第558回 地球の科学力はてえしたもんだよ
“満を持してマングース!!”の件も、結構自分の方でコンテを直してありますね。改めて見るとコンテが真っ赤っか! いや、『沖ツラ』のコンテチェックは元のコンテ上りをバッサリ消して、そこに“赤”で修正を入れていたので、今見返すとパッと見で“赤多っ!”となる訳。
この話もハブとマングースとヤンバルクイナと勉強になることが多いだけでなく、それらを楽しくネタにしてて、やっぱり原作が秀逸! カニやらヤドカリやらと、次々てーる―の肩に並べていくすず。ラスト、画面いっぱいにナマコを突き出す~のすずは、自分の方でコンテ調整した部分。すずによるタイトルコールにも、“そっと置く感じで”と指示しました。で、次——
“スナックパイン”は本当に手軽に食べられるパインで驚きました(実食済み)!
前半と後半、原作上では別々の話を時間経過で順に繋げて一本化するため、その間起こる喜屋武さんの髪型変化に対し、てーる―のモノローグで「いつの間に!?」と突っ込みを入れたのだと思います。家に帰って軽く髪を纏めた、という体で。「突如ねじ切ったあああっ!!」のてーるーツッコミは、これもアフレコ時爆笑しました(笑)。本当にてーるー役・大塚剛央さんは良い!
喜屋武さんの「バナナ取って来ようね~」の後、ここに至るまでの経緯を1カット、
肩のカニやらを外しているてーるーを誘う喜屋武さん! 奥に走り去る安慶名とすず!
の止め画で回収する案もコンテチェック時に俺の方で足しています。こーゆートコ、分かりにくくても説明しとかないと、「お客(視聴者)に対してフェアじゃない!」とか思ってしまうタチなんです、自分。
そして、バナナが庭になる沖縄ってやっぱスゲー!!
ということで、今回も短くてすみません! 『キミ越え』に戻ります(汗)!
「ANIMATOR TALK」はアニメーターの方々に話をうかがうトークイベントシリーズです。10月5日(日)に開催するのは「ANIMATOR TALK 本田雄 2」。『君たちはどう生きるか』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』『千年女優』等で知られる本田雄さんをメインのゲストに迎えるプログラムの第二弾となります。
昨年4月21日(日)に開催した「第220回アニメスタイルイベント ANIMATOR TALK 本田雄」では、本田さんの学生時代から、作画監督や原画で参加した『ふしぎの海のナディア』の頃までを、影響を受けた作品などを交えて語っていただきました。今回のトークはその続きとなります。
もう1人のゲストとして井上俊之さんも出演。井上さんのお話も沢山うかがえるはずです。また、最近のアニメスタイルの作画系イベントでは関係者席にいる方からコメントをいただくことが多いのですが、今回も同様のかたちでトークが進行する予定です。
また、当日は会場でアニメスタイルの新刊「本田雄 アニメーション原画集 vol.1」を特典小冊子「本田雄ラクガキ本」付きで販売します。

会場は新宿のLOFT/PLUS ONEです。チケットは9月20日(土)昼12時から発売。購入方法についてはLOFT/PLUS ONEのサイトをご覧になってください。
イベントは「メインパート」のみを配信します。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。
なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
■関連リンク(チケット関係)
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/332883
会場&配信チケット(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/jvw90
配信チケット(ツイキャス) https://premier.twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/396251
■関連リンク(書籍関係)
【新刊情報】スーパーアニメーター 本田雄さんの原画集を刊行!! 『崖の上のポニョ』『青の6号』『ふしぎの海のナディア』等の原画を収録
https://animestyle.jp/news/2025/07/25/29609/
■関連リンク(アニメスタイルチャンネル)
「第220回アニメスタイルイベント ANIMATOR TALK 本田雄」
https://www.nicovideo.jp/watch/so43726900
※前回のイベントのアーカイブ配信です。アニメスタイルチャンネルの会員が視聴できます。
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第246回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年10月5日(日) |
会場 |
LOFT/PLUS ONE | 出演 |
本田雄、井上俊之、小黒祐一郎(アニメスタイル編集部) |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 2,300円、当日 2,500円(税込·飲食代別) |
腹巻猫です。8月27日にTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のサウンドトラック・アルバムがリリースされました。先行配信で一部の楽曲が公開されていたものの、音楽の全貌が明らかになったのは初めて。ちょっと驚いたのは、音楽の多くが特定のシーンに合わせたフィルムスコアリング的な手法で作られていたこと。そして、劇中に流れる歌ものの多くを、劇伴を担当した照井順政が作詞・作曲していたことです。さまざまな意味で、現代的だなあと思います。今回は『GQuuuuuuX』の音楽について語ってみます。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は、2025年4月から6月まで放映されたTVアニメ。監督・鶴巻和哉、アニメーション制作・スタジオカラー、サンライズのスタッフで制作された。「エヴァンゲリオン」シリーズのスタジオカラーが「ガンダム」シリーズの制作に参加したことで話題になった作品だ。
宇宙世紀0085年。スペースコロニーで暮らす女子高生アマテは、運び屋の少女ニャアンと出会ったことから非合法なジャンク屋に関わってしまい、人生が一変する。最新鋭のモビルスーツ・GQuuuuuuXに搭乗し、モビルスーツ同士の対戦競技クランバトルに、「マチュ」を名乗って参加することになったのだ。マチュと一緒にクランバトルを戦うパートナーは、赤いガンダムに乗る少年・シュウジ。マチュとニャアンとシュウジの3人は、正体を隠してクランバトルを戦ううちに、謎の遺物「シャロンの薔薇」をめぐる計略とジオン軍の内紛に巻き込まれていく。
物語の舞台設定は、TVアニメに先行して劇場公開された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』で明かされている。本作は、『機動戦士ガンダム』第1作で描かれた「1年戦争」でジオン軍が勝利し、地球連邦軍が敗れたパラレルワールド(今風に言えばマルチバース)を舞台にした作品なのである。古くからのガンダムファンにとっては、シャアやキシリア、シャリア・ブルといったおなじみのキャラクターが、正史(従来の「宇宙世紀」の世界)とは異なる世界線で活躍するのが大きな見どころになっている。
いっぽう、主人公のマチュやニャアンやシュウジたちは、現代の若者らしいキャラクターとして描写されている。特に初期のエピソードでは、3人の揺れ動く心情や関係性の変化が軽快なテンポで描かれ、青春ものの雰囲気が濃い。これも新鮮で魅力的だった。
音楽は照井順政と蓮尾理之が共同で担当。以下、サウンドトラックCDの解説書に掲載された、鶴巻監督・照井順政・蓮尾理之の鼎談を参考に、本作の音楽の成り立ちをふり返ってみよう。
鶴巻監督は「若い世代の青春を表現する、現代的な感覚の楽曲が欲しい」と考え、アニメ『呪術廻戦』の音楽などに参加していた照井に音楽を依頼したという。照井は、スケジュールや楽曲のボリュームなどを考えると、1人で音楽を担当するのは厳しいと思い、旧知の音楽家・蓮尾理之に声をかけた。ふたりはロックバンド・siraphのメンバーであり、一緒に活動してきた仲なのである。照井はギタリスト、蓮尾はキーボード奏者。演奏する楽器の違いは音楽性の違いにつながり、2人の音楽が補完しあう、絶妙な共作になった。
「ガンダム」シリーズの音楽といえば、壮大な世界観を表現するオーケストラサウンドという印象が強い。しかし、『GQuuuuuuX』の音楽は、シンセサイザーの電子的なサウンドを基調にしている。照井はキャラクターデザインやコンセプトアートを見た印象から、オーケストラよりも電子音を中心とした音楽がフィットすると考えたという。サウンドトラックの1曲目に収録された「薄暮のハイフロンティア」に、本作の音楽の特徴がよく表れている。筆者は劇場版『Beginning』でこの曲を初めて聴いたとき、「これまでにないガンダムの音楽だ!」と強い印象を受けた。もちろん、これまでのガンダムシリーズにもシンセサイザーの曲はある。『ガンダム』第1作には「スペースコロニー」という曲があり、宇宙の情景やスペースコロニーの生活を電子音で彩る演出は、そこから後続の作品に受け継がれているといってもいい。ただ、音楽全体を電子音中心に作った作品はこれまでなかったと思う。
『GQuuuuuuX』の音楽のもうひとつの特徴は、コーラスや歌が入った曲が多いことである。解説書の鼎談とは別の、Webサイト・OTOTOYに掲載されたインタビュー(下記URL)によれば、もともと照井順政への依頼は「挿入歌を作ってほしい」というものだったそうだ。
https://ototoy.jp/feature/2025082703
照井も蓮尾もロックバンド出身であり、アニメ作品やアーティストへ楽曲提供を行うなど、ボーカル入りの曲作りは得意分野と言える。本作では電子音を基調にしたサウンドと生の女声ボーカルを組み合わせることで、宇宙を舞台にした青春群像という本作独自の世界観を表現することに成功している。先に紹介した「薄暮のハイフロンティア」も、その手法で作られた楽曲である。
物語が進むにつれて、本作の内容はクランバトルをメインにしたものから、本格的な宇宙戦を描くものに変化していった。それに合わせて、音楽も従来の「ガンダム」シリーズのような弦楽器やブラスを使ったスケールの大きなものが増えていった。シリーズを通しての音楽のテイストの変化も聴きどころである。
また、劇中の1年戦争を描くパートでは、『ガンダム』第1作(TV版、劇場版)の音楽が使用されている。この演出は劇場版『Beginning』でも大きな話題を呼んだ。過去パートと現代パートとで、音楽の印象が大きく異なる点も本作の特徴である。それが、「旧作とは異なる世界線への分岐」という本作の設定に合っていた。当コラムでは字数の都合もあり、旧作音楽には詳しく触れないが、『Beginning』で使われた旧作の楽曲は公式プレイリストにまとめられているので、関心のある方は音楽配信サイト等でチェックしていただきたい。
