『タイガーマスク』を語る
第5回 「此の子等へも愛を」についてもう少し

 第50話「此の子等へも愛を」についてもう少しだけ書いておく。

 細部について触れることにしよう。直人が夫婦の家に辿り着くまでが興味深い。直人が原爆ドームの模型について知ったのは、同じホテルに泊まってるアントニオ猪木が土産物屋で購入して、他のレスラーに見せたことがきっかけだった。直人は猪木が模型を買った産物屋に行く。猪木が買った模型が最後のひとつであり、土産物屋には模型の在庫が無かったので、直人は土産物屋の主人に模型の製造元を教えてほしいと言うのだが、模型は問屋を通してくるので製造元は知らないと主人は答える。問屋の場所を教えてもらった直人はそこに赴き、模型の製造元を訊くが、問屋の男は教えることを渋る。なんとか教えてもらった直人は、ようやく夫婦が暮らす長屋に辿り着く。すんなりと夫婦のところに行かず、土産物屋から問屋、問屋から長屋という段取りを踏んでいるわけだ。『タイガーマスク』の他のエピソードなら、土産物屋の場面で事情をよく知っている人物が偶々現れて、夫婦が住んでいる場所を教えてくれるといったかたちで、物語をショートカットするはずだ。
 また、エピソード後半で、三郎達が宿題をする場所がないことが問題になった時に、直人は地元の民生委員の家を訪ねる。そこで詳しい事情を聞いて一肌脱ぐことになるのだが、民生委員の家を訪ねるという展開が『タイガーマスク』の世界では異様に感じるくらいにリアルだ。いや、『タイガーマスク』以外の他のアニメでも、主人公が民生委員を訪ねるなんて展開は滅多にないはずだ。
 夫婦の許に辿り着くまでの段取りをしっかりと踏んでいるのも、民生委員を登場させたのも、物語をより現実味のあるものにするためだろう。作品に現実感を与えて、視聴者に劇中で起きていることを、自分の身近で起きていることのように感じてもらいたかったのだろう。

 以下はまた別の話だ。プロデュースサイドや演出サイドでは第50話「此の子等へも愛を」をもっと分かりやすく、被爆者家族の悲劇を描いた話にしたかったのではないか。
 『タイガーマスク』DVD BOX第2巻の解説書(僕が構成・編集を担当している)に収録された斉藤侑プロデューサーのインタビューによれば『タイガーマスク』では各話のプロット(斉藤プロデューサーはそれを「設定書」と呼んでいた)を渡して、脚本家はそれを元にして脚本を書いていたのだそうだ。各話のプロットは短いもので、1話につき200文字詰め原稿用紙一枚程度のボリュームだった。
 斉藤プロデューサーが、直人が原爆ドームの模型を作る被爆者家族と出会うプロットを書いた。その段階では被爆者家族の悲劇を描いたエピソードがイメージされていたのではないか。この回の脚本は柴田夏余。柴田夏余は『タイガーマスク』で濃密な仕事を多数残している。柴田が脚本を執筆するにあたってプロットを捻り、さらに捻り、前回紹介したような話に仕上げたのではないか。
 第50話本編を観た後に、第49話についた予告を観てもらいたい。本編の映像を使ったものでありながら、予告では第50話が子供達の悲劇的な境遇を描いたものになっている。本編とはかけ離れたものとなっているのだ。プロデュースサイドが望んだのは、予告で示されたような内容だったのではないか。
 僕は第50話を「他人の不幸を娯楽として消費すること」を皮肉を込めて描いたものだと受け止めているが、メタ的には作り手が不幸な境遇にいる人達をモチーフにして悲劇的なエピソードを作ろうとすることや、視聴者がフィクションを通じて他人の不幸を消費しようとする行為に対する皮肉にもなっているのではないか。

●『タイガーマスク』を語る 第6回 第54話「新しい仲間」 に続く

[関連リンク]
Amazon prime video(アニメタイムチャンネル) 『タイガーマスク』
https://amzn.to/4bjzNEM

タイガーマスク DVD‐COLLECTION VOL.1
https://amzn.to/4biO18J

原作「タイガーマスク」(Kindle)
https://amzn.to/3w3BJlV

『タイガーマスク』を語る
第4回 第50話「此の子等へも愛を」

 『タイガーマスク』のドラマについて考える上で、第50話「此の子等へも愛を」、第54話「新しい仲間」、第55話「煤煙の中の太陽」、第64話「幸せの鐘が鳴るまで」が特に重要だ。前回も触れたが、第50話は被爆者家族を、第54話は過保護を、第55話は四日市の公害を、第64話は交通遺児をモチーフにしている。ではあるが、これらのエピソードに注目したいのは社会的な問題を扱った話だから、だけではない。
 伊達直人はここまで、不幸な子供達のために自分のファイトマネーを使ってきた。第64話の直人自身の言葉を借りれば、彼は不幸な境遇にいる子供達を幸せにするためにリングの上で戦ってきたのである。だが、その行為にどれほどの価値があるのだろうか。直人がやってきたことは本当に子供達のためになることだったのだろうか。この4本のエピソードは直人の行いに対する疑問を提示する。「伊達直人がいかに無力であるか」を描き、最終的に彼がやるべきことは何なのかに辿り着く。『タイガーマスク』のドラマの中核をなすエピソード群なのである。  

 ひとつひとつ観ていこう。第50話「此の子等へも愛を」(脚本/柴田夏余、美術/遠藤重義、作画監督/我妻宏、演出/白根徳重)はタイガーがワールドリーグ戦に参戦している時期のエピソードである。舞台となるのは広島だ。ファーストシーンは広島平和記念資料館である。キノコ雲、焼けただれた身体、焼け野原になった街、平和の願いを捧げる母と娘。タイガーは広島平和記念資料館に展示されたそれらの写真を目の当たりにして息を吞む。精巧な原爆ドームの模型が土産物屋で売られていることを知った直人(ここからは伊達直人の姿だ)は模型を手に入れてそれでちびっこハウスの子供達に戦争の悲惨さを伝えたいと考える。だが、土産物屋に模型は残っておらず、それでも模型を手に入れようとする直人は製造元を調べてそこに赴く。模型を作っていたのは玩具会社でもなければ町工場でもなく、長屋暮らしの夫婦だった。
 直人は模型を売ってほしいと夫婦に頼み込むが、買い手が決まっているので売ることはできないと断られる。この場合の買い手とは、模型を土産物屋に卸している問屋のことだ。夫婦が作業をしている部屋の中に、赤ん坊が入った籠がぶら下げられている。赤ん坊が泣き出す。どうやら腹を空かせており、オムツも汚れているらしい。しかし、夫婦は赤ん坊の相手をせず、模型を作り続けるのだった。
 その後、直人は平和記念公園で幼い兄妹と知り合う。名前は三郎とめぐみだ。直人は兄妹を食堂に連れて行く。彼等は原爆ドームの模型を作っている夫婦の子供だった。模型を作る邪魔になるので、三郎達は昼間は家に帰ることができないのだ。三郎達の母親は被爆者であり、いつ原爆症が発症するか分からない。そのために父親は意地になって模型を作っているのだ。父親は自分達が作っている模型を「平和への祈りの千羽鶴だ」と言っているのだという。ここまでが第50話の前半である。後半ではタイガーの試合があり、更に直人と三郎達、夫婦との関わりが描かれる。

 このエピソードには注目したいポイントがふたつある。ひとつは「最後まで伊達直人と被爆者家族夫婦の気持ちが通うことがなかった」という点である。もうひとつが「直人が子供達に嘘をついた」という点だ。
 まずは「最後まで伊達直人と夫婦の心が通うことがなかった」ことについて触れよう。他のエピソードなら、直人は旅先で知り合った人々の境遇や悩みを理解し、その上で行動を起こすのだが、この話では最後まで模型を作り続ける夫婦の心中について思い至ることはない。夫婦が赤ん坊が泣いても模型を作る手を止めないのは、そして、自分達の子供の面倒を見る時間を惜しんでいるのは模型作りに対して真剣に取り組んでいるからだ。直人は最後までその必死さに気づかない。戦争をあってはいけないものだと考え、「平和への祈りの千羽鶴」という言葉に胸を打たれはするけれど、それを言った夫の想い、目の前にいる被爆者である妻の気持ちを考えようとはしないのだ。夫婦にとって直人は、最後まで「問屋を通さずに模型を売ってほしいと言う迷惑な観光客」でしかない。
 終盤において、直人は夫婦に対して、土産物屋で売っているのと同じ金額で買うから直接売ってほしいと言う。金の力でどうにかしようとしたのだ。どう考えても、その言動は俗物のものだ。このエピソードで、作り手が直人をネガティブに描いているのは間違いないだろう。

 「直人が子供達に嘘をついた」について述べる。直人が三郎とめぐみを食堂に連れて行ったのは、母が食事を用意してくれないため、兄妹は外で毎日同じようなものを食べており、めぐみが不満を募らせていたからだ。直人は食事を奢ろうとしたが、三郎は貧しくても他人の世話にはならないという。そこで直人は「100円で食べられる店に行こう」と言って、二人を町の食堂に連れて行った。勿論、100円で食べられるというのは嘘であり、直人は三郎達には分からないようにして、足りない分を支払うのだった。翌日、三郎は数人の友達を連れてその店に行く。彼等は100円で食べられると信じているのだ。彼等がまた食堂に行くのではないかと気づいた直人も店を訪れて、食堂の店員に現金を渡す。これからも彼等に100円で食べさせてほしいというわけだ。以下は劇中で描かれていないことだ。食堂が100円で食事を提供するのは直人が渡した金が尽きるまでだろう。これからも子供達が食堂を訪れ続けるならば、店員はいつか「100円で食事ができるのは嘘だったのだ」と子供達に告げることになるはずだ。自分が騙されていたことを知れば三郎は傷つくだろう。しかし、この話の直人はそこまでは考えが及ばないのだ。  

 第50話は序盤の平和記念資料館のシーンこそセンセーショナルだが、それ以外は淡々とした語り口で進んでいく。直人が夫婦の心中について思い至らないことについて、劇中で誰かが指摘しているわけではない。三郎達にいつかはバレる嘘をついたことについても、劇中で問題視されてはいない(厳密に言うと、食堂の店員が直人の嘘に対して納得していないことが少しだけ描写されている)。後半で宿題をする場所のない三郎達のために、直人がファイトマネーを使う展開があり、エピソード全体としては直人が活躍したかたちになっている。だから、直人の言動がネガティブなものとして描かれていることに気がつかなかった視聴者は多いはずだ。ではあるが、すっきりとしない読後感を残すエピソードであるのは間違いない。
 このエピソードは必ずしも反戦を訴えるものではない。被爆者を登場させて、平和への祈りを込めて原爆ドームの模型を作っていることを描いているのだから、戦争の悲惨さや被爆者の想いを視聴者に提示しているのは間違いないのだが、作劇の力点はそこには置かれていない。三郎の言動が悲観的でないのも重要だ。彼は両親が作る原爆ドームの模型を誇りこそすれ、直人の前で自分達の境遇を嘆いたりはしない。自分の人生や生活を、当たり前のものとして受け止めてるようだ。だから、反戦をテーマにし、戦争の悲惨さを伝える話だと思って観ると面食らうかもしれない。
 直人が模型についてどのようなかたちで決着を付けたのかについては、作品を観て確認してもらいたいが、呆れるくらいにあっさりしたものだ。そんなことで済むなら、模型の製造元を訪れる必要はなかったのではないかと思うくらいだ。そして、模型について決着を付けた後、タイガーが(ここでは直人ではなく、タイガーの姿だ)これからのワールドリーグ戦について想いを巡らしたところで、このエピソードは幕を下ろす。ラストシーンにおいて、彼の心中には被爆者家族の不幸も「平和への祈りの千羽鶴」もすでに存在しない。意地悪な言い方をすれば、原爆ドームの模型に決着が付いたところで、彼の反戦に対する想いは一段落してしまったのだ。反戦を訴えるための話だったら、こんな終わらせ方にはしないはずだ。例えば直人が戦争の悲惨さについての想いや反戦についての考えをモノローグで語り、それを視聴者にアピールする。そんなかたちで終わらせるはずだ。

 第50話はアニメ『タイガーマスク』全話の中で、最も受け止めるが難しい話であるはずだ。作り手はこのエピソードに込めた全てを理解してもらいたいとは思っていなかったのかもしれない。むしろ、このエピソードを観て、何かひっかかるものを感じてくれればそれでよい。そんなつもりで作ったのかもしれない。ではあるが、何かの狙いがあってこのエピソードを作ったのも間違いないはずだ。以下で、このエピソードについて「解釈」してみたい。
 第50話については、色々なかたちで解釈することができる。僕はこれを「他人の不幸を娯楽として消費すること」を描いたものであると受け止めている。そして「不幸な出来事の当事者と第三者の距離感」を描いたものであると考えている。『タイガーマスク』が放映された頃に「娯楽として消費」というような言い回しはなかったはずだ。ではあるが、その概念によって、この話が理解しやすくなる。
 直人が戦争についてあってはならないものだと考えて、戦争の悲惨さを子供達に伝えたいと考えたのは間違ったことではないが、それ以降の直人の言動は「安易に他人の不幸を娯楽として消費しようとしている」ものとして描かれている。つまり、浅薄なもの、愚かなものとして扱われている。
 しかし、その浅薄さや愚かさは我々が日々実践していることではないか。例えばテレビやネットで世間の不幸を知れば心が動く。それについて何かを言ったり、SNSに書いたりするかもしれない。ではあるが、しばらくすればそのことは忘れてしまう。我々はそれを当たり前のこととしてやっているのではないか。それを「他人の不幸を娯楽として消費している」とは言えないだろうか。報道で知った他人の不幸には心を痛めるが、目の前にいる人の不幸については親身になって考えようとはしない。それもよくあることではないのか。
 第50話「此の子等へも愛を」は直人の言動を通じて、我々の「他人の不幸を娯楽として消費すること」や「不幸な出来事の当事者との距離感」を皮肉を込めて描いたものではないのか。

