ANIME NEWS

アニメ音楽丸かじり(132)
豪華アーティストが集結! 『スペース☆ダンディ』サントラ

 『機動戦士ガンダムUC』の最終章となるepisode 7「虹の彼方に」の公開に合わせて、澤野弘之とAimerのジョイントコンサートが開催される。5月30日に大阪BIGCAT、6月1日に東京Zepp Tokyoの2会場での公演だ。イープラスとバンダイナムコによる先行予約はすでに終了しており、一般販売を待つ状況となっている。
 今回、両名はSawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のユニットとしてライブを行い、episode 6の主題歌「RE:I AM」およびepisode 7の主題歌「StarRingChild」を披露する予定だ。またAimerの持ち歌ではないが、「EGO」「REMIND YOU」といった、これまでに『ガンダムUC』に使用された挿入歌も歌われる予定とのこと。
 ちなみにepisode 7の劇場先行上映は5月17日〜6月13日の4週間限定となる予定だ。大迫力のモビルスーツ戦は劇場でこそ見応えがあると言うもの。館数も全国35館とこういった企画にしては多いので、足を運んでみてはいかがだろうか。2010年の第1話からはや4年、長きに渡った『ガンダムUC』のプロジェクトも、いよいよ終焉が近づいている。僕も劇場でその結末を確かめるつもりだ。

StarRingChild EP/Aimer

DFCL-2063/1,620円/DefSTAR RECORDS
5月21日発売予定
Amazon

 他作品との兼ね合いで取り上げるのが遅れてしまったが、このCDを紹介しないわけにはいかないだろう。3月26日にリリースされた『スペース★ダンディ』のサントラである。アニメ本編はすでにシーズン1の放映を終え、7月からのシーズン2に備えている段階だ。ちなみに、4月30日発売予定の「アニメスタイル005」には『スペース★ダンディ』の記事が掲載されている。これを読んでおけばシーズン2がより楽しめるはずだ。
 サントラは23曲を収録し、77分とCD1枚にギッチリ詰め込まれている。本作ではOP「ビバナミダ」を岡村靖幸、ED「X次元へようこそ」をやくしまるえつこが担当したことも話題となったが、それぞれTVサイズで収録されている。ダウンロード販売にも積極的であり、iTunes、mora、レコチョク、Amazonなどで購入が可能だ。
 ジャケットはキャラクターデザインの伊藤嘉之による描き下ろし。1980年代に一世を風靡した鈴木英人(山下達郎「FOR YOU」のジャケットなどで知られる)の画風を意識したものだろう。CDタイトルやロゴは、言うまでもなく小林克也の音楽番組「ベストヒットUSA」へのオマージュ。つまり1980年代に青春を過ごした、オジサンたちを狙い打ちにしているわけだ。描かれているカセットテープは、金色が目立つデザインからしてマクセルのものか。その世代の片割れの僕としては、ラジオやLPの音源を一所懸命カセットにダビングしていた頃の記憶が蘇るようだ。
 本作の監督は渡辺信一郎。『MINDGAME』『ミチコとハッチン』『LUPIN the Third —峰不二子という女—』などで音楽プロデューサーを務めただけあって、本作でもサウンド面のこだわりは相当なものがある。なにしろあまりにも沢山のアーティストを集めたため、列挙するかたちでは表記が困難になり、便宜的に「スペース☆ダンディバンド」という名義を用いているほどだ。各話のOPクレジットを見ると、スペース☆ダンディバンド名義の下に、何人かのアーティスト名が記されている。その話数で誰の曲が使用されたのか、これで確認できるわけだ。
 本盤に収録された楽曲で言うと、最多の3曲を提供したのが☆Taku Takahashi。m-froのトラックメイカーとして、あるいは『Panty & Stocking with Garterbelt』の音楽担当としてお馴染みだろう。次いで埼玉のファンクバンド、Mountain Mocha Kilimanjaroが2曲を提供。同じく2曲を提供したKenKenは、金子マリの子息で凄腕のベーシストだ。その他、TOKYO No.1 SOUL SETの川辺ヒロシ、クラムボンのミト、プログレ・キーボードの大家・難波弘之、往年の山下達郎によく似たサウンドとボーカルで知られるジャンクフジヤマ、SHOGUNでの活動や、一世風靡セピアや岩崎良美への楽曲提供で知られる芳野藤丸など、新旧・ジャンルを問わずに幅広いアーティストが集結している。
 したがってサウンドの統一性などは求めようもないし、むしろ各話完結で話数ごとにテイストの違う『スペース★ダンディ』らしく、バラエティ豊かな楽曲が揃っている。とはいえてんでバラバラというわけでもなく、各話のハイライトとなるアクションシーンでは、テクノ調のBGMが使われるケースが多い。このあたりは最も多くの話数でクレジットされている、☆Taku Takahashiの貢献によるものだろう。