本作のサウンドトラック・アルバムは、「『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで、2025年8月27日にバンダイナムコミュージックライブからリリースされた。CDは通常盤が2枚組、初回限定盤が本編未使用曲を含む3枚組。配信版はCD通常盤と同じ内容である。
収録曲は下記を参照。
https://www.sunrise-music.co.jp/list/detail.php?id=1324
初回限定盤・通常盤共通のディスク1、ディスク2から、印象的な楽曲を紹介しよう。
全体はストーリーに沿った構成で、全48曲を収録。次回予告のフルサイズや、挿入歌のフルサイズ、カラオケなど、本編では流れなかったバージョン違いの音源も収録されている。
解説書の鼎談によれば、本作の音楽の大半は、絵コンテを撮影した映像に音楽をつけていくフィルムスコアリング的な手法で制作されたという。そのため、楽曲と使用されたシーンとが密接に結びついている。アルバムには、ほぼ劇中使用順に楽曲が収録されているので、曲を聴きながら本編を追体験することができる。また、本編では楽曲の一部しか使われていないケースも多いため、アルバムではフルサイズの楽曲を純粋に音楽として楽しむことができる。1枚で2度おいしいアルバムなのである。
シーンに合わせて書かれた楽曲の中には、一度きりの使用に終わらず、ほかのシーンで使われる曲もあった。つまり、フィルムスコアリング的でありながら、溜め録り的な演出も行われているのだ。これは、なかなかうまい手法だ。TVシリーズの場合、同じ曲を流すことで、キャラクターやシチュエーションを印象づけることができるからである。
ディスク1の1曲目「薄暮のハイフロンティア」は、第1話の冒頭でマチュとニャアンが出会うシーンに流れた曲。すでに紹介したとおり、本作の音楽イメージを象徴する曲であり、初出から強烈な印象を残す、出色の楽曲になっている
トラック4の「クランバトル」はリズムとシンセサウンドを主体にしたバトル曲。大義も名分もないゲーム的なモビルスーツ戦のシーンに、明快なメロディを持たない無機質な曲がフィットしていた。この曲は第1話で使用されて以降、クランバトルのシーンにたびたび使われたほか、後半のエピソードではクランバトルではない本物の(軍事的な)戦闘シーンにも何度か使われている。
トラック5「目覚めたい魂たち」は、第1話でマチュが初めてGQuuuuuuXに乗り、軍警察のモビルスーツを倒す場面に流れた曲。ストリングスのメロディで盛り上がる曲調は従来のガンダムシリーズの楽曲を思わせる。しかし、バックトラックには電子音がきらめき、『GQuuuuuuX』らしいサウンドになっている。第5話ではニャアンがGQuuuuuuXに乗って出撃し、パイロットとして覚醒する(オメガサイコミュを起動する)場面に、この曲が流れていた。曲名が「目覚める魂たち」ではなく「目覚めたい魂たち」とつけられているのが、青春ものっぽくて、すごくいいと思う(構成・曲名づけは鶴巻監督)。
トラック6「コロニーの彼女」は、キラキラしたシンセサウンドの中に「ラララ」と歌う女声コーラスが入ったテクノポップ風の曲。「薄暮のハイフロンティア」と並ぶ『GQuuuuuuX』らしい曲だ。使用されたのは第3話でニャアンがデバイスの売人と接触するシーン。本作の音楽には、現代の若者っぽさを感じる曲が多いのだが、この曲もそのひとつである。
トラック8〜トラック13は第4話「魔女の戦争」で使われた曲。1年戦争で活躍した女性パイロット、シイコ・スガイが登場するエピソードである。シイコとマチュのふれあいを描写するギターとシンセの曲「運河脇の帰り道」(トラック9)、シイコの想いを表現するチェロとピアノとシンセの曲「残り香」(トラック11)など、曲調がぐっと情感豊かになって、「これまでと何か違うぞ」と感じさせる。クランバトルのシーンに流れる曲「魔女の戦争」(トラック12)は、緊迫した弦のフレーズに始まり、ブラスやパーカッション、シンセなどが加わって、スケールの大きな音楽に発展していく。作曲は、本作の音楽に参加している3人目の作曲家・徳澤青弦。徳澤はチェリストでもあり、いくつかの楽曲の編曲も手がけている。シュウジの赤いガンダムと戦うシイコが「キラキラ」を見る場面に流れる「欲しいものすべて」(トラック13)は、「ラララ」と歌う女声コーラスの入ったきれいな曲。曲調が美しいぶん、シイコの心情の切なさや戦闘の無情さが際立つ。本作の中でも特に記憶に残る曲のひとつである。
ディスク1の後半には「夏の現在地」(トラック15)と「水槽の街から」(トラック18)という、2曲の歌もの(歌詞のあるボーカル曲)が収録されている。「夏の現在地」は第5話でマチュがヘッドフォンで聴いている曲。「水槽の街から」は同じく第5話で、自分がいないのにクランバトルが開始されたことを知ったマチュが、急いで駆けだす場面に流れている。どちらも挿入歌と言えるのだが、むしろ筆者は、近年増えてきた「歌入りの劇伴」の一種ではないかと考えている。解説書の鼎談で鶴巻監督は「シーンに当てすぎていない」ボーカル曲が好きだと発言している。歌詞に意味がないわけではないが、シーンと密接に関係している(シーンを説明している)わけでもない。つまり、歌詞を聴かせることを重視していないボーカル曲である。
「挿入歌」というと「歌」に重点があり、歌が流れているあいだドラマは止まっていることが多い。しかし、歌入りの劇伴は、曲が流れているあいだもドラマが進行し、セリフも入る。そのため、視聴者(観客)は歌詞を聴いていない。あとでサントラ盤などで歌詞を知って、こういう曲だったのかと気づく。アニメ『進撃の巨人』などの音楽を手がける澤野弘之がこうしたタイプの楽曲を積極的に書いているし、ほかにも同じような試みをする作曲家が増えてきた。
鶴巻監督はこう語る。
「そういう曲(注:ボーカル曲)が流れると、自然とシーンに幅と奥行きが出る。(中略)歌詞と重なると、セリフに集中できないという人もいるけれど、歌詞をあとで読めば画面に映るものと二重でストーリーが進み、奥行きに繋がると考えています。(中略)手法としては、ストーリーのあるミュージックビデオに近い感覚かもしれません」
『GQuuuuuuX』は、マチュやニャアンの心情描写に、歌入りの劇伴を効果的に使っている。注目したいのは、照井順政がこれらの楽曲の作詞・作曲を担当していることである。劇伴の担当作家が歌ものも書くことで、ドラマと乖離しない曲が生まれるのだ。
余談になるが、こうした歌入りの劇伴が増えてきた背景には、キャラクターの心情をセリフや音楽で直接的に表現することが、わざとらしい、演出過剰だ、と思われるようになってきたことがあるのではないか。その代わりに、歌入りの劇伴を背景に流し、雰囲気で心情を感じ取ってもらう。あとで歌詞を読んだときに、そういう意味もあったのかと気づいてもらえるようにする。そんな思惑があるのではないだろうか。
話を戻そう。ディスク1の終盤は、戦闘ものらしい重厚な音楽が多くなってくる。「正面突破」(トラック22)、「イオマグヌッソ」(トラック25)、「オーバーピーク」(トラック26)など、いずれも物語が大きく動き出す第6話、第7話で使用された曲である。
解説書の鼎談の中で、「裏取り」(トラック24)と題された曲が、実は第7話のサイコ・ガンダム出現シーンのために書かれた曲だったことが明かされている。実際の第7話のそのシーンには、『機動戦士Zガンダム』の曲(「モビル・スーツ」中間部)が流用された。新しい音楽も悪いわけではないが、『Zガンダム』の音楽には鬼気迫るような迫力がある。旧作の音楽のパワーをあらためて考えさせられる話である。
続いて、ディスク2の収録曲から。
1曲目に収録された「フォールアウト」は、第7話でGQuuuuuuXがスペースコロニー内を飛ぶ場面に流れたアップテンポの曲。シンセサウンドとリズムを重ねたスピード感のある曲調が高揚感を生む。『GQuuuuuuX』ならではのカッコいい曲とは、こういう方向性なのだろう。
ディスク2で印象深い曲といえば、第9話でマチュが水底に沈んだシャロンの薔薇を見つける場面に流れた「水底の星」(トラック9)、そのシャロンの薔薇が引き上げられる場面に流れた「シャロンの薔薇」(トラック10)がある。どちらもシンセ主体の幻想的な曲で、「向こう側の世界」から来たというシャロンの薔薇の神秘性が表現されている。シンセの音色が生かされた曲だ。
ディスク2のトラック11以降は、第10話から第12話で使われた楽曲である。緊迫した戦闘をダイナミックに描写する「Damage Per Second」(トラック11)、女声コーラスと管弦楽器による前衛音楽のような「ゼクノヴァ」(トラック12)、上下動する弦が焦燥感をあおる「宇宙世紀のクロニクル」(トラック14)、最終話の巨大な白いガンダムとの戦闘シーンに流れた弦楽器主体の「マチュとジークアクス」(トラック15)など、大詰めを飾るにふさわしいスケールの大きい楽曲が並んでいる。ただ、聴きごたえがある反面、初期の「薄暮のハイフロンティア」のような曲の出番がなくなったのは、もったいなかった気がする。
とはいえ、最後のバトルシーンに歌入りの「Far Beyond the Stars -GQuuuuuuX ver.-」(トラック16)が流れたのは『GQuuuuuuX』らしくてよかった。この曲の歌詞は英語なので、劇中で流れているときは、歌詞の意味はほとんど意識されない(少なくとも筆者はそう)。サントラにはフルサイズが収録され、歌詞も掲載されている。さわやかなポップスとしても聴けるこの曲がクラマックスに流れたことで、『GQuuuuuuX』は青春ものの香りを残したまま完結したと思う。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は、「ガンガム」シリーズの音楽史をたどるような作品だった。劇中では第1作の音楽や『Zガンダム』の音楽が流れ、同時に現代的なシンセサウンドの曲やボーカル入りの曲も流れる。サウンドトラック・アルバムには新曲しか収録されていないが、本編で使用された旧作の曲は各話のエンディングクレジットにすべて表記されている。それを参考に自分で音源を集めてプレイリストを組むことが可能だ。新しい世代のファンには、ぜひ、エンディングクレジットや公式プレイリストを手がかりに、旧作の音楽にも触れてもらいたい。映像を演出する音楽の原点、原型のようなものが、そこにあると思うのである。
そして、古くからのガンダムファンには、旧作の音楽だけでなく、『GQuuuuuuX』のサウンドトラックに収録された新曲もぜひ聴いていただきたい。新しい『ガンダム』の音楽には、映像音楽の新しいスタイルが反映されている。『ガンダム』の世界を現代の手法で表現しようとした作曲家のこだわりは、きっと心に響くと思うのだ。すぐには伝わらなくても、いつかきっと……。マチュのセリフにあるように「私たちは毎日進化する」のだから。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』オリジナル・サウンドトラック(初回限定盤)
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作監修正必須カットが、あっちにもこっちにも! まだ、現状それ……!
