
第520回 還暦のバトンタッチ!

前回の続き。是非りんたろう監督の本『1秒24コマの僕の人生』の感想を! と思っていたのですが、まだ全部読めていないくらい、今忙しくて、今回もいつもの如く“忙しい”の話を短く。
50歳になってまだまだ仕事がいただけているのは、本当に有り難い話で、来年も何作かを同時進行で動かさなくてはならず、まだまだ楽しくなりそうです!
20代の頃は、皆さんそうだと思うのですが、まさか自分が50歳になるなんて微塵も思ってもみなかったし、もしそうなったとしても、やりたいことはあらかたやり終えて残された仕事を細々とこなして食っていけたらいいな~などと思っていましたが、全然ダメ! やらなきゃならない(と思っている)こと、半分もできていない! 今年こなしたいと思っていた仕事すら、こなせずに来年に持ち越し! ま、そんなもんなんでしょうね、人生とは。
そもそも俺自身は大した人間だと思っていません。己の人生にも高学歴・高収入を狙うとかいった過剰なプレッシャーをかけてもこなかったし、こんな自分程度のアニメ監督でもいまだに何某かの仕事ができて暮らしていけている現状を続けて一生を終えられれば、「本当に幸せな人生だった」と、死ぬ瞬間思えるのでしょう、誰も恨むこともなく。
今の自分は誰も恨んでないし、嫌な思い出も「あれはあれで良かったのかも」くらいには考えられるようになりました。例えば、10数年前の監督降板の時は「自分は悪くない!」と周りに叫んだし、手間かけて事の経緯を委員会周りから聴き込みしてくださったスタッフさんもいて、その方からも「君は悪くないよ」と慰められもしました。「10年経ったらその時のあらましをどこかで」~とかも、自分も人間なのでそれくらいは考えました。ところが、今になって語るとしたら、もう恨み辛み話とかじゃなく、ただのしくじり先生——“監督業での失敗・反省からの注意事項”的な話にしかならないと思います。もうすでに興味ある人もいない(と思う)話、今さら語るのもね……?
ハッキリ言いますが、あの時のことは100%全部、自分が悪いです! 関係各所、スタッフの皆様、本当にご迷惑お掛けして、申し訳ありませんでした!
てのが、現在の心境。それでも悪口言う人は言うので、どうぞ。こちらは構っている時間ありません! 自分は自分で、目の前のいただいた仕事を楽しく、できる限り誠実にこなしていくのみ。仕事、仕事…!
とは言っても、目の前の仕事が忙しいばかりでは、新しいモノは作れないので、来年こそは遊ぶ時間を作る努力もしなければと思いつつも、コンテ渡して現場のスタッフに任せて自分だけ自由出勤なんてできない性分なもんで。
今回も何が言いたいのか纏りませんでしたが、
まずは、新年早々『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』放映開始になるので、是非観てください!
で、明日は次作品のアフレコが“朝10”なので寝るとします。
腹巻猫です。昨年から今年にかけて、藤子・F・不二雄生誕90周年を記念したさまざまな企画が実施される中、映像関係で注目を集めたのが、今年配信された新作アニメ『T・Pぼん』でした。かつて単発TVスペシャルとしてアニメ化されたことがありますが、シリーズものの形で映像化されるのは初めて。原作に沿いつつも現代的なアレンジを施した仕上がりで楽しめました。音楽は大島ミチルが担当。スケールの大きな音楽が作品内容にぴったり。今年の締めくくりに、この作品を紹介します。
『T・Pぼん(タイムパトロールぼん)』は2024年5月からNetflixで配信されたアニメシリーズ。藤子・F・不二雄の原作マンガを、監督・安藤真裕、アニメ—ション制作・ボンズのスタッフでアニメ化した。シーズン1、シーズン2の2部構成で、各12話、全24話が配信されている。
平凡な中学生・並平凡(なみひら・ぼん)は、ある事件をきっかけにタイムパトロールの見習い隊員に任命される。先輩女性隊員リームと超空間生物ブヨヨンとともにぼんが挑む任務は、歴史の中で不幸な死を遂げた人物を救うこと(ただし歴史に影響を及ぼさない人物に限る)。タイムパトロールとして経験を重ねたぼんは、準隊員を経て正隊員に昇格し、さらなる任務に挑んでいく。
SFの分野でタイムパトロールものといえば、歴史を改変しようとする時間犯罪者と、それを阻止しようとするタイムパトロールの対決を描くものが主流。しかし、本作は過去の世界で死ぬ運命にある人を救助するという、SFとしては「掟破り」とも言える設定になっている。が、それが時間犯罪ものとは異なるサスペンスを生み、人間ドラマとしても見ごたえのあるエピソードが続出した。
アニメ版は原作の持ち味を生かし、現代的な歴史考証や科学考証を盛り込んで、幅広い世代に楽しめる作品に仕上がっている。世界各地が舞台になっている点でも海外配信に恰好のタイトルだ。
音楽は『鋼の錬金術師』『四畳半神話体系』などの大島ミチルが担当。世界中を飛び回って演奏や録音を行っている大島ミチルは、本作の音楽にまさにうってつけの作曲家である。
『T・Pぼん』の音楽は、大編成のオーケストラを使ったスケールの大きなサウンドで作られている。大島ミチルはXのアカウントで本作の音楽についてのコメントを何度か投稿しているのだが、その中で「この作品にオーケストラサウンドはどうかなぁ?と思ったのですが、ヘビーなシーンも多いので…」と語っている。歴史的な戦争や大災害が描かれる作品だから、物語を彩る音楽にはオーケストラの雄大なサウンドが必要だったのだろう。
演奏はハンガリーのブタペスト交響楽団とアメリカのナッシュビル・ミュージック・スコアリング・オーケストラが担当。日本からギターの古川昌義、尺八奏者の藤原道山らも参加している。作品にふさわしく、演奏も国際的だ。
大島ミチルのコメントによれば、本作の音楽は全4回にわたって110曲以上を録音したそうである。レギュラーで使用される録り溜めの曲もあるが、映像に合わせて書いた曲も多い。オーケストラによるサウンドもあいまって、映画音楽のようなリッチな印象の音楽になった。
本作のサウンドトラック・アルバムは「T・Pぼん(Soundtrack from the Netflix Series)」のタイトルで2024年8月30日にNetflix Musicから配信開始された。今のところCDでの発売はない。収録曲は下記リンクを参照。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DFD4VHDM
サウンドトラックに収録されたのは、110曲以上から厳選された55曲。配信サイトによってはトラック番号を01〜55と表記しているケースもあるが、Amazon Prime Musicなどでは、DISC1:01〜35、DISC2:01〜20と、2枚のディスクに分けて表記している。曲目を見ると、DISC1はシーズン1、DISC2はシーズン2を想定した内容であることがわかる。本稿でも、ディスクごとに分けて紹介することにしたい。
ディスク1は、大島ミチル作詞・作曲によるオープニングテーマ「BON BON BON」からスタート。主人公の名「ぼん」をリズミカルに歌いこんだ、ロック調の軽快な曲である。実はNetflixで言語をスペイン語にするとスペイン語バージョンを聴くことができる。スペイン語版だけNetflixの希望で追加したのだそうだ。
トラック2からはBGM集。構成は劇中使用順に即したもので、各エピソードから1曲〜数曲をセレクトしている。この構成がなかなかすばらしい。
1話完結の作品なので、使用順にはこだわらず、イメージアルバム風に構成することもできたと思う。が、しっかり本編の流れを反映した曲順になっている。だから聴きながら本編をエピソード順にふり返ることができる。自然に『T・Pぼん』の世界に入っていける、いい構成だ。
ここからは、各曲がどのエピソードから選曲されたかを明らかにしながら、聴きどころを紹介していこう。
トラック2「Very Ordinary」〜トラック7「I Won’t Be Erased!」は第1話からの選曲。弦がのんびりと奏でる「Very Ordinary」は、平々凡々たるぼんのキャラクターを描写する曲で、ぼんの場面にたびたび選曲されている。トラック6「Time Patrol」はタイムパトロールのテーマ。登場ファンファーレから始まる高揚感たっぷりの曲だ。
トラック8「There’s Two of Me?」〜トラック15「Parent and Child Reunion」は、ぼんの初任務を描く第2話からの選曲。リームとブヨヨンの登場場面に流れる「Ream and Buyoyon Appear」がユーモラスな味わいを出している。ぼん初出動の場面の曲「The First Dispatch」(トラック11)が、不安から決意へと変化していくぼんの心情を表現する。ぼんが洪水から老婦人を助ける場面に流れるトラック14「I Want to Help!」がいい。緊迫感と使命感がミックスされた、人命救助をテーマにした本作を象徴する楽曲だ。この曲はシーズン1よりもシーズン2でよく使われていた。
ここまでで15曲。タイムパトロールぼんの誕生を描く第1話と第2話の曲を手厚く収録しているのがディスク1の特徴である。
トラック16「The Royal City」は第3話で古代エジプトの場面に流れた民族音楽風の曲。本作では、こうした異国をイメージした曲がたくさん作られていて、アルバムの中で音楽の印象を変化させるスパイスのような役割を果たしている。
トラック17「I Became a Time Patrol Agent!」〜トラック20「The Weight of People’s Mistakes」は、第4話からの選曲。古代人が丸木舟で太平洋を渡る場面に流れるトラック18「Sailing Across the Ocean」は、上下する弦の動きが果てしない大海原を思わせる、悲壮感あふれる楽曲である。
