ANIME NEWS

アニメ音楽丸かじり(130)
ガンプラバトルはフラメンコの香り!? 『ガンダムビルドファイターズ』サントラ登場!

 僕はいわゆる「アイカツおじさん」ではないし、あまりCDをジャケ買いするタイプでもない、それでも、ジャケットの可愛らしさにすっかり参ってしまったのが、『アイカツ!ベストアルバム Calendar Girls』だ。デフォルメされたポップな絵柄と淡い色遣いの組み合わせが独特で、華やかでありながら押しつけがましくない。キャラクターの主線をすべてピンクで揃えているのも、柔らかさを感じさせる理由だろう。オタクはもちろんのこと、番組本来のターゲット層である女児にも受けがよさそうだ。
 CDは3面デジパック仕様であり、表紙以外の2面も同じく美麗なイラストが描かれている。ぜひ全容をランティス公式ページにてチェックしてほしい。イラストは、デザインワークス担当の石川佳代子によるもの。『アイカツ!』ファンならご存じのとおり、この絵柄はアニメのEDでお馴染みのものだ。過去3パターン制作されたED映像はすべて石川佳代子が担当しており、その好評ぶりがうかがえる。この絵柄で10分くらいの短編アニメシリーズが観たいと思ってしまうのは、僕だけだろうか。

TVアニメ/データカードダス アイカツ! ベストアルバム Calendar Girls

LACA-9350〜9351/3,240円/ランティス
4月9日発売予定
Amazon

 昨年10月の記事にて、ドラマ「リーガルハイ」サントラの素晴らしさについて触れ、作曲者の林ゆうきを紹介した。さすがにこれだけの才能をアニメ界が放っておくはずもなく、昨年から今年にかけてTVアニメの仕事が一気に増えてきている。昨年開始の番組だと『ブラッドラッド』『DIABOLIK LOVERS』『ガンダム ビルドファイターズ』の3作、そして今年は4月開始予定の『ハイキュー!!』『ソウルイーターノット!』(両作とも橘麻美と共同)、夏開始予定の『DRAMAtical Murder』と早くも3作での起用が決まっている。人気TVドラマの「ストロベリーナイト」シリーズや、「リーガルハイ」シリーズと並行しての仕事だから、かなりの多忙ぶりと言えるだろう。今後も菅野祐悟のように、ドラマとアニメに両軸を置いた活躍を続けていくのではないか。
 さて、今回はその中から3月12日にリリースされた『ガンダム ビルドファイターズ』のサントラ盤を紹介したい。CDは2枚組で、121分に55曲を収録というボリュームだ。1クール目のOP「ニブンノイチ」とED「Imagination > Reality」、および2クール目のOP「wimp ft. Lil’ Fang(from FAKY)」とED「半パン魂」はいずれもTVサイズで収録、さらにキララ役の悠木碧が歌う挿入歌「ガンプラ☆ワールド」はフルサイズで収録している。収録曲数からも分かるとおり、第1クールのBGMはもちろんのこと、第2クールのBGMもバッチリ入っている内容だ。通常のブックレットのほか、初回封入特典として、音楽担当の林ゆうきと音響監督の三間雅文の対談が掲載されたブックレット6ページが付属する。
 ご存じのとおり、『ガンダム ビルドファイターズ』は過去の『ガンダム』シリーズに多かった戦争ものではなく、プラモデル同士のバーチャルファイトである「ガンプラバトル」を主軸にした番組。コメディ要素もあり、小さな子供でも楽しめる内容だ。しかしながら各話のハイライトとなるガンプラバトルのシーンは、近年よく見る3DCGではなく、手書き作画で迫力満点に見せてくれるし、随所に過去シリーズへのオマージュと思しきシーンもあって飽きさせない。そして音楽もまた、「子供向け」などという手抜きの一切ない内容なのだ。
 いくつか収録曲を紹介したい。まずDISC 1の1曲目「GUNDAM BUILD FIGHTERS」は、曲名どおり本作のテーマともいうべき楽曲。第1話のアバンタイトルから使用され、『GBF』の番組カラーを決定づけている。対談ブックの林ゆうきのコメントによれば、イントロのデジタル(シンセ)とアコースティック(オーケストラ)が重なるサウンドは、現実世界からガンプラバトルのバーチャル空間に入っていくイメージとのこと。同じく7曲目「build-fight」もまたガンプラバトルへの導入で使用された楽曲。歪んだドラムンベースのサウンドが強烈であり、子供も視聴する時間帯の番組としては、かなり大胆な仕掛けと言えるだろう。もちろん個人的にはこういったチャレンジ精神は大好き。「子供向けだから穏当な音楽にしよう」だなんて、逆に子供を侮っていると思うのだ。
 DISC 1の12曲目「紅の彗星 〜通常のフラメンコの3倍の情熱〜」はタイトルこそ冗談めかしているが、曲調はいたってシリアスだ。デジタルビートに包まれているものの、ギターといいボーカルといい思いっきりフラメンコのスタイル。第6話のレイジとユウキ会長とのガンプラバトルはシリーズ序盤のハイライトだったが、この楽曲がフィーチャーされることで、ガンプラバトルをまるで剣士の決闘かのように見せていた。DISC 2の12曲目「フェリーにの華麗なる攻撃MK-II」は、バンドネオンをフィーチャーしたアルゼンチン・タンゴ風の哀愁のメロディに、デジタルビートを掛け合わせた楽曲。DISC 2の9曲目「Samurai-Edge」は尺八や三味線の生演奏をフィーチャーした和風ロック。このような曲調の多国籍ぶりも、『GBF』サウンドの大きな魅力のひとつだ。
 最後にひとつ興味深い情報を書いておこう。対談ブックによれば、本作のBGMはステムミックスで納品されたとのこと。ステムミックスとは、通常のCDの「2ミックス(LR)」ではなく、ドラム、パーカッション群、ギター、ストリングスなど、大まかなパートごとにチャンネルをまとめたミックスのやり方だ。これによって音響監督は、シーンの内容に応じて「ギターの音量をもっと上げよう」「ここはドラムを控え目に」など、まるで音響エンジニアのように楽器バランスにまで踏み込んだディレクションが可能となるわけだ。それもあって『GBF』の番組内で使われたBGMは、サントラに収録された本来のバージョンとは異なる部分も多い。楽器の音量バランスもそうだし、楽曲の一部をカットして使用する場合もそうだ。通常の2ミックスの場合は、楽曲が静かになるタイミングや、楽想が切り替わるあたりで曲をカットして劇中に当て込むことが多いが、ステムミックスの場合は「ドラムの音だけ残す」「シンセだけフェードアウトさせていく」というような凝ったやり方も可能であることから、『GBF』のBGMの使用方法はより複雑で有機的なものとなっている。ぜひ、アニメ本編の音とサントラとを聴き比べてもらいたい1枚だ。(和田穣)

ガンダム ビルドファイターズ オリジナルサウンドトラック(音楽:林ゆうき)

AVCD-38914〜5/3,675円/エイベックス
発売中
Amazon