 収録曲についていくつか紹介しよう。1曲目「Star Future」は☆Taku Takahashiの作曲で、アバンタイトルのナレーションBGMとしてお馴染みだろう。「Star Future」という曲名は、頭文字を繋げるとズバリ「SF」である(ちなみに☆Taku TakahashiはSF好きとしても有名)。軽快なフュージョン系のリズム隊は1970年代後半〜80年代前半のSFアニメでよくあったサウンドであり、さらに微妙にデチューンされて音程のヨレたシンセの感じもそれらしい。極めつけはゴダイゴやC-C-Bでお馴染みの、シモンズのシンセドラムのような音まで入っており、全力で「昭和のSFっぽさ」を醸し出した1曲だ。この曲における「ダサかっこよさ」「狙い澄ました古さ」こそ、『スペース★ダンディ』という番組の特徴そのものと言えるかもしれない。
 6曲目「Love you, dandy」は、第6話のパンツ星人とチョッキ星人による不毛な戦いのシーンにて使用。ソロユニットagraphで知られるkensuke ushioの作曲で、16ビートのシンセベースといい、レゾナンスを効かせたシンセパッドといい、ボコーダーの導入といい「これぞテクノ」というサウンドだ。7曲目「星屑のパイプライン」は、同じく第6話のラストにおける宇宙サーフィン(?)の場面にて使用。ジャンク フジヤマの爽やかでゴージャスなAORサウンドは、1980年代によくあるリゾートをテーマにしたポップスのよう。しかし映像はハワイでも南国でもなく、惑星の爆発を利用して爆風でサーフィンするダンディとミャウなのだから、そのギャップに思わず笑ってしまう。楽曲がきちんと真面目に作られているからこそ、こういったギャグが活きてくるという好例だ。
 16曲目「知りたい」は、第5話のゲストキャラ・アデリーと、ダンディのほのぼの珍道中を彩ったボーカル曲。日常感あふれるラップと歌詞で、昨年アルバムデビューしたばかりの泉まくらと、若手プロデューサーmabanuaによる共演に、菅野よう子が楽曲制作で参加したかたちだ。大御所作曲家と若手の個性が、ごく自然にひとつの楽曲に融合しているのが面白い。泉まくらの可愛らしい声質は、アデリーを演じた花澤香菜の声ともイメージが重なるように思う。
 今回、改めて本編を見直してつつサントラを聴いたが、まだまだこのOST1に収録されていない楽曲は沢山ある。第2話でスカーレットが活躍する一連のシーンにあった『ルパン三世』のパロディ風音楽や、第3話でダンディがラーギ星人からマミタスを助けるシーンのテクノポップっぽい音楽、第4話でゾンビライフを満喫するダンディたちのバックに流れるハワイアン風のBGMなど、特徴的な楽曲が毎回のように出てくるのだ。シーズン2もあることだし、ぜひサントラの続編にも期待したいところである。(和田穣)

スペース☆ダンディ O.S.T.1 ベストヒット BBP(音楽:スペース☆ダンディバンド)

VTCL-60368/3,240円/フライングドッグ
発売中
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