トラック21「Witch Hunt」とトラック22「Where Love Leads」は中世ヨーロッパの魔女狩りをテーマにした第5話から。エキゾチックで哀感ただよう「Witch Hunt」と恋人たちの語らいの場面に流れる美しい「Where Love Leads」の対比がみごと。
次のトラック23「Thoughts on India」は第6話で天山山脈を越えようとする玄奘法師とぼんたちが語らう場面に流れた東洋風の曲だ。
トラック24「The Tradition of Sacrifice」〜トラック26「The Terror of the Minotaur」は第7話から。クレタ島のいけにえと魔獣ミノタウロスのエピソードを彩る不安な曲や異国風の曲が並ぶ。
トラック27「Mainland Showdown」とトラック28「Ensign Sakuragi」は、第二次大戦末期の沖縄を舞台にした第8話からの選曲。空襲で壊滅した都市の惨状を描写する「Mainland Showdown」、生き残った特攻隊員・桜木少尉の悲哀を表現する「Ensign Sakuragi」。どちらも悲痛な想いが伝わってくる。吉永小百合による「原爆詩」の朗読の音楽も手がけている大島ミチルらしい楽曲である。
第9話で流れたトラック29「Agents Riding Dinosaurs」は、ジュラ紀にバカンスに出かけたぼんとリームが恐竜の背に乗る場面の曲。のんびりした雰囲気から始まり、しだいに盛り上がって雄大な曲調で終わるのが気持ちいい。
続くトラック30「Gun Man」とトラック31「Tactics」は、西部開拓時代のアメリカを舞台にした第10話で流れた曲。古川昌義のギターをフィーチャーした西部劇風の曲だ。
トラック32「The Athenian and Persian Army Time-trippers」は、古代ギリシャを舞台にした第11話より。アテナイ軍とペルシャ軍が対峙する場面に流れた、ハリウッドの史劇映画を思わせる壮大な音楽である。
トラック33「Time-trippers」とトラック34「Ruin & Parting」はシーズン1の最終回である第12話からの選曲。ぼんとリームの別れの場面に流れる「Ruin & Parting」が切ない。突然の別れに動揺するぼんの心情を、ストリングスと木管の旋律が表現する。その雰囲気のまま、エンディングテーマのTVサイズ「Tears in the Sky (TV Version)」でディスク1を締めくくる構成もうまい。
続いてディスク2から。
トラック1「A Growing Sense of Responsibility」とトラック2「A Cute New Recruit」はシーズン2の第1回となる第13話からの選曲。「A Growing Sense of Responsibility」は、ついに正隊員となったぼんの決意を表現する曲。弦のおだやかなメロディにリズムが加わり、しだいに力強く変化する曲調から、ぼんの成長が感じられる。「A Cute New Recruit」は新たにタイムパトロールの見習い隊員となった、ぼんと同じ中学の同学年の少女・安川ユミ子のテーマ。シーズン1のヒロイン・リームとは異なるタイプの魅力を表現するキュートな曲調だ。この曲は第20話でユミ子が正隊員に昇格した場面にも選曲されている。
トラック3「New Team, New Uniforms」〜トラック6「Chaac Descends」は古代マヤを舞台にした第14話から。ぼんとユミ子がタイムパトロールの新ユニフォームを身につける場面の「New Team, New Uniforms」には、ディスク1に収録されたタイムパトロールのテーマ「Time Patrol」のモチーフが引用されている。
トラック7「The Gempei War」と次の「The Sound of Kamomaru’s Flute」は、平安時代の壇ノ浦の合戦を描く第15話で使用された。「The Sound of Kamomaru’s Flute」は平家の血を引く少年・加茂丸が吹く笛の音。藤原道山による演奏である。
トラック9「The Beginning of Writing」は第16話で、トラック10「Tracing Roots」とトラック11「Dire Wolves」は第17話で使用。「The Beginning of Writing」も「Tracing Roots」も、ぼんが人類の長い歴史に思いをはせる場面に流れた、しみじみとした曲だ。歴史の中の平凡な人間の営みに光を当てる、『T・Pぼん』らしい曲である。
次の曲は第18話から……となりそうなところだが、実は第18話と19話からは選曲されていない。トラック12「The Fate of the City of Troy」はトロイ戦争を描く第20話で使用された曲。重苦しい曲調が戦争の無情さを表現する。
トラック13「Strategy」は第21話、トラック14「Those Who Know No Fear」とトラック15「The Great Eruption」は第22話からの選曲。不穏な曲や緊迫した曲が続いて、アルバムもクライマックスに向けて盛り上がってくる。「The Great Eruption」は火山の大噴火によって滅びた都市ボンペイの悲劇を描写する音楽。これも史劇映画風の重厚な曲だ。
民族音楽風のトラック16「The Bazaar of Mohenjo-daro」は第23話のモヘンジョ・ダロの場面に流れた曲。本編ではループして長く使用している。続くトラック17「Following Clues」も第23話から。ぼんが行方不明になったリームの手がかりを探す場面に流れた緊迫感に富んだ曲で、このシーンが最終回への布石になっている。
トラック18「Chase After the Dimension Ball!」とトラック19「Tears in the Sky (Time Patrol Version)」はシーズン2の最終回、第24話からの選曲。「Chase After the Dimension Ball!」はフィルムスコアリングで書かれた3分近い曲。映像に合わせて変化するスリリングな曲調が実に映画的。「Tears in the Sky (Time Patrol Version)」はエンディングテーマをオーケストラ編成にアレンジ・演奏した曲で、ラスト前のぼんのモノローグに重なって流れた。エンディングテーマのアレンジが流れるのはこのシーンだけ。それだけに印象深いシーンになった。うまいなあ。
アルバムの最後に収録された「Tears in the Sky」は、エンディングテーマのフルサイズである。大島ミチルのコメントによれば、『T・Pぼん』は命を救う話なので「亡くなった大切な人への思い」をテーマにして書いたそうだ。大島自身、この曲を書いている最中に身近な人を亡くし、そのときの気持ちを曲に込めたという。歴史の中に消えていく人々への想いと、それを忘れずに前に進もうとする想いが胸を打つ。ポップス的な曲調に普遍の想いを乗せた名曲だ。
最後に、このアルバム全体の感想をまとめておこう。
オーケストラサウンドが悠久の歴史と世界の広大さを感じさせる、スケールの大きなサウンドトラックである。生オケならではの温かみのある音は、人の命を救う本作のテーマに沿っている。さまざまな時代や土地を描写する音楽はバラエティに富んでいて、聴きながら、ぼんと一緒に時間旅行を体験しているような気分になる。本編使用順に沿った曲順で名場面を思い出しながら聴ける、理想的なアルバムだ。
あえて不満を言うなら、収録時間の制約がない配信アルバムなのだから、もっと収録曲を増やしてほしかったなあ。日常場面で流れるユーモラスな曲や、第8話のラストで桜木少尉と恋人・明子の想いがつながる場面の曲など、「サントラで聴きたかった」と思う曲がまだまだある。バランスを考えての選曲だと思うが、あと10曲くらい入れてほしかった。
いや、『T・Pぼん』の原作はまだ10話以上残っているから、アニメ版シーズン3の制作も夢ではない。もし、シーズン3が実現したら、新曲と未収録BGMを収録したサントラ第2弾をリリースすればよいではないか。ぜひそうなってほしい。
T・Pぼん (Soundtrack from the Netflix Series)
Amazon
りんたろう監督の「1秒24コマの僕の人生」購入しました!
りんたろう監督版の「まんが道」みたいな感じで、フィクション・作り話を面白がれない俺にとっては、いちばん興味あるのはこういう“実話の漫画化”です。
りんたろう監督作品はほぼ全作観ている俺。劇場版『銀河鉄道999』を始め『幻魔大戦』『カムイの剣』『火の鳥~鳳凰篇』『X』などの劇場長編も好きですが、個人的にTVシリーズ『がんばれ元気』第1話が大好き。当時の安かろう悪かろうなTVシリーズが当たり前に流れる中で、「こういう画面を作りたい! そして自分自身もこれが観たい!」という明確な意思表示を1カット1カット丁寧に積んだフィルムで、今現在に至るまで何回も観れる良作だと思います。
りんたろうアニメは時が経っても何回も観たくなるんです、自分は。『メトロポリス』も公開当時劇場で観た限りでは正直「どうだろう、これ?」とは思ったものですが、結果気付けば、りん監督の画コンテ付きスペシャルエディションDVD-BOXを買って、さらに後にBlue-rayでも買い直しました。
ハラハラドキドキなスペクタクルを楽しむために観るのではなく、“画作りを味わう”! それが、りんたろう監督作品の醍醐味!
