ANIME NEWS

アニメ音楽丸かじり(96)菊池俊輔 50周年記念CD-BOXは10枚組!

 10月開始番組の主題歌で気になったものはいくつかあるのだが、一番驚かされたのは『ジョジョの奇妙な冒険』のエンディングテーマに使用された、イエスの「ラウンドアバウト(Roundabout)」だ。なにしろこの曲が収録されたアルバム「こわれもの(Fragile)」の発売は1971年と、もう40年以上も前になるのだから。いま10代の若いファンにとってみれば、この時代の音楽は「歴史上の出来事」になるだろう。しかも日本の音楽シーンにおいては、1990年代以降は邦楽全盛であり、洋楽の存在感がどんどん低下してきているという事情もある。
 この「こわれもの」が発売された1971年当時の日本の音楽市場は、まったく様相が異なっていた。オリコン年間アルバムチャートの1位がエルビス・プレスリー「この胸のときめきを」、2位と3位がサイモン&ガーファンクル、5位がザ・ベンチャーズ、9位が洋画「ある愛の詩」サウンドトラックであり、シングルはともかくアルバムでは洋楽が優勢だったのだ。

 さて『ジョジョ』ファンならご存知のとおり、原作者の荒木飛呂彦は相当の洋楽マニアであり、登場人物やスタンドなどの名称に洋楽アーティストの名前がそのまま、あるいは少しアレンジして使われている。イエスの楽曲が主題歌に起用されたのも、そういった経緯からだろう。若き日の荒木飛呂彦が、人生最初に買ったレコードもイエスだという。
 この「ラウンドアバウト」は、プログレの魅力である複雑な楽曲展開をコンパクトに凝縮した名曲とされ、バンドの代表曲のみならず、プログレ界全体を代表する楽曲と言っていいだろう。コンパクトとは言っても8分30秒もあるので(プログレでは20分30分の曲が当たり前なのだ)、TVアニメでは当然エディットバージョンが使われている。このバージョンの音源はいまのところ発売されていないため、じっくり聴きたい方は「こわれもの」のCDを買い、手早く聴きたい方はダウンロード販売を利用するのがいいだろう。たとえばiTunesでは150円で購入できる。
 プログレの楽曲は難易度が高いため、コピー演奏をすると手応えとやりがいがあって楽しい。「ラウンドアバウト」はギター、ベース、キーボード、ドラムスのいずれも見せ場がある。楽器の心得のある方は、ぜひチャレンジしてみてほしい。

こわれもの/イエス

WPCR-75494/1,800円/ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
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 日本コロムビアから怒涛の主題歌CD-BOXが発売だ。1961年に映画「八人目の敵」で劇伴作家としてデビューし、その後『タイガーマスク』『バビル2世』『ドカベン』『ドラえもん』『DRAGON BALL』など、多数の人気アニメに音楽を提供した菊池俊輔。彼の作曲家生活50周年を記念する10枚組CD-BOXが、11月14日にリリースされる。内容はこれまでに担当してきた実写・特撮・アニメ等の主題歌を集めたものだ。
 CD10枚組に全283曲を収録する凄まじいボリューム。枚数もさることながら、1枚あたりの収録曲数が多いのだ。もちろん初CD化の楽曲もいくつか含まれている。116ページのブックレットには作曲者本人のコメントも掲載される予定だ。ちなみに全10枚のうち5枚がアニメ関連のディスクなので、今回はその内容を紹介したい。

DISC-4 アニメーション編1

 『宇宙パトロールホッパ』『タイガーマスク』『バビル2世』『新造人間キャシャーン』『侍ジャイアンツ』『破裏拳ポリマー』など1965年~1975年の作品の主題歌を収録。初CD化の曲はなくいずれもコンピレーション盤などで入手可能だが、『ウリクペン救助隊』は現在やや入手が困難だ。デビュー間もない時期の水木一郎、ささきいさお、堀江美都子、大杉久美子らの瑞々しい歌声をたっぷりと楽しめるのがポイント。

