◇口上◇
本郷みつるです。もう40年以上アニメーションの仕事をしています。そのキャリアの最初は亜細亜堂という会社からスタートしました。私はその会社でアニメーションの演出の仕事を始め、社長の芝山努さんと出会いました。私のいた頃、芝山さんは『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『忍たま乱太郎』の監督を同時にこなしていました。『ドラえもん』に関しては毎年劇場の監督をやり、絵コンテも1人でやっていました。とにかく圧倒的な仕事の質と量です。現場から引退されてしばらく経ちましたが、後世に残した影響は計り知れません。でもご本人は前に出る事を好むタイプではなく、業界に関わった人間が「芝山さんは凄かった」と言うのを伝え聞く機会があるくらいです。そこで今回、私の知っているアニメーターや演出の方にインタビューをして芝山さんの凄さを後世に伝えたいと考えこの企画をスタートしました。何回続くか分かりませんが、よろしくお願いします。第一回としてお話をうかがったのは、大武正枝さん。アニメーター歴45年以上のベテランの方ですが、アニメーターとしての最初期のキャリアで、1978年に公開された劇場版『ルパン三世』に動画チェックとして関わっていた事を知り、インタビューをお願いしました。
アニメーション演出者 本郷みつる
本郷 それでは、よろしくお願いします。
大武 はい。
本郷 大武さんはスタジオ古留美で仕上げのアルバイトの仕事から、アニメーション業界に入ったという事でよろしいんでしょうか。
大武 そうです。
本郷 芝山さんとの仕事は劇場版『ルパン三世』(以下『マモー』と表記)が初めてだったんでしょうか。
大武 はい、その時が初めてです。
本郷 その時って、大武さんは業界に入られて何年目くらいだったんでしょうか。
大武 私自身は18歳で仕上げのバイトを始めて稼げないので一回辞めて一般職に入ったんですね、イトーヨーカドーに勤めて1年半。それを辞めてアニメーターになったんです。
本郷 最初がスタジオ古留美ですか。
大武 そうです。そしてアニメーターになったのが5月末なんですが、7月の頭から動画チェックをやってくれと言われて。
本郷 え、動画を始めて2ヶ月後に動画チェックの仕事を?
大武 ええ、劇場をやってくれって。
本郷 『マモー』の作画監督の椛島義夫さんに言われたのですか。椛島さんとはいつから一緒に仕事をされていたのですか。
大武 私のアニメの先生が椛島さんなんです。椛島さんはシンエイ動画を辞めて古留美に移籍して、作画部を作ったんです。私がアニメーターをやりたいと思ってスタジオを探していた時に、古留美が作画部を作るという事を知って試験を受けたんです。
本郷 へえ~、それで試験に受かって2ヶ月後には劇場の動画チェックを?
大武 仕上げを1年半やっていたから、シートを読むとかの最低限の知識があったので。
本郷 それで動画チェックを始められたのはおいくつからだったんですか。
大武 21歳でした。
本郷 そうでしたか。それで今回は当時の芝山努さんについてお聞きしたいのですが、『マモー』の時はスタッフルームがあったんでしょうか。
大武 『マモー』を作る為に阿佐ヶ谷に劇場専用の棟がありました。隣がテレコムだったかな。
本郷 そこには、芝山さん以外に監督の吉川惣司さん、作画監督の椛島さんがいらした?
大武 作画監督の青木悠三さんもいました。
本郷 大塚康生さんも?
大武 大塚さんはいませんでした。椛島さんが途中で体調を崩して休んだ時期があって、それでどうしよう、劇場は進めなきゃいけないしという事になった時に大塚さんが手伝ってくれて。
本郷 大武さんは芝山さんとは初対面だったんですね。芝山さんの事はご存じだったんですか。
大武 仕上げで『ガンバの冒険』をやっていたので、多少知っているくらいでした。
本郷 因みにスタッフルームは広い場所だったんですか。
大武 広かったですね。
本郷 スタッフルームに行ったら、芝山さんがレイアウトをやっていた?
大武 そうです。
本郷 当時、レイアウトだけをやっているポジションはそれまでの日本の劇場作品にはなかった?
大武 なかったですね。色んなスタジオに原画を出していたけど、公開が12月で時間もないし、上手いレイアウトが必要だという事で芝山さんが全部担当したんだと思います。
本郷 大武さんは椛島さんと一緒にスタッフルームに入ったんですか。
大武 私は古留美で動画をやっていて、7月から入りました。椛島さんは6月頭にスタッフルームに入っていましたね。
本郷 なるほど。
大武 私もどうなるのか想像が付かなかったんですが、とりあえずやってみようと。
本郷 では、最初に芝山さんとお会いになった時の印象とか覚えていますか。
大武 あの、とにかく机にずっと座って、まるで事務職のようにひたすら、朝10時にはもう机に向かって、ずうっと仕事をしていて、私は最初のうちはチェックする物が無かったので「動画チェックなんだから動画をやっていなさい」と言われて『マモー』の動画をやっていたんです。その間ずっとスタッフルームにいたのが、芝山さん、椛島さん、青木さん、私だったんですね。淡々と仕事をする芝山さんを見ていました。
本郷 芝山さんは椛島さんと話したりはしなかったんですか。
大武 していましたよ。椛島さんは来てもすぐには仕事をしなくてタバコを吸って、芝山さんを見て「芝さんは凄いなって」と言って。
本郷 芝山さんはずっと机に向かっていたんですね。何時間くらいやっていたんですか。
大武 最初の頃はそんなに遅くまでやっていなかった筈です。公開が迫った10月頃には朝までやって、朝ちょっと帰って、仮眠を取ってまた来て働くみたいな生活が1ヶ月ほど。
本郷 芝山さんは全カットのレイアウトを上げた後はお役御免だったのでしょうか。
大武 えっとね、あ、立ち会っていましたね。
本郷 原画をやったりとか?
大武 原画はやっていないですね。
本郷 でも1人で全カットのレイアウトをやったんですよね(編注:青木悠三が作監をしたパートのみ、青木自身がレイアウトを描いているとも言われている)。
大武 1000カット以上あって、6月から入って4ヶ月くらいで上げた筈ですよ。
本郷 4ヶ月!? 現存するレイアウトを見ると、清書すると原画で通用するレベルの、克明なレイアウトだったようですが。
大武 監督の吉川さんの絵コンテが出来たところから、どんどんレイアウトにしていました。
本郷 ああ、絵コンテは完成していたわけではなかったんですね。
大武 そうです。
本郷 仕事に入られて、芝山さんとお話して何か覚えている事はありますか。
大武 どうして、こんなに凄いレイアウトを描けるんですかって聞いたら「いやいやいや、映画を観なよ、黒澤(明)とか」。
本郷 やはり黒澤ですか!
大武 「あの黒澤の画面の収まり、手前になめて、山があって……」「観るといいよ、勉強になるよ」って。結構その後は黒澤作品を観ましたね。
本郷 芝山さんはずっと働いていたという話でしたが、雑談をする事もあったんですよね。雑談をしていたのはお昼の時間とかですか。
大武 お昼の時間はありましたね。あと夜の10時、11時になると制作が夜食用に吉野家の牛丼を買ってきて、それを食べていました。1ヶ月半くらい。
本郷 その時は芝山さんもいて。
大武 みんなで夜食を食べていました。
本郷 4人でいつも夜食を。
大武 他に背景さんが2人いたと思います。門野真理子さんとか。
本郷 アニメーターになって2ヶ月の時期に、大武さんが見た芝山さんのレイアウトってどうでしたか。
大武 もうね、鳥肌ものっていうか、プロはこういうものなのか! こうやれないとプロにはなれないのか……と思いました。
本郷 芝山さんは「巧い」というのもあるのですが、驚異的に「早い」んですよね。
大武 巧い、早い、またキャラがいいんですよね。
本郷 「いい画」ですよね。
大武 レイアウトのこの画があれば決まるという感じでしたね。芝山さんが自分で「1日何カット」と決めてやっていました。
本郷 『マモー』をやっていた時に思い出す印象的なエピソード等はありましたか。芝山さんはイタズラ好きな一面もあったりすると聞きますが。
大武 それはありましたね。『マモー』では制作の子がこの作品の為に雇われた人達だったのですが、芝山さんが、その子達に教えながらやっていましたね。みんな、仲よかったですね。「芝山さん、芝山さん」と言って、慕っていました。
本郷 吉川監督ではなく、芝山さんが。
大武 芝山さんはずうっとスタッフルームにいたので。青木さんはマイペースでふらっと現れて、さあっと帰っていきました。青木さんはパート作監だったので、大量にやっていたわけではないんです。それから、椛島さんは来ない時期があって、私はそもそも椛島さんに呼ばれて来た古留美からの派遣だったので、どうなるのかなと。
本郷 じゃあ、机が2つ空いていて、芝山さんと大武さんだけの時が。
大武 結構ありましたね。芝山さんが「椛島さんは結構ナイーブだから、今回プレッシャーかな?」と言って、一生懸命に場を和ませようとしていましたね。
本郷 凄い仕事量を飄々とこなしてなおかつ、余裕があるという。
大武 そう。「見てていいですか」って聞くと、「どうぞどうぞ」と言って、ふんふんふんって描いていました。
本郷 その時期の芝山さんは『ガンバの冒険』でシリーズを通じて画面設定、レイアウトをやった後で、アニメーターとして乗っている時期ですよね。大武さんが見ていた時にどう描くか迷っていたりとか。
大武 なかったですね。座ったら描き始めて、ずっと描いてる。
本郷 お休みとかあったんですか。
大武 最初のうちは日曜が休みで、途中からなくなりました。
本郷 昔のアニメ業界のお約束ですね。
大武 途中からやってきた大塚さんも飄々としていて、椛島さんがいなくて積まれたカットの中からシュッと修正前の原画を抜いて中を見て「はい! オッケー」って。
本郷 本当ですか!?
大武 「大丈夫、大丈夫」と言って。
本郷 以前もお聞きしましたが、椛島さんが全カットに修正を入れているわけではないんですね。
大武 青木さんもいたので、押さえるところは押さえていた筈です。
本郷 最終的に大武さんの動画チェックの仕事が終わったのはいつ頃だったんでしょうか。
大武 11月末だったと思います。
本郷 ギリギリですね。
大武 ギリギリです。
本郷 その頃、芝山さんは?
大武 いましたね。リテーク出しなんかもあったし。全部終わって解散するまでは。
本郷 私が芝山さんの仕事振りを見るのはそこから数年後からなんですが、アニメーターってこんなに巧くて早いんだって驚きました。しばらくして全員がそうではないと気付きましたが。大武さんと働いた頃の芝山さんはアニメーターとして最高の時期だったかもしれませんね。
大武 30代後半だったと思うけど、座ったら描いてる。悩んでる暇もないって様子でしたね。亜細亜堂の時も10時に来ていたのかしら。
本郷 9時に来ていました。誰よりも早く(笑)。他に当時の芝山さんに言われて覚えている事がありましたら聞かせてください。
大武 「君は椛島さんに付いていけば、間違いなく描いていけるよ」って。
本郷 間違いなかったわけですね。
大武 大塚さんにも言われましたよ。「とりあえず、この人って決めた人の画を盗めばいい」って。
本郷 アニメーターになったばかりの大武さんに、芝山さんの存在は大きな影響を与えたんですね。
大武 大きかったですね。量を描かないと上手くならないと言われましたね。言われた事を心に刻んでやってきました。
本郷 大武さんの「師」ですね。今日はどうもありがとうございました。
大武 ありがとうございました。
取材日時/2024年 取材・構成/本郷みつる
●プロフィール
大武 正枝(おおたけ まさえ)。アニメーター。キャラクターデザインを務めた『あたしンち』シリーズ、『黒魔女さんが通る!!』、『となりの関くん』をはじめ、様々な作品に参加。
第896回 『沖ツラ』制作話~指導方針と令和
作画話の続き。前回、作画に関して厳しめな話をしましたが、もう少し正直に深堀を。
俺がテレコム・アニメーションフィルムで大塚康生さんや友永和秀師匠教わった“原画”とは、理屈&リアリティでがんじがらめの、大よそ“自由に楽しくお絵描き”とは程遠い仕事!!
