ANIME NEWS

アニメ音楽丸かじり(137)
さらにクールに、よりモダンに。岩崎琢の最新型『魔法科高校の劣等生』サントラが登場!

 ランティス15周年企画と言えば、まず今月19日より各地で開催される「ランティス祭り2014」が挙がると思うが、こんな企画盤も発売されている。7月2日リリースの「Anison Strings~弦楽四重奏で聞くランティスの歴史」だ。演奏を担当するのは、茅原実里のライブサポートなどでもお馴染み、室屋光一郎率いる“大先生室屋ストリングス”だ。ジャケットは、ランティスと関係の深い京都アニメーションによる描き下ろし。
 アニソンを管楽器や弦楽器の編成で演奏する企画盤も、近年ではよく見かけるようになった。こういったCDでは、リリース当時に人気のある楽曲か、あるいは企画者や演奏者や好む楽曲をセレクトし、その中から求める楽器編成での編曲に向いた楽曲を絞り込んでいくケースが多い。ところが本盤はランティス楽曲という縛りだけで、オリジナルの発表年代もバラバラなのが面白い。
 考えてみると1980年代以前のアニソンで、時代を超えて生き残った楽曲は「クラシック」として評価され、ライブイベントで歌われてもかなりの好反応を得ているように思う。これらの楽曲が決して流行りのサウンドではないのにも関わらず、である。深夜アニメが活況を呈した2000年代の主題歌も、膨大な数が制作されてきたのだから、売れ筋以外にももう少し光が当たっていいと思う。そういった意味で、この企画盤はいい機会になるかもしれない。
 そうそう。この「Anison Strings~弦楽四重奏で聞くランティスの歴史」はe-onkyo musicで96kHz/24bitのハイレゾ版が配信されている。弦楽器の微妙なニュアンスを楽しむのなら、CDよりもこちらがオススメだ。価格も3600円と、CD版とあまり変わらないのがいい。

Anison Strings~弦楽四重奏で聞くランティスの歴史

LACA-15418/3240円/ランティス
発売中
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 今回紹介するのは、現在放映中のアニメ『魔法科高校の劣等生』のサントラだ。原作小説は「オリコン2014年上半期“本”ランキング」でライトノベル部門第2位の売上65万1405部を記録し、アニメ版も「アニメ!アニメ!」アンケートでは2014年春シーズンの視聴予定番組でトップだった。非常に期待値の高い作品と言えるわけで、しかも音楽はかの岩崎琢が担当だ。もともと実績のある人気作曲家だが、特に最近では『ヨルムンガンド』『GATCHAMAN CROWDS』『ノラガミ』など次々と印象的な音楽を生み出しているだけに、期待も高まろうというもの。
 7月2日にリリースされたサントラは、全23曲収録で69分。1曲あたりの尺が長いのは、岩崎琢の作風を知る人にとってはお馴染みのことだろう。ジングル的な断片ではなく、きちんとした構成のある楽曲が多いだけに、音だけでも十分に楽しめるのが嬉しい。
 3曲目「Metaphore」はコラール風の荘重な金管合奏から始まる神秘的なナンバー。第1話アバンタイトルで流れた楽曲で、タイトルは隠喩(メタファー)のフランス語綴り。こういった金管だけの合奏はブルックナーやマーラーなど、後期ロマン派のクラシックによく用いられる書法だ。演奏にわずかなミスやピッチの狂いも許されないため、用いるのに勇気のいるスタイルでもある。
 5曲目「Animoe」は第1話で主人公・司波達也が妹・深雪の頭をなでるシーンで使用。タイトルはそのものズバリ「兄萌え」である。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』で高坂京介を演じた中村悠一が達也を、同作で京介を「お兄さん」と慕った新垣あやせ役の早見沙織が深雪を演じるとあって、声優オタク的にもこの兄妹のラブラブぶりは色んな意味で美味しい萌えポイントだろう。
 9曲目「election」は第2話での達也と服部刑部との模擬戦シーンや、第7話でブランシュのアジトに踏み込むシーンで使用。クールで無機質なテクノビートが本作における魔法戦の雰囲気を決定づけている。本作における魔法の仕組みはとてもロジカルで、魔法戦はパワー勝負というより知能戦の要素が強い。楽曲もそのあたりのムード作りに一役買っているわけだ。11曲目「physical play」は第6話の千葉エリカと壬生紗耶香の剣術対決にて使用。シンセベースの効いたテクノ系のバトル曲だ。
22曲目「code break」は第1話で達也と師匠の九重八雲が体術で手合わせするシーンや、第6話でブランシュの一派と学内で乱戦になるシーンに使用。サンバ風のイントロからデジタルビートに移行し、エフェクト処理されたボーカルが乗ったハイブリッド感満点のEDMサウンドだ。
 以上のように、本作の音楽はオーケストラ調のものは少数で、テクノやEDMの路線に傾倒した楽曲が目立つ。先に挙げた3作に比べても、より一層その傾向が進んだように思う。近年の岩崎琢が作り上げてきた方向性を、より推し進めたものと言えそうだ。そして、本盤に収録された楽曲は、その多くがシリーズ前半にて使用されたもの。10月22日にはサントラ第2弾の発売が予定されているため、今後新たに登場する楽曲はそちらへの収録になるはずだ。今からリリースが楽しみである。(和田穣)

『魔法科高校の劣等生』オリジナルサウンドトラック(音楽:岩崎琢)

SVWC-7998/3,240円/アニプレックス
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