であると、未だに定期的に観返しています。角川アニメ以降のりんたろう監督作品評は賛否両論気味ですが、俺は個人的に映画としては「?」でも、りんたろう作品としては“賛”寄りです。やっぱり、色々文句を言いつつも何度も観返している時点で、監督の術中にハマっているのでしょう。
自分のりんたろう監督とのニアミス(?)はほんの何回か。まず、自分がテレコム(・アニメーションフィルム)を退社してフリーになって、最初の仕事が『はじめの一歩』の原画だったため、ちょくちょくマッドハウスに出入りしていたのですが、その際、当時マッドハウスに在籍していた学生時代の同期・(寮でも同室だった)山田勝哉君の席に行ってお喋りしていると、自分の背後を通過していったのです、りんたろう監督が! それは当たり前で、当時の山田君は『SPACE PIRATE HERLOCK』(2002年)のメカニックデザインや『48×61』(2004年『スチームボーイ』DVD特典OVA)の原画などでりんたろう班所属で、彼の席からすぐそこが“りん監督部屋”でしたから。
さらにその後は前述した『SPACE PIRATE HERLOCK』第10話の原画をお手伝いしましたが、りん監督とはお会いできませんでした。後はマッドハウスの忘年会ですれ違ったくらい。遅れて途中からいらっしゃったりん監督ですが、現れるや否や「りんさんが来た!」と、広い会場の空気を一変させたそのオーラの凄さを、今も記憶しています。
監督やアニメーターとして活躍し、様々な作品を手がけてきた北久保弘之さん。その北久保さんのトークイベントを開催します。北久保さんのトークイベントは、シリーズ企画として数回開催する予定です。
2025年1月26日(日)に開催する第1回では『GOLDEN BOY さすらいのお勉強野郎』、『ジョジョの奇妙な冒険』、PSゲーム『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を中心にお話をうかがいます。作品内容についてだけでなく、作画についても話をしていただくことになるはず。トークの聞き手は小黒編集長と沓名健一さんが務めます。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは2024年12月14日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/302320
会場&配信チケット(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/wgpz1
配信チケット(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/348331
第233回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年1月26日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA |
出演 |
北久保弘之、小黒祐一郎、沓名健一 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 2,300円、当日 2,500円(税込·飲食代別) |
今日は色々なことがありました。まず、朝から某アニメ誌の取材。もちろん、現在制作中のシリーズのです。そして午後、某大手アニメ会社から作監の依頼。
ここ数年は会社(ミルパンセ)と音響スタジオの往復がメインなワークスタイルのため、社内スタッフ以外の人と話をすることがめっきり減った上、仕事も忙しくなる一方だから友人らに電話すらできていません。なので、向こうから話しを聞きたい~だけでなく、仕事の依頼ですら良い気分転換に使わせていただきました!
某アニメ誌の取材は、いわゆる“作品内容について監督が語る~いつものアレ”です。が、これもやっぱり作っている最中だ、と自分の考えを纏めるのに有効的に働きます。ライター(記者?)の方から質問され、それらに答えることで「あ、俺、今こんなこと考えてるんだ」と自分を客観的に見ることができて面白いモノです。来年の別シリーズ、さらにその次とまたよろしくお願いします。あ、写真はNGで。必要なら似顔絵提出します。
余談ですが、自分は取材を受ける際“写真”は基本お断りしています。イベントで演者さんらと並ぶ際やTV番組取材での制作現場模様などでない限り——あ、後、海外からの取材で写真の断り方が分からなかった時以外は基本写真は撮られていないと思います。俺としては作品の宣伝のためが基本で、前者の演者さんと監督で~と言われると断りづらく、やっぱ「失礼かな?」と思ってかなり無理して壇上に上がります。実際それらの登壇の際は、毎回舞台裏でえずいてるくらいのあがり症なのです。番組なども何回かありましたが、飽くまで“制作現場ルポ”のスタッフ代表枠のつもり。雑誌取材における写真NGは、単純に自分自身が止めで保つ出で立ちだと思っていないからです。——って、10年以上前にも語ったのですが、お忘れの方も居るでしょうね……。
で、次が某大手アニメ会社から作監の依頼。結果から言うと電話をくださった制作さんには「今、忙しくてお受けできません……」と丁重にお断りさせていただきました。
おそらく、何年も前の連絡先リストに片っ端から電話したんでしょう? でなきゃ俺のトコまでかけてきやしないでしょうから!
と、作監探しに奔走する制作さんが気の毒で、お受けできない代わりに「作監がいないならウチならこうしてる~」的なアドバイス(提案?)をさせていただきました。余計なお世話かも知れませんが、
人手不足は知恵で乗り切る!
これが、会社同士がスタッフの奪い合いをしないで済む唯一の考え方だと、自分は信じています!
ってとこで、また内容なくてすみません。仕事に戻る時間で……(汗)!
片渕須直監督が制作中の次回作のタイトルは『つるばみ色のなぎ子たち』。平安時代を舞台にした作品のようです。
『つるばみ色のなぎ子たち』の制作にあたって、片渕監督はスタッフと共に平安時代の生活などについての調査研究を進めています。その調査研究の結果を披露していただくのが、トークイベント「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」シリーズです(以前は「ここまで調べた片渕須直監督次回作」のタイトルで開催していました)。
2025年最初の「ここまで調べた『つるばみ色のなぎ子たち』」である「10」は1月4日(土)に開催します。サブタイトルは「平安京大内裏・内裏ツアー ー中宮定子はどこを歩いていたのかー 編」。今回は平安京の大内裏、内裏を中心とした話になるようです。出演は片渕監督、前野秀俊さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。
なお、今回の「10」は「ここまで調べた片渕監督次回作」時代から数えて、25回目のイベントとなります。
会場は阿佐ヶ谷ロフトA。今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。また、今までの「ここまで調べた~」イベントもアニメスタイルチャンネルで視聴できます。
チケットは2024年12月7日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/301735
会場&配信チケット https://t.livepocket.jp/e/yvnzt
配信チケット(ツイキャス) https://twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/346942
なお、会場では「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」上巻、下巻を片渕監督のサイン入りで販売する予定です。「この世界の片隅に 絵コンテ[最長版]」についてはこちらの記事をどうぞ→ https://x.gd/57ICr
第232回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年1月4日(土) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA |
出演 |
片渕須直、前野秀俊、小黒祐一郎 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,800円、当日 2000円(税込·飲食代別) |
腹巻猫です。2024年1月期に放送されたTVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』のサウンドトラック・アルバムが11月15日に発売されました。放映終了から半年以上経っての発売は、本作の音楽に大きな反響があったことをうかがわせます。筆者もさっそく購入して聴きました。今回は、この異色ロボットアニメの音楽を紹介します。
『勇気爆発バーンブレイバーン』は2024年1月から3月まで放送されたTVアニメ。原作・Cygames、監督・大張正己、アニメーション制作・CygamesPicturesによる、オリジナル・ロボットアニメである。
ハワイで人型機動兵器・ティタノストライドを投入した合同軍事演習が実施された。自衛隊のパイロット、イサミ・アオと米軍のパイロット、ルイス・スミスは演習中に出会い、意気投合する。が、突然、宇宙から飛来した謎の侵略者デスドライヴズの襲撃を受け、ハワイの軍事基地は壊滅の危機に瀕した。絶体絶命のとき、巨大ロボット・ブレイバーンが現れ、イサミたちを救う。イサミをパートナーに選んだブレイバーンは、人類と共にデスドライヴズと戦うことを約束する。
90年代のロボットアニメ「勇者シリーズ」をほうふつさせるタイトルに反して、第1話はシリアスに始まる。が、終盤になって「こうくるか!」と思わせる展開が待っている。タイトルどおりのスーパーロボット・ブレイバーンが登場するのだ。
ブレイバーンは人間の言葉を理解し、話すことができる意思のあるロボットである。このあたりは勇者シリーズと似ている。しかし、なんのために、どこから来たのかは謎に包まれていた。その謎がしだいに明かされていくわけだが、ひねりにひねった設定になっている。単純明快で熱血なロボットアニメへのオマージュにあふれているが、けっこう、クセのある作品である。
音楽は映画やTVドラマ、CM等の音楽で活躍する渡邉崇が担当。渡邉がロボットアニメを手がけるのは本作が初めてである。
サウンドトラック・アルバムの解説書に掲載されたインタビューで、渡邉崇は「自身が大好きな昭和のヒーローものの音楽と、ハリウッド映画のようなテイストの音楽を混在させた世界観の音楽構築」に挑戦したと語っている。ふたつのサウンドはだいぶ異なるが、無理に融合させず、そのまま混在させることを選んだという。
実際、サントラ盤を聴くと、昭和のロボットアニメ風の曲と「アベンジャーズ」のような現代のヒーロー映画風の曲が共存している。突き抜けた爽快感のある曲とシリアスなアクション曲の混在は違和感がないわけではないが、それは『勇気爆発バーンブレイバーン』という作品の特徴でもある。それが作品の味であり、魅力なのだ。あえてサウンドを統一しなかったことは正解だった。