でした。1枚1枚の原画を丁寧に捲られて「このポーズとこっちのポーズのシルエットの変化が~」とか「波の散り方は~、炎の動きは~」などといちいち“芝居”と物理法則の指導が入り「とにかく黙ってこう描くべき」と。せっかく試験に合格してハレて原画になれたのに「やっぱり難しい……」とまた動画に戻る人が何人もいたぐらい、その楽しさは厳しさに裏打ちされた真剣な仕事でした。が、個性・多様性は二の次な昭和教育を受けた自分らとは違い、時代は令和。それ故、自分がミルパンセで新人を指導する時、
「とやかく言わずこうしろ!」と強制的に言うより、「一応セオリーとしてはこうだけど、あとは自分なりのやり方を見つければよい!」
的な言い回しを心掛けていました。で、今回はっきり言ってその自分の指導のし方が仇になっていたことが、如実に結果として現れた訳です。つまり、何年も前から繰り返し教えたハズのことが、皆大好き“多様性と人それぞれ”思考によって、俺が目の前で実演して見せても「あれは板垣さんのやり方~」と聞き流すだけで、その後ついてくるハズの“それぞれ自分なりのやり方”を見つけられていなかったのです。キャラのポーズだけでなく、海、水、炎、土煙他エフェクト——緩い。
別に俺の描き方を真似なくてもいいから、“好きに描いた”各々の研究結果を見せてくださいよ!
といった仕上がり。で、若手が元気な現場を作るという目論見は見事に外れて、緩い先輩が、只々優しく甘く根拠のない指導によって緩い後輩を育てる現場ができ上がりそうになっているのが分かって、「このままでは駄目な作品と駄目なアニメーターができ上がてしまう!」と、多様性総作監中止! 「取り敢えず今回は、俺のラフをトレスして!」と全編、責任を取って直し捲った訳です。
もちろん、俺の言ったことを自分なりに吸収して、上達している人達もいるし、今後もまた若手そして今年入社した新人らにも期待して、新たに更新版指導方法を模索中な毎日です。
第533回 《短期集中連載 アニメーター飯》江古田の定食屋「じゅん」

第895回 『沖ツラ』制作話~設定発注・作画IN
キャラクター・小物・美術・色彩設計など、設定類の発注は全面的に監督・田辺慎吾君に任せて、その上がりで気になったところにチェックをするという前作『いせれべ』と同じコンビネーション。前回話題にしたように、コンテ修正は全面的に板垣、設定発注は田辺。コンテを決定稿に持っていくにはキャリア的にまだちょっと……、だとしても監督の仕事の半分は“発注”ですから、そちらは全面お願いしました。
キャラクターの開発も、メインキャラ(喜屋武・比嘉・てーるー・安慶名・下地・上間)に関してはラフの時点で俺の修正が入っています。あと、サブキャラも吉田(智裕)君だけでなく社内スタッフ数人に撒いて、監督と一緒にチェックする、といった感じでスタッフ皆で設定を描いた感じです。あ、アニメーターに美術設定を描いてもらったりもしました。
で、いよいよ作画がまた大変!
先に謝っておきます。申し訳ありませんがここではスタッフ一同の将来の成長を願って、敢えて厳しくハッキリ言わせてもらいます。1話から「出来が良くなかった!」と。キャラが似てる似てないとかじゃなく、表情が硬い、ポーズが硬い、動きが硬い!!!
コンテを出し切った俺は、早々に“総作画監督”制の廃止。全員“平”の作監(メインアニメーター)として、板垣(作画プロデューサー)の指示のないものを勝手に次工程へ回すのを禁止しました。そして、すでに上がっていた仕上げ素材に板垣のほうで、直接デジタル作画修正~動仕スタッフ総出でクリーンアップ&仕上げ! 部分的に原画から描き直し。
制作期間前半は脚本・コンテ~後半はスタッフの未熟な部分の補完・修正に走り回っていた!
そんな毎日でした。まぁこーゆーのもまた楽しいものです。
その『沖ツラ』制作中、次作の準備・プリプロを進めてくれていたのが、木村博美さん。前回発表しましたが、もう一度念押し。
木村博美キャラデザ、そして初監督『キミと越えて恋になる』のPV、是非見て下さい!
【新文芸坐×アニメスタイル vol.188】
『デジモンアドベンチャー』劇場版初期三作
4月12日(土)に開催する【新文芸坐×アニメスタイル】の上映プログラムは「『デジモンアドベンチャー』劇場版初期三作」です。
細田守監督による第1作『デジモンアドベンチャー』は本格怪獣映画の醍醐味を詰めこんだ短編。同じく細田監督の第2作『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』はスタイリッシュを極めた映像&タイムサスペンスの娯楽作。山内重保監督による第3作『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!! 後編 超絶進化!!黄金のデジメンタル』は濃厚な空気が観客を圧倒する異色作。いずれも作家性が発揮された傑作です。
トークのゲストは山内重保監督。【新文芸坐×アニメスタイル】での山内監督の登壇は2012年6月以来となります。
今回は貴重な35ミリフィルムによる上映となります。チケットは4月5日(土)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(『デジモンアドベンチャー』劇場版初期三作 情報ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-04-12-1
【新文芸坐×アニメスタイル vol.188】 |
開催日 |
2025年4月12日(土)13時30分~16時50分予定(トーク込みの時間となります) |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
一般3000円、各種割引2800円 |
上映タイトル |
デジモンアドベンチャー(1999/20分/35mm) |
トーク出演 |
山内重保(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
第301回 きっと魔法のせい 〜魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜〜
腹巻猫です。西武渋谷店で開催中の「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」に行ってきました。膨大な数の資料がぎゅっと濃縮された展示。原画(複製含む)から伝わる作り手の熱気に打たれます。そして展示の背景にある、資料を散逸から救い、現在まで守り通したファンの熱意にも想像をめぐらせたい。筆者も50年前、同じ思いを胸にその活動を見守っていました。開催は3月31日までなので、気になる方はお早めに。
http://tfc-chara.net/yamato50th/exhibition/
今回取り上げるのは、今年(2025年)1月から放映中のTVアニメ『魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜』の音楽。
本作は2016年に放映されたTVアニメ『魔法つかいプリキュア!』(通称「まほプリ」)のストレートな続編である。
『魔法つかいプリキュア!』は、中学2年生の朝比奈みらい(キュアミラクル)と魔法界から来た少女・十六夜リコ(キュアマジカル)、妖精の赤ちゃんから成長した花海ことは(キュアフェリーチェ)の3人が伝説の魔法つかい「プリキュア」に変身し、邪悪な闇の魔法使いや世界に災厄をもたらす「終わりなき混沌」と戦って世界を救う物語。
続編となる『魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜』では、成長したみらいとリコが、刻の魔法をあやつる少年アイルの謎を追い、黒幕である刻の魔獣クロノウストと戦う姿が描かれる。
前作(『魔法つかいプリキュア!』)の第49話、物語の後日談となるパートに、大学生になったみらいと魔法学校の先生になったリコが登場する。『MIRAI DAYS』はその時間線の延長で展開する作品だ。「2人のその後が知りたい」と思いながら待っていたファンにとって、まさに待望の続編である。
音楽は前作も手がけた高木洋が担当。本作のために37曲の新曲を制作している。
そのうちわけは、新たに登場するキャラクターの音楽、敵があやつる「刻の魔法」の音楽、プリキュアの戦いを描写するアクション曲、成長したみらいたちの日常や心情を描く音楽、といった構成だ。
こうした新曲とともに前作の音楽も劇中ではふんだんに使われている。たとえばサブタイトル曲、プリキュアの変身BGMや浄化技の曲、心情描写曲や状況描写曲、アクション曲など。耳になじんだ音楽を聴いていると、放映当時の思い出がよみがえり、「あの世界に戻ってきた!」と思わせてくれる。
本作のために新曲を作るにあたり、高木洋は、みらいやリコが「成長した感じ」を音楽で表現しようとは特に意識しなかったという。というのも、前作の放映は8年前。それから現在まで、高木自身も経験を積み、スキルアップしている。8年のあいだに自身が身につけたことを自然に音楽に落とし込めば、意識せずとも成長した2人にふさわしい音楽ができるはずだと考えたのだ。
だから、本作のために書かれた音楽は、特に大人びた音楽にはなっていない。前作からシームレスにつながるような音楽である。それがいい。大学生になったみらいも先生になったリコも、「大人になった」という印象はなく、中学生の頃の無邪気さやノリを残している。筆者の経験から言っても、大学生って中学時代に思っていたほど大人ではないのだ。結果的に新作の音楽は前作の音楽と自然にまじりあい、ふたつの作品を隔てる時間を感じさせない。『まほプリ』という作品にとっては、それがよかったと思う。
特筆すべきは、新曲の中に前作の曲をアレンジした曲やモチーフを引用した曲があること。音楽発注の段階でそうした指定がされた曲もあるが、高木洋が自らアイデアを出して作った曲もある。高木は、前作で自分の音楽がどのように使われたかを熱心な『まほプリ』ファン並みに把握しており、「こういうテーマの曲なら、前作のあのモチーフを引用したほうが効果的だろう」と判断して作曲に臨んだのである。
また、前作の音楽制作のときに高木がこだわったのが、コーラスにプリキュア主題歌シンガーの五條真由美とうちやえゆかを起用することと、リズム(ドラム、ベース)に打ち込みを使わずに生楽器で録音することだった。本作でもそのふたつは継承され、『まほプリ』サウンドが再現されている。
こうした仕事ぶりからは高木洋の熱い「まほプリ愛」が伝わってくる。
本作のサウンドトラック・アルバムは2025年3月5日に「魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜 オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで、マーベラスからCDと配信でリリースされた。
収録曲は以下のとおり。
- ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!〈ピンクダイヤ〉
- Dokkin◇魔法つかいプリキュア!!Part3〜MIRAI DAYS〜(TVサイズ)
- 助けて!魔法つかい
- キャンパスライフはワクワクもんだぁ!
- ひすいのテーマ
- 刻の魔法
- フラッシュバック
- アイルのテーマ
- 大きくなってる!?
- みらいとリコの新生活
- 懐かしき思い出
- 不安な未来
- あやしい影
- 闇に潜む脅威
- 大切なものを守るために
- 巨大モンスター出現
- 襲い来る強敵
- 砂嵐の中に
- アイルの過去
- 悪夢の序章
- 刻の魔獣クロノウスト
- 魔獣との対決
- めざめる力
- K’s レポート
- 闇の魔法つかい集結!
