アニメ様の『タイトル未定』
167 アニメ様日記 2018年8月5日(日)~

2018年8月5日(日)
トークイベント「第148回アニメスタイルイベント 『この世界の片隅に』に至る道(1)」を開催。片渕さんのこれまでの歩みをじっくり語っていただくイベントシリーズの第一弾だ。もしも、3時間使って、学生時代に参加した『名探偵ホームズ』の話題が終わらなかったらどうしようかと思っていたが、無事に『名探偵ホームズ』までの話はクリア。ラストにちょっと世間話をする余裕があったくらいだ。ムック「THE ART OF 名探偵ホームズ」に片渕さんが描いた『名探偵ホームズ』のイメージボードが1枚だけ載っている。脚本で参加していた片渕さんがどうしてイメージボードを描いているのか、ずっと気になっていたのだけれど、その謎が解けた。シナリオを提出する際に添えたものだったのだ。

2018年8月6日(月)
作業をしながら『あそびあそばせ』を1話から最新話まで観る。なかなか面白い。『バキ』最新話の6話「片平巡査の報告書」も観る。いやあ、展開が速い速い。連載で読んでいた頃のことを思うと、この速さを贅沢に感じるくらいだ。

2018年8月7日(火)
どういうわけだ。夏の書籍を校了してからのほうが事務所にいる時間が長くなっているぞ。

2018年8月8日(水)
池袋HUMAXシネマズで『劇場版 ポケットモンスター みんなの物語』を観る。集団劇で、それぞれの登場人物にドラマを持たせるという難しいプロットに挑戦しており、意欲的な作品だ。以下は、ちょっとネタバレ。僕が泣けた部分は都合三箇所だ。ひとつは中年男のカガチが、ウソッキーを相棒と認める場面。もうひとつが老婆のヒスイが、今は亡きブルーの姿を見たところ。もうひとつが女子高生のリサが、弟の助けを得て走り出した部分。泣かせるところにもっていくタイミングが巧い。
 矢嶋哲生は僕にとって期待のクリエイターだ。『みんなの物語』は彼の初めての劇場監督作品であり、今後の可能が感じられる作品だった。彼が監督を務めたTVシリーズ『ポケットモンスターXY&Z』的なアクションもあり、その意味でも満足。
 カガチについてもう少し書いておく。彼は調子がよくて、ウソばかりついている男だが、姪のリリィにはいいところを見せようとする。この男の作画としての芝居の感じがアニメ版『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津に似ていた。セリフの最初に「あー」と言ってから話し出すところがあったと思うが、それも両津っぽかった。リリィは檸檬のポジションだ。いや、似ていたとしても偶然だろうし、似ていたからといって問題があるわけではないのだけど、とにかく「両津っぽいなあ」と思いながら観ていた。

2018年8月9日(木)
コミックマーケット94前日。搬入は編集部のスタッフに任せて、事務所で待機していたのだけど、あるアクシデントが発生。その対応をする。事務所で待機していてよかった。

2018年8月10日(金)
コミックマーケット94の1日目。今回のアニメスタイルの販売物は「黄瀬和哉 アニメーション画集」、「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」、「電脳コイル アーカイブス」。それぞれ充実した仕上がりとなった。特典はそれぞれ「黄瀬和哉のうすい本」、「馬越嘉彦 描き下ろし原画集」、複製ミニ色紙。「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」だけでなく、他の2書籍についても、女性のお客様の購入が多かったのが印象的。

2018年8月11日(土)
コミックマーケット94の2日目。今回のコミケの2日目、3日目は現場を編集部のスタッフに任せて、僕は午後からの参加にさせてもらった。疲労がたまっていたし、午前中にコミケ以外の作業を進めておいたほうがいいからだ。『新幹線変形ロボ シンカリオン』の『新世紀エヴァンゲリオン』コラボ回は、後で録画で観た。

第574回 4Kウルトラ!


 年に1、2度いわゆる「自分へのご褒美」! 4KウルトラHDが観られる環境を手に入れました。『ユリシーズ』のコンテ最終話まで出したら買おう! と前から思っており、コンテを上げてからやや遅れて届いたというわけ。あ、ちなみに

すでに『ユリシーズ』のコンテは全話描き終わってます!
現在オープニング・エンディングに取りかかり中!

 とりあえず俺、普段高い物は買わないし、過ぎた贅沢はしないので「たまにこのくらいは」とTV・プレイヤーと一緒に

『劇場版あしたのジョー2』(1981年/出崎統監督作品)
『劇場版SPACE ADVENTURE コブラ』(1982年/出崎統監督作品)
『起動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年/富野由悠季監督作品)
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』&『イノセンス』(1995年・2004年/押井守監督作品)

も一気に購入! 全部大好きな作品! 『ジョー2』は言わずもがな。『劇場コブラ』はとにかくよく動く出崎アニメ。森本晃司さんや福島敦子さん、大塚伸治さんら一番アニメーターが充実していた頃のあんなぷるの真骨頂! 杉野昭夫作監の美少女たちも小林プロの宇宙空間も高橋プロの3D映像もすべて最高です!!
 『逆シャア』は板垣の中でベスト・オブ・ガンダム/中学の頃の友人らと立ち観した懐かしい思い出。ガンダム初、と言うより富野監督初の劇場用完全オリジナル(新作)だけあり、監督の「映画」に拘ったコンテ・レイアウトが本当にカッコいい! 冒頭タイトルが出るまでの数分が、すでに状況説明を説明と感じさせない巧みな構成。大画面でのモビルスーツ戦は圧巻です! 三枝成彰さんの音楽も好き。全編大人なムードもたまりません!
 『攻殻』は何しろ観やすくていい。押井監督 × I.Gの劇場体制ができあがった作品で、リアルタイムで観た時、あまりの完成度に震えました。当時ド新人の動画マンだった自分に「アニメーターってここまで描かなきゃならんのか!?」と思わせた映画です。『イノセンス』はもう「完成度の権化」! 押井監督はどこへ向かってるのか? と何度も繰り返しDVDを観たのに、4Kでまた買いました。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 107
ストップモーション・アニメの世界

 この数年、ストップモーション・アニメの意欲的で新鮮な作品が次々に公開されている。9月22日に開催するオールナイトは、そのストップモーション・アニメの特集だ。
 上映タイトルは『ちえりとチェリー』『チェブラーシカ 動物園へ行く』『ぼくの名前はズッキーニ<吹替版>』『KUBO/クボ 二本の弦の秘密<吹替版>』。さらに短編『モリモリ島のモーグとペロル』『陸にあがった人魚のはなし(パイロット版)』『映画の妖精 フィルとムー』。

 トークのゲストは『ちえりとチェリー』『チェブラーシカ 動物園へ行く』を手がけた中村誠監督。監督作品についてだけでなく、近年のストップモーション・アニメについての話もうかがう予定だ。前売り券は8月18日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 107
ストップモーション・アニメの世界

開催日

2018年9月22日(土)
開場:22時30分/開演:22時45分 終了:翌朝5:00(予定)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

中村誠、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『ちえりとチェリー』
『チェブラーシカ 動物園へ行く』
『ぼくの名前はズッキーニ<吹替版>』
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密<吹替版>』
『モリモリ島のモーグとペロル』
『陸にあがった人魚のはなし(パイロット版)』
『映画の妖精 フィルとムー』

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

アニメ様の『タイトル未定』
166 アニメ様日記 2018年7月29日(日)~

2018年7月29日(日)
事務所で作業をしつつ、ネット配信で『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第五章』『BRAVE STORM ブレイブストーム』『GODZILLA 決戦機動増殖都市』を観る。いずれも劇場公開時に観ることができなかった作品だ。Kindleで「バーナード嬢曰く。」4巻を読んだ。今回もニヤニヤしながら読んだ。僕がこのマンガを好きなのは、登場人物の自意識の強さ、放課後気分に自分の学生時代を思い出すからでもある。

2018年7月30日(月)
作業をしつつ『こみっくがーるず』全話を一気観する。楽しかった。ロングショットの効果的な使用を含めて1話の演出が、特に好印象。Kindleで「木根さんの1人でキネマ」5巻を読む。今回も面白かった。「バーフバリ」の話はネットでも読んだはずだけど、「バーフバリ」を観てから読んだら、面白さが倍増だった。

2018年7月31日(火)
『未来のミライ』を観た。細田守の初監督作品は1999年に公開された劇場版『デジモンアドベンチャー』 だ。つまり、今年で彼が監督となって20年目となる。この20年の間に細田守は歩み続けた。そして、変わり続けた。それを僕たちファンは見つめ続けた。10何年か経ってから振り返ってみると、そういうことになるのだろうと思う。

2018年8月1日(水)
仕事の合間に、有楽町マルイで開催中の「いのまたむつみ展」へ。展示のメインはイラストであるのだけど、僕の目当ては『宇宙戦士バルディオス』のカラー絵コンテだった。説明しておくと、これは『宇宙戦士バルディオス』の未放映エピソードの絵コンテで、当時、同作品の豪華本などに掲載されたものだ。まさか現物を目にする日がくるとは思わなかった。展示の説明文に「ムック用 加筆絵コンテ 原画」とあったので、これで書籍用に描かれた(あるいは色を塗った)ものだということが明らかになった。そのカラーの絵コンテが書籍用に用意されたものだというのは、以前から聞いてはいた。

2018年8月2日(木)
表参道で、あるアニメーターさん、吉松さんとこれから出す書籍の打ち合わせをしつつ食事。

2018年8月3日(金)
「黄瀬和哉のうすい本」「馬越嘉彦 描き下ろし原画集」が校了。これで夏の仕事が一段落したかというと、そういうわけでもない。WOWOWでの放映を録画した『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を観る。ロードショー時よりも印象がよかった。

2018年8月4日(土)
池袋HUMAXシネマズで『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ー2人の英雄ー』を観る。まんがまつり的で、子どもも、キャラクターのファンも嬉しい内容。隣の席の女性は爆豪君が登場するたびにキャアキャア言っていた。個々のキャラクターに見せ場を作っているのがよかった。クライマックスのバトルもいいけれど、冒頭のアクションもよかった。夜は平松禎史さん達と吞む。

第573回 久しぶりの原画なので

 『バカボン』と『ポ○モン』、予定外の飛び込み原画仕事が続いたので、またちょっと原画の話。アニメの原画とはつまるところ「パラパラマンガ」です。デジタル世代の若い方々は別の手段でやられているのかもしれませんが、我々の年代にとっては手塚治虫先生もやられたように「教科書やノートの端に連続かつ少しずつ変化した画を描いてパラパラめくると動いてみえる!」という単純な遊びです。これに理屈や根拠を付けるとプロの原画の仕事になるのだと思います。そして自分はその「パラパラマンガを原画にする理屈・根拠」を、学生時代やテレコム在籍時に、小田部羊一先生や大塚康生さん、友永和秀さんから教わったというわけです。原画を教わることは本当に楽しくて、そりゃ直されたら面白くはないのですが、俺の先生方は皆気持ちいいくらいの速さで修正したり、お手本を描いてくださるので、それを見て

俺もこんなふうに速く巧くなりたい!