音楽的な聴きどころのひとつは、スーパーロボットアニメ的な「燃える曲」。ブレイバーンの登場場面や活躍場面に流れ、盛り上げる。思い切った曲調が、ときにユーモラスな味わいにもなっている。
人間側の戦闘曲は、比較的シリアスな曲調で作られている。ミリタリー描写はリアル寄りで、音楽も緊迫感に富んでいる。人類の危機がシリアスに描写されるぶん、ブレイバーンの活躍が爽快に感じられるという対比をねらったのだろう。
心情曲では、ピアノと管弦楽が共演する曲が耳に残る。いわゆる「エモい曲」が多く作られ、名場面を彩った。本作の音楽は、生楽器とシンセの打ち込みを併用しているが、心情曲については生楽器の音を大切に作っている印象を受ける。
敵のデスドライヴズにつけられた曲も興味深い。特に、スペルビア、クピリダスといった機械生命体の幹部たちにつけられたテーマが秀逸だ。得体のしれない敵なので、音楽も個性的になっている。本作のもうひとつの聴きどころと言ってよいだろう。
本作のサウンドトラック・アルバムは「オリジナルTVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで、11月15日にCygamesから発売された。収録曲は以下のとおり。
CD1枚に47曲を収録。最終回にのみ流れたオープニング主題歌のイサミ・アオ・バージョンが収録されているのが目玉のひとつである。
大張監督のインタビューによると、劇伴は50曲以上を発注し、そのすべてを劇中で使用したそうだ。だとすると本アルバムは完全収録ではないが、印象的な曲はほぼ入っている。
構成は、物語を再現するというよりは、作品のイメージと音楽的流れを重視したイメージアルバム的なコンセプトで組まれているようである。
1曲目の「Brave fight!!」はブレイバーン登場シーンに流れる曲。アルバムの序曲的位置づけなのだろう。ちょっと時代劇をほうふつさせるような昭和テイストの曲になっている。残念ながら本編で使われたのは第2話だけだった。
2曲目「Combat start!」はブレイバーン、人間側の区別なしに使われた戦闘曲。高速でうねる弦のフレーズが激しい戦闘をイメージさせる。第6話で使用された日本奪還作戦のテーマ「オペレーション・アップライジング」(トラック3)、ミリタリーマーチ風の「ダイダラ中隊」(トラック4)と軍事活動を連想させる曲が続き、本作の世界観をくっきりさせる。
トラック5で、謎めいたヒロインのテーマ「ルル」が現れるのが面白い。笛やシンセ、人の声などが奏でる、神秘的でエキゾチックな曲だ。第3話の冒頭、月夜の浜辺でスミスがルルと出会うシーンに流れていた。次の「Innocent」もルルにつけられた曲である。
トラック7「Lana」とトラック8「ラムファイヤー」は軽快な日常曲。ハワイが舞台になっていることから、南の島を連想させるトロピカルなサウンドが使われている。
トラック9からはブレイバーンをイメージさせる曲が並ぶ。「勇者の帰還」は勇者のテーマとも呼ぶべき曲。第4話でブレイバーンが侵略者から最初に奪還すべき地として「日本」を選ぶ場面に流れていた。第9話の合体シーンで使用された「勇気合体!バーンブレイバーン!!」(トラック10)、トランペットソロから始まるアクション曲「Absolute bravery」(トラック11)と続いて、ヒーローものの雰囲気が盛り上がる。
「Absolute bravery」は第1話のブレイバーン登場シーンから使われ、以降も勇気や決意を描写する曲としてたびたび使用された名曲である。
ここでようやく、敵の襲来と戦闘を描写する「Enemy attack」(トラック12)が登場。ハリウッド映画音楽を思わせるスケール豊かな曲調が、敵の圧倒的な力を表現する。この曲は第1話のデスドライヴズ襲撃シーンから使われていた。
ここからは、楽曲のタイプ別に紹介しよう。
まず、昭和ロボットアニメ風の燃える曲。
トラック20「私の変形を見よ!」は第2話などで、ブレバーンが飛行形態ブレイサンダーに変形して飛び立つ場面に流れた曲。ブレイサンダーからブレイバーンに戻るときも同じ曲が使われている。
トラック36「極鋼!スパルガイザー」は第5話でルルが観ているヒーロー番組「機攻特警スパルガイザー」のテーマ曲。パンチの効いたブラスサウンドや昭和歌謡風のメロディラインがいかにもそれらしい。
主題歌「ババーンと推参!バーンブレイバーン」の歌入りとカラオケ(本アルバムには未収録)も、ブレイバーンの活躍を盛り上げる楽曲としてたびたび挿入されていた。
次にシリアスな戦闘を描写する曲。
トラック32「大混戦」はデスドライヴズとの死闘を描写する激しい曲。弦楽器の動きがスリリングなトラック38「焦燥」も緊迫した戦闘シーンに使われた。
トラック40「ティタノストライド」と「タイタンの咆哮」は、デスドライヴズに立ち向かう人間たちの闘志を描写する曲。「タイタンの咆哮」は第8話でスミスが敵幹部・クーヌスと刺し違える場面に使われたのが印象深い。
そして、勇気や友情や決意を表現するエモーショナルな曲。本作のドラマ部分を支える重要な楽曲である。
ピアノとオーケストラによるトラック18「Island」は、美しい南の海の情景をイメージさせる希望的な曲。第4話で酒場をおとずれたイサミが兵士たちから「ヒーローの登場だ」と感謝される場面や第8話のブレイブナイツ結成の場面などに使用された。
次のトラック19「光あれ‥!」は弦の律動的な動きから金管を中心にしたオーケストラの力強い演奏に展開する高揚感あふれる曲。第5話のオペレーション・アップライジングの準備に励む兵士たちの場面に流れて、決戦気分を盛り上げた。
トラック22「鋼の絆」はブレイバーンとイサミたちの絆を表現する曲。繊細なピアノの響きから、金管と弦のゆったりしたフレーズに展開、終盤はヒロイックで躍動的なオーケストラの演奏で終わる。この曲は最終話(第12話)でブレイバーンが最終必殺技を放つ場面に使われている。
トラック25「ATF」は、各国の軍隊により結成された多国籍部隊「Allied Task Force」の略称をタイトルにした曲。ピアノと弦の導入から弦の流麗なメロディに展開し、リズムやエレキギターが加わって盛り上がっていく。第3話でキング司令が兵士たちにブレイバーンを紹介する場面、第7話でブレイバーンがイサミと共に戦うよろこびをスペルビアに語る場面など、友情や仲間との絆を描くシーンに選曲されていた。
トラック34「Mana/マリーンの俺が転生したらスーパーロボットだった件」は、タイトルどおり、第9話のスミスの転生シーンに使われた曲。曲の後半は「鋼の絆」と同じモチーフが使われている。静から動への転換が気持ちいい曲だ。
トラック35「勇者の血脈」もピアノとオーケストラによる友情と絆を表現する曲。「勇者の帰還」「宿命」「勇者の血脈」には同じメロディが使われており、本作における勇者のモティーフなのだろうと想像できる。
トラック44「アブソリュートズバッシュ、そして〜」は最終話クライマックスのブレイバーン対ヴェルム・ヴィータの対決シーンに使われた。仲間たちの勇気がひとつに融合していくさまが、リズムと管弦楽とコーラスによって描写される。昭和のロボットアニメ音楽とは違ったスタイルで熱い想いを表現した「燃える曲」である。
最後にデスドライヴズのユニークな音楽。
トラック16はずばり「デスドライヴズ」と名付づられた曲。重厚なオーケストラサウンドに妖しいコーラスとシンセサウンドが重なる。「不気味」や「怖い」というより「奇妙」な音楽である。
幹部の機械生命体に付けられた曲は、スペルビアのテーマ「高慢の翼」(トラック15)、ヴァニタスとペシミズムのテーマ「虚栄と悲観の輝き」(トラック26)、クーヌスのテーマ「淫蕩の閃光」(トラック39)、クピリダスのテーマ「強欲の炎」(トラック42)、ヴェルム・ヴィータのテーマ「まことの命」(トラック43)の5曲。
スペルビアはのちにブレイバーンと共闘するので、「高慢の翼」は和風サウンドを混ぜつつもヒロイックに作られている。しかし、残りの4曲はそれぞれに異質。現代音楽的なサウンドや男声・女声コーラス、エキゾティックなリズム、デジタルサウンドなどが組み合わさって、分類不能の「奇妙な音楽」(誉め言葉)になっている。「ロボットアニメの敵はこういう曲」というパターンを打ち破る、挑戦的で前衛的な音楽だ。前にも書いたが、本作の音楽の大きな聴きどころである。
『勇気爆発バーンブレイバーン』の音楽は、燃えるロボットアニメのオマージュに収まらない、意欲的で現代的な作品になっていると思う。その両極にあるのが、昭和のロボットアニメ風の熱い曲とデスドライヴズの奇妙な曲だ。ふたつの音楽は真逆の方向に振り切っている。タローマン風に「なんだこれは!」と言いたくなる。爆発しているのは勇気だけではない。音楽も爆発しているのだ。
オリジナルTVアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」オリジナルサウンドトラック
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納品が始まると、作画修正やリテイク指示三昧の毎日。再三話題にしているとおり、ミルパンセでは今、外(外注やフリー)に撒かず、なるべく社内~社員スタッフで制作しています。そのため、出来の悪い演出指示・作画・美術などは、もちろんリテイク~結局自分で直すことになります。その際スタッフたちに「どこがどうおかしいのか?」「どう修正するべきか?」などを説明するのに、自分が20~26歳までお世話になったテレコム・アニメーションフィルムで受けた指導内容と、その後フリーになってから回った各スタジオ(会社)でお会いした名監督・名アニメーターの方々との仕事の経験まで——その全てが“糧”となっていて、それらのお陰で俺は今、食えている気がします。
テレコムだけではなく、その後のフリー生活でも「巧い人が関わっている作品」を意識的に選んで参加して一つでも多く「巧く効率のいい仕事の“コツ”」を盗み取ろうとして走り回っていました。それらが今、若手の指導に実を結んでいるという訳です。
ただ、自分はフリーで彼方此方のスタジオで楽しく仕事ができた時期があって、本当に幸せだったと思いますが、現状の若いアニメーターたちには社員若しくは固定給で会社に拘束してもらうほうをお勧めしています。その理由は、デジタル作画がメインになりつつある昨今、制作会社と連携を取るかたちで仕事しているほうが、制作体制の改変にも組み込んでもらえるし、新しいツールの情報だって自動的に入ってきますから。
それでも未だに「アニメーターはフリーが基本!」「俺たちの“自由”を奪わないでくれ!」的に頑ななまでに“会社に囲われたくない”主義の方は、それはそれで良いと思います。人それぞれですから。
ただし、憶えておいた方がいいのは、
“原画しか描けない”とか“コンテしか描けない”“ラフな演出指示画をペラペラ入れるだけ”などの「~しかできない」アニメスタッフより、令和の世は“一人でアニメ作品を作れるアニメクリエイター”の方をこそ、「画を動かすことができる才能職」として世間が認知している!