- 永遠への誘惑
- あらがえない現実
- 猛攻迫る
- 魔法大激突
- 宇宙終焉の危機
- 未来をこの手で
- 止まる時間
- 刻の迷宮
- あなたがここにいてほしい —オルゴールversion—
- 魔法がつなぐ未来
- 四人の魔法
- プリキュア・エクストリーム・レインボー! —MIRAI DAYS version—
- 歩みゆく日々
- キセキラリンク(TVサイズ)
収録曲はすべて本作のために制作された新曲。前作の曲は収録されていない。
構成は筆者が担当した。本作では脚本をベースに「どこにどんな曲を流す」という音楽プランが練られ、それをもとに音楽発注が行われている。つまり、多くの曲が具体的なシーンを想定して書かれている。いくつかの曲では絵コンテをもとに絵に合わせたフィルムスコアリングが行われた。本アルバムはその音楽プランに沿った構成でまとめている。ただし、完成作品では音楽プランとは異なる曲が流れているケースもあり、必ずしも本アルバムどおりの順で曲が使われているわけではない。
以下、ポイントとなる曲を紹介しよう。
1曲目「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!〈ピンクダイヤ〉」はプリキュアの変身BGM。前作の変身BGM「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!〈ダイヤ〉」をアレンジした曲である。変身に使う宝石が「ダイヤ」から「ピンクダイヤ」に変わっているのが物語の上でも伏線になっている。
実はもともと変身BGMを新録する予定はなく、前作の「ダイヤ」の曲を使う予定だったという。が、高木洋が第1話のアフレコを見学した際に「ダイヤ」ではなく「ピンクダイヤ」と言っているのを聴いて、「宝石が違うなら曲も新しくしたほうがよい」と考え、新曲を作ることを提案したそうだ。コーラスの歌詞も前作とは異なるものが作られ、五條真由美とうちやえゆかの歌唱で録音されている。
トラック5「ひすいのテーマ」は、みらいとリコの前に現れる謎の少女ひすいのテーマ。ひすいは新キャラクターではあるが、本作の冒頭で行方不明になった花海ことは(キュアフェリーチェ)と深い縁があり、風貌も似ている。そのため、「ひすいのテーマ」は前作のことはのテーマ「はーちゃん」の音型を受け継いだ曲になっている。
第8話ではひすいの秘密が明かされ、ことはが再登場する。そのときに流れる曲「めざめる力」(トラック23)も注目だ。前作のキュアフェリーチェの変身BGM「フェリーチェ・ファンファン・フラワーレ!」をアレンジした曲になっているのである。第8話では「めざめる力」と「フェリーチェ・ファンファン・フラワーレ!」の2曲が続けて流れ、新作・旧作の音楽リレーでキュアフェリーチェ復活シーンを演出していた。
ほかに新キャラクターのテーマとしては、プリキュアの前に立ちふさがる新たな敵アイルとクロノウストの曲がある。
「アイルのテーマ」(トラック8)は刻の魔法をあやつる少年アイルのテーマ。「刻の魔法」(トラック6)、「巨大モンスター出現」(トラック16)、「砂嵐の中に」(トラック18)、「アイルの過去」(トラック19)、「悪夢の序章」(トラック20)はそのヴァリエーションである。アイルは刻の魔法でみらいとリコを翻弄するが、実は心に悲しみを抱いたミステリアスなキャラクターだ。そのため、音楽も邪悪なイメージではなく、謎めいた面が強調されている。なかでも「アイルの過去」は哀感ただようリリカルなアレンジになっているのが聴きどころ。
「刻の魔獣クロノウスト」(トラック21)は第6話で姿をあらわす刻の魔獣クロノウストのテーマ。「魔獣との対決」(トラック22)、「永遠への誘惑」(トラック26)、「宇宙終焉の危機」(トラック30)は、そのバリエーションだ。いずれも強敵らしい、重厚で威圧感のある曲調で作られている。
バトル系の曲ではヒロイックな「未来をこの手で」(トラック31)のカッコよさにしびれる。いっぽう「闇の魔法つかい集結!」(トラック25)は変化球とも言えるユニークな曲だ。クロノウストの魔手が魔法界に迫ったとき、前作では悪役だった闇の魔法つかいたちも魔法界を守るために立ち上がる。第9話のそんなシーンに流れるのがこの曲。前作の闇の魔法つかいのテーマ曲「闇の魔法つかい」をロック調にリアレンジしたものだ。これも時をへだてた音楽リレーと呼べる、うれしい演出である。
前作の第49話で、みらい、リコ、ことはの3人が離れ離れになっていく、涙なしに観られないシーンに流れたのが、ピアノとストリングスによる「あなたがここにいてほしい」という曲だった。本作ではその曲をオルゴール風にアレンジした「あなたがここにいてほしい —オルゴールversion—」(トラック34)が作られている。実はこの曲も当初の音楽発注になく、高木洋が「こんな曲もあるとよいのでは」と考えて自主的に追加した曲だ。本編では第8話の終盤に流れたほか、第11話のみらいとリコが離れ離れになるシーンに、オリジナルの「あなたがここにいてほしい」につながる形で使用されている。高木洋の「まほプリ愛」あふれる音楽作りと、それを受け止めた音楽演出が生んだ、新たな名シーンである。
さて、この原稿を書いている現在、本作の放映は最終回(第12話)を残すのみ。「魔法がつなぐ未来」(トラック35)、「四人の魔法」(トラック36)、「プリキュア・エクストリーム・レインボー! —MIRAI DAYS version—」(トラック37)の3曲は、最終回用に、絵コンテに合わせたフィルムスコアリングで書かれた曲である。なので詳しく解説すると最終回の内容を明かしてしまう。それでは申し訳ないので、ここでは簡単な音楽解説にとどめることにしよう。
「魔法がつなぐ未来」には前作の「月夜のめぐりあい」という曲が引用されている。「月夜のめぐりあい」は前作で印象深い、重要なシーンに流れた曲。それを引用する趣向は発注によるものではなく、高木洋のアイデアである。
「四人の魔法」は最終決戦用の曲。ピアノ主体のやさしい曲調で始まり、後半からアップテンポに転じる。後半に引用されているのが2016年公開の劇場版『まほプリ』のために作られた挿入歌「キラメク誓い」(作曲・高木洋)のメロディ。これも高木のアイデアによるものだ。
「プリキュア・エクストリーム・レインボー! —MIRAI DAYS version—」は前作の3人合体技の曲「プリキュア・エクストリーム・レインボー!」をアレンジした曲。シーンの長さに合わせてリアレンジされているが、高木はここでも独自のアイデアを盛り込んだ。曲の終盤に『魔法つかいプリキュア!』のメインテーマ「魔法がひらく未来」のモチーフが登場するのだ。新作にはメインテーマをそのままアレンジした曲はない。最終回に流れるこの曲にメインテーマのモティーフが登場すれば、『まほプリ』の音楽としても完成するし、ファンもぐっとくるだろう。そんな発想で高木が作り上げた曲である。
『魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜』の音楽は、懐かしい『まほプリ』サウンドを継承した上で、8年間の音楽的な進化も感じさせてくれる、前作ファンも納得の作品である。単純に新曲として聴いても楽しめるが、前作のサントラを聴きこんでいる人なら、楽曲のそこここに、前作へのオマージュやリスペクトを感じ取ることができるだろう。
特にアルバムの終盤にまとめられた最終回用の音楽を聴くと、前作にハマった人ほど、最終回がどうなるのか想像がふくらむと思う。想像と期待を胸に最終回を観れば、「こうくるか!」「やっぱりそうなるよね!」と楽しめるはず。そしてきっと、もう一度サントラ・アルバムを聴きたくなる。
それを「音楽がかけた魔法のせい」と言うことはたやすい。しかし、その魔法はなんとなく発動したわけではない。前作モチーフの計算された引用、演奏・録音手法の再現など、ファンを感動させるだけの理由がある。それが魔法なのだ。
魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜 オリジナル・サウンドトラック
Amazon
第532回 『宇宙戦艦ヤマト』と師匠

第894回 『沖ツラ』制作話~納品完了、そして
お陰様でつい先日、『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(沖ツラ)』最終回まで納品完了。で、落ち着いて何を書(描)こうと考えたのですが——ま、『沖ツラ』本編話、頭からで……。
取り敢えず「原作を1話21~22分×12本のTVシリーズにどう纏める?」、これに関して自分から提案したのは、
オリジナルを足して引き伸ばすのはNG! で、原作を“21~22分”集め1話分を作る(×12本)!
と決めて、田辺慎吾君(シリーズ構成・監督)へ渡しました。原作がマンガの場合、ページ数で尺を計りづらいもので、例えば“ラブコメ”は間を作れるけど、“コント”はテンポのために尺を削る。この『沖ツラ』の原作はどちらも面白いので、
“アニメ21~22分に収めるのに適正な本数”の原作を繋ぐ構成を!
と。結果、田辺案で出てきた構成も、1話に収める使用原作本数が2本のもあれば4本のもあります。それを「ここのエピソード順は~」とか「シーサーの指笛講座はCパートに回して~」などといろいろ調整。
で、ホン読み(脚本打ち合わせ)で田辺君を始め社内の演出陣の上げた脚本に司令塔として修正指示を出し、委員会のOKをもらいます。今回、自分が脚本に入っていないのは、前作『異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する(=いせれべ)』の作画リテイク作業と、スケジュール的に被っていたからです。ハッキリ言うと、
文字(テキスト)の修正(調整)より、作画の修正の方が時間が掛かるし人も選ぶから!
です(カチンときた人がいるかも知れませんが、本音の本音)。
で、コンテ。これは前作『いせれべ』同様、全面的に修正・調整させてもらいました。半分以上描き直しはザラです。ウチはできるだけコンテは外に撒かない主義で、必然的にキャリアの浅いスタッフにコンテを切ら(描か)せるため、直しは全て俺が面倒を見ることになります。「コンテやりたい人~」と声を掛けて、挙手した人に「その代わり出来が悪かったら全修しますよ」と。
『いせれべ』はある意味コンテ・デビューに対してのご祝儀代わりで、どれだけ直そうとスタッフ・クレジットでの連名は避けましたが、今回は本来の姿、身贔屓なしで全話連名。
これは監督によって(もしくは会社によって?)違いはあると思いますが、自分は基本、
上げられたコンテがその担当者のモノとして独立した完成度に達していると判断し、必要最小限の監督修正で終わっていれば、連名にしません!
だから、『いせれべ』のクレジットの方が異例で、今作の方が本物。これからはどうするか分かりませんが、いちばん早いのはスタッフが皆“一人前”になることでしょう。
で、そろそろ次の打ち合わせの時間なので——って、あ、そうでした! 次の作品、
『キミと越えて恋になる』のPVが解禁になりましたので、是非観てください!
以上。
第531回 話が噛みあわない

第893回 『沖ツラ』制作話~現状報告
『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(沖ツラ)』のOP話は、前回巻きかけて終わらせたところで、「次EDの~」とも思ったのですが、それどころではない現状なので、今回はその“現状”の話。
ハッキリ言って、ラストの追い込み中でバッタバタ!!
です。この原稿を書いているデスクトップには、作画修正カットが並べられたクリスタ(CLIP STUDIO)が同時に開かれているくらい……。
今作は総監督という一種総合的な監修職には到底止まらない仕事量です。まず当然、脚本・コンテのチェック、特にコンテは殆どの話数、半分以上直しています。あと、編集や音響対応も。
そして何より作画! 今回役職名も“作画プロデューサー”とあるとおり、画直し(作監修正)の総指揮をとっています。コンテ時の演出意図に沿って作画スタッフ(メインアニメーター)に直しの指示をし、残ったカットは全部“俺が拾う”! それを基本一発で修正しまくり、先に振った作画スタッフが手持ち分を終わらせられたら、こちらに戻ってもらい、ササっと入れた俺のラフを拾って修正してもらう、と。
よって、全話半分近く(話数によっては以上)、板垣の画が何某かのっていることになります。つまり、各話ひととおり修正をのせられるように、どうとでも対応可能な自分が構えているのです。
正直言うと、今の若いスタッフは我々世代より平均的に描くスピードが落ちているんです。あ、俺自身は決して手が速いほうではありませんよ。それはテレコム時代の先輩方ならよ~くご存じのはずです。その速くない俺から見ても、今の若手は“手が遅い”と感じます。
もちろん、若手でも量産できるアニメーターもいるし、遅い人はそれなりの理由があるのも分かります。例えば、
ハイビジョンに耐えられる作画や、それに付随して各キャラの増え続けるパーツやディティール、そしてデジタル作画ツールに神経を多く使う分遅くなる!
