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第26話 行くぜ ダチ公

第26話 行くぜ ダチ公

●アンチスパイラルの罠を脱し、ついに超銀河グレンラガンへの変形を成功させたシモン達。立ちふさがる巨大戦艦も撃破し、もはや向かうところ敵なしと思われたその時、さらなる罠が彼らを襲う! 多元宇宙迷路に囚われた大グレン団が、それぞれの「あったかもしれない人生」を体験する、ドラマチックなエピソード。Bパートの絵コンテ・作画監督は平松禎史が手がけ、今までにないムードで作品に深みを与えている。死んだはずのカミナが再び登場し、シモンやヨーコと再会するシーンが切なくも感動的。前半の超銀河グレンラガンと不気味なデザインの敵戦艦が繰り広げるバトルも見どころだ。

脚本/中島かずき|絵コンテ/大塚雅彦、平松禎史|演出/大塚雅彦|作画監督/平松禎史、平田雄三、阿部慎吾|原画/向田隆、宮沢康紀、三木俊明、渡辺義弘、田中将賀、小田剛生、猪狩崇、河野紘一郎、高山朋浩、松田宗一郎、富田浩章、雨宮哲、山口智、貞方希久子、赤井俊文、長谷川ひとみ、西垣庄子、渡辺敬介、櫻井将史、後藤望、益山亮司、小島大和、桑名郁朗、小松田大全、すしお、今石洋之、阿部慎吾、平松禎史

取材日/2007年11月9日、2007年12月11日、2008年1月16日、2008年2月20日 | 取材場所/GAINAX | 取材/小黒祐一郎、岡本敦史 | 構成/岡本敦史
初出掲載/2008年3月28日

── この回は『グレンラガン』全体の中でも、やや異色ですよね。

大塚 やっぱり平松(禎史)さんですよ、26話は。

今石 うん、そうですね。最初の予定では、最終回を僕がやって、ラス前1本を大塚さんがやる、という事で進めていたんです。でも、大塚さんがコンテを描いていて「……描けん」みたいな感じになってしまって。

大塚 ちょっと時間的にね。ホントはやりたかったんですよ。26話は“シモンとカミナの本当の別れ”という場面があるので、もうプロットの段階で「これは自分がやりたいな」という気持ちがあった。こっちでもいろいろアイディアを出そうと思っていたんですけど、それをまとめにかかった時、ちょっと時間が足りないし、もう少し画的に描ける人がやらないとマズいな、と思ったんです。それで、どうも時間があるらしい平松さんを口説きに行って(笑)。

今石 ふたりで頭下げに行きましたよね。ちょっと折り入ってお願いがあるんですけど……って。

大塚 平松さんは「なっ、何しに来たんだ!?」みたいな(笑)。

一同 (爆笑)

今石 そうそう。うわあ〜! みたいなリアクションされました(笑)。『グレンラガン』では平松さんには原画しか振らないはずだったんだけど、禁を破って、最後だけコンテを振ってしまいましたね。そうだ、忘れないうちに言っておかないと。

── ?

今石 前に2話の話をした時、平松さんの話題で「森久司さんのカットと岩が違う」という話をしたじゃないですか。あの記事を見た平松さんが「あれはわざとなんだ!」と(笑)。

── ああ、なるほど。あえて違う岩を描いたんですね。

今石 そう。森久司さんはエフェクトみたいな凄い作画で岩を描いてくるだろうから、あえてスライドにして前後を合わせなかったんだ、と。岩とかに興味がないからスライドにしたんじゃなくて。

大塚 ハハハハ(笑)。

── かなり高度な作画ギャグとして。

今石 そうです。

── 違う人が描いている事が分かるように?

今石 いや、「分かるように」かどうかは分かんないけど(笑)。とにかく、それは伝えてほしいと言ってました。

── 了解しました。平松さん、ごめんなさい!

── では、26話の話に戻りまして……コンテは大塚さんと平松さんの連名ですが、どういう分け方をされたんですか?

