前略、
また、あまりの短さに驚かないでください、最終話納品までの緊張感真っ盛りなもので!
皆さん、『キミと越えて恋になる』は観て頂けてますでしょうか?
俺自身はそれを作るのが忙し過ぎて、放送をまったく観れていません!
……では、また来週。
草々
——ほら、また短かった!
前略、
また、あまりの短さに驚かないでください、最終話納品までの緊張感真っ盛りなもので!
皆さん、『キミと越えて恋になる』は観て頂けてますでしょうか?
俺自身はそれを作るのが忙し過ぎて、放送をまったく観れていません!
……では、また来週。
草々
——ほら、また短かった!
12月14日(日)に開催する上映イベントは「【新文芸坐×アニメスタイル vol.196】新文芸坐スクリーンで観るスコープサイズアニメ MIND GAME」です。
近年はスコープサイズでアニメ作品が作られることも少なくありませんが、それらの作品が常にスコープサイズにとってベストなスクリーンで上映されているわけではありません。つまり、スクリーンの上下黒味が入ったかたちで上映されることがあります。「新文芸坐スクリーンで観るスコープサイズアニメ」はスコープサイズで作られたアニメ作品を、スコープサイズの上映に最適な新文芸坐のスクリーンで上映していく企画です。
今までの【新文芸坐×アニメスタイル】でも同じスクリーンで上映していたわけですが、これからのプログラムで改めてスコープサイズのよさをお伝えしていきます。
「新文芸坐スクリーンで観るスコープサイズアニメ」で、最初に上映するスコープサイズの作品は『MIND GAME』。ロビン西さんの原作を湯浅政明監督とSTUDIO4゚Cが映像化した傑作劇場アニメーションです。エネルギッシュ&アバンギャルドな映像を、是非とも新文芸坐のスクリーンでご覧になってください。
トークのゲストは湯浅政明監督。聞き手はアニメスタイルの小黒が務めます。チケットは12月7日(日)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(本プログラム チケット販売ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-12-14-1
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【新文芸坐×アニメスタイル vol.196】 |
開催日 |
2025年12月14日(日)12時00分~14時45分予定(トーク込みの時間となります) |
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会場 |
新文芸坐 |
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料金 |
2200円均一 |
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上映タイトル |
『MIND GAME』(2004/103分/35mm) |
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トーク出演 |
湯浅政明(監督)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
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備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
腹巻猫です。12月10日にSOUNDTRACK PUBレーベルよりCD「新幹線公安官/騎馬奉行 オリジナル・サウンドトラック」を発売します。70年代後半に放送されたTVドラマ「新幹線公安官」と「騎馬奉行」の音楽をカップリング収録した初のサウンドトラック・アルバムです。音楽は2作とも渡辺岳夫が担当。『機動戦士ガンダム』につながる円熟のサウンドをぜひお聴きください!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0G1S93731
12月13日にはサントラDJイベント・Soundtrack Pub【Mission#49】劇伴酒場忘年会2025を蒲田studio80で開催します。その中でも上記サントラ盤の紹介をする予定。お時間ありましたら、ぜひおいでください!
https://www.soundtrackpub.com/event/2025/12/20251213.html
来たる12月6日は「レコードの日」。今年は11月1日と12月6日が「レコードの日」になっている。
日本レコード協会は1957年に11月3日を「レコードの日」と定めた。しかし、ここでいう「レコードの日」は、2015年から毎年開催されているアナログレコード普及のためのイベントのことである。こちらの「レコードの日」は毎年柔軟に日付が設定されており、この日に合わせてレコードメーカーからスペシャル盤がリリースされたり、全国のレコード店でイベントが行われたりする。このスタイルは2008年にアメリカで始まったイベント「RECORD STORE DAY」(4月の第3土曜日)を参考にしたものだ。
「レコードの日」には特別なアナログ盤がリリースされることが多く、それを楽しみにしている音楽ファンもいる。メーカーにとっては、趣向を凝らしたレコードをリリースして音楽ファンの注目を集め、メーカーとしての存在感を示す恰好の機会なのである。
ここまでが前置き。今回は、レコードの日に合わせて12月6日に日本コロムビアからリリースされるアナログ盤「赤毛のアン 音楽選集 〜アヴォンリーの四季〜」を紹介したい。
「赤毛のアン 音楽選集 〜アヴォンリーの四季〜」は1979年に放送されたTVアニメ『赤毛のアン』の音楽から30曲を選曲して構成したアルバムである。
TVアニメ『赤毛のアン』についての詳しい説明は省略しよう。高畑勲が演出を手がけた名作アニメで、音楽は現代音楽の作曲家・三善晃(主題歌・挿入歌)と、その弟子である毛利蔵人(劇伴と挿入歌)が担当した。
TVアニメ『赤毛のアン』のサントラ・アルバムとしては、すでに「赤毛のアン 想い出音楽館」という完全版CDがリリースされているし、1981年には「テレビオリジナルBGMコレクション 赤毛のアン」というレコードもリリースされていた(こちらもCD化済み)。「赤毛のアン 音楽選集」は過去のアルバムとなにが違うのだろう? 新たにレコードをリリースする意義はあるのだろうか? と疑問を感じるファンも多いと思う。今回は「赤毛のアン 音楽選集」の内容を紹介するとともに、アナログ盤でサントラを聴くことの意味も考えてみたい。
『赤毛のアン』の音楽については、当コラムでも取り上げたことがある。そのとき紹介したのはCD「赤毛のアン 想い出音楽館」だった。このアルバムは現在、配信もされているし、近年開催された「赤毛のアン アニメコンサート」の選曲や曲名の参考にもされている。『赤毛のアン』の音楽アルバムとしては決定版と呼んでよいだろう。
1981年にリリースされたLPアルバム「テレビオリジナルBGMコレクション 赤毛のアン」は、放送終了後まもなくにリリースされたもので、選曲・構成は「想い出音楽館」とは異なっている。組曲風に構成された、これもよくできたアルバムだ。「レコードの日」にあわせてアナログ盤をリリースするなら、このアルバムを復刻プレスする手もあったのではないか? しかし、「赤毛のアン 音楽選集 〜アヴォンリーの四季〜」は、「想い出音楽館」とも「テレビオリジナルBGMコレクション」とも内容が異なる、まったく新しい商品である。この意味について、まず考えたい。
筆者は「赤毛のアン 音楽選集」に企画段階から関わらせていただき、選曲・構成・解説も担当した。当初からスタッフのあいだで話し合っていたのは、「せっかく出すなら、今までの商品とは異なるコンセプトのものを」ということだった。発売は「レコードの日」に合わせてあるが、このレコードは「日本アニメーション創立50周年記念」を謳った商品でもある。記念商品にふさわしい、音楽性(芸術性といってもよい)の高いアルバムにしたい、という思いがスタッフのあいだで一致した。
重視したのは「音」である。ご存じの方も多いと思うが、記録される音の情報量は、CDよりもアナログ盤のほうがまさる。CDはノイズがほとんどないのでクリアに聴こえるが、再生される音の豊かさという点ではアナログ盤のほうがすぐれているのである。配信もCDと同じマスターなので、CD音質以上にはなっていない。「赤毛のアン 音楽選集」では、アナログ盤の音のよさを生かしたアルバム作りをしたいと考えた。
