前回、面接の話をしましたが、その面接の時「何か訊きたい事あります?」と尋ねたところ、入社希望の方から
某アニメ監督さんが「数年でアニメ業界は滅ぶ!!」と言ってたのをネットで見てたんですが、板垣さんはどういうお考えでしょうか?
と。自分は即答しました。
まぁ、その某アニメ監督様が何を思ってそう発言なさったのか分かりませんが、あくまで私見として自分は「あり得ない!」と言い切っておきます。これは決して楽天主義で言うのではないんです。某監督様の仰る「アニメ業界」がどこらへんの範囲を指すのか知りません。自身のまわりに将来性を感じさせる新人がいないのか? はたまた自身の企画にお金(制作費)が集まらない事を憂いている? もしくはそのお金を出してくれるスポンサーさんがいない? よく分からないけど、「アニメ」という表現手段に未来があると思ってらっしゃるなら、そんな事言う前に作品を作り続けるべきではないでしょうか!?
と。正直、その「滅ぶ」発言をなさった監督がどなたか存じ上げません(本当です! 最近忙し過ぎてネット見てる暇なくて)ので、真意も知らず「アニメ業界が滅ぶ云々」だけに反応して、入社希望の若者にさらに話しました。
「所詮は権威者発言の引用でしょ?」と突っ込まれるのを覚悟で、日本映画界の超巨匠・黒澤明監督が生前、インタビューでこんな事を仰ってました。『日本映画がダメになったって言う人がいるけど、映画ができてまだ100年足らず(当時)ですよ。これからですよ! そんな事いけしゃあしゃあと言えるヤツは映画人じゃない! ダメになったって言うんなら「映画会社がダメになった」んでね!』って。これ俺が凄く好きな言葉で、自分がやってる表現手段を心底信じてるクリエイターってこうではないかと思うんです。たとえ円盤(DVD/BD)が売れなくなったメーカーや視聴率を取れなくなったTV局がアニメを見限る事があっても、我々「アニメ人」が「滅ぶ!」なんて言ったら始まらないでしょう!
面接で話す内容としてはどうかと思いますが、真剣に聞いてもらえました。でも本当に思うんです(ここからは面接で話していない内容です、念のため)。最初は映画公開から始まって、後にTVシリーズが始まったアニメ。自分が中・高校生の頃になるとオリジナルビデオアニメ(OVA)が出てソフトメーカーが参入。そのノリでゴールデンタイムでは視聴率が稼げなくなったアニメが、メーカーと組んで深夜枠に時間を移し「ソフト売り」へ。ソフトもVHS→LD→DVD→BDへと移行しました。そしてネット配信。が、映画は消えたでしょうか? ゴールデンタイムにだってアニメは残ってるし、深夜もまだあるでしょう? OVAも、薄く扱いやすい円盤(OAD)となっただけです。ネット配信はまだまだこれから。それこそ100年に及ぶアニメの歴史の中で「円盤売り上げ至上主義」っていったい何年か考えてみてほしいんです。「滅ぶ発言」の監督様の目が行き届かないところで、「アニメ熱」を持った若いプロデューサー志望が、毎年メーカーやTV局に入ってきてるはずでしょう? そういう方々にはもう期待できないんでしょうか? 自分は期待したい! たまに挫けそうになるけど、やっぱり自分は期待します!