現代のアニメは線だけではなく、例えば背景や貼り込みなども含む“画面の情報量”が多過ぎる故、一口に「作画修正」とは言い切れない品質管理に奔走するのがアニメ監督の仕事になりつつあります。毎週放送されている内、半分出来の悪い話数があっても納得して観ていた我々が慣れ親しんだ1980~1990年代のアニメ。その頃の毎週1回放送して“消費”されるだけの大らか基準で、今のシリーズを制作する訳には行きません。1990年代後半~2000年以降、デジタル仕上げからデジタル撮影へ徐々に移行し、セルに筆で絵具を塗っていた職人や、1コマ1コマシャッターを押していたカメラマンは姿を消し、スタジオ内にはPCとオペレーターが並び、ラッシュ時に見つかった“色パカ(塗りミス)”“口パクズレ”などは後からでも簡単に直せるようになり、それら以前のアニメに付き物だったテクニカルミスも同時に姿を消すこととなりました。そのお陰で“作画ミス・失敗がないことが良いアニメの最低条件”になったのでしょう。さらに2020年以降CGやデジタル作画を駆使し、“配信”という視聴形態のバケモノに戦いを挑む制作体制になり、それは“如何に繰り返しの視聴に耐え得るアニメを作れるか?”という、
スタッフ一同ハイビジョン対応のキメの細かい作業に突入した!
のです。つまり、80年代のアニメ作品はマニアでない現代の普通・一般の方々から見ると、「荒くて観てられない!」と。もう一度言います、古作品マニアは別です! 俺が大好きな出﨑(統)・杉野(昭夫)コンビのアニメも、俺自身は一生観られますから! でも、昨今のアニメファンからは粗雑に見えるかも知れません。それこそ、
1990年代~の所謂“巧いアニメーターの崩し作画”はいくら気持ち良く動いても、令和の世ではただの作画崩壊に受け取られる可能性を秘めている!
し、その納品を受け取るスポンサー(委員会)さんらもどんどん若返っています。その事を肝に銘じて、我々ロートル監督は自分の仕事内容を見直さなければなりません(警鐘)!
すなわち、若手スタッフと同じ目線に立って監督自らが作画直しをするのは、アニメ監督を生業にするなら当然の話で、作画崩壊は作画スタッフ及びアニメ会社のせいだとかは言ってはいけないのです、監督は。そして、
「作監修正が1日1カットしか上がらない(汗)」と聞いた時も、「昔は作監と言えば1日10カット以上で、○○さんに至っては1日30カット上げてたぞ!」などと、己世代の仕事速度武勇伝を後輩に語って聞かせたところで、この現状に何も寄与しません!
今の若手スタッフらは、親や学校の教育も違えば周辺のテクノロジーも違い、さらに仕事の得意分野もそれに望まれる正確さも、努力・根性・学歴至上主義の我々世代とは違います! その上、前述のような細部まで正確さを要される画面を作らなければならない訳で、大雑把80年代アニメに於ける大雑把作画で大量生産した作監修の質・量とも比べるべきではないからです。結局、古いアニメの作り方そのものを見直す時期にきているのだと思います。
で、今回も短くてすみません! 修正に戻ります(汗)!
直さなきゃならないカットが、あっちにもこっちにも! それが今の現状……
『キミと越えて恋になる』、放送1ヶ月前になると、日々作画修正の毎日!
公式より“メインPV第2弾”も上がっているので、是非ご覧ください。総作監修の入っていない、剝き出しの板垣作監修正したカットがいくつも入っています。どれか分かるでしょうか?
という訳で、今回はすみません! また仕事に戻らせて頂きます(汗)!
9月28日(日)にトークイベント「アニメマニアが語る『芝山努とAプロ』」を開催します。
芝山努さんは『ドラえもん』シリーズ、『ちびまる子ちゃん』、『ど根性ガエル』といった様々な作品を、長きに渡って手がけてきたアニメクリエイターです。その作品の素晴らしさは読者の皆さんもよくご存知のことでしょう。
今回のイベントでは芝山さんの仕事について、さらに彼が所属していたAプロダクションについて、アニメマニアの目線(あるいはアニメ研究家の目線)で語っていきます。マニアックな内容のトークになるはずです。
トークの出演はアニメスタイルの小黒祐一郎編集長と、国産商業アニメ研究の第一人者である原口正宏さん。聞き手としてプロデューサーであり、元アニメ雑誌編集者であった高橋望さんにも出演していただきます。
実現してもごく短い時間になると思われますが、このイベントで、芝山努さんご本人の出演があるかもしれません(ご出演していただけない場合もあり得ます。ご了承ください)。
今回のイベントはトークのメインパートを配信します。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは2025年9月6日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/331549
会場&配信チケット https://t.livepocket.jp/e/x04rk
配信チケット(ツイキャス) https://premier.twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/393886
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第245回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年9月28日(日) |
会場 |
LOFT/PLUS ONE | 出演 |
小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)、原口正宏(リスト制作委員会)、高橋望(プロデューサー) |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,500円、当日 1,800円(税込·飲食代別) |
腹巻猫です。9月13日に蒲田studio80にてサントラDJイベント「Soundtrack Pub【Mission#48】」を開催します。特集は「生誕100周年・渡辺宙明スペシャル」。2022年に亡くなった渡辺宙明先生の生誕100周年を記念し、音楽の魅力と後世に残した影響(あるいは残すべき音楽性)をあらためてふりかえる企画です。ぜひ、ご来場ください! 詳細は下記URLから。
https://www.soundtrackpub.com/event/2025/09/20250913.html
今回は、前回紹介した『タコピーの原罪』の作曲家・藤澤慶昌が音楽を手がけたアニメ、『アポカリプスホテル』を取り上げたい。『タコピーの原罪』とは違ったタイプの音楽の魅力が味わえる作品である。
『アポカリプスホテル』は2025年4月から6月まで放送されたテレビアニメ。監督・春藤佳奈、シリーズ構成&脚本・村越繁、アニメーション制作・CygamesPicturesのスタッフで制作されたオリジナル作品だ。
人類にだけ効果を及ぼす致死性のウイルスが地球に蔓延した。生き延びるために人類は宇宙へ旅立ち、それから長い年月が経った。日本の銀座にあるホテル「銀河楼」では、残されたロボットたちが、いつ人類が帰ってきてもいいように毎日ホテルを管理し、客が訪れるのを待っていた。支配人代理の代理を務めるアンドロイド、ヤチヨもそのひとり。100年ぶりに銀河楼を訪れた客は、人類ではなく、地球外生命体(宇宙人)だった。ヤチヨたちは宇宙人も大切な客としてもてなそうとする。
キャラクター原案を漫画家の竹本泉が手がけている。ちょっと懐かしい絵柄のキャラクターが、ユーモラスでほのぼのした味わいを出していて、実にいい。
すでに誰かが言っていることだと思うが、「人類がいなくなったあとにロボットだけが客を待ち続けるホテル」という設定は、50〜60年代の古典的なSFを思わせる。クリフォード・D・シマックあたりが書きそうな話である。シマックは遠い未来や田園を舞台にした味わいのあるSF小説を書いた。『アポカリプスホテル』にも同じような雰囲気がただよっている。何が言いたいかというと、本作にはオールドSFファンがよろこびそうなSFマインドが感じられる、ということである。
音楽は藤澤慶昌が担当。SFとはいえ、日常的なシーンが多く、ホテルの華やかな雰囲気も盛り込んだ本作に、藤澤慶昌の音楽はぴったりだった。
銀座の一等地にある正統派ホテル・銀河楼を描写するのは、女声スキャットが入ったミュージカル音楽みたいな華やかな曲。そこにロボットたちをコミカルに描くテクノポップ風の曲や、ミステリー・サスペンス・バトルなどを表現する映画音楽風の曲、ロボットの人間的なふるまいに情感を添えるリリカルな曲などが加わり、バラエティに富んだ、魅力的な音楽世界を作り出している。
『タコピーの原罪』とは対照的に、本作には明るく軽快な曲が多い。『ラブライブ!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などを手がけた藤澤慶昌の持ち味が発揮された作品である。
本作で特に印象深いのは、銀河楼を華やかに彩る女声スキャットの曲だろう。ヤチヨたちがホテルで客を迎える準備をしている場面などに流れて、往時のにぎわいを想像させる。音楽だけでホテルの格式やファッショナブルなイメージまで表現しているのがうまい。