過去の『赤毛のアン』のサントラアルバムは、できるだけ多くの曲を入れたいという思いが先に立ち、音質は二の次になっていた。直径30cmのLPレコード・アルバムによい音で録音できる時間は片面20分程度と言われている。ポリ塩化ビニール樹脂に物理的に溝を刻み、そこに針を落として再生するアナログ・レコードでは、溝の幅や、溝と溝のあいだの幅があまり狭くなると、よい音では再生できないのである。しかるに「テレビオリジナルBGMコレクション」では、片面25分〜27分が収録されている。サウンドトラックが発売されること自体が珍しかった当時は、音質よりも、1曲でも多く収録されているほうが歓迎されたのだ。しかし、今回は音のよさを優先して片面20分程度に収めることを目標にした。
選曲は、「想い出音楽館」がCDと配信で聴けることから、「代表曲を網羅」「名場面を再現」といった考え方ではなく、「アナログ盤で聴くにふさわしい曲」という観点で考えることにした。言い換えると、音楽としての完成度や演奏・録音のクオリティを重視したわけである。
「赤毛のアン 音楽選集 〜アヴォンリーの四季〜」の収録曲は以下のとおり。
Side-1
01.オープニング タイトルバックB
02.きこえるかしら(歌:大和田りつこ)
03.プリンス・エドワード島へ A-1A(RETAKE)
04.よろこびの白い道 A-2B
05.よろこびの白い道 B-2B
06.湖と妖精のワルツ D-1
07.おごそかな誓い D-2
08.そばかすだらけの女の子 B-3A
09.あしたはどんな日(歌:大和田りつこ)
10.夏の光・海辺の夢 C-4
11.夢見る頃を過ぎても B-12
12.秋の訪れ C-8
13.雪降る聖夜 B-12-2
14.雪降る聖夜 B-2
15.クリスマスのコンサート B-11
16.神は天にいまし A-1
17.森のとびらをあけて(Instrumental)
Side-2
01.忘れないで(歌:大和田りつこ)
02.めぐる季節 〜光と風の中で〜 B-3C
03.十五歳の春 B-16
04.十五歳の春 B-9B
05.アイドルワイルドの木陰で B-7
06.クィーン学院への旅立ち B-5B
07.冬のセレナーデ 〜アヴォンリーの雪〜 B-18
08.冬のセレナーデ 〜アヴォンリーの雪〜 B-17C
09.おごそかな誓い B-9A
10.マシュウの愛 B-1A
11.フィナーレ B-9
12.神は天にいまし A-2E
13.さめない夢(歌:大和田りつこ)
全30曲。旧アナログ盤「テレビオリジナルBGMコレクション」では、オープニング・エンディング主題歌を含め38曲が収録されていたから、それより8曲減ったことになる。実は初期の構成案では27曲にまで絞っていたのだが、検討を重ねて現在の曲数に落ち着いた。
曲名は「想い出音楽館」のものを踏襲。曲順は過去のアルバムとは一新し、アルバム名の副題にある「四季」のうつろいを感じてもらうような流れを意識して構成した。
ここからは収録曲について、簡単に語ってみたい。
先に書いたように、選曲は「アナログ盤で聴くにふさわしい曲」という観点で検討した。作曲者の三善晃、毛利蔵人、演出の高畑勲らが生前に残した言葉や文章も参考にした。作曲家にとっても記念盤になるようなアルバムにしたいと思ったのだ。結果、劇中ではあまり使われなかった曲や一度も使われなかった音源が含まれる、いわゆる「ベスト盤」とは一線を画したものになったと思う。
主題歌・挿入歌はTVサイズではなく、繊細なアレンジの妙が味わえるフルサイズで収録した。「あしたはどんな日」と「森のとびらをあけて」の2曲は、高畑勲が生前に印象深い曲として挙げていた挿入歌である。「忘れないで」は劇伴を担当した毛利蔵人が作・編曲した歌であり、劇伴にもそのモチーフが使われている。曲自体も文句なしにすばらしい。毛利蔵人の代表曲のひとつとして、入れることにした。
劇伴の中で、筆者がどうしても入れたかった曲の筆頭が「湖と妖精のワルツ D-1」(Side-1のトラック6)。第2話でアンがきらめく湖を見て感動する場面に流れるワルツの曲だ。本編では6回しか使われていないが、「『赤毛のアン』の音楽といえばこの曲」と呼べる曲のひとつである。
Disc-1のトラック14「雪降る聖夜 B-2」もワルツの曲。この曲も6回しか使われていない。けれど、ストリングスの軽やかな旋律が胸を躍らせる魅力的な曲だ。こういう明るい曲や「そばかすだらけの女の子 B-3A」(Disc-1のトラック8)のようなユーモラスな曲も、『赤毛のアン』の世界を作り上げる大事な要素としてアルバムに入れておきたいと思った。
Side-2では、トラック2「めぐる季節 〜光と風の中で〜 B-3C」が筆者のお気に入り。アコースティックギターとリコーダーによるさわやかな曲で、アヴォンリーの風に吹かれているような気分になる。クラシック音楽的な曲ではないが、「アナログ盤で聴くと気持ちいいだろうなあ」と思った曲だ。
トラック9「おごそかな誓い B-9A」も忘れがたい曲のひとつ。第9話のアンとダイアナの心の友の誓いの場面に流れたほか、重要なシーンにたびたび使用された、弦と木管のアンサンブルが美しい曲である。
続くトラック10〜12「マシュウの愛 B-1A」「フィナーレ B-9」「神は天にいまし A-2E」の3曲は、「『赤毛のアン』の音楽を聴くなら、これだけははずせない」という名曲。「こういう曲をアナログ盤でゆったり聴きたいなあ」と思いながら選曲したことを覚えている。
このアルバムで初めて商品化される音源を紹介しよう。
初商品化音源は2曲ある。ひとつは、Side-1のトラック11「夢見る頃を過ぎても B-12」。この曲は「想い出音楽館」に収録されているし、配信もされている。しかし、実はこれまで商品になっていたのは不完全な音源だったのである。「想い出音楽館」を作るときに、筆者のミスで正しいサイズよりも短いサイズの音源で収録してしまったのだ。詳しくは「赤毛のアン 音楽選集」のライナーノーツの解説をお読みいただきたい。今回、完全版の音源を収録することができて、ようやく長年の悲願を果たすことができた。
もうひとつは、Side-1のトラック17「森のとびらをあけて(Instrumental)」。挿入歌「森のとびらをあけて」のインストゥルメンタル版である。この音源はまったくの初商品化になる。先に紹介したように、この歌は高畑勲の思い出の曲のひとつ。歌入りで収録するべきか迷ったが、今回はあえてこちらを選曲した。この音源は劇中では一度も使用されていない。しかし、ギターがブルージーな演奏を聴かせるインスト版には、埋もれさせておくには惜しい魅力がある。この機会を逃すと2度と商品化の機会はないと思い、収録した次第。アナログ盤を購入してくれる『赤毛のアン』ファンへのプレゼントの気持ちも込めた選曲である。
最後に「音」について。
『赤毛のアン』が制作された1970年代は、音楽制作はすべてアナログだった。『赤毛のアン』のマスターテープも磁気テープで制作された。今回のアナログ盤の音源は、CD用マスターの流用ではなく、オリジナルの磁気テープからアーカイブされたマスターを使用している。そこから最新の技術でマスタリングを行った音をレコード盤に刻んだものが、「赤毛のアン 音楽選集」なのである。筆者はテストカッティング(レコード盤をプレスするための原盤になるディスクを試験的に制作する工程)にも立ち会ったが、できたばかりのレコードを再生して聴こえてくる音の鮮やかさに驚いた。『赤毛のアン』の主題歌・挿入歌は放映当時にレコードになっているが、それよりもずっといい音に聴こえる。劇伴の音も、過去のアナログ盤やCDの音より豊かで深みがあり、「こんな音だったんだ!」と感動した。過去のアルバムを聴き慣れた人の耳にも新鮮に響くはずだ。『赤毛のアン』のアイテムとして手元に置くだけでなく、ぜひ、プレーヤーに乗せて、スピーカーで聴いてもらいたい。
CDや配信でリリースされているサントラをあえてアナログ盤で聴く意味はなんだろうか? ひとつはもちろん音の違いだ。CDでオミットされた周波数の音もアナログ盤の音には含まれている。デジタル化されていない音の柔かさもある。でも、それだけではないと思う。アナログ盤を聴くには手間がかかる。機材をそろえ、音を出す時間と空間を用意しなければいけない。ちょっとした非日常体験だ。ブルーレイや配信で観る劇場作品と劇場のスクリーンで観る劇場作品の印象が異なるように、CDや配信で聴く音楽とアナログ盤で聴く音楽とでは、体験の質が異なる。アナログ盤を買う人は、その体験を買っているのである。
(なんて言ってますが、気楽に聴いてもらえばよいと思います)
赤毛のアン 音楽選集 〜アヴォンリーの四季〜
Amazon
『キミと越えて恋になる』の制作もいよいよ佳境!
