたい 長濵博史」です。監督として『蟲師』『惡の華』などで非常に意欲的な仕事を残し、現在は『UZUMAKI』を手がけている長濵博史さん。このイベントでは、インタビュー形式で学生時代の話から現在までをうかがいます。

 なお、このイベントは連続企画になる予定です。今回はうかがえるところまでうかがって、続きは続編イベントとして開催することになるはずです。今回も配信は先行してLOFT PROJECTがツイキャスで行い、その後でアニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。  

 チケットは現在発売中。詳しくはLOFT/PLUS ONEのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT CHANNEL
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/broadcast/210120

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第187回アニメスタイルイベント
この人にもっと話を聞きたい 長濵博史

開催日

2022年4月2日(土)
開演12時 終演14~15時予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

長濵博史、小黒祐一郎

チケット(ツイキャス)

視聴チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第748回 コンテ描く時間を!

 ——いきなりですが、また短い原稿になりそうです!

撒いていたコンテマンからギブ・アップが出て、急遽自分の方でやる事になりました故!

 結構UP予定日をぶっちぎってのギブ・アップで(汗)。スケジュールを立て直すには、チェックする者が直に描いた方が早い——ま、シリーズをやるとままあること。でも今回の自分は“総監督”なので、こういう事故もカバーし易く、打ち合わせなどは現場の監督に任せて、こちらは「ま、久々にコンテ切る(描く)のも楽しいか~」と。こういう時、ギブ・アップした本人や制作会社を責めてもなんにも前進しません。自分の場合、コンテラフを淡々と上げ「次はこんなことない人に振ろう」と決意を新たにするのみ。

よって、ゴメンナサイ! コンテ作業に戻ります、また来週!

第227回 ミラクルはお好き? 〜ミラクル☆ガールズ〜

 腹巻猫です。SOUNDTRACK PUBレーベル第29弾「ミラクルガール オリジナル・サウンドトラック」を3月30日に発売します。1980年に放映されたTVドラマ「ミラクルガール」の初のサウンドトラック・アルバムです。「ミラクルガール」は由美かおるが主演した女性探偵アクションドラマで、音楽は渡辺岳夫が担当。おしゃれで軽快なサウンドは、渡辺岳夫が手がけた『キューティーハニー』の音楽に通じるところがあります。ただいま予約受付中!
https://www.amazon.co.jp/dp/B09VKLP45H/
試聴用動画も公開中です。


 もちろん、「ミラクルガール」と『ミラクル☆ガールズ』のあいだにはなんの関係もない。
 とおことわりした上で、今回はTVアニメ『ミラクル☆ガールズ』の音楽を聴いてみたい。ネットで「ミラクルガール」を検索すると、高確率で永井真理子の歌う曲「ミラクル・ガール」とマンガ・アニメの『ミラクル☆ガールズ』がヒットする……というご縁である。
 『ミラクル☆ガールズ』は1993年1月から12月まで放送されたTVアニメ。「なかよし」(講談社)に連載された秋元奈美の同名マンガをアニメ化した作品だ。
 松永ともみと松永みかげは、性格も趣味も正反対の双子の姉妹。ふたりには秘密があった。姉妹が心を合わせるとテレパシーやテレポーテーションなどの超能力を使うことができるのだ。ふしぎなふたりの学校生活や恋や冒険を描くファンタジック・ストーリー。
 「なかよし」誌上では「美少女戦士セーラームーン」と並ぶ2大連載だったという人気作品。その「セーラームーン」は1992年にアニメ化されている。
 アニメ版『ミラクル☆ガールズ』は、『セーラームーン』との差別化を考えてか、異なるテイストをねらって作られたようである。
 原作は中学生編からスタートするのに、アニメはいきなり高校生編から始まる。当初の監督は『魔法のスター マジカルエミ』などを手がけた安濃高志(第1話〜第17話まで担当)。『マジカルエミ』でも印象的だった、セリフに頼らず、細かい芝居や風景描写を重ねて心情を表現する演出が本作でも見られる。『セーラームーン』より対象年齢高めの「お姉さん向け」に作られている印象なのだ。

 そんな作品だから、音楽もちょっと大人っぽい。
 音楽を担当したのは大島ミチル。本作は大島ミチルが手がけたアニメ作品の中でも初期のもののひとつである。
 大島ミチルといえば、オーケストラを使った華やかでスケール感豊かな音楽がイメージされる。が、本作の音楽は、シンセサイザーと少数の生楽器によるミニマムな編成での演奏。弦楽器がバイオリン1本しか使われていないのだから徹底している。
 そのぶん、ミュージシャンは豪華だ。ピアノとシンセサイザーは大島ミチル自身。バイオリン・篠崎正嗣、パンフルート・旭孝、ギター・土方隆行、ベース・高水健司と、日本の映像音楽やポップスを支えてきたミュージシャンが集められている。
 コーラスとコーラスアレンジに黒石ひとみが参加していることにも注目したい。黒石ひとみは、のちにTVアニメ『プラネテス』(2003)、『LAST EXILE』(2003)、『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006)などの音楽(楽曲提供や劇伴作曲)で活躍するアーティスト。『ミラクル☆ガールズ』はその10年前の作品になる。
 音楽の内容もユニークだ。リズムは控えめで、しっとりしたメロディを聴かせる曲やサウンド重視の曲が多い。ピアノの音、シンセサイザーのふわっとした音やキラキラした音、民族楽器の音などが耳に残る。ヒーリングミュージックや環境音楽系のサウンドで編まれた音楽なのである。のちに大島ミチルが手がけた魔法少女アニメ『魔法のステージ ファンシーララ』(1998)、『リトルウィッチアカデミア』(2013)などと比べても、だいぶイメージが異なる。
 クラシック系でも、ジャズでも、ロックでもない。そのサウンドをひと言で表現するなら、「ニューエイジ・ミュージック」と呼ぶのがぴったりくる。
 ニューエイジ・ミュージックに明解な音楽的定義はないが、ウィンダム・ヒル・レコードのピアノ音楽や喜多郎などのシンセサイザー音楽が、この時期そう呼ばれていた。ヒーリング音楽や環境音楽に近いが、もっとポップス寄りの作家性の強い音楽である。
 そこで思い出すのが、大島ミチルが1993年に発表した「ワーズワースの庭で」(1994年から「ワーズワースの冒険」に改題)のテーマ音楽「シャ・リオン」。これもニューエイジ・ミュージック的な曲だった。また、1990年に篠崎正嗣とのユニット「式部」で手がけたNHKスペシャル「大英博物館」の音楽もエスニカルなニューエイジ・ミュージックの趣がある。
 『ミラクル☆ガールズ』もその系譜につらなる作品なのである。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「ミラクル☆ガールズ オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで1993年3月にソニー・ミュージックレコーズから発売された。初回盤はデジパック仕様。1993年8月には2枚目のサントラと呼べるアルバム「ミラクル☆ガールズ リミックス」が発売されている。
 「オリジナル・サウンドトラック」を聴いてみよう。収録内容は以下のとおり。

  1. キッスの途中で涙が(歌:GARDEN)
  2. ミラクル・ブレス -Wake Up-
  3. ミステリー —神秘の国—
  4. 伝説の花
  5. クリスタル・ウェイヴ〜サスペンス
  6. Premonition(予感)
  7. グッド・モーニング!! ガールズ
  8. ハーフ・ムーン
  9. ミラクル・ブレス
  10. メモリー -Good Night-
  11. ふたりじゃなきゃだめなの(歌:Dio)

 1曲目と12曲目がオープニング主題歌とエンディング主題歌。それぞれフルサイズで収録されている。残る10曲がBGMである。
 アニメサントラとしては異色のアルバムだ。本編でたびたび使われているコミカルな曲や明るい日常曲はほとんど収録されず、神秘的な曲やエスニカルな曲が主に選ばれている。また、曲の頭にSEがミックスされていたり、2つの曲がクロスフェードする形で1トラックに編集されていたりする。アニメで流れていた音楽を楽しむというより、独立した音楽作品として聴くことを意識したアルバムになっている。
 これは、いわば『ミラクル☆ガールズ』の「ミラクル」に着目して構成されたニューエイジ・ミュージック・アルバムなのである。
 2曲目の「ミラクル・ブレス -Wake Up-」は時計と目覚ましのベルの音から始まる曲。超能力発動場面に流れるSE的なサウンドに続いて、バイオリンとシンセサイザーによる、ゆったりとした神秘的な音楽が聴こえてくる。曲名の「ミラクル・ブレス」とは、ともみとみかげが左手首に付けているブレスレットのこと。ふたりが超能力を使うとブレスレットの花の飾りが光る設定だ。10曲目の「ミラクル・ブレス」はこの曲の別アレンジ。超能力発動シーンや、第10話の雪の大樹が現れるシーン、第17話の過去の幼い自分と出逢うみかげなど、幻想的な場面に使われていた。
 トラック3の「ミステリー —神秘の国—」はざわめく人の声から始まる。雑踏の中のイメージなのだろう。バグパイプ風の笛の音がエキゾティックな旋律を奏で、異国を旅している気分になる。曲の終盤は、ダルシマーかツインバロム風の弦の音が東欧風のメロディを演奏するパート。この部分は第1話の冒頭など、ミステリアスな場面にたびたび使われている。
 トラック4「伝説の花」はパンフルートが哀愁を帯びたメロディを奏でるフォークロア風の曲。バイオリンとギター、ベース、シンセなどの音が重なり、ファンタジックな曲に仕上げられている。第1話では、あこがれの倉茂先輩の海外留学を知ったみかげの心情を表現する曲として選曲されていた。
 トラック5「夢」はたゆたうようなバイオリンのメロディにパーカッションやベースがからむドリーミィな曲。第11話の太古の恋人たちの別れの場面や第18話のともみとみかげがユニコーンに乗って夜空を飛ぶ場面など、本作の中でもとりわけファンタジー色の強い場面に流れていた。
 テクノっぽいシンセサウンドから始まるトラック6「クリスタル・ウェイヴ〜サスペンス」はサスペンスシーンによく流れた曲。後半のシンセがリズムを刻むパートは追っかけ場面の定番曲である。
 トラック8「グッド・モーニング!! ガールズ」は本アルバムの中でもサントラらしい1曲。鍵盤ハーモニカのソロに続いて、軽快なリズムと女声コーラスによる伴奏が始まり、鍵盤ハーモニカが軽やかなメロディを演奏する。さわやかな朝の情景を思わせる曲である(この曲はあまりニューエイジっぽくない)。ともみとみかげの明るい日常のシーンによく使われていた。
 トラック9「ハーフ・ムーン」は、大島ミチル自身の演奏によるピアノソロの曲。本編ではピアノソロの曲がたびたび使われており、明るい曲、悲しい曲、主題歌アレンジなど、さまざまな曲想のものが確認できる。このトラックは、その中から代表して1曲という感じなのだろう。月を見上げてもの思う少女の姿が目に浮かぶような、幻想的でロマンティックな曲である。第15話の桜の花びらが舞う中にたたずむみかげ(の分身)の場面などに使用された。
 ねじを巻く音から始まるトラック11「メモリー -Good Night-」は、オルゴールの音色で奏でられるリリカルなワルツ。タイトルどおりのノスタルジックな曲である。同じメロディをシンセで演奏した曲もよく使われていた。
 曲名を見ればわかるように、本アルバムは「Wake Up」で始まり、「Good Night」で終わる構成になっている。ふしぎな姉妹のミラクルな日常をニューエイジ風サウンドで綴った1枚——そんなコンセプトで作られたアルバムなのだろう。
 本アルバムのサウンドプロデュース&ミックスとしてクレジットされているのが、シンセサイザープログラミングも担当した伊藤圭一。実は伊藤圭一は「大英博物館」のサウンドプロデュースも手がけており、大島ミチルが本作のあとに手がけた劇場アニメ『はじまりの冒険者たち レジェンド・オブ・クリスタニア』(1995)やTVアニメ『鋼の錬金術師』(2003)、黒石ひとみが手がけた『コードギアス 反逆のルルーシュ』などの音楽作りにも参加している。『ミラクル☆ガールズ』の独特なサウンドとアルバムを作り上げたキーパーソンは伊藤圭一ではないか、と筆者は推測している。