と思うようになったんです。そういえば以前ジブリさんが出した「大塚康生の動かす喜び」というDVDで、大塚さんがカメラに向かって説明しながら「五ェ門抜刀の作画」を実演する場面があったのですが、

アレです! 板垣が教わったアングルの大塚さん!
机もあのまんま。実に懐かしい画でした!

第149回アニメスタイルイベント
馬越嘉彦の仕事を語る!

 「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」の刊行を記念してイベントを開催する。「馬越嘉彦の仕事」をテーマにし、彼自身に、そして、関係者に大いに語ってもらうトークイベントだ。馬越以外の出演者については決まり次第発表する。
 会場では「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」を、特典小冊子「描き下ろし原画集」付きで販売する。なお、「描き下ろし原画集」が特典となるのはコミックマーケット94と、このトークイベントのみとなる予定だ。

 今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する。前売り券は8月11日(土)から発売開始。詳しくは以下のリンクの阿佐ヶ谷ロフトAのページを見てもらいたい。

■関連リンク
馬越嘉彦の原画集がC94で先行販売。特典は「描き下ろし原画集」!![WEBアニメスタイル]
http://animestyle.jp/news/2018/08/03/13937/

アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/96138

第149回アニメスタイルイベント
馬越嘉彦の仕事を語る!

開催日

2018年9月2日(日)
開場12時00分 開演13時00分 

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

馬越嘉彦、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

第137回 オーディーンとは何だったのか? 〜オーディーン 光子帆船スターライト〜

 腹巻猫です。夏のコミックマーケット2日目・8月11日(土)に東ホールG-29b「劇伴倶楽部」でサークル参加します。新刊「劇伴倶楽部Vol.15 THE MUSIC OF YAMATO 1977 宇宙戦艦ヤマト(1977)の音楽世界」を頒布します。1977年公開の劇場版『宇宙戦艦ヤマト』と1977年発売のドラマ編LP、および「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」、そして1977年12月に放送されたオールナイトニッポンのラジオドラマ『宇宙戦艦ヤマト』を中心にした内容です。既刊は「THE MUSIC OF YAMATO 1974 宇宙戦艦ヤマト(1974)の音楽世界」と「THE MUSIC OF TRITON 海のトリトンの音楽世界」他を予定しています。会場でお会いしましょう。


 前回と同じく、最近入手したアナログレコードの話。
 1985年に公開された劇場アニメ『オーディーン 光子帆船スターライト』には「音楽集Vol.1」「音楽集Vol.2」と題された2枚のサントラ盤がある。その2枚は前から持っていたのだが、今年に入って、「もう1枚、音楽集があるんですよ」とライターの早川優さんから教えられて、自分の勉強不足を痛感。その後、それほど熱心に探していたわけでもないのだけど、ある日、中古レコード屋でレコードをチェックしていたら目の前にそのレコードがあるではないか!
 当時の定価より安かったこともあり、迷わず購入。これがアニメ音楽史的にもなかなか興味深い盤であった。

 『オーディーン 光子帆船スターライト』は1985年8月に公開された劇場アニメ。西崎義展プロデューサーが『宇宙戦艦ヤマト 完結編』(1983)の後に製作・総指揮を務めて完成させた宇宙SFアニメだ。
 西暦2099年、試験航海中の光子帆船スターライト号に乗りくんだ若者たちが、2万年の昔に地球を訪れていた異星人の宇宙船を発見したことから、異星人の故郷オーディーン星をめざして冒険の旅に出る物語。危険を承知で未知の星をめざす若者たちの冒険心や挑戦心が、本作の大きなテーマである。
 「『ヤマト』の夢ふたたび」をめざしたものの支持を得られず、『ヤマト』の二番煎じ、三番煎じと呼ばれたり、「宇宙を航行するスターライト号の美しさのみが救い」と言われたり、評価の芳しくない作品だ。しかし、作画監督に湖川友謙、高橋信也、金田伊功らをそろえた作画は見応えがあるし、血気盛んな若者たちが大人に反抗してがむしゃらに突き進む展開は『宇宙戦艦ヤマト』にはなかった味で、悪くない。あらためて観た筆者は、「ああ、この味は『宇宙からのメッセージ』(1978年公開の東映実写作品)だなあ」と思った。
 実際、西崎プロデューサーも、これはは若者たちのエネルギッシュなバイタリティが主眼の作品だと語っている。その躍動感にあふれるドラマを表現するには、『ヤマト』でおなじみの宮川泰と羽田健太郎の音楽だけでは不足と考え、へビィメタルとシンセサイザー音楽を取り入れた。
 結果、本作の音楽は、宮川泰&羽田健太郎によるシンフォニックサウンドと、へビィメタルバンドLOUDNESSのロックサウンド、T.P.O.によるシンセサイザーサウンドの3種類のサウンドが共演するぜいたくなものになったのである。
 LOUDNESSは人気ロックバンド・レイジー(影山ヒロノブがいたバンド)が解散したあとに、レイジーのメンバーだった高崎晃と樋口宗孝らが1981年に結成したバンド。1983年には全米ツアー、ヨーロッパツアーを行うまでの人気と実力を兼ね備えたバンドになり、本作に参加した頃は絶好調だった。その後、メンバーの交替はあれど、現在も活動を続けている。
 LOUDNESSが本作に提供したのは、主題歌「Odin」と挿入歌「Gotta Fight」、そしてインスト曲の「CONTACT!! スターライト号発進」(ストリングス編曲:羽田健太郎)と「Flash Out」の4曲だ。
 「Odin」はエンドクレジット(LOUDNESSも映像で登場する)を飾ったほか、スターライト号のクルーたちが異星人の記憶装置を解読してオーディーン星のことを知る場面に流れている。
 「Gotta Fight」は冒頭、若者たちがスターライト号に乗船する場面にたっぷり流れた印象深い曲。スターライトが帆を輝かせて重力遮断航行を開始する場面や、若きクルーたちがスターライト号を奪取する場面にも使用された、若者たちの勢いを象徴する曲である。
 「CONTACT!! スターライト号発進」はタイトルどおり、スターライト号発進シーンを盛り上げた曲。ロックサウンドに乗っての発進シーンは『ヤマト』と対照的だ。また、スターライト号が宇宙のサルガッソー的な異空間ギンヌンガ・ガップを脱出する場面にも流れている。
 「Flash Out」はアクションシーンで流れる野性味あふれる軽快な曲。サントラ盤には入っておらず、LOUDNESSの12インチシングル「Gotta Fight」のみに収録された曲である。
 宮川泰と羽田健太郎が手がけた楽曲は、『宇宙戦艦ヤマト』の流れを汲む壮大かつメロディアスな仕上がり。プロローグに流れる8分に及ぶ大曲「大航海時代」(宮川泰作曲)や羽田健太郎が作曲したスターライト号のテーマ「光子帆船スターライト」、激しいバトル曲「スターライト号の反撃」「THE WAR—大戦争—」(ともに宮川泰作曲)、颯爽とした曲調の「宇宙軍最高速戦闘機」(羽田健太郎作曲)などはサウンドトラック盤の中でも聴きどころだ。
 ところが、60人を超えるオーケストラで録音した宮川泰と羽田健太郎の楽曲は、劇中ではほとんど使われていないのだ。
 本編で印象に残るのは、LOUDNESSの手がけたハードなロックサウンドとT.P.O.が手がけたシンセサイザー音楽のほうなのである。

 本作は3種類のサウンドトラック・アルバムが発売されている。「音楽集Vol.1」(1985年8月発売)、「音楽集Vol.2」(1985年9月発売)は宮川泰と羽田健太郎の音楽とLOUDNESSの楽曲を中心にしたアルバム。そして3枚目が、T.P.O.のシンセサイザー音楽のみを収録したアルバムである(1985年10月発売)。
 このシンセサイザー音楽集、正式タイトルがよくわからない。帯には「オーディーン 光子帆船スターライト音楽集/SYNTHESIZER T.P.O.」と書かれている。ジャケットの表面は「T.P.O. オーディーン 光子帆船スターライト」。ジャケットの背は「オーディーン・シンセサイザー/T.P.O.」。そして、レコードのレーベル面の表記は「DIGITAL TRIP オリジナルサウンドトラック 劇場用アニメーション オーディーン 光子帆船スターライト 音楽集」。店頭でLPの背だけを見たら、あるいは帯なしのジャケットだけを見たら、サントラとは気づかないデザインである。むしろ、T.P.O.のアルバムとして売ろうとした形跡がある。
 そういう事情と、発売時期が公開から2ヶ月もあとだったこともあり、このT.P.O.のアルバムはアニメファンにあまり認知されず、そんなに売れなかったのだろう。現在に至るもほとんど忘れられた存在になっている。
 しかし、これが実は重要なアルバムなのである。

 そもそも「T.P.O.」とは何者か。アルバムには安西史孝と天野正道の名前がクレジットされている。前回取り上げた『みゆき』の音楽に参加した2人だ。この2人を含む5人組ユニットが、1983年にCBS・ソニーからデビューしたTPOなのである(『オーディーン 光子帆船スターライト』では「T.P.O.」と表記されているが、オリジナルアルバム等でのアーティスト名は「TPO」表記なので、以下、これに従うことにする)。
 TPOのデビュー時のメンバーは片柳譲陽、安西史孝、天野正道、岩崎工、福永柏の5人。バンドではなく、単独で音楽作りができる作・編曲家の集まりだった。そのなれそめは、1981年に開催された神戸ポートアイランド博覧会(ボートピア81)のパビリオン用の楽曲制作を請け負った安西史孝が、他のメンバーに声をかけたことだったそうだ。
 アルバム「TPO1」でデビューしたTPOは「ソニーのYMO」と異名を取るほどの注目を集める。そのデビューの年、1983年に、安西史孝と天野正道が手がけたのが劇場アニメ『うる星やつら オンリー・ユー』とTVアニメ『みゆき』の音楽だった。TPOはメンバーの組み合わせで名義を使い分けていて、安西史孝と天野正道の2人が受けた仕事は「TPO2」の名で担当することもあったという。『オーディーン 光子帆船スターライト』もまさにそういう仕事だが、クレジットはTPO(T.P.O.)となっている。
 『オーディーン 光子帆船スターライト』の仕事が特異な点は、T.P.O.名義で1枚アルバムを出したことである。
 そのアルバム=3枚目の音楽集の収録曲は以下のとおり。