で、残りの作画、そしてその直し(修正)で大忙しの日々です。先にお断りしておきますが、今回も短いです……。
作画リソース(作画監督・原動画マン)を適切なシーンに割り振って、打ち合わせ~発注をし、数字を追っかけつつ、修正の指示。そして、板垣自身も作監に参加し、“木村総作監の欲しい画”に少しでも近付けるのが現在の俺の仕事。
この『キミ越え』は、脚本・構成~コンテチェックは板垣案優先、設定・ビジュアルイメージは木村(博美)監督案優先させています。その上で監督二人が共にアニメーターである以上、必然的に作画は一緒に直す(修正する)という制作工程。まぁ、
その辺の細かい話は、最終話まで納品した後、ということで!
ということで、今週はここまでで。ほら、短かったでしょ?
2025年最後の「アニメスタイルイベント」は「こんなアニメ本を出したい&出してもらいたい」。アニメスタイル25周年を記念したイベントの第1弾となります。開催日は12月7日。会場は阿佐ヶ谷ロフトAです。
内容はシンプルに「出版したいアニメ関連書籍」や「出版してもらいたいアニメ関連書籍」について語るというもの。アニメスタイル編集長の小黒も語りますし、ゲストの方達にも語っていただきます。
現在、決まっている出演者は小黒編集長、吉成曜さん、今石洋之さん。追加のゲストが決まりましたら、改めてお伝えします。
当日は会場にいらしたお客様にアンケート用紙を配り、「こんなアニメ本を出したい&出してもらいたい」について書いていただきます。いただいたアンケートはイベント中に内容を紹介するかもしれません。よろしかったら、アンケートにご参加ください(ただし、「出してもらいたい」と書いても、それが必ず実現するわけではありません)。
今回のイベントではトークの第1部を配信します。普段よりも配信しないパートが長めになるかもしれません。配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
チケットは2025年11月29日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/339411
会場&配信チケット(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/u72s4
配信チケット(ツイキャス) https://premier.twitcasting.tv/asagayalofta/shopcart/407332
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第249回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年12月7日(日) |
会場 |
阿佐ヶ谷ロフトA | 出演 |
小黒祐一郎、吉成曜、今石洋之 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 1,800円、当日 2,300円(税込·飲食代別) |
『沖ツラ』話が終わったら、『キミと越えて恋になる』のことを語り始めようと思っています!
今回、初監督(共同)の木村博美さんの才気、そして社内スタッフの頑張りなどについても色々言いたいことがあるのです。
が、“シリーズの納品期間は死ぬほど大変!”だけは、何作監督しても絶対変わることのない事実です。
もう少し……もう少しです! 『異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する』『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』に続き、この『キミと越えて恋になる』も、スタッフ皆様のお陰で、また良い作品に仕上がりそうで、とにかく頑張っている最中、がもう少し続き、またお茶濁しショートですみません。
『キミ越え』鋭意制作中の為、ご容赦頂ければ幸いです。
腹巻猫です。私が参加していた劇伴専門バンド・G-Sessionのライブが、11月22日(土)17:30から新中野のLive Cafe弁天で開催されます。コロナ禍で活動休止していたのでライブは7年ぶり! 特集は「謎の劇伴UFO」と「7年越しの電リク大作戦」の2本立て。今回、私は客席で応援するので演奏内容は知らないのですが、きっとマニアックな選曲でしょう。お時間ありましたら、ぜひどうぞ!
詳細は下記を参照ください。
http://www.benten55.com/sche14/sche14.cgi#3968
過去のG-Sessionライブ
https://www.soundtrackpub.com/event/gsession/
今回は11月7日に公開された劇場アニメ『トリツカレ男』の音楽を取り上げよう。
いしいしんじによる同名小説を原作に、監督・高橋渉、アニメーション制作・シンエイ動画のスタッフでアニメ化された作品だ。
興味を持ったことにとりつかれたようにのめり込むことから「トリツカレ男」と呼ばれている青年ジュゼッペ。ネズミのシエロと話そうとするうちに、ネズミ語もわかるようになった。ある日、昆虫採集に夢中になっていたジュゼッペは、公園で風船売りの少女ペチカに出会い、恋に落ちてしまう。シエロの応援もあってペチカと友だちになれたジュゼッペだが、ペチカの笑顔に曇りがあることに気づいてしまった。ジュゼッペはペチカに心から笑ってもらうために、彼女の抱える悩みを取り除こうとする。
全編にキャラクターが歌う劇中歌が散りばめられたミュージカルアニメである。シンエイ動画らしい独特の絵柄が魅力的。それに歌がすばらしい。歌手やミュージカル俳優として活躍するキャストがそろい、表現力豊かな歌を聴かせてくれる。なかでもペチカ役の上白石萌歌の歌唱は、劇場で聴いていてうっとりするほどだ。
しかし、個性的な絵柄と歌の印象から、本作を「明るく楽しいミュージカルアニメ」と思って観に行くと、少々期待を裏切られる。明るく楽しいシーンも多いのだが、物語の後半はけっこうシリアスで繊細な展開になっていくのだ。ディズニーの劇場長編のような親子づれで気軽に観に行ける作品というよりは、「ラ・ラ・ランド」みたいな大人向けの作品だと思ったほうがよいだろう。
音楽は3人組のバンドAwesome City Clubのボーカリスト・ギタリストであるatagiが担当。主題歌・劇中歌すべての作曲と劇伴の一部を手がけている。ほかに劇伴担当として、波立裕矢と未知瑠の2人がクレジットされている。
本作の主題歌・劇中歌のことは、すでにさまざまなメディアで取り上げられているので、当コラムでは劇伴音楽にフォーカスして語ってみたい。
ミュージカルの音楽といえば、歌が中心になり、劇伴は歌のメロディを引用しながら物語を盛り上げていく、という印象がある。華やかな舞台劇音楽のようなイメージだ。
しかし、本作の劇伴音楽はちょっと違う。歌のメロディの引用もあるが、控え目だ。むしろ、一般的な劇場作品の背景音楽に近い。あまり目立たないように、ドラマにそっと寄り添っている。それはたぶん、本作が「明るく楽しい」だけの作品ではないからだろう。
実は、atagiと波立裕矢は劇伴音楽を手がけるのは初めて。atagiはバンドサウンド、波立裕矢はオーケストラサウンドが得意という持ち味の違いがある。もう1人の劇伴担当である未知瑠は、劇場作品・ドラマ・アニメの音楽で活躍し、オーケストラからジャズまで、さまざまなスタイルをこなす、いわば劇伴のプロ。3人の個性がまじりあって表現される本作独特の世界観が聴きどころである。
本作のサウンドトラック・アルバムは、2025年11月5日に「トリツカレ男 オリジナル・サウンドトラック」のタイトルでcutting edgeより配信でリリースされた。11月19日にはCD版もリリースされる予定である。
収録曲は以下のとおり。
トラック27の「ファンファーレ」はCD版にのみ収録。配信版のアルバムには入っておらず、Awesome City Clubの楽曲として別途配信されている。
atagiは本作の劇伴を依頼されたとき、劇伴作曲の経験がなかったので悩んだという。しかし、「Awesome City Clubのような音楽で表現してほしい」と言われて引き受ける気になったそうだ(「up plus(アッププラス)」2025年11月号掲載のインタビューより)。