 『タイガーマスク』の物語として考えると、第50話は他のエピソードと少し違った視点で伊達直人を描き、彼がそれまでやってきたことに対して疑問を投げかけるエピードであると考えることができる。ハウスの子供達のために原爆ドームの模型を手に入れようとしたのも、三郎達に100円で食事ができると嘘をついたのも、直人がよかれと思ってやったことだ。彼自身は普段と同じように行動しているつもりなのだろう。しかし、第三者の目で見ればそれらは自己満足のための行為でしかない。原爆ドームの模型を手に入れようとしたのが自己満足のためでしかないのなら、これまでのエピソードで彼がファイトマネーを子供達のために使ってきたのも自己満足に過ぎないのではないか。自分の正体を偽ってハウスの子供達に接しているのも、三郎達にいつかはバレる嘘をついたと同様に、つかなくていい嘘をついているだけなのではないか。
 つまり、『タイガーマスク』という作品の根本となっている部分について疑問を投げかけたのではないか。そういった意味で第50話「此の子等へも愛を」は問題作であり、異色作である。『タイガーマスク』の全話の中で、最も尖ったエピソードであると僕は考えている。

 直人の行動についての結論は、このエピソードでは出ない。ただ、視聴者にモヤモヤとしたものを残すだけだ。

●『タイガーマスク』を語る 第5回「此の子等へも愛を」についてもう少し に続く

[関連リンク]
Amazon prime video(アニメタイムチャンネル) 『タイガーマスク』
https://amzn.to/4bjzNEM

タイガーマスク DVD‐COLLECTION VOL.1
https://amzn.to/4biO18J

原作「タイガーマスク」(Kindle)
https://amzn.to/3w3BJlV

『タイガーマスク』を語る
第3回 第5クール~第8クール

第5クール(第53話~第65話)
 第56話から第58話がブラックV関連のエピソードで、この3本はアレンジを加えているが、原作に沿ったものだ(原作ではタイガーの弟分として大谷鉄平が登場するが、アニメではその存在はない)。第5クールで原作を使ったのはこの3話だけで、他は全てオリジナルのエピソードである。
 第53話でオリジナルキャラのザ・ミラクルズが登場。彼等は虎の穴の一員であり、第6クール途中までサブレギュラーキャラとして登場する。第61話がオリジナルの敵であるブラックパンサー登場の布石となるエピソードで、第62話でタイガーがブラックパンサーの存在を知り、第65話でブラックパンサーと戦う。
 強敵との戦いのエピソードの合間に第55話「煤煙の中の太陽」、第60話「虎とへんくつ医者」、第61話「王将の道」、第63話「めりけんジョー」、第64話「幸せの鐘が鳴るまで」といった「直人と市井の人々とのドラマ」を描いた大人びたタッチの傑作が連続して生み出される。強敵との戦いと「直人と市井の人々とのドラマ」が組み合わされているのが、第5クールのカラーだ。
 前回も触れたように第4クールの第52話「此の子等へも愛を」は被爆者家族が登場するエピソードであり、第55話「煤煙の中の太陽」では四日市の公害を、第64話「幸せの鐘が鳴るまで」では交通遺児をモチーフにしている。直人と市井の人々の関係を描いたエピソードではないが、第54話「新しい仲間」は過保護がモチーフだ。この第52話、第54話、第55話、第64話に関しては社会的な問題を取り入れていることが興味深いが、むしろ、この4本のエピソードを通じて「伊達直人の無力」を描き、さらに「一人の人間が恵まれない人達に対してできることは何なのか」というテーマに辿り着いていることが『タイガーマスク』という作品にとって重要だ。第64話が「人間・伊達直人」のドラマのクライマックスである。それについては、このコラムの次回以降で語る予定だ。

第6クール(第66話~第78話)
 第6クールは、ここまでのアニメ『タイガーマスク』の集大成として作られたと思われるシリーズだ。全てのエピソードがアニメオリジナルで、原作を使った話は1本も無い。
 第6クールでは第14話で登場し、その後、直人を陰で支え続けてきた大門が覆面レスラーのミスター不動としてリングに立ち、第28話で登場してタイガーに対して敵意を抱いてきた高岡拳太郎がイエローデビルとしてタイガーに挑む。虎の穴の三人の支配者がブラックタイガー、ビッグタイガー、キングタイガーのビッグ3であることが判明し、タイガー&ミスター不動はビッグ3と死闘を繰り広げる。ミスター不動も、イエローデビルも、ビッグ3もアニメオリジナルのキャラクターだ。
 話数毎に振り返ってみよう。第66話は総集編的な内容で、直人の回想の中でビッグ3の存在が明らかになる。第67話で高岡拳太郎がイエローデビルとしてアメリカで活動を始め、その一方で、タイガーは虎の穴の若きレスラーであるナチス・ユンケル、キングジャガーと、それぞれ第69話、第71話で戦う。第71話ではセコンドに付いていたザ・ミラクルズが試合に乱入し、止めに入った馬場、猪木、他のレスラー達をなぎ倒すという大乱戦の中、観客として試合を見ていた大門が(何と背広姿で)リングに上がり、タイガーと共にザ・ミラクルズを倒す(第71話はシリーズ屈指の痛快エピソードだ)。それをきっかけに第72話から大門はミスター不動として活躍するようになる。
 第73話でイエローデビルがタイガーによって倒され、第74話で拳太郎は自分が虎の穴に騙されていたことを知る。そして、拳太郎も虎の穴を裏切り、正統派レスラーのケン・高岡としてリングに立つことになる。孤独な戦いを続けてきた直人だが、ここで大門、拳太郎という仲間を得たのだ。
 第75話終盤でビッグ3がタイガーに挑戦状を叩きつける。第77話がタイガー&ミスター不動と、ビッグタイガー&ブラックタイガーのタッグマッチだ。この試合でミスター不動は自らの命を投げ出して、ビッグタイガーとブラックタイガーを葬る。第78話はタイガーマスクとキングタイガーのシングルマッチで、タイガーは激闘の末にキングタイガーを倒すが、その頃、大門は病院で息を引き取っていた。
 第75話でビッグ3が物語の全面に出てから第77話までの緊張感、ドラマの盛り上がりは素晴らしいものだ。この数話のために、ここまで物語を積み上げてきたのだろう。第5クールにあれほどあった「直人と市井の人々とのドラマ」が、第6クールでは一切無くなっている点にも注目したい。

第7・8クール(第79話~第105話)
 新たに「虎の穴のボス=ミラクル3=タイガー・ザ・グレート」という強敵が設定され、彼との対決に向けて改めて物語が積み上げられていく。虎の穴のボスも、タイガー・ザ・グレートもアニメオリジナルの存在だ。第6クールでは原作を使ったエピソードが一切無かったが、第7・8クールでは原作に登場する敵レスラーや試合をアレンジして使っている。第1クールにあった「虎の穴が差し向けた殺し屋がリングの外で直人を狙うエピソード」が復活するのも第7・8クールの特徴だ。話数としては第85話、第88話、第103話である(3本とも辻真先が脚本を担当)。
 それまで謎めいた存在であった虎の穴のボスが、第79話で初めてミスターX達に顔を見せ、タイガーマスク打倒のために直接指揮を取るようになる(なお、それまでにボスが登場したのは第28話、第75話、第78話だ)。ボスは第91話で来日し、覆面レスラーのミラクル3として人々の前に姿を現し、第92話から自分の強さを直人と観客にアピールしていく。そして、第101話で名と姿を変え、タイガー・ザ・グレートとしてリングに立つ。そして、タイガーの弟分として活躍していたケン・高岡を倒すのだった。
 ミラクル3は原作に登場する同名レスラーをアレンジしたキャラクターだ。原作のミラクル3も、力と技と反則を兼ね備えたレスラーとしてタイガーの前に立ち塞がるが、実は技に優れたレスラー、怪力のレスラー、反則魔のレスラーが、三人で一人のレスラーを演じていたことが判明。とんだインチキレスラーであった。それに対して、アニメのミラクル3は本当に力と技と反則を兼ね備えたレスラーなのである(ただし、反則の使い手としての実力を見せるのは、タイガー・ザ・グレートとなってからだ)。
 第102話で直人は自分がタイガーマスクであることをルリ子に明かし、第103話で直人の宿敵であったミスターXが命を落とす。第104話と第105話(最終回)がタイガーマスクとタイガー・ザ・グレートの決戦だ。流血に次ぐ流血の激闘の中、タイガーはその素顔を人々に曝すことになり、テレビで中継を観ていた健太達も、直人がタイガーであったことを知ってしまう。タイガーは反則の限りを尽くし、タイガー・ザ・グレートを倒す。遂に伊達直人の長い戦いに決着が着いたのだ。しかし、反則を犯してリングを血に染めたのは許されることではない。直人はルリ子や健太達に別れを告げることもせず、日本を去るのだった。
 最終回でタイガーマスクの正体が明らかになることの布石が、かなり前から打たれている点にも触れておこう。健太がタイガーの正体を知りたがるのが第80話。第81話と第82話では敵レスラーが、リングでタイガーのマスクを剥がそうとする。再び健太がタイガーの素顔を知りたがるのが第96話で、その時は直人がタイガーと同じ場所に包帯を巻いていることに気づいてしまう。以上を踏まえて第102話、第105話の展開となるわけだ。
 ボスがタイガーのウルトラ・タイガー・ブリーカー攻略は容易いと断言したのが第79話、実際に彼がウルトラ・タイガー・ブリーカーを破るのが第104話だ。これも布石を打ってから、実現までに時間をかけた『タイガーマスク』ならではのシリーズ構成だ(余談だが、すでに第73話でイエローデビルがウルトラ・タイガー・ブリーカーを破っている。キングタイガーもその直後に自滅しているとはいえ、第78話でウルトラ・タイガー・ブリーカーを破っており、ボスが初めて破ったわけではない)。
 虎の穴のボスの登場からタイガー・ザ・グレートと決戦までが、ヒーローである「伊達直人=タイガーマスク」の活躍を描いた第7・8クールの本筋である。そして、それと並行して、ちびっ子ハウスの個々の子供にスポットが当てられて「みなしごがいかに生きるべきか」が語られる。これが第7・8クールの重要なポイントだ。具体的にはミクロの親戚が見つかり、彼女がハウスを去る第83話。ヨシ坊が裕福な夫婦に引き取られる第89話。クラスメートにみなしごは勉強ができても出世はできないと言われた健太が、そのことを直人に問う第93話。第89話でヨシ坊はハウスに戻っているのだが、第100話では彼の本当の両親が現れる(第20話でも、ヨシ坊の母親が現れているが、その時は人違いであることが分かった。ヨシ坊がハウスを去るかどうかが描かれた話が三度もあるのだ)。第100話のラストにおける直人のモノローグで語られたことが「みなしごがいかに生きるべきか」についての結論であり、それはアニメ『タイガーマスク』における「人間はどのように生きるべきか」についての結論にもなっているはずだ。

 『タイガーマスク』は第6クールで完結する予定で制作が進められており、しかし、更なる放映延長が決まって第7、第8クールが作られたのだろう。スタッフ達が第6クールで完結寸前まで進んだ物語を、第7クールで再スタートさせ、次のクライマックスである第8クール終盤に向けて物語を積んでゆき、傑作と評される最終回に辿り着いたことは賞賛に値する。しかし、アニメ『タイガーマスク』の物語が本当の意味で充実しているのは第5クールから第6クールにかけてである。そのことは強く、主張しておきたい。

●『タイガーマスク』を語る 第4回 第50話「此の子等へも愛を」 に続く

[関連リンク]
Amazon prime video(アニメタイムチャンネル) 『タイガーマスク』
https://amzn.to/4bjzNEM

タイガーマスク DVD‐COLLECTION VOL.1
https://amzn.to/4biO18J

原作「タイガーマスク」(Kindle)
https://amzn.to/3w3BJlV

『タイガーマスク』を語る
第2回 第1クール~第4クール

 『タイガーマスク』は1969年10月から1971年9月まで放映された。全105話の長大なシリーズだ。
 本作はアニメオリジナルのエピソードが非常に多い。序盤は原作に沿ったエピソードをメインとし、間にオリジナルのエピソードを挟むかたちであったが、やがて、オリジナルが中心となり、第6クールでは1本も原作が使われていない。そうなったのは原作のストックが少なく、あっという間にアニメが原作に追いついたためだ。アニメの制作スタッフは、原作のストックが無い状況で長期のシリーズを展開するためにオリジナルキャラクターを生み出し、半年後、1年後を見越して物語を構成している。
 クール毎の節目の話数(13の倍数の話数)にクライマックスがくるように構成されている点にも注目してほしい。『タイガーマスク』は何度も放映が延長されており、どこで放映が終わるか分からなかった。そのために1クール毎に(つまり、13話毎に)物語を構成し、各クールの最後が最終回になってもいいようにしていたのだ。

