1989年は元号が昭和から平成へと変わり、その一方でTVアニメの本数が再び増加傾向に転じた年である。
平成最初の新作TVアニメは、小林よしのり原作の『おぼっちゃまくん』。藤子アニメのイメージが強かったシンエイ動画が、やや下品なネタもある子供たちの世界をパワフルに映像化し、新境地を拓いた。
2月9日、手塚治虫が胃癌で60年の生涯を閉じた。遺作の『青いブリンク』は4月にスタート。総監督として、病床でキャラデザインやストーリーにも意欲的に関わり続けたが、ついに放送を見ることは叶わなかった。
この年の秋、1週間に放映される30分アニメの本数は83年のピーク時を上回り、初の40本台に突入した。その背景には、円高による海外合作の急減、OVAの製作飽和状態・廉価化による予算の低下、各出版社を巻き込んだメディアミックス戦略などの影響があった。TVという市場は再び注目され、著名なスタッフの回帰を促す結果となった。永らく合作に関わっていた出崎統は久々にカムバックし、TVスペシャル『ルパン三世 バイ バイ・リバティー・危機一発!』を監督。『ピーターパンの冒険』でも、劇場作品『AKIRA』で注目を集めたなかむらたかしがキャラデザに抜擢された。また、角川劇場作品やOVAで活躍してきたマッドハウスもTVに復帰し、浦沢直樹原作の『YAWARA! a fashionable judo girl!』を制作。強く可憐な柔道少女を描いたその物語は、バブル期の世相を映すとともに、ヒロインが輝き出す90年代アニメの予兆でもあった。
TVアニメの企画は暗中模索のまま、その対象年齢、ジャンル、放映時間帯を拡大していく流れにあった。フジテレビは、再放映が主体だった17時台に『がきデカ』『かりあげクン』など5本の新作をスタート。テレビ東京グループも自局の編成網・メガTONネットワークを充実させて新作を増やし、『天空戦記 シュラト』『アイドル伝説 えり子』などを放映した。TBSの『藤子不二雄Ⓐの 笑ゥせぇるすまん』など、 大人向けバラエティのコーナーアニメもまた、視聴対象の広がりを示すものだった。そんななか、6月にはNHK衛星放送、10月には衛星チャンネルが正規放送を開始。『ポール・ポジション』と『敵は海賊 〜猫たちの饗宴〜』を、それぞれ12月に放送した。平成元年は、TVという舞台の拡大、多チャンネル時代の幕開けの年ともなったのである。
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