A面

  1. 大要塞の出現
  2. 空間要塞体ベルゲル
  3. スクランブルII
  4. アースゴードのテーマ
  5. サスペンス
  6. ベルゲルの苦悩

B面

  1. ベルゲルロボット兵士の行進
  2. 宇宙軍最高速戦闘機
  3. 歪曲点突入
  4. 歪曲点通過
  5. GOTTA FIGHT
  6. オーディーン星

 「大要塞の出現」は謎の敵の本拠地・空間要塞体ベルゲルが登場する場面にたびたび流れた曲。
 「スクランブルII」はシンセによるアクション曲で、「音楽集Vol.1」に収録された「スクランブル」(これもTPOの曲)とともに、スターライト号の戦闘場面を盛り上げた。
 「宇宙軍最高速戦闘機」は「音楽集Vol.2」に収録されている羽田健太郎作曲の同名曲をシンセでアレンジ・演奏した曲。オーケストラ版が録音されているのに劇中ではわざわざシンセ版を使用している。
 「歪曲点突入」は、スターライト号が超光速航行が可能な「歪曲点」(一種のワームホール)に突入する場面に流れる現代音楽的な楽曲。2度にわたって使われている。
 「オーディーン星」は「音楽集Vol.2」に収録された「オーディーン星への想い」の後半部分を新たなアレンジでシンセで演奏した曲。「オーディーン星への想い」は羽田健太郎が作曲、TPOが演奏を担当した曲で、謎の美少女サラがオーディーン星人の残した記憶装置を解読する場面や、物語の終盤でベルゲル要塞のサイボーグ兵士がオーディーン星の思い出を語る場面などに使われた神秘的で叙情的な曲だ。「オーディーン星」のほうは、激闘の末にベルゲル要塞を退けた主人公たちがオーディーンに向けて旅立つラストシーンに流れている。
 未使用曲もあるが、重要な場面で流れる曲も多く収録された本アルバムは、『オーディーン 光子帆船スターライト』の音楽を語る上で忘れてはならない、また、欠けてはならない、重要な1枚である。そして、TPOのアルバムとしても、その筋のマニアには溜まらない1枚だろう。
 「音楽集Vol.1」のライナーノーツに掲載されたプロデューサー・メッセージによれば、もともと、機械に支配される敵異星人を描写する音楽としてシンセサイザーサウンドを取り入れることにしたのだという。
 しかし、これは想像だが、制作を進めるうちに、西崎プロデューサーの中ではTPOのサウンドがどんどん重要になってきたのではないだろうか。完成作品では敵側のみならず、スターライト号側の描写にもシンセサイザー音楽が使用されている。「音楽集Vol.1」「Vol.2」のオーケストラ曲があてはまる場面も、シンセサイザー音楽に置き換わっているのだ。最終的には、本編音楽の半分以上をTPOのシンセサイザー音楽とLOUDNESSのロックサウンドが占めることになった。
 それは、結果的によかったと思う。『ヤマト』との差別化につながったからだ。

 本作が公開された1985年は「SF大作にシンフォニックサウンド」という「スター・ウォーズ」(1977)以来の伝統(もしくは流行)が過去のものになりつつあった時代である。1982年公開の「ブレードランナー」「トロン」はすでにシンセサイザー音楽を採用しているし、1984年にはジョルジオ・モルダーが自身のシンセサイザー音楽をつけた「メトロポリス」をリバイバル公開している。日本でも、『1000年女王』(1982)、『風の谷のナウシカ』(1984)、『銀河鉄道の夜』(1985)など、シンセサイザー音楽が全編を彩るSF・ファンタジーが現われていた。大オーケストラによるシンフォニックな音楽は、『クラッシャージョウ』(1983)、『超時空要塞マクロス 愛おぼえていますか』(1984)を経て、本作を最後に見られなくなっていくのである。そもそも宇宙SFというジャンル自体が劇場アニメから消えていく。
 そんな過渡期のアニメ映画音楽をふり変える意味でも、本作は興味深い。
 残念ながら本作の3種の音楽集は、一度もCD化されていない。LOUDNESSの歌った2曲だけは、LOUDNESSのベスト盤で聴くことが可能だ。音楽集の復刻が望まれる。
 『オーディーン 光子帆船スターライト』では、主人公たちはオーディーン星にたどりつけないまま終わる。オーディーン、それは若者たちの胸に燃えるあこがれや夢の象徴なのだろう。そう思うと、旅を続ける決意で閉じる終幕もさわやかな印象が残る。この作品自体が、見果てぬ夢の象徴のようなものなのだ。時代のあだ花と呼んで切り捨てるには惜しい。その音楽とともに、今一度、鑑賞のチャンスがほしい作品である。

LOUDNESS EARLY SINGLES
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アニメ様の『タイトル未定』
165 アニメ様日記 2018年7月22日(日)〜

2018年7月22日(日)
デスクワークの日々。早朝の新文芸坐に。着いた時にはオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 105 『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事」の終盤だった。いつものようにイベントの最後を見届ける。その後、事務所に戻って作業。

2018年7月23日(月)
デスクワークの日々。「黄瀬和哉 アニメーション画集」と「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」の校了日。それと並行して「設定資料FILE」の構成を進める。配信で『メガロボクス』を観ながらの作業。今さらだけど、藤巻の名前ってゴロマキ権藤の「藤」と「マキ」からとっているんだろうなあ。『メガロボクス』は『あしたのジョー』に対するリスペクトだけでなく、1クールできっちりとまとまる物語と設定になっているところもよかった。「だれもしらないフシギな世界 湯浅政明スケッチワークス」の見本をいただく。まだ、パラパラとめくっただけだが、資料も豊富、読み応えもあるようだ。全体に好印象。ちなみに、僕も取材を受けている。

2018年7月24日(火)
デスクワークの日々。夕方に帰宅したのだけれど、確認しなくてはいけない用事が発生して、22時くらいに事務所に戻る。

2018年7月25日(水)
デスクワークの日々。「電脳コイル アーカイブス」の校了日。並行して「黄瀬和哉のうすい本」 の編集を進める。

2018年7月26日(木)
デスクワークの日々。今まで長尺版と言われていた『この世界の片隅に』に新しい場面を足した映画のタイトルが『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』であると発表された。いいタイトルだ。9時55分から新文芸坐のモーニングショーで「ゴッホ 最期の手紙」を観る。ロードショーで観るつもりで行きそびれた映画だ。ゴッホの生涯を描いた作品だと勘違いしていたけど、そうではないのね。実写を油絵でトレスしていて、実写そのものに見えてしまうところもあり、これをアニメーションと呼んでよいのかどうかは難しいところ。映像的に面白いところはいくつもあったし、よくもこんな手間のかかる作品を作ったものだとは思う。

2018年7月27日(金)
デスクワークの日々。昼で仕事が一段落して、午後から映画に行けるかと思ったが、そんなことはなかった。夏の新刊「黄瀬和哉 アニメーション画集」「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」「電脳コイル アーカイブス」について「WEBアニメスタイル」で告知する。メルマガ「押井守の『世界の半分を怒らせる』」の「廃刊特別号」が届く。僕はこのメルマガが好きだった。押井さんが近しい人と吞みながら話しているのを、近くで聞かせてもらっている感じもあり、それが楽しかった。読者の質問に答えるコーナーでの、押井さんの兄貴っぽい感じも新鮮でよかった。押井守研究における重要な資料にもなるはずだ。同メルマガ136号で少しだけ語られた「メルマガ編集者の心身の不調」が気になる。

2018年7月28日(土)
新文芸坐で「バーフバリ 伝説誕生」「バーフバリ 王の凱旋〈インターナショナル版〉」の2本立てを観る。噂には聞いていたけれど、期待した以上の超娯楽作だった。エネルギーに満ちた作品であり、燃えるだけでなく、泣ける。アクションのケレンも凄まじい。作り手が「娯楽作の価値」を信じているように感じられ、なによりもそれがよかった。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 106
『この世界の片隅に』二度目の夏

 公開から足かけ3年経った今も、多くのファンに支持され、超ロングランを続ける『この世界の片隅に』。先日、新規場面を加えたもう1本の映画、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開されることが発表されたばかりだ。
 2018年8月の新文芸坐とアニメタイルのオールナイトは、『この世界の片隅に』を手がけた片渕須直監督作品の特集だ。今回は監督を務めた劇場長編『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の片隅に』に加えて、ある作品の上映を予定している。そのタイトルが何なのかは、近々に発表できるはずだ。

(追記)もう1本の上映作品を発表します。「ACE COMBAT 04 shattered skies」サイドストーリーです。これはゲーム「ACE COMBAT 04 shattered skies」内のムービーで、片渕さんが演出と脚本を担当しています。お楽しみに。

 トークのゲストは、片渕監督を予定。前売り券は8月4日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 106
『この世界の片隅に』二度目の夏

開催日

2018年8月25日(土)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『アリーテ姫』(2000/115分/35mm)
『マイマイ新子と千年の魔法』(2009/93分/35mm)
『この世界の片隅に』(2016/129分/DCP)
「ACE COMBAT 04 shattered skies」サイドストーリー (C)BANDAINAMCO Entertainment Inc.

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第572回 『キャプテン翼』と久々の原画!

本当に大変なのです!
『キャプテン翼』をアニメ化するということは!

 何せ11人対11人が走りっぱなしに加えて、それを見守る監督やコーチや親族や恋人など。カットがいくつあっても足りません。2002年度版『キャプテン翼』で、自分もコンテを8本切らせてもらったので、現在放映中の新作『キャプテン翼』もその大変さが画面からにじみ出ていて、本編の翼たちより制作現場の方々をついつい応援してしまうのは、一種の職業病でしょうか? しかも今回の『翼』、制作会社が『ベン・トー』(2011年)の時お世話になったdavid productionで、監督が同じく『ベン・トー』の3話と11話でコンテ・演出をやってくださった加藤敏幸さんなので、スケジュールがあれば恩返しに駆けつけたかったのですが、本当に申し訳ありません。そのかわり、ウチ(ミルパンセ)出身の村田君が『ジョジョ』に引き続き参加しているのでよろしくお願いします! ちなみに『ジョジョ』は村田君自身が原作好きだったので、俺がdavidさんに紹介したかたちでした。あと、単純に自分『キャプテン翼』が原作から好きで、特に翼ってキャラクターが描いてて気持ちいいんです。頭の中はサッカーのことだけだから、行動原理がストレートで、カット割ってても迷うことなし! ケレン味も情緒系もハッキリした表情・ポーズでレイアウトもカッコよく決まるのです! やっぱりまた描きたい!!