 2枚目のアルバム「ミラクル☆ガールズ リミックス」もまた、伊藤圭一のサウンドプロデュース&ミックスによる作品。ブレイクビーツに乗せてBGMをメドレーで聴かせる、DJ向けを意識したようなアルバムだ。これまたアニメサントラのイメージを打ち破るコンセプトに驚かされる。サントラファンとしては、ふつうに聴かせてほしいと思うけれど……。
 ただ、このアルバムの3曲目に収録された「Miracle Girls Medley」は、BGMを余計なミックスなしにメドレーで聴かせるトラック。後期のアバンタイトル音楽やサブタイトル曲、アイキャッチ曲、みかげのテーマ、ともみのテーマなど、劇中でなじみのある曲を聴くことができる。本作の音楽アルバムの中で、もっともサントラらしいトラックと言えるだろう。これを聴くと、「あれ、意外とファンキーな曲や軽快な曲も多いな」と思ってしまう。
 そう考えると、「ミラクル☆ガールズ オリジナル・サウンドトラック」はプロデュースの力を強く感じるアルバムだ。ニューエイジ・ミュージックとして聴ける魅力的なアルバムであるが、それを成立させたのは、音楽自体もさることながら、ミックスとプロデュースの力によるところが大きい。ふつうにサウンドトラックとして作っていたら、まったく印象の異なるアルバムになっただろう。「ミラクルな仕事だなあ」と思わせる1枚である。

ミラクル☆ガールズ オリジナル・サウンドトラック
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ミラクル☆ガールズ オリジナル・リミックス
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第747回 観なくてもよくないですか?

年々、無欲の度が増している気がします!

 それは良いことなのか? 悪いことなのか? こないだカミングアウトしたとおり、アニメ業界人としての必須科目的アニメも、バシバシ観逃している板垣です。別にどんな職種でもよく言われる、“「好き」を仕事にすると「嫌い」になる”的な贅沢な不幸話ではありません。それで言うなら俺、マンガ読むのも、アニメ観るのも、ゲームやるのも、好きで好きでのめり込んだことなんてほぼありませんから。むしろ多分、

それらを観た人・やった人の話を聞く方が好きなんです!

 エンタメ自体を己で楽しむことに意味を感じていなくて、“そのエンタメを味わった人が何を感じたのか?”にこそ興味があるのです。だから俺の場合アニメの“感想”は言っても、“批評”らしいことは自分発で言うことが殆ど皆無なんです。Twitterも自分ではやらないけど、他人の発信を見るのは嫌いじゃないんです。「あ、世の中こんなこと考える人が増えたんだ~」と。
 今頃気付くことじゃないかも知れないけれど、恐らく「客観視点」で生きてきたし、これからもそう生きたいと思ってるんでしょう。でも、何かを作る時だけ「主観人間」になりたい、と。

 で、この前の日曜日——

ホント、久っ々に(コ●ナ禍以降初めて?)、BOOKOFFにて中古Blu-rayを買い漁りました!

 自分、やっぱり映画・アニメはレンタルとか配信とかより、ソフトとして実物が欲しい人間なので、BOOKOFFで「今晩何買って観ようかな~」と店内散策するのが至福の時なんです! まず手に取ったのは「八甲田山」(1977年)。木村大作撮影監督の監修による4Kリマスター版(前に買ったDVD版は画質が酷かったので今回Blu-rayで買い直し)。脚本/プロデューサー・橋本忍、森谷司郎監督作品。森谷監督と言えば、黒澤明監督ファンの皆さんならご存知、「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」などの黒澤映画の黄金期を支えた名助監督! 監督作品としては、本作同様に大ヒットした「日本沈没」(1973年)ももちろん有名ですが、個人的には「小説吉田学校」(1983年、残念ながら遺作)が好き! で、「八甲田山」は自分が3歳の時の映画。当然、TV放送などで知ってた程度。我々世代にとって本作以外にも「二百三高地」(1980年)や「連合艦隊」(1981年)といった全尺2.5~3時間に及ぶ超大作は“TVで好きなレギュラー番組を平気で3~4時間ぶち抜いて放映する”という、子供からするととてもはた迷惑な映画群の一本。高校生くらいから映画自体に興味を持つようになって初めて認めるタイプの作品です。昭和だったら「観てたら先生に褒められる賢い子」で「これを観ずにアニメばっか観てると馬鹿な子」と区分けする物差し的役割を担っていた、いわゆる「高尚映画」。でも、昭和の子供にとっての「我慢が伴い、本音を言うと“退屈”な2時間越え映画」も、成人迎えた頃になると「うん、中々いいじゃない!」と思える不思議。公開当時のリアルタイムに劇場で観たら、一種アトラクション感覚だったのではないでしょうか?

密閉された暗闇で共に大画面を見上げる何百人の観客と共に、猛吹雪で遭難する雪中行軍を“疑似体験”するヴァーチャル感を味わうことができる豪華な映画だったはずです!

 次はアニメ。『八百八町表裏 化粧師』(1990年)Blu-ray。石ノ森章太郎原作による、江戸後期を舞台にした“ビジネス漫画”。化粧師と名乗る主人公が、「江戸の町を化粧する!」と人々のメイクはもちろん、町ぐるみイベントをプロデュースしたりと、とにかくアイデアマン。TBS「ギミア・ぶれいく」内、あの『藤子不二雄(A)の 笑うせぇるすまん』の充電期間に挟まれたアニメで、まだ名古屋にいた頃、リアルタイムで毎週ビデオ録画していたものの、当然当時のVHSとか残っておらず、これも買い直し(?)気味。いや、でもこれ──

改めて観直して本当に良かった(現在2周目視聴中)!
本当に素晴らしい!

 総監督・福冨博、作画監督・木上益治のあにまる屋(現・エクラアニマル)コンビ。『怪物くん』(1980年)や『キャッツ♡アイ』(1983年)などでご活躍されてた方々。自分的に面識はないのですが、新人だった頃、先輩方から名前を聞いて知っていました。会社は別でも、巧い人は巧い人とどこかで繋がってるのがアニメ業界の狭いところ。福冨監督はTVスペシャル版『プロゴルファー猿』(1982年)の監督や『ハイスクール!奇面組』(1985年)『ついでにとんちんかん』(1987年)のオープニング・エンディングが最高だと思ってます。特に『奇面組』『とんちんかん』のOP・EDは洒落てて好き。“背景動画(背景を作画で描いて動かす)”が印象的な監督で、『化粧師』でもそれは発揮されてます。監督御自身によるコンテ本数は多くはないですが、どれも背景動画が効果的な箇所で使われて「ニヤリ」とさせられます。木上益治作画監督は後に京都アニメーションの取締役で御活躍される方。『化粧師』も作画がとにかくハイクオリティ! 芝居の一挙手一投足がちゃんと作監修正で押さえられてるのが分かります。しかも最終話(第22話)ではコンテ・演出までなさってます。これまた素晴らしい出来で、今ではダサいと言ってやらなくなった“80~90年的イメージ画面”も木上さんがやるとダサいどころか、一回りして美しく見せるセンスの良さ。シャープでカッコいいアクションシーンも、手足のフォルムから全体のポーズまで本当に洗練されてて、現在でも十分通用する“粋”な作画! こんなに凄い最終回がデータを観ると、“未放映”とのこと(第17~22[終]話が未放映話数)。勿体ない!! 何やってるんですかTB●さん!?

江戸時代をリアルに描く! ではなく、TVの製作内で“感じさせる”演出・作画が素晴らしい!

 そして最後は言わずと知れた『チャージマン研!』(1974年)のBlu-ray! マニアの間では『チャー研』の愛称で親しまれている名作で、だーいぶ前、今石洋之監督がDVD-BOX買ってたのを羨ましく思い出し、BOOKOFFで発見! しかもBlu-ray! 今さら即買い! 内容は一体何が“チャージマン”なのかも視聴者に知らせもせず突き進む怪しさ! しかもSE(効果音)もほとんどない! 変な尺埋め追っ駆けっこ!

おかしなことが、とにかくいっぱい!

第746回 50代に向けて

やった!! 脚本(シナリオ)、一通り終わりました!!

