本日は、じっくり時間をとって書(描)けると思ったのですが、予定外の面談が入って……!
現状は毎週の納品合わせで、以下。申し訳なくてごめんなさい。また来週、ということで……。
本日は、じっくり時間をとって書(描)けると思ったのですが、予定外の面談が入って……!
現状は毎週の納品合わせで、以下。申し訳なくてごめんなさい。また来週、ということで……。
腹巻猫です。サウンドトラック・アルバムがCDで発売されることが少なくなり、配信のみでリリースされることが増えてきました。そこで困るのが「知らないうちにリリースされていた」という場合がよくあること。特にTVアニメのサントラが放映終了後、しばらくしてからリリースされると、ネットニュースにも取り上げられず、気がつかないことがあるのです。
今回取り上げる作品もそのひとつ。TVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』です。「サントラ出ないのかな」と思っていたら、放送終了後1ヵ月以上経ってからリリース。しばらくしてから気づきました。「出るなら早く教えてよー!」。いや、うれしいけど。
『しかのこのこのここしたんたん』は2024年7月から9月まで放映されたTVアニメ。おしおしおによる同名マンガを原作に、監督・太田雅彦、アニメーション制作・WIT STUDIOのスタッフで映像化された。
全51曲。総演奏時間は約70分。10秒前後の短い曲もたくさん収録されているのがうれしいところ。劇中で印象的な楽曲はほぼ網羅されている。
曲順はおおむねストーリーの流れに沿っている。
トラック1〜10までは第1話で使用された曲。制服姿の虎子が登場するシーンに流れる「ここは乙女の園(共学)」(トラック1)、虎子を見つめるシカを不穏に描写する「シカ!シカシカシカ!シカ!!!」(トラック2)、サブタイトル曲「シーーーカーーー♪」(トラック3)の3曲がいわば導入部。「シカ」のコーラス曲がさっそく2曲出てくるのが強烈だ。
続いて愛らしい曲調の「噂のパーフェクトGIRL」(トラック4)と歪んだエレキギターによる「元ヤンであること」(トラック5)の2曲で、元ヤン虎子の2つの顔を描写。「元ヤンであること」は一発ギャグのような短い曲だが、虎子が感情をあらわにする場面などで効果的に使われている。
ミステリアスな「今日、この日までは…」(トラック6)、トラブル発生! という雰囲気の「Girl Meets SHI-KA」(トラック7)、とぼけた「ヌ〜ン…」(トラック8)の3曲は、第1話の虎子とのこたんの出会いのシーンに流れた。変拍子を使った「Girl Meets SHI-KA」は『スパイ大作戦』みたいな緊張感のある軽快な曲。「ヌ〜ン…」は日常描写によく使われた曲で、木管とパーカッションのアンサンブルが微妙な空気感を表現している。トラック15「特別にツノをあげよう」、トラック21「よろしくぬん!」なども「ヌ〜ン…」と同じ系統の曲だ。こういう曲をバックにのこたんの奇妙な日常が描かれ、虎子が突っ込むのがおなじみのパターンだった。
男声コーラスが「シーカ」とくり返す「のつ!鹿乃子のこです!」(トラック9)は、のこたんが転校生として教室に入ってくる場面で使用。のこたんのテーマというわけでもなく、「シカあらわる!」といった緊張感のあるシーンによく選曲されていた。「シカッ♪シカッ♪」(トラック10)は女声コーラスによるアイキャッチ曲。
ここまでが主人公2人が出会い、物語が動き出す序盤パート。「シカ」のコーラス曲やとぼけた日常曲、パロディ風の曲など、本作の音楽の特徴(面白さ)がすでによく表れているし、本編のテンポ感も再現されている。
トラック11〜21は第2話と第3話で使用された曲を中心にした構成。
姉が好きなあまり闇落ちしてしまう虎子の妹・餡子のテーマ「暗ガール」(トラック11)、メロドラマ風の「やだ…こしたんてば【ハート】」(トラック13)、シリアスな曲調の悲しみの曲「ツノが生えてる女の子なんて」(トラック16)などが面白い。
「シカー♪シカー♪シカー♪(陽)」(トラック18)は毎回のように使われた女声コーラスの曲。のこたんの突拍子もない行動やのこたんに振り回される虎子の場面などにアクセントを付けるように流れて、なんともいえない面白みをかもしだしている。サブタイトル曲やアイキャッチ曲と並んで印象深く、「『しかのこ』の劇伴といえばこの1曲」みたいな代表曲のひとつである。
軽快な「シカ部っていったいなんです!?」(トラック20)と脱力系の「よろしくぬん!」(トラック21)も使用頻度の高い日常曲。ここまでで、餡子と馬車芽めめがシカ部に参加し、主要キャラクターがそろったイメージだ。
トラック22〜31までは、シカ部をめぐるドタバタをイメージした選曲になっている。
「ここは戦場だぞ!!」(トラック23)、「かかって来いやぁっ!!」(トラック24)、「あれは罠だ!!」(トラック25)の3曲はアクション映画風の緊迫感のある曲。第2話でのこたんが謎の敵に襲撃されるシーンや第5話のシカ部の特訓シーンなどに流れていた。トラック30の「こうなったら武力行使だ!」も同じ系統の曲で、こちらは第3話で虎子が水の入ったペットボトルを並べてシカを威嚇する場面に使用。曲だけだと面白さが伝わらないが、映像との相乗効果で破壊力を発揮する曲である。
本作には特定のシーンを想定して書かれたと思われる曲もいくつかある。
讃美歌風の「主よ御許に鹿づかん」(トラック28)はそのひとつで、第2話でシカの天使がのこたんを迎えに天から降りてくるイメージシーンに流れた。
のこたんが歌う挿入歌「家族になろうよ、日野で」(トラック32)も第4話のみで使用された曲。突然画面がカラオケ映像風になってのこたんの歌が流れるシーンはなかなかシュールだった。
トラック32以降は、こうした使用場面が限られた曲が多く収録されている。その曲調は多彩で、バラエティに富んでいるとも言えるし、カオス度が増しているとも言える。回を追うごとにギャグもパワーアップしていく本作らしい構成である。
トラック33「古き言い伝えはまことであった…(Cervus)」は第5話のシカの大名行列の場面で老婆(犬養ミツ)がつぶやく言葉をタイトルにした曲。『風の谷のナウシカ』のパロディなのだが、曲は『ナウシカ』に雰囲気を寄せつつ、まったく違うものになっているのがすごい。「Cervus」はシカを意味するラテン語である。
トラック34「シカー♪シカー♪シカー♪(陰)」とトラック35「つちのこのこのこのこたんたん」は謎の生物「つちのこ」が登場する第6話で使用。「つちのこのこのこのこたんたん」は「Girl Meets SHI-KA」(トラック7)と同系統の曲で、つちのこの摩訶不思議な生態を変拍子を使って表現している。
トラック36「シカコレ」とトラック37「鹿乃子が見せた幻影だというのか……!?」は第7話のシカコレクションのエピソードで使用。次の「喫茶ツバメ」(トラック38)と「日野になぜシカ!?」(トラック39)は同じく第7話の後半の「喫茶ツバメ」のエピソードで使用された。テクノ風、ウィンナワルツ風、ジャズ風とさまざまな曲調が楽しめる。 第8話の新年の鹿神神社のシーンで流れた「鹿神神社」(トラック40)と「はんにゃ〜ほんにゃらふんにゃ〜シカシカ」(トラック41)、第9話の体育祭のエピソードで使われた「ソイヤ」(トラック42)と「のーこたん♪こーっちこい♪」(トラック43)、第10話の華道部のエピソードを彩る「なんだこの空気は!?」(トラック44)と「花が…生きている…!」(トラック45)。爆笑を誘うシュールな場面の曲が続く。
いよいよ終盤は、最終2話で使用された曲である。
トラック46「伝説のマタギ」とトラック47「TOSOKAISHI」は、伝説のマタギとのこたんとの死闘を描く第11話で使われた。和風マカロニウエスタン風の「伝説のマタギ」に、追う者と追われる者の対決を描写する「TOSOKAISHI」で緊迫感が盛り上がる。
最終回(第12話)、秘密機関「シカの穴」が登場する場面で流れた「それが…シカの穴!!」(トラック48)も緊迫感のある曲。曲の後半に聴こえてくる「シカ、シカ」の男声コーラスが「シカの穴」の不気味さを強調する。いったい、このお話はどこへ向かっていくのか?