というくらいのことを考慮した上ででも“遅い人”が増えているのは確かかと思います。他社の社長や制作プロデューサーらに訊いても同様の返答が返ってくるからです。「今の若いアニメーターは(描くのが)遅い」と。
まぁでもウチは皆、社員給なので「まずは良い原画を描く」のが第一、そして「その上で手が速ければ尚良し」くらいに考えるようにしています。
と言う訳で、また作画修正に戻ります!
第237回アニメスタイルイベント
アニメ様イベント2025 作った本・これから作る本
5月4日(日)に開催するのは「第237回アニメスタイルイベント アニメ様イベント2025 作った本・これから作る本」。アニメスタイル編集長小黒祐一郎(アニメ様は彼のニックネームです)のトークイベントです。
今年で小黒はアニメ雑誌&書籍の作り手として40年目を迎えます。それをきっかけに今までの40年で作った本を振り返り、本作りのこだわり等について語ります。そして、これから作る本についてもお話する予定。なお、トークの内容は過去の小黒のイベントと重複する部分があるはずです。あらかじめご了承ください。
トークの聞き手はプロデューサーであり、元アニメ雑誌編集者であった高橋望さん、脚本家の大河内一楼さんにお願いします。チケットは3月15日(土)正午12時から発売。購入方法については阿佐ヶ谷ロフトAのサイトをご覧になってください。
今回のイベントもトークのメイン部分に関してネット配信を行います。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
今回のイベントは配信しないパートが、普段のイベントよりも長めになるかもしれません。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/311680
会場&配信チケット(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/dozyy
配信チケット(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/363627
第237回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年5月4日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
小黒祐一郎、高橋望、大河内一楼 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込·飲食代別) |
アニメスタイル編集部が開催する一連のトークイベントは、イベンターによるショーアップされたものとは異なり、クリエイターのお話、あるいはファントークをメインとする、非常にシンプルなものです。出演者のほとんどは人前で喋ることに慣れていませんし、進行や構成についても至らないところがあるかもしれません。その点は、あらかじめお断りしておきます。
第300回 歌わないミュージカル 〜劇場アニメ ベルサイユのばら〜
腹巻猫です。3月22日に神保町・ブックカフェ二十世紀で開催されるイベント「サウンドトラック☆スクエア」に出演します。サントラ専門店「ARK SOUNDTRACK SQUARE」が主催する音楽とトークのイベントです。今回は2020年から2025年のあいだに海外・国内でリリースされたサントラ盤の中から名盤・注目盤を厳選して紹介しようという企画。アニメ音楽が取り上げられるかどうかわかりませんが、サウンドトラック、特に映画サントラに興味のある方はぜひどうぞ。詳細は下記を参照ください。
https://arksquare.net/jp/news/2025/02/20250215.php
劇場アニメ『ベルサイユのばら』の音楽について語ってみたい。
今さら説明するまでもないと思うが、原作は池田理代子が1970年代に発表したマンガ史に残る名作。将軍家の娘として生まれた男装の麗人オスカルとフランス王妃マリー・アントワネットの2人を中心に、フランス革命に向かう激動の時代を生きた人々の愛と自立と戦いを描いた作品だ。70年代には宝塚歌劇、実写劇場作品、TVアニメになって人気を博した。それを現代の劇場アニメとしてリメイクしたのが本作である。なお、公式サイトでは「劇場アニメ『ベルサイユのばら』」の表記で統一されているので、本稿でもそう表記することにする。
正直に言うと『ベルサイユのばら』をアニメでリメイクすると聞いたときは、あまり期待しなかった。筆者はTVアニメ版のファンで、2016年に「ベルサイユのばら 音楽集[完全版]」の企画をメーカーに持ち込んで、構成・解説を手がけたくらい(このアルバムは現在、配信で聴くことができる)。しかし、音楽を澤野弘之が担当すると聞いて、がぜん興味がわいた。
『ベルばら』に澤野弘之の音楽! 激しいロック調の曲や『進撃の巨人』みたいなコーラス入りの重厚な曲が流れるのか? 絢爛豪華でパワフルなアニメになるかもしれないと想像がふくらんだ。
結論から言えば、劇場アニメ『ベルサイユのばら』は筆者が期待していたものとは違っていた。絢爛豪華でパワフルというよりはポップでロマンティックな印象である。しかし、「こういうのもありだな」と思った。
驚いたのは音楽の演出。劇中に15曲もの挿入歌が流れる。ユニークで大胆なアプローチの作品だった。
あらかじめ言っておくと、本作はいわゆる「ミュージカル映画」ではない。ミュージカル映画では、登場人物が劇中で歌い始める。本作にはそういう場面もいくつかあるが、それはどちらかといえば例外で、歌が流れるシーンの大半は、ミュージックビデオのようなイメージ映像になっている。「ミュージカル映画」というより「音楽映画」だ。本作のユニークなところである。
劇中に15曲もの挿入歌が流れることには、それなりの必然性がある。
本作は約2時間の尺。そこに原作の物語を詰め込んでいるから、展開が駆け足になるし、省略されたエピソードも多い。キャラクターの秘めた心情や心境の変化などが観客に伝わりにくい。そこで効果を発揮するのが挿入歌だ。歌がキャラクターの心情を代弁し、映像で描ききれなかった想いを伝える。役割としてはミュージカル映画の劇中歌と同じである。
では、なぜキャラクターが歌うミュージカル映画にしなかったのか? 監督の吉村愛はインタビューでこう語っている。
「曲を聴いてキャラクターが歌い出すミュージカル形式は苦手な人もいるので、アニメのオープニングやエンディングのような映像表現とともに曲が流れてくる形にしたかったんです」
たしかに、登場人物が突然歌い出すミュージカル演出は、うまくやらないと不自然になり、コミカルにも見えてしまう。本作にも登場人物が歌っているように演出されている場面がいくつかあるが、「なんで歌ってるの?」と雑念がわいて作品に入りこめなかった。いっぽうミュージックビデオ的に演出されているシーンは、余計なことを考えずに雰囲気にひたることができる。歌とイメージ映像を心地よく楽しみながら、脳内でドラマを補完し、気分を盛り上げることができるのだ。
本作における挿入歌は、映像的・音楽的な見せ場と作るとともに、映像で語り切れない情感とエピソードを補うしかけである。もしこの作品に歌がなかったら、ただ駆け足に物語をまとめただけの印象になっていただろう。
音楽は澤野弘之とKOHTA YAMAMOTOの共作。澤野弘之が全体の音楽プロデュースと挿入歌の作・編曲を担当し、KOHTA YAMAMOTOがインストゥルメンタルの劇伴を担当している。劇伴の中に澤野が作曲した挿入歌のメロディがちりばめられた構成だ。
澤野弘之のインタビューによれば、本作の音楽制作に取りかかったのは5年ほど前(つまり2020年頃)。挿入歌作りから先行して進めたという。澤野はインタビューの中で「クラシカルなアプローチの楽曲ではなく、POPS&ROCKを取り入れた現代的なサウンドにしてほしいというオーダーだったので、それぞれシーンごとに必要な楽曲の方向性やサウンドイメージなどが書かれた音楽メニューをもとに制作していきました」と語っている。
いっぽうKOHTA YAMAMOTOは、2022年春に監督(吉村愛)、音響監督(長崎行男)、澤野弘之と打合せをし、劇伴制作を開始した。澤野弘之による挿入歌のデモがすでにできあがっていて、挿入歌のメロディを組み込んだ劇伴と、それとは別にオリジナルで制作する劇伴のオーダーを受けたという。作曲は絵コンテをベースに映像にタイミングを合わせたフィルムスコアリングのスタイルで進められた。澤野弘之の楽曲がポップス&ロック志向なのに対し、KOHTA YAMAMOTOはオーケストラ楽器を主体にしたクラシカルなアプローチの曲が多いのが特徴だ。
結果的にポップス&ロック的な楽曲とクラシック的な楽曲が共存する、現代の『ベルばら』音楽と呼ぶにふさわしい音楽になったと思う。宝塚歌劇版とも実写版ともTVアニメ版とも異なる、新たな『ベルばら』サウンドの誕生である。
本作のサウンドトラック・アルバムは、挿入歌を収録した「Song Collection from The Rose of Versailles」と劇伴を収録した「The Rose of Versailles Original Soundtrack」の2タイトルが、2025年2月26日にエイベックス・ピクチャーズよりCDと配信で同時リリースされた。
収録曲は下記商品紹介ページを参照。
「Song Collection from The Rose of Versailles」
https://verbara-movie.jp/discography/detail.php?id=1020677
「The Rose of Versailles Original Soundtrack」
https://verbara-movie.jp/discography/detail.php?id=1020676
「Song Collection」には挿入歌15曲のフルサイズと10曲のMovie Edit版(劇中バージョン)を収録。15曲の挿入歌はすべて劇中で使用されている。
「Original Soundtrack」は全31曲をストーリーに沿った曲順で収録。こちらには歌は収録されていない。「Song Collection」の曲と「Original Soundtrack」収録曲を組合せれば、本編で流れた音楽を再現することができる(ただし絢香が歌うエンディング主題歌「Versailles —ベルサイユ—」は別売)。
以下、印象的な曲をピックアップして紹介しよう。
オープニングに流れる挿入歌「The Rose of Versailles」は本作のメインテーマ。オスカル、マリー・アントワネット、フェルゼン、アンドレの4人が歌う曲だ。オープニングでこの曲が流れてきたとき、「うわー、こう来たか!」と思った。『ベルばら』の歌というとドラマティックに歌い上げるイメージがあるが、「The Rose of Versailles」は思い切ってポップで明るく華やかな曲調。4人のキャラクターが歌うことで「この作品は4人の物語」という宣言にもなっている。
劇中にはこの曲をアレンジした曲がいくつも登場する。冒頭に流れる劇伴「The Rose of Versailles 〜Prologue〜」や新たな国王の誕生をパリ市民たちが祝福する場面の挿入歌「Our King and Queen」は、フランスの繁栄の象徴のように使用されている。
いっぽう、同じメロディをアレンジした挿入歌「Anger and pain」は、王政に対する市民の怒りを表現する曲として流れる。そして、物語終盤に流れる劇伴「フランス革命」や「自由・平等・友愛」では、フランス革命の象徴として、このメロディが使用される。
作品が展開するにつれて、同じメロディが異なる意味を持った曲に変化していく。実にみごとでドラマティックな音楽設計である。
「Ma Vie en Rose」はマリー・アントワネットが歌う挿入歌。フランス王室に輿入れしたアントワネットの天真爛漫さを描写する曲として流れている。このメロディも劇伴に形を変えて登場する。ルイ16世とアントワネットの初対面の場面に流れる「花嫁・アントワネット」、フェルゼンが去ったさみしさを放蕩と贅沢でまぎわらすアントワネットの場面に流れる「放蕩の妃・アントワネット」などだ。
