ANIME NEWS

アニメ音楽丸かじり(147)
テクノサウンドと声優ボイスのマリアージュ 『トリニティセブン』サントラを紹介!

 先週の記事にて腹巻猫さんも取り上げておられたが、「スタジオジブリ 高畑勲 サントラBOX」は全サントラファン要注目のアイテムだ。「今年最後の大物」と書こうかと思っていたら、発売日が12月3日から来年1月21日に延期されてしまった。ただ高額商品であるだけに、なにかと物要りな12月よりも、1月に発売してくれた方がファンの懐具合には優しいと言えるかもしれない。収録ディスクのうち、やはり初CD化の劇場版『じゃりン子チエ』サントラに注目が集まるかと思うが、僕が高畑作品のBGMで思い出深いのは『平成狸合戦ぽんぽこ』だ。この作品のテーマ曲とBGMを担当した上々颱風とはちょっとした縁があり、共通の知人もいる。彼らの前身である「紅龍&ひまわりシスターズ」のデビュー前のデモテープも耳にしており、当時から親しみやすいメロディを作る能力に光るものを感じていた。『ぽんぽこ』の制作発表当時、彼らがスタジオジブリ作品に起用されるとの報を受けて、我がことのように嬉しかったものだ。現在の上々颱風は、リーダー紅龍の病気療養のため活動を休止しているが、いつかまたあの三線バンジョーの音色を聴かせてほしいと切に願う。

スタジオジブリ 高畑勲 サントラBOX

TKCA-74174/16,200円/徳間ジャパンコミュニケーションズ
1月21日発売予定
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 今回紹介するのは、10月から放映中のTVアニメ『トリニティセブン』のサントラ。『ウィッチクラフトワークス』のBGMとED主題歌「ウィッチ☆アクティビティ」で注目を集めた、テクノユニットTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの新作である。今回も充実のテクノサウンドをたっぷりと楽しめる1枚であり、前作に続き魔法ものを担当するというのが面白い。なお『ウィッチクラフトワークス』のサントラとED主題歌については、5月27日の本連載にて紹介しているので、そちらも併読していただけると幸いである。
 CDは11月19日に発売ずみで、2枚組に40曲収録というボリュームとなっている。ZAQによるOP主題歌「Seven Doors」と、頻繁に変わる各種ED主題歌は収録されておらず、そちらはシングル盤を購入ということになる。ED主題歌もすべてTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが手がけており、アッパーかつキャッチーなテクノポップが揃っているので、「ウィッチ☆アクティビティ」が気に入った方にはぜひチェックしてもらいたい。
 番組名にもなっているトリニティセブンとは、物語の舞台となる王立ビブリア学園を代表する7人の美少女魔道士たちの総称。本盤にはそのトリニティセブンの声優陣が全面協力しており、BGMに数多く使用されているボーカルやラップ、ボイスネタはすべて彼女たちによるものだ。声優が主題歌や挿入歌を担当するケースはよくあるが、BGMに深く関わる例はなかなかに珍しく、本盤の大きな特徴となっている。
 ディスク1の6曲目「TURN THE TABLES」は第1話で主人公・春日アラタが王立ビブリア学園に入学するシーンなどに使用。アップテンポのエレピのリズムに、リリス役・原由実の英語ラップが絡むお洒落なナンバー。クラブでかけても違和感のなさそうな仕上がりはTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDならではだろう。
 ディスク1の7曲目「MAGUS MODE」はアラタのメイガス(魔道士)モードが発動する場面などに使われた楽曲。使用頻度も高く、本作を代表する楽曲のひとつ。トリニティセブンの声優全員が「MAGUS MODE」と繰り返すボイスに、ピアノのリズムが絡むハウス調の楽曲だ。ボトムの効いたバスドラとスラップベースの気持ちよさは、ぜひスピーカーの大音量で聴いていただきたいものだ。ちなみにディスク2の20曲目「MAGUS MODE “SATAN FORM MIX”」はこの曲のリミックス。ドラムパートがシンセドラムに、ベースパートがシンセベースに差し替えられており、よりフロア向きのダンスチューンに仕上がっている。
 ディスク1の18曲目「IMPER」は第4話ラストでの幻想種とのバトルなどに使用され、アラタのテーマである「支配」をイメージした楽曲だ。バイオリンの分散和音を軸にピアノやシンセが盛り上げる、ミニマルミュージック色の強いナンバー。難易度の高いシーケンスフレーズを弾き続ける、浅井眞理のバイオリンテクニックが聴きどころ。
 ディスク2の12曲目「Spell Succeed」は第4話の学園地下迷宮でのバトルや、第8話の終盤などに使用。アキオ役・柚木涼香のボーカルに、硬質な音色のドラムトラックが絡み合う緊張感たっぷりのバトル曲だ。

 以上のように本盤においては、テクノサウンドと声優のボイス・ボーカルが共存し、作品世界とBGMとの親和性アップに一役買っている。さらに言うと、ED主題歌はトリニティセブン声優が持ち回りで担当しており、各主題歌の一部にはBGMから転用されたフレーズやボーカルがそこかしこに散りばめられている。これによって本編・主題歌・BGMの3要素が、あたかも三位一体(トリニティ)のような調和を見せているのだ。こういったスタイルは、声優が歌を歌うことが当たり前になった時代だからこそ実現できたと言えるだろうし、アニメ劇伴の新たなトレンドとなり得るようにも思う。(和田穣)

TVアニメ『トリニティセブン』 オリジナル・サウンド・トラック
TRINITY SEVEN : MAGUS MUSIC ARCHIVE
(音楽:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)

EYCA-10093〜4/3,564円/エイベックス・ピクチャーズ
発売中
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