クライマックスは、シカ系ゆるキャラとのこたんとの対決だ。トラック49「まさか日野市で会えるなんて」は、北海道のゆるキャラ、キュンちゃんがシカ部にやってくる場面で使われた。キュンちゃんのキャラに合わせた、ほのぼのした曲である。
のこたん最後の活躍は、奈良県のマスコットキャラクター、せんとくんとの対決。トラック50「頂上対決」は、タイトルどおり、のこたんとせんとくんの対決場面に流れたマーチ風の曲。プロレス中継などでおなじみの「スポーツ行進曲」を思わせる曲調が楽しい。なお、せんとくん入場シーンに流れた曲は、せんとくんの公式テーマソング「せんとくんなら知っている」である。
ラストに収録された「野生のシカ」(トラック51)は虎子が歌う挿入歌(イメージは「アイ・オブ・ザ・タイガー」か?)。第12話で虎子がのこたんを特訓するシーンに流れたほか、第12話のエンディングテーマとしても使用されている。本アルバムには主題歌は収録されていないが、最終回を締めくくった曲をラストに収録することで、アルバムがまとまった。
以上、駆け足でサウンドトラック・アルバムを紹介したが、序盤、中盤、終盤と雰囲気を変えて作品イメージを再現した、巧みな構成だと思う。音楽自体もいい。印象的なエピソードやシーンに印象的な曲がつけられているのが、本作の強みであり魅力だ。多彩なアイデアを盛り込んだ音楽がシーンの面白さを何倍にもパワーアップし、同時に、音楽を聴くと名(迷)場面が思い浮かぶ。
そして、耳に残るのはやはり、さまざまな形で歌われる「シカ」のコーラス曲である。本作の音楽イメージと世界観を決定づけているのは「シカ」のフレーズ。「シカ」が世界を作っているのだ。
TVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』オリジナルサウンドトラック
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前々回話題にした“作画プロデューサー”という役職は、自分が作った新しい仕事です!
聞いてください。最近でもまだ俺宛てに大手アニメ会社から「作画監督の仕事をお願いしたいのですが~」との電話が掛かってくるんですよ! 「原画は海外も含めれば何とか撒ける! ただし、それを修正してくれる巧い作監さえいれば!」と。その他、知り合いの業界人からも「ミルパンセで作監お願いできる人いませんか?」とも。
大手制作会社に限って何本も“良い仕事”を受けるだけ受けて独り占めする癖に、作監とかを俺なんかに振ってくるんです。業界全体の人手不足が囁かれるようになって久しい昨今、いまだに半分以上を外撒き(外注)して制作するのがアニメだとでも思っているのでしょうか?
ハッキリ言います。
内製できない仕事を受けるのはもうやめません、大手制作会社さん?
と言う訳で、作監に限らず作画スタッフの人材不足をどう解決するか? 今いる社員スタッフの能力(スキル)を適材適所に巧くパズルして、作画工程の交通整理をし、できるだけ全体の半分のカットは“テイク1”で一発OKにする。半分を効率よく作る代わりに、高難易度なカットはアドバイスと軽いラフを与えて描いた本人にテイク2・テイク3とテイクを重ねて完成に近づけて行く。早い話作監修正が入っていなくても“見れるカット”に仕上げればいい訳で、どんな手を使っても!
スタッフ指導のために必要なラフやアタリを入れたり、カットによっては社内の別の人で作監を手配し、場合によっては自ら作監修正も入れる——それが総作画監督ではない、作画プロデューサーです。
で、もっと詳しく説明しようと思っていたところで、時間! 仕事に戻らせていただきます(汗)!
2月22日(土)に【新文芸坐×アニメスタイル】で『化け猫あんずちゃん』と『きみの色』を上映します。いずれも2024年に公開された劇場アニメーションであり、内容についても画作りについても意欲的な、新鮮な魅力に溢れた作品です。まだご覧になっていない方はこの機会にどうぞ。
トークのゲストは『化け猫あんずちゃん』の久野遥子監督と『きみの色』の山田尚子監督。トークは2作品の上映後です。聞き手はアニメスタイル編集長の小黒祐一郎が務めます。興味深いお話を伺うことができるはず。
チケットは2月15日(土)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトでご確認ください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト( 『化け猫あんずちゃん』『きみの色』情報ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-02-22-1
【新文芸坐×アニメスタイル vol.186】 |
開催日 |
2025年2月22日(土) |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
3800円均一 |
上映タイトル |
『化け猫あんずちゃん』(2024・日=仏/94分) |
トーク出演 |
久野遥子(監督)、山田尚子(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
●関連サイト
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。
『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などについての調査研究を進めています。その調査研究の結果を披露していただくのが、トークイベント「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」シリーズです(以前は「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルで開催していました)。
3月8日(土)昼に「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』11」を開催します。サブタイトルは「片渕監督のハードディスクには何が入っているのかのぞいてみよう編《質問コーナーあり》」。今までのイベントでも片渕監督のハードディスクにある様々な資料、Excelのデータ等を見せていただきました。今回はそのハードディスクがテーマです。果たしてどんなトークが展開されるのでしょうか。
今回のイベントでは「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」で初めて、質問コーナーを設けます。会場にいらしたお客さんに紙を配り、聞きたいことのある方に質問を書いてもらいます。質問はイベント中に片渕監督に答えていただく予定です。質問に答えるコーナーの半分くらいが、配信のない「アフタートーク」になる予定。時間の関係などで全ての質問に答えられない場合があるかもしれません。あらかじめお断りしておきます。
出演は片渕監督、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、短めの「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは2025年2月8日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/308189
会場(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/z7003
配信(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/357967
なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr
第235回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年3月8日(土)昼 |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,800円、当日 2000円(税込·飲食代別) |
監督やアニメーターとして活躍し、様々な作品を手がけてきた北久保弘之さん。1月26日(日)にその北久保さんのトークイベントを開催しました。
続けて第2弾「北久保弘之の仕事2」を開催します。日時は4月13日(日)。会場は前回と同じ、阿佐ヶ谷ロフトAです。
第2弾「北久保弘之の仕事2」では北久保さんのアニメーター時代の活躍、初監督作品である『くりいむレモン』シリーズの『POP CHASER』、さらにオムニバス作品『ロボットカーニバル』を中心にお話を伺います。今回もトークの聞き手は小黒編集長と沓名健一さんが務めます。
前回のイベントで、トーク中に関係者席の方からコメントをいただきました。今回も同様のかたちで進めます。「北久保弘之の仕事2」では関係者席に座っていただく方として、井上俊之さんと毛利和昭さんを予定しています。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは2025年2月8日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/308191
会場(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/9tsma
配信(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/357976
第236回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年4月13日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
北久保弘之、小黒祐一郎、沓名健一 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 2,300円、当日 2,500円(税込·飲食代別) |
こないだ1月28日、毎年恒例の誕生日を迎えて無事51歳になりました。自分みたいな人間でも51歳になれるものなのですね……。
子供の頃などは失礼な話、50代の伯父さんを指して“人生の終盤戦を迎えた人”とか思っていたものです。スミマセン……。が、いざ自分がその年代に突入してみると、意外や意外、20代の頃とは全然違った面白味や人付き合いもあり、十分楽しいです、50代!
仕事も減るどころか増える一方。『沖ツラ』の後も、様々な仕事が目白押し! 発表できるタイミングでまたここで報告させていただきます。
で、本日も忙しくて、仕事に戻らせて頂きます(汗)。次回は落ち着いて書きます!