大塚 これは単純にA・B分けです。いちばん気にしていたカミナの出てくるくだりはBパートだったので、平松さんに。Aパートは、僕です。ほぼアクションで、あまり得意ではないんだけど、そこはきっと今石君が直してくれるだろうと思いながら。

今石 ほとんど直さなかったですけどね(笑)。

大塚 Aパートは、わりと調整的な気分で描いてました。おそらくBパートの分量が増えるだろうと見越して、Aパートはシナリオを少し圧縮した感じにしておこうと。

今石 ああ、そうでしたね。中島さんのホンはAパートも全開で、ほとんど最終回レベルの作画が必要な内容だったので、泣く泣く詰めました。超銀河グレンラガンの活躍が減ってしまったのは残念なんですけど。

大塚 でもまあ、アクションの見せ場は次の最終回にもあるからね。26話はやっぱり、カミナのシーンをクライマックスにしようと。

今石 あの平行宇宙ネタは、中島さん渾身のネタでしたからね。

大塚 うん。カミナをもう一回出すには、いちばんいい手だったよね。生き返るわけではないし、完全に夢というわけでもないし。

── 平松さんのコンテはいかがでしたか。

大塚 僕の方では漠然としたアイディアしかなかったんだけど、平松さんが巧くまとめてくれた。結果的には振ってよかったなあ、と思います。

今石 ああいうまとめ方ができる人はいないですよね。僕でもできないですもん。TVのチャンネルをガチャガチャ変えるというアイディアも、よかったですよね。

大塚 (多元宇宙からの)復活のプロセスについては、カミナに怒られて復活するというよりは、シモンが自発的に気がつくような感じにしてほしいな、と思っていたんです。きっかけはカミナでもいいんだけど。それと、そこにニアの要素を少し入れられないか? というのもあった。そしたら平松さんが、シモンとニアが最初に出会った場所を舞台にする、というかたちで活かしてくれた。

── 9話に出てくる姫捨て谷ですね。

大塚 あのアイディアは凄くいいな、と思いましたね。あと、シナリオではヨーコとカミナが会うシーンはなかったんだけど、ちょっと2人を会わせたいなと思って。会話はなくてもいい、目と目が合うぐらいでもいいから、って。そこでも平松さんから、2人が最後に別れた場所で再会するというアイディアを出してもらった。それも含めて、やっぱりさすがだなあと思いました。

今石 ヨーコに対してカミナが一言も喋らないのがいいですよね。シモンにはああだこうだ色々言ってるんだけど(笑)、ヨーコには何も言わない。

大塚 中島さんとも相談した時、「あんまりラブコメみたいな要素は入れたくない」みたいな事を言われていたんです。そういう意図はなかったんだけど、とにかく「会話してどうにかなる」という展開にはしないでほしい、と。

── ヴィラルのくだりは脚本にもあったんですか?

今石 あれはホンからありましたよ。また菊地(大輔)君がそこだけ超反応して、山ほどイメージボードを描いてきた(笑)。まあ、オイシイ場面ですからね、やっぱり。

大塚 ヴィラルの嫁はボードに描いてあったんだっけ?

今石 うん、ボードで相当膨らんでます。シナリオにも嫁がいるとは書いてあったけど、ああいうビジュアルになったのは、完全にボードの暴走ですね(笑)。

大塚 26話のボードって、半分ぐらいあのシーンじゃなかった?

── そういえばヨーコの画とか見当たりませんでしたね。

今石 ヨーコなんか全然描いてくれないですよ。

大塚 それでも、ヴィラル一家のシーンは、コンテチェックで監督がさらに足してたよね。

今石 そうですね。あそこは僕も若干思い入れしてたのかな(笑)。結構、平松さんのコンテはあっさりめだったんですよ。それでヴィラルの表情変化をちょっとしつこくしたのかな。最後にカッと戦士の表情に戻るという。で、ヴィラルはシメなので、飛んでいく画をちょっと長めにして、間をとりたかった。

大塚 あそこで曲が終わるのが、凄く綺麗なんだよね。

今石 ラストのニアの悶えは、さすが平松さんでしたねえ。

大塚 ハハハ(笑)。

今石 僕はあそこまで掘り下げるつもりはなかったので、コンテであんなに伸びるとは思わなかった。

大塚 確かに。アフレコで芝居を聞いてて、凄く申し訳ない気持ちになったよね(苦笑)。なんか、こっちが虐めてるみたいな気分になって。

今石 そうそう。延々と喘ぎ声を言い続けているという。福井(裕佳梨)さん、ゴメンナサイ。

大塚 でも、あそこは西垣(庄子)の原画もよかったよね。

今石 あの辺はずっとよかったですね。

── 作監が3人体制になってますが、これはどういう仕事分けだったんですか。

今石 Aパートは、平田(雄三)さんがキャラ作監で、阿部(慎吾)君がメカ作監。Bパートは平松さんです。

大塚 Bパートも一応、阿部君がメカを見てるよ。実質メインだったのはAパートだったけど。Bパートのラストに出てくるグレンラガンは、桑名(郁朗)さんの原画だから、そのままスルーって感じ。しかもギリギリまで粘ってきたし(笑)。

