12月7日の幕張メッセイベントホールにて行われた、ゆいかおりライブツアー「HEARTY PARTY!!」最終公演に参加してきた。ダンスに優れたユニットゆえ、間近で鑑賞できるクラブ公演に行きたかったが、あれよあれよと人気者になり、今ではキャパ8000近い幕張メッセイベントホールをほぼ満席にする勢いである。それでも遠目に分かるほどダンスのキレは抜群で、ボーカルにも終始安定感があった。特にライブ後半でのダンス映像から、ダンスチューンの「VIVIVID PARTY!」へつなぎ、EDM風の新曲「NEO SIGNALIFE」で締めくくる流れは圧巻。ゆいかおりと言えば「PUPPY LOVE!!」に代表される、可愛らしいアイドル曲の印象で語られる事が多いが、その真価はダンスチューンにこそあると個人的には思う。
ゆいかおりLIVE「BUNNY FLASH!!」
KIXM-172/6,804円/キングレコード
発売中
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さて、今回が「アニメ音楽丸かじり」の2014年最後の更新となる。今年最後に相応しいCDを紹介することができて、僕も嬉しい限りだ。年末に向けて放映も佳境に差し掛かっている、TVアニメ『結城友奈は勇者である』のサントラである。
和やかな日常シーンの楽しさと、樹海化シーンや変身シーンの美しさ、力感みなぎる戦闘シーンの迫力、そしてキャラクター(と視聴者)を絶望のどん底に叩き落とすストーリーで話題の作品。第8話以降の過酷な展開には、涙を禁じ得なかった視聴者も多いのではないだろうか。世界観の謎解き的な楽しみもあり、オリジナル作品ならではの醍醐味を感じさせてくれる。OP主題歌「ホシトハナ」については先月の記事にて紹介ずみなので、そちらも参考にしてほしい。今にして思えば、この主題歌の歌詞には後のストーリーの伏線となるワードがたっぷりと盛り込まれていたわけで、改めて制作チームの周到な仕掛けに感心させられる。
サントラ盤は12月10日にリリースされており、全31曲で73分51秒とCDの収録限界近くまで目一杯入っている。主題歌・挿入歌は含まれていないが、OP主題歌「ホシトハナ」のインスト版が1曲目に収録されている。同曲をアレンジしたものが次回予告の音楽(31曲目「ハナトハナ」)や、本編BGM(25曲目「満開」)に使われており、主題歌とBGMには密接な関係性があるのだ。
音楽担当のクレジットは「岡部啓一・MONACA」となっている。MONACAと言えば、ナムコを退社した岡部が自ら設立した会社であり、神前暁も所属することで知られる作家集団だ。具体的な作曲の分担は、サントラの記載によれば岡部啓一13曲、帆足圭吾12曲、高橋邦幸5曲、石濱翔1曲となっている。各話のクライマックスで流れるような重要な楽曲は、岡部の手になるものが多い。
『結城友奈』サントラにはいくつかの特徴があるが、まず注目すべきはその曲名。「ヒナギク」「コスモス」「ユウガオ」など花の名前が記された曲が12曲も並んでいる。本作はタイトルロゴにも明らかなように花をモチーフとしており、各話のサブタイトルも花言葉に由来したものだ。それともうひとつ、「☆☆☆☆☆*****」のように、星印とアスタリスクをあしらった曲名がずらずらと続くのも特徴的。アスタリスクを「花」と解釈すると、「星」が敵であるバーテックスを、「花」が友奈たち勇者部の面々を象徴しているのだろう。
音楽面でのポイントは、まず造語によるボーカル・コーラスの多用を指摘したい。この作風は、岡部の代表作であるゲーム「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」BGMにも近く、実際同作に参加したEmi Evansと中川奈美が『結城友奈』でもボーカルとして起用されている。特に楽曲毎のクレジットはないが、教会音楽風のコーラスはEmi Evansが、民謡調のコーラスは中川奈美が主に担当しているものと思われる。
いくつか楽曲を紹介していこう。4曲目「ユウガオ」は帆足敬吾作曲で、Emi Evansによるもの悲しい独唱がフィーチャーされたボーカル曲だ。造語による歌詞と、一部に教会旋法を用いたメロディは、どこの国のものとも知れぬ不思議なムードを漂わせている。第10話Aパートの、東郷美森による長いモノローグにて使用された。
10曲目「威風堂々」も帆足敬吾によるもの。4度平行を多用したオルガヌム風のコーラスと、勇壮なリズム・ストリングスが気分を高揚させてくれる楽曲。第1話の初戦闘における犬吠埼姉妹の変身シーンや、第5話のアバンタイトルなど、戦闘シーンをドラマティックに盛り上げていた。
21曲目「タンポポ」は高橋邦幸作曲。チェレスタの単旋律による教会旋法のメロディがミステリアスな、ミニマル調の楽曲だ。第2話のアバンタイトルやバーテックスについて解説されるシーン、第3話の三好夏凜の自宅シーン、第10話で東郷美森と乃木園子が病院で会話するシーンなどに用いられた。本作における世界観の不気味さ、不穏な部分を象徴するような楽曲だ。
25曲目「満開」 は岡部啓一作曲。OP主題歌「ホシトハナ」イントロのコード進行を元に展開させた楽曲で、タイトルどおり第5話における結城友奈の満開シーンに使用された。こちらも4度平行を多用するオルガヌム的なコーラスが聴きどころで、短3度転調を繰り返していく楽曲展開が美しい。
28曲目「☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆*****」は岡部啓一作曲。第2話戦闘シーンのクライマックスや、第5話で犬吠埼風が満開するシーンなどに使用された。いきなりコーラスとストリングスのトゥッティ(強奏)から始まる劇的なナンバーであり、粒ぞろいの『結城友奈』BGMの中でも白眉の1曲と言えるだろう。中間部ではオクターブユニゾンによるボーカルが雄大な情景を生み出しており、まるで最終回専用BGMのようなスケール感がある。このような楽曲をシリーズ序盤で出してしまうところが、『結城友奈』各話の密度の濃さに繋がっているのだろう。
本来ならば全曲について詳細に解説したくなるほど、『結城友奈は勇者である』サントラには濃密で語るべき点の多い楽曲がたっぷりと詰まっている。間違いなく、2014年ベストサントラの候補になる1枚だと言っていい。
ただ残念なところがないわけではなく、例えば第1話冒頭の人形劇シーンや、シリーズ前半のコメディ調音楽や日常シーンの音楽、第9話で東郷美森が自害を試みるシーンの音楽など、かなりの数の楽曲が未収録となっている。これらはぜひサントラ第2集やダウンロード販売など、なんらかのかたちで世に出してほしいところだ。
そして今回サントラを聴いて強く感じたことは、この音楽のクオリティとスケール感は、劇場作品にこそ相応しいのではないか、という思いだ。最終回の内容にもよるが、アニメ本編にも多大な反響がある事が予想されるし、劇場版『結城友奈』を見たい! と願うのは僕だけはないと思うのだが、如何だろうか。(和田穣)
TVアニメ『結城友奈は勇者である』
オリジナル・サウンド・トラック (音楽:岡部啓一・MONACA)
PCCG-1438/3,240円/ポニーキャニオン
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