で、『深夜! 天才バカボン』です!

 久々です。純粋に(自分の監督作品以外で)原画のみを描いたのは『TERRA FORMARS』最終話(ラストのヌンチャク・アクション)以来か? 今回の『バカボン』、本来は自分が面倒を見た新人が受けた仕事だったんですが、本人がギブアップ。先方に迷惑はかけられないので俺が引き受けました。「この忙しいのに〜!」と愚痴りながらも描いてる時は楽しい! それが原画。でも大したカット数をやったわけでもないのに、原画マンのクレジットで一番最初になっていたのは、他の原画の方に申し訳なかったです(汗)。制作さま、あまりお気遣いなく、真ん中にコッソリ埋めちゃってください、俺の名前などは。あれ? もしかして「あいうえお」順? だとしたら失礼しました。以前、某アニメ会社に「ウチはあいうえお順です」と言われたもので。あと、偶然なのですが、『深バカ』の副監督・演出はこれまた『ベン・トー』6話で演出してくださった山本天志さんだったので、こちらは多少恩返しできたかと思います。でも数少なくてスミマセン!

で、さらに今『ポ○モン』の原画を(汗)

アニメ様の『タイトル未定』
164 アニメ様日記 2018年7月15日(日)~

2018年7月15日(日)
やはり、デスクワークの日々。データ原口さんのTwitterアカウントが動いた。これは僕にとっては事件だ。原口さんは前からアカウントを持っていたのだが、ツイートらしいツイートはしていなかったのだ。このまま自分から情報を発信してくれるようになるといいなあ。作業をしながら、テレ朝チャンネル2の「EXまにあっくす 特濃~帰ってきたザザーンさん~ 再編集版」でやっていた「ザ・サムライ」を最初から最後まで観てしまった。前にも観たのに。3月12日(月)の日記でも書いたけど、月曜ドラマランドで放映されたドラマで、ユルい感じがいい。それから、大場久美子さんが演じる女教師がよかった。

2018年7月16日(月)
デスクワークの日々。祭日だけど、「黄瀬和哉 アニメーション画集」「馬越嘉彦 アニメーション原画集 第一巻」の編集に参加しているスタッフが集まって打ち合わせ。夕方は馬越さんからイラストの回収。最近、三日に一度は馬越さんに会っている気がする。

2018年7月17日(火)
デスクワークの日々。大物のテキストが終わったので、今日から少し楽になるぞと思ったら、まるでそんなことはなかった。嵐のような忙しさ。

2018年7月18日(水)
デスクワークの日々。Amazonで購入した『トランスフォーマー ザ・ムービー』 のBlu-ray(米国版)が届くが、再生する余裕もなし。

2018年7月19日(木)
デスクワークの日々。編集部スタッフに書いてもらったテキストをチャチャっと直して戻す。巧い。猛烈に巧いぞ、俺。瞬間的な作業でこれを書いているのを誰かに誉めてもらいたいくらいだけど、当事者は直された彼と直した僕の2人しかいないから、誰も誉めてくれない。

2018年7月20日(金)
デスクワークの日々。「あしたのジョーCOMPLETE DVD BOOK vol.1」のDVDをようやく再生。ディスク1枚に9話も入っているのに、「なにこれ?」と驚くくらい映像がきれいだ。旧『あしたのジョー』の映像の印象が変わるくらいのクリアさだ。劇場で『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の特報が流れたらしい。2020年ということは、庵野さんが還暦を迎える年だ。ところで、タイトルの最後の『:||』はロゴには入るけれど、テキストで表記する場合は省略するらしい。

2018年7月21日(土)
デスクワークの日々。話題の『BORUTO NARUTO NEXT GENERATIONS』65話「父と子」を観る。噂になっている回だ。確かにアクションの密度がとんでもない。話もみっちりと詰め込まれている。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 105 『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事」。楽しく、内容も濃いトークになったと思う。7月1日(日)のイベントでお客さんに見せられなかった資料を展示することができた。

第136回 番号で呼ばないで 〜みゆき〜

 腹巻猫です。連日35度を超える猛暑にぐったりです。ほとんど家にこもってます。みなさまも熱中症にお気をつけて。


 先日、放映当時買っていなかったサントラ盤を中古で入手した。それを聴いていて思うところがあったので取り上げたい。
 買ったのは「みゆき 音楽編 〈MIYUKI Music Issue〉」。1983〜1984年に放映されたTVアニメ『みゆき』のサウンドトラックLPだ。
 あだち充の人気マンガを原作にキティ・フィルムが製作したTVアニメ作品。アニメ制作もキティ・フィルム三鷹スタジオで行われた。あだち充マンガの初アニメ化作品である。
 平凡で優柔不断な高校生・若松真人は、ある日、憧れの同級生・鹿島みゆきと急接近する。ところが同じ日、外国で暮らしていた血のつながらない妹みゆきと6年ぶりに再会し、同居することに。真人と2人のみゆきとの三角関係を描いたラブコメディだ。エンディング主題歌「想い出がいっぱい」が大ヒットしたので、歌だけは覚えているという人も多いだろう。
 あだちマンガの空気感の再現という点ではのちの『タッチ』に一歩ゆずるが、主役3人の心情が丁寧に描かれた、よくできた作品だった。初期の真人のモノローグを多用した演出も雰囲気がある。妹の若松みゆきの声はソロデビュー前の荻野目洋子だし、鹿島みゆきは昨年急逝した鶴ひろみなので、今見直すといろいろ感慨深い。

 音楽はライオン・メリー、天野正道、安西史孝の3人の共作になった。
 ライオン・メリーは、あがた森魚のサポートメンバーに始まり、戸川純、大滝詠一、葛城ユキ、元ちとせなどのレコーディングやツアーサポートで、また、自身のバンド・メリーズで活躍したキーボード奏者、作曲家。
 天野正道はアニメ『ジャイアント ロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』(1992〜1998)、『STRATOS4』(2003)などの音楽で知られる作曲家、指揮者。
 そして、安西史孝は『うる星やつら』(1981〜1986)の音楽を風戸慎介らと共作で手がけた作曲家、キーボード奏者だ。
 同じキティ・フィルム製作の『うる星やつら』の音楽も複数作曲家の共作というスタイルだった。それを踏襲した形である。
 音楽は、4リズムにサックス、フルート、シンセなどを加えた小規模の編成。シンセは控えめで、生楽器の音色を生かした軽いロックやフュージョン風の曲が中心だ。コミカルにもシリアスにもなりすぎないタッチが、作品に合っていた。
 劇中には挿入歌として既製楽曲がたびたび挿入されている。終盤は毎回エンディングに「きょうの挿入歌」とクレジットが出て紹介されるくらいだった。来生たかおとヴァージンVS(あがた森魚のバンド)の曲が多かったが、井上陽水「傘がない」(6話)、白竜「ロンリーボーイ・ロンリーガール」(26話)、上田正樹「ルーレット」(32話)など渋い選曲もあった。挿入歌が、登場人物の言葉にならない微妙な心情を表現している。本作の特徴のひとつである。
 サウンドトラック・アルバムは「みゆき 音楽編 〈MIYUKI Music Issue〉」のタイトルで1983年8月にキャニオンレコードから発売された。サウンドトラック2枚目「みゆき 音楽編2 〈MIYUKI Music Issue 2〉」が1984年2月に発売されている。どちらもCD化はされていない。
 収録曲は以下のとおり。

A面

  1. BGM-1(★)
  2. BGM-2(☆)
  3. BGM-3(☆)
  4. BGM-4(※)
  5. BGM-5(★)
  6. BGM-6(※)
  7. BGM-7(★)
  8. BGM-8(☆)

B面

  1. BGM-9(★)
  2. BGM-10(★)
  3. BGM-11(★)
  4. BGM-12(★)
  5. BGM-13(※)
  6. BGM-14(※)
  7. BGM-15(※)
  8. BGM-16(※)
  9. 想い出がいっぱい(歌:H2O)

(作・編曲:☆=ライオン・メリー/★=天野正道/※=安西史孝)

 曲名を見て「な、なんじゃ、こりぁあ!」と思った人、筆者が手を抜いたわけではないのです。こういう曲名なのです。
 世の中には音楽メニューをそのまま曲名にしたようなサントラや、Mナンバーをそのまま曲名にしたサントラもある。後者はあえて「曲名をつけない」という選択をした結果、制作時に付番されていたMナンバーをそのまま使ったものだ。
 しかし、本アルバムの場合はあきらかに違う。単に収録順に1から16まで番号を付けたのだろう。
 実はキャニオンレコードは他の作品でもこういう曲名をつけている。他ならぬ『うる星やつら』のサントラ2枚目、「うる星やつら MUSIC CAPSULE 2」だ。曲名はM-1、M-2、M-3……。こちらはMナンバーにも見えるので、まだ罪が少ないとも言える(そんなことないか)。いや、「MUSIC CAPSULE 2」の発売日は1983年9月。「みゆき 音楽編」の1ヶ月後なので、同じBGM-1、BGM-2ではまずいと思って、こっちをM-1、M-2にしただけではないか。
 では、「みゆき 音楽編2」は? と思って調べると、BGM-17、BGM-18……と「音楽編」の番号の続きになっていた。
 当時のキャニオンレコードのサントラが全般にこういう曲名のつけ方をしていたわけではない。『トム・ソーヤーの冒険』も『新竹取物語 1000年女王』も、ちゃんと1曲ずつ内容をイメージさせる曲名がついている。なぜか『みゆき』と『うる星やつら』はこういう曲名になっているのだ。
 これは、アニメ音楽ビジネスに参入して間もないキャニオンレコードにサントラを作るノウハウがなく、ディレクターまかせにしたために生じたことだという。このあたりの事情は、CD「女性声優グループ音楽史[ポニーキャニオン編]」(1996/ポニーキャニオン)初回盤に付属している60ページに及ぶブックレット「アニメーション音楽史[ポニーキャニオン編]」に詳しい。
 BGM-1、BGM-2という曲名のつけ方はユーザーに親切でないだけでなく、ビジネスでも損をしている。「『みゆき』のサントラ買おうかな」と思って店頭で収録内容を見ても、曲名がこれではどんな曲が入ってるかわからない。やっつけで作ったような商品に見える。だから、このアルバムはあまり売れなかったらしい。