腹巻猫です。話題の劇場先行上映『機動戦士Gundam ジークアクス Beginning』を観てきました。「こうくるか!」という驚きに満ちた快作です。観終わって思ったのは、劇中で使用された楽曲をそのまま収録したサウンドトラック・アルバムを出してほしいな、ということ。ガンダム音楽の過去と現在が出会う面白いサントラになると思うのです。
今回は昨年(2024年)12月末に発売された『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』のサウンドトラックを紹介したい。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、浅野いにおの同名マンガを原作にしたアニメ作品。アニメーションディレクター・黒川智之、脚本・吉田玲子、アニメーション制作・Production +h.のスタッフで映像化された。
アニメ版は大きく分けると劇場版とシリーズ版の2種類がある。劇場版は2部構成で、2024年3月に「前章」が、同5月に「後章」が公開された。シリーズ版は全18話で構成され、2024年12月から各種配信サイトより配信されている。
黒川アニメーションディレクターの話によれば、最初から劇場版とシリーズ版の2種類を作ることが決まっていて、シリーズ版18本を作ってから劇場版を作ったのだそうだ。劇場版はシリーズ版全体の約3分の2の長さ。劇場版に含まれないエピソードがシリーズ版に含まれているほか、一部のエピソードの順序や物語のラストも異なっている。が、基本的には同じ物語である。
上空に直径5千メートルの巨大な宇宙船(母艦)が浮かんでいる東京。3年前に突如飛来した母艦は、米軍の攻撃により動きを止めたが、それ以来、渋谷上空を回遊し続けている。どこから、何のために来たのかも謎のままだ。
変貌してしまった東京で、高校生の小山門出と中川凰蘭は、それまでと変わらない日常を続けていた。ある日、母艦から発進した中型宇宙船が自衛隊によって撃墜され、門出たちの友人の少女が巻きこまれて死亡する。2人の変わらないはずの日常が、少しずつ変わり始めていた。
「頭上に巨大宇宙船が浮かぶ日常」という設定が魅力的。学園青春もの風に始まるけれど、物語はどんどん思わぬ方向に転がりだし、最後は大スペクタクルで終わる。しかし、中心となるのは門出と凰蘭の友情の物語。SF的な仕掛けが多いほか、現実の事件と重なるような描写もあり、多彩な読み取り方ができる作品である。
音楽的なトピックとしては、主題歌をシンガーソングライターの幾田りらとあのの2人が歌い、主役2人の声も担当したことが大きな話題になった。
劇中音楽(劇伴)は、アニメ『スペース☆ダンディ』『ユーリ!!! on ICE』『キャロル&チューズデイ』などに楽曲を提供している作曲家・梅林太郎と、yuma yamaguchi、犬養奏、清竹真奈美が共同で担当している。
ただ、筆者の印象だが、本作は主題歌に比べて劇中音楽が語られる機会があまりに少ないように思える。劇場版パンフレットにもサントラCDのブックレットにも作曲家のコメントは掲載されていない。どのようなコンセプトで劇伴は制作されたのか? ここからは、本編の音楽演出とサントラに収録された楽曲から読み解いてみたい。
筆者が聴いた限りでは、劇中音楽は映像に合わせたフィルムスコアリング的な楽曲とTVアニメ的な溜め録りの楽曲の組合せで作られているようである。シリーズ版が先行して制作されたそうだから、溜め録り方式を基本に、重要なシーンではフィルムスコアリングを採用したのだろう。
サウンド的にはどうか? こうした作品であれば、オーケストラサウンドを基調とした、マーベル作品のようなスケールの大きな音楽がついてもおかしくない。が、実際にはシンセサイザーと生のストリングス(弦楽器)、ピアノ、ギター、ドラムスを組み合わせたサウンドで作られている。曲調は抑え気味で、アンビエントやミニマルとまではいかないまでも、淡々とした、メロディアスでないタイプの曲がほとんどだ。あえて、観客の感情を動かすことを避けたみたいに。
この音楽のねらいはなんだろうか。ヒントは劇場版パンフレットに掲載された黒川アニメーションディレクターのコメントにある。
それによれば、原作者の浅野いにおからは「作品のドライかつクールな目線を大切に、アニメで過度にドラマティックに、ウェットにはしたくない」という要望があったという。それを受けて、アニメもリアル感のある映像を作ることを意識した。別の言い方をすれば、いかにもSFアニメっぽい、ケレン味のある派手な演出は避けたということだろう。
また同じく劇場版のパンフレットに掲載された、脚本の吉田玲子のコメントには、浅野いにおがアニメ『けいおん!』から触発されて原作を描いたという話が語られている。吉田はこう続ける。「なるほど、これは世紀末の『けいおん!』なんだな、と」。
「頭上に巨大宇宙船が浮かぶ日常」を『けいおん!』のようにさりげなく、今を生きる少女たちの日常のように描く。これが本作のねらいなのだと思う。
だから音楽も、ことさらにSFアニメ風にするのではなく、日常アニメで流れているような曲調をねらったのではないか。本作の劇伴は、日常シーンに流れる曲とSF的なサスペンスシーンに流れる曲とのあいだに、サウンド的な違いがほとんどない。どちらも、シンセサウンドを基調に、シンプルなフレーズのくり返しで構成された曲がほとんどだ。非日常と日常がシームレスにつながっている。それが『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の音楽が描く世界である。
本作のサウンドトラック・アルバムは2024年12月25日に「『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで日本コロムビアからリリースされた。収録曲は以下のとおり。
全25曲。最後に収録された「SHINSEKAIより」はシリーズ版の主題歌。劇場版主題歌は収録されていない。しかし、劇場版とシリーズ版では、ほとんどのシーンで選曲も共通しているから、これは劇場版とシリーズ版共通のサントラと考えてよいだろう。
それにしても、収録曲25曲(うち劇伴は24曲)というのは少ないのではないだろうか。
劇中に流れた曲を調べてみると、サントラに収録されていない曲も多い。おそらく全部で40〜50曲くらいの楽曲が用意されたはずである。
話題の作品なのだから、サントラ盤は2枚組にして、なるべく多くの楽曲を入れたほうがよいのではないか。それでも売れるはずだ。どうしてこういう構成になったのか? もやもやするが、このことについては、あとでもう一度考えてみたい。
以下、劇場版をベースに収録曲を紹介していこう。
まず全体の構成であるが、トラック1〜18が劇場版の「前章」、トラック19〜24が「後章」に沿って選曲されているようだ。「前章」のボリュームが大きいのが特徴である。
1曲目「Chime」は、学校の屋上で語らう門出と凰蘭の頭上に巨大な母艦が見える場面に流れる曲。この曲の終わりとともにメインタイトルが出る。本作の世界観を象徴する印象的なビジュアルのシーンである。チャイムのようなキラキラした音色と母艦の威容を表現する低音のサウンドが合体している。日常と非日常の融合を感じさせる音楽だ。
トラック2「Clock」は、使用順は前後するが、劇場版が始まってまもなく描かれる、門出が授業を受けるシーンに流れた曲。ミニマル的な同じ音型のくり返しによる日常曲である。日常曲ではあるが、聴き続けていると、なんとなく不穏な気分になってくる。
トラック3「Chat」は80年代っぽいシンセの音色とリズムを組み合わせた楽曲。タイトル通り、門出と凰蘭と友人たちとのたわいない語らいの場面に使用されている。トラック4「Not here」もシンセの音色とリズムによる日常曲。門出が学校の廊下で担任の渡良瀬に進路の相談をする場面に使用された。チップチューン的なサウンドの中から、門出のぎこちない心情が伝わってくる。
トラック5「Crimson」はひと言で表現できない複雑な心情を描写する曲。シンプルなフレーズをくり返すピアノにストリングスのうねりが重なり、切実な想いを表現する。門出が車の中で母親と口論になるシーン、門出が凰蘭に「あなたは私の絶対なの」と告げるシーンなどで流れている。ウェットになりすぎない曲調で思春期の少女の気持ちを表現する、本作らしい1曲である。
次のトラック6の「Almost late」は、学校に遅刻しそうになった門出が走って登校する場面に流れたハイテンションな曲。この曲はフィルムスコアリングで作曲されたようだ。
トラック7「Japanese pancake」は門出たちがお好み焼き屋に集まる場面に流れていた80年代テクノポップ風の曲。
アルバムのここまでが、いわば門出と凰蘭の日常を描写するパート。
次のトラック8「On edge」から物語が動き出す。「On edge」はリズム主体のサスペンス系の曲だが、本編では使われていないようである。
トラック9「We」は静かなピアノソロから始まる。シンセとストリングスが加わり、切ない心情があふれだす。「前章」「後章」を通して、門出と凰蘭、門出と渡良瀬の場面に選曲されていた。特に「後章」での門出と渡良瀬の別れのシーン、門出が凰蘭に「おんたんは絶対ですから」と言うシーンが印象深い。
自衛隊が中型宇宙船を迎撃する場面に流れたトラック11「Barricade」を経て、ふたたびピアノ主体の曲が門出たちの心情を描写する。
