ANIME NEWS

アニメ音楽丸かじり(171)
年末企画 2015年のサントラ5選はこれだ!

 今年の年末年始は声優ファンにとってなかなかにハードだ。12月30日〜31日に坂本真綾、1月1日にRhodanthe*、1月2〜3日にゆいかおりがそれぞれ公演を控えている。全てに参加する猛者は多くはないとは思うが、時期が時期だけにどれかひとつを見に行くだけでも一苦労だろう。もちろん、正月返上で臨む声優さんたちはファン以上に大変だ。
 年越しライブの習慣はすでに定着して様々なアーティストが行っているが、三が日での公演は一般的に動員面で不利だろうと思われる。正月休みには実家に戻り、家族・親族と過ごすという習慣には根強いものがあるからだ。それでもこの時期に公演を行う理由を色々と考えてみたのだが、いわゆる2016年問題とも絡んでくるのではないかと思い至った。つまり「この日程しか会場が空いていなかった」という可能性だ。
 さいたまスーパーアリーナ、東京国際フォーラムなどアニソン系コンサートでもよく使用される会場が来年改装を控えており、夏場のイベントシーズンには会場不足が深刻化しているだろう。2016年においては、「イベントはとにかく見られるうちに見ておくべし」と言えるのではないか。

 さて、今回が本連載2015年最後の記事となる。そこで今年紹介してきた21作品のCDの中から、特に印象に残っているサントラを5つピックアップさせてもらいたい。ただし5枚を順位を付けるものではなく、紹介順は評価とは無関係だ。

 まずは2月18日にリリースされた、TVアニメ『アカメが斬る!』のサントラ盤だ。発売当時の紹介記事はこちら
 2014年から今年にかけ、TVシリーズ6作品を担当する多忙ぶりだった岩崎琢が音楽担当。そして新興のTOHO animation RECORDSからのリリース、『結城友奈は勇者である』をヒットさせたタカヒロの原作ということで、注目度の高かった1枚だ。中世風の異世界を表現するため、様々な地域の民族音楽を取り入れてエキゾチックなサウンドを作り出しているところに魅力がある。特に要所で見られる本格的なアラブ風サウンドは、TVアニメではなかなか見られないもの。民族楽器ウードによる微分音(平均律のピッチにない音)には怪しげな響きがあり、殺し屋集団ナイトレイドを中心に据えた本作のダークな世界観にぴったりだ。

アカメが斬る! オリジナルサウンドトラック1(音楽:岩崎琢)

THCA-60046/3,564円/東宝
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 次に取り上げたいのは、7月15日リリースの『血界戦線』サントラ盤。発売当時の紹介記事はこちら
 このサントラによって岩崎大整の音楽の魅力を知ったことは、個人的に2015年最大の収穫だったと思っている。この作品には様々なジャンルの楽曲が導入されているが、劇中で重要なシーンのBGMを担っているのがジャズ。わざわざアメリカまで渡り、現地のミュージシャンによる録音を敢行したこだわりのサウンドだ。『血界戦線』は物語の舞台が「ヘルサレムズ・ロット」という異界化したニューヨークであり、ニューヨークに深く根ざした音楽であるジャズとのマッチングは抜群だ。さらにディスク2にまとめて収録されているボーカルナンバーも、英語詞によるジャズ調のものが多くて実にお洒落である。2015年を代表するサントラをひとつだけ選ぶとするなら、これを選ぶ人は少なくないはずだ。

TVアニメ 血界戦線 オリジナル・サウンドトラック(音楽:岩崎大整)

THCA-60055/3,564円/東宝
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 続いては、10月7日リリースの『Classroom☆Crisis』サントラだ。発売当時の紹介記事はこちら
 『ガンダムビルドファイターズ』などでアニメファンにもすっかりお馴染みとなった林ゆうきの作曲。彼が得意とするブラスのサウンドを中心に、シンセやラップも加えたボーダレスな曲調が光る。こう書くとまるで岩崎琢の得意とする方向性のようだが、林ゆうきの楽曲はあくまでポップで分かりやすい。複雑な編成を用いた場合でも、主旋律のメロディは平易で耳馴染みのいいものに仕上げていくのが彼の個性と言えるだろう。このあたりが、「リーガル・ハイ」や朝ドラなど幅広く活躍している理由だろうか。アニメ本編中でも多用された「Classroom☆Crisis」「A-ATTACK」の2曲は、僕もお気に入りのナンバー。

Classroom☆Crisis Original Soundtrack(音楽:林ゆうき)

SVWC-70108〜9/3,780円/アニプレックス
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 そして、11月4日にリリースされたTVアニメ『Charlotte』のサントラも欠かせない。発売当時の紹介記事はこちら
 麻枝准の作品といえば音楽が話題になるもの。最新作『Charlotte』でも鮮烈なインパクトのある主題歌と挿入歌の数々、そして新要素を取り込んで進化したBGMを楽しめる。_本作では全面的にエレクトロニカを取り入れたのが特徴で、耽美的なシンセのサウンドにどっぷりと浸れるところが魅力だ。全般的に音数は少なめだが、その分劇中ではBGMが大きめの音量になっており、セリフと音楽がせめぎ合って視聴者に投げかけられるのが『Charlotte』の魅力だ。音楽と脚本の両方に関与できる麻枝准の特異な才能は、もっと評価されてしかるべきだと感じる。

TVアニメ『Charlotte』 Original Soundtrack(音楽:麻枝准・ANANT-GARDE EYES)

KSLA-0110〜0111/3,780円/ビジュアルアーツ
発売中
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 最後にちょっと変化球になってしまうが、コンサート実況盤である「宮川彬良Presents 宇宙戦艦ヤマト2199 Concert 2015」 を挙げておきたい。発売当時の紹介記事はこちら
 『宇宙戦艦ヤマト2199』に使用された劇伴を「録音時と同じスコア」「録音時と同じ編成」「録音時と同じミュージシャン」によって実演するという、極めて野心的な試みがなされたディスクだ。その仕上がりは、著名スタジオミュージシャンたちが生み出す一糸乱れぬアンサンブルによって、極上の音楽体験ができる1枚となった。近年、アニメのBGMを中心にしたオーケストラのコンサートは増加傾向にあるが、演奏のクオリティは玉石混交というのが正直なところ。オーケストラ奏者にとっては通常のレパートリーではないため、どうしてもリハーサル時間には各楽団の「本気度」による差が生じてしまう。そういった状況の中で、既存の楽団ではなくスタジオミュージシャンを組織した本盤は、こういったアニメ系コンサートの意義に一石を投じるものとも言えそうだ。
 また本盤によって元々評価の高かった『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの音楽は、さらに一段高いところへ押し上げられ、押しも押されぬアニメ劇伴のクラシック(古典)として、その評価を不動のものとしたのではないかと思う。
 来年もまた、この5作品のように素晴らしいCDと巡り会いたいものだ。(和田穣)

宮川彬良Presents 宇宙戦艦ヤマト2199 Concert 2015

【CD版】COCX-39088〜9/4,104円/日本コロムビア
発売中
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宮川彬良Presents 宇宙戦艦ヤマト2199 Concert 2015

【Blu-ray Audio版】COXC-1115/5,184円/日本コロムビア
発売中
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