 では、中身はつまらないかというと、まったくそんなことはないのである。今聴いてもなかなか味わいのある、いいアルバムだ。曲ごとの作・編曲者がクレジットされている点も評価したい。
 BGM-1はサックスをフィーチャーしたロックンロール風の曲。『ジャイアント ロボ』のシンフォニックな音楽のイメージが強い天野正道だが、こういうバンド編成の小粋な音楽も書くのだ。4話で若松みゆきが高校の編入試験に合格したことを知った真人の同級生・竜一が大はしゃぎする場面に流れている。
 他の天野正道の音楽も一緒に紹介しよう。BGM-5はフルートとピアノをフィーチャーしたさわやかでメロディアスな曲。途中からストリングスが加わって上品な雰囲気に。「鹿島みゆきのテーマ」というイメージだ。
 BGM-7はサックスが陽気なテーマを奏でる軽快な曲。4話で真人がみゆきを編入試験に合格させようと家事を引き受ける場面に流れた。「がんばれ!お兄ちゃん」という感じだろうか。
 BGM-9はサックスとフルートが流麗なメロディを歌う爽快感のあるフュージョン。1話で若松みゆきがサーフィンをしながら登場する場面に使用されている。ずばり、「若松みゆきのテーマ」というイメージ。
 BGM-10はサックスとピアノ、ストリングスによる艶っぽくムーディなナンバー。真人がエッチな妄想をふくらませる場面などに流れている。曲名をつけるなら「むふ(ハート)」というところ。
 BGM-12はテナーサックスがもの憂げな、ムード歌謡みたいな曲。3話でみゆきと竜一を送り出した真人が悶々とするユーモラスな場面に使用された。「真人の憂鬱」とでも呼びたい曲だ。
 BGM-2、BGM-3、BGM-8はライオン・メリーの作曲。アルバムの中でも異彩を放っている。BGM-2は小粋なピアノとバンドがセッションする軽快な曲で、70年代アイドル歌謡曲みたいなピアノのメロディが印象的。
 BGM-3は「♪シュビドゥバ」と女声スキャットが入るファンキーな曲。若松みゆきに自分をアピールしまくる竜一の場面に流れている。BGM-8も頭から女声スキャットが「♪ドゥビドゥバ」と歌い出すはじけた曲だ。1話で黒いビキニの水着を手にした真人と同級生の好夫がにんまりする場面に使用。曲名をつけるなら「男ってやつは……」とか。
 いずれも、あがた森魚や戸川純など、個性的なアーティストのサポートをしてきたライオン・メリーならではの遊び心にあふれたナンバーである。
 シンセをメインにしたユーモラスなBGM-4、BGM-6は『うる星やつら』の安西史孝の作曲。どちらも歌メロのようなメロディの曲で、密かに歌詞があるのでは? と思ってしまう。本作の代表的なコミカル曲だ。
 同じ安西史孝の曲でも、BGM-13、BGM-14、BGM-15、BGM-16は、いずれもピアノ、フルート、ストリングス、サックスなどの生楽器をメインにした小編成のメロディアスな曲。シンセのイメージが強い安西史孝だが、両親はバイオリンを弾いていて、自身も小さい頃からクラシックピアノを弾いていたそうだから、クラシカルな音楽も得意なのである。
 フルートの快活なメロディから始まるBGM-14は、2話で若松みゆきが好奇心に目を輝かせながら街を歩く場面に使われた。みゆきの天真爛漫な魅力を描写する曲だ。
 フルートとストリングスのアンサンブルがさわやかなBGM-15は朝のイメージ。真人とみゆきの登校シーンなどに流れている。
 BGM-16はピアノとエレピが奏でるメロウなナンバー。フランス恋愛映画の音楽のような大人びた哀愁をただよわせる曲だ。本作のロマンティックな一面を表す、本アルバムの中でも聴きどころの1曲である。「たそがれメランコリー」なんて、ムードのある気取った曲名をつけたくなる。

 と紹介してきたが、やはり曲名がBGM-1、BGM-2では読者もイメージがわきづらいのではないだろうか。
 曲名は楽曲の顔。一度つけると10年も20年も、自分が思った以上に後世まで残ってしまうので、筆者も曲名を付けるときは非常に気を遣う。作曲家にとっては自分の子どもに名をつけるようなものだから、思い入れもひとしおだろう。「この名前でみんなに愛されてね」と思いを込めて名づけているのだ。
 不思議なもので、ヘンな曲名だと思っても呼んでいるうちに慣れてしまう。『宇宙戦艦ヤマト』の「元祖ヤマトのテーマ」も最初は「うーん?」と思ったが気にならなくなった。けれど、だからこそ、曲名は安易につけてはいけないのだ。
 いっぽう、曲名がついていてもMナンバーで呼ぶ人もいる。楽曲制作時には曲名はついていないのだから(つけている作曲家もいる)、厳格に考えればそれが正しいのだが、味気ない印象はぬぐえない。Mナンバーは一種の記号であって曲名ではない。曲を音楽ではなくデータとしてしか見てないような印象を受けるのだ。個人的には「曲名がついているなら曲名で呼んであげてほしいなあ」と思う。
 「番号なんかで呼ぶな! おれは自由な人間だ!」というのはイギリスの傑作TVドラマ「プリズナーNo.6」の中のセリフだ。音楽にも人格があるなら、名前で呼んでほしいと思うのではないだろうか。
 曲名は残念な「みゆき 音楽編」だが、曲自体はお勧めなので、アナログレコードが聴ける人は、中古盤で見かけたら入手して聴いてほしい。

 最後に、本アルバムに収録された主題歌についても書いておきたい。
 オープニング「10(テン)%の雨予報」とエンディング「想い出がいっぱい」の2曲とも、作詞・阿木燿子、作曲・鈴木キサブロー、編曲・萩田光雄の作。当時の歌謡界のヒットメーカーをそろえた豪華な顔ぶれである。歌のH2Oは、1980年に実写劇場作品「翔んだカップル」の挿入歌「ローレライ」でデビューした男性2人デュオ。
 「10%の雨予報」は、鈴木キサブローらしいメロディのさわやかで軽快な曲。TVサイズはヒロイン「みゆき」の名が歌われているが、レコードサイズはその部分を別の歌詞に変えてある。ふつうのJ-POPとして売り出すための変更だろう。アニメソングのJ-POP化が進み始めた時代ならではの処理である。
 「想い出がいっぱい」は、今でもTVなどで流れ歌われている、H2O最大のヒット曲。中学や高校の教科書にも載り、授業や合唱で取り上げられているそうだ。シングル盤は「想い出がいっぱい」がA面で、「10%の雨予報」がB面に収録されていた。阿木燿子のストーリー性のある歌詞と鈴井キサブローの郷愁を感じさせるメロディの組み合わせが、胸をざわざわさせる。
 『みゆき』の主題歌と挿入歌(の一部)はアルバム「みゆきのLOVELYコレクション」にまとめられ、CDでも発売された。「10%の雨予報」は歌詞違いのTVサイズとレコードサイズの両方が収録されているのが気がきいている。この気配りがサントラにもあれば……と思うが、「LOVELYコレクション」の方は発売元がキャニオンレコードではなくキティレコードなのであった。

みゆきのLOVELYコレクション
Amazon

アニメ様の『タイトル未定』
163 アニメ様日記2018年7月8日(日)~

2018年7月8日(日)
デスクワークの日々。前日から続いて、ある本のテキスト作業。『ダーリン・イン・ザ・フランキス』最終回を観る。ガイナックスリスペクト(リスペクトという言葉が正しいのかどうか分からないけど)にちょっと驚く。それはおいておいて、いい最終回だった。確認することがあってDVDで『VAN HELSING THE LONDON ASSIGNMENT』を観る。黄瀬和哉さんは「Animation Director’s」の役職で二人クレジットされているうちの一人。キャラクターデザインの役職で数人クレジットされているが、黄瀬さんの名前はなし。

2018年7月9日(月)
デスクワークの日々。うちのMacはブロンズと書こうとしたら、青銅聖闘士と変換する。

2018年7月10日(火)
デスクワークの日々。嵐のような忙しさ。馬越嘉彦さんからイラストを回収。前にイベントの楽屋で、あるアニメーターさんに住所と電話番号をいらない紙の裏に書いてもらい、なんとなく使っていないパソコンのモニターに貼っていたんだけど、それが役に立つ日がきた。

2018年7月11日(水)
デスクワークの日々。dアニメストアで『蟲師』を観る。面白い。『蟲師 続章』より面白いような気がする。

2018年7月12日(木)
デスクワークの日々。今さら『攻殻機動隊 ARISE』のタイトル表記を確認した。本編映像だと以下のようなかたちでタイトルが表示されている。
…………
攻殻機動隊 ←文字サイズ・中
ARISE ←文字サイズ・大
GHOST IN THE SHELL  ←文字サイズ・小
…………
だったら『攻殻機動隊 ARISE[GHOST IN THE SHELL]』とか『攻殻機動隊ARISE -GHOST IN THE SHELL-』といった複雑な表記はしないで『攻殻機動隊 ARISE GHOST IN THE SHELL』でよいのではないか。勿論、シンプルに『攻殻機動隊 ARISE』もあり。それに対して『攻殻機動隊 新劇場版』のタイトルロゴは本編映像だと以下のようなかたちになっている。
…………
攻殻機動隊 ←文字サイズ・大
GHOST IN THE SHELL  ←文字サイズ・小
新劇場版 ←文字サイズ・中
…………
これを『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL 新劇場版』と表記すると分かりづらいから、やはり『攻殻機動隊 新劇場版 GHOST IN THE SHELL』か。勿論『攻殻機動隊 新劇場版』もあり。最初の劇場版を『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』にするなら、あわせて『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 ARISE』、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 新劇場版』にするという手もある。かっこいいけど「それは違う」という意見もありそうだ。
以下は別の話題。確認することがあって 『おジャ魔女どれみ♯』最終回が収録されているDVDをレンタルで観たのだけど、最後に『も~っと!おジャ魔女どれみ』1話の予告が入っていない。寂しい感じで終わってしまう。