 以下で『タイガーマスク』の物語の流れをクール単位で解説する。


第1・2クール(第1話~第26話)
 第1・2クールは原作を主軸として、アニメのオリジナルエピソード、オリジナルの描写を加えるかたちで展開する。
 第1話のタイガーの帰国から第7話でブラック・パイソンを倒すまでは多少のアレンジはあるが、基本的に原作に沿った展開だ。第6話でタイガーとブラック・パイソンの試合を見るために健太がちびっこハウスを抜け出す。それを追ってリングサイドに姿を現したルリ子は、試合中のタイガーに対して、悪役に憧れる健太を正しい道に導いてほしいと訴える。ルリ子の懇願を受け入れて、タイガーは第7話で反則を使わずにブラック・パイソンに勝利する。これをきっかけにして、彼はフェアプレーの正統派レスラーに転向する。タイガーは虎の穴の裏切り者になった上に、得意の反則を使わないという枷を自分に与えることになったのだ。
 オリジナルエピソードの第8話を挟んで、ゴリラマンが登場する第9話と第10話も原作を使用した話。第11話から第22話が「ワールド大リーグ戦」(ただし、途中で「ワールド大リーグ戦」でない試合が挿入される)で、この時期はオリジナルエピソードが多い。
 第23話から第26話までが第1・2クールのクライマックスとなる「覆面ワールドリーグ戦」であり、ここは原作に沿った内容(ただし、原作で「覆面ワールドリーグ戦」の試合として行われたスカルスター戦が前倒しになり、第13話で単独の試合として描かれている)。「覆面ワールドリーグ戦」にはミスター・ノー、ゴールデンマスク、ザ・ライオンマンといった個性が際立った覆面レスラーが登場。それ以外にも、ジャイアント馬場が覆面レスラーのザ・グレート・ゼブラとして参戦する等、「覆面ワールドリーグ戦」は見どころが多い。
 第1・2クールにおける、アニメのオリジナルエピソードを紹介しよう。直人が恵まれない人達と関わるエピソードが第12話、第19話、第22話だ。第12話では大阪の孤児院の子供達のために傷ついた身体で試合に挑み、第19話では母親の面倒を見るために廃品回収の仕事をしている少年とその周囲の人々と触れ合い、第22話では祖父を捨てて東京に行こうとする漁師町の若者に希望を与える。
 同じくオリジナルで「虎の穴が差し向けた殺し屋が、リングの外で直人を狙うエピソード」が第8話、第15話、第20話。その中の第8話は奇抜な展開が多い異色編だ。刑事ドラマ風の第17話では、ひき逃げ犯人を探し出すために直人と健太が活躍する(脚本は後にミステリ作家となる辻真先だ)。
 オリジナルキャラクターで、後にサブレギュラーとなる嵐老人が初めて登場するのが第11話。同様に重要な存在となるオリジナルキャラの大門大吾の初登場が第14話。原作にもいるキャラクターだが、第14話では虎の穴の3人の支配者も登場。大門大吾とタイガーが試合をするのが第18話だ(大門はこの話数で第72話以降と同じ不動明王のマスクを付けてリングに上がっているが、ミスター不動の名前は使っていない)。

第3クール(第27話~第39話)
 第27話は「覆面ワールドリーグ戦」の後日談だ。第28話、第29話、第30話がアニメオリジナルで、第31話、第32話、第33話は原作に戻って、アポロン兄弟との対戦と必殺技ウルトラ・タイガー・ドロップの完成を描く。第34話と第35話はアニメオリジナルで、第36話から第39話は原作に戻り、インドを舞台に「全アジアプロレス王座決定戦」を描く。第39話がタイガーとミスター?(クエスチョン)の対決で、これが第3クールのクライマックスとなる。
 後にイエローデビルとなる高岡拳太郎の初登場が第28話で、彼にスポットが当たるのが第34話。拳太郎はミスターXに騙され、母親がタイガーのために死んだと思い込む(タイガーとイエローデビルの戦いが描かれるのは、10ヶ月後に放映される第73話である。『タイガーマスク』のシリーズ構成のスケールは凄まじいほどに大きい)。
 第3クールには実在のレスラーの半生を描いたドキュメンタリータッチのエピソードが二本ある。第30話「不滅の闘魂『力道山物語』」、第35話「チャンピオンへの道 -G・馬場の苦闘-」である。

第4クール(第40話~第52話)
 第40話から第43話はインドから凱旋したタイガーが強敵・赤き死の仮面と戦うまで。オリジナルエピソードを挟んでいるが、この部分は原作の映像化だ。赤き死の仮面との死闘で反則を使ってしまったタイガーは、原作でもアニメでも再び海外に旅立つ。原作ではパリの地下プロレスでミスター・カミカゼやマップマンと戦うのだが、アニメでは第44話においてロサンゼルスでミスター・カミカゼと出会い、第45話ではドイツのハンブルグ、第46話ではモナコ、第47話でフランスのパリと、ヨーロッパを転戦。そして、第49話でロサンゼルスに戻ってミスター・カミカゼと対戦する。原作でもアニメでもミスター・カミカゼとの対戦で第2の必殺技ウルトラ・タイガー・ブリーカー(原作では技の名称がフジヤマ・タイガー・ブリーカーである)を完成させることになる。ミスター・カミカゼと対決に至るこの部分は地下プロレス界を舞台にした暗い雰囲気の原作と、各国で現地の人々と交流していくアニメのギャップが激しい。
 帰国後第一戦の第49話は原作をアレンジしたエピソード。第50話、第51話、第52話はオリジナルだ。第49話から第52話では「第13回ワールドリーグ」の模様が描かれており、タイガーは第52話で第4クールの掉尾をワールドリーグ優勝で飾る。
 第50話が被爆者家族が登場する「此の子等へも愛を」だ。このエピソードから「直人と市井の人々とのドラマ」を描いたアニメオリジナルの傑作エピソードが続出することになる。

●『タイガーマスク』を語る 第3回 第5クール~第8クール に続く

[関連リンク]
Amazon prime video(アニメタイムチャンネル) 『タイガーマスク』
https://amzn.to/4bjzNEM

タイガーマスク DVD‐COLLECTION VOL.1
https://amzn.to/4biO18J

原作「タイガーマスク」(Kindle)
https://amzn.to/3w3BJlV

『タイガーマスク』を語る
第1回 この作品について書く理由

 このコラムでは『タイガーマスク』について書く。1969年から1971年に放映されたTVアニメ『タイガーマスク』についてだ。
 僕が「『タイガーマスク』について書きたい」と思うようになったのは10年くらい前のことだ。DVD BOXの解説書等でこの作品について何度か文章を書いているが、自分の原稿として、まとまったかたちで書きたいと思ったのだ。時間に余裕がある時に色々と調べてから書くつもりだったが、そんな「いつか」はこないかもしれない。それに気がついたので、今、書き始める。充分な調査をして執筆するわけではないので、少し粗い原稿になるかもしれない。

 『タイガーマスク』を「虎のマスクをかぶったヒーローが、怪人的な覆面レスラー達と戦いを繰り広げる荒唐無稽なプロレスアニメ」だと思っている人は多いと思う。それは決して間違っていないし、それも本作の魅力ではあるのだが、それだけではないのである。『タイガーマスク』にはハードボイルドタッチの「大人のためのドラマ」という一面がある。そして、「人間はどのように生きるべきか」といったテーマに対して真摯に向き合って作られた作品でもある。巧みに計算されたシリーズ構成の妙についても、多くの人に知ってほしい。
 本作には作画や演出、音楽等、様々な見どころがあるが、今回からのコラムではその中の、主に物語について語ることになる。決して、アニメ『タイガーマスク』の全てを語るものではない。それについても先にお断りしておく。
 この作品は放映当時に大変な人気であったにも関わらず、その後、あまりにも語られる機会が少ない。同時期に放映された同じ梶原一騎原作の『巨人の星』(1968年~1971年)と『あしたのジョー』(1970年~1971年)に比べても語られることが少ない。それが「『タイガーマスク』について書きたい」と思ったきっかけのひとつだ。
 『タイガーマスク』について触れられる時に、ポイントになることが多いのが「最終回が凄い」である。確かに最終回は素晴らしい出来だ。しかし、最終回以外にも素晴らしいところは沢山ある。最終回だけで『タイガーマスク』を語ったことにされるのを、僕は非常に残念に思ってきた。
 「被爆者や公害といった社会的なテーマを描いたエピソードがある」と言われることもある。確かにそれらのエピソードは『タイガーマスク』の中でも重要なものであるのだが、重要なのは被爆者や公害を扱っているからではない。これも是非とも書いておきたいポイントだ。

 作品の概略について説明する。『タイガーマスク』は同名マンガを映像化したTVアニメである。マンガ「タイガーマスク」の原作は梶原一騎、作画が辻なおきだ。当初は雑誌「ぼくら」に連載され、後に「週刊ぼくらマガジン」「週刊少年マガジン」で連載されている。アニメを制作したのは東映動画(現・東映アニメーション)だ。これは他の当時の東映動画作品も同様ではあるのだが、監督に相当する演出家は存在しない。これはシリーズ全体を統括する監督がいないという意味であり、各話の演出家がそれぞれ自分の担当話数を監督していると考えてほしい。シリーズ構成にあたる仕事は、プロデューサーの斉藤侑が担っていたようだ。番組開始時のキャラクターデザインは木村圭市郎が担当。『タイガーマスク』の作画は斬新なものであり、後のクリエイターや作品に多大な影響を残している。各話の作画スタッフの仕事も素晴らしい。
 物語の導入部分についても触れよう。主人公の伊達直人は孤児であり、ちびっこハウスという孤児院で育てられていた。しかし、ちびっこハウスは借金を抱えており、解散することになる。孤児達が他の施設に引き取られる前の日に彼等は上野動物園に行き、そこで虎を見た直人は「虎のように強くなりたい」と願う。虎のように強くなって、悪い大人達をやっつけたいと考えたのだ(アニメの第1話のこのシーンで、直人は孤児院のことを誉めていた大人達の偽善についても言及している)。動物園で皆の前から姿を消した直人は「虎の穴」に拾われる。虎の穴とは悪役レスラーを世界中のプロレス界に送り込んでいる世界規模の秘密組織だ(なお、アニメの第1話では悪役レスラーを育てているのは虎の穴の活動のひとつであると、ジャイアント馬場が語っている)。
 10年の月日が流れた。虎の穴で特訓の日々を乗り越えた直人は、反則を得意とする覆面レスラーのタイガーマスクとして、アメリカのプロレス界で悪名を馳せていた。直人は久しぶりに帰国し、懐かしのちびっこハウスを訪れる。ちびっこハウスは前院長の子供であり、直人の幼馴染みでもある若月先生とルリ子の兄妹によって再建されていた。しかし、直人が訪れた時、ちびっこハウスは借金のために立ち退きを迫られていた。10年前と同じ状況になっていたのだ。虎の穴には所属するレスラーがファイトマネーの50%を虎の穴に納めなくてはいけないというルールがあった。そのルールを破った者には死の制裁が待っている。だが、直人はちびっこハウスを救うために今まで貯めたファイトマネーを使ってしまい、さらに次の試合のファイトマネーもちびっこハウスのために使わざるを得ない状況となる。ファイトマネーを納めることができなかった直人は、裏切り者として虎の穴に命を狙われることになってしまった。直人はタイガーマスクとして、虎の穴が送り込んでくる怪人的な覆面レスラーと戦い続けることになる。
 ちびっこハウスの子供達はタイガーマスクのファンであり、中でも元気で生意気な健太は熱烈なファンだ。直人は自分がタイガーマスクであることが知られれば、彼等に危険が及ぶかもしれないと考えたのだろう。ルリ子やちびっこハウスの子供達に対して、自分がタイガーマスクであることを隠している。直人は裕福ではあるが頼りない青年を演じており、ちびっこハウスの子供達は彼を「キザにいちゃん」と呼んでいる。なお、ちびっこハウスの健太以外の子供はガボテン、ヨシ坊、チャッピー。他にも何人もの子供がいる。シリーズ中にちびっこハウスに加わるのがミクロと洋子だ。
 他のレギュラーのキャラクターは虎の穴のマネージャーであり、直人にとっての宿敵となるミスターX。実在のプロレスラーであり、タイガーマスクのよき先輩であるジャイアント馬場。そして、アントニオ猪木である。

 次回はシリーズ全体の物語の流れについて触れることにする。なお、この一連のコラムではキャラクター名の「タイガーマスク」を「タイガー」と、「ちびっこハウス」を「ハウス」と省略することがある。本編でもそのように省略されることが多いのだ。主人公の名前を直人と表記する場合は伊達直人として行動している場面、タイガーマスク(タイガー)として表記されている場合はタイガーマスクとして行動している場面だと思っていただきたい。また、固有名詞の表記は同作DVD BOX、単体DVDソフト(DVD‐COLLECTION)の解説書に準ずることとする。
 また、ここまで読まれて作品を興味を持たれた方は、次回以降のコラムを読む前に『タイガーマスク』本編をご覧になってもいいかもしれない。『タイガーマスク』は2024年5月現在、Amazon prime videoのアニメタイムチャンネルで全話を視聴することができる。

●『タイガーマスク』を語る 第2回 第1クール~第4クール に続く

[関連リンク]
Amazon prime video(アニメタイムチャンネル) 『タイガーマスク』
https://amzn.to/4bjzNEM

タイガーマスク DVD‐COLLECTION VOL.1
https://amzn.to/4biO18J

原作「タイガーマスク」(Kindle)
https://amzn.to/3w3BJlV

アニメ様の『タイトル未定』
438 アニメ様日記 2023年10月15日(日)

2023年10月15日(日)
『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』2話について。乾杯の場面で「プリティーだった私たちの再会を祝して!」と言っていたけれど、最終的に「あの頃の私達はプリティーだったけど、今の私達もやっぱりプリティーで、なおかつ素敵」のようなところに落ち着くといいなあと思った。
「設定資料FILE」の構成を進める。作業の途中で取り上げた作品の脚本を読む。夕方までやって、仕上げ直前まで構成を進めた。作業の途中で20年ぶりくらいにペーパーボンドを切らした。