トラック11「Butterfly」は門出が友人のキホの死を知る場面に使用。淡々とした曲調ながら(いや、だからこそ)、胸がしめつけられる曲だ。劇中では途中から入るストリングスをカットして使用されている。
それに続いて、キホの死を知らないかのようにふるまっていた凰蘭の悲しみを門出たちが知る場面に流れたのがトラック12「My Friends」。やさしい曲調が友人同士の楽しい思い出をよみがえらせ、かえって悲しみを増幅させる。一瞬の静寂をはさんでピアノのフレーズが変化する部分は場面展開にぴったり合っている。この曲もフィルムスコアリングで作られたのだろう。
トラック13「Flashback」から、また物語が転換する。
「Flashback」はタイトルどおり、過去に遡る場面に使用された曲。少年・大場圭太の姿を借りた宇宙人(めんどうなので以下「圭太」と表記)が、凰蘭の過去(正確には並行世界の凰蘭の過去)を見る場面に流れている。本作のカギとなる重要な場面の音楽だ。浮遊感のある幻想的なサウンドに効果音的なシンセのフレーズが挿入され、並行世界への旅に緊張感を与える。「後章」で圭太がマコトに凰蘭の過去を見せる場面にも使われた。
次のトラック14「Discord」は過去の門出と凰蘭が海岸でヘルメット姿の宇宙人を助けるシーンに使用。シンセのリズムにキラキラした音色のメロディが重なる。哀しみと不安と焦燥感が入り混じったような、不安定な心情を描写する曲である。
トラック15「gloom」は、ジュリア・ショートリードのボーカルをフィーチャーしたミステリアスで美しい楽曲。(たぶん)本編未使用曲である。この曲が流れるシーンを観てみたかった。
それに続くのは、並行世界で門出が凰蘭を初めて「おんたん」と呼び、2人が親友になる場面のトラック16「If」、並行世界での門出と凰蘭の辛い別れのシーンを彩ったトラック17「Unanswered」。どちらも、門出と凰蘭の大切な場面に流れた曲だ。2曲ともアンビエント風の落ち着いた美しい曲調で作られているのが本作らしい。
そして、トラック18「In Half a Year」は「前章」のラスト、自衛隊の攻撃によって破壊された中型宇宙船から、無数の宇宙人が空中に投げ出される場面に流れた曲。緊迫感のある前半から、崩れていく日常を惜しむかのようなゆったりしたストリングスの旋律に展開し、終盤はストリングスの刻みで危機感を盛り上げる。「人類終了まであと半年」の文字がドン!と出て「前章」は終わる。シリーズ版では、ここまでが第8話にあたる。
トラック19「hello」からは「後章」で使われた曲。「hello」は凰蘭が大学のオカルト研の先輩の部屋で圭太と出会う場面に流れている。「前章」で流れた「Clock」「Chat」などと同じ系統の日常曲だ。
いよいよアルバムも終盤。トラック20以降は人類と宇宙人とのあいだの葛藤、闘争を描く曲が続く。
トラック20「Mothership」は「後章」の序盤、過激派グループに所属する小比類巻健一とその仲間が宇宙人を殺戮する場面に使用。アップテンポのリズムと不安なサウンドでサスペンスを盛り上げる正統的映画音楽風の曲だ。「後章」の終盤で、圭太が母艦内に入ろうとする場面にもこの曲が使用されている。
トラック21「Genocide」は居酒屋に居合わせた門出とサラリーマンらが宇宙人との共存をめぐって論争する場面に流れた。低音のピアノの響きがわかりあえないやりきれなさを表現する。
トラック22「Operation」は、大学構内に逃げ込んだ宇宙人を自衛隊員が掃討し、学生たちがショックを受ける場面に使用。スペーシーな導入から、リズム主体のドライな曲調に展開する。後半は効果音的な不気味なサウンドで不安感、威圧感を強調する。情感を抑え、冷酷で不条理な現実を表現した曲である。
アルバムの終盤を締めくくる2曲は、凰蘭の心情に寄り添った音楽だ。
トラック23「Backyard」は、オカルト研の合宿に参加した凰蘭と圭太が手をつないで海岸を歩き、語らうシーンに使用。凰蘭が圭太にキスする場面まで流れ続ける。ピアノのシンプルな旋律からストリングスが加わり、情感豊かに盛り上がる。アルバムに収録された音楽の中でも格別エモーショナルな、本作の音楽の中では異色とも呼べる曲調の楽曲である。しかし、凰蘭が珍しく素直な心情を見せるこのシーンには、本作の基調であるドライな音楽ではなく、ある程度ウェットな音楽が必要だったのだろう。この曲は、並行世界の凰蘭が門出を守るために過去に戻る場面にも使用された。
トラック24「Decision」は、シンセが奏でる、ふわっとしたサウンドの曲。上記のシーンとは逆に、圭太が凰蘭に突然キスするシーンに使用されている。
劇場版はこのあと母艦の爆発をくいとめようとする圭太を中心にしたスペクタクルになっていくが、その場面で流れたボレロ風の曲などは収録されていない。挿入歌「あした地球が粉々になっても」が流れたあと、空をただよう圭太を自衛隊のヘリが助けようとする場面に、アルバムの1曲目「Chime」がふたたび流れる。始まりと終わりを同じ曲が飾ることで、門出と凰蘭たちの非日常的な日常がこれからも続くことが予感される。考えさせられる音楽演出だ。そのあとの、門出と凰蘭の前に圭太が現れて「ただいま」と言う場面には、トラック16「If」の終盤の部分が使用された。
本アルバムの構成を改めてふりかえると、SF的なドラマよりも門出と凰蘭の日常と友情のドラマに焦点を絞って選曲されていることがわかる。個人的には、ほかにも収録してほしかった曲があるが、そうすると全体の雰囲気というか、アルバムのコンセプトが崩れてしまうのだろう。このアルバムはサウンドトラックであると同時に、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の世界を門出と凰蘭の主観から再構成したイメージアルバムのようなものになっている。先に「あとでもう一度考えてみたい」と書いた話に戻ると、「頭上に巨大宇宙船が浮かぶ日常」を音楽で表現したのが、この選曲と構成なのだろう。そういうコンセプトのアルバムなのだと筆者は解釈した。
とはいえ、サントラファンとしては「もっと多くの曲を収録してほしかったなあ」というのが偽らざる心境だ。
たとえば、「前章」で門出と凰蘭が夜道を歩く場面などに流れていたピアノのリリカルな曲や、門出と凰蘭がタケコプターのような宇宙人の道具で空を飛ぶ場面の軽快な曲(シリーズ版では第5話のエンディングに使用された)など、音楽単独で聴きたい曲がまだまだある。この連載では何度も同じことを書いているが、本作も、いつの日か未収録曲を補完した完全版(もしくは拡大版)サントラをリリースしてほしい。それだけの価値はある作品だと思うのである。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』オリジナル・サウンドトラック
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前回の続き『沖ツラ』OP話。
c-005、006、007は森亮太君の原画で、作監を板垣。森君は我社随一の動かし系アニメーターで、今回も良い仕事をしてくれました。実はこの踊りバックの沖縄コラージュは指定が大変で、作画以外のスタッフからするといわゆる“ズルい1カット”というヤツ。各カットそれぞれBGは4枚ずつで、撮影指定も同じく4枚ずつ。ちなみに撮影指定&タイムシートはc-005のほうを俺が書き上げて、それを森君に「こんな感じで006、007はお願い~」とお任せ。仕上げ素材も結構な数。皆さんのお陰で密度の高いものになりました!
c-008 これは板垣担当、と言いうほどのことではなく、レイアウトと撮影指定・タイムシートを提出して終わり。ちなみにサブタイトルは全部原作者の空(えぐみ)先生が出してくださり、俺の方から“第○話~”ではなく、これも“沖縄の数え”でくださいと提案させていただき現在の形になりました。
c-009、010 新人の堤直哉君に原画を振り、作監を篠衿花さん。実はここの歩きはダンスの振り付けの一部。ダンスムービーをご披露できる機会がありましたら確認してみてください。c-010の方は堤君上り、一度ボツにさせて貰いました、元気がなかったから。で、自分の方でザーっとラフを描いてそれに合わせてもう一度原画を描き直し、篠作監へ。
c-011 篠さんの直原画(作監不要)。鉄さんのポーズもダンス振り付けより。
c-012、013 こちらは本作のキャラクターデザインを担当した吉田智裕君の原画。で、「もう一息“元気”に」と篠作監入れてフィニッシュ。実はここも振り付けの一部。以外にこのOP、そこそこダンスで埋まっているのです。
c-014 また山本(直幸)君の原画に、板垣作監。修正大変で、本人に色々注意しました。多くは語りません。
てとこで、「何?」と思われたアニメ業界人の方、いらっしゃるのではないでしょうか? 作監はカット毎バラバラで、キャラデ担当が描いた原画を作監がさらに修正したり、実務上もクレジット上も総作画監督はなし。これが、今回の板垣——もう一つの役職“作画プロデューサー”です。つまり、全作画工程を、言わば交通整理する役割。
……時間です(汗)。詳しい事はまた次回。
前回も言いましたが『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』放映中!!
どこから語り始めていいか、考えている時間がないため、オープニングから!