ということ。某動画サイトには1人で作ったショート・アニメが続々上がっているだけでなく、世の芸能人らが続々フリーになって、“お笑い”“料理”“歌”と、己の芸1本で動画投稿し始めたのがその証拠かと。なのにアニメーターはフリーを名乗りながら、会社から発注を受けないとエンタメを作るどころか、画一つ動かせないって……。だから、自分は社内のスタッフたちに、色々なセクションに興味を持つことを促しているのです。
脚本・コンテ・演出・原画・背景・音響・編集~と興味を持った仕事は、自分が知っている限り、なんでも教えてやらせてみています! ここ2~3作は“監督”の指導もしている!
と。せめて、まだ1人制作は無理でも動画制作工程全般に興味を持って働けば、何かの切っ掛けで“クリエイター”になれるのではないかと!
って訳で、現在制作中『沖ツラ』の次作も別の監督を面倒見て、共同監督しています!
2024年12月21日(土)に新文芸坐で『北極百貨店のコンシェルジュさん』を上映します。『北極百貨店のコンシェルジュさん』は西村ツチカさんの同名マンガを映像化した劇場アニメーション。可愛らしくてハートウォーミングな内容で、物語的にもクリスマス前後の鑑賞が相応しい作品です。アニメーションとしても丁寧に作られており、作画的な見どころもたっぷり。作画ファンにもお勧めです。
トークコーナーのゲストは板津匡覧監督と、アニメーターの井上俊之さん。聞き手はアニメスタイルの小黒編集長が務めます。
チケットは12月14日(土)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(『北極百貨店のコンシェルジュさん』情報ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2024-12-21-1
【新文芸坐×アニメスタイル vol.184】 |
|
開催日 |
2024年12月21日(土)14時00分~16時15分予定(トーク込みの時間となります) |
会場 |
新文芸坐 |
料金 |
一般2400円、各種割引2000円 |
上映タイトル |
『北極百貨店のコンシェルジュさん』(2023/70分) |
トーク出演 |
板津匡覧(監督)、井上俊之(原画)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
今回もコンテ・演出・作画とオープニングとエンディングを楽しく作らせていただきました!
演出に転身したアニメーターで「OP・EDアニメを好き勝手に作るのが夢!」という方に何人も出会いました。むしろ、シリーズの監督は重たいから、ミュージック・クリップくらいのサイズで“自分純度100%アニメ”を作りたいといった具合です。
でも、板垣個人に取ってOP・EDは、自分で監督する作品の“箸休め・余興”枠。曲発注で「こんな作品にしたい~」と本編の指針を語って、それを踏まえた上で各アーティストさんが思い思いの主題歌を作ってくださり、それに自分で本編内容からイメージを膨らませた“画”付けると。つまり、俺にとってはあくまでも“本編ありき”なんです。
たまに、自分が監督じゃない作品のOP・EDアニメーションのみを受ける場合があるのですが、その場合、大抵プロデューサーからの依頼で、監督から直接はなかったような気がします。『化物語』(まよいマイマイ)OPも『鬼灯の冷徹』(OAD)EDも。そもそもそういったOP・EDのみの依頼がきた際は必ず「何で監督がやらないの?」とプロデューサーに訊くくらい、俺に取ってOP・EDは監督がやるのが基本で、本編のコンテが一区切り着いたところで楽しむ、監督業に付いてくるご褒美みたいなモノ。
ここまで何本もやってきてだんだん飽きてきてはいるものの、本編のドラマを90秒で語り切る! やっぱり面白楽しい仕事です。放送をお楽しみに!
って訳で、おやすみなさい!
腹巻猫です。11月27日にSOUNDTRACK PUBレーベル第37弾として「アルプスの少女ハイジ メモリアル音楽集」を発売します。TVアニメ『アルプスの少女ハイジ』の放映50周年を記念したCDアルバムです。2008年に2枚組の限定版CDが発売されていますが、今回は3枚組。初商品化音源を大幅に補完した決定版です。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DM1RD7HZ
発売を記念して、11月30日に神保町・ブックカフェ二十世紀でトークイベントを開催します。CDの特価販売もしますので、ぜひご来場ください!
詳細は下記URLから。
https://www.soundtrackpub.com/event/2024/11/20241130.html
TVアニメ『アルプスの少女ハイジ』の音楽については、当コラムでも一度取り上げたことがある。そのときは、主に音楽的な魅力について書いた。
今回は、CDの制作過程で判明した『アルプスの少女ハイジ』の音楽の全体像について、また、新しいCDが過去の商品とどう違うのかについて、語ってみたい。
『アルプスの少女ハイジ』の物語について詳しく説明する必要はないだろう。
両親を亡くし、5歳のときアルムの山に住むおじいさん(アルムおんじ)に預けられたハイジは、大自然の中で天真爛漫に育ち、その素直な心で出会った人々の心を解きほぐしていく。
物語は、アルムの山を舞台におじいさんやヤギ飼いの少年ペーターとの交流を描く第1部、大都市フランクフルトを舞台に足の不自由な少女クララとハイジの友情を描く第2部、そして、再びアルムの山を舞台にクララが歩けるようになるまでを描く第3部に大きく分けられる。本稿では、便宜上それぞれを「アルムの山編」「フランクフルト編」「再会のアルム編」と呼ぶことにする。
『アルプスの少女ハイジ』の音楽(BGM)はこれまで何度か、レコードやCDの形で商品化されている。しかし、著名な作品でありながら、BGMが全部で何曲あるのか、録音が何回行われたのかなど、基本的な情報すらはっきりしていなかった。
『アルプスの少女ハイジ』のBGM(劇伴)は、大きく分けると次の3つに区分できる。
(1)オリジナルBGM
(2)現地録音音源
(3)エキストラ音楽
(1)のオリジナルBGMとは、渡辺岳夫が本作のために作曲した音楽のことである。過去の音楽集アルバムに収録されていたのは、すべてオリジナルBGMだ。
(2)の現地録音音源は、渡辺岳夫らがスイスで収録した民族楽器などの演奏のこと。劇中で流れるヨーデルの曲もこれに含まれる。
(3)のエキストラ音楽とは、特定の場面や特定のエピソードでの使用を想定して、レギュラーで使用される音楽とは別に用意された楽曲のこと。その多くは既成曲である。たとえば、フランクフルトの街を描写する音楽として使用されたモーツァルトの楽曲などがこれに該当する。
まず(1)のオリジナルBGMについて。2008年に発売された2枚組CD「アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック(限定盤)」の解説書にはBGMの録音回数は5回と書かれている。その録音回数を頭につけたMナンバーも表記されている。しかし、筆者はこれについて疑問を感じていた。
そもそも、1981年に日本コロムビアから発売されたLPアルバム「テレビオリジナルBGMコレクション アルプスの少女ハイジ」の構成からして、不思議なところがあった。全体的には物語の流れに沿って曲を並べているのだが、番組の後半で初めて使用される曲が頭のほうに収録されていたりする。また、ハイジがフランクフルトからアルムに帰ってきた場面をイメージして「ただいまおじいさん」と名づけられた曲が収録されているのだが、その曲は実際にはそういう場面には使用されていない。曲順や曲名が本編の使用場面を反映しておらず、イメージアルバム的な構成になっているのである。
ただ、それはこの時期のアニメサントラではよくあることだった。まだ家庭用ビデオも普及していない時代。映像ソフトも動画配信もない。本編を見直すには再放映を待つしかない時代だ。だから、音楽集を構成するときは記憶やTVから録音した音声が頼りだった。そのため、構成ミスや解説の誤りは珍しくなかった。それでも音楽が商品化されるだけでありがたかったのである。
2008年発売の「アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック(限定盤)」は、基本的に「テレビオリジナルBGMコレクション」の構成をそのまま生かし、未収録曲を追加する形で構成されている。その結果、曲順や曲名の不自然さは、そのまま残されてしまった。全5回という録音回数も、「テレビオリジナルBGMコレクション」の構成が録音順を反映していると仮定しての仮説だろう。
では、『アルプスの少女ハイジ』のBGMは本当は何回録音されたのか?