アントワネットとフェルゼンが歌う「Resonance of Love」は、4年の時を経て再会した2人があふれ出る想いをこらえきれずに抱き合う場面に流れた挿入歌。アントワネットとフェルゼンの愛のテーマである。このシーンも華麗な(少女マンガ的な)ミュージックビデオ風に演出されていて、アニメならではの名場面になっていた。注目してほしいのは、挿入歌が流れる前に同じメロディを使った劇伴「フェルゼンの謁見」と「アントワネットとフェルゼン」がすでに劇中に使われていること。劇伴が挿入歌の予告もしくは伏線になっているのだ。
オスカルが歌う挿入歌「心の在り処」は複雑な心情を歌った曲である。恋のよろこびを初めて知ったというアントワネットの想いを聞き、オスカルは自分が信じていた価値観(男として生きてきた生き方)がゆらぐように感じてショックを受ける。オスカルが父から結婚を奨められて動揺する場面に流れる挿入歌「Return to nothing」はこの曲の変奏だ。「悩めるオスカルのテーマ」とでも呼ぶべきモチーフである。
自分がフェルゼンに惹かれていることに気づいたオスカルは、ドレスに身を包んだ美しい女性として舞踏会場に現れる。フェルゼンに声をかけられたオスカルはそれで満足し、自分の気持ちをふっきるのだが、本作ではその描写はない。代わりに流れるのが挿入歌「Believe in My Way」だ。歌はオスカルの独唱で始まり、劇中で描かれなかったオスカルの想いが語られる。続いてアントワネットが、フェルゼンが、アンドレが歌い継いで、それぞれが信じる「自分の道(My Way)」を語る。最後は4人がそろって歌う合唱となって終わる。中盤のハイライトと呼べる挿入歌である。
数ある挿入歌の中でも4人が歌う歌は「The Rose of Versailles」とこの「Believe in My Way」だけ。「The Rose of Versailles」が作品全体のメインテーマだとすれば、「Believe in My Way」は4人の心を表現した愛のテーマと言えるだろう。
また、この歌は物語の前半を締めくくる曲でもある。この歌が流れたあと、貧困に苦しむパリ市民たちが描写され、物語は革命に向けて急展開していくのだ。
革命に向かってパリ市民やオスカルの心境が変化していく場面では、KOHTA YAMAMOTOがオリジナルで(挿入歌のメロディを使わずに)書いた劇伴が重要な役割を果たしている。重苦しい曲調でパリ市民の憤りを表現する「怒れる市民」、自由の尊さを知ったオスカルが市民に寄り添おうと決意する場面の「決意のオスカル」、合唱とオーケストラが崩壊寸前の王室とパリを描写する「絶望の都・パリ」など。前半とは対照的な暗く切迫した雰囲気で作品を彩っているのがKOHTA YAMAMOTOによる劇伴である。
KOHTA YAMAMOTO自身が「気に入っている曲」と語るのが、「ルイ16世と真実」と「ジェローデル・愛の証」の2曲だ。「ルイ16世と真実」は、密告の手紙によってアントワネットとフェルゼンの仲を知ったルイ16世が自分の想いを王妃に語る場面に流れる曲。「ジェローデル・愛の証」はオスカルのアンドレへの想いに気づいたジェローデルがオスカルとの結婚をあきらめ身を引く場面に流れる曲。どちらもキャラクターの繊細な心情が描かれたシーンである。KOHTA YAMAMOTOはピアノやストリングスを使ったクラシカルな曲調で、それぞれの切ない気持ちを表現する。ルイ16世とジェローデルが歌う挿入歌は作られていないが、2人もまた愛に生きる登場人物なのだと思わせてくれる音楽だ。
オスカルが歌う挿入歌「Child of Mars」は、オスカルが父に「私は軍神マルスの子として生きましょう」と宣言する場面に流れた曲。終盤でオスカルが市民とともに戦う場面には、この曲を変奏した挿入歌「Liberation」(歌唱は澤野弘之作品と縁の深いアーティスト・Tielleが担当)が流れる。「心の在り処」が「悩めるオスカルのテーマ」なら、こちらは「戦うオスカルのテーマ」である。
オスカルとアンドレの愛のドラマのクライマックスは、2人が結ばれる場面。2人が歌う挿入歌「夜をこめて」が万感の思いを表現する。その直前の場面には同じメロディの断片を含んだ劇伴「アンドレ・グランディエの妻に」が流れていた。ドラマからスムーズに歌につなげていくミュージカル的な演出である。
先に書いたように、ラストシーンに流れるのは「The Rose of Versailles」をアレンジした劇伴「自由・平等・友愛」だ。オープニングでは華やかに歌われたメロディが、ラストではピアノとストリングスによるしっとりとしたアレンジで演奏される。劇中にこのメロディがたびたび登場するから、観客の脳裏にはここに至るまでの物語の記憶が走馬灯のようにちらつく。この場面は観ていてぐっときてしまった。
こんなふうに、本作の音楽は挿入歌と挿入歌、挿入歌と劇伴が密接に連携し、さらに劇伴が隙間を埋める形で構築されている。2時間の作品に15曲もの挿入歌が流れても散漫な印象を受けないのは、音楽全体が緻密に構成されているからだろう。
劇場アニメ『ベルサイユのばら』は現在も映画館で上映が続いている。筆者の印象だが、気に入ったら2度、3度と劇場に足を運ぶリピーターが多い気がする。一度観ただけでは挿入歌の歌詞は頭に入らない。パンフレットに掲載された歌詞を読み、ソングアルバムやサウンドトラックを聴いて、また劇場に向かうファンが多いのではないか。そうすることで、よりキャラクターの心情に共感でき、作品で描かれなかったエピソードを想像で埋めることができるからだ。
多彩なキャラクターが登場する『ベルサイユのばら』の物語を2時間にまとめることは難しく、説明不足だと思うところもあるし、細かい点で不満がないわけではない。が、歌を軸に構成する本作のアプローチは、予想以上にうまくいっている。『ベルばら』音楽史に新たな名曲が加わった。こういうアニメ版『ベルばら』もいいと思う。
Song Collection from The Rose of Versailles
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The Rose of Versailles Original Soundtrack
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第530回 《短期集中連載 アニメーター飯》肉あんかけチャーハン

第892回 『沖ツラ』制作話~OPひととおり
第890回から続き、『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(沖ツラ)』OP話。
c-023 手拍子、1つの素材を、肌色変えて3人に! こういう費用対効果をコンテ段階で考えるの好きです。篠(衿花)さん作監で締めてもらいました。
c-024 こちらのチョンダラー喜屋武さんも、委員会からは「素顔の方が~」と提案されましたがお断りしました。コンテにラフを足したものを森(亮太)君に原画化してもらい、俺の方で作監を。なぜか最後にシーサーに寄るの、個人的に気に入っています。
c-025 横アングル踊り、ラスト「あ、てーるーだ!」の比嘉さん。原画・市川(真琴)さん、作監・板垣。
c-026 これは篠さんによる直原画=作監不要。ただし、ラフ段階で俺の方から「手と腰の動き、大きく~」と参考ラフを入れてから清書に入ってもらいました。
c-027 下地・上間・鉄~これもただの歩きではなく、実はダンスの振り付け。同様に篠原画=作監不要。
c-028 比嘉姉妹。可愛いのはいいけど、やや頭身が低いかも。これも篠原画=作監不要。
c-029 ようやくすっぴんの喜屋武さんダンス~サブキャラ大集合。コンテを基にラフ足し~タイミング付けまでして、あと篠さん。この辺数カットは本当に助けてもらいました。
c-030 踊るてーるー、アオリ。原画・市川、作監・板垣。「アオリパースがうまく描けない~」とのことでたくさん修正入れました。
c-031 踊る比嘉さん、俯瞰。原画・市川、作監・板垣。コンテ時はもっとニコやかに。自分描いたのですが、委員会チェックより「比嘉さんなので、抑えて」と。
c-032 これも一応ダンスの振り付け。それを“誇張”させて飛ばしました! コンテでは靴を履かせてたのですが、こちらも「ベンチに土足は止めて」で、裸足に。「だったら、島ぞうり焼けは必須ですよね!」と俺。ラフ原・板垣、二原・市川、作監・板垣。
c-033・034・035 メインタイトル(c-036)に、てーるー・比嘉・喜屋武それぞれのダンスのインサート。全て、原画・市川、作監・板垣。特筆すべきはc-033の比嘉さんのハイビスカスポーズ(?)、市川さんが良い仕事しています! 動きはそのまま使って、自分はベタで作監修正のせただけ。
c-037 ラスト皆でシーサーポーズで締め! は板垣の一発原画! でしたが、委員会より「もう少し年齢上げて」とのリテイクで描き直したので、結局二発原画?
第529回 ガンプラ作りたい熱が再燃!

【新文芸坐×アニメスタイル vol.187】
アバンギャルドアニメーションの傑作 『傷物語 -こよみヴァンプ-』
3月23日(日)に開催する上映プログラムは「【新文芸坐×アニメスタイル vol.187】アバンギャルドアニメーションの傑作 『傷物語 -こよみヴァンプ-』」です。
西尾維新の小説「傷物語」を映像化したのが『傷物語〈I 鉄血篇〉』『同〈II 熱血篇〉』『同〈III 冷血篇〉』の三部作です。それを再構成して、1本の長編アニメーションにまとめたのが、この『傷物語 -こよみヴァンプ-』となります。
『傷物語 -こよみヴァンプ-』は娯楽作でありつつ、全編に渡って作り手の美意識が貫かれた尖鋭的な作品です。映画館の大スクリーンと音響で楽しんでください。
トークのゲストは尾石達也監督です。ご自身の創作に関するルーツやスタンス、「傷物語」映像化の狙いなどについてうかがいます。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が担当。
なお、「傷物語」は〈物語〉シリーズの作品ですが、〈物語〉シリーズの第一作である「化物語」の前日譚となります。同シリーズを未見の方でも理解できるはずです。
チケットは3月16日(日)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(『傷物語 -こよみヴァンプ-』情報ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-03-23-1
【新文芸坐×アニメスタイル vol.187】 |
開催日 |
2025年3月23日(日)14時45分~18時25分予定(トーク込みの時間となります) |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
2200円均一 |
上映タイトル |
『傷物語 -こよみヴァンプ-』(2024/144分/PG12) |
トーク出演 |
尾石達也(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
第891回 『バーチャファイター』とテレコム
YouTubeのTMSアニメ公式チャンネルで、『バーチャファイター』の全話配信中!
で、自分がテレコム(・アニメーションフィルム)時代に動画を描いたところを見つけて遊んでいました(仕事の息抜きです)。
30年前の作品でも、結構憶えているモノです、自分の描いた動画は!
動画の箇所を憶えているということは、原画担当者も憶えているということです。青山(浩行)さんの作監修正とかも。
テレコムが担当したのは#08、#10、#13、#17の計4本。動画としては4本全て入っていたはずですが、スタッフロールに載せられる人数に制限があり、確か俺の名前は#10と#17で載っていたかと。その内#17は“坂垣伸”と誤植でガッカリ……(汗)。
当時のテレコムは社内動画のカットが棚に並べられていて、好きに選べるシステムだったので、俺は好きなアクションシーンばかり狙って動画にしていました。前述の青山浩行さんだけでなく、八崎健二さん、川口隆さん、西見祥示郎さん、赤城博昭さん、そして田中敦子さん、今でも信じられないくらい巧い方々が、自分の先輩としてテレコムにはいっぱいいらっしゃいました。その巧い原画を動画にすることで様々な作画テクニックを学ばせていただいたのが『バーチャファイター』。想い出深い新人時代の作品で、ジブリ作品の動画と同じくらい貴重な時間でした。
さらにTMS公式では
シリーズの『ベルサイユのばら』も全話配信中! 出﨑統監督作品!!