OPのダンスはアニメ化に際して、原作者・空えぐみ先生のリクエストだったと記憶しています。「OPは是非躍らせて欲しい」と。そしてさらに「“沖縄”を詰め込んだモノにして欲しい」とも。
で、できたのが今作のOPです。コンテ・演出・作画監督と全カット分のレイアウトは自分でやりました。本編と同時進行からくる現場リソース的に、空いた時間に俺の方でコツコツと背景原図、それと同時にキャラのポーズ・動きのラフを積み上げていって、手の空いたスタッフを見つけては「このレイアウトでー」と原画を発注。で作監は部分的に、篠(衿花)さんに手伝ってもらって完成しました。キャラクターたちが皆可愛いので、描いてて何の苦もなく楽しいばかりの仕事で、概ね予定どおりの仕上がりになってると思います。
主題歌はHYさんの「大大大好き」で、サビがとても耳に残る良い曲だと思いました。
で、ファーストカットc-001は俺の一発原画。シーサーのキャラ、ゆるくって好きです。c-002,003,004もこちらでラフを入れて、山本(直幸)君に原画を振りました。
で、すみません(汗)、仕事に戻ります故、続きは次回。
杉井ギサブロー監督と言えば『宮澤賢治 銀河鉄道の夜』『紫式部 源氏物語』『タッチ』『悟空の大冒険』等、素晴らしい作品を残してきた名監督です。
その杉井監督をゲストに迎えたトークイベントの第二弾を、2025年2月16日(日)に開催します。聞き手は小黒編集長が務めます。
前回のテーマは「アニメとアニメーション」でしたが、今回のテーマは「映画とアニメとアニメーション」。作品としては『ナイン』と『タッチ』と『宮沢賢治 銀河鉄道の夜』について触れる予定です。
今回のイベントも配信があります。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは1月18日(土)12時から発売。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
なお、前回の杉井さんのトークイベント「第230回アニメスタイルイベント 杉井ギサブローとアニメとアニメーション」は現在もアニメスタイルチャンネルで視聴できます。アニメスタイルチャンネルは会員向けのサービスです。
「第230回アニメスタイルイベント 杉井ギサブローとアニメとアニメーション」(アニメスタイルチャンネル)
https://www.nicovideo.jp/watch/so44334898
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/305597
会場(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/ta7g6
配信(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/354221
第234回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年2月16日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
杉井ギサブロー、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 2,300円、当日 2,500円(税込·飲食代別) |
腹巻猫です。本年もよろしくお願いいたします。
昨年はさまざまなコンサート、イベントに足を運びましたが、11月20日に恵比寿LIQUID ROOMで開催された牛尾憲輔さんの劇伴作家活動10周年記念ライブ「behind the dex」はなかなか衝撃的な体験でした。オールスタンディングのホールを満杯にした観客が『チェンソーマン』『DEVILMAN』『ダンダダン』『ピンポン』などの劇伴で盛り上がるさまは、まるでクラブイベントのよう。絶賛放映中だった『ダンダダン』の曲は観客の反応も大きかったです。今回はその『ダンダダン』の音楽について。
『ダンダダン』は2024年10月から12月まで放映されたTVアニメ。龍幸伸による同名マンガを原作に監督・山代風我、アニメーション制作・サイエンスSARUのスタッフで映像化された。霊媒師の家系に生まれた女子高校生・綾瀬桃(モモ)と宇宙人の存在を信じるオカルトマニアの男子高校生・高倉健(オカルン)が、協力して怪事件に挑むSFファンタジーである。
随所に凝った映像演出や力の入った作画があり、目が離せない。モモとオカルンが口論しながらも互いを意識し、接近していく展開が学園ラブコメのようでこそばゆいし、登場する宇宙人や怪異などに過去の特撮ドラマやアニメ、劇場作品などへのオマージュが見られ、懐かしい味わいを出している。オカルト、SF、ホラー、学園青春ものなど、さまざまな要素が入り混じった、多彩な楽しみ方ができる作品だ。
牛尾憲輔が手がけた音楽については、放映中からアニメ雑誌などにインタビューが掲載されており、そのユニークな作り方がとても気になっていた。
監督の山代風我は、「昔の円谷プロダクション作品の『ウルトラQ』から『怪奇大作戦』あたりの空気感を映像で出していきたい」と構想を話した上で、音楽は「使用したいクラシック音楽があるくらいで、あとは何でもありの世界観のように、自由にやってほしい」と牛尾に伝えたという。
音楽作りは、牛尾憲輔が原作、脚本、設定画などの資料をもとに、イメージアルバムのような形で数曲を制作し、監督たちに聴いてもらうことからスタートした。幸い、最初から互いに考えていた方向性が合致し、音楽メニューの作成、楽曲制作へと進んだ。牛尾憲輔はほかの作品でもこんな進め方で劇伴作りをしているのだそうだ。
『ダンダダン』はさまざまな過去の作品やカルチャーへのオマージュにあふれた作品である。牛尾はインタビューで本作の印象を「あらゆるカルチャーをリミックスするような感じ」と語っている。その感じを音楽でも再現するために、さまざまなジャンル、時代の音楽をリミックスするスタイルを考えた。
と書くと、既存の音楽のスタイルを模倣したり、取り入れたりして新曲を作る手法が思い浮かぶが、牛尾憲輔が試みた方法はそう単純ではない。
牛尾憲輔が選んだ手法は「サンプリング」。既存の楽曲を取り込んで、加工したり、新しい要素を足したりして、独自の楽曲に仕上げていく作り方だ。現代のテクノやダンスミュージックではおなじみの手法である。
ユニークなのはここからだ。サンプリングにはもとになる楽曲が必要になる。しかし既存の楽曲は権利の問題などで自由に使えない。そこで、牛尾は自分でサンプリング用の楽曲を作り、それを加工して新たな曲を作るという二重の手間をかけたのである。
たとえば、第1話でモモが「(俳優の)高倉健のような男」を探して学校内を歩き回る場面にかかる「tiger and flower」という曲。高倉健が主演した任侠映画の主題歌のような曲を作曲し、それをサンプリングしてローファイ・ヒップホップ風に仕上げたという。単なるパロディ、パスティーシュではなく、その時代、その作品へのリスペクトをこめた楽曲をいったん作って、そこから現代に通用する楽曲に昇華させているのだ。
しかも、サウンド感もその時代の楽曲らしくするため、あえてレコード盤ぽい音質やブラウン管テレビから流れてくるような音質でサンプリング用の楽曲を制作している。多くの曲をこうしたやり方で作ったため、「ほとんどの曲で通常の倍の手間がかかっている」と牛尾憲輔は語る。
「ふつうに○○風の曲を作るほうが楽だし、早いし、ほとんどの人は違いに気がつかないのでは?」と考える人も多いだろう。が、それでも作り方にこだわる。コンセプトや作る過程に意味があると考える。牛尾憲輔はそういう作家である。
本作のサウンドトラック・アルバムは2024年12月18日に「『ダンダダン』オリジナルサウンドトラック」のタイトルでアニプレックスから配信とCD(2枚組)でリリースされた。
収録曲は以下のとおり。
Disc 1
Disc 2
全33曲。インタビューなどによれば、牛尾憲輔が本作のために制作した楽曲はこれですべてである。
最近は1クールのアニメでも40〜50曲を作ることが多いので、曲数は少なめだ。しかし、1曲1曲が濃密であるのと、多くの曲が2分から3分台の長さなので、物足りない感じはない。
全体の構成は、ディスク1がおおむね第1話から第4話までのイメージ。モモとオカルンが出会い、妖怪ターボババアが仲間に入るまでのエピソードで使用された曲が収録されている。ディスク2は第5話以降に登場するキャラクターや怪異をテーマにした曲が並ぶ。物語に沿いつつ、ディスク1とディスク2で雰囲気を変えた巧みな構成だ。
ディスク1から紹介しよう。
1曲目「code:DDD」は本作のメインテーマ。「ダンダダン」と聞こえるリズムをベースに、不穏なシンセサウンドが加わり、さらに別のリズムが重なってダンスミュージック風に発展する。牛尾憲輔のコメントによれば、異なるジャンルのベースやドラムがサンプリングされているとのこと。本作の主題歌「オトノケ」も「ダンダダン」というフレーズから始まるので、意識したわけではないだろうが、主題歌と劇伴のサウンドが呼応したような形になっている。
このメインテーマのバリエーションがトラック9の「code:DDD (Ver.H)」とディスク2のトラック12「code:DDD (Ver.O)」。「(Ver.H)」はホーミーを、「(Ver.O)」はお経をミックスした曲になっている。呪文のようにも聞こえる人の声が、楽曲に妖しさ、不気味さを加味している。
トラック2の「a slice of peach」はモモのテーマ。しだいに重なる複数のリズムと女声ボーカルによる、はじけた曲調のナンバーである。ボーカルの歌詞はよく聞き取れず、何を歌ってるのかわからないが、それもねらいなのだろう。
次のトラック3「okarun’s file」はオカルンのテーマ。シンセサウンドによるSFホラー音楽風の曲である。90年代の人気海外ドラマ「Xファイル」あたりを思い出してしまう曲調だ。
先に紹介したトラック4「tiger and flower」は、任侠映画主題歌風の原曲がしだいに変形して、どんどん印象が変わっていくのが聴きどころ。