2018年7月13日(金)
デスクワークの日々。今度は『蟲師 続章』を観る。ああ、やっぱり、『蟲師』と『蟲師 続章』は別のアニメだなあ。きちんと比べたら、どちらもいいところがあるということになるんだろうなあ。夕方に帰宅したのだけど、対応しなくてはいけない用事が発生して、22時くらいに事務所へ戻る。その用事を片づけた後で『からかい上手の高木さん』OADを観る。ああ、確かにTVシリーズとノリが違う。テンポ感も違うかな。

2018年7月14日(土)
デスクワークの日々。朝の散歩でサンシャインシティに行ったら「魔法×戦士 マジマジョピュアーズ!」イベントのリハーサルで、主演の女の子達がジャージ&白Tシャツ姿で練習をやっていたでござる。
【後日修正】これを書いた後で、日記メモを読み返して、間違いに気がつきました。たまたま「魔法×戦士 マジマジョピュアーズ!」イベントのリハーサルを見たのは翌日の7月15日(日)でした。訂正させていただきます。

第570回 『バキ』と『キャプテン翼』

 今年4月から『キャプテン翼』、7月から『バキ』が放映中で、なんとなく嬉しい板垣です。なぜなら自分がテレコムを辞めて、演出デビューが2001年の『グラップラー刃牙』で、その後が同じグループ・タック制作繋がりの2002年版『キャプテン翼』。演出駆け出しの頃に関わった『バキ』と『翼』が10数年振り、しかも同時期に観られるなんて、なんか素敵な話。本当は時間があったら、それぞれ1本ずつお手伝いさせてほしいとこなんですが、現状を鑑みるとそうもいきません(汗)ので、今回は一視聴者として楽しませていただきたいと思います。
 まず『バキ』! 俺自身は基本スポ根や格闘ものも大好きです。今回の『バキ』は2001年の『グラップラー刃牙』の時より原作の絵に近くて、それはキャラだけでなく、画作り的な部分も非常に板垣恵介先生ワールドを再現できてると思いました。特にオープニングは格好よすぎ! 「最大トーナメント編」なのも個人的に痺れました! ジャック・ハンマーは、自分も2001年版『刃牙』で描いたんですが(#40「明日を捨てた男」)、凄えカッコイイんですよね。今回のオープニング、口内カメラのカットとか怖くていい! うーん描きたかった! 今シリーズの「最凶死刑囚編」は連載当時
、毎週楽しく読んでました。ていうかアニメ業界内に『バキ』ファンて本当多いですね! 今回『バキ』の監督は平野俊貴さん。お会いしたことはありませんが、平野監督と言えば『戦え!! イクサー1』! OVAバブルのころ観ましたし、BD買いました。
 ちなみに自分の演出デビューは、2001年版『刃牙』#22「両雄激突!」で1本目は処置(演出)のみ。2本目#28「オーガ降臨」以降(#34「ファイティング・キッズ」と#40)は全てコンテ・演出。あと#09「訣別」は原画で参加したはずです。初めてコンテを描かせてもらえた『刃牙』はとても嬉しくて、小田部羊一先生とお食事に行った際、「先生、僕コンテ描いたんですよ!」とお見せしたところ、


 まずタイトルが読みにくかったようでした。続いて「えっ!? 板垣くん、演出志望だったの?」と。
 で、『キャプテン翼』! こちらは4度目? OVAの『新』を入れると5度目のアニメ化でしょうか。最初のTVシリーズは自分が小学生のころ、OVAの『新キャプテン翼』は中学でOVAバブル期。次の『キャプテン翼J』は学校を卒業してテレコムに入ったころ。そして2002年版『キャプテン翼』はフリーになってスタッフとして参加。自分サッカー部に入ったことは1度もないけど、『翼』の単行本は姉貴と一緒に全巻揃えたくらい好きだったので、2002年にコンテでの参加(#49「狙え! 10ゴール10アシスト」のみコンテ・演出・作監)は嬉しかったのを憶えています。今回の新シリーズも時間があったら参加したかった、てとこですみません!

アニメ様の『タイトル未定』
162 アニメ様日記 2018年7月1日(日)~

2018年7月1日(日)
早朝に新文芸坐へ。着いた時には、オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 104 東映長編の名作」の終盤だった。いつものようにイベントの終わりを見届ける。その後、某所で井上俊之さん関連の資料を探したのだが、肝心の『GU-GUガンモ』の原画が見つからない。自宅にあるのではないかと気づき、帰宅して原画を探索。そして、発見。よかったよかった。あ、自宅にアニメの資料が山積みになっているわけではないですよ。念のため。昼から阿佐ヶ谷ロフトAでトークイベント「第147回アニメスタイルイベント 井上俊之の作画を語ろう」を開催。井上さんにたっぷり話をしていただいて、それはよかったのだけれど、せっかく見つけた資料をお客さんに見ていただく時間がとれなかった。7月21日のオールナイトで展示できたら、展示したい。

2018年7月2日(月)
放映済みのあるオリジナルアニメの脚本を読んでいたら、傑作ギャグシーンで段取りとセリフがほとんど脚本のまま。だけど、脚本よりも面白くなっている。これは理想のかたちのひとつだなあ。昼から新宿で取材。何の作品についての、誰の取材なのかはまだ秘密。今回はあるライターさんに、取材のアシスタントで入ってもらったのだけど、それが新鮮だった。

2018年7月3日(火)
朝は事務所で、TOKYO MXで録画した『幽★遊★白書』セレクト放送を再生しながらキーボードを叩く。やっぱり役者さんの芝居が楽しい作品だ。夏に出す予定のあるアニメーターさんの原画集で、試し刷りが出る。今回は紙の種類、厚みを変えて束見本を3つ作ったのに加えて、紙の種類、厚みを変えて、4種類の試し刷りを出した。ちなみにその原画集は編集作業が進行中であり、まだレイアウトはできていないので、仮の素材と仮のレイアウトで試し刷りを出した。午後にそのアニメーターさんの取材があり、その場で試し刷りを見てもらい、紙のセレクトについて確認していただいた。彼らしい紙を選ぶことができたはず。今日は「アニメスタイル013」の発売日だったが、片づけなくてはいけない用事が多く、書店に「アニメスタイル013」が並んでいるのを見に行くことができなかった。

2018年7月4日(水)
14時から新宿で取材。休憩を挟んで、21時から中央線方面で取材。23時50分から新宿バルト9で、まもなく上映が終了するはずの『UNDER THE DOG Jumbled』を観る。デフォルメキャラのパートやイメージビデオ風のパートがあって面食らったが、本編は予想していたよりも見応えがあった。OVAシリーズの第1話という感じ。

2018年7月5日(木)
打ち合わせとメールだけで一日の大半が終わる。メールも打ち合わせも仕事ではあるんだけど、もっと色々と進めないと。ネットで『UNDER THE DOG Jumbled』の上映期間が延長されたことを知る。ガーン。知っていれば、無理して夜の遅い時間に行かなかったのに。

2018年7月6日(金)
気がついたらMacのSafariで、Huluが再生できるようになっていた。よかったよかった。Huluで『機動警察パトレイバー[劇場版]』を観ていたら、次の動画として勧められたのが、『機動警察パトレイバー』NEW OVAの8話「火の七日間」だった。『機動警察パトレイバー2 the Movie』じゃないのか。いや、これはこれで「分かっている感」はあるんだけど。

2018年7月7日(土)
ある本のテキスト作業。確認することがあって、土曜の昼から『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』を観る。どちらかというと、夜に観たい作品だ。今回は黄瀬和哉さんの作画監督作品として観た。

第569回 大塚さんのお言葉

7月11日は大塚康生さんのお誕生日、87歳おめでとうございます!!

 大塚さんは自分にとってアニメ業界に入っていちばん最初の先生です。専門学校では小田部羊一先生に作画を教わり、プロになってからは大塚さん! 我ながら運がいいアニメ人生の滑り出しでした。板垣がテレコムでお世話になったのは1994〜2001年まで。小田部先生より「僕の教え子」との触れ込みがあったせいか、大塚さんは最初から気さくに話しかけてくださいました。「とにかく画を描いたら何でも大塚さんに見せに行きなさい」と小田部先生にも言われていたので、研修期間からちょくちょくスケッチや原画もどき(原画の習作)を見ていただきました。研修課題だけで手一杯な新人が多い中、寝る時間・遊ぶ時間を削って画を描いては見せにくる新人が、その当時は珍しかったのでしょう。後に後輩づてに聞いた話では、板垣の話題が出ると「アイツは画を見てくれと、しょっちゅう持ってくるんで困った(笑)」と話してたそうで、照れくさくもあり嬉しくもありました。以下は数ありすぎる、そして忘れられない大塚さんのお言葉の抜粋。

「あんた、動画向いてないね〜。早く原画になりなさい」
(緊張でガチガチな板垣の動画を見ての一言)

「今度1日かけてじっくり見てやるよ」
(原画の習作を何回か持っていった時の嬉しい一言)

「あ、燃えてる燃えてる〜、気分(雰囲気?)出てますよ」
(炎の課題を提出した際のこれまた嬉しかった一言)

「うん、ここの水の切り方いいね〜」
(板垣の『CYBERSIX』の原画を指差して……同上)

「こないだ宮崎(駿監督)に会ったら、巧いアニメーター貸してくれないか? 
って言われたんで、馬鹿言うな! って返してきたよ、ひひひ(笑)」
(イタズラっぽく話されてましたが、「巧いアニメーター」はけして俺のことではありません!)

で、何より忘れられないのは、演出家になりたくて退社を決意した時の一言。

あわてることはないんじゃない?

