第21話 あなたは生き残るべき人だ
●コレハナ島の小学校に、新任教師のヨマコ先生がやってきた。彼女はすぐに島の生活に溶けこみ、生徒達からも慕われる存在に。気弱ないじめられっ子のナキム少年も、美人で優しくてかっこいいヨマコ先生に心奪われるが、同級生の女の子マオシャはそれが面白くない……。これまでとはガラリと違う名作劇場ライクな世界観で展開する、ハートウォーミングな一編。それでも後半は派手なアクションあり、大グレン団の再結集あり、ヴィラルの仲間入りありという怒濤の展開を見せる、盛りだくさんの内容だ。キャラ作画監督とサブキャラ設定を担当した柴田由香による、島の子ども達の可愛らしさが魅力的。
脚本/中島かずき|絵コンテ/中村哲治|演出/佐伯昭志|キャラ作画監督・サブキャラ設定/柴田由香|メカ作画監督/阿部慎吾|原画/岡崎洋美、松下郁子、渡辺義弘、小沢まどか、塩塚文史、長谷川ひとみ、西垣庄子、益山亮司、山口智、後藤望、林明美、平川梨絵、赤井俊文、貞方希久子、阿部慎吾、佐伯昭志
取材日/2007年11月9日、2007年12月11日、2008年1月16日、2008年2月20日 | 取材場所/GAINAX | 取材/小黒祐一郎、岡本敦史 | 構成/岡本敦史
初出掲載/2008年2月22日
── 21話は、菊地大輔さんの描いたイメージボードの量がやたらと多い回ですね。
大塚 ハハハ。ボードを描きたい回には、いっぱい描いているので。
今石 そう。描きたいところしか描いてくれない(苦笑)。
── 21話はどういった意図による布陣なんですか?
大塚 ヨマコ先生の話は、最初から柴田(由香)でやりたいとは言っていたけど……。
今石 一度は諦めてたんですよね。でも、いろいろスケジュールがずれてきて、参加できるようになった。演出も最初は違う人がやるはずだったんだけど、とある事情でできなくなってしまったので、土壇場で佐伯(昭志)君に頼みました。
大塚 コンテのフィックスは早かったんだっけ?
今石 いや、コンテの上がったタイミングは他の回と同じだとは思うんですけど、その後の佐伯君の仕事が速かったんですよ。演出だけだから、という事もあったと思うけど。
大塚 作画もかなりよかったし。
今石 そうですね。本来、第3部はスケジュールを回復させる意図で準備していたはずなんですけど、現実的には案の定ズルズルと……みたいな事になってきて(苦笑)。そういう時に、21話は「クオリティを下げずにスケジュールを守る」という事を、社内だからこそコントロールできるやり方で作っていたと思うんです。短期間で、新人原画マンもかなり投入しているはずだし。
大塚 いやあ、21話は安心して観れました。
今石 キャラもよく動いてますよね。子どもとか。
大塚 うん。日アニとか、そっち系の世界で。「ガイナっぽくねえ!」みたいな感じで面白かった(笑)。
今石 20話まではあんな展開にしといて、急に「なんだ?」っていう(笑)。いきなりほのぼのされても、みたいな。
── サブキャラ設定も柴田さんですよね。ナキムとかマオシャは、今石さんの描くマンガ画っぽいですけど、監督の原案があったんですか?
今石 いや、クンパだけかな。ナキムとマオシャのイメージは、それこそボードにほとんど描いてあったと思う。ツインテールの女の子だとか、おかっぱ頭の男の子だとか。それを柴田なりに解釈して、ああなった。
── クンパは監督自らラフを描いたんですか?
今石 いや、確かコンテの時はまだキャラ表がフィックスしていなくて、ボードからコンテを起こしてたんですよ。で、僕がコンテを直した時に、クンパの画を描いてるんです。多分、その画を柴田が拾ったんじゃないだろうか。
── 獣人のデザインも柴田さんが?