仕事中の息抜きで、こちらも駆け抜けています。ありがとう、TMS公式様! できたら『モンスターファーム』の全話もお願いします! こちらは自分が“原画”を楽しんだ作品で、昔VHSに録画していたものがもう観れなくなっています。久々に観たい~!
短くてすみません(汗)、また来週で……。
第299回 新たなピース 〜交響組曲 宇宙戦艦ヤマト 2024mix〜
腹巻猫です。『宇宙戦艦ヤマト』(1974)放送50周年を記念して、昨年から今年にかけてさまざまなイベントが開催され、新商品が発売されています。そのひとつに、昨年12月にリリースされたアルバム「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト 2024mix」がありました。1977年に発売された「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」をオリジナルマスターに遡ってニューミックスしたアルバムです。
ポイントは「リマスター」ではなく「ニューミックス」である点。
両者はどう違うのか? 完成したアルバムと旧盤の違いは? 結局どっちがいいの?
そこを語ってみたいと思います。
「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」は、TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(1974)の音楽を作曲者の宮川泰自身がオーケストラ用にアレンジし、選りすぐりのミュージシャンの演奏によって録音したアルバムである。演奏・構成ともにすばらしい名盤で、アニメ音楽アルバムの金字塔として、当コラムの第1回でも取り上げた。このアルバムを聴いてアニメ音楽にのめり込んだという人も多いだろう。本作のヒットでアニメ音楽の商品化が一気に進んだことから、アニメ音楽ビジネスのターニングポイントとなった作品とも言える。
それだけ人気があり重要なアルバムなので、CD時代になってもくり返し再発売が行われ、リマスターも何度かされている。
しかし、今回の「2024mix」は過去のリマスター盤とは根本的に異なる商品である。それを理解してもらうためには、マスタリングとミックスの違いを説明しておく必要がある。
マスタリングとは、レコードやCD、配信用音源等の制作時に必ず行われる工程で、ひとことで言えば、録音した音源を聴きやすいように、また、よりよく聞こえるように調整する作業である。音量の調整やノイズ取りを行い、ときには、エコーを加えたり、特定の楽器の音を目立つようにしたり、コンプレッサーで音を圧縮して音量差を整えたりする。マスタリングを行うエンジニアの手腕によっては、曲の印象は驚くほど変わり、それは曲の評判にも影響する。音楽を商品化する上で欠かせない重要な工程である。
ただ、マスタリングでできることは基本的にマスターに含まれている情報を引き出すことで、まったく別の音源を作り出すことはできない。アニメーションにたとえると、フィルム(もしくは映像データ)に記録された映像の彩度やコントラストを調整したり、カラーバランスを整えたり、ゴミ取りをしたりし、お色直しを行うのがマスタリングにあたる。リマスタリング(リマスター)とは、このマスタリングをやり直して、新たなマスターを作り出すことである。
いっぽうミックスとは、マルチトラックレコーディングされた音源を組み合わせて、ひとつのマスターを作り出す工程である。マルチトラックレコーディングとは、大ざっぱに言えば、楽器ごとにトラックを分けて録音すること。弦楽器、金管楽器、木管楽器、リズム、ボーカルなどを別々のトラックに記録しているので、個別に音量を変えたり、加工したり、演奏ミスのある部分をミュート(無音に)したり差し替えたりすることが可能だ。ミックス工程では、各トラックの音量や定位(音が聞こえてくる位置)を決め、2チャンネル、または5.1チャンネルなどにまとめてマスター音源を作成する。
ニューミックスとは、マルチトラック音源にさかのぼってミックスをやり直すことである。トラックごとの音量や定位、採用する演奏のテイク、音を重ねるタイミングなど、根本的なサウンドデザインを変えることができる点がリマスターとの大きな違いだ。アニメーションにたとえると、キャラクターや背景などの素材を組み合わせて再撮影を行ったり、撮影した映像素材をもとに再編集を行ったりするのがニューミックスにあたると言ってよいだろう。
なお、「ニューミックス」と同じ意味で「リミックス」という言葉が使われることがあるが、「リミックス」は既存の音源を加工・編集して新たな曲を作り出すことにも使われるので(ダンス用にリズムトラックを加えたり、曲をループさせたりした「ダンスミックス」など)、本稿では「ニューミックス」と呼ぶことにする。
「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト 2024mix」は、日本コロムビアが保管していたオリジナルのマルチトラックテープをデジタル化し、ニューミックスを行ったアルバム。過去のリマスターアルバムとは異なる次元でのサウンドのリニューアルを実現している。
とはいえ、その作業はなかなか大変だったそうだ(アルバムのライナーノーツなどからの情報)。というのも、今回のニューミックスの趣旨は、旧アルバムに忠実に、音質の向上を目指すこと。音を足したり引いたり、別テイクを採用したり、音のタイミングを変えたりして別バージョンを作るのではなく、基本的に音量や定位などは旧盤と大きく変えずに仕上げることが求められた。これがなかなか難しいのである。というのは、オリジナル盤のミックスを行ったときのトラックごとの音量・定位や採用するテイクなどの情報が残されているならよいが、それがない場合は、参考音源(今回の場合はオリジナル・レコードマスター)を再生して、人の耳で判断し、再現するしかない。筆者もかつて「ベルサイユのばら 音楽集[完全版]」の制作時に同様のニューミックス作業に立ち会ったことがあるが、職人的な技と耳のよさが必要な作業だった。
今回は1977年に録音された16チャンネル磁気テープを使用してのニューミックス。まず、テープを再生できる状態にし、テープの劣化による歪みやノイズを除去するなどの手間がかかっている。さらに、本作はマルチトラックレコーディングとはいえ、楽器ごとに分けて録音するのではなく、スタジオにミュージシャンを集めて「せーの」で一斉に演奏して録音している。楽器セクションごとマイクを立てて録音しているのだが、防音のためのパーティションを置いたにしても、弦のトラックに木管の音がもれて小さく録音されているといったケースがしばしばある。その音もれをデジタルで可能な限り除き、さらに楽器ごとの周波数特性を利用して、1トラックにまとめられている音をさらに細分化してトラックを分けるといったことも行っているのだ。
「2024mix」は、大変な手間をかけて作られた、こだわりの詰まったアルバムなのである。
本アルバムは、オリジナルLPの発売日に合わせた2024年12月25日に、日本コロムビアからCDとアナログレコードと配信でリリースされた。配信は通常配信、ハイレゾ配信、空間オーディオの3種類。好みのメディアを選ぶこともできるし、複数購入して聴き比べることも可能だ。
収録曲は以下のとおり。
01. 序曲 2024mix
02. 誕生 2024mix
03. サーシャ 2024mix
04. 試練 2024mix
05. 出発 2024mix
06. 追憶 2024mix
07. 真赤なスカーフ 2024mix
08. 決戦〜挑戦=出撃=勝利〜 2024mix
09. イスカンダル 2024mix
10. 回想 2024mix
11. 明日への希望〜夢・ロマン・冒険心〜 2024mix
12. スターシャ 2024mix
LPレコードでは、オリジナル盤どおり01〜06がA面、07〜12がB面に収録されている。
先に書いたとおり、本アルバムのオリジナル盤については当コラムで一度取り上げたことがある。そこで今回は、オリジナル盤と2024mixとの聴き比べをしてみたい。なるべく条件をそろえて聴き比べるために、ソースとして24bit/96kHzでマスタリングされたハイレゾ音源を使用する。2014年8月6日にリリースされた「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」のハイレゾ配信音源と今回の「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト 2024mix」ハイレゾ配信音源である。
全曲を聴くと長くなるので、次の4曲を聴き比べてみよう。
01. 序曲
05. 出発
07. 真赤なスカーフ
09. イスカンダル
まず「序曲」。タイトルどおり、アルバム全体の導入となる曲で、クラシック風の格調高いサウンドにアレンジされている。宇宙の神秘を描写するテーマから始まり、女声スキャット(川島和子)による「無限に広がる大宇宙」のメロディが登場。さまざまに変奏されたあと、最後に主題歌「宇宙戦艦ヤマト」のモチーフが短く奏されて終わる構成。
演奏が始まると、木管と弦楽器が合奏する出だしの部分から印象が違うことに驚く。2024mixではバックのピアノとパーカッション、ベースの音がオリジナル盤よりはっきりと聞こえる。音の分離がよく、楽器それぞれの音が明瞭になっている。
川島和子のスキャットが始まる部分では、オリジナル盤よりも音(声)の立ち上がりが鮮やかだ。音の広がりと音量もオリジナル盤より強調されている。オリジナル盤はスキャットとオーケストラが溶け合っていたが、2024mixはスキャットを前面に出した音作り。「この曲ではスキャットが主役」、そんな意図を感じる。
終盤の主題歌のモチーフが現れる部分は、オリジナル盤よりリズムがはっきり聞こえ、ダイナミックな印象を受ける。
「序曲」を聴いただけでも、2024mixは、全体にオリジナル盤よりもメリハリのあるクリアな音になっていることがわかる。
続いて4曲目の「出発(たびだち)」。第3話ラストのヤマト発進シーンに流れたBGM「地球を飛び立つヤマト」をアレンジした曲である。
オリジナル盤のライナーノーツで宮川泰が、この曲はポール・マッカートニーの曲「007 死ぬのは奴らだ」からヒントを得たと語っている。「007 死ぬのは奴らだ」は同名劇場作品の主題歌で、流麗なメロディとたたみかけるようなリズムを1曲の中に盛り込んだロックオーケストラ風のナンバーである。
「出発」のオリジナル盤はオーケストラの演奏にロックのリズムが加わった印象だった。2024mixでは、よりロック色の強いサウンドになっている(気がする)。
20秒ほどの序奏のあとに現れるロック的なリズムのパート。2024mixではリズムを刻むエレキギターとエレキベースがオリジナル盤よりしっかり聞こえる。続いて、木管と弦楽器がメロディを奏で始めるが、その後ろで鳴っているリズムも2024mixのほうが明瞭だ。オーケストラとリズムが絡みあい、しだいにテンポアップしていく中間部では、2024mixのほうが、ドラムの音がオーケストラに負けない音量で聞こえることに注目したい。オリジナル盤以上に「ロックオーケストラ」を感じさせるミックスになっている。原曲の「地球を飛び立つヤマト」はこんな音だったなあと思い出す。
次は7曲目の「真赤なスカーフ」。エンディング主題歌「真赤なスカーフ」を大胆に料理した、宮川泰の名アレンジが味わえる1曲である。
序盤は弦合奏による悲し気なアレンジ。一瞬の静寂ののち、ラテンミュージック風にアレンジされたテーマが始まり、空気が変わる。この部分はオリジナル盤より2024mixのほうが、リズムのはっきりした力強いサウンドになっている。金管やピアノの音がオリジナル盤より目立って聴こえるのも特徴。後半のトランペットソロとギターソロも、2024mixは、それぞれのソロ楽器が主役らしく前に出て演奏している印象だ。
2024mixは、オリジナル盤よりリズムセクションやソロ楽器の音が立った、パンチのあるサウンドになった。「宮川泰が聴かせたかったのはこういう音だったのかな?」と思わせる。
そして9曲目の「イスカンダル」。これも宮川泰らしいイージーリスニング風の1曲。イスカンダルのテーマとして使用されたBGM「美しい大海を渡る」のアレンジ曲である。
序奏部はアルトフルートがテーマを奏でる。2024mixではバックのピアノやビブラフォンなどによるふわふわした音がオリジナル盤より大きく聞こえ、幻想的なイメージが強調されている。それに続く弦合奏主体のパートでは、やはりバックのビブラフォンやベースの音が明瞭に聞こえ、ポップスオーケストラ的なサウンドが堪能できる。