トラック5「seiko」はモモの祖母で霊媒師の星子のテーマ。ミステリアスに始まり、中盤はディスコ風の曲をサンプリングして軽快に、終盤はさらに曲調が変わってテクノロック風に変化する。サントラCDの解説書に掲載された牛尾憲輔のコメントによれば、「3曲分の労力をかけている」そうだ。
トラック6「serpoians」は人間の女性をねらう宇宙人・セルポ星人のテーマ。ループするギターのフレーズとエコーがかかったパーカッションの組合せが、妖しく奇妙な宇宙人のイメージを伝える。「ウルトラQ」「アウターリミッツ」などの60年代SFドラマの香りがある曲だ。
トラック8「(un)lucky cat」はにぎやかなラテン風の楽曲をベースにしたナンバー。女声ボーカルが入って、お祭りさわぎみたいな雰囲気になる。この曲はモモとオカルンのコミカルな場面によく選曲されていた。
トラック9「code:DDD (Ver.H)」からは、一気呵成という感じで、モモ&オカルンと怪異との対決が描かれる。
アップテンポのビートがループするトラック10「on the edge」は、ピンチの場面によく流れた曲。ほぼリズムのみの楽曲だが、よく聴くと複数のビートが重なり緻密に構成されていることがわかる。
トラック11「like a fire」からトラック14「breakthrough」まではバトルシーンでおなじみの楽曲。「like a fire」「paranormal funk」「breakthrough」は70〜80年代ディスコやファンク風の楽曲をベースに、現代的なダンスミュージックに仕上げている。バトルシーンにダンスミュージックが流れるのが本作の特徴で、それが高揚感を生むとともに、ユーモラスな味わいを出す効果をあげている。
同じくバトルシーンに流れるトラック12「william hell overture」は、よく知られたクラシック曲「ウィリアム・テル序曲」と「天国と地獄」をベースにした曲。もともとは「それっぽい曲を」という注文だったのを「そのまんま使ったほうが面白い」と提案し、いったんクラシック的な演奏を録音したのち、サンプリングしてハウス風に加工したのだそうだ。
怪奇現象を描写する不気味なトラック15「the tunnel」に続き、トラック16「the girls」は第4話で使用された曲。モモとオカルンが非業の死を遂げた少女たちを悼む場面に流れた鎮魂の曲である。この曲のように、シリアスな心情や事件を表現する曲は、サンプリングではなく、ストレートな手法で作曲されている。
ディスク1の最後に収録されたトラック17「turbo granny」はターボババアのテーマ。前半はホラー映画的なシンセサウンドで「怖さ」を前面に押し出し、後半は軽妙なリズムに合いの手やねこの鳴き声を加えた曲調でコミカルさを打ち出す。ターボババアのキャラクターの変化を1曲の中に凝縮した曲である。
ディスク2は、モモとオカルンの内面を表現する「momo」(トラック1)と「okarun’s life」(トラック2)から始まる。どちらも思春期の高校生の心情に寄せた繊細なサウンドの楽曲になっている。
次の「more than friends」(トラック3)と「less than lovers」(トラック4)は、タイトルどおり「友だち以上」「恋人未満」の2人の関係を表現する曲。青春映画風のポップな「more than friends」に対し、「less than lovers」は『僕の心のヤバイやつ』に通じる甘酸っぱい香りがする。
80年代の化粧品のCM音楽風に作ったというアイラのテーマ「aira」(トラック5)、70〜80年代シンセミュージックをベースにしたような「can’t take it anymore!!」(トラック6)などは本作の明るい面を代表する楽曲だ。
トラック8「the crawling ghost」からトラック11「acrobatic silky」までは、放映時に大きな反響を呼んだ第7話で使用された楽曲が並べられている。
モモとオカルンが妖怪アクロバティックさらさら(アクさら)から逃げる場面に流れた「the crawling ghost」とモモとオカルンが死んだアイラの蘇生を試みる場面の「curse」(トラック9)は、怪異を描写する曲としてほかのエピソードでも使用されたナンバー。
アクさらの過去が描かれる場面の「love theme」(トラック10)とアクさらとアイラの別れの場面に流れる「acrobatic silky」(トラック11)は、このエピソードに沿って書かれた曲だ。特に「love theme」はフィルムスコアリングで書かれた4分30秒に及ぶ曲で、本作の音楽の、そして本アルバムの一番の聴きどころと言ってよいだろう。
アルバムの終盤は、第10話以降で流れた印象深い曲が収録されている。
トラック13「jiji!」は第10話で登場するモモの幼なじみで初恋相手のジジのテーマ。能天気な曲調がジジのイメージにぴったり。
「spoken spell」(トラック14)は第9話のセルポドーバーデーモンネッシーとのバトルシーンに、「taro and hanako」(トラック15)は第11話と第12話の人体模型タローとハナのエピソードで使用された。
そして、「the kitos」(トラック16)は、第12話でモモとオカルンが温泉街にやってくるシーンで使われた曲。モモたちが出会う怪しい人々、鬼頭家の一族のテーマであり、なんとなく劇場作品「犬神家の一族」のテーマを思わせる。これがアルバムの最後の曲。本編にならって、サントラも「次回(第2期)に続く」という雰囲気で終わるのがニクい。
なお本作の第5話では、モモとオカルンがお互いを探して学校の中を歩き回るシーンに、フェルナンド・ソルのギター曲「モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲」が使用されている。多くの人が指摘しているとおり、これは「怪奇大作戦」第25話「京都買います」のオマージュだろう。ここはサンプリングでは意味がない。ストレートな楽曲の引用が効果的だった。
失敗すると単なるパロディになってしまいそうなサンプリングという手法を、徹底した作りこみと絶妙なバランスでオマージュに昇華させているのが、『ダンダダン』の音楽のユニークですぐれたところである。2025年7月からの放送が決定した第2期でも、同じ方向性の音楽が聴けるのか? それとも新たな試みが行われるのか? 今から楽しみでならない。
「ダンダダン」オリジナルサウンドトラック
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『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(略称・沖ツラ)』が放映開始しました!
空えぐみ先生(新潮社 くらげバンチ)の同名コミックのアニメ化です。原作の誰も傷つけない優しい笑いを巧くアニメに落とし込もうと頑張っています。是非観てください!
そして、今年はもう幾つか企画が動いているので、その都度続報を!
そしてさらに今年からデアゴスティーニより、『特捜最前線 DVDコレクション』が発売開始! 念願の“全話”! 何せ全509話で全170巻!? しかも隔週刊行で7年間楽しめる!! 長坂秀佳先生作品~109話分が蘇る!! 夢のよう!! 途中で途切れないことを切に祈りつつ、今年も宜しくお願いします!
「今年も、忙しくて楽しかった!」と言い続けて50歳が終わりを迎えようとしている板垣です。年が明けて1月28日で51歳で、この連載も有難いことにそろそろ900回! 18年も続けていることになります。だから何だ? と言うほど広がる話題でもなく、ただ月並みに「時が経つのは早いな~」と。
取り敢えず、
来年早々より『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』放映開始!
で、さらに次作の発表も? まだ情報は流せませんが、2025年も忙しくなることだけは決定事項です。
2025年最初の【新文芸坐×アニメスタイル】は映画『クレヨンしんちゃん』です。
1月19日(日)に第4作『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(本郷みつる監督/1996年)、第8作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』(原恵一監督/2000年)を上映します。【新文芸坐×アニメスタイル】では何度も映画『クレヨンしんちゃん』を上映してきましたが『嵐を呼ぶジャングル』はこれが初めてのはず。「初笑い」のテーマに相応しいタイトルとしてセレクトしました。両作とも貴重な35mmフィルムでの上映となります。
それぞれの上映に、本郷みつる監督と原恵一監督のトークがつきます。『ヘンダーランドの大冒険』では上映の後にトークを、『嵐を呼ぶジャングル』では上映の前にトークをやります。
チケットは1月12日(日)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(「嵐を呼ぶ初笑い!クレヨンしんちゃん」情報ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-01-19-2
【新文芸坐×アニメスタイル vol.185】 |
開催日 |
2025年1月19日(日) |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
2300円均一 |
上映タイトル |
『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(1996/97分/35mm) |
トーク出演 |
本郷みつる(監督)、原恵一(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
前回の続き。是非りんたろう監督の本『1秒24コマの僕の人生』の感想を! と思っていたのですが、まだ全部読めていないくらい、今忙しくて、今回もいつもの如く“忙しい”の話を短く。
50歳になってまだまだ仕事がいただけているのは、本当に有り難い話で、来年も何作かを同時進行で動かさなくてはならず、まだまだ楽しくなりそうです!