 後は原作&クライアント・チェックを受けての微調整をするのみ。これまでの話数もそんなに修正指示はなかったので、まあ、すぐ終わるでしょう。つまり体感で全体95%の脚本が終わった感じ。でもすでにコンテ・チェックも同時進行に進めているし、さらにもうすぐ音響も始まるし~で、相変わらず暇になることはないのでしょうが。
 この連載を初期から読んで下さってる方は(ま、いないか)、板垣が40代に入ってからの仕事のやり方が変わったことに気付きませんか? はい、まあそんなに興味ないのは分かっているので、さっさと自分から話を進めます。先ずは、知人・友人と一緒に仕事するのをほぼ止めました。これはそんなに意識的に誰かと喧嘩したとか嫌いになったとかではなく、単純に会社(ミルパンセ)の新人育成が忙しくなって時間的に都合が合わなくなったからです。他意は全くありません。ただ、ご心配なく。連絡を取る必要がある時は取るし、今までどおり長電話になったりしてますから。そう。その友達付き合いの裏で、なるべく会社中心で作品作りをしたいと考えるようになりました。これは数年前にもここで語ったと思いますが、理由は簡単。

自分は30代でヒット作を生み出せなかったからです!

自覚がハッキリあります。20代は作画・コンテ・演出を中心に技術の修練。運よく29歳の時監督の仕事がいただけたので、30代は監督としてやれるとこまでやってみたんです。——で、ダメでした。ダメというのは、自分は業界の先達を統計的に見て、30代でそこそこ成果を出して、ピンのアニメ監督として認められない限り、40代以降でコンスタントに監督の仕事は貰えないのが分かっていたからです。そういうものです、業界は。その“30代の成果”がなかった人は自宅作業の“コンテ描き”になる40代の未来しか見えていませんでした。いや、その監督順番待ちコンテマンを否定する気は全くありません。その人の好き好きですから。どんなジャンルでも“個人単位のデスクワーク”は効率良く稼げるもので、そりゃあTVシリーズ月4本コンテ切れ(描け)ば、お金持ちになれます。俺も週1コンテくらいはできます(実際そんな時期ありました)が、やっぱ自分はどうしても制作現場が好きなので、稼ぎは二の次。スタジオ入って作画やら処理でギャーギャー喚きたいタチなんです。よって30代終わりにミルパンセで新人の育成からやる! に方向転換したと。
 それでも30終わり~40入口、つまりその過渡期はまだ大きな会社に出入りして監督してたんですが、所属するつもりはありませんでした。学生時代の同期が下請け会社で出来高(単価制)生活苦をおくっていた駆け出し時代、板垣はテレコム・アニメーションフィルムの社員だったため、大手の裕福さも分ってたし、逆に不自由さも心得ていました。例えば単純計算で監督が10人いる大手のスタジオは、自分に監督が回ってくるサイクルが4~5年に1本、下手すると体よく“監督待機中コンテ・演出マン”で10年とかになったりします(ヒットタイトルをモノにした方は別ですが)。だから、テレコム退社した時点で「次、社員になるなら自分達で作った会社で!」と決めていました。30代に通過した会社からも社員契約のお誘いはあったのですが、全部お断りして「フリーでやります」と。テレコムの先輩方を裏切った(恩返しできず辞めてしまった)ことに対する“禊”の気持ちでもありました。
 そんなこんなで自分の40代は個人事業主として、あちこちのスタジオで監督してはアニメーターの面倒すら見ず、作家気取りで自分の年収だけを上げて回るようなことだけはしたくなかったのです。そもそもそういう制作現場に対して無責任な人が「アニメーターの待遇改善を!」と謳う団体に加入して、国から助成金やらを貰ってアニメ制作費にしたとて、フリーランスのアニメーター自体が無責任な仕事(気が向いた時にラフ原描き逃げなど)を自ら見直さない限り、数千万円程度では焼け石に水。アニメーターもTwitterとかで「国が~」「政府が~」とか飛ばしていないで、己のワーク・スタイルを見直し、

タイム・カード押して毎日定時に出勤するからちゃんとした時給で貰える社員にして下さい!

くらい言ってからの話! いつ手を付けるのか? どこにどう使われるか? も分からない相手に銭払えないって、クライアントも。と、少なくとも現時点ではクライアント(スポンサー)側より、俺たちアニメ制作スタッフ(作り手)側の方の意識改革がまずもって急務かと! あくまで板垣個人はそう思って、行動しています。

 ちょっと熱く逸れましたが話を戻して、自分が目指そうとした40代とは、

“自分一人で”ではなく“自分も含む会社全体”で仕事がいただけて、そして作れるようになること!

なんです。地位も名誉も金も諦めれば、ただ一つ「監督として作品を作り続けたい!」くらいの願いは叶ってもバチは当たらないかと。ちなみに自分は少々調子に乗ってた30代よりギャラは半分に設定して社員にさせてもらいました。もちろん俺自身、後輩の見本になるため、タイムカードも毎日定時で押しています。
 数年前、俺から某プロデューサーに、

「板垣個人では“ヒット作一つ持ってない監督”だから、某Pさんが名前出しても(企画は)通らないだろうけど、“俺も含む会社単位”で、ならどう?」

って、訊いたことがあります。すると某Pからは、

「人材育成好きの板垣さんが育てたスタッフと板垣監督になら、仕事は作れます!」

と返されました。それがすべて。某Pは未だに俺のこと「賢い」と言ってくれてます。でも、俺に言わせると賢いとかいうより単なる生存本能とでも言いましょうか? 人間、謙虚に分をわきまえさえすれば「最後の一つ」くらいの願いは叶うものです。俺に言わせれば、自分の分をわきまえず「好きな仕事だけやり」「身の丈以上の金が欲しくて」「世界中から褒められて“俺だけ”有名になりたい」と思ってる人って、ムシが良過ぎます。

──皆さんの周りにそう言う人、居ませんか?(て、もし居ても一報は不要です。)

第186回アニメスタイルイベント
【合田浩章スケッチブック刊行記念】合田浩章 TALK LIVE

 合田浩章による初のオリジナル女性イラスト画集「合田浩章スケッチブック」の刊行を記念したイベントを開催する。タイトルは、「【合田浩章スケッチブック刊行記念】合田浩章 TALK LIVE」。合田浩章をメインゲストに迎え、アニメーターを目指した切っ掛け、『ああっ女神さまっ』をはじめとした監督作やキャラクターデザイナーとして参加した『おねがい☆ティーチャー』『アマガミSS』等の話題、あるいは、どのようなことを考えて画を描いているかなど、たっぷりと話してもらう予定だ。聞き手は本書の編集を担当したアニメスタイル編集部のスタッフが務める。

 イベントでは、Twitterの質問箱で合田さんへの質問を募集している。質問の全てに答えることはできないかもしれないが、なるべく多くの質問に答えてもらう予定だ。質問は、以下の「合田浩章スケッチブック」告知アカウントのリンクからどうぞ。質問には、合田さんの作品や彼の画のどんなところが好きなのかも書きそえてもらえると嬉しい。

質問箱(「合田浩章スケッチブック」告知アカウント)
https://peing.net/ja/gohda_book_info

 このイベントは、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、配信のみでの開催となる。先行してロフトグループによるツイキャス配信を行い、その後にアニメスタイルチャンネルで有料会員向けに配信する。

 配信の視聴チケットは既に発売中。数量限定でサイン入りの「合田浩章スケッチブック」と特典冊子が付いた視聴チケットも発売している。詳しくは、以下のロフトグループのページを確認してほしい。

■関連リンク
ロフトグループ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/broadcast/206436

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

『やがて君になる』『おねがい☆ティーチャー』の合田浩章による初のオリジナル女性イラスト画集を刊行!
http://animestyle.jp/news/2022/02/22/21570/

■合田浩章プロフィール
アニメーター、演出家。1965年3月24日生まれ。北海道出身。高校時代からアニメーターの活動をはじめ、『六神合体ゴッドマーズ』で原画デビュー。『ああっ女神さまっ』ではOVA、劇場版、TVシリーズ、OADで監督を務めた。キャラクターデザインを担当した作品に『おねがい☆ティーチャー』『アマガミSS』『恋と選挙とチョコレート』『やがて君になる』等がある。

第186回アニメスタイルイベント
【合田浩章スケッチブック刊行記念】合田浩章 TALK LIVE

開催日

2022年3月24日(木)
開演19時

出演

合田浩章、アニメスタイル編集部スタッフ

チケット

ツイキャス配信チケット/1,300円
サイン入り書籍付視聴チケット/5,500円(送料込み)

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第226回 特別な瞬間 〜スーパーカブ〜

 腹巻猫です。去る2月に急逝されたアニメーター・大橋学さんの追悼上映会が3月5日と6日に三鷹で開催され、参加してきました。両日とも上映終了後にトークセッションがあり、大橋さんの仕事や人柄を偲ぶことができました。
 その中で上映された『ちびねこトムの大冒険 地球を救え!なかまたち』(大橋学さんがキャラクターデザインと作画監督を担当)が4月にMorc阿佐ヶ谷で上映されます。未見の方はこの機会にぜひどうぞ。
https://www.morc-asagaya.com


 今回紹介するのは昨年(2021年)4月から6月まで、全12話が放送されたTVアニメ『スーパーカブ』の音楽。
 昨年、筆者が観て気に入った作品のひとつである。サウンドトラックの特殊なリリース形態も気になった。そのことは、あとで触れたい。
 『スーパーカブ』は、トネ・コーケンのライトノベルを、監督・藤井俊郎、アニメーション制作・ スタジオKAIのスタッフでアニメ化した作品。
 親はいない、お金もない、趣味もない、友達と呼べる人も将来の目標もない、ないないづくしの女子高校生・小熊。坂道を自転車で通学するのに疲れたある日、中古のスーパーカブを破格の安さで手に入れる。カブに乗り始めた日から、小熊の日常は一変した。目に映る景色が色づき、同じくカブに乗る同級生・礼子と話をするようになった。小熊の世界は少しずつ広がっていく。
 小熊の日常を丁寧に描く、一見地味な作品だ。ふだんは人物も背景も彩度を落として描かれているので、ますます地味に見える。しかし、小熊が初めてカブに乗った場面ではぱっと色彩が鮮やかになり、小熊の感動が目に映る情景を通して伝わってくる。この「心が動いたときに世界が色づく」演出は全編を通して使われていて、本作の特徴のひとつになっている。
 丹念な日常描写と、小熊の個性的な言動が見どころで、目が離せない作品だった。スタジオKAIのサイトに掲載された根元歳三(シリーズ構成・脚本)のインタビューを読んだら、『赤毛のアン』のような作品をやりたいと思っていた……と書かれていて、なるほどそういう方向なんだと納得した。
 なにげない日常の中に、輝くような特別な瞬間がある。これはそういう瞬間をとらえた作品である。