今石 獣人は僕です。
── あ、そうなんですか(笑)。
今石 うん。ガメルとダシャー。あれは僕がクリンナップまでやっちゃいました。脇毛とか描いて喜んでました(笑)。どうしようもないですね。ガメルなんか2カットしか出ないのに。
大塚 え、そうだっけ?
今石 うん。最初に登場するところと、あとは黒焦げになってるところだけ(笑)。ダシャーはいっぱい出てるんですけど。
大塚 そのわりにはインパクトが強かったなあ。
── なんにしろ、この回のサブキャラに関しては、錦織さんはタッチしてないんですね。
今石 ええ、ノータッチです。多分、1枚も描いてないですね。錦織こそやりたかった回であろうとは思いますけど(笑)。でも、ヨマコ先生のキャラ表だけは絶対に譲らなかった。
── それも柴田さんが描いていた可能性があるんですか。
今石 いや、メインキャラは基本的に譲ってないです。スケジュール的にヤバかった事もあるけど、それでもメインキャラのバリエーションに関しては、錦織以外の人間が描く事は考えられなかった。僕としても「無理してでも描いてよ」という感じだったし。
── なるほど。
今石 21話はシナリオ的にも、中島さんのテンションが相当上がってきている頃ですね。よくこれだけの分量が1本に入ったな、という。
大塚 普通、島で終わるよね(笑)。
今石 うん。ずっと「もったいないなあ」って言ってましたもんね。島で1本、みたいな感じで終わる方が、まあ美しくはあるんだけど。でも観ながら「おいおい、どこまでやるんだよ」とか思いつつ、最後のヴィラルとシモンのくだりまで行き着くと、なんとなく嬉しくなっちゃう(笑)。シナリオを読んでても「なるほど、ここまで行くのなら……」と思いました。さすが中島さん。
大塚 後半、早いよねえ(笑)。
今石 ええ。シナリオではもうちょっと段取りがあったんですけどね。ロケットの打ち上げとか、宇宙服に着替える場面とかもあったんだけど、そこはバッサリ飛ばしました。
大塚 そう。ああいうところのテンポが、今石君は巧いなあと思うんだよね。ポンポーンっていくところ。普通はそこまで思い切れないよ。
今石 ああ、そうですかね……段取りが苦手なだけなんですけどね(笑)。
大塚 普通だったら、ヴィラルを仲間にするのか? みたいな葛藤を入れたくなるものなんだけどね。みんなすぐに「まあいいや」みたいな感じになる(笑)。
今石 そのあたりは中島さんのよさでもあるんですよ。一瞬「おいおい」とか思うんだけど、さらにその後でおいしいシーンを畳み掛けられちゃうから、「あ、もういいや」ってなっちゃう(笑)。だからその間に、時間があればあるほどマズいんですよ。即座においしいところまで持っていって「おおーっ!」みたいな感じにさせてしまう。
大塚 どさくさに紛れて(笑)。
── 21話はヨーコのアクションも見どころですよね。まるで『フリクリ』5話を思い出させるような。
今石 ああ、またセルフパロディをやってしまいましたね(笑)。
── あれは実際、パロディなんですか?
今石 いや、手癖というかなんというか。でもまあ、ヨマコ先生のバイクを黄色にした時点でね(笑)。ホントに黄色でいいのかな? とか言ってたんだけど、「やっぱり黄色がいいね」って事で。
大塚 いいじゃないですか。
今石 とにかく、人間対ガンメンのバトルは、ここでやっておきたかったんです。銃でガンメンを倒すというアクションは、第1部でもそんなにはできなかったし、ヨーコ単体でガンメンを倒すシーンもなかったから、色々無理をしてでもやりたいと思い続けてたんですよね。
── 久々に獣人ガンメンが登場する回でもありますね。
今石 僕、あのガンメン好きなんですよ。ゴズー改。手と足をすげ替えてカスタムしているという。それもずっとやりたくて、なかなかやる場所がなくて困ってたら、ここでやれたのでよかったです。確か、ツインボークンの元になったガンメンの腕と、9話に出てきたメズーのパーツがついてるんだよな。
大塚 ああいういかがわしさが、いいよね。
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