COLUMN

第770回 『猿』と『逮捕』

『Extreme Hearts』第9話、放映されたようです!
 自社作品(制作元請け)が作画INするまでの間(脚本開発中)、社内の作画スタッフを手空きにしないよう、他社のグロスを手伝ったりするのが通例。ウチくらいの社員20〜30人規模の会社なら当たり前のことで、基本アニメーターを固定給で雇うということは、手空きを作ったら会社は終わりです。自分の監督作品を準備する間も、現場(スタジオ)の維持は必須。社内のアニメーター育成も兼ねて、自分がグロスの内容チェックもする訳。己の監督作品準備中だとて、です。  まぁ早い話、この間の『転生賢者の異世界ライフ』と同時にやってた仕事です。あちらに関しての自分の仕事は、演出チェック上がりの監修と原画のアドバイスがメイン。ちょっと現場で困ったレイアウトやエフェクト作画とかがあった時、参考を描いて見せたりした程度のノンクレジット仕事。  で、こちら『ExH』はレイアウト・原画の演出チェックをした後、キャラクター作画監督は社内の吉田智裕君に任せて、アクション&エフェクト作画は板垣が直に修正しました。例えば
河原を全力疾走ですっ飛んで行き、卵12個パックと米15kgを持って帰ってくる陽和や、バレーボールの“ジャンプ~アタック!”など
のアクション&エフェクト作画をやりました。ああいった土煙とかは基本“下描きなしの一発描き”! 自分にとってはノンストレスの気楽な作業です。因みに控室や客席の他チームの選手たちや重要なアクションなどは、社内の木村博美さん(『COP CRAFT』のキャラデ)に助けてもらってます。こちらも現在制作中シリーズのキャラクターデザイン作業の合間を縫ってお願いした仕事でした。  ところで、今回の話自体がきたのは確か去年の7月? 『蜘蛛ですが、なにか?』の後で、実は自分らの会社に話がきた時点で9話は半分は進んでいました。よって、当然コンテにも参加していなくて当たり前。ジャンル的にスポーツものは好きなので、もうちょっと早く話を頂けたなら、当然コンテからやりたかったです。  それと、この『ExH』に「おおっ!」と自分的に食いついた要因は
西村純二監督作品!
てことでした!  そう! 俺が少年時代夢中になって観た藤子不二雄アニメ、あの『プロゴルファー猿』(1985〜1987)の監督(当時のクレジットはチーフディレクター)です。あと、自分が業界に入ってからですが、『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』(1999)も好きです(劇場で観ました)。更に作品での自分とのニアミスは『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(2012)、西村ジュンジ名義で#08の脚本で参加されていました。自分は#05のコンテ・演出・作監(と#10の原画)で参加していましたが、その時は現場でも打ち上げパーティーでもお会いできませんでした。  で、今回『ExH』の打ち合わせで初対面と言う訳。
『プロゴルファー猿』大好きです!
劇場『逮捕』もカッコ良かったです!
と、打ち合わせの休憩時間に雑談。西村監督は「(時計を見て)じゃ、1時間経ったから5分休憩」と一定時間ごとに休憩を挟むサイクルで仕事されているらしく(そう見えました)、休憩時間は気さくに話して下さって嬉しかったです。以下がその雑談内容。
板垣 「『プロゴルファー猿』に小中学生の頃夢中で、劇場版『スーパーGOLFワールドへの挑戦‼』(1996)も傑作だと思いました!」
西村監督 「ありがとうございます。あれ僕の初監督ですよ。あれ今川(泰宏)が演出で入ってたよね」
板垣 「あ、今川監督とも仕事したこと(『鉄人28号』[2004])あります。因みに、藤子不二雄Ⓐ先生はどの程度口出し(チェック)」されたんですか?」
西村監督 「ほとんど僕らの方で作りました。凄く気さくで新宿で焼肉ご馳走になったなぁ」
板垣 「劇場『逮捕』での見せ場の“ストップモーション”、良かったです!」
西村監督 「(笑)僕は基本、“止め”が好きなんですよ」
板垣 「出﨑ハーモニーじゃなく、“モーションブラー”の実写的な止めが綺麗に決まってました」
西村監督 「こんなに過去作の事訊かれるとは思わなかった(笑)」

 今回も短くてすみません。仕事に戻ります(汗)。