今 敏さんが亡くなって6年経つ。いまだに僕の中では、今さんについて整理がついていない。
彼は僕よりも一つ年上だったが、その落ち着いた物腰はずっと年上の印象だった。亡くなった2年後に、自分が今さんよりも年上になってしまった事に気づき、それが納得できなかったし、切なくもあった。その後も「ああ、また今さんよりも年上になってしまった」と何度か思った。
今さんは次々に新しいタイプの作品に挑戦し、僕たちを驚かせてくれた。サイコホラーの『PERFECT BLUE』の次に、美少女コスプレ七変化もの(と彼自身が言っていた)の『千年女優』を作ったのも、その次に人情もののコメディ『東京ゴッドファーザーズ』を手がけたのも意外だった。時々、今さんが映画を作り続けていたとしたら、どんな作品を残したのだろうかと考える。
『千年女優』が完成した頃に、彼は「アニメ映画を10本作りたい」と言っていた。やりたい事はたくさんあるし、これからもアイデアは出てくるだろう。だから、時間をかけて大作をやるのではなく、アイデア勝負で数を作りたい。彼はそう話してくれた。作り続けたなら、きっとよい意味で僕らを裏切るようなものを見せてくれたに違いない。
「惜しい人をなくした」という言い方は好きではない。どんな人だって、亡くなったら悲しいだろうと思うからだ。だけど、今さんについては、ついその言葉を口にしてしまいそうになる。
悔やんでも仕方がない。
僕らにできる事は、今さんの作品を忘れずにいる事、そして、まだそれを知らない人に魅力を伝えていく事だけなのだ。
●サムシング吉松のコラムinコラム