COLUMN

第683回 なぜ出崎アニメ?

もう俺にとって、アニメは出崎アニメだけでいいっ!

 まだ今作ってる作品のタイトルが発表できないので、今回も出崎統監督の話。なぜなら板垣はハッキリ言って「アニメとは出崎監督作品のこと」だと思っているからです!

「板垣くんはなんでそんなに”出崎”なの? 君とはタイプが全然違うのに」

と以前、MAPPAの丸山正雄(現在・代表取締役会長)より訊かれたことがあります。誰よりも出崎監督を知り尽くした丸山プロデューサーから「出崎」という名前が出ただけでなく、「君とはタイプが〜」と比較されたようなお言葉をいただけただけで畏れ多くて、その時なんと返答したのか憶えてはいないのですが、おそらく「だって出崎さん、最高じゃないですか!」的な返しをしたと思います。あ、その際の以下のおしゃべりは憶えてます。

板垣「出崎さんて、企画とかジャンルとか選ばず、どんな原作でも自分の作品にしちゃうじゃないですか。そこが本当に凄いんですよ!」
丸山「そんなことない! 統ちゃんは作品選んでる」

 その話は俺にとってかなり意外な話で、亡くなられるまで引っ切りなしに監督作が続いていた出崎さんが、企画(仕事)を選んでいた——選ばずにすべてこなしていたら、いったい何本の出崎アニメが世に出ていたことか?
 また、今まで何人かのプロデューサーから「板垣さんはオリジナルはやらないの?」と訊かれたんですが、いつも「そんなん誰が期待してくれて、どこがお金出すんですか? 俺は基本、身の程をわきまえていますから」と答えていたのです。でも、本音を言うとあまり興味がないんです、オリジナルというものに。だって

どの作品も原作を上回る映像的な魅力と、さらに掘り下げられた演出(コンテ)によって、各キャラクターがまるで実在する人物であるかのように描かれた躍動感溢れる出崎アニメ! いや出崎フィルム!

を知ってしまうと「監督のオリジナル作品であることが最優先事項だ」なんて、マンガ家に挫折した俺にとっては、とっくの昔に諦めてることですから。「運がよければ1本オリジナルできたらな〜」くらい。1本のオリジナルより10本の原作ものがやりたいと思ってます。出崎監督ご自身がオリジナル企画についてどうお考えだったのかは存じ上げませんが、少なくとも板垣が築き上げたいフィルモグラフィーは、数年おきに劇場オリジナル作って30年で10本より、毎年何かしら監督して30年で30本以上できたら悔いなく死んでいけるかと。考えは人それぞれだと思います。