 本作は音楽演出にも特徴がある。音楽が流れる場面が極端に少ないのだ。第1話ではわずか3曲しか流れない。第2話では5曲。以降も5曲から6曲というのが標準的な曲数で、意図的に音楽の使用を抑えていることがわかる。
 どこにどんな曲を入れるかは、藤井俊郎監督のプランによるものだそうだ。スタジオKAIのサイトのインタビューで、藤井監督は、場面を説明するようなわかりやすい音楽演出は避け、音楽と映像がどちらも印象に残るように、「ここは絶対必要だと感じるところに音楽を乗せたかった」と語っている。
 結果、音楽が流れるシーンが際立ち、音楽が聴こえることが特別な意味があると感じられる作品になった。音楽もまた、いつもと違う「特別な瞬間」の表現なのである。
 本編ではクラシック音楽が多用されている。これも本作の特徴のひとつ。選曲は藤井監督自身によるもので、脚本制作と並行して選曲が進められた。最終的に、ドビュッシー、ラベル、サティ、ショパンらのピアノ曲を中心に16曲が使用されている。使用された音源はすべて本作のために演奏されたものだ。原曲そのままではなく、使用するシーンに合わせて、テンポや長さを調整して演奏されている。
 印象的なものを挙げると、まず第1話の冒頭に流れるドビュッシーの「アラベスク 第1番」。山梨県の自然豊かな街の情景を瑞々しい音色で彩って、視聴者を作品世界へと導く。同じ第1話の終盤ではドビュッシーの「月の光」が流れて、カブを手に入れた小熊の心情を伝えている。
 第3話のラストで小熊が礼子から携帯電話の番号を書いた紙をもらう場面では、リストの「愛の夢」が流れて、小熊のときめきを表現する。ロマンティックな演出だ。
 第11話冒頭で、小熊が川に落ちた同級生・椎を救助に向かう場面。この場面だけはピアノ曲ではなく、ビバルディのバイオリン協奏曲「冬」が選曲されている。細かく刻まれる弦のフレーズが小熊の不安と焦燥を表現する。映画音楽的な使い方である。
 そして、第12話の冒頭では、エルガーの「朝の挨拶」がピアノソロで演奏されて、特別な1日の始まりを印象づける。
 よく考えられた、そして、とてもぜいたくな音楽演出である。
 こうしたクラシック曲を補完するのが、本作のために作られたオリジナル楽曲。作曲は石川智久とZAQの2人が担当した。
 石川智久は、TVアニメ『ウィッチクラフトワークス』(2014)、『魔法陣グルグル』(2017)等の音楽を手がけたテクノユニット「TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」のメンバーで、単独でもTVアニメ『イノセント・ヴィーナス』(2006)、『黒神 The Animation』(2009)、『咎狗の血』(2010)等の音楽を担当している。ZAQはアニメやゲーム作品への楽曲提供などで活躍するシンガーソングライター。劇伴音楽を手がけるのは本作が初めてだった。
 音楽制作にあたっては、日常感を重視した作品なので、「劇伴もドラマチックにならないように」とリクエストされたという。クラシック曲の音源制作も石川智久が担当している。
 本作のために作られたオリジナル楽曲は全22曲。クラシック曲が別にあるとはいえ、1クールのアニメとしては驚くべき少なさだ。しかも、そのうち半分くらいは1回か2回しか使われていない。そのため、あたかもその場面のために書かれた曲のように感じられる。
 特定のシーンにしか使われない曲があるいっぽう、何度も使われた曲もある。フィルムスコアリングと溜め録りをミックスした作り方である。曲の分担は2人で相談して、ギターが入る曲はZAQ、ゆったりしたテンポの曲は石川、といった具合に得意分野を考慮して決めていったという。
 こうして作られたクラシック音楽とオリジナル音楽が、本作の「特別な瞬間」を彩ることになった。

 本作のサウンドトラック・アルバムは、2021年8月に発売されたBlu-ray BOXの特典の形でリリースされた。といってもパッケージに入っているのはCDではなくDLカード。カードに記載されたコードを指定されたサイトで入力すると音源がダウンロードできるしくみだ。ダウンロード期限は2024年8月31日まで。
 この仕様を知ったとき、「サントラもついにここまで来たか……」と思った。同梱CDであれば、発売時に買い漏らしても、あとから入手することが可能だ。が、こういうシステムだと、あとからBlu-ray BOXを入手しても、ダウンロード期限が過ぎれていればサントラは手に入らない。ダウンロード回数にも制限があるようなので、期限内であっても、すでに使用されていればダウンロードできない。買い逃し禁物の仕様なのである。
 筆者もBlu-ray BOXを買ってサウンドトラックをダウンロードした。
 収録曲は以下のとおり。

  1. 時速20キロ
  2. 朝は来る
  3. お昼休み
  4. いつものように
  5. どこにでもいける
  6. スーパーカブ
  7. カブラグ
  8. スーパーカブ ボサノバ
  9. 春への伝言 晴
  10. スーパーカブに乗って
  11. エフエム
  12. 春への伝言 雨
  13. 夏の変わり
  14. 高校2年、夏
  15. 富士を制す
  16. もっと高く
  17. まほうのかぜ 雲
  18. 秋の準備
  19. まほうのかぜ 雪
  20. 遠い春
  21. バール
  22. メヌエット
  23. まほうのかぜ (TV size)
  24. 春への伝言 (TV size)

 オリジナル楽曲22曲をすべて収録している。クラシック曲と効果音的に使用されたピアノの単音ブリッジは未収録。ファンとしては、クラシック曲も入れてほしかった……と思うが、オリジナル曲だけでも聴けるのはうれしい。
 1曲目の「時速20キロ」は第1話で小熊が初めてカブに乗って走り出すシーンに流れた曲。カブの速度に合わせて、速すぎないくらいのテンポで作られている。ピアノのメロディが軽やかにはずむ3拍子の曲だ。この曲は小熊がカブに乗るシーンにたびたび(ぜんぶで6回)選曲されている。
 おなじくカブをテーマにした曲が、6曲目の「スーパーカブ」と10曲目の「スーパーカブに乗って」。「スーパーカブ」はピアノとギターなどが奏でる、スローテンポのやさしい雰囲気の曲。小熊のカブへの想いを表現しているようだ。第3話の冒頭で、小熊が「カブのある生活に慣れてきた」と思う場面などに流れている。
 「スーパーカブに乗って」はピアノとシンセ、ギター、オーボエなどのアンサンブルによる軽快な曲。風を受けて走る爽快感が感じられる。第8話で小熊と礼子が秋の道を走る場面に流れた。第3話では、この曲からピアノやオーボエの音を抜いたミックス違いが使用されている。
 2曲目からの3曲、「朝は来る」「お昼休み」「いつものように」は、もっぱら日常的なシーンで使われた。第2話冒頭の小熊の登校シーンに流れた「朝は来る」はピアノのメロディが美しい、さわやかな曲。第11話のラストで、小熊が「椎を追いかけていたのは自分だ」と思う場面も印象に残る。
 「お昼休み」は第2話で礼子が小熊に話しかけてくる場面に使用。小熊と礼子、椎たちのおだやかなひとときに流れる曲である。ピアノ(キーボード)とオーボエが会話しているような構成が楽しい。
 「いつものように」については、作曲した石川智久が「小熊の孤独な朝をイメージした暗めの曲」と語っている。ピアノとオーボエをメインに演奏される、ややメランコリックな曲。第2話の小熊の起床から登校シーンなど、小熊にとっての「いつもの日常」を描く曲である。
 5曲目の「どこにでもいける」は、ピアノのシンプルなフレーズとストリングスのメロディによる、高揚する心を描写する曲。第2話のラストで、下校中の小熊が自宅に向かう道をそれて寄り道をする場面に流れた。第6話で小熊が修学旅行のバスに追いつく場面にもこの曲が流れる。カブに乗ることで小熊が手に入れた「特別な瞬間」を象徴する曲なのである。
 14曲目からの3曲、「高校2年、夏」「富士を制す」「もっと高く」は、礼子が富士山への登る道をカブで走ろうとする第5話で使用された。ほかの曲とはテイスト異なるロック調の楽曲である。
 「まほうのかぜ 雲」と「まほうのかぜ 雪」はオープニング主題歌「まほうのかぜ」の、「春への伝言 晴」と「春への伝言 雨」はエンディング主題歌「春への伝言」の、それぞれアレンジ曲。「まほうのかぜ 雲」は椎の実家のカフェ「BEURRE(ブール)」のシーンで何度か流れている(店内BGMではない)。「まほうのかぜ 雪」は口笛を使ったアレンジが楽しい曲で、なんといっても第10話の雪原で遊ぶ小熊と礼子の場面が最高。
 「春への伝言 雨」はタイトルどおり、小熊がレインコートを着てカブで走る場面(第4話)に流れたが、「春への伝言 晴」は変わった使われ方をしている。小熊や礼子が訪れるホームセンター「コメリ」の店内BGMとして使われているのだ。
 店内BGMとして使われた曲はほかにもある。11曲目の「エフエム」は中古カー&バイク用品店「UP GARAGE」の、21曲目の「バール」は中古ショップ「GOOd-OFF」の店内BGMとして使用。22曲目の「メヌエット」は、文化祭で小熊のクラスが開いたバール(イタリア風カフェ)の店内BGMに使われた。
 ハンドクラップを取り入れた18曲目の「秋の準備」は、第7話でクラスのピンチを救うために小熊と礼子がカブで出かける準備をする場面や第10話の雪道を走る小熊と礼子の場面などに選曲。カブ仲間同士が過ごす楽しい気持ちが伝わってくる曲だ。
 20曲目「遠い春」は、第11話で川の中から救い出された椎が小熊の家でお風呂に入るシーンに1回だけ流れた。ピアノのゆったりしたメロディが椎のほっとした心情を表現している。
 1話あたりの使用曲数が少ない本作だが、例外的なエピソードがふたつある。ひとつは第6話。この回だけは音響監督の矢野さとしが選曲を担当している。インタビューで矢野が「つい曲を入れてしまうんです。音楽で表現してしまう」と語っているように、使用曲数は9曲と多め。ピアノの単音ブリッジも数カ所使われていて、説明的な印象だ。もっとも、アニメの音楽演出としてはこれくらいがふつうなのだろう。
 もうひとつは、最終回となる第12話。この回も9曲が使用されている。ただし、第12話は小熊と礼子と椎の3人がカブに乗って、山梨から鹿児島まで桜を見に行くエピソード。全編がいつもと違う、特別な時間なのである。だから音楽も、エルガーの「朝の挨拶」に始まり、「まほうのかぜ 雲」「時速20キロ」「スーパーカブ ボサノバ」「秋の準備」「お昼休み」「まほうのかぜ 雪」と、明るく軽やかな曲の連続で小熊たちの旅に寄り添う。
 旅の終わり、満開の桜を前にした小熊たちの場面に流れるのが「スーパーカブ」。本作にはメインテーマ的な曲は設定されてないが、それにもっとも近いのがこの曲だと思う、と石川智久がインタビューで語っている。その言葉を裏づけるような選曲である。
 そして、ラストシーン、椎が新しく買ったカブを小熊と礼子に見せる場面。13曲目の「夏の変わり」が流れる。「どこにでもいける」をよりポジティブにしたような曲で、カブに乗り始めて変わっていく小熊の日常や心情がイメージされる。第6話のラストで小熊が「いつまでも走り続けよう、このスーパーカブと一緒に」と思う場面にも、この曲が流れていた。本作の音楽の中でもとりわけ印象的な楽曲のひとつである。

