すでに様々なメディアで取り上げられているため、ご存じの方も多いであろう。楽曲配信サービス「e-onkyo music」にて、アニメ音楽のハイレゾ配信が始まっている。まずランティスから10月30日に『ラブライブ！』の関連楽曲、11月29日から「エウレカベイビー」など麻生夏子のシングル各曲が配信中。以降も順次、配信楽曲が追加されていく予定だ。
ハイレゾとは何かと定義するなら、「ＣＤ規格以上の精細度による音楽データ」という事になる。つまり「ＰＣＭ」「44.1kHz」「16bit」のＣＤ規格を超える音源というわけだ。よってそのスペックはすべて一律というわけではなく、たとえば『ラブライブ！』の場合には48kHz/24bitという仕様での配信となっている。
現代の音楽制作の現場では、ＣＤ規格である44.1kHz/16bitで楽曲を制作することはまずない。より精細度の高いレートで録音・ミキシングを行った上で、最終的にマスタリングの過程で44.1kHz/16bitに落としてＣＤマスターを作るわけだ。つまり、ミュージシャンやエンジニアが現場で耳にしている音は、ＣＤ規格よりもハイスペックである場合が多い。当然ながら「そのままの音でリスナーまで届けたい！」という欲求が作り手の側にはあるわけだが、そこに立ちふさがるのがＣＤ規格の限界である。今回のハイレゾ楽曲配信によって、そのギャップが埋められるという期待は大きい。ＣＤを介さない音楽配信ならば、ハイレゾでの楽曲配信が容易になるわけだ。
さて、注目したいのは12月27日から『ガールズ＆パンツァー』のサウンドトラックが配信されること。マーチという楽曲形式へのこだわり、作品と音楽の親和性、楽曲クオリティなどの点で、近年のアニメサントラの中でも秀逸な一枚だ。このディスクをハイレゾで聴けるというのは、大いに楽しみと言える（同作については今年４月の連載で取り上げている）。
またキングレコードからは、かの『新世紀エヴァンゲリオン』ＴＶシリーズ版サウンドトラック３作品が、12月18日から配信されている。わざわざこの配信のために、ハリウッド作品のマスタリングエンジニアとして有名なパトリシア・サリヴァン（彼女は劇場版『序』『破』『Ｑ』のマスタリングも担当している）を起用してリマスターを行ったとのこと。音にうるさい鷺巣詩郎ならでのはこだわりである。
僕も実際に購入して聴いてみたのだが、これがもう唖然とするほどにＣＤとはまったくの別物だった。たとえば「残酷な天使のテーゼ」では、イントロの多重録音によるコーラスが個々のパートの息づかいまで感じとれるし、「FLY ME TO THE MOON」ではストリングスがまるで往年のアナログレコードのように、重厚かつ倍音豊かに響いてくれる。「EVA-02」では勇壮なブラスセクションから、ホルン、トランペット、トロンボーンといった構成楽器がはっきりと聞き分けられるし、奏者のマウスピースの鳴りまで感じられる。とにかく音の精細度と、奥行きの立体感がまるで別次元という印象だ。
ただし、いずれも無圧縮・ハイビットの音楽データであるから、それなりのファイルサイズを必要とする。たとえば４分程度の「残酷な天使のテーゼ」が、flac形式で166MBというデータ量になるのだ。利用時にはパソコンのＨＤＤ容量を確認した方がいいだろう。
さて、年の瀬も近づいてこの連載も今回が年内最後の更新となる。この時期はＣＤの発売数も多く、12月下旬だけでも音楽ＣＤとドラマＣＤを合わせてゆうに100作以上がリリース予定だ。当然、すべてを取り上げるわけにもいかないが、個人的に注目の作品をいくつか紹介してみたいと思う。
まず、劇場版のヒットも記憶に新しい『魔法少女まどか☆マギカ』のMUSIC COLLECTIONが、12月25日に発売予定だ。2011年を代表する人気作でありながら、これまで単体のサントラＣＤはリリースされていなかったので、待望の商品化と言える。
ＣＤの構成は２枚組に120分、全45曲の収録内容となっている。これはBlu-ray＆ＤＶＤ２巻、４巻、６巻の完全生産限定版に付属していたサントラＣＤをベースに、曲順を再構成したものだ。またBlu-ray＆ＤＶＤ１巻の特典ＣＤに収録されていたまどかのキャラソン「また あした」、５巻収録のさやか＆杏子のキャラソン「and I’m home」を含み、オープニング主題歌「コネクト」と、エンディング主題歌「Magia」も入っている。さらに各ディスクの冒頭には、梶浦由記による新規書き下ろし楽曲「prelude to Act 1」「prelude to Act 2」が収録されたほか、「Numquam vincar」のライブバージョンもある。
すでにBlu-ray＆ＤＶＤの完全生産限定版を全巻揃えた人にとっては無用かもしれないが、これから『まどマギ』の音楽に触れようとする人には、既発の音源を網羅した本盤がファーストチョイスになるはずだ。また同じ12月25日にはBlu-ray Disc BOXも発売予定で、同時購入のキャンペーンもあるのでファンはチェックすべきだろう。