次に印象的なのが、しみじみしたシーンに流れるピアノや弦楽器による抒情的な音楽。ヤチヨたちはロボットだから感情はないはずなのだが、言動は人間以上に人間的だったりする。抒情的な音楽が流れることで、視聴者はロボットに感情移入し、ロボットに人間性を感じるようになる。
それからもうひとつ、筆者が特に記憶に残った音楽がある。長い時の流れや宇宙空間の広がりを感じさせる、効果音的な音楽である。これについては、あとで詳しく語りたい。
本作のサウンドトラック・アルバムは、「アポカリプスホテル ORIGINAL SOUNDTRACK」のタイトルで2025年6月25日にサイバーエージェントから配信開始された。配信のみでCDでの発売はない。ただし、ブルーレイ特装限定盤の第2巻と第3巻にはサウンドトラックCDが同梱されている。
少し長くなるが、曲目を以下に書いておこう。
トラック52と53は、それぞれ第6話と第9話で流れた挿入歌。
トラック1〜51が劇伴である。おそらくこれで全曲だろう。
基本的に1話完結のエピソードで構成された作品なので、曲順は使用順にはあまりこだわっていないようだ。
トラック1のアイキャッチに始まり、トラック2「ようこそ、ホテル『銀河楼』へ」とトラック3「愛すべきお客様に、ハートフルな今日と最高の笑顔を」で、舞台となるホテルを紹介する。この2曲は女声スキャットの入った華やかなビッグバンド風の曲である。ミュージカルの序曲のような雰囲気で「銀河楼」がにぎやかだった時代をイメージさせる。本作の劇伴の代表曲といえば、この2曲あたりになるだろう。
トラック4〜8は、人類が地球を去ってからの時の流れをイメージした構成のようだ。
トラック5「悠久の時」は毎回のように使われたピアノソロの曲。サティのピアノ曲のような落ち着いたトーンで、廃墟となった街の情景やヤチヨたちの日常を描写している。感情を感じさせない、淡々とした曲調が、人類が消えた世界の静かな雰囲気をよく伝えている。
トラック6「メンテナンス」はシンセサイザーのリズムと無機的なメロディーに女声ヴォーカルが重なるテクノポップ風の曲。働くヤチヨの場面によく流れている。アンドロイドとしてのヤチヨの個性を表現した曲とも受け取れる。
トラック8「自然に還った街」は、ヤチヨが湖で釣りをする場面などに流れた、ギターとパーカッション、笛などによる素朴な曲。使用回数は多くないが、本作の世界観を表現する重要な曲だ。
トラック9からは、ユーモラスな曲やしゃれた曲が続く。地球外生命体の客が訪れ始めてからの銀河楼の日常を描写する音楽である。
女声スキャットが入った「女子会」(トラック9)は、第3話でタヌキ星人の一家がヤチヨと対面する場面に流れた曲。以降は、タヌキ星人の少女ポン子のテーマ的に使われている。4ビートのジャズ「男ってバカよね…」(トラック11)はホテルのバーカウンターの雰囲気。続いて収録された「これはどういう事でしょう?」(トラック12)、「私たちは人間です!(タヌキです」(トラック13)、「ア゛ーーーーーーーー!!!」(トラック14)、「ピポポピポピポピポポピピ」(トラック15)、「シャンプーハットがない!?」(トラック16)などは、人類とは異なる宇宙人の習性に困惑し、動作不良を起こす(人間風に言えば、うろたえる)ヤチヨを描写するコミカルな音楽だ。
演歌風の「宇宙人のブルース」(トラック17)はタヌキ星人の老婦人(ポン子の祖母)ムジナの場面に使われていた。
戦争映画音楽風の行進曲「シャンプーハット大作戦」(トラック18)とピンクパンサー風の「シー…気づかれないように…」(トラック19)の2曲は、難題に対処するヤチヨたちをユーモラスに描写する、おなじみの曲である。
トラック20からは雰囲気が変わり、ピアノや弦楽器によるリリカルな曲が紹介される。
ピアノとチェロによる「大切なこと」(トラック20)は第9話でムジナのビデオメッセージが流れる場面などに流れた感動的な曲。弦合奏とオーボエがしみじみと奏でる「触れ合う心」(トラック21)は、第8話のラストでグレていたヤチヨが職場復帰する場面や第12話で人類の帰還を素直によろこべないヤチヨをポン子が励ます場面などに使われた。
ほかにも、第11話でヤチヨがペガサスに乗って飛ぶ場面の「夢」(トラック23)、第9話でポン子が祖母ムジナとの思い出を回想する場面の「別れ」(トラック24)、第8話でヤチヨがポン子に虚しさを訴える場面の「宇宙に想いを馳せて」(トラック25)、第1話でヤチヨが「すぐに帰ってくる」というオーナーの言葉を思い出す場面の「約束」(トラック29)など、心に残る曲は多い。
これらのトラックは、藤澤慶昌が得意なタイプの、繊細な心情を描く曲である。本作ではロボットや宇宙人の感情を直接的に表現するというよりは、視聴者が自身の心情を重ねて感情移入することを助ける曲として機能している。
トラック30〜32の「おかしいですね…」「謎が謎を呼ぶ」「暗躍」の3曲は、ホテルの密室殺人事件(?)を扱った第10話で印象的に使われたミステリー・サスペンス曲。
トラック33〜40はアップテンポのアクション曲や危機描写曲が集められている。第4話の巨大生物ヌデルとポン子の戦いや、第8話でのポン子対ヤチヨの対決場面に流れた曲である。曲名からパロディになっている「ヌデル補完計画」(トラック34)をはじめ、あえてシリアスになりすぎない(笑える余地を残した)曲調で作られているのが本作らしいところ。
トラック41「結婚行進曲」は第9話のポン子の結婚披露宴で流れた曲。メンデルスゾーン作曲の「結婚行進曲」である。たぶんヤチヨの選曲なのだろう。この場面はポン子の結婚披露宴とポン子の祖母ムジナの葬儀を同時に行っているので、結婚行進曲に男声ヴォーカルが歌うタヌキ星人のお経が重なり、変な曲になっている。曲だけを聴くとコミカルなパロディ曲と思われるかもしれないが、実は地球人の文化と異星人の文化がまじりあって生まれた、SF的なポリフォニー(複数の旋律が同時進行する)曲だ。こんなところにも本作のSFマインドが感じられる。
続くトラック42〜47は、バラエティに富んだ楽曲が続く。ビッグバンド風の「そうだ、銀座へいこう」(トラック42)、ピアノとウッドベースによるジャズ「大人への階段」(トラック43)、第5話のウイスキー造りのシーンに流れたマーチ「プロジェクト・ウィスキー」(トラック44)、シンセとピアノによる「静寂」(トラック45)、優雅な弦合奏による「結婚披露宴」(トラック46)。ポン子の成長や披露宴のにぎわいを表現した構成のようでもあるし、銀河楼の歴史をフラッシュバックしているようでもある。本作の音楽の多彩をあらためて実感する流れだ。
この中に、ちょっと異質な曲がある。トラック45の「静寂」だ。明確なメロディーはなく、シンセの響きとピアノのタッチだけによる、環境音楽ともヒーリングミュージックとも聞こえる曲である。この曲が、このコラムの始めのほうで書いた「長い時の流れや宇宙空間の広がりを感じさせる、効果音的な音楽」のひとつだ。
「静寂」のような曲は、ほかにふたつある。トラック7の「人類はいつか帰ってきます」とトラック50の「生命」である。
「人類はいつか帰ってきます」はシンセの長いフレーズが積み重なっていく空間系の曲。第2話で環境チェックロボットがヤチヨに「人類はもう帰って来ないだろう」と伝える場面や、第12話で地球に帰還した人間の女性トマリが「人類は今も恒星間宇宙船で宇宙を旅している」とヤチヨに話す場面に流れていた。
「静寂」は第3話で1度だけ使用された。タヌキ星人が地球人と接触したことがあるとヤチヨに話す場面である。回想シーンで描かれる地球の宇宙船の中には宇宙服を着た人間が浮かんでいるが、彼らは遠い昔に死んでいた。宇宙と時間の非情さが描かれた場面だ。
「生命」は、第11話で休暇をもらったヤチヨが馬(?)と一緒に廃墟の街を歩く場面に使用。人類がいなくなっても、地球は植物や動物などの生命にあふれていることが、映像と音楽だけで表現される。
これらの楽曲は、音楽だけを聴いて面白いタイプの曲ではない。しかし、映像とともに流れたとき、あるいは『アポカリプスホテル』という作品をふりかえるとき、本作の世界観に密着した、なくてはならない曲であると思う。SFでしか描けない、悠久の時間と空間、その中の人間という存在の儚さが、こうした効果音的な、空間系の音楽で表現されていると思うからだ。
アルバムの終盤は、第11話と第12話で使用された楽曲で構成されている。
トラック48「休暇」は、第11話でヤチヨが銀座の街を歩く長いシーンに使われていたピアノの曲。第11話は筆者が本作の中で、もっとも印象に残った、お気に入りのエピソードである。大きな事件が起きるわけではないが、ヤチヨと一緒に銀座や東京の街を歩くことで、見慣れた風景が相対化され、文明や生命について考えさせられる。この回だけで、短編SFとして完成している。世界が水没したあとの世界を猫が旅する『Flow』という海外アニメ映画があったが、それと同じ空気感がこのエピソードにはある。曲の話に戻ると、「休暇」は約4分50秒あり、曲の展開が映像とぴったり合っている。おそらくはこのシーン用に絵に合わせて作られたのだろう。