 本作のために作られたオリジナル曲は、わずか22曲。曲数が少ないからこそ、1曲1曲が場面と結びつき、曲を聴けば映像やセリフや、番組を観ていた当時の思い出がよみがえる。それもまた、かけがえのない特別な瞬間だ。日常の中にも輝く瞬間があることを、スーパーカブの音楽は思い出させてくれる。

スーパーカブ Blu-ray BOX
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アニメ様の『タイトル未定』
341 アニメ様日記 2021年12月5日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年12月5日(日)
レンタルVHSで『DOWN LOAD 南無阿弥陀仏は愛の詩』を観る。返却直前にビデオを観るというパターンは久しぶり。SHIBUYA TSUTAYAでVHSとCDを返却。それ以外はずっとデスクワーク。

2021年12月6日(月)
仕事の合間に新文芸坐で「日本侠客伝」を観る。プログラム「『やくざ映画入門』(春日太一 著/小学館新書)刊行記念 『仁義なき戦い』だけではない! やくざ映画の楽しみ方」の1本。ところどころ観たような場面があるけど、おそらくは初見。物語構成がよくできている。エピソードが多くて、飽きさせない。汚いことをするヤクザと仁義を重んじるヤクザの対立という構図で、当時の感覚だと主人公を応援するつもりで鑑賞できたのだろうけど、今の目線だとそれは難しいかも。そういう部分を含めて楽しんだ。DCPでの上映で、映像もよかった。今の新文芸座は休憩時間に数本の予告が流れるのだが、その1本目が『映画大好きポンポさん』だった。さらにロビーには往年の名画と並んで(しかも、かなり大きなサイズの)『ポンポさん』のポスターが掲示されていて、ちょっと嬉しかった。

2021年12月7日(火)
午前中に「設定資料FILE」の構成を終わらせる。午後にグランドシネマサンシャインで『ARIA The BENEDIZIONE』を鑑賞。通常上映ではあったけれど、勘違いでなければ音量が大きめ。本編前のコーナーは、何かのミスかと思うくらいに音が大きかった。本編に関しては音の演出が分かりやすく、その意味で楽しめた。作画はキャラクターの顔の作画がよかった。
「はしっこアンサンブル」5巻~7巻を読む。読んでいる間、幸福だった。この数年で読んだマンガの中で一番好きかもしれない。モチーフは合唱であり、青春モノでもある。面白いし、泣ける。キャラクターもいいし、マンガとして篦棒に巧い。劇中の歌が耳に聞こえるようだ。

2021年12月8日(水)
「はしっこアンサンブル」の影響で、早朝散歩時にApple Musicにあった合唱曲を聴きながら歩く。

2021年12月9日(木)
この日の早朝散歩は池袋と王子の往復。途中で新文芸坐の花俟さんと会う。花俟さんは会社からの帰りだった。午前中にグランドシネマサンシャインで、ワイフと「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」【IMAXレーザーGT字幕】を観る。

2021年12月10日(金)
午前中にワイフと「庵野秀明展」に。僕は内覧会に続いて、二度目の来場だ。今回は追加の展示をチェックして、図録を3冊購入した。
以下は「庵野秀明展」の見どころのひとつであるTV『超時空要塞マクロス』の27話「愛は流れる」の原画について。例の機動兵器(デストロイド ファランクス)の胸部にダイコンの女の子が描かれているカットだ。本放送時にも画面を観て「ああ、遊んでいるなあ」と思ったのだが、実際の原画を見てみると、完成映像では読み取るのが困難な文字が沢山書き込まれているのがわかる。例えばスタッフの名前、声優の名前などが書き込まれている。特に驚いたのが、ダイコンの女の子の下に「DCIV 1983 8.20~」と書かれていること。「愛は流れる」が放送されたのが1983年4月24日で、DAICON 4の開催1日目が1983年8月20日。つまり、開催の4ヶ月前に『マクロス』内で「8月20日にDAICON 4をやるよ」という宣伝をするために、あそこにダイコンの女の子を描いたではないか、ということだ。図録にもその原画が収録されている。印刷だと、現物よりも文字を読み取るのが難しいけれど、読めなくはない。

以下はTwitterに書いた内容。
https://twitter.com/animesama/status/1469086208920027138
「設定資料FILE」の『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』の見どころについて。キャラクターに関しては、1枚のデザイン画の情報量が異様に多いことがポイントであるのですが、特に凄いのがアイリスの「乳歯」です。
歯並びだけでなく、どれが犬歯でどれが臼歯なのかまで分かるようになっています。この乳歯についての設定は、オリジナルのデザイン画では表情集の中に配置されていたものです。

2021年12月11日(土)
トークイベント「第182回アニメスタイルイベント アニメ様と仲間達の酔っ払いトーク」を開催。ゲストは渡辺歩さん、泉津井陽一さん、そして、吉松さん。パート毎にゲストが登場し、パート毎に別の話題でトークを展開するという変則的なイベントだった。開演前に楽屋で呑んで、イベント中に呑んで、終わった後に打ち上げで呑んだ。イベントの打ち上げなんて、数年ぶりだった。

第745回 アニメのどこが好き?

2022年も、もう3月! 早い! 40過ぎてから時が過ぎるの、本っ当、早い!!

来月、新人が入ってきます。去年後半から今年初めまで、何人面接したでしょうか? 会社発足から10年、毎年新人の面接は自分でやってきました。もちろん合格・不合格も板垣の方で決めてます。あ、作画と演出だけです、俺がやるのは。ちなみに自分は会社で実技試験はやりません。送られてくるポートフォリオを見て、「描けそうかな~」て思った人だけ、後日呼んで面接。やはり自分は面接の方を重んじます。面接の内容は、その時々相手次第で変わるし、ほぼアドリブで、出たとこ勝負。その方の“好きなアニメ”の話だったり、“昨今のアニメで感じたこと”や“将来、アニメで何やりたいか?”とかを訊き話した後、質問を受け付けます。ウチの会社に関してに限らず、広く“アニメ全般”もあり。ネット上で話題になる業界噂話の真偽なども「板垣個人が知ってる範疇で」と前置きして、大概お答えしております。そして最後に会社の勤務形態や契約内容を説明して終わり。「ウチで良い」とその場で即決する人もいれば、他に受けた会社の結果待ちを申し出る人もいたり、その方の希望を優先するようにしています。  何しろ、自分の半分ぐらいの年齢な若者らが、アニメのどこが好きでこの仕事をやりたいと思ったのか? を訊くのが楽しみで、これは本当に無理して謙虚ぶるつもりではなく単純に勉強になります。はっきり言うと、我々世代が崇めたスター監督やスーパーアニメーターのことをことごとく「知りません」で一蹴してきます。特に好きなアニメを作った会社は知ってても、その作品の監督は「知りません」がほとんど。だから、我々世代より上の監督で、“(演出)処理やらない”・“スタジオ入らない”・“若いスタッフを相手にしない”で自宅作業を貫いている人は要注意! 気づいたら監督扱いしてくれる会社がなくなってますから! もちろんウチ(ミルパンセ)を受けに来る人も、板垣なんて知らずに受けに来る人がほとんどですし、自分はそれで全然構いません。

ただ、アニメという表現に興味を持った若者と一緒に仕事させて貰える場を大切にしたい!

と普通のおじさん的に思ってるのと、やっぱり、若い人が語る夢の話を聞くのは、歳を取れば取るほど自らの栄養になる気がします。そりゃあ「考え甘いな」と思うことは多々あるけど、自分自身の出発点と重なる部分があって、昔というか「初心」を思い出して、ちょっとだけ“ピュア”になれます。——って、また短い。

第185回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作8【お姫様たちを待っていた運命について考えてみる編】

 片渕須直監督は『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く、新作劇場アニメーションを準備中です。まだ、作品のタイトルなどは発表になっていませんが、平安時代に関する作品であるのは間違いないようです。
 新作の制作にあたって、片渕監督は平安時代の生活などを調査研究しています。その調査研究の結果を少しずつ語っていただくのが、トークイベントシリーズ「ここまで調べた片渕須直監督次回作」です。これまでのイベントでも、あっと驚くような新しい解釈が語られてきました。
 2022年3月12日(土)に開催する第8弾のサブタイトルは【お姫様たちを待っていた運命について考えてみる編】。中宮定子を含めた女性達の生涯が話題となります。出演は片渕須直さん、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。

 新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、今回は配信のみのイベントとして開催します。先行してロフトグループによるツイキャス配信を行い、その後にアニメスタイルチャンネルで配信します。アニメスタイルチャンネルではトーク本編とは別に「ここまで調べた片渕須直監督次回作・ミニトーク」も配信する予定です。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。

 ツイキャス配信のチケットについては3月2日(水)19時からチケット発売となります。詳しくは、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
ロフトグループ
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/broadcast/207026