今回のCD制作にあたり、渡辺岳夫の音楽事務所である三協新社に保管されていた資料を参照して詳細な調査を行った。渡辺岳夫が書いた音楽リストとスコアがほとんど残っていたのだ。判明したBGMの録音状況は以下のとおり。
第1回録音:1973年12月7日録音 約25曲
第1話用の音楽。
第2回録音:1973年12月18日録音 約40曲
「アルムの山編」の音楽。第2話から使用。
第3回録音:1974年5月2日録音 約40曲
「フランクフルト編」の音楽。第19話から使用。
第4回録音:1974年9月11日録音 約20曲
「再会のアルム編」の音楽。第38話から使用。
これ以外に小規模な録音が数回行われているが、核となるセッションは4回である。物語の舞台が切り替わるタイミングに合わせて追加録音が行われていることがわかる。
過去の商品ではBGMのMナンバーの表記誤りもあった。サウンドトラック研究において、「Mナンバーが正しくない」というのは、研究の基盤をゆるがす一大事である。サントラの世界では「曲名は変わってもMナンバーは変わらない」というのが暗黙の決まりだからだ。今回は渡辺岳夫が遺した音楽リスト及びスコアと音源を照合し、すべての楽曲の正しい録音時期とMナンバーを特定することができた。これだけでも、今回のCD制作は意義があったと思っている。
次に(2)の現地録音音源について。渡辺岳夫はスイスに数回にわたって音楽取材に訪れている。そのとき、現地でさまざまな民族楽器の音や歌を録音している。たとえば、ヨーロッパの民族楽器ハックブレット(金属弦を叩いて音を出す楽器)やアルペンホルン、カウベルなどの演奏である。この録音の一部は劇中にBGMとして使用されているが、もともとは作曲の参考にする意図もあったのではないかと思う。当時のスイスの息吹を感じられる貴重な録音である。
(3)のエキストラ音楽としては、フランクフルト編で流れるモーツァルトの「ディベルティメント ニ長調」や同じくフランクフルト編でオルガン弾きの少年が演奏する手回しオルガンの曲などがある。エキストラ音楽はその性質上、1回〜数回しか使われないことが多い。それをわざわざ時間と費用をかけて録音するのはもったいないので、TVアニメやTVドラマでは、既存の音源(レコードやCD)を流用することがよく行われている。しかし、『アルプスの少女ハイジ』では、こうした曲もすべて新録音している。音楽テープに録音セッションが残っており、NGテイクも記録されているのである。既存のレコードの流用だったら権利上の都合で収録できないケースが多いが、本作のエキストラ音楽はオリジナル録音なので、支障なく収録することができた。
あらためて、11月27日発売のCD「アルプスの少女ハイジ メモリアル音楽集」の全体の構成を紹介したい。
CD3枚組のディスク1には、主題歌・挿入歌と現地録音音源、エキストラ音楽を収録した。主題歌・挿入歌は、レコードサイズのほかにTVサイズやカラオケなどのバリエーションも可能な限り収録している。
現地録音音源やエキストラ音楽の存在はこれまでも知られていたが、過去の音楽集アルバムにはいっさい収録されていない。歌ものやオリジナルBGMの収録を優先すると、どうしても特殊な録音は後回しになってしまうのである。が、今回は3枚組である利点を生かし、初めての商品化が実現した。『アルプスの少女ハイジ』の音楽世界の全貌を明らかにする快挙である。
ディスク2とディスク3は「BGMコレクション」として、オリジナルBGMを新構成で収録した。過去の商品に未収録だった曲も含め、音源が残っている楽曲はすべて収録している。構成は、一部の短い曲を除いて1曲1トラック形式とし、物語の流れに沿った曲順でまとめた。名場面と音楽をセットで記憶している熱心な『アルプスの少女ハイジ』ファンにも違和感なく聴いてもらえるアルバムになったと自負している。
細かい収録曲は下記を参照。
https://www.soundtrack-lab.co.jp/products/cd/STLC060.html
YouTubeで試聴用動画も公開中。
https://youtu.be/nN1u20l8J-Q
最後に、こうした過去の作品の音楽を商品化するねらいと意義について書いておきたい。
筆者は2024年10月5日に国立映画アーカイブで開催された「マグネティック・テープ・アラート」というイベントに参加した。「マグネティック・テープ・アラート」とは、磁気テープの経年劣化と再生機器の生産および保守の終了などにより、2025年頃にはテープのデータを移す(バックアップする)ことができなくなる可能性が高いという国際的な警鐘のことである。「いや、80年代に録画したうちのビデオテープはまだ再生できる」という方もいると思うが、ここで言っているのは、「記録当時の状態に近い良好な品質で保全する」という意味だ。イベントでは、磁気テープ等に記録されたデータの保全活動を研究機関がどのように行っているのか、事例が紹介された(下記参照)。
https://www.nfaj.go.jp/onlineservice/mtap/
では、サウンドトラックの現状は?
昭和の劇場作品やTV番組の音楽のほとんどが磁気テープで記録されている。そして、それらは劣化が進み、すでに再生困難になったものや、廃棄されたものが多い。音楽テープの保存は制作会社や制作スタッフにゆだねられており、国立映画アーカイブのような公的なアーカイブ機関が存在しないのである。
実は『アルプスの少女ハイジ』の音楽テープの中にも劣化により再生困難なものがあった。CDには多少のノイズは目をつぶって収録した。なぜなら、今アーカイブしておかないと、次のチャンスはないかもしれないからだ。アーカイブしたデータはもちろん大切に保存するが、商品にして多くの複製を作っておけば、後世まで残る可能性は高くなる。
旧作のサウンドトラック・アルバムの制作・発売は、作品を観ていたファンに向けてという面が大きい。よろこんでくれる人、聴いてくれる人のためである。しかし、それだけでなく、貴重な音楽遺産を保全するという意義も大きいと筆者は考えている。録音回数やMナンバーなどの正確な情報を残すことも同様で、それが将来『アルプスの少女ハイジ』の音楽を研究しようとする人の役に立つはずだ。
「アルプスの少女ハイジ メモリアル音楽集」は『アルプスの少女ハイジ』の音楽を50年後、100年後まで残すことを考えて作った。商品を多くの人が買ってくれれば、50年後にもいくつかは残っているだろう。CDの物理的劣化は避けられないとしても、国会図書館ではCDと紙資料のデジタルアーカイブを進めているので、データは残るはずだ。50年後の『アルプスの少女ハイジ』放映100周年の年、筆者はこの世界にはいない。が、そのあいだに誰かが『アルプスの少女ハイジ』の音楽研究を一歩進めてくれる。そうなることを願っている。
11月30日のイベントでは、CDの解説書や当コラムに書ききれなかったことも含めて、資料を参照しながらお話したいと思います。興味のある方はぜひどうぞ。
https://www.soundtrackpub.com/event/2024/11/20241130.html
アルプスの少女ハイジ メモリアル音楽集
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改めて言いますが、俺の理想は“出﨑コンテ”です!
ただ、ファンの方々はご存知のとおり、出﨑統監督の手になる画コンテは“大変ラフ”で、イメージこそ伝わるのですが、細かいディティールは演出・作画にお任せというスタイル(よーく見ると実はそうでもないのですが)のため、画を作るスタッフ側からすると好き嫌いが別れるようです。自分が業界に入った際、出﨑コンテに触れたことがある先輩方からは賛否両論耳にしました。テレコム(・アニメーションフィルム)に入社した頃、出﨑信者であることをカミングアウトすると、ある先輩からは「出﨑さんのコンテ、何描いてあるのか分かんない(笑)」と。他に「散々(スケジュールを)引っ張って、コンテ上げたら助監督(演出)に任せて消えていった」とか「芸術家気取りで、嫌い」といった意見も。自分が入社する前は『劇場版 SPACE ADVENTUREコブラ』や『マイティ・オーボッツ』『NEMO』パイロットフィルムなど、出﨑監督とテレコムは結構組んでいて、その時の印象が良くなかったのでしょう。ところが、フリーになってあちこちの現場で仕事するようになった自分が聞いた出﨑評は、「統さんのコンテ大好き! あの画が良いんだよ!」「作画スケジュールは崩壊するけど、出﨑(監督)のコンテは面白い!」と良いものばかりで、嬉しかったのを憶えています。
批評・評価は色々あっていいのですが、個人的にコンテに関して思うことは、第一に、
1コマ1コマの画に時間を掛けてはいけない! むしろ誤解を恐れずに言うと本来はスピードある筆致“雑”に描くべき!