トラック49の「余暇」は「休暇」の別ヴァージョン。ほとんど同じ曲だがピアノのタッチとコーダが異なっている。第12話で、待ち望んでいた人類の客を迎えたヤチヨが理由のわからない違和感を抱く場面に使われていた。
トラック50の「生命」はすでに紹介した。これも5分以上の長い曲で、やはり曲の展開が絵にぴったり合っている。本作の音楽は基本的に溜め録りなのだが、一部は絵に合わせて作られているようだ。
トラック51の「贈りもの」は、第12話でヤチヨとポン子がホテルで人類の客(トマリ)を迎える場面に流れたピアノソロの曲。第12話のラストは、ヤチヨが宇宙に飛び立っていくトマリを見送る場面で終わる。しかし、サントラの締めくくりにこの曲が置かれたことで、トマリが約束した通り、人類が地球に帰って来たような印象が残る。うまい構成である。
『アポカリプスホテル』は、ロボットが運営する未来のホテルを舞台にした、コミカルで、ときどきほっこりするアニメ作品である。そして、実はなかなか深いテーマを秘めた、良質なSF作品だと思う。SFの本質である価値観の相対化や認識の拡大をうながす場面が、さりげなく、しばしば登場するからだ。そういう観念的な要素は、なかなか音楽には反映されづらい。しかし、本作では華やかな曲や軽快な曲、リリカルな曲の中に、感触の異なる効果音的な曲を混ぜることで、SFのエッセンスを印象付けている。そういう意図はないのかもしれないが、結果的に、そういう効果をあげている。本作の音楽は、華やかでユーモラスで、リリカルで、同時にSFマインドを感じさせる音楽になっている。SF少年だった筆者のような視聴者にとって、この音楽は最高のおもてなしである。
アポカリプスホテル ORIGINAL SOUNDTRACK
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上映イベント「押井守映画祭」は押井守監督が手がけた作品を連続して上映するシリーズプログラムです。他の【新文芸坐×アニメスタイル】のプログラムと同様に新文芸坐とアニメスタイルの共同企画でお届けしています。
「押井守映画祭2025」の第三弾として、9月13日(土)に《Avalon 編》を開催します。上映作品は「Avalon アヴァロン」(2000年)と「アサルトガールズ」(2009年)。いずれも実写映画ですが、「Avalon アヴァロン」はアニメーションの作り方を実写に持ち込んだとも言える意欲作。そして、「アサルトガールズ」は「Avalon アヴァロン」と世界設定を共有した作品です。どちらも、なかなか劇場で観ることができない作品です。
今回も作品上映の前にトークコーナーを予定しています。ゲストは押井監督と佐伯日菜子さんのお二人。佐伯さんは「アサルトガールズ」のカーネル役。また、押井監督の「真・女立喰師列伝」の 「ASSAULT GIRL ケンタッキーの日菜子」ではケンタッキーの日菜子役で主演を務めています。トークの聞き手はアニメスタイル編集長の小黒祐一郎が務めます。
チケットは9月6日(土)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。 なお、今回の「押井守映画祭」でも押井守映画祭オリジナルグッズを販売する予定です。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(本イベントチケット販売ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-09-13-1
緊急告知!押井守映画祭オリジナルグッズを販売します!!
https://animestyle.jp/news/2025/04/30/29056/
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【新文芸坐×アニメスタイル vol.193】 |
開催日 |
2025年9月13日(土)13時10分~17時55分予定(トーク込みの時間となります) |
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会場 |
新文芸坐 |
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料金 |
3300円均一 |
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上映タイトル |
Avalon アヴァロン(2000/106分/35mm) |
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トーク出演 |
押井守(監督)、佐伯日菜子(出演)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
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備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
『沖ツラ』7話の続き。あれ、台風の件はやりましたよね? じゃ、“ハブ”話!
のっけから“ハブ”→“羽●名人”→“ハブ捕り名人”のややこしいリレーに笑わされました。もちろん、原作から笑わせてもらいましたが、アフレコで声が入って尚のこと、てーるーと喜屋武さんの間抜けなやり取りに改めて爆笑してしまいました。ハブ捕り名人のキャラも秀逸! 本当に空(えぐみ)先生のコメディー(ギャグ)センスには脱帽です。
が、このBパート冒頭、“通りかかる喜屋武さんと比嘉さんの“ハブ”の噂話を立聞きするてーるー“の場面、
マンガだと1コマにいくつも台詞(情報)がぶち込めるのに対して、アニメ(フィルム)は時間と共に流れていってしまうため、カット割りで整理するのが大変でした(汗)!
元のコンテがあまり上手くいってなかったので、俺の方で全面的に修正させてもらいました。原作をお持ちの方はアニメ版と比べて見てください。このシーンこそ、
マンガのコマはそのままアニメのコンテに引き写すことができない!
という良い例だと思いますし、上記の苦悩の意味が分かっていただけるかと。ま、でも言うほど悩まなかったかも。
あと、実在する“羽●名人”のビジュアルも見せられる部分ギリギリまで寄った気がします。「眼鏡まで入れたらダメ」とかなんとか、製作委員会から何度か注意された挙句が現状。
イタチ役比嘉さん登場のシーンで食べてるものが、演出か作画の勘違いで最初カボチャで描かれていて、空先生より「できたらミカンでお願いします」と委員会を通して要望いただきました(汗)。確かに原作のコマを見ると「イタチとの対比的にカボチャではなかろう」と演出に作画直しを発注。その際に“ミカン”を分かりやすくするために足下に“皮”を置く指示を俺の方で加えました。
なんにしても、メインキャラが各動物の着ぐるみで解説を進めるのは可愛くてナイスアイディア!
ま、結局『沖ツラ』は原作が凄く良くできてるので、どこまで読み込んでその面白さを再現できるか? が我々の腕の見せ所でした。当然の話ですが……。
さて、そろそろ『キミ越え』の続きやります!
2~3週ほど前の続き、コンテ修正の話。改めて見ると、これまでの話数同様7話も例外なく、容赦ない修正をしています。ほぼ“描き直し”と言ってもいいくらい。
チェック内容は
アングル・キャラのサイズ・カット尺取り直しほか。やっぱり、まあ“全部”になります!
スタッフ表記にあるとおり、今作も田辺(慎吾)監督を置いての総監督というのが自分の立ち位置。本来ならコンテ・チェックも一旦監督に任せるのがいいのかも知れませんが、前作『いせれべ』同様今回もそうしませんでした。なぜなら彼本人のコンテを見ても「自分はカットを絶対こう割る!」と言う傲慢さが感じられなかったからです。
俺は監督は傲慢であるべきと提唱しています。なぜならスタッフ・キャストの方々から「これどうするの?」と質問が飛んできた場合、素早い決断が必須。皆さん仕事場で楽しく遊びたがってる訳じゃなく、早く終わらせて帰りたがっているのです。だから、監督は「俺はコレが良い!」と早く答える傲慢さが必要不可欠! これはアフレコ現場に於いて音響監督にも確認したところ、「良い人装って、その実優柔不断な監督こそ本当に困る! 傲慢が良い」と仰っていました。
コンテの話で言うなら、“それぞれのコンテマン(演出)の個性を尊重する”大らかな現場を作りたいを大義名分に、“面白くないコンテ”でもスルーするつもりの演出家にコンテを預けても、結局後で俺が直すハメになります。だったら監督は全設定発注と自前のコンテを多く切って(描いて)、全員(監督も含む)のコンテを俺がチェック・修正する! と。そして、全般直しが多いためコンテ連名になっているのです。
監督にとってコンテ修正とは、容赦なしの戦場!
だと思っています、板垣は。だって「面白いフィルムの流れを作る」って音楽に例えるなら作曲するようなもの。5~10人の民主制で譜面書きます? スケジュール上、一旦描き手を分けたにしても一本に統括する仕事はやっぱり一人でやるべき! それが一番誠実な仕事の仕方だと信じています。
という訳で、『キミ越え』制作中!
