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第22話 それが僕の最後の義務だ

第22話 それが僕の最後の義務だ

●大気圏外でムガンの大編隊に待ち伏せされ、絶体絶命のピンチに陥ったアークグレン。そこに駆けつけたのはシモン率いる大グレン団だった! 宿命合体を果たしたシモンとヴィラルの声が、広大な宇宙にこだまする。「俺を誰だと思ってやがる!!」 見事復活を遂げた大グレン団が、宇宙を舞台に壮絶なバトルを繰り広げる『グレンラガン』第3部最終章。息もつかせぬ大迫力のメカアクションと新展開の乱れ打ちに、圧倒されっぱなしのエピソードだ。制作協力をGONZOが担当し、作画監督をレイアウト・キャラ・メカの3人体制で固め、シリーズ最終回かと見紛うようなハイクオリティな映像を実現させた。

脚本/中島かずき|絵コンテ/大塚健|演出/池畠ヒロ史|LO作監/林明美|キャラ作画監督/貞方希久子|メカ作画監督/雨宮哲|原画/新井淳、牟田口裕基、三輪和宏、泉保良輔、砂川正和、小田裕康、佐藤利幸、山岸たかお、夏目真悟、小川完、田村勝之、西澤真也、久嶋浩徳、嶋田俊彦、平牧大輔、小美野雅彦、渡辺純子、土屋圭、村松尚雄、渡部ゆかり、新田知子、青木美穂、森幸子、寺田完、加藤真人、清水健一、KIM JYUN-CHUL、大塚健、雨宮哲、貞方希久子|制作協力/GONZO

取材日/2007年11月9日、2007年12月11日、2008年1月16日、2008年2月20日 | 取材場所/GAINAX | 取材/小黒祐一郎、岡本敦史 | 構成/岡本敦史
初出掲載/2008年2月29日

── いよいよ第3部のクライマックスです。

今石 そうですね。『グレンラガン』3度目の最終回。

── 監督の中で22話のポイントはどこだったんですか?

今石 まあ、ずっとメカの描写ができなかったので、そのエスカレート具合ですよね。

大塚 Aパート?

今石 うん。巨大な宇宙船だと思っていたアークグレンがいきなり、しかもアッサリ変形して、それまで延々と対処に困っていたムガンをやっつけちゃう。で、地球に落ちてくる月を元に戻そうとしたら、実はそれもメカで、また味方にして……。

大塚 普通、Aパートの内容だけで終わるよね(笑)。アイキャッチが出た時にビックリすると思うよ、「まだ半分あんの!?」って。

今石 この頃は、各話に必ず3本分ぐらい話が入ってますから。

── 展開もはてしなく濃密ですけど、画の見応えも相当なものですよね。

大塚 でも、22話は進行が凄く早かったんだよね。ダビングはオールカラーだったし。

今石 ほとんど色がついてましたね。背景はないところもあったけど、セルはもう終わってました。

── 進行がよかったのは、どなたの功績なんですか。

今石 GONZOの制作さんと、社内の作監の手が早かったんですよね。

── この回の制作担当は、しんたくきよしさんですか。その方の進行ぶりが優秀だった?

今石 そうです。原画マンも相当集めてくれたし、その人自体がものすごい作画マニアだから。あれですよ、『ハヤテ(のごとく!)』の39話をやった人ですよ。

── ああ、あのダメな回(笑)。まさにあれこそが作画アニメでしたよね。「久々にダメなアニメを観たぞ!」っていう。

今石 あれはホントにひどい!(感嘆) いやー、僕も若い頃はいろいろやったけど、こんなひどい事はしてないよと思いました。(ほめてます)

大塚 ハハハ(笑)。

── しかも確信犯でやっている。崩すところは崩すけど、女装ハヤテとかは、ちゃんと可愛く描いているあたりがイマドキですけどね。

今石 あれを作ったスタッフが『グレン』22話にかなり入っています。

── で、22話はそのGONZOチームのおかげで、かなり進行もよく、クオリティも高く。

今石 そうですね。コンテも相当早い段階で発注してあって、わりとスケジュールどおりにいきました。

── コンテを大塚健さんに頼んだのは、やはりメカとキャラ両方のカッコよさを期待して?

今石 ええ。とにかくアクションが弾けてほしい回ではあったんですけど、かと言って15話みたいに何もかも玉砕みたいな感じでは困る。まだ残り5、6本ある事も考えつつ、最終回っぽい派手なアクションにしたかった。だからシナリオの段階でかなり抑えた記憶があります。アクションのシークエンスも、もっと色々あったんだけど。

── 大塚さんはコンテだけの参加だったんですか?

