第25話 お前の遺志は受け取った!
●アンチスパイラルの罠にかかり、高密度の海と化した宇宙に囚われた超銀河ダイグレン。だが、絶体絶命のピンチにも活路を見出すのが大グレン団だ! シモン達は無謀きわまる捨て身の作戦に出るが、その先にはまたしても悲劇が待ち受けていた……。20話と同様、キタンの男らしい勇姿と活躍が描かれるエピソード。作画・台詞・音楽が相まって、凄絶なまでにエモーションの高まるクライマックスが圧巻だ。制作協力はAIC宝塚。アニメアールのスタッフが多数参加し、80年代ロボットアニメを支えた吉田徹と貴志夫美子が名を連ねた、歴史的邂逅を感じさせる回でもある。
脚本/山口宏、中島かずき|絵コンテ/佐伯昭志|演出/吉田徹|キャラ作画監督/貴志夫美子|メカ作画監督/中澤勇一|LO監修/錦織敦史、本村晃一|原画/アニメアール 加瀬政広、森下博光、光田史亮、武本大介、小松温、西川真人、増田伸孝、五十川礼、池田早香、上田恵未、松尾真彦、山本健一郎、奥村光博、笠野充志、榊原智次| AIC 清水裕輔、渡部崇| AIC宝塚 日下部智津子、立川聖治、寺野勇樹、藤田雄己、横峰克昌| 渡辺敬介、すしお|制作協力/AIC宝塚
取材日/2007年11月9日、2007年12月11日、2008年1月16日、2008年2月20日 | 取材場所/GAINAX | 取材/小黒祐一郎、岡本敦史 | 構成/岡本敦史
初出掲載/2008年3月21日
── これはアニメアール回ではなくて、正式にはAIC宝塚回なんですね。
今石 そうですね。AIC宝塚さんがアールのスタッフを呼んできたという。『グレンラガン』最後の外出し回です。
大塚 ここで1本引き受けてもらったのは大きかったですよ。
今石 第4部では唯一、前後のシーンを切り離しやすい回だったので。
── コンテ以降の作業は、完全にAIC宝塚さんにお任せで?
今石 ええ。一応、監督チェックと総作監チェックは入れてますけど。コンテはまた救世主の佐伯(昭志)君ですね。この時は佐伯君と相談して「もう少し脚本をいじろう」という話になって、中島さんにちょっと手伝ってもらった。おかげでだいぶシンプルな話になりました。最初はもうひとつエピソードがあったんだけど、それをバッサリ切って、キタンの話に集中する流れにしました。
大塚 ホントは、アーテンボローの話がかなりあったんだよね(笑)。
今石 そう。Aパートはアーテンボローが生きるか死ぬかみたいな話で、潜水艦モノ的な死に方をするかと思いきや、やっぱり死ななかったという展開があったんだけど(笑)。今そんな事をやっていてもなあ、という事でカットしました。だから24話とかの詰め込み具合に比べると、25話はわりとゆったりしてるんですよね。
── 意外とじっくりした会話シーンが多いですよね。
今石 今まであんなに急いでたのに(笑)。でも、そのおかげで最後はちゃんと盛り上がってくれたので、正しい判断でした。
── 中島さんは主に枝葉の整理をしてくれたんですか?
今石 いや。デススパイラルマシンだとか、キタンがギガドリルブレイクするとかいった流れは、中島さんのリライトが入った時にできたものです。その辺の閃きがやっぱり凄いですよね。シナリオ打ち合わせはもう終わってたから、他の話数のアフレコ時とかにチョコチョコ相談していて、「ちょっと変えたいと思ってるんです」みたいな話をしたら、翌週には展開を考えてきてくれた。で、アフレコも終わって声優さんも帰った後のブースで、こんこんと膝をつめて中島さんからアイディアを聞いて。「なるほど、それでイケる」という事で、今のかたちになりました。
── ブータの螺旋力発動というのは、当初の設定からあったんですか?
今石 あれは結構、最初から言ってましたね。中島さんはとにかくブータで何かしたい、人間型にしたいとか、ずーっと言っていて。ほぼみんなから反対されてたんじゃないかな(笑)。
大塚 いや、反対はされてなかったけど、話が進んでいくにつれて、そのネタまでは入れづらいかな……という感じはあったかも。
── 画にするとそうでもないですけど、言葉で聞くと「えっ!?」ていう展開ですよね(笑)。
今石 うん。「大丈夫なの、それ?」みたいな。
── 脚本の山口(宏)さんがブータ担当だったわけではないですよね。
今石 いや、どっちかと言うと山口さんはキタン担当なんです。25話はキタンの話だから、山口さんもやりたいと言っていて。
大塚 キタンのキャラクターは、シリーズを通してかなり膨らんだよね。特に第3部あたりから。今石君は元々、キタンが好きだったんでしょ。
今石 そうですよ。だって普段の僕のアニメなら、キタンが主役ですから(笑)。
一同 (笑)
── スタッフ的にはいかがでしたか。
今石 個人的には、演出が吉田徹さんで、作監が貴志夫美子さんというのは、凄く嬉しかったです。
── 80年代ロボットアニメらしい顔ぶれですよね。
今石 ええ。僕が今期いちばん楽しく観ているアニメは、ケーブルTVで再放送してる『(太陽の牙)ダグラム』ですから(笑)。あのひたすら淡々とした感じが素晴らしくて、毎日楽しみでしょうがない。谷口(守泰)作監回のデイジーは、やっぱり可愛いんですよ。
── 毛利(和昭)さんのデイジーが?
今石 いや、毛利さんが抜けてからも可愛いんです。あれはきっと貴志夫美子さんですよ(笑)。25話は、アールの人もかなり頑張ってくれましたね。アクションとかもだいぶやってくれたし、メカ作監の中澤(勇一)さんも頑張って直してくれていたなあ。
── そんな中で、またすしおさんの名前が。
今石 最後のキタンのギガドリルブレイクを、また描いてくれてます。ギガドリルブレイクと言えばすしお、という韻を踏んだかたちですね。
── ラストの劇画調に描かれたシモンの顔も、すしおさんですか?
今石 あれは……俺か(笑)。真っ黒になっちゃいましたね、描きすぎて。
大塚 26話の冒頭で平田(雄三)さんも線グリグリの画でシモンを描いていたんだけど、25話で今石君が描いた原画を見て、もっと線を増やしたらしいよ。「これじゃ足りない!」って(笑)。
一同 (笑)
今石 それでああなったのか……なるほど。
── キタンの最期を飾るクライマックスの音楽も印象に残りますね。ラップのバリエーションに続いてアリアが流れるという。
今石 ああ、あれはカッコよかったですね。まさかラップとオペラを合わせてくるとは思わなかった(笑)。愕然としました。あの曲をどこで使うか、何話から使うかというのも迷いどころでしたね。後半、人死にが大量に出る展開に見合う曲というオーダーで作ってもらった曲で、発注した時点では24話あたりから使う事を想定していたんだけど、上がってきたものを聴いて考えているうちに、やっぱりここだろうな、と。
── 25話の思い出はそんなところですか。
今石 個人的な話で言えば、25話の監督チェックあたりが、ほぼ最後の監督作業だった気がしますね。26話は大塚さんや平松さんにお任せで、監督としてあんまり作業してないと思うので(苦笑)。
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