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第14話 皆さん、ごきげんよう

第14話 皆さん、ごきげんよう

●ついに王都テッペリンの目前まで辿り着いた大グレン団。そこに立ち塞がる四天王の戦艦、ダイガンテンとダイガンド。陸と空で繰り広げられる激戦の行方やいかに? テッペリン攻略戦を描く第2部クライマックスの前編は、空中戦・地上戦の2部構成でおくる高密度なアクション回だ。作画監督の久保田誓は前半の板野サーカス・カットの原画も担当。

脚本/山口宏|絵コンテ・演出/中山勝一|作画監督/久保田誓|原画/りょーちも、夏目真悟、赤井俊文、沓名健一、山下清悟、松林唯人、杉江敏治、小島大和、山口智、雨宮哲、貞方希久子、渡辺敬介、西垣庄子、益山亮司、榎本花子、田中春香、長谷川ひとみ、後藤望、吉成曜、久保田誓、松本憲生、石浜真史

取材日/2007年11月9日、2007年12月11日、2008年1月16日、2008年2月20日 | 取材場所/GAINAX | 取材/小黒祐一郎、岡本敦史 | 構成/岡本敦史
初出掲載/2008年1月24日

── ここから怒濤の最終決戦に突入していくわけですが、やはり正念場だという意識があったんですか。

今石 そうですね。全体で見ると中間地点だけど、とりあえずここで1回燃え尽きるであろう事は予想していました。14話と15話が作画インした時期って、ほとんど同じじゃなかったかな? 14話のコンテも、かなり引っ張った気がする。

大塚 うん、多分同じ頃に入ってるね。作画的にもお互い意識して、横目に見ながらやっている感じだよね。

── この2エピソードは最初から、今やGAINAXの中堅アニメーターである久保田誓、すしおにそれぞれ1本ずつ任せる、という狙いだったんですか。

今石 ええ。それはシリーズ構成時から考えていました。80年代要素を入れるという個人的な意図で言えば、空中戦を始めた以上、やっぱり板野サーカスが見せ場の回がなければいけない。そこにわざわざ久保田を入れたんだから、そういうカットは絶対に作ろうと思っていた。で、14話はいっその事「作監でよろしく」って事で(笑)。ミサイルカットは、コンテチェックの段階でわざわざ足したのかな。

大塚 そうだね。

今石 「ここは久保田が原画やってね」という事で(笑)、12秒ぐらい延々と続く板野サーカスのカットを作ったんです。久保っちは、あのミサイルカットを本当に最後の最後までやってましたね。

大塚 うん、あれがいちばん最後だった。

今石 ほとんど作監作業が終わった後までとっておいて、2原を阿部(慎吾)君とか、もう1人ぐらいに撒いて。前半だけ、先に動仕に出したりしてましたもんね。

── 1カットの前半だけですか?

大塚 そうです。12秒あるカットの、頭の5〜6秒分だけ、動画仕上げに出したりしてました。

── なるほど。

今石 14話も相変わらずカッティングでオーバーした尺を詰めていたんですけど、カッティングに行く前、久保っちに「あのカットどうする? ヤバそうだったら1〜2秒くらい削っとくよ」って訊いたんですよ。そしたら「いや、切らないでいいです」って(笑)。だからあそこは最後まで削らなかった。

── ストーリー的には12秒も要らないカットだけれども……。

今石 ええ、全く必要ない。そもそもあのカット自体がなくても全然成立するんだけど、気持ち的にはあれがないと意味がない。

── ただ、あの場面はかっこいい活躍とかじゃなくて、シモンが休んでいる間にロシウが敵のミサイル攻撃から逃げ回ってるだけなんですよね。

大塚 ハハハ(笑)。「ちょっと休憩! あと頼む」とかって。

今石 そういう意味では、この回はシモンがわりといい加減なんですよね(笑)。でも、やっぱり螺旋力って気合いですから、少し休まないと出せないんですよ。意外と限界があるんです。

── 「5分だけ寝かせて」みたいな。

今石 そうそう。「これじゃロシウもグレちゃうよ」って、みんな言ってました(笑)。いつかシモンを引きずり下ろそうとするだろうなあ、と思いますよね。だってシモンも終いに「俺と兄貴のグレンラガンは、こんなものじゃない!」とか言っちゃうしね。ロシウ乗ってるのに(爆笑)。