今石 いや、原画もやってますよ。いちばん最後、Bパートの終わりで、ニアのいるところにドリルをブスッと刺すところ。

真鍋(広報) 「作画の鬼ッ!R」にも使わせていただきました。

今石 ああいう決めのカットは、ぜひ大塚健さんに振らねば! と。

── この回の原画マンは、普段とは全く違う顔ぶれなんですよね。

今石 そうですね。アークグレンの変形シーンは、夏目(真悟)君と、小川(完)さんと、牟田口(裕基)さんと、小田(裕康)さんかな。4人ぐらいで描いてるから、もうバランバランで、凄いカオスなんですよね(笑)。あと、新井淳さんの仕事には笑いましたけどね。『マシンロボ』の頃限定の大平(晋也)作画をしてくるという。

── で、社内の作監はレイアウト・キャラ・メカという布陣で固めて。

今石 ええ、かなり強力にしてます。

大塚 林(明美)さんも結構、直してきたよね。(レイアウトの)バランスだけ見てくれるのかな、と思ったら、ちゃんと作監を入れてた。コクピットとか。そのおかげで早く終わったというのもあるのかな。貞方(希久子)とかは相当助かったはず。

今石 うんうん。

大塚 あとは上っち(上村秦。撮影助手)が結構、大変な思いをしてたね。(月メカ内部の)ドリルを差し込む部屋の壁には、渦巻き模様を貼り込んであるんですけど、その作業を上村君という人がやってるんですよ。相当な数のカットで。

── Bパートの大部分は、あの空間が舞台ですもんね。

大塚 そうですね。BG描きも一部あるんですけど、部屋の形が分かるようなカットは全部そうです。それと、第3・4部のマル爆発の貼り込みも、彼がやってます。

今石 特に22話のマル爆発は、尋常な量じゃないですからね。

大塚 社内にはその上村君と小宮(智彦)君という、3Dチームとのやりとりを手伝ってくれる2人がいて、彼らのおかげでだいぶ助かりました。やっぱり3Dって、普通の作画の進行だと間に合わないんですよ。ちょっと先手を打って仕込まなくてはいけないんだけど、そのあたりは2人がいてくれたおかげで、だいぶ楽でした。

── 3DCGIはサンジゲンさんですね。22話だと、巨大ムガンが変形展開するところとか、見応えがありました。

今石 うん。ああいう表現こそ3Dならではかな、と。

── でも、ちょっと「トロン」っぽくもあり。

今石 そうですね。「困った時は『トロン』っぽくしてくれ」とか言ってた気がする。

大塚 第3部は3Dのおかげで全体的に助けられたと思います。しかも、凄くやる気があったからね、サンジゲンさんに。

今石 いやー、サンジゲンさんのやる気は異常でしたねえ(笑)。第3部で早めに3Dムガンを退場させちゃったのが、本当に申し訳なかった。

大塚 3Dのシーンで、先にサンジゲンさんの方でレイアウトを上げてもらうカットもあったんですけど、グレンラガンとかグラパールは本編では作画だから描かなくていいのに、(レイアウトでは)ちゃんとモデリングしてあって、わざわざ置いてあるんですよ(笑)。

今石 ガイドをくれって言ってるわけでもないのに、3Dでちゃんと組んである。「爆発は作画ですよ」って言ってるのに、3Dで作ってきたりとかするし。ニアとかもモデリングしてましたよね。パンツまで見えてて(笑)。

大塚 ハハハ。

今石 「とりあえずテストで上げてみてください」ってオーダーした映像とかでも、自由にコンテをきって、ないシチュエーションをわざわざ作ってきてくれたりする。

大塚 グレンラガンが走ってたりとかね(笑)。

今石 「面白いんですけど、本編にこの画ないんです、ゴメンナサイ」みたいなのが結構多かった。申し訳なかったですね。

大塚 あと、デフォルメの注文も結構してました。作画だと自然にデフォルメがあるんですけど、3Dは逆に形が正確に出ちゃうから、変則的にパーツを伸ばしてもらったりとか。カメラワークにしても、途中からレンズサイズを変えるとか、いろいろ変な事を試してもらった。

今石 「最初の3枚だけ広角レンズにして、途中から望遠になって、最後のキメはまた広角になってほしいんですけど」みたいな(笑)。

大塚 いちいち描くのも大変だけど、「描いたらできるのに……」みたいな事が、逆に3Dではできないところもあって。やっぱり、作画の気持ちよさを出すのは難しいなあ、と。

今石 そうですねえ。「手と足だけ、広角レンズで」とか。

大塚 ハハハ。かなり無茶を言ってたよね。普通は怒ると思うけど(笑)。

今石 でも、結構やってくれましたからね。やっぱりアニメの事を分かってるんですよね、サンジゲンさんは。むしろ、あんまり注文しなかったりすると、つまらなさそうなんです。「もっとなんか言わないの?」みたいな空気があって(笑)。

真鍋 ウチの撮影部に雰囲気が似てる感じがしますよ。自分達で1回やった事は、どんどん継ぎ足していく雰囲気というか。

今石 ああー、そうかもね(笑)。

真鍋 DVD8巻には、さっき言っていた3Dテスト映像が収録されているので、ぜひ観てもらえると。

大塚 ああ、入るんだ。

真鍋 入ります。3Dのグレンラガンが走るシーンとか、3Dのニアも見れますよ。

── パンツも見えてるんですか?