「止めてくださってる!」と感激したものですが、「でも、やっぱり」と自分の意志を伝えました。その時の一言が、

第135回 超人ふたたび 〜電光超人グリッドマン〜

 腹巻猫です。90年代に放送された特撮TVドラマ「電光超人グリッドマン」を原作とするアニメ『SSSS.GRIDMAN』が10月からTV放映されるというニュースが入ってきました。『アニメ(ーター)見本市』で発表された短編アニメ『電光超人グリッドマン boys invent great hero』がパイロット版になった形でしょうか。音楽は鷺巣詩郎が担当するというから期待が高まります。


 今回は短編アニメ版でも主題歌が引用されていたオリジナル版「電光超人グリッドマン」の音楽を紹介しよう。久しぶりに特撮作品の音楽がテーマだ。
 「電光超人グリッドマン」は1993年4月から1994年1月まで放映された円谷プロ制作の特撮TVドラマ。コンピュータ・ワールド(今でいう電脳世界=サイバースペース)を舞台に、異次元の魔王カーンデジファーと戦う電光超人グリッドマンの活躍を描く特撮ヒーローものだ。パソコンやインターネットが広く普及していない時代に電脳世界の戦いを描いた先駆的な作品である。CG技術が成熟していなかったこともあり、コンピュータ・ワールドの描写はほとんどミニチュア(と言っていいのか……?)特撮を利用して行われている。今観てもなかなか新鮮だ。
 グリッドマンと協力しあって電脳世界の危機を救うのは、直人、ゆか、一平の3人の少年少女。いっぽう、カーンデジファーに誘惑されて電脳世界を破壊する怪獣を作り出すのも、人付き合いの苦手な少年・武史。いずれも14歳、中学2年の少年少女たちが物語の中心となるのが本作の大きな特徴である。少年ドラマ的な味わいがある特撮ドラマだった。
 音楽は戸塚修が担当している。

 戸塚修は1952年生まれ。ご本人のサイトに掲載されたプロフィールによれば、慶應義塾大学在学中にポップス理論を林雅彦に、ジャズ理論を北川祐と渡辺貞夫に師事。また、ジャズピアノを藤井貞泰に、アンサンブルを大森明に師事した。70年代からキーボード奏者、作・編曲家として活動を始め、八神純子「思い出は美しすぎて」(1978)、近藤真彦「愚か者」(1987)など、数々のポップスの編曲を手がける。
 アニメ音楽(BGM)の仕事では、『星銃士ビスマルク』(1984)を皮切りに、『超獣機神ダンクーガ』(1985/いけたけしと共作)、『鎧伝サムライトルーパー』(1988)、『魔法のエンジェル スイートミント』(1990)、『あしたへフリーキック』(1992)、『十二戦支 爆烈エトレンジャー』(1995/池毅と共作)などを手がけている。現在は“トッツィー戸塚”、“悠木大”の名でも活躍中。
 戸塚修がアレンジしたアニメ・特撮ソング——「風のノー・リプライ」(『重戦機エルガイム』1984)、「不思議CALL ME」(『星銃士ビスマルク』)、「City Hunter 〜愛よ消えないで〜」(『CITY HUNTER』1987)、「ジライヤ」(「世界忍者戦ジライヤ」1988)、「サムライハート」(『鎧伝サムライトルーパー』)など——を聴けば、その作風がなんとなくわかる。バンド編成をベースにロックのリズムとシンセをブレンドしたサウンド、楽曲を特徴づける巧みなコーラス、キラキラしたポップス風味。80年代の戸塚修アレンジはそんなイメージだった。
 「電光超人グリッドマン」の音楽にもそのサウンドが継承されている。作品内容からすればシンセをふんだんに使ったテクノポップ風であってもおかしくないし、そういう曲もあるのだが、基本はロックサウンドを基調にした王道のヒーロー音楽だ。
 サウンドトラック・アルバムは1993年9月にビクターエンタテインメントから発売された。収録内容は以下のとおり。

  1. 夢のヒーロー(歌:坂井紀雄)
  2. 平和な街角
  3. ふたつの勇気(インストゥルメンタル)
  4. 小さな悪意
  5. 怪獣出現!
  6. 僕たちの秘密基地
  7. ジャンク
  8. 魔王カーンデジファー
  9. ハートブレイク
  10. パサルートを駆け抜けろ!
  11. バグッた!
  12. ふたつの勇気(歌:コンポイドスリー)
  13. 怪獣のダンス
  14. ああ、大失敗
  15. グリッドマン危うし
  16. 敗北
  17. アクセスコードはGRIDMAN
  18. 決意
  19. 負けるなジャンク
  20. ともだち
  21. がんばれ! 3人組
  22. 侵略
  23. アシスト・ウェポン発進せよ!
  24. 破壊
  25. 超神合体! サンダーグリッドマン
  26. 電光雷撃剣グリッドマンソード
  27. もっと君を知れば(歌:坂井紀雄)

 1曲目がオープニング主題歌、ラストの27曲目がエンディング主題歌。ともにフルコーラスで収録されている。
 12曲目は少年3人組が歌う挿入歌だ。
 オープニングは鈴木キサブローの作曲。キャッチーな歌い出しから、いつまでも続くようなサビまで、鈴木キサブローらしいメロディの曲だ。戸塚修のアレンジはシンセを強調したテクノロックの趣。歌い出しのボーカルとコーラスのかけあいが強烈に印象に残る。ハードな曲調の中にふっと哀愁が漂う中間部のコーラスの入れ方もうまい。90年代特撮ソングの名曲のひとつである。
 トラック2「平和な街角」は直人たちの平和なひとときを描写する曲。軽快なリズムの上でサックスとストリングスがメロディを奏でる。物語の開幕にふさわしい明るい曲だ。
 トラック3は戸塚修作・編曲の挿入歌「ふたつの勇気」のストレートなインストゥルメンタル。ゆかと一平がグリッドマンを助ける支援プログラムをコンピュータ・ワールドに送り込む場面などに流れていた。戸塚修が設定した「主役トリオのテーマ」である。
 トラック4「小さな悪意」は武史のテーマとも呼ぶべき曲。直人たちの同級生・武史は、魔王カーンデジファーに心の弱さを突かれて電脳怪獣を創り出し、さまざまな事件を引き起こす。今でいうブラックハッカー(クラッカー)のような少年だ。シンセのミステリアスな音色と妖しいメロディが不穏な雰囲気をかもしだす。心の闇を描写する曲だ。
 トラック5はコンピュータ・ワールドを破壊する怪獣を描写する「怪獣出現!」。くり返されるエレキギターのリフにシンセの緊迫したフレーズが絡み、危機感を盛り上げる。挿入されるピアノの高音が効果を上げている。怪獣好きとしてはついつい気持ちが高ぶってしまう曲。
 トラック6「僕たちの秘密基地」は「もっと君を知れば」のメロディによる主役トリオのテーマ。直人たちは、一平の両親が経営するインテリアスペースの地下に、自作のパソコンを組み立てる秘密の作業場を持っているのだ。ウエスタン的なリズムにブラスのメロディと弦の流麗な対旋律。高揚感のある爽やかな曲である。グリッドマンの戦闘場面にもたびたび選曲されている。
 次のトラック7「ジャンク」は3人が組み立てたパソコン「ジャンク」のテーマ。ジャンクはグリッドマンにエネルギーを供給する生命線である。デジタルなリズムの上でリコーダー風のシンセのメロディが踊る。後半にアドリブっぽいソロが登場するから、メロディは打ち込みではなく手弾きのようだ。
 トラック8は「魔王カーンデジファー」。悪の親玉の登場である。カーンデジファーはハイパーワールドからこの世界にやってきて武史のパソコンに棲みついた魔王。対するグリッドマンはハイパーワールドからカーンデジファーを追ってきたエージェントという設定。彼らはプログラムではなく、異次元からやってきた生命体なのだ。そのため、怪獣やカーンデジファーがコンピュータ・ワールドから現実世界へ出てこようとする描写もある。本作が他の電脳SFものと異なるユニークなところである。曲の冒頭はカーンデジファー登場を表現するショック音楽。続いてエレキギターとエレピが奏でる重いリズムにストリングスのメロディがうねり、カーンデジファーの恐ろしさを描写する。
 トラック9「ハートブレイク」はサックスとアコースティックギター、エレピなどが奏でる「ふたつの勇気」のバラードアレンジ。メロウな演奏は大人っぽすぎる気もするが、少年少女らしい悩みや寂しさを描写する曲として、とてもいい雰囲気に仕上がっている。
 トラック10「パサルートを駆け抜けろ!」のパサルートとはコンピュータ・ワールドへつながる通路のこと。グリッドマンはパサルートを通って事件が起きたシステムへ急行するのだ。映像では光り輝くトンネルの形状で描写されていた。エレキギターの緊迫したフレーズからシンセによる「ふたつの勇気」のメロディへと展開する疾走感たっぷりの曲。
 次のトラック11「バグッた!」は4リズムとファンキーなシンセが奏でるコミカル曲。トラック13「怪獣のダンス」、トラック14「ああ、大失敗」とともに、直人たちのほのぼのするシーンを彩る曲である。
 トラック12「ふたつの勇気」は戸塚修が設定した主役トリオのテーマに歌詞をつけて歌にしたもの。少年ドラマっぽい歌詞がなかなか泣ける。歌っているコンポイドスリーは正体不明だが、主人公たちと同世代の少年を集めたグループだそうだ。本作のドラマの肝は、グリッドマンと直人たちの間に友情が芽生えること。その友情をテーマにした曲だ。
 トラック15「グリッドマン危うし」は冒頭から緊迫感あふれる危機描写曲。エレキギターが刻むリズムにブラスとストリングスの切迫したフレーズがくり返される。中間部のエレキギターのアドリブが聴きどころ。手弾き楽器ならではの生々しい緊張感がいい。第25話のラスト、グリッドマンが倒され、世界はカーンデジファーに支配されてしまうのか? という危機感に満ちた場面に流れていた。
 トラック16「敗北」はオープニング主題歌のメロディをピアノソロでしっとりと演奏した悲しみの曲。第26話でグリッドマンとともに倒れた直人をゆかが介抱する場面に流れている。トラック15からこの曲を経てトラック18に至るまでの構成が実にうまい。
 トラック17「アクセスコードはGRIDMAN」は敗北ムードを吹きとばパワーみなぎる曲だ。戸塚修が設定したグリッドマンの主題、本作のメインテーマとなるメロディが登場する。エレキギターとブラスのかけあいで展開する軽快なロックナンバーである。
 ドラムロールからスタートするトラック18「決意」はブラスとストリングスを主体にしたオープニング主題歌の勇壮なアレンジ。グリッドマン勝利のイメージの曲だ。マカロニウエスタン風のリズムが燃える。ヒーローものの音楽はこうでなくては! と思わずひざをたたきたくなるような胸躍る曲。
 次から3曲はひと休みの雰囲気。トラック19「負けるなジャンク」はシンセ主体のテクノポップ風の曲。本作ではこういうシンセ主体の音楽は意外に少ない。
 トラック20「ともだち」はピアノソロが奏でる友情のテーマ。エンディング主題歌のスローアレンジである。第2話でグリッドマンが自分の使命を語り、直人、一平、ゆかの3人がグリッドマンとともに戦う決意を固める場面に流れていた。
 トラック21「がんばれ! 3人組」は「ふたつの勇気」のエレキギターメロによるアップテンポアレンジ。青春ドラマ音楽のような明るくポジティブなナンバーだ。
 トラック22から最終決戦の雰囲気になる。「グリッドマン危うし」の変奏である「侵略」は、焦燥感をあおるエレキギターのリズムをバックに、ブラス、エレキギター、ストリングスがスリリングなセッションをくり広げる曲。グリッドマン絶体絶命! といったシーンに流れる危機描写曲だ。
 トラック23「アシスト・ウェポン発進せよ!」はゆかと一平がジャンクを通して送り込むグリッドマン支援プログラム=アシスト・ウエポンのテーマ。少年少女たちがヒーローを助けてともに戦う構図が本作のドラマの燃えるところである。ブラスのイントロに続いて、オープニング主題歌のメロディを引用したストリングスのリフがくり返される。心をかき立てるトランペットソロ、ストリングスのリフを挟んでサックスのアドリブが続き、再びトランペットソロ、サックスのアドリブという構成。熱気あふれるセッションを聴くような、本アルバムの中でもいちばんの聴きどころのひとつ。
 ワイルドな曲調のトラック24「破壊」はコンピュータ・ワールドを蹂躙する怪獣を描写する曲。エレキギターとオルガンが暴れまくるロックナンバーだ。電脳世界が破壊され、現実世界が大混乱に陥る場面などに流れた。
 トラック25「超神合体! サンダーグリッドマン」はグリッドマンのテーマを変形した重厚な曲。ミディアムテンポの重いリズムに低音のシンセとエレキギター、ピアノが絡む。合体というより、反撃のチャンスを待つグリッドマンという雰囲気。
 最後のBGMはグリッドマンのテーマをブラス主体に演奏した「電光雷撃剣グリッドマンソード」。グリッドマンの出動シーンや戦闘シーンを盛り上げた本作のメインテーマである。エレキギターのアドリブから、たたみかけるようなブラスのリフに展開する間奏がエキサイティング。アルバムの構成としては、この曲ですぱっと終わるのが特撮サントラらしくて好印象だ。
 ラストはエンディング主題歌「もっと君を知れば」。オープニングと同じ鈴木キサブロー作曲による、明るく爽やかな青春ポップスである。