2023年10月16日(月)
新文芸坐で「秀子の車掌さん」(1941/54分/35mm)を観た。プログラム「生誕100年記念特集 高峰秀子と名作たち」の1本。想像していたよりもアイドル映画だった。主人公の「おこまさん(高峰秀子)」に恋愛描写はないし、映画全体として生々しい描写もない。たわいないだけの話かと思ったら、バス会社の社長が小悪人で、それと関連して、おこまさんに残念な未来が訪れることが示唆されて終わる。それっている? という感じだったけど、当時としてはこのくらいのオチはつけなくてはいけない、という感じだったのかなあ。全体にのんびりとした話で、特に序盤のバスの運行模様は平和すぎてファンタジー。当時としても誇張した世界を描いた作品であったと思われるけど、今の目で観るとファンタジー度数が上がっているはず。驚いたのは序盤のシークエンスで、運行の途中で客がいるのに実家の近くでバスを停めてもらい、おこまさんが自宅で用事を済ませて戻ってくるという展開。新文芸坐は高齢のお客さんが多かった。映画館スタッフに手を引かれて席に着いた方が二人かな。ちょっとしたユーモラスな描写で後ろの席のお客さんが笑っていて和んだ。
14日(土)に事務所で使っている椅子の背もたれが取れてしまって、そのまま作業をやっていたら腰がヤバい。きちんとした椅子は改めて選ぶとして、このままでは仕事にならないので、よさそうなやつをアスクルに頼んだ。

2023年10月17日(火)
アスクルに注文した椅子が届き、事務所スタッフが組み立ててくれた。背もたれがしっかりしていて快適。腰の痛みも減った。昼から新宿のルノアールの会議室で高橋久美子さんのインタビュー。画集のための取材だ。ずっと聞きたかった話を聞くことができた。

2023年10月18日(水)
録画してあった映画「スプーン一杯の幸せ」を流し観。1975年の映画で主演は桜田淳子さんだ。バトミントン部に所属する梅村乃里子(桜田淳子)と、教師でバトミントン部のコーチになった福島清彦(黒沢年男[現・年雄])がメインで、『エースをねらえ!』みたいな話になるのかと思ったら、乃里子が、福島と母親(浜木綿子)の結婚を許すかどうかという話に展開。恋愛の話ではあるけれど、主人公は憧れを感じるくらいで恋愛はしない。桜田淳子さんの見どころは、離ればなれに暮らしている(両親は入籍しなかった?)実の父親と会った際の白い上下の衣装。清楚でお嬢さんらしくて、お父さん目線としては最高に可愛いのではないか。「やだあ、エッチなお父さん」と言われていたけど、あれは殺し文句だなあ。ラスト直前の喫茶店のシーンで分かりやすく、タイトルを回収していた。
同じく「夢のハワイで盆踊り」を流し観。1964年の東映映画で主演は舟木一夫さん。舟木一夫が舟田夏夫を演じて、本間千代子が風間美代子を演じて、高橋元太郎が高木源一郎を演じている。タイトル通り、登場人物がハワイに行って盆踊りを踊る。堺正章さんが若い。先に「夢のハワイで盆踊り」という曲がヒットして作られた映画かと思ったら、そういうわけでもないみたい。
この日は病院Bに。今回は呼吸器関係の診察。病院の行き帰りと待ち時間に、小説「氷菓」をKindleで読了。予想の倍くらいは面白かった。

2023年10月19日(木)
午前中の散歩で旧古河庭園に行って薔薇を見る。
グランドシネマサンシャインで「ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!」を【吹替版】を鑑賞。「手描きの絵のような3DCG」のビジュアルがよくできている。線で表現されたラクガキみたいなエフェクトもよかった。内容に関しては、亀達のティーンエイジャーっぽい感じがよくて、『おそ松さん』の六つ子的だと感じた。クライマックスのバトルで、名もなき人間の男性が、巨大化したスーパーフライを倒すことができるアイテムをもって、スーパーフライに向かって走り出したところは不思議な感動があった。クライマックスの「そうだ。『進撃の巨人』だ」のセリフが、僕的にはかなりイケていた。あのセリフから立体機動装置的なバトルに直結したら、感動しただろうなあ。実はあのセリフで脳内に「紅蓮の弓矢」が響いた。映画全体としては「もうちょい」と思うところもあったけど、楽しめた。
TVアニメ『氷菓』で、前日に読了した原作に相当する1話から5話を再視聴した。基本的な物語の流れは原作と同じ。変わりゆく天気を凝った画作りで表現したり、キャラクターをたっぷり動かしたりして、映像的に見映えのあるものにしようと努力している。千反田の家で謎についての調査の発表をしている途中で千反田がおにぎりを作り出したり、図書室での謎解きの途中で、摩耶花が本を書架に戻すのを長回しで見せたり。当時はピンとこなかったんだけど(当時からそれを理解するべきだったんだけど)、『氷菓』って京都アニメーションのアニメ表現で、ロジックが中心のミステリに果敢に挑んだ作品なのね。その結果を成功とみるか、成功ではないとと思うかは人それぞれで違うのだろう。

2023年10月20日(金)
ワイフと一緒に旧古河庭園に行って薔薇を見る。二日連続で旧古河庭園に来たのは、前日に来てワイフに薔薇を見せたいと思ったからだ。アプリ「旧古河バラコレ」も使ってみた。
午後はラクガキ画集のために、今村亮さんとSkype打ち合わせ。個々のイラストの話になってからは、打ち合わせを編集部スタッフに任せて、自分は音声だけを聞いていた。
夜は「Netflixシリーズ「PLUTO」世界最速上映会ジャパンプレミア」に参加。上映された1話に関しては配信作品とは思えない大作感のある仕上がりだった。キャティングもよかった。この日の上映に関して言えば音響もかなりよかった。丸山正雄プロデューサーからの依頼で、僕と事務所のスタッフで『PLUTO』で何度か企画書を作成している。最初に企画書を作ったのが2013年のようだ。とにかく完成してよかった。

2023年10月21日(土)
この日は取材原稿の粗まとめを進めた。
2013年に作った『PLUTO』の企画書のテキストを読んでみた。前夜のトークでは浦沢直樹さんが「最初の企画では120分の企画だった」と語っていたが、2013年の企画書では「120分の劇場アニメーション・全2本」だった。これは誰かから言われてそうしたのではなくて、自分が120分で2本くらいが現実的だと判断したのだと思う。ざっとテキストを読むと、煽りに煽っていて、我ながらいい仕事をしている。
編集作業を進めている書籍について。今回も「お前はこの本のために、どれだけ金を使えるのか」という展開になってきた。この場合の「お前」というのは社長である僕のことだ。本を作るには技術も手間も必要だけど、お金も必要だ。ここで余計にお金を使うと、少しだけ本の充実度が上がるはず。

第850回 集中力散漫なところに届きました!

いや、決して仕事を受け過ぎたつもりはありません(汗)!

いつも、いただいた仕事に対していろんな可能性が見えてしまうんです。だから「お受けできません」ではなく、「こうすればできると思います」と、“やる”前提で話します。すると、現状の板垣が仕上がるという訳。
 この歳になると集中力が益々散漫になって、一つのことを何時間も集中してやり続けることが難しく、そんな時別の仕事(作品)に頭を切り替えるのです。例えば原画修正などの画を描き行き詰まると、脚本やプロットなどのテキスト作業を1~2時間やったり、その後オープニングのコンテ切る、で合計一日とか。
 子供の頃から現在まで、大概のモノに飽きっぽい俺。今までで一番辛かったのは、仕事が監督一本しかなく、キャリアが浅くヒット作がないという政治的理由から、自分の監督作品なのに脚本にも参加させてもらえなかった頃の脚本上り待ち時間の暇。当時のプロデューサーから「まあ、監督には“待ち時間”てのがあるもんで」と窘められた、というか俺の主義として義理を欠きたくないので、さらなる仕事を重ねる場合、現在受けてる仕事のほうのプロデューサーに必ず断りを入れるのですが、入れたのが仇になり了解が得られず、ユル~い暇ができてしまったという訳。
 本来「これに一本集中させてくれよ! それでいて拘束料くれよ!」という監督の方が多いかと思いますが、俺の場合は「拘束料は要らないから、仕事の隙間を埋めてくれよ!」なんです。ま、ミルパンセができてからは、自分にくる仕事が基本“会社の仕事”になってるため、シリーズ構成・脚本や音響監督、はたまた背景の直しまで、隙間を空けるどころか、今度は溢れんばかりの仕事量をやらせてもらってます。
 そんな訳で、制作中2本、脚本・シリーズ構成中2本、その他準備中1本、の今。

 と、そこへまた届きました!

ぴあの『劇場版あしたのジョー2 COMPLETE DVD BOOK』が!

 1981年の出﨑統監督作品! 板垣をアニメの世界に誘(いざな)った大傑作です! この映画で「アニメって凄い!!」と思い、“出﨑統”という名前を覚え、“監督”と言う職業があることを知りました。ビデオレンタルで何度も借り、レーザーディスクからDVD、そしてノーマルのBlu-rayから4K ULTRA HD Blu-ray、さらに今回ぴあDVDと、出る度買ってしまう俺がいます。
 “ぴあ”シリーズ、毎回楽しみのブックレット。唯一劇場版のみの“砂浜〜足跡シーン”のコンテや原画+作監修正、杉野昭夫インタビューと今回も見所満載でした!

 次巻は『劇場版ガンバの冒険』!! “東京ムービー新社(現:トムスエンタテインメント)版・劇場出﨑アニメ”編、まだまだ続きますように!

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 176】
破格の超大作OVA ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日

 5月4日(土・祝)と5日(日・祝)の2日連続で、新文芸坐とアニメスタイルの共同企画で上映プログラムを組みました。
 新文芸坐とアニメスタイルの共同企画による上映プログラムは今年で15周年、アニメスタイル編集部は今年で25年目。それを記念しての特別企画です。

 5日(日・祝)は「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 176】破格の超大作OVA ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日」。コンセプト、映像、音楽、キャスト、全ての点において破格であり、今川泰宏のケレン味と趣味性が遺憾なく発揮されたOVAシリーズです。新文芸坐×アニメスタイルの企画では、今までも何度かオールナイトでこの作品の全話上映を行っていますが、今回は昼間の上映。勿論、全7話を一挙上映します。

 今回はスタッフのトークはありません。アニメスタイルの小黒編集長と、新文芸坐の花俟良王さんが、上映前にご挨拶として少しお話をさせていただきます。  

 チケットは4月28日(日)から発売します。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。

●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 175】今 敏が描いた華麗なる騙し絵 『千年女優』
http://animestyle.jp/2024/04/24/26934/

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 176】
破格の超大作OVA ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日

開催日

2024年5月5日(日・祝)13時35分~20時20分

会場

新文芸坐

料金

3000円均一

上映タイトル

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』全7話(1992-1998/339分/BD)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 175】
今 敏が描いた華麗なる騙し絵 『千年女優』

 5月4日(土・祝)と5日(日・祝)の2日連続で、新文芸坐とアニメスタイルの共同企画で上映プログラムを組みました。
 新文芸坐とアニメスタイルの共同企画による上映プログラムは今年で15周年、アニメスタイル編集部は今年で25年目。それを記念しての特別企画です。

 4日(土・祝)は「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 175】今 敏が描いた華麗なる騙し絵 『千年女優』」です。『千年女優』は今 敏監督の手がけた傑作長編アニメーション。今回は4Kデジタルリマスター版での上映となります。
 このプログラムではスタッフのトークはありません。アニメスタイルの小黒編集長と、新文芸坐の花俟良王さんが、上映前にご挨拶として少しお話をさせていただきます。

 当日はアニメスタイルの新刊「千年女優 アーカイブス」を、本田雄さんの描き下ろしによる複製ミニ色紙付きで販売します。 

 チケットは4月27日(土)から発売します。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。

●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

【アニメスタイルの新刊】「千年女優 アーカイブス」を刊行します!
http://animestyle.jp/news/2024/04/13/26861/

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 176】破格の超大作OVA ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日
http://animestyle.jp/2024/04/24/26938/

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 175】
今 敏が描いた華麗なる騙し絵 『千年女優』

開催日

2024年5月4日(土・祝)16時35分~

会場

新文芸坐

料金

一般 1700円、各種割引き 1300円

上映タイトル

『千年女優』4Kデジタルリマスター版【4K上映】(2001/87分)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

アニメ様の『タイトル未定』
437 アニメ様日記 2023年10月8日(日)

2023年10月8日(日)
「第212回アニメスタイルイベント ANIMATOR TALK 黄瀬和哉&西尾鉄也」を開催。遊びに来た本田雄さんにも登壇していただいた。楽しいイベントになったと思う。

2023年10月9日(月)
『野球狂の詩』の「北の狼南の虎」について調べることになって、自分が「北の狼南の虎」のロマンアルバムを持っていないことに気づく。あのロマンアルバムは古本屋でやたらと見かけた記憶があるなあ。それから「北の狼南の虎」の劇場版を観たことがないことにも気づいた。

以下はこの日に観た『サザエさん』Cパート「父さんの常備薬」(作品No.8642 脚本/城山昇 演出/望月敬一郎)について。酔って帰る途中の波平が同様に酔った男性に声をかけられて話し込み、翌日に会うことを約束する。しかし、波平はその男性が誰だったのかが思い出せない。カツオがサッカーをやって膝を擦りむいたところでサングラスをかけた男性が現れて治療をしてくれる。カツオはサングラスの男性がどこかであった人のような気がするが、誰なのか思い出せない。それを聞いたフネに、お礼を言わなくてはいけないから、誰なのかを思い出すように言われる。前夜の飲酒のために調子がよくない波平が家の薬箱で胃薬を探すが見つからず、胃薬を探していることを知られたくなくて、誤魔化すためにツメを切る。買い物に出かけたサザエは途中でマスオに会って話をして、カツオに会って話をして、薬屋に寄って置いてあった雑誌を読み耽って、子どもに風船をあげる。同じ薬屋に波平が胃薬を買いに来て、薬屋のご主人が昨夜の男性であることが判明。酔っていた波平が胃薬を買いにくると予想して、彼は翌日の再会を予告していたのだ。次いでサングラスの男性も薬屋のご主人であることが判明する。大筋は波平が約束した相手も、カツオを治療してくれた人物も同じ人だったという話で、それ自体はあまり面白くないし、尺を持て余している感じすらあるのだけれど、むしろ、話がぼんやりしているところが、本当の意味で日常を描いていると感じられて、とてもよかった。特にサザエが買い物に出かけた部分での物語がぼんやりしている感じが凄い。サブタイトルの「父さんの常備薬」もエピソードの内容を説明しているわけではなく、その曖昧さも悪くない。