そのatagiが担当した楽曲は「memoir」(トラック2)、「シエロ教えて!」(トラック5)、「ひみつの会議1」(トラック9)、「ひみつの会議2」(トラック12)の4曲。どれもネズミのシエロがらみの曲である。ジュゼッペとシエロとの出会いが語られる場面の「memoir」で弦のピチカートやシンセを使ったテーマが提示され、以降の3曲ではそのテーマが反復される。劇伴におけるシエロ(あるいはシエロとジュゼッペ)のテーマなのだろう。
波立裕矢は9曲の劇伴音楽を担当した。波立は主に純音楽の分野で活躍する作曲家で、先に紹介したように、劇伴を手がけるのは本作が初めてだったという。
まず、ジュゼッペとペチカの出会いのシーンに流れる「出会いのワルツ1」(トラック3)と「出会いのワルツ2」(トラック6)。ジュゼッペの心のときめきを表現する、クラシカルでロマンティックなワルツの曲だ。「出会いのワルツ2」のあとに、ジュゼッペとペチカがデュエットするメインテーマ「ファンファーレ〜恋に浮かれて〜」が流れ始めるシーンは、本作の見どころ、聴きどころのひとつ。
「帰ってきた日常」(トラック11)、「さすらいの医者」(トラック13)、「秋とジュゼッペ 恋の行方」(トラック14)の3曲も波立裕矢の作曲。この中では、ジュゼッペが変装したヘンな医者のテーマ「さすらいの医者」が面白い。ミディアムテンポの飄々とした曲で、ベースとピアノとパーカッションが作り出すリズムは、異国の舞踏音楽のようでもある。「秋とジュゼッペ 恋の行方」はギターとピアノを中心にしたリリカルなサウンドが心に沁みる1曲。「帰ってきた日常」については、このあとあらためて紹介したい。
正直に言うと、歌のすばらしさに比べて、本作の劇伴音楽は少々地味ではないか、と筆者は感じていた。もっと歌い上げる曲やはじけた曲があるほうがミュージカルらしいと思っていたのだ。
しかし、波立裕矢のXのポストに興味深い発言を見つけた。2025年11月12日のポストで、波立はこう書いている。
「#トリツカレ男 の劇伴のモデルの一つとしたのは、三善晃さんの「赤毛のアン」のための音楽
脚本や絵柄を読み込むうち、本作でなら元々大好きな作品へのオマージュが自然に響くのではと思い至りました」
なんと、TVアニメ『赤毛のアン』の音楽をオマージュしたというのだ。ポストでは三善晃の名しか書かれていないが、当然、毛利蔵人が手がけた劇伴音楽もオマージュの対象に含まれているだろう。
それを意識して『トリツカレ男』の劇伴を聴くと、「なるほど『赤毛のアン』か」とひざを打ちたくなるところがある。
「帰ってきた日常」(トラック11)もそんな曲のひとつである。ギターやピアノ、パーカッションが奏でるおだやかなサウンドは、現代的でありながら、バロック音楽的なたたずまいがある。バロック音楽は毛利蔵人が『赤毛のアン』の劇伴で試みたスタイルのひとつである。
波立裕矢が手がけた残り4曲の劇伴——「ジュゼッペとタタン」(トラック19)、「シエロの言葉が」(トラック22)、「真実にたどり着いて」(トラック23)、「すべてジュゼッペだったのね」(トラック25)では、弦合奏とピアノ、フルート、ハープなどが奏でる、フランス印象派音楽風の上品で色彩感豊かな響きを聴くことができる。これも『赤毛のアン』の音楽に通じるサウンドだ。
波立裕矢は、『トリツカレ男』の一見エキセントリックな物語の中に、『赤毛のアン』と共通する日常への愛しさや想像力の尊さを感じたのではないだろうか。そのアプローチは、本作に一般的なミュージカル音楽とはひと味違う繊細なサウンドを提供することになった。とりわけ物語終盤の展開に、そのサウンドがマッチしたと思う。
アニメ『本好きの下剋上』『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』などの音楽を手がける未知瑠が担当した劇伴は8曲。
「ジュゼッペ、ジャンプ!」はジュゼッペが空に飛んだ風船をジャンプして集める場面に流れる曲で、軽快なリズムと口笛やブラスの合奏が楽しいミュージカルらしいナンバーだ。しかし、楽しい曲はこれくらいで、以降はあまりメロディアスでない、サウンド志向の曲が続く。
「ブレーキなしで!」(トラック8)は、ブレーキの壊れた自転車を押すペチカとジュゼッペが坂道を下りながら語らう場面の曲。ピアノとシンセ主体のシンプルな表現で、ふたりの心の中に芽生える言葉にならない感情を描写する。もっとメロディアスな音楽であってもよさそうなシーンだが、あえてメロディを抑えているのがうまい。未知瑠は、こういう複雑な心情やシリアスな状況を描くシーンの音楽を主に担当しているようである。
トラック15〜18は連続で未知瑠が担当している。「ペチカの過去」「当方、トリツカレ男」「Accident! 1」「Accident! 2」の4曲である。「ペチカの過去」はジュゼッペがペチカに秘めた過去があることを察する場面の曲。「ブレーキなしで!」と同様に、メロディを抑えた曲調でジュゼッペとペチカの心情を描写している。感情をひとつに限定せず、さまざまな心情が入り混じった複雑な曲調になっているのが現代的だ。
「当方、トリツカレ男」はジュゼッペがペチカの過去に関わるタタンという男のことを調べる場面の曲。これは比較的わかりやすい、ブルージーなジャズ風の曲である。
「Accident! 1」「Accident! 2」の2曲は、タタンの過去の回想シーンに流れる効果音的音楽。ここでも感情をあおらない抑えた表現が効果を上げている。このあたりは劇伴音楽の経験豊かな未知瑠ならではの音楽作りで、「うまいなあ」と思うところだ。
トラック20「ペチカとタタン3つの大切なこと」は、ピアノのみで奏でられる美しくリリカルな曲。ペチカの気持ちに寄り添った曲想だろう。
トラック24「私たちは必ず転ぶ」は、終盤の重要なシーンに流れる4分45秒に及ぶ長い曲。劇中では、この曲の上にほとんどずっとセリフが重なっている。このシーンでは、セリフが歌で劇伴がその伴奏になっていると言ってもよいだろう。音楽単体で聴くより、セリフとともに聴いたほうがぐっと胸に沁みてくる曲だ。音楽が主張しすぎず、歌いすぎない。その絶妙のさじ加減が、やはり「うまいなぁ」と思う。
劇伴にフォーカスして『トリツカレ男』の音楽を紹介したが、本作の音楽設計のユニークさと巧みさがわかっていただけただろうか。
すでに書いたとおり、筆者は『トリツカレ男』の劇伴音楽を「少々地味ではないか」と思っていた。あらためてサウンドトラックで聴きなおしてみると、よく考えられた、作品にマッチした音楽である。一般的なミュージカル音楽のイメージを裏切るような抑制された表現が、複雑で繊細な心情を描写するのに効果を発揮している。もし未見の方がいたら、ぜひ劇場で本作の個性的な映像と歌と音楽を体験してほしい。
最後に、サウンドトラック・アルバムに収録されていない歌について。本作の劇中歌はほぼすべてアルバムに収録されているが、一部、セリフ扱いで録音されたものは入っていない。筆者が特に記憶に残っているのが、ペチカの母親役で出演している水樹奈々が、終盤の印象的な場面で歌う歌である。筆者がこの作品の中で、とびきり「ミュージカルらしい」と思ったシーンだ。あの歌もアルバムに入ってるとよかったなあ。
トリツカレ男 オリジナル・サウンドトラック
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『沖ツラ』9話、パブリックビューイングでの野球観戦。たとえ止めでも“モブ”は大変です! 「誰もそんなトコ観てない!」とか仰るプロデューサーさん始め製作委員会の方々がよくいらっしゃいますが、俺から言わせてもらえば「観てるんじゃない、感じてるんだ!」と。
お客(視聴者)は1カット単体の数秒で「ここのモブがおかしい!」と見つけるのではなく、歪な画を何カットと見せ続けられたところで、「あれ? 何かさっきから変なモノ見せ続けられてる?」と感じるんです!
だから基本、止めでも、ちゃんと間がもつポーズ・画でなければ、観る側はドラマに集中できません。そのため、モブ・シーンほど、巧い人に頼むというのが自分の差配です。この野球観戦シーンはお馴染み篠(衿花)さん。
観客モブのカットいっぱいT.B(トラック・バック)で(今まさに)席に着こうとしているてーる―が最後にフレームINしてくる、とすれば、てーるーまで止めポーズでもつから!
