COLUMN

第682回 出崎・コンテ・旅

 現在制作中の新作のキービジュアル(のゲラ)を確認しました。が、まだ発表してはいけないらしいので、今回も俺の趣味、出崎統監督のコンテの話(また……)。前回購入した『家なき子』。収録話数11話分すべて観ました。出崎監督は常に「旅」に拘った作家であり、時にはコンテという仕事自体を「旅」に喩えていらっしゃいました。『家なき子』はまさに旅。主人公・レミが旅芸人・ビタリスに買われて旅に出てからずっと旅・旅・旅! 監督ご自身がどこかのインタビューで「いちばん好きな自作は?」の問いに「『家なき子』です」と答えてらっしゃったのも頷けます。何せ

『家なき子』=「旅」=コンテ!

ですから。『家なき子』を改めて1話から観直すと、出崎監督の演出は「コントラスト」の一言に尽きます。他のどの監督よりも、すべてがコントラスト。「静(止め)」と「動」のカット割り、「光(入射光)」と「影(パラ)」の画面構成、主人公とライバル、男と女。そして『家なき子』は「子ども」と「大人」。子どもからの目線で大人の「優しさ」と「怖さ」(あ、これもコントラストね)を出崎コンテで丁寧に丁寧に描いています。3回PANやハーモニーより

本来の演出の本領——キャラクターの心情をカット割りで表現することができる出崎監督を全板垣が尊敬します、いつまでも!

 余談。『家なき子』と同様の旅もチーフの出崎作品に『雪の女王』(2005年)がありますが、これなどはリアルタイムで「全話コンテなるか出崎監督!?」と、本来とは違う楽しみで見入ってたファンが多かったように見えました。特に業界内出崎ファンにとって、そんなメタ要素も作品の醍醐味。『スペースコブラ』(1982年)もあのムードでもっと長く続き、且つ自身のコンテ話数がもっと多ければ、出崎監督・異色旅アニメシリーズになったと思うのですが。ただのファンによる心の声でした。