現在作ってる作品が「幸せとは何か?」を問いかけるところから始まるので、唐突に思い立ち、今回タイトルにブチ込んでみました。昔、自分はある年上の友人から「幸せとは『やりたいこと』と『やらなくてはいけないこと』が一致している状態だ!」と言われたことがあります。当時学生だった俺は「なるほどな〜」とその友人の哲学に傾倒したもんだし、正直今でもこれは一理あると思ってるし、その範疇で言うなら、
自分は今、十分幸せです!
やらなきゃいけない仕事が山のように机に積み上がっていて、そのすべてが「自分のやりたい仕事」なんですから。何々賞をとったり、何万本売ったなどの栄冠のない監督でも作品を作り続けさせてもらえてる——これ以上の幸せを望む人間がいるなら、その人は余程のお坊ちゃんだと思います。
俺も20代の頃は人並みに野心に満ちてたと思うし、「自分には才能があるはず!」と信じてました。いや、正確に言うとそう思いたかったんでしょう。20代の終わりに監督をやらせてもらったとこまでは、そこそこまだ才能というものを信じてました。ところが30代に入って「おや? 雲行きが怪しいぞ?」となり、40前で
あ、俺の才能なんて大したことなかったんだ!
と分かった時、何かいろんなことが楽になった気がします。もう、ホンっとうに男ってしょうがないもんで
自分という人間が生まれてきたのは世界の必然。
自分は何かをするべくして生まれてきたはずだ!
と皆なんの根拠もない使命感を持って生まれてきてる、ような気がします。実はそれ自体は悪いことではなく、それを信じて全うし、それなりの評価をもらえた人たちだけが所謂「天才」なのでしょう。でも大半の人間は、その人生の途中で鼻をへし折られ、己の分をわきまえる。そして「上手に分をわきまえた人」は必ず幸せになれる、と思うんです! なぜなら、週休半日で働いて働いて働き尽くし、定年を迎えて退職し、実家で立派にTVの番人を勤め上げてる父親は、俺から見ると幸せそうに見えるからです。まぁでも、才能がなくても、それを自ら認める勇気もなく、トンガってツッパって喧嘩を売りまくって生きる人生ってのも、なかなかオツなものかも知れません(笑)。だって
人生は大したもんではなくても、素晴らしいもんですから!!
だから板垣は楽しいアニメ、バカなアニメ、そしてたまに感動するアニメを、作って作って作り尽くして生を全うしたい、それが幸せです。「そんな意味のないアニメ作りたくない」って格調高き高尚アニメを作りたい監督様を否定する気はまったくありませんが、アニメ業界人全員が、同じ理想を掲げて作品を作らなきゃならない理由はないハズですよね。