アニメスタイルチャンネル
https://ch.nicovideo.jp/animestyle

第185回アニメスタイルイベント
ここまで調べた片渕監督次回作8【お姫様たちを待っていた運命について考えてみる編】

開催日

2022年3月12日(土)
開演12時 終演14時~15時頃予定

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

アニメ様の『タイトル未定』
340 アニメ様日記 2021年11月28日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年11月28日(日)
昼間の散歩で、ワイフと高田馬場を歩く。その後、渋谷に行ってTSUTAYAで『夢枕獏 とわいらいと劇場』『DOWN LOAD 南無阿弥陀仏は愛の詩』のVHSをレンタルする。どちらもVHSやLDで持っているはずなのだけど、急に観たくなってレンタルした。夜は「ルパン三世 放送50周年記念上映イベント」の3日目に参加。上映作品は『旧ルパン』パイロット(TV版)と『新ルパン』の「マイアミ銀行襲撃記念日」「死の翼アルバトロス」「さらば愛しきルパンよ」。他のファンと一緒に『新ルパン』を観ることができたのが楽しかった。トークのゲストは友永和秀さん。『旧ルパン』パイロットが当時、テレビ放送されていたというのは初耳。『旧ルパン』本放送前だったらしいんだけど、どのタイミングで放送されたのだろうか。トークの収穫は「死の翼アルバトロス」の大塚康生さん作画パートが判明したこと。上映はマスターとスクリーンの大きさのバランスがよく、非常に観やすかった。リマスターされたアニメ作品の上映で、かえって映像が見辛くなる場合と好対照だ。あの環境なら、他の旧作TVアニメのスクリーンの上映もありだと思う。

2021年11月29日(月)
前夜のイベントをきっかけにして、改めてアニメ『ルパン三世』について考えた。一時期までの『ルパン三世』は、一般視聴者は別にして、作り手(の一部)とコアなファンにとっては「文脈」が重要な作品であった。『新ルパン』は普通に観ても面白いのだけど、文脈を意識して観るとますます面白くなるはずだ。

2021年11月30日(火)
早朝散歩は1人で。池袋から代々木まで歩く。途中で富士そばの『先輩がうざい後輩の話』コラボ店舗を見つけてそこで朝飯を食べる。
『鬼滅の刃 無限列車編』最終回を録画で視聴。勿論、劇場でも観ているのだが、クライマックスだけ観ると(あるいは1本のテレビアニメとして観ると)撮影が凄まじい。
レンタルしたVHSで『夢枕獏とわいらいと劇場』を観る。かなり久しぶりの視聴だ。「骨董屋」と「四畳半漂流記」ばかりが話題になるが「夢蜉蝣」もいいぞ。
Amazonで検索していたら、『カードキャプターさくら』のアニメ関連書籍で持っていないものがあることが分かって、古本を注文する。

現行深夜アニメの最新話数を片っ端から流し観する。
『進化の実 知らないうちに勝ち組人生』9話
『境界戦機』9話
『カードファイト!! ヴァンガード overDress』21話
『月とライカと吸血姫』9話
『鬼滅の刃 無限列車編』7話
『パズドラ』181話
『ジャヒー様はくじけない!』17話
『結城友奈は勇者である -大満開の章-』9話
『ブルーピリオド/でーじミーツガール』9話
『プラチナエンド』8話
『ワールドトリガー』3rdシーズン 8話
『マブラヴ オルタネイティヴ』8話

2021年12月1日(水)
このところ『先輩がうざい後輩の話』について色々と考えている。シリーズ構成についてとか、リアリティと世界の奥行きの関係とか。現行のTVシリーズに文句があるわけではない。むしろ、よく出来ていると思う。ただ、色々と考えるきっかけになった。夕方から、とある監督、とあるプロデューサーと食事。監督とはリアルで顔を合わせるのはかなり久しぶり。元気そうでよかった。

引き続き、現行深夜アニメの最新話数を片っ端から流し観する。
『TSUKIPRO THE ANIMATION 2』8話
『シキザクラ』7話
『Deep Insanity THE LOST CHILD』7話
『海賊王女』8話
『逆転世界ノ電池少女』7話
『吸血鬼すぐ死ぬ』8話
『やくならマグカップも 二番窯』8話
『しょうたいむ!~歌のお姉さんだってしたい~』8話
『MUTEKING THE Dancing HERO』8話
『テスラノート』8話
『さんかく窓の外側は夜』8話
『先輩がうざい後輩の話』7話
『ビルディバイド -#000000-』7話

2021年12月2日(木)
グランドシネマサンシャインで『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』を鑑賞。その後、印刷会社の方と打ち合わせ、Zoom打ち合わせ、とあるアニメスタジオで打ち合わせ。印刷のスケジュールを作り直す。毎日、スケジュールを作り直している気がする。

またまた現行深夜アニメの最新話数を片っ端から流し観する。
『86―エイティシックス―』18話
『D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION』7話(再)
『大正オトメ御伽話』7話
『異世界食堂2』8話
『魔王イブロギアに身を捧げよ』8話
『ヴィジュアルプリズン』8話
『SELECTION PROJECT』8話

2021年12月3日(金)
Netflixの『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』を視聴する。いやあ、面白い。原作を読み返したくなった。仕事に関してはやることが多い。考えなくてはいけないことも多い。

2021年12月4日(土)
あまりにもやらなくてはいけないことが多いので、この土日でやることを4つに絞った。他は月曜以降にまわす。全部やろうとすると、焦って効率が落ちるはずだ。
「中村豊 アニメーション原画集 vol.2」でデザイナーさんにデザインを依頼するために、イラストやラフ等を整理する。当然ながら、ラフもテキストもデータ。イラストもスキャンしてデータで送るので、最終的には全てがひとつのフォルダにまとまってしまう。アナログで本を作っていた頃に比べると、渡すものが比較にならないくらいシンプルになった。アナログの頃は(デジタルの初期も)イラストそのものをデザイナーさんに渡すこともあったし、手描きのラフを紙で渡すこともあった。時期は短いけれど、テキストをフロッピーディスクで渡していた頃もあった。シンプルになったけれど、今のほうが丁寧に素材を整理しないといけない印象だ。

第744回 知らないことばかり

今までの人生、世の流行りモノにほとんど乗らずに生きてきた板垣です!

 うん。概ね世の人が騒ぎ過ぎている物事に関心を向けない(行列には死んでも並ばない)主義なのです。正確に言うと、ハマる回数が極端に少なく、ハマるはハマるけど時期が他人とずれているのです。でも、『あしたのジョー』のように数少なくハマる時はとことん深い(ま、これから先『ジョー』以上にハマるモノはないでしょうけど)。
 WEBアニメスタイルなので、まずアニメに関してで言うと、幼稚園〜小・中学生とあれだけ好きだった藤子不二雄アニメも「藤子不二雄先生がⒶと“F”に分かれた」途端に、『ドラえもん』を観なくなったり、原作が新連載の頃から愛読し単行本も買って、毎週アニメも視聴していた『ドラゴンボール』も、ピッコロ大魔王あたりで読むのも買うのも観るのも止めました。どちらもその後の藤子・F・不二雄先生や鳥山明先生のファンから言わせると「これから」って時だったと思うし、その後どんどん国民的マンガに認定されていったのは皆さん御存知でしょう。
 宮崎駿・高畑勲両監督作品もそう。『母をたずねて三千里』『未来少年コナン』『ルパン三世カリオストロの城』『じゃりン子チエ』が大好きだったのに、スタジオ・ジブリ作品になって“世界中の人々のモノ”になってからは興味を失ってしまいました。それでもジブリ作品に関しては、途中から自分がアニメ業界人になっていたのもあり、後学の為にも、と『千と千尋の神隠し』までは無理して劇場で観てました。でも、はっきりカミング・アウトすると、実は『猫の恩返し』以降、ほとんど観ていません。劇場はおろかテレビ放送でも、チャンネルザッピング中たまたま目にして数分観た程度。『ハウルの動く城』などは当時、特装版DVDまで買ったのに冒頭15~20分しか観ていません。世界中が「ジブリ、ジブリ~」と言い始めると無理してまで観なくなるのです。ただし、どれも嫌いなのではありません!

世界中で大ヒットしているモノなら今、俺が観なくてもいいじゃん! 観たくなった時に観よ!

と思っているだけです。
 これはアニメに限りません。昭和の子供なのにアイドルやプロ野球にも食指が動かず、受験戦争にも参戦せず、車の免許も取らず(根本的に車自体欲しいと思ったことがない)おおよそ、その時代に生まれての標準装備を全て備えていない板垣から見ると、最近唯一の息抜きであるYouTubeは驚きの連続。まず、タレント・スポーツ選手・芸人さんや各分野の知識人・有識者の方々の動画から、一般の方々の大食いから猫動画まで全て並列に並んでるところが良い。自分はなるべく、チャンネル登録で特定の動画を視聴するより、デタラメ・いきあたりバッタリに適当に観るようにしています。その方が、現在の世の中を俯瞰して感じられる気がするからです。
 つまり、前半語った“世の中の流行りに乗らない”とは、

正確な判断を見失うほど、世間に迎合しない主義!

とも言えます。多分子供の頃から本能的にそうだったのではないかと、今更ながらに改めて思うのです。決して「流行り」が嫌いなのではなく、流行りに飛びついてしまう「人間の性(さが)」にこそ、もの凄く興味が惹かれるんです、自分は。別にカッコつける訳でもなく、本当にそうなんだからしようがない。

常に物事の本質——「本当にそうなのか?」と、そこに関しての好奇心が旺盛なのです!

 だから、他人と話が合わないことを今まで恐れた試しがありません。学生時分、周りの皆が『美少女戦士セーラームーン』に夢中になってた際、その中に混じって自分一人だけ出﨑統監督のOVA『B.B』や『修羅之介斬魔剣』の布教活動をしていたのが板垣ですから。そうすると逆に皆がハマってる『セーラームーン』が見えてくるんです。ジブリもそう。ジブリ作品を観た人がこれだけ世界中にいるなら、ノーガードでその中に入って「観たことない」だけを武器にして話し込むと、そのストーリーは分からなくとも、それにハマってる人の考え方が見えてきて、それが分かれば自分は十分なんです。

この仕事を始めて20数年、今更「仕事を忘れて」アニメ鑑賞を満喫したいなんて思いません故!