腹巻猫です。今回は、6月から配信されたアニメ『タコピーの原罪』の音楽を取り上げたいと思います。タコ型宇宙人タコピーと地球人の少女との交流を描く、ほのぼのした日常SF……かと思っていたら、どんどんシビアな展開になっていく衝撃作でした。音楽もユニークな工夫を凝らした意欲作です。
『タコピーの原罪』は2025年6月から8月にかけて全6話が配信されたアニメ。タイザン5によるマンガを原作に、監督&シリーズ構成・飯野慎也、アニメーション制作・ENISHIYAのスタッフでアニメ化された。
ハッピーを広めるためにハッピー星から地球にやってきたタコピーは、小学4年生の女の子・久世しずかと出会う。しずかをハッピーにしようとさまざまな「ハッピー道具」を駆使するタコピーだが、しずかは同じクラスの雲母坂まりなからひどいいじめを受けていて、どうしても笑顔になってくれない。タコピーがしずかに会って7日目、しずかは愛犬チャッピーを失った絶望から、タコピーのハッピー道具を使って自殺してしまう。ショックを受けたタコピーは時間を7日前に巻き戻し、やり直そうとするのだが……。
憎しみや悪意といった地球人のネガティブな感情を知らないタコピーは、楽天的な言動をくり返し、それが逆にしずかたちの日常の残酷さを浮かび上がらせる。筆者は原作を読んでいなかったので、毎回「ここでこうなるの?」と驚きながら全6話を観終わった。最終話で解決はないが救いはある終幕になってほっとした。気楽に「観て」とは言いにくいが、観れば心を大きくゆさぶられる作品だ。
本作の音楽は大きく分けると、底抜けにハッピーなタコピーと過酷な日常を生きるしずかたち、という対照的なふたつの視点で作られている。タコピーの視点の曲は、ほのぼのしたメルヘンチックな曲調で書かれ、ネガティブな感情を感じさせない。しずかたちの視点の曲は人間的な喜怒哀楽を表現していて、その中でも特に不安感や恐怖感を描写する曲が「ホラー映画か?」と思うほどの振り切った曲調になっているのが印象的だ。
音楽を担当したのは『ラブライブ!』『宇宙よりも遠い場所』『アポカリプスホテル』などの音楽を手がけた藤澤慶昌。どちらかといえば、ほのぼのした作品やキラキラした作品が多い印象の藤澤慶昌が、本作では容赦なく胸をえぐるような心情表現に挑戦している。本作の聴きどころのひとつである。
本作の音楽の大きな特徴は、女声ボーカルを取り入れた曲が多いこと。サウンドトラック・アルバムには37曲が収録されているが、そのうち12曲が女声ボーカル入り。ボーカルはTVアニメ『薬屋のひとりごと』などの音楽にも参加している歌手、きしかな子が担当している。タコピー視点の曲にもしずか視点の曲にもボーカルが入っており、違うテイストで歌い分けられている。ボーカルが入ることで、タコピーやしずかたちの心情が、直接声を聞くように生々しく伝わってくる。ボーカルはタコピーやしずかの「心の声」なのだろう。
本作のサウンドトラック・アルバムは、2025年8月13日に「アニメ『タコピーの原罪』オリジナル・サウンドトラック」のタイトルでAnchor Recordsよりリリースされた。配信のみで、音盤(CD・レコード)の発売はない。
収録曲は以下のとおり。
劇中で流れる曲はほとんど収録されている。未収録は、おそらくタコピーがハッピー道具を出すときに流れるファンファーレぐらいだろう。未使用に終わった曲もいくつか含まれているようだ。
曲順は劇中使用順にこだわらず、大きな流れで『タコピーの原罪』の世界観を再現する構成。
トラック1の「どうせ何も変わらないし」は、あきらめに彩られたしずかの日々をけだるいムードで表現する曲。第1話で、しずかがまりなに呼び出される場面に流れていた。さっそくこの曲から女声ボーカルが入っている。何かを歌っているようだが歌詞はわからない。楽曲のクレジットには作詞者が表記されていないので、おそらくは造語のような、意味のない言葉で歌われているのだろう。しずかの辛さは言葉にできない、という比喩的な曲ととらえることもできる。
トラック2「チャッピーがいれば大丈夫」は、愛犬チャッピーと一緒にいるときのしずかの安心感を表現する曲。しずか視点の曲の中では数少ない、やさしくほのぼのした曲である。トラック3「学校というところ」は第1話でしずかとタコピーが学校に行く場面で流れた。明るい曲調だが、中盤や終盤では緊張感のある曲調に変化する。一見おだやかに見える学校生活に暗い影が落ちていることを音楽で表現しているのだ。
トラック4〜10にはタコピー視点の曲(タコピーの曲)がまとめられている。「おはなしがハッピーを生むんだっピ!」(トラック5)、「ものすごい笑顔にしてみせるっピ!」(トラック6)、「今日もがんばるっピ!」(トラック7)など、曲名だけでもすごいハッピー圧力が感じられる。
タコピーの曲には女声ボーカルが「ラララ」「ランランラン」といった楽しげなスキャットで歌うものが多い。タコピーが見ている、憎しみも悪意もない善意に満ちた世界が、メルヘンチックな曲調で表現されていて、まぶしいくらいだ。トラック31の「これで大丈夫だっピ!」も同じ仲間に入る曲である。
トラック11からは雰囲気が変わり、どんどん不穏になっていく。トラック13「まじめでバカ」は勉強が得意な同級生、東直樹のテーマ的に使われたピアノ主体の曲。トラック14「今度こそ」は、第4話でしずかから頼りにされた東が「今度こそうまくやってみせる」と決意する場面に流れていた。シンセ、ピアノ、弦などによるメランコリックな曲調で、東の抱える劣等感と無力感を表現している。トラック35の「役立たず」も同様に東の屈折した心情を表現した曲である。
トラック15〜18は、しずかをいじめるまりなにフォーカスした曲。「お前さえいなければ」(トラック15)は第2話でまりながしずかを追及する場面に流れたサスペンス的な悲哀曲。まりなは自分の家庭の不和の原因はしずかの母親にあると考えて、しずかに怒りをぶつけているのである。「家族を返せ」(トラック16)と「ママ」(トラック17)は、まりなが母親といる場面に流れたホラー音楽風の心情曲。不協和音を響かせる弦合奏と「はあ〜」とささやくような女声ボーカルによる「家族を返せ」が強烈。こういう曲を聴くと、まりなに同情する気持ちになってくる。
トラック19からまた雰囲気が変わり、少し希望が見えてくる。
トラック19「きみにしてあげられること」とトラック20「きみに笑ってもらえるように」は、しずかたちをハッピーにしようとするタコピーの気持ちをしみじみとした曲調で表現する曲。どちらも最終話の重要な場面で流れている。ここでは「ラララ」などの女声ボーカルは使われず、ピアノや弦、木管などのアンサンブルで、重層的な旋律が奏でられる。明るいだけでない複雑な心情を描く曲だからだろう。
トラック21の「最近はちょっと悪くないんだ」は、キラキラした音色のフレーズのくり返しと弦楽器の旋律で、おだやかな日常を表現する曲。第1話のラスト近くでしずかがタコピーに「(タコピーのおかげで)最近はちょっと悪くないんだ」と話すシーンに流れていた。前の2曲を受けて、しずかがタコピーに感謝している雰囲気である。
しかし、いい雰囲気になったのも束の間、次の曲からは、またどんどん暗くなっていく。
トラック22「ごめんね」は、第1話でしずかが死んだことに気づいたタコピーが「ごめんね」と話しかける場面に流れた、衝撃と動揺を表現する曲。トラック23〜27の「懺悔」「家族」「喪失」「後悔」「憎悪」は、しずか、まりな、東たちがしだいに追い詰められていく過程で使われた心情・状況描写曲。続けて聴くのはなかなか辛いものがある。
トラック28「魅惑の瞳」は、弦の駆け上がりからアップテンポのリズムと女声ボーカル、弦などの合奏に発展していく、高揚感のある曲。事態の好転を連想させるが、劇中ではしずかが意外な一面を見せる、背筋がぞくっとするようなシーンに選曲されている。
次のトラック29「ああ、無理だ」も忘れがたい印象を残す曲。第1話でしずかに変身してまりなに会ったタコピーが、まりなから何度もけられて動けなくなる場面に流れていた。ノイズ的な背景音に、ため息のようなボーカルが重なり、悪夢の中をさまよう気分にさせられる。
トラック32「変えられない未来」は、ピアノと弦による現代音楽風の曲。第2話で、タコピーが何度時間を巻き戻してもしずかの運命を変えられない絶望感を表現していた。
トラック33「魔法」は第2話のラストで流れた弦合奏の曲。ビバルディの「春」の演奏が挿入されている。その部分だけを聴くと明るいのだが、この曲が流れるのは、「魅惑の瞳」と同様に背筋がぞくっとするような怖いシーン。傷つき歪んだ心情を音楽と映像のギャップで表現する演出である。
トラック34の「Lucky Days」は藤澤慶昌の作詞による挿入歌。楽しい気分を表現するポップで軽快な曲で、第3話でしずかたちが東京へ行く計画を立てる場面に流れていた。
トラック36「行こう、東京へ」は、弦やピアノの軽快な演奏が期待感、高揚感を表現するさわやかな曲。第4話のラストと第5話冒頭の、しずかが東京にいる父のもとへ向かうシーンで使われている。
こうした明るい曲をアルバムの終盤に持ってきたのは、アルバム全体の印象を暗くさせない意図があるのだろう。
最後の曲「捜しもの」は、第6話で使われた挿入歌。地球に来た本来の目的を思い出したタコピーが、しずかに寄り添い、一緒にすごす場面に流れていた。この曲にはしっかりと日本語歌詞がつけられている。作詞は『薬屋のひとりごと』の挿入歌などを手がけた内田ましろが担当。1曲目の「どうせ何も変わらないし」にはなかった日本語詞の採用は、タコピーとしずかのあいだに「おはなし」が成立したことを反映しているのではないか。深読みしすぎかもしれないけれど、そう思うとよけい泣けてくる。「心の声を捜している」と歌う、このシーンと本作のテーマに沿った歌詞が感動的だ。