と作打ち時にポーズの指定まで。本当にモブは毎回苦労します。
で現在制作中の『キミと越えて恋になる』でも同様。俺の方でモブに作監修正入れたカット、結構あります。
そして、また短くてすみません。『キミ越え』是非観て下さい。
TVアニメ『真・侍伝 YAIBA』放送終了を記念して、アニメーターの方々の仕事を振り返るトークイベント「『真•侍伝 YAIBA』アニメーター・スペシャルトーク!」を開催します。
亀田祥倫さん(キャラクターデザイン&総作画監督)、前並武志さん(サブキャラクターデザイン&メインアニメーター)をはじめ『真•侍伝 YAIBA』主力クリエイターの方達が出演。スペシャルゲストとして、蓮井隆弘さん(監督)、岡田麻衣子さん(アニメーションプロデューサー)にも登壇していただきます。
開催日は11月29日(土)。会場はLOFT/PLUS ONEです。チケットは11月8日(土)正午12時から発売となります。チケットについては、以下のロフトグループのページをご覧になってください。
今回のイベントではトークの第1部を配信します。配信のない第2部のみに出演するゲストの方もいらっしゃるはずです。ご了承ください。
配信はリアルタイムでLOFT CHANNELでツイキャス配信を行い、ツイキャスのアーカイブ配信の後、アニメスタイルチャンネルで配信します。今回のイベントのアニメスタイルチャンネルでの配信は、配信開始から一か月のみとなります。
なお、ツイキャス配信には「投げ銭」と呼ばれるシステムがあります。「投げ銭」による収益は出演者、アニメスタイル編集部にも配分されます。アニメスタイルチャンネルの配信はチャンネルの会員の方が視聴できます。
■関連リンク
告知(LOFT) https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/337656
会場&配信チケット(LivePocket) https://t.livepocket.jp/e/2-dga
配信チケット(ツイキャス) https://premier.twitcasting.tv/loftplusone/shopcart/404611
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第248回アニメスタイルイベント | |
開催日 |
2025年11月29日(土) |
会場 |
LOFT/PLUS ONE | 出演 |
亀田祥倫(キャラクターデザイン、総作画監督)、前並武志(サブキャラクターデザイン、メインアニメーター)、蓮井隆弘(監督)、岡田麻衣子(アニメーションプロデューサー)、主力クリエイターの方々 |
チケット |
会場での観覧+ツイキャス配信/前売 3,000円、当日 3,500円(ともに税込・飲食代別) |
『沖ツラ』8話の続きから。ゆいレールに乗りに行く幼少・喜屋武さんと幼少・比嘉さんはやっぱり微笑ましいですね。この手のシーンはアニメーターも描いて和むらしく、原画・作監の上りも各々が考えた“可愛い”が詰まっているモノです。ゆいレール車内で幼少・喜屋武さん踊り~同じく比嘉さんの「あ、それは無理」の即答まで、アニメーター・森(亮太)君が思う“可愛さ”に満ちていたので、そこは十分残して、板垣の方で最小限の作監修正で済ませました。
あ、今週放送の『キミ越え』第4話の作画チーフが森君で、今回もキメの細かい芝居・アクションを見せてくれて嬉しかったです。
で、おまけのCパート。比嘉さんの同時通訳に驚愕の安慶名さん! 本当は方言監修の譜久村(帆高)さんにうちなーぐちを書いていただけないか? とも考えたのですが、「ぺらんちゅ」に統一して連呼した方が面白そうだったので——ぺらんちゅ、ぺらんちゅ、ぺらんちゅ……。
次9話。アバン~誰も居なくなった町。この辺りは市川(真琴)さん作画。ザン! と踏み込むてーるー足元、その土煙は俺の方でササッと描き直しました。また、アバンのラスト、“シュパんちゅ”の投球フォームとかもラフを入れたりもしましたが、全体作画を直さなきゃならない立ち位置から、原画の描き直しすると、“多少ユルくても早く描ける”方法を選ぶことになるので、どうしても少々物足りない仕上がりになってしまい、残念です。
そろそろ、久し振りに“純正な原画”を思いっきり描きたい!
欲が高まってきている、今日この頃。
はい、短くてゴメンナサイ! また来週。
あ、ところで前回『名探偵ホームズ』設定資料集の話をして、久し振りに観たくなってTMS公式YouTubeにて本編(第3話)視聴。すると——
腹巻猫です。YouTubeで配信されているWebアニメ『ぷちきゅあ〜Precure Fairies〜』のテーマソングアルバムが10月29日にリリースされました。主題歌のほかにBGM約30曲も収録。構成は腹巻猫が担当しました。本家のプリキュアシリーズとはひと味違う、可愛い音楽満載です。ぜひお聴きください!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0FHH4PJD7
今回取り上げるのは、今年(2025年)10月に公開された劇場アニメ『ホウセンカ』の音楽。劇中の展開に踏み込んで紹介することをあらかじめお断りしておく。
『ホウセンカ』は、TVアニメ『オッドタクシー』(2021)を手がけた此元和津也(脚本)と木下麦(監督)のコンビによるオリジナル作品である。企画・制作を、劇場アニメ『映画大好きポンポさん』の制作スタジオ・CLAPが担当した。
阿久津実は30年以上収監されている無期懲役囚。今は年老いて死が近づいていた。その阿久津に、鉢植えのホウセンカが声をかけてくる。阿久津はホウセンカを相手に昔話を始めた。
1987年、しがないヤクザの阿久津は子連れの女・那奈と所帯を持ち、小さなアパートで暮らし始めた。庭にはホウセンカが咲いていた。阿久津はきわどい仕事に手を出し、羽振りがよくなったが、バブル崩壊とともにうまくいかなくなる。そんなとき、大金が必要になった阿久津は兄貴分の堤に誘われ、組の金庫から金を強奪する計画に手を貸してしまう。その結果、監獄に入ることになったのだ。それから30年余り。アパートを離れ、身を隠していた那奈からの伝言をホウセンカが届けに来た。
「いいアニメを観た」というより、「いい映画を観たなあ」と思った作品だ。よく練られた脚本と自然体の演技と計算された演出がみごとにかみ合って、50〜60年代の日本映画を観るような趣があった。「アニメでなくても成立するのでは?」という思いも頭をかすめるが、ホウセンカがしゃべる姿を違和感なく見せるには、やはりアニメが最適だったのだろう。
音楽は3人組のバンド〈cero〉が担当。メンバーの高城晶平、荒内佑、橋本翼のそれぞれが、作曲、アレンジ、プロデュースも行うバンドである。バンドとして映画音楽を担当するのは本作が初めてだそうだ。
作品を観て気がつくのは、音楽が流れる場面がきわめて少ないこと。サウンドトラック・アルバムは、オープニングテーマとエンディングテーマを含む13曲入り。映画音楽として作られた曲は、これですべてらしい。劇中音楽は11曲。90分の劇場アニメとしては、かなり少ない。
しかし、観ているあいだはそのことに気づかなかった。音楽が自然に物語に溶け込んでいるからだ。ありきたりの作品なら音楽でサスペンスを盛り上げるような場面も本作では淡々と描写される。音楽を控えめにすることで臨場感と緊張感を生む。黄金時代の日本映画にしばしば見られる演出である。
Webサイト「音楽ナタリー」に掲載されたインタビュー(https://natalie.mu/music/pp/housenka)によると、木下監督は本作の音楽について、「静かな物語なので、音楽も静かで品のあるものにしたい」と考えたそうである。「儚さ」「虚しさ」「瞬く間」「美」というキーワードをもとにceroに作曲を依頼した。
結果、一般的な劇場アニメの音楽とはだいぶ印象の異なるものができあがった。静かで儚い曲調の、環境音楽的・ミニマル的とも呼べる音楽である。シーンを盛り上げるよりも、ただそっとそこにあるような音楽だ。その控えめな曲調が本作とみごとにマッチしている。
サウンド的には、アコースティック楽器を中心にしたミニマムな編成で作られているのが特徴。そして、インタビューでも語られているが、楽器が出すノイズ的な音を取り入れ、生活音のように音楽の中に潜ませているのが印象的だ。
本作のサウンドトラック・アルバムは、2025年10月8日に「ホウセンカ Original Soundtrack」のタイトルでポニーキャニオンからリリースされた。CDと配信があり、内容は同じである。
収録内容は以下のとおり。
劇伴として書かれたトラック02〜12には、花の名のタイトルがつけられている。花の名に続くワードは、その花の花言葉だ。曲が流れるシーンを花言葉で象徴的に表現しているのだろう。この独特の曲名のおかげで、本アルバムは花をテーマにしたコンセプト・アルバムとして聴くこともできる。
トラック1の「Moving Still Life」は、本作のオープニング主題歌。一緒に暮らし始めた阿久津と那奈がアパートの庭の向こうに上がる花火を見るシーンに流れている。劇中では花火の開く「ドン、ドン」という音と重なって聞こえ、生活に溶け込んだ音楽になっている。
トラック2の「サルビア 家族」は、若き阿久津と那奈の日常に流れる曲。ピアノとクラリネット、ビブラフォンのシンプルな編成で奏でられる、なにげない日常を彩る音楽だ。