DISC-5 アニメーション編2

 『UFOロボ グレンダイザー』『大空魔竜ガイキング』『闘将ダイモス』など、徐々にSF色・ロボット色を強めていくアニメ界の傾向を反映したラインナップ。1975年から1978年という短い時期だけでCD1枚分26曲になるのだから、当時の仕事量の凄まじさが想像できる。  メルヘンチックなフルートやグロッケンシュピールが楽しい『アラビアンナイト シンドバットの冒険』は、後の『ドラえもん』への布石となるようなチャーミングな楽曲で、個人的なお気に入りだ。『ポールのミラクル大作戦』『激走ルーベンカイザー』などの主題歌は、収録されたコンピレーション盤もあるが現在では入手しにくい。異色なのはマンガ「赤いペガサス」からの1曲で、イメージソングと音声ドラマを収録した企画盤LPより収録。この盤は未だにCD化されていない。

DISC-6 アニメーション編3

 1979年から1986年にかけての作品で、『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』『Dr.スランプ アラレちゃん』『忍者ハットリくん』『わが青春のアルカディア 無限軌道SSX』『オバケのQ太郎』など。菊池俊輔の名を高めた藤子不二雄作品、鳥山明作品が仕事の中心となっていく時期だ。特に『Dr.スランプ』からは主題歌・挿入歌など7曲を収録。いまだに盆踊りの定番となっている「アラレちゃん音頭」ももちろん収録している。主題歌を担当していない『DRAGON BALL』については、野沢雅子による「孫悟空ソング」と、サントラからの「旅立ち」の2曲を収録。『オバケのQ太郎』からの「あいうえオバQ」はこれが初CD化となる。

DISC-7 ドラえもん+劇場用アニメーション編

 ほぼ『ドラえもん』づくしの1枚。TVシリーズから国民的アンセム「ドラえもんのうた」を始め主題歌・挿入歌12曲を収録。長年にわたって武田鉄矢が作詞をつとめた、劇場版主題歌からは11曲を収録している。長期シリーズのため、原曲の発表年代は1979年から1995年までと幅広い。初CD化となるのは劇場『21エモン 宇宙へいらっしゃい!』から主題歌「宇宙へいらっしゃい!」「遥かなる宇宙」の2曲だ。『21エモン』は原作が1968年~、この劇場作品が1981年、TVシリーズが1991年~と、藤子不二雄にしては映像化まで非常に時間のかかった作品だった。

DISC-8 東映まんがまつり+ラジオ+キッズソング+テレビドラマ編

 「東映まんがまつり」にて劇場公開された『宇宙円盤大戦争』(1975年)、『グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦! 大海獣』(1976年)、『世界名作童話 おやゆび姫』(1978年)から、それぞれ2曲ずつを収録。『宇宙円盤大戦争』は、知る人ぞ知る『UFOロボ グレンダイザー』のパイロット版とも言える作品だ。『決戦! 大海獣』からの主題歌「いざ行け! ロボット軍団」と、挿入歌「戦いの詩」はマニア心をくすぐる選曲と言えよう。

 あまりに大規模のCD-BOXであるため、アニメ関連にのみ絞って内容を紹介したが、もちろん他のディスクにも魅力的な主題歌がたくさん含まれている。特に「仮面ライダー」シリーズの充実ぶりには目を見張るものがあるし、「がんばれ!! ロボコン」「宇宙鉄人キョーダイン」もきっちり押さえてある。実写作品絡みの音源でも初CD化、初音源化のナンバーが含まれているので、気になる方はコロムビアの公式サイトで曲目をチェックしてみてほしい。(和田穣)

「菊池俊輔 作曲50周年 CD-BOX
Composer SHUNSUKE KIKUCHI 50th Anniversary CD-BOX」

COCX-37636~45/18,900円/日本コロムビア
11月14日発売予定
Amazon