編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年7月24日(日)
オールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.137 渡辺歩&小西賢一の劇場アニメーション」のトークを終えた後、『のび太の恐竜2006』の上映を少し観る。自宅での休憩を挟んで、再び新文芸坐に。今度はワイフも一緒だ。午前3時40分からの『海獣の子供』を観る。関係者席ではなく、チケットを購入して中央の席で鑑賞した。新文芸坐の新上映システムでの『海獣の子供』の映像と音響を確認したかったのだ。リニューアル前の上映をしっかりと覚えているわけではないけれど、特に音響の迫力が増していたのではないか。オールナイト終了後、ワイフと朝の散歩に。
Eテレでやっていた「アニメ シュームの大冒険」を偶々観る。色使いと画面構成がよかった。
2022年7月25日(月)
アニメスタイルのアーカイブシリーズで出したい新刊の企画を思いついた。有名なタイトルだけど、過去にイラストや設定画がまとめられたことはないはず。というか、メインキャラの線画設定もほとんど世に出てはいないのではないか(確認したら、キャラクターの色見本はDVD BOXの解説書に載っていた)。自分が雑誌の記事や映像ソフトの解説書を作った時も、線画設定は各話のゲストは小道具ばかり載せていたような気がする。この企画が実現したとして、500部くらいは売れるはず。数年かければ800部くらいは出るか。アーカイブシリーズのフォーマットだと、その部数では企画が成立しない。打ち合わせで「売れないとは思うけど、やりたい本がある」と言って話したけれど、編集部の皆の反応はよくなかった。
2022年7月26日(火)
朝の散歩以外はデスクワーク。PDFとテキストとマンガ原稿の画像がネット経由で飛び交う。夏の書籍のクライマックスが今日かもしれない。
録画がたまっていた「Gメン’75」を6話分を作業をしながら観た(28~33話)。その間、「Gメン’75」の世界にいた気がする。ひとつのエピソードで同じ歌謡曲を何度も使うのがよかった。
2022年7月27日(水)
ここ数日、「この人に話を聞きたい」取材の予習で過去のマッドハウス作品をセレクトして視聴している。この日に観たのは『妖獣都市』『YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!』『YAWARA! a fashionable judo girl!(1話)』『はだしのゲン』『はだしのゲン2』。
あまり意識していなかったけど『はだしのゲン』(1983年)は『夏への扉』(1981年)、『浮浪雲』(1982年)に続く、真崎守監督(演出)作品ということになる。アニメーションの作りとしては一貫性があるかも。何度も話していることだけど、『はだしのゲン2』の井上俊之パートは笑っちゃうくらいに巧い。ほぼ『AKIRA』だ。
『妖獣都市』のBlu-rayを4K大型モニター視聴(ディスクは4Kではない)。映像は鮮明ではあるけれど、バキバキになっているわけではなく、少し柔らかさがある。黒と青(そして、赤)のコントラスが効いていてそれが心地よい。これはこれで理想のリマスターなのではないかと。
U-NEXTで『YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!』を視聴。レギュラーキャラではなく、ゲストの子供達の話なので、観ていてテンションが上がらないのは公開当時の印象と変わらず。花園薫が子供達と話す時に、自分のことを「おじさん」と言うのだが、それでいいのか、大学生。ライバルの柔道チームの少年達のキャストはメインの少年が浪川大輔さんで、他の4人が林原めぐみさん、矢島晶子さん、高乃麗さん、頓宮恭子さんと、今となっては異様に豪華。序盤の作画がキャラクターだけでなく、動きまで兼森義則さんの作画に見えて、気合いを入れて直しているのかと思ったら、作画監督は君塚勝教さん。兼森さんは原画の筆頭でクレジットされていた。かなりの量の原画を描いているのでは?
