COLUMN

第427回 仕事上のテーマ〜『てーきゅう』

 板垣は作品内(ストーリー上)のテーマとは別に、毎作品

作品を作る上、つまり仕事(作業上)のテーマを設ける!

ようにしています。これは自分が新人原画マンだった頃、とある先輩に「仕事にとりかかる際、『今回は原画枚数を多く描いてみる』とか『今回は早く描き上げよう』とか、毎回ひとつテーマを決めてとりかかるようにするんだ」とアドバイスされたのに端を発します。その先輩いわく「人間あれもこれも目標を掲げてもひとつもクリアできないから、毎回ひとつ目標を達成してそれを積み上げていく方が成長が早い!」なるほど! と。監督になってもそれは変わらず、例えば『てーきゅう』の場合だと

第1期 自分自身の作画・演出遊び!
第2、3期 ズバリ演出!
第4期(+『なすの!』) 会社と新人育成!

となります。第1期の時は、まずそれまでの知人・友人・仲間スタッフを連れて来ず(予算的にもキビシイのが分かってたので)、とりあえず「自分自身が作画で遊ぼう!」ということで、今観ていただくと、自分以外の原画マンに発注しても理解されない(であろう)イタズラを結構やってます。例えば第一面で、かなえが「すべからず! すべからず!」とラケットを大振りするカット——かなえ3つを1枚に作画してモーションブラーの移動で動きを表現してみたり、第4面で少しずつタネ明かしするような画面分割をしてみたり(このようなレイアウトを他人に描いてもらった場合、後で結局自分で直すハメになります)。その他、極太マジックで作画したり、頭のド寄りと手のスライド(引っぱり)だけで会話したり(第7面)などは第1期ならではの「遊び心」です。そうする事で

自分的アニメ作りの基本に立ち返る!

のがテーマだったわけ。つまり「オマエはただ(動画)枚数を使いたいのか!?」「動かさないと本当にアニメは作れないのか!?」と自問自答するように作ってました。それでかえって

アニメの本質に近づけた!

と思います。
 で、第2、3期の「演出」とは、

作画(原画の組み立て)は他人に任せて(キャラ修正はもちろん自分でやるも)、額面どおり「演出」で画面を仕切る!

という意味です。今はもう時効でしょうが、2期と3期が直結する事は最初っから決まってスタート、とゆーか俺に依頼がきた時点で「2クールやってください!」でした。その際、MAPPA様と相談して「板垣さんは全コンテと原画修正に徹してください!原画マンはウチで揃えますから!」と言われ、そうしたわけです。だから2、3期は1期に比べて凝った事やってないですよ、今観ると! 原画さんに描いてもらうために

コンテ時なるべくシンプルな画面構成になるように計算してましたから!

そうする事で「アニメnおける演出って何?」とか「他人に描いてもらう原画をどう使うか?」を考え直すよいキッカケになりました。
 当時観た人から「あれ? 1期よりムリしてないですよね?」と訊かれ「あ、分かる?」と。
 さらに第4期、会社と新人育成は次回(汗)。