7月期のTVアニメ主題歌の中で、僕がよく聞いているのは『監獄学園』のオープニング主題歌「愛のプリズン」だ。大槻ケンヂの作詞、NARASAKIの作曲ということで『さよなら絶望先生』のコンビが再び組んだことになる。ゴリゴリしたハードなギターサウンドに、どこか脱力してしまうような歌詞のユルさはこの2人ならでは。歌っているのはメインキャラクターを演じる声優4人なのだが、幻聴でオーケンのボーカルが聞こえてきそうなほど、特撮のレパートリーのようにも思えてくるナンバーだ。いずれはセルフカバー音源のリリースにも期待したいところ。
TVアニメ『監獄学園』オープニング主題歌「愛のプリズン」
1000573547/1,080円/ワーナー・ホーム・ビデオ
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さて今回は、先月22日にリリースされたTVアニメ『SHOW BY ROCK!!』のサントラ「SHOW BY ROCK!! OST Plus」を紹介しよう。TVアニメはすでに放映を終了しているが、1クールで描き切るにはもったいないほどに魅力的なキャラクターが沢山登場した作品だった。僕のお気に入りはレトリーで、メガネ、褐色、金髪、ツインテール、ニーソ、ツンデレ、百合、ボクッ娘と萌え属性てんこ盛りのキャッチーなキャラクターだ。
CDは2枚組で55曲、91分というボリューム。最近のアニメサントラは2枚組構成がスタンダードになりつつあるが、本盤もそのような作りとなっている。本作では主人公シアンの所属するプラズマジカのほか、シンガンクリムゾンズ、徒然なる操り霧幻庵、トライクロニカ、クリティクリスタといったバンドが劇中に登場するのだが、それぞれのバンドに持ち歌が設定されているのも魅力だろう。
音楽担当は高梨康治、Funta7、RegaSoundの三者による連名。高梨康治については、アニメファン、サントラファンならば今さら説明する必要もないだろう。『NARUTO疾風伝』『FAIRY TAIL』『プリキュア』シリーズなどで知られる、現代を代表する劇伴作家のひとりだ。Funta7は、バンドFuntaのメンバーが個人で活動する際の名義であり、アニメにおいては主題歌・挿入歌の作詞・作曲・編曲を数多く手がけている。特に『とらドラ!』の主題歌「バニラソルト」「オレンジ」は広く知られているだろうし、『ゆるゆり』でキャラクターソングの大半を担当したことを覚えている方もいるだろう。RegaSoundはインターネットを通じて集まったクリエイター集団で、こちらもアニメでは主にキャラクターソングや挿入歌を担当している。
大まかに三者の分担をいうなら、高梨康治がダークモンスター関連やバトルシーンなどを中心に、激しいロック調の楽曲やおどろおどろしいオーケストラ系の楽曲を担当。Funta7とRegaSoundは日常シーンや叙情的なシーンの音楽を多く担当している。RegaSoundは劇中におけるプラズマジカの楽曲も担当しているため、これらの楽曲をBGM用にアレンジしているケースも目立つ。
それではCDの内容について見ていこう。まずは気になる主題歌・挿入歌の収録状況だが、多くがTVサイズでの収録となっているため、フルサイズで揃えたいという方は各種シングル盤を購入した方がいいだろう。プラズマジカによるオープニング主題歌「青春はNon-Stop!」はTVサイズと、第1話に使用された「青春はNon-Stop! シアンver.」も併せて収録。「シアンver.」はこれがCD初収録で、ボーカルがシアンのソロであること、合いの手が入っていないなどの違いがある。また、エンディング主題歌「Have a nice MUSIC!!」もTVサイズでの収録となっている。
劇中の各バンドが演奏する挿入歌については、トライクロニカの「キミと☆Are You Ready?」、シンガンクリムゾンズの「Falling Roses」「Crimson quartet ―深紅き四重奏―」、クリティクリスタの「Yes!アイドル♡宣言」、徒然なる操り霧幻庵の「旅路宵酔ゐ夢花火」のいずれもTVサイズで収録している。
主役バンドであるプラズマジカの2曲についてはさすがに優遇されており、第3話で初披露された「迷宮DESTINY」は「1st,session ver.」のTVサイズおよびフルサイズと、よりツインギター編成を活かした完成形(シングル盤と同一)をTVサイズで収録。「流星ドリームライン」はシリーズ後半で何度も登場した楽曲だが、こちらも「1st,session ver.」のTVサイズとフルサイズ、完成形(TVサイズ)の3種類を収録している。
BGMについても紹介していこう。まずディスク1の12曲目「We are the ROCK!」は、第3話でシアンがストロベリーハートから対バンについて説明を受けるシーンに使用されたもの。LAメタル風のミディアムテンポに、テクニカルなツインギターが乗った痛快なロックナンバーだ。16曲目「Soldiers go on」は高梨康治お得意のスピードメタルで、ザクザクとしたギターリフとドラマティックなコード進行はまさに高梨節と呼べるもの。第1話でトライクロニカの面々がダークモンスターと戦うシーンなどに使用された。22曲目「Crisis of the Scene」はストリングスの刻みが雄々しいサウンドで、高梨の代表作であるPRIDEのテーマ曲を思わせる曲調だ。こちらも第1話などバトルシーンの各所で使用された。ディスク2の13曲目「悪鬼襲来」は第9話で、本作の黒幕ダガー・モールスが登場したシーンに使用された。どことなく曲調が映画「スター・ウォーズ」の「帝国のマーチ」を思わせるのは、ダガー・モールスというキャラクター名からしても偶然ではないのだろう。
劇中バンドの挿入歌は、それぞれ方向性が違うもののいずれもロックを基調としている。さらにハードにロックする高梨康治のBGMが相まって、2枚組CDの中にロックサウンドがぎゅぎゅっと詰め込まれているのが特徴だ。キャラクターのビジュアルは非常にキャッチーだが、一方で音楽は骨太なのが『SHOW BY ROCK!!』の魅力。「かわいい」と「ロック」が自然に共存している楽しさを、本盤からたっぷりと味わってほしい。(和田穣)
TVアニメ『SHOW BY ROCK!!』OST Plus(音楽:高梨康治、Funta7、Rega Sound)
PCCG-01478/3,564円/ポニーキャニオン
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