この日に録画で観たアニメは以下の通り。当然ながら、ながら観である。
…………
『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。』1話
『アンデッドアンラック』1話
『はめつのおうこく』1話
『彼女もカノジョ』 13話(Season 2 1話)
『シナモンと安田顕のゆるドキ☆クッキング』1話
『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』1話
『最果てのパラディン 鉄錆の山の王』1話
『ひきこまり吸血姫の悶々』1話
『SPY×FAMILY』26話
『新しい上司はど天然』1話
『帰還者の魔法は特別です』1話
『オチビサン』1話
『豚のレバーは加熱しろ』1話
『ティアムーン帝国物語 断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー』1話
『僕らの雨いろプロトコル』1話
『ポーション頼みで生き延びます!』1話
『THE IDOLM@STER MILLION LIVE!』1話
『ちびまる子ちゃん』1405話
『サザエさん』2721話
『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』1話
…………
10月の新番組で、1話で作品のタイトルロゴがどこにも表示されていないものが何本かあった。配信をメインだと考えれば、タイトルロゴを出さなくてもいいだろうという感覚なのかな。

2023年10月10日(火)
10月7日の『キボウノチカラ オトナプリキュア’23』1話と、10月8日の『ひろがるスカイ!プリキュア』36話で内容が重複しているのが狙いのわけがないけれど、タイミングがよくない。小学校の先生になった夢原のぞみよりも、専門学校生で保育士の実習をやっている聖あげはのほうが安心して見ていられる。
ワイフと大阪に行く。会場前で吉松さんと合流して、心斎橋PARCOの「大友克洋全集 AKIRAセル画展 OSAKA」を観覧する。池袋で同イベントをやっていた時にはチケットを取り損なって行くことができなかったのだ。僕的な見どころはセルよりもレイアウトや原画であり、感想としては「やっぱり大友さんは桁違いに巧い」だった。大阪まで行ってよかった。物販ではクリアファイルを購入。晩飯は大阪出身の吉松さんに選んでもらった店に行った。店に入って注文する段階で、大阪に来て博多料理の店に入ってしまったことに気づく。いかにも大阪らしいものを食べたかったのだけど。

この日に観た録画で観たアニメは以下の通り。
…………
『星屑テレパス』1話
『川越ボーイズ・シング』1話
『デッドマウント・デスプレイ』13話(Season 2 1話)
『ひろがるスカイ!プリキュア』36話
『七つの大罪 黙示録の四騎士』1話
『青のオーケストラ』24話
『私の推しは悪役令嬢。』2話
…………
Kindleで「蹴りたい背中」(綿矢りさ)を読了。面白かったし、感心した。言葉にできないものを表現するというのはこういうことか、という感じ。作品の感想とはちょっとズレるけれど、登場人物の「にな川」の視点で書いたら、全然違う話になるよね。

2023年10月11日(水)
深夜に大阪のホテルで目を覚ます。ワイフがお腹が空いたというので、午前3時過ぎの大阪の街にくりだす。この時間でも営業している店は多いし、歩いている若者も多い。あちこち歩いて24時間営業の居酒屋に入って、前日に食べられなかった串カツ等をいただく。ホテルの朝食ビュッフェには串カツ、たこ焼き、お好み焼き、ミックスジュースなどがあった。せっかくなので、また串カツをいただく。ちなみにホテルの名前は「天然温泉 朝霧の湯 ドーミーインPREMIUMなんばANNEX」だ。ホテルの部屋でテレビを点けたら、サンテレビで午前7時から「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」、午前7時半から旧『うる星やつら』を放送していた。確認したら両方とも帯枠で、前者は月~木、後者は月~金。金曜のみ午前7時から『CAT’S EYE』をやっているらしい。いいなあ、朝の帯枠。
午前中は大阪の街を歩く。チェックアウトした後も梅田の地下街を歩いて、ワイフの希望で有名な串カツ屋で昼食。この日、三度目の串カツだった。大阪に行ったのは今までの人生で4度目だと思うけど、たっぷりと歩き回ったのは初めてだった。元気のある街だと感じた。帰りの新幹線の中では仕事のメール。事務所に戻って定例Zoom打ち合わせ。
ある人のSNSへの投稿で「オリジナルアニメが人気でジャンプ原作に勝てるわけがないんだから」といった内容のものを見かけて、軽くショックを受ける。それが現在のアニメファンの感覚を代表するものかどうかは分からないけど、そんな意見が出るくらいにオリジナルは力を失っているということだろう。

この日に録画で観たアニメは以下の通り。
…………
『ミギ&ダリ』2話
『鴨乃橋ロンの禁断推理』2話
…………

2023年10月12日(木)
試写会で『屋根裏のラジャー』を鑑賞。疑問点はあるが、物語としては、つまらなくはない。現代性もあると思った。ただし、ヒットするかどうかはわからない。話は変わるけれど、東宝社内に「ゴジラ会議室」という名称の部屋があった。
あまりにも用事が多くて、自分の作業(原稿とはページ構成とか)をやっている時間がない。数えてみたら10数冊の書籍が同時進行だった。

この日に観た録画で観たアニメは以下の通り。
…………
『婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む』2話
『16bitセンセーション ―ANOTHER LAYER―』2話
『Helck』16話
『東京リベンジャーズ』39話
『でこぼこ魔女の親子事情』2話
『MFゴースト』2話
『オーバーテイク!』2話
『シャングリラ・フロンティア』2話
『マジンガーZ』52話
…………

2023年10月13日(金)
この日の作業は大半が取材原稿の粗まとめ。「設定資料FILE」の素材の確認も進めた。いいことがあった。難しいだろうと思っていた書籍の企画にOKが出たのだ。

この日に録画で観たアニメは以下の通り。
…………
『Dr.STONE NEW WORLD』12話(第2クール1話)
『呪術廻戦 渋谷事変』36話
『放課後少年 花子くん』1話
『ビックリメン』2話
『柚木さんちの四兄弟。』2話
『お嬢と番犬くん』3話
『レヱル・ロマネスク2』2話
『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』2話
…………

2023年10月14日(土)
20数年前に細田守君(ここは「君づけ」にします)と、飲み屋で朝までかけて、大学生男子の恋愛相談に乗ったことがあった。その大学生男子は40歳過ぎとなり、恋人ができた。この日の食事では、彼に恋人を紹介してもらった。20年ぶりの伏線回収だった。ちなみに恋愛相談に乗った時点で、大学生男子は直前まで彼女がいて、僕と細田君は彼女がいなかった。
就寝前に「ゲッサン」最新号で『からかい上手の高木さん』最終回を読む。大団円だ。マンガとしての表現も高みに上っていた。自分的には引っ越しの話題はないほうがよかったけど、それは言ってもしかたがない。

この日に録画で観たアニメは以下の通り。
…………
『アンデッドアンラック』2話
『葬送のフリーレン』6話
『はめつのおうこく』2話
『彼女もカノジョ』14話
『盾の勇者の成り上がり Season 3』2話
『め組の大吾 救国のオレンジ』1話
『め組の大吾 救国のオレンジ』2話
…………

第849回 どうやらマズそうです

なんか、仕事を受け過ぎたみたいです(汗)!

 でも、信じられない方がいらっしゃるかと思いますが、やりたくない仕事はやっていません。
 と言うか、これも同じく信じていただけないかも知れませんが、

どんな仕事でも真剣に取り組むと“やりたくてやってる仕事”になる!

のです。
 とにかく、そんな訳で決められた労働時間いっぱいいっぱい仕事三昧。なんだかんだ言って30年アニメやってこられただけで幸せ者なのでしょう。
 願わくば、将来寿命が尽きる瞬間まで「アニメ作り続けてよかった!」と思っていられることを……。

第279回 知的でエモい 〜道産子ギャルはなまらめんこい〜

 腹巻猫です。4月13日にめぐろパーシモンホールで開催された「カレイドスター音楽祭 〈20周年の すごい究極 オーケストラコンサート〉」に参加してきました。クラウドファンディングで支援者を集めて実現した、ファンによるファンのための音楽祭です。窪田ミナさん作曲のBGM50曲以上をオーケストラが演奏。ホールに響く音に出演者とファンのカレイドスター愛を感じたイベントでした。いつか第2回を期待します。


 2024年1月期のTVアニメの中で筆者が気に入って観ていた1本が『道産子ギャルはなまらめんこい』。伊科田海の同名マンガをアニメ化した作品である。
 東京から北海道北見市に引っ越してきた男子高校生・四季翼は、引っ越し初日に金髪ギャル風の少女・冬木美波と出会う。美波は翼が転校した高校の同級生だった。慣れない土地の生活に不安を覚えていた翼だが、開放的で人懐っこい性格の美波のおかげで北海道のよさを知るようになり、しだいに友だちを増やしていく。
 美波以外にも、一見クールなゲーム好き美少女・秋野沙友理、美波が憧れる学年トップの先輩・夏川怜奈など、個性的な少女が翼に接近してくる。ラブコメといえばラブコメなのだけど、コミカルなエピソードを重ねる中で、翼と周囲の少女たちが成長していく姿が描かれているのがとてもさわやかで気持ちよかった。
 実在するスポットや食べものなども登場し、「北海道に行きたい!」と思わせてくれるのもいい。筆者が北海道に行ったのは3回くらいで、北見は未体験。機会があれば聖地巡礼してみたい。

 音楽はピアニスト、作・編曲家の高尾奏之助が担当。アニメを観ながら、透明感のある素敵な音楽だなあと思っていた。サウンドトラックであらためて聴いて、知的に組み立てられた音楽でもあると感じた。
 サウンドトラック・アルバムのライナーノーツに、高尾奏之助がコメントを寄せている。それによれば、打ち合わせで「ギャルであることを前面に押し出すというよりも、高校生の青春と優しい雰囲気を大切にしたい」と方向性が決まり、そのイメージを求めて、弦、木管、ピアノ、パーカッション、アコースティックギターなどの生楽器を中心に音楽を作っていったという。「北海道の寒さと、それとは対照的に、そこに生きるキャラクター達の青春の温かさがそれぞれの温度感で伝わればいいな」という想いで作曲を進めたそうだ。
 こだわったポイントとして、「日常曲のにぎやかさとポジティブ感を演出するためにブルーズ・ジャズ感のある音使いを忍ばせたこと」「弦楽器メインの曲では雰囲気をライトなクラシックにおさめ、メロディーだけでなく内声の動きでもキャラの心情の繊細さを表現したこと」「木管系では気温の寒さ、儚さ、温かさをフレーズによって使い分けたこと」などを挙げている。理論的な裏づけのある曲作りはクラシックを学んだピアニストらしい。
 といっても曲が難しいわけではない。とてもわかりやすく、親しみやすく、どの曲もイメージがくっきりしている。曲に託された雰囲気や感情がしっかり伝わる曲ばかりだ。なまら知的でエモい。そんな音楽である。
 本作の放送中に、エフエム北海道で「道産子ギャルはなまらめんこい 〜どさこいラジオ〜」なる番組が毎週オンエアされた。アニメの声優やスタッフが毎回交代でパーソナリティを務める番組で、その第4回に高尾奏之介が出演している。そこで高尾が語った内容も興味深いので紹介しよう。
 高尾が劇伴作りで大事に考えていることは「その物語がどういう世界にあって、どんなキャラクターがそこで生きていて、それぞれが何を考えているのか」。それをしっかり理解して全体の楽器編成や音楽スタイル、ジャンルなどを決めていく。本作の場合は、原作を読み、「翼のにぎやかな日常とヒロインたちの抱えている心模様を魅力的に演出するには、どういう音楽をつけたらいいのか」を考えて曲を作っていったという。「音楽で作品の世界観が決まってくると思う」とまで高尾は言っている。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「TVアニメ『道産子ギャルはなまらめんこい』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで2024年3月6日にポニーキャニオンから発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. 冬の寒い地へ
  2. 道産子ギャルはなまらめんこい メインテーマ
  3. なんて攻撃力してるんだ!!
  4. トホホに帰して
  5. その言葉に胸がジーンと
  6. なんだこの状況は!?
  7. トキメキと、ありがと……
  8. 平穏であったかい時間
  9. 寒い!寒すぎる!!
  10. はずむ会話と足取り
  11. うきうきな北見的日常
  12. ごめん、じゃあね……
  13. 大切な友達だと思ってるから
  14. 今日もみんなで元気よく
  15. 陽気な気分で
  16. モヤモヤした気持ち
  17. 楽しみは一緒に
  18. ふんわりと見惚れて
  19. 翼の赤面
  20. ふ、冬木さん!?
  21. くもり後、笑顔
  22. ぽつりぽつりと、新たな一面
  23. その気持ちが嬉しくて
  24. やばいやばいやばい!
  25. ちゃんといい街なんだなーって
  26. 思春期的葛藤
  27. 不安、不穏、隠した想い
  28. 真夜中のひまわり -Piano ver.-
  29. やっと本音を、言えたから
  30. あの頃の思い出
  31. 愉快軽快ダイジョブかい?
  32. ちょびっと乙女な冬木さん
  33. 安心、その先で
  34. なまら仲睦まじく
  35. 自分と向き合い憧れて
  36. あふれる想いと涙
  37. 心拍数、上昇
  38. ほんとの気持ちは、どっち……?
  39. 問題勃発
  40. はやる想いはめんこい君へ
  41. やっぱり道産子ギャルはなまらめんこい
  42. 真夜中のひまわり -Inst ver.-