真鍋 パンツは見えないです、すいません(笑)。

── 失礼しました。他に22話で印象深い事はありますか?

今石 そういえば、アークグレンのモニターデザインが結構大変だったな。第1・2部は原始的な世界だから、モニター上に文字が出なくて絵とか記号で表記してるんだけど、第3部からは過剰な文字情報データがいっぱい出てくる。もう全く読み取れないぐらいにグチャグチャ出てくるようにしてほしい、と言っていて、それでひたすら物量が増えてしまって大変だった。その上「アークグレンラガン用の螺旋モニターを作ってくれ」という注文もしていて、これがまた大変で……1回ぐらいしか出てないけど(笑)。22話はアークグレンがマトモに活躍する、唯一の回になってしまいましたね。

── アークグレン内部の操縦席に、グレンラガンが腕を組んでガチョーンと入るカットがいいですよね(笑)。笑ってしまいつつも、気持ち的にはかなり盛り上がるシーンでした。

今石 あれはやりたかったですね。合体したとか巨大になったという事を、ああいう描写で無理矢理に納得させてしまおう、そういう事にしちゃおうと。ホントはあの合体シーンで、コクピットの上からズボッと落ちてくる艦橋を、グレンラガンにもスッと避けさせたかったんですけどね。カミナと同じように。でも、そんなに艦橋が長くなかった(笑)。

── そういえばアークグレンと「ゲッターロボ・サーガ」との関連性とか、そのあたりは中島さんと打ち合わせで話していたんですか?

今石 いや、「ゲッター」ネタは全部、中島さんにお任せだったので(笑)。

── 監督の方から「こうしましょう」という話ではないんですね。シナリオが自然とゲッター世界になっていく。

今石 ええ、そうなっていく。その頃になると、僕はもうそれが「ゲッター」ネタかどうかはどうでもよくて(笑)。面白ければOKだし、僕が面白くないと思ったら「それは違う」という話はしてたし。中島さんのさじ加減でOKなら、それでいいと思ってました。

── では、監督から第3部の総括を。

今石 自分としては、なかなか普段やらないところに手を出せたのが楽しかったですね。現場的には、オンエアが始まってからの作業という印象なので、なんというか比較的客観性に欠けている感があって(苦笑)。それもまあ、よくもあり、悪くもあり……という感じですね。

── もっと省力化して作るはずだったのに、そうならなかったという事ですか。

今石 いや、逆に現場を見ていたら、「もっとやってよかったかもな」という気はするんですよ。この頃にはもう人がいなくなっているという想定だったんですけど、結構いてくれたから。でもまあ、あんまり無茶をして当てが外れた時の事を考えると……とも思いますけど。

── 21話とか22話を観ると、余裕があるようにすら見えますからね。

今石 そこはやっぱり、想像していた状況とは違っていましたね。22話なんて、制作の人に「もうないんですか?」って言われましたから。「もっと背動とかないんですかね?」とか(笑)。いやいや、わざわざ減らしたんだから、って。

大塚 (笑)

今石 でも、あったらあったで、多分やれたんだろうなあ。

大塚 このあたりで、ちょっとプレッシャーもかかってきたよね。オンエアが始まって、お客さんが本気だという事が分かってきてたから、あんまり悪戯というか、悪い事しちゃいけないんだな、みたいな感じはあった。

今石 そうですね。ロージェノム・ヘッドを小突くと容器の中でゴワーンと震えるとか、そういうギャグをやってる場合じゃないんだなあ、と(笑)。

真鍋 中島さんはそのネタを凄くやりたかったみたいですね。鳥かごみたいな容れ物に入ったロージェノム・ヘッドが質問に答えないと、ロシウがそれをぶんぶん振って、ロージェノムが「やめてくれよォ〜」って言うという。

今石 そうそう。子どもみたいに「やめてくれェ〜、やめてくれよォ〜」とか言った後、渋い声で「それでだな」って続く感じなんだろうなぁ(笑)。それはもう劇団☆新感線のファンなら「よし!」って喜ぶところなんだけど、多分、大半のお客さんはそうじゃないだろうと思って、我慢しました。

── さすが、今回は空気を読んでますねえ。

今石 いやあ、読みまくりですよ。……読み違えてなきゃいいんですけどね(笑)。

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