トラック3「ウツボカヅラ 絡みつく視線」では、フルートが奏でる短いフレーズの連続が、阿久津と那奈の日常に忍び寄る不穏な気配をさりげなく表現する。あからさまなサスペンスではないが、日常の中の違和感、気になる感じを表現する曲である。
フルートとハーモニックパイプ(振り回して音を出すホースのような楽器)を使ったトラック4「ヒヨドリジョウゴ すれ違い」は、音楽とも効果音ともつかない、ふしぎな曲。しだいに気持ちがすれ違っていく阿久津と那奈の日々を、風のような音が描写する。音楽よりも音響と呼ぶほうがしっくりくる、ユニークなアプローチの曲だ。
阿久津が遊ぶ店のBGMとして使われたトラック5「チューベローズ 快楽」に続いて、トラック6「ユウガオ 罪」はアコースティックギターをメインにした映画音楽らしい1曲。那奈に息子・健介のことを相談された阿久津が、冷淡な返事を返す場面に流れている。年老いた阿久津が過去をふり返ったときに感じる罪悪感を表現する、しみじみと曲である。
次のトラック7「ツバキ 覚悟」も映画音楽らしい1曲だ。弦のピチカートとピアノのリズムに不協和音を鳴らす弦合奏が重なり、堤が阿久津を犯罪に誘うシーンがスリリングに描写される。音楽ナタリーのインタビューによれば、このシーンでは木下監督から「もっとサスペンスを強めたい」という要望が出て、ceroが何度か曲を書き直したそうである。映画をエンターテインメントとして成立させるためには必要な演出であり、音楽だったのだろう。
堤と阿久津が大金強奪を実行する場面のトラック8「カサブランカ 裏切り」では、「ツバキ 覚悟」よりもアンビエントな(環境音楽っぽい)音作りがされている。暴力的なシーンにあえて静かなサウンドを当てる、実写映画っぽい音楽演出だ。
阿久津はひとりで罪をかぶり、無期懲役の刑を受けて収監される。阿久津がそのいきさつをホウセンカに語る場面の曲がトラック9「アネモネ 薄れゆく希望」。コントラバスのピチカートとシンバル、アコースティックギターなどによるシンプルな音楽が、阿久津の置かれた状況を冷静に表現している。
阿久津が30年余りの獄中生活を回想する場面に流れるのは、エレピがリリカルに奏でるトラック10「シオン 追憶」。孤独な長い日々を静かに描写する、しっとりとした曲である。悲哀感を強調しない抑制の効いた音楽が、時の長さと阿久津の心情を想像させる。ほかの曲との音色の違いが効果的で、うまいなあと思うシーンだ。
トラック11「アヤメ 伝言」は、阿久津がホウセンカから那奈の伝言を受け取る場面の曲。ピアノとシンセ、クラリネットが奏でる静かな音楽が、ほのかな希望を感じさせる。シンセの音がメルヘンティックに響いて、本作のファンタジックな一面を表現しているようである。
ラストシーンに流れるのは、ピアノと弦楽器によるトラック12「ホウセンカ 私に触れないで」。年老いた那奈が息子の健介と語らう場面に使われている。感動的に盛り上げる曲調ではなく、日常に溶け込む環境音楽のように奏でられる。それが本作らしくていいし、心地よい余韻を残す。
『ホウセンカ』の音楽は、意欲的なサウンドトラックとしても聴けるし、ちょっと風変わりなアンビエント・ミュージックとしても聴くことができる、個性的な作品だ。
実は本作には、アルバムに収録された曲以外にもユニークな音楽が聴けるシーンがある。
アパートで暮らし始めたばかりの阿久津と那奈が、身近にある食器や道具を使って音楽を奏でるシーンである。「ストンプ(STOMP)」と呼ばれるパフォーマンスを思わせるシーンだ。ほかのシーンでは、那奈と幼い健介が同じようにして音楽を奏でている。日常の生活や動作から生まれる音がそのまま音楽になる。本作がめざしたのは、そんな音楽ではないだろうか。発想を変えれば、いつでも音楽は聞こえてくるのだ。
ホウセンカ Original Soundtrack
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『キミと越えて恋になる』
鋭意制作中いっぱいいっぱいで、申し訳ありません!
と、お茶濁しだけでは何なので、この場を借りてお礼を……。
アニメスタイル様、「名探偵ホームズ資料集」を送っていただき、ありがとうございます!!
これは大変素晴らしい本で、TVシリーズ『名探偵ホームズ』のキャラ・美術設定・本編レイアウトから版権イラスト、そして宮﨑駿監督以下、当時のテレコム(・アニメーションフィルム)スタッフによるイメージボードまで、板垣的にはかなり大満足な内容です!
特に、友永和秀・田中敦子両師匠や道籏義宣先輩、さらに大塚康生様によるレイアウトには感動しました!「自分、若い頃こんな凄い方々にお世話になってたんだよなぁ」と感慨深く、改めて心の中で感謝しました。
はい、今回も短くここで終わり、また来週(汗)。
木村(博美)さんとの共同監督作品『キミと越えて恋になる』が放映中です。観てください!
上映イベント「押井守映画祭」は押井守監督が手がけた作品を連続して上映するシリーズプログラムです。他の【新文芸坐×アニメスタイル】のプログラムと同様に新文芸坐とアニメスタイルの共同企画でお届けしています。
11月15日(土)に「押井守映画祭」の《特別編》として『イノセンス』と『スカイ・クロラ』を上映します。トークのゲストは両作品に作画監督として参加している西尾鉄也さん、原画で参加している本田雄さんです。今回は押井守監督の登壇はありません。西尾さんと本田さんに、作品について、作画について、あるいは押井監督についてたっぷりと語っていただく予定です。
チケットは11月8日(土)から発売。チケットの発売方法については新文芸坐のサイトで確認してください。 また、『イノセンス』は11月14日(金)に、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』は11月29日(土)にもトーク無しの単独上映を予定しています。
今回の「押井守映画祭」でも押井守映画祭オリジナルグッズを販売します。さらに「本田雄 アニメーション原画集 vol.1」、「西尾鉄也画集」も販売する予定です。
他のイベントについての情報もお伝えします。「押井守映画祭2025《特別編》」が開催される11月15日(土)には、同じ池袋のアニメ東京ステーションで「本田雄 原画展」が開催されています。こちらの展示では『スカイ・クロラ』の原画も展示されています。是非とも原画展にもお立ち寄りください。
●関連リンク
新文芸坐オフィシャルサイト
http://www.shin-bungeiza.com/
新文芸坐オフィシャルサイト(本イベントチケット販売ページ)
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2025-11-14-1
緊急告知!押井守映画祭オリジナルグッズを販売します!!
https://animestyle.jp/news/2025/04/30/29056/
【新刊情報】スーパーアニメーター 本田雄さんの原画集を刊行!! 『崖の上のポニョ』『青の6号』『ふしぎの海のナディア』等の原画を収録
https://animestyle.jp/news/2025/07/25/29609/
西尾鉄也の集大成「西尾鉄也画集」ネット書店、一般書店で9月26日発売!
https://animestyle.jp/news/2016/08/16/10363/
本田雄 原画展(アニメ東京ステーション 公式サイト)
https://animetokyo.jp/archives/events/events45/
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【新文芸坐×アニメスタイル vol.195】 |
開催日 |
2025年11月15日(土)13時05分~18時10分予定(トーク込みの時間となります) |
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会場 |
新文芸坐 |
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料金 |
3500円均一 |
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上映タイトル |
『イノセンス 4Kリマスター版』(2004/99分) 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(2008/121分/35mm) |
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トーク出演 |
西尾鉄也(アニメーター)、本田雄(アニメーター)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長) |
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備考 |
※トークショーの撮影・録音は禁止 |
前回同様『キミ越え』の話は置いておいて、『沖ツラ』話の続きから。ドライブインでバーガーを頬張る一同。コンテチェック時、“喰らいつく芝居”を3コマに分け、ボールド(アフレコ用ムービーに明滅する台詞尺のガイド)も“口開ける”“喰らう”“咀嚼”と細かく指定して、いつもやります。これは初監督の時からスタッフ皆に言うのです。
食事シーンを“美味そうに”描けないなら、
シーン自体作らないでください!