 収録時間はたっぷり74分。劇中で流れたBGMは、ほぼすべて収録されている。
 アルバムの序盤は本編の第1話、第2話の流れを踏襲している。翼が美波と出会い、学校と北見の街になじんでいくまでが、音楽で綴られる。中盤にはさゆりや怜奈のエピソードで印象深い曲が現れ、終盤はエモーショナルな展開になって終わる。全12話の物語をふまえた内容になっているのがいい。
 トラック1〜10は第1話を思わせる構成。1曲目の「冬の寒い地へ」は冬の北海道をイメージさせる曲。キラキラした音色のピアノやパーカッションと木管のアンサンブルが雪の舞う情景を思わせる。この曲は第1話では使われていないが、物語の導入にはぴったりだ。
 トラック2「道産子ギャルはなまらめんこい メインテーマ」はタイトルどおり本作のメインテーマ。ピアノと木管のイントロから軽やかに舞い踊るようなメロディに展開する。高尾奏之助は本曲について「メロディーの音の跳躍が激しいのは、キャラクターの心の弾み具合を表現したいと思ったから」と語っている。またバックにはボディパーカッション(手・足・体などを叩いて出す音)が使われている。これはにぎやかさを演出するねらいで入れたのだそうだ。第1話のアバンタイトル、翼が雪の積もった道で美波と出会う場面から使用されている。
 トラック3「なんて攻撃力してるんだ!!」は翼から見た美波の印象を伝える曲。ジャズ風のブルージーな曲調がおかしみをかもしだす。第1話の使用順だとトラック8「平穏であったかい時間」のあと、翼が学校の教室で美波と再会する場面に流れるのだが、「美波登場!」のイメージでここに配置されているのだろう。アルバムの流れとしてはこのほうがいい。
 トラック4〜10までは第1話の翼と美波の出会いから教室で再会した2人が一緒に帰るまでの一連のシーンに使用されている。コミカルな「トホホに帰して」「なんだこの状況は!?」「寒い!寒すぎる!!」は翼が動揺するシーンによく使われた曲。「その言葉に胸がジーンと」「トキメキと、ありがと……」「平穏であったかい時間」はほのぼのしたシーンや心がほっこり温かくなるシーンによく流れた曲だ。どれもシンプルな楽器編成と構成ながら、タイトルどおりのイメージがストレートに伝わってくる。
 トラック10の「はずむ会話と足取り」は毎回のように使用された軽快な曲。翼と美波たちの会話シーンによく選曲されていた。
 トラック11〜13は第2話の終盤に連続して使われた曲。美波と一緒にかまくらに入っているところを厳しい祖母に見られた翼(「うきうきな北見的日常」)。美波との仲もこれまでかと落胆するが(「ごめん、じゃあね……」)、気を取り直して美波に素直な気持ちを伝える(「大切な友達だと思ってるから」)。翼の心情の変化が伝わる巧みな音楽演出だ。ハンドクラップを取り入れた「うきうきな北見的日常」は翼が同級生と遊ぶシーンなどによく使われた。
 本作の音楽は、大きく分けるとコミカル系、にぎやか系、ほのぼの系の3タイプがある(もちろん、このいずれにも当てはまらない曲もある)。コミカル系では、ほかに「翼の赤面」(トラック19)、「ふ、冬木さん!?」(トラック20)、「やばいやばいやばい!」(トラック24)、「思春期的葛藤」(トラック26)、「心拍数、上昇」(トラック37)などがあり、微妙なニュアンスの違いを書き分けているのがうまい。実際に使用されたシーンも曲タイトルと合致している。選曲家にとって、曲のねらいと曲の印象のあいだにずれのない、使いやすい曲なのだろう。
 にぎやか系の曲には「今日もみんなで元気よく」(トラック14)、「陽気な気分で」(トラック15)、「楽しみは一緒に」(トラック17)、「愉快軽快ダイジョブかい?」(トラック31)などがある。どれもバンドセッション的な躍動感が気持ちよく、本作らしいなあと思う曲だ。中でも「陽気な気分で」と「愉快軽快ダイジョブかい?」は使用頻度が高かった。
 ほのぼの系では、「その気持ちが嬉しくて」(トラック23)、「ちゃんといい街なんだなーって」(トラック25)、「あの頃の思い出」(トラック30)、「安心、その先で」(トラック33)などが翼と美波たちの友情のシーンによく使われていた。しみじみといい曲である。
 アルバムの後半になると、切なさやためらいなどを表現する心情曲が多くなる。本作の青春ものの側面を象徴する楽曲たちだ。
 「ぽつりぽつりと、新たな一面」(トラック22)は、木管、ピアノ、パーカッションなどが思春期の複雑な心情を描写するドビュッシー風の曲。第3話のリフトの上で語らう翼とさゆりの場面や第12話の美波が眠っている翼の顔を見つめる場面などに使われ、絵やセリフだけでは表現しきれない想いを描写していた。
 「自分と向き合い憧れて」(トラック35)は第8話で怜奈が翼に「私はいつも人の評価を気にしている」と意外な弱さを見せる場面に流れた曲。ピアノとアコースティックギターとストリングスが繊細な心情を演出する。第11話で美波が翼に「海外留学するんだ」と打ち明ける場面にも使われた。
 「あふれる想いと涙」(トラック36)は数少ない悲しみの曲のひとつ。第11話で美波との距離が遠くなったように感じる翼の心情を彩った。第12話では翼が美波と会いに行くことをためらう場面に流れている。ピアノとアコースティックギターをバックに奏でられるクラリネットの旋律が切なく響く。オーボエやフルートだと悲しくなりすぎるところだが、ぬくもりのあるクラリネットの音色が選ばれているところが絶妙である。
 「はやる想いはめんこい君へ」(トラック40)はメインテーマの変奏で、もどかしや切なさを感じさせるアレンジ。曲後半のクラリネットのアドリブが乱れる心を表しているようだ。第12話で翼が美波のヘアピンを握りしめて会いに行くことを決意する場面に一度だけ使われた。
 第12話の美波が空港で翼が来るのを期待して待つ場面には「ほんとの気持ちは、どっち……?」(トラック38)が流れている。これもメインテーマのモチーフを使った曲で、たゆたうような木管の旋律がゆれ動く気持ちを表現している。第5話で美波がさゆりから「翼にガチのチョコをあげないのか?」と聞かれる場面にも使われたのが音楽的伏線になっていた。
 アコースティックギターとストリングスによる「くもり後、笑顔」(トラック21)は第12話で翼が美波に自分の想いを伝える場面に流れた曲。それに続く、翼が旅立つ美波を見送るシーンでは、ドラマティックな構成の「やっと本音を、言えたから」(トラック29)が流れて2人の感情が交錯するクライマックスを盛り上げた。
 最終話のラストシーンに流れたのは「道産子ギャルはなまらめんこい メインテーマ」だったが、アルバムの締めくくりの曲はメインテーマアレンジの「やっぱり道産子ギャルはなまらめんこい」(トラック41)。テンポのゆったりした演奏が大団円を思わせる。この曲は第7話の翼と怜奈の和服デートのシーンや第11話アバンタイトルの美波がメイクするシーンなどに使われていた。
 トラック42「真夜中のひまわり -Inst ver.-」は第5話で美波がカラオケルームで歌っていた曲のカラオケ。ボーナストラック的な収録だ。そのピアノアレンジ版がトラック28の「真夜中のひまわり -Piano ver.-」。こちらは第5話で翼がピアノを弾いて美波を励まそうとする場面に現実音楽として使われた。こういう曲はサントラ盤ではオミットされてしまいがちなのだが、ちゃんと収録されているのがうれしい。

 高尾奏之助は30分枠のTVアニメの音楽を手がけるのは本作が初めてだったそうだ。そうとは思えないほど完成度の高い充実した内容の音楽である。高尾は何話分かのダビング作業にも参加したという。筆者は常々、作曲家もダビングに参加したほうがよいと思っているので、それを知って感心した。これからどんな音楽を聴かせてくれるか、楽しみな作曲家だ。

TVアニメ『道産子ギャルはなまらめんこい』オリジナルサウンドトラック
Amazon

第848回 まだまだ語り続けます!

ぴあより発売された『劇場版スペースアドベンチャーコブラ COMPLETE DVD BOOK』届きました!

 1982年の出﨑統監督作品。ここ数年買い続けている“ぴあCOMPLETE DVD BOOK”シリーズも、昨年末発売された『劇場版エースをねらえ!』に続き、今回の『劇場版コブラ』へと“東京ムービー新社(現:トムスエンタテインメント)版・劇場出﨑アニメ”編に突入!? 出る度買ってしまうんですよね。それだけ、

“出﨑アニメ”には、他のアニメにない魅力があるんですよ!

 昨今のレンズを通した画を無条件にリアルと信じたパース&レイアウトで、綺麗且つ高密度な作画・美術でストーリーを語るだけのアニメ映画とは全然違う“魅力”です。出﨑監督は生前残されたオーディオコメンタリ―などで「隅々まで描かれた画面が本当に良いのか?」的なことは語られてます。1980年前後、実写の光(入射光)を重ね始めたせいで出﨑アニメが実写的に捉えられた(過去「出﨑作品は実写的」と仰ってた出﨑組スタッフのインタビューあり)のかも知れませんが、自分はそうは思いません。出﨑監督はあくまで実写映画からインスパイアされつつも、その表現をアニメーションに——ですらなく、“画で繫いだフィルム”というかたちで作品にしたかったのではないのでしょうか? アニメという縛りから解き放たれて“フィルム”というカテゴリーで考えればこそ、動く必要もないから“止めハーモニー”や“繰り返し”、その他ありとあらゆるエモーショナルな手練手管により「出﨑フィルム」を目指した! のだと、思うのです。今日日の数あるハイクオリティアニメ映画になくて、出﨑監督作品のみにある何かが板垣にとっては愛おしくて堪らないのです。
 よく言われる“アップとロングの切り返し”の大胆さは言わずもがなですが、個人的に

劇場出﨑作品の最大の魅力は大胆且つ歯切れのいい“編集”!

だと考えています。それは“数コマ伸縮”程度の所謂アニメ演出処理的なテクニカル感度の話ではなく、シーンやカット繋ぎレベルといった全体的な意味での編集の話です。『劇場版エースをねらえ!』に於けるお蝶夫人とのダブルス戦の“ヘリコプター”とかの、試合を全部観せるなど不要! という割り切り。『劇場版あしたのジョー2』の見えないパンチの説明すらなく、そのダウン後“受け返す”工程もカット! これは『(劇)ジョー2』自体がTVシリーズの総集編(テレビの画の使い回し)だから雑に切り過ぎた……とかではなく、「スポーツもののセオリーをポンと飛ばして繋ぐことで、ジョーの野性(瞬発力?)を表現しようと思って~」との出﨑監督インタビューが残っている訳で、間違いなく意図的です。他に『(劇)ジョー2』では「それで終わりか?」金竜飛とか。
 で、『劇場版コブラ』でも、冒頭からコブラとジェーンがテレパシー通信(?)してたり。もちろん説明なし。コブラが元気に走り! 飛び! とアクションたっぷりで動画枚数を無限に使ったかと思えば、ラストのクリスタル・ボーイとの対決は前述の“繰り返し(高速)PAN”の止め画! このシャープさが堪りません! 勝ちが見えてる勝負を長々描く必要なし! でしょう! もう、大好き!!
 次(4/23)は『(劇)ジョー2』ですか!

 是非『劇場版ゴルゴ13』も(懇願)!

第222回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』6 【片渕さんの『調べる』とはどういう意味なのか 編】

 片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。

 『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などの調査研究を進めています。アニメスタイルは「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルでイベントを開催し、現在は「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」のタイトルでイベントを続けています。

 2024年5月18日(土)に開催する「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』6」のサブタイトルは【片渕さんの『調べる』とはどういう意味なのか 編】。文字通り、今回は片渕監督にとって「調べる」ということにどんな意味があることかを語っていただくことになります。作品作りと深く関わったお話になりそうです。
 3月29日に小説家の山本弘さんが逝去されました。それを偲んで今回のアフタートークでは片渕監督に、アニメーション版『MM9』について話をしていただくことになりました。アフタートークは配信はなく、会場にいらしたお客様のみが観覧できます。

 なお、今回の会場はいつもの「ここまで調べた」イベントとは違い、新宿のLOFT/PLUS ONEとなります。

 配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。

 チケットは4月13日(土)昼12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。

■関連リンク
LOFT  https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/280998
LivePocket(会場)  https://t.livepocket.jp/e/ixj5l
ツイキャス(配信)  https://twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/302195

アニメスタイルチャンネル  https://ch.nicovideo.jp/animestyle

 なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr

第222回アニメスタイルイベント
ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』6 【片渕さんの『調べる』とはどういう意味なのか 編】」

開催日

2024年5月18日(土)
開場12時30分/開演13時 終演15時~16時頃予定

会場

LOFT/PLUS ONE

出演

片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎

チケット

会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込・飲食代別)
ツイキャス配信チケット/1,300円

■アニメスタイルのトークイベントについて
 アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。

第847回 楽しい、だけじゃ……

また原画描くのが面白くなってきました!