 全27トラックのうち、歌が3曲。BGMは23曲が収録されている。曲の流れは、平和⇒主人公たち⇒悪のたくらみ⇒事件発生⇒出動⇒初戦の勝利⇒束の間の平和⇒大ピンチ⇒逆転勝利というヒーローものサントラのオーソドックスな構成。カタルシスのある、何度も聴きかえしたくなるサントラだ。
 「電光超人グリッドマン」の音楽はおよそ100曲が録音された。本アルバムと2005年発売のDVD+CD BOXに同梱された「モア・サウンドトラック」でその楽曲はほぼ網羅されている。が、どちらも現在は入手困難。アニメ版放映を機会に、完全版での復刻を期待したい。この際、配信オンリーでもいいから。アクセスコードはもちろん「GRIDMAN」で!

電光超人グリッドマン オリジナル・サウンドトラック
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電光超人グリッドマン DVD+CD! HYPER COMPLETE BOX
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アニメ様の『タイトル未定』
161 アニメ様日記 2018年6月24日(日)~

2018年6月24日(日)
強制休養2日目。朝は『HUGっと!プリキュア』や『ゲゲゲの鬼太郎』をのんびりと観る。午前中にビーチサンダルで砂浜を歩いた以外は、ほとんど一日、ホテルで寝ていた。

2018年6月25日(月)
昼まで強制休養。午後から事務所に戻ってデスクワーク。話は変わるけれど、Twitterで、10年近く前に亡くなられた緒方賢美さんの画をアップするアカウントを見つける。緒方賢美さんは同人誌で活躍されていた方で、猛烈に画が巧かった。巧いだけでなく、画に「アニメごころ」があった。僕はアニメージュの仕事で、彼に何度かイラストを描いてもらっている。アニメーターに発注する描きおろしイラストのラフをお願いしたこともある。『新世紀GPX サイバーフォーミュラ』では彼のラフを原画として使い、吉松さんに修正を入れてもらってセルイラストにしたこともあった(ちなみに、そのアカウントでアップしているアカウントはエロチックなものが多い。苦手な方はご注意を)。

2018年6月26日(火)
デスクワークの日々。気になることがあって『HUGっと!プリキュア』1話から10話を観る。ところで、うちのMacが「あの」で出す変換候補は『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『あの夏で待ってる』でした。

2018年6月27日(水)
デスクワークの日々。『HUGっと!プリキュア』11話から最新21話を観る。展開が早いなあ。15話「迷コンビ…? えみるとルールーのとある一日」はその後の展開を知って観ると、まるで違う話だった。観直して『HUGっと!』のシリーズ構成が丁寧に組まれているのが分かった。

2018年6月28日(木)
「週刊少年チャンピオン」最新号を買う。「ドカベン」シリーズの完結編である「ドカベン ドリームトーナメント編」の最終回が掲載されている号だ。試合は終わるにしても、どうやってドラマを完結させるのだろうかと思っていたら、回想で「ドカベン」の1話に戻ってそのまま終わってしまうという、まさかのループ落ち。このまま「ドカベン」1話から「ドカベン ドリームトーナメント編」の最終回までを繰り返して読み続ければ、永遠に「ドカベン」は終わらないのだ……というのは半分くらい冗談だけど、1話に戻ったところはちょっとぐっときた。僕が「ドカベン」をきちんと読んでいたのは長いシリーズの途中までで、決して熱心なファンだったとは言えないけれど、少なくとも最初の「ドカベン」は抜群に面白い作品であったし、中学高校の頃の僕はこのマンガの登場人物が大好きだった。水島新司先生、お疲れ様でした!
「アニメスタイル013」の見本が届く。作っている時から思っていたけど、今号は誌面が専門誌っぽい。『さよならの朝に約束の花をかざろう』大特集でインタビューイの写真がなく、取材記事で文字がぎっちり詰まっているためでもあるのだろう。
夜は、デジタルハリウッド大学[DHU]公開講座【監督・プロデューサーが語る 映画「名探偵コナン ゼロの執行人」ができるまで】に参加。諏訪道彦プロデューサーと立川譲監督による講義で、興味深い話をいくつもうかがうことができた。だけど、もっと聞きたいことがある。

2018年6月29日(金)
取材とイベントとデスクワークの日々。深夜アニメの最終回をいくつか観る。夕方から、夏に出す書籍のために三鷹の魚民で取材。居酒屋チェーン店の魚民である。インタビューイが吞みながら話したいということで、店を探すことになったのだが、色々あたって、最初に提案してもらった魚民を使うことになった。行く前は、取材に向かないのではないかと思っていたのだけど、立派な個室があって、むしろ、取材向きだった。

2018年6月30日(土)
取材とイベントとデスクワークの日々。昼間はデスクワーク。夜はオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 104 東映長編の名作」。トークのゲストとして映像研究家で、高畑勲・宮崎駿作品研究所代表の叶精二さんに来ていただいた。叶さんのトークは内容が整理されており、話題も豊富。素晴らしい解説だった。また、叶さんに来ていただきたい。

第148回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(1)

 片渕須直監督をメインゲストにお迎えするトークイベントの新シリーズがスタートする。タイトルは「『この世界の片隅に』に至る道」。片渕監督が『この世界の片隅に』を手がけるまで、どのような道をたどってきたのかについて、じっくりとうかがうイベントシリーズである。
 第1回は2018年8月5日(日)昼に開催。彼が学生時代に関わった『名探偵ホームズ』のトークの中心となるようだ。

 今までのイベントと同様に、トークの一部を「アニメスタイルチャンネル」で配信する予定だ。前売り券は7月7日(土)から発売開始。詳しくは以下のリンクの阿佐ヶ谷ロフトAのページを見てもらいたい。

■関連リンク
アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/93278

第148回アニメスタイルイベント
『この世界の片隅に』に至る道(1)

開催日

2018年8月5日(日)
開場12時00分 開演13時00分 

会場

阿佐ヶ谷ロフトA

出演

片渕須直、小黒祐一郎(司会)

チケット

前売1500円 当日1800円(共に飲食別・要1オーダー)

■アニメスタイルのトークイベントについて

 会場となる阿佐ヶ谷ロフトAはトークライブができる居酒屋。入場料(今回は前売1500円、当日1800円)とは別に飲食(最低でもドリンク1杯)をお願いしている。ソフトドリンクもあるので、未成年の方でも大丈夫。 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものだ。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていないし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれない。その点は、あらかじめお断りしておく。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 105
『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事

 先日開催したトークイベント「井上俊之の作画を語ろう」に続き、カリスマの名前で親しまれているスーパーアニメーター、井上俊之にスポットをあてたオールナイトを開催する。タイトルは「『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事」。2018年7月21日(土)の開催だ。

 上映作品は、岡田麿里が監督を務めた大作『さよならの朝に約束の花をかざろう』、大友克洋が総指揮・原作などを務めたオムニバス『MEMORIES』、沖浦啓之監督の初監督作品であり、Production I.Gの代表作でもある『人狼』の3本。
 「アニメスタイル013」の巻頭特集でも話題になっているが『さよならの朝に約束の花をかざろう』で、井上は1300カット中の400カットのレイアウトやラフ原画を担当。つまり、1本の映画の1/3近くの作画に関わり、アニメーションとしての完成度について大きく貢献した。素晴らしい仕事だった。
 『MEMORIES』ではその中の「彼女の想いで」において、キャラクターデザイン・作画監督を担当。『人狼』では副作画監督、原画などの役職で腕を振るっている。上映する3作品は井上俊之の代表的な仕事というだけでなく、いずれも内容、映像の両面で見応えのある作品だ。

 トークコーナーのゲストは、井上俊之を予定。他のゲストついては決まり次第、告知する。前売り券は7月7日(土)から新文芸坐窓口とチケットぴあで発売となる。

新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 105
『さよならの朝に約束の花をかざろう』と井上俊之の仕事

開催日

2018年7月21日(土)

会場

新文芸坐

料金

一般2600円、前売・友の会2400円

トーク出演

叶精二、小黒祐一郎(司会・アニメスタイル編集長)

上映タイトル

『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018/115分/DCP)
『MEMORIES』(1995/113分/35mm)
『人狼』(1999/98分/BD)

備考

※オールナイト上映につき18歳未満の方は入場不可
※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

●関連書籍 『さよ朝』大特集の「アニメスタイル013」が発売中!
http://animestyle.jp/news/2018/07/04/13784/