と。もちろん、その時関われる作画マンのリソース次第では俺自身で描く羽目になるのですが(汗)。あと、比嘉さんがバーガーを食べるカット。これは原作のコマにあった“幸せそうに頬張ってる比嘉さん”の表情が良く、さらに“もっ、もっ”って描き文字が可愛かったので、そのままコンテ~作画にしました。で、自らのお腹の肉をつまんで愕然~「めっちゃ心当たりある——!!」と絶叫モノローグの比嘉さん、ファイルーズあいさん最高でした!
そして、また喜屋武さん比嘉さんの幼少編“ゆいレール”! この件は森(亮太)君の原画が光っています。顔部分は自分の方で作監修正を入れましたが、“動き”は全て彼の原画そのままです。涙を堪える幼少・比嘉さんを見て、“突如立ち上がり駆け出しOUT”する幼少・喜屋武さんの動きや、ゆいレール車内で踊りなど、いわゆる「作画アニメ」的な凝った動きをしていて、この類の場面を任せるなら一番のアニメーターです。もちろん、現在放映中の『キミ越え』でも、森君は大活躍してくれています! 例えば『キミ越え』#01・繋のバスケ・シーンなど。
それと、板垣個人的に“涙を堪える幼少・比嘉さん”は気に入っていて、コンテ修正もこの辺ガッツリ入れています。自分も幼少期凄い泣き虫だったので、この場面での幼少・比嘉さんの気持ちが良く分かる気がして。
はい、今週もそんなトコでまた来週。
『キミと越えて恋になる』~木村(博美)監督共々頑張ります(汗)!
腹巻猫です。10月19日に東京芸術劇場で開催された東京都交響楽団のコンサート「すぎやまこういちの交響宇宙」を聴きました。演目のメインは「交響曲《イデオン》」と「カンタータ・オルビス」。どちらもアニメ『伝説巨神イデオン』から生まれた管弦楽曲です。アニメ音楽ファンには人気の作品ながら、コンサートで演奏されるのは初めて。すばらしい演奏で感激しました。再演の機会があることを願ってます。
今回は今年(2025年)9月に公開された劇場アニメ『ひゃくえむ。』の音楽を取り上げたい。作品もよかったし、音楽も印象に残るものだった。
『ひゃくえむ。』は、『チ。 地球の運動について』で知られる魚豊の同名マンガを原作にした劇場作品である。監督・岩井澤健治、アニメーション制作・ロックンロール・マウンテンのスタッフで映像化された。
小学6年生のトガシは100メートル走で全国1位になるほど足の速い少年。ある日トガシは、がむしゃらな走り方をする転校生・小宮に出会い、彼に走り方を教え始める。トガシの指導で小宮の走りは見る見る上達し、トガシを負かすほどになっていった。が、突然小宮はふたたび転校してしまう。
それから数年後。走ることを続けていた高校生のトガシは、インターハイで小宮と再会し、100メートル走の決勝で対決することになる。
トガシと小宮の2人を中心に、短距離走に挑むアスリートの栄光と挫折や苦悩を描いた物語である。多くのスポーツものが弱点を克服することや、仲間やライバルとの友情を描くことに注力しているのに対し、本作は「なぜ走るのか?」という根源的な問いをテーマにしているのが特徴だ。
トガシが挑む100メートル走は10秒程度で勝負がついてしまう。だから、ドラマはそこに至るまでの努力や心の動きに焦点を当てたものになる。余計な要素を削り落とし、走ることにすべてを集約していく構成と演出。さまざまな技法を駆使して「走り」を表現する映像と音響。それが本作の見どころであり、聴きどころになっている。
音楽は、TVアニメ『呪術廻戦』『Dr. STONE』、TVドラマ「おむすび」などの音楽を手がける堤博明が担当した。
本作の音楽には、ふたつの興味深い点がある。ひとつは本編の重要な要素である「走り」を音楽で表現する工夫。もうひとつは、サウンドトラック・アルバムの構成のユニークさである。
まず「走り」の表現について。劇中の「走り」に関連した音楽は、基本的にギターサウンドをベースにした軽快な曲調で作られている。ギターを中心にしたのは、堤自身がギタリストということもあるだろうし、「走り」を表現するのに適した楽器という理由もあるだろう。ギターのカッティングによって疾走感やスピード感を出すのは、西部劇音楽などでもよくある、劇伴ではおなじみの手法だ。それだけにサウンドが一本調子になりそうだが、本作ではシーンによってテンポやリズムや曲の構成を変え、「走る」場面や目的によって緻密に曲想を変化させている。さまざまな「走り」の音楽表現が聴けるのが、本作の魅力のひとつである。
次にサウンドトラック・アルバムの構成であるが、その話をする前に、まずアルバムの概要を紹介しよう。
本作のサウンドトラック・アルバムは「映画『ひゃくえむ。』オリジナルサウンドトラック」のタイトルで、2025年9月17日にポニーキャニオンからリリースされた。CDは2枚組。Official髭男dismによる主題歌「らしさ」は収録されていない。
収録曲は以下のとおり。
ディスク1
1. 100 meters
2. Training Days
3. 到達点
4. Under Pressure
5. ファーストサイン
6. 幻影走
7. 今から行こう
8. Under Pressure Again
9. 新緑のメモリー
10. After School
11. 8継(鰯二ver.)
12. 始まりの予感
13. イップス
14. Starts to Rain
15. Trial and Error
16. 100 meters Part2
17. After Some Time
18. 8継(トガシver.)
19. ザ・チャレンジャー
20. 祝福のうた
ディスク2
1. The Start of 100 meters
2. 100 meters(Extra ver.)
3. Training Days(Extra ver.)
4. 幻影走(Extra ver.)
5. 新緑のメモリー(Extra ver.)
6. 100 meters(Demo ver.)
7. 8継(鰯二ver.)(Demo ver.)
8. ザ・チャレンジャー(Demo ver.)