 『沖ツラ』、原画の直し。建前上は“作監(作画監督)として原画修正”ですが、全修——早い話、原画描き直し。もちろん全カットそんなことしやしませんが、時々どーしてもやっちゃいます。
 やっぱり、原画は楽しくて面白い! 目の前に良くない原画上がりがあると、「は? これでいいの? なんでもっとカッコ良く描かないの!?」という気持ちで直しまくってしまうのです。若い頃は下手な原画に怒りを覚えましたが、この歳になると「誰もわざと下手に描いてる訳でもないだろうし~」と大らかに見れるもので、寛容に見る代わりに粛々と「全部直させていただきます!」と。修正後原画マン本人に「ここはこうした方がよくて~」と解説、時にはリテイクで戻す。修正理由を相手にハッキリ説明できないなら、リテイクは出しません! 黙って全修します。

しかし、もうそろそろ「原画描くのは楽しいからいいか……」とばかりは言ってられません!!

 自分はこれまで「コンテは楽しい」「原画も楽しい」「監督いちばん楽しい」でやってきましたし、数年前まではまだまだその調子でやってこうと思っていました。が、ついこの間、また学生時代の友人に「アニメーターが原画描いてるだけでなんの版権収入もなく食えない業界が問題なんだ! インボイス制とかもけしからん話だ!」と、なぜか俺に向かって吠えられました。俺に言わせると、

え? 原画だけ——もっと言ってアニメーターだけやってるからダメなんじゃない?

という時代が迫っているのに気づかないのでしょうか。その友人曰く「俺は君(板垣)みたいに監督やりたいとかコンテ描きたいとか贅沢言わないで、ただ“一原画マン”でいいって言ってんだから!」だそう。「……いや、世の6割のアニメーターが貴重な収入源としている“眼パチ・口パク程度の楽(らく)儲けカット”なぞはAIで仕留める時代が直ぐそこまで来てるぞ!」、つまり──

これからの時代、アニメの原画業だけで食って行こうってほうが、よっぽど贅沢なんですよ!!

と。すでにアニメ会社に就職せず、個人作品をYouTubeに上げてデビューしたアニメーターがゴロゴロいる訳で。そういった個人作家はコンテから編集まで自身でやってると思います。アニメの作り方なぞネットで調べりゃ簡単に出てきますからね。
 その友人だけでなく、アニメーターは不遇だ不遇だと言うけど、そもそも本格的エンターティナーたる漫画家になるほどの才能もなく、中学高校と碌に学業せず美少女落書き。無試験でアニメ専門学校入って親の脛齧った類友らとオタク談義三昧の2年間! 念願叶って(?)アニメーターになってからも自堕落に昼過ぎ~夕方近くにスタジオ入って、DVDとか観たりしながら朝までだらだら描いて? 当然これはその友人だけでなく、俺自身にも半分当てはまってると思うし、自分がフリーであちこち出向いていた時、このようなアニメーターに数多く出会いました。もっと嫌われるの覚悟で毒づくと、30年やってコンテの画を拡大して眼パチ・口パクつけた程度に毛が生えた位の原画しか描けない腕で今まで食えてきただけで幸運でしょ!? お金が儲からなかったこと以外、もう十分遊んだじゃないですか? これからもそれだけで食っていこうと思ってる? 社会や政治が悪い! インボイス制が悪い! と言って愚痴ってばかりで何も新しいことを勉強しようともしないの? 学生の頃「僕はオリジナルの企画を持ってるから!」と息巻いていたのはなんだったの? クリスタやAE・Premiere使って自作アニメ作って、動画サイトに上げればいいのに……。
 と言う訳で、自分ももう少し今までと違う仕事を——と、ここ何回かで話題にしているとおりストーリーを組み立てたり、そろそろCGも使えるようになりたく、小さくても自分の作品を作るための勉強をしようと思います。2025年問題が迫る中、AIの台頭に対して自分らアニメーターは今までのような「贅沢さえ諦めて原画描いてりゃ、自由に過ごせる~」な怠慢ワークスタイルを見直し、少しでも勉強して新しい技術を身に付ける時代がきたようです。その方がもっと仕事が楽しくなると思いませんか?

アニメ様の『タイトル未定』
436 アニメ様日記 2023年10月1日(日)

2023年10月1日(日)
雨宮哲さんが原作・脚本を務めた朗読劇「絶滅ホスト」を観劇した。物語そのものが面白いし、登場人物も魅力的。「朗読劇であること」を利用したメタ展開もイケていた。『グリッドマン ユニバース』でも感じたけれど、雨宮さんの恋愛観がいい。

2023年10月2日(月)
新文芸坐で「シンドバッド 7回目の航海」(1958・米/88分/BD)を鑑賞。プログラム「ワクワク!ストップモーションアニメと最新3DCGアニメの傑作」の1本だ。この映画の初見は子供の頃のTV放映で、その後も何度か観ているはず。改めて特撮カット(ダイナメーション)の多さに驚く。骸骨剣士とのチャンバラは今観ても凄い。展開がスピーディで、その意味でも楽しめた。「シンドバッド 7回目の航海」を観る気になったのは新文芸坐に貼られたポスターの左上に「総天然色メガスコープ」の文字があったからだ。 「7回目の航海」って4:3だった気がするんだけど、ワイドだったっけ? と思い、それを確認するために観ることにした。実際に上映された映像は4:3よりも横長。16:9かな。16:9ほどは横に長くなかったかもしれない。ネットで検索すると、米国版LDは4:3で、米国版DVDは上下を切って16:9としたとあった。同時上映の「アルゴ探検隊の大冒険」(1963・英/104分)のチケットも取ってあったので、そちらは冒頭だけ観た。

この日に観た深夜アニメは以下の通り。『オーバーテイク!』の1話がよかった。
…………
『でこぼこ魔女の親子事情』1話
『MFゴースト』1話
『オーバーテイク!』1話
『し~くれっとみっしょん 潜入捜査官は絶対に負けない!』1話
『ちびまる子ちゃん』1404話
『シャングリラ・フロンティア』1話
…………
深夜アニメの新番組ではないけれど、『青のオーケストラ』23話がよかった。やたらと濃厚だった。

2023年10月3日(火)
いくつもの仕事が動き始めた日。
この日に観た深夜アニメは以下の通り。『鴨乃橋ロンの禁断推理』は集英社原作でKADOKAWAアニメということかな。
…………
『鴨乃橋ロンの禁断推理』1話
『SHY』1話
『私の推しは悪役令嬢。』1話
『とあるおっさんのVRMMO活動記』1話
『聖剣学院の魔剣使い』1話
『ミギ&ダリ』1話
『B-PROJECT 熱烈*ラブコール』1話
…………

2023年10月4日(水)
グランドシネマサンシャインで「ジョン・ウィック:コンセクエンス」を【IMAXレーザーGT字幕版】で鑑賞。ワイフも行く予定でチケットを取っていたが、体調が優れず、彼女は行かないことになった。画がよくて、音がでかい映画が観たかったので、まずは満足。中二っぽいところもよかった。とにかくアクションのボリュームが凄い。序盤の日本でのアクションだけで、普通のアクション映画の1本分くらいあるのではないか。最後の決闘場所に行くまでのアクションの長いこと長いこと。屋内のシーンで天井をぶちぬいて真上から撮ったショットがなかなかよかった。自分の好みとしてはアクションのボリュームを半分にして、個々のアクションの見せ方の精度を上げたほうがよかったけど、あのボリュームが商品価値になっているのはよく分かる。

この日に観た深夜アニメは以下の通り。
…………
『Paradox Live THE ANIMATION』1話
『東京リベンジャーズ』38話
『聖女の魔力は万能です』Season2 1話
『忍ばない!クリプトニンジャ咲耶』1話
…………
『セーラームーン』の放映が始まった頃に入浴剤があったよなあ、と思って検索したら、ネットに画像があった。ありがとう。ブログ主さん。商品名は「美少女戦士セーラームーン へんしんタイム」だった。見どころはバッケージのイラストで、お風呂に入っているうさぎ達、それから、マスクをつけてシルクハットをかぶったまま入浴しているタキシード仮面だ。『セーラームーン』の入浴剤からの連想で『少女革命ウテナ』にも子供用の文具セットがあったなあ、と思って検索したところ、見つかった。商品名は「少女革命ウテナ バラの刻印セレクション」。僕が商品窓口として監修したものだ。『ウテナ』で子供用の商品といえば、ドールもあったはず、と思って検索したら、こちらも見つかった。今となっては嘘のような話だけれど、『少女革命ウテナ』も企画時は子供のための人形や各種商品を発売する作品だったのだ。

2023年10月5日(木)
昨年の緊急入院で学習したので、調子が悪い時は「とりあえずは様子をみよう」ではなくて「まずは病院に」と考えることにした。前日とこの日の体調が、緊急入院した時の少し前と同じ感じだったので、慌てて病院に行った。CTスキャンをとってもらったところ、現状では問題なし。午後はあるアニメーターさんと、年末に刊行する書籍について打ち合わせ。

この日に観た深夜アニメは以下の通り。
…………
『婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む』1話
『ブルバスター』1話
『陰の実力者になりたくて!』2nd season 1話
『ウマ娘 プリティーダービー =Season3=』1話
『絆のアリル』13話
「アニメ『ぼさにまる』傑作選」
『16bitセンセーション ―ANOTHER LAYER―』1話
『カミエラビ God.app』1話
『暴食のベルセルク』1話
…………
『私の推しは悪役令嬢。』1話と『婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む』1話が面白かった。自分勝手なことを言うと、どちらも1話の感じで全4話くらいで終わってくれると嬉しいけど、そういうわけにはいかないのは分かっている。勿論、1クールずっと面白ければそれはそれでOK。

2023年10月6日(金)
朝の散歩ではサブスクで『哀しみのベラドンナ』のサントラを聴いた。アナログレコードが出たよなあ、と思って検索したらサブスクにあったのだ。凄いぞ、サブスク。『哀しみのベラドンナ』があるなら、ひょっとして『千夜一夜物語』のサントラもあるのでは? と思って検索したらあった。こちらも聴いた。
『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話をDolby Atmosで鑑賞。とにかく戦闘シーンが凄い。CGそのものについても「ここまできたか」という感じ。凄かったのが、決着が着く少し前の戦車がひたすら滑り落ちるシークエンスで、CGだけでなく、コンテや演出も凄い。21世紀になってから作られた全てのメカアニメの中で「一番板野サーカスに近い」と思った。別にミサイルが飛び回るわけでないけれど、精神が近い。これは第4話だけではないけれど、『最終章』はコアユーザー向けの「キャラクターもの」の枠から外れようとしているところがあると思っていて、今回は特に顕著だと感じた。もっと感動的に作ろうとしたらできるはずだし、キャラ描写でサービスもできたはず。それを含めて第5話と第6話がどうなるのかが楽しみ。普通に決勝をやって終わりではないだろうとは思う。今までやっていなかったテーマに挑むのかなあ。

この日に観た深夜アニメの新番組は以下の通り。
…………
『UNDER NINJA』1話
『魔法使いの嫁 SEASON2』1話
『ビックリメン』1話
『柚木さんちの四兄弟。』1話
『呪術廻戦 渋谷事変』35話
『お嬢と番犬くん』2話
『レヱル・ロマネスク2』1話
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』14話
『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』1話
…………
『お嬢と番犬くん』2話が面白かった。『柚木さんちの四兄弟。』『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』も好印象。

X(旧 Twitter)で『鉄人28号』(1980年版)の45話「暴走! 地獄の天使」について書いた。5人の武装バイクに乗った若者がゲストの敵として登場して、5人を演じたのが神谷明(ジョー)、吉田理保子(ラン)、石丸博也(ケン)、千葉繁(アキラ)、二又一成(イサム)という異様な濃さ。神谷さんが演じるジョーがバイクで搭乗したまま、ロボットのライダーンに搭乗するのだけれど、その時に「ライダーン!」と叫ぶ。誰かが狙った『勇者ライディーン』のパロディであるはずだ。ドラマに関してパロディ的な空気がないので、分からない人は分からないというところが巧い。これはSNSに書かないと、どこにも書く機会がないのではないかと気がついて、書いたのである。パロディを仕掛けたのが誰なのかを調べたいが、それを調べる機会があるのだろうか。

2023年10月7日(土)
この連休で「インディーアニメクロスX! in 渋谷パルコ」が終わることに気がついて、仕事の合間に渋谷へ。目当ての図録を購入。図録はボリュームがあってよかった。Xで流れてくるショートアニメを観る際の参考になりそうだ。こむぎこ2000さんが在廊していたので、図録にサインを入れてもらう。
この日に観た深夜アニメは以下の通り。
…………
『盾の勇者の成り上がり Season 3』1話
『攻略うぉんてっど! 異世界救います!? 』1話
『葬送のフリーレン』5話
『ヒプノシスマイク Division Rap Battle Rhyme +』1話
『ゴブリンスレイヤーII』1話
『アークナイツ 冬隠帰路』1話
…………

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 174】
デジタルの夢・アナログのロマン『BLOOD』『人狼』

 新文芸坐とアニメスタイルの共同企画による上映ブログラムは今年で15周年、アニメスタイル編集部は今年で25年目。それを記念して、これから来年にかけて何度かスペシャルなプログラムをお届けする予定です。

 4月20日(土)のプログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 174】 デジタルの夢・アナログのロマン『BLOOD』『人狼』」。
 『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(2000年)は最先端のデジタル技術を駆使して濃密な映像を作り上げた作品。『人狼 JIN-ROH』(2000年)は「最後の本格的アナログ長編アニメ」とも呼ばれた作品で、手描き作画の最高峰と評されています。同時期にProduction I.Gが送り出したデジタルとアナログの傑作2本立てです。

 トークのゲストは『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の北久保弘之監督、作画監督の黄瀬和哉さん、『人狼 JIN-ROH』の沖浦啓之監督。聞き手はアニメスタイルの小黒祐一郎が務めます。  