と思っています。これを言うと“作画の際、レイアウトの下敷きになる丁寧な清書が成されたものが良いコンテ!”と言う価値観で見る人からは「とんでもない!」と叱られて、出﨑監督のコンテも否定されるのでしょう。でもこれ、作画の直し(現在『沖ツラ』作監作業中の俺……)にも言えるのですが、
同じ下手な原画なら、ザックリ速い筆致で描かれている方が、遅く神経質なそれより直しやすい!
のです。それと、これも以前話題にしたと思うの大塚(康生)さんの名言ですが、
3秒の動きは3秒で描け! 3秒はオーバーでも、せめて3時間で描くぐらいじゃないと! 3日も掛けたら(3秒の動きとは)違うモノになっちゃうから!
これ、“雑コンテ”と同じ理屈かと。つまり、
シーンが流れるのと同じスピード感でにコンテを切る(カットを割る)!
ということ。故に繰り返しますが、コンテの画は丁寧に描くべきではない!——です。作曲に例えるなら、丁寧な丁寧なフォント風音符を、ゆっくり時間をかけて五線紙に描き込んだから名曲になる訳ではないですから。そう。出﨑コンテの独特のリズム感・テンポ感はその辺に起因しているのです。だからこそ監督が全話コンテを切る必要があるのでしょう。
後、清書コンテを望む作画方々、…そもそも、自らの実力不足を棚に上げて、コンテの画ヅラの力を借りて原画を描こうとしている時点で、アニメーターとしてどうかと思います(本音)。が、そうは言っても慢性的人材不足な昨今のアニメ業界では、コンテの清書はほどほどに必要なのでしょうね。
って訳で、仕事に戻る時間です!
2024年最後のアニメスタイルのトークイベントは「年忘れ作画トーク2024」。タイトル通り、作画について色々と語るイベントです。開催日は12月8日(日)。会場はLOFT/PLUS ONE。
第一部のメインゲストは中村豊さん。最近の仕事である『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』で絵コンテ、作画監督を担当したパートについて、参加したアニメーターの活躍を含めて語っていただきます。今回のトークで、見どころたっぷりだった「中村パート」の謎が解けるはず。
第二部のメインゲストはちなさん。トークのテーマは監督作品となった『ファーストライン』のメイキングです。ちなさんはどんな狙いで作品を作り上げたのでしょうか。資料を見ながらのトークとなります。
第三部は企画中ですが「作画放談会」となる可能性が高いです。
中村豊さん、ちなさん以外の出演者で決まっているのはアニメーター&演出家の沓名健一さん、「アニメスタイル」の小黒編集長です。他の出演者が決まりましたら、改めてお伝えします。
※『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』で活躍したアニメーターの廣田光平さんにも出演していただくことになりました。(2024年11月29日追記)
第一部は中村さんが描いた絵コンテをスクリーンに映して、それを見ながらトークを進めることになります。絵コンテを見ていただけるのは会場にいらした方のみとなります。配信ではそのパートで絵コンテを見ることはできません。ご了承ください。
今回のイベントも「メインパート」の後に、ごく短い「アフタートーク」をやるという構成になります。配信もありますが、配信するのはメインパートのみです。アフタートークは会場にいらしたお客様のみが見ることができます。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルはチャンネル会員が視聴できます。
会場ではアニメスタイルの書籍を販売します。「中村豊 アニメーション原画集 vol.2」「同・vol.3」は中村さんのサイン本を販売する予定です。
チケットは11月9日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知ページ(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/299329
会場チケット https://t.livepocket.jp/e/yc68y
配信チケット(ツイキャス) https://twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/342000
■関連リンク(書籍情報)
「中村豊 アニメーション原画集 vol.2」書籍情報
https://animestyle.jp/news/2022/01/05/21244/
「中村豊 アニメーション原画集 vol.3」書籍情報
http://animestyle.jp/news/2022/08/08/22521/
第231回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2024年12月8日(日) |
会場 |
LOFT/PLUS ONE( http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/access.html ) |
出演 |
中村豊、ちな、沓名健一、廣田光平、小黒祐一郎(聞き手)等 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 2,300円、当日 2,500円(税込·飲食代別) |
前回の続きが無理なくらい、バタバタな今週、またお茶濁しで申し訳ありません!
リテイク出しや原画修正やらで、超絶に忙しい現状!! 原画修正というのは、ほぼ原画の“描き直し”! ま、でも結局原画描くの自体は面白いので、それほど不満はありません。ただ思うのは、社内の新人が描いた原画を直していると正直「え!? これでいいの?」と落胆し、「……だったら、俺がもっと面白く描いてやろうか!」と奮起する——の繰り返し。
原画描き始めて早27~8年、俺に原画を教えてくださってた時の友永(和秀)師匠の年齢に、すでに自分自身がなってます。そこまで続けていても、まだまだ奥が深くて、死ぬまで極められない仕事のような気がしています。
とにかく、今年も脚本・コンテ・監督そして、レイアウト・原画・背景と“何でもやった楽しい一年だった”ということになりそうです(汗)。
って訳で、大好きな出﨑コンテについて語っている時間がなく、仕事に戻ります!
腹巻猫です。11月4日に東京建物ブリリアホールで開催された劇伴フェス「東京伴祭2024」に行ってきました。これまでの公演はスケジュールの都合で参加することができなかったので、生で聴くのは初めて。出演は、加藤達也さん、高梨康治さん、林ゆうきさんの3人とミュージシャンのみなさん。3人それぞれに聴きどころが多く、盛り上がりましたが、個人的に加藤達也さんの『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『ラブライブ!サンシャイン!!』『Free!』の曲が生で聴けたのがよかったなあ。
会場で驚いたのは、観客に若い女性が多いこと。そして、演奏中にサイリウムが盛大に振られること。サントラコンサートでこんな光景が見られるとは! カルチャーショックでした。
こういうお客さんに向けてサントラを作る時代なのだなあと感じ入ったイベントでした。
今回は2024年10月25日に公開された劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』の音楽を取り上げたい。敷村良子の同名小説を監督&脚本・櫻木優平、アニメーション制作・萌、レイルズのスタッフで映像化した作品である。
原作小説は実写劇場版やTVドラマになった人気作品。筆者は、田中麗奈が主演した1998年公開の実写劇場版も、鈴木杏が主演した2005年放映のTVドラマも、どちらも観ている。吉俣良が手がけたドラマ版のサウンドトラックも買った。筆者にとって「がんばっていきまっしょい」は少々思い入れのある作品だ。思い入れがあるというより、気になる作品と言ったほうがよいかもしれない。
『がんばっていきまっしょい』は、愛媛県松山市を舞台に、同じ高校に通う少女5人がボート部に参加し、ボート競技に挑戦する物語である。アニメ版の監督・櫻木優平は、この作品が後年多く作られる「女の子部活もの」のさきがけではないかと語っている(パンフレットより)。そう言われれば、『けいおん!』も『ラブライブ!』も『がんばっていきまっしょい』の系譜につらなる作品と呼べそうだ。
ただ、『がんばっていきまっしょい』は『けいおん!』ほどふんわりしてないし、『ラブライブ!』ほど熱血でもない。ふんわりと熱血のあいだを揺れ動く等身大のキャラクターが魅力だった。ちょっと、あだち充のマンガに通じるような。筆者はそこが気になったのだと思う。
アニメ版は、彩度の高い映像が特徴的。映像だけを観るとCGアート風だ。キャラクター描写もドラマも、生々しさを抑えて、さらっと仕上げた印象を受ける。不満がないわけではないが、「こういう『がんばっていきまっしょい』があってもよいな」と思った。
音楽を担当したのは、ストックホルムを拠点に活動する林イグネル小百合。劇中音楽はピアノを主体にしたキラキラ感と浮遊感のあるサウンドで作られている。
本作の音楽について林イグネル小百合は、「海が舞台の作品なので、波の音や潮の響きを弦のフレーズ感や楽器で表現しようと意識しました」と語っている(パンフレットより)。作曲と録音はストックホルムで行われた。水の都とも呼ばれるストックホルムには多くの島と運河がある。林イグネル小百合は、物語の舞台である松山を取材することはできなかったが、ストックホルムの水面の光を眺めながら、音楽の構想をふくらませていったという。演奏もストックホルムのミュージシャンが担当。そのためか、できあがった音楽はちょっと異国めいた雰囲気がただよう。それがCGで描かれた彩度の高い映像とマッチしている。