『タコピーの原罪』の音楽では、ハッピーと絶望の両極端が、めいっぱい振り切った曲調で表現されている。その振り幅が広いほど、タコピーがめざすハッピーと、しずかたちの絶望的な境遇の落差が強調される。しかし、希望がないわけではない。アルバムのラストに収録された挿入歌「捜しもの」が希望の象徴である。なぜなら「おはなしがハッピーを生む」のだから。
アニメ『タコピーの原罪』オリジナル・サウンドトラック
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いつもの如くシリーズ制作中盤以降の自分は、原画を描いたり直したりな日々……
原画を描いている最中「俺、何でこんな仕事してるんだろう?」と、思考が寄り道をする時があります。
レイアウトを描いて、同じキャラクターの画を何枚も描いて芝居をつけて、タイムシートとカメラ指示して……。数ある“絵描き”業の中でもかなり特殊で、アカデミックな美術情操教育を受けた者が必ずしも勝利者になれるとは限らない不思議な仕事(と、俺は思っています)、それがアニメーター。
自分のルーツ——『まんが道』(藤子不二雄A・著)“パラパラマンガ”を描いていた小学生時代は“単なるアニメ遊び”。中学生・高校と漫画描きと出﨑(統監督)アニメに夢中~を経て、マンガを諦めいったんアニメを目指すと決めて上京。
専門学校で小田部羊一先生にはパラパラマンガの“工夫”みたいなモノを楽しく教わった気がします。つまり、何気なく何枚も何枚も無駄に画を積み上げていた俺の“遊び”に「こうするともっと感じが出ない?」的なプロからのアドバイスをしていただけた、と。
卒業~テレコム・アニメーションフィルム時代。新人(動画)の頃は夜中・自宅にて我流で描いた原画の真似事を「見てください!」と大塚康生さんに見せに行っては「ここはこうならない」「本来はこう言う途中のポーズが入って~」などと“アニメーションの根拠”みたいなものをハッキリ教わりました。
原画試験に合格後、最初の原画の先生・田中敦子さんより「これおかしいでしょ?」と初原画を笑われて“プロをなめるんじゃない”を思い知らされました。その後、田中さんはアメリカ出張が決まり『SUPER MAN』一本御一緒したのみで、自分の身は田中さんから友永和秀・師匠に手渡されました。余談ですが「THE ART OF The Princess MONONOKE もののけ姫」(スタジオジブリ責任編集)にある『もののけ姫』制作日誌に“’97 2.11(火) 原画の田中敦子氏、今日で作業が終了し、テレコムへ帰還”とあるのですが、その次の日でした。一緒に『SUPER MAN』の作打ちをしたのは。当時、新人原画マンは先生と一緒に作打ちを受けて作業パートを分担するシステムだったため、自分の原画INは田中さんの帰還待ちだったわけ。だから田中さんが帰還するまで描いていた『もののけ姫』の動画(サンの胸揺らしたやつ)が板垣にとっての最後の動画になります。
で、友永さんに引き継がれた話に戻します。自分にとって、友永さんはいちばん長く教えていただいた、正に原画の師匠。レイアウトの決め方、芝居構成、ポージング、タイミングと何作も面倒を見ていただきました。だからと言って『カリオストロ』のカーチェイスみたいなものは、俺には描けるわけありません(汗)。ただ、いちばん俺の目に焼き付いているのは、
友永さんの仕事に対する姿勢・後ろ姿です!
本当に原画という仕事に惚れ込んで真剣に、そして楽しんで作画机にしがみついている感じでした。
出﨑憧れのコンテ・演出家志望であったハズの板垣が、監督をやりつつも未だに傍らで原画を描き続けているのは、テレコム時代の友永さんの背中が忘れられないからだと思います。友永さんがあれほど入れ込んでいたアニメーターという仕事、やはり一度飛び込んだらやめられないほどの魅力があるのだろうと信じて自分もやってきました。不思議なことに体力・集中力があった若い時より、歳とった今描く原画のほうが面白いと感じることが最近多くなってきました。
ふと思いましたが、俺に原画を教えてくださってた頃の友永さんて、今の俺より若い計算になるんですね……。そりゃあ、自分も若手の面倒見るのが仕事のメインになる訳ですね。
と言う訳で、ウチの若手ホープ・木村博美初監督作『キミ越え』を成功させますよ!
申し訳ありません、本日打ち合わせと原画作業でバタバタ(汗)。『沖ツラ』制作話は来週にして、『キミ越え(キミと越えて恋になる)』の話を少々。
とにかく、木村博美初監督&総作画監督と、頑張っています。自分の方は共同監督、そしてもちろん“作画プロデューサー&作画監督”も兼任して全面的にサポートさせてもらっています。
『COP CRAFT』『異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する』と一緒に作品を作ってきて、今度は共同で監督もお任せ! 非常に感慨深いものです。演出面ではまだ俺の方が色々アドバイスする立場にありますが、正直、作画面では木村さんの拘りに付いていくのがやっと、てとこでなんとかやっています。
という訳で、
『キミ越え』の新たなPV——メインPVが上がっていますゆえ、是非ご覧ください!
腹巻猫です。今回は、7月1日から配信開始された日本アニメーション作品の音楽集「NICHI-ANI Classics」を紹介するシリーズの第3弾。『トンデモネズミ大活躍』を取り上げます。筆者の大好きな作品です。
配信については下記を参照ください。
NICHI-ANI Classics公式サイト
https://sites.google.com/view/nichi-aniclassics
『トンデモネズミ大活躍』は1979年6月にフジテレビ系「日生ファミリースペシャル」の1本として放映された日本アニメーション制作のアニメスペシャル(単発TVアニメ)である。
陶芸職人のマイヤーじいさんは酔っぱらった勢いで1体のネズミの人形を作り出す。それは、耳が長く、尻尾が短く、体が青い、できそこないのネズミだった。目覚めて「トンデモないネズミを作ってしまった」とがっかりするマイヤーじいさん。しかし、そのネズミの人形に命が宿って動き出し、「トンデモネズミ」と名乗って家を飛び出した。冒険の旅を続けるトンデモネズミは、ある日、自分がトンデモネコに食べられる運命にあることを知ってしまう。
70年代末から80年代に数多く作られたアニメスペシャルの中でも、筆者が最高傑作ではないかと思っている作品。原作はポール・ギャリコがモナコ公妃となったグレース・ケリーのために書いた愛らしい児童文学。アニメ版スタッフは、演出/斎藤博、脚本/雪室俊一・斎藤博、キャラクターデザイン/森やすじ・百瀬義行、作画監督/百瀬義行という、そうそうたるメンバー。声の出演がまた豪華で、トンデモネズミ役の野沢雅子を筆頭に、槐柳二、永井一郎、杉山佳寿子、井上和彦、雨森雅司、大木民夫、熊倉一雄、石坂浩二(ナレーター)と聴いているだけで楽しくなる。お話もよくまとまっているし、劇場で上映してもいいくらいの快作だ。
音楽は中川昌が担当。アニメファンにはあまりなじみのない名前だが、トランペット奏者から作曲家に転身し、宝塚歌劇団、OSK日本歌劇団等の音楽監督を務め、CM音楽やポップスのアレンジ等でも活躍した音楽家である。
本作の音楽は古典的なミュージカルを思わせるシンフォニック・ジャズ・スタイルの編成で書かれている。ストリングスが奏でる流麗な曲もいいし、楽しいビッグバンド風の曲や思い切りはじけたジャズファンク風の曲もいい。全編フィルムスコアリングで作曲され、アニメーションのテンポやリズム感と一体となった、すばらしい「漫画映画音楽」になっている。
配信中の「トンデモネズミ大活躍音楽集」には、本作の劇伴音楽が完全収録されている。収録曲は以下のとおり。
構成は筆者が担当した。NICHI-ANI Classics公式サイトに構成意図と聴きどころを掲載しているので、概要はそちらを参照いただきたい。
https://sites.google.com/view/nichi-aniclassics/home/tondemonezumi-daikatsuyaku
ここからは筆者のお気に入りの曲を紹介しよう。
トラック1「プロローグ〜マイヤーじいさんの陶芸工房」は、石坂浩二の語りとともに始まる物語のプロローグとマイヤーじいさんの紹介パートに流れる音楽。ロマンティックな曲調は、まるでミュージカルの序曲のよう。中間部からはマイヤーじいさんのキャラクターを描写する、ユーモラスな、でも品のよい音楽になる。1曲の中で次々と表情が変わって、これからの展開を期待させ、視聴者をわくわくさせる音楽である。
トラック4「トンデモネズミ旅に出る」は、トンデモネズミの旅立ちのテーマ。愛らしい導入部はトンデモネズミが夜中に動き出すシーン。リズミカルな曲調に転じて、トンデモネズミのお茶目なキャラクターが印象づけられる。旅立ちの場面になると、紙ふうせんが歌う主題歌「僕は生まれて」のメロディがストリングスで奏でられる。フィルムスコアリングならではの動きと展開のある曲調が楽しめる1曲だ。
トラック5「オバケのドロロン」はビッグバンドジャズ風に書かれた、オバケのドロロンのテーマ。永井一郎の快演と音楽が組み合わさって、インパクト抜群のキャラクターになった。次のトラック6「トンデモネズミとオバケたち」は、ドロロンの仲間が現れてトンデモネズミを怖がらせようと奮闘するシーン流れた、ドロロンのテーマのバリエーション。本作の音楽は、スタジオにミュージシャンを集めてセッション形式で一斉に録音したのだろう。現場のノリが伝わってくる演奏だ。