9. Trial and Error(Demo ver.)
10. 100 meters(For Workout)
11. Starts to Rain(For Walking)
12. 祝福のうた(For Relaxing)
ディスク1は劇中使用曲を物語に沿って収録したオーソドックスなサウンドトラック。ディスク2は、ディスク1の楽曲をリアレンジしたエキストラ・バージョンや制作初期に作られたデモ・バージョンなどを収めたインスト・アルバムになっている。1枚目と2枚目でまったくコンセプトが異なるわけだ。こういう構成の2枚組は、例がまったくないとは言えないが、かなり珍しいと思う。
まずはディスク1から「走り」をテーマにした曲を中心に紹介しよう。なお、CDの解説書には堤博明による全曲解説が掲載されている。以下の曲紹介は、その解説を参考にさせていただいた。
1曲目の「100 meters」は本作のメインテーマ。キャッチーで耳に残るようなメインテーマがほしいという岩井澤監督の要望に応えて、堤博明が最初に作った曲である。劇中でも最初に流れる音楽だ。堤博明は気合を入れて作曲に取りかかったものの、なかなか納得のいくフレーズが浮かばず、苦心したとふり返っている。あるとき、「『ひゃくえむ。』なんだから実際に走らなければダメだ」と思い立ち、夜の公園を走り出してから曲想をつかんだそうだ。本作の音楽作りの核心に触れるような、いい話だ。
メインテーマのリズムには7拍子が取り入れられている。耳慣れた4拍子や8拍子のリズムと異なる7拍子には、前のめりになるような勢いがあり、それが一心不乱に走るアスリートの体の動きや心の中を想像させる。
2曲目の「Training Days」は、小学生のトガシが転校生の小宮に走り方を教えるシーンの曲。ここは緊張感を必要とするシーンではないので、音楽も心地よく軽やかなギターサウンドに仕上げられている。
次の「ファーストサイン」は、小学生のトガシと小宮が鉄橋の下の道で競争する場面の曲。鉄橋を走る電車の実際の走行音を録音し、リズムに組み込んでいる。現実音と音楽が一体になったミュージックコンクレート的な面白さを感じる曲だ。メインテーマ「100 meters」のモチーフが使用されている点もポイントである。堤の解説によれば、物語の転換点となる重要なシーンであるために、メインテーマのモチーフを使用したそうだ。
トラック11の「8継(鰯二ver.)」は、高校生になったトガシが陸上部の仲間と800メートル・リレー走に挑むのシーンの曲。リレー走の展開に合わせ、前半・中盤・後半でリズムパターンを変化させる工夫が、映像とみごとなマッチングを見せていた。
トラック14「Starts to Rain」は、トガシと小宮がインターハイで対決する場面の直前に流れる曲。焦燥感をあおる低音のギターのフレーズがくり返される中、重いリズムとブルージーなギターのメロディが重なって、トガシたちの緊張を表現する。終盤はスタートに向けて高揚する心情をブラスセクションが盛り上げる。ディスク1収録曲の中でも、もっとも演奏時間の長い(4分近い)、ドラマチックな曲である。
この曲に続く「走り」のシーンには音楽がついていない。映像と効果音だけで見せるほうが効果的だと監督は判断したのだろう。そこに至るまでの音楽の役割は十分に果たされている。
余談だが、本作でアスリートが走るシーンの効果音(足音)のほとんどは、足にマイクを付け、実際にグラウンドを走って録音した音と、同時にガンマイクでも録った音を組み合わせて作っているそうだ。音にも注意して観てほしい作品である。
トラック16「100 meters Part2」はメインテーマの変奏曲。社会人アスリートとなり、不調に悩んでいたトガシが、先輩の海棠の話を聞いたことで気持ちを切り替え、競技大会で走る場面に流れている。メインテーマがふたたび流れることで、トガシの再出発を印象づける演出である。
トガシが日本陸上の予選で走る場面の「8継(トガシver.)」(トラック18)も同様で、こちらは先に紹介した「8継(鰯二ver.)」の変奏曲。高校時代のリレー競技の快走と現在のトガシの走りとが重なり、トガシの復活を感じさせる。同じモチーフを使うことで過去と現在を結び付け、セリフや映像だけでは伝えきれない情感を表現する工夫である。
本編最後に流れる劇伴は、トラック20の「祝福のうた」。日本陸上大会の決勝戦に臨むトガシたちの場面につけられた曲だ。「Starts to Rain」と同じように、スタート前の緊張した場面に流れるのだが、曲調は「Starts to Rain」とまったく違う。こちらは、女声ヴォーカリーズとストリングスをともなった、抒情的な曲になっている。この場面では、もはや勝敗のゆくえは重要ではない、と音楽が語っている。これは、走ることに人生を賭けたアスリートたちへの、タイトルどおり「祝福」の音楽なのだろう。
ここまで紹介してきたように、本作ではシーンごとに考え抜かれた音楽演出が行われている。モチーフの選択、アレンジ、サウンドの作り込みなど、映画音楽ならではの緻密な音楽作りが、作品の感動を支えている。観ているときには気づきにくいが、サウンドトラック・アルバムでは、その工夫をあらためて知り、作品を味わい直す楽しみがある。
では、アルバムのディスク2はどんな意味があるのか?
ポニーキャニオンの商品ページによれば、ディスク2は「劇伴音楽を起点にインスト・アルバムとしてのクオリティを追求した至極の一枚」なのだそうだ。ディスク1の「Soundtrack」に対して、ディスク2は「Extended Edition(拡張版)」と題されている。
1曲目の「The Start of 100 meters」は本編の前に制作されたパイロット版のための曲。シンプルなサウンドと構成による、本編への助走のような曲である。
2曲目の「100 meters(Extra ver.)」はメインテーマの特別版。メインテーマよりも演奏時間を長くし、起伏に富んだ構成にアレンジし直された楽曲だ。続く「Training Days(Extra ver.)」「幻影走(Extra ver.)」なども同様で、場面に合わせて作られた劇伴音楽を楽曲単体で楽しめるようにリメイクしたものと考えればよいだろう。
映画音楽の世界では、純粋なサウンドトラック(劇中使用音源)とは別に、アルバム用の別録音を用意して商品化する例が古くからある。アニメでも、『さらば宇宙戦艦ヤマト』(1978)の公開当時に発売された音楽集が、アルバム用に別録音された楽曲を収録したものだった。『ひゃくえむ。』の「Extra ver.」は、その伝統を受け継いだ試みと言える。
トラック6〜9の4曲は、音楽制作の初期に作られたデモ・バージョン。メインテーマ候補だった曲も含まれている。音楽作りがどのように進められたかを知ることができる興味深いトラックだ。劇伴の研究や作曲を志す人の参考にもなりそうである。
トラック10〜12は、それぞれ「For Workout」「For Walking」「For Relaxing」と題されている。音楽を聴きながら運動する実用的なシーンを想定した別バージョンである。これは、今まであまりなかった試みではないだろうか。単なる鑑賞用ではなく、体を動かしながら聴いてほしいという思いを込めたアレンジなのだ。本作らしいユニークな試みである。「なぜ走るのか?」、その問いの答えを、聴く人それぞれが走りながら考えてほしいという願いがこもっているのかもしれない。
総合すると、ディスク2は、従来ならボーナストラックに収録されるような音源を集めたスペシャルディスクと呼べる内容である。実はディスク1とディスク2を合わせても演奏時間は60分くらいなので、CD1枚に入ってしまう。しかし、商品の構成としては2枚に分けたかったのだろう。物理メディアだからこそ楽しめる趣向であるし、解説書も含めて、CDで買う価値があると思わせてくれる内容だ。
CDが売れなくなったと言われて久しいが、こういう、CDならではの付加価値を付けた作り方をする作品が、ほかにもあってほしいなと思う。懐古趣味ではなく、サントラの可能性を広げる試みとして。
映画『ひゃくえむ。』オリジナルサウンドトラック
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『キミと越えて恋になる』の話はもう少し後にして、今回も『沖ツラ』!
8話“ドライブ”話。まずは演出・長谷川さんにより、コンテに“今この辺り~”と実在の地図を載せてくれてたのがとても助かりました。原図も本人により綿密に押さえてBG発注したとのことで、有り難うございます。そして、“沖縄に鉄道はない”には驚きました! 「沖縄県民、車から出たくなさすぎぃ!」なドライブスルーブームに、また爆笑! でも、俺自身も暑いの苦手なので、沖縄くらい暑いと車から出たくなくなるのも非常に分かります。
テクニカルな話だと、幼少期の比嘉さんが観る恋愛ドラマの電車、
パースをうんと望遠圧縮にした止め画を微小のデジタル拡大で走行感を出した!
のですが、案外上手くいって喜びました。レイアウト&原画・篠(衿花)さんありがとう!
てーるーの隣りでお腹が鳴るのを我慢しようとする乙女な比嘉さん——ファイルーズあいさんの芝居がとても良かったので、これもアフレコ時大喜びしました。巧い! で、こちらも篠作画による比嘉さんの表情が真に迫ってて、こちらも巧い!
ドライブインでの“ズン・ズン・ズン……”は長谷川コンテのままです、面白かったから! 「ズン・ズン・ズン……」と“声SE”でやって来る店員さんも可笑しくって、アフレコ時ゲラゲラ笑った俺!
今回も短い!『キミ越え』の制作を頑張るのでご容赦下さい(汗)!