 ま結局、何が言いたいかと言うと、俺の欲する娯楽としては“YouTubeのダラダラ観(み)”が、一番性に合ってると分かった、と。YouTubeを観てるとジャンル問わず、自分の知らないことを丁寧に説明して下さってる親切YouTuberさんがいらっしゃるし、最新ニュースも映画批評も笑いも俯瞰で観れます。俯瞰で観れるということは、板垣にピッタリな娯楽という訳です。
 ただ、その中でも芸能人ならまだしようがない部分があるんですが、お金持ちYouTuber界隈の方々同士が罵倒し合ってたり、暴露だ! 誹謗だ! 中傷だ! そして謝罪だ~とやってるサムネまで“同列”に混じってて、「もう少し落ち着いて、ご自身も含めて“俯瞰”して見たらいいのに」と思ったりもします。火に油注ぐ感じばっかで、「ご自身のこと、客観的に観たらどう見えてるのか?」を想像して一呼吸置きましょうよ、と。少なくとも、一歩~二歩離れて客観的に見てみると、YouTuberさん個人の恨み辛み、一般の視聴者にとってはどーでもいいことですから、大概。おそらく再生数稼ぎだとは思うのですが、そんなこと繰り返してまで「お金をつかみ取らなきゃ生きていけないというお金持ちの不自由感」が、少々悲しく、自分には映ります。それ以外はYouTube最高!

 結局、何だ今回? ちょっと、俺も自分自身を客観視するため、本日はここまで。

第225回 猫アニメにご奉仕するにゃん! 〜東京ミュウミュウ〜

 腹巻猫です。磯光雄監督の最新作『地球外少年少女』前編・後編を劇場で観ました。『電脳コイル』の先にある未来を思わせる、SFマインドあふれる映像とストーリーにしびれました。Netflixで全話公開されているので、劇場で観られなかった方はぜひご覧ください。石塚玲依さんの音楽もすごくいいです。


 2月22日は「にゃんにゃんにゃん」で猫の日なのだそうである。今年は西暦2022年なのでさらに2が3つそろうことになる。こんな機会はあと100年ない。当コラムでも猫アニメの音楽を取り上げてみよう。
 筆者にとっての最高の猫アニメは『長靴をはいた猫』(1969)。猫が主役だし、文句なしの傑作だ。猫のキャラクターを使った『銀河鉄道の夜』(1985)もいい。とはいえ、どちらもすでに当コラムで取り上げてしまった。
 そこで今回は『東京ミュウミュウ』の音楽を聴いてみよう。
 『東京ミュウミュウ』は2002年4月から2003年3月まで放映された、ぴえろ制作のTVアニメ。地球征服をねらうエイリアンのたくらみをくい止めるため、レッド・データ・アニマル(絶滅危惧動物)のパワーを身につけた5人の少女が、正義の味方ミュウミュウに変身して戦う変身ヒロインものである。
 中学1年生の桃宮いちごは、なぞの青年・白金と赤坂によってイリオモテヤマネコの遺伝子を注入され、ミュウイチゴに変身できるようになった。でも、それ以来、ふだんでもドキドキすると猫耳としっぽが生え、話すと語尾に「にゃん」がつくなど、突然猫化するようになってしまう。あこがれの青山くんと話すだけでも大変だ。ミュウミュウのアジトでもあるカフェミュウミュウでは、ウエイトレスとしてこき使われる毎日。それでもいちごは、戦いを終わらせて元の体に戻るため、仲間のミュウミント、ミュウレタス、ミュウプリン、ミュウザクロとともに、エイリアンに立ち向かう。
 変身ヒロインは数あれど、猫耳としっぽが生えた主人公はインパクト抜群。決め台詞は「地球の未来にご奉仕するにゃん!」。サブタイトルにもやたら「にゃん」がつくなど、猫成分多めの作品なのである。2022年には同じ原作を再アニメ化する『東京ミュウミュウ にゅ〜』が放映される予定だ。

 音楽は『カードキャプターさくら』『カードファイト!! ヴァンガード』などの根岸貴幸が担当。根岸にとっては魔法少女ものである『カードキャプターさくら』を1998年から2年間担当したあとの作品なので、その経験が生かせる反面、違いを出すのに苦心したことが想像できる。
 根岸貴幸の音楽は独特の浮遊感が印象的だ。シンセの音色、メロディの展開にふしぎなふわふわ感があり、聴いていると身体が浮き上がるような気分になる。ファンタジー系の作品や少女ものでは、そのふわふわしたサウンドがとても効果的だ。本作でも、少女の気持ちや妄想が浮遊感のある音楽で表現されている。
 いっぽうで、本作はバトルSFものの一面もあり、輪郭のくっきりしたサウンドも使われている。『カードキャプターさくら』ではあまり聴けなかった、リズムを強調した曲やエレキギターを使ったロック寄りの曲が聴けるのが特徴だ。
 特に、それぞれのキャラクターにあわせて書かれた5人のミュウミュウのテーマ曲は、本作の音楽の聴きどころである。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「東京ミュウミュウ オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2002年9月にNECインターチャネルから発売された。2003年1月には「オリジナルサウンドトラックvol.2」が発売されている。どちらもCDは現在入手困難だが、音楽配信(ストリーミング&ダウンロード)で聴くことができる。
 1枚目の「オリジナルサウンドトラック」を聴いてみよう。収録曲は以下のとおり。

  1. my sweet heart(TV Version)(歌:小松里賀)
  2. サブタイトルにゃん
  3. さわやかな朝
  4. みんな おはよう!
  5. うわぁ〜、遅刻するぅー
  6. みんなでお喋り
  7. あ〜、つかれた
  8. カフェミュウミュウへようこそ!
  9. 麗しのバレリーナ
  10. あこがれの青山くん
  11. 青山くん…大好き
  12. アイキャッチにゃん
  13. キッシュのたくらみ
  14. 不安な予感
  15. エイリアンが現れた!
  16. 敵からの攻撃
  17. ミュウイチゴのテーマ
  18. ミュウミントのテーマ
  19. ミュウレタスのテーマ
  20. ミュウプリンのテーマ
  21. ミュウザクロのテーマ
  22. 5人そろって、東京ミュウミュウ!
  23. 地球の未来にご奉仕するにゃん
  24. ストロベリーチェック!!
  25. 回収!
  26. 今日も一日ごくろうさま
  27. また明日ね
  28. 次回予告にゃん
  29. 恋はア・ラ・モード(TV Version)(歌:東京ミュウミュウ)

 オープニング主題歌とエンディング主題歌のTVサイズを最初と最後に収録したオーソドックスな構成。でも、なかなかよく考えられた、味のあるアルバムである。
 総演奏時間は38分。CDの容量の半分くらいしか使ってないことに驚く。そして、12曲目のアイキャッチをはさんで、大きく前半と後半に分かれる構成。まるでアナログレコードでのリリースを想定したみたいだ。
 「サブタイトルにゃん」「アイキャッチにゃん」など、曲名に「にゃん」をつけてしまうのは、なかなかずるいアイデア。これは2度と使えない。CDの歌詞カードにはキャストとスタッフのクレジットが「メインキャストにゃん」「TVアニメーションスタッフにゃん」といった見出しで掲載されていて、楽しんで作っている雰囲気が伝わってくる。
 アルバムの前半は、いちごたちの日常をイメージした内容。トラック3の「さわやかな朝」は第12話以降のアバンタイトルのバックに使われていた、キラキラしたサウンドが踊るフュージョン風の曲である。軽快な「みんな、おはよう!」、コミカルな「うわぁ〜、遅刻するぅー」「みんなでお喋り」「あ〜、つかれた」などは毎回のように使われたおなじみの曲だ。いちごのキャラクターがうまく表現されている。
 トラック8「カフェミュウミュウへようこそ!」はタイトルとおり、カフェミュウミュウの店内シーンに流れていたクラシカルな曲。優雅でロマンティック。舞踏会に招かれたみたいで気分が高揚する。
 次の「麗しのバレリーナ」は、ミュウミントに変身する藍沢みんとが得意のバレエを踊る場面に流れる曲。みんとは財閥のお嬢様なので、こういう曲がぴったりくる。みんとのテーマとしても使われており、みんとが主役になる第9話ではくり返し流れていた。
 続く2曲「あこがれの青山くん」「青山くん…大好き」は、日常系のハイライトとも呼ぶべき曲。いちごのあこがれの人・青山くんへの想いを表現する曲である。
 ビブラフォン風の音色を使った「あこがれの青山くん」は、ちょっと切なく、夢見るようなイメージ。いちごが青山くんを想う場面や青山くんと話す場面によく使われている。「青山くん…大好き」はストリングスがゆったりと奏でる、やさしく、しみじみとした曲。途中からピアノのリズムが入り、急展開を予感させる。ミュウミュウの仲間の絆を表現する曲でもあり、第3話でミュウレタス=碧川れたすが仲間に加わる場面にこの曲が流れていた。
 アイキャッチをはさんで、アルバムの後半はミュウミュウとエイリアンとの戦いをイメージした内容になる。
 トラック13から、妖しいシンセサウンドを使った「キッシュのたくらみ」、木管楽器やベースの演奏でミステリアスな雰囲気をかもしだす「不安な予感」、低音を強調したサスペンス曲「エイリアンが現れた!」と続き、じわじわと危機がせまるようすが音楽で表現される。
 トラック16「敵からの攻撃」はスピード感のあるバトル曲。エイリアンの手先であるキメラアニマの襲撃やミュウミュウとキメラアニマの戦いの場面によく使われていた。シンセとバンドサウンドが合体したロック風の楽曲だ。
 トラック17からはミュウミュウ登場〜活躍場面に流れる音楽を収録。アルバム全体のクライマックスである。
 「ミュウイチゴのテーマ」はいちごの変身BGM。弦の駆けあがりに続いて華やかなファンファーレが鳴り響き、ファンタジックで力強い主題へと展開する。1分足らずの短い曲だが、変身ヒロインの魅力がぎっしりと詰まっている。『東京ミュウミュウ』を代表する1曲といえば、これだろう。
 続く「ミュウミントのテーマ」「ミュウレタスのテーマ」「ミュウプリンのテーマ」「ミュウザクロのテーマ」の4曲は、それぞれの変身シーンや戦闘シーンに使われた。
 ミュウミントのテーマはピアノの音色を使った現代音楽的なスタイルの曲。同じくピアノを主体にした「麗しのバレリーナ」のサウンドを引継ぎつつ、よりモダンで戦闘的な楽曲に仕上げている。
 ミュウレタスのテーマはフラメンコギターを使ったスパニッシュ風の曲。おっとりしたキャラクターからすると意外な曲調だ。これはミュウレタスが武器としてカスタネット(レタスタネット)を使っていることからの発想だろう。
 ミュウプリンのテーマは中国風。変身する黄歩鈴(フォンプリン)は中国人の女の子という設定だから、ストレートな音楽化である。
 ミュウザクロのテーマはエレキギターが激しくうなるロック。本アルバムの中でも極めつけのワイルドでカッコいい曲である。ミュウザクロはハイイロオオカミのDNAと合体したミュウミュウで、登場時はクールな一匹狼だった。そのとがったキャラクターを表現するにはロック以外にない。
 トラック22「5人そろって、東京ミュウミュウ!」はミュウミュウの名乗りのシーンに流れる短い曲。続いて、ミュウミュウの活躍テーマ「地球の未来にご奉仕するにゃん」が登場。空中を軽やかに舞うようなシンセサウンドが心地よい。スピード感、かわいさ、華麗さをあわせもった、まさに「戦うヒロイン!」というイメージの曲である。根岸貴幸がアレンジしたゲーム主題歌「檄!帝国華撃団」のイントロを思わせる部分があるのも楽しいところだ。
 キメラアニマを倒すミュウイチゴの必殺技の曲「ストロベリーチェック!!」と「回収!」で戦いは終わりを告げる。この2曲はくっつけて使われることが多かった。
 トラック26からの2曲は戦いのあとのエピローグの曲。取り戻した平和な日常を、明るく軽快な「今日も一日ごくろうさま」としっとりした「また明日ね」で描写する王道の構成だ。
 「また明日ね」は第13話のラストで青山くんがいちごの首に鈴をつける場面に流れていた。木管楽器やストリングスのやさしい音色とともに、シンセの浮遊感のある音、キラキラした音がふんだんに使われて、夢の中にいるような気分になる。このシンセサウンドが、やはり本作の音楽の持ち味なのである。
 次回予告音楽とエンディング主題歌でアルバムは幕を閉じる。2枚目のアルバム「サウンドトラックvol.2」には2クール目以降に登場するキャラクターの曲や繊細な心理描写曲などが収録されている。2枚目でも特徴的なシンセサウンドは健在だ。1枚目とセットで聴いてもらいたい。