── 内容的にはいかがでしたか。

今石 14話は、それまでの詰め込みぶりとは違って、ドラマ的にはほぼ何もないんですよね(笑)。15話もそうなんですけど、それはわりと狙っていたところなんです。ここでドラマ的な解決をしちゃうと、実はその後でやる事がなくなってしまう。お祭りっぽく終わってしまうのが80年代的な気分だとも思ったし、後の展開にも繋がると思った。第2部の終わりまでは、やっている事の深刻さにあまり気づかないまま、ワーッとやり遂げてしまう空気にしたかったんです。それでも14話は、要素的には消化するものが多いですけど。

大塚 バチョーンとかね。出てきてすぐ死ぬし(笑)。

今石 そうそう。仲間が出てきてすぐ死んで、四天王も2人同時に殺さなきゃいけない。

大塚 ドラマなんかやってる暇がない。

今石 あと、シトマンドラの航空母艦(ダイガンテン)を落とす時、人のかたちで言うとちょうど股間のあたりに、ダイグレンのナイフ状の先端がブスッと刺さって、まっぷたつに割れる。これも絶対にやりたかった事なんですよ。

大塚 絶対なんだ(笑)。

今石 そこは延々とこだわってました。シトマンドラがやられる時に叫ぶ「ほーちょー!」って、どうして包丁なんでしたっけ? アフレコの時にそうしたのかな。

大塚 多分そうじゃないかな。『グレンラガン』は、アフレコの現場で台詞を作る事が多かったんですよ。中島さんがほぼ毎回、収録に来てくれていたから。

今石 そう。必殺技の名前とか、死に際の変な台詞とかを、よくその場で考えてもらいました。コンテの時はあまり考えてなくて「うおー」とか「ぎゃー」ぐらいで流して、アフレコの時にテストをやっている間、中島さんがウンウン考えて、本番前に台詞を変えるという。そんな事いつもやってたら、声優さん怒っちゃうよね(笑)。でも、それはそれでよかったですよ。声優の芝居を見ながら、「じゃあ『包丁』で」みたいな(笑)。

大塚 やっぱり、演劇をやってる人ならではだと思いましたよ。実際に役者の芝居を見て「よし、こうしよう」というアイデアが出てくる。だからキャラが活きてくるんだな、と。

今石 そうですね。机の上ではなかなか思いつかない“ノリ”みたいなものは出せたんじゃないかな。

── この回、原画で活躍された方は?

今石 沓名(健一)君とか、りょーちも君とか、さらに新世代の原画マンが参加してます。

── ニューウェーブ世代ですね。

今石 ええ、ウェブ系です(笑)。いやあ、りょーちも君の描いたニアが思った以上にロリロリしてたので、「さすが!」と思いましたね。「もうすぐシモンが竜巻を止めてくれます」みたいな事を言って、ニコッと首を傾げるところ。もう想像を超えてました。すばらしい芝居で、感無量でしたねえ。

大塚 感無量なんだ(笑)。

今石 ええ。「なるほど、これがロリだっ!」と。

大塚 今石君からは絶対に出てこないよね。

今石 ねえ。僕にはこんな引き出しはないですから(笑)。錦織でもあそこまではいかないんじゃないか、というぐらいの本気っぷりで、感服いたしました。

── 冒頭の墓参りのシーンは、松本憲生さんですよね。

今石 そうですね。せっかく松本さんが入ってくれるんだから、人物アクションのシーンが作れればよかったんだけど……無理でした。

── メカは描いてくれないんですか?

大塚 「箱でよければ描く」って言ってたらしいです(伝聞)。

── ディテールを描く作業が煩わしいという事ですかね。

今石 線の多いメカを一枚一枚清書してるより、1枚でも多く動きのある画を描きたいはずですからね。そう思うと、3話のカミナとヴィラルの戦い以来、『グレンラガン』では人物アクションはやってないんですよね。

大塚 そうだね。意外に、ちゃんとロボットアニメにしていたって事かな。

今石 かもしれないですね。アクションで感情を高めるところは、全部メカに託しちゃってるから。そういう意味では、第2部がいちばん不安だったんですよ。「ロボット自体が空気みたいな存在になるロボットアニメにはしたくない」って、強く思ってましたから。そこを気にしすぎるあまり、ネタを入れすぎたんでしょうね(苦笑)。

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