ANIME NEWS

アニメ音楽丸かじり(157)
やしきん作の『てーきゅう』主題歌はインパクト満点!

 アニメのBD&DVDに特典CDをつける手法は、現在とてもポピュラーなもの。キャラクターソングやBGM、ドラマCDやラジオ番組を収録している場合が多い。そういった意味で 『ガールフレンド(仮)』のBD各巻に、キャラクターソングを収録した特典CDがついてきたことに目新しさはない。だが驚かされるのはその曲数で、Vol.2からVol.4までの各巻にきっちり6曲ずつ新曲が入っている。最終巻となるVol.4が先月22日にリリースされたが、特典CDに収録された楽曲を歌っているのは、笹原野々花(戸松遥)、螺子川来夢(豊崎愛生)、天都かなた(井上喜久子)、鴫野睦(津田美波)、戸村美知留(阿澄佳奈)、時谷小瑠璃(田村ゆかり)と豪華な面々。毎月リリースされるBD&DVDにこれだけの曲を揃えるには、かなり周到な準備が必要であったことは疑いなく、スタッフの頑張りに拍手を送りたくなる。

TVアニメ『ガールフレンド(仮) Vol.4』[Blu-ray]

VPXY-71367 /7,344円/バップ
発売中
Amazon

5月27日に、TVアニメ『てーきゅう』の4期主題歌「ファッとして桃源郷」と、5期主題歌「Qunka!」が同時リリースされる。今回はこの2曲について取り上げてみたい。『てーきゅう』の板垣伸監督は当Webアニメスタイルにてコラムを連載中だが、4月9日の記事で「やしきんさんの主題歌がとても素晴らしすぎでしょっ!?」と絶賛している。確かにいずれも一度聴いたら忘れられないほどのインパクトがあり、曲調やテーマがまったく異なるところも魅力だ。
 まず「ファッとして桃源郷」を紹介しよう。『てーきゅう』4期のOP主題歌であると同時に、メインキャラクター新庄かなえ(三森すずこ)のキャラクターソングという位置づけだ。テクノポップを基調としたサウンドに、早口でナンセンス色の強い歌詞、そこかしこに入る合いの手、可愛らしい歌声など、正統派の電波ソングと言ってもいい。5音階や銅鑼の音を取り入れるなど中華テイストも特徴で、そのあたりは「西遊記」を思わせるOPフィルムにも表現されている。また、チップチューン的な要素も盛り込まれており、イントロは懐かしのゲーム「イー・アル・カンフー」BGMのようだ。
 かなえ役の三森すずこと言えば、デビュー以来ピンク髪の少女を演じる機会が多く、なおかつ少々アホな子がはまり役。この「ファッとして桃源郷」もそのあたりの個性が存分に出ており、たたみかけるような早口の歌詞を歌いこなしながら、どこかとぼけた声色を維持している。かなえのキャラクター的に、「必死さ」や「巧さ」が出てはいけないから、難しいフレーズであっても気楽さを感じさせるように歌わなければならない。プロの声優ならではのスキルを見せてくれる歌唱と言えよう。
 歌詞は語感のよさと韻を踏むことを徹底しており、「好吃(ハオチー)」と「へいお待ち」、「行っちゃいな」と「チャイナ」など、異なる言語での押韻が楽しい。ピコピコしたリズムパートの上に16ビートで言葉が乗っており、さらに「すってんどん」「ボンキュッボン」など促音を使うことでスピード感を増している。この曲はBPM160程度なので、最近のアニメ主題歌としては特別に速いほうでもないのだが、テンポ以上のスピード感を感じるのは作詞テクニックのお陰だろう。
 続いて「Qunka!」を紹介しよう。『てーきゅう』5期の主題歌で、こちらは板東まりも(花澤香菜)のキャラクターソング。タイトルはもちろん匂いを嗅ぐ時の擬音で、『てーきゅう』ファンならご存じのとおり、変態キャラまりもの場合その対象はパンツになるわけだ。ジャケットの絵柄のとおり曲調はインド風で、パーカッション主体でベースのないバックトラックはマサラムービーによく見られるもの。ノリノリのリズムとエキゾチックなバイオリンが、過剰なまでにインドテイストを主張するのだが、そのサウンドと花澤香菜の声の不思議なマリアージュが魅力と言えよう。
 歌詞は一貫してパンツへの激しい愛着を歌っており、『てーきゅう』1期第3話の内容に即している。特筆すべきは、まりも役・花澤香菜の「怪演」とも呼ぶべき歌唱で、じっとりねっとりとした声色で、まりもの変態性を存分に表現してくれている。花澤香菜は個人名義での歌手活動も行っているが、そちらでの可愛らしい歌唱とはまるで別人のようだ。それでいて天性の可憐な声質ゆえに、下品になり過ぎないところがいい。「ファッとして桃源郷」とタイプは異なるが、声優にしか歌えないタイプの曲だという点は同じだ。

 これらを作詞・作曲したやしきんは、1988年生まれの若手作曲家。2009年にニコニコ動画へのボーカロイド楽曲の投稿からキャリアをスタートさせ、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』の主題歌公募に応じたところ、いきなり2曲が採用された。後にTom-H@ckや百石元で知られるF.M.Fに所属している。
 今回は紹介しきれなかったが、同じく27日に発売となるスピンオフ作品『高宮なすのです!』の主題歌「黄金のキンデレラ ~午前0時に魔法は解けず~」も、同じくやしきんの作詞・作曲。こちらはより正統派のポップスに近く、鳴海杏子の歌唱力と凝ったコード進行を楽しめる。昨年リリースされた『てーきゅう』2期主題歌「メニメニマニマニ」も中毒性の高い楽曲で、一度聞いたら耳から離れなくなるタイプのナンバーだ。今後もやしきんの作る主題歌から目が離せそうにない。(和田穣)

TVアニメ『てーきゅう』4期OP主題歌「ファッとして桃源郷」新庄かなえ(CV:三森すずこ)

ESER-018/1,404円/アース・スターレコード
5月27日発売予定
Amazon

TVアニメ『てーきゅう』5期OP主題歌「Qunka!」新庄かなえ(CV:三森すずこ)

ESER-020/1,404円/アース・スターレコード
5月27日発売予定
Amazon