魔法少女まどか☆マギカ MUSIC COLLECTION（音楽：梶浦由記）
SVWC-7980〜81／3,675円／アニプレックス
12月25日発売予定
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続いてはＣＤ作品ではないのだが、2003年の名作『カレイドスター』の、放映開始から10年目にして初となるBlu-ray BOXの予約が開始されたので紹介したい。なお、発売は半年以上先となる2014年６月３日なので、注意していただきたい。
なぜこの商品を取り上げるのかと言えば、「豪華版」の方にのみ、以前発売のDVD-BOXに同梱されていたサントラＣＤが付属しているからだ。『カレイドスター』はサントラ単体での発売がなく、「ゴールデンフェニックス限定版」（または「クリスマススペシャルＢＯＸ」）「幻の大技ＢＯＸ」「私の夢になってよＢＯＸ」「やってやれないことはない！ＢＯＸ」という４種のＢＯＸ商品に、それぞれ４種のサントラが付属するというスタイルだった。商品によっては品薄だったり、プレミア価格がついてしまったりで、サントラをコンプリートするのは大変な状況が続いていたのである。今回のBlu-ray BOX豪華版も決して安価とは言えないが、購入さえすれば４種のサントラが確実に入手できるので、状況は改善されたと言えるだろう。
ちなみに映像の方は、ＴＶシリーズ『カレイドスター』全26話、『カレイドスター 新たなる翼』全25話のほか、ＯＶＡの『笑わない すごい お姫様』『Legend of phoenix 〜レイラ・ハミルトン物語〜』『ぐっどだよ！ ぐぅーっど！』の３作を網羅した内容となっている。豪華版には前述のサントラ４種のほか、特典ＣＤ１枚が付属するそうだ。まだ内容の詳細は公表されていないので、それを待ってから購入の是非を検討するのもいいだろう。
カレイドスター 〜10年目の すごい Blu-ray BOX〜 豪華版
BIXA-9419／64,584円／ハピネット
2014年６月３日発売予定
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最後に、『天元突破グレンラガン』のスタッフによる新作で、アニメスタイル読者の注目度も高いであろう『キルラキル』のサントラを紹介したい。こちらも12月25日の発売で、全18曲というサントラにしては少なめの曲数ながら、78分の収録時間がある。つまり各曲の尺がかなり長いのだ。オープニング主題歌「シリウス」、エンディング主題歌「ごめんね、いいコじゃいられない。」、および挿入歌「サンビカ」は収録していない。初回仕様限定盤は吉成曜による描き下ろしケース付属で、スコアブックと作曲者インタビューを掲載したブックレットが同梱される。
音楽は、今年『進撃の巨人』でより一層評価が高まった澤野弘之が担当。「goriLLA蛇L」「鬼龍G@キLL」「Kiっ9=KELL」など、サントラの曲名にも澤野らしさが存分に出ている。スピーディなバトルと、こってりと濃厚な作画が魅力の作品だけに、音楽の作風も実にハイテンション＆ハイカロリー。７曲目「KILL7la切ル」に象徴的だが、テクノ風のシンセフレーズにストリングスが加わり、ブラスと共に派手なクライマックスを形成していくのは、『青の祓魔師』『ギルティクラウン』にも見られた澤野弘之の得意とするサウンドだ。13曲目「斬LLLア生LL」、14曲目「キ龍ha着LL」ではそこにエレキギターも加わって圧倒的な音圧を生み出しており、『キルラキル』の画面の濃度・熱量に対して一歩も引いていない。
一方で曲名が普通（？）である１曲目「Before my body is dry」、４曲目「Blumenkranz」、８曲目「Suck your blood」、11曲目「Light your heart up」、15曲目「I want to know」、18曲目「Till I Die」といったところは英語詞のボーカル曲となっており、各話のバトルシーンを盛り上げたり、ストーリーの流れを変えるための重要なモチーフとして使用された。こういったボーカル曲の格好よさも澤野ファンにはお馴染みだろう。今回はサントラの１／３を占める６曲もボーカルが入っているので、お値打ち感がある。
なお新年１月１日には、ニコニコ生放送で『キルラキル』の１話〜12話までが一挙放送されるほか、２日には『天元突破グレンラガン』の１話〜15話、３日には17話〜27話の一挙放送が予定されている。三が日に時間が取れる方は、この機会にまとめて視聴してみるのはいかがだろうか。（和田穣）
キルラキル オリジナルサウンドトラック（音楽：澤野弘之）
SVWC-7973／3,150円／アニプレックス
12月25日発売予定
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