続けて『YAWARA! a fashionable judo girl!』TVシリーズ1話。アバン(Aパートのサブタイトルが出るまで)の演出がよい。今回の取材とはあまり関係ないけど、これから確かめたいテーマができた。
2022年7月28日(木)
今度は『花田少年史』を観る。1話はくまいもとこ、田中真弓、竹内順子、桑島法子、松本梨香、亀井芳子と少年役声優大集合。父親役の矢尾一樹もいいキャステイングだし、祖父役の野沢那智は放送当時も贅沢だと思った(以上、敬称略)。1話は作画もいい。マッドウス史の中でもなにかが極まった作品。
『異世界おじさん』4話がよかった。女子キャラの描写に本気を感じた。絵コンテ・演出は中山奈緒美さん、作画監督は坂井久太さん。カット単位で言うと、酔ったおじさんに連れて行かれる場面での、ツンデレさんが「手を離しなさ……」と言うカットが驚くくらいによかった。
仕事の合間にドラマ「家庭教師のトラコ」1話、2話も観た。橋本愛さんに色んなタイプの役をやらせるドラマかな。「メリーポピンズみたいな橋本愛」「熱血教師の橋本愛」「色っぽい女教師の橋本愛」の中だと、意外と熱血教師がハマっていた。トラコの素の部分はあんまり描かれてないんだけど、これからなんだろうなあ。
YouTubeにアップされている『湘南爆走族』の映像がかなり鮮明で驚く。
2022年7月29日(金)
取材の予習で『METROPOLIS』を観る。『METROPOLIS』はDVD BOXの仕事をしたので本編は何度も観ている。今回はBlu-rayで大型4Kモニター(ソフトは4Kではない)で視聴。公開当時は「クラシカルな物語と世界観」を「最先端の技術と空前の密度感の映像」で劇場アニメーションとして制作したものという印象だったのだけれど、今の目だと「最先端の技術」や「空前の密度感のある映像」を含めてレトロなアニメーションに見える。つまり、「レトロだけど、作り込まれていて密度感のあるアニメーション」に見える。おそらく、そういう見え方が正解なのだと思う。『METROPOLIS』の後は『カムイの剣』を少し観た。
12時過ぎに事務所を出て、新宿で「この人に話を聞きたい」取材。今回の取材させていただいたのは丸山正雄さんだ。今までにも何度か取材のオファーをしたのだが、断られ続けてきた。遂に実現した取材だ。興味深い話をいくつかうかがうことができたが、可能なら、これを丸山さんインタビューの第一弾としたい。
2022年7月30日(土)
新文芸坐で「100発100中」(1965/92分/35mm)を観る。プログラム「東宝の看板スター 永遠の二枚目、宝田明さんを偲んで」の1本。宝田明さんが主人公のアクションもので、宝田明さんが演じる謎の男、浜美枝さんの「爆弾娘」、有島一郎さんの刑事が主人公側のトリオ。敵側の殺し屋は平田昭彦さん。初見だと思って観ていたけど、終盤の逆転劇とラストの主人公と刑事の別れには激しく既視感があった。
物語については「ええっ、どうしてそうなるの?」と思う箇所があったし、設定を活かしきっているとも思わないが、軽いノリの作品だし、そういったところで文句を言うのも何か違う気がする。「爆弾娘」のユミが「パラシュートで地上に降りた時に服が脱げて裸になっちゃった」という理由で、クライマックスのアクションシーンで水着姿になるのには感心。いや、本当に感心した。ラストは主人公とユミの海中ラブシーンになるのだが、主人公がカメラマン(この映画を撮っているカメラマン)に自分達をフレーム外にするように指示して、スタッフの詫びの言葉を画面に表示して終わるというメタオチ。
ちなみに「爆弾娘」とは、ユミが爆弾を自在に使うことからついたニックネームで、劇中で平田昭彦さんが演じている殺し屋が「アカツキの爆弾娘(アカツキは組織の名前で、表記は「暁」と思われる)」とユミを呼ぶ。ユミは笛を吹くことで仕掛けた爆弾を爆発させることができるのだけれど、その効果音がおそらくは特撮作品でお馴染みの音源で、そこだけSFドラマ風味になっていた。