 ふわふわしたサウンドをまとい、脱力したり、せわしなく走ったり、夢見たり、踊ったり、勇ましく飛びかかったりと、豊かな表情を見せる本作の音楽。音楽そのものがなんとなく猫っぽいと思いませんか。というのは、ちょっとこじつけだけど、猫の日だから許してにゃん。

東京ミュウミュウ オリジナルサウンドトラック
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東京ミュウミュウ オリジナルサウンドトラックvol.2
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アニメ様の『タイトル未定』
339 アニメ様日記 2021年11月21日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年11月21日(日)
以下はTwitterの投稿に少し手を入れたものです。取材記事でのクリエイターの発言で、仕事仲間に対して敬称をつけるかつけないか、という話から。
…………
僕もインタビューで敬称は気をつけています。取材終了時に「※※監督のことを※※さんと呼んでいましたが、記事としてまとめる時には※※監督にしてよいですか」と確認することもあります。

最近の取材のひとつで、ある方が仕事仲間を姓ではなく、名前で呼び捨てにしていて、取材終了時に「記事中で呼び捨てでいいか」と確認して、さらに表記を確認したところ、「名前をカタカナで」と指示をいただいて、ちょっと面白かったです。
…………

そして、敬称の話から一人称の話に。
…………
インタビュー原稿で気にすることに「一人称をどうするか」というのもあります。1人の人物の喋りで「私」と「僕」が混在していたとして、原稿ではどちらかで統一することが多いです。そうではなく、たとえば、わざと「8割は私、2割が俺」でまとめることもあります。

「俺はどうしてもそうやりたかったんですよ!」のような熱い発言だけ、「俺」のままにして、他は「僕」で統一するといった感じですね。一人称が統一されていなくても、読んで不自然でなければOKという考え方です。

3000文字くらいの原稿で統一されていないと違和感があるけど、1万文字以上の原稿なら揺らぎがあっても気にならないというのもあります。

出崎統さんの取材は「俺」と「僕」が混在することが多かったです。原稿では「俺」で統一することが多かったのですが、原稿チェックでご本人に「俺が多い。これは偉そうだよ」と言われて修正したことが数回あります。その時は「俺」を「僕」にするのではなく、主語を端折っていました。

僕の場合、出崎さんの取材で修正が入ることはほとんどなかったのですが、「俺が多い」と言われたことは二度か三度ありました。
…………

2021年11月22日(月)
例によって暗いうちに出社。のつもりが、ビルに入ろうとしたけれど、どういうわけかドアの鍵が開かない。何度か試したけれど、無理だった。雨も降っていたし、諦めて帰って二度寝する。午前8時くらいに改めて出社。今度はビルのドアが開いていた。午後は映画に行くつもりだったけれど、朝の一件でズレこんで時間がとれず。年末刊行書籍の進行でやることが山盛り。
10月に始めた『僕のヒーローアカデミア』の再視聴は、最新の第5期の最終回に到達。キャラクターの変化が面白い。今回の視聴で耳郎響香のよさが分かった。それから、やっぱりスーパー作画はその部分だけを切り出した映像を観るのではなく、話の流れの中で観たほうがいい。
Netflixの実写版「カウボーイビバップ」を2話まで観た。

2021年11月23日(火)
早朝散歩は続いてる。この日は遠出をした。ワイフと千駄ヶ谷から、明治神宮外苑のいちょう並木、明治神宮の参道を歩く。いちょう並木まできたところでラジオ体操をやっていたので、それに参加。前に参加した新宿中央公園もそうだったけど、ここも通常のラジオ体操が終わった後に、オリジナルの体操が続く。
Netflixの実写版「カウボーイビバップ」を最終回まで視聴。根本的なところでオリジナルと別物になっていると感じたけれど、僕にとってそれはあまり問題ではなかった。基本的にはOK。キャラクターの違いについても「この作品のジェットはこういう人なのね」という感じ。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』がOKだったのに近い感覚だ。
就寝前に「留年! とどめ先輩」4巻を読む。先日、SNSで「自分のことをオタクだと思ったことはあまりない」と書いた気がするけれど、このマンガを読んで喜んでいる成人男性がオタクでないわけがない。「とどめ先輩」をアニメで観たいぞ。ユルい感じでアニメ化してほしい。絵柄とノリを考えたら、今石さんにピッタリの作品だけど、実際に彼がアニメ化したら、やり過ぎて違うものになってしまうのだろうなあ、と妄想した。

2021年11月24日(水)
アニメスタイル編集部にタップがないことが分かる。数年前にはあったし、捨てた記憶はないので、どこかにあるのかもしれないけれど、とにかく目につくところにはない。「22/7 あの日の彼女たち Animation note」の複製原画を作る過程で必要になるはずなので、Amazonで購入することにした。
グランドシネマサンシャインで『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』を観る。総集編だとは知っていたけれど、音響や映像に発見があるかと思って行ってみた。結論としてはNetflixでシリーズを観ているファンはあまり観る必要はないはず。それから、自分はシリーズを観ているのに「ええっ、ここで終わるの」と思った。
散歩時にSpotifyで『カウボーイビバップ』の公式プレイリストを聴く。実写版のサントラも配信されているのね。

2021年11月25日(木)
編集部では「中村豊 アニメーション原画集 vol.2」と「22/7 あの日の彼女たち Animation note」が進行中。自分の作業はそんなにはないはずなんだけど、やっぱり慌ただしい。
この数日、「銀河鉄道999 THE MOVIE 4KリマスターBOX」の話題で盛り上がる。非常に豪華な仕様で、特に16:9ビスタサイズと4:3スタンダードサイズの両方が収録されるのが嬉しい。

2021年11月26日(金)
散歩とデスクワーク。「ルパン三世 放送50周年記念上映イベント」1日目に行くつもりでチケットをとっていたのだけど、やることが多くて無理だった。残念。

2021年11月27日(土)
『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』は月曜に行くつもりだったのだけど、公開記念舞台挨拶の生中継をやっていることを知り、京田監督の晴れ舞台を見るためにグランドシネマサンシャインに。「設定資料FILE」の作業のために資料に目を通していたので、映画の内容は把握していた。映画館で観て、ある意味において非常に『エウレカセブン』らしい作品だと思った。いつかTVシリーズから『EUREKA』までを通して観直してみたい。公開記念舞台挨拶は女優陣のトークが楽しかった。
その後、新文芸坐で「男嫌い」(1964/83分/35mm)を観る。プログラム「シック・モダン・エレガンス 昭和モード女優祭」の1本。四姉妹と末っ子の弟の物語で、四姉妹が越路吹雪、淡路恵子、岸田今日子、横山道代で、弟が坂本九。先に同題・同出演者のTVドラマが放映されており、この映画はTVドラマの放映中に公開されたものであるらしい。なお、同ドラマは1994年にリメイクされている。Wikipediaには「劇中で登場人物が喋る「カモね」「そのようョ」「まあね」「ムシる」「カワイ子ちゃん」などの台詞が流行語となった」とある。
四姉妹は学生の四女を除けば、それぞれが働いており、しかも、TVドラマのシナリオライターとかファッションデザイナーといった華やかな職業に就いている。亡くなった父親の財産もあり、お金には困っていない。4人とも恋人はなく、親戚のおばさんは彼女達を結婚させようとしている。というのが概略。4人の男性が登場し、それぞれが彼女達に絡む。タイトルは「男嫌い」だけど、望む男性のレベルが高めなだけで、少なくとも今の目線では男嫌いではない。演出はスタイリッシュな方向を狙っていて、画作りはデザイン的な方向に振っている。特に序盤の映像が面白い。名作とか傑作ではないけれど、楽しい映画だった。

第743回 毎度すみません(汗)!

ゴメンナサイ!! 総監督とはいえ、脚本とコンテチェックが重なってまた、お茶濁し!

こんなんが何回も許されるとは思っていません!

来週はちゃんと書(描)きます!

仕事の遅い板垣でした(汗)!

 今、脚本・コンテチェックは自宅作業。朝、会社に入ってタイムカードを押してから自宅に戻りリモートワーク。昼飯食べながら観るYouTubeは、唯一のリラックスタイムだったりします。