ゴージャスなストリングスの音はオリジナル盤も2024mixも甲乙つけがたく、ふくよかなオリジナル盤か、輪郭のくっきりした2024mixか、好みが分かれるところかもしれない。オリジナル盤は柔らかく、温かみのあるサウンド。2024mixはポップス的なカラフルなサウンド。そんな違いが感じられる曲だ。
全体として、オリジナル盤では背景に埋もれていた音が2024mixではくっきりと聞こえるようになり、クリアな音が楽しめるようになっている。何度も聴いているアルバムなのに、2024mixを聴きこむと「こんな音が鳴っていたのか」「こんなアレンジだったのか」と新たな発見がある。
ミックスの方向性としては、基本的にオリジナル盤を踏襲しつつ、各楽器の音を粒立たせ、リズムをしっかり聞かせる音作りになっている。オリジナル盤と比べると、ベールが1枚とれたような、画像にたとえるなら彩度とコントラストが一段上がったような鮮明感がある。
では、2024mixはオリジナル盤より音がよくなったと言ってよいのだろうか? そうも言えるが、そう単純ではない。そもそも「音がよい」というのは個人によって基準の違う主観的なものである。好みや聴覚の差や環境など、さまざまな要因に左右される。そしてもうひとつ、「音楽にとって音がよいとは何か?」という問題がある。
オリジナル盤はさまざまな楽器の音が溶けあい、音の雲がふわっと飛んでくるような印象を受ける。それを「音の分離がよくない」ととらえる人もいるかもしれない。が、筆者はホールでオーケストラの生演奏を聴くのに近いサウンドだと思う。コンサートやライブで生演奏を聴くとき、われわれはまわりの空気も同時に感じ取っている。楽器から出た音は空間の中でまじりあい耳に届く。作曲家は、たとえばフルートとクラリネットを同時に鳴らして、楽器単体では出せない音を聞かせようとする。画家がパレットの上で絵の具をまぜるように。音が分離して聞こえないことが作曲家の意図に沿っていることもあるのである。また、オーケストラの生演奏を聴いていると、オーケストラ全体がまるでひとつの楽器として鳴っているように聴こえる瞬間がある。それが生演奏を聴く醍醐味のひとつだ。オリジナル盤のサウンドは、そんな生演奏の空気感を体験させてくれる。
いっぽう2024mixは、スタジオ録音で作る現代のポピュラーミュージックのサウンドに近い。ひとつひとつの楽器の音をクリアにし、ソロの音は前に出し、リズムもしっかり聴かせる。そうすることで、目の前でミュージシャンが演奏しているような迫力と臨場感を味わえる。ミュージシャンのテクニックや個性も聴き取ることができる。どんなアレンジになっているか分析的に聴きたい人にとってもありがたい音作りである。
オリジナル盤と2024mixのサウンドの違いは、技術的な進歩と同時に、クラシック志向かポップス志向かといった違いが反映されているようだ。それは、スピーカーで音楽を聴いていた時代とヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴く時代のサウンドの違いと言えるかもしれない。
「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト 2024mix」はオリジナル盤に代わる新たなマスターになるのだろうか。
そうではないと思う。2024mixは「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」のマスターに新たに加わったバリエーションのひとつと考えたほうがよいだろう。どちらがよいとか、すぐれているとか、言い切ることはできない。どちらを選ぶかは、好みの問題なのだ。筆者は、リラックスして聴きたいときはオリジナル盤、気分をアゲたいときは2024mixと、その日によって聴くバージョンを変えて楽しんでみたい。
ひとつ言えることは、ニューミックスのためにマルチトラックテープを蔵出しし、アーカイブしたことは大きな意義があるということだ。今回保全された音源から、また新たなミックスが作られる可能性が広がった。音楽遺産を後世に残していく意味でも、すばらしい仕事であり、商品である。当コラムで「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」のオリジナル盤を取り上げたとき、「永遠のマスターピース」とタイトルをつけた。2024mixはそこに追加された新たなピースである。
交響組曲 宇宙戦艦ヤマト 2024mix
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第528回 スマートゴーグルで4DX?

第890回 『沖ツラ』制作話~OPに関して続き
第886回からの続きで“OP”。
c-015 雨に濡れたてーるーと比嘉さんを覗き見る安慶名さん。ここからのカットは本作のラブコメ要素を立て続けに盛り込みました。
c-016 前カットの切り返しに喜屋武さんヒョッコリIN。真円の虹は出﨑(統)監督『家なき子』の影響でしょうか?
c-017 指ハート“デデンデンデン♪”の安慶名さん。中なしポンでハートを大きく~戻す際コマ打ち、作画1枚を拡大・縮小撮影——曲リズム合わせで、こちらもダンスの振り付け。
c-018 コンテと共に“残し”を効かせた指の動きを細かく指示しました。同じく振り付けカット。
c-019 かき氷を食べる喜屋武・てーるー・比嘉。比嘉さんを視認するには尺が短過ぎ? でも、音楽に合わせるとこの位が気持ち良かったので、スミマセン。
以上c-015~019は塩澤(枢)さん他で原画、作監・篠衿花さん。篠さんは『沖ツラ』との相性が抜群で、視聴者の方々が“可愛い”と指差す比嘉さんは篠作監率高いです。#02冒頭とCパートや#05冒頭教室シーンなど、篠上りはほぼ板垣の手は入っていないし、それほど密な打ち合わせ・注文を出さなくても、大概間違いのないモノが上がってきます!
c-020 女子3人のスカート~足。コピペ増殖で費用対効果優先。こちらももちろん振り付けで、原画は市川真琴さんで作監修はなし。市川さんは不思議な画力で、キャラはあまり似せてこないのですが、身体のデッサン、手~指は巧くて、さらに俺のラフを淡々と原画にしてくれたりと、個人的には大変助けられてて、『沖ツラ』本編でも“困ったら市川さん”です。
c-021 同じく女子3人、こちらもダンス振り付けで市川原画ですが、前述のような理由でキャラは篠作監修正が入っています。
c-022 エイサー祭りの一同。こちらもそれぞれ一連+カメラワークで振り付けになるようにしています。後、こちらの“チョンダラー喜屋武さん”、委員会のコンテ・チェックで「オープニングは嘘でもメイクなしにしないと、喜屋武さんと分からないのでは~」と言ってきたのですが「そんな嘘ついたら原作と沖縄に申し訳ないでしょう! これは喜屋武さんのもう一つの顔です!」と返して現状。
で、また短くてすみません。最終話の納品が終わり次第、もう少し落ち着いて制作話書きます(汗)。また来週で……。
第527回 俺たちのディズニーはココだ

第889回 毎度すみません!
本日は、じっくり時間をとって書(描)けると思ったのですが、予定外の面談が入って……!
現状は毎週の納品合わせで、以下。申し訳なくてごめんなさい。また来週、ということで……。
第526回 iPhone、iPhone、応答せよ!

第298回 シカが世界を作る 〜しかのこのこのここしたんたん〜
腹巻猫です。サウンドトラック・アルバムがCDで発売されることが少なくなり、配信のみでリリースされることが増えてきました。そこで困るのが「知らないうちにリリースされていた」という場合がよくあること。特にTVアニメのサントラが放映終了後、しばらくしてからリリースされると、ネットニュースにも取り上げられず、気がつかないことがあるのです。
今回取り上げる作品もそのひとつ。TVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』です。「サントラ出ないのかな」と思っていたら、放送終了後1ヵ月以上経ってからリリース。しばらくしてから気づきました。「出るなら早く教えてよー!」。いや、うれしいけど。
『しかのこのこのここしたんたん』は2024年7月から9月まで放映されたTVアニメ。おしおしおによる同名マンガを原作に、監督・太田雅彦、アニメーション制作・WIT STUDIOのスタッフで映像化された。
元ヤンであることを隠して生徒会長を務める女子高生・虎視虎子(こしたん)は、ある日、電線に引っかかっている少女に遭遇し、助けてやる。虎子が助けた少女は頭にシカの角が生えた鹿乃子のこ(のこたん)だった。虎子の高校に転校してきたのこは、シカ部を創設。虎子を部長に、自身はシカ部所属のシカとして活動を始める。シカ部には虎子の妹・餡子、のこにあこがれる新入生・馬車芽めめなど、個性の強いメンバーが集まり、虎子の人生をかき乱していく。
インパクト抜群のギャグアニメである。原作を未読だった筆者は、タイトルに惹かれて第1話を観てドハマリしてしまった。シュールでアバンギャルドでカオス。1秒先も予測できない展開と爆発力のあるギャグにただ笑うしかない。しかし、こういう作品大好きなのだ。
本作は放映開始前からネットで話題となり、オープニング主題歌のイントロ耐久動画が公開1ヵ月で500万再生を超えるなど、人気が上昇していった。12月に発表された「TikTokトレンド大賞2024」では「しかのこのこのここしたんたん」がホットワード部門を受賞。2024年を騒がせた作品のひとつなのである。
音楽を担当したのは、アニメ『みなみけ』『ヒナまつり』『ビックリメン』などの音楽を手がける三澤康広。本作の監督・太田雅彦とは、『みなみけ』をはじめ、多くの作品でコンビを組んでいる。ちなみに筆者は『ヒナまつり』のサウンドトラックの仕事で三澤康広にインタビューする機会があった。ご本人は、ジョン・ウィリアムズやジェイムズ・ホーナーといった正統派の映画音楽作曲家が好きという映画音楽ファン。そういう作家がテンポの速いギャグアニメの音楽を手がけるところに妙味がある。「セリフのじゃまをしない」といった映像音楽の作法を守りつつ、遊び心のある、映像を生かす音楽を提供している。
ギャグアニメの音楽は、大きく分けるとふたつのアプローチが考えられる。ギャグをやっていても音楽はふつうというパターンと、音楽もはちゃめちゃというパターンである。実際にはどちらかに特化することはあまりなく、両者がバランスよくブレンドされていることが多い。本作の場合も、日常を描写するのんびりした曲もあれば、ギャグを強調するはじけた曲やパロディ的な曲もある。しかし、それだけにとどまらないのが本作の工夫である。
たとえば第1話の冒頭シーン。虎子が初めて登場する場面には少女アニメっぽい華やかな曲(「ここは乙女の園(共学)」)が流れるが、その虎子を見つめるシカが現れるや、男声コーラスが「シカ!シカシカシカ!」と歌う変な曲(「シカ!シカシカシカ!シカ!!!」)が流れて、一気に世界をシュールな空気で満たしてしまう。
この「シカ」の2文字を歌うコーラス入りの曲が、本作の音楽の最大の特徴と言ってよいだろう。男声または女声コーラスによって、ときには「シーカー」と長く、ときには「シカシカシカ」とくり返して、「シカ」のフレーズが歌われる。日常曲でもなく、ギャグを強調する曲でもなく、作品世界を俯瞰する「天の声」のような、不思議な音楽である。
本作には劇伴におけるメインテーマ——作品を象徴する曲はないが、代わりに「シカ」のコーラス曲がその役割を果たしている。「ターミネーター」で「ダダンダンダダン」というリズムが作品とターミネーターのキャラクターを象徴するモチーフになっているように、本作ではさまざまに変形されて登場する「シカ」のフレーズが、作品を象徴するモチーフとして機能しているのだ。
「シカのアニメだから劇伴にも“シカ”のコーラスを入れよう」という発想も面白いが、それを具体化してしまうところが、もっと面白い。
なお、三澤康広のXのポスト(投稿)によれば、女声コーラスは多くのサウンドトラック作品に参加している歌手のKOCHOが担当、男声コーラスは三澤自身が参加している。三澤は劇伴のすべての楽器の演奏も担当したそうで、それが音楽の絶妙な味わいを生み出していると想像できる。
本作のサウンドトラック・アルバムは、2024年11月7日に「TVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで配信開始された。レーベルは本作のプロデュース・製作を担当したツインエンジン。CDでの発売はない。
収録曲は以下のとおり。
- ここは乙女の園(共学)
- シカ!シカシカシカ!シカ!!!
