一昨年に『チャージマン研!』のサウンドトラック盤を発売して話題となった新興レーベル、トラフィック・エンタテインメント様から、鈴木結女の新作ミニアルバム「ZERO」(9/19発売)のサンプル盤をいただいた。
鈴木結女と言えば『NINKU』のオープニング主題歌「輝きは君の中に」ほか、同作のエンディング3曲を歌っていたアーティストだ。結婚とそれに伴う渡米により10年以上も活動を休止していたが、2010年にSound Horizonへ参加したことを皮切りに、今回のCDリリースをもって本格的に音楽活動を再開させるようだ。
鈴木結女の魅力といえば、なんといっても伸びやかで中性的な響きを持つ独特の声だ。久しぶりに触れた彼女の声(と容姿)は、以前にも増して年齢不詳・性別不詳の不思議な雰囲気。全6曲のすべてを本人が作詞、5曲を作曲しているのだが、一人称は「僕」、二人称は「君、キミ」で統一されており、歌詞の内容もどことなくトランスジェンダー的な妖しさを秘めている。おそらく女性ファンにはかなりグッとくるポイントだろう。
ZERO/鈴木結女
TECH-18314/1,800円/テイチクエンタテインメント
発売中
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先ごろ最終話の放映を終えた『輪廻のラグランジェ season2』のサントラ盤が、9月26日にリリースされる。3月に発売された第1期サントラは、原田節(ハラダタカシ)によるオンド・マルトノをフィーチャーした壮大なオーケストラ音楽と、洒落たテクノ・エレクトロニカという2頭立てが光る内容だった。今年発売のサントラの中でも印象に残るものだったが、果たして2期はどうか。CDは全33曲収録で、オープニング主題歌「マーブル」、エンディング主題歌「ジャージ部魂!」のTVサイズをそれぞれ収録している。
正直に言うと、最初にこの盤を聴取した時にはやや困惑した。CDの序盤から日常シーンや内面描写に使用されたおとなしめの音楽が続き、途中11曲目の「Rinne no Lagrange」(第1期楽曲のアレンジ版)と、15曲目の挿入歌「Flower in Green」 でやや気分が盛り上がるものの、その他はおしなべてテンションの低い作風だからだ(本作が第1期中盤より、ロボットアクションから日常描写へと軸足を移した影響もあるだろう)。
ところが23曲目からは怒濤のように勢いのある楽曲が並ぶ。23曲目「411 60」はボレロのような弦の刻みに、ヒロイックなトランペットが映えるロボットアニメらしい楽曲。24曲目「Molrinksuit on」も同路線の派手なサウンドだ。28曲目「Magregui vs Arvirum」はドラマティックな戦闘曲で、高音弦がリズムの刻みを、低音弦がメロディを受け持つ。途中でノイジーなエレキギターが主役になる大胆な構成は『ラグランジェ』ならではだろう。楽曲タイトルはディセルマインとヴィラジュリオの使用オービットから。29曲目「Full force」は3分56秒にもおよぶ長尺で、これまで本作で用いられてきた様々な楽曲を、メドレーのように紡いでいる大団円の1曲。これを聴いてシリーズ全体の内容を追想するのもいいだろう。
さて、本盤の聴きどころとして、先述した挿入歌「Flower in Green」 についても触れておこう。この楽曲は第8話で使用されたもので、フルサイズでは5分を超える(もちろん本盤ではフル収録)。中島愛が初めて全曲英語詞を歌った楽曲であり、作詞・作曲・編曲はもちろんラスマス・フェイバー。浮遊感のあるサウンドとタイトなリズム、自由自在のコード進行、ストリングスの絶妙な使用法など、ラスマス節は今回も健在だ。第1期オープニング主題歌「TRY UNITE!」を思わせる作風であり、シングルカットしてもよさそうなクオリティ。今のところ収録されているのは本盤のみとなる。
『輪廻のラグランジェ season2』オリジナルサウンドトラック(音楽:鈴木さえ子・TOMISIRO)
VTCL-60316/3,045円/フライングドッグ
9月26日発売予定
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最後にもう1枚、同じく9月26日にリリースされるSuara初のベストアルバム「The Best ~タイアップコレクション~」を紹介する。なんとも直球のCDタイトルだが、分かりやすくて個人的には好感触。文字どおりタイアップ曲のみを集めた2枚組28曲に、初回限定盤ではさらに12曲のアレンジ版を含んだスペシャルディスクが付属。実に大盤振る舞いである。
これまで多数のタイアップ曲を歌ってきたSuaraだが、コンピレーション盤のみに収録された楽曲も多い。特に初期からの彼女の活動で重要な位置を占める、アクアプラス制作の美少女ゲーム「痕」「うたわれるもの~散りゆく者への子守唄」「ToHeart2」「ティアーズ・トゥ・ティアラ 花冠の大地」「WHITE ALBUM ―綴られる冬の想い出―(PS3版)」からの楽曲はコンピレーション盤の収録が多く、これまでひとまとめに聴くことはできなかった。ちなみに本盤の発売元・フィックスレコードは、アクアプラス関連のコンピレーション盤を数多く手がけてきたレーベルだ。
そして、これらのゲームがアニメ化された際の主題歌も多く収録している。TVアニメ『うたわれるもの』から「夢想歌」、OVA『ToHeart2」から「一番星」「I am」、TVアニメ『ティアーズ・トゥ・ティアラ』から「Free and Dream」、同『WHITE ALBUM』から「舞い落ちる雪のように」「赤い糸」などを収録。特に『うたわれるもの』オープニング主題歌「夢想歌」は、Suaraの代名詞的な楽曲だろう。
その他、TVアニメ『あさっての方向。』から「光の季節」「傘」、『BLUE DROP』から「BLUE」「蕾-blue dreams-」、『キミキス pure rouge』から「忘れないで」といった主題歌・挿入歌も収録しており、まさに「The Best」というタイトルが誇張ではない充実ぶり。しかもSACDハイブリッド仕様のため、対応機器を持つ人ならオリジナル盤以上の高音質が楽しめるはずだ。
気になる初回盤スペシャルディスクの内容は、 2007年リリースのコンピレーション盤「Pure -AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS-」から「夢想歌」「POWDER SNOW」「キミガタメ」「星座」のPure version4曲、同じく2011年の「Pure2 -Ultimate Cool Japan Jazz-」から「キミガタメ」「星想夜曲」「トモシビ」「Tears to Tiara ―凱歌―」のPure2 version4曲、そしてSuaraの1stアルバム「アマネウタ」の2010年リミックス盤(SACDハイブリッド)から「睡蓮―あまねく花―」「星座」「トモシビ acoustic version」の3曲、そして「AQUAPLUS VOCAL COLLECTION VOL.7」から「memory(English version)」となっている。(和田穣)
「The Best ~タイアップコレクション~」/Suara
初回限定盤:KIGA-90014~15/3,800円/フィックスレコード
9月26日発売予定
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「The Best ~タイアップコレクション~」/Suara
通常盤:KIGA-14~15/3,200円/フィックスレコード
9月26日発売予定
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