 チケットは4月13日(土)から発売します。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。

【新文芸坐×アニメスタイル vol. 174】
デジタルの夢・アナログのロマン『BLOOD』『人狼』

開催日

2024年4月20日(土)16時00分~

会場

新文芸坐

料金

3000円均一

トーク出演

北久保弘之、沖浦啓之、黄瀬和哉、小黒祐一郎

上映タイトル

『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(2000/48分/35mm)
『人狼 JIN-ROH』(1999/102分/PG12)

備考

※トークショーの撮影・録音は禁止

●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/

第278回 音楽は魔法 〜悪魔くん(2023)〜

 腹巻猫です。2023年11月からNetflixで配信されている新作アニメ『悪魔くん』のサウンドトラックCDが発売されました。サントラ出ないのかな? と思っていたので、これはうれしい! しかも、1989年放映のTVアニメ『悪魔くん』のサウンドトラックCDも同時発売! 1989年版のBGMが商品化されるのは初めてで、長年の夢がかないました。今回は2023年版『悪魔くん』の音楽を取り上げます。


 『悪魔くん』は水木しげるの同名マンガを原作にしたアニメ作品。“悪魔くん”とはこの世に千年王国をもたらすとされる1万人に1人の天才少年のことだ。原作にもさまざまなバージョンがあり、少しずつ設定は異なるが、特異な才能を持った少年“悪魔くん”が主人公である点は共通している。
 1989年に放映されたTVアニメ『悪魔くん』は、オカルトに詳しいゆえに“悪魔くん”と呼ばれる小学5年生・埋れ木真吾が主人公。真吾はファウスト博士から救世主“悪魔くん”と認められ、メフィスト2世と十二使徒とともに邪悪な悪魔と戦う。子ども向けにアレンジされているものの、多彩なキャラクターが活躍する魅力的な作品になっていた。
 2023年版のアニメ『悪魔くん』は1989年版のストレートな続編。物語の中でも30年近い年月が経っているようである。
 主人公は“悪魔くん”と呼ばれる埋れ木一郎。彼はある事情から幼い頃に前作の悪魔くん・埋れ木真吾に引き取られて育てられた。今は「千年王国研究所」に住んで悪魔や魔法の研究をしている。一郎の相棒として登場するのがメフィスト3世。1989年版に登場したメフィスト2世と真吾の妹・エツ子とのあいだに生まれた息子、つまり人間と悪魔の混血である。一郎とメフィスト3世は千年王国研究所に持ち込まれる奇怪な事件を調査し、背後にうごめく悪魔のたくらみを暴いていく。
 本編には埋れ木真吾やメフィスト2世、エツ子、こうもり猫といった旧作キャラクターも登場する。それを旧作と同じ声優が演じているのもうれしいところ。1989年版でシリーズディレクターを務めた佐藤順一が2023年版でも総監督を務めている。だから、旧作とのつながりが自然で、「キャラが変わった」と思わせるような違和感がないのもいい。
 しかし、作品の雰囲気はだいぶ変化している。
 2023年版はNetflixでの配信ということもあってか、大人向け、青年向けのテイストになっている。ホラー描写が多いし、絵柄もぐっとスタイリッシュになった。物語はダークファンタジー+探偵ものの味わいである。
 音楽は1989年版の青木望に代わって井筒昭雄が担当。井筒昭雄はTVドラマ「怪物くん」「猿飛三世」「妖怪シェアハウス」「トクサツガガガ」などの音楽を手がけた作曲家で、アニメ作品には当コラムで取り上げた『ファイ・ブレイン 神のパズル』がある。ユニークな作品にユニークな音楽を書く作家という印象だ。もっとアニメをやってほしいなと思っていたので、新作『悪魔くん』の音楽を担当すると聞いて期待に胸がふくらんだ。

 本作の音楽の特徴は、世界各地の民族楽器の音が取り入れられていること。ケーナ、オカリナ、ショーム、チャランゴ、バラフォン、カリンバ、カズーなどの民族楽器と、ギター、ピアノ、フルート、クラリネット、サックスなどの西洋楽器の音が混ざり合い、悪魔と人間が共存する不思議な世界観を表現する。メロディも一風変わっている。毎回のオープニングに流れるメインテーマからして、東洋風とも西洋風ともつかない、エキゾティック(異国的)な旋律である。
 サウンドトラック・アルバムのブックレットに掲載されたコメントで、井筒昭雄は「1989年版のスタッフの方も関わられるという事で責任感と冒険心を持って挑みました」と語っている。「責任感と冒険心」、いい言葉だ。井筒はさらにこう続ける。
 「日常に潜む悪魔たちの質感や人間の持つ欲や憎しみ、嫉妬、狂気…そんな心情を音に乗せて、西洋だけでなく世界中の悪魔たちも意識しつつ、全編を通して『悪魔くん』のサウンドだと感じられる音作りを心がけました」
 民族楽器の音やエキゾティックな旋律が「世界中の悪魔たち」を意識したサウンドなのだろう。
 本作のサウンドトラック・アルバムは「悪魔くん オリジナル・サウンドトラック〜2023〜」のタイトルで、日本コロムビアから3月20日に発売された。収録曲は以下のとおり。

  1. 悪魔くん -Main Theme-
  2. 凶夢 Red Dreams
  3. 天邪鬼 No Thanks
  4. 魔法陣 Summoning
  5. 鎮魂歌 Sanctus
  6. 相棒 Dance
  7. 偶像 Tea time
  8. 異世界 Link
  9. 外套 Eloim, Essaim
  10. 発生 Gong
  11. 妖 Visitor
  12. 獰猛 Attack
  13. 偏愛 Aberration
  14. 囁き Doll
  15. 契約 Error
  16. 闊歩 Underground
  17. 陰陽 Desire
  18. 耽溺 Phantasmagoria
  19. 拉麺 With
  20. 巨石 Ancient
  21. 厄災 Origin
  22. 捻転 Library
  23. 逢魔時 Purple
  24. 団欒 Kitchen
  25. 烏合衆 Prattle
  26. 怪奇呱々 Bubble Up
  27. 咆哮 Devil
  28. 心 Pancakes
  29. 家賃 Old Theater
  30. 迷宮 Dark Cloud
  31. 猛追 Limit
  32. 商店街 Humming
  33. 羽根 Vicious
  34. AKUMA KUN -召喚 Mix-
  35. 共鳴 Solomon
  36. ふたり(歌:吉河順央)

 構成(選曲・曲タイトル)は井筒昭雄のチームが担当したそうだ。曲タイトルは日本語と英語が併記されているが、対訳になっているわけではない。それぞれに意味があり、表と裏の二重性を表しているようでもある。さまざまな解釈ができる面白い趣向だ。
 1曲目の「悪魔くん -Main Theme-」が本作のメインテーマ。オープニングとエンディングにも使用されている。ゆったり始まるイントロから摩訶不思議なサウンド。アップテンポのリズムになり、即興演奏のようにさまざまな楽器が咆哮する。メインテーマのメロディーを奏でる楽器は……サックスなど何本かの管楽器が一緒に吹いているようだが、よくわからない。そのわからない感じがいかにも『悪魔くん』だ。バッキングにも民族楽器の音が散りばめられている。妖しくダークで不思議だけれど、カッコいい。トラック34の「AKUMA KUN -召喚 Mix-」は同じ曲のミックス違いで、実際にエンディングに使用されているのはこちらのバージョンだ。
 2曲目の「凶夢 Red Dreams」はメインテーマのバリエーション。奇妙な事件の発端や、一郎が事件の謎解きをする場面などに使われた。フルートやオカリナなどの木管(笛)の響きと民族打楽器の共演が幻想的な雰囲気をかもし出す。
 次の「天邪鬼 No Thanks」は、おそらく一郎のテーマだろう。一郎は複雑な生い立ちのために人間らしい感情を知らない(理解できない)という設定。傍から見ると、世間知らずで協調性がない人間に見える。そんな一郎を奇妙でユーモラスなサウンドで描写する曲である。
 劇中によく流れていたのが、怪奇な事件のバックに流れるサスペンス曲。本アルバムにもたくさん収録されている。「妖 Visitor」(トラック11)、「契約 Error」(トラック15)、「陰陽 Desire」(トラック17)、「厄災 Origin」(トラック21)、「捻転 Library」(トラック22)、「逢魔時 Purple」(トラック23)、「怪奇呱々 Bubble Up」(トラック26)など。どれも妖しく不気味で、ちょっと恐かったり、コミカルだったりする。民族楽器がふんだんに使われ、呪文のようにも聞こえるボーカルが重ねられた曲もある。井筒昭雄の「冒険心」が発揮されたユニークなサウンドが楽しめる。2023年『悪魔くん』の雰囲気を決定づけているのが、こういう楽曲である。
 井筒昭雄は「ブラッディ・マンデイ」「ジウ 警視庁特殊犯捜査係」といったクライムサスペンスドラマの音楽をいくつか手がけている。その系統にホラー色を加えたのが、こうした怪奇サスペンス曲ではないかと思う。
 もうひとつの聴きどころは、一郎とメフィスト3世の活躍を描写する曲。ダークでノイジーでエキゾティックなロックである。これをロックと呼んでよいのかわからないが(ジャンル分け不可能なので)、気分的にはロックがぴったりくる。
 「魔法陣 Summoning」(トラック4)は軽快なリズムに謎めいたボーカルがからむ曲。第3話で一郎が悪魔を召喚する場面に流れた。トラック6「相棒 Dance」はメインテーマの旋律をフィーチャーした曲で、バンジョーとギターのリズムが心躍らせる。第9話や第11話の悪魔との対決シーンを盛り上げた。トラック18「耽溺 Phantasmagoria」はタイトルの印象とは異なるアップテンポのアクション曲。第11話でメフィスト2世と3世が真吾を助けに向かう場面などに使われている。トラック27「咆哮 Devil」は一郎とメフィスト3世が悪魔と対決する場面にたびたび流れた忘れられない曲。悪魔の脅威を描写する曲とも思えるが、高速でうねる弦楽器と切迫感を呼ぶリズムが激しい戦いをイメージさせる。トラック31「猛追 Limit」はメインテーマのメロディをくずした追跡曲。第8話でピンチに陥った一郎とメフィスト3世をメフィスト2世が救う場面の使用がカッコよかった。
 一郎たちの日常を描写する曲も作られている。
 一郎とメフィスト3世がラーメンを食べる場面によく流れたのが、ずばり「拉麺 With」(トラック19)という曲。第10話で真吾とメフィスト2世夫婦が食事するシーンに流れた「団欒 Kitchen」(トラック24)、ホットケーキを食べる一郎が思い出される「家賃 Old Theater」(トラック29)、ほのぼのした場面を彩る「商店街 Humming」(トラック32)など、バンジョーやアコースティックギターの親しみやすい音色がほっとひと息つかせてくれる。
 数は少ないが、哀感ただよう心情曲も印象に残る。第2話で流れたトラック5「鎮魂歌 Sanctus」はこのエピソードのために書かれたのでは? と思われる曲。妖しくも哀しい女声ボーカルが、依頼人の女子大生・ヒナの運命に寄り添うように響く。トラック13の「偏愛 Aberration」はピアノと弦、女声ボーカルなどが切ないメロディを奏でる曲。第2話で事件の真相が明らかになる場面(薄めのアレンジ)や第4話で依頼人の映画監督・江井の真意が明かされる場面などに流れて、苦い後味の事件を締めくくった。トラック28の「心 Pancakes」はピアノとバンジョーのイントロから弦のしっとりしたメロディに展開する曲。第4話のエツ子の回想シーンや第10話のメフィスト2世と真吾のかたらいの場面、第11話で一郎が真吾の焼いたホットケーキを食べる場面など、心なごむシーンに使用されている。実はほかにも抒情的な曲がいくつか使われているのだが、アルバムには未収録なのが惜しいところ。
 思わず「来た!」と心の中で叫んでしまったのが、トラック9の「外套 Eloim, Essaim」。1989年版のオープニング主題歌のメロディ(つのごうじ作曲)をアレンジした曲である。第1話のラストに真吾が登場する場面で流れたときは(わずか数秒だけど)身を乗り出した。その後も真吾の活躍シーンや回想シーンなどに使用されている。1989年版と2023年版をつなぐ曲だ。
 トラック35の「共鳴 Solomon」も1989年版からの引用曲。真吾が吹いていた「ソロモンの笛」のメロディ(青木望作曲)である。1989年版を観ていた人なら覚えているに違いない旋律で、これも涙ものだ。最終話(第12話)の重要な場面でこの曲が流れる。
 アルバムの終盤に置かれた「羽根 Vicious」(トラック33)は、第5話で一郎の前に姿を現す「天使」ストロファイアのテーマ。荘厳さと邪悪さをまとった、悪魔くんの最大のライバルの曲である。
 そして、アルバムを締めくくる「ふたり」は最終話のエンディングに使われた挿入歌。佐藤順一作詞、井筒昭雄作曲による、フォークソング風のいい曲だ。この曲、実は第1話の冒頭ですでに流れている。全編を観終わって聴くと、「ふたり」とは誰と誰のことなのか、しみじみと考えてしまう。

 2023年版『悪魔くん』の音楽は1989年版とはまったくテイストが異なる。が、ダークで妖しくてロックな曲調は、水木しげるが描く怪奇マンガの空気に近いのではないか。2023年版『悪魔くん』らしい音楽である。その中に1989年版のメロディが挿入されると、少し温度が変わる。けれど、時代も雰囲気も異なるふたつの作品世界がすんなりとつながってしまうのがすごい。音楽の記憶はあなどれない。月並みな言い方だが、「音楽は魔法」だと思うのだ。

悪魔くん オリジナル・サウンドトラック〜2023〜
Amazon

悪魔くん ヒット曲集&オリジナル・サウンドトラック
Amazon