- シーーーカーーー♪
- 噂のパーフェクトGIRL
- 元ヤンであること
- 今日、この日までは…
- Girl Meets SHI-KA
- ヌ〜ン…
- のつ!鹿乃子のこです!
- シカッ♪シカッ♪
- 暗ガール
- 第1回日野南高校チキチキ虎視虎子王決定戦!
- やだ…こしたんてば【ハート】
- ん?は?
- 特別にツノをあげよう
- ツノが生えてる女の子なんて
- ぎゃああああああああああっ!
- シカー♪シカー♪シカー♪(陽)
- だって、こしたんと一緒だし!
- シカ部っていったいなんです!?
- よろしくぬん!
- シカ!シカシカシカ!シカ???
- ここは戦場だぞ!!
- かかって来いやぁっ!!
- あれは罠だ!!
- おねぇちゃぁん【ハート】
- なんでそうなる〜〜〜???
- 主よ御許に鹿づかん
- 私たち、良い友達になれそうじゃない?
- こうなったら武力行使だ!
- なんなのーッ!
- 家族になろうよ、日野で(歌:鹿乃子のこ[CV:潘めぐみ])
- 古き言い伝えはまことであった…(Cervus)
- シカー♪シカー♪シカー♪(陰)
- つちのこのこのこのこたんたん
- シカコレ
- 鹿乃子が見せた幻影だというのか……!?
- 喫茶ツバメ
- 日野になぜシカ!?
- 鹿神神社
- はんにゃ〜ほんにゃらふんにゃ〜シカシカ
- ソイヤ
- のーこたん♪こーっちこい♪
- なんだこの空気は!?
- 花が…生きている…!
- 伝説のマタギ
- TOSOKAISHI
- それが…シカの穴!!
- まさか日野市で会えるなんて
- 頂上対決
- 野生のシカ(歌:虎視虎子[CV:藤田咲])
全51曲。総演奏時間は約70分。10秒前後の短い曲もたくさん収録されているのがうれしいところ。劇中で印象的な楽曲はほぼ網羅されている。
曲順はおおむねストーリーの流れに沿っている。
トラック1〜10までは第1話で使用された曲。制服姿の虎子が登場するシーンに流れる「ここは乙女の園(共学)」(トラック1)、虎子を見つめるシカを不穏に描写する「シカ!シカシカシカ!シカ!!!」(トラック2)、サブタイトル曲「シーーーカーーー♪」(トラック3)の3曲がいわば導入部。「シカ」のコーラス曲がさっそく2曲出てくるのが強烈だ。
続いて愛らしい曲調の「噂のパーフェクトGIRL」(トラック4)と歪んだエレキギターによる「元ヤンであること」(トラック5)の2曲で、元ヤン虎子の2つの顔を描写。「元ヤンであること」は一発ギャグのような短い曲だが、虎子が感情をあらわにする場面などで効果的に使われている。
ミステリアスな「今日、この日までは…」(トラック6)、トラブル発生! という雰囲気の「Girl Meets SHI-KA」(トラック7)、とぼけた「ヌ〜ン…」(トラック8)の3曲は、第1話の虎子とのこたんの出会いのシーンに流れた。変拍子を使った「Girl Meets SHI-KA」は『スパイ大作戦』みたいな緊張感のある軽快な曲。「ヌ〜ン…」は日常描写によく使われた曲で、木管とパーカッションのアンサンブルが微妙な空気感を表現している。トラック15「特別にツノをあげよう」、トラック21「よろしくぬん!」なども「ヌ〜ン…」と同じ系統の曲だ。こういう曲をバックにのこたんの奇妙な日常が描かれ、虎子が突っ込むのがおなじみのパターンだった。
男声コーラスが「シーカ」とくり返す「のつ!鹿乃子のこです!」(トラック9)は、のこたんが転校生として教室に入ってくる場面で使用。のこたんのテーマというわけでもなく、「シカあらわる!」といった緊張感のあるシーンによく選曲されていた。「シカッ♪シカッ♪」(トラック10)は女声コーラスによるアイキャッチ曲。
ここまでが主人公2人が出会い、物語が動き出す序盤パート。「シカ」のコーラス曲やとぼけた日常曲、パロディ風の曲など、本作の音楽の特徴(面白さ)がすでによく表れているし、本編のテンポ感も再現されている。
トラック11〜21は第2話と第3話で使用された曲を中心にした構成。
姉が好きなあまり闇落ちしてしまう虎子の妹・餡子のテーマ「暗ガール」(トラック11)、メロドラマ風の「やだ…こしたんてば【ハート】」(トラック13)、シリアスな曲調の悲しみの曲「ツノが生えてる女の子なんて」(トラック16)などが面白い。
「シカー♪シカー♪シカー♪(陽)」(トラック18)は毎回のように使われた女声コーラスの曲。のこたんの突拍子もない行動やのこたんに振り回される虎子の場面などにアクセントを付けるように流れて、なんともいえない面白みをかもしだしている。サブタイトル曲やアイキャッチ曲と並んで印象深く、「『しかのこ』の劇伴といえばこの1曲」みたいな代表曲のひとつである。
軽快な「シカ部っていったいなんです!?」(トラック20)と脱力系の「よろしくぬん!」(トラック21)も使用頻度の高い日常曲。ここまでで、餡子と馬車芽めめがシカ部に参加し、主要キャラクターがそろったイメージだ。
トラック22〜31までは、シカ部をめぐるドタバタをイメージした選曲になっている。
「ここは戦場だぞ!!」(トラック23)、「かかって来いやぁっ!!」(トラック24)、「あれは罠だ!!」(トラック25)の3曲はアクション映画風の緊迫感のある曲。第2話でのこたんが謎の敵に襲撃されるシーンや第5話のシカ部の特訓シーンなどに流れていた。トラック30の「こうなったら武力行使だ!」も同じ系統の曲で、こちらは第3話で虎子が水の入ったペットボトルを並べてシカを威嚇する場面に使用。曲だけだと面白さが伝わらないが、映像との相乗効果で破壊力を発揮する曲である。
本作には特定のシーンを想定して書かれたと思われる曲もいくつかある。
讃美歌風の「主よ御許に鹿づかん」(トラック28)はそのひとつで、第2話でシカの天使がのこたんを迎えに天から降りてくるイメージシーンに流れた。
のこたんが歌う挿入歌「家族になろうよ、日野で」(トラック32)も第4話のみで使用された曲。突然画面がカラオケ映像風になってのこたんの歌が流れるシーンはなかなかシュールだった。
トラック32以降は、こうした使用場面が限られた曲が多く収録されている。その曲調は多彩で、バラエティに富んでいるとも言えるし、カオス度が増しているとも言える。回を追うごとにギャグもパワーアップしていく本作らしい構成である。
トラック33「古き言い伝えはまことであった…(Cervus)」は第5話のシカの大名行列の場面で老婆(犬養ミツ)がつぶやく言葉をタイトルにした曲。『風の谷のナウシカ』のパロディなのだが、曲は『ナウシカ』に雰囲気を寄せつつ、まったく違うものになっているのがすごい。「Cervus」はシカを意味するラテン語である。
トラック34「シカー♪シカー♪シカー♪(陰)」とトラック35「つちのこのこのこのこたんたん」は謎の生物「つちのこ」が登場する第6話で使用。「つちのこのこのこのこたんたん」は「Girl Meets SHI-KA」(トラック7)と同系統の曲で、つちのこの摩訶不思議な生態を変拍子を使って表現している。
トラック36「シカコレ」とトラック37「鹿乃子が見せた幻影だというのか……!?」は第7話のシカコレクションのエピソードで使用。次の「喫茶ツバメ」(トラック38)と「日野になぜシカ!?」(トラック39)は同じく第7話の後半の「喫茶ツバメ」のエピソードで使用された。テクノ風、ウィンナワルツ風、ジャズ風とさまざまな曲調が楽しめる。 第8話の新年の鹿神神社のシーンで流れた「鹿神神社」(トラック40)と「はんにゃ〜ほんにゃらふんにゃ〜シカシカ」(トラック41)、第9話の体育祭のエピソードで使われた「ソイヤ」(トラック42)と「のーこたん♪こーっちこい♪」(トラック43)、第10話の華道部のエピソードを彩る「なんだこの空気は!?」(トラック44)と「花が…生きている…!」(トラック45)。爆笑を誘うシュールな場面の曲が続く。
いよいよ終盤は、最終2話で使用された曲である。
トラック46「伝説のマタギ」とトラック47「TOSOKAISHI」は、伝説のマタギとのこたんとの死闘を描く第11話で使われた。和風マカロニウエスタン風の「伝説のマタギ」に、追う者と追われる者の対決を描写する「TOSOKAISHI」で緊迫感が盛り上がる。
最終回(第12話)、秘密機関「シカの穴」が登場する場面で流れた「それが…シカの穴!!」(トラック48)も緊迫感のある曲。曲の後半に聴こえてくる「シカ、シカ」の男声コーラスが「シカの穴」の不気味さを強調する。いったい、このお話はどこへ向かっていくのか?
クライマックスは、シカ系ゆるキャラとのこたんとの対決だ。トラック49「まさか日野市で会えるなんて」は、北海道のゆるキャラ、キュンちゃんがシカ部にやってくる場面で使われた。キュンちゃんのキャラに合わせた、ほのぼのした曲である。
のこたん最後の活躍は、奈良県のマスコットキャラクター、せんとくんとの対決。トラック50「頂上対決」は、タイトルどおり、のこたんとせんとくんの対決場面に流れたマーチ風の曲。プロレス中継などでおなじみの「スポーツ行進曲」を思わせる曲調が楽しい。なお、せんとくん入場シーンに流れた曲は、せんとくんの公式テーマソング「せんとくんなら知っている」である。
ラストに収録された「野生のシカ」(トラック51)は虎子が歌う挿入歌(イメージは「アイ・オブ・ザ・タイガー」か?)。第12話で虎子がのこたんを特訓するシーンに流れたほか、第12話のエンディングテーマとしても使用されている。本アルバムには主題歌は収録されていないが、最終回を締めくくった曲をラストに収録することで、アルバムがまとまった。
以上、駆け足でサウンドトラック・アルバムを紹介したが、序盤、中盤、終盤と雰囲気を変えて作品イメージを再現した、巧みな構成だと思う。音楽自体もいい。印象的なエピソードやシーンに印象的な曲がつけられているのが、本作の強みであり魅力だ。多彩なアイデアを盛り込んだ音楽がシーンの面白さを何倍にもパワーアップし、同時に、音楽を聴くと名(迷)場面が思い浮かぶ。
そして、耳に残るのはやはり、さまざまな形で歌われる「シカ」のコーラス曲である。本作の音楽イメージと世界観を決定づけているのは「シカ」のフレーズ。「シカ」が世界を作っているのだ。
TVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』オリジナルサウンドトラック
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