2年ほど前から趣味としてクロスバイクに乗っている。先日も愛車で自宅近くの荒川サイクリングロードを走っていたのだが、その時にふと考えたのが「自転車アニメって意外と少ないな」ということ。もちろんTVシリーズでは『弱虫ペダル』『Over Drive』があるし、劇場作品では『茄子 アンダルシアの夏』があるにはある。しかしながら、「のりりん」「ろんぐらいだぁす!」「東京自転車少女。」「南鎌倉高校女子自転車部」など、近年は自転車マンガが花盛りであることを考えると、青年誌からのアニメ化がもっと増えてもいいと思うのだ(「かもめチャンス!」「並木橋通りアオバ自転車店」はアニメ化されないまま完結してしまった)。
「ろんぐらいだぁす!」はキャラクターがキュートでありながら自転車描写も堅実なので、アニメ化にはもってこいではないかと思う。自転車乗りにはある種ミリタリーマニアに似た気質があって、自転車のメカニックや乗り手のフォームに嘘や間違いがあると、許せなくなってしまうものだ。その点、同作は自転車乗りの間でも高い評価を得ているので安心できる。4月からWEBラジオとサウンドドラマが始まっているため、いずれはアニメ化も……と期待したいところだ。
「のりりん」はかの鬼頭莫宏の作品だが、自転車型兵器を操る少年少女たちが次々と無残に死んでいく話……ではないので安心して読んでほしい(笑)。SFではなく現代日本が舞台の日常劇で、主人公も28歳の会社員という地に足のついた設定。熱血漢の多い自転車マンガとしては珍しく、「自転車嫌い」を自称するクールでシニカルな主人公の語り口が独特だ。
さて6月も下旬に入り、世間の農家では夏野菜の収穫が始まる頃だが、サントラが豊作なのが6月25日だ。『劇場版 TIGER&BUNNY —The Rising—』『健全ロボ ダイミダラー』『バディ・コンプレックス』『マンガ家さんとアシスタントさんと』『僕らはみんな河合荘』『シドニアの騎士』『凪のあすから』『蟲師』と一挙8作品のサントラが発売される。この中で『劇場タイバニ』『ダイミダラー』『バディ』『マンアシ』『河合荘』の5作品は、いずれもランティスからのリリース。しかも『劇場タイバニ』『ダイミダラー』『バディ』はCD2枚組だ。同日にはスフィア、浪川大輔、小野賢章のシングル盤が出るし、『ノブナガ・ザ・フール』のキャラソン2枚、『ガールズ&パンツァー』のドラマCDもある。ランティスはこういった「固め打ち」の発売スケジュールをしばしば敢行するが、社員の方々はかなり大変だろうと想像できる。
その中からまず紹介するのは、現在放映中のTVアニメ『健全ロボ ダイミダラー』のサントラ。CD2枚組に55曲もの楽曲を詰め込んだ内容だ。OP主題歌「健全ロボ ダイミダラー」はTVサイズで収録し、最終話で使用された同局のバラードバージョンも入っている。ED主題歌「Suki Suki//Links」は、TVサイズのほか、もり子・そり子・せわし子の各博士ソロバージョンがそれぞれ収録されている。挿入歌「愛って○×全部かな?」は企画CD「リッツ アイドルデビューシングル」の方に収録されたため、本盤には入っていない。
ところで、その「作中の美少女キャラクターをアイドルに見立てた企画盤」という発想は、いかにも1990年代のアニメにありそうだから笑ってしまう。『ダイミダラー』の作風は敢えて古くささを前面に押し立てている面もあるが、その傾向はこの企画盤でも健在というわけだ。
中西亮輔によるBGMは、ロボットアニメらしくスケールの大きなオーケストラサウンドが中心。第1話のバトルシーンで使用された怪獣映画を思わせるスリリングな曲調や、Hi-ERo粒子覚醒時の東洋的な旋律も魅力的だ。全体的に音楽は真剣かつ丁寧に作られており、それが本編の馬鹿馬鹿しさをより一層際立たせている。「ふざけたことをやるときには、演者が真剣であればあるほどいい」という喜劇のセオリーに、音楽も忠実に従っているようだ。
『健全ロボ ダイミダラー』オリジナルサウンドトラック(音楽:中西亮輔)
LACA-9354〜9355/3,456円/ランティス
6月25日発売予定
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続いて、発売日が4月9日から6月25日と大幅に延期されたことで、ファンをやきもきさせた『バディ・コンプレックス』のサントラ。こちらも2枚組で60曲とたっぷりの内容を誇る。OP主題歌「UNISONIA」およびED主題歌「あの空に還る未来で」はTVサイズで収録。本編中で挿入歌としても使用された、スマートフォンゲーム版の主題歌「ORBITAL LINE」もショートサイズながら収録している。
『バディ・コンプレックス』はコンパクトな1クール作品ながら、第1話と最終話を「時間移動」というテーマで綺麗に繋げたSFらしい設定と、たっぷりと尺を使ったハイカロリーなバトルシーンが魅力的な作品だ。田辺泰裕監督をはじめ、比較的若い世代のスタッフが多く起用されているが、音楽担当の加藤達也もまた1980年生まれの新鋭。とは言っても2009年以降は毎年4本前後のTVアニメを担当しており、33歳にしてすでに手がけたアニメは28作品を数える売れっ子だ。最近の仕事だと『百花繚乱 サムライブライド』の熱くダイナミックな作風、『Free!』の清涼感あふれるポップさ、『世界征服 謀略のズヴィズダー』のスケール感たっぷりの映画的サウンドなど、作品によってスタイルを使い分けることのできる職人肌である。
得意とするのは『百花繚乱 サムライブライド』でも顕著だったデジタルビートとオーケストラサウンドの融合で、今回の『バディ・コンプレックス』においても、特にバトルシーンはこの種のサウンドを多用している。最終話のクライマックスとなった、青葉とビゾンの10分を超える最終決戦の音楽がその代表例と言えるだろう。近年の劇伴制作ではパソコン上でリズムトラックと大まかなサウンドを仕上げてから、必要に応じてスタジオで生楽器をオーバーダブしていくスタイルが主流だが、本作もまさにそういった方向性にある。特に加藤達也のようにほぼ休みなく依頼が入る作家は、このように量産が可能なスタイルを指向していくしかないだろう。ドラムスやパーカッションの奏者が生きていくには、なかなかに厳しい時代である。(和田穣)
『バディ・コンプレックス』オリジナルサウンドトラック(音楽:加藤達也)
LACA-9352〜9353/3,456円/ランティス
6月25日発売予定
Amazon