20代の頃は、皆さんそうだと思うのですが、まさか自分が50歳になるなんて微塵も思ってもみなかったし、もしそうなったとしても、やりたいことはあらかたやり終えて残された仕事を細々とこなして食っていけたらいいな~などと思っていましたが、全然ダメ! やらなきゃならない(と思っている)こと、半分もできていない! 今年こなしたいと思っていた仕事すら、こなせずに来年に持ち越し! ま、そんなもんなんでしょうね、人生とは。
そもそも俺自身は大した人間だと思っていません。己の人生にも高学歴・高収入を狙うとかいった過剰なプレッシャーをかけてもこなかったし、こんな自分程度のアニメ監督でもいまだに何某かの仕事ができて暮らしていけている現状を続けて一生を終えられれば、「本当に幸せな人生だった」と、死ぬ瞬間思えるのでしょう、誰も恨むこともなく。
今の自分は誰も恨んでないし、嫌な思い出も「あれはあれで良かったのかも」くらいには考えられるようになりました。例えば、10数年前の監督降板の時は「自分は悪くない!」と周りに叫んだし、手間かけて事の経緯を委員会周りから聴き込みしてくださったスタッフさんもいて、その方からも「君は悪くないよ」と慰められもしました。「10年経ったらその時のあらましをどこかで」~とかも、自分も人間なのでそれくらいは考えました。ところが、今になって語るとしたら、もう恨み辛み話とかじゃなく、ただのしくじり先生——“監督業での失敗・反省からの注意事項”的な話にしかならないと思います。もうすでに興味ある人もいない(と思う)話、今さら語るのもね……?
ハッキリ言いますが、あの時のことは100%全部、自分が悪いです! 関係各所、スタッフの皆様、本当にご迷惑お掛けして、申し訳ありませんでした!
てのが、現在の心境。それでも悪口言う人は言うので、どうぞ。こちらは構っている時間ありません! 自分は自分で、目の前のいただいた仕事を楽しく、できる限り誠実にこなしていくのみ。仕事、仕事…!
とは言っても、目の前の仕事が忙しいばかりでは、新しいモノは作れないので、来年こそは遊ぶ時間を作る努力もしなければと思いつつも、コンテ渡して現場のスタッフに任せて自分だけ自由出勤なんてできない性分なもんで。
今回も何が言いたいのか纏りませんでしたが、
まずは、新年早々『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』放映開始になるので、是非観てください!
で、明日は次作品のアフレコが“朝10”なので寝るとします。
腹巻猫です。昨年から今年にかけて、藤子・F・不二雄生誕90周年を記念したさまざまな企画が実施される中、映像関係で注目を集めたのが、今年配信された新作アニメ『T・Pぼん』でした。かつて単発TVスペシャルとしてアニメ化されたことがありますが、シリーズものの形で映像化されるのは初めて。原作に沿いつつも現代的なアレンジを施した仕上がりで楽しめました。音楽は大島ミチルが担当。スケールの大きな音楽が作品内容にぴったり。今年の締めくくりに、この作品を紹介します。
『T・Pぼん(タイムパトロールぼん)』は2024年5月からNetflixで配信されたアニメシリーズ。藤子・F・不二雄の原作マンガを、監督・安藤真裕、アニメ—ション制作・ボンズのスタッフでアニメ化した。シーズン1、シーズン2の2部構成で、各12話、全24話が配信されている。
平凡な中学生・並平凡(なみひら・ぼん)は、ある事件をきっかけにタイムパトロールの見習い隊員に任命される。先輩女性隊員リームと超空間生物ブヨヨンとともにぼんが挑む任務は、歴史の中で不幸な死を遂げた人物を救うこと(ただし歴史に影響を及ぼさない人物に限る)。タイムパトロールとして経験を重ねたぼんは、準隊員を経て正隊員に昇格し、さらなる任務に挑んでいく。
SFの分野でタイムパトロールものといえば、歴史を改変しようとする時間犯罪者と、それを阻止しようとするタイムパトロールの対決を描くものが主流。しかし、本作は過去の世界で死ぬ運命にある人を救助するという、SFとしては「掟破り」とも言える設定になっている。が、それが時間犯罪ものとは異なるサスペンスを生み、人間ドラマとしても見ごたえのあるエピソードが続出した。
アニメ版は原作の持ち味を生かし、現代的な歴史考証や科学考証を盛り込んで、幅広い世代に楽しめる作品に仕上がっている。世界各地が舞台になっている点でも海外配信に恰好のタイトルだ。
音楽は『鋼の錬金術師』『四畳半神話体系』などの大島ミチルが担当。世界中を飛び回って演奏や録音を行っている大島ミチルは、本作の音楽にまさにうってつけの作曲家である。
『T・Pぼん』の音楽は、大編成のオーケストラを使ったスケールの大きなサウンドで作られている。大島ミチルはXのアカウントで本作の音楽についてのコメントを何度か投稿しているのだが、その中で「この作品にオーケストラサウンドはどうかなぁ?と思ったのですが、ヘビーなシーンも多いので…」と語っている。歴史的な戦争や大災害が描かれる作品だから、物語を彩る音楽にはオーケストラの雄大なサウンドが必要だったのだろう。
演奏はハンガリーのブタペスト交響楽団とアメリカのナッシュビル・ミュージック・スコアリング・オーケストラが担当。日本からギターの古川昌義、尺八奏者の藤原道山らも参加している。作品にふさわしく、演奏も国際的だ。
大島ミチルのコメントによれば、本作の音楽は全4回にわたって110曲以上を録音したそうである。レギュラーで使用される録り溜めの曲もあるが、映像に合わせて書いた曲も多い。オーケストラによるサウンドもあいまって、映画音楽のようなリッチな印象の音楽になった。
本作のサウンドトラック・アルバムは「T・Pぼん(Soundtrack from the Netflix Series)」のタイトルで2024年8月30日にNetflix Musicから配信開始された。今のところCDでの発売はない。収録曲は下記リンクを参照。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DFD4VHDM
サウンドトラックに収録されたのは、110曲以上から厳選された55曲。配信サイトによってはトラック番号を01〜55と表記しているケースもあるが、Amazon Prime Musicなどでは、DISC1:01〜35、DISC2:01〜20と、2枚のディスクに分けて表記している。曲目を見ると、DISC1はシーズン1、DISC2はシーズン2を想定した内容であることがわかる。本稿でも、ディスクごとに分けて紹介することにしたい。
ディスク1は、大島ミチル作詞・作曲によるオープニングテーマ「BON BON BON」からスタート。主人公の名「ぼん」をリズミカルに歌いこんだ、ロック調の軽快な曲である。実はNetflixで言語をスペイン語にするとスペイン語バージョンを聴くことができる。スペイン語版だけNetflixの希望で追加したのだそうだ。
トラック2からはBGM集。構成は劇中使用順に即したもので、各エピソードから1曲〜数曲をセレクトしている。この構成がなかなかすばらしい。
1話完結の作品なので、使用順にはこだわらず、イメージアルバム風に構成することもできたと思う。が、しっかり本編の流れを反映した曲順になっている。だから聴きながら本編をエピソード順にふり返ることができる。自然に『T・Pぼん』の世界に入っていける、いい構成だ。
ここからは、各曲がどのエピソードから選曲されたかを明らかにしながら、聴きどころを紹介していこう。
トラック2「Very Ordinary」〜トラック7「I Won’t Be Erased!」は第1話からの選曲。弦がのんびりと奏でる「Very Ordinary」は、平々凡々たるぼんのキャラクターを描写する曲で、ぼんの場面にたびたび選曲されている。トラック6「Time Patrol」はタイムパトロールのテーマ。登場ファンファーレから始まる高揚感たっぷりの曲だ。
トラック8「There’s Two of Me?」〜トラック15「Parent and Child Reunion」は、ぼんの初任務を描く第2話からの選曲。リームとブヨヨンの登場場面に流れる「Ream and Buyoyon Appear」がユーモラスな味わいを出している。ぼん初出動の場面の曲「The First Dispatch」(トラック11)が、不安から決意へと変化していくぼんの心情を表現する。ぼんが洪水から老婦人を助ける場面に流れるトラック14「I Want to Help!」がいい。緊迫感と使命感がミックスされた、人命救助をテーマにした本作を象徴する楽曲だ。この曲はシーズン1よりもシーズン2でよく使われていた。
ここまでで15曲。タイムパトロールぼんの誕生を描く第1話と第2話の曲を手厚く収録しているのがディスク1の特徴である。
トラック16「The Royal City」は第3話で古代エジプトの場面に流れた民族音楽風の曲。本作では、こうした異国をイメージした曲がたくさん作られていて、アルバムの中で音楽の印象を変化させるスパイスのような役割を果たしている。