トラック7「トンデモネズミ、タカに襲われる」は、カエルの夫婦と話していたトンデモネズミが、突然飛来したタカ(キャプテン・ホーク)に捕らえられ、空へ運ばれていくシーンの曲。緊迫した曲調でトンデモネズミの驚きととまどいを描写している。始まりは危機感のある曲調だが、途中から主題歌の変奏が入ってきて、楽しい曲調に変化していく。タカはトンデモネズミを傷つけるつもりはなく、トンデモネズミは束の間、タカの背に乗って旅を続けることになるのだ。続くトラック8「タカの背に乗って」とトラック9「空から落ちたトンデモネズミ」では、空の旅の爽快感やスリルが、ストリングスと軽快なリズムによる音楽で表現されている。
トラック10「ウェンディとの出会い」とトラック11「友だちの約束」は、人間の少女ウェンディとトンデモネズミが出会うエピソードのために書かれた曲。紙ふうせんが歌う挿入歌「ウェンディ・ラブソング」のメロディが使用されている。うっとりするようないいメロディで、ウェンディ役の杉山佳寿子の芝居とともに、心に残るシーンになった。
公式サイトの解説にも書いたが、「友だちの約束」は実は未使用曲。本編では「ウェンディ・ラブソング」の歌入りが流れた。「友だちの約束」は音楽集だけで聴けるスペシャルトラックである。
トンデモネズミとウェンディとのシーンは音楽も含めて素敵なのだけれど、せっかく挿入歌まで作ったのに、すぐにウェンディとのお別れが来てしまうのが残念だった。
トンデモネズミはサーカスから逃げ出してきた気の弱いトラと出会う。トラはサーカスに帰ろうとするが、トラを捕らえようと犬の警官たちが包囲網を敷いていた。
トラック15「夜のサーカス」は、トラをサーカスに帰そうとするトンデモネズミが、夜中にサーカスのようすをうかがう場面に流れた2分あまりの曲。フランス犯罪映画やアメリカのフィルムノワールを思わせるミステリアスな雰囲気のジャズである。中間部はフルートが入って、劇場作品「ピンクの豹(ピンクパンサー)」みたいな小粋な演奏になる。大人っぽくてカッコいい曲だ。
トラック19「トンデモネズミがさらわれた!」とトラック20「トンデモネズミを救え!」の2曲は、本作の音楽の中でもきわめつけのスピード感のある曲。トンデモネズミを商売に利用しようとするペッテン氏にトンデモネズミが誘拐され、トラのブーラカーンがそれを追跡するシーンに流れた。ブラスサウンドを効かせたジャズファンク、あるいはフュージョン風の曲調が『ルパン三世』みたいで最高だ。可愛らしい印象の『トンデモネズミ大活躍』にこんな音楽が流れるのか? と意外に思った人も多いのではないだろうか。
ついにトンデモネコと出会い、対決するトンデモネズミ。トラック23「対決!トンデモネコ対トンデモネズミ」は、2人の対決を描写する緊張感のある曲。ヨーロッパ史劇映画のような重厚な雰囲気が感じられる。中川昌はミュージカルや舞台劇で歴史ものの音楽を書いた経験があるのかもしれない。そんなことを考えさせられる曲である。
トラック24「勇気の勝利〜エピローグ」は大団円とエピローグの曲。主題歌「僕は生まれた」のメロディをアレンジした躍動感たっぷりの華やかな曲である。しみじみと「いいお話だったなあ」と思わせてくれる音楽だ。公式サイトの解説にも書いたが、後半のエピローグの曲は本編未使用。本編では代わりに主題歌「僕は生まれた」が流れた。映像が観られる方は、本編のラストにエピローグの曲を重ねて、幻のバージョンを再現してみても面白いと思う。
『トンデモネズミ大活躍』は、難しい理屈や解説は不要な、無心に楽しめる作品である。音楽もしかり。映像とともに音楽を楽しみ、音楽を聴いて本編をイメージするのが最良の聴き方だろう。これぞ漫画映画音楽の本流だ。中川昌は舞台やポップスのジャンルを中心に活躍した人で、映像音楽はあまり手がけていないようだが、もっとたくさんアニメの音楽を担当していたら、きっと楽しい音楽を残してくれていただろうと思う。
残念ながら『トンデモネズミ大活躍』は、過去にビデオカセットやLDでリリースされたことはあるものの、現在は配信や映像ソフトで観ることができない。それでも、もしチャンスがあれば、ぜひご覧になっていただきたい名作だ。せめて音楽だけでも楽しんでもらいたいと考えて、筆者はこの音楽集を提案し、構成した。これを機会に『トンデモネズミ大活躍』に興味を持つ人が増えてくれたら、こんなうれしいことはない。
トンデモネズミ大活躍音楽集
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7話、折り返しです。6話の続きで台風話。こちらから撮影チームにリクエストした“暴風雨”が、巧くいってて個人的に嬉しかった——って、(傍らのコンテを改めて見て)この話数もコンテ直しまくってますね。ご当地スーパー“ユニオン”が閉まってて、安寧が崩壊する喜屋武さん比嘉さんは、もちろん原作から面白かった件ですが、比嘉役・ファイルーズあいさんの狼狽した芝居「すすすすす……」とか聴いた時、より面白くなっててスタジオで爆笑してました。さらに沖メモシーサーのザワつきも良いです。
ところで今さらですが、直した~修正した~といちいち言うけど、
で、板垣はコンテをどういうふうにチェックしているのか?
と、思われる方もいらっしゃると思うので、この辺で少し。
前作『いせれべ』も今作『沖ツラ』も、下に監督がいようとコンテの主導権は板垣の方にあると思っていただいて結構です。ここは前々からこの連載で語っているとおり、
自分にとって監督とは、コンテを自在に描く・操る立場にある人のこと!
であると思っているからです。「じゃ、何でコンテチェックも監督にやらせてやらないんだ?」と仰る方も多いと思います。で、その疑問に答えると、ハッキリ言ってウチ(ミルパンセ)で、野放しで流せるコンテを描けるスタッフがまだ育っていないということです。未熟な人のコンテをなんでも個性~個性~で流すと、ただでさえ限りある作画リソースを不用意に痛め付けることになりかねないし、下手をすると製作委員会の方から「このコンテで大丈夫?」とその後の制作自体に不安がられることにもなります。これは実際あった話なのですが、とある10年以上前、自分の監督作品の隣の班で準備していた某タイトル(俺の監督作品ではありません)は、総監督・監督のダブル監督で進んでいました。ちょっと遅れ気味で上がってきた監督のコンテ第1稿に対して製作委員会側から「原作とだいぶ印象が違うんですが、総監督さんがしっかり直してくれるんですよね?」と言ったやり取りがありました。その際、総監督は「直します」と言っておきながら、ほとんど手を付けずそのまま“総監督チェック済み”として提出したのです。当然それに委員会が激怒。で結局、総監督は解雇。その後、新監督で制作され、その第1稿を上げた元監督は一演出処理に降格。コンテは新監督が全修したのでした。
つまり、監督が居ての総監督だったとしてもコンテの全責任を取れなければならない! ということになります。よって、取り敢えず今は社内スタッフのコンテを大幅に直しつつ、「ここはこう~」と本人に教えながらやっていくしかないと覚悟を決めたのが『いせれべ』でした(その前の『蜘蛛ですが、なにか?』まではほぼ全話自分でコンテ切ってましたから)。そんな中「コンテやりたい人~」と募って、集まったのが今作『沖ツラ』のコンテマンという訳です。その際「俺にどれだけ直されても処理(演出)までやる」というのが条件。
と、もう時間です。コンテ修正の話は次回へ! 『キミ越え』に戻ります(汗)!
片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。
『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などについての調査研究を進めています。その調査研究の結果を披露していただくのが、トークイベント「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」シリーズです(以前は「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルで開催していました)。
9月6日(土)昼に「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』14」を開催します。サブタイトルは「平安時代の女性たちはなぜ出産して亡くなったのか 編」です。
過去の「ここまで調べた」イベントでもお産で女性が亡くなることが多かったという話題は出ていましたが、今回はその発展形です。より深く、さらに別の事柄と絡めたかたちで語られます。
出演は今回も片渕監督、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、短めの「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは2025年8月2日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/327669
会場&配信チケット https://t.livepocket.jp/e/r9xci
配信チケット(ツイキャス) https://premier.twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/387934
なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr
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第244回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年9月6日(土) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,800円、当日 2,000円(税込·飲食代別) |