今石 ギリギリでしたねえ。

大塚 ラストの止め画のグレンラガンも桑名さんがやってるんですよ。夜にその作業をしていて、「あとは影つけだけです」みたいな話だったので待ってたんだけど、なかなか上がってこなくて。結局「今日は多分無理です」みたいな話になって、明日チェックする事にして一旦帰ったんです。影つけだけだよなあ? とか思いながら。で、次の日来たら、まだやってた。

今石 ハハハハ(笑)。影つけだけで徹夜。

大塚 うん。ちょっとビックリしました。

今石 凄い、さすが桑名さんですよ。一から全部描き直したんじゃないか、って感じですよね(笑)。

── コクピットから出たマントがぶわーっとなびいて、シモンが現れるところも桑名さんですか。

大塚 あそこもそうですね。

今石 あと、土下座するニセカミナとシモンの場面を向田(隆)さんに頼んだのも、また韻を踏んだ配置ですね。9話で作監をやった向田さんに、同じシーンをお願いしてます。

大塚 あそこは平松さんもほぼ修正入れずに通してたね。

今石 うん。むしろ、平松さんが向田さんの画に合わせてたって言ってましたからね。

大塚 カッティングで1カット足したところがあって、そこは平松さんに描いてもらったんだけど、それも平松さんが向田さん風に描いてる(笑)。

── ナキムとマオシャが久々に出てくるところは、ちゃんと柴田由香さん風の画になってましたが、どなたの作画なんですか?

今石 あそこは長谷川(ひとみ)かな。

大塚 そうですね。彼女は21話もやってたから。

今石 子どものところはかなり長谷川が描いてましたからね。それでちゃんと同じ画になってたんだと思います。あと、宮沢(康紀)さんもさすがでしたね。冒頭の仏像戦艦が惑星を投げまくるという、どう描いていいか分からないカットを見事にやってくれた(笑)。

── あれ、ムチャクチャ気持ち悪かったですね。

今石 いやあー、あれは気持ち悪いですよ(笑)。さすがです。

── アンチスパイラルの実体はこの回が初登場ですが、どなたか担当アニメーターがいたりしたんですか?

今石 あれはいろんな人が描いていると思いますよ。Bパートではわりと長々と出てるから。

大塚 原画マンだと、後藤(望)、益山(亮司)、横井(将史)あたりかな。

今石 平松さんの描くアンチスパイラルが可愛いんですよね。表情が愛らしくて、愛嬌がある感じで(笑)。

大塚 コンテからしてそうだったよね。

── 監督も原画を描かれてますね。

今石 ああ、はい。平松さんに言われて、断れないと思って(笑)。

── 何カット描かれてるんですか?

今石 1カットじゃないですか? ロージェノムが「ウォオオオオ!」って叫んで光を出すところ。

大塚 アンチスパイラルと対峙して、ブータが変身する直前のところだよね。

今石 早くてよく分かんないですね、あれ(笑)。

── 26話は、演出的にはいかがでしたか?

大塚 うーん、この回はノープランでやってたなあ(苦笑)。

今石 僕もこの辺になると、コンテも最後の方をチョロっとしか直してないし、レイアウトどころかカッティングも途中でいなくなったんじゃないかな?

大塚 そうだっけ?

今石 カッティングしてる最中に「V編行かなきゃいけないんで、任せました!」って、途中で抜けたような(笑)。

大塚 ああ、そんな事もあった気がするな。

今石 そしてラッシュチェックもしていない。V編で繋いだ時に初めて観て「おおー」とか言ってました。いやあ、こんな重要な回を全て任せられるスタッフがいるというのは、凄く幸せな事ですよ。

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●関連リンク
『天元突破グレンラガン』ポータルサイト
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