トラック17「I Became a Time Patrol Agent!」〜トラック20「The Weight of People’s Mistakes」は、第4話からの選曲。古代人が丸木舟で太平洋を渡る場面に流れるトラック18「Sailing Across the Ocean」は、上下する弦の動きが果てしない大海原を思わせる、悲壮感あふれる楽曲である。
トラック21「Witch Hunt」とトラック22「Where Love Leads」は中世ヨーロッパの魔女狩りをテーマにした第5話から。エキゾチックで哀感ただよう「Witch Hunt」と恋人たちの語らいの場面に流れる美しい「Where Love Leads」の対比がみごと。
次のトラック23「Thoughts on India」は第6話で天山山脈を越えようとする玄奘法師とぼんたちが語らう場面に流れた東洋風の曲だ。
トラック24「The Tradition of Sacrifice」〜トラック26「The Terror of the Minotaur」は第7話から。クレタ島のいけにえと魔獣ミノタウロスのエピソードを彩る不安な曲や異国風の曲が並ぶ。
トラック27「Mainland Showdown」とトラック28「Ensign Sakuragi」は、第二次大戦末期の沖縄を舞台にした第8話からの選曲。空襲で壊滅した都市の惨状を描写する「Mainland Showdown」、生き残った特攻隊員・桜木少尉の悲哀を表現する「Ensign Sakuragi」。どちらも悲痛な想いが伝わってくる。吉永小百合による「原爆詩」の朗読の音楽も手がけている大島ミチルらしい楽曲である。
第9話で流れたトラック29「Agents Riding Dinosaurs」は、ジュラ紀にバカンスに出かけたぼんとリームが恐竜の背に乗る場面の曲。のんびりした雰囲気から始まり、しだいに盛り上がって雄大な曲調で終わるのが気持ちいい。
続くトラック30「Gun Man」とトラック31「Tactics」は、西部開拓時代のアメリカを舞台にした第10話で流れた曲。古川昌義のギターをフィーチャーした西部劇風の曲だ。
トラック32「The Athenian and Persian Army Time-trippers」は、古代ギリシャを舞台にした第11話より。アテナイ軍とペルシャ軍が対峙する場面に流れた、ハリウッドの史劇映画を思わせる壮大な音楽である。
トラック33「Time-trippers」とトラック34「Ruin & Parting」はシーズン1の最終回である第12話からの選曲。ぼんとリームの別れの場面に流れる「Ruin & Parting」が切ない。突然の別れに動揺するぼんの心情を、ストリングスと木管の旋律が表現する。その雰囲気のまま、エンディングテーマのTVサイズ「Tears in the Sky (TV Version)」でディスク1を締めくくる構成もうまい。
続いてディスク2から。
トラック1「A Growing Sense of Responsibility」とトラック2「A Cute New Recruit」はシーズン2の第1回となる第13話からの選曲。「A Growing Sense of Responsibility」は、ついに正隊員となったぼんの決意を表現する曲。弦のおだやかなメロディにリズムが加わり、しだいに力強く変化する曲調から、ぼんの成長が感じられる。「A Cute New Recruit」は新たにタイムパトロールの見習い隊員となった、ぼんと同じ中学の同学年の少女・安川ユミ子のテーマ。シーズン1のヒロイン・リームとは異なるタイプの魅力を表現するキュートな曲調だ。この曲は第20話でユミ子が正隊員に昇格した場面にも選曲されている。
トラック3「New Team, New Uniforms」〜トラック6「Chaac Descends」は古代マヤを舞台にした第14話から。ぼんとユミ子がタイムパトロールの新ユニフォームを身につける場面の「New Team, New Uniforms」には、ディスク1に収録されたタイムパトロールのテーマ「Time Patrol」のモチーフが引用されている。
トラック7「The Gempei War」と次の「The Sound of Kamomaru’s Flute」は、平安時代の壇ノ浦の合戦を描く第15話で使用された。「The Sound of Kamomaru’s Flute」は平家の血を引く少年・加茂丸が吹く笛の音。藤原道山による演奏である。
トラック9「The Beginning of Writing」は第16話で、トラック10「Tracing Roots」とトラック11「Dire Wolves」は第17話で使用。「The Beginning of Writing」も「Tracing Roots」も、ぼんが人類の長い歴史に思いをはせる場面に流れた、しみじみとした曲だ。歴史の中の平凡な人間の営みに光を当てる、『T・Pぼん』らしい曲である。
次の曲は第18話から……となりそうなところだが、実は第18話と19話からは選曲されていない。トラック12「The Fate of the City of Troy」はトロイ戦争を描く第20話で使用された曲。重苦しい曲調が戦争の無情さを表現する。
トラック13「Strategy」は第21話、トラック14「Those Who Know No Fear」とトラック15「The Great Eruption」は第22話からの選曲。不穏な曲や緊迫した曲が続いて、アルバムもクライマックスに向けて盛り上がってくる。「The Great Eruption」は火山の大噴火によって滅びた都市ボンペイの悲劇を描写する音楽。これも史劇映画風の重厚な曲だ。
民族音楽風のトラック16「The Bazaar of Mohenjo-daro」は第23話のモヘンジョ・ダロの場面に流れた曲。本編ではループして長く使用している。続くトラック17「Following Clues」も第23話から。ぼんが行方不明になったリームの手がかりを探す場面に流れた緊迫感に富んだ曲で、このシーンが最終回への布石になっている。
トラック18「Chase After the Dimension Ball!」とトラック19「Tears in the Sky (Time Patrol Version)」はシーズン2の最終回、第24話からの選曲。「Chase After the Dimension Ball!」はフィルムスコアリングで書かれた3分近い曲。映像に合わせて変化するスリリングな曲調が実に映画的。「Tears in the Sky (Time Patrol Version)」はエンディングテーマをオーケストラ編成にアレンジ・演奏した曲で、ラスト前のぼんのモノローグに重なって流れた。エンディングテーマのアレンジが流れるのはこのシーンだけ。それだけに印象深いシーンになった。うまいなあ。
アルバムの最後に収録された「Tears in the Sky」は、エンディングテーマのフルサイズである。大島ミチルのコメントによれば、『T・Pぼん』は命を救う話なので「亡くなった大切な人への思い」をテーマにして書いたそうだ。大島自身、この曲を書いている最中に身近な人を亡くし、そのときの気持ちを曲に込めたという。歴史の中に消えていく人々への想いと、それを忘れずに前に進もうとする想いが胸を打つ。ポップス的な曲調に普遍の想いを乗せた名曲だ。
最後に、このアルバム全体の感想をまとめておこう。
オーケストラサウンドが悠久の歴史と世界の広大さを感じさせる、スケールの大きなサウンドトラックである。生オケならではの温かみのある音は、人の命を救う本作のテーマに沿っている。さまざまな時代や土地を描写する音楽はバラエティに富んでいて、聴きながら、ぼんと一緒に時間旅行を体験しているような気分になる。本編使用順に沿った曲順で名場面を思い出しながら聴ける、理想的なアルバムだ。
あえて不満を言うなら、収録時間の制約がない配信アルバムなのだから、もっと収録曲を増やしてほしかったなあ。日常場面で流れるユーモラスな曲や、第8話のラストで桜木少尉と恋人・明子の想いがつながる場面の曲など、「サントラで聴きたかった」と思う曲がまだまだある。バランスを考えての選曲だと思うが、あと10曲くらい入れてほしかった。
いや、『T・Pぼん』の原作はまだ10話以上残っているから、アニメ版シーズン3の制作も夢ではない。もし、シーズン3が実現したら、新曲と未収録BGMを収録したサントラ第2弾をリリースすればよいではないか。ぜひそうなってほしい。
T・Pぼん (Soundtrack from the Netflix Series)
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