日本の地方都市を舞台にしているのに、映像も音楽もひなびた感じや素朴な感じはあまりしない。そこがアニメ版『がんばっていきまっしょい』のユニークなところである。
本作のサウンドトラック・アルバムは2024年10月25日に「映画『がんばっていきまっしょい』オリジナル・サウンドトラック」のタイトルで松竹音楽出版/ShochikuRecordsから配信開始された。CDでの発売予定はないようである。
収録曲は以下のとおり。
劇中で使用された音楽(劇伴)を使用順に収録。ただし、女性アイドルグループ「僕が見たかった青空」が歌う主題歌・挿入歌と現実音として流れる祭囃子や既成曲などは収録されていない。
1曲目の「Prologue」は冒頭に流れる曲。水面に輝く光のようなピアノの音やゆらめく波を思わせるシンセのふわっとした響きなど、本作の音楽のサウンドイメージが集約されている。少女たちの心象風景とも受け取れるサウンドである。
登校風景に流れる2曲目「The Way to School」では、波音を模したようなサウンドが挿入されるのが印象的。少女たちが初めてボートに触れる場面の「First Time to the Sea」(トラック4)では、木管の高音の調べが海辺に集まる鳥の声を思わせ、パーカッションが波しぶきをイメージさせる。海に来た少女たちの高揚感を伝える工夫だ。
日常シーンでは躍動感のある曲やにぎやかな曲も流れる。ボート部のメンバーが集まってくる場面の「Meeting a New Student」(トラック3)や「We Have New Members!」(トラック5)、夏合宿の場面の「Summer Practice」(トラック13)、校舎の屋上で少女たちが意見を交わす場面の「School Rooftop」(トラック18)などである。
ウィンナワルツ風に書かれた「Waltz for Five」(トラック12)はボート部員の妙子の家に少女たちが集まる場面の曲で、優雅な曲調がユーモラスな効果を上げている。
このあたりは、本作の音楽の中でも「女の子部活もの」らしさが感じられる楽曲だ。
少女たちの不安や悲しみや友情を描写する曲は、あまりメロディアスでない抑えた曲調で書かれている。「Find Your Spark」(トラック6)、「Lost Dream」(トラック9)、「Lost Myself」(トラック17)、「Ferris Wheel View」(トラック20)、「Come Together」(トラック21)などは、いずれも重要な場面で流れる曲なのだが、あえて観客の感情をゆさぶるような曲にはしていない。サウンド感やシンプルなフレーズの重なりで繊細な心情を表現している。『がんばっていきまっしょい』らしいなと筆者が感じるところだ。
いっぽう、ボートレースの場面に流れる「First Tournament」(トラック8)や「Our Last Tournament」(トラック24)は、リズムを強調したスピード感のある曲調で書かれている。盛り上げるところはしっかり盛り上げて、メリハリをつけているのが好印象だ。
ボートの特訓シーンに流れる「Boat Club Practice」(トラック7)と「We will Definitely Win!」(トラック11)の2曲は、本作の音楽の中でも少し異質な楽曲である。
どちらの曲も松山に伝わる民謡「野球拳」のメロディを引用している。野球拳が松山ゆかりとは知らなかったので、最初に曲が聞こえてきたときは何が起こったのかと驚いた。メロディは民謡風だが、サウンドは現代的で、ちょっとユーモラスな感じもただよう。その異質な感じが、暑苦しくなりそうなシーンの印象を和らげている。「野球拳」の引用は櫻木優平監督からのリクエストだったそうだが、意表をついた面白い演出だと感じた(意表をつく意図はなかったかもしれないが)。
最後に、本作の音楽の中で、とりわけ筆者の印象に残った曲を紹介しよう。
女声ボーカルが入った「Rainy Day」(トラック19)と「Us Five」(トラック25)の2曲である。どちらもメロディは同じで、ボーカルには歌詞がついている。
「Rainy Day」はボートの練習ができなくなった少女たちがそれぞれの時間を過ごす場面に、「Us Five」は終盤のボート競技の場面で5人が心をひとつにボートを漕ぐ場面に流れる。この2曲について、櫻木優平監督からは「プロが歌っている風に聞こえないように」というオーダーがあったそうだ。そのためか、歌詞の内容は、はっきり聴き取れない。日本語ではないようだが、英語なのか、ほかの言語なのかも判然としない。しかし、それでよいのだろう。
筆者の想像だが、この2曲は挿入歌というより、少女たちの心の声なのだと思う。声のトーンや表情そのものに意味がある。はっきりとした言葉にしてしまうと、微妙なニュアンスがこぼれ落ちてしまうし、想像する余地がなくなってしまう。ボーカルを聴く観客ひとりひとりが、少女たちの心境を想像しながら観ればいい。そのとき、自身の体験や思い出も引き出されるかもしれない。そういうねらいの歌なのだろう。
全体の中でも、この2曲が流れるシーンはくっきりと心に残る。ありきたりの作品だったら、はっきりとした歌詞のある、泣ける曲を流しそうなところなのに、無国籍風の不思議な印象の歌が流れるのがしゃれている。そこに櫻木優平監督と林イグネル小百合のこだわりを感じる。
こうやって音楽演出をひも解いていくと、アニメ版はルックスは異なってもやはり「がんばっていきまっしょい」なのだと納得できる。ふんわりと熱血のあいだをたゆたう「がんばっていきまっしょい」の魅力は、劇場アニメにもしっかり受け継がれていると思うのである。
映画「がんばっていきまっしょい」オリジナル・サウンドトラック
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前回の続き、「ふたりのブラック・ジャック~マンガ&アニメ絵コンテ・競演集」の話!
まだ全部は読めていなくて、杉井ギサブロー監督・丸山正雄プロデューサー・杉野昭夫作画監督のインタビュー&コメントもまだ。
ただ、仕事の合間合間にコンテ集を捲っては、エネルギーをもらっています。出﨑コンテ独特の勢いある筆致、出﨑監督の「こういう画が欲しい~いや、“こうあるべき”!」との“熱量”から、俺は勇気をいただいています。現在『沖ツラ』の次シリーズ(まだ、タイトルは未発表)のコンテ中で……。
話は遡ります。自分は名古屋時代、“古本からスクラップ”して出﨑コンテを収集していたのですが、上京して業界入りしたテレコム時代、何人かの先輩から使用済み出﨑コンテ(コピー)をいただいて超興奮したものです。「出﨑ファンの君にやろう!」と『劇場版BLACK JACK』のコンテを部分で、——恐らくご自身が担当されたパートのコンテでしょう。ちなみにこのコンテを下さった方は、テレコムに席を借りていたフリーのアニメーターで、当時は手塚プロダクションの作品も手伝っていたので、使用済みを破棄するくらいならと、俺に。孫コピーだったので、筆圧・濃淡は荒いものの、初めてA4サイズで手にした出﨑コンテに涙が出るほど嬉しくて、友達らとの飲み会に持ってって自慢したし、その後フリーの演出になった自分がコンテを切る(描く)際は、テキストとして何度も見返したものです。
その後、俺が退社する際に別の先輩(社員)から「これ餞別~」とOVA『エースをねらえ!2』の半パートのみと、同じく『~ファイナルステージ』コンテを1本分まるまるいただきました。その先輩は出﨑監督の『劇場版エースをねらえ!』を観てアニメーターを志したほどの方で、新人だった頃OVA『エース』の現場で使ったコンテ(孫コピー)とのでした。で、いただいた『エースをねらえ!2』のコンテで印象的だったのは、「誰が描いたコンテでも全部出﨑監督が直す」と噂に聞いていたほど、修正が成されていなかったこと。特に意外だったのは出﨑監督得意の派手なアクションである“(テニスの)試合シーン”ほど、無修正で流し、逆にお蝶夫人と竜崎理事の会話シーンの方が画も台詞も全修だったこと。特に普段は“全話コンテの出﨑”であるはずが、『エースをねらえ!2』では何故1話・2話・12話・13話以外のコンテを他人に譲ったのか? DVD-BOXのブックレット内インタビューでは「元々監督のつもりで取り組んでいたら、後で“総監修”とは何だ(笑)?」と出﨑監督は語られていました。ところが、自分の学生時代の先生が『エースをねらえ!2』の演出で参加しており、その先生曰く「(オレの知ってる限りでは)元々出﨑さんは“監修”クレジットのみ~現場のチーフ・ディレクターが実質監督の予定だったけど、当時出﨑さんが本腰入れるはずだった海外合作がなくなって、急に深く関われるようになったんじゃなかったかな~? で、出﨑監督が入る時には、コンテ・演出スタッフに既に声を掛け済みだったような?」と。しかし、これも何10年も前の半分うろ覚え話ゆえ、確実な証言とは言い難いのですが、先生の話どおりだとすると、出﨑監督が頭と尻の2本ずつしかコンテを担当していないことも辻褄が合うんですよ。(でもこの話、何年か前もここで話題にしたしましたよね?)
他人の描いたコンテは、特にその当時の若手が描いたアクションはアニメーションの見せ場としてちゃんと使いつつも、ドラマの核になる部分こそは徹底して直しに直す、脚本があろうと台詞まで全部——それが、出﨑流コンテチェック。
ま、何にせよ自分が初監督『BLACK CAT』において
他者の描いたコンテを監督チェックでどう処理するか? ——は出﨑監督による『エースをねらえ!2』のコンテ修正をこれまた教材にしていた!
のは言うまでもありません。
懐かしい話を想い出したところで、またコンテチェックに戻ります! 傍らに出﨑コンテを置いて。