COLUMN

第773回 歳とっても描きたい!

 最近、「歳をとるとはこういうことか」と考えることが多くなりました。でも、若い頃に考えていた“将来老けるイメージ”より、本当に老けた現状の方が概ねマシな感じです。
物理的に集中力は散漫になり、モノ覚えも悪くなるし、体力は落ちる一方。でも、仕事は楽しくできていますから。徐々に老眼も入ってきてはいるけど、デジタル作画は拡大して描けるので、それほど支障ありません。40歳になったあたりから、イベント絡み以外で酒を飲むこともなくなって、自分で調理して野菜の多めの食事も心掛けてます。健康に気を遣って、後30年は何がしか描けたらいいな~と。あ、後は運動もしなきゃ。
 と言う訳で、若い頃浅はかに考えがちな「太く短く楽しく生きることこそ男らしい」なんて、今は微塵も思っていません。そんなんより、できるだけ長くしぶとく生きて、長くしぶとく作り続けたい! なんでもいいから。
 現状の自分、

人生半分以上消化した時点で、今までにヒット作と呼べるものなし! 貯金もなし!
大金持ちになることに興味なし(金は常時食うのに困らないくらいあれば十分)!
仕事は次々くる! コンテや原画はまだまだ描ける! デジタル・技術革新は大歓迎!
現代に合った作り方改革中! そして、創作意欲まだまだ旺盛! が、慢性的運動不足!

て、とこ。今の自分を正確に見据えることが、更なる成長への第一歩ってことで、これだけ揃えば仕事をする——描くしかない。上記の条件で許す限りのモノ作りをしていきたいです。勿論、若手の育成をしつつ、です。
 ま、新人採用&育成も初めて早10年。やっぱり当然の話ですが10年経つと、初期に入ってきた人と今とでは既にだいぶ違います。まず、デジタル競争。社内スタッフ全員PCやツールを共通規格で通そうとしても、「俺だけはもっと優位な液タブとツールで!」とどうしても他者にマウントを取りたいのか、勝手に規格外れな道具を持ち込むなどのスタンドプレーで、データ書き出しにひと手間掛かって制作上かえって迷惑だったりしたものです。ところがここ数年内入社組は、皆協調性があって現場に優しい人たちばかりになりました。
 その分、「将来、監督になって自分の作品を作りたい!」とか派手な夢を語ってくる人が減りました。先週面接した2人もそれぞれ「作画までしか考えていません」でした。
 やはり、“たかが10年、されど10年”。アニメ『あしたのジョー』の荒々しさが、『あしたのジョー2』の洗練された美しい画面になるまでがたった10年なのです。

色々なモノが変わり進化するのに10年は十分過ぎる時間!

だから何処かの監督さんのように、凡庸な才能のくせになぜか余裕かまして、平気で何年ものブランクを空けることができないのです、小心で凡庸な俺には。だって現状、まだ俺ら世代の監督相手の仕事(企画)ってそこそこありますよ。それが証拠に、上記の様な不安条件てんこ盛りの板垣にですら、常に2~3本は話があります。少なくとも出版社・メーカー問わずプロデューサーはそれぞれ案件を数件位ずつ持っているはずで、声が掛からない訳がないです。もし、仕事がないとすれば、その監督は身の程をわきまえず「この僕にふさわしくない企画だ~」とかお高くとまって断ってる(た)としか思えません。
 おっと、時間切れ。また仕事に戻ります!